運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-10-11 第113回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月十一日(火曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 宮下 創平君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君       大村 襄治君    河野 洋平君       玉沢徳一郎君    宮里 松正君       村井  仁君    谷津 義男君       角屋堅次郎君    広瀬 秀吉君       井上 和久君    鈴切 康雄君       川端 達夫君    浦井  洋君       柴田 睦夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君  出席政府委員         総務庁長官官房         長       山田 馨司君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         総務庁行政管理         局行政情報シス         テム参事官   重富吉之助君         総務庁統計局長 田中 宏樹君  委員外出席者         警察庁長官官房         企画課長    菅沼 清高君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第一課長   川名 英子君         法務大臣官房秘         書課長     長山 頼興君         外務大臣官房領         事移住部旅券課         長       伊藤 庄亮君         文部省高等教育         局大学課長   泊  龍雄君         厚生省保健医療         局管理課長   矢野 朝水君         通商産業大臣官         房情報管理課長 桐山 正敏君         郵政大臣官房文         書課長     谷  公士君         自治大臣官房情         報管理官    小林  紘君         内閣委員会調査         室長      岩渕  静君     ───────────── 委員の異動 十月十一日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     玉沢徳一郎君 同日  辞任         補欠選任   玉沢徳一郎君     河本 敏夫君     ───────────── 九月二十二日  行政機関の休日に関する法律案内閣提出第九号)  一般職の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号) 同月十二日  恩給改善に関する請願伊吹文明紹介)(第七九六号)  同外二件(大石千八紹介)(第七九七号)  同(森田一紹介)(第七九八号)  同(森田一紹介)(第八四六号)  同(木村義雄紹介)(第八七九号)  同(月原茂皓紹介)(第八八〇号)  同(柳沢伯夫君紹介)(第八八一号)  同(大野功統紹介)(第九二五号)  国家秘密法案の再提出反対に関する請願田川誠一紹介)(第七九九号)  同(田川誠一紹介)(第八四七号)  同(新村勝雄紹介)(第九三五号) 同月十六日  恩給改善に関する請願原田昇左右紹介)(第九五四号)  同(麻生太郎紹介)(第九九〇号)  同(川崎二郎紹介)(第一〇二三号)  同(倉成正紹介)(第一〇二四号)  同(谷垣禎一紹介)(第一〇二五号)  同(野中広務紹介)(第一〇二六号)  同(山下元利紹介)(第一〇二七号)  国家秘密法案の再提出反対に関する請願菅直人紹介)(第九五五号) 同月十九日  恩給改善に関する請願左藤恵紹介)(第一一〇一号)  同(野呂昭彦紹介)(第一一〇二号)  同(藤波孝生紹介)(第一一〇三号)  同(奥田幹生紹介)(第一一七六号)  同(北川正恭紹介)(第一一七七号)  同(櫻内義雄紹介)(第一二〇二号)  同(上村千一郎紹介)(第一二九八号)  同(大野明紹介)(第一二九九号)  同(金子一義紹介)(第一三〇〇号)  同(木部佳昭紹介)(第一三〇一号)  同(栗原祐幸紹介)(第一三〇二号)  同(左藤恵紹介)(第一三〇三号)  同(斉藤斗志二君紹介)(第一三〇四号)  同(塩谷一夫紹介)(第一三〇五号)  同(杉山憲夫紹介)(第一三〇六号)  同(竹内黎一君紹介)(第一三〇七号)  同(塚原俊平紹介)(第一三〇八号)  同(戸塚進也紹介)(第一三〇九号)  同(中山太郎紹介)(第一三一〇号)  同(中山利生紹介)(第一三一一号)  同(原田憲紹介)(第一三一二号)  同(原田昇左右紹介)(第一三一三号)  同(東力君紹介)(第一三一四号)  同(松田岩夫紹介)(第一三一五号)  同(武藤嘉文紹介)(第一三一六号)  スパイ防止法制定に関する請願細田吉藏紹介)(第一一七五号)  同(小泉純一郎紹介)(第一二〇〇号)  同外三件(櫻内義雄紹介)(第一二〇一号)  国家機密法制定反対に関する請願安藤巖紹介)(第一二三九号) 同月二十日  旧治安維持法等による犠牲者の賠償に関する請願外一件(藤田スミ紹介)(第一四一七号)  国家機密法制定反対に関する請願安藤巖紹介)(第一四一八号)  国家秘密法案の再提出反対に関する請願岩佐恵美紹介)(第一四一九号)  同(松本善明紹介)(第一四二〇号)  旧軍人軍属恩給欠格者救済に関する請願渡辺秀央紹介)(第一四五三号)  恩給改善に関する請願赤城宗徳紹介)(第一四五四号)  同(小沢辰男紹介)(第一四五五号)  同(奥野誠亮紹介)(第一四五六号)  同(熊谷弘紹介)(第一四五七号)  同(佐藤敬夫紹介)(第一四五八号)  同(塩川正十郎紹介)(第一四五九号)  同(武村正義紹介)(第一四六〇号)  同(中西啓介紹介)(第一四六一号)  同(中村喜四郎紹介)(第一四六二号)  同(二階俊博君紹介)(第一四六三号)  同(丹羽雄哉紹介)(第一四六四号)  同(額賀福志郎紹介)(第一四六五号)  同(葉梨信行紹介)(第一四六六号)  同(前田武志紹介)(第一四六七号)  同(松永光紹介)(第一四六八号)  同(宮里松正紹介)(第一四六九号)  三沢米軍基地に配備されているF16の飛行訓練中止に関する請願石井郁子紹介)(第一七二一号) は本委員会に付託された。     ───────────── 九月十四日  国家機密法制定反対に関する陳情書(第一号)  防衛費の対国民総生産比一パーセント枠厳守に関する陳情書外一件(第二号)  岩国基地における米軍艦載機着艦訓練に伴う騒音障害防止に関する陳情書(第三号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第八二号)  統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第八三号)      ────◇─────
  2. 竹中修一

    竹中委員長 これより会議を開きます。  第百十二回国会内閣提出行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案、及び統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  趣旨説明を求めます。高鳥総務庁長官。     ─────────────  行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案  統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま議題となりました行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案、及び統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案について、一括してその提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  まず、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案について御説明申し上げます。  我が国におきましては、近年、社会における著しい情報化進展背景として、行政機関においても個人情報電子計算機による処理が拡大し、行政運営効率化行政サービスの向上に大きく寄与しておりますが、一方で、従来の手作業による処理には見られない電子計算機処理特性から、個人権利利益侵害のおそれと、これについての国民不安感の存在が指摘されているところであります。  このため、電子計算機処理に係る個人情報取り扱いに関し必要な事項を定めることにより、個人権利利益保護するとともに、臨調答申でも指摘されている行政に対する信頼性確保を図ることとし、この法律案提出することとした次第であります。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、この法律目的であります。  この法律は、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報取り扱いに関する基本的事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人権利利益保護することを目的とするものであります。  第二は、個人情報電子計算機処理に関する事項であります。  行政機関は、所掌事務を遂行するため必要な限度において、かつ、できる限り目的を特定して個人情報ファイルを保有することとし、総務庁長官は、一定の事由に該当する場合を除き、個人情報ファイル保有目的記録項目等について公示することとしております。  また、行政機関の長は、個人情報の安全及び正確性確保するよう努めなければならないとともに、個人情報原則として個人情報ファイル保有目的以外の目的のために利用し、または提供してはならないこととしております。  第三は、個人情報開示及び訂正等であります。  行政機関の長は、本人から、個人情報開示請求があったときは、原則としてこれを開示することとし、訂正等申し出があったときは、調査し、その結果を通知することとしております。  第四に、法施行統一性確保するため、総務庁長官は、資料の提出及び説明を求め、意見を述べることができることとしております。  第五は、この法律規定適用除外であります。  統計法に基づく統計調査によって集められた個人情報及び統計報告調整法に基づく統計報告の徴集によって得られた個人情報については、この法律規定を適用しないものとしております。  第六に、地方公共団体及び特殊法人個人情報電子計算機処理を行う場合には、国の施策に留意しつつ、所要措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。  次に、施行期日等についてであります。  この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、個人情報開示及び訂正等に係る規定については、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  続きまして、統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  最近における社会経済情勢の変化に即応し、統計行政の円滑な運営に資するため、統計調査に係る秘密保護を図る等所要措置を講じ、被調査者統計調査に対する信頼確保することが求められております。  このような要請にこたえるとともに、ただいま御説明申し上げました行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に関連して、統計関係法令においても別途所要規定整備を図る必要があるため、ここにこの法律案提出した次第であります。  次に、法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、指定統計調査以外の統計調査等につきましては、現行法秘密保護に係る規定整備されていなかったことから、その秘密保護を図ることとしております。  第二に、指定統計調査以外の統計調査等によって集められた調査票等につきましては、現行法上その使用規制に関する規定整備されていなかったことから、統計上の目的以外に使用することを規制することとしております。  第三に、指定統計調査等によって集められた調査票等の滅失、漏えい等防止するため、調査実施者が適正な管理を行うこととしております。  その他、この法律案におきましては、統計調査運営上必要な規定整備を行うこととしております。  以上が、これらの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 竹中修一

    竹中委員長 これにて両案についての趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 竹中修一

    竹中委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。田口健二君。
  6. 田口健二

    田口委員 私は、ただいま議題になりましたいわゆる個人情報保護法案について、質問をいたします。日本社会党護憲共同としては私がトップバッターになりますので、一わたり全体の部分についてお尋ねをいたしたいというふうに思いますので、簡潔にそして明確にお答えをいただきたいと思います。  最初に、具体的な部分に入る前に基本的な事項について二、三点お伺いをいたしたいと思います。  第一の点でありますが、高度情報社会の著しい進展によって過度の情報集中化商品化が生じておることは改めて言うまでもありません。また、国の行政機関においてもさまざまな分野個人情報電子計算機による処理が行われ、利用されるに至っております。しかし一方で、個人情報が大量に行政機関で保有され、利用されるようになったことに伴って、国民プライバシー侵害のおそれが高まり、不安感が広がっていることも事実であります。本法案提案理由説明の中にもそのことはあったとおりであります。このようなことから、今日、個人情報保護のために立法化を図ることは時代の要請に応じた極めて重要なことだというふうにも考えております。このような法律我が国行政制度の中でも新しい分野のものであり、それだけにまた慎重を期さなければならないというふうに考えています。  今回の法案提出に至るまでにはさまざまな具体的な検討が加えられてきたというふうに考えていますが、そこでまず最初に、今回の個人情報保護法案提出された背景、これまでの経緯、その必要性について、政府の見解をお伺いいたしたいと思います。
  7. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま田口委員から御指摘のように、行政機関におきまして電子計算機処理をされております内容というものは非常に拡大いたしておるところでありまして、昭和六十二年一月現在、十五省庁が保有しておりますものは約一千二百九十八ファイル、約十二億件という膨大な量に上っております。その内容といたしましては、年金とか保険とか旅券とか国税、出入国管理犯罪捜査医療教育行政等、ほとんどすべての分野電子計算機処理が行われておる、そのような内容になっております。  電子計算機処理特性といたしまして、大量、高速処理が行われておる、あるいはまた集中、結合ないしは検索及び遠隔処理が容易に行われるということがあります。さらに、記録処理ブラックボックス化があるということであります。このようなことから、ただいま御指摘のように国民不安感あるいは個人権利利益侵害、こういうことについて国民の間にいろいろな御意見がございます。昭和六十年の総理府世論調査というのが手元にございますが、これによりますと、コンピューターの利用に伴いまして、プライバシー侵害が多くなりそうだという不安を持っておられる回答が六九%、あるいはまた行政機関における個人情報保護対策が必要だ、こういう回答が七六%、このような数字が出ておるところであります。  こうしたことを背景にいたしまして、私どもといたしましては、どうしてもこの際国民不安感あるいは個人権利利益侵害、こうしたことを政府の立場において防止する施策が必要である、このように考えているところでございます。  この法案成立背景といたしましては、既に五十一年一月に事務次官等会議の申し合わせという形でこれを取り上げておりまして、各省庁が講ずべき事項大綱を示しました電子計算機処理データ保護管理準則というのを一応定めたわけであります。その後にOECD理事会勧告というのが五十五年九月にございまして、いわゆる八原則というのが示されているところであります。  国内的に見ますと、これら情報につきましてオンライン化等が進みましていろいろな形での利用がされる可能性がある、あるいは国際的には、国際間における情報流通というような事態もOECD加盟各国においては現に存在するわけであります。したがいまして、そこにおいて個人権利利益侵害されないような適切な規制が必要である、このように考えたところでございます。  なおかつまた、臨時行政調査会最終答申、これは昭和五十八年三月でありますが、この答申の中においても、個人データ保護に係る制度的方策について積極的に対応すべきであるという提言がなされております。さらにまた、これを受けました累次の行革大綱におきましても、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護制度的方策につきましては法的な措置を行うための具体的検討を引き続き行うということを政府といたしまして閣議決定いたしているところでございます。  これらの諸決定を踏まえまして、政府部内において協議調整を進めました結果、今年四月二十八日に行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案閣議決定をいたしまして、さきの通常国会提出をいたしました。  これが今日までの経緯でございます。
  8. 田口健二

    田口委員 次に、今大臣の御答弁の中にもありましたけれども、一九八〇年にOECD理事会プライバシー保護のための勧告を出されたというふうに私どもも聞いております。また、諸外国においても、こうした国民不安感に対応するために個人情報保護のための法律というものが数多く制定をされておる、こういうふうに聞いておるわけでありますが、そういう点から見れば、今回の法案提案は諸外国に比べて少し遅さに失したのではないか、こういう感もしないでもないわけであります。  そこで、今申し上げましたOECD理事会勧告内容、また欧米諸国における法律制定内容、これは相当数があろうかと思いますからそう詳しくはできないと思いますが、概要についてわかっておれば御説明をいただきたいと思います。
  9. 百崎英

    ○百崎政府委員 OECD勧告の出されました背景内容でございますが、欧米諸国におきましては、一九七〇年代に入りまして国際データ通信というものが本格化いたしました。その結果、先ほど大臣から御説明がありましたように、一国民データがほかの国に流れて、そこで蓄積され利用される、こういった状況を生み出したわけでございます。そのために、プライバシー保護とかあるいはそういったデータの無制限国外流出規制する問題と、データの自由な国際流通、この二つをどういうふうに調和させるか、そういうことが国際的に問題になりまして、そういう観点でOECDにおきましても専門委員会を設けてこの問題を検討いたしまして、先ほど先生おっしゃったような一九八〇年の理事会勧告が出されたわけでございます。  勧告の主な内容は、一つは、加盟各国プライバシー保護のための法的措置を講ずること、それからプライバシー保護の名目で個人データの自由な国際流通に対する不当な障害を設けないこと、こういったことを勧告いたしております。  その勧告附属文書といたしまして実はガイドラインが示されているわけでございますが、その内容は、先ほど先生おっしゃいましたいわゆるOECDの八原則というものでございまして、収集制限原則データ内容原則目的明確化原則利用制限原則安全保護原則、公開の原則個人参加原則、責任の原則、こういったいわゆる八原則が示されているわけでございます。  それから次に、諸外国における個人情報保護法制定状況とその内容でございますが、国のレベルでは、一九七三年にスウェーデンで初めてデータ法というものが成立いたしまして、その後アメリカを初め西ドイツ、カナダ等々の国において次次と法律制定されました。OECD勧告の後にはイギリスその他の国でも法律制定されまして、現在ではOECD加盟二十四カ国のうち十三カ国が個人情報保護法を定めているという状況でございます。なお、サミット加盟国の中では日本とイタリアだけがまだ未制定、こういう状況にな っております。  これらの諸外国における個人情報保護法内容を見ますと、これは国情によっていろいろな違いがございますけれども、基本的には個人情報を対象として、その保有規制あるいは利用、提供の制限、安全、正確性確保、それから個人情報ファイルを公示するとともに自己情報開示あるいは訂正を制度化する、こういった基本的な仕組みの点におきましてはただいま御審議いただいております法案と類似したような内容になっております。
  10. 田口健二

    田口委員 今局長の方から諸外国状況並びにOECDガイドライン、八原則と俗に言われておりますが、概要についてお話があったのであります。これは大臣お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、私も、この法案提案されてから、先ほど来のOECD理事会勧告いわゆる八原則あるいは諸外国法律の中身、こういうものといろいろ比較をしてみたのです。ところが、今回の法案というものはOECD原則から見てもあるいは諸外国の事例から見ても随分立ちおくれておると私は感ずるのです。果たしてこれで題名のとおり個人情報保護法案と言えるだろうか、極論をするならば逆ではなかろうか、こういう感すら実はしないわけでもないのです。  大臣は本年の五月に欧州に視察に行かれたと私も聞いておりますので、そういう諸外国の現在の法律状況から見て、この法案については一体どういうお考えをお持ちでしょうか。私は率直な大臣の所見を伺いたいと思っております。
  11. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいまOECD勧告あるいは諸外国法律に比べて大分立ちおくれているではないか、あるいは先ほどの御質問の中に、そもそもが制定の時期そのものも遅いではないか、こういう御指摘がございました。  実は日本行政あり方欧米行政あり方との間には若干の相違がございまして、日ごろ大変おしかりを受けているところでありますが、日本はいわゆる縦割り行政の意識が非常に強うございまして、それぞれの省庁が持っております情報を横に流すということについて従来非常に閉鎖的でありました。それに対しまして欧米各国におきましては、いろいろな情報相互間におきまして利用するということが日本よりはかなり積極的でありました。政府レベル国家レベルではなくて、地方レベルにおける問題として一番最初個人情報保護法制定いたしましたのはドイツのヘッセン州でありますが、私、このヘッセン州に参りまして、その担当官といろいろ意見交換をいたしましたときに、なぜヘッセン州が最も早くこの個人情報保護法制定に踏み切ったのかということにつきまして質問をいたしましたところ、それは、持っております情報相互にそれぞれの所管以外のところで利用される、いわゆるドイツ的な考え方かもしれませんが、その方が非常に効率的である、こういうふうな考え方が非常に強くなってきた、このまま放置いたしますと、個人情報がそっくりいろいろなところで利用されることになると、それはひいては個人プライバシー侵害につながるではないか、したがって何らかの抑制措置が必要である、規制が必要である、こういうことを強く意識したために自分たちはいち早くこの法律制定したんだということを申しておりました。  先ほども申し上げましたように、現にヨーロッパ各国におきましては、例えばこの前もテレビで放映いたしておりまして、私、見ておりましてびっくりしたのでありますが、国境を越えての臓器の提供ですね。腎臓でありますとかその他、そういうのが適合性があるところがわかれば国境を越えて急速にヘリコプターで運んで手術をやる。そのためには個人のそういう病歴についてのデータ集中的に、いわゆる国境を越えた管理が行われていなければできないわけであります。そのようなことが非常に進んでいるために、OECDにおいてガイドラインを設定して勧告をしたという経緯がございます。  それに対しまして日本の方は、先刻申し上げましたように、どちらかと申しますといわゆる縦割り行政で、横に情報が流れることについて今日まで非常に閉鎖的であった。そういう伝統を踏まえまして、今回私ども総務庁といたしましては、諸外国の立法例、OECD勧告、それらにできるだけ沿う形で各省庁の理解を得ながらこの法律案をまとめたというものでございまして、基本的にはOECDガイドラインを踏み外すものではない、大体その線に沿ったものであると考えておるところであります。それで、個人情報ファイルにつきましてできるだけ公開する、公示をするということにいたしておりますほか、自己の情報開示請求権を規定しているとか、個人情報ファイル保有目的以外の利用、提供を原則的に禁止をするなどなど、それぞれガイドラインに沿った措置を講じているものと理解しております。
  12. 田口健二

    田口委員 ただいまの点は、一番最後に改めて私はもう一度大臣の御見解をいただきたいと思っております。  続いて、プライバシー権というものについて政府考え方をちょっとお尋ねをしたいと思います。  プライバシー権といいますと、私どもは普通ひとりにしておいてもらう権利であるとかむやみに私生活を暴かれない権利、こういうふうに大体考えてきたわけであります。しかし、コンピューターなどの情報通信機器の発展によって、今までは考えられなかったような形で情報集中流通が起こるようになってまいりまして、考え方を変えなければならないようになっているのが現状ではなかろうかと思っています。現代のコンピューター技術によれば、ほんの少しずつの情報を収集し組み立てれば一人一人の人間が完全に浮き上がってくる。そのことによって本人に大変な被害を与えることもあるわけであります。  そこで、今まで言われてきたひとりにしておいてもらう権利ではなくて、自分で自分の情報をコントロールする権利、いわゆる自己情報コントロール権というのが現在のプライバシーについての考え方であるというふうに言われておるわけです。OECD原則というものもこういったプライバシーについての考え方を整理したものである、こういう言い方もされておるわけでありますが、この自己情報コントロール権というものについて政府はどのようにお考えになっておるか、それをお尋ねいたしたいと思います。
  13. 高鳥修

    高鳥国務大臣 私は法律学者じゃございませんので、プライバシーの権利についての概念を問うと言われましても、的確なお答えができるかどうか甚だ心もとない次第でありますが、ただ、私どもが考えておりますのは、いわゆるプライバシーというもの全体についての保護ということになりますと、これはどうも総務庁として手の届く範囲よりもはるかに大きなものである、したがってプライバシー全体の保護という観点についてはなお今後いろいろと御検討いただかなければならないだろう、このように思っております。ただ、政府が保有しております個人情報のうち電子計算機処理されておるものについて、これを利用を適当な規制をしないでおきますと個人権利利益侵害することになるではないかというおそれがあるということに対しまして、この際きちっとした規制をかけようというのが今回の考え方でございます。  したがって、プライバシー保護という点から見ればまだ手をつけていない範囲が非常にたくさんあるではないか、こういう御指摘があればそれは当然のことだというふうに思います。しかし、私ども総務庁として、現在政府が持っておるものについて、既にこれだけ膨大な情報量を持っておりますので、やはりこれは今規制をしなければいかぬ、こういう考え方に基づいて御提案を申し上げたものでありまして、先刻御指摘がありましたような自己情報コントロール権を含むものであるという考え方があることについては、当然承知をいたしております。
  14. 田口健二

    田口委員 先ほど大臣の御答弁の中にもちょっと触れられておったのでありますが、情報化社 会の中で国民が抱いているプライバシー侵害の不安というものについて、さまざまな問題点があろうというふうに思うのであります。先ほど若干大臣からお答えをいただきましたが、この辺の把握について、総務庁としてはどのように国民の意識というものを把握しておるのか、この辺をひとつお尋ねいたします。
  15. 百崎英

    ○百崎政府委員 先ほど大臣から若干紹介を申し上げましたが、そういう意味で重複するところがあろうかと思いますけれども政府におきましては、個人情報保護対策についての国民の意識を把握するために、昭和六十年の七月に総理府で世論調査を行っております。その結果によりますと、一つは、コンピューターの普及に伴って約七割の方が、コンピューターの利用によるプライバシー侵害が多くなりそうだ、こういう不安感を持っておられます。それからまた、国の行政機関地方公共団体に対して安心して個人情報を申告できるというものが過半数を占めてはおりますけれども、何らかの個人情報保護対策を求めるという方が八割近くを占めるに至っております。このほか、国の行政機関に対する保護対策の内容につきましては、利用状況原則公開とか目的外の利用制限、あるいは閲覧、訂正の機会を設ける等々、六項目につきましていずれも半数以上の方がその必要性指摘している、こういう結果が出ております。
  16. 田口健二

    田口委員 それでは、法案の具体的な内容についてこれから質問していきたいと思います。  まず、プライバシー保護原則で何よりも大事なことは収集制限原則であろうというふうに思います。これはOECDのいわゆるガイドラインの中でもまず最初にそのことが明確にされておるわけです。ところが、今回の法案には、最も大事であるところの収集制限規定というものが設けられていないのですね。これは一体どういうことなのか、まず、そのことからお伺いをいたしたいと思います。
  17. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  収集制限原則と言われておりますが、この収集制限原則については、OECD理事会勧告を見ますと内容が二つに分かれているというふうに考えております。  一つは、情報内容による制限でございます。これにつきましては、OECD理事会勧告では、個人データの収集には制限を設けるべきであるとされております。  それからもう一つは、収集の手段による制限でございます。方法といいますか、そういう制限でございます。これにつきましては、OECD理事会勧告では、いかなる個人データも、適法かつ公正な手段によって、かつ適当な場合には、データ主体に知らしめ又は同意を得た上で、収集されるべきである、こういうふうにされているわけでございます。  そこで、まずセンシティブ情報を含めました情報内容による制限について、私ども考え方を申し上げたいと思います。  思想、信条、宗教等のいわゆるセンシティブ情報と言われておりますものに関しましては、OECD理事会の中でも大変な議論があったようでございまして、結論的には、個人データの収集には制限を設けるべきであるということだけ規定しておりまして、その制限内容をどうするかということについては各国の裁量にゆだねておるわけでございます。  私どもが今度提案しました本法案の場合で申し上げますと、第四条に、個人情報ファイルは、法律に定める所掌事務を遂行するために必要な場合に限り保有することができ、かつ記録される項目も必要最小限度のものでなければならぬ、こういうふうに書いておりまして、保有の制限によって実質的に収集の制限をしているというふうに考えておるわけでございます。そして、その中にセンシティブ情報というものも含めて考えておるわけでございます。  また、行政機関個人情報についてその保護を図ります場合には、センシティブ情報について仮に規定法案で設けるといたしましても、適用除外を設けざるを得ないわけでございます。なぜならば、行政機関のある行政では、どうしても個人の思想、信条、宗教等について調べる場合がある分野がございます。したがいまして、そういう規定を設けます場合は例外規定を設けねばならぬということでございますので、本法案の第四条で、所掌事務範囲内でだけしか情報を保有することができないとしていることで、その収集の制限はかかっていると考えるわけでございます。  なお、念のために申し上げますと、西ドイツとかカナダのような場合は、行政機関だけが今度のプライバシー法案の対象でございますが、行政機関所掌事務範囲内で法律に基づいて個人情報の収集を行う場合については、何ら制限が設けられていないということでございます。  長くなって申しわけございませんが、それから第二点目の情報の収集手段による制限でございますが、私どもがこの規定を設けなかった理由は、日本行政というのは、法律による行政の原理といいますか、法律規定に基づいて行政を行う、こういうふうになっておりますので、当然に行政というものは適法かつ公正に行われる、わざわざその収集手段による制限を設けなくてもいいということで、設けなかったわけでございます。なお、行政機関のみを対象としておりますアメリカ、カナダでは、個人情報保護法につきまして、このような収集の手段による制限というものの規定は設けていないわけでございます。  なお、収集の制限に関してはデータ主体、本人確認、本人に同意を得た上で集めろという規定がございますが、これにつきましても、私ども日本の場合、本人の申告とか本人からの直接の個人情報の収集というものがほとんどである。それからもう一つ、先ほども申しましたように、ある行政分野ではどうしても第三者からの個人情報を収集しなければならない場合がある。例えて申しますと、犯罪捜査等の場合でございます。それからもう一つは、確かにその本人通知とか本人同意とかそういう収集制限のことに関連する規定を設けなければ、国民個人情報保護に関する不安感が解消したり、その個人の不測の不利益等を防止することはできないという御意見もございますけれども、本法では政府の持っている個人情報ファイルはできるだけ公示する、そして利用、提供は原則禁止する、それから開示請求があった場合には開示に応ずる、そういうことを規定しておりますので、それらの方法によっても対応は可能であるというふうに考えておるわけでございます。我が国と同じような考え方から、スウェーデンとかイギリスでは本人同意という規定は設けられていないわけでございます。
  18. 田口健二

