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1988-10-21 第113回国会 衆議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月二十一日(金曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 愛知 和男君 理事 岸田 文武君    理事 北川 正恭君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 鍛冶  清君 理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    石渡 照久君       工藤  巌君    佐藤 敬夫君       斉藤斗志二君    杉浦 正健君       谷川 和穗君    渡海紀三朗君       江田 五月君    嶋崎  譲君       中西 績介君    馬場  昇君       有島 重武君    北橋 健治君       石井 郁子君    山原健二郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中島源太郎君  出席政府委員         文部政務次官  船田  元君         文部大臣官房長 加戸 守行君         文部大臣官房総         務審議官    菱村 幸彦君         文部省初等中等         教育局長    古村 澄一君         文部省教育助成         局長      倉地 克次君         文部省高等教育         局長      國分 正明君         文部省体育局長 坂元 弘直君         文化庁次長   横瀬 庄次君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     古川 元晴君         厚生省保健医療         局結核感染症         対策室長    伊藤 雅治君         文教委員会調査         室長      松原 莊穎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  教育職員免許法等の一部を改正する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第四五号)  地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第五三号)  文教行政基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江田五月君。
  3. 江田五月

    江田委員 おはようございます。まず、きょうは教科書採択のことについてちょっとお伺いをしてみたいと思うのですが、作家司馬遼太郎さんがひとつ自分の全精魂を込めて教科書をつくってみようというのでみずからも執筆をされまして、もちろんほかの人と一緒ですが、教科書をおつくりになった。大阪書籍の「小学国語」というのですが、既にきのう文部大臣にこの司馬遼太郎さんの書かれたところをあらかじめ読んでおいてほしいということをお願いいたしましたが、お読みくださったでしょうか。  二つありまして、五年生の一番最後洪庵のたいまつ」、緒方洪庵の話、六年生の一番最後は、これから小学校を卒業する子供たちに対して「二十一世紀に生きる君たちへ」、こういう文章ですね。大臣、なかなか難しいでしょうけれども、ちょっと感想を伺えればと思います。
  4. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘がありましたので、大阪書籍の御指摘部分については目を改めて通させていただきました。一言で申せば、国語教育の面から見ても、人間形成に資するという面から見ても、国語教材としてふさわしいものとは当然思いますけれども、これが五年と六年に分かれておるわけでございますね。  私、率直に思いまして、緒方洪庵さんの件、これは一読して大変結構なことでありますけれども、ただその中に、世のために尽くした人の一生ほど美しいものはないという書き出しでありまして、その中にお医者さんの心がけの一部に、ただただ自分を捨てよ、そして人を救うことだけを考えよ、こういう言葉があるわけであります。これは、私ども先入観念があるのか、今のお子さん方にこういうことが素直に受け入れられるかなという感じを率直に持ったわけでございます。失礼な話ですが、私ども時代にはかつて滅私奉公という言葉がありまして、それはやはり今の時代ではさらに本質をもう一度正しく理解していただかなければいかぬことではないか。  ただ、六年の「二十一世紀に生きる君たちへ」という中では非常に的確にそれが指摘されておりまして、人間とは自然の一部だ、だから人間自分で生きているのではなくて支え合いながら生きているのだ、だから自己確立というものは、自分に厳しく相手に優しく、それを自己確立として、そして他人に対するいたわり、優しさがあることによっておのれのたくましさが生まれるのだ。  この二つを読み合わせますと、非常に立派なことでありまして、そういう意味で、五年生の方に書かれた部分、それを「二十一世紀に生きる君たちへ」ということでもう一度わかりやすく言っていただいている。これは私、大変結構なことで、できればこの認識を間違いなく受け取っていただきたいな、そういう感想は持ちました。
  5. 江田五月

    江田委員 一つ一つ教科書がいい悪いということをここで議論する場ではないのですけれども、しかし、日本じゅうで非常にみんなに好かれ、親しまれ、尊敬もされている作家司馬さんという人が情熱を込めて教科書をおつくりになったというのは、私はこれは敬意を表すべきことだろうと思うのですね。ほかの教科書ももちろんすばらしい教科書ですが、これも負けず劣らずすばらしい。そういう意味検定合格されたのだろうと思います。ところが、これは随分採択する学校も多いのじゃないかと言われておったら、何とふたをあげてみると東京、大阪の私立の学校、十校ぐらいが採用しただけで、それ以外には公立の学校では採択がゼロであった。  こういうことで、この教科書を使って子供たちを教えたいなと思う国語先生が、日本じゅう小学校が二万四千六百もあるのに、全然なかったというのは一体どういうことなのかな、なぜこんなことになるのかとちょっといぶかしく思うのですが、なぜ一体この採択ゼロということになってしまうのですかね。
  6. 古村澄一

    古村政府委員 これは、採択市町村教育委員会の権限でございますので、市町村側の考えということが基本にあるわけでございますが、概して言えば、学校というのは従来から使いなれた教科書を踏襲していくといった傾向が非常に強い。特に、今回は四分の一改訂、いわゆる部分改訂の年に当たっておりますので、そういった従来以上に前の年の教科書をそのまま使っていくというふうな傾向が強かったんだろうというふうに思うわけでございます。
  7. 江田五月

    江田委員 従来からのものを踏襲する傾向が強いというお話ですが、それもあるでしょうけれども、やはり一番の問題は、広域採択制採択区域というものがあって、その区域の中で決めていく。したがって、私はこの教科書子供たちを教えたい、そういう教師願いあるいはそういう教師のグループの願いというものがなかなか通じにくいという、そういう制度になっているところが問題じゃないですか。
  8. 古村澄一

    古村政府委員 現在、教科書選定というのは大体郡市単位ということで一つ教科書を使っていくというふうな仕組みになっておるわけでございまして、これは戦後大体そういった仕組みがずっととられてきて、そして昭和三十八年の法律の制定によってそれが法文化された。そのときに都市単位が集まって採択地区協議会をやりますが、そのときに専門の先生方の御意見を十分そこで調査員等に任命して聞いて、と同時に、片方、県の教育委員会において選定審議会というものを持ってそこからの意見も聞いて、そういうことを基本に置きながら採択地区においては教科書を決めていくというのが長い間のルールで定着しているわけでございまして、そのことが直接この問題の新しい教科書についてストレートに響いているというふうには思えない。実際問題として、先ほど申し上げましたように、前の教科書を使っていく傾向が強いということから、教科書新規参入というのはなかなか入りにくいというのが現状でもあるというふうに考えております。
  9. 江田五月

    江田委員 ことしの小学校教科書採択で、以前からのものを踏襲する傾向が強いとおっしゃいますが、小学校国語でどのくらい変更がありましたか。
  10. 古村澄一

    古村政府委員 全種目で見てみまして、採択変更率はことしは六・七五%ということでございます。
  11. 江田五月

    江田委員 国語だけという数字はあるのかないのか——ありますか。国語だけだとどのくらいですか。
  12. 古村澄一

    古村政府委員 国語だけですと、七・二%でございます。
  13. 江田五月

    江田委員 七・二%変わっていて、七・二%を多いと見るか少ないと見るかはそれは見方ですけれども、それだけやはり変わっていくのに、前からのものを踏襲する傾向が強いからなかなか新規参入しにくい、それが理由である、この大阪書籍教科書がどこにも採用されなかった理由、なかなかちょっとそうは言えないのじゃないかという気がするんですがね。  それはいいとして、新聞とか週刊誌などにこの件は取り上げられていて、そういうマスコミの伝えるところによると、どうも採択区域というものがこういう広域採択になっていて各採択地区の少数の有力教師決定権を持っている。大変に寡占の壁というものがあって新規参入は難しい。しかもその間にいろいろと、何というのですか、まだ教師がなりたてのころから、これは将来物になるぞというような者は一生懸命教科書会社が応援をして、例えばろくでもない——ろくでもないというと悪いですが、どうでもいいようなものに原稿を書かせて原稿料をだっと出すとか、そういうようなことをして次第次第に手懐けていって、悪い言葉で言えば籠絡して自分のところの教科書を売り込むという、そんなことがあるんだ、利権のスクラムがあるんだ、そんなことまで書いてあるんですが、そういう事実というのは文部省は承知をしておられるのですか、おられないのですか。
  14. 古村澄一

    古村政府委員 教科書の売り込みに当たりまして過当競争にならないようということは私たちも大変心配しているところでございまして、そこで、文部省といたしましても、毎年その関係者に対して具体的にそういった誤解を招くような競争をするんじゃないというふうなことを内容にした通知をして指導を厳しくやっているわけでございまして、具体的に何かあった、いかがわしいことがあったというふうなことまで私の方は聞いておりません。
  15. 江田五月

    江田委員 これは文部省局長のところまではなかなか耳に入りにくい。しかし、現場ではいろいろな話がどうもあるようですが、ひとつ十分に耳をそばだてて現場の声を聞いてほしいと思います。  ところで、臨教審答申、私は臨教審答申がすべていいという立場でもありませんが、すべて悪いという立場でもない。いいところ、悪いところいろいろあると思うのですけれども教科書についてはなかなかおもしろいことを言っているのですね。  臨教審の第三次答申では、「今日、この教科書については、内容が画一的、網羅的で、個性的な教育を阻害している、」とか、あるいは「今後における情報化国際化の中で教科書個性的で多様なものが求められている。」この選択についても、「多様な選択の機会の拡大」が必要なんだとか、そういうことを書いているわけです。あるいはまた、「教科書発行者には、ともすれば教科書行政への過度の依存傾向がみられるが、今後は、このような惰性を排し、検定制度の改革ともあいまって主体的、積極的によりよい教科書の作成のために一層創意工夫に努めることを期待しなければならない。」  こんなことが書いてあるわけですけれども、例えば今の国語の場合でいうと、光村図書ですか、これ一社で六四%のシェア。新しい教科書採択が、二万四千六百校もあるのにゼロ。これで個性豊かで多様な教科書あるいは発行者創意工夫を生かしていく、そういうことになるのでしょうかね。どうも何か制度というのがちょっとおかしい、この臨教審答申が求めている方向から見ればですね。そういうことはお感じになりませんか。
  16. 古村澄一

    古村政府委員 私たちは、個性豊かな、非常にバラエティーに富んだ教科書というものがあってほしいというふうに思っております。と同時に、そういったことについて、教科書の編集についてはもっともっと力を入れてほしいと教科書業界にも今まで何回も十分お願いをしてまいりました。結果的に今一社のシェアが大きくなったことについて、一つの評価としては、採択側がその教科書をいいと見た、それが積み重なると日本の国で半分以上になったということになるのですが、やはりもうちょっと、ある程度いろいろな教科書がいろいろな学校で使われるということがあっていいんではないかというふうに思っております。
  17. 江田五月

    江田委員 ところで、広域採択制といいますか、採択区域制、こういう制度をおとりになっている理由は一体何ですか。
  18. 古村澄一

    古村政府委員 やはりその地域におきます事情というものがあろうかと思いますけれども制度的よりも実質論でいきますと、同じような教科書を使っておりますと、先生同士の研修とかそういったことが非常にやりやすいという面がございます。と同時に、子供にしてもある程度共通の、同じところに住んでいる子供は同じ教科書を使っていることによる子供のやりやすさ、あるいは転校する場合においても毎回毎回かえなくてもいいというふうな実質的なメリットはあると思いますし、そういったことが戦後の教科書採択あり方というものをより実態的に合わせて制度化してきたというふうに私は考えております。
  19. 江田五月

    江田委員 あらかじめ文部省の方に伺ったところによりますと、地区制というものの理由は、転校など児童生徒の移動に対応しやすい、どこへ行っても同じ教科書、それが一つ二つ目教科書研究教師共同研究に便利だ、三つ目供給体制合理化迅速化に資する、四つ目採択区域が小さいと販売攻勢が過熱するとか、そんなことをおっしゃっていましたが、公式のお答えかどうか知りませんけれども、いずれもどうかなと思いますね。  個性にあふれたいろいろな教科書をみんなが使っていこうじゃないかという要請と、どこへ転校しても教科書が変わらないことが便利だということとは一致するのかどうか。転校のときに子供の環境が変わって困るから、しかし教科書が変わるどころの変化ではない大変化子供を待っているわけですからね。それよりも、その地域地域にふさわしい個性のある教科書がいろいろなところにあることの方がむしろいいのではないか。共同研究と言いますが、同じ教科書研究をやっている方が便利なのか、いろいろな教科書がある方が便利なのか、これもわかりませんよ。まして、供給体制合理化迅速化に至っては、子供個性というのは一体どうなってしまうのか。教科書を運搬するのに、それはパックしてたくさん一遍に送る方が便利だろうけれども、そんなことで決められてはかなわぬ。販売攻勢の過熱は、小さいといっぱいいろいろなところヘアプローチしなければいかぬから大変——むしろ少ない方がアプローチは激化するとも言えるわけで、いずれにしても大した理由はない。  むしろ、臨教審答申に、供給体制についてもより開放的なものにすることが望まれるということも書いてあるわけで、より開放的供給体制を実現して、教科書をつくる場合も、もっと多様な、個性豊かな教科書ができるように制度的な面からもぜひ検討していただきたいと思いますが、この検討を何か始められているそうですね。これは私が今言ったようなことを目的として設置された協力者会議ですか。
  20. 古村澄一

    古村政府委員 おっしゃいますように、臨教審答申教科書採択あり方についてかなりの提言がなされております。それらを踏まえて現行制度問題点を明らかにして、その改善方策について調査研究をしていただきたいということで、ことしの四月一日に学識経験者の方のそういった会議つくりまして、そこで御検討願っておるのが現状でございます。
  21. 江田五月

    江田委員 文部大臣多様化時代ですから、教科書個性豊かな多様なものが出回る、そして教える者、教わる者が、こんな教科書で勉強したいなと自分たち教科書について意見も言える、そういう意見が反映していく、そういうことも臨教審答申には書いてあるのですね。保護者教師意見も通るような制度ということも書いてあるわけで、ぜひ広域採択という制度を一遍洗い直してみられる必要があると思いますが、いかがでしょう。
  22. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃる点はよくわかります。江田先生文部省職員が申し上げた四つ理由ということも一理はあると思います。ただ、一方で、先生おっしゃるように多様化個性化時代でありますし、そういう児童生徒をはぐくむために学校教育そのもの個性的であり多様的であるということは必要なことでございますので、これから有識者の御意見も聞きながら検討を進めさせていただきたい、このように思います。
  23. 江田五月

    江田委員 教科書の問題はその程度にしまして、次に家庭科男女共修の問題について伺います。  まず初めに、ちょっと古くなりましたが、今年三月、静岡県の県立韮山高校理数科入試男女差別問題というのがありまして、これについて伺います。  静岡弁護士会福地絵子という弁護士さんが静岡弁護士会人権擁護委員会申し立てをいたしました。その申し立て書によりますと、韮山高校では理数科、これは特に優秀な生徒を集めて小人数でどんどん教育していくというようなことでつくられたエリート養成コースということなのだと思いますが、その理数科家庭科をやらないで済むように、女子がおりますと家庭科をやるということになっているが、女子人数が非常に少ない場合には特例として家庭科をやらなくていいことになっているわけで、これを逆手にとって家庭科をやらなくて済むように、定員四十人のところを女子合格者を五名未満、四名に抑えた。そのため女子の中の五位の生徒成績男子合格した三十六名のうちの三位の生徒と同じ成績なのにその女子は不合格となった、こういうことなのですね。  この問題は新聞とかテレビでも相当取り上げられて、NHKのテレビでもかなり長い特集番組をつくっておりましたが、文部省、これは御存じでしょうか。
  24. 古村澄一

    古村政府委員 御指摘静岡県の韮山高等学校理数科におきます選抜経過については、私たちも県から報告を受けております。
  25. 江田五月

    江田委員 その県の報告というのは、今言ったような内容について、そうでございますという報告ですか。
  26. 古村澄一

    古村政府委員 県からの報告によりますと、一つは、事前選抜あるいは合格内定というものが先にあったのではないかという疑問につきましては、入学選抜試験はきちっとやっておりますから、そういった事前選抜ないし合格内定が行われた事実はありませんというのが第一点。第二点は、進路指導に問題はなかったのかということにつきましては、進路指導については若干行き過ぎがあったのではないかということを認めております。それから、男女差別の問題につきましては、男女の区別によって入試を決めたという事実はございません、そういった報告学校から受けたということを県から聞いております。
  27. 江田五月

    江田委員 そういう報告、これは恐らくそういうことをお聞きになると、関係皆さん行政皆さん方は仲間内でかばい合うのだな、そういうところについてもそんなものかな、こういうような苦笑いのようなことになってしまいますよ。現実にはそんなことはないので、事前選抜というのはかなり行われておる。ですから、この韮山高校では入試事前選抜の問題と理数科男女差別の問題、それから県立高校における実質的な男女不平等定員制、こういうことがあるわけですね。  私もいろいろな資料をいただいておりますが、どうも静岡県の各高等学校進路指導の中身などを見ますと、ここの学校男子はここまでの点数は入れるけれども女子はここまで点数がなければ入れないということがずっと並んでいるのですね。こういうものは明らかに男女差別だと思いますけれども文部省、今の御報告をいただいてそれで事足れりですか。
  28. 古村澄一

    古村政府委員 そういう報告でございましたので、やはりある程度そういったいろいろなことについて県民の皆様から批判が出てくるということについては、そういったことがないように県教育委員会としてはしっかり学校指導してほしいということを申し上げ、県の教育委員会としては、先ほどちょっとお触れになりましたが、理数科では女子家庭科をやらないということについては、やはり女子には家庭科をやってほしいということを県の教育長校長会に向かって要望いたしたようでございますので、ひとつ県の努力を待ちたいというふうに思っております。
  29. 江田五月

    江田委員 公式にはなかなか、家庭科をやったりする手間を省いて入試一本やり受験勉強を一生懸命やりたいから女子を少なくするんだなんてことを認めるのは困難だと思います。しかし、そういうふうに受け取られかねない現実があるわけですから、ひとつこれは改善に全力を傾けてほしいと思いますが、家庭科を忌み嫌うというのでなくて、今むしろ家庭科を男の子にも一生懸命教えていかなければならぬという時代が来ているのではないか。  また、そういう入試に余り役に立たぬ科目だから敬遠をするというような人間がどんどんいい学校へ行き、上へ上へ上っていって世の中のリーダーになっていく、そういうことではもう世の中は動いていかない、二十一世紀を迎えられない、そういう時代になっていて、家庭科というもの、家庭科に限らずですけれども、とりわけ家庭科というものを見直していかなければならない、そういう時代が来ている、これが教育に携わる者の共通した認識にならなければならないと思うのですね。  私は、この文教委員会に所属して以来ずっと家庭科の問題には取り組んでまいりました。今までいろいろな経過を経まして、五十九年十二月には検討会議報告が出た、六十年九月に教育課程審議会審議が始まって六十一年十一月に中間まとめ、六十二年十二月に答申、そしてことしの十二月ですか、中学校指導要領、それから来年春には高等学校指導要領が告示をされる。そういう段階になって、やっと家庭科というものが男女ともに履修をする科目になるということのようです。  文部大臣、突然家庭科と言われても面食らわれるかもしれませんけれども、私はこんなことを考えているのですね。今までは、男は外で働き女は家で家庭を守る、そういう役割分担というのであるいはやってこられたかもしれないけれども、今は時代が随分変わりまして、女性も大いに社会参加していこうじゃないか、仕事も持っていこうじゃないか、男もひとつ家庭生活、子育て、こういうことに無関心でいられない。そういうことに無関心でひたすら外で働いて、定年になってほっとしたら、奥さんからもうあなた御用済みよと言われて離婚を言い渡される。そういうことではいけないので、そうではなくて、男もひとつ外で仕事もするが同時に家庭運営女性分担をしてやっていくという、その分担のやり方は家庭家庭でそれぞれにいろいろなタイプがあるでしょうけれども、少なくとも男子身辺自立の学問、技術というものを子供のうちからきちんと身につけておかなければ、これは男自身が将来生き残れない、そういう時代が来ている。  一説によりますと、六十五歳を過ぎて、だんなさんに先に死なれた奥さんだんな奥さんという言葉がこれまた問題ですけれども便宜使いますが、これは天寿を全うするのだそうです。余計な者が早く死んだから。だけれども奥さんに先に死なれただんなさんというのは平均して二年でぽっくりいっちゃうのだというのですが、当たらずといえども遠からずだと思います。  大体家庭維持経営身辺自立なんというのは親から子へ、家庭から家庭へ受け継ぐべきものだ、こういう考え方もあるけれども、しかし今、核家族になったりして、家庭というものの従来の伝統的な機能というものが随分怪しくなっている時代でもあるから、公教育の中で家庭科といいますか、その家庭科も調理、裁縫じゃなくて、例えば子育てのことだとか家庭経済、今クレジットカードで家庭が崩壊なんというところも随分あるのですね。あるいはまた、例えば食品の問題だって人工甘味料のこととか添加物のこととか、社会的な問題がこういうところへも随分入り込んできているわけですから、そういうものについての物を見る目、あるいはこれは本格的に取り組まなければならぬと思いますが、セックスの問題であるとか、そういうことまで含めて生活科というようなものを体系的につくり上げて、男女ともに、しかもこれは同じ時間に同じ場所で、同じ先生から同じ内容男女が学ぶ、そういうことが必要になっている、こうしつこくしつこく主張してきたのですが、大臣、どうお感じになりますか。
  30. 中島源太郎

