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1988-10-20 第113回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月二十日(木曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 宮下 創平君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       河野 洋平君    宮里 松正君       村井  仁君    谷津 義男君       井上 和久君    中村  巖君       安倍 基雄君    浦井  洋君       柴田 睦夫君  出席政府委員         総務庁長官官房         長       山田 馨司君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         総務庁行政管理         局行政情報シス         テム参事官   重富吉之助君  委員外出席者         参  考  人         (元内閣法制局         長官)     林  修三君         参  考  人        (一橋大学教授) 堀部 政男君         参  考  人         (弁 護 士) 渡辺  脩君         参  考  人         (国民背番号         制に反対しプラ         イバシーを守る         中央会議事務局         長)      秦野 八重君         内閣委員会調査         室長      岩渕  静君     ───────────── 委員の異動 十月十九日  辞任         補欠選任   井上 和久君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   有島 重武君     井上 和久君 同月二十日  辞任         補欠選任   鈴切 康雄君     中村  巖君   川端 達夫君     安倍 基雄君 同日  辞任         補欠選任   中村  巖君     鈴切 康雄君   安倍 基雄君     川端 達夫君     ───────────── 十月十九日  スパイ防止法制定に関する請願亀井善之紹介)(第一七二三号)  恩給の改善に関する請願山本幸雄紹介)(第一七六七号)  同(後藤田正晴紹介)(第一八六三号)  同(三木武夫紹介)(第一八六四号)  同(森下元晴君紹介)(第一八六五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第八二号)  統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第八三号)      ────◇─────
  2. 竹中修一

    竹中委員長 これより会議を開きます。  第百十二回国会内閣提出行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案、及び統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人皆様から意見を聴取することにいたしております。参考人として、元内閣法制局長官林修三君、一橋大学教授堀部政男君、弁護士渡辺脩君及び国民背番号制に反対しプライバシーを守る中央会議事務局長秦野八重君に御出席を願っております。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。議事の順序は、まず参考人方々から十分程度御意見を述べていただき、その後各委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため参考人方々に申し上げますが、御発言の際には、その都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は、委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それではまず、林参考人にお願いいたします。
  3. 林修三

    林参考人 私、林修三でございます。  本日は、ただいま議題になっております行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案、これについて私の意見を申し述べたいと存じます。  私は、この個人情報保護の問題については、過去十数年来いろいろな意味でタッチしてきております。その間には外国事情調査にも参ったような経験がございます。それからまた、私は、日本法律制度についてはずっと長い間それに携わってきている、そういうような今までの経緯から申しまして、この法案について若干の御意見を申し上げたいと存ずる次第でございます。  まず、私の考えております我が国における個人情報保護対策あり方について申し述べたいと存じます。  近年の我が国における電子計算機利用及び通信技術発展に伴う情報化進展はまことに目覚ましいものがございまして、国民生活に一方で豊かさと便利さをもたらしていることは疑いのないことでございますが、反面、いろいろな社会的問題を生じさせていることもこれは事実でございます。  特に、電子計算機による個人情報処理の急速な拡大は、国民の間に、自己情報が予期しない形で収集され、あるいは蓄積され、利用され、また提供されているのではないかというような不安感や、個人権利利益の侵害のおそれを生じさせるというような事態も若干起こっておりまして、その保護対策必要性が各方面から指摘されておることは御承知のとおりだと思います。  諸外国では、昭和四十八年、今から十五年前でございますが、一九七三年でございますかにスウェーデンがデータ法をつくりました。これが国レベルでこういう個人情報保護に関する法律制度をつくった最初の例だと思います。続いて、アメリカが連邦法をつくったようないきさつになっております。その後昭和五十五年に、一九八〇年でございますが、OECD理事会勧告OECD加盟各国に出されまして、この問題についての立法化勧告したことは御承知のとおりでございまして、現在までにOECD加盟国二十四カ国のうちで十三カ国においてこれに関する法律が制定されております。  このOECDのガイドラインを実施するに当たりましては、具体的にどのような措置を講ずるかについては、OECDの方でもその国の法律制度あるいは国民性伝統などの違いによる加盟国の裁量の余地を認めております。各国保護法制を見ましても、国によって異なっている面もいろいろとございます。したがって、我が国保護法制をつくるに当たりましても、諸外国法制をそのまま日本に持ってくるということにはいかない、日本のいろいろな法律制度の問題あるいは国民性の問題あるいは伝統などの違いがございますから、我が国として、我が国事情にマッチした法律をつくる必要があるかと思います。  したがって、この制度化に当たりましては、個人権利利益保護することを第一の目的とするということは言うまでもございませんけれども、これとあわせて我が国行政運営の実態や保護措置実効性、さらには今後の行政情報システム発展形態をも考慮すべきだろうと存ずるわけでございます。  ここで少し、いわゆるプライバシーと言われているものの保護個人情報保護との関係について、私なりの意見を申し上げたいと存じます。  プライバシーという観念は、我が国においては現在実定法の上ではまだ取り上げられておりませんで、専ら学説あるいは判例の上で論じられているものでございまして、その内容はまだ必ずしも明確になっておるわけではございませんが、一応他人にのぞき見されたくない自分に関する事柄他人にのぞき見されない権利ないし利益といったものと考えていいのじゃないかと思っております。一方、この法案行政機関の保有する個人情報電子計算機処理に当たっての基本的事項を定めるものでございまして、いわゆるプライバシー全般についての保護対策を講じているものではございません。したがって、この法律案で世間で慣用されているプライバシー保護という用語を使わずに「個人情報保護」という言葉を使っているのは、より正確であり、また適切ではないかと思っております。  また、電子計算機処理が手作業、いわゆるマニュアルの作業処理には見られない際立った特徴を有していることは申すまでもございません。そういうことや、行政情報行政運営の基盤として利用され、全国民生活に直接の関係を持つものとして特に対策を講ずる必要性が高い、そういうことを考えますと、この法案がその対象行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報、これに限っていることは適切ではないかと存じております。  なお、このような法律をつくることは、我が国においては実は新しい、ある意味で画期的な試みでございまして、こういう法案をつくるに至られました政府の努力に対しては非常に評価すべきものがあると存じております。  以上のような基本的な認識からいいまして、この法律案内容は全体的には私は妥当なものだと思いまして、賛意を表する次第でございますが、この法案について各界からいろいろな意見が出されており、当委員会でもいろいろの御調論がなされていることを私なりに承知しております。それらの議論のされていると私が承知している主な点について、以下五点ばかりについて私の意見を申し述べたいと存じます。  まず、本法律案目的規定でございますが、目的規定につきましては、行政運営を優先する法案だというような御批判もあるようでございます。しかしこれにつきましては、OECD勧告プライバシー保護と経済及び社会発展に貢献する情報の自由な流通との調和目的として出されたものであるように、我が国制度化に当たっては、国民一般利益につながる行政サービスの向上あるいは行政運営効率化に不可欠な行政情報システム発展にも資するものとする必要がございますので、この法律案行政運営必要性それから個人利益保護ということを両方二つ目的として掲げていることは適当なのではないかと私は思うわけでございます。  次に、第四条の保有制限について申し上げます。  これに関して収集制限法律の上で明確に規定すべきであるというようなことが言われておるようでございますが、これにつきましてはOECDにおいてもいろいろ議論がございましたようで、いわゆるセンシティブ情報収集制限を行うことが望ましいとの意見がある一方、本質的にセンシティブ情報というものはない、あるいはその定義が非常に難しい、その利用処理形態においてある情報センシティブ情報になるというような意見がございまして、センシティブと万人が認めるような情報を定義づけることは非常に困難むしろ不可能であると言われております。そういう意味で、この法律案個人情報全般を一応対象として保有制限をかけることによって、実質的にいわゆるセンシティブ情報をも含めて個人情報収集を制限するという手法を使っていることは適切ではなかろうかと思います。  次に、この法律案の中核になっております個人情報ファイルを保有する場合についての総務庁に対する事前通知あるいは公示あるいは開示請求制度及びその適用除外事項について、意見を申し上げます。  これにつきましては、各種の適用除外が非常に多過ぎるのではないかという意見も出ておるようでございます。しかし、法案を見てまいりますと、事前通知については、国の安全に係るもの等極めて秘匿性が高いもの、短期間に消去されるもの等改めて通知し公示することが必ずしも必要でないものについて適用除外がされておるわけでありまして、今申しましたような適用除外が多いという批判適用除外事項は少ない方がいいという考え方があるわけでございますが、しかし、殊に行政関係の問題につきましてはある程度の適用除外は必要でございます。そういう意味においてはこの法案の定め方は一応適当だと考えていいのではないかと思います。  それから個人情報ファイル公示につきましても、公共の安全や秩序の維持等極めて公共性の高い事務に限って公示をしないことにしております。これもやむを得ないことじゃないかと考えます。  それから開示請求につきましては、本人利益あるいは公共利益を考慮して、例外的に開示請求ができない場合あるいは開示しないことができる事項法律上限定しておるわけでございまして、これも非常に事柄が多いように見えますけれども、内容を当たっていけば一々もっともなことだろうという気がいたしております。  それから政令委任規定についての問題があるようでございますが、政令委任規定では、一応各号に列挙した事柄に準ずるものということで、ある意味では政令で定めることの歯どめをかけておりまして、こういうことを書いておけば、前の各号に列挙したものと非常に離れたものまで政令で書くということはできないはずで、これはこれでいいのじゃないか。それで、法律に全部列挙できない事項があることはやむを得ないことだと思います。こういう政令委任事項を置くことも必要だろうという気がいたします。  以上、個人情報ファイル事前通知公示あるいは開示請求の各段階における適用除外は、公共利益とか本人あるいは第三者の利益、そういうものに配慮されているものでございまして、いずれも必要最小限度のものと考えていいのじゃないかと思っております。  それから、この法律案においてのいわゆる訂正申し出の問題でございますが、この訂正申し出について、訂正請求権という形にすべきではないかというような御議論も大分あるようでございます。これは、この法律案もとになります要綱に私も関係いたしましたけれども、総務庁の中の研究会議論したときにもいろいろ意見のあったところでございます。しかしこれにつきましては、行政処分の基礎となる個人情報の誤りについては既存の行政不服審査法あるいは行政事件訴訟法というような行政争訟制度がございまして、この法律案により訂正請求権請求者側権利として認めて、それを訴訟等で争うことを認めますと、個人情報について二重の争訟制度が併存することになりまして、そこに若干法律技術的にも問題がございます。また、この法案では第五条に正確性確保義務が規定されておりまして、訂正申し出をした結果に不服がある場合には再調査申し出もできるようにしてございますので、これでいいのではないか、こういうのが適切ではないかと思うわけでございます。  それから最後の論点として、民間部門の保有する個人情報保護の問題がございます。この法律案行政機関の保有するものだけを取り上げておりますが、私も将来やはり民間部門の保有する個人情報についてもいずれ立法化が必要じゃないかと思っております。ただ、民間部門においては営業の自由というようなこととの調整が必要なことなどいろいろなもっと検討すべき問題もございますので、直ちにこの法律案に盛り込むということは必ずしも適切でもございませんし、それをやっておりますと非常におくれるということもあるのではないかと思います。今後、この問題については、政府でそれぞれの関係省庁が早急に検討してその措置を考えてもらうということにしてもらいたいと思っております。  結論として申しますと、我が国の急速な情報化進展あるいは個人情報保護をめぐる国際的な動向などを見ますと、政府案の一刻も早い成立とその早期施行が非常に大切ではないかと思いまして、これをぜひ実は私たちも念願する次第でございます。  ただし、この法律案我が国においては全く新しい性質のものでございますので、その運用状況や今後における情報処理あるいは通信技術の発達、国民意識の変化などに対応して、常に時代に合ったものにしていく必要はあると存じます。  そういう意味において、この法律案が現在の我が国社会において個人権利利益保護し、高度情報化社会への発展あるいは行政信頼性確保のために不可欠のものであるということの意味において、国会ではひとつぜひともこの法律案を早く成立させていただきたいと存じます。また、その成立の暁においては、政府がその適正、厳格な運用に努められることを希望する次第でございます。もちろん、先ほど申しましたように、この法律案は新しい分野に関するものでございますから、この法律案が施行された後において、やはりその運用状況等を見まして、将来それぞれの時期に合った対応、これは必要なことだろうと思うわけでございます。  以上、この法律案について賛成の立場から意見を申し上げました。どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 竹中修一

