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1988-11-09 第113回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十三年七月十九日)(火曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 渡辺 秀央君    理事 甘利  明君 理事 尾身 幸次君    理事 奥田 幹生君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 奥野 一雄君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    石渡 照久君       小川  元君    海部 俊樹君       古賀 正浩君    佐藤 信二君       島村 宜伸君    玉生 孝久君       中川 秀直君    中山 太郎君       額賀福志郎君    福島 譲二君       穂積 良行君    牧野 隆守君       宮下 創平君    粟山  明君       森   清君    山崎  拓君       井上  泉君    小澤 克介君       緒方 克陽君    城地 豊司君       関山 信之君    水田  稔君       石田幸四郎君    権藤 恒夫君       森本 晃可君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    工藤  晃君       藤原ひろ子君 ──────────────────────  昭和六十三年十一月九日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 渡辺 秀央君    理事 尾身 幸次君 理事 奥田 幹生君    理事 田原  隆君 理事 与謝野 馨君    理事 奥野 一雄君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    石渡 照久君       古賀 正浩君    佐藤 信二君       島村 宜伸君    玉生 孝久君       中川 秀直君    中山 太郎君       額賀福志郎君    福島 譲二君       二田 孝治君    穂積 良行君       牧野 隆守君    宮下 創平君       粟山  明君    森   清君       山崎  拓君    井上  泉君       小澤 克介君    緒方 克陽君       城地 豊司君    関山 信之君       水田  稔君    権藤 恒夫君       森本 晃司君    薮仲 義彦君       石井 郁子君    藤原ひろ子君  出席国務大臣          通商産業大臣 田村  元君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       糸田 省吾君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       高橋 達直君         通商産業省通商         政策局長    鈴木 直道君         通商産業省貿易         局長      熊野 英昭君         通商産業省生活         産業局長    岡松壯三郎君         資源エネルギー         庁長官     鎌田 吉郎君         資源エネルギー         庁次長     植松  敏君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       向 準一郎君         資源エネルギー         庁石油部長   坂本 吉弘君         資源エネルギー         庁石炭部長   長田 英機君         資源エネルギー         庁公益事業部長 堤  富男君         中小企業庁長官 松尾 邦彦君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局原子力調査         室長      林  幸秀君         科学技術庁原子         力局技術振興課         長       福原 淑弘君         科学技術庁原子         力安全局防災環         境対策室長   酒井  彰君         科学技術庁原子         力安全局原子力         安全調査室長  尾藤  隆君         大蔵大臣官房企         画官      坂  篤郎君         大蔵省主計局主         計官      伏屋 和彦君         厚生省健康政策         局指導課長   澤  宏紀君         厚生省生活衛生         局食品保健課長 松田  朗君         消防庁特殊災害         室長      原  純一君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 八月四日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     佐藤 文生君   佐藤 信二君     綿貫 民輔君  中山 太郎君     三ツ林弥太郎君   額賀福志郎君     砂田 重民君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 文生君     石渡 照久君   砂田 重民君     額賀福志郎君  三ツ林弥太郎君     中山 太郎君   綿貫 民輔君     佐藤 信二君 同月五日  辞任         補欠選任   穂積 良行君     原田  憲君   牧野 隆守君     林  義郎君   宮下 創平君     左藤  恵君   藤原ひろ子君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   左藤  恵君     宮下 創平君   林  義郎君     牧野 隆守君   原田  憲君     穂積 良行君 同月六日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     後藤田正晴君   海部 俊樹君     左藤  恵君   佐藤 信二君     林  義郎君   中山 太郎君     原田  憲君   額賀福志郎君     村山 達雄君   野間 友一君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   後藤田正晴君     石渡 照久君   左藤  恵君     海部 俊樹君   林  義郎君     佐藤 信二君   原田  憲君     中山 太郎君   村山 達雄君     額賀福志郎君 同月九日  辞任         補欠選任   松本 善明君     佐藤 祐弘君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 祐弘君     藤原ひろ子君 十一月八日  辞任         補欠選任   緒方 克陽君     前島 秀行君   米沢  隆君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   前島 秀行君     緒方 克陽君   伊藤 英成君     米沢  隆君 同月九日  辞任         補欠選任   小川  元君     二田 孝治君   工藤  晃君     石井 郁子君 同日  辞任         補欠選任   二田 孝治君     小川  元君   石井 郁子君     工藤  晃君     ───────────── 七月十九日  官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律の一部を改正する法律案二見伸明君外四名提出、第百八回国会衆法第一八号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案二見伸明君外四名提出、第百八回国会衆法第一九号) 八月三十日  大企業利益社会的還元に関する請願野間友一紹介)(第五七一号)  大企業利益社会的還元等に関する請願奥野一雄紹介)(第六一九号) は本委員会に付託された。     ───────────── 九月十四日  中小企業対策充実に関する陳情書外五件(第六三号)  円高差益還元に関する陳情書外二件(第六四号)  韓国産紬の輸入規制強化に関する陳情書(第六五号)  悪徳商法規制に関する陳情書(第六六号)  フロンガスの早期規制に関する陳情書外三件(第六七号)  産業廃棄物処理施設に関する陳情書(第六八号) 十一月七日  中小零細企業対策充実に関する陳情書外一件(第一五六号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ────◇─────
  2. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する事項  中小企業に関する事項  資源エネルギーに関する事項  特許及び工業技術に関する事項  経済計画及び総合調整に関する事項  私的独占禁止及び公正取引に関する事項  鉱業と一般公益との調整等に関する事項 以上の各事項につきまして、議長に対し、国政調査承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡辺秀央

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ────◇─────
  4. 渡辺秀央

    渡辺委員長 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  5. 尾身幸次

    尾身委員 きょうは商工委員会一般質問でございますが、まず、税制改正の問題と商工政策関連につきまして、通産省にお伺いをしたいと思います。  今回の税制改正法案内容そのものにつきましては、税制改正についての特別委員会において詳細に論議がなされておりますので、ここでは取り上げませんけれども、この税制改正をめぐる中小企業政策について、まずお伺いをしたいと思います。  我が国現行税制は、シャウプ勧告以来、戦後四十年間、大きな変革がなされなかったために、急速かつ大きく変化してきております経済社会に対応し切れず、種々のゆがみが生じているところでございます。すなわち、法人所得給与所得税負担が偏り、国際的観点からの我が国企業税負担不公平感、サラリーマンの重税感等が高まっている一方、消費課税につきましては、昭和二十年代、三十年代には税収全体の四〇%を占めていたにもかかわらず、その後一貫して低下を続けておりまして、最近に至っては二〇%にまで低下しているという状況でございます。また、現在の物品税個別間接税につきましても、課税品目税負担にアンバランスが目立ちまして、最近における消費パターン多様化とかあるいはサービス化の進展という実情に対応し切れず、極めて不公平な構造となっているという実情にあるわけであります。  さらに、二十一世紀に向かって、我が国においては世界一とも言える高齢化社会の到来が予想されているわけでございます。厚生省の推計では、昭和六十年すなわち西暦一九八五年には、六十五歳以上の高齢者一人を働き手六・六人が支えているという状況でございますが、西暦二〇〇〇年には四人で一人を支えることになり、そしてさらに十年たった西暦二〇一〇年には三人で一人を支えるという高齢化社会になると予想されているわけでございます。このような高齢化社会におきましては、いわゆる老人福祉切り捨てをしないで、国民の一人一人が安心して老後を迎えることができるようにするためには、どうしても現在以上に財政基盤がしっかりしていなければならないと思うわけでございます。  したがいまして、私は、一方において二十一世紀に向かって安定的な財政基盤を確立する、他方において先ほど述べましたような間接税不公平問題等を解決して、所得消費、資産にバランスのとれた安定的な税体系を構築するためには、政府の原案にありますように消費に広く薄く負担を求める消費税導入を含めました税制改正をぜひとも実現する必要があると考えているわけでございます。  しかしながら、他方、こういう税制間接税導入に当たりましては、経済基盤も脆弱な中小企業に不当にしわが寄ることのないよう十分に配慮することが必要でございまして、このような観点から、この消費税導入の成否のかぎとも言えます中小企業対策についてお伺いをしたいと思う次第であります。  まず第一に伺いたいポイントは転嫁の問題であります。  この消費税導入した場合に転嫁が円滑かつ適切に行われることが最大の課題でございまして、産業界がこぞってその重要性指摘しているところであります。特に中小企業は、大企業に比べまして弱い立場に置かれており、事業者同士が疑心暗鬼に陥り、抜け駆けを恐れて、個々の事業者の努力ではなかなかスムーズに転嫁が行われないのではないかという心配があるわけであります。  このような産業界の不安を解消して、円滑に転嫁ができるように、消費税法案附則第三十条におきまして、転嫁方法についてのカルテル表示方法についてのカルテルが、公正取引委員会に届け出ることによりまして独禁法適用除外として認められることとなっているわけであります。中小企業方々は、このカルテルを税の円滑な転嫁を行うための一つの重要な手段と考えて、本当にこのカルテルが利用できるのかどうか、また、利用できるとしたらどういう内容カルテルにすべきかという検討を始めているところだろうと推測をするわけであります。  しかし、この今の法律条文そのものを読んだだけでは、かなり難しく、抽象的なものでありまして、具体的にどのようなカルテルが認められるのか、また、届け出の手続はどうしたらいいかということについては、よくわからない点が多いわけであります。したがって、こういう点の詳細な内容について公取ガイドラインを公表するというふうに伺っているわけでありますけれども中小企業者の不安を解消するためにこのガイドラインを一刻も早く作成をしていただき、そしてまた、そもそもこの国会におきまして消費税法案審議するに当たって、ガイドラインを初めとする独禁法運用具体的方針を明らかにしない限り、実質的な審議は非常にしにくいという点も憂慮されるわけであります。  そこで、まず最初に公取委員長にお伺いしたいのでありますが、このガイドラインはいかなる内容のものになるのか、また、その発表の時期はいつごろになるのか、この点についてお伺いをさせていただきます。
  6. 梅澤節男

    梅澤政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま委員から御指摘がございましたように、今回の消費税導入に当たりまして、転嫁が円滑に行われるように消費税法附則独禁法特例に関する規定が盛り込まれておるわけであります。この趣旨につきましては、ただいま委員もお触れになりましたように、事業者にとってこの転嫁がやりやすいように、同時にまた、消費者にとってそれが便乗値上げにつながらないように、そういった点からこの特別措置が提案されたものと我々は理解しておるわけでございます。したがいまして、消費者にとってもわかりやすく、同時にまた事業者にとってもわかりやすいこの運用の実際のガイドラインというものは、御指摘のように私どもぜひ必要であると考えておるわけでございます。  そこで、その内容でございますけれども、まず転嫁方法、これは中小企業事業者に限定をされているわけでございますけれども転嫁方法は、内容的に言いますと、一つはそれぞれめいめいの販売価格消費税相当分を上乗せすることによって転嫁をする方法と、もう一つ価格ではなくて量によって調整するという、二つの方法があるわけでございます。  特に前者につきましては、例えば具体的な運用に当たりましては端数処理といったものがどこまで許されるのかという問題もございます。この点につきましては、取引の規模とかあるいはそれぞれの商品の取引慣行から見ましての、いわば値づけの単位と申しますか価格単位といったものからそれぞれケース・バイ・ケースで判断されることになるわけでございますけれども端数の切り上げにしろ四捨五入にしろあるいは切り捨てにいたしましても、なるべくそういった問題につきまして具体例を織り込みまして、先ほども申しましたように、消費者にも事業者にもわかりやすいガイドラインをぜひつくってまいりたい。私どもの方にも今各方面から各種の御相談や御質問も参っております。  それから、表示方法につきましては、これは値札消費税額をどのように表示するのか、内書き表示するのかあるいは外書き表示するのかといった問題のほか、値札は従来のままにいたしておきまして、消費者の買い上げが終わりました段階でレジで一括して消費税相当額を上乗せするということを業界で決めて、それを表示するといったようなやり方とか、あるいは事業者間の取引について特に言えることでございますけれども見積書とか納品書とか領収書請求書といったものにつきまして本体の価格消費税相当額を明瞭に区分いたしまして、いわばそういったものを業界で統一したフォームをお決めになる、そういったやり方も考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、そういった内容のものを盛り込みましてガイドライン作成し、公表することになるわけでございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、いろんなところからの御相談や御質問も参っておりますし、第一にこれからの立法府での御議論、それぞれ具体的な問題が提起されることも私ども当然予想しておるわけでございまして、そういったものを十分見きわめまして、なるべく具体例を織り込んだものをつくってまいりたい。  作成、公表の時期でございますけれども、これは御案内のとおり、消費税法の税の適用の時期に比べますと、独禁法特例に関する規定の部分は準備期間という意味でかなり早めに施行になることになっております。我々としては、まとまった形で公表するガイドラインというのは、法成立後、施行に間に合うように、手抜かりなくやってまいりたいと考えております。  なお、ガイドラインにつきましては、このほか、下請事業者が親事業者から消費税転嫁について不当な取り扱いを受けないようにといった下請法関連ガイドラインのほかに、一般にこういった税法施行されることになりますと販売表示の面でいろいろな問題が想定されるわけでございます。そういった場合にも、消費者に誤認を生じさせないように、公正な競争が行われるように、どういった表示をしたらいけないのか、どういった表示は許されるのかといったような、表示ガイドラインについてもあわせて作成し、公表することを考えておるわけでございます。  少し長くなりましたが、以上でございます。
  7. 尾身幸次

    尾身委員 今やや詳しい説明がありましたが、今委員長がおっしゃった実例については、カルテルの中に入れていただける、認めていただけるというふうに解釈をさせていただきたいと思います。もし違っていましたら追加で説明を願います。とにかく、消費税が実現したときに、中小企業方々が円滑に転嫁できるという、この法律の精神に基づいてガイドラインを決めていただきたいということを要望しておく次第であります。  次に、さらに具体的に中小企業の実態に即して質問をさせていただくわけでありますが、まず小売商業についてお伺いをいたします。  消費税は、消費に広く薄く負担を求めるもので、最終的には消費者負担すべき税であると思うわけであります。しかし、小売商業者は、厳しい競争状況の中で、消費者との接点として、消費税価格転嫁のいわば最前線に立っておりますので、転嫁について非常に強い不安を抱いているわけであります。  小売商業者転嫁円滑化のためには、まず消費税消費者転嫁されるべきものであるというこの消費税性格を十分にPRしていただきたい、そしてまた、そういう転嫁の環境を整えていただきたいと思うわけでございます。さらに、小売商業者転嫁力をつけるために、店舗改装とかあるいはコミュニティー施設整備等を通じた小売商業者体質強化近代化を図るべきでございまして、こういうために予算税制金融等の面で思い切った助成措置を講じていただきたいと考えるわけでございます。この点について通産省のお考えを伺いたいと思います。
  8. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生指摘になられましたように、確かに中小小売商業は、消費者との接点に立つという意味におきまして、消費税転嫁の問題について大変不安、懸念が大きいことを私ども肌身に感じている次第でございます。したがいまして、先生指摘になられましたような消費税性格につきましての消費者への周知徹底、あるいは先ほど公取委員長お答えになられましたような各種法制面からの措置にあわせまして、私ども といたしましても、中小小売商業者転嫁を十分に行えるような集客力をつけるような対策を講じてまいりたいと考えております。  具体的には、一つには商店街ぐるみ対策、もう一つ個別店舗対策というふうに分かれるかと思いますけれども商店街全体といたしましては、できるだけこれを魅力のあるものにすることによりまして、お客さんが集まるような力をつけていくことが大事だと思っております。そのためには、商店街におきますイベントホールとか駐車場とか商店街共同施設整備を積極的に支援するとか、あるいはいろいろな商店街で行っております各種イベント活動につきましてこれを支援する、あるいはお得意さんの情報管理をするシステムを開発する事業支援する、さらには転嫁がうまく行えるような工夫を凝らしている事例を集めまして、これを各地の商店街のお手本にしていただくように指導相談に乗っていく、このようなことも必要だと思っておりますし、また、個別店舗につきましても、やはり個別店舗魅力のあるものになりますと同時に業務が合理化、省力化できて税の円滑な転嫁ができるような体質にするために、種々店舗改装あるいは事務機器導入等のための支援措置を講ずることなどを考えております。さらには、税制面からも同様に、電子レジスター導入等支援できるようになればと今考えているところでございまして、このような予算金融税制面からの支援につきまして財政当局と鋭意検討いたしているところでございます。
  9. 尾身幸次

