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村山(達)
委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、きょうは
不公平税制のテーマだそうでございますので、そのことについてお伺いしたいと思います。
私は、実は
大蔵省在官二十六年でございまして、幸か不幸か、ほとんど税をやらされたのでございます。衆議院の方もことしでちょうど満二十五年になりまして、その間、経済とか財政を勉強させていただきました。しかし、税制につきましても、最初から我が党の税制
調査会の一員としてやはり勉強させてもらいましたので、通算して五十年、因果なことでございますが、やらせていただいているのでございます。
そこで、
不公平税制の話でございますが、所得課税における不公平の問題として、所得税、法人税の個別問題につきましては与野党が今十項目挙げまして鋭意検討しております。したがって、それらの問題はいずれ本委に出てまいりましょうから、その際またゆっくり議論する機会があろうと思いますので、きょうはその他の事項について、私が日ごろ考えておる不公平問題、そういうものについてお伺いしたいと思います。
ただ、十項目のうち、キャピタルゲインの課税の問題、あるいは、特に最近創業者利得がなぜ非課税か、こういう問題について
論議されておりますので、若干その間の
経緯を知っている者として、今までの
経緯を申し上げ、そして創業者利得の課税についての御感触を最初に伺いたいと思います。
御案内のように、シャウプ税制は二十五年でございますが、このときは原則総合課税でございました。そして株のキャピタルゲイン、キャピタルロスはすべて通算いたしまして、そしてもし赤字が出れば、翌年度以降普通所得から控除するという制度であったのでございます。私は当時国税庁の初代所得税課長としてこの問題に取り組んだのでございますが、何といっても、やはりキャピタルゲインを総合するシステムがありませんでした。したがって、どういうことになったかといいますと、一つは、キャピタルゲインは本当に、言葉はどうか知りませんが、ほとんど逃げまくる、キャピタルロスがありますと、
証券会社の証明書を添えて持ってくるわけでございます。したがって、シャウプが言った理想的な形、キャピタルゲインとキャピタルロスの総合課税という問題は、税収として考えてみましたときには、私はかえってマイナスであったと思います。それからもう一つは、たまたま取っ捕まった者が大変な不公平になってしまう。これは当然のことでございます。
しかも実行上の難しさは、仮に
株式の売却がつかまったといたしましても、その取得原価というものはわからぬのでございます。当然同じ銘柄でございます、やっている人は買ったり売ったりしているわけでございますので、その取得原価というものはつかまらないのでございます。恐らく、今、納税者番号によって総合するという問題はありますけれども、仮に売却高を全部総合したとしても、いつ幾らで買った分をやったかということがわかりませんとやはり問題であろう。ちょうど事業所得の計算上、棚卸しにつきまして同じ問題があるわけでございますが、現行法は、それぞれの取得原価を
本人の選択によりまして求める
方法をあらかじめ申告させておるのでございます。そういうことでようやくつないでいるのでございますので、やはり総合課税になりましてもこの問題は残ると思います。
いずれにいたしましても、そういうことであって、不公平でありかつ税収はマイナスだ、こういうことでありましたので、
昭和二十八年でございましたが、私が主税局の方と相談いたしまして、もうこの制度は、残念ながらこれはやはり理想に過ぎる、廃止してもらいたい、そのかわりに、それにかわるものとしてひとつ流通税として
有価証券取引税のようなものを起こしたらどうか、こういうことで
有価証券取引税が一つの身がわりとして起こされたわけでございます。しかし、見てみますと、これは法人の
株式も同時に一緒に捕捉いたしまして、流通税としてこれが発足しました。それで、二十八年の当初予算では六億ぐらいの予算計上でございましたが、これは、日本の資本
市場の発展とともに、今日ではことしの当初予算では一兆六千六百億、こういう膨大な税収源に育っているわけでございます。
