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1988-09-08 第113回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年九月八日(木曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 宮下 創平君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    大村 襄治君       宮里 松正君    武藤 嘉文君       村井  仁君    森下 元晴君       谷津 義男君    角屋堅次郎君       広瀬 秀吉君    井上 和久君       鈴切 康雄君    川端 達夫君       浦井  洋君    柴田 睦夫君       東中 光雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 児玉 良雄君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 池田 久克君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁労務         部長      吉住 愼吾君         法務省入国管理         局長      熊谷 直博君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         林野庁長官   松田  堯君         運輸省航空局技         術部長     中村 資朗君         海上保安庁警備         救難監     邊見 正和君  委員外出席者         水産庁振興部沿         岸課長     本儀  隆君         運輸省海上技術         安全局検査測度         課長      松村 文夫君         運輸省海上技術         安全局船員部労         働基準課長   千原 伸夫君         運輸省海上技術         安全局船員部船         舶職員課長   合田 憲夫君         海難審判理事所         調査課長    松下 幸亮君         内閣委員会調査         室長      岩渕  静君     ───────────── 委員の異動 九月八日  辞任         補欠選任   浦井  洋君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     浦井  洋君     ───────────── 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第七号)      ────◇─────
  2. 竹中修一

    竹中委員長 これより会議を開きます。  第百十二回国会内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田睦夫君。
  3. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 きょうはまず最初に、昨日の陸上自衛隊実弾訓練事故の問題についてお伺いいたします。  きのうの午前九時四十分ごろ、宮城県の陸上自衛隊王城寺原演習場戦車射撃場で、七四式戦車発射した砲弾が、誤って発射地点から約五・五キロ離れた保野川林道近くの山林に落下、爆発したという事故がありましたけれども、まずこの事故の実態について御報告をお願いいたします。
  4. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 御説明いたします。  第六戦車大隊、大和駐屯地にありますが、この第六戦車大隊が昨日午前中王城寺原演習場戦車射場で七四式戦車実弾射撃訓練を実施しておりましたところ、九時四十分ごろ、演習場から約七百メートル離れた保野川上流国有林内に百五ミリの曳光粘着りゅう弾一発が落達したわけであります。詳しい事故原因等につきましては現在調査中でありますが、林野庁から伺いましたところでは、落達地点付近林野庁の職員の方が作業中であり、極めて近距離に、十七メートルと伺っておりますが、落下したということでございました。
  5. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それは今の段階での報告でありますけれども、要するにあってはならないことが起きたわけですね。「なだしお」が先々月事故を起こしました。そこで、新長官所見をお伺いしたいのですけれども、「なだしお」という大事故が発生いたしまして、それに続いてこのような粘着弾演習場外に出てまさに危険直前のところにまで至ったという状態について、どのようにこの事故の問題について長官はお考えであるか、所見をお伺いいたします。
  6. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 実は「なだしお」と第一富士丸との衝突事故以来、陸海空の各現地に対しましても、やはり心を新たにして今後進むべきであるということを厳に私から申し上げておるのでございまして、さきに西ドイツでアクロバット飛行事件がありましたのを契機に、三沢でのいわゆる航空祭についてもいかがなものであろうかということの申し入れもして、延期をするというような状況にもしてあるわけでございます。したがいまして、演習はもちろんでございますが、通常陸海空の諸行事についても心して進むべきであるということを厳に私から申し入れしている中にこのような事件が起きたことは、本当に遺憾に思うのでございます。したがいまして、今この内容について明らかでございませんが、これから原因究明をいたしまして、二度とこのようなことの起こらないように進めてまいりたい、私はこう考えますので、御理解をいただきたい、こう思います。
  7. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 こういう戦車実弾射撃において、訓練場外実弾が飛び出すということが過去に何回もあったと思います。そのような事故はどの程度あったかお伺いいたします。
  8. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 跳弾事故は、四十二年以降、過去五件ございました。
  9. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その五件の中に、今回のような粘着りゅう弾が飛び出すということはありましたか。
  10. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 六十年五月八日、東富士演習場において、今回と同じ百五ミリ粘着りゅう弾跳弾事故がございました。
  11. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そういう五回の過去の事故、特にこの粘着りゅう弾という危険な弾が飛び出すというような事故に遭遇して、その事故防止ということについて自衛隊の方ではどんなことをやってきましたか。
  12. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 特に六十年の事故におきましては、跳弾を発生させないために、停弾堤傾斜角をきちんとする、それから標的設置場所について万全を期する、それから標的そのものの材質について考え直す、鉄の要素を入れる、こういうふうなことを改めまして、それからまた監視態勢もきちんと強化するということをやったわけなのですけれども、しかしまた今回事故が起こってしまった、こういうことでございます。
  13. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今度の事故というのも、今おっしゃった停弾堤を跳び越えた事故であったことは間違いないですね。
  14. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 まだ詳細なところがわからないのですが、恐らく停弾堤に当たってか、それを越えていったということでありす。
  15. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 過去に五回ありました。そして粘着りゅう弾の飛び出しが二回ありました。東富士演習場だとか上富良野の演習場でこういうことがあって、本当に演習場周辺人たちというものは、いつこんな危険なものが飛び出してきて自分たちの命が奪われるかわからない、こういう不安を募らせているわけであります。  防衛庁の方でその事故が起きないような対策としてとってきたことを今言われました。しかし、それにもかかわらずこうして事故が起きているわけであります。ということは、もうこのような戦車砲実弾訓練ということはやめなくちゃならない、特に危険な粘着りゅう弾発射、こうしたことはやめなければならないと私は思います。中止を要求したいと思いますが、いかがですか。
  16. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 本件の原因につきましては、何度も申し上げますように現在調査中でございまして、再発防止策につきまして現時点でお答えすることはできないわけでありますけれども事故重大性にかんがみまして、当分の間、七四式戦車によります粘着りゅう弾射撃を中止するようにしております。
  17. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いつも事故が起きると当分の間やめるというようなことがあります。それから、注意をするということがあります。しかし、やはり同じような事故がこうして繰り返されております。だから、これはもう、この人を殺傷する武装力が行使されて民間に被害を与える、こういうことはあってはならないことでありますし、この実弾演習をやめるということを私は強く要求したいと思います。  では、次に移ります。次は、アメリカ核艦船横須賀入港問題であります。  八月三十一日、アメリカ海軍イージス巡洋艦バンカーヒル駆逐艦ファイフの両艦が国民の強い反対の中で横須賀入港いたしました。この二つ戦闘艦トマホーク積載可能艦であります。言うまでもなく、このトマホーク核トマホークであります。このことは、二つ戦闘艦巡航ミサイル・トマホーク用垂直発射台を取りつけているということ、バンカーヒル垂直発射台からは一度に六十一発撃てるわけであります。また、この発射台発射試験も済ましておりまして、両艦の核トマホーク積載は、アメリカ専門家などからも広く、積載しているということが指摘されているところであります。しかも、両艦は横須賀母港化するのでありますから、これは極めて重大な問題であります。だからこそ多くの国民がこの両艦の入港に反対し、母港化に反対しているわけであります。  政府はいつも、アメリカ側からの事前協議がない限り核の持ち込みはないという立場をとっておりますけれども、この政府の言葉を、政府のこの言明を国民はどう見ているか、外務省、御存じですか。
  18. 有馬龍夫

    有馬政府委員 御指摘駆逐艦ファイフ及び巡洋艦バンカーヒルは、八月の初めにそれまで横須賀におきまして海外家族居住計画に従って来ておりました二隻のいわゆる小型駆逐艦にかわって参ったものでございますが、先生おっしゃられますとおり、これらの艦はいずれもトマホーク積載能力を有しております。しかし、これは従来から繰り返し説明申し上げておりますように、積載能力を有しているからといってトマホークを積んでいるわけではございません。さらに、トマホークミサイルは通常弾頭及び核弾頭の双方を装備することができる核・非核両用兵器でございます。  いずれにいたしましても、これまた繰り返し申し上げておりますけれども、私どもといたしましては、安保条約上、艦船によるものを含めまして、核兵器持ち込みが行われる場合はすべて事前協議の対象となって、また核持ち込みについての事前協議が行われた場合は政府として常にこれを拒否する所存でございますので、我が国立場は十分確保されていると信じているわけでございます。  核持ち込み問題に対します日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府方針につきましては、これまで最高首脳レベルを含めて累次にわたり詳細に米側に説明してまいっております。米国我が国の関心を十二分に理解しておりまして、また米国政府は、安保条約及びその関連取り決めに基づき日本に対して負っております義務を誠実に履行しているということ、そして今後も引き続き誠実に履行する旨保証しております。したがって政府としては、核持ち込み事前協議が行われない以上、米国による核持ち込みがないということについては何ら疑いを有しておりませんで、これについて国民の方々の御理解を得たいと思っております。
  19. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私が聞いているのは、今も言われました、アメリカ側からの事前協議がない限り核の持ち込みはないんだという政府の説明に対して、国民がそれで納得しているとお考えなのか、それはうそだというように考えているのかということをお聞きしたわけであります。その点、答えられますか。
  20. 有馬龍夫

    有馬政府委員 我が国の国益の根幹にかかわります安全を日米安全保障体制に基づいて確保しております場合、この条約の運用について米国との間では信頼関係に基づいて実施しているということでございます。そして、先ほど私が申し上げました政府立場について大宗の国民の御理解を得られていると私どもは思っております。
  21. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それは違います。たびたびの米核積載可能艦船入港によりまして、圧倒的な国民我が国非核原則はじゅうりんされていると考えております。  六十年の七月に発表されました朝日新聞の世論調査がありますが、これは核意識調査をやっております。ここでは、「核を持ち込ませないという方針は守られていると思うか」という質問に対して、全国レベルで、「守られている」と答えた人は一一%です。「そう思わない」と答えた人が七三%にもなっております。政府事前協議がない限り核の持ち込みはないという答弁は、これは理論的に言ってもごまかしであるわけですが、このことを国民はよく見ていると思います。  また同じ調査で、「核兵器を持ち込むおそれのある外国軍艦飛行機は拒否すべきか」という質問に対しては、「拒否すべきだ」と言った人が七二%あります。「その必要はない」というのは一三%にしかすぎないのであります。国民の圧倒的多数は、この世論調査から見ましても、このように核持ち込みに対して毅然とした態度をとることを政府に求めております。理解を得られているというように言われましたけれども世論調査でこのようにはっきり出ております。政府はこうした世論調査を、国民世論をどう考えるのか、再度お答えを願います。
  22. 有馬龍夫

    有馬政府委員 繰り返しになりますけれども米側は、核持ち込みを行います場合には、艦船によるものを含めましてあらゆる場合に我が国に対して事前協議を行うという義務を負っております。それに対して我が国は従来から、先ほど先生がおっしゃられましたように、そのような我が国に対する核持ち込みは許さないという国民感情を踏まえて存在いたします非核原則に基づいて、イエスと言うことはないということを申してまいっているわけでございます。そして米国は、日米安保条約その他関連取り決めに基づき日本側に対して負っているもろもろの義務は忠実に実行している、今後もそうであると申しているわけでございますから、もしこれについて御理解が得られない向きがあるとすれば、政府としては引き続き御理解が得られるように努力してまいるということでございます。
  23. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 要するに非核原則は、核を持ち込ませないという方針は守られているという人が一割そこそこ。そして核兵器を持ち込むおそれのある外国軍艦飛行機日本から拒否すべきだということを言っている人が七二%あります。守られていないという人が七三%あるわけです。このような国民世論がある。これは世論調査でちゃんと出ていることを挙げました。これに対して、やはり国民の納得しない理由、今政府が言われた考え方というのはもう何年も前からこう言っているわけです。そういう中で国民世論核持ち込みを許さない、非核原則は守られていないという人が圧倒的に多いわけであります。それに対してこういう核積載可能艦船入港を許す、母港化を許すというのは全く許されないことであります。この国民世論があるということについて私は聞いているわけですが、なおこの国民世論が否定している論理を押し通すということは、全く矛盾した許されない態度である、どこの国の政府なのかということを言いたくなるほど情けない態度であります。だから私たちは、日本のこの問題についてもアメリカに従属しているんだということを言っております。私は、そういう点からも重ねて核積載可能艦船入港を拒否することを要求するものであります。  それでは、次はF16の墜落事故の問題についてお伺いいたします。  今月の二日午前九時三十分ごろ、青森県三沢基地の第四三二戦術戦闘航空団所属F16ファイティングファルコン一機が、岩手県川井村小国六地割の私有山林内に墜落、炎上する事故が発生いたしました。このF16の事故は、第四三二戦術戦闘航空団北海道及び本州北部上空において低空飛行訓練を行う中で発生したものでありますが、外務省はこの三沢基地演習について承知しておられますか。
  24. 有馬龍夫

    有馬政府委員 私ども一般論といたしまして、米軍が行います訓練一つ一つについて事前に通報を受けるという立場にはございませんけれども、今先生が御指摘になりました、最後に言及されました三沢基地に駐留しておりますF1戦闘機による訓練につきましては、たしか八月二十五日だったと思いますけれども米側がこれを八月二十九日から九月二日まで行うという趣旨発表いたしておりまして、それを事前に聞いておったということがございます。
  25. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その発表内容というのは今言われたことだけですか。それから、この訓練の中でも猛爆音や衝撃波でガラスが割れるというような被害が生じているのですが、そういう点から考えてみても、どんな訓練をしたのか、演習をしたのかということを外務省は知るべきではありませんか。
  26. 有馬龍夫

    有馬政府委員 米側発表しております内容はさらに詳しいものでございまして、これも趣旨で申しますと、八月二十九日から九月二日までの間、第四三二戦術戦闘航空団北海道及び本州北部上空において低空飛行を行うものである、そして加えまして、これは空対空空対地演習であるということも申しております。もし御要請がございますれば、私ここに発表文そのものを持っておりますのでお読みいたしますけれども趣旨は今申し上げたとおりだと思います。
  27. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それをひとつ読んでいただきたいと思います。
  28. 有馬龍夫

    有馬政府委員 これは米空軍が「報道各社御中」ということで発表されたもので、日本文向こう側が使用したものをそのまま読まさせていただきます。   四三二戦術戦闘航空団では、来る八月二十九日より九月二日までの間、基地戦闘準備態勢演習北海道及び本州北部上空に於いてF—16ファイテング・ファルコンによる空対地空対空戦を行います。同訓練低空飛行は毎日百回程行います。   四三二戦術戦闘航空団は、一九八四年、ソ連軍極東地区増強ぶりを見て、日米両国政府の同意のもとに、三沢基地に配属されました。   ”アジア地区でのソ連軍増強ぶり脅威であり、今日もなお続いています。そのためにも、我々は訓練を重ね、常に最高練度を維持しなければなりません。”と第四三二戦術戦闘航空団司令官、ジョン・G・ローバー司令官は説明しています。   詳しくは英文のプレス・リリースをここに添付します。 御閲覧、御質問ございましたらば下記云々のところに御照会ください、こういう発表文になっております。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その演習発表対ソ脅威論という架空のものを持ち出して宣伝に使っているようでありますけれども、私がお聞きしたいのは、こういう演習によって、低空訓練によって日本国民が大きな被害をいつも受けてきているという問題です。そのことについてはその演習は何も触れていないわけであります。だから、そういう演習をやったならば日本国民がどんな被害を受けるか、そういうことは外務省としても調べるべきでありますし、その被害を許さないという立場に立たなければならないと思いますが、いかがですか。
  30. 有馬龍夫

    有馬政府委員 外務省といたしましても、例えば昨年十一月、北海道上空におきまして類似の態様の訓練が行われましたときに生じた被害状況については詳細捕捉いたしております。今般飛行機事故がございましたけれども、これにつきましてはまだ調査が行われている段階でございまして、詳細を承知するには至っておりません。しかし、一般的に申しまして、このような米側訓練によって、当然米側訓練過程において我が国公共の安全に最大配慮を払わなければなりませんし、実際に払っていると申しておりますが、その過程で生じました事故については外務省としても捕捉いたしております。
  31. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この発表があって、外務省国民立場に立って、今までの経験から被害が生じる、だから被害が生じないようにしろというような申し入れはしたことがありますか。今度の場合です。
  32. 有馬龍夫

    有馬政府委員 これは先ほど先生が御指摘になりましたように九月二日の午前九時半ごろ生じておりますけれども、その日直ちに外務省北米局に在京の政務担当参事官を呼びまして、事故原因究明再発防止米軍機飛行に当たっての安全確保の徹底を求めております。米側は当方の申し入れを了解しております。
  33. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それは墜落してからのことであります。墜落する、低空飛行をやって被害が生じてからでは遅いわけであります。
  34. 有馬龍夫

    有馬政府委員 失礼申し上げました。  私は先生の御質問が今回事故が起きた際にということであろうと思ってお答えしたわけでございますけれども一般論といたしましても私どもは機会あるごとに、先ほど答弁の中に含めたつもりでございましたが、米軍訓練を行う場合にはその過程において公共の安全に最大配慮を払うことが当然であって、そのことは米側に伝えておりますし、米側も繰り返しそのような努力を払っておると申しております。
  35. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それじゃ、米側最大配慮を払って国民被害が起きないようにやっているということですか。
  36. 有馬龍夫

    有馬政府委員 折々今般のような不幸な事件は起きておりますが、私は、基本的には、米国はその訓練を実施するに当たって日本側に申し越しております努力というものを払っていると考えております。
  37. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、アメリカとすれば努力をしているということで、今の答弁だとそれを容認するようなことでありますけれども国民の方は被害が生じてもいいということになるじゃありませんか。
  38. 有馬龍夫

    有馬政府委員 私は決してそのようなことを申しておるつもりはございませんで、何ゆえ米側に機会あるごとに、演習を行う際に我が国公共の安全に最大配慮をするように申しているかといえば、まさに今先生がおっしゃられたような事態を回避するために申しているわけでございます。
  39. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは、外務省が回避させるということであれば、米軍の超低空飛行訓練、こうしたことを日本の領空でやるということはもうやめさせなければ解決しない問題であると思います。そのことを要求すべきだということを言っておきます。  そこで、ちょっと防衛庁にお伺いしますが、日本航空自衛隊戦闘機低空飛行訓練を行っておりますか。その低空飛行訓練の目的はどういうところにありますか。
  40. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  航空自衛隊戦闘機につきましても、いわゆる航空法及び関連規則の適用がございますので、訓練飛行は最低安全高度を守って行うということになります。ただ、最低安全高度を切ってそれ以下で飛行しなければならないような場合には、航空法の八十一条ただし書きの規定に従いまして、運輸大臣の許可を得て訓練を実施します。その訓練航法訓練とか対艦攻撃訓練のようなものであります。
  41. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その訓練を行う場所については限定をしているんだと思いますが、そうですか。訓練空域あるいは演習場以外のところでそうした対艦攻撃の訓練、地上攻撃訓練、こんなことを超低空でやることがありますか。
  42. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 対艦攻撃訓練はもちろん海上自衛隊と共同してやるわけですけれども、公海の上空で行います。しかしながら、航法訓練はいろいろなところでやりますけれども、これとても自己の航空自衛隊飛行場の上というふうなところでやっているわけでございます。
  43. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 F16が対地攻撃を主な任務としているということは一般的に言われているところであります。敵地に侵入して爆弾投下をするというためには、敵のレーダーに探知されないように、レーダーの死角となる低空を飛ぶんだ、こう言われております。  そこで、この墜落したF16というのは、墜落地点の東方二十数キロのところに航空自衛隊の第三十七警戒群山田分屯地のレーダーサイトがありますけれども、これを目標に見立てて攻撃訓練をしていたのではないかということを言う人もあるわけですが、この点は外務省は御存じでしょうか。
  44. 有馬龍夫

    有馬政府委員 承知いたしておりません。
  45. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この墜落したF16に限って言えば今私たちも確証というのはつかむことはできませんけれども、この飛行コース、三沢F16の日ごろの訓練のときの飛行コースを見ておりますと、この周辺というのはたびたび訓練に使われるということから考えますと、このF16については別として、一般的にはこのレーダーサイトを攻撃目標に見立てて訓練をするということをやっているのではありませんか。
  46. 有馬龍夫

    有馬政府委員 承知いたしておりません。  ただ、簡単に申しますれば、日米安保条約及びその関連の取り決めに従って、そして日米安保条約の目的に沿って、我が国の施設、区域の使用を許されております米軍が、その軍の機能を維持するためにさまざまな態様の訓練を行うことは考えられるわけでございます。
  47. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 じゃ、ちょっと防衛庁の方に伺いますけれども、このレーダーサイトというものが、F16がこの地域に来ればレーダーサイトに映る、大体超低空に入ってそれから急上昇するときは一定のところに来ればレーダーサイトに入るわけですけれども、そういうところから見て、防衛庁の方から見ればこの山田のレーダーサイトを攻撃訓練の対象にしてやっているのじゃないかということがわかるのじゃないかと思いますけれども、その点は把握しておりますか。
  48. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  私ども防衛庁といたしましても、墜落した米軍F16、一般的に米軍F16が山田基地のレーダーサイトを目指して訓練をしているかどうかという点につきましては、外務省と同じように承知をいたしておりません。  また、お尋ねのように、レーダーサイトでは空域内を飛行する多数の航空機が監視用のレーダースコープの上に映りますのでよくわかるのではないかということでございますが、一般的には、このレーダースコープの上に航跡が映るわけでございますけれども、そこに映ってまいりますものがどのような航空機であり、どのように識別し、そしてその航跡を追跡するかということは、その目的からいいまして識別の必要のある例えば国籍不明機とかいったようなものについてだけ行っておりますので、米軍訓練がどのような状態で行われるのが普通であるかというようなことをレーダーサイトの航跡でもって調査をしているというようなことはございませんので、わかりません。
  49. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今までの答弁などを総合いたしますと、自衛隊機の場合は低空飛行には制限がある、しかし実際に米軍機の場合は規制を受けるものではない、要するに米軍機日本の空を自由に飛ぶことができるということになっておりますが、そういうことですか。
  50. 有馬龍夫

    有馬政府委員 米軍機につきましては、航空法第八十一条に申します最低安全高度の適用はございません。しかし、米国我が国領空内における通常飛行訓練において、同法に言う最低安全高度、これは先ほども御紹介がありましたように百五十メートルでございますが、人口密集地上空では三百メートルを尊重いたしております。
  51. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 だからその百五十メートル以下にはおりてこないということで、それは例えば比べてみて日本自衛隊機はそうはいかない、いろいろな制限、手続があるわけですけれども米軍の場合は今の高度、百五十というのは超低空ですね、そういう中で日本の領空を自由に飛び回るということができるという考えですか。
  52. 有馬龍夫

    有馬政府委員 申しわけございません。私、御質問趣旨をきちっと理解できなかったのかもしれませんけれども、自由に飛び回れるということではございません。それは、当然に公共の安全に十分な配慮をしながら訓練を行わなければならないということがあるわけでございます。
  53. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 安全飛行ということであれば、パイロットが自分の飛行機が物にぶつからないようにする、落ちたりしないようにする、パイロットが一番安全のことは考えるわけです。安全飛行ということだけが目的であれば、そういう制限だけであれば、それは制限がないに等しいことになるわけであります。三沢基地が五十機配備体制になって訓練が非常に激化をしているわけですが、この訓練の激化というのは、日本列島上空全体が事実上アメリカ訓練空域になっているということであります。一体こんなことが許されていいのかということです。  そこで、三沢基地の四三二戦術戦闘航空団、これは昨年の七月にF16五十機配備体制ということになりました。このときからもう訓練が激化するわけでありますけれども訓練が激化するほど国民被害がまた大きくなっているわけであります。今までF比の低空訓練によって国民に与えた被害というものについて、外務省は把握しておりますか。
  54. 有馬龍夫

    有馬政府委員 これは防衛施設庁が所管してお られるところでございますので、防衛施設庁からお答えいただきたいと思います。
  55. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 しかし、これはアメリカと交渉するのは外務省ですから、外務省自身もちゃんと把握して、この重大な事態を知って交渉しなければならないと思うわけであります。  今言われましたように被害補償交渉の担当が防衛施設庁だということで、防衛施設庁の方から今までの被害実態をお答え願いたいと思います。
  56. 弘法堂忠