    中島国務大臣 私は江田先生の御指摘を拝聴しておりまして三つのことを考えました。一つは先ほどの司馬遼太郎さんの内容ではありませんけれども、人は支え合って生きていくもの、そういう意味では今優秀な女性の方々がどんどん社会活動をしておられますし、私ども自体が、男女それぞれの役割分担はございますけれども、支え合ってそれぞれが生きていくという面があるなあと。  振り返って、私ども政治に身を置いております者はどうしても家庭が別々になることがございますから、幸いと言ってはあれですが、身の回りのことは自分でいたす習慣がついております。朝食ぐらいは自分でつくる、飯を炊いて、洗濯あるいは身の回りは自分でやるという習慣をつけておかないと政治活動ができぬものですから、そういうところを見ますと、男女分担というものが非常にオーバーラップしてきておることだというふうに二点目は感じます。  三点目は、家庭科といっても、家庭一般、それから生活一般、生活技術、こういう並列した中から必修を一つ選んでいただくということでありますが、そのときに、やはりおっしゃっていただきましたように、これを進学の具として見ていくのかあるいは学校教育そのものが生涯学習の重要な基礎部分であるという自覚に立って選んでいただくかによって違ってくると思います。  私ども学校教育というものは進学のための教育ではなくして生涯学習の一環としての学びやであるということを考えておるわけでございまして、その意味からいけば家庭科の必修のとり方、それから重要性というものはますます認識されていかれること、私どもはそれを希望しつつ家庭科の充実に努めてまいりたい、このように考えます。
  31. 江田五月

    江田委員 今教育改革ということが随分言われているわけですが、私はちょっとオーバーに言えば、家庭科がどうなるかということが教育改革が実りを上げるかどうかのテストケースであるような気さえするので、本当に生涯教育の一環としての、人生のスタートの時期における家庭科、生活科、こういう位置づけをしっかり与えられてこれにみんなが一生懸命取り組んでいって、それが受験勉強に流れないで、その他の科目にもそういうものが影響を与えていって、学校教育がふるい落としの教育、進学のための教育から変わっていくことになれば非常にありがたい。そういうことにしなければいけないと思っておるのです。  ところで、検討会議から教課審を通じての文部省基本的な考え方で、私の誤解ならばいいのですが、ちょっと心配になることがあるので、聞いておきたいのです。  それは女子差別撤廃条約についての考え方です。検討会議報告とか、教課審での当時の松永文部大臣のあいさつとか、あるいは教課審中間まとめにも、女子差別撤廃条約という文言がずっと入っておりました。女子差別撤廃条約を批准するということが、世の中の大きな流れがその根本にあるのですが、これが家庭科見直しのきっかけになっていたわけですが、これが教育課程審議会答申の中から消えてしまうわけです。女子差別撤廃条約の意義はもう終わったんだからやめてしまおう、こういう趣旨ですか。
  32. 古村澄一

    古村政府委員 おっしゃいますように、教育課程審議会の中間まとめにおきましては女子差別撤廃条約ということをはっきり書いて家庭科の問題について触れたわけでございますが、答申の段階でその文言がないではないかということだと思います。私たちはその考え方はずっと貫き通している。当然女子差別撤廃条約の精神を答申の中で具現した。中間まとめを台に置いて最後答申に入ったわけですから、そういったことは全くございません。
  33. 江田五月

    江田委員 女子差別撤廃条約というのは、実はかなり重要な条約でございまして、特に家庭科関係では第十条がありまして、その本文は、「締約国は、教育の分野において、女子に対して男子と平等の権利を確保することを目的として、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保することを目的として、女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。」(b)項は、「同一の教育課程、同一の試験、同一の水準の資格を有する教育職員並びに同一の質の学校施設及び設備を享受する機会」、そして(c)は、「すべての段階及びあらゆる形態の教育における男女の役割についての定型化された概念の撤廃を、この目的の達成を助長する男女共学その他の種類の教育を奨励することにより、また、特に、教材用図書及び指導計画の改訂すること並びに指導方法を調整することにより行うこと。」文章が難しいのでじっくり読まなければわかりませんけれども、要するに男女の役割の定型化、固定化というものを、男はこうこうですよ、女はこうこうですよというものを排していこうといういわば実践的課題を締約国に与えている条約、これが女子差別撤廃条約です。  それが別に条約で言われているからというのではなくて、大きな時代の流れ、二十一世紀を迎えるに当たって、各国ともが、世界じゅうがやらなければならぬ課題ということなので、十条(c)項というのは非常に重要だと思うのです。  私、今手元に文部省の初中局の視学官、津止さんという方と調査官の桜井さんという方の書かれた「教育課程審議会答申家庭科教育」、そういう文書を持っておりますけれども、ここでは、今の十条の(b)項のことはお書きになっておるのです が、しかし、十条(c)項の方が抜けているのです。今の十条(c)項、つまり男女の定型化された役割分担というものを改めていくのだという、そこにこの女子差別撤廃条約の、ひいてはそれをきっかけとして家庭科を見直していく、その根本精神があるのだ、これは文部省も同じ理解と考えていいのでしょうね。
  34. 古村澄一

    古村政府委員 そこのところは、私もそういうふうに思っております。
  35. 江田五月

    江田委員 いろいろな人がそういう点を心配していますので、ひとつこれは間違いのないようにしていただきたいと思います。  さて、指導要領の告示を目前にして具体的なことで一、二お伺いをしますが、中学校の技術・家庭、これは木材加工と電気、家庭生活、食物、この四領域が必修、残り三領域以上が選択必修、こういうことになっていくということですが、この残り三領域については少なくとも半分以上は家庭領域の科目が確保されるべきだと思います。  というのは、ほとんどの生徒が、今こういう時代ですから高校へ進学して男女共修家庭科を学ぶ、そういうことになるわけで、中学校できちんと家庭科を履修していないと高校へのつなぎができないわけですね。男子は木材加工、電気、家庭生活、食物、そしてあと三科目は全部技術領域、女子選択必修の三科目が全部家庭領域、そういうような区分にならないように努力をすべきだと思いますけれども、これはいかがでしょう。
  36. 古村澄一

    古村政府委員 おっしゃいますように、現在考えております学習指導要領の必修は、木材加工、電気、家庭生活、食物というのがすべての生徒に履修させて、そして残り金属加工、機械、栽培、情報基礎、それからあと被服、住居、保育といった七領域の中から生徒の興味、関心等に応じて三領域以上選択して履修させる方向ということで検討いたしております。  そこで、新しい学習指導要領に基づきまして具体的にどのような教育課程を編成するかということにつきましては、各学校がそれぞれの教育方針あるいは生徒の実態を踏まえまして決定すべき事柄であると考えておりますが、いずれにいたしましても、男女が協力して家庭生活を築いていくことあるいは生活に必要な知識、技術の修得などの基本的なねらいが達成されるようにということを目的にして今度の教育課程を組み上げていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  37. 江田五月

    江田委員 抽象的なお答えで、そういうことになるのかもしれませんが、ひとつ今までの中学校の技術・家庭というのが男子女子で随分と違ってしまっておりまして、しかも、高等学校家庭一般は技術的なことよりももうちょっと基本的な生活感覚なり生活の基礎なりということに重点を置かれていますが、中学の方は技術にしても家庭にしても随分技術的なことに終始していまして、そうじゃなくて、大改革が中学校でも必要だ。女子差別撤廃条約の要請というのは単に高校だけではなくて、中学の技術・家庭にも及んでいるのだという、これは前からそういう御答弁もいただいているわけですので、ぜひ間違いないようにしていただきたいのです。  同時に、新しい教育課程は高校は六十九年実施、中学は六十八年で全面実施ということですが、ということは六十九年の高校一年生、すなわち六十六年の中学一年生から新しい教育課程を始めなかったら高等学校にうまくつながらない、そういう問題があるんじゃありませんか。六十八年で中学全面実施と言われるのですが、六十八年で中学三年生の子供は、家庭科を中学三年のときにはきちんと学んで、六十九年からの高等学校男女共修にうまく乗っかれる。乗っかれるけれども、六十七年、六十六年のところでは十分家庭科を学んでいないから、突然六十八年で家庭科がどっと出てきても、高校にそのまますっとうまくつながれない。  そこで、中学では新しい教育課程の家庭科に関する限り先取り、六十六年から男子にも家庭科をきちんと教えていく、そういうことをしなければ六十九年からの高校での家庭科の全面実施ということにうまくつながっていかないと思うのですが、この点、いかがですか。
  38. 古村澄一

    古村政府委員 まさに御指摘のとおりのことがあると思います。  そこで、高等学校の新しい学習指導要領の適用を受けます昭和六十九年度の入学生が円滑に高等学校家庭科の授業を受けられるということにするためには、中学校において必修となります家庭生活と食物に関する内容について適切な履修が進められるように必要な措置をしていきたい。こういったことは移行措置といいましていろいろな教科の中にあるわけですが、うまく新しい教育内容子供が受けられるようなそういった移行措置については十分配慮していきたいというふうに考えております。
  39. 江田五月

    江田委員 確認してみますが、移行措置というのは、六十九年全面実施だけれども、それがなかなか難しいから七十年、七十一年くらいまで後回しでその全面実施じゃなくて、前倒しで全面実施にうまくいくように移行措置をおとりになる、こういう理解でよろしいのですね。
  40. 古村澄一

    古村政府委員 おっしゃるとおり、後倒しじゃなくて、六十九年に全面実施になるのに用意をして動かしていくということでございます。    〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕
  41. 江田五月

    江田委員 次に、今度は高等学校の方ですが、高校の家庭科、これはさっき既にお話し出ました家庭一般、生活技術、生活一般、三つのタイプの家庭科をつくる、こういうことになるんですが、ここでまたいろいろ心配がありまして、いろいろな人がいろいろなことをおっしゃる。そういう言葉の端々をちょっと神経質に聞いていますと、従来のように家庭一般というのが女子向き家庭科、生活一般、生活技術が男子向き家庭科、とりわけ生活一般、これが普通科の学生に、生活技術が職業科の学生にとか、何かそういうようなことにだんだんなっていくんじゃないかな、そんな心配をする向きがあるのですが、これはどうなんですか、そんなことがあってはならぬと思うのですが。
  42. 古村澄一

    古村政府委員 高等学校へ行きますと、かなり子供の能力、適性が多様化してきております。したがって、そういった子供の能力、適性あるいは興味、関心等に応じることができるために、家庭一般、それから生活技術、生活一般といった選択の幅を広げたわけでございまして、それは男女とも同じ立場に立ってそれを選択していくということでございますので、おっしゃいますようなことにはならないようにということに考えております。
  43. 江田五月

    江田委員 これはやはり十分注意をしていただかないと、私もこれまでの長い家庭科あり方から考えて、日本じゅう家庭科関係する人たちの頭を全部切りかえるというのは大変なことだから、そうすると、勢い男女学校家庭一般と、もう一つ家庭科を置いて、結果的に家庭一般は女子、もう一つの生活一般、生活技術が男子、こういうことになりかねないので、ひとつそういうことではなくて、それぞれの子供のそれぞれの個性、それぞれの選択で行えるようにということを間違いなくやってほしいと思います。  ところで、この答申には、「施設・設備の整備や担当教員の確保等の問題など学校の実態からみて止むを得ない場合には、当分の間、「生活一般」と関係の深い技術や情報などに関する内容科目又は「体育」の履修をもって代替できるものとする。なお、この場合においても、できるだけ早期に家庭科に関する教育を十分に行うことができるよう条件整備に努める必要がある。」こういうことが書いてありますね。初め二単位は家庭一般、生活一般を教えるけれども、後の二単位は体育その他でよろしいということが書いてあるのですが、この「当分の間」というのは一体どういうお考えなんですか。どの程度のことを「当分の間」とお考えなんですか。
  44. 古村澄一

    古村政府委員 「当分の間」といいますのは、教育課程審議会からの答申では「当分の間」というふうになっておりまして、それをどの辺にしていくかということについては、これから私たちの方も検討すべき問題だと思っております。  そう長くないというふうに思っておりますが、そこのところを、それじゃ何年だということはちょっと今の段階では申し上げかねますが、そういったことでございます。
  45. 江田五月

    江田委員 そう長くないというお答えなんですが、問題は施設設備ですね。現在、家庭科を教える施設設備がない高等学校というのは一体どのくらいあるのでしょう。
  46. 古村澄一

    古村政府委員 家庭科のない高等学校といいますか、男子だけの高等学校というふうに考えますと、男子だけの高等学校は全体で三百八十四校でございます。  ちなみに設置者別にいえば、国立が一校、公立が百十三校、私立が二百七十校というふうになっております。
  47. 江田五月

    江田委員 今の男子校が三百八十四校、それに男女学校でも、例えば工業高校とかそういうところがあるでしょうから、細かな数字はどうだか知りませんが、全国の高等学校五千五百八のうち七百数十校ぐらいが家庭科の施設設備がない高等学校、だから一割少々ですか、そういうことだと思うのですが、そうすると、六十九年実施ですから、今は六十三年ですからまだ六年あるわけですから、この七百数十校について家庭科の施設設備を充実させるということはそう難しくないと思うのですね。当分の間、生活一般の残り二単位はその他の科目でというわけですが、施設設備を六十九年全面実施のときまでに全部整えるということも不可能じゃないと思うのです。六十九年までにはこの施設設備のない高等学校を限りなくゼロに近づけていくという努力をすべきだと思いますが、したがって、「当分の間」というのはそう長くない間じゃなくて、もうまさに限りなくゼロに近い「当分の間」にするべく努力をする、こういう答えを期待したいのですが、いかがですか。
  48. 古村澄一

    古村政府委員 私たちも、新しい指導要領が実施されます前にやはりそういった条件整備というものをしっかりしておきたいというふうなことは思っておりますが、現実問題、財政が絡んでくる話でございますので、都道府県の対応の仕方あるいは国庫補助金の助成措置のあり方といったことを含めて、それじゃ六十八年までに全部そういったことが整備できるかということについては、なおまだ若干の疑問がある。ということになりますと、私が先ほど申し上げましたように、「当分の間」というのは余り長い期間を置きたくない、しっかりとやれるように条件を整備をしていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  49. 江田五月

    江田委員 ぜひこれは計画をきちっとおつくりになって、計画的に家庭科の施設設備の充実をやっていただきたいと思います。  ところで、これは小耳に挟んだのですけれども文部省男女共修という言葉を使わないようにしているのだとか、そういうことをちょっと聞いたのですが、そんなことがあるのですか。
  50. 古村澄一

    古村政府委員 言葉の使い方——男女共修という言葉を、それではいろいろな文部省の出版物等で捜してみますと、男女共修という言葉は今までは使っておりません。したがって、使わないことにしたとかしないとかということではなくて、文部省ではいろいろな指導書とかいろいろな学習指導要領とかを見ても、男女共修という言葉は使わないというのが今の私どもがとっております態度でございます。
  51. 江田五月

    江田委員 その言葉遣いに何か特別の意味があるわけじゃないでしょう。共修という言葉文部省の文章の中に入っていない。そこで使わない。使わないのは、今の家庭科というものを同じ機会に同じ教師から同じ内容男女ともに学んでいくのだという、いわゆる男女家庭科というものを一緒に勉強していく、そういうことを変えるというような合意があるわけではありませんね、その言葉遣いの問題について。
  52. 古村澄一

    古村政府委員 男女共修という言葉言葉として、国語としてまだ熟してない、いろいろな辞典を見ても共修という言葉は出てない。そうしますと、その共修という言葉の持っている意味というものははっきり確定してないということから、今はそういった言葉は使ってないということでございます。
  53. 江田五月

    江田委員 家庭科の問題はその程度にしまして、次に、学校教育の中における予防接種、とりわけインフルエンザの問題について伺います。  まず文部省に伺うのですけれども、これは私の郷里の話になって恐縮なのですが、岡山県笠岡市で、これは昭和六十二年、去年ですが、インフルエンザの予防接種で事故が起きております。六十二年の十月十九日に、笠岡市立中央小学校というところで予防接種を行いましたが、その予防接種を受けて、一人の生徒、二年生の男子生徒が二時間半後発病し、その日のうちに死亡した、そういう事故が起きました。  この事件は、今、これは厚生省ですか、予防接種法に基づく被害者救済の認定の手続の最中かと思いますが、どの段階にあるのですか。
  54. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 委員お尋ねの事故のケースにつきましては、現在公衆衛生審議会の予防接種の事故の認定部会におきまして審査中でございまして、近々結論を出したいと考えている次第でございます。
  55. 江田五月

    江田委員 そこで文部省に伺いますが、笠岡の例だけでなくて全国でかなりいろいろなところでインフルエンザ予防接種の副反応のケースがあるんですが、文部省はそういうことは承知されておるんですか。
  56. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 先生も御承知のとおりに、インフルエンザの予防接種は、予防接種法に基づきまして厚生行政の一環として都道府県知事あるいは市町村長が実施しておるということもございまして、すべて私どもの方に必ずしも報告が上がってこないで、第一次的には厚生省の方に上がっていくようでございます。私どもの方には、たまたま文部省にもあわせて詳細に報告しておこうという、都道府県なり市町村がそういうような場合に上がってくるわけでして、全部は承知はいたしておりません。
  57. 江田五月

    江田委員 これはやはり学校現場の出来事なんですね。笠岡の場合でも、この男の子は生まれてから病気にかかったこともなかった。七月から毎週一回スイミングスクールに通っていて、そのスイミングスクールの内科医の健康診断でも異常なかった。接種の日の朝も別に異状なく送り出した。  与謝野晶子の詩ではありませんけれども、この親御さんは子供に予防接種を受けて死んで帰れとは育ててないわけで、それが学校の体育館で受けた予防接種によってこの事故が起きたというようなことなので、その他のケースも大同小異、学校現場のことだと思うのですが、文部省として無関心ではいられないことだと思いますが、いかがでしょう。
  58. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 もちろん、私ども関心ではいないわけでして、先生も御承知のとおりに、インフルエンザの予防接種について種々見直すべきじゃないかという議論等がなされておりまして、厚生省の中でもそういう委員会を設けて検討を続けてきておるわけでございます。  それに基づきまして、昨年八月、先生御承知のとおり厚生省の方から、インフルエンザ予防接種の実施に当たってはその意義、効果等について十分保護者の理解を得るようにすること、それから、問診を従来以上に徹底して行うこと、それから、被接種者の健康状態に着目した被接種者及びその保護者の意向にも十分配慮するようにというような通知が出ているわけでございます。  私どもは、その通知、その方針に沿いまして、学校がインフルエンザ予防接種に協力する場合には、十分その通知の趣旨に沿って市町村関係当局とも連絡を密にして慎重に行うようにということを都道府県教育委員会を通じて現在指導している最中でございまして、これからもその指導を徹底してまいりたいと考えております。
  59. 江田五月

    江田委員 今の指導内容ですけれども、これは文章がかなり微妙なことをお書きなんですけれ ども、法制上、そういう学校での集団接種ということを文部省が何か行わなければならぬとか、いろいろ指導監督していかなければならぬとか、そういうような立場文部省というのは立っておるんですか。
  60. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 先ほども申し上げましたとおりに、インフルエンザの予防接種は、予防接種法に基づいて厚生行政の一環として都道府県知事なり市町村長が実施しているわけでございます。学校はもちろんそれに協力するという立場でございますが、同時に、児童生徒の健康の保持をするということは学校一つ仕事でございますので、そういう観点をも踏まえて、従来から実施場所を提供するなどの協力をしてきているわけでございます。  私ども立場というのは、児童生徒の健康を保持するという観点から、インフルエンザ予防接種の場合であっても、従来から指導してきているわけでございまして、一方で、厚生行政の一環であることは間違いないのですが、同時に、児童生徒の健康を保持するという立場からの指導を行っておるということでございます。
  61. 江田五月

