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1988-10-25 第113回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月二十五日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 菊池福治郎君    理事 笹山 登生君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君       阿部 文男君    石破  茂君       衛藤征士郎君    遠藤 武彦君       川崎 二郎君    杉浦 正健君       田邉 國男君    玉沢徳一郎君       中島  衛君    柳沢 伯夫君       石橋 大吉君    沢藤礼次郎君       竹内  猛君    前島 秀行君       安井 吉典君    武田 一夫君       吉浦 忠治君    川端 達夫君       藤田 スミ君    山原健二郎君  出席政府委員         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君  委員外出席者         参  考  人         (鹿児島農業         協同組合中央会         会長)     救仁郷義房君         参  考  人         (宮崎高原町         町長)     横田  修君         参  考  人         (社団法人岩手         県畜産物価格安         定基金協会会長         理事)     朝倉 輝夫君         参  考  人         (財団法人食料         ・農業政策研究         センター理事長         )       並木 正吉君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 委員の異動 十月二十五日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   川端 達夫君     佐々木良作君     ───────────── 本日の会議に付した案件  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七号)  肉用子牛生産安定等特別措置法案内閣提出第八号)      ────◇─────
  2. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより会議を開きます。  内閣提出畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案の両案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  本日は、両案審査のため、参考人として鹿児島農業協同組合中央会会長救仁郷義房君、宮崎高原町長横田修君、社団法人岩手畜産物価格安定基金協会会長理事朝倉輝夫君、財団法人食料農業政策研究センター理事長並木正吉君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。救仁郷参考人横田参考人朝倉参考人並木参考人の順に、お一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、救仁郷参考人お願いいたします。
  3. 救仁郷義房

    救仁郷参考人 私は、ただいま御指名をちょうだいいたしました鹿児島農業協同組合中央会会長救仁郷義房でございます。  衆議院の農林水産委員会におかれましては、かねて日本農業畜産振興に対しまして格段の御配慮を賜っております。感謝を申し上げ、お礼を申し上げるところでございます。  私は、肉用子牛生産安定等特別措置法案のうち、肉用子牛につきましての生産者補給金交付制度につきまして、若干意見を申し述べさせていただきます。  まず最初に、鹿児島県におきます肉用牛概要について申し上げます。  鹿児島県の農業生産額は、六十二年度四千六十六億二千百万円でございまして、このうち畜産は二千百五億五千二百万円、全体の五一・八%を占めております、畜産のうち肉用牛は五百七十五億六百万円でございまして、畜産全体の二七・三%を占めておりまして、本県農業の基幹となっております。肉用牛につきましては、六十三年二月現在で、県内農家の約四分の一に当たります三万七千四百戸でございまして二十六万九千四百頭を飼養しておりまして、全国の一〇・二%を占めております。そのうち、子取り用雌飼養が三万二千三百戸、十万七千六百頭を数え、全国肉牛産地子牛を供給いたしておるところでございます。  しかしながら、飼養頭数について見ますと、五十九年の二十七万三千五百頭を最高に、子牛価格低落等影響を受けまして子取り用雌牛を主体に減少を続けてまいっております。しかし、ようやく近年横ばい状態になっているところでございます。また、一戸当たりの飼養頭数は七・二頭と全国平均の十・二頭を下回るとともに、一ないし四頭規模農家肥育で七五・三%、子取り用雌で八一・三%を占めるなど、小規模零細経営となっております。  一方、近年子牛価格はやや高目に推移をしております。肥育経営への影響が大変懸念されるところでございますが、本県の六十二年子牛取引価格は四十万六千二百二十六円と、第二次生産費の四十七万七千九百七十九円を大きく下回っている状況にもございます。  そこで、法案に対します基本的な評価について申し上げます。  我々は、牛肉輸入自由化という結果は極めて遺憾であると考えますが、このように決着をいたしました以上、真剣な国内対策が必要と考えるところでございます。  まず、輸入自由化後、枝肉価格低落等によって、当然肥育経営悪化と、さらにこれに伴う子牛価格低落による繁殖経営悪化が想定をされるところでございます。  牛肉自由化国内措置として、国の責任におきまして不足払い制度を創設し、価格安定制度を強化することは、繁殖肥育両方経営安定を図る 上で生産者立場からも極めて重要でございまして、ぜひ実現を要請するものでございます。  次に、意見要請を申し上げます。  まず、保証基準価格等決定に関しまして、肉専用種につきましては、六十二年和牛子牛生産費は先ほど申し上げましたようにおおむね四十八万円。先行き不安等の中で生産者意欲確保し、資源維持拡大を図るために、産地の声といたしましては、せめて現行水準を上回る水準にしていただくことが必要であると言えます。  乳用種につきましては、現行価格安定制度保証水準が十三万四千円、これは二百十キログラム換算ですが、大変低いことが乳用種加入率の低い一因ともなっておりまして、酪農経営の安定を図るためにも大幅な水準引き上げが必要であると考えます。  次に、合理化目標価格について申し上げます。  子牛生産農家生産コスト目標とされておりますが、土地の制約条件等もございまして、強力な政策的援助が必要であり、また、性急に保証基準価格合理化目標価格に誘導することは、子牛生産維持拡大を阻害いたしますので、相当長期の期間で考えていただきたいことを御要請申し上げます。  次に、契約等について申し上げます。  現行制度では、協会農協または農協連とで契約を行い、その事務面においてもかなりの役割を担っていることで円滑な運用を図っている実態にございます。新制度におきましては、対象子牛拡大、例えば自家保留年及び乳用雌子牛を含めることによりまして、確認の行為あるいは交付金支払い等、その事務量は膨大かつ広範なものとなるわけであります。  生産者組織をいたしております農協は、単に物流を扱うのみでなく、金融面さらには経営技術指導等生産対策も含めて総合的に取り組んでおるところでございます。この機能を活用することは、農家畜産を守り、新制度の円滑かつ効率的な運用を図る上で不可欠と言えるわけでございます。したがいまして、契約については、生産者組織をする農協農協連合会最大限に活用されることを希望いたします。  次に、加入率引き上げ等について申し上げます。  乳用種は大半がぬれ子取引であるという実態を考慮し、農協としても乳肉複合経営育成、哺育・育成農家グループ化センターの設置等現実的な対応が必要となってきますので、そのための支援措置等を検討していただくことを要請申し上げます。また、制度発足までに加入率を大幅に高めるように生産者に対して啓蒙等を行う必要がございます。農協農協連合会においても加入促進に努める考えでありますが、国におかれましても積極的な対策をお考えいただきたいと存じます。  次に、財源確保について申し上げます。  肉用子牛価格安定制度は、一たび価格低落が生じますと膨大な財源が必要でございますので、全国協会融資等準備財産について十分配慮をしていただきたいことを御要請申し上げます。また、自由化後におきましては、価格の大幅な低落が懸念されますことから、新制度におきまして牛肉関税特定財源化によって財源確保することはもちろんのことでございますが、さらに、不足という事態が生じないよう万全を期していただきたいこ、とを御要請申し上げます。  最後に、牛肉輸入自由化という状況の中で、みずから生産性の向上による価格競争力確保には引き続き最大限努力をするものではございますけれども、畜安法に基づきます価格安定制度の適切な運用各般施策、とりわけ肥育経営安定対策の確立を初めとする経営及び生産振興対策の推進を特段よろしくお願いを申し上げたいと考えます。  さらに、六十九年度以降の国境措置につきましては、ウルグアイ・ラウンド交渉において六十八年度の関税率を堅持していただきますとともに、緊急調整措置を継続することを強く御要請を申し上げるところでございます。  以上、意見と御要請を申し上げまして私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手
  4. 菊池福治郎