    弘法堂政府委員 お答え申し上げます。  昨年の十一月の十六日から十八日にかけて第一回の低空飛行訓練が行われましたが、その際の被害につきましては、北海道の南部の静内、浦河、新冠などの九市町村に十一件ほどの被害が発生しております。軽種馬の打撲傷あるいは流産、ウサギの死亡、豚の死亡あるいは窓ガラスの破損等でございます。それから、青森県の三厩村でその際三件ほど窓ガラスの破損が報告されております。  次に、四月の十八日から二十日までに行われました訓練に伴いましては、北海道におきまして羽幌町、滝川市で二件、これは窓ガラスの破損と馬のかいばおけの破損でございます。それから青森県の五所川原で一件、窓ガラスの破損でございます。  それから今回の八月二十九日から九月二日までの訓練におきましては、御案内のとおりFMが山林墜落いたしましたけれども、この山林は樹木を伐採した後の山林でございまして、幸い人身にも被害はございません。また山林火災も起こしておりませんけれども、なお本件の損害の実情につきましてはさらに調査中でございます。それから青森県の五所川原市と平館村で窓ガラスの破損が三件ほど報告されております。  低空飛行訓練とは若干違うのでございますけれども飛行機が間違えて音速を突破したというときの被害で、一月十九日と二月十二日に窓ガラスの破損等が岩手県と青森県の三厩村で生じております。  以上の被害状況につきましては、我々の方から外務省の方にも資料を提供してございます。
  57. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今防衛施設庁の方から物的な被害について御報告がありました。その物的な被害考えてみますと、馬が走り出して骨折をする、それから何といっても民家の窓ガラスが割れるような爆音が及んでいるわけです。ですから、これはもう物的な被害だけではなくて、その昔を聞かされた住民の被害は本当は非常に大きなものがあると思うわけです。お年寄りもいます、寝ている人もいます、病気の人もいます。こういう人たち被害考えてみた場合に、この超低空訓練というのは本当に継続的に日本国民被害を与えているわけであります。これをやめさせなければならないということであります。問題は、被害の補償をすればよいという性質のものではありません。  低空飛行訓練では墜落の危険性が極めて高いというのは世界的にも実証されていると思います。西ドイツ配備のアメリカ空軍F16がことしに入って次々と六機も墜落いたしました。これも大半は低空飛行訓練中のものであります。今回は墜落炎上の場所が今言われたような場所でありましたが、一つ間違えば市街地や民家や学校のあるところに墜落することだって、これはもう低空飛行という自殺飛行をやっているわけですから、そういうことも当然考えられるし、そういうことになれば、これは大惨事を招くことは明らかであります。  今までF16の低空飛行訓練による被害が各地から報ぜられるとともに、例えば秋田県ではその実態を集計いたしまして、昨年の十一月二十五日からこの九月一日まで百十二件の目撃通報があったということが発表されております。秋田県ではそういう中で、五十八市町村議会でF16の低空飛行に反対するという陳情が採択されております。この事実を外務省はつかんでおりますか。また、こういう陳情に対してどう対処しておりますか。
  58. 有馬龍夫

    有馬政府委員 そのような事実があることは承知いたしております。
  59. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 五十八にも及ぶ市町村議会で低空飛行訓練反対の陳情が採択されているという実態を踏まえて、この問題で、こういうことがあることに対してどうしてくれというようなことを受けての外務省の対処は行われましたか。
  60. 有馬龍夫

    有馬政府委員 先生先ほど昨年の七月からということを仰せられましたけれども、例えば昨年の十一月の末に類似の訓練北海道で行われまして、まさに先ほど施設庁から御紹介のあったような被害があったわけでございますけれども、それを受けて我が方からは改めて問題を提起しております。そのほかにも、一般的に騒音その他の被害につきまして米側には折に触れ公式、非公式に話しております。  先ほど申し上げましたように、航空法第八十一条は米軍には適用されておりませんけれども、高度を維持する、これは航空機そのものの安全だけではなくて、まさに北海道における体験を踏まえてのことでございますから、地上のことや安全をも踏まえて百五十メートル、三百メートル、それぞれを遵守すると言っております。  それから、実際に、最初に言及いたしました問題につきましては、十一月十六日にこの第四三二戦術戦闘航空団の司令官が地元の住民に御迷惑をおかけしたことに対して陳謝するという発表を行ったりいたしておりますけれども、繰り返しになりますが、それらの過程を通じ、我が国国民の方々の不満、懸念は米軍に伝えております。
  61. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 北海道では、八月二十五日に訓練実施が発表されますと、道民に不安を与える低空飛行訓練はやめるようにと米軍申し入れいたしました。二日に事故が発生いたしますと、低空飛行訓練の危険性が実証された、再度中止を求める文書を北海道は出しております。外務省はこうした住民意見をどう受けとめておりますか。今まで聞いておりますと、いろいろアメリカには注意したけれども、それにもかかわらず実際上被害がずっと生じてきた。だから北海道では被害を与えるようなものは中止をしてくれということを言っているわけですが、どう受けとめておりますか。
  62. 有馬龍夫

    有馬政府委員 我が国といたしましては、先ほども申し上げたものですからあれでございますけれども日米安保条約の目的に沿って米軍我が国の施設、区域の使用を許しているわけでございます。そして、米軍が軍の属性として練度を維持するということは米軍の抑止力としての機能を維持することでもありますので、原則としてはそれの訓練を許しているということがございます。  このたび大変不幸な事件がございましたけれども米軍低空飛行につきましては、先ほど去年の十一月のことについて申しましたが、その際、市街地上空などはできる限り避けて飛ぶなど、地域住民の方々に与える影響を最小限にするようさらに一層の努力をするということを申しておりますので、そのような米側の姿勢を踏まえまして、米側訓練を行うということは許されるべきだと思っております。
  63. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それじゃ、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。  外務省申し入れても、アメリカの方はそれにこたえる態度は示すけれども実際上はずっとこういう被害を生じてきた。今度は陸地に墜落もしたわけであります。こういうことを見ますと、私は来るべきものが来たというように感ずるわけであります。このまま続ければこれは大惨事につながりかねないと思います。  この超低空飛行は、たとえルールに従って飛んでいましても、何らかの原因で機首が少し下がるとか機体が左右に傾くとか、こういうことがあれば地上に激突することであります。それから、新しい築造物ができますと、これは航空地図に書いてない場合があるわけであります。奈良県の十津川村の木材搬出ケーブルというのは地図にありませんでした。だから、そこを飛んでいった米軍機がそれをひっかける、切断するということをやりました。これも、飛行機の方がいつ墜落するかわからないような危険な状態を来しているわけです。それから局地的な気象条件もあるわけです。こうした超低空飛行の場合はいろいろな事故につ ながる条件があります。この低空飛行をやめさせないということは、陸地でやっていいということは、日本国内において大惨事の発生を容認することと同じだと思うのですけれども長官のこの点についての所見をお伺いしたいと思います。
  64. 池田久克

    ○池田政府委員 F16の訓練でございますけれども、これは先ほど来詳細に丁寧に御説明申し上げておりますように、我が国の防衛と極東の安全にとって極めて枢要な重要な問題でございまして、この訓練を中止してもらうというふうに米側申し入れ状況ではないわけでありますけれども、もちろん事故防止につきましては万全の配慮をする必要がございます。我々も常に事故の損害等の発生状況につきましては詳細に把握しておりまして、その都度米側にもよく説明し、そういう状況を考慮して訓練をするように絶えず申しているところでございます。  不幸にして被害が出るという場合がございます。これにつきましては、私どもの方が日本の国家賠償と全く同じ立場で責任を持って米側と折衝しておりまして、適切にその補償等の措置を講じております。しかし、にもかかわらず事故が発生することは残念でございますので、引き続き安全の維持等について米側とも話し合いをしてまいる、そういう所存でございます。
  65. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今施設庁長官から御説明したとおりでございますが、申すまでもございませんけれども我が国の安全を確保するために節度ある防衛力の整備と日米安保体制を確保する、信頼度を高めるということにあるわけでございます。したがいまして、そういう意味で、やはり米側のいわゆる抑止としての役割を果たしていただくものでございますから、今後、国民からのいろいろな要望等につきましては、先ほど来外務省からの御説明にもありましたように、外務省を通じて米側にその旨を積極的に申し上げるようにしていただく、私たちの方も外務省に対してそういう要望を申し上げるということにいたしたい、こう思います。
  66. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 補償をすればいいというものではないということは、もう私も繰り返し言いました。要するに、日本国民被害を受けないように実効的なことをやらなければならないということであります。そのことを突き詰めていけば、結局は今までやっているような超低空飛行訓練というのはやめさせなければならぬ、やめなければ国民被害はなくならないということであります。  そこで、今度の防衛二法の改正問題にも関連してくると思いますけれども、今回の事故に当たりまして、自衛隊の秋田救難隊のヘリがパイロットの救出を手早く行いました。自衛隊ヘリが飛び立って救出をするまでの連絡、指揮命令系統、これはこの場合どうなっているのでありましょうか。
  67. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  今回、米空軍三沢基地所属のF16のパイロットが九月二日九時半ごろ岩手県釜石市北西約三十キロ付近で緊急脱出した旨の連絡が、まず米空軍三沢基地から航空自衛隊三沢基地にあったわけでございます。この通報を三沢基地から受けました航空救難団司令、これは入間にございますが、それと三沢基地にございます北部航空方面隊司令官が、乗員の捜索、救難、被害拡大防止のために、委員ただいま御指摘のように、秋田救難隊及び松島救難隊からバートル107ヘリコプター二機、それからMU2型航空機二機を、さらに現場近くにあります山田レーダーサイトから隊員の発出を命じ、救難活動に当たったわけでございます。
  68. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 一つは救出した時間、これをお伺いしたいと思います。  それから、去年の三月にこの三沢基地所属のF16が太平洋岸で墜落いたしました。これはどんな状況で発生したのか。それから、このときも救難を自衛隊が行っておりますが、このときはどのようなルートで行ったのかということをお伺いいたします。
  69. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず今回の例でございますが、今回の場合は、パイロットは空自秋田救難隊のヘリ、バートル107で十時二十八分ごろに救出されたとの報告を受けております。  それから、昨年の例につきましてお尋ねでございましたが、突然御質問いただきましたので資料を持ち合わせておりませんので、御勘弁をいただきたいと思います。
  70. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 昨年の事故というのは、海上に墜落した、それで八戸の救援隊がパイロットを救出をした、これは御存じだ、覚えていらっしゃると思いますが、要するに、日本航空自衛隊なりあるいは海上自衛隊の救難隊というのは、本来は自衛隊のために存在するものでありますが、米軍のパイロットの救出に駆けつける、救出をやるという法的根拠はどのようになっているのでしょうか、なぜ日本が行かなければならないのでしょうか。
  71. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  災害救難救援活動につきましては、本来的には自衛隊法八十三条によりまして、災害派遣の要求権者であります地方公共団体の長等からの要請を受けまして自衛隊が出動いたしますのが原則でございます。  しかしながら、一般に航空機が事故を起こしました場合には、それに対する救難活動といいますのは、その航空機事故の特性から見まして、非常に緊急の度合いが高い、またそれが影響するところが大きいということでございますので、時期を失しない状態で、パイロットそのものということもございますが、それが波及いたします二次災害的なものにも思いをいたしまして、人命または国民の財産等の保護に重大な支障を来さないように対処する必要がございます。したがいまして、こういうことを予想いたしまして、自衛隊法第八十三条第二項ただし書きによりますれば、都道府県知事等の要請を待つことなく、自衛隊の判断で自主的に派遣を行うことができることになってございまして、米軍の航空機が航空機事故を不幸にして起こしましたような場合には、こういう判断に基づいて自衛隊が自主的に行動を起こしているわけでございます。
  72. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 要するに、米軍のパイロットであるから本来は米軍が救出するのが筋だと思うのですが、災害派遣ということで日本の救難隊がパイロットをまず救出するというのはどういう根拠になっているのかということなんです。
  73. 日吉章

    ○日吉政府委員 先生御案内のように、日本の領土、領海、領空等におきます事故でございますから、これはその事故を起こしました方がどの国籍であるというようなことに関係なく、日本の主権の問題といたしまして、日本の行政が第一義的といいますか当然に行うべきもの、こういうふうに考えております。
  74. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 はっきり言えば、三沢基地では救難隊が米軍にはいないということでありませんか。
  75. 日吉章

    ○日吉政府委員 私がただいまお答え申し上げましたことに尽きると思いますが、日本の領土内に起きました災害に対しましては日本政府が対処するのは当然だと考えております。
  76. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 三沢基地には、そういう墜落事故があったような場合にパイロットを救出するような救難隊というのは存在しますか、外務省
  77. 有馬龍夫

    有馬政府委員 我が国が提供いたしております施設、区域がいかなる種類の軍によって使用されているかの詳細は米軍の運用にかかわるということで、つまびらかにいたしておりません。
  78. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 言われませんけれども、実際は米軍には救難隊が存在をしない。それから秋田の救難隊、これは三沢の五十機配備が決まる前になってつくられております。それから昨年の三月に救出した八戸の海上自衛隊の救難隊、ここは来年度、六十四年度の概算要求においてもまた新しい体制が組まれようとしているわけであります。そうしますと、結局米軍の救出問題については日本自衛隊が引き受けるということが実態になっているというように見なければならないと思うわけであります。  今度航空救難団の組織の改編が行われますけれども、今までの救出に当たっての命令指揮系統、こうしたものはどのような影響を今度の改編によって受けますか。
  79. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  まず結論から先に申し上げますと、今回御提案申し上げております改編によりまして、航空救難団の隷下部隊につきましての指揮命令系統に変化は生じません。しからば、今回御提案を申し上げております航空自衛隊の作戦支援組織をどういうふうな趣旨でどういうふうに改定するのかということでございますが、これにつきましては、現在航空救難団、輸送航空団、それに保安管制気象団、こういう三つのものが、相互に有機的に業務の内容が関連するにもかかわらず独立した、分散された形となっておりますので、これを航空防衛力のより有効な機能発揮、より効率的な隊務運営という観点からとらえますと、これらを一つの組織に一元化した方がいいのではないか、こういう考え方に立ちまして、これら三つの組織を航空支援集団に一元化することにしたものでございます。その中に含まれます航空救難団の隷下部隊についての指揮命令系統には、冒頭に申し上げましたように変化は来さないわけでございます。
  80. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、これで北米局長は終わります。  次は、潜水艦の衝突事故についてお伺いいたします。  潜水艦「なだしお」と第一富士丸衝突事故について、横浜地方海難審判理事所は、九月二日、横浜海難審判庁に海難審判の申し立てをいたしました。申し立ての要旨をいただきましてこれを見ますと、「なだしお」に衝突事故最大の責任があることが一層明らかになってまいりますし、この中で自衛隊組織の責任を指摘しているということは重大な問題であると考えております。  申立書についてお尋ねいたしますが、七月二十三日午後三時三十五分ごろ「なだしおは第一富士丸と互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあった」こうあります。これは、この時点において「なだしお」がそのまま直進はしないようにしなければならないということがわかる時間、このように理解してよろしいのか。それから、そのときの「なだしお」と第一富士丸の距離はどのくらいあったのか。この二点をお伺いします。
  81. 松下幸亮

    ○松下説明員 お答えいたします。  先生の今の御質問でございますが、「なだしお」側との見合い関係がいつごろ発生したのかという御質問に受け取っておりますが、理事段階といたしましては、三十五分から三十六分の間にそういう見合い関係が生じたというふうに認定しております。なお、三十五、六分の距離等でございますが、三十五分は両船間の距離約二百メートル、三十六分では約千五百メートルというように理事官は認定いたしております。  以上でございます。
  82. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先ほど二百メートルと言われましたが、二千メートルですね。
  83. 松下幸亮

    ○松下説明員 二千メートルでございます。
  84. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 三十六分のときが千五百メートルということですね。  それでは、「三時三十八分ごろ山下艦長は、第一富士丸との衝突を避けるため、」「短音一回の汽笛信号を行わせ、機関停止、後進原速力、後進一杯続いて面舵一杯を令した」こう申立書にはありますが、この時間における「なだしお」と第一富士丸との距離はどれくらいありましたか。それから、この指令によって「なだしお」の艦首が実際に右に向きを変え始めるときの「なだしお」と第一富士丸との距離はどれくらいになっていたのか、お伺いしたいと思います。
  85. 松下幸亮

    ○松下説明員 先生の今の御質問の三十八分の両船間の距離でございますが、三十八分ごろの両船間の距離は理事官の認定段階では五百メートルとなっております。それで、今先生の御質問のそれ以降の諸動作につきましては、内容調査の問題にもかかわってきますので、申立書の事実というものは、一応理事段階での事件に対する考え方の集約的なものとなっておりますので、御指摘の点につきましては、今後審判の過程において明らかにされていくことと思っております。  なお、衝突時の衝突角度等につきましては、付言すれば、衝突時は十度の角度で衝突した、そして「なだしお」側は右側に約三十度、そして富士丸は左舷に約十八度回頭していたということは、理事官の段階でこの申立書の中で認定されております。  以上でございます。
  86. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先ほど、千五百メートルのことを先に言われましたけれども、この両艦の距離千五百メートルという三十六分ごろの段階、これは「なだしお」が「わずかの間機関停止とし」、それから「再び前進強速力とし、十・七ノットばかりの速力で直進したまま第一富士丸の進路を避けるのが遅れた。」こうあるこの三十六分ごろの距離が千五百メートルということで、この二千メートルそれから千五百メートル、時間でいえば三十五分ごろ、それから三十六分ごろ、このときはもう「なだしお」とすれば直進したら衝突する、それまでに避けなければならないということを意味するわけですか。理事所の段階で結構ですから。
  87. 松下幸亮

    ○松下説明員 今先生質問のとおり、理事所サイドでは、「なだしお」側が富士丸を右舷側に見て、避航する立場であったのに、進路または速力を大幅に変更するための避航動作がおくれたという認定はしております。
  88. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、今回の申し立てでは、横須賀基地の第二潜水隊群をこの指定海難関係人にしております。そして、潜水隊群の責任につきまして、申立書は「交錯するときの安全航行について指導が十分でなく、かつ、海難発生時における通報について指示が徹底していなかった。」こう言っております。この点をもう少し具体的に説明していただきたいのです。それから、潜水隊群を指定海難関係人とした理由、これもお伺いしたいと思います。
  89. 松下幸亮

    ○松下説明員 今の先生の御指摘でございますが、申し立ての事実中にありますとおり、「なだしお」の属しておりました第二潜水隊群は、「直属艦船に対し横須賀港第五区付近における航行船と進路が交錯するときの安全航行について指導が十分でなく、かつ、海難発生時における通報について指示が徹底していなかった。」ということにつきましては、先ほども申しましたとおり、申し立ての事実というのが集約されておりますので、いずれ審判の過程におきまして明らかにされていくことと存じますので、ひとつ御了承をお願いいたしたいと思います。  なお、海上自衛隊の第二潜水隊群を指定した理由といたしましては、今申し上げましたとおり、今回このような事件になりまして潜水艦の問題が一応問題となっておりまして、ここにもありますように、そこの隊の隊内における安全航行についての指導等、そういう責任上第二潜水隊群を指定したということで御理解いただきたいと思います。
  90. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛庁の方にお伺いしますが、先ほど海難審判庁の方でこれからの審判の段階で明らかになると言われましたことですけれども、潜水艦は、指令を出してどれくらいの時間があれば船首は右に向くのでしょうか。この申立書によりますと、その当時は三ノットで進行中に衝突とありますが、そういう場合に、指令を出したらどれくらいの時間があれば、面かじいっぱいとしていますが、右に船首の向きが変わるのですか。
  91. 日吉章

    ○日吉政府委員 すぐれて潜水艦という装備の性能に関連する問題でございますので、第三者機関たる海上保安庁なり海難審判庁等でその事実は明らかにされると思いますが、私どもの方からここでお答えさしていただくのは差し控えさしていただきたいと思います。
  92. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 指令を出して、あの巨大なる潜水艦が実際に措置によって動くというまでには時間がかかると思います。それから、両艦の距離五百メートルというところで令されておりますけれ ども、その五百メートルはさらに縮まっているということを見なければならないと思うわけであります。  今回の衝突事故の直後から、海上自衛隊の東山幕僚長は、山下艦長はなし得る最善の措置をとっていたと述べております。これは潜水艦「なだしお」に過失がなかったという趣旨のことを述べているわけです。それから、その後もさきの瓦防衛庁長官を初め竹下総理も、「なだしお」がその場その場でとられた措置について、法令等に忠実であり、間違った措置がとられたというようなことは考えもいたしていない、これは連合審査のときに述べられているわけであります。しかし、衝突事故についてその後も調査が進んでおりますし、その中で潜水艦「なだしお」の責任という問題がはっきりと浮き上がってきているわけであります。  そこで、新しく防衛庁長官になられました田澤長官にお伺いいたしますが、長官は、この時点に至って潜水艦「なだしお」が法令、規則に違反することがなかった、今まで政府が言っておられるようにそういう法令、規則違反はなかった、今の段階ではそう考えていらっしゃらないと思うのですけれども、どのように今受けとめておられるのか。さらに今、海難審判の申し立てがあって、その中では海自の組織の責任が問われておりますけれども、この点についてどうお考えか、お伺いいたします。
  93. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今回の事故につきましては、決してやるべくしてできたものではございません。したがいまして、海上自衛隊としましても、これまで海上衝突予防法あるいは海上交通安全法等を忠実に守り、そして実施をしてきている。海上幕僚長もそういう点をお話し申し上げたと思うのでございまして、これからももちろん私たちはこの法律を忠実に守っていかなければならない。したがいまして、これまでも海上自衛隊としては精いっぱいやってきたのだということを表現したものと思います。しかし、そういう中でこういう事故が発生したことでございますので、私たちとしてはまことに遺憾だ、残念だ、こう思うわけでございます。  さらに、第二潜水隊が富士商事とともに指定関係人に指定されたことにつきましては、先ほど海難審判庁からも御説明がありましたけれども事故原因ないしはその事故の背景等についていろいろ調査が必要だということだと思いますので、私たちはこれを厳粛に受けとめまして、原因究明については徹底してやっていただきたい。また私たちもそれには協力して、二度と事故の起こらないようにいたしたい、かように考えております。
  94. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 衝突が遺憾であると言われまして、さらにお聞きするのはちょっとどうかと思いますけれども、遺憾だと言われる中には「なだしお」の方にも、今まで長官や幕僚長あるいは総理が言われましたように法令をちゃんと守っていた、すなわち過失がなかったということになるかと思いますけれども、自衛官の責任あるいは潜水隊群の責任という問題についてはどうお考えかということでありますが、その点ちょっとお伺いしたいと思います。
  95. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この問題につきましては、海上保安庁あるいは海難審判庁等で原因の究明をした後に明らかになるものと思いますので、したがいまして、それを厳粛に受けとめる態度でただいまおります。
  96. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そこで、申し立てが出た段階でありますが、防衛庁が七月二十六日に「事故概要図」を提出いたしました。そこでは、「なだしお」が右転措置をとった地点は第一富士丸との距離が約七百メートル、短一声、面かじいっぱい、エンジン停止、後進いっぱいということが書き込んであります。この図について防衛庁は、概念図であって、正確度については全く制限、条件がついているのだということを連合審査で答弁されております。約七百メートルで「なだしお」が右転回避措置をとったというこの図の説明というのは不正確ではありませんか。
  97. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 御指摘事故の概要図は、各方面の御要望もありまして、事故の発生の直後に事故の概要等について艦長等からの事情聴取によって得た内容を、あくまで一方の当事者からの聴取という限定的な性格のものである旨をお断りしました上で作成、説明したというものでございます。当時のそういう資料でございますので、事故に至る事実関係については、先ほど来大臣も申しておられますように、海上保安庁等の関係機関による調査や海難審判によって明らかにされるべきものでありますから、現時点で防衛庁が問題の資料を訂正するというふうなことは考えておりません。
  98. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 事故直後につくられた概念図であって正確性は保証の限りではない。そうすると、この概念図にあるように、両艦の距離七百メートルのところで右転回避措置をとったということが書いてありますけれども、このことは今は主張するものではないということにはなりますか。
  99. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 今は調査の手続が進んでおりますので、私どもから特別のことを申し上げることはありません。
  100. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは七百メートルで右転回避措置をとれば衝突はしないわけであります。これは、やはり理事所側の申立書にありますように、五百メートルで令をする、それから潜水艦が動くわけですから、実際上この潜水艦が船首を右に曲げるというようなことは両艦がずっと近づいてからのことになっているというように考えざるを得ないわけです。この点は、NHKのテレビで特別報道がありましたけれども、そこでもやはり百九十メートルのところで初めて動いたということが報ぜられておりました。こういう実態であるわけであります。  今海難審判庁の審査が始まる段階で、それぞれみんなお答えを控えられるわけでありますからこれでやめますけれども、いずれにしろ、このような大事故というものは絶対にあってはならないということであります。やはり浦賀水道のような何百隻という船が通航する中で自衛隊が縦列行動で横切っていくということが、この事故の背景にある一番危険な問題であると考えるのであります。  海難審判庁、結構でございます。  時間が非常に迫りましたが、法案に関連して予備自衛官問題について一つだけ伺っておきたいと思います。  予備自衛官の定員は、最初の陸上自衛隊一万五千人から逐年増加いたしまして、昨年一千人、この改正案では、千人をふやして四万六千人の陸上自衛隊の予備自衛官にする。さらに、昭和四十五年に三百人定員で新設されました海上自衛隊予備自衛官は、昨年八百の定員、今度の法案で三百人ふやして千百人定員。また、昭和六十一年に三百人定員で新設された航空自衛隊の予備自衛官は、昨年六百人、この法案で二百人ふやして八百人定員にしようとしているわけであります。六十四年の概算要求を見てみますと、さらに予備自衛官を四千五百人ふやす計画が出ているわけであります。  この陸海空各予備自衛官の定員増加は何らかの将来構想を持って行われているのかということと、もう時間が参りましたのでこれは大臣にお聞きしたいと思いますけれども、今まで各防衛庁長官が予備自衛官問題についていろいろと意見を述べておられます。この予備自衛官問題についていろいろ防衛庁で検討しておりますけれども、そうしたものも含めて防衛庁長官の予備自衛官についての基本的な見解、この二点をお伺いしたいと思います。
  101. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御承知のように、いわゆる限定的なしかも小規模な攻撃に対して自衛力を整備するということでまいっております。したがいまして、有事の折にはどうしても急速かつ計画的に実力を発揮していかなければならないということになりますというと、予備自衛官の必要性というのがどうしても出てまいるわけでございます。我が国は、私たちの国は私たちの力で守るというような考え方で国民全体が国の安全あるいはまた国の 独立というものを守らなければならないと思いますので、そういう精神で予備自衛官というものの制度をつくっているのだということを御理解いただきたい、こう思います。
  102. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 将来構想も、これは局長の方で結構ですから。
  103. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員の方からの御紹介もございましたように逐年整備をしてきているわけでございますが、防衛庁といたしましては、中期防衛力整備計画の期間中に五万数千人程度の予備自衛官が確保できればありがたい、かような希望を持ってございます。
  104. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いろいろ述べなければならないこともありますけれども、次の機会にいたしまして、本日は終わります。
  105. 竹中修一