    田口委員 余り長かったので、何を言っているのか私はちょっとよく理解ができなかったのです。一口で言うなら、四条で一応この収集制限の歯どめがかかっておる、こういうことも言いたかったのじゃなかろうかと推測をしておるのですが、しかし、この四条の条文というものを逆に読んでいきますと、「法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、できる限りその目的を特定」ということになっているのですが、それをやればどんな個人情報でも、今おっしゃられたようないわゆるセンシティブ情報であっても収集可能になるのじゃないかという疑問があるのです。だから私は、この四条の規定というのはいわゆる制限の歯どめにはならない、実はこう考えて冒頭申し上げたのです。  それからもう一つお尋ねしておきたいのは、いわゆる加藤委員会ですね。この報告の中で収集制限原則というのがあるのですが、「データの収集は適法かつ公正な手段によらなければならない。」ということは明確に言っているわけですね。この法案のこの条文でいって適法かつ公正な手段というのが保証されるのか。あるいは適法かつ公正な手段というのは一体どういうことなのか。その辺はどうなんでしょうか。
  19. 重富吉之助

    ○重富政府委員 先ほども申し上げましたように、適法かつ公正な手段ということは、我が国行政はすべて法律に基づき行われねばならぬということになっておりますので、法律に基づいて行われるということは、当然適法かつ公正な手段によって行われねばならぬ、収集されなければならぬということになると思っております。
  20. 田口健二

    田口委員 大変抽象的で、そういう問題がこの法案にたくさんあるので、後からまたこれはひとつその辺でまとめてお尋ねをいたしますが、今の点でもう一点お尋ねをしておきますけれども、これは加藤委員会の報告の中にもあるのですが、当時の行政管理庁が昭和五十四年九月に行った「国の行政機関における個人データの取扱い調」こういうのがあるのです。その中で見てみますと、全部ではないと思うのでありますが、七省庁の取り扱う九十八の個人情報ファイルのうち同意を求めているのはわずかに六ファイル、これは事実なんですか。
  21. 重富吉之助

    ○重富政府委員 事実でございます。
  22. 田口健二

    田口委員 そうしますと、今言ったような九十八のこの個人情報ファイルのうちに本人の同意を求めているのはわずか六ファイル、もうほとんどなきにも等しい。こういうことになれば、今回の法律が成立をすればこういう点はどうなんでしょうか、規制をされていくというふうに理解をしておられるのでしょうか、その辺をひとつお伺いをいたします。
  23. 重富吉之助

    ○重富政府委員 ただいまの加藤委員会の報告に附属で出ている資料は一部のサンプル調査でございますので、果たして同意を得ているのが六事例、全体の一〇%以下であるということかどうかは確かでないということが一つでございます。
  24. 田口健二

    田口委員 それじゃ次に、安全性と正確性という問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  個人情報の安全、正確性確保個人情報保護対策において大変重要なことでございますし、電子計算機処理による個人情報が適切に管理されないで、不正確また不完全な個人情報利用あるいは提供されたり、個人情報が漏えいをしたり滅失をしたり、そういうことになりますと個人に大変な不利益をもたらすことになるわけであります。法案の第五条で、個人情報の安全及び正確性確保については単に努力義務だということになっているのですね。これできちっとした具体的な保護対策が講じられるのかどうなのか、その辺の見解を伺いたいと思います。
  25. 百崎英

    ○百崎政府委員 まず、個人情報の安全確保の具体的な措置でございますが、これは一つは、管理組織をつくるとかあるいは管理規定整備するといったいわゆる管理的な保護措置、それからもう一つは、データに対するアクセス制限をするあるいは暗号化を図る等々といったような技術的な保護措置、それからもう一つは、コンピューター等を置いております施設あるいは設備の整備を図るといった物理的な保護措置、こういったようなことが考えられるわけでございますが、正確性確保の具体的な措置といたしましては、ファイル保有目的に必要な範囲内で、一つは入力時の照合、確認等のチェック体制をどうするか、それから仮に誤りを発見した場合の訂正等の手続をどうするか、あるいは記録事項の更新をどういうふうな手順でやるか、保存期間をどういうふうに設定するか、あるいは保存期間が経過して必要がなくなった場合にどういう形で廃棄するか、こういったようなことが考えられるわけでございます。  そこで、このような具体的な措置につきましては、個々のファイル目的あるいは性格ごとに異なることがございますし、また技術の進歩によっても異なるものでございます。それからまた、個個のファイルに即してそういった問題は適切かつ弾力的に対応する必要がある。そういうことで、私どもといたしましては、ガイドラインを定めてその基準に従って実効性を図りたいというふうに考えているところでございます。  この法案を成立させていただければ、私どもは早速その作業に取りかかりたいと思っておりますけれども規定上努力義務ということにはなっておりますが、これは私どもといたしましては、単に努力するということではなくて、まさに安全、正確性確保のために早速こういう作業を始めたいというふうに考えております。
  26. 田口健二

    田口委員 次に、利用制限、提供制限の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  法案の第九条に利用、提供の制限を設けたのは、個人データ利用、提供いかんによっては、例えばデータが収集目的外に利用、提供された場合に利用者に当該個人に対して誤った認識を持たせるとか、そういうことで個人自体の虚像を形成する可能性があるし、またプライバシー侵害のおそれも大変大きい、こういうことで利用制限、提供制限規定が設けられたというふうに理解をしておるのでありますが、そのとおりですか。
  27. 百崎英

    ○百崎政府委員 まず最初に、目的外の利用、提供についての考え方を御説明したいと思いますが、電子計算機処理に係る個人情報保有目的以外に利用、提供された場合には、今先生がおっしゃいましたように、収集されたときの背景、事情等が無視されて個人に関して誤った認識を持たれたりあるいは部分的な情報に基づいていわゆる個人に関する虚像が形成される、そういったことで結果的に個人権利利益侵害されるおそれがございます。そういうことでこの法案におきましては保有目的以外の利用、提供を原則として禁止いたしております。  ただ、行政機関の保有する個人情報につきましては、一方では行政サービスの向上あるいは行政効率化、さらには国民負担の軽減という観点から、当該行政機関の内部あるいは行政機関相互の間での情報の有効利用ということも必要でございますし、また、場合によっては本人の利益のために目的外に利用、提供するということが要請される場合もございますので、目的外の利用、提供を一切認めないということは適当ではないのではないかと考えております。したがいまして、この法案におきましては、個人権利利益保護と公共の利益との調和を図る、こういう観点から一定の例外事項に該当する場合にだけ例外的に目的外にも利用、提供できるというふうにしているわけでございます。こういう考え方OECD理事会勧告趣旨にも沿っておりますし、また諸外国の立法例にも見られるということでございます。
  28. 田口健二

    田口委員 考え方はそれで私もそう問題はないと思うのです。ただ、せっかく第九条でもって制限規定を設けておるわけですね。ところが、余りにも例外が多いのですよね。今あなたが言われたように、この例外以外のものということになる。こういうことで本当に利用制限なり提供制限というのがきちっと規制できるのだろうか。例外規定が余りにも多過ぎますよ。  それから、第九条の第二項第四号ですね。これは公的機関以外への提供に際してのものであるというふうに理解しているわけですが、この場合、特に「その他処理情報を提供することについて特別の理由のあるとき。」と物すごく抽象的なんですね。こういうことでこれは一体規制ができるのだろうか。今の点はどうでしょうか。
  29. 重富吉之助

    ○重富政府委員 相当の理由があるというのは、私どもは、社会通念上妥当と考えられるもの、そういう場合はこれは許されるというふうに考えております。行政機関同士の流通の場合でございます。——どうも失礼しました。四号の場合は私どもは極めて限定して考えておりますので、その場合は特別の理由があるときということでございます。  特別の理由というのは、この条文にございますように、「専ら統計の作成又は学術研究の目的のために処理情報を提供するとき、」それから、もう一つ私どもが考えておりますのは、例えば欠陥車が発生したような場合に運輸省が持っている情報を公益法人たる、ちょっと機関の名前は忘れましたけれども、そういうことを担当している機関にその情報を与える、それは欠陥車を駆逐するためにぜひ必要なことだからそういうことがあり得るということで、極めて限定した場合だけを考えております。
  30. 田口健二

    田口委員 次に、いわゆるマッチングの問題について少し見解を聞かせてもらいたいと思うので あります。  アメリカにおける状況、OTA報告というのがあるのですが、これを見ますと、いわゆるコンピューターのマッチングそれからコンピューターのプロファイリング、これは、マッチングは一応結合というふうに言われていますけれども、プロファイリングはどういうふうに、正確な訳があるのかどうか私もわかりませんが、こういうのが自在に行われて非常に国民プライバシー侵害されておる、こういう点も報告をされておるわけですね。  ここに「プライバシーが筒抜け」という馬場恭子さんというアメリカ在住の作家の方が書かれた本があるわけですね。これは現代のアメリカの社会におけるいわゆるプライバシーの問題、個人情報の問題がさまざまな角度で取り上げられている。これを見てもこれは大変な問題だなと私ども感じているわけですね。このマッチングそれからプロファイリングの問題について総務庁としてはどう考えておるか、どう対応していこうとしておるか、お尋ねしたいと思います。
  31. 百崎英

    ○百崎政府委員 個人情報ファイルの結合の問題だと思いますけれども我が国におきましても、条例等におきまして一部の地方公共団体が他の機関との情報の結合を禁止している、そういう例がございます。しかし私どもといたしましては、オンラインあるいは磁気テープの提供、こういったことによる他の個人情報ファイルとの結合ということは、まさにある意味では電子計算機の持つ非常に大きなメリットでございまして、そういう結合を禁止するということは行政サービスの向上という面からも電算機処理特性を否定することにつながるのではないかと考えておるわけでございます。今急速に普及しつつありますこの電算機処理というものの特性を生かしながら個人情報保護を図るためには、このファイルの結合禁止というようなそういう手段でなくて、ファイル保有目的に基づいて利用、提供を制限する、そういうような方法によって規制することが適当ではないかと考えているわけでございます。  また、諸外国の立法例におきましても、ほかの機関との個人情報ファイルの結合を禁止している、こういう規定は今のところございません。
  32. 田口健二

    田口委員 次に、公開の原則、大変重要な問題でありますけれども、これについてお尋ねをいたします。  行政機関の保有する個人情報電子計算機処理されることに伴う国民不安感の一つに、現在行政機関がどのような個人情報を電算機処理をしているのかということがわからないという点が一つあると思います。この法案によりますと、個人情報ファイルについて各保有機関が個人情報ファイル簿を作成をし、一般の閲覧に供する、そのほかに総務庁長官が一括的に官報でもって公示をする、こういうことになっておるわけですね。問題は、これらの公示の際にできる限り多くの個人情報ファイル概要国民の前に明らかにしていく、このことが大変大事なことであろうと思うのですね。そこで、個人情報ファイルの公示について、まず基本的な総務庁としての考え方お尋ねをしたいと思っております。
  33. 高鳥修

    高鳥国務大臣 先ほど申し上げましたように、政府では非常にたくさんの個人情報ファイルをしてございますので、国民の皆様方の間に一体どのような情報ファイルされているのかということにつきまして不安感が存在するという事実がございます。したがいまして、そのような不安感に対応いたしまして、国民の皆様方に信頼をしていただける、そういう観点からいたしまして、またこの法律では開示請求権というものを保障しておるわけでありますが、それを的確に行使をしていただくという観点からも、原則としてその存在及び概要国民の皆様方に明らかにしたい、それがこの法律考え方であります。  したがいまして、ただいま御指摘がございましたように、本法案ではそれぞれの行政機関の長が一般に保有しているものについて閲覧に供する、あるいはまた総務庁長官が年一回これをまとめて官報で公示をするということを原則としておるわけであります。ただ、中にはいわゆる公表になじまない性格のものもございますので、それらにつきましてファイル簿への掲載及び公示を行わないことができるというような留保をしておるということでございまして、原則は公開ということをあくまでも貫いていきたいと考えております。
  34. 田口健二

    田口委員 今の大臣のお答えですけれども、今度の法案によりますと本人が知ることができないファイルというものが大変多くなってきていると感じるのです。例えば第六条の第二項、ここには十一項目並んでいますね。第七条三項には六項目、これは本人自体がその存在すら知ることのできない部分だろうと思うのですね。もしこういった項目に挙がっている情報の中で誤りがあって大変なプライバシー侵害を引き起こす、そういうことになったときはじゃ一体どうするのか。  それから特に事前通知の適用除外ですね、第六条第二項。これは少なくとも条文から見れば総務庁すら把握できないということになるのですね。そうなったら一体どうやって総務庁は適正管理というものをやっていくのでしょうか。総務庁みずからが知り得ないそういうファイルが存在をする、そのことを認めているということになればこれは一体どうやって管理をしていくのだろうか、こう思わざるを得ないのですが、その辺はどういうお考えですか。
  35. 百崎英

    ○百崎政府委員 事前通知あるいは公示の適用除外、これは必要最小限のものにすべきじゃないか、こういう御指摘だと思いますが、最初に事前通知制度の方から御説明させていただきますと、この事前通知制度と申しますのは、各省庁が持っております個人情報ファイル、これを保有するに当たって政府全体としてこの法律に適合しているかどうかあるいは各省の取り扱いが統一されているかどうか、こういうことを確保するために総務庁に通知していただくわけでございまして、そういう意味では私どもも基本的に、原則としてはすべての個人情報ファイルについて事前通知をしていただく必要があるものと考えております。  ただ、国の行政機関が保有している個人情報ファイルの中には、特に秘匿性が高くて総務庁が事前通知を受けて調整を行う余地が極めて乏しいもの、例えばそれが第六条に例示されておりますが、国の安全にかかわるものあるいは外交上の秘密に関するものあるいはまた犯罪捜査等のためにつくられるもの、例えば犯罪捜査のようなもののためにつくられる、これが事前に知られるということはやはり非常に犯罪捜査の支障にもなるわけでございまして、こういった特に秘匿性の高い情報につきましてはできるだけそれを知り得る者の範囲を狭くする、こういう必要も実はあるわけでございます。そういう意味で、総務庁が特に法律の適合性あるいは統一性を調整する余地が少なくてそれほどそういった情報について立ち入って調整ができないようなものにつきましては、これは事前通知の適用除外ということにしたわけでございます。  それからもう一つの類型といたしまして事前通知の適用除外の類型は、記録項目あるいはファイル利用のされ方から個人権利利益侵害のおそれが少なくて、特にこれについては総務庁に事前通知して調整をするという必要性の少ないものがあるわけでございます。資料送付目的ファイルという例が法律にもございますけれども、例えばこれは郵便局におきまして、町内といいますか郵便区の中の個々の家庭の名字とかあるいは住所とか、そういったものがファイルになっている場合もございますけれども、そういうものはまさにそのためにだけ使うわけでございまして、いわば郵便の区分けとか配達といった仕事だけに使うわけでございまして、これは直接にその個人権利利益侵害する、そういうおそれはほとんどないわけでございます。それからまた、短期間に消去されるファイル、例えば毎年あるいはかなり多くの頻度で行われる試験につきましては、もう既に合格者が決まってどこかに採用されるとか、あるいはそういったことが終わりますと翌年度以降そ ういったファイルはもう必要ないということで消去するような場合もございますが、すべて一段落してしまえばもうほとんど用はない、そんなようなものも実はございまして、そういう意味で、個人権利利益侵害のおそれが非常に少ない、そういうものにつきまして事前通知を必要としないというふうにしたわけでございます。  それから公示につきましても幾つかの例外がございますけれども、この公示制度と申しますのは自己情報開示請求権の前提にもなるものでございまして、これにつきましてもできる限り広く公示するという必要があることは私どもも同感でございますけれども、ただ、ファイルの中にはそれを公示することによってそのファイル保有目的の達成を著しく阻害するおそれがあるというものがございまして、そういうものにつきましては公示をしないというようなことにしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、基本的には御指摘のように、こういったファイルはできるだけ広く公開するということは当然のことではないかというふうに考えております。
  36. 田口健二

    田口委員 続いて開示請求権、今お話がありましたが、一、二点お尋ねしたいと思うのであります。  自己に関する個人情報についてどのような内容が記録されているのかを知ることは国民の一番関心のある問題でありますし、行政機関における個人情報の適正な取り扱い手続の一環として今回自己の開示請求権というものを制度化をしたということは、私も一応これは評価をしていいと思っております。しかしながら、第十三条第一項ただし書きで、教育、医療、刑事事件、この三つの関係は開示請求権の適用除外だということになっておりますね。まず、その理由をお伺いいたしたいと思います。
  37. 百崎英

    ○百崎政府委員 この十三条の第一項では、教育、医療情報、それから刑の執行等のファイル開示請求の対象外としているわけでございますが、この教育の問題につきましては、いわゆる学校における成績の評価あるいは入学者の選抜に関するもの、この成績の評価といいますのは、例えば先生一番よく御存じだと思いますけれども、試験の結果採点で何点という客観的なことで出てくるような成績はそれほど問題ないといたしましても、学校の教育現場におきましては、一般的に成績の評価というのはいわば先生の教育の方針なり方法なりあるいは児童に対するいろんな物の考え方なり、そういったものから総合的に判断して成績の評価をする、こういう場面が非常に多かろうと思います。そういう意味では、基本的に先生と生徒たちとの間のいわば信頼関係というものを基礎にして成績の評価というものが行われるわけでございますが、この成績の評価を例えば開示請求ということでとことん裁判にまで持ち込んで争って開示させる、これは教育の目的なりあるいは今申し上げましたような教育の信頼関係という、そういう面から見て果たして本当に適当なことであるのであろうか。そんなような問題も実はあるわけでございます。これはさればといって、生徒が先生にあるいは保護者が先生に成績を見せるろ言っても見せてはいけないという禁止をしているわけでは決してございませんで、従来どおり先生が場合によっては自発的にその生徒の様子を見ながら、その教育あるいは指導の立場で成績を見せる、これはもう一向に構わないわけでございます。  それから医療につきましても、例えば今不治の病と言われておりますような病気が診断の結果わかったという場合に、それを本人に告げますと非常に大きなショックを受ける、そういうことでお医者さんがその病名を伏せておく、ところがどうしても自分の病名が知りたいから見せろと言ってとことん裁判まで争って開示させる、これも果たして適当なことであるのであろうか。こんなような問題がございまして、これもあくまでもお医者さんのそれぞれ専門的な立場から見た取り扱い、そういうことにお任せした方がいいのではなかろうか。これもお医者さんに、こういう規定を置いたからといって患者に病名を一切知らせるな、こういうことを規定している趣旨ではございませんで、場合によっては、普通の病気であればお医者さんとしては当然病名を教えるということであろうと思います。  ただ、非常に特殊な不治の病の場合に、今度はそれをかえって教えない、そういう場合だけは不開示にしてしまう、こうしますと、普通の場合お医者さんに聞いていろいろ病名を教えてもらったけれども、どうしても教えてもらえないとなると、今度は逆に自分は本当に不治の病なんだろうか、こういうふうになってくるわけでございます。そうすると、今度はお医者さんの方も、特定の場合には見せる、特定の場合には見せないというような取り扱いをしますとどうしてもそういう問題が起こりますので、結局のところは全部見せない、そんなことにも実はなるわけでございまして、教育とか医療の場合にはいわゆる信頼関係と申しますか、そういうところにお任せした方が適当であろうというふうに考えて、開示請求の対象外にしたわけでございます。  それから刑の執行に関する情報につきましても、こういうことは余りないとは思いますけれども、いわば刑の執行を終えて今から社会に出て更生しようという方が就職をしようという場合に、こういう刑の執行とかそういうことに関するおまえさんの情報開示請求をしてもらってこい、特に過去に前歴がなければ採用するよ、例えばそんなようなことで、刑の執行についての請求をとことんできるような仕組みにしておきますと今申し上げたようなそういう問題も出てくるおそれがありますので、この三つにつきましてはファイル開示請求の対象外にした、こういうことでございます。
  38. 田口健二

    田口委員 今局長の方から教育、医療、刑事三種類については開示請求権の適用除外にされた理由を言われたのですが、しかし同時に、今のお答えにもあったようにこの問題というのはやはり裏の場合もあるのですね。開示しないことがすべて正しいとは私は言い切れない問題があると思うのですよ。その逆の場合もまたあり得るのですね、今ちょっと答弁の中でも言われたと思いますけれども。総務庁の報告書によれば、教育と医療分野については「別途、関係省庁による検討を行う必要がある」というふうに書いてあるのですよ。  そこで、文部省お見えですか。——じゃ、文部省の方にちょっとお尋ねをしたいと思うのですが、今私が申し上げました「別途、関係省庁による検討を行う必要がある」ということですが、文部省としてはこの問題について何か検討を行っておるのか、行っておるとすれば、その内容をひとつお聞かせいただきたいと思います。  それから、ここで関連をして一緒にお尋ねをしておきますけれども、大学共通一次試験で試験の結果をコンピューターに入力をされているというふうに聞いておるのですが、その内容というのはどうなっているのか、またこの情報保護対策ですね。それから、これはさっきの質問ともちょっと、意見がどうかはわかりませんが、私は共通一次試験の結果というのは本人の開示請求があれば見せていいんじゃないか、こう思うのですね。その方が本人の将来を考えていく場合に非常に参考になる。わからないままにずっとやっていくことよりも、入試の結果は開示請求があれば本人に知らせていいんじゃないか、そういう気持ちもするのですが、それについて見解があればちょっとお答えをいただきたいと思います。  以上です。
  39. 泊龍雄

    ○泊説明員 お答えいたします。  三点ほどお尋ねであったろうかと思います。まず第一点の、学校における成績の評価あるいは入学者選抜に関する事項開示請求についての問題でございます。  これは先ほど総務庁の方からもお答えがございましたように、私どももいろんな角度から検討いたしてみましたが、やはり学校における成績の評価というものにつきましては、基本的には教師と 学生生徒との信頼関係のもとで教育的な見地で行われるべきものであろう。そういったことを考えますと、学校内における成績の評価といったようなものもさまざまなものがございます。中には指導上の内部資料といったような性格もございますので、本法案において他の個人情報等と一律にこういったものをいわば権利義務関係といったような形で取り扱うのはいかがなものであろうかということで、御案内のとおり、この学校の成績に関する事項につきましては開示請求の対象外ということにされているところでございます。  同様な意味合いで入学者の選抜の問題につきましても、これもまた先生御案内のとおり、入学者の選抜に当たりましては、例えば調査書であるとか面接であるとかあるいは学力検査、あるいは専攻等によっては実技試験といったようないろんな形での基礎的なデータを総合的に判定して合否を判定していくという作業でございます。これにつきまして、例えば今申し上げました内申書あるいは面接といったようなものにつきましてこれを本人に開示をするということになりますと、これまた学生生徒の人格形成上あるいは教育効果の上でも必ずしもいい結果だけにはならないといったようなおそれもございます。かつまた、学力検査等について考えてみますと、その素点あるいは順位というものを開示してもいいではないかという御議論があることは承知いたしておりますが、今申し上げましたように、学力検査というのはいろんな形でのデータのいわば総合的な判断の一部分ということになりますと、御案内のような受験競争が過熱化している今日の状況を考えますと、いわばその判定の一部分の材料をもって入学選抜における評価そのものというふうにもとられかねないといったようなことを勘案いたしまして、やはりこれもまた本法律案における一律の開示請求という形での処理はいかがなものであろうかということで、御案内のような案になっていると承知いたしているところでございます。もちろんこれは、各学校が教育的見地に基づいて慎重な対応のもとにそれぞれの情報といったようなものを本人に開示をするということまでも禁止するものではないというふうに理解をいたしております。  あわせまして、順番が前後いたしますが、お尋ねのございました共通一次関係でのいわゆる素点を公表したらどうかというお尋ねでございますが、この件につきましても、御案内のとおり共通一次そのものもまた個別の各大学におきます学力検査の一部分でございます。そこで、その性格等につきましては、今申し上げましたような点でやはりいろんな問題があるといったようなことがございます。この点につきましては御案内のとおり、この共通一次についていろんな形で調査研究を進めてまいってきております国立大学協会におきましても、この共通一次の導入に当たりまして同じような考え方の調査レポートをまとめております。これはまさに今申し上げましたように、共通一次といえども入学試験の一部である、そこでこれらを本人に通知するということになりますと、一部分が全体の結果というように受け取られるおそれもある、かつまた大学あるいは高校間の格差を助長するおそれもあるといったようなことで、これについては差し控える方が適切であるといったような調査レポートがまとまっているところでございます。  これまた昭和六十五年度から国立大学以外に国公私立を通じた新しい大学入試センター試験というものも想定をいたしておりますが、この件につきましても、私どもで学識経験者等による調査研究協議会を開いて、そこの最終報告等におきましても、同様な趣旨で、当面本人への素点等の通知を行わない方が適切であるといったような報告をいただいているところでございます。私どもとしては、やはり事柄の性質上、これらの報告の趣旨を踏まえまして慎重な対応をする方がいいのではないかというふうに思っている次第でございます。  それから三番目の点のお尋ねでございます。現在行われております共通一次関係のコンピューター処理等における保護状況等はいかんというお尋ねであろうかと思います。  現在大学入試センターは、共通一次試験にかかわります受験生の氏名、生年月日あるいは出身高校等のいわば出願資格といったようなもの、それから各教科科目別の得点あるいは総得点といったような情報を電算処理のために入力をいたしているところでございます。これらの点につきましては、まずこの使用につきましては、文字どおりその国公立大学から自分のところの受験生にかかわる共通一次における成績の提供を求められる場合以外は、その情報については提供を一切いたしておりません。ただ、内部で入学試験の改善業務等のための調査研究といったようなものについて、所要管理のもとに調査研究を行うためにその使用を認めている、こういう状況でございます。  これらにつきましては、もちろん集計段階でダブルにエラー等のチェックシステムを設けますとともに、管理あるいは保存の体制につきましても、保存期間でありますとか管理責任者でありますとか、あるいは廃棄の際の手続でありますとか、いわばこれらの情報が不用意に目的外に流れるということのないよう十分な体制をとっているというふうに承知をいたしているところでございます。
  40. 田口健二

    田口委員 それでは引き続いて厚生省、同じ内容検討されておるのか、開示の問題について。どういう見解を持っておられるか。  それから、もう一つここで関連をしてお尋ねしておきたいと思うのですが、国立病院・国立療養所の内部であろうと思うのですが、診療記録、カルテの内容をコンピューターに入力する計画があるというふうにも聞いておるのですが、もしそういう計画があるとすれば、その内容についてお尋ねをしたいと思います。
  41. 矢野朝水

    ○矢野説明員 私どもは、厚生省内でこの問題をどうするかということで、関係部局から成ります連絡会議を設けまして検討してまいったわけです。そういう中で総務庁の方から法律案の中身についていろいろ御相談があったということでございまして、最終的には、先ほど局長の方から御説明がありましたように、こういった問題は医師と患者の信頼関係に任せるのが一番いいのじゃないか、開示の対象にするということもいろいろ問題だし、そうかといって開示しない、不開示ということもまたあらぬ疑いを持つわけでございまして、これまた医師との信頼関係を損なう、こういうことで先ほど来のような結論になったわけでございます。  それからもう一つは、カルテをコンピューターに入力する計画はないかどうか、こういうことでございますけれども、これは当面そういう計画はございません。
  42. 田口健二

    田口委員 次に、十四条の不開示の問題です。  開示請求権があっても各省庁の判断によって開示しないことができる、こういう項目が随分あるわけですね。なぜこんなに多くの項目が不開示になるのか、開示請求権があっても各省庁の判断によって開示しない、こういうことになるのか、その辺の見解からまずお伺いをいたしたいと思います。
  43. 重富吉之助

    ○重富政府委員 十四条一項で開示をしないことがあり得る事項というのは、その当該行政を遂行する場合に支障があるというふうに行政官が判断した場合でございます。それで、第一号のイからニまで一応規定しているわけでございますが……よろしゅうございますか。そういうことでございます。
  44. 田口健二

    田口委員 その不開示の問題でどうしても納得しがたい点があるのですが、十四条の一項二号に「第三者から取得した情報に係るものである場合において、保有機関と当該第三者との協力関係又は信頼関係を損なうこと。」とあるわけですね。第三者から取得した情報だからこそ本人の確認が必要じゃないのだろうか、逆にこう私どもは考えるわけですね。ですから、この条項から見ると、本人のプライバシーということよりも第三者との協力関係、このことが重要だと言っているように聞 こえてならないのですね。これは間違いじゃないでしょうかね。その点どうでしょうか。
  45. 重富吉之助