    竹中委員長 ありがとうございました。  次に、堀部参考人にお願いいたします。
  5. 堀部政男

    堀部参考人 一橋大学堀部政男です。  私は、個人情報保護法につきまして、研究室研究を続け、また行政機関における検討にも参加し、立法化必要性を主張してまいりましたが、日本でも個人情報の取り扱いに関するルールができることは、現状と比べまして大きな前進であると考えますので、結論的には、この法案早期成立することを希望します。  私は、過去約三十年間にわたり、断続的ながら、プライバシー個人情報について、外国にも出かけたりしまして研究を進めてまいりました。特に、欧米諸国における個人情報保護に関する法律等国際機関勧告条約等世界的潮流研究するとともに、それらを踏まえた理念論を展開しまして、個人情報保護について日本でも立法措置をとるべきであるという考えを著書、論文を通じて、あるいはその他のさまざまな機会を通じて表明してまいりました。  また、昭和六十年七月から六十一年十二月にかけて開かれました総務事務次官行政機関における個人情報保護に関する研究会にも出席いたしまして、日本行政の方式、現行法との整合性との関係意見を闘わせましたし、また関係省庁意見も聞きました。これらを総務庁行政管理局で整理いたしましたのがこの文書でありまして、「行政機関における個人情報保護対策の在り方について」というのがもと文書の題であります。この総務庁研究会では私は研究者立場でいろいろ意見も申し上げました。そこでやはり日本行政やり方とか現行法との関係につきまして相当意見交換もいたしましたので、私にとりましてはそうした問題を考える大変よい機会であったわけであります。その具体的内容幾つかにつきましては後に述べますが、この総務庁行政管理局のまとめの文書は、研究会における私の意見等も踏まえたものであります。  総務庁では、この研究会意見の整理をもとに素案を作成しまして、各省庁との協議等を重ねて法案を作成いたしました。そのプロセスにつきましては新聞報道等によってある程度まで知っていますが、総務庁研究会における関係省庁等意見を直接耳にした立場からしますと、よく法案がまとまったものだという感じを受けましたし、閣議決定にまで至ったことも、よくここまで来たものだという印象を受けております。個人情報保護について明確なルールがない現状と比較いたしますと、ルール化することは大きな前進であると言えます。特に、自己情報本人に関する情報についての開示請求権という、国の行政機関にとりましては全く新しい権利を設けることについては、かなり強い反対がありました。このことを考慮いたしますと、なおさらそのように言うことができます。  私は、総務庁研究会立法化必要性を含め種種意見を述べてまいりまして、間接的にはこの法案にコミットしてきたわけでありますので、私の個人的見解とすれば必ずしも十分でない点もありますが、結論的には、この法案早期成立することを望んでいます。研究会における議論等を踏まえ、また私の研究室における研究などを踏まえまして、少し具体的に述べてみることにいたします。  まず第一に、今回の法案に盛られているような個人情報保護制度は、日本の国の行政機関にとっては全く新しい、前例のない要素を含んでいるということであります。  プライバシー保護ないし個人情報保護という言葉行政機関の多くが念頭に置きましたのは、現行法にあります公務員の守秘義務規定による保護でありました。なぜ守秘義務規定があるのに新しい制度が必要なのかという疑問はしばしば表明されたわけであります。欧米諸国法律でつくられました個人情報保護制度は、個人情報収集から消去に至る一連の過程を定めることによりまして保護を図ろうとするものであります。したがいまして、守秘義務規定によるものというのはその一部をなしているにすぎません。日本行政はこのような新しい制度を必ずしも予定していたわけではありません。しかも一方で、臨調等にもあらわれておりますような適正、円滑な運営を図るということが重要な課題にもなってまいりました。この個人情報保護制度は、そうしたものにある程度ブレーキをかけることになる側面も持っております。そのため、個人情報保護制度行政の適正、円滑な運営とをどのように調和するのかということが大きな問題になってまいりました。  この法案は、全体として見ますと、その調和を図ろうとしていると見ることができると思います。我が国個人情報保護制度に、またその議論に大きな影響を与えておりますOECD理事会勧告も、一方におけるプライバシー保護、他方における情報の自由な流通という基本的な価値をいかに調和させるかという観点からまとめられていることを改めて思い起こす必要があろうかと思います。  第二に、今回の法案で構想されているような個人情報保護制度は、行政のあらゆる分野関係があるということです。換言しますと、これはすべての行政機関対象とするという制度であります。一方、行政内容は千差万別でありまして、この制度に直ちに対応することができるものとそうでないものとがあることがわかってまいりました。そのため、ヒアリングをしておりますと幾つかの省庁から、他の省庁はともかく自分のところは全面的に適用除外されるべきものであるという意見がかなり述べられたと記憶しております。総務庁研究会では、そのような省庁に対しまして、欧米諸国における制度等を説明しまして、例外があるべきでないことを強調いたしました。今回の法案は、全面的適用除外を主張した省庁をも対象にしております。そのため、部分的適用除外で対応するという結果になったものと考えられます。これは全省庁対象とするためにはやむを得ない措置と思いますが、しかし、こうしたものは厳格に運用されることを希望いたします。  第三に、個人情報保護制度がこのような性格を備えている関係上、従来の行政やり方現行法とのコンフリクトが非常に大きい分野がはっきりしてまいりました。例えば統計医療教育等であります。  それぞれについて簡単に述べますと、まず、統計調査についてでありますが、統計調査に係る個人情報は専ら統計作成目的利用されるものでありまして、他の個人情報一般とは異なります。しかも、これは元来統計法という別の法律で扱われてきております。統計調査重要性については改めて述べるまでもありませんが、統計調査あり方についてはその専門家検討にゆだねなければならないと判断いたしまして、現にそのようにいたしました。また、医療関係個人情報につきましては、特に、患者自分に関する個人情報を記録したカルテ等開示を請求することができるようにするかどうか、これは非常に大きな議論になったわけであります。これも、医師と患者関係に多大な影響を与えるものでありまして、専門家検討が必要であります。さらに、教育関係個人情報についても、医療関係個人情報と同様な問題があります。これも専門家検討を要します。医療教育関係個人情報については、地方公共団体における議論にも参加して私なりに検討してみましたが、従来の慣行を変えるためには国民議論もしなければならず、この個人情報保護法の体系で一挙に解決することはできないのではないかと考えます。  この法案をめぐりましてさまざまな議論が行われておりますことは承知しております。それらにおいて必ずしも取り上げられていないと思われる点に一点だけ触れてみたいと思います。それは、欧米で議論され始めております第二世代データ法との関連であります。  欧米諸国におきましては、データ法運用の経験をもとにその改正が行われ、また改正の検討が行われております。一九七〇年代、さらには一九八〇年代前半に制定されたデータ法は、情報処理技術のうちでも大型コンピューターとの関係個人情報保護することに主たる関心がありました。ところが、情報処理技術や通信技術の面で、一九八〇年代になりますとかなりな発達が見られ、大型コンピューターとともにマイクロコンピューターなどが大きな役割を担うようになりまして、またネットワーキング化が飛躍的に発展するようになってまいりました。そのため、在来型の手法では対応できない面が出てきたわけであります。そこで、新たな対応策が模索されるようになりまして、在来型の法律を第一世代のデータ法と呼ぶといたしますと、第二世代データ法とでも称することができる新型の制度議論されるようになってきています。その内容はまだ必ずしも明らかではありませんが、例えば手続等の簡易化、分野別に対応策を変える特殊化、自主規制化、非公式なサンクション化というのはほぼ共通の傾向と言うことができます。審議中の法案の中にも、部分的ながら類似の傾向を読み取ることができると考えます。  本委員会で修正について質問等が出ていることも聞いております。国の行政機関にとりましても、また国民にとりましても、全く新しい、前例のない要素を含んでいる制度であるだけに、施行後の実際の運用の中でいろいろな問題が出てくることも予想されます。それらにつきましては、政府において何らかの形で検討し、逐次改善を図っていく必要があることを強調したいと思います。  以上で終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 竹中修一