    竹中委員長 和田一仁君。
  106. 和田一仁

    ○和田委員 田澤長官は今回大任をお受けになられまして、大変御苦労さまに存じます。特に、「なだしお」と第一富士丸事故、また続いて宮城での戦車による実弾射撃事故等が続いておられて、大変御心労のことと思います。そういうことの中で、新長官に就任されまして、一つだけまず冒頭に世界情勢の認識等についてお伺いをしておきたいと思います。  今世界的な緊張緩和ですね。特に米ソ間のINFの全廃条約の発効であるとか、アフガンからソ連が撤退を始めている、それも大体予定どおりいっているというような状態、あるいはイラン・イラク戦争は長い間の紛争に終止符を打って停戦がされる、またカンボジアやアンゴラの和平の動きなど、まだほかにもある中で、世界のあちこちである紛争が終息の方向に向かっているのではないか、こんなふうに私は思います。そういう大きな緊張緩和の流れの中で我が国の防衛の最高の責任者になられた長官は、世界情勢のこういう流れについてどういう分析をなさっておられるのか、こういった流れは現実に起きているけれども、なぜここへきて急激にこういう流れになってきたか、起因はどういうところにあるかということをまず長官の認識をお伺いしたい。基本的なお考えで結構でございます。
  107. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今御指摘のように、米ソ間ではINF全廃条約の署名そして発効がなされ、またソ連軍がアフガニスタンの撤退を開始いたすなど、いわゆる米ソ間の軍備統制、軍備管理そして軍縮の交渉が進められていることは世界の平和にとっても本当に喜ばしいところでございます。  しかしながら、御承知のように、米ソを中心とした世界の軍事情勢というものは依然として対峙しているような状況にあるのではないだろうか、こう思われます。また、我が国を取り巻く極東の情勢もいわゆる潜在的脅威というものは依然として拡大されているのではないだろうか、こう思われるものでございますから、依然として力の均衡による抑止、これが世界の平和あるいは世界の安定を維持しているのであるという考え方を持ってまいらなければならないのではないだろうか、かように考えているのでございます。したがいまして、我が国の防衛につきましても、防衛大綱にのっとっていわゆる限定的な小規模な侵略に自力で対応できる節度ある防衛力を整備していかなければならない、また日米安保体制の信頼度を深めていかなければならない、かように考えております。
  108. 和田一仁

    ○和田委員 こういう流れの中で、特に米ソ両大国が第三世界への軍事介入から軍事的な関係の手を引きつつあるような感がするわけですね。アフガン撤退が象徴的ですけれども、そういう今までの軍事関与がだんだん減っていくという流れ、これが一時的なものであるのか、あるいは永続性のあるものと御認識になっているか。極東においても、そうであるならばやがて米軍の撤退というようなこともあり得るかなという点も含めて、長官の御認識を伺いたいと思います。
  109. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、確かに米ソ間でのいわゆる軍備管理だとか軍縮の動き、あるいはまた国連が中心になってイラン・イラク問題の解消等を進めている現状というものは、確かに世界の平和にとっても、世界のいわゆる安全確保の面からいっても好ましいことだと私は思います。  ただ、国連等がいわゆる仲介に入ってイラン・イラク問題をも一つの解決のめどをつけたものの、依然として何かこの問題を低迷させている問題等もございます。いわゆるイデオロギーの異なる国々あるいはまた国情の違う国々が話し合うということはなかなか難しい問題である、時間のかかる問題だと私は思いますので、現状を常に把握しながら防衛というものを進めていかなければならない、こう思いますので、そういう点を中心にして私たちは今我が国の防衛力の整備について考えているということを申し上げたいと思います。
  110. 和田一仁

    ○和田委員 きょうは質問の時間をいただいたのですが、大変短い時間なものですから……。「なだしお」と富士丸の事故がございまして前回の連合審査でも御質問させていただきましたけれども、これまた十分時間がなくて次の機会にということで持ち越した分がありますので、きょうそのことについて御質問をしたいと思います。  この不慮の事故、大変不幸なことでございましたけれども、報道がなされまして、私等が新聞やマスコミの報道でこの事故を知って、そしてその後のいろいろな状況というものも新聞、マスコミから伝わってくるわけです。ところが、その伝わり方を見ておりますと、報道の傾向として潜水艦「なだしお」の責任が大変大きい、全責任が「なだしお」にあるかのごとき報道が当初ございました。「なだしお」の言うことが全く悪いのだというような感じすら受けたわけです。それに加えて、事件があった後の人命救助についても大変な手おくれがあった、何もしなかったではないかというような報道が大きくされまして、雰囲気としては全く自衛隊が悪い、こういう感じが持たれたわけです。  ところが、詳細にこの報道を見ておりますと、もちろん一〇〇%「なだしお」が悪いわけではないでしょうが、そういう報道ばかりではなくて、小さな記事ながらも詳細に見ておりますと、富士丸側にも相当問題があるというふうに私は見たわけでございます。そこで、原因の究明等については海難審判にお任せすることにいたしまして、九月二日に海難審判開始申し立てというものがございました。そこで出された問題を中心に事実関係をちょっと伺っていきたい、こう思っておるわけでございます。  まず、この海難審判開始申し立ての中を拝見しておりますと、釣り船第一富士丸は五十八年に遊漁船に改造されて六十二年四月に船舶検査証書を受けておる、こう書いてございます。それには、この船の最大搭載人員が沿海区域で旅客三十六人、船員八人の計四十四人として検査証が出ている、こういうことでございますが、報道等その他によれば、この船には旅客が三十九人、船員が九人、合計四十八人の人が乗っておられた。そして、そのほかにもう二名乗るはずのお客さんがおった。お二人のOLが桟橋まで来て、そして、せっかく乗るつもりで来たけれども、船を見た上で、どういう感想でおやめになったかはわかりませんけれども、とにかくキャンセルして乗らなかった、こういうことも報道されておりますから、本当を言えば五十名乗せて走る予定だったな、こう思うわけですが、この検査証書にある定員というものはどういうものなのか、これを許可された方にお伺いしたいと思います。
  111. 松村文夫

    ○松村説明員 御説明をさせていただきます。  船舶安全法に基づきまして船舶に乗り組むべき人員の定数を算定することになってございます。船舶所有者からの申し出によりまして、その内容を検討いたします。それぞれの人員に対応する船舶の設備でございますとかあるいは復原性とか、そういうことに適合するものでございますれば、その定員を、船員あるいは旅客あるいはその他の者、そういう区分で決めております。
  112. 和田一仁

    ○和田委員 要するに、その船のキャパシティー、この船が人を運んでよろしいという限界は四十四人である、安全性としてそこまでならよろしい、 こういう判断で定員というものは定められ許可をされていると思うのですが、大変オーバーしている。これはやはりお客さんを預かって運んでいくという立場にある会社の姿勢とすると、こういうところは大変ずさんであるな、安全に対する配慮はなされていたのかな、こう私は思うわけです。  そして、船員八人とございますけれども、船員というのは私の認識では船員法による船員、船員手帳を持っている人、これが船員で、旅客船が船員というものを定員で決めるならば、それは普通の旅客船なら旅客船の中の売店にいるおばさんまできちっと船員手帳を持っている、そういう人が船員ですね。ところが、この富士丸の船員というのは、船員手帳を持っていた人は何人だったのでしょうか。急いでお願いします。
  113. 千原伸夫

    ○千原説明員 私どもが承知している限りでは、船員手帳を持っていた者が五人というふうに聞いております。
  114. 和田一仁

    ○和田委員 船長さん、機関長さん、機関士その他の方、五人が船員手帳を持っておられた。あとは船員手帳のない富士商事の従業員。よく調べますと、これは従業員ではなくてアルバイト、臨時雇いというような方もおったようでございます。そうなると、定員の八人のうち本来船員としての枠は五人ですから、あとその五人も公認されている船員の人でない人もいるようですけれども、三十六人の旅客の定員を削って臨時雇いやあるいはアルバイトの人を乗せるならわかりますよ。船員以外の乗員は旅客の定員として三十六だというのだから、その三十六の定員から船員手帳を持っていない人を削って、少ない三十二人あるいは三十四人というような人を乗せるというならわかる。ところが三十九人も乗っている。そして、船員手帳を持っていない人も乗っている。こういうことが放置されていていいのかな、これが一つ。  それから、時間がないのでどんどん進めますけれども、いろいろ報道を読んでおりますと、この船が衝突直前に潜水艦を発見したときに、船長が、おお珍しい船が来た、潜水艦だと言って乗客に呼びかけをしてそっちへ寄っていったというような報道もあるわけです。こういうことも私は事実関係で究明していただいておると思うのですが、いろいろな情報が飛び交っておりまして、こういう大事な点を海上保安庁は十分審判の過程の中で明らかにしていただかなければいけないな、こう思うのです。  それで、私は一つ特に気になることをお伺いしたいと思うのですけれども、この前の連合審査では、この富士丸は四十五年に進水した大変古い船ですね。これは申立書に書いてあります。五十八年に遊漁船に改造された。このときにその遊漁船、つまりお客さんを乗せる、十二、三人以上のお客を乗せれば旅客船と同じような検査基準があるので、そういった基準は全部通っているのかと伺ったわけですけれども、それは全部クリアしている、こういうお話でした。復原力もちゃんと調査してございます、こういうお話でございましたが、にもかかわらずあの事故で二分間で沈んでしまったということは、これはもう一回検討しなければいけないな、船というものはそんなにもろく沈んでしまうものだろうかなという疑問がどうしても残るわけですね。  百五十四トンの富士丸は、本来もっと小さな百トン未満の船でしたが、デッキの上にサロンをつくり、そして船倉を外してそこに居住区をつくり等して、バランスをとるためにコンクリートで船底にバラストを入れるというようなことをして、百五十四トンの遊漁船に改装されている。本来ならば、漁船としてのトリム、そういうものでバランスをとっていた船が、そういう大改造をしたために後部トリムが非常に大きくなっている。つまり、へさきが上がったまま走るような格好の船であるということが専門家の中で指摘をされております。そういうちょっと普通の旅客船と比べてバランスのよくない船にたくさんのお客さんを乗せて、そして行って、たまたまあってはならないような希有な事故に遭遇して、その上がっているへさきがさらに潜水艦に乗り上げて、後尾が水の中に入った。たまたまその後尾には、改装したためにあったハッチが改装されてなくなって、そのかわりに防水扉があった。その防水扉があいていたためにどんと水が入って、まるで金づちを落とすようにすぽっと垂直に五十メーター沈んだとこの申立書には書いてございます。  そういうことを考えますと、これはこういう構造上の問題についても、遊漁船というものがどんどんできて、同じようにこういういわゆる漁船から改装されて海洋レジャーのための遊漁船ができてくる状態にあると、私はそういう点のチェックももう一回きっちりとやっていただかないと同じような事故につながりはしないか、非常に復原力の弱い、浮力の少ない、防水区画の足らない、そういうような感じの船が平気でお客さんを運んでいるではないか、こういう気がしてなりません。  そこで、こういう船が法的に位置づけがない。こういう船体の規則等は運輸省でやる。しかし、それではこの船を運輸省が管轄していろいろ指導しているかというと、そうではない。よく聞いてみると、これはいわゆる漁業で船を持っている人が三隻あれば一隻、こういう時代ですからこういうものに改装して仕事を始めたというような兼業の方があるというので、これは水産庁かな、こう思うわけですけれども、どうもはっきりしない。こういう船がふえつつあるときに、こういう船の法的な位置づけをやはりきちっとしていただかないといけない、こう思っておるわけですが、まず水産庁の御意見はどうでしょうか。簡単にお願いします。
  115. 本儀隆

    ○本儀説明員 お答えいたします。  まず、船といたしましては、これはやはり船舶安全法等々で仕切られているわけでございます。ただ、遊漁案内業という業態といいましょうか仕事としましては、これは私どもも、同じ水産動植物をとるという性格あるいは漁業との兼業者が多いといったことから、従来から一義的には水産庁の分担かなということで指導等に努めてまいっているところでございます。
  116. 和田一仁

    ○和田委員 これはぜひ両省御相談なさって、こういう船の安全運航のためにどうしたらいいかを相談していただきたい。長官もお聞きいただいているように、これは長官の御関係ではありませんが、たまたまこの事故は関連していますから、閣議等ではぜひひとつそういう方向で御発言をいただきたいと思います。  それで、私は運輸省にちょっと一つ提案したいのですけれども、陸上運送でも大型の自動車を運転する人は大型の資格、小型は小型でよろしい、こういうような免許の区別があります。船にもそういう意味での区別はあるようですけれども、しかし、旅客を扱うために陸上では二種免許でないといけない、たとえ四人、五人の人であろうと、タクシーを運転するからには二種というお客さんを扱う免許が要るんだ、こういうふうになっておりますが、船ではなっていないようでございます。私は、そういう意味ではこの旅客船、少なくも十三人以上の旅客を運ぶ船は、それを操船する資格は特別な資格を与えていいのではないか、いわゆる船長さん以下幹部になる船員には、かわりにハンドルを持つ、舵輪を持つ船員の人もそういう資格のある人であるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  117. 合田憲夫

    ○合田説明員 御説明いたします。  船舶の航行の安全を確保するために一定の海技資格を有する船舶職員の乗り組みを義務づけているところでありますが、御案内のとおり船舶というものは、船員でありましてもあるいは旅客でありましても非常に多くの人が乗船している、これが船の実態でございます。そういうことで、海技資格制度におきましては旅客船、貨物船の別なく、このような船舶の特性を前提といたしまして、国際条約に準拠してそのレベル、内容を決めておりまして、旅客船の安全な操船にも十分対応し得る、このように考えているところであります。  なお、船長のお話がございましたけれども、船長の職務をとるためには一定の海技資格を有する、これは当然でありますが、そのほかに船舶職 員として一定の履歴を積んだ者に限るというふうにしておりまして、安全確保に万全を期しているところであります。
  118. 和田一仁

    ○和田委員 申立書を拝見しておりますと、この衝突するまでの経過の中で、「なだしお」は危険を感じて転舵をして、エンジンをとめて後進全開をかけましたね。一方富士丸の方は、潜水艦が見えたよというようなことを言いながら左にかじを切って、そして七ノットで走っていましたけれども、最終的にこれは危ないと思ってさらに左にかじを切った上でエンジンをとめた。私のこれは素人考えですが、船というものは陸上の交通機関と違って、エンジンをとめただけでは走っているのですよね。まあ陸上でもそうです。そのかわりにブレーキを踏むわけです。ブレーキというのは何かといえば、後進をかけること、こんなことは私にもわかります。ですから、危険を感じてブレーキをかけたか、かけないかということになると、これは完全に富士丸はブレーキがかかっていない、ハンドルは切った、エンジンは切ったがブレーキをかけていない。これは同じ船員、船長さんとして貨物を運んでいる人、大きな船を運転する人、資格はあるかもしれないけれども、お客さんを預かっているバスの運転手がブレーキをかけないのと同じだ。こういうことはやはり二種というような、お客さんを扱うという免許を持っている人の自覚がないといけないと思うのですよ。これは今度の事故の中でも大変大きなポイントだと僕は思うのですね。  大きな船は行き足も大きい。大きいからブレーキをかけてもなかなかとまらない。小さな船はブレーキをかければすぐとまる。これは陸上でも同じ。「なだしお」と第一富士丸が危険を同時に感じて同時にブレーキを踏んだら、「なだしお」がとまる前に第一富士丸はとまっていますよ。「なだしお」はぶつかるときに十一ノットで走ってきたのを減速して三ノットぐらいだった。そして、第一富士丸の方は七ノットのままぶつかって、合計十ノットだった、こういうのでしょう。これは大変なミスですよね。こういう人に船長の資格を与える、こういうことがどこかでチェックされないと、また同じような事故が起こるのではないか、こういう気がしてなりません。これは私の感じです。  そこで、こういう問題は絶対二度と起こしてもらいたくない。ですから、私はそういった今指摘したようないろいろな問題で、この富士丸の経営の責任も経営の姿勢もまだまだいろいろ伺ってみたいと思うのですが、こういう富士丸のような遊漁船を扱っているお役所がはっきりしないものですから何ともしようがない。ですから、そういう意味でこれはぜひひとつきちっとしていただきたい、こう思うわけでございます。  それで、一つは補償の問題がございます。この問題もきのうNHKでは、もう防衛庁としてはいよいよ補償の問題に取り組むというような報道がございました。これは雫石のときも同じですけれども、こういう補償問題については、これは審判が出れば責任が相互にある、幾らかずつかわかりませんけれども、出てくればそれに沿ってやるようになると思うのです。これを聞いてみますと、第一富士丸の方は、富士商事という会社はもう社長さんしかいないということでございまして、この点について防衛庁はどういう基本的な姿勢で補償問題に取り組まれるのか。そして、きのう伝わりますところによりますと、補償額三十億というような報道がなされておりますが、それはそのとおりなのか、簡単にお答えいただきたい。
  119. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 補償問題につきましては、負担割り当てについては、これからいわゆる原因究明が行われた段階、あるいはまた海難審判等の結論を得てからこれは進められると思いますが、それとやはり関連しますのでこれはまず外に置いて、ただいまいわゆる賠償金の積算作業を進めよう。そのためには富士商事の了解をいただかなければなりませんものですから、富士商事と折衝を進めている段階でございます。  ところが富士商事は、負担能力がないのだからそれは私の方では支払う責任がないというような態度でございますので、なかなか了承を得るわけにいきません。しかしながら、できるだけ早い機会にやはり御遺族の方々に対して補償問題は処理してさしあげなければなりませんものですから、私たちとしましては、防衛庁として御遺族と直接交渉に入るということの結論を得たわけでございますので、今後そういう方向でできるだけ早い機会に賠償金の問題を処理いたしたい、かように考えておるのでございます。
  120. 和田一仁

    ○和田委員 雫石の場合は全日空という大きな会社でした。今回は、富士商事は能力がないとおっしゃるけれども、能力だけでなくて誠意もない、私はそんな感じがしております。というのは、四千万保険金がおりればいいじゃないかという姿勢がどうも見える。これは保険金であって賠償金じゃございません。そういう姿勢であっては遺族はたまったものじゃないと思うのですね。ですから、そういう意味では、本当に富士商事が能力がないと政府として判断したならば、事故のもう一つの責任にある自衛隊防衛庁が本気になって補償問題は考えていただきたい、こう思うわけです。  そうなりますと、本来ならば、これはお金を払って乗ったお客さんの補償は当然ですけれども、乗組員はどうされますか。二人亡くなっております。
  121. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 賠償問題につきまして、防衛庁はとりあえず乗客の御遺族の方の処理を優先して考えたいと考えております。と申しますのは、亡くなられた乗員につきましては同様の問題があるわけでございますけれども、これはあくまで富士商事側の方々でございますので、まず富士商事で対応を考えていただきたいということが一つと、それから今後次第に明らかになってまいると思いますが、過失割合等との関係がどうなっていくのか、この辺も見きわめないといけませんので、乗客の方々と乗員の方々を同様に取り扱うというのは適当でない、このように判断をしております。
  122. 和田一仁

    ○和田委員 これは局長さんのお立場からいえば当然の御答弁かと思いますが、しかし長官もおっしゃるように、相手に能力がないということになったときにはぜひ御考慮をいただきたい。そしてまた、分担の割合の問題も結論が出れば、当然それは富士商事側が持たなければならないものがあるはずですけれども、能力がないということをやはり前提に置いてお考えを進めていただきたい、こんなふうに思います。こういった補償問題等についてもこれからきちっとしていただきたいと思うのです。  本当に時間がなくてもうあれなんですが、いろいろ報道を見ていて私には順に落ちないことがたくさんあるのですね。最初に救難された方が横須賀の海上自衛隊の病院に保護されまして、手当てを受けられました。そういう病院の中で、何か聞いておりますと、患者さん、最初はその収容された旅客と乗組員とが一緒に同じ部屋におられたようですが、途中からもう嫌だ、我々だけ別にしてくれといって旅客の方が区別してくれと申し出たというような話も聞いております。これはどういう意味だかよくわかりません。  それから、取材に来る新聞社の諸君、そういう人たちがパジャマを着てまで潜り込んで取材をしている。また、入っていた乗組員の一部が、夜中に外に出て面会をしている。夜中といっても二時、三時ですよ。そういう時間帯に外に出て面会して取材に応じているというようなことを聞きますと、あの病院の管理は一体どうなっているんだろう。そして防衛庁として、こういう事故があったときに、私はきのうも聞いたんですよ。近藤船長さんはすぐ記者会見をしていろいろ言った。しかし山下艦長さんは全然テレビの前にあらわれなかった。やはり自衛隊は誠意がないんですか、こういう話が出たから、そんなばかなことはないですよ、こう言いましたけれども、そういうように印象づけてしまうのですね。これはやはり大事なことだと思うのです。  ですから、こういう大変な事故の後ですから大変混乱はしておると思いますけれども、そういう取材に対しても公平に扱うべきであるし、そして 同時に、そういう患者として預かった病院が、夜の夜中に取材に応じて出ていくのを野放しにしておくというようなことがあったのでは、これはおかしいなと思いますが、いかがですか、おかしくありませんか。
  123. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この事故の問題で、実は私、再発防止対策を積極的に進めるために、過般現地に出向いて実情を調査してまいりました。そして自衛隊員の一人一人にもお会いしまして、規律の正しい自衛隊状況も見てまいりました。  私は、報道されるところによりますと、どうも自衛隊は軍事優先で国民の災害に目を向けることがない冷たい人間ばかりだというような、暗にそういう表現がございますけれども、決してそうじゃない。本当に国を思い、国民を愛している一日本人であるということを国民の方も理解していただきたい、こう思うのです。母親のもとで、いわゆるヒューマニズムの揺籃で育った人間ですよ。戦後の民主主義の空気を吸うた人間ですよ。そして二親を持つ青年であり、あるいはまた子供の親であり、一家の主人である方々で、決して人間性を失った者の集団であるという物の考え方は、これは捨てていただきたい。  ただ私は、自衛隊に求めるものは勇気ある行動をとれ、単に正しいこと、あるいはまた人を憂うる優しさという観念以上にそれを本当に実行しなければいけない、その勇気を求めていると思うのでございますから、そういう点は諸君、国民に対して勇気ある態度をとるようにしなさいということを申し上げているのでございます。  したがいまして、私は今回の事件で、報道の関係だとかいろいろな面で、何をもたもたしているのだという点が国民に映ったと思いますけれども、本当の心は決してそんなものじゃないのだということを御理解いただきたいと思うのでございます。
  124. 和田一仁

    ○和田委員 長官のお話を聞きまして安心してまいりましたけれども、私は防衛というものは国家の本当に基本にかかわる大事な問題であると思います。したがいまして、定数をふやすとか、正面装備を拡充するとか、自衛力の整備を行うことをおろそかにしてはならないと思うわけですけれども、それは正面装備だけを拡充すればいいというものではございません。これは人です。人ですから、この人の問題をないがしろにしてはいけない。直接防衛の任に当たっている人たちが本当に責任を持って、その任務を自覚して誇りを持って任務を遂行できるということなしに防衛力というものはないのだと思うわけです。  それはやる人々がどういう自覚のもとにそういう気持ちが起きるか。つまり、国民を守るわけですから、その守る国民から信頼されなかったら、国民から、おまえら非人間的集団であるとか、無用の長物であるとか、要らないのだとかいってばかにされたり、こけにされたりしていることがあらわになれば、これはやっていかなければならない人々の気持ちも変わりますよ。やる気がなくなるというか士気阻喪してしまうのも無理もないと思うわけなのです。防衛は人であるならば、それを支えるのも国民である。国民とその自衛の任に当たる人々のかたいきずなというものがなければ防衛というものはないのだと私は思うわけなのです。  こういう大変不幸な事故は絶対に起こしてはいけません。そしてまた、きのうあった実弾射撃のような事故もなくしてほしい。一つ一つ事故は絶対に繰り返さない、起こさない、この決意と安全対策は十分とってもらいたい。しかし同時に、そういうことを起こさないために、何も危ないことはできないのだ、危ないことというか、訓練も差し控えようということになって、自衛隊の任務というのは、任務これ無事である、事なかれ主義であるというようなことに追い込んでいってしまって、非常に硬直した組織にしてしまうことは防衛の本筋からいうと逆であると私は思うわけです。この点についても、絶対に事故は起こさないように訓練してもらいたいし、迷惑はかからないようにしてもらいたいけれども、そのことによって硬直するような姿勢、いわゆる管理体制というか、そういう姿勢にならないように御配慮願いたいと思いますが、長官、いかがでしょうか。そのことだけをお聞きいたします。  もう時間がとっくに過ぎておりまして申しわけありません。
  125. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 我が国の独立と平和、そして国の安全を確保するための、いわゆる国家存立の基本にかかわる大任を果たす私たちでございますので、したがいまして、このことに誠心誠意努力してまいらなければならない。そのためには、単に私たちだけでこの問題を処理することはできません。国民の信頼と理解そして協力なくしてできないのでございますので、そういう国民との接点を大切にしながら、信頼の度を増して、国民理解のある、信頼のある自衛隊にしてまいりたい。またか自衛隊、こう言われることなく、またもいいことをしてくれた自衛隊という形にしていきたい、かように考えております。
  126. 和田一仁