    菊池委員長 ありがとうございました。  次に、横田参考人お願いいたします。
  5. 横田修

    横田参考人 御紹介をいただきました宮崎高原町長横田でございます。  本日は、当委員会に付託されておりますところの畜産物価格安定等に関する法律の一部改正案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案の御審議に関連いたしまして、私の意見を述べる機会を与えていただきましたことにつきまして厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。  なお、先生方には、かねてから私ども末端行政に大変な御理解と御協力をいただいておりますことをお礼を申し上げたいと存じます。  意見を申し述べます前に、私の町、高原町の概況につきましてお話しいたします。  宮崎高原町は県の南西部に位置しまして、霧島国立公園を境として鹿児島県に隣接しております。面積八十六平方キロ、山林原野が五四%を占めておりまして、耕地は二八%程度となっております。高原町という名の由来は高天が原が転化したものだというふうに承っておるところでございまして、気候が西南暖地年間平均気温十五度、降雨量が多うございまして二千四百ミリから三千二百ミリ程度水資源には恵まれております。人口は、現在一万二千百でございます。一番多い昭和三十年代には一万五千七百を数えておったこともございましたので、その時代からすると四千名減っておりまして、過疎の町でございます。就業人口形態は、四〇%が一次産業に従事いたしております。戸数でいいますと三千九百戸でございますが、その半数が農業に従事しておる。農業状態は、約三〇%が専業農家、あと七〇%は一、二種兼業農家という形態でございます。  私どもの町は畜産の町でございます。なぜ畜産が盛んになったかといいますと、霧島山ろくという位置でございますので山林原野に恵まれており、また西南暖地で雨の多いところでございますので、ほぼ一年じゅう青草に事欠かない地帯でございます。そしてまた火山灰土壌という特殊土壌地帯でもございますので、普通作よりか畜産に取り組みやすかったという歴史的背景も持っております。そして台風常襲地帯でございますので、畜産主軸農業の展開を県が示されたことにもよります。そのようなことを背景にしまして、私どもの町には県立の畜産試験場がありまして、隣の町には国の種畜牧場を置いていただいておるということからも、私ども地帯畜産が想像していただけると思うのでございます。  さて、畜産の中身でございますが、農業生産額が七十一億円でございます。この中に占める畜産は四十四億円でございまして、六二%のシェアを占めております。この畜産の中では肉用牛中心でございまして、四十四億円の中の十八億円、四一%を占めております。それから養鶏、養豚、酪農と続いておりますが、いずれも県内では高い水準の品質を持ち合わせておる町でございまして、畜産町づくりということを農政中心にして進めておるところでございます。  肉用牛のほとんどが和牛黒牛でございまして、中でも子取り生産経営が多いわけでございます。内容は、母牛、実際に子供を産む母牛規模は四・五頭と極めて零細でございますが、県平均は上回っておるということでございます。最近に至りますと十五頭、二十頭の生産専業農家も出つつあるという形でございますが、また最近は肥育農家もふえまして、七十戸の肥育農家が二千六百頭を年間出荷するという体制を整えております。  このように畜産中心、なかんずく肉用子牛生産中心の私どもの町ですが、県内にもこのような形はたくさんございます。お隣の鹿児島県にもございます。九州各県、東北、北海道にもこのような町はたくさんあると思いますが、このような町では子牛価格が即地域の景気浮揚に大きくしかも敏感に影響いたします。子牛価格が上がりますと町中の商店街が潤ってくる、これが下がりま すと大変沈滞してくる、そのように非常に敏感に影響するわけでございます。そこで、私たちの町では、農政中心畜産にある、中でも子牛生産の、肉用牛繁栄を図ることが、町の活性化であり繁栄であるという位置づけを持っておりまして、私ども、その責務を負わされておるという状況でございます。  このように、私の町に子牛生産肉用牛が盛んになってきたという背景には、国で実施していただいております子牛価格安定事業に負うところが極めて大きいと申し上げたいのでございます。御案内のとおり、子牛価格は、五十七年から六十年に至る間、異常な低落を示しました。特に、五十八年に至りますと、県内でも二十万円を割ったところも出るという大変厳しい状況でございましたが、このときに、子牛価格安定事業が発動されたわけでございます。生産者補給金が交付されました。まさしく恵みの雨という感じでございまして、生産者はもちろん、私たち第一線行政に携わる者としても大変ありがたみを感じたということでございます。  ちなみに、私の町では、この四カ年間に一万三千頭の子牛がこれに該当しまして、金額でいいますと、五億六千万の交付金をいただいた、このことが今日の子牛生産を継続し得たという、極めて支えになったということをお話し申し上げたいのでございます。なおかつ、この場合に、基金不足という事態を生じたわけでございますが、このことにつきましても、国はいち早く対応していただきまして、財源措置ということをしていただきまして、この事業が滞ることなく継続し得たということは大変ありがたいことでございました。今後も、このように、この制度維持財源の補充を十分にしていただきたいとお願い申し上げたいのでございます。  そこで、今回のこの法案、特に肉用子牛生産安定特別法につきまして、私の意見を申し述べさせていただきます。四点について申し上げます。  まず、第一点目は、肉用子牛行政価格の設定についてでございます。  今回の法案で、肉用牛の再生産確保されるような保証基準価格と、牛肉自由化後の国際競争に負けないような価格水準としての合理化目標価格というのが設定されようとしておりますが、前者は、子牛販売価格が保証される基準価格、後者は、私ども生産者自助努力としての目標も示されておるということでございまして、まことに当を得た適切なものであるというふうに評価をいたしたいのでございますが、この保証基準価格現行制度が、私の宮崎県では三十万ということになっておりますので、どうぞこの水準以上について堅持していただきたいということをお願いを申し上げたいのでございます。  第二点目は、生産者補給金の財政上の問題でございます。  これは、さきにも申し上げましたように、いかなる事態にも耐え得るような制度であってほしいと願うのでございまして、財源措置につきましては、特段の御配慮お願いしたい。加えまして、前もありましたように、今回の、関税財源として充てるということでございますが、関税が今のところ七〇%、六〇%、五〇%というふうに配慮されていただいておるということでございますが、六十九年以降につきましても、最終年度の五〇%というものを維持していただきたいと切にお願いを申し上げたいのでございます。  第三点目は、本制度をいつまで存続させるかという問題でございます。  本制度をいつまで存続するか、「当分の間」といううたい方でございますが、私ども、お訴えしたいのは、恒久的にというお願いをしたいわけでございますけれども、そういうことは、やはり国民的な消費者皆さん方の同意を得るには難しいということを考えておりますので、我々自体も、自由化に対応して自助努力をするという前提のもとでございますけれども、御案内のとおり肉用牛生産というものは極めて零細規模が弱いというものも持っておりますし、また、値段によりましては非常に浮き沈みが激しいということ等もございますので、ひとつ長い目で、この肉用牛生産を見守っていただきたい。特に、今の不安は、自由化が来た場合にどうなるであろうかということが率直な心配でございますので、これに対する体制、心構えも今から準備してまいりますけれども、そのときになりましたらば、難しい肉用牛でございますので、どうぞひとつ温い目で、当分の間をお見守りいただきたい。国際競争に耐え得るような体制を早い時期につくりたいと努力いたしていく所存でございますので、その時期までをひとつお見守り、持続していただきたいとお願いを申し上げたいのでございます。  第四点目は、生産対策でございます。  さっきから言いますように、生産対策、非常に規模零細でございまして、基礎が弱い面を持っておりますので、いろいろな面の施策を実施していただいておりますが、今後ともこれらの点においてよろしくお願いしたい。今回の措置につきましては、生産農家肥育農家ともに御配慮をいただいた措置であるというふうに評価申し上げるわけでございますが、今後とも共済事業あるいは畜産衛生事業とか登録事業普及事業、そして試験研究事業、そしてほかに各般補助事業等をいただいているわけでございますが、これらにもひとつ格段の御高配をいただきまして、整備強化を図っていただきたい。そして私たちが足腰の強い、自由化に対応できる畜産の土台を築いていただくために努力しますので、御配意方お願いしたいのでございます。  この制度に対しましては、深く敬意を表して、全面的に賛同の意を表するものでございます。私どもは、自由化に当たりましての生産費の低減、規模拡大と、最大限努力をしてまいりたいと思いますが、この支えになっていく法案でございますので、速やかに御決定をいただきまして、私たちの前途に光を与えていただきたいことを御要望申し上げまして、意見発表を終わらさせていただきます。ありがとうございました。(拍手
  6. 菊池福治郎

