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1988-09-09 第113回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年九月九日(金曜日)     午後一時十五分開議  出席委員    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 官下 創平君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    石川 要三君       江藤 隆美君    尾形 智矩君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       河野 洋平君    穂積 良行君       武藤 嘉文君    村井  仁君       森下 元晴君    谷津 義男君       上原 康助君    角屋堅次郎君       広瀬 秀吉君    渡部 行雄君       井上 和久君    鈴切 康雄君       大矢 卓史君    浦井  洋君       柴田 睦夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 児玉 良雄君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 池田 久克君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         法務省刑事局長 根來 泰周君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵大臣官房審         議官      松野 允彦君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         食糧庁長官   甕   滋君         運輸大臣官房審         議官      金田 好生君         高等海難審判庁         長官      小林 芳正君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      谷野作太郎君         内閣委員会調査         室長      岩渕  静君     ───────────── 委員の異動 九月九日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     穂積 良行君   宮里 松正君     尾形 智矩君   五十嵐広三君     渡部 行雄君   大出  俊君     上原 康助君   川端 達夫君     大矢 卓史君 同日  辞任         補欠選任   尾形 智矩君     宮里 松正君   穂積 良行君     河本 敏夫君   上原 康助君     大出  俊君   渡部 行雄君     五十嵐広三君   大矢 卓史君     川端 達夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第七号)      ────◇─────
  2. 竹中修一