    ○重富政府委員 具体的な例でお話しした方がわかりやすいと思いますけれども、例えば交通事故等がございましたときに目撃者から証言を得る、そういう場合に目撃者がどういうことを言ったというようなことを交通事故の当事者に知らせるということが目撃者の証言を今後受けにくくするというような場合がございます。そういうようなこととか、それから例えば身上調書等をつくります場合に第三者に話を聞きに行く場合がございます。そういう場合に、結局それが本人にわかるということであれば本当のことをおっしゃらない場合もございます。そういうことがございますのでこういう規定を設けたわけでございます。要するに、継続的に今後情報を得る必要があるという点からこういう規定が設けられたということでございます。
  46. 田口健二

    田口委員 いや、どうも私は今の点は納得できないのですよね。やはり第三者から得た情報ということになると本人は全くわからないし、これが誤っておった場合には一体どうなるのだろうかということ、これは大変なプライバシー侵害になってくると思うのです。だから、第三者との信頼関係を損なわないように、そのことが重要なんだという判断だけでこれを知らせないということは大変重要な問題ではなかろうかなというふうに私は考えるのですが、時間がありませんから、次に行きます。  もう一つの問題は訂正権の問題ですね。開示請求権というのは認めているわけですね。ところが訂正権というのは認めていないのですね。ちょっと今ここにあるのですが、いわゆる加藤委員会の報告の中にもこの訂正権の問題というのを明確に指摘をしておるのですね。訂正権がないということになれば本当に個人権利利益あるいはプライバシー権というものが保護されるのだろうか、こういうふうに思うのですが、この訂正権を認めていない理由についてお伺いしたいと思います。
  47. 百崎英

    ○百崎政府委員 電子計算機処理に係る個人情報の誤りにつきましては、一般には電子計算機に誤った入力をするとかあるいは入力漏れがあるとか、そういった場合が多いと考えられるわけでございますが、そういう明確な誤りにつきましては、訂正申し出ということをいたしますと、行政機関が調査をいたしましてもし誤っていればこれを訂正するということは、これは当然の義務でございまして、本法の第五条でも正確性確保という義務の規定もございますので、それは裁判所に任せるまでもなく、いわば訂正申し出ということで職権の発動を促すということだけでも十分訂正の機会があるだろうと考えております。  そういった誤入力というような明確な誤りのほかに、個人情報の中には行政機関の判断とかあるいは評価にかかわるもの、そういうものもございまして、そういう誤りについて訂正請求権を認めるかどうか。これは実は現行の我が国行政救済制度との関係におきましてもいろいろな問題があるわけでございまして、今の行政救済制度は、先生御承知のように、ある行政処分によって具体的にその権利侵害が行われたという場合に、行政上の不服審査とかあるいは訴訟を起こすとか、そういったことによって救済が図られるわけでございますが、そういう場合に訂正請求権というものを認めますと、例えば行政処分が行われる前に自分のデータが間違っているから訂正してくれ、こういう権利を裁判上の仮に権利として認めますと、いわば同じ情報につきまして二つの請求権、例えばそういう誤った情報に基づいて行政処分が行われた場合にはこれはその行政処分を取り消すという抗告訴訟というのがまた別途できるわけですけれども、どちらの請求権も両立し得る、その場合に一体どういう調整を図るかという非常に厄介な問題が一つございます。  また、その行政処分が行われる前に個人情報訂正請求権というものを認めますと、先ほど申しましたようにそのこと自体、現在の我が国行政救済制度の非常に大きな例外になるわけでございますが、電算処理に係る個人情報の誤りについてだけそういう訂正請求権を認めるのは一体どういうことなのか、ほかのいろいろな行政情報一般の誤りの場合の救済はしなくていいのだろうか、例えばそんなような問題もございまして、立法技術的にもなかなか厄介な問題があるわけでございます。  そういうことで今回訂正申し出ということにいたしたわけでございますが、これは現在存在いたします法律の中で、例えば六十年に改正されました住民基本台帳法におきましても、恐らくそれは今のような争訟制度との関係からだろうとは思いますが、やはりこの場合にも訂正申し出、こういうことになっておりますし、そのほか化学物質の審査及び製造の規制法におきましても、やはりこういった誤りを訂正する場合には訂正申し出、こういうことにとどめているわけでございます。
  48. 田口健二

    田口委員 次に、地方公共団体関係についてお尋ねをしたいと思います。  自治省、お見えになっていますね。——まず自治省にお伺いいたしたいと思うのですが、地方公共団体においてもそれぞれの行政活動のために多種多様の個人情報を収集して電子計算機処理をしているのが現状だというふうに思っています。したがって、それぞれ個人情報保護対策を講ずることが必要だと考えますが、現在地方公共団体における個人情報保護対策の実施状況、条例その他を含めて状況がわかればまずそれからお伺いをしたいと思います。
  49. 小林紘

    ○小林説明員 お尋ね地方公共団体状況でございます。現在地方公共団体におきましては、四百三十市町村、四、一部事務組合等でございますけれども、これはことしの四月の状況でございますが、条例を制定いたしまして、自主的に個人情報保護のための対策を講じておるところでございます。このほかに内部的な規定その他によりましても個人情報保護のための手続を決めている団体、ほとんどの団体が措置しておりますので、大体以上のような状況個人情報保護のための対策を講じている、こういうぐあいに把握いたしております。
  50. 田口健二

    田口委員 そこで、総務庁の方にお尋ねをいたすわけでありますが、今自治省のお答えによっても、相当の数の地方公共団体でもって個人情報保護対策が進められておる、こういうことなんですが、こういう状況の中でこの二十六条、「地方公共団体は、」「国の施策に留意しつつ、個人情報の適切な取扱いを確保するため必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」これは当初の原案から見ると表現も変わってきているわけですが、この趣旨をひとつきちっと説明をしていただきたいと思います。
  51. 高鳥修

    高鳥国務大臣 先刻来自治省側との質疑応答にもございましたように、地方自治団体、これは市町村段階においてでありますが、かなりの数の市町村において個人情報保護条例が既に制定されているところであります。その内容につきましても私ども勉強させていただいております。千差万別ではございますが、かなり先進的なものも中にございます。都道府県においては国の法の制定待ちのような格好でありまして、国の法がつくられればそれを見て参考にしながら制定しよう、このような動きのように承知をいたしておるところであります。  私どもがこの第二十六条を設けましたゆえんのものは、都道府県なり市町村なり、そうした地方自治団体においても個人情報保護するということは極めて重要なことであるので、電算処理をされたものについて国に準じた形のものを考えていただいたらどうかなというふうな見地から、この条項を入れておるわけであります。  地方自治団体によりましては、すべての情報ということで手書きのものまで含めてというようなことを規定しておる市町村も確かにございます。それらにつきまして、私どもはそういうものは必要ないよというようなことを言うつもりは全くございませんで、これは地方自治団体の御判断によ ってそれぞれ制定さるべきものであるというふうに考えておりますが、要は、国がこういうことをやりますので、都道府県、市町村においてもしかるべき措置をおやりになっていただくことが個人情報保護するゆえんではないかというふうに考えて、この条項を入れておるところであります。
  52. 田口健二

    田口委員 今大臣のお答えの中にもあったのでありますが、私が一番心配しているのは、四百三十幾つの自治体において条例が制定されておる、内容も千差万別だというように大臣がおっしゃいましたが、確かにそうだと思います。今回の法案に比べると大変進んだ条例を持っているところも率直に言ってございます。それから、特に四十七都道府県が国の策定待ちだという状況になっているわけです、おっしゃられたように。だから、これから条例を制定していこうという自治体がたくさんあるときに、今回の国の法案というものが一定の基準といいますか上限になって、これで抑えてしまうということの危険性はないか、これを大変心配するわけです。地方公共団体がこの法案よりもさらに進んだ分いろいろなものをつくって考えていく、これを規制することにならないか。そういう考え方はないと思いますけれども、改めて総務庁に確認しておきたいと思います。
  53. 高鳥修

    高鳥国務大臣 国の場合と地方自治団体の場合におきましては、持っておりますデータ内容にかなりの相違があることは御承知のとおりでありまして、公開の範囲等につきましても、これは地方自治団体の方が公示を差し控えるなどというような内容のものは少ないと思います。したがいまして、開示をするということについては地方自治団体の方がかなり進んだ形で実行できるのではないかというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、委員が御心配なさるようなことを国としては全く考えておりません。したがって、国がやっておりますことよりも、今例を挙げましたように、コンピューター処理されたものだけではなくて手書きのものも含むというような市町村もあることを見ております。そのようなことについて一々国に右へ倣えしなさいなどと言うつもりは全くございませんし、総務庁はそのような権限もございません。
  54. 田口健二

    田口委員 大臣のお答えはよくわかるのでありますが、一番最後のところが総務庁はそういう権限もございませんということなんで、じゃ自治省どうなんですか。答えられたら答えてください。
  55. 小林紘

    ○小林説明員 その点に関しましては、自治省といたしましてもただいま長官お答えのとおりと考えております。
  56. 田口健二

    田口委員 それでは、この部分を終わりまして、残り時間が余りなくなってまいりましたので全部はできないと思いますが、次に、対象の問題でちょっとお尋ねをしてみたいと思うのです。  民間部門を対象としなかった理由ですね。これは国の行政機関というふうに限定をしておるわけですが、一般的な国民感情からいいますと、間違ってブラックリストに記載をされて信用を受けられないというような信用情報の問題であるとか、思いがけない方法で自分の住所だとか氏名とかそういうものが名簿になっておっていろいろなダイレクトメールが送られてくる、そこで迷惑だといういろいろな問題もあるわけです。  先ほども私申し上げましたが、この本の中にもアメリカ社会におけるこういう民間における個人情報処理の問題が随分いろいろな例が具体的に挙げられて、やがて日本もそういう時代が来るであろうというふうに予告をされているわけです。ということになれば、国民の関心というのは、確かに行政機関が持っておる個人情報保護の問題ももちろん大事ですけれども、民間部門におけるこういった規制というものを非常に望んでおるのではないかというふうに考えるわけですが、この民間部門という問題について総務庁の方としては今どういうお考えを持っておられるかお聞きをしたいと思います。
  57. 高鳥修

    高鳥国務大臣 先ほど冒頭で、いわゆるプライバシー保護ということに関しては総務庁の手の届く範囲というのはおのずから限られておりますということを申し上げたところであります。実は、いわゆる個人情報につきましては公的な部門と民間部門があることは当然のことでありますし、民間部門についていろいろと問題があることは私どもも承知をしておるところであります。この間もテレビでやっておったのを私見ておりましたが、あるうちでは、そこのうちの収入がどれだけあるとか車がどういうものが入っているとか買いかえ時期がいつごろだとか借金がどのくらいあるとか、そんなことが一目瞭然になるようなデータを持っているところもあるというようなそんな話がどうも報道されておったところでありまして、もうそこまでいったのかなという感を深くしておるところであります。  ただ、そういう問題につきましては、実は経済企画庁の国民生活局というところでもいろいろと勉強しておるようでありますし、それから個人の信用関係につきましては、大蔵省、通産省で信用情報をいろいろと指導をしておられるようであります。そういうふうにしてほかの機関でいろいろと今勉強中ないしは取り扱いをいたしております。したがって政府としては、今後できるだけ速やかにそうした方面についての勉強を深めて、やはりこれは適当な規制をすべきであるというふうに考えますが、総務庁としては、民間部門ということになりますと私どもの手の届かない範囲でありますので、とりあえず政府がまずみずからの個人情報保護することを進める、そのことによって民間部門に対しても大きな刺激になるといいましょうか、前進への足がかりにしてもらいたい、そのぐらいの気持ちを持っておりまして、民間部門を決してやらないでいいというような考えを持っているわけではありませんが、当庁として及ぶ範囲をとりあえずやらせていただこうというのが今回の立法の趣旨であります。
  58. 田口健二

    田口委員 民間部門については関係各省庁でそれぞれ検討が行われておるというようなお答えでありますので、時間もありませんからそれぞれお聞きするわけにはいきませんので、経済企画庁お見えですか。——では、代表という意味ではありませんが、経済企画庁の方で国民生活審議会消費者保護部会の報告というのが出されたというふうに聞いておるわけですね。その概要と、これについて経済企画庁としての今後の方針についてお尋ねをしたいと思います。
  59. 川名英子

    ○川名説明員 お答えいたします。  事業者の事業活動の中で消費者の個人情報が積極的に活用されるようになってきております。これに伴いまして、消費者のプライバシーに関する不安とか不満とかそれからトラブルが増加してきております。このために、国民生活審議会消費者保護部会で消費者保護の観点から消費者取引における消費者保護あり方について調査審議してきました。ことしの九月に報告が取りまとめられております。  その報告では、消費者取引に係る消費者保護のための法的規制を講ずる方向で考慮すべきであるとしているわけです。ですけれども、当面はこの報告に示された個人情報保護あり方を踏まえまして、行政それから事業者、消費者おのおのが個人情報保護のために具体的対応を行っていく必要があるとしているわけです。  当庁といたしましてもこの報告の趣旨を踏まえまして、消費者取引における個人情報保護につきまして、消費者保護の観点から遺漏なきよう努めていきたいと思っております。
  60. 田口健二

    田口委員 次に、先ほど大臣のお答えの中にもちょっとあったのでありますが、手作業処理を今回の規制というかその対象から除外した。確かに電算機を利用する場合の大量、高速とかいろいろの点では手作業というのは随分変わってくるというふうに思うのですが、これを外すということになると、ある意味では完全な個人情報保護するというこの制度の上からいって、一つの大きな欠陥が出てくるんじゃないか、こういう気もするわけでありますが、手作業処理を対象外にした理由についてお伺いをしたいと思います。
  61. 高鳥修

    高鳥国務大臣 田口委員指摘のように、電算 機処理された情報というものはオンライン化されやすい、したがって所管外でもこれを容易に引き出すことができる、検索も容易である、いろいろそういう際立った特色があるわけであります。これに対しまして手書き、手作業でやっておりますものにつきましては、まず第一に、公務員の守秘義務というものもかぶさっておるわけでありまして、それぞれが自分で保有するそうした情報についてみだりに他に漏らしてはならないという一つの網がかぶさっておるわけであります。なおかつまた、容易に所管以外の人がこれを見るということができる性格のものではないというようなことがございます。さらにまた、手作業のものまで全部含めますと、それは膨大なものになってまいりまして、果たしてこの法律の実効性を保証できるかどうかという点についても疑念があります。  OECD理事会勧告の中におきましても、必ずしも個人データの自動処理のみについて規定する、つまりそれ以外のものを除外するということがいけないということではないというふうなことも言っておりますので、私どもといたしましては、実務上手作業のものを入れなくても、個人情報保護するという観点からするならば十分この法律目的を達成することができるではないか、このように考えて入れなかったわけであります。
  62. 田口健二

    田口委員 もう一つ、特殊法人の扱いが地方公共団体と同じ扱いになっているわけですね。率直に考えまして、特殊法人というのは行政目的実現のために法律制定をして設立されたものであって、当然個人情報取り扱いについては国の機関と同様に扱うのが私は筋だと思うのですね。これは地方自治体とは全然性格が違いますよ。それを同じ扱いにしている。なぜ特殊法人についてはこれから外しているのか、その辺をひとつお伺いをしたいと思います。
  63. 百崎英

    ○百崎政府委員 この特殊法人は、今先生がおっしゃいましたように公共的な仕事をやらせるために国とは別の法人格を与えて業務を行っていただく、そういう意味では非常に公共性の高い機関でございます。ただ、この特殊法人という形で国とは別の法人格をつくって仕事をやらせるという趣旨は、できるだけ事業運営について経営の自主性とかあるいは弾力性というものを認めて能力的な経営を行わせる、こういう趣旨から別人格にしたわけでございまして、そういう特殊法人について国の機関と同様にこの個人情報保護法によって直接個人情報取り扱い規制するということは経営の自主性あるいは弾力性を損なうおそれがある、こういうふうに考えまして、特殊法人については直接この規制の対象とはしなかったわけでございますが、ただ、この特殊法人はそれぞれ公共的なあるいは公益的な仕事をやっておりますので、この法律におきましては、国の施策に留意しながら、個人情報の適切な取り扱い確保するために必要な措置を自主的に講ずる、こういうことにしたわけでございます。  特殊法人は、先ほど申しましたような公共的な性格の強い機関ではございますけれども、その職員は国家公務員と違いまして守秘義務も課されておりませんし、また法令遵守義務といった国家公務員法の適用も原則としてはないわけでございます。そのほか、特殊法人は現在九十幾つかございますけれども、その業務内容等いろいろ見ますと、例えば日本放送協会、NHKのようなものも含まれておりますが、こういう特殊な法人、これは特に報道の自由その他との関係もいろいろ出てまいりまして、こういうものをどう取り扱うかという問題も実はございまして、こういう特殊法人全体について一律に網をかぶせるということでなしに、個別の特殊法人においてそれぞれの業務の実態あるいは法人の性格、そういうものに応じて必要な措置を講じていただく、こういうことにしたわけでございます。
  64. 田口健二

    田口委員 ということになりますと、地方公共団体と同じ扱いになるわけですから、「必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」と言っても、では政府のどの機関が具体的にこれらの特殊法人についてこのような指導をしていくのでしょうか、その辺をお伺いいたします。
  65. 百崎英

    ○百崎政府委員 基本的には各特殊法人を指導監督する立場にある省庁が、そういう指導監督の一環として特殊法人にそういう自主的な措置を講ずるようにお願いをするということになろうかと思います。
  66. 田口健二

    田口委員 次に実効性の問題、これは最後の段階ですけれども大事な問題ですから、ひとつぜひお願いをしたいと思います。  本法案内容に関する問題で、その実効性というのをどのように確保していくかという点が私は大変重要であろうと思います。個人情報保護制度は我が国現行法制度にない新しい制度であるわけですね。国民権利利益にかかわる重要な制度でありますから、その実効性というものは厳しく図られなくてはならないというふうに思っております。本法の施行は各行政を所管する各省庁がそれぞれ行う、こういうことになっておるわけで、そのために各省庁によって個人情報取り扱いが異なるということも起こりかねない、こういうことも予測されるわけです。  例えば外国の場合に、スウェーデンではデータ検査院、西ドイツでは連邦データ保護監督官、フランスでは情報処理と自由に関する国家委員会、イギリスではデータ保護登録官というふうに、このような強力な監督権限を持つ監督機関というものを設置して制度の実効性というものを図っていく、こういう仕組みになっておるわけですね。  ところが、この法案を見てみますと、第二十一条及び第二十二条において、総務庁長官が資料の提出及び説明の要求並びに意見の陳述を行うことができると書いてあるわけですね。私は、これではこの法律の十分な実効性というのは確保できないと思います。やはり少なくとも総務庁長官の調査権、助言、勧告権というものを法律に明記をすべきだと思う。それがなければ、各省庁が独自の判断で進めていく内容のものでありますから、法律が意図する本当の実効性というのは確保できないと思うのです。大臣、その辺はどうでしょうか。
  67. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま田口委員指摘のように、国によりましてこの法律の実効を担保する機構というのをいろいろと考えておるようであります。第三者機関がいわばその監督を受託するというような形になっているところもありますし、あるいは政府部内にきちっとした監督をする機構をつくっておるところもありまして、それはさまざまであります。  ただ、日本行政機構の上から申しますれば、いわゆる行政委員会的なものは戦後一時期は随分設けましたけれども、最近ではやはり政府が議会を通じて国民に対して責任を負うという形が一番現在の憲法制度上適当なのではないかというふうに考えまして、そういう中で総務庁がこれの制度の取りまとめを図っていこうということにいたしておるところであります。  ただいまお話しのように、調査、助言、勧告というような権限を持つべきであるということについては、率直に申しますといささか同感の面もないわけではありません。しかし、何しろ日本の官庁というのはそれぞれに自立性が非常に強うございます。先ほど冒頭申し上げましたが、いわゆる縦割り行政の色彩が非常に強うございまして、この法律制定するに当たりましても、実はその過程におきまして、一体何で我々が持っているデータについてそんな一々リストをつくって出さなければならないのかとか、それを何で一々総務庁に指示されなければならぬのだとか、ざっくばらんに言いますと、そういうようなそもそも論を克服すること自体がなかなか容易ではなかったということが一つ前提としてございます。  それから、総務庁の設置法におきまして、総務庁長官の権限といたしまして関係行政機関に対する資料の提出及び説明要求並びに意見の陳述ということが規定をされておりますので、したがって、その総務庁設置法の規定に倣いましてこのような規定を設けたというのが実情であります。
  68. 田口健二

    田口委員 実効性に関連をしまして、統一性と斉一性の問題についてお尋ねしておきたいと思います。  この法案の中には、非常に抽象的であいまいな表現というのが先ほど指摘をしましたように随所に見られるわけです。  例えば、第四条の「個人情報ファイルの保有」の問題では、「必要な場合に限り、かつ、できる限り」と、一体どこまでかというのがなかなかわかりにくいわけですね。  第七条第二項では、「個人情報ファイル簿の作成及び閲覧」のところでありますが、「事務の適正な遂行を著しく阻害するおそれがあると認める」と、これもまことに抽象的なんですね。また同三項でも、あるいは第九条の二項、「処理情報の本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるとき」、こういう項目が随分あるのですね。  私は、これは当然何か一定の基準、ガイドラインというものをつくって運用していかなければ、もうとても統一性、斉一性というのは保たれないだろうというように思うのですね。そういう点で、総務庁の見解をお尋ねをしておきたいと思います。
  69. 百崎英

    ○百崎政府委員 大変ありがたい御指摘でございまして、私どもも総務庁という総合調整機関という立場から、この法律が適正かつ実効を上げるような、しかも各省ばらばらに運用されないように、そういう意味でこの法律を成立さしていただきました暁には、早速御指摘のような趣旨で考えてみたいというふうに考えております。
  70. 田口健二

    田口委員 あと幾つかあるんですが、ちょっと時間が足りないようなので、最後に大臣の見解をいただきたいと思うのであります。  冒頭私が質問の中で申し上げましたように、この個人情報保護制度というのは日本行政制度の中で初めてつくられる新しい制度ですね。それだけに大変重要な問題であると同時に、私はこれは慎重に論議を踏まえていかなければならないというふうに考えるわけです。  冒頭申し上げましたように、私どもの考えでは、OECD理事会勧告の八原則に照らし合わせてみても、あるいは欧米諸国の既に制定をされておる法律と照らし合わせてみても、かなり不十分な点が多過ぎるのではないか。こういうことなども考えてまいりますと、私どもの今後の審議というのは、特に日本社会党護憲共同としては慎重に審議をしてまいりたい。それには手続として地方公聴会あるいは参考人の招致、それらを含めて十分な国民との合意が形成できるような審議の場を保障しながらこの問題については取り組んでいきたいというふうに考えておるわけです。  そういう状況があると同時に、背景としてコンピューター技術というものが我々の予測以上に発達をしていくということは、もう間違いないと思うわけですね。そうすると、そういうことが予測される今日の段階でこの法案制定されたとしても、やはり私は近い将来において変更を加えなければならない問題が生じるのではないか。そのことも予測をされるということになれば、当然この法案の中に学識経験者、専門家を含めた調査研究の場を設けるなどして見直し規定というものをきちんと入れておくべきではなかろうか、こういうふうに考えるわけですけれども、ひとつ大臣の今後の決意も含めて見解を伺いたいと思っております。
  71. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法案につきましては、過去十年来の勉強の成果を踏まえまして、かつまた、OECD理事会勧告あるいは各国の立法例等随分ございますので、これらをいろいろ参考にしながらまとめたものでございます。ここに至りますまでの間に、やはり各省庁間の合意を得るということについてはかなり骨が折れたことは事実であります。  したがいまして、そういう中でようやくまとめ上げた法律ではございますが、もちろん非常な勢いで情報処理というものは変化をし、進歩をしつつありますので、この法案でいつまでも対応できるというふうに考えているものではありません。しかしながら、当面かなりの勉強の成果を踏まえてまとめ上げたものでございますので、今直ちに何年後見直しというような規定を入れていただかなくても当分はこれでいけるのかなというふうな自信を持って実は御提案を申し上げたものであります。  それから、御提案の審議会等につきましては、これは広く学識経験者等の御意見を承る、あるいはまた、今後この法律を具体的に実施していくことができますれば、その過程におきまして各方面からいろいろな御意見が寄せられると思います。国会の御意見はもちろんのことといたしまして、幅広く国民の皆様方の御意見を承りながら改むべきは改むべきである、その辺については私ども決して固執するものではございません。したがいまして、審議会等を設けて検討する場というものは将来考えてもいいのではないかというふうに思っております。
  72. 田口健二

    田口委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  73. 竹中修一

    竹中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ────◇─────     午後一時十九分開議
  74. 竹中修一

    竹中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上和久君。
  75. 井上和久

    ○井上(和)委員 国を初めといたしまして地方自治体におきまして、行政事務を行うために電子計算機、すなわちコンピューターが導入されまして既に二十年以上になるわけであります。個人情報の件数が、総務庁からお聞きしておるだけでも六十二年一月現在で十五省庁に十二億件という驚くべき量の個人情報行政機関に収集をされ、管理をされているのであります。多くの国民は、こうしたコンピューターによる個人情報管理というものが進むにつれまして、国は一体自分についてのどのような情報を持っておるのであろうか、あるいはその内容に間違いはないのであろうか、またどういう目的のために使われるのであろうか、こういうふうな不安を持っているというのが実情でございます。  そうした中、今回政府個人情報保護法案提出されたのでありますが、この法案内容を見まして私は、これは果たして行政機関のコンピューターから個人プライバシー、さらには基本的人権という最も大事な目的が守られるのであろうかどうか非常に疑問に思えるものでございます。そこで、これら疑問点につきまして一つ一つお伺いをいたしていきたいと思います。  まず最初に、政府個人情報保護法制定をされたならば国民にとってのメリットというものはどういうものがあろうか、すなわち法制定することによって国民の受ける利益とは一体何であろうかということについてお伺いをいたしたいと思います。
  76. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま井上委員指摘のように、政府が保有する個人情報というのは非常にたくさんあるわけであります。政府におきましては、一般的には国家公務員の守秘義務等によりましてこれらの個人情報がみだりに他に使用目的以外に流れるというようなことについては厳しく戒めているところでありますけれども、しかし電算処理の持つ特性といたしまして、それらが容易にオンライン化される、あるいはまた検索等が容易に行われる、大量情報処理は確かにできるけれども管理の上においてやはり適当な規制を加えなければならない時期に来ているのではないかというふうに思われるわけであります。アンケート調査等におきましても国民の皆様方から、自分に関する情報というものがどんな形で蓄積され、どのような利用をされているかということについて不安である、不満であるというような声もたくさん出ておるところであります。  そこで、本法案制定によるメリットいかんということでありますが、具体的に申し上げます と、今現在は電算処理されました情報取り扱いについてはいわば法的な制度措置が全く確立されていないわけでありますが、この法律制定することによりまして、我が国で初めて制度的に規制が確立するということになります。一つには、個人情報利用、提供が制度的に制限されることになりまして、自己に関する情報がみだりに他人に知られるのではないかという国民不安感が解消される。さらにはまた、個人情報ファイルの公示、開示請求権の設定によりまして、国が持っている自己情報を知ることができるようになる。さらにまた、訂正申し出をすることができるということになりまして、誤った情報に基づく不利益処分を受けるおそれが少なくなるというようなことがございます。さらにまた、個人情報のコンピューターによる処理というものを統一的に規制をすることによりまして、行政サービスの向上、行政効率化が期待できるというようなメリットもあろうかと思うわけであります。  さらにまた、先ほども御答弁申し上げましたが、市町村におきましてはかなり個人情報保護条例が制定されておりますが、都道府県においてはいわば国の出方待ちというような姿になっておるわけでありますし、特殊法人についてなぜ制定しないのかというような御指摘もあったわけでありますが、これらにつきましても、この法律制定されますれば右へ倣えというか、必ずしも準ずるという形ではないわけでありましょうけれども、それぞれそうした対策が促進されるであろうというふうに考えております。  さらに、やはり御指摘があったことでありますが、この法律規制をいたしますのは国が保有する個人情報、しかも電算処理をされたものに限られておるわけでありまして、非常に多くの分野がいわば手がつけられない、そういう状況にいまだございます。民間部門については特に関係省庁においてそれぞれ検討もし、若干の規制はいたしておりますが、まだほとんど手つかずの状態にあると言っても過言ではない。そういうものがこの法律制定されますことによりまして少なくとも前進させられる足がかりになるのではないかというふうに期待をしているところであります。
  77. 井上和久

