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1988-11-08 第113回国会 衆議院 税制問題等に関する調査特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月八日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 加藤 六月君 理事 海部 俊樹君    理事 瓦   力君 理事 羽田  孜君    理事 藤波 孝生君 理事 加藤 万吉君    理事 村山 喜一君 理事 二見 伸明君    理事 米沢  隆君       甘利  明君    池田 行彦君       片岡 清一君    岸田 文武君       志賀  節君    鈴木 宗男君       田原  隆君    谷  洋一君       玉沢徳一郎君    中川 昭一君       中川 秀直君    中島  衛君       中西 啓介君    中村正三郎君       野田  毅君    葉梨 信行君       浜田 幸一君    堀内 光雄君       宮下 創平君    山口 敏夫君       山下 元利君    伊藤  茂君       上田 利正君    川崎 寛治君       坂上 富男君    中村 正男君       草野  威君    小谷 輝二君       坂口  力君    宮地 正介君       安倍 基雄君    工藤  晃君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席公述人         石川県知事   中西 陽一君         全日本民間労働         組合連合会事務         局長      山田 精吾君         全国間税協力会         総連合会会長  古岡  勝君         名古屋市立大学         経済学部教授  牛嶋  正君         TKC全国会会         長       飯塚  毅君         日本書店組合連         合会常任理事  八田 哲弥君         東京大学教養学         部助教授    舛添 要一君         大阪大学経済学         部教授     本間 正明君  出席政府委員         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵大臣官房審         議官      瀧島 義光君         自治政務次官  森田  一君         自治大臣官房審         議官      前川 尚美君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 十一月八日  辞任         補欠選任   野口 幸一君     上田 利正君 同日  辞任         補欠選任   上田 利正君     野口 幸一君     ───────────── 本日の公聴会意見を聞いた案件  税制改革法案内閣提出第一号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  消費税法案内閣提出第三号)  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  消費譲与税法案内閣提出第五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出出第六号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案について公聴会を行います。  公述人各位には、御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。税制改革法案に対する御意見を拝聴し、各案審査の参考にいたしたいと存じますので、忌憚のない御意見をお一人十五分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと思います。  それでは、最初に中西公述人お願いをいたします。
  3. 中西陽一

    中西公述人 石川県知事をいたしております中西でございます。  税制問題等調査特別委員会の諸先生には、かねてから地方自治行政につきまして大変格別の御理解、御高配を賜っておりまして、心から感謝申し上げるものでございます。本日は、公述機会をいただきまして、知事立場から忌憚のない意見を申し上げたいと存ずる次第でございます。  なお、今回の税制改革につきましては、地方団体の間でも種々の意見主張がございますが、全国知事会といたしましてすべて集約いたしたわけではございません。以下申し上げますことは、私個人意見としてお聞き取りをいただきたいと思うのでございます。  御案内のとおり、我が国経済社会は、産業、就業構造変化所得水準の向上、平準化、人口の高齢化消費多様化、さらには経済活動国際化など著しく変化をいたしておるわけでございます。しかしながら、現行の税制は、負担給与所得等の直接税に偏るなどさまざまなゆがみが生じ、また各種の税制上の不公平も指摘されるなど、今日の経済社会状況に十分適応できない状況にございます。  このため、政府におかれましては、税制に対する国民不公平感を払拭するとともに、いわゆる直間比率見直し所得消費資産三つに対する課税を適切に組み合わせ、均衡のとれた税体系を構築するため、所得税等大幅減税消費税創設などを内容としたいわゆる税制改革関連法案を今国会に提出されたものと存じます。  二十一世紀に向けまして、我が国経済社会とその担い手に活力を与えるためには、税制抜本的改革がどうしても必要であると存じております。今回の税制改革関連法案の趣旨に賛同いたしますと同時に、早急にその成立を図られますよう強く期待申し上げているところでございます。  今次の改革に対する県民の反応につきましては、さまざまな意見もございますが、各界各層において関心が高まり、改革を必要とする層が広がっております。このため、国会の場におきまして速やかな審議と十分な論議を尽くされますことを心からこいねがう次第でございます。  なお、低所得層負担増など幾つかの懸念が指摘されておりますが、竹下首相みずから社会福祉施策における歳出面での配慮を初め七項目についてそれぞれの解消策をお示しになっているところでありまして、国民懸念解消に向けた政府の適切な対応を心から御期待申し上げているところであります。  さて、今回の税制改革案につきまして、地方行政に携わる立場からいたしまして、以下数点にわたりまして意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、改革案に伴う地方財政全体の大幅な減収についてであります。  今回の改革案では、国民の租税に対する重い負担感不公平感解消を図る見地から、消費税創設に伴う収入見込み額を超える大幅な減税が行われることとなっておりまして、地方財政全体といたしましては、個人住民税等減税分の大半、約七千八百億円が減収となる見込みであります。  この問題につきましては、国民のニーズに対応し、住民負担軽減合理化を図るため、地方自治体がみずから受けとめるべき減税であると認識いたしております。今回の税制改革重要性にかんがみまして、このことはやむを得ない措置と考えているのであります。したがいまして、この国、地方を通じた減収に対しましては、一部は税の自然増収によって賄われる予定でありますが、基本的には行政改革による対応が必要であろうと考えております。  既に行政改革に取り組んでいます私ども地方自治体立場から申し上げますと、政府におかれましても、補助金簡素化弾力化地方への権限移譲前提とした組織の縮減、諸制度の改善など、引き続き行政改革に積極的に取り組まれますことを御期待申し上げるものでございます。税制改革案に対する国民理解を得る上でも極めて重要と考えますので、一言つけ加えさせていただきます。  なお、今回の税制改革案に伴う減収補てんにつきましては、その補てん率が国の六七%に対し地方が七三%と高くなっておりますことは、地方に対する配慮がなされたものと認識をいたしております。今後とも個々地方団体財政運営に支障の生じることのないよう、引き続き地方財源の確保につきまして万全の措置を講じていただきますことを改めてお願い申し上げる次第でございます。  次に、消費税創設に伴う地方既存間接税の改廃問題についてでございます。  今回の改革案では、料理飲食等消費税娯楽施設利用税改組電気税廃止などが予定されておりますが、地方団体の貴重な自主財源であるこれらの地方間接税改組または廃止されますことは、率直に申し上げて残念でございます。これらの改組廃止に伴う減収につきましては、これにかわるものといたしまして消費譲与税創設され、完全に補てんされることとなっておりますので、全体としてはやむを得ない措置認識いたしておりますが、これらの税収実績団体間の格差がございます。このことをぜひとも御理解いただきたいと考えております。例えば石川県の場合、料飲税県税収入の一一%を超えており、改革案による減収額は、六十二年度ベースで、料理飲食税だけで約八十六億円、間接税全体では百六億円に達する見込みでございます。消費譲与税による補てんに際しましては、このような既存間接税徴収実績に十分な配慮がなされますよう強く要望する次第でございます。  なお、この際、大都市圏地方圏地方税源配分につきましても、一言触れさせていただきたいと存じます。  現在の地方税制のもとでは大都市圏税源が偏在し、昨今は、率直に申し上げて、ますますその傾向が強まりつつございます。このことは、第四次全国総合開発計画に言う多極分散型国土形成を図る上でも憂慮すべき事態であると考えられますので、税源地方圏への再配分につきまして、さらに御検討お願い申し上げるものでございます。  第三に、税制改革を推進するに当たって国と地方信頼関係確立についてでございます。  今次の税制改革を国と地方団体が一丸となって推進していくためには、国と地方との間に信頼関係確立されていることが何よりも重要であると考えております。しかしながら、現在、国と地方の間には国庫負担率の復元問題が大きな懸案となっております。御案内のとおり、国は財政難を理由として昭和六十年度から数次にわたり補助負担率の引き下げを行い、これによる地方財政への影響額は四年間で約五兆円もの多額に上っているのであります。この措置が本年度限りのものであることは法律上も明記されているところであり、また、地方団体におきましても、国の財政上の都合によるいわゆる緊急避難暫定措置であるとの認識のもとに、これまで国に協力申し上げてきたものであります。したがいまして、当然のことながら明年度以降は五十九年度水準に復元すべきものと考えるのであります。  この問題につきましては、政府において明年度の国の予算編成の過程でその取り扱いが検討されると承っておりますが、国庫補助負担率を復元し、国と地方財政秩序の回復と信頼関係確立を図ることは、国の当然の責務であろうと存じます。また、国、地方を通じた税制改革を推進するに当たって最も重要な前提条件であると考えるのでございます。諸先生方の御理解、御高配を賜りますようお願いを申し上げるものでございます。  最後に、私ども地方団体におきましては、多極分散型国土形成と活力ある地域社会づくりに全力を挙げて取り組んでいるところであります。しかし、その裏づけとなる地方財政状況を見ますると、交付税特別会計借入金を含めおよそ六十七兆円にも上る巨額の借入金を抱え、地方財政硬直化を一層深めているところであります。個々団体におきましても、公債費負担比率の上昇など依然として極めて厳しい状況にあるわけでございます。したがいまして、今後とも地方団体が、竹下首相の唱えられます「ふるさと創生」の実現に向け、国土の均衡ある発展とそれぞれの特性を生かした地域づくりにさらに取り組めますよう、引き続き地方分権の推進と行財政基盤充実強化を図っていただきますことを、この機会をおかりして強くお願い申し上げる次第でございます。  大変貴重な時間をちょうだいいたしまして意見を申し上げることができて、ありがとうございました。(拍手)
  4. 金丸信

    金丸委員長 ありがとうございました。  次に、山田公述人お願いいたします。
  5. 山田精吾

    山田公述人 おはようございます。本日は、日本社会党、公明党、民社党の推薦によりまして、このような機会をいただきました。お礼を申し上げたいと思います。  できれば、この公聴会につきましては、自民党さんの単独採決ではなしに、与野党の合意の中で持たれるというのが非常にいいのではないかというぐあいに実は思っております。  税制改革の問題ですが、その前に、その関係リクルート関係について一言やはり触れたいと思うのです。  私自身もこの税制国会には重大な関心を持ってきました。大幅延長国会にもかかわらず、国民関心は、税制改革の成り行きを心配しながらも、むしろ今はリクルート疑惑関心が集中している。税制改革は、国民合意民主主義の鉄則だと私ども思っていますし、その基本政治に対する国民信頼が何よりも大切だということは言うまでもありません。残念なことに、政治に対する国民信頼は地に落ちているのではないかと思います。国会の権威にかけ、みずからの責任で国民の前にリクルート疑惑を徹底解明して、国民信頼を回復することがまず先決だというぐあいに思います。司直の手にゆだねるといった政治家発言無責任発言としか言いようがありませんし、リクルート疑惑は日を追うごとに広まり深まる今日、国会がこの問題を放置していては、税制改革どころか日本の進路を誤らせることになるのではないかということを実は大変心配をしているわけであります。  税制改革についてですが、幾つかの見解を申し上げます。  その前に、この国会で相当十分審議がされたということがよく言われておりますけれども、問題は、その中身が問題、それもリクルート疑惑で打ち消されて、国民の目から見ますと、極めてわかりにくいような状況だと思っております。基本的なことは前回前々回のこの公聴会でも申し上げましたからくどくど申し上げませんけれども、今私たちが考えております重要なポイントだけ一つ申し上げておきたいと思います。  不公平税制の問題がいろいろありますけれども、大体こういう不公平税制になったのはどうしてこうなったのかという点の反省がお互いに足りないのじゃないかと思うのです。そういうことで、やはり反省ということを十分国民の前に示しながら、拙速を避けて、十分時間をかけ中長期的な見直しをすべきだということは再三主張してまいりました。  この場合、高齢化社会具体的ビジョンを示すとともに――示されましたが、極めて不十分です。国民の受益と負担関係国民負担率といった観点から、望ましい税制あり方について、所得資産消費バランスのとれた税体系あり方も含め税制基本構想を策定する必要があると私どもはかねがね主張してまいりました。それを踏まえて、税制全体の大枠を固めて、次いで個別項目検討を行うべきであると思います。これは税制改革基本的な考え方、理念を国会審議し、国民合意を取りつけることが極めて大切だという観点から、この主張を繰り返したわけであります。  税制改革に当たって最も大切なことは、勤労国民生活実態なり実感であります。前回前々回もその実態を明らかにしました。再度申し上げます。  過般、国税庁から昭和六十二年分の民間給与実態統計調査結果が発表されましたが、それによりますと、一年を通して勤務した給与所得者は三千七百六十七万人です。平均給与は三百七十二万円です。この平均給与は、時間外労働を含む諸手当ボーナスを含む給与全額を指しての金額だということを強調しておきたいと思います。  今、具体的な税制改革議論の中で、年収三百万円以下が四七・四%、年収四百万円以下が六五・五%、五百万円以下が実は八〇%近い七八・六%というような現実であります。五百万円以上は二〇・四%、六百万円以上はわずか一二・八%というようなことになっております。  問題は、私どもは大変今心配しております格差の問題です。事業所規模五千人以上を一〇〇と見ますと、一人から九人の零細企業では、平均給与手当を含めまして一〇〇対六六、ボーナスでは一〇〇対一八というような現状だということです。  全体的に言いまして、くどくど申し上げますけれども年収五百万円以下が約八〇%あるんだということだけは、ぜひ税制改革に当たってひとつ考えておいてもらいたいと思います。とかく中流意識に浮かれている風潮がありまして、これらの実態とあわせまして私どもが気にしていますのは、我が国特有とも言える、事業所規模、それから業種、地域による格差、全体にわたって格差が非常に顕著になってきているということであります。  一言つけ加えますと、さきの福祉社会ビジョンの問題で、年金の支給については開始年齢六十五歳ということが指摘をされていましたが、結論から言いまして、私どもはこれは反対であります。恐らく労使を通して反対だということになるだろうというぐあいに我々は見ております。     〔委員長退席海部委員長代理着席〕 早急に、とにかく定年六十歳を実現しまして、六十歳以降の雇用の開発を具体的に推進すれば、大いに私ども財源に寄与するというぐあいに見ています。公務員と違いまして、民間の場合は併給じゃありませんから、働けば年金をもらえないわけでありますから、それをきっちりやっていけばいいんじゃないかというような見解に立っておるということであります。  それから、よく厚生年金モデル年金のことが触れられておりますが、六十三年度予算で十八万五千円です。この十八万五千円がモデルだ、だから国際水準云々だということが言われますけれども、実際このモデル年金に該当する人は極めて少ないということです。大方の人は、このモデル年金の六掛け、七掛けだということをよくみんな知っておく必要があるのではないか。このことが鉄道共済年金をめぐっても大変重要な議論ポイントに実は挙げられておったわけです。  所得課税についてですが、今日まで実施された減税は、昭和四十一年から五十年、十年間で約三兆七千億円、昭和五十一年から六十三年、十三年間で、今回の一兆三千億円を入れまして、三兆八千億円少々というような内容であります。大幅減税大幅減税と言いましても、相当昔と金の価値も変わってきているわけですから、我々から見ますと、余りぴんとこない内容だというぐあいに見ているわけです。しかし、今回の一兆三千億円については、それなりに私どもは評価をさせていただいております。  ただ、皆さんたちに知っていただきたい点は、よく政党や国会議員の方にお会いしますと、あれだけ減税をやったのに反応が弱い、一体これはどういうことなんだろうかということをよく聞かれます。私は反応が弱いはずだと思います。なぜかといえば、年収三百万円の人で減税が千二百円、月百円ですから、これはよほど気をつけないとわかりません。年収四百万円の人で四千七百円、月四百円弱です。年収五百万円の人で一万九百円、月九百円。全体の八〇%がここに全部入っているわけですから、ある中堅サラリーマン以上のところは非常に反応があるかもしれませんが、皆さんたち選挙区を歩かれましても、圧倒的にそういうような人たちですから、減税やったよ、減税やったよと言ったって、銀行振り込み関係もあるかもしれませんけれども、余りぴんとこないのが現状だということは、事実を私は申し上げておるわけですから、今後の減税については、その層についても十分ひとつ考えてもらって、全体のバランスのとれたような対応をぜひしていただきたいことを強調しておきたいと思います。  さらにつけ加えて言いますと、年収三百万円以下の人が五〇%いるということを申し上げましたが、この人たちは、消費税関係増減税税制改革と言われましても、何にも関係ありません。消費税課税されるということだけが大変心配になっておりますから、増減税議論をされても余りぴんとこないというのがこれらの層の人たちであるということであります。  次に、資産課税であります。  資産課税は、経済企画庁国民経済年報六十三年度版でいきますと、我が国国民資産は四千五百二十四兆円と言われています。金融資産は二千四百兆円、うち株式は三百七十五兆円。昭和六十年から六十一年にかけまして百二十一兆円時価総額が上がっております。実物資産約二千兆円、うち土地は一千二百六十二兆円、前年より二百四十四兆円地価が上がっております。株と土地だけでも三百六十五兆円ですから、一日一兆円ずつ実はふえておるというような状況だということです。六十一年から六十二年にかけますと、土地の暴騰その他によりまして、今申し上げました三百六十五兆円を相当上回ることになるだろうと思います。  それに比べまして、現在の土地に対する課税は極めて甘いものになっておりますし、その甘さが利用転換を妨げるとともに、資産保有の二極分化を進めるまた大きな原因ともなっております。  キャピタルゲインが原則課税にされることは私どももちろん歓迎をいたします。しかし、政府改正案では不十分ですし、特にリクルート問題を契機にして、その内容強化が今強く叫ばれている状況でもあります。  問題は、取引の捕捉と総合課税の道を明らかにすることが今極めて大事だというぐあいに思います。  勤労所得に対しては、所得・住民税合わせて一五・五から七六、政府案では一五から六五の累進税率が適用されています。働くことにいかに過酷で、資産に甘い税制であるか、クロヨンと並んで不公平の大きな源であると思っております。  先般、経済企画庁の六十三年度国民生活選好度調査が発表されました。十年前に比べて所得格差は拡大していると見ている人が五六・二%であります。ほかいろいろありますが、時間の都合でカットしますが、政府自身なされたこういう調査にも私は十分ひとつ注目して対応していただきたいと思います。  次に、所得資産消費バランスです。  これについては、竹下総理政府税調に対しても、バランスのとれた抜本的改革をひとつやりたい、そういう諮問をされました。今この三つバランスについて、昭和六十三年度では所得で五八・八、資産で二一・五、消費課税で一九・七、まあ大まかに言って六〇対二〇対二〇というのが現状であるというぐあいにども認識をしているわけですが、今の政府改革案でいきますと、結果的には所得課税削減分消費課税の方に移るというぐあいにどもは見ているわけであります。今説明しました資産の大変な状況に対しては、ほとんどこれに手を触れようとせずに、所得関係を一気に消費に移転するというようなあり方で、本当に竹下総理が言われる三つバランスのとれた税制改革と言えるかどうか、極めて私どもは不満に思っているわけであります。この辺はひとつ明確に今後はしていく必要があるということであります。  不公平税制是正についてであります。  この問題は、私ども主張は極めて簡潔なんです。源泉納税者申告納税者との間の制度と執行の面での不公平是正をぜひやってもらいたいということなんです、比較をすれば全部出てくるわけですから。そういう視点が今回の税制改革については極めて足りないんじゃないかということを言いたいわけであります。不公平がある、たくさんのことが指摘されております。全部挙げてもらいたいと思うのですね。そして国民の前で、どうしてこういうような不公平が出てきたのか、どうすべきなのか、できないのかできるのか、そういうことを国民に示してもらえば、国民の判断が出てくると思います。  問題は、公平の原則確立するためには、そのための物差しとも言えますプライバシー完全保護前提とした納税者番号制度をぜひひとつ導入をしていただきたいと思います。そして総合課税の方向を明確にして、できる限りみなし制度をなくしていくことだと思っているわけです。今回の消費税内容を見ましても、みなし制度の導入で不公平がさらにまた増長するのではないかと思っていますし、このままだとみなし人間、みなし社会、みなし日本になってしまうのではないかということを大変気にしております。御意見があれば、後で教えていただきたいと思います。  具体的な不公平税制について、さらに主張さしていただきたいと思います。  一つは、インデクセーションです。物価自動調整措置の導入。これは消費者物価は五%ぐらいを基準にしたらよろしいという考え方です、累積も入れまして。  二つには、実効ある実額控除制度の導入。これは冠婚葬祭費だとか通勤手当とか、ほかにもたくさん私ども主張しております。  次に、政策福祉減税。これは退職所得控除の引き上げ。これは今大変大きな話題になっておりますが、我々は極めて注目をさせてもらっております。財形の非課税限度額の引き上げ。住宅取得促進税制の改善。  四つ目には、税法上、実効性のある記帳義務をひとつぜひ課してもらいたいと思います。現行の三百万円から二百万円に。記帳の真実性と網羅性を求める条文の設定とか、罰則、過怠税などを設けてもらいたい。今制度はありますが、全くこれはしり抜けであります。  それから、一定額以上の収入のある者に対する総収入申告制を義務づけるということです。総収入金額は、現行が三千万円ですが、これを一千五百万円ぐらいにしてほしい。あとは記帳義務と同じような条件をひとつ整えてもらいたい。  推計課税の導入と立証責任の仕組みの改善であります。税務署側が立証しなくちゃならぬというのは日本だけであります。欧米並み、欧米並みと言われているのですが、ぜひこれはひとつ考え直してもらいたい。  次に、罰則強化と時効延長。悪質、高額脱税の時効については現行七年ですけれども、無期限化、大幅に延長してもらいたい。この程度のものは日本だけですね。  事業主報酬制度の撤廃。これはみなし法人の問題です。これは我々サラリーマンとしてはずっと言い続けている問題であります。  医師優遇課税制の撤廃。そのほか公益法人に対するいろいろな問題がありますが、省略をさせていただきたいと思います。  特に、土地税制見直しについては、土地保有税の創設を申し上げたいと思います。二千平米以上で、価格五億円以上のすべての土地所有者及び地権者に原則として年率一%程度の保有税、これを国税として課税するようにしたらどうか。  土地譲渡所得課税の適正化をやってほしい。  固定資産税の適正化、相続税の適正化は時間がございませんから、内容は省略をいたします。  この中の幾つかは、政府税調の中間答申、実際は最終答申ですけれども内容が積極的か消極的かの差はありますが、触れられておるのです。今日までの国会審議を見ますと、不公平税制にしても税制基本構想にいたしましても、もっともっと突っ込んで国民にわかりやすい国会審議をぜひひとつやってほしいと思います。もしこの臨時国会でどうしても消費税を導入しようとするならば、国会国民に信を問うべきであります。  以上、申し上げまして、私の公述を終わります。(拍手)
  6. 海部俊樹