    菊池委員長 ありがとうございました。  次に、朝倉参考人お願いいたします。
  7. 朝倉輝夫

    朝倉参考人 私は、岩手畜産物価格安定基金協会朝倉でございます。本日は、参考意見を述べる機会を与えていただき、深く御礼申し上げます。  私は、肉用子牛生産安定等特別措置法案のうち、肉用子牛についての生産者補給金交付制度につきまして、若干意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、私の意見を申し述べます前に、岩手県における肉用牛生産概要と、岩手畜産物価格安定基金協会が行っております肉用子牛価格安定業務概要について申し上げまして、御審議参考にしていただきたいと存じます。  岩手県は、四国四県に匹敵する広大な県土を有し、草資源に恵まれております。また、古くから南部ごま南部牛が飼養されるなど畜産について長い歴史があり、農家は牛に対して深い愛着心を持っております。さらには肉用牛生産と密接な関係があります酪農振興が図られて、乳用種肥育の基盤が形成されてきております。  このような肉用牛生産の絶好の条件を生かして、県内では、県、市町村、生産者団体生産者などが一体となって肉用牛生産振興に取り組まれてまいりました。  その結果、今日岩手県の肉用牛の総飼養頭数は十四万九千頭となっており、全国第四位であります。最近十年間におきましては、全国が一三一%の伸びに対しまして、岩手県は一五五%の伸びであります。十四万九千頭のうち、黒毛和種は八万八千頭、乳用種は四万二千頭であります。また、北上山系山村地帯で飼養されております岩手県など特産の日本短角種は一万七千頭であります。  また、肉用牛の粗生産額は三百二十九億円に達しております。岩手県の農業生産額は三千四百五十七億円でありますから、肉用牛農業生産額の九・五%であります。なお、米が四〇・七%、野菜、果実が一一・三%、乳用牛が八・八%であ りますから、肉用牛農業経営の重要な柱となっているわけでございます。  特に、岩手県では、畜産と稲作、畑作との複合経営が多いことが特徴でございます。約十一万の農家戸数のうち、四分の一に当たる二万八千戸の農家肉用牛を飼養しております。肉用牛は、子牛肥育牛販売による所得確保という面からのほかに、土づくりを通じて良質な米、野菜、果樹の生産にも大きく役立っております。  最近は、岩手県内生産された子牛に対する評価は高まってきており、県内の子牛市場価格を見ますと、全国平均よりも高く取引されております。また、肥育牛につきましては、黒毛和種は、例えば前沢牛のように芝浦で全国一の評価を受けているものもあり、日本短角種は、首都圏量販店生協産直によって出荷され、。脂肪の少ない、健康で安全な牛肉として評判がよく、乳用種も、産直による出荷がふえてきております。  このように岩手県は、全国的に有数の肉用牛生産県としての地位を築いてまいりましたが、これまでの間、枝肉価格子牛価格低落飼料価格の高騰など、肉用牛生産をめぐる情勢の変化によって、生産者はその都度苦境に立たされたこともありました。  御案内のように、繁殖経営にとりましては、子牛価格低落所得減少につながるばかりではなく、飼養規模拡大したいという意欲をも失わせてしまうこともあります。岩手県におきましても、昭和五十七年から六十年まで子牛価格が低迷し、五十八年には黒毛和種去勢は十九万五千円、日本短角種去勢が十四万円となりました。低落前の五十五年の価格と比較しますと、それぞれ黒毛で二十一万三千円、短角で八万四千円の低落でございました。  一方、この期間におきまして、黒毛和種日本短角種を合わせた肉専用種の二歳以上の雌牛頭数は、増加はしませんでしたが四万六千頭台が維持されました。大幅な低落にもかかわらず、雌牛資源が何とか維持された背景には、農家努力とともに、肉用子牛価格安定事業による生産者補給金の交付があずかって力があったと認識いたしております。なお、この期間岩手畜産物価格安定基金協会が交付いたしました生産者補給金は、黒毛和種が三十億六千六百三十万円、日本短角種が六億二千四百九十九万円でありました。  岩手畜産物価格安定基金協会は、現在、肉用子牛価格安定事業や県単としての肥育牛肥育価格安定事業などを行っております。肉用子牛価格安定事業につきましては、昭和六十二年度末の契約頭数は、黒毛和種が四万七千百三十二頭、日本短角種が九千六百十九頭、乳用雄子牛が五千二百二十頭であり、加入率は、黒毛和種が約九五%、日本短角種が約九八%であります。乳用種につきましては、現在、哺育・育成頭数が約一万頭と推計されますので、約五〇%ぐらいとなります。しかしながら、新しい制度の発足に伴い、今後、酪農家による哺育・育成農協中心とした哺育・育成が予想されますことから、頭数は増加すると思われます。なお、岩手県の二歳以上の乳牛頭数は約五万頭であります。  次に、肉用子牛生産安定等特別措置法案につきまして、私の意見を述べさせていただきます。  まず、牛肉輸入の自由化決定された今日、岩手県内肉用牛生産者は、今後、生産コストの低減、品質的に輸入牛肉を上回る牛肉生産などに従来以上の努力をしなければならないものの、これらには長期間を要するために、肥育経営においては、経営が成り立つような価格で素牛が供給されることを願っており、一方、繁殖経営は、ある程度所得が得られるような価格子牛が売れることを願っております。また、酪農家は、ぬれ子の価格が堅調に推移してきたため、乳価の低下分を補うことはできたものの、今後ぬれ子の価格低落した場合に経営的に厳しくなるおそれがあることから、できるだけぬれ子の価格の低下を抑えてほしいと願っております。  一方、この法案は、肉用牛価格安定制度を抜本的に強化して、繁殖農家肥育農家、酪農家経営安定を図っていくという内容となっております。したがいまして、私は、この法案県内肉用牛生産者や酪農家の要望に沿っていますことから、基本的に評価し得るものと存じております。しかしながら、この法案に基づきます肉用子牛生産者補給金制度が、真に肉用牛生産者の経営の安定と生産の合理化につながるためには、制度運用に係る面が大きいと存じますので、この点につきまして意見お願いを申し上げたいと思います。  第一に、保証基準価格についてであります。今回の新しい制度が実効性を持ち得るかどうかは、保証基準価格水準によるところが大であります。国内の肉用牛生産の存立は、肥育素牛を供給する子牛生産者に大きく依存しますので、保証基準価格を、最近における価格ども配慮しつつ、子牛生産者の再生産意欲確保できる水準に設定することが必要不可欠であると存じます。  第二に、合理化目標価格についてであります。合理化目標価格は、子牛生産者が合理化によって実現を図るべき目標価格として明示されますが、同時に、肉用子牛取引の目安となり、実際の取引価格にそのまま反映されますと肥育経営を左右することとなります。したがいまして、合理化目標価格水準の設定に当たりましては、繁殖育成経営のみならず、肥育経営の安定にも十分配慮する必要があると存じます。  第三に、品種別の保証基準価格などの設定についてであります。岩手県におきましては、先ほども申し上げましたが、黒毛和種乳用種のほかに、日本短角種が飼養されております。日本短角種は、県内では山村地帯におきまして、夏山冬里方式で放牧主体によって飼養されております。日本短角種の飼養農家の多くは、平地が極めて少ないことから、稲作からの所得に期待することができず、肉用牛と林業労働などに大きく依存しております。以前は子牛生産が主体でしたが、最近は国の事業や県単の事業によりまして肥育が取り入れられて、量販店生協との産直による経営内や地域内一貫生産体制が整備されてきており、また、この産直によって消費者との交流が深まり、日本短角種は山村地域の活性化に大きく貢献しております。  このような日本短角種につきましては、保証基準価格の設定に当たり、山村振興ということにも配慮していただきたいと存じます。適切な水準に設定されなければ、おいしく、しかも手ごろな価格であります日本短角種牛肉生産振興ばかりではなく、山村地域の活性化をも阻害するおそれがあります。  第四に、乳用種についてであります。酪農経営の安定を図るためにも、乳用種制度加入を促進することが必要であります。この法案におきましては、肥育仕向けの乳雌が制度の対象となっておりますことは評価しておりますが、制度発足までに加入率を大幅に高めるような対策を強力に推進することが不可欠であります。  第五に、この法案におきまして、都道府県段階で肉用子牛生産者補給金交付制度の実施団体として位置づけられております都道府県協会についてであります。  岩手県におきまして新しい制度の実施を担うものとして、その役割の重大さに身の引き締まる思いをしており、協会の四名の職員とともに新制度の実施に万全を期す所存でございます。しかしながら、岩手県ばかりではなく、全国の都道府県におきましても、乳用種を主体とした加入頭数の大幅な増加に伴い、契約頭数の確認、管理業務並びに交付金交付業務など、協会の業務量は飛躍的に増大すると存じます。一方、都道府県協会事業運営費の財源は、国からの補助金のほか、都道府県協会の基本財産の運用果実によって賄われております。しかし、近年の公定歩合の大幅な引き下げ等に伴い、基本財産の運用益は一時期の二分の一近くまで減少し、財政は逼迫してきております。新制度の適正な実施のために、私たちも全力を挙げて取り組みますが、協会体制強化につきまして、何とぞ特段の御配慮お願いいたしたい と存じます。  以上、肉用子牛生産安定等特別措置法案につきまして意見と要望を申し述べまして、私の意見陳述を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手
  8. 菊池福治郎

    菊池委員長 ありがとうございました。  次に、並木参考人お願いいたします。
  9. 並木正吉

    並木参考人 ただいま御紹介いただきました並木でございます。今回上程されます法案のうち、いわゆる子牛不足払い制度中心にして、若干の意見を申し述べたいと思います。  私は、今回の法案につきましては賛成をしております。牛肉価格が内外非常に価格差があるわけでございますけれども、これを縮小していくということを考えました場合に、結局かぎになるのは子牛をどれだけ安く供給できるかということだと思います。しかし、子牛を安く供給いたしますと繁殖農家にしわ寄せがいきますので、繁殖農家が続けて生産できるような配慮も必要であるということで、今回の子牛に対する不足払い制度は適切な法案であるというふうに考えております。  若干内部にわたって申し上げますが、第一は対象の範囲を広げた点でございます。  和牛の方につきましては比較的問題はないわけでありますが、ホルスタイン種の子牛につきましては雌牛に拡大したということ、それから、農協を通さなくてもいいというふうに条件を緩和したということ、それから、子牛の体重の実態に合わせて基準価格を改正したということ、これらのことによって対象の範囲が拡大したと同時に、加入率が高まることが期待されるわけですけれども、私は、この加入率の向上に対しては、いろいろな意味での御努力が必要かと存じております。  それから二番目は、保証基準価格水準についてでございます。  この水準は、おおむね現行の制度水準を踏襲したというふうに理解をしておりますが、これも現在の諸情勢を考えますと妥当な措置であったと思います。ただ、この水準が本当に妥当であったかどうかということにつきましては、牛肉自由化に伴って国内の牛肉価格がどのような影響を受けるかということの判断によるわけでございますが、これについてはいろいろな意見がありまして、かなり不透明な点がございます。  ただ一点、明らかだと思われます点は、今後の為替レートの推移でございます。特に、円高が進むかどうかという点だと思います。巷間にかなり有力に言われますように、近い将来一ドル百円という時代が来るということがもし事実といたしますと、そのことだけで牛肉の輸入価格は三割下がるということになります。この影響は、自由化影響をある意味では上回るかもしれません。そういう事態を考えますと、あるいはあり得るかもしれないというふうに考えますと、私は、この保証基準価格水準につきましては、将来もっと厳しい水準を考えなければならないかもしれないということを頭に入れておいていただく必要があるように思います。  それから三番目でございますが、この保証基準価格と市場平均価格との差を補償することになるわけですけれども、この差を定額で補償する、定額で交付するという考え方になっております。  この点につきましては、子牛価格が地域によりまた個体によって非常に違いますので、むしろ個体差を考慮すべきではないかという考え方もあるわけですけれども、私は、定額というお考えで処理されたことが適切であるというふうに考えます。それは、定額ということにいたしますと、安い価格子牛を供給する地域あるいはそういう農家が率としては得になるといいますか、率としては割合が高くなるということになります。現在でも子牛の供給地帯は九州、東北の方に特化しつつございまして、これらの地域は子牛の供給価格の低い地帯でございます。私は、今後日本の牛肉価格を下げていかなきゃならないという環境を考えますと、これらの地域の子牛生産を激励するという効果を持つ今回の措置が適切だというふうに思うものでございます。  それから第四番目でございますが、自由化影響が一九九一年になって突然あらわれるのではなくて、それに至る三カ年の移行期間の間に自由化が起きたと同じような効果、ないしはその効果を先行指標的に見せるような状況が既に生まれつつあり、また、この今後の移行期間の間に生まれるであろうということに注目していただきたいと思います。  一般的に、牛肉自由化牛肉の消費に対して与える影響ということを考えますと、三つあろうかと思いますが、一つは消費量がふえるという点、それから二番目は消費者の好む部位、ロイン系とかそういった意味の部位でありますが、それを選択することができる、三番目は価格の引き下げ、この三つかと思います。  そこで、第一点の消費量の拡大という点でありますが、既に移行期間の間に一年に輸入枠を六万トンずつふやすということになりまして、三年間で十八万トンということになりますが、三年後の昭和六十五年には輸入牛肉は、昭和六十二年度の二十一万四千トンにプラスいたしましてほぼ四十万トンということになります。この増加率は、三年間で倍近い増加率でございますので、この増加率はかつてない増加率だというふうに思われますし、また、自由化が起きた場合に想定される増加率というふうに考えてもよろしいかと思います。そういう意味で、自由化が起きた場合に考えられる消費量の増大が、既にこの移行期間の間に起こるのではないかということが第一点でございます。  それから第二点は、同時売買入札方式による牛肉の輸入枠を、これは御案内のように昭和六十二年度におきましては輸入枠の一割ということにしておりましたが、これを六十三年度には三割、翌年には四割五分、六十五年度には六割にまで拡大するということになっております。  この同時売買入札方式と申しますのは、御案内のとおりでございますが、国内の卸売、小売業者が自分たちの好む部位を注文できる、選択できるという制度でございますので、自由化の第二点の効果が既にそれもあらわれているということになります。特に、今年度につきましては、一応三割という数字でありますけれども、これが実施に移されますのは主として下半期というふうに聞いておりますので、これからの半年間の間における同時売買入札方式の比率は恐らく四割を超すものと思われます。そういう意味で、自由化の効果がこの点についてもいち早くあらわれてくるということになります。  三番目の価格の低下という点でございますが、御案内のように昭和六十年、六十一年ごろは、畜産振興事業団が買い入れ価格に対して安定価格帯の水準をにらみながらそれに課徴金をかけまして、売りさばいて売却しておりましたが、その差額が大体五〇%程度であったと聞いております。五〇%ということになりますと、輸入牛肉にかかる二五%の関税、それから倉庫に運ぶまでの運賃七%程度とあわせて考えますと、一〇〇%近い関税の効果を持ったということになります。しかし、現在におきましては、輸入牛肉価格が上がってきたということと、払い下げされております価格が、全部ではありませんが、一部の牛肉について依然として値下げが続いておりまして、そのために二五%の関税畜産振興事業団との差益を合わせたものが、関税率に換算してみまして恐らく七〇%程度に下がっておるのではないかと思います。そういたしますと、自由化の第一年度における関税は七〇%でございますので、価格についての効果も既に出つつあるというふうに考えられるのでございます。  こういう状況が進んでおりますが、そういう意味では輸入牛肉についての価格は既にかなり下がってきておると私は見ておりますが、しかし、国産牛肉に対する連動性という点では必ずしも十分ではございません。総理府の小売物価調査というのがございますが、それによって肩肉の部位を見ますと、輸入牛肉はことしの九月現在で百グラム百十六円になっておりますが、国産牛肉の方は 三百五十八円ということで、依然として三倍以上の開きを続けております。     〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕  私は、この理由といたしましては、なぜこのようなことになったかということにつきましては、一つは、輸入牛肉が冷凍のものが多くて小売屋さんの解凍技術が不十分であるということ、二番目には、日本の消費者が輸入牛肉の料理法についてまだ十分なれていないということ、それから三番目については、消費者の好む部位が必ずしも必要なだけ入っていないということ、このことのために輸入牛肉は主として外食と加工仕向けに向けられまして、国産牛肉は小売店を通じて家庭消費に向けられるという、ある意味でのすみ分けという状態が起きておるのだと思います。  しかし、このような状態は、自由化が進みますと、やはり大きな変化が生ずると思われます。そして、その変化によって牛肉価格が下がってまいりますと、それは結局子牛価格に響いてまいりますので、子牛に対する対策が必要になってくるということになろうかと思います。そういう意味で、先ほど申しましたように、この法案には賛成したわけでございますが、ただ、不安定あるいは不確定な点がいろいろ残っておりますので、それらに対する敏速な対応をしていただくために、この移行期間の間にどのような変化が起こるかということに十分御注目いただければありがたいということで、今のことを申し上げた次第でございます。  最後になりますが、私は、牛肉生産の将来ということを考えますと、後継者が激減しておることの影響ということにも御注目いただきたいと思います。  現在、酪農経営は七万五千戸くらいでございますけれども、そのうち後継者が農業を主としてやっている農家は二万戸あるかどうかでございます。また、肉用牛生産をしておる農家は現在二十七万戸程度ございますけれども、そのうち後継者が主として農業をやっているという農家を探してみますと、これは農水省の農業調査にそれが出ておりますが、一万戸あるかないかでございます。ということは、これらの後継者の確保されている畜産農家が将来の担い手というふうに考えてみますと、酪農経営については一戸当たりの平均頭数が百頭ということになりますし、肉用牛につきましては、三百万頭の肉牛を、一万戸足らずの後継者が、主として農業をやっている農家で賄うということになりますので、これは幾らか誇張した計算かと思いますけれども、一戸当たり三百頭ないしはそれ以上という数字が計算の上では出てまいります。これが必ずしも実態を示すとは思っておりませんけれども、私は、こういう数字に示される状況が進んでいるということについても、御配慮をいただければありがたいと思います。  以上で、私の意見陳述を終わらせていただきます。(拍手
  10. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 これより参考人に対する質疑を行います。質疑の申し出がございますので、順次これを許します。月原茂皓君。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕
  12. 月原茂皓