    尾身委員 次に、下請企業の問題でありますが、下請企業親企業に対しまして価格交渉力の点で非常に弱い立場にいるということから、転嫁に大変不安があるわけであります。下請中小企業我が国製造業のおよそ三分の二を占めているという現状から見ますと、下請企業転嫁問題というのは非常に重要な政策課題であると思っているわけであります。特に下請の場合に、たとえ表面上は三%という税率分転嫁が丸々実現しているように見えましても、他方親企業の方から合理化によって原価を下げるべきであるというような圧力を別途受けているのが実情でございまして、実際には転嫁ができたようでできないという事態も多いかというふうに心配をされるわけであります。  このため、まず下請代金支払遅延等防止法運用強化するというようなことによりまして、厳重な監視を行っていただきたい。そしてまた、下請企業取引先の開拓を新たに支援をするというようなことで下請企業価格交渉力強化するような施策も講じていただきたいと考えているわけでありますが、この点について、通産省の対応をお聞きしたいと思います。
  10. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生指摘のとおり、私どもも、消費税転嫁につきまして大変不安、懸念が大きい業種、業態といたしましては、先ほどの小売業と並んで下請企業が大変大きな意味を持っていると思っております。私ども、そういう意味で、下請企業消費税の円滑、適正な転嫁のためには各般の施策を講ずる必要があると考えておりますが、先ほど先生も御指摘になりました下請代金支払遅延等防止法等運用強化につきましては、先ほど公正取引委員長からもお話がございましたように、私どもといたしましても、親事業者取引上優越した地位にあることを利用して消費税額転嫁を一方的に拒否するというような不当な買いたたきなどが行われることがございませんよう、公正取引委員会とよく御相談をさしていただきまして、法の運用強化、監視体制の強化を図ってまいりたいと考えております。  そのほか、さらに、取引先親企業の多角化ということも、基本的には下請企業価格交渉力強化して、特定の親企業の言いなりにならないような力をつける意味で大事なことだと考えております。かねて下請企業振興協会においていろいろな取引のあっせんをいたしておりますけれども、これを抜本的に強化して、例えば設備とか技術力などにつきましても、ビデオ、画像の情報をいろいろ整備いたしまして、全国的にこれを提供して、取引先の多角化の一助に資するというようなことも考えております。  さらに、消費税転嫁親企業でちゃんと受け入れてくれるよう、私どもといたしましては、所要の要請、指導等も行いたいと存じておりますし、下請企業側に対しましても、このような点についての普及啓発とあわせてきめ細かな相談に応じられるような体制をつくりたいと考えておりまして、公正取引委員会のほか、予算措置を伴うものにつきましては大蔵省と、鋭意検討いたしているところでございます。
  11. 尾身幸次

    尾身委員 この下請中小企業小売商業の問題と並びまして、特に繊維産業につきましては転嫁が困難な特有の事情がございます。すなわち、繊維産地の特有の複雑多岐にわたります取引形態が存在しているということのために、そもそも消費税の円滑な転嫁が困難であるという事情に加えまして、最近に至っては発展途上国からの安い輸入品の急増によりまして、消費税転嫁に当たっての繊維産業を取り巻く環境が著しく悪化をしているわけでございます。このような繊維の事業者につきましては、今回の消費税導入によりまして特有の深刻な問題が生ずるというふうに心配されるわけでありまして、こうした繊維事業者のための特に強力な転嫁円滑化対策を講ずべきであるというふうに考えるわけでありますが、この点についてお伺いをしたいと思います。     〔委員長退席、奥田(幹)委員長代理着席〕
  12. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 先生指摘のように、繊維産業につきましては、特に川中の産地の繊維事業者について、アジアNIES等からの輸入の急増によりまして過当競争が非常に激化しているということ、あるいは中小零細企業が多く非常に弱い立場にあるということ、さらに産地特有の複雑多様な取引形態が数多く存在するという実態がございまして、消費税の円滑な転嫁を図ることは極めて重要であると十分認識をいたしております。  このために、産地における取引の実態を調査いたしまして、マニュアルを作成し、それをもって啓蒙普及をしていく、すなわち取引の適正化についての指導をしていくことが一つ。もう一つは、繊維産地の行っている各種の需要開拓事業がございます。例えば展示会でございますとか求評会と言われるものが行われております。あるいは、高付加価値の新商品の試作といった需要開拓事業支援していくということを考えております。以上二つの事業転嫁円滑化対策として検討中でございまして、現在財政当局と調整中でございます。
  13. 尾身幸次

    尾身委員 中小企業方々にとりまして、消費税導入に際しまして、転嫁の問題とともに心配しているもう一つの問題は、納税の事務負担が増大をするということであります。  確かに、前回の売上税に対して寄せられた多くの中小企業者の批判を踏まえまして、今回の税制改正法案におきましては、税額票方式をやめて帳簿方式を採用したこと、あるいは簡易課税制度の適用条件を緩和したこと、非課税取引の範囲を最小限にしたこと等の改善がなされておりまして、これによって納税の事務負担は大幅に軽減されていることも事実であり、私はこの点について大きな評価ができると考えているわけでございます。しかしながら、現実には、現在なお帳簿の備えつけを義務づけられていない所得三百万円以下の白色申告者はもちろんのこと、その他の中小企業者も、土地等の非課税取引が存在することなどによりまして、仕入れ税額控除できないものとできるものとの区分経理をしなければいけない、あるいは端数処理をしなければならないというような値決めの複雑さを初めとして、納税事務のある程度の増大は避けられないと考えているわけであります。  このために、中小企業の納税事務負担の軽減合理化を図ることが特に重要でございまして、記帳の代行であるとかあるいは税務相談といったサービスを中小企業方々に提供するとともに、中小企業の記帳の機械化を促進するという措置もとる必要があるのではないかと思うわけであります。こういう施策を実施するために必要な金融税制予算等の措置を十二分にとることによって、納税 事務負担を極力軽減する措置をとっていただきたいと考えているわけでございますが、この点についてお伺いをしたいと思います。
  14. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生指摘のように、今般の消費税法案におきましては、中小企業の納税事務負担につきましては相当程度軽減されるような工夫がなされていることは御指摘のとおりでございますけれども、そのような工夫によりましてもなお納税事務負担はどうしても増大することが避けられないわけでございますので、私どもといたしましては、消費税導入を円滑に進めるためには、先ほど来の転嫁円滑化とあわせて、納税事務負担の軽減合理化のための措置をぜひとも講じていかなければならないと考えております。  このような観点から、私どもといたしましては、例えば商工会、商工会議所でかねてから記帳指導をいたしておりますけれども、コンピューターのオンライン化を加速いたしまして、みずから記帳することができない小規模企業につきましては記帳代行をきちんと行うことができるような基盤を早急に整備することでございますとか、あるいは税務書類の作成も小規模企業にとりましてはなかなかなれないことになろうかと思いますので、税務書類作成の委嘱あるいはきめ細かな税務相談事業、これらにつきましても商工会、商工会議所の窓口を活用したいと考えております。さらには、中には個別企業におきましてみずから計算機あるいはコンピューターを導入いたしまして記帳の機械化をやりたいという方々もおられますけれども、それらの方々にとりましては資金面あるいは知識面で十分でない方々もおられると思いますので、こういう方々のために、機械の導入につきましては、事務処理合理化を促進するための税制措置を創設する、あるいは低利の融資制度を設ける、さらには機械の使い方、税法の仕組み等について詳細な研修指導を実施する。このようなことを考えまして、予算税制金融上の措置、考えられる手段を総合的に講ずることによりまして事務負担の軽減合理化を図るようにいたしたいと考え、財政当局と鋭意検討を急いでおるところでございます。
  15. 尾身幸次

    尾身委員 以上、消費税導入に当たりまして中小企業対策強化拡充が必要であるという点についてお伺いをしたわけでございます。私ども、この税制改正はどうしても必要であると考えておりますが、特に、消費税導入に当たって、日本経済の活力の源泉であり日本経済を支えている中小企業方々に過重な負担がかかることのないよう、十分な配慮と対策を講じていかなければならないと考えているわけでございますが、最後に通産大臣からこの中小企業対策についての御決意をお伺いしたいと思います。
  16. 田村元

    ○田村国務大臣 我が国経済を支えておりますのは中小企業であります。今回の消費税導入によりまして、中小企業に大きな負担が生じ、その活力をそぐようなことがあっては絶対なりません。このために、消費税の仕組みを決定するに当たりましても、中小企業の事務負担の軽減に十分配慮して簡素化に努めましたけれども、これで問題がなくなったとは考えておりません。能事終われりとするものではありません。事務負担はなお増大すること、また、転嫁についても中小企業者の不安が大きいことは十分承知をいたしております。これらを踏まえまして、各面で所要の措置を講じることが不可欠であると考えております。独禁法の暫定的例外措置などの法令面の対応を行うとともに、中小企業の納税事務負担の軽減合理化、税の転嫁円滑化のための所要の助成措置等につきまして、今後とも万遺憾なきを期してまいりたい、このように考えております。
  17. 尾身幸次

    尾身委員 次に、石油に関する税の問題についてお伺いをさせていただきます。  石油につきましては、揮発油税、地方道路税、軽油引取税、石油税、あるいは原油関税など、既に売上高の三〇%を超えます三兆数千億に上る間接税負担が課せられている実情にございます。今回の税制改正は、公平、中立、簡素な税体系を目指しているはずであるにもかかわらず、そしてまた、物品税や酒税等のその他の既存の間接税消費税の創設に伴いまして撤廃ないし減額されているという原案になっているわけでありますが、ひとり石油だけは従来の石油関係諸税に消費税が単純に上乗せで併課されるということになっているわけであります。石油関係の諸税が道路とかあるいはエネルギー対策等の特定財源であるという特別な事情のもとで、この点やむを得ない点もあろうかと思うわけでございますけれども、しかし、よく考えてみると、石油業界及び石油の消費者不公平感が強いというのも理解できるところでございます。  そこで、この税制改正を自民党で議論をしたときの自民党の税制調査会の税制改正大綱の中で、この石油の税につきまして、「消費税が併課されることによる石油に係る税負担については、引き続き総合的に検討するもの」としているわけでございます。この総合的検討の中で、例えば、原油関税を撤廃して、現在原油関税を特定財源としている石炭勘定へ、一般会計から、この原油関税の撤廃額と同額を繰り入れるというような対策を出すべきではないかと思うわけでございます。もちろん、そういうことによりまして、非常に大切な石炭対策の経費が削られたりあるいは石炭勘定がこれによってなくなったりするというようなことは絶対に避けるべきでございますが、こういう石炭対策についての犠牲を絶対に避けるという前提のもとで原油関税の撤廃も真剣に検討すべきであると考えるわけであります。仮にこの原油関税の撤廃が直ちにできないということであれば、もとに戻りまして、この消費税の世界で、例えば少なくともタックス・オン・タックスを排除するといった特別の減税措置を講ずべきではないかと考えるわけでございます。このまま何の具体策も示さずに税制改正法案をこのままで通してしまうというようなことになりますと、石油についての税負担の不公平につきまして、石油業界のみならず石油の消費者たる国民一般の理解が得にくいのではないかというふうに心配をするものでございます。したがいまして、この点につきまして通産大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  18. 田村元

    ○田村国務大臣 今回の消費税法案におきましては、御承知のように、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の趣旨にかんがみまして、定義上非課税となるものを除きまして非課税品目を設けないという原則、その原則から石油についても単純併課ということとされたわけであります。しかしながら、石油につきましては、今おっしゃいましたように、既に三兆円余に上る石油関係諸税が課されていることに加えましてさらに消費税が併課されることで、税負担の増大とともに、円滑な転嫁が可能か懸念されていることもまた事実であります。通産省としましては、御指摘の単純併課による税負担につきましては、引き続き総合的に検討する所存でございます。  いずれにいたしましても、この問題は重要な問題であると認識しておりまして、単純併課による石油に係る税負担につきましては、関係業界、石炭関係者など関係者の間で納得が得られる形で結論が得られるように、最大限の努力をする所存でございます。
  19. 尾身幸次