    ○井上(和)委員 本来、個人情報保護の立法というものは、個人情報目的外に使うことを禁止をいたしまして、そして個人情報の本人への開示訂正の申し立てを認めることによりまして、行政機関が勝手に情報を集めたり使用することがないように、ここに歯どめをかけるというところに立法の趣旨というものがあるというのが一般的だ、こういうふうに私は考えます。  しかし、この法案というものは、まず第一条の「目的」では「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人権利利益保護する」こういうことを明らかにしております。これは、国民の基本的人権を保護することよりも、行政側の便宜のために行政機関内部及び行政機関相互間における個人情報利用を促進することを強調しておるのじゃないかというふうに、この「目的」を見て思うわけであります。すなわち、行政運営個人の利益、こういう二つの事柄がてんびんにかけられておりまして、どちらかといえば行政の適切かつ円滑なる運営の方が個人の利益、権利の保護というものよりも優先しておるような感じがする。これはむしろ個人の利益、権利の保護ということの方が建前の状況になっておらないのかというふうに思えるわけでありますが、この点について御見解を伺っておきたいと思います。
  78. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法律個人権利利益保護することを目的とするものであることは申すまでもないところでありますが、ただ、いわゆるプライバシー一般ということになりますと、私ども総務庁として手の届かない範囲が非常に多うございます。私どもの役所として手の届く範囲というのはやはり政府が保有する個人情報でありまして、したがってそういう意味合いにおきまして、あるいは見方からしますと前後逆ではないかという受け取られ方がされるかもしれませんが、役所の立場からいたしますと私どもの守備範囲における個人情報保護、それをきちっとやることを通じてプライバシー保護にもなり、ひいてはまた行政能率の向上にも資することになる、それはまた国民一般の利益でもあるという考え方でこのような書き方をいたしておりますので、その点の字句の使い方につきましては実はいろいろと論議をいたしたところでありますが、役所の立場からいたしますとここが限界かなというところでそのような表現にまとまった次第であります。
  79. 井上和久

    ○井上(和)委員 先ほど長官にお答えをいただきました国民の受ける利益のところでは、一の方でまず初めに御説明がございまして、個人情報利用、提供を制度的に制限することなどにより自己に関する情報というふうなお答えがございました。そして次に、行政情報システム発展のための土台が整備されるというふうなお答えだと思うのですが、法案はむしろ、これは変なことみたいですけれども逆になっておるわけでありまして、ともかく行政情報システム発展のための土台が整備される、同時に個人情報を守るというふうな話にとれるわけであります。私は、これは大変しつこいようなんですが、個人情報保護、すなわちプライバシー保護ということと行政情報システム発展のための土台を整備するということ、この二つが「目的」にうたわれておるわけでありまして、どちらを最も優先すべきなのかということについての見解をもう一度お聞きしておけたらと思います。     〔委員長退席、前田委員長代理着席〕
  80. 高鳥修

    高鳥国務大臣 御提案申し上げております法律の第一条に「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人権利利益保護することを目的とする。」というふうに書いてございまして、御指摘のように「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」が先ではないか、こういう御指摘があると思いますが、あくまでも個人権利利益保護することを目的とすることが第一義でございまして、それを行政の適正かつ円滑な運営を図りながら確保していくというふうに読んでいただきたいと思います。
  81. 井上和久

    ○井上(和)委員 OECD勧告などを見ましても、個人情報保護制度は個人プライバシー権を保護することが基本的な目的であって、個人情報の円滑な流通を図ることはその目的ではないということであります。我が国政府は、このOECDプライバシー保護のためのガイドラインについての勧告を採択しておるわけであります。したがいまして、この法案はこの原則から大きく後退しているという見方ができるわけでありまして、こういうことになりますと国際間の批判が強まるおそれもありますし、また基本的にOECD勧告を採択しているという事実に基づきまして、このことを政府は慎重に遵守すべきであると私は思うわけであります。  まず、OECDプライバシー保護に関するガイドラインにつきまして詳しくお答えをいただきたいと思うのですが、我が国勧告を採択したのだと思いますので、この内容についてお聞かせをいただきたいと思います。
  82. 重富吉之助

    ○重富政府委員 ちょっと長くなりますけれども、お答え申し上げます。  OECD理事会勧告は、プライバシー保護のための法的措置を講ずることと、プライバシー保護の名目で個人データの自由な国際流通に対する不当な障害を設けないことの二つを目的にできていることは先生御承知のとおりでございます。そこで、プライバシー保護に関して八原則ガイドラインで示しております。その八原則について御説明を申し上げます。  まず第一番目に「収集制限原則」というのを掲げておりまして、その中身を申し上げますと、「個人データの収集には、制限を設けるべきであり、いかなる個人データも、適正かつ公正な手段によって、かつ適当な場合には、データ主体に知らしめ又は同意を得た上で、収集されるべきである。」というのが第一でございます。  第二には「データ内容原則」というのがございます。「個人データは、その利用目的に沿ったも のであるべきであり、かつ利用目的に必要な範囲内で正確、完全であり最新なものに保たなければならない。」というのが第二でございます。  第三に「目的明確化原則」というものがございますが、「個人データの収集目的は、収集時よりも遅くない時点において明確化されなければならず、その後のデータ利用は、当該収集目的の達成又は当該収集目的に矛盾しないでかつ、目的の変更毎に明確化された他の目的の達成に限定されるべきである。」  第四番目の「利用制限原則」でございますが、「個人データは、第九条」——目的明確化原則を指しておりますが、「第九条により明確化された目的以外の目的のために開示利用その他の使用に供されるべきではないが、次の場合はこの限りではない。」(a)としまして「データ主体の同意がある場合」(b)としまして「法律規定による場合」。  五番目の「安全保護原則」でございますが、「個人データは、その紛失もしくは不当なアクセス・破壊・使用・修正・開示等の危険に対し、合理的な安全保護措置により保護されなければならない。」  第六番目の「公開の原則」でございます。「個人データに係る開発、運用及び政策については、一般的な公開の政策が取られなければならない。個人データの存在、性質及びその主要な利用目的とともにデータ管理者の識別、通常の住所をはっきりさせるための手段が容易に利用できなければならない。」  七番が「個人参加原則」でございます。これはちょっと長うございます。「個人は次の権利を有する。 (a)データ管理者が自己に関するデータを有しているか否かについて、データ管理者又はその他の者から確認を得ること。 (b)自己に関するデータを、(i)合理的な期間に、(ii)もし必要なら、過度にならない費用で、(iii)合理的な方法で、かつ、(iv)自己にわかりやすい形で自己に知らしめられること。 (c)上記(a)及び(b)の要求が拒否された場合には、その理由が与えられること及びそのような拒否に対して異議を申立てることができること。 (d)自己に関するデータに対して異議を申立てることができること及びその異議が認められた場合には、そのデータを消去、修正、完全化、補正させること。」  八が「責任の原則」「データ管理者は、上記の諸原則を実施するための措置に従う責任を有する。」とございます。  そうしまして、このガイドラインについてのメモランダムがございますが、その中には、各国の行政制度、伝統、習慣に則して八原則を柔軟に適用してよいということが述べられております。  以上でございます。
  83. 井上和久

    ○井上(和)委員 これらの点を踏まえまして、提案されております法案自体につきまして何点かお伺いをいたしたいというふうに思います。  まず、この法案の対象を政府行政機関が保有している個人情報に限っているだけではなくして、コンピューター処理によるもののみとして二重に限定をしている点がございます。個人情報については民間部門においてもかなり大きな情報量となっておりまして、マスメディアプライバシーを初めといたしまして、クレジットプライバシーあるいはダイレクトメールプライバシーなど、指摘するだけでもかなり広い範囲にまで広がっておるのが実情でございます。まず、今回行政機関だけに限定されている点に不満はあるわけでありますが、民間部門については今後の動向によるとして、コンピューター処理によるもののみに限定された点についてお伺いをいたしたいと思います。  国の行政機関に関する個人情報にはコンピューター処理個人情報のほかに手作業処理、いわゆるマニュアル処理個人情報もかなり蓄積をされておるというふうに聞いておるわけであります。そこで、手作業処理個人情報、すなわち手書き文書はなぜ対象としないのか。また、アメリカなどはコンピューターで処理された個人情報とともに手書き文書も同様にしておるということだそうでありますが、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  84. 高鳥修

    高鳥国務大臣 井上委員指摘のように、個人情報につきましては政府が保有するものあるいは地方自治団体が保有するもののほかに、非常に大きな民間分野があるということは私どももつとに認識しておるところであります。この民間分野に対する規制の問題につきましては、かねてから経済企画庁あるいは大蔵省、通産省等々におきましていろいろと勉強もし、あるいは、一部既に取り扱いの指針等が決められておるところもございますし、通達等を出しているところもあるわけでありますけれども、何分にも関係する方面が非常に多いものですから、まだ法案としてまとめる段階に至らないという状況にあります。  反面、政府の保有する個人情報につきましては、先刻申し上げましたように、非常に膨大な量にわたっておりますので、これについての規制は行革審あるいは臨調等の答申におきましても一日も揺るがせにすべきではない、適当な規制を考えるべきであるというようなことが指摘されておるわけであります。かつまた、OECDの今御指摘のありました理事会勧告あるいはまた諸外国の立法例等々を勘案してみまして、国といたしまして、将来民間部門における規制は当然なすべきといたしましても、まずは国の方の個人情報保護について規制を速やかに立法すべきである、このように考えまして今回の御提案になったわけでありまして、民間部門をおろそかにしていいとは考えているものではありません。  ただ、役所の立場で申しますと、総務庁として民間部門については私どもの手の届く範囲を超えておりますので、それはそれぞれの省庁で今後協議を進めていただくべく努力をしたいと思います。そしてまた、こうした法律制定をされればそれをきっかけにして少なくとも前進させていくことができるのではないかというふうに期待をしておるところであります。  それから第二点の、手書きといいましょうか手作業の分をなぜ入れないのかということにつきましては、日本では従来縦割り行政が非常に、何と申しましょうか、弊害も指摘されましたが、反面、縦割り行政であることによって、それぞれの省庁が持っております情報というものが他の省庁なり他のセクションなりに、同じ省庁内にありましても他のセクションには流れにくいというような形になっておりましたし、かつまた、いわゆる公務員には一般的に守秘義務が課されておるということがあります。コンピューター処理されたものにつきましては容易にオンライン化もされ、そしてまた検索もできるというような特性がございますが、少なくとも手作業によって作成されたものについては、その担当者以外あるいは担当の極めて限られたセクション以外は、よほど何か特殊な事情がない限り、それを他で利用するとかあるいは閲覧するとかということは相当な手続を経なければできない仕組みになっておりますので、かつまた、それを全部規制の中に入れますと極めて膨大なものになってしまって、果たして法としての実効性が保証できるかどうかというような懸念もございます。そういうことからいたしまして、いわば管理が比較的徹底しやすい、かつまた情報が他に転用されやすい電算機処理をされた個人情報を対象として今回規制をするというふうにしたわけであります。
  85. 井上和久

    ○井上(和)委員 そこで、総務庁長官に重ねて一つ、二つ伺っておきたいのですが、まず基本的な事柄といたしまして、国民個人情報保護ということについての考え方を長官から伺いたいと思います。
  86. 高鳥修

    高鳥国務大臣 一般的に個人情報保護ということになりますと、非常に膨大なことになると思います。特に、民間部門における最近の個人情報の蓄積というのは非常に膨大なものがあると思います。先般も、ちょっと前の話でありますが、あるテレビでやっておりましたけれども、ある家庭でその家族構成がどんな形になっておって、収入がどのくらいあって、借金がどのくらいあって、車はどういう種類の何年型を持っておって、買い かえ時期はいつだなどというようなことがそっくりコンピューターにインプットされておる、そこまで個人情報が把握をされておるというようなことまで言われておるわけであります。したがいまして、プライバシー全般について保護をするということにつきましては、これは法務省あたりが中心になりまして今後検討を進めるべきであるというふうに考えますし、また、民間の流通段階における問題については通産省あたりが中心になって検討を進めていただかなくてはならぬというふうに思いますが、政府の保有する個人情報保護ということについては政府の責任においてやらなければならない、それを規制しようというのが総務庁の考え方であります。
  87. 井上和久

    ○井上(和)委員 それからもう一点伺っておきたいのは、現に大量の個人情報というものが行政機関の中に蓄積をされております。そういうふうにたくさんたまっておるのですが、このたまっておるそのもの自体というのは、その個人情報は一体これはだれのものだとお考えになっておられますか。
  88. 百崎英

    ○百崎政府委員 この法律で言っております個人情報は、申し上げるまでもなく、行政機関法律に定める所掌事務範囲内で行政目的を達成するために収集、保有しているというものでございますけれども、これを取り扱う上でまさに本人の権利利益侵害されないように行政機関側にこの法律によっていろいろな規制を加えている、こういうことでございます。  御質問趣旨は、個人情報はあくまで個人情報の主体といいますか、本人そのもののものではないかということだろうと思いますけれども、考えようによりましては、まさにそういう側面があるわけでございまして、そのために、自己情報開示請求を認めたりあるいは訂正申し出を認めたりしている、そういうふうに私どもは理解いたしております。
  89. 井上和久

    ○井上(和)委員 そういう側面じゃなくして、むしろ個人情報というものはそこに記録をされておる国民一人一人のものであって、政府の所有では決してない、こういうふうに私は思います。これが基本的な考え方として重要なところなんであります。現にこの法案では個人情報の所有権がどこに、だれにあるのか、こういう認識というものが非常にあいまいというか、なされていない、私はこれが問題であるというふうに思います。また、そういうふうに言われる方もたくさんおるわけであります。個人情報自体それは国民一人一人のものであるとの基本的な考え方政府には、先ほどからお伺いしておりましても側面という表現だけでございまして、私はむしろ主体であり一切であるというふうに考えるべきであると思うわけであります。このプライバシー保護ということ、これをこの法案の中に求めることが難しい原因というものはそういうところにあると私は思います。行政側の勝手な個人情報管理法だと私は指摘せざるを得ないというふうに思います。だから、これから具体的な問題についてお伺いをいたしたいというふうに思いますが、まずは基本的に、このようにこの法案国民個人情報を守ることにならない、こういうふうに言われる点はやはりその考え方の中にあるというふうに思うわけでございます。  それではまず初めに、個人情報収集制限についてお伺いをいたします。  この法案では、収集制限規定が一切行われていないということなんです。昭和六十年の総理府の世論調査によりますと、先ほど若干触れられてもおりましたが、人に知られたくない情報としては、年間収入あるいは納税額、財産状態などの記録が四八・四%と、これがトップを占めております。そして、次が家庭生活の状況、これが二一%を占めております。以下、主義信条、病歴・障害、公的扶助、学歴・職歴、職種等と続くわけであります。  プライバシーは、人に知られたくない権利というだけではなくして、個人秘密が公になった場合に人権やあるいは財産の侵害を招く場合も少なくないという意味で、言いかえるならば、幸福を追求するその追求の上での重大な人権の一つが損なわれるということがあるわけであります。したがいまして、個人情報を自分でコントロールする権利というのは、何といってもこの情報収集の段階、いわばその入り口時点で既にきちっとコントロールができるようなやり方になっておるのが正しいと私は思うわけであります。  行政機関は、思想、信条及び宗教に関する個人情報、さらには社会的差別の原因となる社会的身分に関する個人情報など、個人の尊厳に関する基本的事項及び基本的人権の中核をなし、かつ多数決原理によって侵すことのできない不可侵的権利に関する事項につき個人情報を収集し保有することはできないと考えるのが基本であります。違憲や違法な人権侵害となる個人情報を初め、それ以外においても本人が他人に知られたくないと思っている個人情報を本人に無断で収集し保有することは、明らかにこれはプライバシーの権利を侵害していると言わざるを得ません。したがいまして、収集制限規定が一切ないということは、これは大変な問題であるというふうに私は考えるわけであります。したがいまして、この点についてお答えをいただきたいというふうに思います。
  90. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま井上委員が御指摘になられましたようなことを、例えば民間のある機関が本人に断りなしにそのような情報を収集したとするならば、これは明らかに御指摘のようなことになるだろうと思います。しかしながら、政府の機関が持っております個人情報というものは、すべて法律に基づいて収集されたものもしくは行政上必要な限度において、その限りにおいて最小限その目的を達成するために収集されたものの蓄積でありまして、いわば国が行政行為を行う場合に当然必要とされるもののみに限られておるものであります。  したがいまして、ただいま本人の同意云々というようなことがございましたが、本人の同意なしには収集できないという規定は、諸外国におきましても民間部門においてはそのようなことがございます。例えば、民間部門における個人情報保護におきまして、本人の同意なしにそのようなことの収集がされた場合に、それを消去させる権利を認めるとか、そういうことはございますが、例えば国が持っております医療でありますとかあるいはまた租税の課税の状況でありますとか、そういうものは法律に基づいて実施をしておるものでありますからして、これは本人の同意の有無ということとは関係がないというふうに理解しております。
  91. 井上和久

    ○井上(和)委員 あくまでも個人情報を収集をした場合、その個人にこの情報は収集しているということを知らすということは私は基本的な問題だというふうに思います。知ることですね。これが知らない間に進んでいるということが一番いけないことであるというふうに私たちは考えるわけなのです。そう考えますときに、ちょっとただいまの御答弁では納得をしがたいところがあるわけであります。これにつきまして、現在お集めになっておられます情報の件についてお尋ねをしておきたいというふうに思います。  きょうは法務省それから外務、通産、郵政、警察、こういう省庁の方に来ていただいております。それで、それぞれの省庁におきまして現在お持ちのファイル名をお聞かせをいただきたいと思います。それから、個人情報の件数がどれぐらいあるのか、それぞれ省庁別にまずお聞きをいたしたいと思います。
  92. 長山頼興

    ○長山説明員 お尋ねのまず法務省の保有するファイル件数ですけれども、合計しますと三十九件ございます。そのファイルにつきまして、ファイル名をこれから申し上げたいと思います。  たくさんありますので主要なものを申し上げますと、まず日本人出帰国記録マスターファイル、次に外国人出入国記録マスターファイル、それから外国人登録記録マスターファイル、さらに司法試験第二次試験データファイルなどがございます。
  93. 伊藤庄亮

    ○伊藤説明員 外務省といたしまして保有してお ります国民個人情報に関するファイルでございますが、一般旅券を取得するに際しまして申請者の方々からその申請書に記載していただいた事項、これに交付いたしました旅券番号それから発行年月日等を追加いたしました、いわゆる旅券発給マスターファイルというものが存在しております。この旅券発給マスターファイルに含まれております件数でございますが、情報の件数は約一千三百万件でございます。
  94. 菅沼清高

    ○菅沼説明員 お答えいたします。  警察庁では、運転免許に関する個人情報ファイル、風俗営業に関する個人情報ファイル、銃砲に関する個人情報ファイル、家出人に関する個人情報ファイルなどを作成管理しております。  それぞれの個人情報ファイルに記録されております情報の件数につきましては、運転免許に関するものが約五千六百万件、風俗営業に関するものが約二万件、銃砲に関するものが約三十三万件、家出人に関するものが約三万件であります。  なお、このほかに犯罪捜査のための個人情報ファイルも作成管理しておりますけれども、その具体的な内容につきましては、犯罪捜査活動への影響等もございますので、よろしく御了解をお願いいたしたいと思います。
  95. 谷公士

    ○谷説明員 お答え申し上げます。  郵政省が保有しております電子計算機利用しました個人情報ファイルといたしましては、本年六月末現在で三十九件ございます。その内容といたしましては、郵便貯金、簡易保険等の原簿ファイル、それからパーソナル無線あるいはアマチュア無線の無線局のファイル、逓信病院の診療関係のファイルといったようなものでございます。
  96. 桐山正敏

    ○桐山説明員 御説明いたします。  通産省の個人情報ファイルに該当すると思われるものは、計量士の国家試験についてのファイル約一万八千人分を六年分保有しております。及び特許等の出願、登録、審判等の業務ファイル、全体で約三千三百万件。以上の二種類でございまます。
  97. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは、総務庁から、十五省庁すべての省庁ファイル数と情報件数について省庁別にお伺いをしたいと思います。先ほどの重複になるかとも思いますけれども、確認でございますので、お願いをいたしたいと思います。
  98. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答えを申し上げます。  最初にまずお断りをしておかなければなりませんのは、各省庁のお答えになったファイルの保有数というのは現時点のものであろうかと思います。私どもが現段階で把握しておりますのは、六十二年一月のものでございます。  それでは申し上げます。  まず郵政省でございますが、ファイル数三十四、件数約四億七百三十一万件。厚生省、ファイル数五十九、情報量三億九千五百八十四万件。警察庁、ファイル数六、情報量、件数でございますが、一億一千六百十六万件。文部省、ファイル数千百十九、件数七千六百八万件、うち学校関係がファイル数で千百十一、件数で七千六百五万件でございます。次に労働省でございますが、ファイル数九、件数四千五百四十五万件。次に運輸省でございますが、ファイル数十、件数四千三百八十一万件。法務省、ファイル数二十五、件数三千七百七十九万件。大蔵省、ファイル数六、件数二千七百三十七万件。通産省、ファイル数三、件数千四百九十九万件。外務省、ファイル数一、件数千百七十四万件。総務庁、ファイル数二、件数三百十一万件。防衛庁、ファイル数十一、件数百二十八万件。環境庁、ファイル数六、件数三十七万件。建設省、ファイル数二、件数二十七万件。科学技術庁、ファイル数五、件数二万件。合計いたしますと、十五省庁ファイル数が千二百九十八、データ数量が十一億八千百五十九万件でございます。
  99. 井上和久

    ○井上(和)委員 六十二年一月現在ということなんですが、もっと新しいのが出るかなと僕は思っておりましたが、なかなかこれは遅いというかあれだという感じがいたします。  それから、現在までのこの十一億八千云々の中で、これを個人に対して全部オープンに知らせることができているというものとあるいはいないというものがあると思うのですが、この比率はどうでしょう。
  100. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  まだ正確な数字はつかんでおりませんけれども、事実上個人開示されるものは全体の件数の八、九〇%、八割から九割でございます。
  101. 井上和久

    ○井上(和)委員 現時点で大体八〇%公開されておるというお話でございます。この問題がしっかり進むということが私は大変大事なことであると考えるわけでありまして、例外事項等を設けないでしっかりと公開をするということを原則にして進めてもらいたい、そういうふうに考えるわけであります。  それで、現に提案されております法案は例外事項というものが、不明確あるいは広範囲、無限定、そういうふうに言われておる事柄が非常に多いわけでありますが、今後これについてはどういうふうにお考えでしょうか。例外事項の件ですね。
  102. 百崎英

    ○百崎政府委員 ただいまの御質問個人情報ファイルについての公示の問題ではなかろうかと思いますが、私どもも基本的には個人情報ファイルというものができるだけ広く国民に知られるということが望ましいというふうに考えております。特に個人情報ファイルを一般に公示することによりまして、それをもとに各個人が自分の自己情報についての開示請求をするとかあるいは訂正申し出をする、そういうことの前提になるわけでございますので、基本的にはできるだけ広くそれを開示する必要があると考えております。  ただ、一方におきまして、行政機関がそういった個人情報ファイルを保有するというのは、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、行政目的を実現するためにそういったデータを収集、保有しているわけでございまして、そういう行政目的の実現という公益目的を達成する上でどうしても支障がある場合には、やはり一定の限度での制限を加えるべきものだと考えております。
  103. 井上和久

    ○井上(和)委員 これにつきましては、ファイル簿の作成、閲覧の問題につきましても「事務の適正な遂行を著しく阻害するおそれがあると認めるとき」こういうふうな例外が設けられるわけであります。それからまた、「政令で定める」というふうにお書きになっておるわけですね。だから、政令で定めるというふうな仕組みを使いまして結局は個人情報すべてを知るということ、このプライバシー権の基本をどうしても無視するような結果になるんじゃないのか、「政令で定める」というふうな言葉でもってそれが覆いかぶされるような憂いがありゃしないかということを私は憂えるわけでありまして、今お伺いをしているわけであります。でないと、非常に秘密みたいなものになると大変よろしくないと考えますので、これについてお答えをいただきたいと思います。     〔前田委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 百崎英

    ○百崎政府委員 例えば、先ほどの公示の例外といたしまして、この法律規定の中に「犯罪の予防に関する事務」あるいは「国際捜査共助に関する事務」等々、若干の事務を挙げておりますが、その最後に、先生おっしゃるような「前各号に掲げる事務に準ずるものとして政令で定める事務」というふうに書いてございます。そういう意味で、いわば無原則政令にこれをゆだねているということではございませんで、ここに限定列挙いたしました事務に準ずる性質を持つ事務を政令で決める、そういうことを考えているわけでございます。
  105. 井上和久

    ○井上(和)委員 そうだろうと思うのですが、ただ、このプライバシーに関する問題につきましては、あくまでも小さなこと、細かいことが大事だというふうにも思いますし、「政令で定める」という言葉でもって済まされるというか、そういうふうにとり行われているということがありますと、そこら辺が実は大変問題であろうと私は思うので、お伺いしたわけでございます。  それから、ファイル簿というのは本に例えて言 いますとタイトルであって、本の中身を総務庁が掌握するわけではないわけであります。ファイル簿はオープンにすべきであるという主張がありますが、関係者の御所見をもう一回ここでお伺いしておきたいと思います。先ほどお願いしました各省庁別にお願いしたいと思います。
  106. 長山頼興

    ○長山説明員 今の御質問趣旨は、ファイル名というのは形式的に各省庁で所管しているのかもしれません。内容について一体どういうふうに把握しているのかという御質問趣旨であろうと思いますけれども……(井上(和)委員「オープンにすべきであるという意見があるわけですね」と呼ぶ)そのような意見があると先生はおっしゃっておるのでお答え申し上げますが、確かにそういう考え方も十分成り立ち得るだろうと思いますけれども、やはりいろいろ検討すべき問題が多いのでございまして、それはこれからの問題であろうというふうに考えたいと思っております。
  107. 伊藤庄亮

    ○伊藤説明員 外務省につきましては、先ほど説明しましたとおり、個人情報に関するファイルというのは旅券発給に関するマスターファイル一件でございまして、これにつきましては事実上、旅券の発給、交付という事実によりましてほとんどのデータがその申請者に公開されているということでございます。公開されていないものにつきましては、旅券面に記載されない住所等がございますけれども、そこら辺はごく一部でございまして、今後この法律が通りまして公開するということになりましたら、その時点では、私どもはいかなる方法で実際の公開手続をとるかということを検討したいと考えております。
  108. 桐山正敏

    ○桐山説明員 先ほど説明いたしました二種類のファイル内容でございますが、計量士の関係につきましては、計量士に合格した人につきましては、現在も担当しております機械情報産業局の計量室の方でその合格者の氏名リスト等を開示いたしております。それから特許につきましては、御承知のように特許公報というものがございまして、特許を認められたものにつきまして、その内容を詳細な出版物ということで刊行して開示を行っているという現状でございます。
  109. 谷公士

    ○谷説明員 お答え申し上げます。  郵政省が保有しております個人情報ファイルにつきましては先ほど申し上げましたような内容でございまして、例えば郵便貯金、簡易保険の原簿ファイルにつきましては、もともと契約者の方との契約の内容を書いてございますので、通帳その他で御本人にもお示ししている内容そのものでございます。  それから、無線局のファイルでございますけれども、これも免許証に記載されておりますような内容のものでございます。  それから、逓信病院の診療関係記録につきましては、主として職員のものでございますし、また内容は病歴等にわたるものでございますので、そういうことでございます。
  110. 菅沼清高