    江田委員 児童生徒の健康を保持するということは、学校の役割でもあり、そのことを文部省も各学校で十分行うように指導監督する立場ではある。しかし、予防接種というのは厚生行政の一環である。児童生徒の健康保持というのは必ずしも予防接種が唯一の方法でもないし、予防接種が児童生徒の健康保持に役に立つのか役に立たないのか、あるいは害になるのか、そういうようなことを文部省が判断する立場にもないのじゃありませんか。だから、集団接種をしろとか、しないとか、するなとか、そういうことは文部省としては各学校なり都道府県教委なりに言う立場にはないのじゃないかという気がしますがね。
  62. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 先ほど申し上げましたとおりに、インフルエンザの予防接種の問題につきましては、その効果についてどうかという議論が今なされておるわけでして、ただ、インフルエンザの予防接種にかわる効果的な有効な手段も一方で見出していないというのが現実でございます。そういう観点で、厚生省がやはりインフルエンザの予防接種を続けていかざるを得ないだろうという御判断に立って、そして、ただし、先ほど申し上げましたようなインフルエンザの予防接種を行う場合にはこういう点に注意するようにという三点の留意事項を挙げておるわけでして、文部省としましては、その三点の留意事項を十分踏まえて学校でインフルエンザの予防接種に協力する場合には実施をするようにという指導をしているわけでございます。
  63. 江田五月

    江田委員 余りくどくど言っても仕方ありませんけれども、インフルエンザの予防のためにどうも予防接種しかいい手がない。しかし、そもそもそんなに予防しなければならぬような疾病であるのかどうか、あるいは予防接種しかないけれども、その予防接種にしたってそれほど予防の効果が高いというものでもないのじゃないか、そこらあたりのところが今随分議論になっているわけで、恐らく文部省としてもちょっと歯がゆいところがあって何ともやりにくいところだというようなこともあるんだと思います。  今の微妙な言葉の言い回しを十分玩味していきたいと思うのですが、やる場合にもこれこれこういうことをよく徹底させなさいよという、読み方によってはやらないからといって文部省が別にどう言うわけでもないですよ、あるいは徹底させる中身というのはとにかく保護者の意向というものが大変大切なんですよ、その意向は十分な理解の上に出していただければいいものですよ、そういう趣旨とも理解できるわけで、その辺の微妙なニュアンスというのは余りここで詰めても仕方ないけれども、そういういろいろなニュアンスがあることですよという、これはどうなんですか。
  64. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 先ほど私がお答えしたような考え方で私ども指導してまいりたいというふうに考えております。
  65. 江田五月

    江田委員 なかなか難しいお話ですが、しかし文部省としては、現に学校現場で集団的に子供たちが受けているその中で事故が起きているというこれはぜひ考えてほしいし、厚生省の考え方の変化、扱いの変化というものもありますから、それを踏まえて、従来のようにとにかく学校が予防接種と言えば生徒は全部ずらっと並んで次から次へどっとこどっとこ受けて、まるで牛や豚にワクチンを打つみたいなそんなことはひとつ改めていくようなことを念頭に置いておいていただきたいと思っています。  ところで、厚生省に対してですが、昨年の八月六日に出されました公衆衛生審議会伝染病予防部会の意見というものがありますね。インフルエンザの予防接種は「社会全体の流行を抑止することを判断できるほどの研究データは十分に存在しないが、個人の発病防止効果や重症化防止効果は認められている。」から、「国民が自発的意思に基づいて予防接種をうけることが望ましい」のである。そこで同日付の保健医療局長通知で予防接種の取り扱いが変わったと理解していいかと思いますが、この変わったことのポイントというのは一体どこにあるのですか。
  66. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 インフルエンザの予防接種につきましていろいろ国民的な議論がなされてきたわけでございます。そのようなことを背景にいたしまして、厚生省といたしましては、まず研究班を発足させましていろいろ医学的な観点、法的観点からの検討等を加えまして、六十一年度の研究結果を取りまとめまして研究班の報告をいただいたわけでございます。  その研究班の報告をもとにいたしまして、インフルエンザの予防接種を実施するに当たりましては、法律上の取り扱いは予防接種法に基づく臨時の予防接種という扱いを変更することなく、しかしながらいろいろ議論されていることにかんがみ、三点でございますが、予防接種の意義や効果について予防接種を受ける人また保護者に対して十分な理解を得るような努力をするということ、それから特に事故の防止という観点から問診を従来以上に注意深く行うということ、それから被接種者の健康状態に着目した被接種者及びその保護者の意向を記入する欄を設けるなど、予防接種を受ける側の意向も十分配慮すること、そこがこの昨年の局長通知のポイントでございます。  一言で言いますと、余り社会防衛的な考え方にとらわれることなく、受ける人たちの自発的な意思というものを尊重した予防接種行政をインフルエンザにおいても進めていくべきである、こういう考え方に立つものでございます。
  67. 江田五月

    江田委員 ちょっと念押しですが、余り社会防衛的な見地に立つのではなく、受ける人たちの自発的な意思を大切にする。受ける人たちのというのは、受ける人たち集団のという意味ではなく、受ける人個々人の、あるいはその保護者も含めてですが、そういう個々人の自発的な判断、自発的な意思というものを重視してこの予防接種体制というのを考えていく、そういうものの積み重ねでそれが社会防衛になるなら大変結構なことだ、そういう考え方でいいのですか。個々人の、受ける人たちのというところをもうちょっと念押しですが。
  68. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 予防接種につきましては、法律上国民の義務という考え方に立っておりますけれども、予防接種を行うに当たっては、接種を受ける人たちの十分な理解というものを前提にして進めていくべきであるという考え方に立つものでございます。
  69. 江田五月

    江田委員 だから、余りそれ以上詰めてもお答えがないのなら仕方がないけれども、人たちのというのは、ある集団で考えているのか、それとも個々人のということで考えているのか。
  70. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 予防接種につきましては、予防接種をすることによりまして社会の構成員の一定以上の人たちに免疫を付与することによって伝染病の流行を防止しようというのが一般的な考え方でございます。しかしながら、いろいろ予防接種を行っていくに当たっては、そういう社会防衛的な考え方だけではなく、予防接種を行うことがその個人にとっても非常に利益になるのだという考え方もあわせて予防接種行政というものを進めていくべきだという考え方でございます。
  71. 江田五月

    江田委員 わかりました。  全体の流れとして、法律上の義務にはなっておる、義務にはなっているけれども、別に罰則もないし、また今の個人の判断というものが基礎にあって行われるべきものである、自発的意思を尊重する、そういうことに変わってきているわけで、言ってみれば、義務接種というのは法律上の根拠を与えて予防接種法の被害者救済にのっけるという、そういう意味で義務接種ということになっているだけであって、何かまあ、義務接種か任意接種かという言葉のやりとりをしても仕方ないけれども基本的に一人一人の国民が自分の任意な判断で受けていくものですよ、そういう大きな変化の流れが今のこの流れだというふうに理解をしたいと思うのですが、それはそれでよろしいですかね。
  72. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 予防接種法では、国民に予防接種を受ける義務というものを書いておりますけれども、これは五十一年の法改正におきまして、罰則をもって受けることを強制するというようなものではないという考え方に変わってきているわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、国民の理解と協力に基づいて進めていくというのが基本的な考え方でございます。
  73. 江田五月

    江田委員 国民の理解と協力ですが、今、接種率が、これは昨年でしたかね、四二%まで下がっておるわけで、ことしはもっと下がるんじゃないか。地域的にもいろんなばらつきがありまして、市町村でもうやっていないところも随分ある。国民の理解でそういう数字になっておるとこれは言わざるを得ないと思うのですが、この接種率というものが、これからすばらしいワクチンが開発されるなら別ですが、どうも今のようなワクチンだともっとこの数字が下がることもあるかと思うのですが、余り数字にこだわらずに、いや、これは何%まで上げなければならぬのだなんというようなお考えを持たずに、ひとつ本当に国民の十分な理解を得て、自発的に受けていくという人たちを選んでやるならやるということにしていただきたいと思います。  問診票が随分変わりましたね。今回のインフルエンザの予防接種は「見合わせます。」「受けます。」これをとにかく最初に書いていただいて、それから後、問診の細かなことがずっと出てきている、そういうような問診票に変わっていると思うのですが、これはどうなんですか、厚生省が全国的に指導してこういう問診票に変わった、こういう理解でいいんですか。
  74. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 昨年八月六日付の保健医療局長による通知とあわせまして、一つの例として厚生省から地方自治体に示したものでございます。
  75. 江田五月

    江田委員 そうすると、いっそのこと、「受けます。」という子供たちは問診票を持っていらっしゃい、だけれども、「見合わせます。」というのまで、別に持ってこさす必要はないんじゃないですか。「見合わせます。」という問診票をお医者さんが、別に何か健康状態なんかチェックする必要も何もないわけで、医者にチェックさすことによって医者の方は、予診ですか、何かそれで金が入るという、そういう仕組みになったりしているんじゃないですか。どうなんです。「見合わせます。」という子供にまでこの問診票を提出させる必要があるんですか。
  76. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 私どもの厚生省から示しました問診票の基本的な考え方は、いろいろ保護者に健康状態を観察していただいて、それを一番最後に総合的にそのような状況を保護者が判断していただいて、今回のインフルエンザの予防接種を受ける、見合わせる、そういう保護者の意向を記入していただく欄を設ける、こういう考え方でございます。最初に、健康状態とは関係なく受ける、受けないという考え方はとってないわけでございます。
  77. 江田五月

    江田委員 これはまだまだしばらく議論が続くことだと思いますが、ところで、予防接種法によると、都道府県知事がその流行の状況などを見て、やるかどうか、やることが必要かどうかを判断する、こういうことになっていますが、これはいいですね。都道府県知事がその必要性についての第一次的な判断権あるいは判断義務、これを持っている、これは法律上、そのまま素直に続めばいいですね。別に厚生省の方がその権限を持っているんですよなんということはないですね。
  78. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 実施義務者は都道府県知事でございます。ただし、「市町村長に行わせることができる。」となっておりまして、ただ、都道府県知事に国の機関委任事務として委任しているという考え方をとっております。
  79. 江田五月

    江田委員 実施のことをじゃなくて、その実施の前の必要性の判断。
  80. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 実施することは都道府県知事の判断でございますが、国の機関委任事務という立場をとっているわけでございます。
  81. 江田五月

    江田委員 もう時間がありませんが、各都道府県の衛生部長さんたちの集まりで全国衛生部長会というのがありますが、六十四年度の要望、インフルエンザを含め予防接種法対象疾病の見直しをひとつやってほしい、こういう要望が出ていたり、それから社団法人日本小児科学会からも要望書で「インフルエンザ予防接種については、より個人防衛に重点をおいた接種方式の採用が望まれる。」こういう要望書が出たり、従来のものと違ったやり方をひとつ考えてくれないかという、いろんなそういう声が高くなっているかと思うのですが、こういうような声にこたえて検討をする、そういうお考えはありませんか。
  82. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 全国衛生部長会からの要望及び日本小児科学会からの要望等については承知をいたしているところでございます。インフルエンザの予防接種につきましては、昨年の八月の公衆衛生審議会の意見を踏まえました通知の線に沿って当面は実施していくという考え方でございますが、予防接種のあり方につきましては、今後とも従来同様、医学水準や社会状況の変化も踏まえまして、必要に応じ審議会の意見も聞きながら検討してまいりたいと考えております。
  83. 江田五月

    江田委員 大臣、これはなかなかいろんな難しいやりとりがありまして、今のインフルエンザが効くとか効かないとか、必要だとか、安全性がどうだとか、これもまた、ああ言えばこう言うでいろいろな議論があるのですけれども、私は、厚生行政文教行政とおのずと視点は違うのだろうと思うのですね。  厚生行政の方からいえば、それは病気はもうない方がいい、国民はいつも健康な方がいい。しかし、教育というのは必ずしもそうじゃないので、病気になったときに初めて、ああこんなことをしていたら病気になるんだなということを勉強するとか、病気になって熱を出して寝ているときにお母さんが温かいおかゆをつくってくれて、そんな思い出がずっと生涯残るとか、そういうときにこの弱い人たちの気持ちが本当によくわかる子供になるとか——先ほどの「小学国語」五年生の司馬遼太郎さんの「洪庵のたいまつ」でこんなところがあるのですね。緒方洪庵は「生まれつき体が弱く、病気がちで、塾や道場をしばしば休んだ。少年の洪庵にとって、病弱である自分が歯がゆかった。この体、なんとかならないものだろうかと思った。」その後ですが、「人間は、人なみでない部分をもつということは、すばらしいことなのである。」「人なみでない」というのは、人並みすぐれてではないのですよ、逆ですね。「そのことが、ものを考えるばねになる。」  そういうこともあるわけですから、病気の性格をよく見て、それが将来大変な重篤な後遺症を残すとか命を落とすとか、そういうものはこれはもうあってはいけませんけれども、多少寝ていれば治る、安静にしていれば治る、そんなような病気まで一切学校にはない方がいいのだというような、そういう考え方じゃない方がきっと——もうちょっとおおらかに、学校教育というのは骨太な教育というのを考えた方が多分いいのだろうという気もするのですが、これはインフルエンザの予防接種についてどうかということでなくて、基本的にそういう病気と教育ということについて、もし大臣にお考えがありましたらお聞かせください。簡単で結構です。
  84. 中島源太郎

    中島国務大臣 私、伺っておりまして、病気に関しましては、特に、教育上からいけば、学校健康教育課というものを文部省つくりました。しかし、つくったからいいというのではなくて、この件に関しては特に学校教育家庭とそれから社会、こういうものの連携がぜひとも必要だと思うわけであります。  先生がおっしゃいますように、私は常々申しますが、父親でも母親でも、小さい赤ちゃんを育てるときに、泣き声一つでおなかがすいているのか、おしめをぬらしているのか、そういうものを聞き分けられた親たちが、その後、成長に従っていろいろな精神的なシグナルあるいは健康上のシグナルを発しておるわけですから、それを聞き分けられないはずがない、こう考えておるわけであります。  しかし、厚生省さんは厚生省さんのように、公衆衛生審議会の意見をもとにして昨年八月に発表されましたその中の字句を見ましても、例えば接種にいたしましても、被接種者と同時に、その健康状態を一番知っているであろう保護者の意識に従ってやろう、こういうことでございます。それはまさに健康という行政から見ても、学校という場をかりておるけれども、実際にはその被接種者の保護者である父兄の意見を一番尊重しよう、こういうことであろうと思いますので、学校教育の中では、特に教育と社会とそれから家庭の接点をよく見きわめながら進めてまいりたい、このように考えております。
  85. 江田五月

    江田委員 学校という場で集団的にやらなきゃならぬ理由あるいはやるべき法的根拠がどこにあるのかという問題をもうちょっと本当は詰めたかったのですが、ちょっと時間の方がありませんので、同僚の佐藤委員の関連質問をお許し願いたいと思います。
  86. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長代理 次に、佐藤徳雄君。
  87. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 余り時間が残っておりませんが、二、三の問題について大臣の御見解を承りたいと存じます。  その第一は、東北、北海道を襲いました異常気象によるところの冷害の問題であります。  この問題につきましては、先般、本会議におきまして緊急質問等が行われ、そして、総理以下関係大臣から、その対策に万全を期するという見解が示されたことは御承知のとおりであります。  そこで、私の選挙区ないしは県内全体を襲っていたものですから、何回か私も現地の実態調査に入ってまいりました。まさにその状況は惨たんたるものでありまして、農水省が発表されました作況指数は、農民の方々ほとんどと言っていいぐらい、実態と違う、信じようとしないというのがまさにその受けとめ方であり、その受けとめ方は正しいだろう、私はこう思っておるわけであります。  被害救済、農家のために天災融資法の発動やあるいは激甚災害の指定等について、今日、農水省を中心としながら進められて検討されていることは十分承知しておりますけれども大臣にお伺いいたしたいのは、文部省としてもこの救済措置の一環として、被害農家を対象といたしました高等学校生徒の授業料の減免をやはり考えてみるべきじゃないか、こんなふうに思うわけであります。権限は都道府県教育委員会にあることは承知しておるわけでありますが、状況が状況でありますだけに、文部省が積極的にその指導に乗り出すことを私は期待をしているわけであります。大臣の御見解を承ります。
  88. 中島源太郎

    中島国務大臣 先生の御質疑に際しまして、改めて冒頭に、冷害その他で災害を受けられました被災農家の方々に心からお見舞いを申し上げます。また、そういう実態も御報告を受けておりまして、そういう地域で学ばれる方々にできるだけ手厚い対策を早急に立てるべきであろう、このように考えております。  先生、おっしゃいますように、高等学校等の授業料免除につきましては、これは各県の条例等によって行われておるわけでございまして、したがって、私どもは、被害の実態に応じまして関係地方公共団体が適切な対応をしてくださるように期待をいたしておるわけでございます。  ただ、これは他人行儀でなくて、その被災地区の状況をつぶさに報告を受けておりますので、できるだけ適切にやっていただくようにお伝えをしたい、こう思っておりますし、また一方では、就学援助の面につきましてもできるだけのことは早急にいたしたい、このように考えております。
  89. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 今のお答えで理解はできたわけでありますが、なお一層ひとつ一歩も二歩も踏み込んで、文部省が各都道府県教育委員会に対して、あるいは市町村教育委員会に対しても御指導をお願いしたいということを要請を申し上げておきます。  第二の問題は、義務教育費国庫負担法の問題であります。  これは、法第一条にその目的が示されていることは御存じのとおりでありますが、その中で、対象として学校事務職員、栄養職員も入っていることもこれまた当然なんであります。これらの職員皆さんも重要な基幹職員であると思いますし、先国会でも大臣からそういう答弁を私はいただいたことを記憶しておるわけでありますが、かなり概算要求の時期も迫っておりますので、大臣の御見解を承りたいと思います。
  90. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘の事務職員、栄養職員の方々につきましては、私どもは、学校教育の基幹的な職員であると再三申し上げておりますし、この立場は貫きたいと思っております。当然のことながら、義務教育費国庫負担法の対象になり得べきものということで進めさせていただいておりますが、六十四年度の概算要求につきましても、その趣旨を踏まえまして要求をいたしておるところでございます。
  91. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 大蔵省は、法律の中でも今お答えにありましたように明確になっているのにもかかわらず、基幹職員である事務職員や栄養職員を国庫負担から適用除外しようという動きが依然として続いていると私は判断をしているわけであります。そうなりますと、国庫負担法の根幹にかかわる極めて重要な問題でありますだけに、大臣を先頭にして文部省そのものが断固としてこれを守っていく、そういう姿勢を貫いてほしいし、そして大蔵省に対してもそのような方向で進めてもらいたい、こう思っているわけでございます。どうぞひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  さて、時間もあとわずかでありますが、最後にお尋ねいたしたいのは、先般、文部省から六十四年度の概算要求の説明を私ども伺いました。四十人学級の完結は御承知のとおり六十六年度でありまして、何としてもその実現を果たさなければならないというのは全会一致するところであります。行き届いた教育実現のためには、さらに今日の状況は三十五人学級をやってほしいという要求さえ高まっている段階でありますから、何としてもその実現に期待をするわけでありますが、四十人学級の進捗状況、今日どういうふうになっておるのか、その見通し等を含めてお答えをいただきたいと思います。
  92. 倉地克次

    ○倉地政府委員 お尋ねの教職員定数等の改善計画の進捗状況でございますけれども、これは四十人学級分とその他の配置率の改善の分が含まれているわけでございますけれども、本年度におきましては四二・七%というのが改善総数に対する実施の進捗状況でございます。
  93. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 大臣最後にお尋ねいたしますけれども、進捗状況が必ずしもスムーズにいっているとは私は判断できません。ことしを除けばあと二カ年しか残っていないわけでありまして、その実現に対して危惧をしている一人でありますけれども、何回も確認を今日までしてまいりましたが、改めてお答えいただきたいのは、六十六年度に約束どおり必ず完結するという確認をしてよろしゅうございますか。
  94. 中島源太郎

    中島国務大臣 六十六年度完結という目標がございますので、それに向かって最大限の努力をいたします。今、進捗状況はお答えしましたように四二・七%でございますが、来年度概算要求で六〇・八%を目指してまいります。あと残る二年間でさらに最大限の努力をしてまいりたい、このように考えます。
  95. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 終わります。
  96. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長代理 次に、北橋健治君。
  97. 北橋健治