    ○月原委員 私は、自由民主党を代表して、参考人の方々にお尋ねいたします。  まずもって、お忙しいところ、きょう我々に貴重な御意見を述べていただいたことに感謝申し上げます。  先般、牛肉自由化のときに農林水産大臣の談話にもありますように、我が自由民主党は政府と一体となって、農林水産大臣の言葉をかりれば全身全霊を傾けてこの問題に取り組んだわけであります。そして、最終的には、いろいろな経過がありましたが、ガットで合法と認められているぎりぎりのところで関税と緊急輸入制限措置ということを得たわけであります。そしてこれが、後でまた御意見を伺うつもりですが、ウルグアイ・ラウンドの交渉の結果にまつというふうに相なるわけであります。  そこで、皆さんは、我々が全力を尽くしたこの法案に対して、一日も早く実現してもらいたい、非常に苦しい中ではあるが政府もよくここまでやった、これが速やかなる実施を願いたいという御意見であったと私は思います。我々党及び政府の非常な努力、そのところを十分意を酌んでいただいてそのような意見を述べられたことに対して感謝するとともに、意を強くしているものであります。  そこで、個々の問題は後にいたしまして、まず、今各参考人からお話がありましたが、自由化、そしてまた自由化の三年後、その間にいかにして国際競争力にたえる強力な生産基盤をつくっていくかということが私は大切だと思います。そこで、今までお話しされた中にもありましたが、それまでにどのような観点から生産基盤を強化していくのかということをお話し願い、そしてそれに対して皆さんはどういうふうな点を要望しておるのかということ、そういう観点から簡単に各参考人からお話を伺いたいと思います。
  13. 救仁郷義房

    救仁郷参考人 ただいまの御質問でございますが、鹿児島県におきます実態につきましては、先ほど申し上げましたように非常に零細であるわけでございます。今並木参考人から、生産部門についても後継者が非常に少ないという御指摘もございました。ある面においては高齢化が全く進んでおりまして、これらの後継者の確保という問題も一つの大きな要素であることもそのとおりでございます。全国平均が十頭を上回る状態の中で、鹿児島県では七・二頭、こういう非常に零細規模でございますから、これは肥育生産におきましても同じ要素を含んでおるわけでございます。したがいまして、規模拡大ということが一番大きな要点であろう、こういうふうに考えます。  土地条件等の整備、これもまた避けて通れない一つの基本課題でございますから、そのことにつきましてもあわせて対策として、行政を含め農業委員会農協一体になりまして、これらの問題は対応する必要があろう、このように考えております。  以上でございます。
  14. 横田修

    横田参考人 生産基盤をどのように整備していけばいいのかという御質問でございますが、今私どもが当面している問題として、行政の末端では自由化に対する不安を除去すべきだということがまず第一点であろうと思います。そのためには、いち早く国が価格安定、そのほかの肥育対策経営の末端に至るまでのきめ細かい対策をいろいろ示していただきました。このことを私たちは信じてやりましょうというふうに生産者に訴えをいたしております。自由化はまだ来ていないわけですが、その先はわからない、その不安を確かに持っているわけですが、こういう国が示されたということにつきましては私ども高い評価をするわけですが、それを信用して、牛肉自由化に対応して自給もしなければいけないのだ、そのためには議員の先生方、そして国を初め、いろいろな配慮をされておる、このことを信用して我々も自助努力をすべきではないかということをやはり行政は率先して旗を振るべきだということを考えております。  そのために、先ほど言いましたように生産基盤は非常に零細で弱い面もある、後継者の問題等いろいろございますが、今農村を受け持っておるのはほとんど高齢者でございますから、後を継ぐ若者たちに夢と光を与えていただく。今度の制度もそうでございますが、最初に言いましたように、生産基盤、いろいろ難しい、直接生産基盤なりなんなりの整備という補助事業等もございますが、共済事業あるいは普及事業、衛生事業、登録、改良の問題等々の問題がたくさんあるわけでございます。特に最近に至ります試験研究機関のバイテクの問題等もございますので、こういう基盤におきます御配慮特段お願いしたい、私たち努力をいたすというふうに考えておるところでござ います。  以上でございます。
  15. 朝倉輝夫

    朝倉参考人 ただいまの横田参考人のお答えの中にもあったわけでございますが、当面自由化を迎えて増してきております農家の不安を一日も早く除去するような対策を講じていただきたい。特に岩手県の場合、黒毛につきましては今は子牛価格にさほどの影響が出ているようには見受けられないのですが、先ほど申し上げました短角市場、秋市場がつい数日前から始まっております。価格は昨年に比べますと低下傾向が見られます。したがいまして、当面農家の不安を除去するためにも価格安定対策には万全を期していただきたい、交付金財源確保等につきましては特段の御配意を賜りたいというふうに考えております。  なお、私ども県といたしましても生産性向上対策を従来から懸命に講じておりますし、この三年間にそのスピードを速めながらなお万般の対策を講じていかなければならないというふうに県、農業団体ともども話し合っているところでございます。  なお、従来から畜産農家等が主として抱えております負債対策等につきましても、県、農業団体挙げて物心両面にわたって今いろいろな指導、援助をやっておるところでございますが、これらにつきましても国の積極的な御援助をお願い申し上げたいと思っております。  なお、もう一つ、新技術の技術向上対策といたしまして、受精卵移植技術なども県の試験研究機関等を挙げて取り組んでいる最中でございます。  そういった諸般の対策を講じながら、県としても何とかこの三年間の移行期にできるだけ農家影響を緩和するような方向で取り組んでまいりたいというふうに私ども考えておるところでございます。
  16. 並木正吉

    並木参考人 私は、安い子牛を供給するという今回の法案の趣旨が徹底することが第一番だというふうに思います。そして、それにあわせて粗飼料基盤が整備されて、それを繁殖農家肥育農家が十分使えるように持っていくことがその次に大事なことかと思います。  以上でございます。
  17. 月原茂皓