    尾身委員 次に、繊維をめぐる問題につきましてお伺いをさせていただきます。  我が国の繊維貿易をめぐる諸情勢は、ことしの五月の通産省の新繊維ビジョンの中間報告にもございますように、NIESの供給能力の増加や、あるいは急激な円高によります我が国繊維産業の国際競争力の低下、我が国国内市場の大幅な拡大、需要の高度化など、大きな変化を見せているところでございます。この結果として、我が国自体の貿易構造も、繊維輸出国から繊維の輸入国への構造的転換を見せており、この中で、繊維製品の輸入は趨勢的な増加傾向をたどると同時に、いわば内需に構造的に組み込まれた要素の一つとなりつつあるわけでございます。  一方、我が国が置かれた国際的立場も近年大きな変化を見せておりまして、膨大な貿易黒字が蓄積する中で、我が国は国際公約として製品輸入の 促進という基本方針を明確に打ち出しているわけでございます。同時にまた、発展途上国側の要望も踏まえまして、我が国経済協力の路線を一層強化して、従来の社会資本の整備性格に加えまして、途上国における輸出産業の育成に対する協力という点につきましても重点を置いて、経済協力は内容の面でも多様化しているわけであります。  我が国の繊維通商政策を考えるに当たりましては、今指摘した点を十分に見きわめるとともに、我が国の国際的立場を配慮することが必要でございます。同時にまた、欧米諸国が輸入規制などの保護主義的な圧力を強めてきている状況の中で、我が国繊維産業が開放市場下での構造調整を進めてきたという実績は、高く評価されるべきであると考えるわけであります。そしてまた、我が国経済発展の方向を考えれば、今後ともこの方針は基本的には堅持すべきであるというふうに考えております。  しかしながら、一方で、一部品目の輸入の急激な増大によります国内市場における撹乱の発生やあるいは国内産業への急激な打撃の発生などから、業界に深刻な懸念が存在していることも事実でございます。  こうした意味で、私は、最近の韓国からのニット製品の輸入急増問題について、何点かお伺いをさせていただきます。  ニット業界等の資料によりますと、韓国からのニット製外衣の輸入は、これまでも増加を続けてまいりましたが、昨年は増加幅が前年比で六八%というふうに非常に大きな増加を示しており、本年においても一月―九月の間に対前年同期比で四一%の増加を示しております。特にセーター類につきましては、本年の同じ一月―九月の間に対前年同期比で約七〇%増と激増をしているわけでございます。そして、我が国ニット業界は、こうした輸入の急増の結果、深刻な危機に直面しているというふうに言われております。  日本ニット工業組合連合会は、無秩序な輸入の増大について、政府に対してMFAを発動するように求めているところでございます。このMFAはガットの場でも認められております緊急対策でございまして、特定品目の輸入の急増等によりまして市場の撹乱が起きている場合には輸入規制の発動を認めているものでございます。この二国間の貿易インバランス等の問題についても十分配慮しなければならないのは事実でございますが、現在のように輸入が集中豪雨的に急増しているような場合には、長期的観点から、秩序ある輸入拡大を図るという観点からも、むしろMFAの発動も辞すべきではないと考えるわけでございますが、この点についての通産省の見解をお伺いいたします。
  20. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 お答え申し上げます。  通産省といたしましては、開放市場下での構造改善の推進ということから、我が国の産業政策の基本的な立場はその構造改善の推進にあるというふうに考えておるわけでございまして、輸入規制等の保護主義的な措置は可能な限り差し控えるべきであるというふうに考えております。しかしながら、一方、余りに急激な輸入の増加は、日本市場を撹乱し、結果として日本の国内業界ばかりでなくて輸出国側にとっても不利益をもたらすことになる、また国内業界の構造改善努力を妨げることになるとの認識のもとに、従来から、あらゆる機会を使いまして、関係国に我が国の国内事情を説明し、理解を求めてきているところでございます。特定品目の輸入急増によって国内産業に重大な被害が生ずるような場合には、輸入国との意見の交換や不公正貿易の場合のダンピング制度の活用等、種々の努力を講ずべきであるというふうに考えておるわけでございます。  御指摘のMFAでございますが、我が国は依然として膨大な貿易黒字の中で製品輸入等の拡大を図っていかなければならないということ、また、他の先進国と異なりまして、アジアNIESとの間にも依然として多大の二国間貿易黒字を有するという現状に照らしまして、現段階におけるMFAの発動については慎重に対応すべきであると考えておりまして、これら種々の努力の結果実効が上がらなかった場合の最後の手段というふうに位置づけるべきであるというふうに考えておる次第でございます。
  21. 尾身幸次

    尾身委員 特に韓国につきましてこのニット製品の対日輸出の秩序化について協力を要請してきているというふうに聞いているわけでございますが、その点についての先方との話し合い及び先方の対応はどうなっているか、実情をお聞かせいただきたいと思います。
  22. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 具体的に韓国とのやりとりにつきまして重立ったところを拾わしていただきますと、本年の四月下旬に韓国に対しまして生活産業局の審議官が我が国の国内事情の説明をいたしまして、秩序ある輸出につき要請をいたしたところでございます。また、業界レベルでは、五月に二回にわたりまして日本繊維産業連盟等の国内関係業界の代表が韓国を訪ねまして情報交換を実施いたしました。このような中で、六月二十六日に、韓国政府は、輸出秩序を維持するねらいから、ニット製品の対日輸出について輸出推薦制というものを実施し、韓国側業界団体内に輸出秩序維持対策委員会を創設するという措置の決定をいたしました。そして、その決定に基づきまして、七月一日から韓国政府は輸出推薦制を実施し、また七月七日以降先ほど申し上げました委員会が設置されているという状況にございます。七月下旬にさらに当方から審議官を派遣いたしまして、先方商工部の高官と会談したわけでございますが、双方は両国業界間の意思疎通を図るためのチャンネルの拡大を図ることが必要であるとの共通認識に至ったわけでございます。と申しますのは、七月一日からの推薦制にもかかわらず、どうも数字は依然として伸び続けているという状況が認識されたものでございますから、そのような対応をとったわけでございます。  これを踏まえまして、八月末にソウルにおきまして両国業界の会談が行われまして、さらに十月の半ばに東京におきまして両国業界間の専門家ベースの会合が開かれて情報交換を行ったという状況にございます。このような先方の対応にもかかわらず、対日輸出鎮静化に向けての実効が上がると推測されるような具体的な手がかりが得られなかったというふうに私どもは承知いたしております。
  23. 尾身幸次

    尾身委員 今のお話でございますと、韓国側と鋭意折衝しているけれども、まだ具体的な成果が上がっていないというふうに理解をするわけでございます。このことは、日本の基本的な自由貿易原則との関連もありますので、慎重に対応する必要があると思いますが、しかし、今の現状で見ますと、やはりこのMFAの発動ということも一部品目についてはやらざるを得ないという実情に立ち至る可能性もかなりあると思っているわけでございまして、そういう場合には通産省としても適切な決断を願いたいというふうにお願いをしておく次第であります。  次に、先日国内の業界が、韓国からのセーター類の輸入につきまして、ダンピング輸出であるとして、提訴を行ったところでございます。私は、かねてから、我が国は自由貿易を基本政策として、輸入制限的措置は極力とるべきではないと考えているわけでございます。ただ、同時にこの自由貿易は公正な貿易秩序のもとに行われるべきである、相手国にダンピング等の不公正貿易があった場合には厳正に対処することが自由貿易経済の正常な発展のために必要である、そしてこれは相手が韓国であると否とにかかわらないというふうに考えているわけでございます。私は、政治家として、隣国であります韓国との長期間にわたる友好関係は極めて大切であると思っているわけでございますが、ダンピングが本当に行われたのであれば、韓国業界に対してといえども断固として対処すべきであり、これによって韓国との友好関係にひびが入ることはないと確信をしているわけであります。  我が国ニット業界の今回の提訴につきまして は、迅速にかつ公正に調査を行い結論を出していただき、その結論に基づいて適切に対応すべき問題であり、その対応がおくれて日本の業界が不当に大きな被害を受けることは何としても避けなければならないと考えているわけでございます。そういう意味で、公平な公正な貿易そしてまた自由な貿易を長期的な観点から発展をさせていく、そういう観点からもこの問題について適正な処置を願いたい、適正な対応を願いたいと思っているわけでございますが、通産省のお考えをお伺いをしたいと思います。
  24. 田村元

    ○田村国務大臣 一般論として申せば、仮にダンピング事実が明らかになりました場合に、自国産業を守るための正当防衛措置としてダンピング関税を賦課することはガット上認められた権利でございまして、これは我が国の輸入促進という基本政策に何ら逆行するものではございません。このような考え方に立ちまして、ガットの諸規定及び関係国内法令等にのっとりまして、今後大蔵省とも十分に協議の上、お互い協力して公正に対処してまいる所存でございます。
  25. 尾身幸次

    尾身委員 繊維産業は、現在、一方において輸入の急増によりまして非常に苦境に陥っている反面、多品種・小ロット・短サイクル化というような国内需要の構造的な変化への対応も迫られているわけでございまして、そしてまた、先ほど申しましたように、税制改正に伴います転嫁の厳しさという問題にも直面をしているわけでございます。そういうわけで、今後繊維産業を取り巻く環境は極めて厳しいとも言えるものでございます。こういう状況の中で、この繊維産業の活性化を図り、環境に対応した構造改善を一層強力に推進をして、新たに発展をしていく繊維産業の活路を見出すということが非常に必要であると思っているわけでございますが、今後の繊維産業対策についての通産省の御見解をお伺いをいたします。
  26. 田村元

    ○田村国務大臣 繊維産業は、製造業、流通業の全従業員のほぼ一三%、二百八十万人の従業者を擁しております。地域経済に大きな影響を有する重要産業の一つでございます。こうした繊維産業が、現下の厳しい事態を打開いたしまして、新たな発展を実現していくことは、国民経済観点から見ましても極めて重大な意義あるものと考えます。繊維産業の新たな発展のかぎは、内需の高級化、多品種・小ロット・短サイクル化に対応した供給体制を構築するとともに、商品提案を通じて新たな需要をつくり出すいわゆる生活文化提案型産業へと脱皮していくことにございます。そのための繊維事業者の努力に対し、政府といたしましても積極的に支援を行っていく所存でございます。このために現行の繊維工業構造改善臨時措置法を改正、延長いたしまして、これを中核として新たな繊維産業対策を展開する方向で目下検討中でございます。  具体的に申しますならば、需要構造の変化に対応した新たな構造改善事業及びこれに対する産地組合等の支援事業の推進でございます。また、二番目には、商品企画機能、情報収集発信機能の向上のための基盤施設たる繊維リソースセンターの整備、また三つ目には、情報化への環境整備、その他もございましょうが、こういう大きな三つの柱、このために所要の財政金融上の支援措置を目下要求中でございます。
  27. 尾身幸次

    尾身委員 次に、世界各国における累積債務の問題についてお伺いをさせていただきます。  一九八七年末の時点におきます世界の発展途上国の累積債務の総額は、一兆二千億ドルの巨額に上るというふうに推計されております。翻ってみますと、この累積債務の問題は、既に一九八二年メキシコの債務危機が発生をいたしました際、これを契機に世界的な問題として顕在化したわけでございますが、その際先進各国は、累積債務問題を一時的な流動性の不足というふうに位置づけまして、緊縮的なマクロ政策とつなぎ資金の貸し付けを行えば解決するという考えで、いわば場当たり的な対処療法で対応してきたとも言えるわけでございます。しかしながら、ここ二、三年、ブラジル、フィリピン等におきます累積債務問題の再燃は、八二年当時と比べますと一層深刻な事態となっておりまして、その原因について従来と全く異なった認識を持たざるを得ない状況でございます。すなわち、この累積債務の問題は、その根本原因が発展途上国の債務返済能力自体が不足してきているというところにあるわけでございます。  こうした中におきまして、先進各国はいろいろな対応を講じつつ危機を回避してまいりましたが、本年のトロント・サミットにおきましても、この累積債務問題が最重要案件の一つとして取り上げられまして、さまざまな合意がなされたところでございます。これら先進各国のこの問題に対する真剣な取り組みにつきましてはそれなりに評価をされるべきでございまして、その着実な実施を図っていくべきであると考えているわけでございます。しかし、この累積債務問題の根本的な解決は、発展途上国におきまして外貨獲得型産業が育成をされ、そして債務返済能力の向上が図られていくことにあると考えられます。  そこで、私は、今現在世界的な課題となっておりますこの問題に対する我が国の取り組みにつきまして質問をしたいわけでありますが、まず第一に、発展途上国の債務累積問題を解決するために途上国の外貨獲得能力を向上させる必要があり、また、このために通産省はどんな取り組みをしているか、お伺いをさせていただきます。
  28. 田村元

    ○田村国務大臣 累積債務問題は、発展途上国の経済発展にとりまして最大の障害であるのみならず、世界経済の安定的発展を図るためにも解決すべき最重要課題一つであることは申すまでもございません。累積債務問題の解決を図っていくためには、御指摘のように、発展途上国におきまして外貨獲得型産業を育成して債務返済能力の向上を図っていくことが不可欠でございます。  このような観点から、我が国は、政府開発援助の拡充、投資の促進及び途上国からの輸入の拡大という、援助、投資、輸入というものが三位一体となった総合的経済協力を推進いたしておるところでございます。御承知のように、私が昨年の一月タイのバンコクで表明いたしましたニューAIDプランもその一環でございます。また、特に直接投資や新規貿易信用によって供与される民間資金というものは、技術、経営ノーハウ、設備等の経済開発資源を一体的に移転する効果を伴っておりますし、途上国の外貨獲得能力向上に極めて有効でございます。このような直接投資など民間の還流の支援を我々としても今後とも拡充していくことが重要と思料いたしております。
  29. 尾身幸次

    尾身委員 今お話にございましたように、この問題は大変大事なんでありますが、特に先進国から発展途上国への民間ベースで投資とか貿易信用の供与を行うことが、債務国の外貨獲得能力の増大のために大切である。そしてまた、民間が、このような対外取引に伴う種々のリスクに対しまして、どうしてもちゅうちょすることは否定できません。この点をクリアして、民間の思い切った対外取引を可能にするためには、貿易保険制度の果たすべき役割がますます重要になってくると考えているわけでありますが、通産省は貿易保険の拡充のためにどのように取り組んでいるか、この点についてお伺いをいたします。  特にこの貿易保険につきまして、現在残高が十兆円ということになっております。しかし、それに対する資本金が七十億という極めて少ない数字であります。来年度予算では三十二億円を要求しているというようなことを聞いておりますけれども、この程度のものでは十兆円の残高に対して全く不十分である。債務累積問題の基本的な解決のために貿易保険が果たすべき役割をこの程度ではなかなか果たし得ないのではないかと思うわけでございまして、シーリング等の問題もあってなかなか難しい問題がございますが、この点については、大所高所的な観点から、ぜひもう一段階の御奮発を通産大臣にもお願いしたいと思うわけでございます。この点につきまして大臣の御決意をお伺いして、質問を終わらせていただきます。
  30. 田村元

    ○田村国務大臣 まず前段のくだりでございますけれども、貿易保険は累積債務問題の解決のため に次の三つの政策課題を実現していくべきであると考えております。  その第一は、発展途上国に対する保険引き受けを弾力化することによってこれらの国に対する新規資金供与を拡大することであります。貿易保険がカバーする貿易信用及び直接投資は、技術、経営ノーハウあるいは設備等の経済開発資源を移転する効果を有するものでございまして、債務国の経済再建にとって特に有効であると考えます。  第二に、パリ・クラブを通じましたリスケジュール、いわゆるリスケでございますが、これを実施することによりまして債務国の有する既存債務の軽減を図ることでございます。貿易保険は我が国が応じておりますリスケジュールの約七割を占めております。その役割はまことに重要でございます。  第三に、トロント・サミット及びパリ・クラブの合意を受けまして、最貧国に対する債務救済措置を実施することであります。この三つが大きな柱であろうかと思います。  以上の課題に対応するために、通産省としましては、保険料率の改定、利用率の向上、リスケジュール債権回収の徹底等の自主努力を行うとともに、一般会計からの資本繰り入れを図ることによりまして、財政基盤強化に向けてあらゆる角度から全力を挙げて取り組んでいるところでございます。  そこで、この貿易保険の財政基盤強化の問題でございますが、これはもう政府全体として取り組むべき問題でございます。一通産省だけが苦労しなければならぬ問題じゃございません。世界に貢献する日本という点からいって、日本国政府として取り組むべき問題であります。また、利用率の向上等の自主努力のみならず、思い切った政策原資の導入が必要不可欠であると考えております。六十四年度予算として、今おっしゃいましたように三十二億円の資本繰り入れを要求しておりますが、もとよりこれだけで貿易保険の財政基盤強化が成就するものと考えているわけではございません。今後ともあらゆる機会をとらえて大幅な政策原資の導入を図るべく全力を尽くす所存でございますが、補正予算というものがあるかどうか、これは私にはわかりません。また、今これに触れるべきではないと思います。しかし、もし仮に補正予算が組まれるものとするならば、そのときに私は貿易保険というものは大きな目玉にしてもらわなければ困ると思っております。先ほどおっしゃったように、シーリングその他で当初予算でなかなか難しい問題がございますから、それならば、もし補正予算を組むとすれば、それは願ってもないチャンス、それこそ中途半端な額では困るので、思い切った予算要求をいたさせようと思っておりますし、また、当然財政当局も、世界に貢献する日本ということで、妙なちゃちな抵抗はしないと私は思います。私は財政当局の良識を信じておりますから、その点ではまず大丈夫と考えておりますので、事務方に思い切って吹っかけろ、こう言って実は指示しておるところでございます。
  31. 奥田幹生