    ○北橋委員 民社党・民主連合の北橋であります。久々に一般質問の質疑の機会を得ましたので、テーマは広範多岐にわたりますが、どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。  私は、この文教委員会で初めて質問に立ちましたときに、最初のテーマに学歴社会の弊害の打破の問題を取り上げたところであります。自分自身の体験を通じましても、日本の国には、大分変わってきたとはいえ、非常に有名校重視、学歴社会というものが根強く残っていると痛感をいたしましたし、またそういった社会風潮というものが現在のいじめや非行や落ちこぼれや難しい教育問題をさらに深刻にしていると考えるものであります。  その意味で、臨時教育審議会がさきの答申におきまして学歴社会の弊害打破という問題を正面から取り上げまして一定の方向づけをしたことを評価をする一人でありますが、問題は、そこで述べられました諸点につきまして政府がどのように関係各方面に影響力を行使されていくかが重要であります。もちろんこの問題は、政府がすべて一定の方向に向けて世の中を変えていくということはおのずから無理でありますけれども、政府の強い意思と有効なる対策が極めて肝要であると思っております。  ことしも就職シーズンが一段落をしてきているわけなんですけれども、私も地元で大変驚いたわけであります。それは、いわゆる指定校制度というものが有名校重視の一つの典型でありまして、臨教審においても、この指定校制度は撤廃すべきである、あるいは就職協定違反の青田買いについても是正をすべきであるということが明確にうたわれておりますし、私もさきの文教委員会でこの点を政府にただしたところであり、政府もその改善を約束されていたところであります。  ある方から就職についての御相談がありました。そこそこの学歴、そして成績なんですけれども、会社に行ってみると、あなたの学校は我々のリストに入っていないということで会ってもくれない、そういう非常に悩んでいる学生さんにお会いをする機会がことしの夏ございました。やはり依然としてこういう問題は根深く残っているんだなということを痛感いたしました。  そこで、政府にお伺いいたしますが、臨教審で明確に方向づけされました指定校制度の撤廃あるいは青田買い、こういった問題の現状はいかがなんでしょうか。    〔鳩山(邦)委員長代理退席、町村委員長代理着席〕
  98. 國分正明

    ○國分政府委員 指定校制度あるいはいわゆる青田買いと言われるものの状況でございますが、まず私どもといたしまして、やはり就職活動というものが秩序ある形で行われることが、これは大学における教育というものに支障も生じませんし、機会の均等というような観点からも望ましいという基本的スタンスを持っているわけでございます。  それで、先生のお話にございましたように、臨教審の一次答申で、学歴社会是正の一つの具体策として、指定校制度というものあるいは青田買いというようなものが有名校偏重につながる、これを何とかせい、こういうようなことで、具体的には六十一年度以来毎年いろいろな形で努力してきているわけでございます。  本年の就職状況に即して申し上げますと、従来、企業サイドあるいは大学サイドでそれぞれ就職協定というのをお互いに申し合わせる、こういう形でやっていたわけでございますが、本年は両方から一つの協議会をつくりましてそこで定めるという形で、なお一層大学サイドあるいは企業サイドもいわゆる就職協定を遵守しようという形で臨んだわけでございます。  その申し合わせ、内容は前年とほぼ同様でございますが、文部省もこれを受けまして政府広報等を通じましてその周知徹底を図る、あるいは大学あるいは企業サイドに対しましてその内容を御通知申し上げて理解と協力を求める、こういう努力をしてきたわけでございます。いわゆる青田買いというものについては、企業の説明開始の期日、個別訪問開始の期日あるいは採用内定開始の期日というような形での指導、さらにまた、指定校制度につきましては、具体的に、これは通知の内容でございますけれども、学歴偏重を助長する出身大学による差別等本人の資質、能力に関係のない形式的理由により不利益な取り扱いをすることなく公平に行うよう御配慮をお願いしたい、こういうような形で各企業にもお願いしたというのが実情でございます。  それで、本年の就職に当たりましては、御案内のように、一つは景気が非常によかったというようなこと、さらにはまた、ちょうどひのえうまに当たっている年の卒業生であるというようなこともございまして、各企業とも積極的な求人活動が行われまして、御指摘のような青田買いというようなことがいろいろ指摘されているわけでございます。私どもも、今後とも、これから各大学あるいは企業サイドでいろんな総括、分析がなされると思いますので、それらを踏まえて明年に向けて改善措置等も講ぜられていくかと思いますが、私どもとしても一生懸命努力したいと思っております。  なお、指定校制度につきましては、その数も年々減ってきているという状況に承知しておりますが、まだまだ不十分な点がございますので、この点についても各企業の理解と協力を求めてまいりたい、こんなふうに考えております。
  99. 北橋健治

    ○北橋委員 文部省がいろいろと努力をされていることはわかりますが、現実に指定校制度をとっている企業というのがどれだけあるかというのは調査のしようもないかもしれませんが、やはりかなりあるのではないか。たまたま明るみに出るケースはわかるわけでありまして、そういった意味では、非常に根深く残っているこの問題を解決するためにはもっと強力な指導なり対策が必要であると思うのです。現状は決して満足すべき状態にはまだなっていない。  そういった意味で、お願いはされているということでございますけれども、例えば企業に対する影響力というのはほかの官庁にもあるわけでありまして、政府全体としてもっと強力な指導体制をとるべきだと思うのですが、今後の改善措置について基本方針をお伺いいたします。
  100. 國分正明

    ○國分政府委員 この問題につきましては、最終的には学生個人と企業とのいわば雇用契約という形になりますので、おのずから法律的な意味においては限度があるわけでございますが、毎年度私どもは大学サイドの要請を取りまとめ、あるいはまた労働省においては労働政策というような観点から各企業に対して指導しているということでございます。御指摘のように、文部省、労働省等があるいは中心になるかと思いますけれども関係省庁の御協力も得てできるだけ指摘されるような点が是正されていくよう今後とも努めてまいりたい、こんなふうに考えております。
  101. 北橋健治

    ○北橋委員 ぜひ政府内で鋭意検討していただきまして、例えば労働大臣文部大臣の連名で何かの通達、文書にするとか明確な方向でより一層の指導が行われることを強く要望しておきます。  さて、続きまして学歴社会の風潮を象徴するようなある事項につきまして政府の見解をただしたいと思います。といいますのは、そもそも学歴社会という弊害が出るのは特定の有名校を重視する風潮が残っているということを意味するわけです。  例えば国立大学の学長の給与につきましても格差が設けられていると聞いております。例えば東 大、京大のグループ、それから旧帝大、筑波大学のグループ、あるいはその他の大学というふうにして給与に格差があると聞いているのですけれども、これは一種の大学の序列化を象徴するような、問題のある現状ではないかと私は考えるわけですが、どうして大学の間でこのような格差が生まれているのか、給与面において格差が設けられているのか、その背景をまずお伺いしたいと思います。
  102. 加戸守行

    ○加戸政府委員 職員の給与につきましては、通常その職務の複雑さあるいは困難さ、さらには責任の度合い等に基づきまして定められるものでございます。  ところで、国立の大学長の給与につきましては、それぞれ学長が管理いたします大学の実態を踏まえておるわけでございますが、例えばその大学におきます学部の数あるいは修士課程が設けられているかどうか、博士課程が設けられているかといったような、その学部あるいは大学院課程の設置の状況、さらにその大学自体が整備されておりました従来の経緯、さらに大学の学生数等の規模の問題あるいは附属研究施設等の数、そういったような状況によりまして、管理運営上の複雑さ、困難さあるいは責任の度合いというもので左右されるわけでございます。  そういった状況等を勘案いたしまして、現在人事院規則によりまして指定職の八号俸から十二号俸までの五段階ということで、それぞれ国立大学長につきましては個別に給与が定められている実態にございます。
  103. 北橋健治

    ○北橋委員 今局長がるる言われたような幾つかの勘案すべき事項を総合的に判断をして五段階に分けているということなんですが、今お話を承った限りでは、私は詳しい数字は持ち合わせてはありませんが、例えば、東大、京大の学長さんとその他の旧帝大の学長さんとの間に管理運営の責任の重みというのでしょうか、今局長さんがおっしゃったような基準に照らし合わせてみても格差があるのは、やはり昔の東京大学、京都大学に対する社会の一般的な風潮というのでしょうか、大学の中でも別格であるという意識が根底にあるんじゃないでしょうか。
  104. 加戸守行

    ○加戸政府委員 学長は、今申し上げましたように、その職務内容、程度に従いましての給与区分になっているわけでございますが、そのこと自体が制度的な意味におきまして大学間の格差であるとかあるいは大学の序列ということを直ちに意味するものではないと私どもは考えております。しかしながら、受けとめ方として、どの大学の学長の給与が何号俸であり、どの大学は何号俸という差があることは事実でありますし、文部省といたしましても、人事院に対しましては、こういった五段階区分をできれば下限を引き上げることによりまして、例えば三段階の区分に改めるとか、そういったような考え方の要望は申し上げているところでございます。
  105. 北橋健治

    ○北橋委員 五段階に分けている現在の制度を見直す方向で文部省検討されているということでございますが、学歴社会の弊害を打破していくというのは非常に難しいテーマではありますけれども、やはりその象徴となっているのは、東京帝国大学なり京都帝大なりそういった歴史のある有名大学というものがその頂点にある、一種のシンボルだろうと思うのです。そういった意味で、東大、京大もほかの国立大学も同じレベルなんだということをこの給与の是正によって天下に知らしめることは一定の社会的な意義があると私は考えます。  そういった意味で、ぜひ東大、京大に象徴される日本の学歴社会の一つのエスタブリッシュメントというのでしょうか、シンボル的なものをこの際思い切って見直すといった姿勢でぜひ御検討いただきたいのですが、いかがでございましょうか。
  106. 加戸守行

    ○加戸政府委員 常に給与の問題、難しいものがございまして、これが国立大学長が仮に単一の給与であればよいという考え方をとるといたしますれば、どうしても一定の給与水準というものが、すべてトップにそろえるということになるのか、あるいは中間をとるということになるのか、その辺が実際問題としては、例えば現在、東大学長、京大学長が受けておられる給与と同じように、小さい、数百人の学生の大学につきましてもその学長を同様に給与上処遇することが果たして可能かどうか、実務的な意味では極めて難しい問題はあろうかと思います。  しかしながら、先生がおっしゃいますように、そういった点の工夫は十分必要であると思いますけれども、実務上の困難さと、今申し上げましたそういった格差の意識を持たせないということの相関関係におきまして、今後文部省としても努力いたしてまいりたいと思います。
  107. 北橋健治

    ○北橋委員 私も振り返ってみまして、いわゆる私立六年制の一貫教育の、世間では受験校と呼んでいる学校で学んだ一人なんですけれども、やはり父兄の間では「目指せ東大、京大」、そしてまた予備校に行った友達も「目指せ東大、京大」、そういった強い意識、衝動に駆り立てられていたという、当時の青春時代を思い起こしまして、少なくとも東大、京大とほかの旧帝大くらいは一緒にするという方向でぜひとも御検討いただきたい。御要望申し上げておきたいと思います。  きょうは、今大臣がちょっと所用で出られておりますので、お帰りになられたところでまたこの問題で文部大臣の決意をお伺いいたしたいと思いまして、続けてまいりたいと思います。  次のテーマは税制改正についてでございます。今、国会の方でも税制をめぐって本格的な議論が行われているわけでありますが、竹下総理大臣も再三指摘されておられますように、国会での質疑を踏まえてよりよいものに修正をしていく用意があるということをお話しになっておられます。まだ国会では修正をするとかそういった段階では決してありませんけれども、せっかくの一般質疑の機会でございますので、この機会に文教に関するところで政府の見解をただしておきたいと思います。  まず、今回の政府の税制改正案の中には、いわゆる教育減税といいますか、十六歳から二十二歳、ちょうど高校生、大学生に当たる世代でございますけれども、そのお一人について所得から一人十万円控除を特別にするという内容が盛り込まれておりまして、これは教育費減税を強く訴えてまいりました民社党・民主連合にいたしましても一定の評価をしているところであります。ただ、なぜ十六歳から二十二歳に限ったかについては非常に疑問に思うわけでありますけれども文部省としては、この辺、どのようにお考えになっておられるのでしょうか。
  108. 菱村幸彦

    ○菱村政府委員 今回の税制改正法案におきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、十六歳から二十二歳までの扶養親族につきましては扶養控除の割り増し制度が盛り込まれております。これは、働き盛りで収入は比較的多くても子供教育とか、それから住宅ローンとか、いろいろな支出がかさんでおりますそういう中堅層の税負担の重圧感と申しますか、そういうものに対しまして配慮しようということで設けられたものでございます。  御指摘のように、今回十万円を上積みいたしまして、新しい改正案では四十五万円の控除を適用するということになっているわけでございます。いろいろこれ以外にも苦しい世帯があるではないかということは御指摘のとおりでございますが、当面この十六歳から二十二歳までにつきましてとりあえず税負担の軽減を図っていこうという趣旨でこの法案が提案されているわけでございます。
  109. 北橋健治

    ○北橋委員 文部省の方におかれましても、これまで保護者子供のために支出した教育費の調査は鋭意されてきておられます。親の負担がどの程度かについては十分御承知だと思います。  そういう意味からしますと、十六歳から二十二歳までとりあえずこの対象になるということは一定の前進であるとはいえ、いまだ不十分なところが多々あると思うのですが、例えばこの文部省調査によりますと、公立高校、全日制に通っていらっしゃる一人のお子さんのために親の支出がどれだけかといいますと、学校教育費と家庭教育費を足しまして二十八万四千百二十五円、これは六十一年度の平均的な数字でございますが、二十八万円ちょっとであります。それに対しまして、同じ六十一年度、私立の幼稚園に通っていらっしゃる方は三十二万五千円でありました。保育園の方は文部省の直接の所管ではないわけでありますが、私自身一人の子供のために保育園料として払っているのは月五万円であります。年間六十万であります。恐らく保育園、幼稚園の段階では相当親の支出が重いのではないかと考えるわけです。  今回の政府の税制改正案というのは、基本的な総理の姿勢からしましても、中堅所得者層に対して非常に配慮をするということが貫かれておりまして、それはそれなりに結構な考えでありますが、教育費に限って見ますと、むしろ親が若いとき子供が小さい、親の収入も大きくないわけでありまして、そういうときこそ、幼稚園、保育園の段階で親の教育費負担というのが相当重いのではないかと相対的に思うわけであります。そういった意味で、内閣総理大臣みずから、国会の質疑を踏まえて法案の修正も弾力的に対応するという姿勢でございますので、この機会にぜひ文部省としましても、この幼児段階における教育費の負担というところにぜひともスポットライトを当てていただきまして、手厚い助成や改善措置が講ぜられるように努力をお願いしたいわけでありますが、いかがでございましょうか。
  110. 菱村幸彦

    ○菱村政府委員 先ほど申し上げましたように、今回の税制改正法案では、中堅層の税負担に対する配慮ということで、十六歳から二十二歳までの扶養親族に限りまして割り増し控除をしているわけでございますが、ただいま御指摘になりましたように、それ以外の世帯につきましても教育費の負担はさまざまでございます。御指摘の幼稚園段階の扶養親族の割り増し控除につきましても、これはこれで問題がございますので、今後の検討課題と私ども認識いたしております。  それから、なお文部省といたしましては、幼稚園児を持ちますこの若い世帯の家計負担につきまして、これまでも就園奨励費等によって配慮してきているところでございますが、こういうこともあわせまして今後とも十分配慮してまいりたいと考えております。     〔町村委員長代理退席、委員長着席〕
  111. 北橋健治

    ○北橋委員 ぜひ幼児段階における親の教育費負担の軽減に向かって万全の措置を講じていただきたいのであります。  大臣、お席にお着きになったところでまことに恐縮なんでございますが、今ちょうど税制改正に関連しまして文教関係のことを質疑申し上げておりまして、政府案には、高校生、大学生の世代には一人十万円ほど所得が控除されるという措置が講ぜられておりまして、それは非常に結構なことだと思いますが、文部省調査によりましても、親が一番困るのは、ある意味ではまだ両親が若いとき、給与のまだ高くないときであります。そのころの保育園や幼稚園にかかっている費用というのは、高校生、大学生と比較しましても決して小さくないわけであります。そういった意味で、これは政党レベルでの話し合いかと思いますけれども文部大臣としても、ぜひこの機会にお願いしたいことは、これから法案をめぐっていろいろ議論がされる場合に、ぜひとも幼児段階におきましても十六歳から二十二歳と同様の措置が講ぜられるように御努力をお願いしたいのでございますが、いかがでございましょうか。
  112. 中島源太郎

    中島国務大臣 北橋先生のおっしゃる意味はよくわかります。たまたま今度の税制改正で提案をされておりますのは、十六歳から二十二歳までと、こう限っておりますが、教育費優遇、教育費減税と税制上の文法では言い切れない点があるようでございますね。  翻って、では負担の多い年代はどこかということなりますと、全国勤労者の六十二年の家計支出を見ますと、全体で平均七・六%ですが、四十五歳から四十九歳あたりが一三%台、というのは一般家計支出に教育費の占める割合でありますけれども、そういう面から逆算いたしますと、一応四十五歳から四十九歳あたりまでの御負担を軽減させるということを何らかの形でまずしていくことが先決だろうということが主になっておると思います。しかし、幼児教育も大切なことでございますから、今お答えしましたように、就園奨励費の拡充その他を含めまして、御趣旨に沿っていろいろ知恵は出してみたい、こう思っております。
  113. 北橋健治

    ○北橋委員 ぜひお願いします。ちょうど私は二人の男の子が保育園に通っておりまして、その負担が非常に重いという若い世代を代表しての切実な声でございますので、ぜひお願いを申し上げたいと思います。  さて、文教関係にも幾つかの助成措置、実際窓口から給付されるいろいろな助成措置が講ぜられているわけでありますが、基本的には、親の収入というものが給付の査定をする場合の一つの大事な基準になっていると聞いております。  私も学生時代に友達と一緒に二人で大学の窓口に行きまして奨学金の申請をしたわけであります。同じような寮で生活しておりますので、彼の生活水準はよくわかるわけですが、毎回載っている。そして仕送りも私よりずっと多いわけであります。そして窓口へ行きますと、私は奨学金はもらえない、彼はもらったわけであります。そのときは、世の中は不平等なんだなというぐあいにしか思いはありませんでしたが、最近国会で所得の捕捉をめぐって不公平の論議が今税制でされているわけですけれども、私の父は給与所得者でありました。友達は自営業者であったわけであります。この所得の捕捉の格差、トーゴーサンピンあるいはクロヨンと呼ばれておりますが、実際はそれほどではないと思いますが、現実として所得の捕捉に相当問題がある。これを是正しようと思いましても、百年河清を待つがごとしとは言いませんけれども、これは非常に難しい問題でありまして、となると、教育のいろいろな関係の助成をする場合に、奨学金でありますとか幼稚園の奨励関係の助成にしましても、やはりこの不平等という問題を何とか乗り越えていく努力が今必要だと思うのであります。  ちょうど今、国会は不公平税制の是正をめぐって与野党が論戦をしている段階でもありまして、ぜひその文教関係の助成についても、この所得の捕捉の問題を正面から取り上げていただきたいと思います。この間の一般質疑のときでも、この問題を取り上げましたところ、文部省の方もこの問題を念頭に置いて鋭意努力をされておる趣旨はわかっておるわけでありますが、今後さらにこの問題意識を鮮明にして強力な対策をとるお考えがあるかどうか、お伺いします。
  114. 國分正明

    ○國分政府委員 具体的には育英奨学資金におけるいわば家計収入の捕捉の仕方というようなことでございましたので、私からお答え申し上げますが、育英奨学資金につきましては、成績優秀ということと同時に、経済的な修学困難性というようなことが柱になるわけでございます。一定の年間所得というもので限度額を設けておりますが、いわゆる給与所得者と言われる人たちが例えば農業、商業等による所得者に比べてどうも不利になっているのではないか、こんな議論がされているわけでございます。  私どもも、それらにつきまして給与所得者が不利にならないようにその実態に応じた基準を設けまして、いわゆる給与所得控除というものも設けて、給与所得者も農業、商業等の生計者も各分野バランスがとれて奨学資金が受けられるように、こういう配慮をしているところでございます。毎年その点について見直しを行っておりまして、昭和六十三年度、本年度におきましてもその所得控除額を六十一万円でございますがふやすというような形で、今の奨学金の支給実態からしますと、農業、商業等と給与所得者等が同じような形で、同じような割合で奨学資金が受けられるように、こういうような工夫をしているところでございまして、今後ともそういう点について留意をしてまいりたい、こういうように考えております。
  115. 北橋健治

