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並木参考人 ただいま御紹介いただきました
並木でございます。今回上程されます
法案のうち、いわゆる
子牛の
不足払い
制度を
中心にして、若干の
意見を申し述べたいと思います。
私は、今回の
法案につきましては賛成をしております。
牛肉の
価格が内外非常に
価格差があるわけでございますけれ
ども、これを縮小していくということを考えました場合に、結局かぎになるのは
子牛をどれだけ安く供給できるかということだと思います。しかし、
子牛を安く供給いたしますと
繁殖農家にしわ寄せがいきますので、
繁殖農家が続けて
生産できるような
配慮も必要であるということで、今回の
子牛に対する
不足払い
制度は適切な
法案であるというふうに考えております。
若干内部にわたって申し上げますが、第一は対象の範囲を広げた点でございます。
和牛の方につきましては比較的問題はないわけでありますが、ホルスタイン種の
子牛につきましては雌牛に
拡大したということ、それから、
農協を通さなくてもいいというふうに
条件を緩和したということ、それから、
子牛の体重の
実態に合わせて
基準価格を改正したということ、これらのことによって対象の範囲が
拡大したと同時に、
加入率が高まることが期待されるわけですけれ
ども、私は、この
加入率の向上に対しては、いろいろな意味での御
努力が必要かと存じております。
それから二番目は、
保証基準価格の
水準についてでございます。
この
水準は、おおむね現行の
制度の
水準を踏襲したというふうに理解をしておりますが、これも現在の諸情勢を考えますと妥当な
措置であったと思います。ただ、この
水準が本当に妥当であったかどうかということにつきましては、
牛肉の
自由化に伴って国内の
牛肉の
価格がどのような
影響を受けるかということの判断によるわけでございますが、これについてはいろいろな
意見がありまして、かなり不透明な点がございます。
ただ一点、明らかだと思われます点は、今後の為替レートの推移でございます。特に、円高が進むかどうかという点だと思います。巷間にかなり有力に言われますように、近い将来一ドル百円という時代が来るということがもし事実といたしますと、そのことだけで
牛肉の輸入
価格は三割下がるということになります。この
影響は、
自由化の
影響をある意味では上回るかもしれません。そういう
事態を考えますと、あるいはあり得るかもしれないというふうに考えますと、私は、この
保証基準価格の
水準につきましては、将来もっと厳しい
水準を考えなければならないかもしれないということを頭に入れておいていただく必要があるように思います。
それから三番目でございますが、この
保証基準価格と市場平均
価格との差を補償することになるわけですけれ
ども、この差を定額で補償する、定額で交付するという考え方になっております。
この点につきましては、
子牛の
価格が地域によりまた個体によって非常に違いますので、むしろ個体差を考慮すべきではないかという考え方もあるわけですけれ
ども、私は、定額というお考えで処理されたことが適切であるというふうに考えます。それは、定額ということにいたしますと、安い
価格で
子牛を供給する地域あるいはそういう
農家が率としては得になるといいますか、率としては割合が高くなるということになります。現在でも
子牛の供給
地帯は九州、東北の方に特化しつつございまして、これらの地域は
子牛の供給
価格の低い
地帯でございます。私は、今後日本の
牛肉の
価格を下げていかなきゃならないという環境を考えますと、これらの地域の子
牛生産を激励するという効果を持つ今回の
措置が適切だというふうに思うものでございます。
それから第四番目でございますが、
自由化の
影響が一九九一年になって突然あらわれるのではなくて、それに至る三カ年の移行
期間の間に
自由化が起きたと同じような効果、ないしはその効果を先行指標的に見せるような
状況が既に生まれつつあり、また、この今後の移行
期間の間に生まれるであろうということに注目していただきたいと思います。
一般的に、
牛肉の
自由化が
牛肉の消費に対して与える
影響ということを考えますと、三つあろうかと思いますが、一つは消費量がふえるという点、それから二番目は
消費者の好む部位、ロイン系とかそういった意味の部位でありますが、それを選択することができる、三番目は
価格の引き下げ、この三つかと思います。
そこで、第一点の消費量の
拡大という点でありますが、既に移行
期間の間に一年に輸入枠を六万トンずつふやすということになりまして、三年間で十八万トンということになりますが、三年後の
昭和六十五年には輸入
牛肉は、
昭和六十二年度の二十一万四千トンにプラスいたしましてほぼ四十万トンということになります。この増加率は、三年間で倍近い増加率でございますので、この増加率はかつてない増加率だというふうに思われますし、また、
自由化が起きた場合に想定される増加率というふうに考えてもよろしいかと思います。そういう意味で、
自由化が起きた場合に考えられる消費量の増大が、既にこの移行
期間の間に起こるのではないかということが第一点でございます。