    ○和田委員 年間数百回といういわゆる災害出動をされて、そういう目に遭った被災者からは大変感謝をされてきていた自衛隊です。一つの事故によって、そういったせっかく築き上げてきた信頼関係が崩れてしまう、そういうことを考えますと、やはり事故というものは起こしてもらいたくないと重ねてお願いを申し上げまして、私、質問を終わります。
  127. 竹中修一

    竹中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  128. 竹中修一

    竹中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕
  129. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 きょうは、外務大臣、農林水産大臣、法務大臣に来ていただきまして、また後から官房長官もおいでになるだろうと思いますが、防衛二法関係について関連する諸問題を含めて御質問をいたしたい、このように存じます。  まず最初に、林野庁長官もお呼びしましたが、「なだしお」と第一富士丸の衝突事件、これは海の事故でございましたが、昨日でございますか、今度は陸上自衛隊戦車の砲弾が演習場外で、しかもそれが国有林の中で、あたかもちょうどその時期に作業をいたしておりました人たちの目の前で爆発をし、至近距離で国有林野で働いておった人たちがこの砲弾の着弾の結果吹き飛ばされる、土砂を浴びるというような非常に恐ろしい事故が発生をした。この問題はもう既に新聞、テレビ等で大々的に報道されておるわけでございまして、自衛隊演習ではありまするけれども実弾射撃というようなもので、これだけ日本は国土狭陣にして人口密度は世界一と言っていいくらい高い、こういうところでこういう事故が起きるということ、全くこれは好ましいことではありません。何としてでもやはり再発を防がなければならない。過去に例もなきにしもあらずというようなことでございますので、まず状況林野庁長官から簡潔にひとつ御説明いただき、林野庁としてどのような対応をしているか、これについて簡潔にひとつ御説明ください。
  130. 松田堯

    ○松田(堯)政府委員 御指摘の事案につきましては、昨日午前九時四十分ごろでございますが、宮城県にございます王城寺原演習場での陸上自衛隊演習中に、戦車からの砲弾が演習場外の大船形山国有林内に着弾したものでございます。当日は、当該国有林を所管いたしております中新田営林署の職員が九名現地で作業をしておったわけでございますが、着弾地点はそのうちの一名から十七メートルの至近距離に着弾をいたしておりまして、縦三メートル、横二・五メートル、深さ〇・六メートル程度の穴があきまして、周囲約二十メートルに土が飛び散った、こういった報告を青森営林局から受けているところでございます。  事故発生直後、中新田営林署は事実の確認を行いまして、青森営林局に報告をいたしたわけでございますが、営林局は当該演習を実施しておりま した大和駐屯地に対しまして強く抗議をいたしております。演習を当面中止し、事故再発防止措置を講ずるように申し入れたところでございます。林野庁におきましても、防衛庁に対しまして同様の申し入れをいたしているところでございます。
  131. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 ごく最近のこの種の事故は、六十年の五月八日に沼津の営林署管内富士山国有林実弾射撃訓練中の実弾が落下をし爆発をした、こういう事例がありました。それからまた、六十二年三月九日、昨年でありますが、旭川支局の富良野営林署上富良野国有林、やはりこれも上富良野駐屯地の陸上自衛隊実弾射撃訓練中、装薬のミスから着弾地を越え国有林内で爆発をした、こういうことがあります。  これはごく最近の一、二の例だけでありますが、そういうものがある。国有林野に働く人たちの御夫人方がこの上富良野の国有林のときに、ことしになってからでしたか昨年でしたか、北海道からわざわざ上京してまいりまして、当時の防衛庁長官に、主人たちの命を守ってくださいという切実な訴えをした。私どもの同僚議員が立ち会った。その際、自衛隊はもう本当に土下座せぬばかりに、もう二度と再びこのような危険な目に遭わせるようなことはいたしませんとおっしゃっておったわけなんですね。そういう経験も私ども持っているわけです。  そういう中で、今度このような事故が起きた。これについて防衛庁長官、かわったばかりで「なだしお」の問題の後をお引き受けしたり、こういう事故に遭って大変お気の毒ではあるのですけれども、やはりこれは正すべきはきちんと正しておかないと、国民から愛される自衛隊防衛庁、こういうようなことを言っても、これは絵そらごとになってしまうわけでございますので、防衛庁としてのこの種事故に対するお考えを、そしてまた、こういう事故を二度と再び繰り返さない、これを何回も「なだしお」問題でも繰り返しておられる長官でございますが、ひとつ所見をお聞かせいただきたい。
  132. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今御指摘のように、過去にあった事故が再び起きたということは本当に残念でございます。しかも、東京湾での潜水艦と民間船舶の衝突事故のあった後でございます。これに対して私たちは襟を正して、今後二度とこのような痛ましい事故を起こしちゃいかぬ、こういう覚悟でおるやさきでもございます。したがいまして、私はこの衝突事故以来、過般の三沢での航空祭に対しても、かつて西ドイツでのアクロバット飛行事故がございましたので、これは考えてみてはどうかという申し入れをしました。そうしたら現地から、これは延期しましょうということに相なったのでございまして、そういうやさきにまた戦車からの粘着りゅう弾というものの事故が起きたということは本当に申しわけない、こう思っているのでございます。  ただいま原因については調査中でございまして、あのいわゆる粘着りゅう弾そのものの持つ多くの特徴なり欠陥なりがあるだろうと思うのでございますので、そういう点を究明して、ただいま御指摘のように二度と繰り返さないようにいたしたい。しかも、この粘着りゅう弾につきましてはこれからの演習をしないように、演習は実施しないようにというようにいたしてございます。
  133. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 新聞の報ずるところによりますと、戦車を目標にして戦車から粘着砲弾を発射する、一たん戦車に当たってそれが跳んでいって別なところで、国有林の中で爆発をしたというのが今度の状況のようですが、それは自衛隊訓練中の人たちは目撃をしてわかっておったというのですね。その戦車に命中したところで爆発をしないで、それが跳越して国有林の中で爆発をした。それから後三十分間射撃を依然として続けておった、そういう状況設定になっておったということについては、やはりこれはどこかに人命尊重というかあるいはまた地域の住民に対する配慮というか、そういうものがなさ過ぎる。平時の自衛隊自身の訓練の仕方というか教育の仕方というか、そういうものに何か欠陥があるような気がしてならない。  その辺のところをどう改めるかということがまず大事だろうし、特に、実弾射撃をやるようなときにそういう事故があるわけですから、着弾地点というものは、正確にねらって撃つわけですけれども、そういう状況にもなることもあるしミスもあるというようなことなんですから、そのミスをした場合に、間違った場合にどれくらいの危険の範囲があるかということはおのずからこれは判定がつくはずであります。そういうような場合に、そこに国有林があるとすればその営林署に対してきちんと事前に通告をして、この範囲は非常に危険地帯だから当日は作業員を配置しないでもらいたいというようなことや、これはまた民家のあるようなところでも同じようなことが言えるだろうと思うのですね。何軒かの部落が点在しているというような場合であっても、それならば事前に町村でどの部落とどの部落は危険性があるからというようなことをきちんと通告をして、そういう危険のないように事前の準備をするというような配慮というものがやはりあるべきだと思うのでありますが、これから再発防止という立場でどのようにお考えになっておられるか、その辺のところをひとつきちんと聞かせておいてほしい。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 ただいままだ調査中ではございますけれども戦車でございませんで標的を置きまして、その後ろに停弾堤があり、それに当たりましたか当たりませんか、その上を越えていったということのようでございます。その際に監視手はちゃんと砲の後ろ側から見ておったのでございますけれども、音を場合によっては十分聞かなかったかあるいは聞きましたか、その辺がまだ現在調査中でございまして何とも申し上げられない点を御理解いただきたいと思います。  それから、隣接いたします国有林でお仕事をなさいます林野庁の方々に御迷惑をおかけしましたけれども事前の通報は、これは規則で決まっておりましてきちんとやっておりました。ただ、いずれにいたしましても、先生も御指摘の三年前の事故以来きちんとやっていたはずがまた同じ弾であったということは、これは非常に問題でありまして、深刻に受けとめ、これの再発防止に全力を尽くさなければいけないというふうに考えておりますので、教育訓練の面も含めまして私どもに御信頼いただきたいと思うわけであります。
  135. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 林野庁長官にお伺いしますけれども、そういうような事前の通告で危険区域というものを特定して警告を発しておくというようなことはきちんと受けておったのでございますか。
  136. 松田堯

    ○松田(堯)政府委員 八月三十一日に大和駐屯地の業務隊長から中新田営林署長の方へ通知されているところでございます。
  137. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 防衛庁長官田澤大臣もかつて農林水産大臣もやられたわけでありまして、国有林の重要性、そういうようなものはもう先刻百も承知のはずであります。どうも最近、VLF、九州のえびの営林署と人吉営林署管内、ああいうようなところで二百数十ヘクタールを、そういう通信施設でありますが、自衛隊がつくるというようなことで、非常な美林をVLF施設に使うというようなことがあったり、近くはまたIDDN、通信情報ネットワークを全国的に張りめぐらそうという計画もあるやに聞いております。  これなんかにおいて、国有林は言うならば我が物というようなことで余りに安易に国有林自衛隊が使う。あるいはまた、先ほど事前にちゃんと通告をしておくということはやったんだというお話でありますから、これは実効が上がるようにきちんとやってもらいたいということで、これはやはり末端の作業員の人たちにまでちゃんと所轄の営林署を通じてやってもらわなければならぬことでありますから、それらの問題も職員に徹底をさせる、そして作業の配置なども危険のないようなところにやるというようなことでぜひ徹底を期してもらう、このことを林野庁長官にも要望しておきますが、今申し上げたIDDNの問題であるとかVLFの施設なんかで、どうも防衛庁国有林 は自分のものだというような形で安易に——山が荒れてどうしようもない、地球上が砂漠化現象が起きるというようなことが世界的な趨勢になっているわけですから、国有林を中心にして山の緑を守っていくということについて、農林水産大臣もやられて山の重要性も十分わかっている方が防衛庁長官にもなられたわけでありますから、その辺のところの調整、調和、こういうようなものについてどのようなお気持ちでおられるか、明確にしておいていただきたい、このように思います。
  138. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 戦後、山を愛し、それで緑をふやそうということで、いわゆる植林政策を進めてまいって今日に至っているわけでございますが、一千万ヘクタールを既に植林しているわけでございまして、それが今日の日本の青い山をつくり上げているわけでございます。したがいまして、それはもちろん民有林にもよりますけれども国有林の役割というのは非常に大きい、こう思いますので、ただいま御指摘のようなことを念頭に置きながら私たちはこの演習地等についての対応をしてまいりたい、かように考えますので御理解いただきたいと思います。
  139. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 ほかにたくさんの問題を質問しなければなりませんし、外務大臣、法務大臣もお待たせいたしておりますものですから、この問題はまだまだ申し上げなければならぬことも多いのですけれども、この辺でやめさせていただいて、次の質問に移らせていただきます。今おっしゃったように、長官からお話がありましたように、今度の場合は人命が損なわれたという直接的な被害はなかったにもせよ、「なだしお」と同じようにこれからそういう事態が起こる危険性というものは極めて色濃くはらんでおるわけでありますので、そういうことのないようにくれぐれも御注意をいただきたい、このことを特に強く要望いたしまして、この件についての質問は終わりまして次に移りたいと思います。  外務大臣、お忙しい中おいでをいただきましてありがとうございました。そこでこの問題は、今ソウル・オリンピックを前にして非常に微妙な状況にあると思うのでありますが、もう連日新聞にも報道されまして、例の大韓航空機墜落事件で真由美なる女性のテレビ証言というか、そういうようなもので我々にはどうもまだしっくりこない多くの疑惑を抱えたまま、日本政府が朝鮮民主主義人民共和国がその国の意思に基づいてやったんだというような断定のもとに制裁措置という、あえて大上段に振りかぶった形ではないにもせよ、官房長官談話で一定の措置を決めて、それ以来人事の往来等が非常に窮屈になっているという、簡単に言ってしまえば一種の制裁措置、こういうものが今でも続いているわけでございます。  その後、国際状況も大きく変化していると思うのですね。INF全廃条約の締結もあるし、アフガンからのソビエトの撤兵もあるし、イラン・イラク戦争も八年間の戦争からようやく停戦にこぎつけようという状況、そしてまたカンボジア、ベトナム問題、こういうようなものも解決への曙光がぼつぼつ見え出してきたんじゃないか。いろいろなそういう問題もありますし、朝鮮民主主義人民共和国もソウル・オリンピックを妨害するなんという意思は全くありませんという表明もなされておる。そしてまた、昨年は十万の軍隊の削減を断行した、こういうようなもろもろの事象があるわけですね。そして、この前あなたに質問したときにも申し上げましたように、朝鮮民主主義人民共和国は日本の国と関係正常化をしたいという強い希望を持っているというようなことを、第三国を通じてあなたのもとにも意思表示が届いている。そういういろいろなことがあるわけでございまして、今たまたま我が党の山口書記長が、第十八富士山丸の問題を皆さんと同じ気持ちで何とか解決したいというような気持ちも持ちながら建国四十周年記念に招かれて行っていらっしゃる。そしてまたソウル・オリンピックも間近である。  こういうような状況の中で、くしくも横須賀を、これはまた後で問題にしますけれども、例の核トマホークを搭載できる、六発あるいは十一発というようなトマホークを積んでいるに違いないと言われるようなものが航空母艦と一緒にきょう出港するというようないろいろな問題がございますけれども、これらの朝鮮半島をめぐる情勢、広く世界の情勢というものを日本の外務大臣としてどのようにとらえられて、朝鮮との関係というものを一歩でも二歩でも半歩でも前進をさせる友好的な態度、やはり向こうは日本をまだまだ敵視した政策をとっている、こう言っているわけでありますが、日本政府もそれらの状況を踏まえて一歩でも二歩でも半歩でも友好的な態度への転換があるというようなことに踏み切る段階に来ていると思うし、そのことがやはりソウル・オリンピックを平穏のうちに成功させる道でもあるだろう、こういうようにも思うわけであります。そういう点で、今私が申し上げたことを踏まえて、ひとつあなたのそれらの情勢に対する認識をこの際お伺いしたい、こういうように思います。
  140. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今広瀬さんみずから申されましたような、確かに地球には紛争を解決し、速やかに平和を取り戻そうという空気がみなぎりつつある、私はこう思っております。特に、超大国である米ソ間におきましてINFのグローバル・ゼロ、さらには、ことしになりましても二度目の首脳会談が開かれ、その後はジュネーブにおいて具体的に両国の事務レベルでいろいろと検討されている、そうしたことが各地の紛争解決へ大きく弾みをつけた、このことは私たちも本当に心から歓迎をし、なおかつ、日本もそうした問題に関しまして経済面さらには非軍事的面でお役に立つならばいつでもお役に立ちますという姿勢は既に示しているとおりでございます。  特に、朝鮮半島の緊張緩和、これは仰せのとおり私たちも隣国といたしまして、またアジアの一員といたしまして、その日の速やかに来らんことを祈るものであります。特に、やはり北朝鮮なりまた韓国なりそれぞれの国々は、お隣のソ連または中国に対しましてもいろいろの面において熱いまなざしを送り、その関係改善を図らんとして努力しておられる。こういう点も十二分に間接直接に私も認めておるような次第でございます。そうした中において、不幸大韓航空機事件が起こりましたから、制裁ではございませんが、措置をとりました。だから、この措置は、やはりひたすらああいうテロ、そうしたことがないようにということをおもんぱかった措置でございまして、目睫の間に迫りました韓国のオリンピック大会が無事成功裏に終わることを現在は衷心よりお祈りを申し上げておるというのが、私たちの気持ちでございます。  また、第十八富士山丸の船長、機関長の抑留という、我々から言うならばまことに不合法なことが行われまして、これに対しましては広瀬委員を初め社会党の方々が非常に努力をしておられる。この努力に対しまして私たちは常に敬意を表し、この間も書記長と留守家族の方とお目にかかりましたときにも私はお礼を申し上げておきました。そうしたことで、第十八富士山丸とさきの官房長官の措置は全く別個のものではございますが、どこかで結びついておるのじゃないかと、いろいろそれぞれが熱い思いを持って眺めておることも、あるいは事実であるかもしれません。  したがいまして、現在といたしましては、しばしば繰り返してまいりましたけれども、盧泰愚政権もああやって北朝鮮に対する呼びかけをしておる、北朝鮮からもオリンピックを絶対に妨害しないというエールも交換されておるという事態でございます。私たちもそうしたことを歓迎しながら、やはりまずオリンピックが平穏無事、成功裏に終わることをお祈りしたい、そうした後において、措置等々の問題に関しましてはいろいろなことから十二分に判断しなければならないであろう、こういうふうに思っておるのが現状でございます。
  141. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 今お答えをいただいたのですが、それはそれなりに受けとめておきます。  きのうの読売新聞には、首相も「十六日に制裁解除」と断定的にクエスチョンマークなしで報じられておる。「対北朝鮮 首相、意向固める」こう いう記事があるわけでございます。これは総理としての決断が大変好ましい方向に向いているなという感じを私は持っておるわけであります。官房長官もこのような総理の意を酌んで記者会見等もやられて、その都度新聞報道になっておる。私ども社会党としても、あるいはまた超党派の議連であります日朝友好議連を通じて日朝関係正常化の一日も早からんことを常に願って活動をしてきた。こういう立場において官房長官の談話の端々に外務省立場、それからまた出入国、特に入国管理局を抱えておられる法務大臣、両省の御意見がもういいじゃないかということになれば、こういう措置も英断を下しますよと言わんばかりの新聞記事になっているわけですね。そういう趣旨からいって、外務大臣の気持ちは今の答弁で私も大体わかったような気もいたします。  今これは実に熱い状況といいますか、我が党の山口書記長がその問題をひっ提げて向こうに行って、きのうあたり向こうの政府高官、許ダム政治局員とも会見をしたようであります。そういう状況の中での話でありますから、できるならば両省ともそういう方向に行って、日朝関係が本当に関係正常化に踏み切れるような段階を迎えたいというお気持ちであるならば大変結構である、こういうように思うわけでございますから、ここで外務大臣に続いて法務大臣からも、この制裁解除というものが一日も早からんことを、特にソウル・オリンピック前でもいいじゃないか、それだけ富士山丸等の人道的な問題の解決も早まるのではないかという希望も持てるような状況まで来ている、そういうことも踏まえて将来のことも描きながら、ひとつ法務大臣の御所見をお示しいただきたい。いろいろなところで法務大臣は、この種の問題があるときに新聞に所見を問われて語っておられる。そういうものを見ておりまして、いつも非常に高邁な、しかも正義感あふれる表明をいただいておることを私は評価を申し上げておるわけでありますが、法務大臣としての御所見をこの際お示しをいただきたい。そのことが官房長官あるいは総理筋で踏み切れるといいますか決断をしやすい状況をつくることにもなろうかと思いますので、法務大臣の御所見を承りたい、このように思います。
  142. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 ただいま外務大臣から答弁がありましたとおり私も考えております。また、現在社会党の書記長が北朝鮮へおいでになりまして、いろいろな問題を携えて御奮闘いただいておりますることに対しまして私も感謝を申し上げておる次第でございます。  現在のところは、去る一月二十六日に官房長官から談話として発表されました政府全体の方針に基づきまして法務省としては対処しておる次第でございまするが、今後ともよく注視をいたしまして、特にソウル・オリンピックが平和裏に終了することを念願し、外務大臣のおっしゃいましたように対処をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  143. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 官房長官、おいでいただきましたので、今宇野外務大臣それから林田法務大臣に申し上げましたが、九月七日の読売新聞にこういう記事が載りました。「十六日に制裁解除 対北朝鮮首相、意向固める」こういう見出しで、「平壌を訪問中の社会党代表団に対し、北朝鮮側が第十八富士山丸問題で船長らの釈放を含めた柔軟方針を示した場合には、ソウル五輪開会直前の十六日の閣議で解除に踏み切る意向を固めた。こうした首相の方針は小渕恵三官房長官を通じて社会党側にも伝えてあり、」云々というようなことがあるわけであります。  この新聞記事を全面的に信用して可なりというならば、それで私は大変結構なんですけれども、そういうお気持ちに総理も、これは当然に官房長官も、この新聞記事はほぼ正確であるというようにお認めになり、長い間かかりました日朝関係がこういう形で新しい友好への一歩、新しい日朝関係というものに飛躍できるチャンスになり得る問題だなという気持ちを持ちながら、総理大臣なり、小渕官房長官なりの率直な御見解をこの際表明をしていただきたいと思います。
  144. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 北朝鮮に対する一月二十六日の政府の措置につきましては、先生御案内のように我が国のパスポートが使われ、あたかも事件そのものが日本人の起こしたものであるとの誤解を浴びた点、あるいはソウル・オリンピックを成功裏に終了するためにいかなる妨害も行われないことを期待して行っておるものでございます。  そうした観点に立ちますと、この措置そのものの解除につきましては、従来からオリンピックが平和裏に成功し、これが終了した段階日本政府としてはこの解除の問題について検討するという立場をとってきたことでございますし、恐らく外務大臣からも同様の御答弁をいただいておることだろうと思います。  一方、この措置の発表以来ここ半年間における朝鮮半島をめぐる諸情勢の変化につきましても、これも否定し得ないところでありまして、盧泰愚大統領が七月七日に宣言を発表し、中ソとの友好関係樹立を発表されると同時に、我が国としても北朝鮮との関係改善につきましてその方向を是とすることと相なっておるわけでございます。また北朝鮮におかれましても、このオリンピックについては何らの妨害工作を行うものでない旨を正式に発表しておることも事実でございまして、また同時に、南北それぞれの、北朝鮮並びに韓国との交渉も板門店で整々と行われておることも承知をいたしております。そうした観点に立ちまして、私どもは現在この変化について十分認識をいたしておるということでございまして、この時点で解除について既に決定しているとか検討しておるとかいうことではありませんけれども、こうした事態の変化につきましては十分認識をいたしておるということでございまして、この気持ちを御理解いただきたいと思います。     〔委員長退席、前田委員長代理着席〕
  145. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 いろいろな新聞の記事で、官房長官が記者会見をやられたときのニュアンスについて、それぞれ若干違うようなニュアンスもあるわけでありますが、そういう中で読売に、十六日制裁解除、首相意向を固める、こういうような記事が出る。同じ日のほかの新聞の中に、特に心配なのは、外務、法務両省の態度もあるというようなニュアンスを語られたというような報道もあるわけであります。そこで、きょう外務大臣と法務大臣においでいただいて、先ほどるる、今あなたがおっしゃった国際情勢の分析などもくどいほど申し上げながら、そういう中で、こういう方向になるのは実に好ましい日朝友好の一つの新時代を迎えることになるのじゃないかという評価を私はしたわけでありますが、両大臣ともこれは好ましい方向であるという表明をなさったものと私理解をしたわけで、今その次にあなたの答弁をいただいたわけであります。  ぜひひとつ、できる限りそういう方向で、オリンピック成功のためにもそういう方向で進んでいただくということに、国家としての一つの決断の時期でもあろうと思いますので、総理のそういう方向でというのは極めて国際正義にもかなう、そしてまた日本の安全と平和にとっても非常に大きな意義のあることである、そういう気持ちで、ぜひそういう方向で努力をしていただきたいということをひとつ要請をしておく次第です。  そういうことで、友好関係樹立の方向に向かって一歩を進めながら、その具体的な今後の日朝関係の中で今私どもがやらなければならない、我々日朝友好議連の事務局長としてずっと頑張ってきているわけですけれども日本からは総務会長の伊東正義さんも行かれたし、通産大臣の田村元さんなんかも行かれているし、そのほか林義郎さんなんかも行っておられますし、こちらからはそういうクラスの大物も向こうはどんどん今まで受け入れてくれたわけですね。そういう中で、向こうの政府高官、こういう人たちを受け入れない、ビザを出さない。かつて日朝友好議連会長代行の谷洋一君が許ダム・前外務大臣、今政治局員の相当高い地位にあるわけですけれども、この人をぜひ日本へお招きをしたいと日朝友好議連を代表してお 呼びをしたのですけれども、大体ビザを出してくれない、入国許可がおりない。かつてまた、日朝漁業暫定協定の契約更新のために玄峻極、当時朝日友好協会副会長でありましたが、国会議員でございます、その方が三回目においでになろうということでこちらから招請をした。ところが日本政府がビザを出さない。前に二回おいでになったときに新聞記者のインタビューに答えて若干政治向きの話をなさった、時の内閣に対する若干の批判もしたり、あるいはアメリカ日本の関係について若干のコメントをしたというようなことで、ストップをしてしまったというような不幸な事態なんかもあったわけでありまするけれども、やはり関係正常化という方向に行くことがアジアの平和を守る大きな道でもあるし、南北の自主的平和統一への大きな道にもつながるという考えを私どもも持っているわけでありまして、そういうことが朝鮮半島の平和、北東アジアの平和、そしてこれが世界の戦争の火種をなくするという意味でも非常に大事なことであろう。  そういうようなことでありますから、これはオリンピックが平穏裏に進んだ後でも結構でございまするけれども、そういう人たちに対してやはり、どうぞおいでください、いつでも日本政府は無条件でビザを出しますよと言うぐらいの踏み切り方はやっていただきたいなということを私ども強く感ずるわけであります。その点につきまして、官房長官、外務大臣、法務大臣、簡単で結構でございますから一言ずつ所見をお聞かせいただきたい。
  146. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 ただいまの委員の御主張せられるところは理解いたしますが、政府といたしましては、この問題は一月の措置に基づいて現在対処いたしておることでございますので、この措置そのものについて……(広瀬委員「措置とは関係ないのです、許ダムさんを呼んだことは。その前からの……」と呼ぶ)はい、承知いたしておりますが、政府としては、現在この措置がございますので、その措置に基づいて現時点では対処いたしておるということでありまして、もし改めて申請がありますれば、この措置との関連において対処するということであろうかと思います。
  147. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 措置という問題を先ほどから官房長官、私たち答えましたから、それはそれとして、一般論として今後どうするのかというお話として考えてみたいと思いますが、国交のある国々におきましても、やはりビザを出すという制度がある国におきましては一定の制限等々がつけられておることが多いわけであります。日本と韓国とは非常に仲のよい国でございますが、やはりビザ発給のときには、こうしたことはやってほしくありませんよということも加えられております。過般も、ついこの間の事件ですが、日本人が逮捕されました。すぐに大使館が中へ入りまして一応帰国をしていただくように、無事にこの者は終わったのですが、やはり政治活動をしてほしくないねということについて政治活動をされたということもございます。  国交のある国におきましてもさようでございますから、まだ日本と北朝鮮は国交がございません。国交問題は、これは南北それぞれがお話し合いになって、そうした事態が来ることを私たちも望んでおるわけでございますが、国交のないときにいろいろな方々がお入りになる場合には、やはりそれ相応の制限がついたりいろいろな問題があったかと思います。したがいまして、やはりそうしたこともお互いの立場上、入国出国に際しましては守っていただかなければならないのじゃないか。それが今まで往々にしてほごにされたから、こうだった、ああだったというような話もあるいはあったかもしれません。したがいまして、今後私たちといたしましても、やはり常に関係改善ということを図っていきたいと思いますが、国交がある、ないということも一つの大きな、幾つかの問題もはらんでおる。そこはひとつお互いがわきまえなければならない問題もあるのではなかろうか、私はかように思います。
  148. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 北朝鮮からの入国につきましては、ただいま外務大臣から答弁がありましたように、現在我が国と北朝鮮との間に国交がないという状況を踏まえまして、入国目的が政治的性格の強いものにつきましてはこれを認めておりませんが、しかし、いわゆる人道的ケースを初め学術とか文化とかスポーツあるいは経済の交流を目的とするものにつきましては、具体的案件ごとに個別の審査の上に、特に忌避すべき事由のない限りこれを許可することにしておりまして、先般の卓球競技団の入国もそれによったような次第でございまして、今後とも今の対北朝鮮措置にのっとりまして対処してまいる所存でございます。     〔前田委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 法務大臣、外務大臣のお話を伺ったわけですが、国交がない、だから国交正常化というか、これは二つの朝鮮策謀というような言い方もあったりしまして、しかし、少なくとも国対国の間で関係の正常化という方向でいかなければ、この前も外務大臣にも、戦争が終わってから四十三年たっているじゃないか、これでたった一つ隣の朝鮮半島北半分のオーソリティーと何の関係も政府間で持てない、そういうものが人道問題にまで波及して紅粉さんや栗浦機関長が抑留されるという、そのことに対してどうにも政府立場で交渉に当たることもできない。閔青年はそれなりに国際法の原則に基づいてこちらでちゃんと人権を保護してやったけれども日本国民である紅粉船長と栗浦機関長については政府として何の手も打てない。これは土井委員長訪朝の際に関係者で話し合ってみてはどうかということで、課長クラスが二回ぐらい北京で話し合ったということは聞いておりますが、そういう程度。これはやはりいかにも情けない状況であろうと思うのですね。隣の国です。しかも二千二百万人の人が住んで、体制は違いますけれども、ちゃんと国を建てておるわけでありますから、それとの間を政府の責任においてやはり対等の立場で話し合えるような状況に持っていくということは、非常に大事なこれからの日本の外交における課題であろう、こういうように思います。  外務大臣は大変お忙しいですか、あと十分ぐらい大丈夫ですか。——じゃ、この際法務大臣にお聞きしておきますが、この前、五月でしたか、ピンポンの世界大会のときにあなたの高邁な見識をもって入国を認めていただきました。これは大変私ども評価をいたして、この委員会でその直前に私も熊谷入管局長質問をいたしまして、措置の前と同じような気持ちで対処しますという御返事をいただいてそのとおり実現したわけであります。来た後で、もう競技をやって団体では第二位になる、いよいよ決勝戦だというようなところで、朝鮮総連という団体があることは御承知のとおりでありますが、その人たちと朝鮮に渡ったことのある友好人士が共同して歓迎実行委員会をやったのですが、そこに出ることは一種の政治活動である、予定外の行動であるということで、どうも厳しい態度でやられて、選手団は大変立腹してお帰りになってしまった。  これは外交儀礼としても、特に暴力的な大変な秩序破壊をするわけではない、法務省の立場から見れば予定外の行動というものは一切許さぬという建前ではあるけれども、友好団体が、そしてまた朝鮮を祖国とする在日朝鮮人の皆さんが朝鮮総連というのを結成してずっとおるわけでありますから、これが破壊的団体であるとか暴力的団体であるとか、あるいは政治団体であるというようなことではないだろうと私は思うのですね。そういうものが入ったからといって、そこへ出るのがいかぬと言って強い指導をされて、出席をしているところへそれが耳に伝わった、それじゃ我々もここへ座っているわけにいかないということで中座をして、相談の結果、また本国にも請訓をしたようでありますが、お帰りになった。せっかく大変な英断をもって法務大臣もやっていただいたのだけれども、ちょっと後の対処の仕方というのが外交儀礼的にも少しかた過ぎたのじゃないか、行き過ぎたのじゃないかという感じを持たざるを得ないわけであります。その辺のところ、もう少し弾力的な温かい配慮というものはないものでしょう か。
  150. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 まず最初に、北朝鮮の卓球競技団が途中でお帰りになったことはまことに残念なことでございまして、私も先生のお考えのような気持ちも持ったような次第でございます。しかしながら、実は入国に当たりましては、日本の卓球連盟が身元保証人と申しますか、いろいろなことについて保証をするということがありまして、そして、入国せられるということはスポーツのためにお入りになるということで政治的な目的はない、したがって政治的な団体との接触は最初から日本卓球協会を通じましてお断りを申し上げておったというような経緯もございまして、ああいうような結果になったわけでございます。しかし、そのことはまことに遺憾なことであったと存じております。
  151. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 法務省、外来の客を温かくもてなすということ以上に、規則一点張りというようなビヘービアが少し強過ぎるのじゃないかなという感想だけ申し上げまして、法務大臣に対する質問はこれで終わります。御退席いただいて結構であります。  今度は外務大臣、五分まで大丈夫だというので最後の質問を一問だけいたします。  ソビエトとの関係でございますが、暮れ近くにでもシェワルナゼ外相が訪日をされるということもある。そしてソビエトの変わりようというか、この前も申し上げましたけれども、ペレストロイカがゴルバチョフ指導のもとにかなり急ピッチで進んでいる。これだけの大改革をやろうというのには国内に抵抗もあるようでありますが、いずれにしてもそういう方向に進んでいる。そしてまた、日本との関係も急速に改善したいという非常に強い希望を持っている。それというのも、軍備増強、さらに軍事対決というような基本姿勢ではもうソビエトの経済ももたないし、国民に豊かな暮らしを保障することもできない、そういうとことんまで来た結果がそういう方向になってきているし、国際政治におけるソビエトのプレゼンスというようなものも、大改革をしよう、そして経済重点、国民生活重点というような方向に向かってきていると思うのですね。それで、かつて一時期、北方領土問題は全く論外の問題であるというような態度から、最近の報道を見ましても、ソ連外務省の広報誌、この間来られた次官などもそういう方向をにおわしておりましたけれども、広報誌等についても領土問題が存在するということを認めてきた、そして対日改善を力説するようになってきている、そういうような状況。  したがって、防衛白書なんかを見ますと、そういうような状況にもかかわらず、米ソの平和共存への方向というようなものは着々進みながらも、アジア方面におけるソビエトの軍備増強はまだまだ大変な脅威だ、脅威脅威ということを言っておるわけですけれども、そういうスタンスから日本の対ソ外交のスタンスというものももう変わる時期に来ているのじゃないか。そして、日本の大きな技術力、経済的なパワー、そういうようなものなんかをソ連にも友好的に提供してやりましょう、そういうような方向に転換することによって、これは太陽と北風の話じゃありませんけれども、その辺のところも踏まえてやはりそういう方向に行くべきではないかな、こう私は思うのですが、御所見を承って、御用があるようですからお帰りになって結構でございます。
  152. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今、ペレストロイカの評価を広瀬委員みずからなさいましたが、私もほぼそれと同じような意見を抱いております。現に、幾つかのソ連の雑誌等々を私も詳細にわたって読み、かつ吟味いたしておりますけれども、確かにゴルバチョフ書記長の思い切って衣がえをしたいという気持ちは評価しなくてはいけない、ただし、社会主義というそうした枠内でのことであるということも私たちの今後の考え方の一つの基準にあってしかるべきと思います。  それで、そうした中において北方四島問題も議論されるべきである、私はこういうふうに考えております。我々がソ連との改善をしなければならないことは幾つもございますが、やはり一日も早く平和条約を結びたい、そのためには北方四島問題に関して解決をしたい、一括返還を求めたい、それが実現すればもっともっとよい関係になりますよということを常に申し上げておりまして、今後もその点は私は変わりないと思う次第でございます。  しかしながら、現に社会主義社会の中におきましても、先ほども申されましたように、非常に大胆な意見が何人かの方々からどんどん出ておるという雑誌も私読みました。したがいまして、日本としてもそういう気持ちを十二分に酌み取りながら、やはり原則原則として守るけれども、しかし改善の面においては、いろいろなことが起こったならば、向こうもダイナミックな行動をとるならば私たちとしてもそれに対応するような気持ちを失ってはいけない、これは私から申し上げてもよいことではないかと思っております。したがいまして、九月にはシェワルナゼ外相と国連における会談も持つことになり、この年末にも外務大臣みずから来るということが約束されておりますから、そうした間におきまして、私たちといたしましても、今日の時代から見た日ソ関係というふうな一つのテーマをもとに、それぞれ十二分に検討を怠ってはならないというのが今日の私の気持ちでございます。
  153. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 それじゃ外務大臣、どうぞ御退席いただいて結構でございます。  防衛庁長官、大変お待たせをいたしました。  「なだしお」と第一富士丸の衝突事件で、もう多くの方が御質問になっておりますので、私は一、二点簡潔にお答えをいただきたいと思います。  これは遺族に対する補償の問題でありますが、遺族も帰らざる御主人なりあるいは兄弟なりを思って、夜も寝られない日々を送っておられるだろうと思うのです。そういう状態になってしまった以上、遺族はやはり防衛庁の責任においてちゃんとした補償をしていただきたいという気持ちも非常に募っておられるだろうと思うのであります。昨日の報道によりますと、先般来防衛庁長官が御答弁されておりますように、防衛庁も誠心誠意遺族の補償等の問題については努力をしたい、こういう立場でもう既に第一富士丸の親会社である富士商事等とも相談を始められておるようであります。  事故原因、主たる責任分野、範囲といいますか、そういうものが陸上での自動車交通でも、車と車が衝突をしたというような場合にどちらにどれくらいの責任があるかという責任の分担割合というようなものがそれぞれの権威ある機関から認定をされる。あるいは裁判であったりあるいは示談であったりいろいろありまするけれども、そういうものはそういうものとして、これからまた海難審判の結果あるいはその他の段階があろうかと思いまするけれども、将来そういう責任をどれだけ国が持ち、どれだけ第一富士丸側が持つか、あるいはその他が持つかというようなことは後回しにしても、できる限り早く、時期を早めてしかるべき、ホフマン方式というようなことも考えておられるようでありますが、常識的に国民の納得のいく賠償、お見舞い、こういうようなものを具体的な形としてあらわしていただきたいな。雫石における全日空と自衛隊機の衝突の際には、私の記憶ではたしか三カ月後ぐらいにはちゃんとしかるべき賠償もされたというように伺っております。したがって、今どういう状況にあるのか、そして時期をどの程度のところでやられるか、できる限り早くやっていただきたいというのが私の質問の要旨であり、そしてまたもちろん今後の再発防止対策というようなものについても伺いたいわけであります。  それと同時に、ああいう事故が起きたという原因の中に、潜水艦というのは水の中に潜って行動をする、それが本務でありますから、よくかっぱのおか上がりなんということが言われますけれども、浮上して航行するときというのは非常になれないというか、水の中での行動ということでそういう面もあったろうと思います。したがって、安 全教育というか衝突防止教育というか、海上交通安全法だとかあるいは衝突予防法だとかこういうようなものなんかは、潜水艦の乗組員、艦長を初め兵に至るまでどういう教育をどのくらいの量で今までやっておったか、この辺のところをきちんとお聞かせをいただきたい、こういうように思います。
  154. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  海上自衛隊では平素から安全確保を重視して教育を実施しておりまして、海上衝突予防法あるいは海上交通安全法等の海事法規につきましても各種の教育課程、防衛大学校から始まり幹部候補生学校あるいは部隊、それから第一術科学校、さらにその先の部隊等におきましても全部徹底した教育を行っているところであります。  具体的な時間数を申し上げますと、ちょっと長くなりますが、例えば海上衝突予防法につきましては、防大、幹候で十数時間、それから部隊等でこれまた十六時間、第一術科学校では四十数時間というふうなことでやっておりまして、さらにまた今回の事故の例にもかんがみまして、再発防止措置の一環として、八月に艦艇部隊に対します海上法規等の巡回講習も、これは海上保安庁の御協力も得まして実施したところでございます。今後とも引き続きこれら海上交通の安全を重視した教育を実施してまいりたいと考えております。
  155. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 長官、賠償の時期。
  156. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 賠償の問題につきましては、やはり原因の究明との関連がございます。したがいまして、負担割合等についてはこれからいろいろ検討してまいらなければいけませんけれども、ただいまの時点では賠償金の積算の作業を進めようということで、富士商事との間でいろいろ了解をいただかなければいけません。かつての雫石での全日空との関係においても、全日空との間で了解を得て積算作業を遺族第一主義で進めたわけでございますので、今回もそういう意味で御遺族を第一義的に考えまして積算の作業を進めたいということで、積極的に富士商事と交渉を進めている段階でございます。  ところが、最近どうも富士商事は私の方では補償能力がない、したがいまして了承するわけにいかぬという状況が出てまいりましたものでございますから、これを単にこのまま日延べさせてもいけませんものですから、私たちの方では、それでは早速御遺族との間で交渉を始めようという決定をしました。その決定に従いまして積算作業を進めよう、こう考えておりますので、できるだけ早い機会にこれを処理いたしたい、こう考えております。  また、再発防止対策については既に具体的な対策ができておるのでございますが、あの過密したいわゆる浦賀水道を中心にして横須賀があるのでございますから、一日も早くその具体化を急がなければならないという点で、潜水艦のいわゆる救助についての不備な点が幾らか指摘されてございますので、例えば探照灯を必要とするとか、救命索の発射器を備えなければならないとか、その他各船舶との連絡のための通信網を完全にしなければならないとか、具体的にこれらの問題をも進めてまいりたい、かように考えておるのでございますので、御理解をいただきたい、こう思います。
  157. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 今の答弁で結構でございますが、できる限り早く責任問題は、どれだけの責任分担が防衛庁にあるか民間側にあるかということは後回しにしても、国の責任でまずやっておいて、その後裁判でも何でもきちんとした責任のとり方というようなもの、責任のシェアは後回しにしてでも、やはり遺族の皆さんに国の誠意というものを示してもらうように、雫石事件と同じようなタイミングで行われるように強く要望して、終わりたいと思います。  あと、皆さんの方に質問通告をいたしました十数項目ほとんど手つかずで終わってしまいましたが、こういう内容質問をしたいのだということは前もって御通告をしておりましたものですから、我々の意のあるところは質問をしませんでも、質問通告で我々の危惧、防衛問題に対するいろいろ国民的な危惧というものをお察しいただいて、憲法の精神というものをきっちり踏まえてこれからの防衛問題に当たっていただきたい、こういうことを要望いたしまして、時間を大分超過してしまいまして失礼いたしましたが、以上で終わらしていただきます。
  158. 竹中修一