    竹中委員長 これより会議を開きます。  第百十二回国会内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員 きょうは竹下総理大臣の御出席をいただいて、先国会以来これまで議論されてまいりました防衛二法がいよいよきょうの本委員会最後の締めくくりという段階を迎えたわけでございます。  私は、潜水艦なだしお」等の事故もありまして、自衛隊防衛庁が今謹慎の身である、したがって改正案は、当然与野党理事の相談によって議論されていくことであるけれども、しばらく謹慎状態でおってはどうかと、率直に言ってそういう意見を申し上げたのであります。しかし、委員会運営委員長を中心に理事双方でなされるわけでありますから、今週の火曜日の段階も、私は午前十時十分から始まるということで準備をして待っておりましたところ、そういった意向も反映したと思いますけれども、午後開かれて二時間それぞれ関係との質疑を行ったところであります。  私は、ここにも掲額がされておりますけれども、議員各位承知のとおり竹下総理とは五年前に二十五年永年表彰を受けた同期の桜であります。ここに八人掲額されておりますが、竹下さんは一番後のところ、これは若いからでございますけれども、政治家総理大臣になることが一番出世ということであるならば、八番目の一番隅におりますけれども、総理になったという点ではトップで走っておることに相なるわけでありまして、政党の見解の相違ということを乗り越えて、同期の桜としては竹下内閣の登場にひそかに祝意を表したわけでございます。それは同期の桜としての気持ちでありまして、ただすべき点はやはり厳しくたださなければならぬのは野党の我々の責任であるということには変わりはございません。  そこでまず第一点は、きょう本会議で、かねて懸案でありました税制改革にかかわる特別委員会野党全部反対の中でスタートする、またきのうは、リクルート疑惑に絡んでの問題で同僚の楢崎議員リクルート関係の江副前会長を含めて三人告発をする、東京地検特捜部はそれで乗り出すだろうといったような新たな事態も迎えておるわけであります。私はこれらの点に深く触れるつもりはございません。それらの問題はこれから与野党協議を通じて、税制改革の問題については不公平税制の是正という与野党協議の場もスタートしたわけであります。  私が第一点の質問として言いたいのは、政権の座にあれあるいは野党の座にあれ、我々が心がけなければならぬことは政について民の信頼がなければ成り立たぬということであります。総理としてもそれを基本に置いておられると思いますし、我々も民主政治議会制民主主義の中では基本的に国民主権である主権者国民意向、世論を大切にしなければならぬ。そういった点で、リクルートコスモスの疑惑の問題についても、政府政府として、我々は国政調査権に基づいてこれをただ していかなきゃならぬ責任がある。これからの後半期に臨むに当たりまして、竹下総理訪中一つの大きな山場を成功裏に客観的には越えたというふうに言われておりますけれども、これから本番の内政に臨むに当たってどういう姿勢でいかれようとするのか、これをまずお尋ねいたしたいと思います。
  4. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 最初に、同期の桜であるか、三十年たちましたのであるいはお互い同期の老木であるか別といたしまして、将来ともにお互い国のために、その立場は異にせよ切瑳琢磨していきたい、このように思います。御激励ありがとうございました。  さて、一連外交日程と申しましょうか、昨年十一月六日、本院で指名をちょうだいいたしましてから十カ月以上になります。八回の外遊の中、今度の中国訪問というものは、平和条約締結十周年、こういう記念すべきときに、私は私なりに、従来の共同声明条約、四原則、そういうものを踏まえて、日中友好の新しいスタートというぐらいな気持ちで参りまして、謙虚に意見交換をすることができたことについては、私自身大変喜ばしいことだと思っております。  さてそこで、内政問題というものが、きょう特別委員会の発足の日でありますだけに、これからまさに内政のときを迎えた、こういう気持ちは私も等しくいたしておるものであります。今度の国会をお願いしたことそのものが、いわば私の側から申しますならば、税制改革を二十一世紀に向かって揺るぎない体制を構築したいということでお願いした国会でありますだけに、国会の審議に当たりましては、それこそ私なりに謙虚に耳を傾けながら十分御理解いただくべく努力をして、丁寧に丁寧にお答えをしていこう、そして国民の負託にこたえていかなければならぬ。同時に、国会の場を通じてまた国民皆様方にも理解をいただく場所ではなかろうか。国会の子としてそんなことも考えておるところでございます。
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 数日来ちょっと風邪を引いて体のコンディション、先般の委員会もそうでありましたが、私の方は言語は明瞭でありますけれども、質問趣旨についてあるいは不明瞭な点があるかもしれませんが、竹下総理の方は言語明瞭、答弁明瞭ということでぜひこれからの質問お答え願いたいと思うわけでございます。  今の御答弁のときにも、内政のこれからの課題についてもう少し言及されるんじゃないかというふうに期待したのですけれども、後々控えておる、決められた中の質問でございますから、私の意のあるところを受けてこれからの内政に臨まれたいというふうに希望いたしておきます。  何としても尋ねなければならぬ防衛二法に関連しての問題は、今回の痛ましい潜水艦なだしお」と第一富士丸との衝突事故であります。私も数日後、我が党の土井委員長とともに現地に参りまして、関係方面事故の現実の調査を行ったり、あるいは亡くなられた方々に心から哀悼の意を表し、また、病院で看護を受けております方々については土井委員長と岩垂君とが代表してお見舞いをするということで、現場にも参ったわけでございます。これは本委員会を含む連合審査事故数日後に開かれて、総理出席も求めながら議論が行われてまいりましたし、今週の火曜日のときにも私自身防衛庁はもちろんでありますけれども、海上自衛隊、海上保安庁、それから海難審判庁、それぞれの責任者を求めて議論しましたので、そういう経過については今日の段階では深く触れません。  今日の時点で総理にお尋ねをしたいのは、一つは、「なだしお」は第一富士丸よりもはるかに大きい過失責任を負っておるという認識を私は持っておるわけであります。そういう認識に立つとするならば、制服組あるいは背広組を含めた今回の事故に対する政治的な責任とり方、これを明確にしていく必要がある。新しく防衛庁長官になられました田澤長官からお伺いしましても、何か海上自衛隊等責任問題については先送りという感じがしないでもない。また、その先送り竹下総理の御意向が働いているのじゃないかという感じさえしないでもないわけであります。  竹下総理は、連合審査のときも言われておりましたように、雫石の大変な痛ましい事故航空自衛隊との間でございました際の官房長官でございました。あの当時、増原防衛庁長官以下の責任が直ちにとられるという経緯がございました。今日のこの事故においては、雫石のあの事故教訓制服組としては逆に生かしたいという気持ちがあるように私は思うのでありまして、そういう点で海上自衛隊等責任問題ということについて、総理はどういうお考えでこれを裁かれようとするのか、この点についてお伺いいたします。
  6. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今回の事故につきましては、いつも申し上げますように、当事者の一方が自衛艦でありましたというこの事実からいたしまして、まことに申しわけない、こういう素直な心境をもって言葉を選びながら、痛恨のきわみであります、このように最初答えておったわけでございます。  さて、この一連責任問題でございますが、当初瓦長官から、当日七月二十三日の夜であったと思います。私はこの職を拝命してからその責任とり方については承知をしております、当時でございますから、当面は捜索、救難活動に全責任を果たすことこそあるべき責任とり方であると考えております、このようなお考えでありました。私もそのとおりだと思った次第であります。そして衆参両院におかれて、予算委員会等においてこの問題が議題となり、最後まで瓦前長官答弁のその責任を果たし、そして当日また慰霊式を行う段取りにもなっておりますので、その後一通りのけじめとしてみずからが政治責任をとるべきだという願いが出まして、私はこれを受理したわけであります。  そこで、いわゆる事実的な事故に関する責任、この問題についてのことになるわけでございますが、今まさに事故原因究明を一層徹底的に行われることに対して、防衛庁側としてもこれに最大限協力をし、そしてその事故原因究明を待った段階で適切な判断をすべきであるというふうに私は考えておるところでございます。ちょうど昭和四十六年の七月三十日が雫石事件でございますから、八月二日に責任問題についての、私にも記憶はあるわけでございますが、あの当時のこともまた教訓として、私は、事故に関する原因究明を徹底的に行うことに対して防衛庁側最大限協力をすることによって、その結果が出た段階で適切な判断防衛庁長官が行われるべき問題であろうというふうに考えておるところでございます。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 潜水艦衝突事故に対する海上自衛隊等制服組も含めた責任とり方については、事態が明らかになった段階で、これは我が党の岡田委員に対して連合審査の中で、つかさつかさ責任というものは事態が明確になればきちっとしたい、それは当然のことであるという意味のことを答えられておるわけでございますが、これが不問に付されるということは断じてないというふうに私は受けとめておきたいと思います。  そこで、遺族への補償の問題でありますが、次の質問関係もありますけれども、簡潔にお答え願いたいと思います。  これは総理の御指示もあり、新しく長官になられました田澤防衛庁長官の御指示もございまして、防衛庁自身富士商事と話をして窓口をこちらでやるがいかがか、それがうまくいかなかった、ならば防衛庁独自で、これは国が国民から預かった税金の中から最終的に払う問題もあるわけでありますけれども、そういうことで遺族側と当たっていこうという姿勢にある。私も、富士商事の関連というのは今後ともに起こりますけれども、そういうことでイエスという窓口の了承が与えられない中でも、この問題は早期に御遺族との関係を進めていく、誠意を尽くして進めていく、なるべく早い機会にこの問題を済ませる、こういう基本姿勢で臨まれると思うのですが、いかがですか。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 従来お答え申し上げており ましたのは、事故原因に関する関係機関調査を見きわめつつ、適切に対処していかなければならない問題であります、このようなことまでは申し上げてまいりました。さらに、今角屋さんから御指摘がありましたとおり、御遺族等立場を第一に考えまして、そこで現在防衛庁において、賠償額負担割合の問題は外に置きまして、賠償額積算作業を始める、こういう姿勢田澤長官就任の際、私の方へお話がありました。それは結構でございましょうということで進めておるところでございます。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 それでは、潜水艦なだしお」の第一富士丸との衝突事故の問題については、この程度でポイントの質問を終わります。  次は、外交等を含めた国際情勢のうちで、特に中国関係の問題あるいはソ連との関係の問題、こういうところに焦点を当てながらお伺いをいたしたいと思います。  その意味は、申し上げるまでもなく、我が国安全保障という問題を総合的に考える場合には、やはり外交的努力というものが重要な役割一つであります。また、あってはいけませんけれども、有事を想定する場合には、国民の食糧の安全保障といった問題も重要な柱になります。そういった中で我が国の直接防衛力というものの果たすべき役割あるいはそれをどう考えるかといったようなことが我が国総合安全保障考える場合の重要なファクターになると思うのでありまして、そういう意味から中国関係ソ連関係等について、若干お尋ねいたしたいと思うわけであります。  私は、基本認識として、数年来、特に昨年来今日、国際情勢米ソ首脳会談等を通じたINFの全廃条約、あるいはイラン・イラク戦争の停戦、アフガンからのソ連軍撤退等、いろいろ明るい日差しが世界的に見えてまいりました。地域紛争も、カンボジアのベトナム軍撤退等について早晩それが目に見えた形で実現をしてくるんじゃないかといったこと等も含めて、いわゆる数年来の厳しい国際情勢の中から明るい日差しが見えてきた、デタントの兆しが見えてきたというふうに認識をしておるわけであります。  今回、竹下総理中国をお訪ねになりまして、鄧小平中央軍事委員会主席あるいは趙紫陽党書記あるいは李鵬首相等中国首脳部と会われまして、内外の諸問題、日中間の諸問題に対して隔意なきお話をされ、また八千百億円に上る借款というものを我が国として出す用意があるということで、今回の竹下訪中は客観的に言えば大きな成果を上げて帰られた、人民日報等報道を見てもそういう評価を与えておる。個々の問題になれば各政党、各政治家によっていろいろ違うでありましょうけれども、竹下総理からすれば、総理就任十カ月の一つの大きな頭の痛く考えておった山を無事越えたというのが実感ではなかろうかと思いますが、過般小渕官房長官にお伺いをしたのでありますけれども、これは直接行かれたのは竹下総理でありまして、今回の訪中について竹下総理から、どういう御判断を持っておられるか、また、その訪中に基づいて、これからアジアにおける大切な国である隣国の中国との関係をどうしていこうというのか、そういう点について簡潔にお答え願いたいと思います。
  10. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 最初にもお答えいたしましたが、本年は日中平和友好条約締結十周年、こういうときでございました。したがって、私も訪中したいという希望がありましたが、中国政府から招聘を受けましたので、国会のお許しをいただいて訪中日程を消化することができたことを大変感謝をいたしておるところであります。もう一つ、十周年と同時に、李鵬総理と私はもとより、かつて別の立場においてはお会いしたことがございますが、両方とも新米といいますか、新しい政権責任者であるという初の出会いということにも相なるわけでございますので、したがって、双方が恒久的な日中友好というものに少しでも、お互いの個別問題をも含めて三時間数十分にわたりました意見交換が実を結ぶことになればと思って、誠心誠意会談に臨んだわけでございます。したがって、個人的にも相互理解をさらに深めることができたというふうに今考えておるところでございます。日中関係強化拡大の礎を一層強化することにいささかでも役立ったとすれば私なりに幸いである、このように思っておるわけでございます。  今後とも揺るぎない日中友好関係を構築していくために、日中共同声明、そうして平和条約、さらには四原則というものをあくまでも基礎に置いて、各分野にわたっての関係をより深めていきたい、このように考えておるところでございます。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 中国を訪問されたときに、竹下総理は、数年来非常に熱心に中国が希望しておりますガット加盟問題、この問題について我が方としても積極的にサポートしましょう、言葉はそういう意味で言われたので、私はサポートしましょうということで言われたと思うのです。  これはかつて、東芝機械とか貿易自由化に絡む農産物十二品目とか、いろいろなときに私もガット問題は議論した経緯がございます。今日、九十数カ国ガットに加盟しておりますけれども、ソ連とか中国は入っていない。その中の中国が積極的にそのことを希望されておる。また、中国一つであるというお互い認識は変わらないわけでありますが、現状では台湾というのが地域として存在をしておる。中国首脳は、台湾地域としてガットに加盟するという場合はこれに拒否の態度を示さないという柔軟な姿勢お話しになったということも報道としては伝わっておるわけであります。  基本は、中国ガット加盟ということについて我が方としてもサポートする。これは竹下総理ほどの経済の国際的な専門家になれば、見通しとしても明るいという御判断があっての発言だろうと思うわけでありますが、今回、八千百億円の中国借款の問題については、対中国借款、九〇年から九五年にかけての対象案件というのがプロジェクトとしては四十数件上がっておりまして、これを逐次具体的に話し合われながら経済援助円借款等をやられるんだろうと思います。これには発電所の問題があったり、橋梁の問題があったり、道路の問題があったり、飛行場の問題があったり、工場関係の問題があったり、いろいろ対中国円借款の問題については中身が書かれておるようです。これは、私はこの中身に入ろうという意思は全然ないのであります。そういうことをやる場合も、ガット体制の中に入ればいわゆるココムとかチンコムとかいうアメリカ側の受けとめ方も少し大きく変化すると思うのでありまして、私は、ぜひ中国ガットに加盟するということは速やかになさることを希望する一人でありますけれども、この問題についてひとつお答えを願います。
  12. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今角屋さんは報道等を読んでのということで、御意見を交えた御質疑でございましたが、大体そのとおりでございまして、我が国としては、中国ガット参加をまずは基本的には歓迎をする立場にあります。  先般の私の訪中の際も、そういう趣旨を私の方から伝えました。今ガットの場で作業部会が設置されて中国参加について検討が行われているところでありますので、我が方もその検討作業の中に積極的に参加していこうという立場をとっておるわけでございます。  そこで、台湾ガット問題についてもお触れになりましたが、大筋、先生がおっしゃったとおりのお話もございました。が、正式な加入申請がまだ台湾の場合は行われておりません。今私どもとしては、まずは中国ガット参加について鋭意検討を進められることに対して積極的に参加していこう、こういう立場で臨んでおるところであります。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 次は、日ソ関係の問題に入りたいと思います。  竹下総理とすれば、来年の秋以降総裁二選問題というのが来ますけれども、しかし、竹下内閣政権の構えとしていろいろ国際的、国内的に宿題は多いけれども、歴代内閣政治的外交課題としては、日本ソ連との関係というのがやはり大きな政治課題として残っておる。  言うまでもなく我々は、日本固有の領土である北方四島の返還をきちっとして日ソ間に平和条約を締結する、これが日ソのこれからの外交経済政治、いろいろな面における基本的な原点であるという認識お互いに変わるところがないと思うのでありますが、そういうことも含めて、前中曽根総理は、自分が総理のときにこの問題をぜひ手がけたい、そのためにゴルバチョフ書記長日本に来る、あるいは中曽根総理自身が行くということで非常に意欲を燃やしておりましたが、残念ながらそれはできなかった。中曽根総理としては一番悔いが残ったのはこれが何にもできなかった。その気持ちが、先般中曽根さんがソ連を訪ねられてゴルバチョフ書記長会談をされたというところにあらわれておるかと思うのであります。この中曽根総理ソ連に行かれてどういう話をされたとかというようなことについて言及するつもりはございません。また、中曽根総理ソ連に行くに当たって、一部に外務省が激しい抵抗を示したというふうなことについても言及する気持ちはございません。いずれにしても、そういった状態の中で総理みずから、長年の政治的課題である北方領土問題を解決して平和条約を締結するということにやはり取り組まなければならぬという基本認識は持っておられると思うのであります。  国連総会宇野外務大臣シェワルナゼ外務大臣に会われて、恐らく十二月にはシェワルナゼ外務大臣日本に来られるということに相なるだろうという判断をいたしております。また、私自身のことで簡単に一言言えば、櫻内さんを団長とする第六回の日ソ円卓会議というのが今度はモスクワで開かれる。私は事務の総元締めで、十月の中旬から始まるそういう形の会合に出る。それから、十二月にはシェワルナゼが恐らくおいでになるだろう。来年の二月にはソ連の最高会議国会代表団がおいでになるということで、衆参両院の議長サイドの渉外部のところで話が始まっておる。過般私がモスクワへ参りましたときも、その点について、ハウスの日本側の招待についていろいろグラッキー・ソ日セクション会長とも話してきた経緯がありますが、それはそれとして、日ソ間についてはかつての冬の時代と違って、双方ともに政府レベルにおいて、政治レベルにおいて、あるいはその他の民間団体において交流が活発になってきておるというふうに思うのでありまして、竹下総理は対ソ外交についてどういう姿勢で臨まれるというのか、率直にお答え願いたいと思います。
  14. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今、あるいは議員外交、民間外交等々を含めての御指摘がございましたが、私は、外交問題についても実務者レベルの問題等も含めて申しますと、この関係というのは決して疎遠になっておるんじゃなくして進んでおるというふうにそもそも見ておるところでございます。  しかしながら、御指摘がありましたとおり、北方領土問題を解決し平和条約を締結することによって、この重要な隣国たるソ連との間に真の相互理解に基づく安定的関係を確立するという、これは私も角屋さんも基本認識として全く同じでございますが、そこのところのいわゆる領土問題についての進展ということが今現実問題として見られないということは、確かにのどにつかえた大きな問題であると思っておるところであります。しかし、実務者レベル、民間レベル等の交流が深まる一方、いわゆるグラスノスチあるいはペレストロイカ、こういう言葉に表現されますように、あるいは貴党の土井委員長も訪ソされて、ゴルバチョフさんとの直接対話がございました。また、中曽根総理が参られますに当たりましては、オープンでノーカットでテレビ放映をしようとか、あるいは希望されるところへ行くことに対しても御協力をしようとか、まあ言ってみればグラスノスチとでも申しますか、そういうことが現実問題としてあらわれてきたではないか、私はこういう感を抱いておるものでございます。  したがって、一層これらの問題がこれを契機に前進をし、宇野さんとシェワルナゼさんが国連総会のときにお会いになり、そしてまたその後訪日があり、そうして最終的には、ゴルバチョフさんの訪日を心から歓迎し、期待しておるという立場であるわけでございます。したがって私は、こうした積み重ねというものが最終的に、いわゆる言葉のグラスノスチとかペレストロイカでなく、現実問題としてそれがあらわれてくることを大変な期待を持っておるというのが、現在の偽らざる心境でございます。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 竹下総理の今の御答弁から判断をいたしますと、中曽根総理時代に、ゴルバチョフ書記長日本にいらっしゃい、次は私が行きますということでボールを投げた点は、当然外交常識として生きておって、そしてゴルバチョフ書記長が、米ソ双方の外相の会談を通じてそういうことまで出てくるということになれば、ゴルバチョフ書記長の訪日を心から受け、みずからもソ連に飛んで、宿題も含めてひとつやりたい。大体、鳩山先生が病身を押して総理として行かれて日ソ共同宣言によって国交が開かれてから今日までの間に、身を挺してと言っては大げさでありますけれども、一生懸命に懸案の問題にもぶち当たろうとしたのは、田中元総理がちょうど中間にあって、その後は、なるべくなら難を避けようとして今日まで来たんじゃないかという感じが率直に言ってしないでもない。これはいつまでも放置しておくわけにいかぬ。やはりだれか熱意を持つ者がこの時期に、しかも、客観情勢からいえば非常にタイミングとしていい時期に来ておる。  ソ連側からは北方領土問題について、必ずしも通り一遍に解決済み、存在しないということを言っていない。これはゴルバチョフ書記長がどういうふうにお答えになっておるかというよりも、ソ連のブレーンの中で北方領土の共同管理案のようなことが言われてみたりその他のことがいろいろ言われてくるということは、やはり日本との関係基本的に改善するためには北方四島問題を避けて通れないという認識ソ連側の方にも相当深く入っておると思うのであります。したがって、デタントが始まろうとする、あるいはこれからさらに拡大してもらいたいという状況の中で、アジアにおける大切な隣国である――日本国民からすれば、一番好きな国はどこかといえばアメリカが第一、その次はどこだといえば中国、一番嫌いな国はどこかといえばまず第一に挙がるのはソ連。こういうものにはいろいろ背景がございましょうけれども、外交は好き嫌いでやるわけにはいかない。国民課題として、政治的課題として、あることについては身を挺してでもこれに当たるという姿勢日ソの問題について竹下総理はお持ちでしょうか。
  16. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 御意見の中にもございました外交は好き嫌いでやるものではない、私もそのとおりだと思っております。確かにおっしゃいましたように、一九五六年十月が鳩山総理、それから七三年が田中総理、八二年の鈴木総理、これはブレジネフさんの御葬儀でありました。八五年の中曽根総理、これはチェルネンコさんの御葬儀でありました。先般の中曽根総理の訪ソに際してゴルバチョフ書記長は、訪日問題についてできる限り早期に訪日が実現するよう努力したい、このような発言があったということに対して私どもは評価と期待をいたしております。したがって、まずはその問題の実現を見て、そして十分検討し、みずからが処する道はみずからの責任において決定していかなければならぬ課題だと私は思っておるところでございます。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 防衛の問題に入る前に、先ほど冒頭に申し上げましたように、総合安全保障の問題では我が国として平和外交的努力をするということが基本である。また、あってはならぬ有事の場合を考えれば、基本的にはやはり条件として食糧の安全保障という問題をきちっとしておかなければならぬ。そこで、食糧の安全保障問題について総理の御見解をお伺いしたいのであります。  私が全体方向を申し上げるまでもなく、私が国会当選以来三十年、農政をみずからの政治生命として今日まで生きてきて、今日の農政の現状というものを見ますと、一体私三十年何をやってきたかというふうなことさえ感ずるほどであります。 農産物の自由化、十二品目問題あるいは牛肉・かんきつ問題、さらに相手側としてアメリカの方は、ヤイター通商代表の言をもってするならば、いわば一軒のうちの大黒柱とも言うべき米の自由化まで求めよう、そういう強い動きがあるわけでありまして、そういう中で米国の全米精米業協会、これはRMAと言っておりますけれども、これが近く新通商法第三〇一条に基づいて我が国に米の輸入を求める提訴をする動きがあるというふうに伝えられておるわけであります。  言うまでもなく、今申し上げましたように、米は国民の主食であると同時に、食生活の安定上欠かせない重要な食品目の柱でありますし、また農業生産全体の三分の一を今日でも占めておる基幹的な部門であります。したがって、こういう重要な位置を持つと同時に、私どもが与野党で協議をし、かねて数年前に衆参両院におきまして「国内生産による自給の方針を堅持する」ということの国会決議を行ったことも、総理承知のとおりであります。総理といたしましては、国会の本会議あるいは予算委員会等重要な場面において、米の自給方針を堅持する旨をしばしば答えられておるわけであります。最近の米国の全米精米業協会等の新しい動きが出てまいります場合も、この方針を堅持してまいることにはいささかも変わりはないという気持ちで対応されると思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  18. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる総合安保という中における食糧の安全保障対策、これが安全保障問題を論ずるに当たりまして大変重要な大前提の柱であるというふうな気持ちは、私もこれに長らく関係された角屋さんと意識を等しくいたしておるところであります。  そこで、これが十二品目でありますとか牛肉・かんきつ問題でありますとか、いろいろな問題が今日までありました。その中で、国内対策も含めこれに対してはそれぞれ対応していくという方針を持ち、あるいは今国会でも必要な法律案等をお願いすることにもなるかもしらぬ、こういうようなことで作業を進めておるところでありますが、最も基本的なお話一つとして、RMAのいわゆる提訴問題にお触れになりました。これにつきましては、たしか五十九年七月二十日、衆議院本会議における「米の需給安定に関する決議」、これは参議院でもほぼ文章もそう変わりない決議が行われておりますが、私どもはこれをやはり基本に置きまして対応すべきものである。私どもはかねてウルグアイ・ラウンドで、全体の問題として議論するのはそれは参加しましょう、こう言っているわけでありますから、二国間の問題でこれらのRMA等の提訴が行われていくなどということに対しては、私どもは国会決議等の趣旨に沿って厳然と対応していかなければならない課題であると考えておるところであります。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 次に、竹下総理防衛に対する基本認識あるいは基本的な方針というものについてお伺いをいたしたいと思います。  あとおおむね十分足らずのところでありますが、私はちょうど竹下さんが「私の「ふるさと創生論」 素晴らしい国日本」ということで総裁選挙前に書かれて出された御本をずっと読んでみたのであります。その中に防衛問題、本日のテーマでいいますと、二十二ページのところに「軍事大国にならない日本」、それから後の方で、三十三ページ以降に数ページ使って「防衛とは「ふるさと」を自らの手で守ること」と言って、竹下さんの「ふるさと創生論」の中における防衛考え方が出されておるわけであります。いわば総裁選挙に通る場合の論文を竹下さんや安倍さんや宮澤さんが出されて、中曽根総理はこれが数年間日本政治をやるのにふさわしいと言って指名をされたかどうかわかりませんけれども、学校で言えば大学の卒業論文というのに当たるのだと思うのです。  そこで、竹下総理がこの論文、あるいは総裁選挙の中曽根資格審査委員長に対する資格審査、これは語弊があるかもわかりませんが、そういうことでこれを書かれ、今日でも一国の総理として考えておられる基本的な認識をひとつお伺いしたいと思うのです。  我々は、今のままでどんどん防衛費を増強する、質、量ともに防衛力を増強する、エイジス艦は問題がある、やめといたらいいといってもこれを持とうとする、瓦前長官でも防衛的な航空母艦は持とうと思えば持てぬこともないとか、現行平和憲法と現実の自衛隊との乖離というのはますます進もうとする状況にある。しかし、乗り越えられない点がある。それは海外派兵である、あるいは徴兵制である、あるいは集団安全保障である、さらには従来から、佐藤内閣以来明確に国是だと言っておりますところの非核三原則。こういったいろいろな制約条件は憲法上からもあるいは政策上からもとっておる。そういう中で、あなたは「防衛とは「ふるさと」を自らの手で守ること」の冒頭で「わが国の防衛政策はいま、再検討を必要とする時期にきている。」ということでいろいろ書かれておりますけれども、この再検討基本認識というのは何か。  軍事大国にはならない、なれっこないとも言っておりますけれども、その中で我が国防衛政策の再検討、しかも、その再検討の重要な判断からいえば、国際情勢の中で考えれば今デタントの方向に明快に進んできておるその中で、今までの防衛政策について再検討というのか、そうでなくて、これからどんどん軍事力を質、量ともに強化するという意味において不十分だから強化するということで再検討しようというのか。そのいずれかについても含めてお答えを願いたい。GNP一%堅持の問題もある。あるいは現在の中期防衛力整備計画が来年は四年目に当たりますけれども、そのすぐ後ポスト中期防衛力整備計画、その中で総額明示方式等を含めてどうするのかということ等重要なファクターがあるわけでありますけれども、それらについてまとめてお答えを願いたいと思います。
  20. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、私が書きおろしいたしました「ふるさと創生論」の防衛政策につきまして、私自身これは総理大臣の資格を取るための論文であったというふうには思っておりません。したがって、読み返してみて書かなければよかったなというのは、今も角屋さんからいみじくも触れてちょうだいしましたが、ならないということで、なろうと思ってもなれるものではないという書き方はあるいは間違ったのかなというような感じも持ったりして反省をいたしております。  そもそも日本安全保障というものを昭和二十二年以来議論されたのを全部こうずっと読んでみますと、やはり最初は、国際連合においていわば平和に対して軍事的なものをも含めて力を持つまでの間は、いずれかの国との安全保障体制ということで、それの対象として、もとより占領下ではございましたがアメリカとの日米安保体制というものができて、したがって、日米安保体制賛否両論の問題を根源にさかのぼれば、やはりあのときの基本的思想の上に立って今日継続しておると私は思うわけであります。  そこで、大綱というものができまして、だから大綱を逸脱すべきでないという基本的な考えがあって、さてそこで一%議論というのが昭和五十一年でございましたか、私は建設大臣でございましたが、そういう議論がありまして、それから昭和六十年九月の十八日午前六時半、未明でございましたが、十八兆四千億の中期防というものが、四次防の先取りで随分国会角屋先生なんかに批判をされて、あれからが中期業務見積もりというような形になってずっときましたので、私は、いつの日かやはりきちんとした防衛計画があって初めて、これは足らないじゃないか、これは過ぎるじゃないかというのでシビリアンコントロールというものも本格的にできるものだ、だから、まず一%ありきではなくしてまず計画ありきだというような考え方を大蔵大臣時代から持っておりまして、それを主張して、私が大蔵大臣のときでございました昭和六十年九月十八日午前六時半ぐらいに十八兆四千億を決めたわけでございます。  しかし、基本的にもう一つ大事にしなければな らぬのは、たびたびの御主張にありましたいわゆる憲法、非核三原則、そして周辺諸国に脅威を与えるというようなことがいろいろ言われますが、断じて軍事大国にはならない、専守防衛です。このことを事あるごとに私は外交場裏等においても主張することによって、そうした心配をも払拭して真に平和国家としての日本の国是というものを貫いていきたい。したがって私は、防衛問題についてあの書物の中でもちょっと述べておりますのは、いわばミリタリーの分野に限定した防衛ということを考えないで、可能な限り、このたびも打ち出しております金のみでなくアフガンとかイラン・イラクとかそういうところへ人も派遣しましょうというような外交努力を含めた平和協力、あるいはODA等経済協力、そうした広範な立場における安全保障というものを、日本の国是を世界に明らかにしながら、世界の平和全体にこれが波及していくことを期待しながら、これから私の歴史の一こま、短い期間でございますが、精いっぱい努力をさせていただきたいものだ、このようにみずからに言い聞かせておるところでございます。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 ちょうど総理の御答弁で結びの時間が来たわけであります。私は、それはそのままに尊重いたします。  最後に、私は今日まで三十年、国政の舞台で活動させていただきました、竹下総理政権政党として、私の場合は野党第一党として。私も第一回目当選した以降、十年か十五年ぐらいで天下がとれる、こう言ってやったんでありますが、ちょうど波打ち際の波みたいなものでありまして、近くに来たと思うとまたすっと引いてしまう、ついに政権の岸にたどり着かなかったわけであります。私自身は今期で世代交代でやめていくが、竹下総理の場合は、同期といったって私よりまだ若いのですね。だから、今日まで五十年特別表彰というのは、私の選挙区の尾崎咢堂翁が第一号、それから三木武夫先生が第二号、第三番目だれになるかというのは、恐らく通常からいけば中曽根総理だろう、第四番目に必ずいけるという可能性があるのは竹下総理でしょう。総理の時代が何ぼかというのはこれはもう全然別の問題でありますけれども、私どもよりも若いわけでありますから。  政治立場は違いますけれども、後藤田正晴さんが「政治とは何か」といって書いておる中に、戦争体験をやっておる我々が政治責任を持つ限り、生きておる限り過去の戦争のような過ちを二度と起こさないように必ずやりますということを書いておる。竹下総理もその決意には変わりはないだろうと思うのでありまして、政治経済防衛も含めて、ひとつ日本の将来に誤りのない態度で現役の総理としては最善を尽くしてもらいたいということを強く要請をいたしまして、私の質問を終わります。
  22. 竹中修一