    海部委員長代理 ありがとうございました。  次に、古岡公述人にお願いいたします。
  7. 古岡勝

    ○古岡公述人 私は、現在物品税等現行個別間接税を納めておりますところの納税者の集まりであります全国間税協力会総連合会の会長をやっております古岡と申します。  今回国会に提出されておりますこの消費税法案の行方につきまして一番心配しておるのは、私ども、全間連と略称しておりますが、全間連じゃなかろうかと思っております。本日、この席に公述人として参りまして、参考意見を述べさしていただけることを大変ありがたいと思っております。お礼を申し上げます。  さて、現行の間接税は、特定の物品やサービスに課税する個別間接税制度をとっておりますが、現行のこの間接税制度には、これから申し上げるようなさまざまなゆがみ、ひずみ、不公平が生じております。  第一に、個別に課税されるものとそれ以外のものとの間でアンバランスが生じております。若干の例を申し上げさしていただきますと、同じスキーでも、水の上で使用されますところの水上スキーは課税されまして、雪の上で使用される雪上スキーは課税されません。同じ衣類でも、毛皮製品は課税されておりますが、カシミヤやシルクという、そういう高級織物には課税されておりません。テレビでも、ブラウン管テレビには課税されますけれども、例の液晶テレビには課税されません。同じ家具でも、ケヤキ製の家具は課税されますが、キリ製の漆塗りの家具は非課税となっております。このキリ製の家具で申し上げますと、五一%以上このキリ材が使用されているか否かで可否が判断されておりますが、このような基準によって課税と非課税を分けることの不合理のほかに、私ども納税者立場から見ますと、キリが何%含まれておるのかというようなことを証明する実務上の問題もあります。ゴルフ用品は課税になっております。しかし、テニスの用品は課税されていない、不合理であるというのもしばしば取り上げられる例でございます。ゴルフはお金持ちのスポーツ、テニスは一般的スポーツという考え方からこのようになったものと思われますが、今や河川敷でゴルフをするのには課税されまして、高級住宅地のテニスクラブでテニスをするのには課税されないのはアンバランスではないかというような声が大きくなっております。  第二に、物品税は主として奢侈品、ぜいたく品に課税することとされておりますが、今日では価値観が多様化し、消費態様が急激に変化しているため、何が奢侈品であり何がぜいたく品かの基準があいまいになってきております。例えばカラーテレビ、洗濯機にも物品税が課税されておりますが、これらは今やぜいたく品とは言えなくなっております。乗用車には二三%または一八・五%という高率な物品税が課税されておりますが、これについても同様なことが言えようかと存じます。このように価値基準が不明確になっている状況のもとでは、奢侈品やぜいたく品として課税すべき品目を客観的に決めることは困難になってきているものと考えられます。また、日進月歩の世の中でございます、新しく開発された物品に対しまして課税が追いついていかないというような問題も生じております。  第三に、現行間接税が物に対する課税を中心としておるために、サービスに対する課税が十分にできていないという問題が生じております。近年、消費支出に占めるサービス支出の比重が五割を超えると聞いておりますが、産業のサービス化が急速に進んでいるにもかかわらず、間接税課税されるものはわずかであり、物に対する課税とサービスに対する課税の間のアンバランスが生じております。  第四に参ります。現行個別間接税が限られた物やサービスにしか課税されていないために、国税収入に占める間接税の比率は年々低下しております。このため、収入の大きさに関係なく、使った金額に応じて税金を負担する、あるいは事業意欲や勤労意欲をそがないなどという直接税にはない間接税のメリットを生かせなくなっているように思われます。  第五に参りますと、外国から見ますと、酒税や自動車の物品税のように、我が国に売り込みたいと思っている製品にたまたま日本で重い税がかかっておりまして、差別的であるとの非難が非常に強くなっております。  私は、かねてから以上のような問題を抱えた現行の個別間接税を抜本的に改め、広く薄く消費一般に課税する新しい間接税を導入することが、公平な間接税制度確立し、税制全体の中で間接税の果たすべき役割を発揮させるためにぜひとも必要であるということを考えておりました。今般、政府から提案されております税制改革案は、このような私の従来からの考え方と軌を一にするものであります。  次に、現在提案されている間接税改革案についてでございますが、私は、新しいタイプの間接税の導入に当たっては、物品税の廃止を含めた個別間接税の整理合理化、単一税率の設定、納税事務負担の軽減、新税の円滑かつ適正な転嫁の四点に留意すべきであると考えております。  以下、これらの観点から、今回の改革案の具体的内容について意見を述べさせていただきたいと存じます。  第一に、物品税の廃止を含めた現行個別間接税の整理合理化を図るという点でございます。  物品税にはそもそもさきに述べたような問題点があるほか、万一物品税と新しい間接税とが併存するようなことになりますと、両者の関係をどう調整するのか。物品税の課税されるものにも新しい間接税課税するのか、両方課税するとした場合には税率をどうするのか等々いろいろ複雑な問題を生じます。さらに、例えば同じケヤキ製の家具でも、たんす、棚物類の商品でございますと十三万六千五百円が免税点となっております。テーブルであれば八万七千円が物品税の免税点となっております。この免税点を境にしまして、あるものには物品税がかかり、あるものには新しい間接税がかかるというような大変面倒なことになるわけでございます。簡素でわかりやすい間接税制度とするためにも、新しい間接税の導入に当たりましては、既存の個別間接税廃止、合理化を図るべきであると考えます。  この問題につきましては、今回の税制改革案では、新しい間接税として消費税創設する一方で、既存間接税のうち物品税、砂糖消費税など八税目を廃止するなど、既存間接税の整理簡素化が図られており、妥当な措置と考えます。  第二に、税率は単一税率とすべきであるという点でございます。  現行の物品税では複数税率がとられておりますために、課税物品間でバランスを欠くという問題がございます。また、実際に間接税を納税する者の立場から申し上げますと、仮に複数税率になれば、取引を税率ごとに区分して税額を計算する必要があるなど、納税事務が非常に煩雑になるという問題があります。また、税率の異なる二種類以上のものを一つに、二つの商品を一つに、機能を別々に持ったものを一つにまとめた場合に、その適用税率をどうするか、どちらの方に持っていくかという問題もあります。現行の個別物品税でも、例えば時計つき電気スタンドあるいは時計つきライターなどのように、異なった二種類以上の税率の組み合わせの商品が流通しております。どちらの商品として課税するのか、税務執行上取り扱いが煩雑となっております。  この点につきましても、今回の改革案では、税率は、乗用車が若干残りますが、乗用車を除いて三%と原則として単一税率が適用されるということになっており、望ましい制度と考えております。その上税率水準が三%と現行の物品税の最低税率よりもさらに低く抑えられておりまして、諸外国の課税ベースの広い間接税の税率水準と比べても極めて低くなっております。このため、現在物品税の課税されている物品の多くについて税負担が減ることとなりまして、自動車や電気製品などは、その分価格の引き下げも可能となると考えられるなど、国民経済にも好ましい影響を与えるものではないかと考えられます。  なお、三%という税率は、将来安易に引き上げられるのではないかという不安がないわけではありません。竹下総理も新税にまつわるいわゆる六つの懸念の一つとして取り上げられておりますが、税率が安易に引き上げられるようなことのないよう切にお願い申し上げる次第であります。  第三に、新しい間接税については、導入に伴う納税事務負担を軽減するため、できる限り簡素な仕組みにしていただきたいという点でございます。  今回の消費税では、税の負担消費者が負いますが、納税事務負担は事業者が負うという仕組みになっております。一口に事業者と申しましても、大企業から零細企業までさまざまな事業者がおります。特に中小事業者につきましては、経理処理や納税事務の能力にも限りがあると思われますので、できる限り簡素でわかりやすい制度とする必要があります。先ほどの六つの懸念の中でも、事業者の事務負担の問題が第五の懸念として挙げられております。  この点につきましても、改革案ではさまざまな工夫がなされています。  まず、課税期間を原則として一年とし、申告、納付は確定申告、納付と中間申告、納付の年二回とされております。さらに、実際に納付税額を計算しなければならないのは確定申告の一回だけとされました。売上税では年四回の計算、申告が必要とされていたのに比べますと、大幅に納税事務が軽減されることは歓迎でございます。  次に、売上税のときのような税額票の発行は不要となりました。そして帳簿上の記録や請求書、納品書等から税額を計算できるいわゆる帳簿方式が採用された点でございます。これによりまして、新税の導入後も新たな帳簿等をつくることなく、既存の帳簿を利用できることとなります。また、非課税の範囲が極めて限定され、物品はすべて課税とされたことや、消費者や免税事業者からの仕入れについても、課税事業者からの仕入れと同様に仕入れ税額控除ができることによりまして、帳簿上、課税のものと課税されないものとの仕分けが簡単になってきました。なお、免税事業者からの仕入れにつきましても、仕入れ税額控除ができることとされたために、売上税の際に問題になっておりました免税事業者は取引から排除されるのではないかというような心配が解消されたことは喜ばしいことでございます。  さらに、中小事業者の納税事務負担を軽減するために、年間売り上げが三千万円以下の事業者は免税とし、五億円以下の事業者は簡易課税制度を選択できるとされています。簡易課税制度は、売り上げだけから仕入れを計算できる仕組みで、仕入れを売り上げの八割とみなし、年間売り上げの〇・六%を納税すればよいというものです。仮に年間一億円の売り上げで六十万円の税額となります。なお、卸売業者につきましては、仕入れを売り上げの九割とみなして、年間売り上げの〇・三%を納税することとなります。このほか年間売り上げ三千万円超から六千万円未満の事業者につきましては、納付税額の一部が軽減される限界控除制度が採用されています。この制度につきましても、私は賛成です。  以上のような種々の工夫がされており、事業者の納税事務負担はかなり軽減されるのではないかと思われます。  第四に、新税の円滑かつ適正な転嫁という点でございます。  間接税は転嫁を前提とする税でありますので、税の転嫁がスムーズに行われるような仕組みとする必要がありますが、この点につきましても、今回の改革案では、まず税制改革法案の中で消費税消費者に転嫁されるべき税であることを明記し、事業者は必要に応じ消費税額を明示する措置をとることとする旨を定めるとともに、国が円滑、適正な転嫁に寄与するため、消費税の仕組み等の周知徹底を図る等必要な施策を講ずるよう努めるものとすると定めるなど、円滑、適正な転嫁についての基本的な考え方が示されております。  具体的な対応として特筆すべき点は、独占禁止法の例外措置として、暫定的に中小企業について転嫁の方法のカルテルを、またすべての事業者について表示方法のカルテルを認めることとされたことです。業界や商店街などでこのカルテルを活用していく必要があると考えます。  新税の転嫁につきましては、竹下総理が六つの懸念のほかに七つ目の懸念としてつけ加えられておりますが、事業者にとって重大な問題でありますので、政府としても、円滑かつ適正な転嫁を図るため最大限の努力を払われるようお願いしたいと存じます。  最後になりますが、私はヨーロッパ諸国の付加価値税制度を何回か視察いたしました。各国ともうまく実施されており、特に経済に混乱を来したとか中小企業の経営が苦しくなったというようなことは聞かれませんでした。ただ、ドイツでは中小企業に有利な税制だということを聞いてまいりました。我が国のように、特定の物品だけに課税する今の制度は、もう国際的には通りません。これは国際的に見ますと、日本だけの例外的なものでございます。日本は何といっても経済先進国ですが、その先進国を自負するならば、税制もおくれないように先進国になっていただきたいと存じます。  私は、現行の間接税制は不公平税制の最たるものであると考えます。早く今のような不公平で矛盾の多い税制から脱却して、新しい間接税制度確立していただきたい、このことを申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと存じます。(拍手)
  8. 海部俊樹

    海部委員長代理 ありがとうございました。  次に、牛嶋公述人にお願いをいたします。
  9. 牛嶋正

    牛嶋公述人 公明党の推薦でこのような公述機会をいただきましたことをまず感謝いたします。そして、日ごろ租税論を研究しております立場から、今回の税制改革法案に関しまして若干意見を述べさせていただきたいと思います。  これまでの税制改革議論の中で、広く薄く分かち合うとか広く薄い負担という言葉が唯一の基本的理念であるかのように使われてまいりました。すなわち、高齢社会における長期税制を考えるとき、あたかもそこで求められている諸条件をこの言葉がすべて満たしているような使われ方がなされてきたように思うわけであります。さらに、この広く薄く分かち合うためには、消費税の導入によって消費に広く薄く負担を求めることが最も望ましいとし、消費税導入の有力な根拠とされてきたのであります。  私は、この言葉を取り上げまして、そこに含まれております幾つかの疑問点ないしは問題点を明らかにしながら、本委員会で議論されている税制改革法案につきまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。  まず第一点は、高齢社会にふさわしい長期税制が広く薄く分かち合うことによって十分な性格づけがなされるためには、改めて高齢社会における広い意味での負担あり方について十分な説明を行う必要があると考える点であります。  ここで私が高齢社会における広い意味での負担あり方と申しますのは、租税負担はもちろん社会保険の負担も含め、さらに高齢者に対する介護のあり方など、高齢社会を支える仕組み全体を意味しております。しかし、この点についてこれまでそれほど十分な議論がなされてこなかったように思われるわけであります。そのため、納税者の多くは、高齢社会にふさわしい長期税制と広く薄い負担との関連があいまいのまま、消費税導入の必然性を率直に受け入れられないといった戸惑いを感じているのが現状ではないかというふうに思います。  さらに、これに関連していえば、再開後の税制改革議論において大型間接税議論がおおむね技術論に終始したことにも問題があったように思われます。すなわち、前回売上税が廃案になったとき、その改革案に対して拙速という評価が下されましたが、その意味は、高齢社会にふさわしい長期税制と大型間接税導入の結びつきについて十分な理解が得られなかったことに基づくものと言えるわけであります。したがって、再開後の議論では、まずこの点について徹底的な議論が行われるべきであったわけですが、実際は大型間接税について幾つかのタイプが想定され、主に税務行政上の実行性についてそれらを比較検討するという議論にとどまったように思います。  第二の問題点は、広く薄く分かち合うという言葉は、税制改革を進めていく場合の一つの有力な基準として使われているようでありますが、もしそうであれば、初めに基本的理念として設定されてきた公平、中立、簡素の三基準とどのような関係があるかという疑問が出てまいります。  長期税制確立していく場合、特に税制は公平でなければならないと考えられますが、広く薄く分かち合うことによって、その公平の基準とどのような関係があるのか、これまでの議論の中でそれは必ずしも明確にされてこなかったように思うわけであります。もし広く薄く分かち合うという言葉に公平の基準が含まれているといたしますと、これまで課税の公平を考えるときの基本とされてまいりました個々納税者の担税力に応じて税負担配分すべきであるという応能原則の考え方が否定されることになります。言いかえれば、その考え方に基礎を置く所得税そのものを否定することになるからであります。  また、広く薄く分かち合うことによって中立の基準にも適合するという見方も持たれてまいりました。すなわち、高齢社会を迎えて我が国経済が今の活力を維持していくためには、税制が労働意欲や投資活動に対して抑制的であってはならないと考えられますことから、今回の税制改革が高齢社会にふさわしい長期税制を目指す限り、中立の基準がかなり重要な意味を持つものと言えるわけであります。その場合に、一部の納税者に重い負担を求めるよりも、消費に広く薄く負担を求める方が、税制は抑制効果を和らげ、中立の基準により適合するということが暗黙の前提になっているわけでありますが、この点についてももっと突っ込んだ分析が必要であり、それに基づいてすべての納税者に対して広く薄い負担と中立の基準の関係について明確にしていかなければならない、こういうふうに思います。この点についても、これまでの税制改革議論の中でどの程度深く検討が加えられてきたかについては、やや問題があるのではないかと思っております。  第三の問題点は、今回検討されてきた税制改革案では、消費税を基幹税目として税制の中心に位置づけるというのではなくて、あくまで所得税と法人税とを中核に据えながら、消費税をそれらの税目の補完税として位置づけようとしていることと関連してくる問題であります。そのために、広く薄く分かち合うという言葉の持つ意味が、今まで述べてきた意味内容よりもさらに後退したものになってしまうという問題が生じてまいります。  例えば消費税所得税の補完税として位置づけようとする場合、所得税で捕捉漏れとなった所得消費支出の段階で改めて捕捉されることになるから、広く薄く分かち合うことは、所得税における不公平な要因を是正することにつながるのだという考え方が提示されてまいりました。しかし、この考え方には次のような重要な点が看過されているように思われます。  すなわち、広く薄い負担を求める消費税は、なるほど所得税の段階で捕捉漏れとなった所得からの消費支出に対して課税するものでありますが、同時に、所得税の段階できちっと捕捉された所得、例えば給与所得に対しても、もう一度消費支出の段階で税負担を求めていくことになるからであります。したがって、消費税所得税の補完税として位置づけられる限り、所得税に含まれている不公平税制は、消費税が導入されたといたしましても、そのまま残ってしまうことは明らかであります。  これに対して、消費税を法人税の補完税とみなす立場がもう一つ考えられるわけであります。現在、法人税は、それを負担している利益法人が法人全体の半分にも満たない状況にあります。五〇%以上の法人が税負担を何ら負わない欠損法人となっているわけです。したがって、毎年国税収入の三〇%以上を占めている法人税が実際にこのような税負担状況であるといたしますと、法人税もまた税負担に非常に偏りのある税目であると言わざるを得ません。したがって、今消費税を法人税の補完税として導入することによって、年間売上額が三千万円を超える企業がすべて納税義務者となることから、消費税の導入は法人に対しても広く薄い負担を求めることになり、現行法人税の抱える税負担の偏りという問題の解決に役立つのではないかという考えがそこから出てまいります。  しかし、この考え方に対しても、次のような反論が用意されるわけであります。すなわち、消費税はその税負担が最終消費者に転嫁されることが前提となっていることから、各企業は納税義務者であっても実際の担税者ではないということであります。そのため、消費税の導入によって欠損法人に対して税負担を求めることはできないのであります。したがって、消費税の導入によって広く薄い負担を求めるのは個人に対してであって、法人に見られる税負担の偏りは、そのまま残ることは明らかであります。  以上三つ観点から、広く薄く分かち合うという言葉の持つ意味について検討を加え、幾つかのあいまいな点ないしは問題点を指摘してまいりました。ここから引き出される結論は、今後とも所得税と法人税が我が国税制の基幹税目であり続ける限り、消費税税制の中でこれらの税目の補完税としての位置を超えることができないという点であります。もしそうでありますと、消費税が持つ広く薄く分かち合うという特徴が、高齢社会にふさわしい長期税制にうまく組み込まれていくためには、その前提として、所得税及び法人税が公平及び中立の基準に十分に適合するように抜本的見直しを行っていかなければならないということであります。  この観点に立って、私は本委員会におきまして、消費税法案審議に先駆け、所得税及び法人税の抜本的見直しを進められることを深く、強く要望するとともに、最後に、この見直しの進め方について若干のコメントを加えておきたいと思います。  所得税に関しては、負担の公平の確保という観点から幾つかの不公平税制が取り上げられ、その是正が進められようとしておりますけれども、いずれも部分的な問題だけが取り扱われておりまして、利子配当課税総合課税への移行とか、みなし法人課税と密接に関連する課税単位の問題など、所得税の骨幹にかかわる問題がほとんど取り上げられていないため、所得税について言えば、抜本的改革の名に値しないのではないかと思っております。ぜひこれらの基本的問題を取り上げ、積極的に御審議お願いしたいわけでございます。  また、法人税の見直しについて申しますと、現行税制が立脚しております法人擬制説に立った所得税の前取りとしての課税根拠に対して検討を加えるべきではないかと考えております。そして、この議論を通じて、税負担の偏りや税収の不安定性あるいは実効税率の高水準といった現行の法人税が抱えております問題を取り除いていくべきではないかと思うわけであります。もし今回の税制改革がシャウプ税制以来の大改革として位置づけられるならば、極めてあいまいな根拠のもとで課税が行われてまいりました法人税こそ第一に抜本的改革を進めるべきであるというふうに考える次第でございます。  以上でございます。(拍手)
  10. 海部俊樹