    竹中委員長 次に、井上和久君。
  159. 井上和久

    ○井上(和)委員 防衛二法につきまして、防衛白書を中心といたしまして、種々の点につきましてお伺いをいたしたいと思います。  まず、八八年版の防衛白書でありますが、「国民自衛隊」あるいは「国民の防衛意識」というところがございまして、「安全保障政策に関する国民的合意は、国の平和と安全を保つための基盤であり、国民の国を守る気概や防衛に対する国民理解と支持があって初めて国の防衛が全うされる。」こういうふうな書き出しで始まりまして、この項の最後の方にも、「国の平和と安全を全うするためには、国民一人一人が国の防衛の重要性をよく認識し、国を愛し、これを守ろうとする気概を持つことが何よりも重要である。このような国民の強い意志に支えられてこそ、自衛隊は真にわが国を防衛する力となり、また、日米安全保障体制も有効に機能することができる。」こういうふうな一節があるわけであります。  これを読んで感じますことは、今国民の中で防衛に対する認識あるいは意識というものがどうも不足しておるというか不十分であるというか、そういうふうに考えておられるからこういう文章になるのじゃないかな、こんな気が実はするわけでありますが、これについてお答えをいただきたいと思います。
  160. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  防衛というのは、やはり国民の支持、協力、理解というのがあって成り立つものでございまして、私どもは、先ほど先生お読みいただいた文章も、そういう基本的な考え方を踏まえて書かしていただいているわけでございます。  現在、国民の皆さんが防衛についてどの程度御理解いただけるかという問題につきましては、ちょうど白書の「国民自衛隊」第一章のところ・で、この一月総理府で実施していただいた自衛隊等に対する世論調査の結果を掲載させていただいております。これについてもいろいろな見方があるわけでありますが、こういう平和な時代、日本にいる限り、非常に平和な中で、自衛隊なり防衛という問題についてどの程度関心を持っていますか、本当に必要ですか、こういう質問を受けた場合、本当に必要だというようなことで一〇〇%の方がそう思っていただくというのはむしろ異常な事態じゃないかと思うわけでございます。そういう観点で見てみますと、自衛隊、防衛に関する理解というのも、前回の調査あたりから半数を超える方々が理解していただいている。それから、安保体制というような問題についても七割近い方々が理解していただいている。防衛力整備の問題についても、少なくとも陸海空自衛隊の現在の状況というものについては六割程度の方が結構じゃないか、こういう理解をいただいていることは、相当な理解国民の皆さんの中に定着してきておるというように見てよろしいのではないか。ただ、この数字はそんなに理想とする数字じゃございません。私どもは、あらゆる機会をとらえてさらに理解していただくように努力していきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  161. 井上和久

    ○井上(和)委員 国民理解や支持を求める姿勢というのが、今のお話ですと求めるというふうになっておりますが、文章になりますと、どうしても持つべきであるというふうな感じが読む方はするわけでありまして、例えば国を守る気概を持つ必要があるのだということを、より知らしめる、皆さんに徹底する、こういうふうな感じがするわけなのです。私ども考え方からすると、これはよくないというふうに思うわけであります。正しく理解をするということはありますけれども、この白書のデータといいましょうか、総理府の調査の件につきましては後ほどお伺いをするわけですが、この今の御答弁の中で、現在の国民の皆さん の認識でいいのだというふうにお考えか、もう少し持ってもらいたいとお思いなのか、そこのところをもう一度。
  162. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  国を守るということは、まさに私どものこのいい日本という国を存立させていくのに基本的な問題でございますので、私どもとしては、理想としてはもうイデオロギーにかかわらず国を守るということについては一致していっていただきたい、こういう気持ちを持っておりまして、そういう意味でまだまだ私ども理解を求める努力が足らぬなというように反省しておるところでございまして、今後ともより一層理解を求めるように努力していきたい、こういう認識を持っておるところでございます。
  163. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは次に、先ほど答弁の中でお触れをいただいたのですが、総理府が実施をいたしました世論調査の結果についてであります。  防衛予算の規模、自衛隊の規模について、「今の程度でよい」とする現状肯定の意見が増加をし、約六割に達しておるわけであります。「これは、大半の国民が、自衛隊日米安全保障体制からなる現在の体制、防衛努力の現状といったわが国防衛の基本的あり方に理解を示し、支持していることを表すもの」である、こういうふうに白書の中にも記述をされておるわけであります。ただ、こういうふうに読んでしまいますと、私が思うのでは、大変防衛庁の都合のよい勝手な解釈じゃないのかなという気がするわけであります。  もうちょっと言いますと、防衛予算の規模について見れば、「今の程度でよい」が五八%、「今より少なくてよい」というのが一九%です。「今の程度でよい」あるいは「今より少なくてよい」というのを足すと七七%ですね。であるならば、これは合わせて七七%の国民がこれ以上の防衛予算の拡大ということを望んでいない、こういうふうに考える方が素直なのじゃないかという気がするわけであります。自衛隊の規模につきましても、同じく七七%がこれ以上拡大すべきではない、こういうふうなアンケートの結果だというふうに思うわけでありますが、これにつきましては、ぜひ長官の御所見を賜りたいと思います。
  164. 依田智治

    ○依田政府委員 数字の関係でございますので、長官からお答えいただく前に私からちょっとお答えさせていただきます。  今回の調査の結果は、確かに先生のおっしゃいますように、「今の程度でよい」というのが五八・〇で、「今より少なくてよい」というのが一九・二、合わせると七七%ぐらいになるわけであります。この「今の程度でよい」というのをどう見るかということによって、実はその見解が分かれるわけでございますが、私ども総理府の方で調査していただいたときに、それぞれの調査する方々に対してカードで諸外国の軍備の状況というのはどうかとか、我が国の場合他の国と比較してどうか、六十二年度の予算では一・〇〇四%ということになっておるというようなことも提示した上でいろいろ御意見を伺っておるということでございまして、私どもとしては、「今の程度でよい」ということは、現在政府が進めておる中期防に基づく節度ある防衛力整備の姿勢というものが理解されておるのではないかということで、そういうことになれば、むしろ「増額した方がよい」というのが一一・二、「今の程度でよい」というのが五八、そんなことでございますので、七割程度の方は少なくとも中期防による政府の防衛力整備の姿勢は御理解いただいているのではないか、こういうように実は解釈させていただいているわけでございます。
  165. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御承知のように、我が国は平和憲法のもとで専守防衛に徹して他国に脅威を与えるような大国にならない、そういう基本理念のもとに、文民統制を確実にして節度ある防衛力を整備する、日米安保条約の信頼度を高める、この姿勢は国民が本当に理解してきたのじゃないだろうか、こう私は思うのです。これを基本としながら防衛大綱を決めて、そのもとで中期防を進めているわけでございます。これを進めるに当たっては、今御指摘のように国民理解と信頼がなければできません。したがいまして、もっと高い信頼度があればあるほど、理解力があるほど、みずからの国はみずからの手で守るという考え方が国全体にあると国土防衛の面で一層すばらしいと思うのでございますので、さらに高いことを私たちは期待いたすのでございますが、現状でも、今御説明がありましたように、今の時点でもよろしいという統計が半数以上、五八%も占めているということは、私たちとしてはそれなりに、これまでの節度ある防衛力というものを正しく整備していきたい、こう考えております。
  166. 井上和久

    ○井上(和)委員 五八%が今のままでよいを、今のままこのように拡大することでよいのだという今のままでよいという解釈なんですが、私はこれはちょっとおかしいんじゃないかと思うわけであります。今のままというのは、今のままであると思うのです。どんどんふやしていく計画であって、防衛予算もどんどん伸びていく、そのことが結構なんだというふうに皆さん方言われて、もっと伸ばすというのと同じ意見だというふうに今言われたのですけれども、それだとこの表の見方としては非常に身勝手というかおかしいのではないかなと思うわけなんです。我々はこの言葉からしても、今のままでよいといえば、それはふえない、ただし減りもしないだろう、それが今のままというものじゃないかと思うのです。ところが、例えば今度、次の概算要求が出て、六十三年度の当初予算に比べまして六・一三%増、三兆九千二百七十三億円、こういうふうにどんどん拡大をされようとしておるのですが、これが今のままでよいという皆さんが選択をされたことに当てはまるのだとお考えであるとすると、非常におかしい話だというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  167. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  今の程度でよいということ、これは今現在政府が中期防に基づく防衛力整備、十八兆四千億程度ということをめどとして整備をしておるわけでございますが、その国の計画というものが現にあり、これが国会等でもいろいろ論議され、それに基づいて年々予算が編成されておるという姿勢、これは国民の皆さん方の中で大方の理解を得ておるというように解釈させていただいてよいのではないか。ただ、減らすべきだとかいろいろ意見もふえておるという面もありますので、節度ある防衛力の整備を続ける、節度ある防衛力の整備という一%の精神を守りつつやっていくという姿勢は厳然と私ども厳守していかなければいけないと思うわけでございますが、中期防の路線についての国民理解というのは、大方の理解は得られておるというふうに解釈させていただいてそう誤りはないのじゃないかというふうに実は考えておるわけでございます。
  168. 井上和久