    竹中委員長 次に、竹内勝彦君。
  23. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 できるだけ簡潔に御答弁いただきたいと思います。短時間の中で何項目かぜひ総理にお尋ねしておきたいことがございますので、その点、よろしくお願いしたいと思います。  まず第一点、ここずっとリクルートコスモス問題がいろいろと報道もされ、また、ただいまも本会議におきまして不公平税制是正並びにリクルート問題等に関しての税制改革特別委員会が設置されたわけでございますし、ましてまた昨日は、今も論議がございましたが、我が同僚の国会議員がこのリクルートの前会長並びにリクルートコスモスの社長、それからリクルートコスモスの前社長室長を告発したというような経緯がございますし、非公開株式の譲渡問題それから贈賄工作問題は国民が今非常に注目しておる問題でございまして、これは何としてもこの疑惑を解明していかなければならない。そういった立場におきまして、総理としてこういう場においてコメントするのはこの委員会が初めてでございますので、まず最初に、ぜひ国民が今注目しておるリクルート疑惑に関しての御所見をお伺いしておきたいと思います。
  24. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、今御指摘がありましたように九月八日、検察当局において楢崎議員からの告発を受理した、したがって検察当局が捜査の上適切に対処する問題である、刑事事件としてはしたがってそれ以上踏み込んだ所見を私が申し述べるという立場にはないというふうに申し上げざるを得ないと思っております。  が、政治的な問題として見てみますと、私は、私自身を含め政治家あるいはその周辺の我々として、言ってみれば非常に情報等が集まりやすい立場にあることも事実でございます。したがってそのことが、言ってみれば勤労によってあがなわれた所得というものとの大きな乖離というものに対して、国民皆様方に不信感を与えるような事実というものについては、よしんばそれが言ってみれば通常の経済行為であったとしても、政治家あるいは政治家の周辺というものは情報等が集まりやすい環境にあるだけに、やはり李下に冠を正さずとして厳しくみずからを律していかなければならない問題だというふうに位置づけておるところでございます。それがいわば公開前取引等の問題について、また国会等においては税制上の問題からも御検討が進んでいく課題であろうというふうに思っております。  それからいま一つは、行政当局、特に監督官庁たる大蔵省とでも申しましょうか、そういうことになりますと証券取引法上の問題としての対応の仕方ということに限定されていくのではなかろうか。その問題については種々検討がなされており、国会等でもある程度の御報告が寄せられておるところであろうというふうに、刑事上の問題あるいは証券取引法上の問題、そして政治的問題あるいは道義的とでも申しましょうか、そういうことに対して私なりに心の整理をいたしておることでお答えを申し上げた次第であります。
  25. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 今も本会議場におきまして、特別委員会の設置の趣旨というかそれに関してはわざわざリクルート等に関してということが挙げられておる。そういう中で告発をしたということは、どうも国会の方は静観した方がいいんじゃないかというようなことを言う人も自民党の中におるわけでございますけれども、御承知のとおり、ロッキード事件のときにも裁判で係争中の人物をも喚問したことがございますし、この問題に関しましては、今総理も言われたとおり、これは何としても道義的あるいは政治的というかそういうものまでも含めて本当に重要な問題でございますので、特に野党が要望しておる江副前会長の国会招致という問題も含めて、また特別委員会におきましていよいよ論議が相当行われていくと私は思います。くどいようで恐縮でございますが、もう一度、そういう問題も含めて総理のこの問題に取り組んでいくお考え、御決意を披瀝いただければありがたいと思います。
  26. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる行政上の問題、いわば証券取引上の問題、あるいは刑事上の問題等について政府としての対応の仕方はあるわけでございますが、確かに竹内委員今おっしゃいます、私も国会議員の一人であることは間違いありませんが、長年の何となくしきたりみたいな形で、総理大臣としてお答えする場合はやはり行政府の長という立場がございますので、国会ではこうした方がよかろうとか、ああした方がよかろうとかいうことはやはり国会自身のお決めになる問題として、論評はしない立場をとり続けてきておるということで、この問題は御容赦をいただきたいと思います。  ただ、竹内委員のおっしゃっている御意見については、十分私もお聞かせをいただいたと言うにとどめたいと思います。
  27. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、「なだしお」の衝突事故に関して、先ほども先輩委員から御質問がございましたけれども、まず重要な問題は、特に雫石の四十六年七月のあの事件のときにも同じように補償問題、全日空と自衛隊防衛庁との間におきましての交渉がいろいろと行われ、そういう中で一応肩がわりというか、防衛庁としてその対処をされていった。そういうものを考えていきますと、今回のこの補償問題は、今も原因究明、それ から補償の額あるいは補償の比率、そういったものをやっていこうという、そういうものはともかくとして、それまた大事でございますけれども、ともかく政府として、今第一富士丸の方を考えてみますと、働き手も非常に大勢おった。この中で遺族の人たちのことを考えますと、いち早く政府としてこれは一〇〇%、今後の裁判の持っていき方、成り行き、そういったものに関してのものは当然これは慎重にやっていかなければならぬ問題でございますけれども、まず政府として、雫石のときと同じような形で全部これは補償していくんだという態度がなければならないと私は思いますが、総理としてどういうように考えておるのか、この補償問題に関して御答弁いただきたいと思います。
  28. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今まで本院等で申し上げておりますことは、関係機関調査を見きわめながら適切に対処していく問題でありますというところまでは明瞭に申しておりますが、御遺族様等の立場を第一義的に考えて、できるだけ早い時間に処理しなければならぬ。そこで、今も御意見にもございましたが、いわゆる負担割合等の問題は別にして、賠償額積算作業を開始した、こういう段階にあるわけでございますので、いわば心情的に、今おっしゃったことは私にも十分理解のできるところでございます。
  29. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 例えば遺族立場から考えますと、法律上でいきましても、どちらか一方に対して一〇〇%の補償金を請求できるわけですね。そういう意味からいきますと、遺族が国を相手に裁判に持っていった場合ならば国が一〇〇%の補償を払わなければならない。こういうことから考えましても、これはぜひまず国が責任持つんだということでお願いできればということをもう一度、じゃ総理、まず最初に、その裁判の今後の状況というものは今後の問題ではっきりしてくるわけでございますけれども、とにかく遺族の一番心配な点はその点が今一番重要ではないかと思いますので、一〇〇%国が補償する、こういった点に関しての御答弁をもう一度お願いできればありがたいと思います。
  30. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 前提を置きまして、我が方、いわゆる国の自衛艦というもの、一方富士丸というものがあって、あらかじめそのいずれかに、いずれかにというと民間会社に割合があったとしても、負担能力がないということを今申し上げるということはやっぱり差し控えるべきであろうというふうに私は思いますが、今竹内委員の御指摘なすったその精神なり心情なりというものは十分理解して対応すべきものだという考え方でございます。
  31. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それから、同じく事故に関連して申し上げておきたいのですが、去る八月二十八日、西ドイツ南部のラムシュタイン米空軍基地で行われた航空ショーで、イタリア空軍のジェット機三機が空中衝突した。数十人以上の死亡、百人以上負傷、大変な惨事でございました。  それから日本におきましても、五十七年十一月に航空自衛隊の花形チーム、ブルーインパルスのジェット機が航空ショー中に大観衆の目前で墜落、初めて民間人を巻き添えにした事故を起こしましたね。  そのほか、七日は御承知のとおり、陸上自衛隊が宮城県におきまして、林道工事のそばだったそうですが、七四式戦車が発射した砲弾が爆発して、九人があわや大惨事になるのではないか、そういうような報道もございましたとおり、本委員会でも論議を行いましたね。  それで、今のこの潜水艦事故やらいろいろなもの、全部考えてみますと、ショーだとかあるいはもちろん演習、訓練、いろいろなものでございますけれども、もう一度どうでしょうか、これだけの狭い日本の中で、ちょっと遠くの方へ飛んでいった、ちょっと誤って飛んでいっただけで、もう国民が本当にみんなそこにおられるわけでございますから、大変な状況であるということから考えまして、ぜひこのショーだとかそれから訓練、演習も含めてもう一度ここで検討すべきではないか。イタリアにおきましてももう今後はこのショーはやらないと言っておりますし、ヨーロッパにおきましてもそういったところが幾つも出てきておりますので、そういった面も含めて総理としてのお考えをぜひお聞かせ願いたいと思います。
  32. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 ちょうど私が官房長官をしておりました昭和四十六年でございましたか、本委員会で、きょうも自衛隊機が空を飛んでいる、ああ我々の生命財産を守ってくれておるんだなというような気持ちになるべきであって、いつ落ちるんじゃないかというようなことであってはならぬという質問をなさいましたことを、私は今思い出しました。その人の名前も覚えておりますが、それは名前を申し上げることは差し控えさせていただきますが、いわゆる正式に言えば展示飛行、あるいは曲技飛行とかアクロバットとか普通言っておりますが、そうした問題について、新田澤長官就任したその後の初めての閣議におきまして、私に対して、今おっしゃった趣旨のまさに検討をするために、三沢基地における航空祭でこれを行うことはとりあえず延期をした、自分の発想でそういうことを指示したという報告を受けまして、私もまことに適切な措置をされたというふうに理解をいたしておるところであります。
  33. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それから中期防衛力整備計画は、六十一年度から六十五年度までを対象期間として防衛力整備計画が進められております。この中期防以降をどのようにしていくのか、本委員会でもいろいろと論議は行いましたが、総理としての考えというものはどういうものなのか、この際はっきりしておいていただきたいと思います。
  34. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 先ほど角屋委員質問に対しても、いわゆる中期防をつくるに至った考え方を申し述べたところでございますが、これはまさに来年度予算が四年目、したがって、六十六年度以降の防衛力整備のあり方はどうするかということにつきましては、中期防終了までに改めて国際情勢、そして一方は経済財政事情等を勘案してあくまでも専守防衛、こういう基本方針のもとで決定を行うべきものであるというふうに考えておるところでございます。したがって、今具体的な方針について申し述べる段階にはございませんが、当然のこととして私どもとしては、あくまでも専守防衛という考え方に徹した節度ある防衛力の整備ということを基本に置いて研究が始められていくであろうというふうに思っておるところでございます。
  35. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ちょっと時間的に制限がございますので、ほかの問題に移ります。  まず、先ほど角屋委員からも中国訪問に関しての御質問がございましたが、それに関連いたしまして、日中首脳会談李鵬総理から、日中間の最大の懸案である光華寮裁判問題について、中国基本認識にかかわる問題として引き続き重視している姿勢を示し、日本政府の善処を促しての会談があったと報道され、竹下総理もその場での答えとしてはどういうものがあったのか、若干の報道はございますけれども、どのように考えておるのか。私も京都でございます。私の選挙区に光華寮がありまして非常に関心を持っておりますけれども、この問題に関して御答弁をいただきたいと思います。
  36. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 李鵬総理との会談の中におきまして、二国間問題の重要な一つとして時間をかけて話し合いをしたことは事実でございます。したがって、先般の首脳会談では双方基本的な立場をまず述べ合いました。李鵬総理からは、本当に正確に自分でも記憶をしながらの御発言でございましたが、日本の国情を尊重する、本件が最終的に善処されることを希望する、そういう御発言でございました。全般に悪影響を与えるべきでなく、お互いに国情を尊重し合って解決に向けて努力すべき問題であるという認識が一致をしたわけであります。その背景には、日中共同声明、日中平和条約に示されました一つ中国としての立場を堅持して、今後ともこの立場は変わらないということがあるということは事実であります。  そこで、今司法府に置かれておるわけでございますので、三権の立場から、この問題について司法府の審理に影響するような、予見を与えるようなコメントをする立場はやはり差し控えるべきである。先ほど申しました、先生の方でおとりになるにはいささか抽象的というお感じもあろうかと思いますけれども、そこの中で最大限努力を重ねていくべき問題だというふうに整理をいたしておるところでございます。
  37. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 続けて、今度はサハリンの残留韓国人問題に関してお伺いしておきます。  これまで公明党、特に我が党の同僚議員の草川昭三衆議院議員がこの問題にずっと取り組んできたわけでありますけれども、先般、日本を経由してサハリン残留韓国人の韓元洙氏が四十五年ぶりに祖国韓国の土を踏んで妻子との感動の対面をしたということは、総理も御存じのとおりでございます。こういう形で、最近、ソ連当局の許可を受けてソウル・オリンピックを観戦するためとか一時帰国といった形のものができ上がってきておる。そういう中で、ぜひこの問題は日本政府によって――戦時中、当時日本領土であった現サハリンの樺太に労働力として強制連行されたまま現地に置き去りにされた韓国人、これは四万数千人とも言われておりますし、大変なことではないかと考えるわけでございます。人道的責任立場からも、積極的に日本が予算を組んで家族再会のための支援をすべきではないかと思います。今全力でいろいろ頑張っておられる状況というものはわかっておりますけれども、今後も総理としてもう一歩この問題にどう取り組んでいくか、御決意のほどを伺っておきたいと思います。
  38. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 事実関係を十分御承知の上のお尋ねでございます。  従来から機会あるごとに本件の解決について働きかけをしてきて、従来よりは前向きの姿勢が示されるようになって、そして本邦での親族再会のための一時出国が認められるケースが多くなり、そして今おっしゃったように韓国への永住帰国が実現するケースもできた。今後とも粘り強い対ソ働きかけを継続してまいる考えでございますが、本年度から本邦における親族再会に対する支援のための予算措置も講じてきて、一層支援体制を強化しよう。しかし私は、この問題をお答えするに当たっては、やはりこれまで長年やってこられましたボランティアの方々、それから今お話しになりました草川さん初めいわゆる議員懇の方々、これらの努力に対しては心から敬意を表しておるところでございます。したがって、さらに実務者協議というところへ向かっていくことを目下鋭意努力をいたしておるところである、このように御了知をいただきたいと思います。
  39. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 聞くところによりますと、来週外務省日本赤十字社がモスクワを訪問し、サハリン残留韓国人問題の細部について話し合う、このように伺っておりますけれども、概略で結構でございます、その内容をここで明らかにしておいてください。
  40. 谷野作太郎