    竹中委員長 ありがとうございました。  次に、渡辺参考人にお願いします。
  7. 渡辺脩

    渡辺参考人 私は、日本弁護士連合会、日弁連の立場から、今回の個人情報保護法案について意見を述べさせていただきます。  日弁連としては、この法案に関する意見書を本年の五月に出しておりまして、五月十八日には総務庁にも持っていったのですけれども、その際、総務庁側は、いろいろな状況から見てまず第一歩を踏み出すことが大事であって、それを大きなものに育てていきたいということを言っておられました。私たちとしても、その考え方自体には賛成なのです。何よりも、個人情報保護を名乗る法案が初めて出てくるわけでありますから、できる限り賛成したいという気持ちが正直なところ強かったのです。  問題は、この法案が本当に第一歩と言えるかどうかということだと思うのです。私たちは、法案内容を慎重に検討し、残念ながらとても第一歩とは言えないという結論に到達せざるを得ませんでした。これは私たちにとっても非常に残念な結論であります。なぜそうなのか、その理由を、時間の制約がございますので、以下五点ばかりにまとめさせていただきます。  第一点。総務庁は、収集制限の原則を規定したものとして、個人情報ファイル保有の目的を「できる限り」「特定しなければならない。」という規定を含んだ法案の四条を挙げたいようであります。しかし、これは私たちには納得できない説明です。  OECD理事会勧告の八原則あるいは我が国プライバシー保護研究会報告の五原則などを総合してみましても、収集制限の原則に目的明確化の原則が含まれていることは確かですけれども、それは絶えず適法かつ公正な手段による収集ということの裏づけがあってのことであります。少なくとも適法かつ公正な手段による収集の裏づけがあって初めて、目的明確化の原則はプライバシー保護に結びついていくものと考えていいと思います。そして、この手段というのは、少なくとも本人からの直接的な収集あるいは本人の同意に基づく収集あるいは本人への通知などを基本とするべきものだと考えます。この点が法案には欠けているのです。本人からの直接的な収集などを中心とする適正な収集手段というものを考えなければ、目的だけを明確化したところで権利保護に結びつかないのではないか。しかも日本国憲法は、思想、信条、信教の自由を保障し、それに干渉することを禁止しているのですから、本人に無断で収集すること自体が違憲、違法とされる個人情報が存在することは確実であります。  センシティブ情報の範囲、限界を画することはできないという議論があります。理論的には確かにそうかもわかりません。しかし、政策をつくる段階でどの範囲まで選択するかということはできるはずです。選択の問題は政策の問題としては可能だと思います。ですから、現にセンシティブ情報収集を禁止した立法例が存在しているわけです。まあその点について言えば、やる気があるかないかということが一番の問題なんだろうと思いますけれども、少なくともセンシティブ情報そのものには触れられないとしても、手段の規制について全く触れないというのでは、これは問題にならないのではないか。法案収集制限の原則を全く無視しているという批判は、その意味で正確なものであると私どもは考えております。  第二点。法案におけるシステム上の土台は、各行政機関による個人情報ファイルの保有、それに関する総務庁長官への事前通知、それから各行政機関の長による個人情報ファイル簿の作成、それに伴う告示、閲覧などのシステムです。  問題は、この事前通知やファイル簿作成の義務を免除する例外事項が大変多いということです。広いということです。あるいは不明確だということです。最終的には政令に委任するという条項が定められています。基準とされるべき除外事由自体が極めて不明確に定められているのですから、この政令への委任というのは実質的には白紙委任になるのではないかということを非常に心配せざるを得ません。  この点について私どもは、国民の目が届かないというだけではなくて、国家機関の中でさえ統一的な把握が不可能になるということであって、巨大なブラックボックスを合法化することになりはしないかという指摘をしております。どのような理由によっても、どこから見ても、そのようなブラックボックスを合法化することは許されないはずだと考えております。  第三点。自分情報に対する開示請求権訂正請求権は、個人情報保護法制の中でも個人参加の原則として不可欠のものであります。この場合、訂正請求権とは削除請求権も含むものとして私どもは論議しておりますけれども、法案十三条は開示請求権は認めましたけれども、十四条を見ますと、訂正請求権はついに認められませんでした。これは重大な欠陥であります。  訂正請求権に関することを一言申し上げておきますならば、既存の争訟制度に頼っていては実質的な救済は非常に難しいということです。行政の自由裁量の範囲を逸脱したものと認定されて初めて救済されるわけですから、よほど極端な場合でなければ救済されないのが実情でありますし、相当に時間もかかります。立証も大変です。何よりも、自分収集されたくない個人情報が保有されていて、それを削ってくれという要求をする場合、これは多分収集制限の原則と訂正請求権の具体的な規定がなければ不可能だと思います。間違ってはいないけれども集められては困るという情報、それを削れという要求はこの法案もとではできないだろうと思うのです。つまり、そういう点では救済の手段がない。これは個人情報保護法制のあり方としてはかなり大きな根本的な欠陥ではないかと言わざるを得ません。  開示請求権にもかなり問題があります。  第一に、ファイル保有の事前通知義務やファイル簿作成の義務が広い除外事由を持っているということですから、もともと開示請求権対象になるものがその分だけ狭くなっているということが言えます。それから、医療情報、教育情報など、初めから開示請求権対象から除外されているものがあります。さらに、請求があっても開示しなくてよいという不開示事項がまた大変たくさん列記されている。一々は申し上げません。ここでは第三者から収集した個人情報に関する不開示事項についてだけ申し上げておきたいと思います。  もともと、第三者提供の個人情報こそは本人のチェックが最も必要な情報であります。間違っているかもしれない、削らせなければならない情報かもしれない。ところが、法案十四条一項二号は、「保有機関と当該第三者との協力関係又は信頼関係を損なう」と認める場合には「開示をしないことができる。」と規定しております。本人のチェックよりも提供した第三者機関との信頼関係の方が大事だという考え方がはっきりと出ているわけで、これでは一体何のための開示請求権かと言いたくなるのであります。  第四点。利用制限の原則についても、法案は多くの欠陥を生み出していると言わざるを得ません。確かに、法案の九条一項を見ますと、「ファイル保有目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。」と規定していますけれども、この原則の例外もまた実に広範囲であります。行政機関の内部利用、それから他の行政機関への提供などがそれぞれ幅広く規定されているほかに、特別の理由のあるときはその他へも提供できると規定されているのです。九条二項の四号です。このその他へというのは当然民間も含むでしょう。つまり、どこへでも特別な理由があれば提供できるということになる。行政機関による個人情報利用と提供には、これらを総合してみますと、何をしても違法行為と言えるものがほとんどあり得ないということになるのではないか。  この法案には、個人情報に関する結合禁止の規定もありません。救済制度の面でも、実際的に効果のある方策が提案されているとはとても言えないと思います。  要するに、個人情報収集、保有、利用、提供、救済などのすべての面で、行政機関の責任と言えるものが少しも明確になっていない。罰則の矛先も開示請求者にだけ向けられております。本来は、個人情報収集、保有、利用する保有機関の側の責任が明確化され、その責任が果たされなかったときにその責任を追及するための手段として罰則がいろいろ考えられているわけですけれども、そこはどうも違っております。  なお、罰則については、罪刑法定主義の関係からいろいろな問題がありますけれども、少なくともここでは行政機関の責任に目を向けるという視点が欠けているということだけは申し上げておきたいと思うのです。  第五点。以上の点を総合いたしますと、法案は、個人情報に関する個人権利保護し、保有機関の責任を明確化するという個人情報保護法制の本来的な眼目を全部外してしまっているのではないかと言わざるを得ません。  なぜこの法案がそうなったのかということについて、私は次の二点を指摘しておきたいと思います。  一つは、法案の基本的な立脚点が人権保障ではなく、行政の円滑な運営に置かれているということ、二つ目、そのために、行政の広大な自由裁量を拘束し規制するような規定が全く導入されていないと言っていいこと、あるいはほとんどという言い方の方が正確かもわかりませんけれども、いずれにしても、行政の広大な自由裁量に制約を加えて権利保護を図るという、この発想がないと言わざるを得ないのです。これは、条文の文言だけの問題ではございません。今私が申し上げましたように、法案の実質的で全体的な構造と機能の問題であります。  OECD理事会勧告は、そのガイドラインの中で、加盟国に対して次のことを要求しております。「個人データに関するプライバシー個人の自由の保護のための法的、行政的又はその他の手続きあるいは制度を確立すべきである。」ということです。「個人データに関するプライバシー個人の自由の保護のため」というのが基本になるのです。そして、そのための「適当な国内法を制定すること」これが勧告の中身になっております。法案は、この勧告に沿わないものになっていると私たちは考えております。法案がこのガイドラインによって最小限とみなされるべき個人情報保護の諸原則をいわば全面的に突き崩すことになっていると思うからです。  あらゆる点から見て、法案には抜本的な手直しが必要だと思います。抜本的に手直しをしてください。その上で、マニュアルの個人情報やあるいは民間部門個人情報についても適切な法的保護を実現していくことが必要になっているということをつけ加えて、私の意見陳述といたします。  ありがとうございました。(拍手)
  8. 竹中修一

    竹中委員長 ありがとうございました。  次に、秦野参考人にお願い申し上げます。
  9. 秦野八重

    秦野参考人 秦野でございます。  私は、一九七二年からプライバシーを守る運動を続けてまいりまして、その中でプライバシー保護法制必要性というものを非常に痛感いたしまして、再三政府にも要請をしてまいりましたし、自治体に対しましても条例の制定を訴え続けてまいりました。  昨今のプライバシーに対する国民の意識というのは、私どもが運動を始めました当初から比べますと比べものにならないくらい大変高まっておりまして、私たちに対しましても、年金の振り込み通知がはがきで来るのはプライバシー上問題があるのではないかといったような御意見が多数寄せられておりますし、また、電話帳に電話番号を載せたくないという方も年々ふえております。  ちょっとデータが古くなるかと思いますけれども、二年ほど前のデータですと、東京二十三区の加入者の方の中で、電話帳に電話番号を載せないという方は平均しますと大体一五%、区によりましては二〇%を超えているという実態もございます。また地方でも、私が調査をいたしました新潟、長野の場合は平均八%程度の方が電話帳に載せないということになっております。  このような実態がございますので、私たちとしては、早く法律を制定していただきたいという立場から、本当はこの法案に対しまして非常に多くの期待をかけてまいりました。けれども、内容を見ますと、私どもの期待とは余りにかけ離れていいるということで、実は大変幻滅を感じているわけでございます。  私は、先生方がいろいろ問題点につきまして法文的におっしゃいましたので、少し実例的に、時間がございませんので特徴的な問題だけを挙げまして、問題点について申し上げたいと存じます。  郵便局に郵便配達のための台帳といいますか、原簿があると思います。その中で、一軒ごとのかなり細かいデータが記録されているというふうに言われておりますけれども、私たちは知らされたことも見たこともないわけでございます。間違っているかもしれないわけでございますけれども、わからないわけです。それが、今回の法案を見ますと、法案の中で、物品であるとか金銭を送付するような、あるいは業務上の連絡のための住所、氏名程度のものはファイルについて事前通知をしなくていいということに適用除外になっているわけです。そういたしますと、住所、氏名程度はしなくていいとおっしゃいますけれども、住所、氏名はその本人を確定するわけですから、非常に重要ではないかと私どもは思いますが、それはわからない。まして、そういうことを政府が言われると、現在民間で非常に乱発と言ってはなにかもしれませんけれども、出されておりますダイレクトメールなどというものは、大半がいいということになってしまうのではないか。私たちは、そのことによって個人情報の商品化がさらに拍車をかけられたらどうなるんだろうかという懸念を大変いたしております。  また、郵便局だけを取り上げるのは大変問題だと思うのですけれども、実際に保険の勧誘のために、出生届であるとか選挙人名簿であるとかあるいは住民台帳が使われているというケースを私どもは再三取り上げてまいりました。このようなことは目的利用ということになりまして、これを政府が率先されるということにも非常に問題を感じております。  また、昨今郵便貯金のキャッシュカードと民間のクレジットカードなどとの共用カードが非常にたくさんできておりまして、一月現在で約四十種近くあるように聞いておりますが、その場合に、民間ですと銀行協会のセンターであるとか信用情報センターであるとか、サラ金でもそうですし、クレジット関係でもそれぞれセンターがありまして、自分情報開示を求めますと、そこに行けば開示されるということになっているわけですけれども、今度の法案で郵便貯金に関するその種のデータの開示が求められるのかどうか。私は、法案を拝見する限りではそれはなかなか難しいのではないか。そうしますと、共用カードの中で民間だけに厳しい義務が課せられるようなことになりはしないのかなといったような、これは不安でもあるし、不公正でもあるかというふうに思っております。  警察でよく通報制度ということがされるわけですけれども、通報ということになりますと、第三者からの情報提供ということで、これは非常に不確実な情報になるわけでございます。皆様承知だと思いますけれども、先般グリコ・森永事件のときに、キツネ目の男ということでモンタージュの公開がございました。そうしますと、何千という方がそのキツネ目の男ということで通報しているわけです。ところが、今日に至るまでその犯人といいますか容疑者は明らかになっていないわけですから、いわゆるシロだったということになると思いますけれども、キツネ目だというだけで通報されたり、あるいは身辺が徹底的に調査されるということは非常に重大な人権侵害だと存じますけれども、その何でもなかったキツネ目の人たちというののリストは一体どうなっているのでしょうか。これは私どもはわからないわけです。もしその情報が残っていてひとり歩きをしていったらどうなるんだろうか、非常に心配が多いところでございます。  また、警察関係で申しますと、私どものところに非常に訴えられるケースとしまして、警察が世帯の調査を事細かくされる。一応理由は緊急時の連絡だというようなことをおっしゃっているようですけれども、皆さんは非常に嫌な思いをされておりますが、警察だから断れない、断った場合に何か報復されるのではないかといったような意見が私どもに寄せられてくるわけです。そうしますと、民衆のための警察といったようなことからは非常にほど遠いような状況が、国民の間ではそういう受けとめられ方になっております。これが世帯の場合ですと、まあ世帯の方がわかるわけですけれども、企業などの場合ですと、会社側が社員のリストをそのまま提供しているということになっておりまして、社員の方は御存じないということになるわけです。  こうしたような問題というのはどうなるのでしょうか。今回の法案を見ますと、犯罪の捜査であるとかあるいは予防するということの理由になればあながちそのリストは公開しなくていいんだということになっておりますから、私たちは全くそういった不安な情報の成り行きについて、あるいは間違っていたら大変なことになるのじゃないかと思いますけれども、わからなくなってしまう、全くブラックボックスに入れられてしまうのではないかという心配を非常にたくさん持っております。  また、先ほどもお話がございましたけれども、学業成績ですとか病院やお医者さんのカルテ、診療記録は本人開示をしないということが前提になって法案ができておりますが、現在学校というところを見てみますといろいろな調査が行われまして、生徒や保護者、父兄の細かい情報収集されているわけです。その中では、そのこと自体の中に非常に問題のあるケースもございまして、私どもは何回か問題にしてまいりましたけれども、非常にたくさん集められている。私たちが現在やっております調査の中で、学校における性格テスト、子供たちの性格をテストするといったような問題がどのように行われているかということで集めておりますけれども、その中には、一回に生徒に対して四十項目から多いところは二百項目までマル・バツ式で回答を出させまして、それを民間の企業によるコンピューターで処理をいたしまして、問題の性格があるとか問題児の可能性があるといったような判定を下しているわけです。そのことについて、生徒本人はもちろんのこと父兄にも知らせないからプライバシー保護になっているんだというような理解があるようでございますけれども、仮に皆様の御子弟がそのように、どのように判定されているかわからないということになりますと非常に問題ではないだろうか。私たちは大変心配をいたしております。  学業成績というようなものあるいは評価というものが全く本人に知らされないとすれば、むしろ不信感というものが募っていくのではないか。私はかつて教師の経験がございますけれども、そういうものを全部公開をして、まあ余計な調査はやる必要はないと思いますけれども、学業の成績などにつきましては、よく話し合ってコミュニケーションをとっていくということが信頼関係をつくり上げる一番重要な点ではないかというふうに考えております。  診療記録にいたしましても、実は私はこれは非常に不公平だしおかしいと思っておりますのは、本人に対しては非常に厳密にこれは知らされないということになるわけですけれども、実際にそのカルテがどのように現在処理をされているか。医療情報システムといったようなものを見ますと、カルテは集中管理をされまして、それを扱っていらっしゃる方はお医者さんでも看護婦さんでもなくて技術屋さんである、あるいはインプットをする場合にはアルバイトを使っているというケースが非常に多うございます。そういうところから情報が流れるのではないかと思いますけれども、私どものところに訴えられましたケースとしては、これはある国立大学の有名な附属病院なんですけれども、そこに入院をされた方が退院をされましたら、その途端に自分の病名に対する薬のカタログがどさっといろいろなところから送り込まれてきた。これは自分の病名が流れているのであるということで、その方は非常にショックを受けたということで私たちのところに問題を持ってこられたわけですけれども、こういったようなことがある反面、自分の命にもかかわるような内容について見せられない。コンピューターで処理する場合、あるいは最近ですとICカード化などということもありますけれども、絶対にその内容が間違っていないという保証はないわけで、仮に血液型が一つ間違って登録されていたとすれば、輸血などでは死に至るかもしれないというようなことがあるわけでございます。  事例はたくさん挙げたいわけですけれども、特徴的なものにとどめさせていただきますが、このように見てまいりますと、私たちの生活ですとか命ですとか、あるいは一生を左右するような重要な自分に関する情報が知らされないということが今回の法案の中身ではないのかなというふうに私どもは受けとめているわけでございます。ぜひこういう点は御留意をいただきまして、修正をしていただきたいというのが私たちでございます。  さらに、統計法の問題につきまして修正案が出されておりますが、これは確かに守秘義務の範囲の拡大ですとか管理の適正化であるとか罰則の強化であるということで、従来よりは多少いいのかなというふうに思いますけれども、私ども先般国勢調査一一〇番ということでやりましたときに、朝から電話が鳴りっ放しという状況の中でいろいろ訴えられたわけでございますが、私たちとして一番多く件数を扱いました問題というのは、顔見知りの調査員に内容を知られたくないということなんです。調査員には確かに守秘義務がありますけれども、知られたくないという私たちの願いといいますか、権利とも言えると思います、それと守秘義務では全くすれ違っている。そういう意味では、少しよくなるかなということはありましても、今回の修正案というのは国民立場には立っていないというふうに私は思うわけでございます。  私たちはこのような状況を見ますと、現在政府が十三億八千万件程度の個人情報を保有されているということなんですが、そのうちのどのくらいに私たちがアクセクできるのか、非常に問題があるのではないか。私たちの税金で集められた私たちの情報がもしほとんど見られないようなことになるのでしたら、非常にこれは不公正な話ではないか、おかしいのではないかといったような疑問も起きるわけでございます。私たちとしてはこの法案がどのような性格のものであれ個人情報として扱われる以上、プライバシー権利が保障されなければならないと思っておりますが、プライバシー権利政府がどのように保障をされるかということは、一国の民主主義あるいは文化水準のバロメーターかと存じます。ぜひ私どもの意見を取り入れていただきまして、国民立場に立って人権を守るという立場からぜひ抜本的な修正をお願いしたいと存じます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 竹中修一