    奥田(幹)委員長代理 緒方克陽君。
  32. 緒方克陽

    緒方委員 通産大臣に、まず非常に簡単な問題から御質問をしたいと思います。きょうは原子力発電所の問題と、それからIJPC問題その他を取り上げさせていただきたいと思いますが、安全という言葉の問題です。  安全とは一体何で示すのか。私は、結果で示すものであって、宣伝とかPRでこれを示すものではないというふうに思うのですが、安全とは一体何で示すものかということについて通産大臣にお尋ねをいたします。
  33. 田村元

    ○田村国務大臣 安全ということについては、私は、安全実績というものに対して科学的に確認をすること、と同時に、安全というものを心理的に受けとめるということ、この二つがあると思います。  でございますから、文字どおり安全実績というものを十分に積み重ねて、そうしてそれを大いにPRする。つまり両方が相まっていかなければならない。PRが先になって安全が後になるということはどうかと私は思いますけれども、安全実績が十分積み重ねられていく、それを隠す必要はないのであって、これはこんなに安全ですよということは大いにPRしていいのではないだろうか。むしろ国民の精神的な不安定を取り除くためにも、安定していただくためにも、それは大いにPRすべきものというふうに思っております。
  34. 緒方克陽

    緒方委員 そこで、今二つのお考えが示されたわけですが、実はことしの五月十一日に、新聞報道によりますと、通産大臣は電力の九社長との朝食会であいさつをされて、今言いましたような問題についてお話をされております。それで、これは聞いた話でありますけれども、聞くところによりますと、そこでの大臣の発言というのは、原子力発電所というのは電源として今後重要なものである、したがってこれを推し進めなければならぬということを言われた上で、国民の皆さんの信頼を得る必要があるということで、安全運転の積み重ねが大事であると同時に安全性に留意しながら運転していくということが大事である、そうして最後に国民の皆さんの理解を得なければならぬということを言われたというふうに、これはあるところから、そういうことであるというふうにお聞きしたわけです。原発の問題については後ほど同僚議員からも質問があると思いますが、国際的には脱原発の方向に流れているということは疑うことのできない事実であるし、これは必ず日本にも及んでくるであろうというふうに私は思っておりますが、きょうはそのことは本題ではありませんので、安全PRについてお尋ねをしたいということであります。  大臣は、さっき言われたようなあいさつをされたということですが、翌日の新聞に、これは十二日の毎日ですが、それによりますと、「原発PR政府業界”2人3脚”」という見出しですね。それから次に同じように、これは朝日新聞ですが、五月十二日です。「通産相がPR要請 原発推進、業界首脳に」ということで新聞の記事になっているわけです。結局大臣のそういう要請がこういう記事になったわけです。そして、次に一体何が出てきたかといいますと、もう大臣も見られていると思いますが、その翌月か翌々月ぐらいから新聞の全面を使って、これは六月四日ですけれども、「原子力発電は日本のためにも 世界のためにも 必要なものです。だからこそ 念には念を入れて 安全の確保のために こんな努力を 重ねています。」ということで、こういう新聞広告が全国の新聞にしょっちゅう連載をされるということになっているわけです。つまり、大臣の要請を受けて、新聞を利用したこういった安全PRというものが強まったという実績があるわけです。  しかし、現実にはどうかといいますと、その後もいろいろなところで事故が起きて、一次冷却水が漏れるとかあるいはボルトが折れるとか、いろいろなトラブル、事故が発生しているわけですね。聞くところによりますと、一回の新聞の広告で大体二億円ぐらいかかるという話ですが、二億円の費用、これも実は私たち一人一人が払っている電気料金の中から払われているわけですね。そういたしますと、自分たちが不安を感じあるいはしょっちゅう事故を起こしている、そういうものについて国民が払っている税金で安全PRをするというのは、これは問題だという声が非常に上がってきております。事実、佐賀県の玄海原発、地元にある原発ですが、そのときでも問題になったのですが、ちょうど余熱冷却装置の亀裂が起きて一次冷却水が漏れたということで皆さん抗議に行ったわけです。こんなに安全PRをしているのに一体何だ、ぐっとでもきゃっとでも言ってみなさいという話になりましたけれども、電力会社側はぐっともきゃっとも言えないということです。幾らPRをしても次々に事故が起きていけば、これは逆に国民の感情を逆なでするということになるわけですよ。  そういう意味で、結果的に大臣の発言を受けてマスコミがこういうことでどんどんやり出して、これからもどんどんこれが続いていくということになれば、これは私自身の気持ちも含めてですが、そういう安全PRの分まで電気料で取るのはおか しいということで不払い運動が起きますよ。そういう意味で、大臣が言われた趣旨とどういうふうに変わっていたかよくわかりません、二つのことを言われましたが、こういうことでは国民の不信をますます募らせるばかりだというふうに私は言わざるを得ないということで、大臣としては、そういう業界での話が結果としてこういう国民の感情を逆なでするような電気料金を使っての安全PRについてはやはり問題があったということで、何らかの手だて、取り消しなり本意を伝えるということをしてもらわなければならぬと私は思うのですが、その点について、通産大臣自体のあいさつの問題ですから、この際お答えをお願いしたいと思います。
  35. 田村元

    ○田村国務大臣 私の申し上げたあいさつは、若干の違いはありますけれども、違いといいますか、おっしゃらなかったところがありますが、ほぼそのとおりです。私はそれにつけ加えて、原子力発電がなぜ必要なのかということを大いにPRしるということを強く言った、それはつけ加えて申し上げておきます。  それから、電力料金は電力会社の収入ですから、電力料金でもって原子力発電の安全性をPRすろのはいかぬとおっしゃるのですけれども、私はむしろ当然だと思います。ということは、原子力発電というのが電力に関係がないのなら、例えば原子爆弾の実験の金を電力料金で出すとこれはとんでもないことになります。けれども、電力なのでございますから、しかも日本の電力の三割は原子力発電によって供給されておるわけでございますから、これはPRに使っても技術開発に使ってもあるいは実験に使っても、一向に構わないのじゃないかというふうに私は思っております。  私はいつもよく言っておるのでございますけれども、原子力発電で随分たたかれるわけです。私もたたかれるよりはたたかれない方がありがたいのです。なぜ原子力発電というものを言わなければならないかということでちょっと申し上げてみたいと思いますけれども、日本は資源がないのです。でございますから、この有限の資源というものに対してどう対応するかということを深刻に考えなければならぬと思います。  石油の寿命というものは、今のままでいくとあと四十年しかないと言われております。その四十年たちますと、オイルシェールとかオイルサンド、あるいは少々の探鉱ということはあるかもしれませんけれども、それにしてもオイルシェールやオイルサンドというものから油を搾っていく、非常に高い油になっていきます。将来価格が上昇すればということを考えますと、日本の経済はもちろんでございますけれども、国民生活も大変高い料金の電気やガスを使っていかなければならぬことになってくる。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕 また、今度はガスはどうだ。天然ガスとて限界があります。今の石油よりももっと少のうございます。八割ぐらいと言われております。それから、今度は石炭にかえたらどうだ、こういう説がありますけれども、石炭にかえれば、それによって起こってくる酸性雨、これは一体どうなるのでしょうか。日本の山野は酸性雨で枯渇してくる。今度はまた温室効果をどうするか。それこそ天候が狂ってしまって、水位まで高くなってくるということまで言われているというようなことを考えますと、私は御質問お答えをしておるわけですが、いろいろなことを考えますと、まだ代替エネルギーもそこまで開発されていないということになれば、私自身、仮に原子力発電に反対するとすれば、あるいは批判するとすれば、それにかわる妙案というものを出して、我々の子供や孫や子孫というものにより安定的な低価格のエネルギーをどうして渡してやるか、私はそこまで論じた反論がなければなかなかならない。私は、原子力発電に反対しようと思ったけれども、科学者でありませんから、その反論を見出すことはできなかった。これはみんなで考えなければならぬ問題ではなかろうか、このように考えます。
  36. 緒方克陽

    緒方委員 きょうは原子力発電所は日本にとってどういうものかということで長期的に議論する時間がありませんから、そういう問題は、わずか一時間しかありませんし、その中で二、三問しか準備しておりませんから、それはしません。  今問題にしているのは、大臣の答弁によれば、安全PRというのはやっても構わないという話ですが、現実にあちこちでそういう宣伝をしている翌日に事故が起きているわけですよ。そして、電力会社に、こういう宣伝をしているけれども、一体どうですかというふうに言ったら、電力会社はぐうの音も出ない。そういう実態があるし国民の声があるわけですから、そういうものに耳をかさないで、それは通産省として、政府としては構わないのだということが進んでいけば、原発の不安と、それから実際に原発を真剣に考えているいろいろな国民、それは政党政派を抜きにして考えている人たちから、政府に対して物すごい反撃といいますか、電力会社に対してそういう怒りというものがますます出てくることになるということだけは、今のお答えを聞いてはっきり申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、今のことに関連して具体的な例でお尋ねをしたいと思います。  私のところは佐賀県ですけれども、玄海一号機という原発があるわけです。これは動き出して間もなく、巻尺を蒸気発生器の中に落として、蒸気細管が穴があいて放射能が漏れるとか、蒸気発生器の減肉現象とか、あるいは粒界腐食とか、冷却水のポンプのシャフトが折れるというような、いろいろな事故が起きまして、実は今までに十五回もあるわけです。ところが、ことしの六月でありますが、定期検査が終わってわずか一カ月しかたっていないというときに、一次冷却水に絡む余熱除去装置の配管、これは二十センチくらいでステンレスということですけれども、その上の方に八センチくらいの亀裂が入って、そこから冷却水が漏れたという事故が発生したわけです。それで地元では、私たちだけでなしに保守の議員さんあるいは県知事さんを含めて、どうも玄海一号というのはこれはもう危ないのではないかということもありまして、その後の佐賀県議会でも、玄海原発の安全確保に関する意見書というのが満場一致で決まって、通産大臣にもその意見書が送られてきているわけであります。  結局この問題は何かといいますと、定期検査が行われたわずか一カ月後に一次冷却水が漏れるという事故が起きたということ。そして、後で調べてみると、これは想定できない事故であったということですね。そして三つ目に、これは一とも関連しますが、検査で亀裂が発見できなかったこと。それから、そういう一次冷却水が漏れたわけですが、それが不明のまま、緊急停止を行っていないということですね。それから、関係市町村に対する事故情報の適正な連絡が行われなかったということがあって、いろいろ県内では問題になっているわけです。それは保守革新を問わず、保守の議員さんの中でも原発問題の勉強会ができて、安全性をどうするかというような議論にまで現地ではなっているという状況ですね。  そこで問題は、想定できなかった事故が発生したということでありますから、これからもこういった重大な事故が起こり得る可能性は十分に持っているというふうに言わなければならないと思うわけですね。そして、聞いてみますと、この一次冷却水の溶接部分の検査というのは、四十年のうちに四分の一ずつ一回やればいいということを言われておりまして、そういう内部規程になっているそうです。そうすると、原発は四十年ということに一応言われておりますが、今の時期で言うと三十年ぐらいで終わるというのが多いのではないか。そうすると、一回もそういう重大な溶接部分が検査をされないままで運行をされるということになるわけでありまして、大変危険だということですね。  そういう意味で、今回のような、溶接部分の検査が十年に一回というようなこと、しかもそれが四分の一しか行われないということであれば、再びこういう事故が起こり得るのではないか、絶対 ないという保証が言えるのかどうか、そういう県民の率直な声がありますから、この点についてお尋ねいたします。
  37. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  先生今御指摘の玄海一号機の余熱除去系の検査の件でございますが、六月六日に一次冷却水の漏えいという故障が起こったわけでございます。しかし、これは、配管の亀裂というのは小さく、安全上の問題ということではなくて、格納容器の中の排水だめ、ドレンサンプの中にためられたということでございますし、これは処理されました後、外部に放射能が出るというものでございません。そういうことで、安全という問題ではございませんが、我々は定期検査ということで設備を検査をしております。  しかし、今の御指摘の、定期検査の中でやっておりますISI、供用中検査ということでございますが、これは考え方をちょっと御説明させていただきますと、重要な配管等につきましては、設計の段階から材料あるいは構造というのを十分吟味して、供用期間中、三十年、四十年というのを大丈夫なように、破断しないように設計しているわけでございます。それを長期的に見まして設計段階のことが確保されているかどうかということを、代表的な部位につきましてISI、イン・サービス・インスペクションということで検査しているわけでございます。  そういうことで、今回損傷がISIということでは見つかりませんでした。というのは、三年前にやっているわけでございますが、このときは局部で探傷が難しかったということもございましたし、それから、数年前ということでございますと、その亀裂がそれほど大きくもなかった。仮に検査で十分やっていても、亀裂が検知限度以下かもわかりません。そんなことでできなかったわけでございますが、最近こういうような検査機器の開発ということも相当進んでおります。それから、ISIの範囲というものにつきましては、四十年なら四十年、供用期間中計画的に実施をしております。  そういうことで、今回の余熱除去系のような特殊事象、これは熱成層という事象が起こりまして、特殊なメカニズムで熱疲労というものが起こったわけでございますが、こういう特殊な問題につきましては、我々は、定期検査でその部位につきまして原因等を十分解明し、その部分については今後もよく対応していくということでございまして、ISIというものについては、従来どおり、発電所全体の供用期間中を通じて計画的に我々はやっているということでございますので、その考え方はぜひ御理解いただきたいと思います。  それから、この配管除去系の対策でございますが、これはいろいろ入り口弁のパッキンの問題があったわけでございまして、その取りかえを行ったとか、あるいは弁のディスクの調整の問題もあったということで、それも調整をし直しておりますし、今後は、そういう熱変動、熱成層が起きたかどうかということにつきましても検知できるような温度計をつけるというようなことで、当該問題につきましては万全を期したところでございます。  以上でございます。
  38. 緒方克陽