    ○北橋委員 実際問題として、個人の所得が完全に捕捉されるようになれば問題は解決するわけでありますが、それに至る道は非常に長い道のりを要すると思いますので、その間におきまして、いろいろな窓口事務その他におきまして親の収入を判断する場合に、給与所得者とそうでない方との間には非常に大きな隔たりがあると思うのです。その点を十二分に踏まえて処理をしていっていただきたい。  抜本的な改革にはならないにしましても、窓口の方々は仏心を持った方も多いと思いますし、その辺のところの弾力的な査定といいますか、その辺をお願いしたいのでございますが、今後期待をしてよろしいでしょうか。
  116. 國分正明

    ○國分政府委員 窓口で余りに弾力的にやりますとこれまた問題があろうかと思いますので、例えば育英会等におきまして、統一的に、ただいまの御指摘のような点について給与所得者が不利にならないような仕組みを考えてやっていくということで努力していきたいと思っております。
  117. 北橋健治

    ○北橋委員 ぜひともその点を御検討をお願いしたいと思います。  これは質問ではないのですが、前にも申し上げましたが、やはり奨学金でも上げっ放しの制度というのは問題がいろいろある、アンフェアという問題がどうしてもついて回る。ですから、やはり返すということを徹底して、ちょうど住宅を建てる場合に低利の公的融資がございます、財投から出ておりますけれども、一般会計から利子補給をしまして低利でやっているわけでありますが、そういった意味で融資という形に少しずつ切りかえていく、そういった助成のやり方の方がフェアだと私は思うわけでありますが、ぜひひとつ御検討をお願いしたいと思います。  さて、税制に絡みまして文教関係でよく話題になりますのは、文化にまでどうして税金を取るのかという議論でございます。  文化庁にお伺いをしたいと思います。  もちろんこの税制改正の大綱を決めるに当たりましては与党の大きな発言力もあったでしょうし、また大蔵省を中心とする取りまとめもありまして、文化庁からのいろいろ要望もすべて一〇〇%通っているとは思いません。お立場はよくわかるわけでありますが、やはりこれから教育国家、文化国家として日本が大きく成長していくためにも、文化というものについては税金の対象にしていくということは極めて問題があると考えるわけであります。  そして実際問題、乏しいお金をやりくりしまして日本の文化の振興のために努力をされている方々の間では、非常に政府に対する不満といいますか、文化に対して余りに無理解ではないか、そういった考え方が広まっております。文化庁としては、入場税を初めとするこういった税につきましてはどのようにお考えでしょうか。
  118. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 現行の入場税法におきましては、映画、演劇、演芸、音楽等の入場料金につきまして原則としては一〇%の入場税が課せられております。ただ、免税点が設けられておりまして、映画については二千円以下、演劇、音楽等につきましては五千円以下という免税点がございまして、それ以下であれば入場税が課せられていないという現状になっております。それから、国立劇場の伝統芸能の公開、あるいは助成措置が講ぜられた文化財の公開、それから芸術祭主催公演等の文化庁が主催する催し物につきましては非課税とされているわけでございます。  これが現状でございますが、今回の税制改革の中で消費税が導入されますと、それに伴いまして現行の入場税は廃止されるということになっておりまして、そうなりますと、入場税が課せられた分につきましては入場税がなくなるわけでございますが、免税点以下の興行や非課税であったものにつきましては消費税が課せられるということになるわけでございます。これは、今回導入される消費税というものが消費者には広く薄く負担を求めるというものでございまして、その意味で、免税点とか非課税興行というものがその仕組みの上から、その趣旨の上から設けられていない、そういう仕組みの中で定められているわけでございます。  これは税制改革全体の問題になるわけでございますけれども、消費税がかけられる一方では大幅な所得税等の減税が行われているわけでございまして、全体としては二兆四千億という減税になっているということでございます。その分で国民の可処分所得は増加するということから申しまして、入場料金につきまして、全体の消費について均等に消費税がかけられ、それが三%程度のものであるということから申しますと、殊さらには国民の芸術鑑賞機会の阻害要因になるというほどのことにはならないのじゃないかということで全体の中で理解できることであるというふうに私どもとしては考えておるところでございます。
  119. 北橋健治

    ○北橋委員 大体芸術を愛する人は少々苦労してもお金を出してやりますから、それは阻害要因にならないというのはわかりますけれども、やはり文化庁の立場日本の文化を大きく育てる、振興させるという目標を持った官庁組織でございまして、もう既に政府案ができ上がってしまったわけでありますが、それで一〇〇%そのまま通るということはあり得ないわけでありまして、これから修正という話し合いもいずれは出てくるだろうと思うのです。やはり日本の文化を守る、はぐくむという見地から、強い決意を持って、広く大衆課税になってしまう今回の措置につきまして是正を政府内部でもこれから鋭意続けていっていただきたい。  我々野党といたしましても、いずれかの段階では修正ということに議論がなってくるわけでありまして、そういう文化に対して税金を広く取るということに対しては非常に問題があると考えている立場でございますので、肝心の文化庁がこの程度ならば大して問題はないと言っていただくと、我々としては非常に困るというぐあいに考えるのですが、どうでしょうか。
  120. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは全体の税制の問題でございますので、税制の御論議の中での動向を十分見守りながら私どもとしてもいろいろ考えていかなければならない場合には検討していかなければいけないというふうに考えております。  なお、文化に関する予算の問題についても、私どもは六十四年度の要求についてもかなり私どもとしては大幅な努力をしたわけでございますが、今後ともその面につきましても努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  121. 北橋健治

    ○北橋委員 次のテーマに入ります前に、先ほどの学歴社会の弊害打破につきまして大臣に一言御決意をお伺いしておきたいのでございます。  先ほど私が取り上げましたのは、就職試験を受けにくる生徒さんの学校のリストをあらかじめ企業がつくっておりまして、そのリストに入っていないと面接さえもしないという、いわゆる指定校制度というのが今でも根深く残っております。そういったことで、学歴社会の弊害の打破は臨教審でも大きく取り上げられました。さきに塩川文部大臣のときに私、質問を申し上げましたところ、財界の首脳に会われた機会に大臣の方からこの問題を強く取り上げられまして、非常に強い決意でこの問題の是正に取り組んでいただいたわけであります。  ところが、ことしの就職シーズンを振り返ってみましても、やはり日本の社会にはこの指定校制度、有名校重視の風潮が厳然として根強く残っております。そういった意味では文部省の方もいろいろな機会に努力されていると思うのですが、企業に対する影響力という面では通産なり労働省というのは非常に大きな影響力を持っております。この機会にいわゆる企業へのお願いという段階から一歩踏み越えまして、例えば労働大臣との連名の通達を出すとか、何かそういった強い姿勢でこの問題の改革に取り組んでいただきたいのでございますが、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  122. 中島源太郎

    中島国務大臣 この件につきましては、北橋委員の御提言には全く同感でございます。  もう既に社会全体がそういう学歴偏重からは大分脱却をしておると思うわけでありますが、指定校の問題も数は減ってきておりますが、まだそれが残っておるというのは、やはり社会の後進性であろう、こう言っても間違いではないと思うのですね。これからはますます学校教育そのものが社会人として優秀な質の高い職業人、そして研究者を育てるという、高等教育そのものがそうでありますし、受け入れる方の社会ももう少し創造性、個性、それから社会人となられる方の多様性を求めて受け入れていただくべき時代であろうと思いますので、私どもも、お話し合いの場があればできるだけそのようなことを申し上げますし、また関係省庁とも打ち合わせをさせていただいて、そのような指定校制度というものは速やかに解消できることが望ましいと私も思っておりますので、努力をさせていただきたいと思います。
  123. 北橋健治

    ○北橋委員 ぜひともその御決意でよろしくお願いを申し上げたいと思います。そして、労働大臣との連名の通達といったいわゆる行政指導という形で、そういう方法も含めまして今後対応をしていただくことを強く希望しておきたいと思います。  さて、次の問題は、天皇陛下の御容体が今大変心配をされておりまして、そしてまた、行事についても自粛をする風潮が広まっております。私も過日、皇居内におきまして陛下の御快癒を心からお祈り申し上げまして記帳を申し上げた一人でございますが、先般皇太子殿下が総理大臣に伝えられましたように、過度の行事の自粛というのは陛下のみ心に必ずしも即していないというお話があったようでございます。私の地元でも、そしてまた東京におきましても、運動会を初めいろいろな行事につきまして自粛をするという傾向が非常に強まってきているわけなのですけれども、やはり過度な自粛というものは陛下のみ心に本当にそぐわないだろうと思います。  そういった意味で、最近の風潮につきまして私はやや懸念をする一人なのでございますが、大臣は、天皇陛下の御容体が心配される最近の状況につきまして、どのような御感想をお持ちでしょうか、御所見をお伺いしたいと思います。
  124. 中島源太郎

    中島国務大臣 天皇陛下の御病状に対しては国民ひとしくその一日も早い御快癒を願っておる、そう理解をいたしております。  また、最近におきまして社会的にもろもろの行事が自粛傾向にあったということも承知しておりますが、これはそういう御快癒を願う国民の心のあらわれとして理解はできます。しかし、一般の国民社会生活に支障を来さないように粛々と行われることが好ましいと思います。  特に、今お尋ねの学校関係事業、行事、たまたま運動会とか学芸会の季節でございますけれども、運動会は青少年の体育振興のための一つの行事でありますし、また学芸会は文化に接しみずからが文化を営むという集団の一つの行事でございますから、こういうものは非常に意義あることと思いますので、もちろん自主的な判断によることではありますけれども、整々粛々と行われることが望ましい、このように私は考えております。
  125. 北橋健治

    ○北橋委員 日本語なのですけれども、粛々と進めるというのが文部大臣基本的な御所見だと思いますが、粛という字は自粛の粛ですね。粛々というのはどういう意味なのか、ちょっと私もわからないのですけれども、真意というものは私たちにも伝わってまいります。  ただ、学校関係者の間では非常にピリピリしたムードが広がっているようでありまして、ある県の教育委員会は、いろいろな学校の行事が行われる場合には華美にならないように配慮して実施されたい、例えば花火の打ち上げ、万歳三唱は自粛してほしい、そういった通知が教育委員会関係者の方からも行き交っているようであります。そういった意味で実際の学校現場におきましては、では運動会はどうするのだ、いろいろな行事をどうするのかについて非常に判断に迷っているところが多々あると思うのです。  文部省としては、学校教育現場の最近の現状を踏まえまして何らか一定の方向づけをされるお考えはあるのでしょうか。
  126. 古村澄一

    古村政府委員 この問題は、それぞれの教育委員会あるいは学校現場というところでいろいろな状況を判断しながら現実に行われているのが現状でございまして、文部省としてこういった方向でといった一つの基準といったものを示すつもりはございません。
  127. 北橋健治

    ○北橋委員 一定の方針を示す考えはないということでございますが、例えば地域によりましてはこの問題につきましていろいろと学校の管理者と現場の教職員の間で意見の一致がなくて大変心配されているところも幾つか出てきているわけであります。そういった意味で、粛々と進めればよいという大臣の御見解でございますが、そのお言葉だけで学校教育現場皆さん方がこれからスムーズにいろいろな行事を進めていくのはちょっと難しいのじゃないか、そういう段階に来ているのじゃないかと思っております。  そしてまた、こういうことを口にするのはまことに恐れ多いことでございますが、万が一ということもございます。万が一という場合につきましては、国会のこういう場で言葉にすることは本当は控えねばならないことでございますけれども、国会という国権の最高機関におきまして全くタブー視されている。例えば元号の改元の問題にしましても全くタブー視されている。それは国民生活に非常に大きな影響がありますし、また学校教育現場では非常に難しい問題が派生してくることが予想されているわけでございます。そういった意味で今後の事態の展望を考えますと、このまま何の指導もしないということだけでうまくいくのだろうか、大変な混乱が生じないかということを心配する一人でございますが、大臣、いかがでございましょうか。
  128. 中島源太郎

    中島国務大臣 繰り返すようでございますけれども、ただいまは天皇陛下の御快癒をひたすら願うという状況でございます。  文部省側から基準を示すというようなことを申し上げたこともありませんし、また、内部でちょっと調べさせましたけれども、それぞれ具体の問い合わせがあったということもないようでございます。現状はそういうことでございます。  また、今後とも混乱のないように最善の努力はいたしてまいりたいと思います。
  129. 北橋健治

    ○北橋委員 局長にお伺いしますけれども、実際、教育委員会関係者の間では事実上の通知あるいは通達のような形で学校教育現場に対して自粛についてメッセージを伝えたりしていることが行われているようでありまして、問い合わせは文部省に来てないということなのですけれども、こういった状況の中で本当に文部省は静観をされていくお考えでしょうか。それでこれから学校教育現場において混乱が生じなければ本当にいいと思いますけれども、そのことが文部省のしかるべき姿勢としていかがなものかと私は率直に思いますが、局長、いかがでしょう。
  130. 古村澄一

    古村政府委員 おっしゃいますように、学校あるいは都道府県の教育委員会等からどうしたらいいかといったような問い合わせというものもございません。まさに今の状況は、各学校現場あるいは教育委員会において自主的な判断のもといろいろな行事に対する対応がなされているのだというふうに思っております。そのことによってそう大きく現場が混乱を来しているというふうなこともそんなにたくさん聞いているわけではございませんので、現在は各地方の自主的な御判断にまつというのが私たちのスタンスでございます。
  131. 北橋健治

    ○北橋委員 政府がそういうことであるならば、もうしばらく事態の推移を見守りたいと思います。  陛下の御容体が心配される状況になりまして改めて今教育現場の間で問い直されている問題は、古くて新しい問題ですが、国歌と国旗の問題であります。  これまで国歌と国旗につきましては文部省局長通知という形であると聞いておりますが、学校教育関係者に対しましてこの問題について一定の見解を通知をされて行政指導をされてきているわけでありますが、残念なことに、現場におきましては学校教員が、例えば入学式、卒業式という公的な行事の場で日の丸、君が代に反対する教師はその場の席を外すというような事態もあるようですし、そしてまた私も教育関係者、特に管理職の皆さんから聞きますと、この行事のあるたびにいつも大変な激論が教育現場で闘わされているということであります。文部省の方としては局長通知をしているんだからそれでよしということかもしれませんが、そういったことで今後こういう状況になりまして、改めてこの国歌と国旗については文部省指導方針というのが大事になってくると思っております。  そこで、学習指導要領の見直し作業が今進められておりまして、昨年の十二月に教育課程審議会の方で幼稚園、小中高段階における教育課程について議論がされておりました。その中にも国歌と国旗の問題というものは一項目取り上げられていると聞いております。最終的に文部省がこの方針を決められるまでにはまだ時間があると思うのですが、その中には具体に小中の社会科においては、「国旗及び国歌の意義について理解させ、それらを尊重する態度を育てるようにする。」と言われております。そしてまた、いろいろな学校の儀式におきましても、「国旗を掲揚し国歌を斉唱することを明確にする。」ということを述べられておりまして、私どもはそれは当然のことであろうと思うわけでありますが、具体的に何かこの方針を踏まえて今文部省検討されている新しい局長通知なり何か考えておられるのでしょうか。
  132. 古村澄一

    古村政府委員 若干御説明いたしますと、現在の現行学習指導要領におきましては、小学校の社会科の六学年の中で、「我が国や諸外国の国旗に対する関心やこれを尊重する態度を育てるように配慮する必要がある。」ということをうたい、そして同じく小学校の音楽につきましては、国歌君が代は、各学年を通じて指導するものとするということがあり、そして特別活動においては、儀式を行うようなときには「国旗を掲揚し、国歌を齊唱させることが望ましい。」というふうになっておるわけです。中学校も大体そうなっている。  そこで、教育課程審議会からの答申というものをいただきまして、その中には今先生がおっしゃったようなことで答申をいただいております。私どもの方では、現在、学習指導要領を最終的にまとめる作業が最終段階にそろそろ入ってきます。したがって、その中では教育課程審議会答申を十分踏まえた形での指導要領をつくってまいるということ、それから、そういった指導要領つくりました後につきましては、またいろいろな教育委員会に対する指導が必要になればそのときに考えてまいりたいというふうに考えております。
  133. 北橋健治

    ○北橋委員 文部省の特別活動の実施状況に関する調査におきましても、例えば卒業式の国歌斉唱というのは全国で七三から五三%ぐらいの間であろう、このように調査をしておりました。これまで文部省も初等中等教育局長の通知という形におきまして「国旗の掲揚や国歌の斉唱を行わない学校があるので、その適切な取り扱いについて徹底すること。」と具体的に昭和六十年には通知を出されてきておるわけでありますが、現状においては学校教育現場においては非常に大きな難しい問題が横たわっておるわけでございます。  そういった意味で、徹底することとかやりなさいとかいろいろと言ってきたけれども現場はうまくいってない、むしろ行事のたびごとに関係者は苦しんでいるような現状でございまして、もっと有効な指導方針というのをお考えになっておられないのでしょうか。
  134. 古村澄一

    古村政府委員 私たちから見れば、国旗を掲揚しあるいは国歌を斉唱するということは国民の全体の感じとしてはそう抵抗がないことではないかというふうに思いますが、これが学校現場でいろいろな反対とかそういったことが行われていることもよく私たち承知いたしております。したがって、学校先生方にはよくこの国旗、国歌の意味というものをまず理解していただきたいというのが私たちとしてお願いをいたしたいことでございます。
  135. 北橋健治

    ○北橋委員 例えば一例を挙げますけれども学校教育現場で、教師が行事のときに国歌の斉唱、国旗の掲揚について反対の意思を持っていまして、その行事に欠席をする、その期間だけでも欠席をする、こういった文部省の方針にたがうような行動をとる現場教師が仮にいたとしますと、それに対しては適切な懲戒処分が今とられているのでしょうか。
  136. 古村澄一

    古村政府委員 具体的にそういった行為に対してどういう措置をとるかというのはまさに任命権者を含む監督権者の問題であると思いますが、私たちといたしましては、学習指導要領に書いてあります「望ましい」ということでございますから、学校先生方はひとつやっていただきたいというのが私たち立場でございます。
  137. 北橋健治

    ○北橋委員 そうすると、別にこれに反するような行動をとる教師現場にいたとしても特に任命権者としてはそれに、ペナルティーという言葉は余り使いたくありませんけれども、何らかの措置は今はとっていないんでしょうか。ただお願いをするだけでしょうか。
  138. 倉地克次

    ○倉地政府委員 今御指摘のような場合につきましては、任命権者の方におきましてはそういう事態に対して厳正な態度でもって臨んでいるのが実情でございます。
  139. 北橋健治

    ○北橋委員 私も、厳正に処分してほしいという気持ちを今申し上げているのではありませんが、今まで文部省の方も現場に対して鋭意いろいろな形で指導されてきているにもかかわらず現場では大変混乱をしているということがありますので、適切な対応を今後ともお願いをしておきたいと思います。特に今陛下の御容体が心配されるような状況になりました。今後現場ではますます国旗の問題、国歌の問題につきましていろいろな教師間、学校間の意見の不一致というものが表面化してくると思いますので、ぜひとも鋭意御検討いただきたいと思っております。御要望だけ申し上げておきます。  さて、最後に時間が残り少なくなりましたが、教育課程審議会の方向づけを踏まえまして、答申を踏まえまして今学習指導要領の最終的な詰めを行っている段階でありますが、その中で特に留意すべき諸点について、政府の見解をただしたいと思っております。  その第一は、情報化への対応という項目がございました。これは、もう世の中どんどん情報化が進んでおりまして、むしろ学校教育現場の方が非常に立ちおくれているという現状になりましたので、この問題について教育課程審議会答申を踏まえて政府の方も前向きに取り組んでおられることは非常に評価をするわけです。現に文部省は、一九八五年のときから学校におけるコンピューター教育に関する基本的な方針というものを出されました。    〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕 いわゆる教育関係におきましては、ニューメディア教育元年と呼ばれるほど画期的な方針をお出しになられたことは私どもも評価をするものであります。  ところが、いろいろな経済研究所の調査を見ますと、情報化教育あるいはコンピューターの導入という現状は、イギリスやフランスなんかに比べまして、先進諸国から見て七、八年は少なくともおくれているだろうと言われております。例えばある調査によりますと、イギリスやフランスではもう既に一九八五年までに一〇〇%導入が完了している。しかもそれは国の指導で相当の公費負担を伴って完了しているわけでありますが、日本の方ではまだ小学校は五百校弱、二%、中学校では千三百校、一二・七%。まだその格差は先進諸国の間に非常に大きいものがあるわけであります。そこで、予算も限られておりますし、ほかにも重要な施策がメジロ押しにありますので、ニューメディア関連だけで予算を取るわけにはまいりませんけれども教育課程審の答申を踏まえまして相当これには本腰を入れていただきたいと考えておるものでありますが、政府の基本方針をお伺いします。
  140. 倉地克次