    竹中委員長 ありがとうございました。  これにて各参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 竹中修一

    竹中委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。前田武志君。
  12. 前田武志

    ○前田委員 ただいま四人の参考人方々から、個人情報保護法案に関する御意見を伺いました。  林参考人におかれましては、我が国における個人情報保護制度を考えるに当たっては、諸外国の立法例等を参考にしながらもそれをそのまま持ち込めばよいということではなく、我が国行政運営の実態を考慮し、現行制度との整合性も図るとともに、具体的な保護措置実効性にも十分考慮する必要があるというように述べられました。  また堀部参考人は、今回の法案は全体として個人情報保護制度行政の適正円滑な運営との調和を図ろうとしていると述べられ、この法案早期成立することを希望する旨を述べられたと思います。これらの点については私も全く同感でございます。  また一方、渡辺参考人秦野参考人のお話を伺いますと、今回の法案収集制限の原則がない、それから訂正についての請求権ではなしに申し立てとなっているとか、あるいは公示開示適用除外例が多いなどなど、欧米諸国法制に比べて随分不十分である、このような御指摘があったように思うわけでございます。  さて、急激に進展する情報化社会の中で、電算機による個人情報処理が急速に拡大しております。例えば、本国会においても納税者の背番号制の導入について議論がされるといった状況でございます。その傾向はこれからますます急激に進んでいくものと思われます。堀部参考人も、ただいま第二世代のデータベースであるとかコンピューターのネットワーク化、こういった非常に高次の情報処理の段階に入ってきたといったようなことも指摘されておりました。  このような状況の中で、国民行政に対する信頼を確保するためにも、我が国の実態を考慮した上で個人情報保護の現実的な第一歩をとにかく踏み出すということが一番肝要かと私は思うわけでございます。このような観点から今回の法案は、我が国の法制度や国情も考慮した上で、さらにいわば縦割りで非常に有名なぐらい縄張り意識の強い我が国の各省庁を一括して政府一本で網羅的にこの法案によって個人情報保護しよう、こういうことをやろうとするわけでございますから、そういう意味において私は評価をするわけでございます。  そこで、参考人方々からそれぞれ御意見をさらにお伺いしたいと思いますが、時間が大分経過しておりますので、質問事項についてのみ簡潔にお答えをお述べいただきます。  まず、堀部参考人に二点お伺いいたします。  一つは、先ほど渡辺参考人も述べておられましたが、本委員会でもいろいろ議論になっておりました、収集制限が明確になっていない、この点に関してお述べでございましたが、例えば欧米においてもその規定がないという例も聞いております。その点について一点お答え願いたい。  さらに、事前通知公示あるいは開示について適用除外というのが非常に多いということ、これについても当委員会でいろいろ議論されておりましたが、これについてはOECD勧告でも国家主権、国家安全保障及び公秩序と申しますか、そういったものに関係するものを含めて所要の適用除外が認められておる、このように聞いております。堀部先生は、この関係について非常に長らく御研究され、外国研究についても非常にお詳しいというふうにお聞きしております。  この二点について、まず堀部先生、お願いいたします。
  13. 堀部政男

    堀部参考人 お答えいたします。  まず、収集制限の問題でございますが、国によりまして、例えば西ドイツ等明確に定めていないところもありますし、イギリスの場合なども八原則というのを附則に入れまして、かなり一般的な形で定めるというようなやり方をしております。私は、この問題につきまして、先ほど申し上げましたように、総務庁研究会でいろいろ議論を闘わせました。日本行政の方法、慣行等といろいろすり合わせといいましょうか、それもしてみたわけでございますが、日本法律のつくり方自体が他の法律との関係整合性を非常に重視するというやり方がありまして、法案のつくり方自体も内閣提出法案の場合には内閣法制局で審査するというようなことが行われておりまして、そういう点からいたしますと、この問題について現行法との整合性を図ったのが今回の法案ではないかと思います。  第二点の適用除外が多いと私も思います。イギリスの法律ではたしか十二ありまして、この法案では十二と教えるか十四と数えるか、ちょっと教え方にもよりますけれども、他の国に比べて多いように思われます。これもそれぞれの行政機関、各主任の大臣が責任を持って行っている関係で、それぞれの省庁から、恐らくこれはヒアリングの段階でもそうだったわけでありますが、適用除外についてかなり強い希望が出てきたわけであります。そういうものを調整した結果であると理解しているわけでありまして、これはやはり日本の現在の行政の実情、やり方、それを反映したものと思われます。  以上です。
  14. 前田武志

    ○前田委員 それから、第一条の目的規定の中で「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人権利利益保護することを目的とする。」こういう規定があるわけでございますが、この件に関しては、先ほど来参考人からも、また委員会の中でも、法律の趣旨を不明確にするといった批判があったわけでございます。この点につきましては林参考人が先ほどの御意見の中でも述べられておったかと思いますが、もう少しその辺に絞って林参考人から御説明を願いたいと思います。
  15. 林修三

    林参考人 個人情報保護ということは、主としては個人権利利益保護という見地から必要なことであることは申すまでもございませんが、しかし他面、行政運営の適正化あるいは円滑化という必要性は、これはやはり非常に必要なことでございます。個人情報保護についてもそういう面の配慮を無視することはやはりできないわけでございまして、こういう法律をつくる以上は、その間を適切に調整していくということはどうしてもやむを得ないことだと思うわけでございます。  この点は、先ほども申しましたように、OECD自身も、それぞれの国の既存の法律制度との関係とか、あるいはその国の国民性とか、あるいはいろいろな伝統的なもの等配慮して適切な法律をつくればいいという考え方を示しております。それで、私も総務庁に置かれました個人情報保護の問題の研究会にはずっと参加してまいりました。その過程でもいろいろ議論はございました。この法律としては、個人権利利益保護ということに重点はございますけれども、その個人情報というのが行政機関において保有されるのは、やはりそれは一定の行政目的で保有されているわけでございます。それで、この行政目的の適正な運用ということとの調和は必要でございます。しかし同時に、行政が一般の国民の信頼にこたえるように適正に運営されることが当然必要なわけでございます。そういう点を踏まえてこの法律案としては、個人権利利益保護ということが非常に大事ではあるけれども、それは行政運営の適正化あるいは的確化、円滑化ということを全く無視してすることは非常に問題であるわけで、そういう点との調整を図るということが必要だということで、そういうことがこの法律案の基礎になっておりまして、そういう意味でそれを目的規定に入れたということに私は理解しております。
  16. 前田武志

    ○前田委員 秦野参考人からも結合禁止についての御意見があったかと思うわけですが、電子計算機処理に係る個人情報の結合を禁止するということは電子計算機処理そのものの特性を否定するものではないかな、私はこう思うわけでございます。特に、現今のようにこういうコンピューターシステムというのが高度に発達すればするほどそういった気がするわけでございまして、この点に関して堀部参考人から、諸外国の例を含めて御意見を聞かせていただきたいと思います。
  17. 堀部政男

    堀部参考人 結合禁止という考え方は、日本地方公共団体におきまして条例が制定される中で出てきたものでありまして、私が検討した限りでは、諸外国の立法例の中には明確な形では入っておりません。そのような性格のものであります。
  18. 前田武志

    ○前田委員 それでは最後に、林参考人にお尋ねいたします。  訂正申し立てではなしに訂正請求権を認めよという御意見がありました。それに対して林参考人、冒頭いろいろ御説明をいただいたわけですが、この点に絞ってひとつ林参考人の御意見を再度お聞かせ願いたいと思います。
  19. 林修三

    林参考人 今の御質問の問題は先ほども実は御説明したところなんでございますが、訂正についてこれを請求権といたしますと、当然にそれはあとは訴訟で争うというようなことになるわけでございますが、先ほども御説明いたしましたとおりに、現在いろいろな行政処分につきましては、行政不服審査法あるいは行政事件訴訟法というようなことで我が国ではいろいろな争訟制度がございます。こういう個人情報についても、訂正についての処置がやはり行政庁の一つの処分だというふうなことになってまいりますと、そういうことで争う方法もあり得るわけです。その争いについてはいろいろな前提条件がございますけれども、そういうことになりますと、やはり日本制度としてそこにいろいろな混乱が起こるという点がございますので、そういう点を配慮して訂正申し出ということにするのが適当だろうということで、我々の研究会でも最終的にはそういう意見になったわけでございます。  それで、訂正申し出と申しますけれども、訂正申し出があれば当該行政機関としてはそれを調査して速やかに対処すべきであることは当然でございますし、さらにこの規定の中には再調査申し出の規定も入っております。そういう意味においては、この訂正について請求権としないでも相当これを訂正するというようなことに対処する方法は定められておりまして、今申したような法律制度のいろいろな点に混乱と申しますか、いろいろ複雑な関係を生ずることを避ける意味では、やはりこの点はこれで目的もある程度達せられると思いますので、これでいいのではないかというふうに考えております。
  20. 前田武志