    緒方委員 ちゃんと設計は四十年間大丈夫なように設計をされているというけれども、三年前の検査で結局それが発見できなかった。実はこれは、ずっと長い期間かけてそういう亀裂が八センチ、それから、だんだん上の方にいくと小さくなっていますけれども、二十センチのパイプで、内側に八センチの亀裂が入るということは、それは大変な気圧がかかっているところですから、これが絶対に破断しないという保証はだれもできないわけですよ。そしてまた、今言われたように、破断しないように設計をしていると言っているけれども、実は、内側は八ミリ、上の方では一ミリか二ミリから水が漏れたということですけれども、そういうのが現実に起こっているということは、四十年間安全なように設計しているということ自体が、これは事実と違うじゃないかということに現地に住んでいる県民の感情はなっているわけですよ。それは単に、さっきも言ったように、保守革新の問題ではないところまでなっているわけですね。  そして今、ISIについては、そのことでやっているから理解をしていただきたいということですが、なかなかそのことについて理解しがたい。四十年たってやっと一回検査、もう一遍同じような、また別の特殊的な状況の中で、そういう亀裂が起きたらどうするのかという疑問をやはり現地の住民の人は率直に持っているわけですよ。そういう声に対しては、やはりこのISIというものについても検討をし直すというような率直な態度がなければ、結局、通産省、つまり政府は安全だ安全だということばかり言うけれども、ちっとも国民の不安に対して答えていないじゃないか、そういう声になってくるわけです。  ですから、今、理解をしていただきたい、ISIでやっているから十分だということで理解をしていただきたいということですが、いや、それでは不安だという国民の声に対して検討の余地もないということかどうか。そういうことであれば、いいですよ、その実態を国民の皆さんに報告をして、いや、こういうことで安全問題については責任ある回答をされておりませんということで、国民の皆さんが判断をされることですから。そういう素朴な疑問、ISIの見直しについて、してもらうべきだという声があることについて一顧だにしない、そういう答えであればそれでいいですけれども、そのことについてお答えください。
  39. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  原子力発電所の安全確保ということは、我々は、定期検査ということで、発電所を一年運転しますと、三カ月、四カ月とめて全体的にチェックするわけでございます。それで、この中で、次の運転期間中に問題が起きないようにというような考え方で、予防保全ということで、機器とか系統の健全性を確認しているわけでございます。  そういうことで、定期検査といいますのは、原子炉を安全運転するためにもう少し体系的に我々は考えてやっておりまして、故障、トラブルが発生した場合に、原子炉を自動的に安全にとめられるような安全停止系なんかは国の責任できちっと検査をしている、あるいは原子炉圧力容器等についても、今のISIということで非破壊検査をやっております。それから、調整運転でまた運転状態を見まして、問題ないかどうかを確認しておるわけでございます。そのほかに、電気事業者が自主点検として、いろいろな部分の分解点検あるいは単体の機能とか系統試験ということをやって、オーバーオールで安全性というのを確保しているわけでございます。そういうことで、ISIについてだけで安全が確保されているということでございませんで、今申し上げましたような、通常運転中にもいろいろな格納容器の中の運転状態、水漏れがあるかどうかということについても監視しているわけでございます。  それで、今回も、漏れの量から考えますと、相当の低いレベル、一時間当たり五十リッターというような極めて微量な段階で発見されているわけでございます。しかし、これは、保安規定等我々決めておりますマニュアルによりますと、一時間当たり二百三十リッターを超えるおそれがある場合は運転を停止して点検しようということでございまして、これは随分先の段階で念のため原子炉を停止して点検し、発見したものでございます。  そういうことで、こういうような発電所全体の安全をいろいろなシステム、考え方によってやっているということを、我々も今後ともぜひいろいろな方々に理解していただこうというふうに考えております。  以上でございます。
  40. 緒方克陽

    緒方委員 それはいろいろなことで考えてあるでしょう。私が質問したのは、率直な疑問が出ているという中で、仮に、ISIというものについて、もっとすべきじゃないかという率直な声が出ているわけですよ。具体的にやっていかないといけないから言っているわけで、もうそういうのは関係ない、全体をやっているから関係ないならな い、そういう国民の率直な声について一顧だにする気持ちはないということであれば、そのことだけ答えてください。全体のことはいいです。ISIについて検討の余地はないのかという率直な、そのことについてだけ答えてください。
  41. 向準一郎

    ○向政府委員 今回の特殊な要因のものにつきましては十分調査する、定期検査で検査するということになっておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、このISIの考え方、供用期間中の検査というのは、いろいろなものに全体的な哲学でやられておるものでございまして、これは我が国だけではなくてアメリカ初め軽水炉を使っている国も同じようなASMEという考え方でやられているわけでございますが、そういうようなもので進めておるわけでございます。そういうことで、我々は、この供用期間中検査というのは一つの大きな哲学で体系づけられているものでございますので、このものにつきましてはこういう考え方で今後ともやっていきたいと思いますが、今申し上げましたように、いろいろ定期検査等で発見されました特殊な問題につきましては十分対応し、かつ、ほかの発電所についても、十分反映する必要があるものにつきましては、それ以降に行われます定期検査で、十分その部分についてもよく見ていくという立場でやっていきたいというふうに考えております。
  42. 緒方克陽

    緒方委員 今そういうお答えですけれども、定期検査にしても今はだんだん効率を上げるためにということで短縮をされておる実態ですね。それで、今のISIの問題ですが、一つの哲学でやっているから、アメリカもやっているからということで、とにかくそれで押し通すんだということについては国民は納得しませんよ。とにかく自分の考えていることは絶対間違いないんだ、率直な、素朴な国民の不安とか不信とか疑問とかいう点についてはやはり政府はこたえるようにしていかないと、そういう押しつけだけではますます住民との間でずれが出てくるということだけ申し上げて、このことについては到底佐賀の県民は納得できない気持ちであるということで私は報告しながら、この問題についてさらに今後追及していきたいというふうに思います。  それから次に、消防庁お見えですか、このことでお尋ねいたします。  実は原発の事故が起きるたびにいろいろな関係周辺市町村では問題が起きるわけですけれども、今回も特に地元への通報がおくれたということで、自治体も含めて非常に電力会社との間の不信感が高まってきたわけですね。それで、いろいろな議会でも決議がされるということになったわけです。そこで、私どもとしては、一体どういう住民の人の気持ちなのかなということで、ことしの十月二十六日に現地の住民の人にアンケート調査を、聞き取りと、その場でできない人は郵便で送っていただきたいということで、アンケート調査をいたしました。その結果、非常に問題があるということで原発に反対する人が半分ぐらいありますし、特徴的に出た声は、事故が非常に起きているということと、安全確保ができていない、それから事故が起きたときの被害が大変大きくて十分な対応、連絡などもできていないということで、住民への避難訓練をやってもらいたいという声が実はアンケートの中で六割も出たわけですね。  そこで、この問題について科技庁ですかで話を聞きましたら、防災指針の中では周辺住民の参加は不可欠な要素ということで必ずそれをしなければならぬということではないということ。それから国土庁の方へも問い合わせをしましたけれども、これは全体の法の解釈その他はやりますけれども具体的なことは自治省消防庁の方ですよということですから、お尋ねをいたしますが、結局、避難訓練というのは一体何のためにやるのか。確かに机の上でもあるでしょう、机上訓練もあるでしょうけれども、原発のような、色も見えない、においもしない、何にもわからないというようなものに対する対応といいますか、そういうものをするためには、やはりこれは住民参加が私は必須の条件じゃないかというふうに思うのですが、それは別として、その前段として避難訓練というのは一体何のために行うのかということについてお尋ねいたします。
  43. 原純一

    ○原説明員 お答えいたします。例えば震災対策等におきます住民参加による防災訓練といいますのは、日ごろから地震災害等に関する防災意識の高揚を図り、また各種訓練の体験を通じまして防災行動力を高めていくことが重要である、そういう観点から実施しているところでございます。
  44. 緒方克陽

    緒方委員 それで、住民が参加をしたいし、またしなければやはり不安だという声がアンケートの結果率直に出ておるわけですね。それで、通常的な防災訓練というのはいろいろ自治体その他を含めてやられているようですが、私が聞くところでは、原発の問題では泊のことで横路知事を先頭に四百数十名ですか、そういうのがやられたとか、あるいはもう一カ所どこか住民の方から参加してやられたということで、二カ所ほどあるというふうに聞いておるわけでありますけれども、このことについては、事の重要性から見て住民参加というものが必要ではないか、そういうふうに思いますが、その点について。
  45. 原純一

    ○原説明員 一般的に、地方公共団体におきます防災訓練は、地域防災計画に基づきまして、その地域の実情に応じて行われるべきものであるというふうに考えておりまして、原子力防災訓練におきましては、原子力防災の特殊性にかんがみまして、昭和五十五年の原子力安全委員会の決定でございます「原子力発電所等周辺の防災対策について」、これを踏まえまして防災業務関係者の習熟を重点的に行っているところでございます。  消防庁といたしましても、第一義的には防災業務関係者が原子力防災に関して十分に習熟し、そして適切な対応を行えることが重要であるというふうに考えております。そう考えておりますが、万一の場合に備えて万全を期すという観点から、防災対策の一層の充実のため、御指摘の住民参加の問題も含めて、関係各方面の意見を十分聞きなから検討してまいりたいと考えておるところでございます。  なお、地方公共団体が住民参加の原子力防災訓練を実施する場合には、消防庁としてもこれに協力してまいりたいと考えておるところでございます。
  46. 緒方克陽

    緒方委員 今の点では、関係方面と相談しながら住民参加で協力をしていきたい、連絡があれば自治体とも協力してやりたいということですから、そういうことで取り組んでいただきたいと思います。  次の問題に移りたいと思います。実はさっき貿易保険の話が出ておりましたが、それに絡んでIJPCの問題、私ずっとこの国会で取り上げさしていただいておりますけれども、結局IJPCは、スタートの段階では民間ベースの三井とイラン側との関係であったわけですが、その後ナショナルプロジェクトということになって、その後イラン・イラク戦争ということになってきたわけです。事業については非常に国民的関心のあるところで、マスコミでは調査団が行ったとかあるいは被害の程度も行って報告をされておりますが、被害の状況について政府としてはどういうふうに理解をされているか、お尋ねをいたします。
  47. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 IJPC、すなわちイラン・ジャパン石油化学プロジェクトにつきましては、先生御存じのとおり相当程度工事が進捗した段階でイラン・イラク紛争が発生いたしまして、工事が中断し、その後爆撃を受けてまいったわけでございます。  今後の問題につきましての重要なポイントは、その石油化学プラントそのものがどのような状況にあるかというところが基本であると認識しておりまして、特にその現状に関しましてイランと日本との間の当事者間で、共通かつ客観的な認識がつくられるということが重要だと考えつつあるわけでございます。  そのようなことを基礎にいたしまして、先月の中旬でございますが、日本とイラン両方の当事者 が現地調査をいたしました。既に調査団は帰国しているわけでございますが、目下のところその調査記録を整理しているという状況だと聞いておりまして、非常に大きなプラントでございますので、その内容につきまして調査結果の分析、評価ということをやっておるようでございます。さらに時間がかかるというふうに聞いております。
  48. 緒方克陽

    緒方委員 まだ今のところ中身が時間がかかるということでありますが、そこで大臣にお尋ねしたいのですけれども、途中でナショナルプロジェクトになった、それからイラン・イラク戦争になった。そして今のところ私が見るところでは、国家プロジェクトでありながら、国家的事業ということになっていながら、イ・イ戦争以降は当事者間で話がつくまではとにかく一歩引いておくんだ、後、当事者がどんな話をして、どんな条件が出るかというときに、顔を出そうという感じの話を今まで聞いているのですけれども、国家的プロジェクトというのはそういうものかなという疑問が率直にあるわけですね。確かにイラン・イラク戦争という不幸な事態であるわけですけれども、これは七千億のプロジェクトということで、政府としてもそういうプロジェクトにしてきた責任というものは、一番最終段階で総括はしたいと思いますけれども、今日段階でも、このことについての政府の責任といいますか、そういうものはあるんじゃないか、あるいは今日時点でどう対処されようとしているのか、そのことについてお尋ねをいたします。
  49. 田村元

    ○田村国務大臣 政府も大変関心深く御協力を申し上げた問題ではございますけれども、何と申しましても主体は三井側にあるわけでございますから、両当事者間でよく話し合われて、その結果を待ちたい。  この問題で責任ということでございますけれども、これは戦争の巻き添えを食らったわけでございますから、不可抗力ということが言えるかと思います。日本の総理大臣が行って待ったと言って戦争がとまるわけのものでもありませんし、非常に深刻な戦争でございますから、それが今度停戦になったことは本当に結構なことだと思いますけれども、先般三井側が通産省にいらしたそうですけれども、部長のところでごあいさつをなすったそうですが、まだ私には正式に何の御報告もございませんので、いろいろと検討してみたいと思っております。いずれにしても私自身無関心ではあり得ません。
  50. 緒方克陽

    緒方委員 それでは、時間がありませんから次に進みます。  ところで、さっき尾身先生も御質問になったんですが、IJPCの問題と貿易保険との絡みは非常に大きいということで、総額大体千八百億ですか、そのうち投資保険が千六百億ぐらいということのようですが、非常に貿易保険との関連もあって、貿易保険法の問題で取り上げたときには貿易保険の保険料率を何か七割ぐらい上げたいというようなことが言われておりまして、それはいかがなものかという話をしましたら、今のところ審議会では四割ぐらいだというような保険料率のアップの話のようでありますが、IJPCとも無関係ではないわけですね。何せ保険料収入は四百数十億ということでありますが、これは千八百億ですから、全部支払えば四年分が全部吹っ飛んでしまうという大変なものでありますけれども、そういうことで昨年の八月二十六日に危険発生通知書が出たということはお聞きしております。それからもう一年以上たっているわけですけれども、保険申請があったのかどうか、その後一体このことについてどういう動きがあるのかということについてお尋ねいたします。
  51. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 ただいま先生指摘のとおり昨年の八月二十六日に危険発生通知は受けておりますけれども、それ以降現在に至るまで保険金請求等新たな動きは何らございません。
  52. 緒方克陽

    緒方委員 わかりました。次回また質問さしてもらいたいと思います。  次に、石炭対策特別委員会がなかなか開かれないものですから、鉱害復旧の問題で、申しわけないですが質問をさしていただきます。  この問題については何回か私もこの委員会とかで取り上げさしていただきましたけれども、鉱害復旧については、政府の答弁としては、昭和五十七年に策定した鉱害復旧長期計画はおおむね順調に進んでいるということで大臣は御答弁になるわけでありますし、また、そのように進めていきたいということが言われているわけであります。しかし、旧産炭地域におる者から見て、あるいは地域に住んでおられる人あるいは地方自治体の代表などから見ると、いろいろな認定のおくれ、そういうものがあって、非常に不満や不安というものがあるわけですね。特に農地などでは非常に問題も多いということになっているわけであります。  実は過日、佐賀県の鉱害対策連絡協議会が通産省に陳情いたしましたときに、私も同席をしたわけでありますが、その中でもこの問題が大きく取り上げられているわけであります。もちろん国民の税金といいますか、そういうものを使うわけでありますから、厳正にその復旧事業が行われるということは当たり前のことでありますが、しかし、事業団と通産局というところがあって、私が見るところでは、何百回も何段階もいろいろな調査をされて、認定までに時間がかかるというようなことになっているわけでありますが、時間は六十七年度まで、いよいよ迫ってきているという現状の中で、やはり調査とか認定を急ぐということで、いろいろな事務的な問題は今までも検討されていると思いますが、六十七年の期限切れ、政府はそれをやるのだというふうに言われるからには、そこの現地の人たちとのギャップを埋めるために何らかの検討というものがされるべきではないかというふうに思いますが、その点についてお尋ねいたします。
  53. 長田英機