    ○倉地政府委員 今先生指摘のコンピューター関係などの関連もございまして、昭和六十年度から、私どもといたしましては新教育機器教育方法の開発ということで予算を取ったわけでございます。本年度におきましては二十九億円ということになっている次第でございますが、これによりまして、そうしたパソコンなどの機器を含めまして新教育機器を小中学校並びに高等学校の方で整備するときに補助をいたしている次第でございます。この重要性にかんがみまして、来年度の概算要求におきましては、これを約九億円増いたしまして三十八億円の要求をいたしている次第でございます。  なお、公立文教施設の方の大規模改造経費の方におきましても、コンピューター関係の部屋を設置すると同時に、コンピューター機器を整備するというような場合には大規模改造経費の対象にして整備を進めたいというふうに要求しているところでございます。
  141. 北橋健治

    ○北橋委員 その御努力は多といたしますが、実際問題、日本の八割から九割ぐらいの学校におきましては、小中高におきましてコンピューターとはほとんど無縁な教育が今行われているようでありまして、これは相当力を入れてやりませんと先進諸国との格差という面から見ても埋まらないということがあると思います。  大体、一つの何か目標が設けられているのでしょうか。例えば何年ごろまでに欧米先進国並みに情報化教育を徹底していくという何か明確な方向がなければ、厳しい予算編成の中でその点の予算を確保するということは困難だと思うのですが、目標がありましたら教えてほしいと思います。
  142. 倉地克次

    ○倉地政府委員 今御指摘の整備の最終的な目標ということでございますけれども、まだその段階まで至っておりませんで、私どもといたしましては、設置者の要望にできるだけこたえられるようにということを主眼といたしまして予算の獲得に努力しているところでございます。この態度で若干進めてまいりまして、今後におきまして御指摘の点についても十分検討してまいりたいと思う次第でございます。
  143. 北橋健治

    ○北橋委員 教育課程審におきましても、具体的に情報化への対応について一項目起こして、非常に強調して今後の重要課題として取り上げているわけでありまして、やはり予算を単年度ごとに取っていくという作業も大事でありますけれども、大体何年ぐらいまでにここまで整備をしていくという基本目標をぜひともこの機会に、学習指導要領を煮詰める中でその作業を進めていただきたいと御要望を申し上げておきたいと思います。  次に、国際化への対応ということも教育課程審の答申において強調されているわけでありますが、まず第一に必要なことは、英語教育、外国語教育だと思います。私もそうですが、私の友人も中学、高校のときには相当難しい英語の文章を読む訓練をさせられましたし、現にかなり内容の高度なものまで勉強しないと大学にとても入れないという状況がございました。ところが、大学も英語の勉強は少しありましたけれども、卒業いたしますとほとんど余り使う機会がないということもありますけれども、中、高、大学とあれだけ苦労した英語というものが全く使えないという状況に出くわしました。そういった意味で、根本的に日本の英語教育というのは問題があるのではないかと思います。  去年も私ワシントンで国際会議があるときに行きましたけれども、イギリス人、アメリカ人の英語は別にしまして、ドイツ人やフランス人はほとんどの人たちが皆日常会話、そして自分の専門の分野についてはそれなりに英語でやりとりをするという訓練がほとんど行き届いているようでありまして、日本はそういった意味では非常に立ちおくれているのではないかと思いますが、この辺について今後どのように対応されていくのでしょうか。
  144. 古村澄一

    古村政府委員 確かに、おっしゃいますとおり、聞くこと、話すことということについては大変十分でないというふうに私たち認識しておりますし、そしてまた今学習指導要領改訂作業をやっておりますが、英語教育についてはそういった聞くこと、話すことというものに重点をずっとシフトし直していかなければならないだろうと思っております。  と同時に、学校の英語の先生がまたこれそれではよくしゃべれるのかという話になるとなかなか難しい状況があるということから、英語の先生の研修ということもまずやっていかなければならぬだろう、力を入れていかなければならぬだろう。と同時に、それだけよりももっとネーティブスピーカーを学校に配置して、そして子供に本当に向こうの人の言葉をじかに聞けるようにということで自治省、外務省と三省一緒になって、いわゆる英語教員の指導助手を招致するという事業をやっております。本年度千三百人の英語教員の指導助手を招致して、教育委員会あるいは中学校高等学校に配置いたしておりますが、こういったものについても今後ますます拡大をしていかなければならぬのではないかと思っております。
  145. 北橋健治

    ○北橋委員 その基本方針をぜひ貫いていっていただきたいのでありますが、私も振り返ってみまして、中高のときに英語を勉強するときに無言の圧力で常に子供心にのしかかってくるものというのは、目指すは大学入試のときの英語の問題だったわけであります。担任の英語の先生もよく言われていましたけれども、こういう勉強の仕方は、文法中心のやり方をするのは私も嫌いだけれども、やむを得ないと思って、みんな我慢してついてきてくれと再三よく言われたことを記憶しております。そういった意味で残念なことに今の中高におきましては、これは学校によって、また生徒の進路によりまして違うのでしょうけれども、大学入試の英語の問題のあり方というものが相当影響しているのじゃないかと思うわけであります。  例えば私も中学校のときに、英検の二級の試験を全校的に受けようと学校先生から言われまして、一生懸命英会話を勉強しまして、パスしました。ところが、当然英険の一級まで行けばいいのですけれども、そのころになりますと先生方は大学の入試問題にはそういうものは必要ないからやらぬでよい、大学に行ってから英検の一級を取れ、こういうことで方針が変わるわけであります。そういったふうに大学の入試というものが教師進路指導にも決定的な影響力を与えているという現状から見ますと、やはり大学入試あり方にメスを入れないと英語教育というのは現場でなかなか変わらないだろうと思うわけでありますが、この点どのような見解を文部省はお持ちでしょうか。
  146. 國分正明

    ○國分政府委員 大学入試というものが現実問題として高等学校教育に影響を与えるということからしますと、外国語入試あり方につきましても、先生指摘のような視点がぜひ必要だろうと私ども考えております。臨教審の先般の二次答申におきましても、大学入試における英語につきまして、聞く、話す、読む、書くという多様な力が正当に評価されるような改善を図る必要がある、こういう御指摘があるわけでございます。  こういった観点から、大学入試における例えば英語のヒアリングの実施状況を見てまいりますと、国公私を通じまして逐年これを実施する大学が増加の傾向にございます。例えば国立大学についていいますと、昭和六十一年度の入試では二十五大学三十学部でございましたが、六十四年度の入試におきましては、東京大学を初め三十二大学四十二学部でヒアリングを実施する、こういうふうな傾向があるわけでございます。あるいはまた、推薦入学などにおきましては、TOEFLの成績あるいはお話にございました英検などの検定結果というようなものを利用している大学も出てきております。  いずれにしましても大学入試の問題、個々の大学自身でその方法を決定するということでございますし、また受験者の数とか施設設備の問題等もございますけれども、今後とも英語の多様な力が やはり正当に評価される、こういうような形で入試選抜が行われますよう各大学で工夫検討がなされるよう、今後とも促してまいりたい、こんなふうに考えております。
  147. 北橋健治

    ○北橋委員 ぜひ大学の入試の段階におきまして改善がされますことを念願をしたいと思います。もちろん個々の大学におきまして入試問題のあり方について文部省の方から指導できることというのは限度があることは承知をしておりますが、とにかくここを変えない限りは、中学生、高校生が先生と一緒になって幅広い英語の勉強をするということはなかなか困難だと思いますので、重ねて要望しておきたいと思います。  私の質問通告しましたのは以上なのでありますが、時間がまだありますので、それでは一点だけ、特に答弁があればありがたいのですが、ちょっとやらしていただきます。  先ほども幼児教育の問題を取り上げさせていただきました。親の教育費の負担が非常に重いということです。そこで、そのほかにも入園料、保育園や幼稚園に入るとき、入園料というのは私立の場合かなりの額になるわけなんですが、これは例えば親が転勤いたしますと、返すところと返さないところがあると聞いております。  これは先般文部省の事務当局にお伺いいたしますと、特に文部省として指導は具体的な文書でしてはいないということで、かなり弾力的に現場において判断されているようなんですけれども、実際問題、最近の企業社会というのは変化をしてまいりました。突然単身赴任で行ったり、あるいは子供を連れて突然転勤ということがしばしばあるわけであります。そういった意味で、入園料を払って返してもらえないと勤労家庭にとっては大変大きな問題になる。しかもそれが県によってまちまちであるという現状にあります。この問題について鋭意御検討いただきたいのでございますが、いかがでしょうか。
  148. 古村澄一

    古村政府委員 私立の幼稚園の関係だと思いますが、設置者のそれぞれの御判断もあるということで、返すところあり返さないところありというふうに区々になっているんだと思います。ただいま問題を初めて聞きましたので、ひとつこの辺は状況を調べて、そしていわゆる幼稚園の団体の方々ともお話ができることがあればしてみたい、よく事情を調べたいと思っております。
  149. 北橋健治

    ○北橋委員 ぜひともこの問題にについて勤労家庭の負担を軽減するという立場から、やむを得ず急に転勤になった場合には入園料を返還するという方向で関係者との間の話し合いがまとまることを期待しておきたいと思います。  あともう一点、海外子女の受け入れについてお尋ねをしたいと思います。  先般も私のところにある会社の方が相談に来られました。突然アメリカに出張命令が来た。その方が一番悩まれていたのは子供教育の問題であります。特にこれまでは日本教育現場の中でいい学校を目指して頑張るようにと親も教育しておったのが、突如アメリカの勤務で子供も一緒についていく。一番心配されていたのは帰ってきて後のことであります。アメリカへ行きますと、それはそれなりに大変いい学習環境の中で勉強できるわけでありますから、正当な評価のもとに日本社会がまた受け入れるべきなんですが、現場においては海外に出張して子供さんと一緒に行かれる方にとっては大変な心配事、悩み事を抱えて赴任されているという現状にあります。それはもうアメリカに限らずどこの国に行く場合でも同じだと思うのです。  先般も財界の方から政府に対する申し入れの中に、海外子女の受け入れについて万全の措置をとるよう申し入れがあったと聞いておりますが、私どもの見る限り、かなり文部省の方も努力されていると聞いております。しかし、現場の父兄の間では想像を絶するような不安というものが渦巻いておりまして、この際相当思い切った受け入れの措置を講ずる必要があるのではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。
  150. 古村澄一

    古村政府委員 海外子女の受け入れで主として問題がありますのは高等学校段階というふうに私たち認識いたしております。高等学校子供が帰ってきても、すぐに公立の高等学校への入学試験をしてくれないとか入れてくれないというふうなことがあります。そこでこの十月八日に学校教育法の施行規則を改正いたしまして、従来は一年生の編入学、一年生段階で外国から帰ってきた子供については編入を認めてなかったというふうな規定がございましたので、それを取っ払いまして、一年、二年、三年、どの段階でも受け入れることができるようにするという制度的な改正をいたしました。  と同時に、それは制度の改正でございまして、現実問題、各県において公立高校にそれを幅広く門を開くということが必要でございますので、とにかく帰国子女の編入学についての試験の実施回数をふやしてほしい、それから特別の定員枠の設定をしてもらえないか、それから受験手続をもっと簡素化してくれ、あるいは情報提供をしっかりすべきではないかというふうなことを含めまして、先日、各都道府県の教育委員会に対して遺漏なきようという指導通知を行ったところでございます。
  151. 北橋健治

    ○北橋委員 その中で定員枠の問題があるのですが、実際試験を受けてみると、やはり外国の学校で勉強してきた子供というのは、日本のような数学とかああいった科目については相当立ちおくれている。古文、漢文もそうであります。そういった意味におきまして、やはり海外で勉強されている子女というのは、それだけに国際化社会を迎えるに当たりまして日本にとっては非常に有益な経験をされてきた子供たちでありますので、いわゆる日本型の偏差値教育といいますか、そういう基準で判断してしまうと非常に気の毒だと思うわけです。  そういった意味で、受験回数をふやす、定員枠をふやすということとあわせまして、海外で勉強されてきたそういったレポートを踏まえまして総合的に人格を判断するような、そういった弾力的な措置が必要だと思いますが、その点についていかがでしょうか。
  152. 古村澄一

    古村政府委員 その点につきましては、従来からも、いわゆる海外で生活した子供の状況を考えたそういった選抜のやり方を検討してくれということを都道府県にお願いしておりまして、徐々にではございますが、改善されつつあるというふうに思っております。なお、もっと強く指導してまいりたいというふうに思います。
  153. 北橋健治

    ○北橋委員 よろしくお願い申し上げます。  時間が来ましたので、これで終わります。
  154. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長代理 次に、山原健二郎君。
  155. 山原健二郎

    ○山原委員 今国民が一番大きな関心を持ち、また一番怒りを燃やしている問題は、リクルートの疑惑問題でございます。この問題を解明せずして何が消費税かという言葉まで各新聞の投書欄にも出ていることは、文部省皆さんもよく御承知と思います。  また今まで、過去におきまして教育に関する汚職事件などというのはないわけではありませんでしたが、例えば教科書販売に関する汚職など、これは戦前のことでありますけれども、地方長官まで問題になるというような事件がありました。しかし、日本教育史上これほど大きな教育に関する疑惑を持たれた時期はなかったと思います。そういう意味で、この問題についての解明は何よりも先行されなければなりませんし、特に衆議院の文教委員会におきましてこの問題が一日も早く解明をされることがいずれにしましても重大な課題だというふうに考えているわけでございます。  今度の問題、ちょっと振り返ってみますと、リクルート会社の江副浩正前会長が、彼から元文部大臣の森喜朗さんに非公開株の譲渡が行われましてから教育課程審議会委員また大学審議会委員に任命されています。また、秘書の方の名義ではありますけれども中曽根前首相の名前もこの中に出てまいります。この点についても職権に絡むわいろとして重大な疑惑を持たれていることもまた事実でございまして、今日我が党などの資料公表によりまして臨教審専門委員である公文俊平氏にも株が譲渡されていたという疑惑があります。  この点について、今法案の審議がなされておりますけれども、この法案はすべて臨教審答申に基づくものですが、臨教審答申あるいは教育課程審議会答申、また大学審議会の中間報告などは政府が進める教育改革の根幹をなすものでございまして、その根幹が株と金で汚れていたということになりますと、日本教育にとって重大な禍根を残すことになるわけでございます。また、臨教審答申に基づく法案の審議に先立ちまして、まず本委員会の責務として、将来に禍根を残さないためにも、国会が子供たちに不正義は徹底して明らかにし、国会の権威を明確にするという点においてもリクルート疑惑の全容解明を徹底して行うことが必要だと思います。  私は、この間の当委員会においてもこのことを主張したのでございますが、私のこの見解につきまして、恐らく中島文部大臣もその気持ち、所見は同じものだと思うのでございますが、最初にこの点について中島文部大臣の御見解を伺っておきたいのであります。
  156. 中島源太郎

    中島国務大臣 今御指摘いただきましたことは、今国会におきまして各委員会、税特委におきましてもいろいろ御熱意ある御審議をいただいておるというふうに承知をいたしております。  山原先生からのせっかくの御指摘でございますが、その中で何人かの個人名を挙げられたわけでございますが、この方たちは現行法の中で自己の責任においてなされました証券取引でございますから、今の私の立場からそれに関連して云々することは差し控えさせていただきたいと思います。  関連いたしまして、江副さんが大学審議会あるいは教育課程審議会の委員であったということでございましたが、再三申し上げますように、これはいずれも第八条機関でございまして、それぞれに関係法令がございますから、その関係法令にいわゆる任命の手続等が規定されております。その関連法規に従いまして適正に任命されたこと、こう思っております。ただ、私の代になりまして、七月の時点で、それぞれの審議会の委員でありました江副さんから辞任の申し出がありまして、それに従いまして辞任の手続をとらせていただいたわけでございます。  いずれにしても、一つ審議会というものは系統立った御審議を一定の委員の方々のもとに行われるわけでありますから、理由はともあれその中の委員のお一人でも途中で辞退をされなければならぬということは大変遺憾なことであったというふうに考えておるわけでございまして、今後教育改革を進める上におきまして、私どもはまた独自に政治倫理の上からしっかりと教育改革を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  157. 山原健二郎

    ○山原委員 今、江副さんが途中でおやめになったことに対する文部大臣のいささか不満の御見解があったわけですが、今、教育の荒廃ということを言われますけれども、かつてこれほどの荒廃はなかったと私は思うのです。そういう意味で、教育の問題、特に文教行政の最高責任者としての文部大臣の御見解を伺ったわけでございますが、この委員の任命を中心にして質問をしていきたいと思います。  先日、税制特別委員会が江副氏に対する臨床質問を行いました。このときに江副氏は、非公開株譲渡については、リクルートの経営安定のためであり、他意はないと答えております。すなわち政界工作などではないと言外ににおわせておるわけです。みずから政界工作あるいは官界工作ということを言うはずもないわけですけれども、非公開株譲渡は極めて目的的であり、わいろに当たると思われる節があると私は考えております。例えば、前検事総長は、何の目的もなしに株を配るはずはないということをおっしゃっておられるわけですね。そして現に強制捜査が行われて一昨日から始まったばかりでございますが、この点を見ましても国民の疑惑の念というものは消え去っておりません。  臨教審の委員の選定に当たってはどういうことが行われたのか、この点について聞きたいわけですが、江副氏そのものは臨教審の委員にはなっておりませんけれども、しかし、いろいろな報道を総合してみますと、臨教審委員選考のときに、官邸側からあるいは文部省に対して江副氏を候補として推薦をしてきた経過があるのではないかと思います。この点はどのように把握されておりますか。
  158. 加戸守行

    ○加戸政府委員 臨時教育審議会の委員は、文部大臣の推薦に基づきまして内閣総理大臣が任命されるわけでございますので、候補者のリスト等につきまして文部省側で準備をいたし、そして総理大臣の御判断によりまして任命されたという経緯でございます。
  159. 山原健二郎

    ○山原委員 先日も中西委員の方からこの点について質問があったと思いますが、形式はそうですね。でも今までの報道としまして、これは率直に申し上げたいのですが、中曽根首相時代臨教審委員選任に当たって、中曽根首相が江副をぜひ委員にというごり押しをして当時の話題になったことがあるという報道もありますし、また、江副氏は官邸に出入りして中曽根氏に気に入られていたんだなどと、官邸側から江副氏の名前が挙がっていたことを報道しておる向きもたくさんあります。この点については本当にあったのかなかったのか、これを明らかにしてもらいたいのです。  本日の朝日の記事、これは「視点リクルート問題」でございますけれども、これを見ましても、江副氏がどういう役職をしておったかといいますと、江副浩正氏は公職といたしまして、これは教育課程審議会委員ですね。税制調査会特別委員。あるいは行革審の土地対策検討委員会、土地臨調と呼ばれておりますが、その参与でございます。さらに大学審議会委員ということでございまして、これはきょうの新聞情報だけで質問を申し上げるわけではありませんけれども、例えば、江副氏は経済同友会の幹事をされておりますが、今まで政府機関のこういう重要な審議会には副代表幹事相当の人が派遣をされておったわけでございまして、その点では、平幹事である江副さんがこういう重職につくことについては、全く異例のことであるということを経済同友会自身も申しておるような事態があるわけでございます。  さらに、この方の起用につきまして、例えば税制調査会の特別委員十名が任命されたとき、シャウプ税制勧告以来の抜本改革をと力を入れた中曽根首相が純民間の人を増強し、暴れ馬も入れたい、これは有名な話でございますが、起用されたのは江副氏や牛尾治朗氏、それに今回ドゥ・ベスト社から未公開株を取得していたことが明るみに出ました公文俊平東京大学教授らで、中曽根人脈が多いと言われた、そういうことが書かれているわけです。こういう状況判断からいたしまして、今加戸官房長がおっしゃいましたように形式としてはそういう形式になっておる、これは皆知っておるわけですけれども、実態としてそういうことが全くなかったということが言えるのかということはぜひ聞いておきたいのですが、いかがですか。
  160. 加戸守行

    ○加戸政府委員 ただいまの御質問の中で、いろいろ推理あるいは想像のような視点でのお話でございましたけれども先生がおっしゃいましたような事柄を私どもは具体的には承知いたしておりません。
  161. 山原健二郎