    ○井上(和)委員 六十三年度の防衛予算でアメリカのアーミテージ国防次官補が、英、仏、西独のレベルを超すかどうかの境にあり、世界第三位になりつつある、こういうふうに指摘をいたしております。また、イギリスの国際戦略研究所の最新版「戦略概観」というものの中で、NATOの防衛支出の定義によるならば、日本の防衛予算は世界の第三位であり、それ以上の国はまさにアメリカとソ連のみである、こういうふうに指摘をいたしております。しかし白書の中では、一九八五年度の防衛費を載せておりまして、日本が世界第八位となっている、こういうふうに書いてあるわけです。これは現実と合っていないというふうに思うわけなんですが、新しい数字というのはどういうふうになっておるのか、説明していただきたい。
  169. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 防衛費の国際比較の問題でございますけれども、これは実は大変難しい問題でございまして、各国の置かれております政治的、経済的な条件だとか社会的背景あるいは防衛費そのものの定義が各国で違っておる、内訳がわからないということで、これは大変難しくおのずから限界のあるものでございます。  そこで、白書等におきましては、この関係につきましては世界的に権威があると言われておりま すイギリスの国際戦略研究所、ミリタリー・バランスの数字を使わせていただいておるのでございますが、先生指摘のように、最新版におきましても、それは一九八五年の数字しか載っていないという状況でございます。  最近、大幅な為替レートの変動などがございまして、恐らくドルベースの我が国の国防費は相当高いところにいっているかもしれないわけでございますけれども、この順位がどのようなものになっているのかということを正確に比較することが非常に難しい状況にあるということを御理解いただきたいと思います。
  170. 井上和久

    ○井上(和)委員 ということは、今は世界の中で六十三年度分の日本の防衛費がどのくらいの位置にあるかについては言えないということになるのですか。わからないということはないと思うのですがね。
  171. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 正直申し上げまして、正確にはわからないということでございます。  例えば、各国の予算書に書かれております国防費を単純に比べてみるということをさせていただきますと、一九八八年の国防費の比較でも、我が国のドルベースの防衛費はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスに比べますと若干低いところにある、こういう状況でございます。
  172. 井上和久

    ○井上(和)委員 このイギリスの雑誌の中に既に、日本の防衛予算は世界の第三位であり、それ以上の国はアメリカとソ連というふうな言葉が出ておるわけでありまして、その日本の国自体の中でこれについてはこうだということが言えないというのは非常におかしなことだというふうに私は思うわけです。  そういうことはそれといたしまして、まず、今アジア諸国では、日本の防衛費の増加、拡大ということに対しまして非常に懸念を示しておるということがニュースでよく流れるわけでありますが、このアジア諸国における日本の防衛費の拡大についての懸念、これについてはどういうふうに理解をされておりましょうか。
  173. 日吉章

    ○日吉政府委員 我が国の防衛力の整備に当たりましては、委員がただいま御指摘のように、アジア諸国との過去の関係にもかんがみまして、誤解を生じることのないようにする必要がございまして、累次の機会に我が国の防衛政策の基本方針を説明する努力を払っているわけでございます。歴代長官の御尽力もありまして、大方の理解を得ているものと私ども考えております。特に本年六月から七月にかけましては、戦後防衛庁長官としては初めて前防衛庁長官にインドネシア、シンガポールに行っていただきまして、我が国の防衛政策について御説明をしていただきましたところ、十分の理解を得られたもの、かように考えております。今後ともかかる努力を継続することが大切だ、かように考えております。
  174. 井上和久

    ○井上(和)委員 確かに瓦前長官がお行きになりましたし、そういう点ではよかったと思うのですが、こういう努力をしっかり続けてもらいたいし、そういう努力と同時に、やはり防衛力、防衛費というふうな点につきましてもしっかりと配慮する必要があると私は思うわけであります。  それで、具体的にお伺いをしますが、日本の防衛費の増額、伸び率というものは非常に高いものがあるわけでありまして、まさに主要国の中においては、日本の防衛費の伸び率というのは非常に高いレベルにあるだろうと思うのですが、これについてはいかがでしょうか。
  175. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 防衛費の伸び率の問題でございますけれども、これも先般防衛費の比較のところで申し上げさせていただきましたように、各国の国防費の内訳、定義等がさまざまでございます。置かれました経済、財政事情等もまたさまざまでございまして、これを一概に比較するということはいかがなものであろうかという感じがしておりまして、本当に我が国の伸び率が主要国で一番高いものか、あるいはそうでないのかということを正確に判断する資料を持ち合わせていない、こういう状況でございます。
  176. 井上和久

    ○井上(和)委員 伸び率というのは、前年度に対して今年度はどういうふうになった、その年に対して次の年はどうなったということが伸び率を出すときの条件だと僕は思うのですが、それがわかりませんというか比較できないということ、比較するかしないかは別として、その数もわからないというのは私は非常に納得しかねると思うのです。
  177. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 単純に公表されております国防費の伸び率を比較すること自体がいろいろ問題があるのではないか、こういうふうに申し上げておるのでございます。仮に国防費の内訳等を考えずに、単純に比較するということでやらしていただきますと、例えばミリタリー・バランスに出ております一九八五年の時点の実質伸び率というものを仮にはじいてみますと、日本は五・四でございますが、アメリカは二・〇、ソ連は一一・八、イギリスがマイナス一・二、フランスはマイナス〇・一、西ドイツが〇・二、ポーランドは三二・〇、イタリアが三・六、中国が〇・二というような数字が単純にははじけるわけでございますが、これが果たして実質的な防衛費の伸びを反映しているかどうか、あるいは比較するのにふさわしい数字かどうかというところに自信がないということでございます。
  178. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは、次に行きます。  六十四年度の概算要求が行われましたが、中期防の達成率はどの程度になるか、お答えいただきたい。
  179. 日吉章

    ○日吉政府委員 六十四年度の概算要求の御説明を申し上げます前に、中期防の初年度の六十一年度から六十三年度までの予算の累積いたしました進捗率を申し上げますと、防衛関係費ベースで見ますと、中期防のおおむね五七%程度に累積でなろうかと思います。また、正面の契約ベースで見てまいりますと、おおむね五五%程度になろうかと思います。これに現在要求を申し上げております六十四年度概算要求の数字を含めて申し上げますと、防衛関係費ベース、正面の契約ベースともにおおむね七八%程度に達するのではないか、かように考えております。
  180. 井上和久

    ○井上(和)委員 新長官から防衛費のGNP比一%以内の精神を尊重する、こういうふうなお話をついせんだっても伺いました。GNP比一%以内の精神を尊重するということは、これは守るということと同じような意味だというふうに思うのですが、どのように尊重しておられるか、お伺いします。
  181. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 昭和五十一年十一月の閣議決定での節度ある防衛力の整備、この精神を私たちは常に尊重して今後も防衛力の整備に努めたい、こう考えているのでございまして、先ほども御説明がありましたように、中期防において六十年度価格で総額十八兆四千億円のいわゆる経費枠があるわけでございますから、このような総額明示方式で進めることによって、今後も一%枠というものの精神を尊重していきたい、かようなことで申し上げているのでございますので、御理解いただきたいと思います。
  182. 井上和久

    ○井上(和)委員 今回の白書では「防衛計画の大綱」についての記述というものが大幅に減っておるのであります。それでは、まずその理由につきまして伺いたいと思います。
  183. 日吉章

    ○日吉政府委員 防衛白書全体についての編集の考え方でございますけれども、これは限られた紙面にできるだけ新しい事項を記述していこうという考え方がございますものですから、白書を発行いたします約一年前一年間にわたって国会なり国内におきましていろいろ議論が行われましたことをできるだけ盛り込みたいというようなことで編集をいたしております。  そういう観点から見てまいりますと、委員ただいま御指摘のように、今回の白書の大綱に関する記述は従来に比べまして簡潔になっているわけでございますが、一昨年以降の国会におきます議論が、これは大綱につきまして国民理解が一応大体浸透したからかと思いますが、それほど議論が行われなかったものでございますから、そういう観点から簡潔に記述をさせていただいたというこ とでございます。
  184. 井上和久

    ○井上(和)委員 いや、一昨年以降大綱についての議論がないということはないと思います。大綱というのはもうまさに大綱でありますから、中期防にしましても何にしましても、やはり大綱が基本となって議論というものが全部積み重なっておるというふうに私は思うわけであります。現に私自身もこの大綱についての議論を何回かした覚えがあるわけでありまして、大綱のことについての議論がなかったし、国民の中にもう理解もできた、だから今回は簡潔に済ませたのだというのは、非常に不親切というか間違っているのではないかというように思います。やはり大綱というのはしっかりと発表しなければ、それをつかんでいなければ、ほかの中期防にしても次期防にしましても、やはり大綱というものの持つ意味というのは非常に大きなものがあるというふうに私は思うわけなんです。どうですか。
  185. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず御理解いただきたいのは、本年発行いたしました白書の中にも、大綱につきましての記述は必要最小限度のものはさせていただいておりまして、防衛の構想に係る記述といたしまして、大綱の防衛の構想の位置づけを明確にするように簡潔にその骨子を記載させていただいております。  なお、一昨年以来本年にかけましてそれほど大綱につきましての議論はなされなかった、こういうふうに私は申し上げましたが、これはあくまでも比較の問題でございまして、それに先立ちます二、三年間にわたりましては、ちょうど大綱ができまして十年目というような節目を迎えたこともあったかと思いますが、そもそも大綱の弾力性の問題、大綱の見直しの問題、あるいは別表修正の問題、そういうような問題が相対的な比較の問題といたしまして昨年一年間に比べましてはるかに多く議論がなされた。それを昨年の版で集大成した形で書かせていただきましたものでございますから、その部分を割愛させていただいたわけでございます。
  186. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは、この大綱について伺うわけでありますが、中期防におきましては大綱の水準が達成される見通しかどうかということについてであります。あるいは達成されない、したがって次期防で水準を達成する、これを目指していくというふうにお考えなのかどうか、この達成についてお伺いをいたします。
  187. 日吉章

    ○日吉政府委員 そもそも現在の中期防は、一般的に、大まかに申しまして、大綱が予定しております防衛力の整備水準に到達することを目的といたしております。したがいまして、中期防が達成されました暁におきましては、おおむね大綱が予定しております防衛力整備水準に達するわけでございますけれども、その中には、そもそも中期防策定時代から達しない形になっておりますものが、例えば主要装備で申し上げますと支援戦闘機等につきましてはあろうかと思います。  なお、次期防以後の問題でございますが、六十六年度以降次期防という形で中期計面を策定するかどうかという点につきましては、まだ政府方針が決まっておりません。私どもとしては、中期的な計画をやはりつくらせていただきたい、かように考えておりますが、まだ決まっておりませんので、その内容についてまで言及することはできないわけでございます。  ただ、中期防整備計画が大綱水準におおむね達したといたしましても、残された部分、あるいはその後もやはり諸外国の軍事技術水準等は向上いたしておりますし、それにパラレルに対応していく必要がありますし、なおかつ損耗更新、維持、そういうふうな経費もかかるわけでございまして、六十六年度以降につきましても、やはり大変な努力が必要であろう、かように考えております。
  188. 井上和久

    ○井上(和)委員 おおむね大綱水準が達成できるというふうにお考えだと思いますが、そういうことで、これが六十五年で「防衛計画の大綱」の水準が達成されたということになりますと、次期防というのですか、その次の計画のときには大綱見直しということをしなければならぬのじゃないかと思いますが、これについてはいかがでしょう。
  189. 日吉章

    ○日吉政府委員 大綱の見直しの問題でございますけれども、大綱は一つの国際情勢、国際軍事情勢を前提といたしまして決められてございますが、私どもは、現時点におきましては、その前提としております国際情勢には基本的に変化はないのではないかと考えております。そういう意味で、大綱そのもの、大綱の基本精神を見直すような状態ではないのではないかと思います。  ただ、大綱そのものが弾力性を持った形で書かれてございまして、これは委員既に御案内のように、やはり諸外国の軍事技術水準そのものの推移に対応した形で必要最小限度の防衛力を整備していくということになってございますから、諸外国の軍事技術等が変化してまいりますと、それに対応して変化をしなければいけないという問題がございます。特に、大綱の別表のところには、大綱策定時に保有しているもの、あるいは保有することを予定しているものを前提として別表は作成したというような注記がございまして、こういうことは大綱そのものが弾力性を持っているということだと思います。  したがいまして、そういう意味で、理論的には大綱の見直し、精神の見直しはなくとも、別表の改定、修正というようなことはあり得るのだと思いますが、累次にわたって私どもは御説明申し上げておりますように、論理的な話とは別といたしまして、現時点におきまして大綱そのものはもちろんのこと、大綱の別表も見直すことは考えておりません。
  190. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、次期防の基本方針というのは決まっておるのでしょうか、それについてお伺いをいたします。また、いつごろまでにこれを決められるか。
  191. 日吉章

    ○日吉政府委員 これにつきましては、昨年一月に閣議決定されました「今後の防衛力整備について」という閣議決定の文書の中に一項目がございまして、昭和六十六年度以降の防衛力の整備につきましては、それまでの間に国際情勢その他もろもろの情勢を勘案しながら検討する、こういう趣旨のくだりがございます。したがいまして、それまでの間に考えるわけでございますが、先ほども申しましたように、私ども防衛庁といたしましては、やはり防衛力整備というような性格のものは、中長期的な観点に立って継続的、計画的に行われるということが望ましいと考えておりますので、そういう意味では、六十六年度以降も中期防のような中期的な計画を策定させていただきたいと考えております。  そういたしますと、あと二年余を残すわけでございますけれども、これまでの年次計画策定の経緯等考えますと、二年程度の期間はどうしても必要でございますので、できるだけ早く私どもといたしましては、政府の場におきまして、例えば安全保障会議等におきまして御議論を経まして、六十六年度以降中期的な計画を策定することを前提とした検討作業に入るゴーサインが得られれば非常にありがたい、かように考えております。
  192. 井上和久

    ○井上(和)委員 その見通しについて私は聞いたわけでありまして、いつぐらいからやっていくことになりそうかということを聞いておるのであります。  それと、やる場合に、中期防と同じような方法でしょうということですが、具体的に聞きまして、あるいは五年でやるのかあるいは三年でやるのか、これはこの前にもいろいろお話をしたことがあるのですが、長官もおかわりになったことでございますし、改めまして、この考え方についてお伺いもしておきたいと思います。
  193. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ただいま防衛局長から答弁させたように、中期的な計画をやはり計画的に積み上げるということはこれから必要でございましょうから、そういう方向で進めたい、もちろん国際情勢だとかあるいは技術の進歩だとか、こういう点を配慮してのことでございますので、しかも、安全保障会議の議を経た上でのことでございますので、そういう点では今後十分慎重にこれに対応してまいりたい、かように考えております。
  194. 井上和久

    ○井上(和)委員 具体的な数についてやってください。
  195. 日吉章

    ○日吉政府委員 中期的な計画といいました場合には、常識的には現在の計画のような五年計画、いろいろな公共事業等の計画等も五カ年計画というのが我が国におきましては常識的かと思います。ただ、いろいろな世界の情勢あるいは技術の革新、そういうようなものが長足の進歩を遂げている時代でございますから、余りに長い期間でございますと、その変化に対応し切れないというような欠点がございます。ところが、逆にこれが短い期間でございますと、長期的、中期的な展望に立った計画とならないという欠点がございます。特に、防衛力の整備計画ということになりますと、主要な装備、艦船あるいは航空機というようなものには調達リードタイムが非常に長くかかります。例えば三年、長いものでは五年程度かかります。そういうふうに、そもそも防衛力整備計画にはある程度長期間を見通さないといけないというような内蔵された要請がございます。この二つの要請をどういうふうにミックスさせるかということかと思います。そういう意味で、常識的には五年とかあるいは三年とか、場合によりますと三年間はきっかりした計画にしまして、後に参考として二年くっつけておくとか、いろいろなオールターナティブがあろうかと思いますが、これらはあくまでも今後六十六年度以降も中期防衛力整備計画のようなものをつくるのだと政府の中でお決めいただいた後、比較考量して決めるべきものではないか、かように考えております。
  196. 井上和久

    ○井上(和)委員 これでおっしゃられましたようにあるいは五年または三年と二年というふうなやり方になるかもわからないということでございます。一つは、これを実施する場合に、現時点の考え方で結構なんですが、中期防と同じように、やはり総額明示方式だというふうにお考えなんでしょうか。
  197. 日吉章

    ○日吉政府委員 総額明示方式を今後の防衛力の整備の一つの方式としてお決めいただきましたのが昨年の一月の閣議決定でございます。それからそれほど時間が経過していないというようなことから考えますと、総額明示方式といいますのは、現時点で考えられます一つの有力な方式ではないかと思います。なおかつ、実質的に申し上げましても、総額明示方式といいますのは、主要な整備の内容とそれに要する経費とを一体としてミックスさせて計画が立てられてございますので、抽象的に経済指標等にリンクさせて何%というようなものよりも内容としては充実し、望ましいものになっているのではないか、かように考えております。
  198. 井上和久

    ○井上(和)委員 この総額明示方式であって、ローリング方式と言われておりますもう一方の方式なんですが、これは一切そんな考え方は持たない、今のところ持たないという理解でいいのでしょうか。
  199. 日吉章

    ○日吉政府委員 六十六年度以降中期的な計画をつくるということすら決められていない段階で、そこまで議論を申し上げることはいかがかと思いますが、先生ただいまお尋ねの点も含めまして今後検討する話だと思います。  ただ私は、このローリング方式という方式がそもそも歯どめといいますか限度額を設けるのに適さないというようなものなのかどうかという点も含めて検討したいと思います。といいますのは、単にローリングいたしまして、その後の期間につきましての何の制肘もないというようなものでございますれば、ある意味ではローリング方式といいますものは総額明示のしり抜けのような性格が出てくるかと思いますが、ローリング方式の場合にも、一つのモディフィケーションとしましては、三年たちました、あと二年の内容につきましては、その時点で見直すけれども、金額の範囲につきましては、一応残された二年の金額はそのまま参考にいたしまして、それに三年間をくっつけるというような方法もあろうかと思います。しかしながら、これは強いてお尋ねでございましたので、一つの考えとして申し上げたことでございまして、決してこういうようなことを検討しているということではございません。
  200. 井上和久

    ○井上(和)委員 中期防においては洋上防空体制はどの程度達成されることになるのかをお伺いしたいと思います。あるいは次期防におきましても、この洋上防空体制の整備というのが主要な整備目標になるのかどうか、この辺について。
  201. 日吉章

    ○日吉政府委員 洋上防空のあり方につきましては、中期防に基づきまして近年の経空脅威、空を経由してまいります脅威の増大にいかに効率的に対応するかという観点から、カテゴリーとしましては、早期警戒監視機能、早期に警戒し監視するという機能、それからミサイル発射母機に対処する機能、それからミサイルそのものに対処する機能、こういう三つに大別して検討を行ってきているところでございます。  この検討の成果につきましては、昭和六十三年度、ことしの予算でその整備に着手いたしましたミサイル対処機能、これはイージス艦でございますが、のように中期防期間中において既に整備に着手し、あるいは着手し得るものもございますけれども、今申しました後の二つのカテゴリー、早期警戒監視機能あるいはミサイル発射母機対処機能等につきましては、今後検討していかないといけませんので、そういう意味では、これらにつきましては六十六年度以降の検討課題に引き継がれることになるのではないかと考えております。
  202. 井上和久

    ○井上(和)委員 白書によりますと、陸上防衛態勢研究会というところにおきまして着上陸侵攻に対する早期前方対処の可能性について研究をしているというようなことが書かれてありますが、これの具体的な内容と目的についてお伺いしたいと思います。
  203. 日吉章

    ○日吉政府委員 陸上防衛態勢研究会につきましては、先ほどお答えいたしました洋上防空体制研究会とは違いまして、検討がそれほど進んでおりません。したがいまして、現時点におきまして、どのような検討経緯であるかというようなことをお話し申し上げる段階に至ってございません。  ただ、物事の考え方、検討の基本方針、基本的方向というものを申し上げますと、我が国は、言わずもがなでございますが、北西太平洋に位置しまして、四面を海に囲まれた島国であるというような地理的特性がございます。また、将来の軍事科学技術の趨勢というものを考えました場合に、例えば北部日本の防衛を重視して、着上陸侵攻に早期に前方対処する必要があろう。これは我が国の地理的特性、あるいはまた我が国が非常に国土が狭隘、しかも平野が少ない、その少ない平野にかなり過密に人が住んでいる、そういうふうな状況考えますと、やはり着上陸されない前方で対処する、そういう態勢をとる必要があろうということが考えられます。  そういう観点から、いかなる形で陸上防衛態勢を再構築するのがよろしいか、こういう方向からの検討というのが検討の方向でございますが、残念ながらまだ具体的にそれをどう具現化するかというところまで検討はいっておりません。
  204. 井上和久

    ○井上(和)委員 このことについてもうちょっと伺っておきたいのであります。  一つは、このことが海上水際火力打撃構想につなげるねらいである、こういうふうなことも一部言われておるわけでありまして、このようになりますと、陸上自衛隊の新たな防衛構想になるのではないのかというふうに思うわけであります。したがって、これが次期防における整備の目標としてとらえられてくるようになろうというふうには常識的に思うわけなんですが、これでいいのかどうか。  またもう一点は、早期前方対処、こういう考え方になりますと、これは先ほどの大綱というものから一歩踏み出すことになりはしないかというふうに思うわけであります。したがって、これはこういうことになりますと、従来と異なった部隊あるいは装備というものが必要になってくる話だろうというふうに思うわけでありますが、この点はどうなんでしょう。
  205. 日吉章

    ○日吉政府委員 次期防におきまして陸上防衛態 勢というのも整備すべき課題の一つになることは事実だと思いますが、次期防の主要な柱が陸上防衛態勢の再構築であるかどうかという点は、これは今後次期防の作業をしてみないとわからないことだと思います。  なお、水際火力撃破構想という形で今先生がおっしゃられましたけれども、こういう言葉を用いるかどうかは別といたしまして、こういう考え方は中期防の中にも既にございます。我が技術研究本部が独自に開発いたしましたSSM1といいますのは、まさに水際でもって陸上自衛隊が侵攻勢力を撃破するためにつくった装備でございまして、こういう考え方は既に中期防の中にもあるわけでございまして、あくまでも自衛のための最小限度の効率的な装備として装備する以上、大綱の精神あるいは大綱の基本的考え方にもとるというようなことにはならないのではないか、かように考えております。
  206. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、有事来援の研究ということが書かれてございます。これについてお伺いをいたしたいと思います。  今年一月の日米防衛首脳会談で、日本側の提案によって研究を行うことになったと言われておるわけでありますが、日本側が提案した背景、なぜ日本側がこのことについて提案をしたのか、その理由をお伺いしたいと思うのです。  というのは、例えばアメリカの来援のときに、これはちょっと不安なことがあるとか、あるいは不審な点があるんだとかいうふうなことがあったからかどうかですね。
  207. 日吉章

    ○日吉政府委員 御案内のように、我が国の防衛の基本的な考え方は、まずもって限定的な小規模の侵攻に対しては独力で我が国が対処するということでございますけれども、現在のような米ソの超大国を中心として相対峙している中におきましては、現実に有事の状態というものがどういう状態で起こるかは正確に予測できませんけれども、それでもって十全の安全が図られるというふうには考えられませんので、日米安保体制の信頼性に究極的には依存しているところでございます。  そういう意味で、日米安保体制の有効性を担保するという意味で、不幸にして有事の事態が発生いたしましたときに、米側の来援が時宜を得て円滑に行われるための方策を事前に両国間で研究をしておくということは極めて重要なことであろう、こういう考え方に立ちまして、我が国の方から申し入れをしたわけでございます。
  208. 井上和久

    ○井上(和)委員 このことにつきまして、現在行っております有事法制の研究は、有事における自衛隊の行動にかかわる法制の研究であって、有事の際の米軍の行動にかかわる法制上の問題は対象にしていない、これは白書のとおりでありますが、有事における米軍日本での行動というものは、現状は日本国内法で拘束をされるのか、あるいは何ら制限なしにやるのか、この辺はいかがでしょう。
  209. 日吉章

    ○日吉政府委員 御質問の意味を正確に理解できているかどうか、いささか自信がないのでございますけれども日本の国内におきます行動につきましては日本の法制が適用されることになると思います。  ただ、有事の状態が発生いたしましたときに、米軍ということでありませんで、そもそも我が日本自衛隊につきましてもどのような法制を整備しておくことが自衛隊の行動を有効ならしめるか、あるいはまた、それによって影響を受けます国民の権利が安全に守られるかというような観点から有事法制というものは研究すべきことなのかと思います。  その場合に、米国日本自衛隊と共同対処行動をとるということになりますれば、ある意味では自衛隊の有事におきます行動と類似の行動を米軍もとることになりますから、もし自衛隊に関します有事法制というものが完備されてまいりますと、それと類似のようなものを米側にも適用することが望ましいというようなことは論理的には考えられるのではないか、かように考えておりますが、具体的に検討の段階に入っているというようなことではございません。
  210. 井上和久