    ○月原委員 ただいま各参考人から、後継者、そして不安を除去するということについて、具体的にもお話がありましたが、今自由民主党及び政府が一体となって周辺対策について緊急対策を講じ、また来年度予算要求でもそういうことを要求しておるのです。例えば朝倉参考人のおっしゃった新技術についても強く要求している、実現するべく努力しているところでございますので、方向としては皆さんの考えられている方向で動いているのではないかというふうに思います。  そこで、並木参考人に専門的な立場からお尋ねしたいわけでありますが、外国と比較すると日本は生産性は低い。いろいろな悪い条件を持っております。そういう中にあって、食糧の安全保障というか、それから価格ももちろんだし、安定して供給される。そして、この牛肉というものが今国民の生活の中に大きな地位を占めてきておるだけに、そういうふうなことに対して日本でもちゃんとその経営が成り立って、そして農家が希望を持てる、そういうふうなことが日本の国にとって大切だと思うわけです。  そういう意味において、自由化後と申しますか、それまでに基盤をどういうふうにするかということは皆さんから今御意見を承ったわけでございますが、自由化されてもまだ関税等についていろいろその財源等も見つけながらそういう方向で進んでいるわけですが、むしろその後言われておるウルグアイ・ラウンド、そこのところが非常に大きな、それ以降の問題がまさにある一つの考え方を今から持っていなければ農家の方々も不安だろう、私はこのように思うのです。ですから、ポスト・ウルグアイ・ラウンドというか、自由化されて三年後、四年後に対して、政府なり自由民主党に対して、こういう点を今から研究しておくべきだという御意見があれば教えていただきたい、こう思います。
  18. 並木正吉

    並木参考人 ただいまの問題はどうも不確定なところが多くて、私もとても言えない点でございますけれども、やはり内外価格差、それから生産費の大きな差ということを考えますと、五〇%の関税を上回らないことという約束はありますけれども、できるだけ五〇%に近い水準維持していただくことが第一の前提かというふうに思います。  それから後のことになりますと、今ここで移行期間の間にいろいろ起きておりますので、その間に自由化によって起きるであろうことがほとんど出てくると思いますので、それをごらんいただきながら御判断いただくというのが一番現実的な対策ではなかろうかというふうに思います。その際、長期的に後継者が非常に少なくなっている点ですとか、若干の問題は先ほど来申し上げましたが、もう既にそういう兆候は出ておりますので、現在既にあらわれております兆候を正確に読み取っていただければおのずから対策は出てくる、私はこう考えております。
  19. 月原茂皓

    ○月原委員 非常に短い時間ではございましたが、密度のあることをいろいろ教えていただきまして感謝しております。きょうおいでの参考人の方々は各地域で指導的な立場におられるわけであります。そしてまた、それが我が国の畜産の大きな支えにもなっているわけでございますから、我々も今お話しの点については方向としては一致しておる、こう思っておりますから、全力を尽くしますので、農家の不安がなく、そして自信を持って進めるように今後指導していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  20. 菊池福治郎

    菊池委員長 串原義直君。
  21. 串原義直

    ○串原委員 参考人先生方、きょうは大変にお忙しいところをありがとうございました。大変勉強させていただきました。そこで、何点か伺いたいと思います。  最初に救仁郷参考人に伺いたいのでございますが、牛肉自由化が進んでくるわけだから国内の牛肉生産コストを下げよ、あるいはそのためには規模拡大が必要だというような意見があるわけでございますけれども、いやいや、それはそう簡単ではないことなんだ、我が国の地理的、自然的条件から見て、簡単に生産コストを下げよ、規模拡大が必要だと言っても、それは現場をよく知らない人たちが言うことであって、しかく簡単なことではない、こういう指摘があります。私もそう思う者の一人でございますし、先ほども後継者難につきましての現状についてもお話がございました。  そこで伺いたいのですけれども、どうしたらコストが下げられるのか。このこととこのことをやればコストが下がるでございましょうというお考えがございましたら教えてもらいたいということであります。  それからいま一つは、これは逆な言い方になるかもしれませんけれども、日本の場合はコスト低減に何が一番ネックになっているとお考えでしょうか、お教えください。
  22. 救仁郷義房

    救仁郷参考人 お答えを申し上げます。  全く御指摘のとおりでございまして、鹿児島県におきます実態について冒頭申し上げましたように、四十万そこそこに今子牛価格が多少上がりぎみに推移をいたしておりますけれども、原価が、第二次生産費が四十八万程度生産費を償っていない実態を申し上げたわけであります。  こういう背景を見ながら、コストの低減という前提は、何としましても規模が小さいということでありますから、飼養頭数をふやす、このことが一番コスト低減につながる大きな要件であることは論をまたないわけでございます。しかし、これは肥育においても同じ要素でございますが、一頭飼養いたしますには粗飼料源としましての土地が十アール必要である、こういうことでありますから、一頭増頭いたしますと十アール土地条件の整備が必要である。七頭平均ということになりますと、おおむね七反歩持っておるわけでございますね。これを十頭にしますと、三反歩ふやしません と、一町歩の粗飼料畑がないと飼養ができにくい、こういう生産条件がございますので、先ほども自民党の先生の御質問にお答えを申し上げた背景はそういうことでございます。必要でございますけれども、兼ね合いの中で、急速に自由化になった、それじゃすぐ生産規模をふやして、規模拡大をして生産コストを下げる、理想論としてはそうでございます。先生御指摘のとおり、実態を知らない論議であるという現実が出てこようと考えますが、産地におきましては、必然的に生産費を下げないと国際価格に対比ができない。平たく申し上げれば、これは日本農業の宿命ではないのかという考え方も成り立つわけでございます。アメリカあるいは豪州のあの広大な放牧で牛肉ができる地域と、日本の非常に国土の狭い、しかも一人当たりの耕地の狭い畜産農業、こういう形の中からいいますと、急速に自由化になった、すぐ生産コストを下げて国際価格と競争のできる状況にない。  中小家畜につきましては、御案内のとおり酪農を初め豚——酪農も大型でございますが、特にこれは北海道という広大な地域の中で酪農経営しておられるという状況からいきますと、EC並みあるいはECに近づいた生産コストの低減ができておる。豚、ブロイラー、さらに鶏卵、採卵、こういう分野におきまして競争条件ができておるという背景もございます。そういうことを御理解いただきまして、私ども産地におきましても、各行政、関係団体と一体になりまして規模拡大に取り組み、生産費の低減に努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  23. 串原義直

    ○串原委員 並木参考人に伺いたいのでございますが、先生先ほど、後継者が激減をしている、大変後継者というのは少なくて心配だという意味のお話をいただきました。私もその辺がとても苦になるところなんでございます。そこで、酪農の場合は一戸当たり百頭、肉用牛肥育の場合は三百頭、こういう数字的なお話もいただいたのでございますが、この後継者がないということが基本的には我が国の肉牛生産の基盤が崩れることにつながっていくわけでありまして、これはもうまことに重要不可欠、政治の中では後継者育成は重要不可欠な大きな要素だというふうに考えているのでございますが、先生、専門家の立場で、国会はこの点を特に考えていくべきではないのか、こういうことがありましたら教えてもらいたいのでございます。
  24. 並木正吉

    並木参考人 私は、率直に申しまして、これをやれば後継者がおのずから残ってくるという特効薬というのはないんだというふうに思っております。後継者が少なくなってまいりましたのは、日本農業の言ってみれば体質が弱くなってきた。慢性病のような形で弱くなってきておるわけですから、政策とすれば、いろいろな政策を地道に気長くやっていくということ、そしてその中に一つの方向を示すということが長い目で見て私は一番有効であって、例えば保証基準価格をできるだけ上げるとかいう形で経営に多少有利さを出して、それで後継者を確保できるようになるかといいますと、後継者はそういう状態は長続きしないということを肌身で知っておりますので、やはり最小限の財政的な援助の中でやっていけるという筋道がわからないと結局後継者はそこへ来ないということだと思いますので、いろいろな政策を地道にやっていただく以外に方法はない。  ただ、生産費の違いということで一言、御案内のことでありますけれども申し上げたいと思いますのは、グラスフェッドの、つまり草で飼ってそのまま持ってきた牛肉と同じ価格のものを日本でつくろうということになりますと、これは考えても無理なことでありますし、またその必要もないと思います。結局、日本の消費者がどのような牛肉を好むかということをはっきりつかんで、牛肉についてのいわば差別化をできるだけ進めていくという方向で前途に光明といいますか、希望を見出すという方向が一番大事だというふうに思います。その点を考えますと、いたずらに面積規模拡大ということをアメリカやオーストラリアのように考える必要は全くないわけでありますから、日本的なやり方をそこで生かしていくということが必要かと思います。
  25. 串原義直

    ○串原委員 横田参考人に伺いたいのでございますが、町長さん、大変熱意を持って育年振興努力されていることに敬意を表したいと思うのでございますけれども、お話をいただく中で、不足払い制度、一口できょうは不足払いと言いますが、子牛不足払い制度、これは見通しのつくまでというような表現をお使いになって、できるだけ長くやれ、こういうことでございました。私もそうは思いますけれども、この辺が実は大変に難しいところだというふうに思うのでございます。これはもう一足突っ込んで年限を切ることはなかなか難しいとは思いまするけれども、十年ほどしたならば内外価格差に対応できるような体質というものはできますでしょうか、それでは無理か、この辺はいかがでしょうか。
  26. 横田修

    横田参考人 自由化が実現していない今でございますので、私の体でもまだ感じとしてもわかないというのが実態でございますが、いまさっきから言いますように、努力すべきだというふうに考えるわけでございます。  で、私の言い方では、体制が整う間、それが先生おっしゃいますように十年ぐらいをめどということでございますが、数字で何年ということをこの場で申し上げる持ち合わせがないわけでございますが、生産体制は極めて零細であり、弱い面を持っておりますので、早い時期に私たちも立て直しをしなければならないということは考えながら進めていきたいというふうに考えます。  ただ、いまさっきから出ますように、日本の農業の特色、外国の特色がございますので、今先生おっしゃいます、それを自由化に対応する、これをこのままの形で、同じレベルで対応するという、EC並みとかいろいろな言葉が出てきますけれども、これはなかなか現実的には難しいのじゃなかろうか。それだからこそこのような対策を打っていただくということでございますので、これに早くなれ切らなければならないという感じも持っております。いつまでも甘えてはいけない、それは消費者サイドからの合意はいつまでも得られないだろう。だから、今おっしゃいますように、早い時期ということを考えながらも、やはり当分の間、その体制が整うというところまで、特に後継者の問題等もございますので、明るいめどがつくまでは温かい目で見守っていただきたいという御要望を申し上げたいと思います。
  27. 串原義直