    ○谷野説明員 事務的なことでございますので、私の方から御答弁申し上げます。  この問題は、先生にもいろいろ御心配いただいておるわけでございますけれども、政府といたしましても、できるだけ早い機会に実務者レベルの会議ソ連政府との間に持ちたいと思いまして、そのような実務者レベルの会議におきまして、第一点といたしましては日本での親族の一時再会のより円滑な実施、第二点は日本に来られましたサハリンの朝鮮人の方々の韓国への一時訪問の実現、第三点にはサハリンにおける身寄りのない方々の韓国への永住帰還の実現、こういった三点につきまして先方とできるだけ早い機会に具体的にお話をしたいというふうに考えまして、先方政府に申し入れておるところでございます。恐らく赤十字の方々がモスクワにお越しの折にもそのようなことについて先方とお話し合いがあるものと考えております。
  41. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 去る八月二十三日、レーガン米大統領は八八年包括通商・競争力強化法、この法案に署名している。新しい包括通商法が発効したわけですね。それで、レーガン大統領は、署名に当たりまして「「包括通商法は米経済の成長に貢献するものだ」と評価しながらも、「米通商代表部に特定の権限を与えたり、輸入課徴金導入などの条項が含まれている」と指摘、適切な運用が必要であるとの考えを示した。」という報道がされております。  そういう中で、日本と米国との間に今後新たな日米摩擦というものが起こってくるのではないか。今まで繊維だ、自動車だ、半導体だ、いろいろなものが摩擦としてございましたが、今度はこういう関税法三三七条にしてもあるいはスーパー三〇一条にいたしましても、知的所有権という問題、日米の法律摩擦というかそういったものが出てくるわけでございますけれども、総理としてこの問題にどう対処されていくのか、率直な御見解を伺っておきたいと思います。
  42. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 レーガン大統領がいわゆる包括貿易法案に署名される際、いろいろなことをおっしゃっておりますのについては、今竹内委員もお触れになりましたが、私どもも読んでみまして、米国憲法の精神からもというような、必ずしも適切でないというような表現にもとれるような御意見については、私もこれが行政当局の運用によって保護貿易主義の台頭を促進するようなことがないような形で運営されていくことを心から期待をしておりますし、その都度その趣旨のことを米行政当局にも働きかけてもおりますし、今後とも働き続けなきゃならない問題であると思っております。  そこでまた、知的所有権問題についても御言及になりましたが、この保護は我が国にとって重要な問題であって、妥当な国際的保護と国際的な制度の調整を目指して多数国間のフォーラムで積極的に推進してきておるところでございますが、今度は日米間の経済関係において本件が持つまたさらなる重要性にかんがみまして、米国との間では日米双方の知的所有権制度、いろいろ違いもありますが、及びその運用について意見交換を行っておる。この問題につきましては、政府部内の調整が重要であります。これまで同様今後とも関係省庁間で十分に協議しながら対米、そして多国間のフォーラム、こういうものに対応していくべき問題であるというふうに考えておるところでございます。
  43. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それに関連してといってはなんでございますが、米大統領選もこの十一月を目指していよいよ白熱というかそういう状況になってきております。そこで、お伺いしておきますが、竹下総理は、アメリカ大統領が選出されたときには就任式に総理みずから御出席されるお気持ちもあるというようなことも伺っておりますが、この際その辺の御真意を伺っておきたいと思います。
  44. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 日米関係の重要性にかんがみまして、もう任期が参りますから次期大統領との間におきましても同様に両方の首脳レベルでの緊密な協力関係を築いていくべきものであるという考えは、御指摘どおり私も考えております。就任式典に行くかどうかという具体的なことになりますと、一月でございますと国会の問題とかいろいろなことが私どもお互い国会のプロとして考えますと考えられますので、お許しをいただければそれに行きたいという表現をするにはちょっと今まだ早いような感じがいたしますので、現時点で訪米計画についての日程はまだ今のところ未定でございますというお答えをするのがきょうのところは適切じゃないかな、こう思ったわけでございます。
  45. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 時間でございますが最後に一問だけ。簡潔で結構でございます。  総理も御承知かと思いますが、六十二年度の防衛費が決算段階におきまして史上空前の規模で、円高の影響といいますか、そういったものがございまして、一%枠内におさまるのじゃないかというような実情でございますね。いろいろそういったものもかんがみ――もともと私どもはこの一%枠は絶対に守るべきである。ここ十年間の数字を 私はここに持ってきたのですが、総理昭和五十三年の防衛費は一兆九千十億円でした。六十三年の防衛費が三兆七千三億円、約倍ですよね、十年間で。そのほかのも調べましたら、文教科学費は三兆八千四百六十二億円でした、五十三年。それが四兆八千五百八十一億円、二六%増です。防衛費と比較すると、防衛費の方は約倍ですね。文教科学費は二十数%。そのほか社会保障関連に関しましては、六兆七千八百十一億円が十兆三千八百四十五億円、五三%増です。公共事業に関しましては、五兆四千五百五十一億円が六兆八百二十四億円、約一一%ですか。  こういうようなことを見てみますと、防衛費のみが大変に突出しておるということは、ここ十年の状況を見てもそうでございますし、最近はまた特に状況としてはひどいものがございましたが、私どもがかねてより申し上げておりますとおり、今後も防衛費はGNPの一%枠を超えてはならない、こういうことを主張しておるわけでございますけれども、総理といたしましてぜひ御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  46. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今の比較は決して間違っていないと思います。私の記憶でございますが、昭和二十一年は防衛費はございませんけれども、一千二百億ぐらいが年間の予算、決算ベースで、総額で一兆を超したのが昭和二十八年、十兆を超しましたのが昭和四十七年というふうにたしか記憶しております。その間の予算総額に対する防衛費の占めるシェアということについての資料は持ってきておりませんが、先生御指摘のとおりであろうと思っております。したがって、いわゆる「今後の防衛力整備について」ということで六十二年一月二十四日に決定しました当面の防衛力整備ということについては、「当面の防衛力整備について」という昭和五十一年十一月五日の閣議決定にかわるものとするが、同閣議決定の節度ある防衛力の整備を行うという精神は、引き続きこれを尊重するものとするということに決めました中に、私どもは、あの際そうしたものが決まったということを絶えず念頭に置くことによって節度というものを守っていかなければならぬという方針は今後とも持ち続けたいというふうに思っておるところでございます。
  47. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 終わります。
  48. 竹中修一