    ○菅沼説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問に関連いたします当庁の情報ファイルといたしましては、犯罪捜査に関する情報ファイルが問題ではなかろうかと思いますけれども、御承知のように、大変犯罪捜査が困難化してくる、こういう実情の中で、公共の秩序維持の目的を達成するために、警察といたしましても、犯罪捜査の過程等で得られた情報ファイル化しているわけでございますけれども、どういうタイトルのファイルを持っているかということは、捜査活動に密接にかかわってくることでございますし、捜査活動の手法そのものにもかかわることでございますので、その点につきましては、タイトルについても公表すべきものではない、このように考えておりますので、よろしく御了解をお願いいたしたいと思います。
  111. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、処理情報開示及び訂正請求権についてお尋ねをいたします。  個人が自分の情報に対する開示請求権並びに訂正の請求権は、個人情報保護法制定の中で最も根幹をなす部分であるというふうに思います。これで、この法案というものが開示請求権を認めたものの訂正請求権については認めていない、これは大変大きな欠点であるというふうにも私は思うわけであります。  そこで、まず開示請求権についてでありますが、個人が自分の情報について、行政機関のコンピューターにどのように入力というかインプットされて、正確に処理されているかを知るための開示請求規定していることは、これまでに比べまして一歩前進であるというふうにも思うわけでありますが、同時に、先ほど指摘をいたしましたように、ファイル保有の事前通知義務とファイル簿作成義務について、その例外が不明確あるいは広範囲あるいは無限定というふうに設けられておるということになりますと、その分だけ開示請求権の対象がもともと狭いものになっているということであります。そして、この開示請求権にもこれまた対象から外れているという事項がある。これはどういうものがあるのか、まずお答えをいただきたいというふうに思います。
  112. 百崎英

    ○百崎政府委員 開示請求権の対象外となるものは、一つは、先ほども御議論がございましたが、学校教育法に規定する学校における成績の評価あるいは入学者の選抜に関するものということでございます。それからもう一つは、病院、診療所あるいは助産所における診療に関するもの、それからもう一つは、刑事事件に係る裁判もしくは検察官、検察事務官等が行う処分または刑の執行に関するもの、これが開示請求の適用対象外となっております。
  113. 井上和久

    ○井上(和)委員 いろいろとそういうふうに対象外の事項というものがあると思うのですが、この中で、先ほど午前中にも議論がございました、保有機関と当該第三者との協力関係または信頼関係を損なうと認める場合には開示しないことができる、こういう規定のことなんですね。これにつきまして、法案第十四条の一項二号、個人情報のうち、いわゆる第三者から収集された個人情報こそ、私が思いますに、それが正確かどうかの本人のチェックというのはむしろ必要ではないか、こういうふうに私も考えるわけでありますが、お答えをいただきたいと思います。
  114. 百崎英

    ○百崎政府委員 この個人情報保護するに当たりまして、基本的には、個人情報の主体である本人の権利利益侵害されないようにということが基本でございます。ただその場合に、例えばこの十四条の御指摘のような規定がございますけれども個人情報の本人以外の第三者から取得したような情報である場合に、保有機関と当該第三者との協力関係あるいは信頼関係が損なわれるという場合には、その処理情報は不開示をすることができる、こういうことになっておるわけでございますが、これは先ほど申し上げました開示請求の対象外にするということではございませんで、個々のケースによりまして個別の判断を加えた上で、どうしても第三者との協力関係を損なうおそれがあるというような場合等におきましては「開示をしないことができる。」こういうふうに定めたわけでございます。
  115. 井上和久

    ○井上(和)委員 ここで開示請求権を新設した理由ということについて、言うてください。
  116. 竹中修一

    竹中委員長 もう一度質問してくれませんか。
  117. 井上和久

    ○井上(和)委員 開示請求権を新しくこの中に入れたというお話がございましたね。そう聞いておるのです。その理由について。
  118. 百崎英

    ○百崎政府委員 ちょっと御質問趣旨が、開示請求権を認めた理由という意味でございますか。——これは申し上げるまでもなく、自分の情報行政機関でどういうふうに把握され、どういうふうに使われているのか、そういうことにつきまして、前のアンケート調査等にもございましたように、やはり一般国民にとっては一番関心事である。そういうことで、自分の情報についてどういうような状態になっているかということを行政機関に対して開示を請求する、そういう趣旨で設けたものでございまして、ある意味では個人情報保護する上での一番のメルクマールになるものというふうに私どもは考えております。
  119. 井上和久

    ○井上(和)委員 続きまして、開示制限の中で、 三に「個人の生命、身体、財産その他の利益を害すること。」云々、こういうふうにあるわけです。これは行政機関からすれば大変な拡大解釈ができる、広がっていく、こういうふうに思われるわけなんです。そう考えますと、例えばここに「その他の利益」とあるのですが、これはどういうことを想定されておられますか。
  120. 重富吉之助

    ○重富政府委員 例えば個人の名誉等が考えられると思います。
  121. 井上和久

    ○井上(和)委員 国民が自分の個人情報開示請求をしたといたしましても、いろんな理由がありまして、その開示する内容行政機関の裁量権にゆだねられているというのが結論であろう、こういうふうに私は思うわけでありまして、個人情報のすべての項目について開示するという保証がないと、法案としても私は大変よろしくないというふうに思うわけでありますが、この開示について完全な保証はされていくということについての考え方を答えてください。
  122. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  個々の例によって違うわけですが、十三条の一項ただし書きにございます教育、医療、それから刑事関係のものにつきましては、一般的に不開示でございます。  その理由は、例えば医療につきましては、がん等の場合がございます。例えば、自分の病名は何であろうかということを本人が開示請求した場合、ある人には見せる。がんでない人には、そうでないですよということはできるわけですけれども、ではがんの人は請求した場合どうなるか、こういう問題がございます。そうすると、権利として認めた場合は、その人には見せないということはできないわけですから、見せる。そうすると、非常に悪い影響を与える。そういうことがございまして、本人の不利益になる場合があるのではないか。  それから教育の場合にも、先刻文部省の方から御説明がございましたように、教育というのは基本的に教師と生徒の信頼関係によって成り立っておるわけでございまして、生徒の状態いかんによっては、その成績を示すことが生徒の学習意欲なりその後の精神的成長にとってよろしくないという場合も考えられるわけでございます。そういうことから、いろいろございますが教育については一般的に不開示にしよう。  それから刑事関係につきましては、例えば就職をする場合に、雇う方があなたは前歴があるんですか、ないんですか、こういうことをおっしゃった場合にその前歴を持っていく、そして前歴がある人は雇わないよということも考えられるわけでございます。そうすると、刑事関係の記録をお見せするということは本人の不利益になることがある。それからもう一つは、そういうことによって前歴のある方がせっかく更生しようとしてもできなくなると、前歴のある方の吹きだまりができて社会全体のためによろしくないんじゃないか、そういうことからこれは一般不開示にしたわけでございます。  それから十四条の各号に掲げるものは行政の遂行に支障を及ぼす場合は不開示とすることができる。しかし、この十四条で不開示とすることができるものにつきましては、本人は行政機関の判断について不服があると行政苦情の申し立てができますし、また争訟、それを見せろ、この法律規定からいって不当ではないかということが裁判で争える、そういうことはできるわけでございます。したがいまして、行政機関の恣意によって見せる見せないが決まる、開示が決まるということはございません。
  123. 井上和久

    ○井上(和)委員 そういうふうにお考えになっておられると思うのですけれども、病気の場合につきましても、本人は言って不利益であるかどうかということは、ケース・バイ・ケースの場合もあるでしょうし、いろいろな事情があると思いますので、見せることが必ず不利益だと決めることは私は僣越じゃないかというふうに思いますね。  それから、先ほどOECDの八原則の御説明をいただきました。その中で利用制限原則というのがあるわけでありますが、本法案では外部機関への個人情報の提供を認めておるわけであります。これは個人情報の共同利用を許すということになるわけでありまして、行政機関相互の共同利用ばかりでなくして民間に提供されるおそれというものがあるわけであります。第九条では保有目的外の個人情報利用をも認めております。また第三者への提供も可能ととらえることができるわけでありますが、この場合、第三者というのは民間企業も含めてのことであるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  124. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  まず第九条の規定の仕方でございますけれども、第一項では目的以外の利用、提供は原則禁止ということを書いておりまして、二項で前項の規定にかかわらず次の四号はいい、こう書いておるわけでございますが、ただしその中で、二項のただし書きで「処理情報ファイル保有目的以外の目的のために利用し、又は提供することによつて、処理情報の本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。」ということで、本人の不利益になるような提供はしてはいけませんということを書いておるわけでございます。  先生のお尋ねは多分その二項の四号かと思うわけでございますが、この四号の規定では、先生おっしゃるように、確かに行政機関とか地方公共団体とか特殊法人以外のところにも提供できることが書いてあるではないかということでございましょう。そこにつきましては、私どもは「学術研究の目的のため」とか「専ら統計の作成」という本人の権利利益侵害するおそれのないような場合を考えておるわけでございますし、そのほかに提供する場合は「特別の理由のあるとき。」ということでございまして、公共の利益、提供することの利益と個人権利利益保護することを相図りながら判断する。  では、例えばどんなことが考えられるかということでございますが、民間企業に出すこともございます。しかし、それは極めて限られた場合でございまして、現在出しておるのは欠陥車が発見されたような場合、その車のナンバーとかその他のことを、運輸省が持っている資料を出す。しかし、それは欠陥車を回収するとかそういうために出すわけでございまして、公の利益になること以外は出さない。この「特別の理由のあるとき。」というのは、私どもは非常に厳しく考えております。
  125. 井上和久

    ○井上(和)委員 答弁を聞きますと問題がないように思うのですけれども、ただ現実には民間企業へ行政が持っておる情報がどんどん流れ出すということになりましたらこれは大変なことでありまして、まさにプライバシーも何もあったものじゃないのです。したがいまして、それについての歯どめというか枠組みがきちっとできておらなければならないというふうに私は思うわけであります。  個人情報保護法の制定目的自体でありますが、私は、本来個人情報に関する個人の権利の保護、さらには保有機関の責任を明確にする、こういうところがこの個人情報保護法というものをつくらなければならないと考えられる最大の理由だと思うわけでありますが、それにつきましても、この法案というものが、指摘をできるように、大変な欠陥、問題を持っておるということを考えるわけであります。  ここで行政機関の責任に関する問題についてお伺いをしておきたいと思うのです。  この二十五条の「罰則」についてでありますが、「偽りその他不正の手段により、第十三条第三項の規定による開示を受けた者は、十万円以下の過料に処する。」こういうふうにございます。これは条文のとおりでありますが、「開示を受けた者」ということでありますとこれはあくまでも個人であるはずでありまして、個人を指します。この罰則というものはあってしかるべきということは私も認めるわけでありますが、あくまでも個人のことを罰則として規定をされておるだけでありまし て、逆に言えばこれ以外にないというのは大変問題じゃないのかという気が私はするわけであります。  といいますのは、「例えば行政機関内において職務に関係のない個人情報を不正に入手をして、またそれを第三者に対して渡すというか売るというか、そういうことをする。こういうことを例えば国家公務員がしたとしても、それについての罰則はこれには当てはまらぬということなのです。これは処罰されなくてもいいということではない。むしろこういうときのために罰則規定というのはあっていいのではないかというのが私の思うことでありまして、登録しておる本人の開示の請求の仕方が不正であったということで、あくまでも個人を指すということから、こういうふうな点についての罰則の仕方を抜かしてはならぬのじゃないかということを私は感じるわけです。行政事務に携わる国家公務員という立場から考えましてもぜひ、そういうことはないとお考えだろうと思うのですけれども、この点について御説明を願いたいと思います。
  126. 百崎英

    ○百崎政府委員 今の御質問は、要するに例えば国家公務員に対する罰則規定がこの中にはないじゃないかという御指摘だと思います。国家公務員につきましては、先生御承知のように国家公務員法上、法令遵守の義務とかあるいは守秘義務とかそういったものが決められております。行政機関の職員がそういった義務に違反する場合には当然に国家公務員法上の罰則あるいは懲戒処分を受けることになるわけでございます。  それからまた、仮に本法にいろいろな、例えば刑事罰を設けてはどうかというような御意見も一部にございましたけれども、特に刑事罰を設けるような場合には、これは犯罪を構成する要件、いわゆる横成要件というものを非常に厳格に決める必要があるわけでございますし、また刑事罰をこの法律についてだけ設けるということは、例えば先ほどから問題になっております手作業処理の場合に同じようなことが行われた場合には一体どうするのか、そのあたりの均衡はとれているのかどうかというような問題もございまして、例えばそういう刑事罰を科するような場合には刑事政策のあり方全体についてさらに慎重に検討を加えていく必要があるのではないか、かように考えているわけでございます。
  127. 井上和久

    ○井上(和)委員 収集あるいは保管、管理、そういうことが行われるときにどういうふうにそれを行うかということ、これは不正に行われてはならないということは当然でありまして、特に、私はそういう意味からこれを申し上げたのであります。もちろん、守秘義務違反ということはこのことについても当てはまるであろう、これは先ほど御答弁がございました。そのとおりだというふうに思いますが、私はこのことで申し上げたわけであります。この収集や保管、管理利用、こういう運用といいましょうか、それがどういうふうに、だれによってなされるかということにおいて、その段階での違法なことがあるということはもっと許しがたいことでもございますので、申し上げた次第でございます。  それから、行政機関の責任に関する法案規定というものが先ほど言いましたように多少不十分である、これを私は思いますが、特に、第九条に「処理情報利用及び提供の制限」に関する規定ということがございます。「ファイル保有目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。」という原則規定はしているわけでありますが、ここでも例外というものが設けてありまして、しかも広範囲になっており、違法行為と言えるものはほとんどないのと同じであるということだと思うのです。具体的に言いますと、九条二項の二号、保有機関が内部で利用する場合、「所掌事務の遂行に必要な限度で」利用し、「相当な理由のあるとき。」また第二項の三号、他の行政機関等へ提供する場合、「事務又は業務の遂行に必要な限度で」使用し、「相当な理由のあるとき。」さらには、第二項の四号、その他へ提供する場合、「その他処理情報を提供することについて特別の理由のあるとき。」このように違法行為そのものが見つからないくらいに広範囲に例外というものかつくられておるというふうに私は受け取るわけであります。  まさに行政機関にとってみますと、こういうふうな規定があるということは、大変悪く言えばざる法であるというふうに思いますし、国民の側から見ましてもそういう点が不徹底だ、こういうふうに考えられるわけであります。これから考えましても、この法案というものは個人プライバシー保護、それを重点とする法律案としては非常に不完全である、こういうふうに私は思うわけでありますが、これにつきまして、行政機関の便宜を図るためだけではないということについての御見解をお伺いしておきたいというふうに思います。
  128. 百崎英

    ○百崎政府委員 個人情報を他の機関等に提供するというようなことが非常に広範に行われるのではないかという御指摘でございますが、あれは法律規定にもございますように、特に行政機関の場合には、仮に他の機関に提供する場合であっても相当な理由がある、社会通念的に見て合理的な理由があるというような場合に限っておりますし、行政機関以外のいわゆる一般の民間等に出す場合には、先ほども御説明いたしましたように特別の理由がある場合に限って提供できる、こういうことにして縛っておるわけでございます。  そこで、立場をといいますか、ちょっと考え方を変えてこういった問題を検討いたしてみますと、一方におきましてこれだけ情報化が進んでまいった世の中におきまして、例えば行政改革というような側面からいいますと、できるだけ窓口を一本化してほしい、こういう国民の要望もございます。同じような書類をあっちに出し、こっちに出しということはとても煩瑣でかなわない、そんなような場合もございまして、それが法律規定に基づいてきちっとした所掌事務のもとにいろいろな機関がそういった行政事務を行う場合には、やはりその個人情報を有効に利用するといいますか、そういった必要もあるわけでございます。そういうサイドから考えますと、一律に他の機関に個人情報を提供することはけしからぬということにはまたならないのじゃないか。そういった点もかれこれ勘案いたしまして、今回のような法案をつくったわけでございます。
  129. 重富吉之助

    ○重富政府委員 若干補足して御説明申し上げます。  個人情報行政機関が持ちます場合には、この第四条の一項で「法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、できる限りその目的を特定しなければならない。」と書いておるわけでございますが、これは先生が今問題にされました第九条の第二項第二号のところでございますけれども、「保有機関が法律の定める所掌事務の遂行に必要な限度で処理情報を内部で利用する場合であって、当該処理情報利用することについて相当な理由のあるとき。」こうございます。個人情報ファイルを持ちます場合は、各省庁の中でどこの局、極端な場合はどこの課まで特定して持ちなさい、そういう形で、保有機関というふわっとした形で持つことを許していないわけでございます、この法律は。この法律は、特定の局または課まで限定してファイルを持つようにしなさいということを言っておりますので、その同じ省庁内でも他部課、他局に渡す場合には相当な理由がなければならない。先ほど局長が御説明しましたように、社会通念上妥当と思われる理由がなければならないということを言っておるわけでございまして、同じ省庁内でもそれだけ厳しく規制をしているわけでございますので、そのことも御勘案願いたいと思います。
  130. 井上和久

    ○井上(和)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  131. 竹中修一

    竹中委員長 川端達夫君。
  132. 川端達夫

    ○川端委員 委員長、長官、よろしくお願いします。  今回議題となっております行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案についてお伺いをしたいのですが、今までい ろんな意味でいわゆる時代の流れとともに個人プライバシーという部分の議論が非常に盛んになってまいりました。そういう意味で、これまで先進国の中でプライバシーに関しては非常に後進国ではないかというふうな指摘まで受けている我が国にとりまして、今回の法制化で今まで全くないところから個人情報保護をしよう、あるいは利用をしていこうというふうな、利用の場合に一定の枠をつけていこうというふうな法案が提示されるに至ったという分では、非常に大きな前進ではないかというふうに評価をいたしたいというふうに思います。しかしながら、いわゆるプライバシー保護というふうな観点、いわゆる個人を守っていくというふうな面では、この法案が持っているものはいろいろな面でまだまだ不十分ではないかなというふうなことも指摘せざるを得ないのではないか、そういうふうに考えるわけです。  それで、一番初めに、午前中あるいはただいまの御議論の中でも出ておりましたけれども、総務庁というふうな立場でなくて、いわゆる政府の立場でプライバシー保護というものについてどういうふうにお考えになるのか、長官の御見解をお伺いをしたいと思います。
  133. 高鳥修

    高鳥国務大臣 いわゆるプライバシー全般ということになりますと、これは総務庁の手の及ぶ範囲をかなり超えた問題でありますので、これ全体についてはなお今後大いに検討さるべきものであろうというふうに思います。  総務庁といたしましては、かなり早い段階から問題意識は持っておったわけでございまして、一番早くは昭和五十一年の一月に、事務次官会議等の申し合わせによりまして電子計算機処理データ保護管理準則というのを定めたわけであります。その後問題意識を持ちましてずっと検討を重ねてきたわけでありますが、今御指摘プライバシーのうちで、いわゆる個人に属する情報保護の面におきましては、民間部門と公的な部門がある、これを一本の法律で定めたところもありますし、それぞれ別個の法律規制をしているところもございます。私どもといたしましては、民間分野における個人情報保護という問題も極めて重大な問題であり、何らかの規制をできるだけ早い機会にすべきであるということは当然のこととして考えておりますが、とりあえずは政府が保有する個人情報についてしかるべき規制をすべきであろう。これはOECD勧告がございますし、かつまた諸外国、先進諸国においてほとんど大部分がこれを実施しておる。そういう状況の中で、サミット参加国の中でいまだ法案を持っておらないのは日本とイタリーだけである。イタリーについては、一遍提案をいたしましたが、政変によりまして流れて、再提出をするという段階にあったわけでありますが、そうなりますと、日本だけということになるわけでありますので速やかな法の制定が必要であろう、このように考えまして、プライバシー全体よりは、まずは政府の方をやって、しかる後にそれを第一歩といたしまして民間部門についても適正な規制を考える段階になろう、このように考えて今回御提案を申し上げた次第であります。
  134. 川端達夫

    ○川端委員 法案背景はそういうことで理解をしておるのですが、私、今お伺いしたのは、その法案趣旨の前提となるプライバシーというのは保護されるべきであるというふうに私は思うわけですけれども、その部分の御認識、それからプライバシーというものが、今まで個人情報を勝手に知られたくない、要するにひとりでいたいという権利であるというふうな解釈から、最近は自分の情報を自分でコントロールできる権利を含むのであるというふうなのが通説になってきているというふうに見聞きをするわけですが、そういう観点の中で、今回はその一部であるということではなくて、一般的に政府としてその将来的な分を含めてプライバシーはもう少しきちっと保護していかなければならないという御認識をお持ちであると思うのですが、その点をちょっと確認をしたかったわけです。
  135. 高鳥修

    高鳥国務大臣 私は、その方面の専門の学者でも何でもありませんので、プライバシーの概念について正確な規定を述べよと言われましても、なかなか当を得た御返事はできないわけでありますけれども、ただいま御指摘のように、従来のひとりにしておいてもらう権利から今日では学説などでいわゆる自己情報コントロール権を含むものであるという考え方があることにつきましては、私どもも承知しているところであります。民間部門を規制いたしました欧米法律について勉強してみますと、例えば自己の情報を自己の意に反して収集されている場合、これに対する取り消しをさせる権利を認めるというようなことがございます。しかしながら、政府の場合には、いわゆる法律、制度に基づきまして極めて限定的に行政の一つの行為として収集をしたものの蓄積でございますので、したがって、自己情報コントロール権と申しましても、一切の登録を拒否するというような性格のものはこの中には含まれていないのではないかというふうに理解しております。
  136. 川端達夫

    ○川端委員 長官はこの法案について非常に御勉強されておるので法案のことまでお触れになりましたけれども、私、一般論として、今そういう個人情報コントロール権を含めたプライバシーを可能な限り保護していくということが国民の間からも求められているし、行政もその基本的な認識の中でいろいろなことをやっていくべきであろうというふうに考えますし、当然そういう観点に立脚してお考えであると理解をいたしております。  そういう考え方の中で、法律規制をしていくという部分OECDが八つの原則というのですかそういうものを示して、一つのガイドラインを提示しているわけですけれどもプライバシー保護という観点から、OECDの八原則とよく言われている部分に関してはどのような評価をされているのでしょうか。とんでもないことを言うというのか、非常にそのとおりだというふうにおっしゃるのか。実際の、これから法律をつくっていこうというときの技術的な問題は別として、総論的にこういうことを十分にしんしゃくすべきであるのかどうかということについて、御見解を賜りたいと思います。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕
  137. 高鳥修

    高鳥国務大臣 いわゆるOECDガイドラインにつきましては、こういう理事会勧告がなされたことを踏まえまして私ども法案検討をしてまいったところであります。かつまた、法案の立案の段階、過程の中で、私どもの方から担当官OECDに派遣いたしまして、たしかあれはガスマンといいましたか、OECD担当官に私ども考え方説明して、見解を聴取する等のこともいたしました。OECDにおきましても、私どもの立案しておる方針につきましてはそれなりの評価をしていただいたという経緯があります。そういうことを踏まえまして私どもとしては今回御提案を申し上げたわけでありますので、OECDガイドラインを踏まえての御提案であるというふうな御理解をいただきたいと思います。
  138. 川端達夫

    ○川端委員 今の法案OECDガイドラインを踏まえたものであるという御見解であります。そうすれば、もう一つ、政府の方での提案我が国状況というものを述べておられるわけですけれども、そういう部分でも、国民の間に自己の情報が予期しない形で収集、蓄積、利用または提供されているのではないかとの不安感や、個人権利利益侵害のおそれを生じさせるからその保護対策の必要性指摘されている、世論調査でもそういうふうな部分が出ているということがかねがね言われているわけですが、そういう部分で今回の法案OECDガイドラインは大体それに沿って評価をされるものだという御見解でありましたが、もう一つの、今述べましたような国民が持っている世論調査にもあらわれるいろいろな不安に対して、この法案はどの程度こたえられているというふうに御認識をされているのか、お伺いしたい。
  139. 高鳥修

    高鳥国務大臣 何分まだ御提案をした段階でございますので、国民の皆様方にはこの法案内容について十分御理解をしていただく機会がほとん どない、一部新聞報道等で伝えられた程度でございまして、ほとんどないわけであります。  しかしながら、少なくとも政府が持っておりますコンピューター処理をされました個人情報につきましては、いろいろな例外規定はあるにせよ原則公開、かつまた訂正申し出る権利を認めるというようなことを通じまして、自分の個人情報がどのような形で記載されているかということについて知ることがはっきりと認められるわけでありますので、この法案ができることによりまして、国民の皆様方が持っておられる漠然たる不安の一部は少なくとも解消されるのではないかというふうに思います。
  140. 川端達夫

    ○川端委員 提案趣旨はそういうところにあるというふうに思うわけですけれども、つぶさに法案を読んでみまして、あるいはいろいろな関係する資料等々を見ますと、どうもそういう国民プライバシー保護という観点よりは行政の都合といいますか運用というものにやや力点が置かれているのではないかなというふうなことを、各点で印象として受けます。  そういう中で長官が先ほどおっしゃいましたように、プライバシー保護という観点では確かに非常に幅の広いものである、今回は官民ある中で官の部分である、そしてその中のコンピューターの部分であるというふうな、一部であるというふうに思います。確かに全体非常にたくさんある中の一部を規定をしよう、しかしその中で、その一部を規定をする場合においても、基本的な哲学というのですか、思想といいますか、それは個人情報保護するというもの、個人プライバシー権利を守っていくというものに一貫して貫かれなければいけない、このように考えるわけです。その意味では行政効率化推進がやや前に出ているのではないかなというふうな印象を受けております。その点に関してはどうでしょうか。きょうの質問も大体そういうニュアンスであったかなと思うのです。そういう印象を受けとめているわけですけれども提案者としてはどういうお考えなんでしょうか。
  141. 高鳥修

    高鳥国務大臣 法律の第一条の書き方がそのような書き方にとられがちな表現になっておりますので、その点がどうも一番ひっかかるのではないかなというふうに思います。  私ども、実はその点についていろいろと議論を重ねたところでありますが、あくまでも個人情報保護目的とするというのがこの法律の第一義でありまして、それを行政運営の適正化、円滑化を図りつつやるという、図りつつの方はつけ足しでありまして、保護の方が第一義であるというふうに読んでいただきたいというふうに思っております。
  142. 川端達夫

    ○川端委員 ぜひともそう読みたいわけですけれども、なかなか読めない部分が出て困るのです。  先ほども少しお触れになりましたけれども、総務庁の方でいろいろと検討していかれた、実際にその情報を保有し管理をしている各省庁間で随分意見交換といいますか、すり合わせというふうなものをおやりになったと思います。そういう中で、目的としていわゆる個人情報保護するんだという基本的な姿勢と行政の円滑な遂行という部分は、やはり相反する部分が出てくる。各省庁については、いろいろとそういうたがをはめられるとやりにくいという部分とのあつれきというのが当然出てきたというふうに思うわけです、先ほども若干そういうことのニュアンスをお触れになりましたけれども法案作成の過程で、そういう各省庁との調整というものでいろいろと問題になったといいますか、私の想像では多くの例外規定あるいは運用の幅というものを読めるような形になったのではないかなというふうに思うのですが、そこら辺の経緯といいますか、御努力という部分で、お差し支えない範囲でお聞かせをいただきたい。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  143. 百崎英

    ○百崎政府委員 こういった法案国会に御提出する場合には、申し上げるまでもなく政府部内でいろいろな調整を図るわけでございまして、内閣として一体とした法律を出す、そういうことでございますが、その調整の過程では、確かにこの法案につきましては特に我が国で全く新しい初めての制度である、そういうようなことがございまして、各省庁にとってみましても、何といいますか、率直に申し上げますと、今後行政機関側として物すごい開示請求が出されるのではなかろうかという不安を持ったこともあるいは一部事実ではないかというふうに考えております。  いずれにいたしましても、この法案をつくるに当たりまして、私どもといたしましては、あくまでも個人情報保護を図るという精神だけはまず第一義的に大切だということで、そういう姿勢だけは貫いたつもりでございます。実際の行政の運用に当たる各省のいろいろな御意見を聞いておりますと、我が国行政の実態あるいは行政慣行、そういった面もやはり考慮をすべきではなかろうか、そういうことでいろいろな案がございましたが、それを検討いたしました結果、今日お出ししているような法案になったわけでございます。
  144. 川端達夫