    ○串原委員 最後になったのですけれども朝倉参考人に伺いたいのでございます。  自由化をした場合には国内の牛肉価格は大幅に下がるであろう、こういう先生方の御意見もきょうも伺ったわけでございますが、そこで、牛肉の貿易自由化に対応いたしまして、特に乳雄子牛の取り扱いを含め乳牡の肥育ですね、このことに対しては、特にこの点について配慮をしなければいかぬ、配慮すべきだというようなことを、お考えがございましたらお教えを願えるとありがたいのでございます。
  28. 朝倉輝夫

    朝倉参考人 現在岩手県でも乳雄を中心にした肥育をやっておるわけでございますが、今回の国がお考えになっておる対策の中で乳雌まで含んで対象にするということで大変心強く感じております。この乳雄の肥育につきましていろいろな難しい問題をはらんでおりますけれども、当面一番大事なのは、哺育・育成組織立ってやる体制づくり、例えば農協等が中心になりまして、酪農家生産しましたぬれ子を組織的に集めて、そこでもってある月齢まで哺育・育成をしてそれで肥育農家に供給してやる、そういう体制が当面非常に大切なことではなかろうかなというふうに感じております。今さしあたって先生の御質問に対しましてそういうことが大事じゃないかなというふうに感じたものですから、お答え申し上げます。
  29. 串原義直

    ○串原委員 ありがとうございました。時間が参りましたので終わらせていただきます。
  30. 菊池福治郎

    菊池委員長 水谷弘君。
  31. 水谷弘

    ○水谷委員 参考人の皆様方には、大変お忙しい ところをきょうはありがとうございました。大変貴重な御意見を伺わせていただきまして御礼を申し上げます。  我が国にとって牛肉自由化というのは、我が国の農業畜産歴史の中で全く経験をしたことのない新しい事態がやってくる。私も実はこの自由化交渉が決着を見た時点で、急速鹿児島県と熊本県にお邪魔をいたしました。現場で大変その衝撃といいますか、将来に対する不安を抱えながらしかし生き延びなければならない、そのためにどうしたらいいんだと、真剣な御議論をいただいてきたことを今も思い出しております。  今回、政府が肉用子牛生産安定等特別措置法案という形で新たな対応をするということになっておりますが、私は基本的に、やはり農業畜産、その地域経済を支えてきた大事な歴史を踏まえて総合的な政策をしなければ、これはとてもその地域の振興は大変であろう、こんなふうに考えております。今回のこの立法措置だけでとてもクリアできるような問題だけではない、周辺の数多くの問題があることもよく存じております。しかし、きょうはこの法案審議のためにおいでいただいたわけでございますから、これに限っていろいろ御意見をちょうだいをしたいと思っております。  まず、鹿児島農業協同組合中央会会長救仁郷参考人にお聞きをいたしたいわけでございますが、繁殖肥育一貫経営という、これからの自由化に対応するための一つの物の考え方としてそういう考え方がございます。このことについてどういうふうなお考えをお持ちか、またこれに対する問題点なり取り組むべき問題があればお尋ねをしておきたいと思います。
  32. 救仁郷義房

    救仁郷参考人 生産肥育の一貫体系ということにつきましては、私ども鹿児島県におきましても今推進をいたしておるところでございます。特に問題になるような点というのは今のところございませんけれども、先ほどございましたように生産費の低減という面からいきますと、みずから生産をいたしました肥育素牛の系統なり内容というものを十分承知をいたしておるわけでございますから、そういう環境を踏まえて肥育体系へ移る、こういうことになりますと、その面では非常に有利性がある、このように判断をいたしておるわけでございます。でございますから、いや地現象といいましょうか、あるいは畜産になれないということ等がございません。そういう意味では冒頭申し上げましたように非常によい環境の中で肥育に入られるという利点があろう、こういうように考えておるところでございます。今後とも成果を見ながら、このことをやはり生産費低減の一環の中身としてとらえて推進をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。  以上でございます。
  33. 水谷弘

    ○水谷委員 宮崎県の高原町長様の横田参考人にお尋ねをいたしますが、規模拡大、これはもちろん一番大事な問題でございます。しかし、現在のこの小規模零細経営の現状から、一体どういうふうなプロセスで規模拡大がどの辺くらいまで推進ができそうなのか、その辺に対するお考えはどのようにお持ちでございましょう。
  34. 横田修

    横田参考人 規模拡大がどの程度までできるのかという御質問だろうと受け取るわけでございますが、私どものところでは子牛生産経営、子取りの経営実態というのは、今さっき申し上げましたように四・五頭と極めて低い、全国的に見ましてもそうでございます。ただし、その中でも申し上げましたが、大きいところでは十五頭、二十頭あるいはそれ以上の繁殖雌牛を備えましてほぼ専業的にやっておる、実際実現しておりますので、それを今の時点で踏まえますと、二十頭、三十頭、この程度規模は私の町でも十分可能だ、そのように今考えながら進めております。  以上でございます。
  35. 水谷弘

    ○水谷委員 岩手県の安定基金協会朝倉参考人にお尋ねをいたしますが、今度のこの財源の問題について、当面こういう形で財源手当で国も対応をしておるわけでございますが、私どもも将来的に果たしてこれで大丈夫かどうか、そんな不安はございます。しかしながら、これからも先ほどのお話のように加入の促進、加入率を向上させるというお取り組みを現場で一生懸命やっていただくわけでございます。これもまた財源の面でも大事になってくるわけでありますが、特に国が加入を促進するという上でもっと力を入れるべき事項が考えられれば、御指摘をいただければありがたい、こう思います。
  36. 朝倉輝夫

    朝倉参考人 生産農家の基金加入につきましては、従来から私どもも、県、農業団体一体となって取り組んで積極的に進めておるわけですが、特に今委員御質問の、加入の増を図るために国に対してとっていただきたい方策はという御趣旨だったと思いますが、私どもが国にお願いしたいことを申し上げますと、私どもが全力を挙げて取り組む際に、そういった体制が整備できるような協会内部の体制、それから県内でいろんな行政機関、農業団体一体となって取り組むわけでございますので、そういった十分な体制で取り組めるような御配慮をいろいろとお願いしたいものというふうに考えているわけでございます。  以上でございます。
  37. 水谷弘

    ○水谷委員 並木参考人にお尋ねをいたします。  先ほどいろいろお伺いをいたしておりまして、特に私がこれからの取り組みの中で考えておりますことに、飼料の問題について大変早急に取り組みをしなければいかぬ、特に粗飼料の問題については、これは大きな問題になるなということでございます。  確かに、国土の面積が狭い日本の中で効率のいい経営をするためには、コストダウンを図るためには、どうしてもえさの問題が大事になってきます。今、スイートソルガムの研究が大分進んでおりまして、十アール当たり二十トン、こういう試験結果等も大分出てきております。しかしながら、なかなかこれは実用化というところまで取り組めない、そういう状況が片方にございます。本当に、単収が一トン程度のものを相手にして、飼料穀物としてやっているのではどうにもならない。こういう方向を、もっと農水省が試験研究に専門的に取り組みながら、飼料の確保、そしてその飼料が広大な面積を使うわけにはどうしてもまいりませんから、そういう意味ではそういう方向性というものについて私たちは大変関心を持っているわけですが、この点、どうお考えでございますか。それが一つ。  きょうの日農新聞を見ますと、いわゆる和牛の精液がカナダに送られて、カナダで日本の消費者が求めるような和牛生産の芽がもう出てきておる。先般、オーストラリアへ行かれました同僚議員の話では、もう既にオーストラリアにおいても、いわゆる日本の和牛というものが世界において相当肥育をされている。アメリカはもちろんそういう志向で、肉の品質の問題では、相当これから自由化後その問題については徹底した研究をしてくるだろう。こういう環境の中で、さて、日本的な行き方をし、そういうものと伍していくためにはまたどういう取り組みが必要になってくるのかな、こう考えているわけでございますが、この二点、並木参考人にお尋ねをいたします。
  38. 並木正吉

    並木参考人 第一点は、穀物飼料について新しい取り組みができないか、またそれをやるべきじゃないかということがございましたが、私は技術的なことは余りよく存じませんが、基本的な方向といたしますと、日本で考えなければならないのは粗飼料の増産ではないかというふうに思います。これは方向ということでございますので、穀物飼料の方は一切日本でやってはいけないということを言っているわけじゃありませんが、方向からいえば、粗飼料が重点的にやられるべきじゃなかろうか、こういうふうに思っております。  それから第二点の、日本の和牛の精液が外へ行きまして、そして日本で育てております肉牛に近い牛肉が海外から輸入されたときに一体どう対抗するかという問題でございますが、恐らく和牛を向こうで育てるといたしましても、粗飼料だけで育てたのでは日本的な牛肉にはならないはずだと思います。そこには、やはり日本でやっておりま すような穀物肥育期間を日本と同じように延ばさなければならない。そうしませんと、日本の牛肉に太刀打ちできるような肉質にはならないのだろうと思うのです。  ところが、そういうふうになりますと、穀物の価格は、アメリカでやりましてもカナダでやりましても、日本は幸か不幸か完全に自由化して関税をかけないという制度をとっておりますので、日本で使う穀物飼料の価格とカナダ、アメリカ、オーストラリアで肥育農家が使う穀物の価格がそんなに差がないということになります。多少の差はありますが、それは運賃と日本で今後問題になります関税とで対抗し得る性質のものではなかろうか、つまり、日本的なやり方をカナダがまねをすればするほど向こうで持っていたメリットがなくなってくる、そして日本の生産に近づいてくる、私はこういうことじゃないかと思います。そういう意味で、いたずらに日本がだめだ、だめだという不安は農家の方に持っていただかないように御啓蒙いただければありがたい、私はこのように思います。
  39. 水谷弘