    ○長田政府委員 鉱害復旧事業につきましては、先生お話しになられましたように、五十七年に策定されました長期計画で現在やっておるわけでございまして、五千九百億円の残存鉱害を六十七年七月末までに、法定期限内に片づけようということで鋭意取り組んでいる状況でございます。  あと、個別の案件といたしまして、認定のおくれの御指摘がございましたが、最近非常にいろいろ難しい案件がたくさんございまして、これらの案件につきまして、いろいろ急ぐための工夫をしなければならないわけでございますが、例えば公共投資、公共事業と一体のものあるいは他の鉱害復旧事業と一体のものというようなものについては、その審査の順番についていろいろ配慮して繰り上げて行うとか、そのような工夫をいろいろとやってきているわけでございます。  そこで、いずれにしましても、法定期限もだんだん迫っておりますし、案件といたしましてはまた難しい問題もいろいろございます。そういう事情を考えまして、とにかく鉱害認定の促進ということは非常に重要なことでございますから、事業団ともどもこの迅速な推進に努めてまいりたいと思うわけでございます。
  54. 緒方克陽

    緒方委員 そのことについては、ぜひいろいろな工夫をしていただきたいというふうに思います。  問題は、このことを進める上にも、何といっても予算の確保が大事なことであります。昨年もいろいろありましたけれども、昨年並みという実績のようでしたけれども、これでは六十七年までに終わるのかなという気もいたしまして、予算の確保については、やはり大臣しっかりやっていただかなければならぬというふうに思いますが、この点についての御決意をお尋ねしたいと思います。
  55. 田村元

    ○田村国務大臣 鉱害復旧につきましての思いは緒方委員と我々全く同じでございます。鉱害二法の期限内、つまり昭和六十七年七月末に残存鉱害の解消を図るとの方針のもとに、毎年度計画的かつ効率的な復旧に努力をしているところでございますが、その裏づけとなるものはおっしゃるとおり予算でございます。でございますから、この問題につきましては、人心の安心感を得ていただくためにも、今後とも所要の予算が確保されますように、我々も鋭意努力をいたしてまいる所存でご ざいます。
  56. 緒方克陽

    緒方委員 そういうことでぜひ御努力をお願いしたいと思います。  最後になりますが、尾身委員質問になりましたけれども、実は今の問題については石特会計とも関連するわけでございます。この石特会計については、鉱害復旧とそれから石炭の合理化安定対策として設けられてきたわけでありますが、今日も大きな役割を果たしているし、六十七年度までということでありますが、先ほどもお話がありましたように、今回の税制改革に絡んで石油原油関税の撤廃等の話も出てきているわけであります。しかし、これは、石炭特別会計の出てきたときのいきさつや今日の現状からして大変問題があるのではないかということで、下手をすると一般会計でということになって、それが必ずしも保証されるということになるかと言えば、いろいろ問題もあるという意味で、日本のこれからのエネルギー政策ないしは石炭政策あるいは鉱害復旧に大きな影響を与えるということになるわけでありますが、この点についての通産省としてのお答えをいただきたいと思います。
  57. 田村元

    ○田村国務大臣 御承知のように、現在政府といたしましては、鉱害対策を初め石炭対策計画的かつ着実に推進しておるところでございます。今後ともこの方針に変わりはございません。  御質問の原油関税問題につきましては、消費税の単純併課によります石油に係ります税負担についての総合的な検討項目の一つとなっておりますが、これによって石炭対策の円滑な遂行に悪影響を及ぼすことがあってはならないと考えております。  具体的には、我々、石炭三原則という言葉を使っておりますけれども、石炭勘定の維持、原油関税にかわる安定的財源の確保、石炭対策に必要な歳出の確保、こういった三点が確保されることを前提として対処してまいる所存でございます。
  58. 緒方克陽

    緒方委員 この問題については、もう残り期間も少なくなった問題でもありますし、やはりきっちりと六十七年度までに決着をつけて、そして日本として新しい予算の使い方なんかもしなければならぬわけですから、六十七年までのこの事業の完全な実施というものについて政府としても格段の努力を強くお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  59. 渡辺秀央

    渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  60. 渡辺秀央

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小澤克介君。
  61. 小澤克介

    小澤(克)委員 山口県の熊毛郡上関という町がございまして、そこで昨年の統一地方選挙の際に町長選挙が行われたわけでございます。この町長選挙は、原発の立地をめぐって激しく争われたために、原発選挙というような性格を非常に強くしていたわけでございますが、この選挙のころに、実は大量の住民票の架空転入問題というのが生じました。しかも、これは大量に行われたわけですけれども、その中に、見逃すことができないのが、中国電力の社員が含まれていた、こういう事実がございます。この点につきまして、公益企業として重大な問題であろうかと思いますので、まず少し事実関係をお尋ねをしたいと思います。  問題となったのは、中国電力の通称上関調査事務所というところの職員のようでございますが、まず、正式な名称はどんな名称で、そしてこの施設はどんなことを業務内容としているのか、あるいは職員数はどのくらいか、これは選挙の行われた当時で結構でございますが、とりあえずそれだけお尋ねいたします。
  62. 堤富男

    ○堤政府委員 お答え申し上げます。  上関には中国電力上関調査事務所というのがございます。先生の御指摘の町長選挙の当時の六十二年四月当時の職員数は四十九名でございまして、現地で立地のための調査を準備をしているということでございます。
  63. 小澤克介

    小澤(克)委員 正式名称は中国電力株式会社上関立地調査事務所ということではございませんか。
  64. 堤富男

    ○堤政府委員 大変申しわけございません。中国電力株式会社上関立地調査事務所でございます。
  65. 小澤克介

    小澤(克)委員 これに附属していわゆる上関寮というものがあるようですが、これは正式名称あるいは住所はどうなっていますか。それからまた、いつごろでき上がって、いつごろから実際の職員の入寮が始まったのでしょうか。
  66. 堤富男

    ○堤政府委員 お答えさせていただきます。  まず寮の名称でございますが、中国電力株式会社上関寮でございます。上関寮の住所でございますが、山口県熊毛郡上関町大字室津二百八十五の一でございます。この寮ができましたのは、六十一年の五月にでき上がりまして、翌月の六月あたりから入寮が開始されております。
  67. 小澤克介

    小澤(克)委員 この調査事務所あるいは今お尋ねいたしました上関寮、これらに関係の深い職員について架空転入が行われたというようにいろいろ新聞などで報道されているわけでございます。  そこで、まずこの調査事務所の職員のうち警察の事情聴取を受けた者はどの程度いたのか、中国電力からどのような報告を受けておられますでしょうか。
  68. 堤富男

    ○堤政府委員 本件に関しまして山口県警の事情聴取を受けた者は、先ほど申し上げました上関立地調査事務所の職員のうち二十四名と報告を受けております。
  69. 小澤克介

    小澤(克)委員 新聞報道等では二十三人となっているようですが、今のお答えでは二十四名が正確なようでございます。  そうすると、四十九名中二十四名が実に警察の事情聴取を受けたということになるわけでございますが、これらの事情聴取を受けた方々がいつごろ住民票の転入を行ったのか、これについてはどのような報告を受けておりますでしょうか。
  70. 堤富男

    ○堤政府委員 二十四名の方々、最終的に処分されなかった人もいるわけでございますが、一つ一つ申し上げると時間の関係もございましょう、おおよそ申し上げますと、六十一年の六月から六十二年の一月にかけまして入寮しております。
  71. 小澤克介

    小澤(克)委員 今六十一年の九月とおっしゃったんですか、六月とおっしゃったんですか。
  72. 堤富男

    ○堤政府委員 六十一年の六月からでございます。
  73. 小澤克介

    小澤(克)委員 一つ一つ言うと時間がかかるということでございましたが、それでは、こちらである程度まとめて調べておりますので、このとおりかどうかお答え願いたいと思うのです。  六十一年の十一月二十一日に転入が一名、それから同年十二月二日転入が一名、同月六日転入が一名、同月八日転入が一名、同月十日転入が一名、同月十一日転入が一名、同月十四日一名、同月十五日に所長を含めた六名、同月二十四日一名、二十六日二名、年が明けまして六十二年の一月十二日一名、同月十二日一名、同月十三日一名、同月十六日一名、同月十九日一名、以上で二十一名になろうかと思います。さらに、そのほか三名ばかりいるようでございますが、以上のとおりで間違いないでしょうか。
  74. 堤富男

    ○堤政府委員 ちょっと口頭でのやりとりでございまして、大変申しわけないのでございますが、おおよそ間違いないというふうにだけ申し上げさせていただきます。もし必要でございましたならば照合させていただきます。
  75. 小澤克介

    小澤(克)委員 おおよそ間違いないということでございますが、なかんずくこの十二月十五日に所長を含む六名が転入をしている、これは間違いないでしょうか。
  76. 堤富男

    ○堤政府委員 おおよそ間違いないと思っております。
  77. 小澤克介

    小澤(克)委員 そして、この件についていろいろ告発等があったようでございまして、警察の取り調べなどがあって、そしてことしに入りまして昭和六十三年の二月二日までに大量の書類送検があった、その中に中電の社員も含まれていた、このように聞いておりますが、中電の方ではどのよ うに把握しているということでしょうか。
  78. 堤富男

    ○堤政府委員 本件につきまして書類送検された人が全体で百五十二名ありますが、その中で中国電力会社の社員が六名含まれております。書類送検されている数でございます。
  79. 小澤克介

    小澤(克)委員 この六名の中電の職員が六十三年の二月二日までに送検されたというふうに聞いておりますが、これはいずれもこの上関調査事務所の職員でしょうか、あるいは入寮者でしょうか。
  80. 堤富男

    ○堤政府委員 これは入寮者であると同時に当然のことながら職員でございます。
  81. 小澤克介

    小澤(克)委員 このときに、新聞報道によりますと、会社側の対応といたしましては、石原寿男という原子力立地推進本部の副本部長で取締役の方が、転入問題で警察の取り調べを受けたということは聞いているが、不正転入は聞いていないし、ないと思う、このようなコメントを出しているようですが、このとおりでしょうか。
  82. 堤富男

    ○堤政府委員 石原取締役のコメントについては聞いておりません。
  83. 小澤克介

    小澤(克)委員 この一連の事件についての会社側の対応についてお尋ねするからということを事前に通告しておいたのですが、この点聞いてないのですか。
  84. 堤富男

    ○堤政府委員 実態については伺っておるつもりでございますが、本件については残念ながら聞いておりません。
  85. 小澤克介

    小澤(克)委員 同じく送検された段階で、新聞報道によりますと、これは中国電力のどなたが言ったかということは必ずしも明確でないのですが、会社として組織的に転入を勧めたことはない、個人の意思でやったと思われるが、責められることではないとして、送検された社員の処分は考えていないことを明らかにした、こうなっておりますが、この点いかがでしょうか。
  86. 堤富男

    ○堤政府委員 その点について、どなたが申し上げたのかわかりませんが、報告は受けておりません。ただ、処分をするつもりがないというところにつきましては、最終的には処分がされているという事態がございますから、その点は後のファクトから考えて間違いかと思っております。
  87. 小澤克介

    小澤(克)委員 いやいや、そうじゃないのですよ。これは送検された段階での反応ですからね。後でどうこうということはないのじゃないでしょうか。間違いだとおっしゃったのは、今確認しているのですか。
  88. 堤富男

    ○堤政府委員 繰り返しになって大変申しわけございませんが、その点については確認しておりません。先ほどの発言は推量に基づくものでございます。
  89. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこで、このことが山口県の県議会でも問題となりまして、山口県議会の商工労働委員会で、本年の三月十七日、十八日に、この点について中国電力からの見解を求めたところ、中国電力からのコメントとして、中国電力副社長の和泉本部長が委員会に伝達という形で、今回の事件はまことに遺憾である、世間を騒がせて申しわけなく思っている、転入は個人のかかわりであって会社は関与していない、今後は資質の研さんに努め、地域の発展に寄与していきたいと思っている、こういうコメントを寄せたわけでございます。これについて、県議会の方では、委員会といたしまして、商工労働委員会の結論としては、このコメントは公益事業者である中電の謙虚な反省として受けとめられない。山口県議会を代表する、県議会のそのパートであります商工労働委員会としてはこのような受けとめ方をしているわけでございますが、この辺の事実については通産省としても報告を受けておりますでしょうか。
  90. 堤富男

    ○堤政府委員 その点につきましては私の方で報告を受けております。おおよそ報告を受けている点につきまして、今先生の方で教えていただいたことと基本的には同じでございます。
  91. 小澤克介

    小澤(克)委員 そして県議会の商工労働委員会では、このようなコメントを寄せられただけでは、これで終わりにするわけにいかないということで、結論として、委員会の論議を踏まえて中国電力に対して三月二十四日、山口県議会商工労働委員会委員長島田明さんの名前で「上関町長選挙に係る公職選挙法違反問題について」と題する要請をしているわけでございます。  非常に短いものですので読み上げますと、「昨年四月に実施された上関町長選挙において、公職選挙法違反容疑により書類送検された者の中に貴社の職員が含まれていたことは誠に遺憾である。本件について、去る三月十七日、十八日開催の当委員会において、原子力発電所立地問題に関連して論議したところであるが、この違反容疑については、今後、司法当局によって判断がくだされるとしても、公益事業者たる貴社に対する不信感を県民に与えたことは否めない事実である。よって、今後、貴社におかれては、この事態を厳粛に受け止められ、公益事業者としての社会的責任を踏まえて慎重な対応をされるよう強く要請する。」このような要請までがなされたわけでございますが、これに対して中国電力はどのようにこれを受けたか、対応したか、これについてはどういう報告を受けておられますでしょうか。
  92. 堤富男

    ○堤政府委員 六十三年三月二十四日に、山口県の商工労働委員会委員長から、先ほどお話しのございましたような慎重な対応の要請があったわけでございます。これを受けまして、これだけではないのでございますが、中国電力としては全体として先ほどお話しのありましたように厳粛に受けとめており、大変申しわけなく思っているということを通産省あるいは対外的にも新聞等を通じて話をしておるわけでございますし、申し入れのあった各種団体に対してもそういう対応をしていると報告を受けております。
  93. 小澤克介