    ○山原委員 なかなかこういう問題については、それはストレートにはお答えにはならぬと思いますけれども、さらに、事実中曽根首相の日程表を見ますと、これは臨教審設置法案が審議されているさなかのときでございますが、五十九年四月十五日ですね。これは新聞に出ている首相の日程表から見たわけですが、非常に江副さんとの関係というのは深いわけですね。四月十五日午後二時二十分にゴルフを終えて先行パーティーの藤波官房長官、森文相、牛尾治朗ウシオ電機会長、江副浩正リクルート社長と歓談、こういうふうにどこを見ましても特に当時の森文部大臣と江副氏が一緒にゴルフに回るというようなことも幾つか出てまいりますし、そういう意味では極めて深い関係にあったのではないかと思われます。  それからまた週刊現代、あなたの方は単なるうわさだとおっしゃるかもしれませんが、一応出しておきますと、次のような記事が出ていますね。江副氏が文部省にしきりに出入りするようになったのは森喜朗文相時代から、江副さんの窓口だったのが当時の高等教育局の坂元弘直課長、現体育局長のようですというふうに出ておるわけでございますが、こういうことはやはり否定すべきは否定したらいいと思うのですが、その以後否定された事実もありませんけれども、こういうことがあるんでしょうか。坂元弘直氏と江副氏との関係はどういうものであったのか、あるいは就職情報とのかかわりなのか、それとも森元文相との取り次ぎを行う役割だったのか、この辺について文部省の見解を伺いたいのです。
  162. 加戸守行

    ○加戸政府委員 週刊現代の記事を拝見いたしました直後、私自身が坂元体育局長に確認をさせていただきました。本人は、全くそのような事実はないときつばり断言いたしております。
  163. 山原健二郎

    ○山原委員 そのほかにもありますけれども、これは状況説明のようになるわけでございまして、問題はこれらの記事や報道、これを総合してみますと、文部省と江副氏との関係というのはかつてなく深い関係に森元文相当時になっておったのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  164. 加戸守行

    ○加戸政府委員 森元文部大臣と江副氏との関係につきましては、文部省は詳細承知する立場にございません。
  165. 山原健二郎

    ○山原委員 きょうは当事者がおいでになりませんので、私の質問に対する答弁もそういう答弁になるだろうということは多少私も予想しておるわけですけれども、ただすべき点はただしておきたいと思います。  江副氏は、臨時教育審議会の委員にはなれませんでした。これは恐らく私の推測では、当時の新聞その他の状況からしまして官邸側からの名指しはあったと思いますけれども、しかし臨教審委員にはなれなかったのですね。臨教審が発足したのが昭和五十九年の九月でありますから、五十九年の十二月に森元文部大臣に対しましてリクルートの非公開株が譲渡されたわけでございます。譲渡株の中で、今まで既に提出をされております資料を見ますと、一番多い方が森さんでございます。これは三万株約一億六千万円の売却額を上げていたことになっております。この場合、株譲渡に当たってファーストファイナンスから融資を受けて御自身がこれを受け取ったということをみずから認めておられるわけでございまして、自分自身は身銭は切っていないというのが今の真相でございます。それに次いで多いのが中曽根首相の秘書名義での一億四千万円の売却額でございます。  これが今までわかっておる事実関係でございますが、これが譲渡されまして、その後に江副氏が教育課程審議会委員、そして翌々年大学審議会委員に所属することになるわけでございます。この点について確かめておきたいのですが、いつ委員に任命され、審議会のどのようなポストに江副氏はおつきになったのか、このことを伺っておきます。
  166. 加戸守行

    ○加戸政府委員 江副氏が文部省関係審議会の委員に発令されましたのは、教育課程審議会の委員といたしましては昭和六十年九月十日でございます。それから大学審議会の委員といたしましては昭和六十二年九月十八日の任命でございます。  いずれも両審議会の委員を六十三年七月十一日付で辞任されております。
  167. 山原健二郎

    ○山原委員 審議会のどういうポストにつかれたのですか。
  168. 古村澄一

    古村政府委員 教育課程審議会では分科会に分かれて審議いたすわけでございますが、高等学校分科会に所属いたしておりました。
  169. 山原健二郎

    ○山原委員 委員の任命の経過については八月二十五日でございましたか、私は決算委員会で取り上げましたが、こういう御答弁をいただいておるわけです。いわゆる人選に当たっては「大所高所から審議していただくということで、学校関係者あるいは教育学者のみに限らないで、文化、スポーツ界あるいは経済界、マスコミその他の学識経験者などの各界から人を集めて御審議をいただいておるところでございます。」これが御答弁でございまして、江副氏の問題についてもこのような観点から選考したと述べられております。特に進路指導などに識見を有しているから委員をお願いしたとも答弁をされました。  江副氏が所属した審議会の委員会はまさに江副氏の企業利益と合致する委員会に所属していると私は思っております。第一に、リクルートは就職情報、進学情報を提供しまして教育情報産業として急成長してきた企業であります。教育課程審議会高等学校教育課程分科審議会、さらに職業教育分科会、また大学審議会は極めて重要な位置を占めているのでありますが、同時に、リクルートはコンピューターや通信事業を拡大するためにコンピューターを中心とする教育改革の動向を一番この時点では知りたかったときでございます。そうしますと、教育課程審議会高等学校教育課程分科審議会、また職業教育分科会、大学審議会もその意味では極めて重要な位置を占めているわけでございます。  こうした点から考えますと、江副氏のこの間の教育に関する審議会委員任命は、一企業に対する便宜供与ではないかとの疑問が生じてくるわけです。このことを質問したわけでございますが、明確な回答をいただいておりません。文部省としてこの点について調査をされたのかどうか、伺います。
  170. 加戸守行

    ○加戸政府委員 審議会の委員に任命いたしますれば、当該審議会におきます審議事項あるいはその課題等について多様な御意見をお出しいただくわけでございます。審議会の委員になったからということでその委員が所属されます企業に対しまして便宜供与するという結果になることはあり得ないと思っております。また、そのような便宜供与があったかないかというような事実関係調査いたしたことはございません。
  171. 山原健二郎

    ○山原委員 法務省の方、おいでいただいておりますが、この点につきまして何らかの調査をされているでしょうか。
  172. 古川元晴

    ○古川説明員 今国会で繰り返し申し上げておるところでございますけれども、今回のリクルート問題につきまして種々国会で御指摘やら御論議されているところがあるわけでありまして、そういう点につきましては、直ちにそういうものが捜査の対象になるというわけではございませんけれども、東京地検といたしましては、そのようなもろもろの点につきましては当然承知しているものと思うわけでありまして、そういう角度から適切に対処しているものと考えておるところでございます。
  173. 山原健二郎

    ○山原委員 一定の視点を持っておられるということがわかりましたが、例えば高等学校教育課程分科審議会、これの第一回総会の議事概要をいただいておりますけれども、これを見ましても、例えば「自由討議」の中で、「教育課程審議会中間まとめについて次のような自由討議が行われた。」この中などはまさにコンピューター問題、もうリクルートという企業にとっては資料としても一番大事な問題が論議されているわけですね。御承知のように、この業界におきましては熾烈な競争が行われているわけでございまして、進路指導に対してコンピューターを導入するということあるいは情報ネットワークをつくるということでは先陣争い、しかも生涯学習体系の中でいわゆるインテリジェントスクールなどというものをめぐっての独占をしたいという希望がある業界の今日の状況の中で、一つの企業の社長さんが重要なポストに幾つもつくのですね。  しかも、かなり不自然な形でついていく。しかも、その場所ではこの企業にとって最も大事な情報が交換をされている。これを知り得ることがどれほどこの企業の将来の発展にとって有利になるかわからないというような問題も含んでおるわけでございまして、今官房長がおっしゃるように、大変きれいにおっしゃるわけですけれども、私はどうも納得がいかないのですよね。それで、その中にこの株が有利に動いておるとするならば、これは大変重大な問題であると思っておりますが、時間の関係で次へ移ります。  最大の非公開株の譲渡を受けまして、便宜供与が疑われるような問題だと私は思うのですけれども、この点について今贈収賄事件にまで発展する問題だというふうな簡単なことを私は申し上げるつもりはありませんが、法務省としてどういう視点でこの問題の捜査に当たられようとしておるか、捜査という言葉が正しくないかもしれませんが、どういう見解を持っておられるか、もう一度お伺いしたいのです。
  174. 古川元晴

    ○古川説明員 ただいま委員御指摘のような具体的な事実あるいは具体的な固有名詞を挙げてのお尋ねということになりますと、法務当局といたしましてお答えするような立場にはないということをとりあえず御理解いただきたいと思うわけでありますけれども、繰り返しでございますけれども、いずれにいたしましても国会で種々御論議されているところにつきましては検察当局といたしましても承知しているところであるというふうに思っておりますので、それなりに適切に対処するものというふうに考えておるということで御理解いただきたいと思います。
  175. 山原健二郎

    ○山原委員 一昨日、リクルート及びリクルートコスモス社に対する強制捜査が行われまして、ついに松原室長が楢崎氏に対して五百万円を渡そうとした贈賄容疑による逮捕が行われるという事態を迎えております。五百万円という金額と比較するなどということではありませんけれども、随分多額の金が売却益として出ておることも間違いございません。で、私は、捜査当局としまして、例えば審議会委員などという重大な委員に任命をされるというこの事態、固有名詞は今申し上げません、株の流れの中で、それを解明する中で任命という職権問題が絡む問題について、これを視野に入れて捜査をする、そういうことなのかどうか。この点も伺っておきたいのです。
  176. 古川元晴

    ○古川説明員 まずもって御了解いただきたいのでありますけれども、検察を含めました捜査機関といたしましては、やはり捜査といいますのは犯罪を対象といたしたものでございまして、その前提を欠いた場合には捜査の対象になり得ないわけでございます。したがいまして、捜査機関といたしましては、まず犯罪があることを前提といたしまして、果たしてそのことが刑事訴追をするに足る犯罪事実かどうかということを確定していくということが任務でございまして、それを離れて疑惑それ自体の解明ということは私どもの所管外になるということでございます。  ただしかし、いろいろ御指摘されておる事柄につきましては今後の問題でありまして、どのように発展していくのかということも今の段階で定かに申し上げるわけにはいきませんけれども、いずれにいたしましてもそういう御指摘があったということは承知していくものと考えております。    〔鳩山(邦)委員長代理退席、委員長着席〕
  177. 山原健二郎

    ○山原委員 大変重複した質問のようでありますけれども、大事な点でありますからもう一つ。江副さんが教育課程審議会委員になったのは六十年の九月、また大学審議会委員になったのは六十二年の九月でございます。株の譲渡が行われたのが五十九年の十二月でございます。  それから、官邸日誌をちょっと見せてもらったんですが、六十年の三月二日に江副氏が官邸を訪れております。また六十二年の八月八日には軽井沢で中曽根当時の首相に会っております。いわば委員に任命される数カ月前には中曽根前首相に会い、その後に委員となっているという、そういうことが官邸日誌等の関係で出てまいりまして、こういう関係から教育課程審議会委員になり、また大学審議会委員になった。この経過を見ますと、とりわけ大学審議会は、「大学審議会は、大学に関し広くかつ高い識見を有する者のうちから、文部大臣が内閣の承認を経て任命する」、こういうことになっておりますから、内閣及び内閣総理大臣の関与というのは非常に濃厚なものになっているわけでございます。  そうしますと、率直に聞きますが、内閣総理大臣が委員の任命に当たって江副氏を推薦並びに委員にせよという指示があったかどうかということは極めて重大な問題ですが、文部省の方はそれは知らないということでございますが、職務権限に関する問題でございますので、この点について捜査当局はどういうお考えを持っているか、もう一回伺っておきたいのです。
  178. 古川元晴

    ○古川説明員 お尋ねの職務権限ということ自体につきましては、やはりそれはそれぞれの所管の省庁があるわけでございまして、直接的には当該省庁のお答えされるべき事柄であろうというふうに思いますので、御答弁は遠慮させていただきたいと思います。
  179. 山原健二郎

    ○山原委員 江副氏が教育課程審議会委員になった当時の文部大臣は、松永文部大臣時代でございました。また、大学審議会委員になったのは塩川文部大臣時代でございました。森さんは、当時文部大臣ではありませんが、江副氏から非公開株を譲渡されたときの役職は自由民主党教育改革調査会長でございます。また、自由民主党の副幹事長、また江副氏が教育課程審議会委員になったときも同じ肩書でございました。そして、大学審議会委員に任命されたときも自由民主党の教育改革に関する調査会長であり、総務会長代理でございました。つまり、自由民主党政府のもとでは、予算のみならず政府の人事についても自民党の意見、とりわけ文教族議員の意見が絶大だと言われてきておったところでございます。  こうした森さんの立場から見るならば、当然のこととして口添えあるいは江副氏を委員にという話があったのではないかという疑惑を持つのはごく自然と見なければなりませんが、文部省はそうした推薦があったのかということについて全く存じないのか、再度この点を伺っておきます。
  180. 加戸守行

    ○加戸政府委員 文部省におきます審議会委員の発令のシステムは、それぞれの審議会の庶務を担当いたします原局におきましてまず候補者のリストアップをし、そして局としての審議会委員の原案を文部省大臣官房に上申をいたします。それを受けまして私どもは決裁をし、そして文部大臣名で発令をする、こういうシステムでございまして、あくまでも審議会委員のまず候補者選びから人選に至りますまでの間、すべて文部省内で内部手続として行われる事柄でございます。少なくとも先生がおっしゃいましたような、外から委員のリストが入ってくる、あるいはリストに追加されるというようなケースはございません。
  181. 山原健二郎

    ○山原委員 きょうの新聞を見ますと、任命権者は確かに松永文部大臣であったが、「事情を知る文部省幹部は「江副さんを委員にしたのは、前文相だった森さんの力が大きかった。」」こういうことが出ているのですね。だから、この信憑性について、今私はこれを明らかにする力を持っておりません。けれども、少なくとも委員の人選に当たってこういうことが行われることは全く正しくありませんし、ましてその直前に株の譲渡が行われたなどということの関連において見ますときに、それは全く正しいことではないわけでして、そういう意味では、ぜひともこれは森さん自身に明らかにしていただかないと、私も森文相とは一緒に当選してきた、この文教委員会に籍を置いて親しい間柄でございますが、しかし政治家としてこれから先の問題を考えますときに、明らかにすべき点は明らかにする。彼は、私は譲渡を受けておるということを率直に言ったただ一人の、ただ一人ではありませんけれども、はっきりさせた人なんです。そういう意味では、明確にすることが彼に課せられた任務でもあろうというふうに私は考えておるわけでございます。  そこで、今文部省は、いやそんなもの一切なかったんだ、だから文部省の判断においてやったんだということをおっしゃるわけでございますが、この江副氏がなぜこのような重要な職についたのかということでもう一つ疑問があります。  江副氏は一九七〇年に就職協定違反という問題を起こしまして労働省から強い指導を受けているところであります。また、地上げ屋のピンはねをしていたということもございまして、これまた指導を受けた人なんですね。この方がなぜ、先日も中西さんがおっしゃったように、たくさんおる企業家の中で一番正しい大学審議会の委員であり、教育課程審議会の委員として適切な人物だと文部省が選んだかという問題ですね。瑕疵のある人ですよ。たくさんの企業家の中で、なぜこの人がこのように白羽の矢を立てられたかということはだれにとっても疑問なんです。その点はどういう確信を持って文部省選定をされたのか、伺います。
  182. 加戸守行

    ○加戸政府委員 江副氏は、進学情報あるいは就職情報等を取り扱いますリクルートの責任者でございまして、その意味におきましては、文部省が今申し上げました教育課程審議会あるいは大学審議会におきまして進路関係あるいは就職関係、そういった豊富な知識経験等を生かして、教育課程の面あるいは大学のあり方という議論の際に御意見をちょうだいできるという観点から委員に選任させていただいたわけでございます。  もとより、一つの企業の責任者でございますから、その企業自体が今までに全く問題がないということはないわけでございますが、今おっしゃいました就職協定違反の問題にいたしましても、それは当時そういう事実が一つあったことは承知いたしておりますけれども、既にその協定違反の事実は是正されておったわけでございまして、企業活動の一部においていささかの問題があったからということで委員に選任することが不適任だとは考えておりません。
  183. 山原健二郎

    ○山原委員 日本教育の中枢に座るわけですから、人選に当たってはよほどの人格、識見というものも検討されるものだと思いますよ。だから、私は今まで状況説明をしたわけですよ。何となく、このつながりというものが余りにも深い情勢でしょう。あなたは簡単におっしゃいますけれども、これは大問題なんですよ。地上げ屋の代理業としてその地上げから所定の二倍の手数料をピンはねしていた。しかも、大手不動産業者として非常に例のない行為で、これは手数料違反、業務停止に値する行為だったということで大きな問題になって、建設省は指示処分ということをしているわけです。その手数料に至っては、四億五千万円取っているのですよ。こういう方が一番最適の人だというふうにおっしゃること自体がわかりません。  当時、新聞はどういうふうに書いたかというと——非常にこれを重視しまして、処分二日後に全国の都道府県に建設省は通達を出しておるわけでございます。しかも、この当時マスコミはどう書いたかといいますと、この事件を引き起こしたのがリクルートコスモスでありますが、当時の新聞は、地価高騰の元凶と書いているわけでございます。あの当時の地価高騰問題が世間を騒がしてどれほど庶民を苦しめたかわからぬでしょう。こういう経歴を持った方ですよ。これが一つです。  もう一つは、教育の問題でしょう。青田刈りです。この青田刈りにつきましても、違反とは確定できませんでしたけれども、ただし強い指導を労働省が行っているわけですね。しかも、これは労働大臣文部大臣の通達違反、違反とまではいかないけれども。労働大臣文部大臣の通達は、期限以前に青田刈りをやってはならぬという、これも大論議の末にこういうようになったわけですね。それに違反をするような行為をされて、そして労働大臣からこれに対して適切な指導が行われたという、それは直前ですよ。そんなに昔のことではないのですね。  そういう方がなぜたった十八名の委員の中に、大学審議会という全国五百に近い大学をわずか二十人で支配する、十八人ですけれども、これを左右することのできる重要なポストについたのか、教育課程審議会のこの重要な部署につくことができたのか、最適の人物だなどということを言える人ではない。この文部省のとった態度に対してはどうも納得いきませんね。どうですか、その点。
  184. 加戸守行

    ○加戸政府委員 文部省も各種審議会ございますが、当然それらの審議会の委員といたしましては、企業の会長あるいは社長、具体的に申し上げますれば、銀行の関係の方、あるいは放送会社の方、あるいは広告会社の方、その他いろいろな各方面からの、その企業で一流の実績を上げられておりますような方々、その豊富な知識経験を生かして審議会委員に任命している状況でございます。もちろん、これらの委員の方々が所属されます企業が、それぞれすべて過去におきまして一点の非の打ちどころもなかったかどうかという事実も確認をするわけではございませんし、またそれぞれの企業自体が企業行為の中で各般の活動をなされていると思います。しかしながら、私ども審議会の委員としてその個人個人の過去の業績の中から培われました知識経験あるいは幅広い視野といったものを生かしていただいて、審議会の中で建設的なあるいは幅広い御意見をちょうだいするという観点からお選び申し上げているわけでございます。  もとより審議会の委員でございますから、その時点で特定のテーマに沿いましてどのような方を選考するのかという場合は、豊富な相当量の候補をリストアップいたします。その中でよりこちらの方が適当だという判断が加わっていくわけでございますが、その場合、もちろん審議会の委員でございますから任期がございまして、交代いたします。交代する時点で、またその時点でそれぞれの委員の適格性を判断するわけでございまして、今の審議会の委員がじゃベストかと言われますれば、それ以外の方も人材もございますが、その審議会の目的とします審議事項のテーマあるいは課題、審議の方向というものを総合勘案しながらその時点におきます建設的な提言をいただく委員を選んでいるというのが実情でございます。
  185. 山原健二郎