    海部委員長代理 ありがとうございました。  以上で御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 海部俊樹

    海部委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正三郎君。
  12. 中村正三郎

    中村(正三郎)委員 きょうは公述人各位におかれましては貴重な御意見をお聞かせいただきまして、大変ありがとうございました。  そこで、時間も限られておりますので、端的に御質問させていただきたいと思います。  特に山田事務局長にお伺いしたいのでございますが、今いろいろお話を伺いまして、私は実はサラリーマン出身、労働組合員であったこともございます。そういう点から考えまして、今事務局長が言われました、給与所得者、サラリーマン、労働組合員の給与所得ベースというのが一般に思われているよりか非常に低いのだというお話は、よく理解できるわけであります。また、それを労働運動としてとらえられることも非常に正しいことであろうかと私ども理解させていただくわけであります。  その中で、五百万以下の所得の方が八〇%おられるということをお伺いしましたが、逆に、少し前の統計でございますが、組合のこうした給与所得者の方に税の負担は重いとお考えですかということを総理府で調査したことがあったのでございます。そのときに、私の税の負担は非常に重いですよと言った人の七〇%が課税最低限であったということも実はあるのでございます。また、それから八〇%の反対の二〇%、五百万以上の方が給与所得者の税の大半を納められているということもまた事実なわけでございますね。そういうふうに、日本給与所得者、特に低所得者の税負担というのは、外国に比べて非常に軽かった、相対的に高額所得者と比べて軽かった。これは大変きつい累進税率があるという結果だと思いますが、この懲罰的とも思えるような累進税率のある中で給与を上げていこうということをやる場合には、やはりこの累進税率を緩めていかなければいけないということは、さっき御主張になったことは私どもも同意をできるわけでございます。  そうした中で今の税制改革の問題をとらえてみますと、さまざまなひずみというか不公平感ができているわけでございまして、この大変大きな累進税率を持った所得税がさまざまな不公平感を生んできている。この所得税の累進税率のために、シャウプ税制の骨格を守りながらきたところが、どんどん所得税に対する負担がふえてきた。法人税は大体少しずつふえてはまいりましたけれども、相対的に率からいえば所得税の方に負担が大きくなってきた。そういった中で、物品税、消費にかかる税金にいたしましても、先ほど間税協力会の方からお話ございましたように、さまざまな不合理が出てきて何とも説明できない。六十万円する着物には無税であって、ちょっとした千円かそこらの毛皮にも税金がかかってしまう。また、さっき言われたようなカラーテレビの例だとか、ウーロン茶には課税されて紅茶にはなぜ課税されないかとかいろいろな問題が出てきているわけでございます。  そういう中で、世界の税制改革の傾向として、所得税はフラット化をしていって、世界的に、いわゆる垂直的公平は必要であるけれども、比例税率でも、やはり多く稼いだ人は多くの税金を納めるようになるわけですから、それを補完的に累進税率が入れられてきたわけですが、それを若干緩めてフラット化の方に持っていこうという傾向が一つの潮流としてあるわけだと思うわけでございます。また、これからの高齢化社会を迎えて、その中のいろいろな社会保障費等の負担の増を考えてまいりますと、その中で現行の税制の骨格を守ったままいけば、大変な勢いで給与所得者負担が集中していかざるを得ないと思うわけでございます。そういったものを解消するために、また、消費資産所得バランスということもさっき言われましたが、そのバランスを考えて幅の広い、課税ベースの広い間接税を入れていこうというのが世界の流れであるわけでございます。  そうした税制改正を今考えて御提案を政府がしておられるわけでございますが、先ほどのお話の中で、山田事務局長さんと牛嶋先生だけが、それがいい悪いというお話をされなかったわけでありますが、私は中長期的に見て、世界のこの国際化する経済の流れの中でとらえても、この方向自体、方向づけに対しては御賛成をいただけるものだろうか、また、賛成をいただけないならどういう理由があるのだろうかということをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 山田精吾

    山田公述人 さっき急いだものですから、ちょっと舌足らずもありましたから補足をさせていただきたいと思いますが、一つは、今回の一兆三千億円の減税についてはいろいろな問題を指摘しました。指摘をしながらも評価をさせていただきますというのは、今先生触れられましたように、例えば年収六百万円以上の人が全体の五四・四%を負担しておるわけですから、これも大変な増税だなということを私ども受けとめておりますので、先ほどああいう発言をさせてもらった。しかし、実態からいうと、八〇%近くの人はほとんど減税の恩恵にお礼を言うほど浴してないということも一方では言っておりますので、今、全体世の中が多様化しまして、私どもの運動から見ましても、その両面をどういうぐあいに最大公約数、合意形成を整えながら一つの方向に持っていくのかということは、今度の税制改革だけではなくて、世の中全体いろいろな問題に当たりますと、その点が大事だなということを思います。  ですから、やはりまとまる場合は、高度を高くして、そして時間をかける、そういうような中で全体の合意を図っていく、こういう基本的な姿勢が大事で、先ほど先生も中長期的に見てと、やはり見てだけではなくて、中長期的にやるというようなことも両面から取り組むことが非常に大事だ。そういう点で、時間をとりまして私どもが昨年から主張し続けております税の基本的な考え方といいますか理念といいますか、それについてはそう大きな違いがないのじゃないかというぐあいに私は思っているのです。  ですから、今の間接税にしましても、物品税を初めにして矛盾、問題点が確かにあるのですよ。これを直さなくちゃならぬわけですよ。直すに当たっての前提というのがいろいろあると思うのです。その議論を深めて七、八割程度お互いの合意ができれば、おのずからこういう姿が個別にはいいということの合意形成に進んでいくのではないかと思うのですけれども、入り口のところで私どもひっかかっておるものですから、なかなか中に立ち入れない。ですから、先ほど私がみなし税のことをちょっと申し上げましたが、どっと笑いか何か嘲笑的な声が出ましたけれども、ああいうことも、やはりみなしがいいのかどうか。やはりこれは仕方ない面もあるのです。しかし、できるだけそういうものをなくしていく。総合課税とかそれから何かのチェックをする物差しとか、そういうようなものをきちんと用意する。  それから、くどくなりますが、竹下総理が当初所得資産消費と言われました。私どもは最初は抵抗があったのですよ、これを横並びでバランスをとるというのは。しかし、よかろう、総理も言われることだから、ということで我々もまじめに議論したのです。これを受けて立とうじゃないか。しかし、今の政府のまとめつつあります内容を見ますと、必ずしもバランスとれていないな、むしろアンバランスの方向に進んでおるなということが大変気になるものですから、私どもは数字を持っておりますが、まだ非公開だということになっておりますから、新しい視点の改革に伴うバランスがどういう数字で示されるのか、およそ私どもは私どもなりに推測をしておりますので、そういう前提をやはり整理してほしいなというのが私どもの気持ちだということです。
  14. 中村正三郎

    中村(正三郎)委員 今事務局長のお話を伺いますと、前提条件が満たされれば方向としては御賛同いただけるというふうに理解させていただきたいと思うわけでございますが、大体そういうことでございますね。
  15. 山田精吾

    山田公述人 大変失礼ですが、それは中身次第ということです。
  16. 中村正三郎

    中村(正三郎)委員 今いろいろ御説明になられました不公平税制に対して、これの問題も私ども事務局長と考えを同じくするところも多いわけでございますし、現に不公平税制是正については与野党間で今お話し合いが行われておりますし、また政府の税調の中、また党税調の中のいろいろな論議の中にもありましたし、それが今度の税制改革法案の中に具体化しているものもあるわけでございます。こういったことを私ども与野党で話し合い、また、我が党としてもいろいろ論議をして、よりよいものにして、この税制の実現を目指していくというふうに考えておるわけでございますが、私は手前勝手かもしれませんが、事務局長は大体同じお考えのようだというふうに理解をさせていただけるわけでございます。  そして、個々の問題でございますが、資産課税の中で土地のことを言われました。土地については、この前土地の時価が高騰したときに、住んでいる人が固定資産税が上がったら大変だということで、与野党ともに大合唱して固定資産税を上げないようにということで騒ぎが起こったわけでございます。そういう中で、資産に対して、土地は売れば利益になるかもしれませんが、ただ住んでいる、長期的保有をしているものについて大きな保有税をかけるということは、これは追い出しにもなるし、いろいろな弊害が起こるかと思うのでございますが、その点が一点お伺いしたいわけでございます。  それから、インデクセーションのことを申されましたが、インデクセーション、これは理解はできるわけでありますが、インデクセーションをやるとすると、これはすべてのものにやらなければならなくなると思うのですね。例えば借金の債務を持っている人は得になるであろうし、いろいろな償却の問題もあるでございましょう。そういったものをすべてやらなければならなくなっちゃう。そういう中でもし、累進税率の緩和と課税最低限の上昇によって低額所得者の税負担を軽くしていくという方向がこの法案に入っておるわけですから、そういう方向で税のフラット化、最低課税の層の上昇ということを考えれば、あえてインデクセーションをやってほかの税とのいろいろな不整合を起こすよりか、現実的には今の税制改正をやることによって目的がほぼ達成されるのではないかと思うわけでございますが、御意見を伺いたいと思います。
  17. 山田精吾

    山田公述人 後のことから申し上げたいと思いますが、インデクセーションにつきましては、政府税調の答申もああいうようなことになっておりますけれども、例えば昭和五十二年から昭和六十二年の十年間、消費者物価上昇が三四・六%、実は上昇をしているのですよね。今度の一兆三千億円の減税で額としてはとんとんになったのです、額としては。ですから、必要に応じてやりますというのがあの答申の内容ですよね。必要に応じてなかなかやってもらえないものですから、明けても暮れてもサラリーマンの労働組合を初めにしてデモをやったり集会を毎年やっているのです。知らない人は毎年上がっていると思っているのです。ですから、そういうような実績を見ますと、ああいう答申についてはわからないこともありませんけれども、実績から見るとそう言ったってできやしないじゃないかというのが私たち見解です。  それから、サラリーマンの今の所得についてのスライドをやればほかを全部やらなければいかぬ、それは必ずしも線を引いてもいいのじゃないかというような気持ちを私は持っています。一番不公平は何か、それは源泉と申告の違いだよ、その大きな問題はやはり物価であるということで、ひとつこの点だけでも整理してもらうと、かなりサラリーマンの気持ちは落ちついてくるんではないかなというのが私たちの見方だというようなことです。くどいようですが、そう言われても実績はそうなっていないということです。  それからさらに、やはり所得減税は、そういう不公平面における減税といわば経済政策に伴う対応、両面がございますから、経済に対する対応については、今言われたようなことが当然だと思いますけれども制度的にはちゃんとしてほしいということです。  それから、時間がありませんから急ぎます。資産課税の問題については、トータルとしてさっき申し上げました、六〇対二〇、二〇。このことに原則的には注目すべきではないかと思うのです。個別のいろいろな施策についてはいろいろあると思います。ですから、なかなか具体的に政府税調全体を通じて上がってこないですから、素人頭をたたきながら土地保有税というのをあえて私どもは打ち出したわけです。これよりもっといいものがあれば、どうぞひとつ国会でその方向を私は示していただきたい。対案がなくて文句を言ったってしようがないものですから、二千平米以上、五億円、一般的には関係ないですよということで打ち出してもらったということであります。
  18. 中村正三郎

    中村(正三郎)委員 終わります。
  19. 海部俊樹

    海部委員長代理 次に、伊藤茂君。
  20. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 公述人の皆様にはお忙しい中をお越しいただきましてありがとうございます。大変申しわけないのですが、本来でしたら極めて重大な国民注目の法案でございますから、皆様方からもたっぷり御意見をいただき、また時間をとって十分な議論をしたいのですが、私に与えられた時間は十五分しかございません。恐縮でございますが、幾つかどうしてもお伺いしたいので、また言い足りない点もあったと思いますので、簡潔にお答えいただければありがたいと思います。恐縮ですが、よろしくお願いをいたします。  まず、山田さんと牛嶋さんに伺いたいのですが、山田さんおっしゃいましたように、やはり税の基本国民信頼でございますから、一つにはリクルート問題の徹底究明を初め、これをきちんとしなければならぬという政治の姿勢が前提だろうと思います。不公平も是正しなければならぬと思います。そしてまた、山田さん、連合の基本的方針だろうと思いますが、幾ら何でも、とにかく目の前、ことしじゅうにこんな法案を上げてしまうというようなことでは国民信頼は得られないというようなことであろうと思います。  そういう中で、山田さんかねてからの御主張で、税制に関する基本原則あるいは税制基本法、私ども税制基本構想ということで四野党一致をいたしまして五つの目標、五つの手順、大体同じ趣旨だろうと思いますが、もう自民党、与党からすれば、ここで強行ということはあるかもしれません。もう初めに大型間接税ありき、一日も早く入れたいような野望を持っているということだと思いますけれども、これがなくて本当の税制はないと私は思います。それについて、山田さんの柱としてお考えになっていることを伺いたい。  兼ね合わせまして、牛嶋さんにお伺いしたいのですが、税制基本という中で公平、公正、その他さまざまのプリンシプル、国際的な原則がございます。もう一つ重要なのは、明確性といいますか、公平性、公正性と同時に明確、言うならば国民信頼、そういうものはきちんとされるという原則がやはり必要ではないだろうか。余りにもタックスペイヤーから見て、税制の決め方、執行が、政府のやり方が不透明であるために、極めて大きな不信感が発生をしているというふうに思いますが、その点どうお考えでございましょうか。よろしくお願いします。
  21. 山田精吾

    山田公述人 結論から申し上げますと、何で今こんなにばたばた急がなくちゃならぬのかなという感じなんです。去年のあの売上税のときは、いわゆる急速な円高によりまして、日本は沈没するんじゃないか、円高不況ということで私ども大変心配をしました。そのことも売上税には非常に絡んでおりましたね。そのときは日本の将来について非常に悲観的な風潮が本当に流れておりました。とにかくやはり政府としましても、来年へ向けて何兆円かの金が欲しい、そういうことが基本にはあったのではないか。今景気はまさに絶好調ですよ。二十四カ月続きました。さらに今後の我々の努力によっては、これはさらに継続することができるだろうというのが実は大方の見方になっているわけですね。そういう背景にありますから、経済情勢に合わしたような、少し落ちつきを持って時間もかけてやれば、私は、お互いに日本人同士ですから、合意形成ができないことはないというぐあいに思っております。ばたばたしますと、どうしてもそこには問題が出てくるような気がしてなりませんので、ぜひひとつ今秋の消費税導入についての結論はおやめになった方がいいと思います。
  22. 牛嶋正

    牛嶋公述人 今おっしゃいました明確性でありますけれども、これはこれまでの経済学者、財政学者がいろいろな租税原則なり基本的な理念を提示しておりますけれども、その中には必ずこの明確性というのが入っているわけですね。私は、まず税というのは、自分にどういう理由、根拠でどれだけの税負担がかかっているかということが個々納税者にとってはっきりしなければ、公平の問題も中立の問題もあり得ないというふうに考えております。ですから、まず今御指摘のように、税には相互の信頼が必要だということですけれども、私は、そのためにも非常に明確な税制をおつくり願いたい、こういうように思っております。
  23. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 山田さんに重ねてお伺いいたしますが、山田さんのかねての御主張に関する問題が二つであります。  一つは、物価調整制度、インデクセーションの問題。先ほどもお話がございましたけれども、今これに関して議論いたしますと、政府の方から何か財政収入が不安定になるからとか、あるいは所得税の構造がフラット化すればいいのではないかとか、あるいは先ほども与党の方から話が出ましたような、すべてにかかわるとか、さまざまなことを申しておりまして、消極的であります。私は、物価調整制度というのは、世界各国を見ましても、世界の常識であろうと思います。これを実行しない日本だけが世界の非常識ということではないだろうかということで、私ども含めまして何年か前に法案も提出をしたところであります。この問題の御見解と、もう一つは、山田さんは前にクリーンカードというのを提唱をなさっておりまして、納税者番号制度というものについて一番大事なのは、社会の公平のために、負担の公平のために、あるいは福祉も通じた公平のためにやりましょうというのが趣旨だろうと思います。何かプライバシーの侵害のおそれのあるような番号を全部くっつけるというふうな意味では考えていないわけでありまして、クリーンカードの提唱というのも、恐らくはそういう趣旨から出されているというふうなことであろうと思います。山田さん、政府税調のメンバーあるいは番号制小委員会についても御参画をいただいているというふうなわけでございまして、お伺いしたいのは、私はこういう趣旨はわかっているので、これをやることがこの抜本改革機会をおいてない、また抜本改革をするならば、これは不可欠だということではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  24. 山田精吾

    山田公述人 物価調整の問題につきましては、我々も欧米の内容等をいろいろ勉強させてもらったのですが、いろいろなやり方があるのですよね。ですから、今指摘ありました、政府の方もよく言われる、問題点があれば、そういうことも十分織り込みながら、ひとつ実態に合うような形で、やる気になればこれはできることなんで、やる気がなければこれは何だかんだ理屈をつけますけれども、いろいろな例がいろいろな国であるわけですから、できないことはない、ぜひひとつやってもらいたいというのが私どもの率直な気持ちです。  それから、納税者カードの問題については、ずっと私どもはこれは言い続けてきた内容なんですけれども、何か一部、我々自身がグリーンカードについて廃止するのに賛成したのじゃないかということを時々言われるのですが、せっかくの機会ですから、そういうことは絶対ありませんでしたので、お間違いのないようにしてほしいと思います。あえて納税者番号をクリーンカードと呼んだのは、できるだけさわやかなイメージをつくりたいというような気持ちもありまして、クリーンカード、ガラス張りというようなことで主張しております。今先生の言われたようなことと全く同じ考え方ですから、もうそれ以上申し上げることはありません。
  25. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 山田さんにもう一つ伺いたいのですが、先般来、税制改革については、高齢化社会に向けてどのような負担でどのような社会サービス、あるいはどのような負担でどういう日本をつくるのかという問題ではないだろうか、その不可欠の条件として、高齢化社会に向かうより積極的であり、また時代に合ったところの福祉政策をつくらなければならない、そのために知恵と汗を絞らなければならぬということを私ども主張をいたしてまいりました。  政府側の方からいわゆる福祉ビジョンについての文書による提起がございました。ただ、その内容を見ますと、年金の支給年齢を六十五歳に繰り延べるということがえらく重点になっているようなんですね。そのために、それでは就労年限をどうするのか、あるいは定年をどうするのかとかいうことは、何かまくら言葉になっているような印象で私どもも見ておりますし、世間でもとらえられている。これは重大問題であろうと思います。労働運動にとっても重大問題であろうと思います。その辺のことにつきまして、連合としての正式な見解も出されているようでございますけれども、それについての御見解と、それからついでで恐縮ですが、先ほども所得階層別の今度の消費税導入を中心とする税制改革によって重大な事態が起こるということを申されました。そういう意味で考えますと、大蔵省、政府が出されているシミュレーション、みんな幸せになります、また週刊誌にも大減税ですというのが書かれておりますが、私は、これは労働者の実感とも実態ともかけ離れたものであろう、日夜そういうこともごらんになっていると思いますので、その二つ、御見解を伺いたい。
  26. 山田精吾