    ○水谷委員 お忙しいところ、ありがとうございました。  以上で終わります。
  40. 菊池福治郎

  41. 川端達夫

    川端委員 参考人の皆さん、お忙しいところ、ありがとうございます。また、先ほどは貴重な御見識を御披瀝いただきまして、ありがとうございました。ふだんは、日本の畜産振興のために懸命の御努力をいただいていることに敬意を表したいと思います。  非常に限られた時間でありますので、かいつまんで御質問させていただきたいと思うのですが、先般来までは、日本の畜産を守るために可能な限り自由化すべきでないというお立場、我々もそうでありました。自由化に反対をしてまいりました。しかし、諸般のいろいろな情勢の中で、政府も御努力をいただいた中で今日のような状況になった。そういう中で、今回の法案自体はいわゆる緊急対策としてとられたということでは、一刻も早く成立させるべきであると思うし、皆さん方もそうであったということで安心をいたしたわけですけれども、今現に生産をしておられる現場の方々を中心として思っておられることは、いわゆる先が見えない、このまま続けていってどうなるのだろうかということが一番の不安であるというふうに理解をしているわけです。幸いなことには、牛肉の消費自体はこれからもふえるであろう、そう落ちていくという産業ではない、そういう意味では環境的には恵まれているということが一つだけあるのだなというふうに思っているのですが、一番初めに並木参考人にお伺いをしたいのです。  先ほどもお触れをいただいた部分でもあるので再度になりますが、今日の事態が、いわゆる自由化の序盤戦としてもう既に始まっているんだ、そういう中で輸入肉と国産肉がそれなりにすみ分けを今一部始めている、しかし将来的には変わっていくのではないか、こういうふうな御意見だったわけですけれども、需要の見通しとそれから価格の面でそういうすみ分けが進んでいき、あるいは先ほどの御議論の中でも、アメリカもオーストラリアもそれなりに日本人の嗜好に合わせたようなものを一生懸命つくろうとしている、そういう面ではすみ分けというのも必ずしも楽観を許さない。そういう中で国民が求めている、広く一般的に言えばより安くということと、それから品質的には日本人の好みというものがある。そういう中で、どういう状態で日本の畜産というものが輸入肉と共存する中で基盤を確立していくのか、どういう姿にあるべきなんだろうか。  これにはいろいろあると思うのですね。価格の問題それから品質の問題。一部には、これからは牛肉もたくさん食べられるようになると、健康食品ですが、余りそんな脂身なんというのはむしろ好まなくなるのだというふうに、強気のことを言う外国の人もいるわけです。そういう意味で品質の問題、それにかかわるものとしては価格とか飼料あるいは規模、そういうものがあると思うのですけれども、要するに、畜産農家の方々が先にどういう形に持っていけばそれなりに成り立つのかが全くわからないということが、今の一番難しいところだと思うのです。そういう意味で御専門のお立場から、主として価格差の問題あるいは品質の問題、それをカバーする部分での経営規模、飼料等々のあり方という部分に関してはどのようにお考えか、ちょっと概括的にお聞かせをいただきたいと思うのです。
  42. 並木正吉

    並木参考人 私も、正確にこうだという結論を持っているわけではありませんけれども、漠然とした判断を申し上げます。  先ほども申しましたように、輸入牛肉は、現状では外食と加工仕向けの方に七〇%以上回っていると思います。家計仕向けの方に回っているのはせいぜい三〇%。供給されます牛肉の中で、国産牛肉の比率は現在では三分の二近くを占めておりますので、家計消費という形で消費している牛肉に限りますと、輸入牛肉の割合はせいぜい一五%、圧倒的に国内産の牛肉ということになっているわけです。  この点は、先ほど申しましたように恐らく三つの理由がありまして、一つは、小売屋さんの解凍の技術がまだうまくない、入ってくるものがフローズンのものが多いということが一つ。それから消費者が、外国から入ってくる牛肉をうまく食べる料理法についてふなれである。例えば、シチュー肉で食べる技術がもっと普及しておれば、外国から輸入される牛肉をもっと安く、うまく利用できると私は思うのですけれども、そういった習慣がまだ普及してはおらない。それから三番目には、畜産振興事業団の価格安定を図るという政策の目的からそうなっていたわけですけれども消費者の好むロイン系が比較的少なかった。そういうことで小売店では、輸入牛肉価格と国産牛肉との間にかなり大きな格差があって、輸入牛肉価格を下げれば下げるほどその格差が広がってきた。つまり、輸入牛肉価格を下げてもホルスタイン種は大体横ばいで、和牛牛肉の方は供給不足という点もあるのですが、むしろ一貫して上昇を続けてきた。その格差が非常に大きくなってきたというのが現状だったと思うのです。  ところが、外食産業とか加工食品産業になりますと、海外から入ってまいります輸入牛肉をうまく料理して、付加価値をつけて売る技術があるわけですね。ですから、そこでは国産牛肉と比較的競合しないでそこのよさを発揮できるものですから、先ほど申しましたような仕分けが行われたんだと思うのです。ところが、これから先、輸入牛肉が非常な勢いでふえてきますので、外食と加工仕向けだけで賄い切れるかどうか、そこからあふれたものがいわば玉突き状に家計仕向けの方に回ってこないかというのが、自由化後ないしは現在の移行期間における一つの問題点だと私は思う。  そのときに、一体どういうことが起こるのだろうということを実は注意深く見ておきたいと思っておりますが、大きな方向とすれば、私は、国産牛肉は家計仕向けの方が中心であって、特選とか特上あるいは上という一部の非常にいいものは外食の方へ回るといったことはありますけれども、大きな傾向とすれば、国産牛肉は家計仕向けの方にいき、輸入牛肉は外食、加工仕向けにいく。そして、残念ながら消費が全体としてふえるのは、そしてふえ方の大きいものは外食と加工仕向けであって、今後牛肉の消費の一番ふえるところを残念ながら外国の方に預けておる。私のむしろ希望からいえば、日本の畜産がそこでも競争できるようなことを考えなければいけないのか、あるいはそういうふうにするには一体どういうことが必要なのかということも私の頭の中にありますけれども、しかし当面は、家計と外食、加工における国産牛肉と輸入牛肉との仕分け、すみ分けが大きい傾向だろうと思います。  以上でございます。
  43. 川端達夫

    川端委員 ありがとうございました。  そういう中で先が見えるといいますか、こうい う形で守っていこうということでいろいろな御努力を現場の方でおやりになっているわけですけれども、そういう部分の一つの示唆といいますか実例があれば、あるいはこういう観点からコストを下げよう、品質を向上させようというときに、いろいろな努力をしているけれども、こういうことをやっている、あるいはやろうとしたがいろいろな法的な問題で障害がある、あるいはもう少しこういう部分に政府としてバックアップがあればもっとやりやすいのにということがいろいろおありだと思いますので、救仁郷参考人、どうでしょうか。そういう部分で、例えばモデル的にこれから生き残る一つの姿をいろいろお考えになっていると思うのです。そういう場合にこういうことをやろうとしている、あるいはやっているということと、そのときに政府に対してもう少しこういうことを助けてほしいということはいかがでしょうか。
  44. 救仁郷義房

    救仁郷参考人 自由化を控えるということを前提にいたしまして、先生御指摘のとおり、私どもとしましては、交渉に入るまでに絶対自由化阻止という、これは組織の命題として運動を進めた経過がございます。しかし、それならば自由化が起こればどうなるのか、こういうことにつきまして、県の行政と私ども経済団体におきまして対策本部を結成いたしておりまして、いろいろ想定できる案件につきまして対応策を今練っている段階でございまして、まだ具体的にこうすればどうなるという個別の案件をまとめておりません。  大方の問題点についてはそれぞれ整理をいたしておりまして、それぞれプロジェクトチームを編成いたしておりまして、対応策について現在検討中でございます。今後とも、鋭意早い機会に結論を得まして、そういう方向を決定いたしたいという段階でございます。
  45. 川端達夫

    川端委員 横田町長さんにも同様の趣旨なんですけれども、実際に町でたくさんの方が従事をされておる。そうすると自由化までは、今まさに救仁郷さんおっしゃったように、それは非常に困るということで、とにかく何とか阻止したいという思いだったと思うのですが、現実にこういう流れに入ってきた。そうすると先を見なければいけないという状態、先ほど並木参考人の方からもどういうところで生き残っていくのかという一つの御示唆があったと思うのですが、そういう部分で町としてあるいは実際に、先ほども少し規模を大きくしていくようなケースをおっしゃいましたけれども、そういう部分で合理化の目標価格みたいなものを設定していろいろなお知恵を出されていると思うのですが、何かもう少し具体的なものがありましたら教えていただきたいのです。
  46. 横田修

    横田参考人 具体的な方策としましては、私ども申し上げましたように、やはり規模拡大して生産コストを下げるべきだ、これは原則論としてあります。  そのためにどうすべきかということでございますが、地域内の一貫生産体制、これはどこの県でもそうしておる。私ども生産県でございまして、一番悲しいことは、子牛のまま、原材料のまま売っておるということです。そして、それが松阪肉に変わっておる、神戸肉に変わっておるという現状でございます。こういうものを宮崎県——鹿児島県も相当やっていらっしゃいますが、私の県でもそれをやらなければいけない。私のところは今ほぼ三千五百の生産で、そのうち肉用牛も入っておりますが二千六百くらいの肥育をしておりますので、これは率からいいますと五〇%以上になっておると思いますが、そういうものをうんと拡大していく、そして生産肥育、そうしますとでき上がる肉牛も価格、コストが下がっていくということでございますので、そういう方策をとっていきたいというのが当面の問題でございます。  もうちょっと言わせていただきますならば、肉用牛というのは精いっぱいやって一年に一頭しか産みませんので、もし価格の変動でついえ去っていくということになりますと、この回復はなかなか難しいということを先生方も国民の皆さん方も知っていただきたいと私はお訴えしたいのでございます。豚とか鶏はすぐ回復ができますけれども、大動物はなかなか回復ができない。今高いというのも、五十七、八年に低落したそのあおりを食っているわけでございますので、こういう国民的な御理解をいただきますように、先生方も、国におかれましてもしていただきたいとお願い申し上げたいのでございます。
  47. 川端達夫

    川端委員 どうもありがとうございました。  時間が来たので終わりますが、国民の皆さんにとってあるいは生産者にとっても、生産者が見える、いわゆる食糧の安全性が確保されて安定的であるという部分で、しかも望ましい品質のときに合意のできる価格帯というのが、私は必ずあると思います。これは、必ずしも輸入物と同じであるということではないと思います。そういうところへ着地することが一番大事なことであるという部分で、私たちもこれからも勉強していきたいと思いますし、またいろいろと御示唆をお願いしたいと思います。貴重な御意見ありがとうございました。  終わります。
  48. 菊池福治郎