    ○前田委員 終わります。
  21. 竹中修一

    竹中委員長 田口健二君。
  22. 田口健二

    ○田口委員 参考人の方にお尋ねをいたしたいと思いますが、まず冒頭に、大変御多用の中を本委員会に御出席をいただきまして私どもの審議に御協力をいただきますことを厚くお礼を申し上げたいと思います。  時間がありませんから幾つかの点になるかと思いますが、最初に秦野参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどもおっしゃっておられましたように、一九七二年から大変長い間プライバシーを守るという運動に携わっておられるというお話でありますので、体験的にいろいろな多くの事例も知っておられると思いますが、まず第一に、本法案では第三条でもって国が行う統計調査は例外ということになっておりまして、これは先般の委員会審議の中でも、現在の法制度からいってそれは当然だというふうな感じになっておるわけですが、先ほどの秦野参考人のお話の中では、国勢調査なども取り上げられてやはり問題があるというようなお話もございました。そういった点について、もう少し御意見がありましたらひとつお聞かせをいただきたいと思っています。
  23. 秦野八重

    秦野参考人 お答えいたします。  国勢調査のときに、これは調査員が実際にその内容にタッチしまして訂正をしたりするようなこともあるわけです。私ども再三密封をして出させてほしいということで総務庁にお願いしてまいりまして、一時、封筒を請求すれば配られるということになったわけでございますが、その節には、封筒を配る配らない、渡す渡さないで調査員との間に非常に大きなトラブルがございました。その次の先般の調査の際から説明用紙を利用して密封ができますよということになったわけでございます。  実は私どもとしましては、そうなればかなりトラブルも少なくなるし、皆さん少しは気持ちが楽におなりになるのかなというふうに思っていたわけでございますけれども、一一〇番を設置したということが報道されますや否や、その点での非常にたくさんの意見がありまして、破って出したって何も証拠が残らないではないか、さきの調査のときに封筒に入れて出したにもかかわらず、実はその内容調査員が知った、しかもその調査員は、アパートかマンションかわかりませんけれども、管理人の方がやっておられまして、その訴えられた方の場合は正直に失業中である、要するに収入がないということを書かれたわけですね。そうしましたら、管理人の方から、そんな人は置いておくと非常に自分の方の損害になるということで家を追い立てられた、したがって、全然信用していないんだというような訴えがございました。そういう件数は非常にたくさんございまして、前回二週間ばかりやりました中で三百何十件ということで私たちに上がってまいりましたけれども、そのうちの二百数十件というものはほとんど苦情であったわけでございます。  その中で、どうしてこういうことをしなければいけないのか、私どもとしましては調査は必要なんだということで説得を逆にしたようなケースも随分ありましたけれども、非常に心配をしておられます。また、封筒をもらったあるいは密封して出したために村八分に遭ったというようなケースもございまして、私たちとしては、こういうものについてはぜひ全員が密封をして、調査員のようなところを通らずに、調査員が要らないということではありませんで、本人が納得をして調査員に記入してくれとか直してくれということであれば、それは構わないと思うのですけれども、現在ではいろいろなことがあるわけです。  そして、調査員である方の実感として私どもに御報告がありましたのは、自分たちがチェックをしてみると、職歴はというか地位はおおむね高く、家はおおむね広く、賃金はおおむね高いということになっている。そうしますと、そのような調査が集計されていきますと非常に実態を反映しないということになるのじゃないか、私どもとしましては、そういう意味から国勢調査だけでなくて指定統計について非常に問題視をいたしまして、これは再三にわたって総務庁の方にお願いをしているというふうなことでございます。
  24. 田口健二

    ○田口委員 次に、これも先ほどのお話の中にございましたが、私も先般の本委員会の中で関係省庁から意見を求めたのでありますが、十三条の開示請求権の中で教育、医療、刑の執行の三分野について、これは適用除外になっているわけですね。先ほどのお話にもちょっと触れられておりましたが、その辺、教育あるいは医療、こういう点でさらに御意見がありましたらお聞かせをいただきたいと思っています。
  25. 秦野八重

    秦野参考人 お答えいたします。  内申書の問題がしばしば教育関係では問題になっているわけでございますが、これが全く本人がわかっていない。これは現在、内申書裁判などもありますし、それから現に私どもがいろいろなところでお目にかかった方の中には、内申書に全く自分の記憶もないというか、したことのないようなことが教師の手によって勝手に記入をされていた、これは後でいろいろなケースからわかったわけでございますが、そのためにその人は学習権を奪われたというような実例がございます。先ほど申し上げましたように、性格テストのような記録が内申書に一方的に記録されますと、問題の可能性ありといったようなことで、現実には問題になるかどうかわからないようなものがついて回る、しかもその内容がわからない。それから皆様も御承知かと思いますけれども、高校生であるとか中学生のような場合には非常に揺れ動きの激しい年代でございますから、一時的にはいろいろなことになるかと思いますが、そういうものが一生涯ついて回るようなことになりますと、生活権さえ奪われかねないという実態がございます。  そのようなことで、私たちとしては内申書も本人と相談しながら書くような、これは私の知っている方ですが、カナダで教師をしておられますけれども、その方の話を伺ってみますと、もちろん教育制度も違いますので一概にカナダの例がそのままいいということではございませんけれども、このように内申書を書きますよということで、本人も納得して、正しく本人内容を伝えるような推薦書を書きます、そうしないと自分の信用が相手の学校なり何なりから疑われるのだというようなことを言っておられました。  それから診療記録のことでございますが、これはよくがんの告知などが問題になりまして、そういうのはショックを与えるというふうに言われますけれども、たまたまがんの告知というのは確かにショックを与える面もございますが、治らない病気、死ぬ病気というのはがんだけではございませんで、例えばエイズのような場合ですと告知しなければならないものもあるわけです。やはり本人には非常にショックだろうと思います。ですから私は、こういう問題というのは一つの社会慣習的なこともございますので、それぞれ、もちろん告知したら亡くなるような状態であれば、これはやはりお医者さんの判断によると思いますが、次第にこういうものは告知されていくような、欧米と同じような方向をとっていく、そのことは昨日の新聞にアンケートの資料か何かが出ておりましたけれども、知らされたいという方がふえつつあるわけです。現在外国人の方で日本におられる方の日本医療に対する不信感というものはその辺が非常に強いということも聞いておりますので、原則的にぜひ診療記録というものは本人開示をして、どのような診療をされているのか、薬が調合されているのかということは、やはり自分の重要な情報として知らされるべきだというふうに考えております。
  26. 田口健二

    ○田口委員 もう一点お尋ねをいたしますが、この法案では二十六条で地方自治体関係の条項が規定をされているわけですね。三千三百余りあると言われる自治体の中で、既に四百を超える自治体がこのような条例を制定している。ところが、四十七都道府県はすべてこれからということでありますし、また、多くの自治体が今後このような条例を制定をしていく、こういう形になっていくと思うのでありますが、私は、もしこのような大変不十分な法案成立をするということになれば、地方自治体に与える影響は極めて大きいだろうというように思っています。先般の本委員会での質疑の中で大臣の方から、地方自治体に強権的な指導はやらないということはお答えをいただきましたけれども、秦野参考人としては、本法案成立によって自治体における条例というものにどのような影響を与えていくだろうかという点で御意見がありましたら、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  27. 秦野八重

    秦野参考人 先ほど申し上げましたように、私どもかなり早い段階からモデル条例などをつくりまして自治体に呼びかけをしてまいりまして、おかげをもちましてといいますか、かなりいいものも出てくるようになったやさきだったわけです。多くの自治体で模様見だということがかなり言われていまして、法案がどうなるかということを見ているんだ、圧倒的多数の自治体がそういうことでございました。今お話しのようなことも私、承っておりましたのですが、ごく最近、これは東京都のある市でございますけれども、条例が審議をされている、そこの議員さんから、どんなものだろうかというふうに案をいただいたわけなんですが、それを見ましたら、目的のところは一言半句も違わないくらいこの法案とそっくりで、随所にそういうことが出ていたわけです。多少はほかの自治体との関係もございますのでこのままということではございませんけれども、ああ、なるほどというふうに私は思いました。  それから、これは私が実際に見ているというようなことではございませんけれども、ある集会で伺いましたらば、既に今まである条例を改正をする提起がなされているということもございまして、私としては、法案の文言としては自治権にゆだねられるというようになっておりますけれども、風潮といいますか、そういう点ではやはり相当水準が下がっていくのではないかというように心配をいたしております。
  28. 田口健二

    ○田口委員 最後に、堀部参考人にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  本法案の審議の過程の中で非常に問題点になった中の一つに、本人が存在自体がわからない個人情報ファイルというのがこの法律によると随分出てくるだろう。こういう例というのは諸外国法律の中に一体存在をするのだろうか。余りにもこの辺が問題ではないか。これは質疑も行ったのでありますが、この辺について、ひとつ御見解がありましたらお知らせをいただきたいと思います。  それからもう一つは、実効性の問題に関連をして、監督機関の権限の問題でありますが、私どもが調べた限りでは、諸外国における監督機関の権限というのはかなり明確になっておるように思うのです。ところが、今回の法案総務庁の権限というのは、ファイル設置に当たっての事前通知と資料の提出及び説明、意見の陳述。これでは私は実効性は保たれないということを申し上げたのですけれども、参考人の御意見はいかがでしょうか。
  29. 堀部政男

    堀部参考人 まず、ファイルの存在が適用除外によりましてわからないところがあるということでありまして、諸外国もそれぞれの国情に合わせたつくり方をしておりまして、先ほど申し上げましたように、日本の場合には少し多いわけでありますが、これはどうも各省庁調整の結果このょうになったものと推察いたしておりまして、それぞれの権限に基づくものでありまして、どうも総務庁でこれをすべて適用除外をなくすというわけにはいかなかったのではないかというふうに思います。先ほども申し上げましたように、やはり適用除外が多いわけでありますので、それが個人情報保護を損なわないように厳格な運用を私としては期待したいと思います。  第二の監督機関の問題でございますが、諸外国の場合、アメリカにはこのような監督機関はございません。ヨーロッパ型の法律に監督機関を設けるというのがございまして、私も個人的にはこういう制度がぜひ必要であろうと思います。研究会などでもそういう主張をしてまいりましたけれども、これも統一性確保の機関を何か設けようということを研究会でも掲げましたが、やはり各省庁との関係、さらに、ちょうど行政改革の議論が行われておりまして、新しい機関を設けるというのは大変難しいという状況があってこのようになったものと思われます。  以上でございます。
  30. 田口健二

    ○田口委員 恐れ入ります、一つ落としておりましたので……。  先ほどの堀部参考人のお話を伺っておる中で、本法律成立をし実施をされる段階で、今後検討し改善をしていく必要があるのではなかろうかという御意見のようだったというように思います。私どもも、仮に法案成立をした場合であっても、今日の高度情報化社会進展その他この法案が持っているさまざまな不十分さから考えるならば、当然これはある時期に見直しをすべきだということを主張しておるわけでありますが、参考人の先ほどの意見はそのように御理解をしてよろしいでしょうか。
  31. 堀部政男

    堀部参考人 そのように理解していただきたいと思います。
  32. 田口健二

    ○田口委員 終わります。
  33. 竹中修一

    竹中委員長 中村巖君。
  34. 中村巖

    中村(巖)委員 公明党の中村巖でございます。  本日は、参考人の先生方におかれましては、お忙しいところを本委員会の審議のためにおいでをいただきまして、大変ありがとうございます。  早速でございますが、質問をさせていただきます。まず、林参考人にお伺いをいたします。  本法案が立脚をしている基本的なところは、要するに行政官庁というものは各種の情報収集するんだ、こういうことであって、その行政過程においていろいろな情報が集まってくる。そして、その集まってくる、あるいは集めるということにおいては基本的に自由である。どんな情報をどんな手段で集めようとも、それは自由なんだ。ただ、その集まった情報をどうするかということだけが問題なんだ、こういうふうな考え方に立っているかのように考えられるわけであります。確かに、この法案の中には、行政上一定の目的にかなう情報だけを収集しなさい、こういうことはあるかもしれないけれども、原則的には自由なんだというようなことだろうというふうに思います。  そこで、行政官庁というものは行政上の一定の目的にかなう情報なら何でもかんでもどんな手段でも集めていいのかということについての考え方は、林参考人としてはどういうふうに思っておられるのか、それをまずお聞きしたいと思います。
  35. 林修三