しかしその当時から、
株式の
譲渡所得による所得は非課税にするにしても、やはり余り目に立つもの、事業所得あるいは雑所得に該当するようなもの、あるいは事実上事業の
譲渡に類似するような、持ち分のある一定比率以上を
譲渡したものについては課税すべきではないかということで、この分はやはり依然として課税するということに残したわけでございます。
その後、
市場にはいろいろな現象が起きました。第一に、買い占めによって発行者に高く売りつけるというような人が横行してまいりました。そこで、買い占めによるものはやはり課税の対象にするというようなことにいたしました。それからまた、いわゆる株価操作がだんだん始まりまして、いわゆる仕手株というものがありまして、
取引所の特別
報告銘柄というようなことで、社会的に感心しないというようなものについてもまた課税の対象に取り込みました。また大口のもの、これについてもやはり課税すべきじゃないかという常識論がありまして、それを取り込んできた、こういうような
経緯でだんだんやったのでございます。
創業者利得を非課税にいたしましたのは、そのままほっておきますと、継続的
取引あるいは事業
譲渡類似の
取引、さらには大口
取引、こういうものに当然ひっかかってくるわけでございます。折から日本の資本
市場は非常に日本の今後の経済成長のために拡大が望まれておったのでございます。ほかの社会的に好ましくない現象だけとっつかまえて、それに課税しているわけでございます。ほかのものは全部非課税になっておる。そこで、結果的にそれらの大口とかあるいは継続であるとか、あるいは事業
譲渡類似に該当するいわゆる創業者利得については、むしろ
市場拡大のために、あるいは創業者の
株式公開というものは結構なことではないかというようなことから非課税にしてまいった、こういうことだろうと思います。
今日、キャピタルゲインは原則課税に戻ろうじゃないかということで、既に
政府御提案の分離課税と申告分離課税の選択制度になっております。今度の案では、そこは申告になるのか分離になるのかはこれからの問題でございましょう。また、税率がどうなるのか、今のところでは申告になってもやはり二〇ということになると思います。
株式市場のその後の変化は大変なものでございまして、今や時価総額においてもニューヨーク
市場を抜き、それから売買総額におきましても、もうニューョーク
市場に近くなっておる。昨年の
株式の大暴落のとき、いわゆるブラックマンデーのときにアメリカの方は随分おっこちまして、今日まであの水準を回復してない。幸いにして、日本は一五%程度落ち込みましたけれども、もう既に回復してあの水準を抜いておる。今や、昔のようにニューヨークの相場を写真相場としてこちらが写すのでなくて、逆に日本の資本
市場というものが、やはり世界的なものとして、日本の資本
市場の行方いかんが世界の資本
市場に影響を与えるというほど大きくなっているわけでございます。
したがいまして、その観点からいたしまして、やはり
株式市場というものは、今までのような量的な拡大ではなくて、国際資本
市場としてその適格条件である価格形成について公正を保たにゃいかぬ、あるいは透明度をふやさなければいかぬ、こういう要請が時代とともに強くなることはもう当然なのでございます。したがって、
インサイダー取引の規制の問題が登場する、あるいはディスクロージャーのより徹底がやはり叫ばれる、これは当然なことだろうと思うのでございます。
まあ今まで
証券会社、随分日本の
証券会社は大きくなりましたけれども、率直に申しまして、日本の
証券会社の優勝劣敗と申しますか優劣というのは、ほとんどアンダーライターになるかどうか、これが一つの問題、もう一つは、いわばインサイダーのような、あるいはそれに類似したような情報をたくさん持っているかどうか、これによって恐らく
証券会社の優劣が決まってきた、こういうことだろうと思います。しかし、今や
先ほど申しましたように質的転換を図らねばならぬ、そういう
意味で創業者利得について改めて今光が当てられている、こういう状況でございます。
そういうときに、この創業者利得の課税のあり方について、まだ実務者
会議でも結論は出ておりませんけれども、どのような感触を持っておられるか、まず
大蔵大臣にお伺いしたいと思います。