    ○川端委員 今いみじくもおっしゃいましたけれども、そこの行政のおのおのの仕事という部分、これがまさに行政の円滑な遂行ということだと思います。縦割り行政の中で、そういう部分では今まで情報を公開するあるいは開示をするというふうなことは全くなかったわけですから、非常に抵抗がある。個人情報保護するという新しい価値観の中でやっていくという部分には当然ながら抵抗がある。ただ、そこで実際に今運用されている部分に余りに重きを置くとそちらがメーンになってしまうということで、差し支えない範囲個人情報保護開示をしていくというふうな流れになって、前段申し上げました目的行政の円滑な遂行にウエートがあるのではないかというふうに読み取れてくる、こんな懸念が非常に強くあります。  そういう意味で、例えば今回こういう法案をつくろうというときに、既に今も行政は動いているわけですから、各省庁が今までいろいろなファイルを保有しているあるいは相互利用している、そういうものがこの法案ができることによって持てなくなる、あるいは今まで借りていたものが使えなくなる、そういうふうな事例は起こり得るのでしょうか。省庁との折衝の中で、今回の法律によって今までのそれは制限をされてしまいますよというふうなことが発生をするのでしょうか。
  145. 百崎英

    ○百崎政府委員 現時点におきまして各省庁が保有しております個人情報ファイル、これは全体はちょっと私ども内容まで含めてわかっておりませんけれども、少なくとも今のような非常に厳しい世の心で行政機関がいろいろな仕事をやっている場合に、不必要な個人情報ファイルを持っているということはまず常識的に考えられないんじゃないかと私は思います。  それはそれといたしまして、この法律が施行されますと、本法によりまして各省庁法律に定める所掌事務範囲内で、しかも仕事をする上での必要最小限の個人情報を持つということに限定されますので、場合によってはそういう不必要なものがあれば当然これは廃棄していただくことになりますし、また必要以上の事項が記載されているとかあるいは必要以上の個人範囲が含まれているという場合には、この法律規定によりまして当然削除されてしかるべきものというふうに考えております。
  146. 川端達夫

    ○川端委員 現実には不必要なものは持っているはずがないのですね。不必要なものを持っているはずがない中で現実に利用をし行政が運用されている。そういう中で、恐らく今回の法案のいろいろな規制の中でもほとんど実害がない、だから支障のない範囲で通知をし公示をし開示をしていくという、今まで開示されなかったのがされるというのは前進なんですけれども、そこにスタンスが非常に官優先ではないかというふうな部分を印象として非常に強く受けます。これは総論でありますが、そういう意味で、個人情報保護目的としていくということであれば、当然ながらコンピューターの処理だけではなくて、マニュアルの部 分も基本的には含めるべきであると思うのです。個人情報保護という観点からはそうだと思いますけれども、これを外した理由をお伺いしたいと思います。
  147. 高鳥修

    高鳥国務大臣 先ほどもお答えしたところでありますけれども日本の役所というのは縦割り行政でありまして、かつまた同じ省庁内においても部局間においてほとんど情報が閉鎖的であるというような形になっております。  そういう中で、いわゆる電算処理をされた情報というものは、大量に処理をされ、かつまたオンライン化され、検索等が容易であり、その項目だけではなくて他の項目まで操作をしますといろいろ出てくるというようなことがありますので、したがってコンピューター処理されたものについては速やかにしかるべき規制をかけるべきであるというふうに考えたわけでありますが、いわゆる手作業によって個々に各セクションにおいて持っております情報につきましては、それぞれ公務員の守秘義務なり法の遵守義務なりございまして、みだりに他に漏らしてはならないということになっておるところでありますし、かつまたそのような資料等につきましては、部局外の者がこれを利用するとか閲覧するとかということは役所の機構上そうあり得ることではないというふうにも考えるわけであります。当然これらは守秘義務なりなんなりの対象にもなり、規制をされているところでありますし、今回はそれを含めると非常に膨大な量になりまして、実質的に規制が非常に難しくなるというような問題もございましたので、したがって電算機処理をされファイルに蓄積されたものに限るということにいたしたところでございます。
  148. 川端達夫

    ○川端委員 守秘義務あるいは仕組みとしての部外利用が余り実態的にされないというふうなことはわかるのですけれども、それだけが個人情報保護ではない。機密漏えいとかいうことだけではなくて、そういうもののファイルがあるということを知るということ、あるいはその中身が間違っているかどうかというふうなことも含めて言うと、個人情報保護するという観点からいえば、何もコンピューターに限るという性質のものではないというふうに思います。  そういう意味で、今回のものはまさにコンピューターの部分というふうに限定をされたわけですけれども、将来的にはどういうふうに考えておられるのか。これはもう将来ともにそういうふうなものはするつもりがないのか、検討をしていく課題であるのか、そういうことについてお伺いをします。
  149. 高鳥修

    高鳥国務大臣 OECD理事会勧告では、個人データの自動処理についてのみガイドラインを適用することを妨げるものではないということになっておりますので、一応日本の現在私ども提案いたしております法律は、このOECD理事会勧告に反しない形でお出しをしておるわけであります。諸外国におきましても、確かに手作業処理個人情報を対象としておる国もございますが、それらについてもかなり限定的な形で規定をしておるようであります。  今回この法律制定させていただきますならば、将来の課題としてそのようなことにつきましても勉強さしていただきたいというふうに思います。
  150. 川端達夫

    ○川端委員 個人情報保護という趣旨からいうと、私はこの法は実務的にはよく理解はできますけれども、この法案趣旨からいって、精神条項として、いわゆる個人情報というのは個人のまさに基本的な人権として守るのだ、そこにはコンピューターもマニュアルもない、そういうものであるという基本的な姿勢というものをお示しになるべきではないか。その中で具体的にいろいろ規制をする部分制限を加えていく部分に関してはコンピューターに限定をする。初めからコンピューターだけというと、何か受けとめとしてマニュアル部分はどうでもいいのじゃないかというふうなことになりかねないというふうに思いますが、その点はどうでしょうか。
  151. 百崎英

    ○百崎政府委員 私どもは、むしろこの法案が成立することによりまして、手作業で行われている部門につきましても、この法律の精神を実際に各省庁が生かして個人情報保護を事実上やっていただける、そういう期待をしているところでございます。
  152. 川端達夫

    ○川端委員 期待はしばしば裏切られるので、そういうことも将来マニュアルをどうするとかいうときにはぜひとも考えていただきたい。それは基本的なことだというふうに思います。  関連をしてというか同じような部分で、先ほど長官もお触れになりましたので繰り返しになるかもしれませんが、公的部門だけではなくて民間の部門も検討の課題であるということなのですが、これは非常に膨大な量になっているし、いろいろな意識調査、世論調査等でもやはりこの部分で、知らない会社からダイレクトメールをどんどん送ってくるというふうなことで国民も非常な不満を持っている。これはよくよく調べると、いわゆる公開された情報に基づいている部分も現実にはあると思います。しかし、そういうことも含めて、だれが何を知っているかわからないなという部分国民の実際の漠とした不安としては、いわゆる私的部門に関してのそういう規制というものがどうなっていくのだろうかというふうに認識をしているというふうに思うのですが、これはやはり何らかの形で規制をしていくべきだ、そういう流れをつくるべきだというふうに思うのですが、これからの検討の予定も含めて御見解をお伺いしたいと思います。
  153. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま御指摘のように、民間部門におきましても膨大な個人情報の蓄積がされ、それがいろいろな形で利用されておるわけでありますし、たしかこれは国が保有する情報のごく一部でありますが、たまたま流出をして民間に利用されたというようなケースもあったやに記憶しております。そのようなことは極めて遺憾なことでありまして、あってはならないことでありますので、厳しく規制をしていかなければならないというふうに思います。  民間部門につきましては、今経済企画庁国民生活局で取り上げて検討しておりますことと、それから通産省、大蔵省が個人の信用状況についてのデータ管理について規定をしておるところでありますが、いずれにいたしましても、民間部門の方がむしろ大きな問題ではないかという認識は私も持っております。  ただ、関係省庁が非常に多くて、総務庁としてこれを手がけるということは非常に難しい立場にございますので、私どもがこういう法律を国として定めることによって、民間部門にも定めるべきであるという機運が高まり、そしてそれへ向かって大きく前進するように期待をしておりまして、国会においても大いにそうした御議論をいただくことは大変役に立つことであるというふうに思っております。
  154. 川端達夫

    ○川端委員 民間部門は今すぐにというのは難しいと思うのですが、ぜひとも御努力いただいて、国民の不安の解消になるようにしていただきたいというふうに思います。  そういう中で、今お触れになりましたけれども情報が漏れているという事件が既に起こっている。一つは、千葉の社会保険事務所から受給者協会を通じて通信販売の会社に年金受給者の名簿が三万人ほど流れて、天皇陛下最長寿記念の純金小判を買いませんかというふうな事例。あるいは社団法人全国軽自動車協会連合会の磁気テープのコピーが自動車会社に回った、現実にこういう事件が起こっているわけですね。そういう部分、特に行政機関に準ずる特殊法人に関して既に問題が発生をしているという部分で、当然ながらこの今まさに新しい法律をつくろうというときにそういう枠内に入るというふうな思いをしていたのですが、その点についてはどういうふうに認識をされているのでしょうか。
  155. 百崎英

    ○百崎政府委員 端的に申しますと、この個人情報保護法特殊法人にも直接適用してはどうか、多分そういう御趣旨の御質問だと存じますが、特殊法人は先生御承知のように、いわば公共性の高 い事業を行わせるために事業運営についてできる限り経営の自主性とかあるいは弾力性を認めて能率的な経営を行わせる、こういうことで国とは別の法人格を与えてつくっているものでございます。そういう意味で、そういった特殊法人につきまして国の行政機関と全く同じように一律に個人情報保護法を適用することは、かえって経営の自主性、弾力性を損なうおそれがある、そういうようなことから適当ではないのではないかというふうに考えて、特殊法人につきましては、法律にもございますように、国の施策に留意しながら個々の特殊法人において必要な措置を自主的に講ずるという努力義務を課しているところでございます。  おっしゃいますように、確かに特殊法人は公共性の高い仕事を行っておりますけれども、ただ一方におきまして、先ほどもちょっと触れましたが、特殊法人の職員につきましては、国家公務員とは違いまして、いわゆる法令遵守の義務とかあるいは守秘義務というようなものも課されておりませんで、どちらかというと経営の実態等を見ますと民間に近いような点がかなりございます。そういうような面からいたしましても、特殊法人につきましてはこの法律を一律に適用することはいかがなものか、こういうふうに考えているわけでございまして、それぞれの特殊法人においてこの法律の中身に留意しながらそれぞれが必要な措置を講じていただきたい、私どもとしてはそういうふうに考えているところでございます。
  156. 川端達夫

    ○川端委員 民間の場合は、そういういわゆる政府といいますか公の権力というものを及ぼすという部分には慎重にやらなければいけない。その中で特殊法人の場合は、まさにおっしゃるように個個に自主的にいろいろな運営をし、運用をしていこう、事業をしていこうという団体である、そういう意味では非常に民間的な要素を持っている。言いかえれば、個人情報保護に関しても非常に不安な要素を大きく持っているということだと思うのです。そういう部分に関して、その個々の団体の自主性にゆだねるというふうなことが、まさに行政の円滑な遂行の方が個人情報保護よりも優先しているのではないかというふうな一つのあらわれではないかな、どうしてそこにその枠をはめることができないのかということに関しては大きな疑問を持ちます。議論をしても、御意見は今伺いましたが、やはりそういう意見もあるということを御認識をいただきたいと思います。  それで、全般的な話として、個人情報保護ということを考えるときにもう一つの大きな観点として、いわゆる国の権力をもって行政を行うというときに、それが民主的に行われている、民主的な行政が行われているという保障としていわゆる情報公開制度というものがあると思います。その情報公開の円滑な遂行の中に個人情報保護というものが位置づけられるという見方も一つあるのじゃないか。プライバシー保護し、なおかつ行政情報を公開していくというふうな観点からも個人情報保護というのは考えられるべきである。議論としても、いろいろな形で情報公開を法で規制をしていかなければいけないのではないかということがあります。そういう意味で、情報公開のことを触れずに、個人情報保護という形の中でいろいろな情報取り扱いの公開であるとか開示であるとかというものを規制していくということが、これからの情報公開にとっていろいろ障害があるのではないかなという懸念を持つわけですけれども、この情報公開というものに関してどのように考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  157. 百崎英

    ○百崎政府委員 若干前置きみたいなことになろうかと思いますが、この法案は電算機処理をされている個人情報保護するということでございますけれども、先生が御指摘になられました情報公開制度は、いわゆる民主的な行政運営を実現するという観点から、何人にも広く行政情報一般を対象に請求に応じて公開を求める、そういうことを認める制度でございまして、そういう意味では目的必要性等につきまして異なる点がございます。いずれにいたしましても、情報公開の問題につきましても臨調答申以来私どものところでいろいろ研究会をつくって目下検討しているさなかでございますが、何せ個人情報保護につきましてもいろいろ難しい問題がございました。行政情報一般について何人も情報の公開を求めるという制度になりますと、さらに検討すべき範囲が非常に広くなりますし、また、まさにこれも我が国における初めての制度でございますので、今研究会でいろいろ検討はいたしておりますが、大変な議論がいろいろな面でございます。  いずれにいたしましても、そういった制度的な問題につきましてこれから引き続き検討を進めてまいりたいと思いますが、さしあたりは、先生御承知のように、運用上の問題といたしまして、できるだけ行政機関が持っている情報をいろいろな形で公開する、閲覧をする場を設けるとかそういったことを逐次やっておりまして、かなり文書の閲覧の窓口等も拡大してきている、そういう状況にございます。いずれにいたしましても、この情報公開の問題につきましては大変難しい問題をいろいろ抱えておりますが、鋭意さらに検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
  158. 川端達夫

    ○川端委員 非常に難しい問題がたくさんあるのですけれども、この情報公開がこれから検討されていく過程で、個人情報保護の名目のもとに、こういうファイルは例えば存在すら言えないとかという部分が非常にその境界というので関連していろいろな問題、むしろこちらのこの法案によってその部分範囲を先に制限をしてしまっているというふうなことにならないようにという心配をしているわけですので、ぜひともその点に関しては、これからの運用あるいは情報公開の検討の際にこれが手かせ足かせにならないような、個人情報保護することとのマッチングというのに対しては御留意をいただきたいと指摘をしておきたいと思います。  総括的な観点の質問を終わりまして、個々の条文について幾つか御質問をしたいと思います。  初めに、第二条で用語の定義をしているわけですが、第一号に「行政機関」というふうな部分があるわけです。「国家行政組織法第三条第二項に規定する国の行政機関として置かれる機関」というふうになっているわけですが、内閣のもとに置かれる内閣官房というのはここには入っていないわけですが、これは除かれているというふうな解釈でよろしいのでしょうか。
  159. 重富吉之助

    ○重富政府委員 そのとおりでございます。
  160. 川端達夫

    ○川端委員 一般的に行政機関の保有するというふうな法案の中身として、内閣官房も行政機関ではないのかなと素人目に、詳しい定義はよくわからないのですが、内閣が行政府の最高機関であるという部分で言えば、そういう解釈であるのではないかな。そういうときに、そこにはコンピューターでファイルを持つことがあり得ないから除かれたのか、どういう趣旨で除かれたのかについてお答えいただきたい。
  161. 百崎英

    ○百崎政府委員 内閣のいわゆる内閣官房といいますか、これは行政機関に該当するのではないか、こういう御指摘でございますが、基本的に内閣と申しますのは、私から申し上げるまでもなく、行政権のいわば最高の機関として、いわゆる合議制という形をとりまして国の最高の行政面における意思を決定する、こういうことでございまして、我が国行政組織の建前としては、そういった統一的な内閣の方針のもとに各行政機関、ここで書いております国家行政組織法に規定する固有行政機関が内閣にすべて集約されている行政事務をそれぞれ分担管理する、こういう建前をとっているわけでございます。そういう意味では内閣に属する行政権というものが一応建前としては各省庁にすべて分担、分配されている、こういうことでございまして、裏から言いますと、内閣プロパーの行政事務というのはないのではないか、基本的にはそういうふうに考えているわけでございます。  ただ、御指摘のように内閣には内閣官房という事務機構があるではないか、それはまさにおっし ゃるとおりでございますけれども、私ども、ここでは内閣の内閣官房なりあるいは内閣の法制局なりそういったものは、内閣のいわゆる補助部局という形で内閣と一体的に考えて、この法律に言う行政機関からは外している、そういうことでございます。
  162. 川端達夫

    ○川端委員 この法案個人情報保護をするというためにあるのであれば、内閣官房の、持っているのか持っていないのか知りませんけれどもファイル自体をどういうふうに個人情報保護という観点から取り扱うべきなのか。そこの役所の役割が補助的であるのか分担であるのかというのは別にしてやるべきであり、今のような御答弁ですとまさに行政の都合で判断をしていると言わざるを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
  163. 百崎英

    ○百崎政府委員 先ほど申しましたような理由で今御提案申し上げておりますこの個人情報保護法の対象となる行政機関からは外れてはおりますけれども、内閣のそういった補助部局にいたしましても、あるいはさらに、この法律から外れております会計検査院とかあるいは裁判所なり国会なりそういった機関におきましては、やはりこの法律というものを念頭に置きながら自主的にそういった措置を講じていただいてはどうだろうか、そういうふうに私どもは期待しているところでございます。
  164. 川端達夫

    ○川端委員 自主的におやりになることを期待されることが非常に多いように承ります。  次に、第四条に関連するのかとも思いますが、ちょっとよくわからないのですが、OECDガイドライン、「個人データの収集には、制限を設けるべきであり、いかなる個人データも、適正かつ公正な手段によって、かつ適当な場合には、データ主体に知らしめ又は同意を得た上で、収集されるべきである。」こういう一つの原則、いわゆる収集制限原則というのがあるわけです。先ほど長官は、OECD原則はほぼというよりも非常にそれにのっとったものである、こういうふうなことでありましたけれどもOECDのこの項目、情報収集制限原則というものに関してどういうふうに考えておられるのか。それから、この法案第四条だと思うのですが、それを満たしているというふうにお考えなのか、どうでしょうか。
  165. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  先生から御質問がございまして、その中でございましたように、OECD理事会勧告では、確かに内容制限とか収集方法の制限、それから本人同意という三点が言われているわけでございますが、まず内容制限の問題に関して申し上げますと、第四条で、各行政機関はその所掌事務範囲内で、しかもかつできる限り特定した形で保有しなければならないという保有の制限原則がございますので、それが実質的に収集の制限とイコールであるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  それから適法かつ公正な手段による収集というのは、行政機関の場合、特に我が国の場合は法律による行政の原理といいますか、そういうことが言われておりまして、法律範囲内でだけ行政を執行しておる、そういうことから当然に適法かつ公正な手段というのは担保されるという考えでございます。これはアメリカとかカナダみたいに公的部門、行政機関のみを対象としている国では、この収集手段についての規定は一切ないということでございます。  それから本人の同意の話でございますけれどもOECD理事会勧告をよく読みますと、「適当な場合」ということがございまして、適当でない場合は本人の同意は必要としないということに読めますし、それから我が国情報収集します場合も、基本的には各個人から行政が申告とかその他によって情報を集めるものでございます。それがほとんどでございます。それからもう一つは、犯罪捜査等の場合は本人の同意なしに第三者から情報収集する場合等がございます。それからもし仮にそういう情報の収集について、特にセンシティブな情報について制限を設けたといたしますと、例外が物すごく多くなるわけでございます。これはセンシティブ情報等について非常に突っ込んだ検討をされている加藤委員会等でも、このセンシティブ情報等について規定するということはどうかということがございますし、それから本人の同意ということについてもそれほど厳しく考えられていないというふうに私どもは理解しているわけでございます。  そういうことから、OECD収集制限原則というものは基本的に守られているのではないかというふうに考えております。
  166. 川端達夫

    ○川端委員 内容制限に関して第四条第一項で保有の制限をしている。ところが先ほどの御答弁の中で、およそ法律に基づき行政の役に立つもの以外を持つはずがないという趣旨のことがあったわけですね。これは当たり前のことなんですね。これは決して内容制限しているものではないのではないか。このOECD勧告に言う原則というものの制限というのは、基本的には個人のこういう情報に関しては持つべきではない、しかし行政が必要とし、法に定める部分に関してはこの限りでないというふうな意味でいわゆる基本的な姿勢を示せ、個人情報は守るという基本的な姿勢はそうですよということを言っていると思うのです。それが結果的に、その目的外には集めないからそれをカバーをしている、あるいは法に基づいてしているんだからそれはカバーをしているというのは、手段によって目的は達成しているではないかとおっしゃる言い方だと思うのです。本来そういう目的として、個人情報というのは何が何でもどうしてもいいですよということではありませんよというものがまずあって、その中でそれを担保する方法として、集めるのはこういう方法で集めなさいよというふうに規定をすべきではないかなと思うのですけれども、例えば、行政機関法律その他規定がある場合を除いてはかくかくしかじかのものは集めてはいけないんだというふうな書き方をすると、具体的に支障があるのでしょうか。
  167. 百崎英

    ○百崎政府委員 これは規定の仕方なのかもしれませんけれども、少なくともこの法律におきましては、個人情報ファイルを保有するという時点で「法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、できる限りその目的を特定しなければならない。」こういう規定を置きまして、ファイル保有の段階でいわば間接的にその収集の制限もしている、こういうことでございますが、結局OECDあるいは諸外国の立法を見ましても、行政機関法律規定に基づいていろいろな個人情報を収集することは妨げないということになっておりますので、いわば裏から規定をするのか、表から規定するのか、そういう違いではないかなというふうに私どもは考えております。法律に基づいて行政機関行政事務を行うということは、そういう場合にどうしても必要な情報というのは当然収集できるわけでございますので、結局のところは表から規定するのか、裏から規定するのか、そういうことではないかなというふうに私どもは考えております。
  168. 川端達夫

    ○川端委員 おっしゃるとおりだと思うのです。それで、私は表からすべきだ。これはなぜかといいますと、先ほどの議論でも、将来にわたっては私の部分にも個人情報保護ということに関しては何らかの枠をはめていくべきだ、いわゆる民間部門にもしていくべきだ、それから、自助努力によって趣旨を読み取って、おのおのの機関も、たちまちは関係ない部分もこの法律に基づいて情報保護をしていくべきである、そうなることを期待するというふうなことをおっしゃいました。そういうことであるからこそ法律というのは真っ正面から表から書くべきである。結果的に裏から、こういうことはしない、しない、こういうことしかしていないから、トータル的には規定をしているではないかとおっしゃるけれども、そういうことでいえば、これは民間への波及という部分等々を考えたときに、民間は別に法律で定めたことをしているわけではないわけですから、営利活動を目的としているわけですから、そういうときにこの 精神は何なのか、哲学は何なのかということが、どうもこの法案全般に言えることですけれども、ないということに関して非常に不満に思うわけです。中身に関しては言われたように表から書くか裏から書くかということだと思うのですが、公明正大な中でどうして裏からやる必要があるのかな、表から堂々とおやりになったらいかがでしょうか。
  169. 百崎英

    ○百崎政府委員 まずとにかく基本的には、行政機関というのは申し上げるまでもないことでございますが、行政事務を実現する、公益目的を実現する、そういう仕事をやっているわけでございまして、それはあくまでも法の建前上、法律に従って適正に行政を行うということは当然の責務になっているわけでございますが、そういう中で行政目的を達成するために個人情報を集める、これはだから法律規定があればその限りでいろいろな個人情報を収集できるということでございますので、民間の場合とはやはりそこのところが大分違うのではないかという感じがいたします。民間の場合はいわゆる私的契約、契約自由の原則といいますか、そういう舞台の上で自由な営業活動を行うということが基本でございますけれども行政の場合には法律に基づいて、場合によっては公権力を行使するということも含めて行政目的実現のための仕事をやっているわけでございますので、また、その限りで必要な情報国会の御承認をいただきました法律規定に基づいて収集をしたり保有したりするということでございますので、民間の場合とは基本的に土壌といいますか舞台が違うのではないか、私はそういう感じは持っております。
  170. 川端達夫

    ○川端委員 これに時間をとるわけにいきませんが、今みたいな御答弁が、基本的にこの法案個人情報保護をするという中で行政のいろいろな情報をどうコントロールしていくかというふうなものではなくて、行政機能の運用に関してそういう部分を適当な部分で差し支えない範囲で機能させるというふうになりかねないというふうに受けとめました。  というのは、個人情報保護するという大きな枠の中で、行政機関の中の一部のコンピューターというものであっても、その思想というのは総合的な個人情報保護という観点に一貫して立っていなければいけない。そういう中でこの法案が組み立てられているならば、その展開として応用として私の部分、いわゆる民間企業に対してもそういう部分を見本として示すことができる。行政機能はそういう公権力も行使して情報は必要なときに集められるのだからということは、これはまさに行政の円滑な推進のためであるというふうに思います。  次に、第五条の安全確保に関してでありますが、努力目標ですね。「必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」というのはかなり緩やか過ぎるのではないか。講じなければならないというぐらいにきっちりとすべきではないかなという印象を持っております。それと同時に「当該行政機関の長は、」というふうな表現なんですが、長のもとに部下がいるわけですからということなのかもしれませんが、全般にその業務にかかわる者というふうなことにならないのか、この二点についてこの項に関してはお伺いをしたい。
  171. 百崎英

    ○百崎政府委員 安全性の確保は努力目標ではなくていわば必須のものと考えるがどうかという御指摘でございますが、これは私ども考え方においては全く先生のおっしゃるとおりに考えております。  この個人情報の安全確保措置につきましては、一つは、個々のファイル目的なり性格ごとに安全確保措置というのが異なる場合もあり得るわけでございますし、また技術の進歩によりましてもいろいろと異なってくるということもございます。そういうことで、この安全性の確保につきましては、法律その他で具体的にその措置を決めるのではなくて、技術の進歩等に応じて弾力的な対応ができるように行政機関において確保努力をすべきである、こういう規定をいたしているわけでございますが、現実には私ども考え方といたしましては、ガイドラインというものをつくりまして実際の安全性の確保を図ってまいりたいというふうに考えております。私どもは、この法律が成立いたしました後は遅滞なくガイドラインのようなものをつくりまして、この安全性の確保に十全の努力を払ってまいりたいというふうに考えております。
  172. 川端達夫

    ○川端委員 次に、第六条の保有に関しての事前通知なんですが、前段までの部分で私は表から堂堂と収集の制限というものがきちっと国民にわかる形でされるべきではないかということを申し上げたわけですが、御提案法案では、行政側が行政目的に沿ってその都度収集をおやりはなるということで、その個人にとっての保障という形の位置づけで、こういうファイルを持っていますよ、あるいは持ちますよという通知ないしは公示というものが位置づけられているのではないかなというふうに考えるわけですけれども、そういうことでよろしいのでしょうか。
  173. 百崎英

    ○百崎政府委員 この法律規定しております事前通知制度の趣旨でございますけれども、これは各省庁個人情報ファイルを持とうという場合に、総務庁長官に対して事前にかくかくしかじかのこういう中身のファイルを保有するということを通知する仕組みにしているわけでございますが、その趣旨は、この法律というものが我が国で全く新しい制度でもございますので、各省によって法律の運用におきまして統一性に欠けることがあってはならないし、また法律に適合しないような運用をされては困る、こういうような趣旨から、私どものところに通知をいたしていただきまして、先ほども御議論がありましたような、もし必要があれば長官からいろいろな意見を申し上げる、こういうようなことになっているわけでございます。  それから公示制度につきましては、これはそのようにして通知されたもののうち公示できるものにつきましては、後ほど法律にも出てまいりますが、いわゆる自己情報開示請求という権利を設けておりますので、それを実行する前提とするために、それぞれの機関が自分で保有しております個人情報ファイルを一般に閲覧し、あるいはまた総務庁がこれを一括して公示する、そういうことでございまして、基本的には国民の皆様方の個人情報につきましての開示請求をするそのためのいわば前提になる、そういう趣旨の制度でございます。
  174. 川端達夫