    林参考人 現在の憲法下における行政は、原則としては法による行政ということでございます。各種省庁行政機関はすべて法律によってその任務が規定されておりまして、所掌事務も規定されております。したがいまして、各省庁は、法律なり法律に基づく命令なりに従って任務を遂行していくわけでございまして、何をやってもいいというようなことはもちろんございません。おのずから法令によって任務は限定されておりまして、その範囲で行政運営の上に必要な材料を集めるというようなことになるわけでございます。  また、国民からいろんな情報収集するについては、原則は、これは強制的にとる場合にはもちろん法律の根拠を必要としておるわけでございまして、法律でこういうものについてこういう報告を徴収できるというような規定は、それぞれの実定法にみんな入っているわけでございます。それはそれぞれの法律目的の範囲内でそういう報告が徴収できるわけでございます。  それから、現在の我が国ではいわゆる行政指導というものが非常に幅広く行われていることは事実でございます。行政指導についてはいろいろな議論があるわけでございますが、行政指導といえども、行政指導というのは任意で相手方の同意を前提としてやるわけでございますから、何でも自由にやってもいいということではないわけで、当然に各省庁の任務なり設置の目的なり、あるいは所掌事務の範囲でしかこれは行い得ないわけです。  今お話しの、どんな情報を集めてもいいのかということについては、それはそうは言うべきではなくて、やはり本当に行政運営、その省庁の所掌事務運営する上において必要な限度においての情報収集する、それは、あるものは法令に従ってとります、場合によっては行政指導的なもので本人から収集する場合もございましょうし、第三者から収集する場合もございましょうけれども、要するにそれはやはり当該行政庁の所掌事務なり任務の範囲内でそれに必要な限度に限られる。原則は、行政は法に基づいて行われる、そういうのが現在の建前だ、そう思っております。
  36. 中村巖

    中村(巖)委員 その点で、もう一点伺いますけれども、そういう行政庁の所掌事務目的の範囲内、こういう制約はあるだろうことは事実かもわかりませんけれども、その外に、やはり憲法なりあるいは憲法に準ずるような規範というものによる外部的制約というものは全くないのか、そういう意味で、例えば集める情報の中身なりあるいは手段について、そういう現行憲法あるいは憲法に準ずる規範による制約をこうむっていないのかということについてはどうですか。
  37. 林修三

    林参考人 憲法は、国民権利義務についていろいろな保障規定を置いております。当然に、一般の国民に対して義務をかけるというようなことについては、この憲法の人権保障の規定との関連で、仮に強制的な報告をとるにしてもそれは公共の福祉上必要な範囲というようなことは、当然憲法上の制約はあるわけでございます。それからまた、手続につきましても、憲法では、例えば三十一条なんかではいわゆる適正手続と申しますかあるいは正当手続と申しますか、そういう基本的な規定が三十一条に置かれておりまして、三十一条が行政機関行政運営に全面的に適用があるかどうかにつきましては、これは学説も分かれておりますし判例も必ずしも明確ではございません。しかし、個人は、相当な権利利益の強制にわたるとかあるいは侵害になるようなことについては、いわゆる三十一条の適正手続の規定が適用になるということは判例も言っておるわけでございます。  そういう面で、もちろん行政運営においては、先ほど申しましたように、法に基づく行政というのが現在の憲法の建前でございます。それは行政の所掌事務運用自身、範囲ももちろん法律で規制されますし、その行政のために必要な手段、方法ももちろん今申し上げました広い意味で憲法で規定されております国民権利義務の尊重ということは当然の前提としてあるわけでございます。
  38. 中村巖

    中村(巖)委員 そうなりますと、林参考人に重ねてお伺いしますけれども、先ほどのお話の中で、センシティブ情報の問題についてはこれは技術的に定義は困難であるというようなことを言っておられたわけですけれども、このセンシティブ情報と巷間言われているところのものについては、憲法上の人権の保障の問題との関係の中でやはりそれは収集をしてはいけないんだということが一つの制約としてなければならぬのではないか。そのためには、そういう憲法上の要請があるとするならば、技術的にかなりの困難はあるとしても、やはりそういうものを選別をして、これは収集すべからざる情報であるということを法律でもって明らかにしなければならぬのではないかと思われますけれども、いかがですか。
  39. 林修三

    林参考人 今お話しのセンシティブ情報については、先ほども申し上げましたように、センシティブ情報とは何ぞやというようなことについては非常に定義が難しいわけでございます。したがいまして、そういうものの情報収集はいけないというようなことを法律で決めることは非常に難しいと思います。それなら、手続的に何らかの保障規定を置くべきではないかという御議論もあるわけでございますが、これまた、実は行政というのは公共利益の保持あるいは安全の保持とか危険の防止のために行われておるわけでございまして、そういう意味においては、いろいろな情報収集公共利益の保持あるいは公共の安全の保持とか危険の防止のために必要な場合がございます。そういうものの中にはあるいは個人情報本人にとってはセンシティブなものだというようなものもあり得るかと思います。しかし、それについてはこの法律案では、一方の保有の制限あるいは保有した情報の保持あるいは正確性の保持とか、あるいはそれをそう簡単に他に見せてはいけない、目的外に使用してはいけない、そういうようなことでその制限を置いておりまして、そういうことによって今おっしゃったようなことについては保障はされている、そう考えていいのじゃないかと私は思っております。
  40. 中村巖

    中村(巖)委員 次に、堀部参考人に伺いたいと思います。  堀部参考人総務庁研究会のことを先ほどおっしゃいましたけれども、それ以前に先生御自身が、昭和五十六年でしたか、行政管理庁でプライバシー保護研究会、加藤一郎先生が座長でやられたそこに加わっておられたわけでございまして、その研究会はその翌年の八二年ですか、昭和五十七年に報告を出しておられるわけです。その中に五つの基本原則というものを決めたというか、それに立脚しなければならないのだということを言っておられまして、収集制限の原則、利用制限の原則、個人参加の原則、適正管理の原則、そして責任明確化の原則、こういうことになっておるわけでありますけれども、それと同時に、これはミニマムスタンダードなんだ、こういうことでございました。  今回の法案を、先生御自身も関与されたといえば関与されたのかもしれませんが、ごらんになって、その当時のこの五つの原則というものが一体貫徹されているのだろうかということを、私どもからすれば疑問でありますけれども、先生御自身はどうお考えになっておられるのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  41. 堀部政男

    堀部参考人 今先生御指摘のように、私は、行政管理庁のプライバシー保護研究会、それから総務庁行政機関における個人情報保護に関する研究会、両方参加いたしました。行政管理庁の研究会総務庁研究会との性格の差異ということを一つ申し上げなければならないように思います。  行政管理庁の研究会の場合には、OECD理事会勧告が出ました直後から開かれるようになりまして、そこでは日本で考えられるかなり理念的なものをまとめるという作業をいたしました。現行法等との整合性なども委員の中には強調される方もございましたけれども、どちらかといいますと、OECD理事会勧告我が国でどのように実現できるかというようなことでやりまして、今先生御指摘の五つの基本原則、それから十項目にわたる具体的方策というものを提示したわけであります。その後、臨時行政調査会の答申が五十八年の三月に出まして、その後閣議決定等がなされまして、個人情報につきましては、法的措置を含め制度的方策について検討するというふうになってまいりました。その具体的検討をいたしましたのが総務庁研究会であるわけであります。  そこで、私は先ほども最初の方で申し上げましたように、いろいろ理念論を展開してまいりまして、また行政管理庁の研究会のメンバーでもありましたのでそういう主張はいろいろいたしましたけれども、総務庁研究会の場合には、具体的に今後法案を考える場合にどうなるのかという相当細かい詰めをしたわけであります。そういう結果、OECD理事会勧告、また諸外国法制で使われている表現を日本的に直すとこういうふうになるというのが行政実務に詳しい先生方の意見等でありまして、それを総務庁行政管理局でまとめたわけであります。そのような経過を経ておりまして、表現の面では行政管理庁のプライバシー保護研究会の五原則は必ずしも明確には入っていないわけでありますが、実質的にはその精神がこの法案には反映されているのではないかと私は理解しております。
  42. 中村巖

    中村(巖)委員 堀部先生にもう一点伺いますけれども、先ほど教育関係情報あるいは医療関係情報のことにもお触れになりまして、こういうものはいろいろな諸般の状況、従来の慣行等を考えると開示されなくてもやむを得ないというような御発言がございました。こういうものというのは今日行政機関が集めている情報の量の中では巨大な量を占めているわけでございまして、こういうものを開示しないということになると、この開示という点に関する限り、この法案成立しても国民に対して開示される情報というのは一体何があるのかということは多大に疑問になってきまして、量的にいっても極めて少ないものになるのではないか。また、それが公開されましても、国民はそんなことはあらかじめわかっているというような情報にしかすぎなくなるのではないか、こういうふうに考えますけれども、その点はいかがですか。
  43. 堀部政男

    堀部参考人 先ほど申し上げましたのは、開示されなくてもやむを得ないと言ったつもりではございませんで、この問題を解決するためには、この機会でもよろしいかと思うのですけれども、国民議論をしていく必要があるのではないだろうか。  私、プライバシー権利などにつきまして著書等を書いたこともございまして、例えばお医者さんの集まりに何回か呼ばれていきました。そういうところでも、私など自分情報へのアクセス権ということを主張したわけでありますが、私を呼んだお医者さんの大部分は、それは日本の現在の医師と患者関係を無視したいわば空想的な議論にすぎないというような受けとめ方をされたわけであります。私個人といたしましては、教育の場合も医療の場合も自己情報へのアクセス権ということは認めていくべきであろうと考えますけれども、現状をこの法律で一気に変えるというのは難しいのではないだろうか。それはそれぞれの分野でもっと議論を起こして考えていくべき問題ではないかと思います。これは一つの手続を定めるものであると私は理解しております。もちろん、この法案によりまして人権保障がこれまで以上に徹底できますことを望んでいるわけでございますけれども、それぞれの問題が余りにも難しいものでありまして、一気に解決するというわけにはどうもまいらないのではないか、そういう趣旨のことを先ほど申し上げたつもりでございます。
  44. 中村巖

    中村(巖)委員 渡辺参考人にお尋ね申し上げますけれども、時間がございません。  先ほど結合禁止のことについてお触れになったわけであります。その前段、この法案情報の外部提供あるいは目的利用、こういうものについて大変緩やかになっているわけで、こういうことが緩やかにやられると情報相互がやがては結合されていってしまう。そして、それは世上言うところの国民背番号制というようなものに一つの統合した、全部の国民一人一人についていろいろな情報が結合されて、背番号制のようなものが成立してしまうのではないか、こういうふうに思っております。この結合禁止ということは私どもも重要だと思いますけれども、結合禁止というものは先生のお立場で絶対になされなければならない、こういうことになるのだろうと思いますけれども、その辺のことを御説明をいただきたいと思います。
  45. 渡辺脩

    渡辺参考人 ただいま御指摘のとおり、行政関機が保有する個人情報利用や提供の問題を考えます場合、特に先ほど来指摘されておりますようにコンピューターが高度に発達している現状もとでは、利用、提供といっても中身は結合の問題が一番大きいだろうと思うのです。それが何の制約もなしにどんどん集中的にあるいは独占的に情報がまとめられていくということになりますと、これは日弁連の意見書でも申し上げておりますけれども、プライバシーの侵害ということだけではなくて、情報がそういうことで他の情報と結合して新しい情報が生まれていって、それを国民の側は何も知らない状態に置かれていく、しかも、その情報を握っている人たちは国民の隅々まで把握することができるという、そういう管理体制ができていくということになりますと、これはどうも民主主義の基盤にかかわってくるのではないかというぐあいに考えております。  ですからその意味では、個人情報利用、提供の中心問題の一つとして結合の問題は、コンピューターの問題を考える以上はどうしても非常に大きいということと、それを何の制約もなしに放置しておくと、今申し上げたように、プライバシーの侵害というだけではなくて、国民全体への管理システムみたいなものが自動的にでき上がってくるのではないか。そういうことを非常に恐れております。したがって、問題の所在を明確につかんだ上で、目的利用の禁止ということはそういうことを含めたものでなければいけないというぐあいに考えております。国民権利保護という点からいくとこの点は非常に重要なポイントだというぐあいに考えております。
  46. 中村巖

    中村(巖)委員 時間ですので、終わります。  先生方には大変お忙しいところ、ありがとうございました。
  47. 竹中修一

  48. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は民社党の法務の理事をしております安倍でございます。本日は先生方、本当にお忙しいところをありがとうございました。  同僚議員がいろいろ既に御質問したことでございますので、できるだけ重複を避けるようにお話ししたいと思います。  最初に、林参考人でございますけれども、当初OECDの原則をそれぞれの国がそれぞれの国の実情に応じて取り入れてきているというお話をされましたけれども、我が国において、どの点が一番我が国の実情を取り入れた点であるという御認識をお持ちかということでございます。
  49. 林修三