    ○山原委員 そういう説明は納得しませんけれども、官房長としてはそういうお答えしかないと思いますけれども、私が申し上げましたような経過から言いまして非常に不自然です。だれが考えても不自然です。しかもこういう方が日本教育の中枢において方針を決定する中に座られるということも私は納得いきません。だから、こういう事件が起こるのですよ。あの方が株の操作でもうけた金額わかっていますか。百五十億ですよ。ロッキード事件のときは三十億の金が動いたと言われるのですけれども、今度あの方の行動によって得た利益は百五十億というものです。ただのことじゃないのですね。しかもばらばら出てくるわけでしょう。しかもそれが隠しても隠しても次から次へ出てくる。  共産党に寄せられた内部告発のメモ、ごらんになったと思いますが、正義の天誅を加えてもらいたい、こんなことがまかり通ったのではたまらないという気持ちから出ているわけでございまして、そしてそういうことになってきますと、あの方が今とっておられる態度をごらんになっても、心因反応という病気か何か知りませんが、そういうことだそうでございますけれども、臨床質問されましたときに、本当にあれは人間としても問題があるわけでしょう。私は命を絶っても言えないものは言えないのだ、経済人として言えないのだ。その方が教育の場に座っているのですよ。教育は経済だけじゃありませんからね。そういう点では本当に不満ですけれども、官房長、これ以上申し上げても仕方がないと思いますが、その辺はこれは今後の問題として厳重に戒めるべきことです。  文部省と江副氏とのつながり、リクルートとのつながりというのはかなり深いように思います。ことし八月三日に開かれました全国高等学校進路指導研究協議会にリクルートの関係者が分科会の助言を行う、または文部省の初等中等教育局長があいさつに出るということもありました。文部省がそういう意味ではリクルートと、しかも八月といえばリクルート疑惑が起こっておるときですね、そういう意味では何となくリクルートとの間のつながりというのは異常に近い深い関係があるように思いますが、そういうことはありませんか。
  186. 古村澄一

    古村政府委員 全国高等学校進路指導研究協議大会ということについてのお尋ねだと思いますが、主催いたしましたのは全国高等学校進路指導研究協議会といういわゆる進路指導についての学校現場先生の集まりでございます。そこでいろいろな研究大会をやりますときに、文部省からいろいろ励ましの言葉をやったりというふうなことで来賓として招かれることもございます。そういった点で私のかわりに関係課長が出たということもございますが、それはそれで私は当然あってしかるべきというふうに思います。ただ、それがリクルートの人を講師で呼んだ呼ばないという話について私は承知いたしておりませんが、それは主体性のある進路指導協議会の方が主催でございますので、そちらからの招請があったというふうに思っておりますので、文部省がどうこうしたという話ではございません。
  187. 山原健二郎

    ○山原委員 江副氏と臨教審関係について質問をしておきたいのですが、その前に教育課程審議会における江副氏の発言内容及び大学審議会の議事の概要の提出と江副氏の発言内容の提出を求めたいのでございますが、それはできますか。
  188. 國分正明

    ○國分政府委員 大学審議会におきましては自由な御発言ということをよりよい審議のために保障したいということで非公開ということにいたしております。また、現実に議事録等はとっておりませんので、御提出するというわけにはまいらないと思っております。
  189. 古村澄一

    古村政府委員 教育課程審議会におきましても同様の立場でございます。
  190. 山原健二郎

    ○山原委員 私は前に審議会の問題について予算委員会で取り上げたことがありますが、たくさんの審議会がございます。しかもその審議会委員が次第に、前ともっと様相を異にしまして、いわゆるそれぞれの省庁に近いあるいは考え方の近い人が選ばれる。するとこれが隠れみのになっている。だから、私ども審議会の答申が出てきたりしますときにそれを審議しようと思っても、ああ議事録はないということで中身がわからないまま答申が出てくるということが随分多いのです。これはもう本当に国会軽視にもつながりかねない情勢が今あるわけですが、この審議会のあり方についてもこれはいずれ批判を申し上げたいと思っておりますが、江副氏の場合は臨教審の委員ではありませんが、臨教審とも非常に深い関係を持ち、また江副氏に対しては臨教審はこの発言を非常に重視しておるということについて質問をしたいのです。  例えば臨教審はヒアリングを行っておりますが、この江副氏を迎えてのヒアリングは何をやられたか、お答えできますか。
  191. 加戸守行

    ○加戸政府委員 突然のお尋ねでございまして、ちょっと私ども当時の資料は持ち合わせておりませんので、確認いたしかねます。
  192. 山原健二郎

    ○山原委員 これは「臨教審だより」に出ています。ヒアリングの中身は我々は知ることはできませんが、たまたま「臨教審だより」を見ますと、これは六十年ですか二月二十七日の臨教審のヒアリングで江副氏が「学歴社会について」述べております。それをわざわざ臨教審だよりのナンバー六に掲載をしております。それだけではなくて、臨教審だよりのナンバー二十八を見ますと、「これからの職業資格」について座談会に登場されております。臨教審だよりのシリーズを見ましてもこれほど優遇されている財界人はほかにありません。ここでも臨教審と江副氏の関係が深いものであることが指摘できるわけでございますが、問題なのは臨教審の専門委員に対して江副氏から非公開株が譲渡されているということでございます。この点について文部省はどのようなお考えを持っておりますか。
  193. 加戸守行

    ○加戸政府委員 審議会の委員が個人の財産運用をどうされるかという点につきましては、文部省は少なくともそのことにつきまして関知する立場にないと考えております。
  194. 山原健二郎

    ○山原委員 これは先般発表されました我が党の内部告発によるものですが、公文俊平さんのことですね。この方は東京大学教授でございまして、臨教審の専門委員、最初に申し上げたとおりです。  それで、この中でドゥ・ベストを通じての株式譲渡先に専門委員である公文さんの名前が載っておりまして、株数一万株、金額として三千万円となっています。売却利益は二千二百七十万円と言われているわけでございますが、このリストは一〇〇%信憑性があるものでございまして、今税制特の審議内容となっておるわけでございます。公文俊平氏自身もこのことについては否定をされておりません。  文部省としまして、臨教審の専門委員に対して株の譲渡が行われたということは、これは全く問題視すべきことではないというお考えでしょうか。もう一回伺います。
  195. 加戸守行

    ○加戸政府委員 公文俊平氏は当時東京大学の教授でございまして、国家公務員、しかも文部教官としての立場におきましては良識を持って行動される必要のある立場でございますし、国民から批判を招くような行為ということは避けなければならないことは一般論として申し上げられるわけでございます。  具体的な株の購入の事実が、現時点ではそういう御指摘のようなことがあるようでございますけれども、私ども立場としては、基本的にはあくまでも個人財産の運用である、しかし結果としてそれが国民の批判を招くような行為とあるいは判断されるとするならば、残念なことだという感じは持っております。
  196. 山原健二郎

    ○山原委員 単に残念なことでしょうか。国家公務員法第三十九条によりますと「何人も、」「金銭その他の利益を授受し、提供し、要求し、若しくは授受を約束したり、」云々「これらの行為に関与してはならない。」となっております。公文さんの場合は当時東大教授でありまして、おやめになったのはこの問題がうわさをされるときですね。本年の九月三十日に東京大学をおやめになっておるわけですが、この辞表の理由はどのようなものになっておりますか。
  197. 加戸守行

    ○加戸政府委員 ちょうど公文氏の所属されます東京大学教養学部におきまして、この春いわゆる教養学部の教官任命をめぐりまして学内で意見の対立等があったようでございまして、そういった学内体制の運営に対します批判的な意味をもちまして公文氏が辞意の意向を四月ごろに表明された旨の報道を拝見したことはございます。そのことが実質的な理由ではなかろうかと想像しているわけでございますが、いずれにいたしましても公文氏の方からは前期授業が終了いたします七月十一日に辞職願が提出されております。  その辞職願におきましては、「このたび一身上の都合により昭和六十三年九月三十日付をもって辞職したいのでご承認願います」という内容の辞職願が提出されまして、学内で教養学部の教授会におきまして九月二十二日に辞職を了承し、それを受けまして東京大学長から文部大臣あてに上申が行われ、御希望の九月三十日付——この九月三十日と申しますのは教養学部の前期課程が終了する日でございますが、そういった学校運営の視点からの判断で辞職願が出され、文部大臣が承認をしたという経緯でございます。繰り返しになりますが、辞職の文面は「一身上の都合により」ということでございまして、これは辞職願の通例のパターンでございます。
  198. 山原健二郎

    ○山原委員 国家公務員法三十九条との関係文部省は今回の問題でどういう解釈をしておられますか。
  199. 加戸守行

    ○加戸政府委員 国家公務員法の三十九条は、あるいは退職、任用、そういった官職につくためにこういった金品を授受してはならないということが書いてございます。今の質問の趣旨がよく理解いたしかねますが、審議会委員になるために金品を供与したり授受したりというような事実ではないと理解しております。
  200. 山原健二郎

    ○山原委員 普通の例えば地方公務員などにおきましてこういうことがありましたら、これは大変な懲罰の対象になるのが今までの文部省の方針ですよね。場合によっては免職処分になりかねない情勢でありますけれども、この場合は全く問題にならないという解釈ですね。三十九条は問題にならない、そう理解してよろしいですか。
  201. 加戸守行

    ○加戸政府委員 おっしゃっている趣旨がよく理解いたしかねますが、通常、国家公務員法三十九条の規定は、あるポストにつきたいということで利益を供与したりあるいはそのポストにつけるために金銭を受け取るというようなことでございまして、先ほど条文を読んだばかりでございますけれども、任命権者側において余り採用したくないけれども金銭の授受を受けて採用するとか、そういうような関係を念頭に置いた規定ではないかと思いますが、少なくとも、審議会の委員になるために今のような株の譲渡を受けるというようなことが因果関係として成立するようには、私、突然の御質問でございますが、直観的には該当しないであろうと思っております。
  202. 山原健二郎

    ○山原委員 これは何かの官職につくために、あるいは審議会委員になるためにある方からもらったというものではない、あるいは渡したというものではないのです。職務権限の問題は別の問題として、私はよくその辺わかりませんけれども、しかし国家公務員である者が、一方にとってみれば渡すことは何かの目的を持っているわけですからね。しかも相当の金額でしょう。売却することによって相当の金額が入手できるわけですからね。それは何らかの意図をもって出てき、そして双方の関係がありまして、そしてその後で大学審議会委員あるいは教育課程審議会委員に江副氏はなっていくわけですから。公文氏に職務権限があるとは思いませんけれども、そういうことが好ましいことなのかということは聞いておきたいのです。
  203. 加戸守行

    ○加戸政府委員 基本的には公文氏の個人的な財産の運用という視点から行われたものではないかと私どもは現時点において理解をいたしておりますが、その行為自体が先ほど申し上げましたように国民の批判を招くような行為であるといたしますれば、それは良識を持って行動すべき公務員としての視点から議論されるべき事柄であろうと思います。  いずれにいたしましても、今おっしゃいましたような法令の規定に抵触するというぐあいな感覚を持っているわけではございません。
  204. 山原健二郎

    ○山原委員 ここから臨教審答申の根幹にかかわってくるわけですが、例えば公文俊平氏と江副氏との接点も、教育問題、とりわけ臨教審問題と深く関係しております。これは、臨教審教育自由化問題が大きな問題になりましたときに、政策構想フォーラムというのが御承知のように東京大学を中心にしてあるわけでございますが、そこから「学校教育行政の行革提言 —教育改革の突破口としての規制緩和・撤廃—」デレギュレーションというものを出しておりまして、これが臨教審に大きな影響を与えるわけですね。当時、臨教審をめぐりましての激しい論争が行われましたときのいわゆる教育自由化論の大きな援護射撃になったことがございます。  この提言を行った中に公文俊平氏と江副浩正氏が名を連ねているわけでございまして、教育改革について両者はまさに同志的関係になっております。したがって、公文俊平氏が臨教審とどのような立場でどのような意見を述べてきたかということは極めて重要な問題でございます。臨教審答申が今次教育改革の根本となっておりますので、この辺の経緯についてただす必要があります。文部省としてこれをどう把握されておるか。  当時のいわゆる教育自由化論、これは私どもと見解を異にするわけでございますけれども、これを彼らが一緒になって援護したという事実は消すことができないと思いますが、その辺について文部省はどういう把握をされておりますか。
  205. 加戸守行

    ○加戸政府委員 たしか公文俊平氏は臨時教育審議会の専門委員であったと思いますが、臨時教育審議会の総会に出席するメンバーではなくて、そのもとに置かれました部会あるいは専門委員会に所属しておられたと思います。ちょっと私、資料を持ち合わせませんので不確かでございますが、多分情報化委員会に所属され、あるいはもう一つどこかの部会に所属されていたと思いますけれども、その部会の審議に今おっしゃったような視点での方向に公文俊平氏が有力な影響を与えたというような立場では理解はいたしておりません。
  206. 山原健二郎

    ○山原委員 いわゆる臨教審答申に基づく法案の審議が行われているわけですが、今度のリクルート事件、そして江副氏の行動その他を見ますと、憲法、教育基本法に基づいて行われ、平和的かつ民主的な人間の育成という大原則に立ってまいりました日本の戦後教育の民主的発展の方向に対して、そういう視点ではなくて、教育というものをいわば商取引の対象にしようという動きがあった、それが噴き出してきたのが今度の江副氏をめぐるリクルート事件ではなかったか。しかも、このリクルート問題は、国政上の問題であることはもとよりでありますけれども、同時に教育問題と深くかかわりを持っているという点で非常に重大な中身を持っていると思います。  そういう意味では、私はもともと、臨教審が成立しましたときから、臨教審の抱えている中身を明らかにしなければならぬということを言ってきた一人でございますけれども、まさに臨教審答申の中身が日本教育をこういう形でゆがめていこうとする、その接点に江副氏という者があって、そしてみずからの企業の利益のために教育の中枢部に乗り込んでいく。そのためにリクルートの株を大量に政財界に渡していくという結果になってきた。これは驚くべきことであり、恐るべきことだと考えておるわけでございます。  したがって、中村委員長にも伺いたいのでありますけれども、私は、この問題については時間をかけまして各党の委員の皆さんからも集中的な審議を行いまして、そしてこの事態を解明をしていくということが必要だと思います。今後の日本教育の発展にとって、ここのところをあいまいにして過ごしていくのでは国民に対して責任が持てないと思いますので、この点をひとつ強く委員長に要請をいたしたいと思います。  もう一つの問題は証人喚問の問題ですが、私の党は税制特におきましても二十六名の証人喚問を要求しております。しかし、ここは税制特別委員会ではありません、教育を語る文教の場でございますので、私がきょうの質問の中で申し上げました、前総理中曽根康弘氏、森喜朗元文部大臣、そして、江副浩正リクルート前会長、公文俊平、この四名の方に証人としてこの委員会に出ていただきまして真実を明らかにしていただきたい、こういう期待を強く持っております。この点はぜひ理事会におきまして御審議をいただきたいということが一つでございます。  そして最後に、私の見解といたしまして、これらの問題を明確にせずして法案の審議に入ることは私は許容することができないのです。というのは、税制特におきましても今税制六法には入っておりません。証人喚問の問題で税制特は非常な苦労をしておるわけです。それは、国民に全貌を明らかにするという意味において、税制特の責任において皆さんが努力をされているわけでございますけれども、これだけ教育の問題と関係してまいりました以上、本委員会においてもこの点をぜひ行うべきであると思います。  川崎市におきましては既に百条委員会を適用いたしまして真相解明のために証人喚問も行うということがなされようとしている段階でございまして、本委員会において証人喚問ができないはずはございません。そういう意味で強く要請をいたしたいのでございますが、最後中村委員長の御見解を伺って、私の質問を終わります。
  207. 中村靖

    中村委員長 委員長から申し上げます。  ただいま山原健二郎君からの御要望、御提言等につきましては、理事会におきまして協議をさせていただきたいと存じます。
  208. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。      ────◇─────
  209. 中村靖

    中村委員長 第百十二回国会、内閣提出教育職員免許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。中島文部大臣。     ─────────────  教育職員免許法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  210. 中島源太郎

    中島国務大臣 このたび、政府から提出いたしました教育職員免許法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及びその内容の概要について御説明申し上げます。  学校教育の直接の担い手である教員の活動は、人間の心身の発達にかかわるものであり、幼児・児童・生徒の人格形成に大きな影響を及ぼすものであります。このような教員の資質能力の向上は、その養成・採用・現職研修の各段階を通じて、総合的に図られるべきはもとよりでありますが、まず、その最初の段階である養成教育において真に教員にふさわしい人材を育成することが肝要であります。大学の養成においては、幅広い人間性、教科・教職に必要とされる基礎的、理論的内容と実践的指導力の基礎を確実に修得させる必要があると考えております。  そのためには、開放制の原則に立ちつつ、教員養成課程における専門性の一層の向上を図るとともに、教職により深い学識を備えた者を招致できるようにする必要があります。  また、他方において、学校教育多様化等に対応するため、社会的経験を積んだ教員にふさわしい者を教育界に迎え入れるようにすることも重要であり、これによって学校教育に生気と広い視野を与えることも期待されます。  今回の改正は、臨時教育審議会の答申及び教育職員養成審議会の答申を受けて、このような観点から、教員免許制度改善を図ることを内容とするものであります。  以下、この法律案の概要について申し上げます。  第一は、普通免許状の種類の改善であります。  教職につく者に対して、教員養成課程において、教科・教職についての基礎的、理論的内容と広い教養、そして実践的指導力の基礎を確実に身につけさせるためには、学部を卒業して免許状を取得させることが必要であることから、学部卒業者に対する免許状を一種免許状とし、教員の資質能力の標準的な水準を示すものとしております。  この一種免許状を基礎として修士課程等で特定の分野を修め、その分野について高度の資質能力を備えていることを示す免許状をすべての学校種について設けることとし、これを専修免許状としております。  これにより、現職の教員が修士課程等において研修することを促進し、また、修士課程等修了者が進んで教職につくことを期待しております。  他方、短期大学を卒業程度とする免許状については、二種免許状としておりますが、二種免許状を有し、教員として採用された者については、その取得後、教員としてなお一層の資質能力の向上を必要とし、さらに研さんが必要であることから、一種免許状の取得に努めるよう努力義務を課すこととしております。  第二は、社会人として有為な人材を教員として活用するための措置を講じることであります。  その一は、社会的経験を有する者に対して授与する特別免許状を設けることであります。特別免許状は、教員の任命権者が、担任する教科についての専門的な知識または技能を有し、かつ、社会的信望等がある者を都道府県教育委員会に推薦し、その推薦に基づいて、都道府県教育委員会が行う教育職員検定合格した者に対して授与される教諭の免許状であります。  その二は、教科の領域の一部に係る事項等を担任する非常勤講師については、授与権者の許可を受けて、免許状を有しない者を充てることができることとするものであります。  第三は、大学において普通免許状の授与を受けるために修得することを要する単位数の引き上げ等であります。大学において普通免許状の授与を受けるために修得することを必要とする単位数の引き上げは、近年、学校教育において求められている教育の方法・技術、生徒指導、特別活動等の指導力の向上を図るためのものであります。また、教育実習については、その構造化と内容改善を図るため、新たに事前及び事後指導を必修とすることとしております。  大学における単位の修得については、大学卒業後の免許状の取得を容易にするため、大学が設置する一年間の教職特別課程においても単位を修得し、免許状を取得することができるなどの措置を講じることとしております。  第四は、教育職員検定により他の種類の免許状の授与を受ける場合に必要とする最低在職年数と最低単位を定め、最低在職年数を超える在職年数がある場合にはそれに応じて逓減する単位数を定めることであります。これは、現職の教員の自発的な研修の意欲を喚起するためのものでありますので、現行の二級普通免許状を有する者が一級普通免許状の授与を受けようとする場合に、十五年の在職年数があれば単位修得を要しないとしている特例は、廃止することといたしております。  第五は、中学校高等学校の免許状については、免許法において定められている免許教科のほかに、文部省令で定める免許教科についても授与することができることとするものであります。これは、近年の学校教育内容の変化等に対応して、これらの教科を担任する教員の確保を速やかに行おうとするものでありますが、これらの文部省令を定めるに当たっては、教育職員養成審議会の意見を聞いて慎重に対処することとしております。  第六は、その他所要の規定の整備を行うことであります。  この法律は、昭和六十四年四月一日から施行することとしておりますが、大学等に対する新しい免許基準の適用は、昭和六十五年四月一日からとしております。  なお、既に授与を受けている免許状は、それぞれ新しい免許状とみなすこととするほか、以上の制度改正に伴う所要の経過措置を講じることとしております。  以上が、この法律案の提案理由及び内容であります。何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  211. 中村靖

    中村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。      ────◇─────
  212. 中村靖

    中村委員長 次に、第百十二回国会、内閣提出地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案の趣旨の説明は第百十二回国会において既に聴取いたしておりますので、これを省略することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  213. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────  地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  214. 中村靖

    中村委員長 次回は、来る二十六日水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十六分散会