    竹中委員長 次に、和田一仁君。
  49. 和田一仁

    ○和田委員 総理、過日訪中をされてきた総理、そしてまた近く訪韓される総理でございます。あなたは、国際社会の中で我が国が国際社会の一員としての責務を果たすことが大変な使命であると常々お考えになっておられるようでございまして、特に世界平和に寄与できる日本でなければならない、こういう思いがおありのようでございます。そのためにはもちろん我が国安全保障をおろそかにしておってはいけない。世界平和への寄与のまず第一は、まずみずからの国の安全保障をしっかりとすることである。自分の国が紛争の原因になるような種をまくようなことがあってはいけないことでございまして、そういうことは断じて避けなければなりません。  そこで総理、今世界は、INF全廃の条約が発効したり、あるいはソ連がアフガンから撤退を開始をしたり、またイラン・イラク戦争も八年ぶりの停戦という状態になりまして、カンボジアやアンゴラの紛争というものも終えんの方向にあるわけでございます。このあり方、こういう状況を世界的な緊張緩和の流れが始まったというふうに御理解になっておられるのかどうか。あわせて、極東アジアにおける情勢というものはどんなふうに受けとめておられるか。訪中をされ、そしてまた訪韓をされようとされておる総理にこの基本的なところでお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  50. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私、就任以来世界に貢献する日本ということを言ってきておりまして、一つが平和に対する協力であり、二番目が文化交流であり、三番目がいわゆるODA等経済協力である、こういう考え方で今日に至って努力をしておるわけでございますが、その中で平和への協力ということ一つとってみますと、例えば、今御指摘もありましたが、アフガンで金だけでなく文民を派遣しますとかあるいはイラン・イラクの紛争解決に当たりましても文民の派遣等を決めておる、こういうところでございます。そしてカンボジア問題は、何と申しましょうか、まだ十一月のパリにおける会談等の推移を注目して見守っておるところでございますが、いずれにせよ、この間の中ソの外相会議においても一つ議題となって、ある部門は共通認識がなされたというような、総合して見ますとINFを含めすべて喜ばしいことであるというふうには私自身思っております。  ただ、現実問題として、さはさりながら、今日の例えば軍備管理・軍縮につきましても、同じレベルでお互いがダウンしようというので直ちに全部パアにしろという話ではないわけでございますだけに、やはり力の均衡というものが現実の問題として存在しておるということについては、いつも現実的にやはり厳しくこれを見詰めていなきゃならぬ課題だというふうに自分の心にも言い聞かしておるところでございます。したがって、一つのムード的なものが現実問題としてそれぞれの事態としてあらわれて、それが進んでいくことを期待をいたしておりますが、ただムードだけの中でみずからを律しておってはならぬということは、常日ごろみずからにも言い聞かしておるところでございます。
  51. 和田一仁