それから第二点は、同時売買入札方式による
牛肉の輸入枠を、これは御
案内のように
昭和六十二年度におきましては輸入枠の一割ということにしておりましたが、これを六十三年度には三割、翌年には四割五分、六十五年度には六割にまで
拡大するということになっております。
この同時売買入札方式と申しますのは、御
案内のとおりでございますが、国内の卸売、小売業者が自分
たちの好む部位を注文できる、選択できるという
制度でございますので、
自由化の第二点の効果が既にそれもあらわれているということになります。特に、今年度につきましては、一応三割という数字でありますけれ
ども、これが実施に移されますのは主として下半期というふうに聞いておりますので、これからの半年間の間における同時売買入札方式の比率は恐らく四割を超すものと思われます。そういう意味で、
自由化の効果がこの点についてもいち早くあらわれてくるということになります。
三番目の
価格の低下という点でございますが、御
案内のように
昭和六十年、六十一年ごろは、
畜産振興事業団が買い入れ
価格に対して安定
価格帯の
水準をにらみながらそれに課徴金をかけまして、売りさばいて売却しておりましたが、その差額が大体五〇%
程度であったと聞いております。五〇%ということになりますと、輸入
牛肉にかかる二五%の
関税、それから倉庫に運ぶまでの運賃七%
程度とあわせて考えますと、一〇〇%近い
関税の効果を持ったということになります。しかし、現在におきましては、輸入
牛肉の
価格が上がってきたということと、払い下げされております
価格が、全部ではありませんが、一部の
牛肉について依然として値下げが続いておりまして、そのために二五%の
関税と
畜産振興事業団との差益を合わせたものが、
関税率に換算してみまして恐らく七〇%
程度に下がっておるのではないかと思います。そういたしますと、
自由化の第一年度における
関税は七〇%でございますので、
価格についての効果も既に出つつあるというふうに考えられるのでございます。
こういう
状況が進んでおりますが、そういう意味では輸入
牛肉についての
価格は既にかなり下がってきておると私は見ておりますが、しかし、国産
牛肉に対する連動性という点では必ずしも十分ではございません。総理府の小売物価調査というのがございますが、それによって肩肉の部位を見ますと、輸入
牛肉はことしの九月現在で百グラム百十六円になっておりますが、国産
牛肉の方は
三百五十八円ということで、依然として三倍以上の開きを続けております。
〔
委員長退席、笹山
委員長代理着席〕
私は、この理由といたしましては、なぜこのようなことになったかということにつきましては、一つは、輸入
牛肉が冷凍のものが多くて小売屋さんの解凍技術が不十分であるということ、二番目には、日本の
消費者が輸入
牛肉の料理法についてまだ十分なれていないということ、それから三番目については、
消費者の好む部位が必ずしも必要なだけ入っていないということ、このことのために輸入
牛肉は主として外食と加工仕向けに向けられまして、国産
牛肉は小売店を通じて家庭消費に向けられるという、ある意味でのすみ分けという
状態が起きておるのだと思います。
しかし、このような
状態は、
自由化が進みますと、やはり大きな変化が生ずると思われます。そして、その変化によって
牛肉の
価格が下がってまいりますと、それは結局
子牛の
価格に響いてまいりますので、
子牛に対する
対策が必要になってくるということになろうかと思います。そういう意味で、先ほど申しましたように、この
法案には賛成したわけでございますが、ただ、不安定あるいは不確定な点がいろいろ残っておりますので、それらに対する敏速な対応をしていただくために、この移行
期間の間にどのような変化が起こるかということに十分御注目いただければありがたいということで、今のことを申し上げた次第でございます。
最後になりますが、私は、
牛肉生産の将来ということを考えますと、後継者が激減しておることの
影響ということにも御注目いただきたいと思います。
現在、
酪農経営は七万五千戸くらいでございますけれ
ども、そのうち後継者が
農業を主としてやっている
農家は二万戸あるかどうかでございます。また、
肉用牛の
生産をしておる
農家は現在二十七万戸
程度ございますけれ
ども、そのうち後継者が主として
農業をやっているという
農家を探してみますと、これは農水省の
農業調査にそれが出ておりますが、一万戸あるかないかでございます。ということは、これらの後継者の
確保されている
畜産農家が将来の担い手というふうに考えてみますと、
酪農経営については一戸当たりの平均頭数が百頭ということになりますし、
肉用牛につきましては、三百万頭の肉牛を、一万戸足らずの後継者が、主として
農業をやっている
農家で賄うということになりますので、これは幾らか誇張した計算かと思いますけれ
ども、一戸当たり三百頭ないしはそれ以上という数字が計算の上では出てまいります。これが必ずしも
実態を示すとは思っておりませんけれ
ども、私は、こういう数字に示される
状況が進んでいるということについても、御
配慮をいただければありがたいと思います。
以上で、私の
意見陳述を終わらせていただきます。(
拍手)