    林参考人 これはいろいろあり得るわけでございます。先ほどの御質問の中にもございましたが、例えば個人情報保護制度をつくるについて、それのいわゆる監督機関的なものを、ヨーロッパの法律では独立機関を置いている例が割合あるわけでございますが、日本でそういうものを置くのがいいかどうかということなんかも相当議論されました。  これは現在の憲法下における日本行政組織のあり方から申しますと、いわゆる行政委員会的なものはそれほど、そう広く設けることについてはいろいろな議論がございます。それで、そういうことはヨーロッパで置かれているような、例えば英国とかフランスあたりでも割合独立的な機関を置いておりますけれども、そういうのを日本の場合には必ずしもそのまま持ってくるわけにはいかない。これはいろいろな議論がございましたけれども、この法律案総務庁の権能として若干の規定を入れておりますけれども、そういう点が一つの問題になろうかと思います。  それからもう一つ申し上げれば、先ほど堀部参考人から初めにちょっと言われましたけれども、我が国では公務員の守秘義務というのが非常に徹底して行われておりまして、従来も国の機関が持っております個人情報は非常にたくさんあったわけでございますが、それが余り問題を起こすことがなかったのは、まさに公務員の守秘義務が非常に厳格に守られていた、現在も守られていると思いますけれども、そういうことがあるわけです。行政機関側では、この守秘義務の規定があるからこういう個人情報保護の規定は要らないというような議論が相当あったわけでございます。しかし、これはそういうものじゃなくて、確かに守秘義務によって個人情報の流出というのは、日本の場合では、特に国の行政機関の場合には非常によく守られておりますけれども、行政機関の持っておる個人情報が、そこに間違ったものが入っていはしないかというようなことに対する国民不安感というものは、やはりコンピューターの技術が発達してまいりますと非常に出てくるわけでございます。そういうものに対応するためには、行政に対する国民の信頼を保持するためには、こういう法律をつくって制度的に国民の信頼が保持できるようなものを設けていくということが必要だろう、そういうことなんでございます。しかし、そういう場合にも、今申しましたような既存のいろいろな行政上の諸制度日本にはございます。そういうものを踏まえてこの法律案をつくっていくということは必要だろうと思います。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申しましたけれども、例えば訂正請求、訂正申し出の問題につきましても、既存の行政争訟制度、これはやはり国によって非常に違うわけでございまして、日本の場合はこの行政争訟制度が一応制度化しておりますので、こういうものを前提として、訂正についてそれを請求権とするか申し出とするかというようなことについてはやはり考える必要があるだろう。  ちょっと思いついただけでそういう点があるのじゃないかと思います。
  50. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今度の法律は、やはりこれから地方公共団体がつくるモデルにもなりましょうし、それから民間の情報の問題をあれするのに一つのモデルになる、非常に重要じゃないかということでございまして、これから本当に情報は非常なスピードで累積していく、でありますから、現在の既存の法制調和させるというのとはまた別の次元で考えていかなくちゃいけない問題もあるのじゃないかというような気がするわけです。  弁護士会の方から、例えば収集方法あるいは提供、要するに本人の同意がなくちゃいかぬとか、あるいはこれがどんどんと外へ漏れていってどんどん提供されては困る。情報が少ないうちはいいのですけれども、それが非常に高度化していく、私ども、かつて法務委員会で登記の電算化のときに、個々の登記簿を見ていればわからないけれども全体がわかるとたちまちその個人のすべてがわかってしまう、個々にわからないものが総合化することによって非常に大きな力を発揮するということは十分考えられるということが論議されたわけでございますけれども、私は、本当に出発点において、五年後見直しという問題があると思いますけれども、相当人権に配慮した形でいかないとそれが困るのじゃないかという気持ちがするのでございます。林参考人に、弁護士会が提示した収集方法の問題とか、提供をそう安易にしては困るというような問題についてどういった議論がなされて、どうお考えであるかということをお聞きしたいと思います。
  51. 林修三

    林参考人 収集制限の問題につきましては、先ほどもお答えいたしましたけれども、センシティブ情報の定義それ自身が非常に難しい、そういう問題もございまして、むしろ実質的なことを確保する意味においては、この法律で各行政機関がそれぞれの目的の範囲内でこういうような個人情報を保有できる、その目的を限定し、またそういうことによっておのずから収集される範囲も決まってまいりますし、それから一方で、それが外部に流出することについて相当厳しい制限をかける、そういうことによって実は実質的な目的は達するのじゃないか、そういうようなことであったわけでございます。収集制限というようなことを正面から書くよりはむしろそれの方が実質的には目的に合うようなことになるのではなかろうか、この研究会あたりでもそういうようなことであったように記憶いたしております。  それで、いわゆる目的外使用でございますが、これはやはり他の情報と結合してそこで全く別な情報が創出されるとか、それがその情報を初めに提供した者にとって全く考えられない方向に使われるというようなことは防止する必要がございます。したがいまして、各行政機関の持っております個人情報目的外使用ということは相当限定する必要があるだろうと思います。  ただ、絶対に禁止していいのかとなりますと、いろいろな行政上の問題から申しまして、例外はやはりあり得るわけでございます。例えば、国税に関する情報と地方税に関する情報というようなものは、ある意味では相当相互に知るというようなことは必要な場合があるわけで、そういうことを考えますと、これは絶対的な禁止ではやはり行政はうまく動かない、そういう問題がございます。  既に地方団体では、随分個人情報の制限の条例もできておりますし、あるいは情報公開の条例もできておりますが、その運用を見ておりますと、相互の目的外使用と申しますか結合は、地方団体によっては割合ルーズに行われているところもあるように私は思っております。しかし国の場合は、現在までは非常は厳格に運用されておると思います。非常に限定された範囲でしか目的外使用はされておらない。これは各省庁が所掌事務をそれぞれいわゆる縦割り行政で——縦割り行政についてはいろんな弊害もありますが、そういう意味においては、目的外使用については現在は縦割り行政のいいところが非常に出ている。そういう面もございますし、現在までは各省庁の持っている個人情報が相互に使われている例は非常に限定されたものしかないと思います。しかし、先ほど申しましたような若干の例外は置く必要があるだろう。そういうことで、今度の法律案でこういうことにすることはやはりやむを得ないことだろうというふうに思っております。
  52. 安倍基雄

    安倍(基)委員 では次に、堀部参考人にお聞きしたいと思います。  いろいろ議論を聞いていると、基本的には、本人ができるだけ自分情報を知り得て、また反面、それがほかに利用されては困るというのが大原則かと思いますけれども、この面で今回の法制が十分であるかどうか。  二番目に、いわゆる基本法的なものがこれから要るものかどうか、必要だと思いますけれども……。これから民間の問題も出てきますね。これは一つのはしりですけれども、国の行政機関、地方の行政機関、今度は個別企業における電算化情報の話、ある意味からいうと基本法的なものが要るのではないかなという気がいたしまして、その辺がほかの国はどうなっているのか、日本はこれからどうしたらいいのかという点をお伺いしたいと思います。
  53. 堀部政男

    堀部参考人 お答えいたします。  先生の方で出されました第一の、自分情報を知る上で十分かという点でございますが、私は個人的には必ずしも十分とは思っておりません。ただ、先ほど来申し上げておりますように、それぞれの問題がそれぞれのところでもっと議論されていかないと、どうもこの法律だけで一挙に解決するというのは困難ではないか。大きな期待をかけられている面もあるのですが、他面におきまして、今の日本行政法の体系等からしまして困難な面もあるのではないかと思います。  第二の点でございますが、民間に絞って申し上げますと、一つの法律で公的部門も民間部門対象にしておりますのは、ヨーロッパの立法例に多く見られます。これをオムニバス方式などと比較法的には言っておりまして、これに対する別の方式がアメリカ、カナダに見られます。これは個別の領域ごとに法律を制定していくというものでありまして、セグメント方式とでも比較法的には呼んでいるものでございます。今回日本では、仮にこの法案が通るといたしますと、アメリカ的なセグメント方式に踏み出すわけでございまして、そうしますと、個別の分野、民間につきましてどのようにするのかというのが今後の課題になってこようかと思います。  民間につきましては関係省庁において検討をしておりますし、現に私もかかわっているところがございます。  今後はどういう方向がいいのか、これまた関係省庁検討する必要があろうかと思いますけれども、一つ考えられますのは、今先生が御指摘になりました基本法的なものを定めるというようなことは考えられると思います。  以上です。
  54. 安倍基雄

    安倍(基)委員 時間も少ないようでございますから、ちょっと質問が林参考人に集中して申しわけないのですけれども、林参考人堀部参考人お二人にお聞きしたいと思います。  林参考人には、今の基本法についてということと、二番目に、今納税者番号というのが出てきておりますが、私たまたま大蔵委員をしておりまして、時々税特あたりで質問するような立場にあるのでございますけれども、これはまたある意味からいうと負担の公正という意味で組合あたりもそれを提唱しているところがございます。この納税者番号制度についてのお二人の意見、最初の基本法についての林参考人意見ということをお聞きしたいと思います。
  55. 林修三

    林参考人 基本法とおっしゃる意味がどういうことかと思いますけれども、今堀部さんが言われましたとおりに、やはりこの法律案は国の行政機関の保有する個人情報保護内容でございます。しかし同時に、地方公共団体の保有する個人情報保護も当然に必要なことでございまして、これは今まで条例が相当できておりますし、この法律案でも地方団体もそういうものをだんだんつくっていってほしいということを書いております。それから特殊法人なんかについてもそういうことがこの法律案にうたわれております。それからあと民間部門の保有する個人情報、これも非常に重大な問題でございまして、先ほど私の初めの意見のときにも申し上げましたけれども、行く行くはやはり民間部門個人情報保護についても何らかの立法措置が必要だろうと私は思います。  そういうものをそれぞれ立法するについて、今堀部参考人が言われましたとおりに、アメリカ的な方式でいくのかヨーロッパ的な方式でいくのか、これはいろいろな考え方がございますし、また日本の状況にも合わせて、今いわゆる行政が各省庁で一応分担管理されている状況もやはり参考にしなければいけませんので、法案は一つの法案にするか、数個の法案が併存するような方法がいいのか、これは今後考えなければいけません。しかし、そういう場合にやはり個人情報保護全般を通ずるような、基本的な原則を何かうたうような法律があった方がいいのではないかという御議論はあるだろうと思います。それはそれぞれ幾つかの法律案を部門別に分けてつくるような場合には、そういう基本原則的なものを定めた法案も必要であろうかというような気がいたしております。  それから、納税者番号の問題でございますが、これは税の公正な課税と申しますか確保という点では、納税者番号というのはある意味では非常に役立つ制度だろうとは思います。しかし他面、個人の経済取引というのは現在原則的には自由な取引になっております。こういうものに踏み込んで、それに関係するいろいろな情報をこの納税者番号を通じてすべて税務当局に集中させようということでございます。現在でもそれぞれの税法では、いろいろな取引についての情報提供の義務は法律で書いてございますが、それが必ずしも十分に守られておらないことは御承知のとおりで、それをこういう納税者番号というようなものをつくって各取引に記入して集めようというわけで、これは税の目的からいえば私は非常に有効な制度だろうと思います。ただ、こういう問題を税の目的だけでやっていいかどうかということは、私は非常に大きな問題があると思っております。  それで、アメリカは社会保障の番号を納税者番号に流用しておりますが、これはまさにある意味では個人情報の結合をやっておるわけでございます。しかし、アメリカは納税者のあれを社会保障の番号でやっておりますが、あれは必ずしも実績が十分に上がっていないという評判も私は聞いております。これは今政府の税制調査会の方々が海外で調査をしておられましょうから、私は差し出がましいことは申し上げませんけれども、やはり自由主義国家における個人の取引の自由、個人はあくまで自分利益を追求できるという建前、これを自由主義国家ではみだりに制限するわけにはいかないわけで、そういう見地から申しますと、これはそういうものに対してある程度の制約を加えようという制度でございまして、これが果たしてうまくいくかどうか、いろいろな経済全体の運営整合性のあるような運用ができるかどうか、これはよほど慎重な調査が必要ではないかと私は思っております。
  56. 堀部政男