    ○和田委員 現実にはそういう流れがあるけれども、ムードだけではいけないとおっしゃられました。極東においてもそういう意味でどういう御理解をされておるか。きょうは防衛論議をしておるわけでございますけれども、米ソも第三国に対するいろいろな軍事関与をだんだん減少させていこう、こういうような動きが見えております。この背景にはやはり相当大きな軍事力負担というものがその背景にあることも見逃せないと思うのですね。そういうことを前提としながら我が国防衛のことを考えますときに、こういった日本防衛計画の基本にございます防衛大綱、この防衛大綱はもう当然これは国際情勢の分析がその前提にあるものと私は思います。ですから、この国際情勢の変化があったのかないのか、この認識が変わってないのか、その辺をお伺いした上で、変化しているならばどうするのか、変化していないならばあの防衛大綱のままでよろしいのかをお伺いしたいと思います。
  52. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私自身、いわば先ほど御指摘なさいましたINFにしても、アフガンあるいはイラン・イラク戦争、そしてカンボジア問題、そういう変化はあっておるというふうに現実これを認めております。それから、中ソの外相会談に先立って認識を私なりにただしてみましたところ、中ソ関係は三つの問題があった。すなわち、アフガンとカンボジアと国境問題である。それらの問題がいわば解決しておる問題もあるわけでございますから、外相レベルの話し合いなどというのは進んでいくであろうというお話でございましたが、報道関係等を見て、そういうことになっておるんではないかというふうに思います。  が、しかし一方、一九八七年からのいわば軍事配置等を見てみますと、率直なところ、それがグラスノスチとかあるいはペレストロイカ、実際はペレストロイカは国内問題でございますが、言葉からする国際的ペレストロイカというようなものが現実の姿としてそういう軍事配置の点等については明瞭に出ておるとは私はとても言える状態ではないではないかというふうに思うわけでございます。したがって、国際情勢の変化、そのときどきのいわゆる経済財政事情等を勘案して防衛計画というのは決めていくのは当然のことでございますが、防衛大綱そのものを見直していく時期であるというふうには、私は今そういう認識には立ち至っておりません。
  53. 和田一仁

    ○和田委員 大綱そのものの見直しの時期ではない、こういう御見解をいただきました。それでは、そこから先をもう一つお聞きいたします。  今この防衛大綱のもとに進められている中期 防、これが六十五年に達成をされるという計画で進んでおるわけですが、その中期防後の防衛力整備のあり方についてお尋ねをしたいと思います。  きょう政府安全保障会議をお開きになったことと思います。私は先国会の内閣委員会で瓦前長官にポスト中期防についてお尋ねをいたしました。そのときに長官答弁は、現在の中期防のような中期的な防衛力整備計画をつくることが望ましい、それは安全保障会議に諮って年内にも着手してまいりたいという御答弁をいただいたわけでございます。きょうは午前中に安全保障会議があったと伺っておりますけれども、いかがでございましたでしょうか。この中期防の問題についての新しい姿勢がお出になったかどうかをお尋ねしたいと思います。
  54. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 御指摘なさいましたとおり、今朝八時からと八時半から安全保障会議及び議員懇談会、これを行ったわけでございます。主要な議題は、まずは我が国を取り巻く軍事情勢、それから自衛隊のそれに対する現状、それからもう一つは概算要求、八月三十一日締め切ったわけでございますから、この昭和六十四年度防衛関係予算概算要求のうちの主要な事項についての説明を受けてきたわけでございます。したがって、きょうのところは次期防についての話し合いはいたしておりません。  この問題については田澤長官ともいろいろまたお話し合いしなければならぬ問題と思っておりますが、瓦前長官が念頭に置いておられたことというものは、絶えずいろんな検討はしておるわけにいたしましても、大きく不見識であるとか間違っているとかという筋のものではないんじゃないかなと思っております。  私自身が第四次防のときまで知っておりまして、それから単年度が続いて、その後、中期業務見積もりになって、国会での答弁は、予算要求に当たっての防衛庁部内の一資料にすぎませんというような説明をしてきましたが、これではいけないというので、私自身も主張して計画があるべきだということでございましたので、私の念頭の中にはやはり中期計画というものはいいことだという気持ちは今でもございます。
  55. 和田一仁

    ○和田委員 先ほどの同じような御答弁の中にあった、初めに防衛費の一%枠ありきではなくてやはり計画ありきでないといかぬというお答えとも共通するんじゃないかと思うのですね。そういう意味で、やはり中期防がそろそろ達成される時期にあるだけに、こういった時期に開かれた安全保障会議でまだポスト中期防の計画がきょうはなかったということはちょっと意外だなと思うのです。こういう当方式を踏襲していかれるのかあるいは総額明示方式でいくのかという点も大変大事だと思います。ですからお聞きしたわけでございまして、きょうはもっとほかにも聞きたいものがございますので、その点についてもまたもしお触れいただければお答えをいただくことにして、先の御質問をさせていただきます。  また近く訪韓される、十六日の夜ですかということでございまして、訪韓される韓国の方からの報道によりますと、オリンピックが開かれるわけですけれども、我が国が今北朝鮮に対してとっている制裁をオリンピック前に日本政府は解除するのではないかなというようなことが伝えられておるわけですけれども、きのうも小渕長官はここで、この内閣委員会で制裁解除の条件というのは整うと見ておられるような答弁がございました。朝鮮半島をめぐる情勢の変化は十分認識しているというような御答弁があったのですが、総理自身同様の御見解でしょうか。
  56. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 小渕長官は内閣官房長官でございますから、内閣のスポークスマンとして小渕長官が申しましたことは私が申したこととお受けとめいただいても、それは当然のことであろうと思っております。確かに盧泰愚提言等を初めとしていろいろな変化が出ておるというのは私も承知をいたしております。しかし、いわば制裁解除の問題につきましては、現在のところ従来と同じ方針で、今情勢次第によってはどうしようとかいうことを部内で協議して決定しておるという状態ではございません。
  57. 和田一仁

    ○和田委員 くどいようですが、もう少し聞かせていただきます。  今社会党の山口書記長が北朝鮮に行っておられますけれども、政府としては山口書記長に、乗組員の釈放かあるいはその交渉に応じるか、あるいは応じないまでも山口書記長と抑留されているというか乗組員の二人との面会がオーケーになるかどうか、こういうことを書記長がお帰りになって報告をお聞きして、その反応を見ておられるように伝えられているのですけれども、こういったことだけが条件なのかどうか。これは第十八富士山丸のことですね。私ちょっとそれを申し落としましたけれども、第十八富士山丸の乗組員の抑留の問題。これだけがこの条件として整うか、あるいは何かの情報があった場合には直ちに解除に踏み切るというような報道もあるわけなので、そういう反応をごらんになって、十六日においでになる前にそういうことがはっきりしたら訪韓された際に総理はおっしゃるつもりなのか、これはその訪韓のタイミングとは全然別個のものと考えておられるのか、お聞きしたいと思うのです。
  58. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、今度の訪韓そのものは、先生の党からも御参加をいただいておる日韓議連等の方もおられますが、オリンピックの開会式を祝福するというのがこれは第一義でございます。今の山口書記長、その前は田邊書記長、土井さん、それでずっと深田さんという方が非常に事務的なことをやっていらっしゃいますが、私も幹事長時代から関心は持っておりますが、制裁解除とその問題と直接結びつく問題ではないというふうに私は考えております。
  59. 和田一仁

    ○和田委員 もう一つお聞かせいただきたいと思います。  先ほど世界平和への寄与には金だけではなくて人も出す、アフガンやイラン・イラクにも人を、文民を出すのだというお話がございました。アフガンにしてもイラン・イラクにしても、軍事紛争というか軍事介入というか、そういうことの後始末でございまして、当然これの監視団の中には事務部門と軍事部門がございます。今総理がおっしゃったのは、そのうちの事務部門に外務省から人を派遣する、こういうことでございますけれども、この軍事部門のバランスをいろいろ聞いてみますと、列国が派遣をしているのは制服組がはるかに多いということでございます。いわゆる専門集団がその撤兵やら停戦の状況を監視しているということではないかと思うのです。  そこで私は、我が国自衛隊もそういう軍事専門集団として、これは何も戦争をしに行くのでもなければ海外派兵でもない、一人の役人としてこれを派遣するということでは何ら法的に抵触するものではないと思うのですが、それをおやりにならないのは何かそういう心配があるからかどうか、これが一つ。  それから、これと似たようなことになるわけですが、先般外務省が国際緊急救助隊をおつくりになりました。私はこの前も中曽根総理にもお聞きしたわけですけれども、これが十六省庁で構成されてこういう立派な救助隊ができて、今まで日本は世界でいろいろなSOSがあったときにも、ただお金を出すというだけで非難をされていたのを人を出して汗を流して救助しよう、こういうことになったことは大変結構だと思うのです。ただ、ここになぜ防衛庁を十六省庁の中に入れないのか。入れてもだめだと思うから入れないのか、入れると誤解を生ずるとお考えになっているのか。これも私は、南極派遣をなさっているのと同じような意味で、平和目的のために、まして人命救助のために自衛隊をお使いになるということは決してちゅうちょする必要はない、こう考えてくどくどとお尋ねしているわけなんです。  そこで総理、今ビルマで大変な状態になりました。在留邦人二百人以上、もっといるのかもしれません、定かな数字は知りませんが。ああいう状態に置いておけないというので外務省は帰国を勧奨した、あるいは命令したかしておりますけれど も、なかなか帰る手段がない。ストライキのために飛行場は使えないということがある。そのときに米軍の軍用機なら、飛ぶから乗っけていってもらうのだということになりかねないわけですね。そういうことも含めて、海外におけるこういう邦人の救出であるとか、あるいはそういうこととは関係なく、海外のどこかの国で大災害が起きたときに飛んでいって救助するというようなことのために、大変な訓練をして立派な装備を持っている自衛隊を何とか平和裏に使うというようなお考えがあるかどうか、この点をお尋ねして、お答えをいただきたいと思うのです。  まず、人を出すというのに文民だけでなしに制服を出す気はないかどうか。そして、この救助隊に関連して、こういう邦人救出にも総理自衛隊の力を使っていこうというお考えがあるかどうか。未来ないよとおっしゃるかどうかをお聞きしたいと思います。
  60. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今まで申し上げておるのは文民を派遣する、こういうことに整理整とんをしておるわけでございます。  今おっしゃいましたような議論は、例えばペルシャ湾の機雷排除の問題のときも十分政府部内で、これは今の立場ではございませんでしたけれどもしたこともございます。それから救助隊の問題のときにも、これもやったこともございます。しかし現状この文民派遣の場合、例えば選挙監視のためとかあるいは運送、通信、そういう問題とかいうことになりましても、ある国は軍隊の通信部隊が行って大変能率よく機能したとかいうような話を承りますときに、救助隊の問題についてももっともっと検討していくべき課題が多いな、こういうことをいつも感じておるわけでございますが、憲法、自衛隊法等、いろいろな角度から検討をいたしてみまして、今直ちにいわゆる自衛隊員をそういう目的で派遣するということはしないという方針の上に立っていろいろな苦労をしておるところでございます。
  61. 和田一仁

