○宮澤国務大臣 五点にわたりまして御主張を承りました。
まず第一の点でございますが、個別物品税等々を整理した結果、実際には
消費税をやりましても二兆円のネットの増収しかない、これはそのとおりでございます。そして、国、地方も相当の負担をするではないか、この点につきましては、前回大蔵省、自治省から御答弁を申し上げたとおりでございますが、国と地方の間の重複分といったようなものをもう少し精査をする必要があるようでございますが、いずれにいたしましても、おっしゃいますように、一兆と仮にしようとおっしゃいましたのはその辺でございましょうと思います。そうしますと一兆ぐらいのものしか残らないではないか、国も地方も転嫁をこれは必要とする
税金でございますから、当然負担をしなければならないことでありまして、これは仰せられるとおりであります。
第二点でございますが、こうなったのは、実は仮に
消費税が五%でもあれば相当大きな収入であるから、三兆四千億という、国、地方合わせると八つの税になるわけでございますが、そういう間接税を廃止しても大きなものが残るが、五兆四千億ではこれは今第一に御指摘になったように残るものは非常に少ないではないか、それは言ってみれば個別
消費税というものを吸収し過ぎたと申しますか、何もかにもやめてしまう、そういうことで、そこのところが行き過ぎたんではないか、元が九兆もあればそれはよろしいが、こういう
意味の御指摘であったと思います。
これは、物品税等々の個別間接税の方にいろいろもうこのまま放置できないような問題がむしろあったというふうに御
理解をいただくべきかと存じます。すなわち、そのうち尤たるものは物品税でございますが、戦前には非常に大きな
税金であり、たくさんの項目を課税対象にいたしておりました。戦後大変にいろいろな変遷をいたしましたが、その間これは、戦後の最近までの経緯を見ますと一種の奢侈品課税であるといったようなふうに多くの場合説明されてまいったのでございますが、
国民の価値観が変わってまいりますと、何が奢侈品で何がぜいたくかといったようなことは大変に実はあいまいになってきたことは否定ができません。現実の姿といたしましては、今の物品税収入は自動車とそれから電気製品でほぼ三分の二をしょっておるわけでございますので、その他のものはあるいは課税であれあるいは非課税であれ、なぜその二つのものだけがそう多くのものをしょうのか、それは奢侈品であるからということになりますと、どうもいろいろ疑問を寄せられる向きもある。のみならず、個別間接税の中でも酒税などになりますと、これは外国からの高級酒の輸入を防圧するための方法であるというようなことがしばしば国際
会議において首脳間でやりとりがあるというようなことになってまいりまして、個別間接税そのものが実は非常に説明しにくくなった、あるいは対外的にいろいろ批判の対象になつた。
振り返りますと、OECD加盟二十四カ国でございますが、付加価値税を採用しております国が十八カ国あるそうでございます。残り五カ国はベースの広い
消費税型のものをやっておりまして、そのうちカナダは近く付加価値税に移行するかどうかというような
議論をやっておりますが、残った一国は日本ということでございます。そういう
意味からも、やはり個別間接税を整理すべき、統合すべき時期に来ておるだろうというふうに存じます。
これは
米沢委員からもしばしば御批判のあるところでございますけれ
ども、タックス・オン・タックスというようなことはなるべくやらない方がいいということもございますので、こういう
消費税をいたしましたときは個別間接税は廃止をできるだけしようというのがこのたびの
考え方でございました。その結果、残ったものは少ないねとおっしゃいますればそのとおりでございますが、制度としては
かなり整備されたという
感じがいたします。
第三の問題は、地方にも今度の
消費税収入は結果として相当分与あるいは交付することになる。確かに、三九%と存じますが、これが地方の財源になってまいります。そうなりますと、なおさら今度のこの
税制改正においてあるいは
消費税において金目でもって
高齢化社会に対応するんだということは、金目の面では言えないではないか、こういう御指摘でございました。
これは総体として二兆四千億円の
減税になるわけでございますので、金目の面で高齢化対策をやっておるということは確かに申し上げにくい、それは私はおっしゃるとおりであると存じます。ただ、私
どもが思っておりますのは、前にも申し上げまして申しわけございませんが、今の段階で六・六人の若い人が高齢者を背負っておる。十五歳から六十五歳の人が六十五歳以上を背負っておる率は六・六対一でございますが、それが二〇〇〇年になると四対一になり、二〇一〇年には三対一になるというのが目に見える現実になってまいりましたので、その際、今のような
税制をそのままにしておきますれば、若い人は直接税、所得税を中心にしてこの負担をせざるを得ない。今さえ所得税が非常に高いと言われているときに、そういうことを若い人に求め得るかといえば、私は恐らくそれは不可能を強いることであるというふうに存じます。かくては安定した社会福祉制度というものは危殆に陥ると考えざるを得ない。
そういう
意味で、我が国は
かなり所得水準の高い、格差の少ない社会になってまいりましたので、このような社会の共通の負担は薄く広く
皆さんに背負っていただく。いわば若い人に背負ってもらう六十五歳上の方々も、恐縮なことではありますけれ
ども、お人のためというわけではございません。やはり御自分たちのためにもそういうことを考えてはいただけないだろうかということでございます。それは制度の問題であって、金目の問題で申し上げているのではないということは御指摘のとおりと思います。
直間比率でございますが、この前国の方だけを申し上げましたが、国だけを申せば七二・二対二七・八がほぼ二対一になる。これはよろしゅうございますが、地方の方は七七・三対二二・七が七四対二六程度でございますので、国、地方を合わせますと直間比率の改善は少のうございます。
直間比率というのは、
総理がしばしば言われますが全体をあらわす
一つの形でございますから、これが余り狂っておりますときは何かどこかに問題があるというふうな、指標として考えております。昭和二十五、六年、シャウプ
税制が始まりましたころは直接税が五五であったと思いますが、一遍、昭和四十五年ごろに五〇まで行ったことがございます。しかし、その後ずっと骨格が変わりませんから、直接税がここまで参りましたのはやむを得ないことで、七二対二七が悪いと申しますよりは、これが中堅所得層の給与所得を中心にした非常な
重税感になってきている。そのことの一種の表にあらわれた姿、それが直間比率である。したがって、この直間比率の姿が非常に偏ったときには何か
税制の中に問題がある、こういう指標として私
ども申し上げているのでありまして、このたび改正させていただきますと、国税については二対一になってまいるというふうに考えます。
最後の問題は、このたびの
税制改正は結局歳入欠陥をつくっていくのではないか、この御指摘は、今までお述べになりました四つのことの締めくくりとして言っていらっしゃるわけでございますが、確かに財政当局としては、現在のような財政
状況でネットの
減税をするということはこれは
かなりの思い切りでございます。殊に、特例公債を昭和六十五年度にはやめたいという
立場から申しますならば、歳入欠陥というのは相当つらいことでございます。しかし、いろいろ
努力をいたしまして、結局、
消費税二%という税率はこれがもう限度である、今日においてもさように考えますし、将来においてもそう考えるべきものでございますから、そういうむしろ厳しい
状況の中で、やや優先度の低い歳出は切っていく。また、租税措置法等々にも工夫すべきものもあろうと思います。かたがた経済
運営を誤らずに、こういう中で何とか財政再建も進めてまいりたい、かように考えております。
長くなりまして申しわけございませんでした。