  49. 山原健二郎

    ○山原委員 共産党の山原でございます。  時間の関係で四名の方にお尋ねできない場合があるかもしれませんが、その点は御容赦いただきたいと思います。  最初に岩手朝倉参考人にお伺いしますが、御承知のように岩手県の江刺におきまして、安部さんという方が牛肉・オレンジの自由化の受諾が決まりましたときに自殺をされた事件が起こっておりまして、私の党の藤田委員がその直後におうちまでお伺いしたのですが、そのときの地域の方々の安部さんに対する評価も、江刺では模範的な繁殖農家で立派なリーダーでございました、こういうふうに言っておられますが、こういう経営をしておる方までが大変不安を感じてこういう悲惨なことになったわけでございますけれども、この牛肉自由化が国内肉牛生産にどれほど深刻な影響を及ぼすかということについては、参考人の皆さんが一番よく御承知のことと思います。課徴金制度も拒否されまして、さらに関税障壁も年々引き下げるということでは、少々の国内対策をもってしましてもこの深刻な打撃を防ぐことができないのではないか、こういう心配もありますが、こういう点について随分御討議をなさっておると思いますけれども、最初にちょっと御感想をいただきたいと思うのです。
  50. 朝倉輝夫

    朝倉参考人 自由化決定に伴いまして農家の中に不幸な事態を生じたことを非常に遺憾に思っております。このお話の出ました安部さんに限らず、県内生産農家は、自由化決定のとき大なり小なりそれぞれ衝撃を受けられたことと思いますが、いずれ自由化決定いたしまして、これから国際競争力のある生産性の高い繁殖経営なり肥育経営という体質を築き上げていかなければいかぬということで、今、農家もそうでございますが、行政機関、農業団体、挙げて取り組みを始めている最中でございます。  何せ今先生おっしゃったように、先行き不透明の中でどういう手を講じていけばいいかというのはなかなか妙案が出ないわけでございますが、さしあたり私ども、担当しております価格安定業務、実施機関でございますので、そういったところに寄せられます意見は、保証基準価格にしろ、今度設定される合理化目標価格にしろ、繁殖農家のみならず肥育農家にも希望を持たせるような価格で決めていただくように国にお願いしてくれ、こういう切実な声がたくさん寄せられております。そういった面でいろいろと御配慮をいただきたい、かように考えておるところでございます。  以上でございます。
  51. 山原健二郎

    ○山原委員 次は、ちょっとややこしい質問ですが、町長さんをされておられます横田参考人にお伺いしたいのです。  この牛肉・オレンジの自由化につきましては、各党ともずっと反対をしてきたわけですね。今回自由化決定する際に、こういう公式文書が出ております。ヤイター米通商代表あての松永駐米大 使の書簡の中に、「国会の承認を含む所要の国内手続に従うことを条件として」措置されると明記されています。すなわち、その国会の承認を受ける国内手続というのが、今回の畜産物価格安定法の一部改正という出ている法律なんですね。これを承認するかしないか、もし国会がこれを承認しなかった場合には、政府は自由化措置がとれないという公文書になっているわけです。したがって、自由化措置までまだ行っていない、この法律が通りました暁に自由化決定する、こういう仕組みになっているわけですね。この点が今まで余り論議されていませんが、こういった問題について、たくさんの畜産農家を抱えておるおたくの町において、そういう論議が何らかなされているのかどうか、その点ちょっと伺ってみたいのです。
  52. 横田修

    横田参考人 私どもも今までは、でき得るならば今のような状態を堅持していただきたいというのが率直なお願いでございました。しかしながら、私どもがそう申し上げるのは僣越でございますが、すべてが世界の流れの中のことでございましょうから、今はいたし方ないと感じておるということでございます。そういうやさきに、いろいろな今要望申し上げましたようなこともしていただきたい、そして、国も対策としてかくかくしかじかのこともしていただくということでございますので、私たち自助努力と国の施策をあわせて私たちの生きていくことを開拓していきたいというのが、今の率直な考え方でございます。
  53. 山原健二郎

    ○山原委員 全国一の肉用牛飼育頭数を抱えております救仁郷会長さんに伺いたいのですが、私の党も鹿児島にも調査に参りまして、行きましたときには大変お世話さまになっておりますが、全県的には一、二頭飼いが二万戸近くあり、それから肝属郡というところでは三、四頭飼いが八割。ここでは、農家が一年でも二年でも長くやってくれるように予算を組んで、高齢者に協力員を派遣したり、さまざまな御苦労をなさっているわけですね。こういう実情にもかかわらず、以前にも増して規模拡大による合理化、コスト低減が強調されているわけでございますが、この点について、現在の平均経営規模が三・三頭あるいは四頭以下の経営規模の割合が八四%、先ほどの御説明とちょっと違うように思いますが、和牛繁殖経営零細性が存在しているわけですね。これを簡単に克服できるのか。こうした現実を無視した規模拡大の強調は、小規模あるいは零細農家の切り捨てあるいは地域の農業と経済への深刻な打撃になるのではないかと心配せざるを得ないのでありますが、この点について救仁郷会長の御意見を伺いたいのです。
  54. 救仁郷義房

    救仁郷参考人 実態調査等を踏まえていただきましてありがとうございました。そういうことを踏まえての御質問でございます。  ちょうど六十二年度におきます調査によります平均年齢が、高齢化の傾向にはありますものの、大体五十五・九歳、五十六歳というふうに調査をまとめておるところであります。飼養頭数の動向につきましては冒頭申し上げたとおりでございまして、非常に零細であることは依然として続いておるところでございます。先ほども申し上げましたように三万七千四百戸、前年対比戸数においては九五・七%、こういう減少傾向にございます。一戸当たりの飼養頭数にいたしましても三・三頭、こういう状況にございます。  しかし、幸いにいたしまして、我が鹿児島県は黒毛和牛産地でございまして、子牛価格あるいは牛肉につきましても横ばい、こういうことで堅調に推移をいたしております。もちろん、ことしから六万トンずつの枠の拡大が三年続いてあるわけでございますけれども、初年度のことしにおいてすら、果たして六万トンの枠の拡大がどのような影響にあるのかということにつきましても、実態がまだ把握できていない状況にございます。そういう背景の中で、幸いにいたしまして、先ほど申し上げますように、子牛価格なり牛肉枝肉価格が横ばいに推移しておる。子牛価格は、頭数の減少ということもございましてある程度上昇傾向にございます。余り心配したほど今影響が出ていない状況でございますので、これらにつきましても、先ほど申し上げましたように、今後どのような形で自由化あるいは枠の拡大影響してくるのかというのをチームによりまして調査中でありますし、これに対します対応策を模索をいたしておるところでございます。  したがいまして、場合によりましては、今までアメリカから来日された観光団なりあるいは仕事でおいでになりました方々、日本におきまして和牛肉を食べられて、非常にうまい肉だという評価を受けたということもお聞きいたしております。今後はこういうことを含めて、逆にアメリカに、非常に金持ちの皆さん方に日本の和牛を食っていただくような輸出対策についても、これは政府におかれましても一応予算措置も考えていただいておる、また、そういう市場の施設についても検討いただいておるというふうに考えておりますので、その面につきましても十分な御配慮をいただければ大変ありがたい、このように考え、私どもといたしましても、ただ単に輸入におびえることなく、今度は輸出ということにも意を配りながら、生産性の向上、あわせて生産者意欲を向上させる努力もいたしたい、このように考えておるところであります。  以上でございます。
  55. 山原健二郎

    ○山原委員 私も、いたずらに不安をまき散らす意味でお尋ねしているわけではありませんが、今度調査をしまして、どこへ行きましても和牛は生き残れる、うちは生き残れる、また生き残る方法を探しておるのだという声が一番多いのですね。ただ、不安がつきまとうことは事実でございまして、今回もきょうの日本農業新聞に大きく、「和牛精液すでに米国へ」というのが出ておりまして、先ほども御質問があったわけですが、そういう情勢の中ですから大変だと思いますが、頑張っていただきたいと思います。  最後に、政府の説明によりますと、牛の保証基準価格を将来的には合理化目標価格水準に順次引き下げていくことがこの法案の前提になっています。国際価格動向や生産の合理化等を踏まえ決められる合理化目標価格が、非常に低い水準に設定されていくことはほぼ明らかではないかと思います。したがって、保証基準価格も下げられていくとなりますと、これでは繁殖農家を守ることはできないのではないかという不安が生じるわけでございます。何遍も申しわけありませんが、この点についても救仁郷さんのお答えをいただきたいのです。お考えをいただきたいのです。  それから最後に、岩手朝倉さんに、ぬれ子が子牛価格安定事業の対象外になっておるということについて、どういう御見解を持っているかお伺いをしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  56. 救仁郷義房

    救仁郷参考人 お答えを申し上げますが、全く先生御指摘のとおりの心配があるわけでございまして、やはり肉牛の生産、これは素牛の供給によって肥育が成り立つ、こういうことでございまして、先ほど並木参考人からも御指摘がございました。現実におきましては、牛肉価格が堅調に推移しておる関係から、しかも今出荷されております枝肉は安い時期の素牛でございましたからどうにか採算割れがない、こういう状況にございますが、現在の価格の特に和牛の素牛を肥育しまして出す段階になりますと、今出ております価格よりも素牛分だけが相当高くついておる、こういう状況にございます。  やはり生産肥育との因果関係というのは、生産だけが潤って肥育がダウンするという形では相関関係の中で成り立っていかないのも事実でございます。そこにおいて、御指摘のとおり、保証基準価格というものの決まり方、このいかんというものが将来の日本の牛肉確保について大きく影響をいたすわけで、生産地帯肥育地帯との兼ね合いの中でより効率的な価格の決め方というのが非常に重大でございまして、私どもといたしましても、冒頭御意見を申し上げましたように、現行水準を上回る形で決定をいただきたい、こういう ふうに御要請を申し上げた次第でございます。
  57. 朝倉輝夫

    朝倉参考人 乳用種のいわゆるぬれ子の問題についての考えというお尋ねでございましたが、このぬれ子の問題は、国におきましてもぬれ子の現在の取引実態に応じて決められた措置だと考えておりまして、今回の対策の中に、先ほども申し上げましたが、従来の乳雄のほかに乳離も加えられたということは従来より一歩前進であるというふうに、私受けとめておる次第でございます。
  58. 山原健二郎

    ○山原委員 どうもありがとうございました。
  59. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十九分散会