    ○和田委員 憲法、自衛隊法その他を検討してとおっしゃいましたが、憲法まで検討する必要はなく、自衛隊法の一部を見直していただければ十分可能なことを申し上げておきたいと思うのです。  税制問題も大変大事な問題だと思いますけれども、国民生活の根幹にかかわるのが国の平和と独立の問題でございまして、ましてや国際社会で尊敬に値する国だと思われるような立派な国づくりを総理は目指しておられるわけで、ぜひひとつ頑張っていただきたいと思うのです。竹下内閣は長い歴史の一こまだとさっき大変謙遜しておっしゃいましたけれども、決してそんなことはなくて、相当長いのじゃないかなと私は予想しております。たとえそれがどういう期間でありましてもやはり防衛の中断ということはあり得ないのですから、ぜひひとつ二十一世紀のふるさとをどう守るかという大変大事な防衛総理はどういう心情でお考えになっているか最後にお聞きして、時間が参りましたので終わらせていただきます。
  62. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 現実問題として、今いわば米国の経済力等が相対的に弱った、というよりも相対的にほかが上がったとも言えるかもしれませんが、相対的に一九四〇年代後半から五〇年にかけてのような力はない。そうすると、先進国の中におけるいわゆるバードンシェアリングという問題が私はやはり大きな課題になってくるであろう。その場合、我が国として果たすべき役割というのはいわゆるミリタリーの問題以外の点においてたくさんあるんじゃないかということも総合した、世界に対する平和への貢献というものを一つの基調としておきたい。いま一つは、やはり気概としてはみずからの国はみずからが守るという気概の中に、安保条約が効率的に機能していくための工夫は絶えず続けていかなければならない。それが、いわゆる装備等については近代化であろうし、あるいはまた練度等の向上も必要であろうしという、この局限した我が国の問題とそして世界全体の平和に寄与する問題ということについて両面から進めていかなければならないではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  63. 和田一仁

    ○和田委員 ありがとうございました。終わります。
  64. 竹中修一

    竹中委員長 次に、浦井洋君。
  65. 浦井洋

    ○浦井委員 私は、潜水艦なだしお衝突事故の問題に絞って、ひとつ竹下総理に所見をお伺いしたいのであります。  潜水艦なだしお」と第一富士丸衝突事故では「なだしお」の責任が極めて大きいということが、その後の各セクションといいますか、そういうところでの原因究明であるとかあるいは捜査によって一層明らかになってきておる。山下前艦長といいますかの責任は言うまでもないことでありますけれども、私はこの事故の根本原因というのは、海上自衛隊の軍事優先、人命軽視という本質にあるというふうに指摘をせざるを得ないのであります。  そこで、九月二日に横浜地方海難審判理事所が横浜地方海難審判庁に海難審判開始の申し立てを行った。これは総理も御報告を受けておられるだろうと思うのですけれども、この申し立てによっても、潜水艦なだしお」に主な責任があることははっきり出ておると私は思うのです。しかも、ここでは山下前艦長だけではなくて、横須賀基地の全潜水艦を統括する第二潜水隊群も被告に相当する指定海難関係人とされておって、この第二潜水隊群に対しては、この申し立てによりますと、「直属艦船に対し横須賀港第五区付近における航行船と進路が交錯するときの安全航行について指導が十分でなく、かつ、海難発生時における通報について指示が徹底していなかった。」ということを指摘しておる。これは明らかに自衛隊組織の責任を指摘しておると私は思うわけであります。これはかつてないことなんですね。自衛隊が組織としてその責任を指摘されたということはかってないことなんです。  そこで、総理にお尋ねしたいのですけれども、総理は言うまでもなく三自衛隊の最高責任者であります。その総理の現時点におけるこの事故に対する御所見をひとつお伺いをしたいのであります。
  66. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 所感という形におきましては、今般の事故に関連して、私は、連合審査の場でございましたか、海上自衛隊の隊員がとった措置はこれは法令、規則に違反しているといったものではなく、その部署部署において精いっぱいの努力をしたものであったという報告を受けておって、そのことは私として理解をいたしておりますということを申し上げましたのが、これが連合審査における当時の私の申し上げたことでございます。  それで、海難審判等によって今これが究明されておるということになりますと、これが公正な究明が行われていくというのは当然のことでございますので、私は、それについて予見を申し上げるような立場は差し控えるべきである、公正な究明がされるべきものであるとまた信じておると言うにとどめるべきであろうと思っております。
  67. 浦井洋

    ○浦井委員 その前段は問題でありますから後で総理にまた質問させていただきますけれども、後段の審判の問題でありますが、いよいよ十月三日からそれが始まるわけなんです。そうすると、その際に海上自衛隊にもう何も隠すものはないわけであります。何も隠すものはないわけなんですから、当然全面的にその審判に協力せよというふうに総理指示をされますか。
  68. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この海難審判については十分な審議が尽くされる、これは当然なことでありまして、その結論が早期に得られて事故原因が解明されていくということは心から期待をするところでございますので、当事者である自衛隊といたしまして、先ほども申し上げましたように、この究明については最大限協力をするのは当然のことであるというふうに思っております。
  69. 浦井洋

    ○浦井委員 そこで、さっきの総理答弁の前半の問題でありますけれども、ここが問題でありまして、少し事故を振り返ってみますと、七月二十三日の事故直後、この深夜には、きのう我が党の東中議員が指摘をいたしましたように、佐藤潜水 艦隊幕僚長は、「なだしお」の回避する時期が遅かった、こういうふうに言っておるわけですね。ところが、七月二十四日になると、海自の東山幕僚長はその原因について、今総理が言われたように、山下艦長はなし得る最善の措置をとっていたと明らかに変わっておるわけなんですね。だから、こういうふうに言えば、いかにも潜水艦なだしお」に過失責任はなかったんだ、むしろ衝突の原因は第一富士丸にあると言わんばかりの態度をとっている。それから東山さんだけではなしに、他の海自の幹部も記者会見などで同じような態度をとり続けている。それを受けた格好で、総理も、七月二十八日の集中審議であるとか予算委員会というような場で今言われたように、「なだしお」がその場その場でとられた措置について、法令や規則には忠実であって、間違った措置はとられていない、こういうふうに答えておられて、今もそのまま来ておるわけですね。  そこで私、お聞きしたいのですけれども、今日の時点でなお事故原因について、潜水艦なだしお」が法令、規則に違反することはなかったというふうに考えておられるのかどうか、その点をはっきりとお答え願いたいと思います。
  70. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 それこそ海難審判で厳正な審査が行われておることでございますので、この法令、規則等の具体論について私が言及することは差し控えるべきものであるというふうに考えております。
  71. 浦井洋

    ○浦井委員 そう言われるだろうと予想しておったわけなんです。  さらに、「申立のお知らせ」という文書によりますと、海難審判理事所の「申立のお知らせ」では、もうはっきりと、「なだしお」が「第一富士丸の進路を避けるのが遅れた。」こういうふうに指摘しておるわけなんです。こういうような申し立てがなされた今日の時点でも、なお総理は今みたいな答弁を繰り返されますか。
  72. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 海難審判庁といういわば第三者機関におきまして厳正な審査が行われておる際に、私は、今のようなお答えを繰り返すのが当然のことであろうというふうに考えております。
  73. 浦井洋

    ○浦井委員 そこが問題なんですよね。総理は予見をもう与えておられるわけなんですよ。総理が東山海幕長などの制服組の報告をうのみにされたのか、同意をされたのか、あるいは手直しをされたのかわかりませんけれども、その時点では、事故直後の海上保安庁の調査もまだ進んでおらない、こういう段階で、今のようなことをもう既に言われておる。「なだしお」のとった措置は法律、規則に基づいて正確であったと思うというふうに言われておる。こういう見解を表明して、今日の時点でもこの見解を引き続いて持っておられるということは、「なだしお」にはもう責任がないんだという方向に、さっき予見と言われましたけれども、そういう方向にこそ予見を与えるものだと私は思うのですよ。だから、総理の今の御答弁やらあるいは今まで続いてきた見解、こういうものが、さらに言えば海上自衛隊原因究明の作業であるとかあるいは海上保安庁の捜査にも非常に重大な影響を与えてきたのではなかろうか、これからも与えかねないのではなかろうかというふうに私は思うのです。  だから、今までずっと言われてきたこと、それを一歩踏み込んで、はっきりとあの点は私は取り消しますということをここで、この場で言われるべきだと私は思うのです。総理、どうですか。
  74. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 重ねてくどいようでございますが、厳正な審判が行われるときに、私は、予見を与えるようなことを言うべきでない、こういうことは今後とも貫いていこうと思っております。いわばこの二十三日、そして私も二十三日から逐一報告を聞いておりましたが、自衛隊の最高監督責任者として、その報告そのものについては、私はつかさつかさにおいて一生懸命やっておるということを信頼すべきは当然のことであるというふうに今でも思っております。
  75. 浦井洋

    ○浦井委員 なかなか総理は見解を変えられないわけなんでありますけれども、私は、今回の事故というのは、海上自衛隊潜水艦の機密を保つために、このことが第一義的であって、それで人命軽視ということもあえてやっておる、そして総理のお言葉を使えば、さまざまな法令や規則の違反を行っていることは極めて明らかだと思うのです、もう今日の時点で。ところが、今ずっと総理が言われているように、総理は海幕長の報告に基づいて、法令や規則に基づいて「なだしお」は最善を尽くした、こういう見解を持ち続けておられるということは、今の時点では非常に重大な問題だと言わざるを得ないわけなんです。  総理自衛隊の最高責任者として一体これは資格を問われる問題ではなかろうかと思うのですが、それでも総理は前言を翻すという御意思はございませんか。
  76. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そもそも国民の財産、生命を守るという立場にある者は、人命最優先という考え方を貫くことは当然のことであります。したがって、基本的にまず、人命軽視、軍事優先というような思想はあるはずもなく、あるべきものでもないという考え方に立っておるわけであります。私があの時点で報告を受けたということについての私の所感は、今でもその時点においての所感はそのとおりであるというふうに思っております。
  77. 浦井洋

    ○浦井委員 人命最優先ということを今総理は言われたのですけれども、そうなっておらなかったのでしょう、現実は。そこのところなんですよ、私が言うておるのは。だから、海難審判理事所の申し立てが指摘しておるように、今度の事故は艦長の責任にとどまらず、自衛隊の組織の問題を問うておるというふうに私は指摘をしておる。これは極めて重大な問題なんです。冒頭私が指摘したように軍事優先、今総理も言われたのですけれども、軍事優先、人命軽視の自衛隊の本質にかかわる問題がここにちゃんと出ておるわけなんです。  だから、私は最後にもう一遍、しつこいようですけれども、総理の見解あるいは反省、もう一つ言えば反省的見解をここできっぱりと述べていただいて、それで質問を終わりたいと思います。
  78. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は、責任のいかにあれ、一方の当事者が自衛官であるということについてはまことに申しわけないという気持ちを率直に申し述べたことがございます。そうした気持ちは今日もございます。しかしながら、あの時点においてそれぞれの部署部署において一生懸命みんなが努力して、それに対する報告というものについては、あの時点の所感は決して間違ったものではないというふうに今でも考えております。
  79. 浦井洋

    ○浦井委員 総理の資格を問われるような重大な問題について見解をお変えにならないということは甚だ遺憾なことであるということをはっきりと申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。以上であります。
  80. 竹中修一