    山田公述人 二十一世紀、高齢化社会に向かって我々自身もある程度負担増が出てくるだろうということはわかった上でいろいろなことを申し上げているわけなんです。  具体的に申し上げますと、六十五歳、七十歳、何歳でも書こうと思えば書けると思います。それにまた対応できるような業種なりあるとは思います。しかし、全体的にとらえた立場でこの種の問題は方向を示してほしいなということです。ですから、私どもとしては、先ほど申し上げましたように、やはり支給開始年齢は六十歳をきちんと起点として押さえておきたい。そして六十歳以降は、およそ今の労使の間でも定年制、なりませんよ。再雇用というような形が今後も進んでいくと思います。そして、そのための雇用を職域でどう拡大していくのか、開発していくのかということは、労使にとっても皆さん方にとっても重要な課題だというぐあいに思っておりますから、私は当面はそのことをぴっちり押さえながらやるということ。それで心配になりますのは、簡単に言いますが、私ども一番頭が痛いのは中高年齢、特に高齢者の言うならば能力開発といいますか再就職といいますか、これがほとんどないのですよ。今有効求人倍率が一・〇八と言われています。しかし、北海道、九州等は〇・七までいっておりません。その有効求人倍率が一コンマを上回っているところでも、高齢者の有効求人倍率というのは極めて低いということなんです。そういうことを本当に真剣に考えた上で、そういう具体策も十分立てながら六十五歳という問題をやはり出してもらわないと、ますます消費税議論すらややこしいことになってしまうのではないかなということを逆に心配をしておりまして、職場のどなたかに聞かれても、六十五歳の定年、はあそうですかなんという人は今のところはなかなかいないというのが実態、実感だということを申し上げます。
  27. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 あと一、二分しかございませんが、公平性の意味で中西さんと古岡さんに一言お伺いをしたい。  先ほど中西公述人は、今回の税制改革消費税を含めまして、これに賛成である、早く成立をとおっしゃいました。世論調査で、知事ですから御承知だと思いますが、今消費税に賛成の人よりも反対の人の方が三倍から四倍というふうな状態になっております。石川県だけ特別でないだろうと私は思います。そういう状況認識個人意見は、それは結構です。そういう状況認識をきちんと踏まえて、知事としてのさまざまな御努力をなさる。認識は、そのように事実認識ですから、お持ちになっているかどうかということと、一緒で済みません、それから古岡さんに一言伺いたいのは、単一税率、結構だと言われましたが、先般ヨーロッパに参りまして付加価値税の父というローレさんという人と会ったのですが、単一税率は社会政策のない証拠です、世界じゅうそんな例はありません。ダイヤモンドと水と何とかとか、水道とか米とかよく言われておりますけれども、もし将来、税率が二けたにでも上がったら大変な国民の不満が爆発するであろう。世界じゅうにないものを非常に結構だと言うのは、何か私はけげんな念を持って伺ったのですが、時間がございませんので、一言だけずつ答えてください。
  28. 中西陽一

    中西公述人 私が申し上げましたのは、私の周囲でいろいろと皆さんの御意見を聞いております。各種団体あるいは地元のオピニオンリーダーであるマスコミ等におきましても、徹底的議論は大いにやっていただきたいが、同時にできるだけ早く消費税体制に移行すべきである。と申しますのは、石川県あたり、二十一世紀、いよいよ高齢化社会を迎えるわけでございまして、いろいろな意味におきましてそう申しておるわけでございまして、議論を飛ばして結論を出せという意味ではございませんので、どうぞよろしくお願いします。
  29. 古岡勝

    ○古岡公述人 一言申し上げさせていただきます。  早く導入させてほしいと言っておりますのは、私ども全間連の会員は、全員が、物品税が昭和十二年からですが、戦前を問わず戦後四十年間、この不公平、矛盾に苦しんでまいったものでございます。現在も苦しんでおります。大変苦しんでおります。だから早くこれは是正してほしいということです。  それから、単一税率につきましては、これは現在の個別消費税、物品税があれほどたくさん、八十五品目いろいろな税率があります。これはもう大変な事務負担です。こういう事務負担は、単一税率によって解消されると思っております。よろしくお願いします。
  30. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ありがとうございました。
  31. 海部俊樹

    海部委員長代理 次に、宮地正介君。
  32. 宮地正介

    ○宮地委員 公述人の皆さんには大変御多忙の中当委員会に御出席いただきまして、大変にありがとうございました。きょうは限られた時間が十分以内ということでございますので、基本的な問題について何点かお伺いをしたいと思います。  まず最初に、山田公述人に。リクルート疑惑の問題についても触れられました。今回のこの税制改革法案審議に当たりまして、リクルート疑惑との関係は大変に重要な問題であろうと思っております。既に御存じのとおり、この六法案政府提案者の中心的な立場にある竹下総理あるいは宮澤大蔵大臣、この方々がこのリクルート疑惑に大変に関係がある。こういうことで国民政治不信というものも大変強いわけでございまして、果たしてこの法案を提案する資格がまずあるのだろうか、こういう素朴な国民のいわゆる疑念もあるわけでございまして、こういった点について公述人はどのように国民の代表としてお受けとめになっているか、まずお伺いしたいと思います。
  33. 山田精吾

    山田公述人 きょう公述を申し上げる前提リクルートの問題について触れました。一日も早く、ひとつ国会の責任において内容について解明をして、国民に示してもらいたいということを申し上げました。  今先生の方から、それぞれの立場における責任についてどう思っておるのかという指摘だったと思いますが、私は、これだけの国民の世論とか国会の論争を通じまして、それぞれの立場の人がそれぞれの立場でひとつ責任を明らかにされるということが、今最も大事なことではないかというぐあいに思っております。
  34. 宮地正介

    ○宮地委員 特に今回のこのリクルート問題の中で、キャピタルゲインの問題、いわゆる株の売却益に対する課税問題、これが大変にやはり不公平である。例えば創業者利得の江副さんが百四十六億円のいわゆる利得を得ながら、これが非課税である。国民の汗水垂らしている方々が勤労所得においては大変な所得税がかかる。ところが不労所得であるこうしたキャピタルゲインについては非課税である。こういうことで、今回この税法の中においても原則課税、あるいは申告分離課税二〇%あるいはみなしで一%。特にこのみなしの源泉分離課税については大変にこれは問題がある、こういうことで与野党間でもこの問題については踏み込んで改正をしなくてはならない。こうしたやはり不公平な税の最たるものとして、このキャピタルゲインの問題というものが国民の中からひんしゅくを買っていると思うのですね。この点について牛嶋先生どのようにお考えか、一言コメントいただければと思います。
  35. 牛嶋正

    牛嶋公述人 私、先ほど所得税の抜本的改正、そのためには所得税にかかわる骨幹的な問題について慎重に議論していただきたいということを申し上げました。そのうちの一つに今御指摘のキャピタルゲイン課税も含まれているわけでございます。やはり今の所得税の基本は、すべての所得個々納税者について総合して、それに対して課税をするということですね。今言われております不公平税制のほとんどは、その総合課税が十分に行われていないところから出ているわけでございまして、その最も大きな部分といたしまして、今御指摘の有価証券のキャピタルゲイン課税があるわけです。それで、キャピタルゲインも、これも所得個人所得という観点から申しますと、所得に当然含めるべきでありますし、今までは土地に対するキャピタルゲインが譲渡所得で含まれていたわけですから、これはもう当然有価証券についても含めるべきだ、こういうように思っております。
  36. 宮地正介

    ○宮地委員 今先生からも総合課税の構築の問題をお話しになりました。我々公明党も、これからの税制改革の一つの手順、方途ということで、まずやはり現在不公平と言われている不公平な税制是正すべきである、また基本的にはシャウプ勧告以来の税の根本は総合課税に移行していくべきである、こういうことで、昨年マル優廃止のときに、利子配当課税については、附則の中で五年後に見直しをして総合課税に移行をする。今回の審議の中でも、特にキャピタルゲイン課税などにつきましても、今後四年後に見直しをして、総合課税に移行していく、そういう中でやはり税の根本的な一つの構築をしていくべきである、こういうことについても竹下総理は前向きに答弁もされました。やはり分離課税とかあるいは租税特別措置などによりまして、非常に税の本来の体系が今形骸化されておる、これをもとに戻していく、そういうような一つのきちっとした道をつくり、そして国民合意を得ながら直間比率というものは第二次改革の中で見直していくべきではないか。そう考えますと、やはり今回の消費税導入は余りにもこれは拙速過ぎるのではないか。国民の大多数がいまだに反対をしております。ましてこれは二年前の中曽根内閣の、政府の選挙の公約違反でもある。まして中身を見てまいりますと、年金生活者あるいは低所得者層、生活保護世帯、まさに弱い者いじめである。中小企業にとりましても、独禁法の適用除外によって価格転嫁させると言いながら、実際は繊維業界などを初め価格に転嫁できない。結果的には中小企業の経営圧迫につながる。三%というものは、中小企業経営者にとっては、これは大変な率でございまして、まして三%というのは、まず消費税導入ありきである。これが打ち出の小づちとして今後さらに税率が上がっていくことは十分に考えられるわけでありまして、そうなりますと、小さな政府どころか大きな政府、本当に小回りのきかない、ますます行革も大変に進まない、そういう危険もあるわけでございまして、そういう中で、先ほど石川県知事中西さん、あるいは古岡さんは賛成の意向を表明されましたが、この点についてはどのように受けとめておられるのか。時間がございませんので簡単で結構ですが、御答弁いただければありがたいと思います。
  37. 中西陽一

    中西公述人 基本的に、将来はもっと小さな政府、規制緩和をすべきだと思うのでございます。それにいたしましても、先ほどもお答えいたしましたように、今の所得税が本当に激しい累進税率であること、また法人系統におきましても、国際比較からいたしまして今のあり方は適切でない、こういうことを考えますと、石川県の場合、中小企業団体、農業団体等もそれぞれやむを得ないこととして賛成を表明しておりまして、それを受けまして私も賛成でございますが、何としても税改正は国民生活の根底にかかわる大きな問題でございますから、十分御審議をされることを心から期待しているわけであります。
  38. 古岡勝

    ○古岡公述人 最初に、三%でございますが、三%という税率は世界で類を見ない一番低い税率だと私は認識しております。それで、この三%を業者が負担しなければならない、利益がそれだけ減るということでございますが、これは転嫁をしないから減るということが考えられるのであって、転嫁を前提としておりますので、殊に、先ほども申し上げましたように、政府では、この転嫁について最大限の努力をする、PRをするということを明言されております。それを私どもは期待しております。
  39. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  40. 海部俊樹

    海部委員長代理 次に、安倍基雄君。
  41. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 公述人の皆様にはお忙しいところどうもありがとうございました。こちらに与えられました時間が十分でございますから、簡潔に御質問したいと思います。  最初に、山田公述人にお聞きしたいのでございますけれども、連合の中にもいろいろの議論があると思います。それは促進派もあるでしょうし、あるいは反対派もあると思います。きょうの御意見というのは、塚本三条件で出された福祉ビジョンについての説明、行革についての説明、それに対して政府はある程度の答えをしておりますが、それについてまだ十分ではないという御意見かと思います。これからもう少し審議を尽くさねばならない、今国会でやっては困るという御意見を言われましたけれども、これはいわゆる個人意見でなくて連合全体の御意見であるのかどうか、その辺をまず第一にお聞きしたいと思います。
  42. 山田精吾

    山田公述人 国会で示されました福祉ビジョンにつきましては、行財政改革もあわせまして連合は連合としての見解を文書できちっとまとめまして内外に明らかにしていますから、個人見解ではなしに、これは連合の見解というぐあいに受けとめてもらったらいいと思います。その内容については、先ほど公述の際に申し上げておりますから繰り返して申し上げませんけれども、そういうことであるということです。
  43. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ということは、基本的な議論がまだ十分なされておらない、その意味でもう少し審議は尽くさねばならない、この秋にもし通過させるのであれば、それなりの相当厳しい、解散をもって行うべきだとまで書いておりますけれども、その辺までの強い話であるのかどうかでございます。その辺ちょっと私どもこれは非常に大事ないわば問題点だと思いますので。――そういうことでございますね。
  44. 山田精吾

    山田公述人 ちょっと御質問の趣旨がとりにくいのですけれども、どういうことなんでしょう。私どもとしては、民社党の方で三条件を出されたということを前提に今発言がされたと思いますが、そのことについての議論は極めてまだ不十分じゃないかということを今まで申し上げておったつもりなんですよ。  それから、冒頭質問がありまして、連合の中にもいろいろな意見があるのではないかということも触れられました。なるほど産業のグループ、グループによっていろいろな意見があることは事実です。連合としては、あくまでも納税者、それから消費者、サラリーマンという立場に立って今回の税制改革は貫き見ようじゃないかということを基本に据えながらいろいろな見解なり発言を今まで私どもはしてきております。産業の事情になれば、また産業の事情でいろいろな意見のあることも承知しておりますが、基本はそういうことに置いている、こういうことでございます。
  45. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 土地税制などの議論もなさいました。この委員会におきまして私も同じような議論を展開したところでございますけれども、いわばこの資産課税の問題を消費税の決着と同時くらいにしてほしいというような意味であるのか、まあそれは大分時間もかかるから後回しということでもいいのか、その辺はどうでございますか。山田公述人、どうぞ。
  46. 山田精吾

    山田公述人 国会審議状況を私どもで見る限りにおきましては、資産問題に対するお互いの議論といいますかお互いの対案といいますか、そういうことに対する審議がまだまだ不足しているのじゃないかということで、あえてきょうの段階でも、先ほどいろいろな数字を出しながら、もっともっとこの資産問題について、竹下総理もせっかくああいうバランス論を言っておられるのですから、やはり国民から見てなるほどなというような税制改革案を提示してもらわないと、もともと国民に出されたあの公約自身がおかしなものになるなということを心配しながら、先ほどくどくどと実は公述をさせていただいたということです。
  47. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 次に、古岡公述人にお伺いしたいと思います。  既に議論も出ましたけれども、欧米諸国の中にはいろいろ税率に差を設けているところもあります。今度フラットにした場合に、さっきも議論に出ましたけれども、ダイヤモンドと必需品と同じでいいのかどうかという議論もまた出てくるかもしれぬという点がございます。この点、果たして一度に全く同一税率でもいいのかどうかという問題があると思います。  二番目に、今転嫁については政府の言うことを信じますということを言われましたけれども、転嫁しやすい物品と転嫁しづらい物品とがある。今、例えば繊維なんかはNIESに追われて、後進国に追われてきゅうきゅう言っている。でありますから、政府が転嫁を保証してくださるから安心でございますという議論は非常におかしいのではないか。では、転嫁しやすい物品、転嫁しづらい物品、それをどうお考えになっておるか。  第一の、すべてフラット税率についてはやはり問題があるのではないかという御認識がないのかどうか。それは皆様が今まで苦しんでこられたことはわかります。しかし、また新しい苦しみを生む人間も生じてくるかもしれぬ。でございますから、この転嫁問題とフラット税率がどうしても望ましいのかどうか、この二点についてもう一度御返事を願いたい。
  48. 古岡勝

    ○古岡公述人 同一税率でいいかどうかということは、例えば貴宝石、ダイヤモンドその他高額ぜいたく品があるだろう、だから、それとそうじゃない必需品とは区別すべきじゃないかという問題が起きるのではないかという御質問ではなかったかと存じます。  先ほども申し上げましたとおりに、今、例えばダイヤモンドにしましても、新婚夫婦は結婚式のときに五十万や百万のダイヤモンドを花嫁さんに贈るというのはもう常識でございます。自動車を買うのも常識でございます。こういうときに、それでは五十万円がぜいたく品か、百万円がぜいたく品か、どこで一体線引きするのか。その線引きというのは非常に難しい。むしろ困難であろうと思います。  そして、先ほどもるる申し上げましたが、何しろ私ども複数税率で大変苦労しております。今回また新税に例えば導入されるとしまして、これが複数税率で、ぜいたく品は高い税率にしよう、そのほかは安いものにしようといいますと、それでは今度は両方かかることになってしまう。これはまた大変な――両方といいますのは、三%のほかに一〇%のものは七%またかけなきゃいかぬ、そういうことになりますと、私ども、大変これは複雑で、中小企業はこれに耐え切れないということを申し上げたいと存じます。  次に、転嫁の問題でございますが、これはその力関係とかいろいろあって転嫁のしにくいものもあるかとも思いますが、やはりどうしてもこれはみんなで力を合わせて転嫁できるように努力するしか方法はないと存じます。転嫁できなければ、結局は自分が苦しむわけですから、お互いに、殊に今度は公取でもって許されておりますので、何とかそれに従って私どもは転嫁したいと存じております。
  49. 海部俊樹

    海部委員長代理 安倍委員、済みません。お約束の時間が来ておりますし、本会議の予鈴も既に鳴っておりますので、御協力願えませんでしょうか。
  50. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、残念ですけれども、転嫁問題は午後からまたお聞きしましょう。
  51. 海部俊樹

    海部委員長代理 次に、正森成二君。
  52. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんので、ほんの短い時間だけ聞かしていただきます。  まず、石川県知事でございます中西公述人に。先ほど地方減収になる、あるいは自主財源が失われて困る、しかし消費譲与税等で補てんされるけれども格差が生じるという意味のことを言われました。地方財政にとって非常に大変だと思います。石川県の財政規模は、私の承知しているところではたしか三千七、八百億円だと思いますが、そうでございましたか。
  53. 中西陽一

    中西公述人 大体三千数百億でございます。そのとおりでございますが、何としても地方自治の本来に照らしますと、自主財源が大きいほどいいわけですけれども、各県の経済の状況に大変格差がございますので、おのずからその自主財源と申しましても、地方交付税あるいは消費税配分等でこれを埋めていただく、こういうことになるものだと思っております。
  54. 正森成二

    ○正森委員 石川県では今度の税制改革でどれだけ減収になって、どれだけ補てんされるかは御存じですか。
  55. 中西陽一

    中西公述人 概数でございますが、私の県で最も大きい影響を受けますのは料理等飲食税でございます。これは全国のシェアの二・一%を占めておりますので、これは百億近いものが減収になると考えております。正確に言いますと八十数億かと思います。そのほかいろいろとございますけれども、特別消費税におきましてこれらについての補てん、また地方交付税全体におきまする補てんを期待しているわけであります。
  56. 正森成二

    ○正森委員 私どもが調べました資料では、おたくは料飲税の収入が非常に多くて、我々の資料では九十三億になっております。それらの関係の税全体で百四十四億ぐらいの減収になります。これに対して、消費譲与税の人口割と従業員割及び交付税を入れても補てん額は七十二億円で、差し引き減収が七十二億円になります。そのほかに建設事業費や物件費や維持補修費や災害復旧費等が消費税の導入で当然上がりますから、これが幾ら上がるか私どもで計算しますと、三十七億円ほど上がります。そのほかに人件費のはね返りというものが当然出てまいります。これを半分の一・五%にしますと大体二十億円で、合計五十七億円の歳出増。そうなりますと、これらを合わせますと相当な金額になるわけですね。大体百三十億を超える額になります。これはあなたの方の予算の一・五三%に匹敵するわけですね。これは地方財政にとって随分大変なことじゃないでしょうか。
  57. 中西陽一

    中西公述人 実は税改正とそれに伴いまする諸財政制度の改正によりまして、トータルといたしまして収支バランスがとれるようにということを強く今関係方面に期待しているわけであります。
  58. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんので、山田さんに一点だけ伺います。  これは十年前ですけれども、大平内閣の消費税導入のときに、こういう講演をした人がいるのです。「一般消費税を導入した場合の物価への影響」ということで、「一番簡単な例として、あらゆる小売の売上げに対して五%の一般消費税を新たに課するとすると、物価は五%上がります。これは物価が上がったというのではなく、増税の反映そのものであり、言いかえれば増税そのものです。確かに皆さんの可処分所得は実質的には五%少なくなります。しかしそれが増税なんですから、それは仕方がない。そうだからといって、皆さんの給料を五%上げてくれという要求が出てくると、ぐるぐる回りして、経済全体として見ると増税の効果がなくなってしまう」こう言うているのですね。これはほかならぬ大蔵省の伊豫田敏雄という当時大臣官房審議官、その後国税庁の次長をやった方です。この人の見解だと、労働組合は、幾ら消費税の導入によってそれ自体物価が上がっても、それは増税だからがまんしなくてはならない、賃上げをしてはならないという考えにつながるわけですね。  そこで、労働組合の御代表の一人として伺いたいのですが、あなた方は、こういう見解で賃上げを自主的に抑制されますか、それとも労働力の維持改善のために消費者物価が上がった分だけは賃上げをやっぱりかち取らなければならない、こういう御指導をされますか。どちらですか。
  59. 山田精吾

    山田公述人 それは上がれば要求して取らにゃいかぬと思います。
  60. 正森成二

    ○正森委員 当然のお答えを伺いました。  私、ございますけれども、本会議がございますから、二分ぐらい残してやめさせていただきます。
  61. 海部俊樹

    海部委員長代理 これにて午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ────◇─────     午後一時三分開議
  62. 海部俊樹