    ○井上(和)委員 日米の防衛協力というものは、ここ数年来積極的に推進されておるのであります。また今日まで日本に対する防衛力の増強の要求ということもございました。  今アメリカでは、御案内のとおり八カ年にわたるレーガンの政権が来年一月で終わりまして、今年中にも新しい大統領が選挙される状況下でございますが、その結果いかんによりまして、この日米の防衛関係というものに何らかの変化が起こるのではないか。また、その可能性といいましょうか、そのことについてはどういうふうにとらえておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  211. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 委員御承知のとおり、最近アメリカにおきましては、いわゆるバードンシェアリングという議論が盛んに行われております。その中で一部アメリカ議会の中では、かなり激しく日本の防衛分担というのは極めて少なくてもっと劇的にふやさなければいけないという意見も当然述べられております。それに対しましてアメリカの現在の政府立場というのは、日本が今行っている防衛努力というものを評価しつつ、かつアメリカが世界全体にわたって引き受けておりますコミットメントというものについて同盟国もそれなりの協力をしてもらいたいという立場から、それぞれの同盟国の防衛力の整備の努力を続けてもらうと同時に、例えば日本のように米軍が駐留しているところにおいては、駐留経費について受益している側においてもできるだけ負担してもらいたいという希望を行政府の方からも表明しているわけでございます。  もちろん、これから米国政府がかわって、特に共和党から民主党にかわった場合にどういう政策を打ち出すかということを現在の段階においてはっきり見通すことは非常に難しいわけでございますけれども、少なくとも共和党であれば、当然のことながら今の行政府立場を継続すると思われますし、それから民主党といたしましても、民主党の候補が今まで言っておりますところによりますと、そういうところで政策の変更を示唆するような発言というのは今のところ見当たりません。そういう角度からいいますと、もちろんアメリカの中では今後いろいろな議論は行われますでしょうけれども、どういう政権ができるとしても、非常に極端に変わってくることはないというふうに私ども考えております。
  212. 井上和久

    ○井上(和)委員 この白書の考え方としますと、INFの条約が調印されましても、米ソの軍事的な対峙というものはいささかも変わらない。しかも、ソ連の軍事力増強の趨勢というものは世界的な規模においてあるいは極東においてもずっと続いておるのだ、こういうふうに考えておられると思うのです。  そうしますと、今SS20の撤去ということが言われております。アジアにおけるSS20の撤去ということは、この白書の基本的な考え方というものの中ではどういうふうにこれを評価しておるのか、お伺いをしたいと思います。
  213. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ソ連のアジア部には百六十二基のSS20が今まで配備されておるわけでございますけれども、このSS20は弾頭が三つついていて、それで五千五百キロぐらいの射程を持って、日本、中国、それからアジア、東南アジアの諸国の大部分をその射程内におさめているという非常に強力な核兵器でございます。この兵器がいわゆるグローバル解決というようなことによって撤去されることによって、少なくともこのSS20による脅威というものがなくなる、これは非常に評価できる点かと存じます。  ただ御承知のとおり、今度のINFの対象になっております核兵器というのは、米ソの持っております核兵器のごく一部にすぎないわけでございます。ソ連について言いますれば、例えば戦略核についてはアジア部に三分の一ないし四分の一が配備されておりますし、潜水艦発射のミサイルも当然まだ残っているわけでございます。そのほかにも、航空機が持っております爆弾とか空対地ミサイルといったような多様な核兵器というもの は依然としてソ連全体、それから極東についても残っているわけです。したがって、SS20がなくなることによって、そういう潜在的な脅威がなくなるということでは決してないわけでございます。  それに加えまして、現在、戦略核の均衡のもとでINFがなくなっていくという状況、そういうことになりますと、当然のことながら通常兵器における均衡というものが非常に問題になってくるわけでございます。戦略核の削減が行われれば、当然そういう通常兵力の問題もまた浮かび上がってくるわけでございます。これは既に欧州方面では非常に懸念が表明されて、その交渉に向かっての動きもあるわけでございますけれども、基本的にはアジアについても同様の状況かと思います。  そういう状況のもとで、白書が指摘しておりますとおり、ソ連の極東における軍備の増強は、ペレストロイカとかいろいろ言われていながら、実際には現在においても継続しているのはもう厳然たる事実でございまして、そういった状況のもとで我が国周辺の情勢は依然として厳しいと見ざるを得ないということでございます。
  214. 井上和久

    ○井上(和)委員 ただいま御答弁をいただきました評価するものであるということでありますが、それならそれでもうちょっとそういう考え方も述べるべきではないかと私は思います。  同時に、この中距離核兵器の全廃が進めば、かえって通常兵器の度合いというか潜在的な脅威というものが強まるのだというお話でございました。もう一歩言えば、その通常的な兵力というか兵器が、例えば極東でソ連の通常兵器がだんだん減少するというか減っていけば、そのときは日本の防衛力もやはり減るのでしょうね。
  215. 日吉章

    ○日吉政府委員 もしそのような状態になりまして、我が国が自衛のために必要最小限度装備すべきものが少なくて済むような状態になりますと、それは当然に減少するものだと考えております。
  216. 井上和久

    ○井上(和)委員 そうだと思います。  それでは、政府はこの通常兵力の軍縮ということについて自分たちとしてはどういうふうに考えておられるか。  特に、日本の防衛費の伸び率がある資料では世界第三位にもなると言われておりますし、日本の軍拡あるいは冷戦的な発想というものがアジア諸国においても非常に影響を与えているという実態があると思うわけであります。この点について、通常兵力の軍縮ということについてぜひ努力をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  217. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 通常兵力の分野におきましても、当然その軍縮についての努力が将来行われていかなければならないことは、そのとおりでございます。  ただし、実際問題といたしまして、残念なことに、我が国周辺の軍事情勢というのは、政治的には米ソの二超大国の非常に単純な対立ということではなくて、中国の存在等ヨーロッパ正面よりもはるかに複雑な状況にございます。それに加えまして、現在ヨーロッパにおいてようやく通常兵力の削減について端緒を得んとしているその交渉が、ヨーロッパ正面における陸における対立という、これまたどちらかと申しますと単純な図式のもとで交渉が始められようとしているわけでございます。  それに比べますと、アジア、日本の周辺と申しますのは、海という非常に大きな要素がございまして、ソ連という非常に大きな大陸と海というものが、どちらかと申しますとそういう対立の接点にあるわけでございます。そういたしますと、その中でその均衡を図っていくということは極めて難しい問題があるかと思います。  ちなみに、ヨーロッパの方面におきましても、海軍を含めた軍縮・軍備管理の話というのは全く進んでいないというのが現状でございます。それを一つ見ましても、割と話が進んでいると言われているヨーロッパにおいてもそういう状況でございます。そういったことから、アジア周辺での軍縮・軍備管理というのは非常に大きな困難があるかと存じます。ということで、息長くやっていかざるを得ない、そういう感じがいたしております。
  218. 井上和久

    ○井上(和)委員 この白書を読んで一番心配する事柄というのは、自衛隊の守備範囲といいましょうか行動の範囲というものがだんだん拡大をしているというふうに思うわけであります。これは、結局装備の面におきましても、あるいは戦略、人員、経費の上におきましても大変膨大化をするということだと思います。  例えば、陸上自衛隊の先ほどの早期前方対処あるいは洋上防空構想。それで、防空構想の中で特に、敵の航空機をできる限り遠くで要撃する、せんだってもこれについての議論がございました。こういう考え方というものは、専守防衛に反していくのじゃないかという気がするわけであります。また、防衛費の拡大にもつながります。OTHレーダー、イージス艦あるいは空中給油機、こういうふうな話になってまいりますと、本当に日本自衛隊、専守防衛という話から、やろうとしておることは拡大に、より遠くへという話になっているというふうに言わざるを得ないと思うわけであります。今日までの国会の議論の中でも、この専守防衛という趣旨を踏まえて、足の長い戦闘機であるとか爆撃機というのは持たない、こういう見解を持っておったのでありますが、空中給油機の導入ということになりますと、これは大変足の長い話になるというふうに思うわけであります。  したがいまして、ここで私は、アジアの国々に対してもあるいは日本国民に対しても、そういうふうに専守防衛の自衛隊というものが、自衛力というものがだんだん拡大しているというふうにとれることがあるわけでありますから、それに対して、自衛権の限界とはこうです、あるいは自衛隊の行動範囲はこういうふうな範囲です、あるいは予算的な歯どめというのはこういうふうに歯どめをしてありますというふうなことで、まさに安心のできる専守防衛の具体的なものを示すべきである。もちろん示しておいでるのでしょうけれども、もっともっとわかりやすくこのことについて訴えるべきであるというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  219. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御承知のように、我が国の防衛力というのは平和憲法のもとで、ただいま御指摘のように専守防衛に徹しなければいけないということ、そして節度ある防衛力を整備するということでございます。しかも、防衛大綱の考え方は、限定的な、しかも小規模な侵略に対して、いわゆる有効な、単独でこれに対応する、そのときの効率的な防衛力にしようということでございます。したがいまして、常に五十一年の、節度ある防衛力の整備というこの精神を生かしていかなければいけない、その精神を尊重していかなければならない、こう思うのでございます。  したがいまして、これから、もちろん国際情勢だとか科学技術の進歩等によって防衛の具体的な問題というのはいろいろ考えられると思いますけれども、私たちは常に節度ある防衛力の整備という精神を貫いてまいりたい、かように考えています。
  220. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは、防衛政策の課題といたしまして、兵器の技術水準の高まりに対応するために日本の独自の兵器開発に力を入れる、こういうことが述べられているわけでありますが、これは具体的にはどういうふうなことを考えておられるのか、防衛産業の育成ということにつながりはしないのかというふうな気がするのですが、これについてお答えいただきたい。
  221. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 最近は科学技術の発展が著しくて、防衛力の整備に当たりましても、現在の諸外国状況等に対応いたしまして我が国の装備品の質的な向上を図るということは非常に重要なことでございます。そのためには、現在の我が国の技術水準を見ますと非常に科学技術が発達しておりまして、私どもといたしましては、この広い民間のベースの上に質的な充実を図るために装備品の技術開発にも力を入れていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。  それではなぜ技術開発に力を入れる必要があるかということでございますが、それはやはり装備品というのは国土国情に適したものをつくらなけ ればならない。さらに、これからますます技術競争も激しくなっておりますから、独自の技術を持てば、やはりそれだけ技術交流も容易になるというような観点もあるわけでございます。したがいまして、白書でも述べておりますけれども、ニューセラミックスとかエレクトロニクスとかさらには新素材とかいろいろの面で発達しておりますから、そういうものを活用いたしまして、質的に充実した装備を目指すために研究開発に力を入れていきたいというのが私どもの基本的な態度でございます。
  222. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは、運輸省にお伺いをいたします。  航空法では、飛行に関しまして、危険の生ずるおそれのある区域を飛行してはならない、その区域を運輸省令で告示する、こういうふうに定めておるわけでありますが、まず、この区域を告示した例が今までにあったかどうかお伺いをいたします。
  223. 中村資朗

    ○中村(資)政府委員 お答えいたします。  告示はございません。
  224. 井上和久

    ○井上(和)委員 去る六月二十五日、アメリカのヘリコプターが愛媛県の伊方町にある四国電力伊方原子力発電所の近くに墜落したという事故がございました。この現場は、四国電力の原発のわずか一・五キロ、千五百メーターであります。まさに間違えば原発を巻き込んだ大事故になる、大変な危険性をはらんだ事故でございました。  こういうことでございまして、そこで運輸省にお伺いをいたします。  この原発周辺を、航空法で言う「飛行に関し危険を生ずるおそれがある区域」として省令で定める考えというものはございませんか。あるいはまた、時間の関係もありますのでまとめてお伺いをしたいのですが、昭和四十四年七月五日付で「原子力関係施設上空の飛行規制について」という通達でしょうかお出しになっておるわけなんですが、この間の事故は六十三年でありまして、これは昭和四十四年七月五日なんですね。したがいまして、もうかなり隔たりがあるのですが、この四十四年七月時点での原子力発電所等原子力関係施設と現在の施設とはどのくらい違いがございましょう。数的に言ってください。
  225. 中村資朗

    ○中村(資)政府委員 お答えいたします。  航空機による原子力施設に対します災害を防止するためには、現在、原子力施設付近での最低安全高度以下の飛行を許可しないということにいたしておるわけでございますが、それと同時に、原子力施設付近の上空の飛行を行わないように指導を行っておるわけでございます。この指導につきましては、防衛庁及び米軍を含めて、航空路誌、AIPと言っておりますけれども、エアロノーティカル・インフォメーション・パブリケーションという航空路誌を発行しておりまして、これにより周知徹底を図っておる、必要なパイロット等には十分周知徹底をしておるというところでございます。  なお、今先生指摘がございました六月の四国電力伊方発電所付近で発生をいたしました米軍のヘリの事故でございますが、これにかんがみまして、私ども七月一日に再度原子力施設付近での上空の飛行を行わないようにという通達を発したところでございます。また、米軍に対しましては、六月三十日に外務省から原子力施設付近の飛行規制につきまして一層の徹底を図るように申し入れがなされたというふうに聞いておりまして、米軍の方からも改めて周知を徹底するというような回答をいただいているというふうに聞いておるわけでございます。  さらに、原子力につきましては、原子力施設から半径二マイルかつ高度二千フィート未満につきましては、民間機とか自衛隊機の訓練、試験空域を設定しない、そういう方針を立てております。と同時に、この二千フィート以上の高度であっても、できるだけ原則として試験飛行訓練飛行は行わない、避けるようにという指導をしておるわけでございます。  先生、最後に御下問のございました昭和四十四年の話でございますが、ちょうどこのころに我が国の原子力施設ができ上がってきつつある情勢があったわけでございます。ちょうど四十一年より原子力発電所が運転されておりますけれども、四十四年には運転中の一基を含めまして五基が建設中でございました。そういうことで、そのほかにも施設の設置計画がかなり進んでおりましたので、このような原子力関係施設の増加に対応いたしまして、航空機による災害があってはいけないということで四十四年の七月に通達を出したわけでございます。  現在は、実はかなりの数に上っておりまして、これは科学技術庁の方からお聞きした数字でございますけれども、動力炉につきましては三十七基、研究炉につきましては十三基、臨界実験装置につきましては七基、ウラン加工施設は六カ所、再処理施設が一カ所、さらに附帯陸上施設が一カ所ということでございます。
  226. 井上和久

    ○井上(和)委員 したがいまして、四十四年の七月あたりでは、一基と建設中の五基を含めても六基なんですね。ところが、今ございましたように、施設でも三十七、十三、あるいは七、六、一というふうに、これは五十余もの施設が今は現実にあるわけなんです。  こういうふうになってきますと、再度通達を出して、安全のために「上記通達の趣旨について再度関係事業者に対し周知徹底を図られたい。」こういうふうなことでございますが、この文章を読みましても、施設付近の上空の飛行はできる限り避けるようにというふうなことなんです。私は、これはできる限り避けるだのいうんじゃなくして、そういうところは避けてもらいたいというふうに思うわけなんです。それが正しいと思うのです。そういうふうな意味で、この四十四年から考えましてもさらに二十年を超えようかとするわけでありますから、その基数にしましても状態にしましても、その当時とは全然違うような状態にもなっておるわけであります。したがいまして、ぜひこれを徹底をしていただいて、できる限り避けるとかいうのじゃなく、そういうところは完全に避けるということを明確にしてもらいたいと思いますが、いかがでしょう。
  227. 中村資朗

    ○中村(資)政府委員 お答えいたします。  現在パイロットには、先ほど申し上げましたように航空路誌を使いまして完全な周知徹底を図っておるわけでございます。特に、航空機に乗りますパイロットにつきましてはエアマンシップということが非常に大切なことでございますし、今後きめの細かないろいろな施策をしながら、原子力施設上空での飛行を完全に避けるような方向に向かって努力を続けてまいりたいというふうに思っております。
  228. 井上和久

    ○井上(和)委員 周知徹底を図っておるといいましても、こういうふうなきちっとしたものを出すか出さないか、それを出さなければ現実に周知徹底にならないと思うのです。そういうことを私は聞いておるわけでありまして、周知徹底をしよります、しよったらいいのではなくて、現実にそこに落ちたわけですから、こういうことをしないように、通らないようにということを明確に打ち出してもらいたいということを言っておるのですよ。
  229. 中村資朗

    ○中村(資)政府委員 先生の御趣旨は非常によくわかっておるわけでございますが、現実問題といたしましてまず飛行機墜落をしないということが一番大事なことでございまして、私どもとしては、航空法の諸規定にのっとりまして、航空機の安全運航ということにまず第一義的な努力を傾注してきておるわけでございます。いろいろな法律に基づく規定をつくりましても、一たん落ちてしまえばこれはもう大変な事故になるわけでございますので、まず落ちないということを何らかの方法で、いろいろな意味で諸施策を通じて頑張ってまいりたい、また、パイロットに対してはできるだけ避けて飛ぶような努力を今後も周知徹底をしていきたいということでございます。
  230. 井上和久

    ○井上(和)委員 私、ちょうど愛媛県の選出でございます。伊方原発の近くでの大惨事でございま して、県民といたしましても大変冷やっとした問題でございました。防衛白書に関しまして、あるいはこういうことにつきましても国民の安全を守るという上からいきますと大変な問題でございますので、ぜひ重々努力をしてもらいたいというふうに思います。  以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  231. 竹中修一

    竹中委員長 次に、東中光雄君。
  232. 東中光雄

    東中委員 「なだしお」の衝突事件についてお伺いをしたいのであります。  七月二十三日午後三時三十九分、死者三十名に達する大変な、自衛隊、海目としては初めての大惨事が起こりました。こういうのがなぜ起こったのかということについて、そして再発防止のためにどうするかということについて、事件が起こってからもう四十日を超しておるわけですから、防衛庁としてこういう重大な大事故が起こった原因は一体何であったのかということについてどうお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  233. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えします。  今回の事故原因につきましては、海上保安庁等の関係機関による調査や今後の海難審判によって明らかにされるべきものでありまして、現時点において防衛庁としての判断を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  234. 東中光雄

    東中委員 海上保安庁から来ていただいておるのでありますが、海上保安庁は調査し、捜査をしておられます。それは海上警察の警察権の行使としての調査、捜査であると思うのですが、そうではございませんか。
  235. 邊見正和

    ○邊見政府委員 お答えいたします。  そのとおりでございます。
  236. 東中光雄

    東中委員 海難審判理事所の方でもいろいろ調査をされ、審判の申し立てもされましたが、そういう調査はどういう観点から何のためにやられておるのですか。
  237. 松下幸亮

    ○松下説明員 お答えいたします。  海難審判庁といたしましては、海難審判法に基づきまして、独自の調査先生のおっしゃるとおり九月二日に理事官の調査段階が終わりまして、申し立ていたした次第でございます。
  238. 東中光雄

    東中委員 海上自衛隊が海上自衛隊の行動として、いわば公務として行動を起こして、そして事故を起こした。だから、防衛庁はこういう事故が起こらないように対策を既に一部、一部かどうか知りませんが発表されていますね。海上自衛隊として対策を練らなければいかぬ。刑事責任追及のための捜査とかあるいは海難審判をやるための捜査とは別に、海上自衛隊がやった行動について、こういうとんでもないことが起こったんだから、なぜそういうことが起こったんだろうということを海上自衛隊立場原因を調べてこそ対策ができるんじゃないですか。刑事責任の追及をやる方の調べを待って初めて対策ができるというようなものではないでしょう。原因が何であったかということを調べて、そしてこそ対策というのは立てられるはずですよ。何にも調べてないのですか。
  239. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えします。  海上自衛隊といたしましても、通常事故調査委員会とは別に艦船事故調査特別委員会というのを設けまして、海幕副長を長とし、部長たちもメンバーとなり、監察官が取り仕切る調査委員会を設けておりますが、これはあくまでも海上自衛隊独自の調査でありまして、いわゆる海上保安庁あるいは海難審判庁において行われます捜査あるいは調査とは別個のものであります。それは十分な証拠と申しますか、相手方の行動についての十分な知識を得られない状態での調査ということになるかと思います。  なお、我々防衛庁といたしましては、このほかに自衛隊艦船事故防止対策委員会というのを設けまして、これは事務次官を長とする各局長等をメンバーとするものでありまして、ここでは事故原因調査を総括いたしますとともに、艦船の航行の安全対策を総点検し、今後の艦船関係事故防止対策の確立を期するということで作業を進め、主な要素がまとまりました段階で先般再発防止策を出した、こういうことになっております。
  240. 東中光雄

    東中委員 私が聞いているのは、海上保安庁は刑事責任の有無ということで被疑者としての艦長の捜査をやっております。これは調査だったかもしれぬが、すぐに捜査に切りかえられて、本来ならば強制捜査は当然やられるべきだと私は思うのですけれども、それはそういう角度からやっているのです。  海上自衛隊としては海上自衛隊のやり方として、こういう事故を起こすようなことではどうにもならぬのだから、そのときになってどういう原因でこういうことになったのかということをえぐり出して初めてその原因の部分を除去していくということで対策が出てくるはずなんですね。だから、海上自衛隊として、今度の「なだしお」のあの惨事が起こったケースについて、その原因はどこにあったのかということについてまだ何にも結論が出ていない、それらしい方向も出ていない、しかし対策だけは出したんだ、こんなばかなことは許されませんよ。  だから、どういう原因だったかということを決めているのか、まだ決まっていないけれども大体こういう方向だということになっておるのか、そのことを明らかにしてもらいたい。それもできないということだったら、原因がわからぬままで対策なんというものをやったのは全くお茶を濁しておるということになると思うのですが、どうです。
  241. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 先ほど申し上げましたように、特別委員会の調査結果はまだ最終的なものとしてはまとまっておりません。また、完全なものとしてまとまりますためには、部外の公正な第三者機関の調査が完了することが場合によっては必要だろうというふうに考えられるものであります。  なお、その途中の段階におきましてもおおよその要素というふうなものは押さえることができるわけでありまして、それを盛り込んだ対策を至急に立てるということは我々の大事な責務だと考えておるわけであります。
  242. 東中光雄

    東中委員 おおよその対策はできるけれども、おおよその原因もわからない。そして、海上保安庁が出してきたことを見てからと言う。刑事責任の有無の判断、結論、海上保安庁というのはそんな刑事責任の有無の判断なんかできやせぬですよ。ただ海上警察としてやるだけで、あと検察官が公訴提起に値するかどうかという刑事責任の判断を一応やって、そして裁判所が結論を出すのですから。そんなものは刑事責任の問題なんですよ。そうじゃなくて、海上自衛隊として一体どうなんだ、あれでよかったのか、悪かったのか。よかったとしたら、刑事責任などもってのほかだということを言わなければならぬことになるはずでしょう。  それについて今防衛庁として、海上自衛隊としては何も概括的な大方の原因究明もやっていないというふうな答弁ですけれども、この事件が起こったのは七月二十三日の午後三時三十九分ですね。そして、その日の夜には西村海上幕僚監部運用課長はこのことについて具体的なコメントをしていますね。何と言ったのかといえば、「なだしお」のスピードも入港時は通常五〜六ノット程度でかなりゆっくり航行していたとおもう。これまでの経験から今回も漁船が早かったのではないか。」だから衝突したのではないか、こういう言い方をした。これは事情がよくわかっていないということを前提にしています。  その次に、佐藤潜水艦隊司令部幕僚長、この人ははっきりとこういうように総括しましたね。「「なだしお」の艦橋に山下艦長以下四人が立っていたが、第一富士丸を発見して、回避する時期が遅かった。潜水艦の側にも責任があった。」という趣旨のことを記者会見で公にしましたね。潜水艦隊の幕僚長ですから、直属の上官ですね。事情を聞いて、事件が起こってから八時間も九時間もたってからこういうふうに言ったのです。そうでしょう。遅かった、そして責任がある、こういうふうに言った。  ところが、それからまた十時間余りたって、今度は東山海幕長がどう言ったか。これを取り消したでしょう。艦長は最善の措置をとったと思っておる、だから回避する時期が遅かったというあの潜水艦隊の幕僚長の発言はその後それを訂正しているはずだと言って、万全の措置をとったと思っておるというふうに明白に言いましたね。これは原因について言っておるのでしょう。しかも、それは個人的なものじゃないですね。全部、直属の関係のある人が公に言っておるわけですよ。遅くて責任があったというのを、その後、二十四日の午後、昼直後にわざわざ記者会見をして、防衛庁でスクリーンでいろいろ示しながら、艦長は万全の措置をとった、そして潜水艦隊幕僚長の言ったことは既に取り消されておる、訂正されておるはずだと言って訂正した。これは一体どうなるんですか。これについてどうお考えですか。
  243. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この事故については海上自衛隊としては、海上衝突予防法あるいは海上交通安全法等をよく理解してこれまでも安全対策を十分考えながら進めてまいっておるのでございまして、したがいまして、この問題については精いっぱい努力してきたんだ、しかしたまたまこういう大きい事故が起きたので本当に残念だ、こういうことでございまして、しかも、自衛隊として原因を徹底して究明すればいいじゃないかという御指摘でございますが、やはり第三者の機関でこの事故原因を究明していただいて、そして私たちは素直にこれを遵守するというような姿勢でこれから臨んでいかなければならない、こう思うのでございます。  ただ、二度とこういうような事件が起こらないために今再発防止対策というものを進めていかなければならないわけでございますので、そういう点について、潜水艦としての特殊な船舶としてのあり方がこれだけでよろしいのかというような問題も含めていわゆる再発防止対策をつくり、そしてそれを進めているという段階なのでございます。
  244. 東中光雄