    ○川端委員 そういう意味では、私は事前通知あるいは公示というのはこの法案の中で非常に重要な位置を占めているというふうに思いますし、役割は今おっしゃったようなことだというふうに思います。しかし、そのときに、つぶさに検討しますと余りにも例外が多過ぎるのではないか。骨組みとしては非常に理解ができるわけですが、ある程度の制限というものがあるというのは情報のことですからやむを得ないというふうなことも理解をいたしますが、どうも多過ぎるのではないか。特に六条の第二項の通知の適用除外、これになりますと、先ほどファイルを保有することにおいて各省庁間にアンバランスがあってはいけないという部分で、いろいろ調整をすることで通知の機能があるということなのですが、この第六条第二項の部分は、各省庁の調整もくそもなくて、各省庁の判断で通知もしないというふうになるのではないかという心配をするわけですが、この項に該当すると各省庁の長が判断をすれば、こういうファイルを持ちます、あるいは持っていますということ自体総務庁に言わなくてもいいということでよろしいですか。
  175. 百崎英

    ○百崎政府委員 事前通知の制度のいわば除外規定といいますかそういうことでございますが、ここに該当するような個人情報ファイルにつきましては、御指摘のように総務庁には通知してこないということに相なります。
  176. 川端達夫

    ○川端委員 ということは、各省庁がいろいろな個人情報に関するファイルを持つと、その部分が、個人保護していく観点から見たときに、何 のファイルであるかということ自体がその省庁あるいはもっと小さな部局、課の中以外に全くわからないという仕組みをつくっているわけですね。そういう意味でここのいろいろな項目が、これは十一項目にわたって規定をしているわけですけれども、そうするとこれの判断自体はそこのどなたがするわけですか。具体的に言うとどのレベルになり得るのですか。
  177. 百崎英

    ○百崎政府委員 各省庁が持っております個人情報ファイルがこの第六条の二項の規定に該当するかどうか、この判断は基本的には各ファイルの保有機関の長がすることになります。  そこで、第二項の規定でございますけれども、一号から十一号までいわば例外規定をいろいろ設けているわけでございますが、これは基本的には、一号と二号につきましては、ファイルが存在するということ自体がまたいろいろ問題があるわけでございまして、国の安全とか外交上の秘密そのほかの国の重大な利益に関する事項、あるいは犯罪の捜査等に関するファイル、こういうファイルが存在するということ自体で場合によっては外交交渉上非常にぐあいが悪くなるというようなこともあり得るわけでございますし、また仮にこういうファイルがあるということが知れますとまさに今行いつつある犯罪の捜査に支障が生ずる、そういうようなこともございまして、この一号と二号は、こういった特にそういう意味での秘匿性の極めて高いファイルにつきましてはできるだけそういった情報を知る機会のある範囲を狭める。私ども総務庁の方に犯罪捜査のためにこういうファイルを実は持ちたいのだというようなことを仮に事前通知されましても、少なくとも犯罪の捜査等のためにつくられるファイルなどは、公訴が提起される前は当然のことながらすべて秘密扱いをされるわけでもございますし、また仮に私どもがこういった犯罪捜査の動き等を知りましても、こういうファイルはぐあいが悪いとか、ここの部分は余分な情報だとか、そういったような意味での法適合性なりあるいは法律統一性といったことについての事前調整を行う余地が極めて少ない、そういうような点もございまして、これを除外したわけでございます。  そのほかのいろいろな規定がございますけれども、これらはいわばこういったようなファイルでここに書いてございますような利用の仕方をする場合には国民権利利益というものはまず侵害されるおそれがないだろう、そういうようなことで三号以下ずっと規定しているわけでございます。
  178. 川端達夫

    ○川端委員 前段の一、二に関しては、ある程度の制限というのはまあ百歩譲ってやむを得ない部分もあるなというふうな理解をするのですが、その後の部分に関して、次の第七条で規定をしている、いわゆる公示をするまでもないということでは理解をするのですけれども、持っていること自体言わなくてもいいというふうな条項をこれだけたくさん、しかも最後には「政令で定める個人情報ファイル」ということで、この政令というのは具体的にどういうことを指すのかもお知らせいただきたいのですが、各省庁が持っていること自体何も言わなくてもいいというふうなファイルが、しかもそこの独自の判断でそういう通知をしないように、この枠内に入るのだという判定をできる、その幅を持った中でするということは、法律趣旨から反してひとり歩きをする、その部分を全くコントロールできない、監視もできないという状態に置いてしまうということで、情報の集め方あるいは使い方によっては問題の起こる可能性を否定はできないと思いますが、どうでしょうか。
  179. 重富吉之助

    ○重富政府委員 先生が今御質問なさいましたことは三号以下のことであろうと思いますので、御説明申し上げます。  まず、十一号の例外規定といいますか、政令で準ずるという形で定めるものでございますけれども、私どもが今考えておりますのは賃金、職員等の個人ファイル、そういうものを考えておるわけでございます。  それから第四号以下のファイルについて御説明を申し上げます。  その前の三号というのは、その機関特有の内部管理情報であるから個人情報の問題ではなかろう、国民との関係は余りなかろうと考えております。  それから第四号の試験的なファイルでございますけれども、これを外した理由というのは、試験等に該当する個人ファイルというのは、これに基づいて具体的な事務が行われないこと、また一般的に規模も小さく継続性もないこと、それから他へ提供されるおそれもほとんどないと考えられることから、個人権利利益侵害のおそれが少ないと判断しているわけでございます。  それから第五号でございますけれども、これは既にファイルについて保有目的とか記録項目とかいうものが総務庁に連絡されたもので、そのファイル範囲内で作業用に使うファイル、そういうファイルというものはその範囲内であるからいいのではないか。  それから六号の、一年以内に消去することになる処理情報のみを記録する個人ファイルについては、非常に短期間であるということで、法律の公示のところにございますように一年に一回公示するということになりますと、その場合にはもうほとんどなくなっている場合が多いというようなことも含めて、短期間であるということでこれは外しておるわけでございます。  それから第七号は、諸外国ではメーリングリストというものでございますけれども、これは単なる郵送のための住所とか氏名とかいうものを記録するもので、そういうものは個人情報ではあるけれどもそんなに漏れることを気にする必要はないというものでございます。  第八号は個人が単独でつくるものでございますが、OA化等が進むと、個人が自分の仕事を遂行するためにまた当該職員限りでやるためにファイルをつくる場合がございますけれども、これも個人権利利益侵害は実際的に非常に少ないのではないか、そういうふうに考えて第八号を置いているわけでございます。  第九号は学術研究のためにつくるもの。ここのところは、大体大学の学問の自由とかいうことも含めて、また個人権利利益侵害も余りないのじゃないかということも含めて、これを外しているわけでございます。  第十号は数が非常に少ないもの。私どもは、千以下ぐらいの数のものは余り影響がないのではないかと考えて規定しているわけでございます。  十一号は、先ほど説明したとおり三号以下十号までに準ずるものでございまして、広げるつもりはございません。極めて厳格に運用したいと考えておるわけでございます。  以上でございます。
  180. 川端達夫

    ○川端委員 御趣旨はわかるのですけれども法律がひとり歩きをする、ここの部分でそういう判断をして通知をしないということ自体に、総務庁は一切関与をしない。ガイドラインか何かお示しになるのか知りませんけれども、その部分でよほど厳格な規定を、この抽象的な部分をもっと具体的にするということをしても、判断をして出さなかったこと自体がその枠を超えているか超えていないかだれもわからないという部分に非常に懸念を持つということを申し上げておきたいと思います。  それから第七条で、今度は閲覧ないし開示にかかわる部分として、表現の問題なんですが、「事務の適正な遂行を著しく阻害するおそれがあると認める」これも保有機関の長がそういう判断をするということで非常に抽象的なものであり、その長の判断に任すということでは、一般の個人開示をしてほしいということに関して必要以上に制限をしないだろうかということを懸念するわけですが、例えば第二、第三に関して具体的な部分がどのようにあるのか、二、三お聞かせをいただければと思うのです。
  181. 重富吉之助

    ○重富政府委員 ここのところは、この部分については総務庁にファイルが送られてくるわけでございますから、総務庁では、各省庁横並びで公平 が保たれているか、それからおかしいのはないかということをまさにこの法律目的趣旨に沿って見ることができるわけです。そして二十一条、二十二条でいろいろと意見を述べることもできるということから、総務庁も間接的に調整できると私どもは考えております。  第二号、第三号については具体的なファイルがちょっと今手元にございませんので、後ほど説明させていただきたいと思います。
  182. 川端達夫

    ○川端委員 時間が迫ってきてあれなんですが、第九条に「利用及び提供の制限」というのがあるわけです。第一項の趣旨は全体にかかわるものだと思いますが、この趣旨個人の利益を不当に侵害しないために目的外に利用したり提供してはいけないということと理解していいのでしょうか。
  183. 百崎英

    ○百崎政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  184. 川端達夫

    ○川端委員 そうであるならば、これは本来第一項に書くべきではないかな。第二項のただし書に今言ったような趣旨が出てくるわけですね。「本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるとき」にはいけないということで、こういう構成になっているわけですけれども、本来から言うと、個人情報は本人あるいは第三者の権利利益を守るために保有の目的外の目的利用あるいは提供をしてはいけないというふうに書くべきであって、第二項のただし書きに出てくるような性格のものではないのではないかな。  というのは、こういうふうな形で出てくるということ自体に、先ほどの繰り返しになって余り議論にはならないかもしれませんが、いわゆる行政の方が個人情報保護よりも非常に先に行っているというふうな印象を受けてしまうわけです。しかも結果的には、その第二項で目的利用あるいは提供が一から四まで規定をされているわけですが、そういう中でその中身を見ますと、「相当な理由のあるとき。」あるいは「特別の理由のあるとき。」というふうな形で、全般的にこういう表現が多くて、所属の長はというふうな形で出てくるので、どこでチェックをするんだろうか、あるいは個人の利益を侵すという価値判断はどこでどうされるのであろうかというふうなことに関して幾つかの不安を持ちます。  そういう意味で、時間が来てしまいましたのでこれで終わりにいたしますけれども、全般的にこの法案自体、あと幾つかの項目も含めてですが、個人情報保護するという観点に立つならば、その目的、姿勢を条文の中でもはっきりさせるべきであるし、それから行政の長の判断というふうな部分であいまいな部分はできれば削除し、そういう疑念の入らないようにすべきであると思いますし、そういう部分は逆にいろいろなガイドラインあるいは第三者等々のチェックによって担保されることを考えるというふうな部分でいろいろ検討すべきことが多くあるのではないかなと思います。ちょっと質問の手順が悪くて時間が来てしまいましたので、最後にどうぞ。
  185. 重富吉之助

    ○重富政府委員 第九条のことに限り御答弁しておきます。  判断は各行政機関の長が判断いたします。それから「相当な理由」というのは、社会通念上妥当と思われる理由でございます。それから「特別の理由」というのは、一つ一つ当たらなければわかりませんけれども先ほど他の質問者の方に御説明しましたけれども、例えば、ある自動車が欠陥車であったというような場合に、その自動車を回収するためにその自動車の登録ナンバーその他を運輸省が当該メーカーに教えるということは、欠陥車を走らせないということで社会的に意味がありますのでお教えする。そういう極めて限られた場合にだけしか判断をいたしませんし、特別の理由というのは極めて高い公共の利益と比べながら個人データをできるだけ守るという観点から個別に判断していく、そういうことになろうかと思っております。
  186. 川端達夫

    ○川端委員 時間が超過してしまいましたので終わりますが、今の部分に関しても保有機関の長にその分を任せるという部分でどうなのかという懸念をやはり持たざるを得ないということで、仕組みとして何らかのガイドラインあるいはチェック機能というものをつけるべきではないかというふうな意見を持っております。  時間が来ましたので終わりにします。どうもありがとうございました。
  187. 竹中修一

    竹中委員長 浦井洋君。
  188. 浦井洋

    ○浦井委員 この行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案について若干の質問をしたいと思うのですが、まず高鳥長官にお伺いをしたい。  先ほどからも言われておるように、この法律案というのは「行政機関の保有する」ということでくくって、それから「電子計算機処理に係る」というところでくくって、そして「個人情報保護」というふうな限定された分野についての個人情報保護法案だというふうに私理解するわけであります。だからそこでは、当然総務庁として法案作成の過程ではプライバシー保護が立法の動機となっておると私は思うのですけれども、長官にお聞きしたいのは、その動機になっておるのだということを確認していただきたいのと、それからあわせて、先ほどから問題になっております高度情報化社会におけるプライバシー保護について長官はどう考えておられるのか、まずひとつ最初にお聞きしておきたいと思います。
  189. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法案の立法の動機についてでありますが、率直に申しまして、最近、個人情報のうち政府が保有するものにつきまして電算機処理をされた件数というのが急激にふえてきておる。それが、従来の役所の仕組みでございますと、それぞれの機関におきまして公務員の守秘義務等によりまして非常に閉鎖的な形で扱われていたものが、電算処理をされることによって大量、迅速に処理をされる反面、いわゆるオンライン化等によりまして他にも利用されやすい形になってきておる。そのようなことは個人に関する情報の蓄積の本来の趣旨を逸脱した利用のされ方もされるおそれがある。そういうことからいたしまして、総務庁といたしましては、かつての行政管理庁時代以来個人情報保護ということについて関心を持って勉強してきたところでありまして、直接の動機といたしましては、OECDのいわゆる理事会勧告あるいは諸外国における立法例、そういうものをやはり背景にいたしまして、我が国もこのままであってはいけない、速やかな対処をしなければならぬということで立法したのが直接の動機でありまして、プライバシー全般ということになりますと、これは当庁として手の及ぶ範囲をかなり超えたものであるというふうに認識しているところであります。
  190. 浦井洋

    ○浦井委員 今朝来聞いておりますと、長官はなかなか上手に核心を外してお答えになるわけですけれども、私も率直にお伺いしたいのですけれども、この法案個人情報保護というのは、先に個人情報保護ありきなのか、結果として個人情報保護があるのか、その辺端的にひとつお答え願いたい。
  191. 高鳥修

    高鳥国務大臣 どうも鶏と卵とどっちが先かというような論議になりかねないと思いますが、率直に申しまして、プライバシーということになりますと非常に幅の広い概念になると思います。それ全部を私どもが今対象にするほどの権限もございませんし、能力もございませんが、放置をしておくわけにはまいらない問題である、そういう問題意識は持っておるところであります。  そういう観点からしていろいろと勉強させていただいたわけでありますが、いわゆるプライバシーのうちで個人情報に関する分については、行政機関が持っておりますものと民間がそれぞれの立場で収集し利用しておるものとがございます。本来ならばこの両方を規制しなければならないわけでありますが、今の我が国の仕組みといたしまして両方を一遍に規制することはなかなか難しゅうございますし、それからOECD勧告などでもそれはそれぞれ別の法律で定めても必ずしもいけないことではないというふうに考えられますので、したがって、まず当面国が持っております個 人情報について適正な保護措置が講ぜられるような立法をすべきであると考えて、この法律案を立案したということであります。  なおまた、地方自治団体のうち市町村につきましては、かなりの数の団体において既に個人情報保護に関する条例を制定しているところがございまして、国の方はむしろ諸外国に比べてもあるいはまた地方自治団体に比べてもおくればせであるという自覚をしておるところであります。
  192. 浦井洋

    ○浦井委員 私が後で質問しようとすることにもお答えをいただいたわけでありますけれども、お聞きすれば、権限もなし、能力もなし、かといって放置もできない、だから限られた範囲で当面こんなことをやりましたのだというような格好で、だんだん本音に近いようなことが出てくるような感じを私今の御答弁から察したわけであります。だから個人情報保護に関する法律というようなおこがましい名前をつけるのはちょっとおかしいのではないかなという感じを持つわけであります。だから、これはそうであってはならぬというふうに申し上げておきたいと思います。  確かに今長官が言われたように、プライバシーの概念というのは比較的新しいわけですね。だからその定義も先ほどからいろいろ議論があったようにいろいろあると思うのですけれども我が国では一九六四年、昭和三十九年の東京地裁の例の「宴のあと」という書物に関する裁判の判決で初めてプライバシー権が承認をされたというふうに思えるわけです。そこには私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利という格好で、それがずっと今まで一般に理解されてきたプライバシーということだろうと思うのです。  ところが、急激にコンピューター化が進んできて、そういう定義が今度は自己に関する情報の流れをコントロールする個人の権利というような格好に重点が移ってきたわけです。第三世代といいますか、今その時期なんですよ。そういうことになると、今この時点で、こういう時期に少なくとも個人情報保護に関する法律案をつくって国会提出されるということになれば、当然プライバシー保護がこの法案の根底になければならぬし、目的もそうでなければならぬ、私はそう思うのですが、長官、どうですか。
  193. 高鳥修

    高鳥国務大臣 私どもは通称個人情報保護法案、こう申しておりますが、決してプライバシー全体をカバーするような大それた気持ちを持っておるわけではありませんで、短縮して言うために申しておるところでありますが、ちゃんと表題に書いてございますように、「行政機関の保有する電子計算機処理に係る」というその限りにおける個人情報保護に関する法律案を御提案申し上げておるということであります。  それから、今プライバシーに関するいろいろな御説をお述べになりました。「宴のあと」の裁判につきましては私もかつて読んだことがございます。それから今の自己情報コントロール権という学説でありますが、これにつきましても学説としては私も承知をいたしております。ただ、現在いろいろと議論を重ねられている段階であるというふうに考えられます。  私どもは、そういう学説は学説といたしまして、とりあえず、やはり政府がかなりの情報量のものを持っておる、それがオンライン化されて、本来ヨーロッパなどでは、政府が持っておるものが今国内の諸機関だけではなくて国外にまで利用されつつある、それに対して適当な規制をかけるべきだということが出発点のようでありますが、日本においてはそういう点非常に閉鎖的であり、縦割り行政でありますために他に流用されるという機会は比較的なかったわけではありますが、先ほどもちょっと川端委員からの御指摘がございましたが、現に、国ないしそれに準ずる機関が持っております情報が一部流出をしたというような事件もないわけではない。したがって、この辺できちっとした整理をしておかなければならないという切迫した状況にあるという認識に立って今回法案提出した次第であります。
  194. 浦井洋

    ○浦井委員 非常に謙虚に、総務庁として大それた考えはないとか、学説は承知しておるけれども議論があるとか、あるいは国際的な調整が必要なので、非常に切迫しておるのでとりあえず出したんだとかいうような格好で、核心が出てこないわけですね。  それで、法律にはそう書いてありますというようなことなんですが、その国際的な問題でいけば、先ほどから議論になっておりますように、一九八〇年のOECD理事会プライバシー保護勧告であるとか欧州評議会、CEの個人保護条約等、その勧告が出されて、プライバシー保護というのはやはり国際的潮流になってきた、これは長官もよく御承知だと思うのです。日本もそのOECD理事会勧告に賛成しておるわけなんですが、その勧告について長官はどう理解して、この法案をつくる上でどういうふうに尊重されておるのかという点を、ひとつ御意見をお聞きしたい。
  195. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法律案提案するに至りますまでの間には十年余りの歳月を経ておるわけでありまして、その間にいろいろな段階での研究会なども開催をして詰めてきたところであります。そういう過程におきまして、OECD理事会勧告というものも尊重すべきものとして私どもは受けとめまして、これに背馳しないような形で法案をまとめなければならないということでやってまいったわけであります。法案作成の段階におきましては、実はOECD担当官のところに私ども担当官を派遣いたしまして、大体このような内容のことを考えておるんだ、意見を聞きたいということで、意見も聴取をいたしました。おおむね適当であろうというような賛成の意見も聞いておるところであります。  OECD理事会勧告というものは非常に幅広い対象を考えております反面、かなりの留保もしてもいいという、何といいましょうか、必ずしもそれはやらなくてもいいんだというような表現を加えながらも諸原則を示しておられるわけでありますので、そうした諸原則を踏まえた上で立案をし、御提案をしたというふうに考えております。
  196. 浦井洋

    ○浦井委員 この件で議論をすると時間がたってしまいますから、私の言いたいことを申し上げたいのですけれども、そういうような、とにもかくにも先ほどから長官がお認めになっておるような国際的なインパクトといいますか、こういうものがある。国内でのプライバシー意識の高まりがある。そういう中で、長官は意図的に加藤委員会ですか、プライバシー保護研究会の名前を出されないわけなんですけれども、そういう報告が出されて、そこで個人情報保護に関する五原則がまとめられたわけですね。そこまではよかった。ところが、その後臨調答申が出てからだんだんおかしくなってきて、そして研究会のまとめがやられて閣議決定を経た。先ほどから上手に核心を外した答弁をされておられるように、私端的に申し上げますけれどもプライバシー保護の精神を抜きにした今のこの法律案提案になっておると私は言わざるを得ないと思うわけであります、これは長官いろいろ弁解されるでしょうけれども。  だから、OECD勧告を尊重すると言われるならば、やはりプライバシー保護はどうあるべきかという点をきちんとした法案にしなければならぬ。これではそうなっていない。だから、ちょっと飛躍した質問ですけれども、これはこれとして、個別法としては利用する面もあるかもわかりませんけれどもプライバシー保護そのものについて何か抜本的な一般法を出されるお気持ちはないですか。
  197. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいまの問題についてはむしろ内閣総理大臣お尋ねをいただきたいわけでありまして、総務庁長官が法務省やあるいは経済企画庁や通産省の守備範囲侵害するというわけにはまいらないところがございます。  ここで全くの私見を申し上げるのはいかがかと思いますけれども先ほど来申し上げておりますように、この法律制定していただけるならば、それはより幅広い、民間分野も含めた個人情報保護法案に対して大きなきっかけになっていくことを私どもとしては期待しておるということであり ます。
  198. 浦井洋

    ○浦井委員 だから、私先ほどから申し上げておるように、プライバシー保護法的な基本法があれば、この法律行政機関あるいは電算機処理に係るというところでそういう限定した特別法で差し支えないと思うのですね。プライバシー一般には及ばないということになるわけなのです。ところが、現実の進行ぐあいは、個人情報保護に関するという名称を付した法律案というのは、先ほどから言われておるように我が国では初めてつくられるわけでしょう。そうすると、この法律がこれから民間の部門においてもあるいはマニュアルの部分においても基本法的な役割を果たしていくのではないか。また、何もお知りにならない国民の皆さん方は、そういう基本的な法律ができるのだなというふうにあるいは期待されておるかもわからぬ。だから、その立法の精神にプライバシー保護がないということが、長官は上手にえんきょくに言われておりますけれども、子細に検討すればするほどそれがないわけですね。例外規定とか適用除外ばかりで。だから、そういう意味では、そういう国民の期待を裏切るようなものになるのじゃないですか。これは長官、余り謙虚にならずに、大それたことを考えずに、竹下内閣の国務大臣のお一人ですから、やはり堂々とその辺は端的に率直にお答え願いたいと思うのです。
  199. 高鳥修

    高鳥国務大臣 プライバシー保護全般につきましては、これを議論してまいりますと到底この法律がまとまるということは早急にはできない、それはなかなかまだ時日を要することではないかと思われます。そこで、当庁といたしましては、ほっておくわけにはいかない今の国が保有する個人情報のコンピューター処理をされたものについて、取り急ぎ少なくとも保護をする制度を確立しておく必要がある、このように考えたわけでありまして、決してプライバシー全般なりあるいは民間部門も含めた個人情報、それをないがしろにしていいというふうには考えておりません。  それからもう一つは、これは別に謙虚に私ども物を申しておるつもりはございませんが、個人情報なりプライバシーなりの保護をするということの、いわば一里塚と申しますか、土台石の片隅の一つであるかもしれない、もっと大きなものが当然必要になってくるだろうということは承知をしながらも、その一里塚として御提案をしておるということであります。
  200. 浦井洋

    ○浦井委員 とにかく、内外から迫られておるのでつくったんだ、議論をしておればつくれなかったかもしらぬ、これは一里塚にすぎないんだ、大臣はよくそういうお言葉を謙虚に使われるわけですけれども、土台石の片隅にしかすぎないんだということでありますけれども、あえて美辞麗句と申しますけれども、そういう美辞麗句を連ねながら、実際にはこれが個人情報保護に関する法律案という格好で、文字どおりひとり歩きして基本法的な役割を果たしていくわけなんですよね。  そこで、具体的にその第一条の「目的」の項を見てみますと、先ほどから言われておりますように、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人権利利益保護することを目的とする。」こういうことになっておるわけなんです。だから、これでは個人情報保護目的の中で明確になっておらぬというふうに私は思うのですけれども、これは別に法律の表現の技術的な問題ではなしに、もっと基本的な精神としてここにはっきり書くべきだと思うのですがね。
  201. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいまの第一条の条文の書き方でありますが、これはあくまでもこの法律目的は「個人権利利益保護することを目的とする。」ということが趣旨でございまして、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」こういうふうに書いてありますので、何かそっちの方が先だというふうな受けとめ方をどうもされがちでありますが、私どもはそういうつもりではございませんで、何とかうまい表現方法はないものかいなと私も考えたのでありますけれども行政の適正な運営を図るということは、国民の皆様方の個人権利利益を擁護する、保護するゆえんでもあるし、かつまたそのことを円滑にやることも、これまた国民皆様方に対するサービスになる、そういうことの中を通じて個人権利利益保護することが第一の目的である、かなり苦しいところでありますが、そのように読んでいただきたいと思っておるところであります。
  202. 浦井洋

    ○浦井委員 非常に苦しいけれどもそう何とか御理解を願いたいということだそうでありますけれども、素直に私理解をしたいと思うので、国会議員になってから常に素直に何事も理解をしてきたつもりなんでありますけれども、その「目的」の項を読みますと、これはもう個人情報保護というよりも、やはり行政機関における円滑な運営というのを優先させておるというふうに私は読まざるを得ないと思うわけなんですよ。  それともう一つ、先ほど言われた個人権利利益保護するという規定の仕方も、ちょっと一般的、抽象的過ぎるんではないかというふうに思うわけであります。これは、私がそう感じるだけでなしに、法律の専門家である日弁連の意見書の中にも、この第一条からは個人情報保護は読み取れない、こういうふうに言っておるわけなんですよね。だからかなり多数の意見なんですよ。長官、どう思われますか。
  203. 高鳥修

    高鳥国務大臣 日弁連の御意見につきましては私も読ませていただきました。日弁連のお考えと私どもと基本的に違いますことは、日弁連のお考えは、要するに今お述べになりましたように、プライバシーの権利というものを優先をして保護をするということを最重点にして、そのためにはこれだけでは足らぬではないか、こういうお考えであります。私どもはその点が基本的に違いまして、国が保有しておる個人情報のいわばコンピューター処理されたものが今のままではいけないから適当な規制をしなければならぬということにウエートを置いておるわけでありまして、したがって、個人情報全体について物足りないではないかと言われれば当然のことである、それは、そういう個人情報全体をカバーしているわけではありませんから、そういうふうに言われてもそれは仕方がない、本来、その全体をカバーする法案ではないということを弁護士会の方々からもはっきり御理解をいただきたい、このように思います。  それからもう一つでありますが、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」ということをつけませんと、私ども総務庁が提案する法律にはなりません。それは、個人プライバシーの権利全体を保護するということであれば法務省なりなんなりの所管のことでありまして、私どもの所管にはならないわけであります。そういう意味合いにおいて極めて限定的に挙げておるわけであります。
  204. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣のお考えがいよいよ核心に近づいてきたようでありますが、私は、この点については日弁連の側の意見が正しいというふうに思っておるわけなんです。だから、ここで私は総務庁に要求したいのは、立法の趣旨というものはやはり個人情報保護にあるというふうにすべきだと思う。そのためにだれが見ても「目的」の項はそう読み取れるように書き直すべきだと思うのです。例えば「個人情報保護することにより、個人の尊厳を保持し、国民の基本的人権を擁護することを目的とする。」というふうな格好に書けば、これは極めて明確になる。また、国内的にも国際的にもそういうような方向こそが私は今求められておるというふうに思うわけで、この「目的」のところをひとつ大臣、勇断を奮って書き直していただきたいと思うのです。
  205. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま浦井委員提案のような書き方をいたしますと、この法律は中身まで全部書きかえなければならぬことになりまして、それでは到底国会に御提案できるような今まだ状況にないということであります。さりとて、個人情報政府が保有しておるコンピューター処理されたものを今のような形で放置をしておいていいかといえば、そうではない。したがって、私どもとしては、今私どもが守備範囲でできる範囲内において精いっぱい努力をしてまとめたのがこの法律である、そう御理解をいただきたいと思います。
  206. 浦井洋