    海部委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  公述人各位には、御多用のところ御出席をいただきましてありがとうございました。税制改革法案に対する御意見を拝聴し、各案審査の参考にしたいと存じますので、忌憚のない御意見をお一人十五分程度お述べいただき、その後委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。よろしくお願いします。  それでは、最初に飯塚公述人にお願いいたします。
  63. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 私は、TKC全国会という会の会長をやっております。税理士であり公認会計士でございます。  本日は、公述人として私は三点についてちょっと御意見を申し上げたいと思います。  第一は税制国会そのものについて、第二は不公平税制是正について、第三は消費税法案について、以上の三点について意見を申し述べさせていただきます。  まず、税制国会についてでございますが、国民の不信を充満させた税制国会であるということを私どもは感じております。  二番、集金能力のある者が国会を支配するとする今の国会の体制は、根底に亡国の要素を抱えていることを知らねばならない。  三番、政治個人が集金活動の必要のない趣旨の政党法を制定すべきである、ドイツのように。ドイツの場合、御承知のようにパルタイエンゲゼッツというのがあって、大衆からお金を集めることを政治家は必要としない、そういう形になっておる。  四番、審議拒否は政党の消滅をもたらす。与党は社会正義の理念の限度いっぱいまで野党の要求をのむべきである。  それで第一は終わりまして、次は第二に入らせていただきます。  不公平税制是正について。  巷間で問題となっている点は、土地税制、医師税制、みなし法人課税、キャピタルゲイン課税等であるが、そのほかに私が長年税制の構造的欠陥として指摘してきた問題点は以下のとおり。  一番、記帳義務の強化をすべきであるという点。  アメリカでは、一九五四年の内国歳入法から農民を記帳義務者に加えております。西ドイツではワイマール憲法時代から農民に記帳義務を課しております。日本の税法はこの点ではでたらめであります。  二番目、会計帳簿記載事項の国際化という問題があります。  我が国は、シャウプ勧告の出た直後の昭和二十五年以来、会計帳簿の記載事項を約四十年間変えていない。米国及び西ドイツの会計処理基準書は両国とも約一千ページである。この点の方針につき日本国会は何をやっているのかというのが我々選挙民の考え方でございます。  三番、納税義務者の掌握。  日本には、納税義務者を漏れなく掌握するための税法条文がない。地方交付税法第三条を改正して、地方自治体の職員を動員すべきである。  四番、総収入基準の導入。  所得税法第百二十条を一部改正して、所得を基準としてではなく、収入を基準として申告する体制に変えるべきである。  五番目、脱税未遂犯の取り扱い。  今回の消費税法案で、保税地域から引き取られる課税物件についてだけ脱税の未遂犯を認めたが、なぜこれをもっと拡大し、かつ法人税法、所得税法についても認めないのか。米、英、独、仏のように、脱税の未遂犯の裏側には不実記帳があるのであって、この不実記帳についても日本も刑罰を科すべきである。  六番、政治資金規正法の改正。  政治資金規正法がある間は、その第十四条の「会計監査を行うべき者」との部分を改正し、「公認会計士、監査法人又は開業五年以上の税理士で監査を行う者」と改正すべきである。私の見解は、政治資金規正法で、パーティーに税金をかけろなんというのはくだらない議論であって、政治家は金がかかる。金が実際かかる。だからそれは政治家がきちんと政治に使うということを――二号さんを囲うなんということには使わない。政治に金を使うのだということをはっきりさせるために監査人制度を改めればよろしいと私は考えている。  七番、コンピューター会計法規の制定。  日本のコンピューター普及状況は世界第二位である。今百万社以上の企業がコンピューターによる会計をやっているのに、コンピューターによる会計法規が全くない。米国では二十四年前にできている。国会は何をやっているんでございますかとお尋ねしたい。  八番、適正申告のための課税資料提出義務の強化。  米国では年間六百ドル以上の売買先の住所、氏名、取引内容について売買主に資料提出を義務づけており、違反者には罰金を科している。この罰金でございますが、資料提出義務の違反者は最高限度は五万ドルでございます。六百万以上の罰金ですよ。  九番、租税法律主義の確立。  西ドイツは、基本法つまり憲法ですね、基本法百二十九条によって通達を全廃した。米国は国会議事録の文言に限ってそれを通達に採用している。日本国会がその権限を放棄して通達行政がまかり通っている。でたらめである。ここらは本気になって考えていただきたいところです。  等々であるが、抜本的税制改革の断行を前提として特に次の二点を強調しておきたい。   第一は租税法律主義の確立。第二は納税者総背番号制度の早期導入。何か四年先とかそんな声が聞こえてまいりますけれどもとんでもない。直ちに総背番号制を断行していただきたい。  三番、消費税法案について。  我が国の高福祉、高齢化社会対応し、かつ企業の国際競争力の観点からも、法人税及び所得税の軽減化並びに直間比率是正のために消費税の導入は避けてはならないものと考える。しかし、このたび提案された消費税法案はさまざまな問題点を内包しており、次にそのうちの数点を強調しておきたい。  一つ、消費税は本来最終消費者が負担すべきものであるから、極力事業者が自己負担をしないで済む仕組みであるべきこと。特に消費税法案第三十条に定める課税売上割合の計算において、西ドイツのごとく、分母を構成する非課税売り上げから土地と有価証券の譲渡額を除く必要がある。その理由、第一、課税売り上げに係る預かり消費税から控除できる課税仕入れに係る支払い消費税額の計算は、課税仕入れに係る消費税額を、①課税売り上げに対応するもの、②非課税売り上げに対応するもの、③課税売り上げ、非課税売り上げの双方に共通に対応するものの三つに区分し、個別配分方式としては、①課税売り上げに対応するものと、③課税売り上げ、非課税売り上げの双方に共通に対応するものに課税売上割合を乗じた結果とを加えたもの、または比例配分方式としては、課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算したもののいずれかの方式により計算することとされている。なお、課税売上割合とは、課税売上額と非課税売上額とを合算したものに対する課税売上額の比率である。  この場合、非課税売り上げである有価証券や土地の譲渡の額を分母に入れると、有価証券や土地の譲渡の額は一般に多額であるので課税売上割合が小さくなる。したがって、課税売り上げに係る消費税額から控除する課税仕入れに係る消費税額も少なくなって、その結果納付額が大きくなることになる。つまり、控除する消費税額が少なくなって、その分自己負担がふえて不当な企業負担となってしまう。これが第一点です。これは直していただきたい。  第二点、消費税法案の第三十条第七項によれば、課税売り上げに係る消費税額から控除できる課税仕入れに係る消費税額については、消費税額の控除に関する帳簿または請求書等を保存しない場合は適用しないとされているが、この文言では証憑等はなくても帳簿に記帳さえされてあればよいことになる。このことは証憑のないところに記帳はないという、これは国際的に認められた会計上の大原則でありますけれども、ここのところが自民党の先生方及び大蔵関係の方々は余りよくわかってないらしい。ドイツでもアメリカでもイギリスでもそうですけれども、例えばドイツの場合は商法及び税法に規定がある。カイネ・ブーフング・オーネ・ベレーク、証憑書類がないものは記帳してはいけない、証憑書類がなければ記帳はないんだという考え方が実は法制化されておる。日本以外の文明国ですよ。  そこでちょっと困ることは、ここにミスプリントがあるので申しわけない。「仕入税額控除の対象となる取引については、」という十九文字、これはミスプリントでありますから削除いただきたい。帳簿のみならず請求書などの証憑書類、つまり原始取引記録の整理、保存も義務づけることが必要である。  三番目、消費税に新たな不公平を持ち込まないこと。  例えば、①簡易課税方式の適用は、法案第三十七条では課税売上高五億円以下となっている。この点について十億円以下に拡大すべきだとの意見もあるが、それは逆に不公平を拡大することであり、むしろ一億円以下とすべきであるという点。それから②として、免税業者について、法案第九条は課税売上高三千万円以下としているが、先進国の実情を見ても余りに高額であり、公平を実現するために一千万円以下とすべきである。  最後に四番、消費税法案第六十九条では、収税官の処罰事由というものを情報の漏えい、盗用だけに限定しておるけれども、これは文明国の立法例に反しておる。アメリカの内国歳入法の七千二百十四条によると、そういう場合に処罰すべき場合というのは九つ用意されておる。例えば税法の執行をかさに着て精神的圧力を加えたとか、あるいは暗に金銭、物品の提供を要求するとか、そういういろいろな場合がございますので、それらについて願わくは内国歳入法の七千二百十四条を参照して改正していただきたい。  以上が私の意見でございます。終わります。(拍手)
  64. 海部俊樹

    海部委員長代理 ありがとうございました。  次に、八田公述人にお願いいたします。
  65. 八田哲弥

    ○八田公述人 私は中小小売商という立場で、特に消費税の問題について意見を述べさせていただきたいと思います。  私どもは、今回の消費税の導入に当たりまして手続が不足しているのじゃないのかということをまず感じるわけでございます。私ども、小さな店の経営者でございますので、店の経営がおかしくなったという場合にはやはりこれを立て直しをしなければいかぬという考え方を持ちます。国会でも、国の財政がおかしくなったからこれを直さなければいかぬという考え方は、私もよくわかるわけでございます。しかし、そういった場合に、私どもは自分の店を見直した場合に、無理をして過大なサービスをして得るべき利益をもらってなかったのじゃないのかということをまずチェックいたすわけです。つまり、国でいえば優遇措置をとって取るべきものをいただいてないのじゃないのか、いわゆる不公正税制是正がまだ十分に行われていない、私はまずここからやるべきだというように考えるわけでございます。  それからいま一つは、それと同時に店の経営を健全化するためには、むだな出費がないかということをチェックしなければならない。場合によりますと非採算部門を切らなければならない、時によると人員整理もしなければならないということを店の中でやらなければならない。私どもはそういうことをやって経営をしているわけでございます。つまり、国で言えば行政改革の問題でございます。これは、私どもの目から見ますと、行政改革もまだ不十分であるというふうに考えるわけでございます。  この二つを抜きにして安易に消費税の導入を進めるということは、私どもの経営でいえばこれは放漫経営に当たる、こういうことは、やはりまずやるべきことをきちっとやってから消費税の導入を御検討いただきたいというのが一つの理由でございます。  それから二番目には、この消費税というものは日本の経済的な風土に合わないのではないのかという肌身に感じた実感があるわけでございます。  この狭い国土の中に一億以上の人口が住んでおります。その大部分が中小企業で働く人々でございます。乏しさを分かち合いながら中小企業を営んでおるわけでございます。中小企業というのは、ある面でいうと失業救済的な役割を果たしているというのも現実の姿であるわけです。したがいまして、多くの中小企業があるということは、外国から言わせると日本の流通機構が複雑だということを指摘されている一つの原因になっているかもしれませんけれども、しかしながら、こういう形で今の日本国民は職を得て生業をしながら働いているわけでございます。  この中へこの消費税が入ってまいりますと、いわゆる付加価値税タイプのこの消費税は、各段階に課税されてくるというこの形は、流通過程が長い段階では、より長いものがより短い業者との競争に負けていくという性格があるわけでございます。したがいまして、これが入ってまいりますと、より小さなものから淘汰されていくということを我々は非常に心配をしているわけでございます。つまり、私どもは、これが入ってくることによって経営の危機と生活の不安がつきまとっている、こういうことを生活実感として考えるわけでございます。  したがって、こういう考え方が、昭和五十四年の一般消費税に対して中小小売商が反対をし、さきの売上税についても反対をし、今もこの消費税について私ども反対をしているという理由でございます。これはやはり国民の声として六五%の、最近の朝日の世論調査でございますけれども、そういう数字が出ている。この中には多くの中小小売商の声が含まれているということを、これはぜひ御検討いただきたいと思うわけでございます。  そういう意味で私どもは、流通過程が簡素化されることによって中小小売商が淘汰されていくという、こういう危険な消費税が導入をされることについては反対をしなければならないという主張を申し上げたいと思います。  それから、いま一つ難しい問題は、税額の完全転嫁といったことがどうも難しい、どう考えても難しい。その結果、これは私どもに対して第二の事業税的な性格が極めて強く出てくる、こういうことを考えざるを得ないわけでございます。  私どもは町のお客さんに対しまして、よりよい品物をより安く提供している店でございますというキャッチフレーズを使っておるわけでございます。つまり、隣の店よりも少しでも安く売ることによってお客さんを誘引していくという、激しい価格競争をやっておるわけでございます。こういう価格競争をやっている中で、私どもは三%の税額を転嫁していくということが極めて困難な作業。現在三%かもしれませんけれども、どうもこれが、三%が五%になり――今回三%を導入する際に大蔵省さんは、三%じゃ困る、せめて五%にしてくれ、五%がだめなら四%ということを主張されていたということを聞き及んでおります。つまり、三%が必ず三%にとどまらないということ、税率が上がれば上がるほど価格転嫁といったものは困難になる、完全転嫁ということは困難になるということを私どもは指摘せざるを得ないわけでございます。  それで最近、じゃ価格カルテルを認めてこれを転嫁しやすいようにしてあげましょうという親切なお考え方があるようでございますけれども、競争する業者が多くて価格競争をやっているというところで今までこういったものは成功したためしを私どもは聞いておりません。寡占事業においては価格カルテルは成功するかもしれませんけれども、業者同士の激しい価格競争をやっている中で、到底こういうことが成功するというふうには私どもは考えておりません。  今回の消費税法案の中で、三千万円までの免税点を設けていただきました。それから、六千万円以下までの限界控除制度というものがございます。これはすなわち、こういう制度を設けられたというこの特別措置は、つまり第二の事業税の性格を持っているということを前提としての措置ではないのか、政府みずからがこれは第二の事業税ということを認めていらっしゃるというふうに私どもは感ぜざるを得ないわけでございます。  この第二の事業税ということは、売り上げのあるところに消費税はかかってくる、赤字でもかかってくるという過酷な税金でございます。多くの中小小売商は、先ほど申し上げましたとおりにいわば生業という形で営業を行っておるわけでございます。今、農村に嫁が来ないという話がございますが、今、中小小売店には嫁の来手がないという現実が生まれてきておるわけでございます。息子も、おやじ、おふくろの働いている姿を見たらとても跡は継げないと言う。息子も跡を継がない、嫁も来ない、こういう厳しい経営をしている中小小売商に赤字でもかかってくるというこの消費税の導入は、私どもはそういう立場からもこれは反対をせざるを得ないという立場をとっておるわけでございます。  それから第四番目の問題といたしまして、私どもが考えるあるべき税制の姿というものは、シャウプ税制が総合累進課税をとってまいりました。その後、いろいろな優遇特例措置を設けてこれが崩れてまいりまして、不公正税制といったものが生まれたという過程も私どもは勉強させていただきました。その結果、今私どもが不公正税制と言っているものは、医師優遇税だとかみなし法人税という、そういった細かい問題ではなくて、いわゆる経済的にゆとりのある人とゆとりのない人の格差がますます拡大をしている、こういう大きな不公正が生じているということを私どもは指摘をせざるを得ないわけです。  そういう中で、経済的にゆとりのある人がいわゆる金余り現象で、個人があるいは法人が株式に投機をしたり土地に投機をしたりということで、株価を上げ土地を上げているということが一つの現象として生まれてきております。そういうことが今回のリクルート問題でも、私は大きな一つの背景になっているのじゃないかというふうに感じるわけでございます。  そういう立場で私どもは、そういうことになりますとますます庶民が暮らしにくい世の中になっていくということを痛感するわけでございます。したがいまして、やはりこれからのあるべき税制の姿といったものは、まじめに額に汗をして働く人には税金は安くあるべきだ、不労所得には重くあるべきだ、貧乏人には軽くあるべきだ、金持ちには重くあるべきだ。そして、そうした税制確立することによって社会全体の公正が保たれるような税制にしていただきたいということを申し上げまして、私の公述を終わらせていただきます。(拍手)
  66. 海部俊樹

    海部委員長代理 ありがとうございました。  次に、舛添公述人にお願いいたします。
  67. 舛添要一

    ○舛添公述人 今回、内閣により提出されました税制改革法案基本的には賛成するという立場から意見を述べさせていただきます。  初めに賛成の理由を説明いたしますけれども、ただいま基本的には賛成と申しましたように、今回の税制改革法案にはまだ改善すべき点も多々あります。この点につきましてはまた後ほどお話ししたいと思います。  まず第一に申し上げたいのは、現在の税制改革するということについては広く国民の間にコンセンサスが生まれているということであります。昨年十二月に総理府が実施いたしました「社会意識に関する世論調査」の結果によりますと、「現在の日本社会のいろいろな不公平・不平等問題について、どのように感じているか」という問いに対しまして、税制に対する不公平感を表明した回答が最も多く、回答者の実に八〇%が不公平だと感じております。ちなみに以下は、「所得格差」が七四・六%、「学歴の偏重」五九・五%、「土地の所有」五四・〇%、「大都市圏地方圏格差」五二・九%と続きますが、特に不公平感のトップであります税制につきましては、前回昭和五十五年三月の調査に比べましても、不公平感を「強くもっている」者の比率が二〇%以上もふえております。この世論調査から見ましても、公平な税制確立を目指しまして抜本的な改革を今日行うことは、まさに最大の政治的課題であると思います。  さて、私が今回内閣提出税制改革法案に対しまして賛成いたします理由が三つございます。第一は、高齢化社会への対応ということであります。第二は、価値観の多様化を認めて、自由で公正で活力ある社会を築き上げるためであります。そして第三は、日本が経済大国として必要な国際性を備えるということであります。  第一の高齢化社会への対応という点では、我が国が急速に高齢化社会へ向かっていることは周知のとおりでありますし、この点につきましては説明を省略させていただきます。ただ、一点だけ述べさせていただきますと、消費税高齢化社会対応するための重要な財源というふうに位置づけるのならば、福祉目的税的な発想がもっとあってもよかろうかというふうに思います。  私が賛成いたします第二の理由、これが最も大事な理由でございますが、それは自由で公正で活力ある社会を構築するという点でありますが、今日の税制はそのような社会づくりに適合的なものとは言えないと思います。その理由の第一は、所得税の累進性が余りに強過ぎて中堅層に重税感を抱かせておりまして、勤労意欲を阻害しているからであります。第二の理由は、トーゴーサンとかクロヨンとか言われますように、所得の把握に著しく公正を欠いているということであります。この点につきましては税務当局の今後の一層の御努力をお願いしたいわけでありますが、一億総財テクブームで、しかも税金逃れを恥としないような今日の我が国の風潮ではそれにも限界があります。  そのように考えてきますと、衣食住にすら困った敗戦直後と異なりまして、今日の日本のような豊かな社会では、資産課税ということをちょっと別にして考えますと、極論すれば、すべてが間接税の場合とすべてが直接税の場合を比べますと、私はむしろ前者の場合の方が社会的公正にかなうと言ってもいいのかもしれないと考えております。それは、所得よりも消費の方がはるかに把握が容易でありますし、所得がふえますれば通常では生活も派手になって消費もふえるものであります。所得は皆さんよく御存じのように隠すことができますが、消費はそのようなわけにはまいりません。また、間接税の逆進性よりも今日のような所得税の累進性の方がむしろ問題が大きいということが言えます。間接税の導入によりまして確かに生活上に大きな影響をこうむる社会的弱者はおりますが、そういう方々に対しましてはさまざまな手段で救済することを考えればよいのであります。  それから、不労所得ということを別にしましたら、収入の多寡というのはいわば社会的貢献度のバロメーターでもあります。この社会的貢献度というのは実は社会の価値観の反映でありまして、これを余りにも累進性の高い所得税によって変えてしまうというのはいかがなものかと考えます。もちろん税制による所得の再配分効果ということを考えるべきなのは当然でございますが、同時に以上のような点も考慮すべきであると思います。  次に、今日の日本では価値観が著しく多様化しておりますが、現行の税制はそのことを認めていないようであります。自由ということが多様な価値観を認めることを意味するのでありますならば、現行税制のもとでの政府は、人々の価値観にまで介入する、およそ自由という名を掲げるに値しない政府であります。私は、自由な民主社会における政府というものは、人々の思想、生活様式、美的感覚などにまで介入することは厳に戒めるべきであると考えております。  ところが、現行物品税体系の恣意性を見てもわかりますように、高級なものとそうでないもの、それからリッチな志向とプアな志向、こういうものを政府が決めてしまっていることになっております。例えばグルメ志向のOLにとってのフランス料理と、それから皆さま方国会議員先生方にとってのゴルフと、それからアウトドア志向の若者にとってのスポーツカー、こういうものはすべて等価値であるべきでありまして、価値の序列を政府が決めるべきではないと思います。例外なしに広く薄く消費税をかけることに私が賛成いたしますのはそのためであります。  かつて中曽根前首相は、「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方でしない」と述べられたことがありますが、私に言わせれば、まさにそのような消費税こそ今日の日本に必要なのであります。前回の売上税は五十を超える非課税品目がございましたが、そのような無原則的な間接税は論外であります。これは皆様が最もよく御承知のように、族議員という名前の政治家と官僚と業界とのいわゆる三角同盟というのが政治過程に大きな影響を与えているのが今日の日本政治でございまして、その中において政治の恣意的な介入を排除して公正な税制を実現するためには、基本的には例外を認めず広く薄く課税する消費税は不可欠であります。  さて、私が今回の政府提出の税制改革法案に賛成します第三の理由は、経済大国日本には国際性の視点が必要だということであります。先般、アジア、アフリカの発展途上国を視察してまいりましたけれども、経済大国日本に対するこれらの国の期待の大きさに非常に驚かされた次第であります。そのような諸外国の期待にこたえるためにも、伝統や慣行にとらわれることなく、必要な改革は断行する必要がございます。  その点で四点ほど申し上げます。  第一に、異常に実効税率の高い法人税が産業の空洞化をもたらすということを忘れてはならないと思います。円高に加えまして、今日の税制が優秀な企業を、そしてまた優秀な個人日本から追放するとすれば、それはまことに不幸なことでございます。第二に、物品税や酒税が非関税障壁として対外経済摩擦の一因となっていることは周知のとおりであります。第三に、我が国の流通機構を簡素化、透明化することは今や国際的要請であります。貿易黒字を減らし、諸外国の製品を進んで輸入することは今日の日本の国家的要請でございますが、複雑な流通機構がそれを拒んでいるとすれば、その点に手をつけることが不可欠であります。伝統や慣行の上にあぐらをかいていることは許されないと考えます。第四に、キャピタルゲインを原則課税することは金融大国日本として不可欠であると考えます。  以上の点から見まして、現行税制は、中曽根前首相の言われる「国際国家日本」とか竹下総理主張されます「世界に貢献する日本」とかいうものとは全くほど遠いものでございます。その意味でも今回の税制改革を支持いたす次第でございます。  次に、今回の税制改革法案の問題点につきまして私見を述べさせていただきたいと思います。六点について取り上げます。  まず第一に、みなし法人課税、宗教法人課税などのいわゆる不公平税制是正につきましてはまだ不十分であります。この点につきまして今後一層の改善努力をお願いしたいと思います。  第二に、キャピタルゲインにつきましては、所得の把握を公正にするために納税者番号制度を本格的に導入することを検討すべきであると考えます。  第三に、消費税の導入につきましては、政府は、第一に消費に薄く広く公平に負担を求める、第二に簡素でわかりやすく、取引慣行にも配慮する、第三に納税者、税務関係者の事務負担配慮する、第四に産業経済に対して中立的、かつ国際的経済摩擦を招かないという四点を検討基準として挙げてまいりました。さきに述べましたように、消費税の導入が不公平税制を改める意味を持ちまして、しかも豊かな社会における社会的公正を実現することを目的とするのであれば、以上の四つの基準のうち、第一の薄く広く公平にという点をもっと強調すべきであります。第二の取引慣行とか第三の納税者の事務負担ということを配慮することはもちろん必要でございますが、しかし、それでは余りにも我が国の経済システムの現状前提にし過ぎておりまして、消費税導入によります流通機構の近代化とか透明化といった観点が欠落することになってしまいます。  税制改革日本の経済システムに与えます革新効果につきましても、もっと前向きであるべきでありまして、少なくとも四つの基準についてはウエートづけをする必要がございます。その意味で、各段階での税金の価格への転嫁を確実にして、かつ流通機構の近代化という点からも、私はなお理想論としましてはEC型付加価値税のインボイス方式に固執したいと考えております。その点で、特に中小事業者を念頭に置きました簡易課税制度や事業者免税点制度や限界控除制度などは、原理原則を大切にする税制改革という点からは必ずしも納得がまいりません。政治家の立場からすれば税とは政治なりということでございましょうが、一市民の立場からは税制こそ原理原則をしっかりと踏まえてやっていただきたいということでございます。  第四に、相続税につきましては、今回の改正は大都市部におきます地価の急激な高騰という事態を踏まえての、いわば緊急避難的な政策的対応が濃厚でございますが、今後相続税や土地税制につきましても、どのような哲学でこれを改革していくのか、本格的に取り組んでいただきたいと思います。  私は、相続税につきましては、社会の活力を保つためにも、また、フローとストックの課税バランスという点からも、むやみに税率の低減を行うべきではないと考えております。また、土地税制につきましては、土地というものの公共性にかんがみまして、土地の単なる保有ではなくて、土地の供給、そして利用をもっと促進するような税制を実現させていただきたいと思います。竹下総理は、税制改革の次の課題として「ふるさと創生論」の実現ということを掲げておられますが、その際に、ぜひこの土地税制の抜本的検討ということをお忘れにならないようにお願いしたいと思います。困難な課題は避けて通るというのでは勇気ある政治と言うことはできないと思います。  第五に、法人税につきましては、日本の企業の国際的競争力を保ち、日本の産業社会の活力を維持するという視点からは、実効税率を五〇%以下にするという減税方針は妥当でありますが、円高の進行などの最近の国際経済環境を考慮に入れますと、税率をさらに引き下げることを考えてもよかろうかと思います。  最後に、第六に、総体的に、今回の税制改革によってどのような社会を築き上げるのかという将来ビジョンについての議論がこの国会の場で余りにも少な過ぎます。宮澤大蔵大臣がいつも言われますように、高齢化社会への対応、そのことばかりの繰り返しでは夢がなき過ぎますし、これでは税制改革について若い世代の支持を得ることはできません。どうか、若者が希望に燃えて未来へ進んでいけるような明るい社会像を政治家の皆様方が率先して提示していただきたいと思います。  以上の諸点につきまして、今後なお一層の改善が図られますことを切に希望いたしまして、私の意見の陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  68. 海部俊樹