    堀部参考人 納税者番号制につきましては私もこれまで意見を述べてきておりますが、かなり厳格な条件を付するということが必要ではないかと思います。その上で、一つの租税の負担の公平という把握をする上での、運用をする上での方法かと存じます。
  57. 安倍基雄

    安倍(基)委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。
  58. 竹中修一

    竹中委員長 柴田睦夫君。
  59. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 共産党の柴田睦夫でございます。参考人の皆さんには、本当にありがとうございます。  最後の質問でありますが、まず最初に、秦野参考人にお伺いいたしたいと思います。  多年プライバシーを守る運動を進めてこられまして、そういう点からいうとこの法案が期待外れであるという御意見をお伺いいたしましたが、もう一つ運動を進めておられます国民背番号制度という問題について、法案では個人情報を番号で整理することができるというふうになっております。しかも、個人情報ファイル相互の結合も禁止していないわけです。こういう点から見ますと、かつて大問題になりました国民背番号制、これに道を開くのではないかと私自身も懸念をするわけであります。その点、運動を進めてこられました秦野参考人の実際面からのお考えをまずお伺いしたいと思います。
  60. 秦野八重

    秦野参考人 お答えいたします。  私どもは、今お話がありましたように、国民背番号制に反対しているという立場で進めてまいりました。その意味はもちろん、総背番号をつけてというか、一つの番号で国民のあらゆる部分まで総管理するような使い方というものについては、私たちとしてはどうしてもプライバシー権利立場から賛成できない。ただ、先ほどお話がございましたように、情報のシステムの結合を禁止するということになると、全部情報化にも反対するのかといったような御意見もあるやに思いますけれども、そういうことではございませんで、どういう使い方をするのか。今の現状で申しますと、コードナンバーをつけまして全部統合するということは、システム的には非常に可能になっております。したがいまして、個人情報をそのシステムの中で扱う場合には非常に厳正なガードをかけていく、それからもちろんインプットをするとき個人情報については余り便利さを優先させるようなことにしてほしくないという立場で、私たちは既にいろいろ問題を進めてきておりますので、先ほどお話がありましたような納税者番号ということをもし実現するとするなら、私たちとしては、相当厳格にプライバシー保護立場、あるいは税務情報などについても全部公開をするということ、国民からガラス張りにするということが前提でなければ非常に問題があるだろう。まして、社会保障の番号を使うというようなことにつきましては、国民背番号制への道を開くという立場で私たちは反対をいたしております。
  61. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次に、堀部参考人にお伺いしたいと思いますが、昭和五十七年の七月にプライバシー保護研究会プライバシー保護対策という報告が当時の行政管理庁から出ております。そして、今度六十一年の十二月に総務庁行政管理局から「行政機関における個人情報保護対策の在り方について」という報告が出ております。先生はこれらにずっと御関係になっていらっしゃるのですが、これは一九八二年の十月一日号の「ジュリスト」その中で座談会があります。五十七年のときの研究会は参加しておられました加藤一郎先生それから塩野先生、こうした方たちが出席しておられますが、その中で、いろいろありますけれども、時間がありませんので一つだけお伺いしますが、「公開の原則」というところを見ますと、個人システムを公示をするという問題について研究会でもいろんな議論が行われたということが述べられております。この公示の問題、公開の問題、この点についての議論の中身をもう少しお聞かせいただきたいと思います。
  62. 堀部政男

    堀部参考人 お答えいたします。  行政管理庁のプライバシー保護研究会におきましては、先ほど申し上げましたように、OECD理事会勧告が出ました直後でありまして、我が国でどのようにこれを考えていくのかという観点から議論いたしました。その際、公開の原則につきましても相当検討をいたしまして、これには大きく分けて二つの意見がございました。  一つは、やはり公開の原則に基づいてあらゆる個人データシステム、そのときは個人データシステムという言葉を使いましたけれども、個人データシステムは公示されるべきではないだろうかということであります。それに対しまして、国の安全とか外交交渉に関する秘密とか、そういうものに絡む個人データシステムというのも考えられる。実際にあるかどうかそこは実態はつかめませんでしたけれども、そういうものがある。そこまですべて公開するというのは国益との関係で問題ではないだろうか。こういうふうに大きく分かれたわけであります。そこでは原則公開という立場は出しましたけれども、具体的にどこまでのものを公開するかということにつきましてはそれほど明確にはいたしておりませんでした。
  63. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これも堀部参考人にお伺いしたいのですが、御意見の陳述の中で、法案は逐次改善されることを要望するという趣旨の御発言がございました。  具体的にお尋ねいたしたいのですが、この加藤一郎座長のときの研究会それから総務庁研究会、こうしたものを通じましてプライバシー保護という点で御発言になっておられたと思いますが、この法案の改善要望との関係プライバシー保護という面についての御意見をもう一つお伺いしたいと思います。
  64. 堀部政男

    堀部参考人 プライバシー保護という言葉を用いるか、個人情報保護という言葉を用いるか、このあたりが大変議論があったところでありまして、プライバシーという言葉は大変わかりやすい言葉ではあるのですが、各人がそれぞれこれは自分プライバシーであるというものがプライバシーになるような感もなきにしもあらずでございます。例えば、住所、氏名、電話番号というのは自分プライバシーであるから、これは絶対的に集めるべきでない、こういう御意見も一方にあるわけでありますが、具体的に制度をつくるとなりますともう少し客御的にとらえられるものを掲げていかなければならないというような点から、個人情報という概念を用いてきているわけでございます。  今後逐次改善を図っていく必要があるというふうに私は個人的には考えておりますが、それがプライバシー一般を保護するということまでは進まないのではないかと存じます。といいますのは、プライバシーというものは、これはマスメディアとの関係もともと出てきた議論でございまして、そのあたりとの調整をどのように図るのかというようなこともあるわけでありまして、現に国が持っております個人情報についてマスメディアの側が公開を請求してくるときに、すべてプライバシー保護であるということで出ないということが知る権利との関係でまた問題が出てくるのではないかと思います。プライバシーというのはマスメディアが侵害するという形で出てまいりましたけれども、それがまた余りに強調されますと、今度はマスメディアの知る権利、それは国民の知る権利を代弁している面もございますので、それとの兼ね合いをどうするのかというような問題も出てこようかと思いますし、実際は運用してみてどのような問題が出てくるか、今の段階では予測しがたいわけでございますが、いずれにいたしましても、逐次改善を図っていく必要があると私は考えております。
  65. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 渡辺参考人にお伺いいたしますけれども、いわゆるセンシティブ情報の問題ですが、この収集制限がない、そしてまた収集手段についての制限がない、人権保障という立場から御説明がありました。これは立法的にやらなければならない、そしてまたそれをやることができるというお考えだと思いますが、ちょっと繰り返しになりますけれども、そういうところをもう一度お伺いしたいと思います。
  66. 渡辺脩

    渡辺参考人 先ほども申し上げましたけれども、センシティブ情報についてはいろいろ難しい議論があって一概に定義づけができないという意見があります。定義づけができないという点では確かにそうかもわかりませんけれども、いろいろ論議されているものの中で何を選ぶかというのはまた別の問題でありまして、政策の問題として考えれば、項目を挙げて具体的に特定することができると思います。現にその立法例は外国の法令にもありますし、地方自治体の条例にも出てきております。外国の立法例をそのまま日本に持ち込むべきではないので実態に立脚するべきだという御意見があって、その点は私も賛成でありますけれども、我が国の実態に立脚してみてもそういう選択はできるはずだというぐあいに思います。  少なくとも、本人が望まない情報、これを勝手に集められて勝手に使われることは、やはりそのこと自体が人権侵害を構成するわけでして、そのことを本人がチェックすることを保障される必要は少なくともあるのではないか。したがって、センシティブ情報を特定するのは難しいという御意見があるにしても、少なくともその手段の問題ぐらいは考えてもらわなければ権利保障にならないのではないかということを申し上げているわけです。  先ほど申し上げましたけれども、収集制限の原則を立てておきませんと、自分が望まない情報を勝手に集められて勝手に使われていても、それが間違ってでもいない限り削除を要求することもできないだろうと思うわけです。これは訂正請求権がないということとも結びつく問題ですけれども、やはりこの辺のところはプライバシー保護の問題を軸にしながら個人情報保護法制の一つの中核をなす問題ではないかというぐあいに思います。  そしてまた、私ども論議しておりますのは、思想、信条あるいは信教の自由にかかわる情報を無断で収集すること自体が違憲であり違法であるということには異論がないと思いますけれども、そういうケースの場合を考えますと、収集されること自体が被害になる、そして日弁連の意見書でも申し上げておりますが、行政機関が保有する膨大な個人情報がどのように集められ、どのように蓄積され、どのように利用されているかということ自体を今国民が知らない状態にあるわけでして、その意味では、本当にどういう被害の実態が生まれているのか、それを国民自身が知ることのできない状態にあること自体が非常に大きな問題だというぐあいに思っております。収集されていること自体が秘密にされる状態があってはならない、本人からチェックする機会のないそういう制度であってはならないということが、個人情報保護制度を論議する大前提としてアメリカあたりでは原則立てられているわけです。立法の問題はそれぞれの国の状況に応じて変わるといたしましても、原理原則的な考え方というものはやはり普遍性があり国際的な共通性があるわけですから、そういうものに立脚した法制のありようというものを考えるべきであり、そういう点から考えても申し上げているような趣旨で情報収集制限の原則はやはり具体化されるべきものであるというぐあいに考えております。
  67. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それに関連してちょっとお伺いしたいのですが、個人情報ファイル公示しないという問題があります。一応公示するということになっていて、例外がずっと設けられて、特に重大な、国民にとって関心の高いファイルが公示されないというような規定になっていると思うわけでありますが、これは国民の知る権利にかかわる問題だと思うわけです。そして、例外を全面的にしていく、重大なファイルの存在さえ知らせない、こういうことになりますと、これが国の行政あり方の既成事実になってしまうのではないか、それは国の秘密主義的な行政になりはせぬか、こういう危惧を持つわけですが、日本弁護士連合会ではそういう点についての御議論はあったでしょうか。
  68. 渡辺脩

    渡辺参考人 ただいまの御質問の点に関する論議はいろいろ出ております。結論として日弁連の意見をまとめているわけではございませんけれども、例えば六条二項の一号には、今御指摘のように「国の安全、外交上の秘密その他の国の重大な利益に関する事項を記録する個人情報ファイル」が除外されるわけです。ここで規定される「外交上の秘密その他の国の重大な利益に関する」その情報というものはどういうものであるのか明確化すること自体がかなりいろいろ難しいと思いますけれども、しかし、そういう点を踏まえながら情報公開制度との関係から考えていくと、国民が知る権利を持っている情報がこういう形で秘密として隠されていくことになるのではないかということを、情報公開制度検討しているグループ、委員会から声が上がっております。そういうことを含めていろいろ論議を進めているということは報告申し上げることができると思います。  それからまた、一般的にこの開示請求権対象外になるものが随分多いとか、それから通知義務あるいはファイル簿作成義務の除外事由が非常に多いとか、先ほどいろいろ申し上げましたけれども、個人情報保護から外れるという形で、実は行政機関が有する、そして国民が知っていいはずの、また知るべき情報がいろいろ隠されることになりはしないかということも非常に強く懸念されております。それから自分情報に関して言うと、どうも自分が知りたいと思う情報についての保障はほとんどないわけですから、自分に関する情報についてさえ国の秘密の大きな壁の中に取り込まれてしまってなかなか手が伸ばせないということになりはしないかという懸念も論議されております。いろいろな角度から今御質問の点については議論が出ているということだけは申し上げることができると思います。
  69. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 堀部参考人に今の渡辺参考人の御意見に関連してお伺いしますが、センシティブ情報の定義、これは難しいかもしれませんが、現実に人種、政治的意見、宗教その他の信条、こうしたものの収集を禁止するという外国の立法例あるいは条約、そうしたものは存在するのでしょうか。
  70. 堀部政男

    堀部参考人 お答えいたします。  外国の立法例の中には、今先生御指摘のようなものを収集制限の中に含めているものはございます。
  71. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 では、終わります。
  72. 竹中修一

    竹中委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十九分散会