    ○浦井委員 これは後で指摘をいたしますけれども、拙速でやれば私は日本の国の将来に大きな禍根を残すような法律ではないか、民主主義とかあるいは基本的人権とか、そういうふうに私は言わざるを得ないと思うのです。  もう一遍、国際的なインパクトというようなところで振り返ってみたいと思うのですけれどもOECD理事会勧告では、まず収集制限原則でしょう。それからデータ内容原則目的明確化原則利用制限原則安全保護原則、公開の原則個人参加原則、責任の原則、この八原則が示されておるわけですよね。それから加藤委員会といいますか、プライバシー保護研究会のところではほぼ同じ内容で、収集制限原則利用制限原則個人参加原則、適正管理原則、責任明確化の原則というふうに五つ並べてあるわけなんですね。ここで、しかもこれが個人情報保護法制定における最小限度の基準、こういうふうにいずれも言うておるわけなんです。だから、いやしくも個人情報保護に関する法律案ということでまがまがしく、麗々しく出してくるならば、こういう八原則なり五原則を踏まえてやはり立法すべきだ、私は、国際的に見ても国内的に見てもそうだと思うのですが、どうですか、同じような答えが返ってくるかもわかりませんけれども
  207. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいまの八原則なり五原則なりを踏まえて、私どもとしては立案をしたつもりであります。
  208. 浦井洋

    ○浦井委員 だから、それではいかぬのだ、「目的」の項からひとつ修正をしなさい。それによって全体が変わってくる、よい方に変わればそれでいいわけですから、拙速はいけないということを指摘しておきたいと思います。  そこで、今私が読み上げました八原則、五原則のいずれも、一番目は収集制限原則ということである。大臣は今OECD理事会の八原則あるいはプライバシー保護研究会の五原則、これは認めるというお答えがあったわけでありますけれども、これを読んでみますと、八原則なり五原則のトップにあります収集制限原則に相当するものがこの法案に欠落しておる。これは何ですか。
  209. 百崎英

    ○百崎政府委員 この収集制限原則につきましては先ほど来いろいろ御説明申し上げているわけでございますが、この法律におきましては、直接的にはこの収集制限という段階での規制をいたしませんで、法律の構成といたしましては、法律に定める所掌事務を遂行するために必要な場合に限って個人情報ファイルを保有することができ、しかも、その記録される項目とかあるいは記載の範囲、そういうものも最小限でなければいけないという規定をいたしまして、そういう保有の面を制限するということでもって収集の制限をしている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。これはそういう意味で、OECD勧告に言う個人データの収集には制限を設けるべきである、こういう原則は守られているものと私どもは考えております。
  210. 浦井洋

    ○浦井委員 結局、個人情報内容そのものに着目をした規制はここではしておらない、四条で、「個人情報ファイルの保有」というところでやっておるのだからこれでよいというお答えだろうというふうに私は思うのです。  しかし、ここに「法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、できる限りその目的を特定しなければならない。」というように書かれておりますけれども、要するに、行政目的ということの理由づけをすれば、具体的に例を出しますが、政党への加入であるとかあるいは思想調査など、今警察だとかあるいはいろいろな役所でやっておりますけれども、こういうことは全くフリーになるわけですね。だから、こういう点こそこの法律で厳格に、明確に禁止しなければ、今も現にやられているし、これからもまだ続くわけなんですよ。それで、川崎なんかの進んだところの自治体の持っておる条例では、この収集制限原則、そういうことがちゃんと盛り込まれておるわけなんです。禁止さえしておるわけなんです。  だから、私は、そういう思想調査であるとかあるいは政党への加入というのは、これは基本的な人権にかかわる問題ですから、当然この法律の中に収集を禁止をするということを書き込むべきだと思うのです。あわせて、憲法に言われておるように、思想信条、信教あるいは社会的差別の原因となる社会的身分に関する事項、いわゆるセンシティブ情報ですね、知られること自体が基本的人権を侵すというようなもの、これは収集すること自体をはっきりとこの法律で禁止すべきではないかと私は思うのです。そこが欠落しておるのが私はこの法案の最大の欠点だと思うのです。どうですか。
  211. 百崎英

    ○百崎政府委員 行政機関には基本的にそれぞれの法律の定める所掌事務というものがございまして、機関によりましては、いろいろないわゆるセンシティブ情報というものを収集する機関もございます。これは当然のことながら、法律に基づく所掌事務を遂行する、行政目的を実現する、そういうために行われているものでございまして、私どもといたしましては、それは当然のことではないかというふうに考えております。
  212. 浦井洋

    ○浦井委員 当然のことであると考えますというような話ですけれども、その行政上必要な場合というのはどんな場合ですか、具体的に挙げてください。
  213. 重富吉之助

    ○重富政府委員 まず、その前の質問のところで川崎市条例の話が出ましたので、そのことについてちょっと触れておきますと、確かに先生がおっしゃるように、収集制限部分がございます。しかし、ただし書きで、法律に基づいて行う場合はその限りではないということが明記されております。そのことをまず申し上げておきます。  それから、どういう場合にそれが行われるかということでございますが、例えば、消防庁が消火活動とかまたいろいろな家屋等を見て歩くような場合に、火を非常に使う宗教とかそういうものがあります場合は、ろうそくの使い方とか火の使い方、そういうことも現実に消防庁では気を使っておられるようでございます。そのほか、公安調査庁等でいろいろと調査をされるというようなこともすべて法律に基づいて行われているわけでございまして、例えば西ドイツとかカナダのようなところでは、法律にはっきりと、行政機関所掌事務範囲内で法律に基づいて個人情報の収集を行うことについては何ら制限を設けていないという国もございます。
  214. 浦井洋

    ○浦井委員 消火活動で、火を使う宗教でろうそくやというような話になってきたら、これはもう全く話にならぬわけなんで、これはセンシティブ情報の中に入らないと思うのですよ。  それから、公安調査を法律に基づいてやっておるというような話でありますけれども、これはもう私は断固許せないと思うのですよ。だから、そういうことがこの法律では野放しになっておる。それを公然と認めて、それでセンシティブ情報もどんどんこれから収集していこうということで、そういう内容法律になっているのと違いますか。どうですか。
  215. 百崎英

    ○百崎政府委員 この法律は、そういったセンシティブ情報を収集するためにつくっている法律ではございませんで、全体の行政機関がいろいろな面での行政活動を遂行していく場合に、必要最小限の情報をそれぞれの分野について収集する、その場合に、特に個人情報保護については十分な注意を払って権利侵害が起こらないようにする、そういう趣旨法律でございます。
  216. 浦井洋

    ○浦井委員 行政活動の遂行のために必要だという本音が出てきたわけでありますが、そうしたら尋ねますけれども、もう一つ、不正、不法な手段ですね、例えば盗聴であるとかスパイであるとかあるいは買収であるとか、そういうような手段で個人情報を収集するということは、やはりこれは禁止すべきだと思うのですが、これについてはどう思いますか。
  217. 百崎英

    ○百崎政府委員 行政機関行政事務を遂行するに当たりましては、これは法律規定するまでもなく、いわば行政法上の基本原理にもなっており ますけれども法律による行政ということが言われておるわけでございまして、基本的にこういった規定がなくても行政機関は不法な手段によって情報を収集するということは本来あり得ない話でございます。また、国家公務員法におきましても法令遵守の義務というものが定められておりますので、行政関が仕事を行う場合にはすべて適法に行われる、こういう前提があるわけでございまして、法律に適正に情報収集をしなければならないとかいうことを規定するまでもございませんし、諸外国にもそういったような立法例はございません。
  218. 浦井洋

    ○浦井委員 法律による行政で不正、不法な手段で情報を収集するようなことはあり得ない、常に適法的にやっておるはずなんだというようなことなのですけれども、私が先ほどから何遍も言っておりますように、まあ盗聴はする、いろいろな団体に対して内部的に買収して情報提供者にするとかというようなことが今でも行われておるわけなのですね、公安調査と称して。そういうようなやり方で個人情報を収集することは禁止すべきではないか、そのことを私は言っておるわけなのです。  だから、こういうプライバシー保護法、個人情報保護に関する法律案がせっかく出てきたわけですから、この法案の中に、本当に個人情報保護するということなら直接ここへ書き込んで、それで罰則を設けるというところまで総務庁として踏み込むべきだと私は思うのですが、どうですか。
  219. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  先生が先ほどからおっしゃいましたOECD原則、これに沿うべきではないかというお話でございましたけれどもOECD収集制限のところも、先生がおっしゃいますように何らかの意味での収集制限を設けるべきであるということでセンシティブ情報のことについては触れてないわけでございます。それは大変な議論があったように私どもは承知しておるわけでございますが、それを決めることは非常に難しい、国とか伝統とか歴史とかでそれは非常に判別しにくいということで、OECDも議論があったけれども何らかの形で制限を設けるべきであるということでセンシティブという言葉は使っておりません。  それから、先生がおっしゃいましたように、盗聴というようなことはよろしくないと思います。それは昔の公衆電気通信法ですか、今の電気通信事業法、そういうものにきちっと法律で定めてあるわけでございますから、法律に基づいて行政を行う者がそういう法律の定めに違反した行為を行うということはよろしくないと思います。  ただ、いわゆるセンシティブ情報と言われるものでも、例えば信教のことでも公益法人の許可に関する場合は文部省は集めざるを得ない、それから病気の場合でも国立病院等でいろいろ研究をするような場合にはある程度集めざるを得ない、それから犯罪捜査のためにはある程度犯罪の容疑というようなことも調べざるを得ない、それから社会的身分というようなことにつきましても外国人登録とかその他のことで集めざるを得ないというように、行政を行う場合に最低限必要な収集というものはあり得るのではないか、こんなふうに考えるわけでございます。
  220. 浦井洋

    ○浦井委員 私は大臣に申し上げておきたいのですが、これは個人情報保護に関する法律というふうに言うてあるわけなのですけれども先ほどからの問答を聞いていただいても、憲法に違反するような個人的人権の侵害にかかわる規制というものが欠落しておる、これがこの法案の致命的な欠陥なのですよね。だから、「目的」の項で大臣はいろいろ言われたですけれども個人情報保護を明確にうたうことができないということがはっきりしたわけです。それで、収集制限原則も全く欠如しているということになると、この法案というのは個人情報保護に関する法律案ではなしに、個人情報コンピューター管理法案というような名前に変えた方がいいのではないですか、私はそう思うのです。答えはもういいです。  そこで、個人情報保護するためのいろいろな原則の中で肝心なことは、先ほどから申し上げておるように、自分の情報を自分の知らないところでだれかが収集、保有していないかを確かめて、それが間違っていたら訂正したりあるいは廃棄させることを権利として保障することだと私は思うのです。そういう点でこの法案は、本朝来指摘されておるように適用除外が多過ぎて実効がないのではないかと思うのです。  事前通知の問題一つとってみても、秘密にできるファイルが多過ぎるわけなのですね。六条の二項のところを見まして私どもびっくりしたのですけれども、その第一号の「国の安全、外交上の秘密その他の国の重大な利益に関する事項を記録する個人情報ファイル」は個人情報ファイルの保有等に関する事前通知の例外とされる、こういうふうな格好になっておるわけなのですね。  それで、具体的にお聞きをしたいのですけれども、「国の安全」というのは具体的に何ですか。
  221. 重富吉之助

    ○重富政府委員 私どもは、「国の安全」といいますのは、国家の構成要素でございますところの国土とか国民とか統治体制が平和で平穏な状態に保たれていること、言いかえますならば、国家社会の基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいうものと考えております。具体的に申しますと、一つは、国を直接侵略または間接侵略から守り国家の存立を維持すること、二つは、国家統治の基本秩序及び基本的な統治方式を維持すること、三つ目でございますが、国民全体の生命が保護され、基本的な経済秩序が保たれていることなどが考えられておりまして、必ずしも国防に関する事項だけには限られるものではないというふうに考えております。
  222. 浦井洋

    ○浦井委員 ぬけぬけとよう言われるわけですけれども……。  それから、その次の「外交上の秘密」というのは何ですか。
  223. 重富吉之助

    ○重富政府委員 私どもは、「外交上の秘密」といいますのは、対外関係事務の処理に関する情報及びこれらに関する文書、図画並びに物件のうち、その事実または内容が漏えいするといいますか漏れることによりまして、例えば国の安全が害されますとか相手国との信頼関係が損なわれるとかまたは交渉上重大な不利益をこうむることなど、この情報が漏えいしないよう周到な注意のもとに保護しなければならないものを「外交上の秘密」と考えております。
  224. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、その次の「その他の国の重大な利益に関する事項」これは何ですか。
  225. 重富吉之助

    ○重富政府委員 この「国の重大な利益」として私どもが考えておりますのは、公共の利益や社会的な利益のうちに公安や治安に係る重要なもの、または為替管理等国の利益に係るものであって、そのうち特に重要なものを考えております。
  226. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、今三項についてお答え願ったのですけれども、そういう「国の安全」、「外交上の秘密」、それから「国の重大な利益に関する事項」これを判断するのは一体だれなのですか、この法案によれば。
  227. 重富吉之助

    ○重富政府委員 各行政機関の長でございます。
  228. 浦井洋

    ○浦井委員 「国の安全」の中で国防のみではないというようなことを言われたわけなのですけれども、そこが一番言いたいところなのだろうと思うのです。私は調べてみたのですけれども、防衛庁には防衛秘密と庁秘、防衛庁の庁秘、それが件数にして昭和六十年末までに十三万三千八百十六件ある。それから点数に直すと百六十五万三千二百十六点ある。今は昭和六十三年ですからさらにふえておるだろうと思う。そうすると、こういう膨大な件数、点数がいずれも防衛庁の秘密になってしまうというような、そういう秘密主義も今の自衛隊の中にはその根底にあるわけですよね、この間の「なだしお」の衝突事件を見てもわかるように。そういう防衛庁の長、長官にこういうような資料が国の安全か否かの判断を任せるということになると、事国防に関して、防衛に関して、ほとんどすべての事項が国の安全にかかわるものとして事前通知から除外されてしまう。これは火を見 るよりも明らかなのです。それにさらに国の重大な利益というようなことが、今言われたようなことが加わると、これはもう防衛庁や外務省だけでなしにほとんどの省庁ファイルというのは、ファイルの保有に関する問題ですから事前通知の例外になってしまう、そうならざるを得ないじゃないですか。だから悪く言うと、ここに書かれておることをそのままずっと素直に理解をしていけば、残る個人情報というのはかすみたいなものばかりでそれだけが事前通知の対象になるのだ、肝心のことはみんな国民の目から隠されておるのだ、そういうふうに言わざるを得ぬと思うのですが、これは長官どうですか。
  229. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま担当官から御説明申し上げましたように、それらの問題については極めて限定的に考えておりまして、私どもとしては、この法律案が通ります場合にはかなりのものが国民の皆様方の前にこういうファイルがありますよということでお示しできるものというふうに考えております。  今委員から御指摘のあったようなことにつきましては、今の段階ではそういうファイル簿があること自体全くわからないわけでありますけれども、少なくともこの法律ができますことによりまして、この中でなぜどういうものを載せないかということについてはそれぞれの大臣がきちんと判断をしなければならない、そういう状況になるわけでありますから、現在よりは少なくとも前進であるというふうに思います。なおかつまた、それらのファイルを登載するかしないかにつきましては、総務庁といたしましてもまたいろいろな観点から各省庁の実施状況を見守りながら、適時適切に判断をして対処していくことも可能かというふうに考えます。
  230. 浦井洋

    ○浦井委員 総務長官、なかなか、それは善意で言われておるのかもわかりませんけれども、事態はそう安易なものではないというふうに私は思うわけなのです。これはぜひ撤回をして出し直してもらわなければいかぬと私は思っているのですけれども、これがもしも実施されると、今言ったように事前通知の適用除外一つを見てもわかるように、国民の目から隠れる部分が非常に巨大なものになってくる。巨大なブラックボックスができ上がる。それがこの法案が通ることにより合法化されるというふうになるだろうと私は思う。そうなってきますと、民主主義を基盤にした民主主義社会というのは、今人類がたどり着いておる一番進歩的な形態ですよね。だから、そういう民主主義に対して非常に危険な事態になってくるんではないかというように思うわけです。これは反論されるかもわかりませんけれども、アメリカでは秘密ファイルは存在させるなというふうに言われておるわけでしょう。だから、せっかくこういう個人情報保護に関する法律案を出されるのなら、やはり例外を認めずに網羅的に事前通知をするように手直しをすべきだというふうに私は思うのですけれども、もう一遍長官の御意見を伺っておきましょうか。
  231. 高鳥修

    高鳥国務大臣 既に個人情報保護法案制定しております各国におきましても、かなり多くの部分について除外例を設けておるところでありまして、日本が特に多いということではないというふうに承知しております。
  232. 浦井洋

    ○浦井委員 おかしな言い方ですけれどもね。各国とも除外例が多い、日本だけではないんだというようなことは理由には全くならぬというように思うのです。  それでは、今度は開示の問題なんですけれども、これも例外が多いわけなんです。十四条が不開示の項目に当たるわけですけれども、それの一項の二号ですか、「処理情報が第三者から取得した情報に係るものである場合において、保有機関と当該第三者との協力関係又は信頼関係を損なうこと。」これが不開示になっておる。具体的にお尋ねしますけれども、「第三者から」となっておりますけれども、「第三者」とは具体的に何を指すわけですか。
  233. 重富吉之助

    ○重富政府委員 第三者というものから御説明しますと、本人及び保有機関以外の者を第三者と申します。  それから、この十四条一項二号のところの問題でございますけれども開示請求権を原則として認めます、しかし、公共の利益とかその他の利益と調整を図らなければならない場合がございます。そういうことで、この場合も、結局本人に開示しますと第三者との協力とか信頼関係を害するということが認められるような場合には当該情報開示をしないこととすることもできるという規定でございます。これは十四条の頭書きのところを読んでいただきますと、「開示をしないことができる。」とあるわけです。「当該処理情報の全部又は一部について開示をしないことができる。」とあるわけですから、これは二号にも当然に係るわけでございます。したがいまして、開示するかどうかということは、請求の都度本人の利益と第三者の利益あるいは公共の利益との比較考量において個々に判断するものでございまして、決して常に第三者との協力とか信頼関係を優先するものではないわけでございます。
  234. 浦井洋

    ○浦井委員 私は、こういう情報というのは本人から直接収集するのが正常な方法だと思うのですよ。いろいろ言われたんですけれども、第三者から収集しなければならぬ個人情報というのは一体どんなものがあるのですか。
  235. 百崎英

    ○百崎政府委員 いろいろな例があろうかと思いますが、例えばすぐ思いつくのは、先ほどもちょっと御説明がありましたが、交通事故が起こったという場合のその事件の処理に当たりまして、当事者以外の第三者が目撃をしていたというような場合に、その第三者に当たっていろいろ警察等が調査をする、それが何らかの形で個人情報ファイルに記録されている、そういう場合が一つの例ではなかろうかと考えております。そのほか、そういったことに類似するような場合があり得るのではなかろうかと考えております。
  236. 浦井洋

    ○浦井委員 先ほども交通事故、また今度も出てきたんですけれども、別に交通事故の捜査でコンピューターが要るわけではないわけでしょう。ほとんどマニュアルですよね、この場合。何やかにや言うて、本人と保有機関以外の者が第三者でございます、そこではどんなことがやられても、先ほどの同僚委員質問には、身上調査もやります。スパイ活動なんかもやられるということなんです、こういうことで。だから、私は要求したいのですけれども、現在第三者がやっておる、この方法で取得しておるすべての個人情報の種類と名称と使用目的をひとつ明らかにしてほしいと思うのです。委員長、これよろしくお願いしたいと思うのです。どうですか。
  237. 竹中修一

    竹中委員長 承りました。承りました。
  238. 浦井洋

    ○浦井委員 もしお答えがあれば、すべての個人情報の種類、名称、使用目的、まずこれを明らかにできますか。
  239. 百崎英

    ○百崎政府委員 この規定趣旨から考えてみましても、すべてのそういった第三者から得た情報につきまして、その名称とか種類とかその使用の目的とかいうことを御提出することだけは差し控えさせていただきたいと思います。
  240. 浦井洋

    ○浦井委員 国権の最高機関でありますから、委員長、やはり私、理事会に諮っていただいて、すべての個人情報の種類、名称、使用目的委員会提出させるように御努力願いたいと思うのですが、どうですか。
  241. 竹中修一

    竹中委員長 はい、努力はしてみます。
  242. 浦井洋

    ○浦井委員 私が何でこんなことを申し上げるかといいますと、いろんな例が出てきておるわけです、第三者によるプライバシー侵害、基本的人権の侵害というようなことで。  猟銃の所持許可を申し出ると、まず警察から家族のメンバーの前科の有無が調べられる。無論、前科者がいれば許可しない。本人の年間所得が調べられ、余り少ないと許可されない。また、警察から奥さんに電話がかかって、御主人は本当に狩猟が好きなのかどうか確かめられて、狩猟よりもゴルフやテニスをやるように忠告したらどうかというような勧めも警察からあったという。警察官 が、近所を回って申請者の日常の素行についても聞き込みをやるそうだ。プライバシー侵害にもなりかねない。これは東京新聞のことしの四月ですね、これに書いてある。  それから、これはもうひどいですよね、徳之島の農業高校。ここでは県立徳之島農業高校が非行防止などの生徒指導のために全生徒の写真のコピーを徳之島警察署の要請に応じて提供しておる。警察に全生徒の写真を出しておるわけですよ、名目は非行防止にしろ。これは毎日新聞の去年の十月です。  それから、東京新聞、去年の十二月。千葉の船橋で、住都公団が団地入居者の名簿を警察に見せるというようなことをやっておるわけです。本来プライバシーを守るべき、公開してはならぬようなものを見せておるということなんです。そこで、団地の自治会の人が人権侵害の訴えを起こしておる。新聞をちょっと見ただけでもこういうような事例がたくさん出てくるわけなんです。  だから、私はやはりここで今必要なことは、第三者がやっておる、第三者から取得しておるいろんな方法、そのすべての個人情報の種類、名称、使用目的委員会にひとつ提出させるように委員長からお取り計らいを願いたいということをお願いしておるわけであります。ひとつよろしくお願いします。  そこで長官、要するに私が言いたいのは、使用目的を明らかにして直接本人に聞くという、先ほどから何遍も繰り返しております収集制限原則が守られるならば、こういう例外規定は不必要ではないか、不必要になってくるわけなんです。だから、出し直しなさいということを言っておるわけなんです。  第三者からの情報というのは、先ほどもどなたか言われたように、この第三者からの情報こそが事実かどうかということを、その本人は非常に関心を持っておる。これが開示の必要になるわけなんです。だから第三者の、こういう格好で規制、不開示ということになってしまいますと、これは個人の権利の尊重よりも、第三者との信頼関係や協力関係が優先されるということになってしまって、個人情報保護法案というような格好にはこの一点だけを見てもとてもならぬのではないか。まさに本末転倒だと私は思うのです。こんなものではだめだと思うのですけれども大臣、もう一遍明快にされますか。
  243. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいまの規定につきましては、そのようなことが極めて、恐らく慎重にそれぞれ各担当の方では行っておると思いますが、現実にやられておる部門もあるわけであります。そのようなことについては、その担当部門におきましては、これを全部開示の対象にされるというようなことになれば第三者から適切な情報を得がたくなるし、かつまた第三者に対して大変な御迷惑をおかけすることにもなる。それは、第三者の情報を一〇〇%信頼してそのままファイル簿に載せるというようなことではないと思いますが、それはそれぞれの部局において適切な判断をして処理をされることとは思いますけれども、要するにその行政のそれぞれの目的に沿って対処しておるものを著しく阻害することになり、迷惑もかけることになるとすればそれは困るという話でありますので、やむを得ないというふうに判断したわけであります。
  244. 浦井洋

    ○浦井委員 行政目的が優先して、そこのけそこのけ行政目的が通るんだというようなことをこの法律案で合法化することになるわけなんです。それが公安情報とかいろいろなことにかかわってくると、そこにぽっかりと巨大なブラックボックスができて、これが民主主義を非常に破壊する危険があるということを私は指摘しておるわけなんです。だから、その辺のところは大臣も、まあ自民党の大臣でありますから理解してほしいというのは無理かもわかりませんけれども、ひとつそれはそれなりに個人的には理解をしてほしいと思うわけであります。  最後に、地方条例の問題です。  大分出てきましたけれども先ほど川崎の例をちょっと申し上げたのですけれども法案で国が自治体に基準を示すことになっておるが、既に川崎のように国の基準よりも高いレベルの条例をつくっているところがある。そういう場合に、川崎の場合例外規定はあるけれども収集制限規定もあるわけですね、今お答えになったように。これをどう考えられるのか。この法律案がもしも成立したときに、この法律を超えるような条例を政府は一体どのようにするのか、どう見て、どのようにするのか。この二点についてお答え願いたい。
  245. 高鳥修

    高鳥国務大臣 先ほどもこの点については御説明を申し上げたところでありますが、地方自治団体、特に市町村が今日まで既にかなり個人情報保護条例を制定しておられます。その中には政府がただいま提案をしております法案よりも進んだと申しましょうか、いろいろと多岐にわたる内容を持った条例があることも私どもは承知をしております。そのような条例について、それが適当であるとか適当でないとかと申すつもりは全くありませんし、そのようなつもりでこの条項を入れたわけではございません。都道府県においてはまだほとんど制定をされておりませんので、都道府県においても制定されることが望ましい、あるいは市町村においてもまだ制定されていないところもございますので、市町村においても制定されることが望ましいという考え方に基づいてこのように入れておるわけであります。  なおまた、川崎市の条例を引き合いに出していろいろと御説がございましたが、市町村と国とではおのずから持っております情報の質、内容がかなり違いますので、したがって、市町村においておやりになったから国がそのとおりにできるかといいますと、できない問題もあるということは御理解をいただきたいところであります。
  246. 浦井洋

    ○浦井委員 私が要望したいのは、この法案に盛られておるようなものであってはならぬと思うし、国の考えておる基準というのはミニマムである、その国の低い水準の、ミニマムのものを自治体に押しつけて、これでなかったらならぬというような格好に持っていくのはやめておきなさいということを要望しておるわけであります。  時間が来たわけでありますが、最後に、今私がずっと質問を申し上げたように、個人情報保護法案といいながら、実際にはプライバシーの権利の保護という中心的な目的から非常に逸脱しておる、著しく逸脱しておる。国際的な、国内的な潮流になっておる諸原則もこれは意図的に盛り込んでおらない。特に個人情報収集制限原則については完全に欠落させておるばかりでなしに、他の原則についても適用除外ばかりが多くて、まさに行政を進めていく立場からの個人情報のコンピューター管理法と言うべき代物になっておる。これはもうプライバシー権の侵害も甚だしいものになるというふうに私は思うわけであります。  だから、私はこれで終わりますけれども、やはりこの法案は撤回をして、そして真に今人類が到達しておる自己に関する情報の流れをコントロールする権利を保養するという観点からの本当の意味での個人情報保護法案の再提出を求めるということを要求して、私の質問を終わりたいと思います。  以上であります。
  247. 竹中修一

    竹中委員長 次回は、来る十三日木曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会