    海部委員長代理 ありがとうございました。  次に、本間公述人にお願いいたします。
  69. 本間正明

    ○本間公述人 税の専門家の立場から、今提案されております政府税制改革案について問題点を指摘したいと思います。  税制改革の必要性は、各種世論調査を見ましても、これは非常に高い形になっておりますし、私自身も非常に税制改革の必要性は認めておるわけでございます。シャウプ勧告以来四十年近く、我が国税制は、場当たり的に導入されました租税特別措置等によりまして非常にゆがめられておりますし、時代の進展という観点からいっても、国際化にふさわしくない税制になっているということも事実でありましょうし、それから、高齢化社会に対する対応としての税制という観点からも、不十分な点は十分にあろうかという感じがいたしております。  しかし、現状では、今提案されております政府税制改革案国民の大多数の支持を得ているかと申しますと、必ずしもそうではないのではないかという感じを受けております。その理由は恐らく幾つかの理由が考えられるのだろうと思います。一つは、日本国民の知的水準が低いから理解できないという考え方もございましょうし、あるいは情報不足、どういうような道筋で税制改革が行われるかという情報不足が不安を生むという形で国民理解が得られていないということが第二番目に挙げられましょうし、あるいは第三番目には、これは国民が考える税制改革の理想像と現実の提案との間にギャップがあるというぐあいに感じ、それが不満を生み出しているということも考えられようかという感じがいたします。  私は、第一に、やはり情報不足が非常に大きいのではないかという感じを受けております。昨年までは、財政再建ということで財政は大変だ大変だということを言いながら、ことしになりますと、政府の発表で二兆四千億円の減税税制改革案を出してくる。税制改革財政改革の間にはどういう関係があるのかということが一つ出てこようかと思いますし、あるいは高齢化社会対応するのだということで税源拡充論を強調しながら今なぜ減税をするのだという、そういうロジカルな面での説明というものも必ずしも明らかにされていないような感じを受けております。  そういう意味で私は、税制の専門家といたしまして、短期的な税制財政のかかわり方、これは財政計画というようなものを含めて、例えば特例国債の脱却と税制改革はどういうぐあいにつながっているのか、そういう内容をもう少し具体的に提示する必要がありはしないかという感じを受けております。  それからもう一つは、高齢化社会対応するということが言われておりますが、具体的にそれが国民所得比でどの程度になるのかということは、ことしの三月に大蔵省と厚生省が一緒になりまして発表いたしましたものを見てみますと、二〇一五年には大体四五・六%で、財源的にも調達できるというような形になっております。そうしますと、これは量的な問題というよりも、むしろ税制改革の必要性は質的なひずみの是正につながってこなければならないのではないかという感じを受けております。そういう観点から申し上げますと、税制改革税制の持つひずみをどういうぐあいに克服していくかということにつながるのだろうと思います。  今政府の提案されておりますのは、課税ベースの組みかえ、これは所得消費資産の組み合わせを変えていくということによって税制改革を実現しよう、こういう構図をとっておるわけでございますが、この課税ベースのひずみ是正論にはこれまで幾つかの論拠というものが示されてきたのだろうと思います。  一つは、これはいわば能力説から受益説的な考え方の発想の転換、つまり広く薄く受益する者が、これだけ所得の不平等化が改善されてきた状況では、低所得者の人もその受益に応じて負担しても構わないのではないかという考え方。  それからもう一つは、高齢化社会の中へ参りますと、これまでもそうでありましたように、勤労所得者のウエートが非常に高くなっていく。そして、それを所得消費を入れかえることによって、勤労所得者への過重の税負担というものを、これを阻止していくような制度を組み込んでいくべきだ、こういう考え方が第二番目にございます。これは一つは活力という観点あるいは効率という観点からの直間比率是正論につながっていくわけであります。  それから第三番目は、これはいわゆる水平的公平論からの税制改革の効果を強調する点でございまして、この部分につきましては、クロヨンというような問題に対して、消費税のウエートを高めるということがかなり効果があるということが事実認識としてあるのだろうという感じを受けております。  それから第四番目は、これは高額所得者へのインセンティブという観点から、活力ある社会を維持していくためには、それなりに働いた者が報われるというような、そういう税制というものを確立すべきだ、こういう論拠が出てきたかと思います。恐らくこれに対する反論というのは、そうは言っても高額所得者優遇で、そして低額所得者が逆進的な税制改革になり割を食うのではないか、こういう租税原則上の目標額の対立をどういうぐあいに克服すべきかということが、今、国会議論を求められているところであろうかという感じを受けております。  こういう目的あるいは理念から申し上げまして、今提案されている具体的な税制改革案がどの程度効果的なものかどうかということが、これが内容検討としては問われる必要があるわけでございます。  税制改革を推進いたしますときに手段は三つございます。課税ベースの組みかえ、所得消費資産を組みかえることによって税制というものを動かしていく。それからもう一つは、税率構造を変えることによって税負担構造を変え、そしてそれが社会に対する、あり得べき社会の実現へ向けて役立つ。それからもう一つは、一つ一つの課税ベースの中の捕捉の程度をどういうぐあいに考えるかということが問われる必要があるわけでございまして、この三つをどういうぐあいに組みかえるかによって、税制改革の仕上がりというものがかなり大きな差を生み出していくというのが現実であろうかと思います。  そういう意味で、今提案されております税制改革を見てみますと、幾つかの点で私は不十分な点があるのではないかという感じを受けております。  一つは、これは制度上認められております租税特別措置、特殊な職業を持った人々が特別な税制上のメリットを受ける制度が温存をされている状況。これは税制がすべての国民にとって平等に与えられている機会均等性を損なう、まさに次善の意味での公平さというものを税がいかに確保していくかということが税制信頼にとって非常に重要なわけでございますけれども、これがほとんど手をつけられていないというのは、少なくとも勤労所得者を中心にしては非常に不満があるのではないかという感じを受けております。この問題は、恐らく、金額が極めて少ないとか、これは瑣末的な事柄だというようなとらえ方があろうかと思いますが、税制の持っているシンボリックな意味での公平さという観点からいいますと、極めて大きな意義を持つということを了解していただきたいというぐあいに考えております。  それからもう一つの改革の方向といたしましては、税率構造をこのたびは十二段階から五段階にするということでございまして、この簡素化はアメリカの一五%と二八%に比較するにはまだ及びませんけれども簡素化をするということは、勤労所得者のライフステージの税負担の均衡化という観点から申し上げますと極めていい効果を及ぼします。しかし、この簡素化は、課税ベースをいじらないということになりますと、どうしても縦の再分配の点で問題を生み出してしまう。現存の税負担構造に比べて、どうしても低額所得者にしわがいき、高額所得者にメリットが出てくる。これをどういうぐあいに解決をするかということになりますと、課税ベースの拡大ということが必要になってくるわけでございまして、この課税ベースの拡大という点に関して今回の税制改革案は極めて私は不十分であろうというぐあいに判断をいたしております。  アメリカの場合には、二段階にして、所得階層間の税負担の中立性を満たしますために、課税ベース、例えばキャピタルゲインにつきましては、それまで六〇%非課税であったのを全額普通の所得と同じように課税をするという形でそれを相殺する措置をとって、見事に活力と公平というものの目標を両立させているということが言われておりまして、ハードヘッドとソフトハートを両立させた見事な改革だということが言われております。  それに対して日本のこの課税ベースの取り組みというのはいかにも不十分でございます。これは一つは株式あるいは土地に対する税制の取り組み方というのが極めて不徹底であるということが私は指摘できようかと思います。株式に対する課税につきましては、原則課税から課税に転向したというぐあいに言われておりますけれども、実際は有価証券取引税が万分の五十五ございましたから、実質的にはほとんど変わっていない、ただ率が変わったということでございますし、それプラス申告・源泉分離を認めたことによって相殺措置を導入したということが、極めて税負担の公正な負担という観点からいうと問題を生み出してしまったということでございまして、この所得捕捉、株式の譲渡益についての確かな手だてを講ずるためには、我々はこれから納税者番号を含めて適正な捕捉をしていくかどうかということを徹底的に議論をしていただきたいと思いますし、私自身は、この納税者番号というのは、単に所得の捕捉という観点からだけではなくて、高齢化社会の行政機構の効率的な運用という観点からいっても必要になってこようかという感じを受けております。  それから、最後に、消費税の問題でございます。  これは消費に対する課税というものが、例えば昭和三十三年度を例にとりましても五四%ぐらいございまして、日本の国も間接税の比重が極めて多かったわけでございますが、それが現在二七まで下がってきているというような状況は、中堅所得者層に結果的に税負担をしわ寄せしているという意味では極めて大きな問題を生み出すということが言えるかと思いますし、消費税課税のウエートを高めていくということは必要であろうかと思いますが、しかし今提案されている消費税に設けられましたタイプあるいは特例措置というものが、いかに経済に対して非中立的な効果を生み出すかということは強調しておくべき点であろうかと思います。  つまり我々給与所得者間接税強化をサポートした大きな理由は、一つには所得捕捉に役立つのではないかということが言われておりましたけれども、帳簿型が選ばれたことによってこの面のメリットが減殺されてしまったということ。それからもう一つは、帳簿型に加えて五億円以下の事業者に対して簡易課税制度を設けてしまった、そして卸で一〇%、小売で二〇%を零細企業の保護という名目のもとに導入したということは、産業構造、産業組織に対して極めて大きなインパクトをもたらすと思います。それと同時に、果たしてこれが零細な企業に対して救済措置になり得るかどうかということになりますと、これも極めて疑問を持っております。小売のマージン率あるいは卸のマージン率の平均値というのは今設定されておりますものよりも低い状況になりますから、大多数の人々がこの簡易課税制度のメリットを受けられないという感じが出てこようかと思いますし、そういう意味では、税で零細企業を救済するというようなものは税理論からいっても極めて非効率的な手段である。そうするのであれば、ほかの資源配分に対して影響を起こさないような形でのそういう中小企業対策というものが考えられるべきであって、税それ自身は一般的な形での仕組みを入れておくということが肝要で長続きする、必要だと私は思っております。  最後に、私は、この税制改革が、高齢化社会の中でどういう社会構造を是とし、どういう社会の連帯を生み出していくかという、そういうビジョンが必ずしも明確な形で国民に呼びかけられていないのは問題がありはしないかという感じを持っております。新保守主義的な形で高額所得者が今以上に幅をきかせるような状況を是とするのか、あるいは今まで我々が日本経済の繁栄を支えてきた平等主義的な考え方を維持していくのがいいのか、そういう問題についての詰めのある議論を今後国会で慎重に議論をしていただきたいと思います。  私の公述人としての意見発表はこれでとどめさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  70. 海部俊樹

    海部委員長代理 ありがとうございました。  以上で御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  71. 海部俊樹

    海部委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田行彦君。
  72. 池田行彦

    ○池田(行)委員 公述人の皆様方には貴重な御意見の開陳、まことにありがとうございました。時間も限られておりますけれども、数点につきましてさらに公述人の皆様方の御意見を敷衍していただきたいと存じます。  今、お四方の御意見をいろいろお伺いしておりますと、一方におきましては、現下の最大の政治課題は税制改正である、何としてもこれを早く断行しなければいけないという御意見もございましたし、他方におきましては、不公平税制が温存されたまま、あるいは行政改革も不徹底のまま今なぜ税制改正を急ぐのだろうかといった御意見もございました。また、きょうはそういう御意見はございませんでしたが、これまでの委員会の御審議の中でも、特に現在ここのところ税収は非常に好調なんだ、何も急ぐことはないじゃないか、もう少し慎重に審議をしたらいいじゃないか、こういうふうな御意見もあったわけでございます。  確かに個別の、個々の不公平の是正も、これは是正のために努力をしていかなければならぬわけでございますが、私ども、今の日本の全体としての税制の仕組みそのものが、構造、システムそのものがいわばもう最大の不公平になっているのじゃないか、このことを改正せずして不公平の是正はないのじゃないか、こんな感じを持っておるわけでございます。  もとより、これまでも租税特別措置法は時代の流れの変化に伴ってどんどん見直してまいりましたし、それから今回の税制審議の中におきましても、さらに徹底をしよう、今すぐできないものは時期を見てやろうというようなことも与野党でもいろいろ協議が進められておるところでございます。そういった意味で私は、不公平の是正なりあるいは行政改革の徹底というものは当然これからも続けなければなりませんけれども、それがゆえに今、税制の抜本改正を待てということにはならない、何としても抜本改正を進めなければいかぬ、このように考えるわけでございますが、その点につきまして舛添公述人並びに本間公述人から御意見をちょうだいしたいと思います。簡単で結構でございます。
  73. 舛添要一

    ○舛添公述人 私は、先ほど申しましたように、やはり今日の最大の政治課題というのは税制の不公正というものを是正するということでございます。これは早急に手をつける必要がありますし、今後、先ほど申しましたように改善すべき点は多々ございます。これはまた時間をかけてやればいいのだというふうに思います。  それから、税収との絡み、それから経済が好調ではないかという点につきましては、まさに経済が好調であるときにこそ手をつけるべきでありまして、財源がなく、それから民のかまどが冷えているときにはこういうことはできないだろうというふうに思います。  それから世論の状況を見ましても、幸か不幸かこの前の売上税が失敗したことによりまして、国民が十分に税制について研究する時間を得られたのではないかというふうに思いますので、私の感じでは税制改革の機は熟しているというふうに思います。  ありがとうございました。
  74. 本間正明

    ○本間公述人 御承知のとおり今、日本は昨年度も非常に税収が潤沢でございますし、ことしも恐らく、弾性値を一・一と計算いたしましても今のままでは四兆五千億円くらいの自然増収が出てくると思いますし、あるいは弾性値を二ぐらいにしますと七兆円近くの自然増収が出てこようかという感じを受けております。したがいまして、私は税の専門家といたしまして、税の仕上がりというものを非常に気にいたします。そういう意味では、現在の消費税のままでは少し問題が大き過ぎはしないかという感じを持っております。その観点からいいますと、五億円の簡易課税のレベル、それが九六・七%も入っているということでございますから、これが導入されますといろいろな形での影響が出てくるのではないか。そういうようなものをもう少し合理的に科学的に分析をした上でその議論を収束させていく方に持っていくのが適当ではないかという感じを受けておりますので、そういう意味では、このままでは少し拙速かなというイメージを持っております。
  75. 池田行彦

    ○池田(行)委員 次に、各公述人ともいろいろな角度から、株あるいは土地税制あり方については何としてもこれからも徹底的な見直しをしなければいけないじゃないかという御指摘がいろいろあったわけでございます。  そして、それとの関連におきまして、これを把握するための体制の整備がぜひとも肝要であろうということで、納税者番号制度についてこれを積極的に進められるという御意見が多かったようでございますけれども、この納税者番号制につきましては、御承知のとおり、かつてグリーンカードという仕組みを我々国会でも一たん決定いたしまして、その後実施に至らないまま廃案にしたという、こういう苦い経験もございます。それからまたプライバシーの侵害の問題がもとよりあるわけでございますし、それからこの番号制は一体どの程度の範囲をカバーするのか、このカバーする範囲のとり方いかんによっては、金融市場、資本市場における資金のシフトを呼び起こしたりして不測の混乱を経済界にもたらす、そういったおそれもあるというように、いろいろな点が指摘をされておるわけでございますけれども、この納税者番号制については今与野党間のいろいろな協議の中におきましても、将来キャピタルゲイン等についても、総合課税ということも含めて検討しようじゃないかというような話もございます。御承知のとおり、昨年利子課税あり方について根本的な改正がございまして、そのときにもやはり五年後、つまり今から申しますと四年後になるわけでございますが、利子課税につきましても、総合課税の問題も含めて見直していこうじゃないかといったような合意がなされておるわけでございますが、そういった観点から申しますと、これは確かに必要なことではございますけれども、やはりある程度の時間をかけて、四年も待てないという御議論がございましたけれども、この点につきましては若干そのくらいの時間をかけて検討すべきではないかというふうに思うわけでございます。その点についてどうお考えか。  そしてさらに、納税者番号制のカバーする範囲についてどのようにお考えだろうか。できるだけ税については、少なくともすべての税にかかわりのある経済行為をカバーするようにすべきなのか、あるいはある程度プライバシーの観点その他を考えて、公権力の介入は余り広くなってはいけない、ある程度で限定すべきであるという御意見なのか。限定すべきだとするならば、どういった範囲をよしと考えられるのか。それにつきまして各公述人、一言ずつでようございますので、簡単で結構でございますから御意見を。
  76. 海部俊樹

    海部委員長代理 すべての公述人ですか。それでは着席順に指名させていただきます。
  77. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 先生は御存じだと思いますけれども、十数年前からスウェーデンでは国民総背番号制が実施されております。そしてこれは国税関係、税金関係と、刑事訴追関係ですね、刑事関係、この二つに厳格に絞っております。私は、国民の税に関しては、国に対するプライバシー権というのはないと。これはギリシャ哲学におけるプラトーの言ったごとく、やはり市民は自分の全財産を執政官に届け出ろということ、それをやらなければいかぬと思うのです。
  78. 八田哲弥