    東中委員 長官、私の質問と違うことを答えてもらっては困りますよ。私が言っているのは、対処する措置がおくれた、海自は責任があるんだということを潜水艦隊幕僚長が言った。公に言ったんですよ。それからすぐ後に上司である海幕長が、東山さんが、あれは取り消したんだと。だから違う事実関係を言ったのですね。おくれたという判断を海目としては一回した。少なくとも外へ発表したわけです、国民に対して。それで今度は、おくれたんじゃないんだとは言わなかったけれども、万全の措置をとったので前のものは取り消されている、こういうふうに言った。この具体的事実についてどう思うているのか。  ほかの官庁が調べるのはそれは当たり前ですよ。防衛庁が刑事責任の追及のための捜査なんかやれないのは当たり前です。それをやって起訴されたら従わなければいかぬのは当たり前です。それに従ったからといって防衛庁の体制は何も変わらないです。やはり防衛庁防衛庁としてどこに原因があって今度はそういうことの起こらないようにどうするんだということをやらなければ、防衛庁の運用というものは成り立たぬじゃないかということを私は言っているわけです。長官はそのときの長官でありませんから、田連さん、出てこぬでもいいのですよ。だから私が言いたいのは、防衛局長、潜水艦隊の幕僚長が言った、それを約半日後ですね、深夜に言ったものを翌日の二十四日の昼過ぎに海幕長が、あれは訂正されているんだ、取り消しだということを言ったことについて今どう思っているかということを聞いているわけです。
  245. 日吉章

    ○日吉政府委員 必ずしも私の所掌ではございませんけれども、当時関係いたしました者として私からお答えを申し上げたいと思います。  委員からは幾つかの問題の指摘がございましたが、まず事故原因の究明でございますが、確かに刑事責任を問う場合に事故原因というものを究明しなければいけない。それは確かに再発防止のための事故原因の究明と刑事責任を問う場合の事故原因の究明と目的は違うかもしれませんけれども事故が起こった原因そのものは、これは一つだと思います。そういう観点から第三者機関で調査が進められておりますときに、事故を起こしました一方の当事者が軽々に自己の内部の調査に基づきまして意見を述べるということはいかがなものであろうかという点で、私どもは私どもなりに調査をいたしておりますけれども、外に申し上げるべきことではない。なおかつ、私たちは当事者でございますから、内部で調べました場合にも必ずしも客観的に正しいものでない場合もあり得ると思いますので、私ども自身もやはり第三者機関の公正なる判断を最終的には参考にさせていただかなければいけない、こういう点が一点でございます。  それから、事故発生直後の混乱いたしました段階におきまして、いろいろな方面からの求めに応じましていろいろな者が発言をいたしております。その一々につきまして私は正確に記憶いたしておりませんけれども、まさに言わんといたしましたことはこういうことなんでございます。潜水艦の方でそれぞれ乗組員がとりました行動につきましては判断の誤りその他そういうようなものはあったかと思いますけれども、見張りを怠っていたとか、あるいは回避をしなかったとか、法律で回避をするときにまず右に曲がれと言われているその第一原則を守らなかったとか、そういうことではない。そういう意味でそれぞれそれぞれが最善の努力をとったと私たちは信じております、こういう趣旨のことを申し上げたのだと思います。  ただ問題は、現実に衝突が起こったわけでございます。なお、衝突は固定したものとの間で衝突を起こしたのではありませんで相手がございまして、相手も動いているわけでございます。したがいまして、そこにおきましてどのような判断をしたか、その判断が果たして適正であったかどうかという問題がございます。この問題はまさに第三者機関等で正確に判断をしていただかなければならない問題ではないかと思います。そういう意味で、その与えられた場で最善の努力を、少なくとも主観的には彼らは怠惰なことをした、怠ったということではなくして最善の努力をしたという気持ちをそれぞれの者が述べたのではないか、私はかように理解しております。  それから、既に私どもは取り急ぎ再発防止対策を講じて実行に移しておりますけれども事故原因が究明されていないにもかかわらずなぜ再発防止対策が講じ得たのかという点でございますが、その点につきましてはやはり幾つかのポイントがございます。見張りが適正に行われていたかどうかというような点がございますので、そういう意味で私どもは見張りは、委員もただいま御指摘になられましたように、四人があの狭い艦橋に立って見張りをしております。ところが、その見張りが四人体制がいいかどうかという点につきまして、その見張りの人数をふやすとか、あるいは臨機の対応ができるような教育を十分に実施するとか、そういうような対策を講じたわけでございます。
  246. 東中光雄

    東中委員 聞いていないことを答えなさんな。私が今聞いたのは、これははっきり国民の前でテレビを通じて言ったことに基づいて我々は言っているんだから。佐藤潜水艦隊司令部幕僚長が言ったのは、回避する時期が「なだしお」は遅かった、だから海自側には責任があるんだということを二十三日の深夜に国民に向かって言ったのですよ。そして十二時間余りたったら今度は海幕長が出てきて、あれは違うんだ、本人も取り消したんだと言って、それは具体的な問題ですよ、そして今度は万全の措置をとった、こういうふうに言ったのです。これは海上自衛隊としておくれたという事実を認識したからこそ言うたんでしょう。でっち上げて言うたわけじゃないでしょう。しかもずっと上まで上がっていって、潜水艦の艦隊の幕僚長という資格で言うているのでしょう。そして今度は海自の最高責任者がそれを取り消すと言うて。現在はどうなんだということを聞きたいから言うているんであって、そんな抽象的な見張りがどうのこうのということは聞いてないですよ。  この問題についてあんたは一々知らぬと言っても、事実そうなんだから、国民の前には。そんな無責任なことは許されませんよ。どうなんですか。回避がおくれた、責任があった、だから回避がおくれぬようにちゃんとこれからせないかぬのだというふうに、教訓というか反省するというんだったらわかるんです。おくれたことについての責任はどうだ、刑事責任はどうか、こんなものは海上保安庁なり裁判所がやることで、あなた方は刑事責任をやることじゃないのです。海上自衛隊としてどういう行動をとるのかということについて、この二つの、艦隊の幕僚長とそして海幕長との言うことが違っておる、それぞれの機関が言うているわけですから、それについてどうなんだと言って聞いているんですから、問題をそらさぬで答えてください。
  247. 依田智治

    ○依田政府委員 記者会見等に関係する問題ですので、私の方から答えさしていただきます。  現在の時点では、既に権威ある機関によりまして原因調査等が行われておるということで、一方の当事者としてそういう問題については一切控えるというのが節度であろうかと思いますが、事故発生直後といいますのはやはりほとんど情報不足、それで国民また関係者の皆さんは、一刻も早くたとえ断片情報でも知りたいというような要請が非常に強いわけでございます。私どもとしては、発生した直後、いろいろ潜水艦隊の幹部また幕僚長等が記者等の求めに応じて自分らの把握している現状についてその都度、これは原因等については権威ある機関によって調査をしていただくものだけれども、現時点で私どもが把握しておる状況はかくかくでございますということを申し上げたわけでございます。  そんなことで、その時点、時点、非常に発生した以後結構いろんな状態で混乱しておりますので、若干情報が行き違いがあり、その点は私どもは今日反省点としてとらえておりまして、今後はこういう事案の場合においても一貫して的確な情報が提供できるようにということは今後の反省の一つでございますが、その時点、時点におけるお断りをしながら記者会見した中身につきましては、若干の行き違いがある点につきましてひとつ御了解をいただきたいと思うわけでございます。  なお、対策につきましては、次官のもとで私どもメンバーに入ってやっておるわけでございます。そういうことで、対策はもちろん、私どもとしては私どものできる範囲での内部の対策ということで、十分責任を持ってやっておるわけでございます。外に言うということは今は控えておるということでございます。
  248. 東中光雄

    東中委員 潜水艦隊幕僚長は回避がおくれたということを国民に向かって幕僚長の資格で言うた。今度は万全の措置をとったのでおくれたと言った分は取り消されておるというふうに海幕長が十二時間余り後に言うた。現在の時点で回避はおくれたと海上自衛隊考えているのか、あるいはあれは万全の措置をとったものであって、回避はおくれたと言うた潜水艦隊幕僚長の発言は、あれは取り消してしかるべきものなんだと今もそう思っているのか、これはもう争点になっている問題ですから、当然調査をされておるはずですから、その点はどうですか。
  249. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今第三者機関でこの原因の究明をしている中で、(東中委員「それは刑事責任の追及だよ」と呼ぶ)刑事責任の追及をも含めて原因の究明をしておるときに、あなたのおっしゃるようなその当時の個々の発言を取り上げて、そしてどうなんだ防衛庁はと言うことは、ちょっと今の段階では私たちはそれにお答えをするわけにいかないと申し上げるほか道はないのです。
  250. 東中光雄

    東中委員 個人が言うたんじゃないんですよ。評論家が言うたんじゃないんですよ。防衛庁の方が言うた。そして、おくれた、責任があると言うて、今度は、万全の措置をとった、前のは取り消すんだと言うた。この二つ国民の前に出ておるわけですよ。防衛庁としての見解ですよ。私もテレビで見ましたよ。それからこれだけたってもなお言わない。これこそまさに無責任きわまる、これがこういう事故を起こしていく防衛庁の体質になっていくんだ、私はそう思います。  それで、海幕長が言うたそのときの状況ですが、防衛庁の中で、スクリーンを示して、図を書いて説明したのですよ。あのテレビは見られたと思います、私も見たんですから。それによると、   「なだしお」は東京湾・浦賀水道の右側航路帯を浮上航行で北上し、規定通り五号ブイを過ぎて左へ回頭、横須賀港に針路を向けた。艦の司令塔には艦長、航海長、哨戒長、信号員の四人がいて操艦や見張りに従事していた。   左折して間もなく、右舷前方を南下中の「第一富士丸」を確認。両船間の距離は約二千五百ヤード、二千二百五十メートル。山下艦長は両船の位置、相対速度などから前を横切れると判断し、五、六ノットから増速を命じた。しかし、同時に左舷からヨットが接近してきたのを発見。艦長はヨットとの衝突を防ぐため汽笛を鳴らして警告、スクリューを逆回転して減速、エンジンを停止した。ヨットは左に反転してUターンした。   このあと、再びエンジンを始動して、南下中の「第一富士丸」を警戒しつつ西進。同船との距離がさらに接近したのでエンジンを停止し、 云々、こうなっているのですが、このときに、増速をしたのは、第一富士丸の前を横切るために五、六ノットから十ノット以上十一ノット近くに増速してどんどん走ったと言うておるわけですよ。そうしておいて一定の時点へ来たら今度は逆に、面かじいっぱいをやった、減速をした、こういう状態になったということを言っているのです。しかもそれは万全の措置であった。こういう会見での話の要旨です。  こういう認識は、国民の前で海幕長としてやったことですから、だから、それは間違っておった、あるいは今もそのままだというふうにお思いになるのか。防衛庁としてはあるいは海上自衛隊としては、あのときの説明について何らその後言われていないのですよ。しかしそういう説明をしたのですから、それは間違っておった、事実と違うことを言うたんだということなのか、やはりそのとき言うたのはそのままなんだということなのか、お伺いをしたい。
  251. 日吉章

    ○日吉政府委員 非常に具体的な御指摘でございましたので若干具体的にといいますか、それに即応してお答えを申し上げたいと思いますけれども、やはり海幕長があそこで記者の求めに応じまして話しましたときには、事故直後でございまして、必ずしも十分な情報が入っていない、しかも、いろいろ御質問を受けまして、明快に答弁をせざるを得ないというような状況があったということは御理解いただきたいと思います。  なお、衝突という事実は、先ほども申しましたように、今回の場合にはまさに相手があるわけでございまして、双方が動いておるわけでございます。したがいまして、相手がどのように動くかというような判断も含めて操艦をしないといけないというような状況になっているわけでございます。したがいまして、その判断が正しかったのか正しくなかったのか。衝突したのは事実でございますから、それはやはり誤りが双方のいずれかに、あるいは双方にあったのだと思いますが、そういう点で、その判断につきましては、まさに当事者では正確なことはわからないわけなんでございまして、そういう意味で、今第三者機関でお取り調べをいただいているわけでございますから、その段階におきまして、当方でそれを訂正するとかあるいはそのまま固執するとか、そういうふうな状況にはないというふうに思います。  なおかつ、私どもはやはり第三者の判断にゆだねなければいけないと申しますのは、二つの船と艦がございまして、相手側がどういうような行動をとったかということにつきましては、私どもは一方の当事者でございますから、いかんせん第三者機関でありませんのでわからないわけでございます。したがいまして、海幕長が申し上げましたことが全面的に間違っていたとか、あるいは正しいんだというような判断も今のところはでき得な いと思います。  ただ、委員指摘のように、ただいまの時点におきまして、そのような御疑問なり御指摘がおありになるということから考えますれば、あるいは海幕長の説明が若干断定的に受け取られる節があったのかとも思われますが、その点は、もしそういうことがあるとすれば、今後私ども一同として反省しなければならないところではないかと考えております。
  252. 東中光雄

    東中委員 相手方のことなんか一言も海幕長は言うてないですよ。私が読んだところでも言うてないでしょう。だから、前を突き切れると思うて、五、六ノットぐらいで走っておったのを増速をして、前を突き切るために進んでいったんだということを海幕長は言うているわけです。これは、「なだしお」の行動について海幕長が言うておるわけです。そして、接近したから面かじいっぱいをやったんだ、こう言うているわけです。そのこと自体は、今訂正されるのかされないのか。だから、ほかの船との関係とかなんか言うてないのですよ。
  253. 日吉章

    ○日吉政府委員 もし、御質問の意味を正確に受けとめていなければお許しをいただきたいのでございますが、突き切れるか突き切れないかの判断は、まさに相手の船がどういうふうなスピードで、どういう方向で動くかということを判断しないと、突き切れるか突き切れないか判断ができないんだと思います。そういう意味で、現時点におきまして、原因判断につきましていろいろなコメントを申し上げるということは、やはり適切、適当ではないのではないか、かように考えております。
  254. 東中光雄

    東中委員 あなた、日本語の意味がわからぬのですか。「なだしお」が突き切れるという判断をして、増速をして、二百七十度ようそろで走ったというふうに言うている。それはその判断が間違っておったかよかったかというようなことを私一つも聞いていないのです。増速をしたということを言うている。そして、接近した時点で、これはいかぬというので面かじいっぱい、後進いっぱいというふうにやったという趣旨のことを言うているが、それはそうですかと言うているんですよ。何もその判断が間違っておったとかよかったとかということは一つも聞いていないじゃないですか。何を言うているんですか。
  255. 日吉章

    ○日吉政府委員 これらの点につきましては、現在調査を進めておられます海上保安庁等で艦長等が供述をしている内容にわたることになると思いますので、この段階で私どもの方でとやかく申し上げるのは適切でないのではないかと思います。
  256. 東中光雄

    東中委員 無責任きわまる。具体的なことを海幕長が国民に向かって言うたんですよ。それを今になったら、言いません。それなら、そのときからそう言いなさいよ。海幕長はそういうふうに言うた。  それでは、保安庁に聞いたって今捜査中だからあれですが、海難審判理事所の方にお伺いしたいのですが、海幕長がそのときにそういうふうに言うた。ですが、審判理事所の方で三百十七点の証拠品と、それから記録千九百五十丁、質問対象人員四十五人、質問対象延べ人数五十六人、これだけの証拠調べをやられて出された理事所としての、その場面における「なだしお」の行動はどうであったかということを、理事所としての判断されていることを明らかにしてほしい。
  257. 松下幸亮

    ○松下説明員 要点だけまとめて申しますけれども、申し立てされました事実の概要で、今先生指摘の「なだしお」側の行動は、   三時三十五分ごろなだしおは第一富士丸と互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあったが、山下艦長は、そのころ自艦の南側を北上する帆走中のイブIに留意してそのまま進行するうち、同時三十六分ごろわずかの間機関停止としイブIに対して長音一回の汽笛信号を行わせたところ、イブIが左舷側を約三百メートル隔てて西進したのを認め再び前進強速力とし、十・七ノットばかりの速力で直進したまま第一富士丸の進路を避けるのが遅れた。   同三時三十八分ごろ山下艦長は、第一富士丸との衝突を避けるため、はじめて短音一回の汽笛信号を行わせ、機関停止、後進原速力、後進一杯続いて面舵一杯を令したが、同時三十九分三ノットばかりの前進行き脚で艦首がほぼ三百度に向いたとき、横須賀港東北防波堤東灯台からほぼ百十度一・七海里ばかりの地点において、なだしおの右舷艦首が第一富士丸の右舷船首に前方から約十度の角度で衝突した。 というように理事官の段階では一応認定しておるところでございます。
  258. 東中光雄

    東中委員 まさに海幕長が言うたことと、突っ切るつもりで前進をしておった、もう衝突するというふうになって、三十八分ごろに面かじいっぱいをとって、そして三十九分、一分間で衝突しているのですよ。これはもう明白なおくれじゃないですか。海上衝突予防法では、あらかじめ時間の余裕を持って避航義務者は大きく右の方に切らなければいけないんだ、相手方にわかるようにせにゃいかぬのだという、あの海上衝突予防法十六条からいったら、前を突っ切るんだというて、今度はぎりぎりいっぱいになってから後ろへ回るんだという、こんなものはあなた、むちゃくちゃですよ。  こういうことが明らかになっておって、何がわかりませんとかなんとか言うのですか。こんなことで本当に防衛庁、海上自衛隊が反省しているなんということは、とてもじゃないが言えません。私時間がないので、これはきっちり詰めたいところでありますが、やむを得ません。  もう一点はっきり聞きたいのでありますが、防衛庁に伺います。  防衛庁設置法第六条の六号では、海上における人命もしくは財産の保護のために行動をすることが自衛隊の任務を遂行するための権限として規定されています。そして自衛隊法百八条の規定から見て自衛隊は、自衛官にも適用がある船員法十四条によりますと、潜水艦の艦長は他の船舶の遭難を知ったときは人命の救助に必要な手段を尽くさなければならないというふうに法律で義務づけられています。ですから潜水艦の艦長は、艦長の職務上の義務として、遭難を見たら人命救難のために手段を尽くせというふうになっているのですが、そのとおり潜水艦の艦長も当然認識していたのでしょうね。どうでしょう。
  259. 日吉章

    ○日吉政府委員 不幸にして衝突が起こったわけでございますが、衝突いたしました直後、艦長は救難態勢をしきまして、それでもって……(東中委員「法律解釈だけ聞いているんです。時間をとるのはやめてください」と呼ぶ)その法律の趣旨に従いまして、与えられた条件の中で最善を尽くしたというふうに考えております。  ただ、いろいろな潜水艦の性能上の支障、それから衝突いたしました場合に潜水艦は、先ほど委員がおっしゃられましたように後進いっぱいをかけておりまして、行き足がほとんどとまっておりましたので、衝突後機関停止をいたしました関係で、百メートル以上、百メートルないし二百メートルというふうに聞いておりますが、その程度現場から離れたという不幸な事実がございまして、潜水艦の場合には、もう委員は先刻御存じでございましょうが、内火艇というような非常に機動力のある救命艇を持ってございません。したがいまして、あの大きなスクリューのままで現場に近づくことは非常に危険でございますので、極めて遅い速力で現場に近づきました関係上、その現場に到達する途中、三名の方々を救助するにとどまったということでございます。
  260. 東中光雄

    東中委員 私は、質問していないことを答えて時間をつぶすのはやめてほしいと思います。フェアじゃないですよ。  衝突をしたときは、あなたはほとんど停止の状態であったと今言われましたね。そういう事実関係をこういうときにはちゃんと言うんですね。  理事所の方にお伺いしたいのですが、三十九分、衝突したときのあの潜水艦の行き足は何ノットぐらいだったのですか。
  261. 松下幸亮

    ○松下説明員 理事所の方の調査段階での衝突時の速力につきましては、先ほども御説明いたしま したけれども、三ノットばかりの速力があったという認定でございますが、いずれこの問題につきましては審判の過程でも明らかにされていくことになると思います。
  262. 東中光雄

    東中委員 三ノットであったと理事所は認定している。あなたは停止したと言った。ここで食い違いが一つ起こっています。三ノットで動いておる潜水艦は二千二百五十トンです。当たった釣り船は百五十四トンです。小錦とふんどしかつぎどころじゃないのです。うんと差があるのです。そういうことで当たった場合にこの二千二百五十トンの潜水艦が相手方の小さい船に与える衝撃力というのは、mv2ですからものすごいごついものになりますね。だからすぐとまるというわけでもないのです。そのときは後進いっぱいをかけておったけれども行き足が三ノットあったのです。ところが、それから後ですよ。衝突したらそれは行き足はとまるかもしれません。向こうは二、三分で沈んだのでしょう。ところがこの潜水艦は、今は百ないしそれ以上と言いましたけれども今までは、二百ないし三百メーター後進をしていったのであります、それで二百メーターないし三百メーターのところでとまったんだ、それから戻ってきたのだから、しかもスクリューが外に回っているからなかなかゆっくりしか行けないので救難ができなかったのですという答弁をずっとやってきていますね。今の答弁とまるっきり違うのです。  そこで、私聞きたい。衝突したそういう中で、なぜその衝突現場から後進するのですか。後進いっぱいをかけたままだったのでしょう。そうでなければ、前に行く行き足のあった船が何で後ろに下がりますか。下がるのは後進をかけたからですよ。そして二百ないし三百メーター後ろに行ったということになるのです。それは衝突現場から後進で離脱をしたということではありませんか。何回も記者会見で今まで自衛隊、海自関係者が救難問題についてそういう発言をしています。今防衛局長が言ったのとは違う。  だから、衝突をして救難する法律上の義務のある者が後進をかけてあえて後ろへ行って、そして二十一分かかって連絡をして十数分で戻ってきたのだ、だからもうそのときは救えなかったのだ。これは救難すべき法律上の義務ある者がそれを救難しないどころか、その現場から離脱をした。法律上の義務ある者が死に瀕している人たちを目の前にして、それの救援をしないで離脱をする。私は大学時代に刑法の講義でこういう場合は殺人の不作為になるのだということを聞いたのを今もはっきり覚えています。そういう状態でこの離脱、後進、二百メーターないし三百メーター後進したということの責任をあなた方はどう思いますか。
  263. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず最初に、私が答弁いたしましたことで、実際、表示の錯誤になるのでしょうがちょっと間違えたことがございまして、百メートルないし二百メートルと申し上げましたが、それを私たしか申し上げたと思います。前回の委員会では二百ないし三百というふうに報告を受けているというふうに答弁いたしておりまして、それは委員指摘のとおりでございまして、ただいまの答弁を取り消させていただきます。ただこれも、海の上の事故のことでございまして、私どもは隊員からそういう報告を受けているということでございます。  それから行き足の点でございますけれども、約三ノットであったと申立書に書かれておることは私も承知いたしております。したがいまして、私のただいまの答弁ではほとんどとまったというふうに申し上げたようには思っていないのでございますけれども、私は三ノットと書かれていたことは知っておりますものですから。ただ、三ノットをどう評価するかでございますが、それほどスピードが出ていなかったのは事実ではないかと思います。  それで、衝突いたしました後で機関停止をかけております。したがいまして、その前の回避行動をとりました後進いっぱいがきいているわけでございまして、これは潜水艦のスクリューの構造上そうならざるを得ない点があることは御理解を賜りたいと思います。  私ども自衛隊員といいますものは、まさに有事の際に我々自身の身命を賭して国民の身体、生命、財産を守ることを任務とさせられているわけでございます。しかも志願兵でございます。したがいまして、私たちの日々の訓練はそういう現場離脱をするというふうな教育はしていないつもりでございますし、私どもはそういうふうなことは全く信じられませんし、そんなことはいたしていないと確信いたしております。
  264. 東中光雄

    東中委員 時間ですから終わりますけれども、主観を言うたってしようがないですよ。そういうことの事実はどうかということを厳正にたださなければ、信じでおりますじゃ何ぼ信じたってだめなんです。だから、後進をかけていない、前への行き足があったものが、衝突で仮にとまったとして、機関停止してなぜ二百メーターも三百メーターも後進するんですか。そんなことあり得ないですよ。潜水艦の構造がどうであろうと、三ノットにしろ、前へ向かっておったものがどうして後進、停止にして二百メーターも三百メーターも下がるんですか。そこに人がおるんでしょう。助けを求めておる人がおるんでしょう。ヘルプ・ミーとまで言うたという人がおるんでしょう。それをずっと二百メーターも三百メーターも下がったんでしょうが。それでここへ戻ってくるのに十数分かかったと何遍も言うているんでしょう。二百メーターも三百メーターも戻ったのは、艦長が現場から離脱したと言わざるを得ないですよ。そうでなかったらなぜとめないのですか。回りかけたら、面かじとったって取りかじに当ていと言ってとめるんですよ。後進の行き足があるんだったらそれをとめたらいいけれども、行き足がない、前へ行く行き足があったものをなぜ後進でそんなもの行きますか。そういういいかげんなことを言うてはいかぬです。実際は、とめたのは二百メーターないし三百メーター後でとまったんだ、そこから通信をしたんだ、そして帰ってきたんだ、はっきり言うている。もう一々挙げませんけれども、テレビなんかで記者会見で言うていますよ。  だから、これは事実に目を向けてほしい。そんなもの、当然とめられるはずです。そして救難すればいいんです。外れておったから、だからできなかったんです、スクリューが外へ向いておるから、行くのに時間がかかったんです、こういうことを弁解していたけれども、なぜ二百メーター、三百メーター離れたのか、ここが問題なんです。私は、防衛庁態度はまさにそういう点についてのきちっとした総括をしておらぬ、原因をきっちり見ておらぬということで、これははっきり船員法違反になるということを思います。強く抗議をし、指摘をします。事実をはっきりあなた方は総括していないようなことを言うんだから、そういうことではだめだ。  時間ですから、質問を終わります。
  265. 竹中修一

    竹中委員長 次回は、明九日金曜日午後一時十分理事会、午後一時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十三分散会