    小澤(克)委員 ちょっとよくわからなかったのですが、通産省に対してはともかくとして、対外的にあるいは県議会に対してどういう返答をしたかというのを具体的に教えていただきたいのですが。
  94. 堤富男

    ○堤政府委員 県の商工労働委員会に対してはそれを受け取ったということでございますが、全体として新聞発表あるいは各種申し入れのあったところに文書で回答等を行ったという意味でございます。県の委員会に具体的にどういうふうに報告をしたかは報告を受けておりません。
  95. 小澤克介

    小澤(克)委員 この三月二十四日の申し入れに対して中電側で何だか新聞発表したというのは、ちょっと私寡聞にして聞いていないのですが、どんなことをだれがどう発表したのですか。
  96. 堤富男

    ○堤政府委員 三月二十六日に山口地方検察庁の処分の発表がありまして、その際に、先ほどのお話にありました和泉副社長がプレスに対しまして、社員の一部について不正行為があったことについては厳粛に受けとめている、世間をお騒がせしたことは申しわけない、ただし会社で関与したことではないということではございますけれども、その趣旨の話をプレス発表しているということでございます。
  97. 小澤克介

    小澤(克)委員 それは要するに起訴されてからの話ですね。この県の商工労働委員会の申し入れがあった時点では、特に態度表明というのはなかったんじゃないのですか。
  98. 堤富男

    ○堤政府委員 県の委員会からの要請がありましたのが六十三年三月二十四日でございます。和泉副社長がプレスでコメントしましたのが二日後の三月二十六日でございます。したがいまして、そういう関係があるのではないかと思っております。
  99. 小澤克介

    小澤(克)委員 違うのですよ。二十六日は、起訴されたから、それをきっかけに、あなたが先ほどおっしゃったような見解表明があったのですよ。それ以前の段階です。二十四日に、起訴前に、県議会、県民の代表が中電にちゃんと申し入れしているのです。それに対して何らかの明確な対応がなかったんじゃないですか。起訴されて初めて、やむを得ずといいますか、副社長のコメントが出たんじゃないですか。
  100. 堤富男

    ○堤政府委員 その辺の事情をすべて踏まえてプレスでコメントしたものと承っております。
  101. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、二十四日から二十六日までの間には、つまり起訴される以前には、 明確なコメントがあったのかなかったのか、端的に言ってください。
  102. 堤富男

    ○堤政府委員 三月二十六日以前においてはなかったと聞いております。
  103. 小澤克介

    小澤(克)委員 最初からそう言えば時間がかからなくていいのですよ。  それで、結局、二十六日くらいでしょうか、起訴されたようですが、中電職員が何人くらい、どういった罪名で起訴されたか。これは法務省に聞けば明確な事実なんでしょうけれども、中電としてはどういうふうに認識しているかということで、どう報告を受けておりますでしょうか。
  104. 堤富男

    ○堤政府委員 本来は確かに先生のおっしゃるとおり法務省の管轄のことでございますけれども、報告を受けている点等につきまして申し上げますと、当該六名、先ほど起訴を受けて略式命令の請求を受けたと聞いております。その結果、最終的には刑法百五十七条及び百五十八条それから公職選挙法の二百三十六条、二百三十七条の違反の罪で六名はそれぞれ罰金十二万円、公民権停止三年の刑を受けたと聞いております。
  105. 小澤克介

    小澤(克)委員 起訴されたかどうかと聞いているのですから。どういう罰金を受けたとかいうのは、その後の裁判の結果のことでしょう。質問は正確に聞いてちゃんと答えてくださいよ。  それで、六人が略式起訴を受けたということのようです。略式請求を受けたということは、略式手続について同意をしたということですよね。ということは、少なくとも積極的には争わないという態度をあらかじめ表明したからこそ略式請求を受けたんだということになろうかと思うわけです。つまり、起訴された段階でもう罪を認めたも等しい、こういうことになるわけですけれども、この六名というのは一体どんな役職の方なんでしょうか。
  106. 堤富男

    ○堤政府委員 六名の肩書でございますが、副長クラスが二名、職員が四名、これは起訴段階での話でございます。
  107. 小澤克介

    小澤(克)委員 事前に教えていただいたのでは、渉外課の係長、調査課の係長、広報課職員、広報課副長、渉外課副長、そのほかに運転手さん一名、こうなっているようですが、これで間違いないでしょうか。それからもう一つ、副長というのは一体どの程度の地位なのかちょっとわかりにくいのですが、その点について説明してください。
  108. 堤富男

    ○堤政府委員 既に処分を受けたことでもございますけれども、個人にかかわる問題でございますので、本当はこういう公の場でやるべきかどうか大変私としては悩んでおるわけでございますが、先生お調べでございますので、職員の肩書についてはそういうことかと思います。それから、副長といいますのは、一般的には課長に準ずるクラスということだと思っております。
  109. 小澤克介

    小澤(克)委員 この六名に限定して言いましても、住民票の転入が六十一年の十二月十六日、それから二十四日、二十六日、六十二年の一月十六日、十七日、十九日、このように非常に接近した時期に行われているようでございます。結果的には処分は、先ほど先んじておっしゃられましたが、罰金十二万円、公民権停止三年、罪名は公正証書原本不実記載、同行使、それから公職選挙法違反、このようでございまして、いずれも罰金を納付して確定をした。また、もちろん略式でございますから、公訴事実を不服として争うあるいは正式に裁判を求めるというようなことは、いずれもなかったというように聞いているわけでございます。  そこで、お尋ねするのですが、この方々がどこから転入したということについては報告を受けておられますでしょうか。
  110. 堤富男

    ○堤政府委員 六名につきましての転入前の住所でございますが、四名は山口県の柳井市、一名は熊毛郡の平生町、もう一人の最後の一名でございますが、大島郡大島町と聞いております。
  111. 小澤克介

    小澤(克)委員 いずれも非常に近いところでございますので、東京から転勤したというようなのと全く違うわけでございますので、隣接する市町村ですから、これはもう争いようがないということで略式に同意をし、そして判決を受けたということだろうと思うわけでございます。  そこで、これは公益企業として大変な不祥事であると少なくとも私は認識するわけです。地方自治に対する露骨な介入でもございますし、何よりも刑法犯を犯したわけでございますから。しかも、最初に申し上げたとおり、これはまさに原発選挙と言われたように、原発誘致問題をめぐってこれが最大というかほぼ唯一の争点として争われた町長選挙でございます。それに当の立地のための事務所にいる人たちがこういう形で架空転入をしたということは、これはちょっと社会的にも容認しがたい事態ではなかろうかと思うわけでございます。ことしの五月二十三日の参議院の決算委員会でございましょうか、そこで委員からのお尋ねに対して通産大臣が、「これはいけませんね、率直に言いまして。私はとんでもないことをしてくれたと思っております。」というふうに言っておられますし、それから同じく通産大臣、「こういう事件はちょっと私も聞いたことがない事件であります。恐らく他の電力会社もびっくりしておるんじゃなかろうかと思います。」こんなふうに受けとめておられるようでございます。極めてまともといいますか、私がこんなことを言っちゃ失礼ですが、非常に常識的な受けとめ方ではないかと思うわけでございます。  そこで、当然このような不祥事については会社としてもきちんとした対応をしたのではないかと思うわけでございます。それで、対外的には起訴された時点で、先ほど一部答弁ありましたけれども、会社としてどのように対応したのか、もう一度明らかにしてください。
  112. 堤富男

    ○堤政府委員 お答えさせていただきます。  先ほどの答弁とダブる部分がございますけれども、この際、会社といたしましては、関与はしていないものの、社員の一部に不正行為があったことは厳粛に受けとめており、世間をお騒がせしたことは申しわけないという旨の陳謝を、当省を含めまして各方面に行っておるところでございます。
  113. 小澤克介

    小澤(克)委員 ちょっと正確に言ってほしいのですけれども、マスコミで報道されているところによりますと、和泉晋一中国電力副社長、原子力立地推進本部長が、「このたび、転入問題をめぐって当社職員に対し、検察当局から略式命令の請求をされたことについては厳粛に受け止めている。当社職員が不正転入にかかわっていたことは、はなはだ遺憾であり、世間をお騒がせし申し訳なく思っている。今後、このようなことのないよう職員の注意を喚起し、指導していきたいと考えている。」このような内容のコメントを広報部を通じて発表した、これはプレス発表したという意味でしょうが、そういうふうに聞いておりますけれども、そのとおりでしょうか。
  114. 堤富男

    ○堤政府委員 そのとおりと承っております。
  115. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこで、会社として社内的にといいますか対内的に、これら職員に関して、あるいは監督責任者等も含めたのかどうかちょっとよくわかりませんが、処分があったのではないかと思うわけでございます。この点についてはどういう報告を受けておりますでしょうか。
  116. 堤富男

    ○堤政府委員 お答えさせていただきます。  本件にかかわる中国電力株式会社の社内処分につきましては、本年五月、刑事罰を受けました六名、その監督を行うべき立場にある者に対して、社内規程に基づいて厳正な処分があったと聞いております。
  117. 小澤克介

    小澤(克)委員 厳正な処分というのは一体どういう処分なんでしょうか。
  118. 堤富男

    ○堤政府委員 本件につきましては、個別企業の責任と判断で行うべき問題でありますし、個人のプライバシーにかかわるというところがございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思っております。
  119. 小澤克介

    小澤(克)委員 名前まで明らかにしろなんて言っていないんですよ。質問する方も注意して、肩書までは言いましたけれども、個人名はプライバシーの問題もありましょうから、しかも刑事罰を受けたという不名誉なことですから、名前までは 言いませんでしたけれども、公益企業の職員に公益企業がどういう対応をしたのか、そのことが公益企業としていかに本件について反省をしているのかということの極めて重要なバロメーターになりますので、これは明らかにしていただかないと困ると思いますよ。どうなんですか。
  120. 堤富男

    ○堤政府委員 基本的には、当省が話を承りまして、社内規程に基づいて厳正な処分が行われたと聞いております。その内容も一応報告を受けておりますけれども、個人の、非常にわずかな人数の方々のお話でございますし、現在まだ生活をしている方々でございます、内容的には通産省としては十分だとは思っておりますが、内容については差し控えさせていただきたいと思っております。
  121. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは中軍がこの事態をどの程度重大に受けとめているのかという非常に重要な要素でございますので、国民の前に明らかにしていただかないとまずいんじゃないでしょうか。行政庁としては報告を受けている、国民の前には明らかにすることはできない、そんなばかなことはないですよ。だめですよ。言ってください。
  122. 堤富男

    ○堤政府委員 先ほど申し上げましたが、個人のプライバシーにかかわることでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  123. 小澤克介

    小澤(克)委員 中電がその処分内容を世間的に公表していないということが批判の対象になっているのです、そのこと自体が。だから聞いているんですよ。中電が本当に襟を正しているのかどうか、これはぜひ明らかにしていただかなければまずいと思います。  先ほどから言っておりますとおり、県民の代表機関である県議会でも、中電の対応が非常に不十分だ、反省の色が見られないということで、これは起訴以前の話でございますけれども、わざわざ中電からコメントを求めたり、それでも足りないということでさらに申し入れたりしているわけです。それとは別に、三月二十六日についに六名が略式になり、争うこともなく罪を認めてそれに服した、こういう事態なんですから、それに対して会社でも当然厳正な処分がなされただろう、中電が良識のある会社であれば十分厳正な処分がなされたであろうというふうに世間は思うわけでございますが、その処分内容について公表しない、マスコミの取材に対しても全部拒否をしている。このこと自体が、本当に公益企業としての責任を感じているのかどうか、甚だ疑わせるわけでございます。これはどうしても、一体どういう対内的な処分をしたのか明らかにしていただきたいと思います。
  124. 堤富男

    ○堤政府委員 まず御確認させていただきたいことは、処分があったことは事実でございます。これは私の方が確認しでございます。  処分の内容につきましては、先ほどのお話のようにプライバシーにかかわるので申し上げられませんが、ただ中国電力全体の態度としましては、例えば六月十五日、社長が通産大臣のところに参りまして陳謝をしていること、それから社内で再発防止のための措置をとったこと等を報告しております。通産省としてもその辺の指導は各レベルでやらせていただいておりますし、もう一つ加えさせていただきますと、刑罰で刑法上の処分を十分受けており、社会的制裁も十分受けておるわけでございます。この点、中国電力、個人、それぞれは十分反省をして、今後再発の防止という点我々は確認しておりますし、その点を御報告をさせていただきたいと思います。
  125. 小澤克介

    小澤(克)委員 六月十五日、社長が通産大臣に対して陳謝をしたわけですか。社長みずからがですか。監督官庁である通産省に、あるいはその長であります通産大臣に、社長みずから陳謝した、これはそれで大変結構なことだろうと思います。問題は、これは地方自治に介入したのですよ。上関町民に対して、あるいは県議会でも問題になったのだから県民に対して、あるいは今当委員会で問題になっているわけですから国民に対して、社長が陳謝するというようなことはないのですか。そういうことは聞いておりませんか。
  126. 堤富男

    ○堤政府委員 中国電力の方といたしましては、山口県議会あるいは申し入れのありました各種団体に対して文書で回答を行う等、対応をしております。内容は、先ほど先生の方がお読みになったのと大同小異でございますが、会社として関与はしていないものの、社員の一部に不正行為があったことは厳粛に受けとめている、世間をお騒がせしたことは申しわけない、こういう点でございます。その点につきまして、繰り返しますが、マスコミ等も通じまして社を代表して同様の趣旨の遺憾の意を表明しておるわけでございます。
  127. 小澤克介

    小澤(克)委員 もう時間がなくなりましたが、次の問題に入れませんので。  今の、会社として関与していないというのは、どういう意味ですか。そこで言う会社というのは一体何のことですか。
  128. 堤富男

    ○堤政府委員 中国電力全体として、組織として関与をしていないという意味でございます。
  129. 小澤克介

    小澤(克)委員 それは取締役会で決めて、そしてその補助機関である各部長だとか何とかに指示してやらせたということではないのでしょう。だから法人が法人としての行為であるということは言えない。それはそうでしょうよ。取締役会でそんなことを決めるような会社がまさかあるとは思いませんからね。  そんなことを言っているのじゃなくて、この上関の事務所の者が四十九名中実に二十四名が警察の取り調べを受けている。その中で動かしがたい者六名が起訴される。しかも略式手続に同意をして最初から争うつもりはない。そして、しかも刑に服している。そして最初にお尋ねしたとおり極めて接近した時期にこれらの転入が行われているわけですよ。しかも十二月何日でしたか、所長以下六名がまとまって転入の手続をしております。これはまさに、会社ぐるみとまでは言いませんが、この事務所ぐるみで行ったことは間違いないことです。会社組織の一部分でしょうけれども、一パートでしょうけれども、組織的にこの転入をやっていることは客観的に見て間違いないですよ。いいですか、十二月十五日には所長など六名がまとめて転入をしているのですよ。これはまさに会社の、一部とはいえ会社組織の一部が行った行為でしょう。それぞれがばらばらに思いついてこんなことをやりますか。そんなことで国民が納得すると思いますか。まさに会社が関与しているのです。だからこそ副社長も遺憾の意を表しているのでしょう。だとすれば、まず従業員に対してどんな処分で臨んだのか明らかにすべきです。  それから、社長みずからが通産大臣に対しては結構ですけれども、住民、町民ですね、それから県民、国民に対して、きちんとした態度表明をすべきだ、こう思いますが、大臣いかがでしょうか。
  130. 田村元