    竹中委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  81. 竹中修一

    竹中委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。月原茂皓君。
  82. 月原茂皓

    ○月原委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、賛成の討論を行います。  それに先立ち、先般の不幸な出来事によって亡くなられた方々及び御遺族に対し、心から哀悼の誠をささげるものであります。  さて、INF全廃、アフガンからの撤退開始、イラン・イラク戦争の停戦等の動きはあるが、今日、国際社会においては、核兵器を含めた力の均衡に基づく抑止が平和と安定を支えていることも冷厳な事実であります。ゴルバチョフ書記長登場後、ペレストロイカ政策が推進されているが、軍事ドクトリンの実質的変更も見られず、また、国家の人的、物的資源の軍事的分野への配分にも変化は見られません。INF全廃にしても、アフガンからの撤退にしても、純軍事的に見て、ソ連軍 部がそれを選択せざるを得ない理由があったからであります。また、一見軍事ドクトリンの変更のように見えるものも、装備の著しい近代化が作戦、運用面に反映したにすぎません。我が国周辺においても、極東ソ連軍は質量両面にわたり増強され、これに伴う行動も活発化しています。  このような厳しい軍事情勢のもと、国の平和と安全を確保するため、日米安全保障体制を堅持し、自衛のため必要な限度において質の高い防衛力の整備を行っていく必要があることは論をまちません。それが結果的には、東西両陣営間の軍事バランス面で自由主義陣営諸国の安全保障の維持にも寄与し、アジアひいては世界の平和と安全に貢献するものであります。国際社会において揺るぎない地位を占めるに至った我が国の当然の責務でもあります。国際社会で真に理解と敬意を得るのは、自国及び国益を守る強固な意志と能力を持った国家であることは歴史の認めるところであります。  今回の改正は、装備の配備による海空自衛官の増員、日米協力推進のための統幕自衛官の増員、効率的隊務運営のための航空自衛隊組織の改編、後方整備のための予備自衛官の増員を内容とするもので、極めて妥当なものであると考えるのであります。  改めて申すまでもなく、我が国の平和と安全は防衛力整備のみで全うされるものではありません。政府に対し、今後とも国民防衛問題に対する理解と支持のもとに、日米安保体制を堅持し、さらに有効で効率的な防衛力の整備に努め、さらに経済援助、国連の監視活動等に積極的に参加し、アジアの、ひいては世界の平和と安定に大きく貢献されることを要望するとともに、特に自衛隊員諸君に対し、今回惜しまれつつ辞任された瓦前長官の意を酌み、田澤長官のもと、崇高な責務に一層邁進されんことを切望して、私の賛成討論といたします。(拍手)
  83. 竹中修一

    竹中委員長 次に、田口健二君。
  84. 田口健二

    ○田口委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  最近における国際情勢は、昨年末、米ソ首脳会談においてINF全廃条約の歴史的な調印が行われ、本年六月に発効いたしており、さらに両首脳間において、戦略核の半減、地域問題等で交渉を続行することなど、米ソ対話路線の定着化が見られる中で、アフガニスタンからのソ連軍の撤退、イラン・イラク紛争の停戦など、世界情勢は軍縮そして平和へと大きく動いているのであります。  しかるに、竹下内閣は、さきの中曽根内閣におけると同様に、ソ連の軍事力の増強を最大のよりどころとし、中期防衛力整備計画の達成を最優先課題としつつ、一層の防衛力増強を推し進めようとしています。  このような平和憲法の理念に反する政府防衛政策は、米軍のトマホーク搭載艦船の母港化やこれに伴う核持ち込み疑惑、イージス艦導入などによる米海洋戦略への加担、FSXの共同開発などの武器技術の日米協力、SDI研究参加などによる非核三原則の空洞化などが懸念される中で、今や完全に米国の対ソ戦略に組み込まれ、我が国を核戦争の脅威にさらすものと言わなければなりません。  さらに、政府は、昨年一月防衛関係費の対GNP比一%枠を撤廃して以後二年続けて一%枠を突破させ、年々着実に増額させ続けているのであります。  先般の遊漁船第一富士丸潜水艦なだしお」の衝突事故は多数の死者が出るという大惨事となりましたが、このとき改めて自衛隊の体質そのものが国民に厳しく問われるところとなりました。  以上指摘してきたとおり、円高不況、行財政改革の厳しい環境下で国民生活は大きく圧迫され、さらに重い負担が強いられようとするときに、防衛関係だけ特別扱いしようとすることは納得しがたいところであります。  本改正案は、自衛官の定数増、予備自衛官の増員、航空自衛隊の組織の改編であります。これは、自衛隊が米軍の補完的役割を担いつつ、みずからの規模と能力においても際限なく増強しようといたしており、このような軍拡路線を盛り込んだ本改正案には重ねて強く反対することを表明して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  85. 竹中修一

    竹中委員長 次に、井上和久君。
  86. 井上和久

    ○井上(和)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行うものであります。  この一九八八年は、ソ連における八八年国防費の据え置きやアメリカの国防費の三年連続の実質減、なかんずく、INF全廃条約の実施など、軍縮への歴史的第一歩を歩み始めた画期的な年と言えます。  軍縮は非現実的であるという今までのタブーを打ち破り、初めての核軍縮を実らせたこのINF全廃条約は、世界の多くの人々に軍拡よりも軍縮推進への期待を高めました。  我が国においても今日、次は西太平洋を初めとした海の核軍縮を推進しようとの世論が広がっております。  しかし、先月、竹下内閣が初めて発表をした昭和六十三年度版防衛白書は、世界の構造は力の均衡維持に変化なしとしつつ、ソ連の軍事力増強も変化は見られないとする旧態依然とした認識となっております。こうした情勢分析に驚くとともに、今日、大きく変容する世界の構造変化を我が国政府はリアルに掌握しているのであろうかとさえ思うのであります。  そうした国際情勢認識のもと、防衛白書は、我が国防衛課題として、防空、着上陸侵攻の対処及び海上交通の安全確保のため、対潜戦(ASW)を初めとした諸能力発揮の態勢整備を執拗に述べております。  そして、シーレーン、洋上防空等の整備、運用を重視しなければならないとして、海上防衛力の整備のため購入費一千数百億円というイージス艦の必要性を強調しております。これは、今後、自衛隊のシーレーン、洋上防空の装備がより一層拡大していくことを意味しており、現在の中期防衛力整備計画に続くポスト中期防衛力整備計画では、防衛力の増強が一段と強化されることとなるのは明らかであります。  我が党は、防衛費のGNP一%枠撤廃はもちろんのこと、現在の中期防、ポスト中期防による防衛力の拡大には断固反対をいたします。  恒久平和主義を国是とする我が国は、周辺諸国に脅威を与える軍事大国に断じてなってはなりません。そのためには、GNP一%枠、非核三原則、武器禁輸三原則、宇宙の非軍事利用などの平和原則をあくまで遵守すべきであります。  以上の基本立場から、我が党は防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対をするものであります。(拍手)
  87. 竹中修一

    竹中委員長 和田一仁君。
  88. 和田一仁

    ○和田委員 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、一括して賛成の討論を行うものであります。  今回の法改正は、我が国防衛力の質的向上に資するものであり、かつ必要不可欠のものであると確信いたします。しかし、私はここで、あえて次のことを申し上げたいと思うのであります。それは、自衛隊を効果的に運用し、我が国防衛を全うするためには、自衛隊に対する我が国民の信頼がぜひとも必要であるということであります。  その意味で、先般の潜水艦衝突事故とその後の対応は、営々として積み重ねてきた自衛隊に対する国民の信頼を失うこと大きく、まことに遺憾でございます。年間五ないし六百件以上に及ぶ災害に出動し国民に感謝され、六十年御巣鷹山の旅客機墜落惨事の際の生存者救出に対する挺身的な活動は国民に深い感動すら与えました。政府は、今回の事故原因を徹底的に解明し、その再発防止に万全を期すべきであります。それこそが信頼回復への第一の道であります。  同時に、見逃すことができないのは、最近の自 衛隊においてこの種の事故、すなわち人為的なミスによる事故が続発しているということであります。その理由は幾つかありましょうが、最大のものは、装備の更新や近代化に隊員の練度が十分対応できていないことではないでしょうか。装備の更新や近代化はもとより大切ですが、これらを動かすのはやはり人間であります。したがって、装備を動かす隊員の練度や士気を高めることも、また極めて重要であります。  しかるに、最近の自衛隊には、装備の更新や近代化に比べ、隊員の練度向上などの施策が十分に整備されていなかったのではないかのうらみがあります。毎年優秀な人材を確保し、彼らに装備の更新などに対応した十分な訓練を行い、練度を維持向上させていくことは、言うべくしてなかなか困難なことではあります。狭い演習場、限られた訓練時間、そしてやがて急速に減少していく若年人口と、多くの制約が山積しております。  しかし、それがいかに困難な課題でも、自衛隊の練度と精強さを維持し、国民の信頼を回復するためには、どうしても避けて通ることは許されません。こうしたことにこそ英知を集め、必要な予算もつぎ込むべきであります。そのことをあえて申し上げまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  89. 竹中修一

    竹中委員長 次に、柴田睦夫君。
  90. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対の討論をいたします。  今回の防衛二法は、海、空、統幕要員の自衛官を初め、予備自衛官の大幅増員、航空自衛隊の骨格組織の抜本的改編を内容としています。  これは、アメリカの海洋戦略に基づいて、日米共同作戦体制が飛躍的に強化されているもとで、自衛隊が米軍のアジア・太平洋戦略の補完部隊として、三海峡封鎖、日本海、オホーツク海の制圧、西太平洋全域の制海・制空権の確保という任務を遂行するため、一層の増強を図るものであり、我が党は断じて容認することはできません。  一九八七年に策定された日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインは、日米間の軍事戦略文書となり、これに基づいて米軍の有事来援研究を初め、日米共同作戦、シーレーン防衛、極東有事研究、インターオペラビリティー研究など、さまざまな研究が実行に移されています。これはまさに、自衛隊がアメリカの戦争に参戦する体制づくりを本格的に準備するものであります。海上自衛隊潜水艦なだしお」の衝突事故も、こうした状況のもとで引き起こされたのであります。最近、日米合同演習がかってなく実戦的な様相を呈してきたのもそのあらわれであります。  この四月、統合幕僚会議は、日米統合演習の強化を盛り込んだ初めての中期統合訓練構想を明らかにしています。この構想は、日米統合演習を本格化し、チームスピリット(米韓合同演習)に見るような大規模な軍事演習の実施をねらったものであります。  こうした情勢のもとで提出された今回の防衛二法改正案は、重大な内容を含んでいます。  第一は、海空自衛隊員等の増員であります。  この増員は、主要装備である護衛艦、潜水艦、F15などの新たな配備に伴う要員確保にあり、一千海里シーレーン防衛、洋上防空体制確立の一環であります。  第二に、予備自衛官の大幅増員は、有事の際、基地防空、後方警備、輸送などの任務にとどまらず、即応予備戦力として第一線部隊に投入するものです。  陸上自衛隊では、自衛隊OBからだけでなく、一般民間人からも募集できるようにするなど、予備自衛官制度を改定し、大増員の構想までまとめていると言われています。今回の増員もこうしたことを背景としたもので、継戦能力の強化を図るものと指摘せざるを得ません。  第三は、航空自衛隊の抜本的な組織改編で、航空総隊とそれを支える輸送、補給の各種部隊の組織を機能別に再編、強化するものです。それは、部隊のより効率的な運営を図り、有事には航空総隊が最大限の戦闘力を発揮できるようにし、有事即応態勢を一段と強化するものです。  以上指摘したように、本改正案は、日米軍事同盟のもとで、日米共同作戦体制強化の推進、違憲、国民弾圧、対米従属の軍隊をますます増強するもので、絶対に許すことはできません。  中距離核戦力(INF)全廃条約の調印など、世界が核軍縮の流れにある中で、今日、すべての国民が求めているのは軍備拡大ではなく軍縮です。  アメリカの戦争に国民を巻き込む日米軍事同盟を破棄し、独立、非核、非同盟、中立を目指して進むことを重ねて強調し、防衛二法案の反対討論を終わります。(拍手)
  91. 竹中修一

    竹中委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  92. 竹中修一

    竹中委員長 これより採決に入ります。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  93. 竹中修一

    竹中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 竹中修一

    竹中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  95. 竹中修一

    竹中委員長 次回は、来る十三日火曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十五分散会