    ○八田公述人 総背番号制についてはいろいろ問題があろうかと思いますけれども、私は、最終的にはこういう制度を設けない限り確実な捕捉はできていかないだろうと思われますが、ただ、やはり裏にありますプライバシーの侵害等の問題について難しい問題がございますので、その点を十分配慮の上御検討していただきたいというふうに考えるわけでございます。
  79. 舛添要一

    ○舛添公述人 この納税者番号制によりまして、私は基本的には税逃れとか脱税とか節税とかいうことを恥としないような現在の日本の文化を変える必要があると思います。ですから、カバーする範囲はおよそすべての税にかかわるべきであって、なるべく広くということでございます。
  80. 本間正明

    ○本間公述人 私も、基本的には一部の資産所得だけに限定するようなやり方は非常に望ましくないと考えております。勤労所得はもう実際上は完全に納税者番号で捕捉されているのと同じような状況にございますので、資産所得はすべて少なくとも第一段階で全部番号制でカバーするような形にする、それ以外の事業所得等についても徐々に広げていくというのが望ましい考え方であろうと思っております。
  81. 池田行彦

    ○池田(行)委員 ありがとうございました。  それから、消費税の問題点につきましていろいろ御指摘があったわけでございますが、その中で共通していたのが、いろいろな特例措置が新しい問題というか不公平というか、そういったものをもたらすのじゃないか。特に簡易納税制度あるいは限界控除制度、それから免税業者の点についていろいろ御指摘がございました。  そこで、特に飯塚公述人でございましたか、思い切って三千万は一千万に下げるべし、あるいは五億円は一億円に引き下げるべしという、こういう御意見がございました。確かにこういった免税の限界なり簡易納税の限界、諸外国の例に比べてかなり高いところになっていると思います。しかし、これは我が国がこういった形の間接税を初めて入れるものであり、なじみのないという点もいろいろ考慮しながらこういうことになったと思うのでございますが、そのことがある意味できめ細かい配慮を欠き、かえって新しい問題を生むというのは御指摘のとおりだと思います。  それを解消するためにいろいろな方法があると思うのでございますけれども、例えば付加価値の非常に多い業種、例を挙げて恐縮でございますが、ビルメンテナンスだとかあるいはバンケットサービスなんかはそうでございましょうか、そういったふうな付加価値の高い業種については、先ほどの一〇%とか二〇%という前提、つまり〇・六%、〇・三%という税率そのものが非常に現実から離れて低過ぎるので、それで限界のところでぽんと急に税率が上がる、そこに自由な競争を阻害するという問題があると思うのでございます。そういうことが一方でございます。  それから他方では、実際はそこまでの付加価値はないよというのが、これは本間先生でございましたか御指摘がございましたけれども、そういうことを考えますと、こういった簡易納付の場合の課税の付加価値の計算の仕方あるいは課税の率について、一本じゃなくて二本か三本に分けるという仕組みもあるいは考えられないことはないと思うのでございますね。付加価値の非常に多い、高い業種は束ねて、例えば〇・六%じゃなくて一%にするとか、そういうことにすればその業界の中ではある程度のスムーズな移行が可能になると思うのでございます。そういうことについてはどういうふうにお考えになるのか。  それからまた、飯塚さんが五億円を一億円に、三千万を一千万にとおっしゃいましたのは、そのぐらいにすれば今問題が非常にありそうな業界において、業界の実態と照らし合わせて、ある程度そういった問題点の解消につながるということがあるのかどうなのか。あるいはそうじゃなくて、こういった例外はなるべく少ない方がいいのだ、限界は下げろというお考えなのか。その点についてお伺いしたいと思います。
  82. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 私はちょっと難聴なものですからよく聞こえない部分もあったのですが、簡易課税方式を五億円から一億円に下げろという主張を私は持っているわけですが、それは、五億円というのはちょっと粗雑過ぎる。つまり、あなた様はただいま初めてやるのだからこのくらいなんとおっしゃったけれども、そうじゃなくて、初めからやるのだからできるだけ公平性を実現するということで考えていただきたい。その意味で五億円というのはちょっとラフ過ぎる。願わくは一億円未満にしていただきたい。  それから同時に、一千万円以下というのは、例えばEC各国を見た場合、EC第六号指令によると、非課税限界は、年間課税取引高八十三万円以下の者は免税、ドイツは八百万円、日本円に換算してです、十万ドイツ・マルクですから。それからイギリスの場合は五百十一万ぐらいです。五百万とか八百万とかというのがイギリスやドイツのあり方でございますから、私が申し上げているのは、一千万というのはさほど無理からぬところであろうと考えております。  終わります。
  83. 池田行彦

    ○池田(行)委員 もう時間がないようでございますけれども、最後に一問だけ本間公述人にお願いいたします。  昨年の売上税がなぜ廃案になったか、だれがつぶしたか。その戦犯といいましょうか、あるいは立場によれば功労者でございましょうか、それにつきましてある雑誌は三人の名前を挙げておりまして、その中の一人に本間先生のお名前が挙がっておったと思うのでございます。あれは、たしか家計に及ぼす影響をいろいろ試算されまして、六百万円ぐらいでしたか、そこまではむしろ増税になるんだというふうに試算された。そのことが非常に大きな影響力を持ったというように考えるわけでございます。しかし、確かにそういった家計に及ぼす影響も大切でございますけれども税制改正というのは、先ほどの先生の御意見の開陳そのものにありますように、もう少し広く大きな視野から、観点から見なくちゃいかぬと思いますね。余りその場の損得勘定で見ていくのはいかがかと思うのでございます。そういった観点では、きょうの先生の御意見、賛成、反対は別にしまして広くとらえておられたと思うのでございますけれども。  さて、去年の売上税と比べましてことしの消費税は、先生の御持論の、先ほどもございましたライフステージに配意をして税制を築いていくという点では随分進んだものがあると思うのでございます。そういった意味では、先生も実はこの政府提案の税制改革を、問題点はあるにしても全体としては相当評価しておられるのではないかと思うのでございますけれども、いかがでございますか。
  84. 本間正明

    ○本間公述人 確かに中曽根前税制改革の場合に、私、政策構想フォーラムというところで試算をいたしまして、所得再分配の面で若干問題があるということを指摘させていただいたのですが、そのときに同時に、日本の場合には年功序列的な賃金体系になっておりますので、どうしても、累進構造が非常にきついということは、四十代の後半から五十代にかけて極めて急激に税負担が上がっていく、この面では非常にメリットがあるということを強調して、そのために改善策として幾つかの案を提示したというのが記憶に残っておるわけでございます。  ことしの提案されております竹下税制改革は、これは二兆四千億円の減税になっておりますので、その意味では所得再分配の問題がかなり弱くなっている、しかも中堅のところでは非常に減税幅が大きくなって、アッパーミドルの六百万から一千万ぐらいまでは減税率が二けたになるというような状況になっておりますから、そういう意味では私はプラスの面がかなり出てきているんだろうという感じを受けております。  ただ、やはり税というのは恒久的なものでございますので、目をつぶれというような感じで私はどうも納得がいかないというのが現状でございまして、日本税制改革論議は、問題点を指摘しますとすぐに反対論だとか賛成論だとかいうことにいきましてなかなか議論が深まっていかないということに非常にいら立ちを感じております。そういう意味では、国会におきましても科学的な掘り下げた議論を展開されることを期待いたしたいと思います。
  85. 池田行彦

    ○池田(行)委員 ありがとうございました。
  86. 海部俊樹

    海部委員長代理 次に、川崎寛治君。
  87. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 公述人の先生方には大変お忙しいところありがとうございます。おわびを申し上げたいと思いますが、先ほど来公述いただいておりますように大変大事なこの税制改革でございますけれども、与えられました質問の時間がお答えを含めて私の場合は十五分、これはもう先生方には大変失礼な扱いだ、こう思います。残念ながらそういう理事会の決定でございますので、それに従わざるを得ないことをまずおわびを申し上げたい、こういうふうに思います。  八田さんに伺いたいと思うのでございますが、中小企業者の立場から切々として真情を吐露されまして、今日の導入されようとする消費税の問題について率直な御意見を伺いました。日本の社会に、日本の風土になじまないのだ、これはもう今中小零細の企業の人たちがみんな持っておる感じではないか。それは各種の世論調査に出ておりますし、政府関係のNIRA等の税制のあれにもやはり出てきておるわけでありまして、そういう面でいきますと、流通の長い中小企業の過程の中で弱いものはつぶれる、こういうふうに言われました。価格転嫁は、いろいろなことを今言われておりますけれども、実際にはそれらが実行されても不可能だ、第二事業税的なものにならざるを得ない、こういうふうに断定をされるのではないだろうか、こう思います。  特に八田さんは、御自身書店を経営しておられるというふうに伺っております。そういたしますと、書店の場合には大変小さな経営の方々が多いわけでございますが、そういうお立場から、今回の消費税導入というものがあなた自身の書店の経営にどういうふうに及んでくるというふうにお考えになられるか、まず伺いたいと思います。
  88. 八田哲弥

    ○八田公述人 私ども書店の場合でございますけれども、通産省の商業統計によりますけれども、大体平均的な書店は面積は二十坪、六十六平米に当たりましょうか。売り上げを試算いたしますと、大体月商五百万という数字がはじき出されます。つまり年商六千万ということでございます。  私どもの業界の資料といたしまして、この六千万以下の書店の経営内容が一体どうなっているかという資料がございます。これをちょっと御披露申し上げたいと思いますが、六千万の書店が最終的に経常利益として計上されておるものが〇・〇一しかない状態でございます。それで、月商五百万と申しますと、大体粗利益が二〇%ございますので、使える範囲は百万ということになります。百万のうちに、人件費が私どもの業界非常に比率が高うございまして、五〇%から六〇%が人件費です。大体個々の店では、夫婦とアルバイトが二人ぐらいおるわけでございますね。仮に六十万の人件費をとれたとしても、二十万をアルバイトに払ってしまうということになると、夫婦二人の月収手取りが四十万ということです。ですから、よくクロヨンという話がございますけれども、私どもの業界にはクロヨンというような状態は全くないわけでございます。  そこにこの三%の税率で入ってくるということになりますとどういうことになるかということになるのですが、今いろいろ私どもも導入された場合ということを検討しておりまして、私ども、本は定価販売、再販制度というのがございます。したがって、千円の本を税込み定価ということで千三十円にすればいいじゃないかという議論が一つございますけれども、これは、この形ならば定価販売制度、再販制度は守れるかもしれませんけれども、私どもがシミュレーションをやってみますと、三%を導入されると粗利益が〇・七近くは減ってしまう。つまり、先ほど申し上げました〇・〇一しか経常利益がないところに〇・七近くの粗利益が減るということになると、これは完全に赤字経営ということになります。では、一体その粗利益はどこで確保するかということになりますと、やはり私ども流通業者は出版社に向かって粗利益を何とかふやしてほしいというような、業界的な混乱を生ずるようなことをしなければならぬ。こういうことを私は私の業界に持ち込みたくない、そういう意味からもこの消費税は困るということを申し上げているわけでございます。  以上でございます。
  89. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そういたしますと、税制改革が経済に中立的でなければならぬ、こういうことでございますが、しかし実際にはこの消費税が導入されますと、これは後ほど本間先生にもお伺いしたいのですが、社会や経済構造に大変大きな影響を与える、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  90. 八田哲弥

    ○八田公述人 全くそのとおりだと思います。私ども書店の業界だけを見ましても、結局生き残れるのは、私どもの業界の中でも経常利益を多く出しているのは大型店でございますので、これは中小の書店が淘汰されて大型店が残る。大型店といったものは一体どこにあるのかというようなことになりますと、やはり都市型の書店が生き残って、町や村からは書店の姿が消えていくということになろうかと思います。私は、こういう姿になってはならない、そういう意味からもこの件に関しては御再考いただきたいということがお願いでございます。  以上でございます。
  91. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 本間先生はまずビジョンを少し、希望の持てるような未来社会のビジョン議論してそれからと言われているのですが、アメリカの税制改革の場合は、公聴会あり方日本と天と地の違いの公聴会の進め方をいたしますね。そういたしますと、ビジョンを描いてからということでは間に合わない今のこういう状況でございますが、といたしますならば、これを導入されると日本経済社会がどう変わるか、その点についての御意見を伺いたいと思います。
  92. 本間正明

    ○本間公述人 五億円以下の事業者に簡易課税制度を認めたということは、これは非常に大きな影響がございまして、これはどういうことかと申しますと、みなしマージン率を二〇%というぐあいに考えておりますので、これよりも高いマージン率の事業者は非常に得をする、それよりも低いところは損をするという形になります。そのみなしマージンと実際のマージン率の格差、これは預かり金勘定に入るのだと思いますけれども、これを所得税あるいは法人税の段階でどういうぐあいに取り扱うかということで実は損得が違った形になってまいります。これを例えば所得税を、税率の非常に高いような形でそれを徴収するというような感じになってまいりますと、これはかえって高くなってしまう可能性もあるわけでございまして、それがないといたしますと、確かに今のマージン率の格差を生み出すわけですが、一つは、マージン率の高い、競争力の強い企業が残る。それからもう一つは垂直的な統合をこの簡易課税制度は非常に促進する効果を持っている。それからもう一つは、これは逆に企業分割のメリットを有する側面もあるんだ。これは非課税事業者になるかどうかということにもよりますけれども、したがいまして産業構造あるいは産業組織の面でかなり大きな影響を生み出してしまうということが大きな問題でございます。  この転嫁のために、例えば非課税業者に対しまして談合に加わって一緒に三%の分を転嫁いたしますと、逆に今度は消費者の負担が不明朗になってしまう。転嫁が一体何だというような問題になってしまいますので、これまた大きな問題を生み出すと同時に、消費者の観点からいきますと非常に不公平だというような形になりますので、私も、この五億円以下九六・七%、一億円にいたしますと八六・五%になります。一億円でも高過ぎはしないかというイメージを持っております。
  93. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 飯塚公述人にお伺いしたいと思います。  大変お尋ねしにくいテーマであるのですが、リクルート問題というのが今国会税制改革とも絡んで不可分の問題になっておりますね。この江副という人が株をばらまくことができたのは、一つは異常な土地の値上がり、株の値上がりという問題ですね。もう一つは現在の不公平税制、これを一〇〇%利用しているわけなんです。と思いますが、この点についてお伺いしたいというのが一つ。  それからもう一つは、社会正義という点を大変御主張になられておるわけでありまして、そのための税法のあり方、そういう意味では税制法律主義ということを大変強調しておられるわけであります。見ておりまして、やはり大蔵省の通達行政というのは目に余るものがあると思うのです。その二点について伺いたいと思います。
  94. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 お答え申し上げます。  リクルート問題とおっしゃいましたね。リクルート問題については、我々は圏外におりますのでよくわかりませんけれども、しかし、私ども桟敷におる者、選挙民として桟敷にいて国会を眺めている者から見ますと、結局は政治というのは金が支配しているのだろう。だから、結局そこで、今の政党の親分方というのはみんな集金能力を持たないと国会で余り威張れない、いい地位にもつけないということになるのではないか。それは間違いだ。我々国民の側から見ると、政治家はお金がかかることはわかる、しかしそれは国家がかわって払う、大衆からは集めないという、いわゆる西ドイツ方式の政党法をつくるべきであるというふうに私は思う。この段階へ来てなおかつ政党法の立案を主張しないという国会議員先生方は一体どうしているんだというふうに私どもは思うわけなんです。  それからもう一つ、租税法律主義ということでございますが、この租税法律主義ぐらい重要な法律はない。何となれば、憲法三十条、八十四条によって法律によらなければ税金は取れないということになっているんだ。しかるに実際は違う。実際は所得税法、法人税法の膨大な通達がある。これが問題なんだ。  そこで先生方にまじめにお考えいただきたいと思いますことは、一九四九年に制定されたドイツの基本法、今の憲法の百三十九条によると、通達はこれをもって廃止するということになっている。今ドイツでは通達は全廃されています。そのかわりに、通達にかわるものとしてリヒトリーニエというのが施行されております。これは施行規則に当たります。そして、リヒトリーニエというのは法源性がないということが国会その他で確認されております。そうならなければいかぬと思う。そのことを実現するために先生方国会に出てきているのじゃないのか。つまり国会なくんば税なし、つまり税というのは一番大きな問題なんだ。だから、そうだとすれば、先生方が大蔵省にかわって通達にかわるだけのものをつくっていただきたい。そのことをお願いしたいということなんです。
  95. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 舛添先生にお伺いしたいと思います。  社会党に関するいろいろの論文も拝見をさせていただいております。なかなかそういう御期待に沿えなくて申しわけない点もありますが、いろいろと、これで活力のある社会、国際国家を目指すためにというお話でした。しかし、八田さんや本間先生の御指摘はちょっと違うのですね。社会がむしろ逆に、舛添先生の言われるような方向に行かないという逆の御指摘があったのです。その点についての御批判を伺いたいと思います。
  96. 舛添要一

    ○舛添公述人 それは政治家の方々が立派に国を導いていってくだされば済む話でございまして、実際にどういうふうにして適用するかということでございますけれども、私はやはり最後に申しましたように、国際性ということは非常に大切なことであって、税制改革につきましても国内的な配慮だけではなくて国際的な配慮が必要であろうというふうに思います。それはいわば国際社会における税金のようなものでございまして、例えば、もちろんいろんな意味で中小事業者の方々がお困りになることはございます。けれども、それが慣行であり日本の伝統であり流通機構についての特色であるということで済ましておられるのか、済ましておるにしては日本の国が余りに大きくなり過ぎたんではないかというふうに思います。それで私は、では弱者は切り捨てればいいのかということではなくて、それはほかの手段で救済すればいいのでありまして、まさに政治の課題であろうというふうに思います。  それから、全体的に言いまして、所得の把握に関する不公正ということにつきましては非常な不満がみなぎっているわけです。だから、これを是正するという意味において私は消費税の導入ということに賛成だと位置づけたわけでありまして、消費税の細かい、いろんな例外規定を含めて技術的な問題の問題点は指摘いたしました。だけれども、我々給与所得者にとってもはや耐えがたいというのは、所得の把握に対して不公正である、ではこれをどうするのか、マルサを入れてやればいいじゃないか。やればいいじゃないかというけれども、先ほど言いましたように、皆さんよく御存じのように、所得を隠すのはみんなうまいし、それが日本の風潮であるわけです。だからそれは現実的にこの一九八八年の日本においては私は無理だろう。ですから、そういう意味において消費税にそういう社会的公正という点からの期待を申し上げたわけであります。
  97. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それでは、ここでいろいろともう少しお尋ねをしたい点もありますが、もう時間が過ぎておりますからやむを得ませんので、これで終わります。先生方ありがとうございました。
  98. 海部俊樹

    海部委員長代理 次に、二見伸明君。
  99. 二見伸明

    ○二見委員 公明党・国民会議の二見でございます。  本日は、大変貴重な御意見ありがとうございました。二、三お尋ねをしたいと思います。  舛添先生は、今議論となっております消費税基本的にはお認めになられるという立場での御見解だったと思いますが、そういたしますと、実は税制というのはいろんな立場でいろんな意見がありまして、百人集まれば百人の意見があるぐらいなものですから難しいのですけれども、ただ、間接税を容認されている方々の中にも、今度の消費税というのはいわば堕落した間接税だという厳しい御指摘があります。具体的には、簡易課税制度とか帳簿方式とかというそのシステムに疑問を持たれて、間接税を容認される方々でもこれはよくないという意見があるのですけれども、その点についての先生の御見解を承りたい。  税制国際化ということをお話しになられましたが、私もそれは同じ意見でして、経済そのものが既にボーダーレスでございますから、確かに税制というのは一国の主権の象徴かもしれないけれども、そうもいきませんですね。ヨーロッパ、EC諸国は、既に基本的には税制は国境を越えて共通化しつつありますし、一九九二年のECの統合を目指してその調整も行われております。日本でも同じことになりますけれども日本でもそうしなければならぬと思いますが、そうなった場合、いわば堕落した間接税と酷評された消費税が、国際化という面から見て、なじむというか、妥当性があるのかどうか、その点の御見解はいかがでしょうか。
  100. 舛添要一

    ○舛添公述人 堕落した間接税であるかどうかというのは表現の方法でございまして、私は政治的妥協が入った間接税であるというふうに申し上げたいと思います。  先ほども申しましたように、理想論としては私はEC型の付加価値税でインボイス方式を主張しています。しかし、それは皆様方が御議論の過程で、もう過去一年ぐらいかかりましていろいろ御議論して、現場を見ておられて、それは余りに日本の現実からかけ離れている、そういうことで妥協されたんだろうというふうに思います。  それから、間接税だけを切り離して議論するのではなくて、所得税の減税、それから累進率の緩和ということとをカップリングして話をする必要があろうかと思います  何度も私が申しますように、不労所得はちょっとおきますが、額に汗して稼いだものについては正当に評価すべきであって、そのことを見る、つまり額に汗したことを見るのではなくて消費に目をつけた方が所得の把握についてははるかに公平だろうというふうに私は思います。例えばたくさん、いろいろな不労所得を含めてこっそりお金を稼いでも、これを見つけることは不可能かもしれませんが、実入りがよくなれば銀座のバーで飲み明かすとか外車を急に買って乗り回す、これはがっぽり税金をいただけばいいわけでありまして、そういう意味で、私は一般的な話をしているのではなくて、今日の日本における現状を見たときに、今度の、堕落したか政治的妥協が入ったかは別として、消費税の導入を含む税制改革というのは必要だろうと思います。  それから、その点につきましては、私は、国際的なボーダーレスエコノミー的状況には何ら背反するものではなくて、むしろ付加価値税的なものを入れていない国の方が少ないわけでございますから、これはまた税務当局が御研究なさって、いろいろな意味での問題点は除去していただけばいいのだと思います。
  101. 二見伸明

    ○二見委員 八田公述人にお願いいたしますけれども、本の場合、これは先ほどお話ありましたように再販制度ですね。そうすると、消費税を導入すると再販制度が崩れるのじゃないかなという不安も私持っているわけです。  例えば、千円の本を千三十円というふうに定価表示しなければなりませんね。そうすると、それで税込み千三十円の定価価格でもって全国一律販売されることになるから、その点では再販制度は維持されるのだけれども消費者の目、消費者というか別の見方をすれば、あの課税店は千三十円でやむを得ないけれども、こっちは非課税店だ、それを千三十円で売るということはどういうことなんだ、法律的に問題があるんじゃないかとか、こっちの非課税店の方が少しもうけ過ぎているんじゃないかという批判も出かねませんね、これは。そうすると、それが再販制度に響いてくるんじゃないかなという不安を持っておるのですけれども、その点について書店はどういうふうにお考えになっているか。  もう一つ、非常に具体的で申しわけないのですけれども、在庫本です。きのうまで千円、明くる日から千三十円です。オイルショックのときそういうシールを張ってやったことがありますね。シールを張ってやったところが、えらく不興を買って本が売れなくなって大変な目に遭ったという経緯もあります。きのうまで千円だったものを明くる日千三十円とシールを張ればいいかというと、これはなかなか消費者はうんと言いにくいですね。このシールを張ったのはもともと税金が入ってないやつじゃないかということになります。そういうところはどういうふうに書店はお考えになっているのか、その点をお願いします。  それから、これは舛添先生と本間先生にお尋ねしますけれども、いわゆる消費税を導入することになりますと、ある瞬間に三%上がるわけですから、そうすると駆け込み仕入れというのをやりますね、これは。仮需です。三カ月ぐらい前からずっと在庫をそろえておいて、そして明くる日から売るということになりますね。すると瞬間的には、瞬間的な不況といいますか、そんな現象も起こるんじゃないかなと思いますけれども、そういう点についてはどういうふうにお考えになりますか。  以上で終わります。
  102. 八田哲弥

    ○八田公述人 千円の本を千三十円という値づけをすれば、三%の税込み価格で、したがって再販制度は守れる、これは先ほども私申し上げたのですが、私どもの業界を見ますと、三千万以下の書店というのは大体五〇%以下だろう。ただ、兼業店がございまして文具を売ったりなんかやっておりますので、書籍だけの売り上げを見ますともっと比率が高くなりまして七〇%近くになるのですが、書店そのものの販売価格としては三千万というのは私は五〇%以下と見ているわけです。そうしますと、前段階で問屋から入ってくるものに対しては三%の仕入れが入っておりますので、三千万以下の五〇%の店は税務署に納めるものが自分の懐に入るということが、これは実際問題として生じるわけでございます。このことは、私はやはり業界の中に新たな不公正を生み、また業界としてこれはいろいろな複雑な問題を醸成していくことになるんだ、これが非常にまずいことになろうかということで、私ども業界ではこのことについては心配をしておるわけでございます。  それから在庫品の問題については、これは非常に私どもは頭を痛めております。現在の時点で、出版社あるいは問屋それから私どもの書店の在庫が約七千億ぐらいあるだろう。これの三%というのは二百三十億ぐらいのものがあるだろう。じゃ、一体これをどうするのかということになりますと、定価づけをそれぞれの段階でシールを張りかえたり到底できません。一体これはどうしたらいいのかという現実問題で私どもは頭を悩ませているのが現状でございます。大変な混乱が起きますということを申し上げたいと思います。
  103. 舛添要一

    ○舛添公述人 駆け込み仕入れによる不況の可能性でございますけれども、三%という税率でございまして、これは一〇%のような大きなものではない。それからストックのためのスペースと費用ということもございますので、全体的な経済的状況に大きな影響を及ぼすほどの不況はなかろうかというふうに考えます。
  104. 本間正明

    ○本間公述人 基本的には舛添公述人と同じでございますけれども、経済はうまくできておりまして、駆け込み需要がありますと値段が上がる、そして低く、需要が冷え込むと値段が下がるということですから、金利負担の面も含めてやりますとそれほど利害得失は起こらないという感じになると思います。そういう意味では余り大きな影響はないと思います。
  105. 二見伸明

    ○二見委員 ありがとうございました。
  106. 海部俊樹

    海部委員長代理 次に、安倍基雄君。
  107. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 公述人の御先生方、どうもお忙しいところをありがとうございました。同僚議員がいろいろ聞いた後でございますけれども、私、この議論を聞きながら、ひとつ本間先生にお聞きしたいと思います。  舛添先生は、むしろ流通機構は透明化した方がいい、近代化しなければならぬ。八田公述人は、日本の場合にはみんながシェアを分け合ってそこで生きているんだということのお話でございました。私も、日本の場合に先端の産業は非常に力があるけれども、いわゆるその果実をみんなが分け合って生きているんじゃないかという考えがあるわけです。でございまして、この点につきまして、透明化ということ、合理化ということはある意味からいうと労働力が追い出されるという話にもなるのでございまして、私はこの点、大蔵委員会でもときどき指摘しているのですが、日本の場合にはいわば製造業において約一千万、工業において約一千万近くいる。そのうちの七〇もしくは八〇が中小である。ところが、欧州においてはその割合が大体三〇%だ。日本の場合に非常に中小が多くなっている。これは一つの考えは、長い間の欧州における間接税、取引高税みたいなものがございましたが、それでもって淘汰されてきたのではないかなという気もするわけです。この点、本間公述人はどう思っていらっしゃるか。あるいは流通機構の合理化がいいとお思いになるのか、やはりある程度シェアを分け合うという意味でいたし方がないとお考えになっているのか、その点をお聞きしたいと思います。
  108. 本間正明

    ○本間公述人 流通機構の非合理的な側面というのは日本は否定すべくもないと思います。そういう意味で、私は一般論としては、これは近代化に向けて大きく走り出すべきであろうというぐあいに考えております。しかしながら、税がその持っている意味をわからずにそういう形で影響を及ぼしてしまうということに関しては余りいいサイドエフェクトではないのではないか。流通機構を近代化するならどういう方向で近代化するかというポリシーを決めて、そしてそれに従って効果的な政策手段というものを準備すべきだろう。切り捨てるべきだという議論だけには私はくみしませんので、そういう意味では、税の持っているアービトラリー、恣意的な効果というものはできるだけ排除して、租税特別措置的なもの、簡易課税制度でありますとか例外規定というのはできるだけ低く設定した方がよろしいかというぐあいに考えておりますし、それからもう一つは、これは中立的にやろうといたしますと、どうしても伝票型の方が帳簿型よりもいいという形になりますので、中長期的に見れば、伝票型への改革というものも当然議論の対象になってしかるべきではないかと思っております。
  109. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私も長期的には消費税ということが必要だと思っておりますけれども、ただ、今これが中小企業に対する影響はどうなるのかという問題を十分きわめ尽くしていかなければいけないだろう。それとの関連で、独禁法の緩和ということがしきりに言われております。私の考え方は、独禁法というのは寡占力のある、価格形成力のある者に対して独禁法を適用して、そこでもっていわば恣意的な価格形成を排除する。ところが、さっき八田公述人が言われましたように、競争が非常に激しい、しかも大勢が競争しているという状況のもとに独禁法を緩和してみても、絵にかいたもちではないかという気が私はいたします。この点について、果たして独禁法の緩和がいわばそういった転嫁を可能にするものかどうか、どのくらい効力があるかにつきまして本間公述人の御意見を承りたいと思います。
  110. 本間正明

    ○本間公述人 結論から申しまして、実効ある解決策には余りなり得ないのではないかというぐあいに考えております。基本的に転嫁がよいかどうかというのは、これは消費税を込みにいたしましたときの、価格が上がったときに需要がどの程度弾力的に動くか、その財、サービスの性格によって転嫁の度合いというのは決まりますので、そういう意味では、談合を入れたからといって、必ずその談合から枠をはみ出ることによって利益を得る事業者がいる限りにおいては、きちんとした対応ができないと思います。  それからもう一つは、非課税業者を設けますと、完全に転嫁をさせるという形になりますと過剰転嫁の問題が起こってまいります。これは物価上昇という形ではね返ってまいりますので、どういうものを適正な転嫁と考えるかということは国会でもきちんと議論していただきたいと思います。込みにして全部やればいいという話では毛頭ないということだと思います。
  111. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私も、買い手市場か売り手市場かという産業構造そのものによって決定されるのであって、それぞれの産業部門において、いわば需給の関係で決まるのが最終である。でありますから、この独禁法の緩和云々は、ある程度、産業によって絵にかいたもちになるんじゃないかという懸念があるわけです。この問題が本当に経済構造にどういう影響を及ぼすか、さっき本間公述人が垂直化を促進するだろう、あるいは分割を招くだろうという話をされました。私も事実そんな感じもいたしますけれども、さっきの問いの中で、欧州において非常に中小企業が少ないという理由が過去における間接税の影響であったのかどうか、これについての御見解を承りたいと思います。
  112. 本間正明

    ○本間公述人 御承知のとおり、付加価値税の前に欧州では取引高税というのがございまして、これは累積課税を非常に発生させるという形になります。そういたしますと、当然のことながら、流通機構が長いという感じになりますと、極めてタックス・オン・タックスが生じまして物価が高くなるという形になりますから、流通機構を簡素化した方が極めて効率的な形の取引ができるということになりますので、私はそういう経緯を踏まえて売上税のダブルタクセーションを回避するような形での改革がなされたと思っております。そういう意味では、付加価値税の前ではそういう影響があって、そしてその反省の上に立って今現在の付加価値税、伝票型の付加価値税というのができたんだと私は思っております。
  113. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私はそういったような見解から、どちらかというと非常に慎重論を考えておるのでございますけれども、やはりこういった税を導入する前にはその辺の影響を十分勘案していくべきではないかと思っております。  これにつきまして時間もございませんからこの辺で打ち切りますが、もう一つ飯塚公述人ですね。  さっきいろいろ、租税法律主義あるいは納税者番号、既にお答えになりましたけれども公述人が主張されておる中で、税の捕捉との関連で地方自治体のいわば職員を使ってみたらどうかというのはどういったことを意味しておられるのですか。
  114. 飯塚毅

    ○飯塚公述人 お答え申し上げます。  納税者をどう把握するかという問題については、日本には税法がありません、条文が。これはちょっと奇妙なことでございますけれども、ない。たまげたことなんです。それに対してカナダあたりでは、赤ちゃんに対しても大蔵大臣は申告書を送付するということになっておる。網羅的に送付しますから心配ない。日本はそういうことはない。特に、例えばドイツの場合は、国税通則法の百三十四条以下六カ条ございます。そして納税者は漏れなくつかむんだぞという思想の上に立っておる。例えば国の税務官吏というのはわずか五万人ぐらいで、ちょうど西ドイツも日本と同じぐらいでありますけれども地方自治体の市町村の吏員、そういうものはいわゆる身分登録あるいは事業登録という形で――これは大蔵省の主税局長さんも御存じのはずだ。つまり、事業登録または身分登録というものを市町村の吏員にやってもらう。それによって完全に掌握する。だから漏れがないということなんで、そこのところが一番肝心だと思うのです。そういうことです。
  115. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう時間もございませんが、舛添公述人に。  今まで本間公述人との議論で起こった話ですけれども、いわば流通機構の透明化、これは確かに自然の流れかもしれませんけれども。私はよく言うのですけれども、だれもかもが大企業に勤められておられれば一番いい。ところが日本の場合には、これから製造業においてはオートメーションがどんどん進みます。その人数の雇用は限られてきます。そうしますとどうしてもはみ出てくる人間がいる。その辺の雇用をどうお考えになられるのかという点について、いわば消費税がもし転嫁が難しくて中小企業に大きな打撃を与えるとなれば、それをどう公述人のいわば御意見と調整されて考えておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  116. 舛添要一

    ○舛添公述人 その点につきましては、基本的には、長期的にはやはり透明化、近代化が必要でありまして、いろいろな犠牲はいたし方ないことでございまして、それは政治の力によって救う必要があろうかと私は思います。いろいろな例えば補助金というようなことがあろうかとも思いますし、例えば本当に倒産の憂き目に遭って失業ということになれば、生活保護というようなこともあるかと思います。  ただ、中小企業の問題や労働力の問題につきましては、この委員会の課題ではございませんけれども、例えば外国人労働者の問題とか対外的ないろいろな問題が同時に起こってきております。そういうことと比較して考えますと、この消費税導入によってもたらされる問題と同時に、ないしはそれより重い問題として外国人労働者が不法に入ってきているような問題があったり、それから諸外国との貿易摩擦という問題もあるわけですから、そういうものの比重をお考えになった上で、やはり全体的なバランスをとって考えるべきであろうかというふうに思います。私も弱者を切り捨てということはもちろん反対でございますので、それはほかの手段でやればいいというふうに思います。
  117. 海部俊樹

    海部委員長代理 時間が経過しておりますので……。
  118. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、ここでやめておきます。残念ですけれども
  119. 海部俊樹

    海部委員長代理 次に、工藤晃君。
  120. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 共産党の工藤晃です。  公述人の皆さん、きょうはお忙しいところ大変御苦労さまです。今まで大勢いろいろ御質問がありましたので、なるべくダブらないようなつもりではありますが、重なるところもあると思いますが、それはお許しください。  まず八田さんにお伺いしたいと思いますが、今日本の就業状態などを見ておりますと、農業、水産業からどんどん人が減っていって、製造業でも減っていって、結局流通、サービスにふえて、流通、サービスでも、零細なところは倒産というよりも廃業、転業などが非常にふえている。そういう状況がしばらく続くであろうということを考えざるを得ないわけですが、そういうときにこの消費税を導入するということは、大変な、そこで非常に困難を大きくするし、それは就業全般にも大きな影響を与えるのじゃないかと心配しております。先ほどその点言われたのではないかと思いますが、その点が一つ。  もう一点ついでにお伺いしますと、何やらカルテルで転嫁ができるという話がありまして、そのカルテルというのもまだよくわからないのですが、要するに転嫁の方法のカルテルと転嫁の表示のカルテル、それも何やら団体に三分の二中小企業がいればいい、あとは大企業でいいというのです。商店街みたいなところでもできるんだといっておりますが、今実は中小企業庁が調査すると、全国の商店街のうちの八割は衰退しつつあるという答えが返ってきて、店がぽつぽつなくなっている。実際そういう商店街でカルテルみたいなものができるものでしょうか。それは書店という立場をお離れになって、ちょっとお答え願いたいと思います。
  121. 八田哲弥

    ○八田公述人 先生方、ひとつ商店を見ていただきたいのですが、最近商店街には貸し店舗というのが非常にふえております。つまり、これは原因は何かということを申し上げますと、先ほどから流通の近代化の問題が出ておりますけれども、片方でスーパー等の進出があり、その片方でコンビニエンスストアが乱立している状態なんです。これはつまり、コンビニエンスというのは大手の資本の実質的な支配下にある、これが商店の中に進出してくる、それで結局競合する中小の商店は撤退せざるを得なくなるということと、いま一つは、土地が高騰したというようなことで、家賃で入っているところは更改期、更新期に高い家賃を要求される、それで商店の営業ができなくなってくる、こういう状態が現在あるわけです。そこに消費税が入ってまいりますと、これは経営状態をますます悪化さしていく、中小の小売商は成り立たないという状況がさらに加速されるということを私ども心配しておるわけでございます。  それから、今価格カルテルが認められたらそれはできるかどうかという問題ですが、商店のおやじは、毎日、新聞にチラシが入ってまいります、同業者が、例えば卵をうちの近所のあそこではきょうは幾らで、この三日間幾らで売っている、うちはそれに対抗するために安く売らなきゃならないということで、激しい価格競争を商店の中でもやっているわけでございます。こういう中で価格カルテルというものを認められたとしても、できっこないというように私どもは考えるわけでございます。  以上でございます。
  122. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それでは、この問題は八田さんと本間先生にまたお伺いしたいのですが、お二方ですが、先ほどから非常に複雑な状態をお話しになったと思います。  どう複雑かというと、五億円以上、これは普通にということですね。ところが、五億円以下も三つぐらいに分かれると思うのですね。例えば、付加価値率が二〇%以上で高いからといって利用しましょうというのと、二〇%以下でもこの方が便利だから泣く泣く使いましょうというのと、それから簡易を選ばないものというふうに分かれる。さらにそれに加えて、三千万円と六千万円の間に限界税率というのがありまして、これが三%から〇%までなんですが、これはまたおかしな話で、その年の年商ですから、帳面を締めくくってみないと自分が何%選べるのかわからないのですから、本当は町で、うちは二・四%のお店ですとか二・八%の店ですと前もって出せないわけですね。それからさらに三千万円未満というので、今ちょっと分類しただけでも物すごい複雑な状態。  これが転嫁が難しいからこういうことになるという反面、これはお店の立場とか業者の立場を離れて消費者の立場から見ると、本当にわけのわからない状態だというふうになってきて、やはり消費者との間のトラブルにもなってくるんじゃないか。逆に、これは私の見方からいいますと、こういう仕掛けをつくったのは、これをやってみるとたちまち非難ごうごうになって、結局EC型にせざるを得ないというところへ持っていくための一つの策略じゃないかと思いますが、その辺はいかがでございましょうか。
  123. 本間正明

    ○本間公述人 恐らく、前回の売上税が非課税事業者規模あるいは非課税品目をたくさん設け過ぎて納税上非常に複雑になってしまった。その便法としてこういう簡易課税方式を導入した。そしてそれと同時に、今回はそれとは独立に、非常に担税力がないと思われる中小零細の企業にとっては差別的な税率を課そうということで軽減をしよう、これがねらいなんだろうという感じがするわけですけれども、しかし私は、これが果たして本当に中小の方々にとっていいことかどうかということも含めて疑問を持っております。  と申しますのは、いろいろな意味での競争力というのはやはり小さな方が弱いと思いますし、垂直的な統合の問題もいろいろな形で起こってまいりますので、競争形態に中立的な形の消費税というものを学者としては推奨したいなという感じを私は持っております。  恐らく問題は、減額控除制度あるいは非課税業者さんが一体となって税金の分を価格に転嫁をしていったときに、消費者サイドからはかなり不満が出てくる、問題が及んでくるというぐあいに思いますけれども、その部分についての解決策というのは恐らくないだろう、そういう意味でも、一本化をするような形での税制度の簡素化、これは中長期的には検討していただきたいなと思っております。
  124. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 本間先生についでにもう一問ですが、先ほどアメリカの税制改革との比較もされました。私もアメリカの税制改革の方が、読むと大変納得いくところが多いわけですが、その中に、まず国民の収入別にどういう税の負担になっていて、それがどのように変わるのかという検討をよくやっているという点もあります。  それで、私は詳しくは知りませんが、アメリカの税制改革に影響があったと言われるペックマン教授の本も日本で訳されておりますが、ペックマン氏などは、日本を見て、日本の税率が累進が強過ぎるというけれども実際はそうじゃないのじゃないか、まだ直接税分野で解決するものがあるのに何で付加価値税を急ぐのかというのがありましたが、そういう考え方を含めまして、どのようにお考えでしょうか。
  125. 本間正明

    ○本間公述人 昨年の三月に私もペックマン教授と話をいたしましたときに、やはりそういう感想をお持ちでいらっしゃいました。ペックマン教授の場合は典型的な包括所得税論者でございますし、アメリカの場合には年功序列的な賃金体系になっておりませんので、どうしても、そのときどきの所得水準に応じて適正な課税をしたらいい、こういう考え方になっていると思います。私は、日本状況というのがどうしても年功序列的になっていて、累進構造というのは、短期的な高額所得者と低額所得者の問題と同時に、ライフステージ、一人の個人の生涯の税負担の分配にも影響してくるんだ、そういう意味で所得資産消費の振り分けを考えるのはそれなりに意味がある。しかし、今の日本税制改革案では資産に対する課税見直しというものが非常に不徹底だから、短期的には所得再分配の問題が顕在化しているだろう、そういう批判もあり得るのだというようなお答えをしたのが昨年の三月でございまして、そういう感想を私、今持っております。
  126. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間が参りましたので、あとの飯塚先生、舛添先生、御質問ができませんが、大変失礼いたしました。  どうもありがとうございました。
  127. 海部俊樹

    海部委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  次回は、来る十日木曜日午前九時理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十分散会