    ○田村国務大臣 この事件はちょっと常識で考えられないような事件であったわけです。私からも厳しく御忠告は申し上げましたが、六月十五日、たしか水曜日であったと思いますが、私のところへ来られて、うちの会社の者がこういうことで大変申しわけないというおわびがあったこともまた事実でございます。そのときの私との対話で、僕は鮮明にまだ覚えておりますが、何か私のところへわびに来た、社長さんだったと思うのですが、この方もまたちょっとあきれ返ったような顔つきで物言いといったような感じがいたしました。  ただ、今公益事業部長がプライバシーの問題であるからといって小澤君の御質問というかお尋ねの御趣旨に必ずしも沿っていない答弁をしたわけでございますけれども、これは弁護士さんに申し上げるのもどうかと思いますけれども、民間企業の内部のことについて、監督官庁であるといえども、いかに公益事業をやっている民間企業といえども根掘り葉掘り、それでどうなった、ああそうか、それで刑はどうじゃ、処分はどうじゃ、一々尋ねるということはいかがなものであろうか。  同時に、今度は政治論から申しましても、率直に言いまして通産官僚であろうと何であろうと、ココム違反のような問題、通産省のもろの所管の問題は別として、民間企業に国家公権力として立ち入る官僚統制には私は反対であります。そういうことが起こって、片っ端から所管の会社に対し て、おまえのところはどうなったかこうなったかといって通産官僚のみならず何官僚であろうとやり出したら、もうこれは戦時統制のようなことになってしまう。ですから、私は、官僚というものは出過ぎたまねはしない方がよい。それでなくても国家公権力を身につけておるのでございますから、国家公権力を振り回すことだけは絶対に禁じた方がいいというふうに私は思います。これは政治論でございます。  でございますから、部長と私とちょっと言葉はよく似た言葉になっても発想が全然違うかもしれませんけれども、今の話は、私のそういう感覚というものも酌んでいただいて、ひとつ部長の答弁をよしとまではしてもらうこともどうかと思いますけれども、まあ仕方がないなということでできればこの問題のけりをつけておいていただきたい、このようにお願いをする次第でございます。
  131. 小澤克介

    小澤(克)委員 官僚制についてのお考えは私も大臣と全く同様でございます。ただ、官僚統制をやれと私は言っているのではなくて、国会に、国民代表に報告をしてほしい。本来ならば中電を参考人として呼んで、証人でもいいのですけれども、中電から直接国民の前に発表をしてもらう、そして国民の前にきちんと謝罪をしてもらうというのが本来の姿でしょうけれども、そこまでするというのもどうかなと思いまして、通産省を通じて御報告願えればということでございまして、別に官僚統制を求めているわけではないのでして、これはぜひ、参考人ということになりますかどうか、これはせっかくの大臣の御答弁でございますけれども通産省がどうこうではなくて、中電が国民の前にやはりきちんと態度を明確にする、また処分内容についてもこれこれこれだけのことを当社としてもやりましたということを、きちんと明確にしていただくということが私は必要だろうかと思います。  この問題については引き続き当委員会等でいろいろ今後とも追及していきたいと思います。時間がなくなりましたので、この問題について一たん打ち切ります。  次に、ナミビアの資源が日本に輸入されているのではないかということについてお尋ねをいたしたいと思います。  このナミビアの問題は、本来ならば外務省から御説明いただければよろしいのでしょうけれども、時間の都合もありますので、私の方で外務省等からお尋ねを既にしておりますので、まとめてその問題点を御指摘した上で、通産当局のお考えを尋ねたいと思うわけでございます。  一九六六年の第二十一回国連総会で、当時の南西アフリカに対する南アフリカの委任統治は終了した、そして同地域は国連の直接の責任下に入るという決定があったわけでございます。そして翌年一九六七年、第五回特別総会において、この地域の独立を達成するまで同地域を施政するため、南西アフリカ理事会を設置する決議が採択されまして、同地域について統治機関として南西アフリカ理事会というものが設置されたわけです。翌年、一九六八年に、この南西アフリカという名称をナミビアと、住民の要望に従ってこういうふうに改称いたしまして、それに伴い南西アフリカ理事会もナミビア理事会というふうに改称されたわけです。  ところが、現実にはこのナミビアは南アフリカによる事実上の占拠と統治が続いているわけでございます。一九七一年には、国際司法裁判所が、南アによるナミビア占拠は不法であるという旨判決を下しているわけです。  そして、一九七四年に、ナミビアの天然資源に関する布告というものが国連ナミビア理事会によって制定されました。この内容は、いかなる個人または団体も、ナミビア領内に存在するまたは存在していたことが判明したいかなる天然資源も、ナミビア理事会の同意なくして、許可なくして「探査、試掘、調査、収奪、採掘、加工、精製、使用、販売、輸出又は分配することは出来ない。」このように明確に定めております。そして、これらのものを「同領域外のいかなる場所へも搬出することは出来ない。」また、これら許可なくして搬出されるところの資源は押収及び没収される、そしてナミビア住民の利益のために信託のもとに置かれる。また、何人もこの押収、捕獲及び没収手続に服すべきものである。それから、「ナミビアに関する本布告に違反するいかなる個人、団体又は法人は将来の独立ナミビア政府に対して損害を賠償する責任を有する。」こういった内容の布告がなされているわけでございます。  この布告は、ナミビア理事会というナミビアの統治機関の出した布告でございますから、いわば国内法的な性格を持つものだろうと思いますが、同時に、一九七四年に直ちに第二十九回国連総会においてこの布告が承認される、そして各国に対してこの布告に協力するための適切な措置を要請するという決議がなされておりまして、日本はもちろんこの決議には賛成票を投じているわけでございます。  直接に禁じているのは採掘や輸出でございますが、この輸出の相手方となる、つまり輸入を受けることも当然このような違法な行為に加担をする行為になるわけでございますから、この布告に違反することになり、将来的には損害賠償をする責任を負わされる、こういうことになろうかと思うわけでございます。  この点については、既に日本国内でも政府の答弁が明確になっておりまして、昭和四十九年十二月十九日の衆議院予算委員会で、このナミビアからの輸入に関しては、当時の宮澤外務大臣でございますが、「国連に協力をするという政府の基本の方針がございますから、したがって民間のそのような契約も」、これはナミビア産の資源を輸入する契約ということでございますが、「政府の方針に協力をしてもらうべきだ、もらいたい、こういう考えでございます。」このように答弁されておりますし、当時の三木総理大臣も、「方針として、国連決議に従って今後は処理するということです。」このように答弁されておるわけです。  そこで、改めて聞くまでもないかと思うのですけれども、大臣にお尋ねしたいのは、このナミビア問題に関する布告について、日本国としてはこれを厳重に守っていくという姿勢がおありかどうか。これは直接には民間の会社等が物資の輸入等に当たるわけでございますが、監督官庁としてこれを厳守させるという姿勢がおありかどうか、念のためにお尋ねしておきたいと思います。
  132. 田村元

    ○田村国務大臣 まず結論から申せば、電力会社が新たなウラン調達契約を行う場合には、原産国がナミビア以外であることが明らかな契約とするように指導してまいりたい、こう考えております。  このナミビア産のウランに関しましては、我が国政府は、国連ナミビア理事会の布告の政治的な意義を理解いたしまして、その趣旨を尊重するとの立場に立って対処してきたところでございます。通産省としましては、今後とも電力業界に対しましてその趣旨の一層の周知徹底を図りますとともに、電力会社が新たなウランの調達契約を行う場合には、原産国がナミビア以外であることが明らかな契約とするよう指導してまいる所存でございます。
  133. 小澤克介

    小澤(克)委員 大臣にお尋ねしたのは、「ナミビアの天然資源に関する布告」、一般論としてこれを厳守させる姿勢がおありかどうかということをお尋ねしたわけでございますけれども、趣旨としてはそのようなお考えだというふうにお聞きできたわけでございます。  そこで、大臣、少し先に進んで答弁されてしまったわけでございますが、内容にわたって、細かい点にわたって聞いていきたいと思うわけです。  今大臣の方から先回って御指摘がありましたとおり、我が国の電力会社がナミビア産のウランを購入しているのではなかろうかということが非常に問題となっているわけでございます。そこで、通産当局に明らかにしていただきたいのですが、我が国の電力会社が、RTZという企業があるようでございます、これはリオ・ティント・ジンクですか、この企業、これは何か多国籍企業で非常に 多くのグループを擁するようでございますが、このグループとの間でウランの買い入れ契約をしているのかどうか、その点についてまず明らかにしていただきたいと思います。
  134. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  我が国の電力会社のRTZ社とのウラン購入契約につきましては、六弗化ウランの形態でなされておるということでございます。
  135. 小澤克介

    小澤(克)委員 今RTZとの契約とおっしゃいましたが、厳密に言うとどうなりますか。RTZ、ミネラルサービスという一〇〇%の子会社のようですが、こことの契約ということではございませんか。
  136. 向準一郎

    ○向政府委員 今お話ございましたように、RTZの一〇〇%の子会社、スイスの子会社でございます。(小澤(克)委員「名前は」と呼ぶ)RTZミネラルサービス社でございます。
  137. 小澤克介

    小澤(克)委員 このミネラルサービス社、ミンサーブなどと略称されているようでございますが、ここと我が国の電力会社がどの程度の数量のウランを、今六弗化ウランの購入契約だということは明らかになりましたが、どの程度の数量、向こう何年間ぐらい供給を受ける契約になっているのか、明らかにしてください。
  138. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  RTZ社との長期契約を有していることは事実でございますが、数量については、商業上の機密ということで、個別のことでございますので、御容赦いただきたい。お答えできないということでございます。
  139. 小澤克介

    小澤(克)委員 既に契約を結んだわけですから、別に機密にする必要はないのではないでしょうか。これから契約したいというのなら、それは商売上の駆け引きがありましょうから明らかにできないというのはわかりますけれども、既にもう契約しているわけですから、これはぜひ明らかにしていただきたいと思いますが、どうですか。
  140. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたように、個別の購入契約でございますので、商業上の機密ということで、お答えできないということでございます。
  141. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは大変不満なのですけれども、もう時間がございませんので。  それで、前に通産省から、これは外務委員会でしたでしょうかで明らかにされた数量がございますね。これは国別の数量ですけれども、その中にイギリスというのがございました。このイギリスというのは、そのほとんどがRTZミネラルサービス社から、このように考えてよろしいでしょうか。
  142. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  今の契約先、イギリスというものの大部分がRTZミネラルサービス社ということでございます。
  143. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、個別の電力会社あるいは数量について必ずしも明らかにしていただいてないわけですけれども、少なくともRTZミネラルサービスとの間で非常に大きい量の取引があるということは明らかになったわけです。  通産省の資料によりますと、我が国のウラン鉱石の調達先ということで、イギリスとして四万八千三百十九・二ショートトン、パーセントにして二四%、これが過去及び将来の調達先である、こういう数量を示されているわけですが、このイギリス分がほとんどがRTZミネラルサービス社からの調達である、こういうことになろうかと思うわけです。  そこで、このRTZミネラルサービスというのが、ナミビアにあるロッシング社という鉱山、これはウランの露天掘りをしている大変大きな鉱山でございますが、そこのウランを扱っているのではないかということ、そういうふうな情報を得ているわけでございますけれども、これについては通産省としてはどのように把握しておられますでしょうか。
  144. 向準一郎

    ○向政府委員 RTZがロッシングの株を四〇%以上持っているということは、そういうことでございます。
  145. 小澤克介

    小澤(克)委員 私の方で入手している資料によりますと、これはニューエキシコと読むのでしょうか、ニューエキシコ・ドキュメントという、ニューエキシコというウラン等のブローカー、ウランに限らないようですが、ブローカーの出している報告書のようです。一九八四年のオクトバーですから十月の十二日号によりますと、ロッシング社のマインサイト、つまり鉱山はナミビアにある、そしてコントラクト アドミニストレーションアンド マーケティングですか、要するに営業であるとか契約の管理等はミンサーブ、これはスイスのRTZミネラルサービスなんですが、そこがやっている、こういう資料がございます。それからまた、今一部おっしゃいましたが、このロッシング社の株の四一・三五%をRTZグループで持っている、こういうことが明らかになっているわけでございます。  そういたしますと、合理的に推測いたしますと、このRTZミネラルサービスを通じて購入しているウランというのは、そのほとんどがナミビアにあるロッシング鉱山のものだということになるのではありませんか。いかがでしょうか。
  146. 向準一郎

    ○向政府委員 先生御承知のとおり、RTZ社はカナダにも山を持っております。そういうことで、今のお話のようなことは、まあいろいろ、民間の資料だということであると思いますが、ちょっと我々それにつきましていろいろコメントするということはできない立場にございます。
  147. 小澤克介

    小澤(克)委員 ということは、カナダであるかあるいはナミビア産であるか、どちらかわからない。逆に言えば、ナミビア産でないという確証はない、こういうことになりますか。
  148. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  ナミビア産であるということも言えないわけでございます。先ほど申し上げましたように、カナダにも山を持っているということでございますので、そういうことになると思います。
  149. 小澤克介

    小澤(克)委員 逆にナミビア産でないということが言い切れるのですか。
  150. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  原産国につきましては契約上特定できないということでございます。
  151. 小澤克介

    小澤(克)委員 契約上特定していないということですね。
  152. 向準一郎

    ○向政府委員 特定しておりません。契約上原産国を知り得ない立場にあるわけでございます。
  153. 小澤克介

    小澤(克)委員 知り得ないわけはないわけです。ちょっと調べればわかるわけですよ。  時間が来てしまって、しり切れトンボになりましたが、最後に大臣にお尋ねいたしたいと思います。  先ほどからのやりとりから明らかなとおり、我が国の電力会社がRTZミネラルサービスというところからウランを調達している、このことは明らかでございます。また、このミネラルサービスはナミビアにあるロッシング鉱山からのウランを取り扱っている、このことも極めて明白なわけです。そして、今の答弁では、日本の電力会社は、ミネラルサービスからのウラン供給を受けるについて、そのウランの原産地について契約上特定していない、このことも明らかになったわけでございます。そうなると、これはナミビア産のウランがRTZミネラルサービス社を通じて我が国の電力会社に入っていることを否定できないということになるわけです。そうであるとすれば、この点について通産省としてきちんとお調べ願う、そして先ほどの大臣の答弁では今後の契約分については云々ということでございましたが、現契約についてもこれは明らかに国連の決議に違反しているわけですから、もしそういうものがあれば破棄するように指導すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  154. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、電力会社としては、今後新たなウランの調達契約を行う場合には、ウラン原産国がナミビア以外であることが明らかな契約としていく方針であると聞いておるわけでございます。また、通産省もこの方針の徹底を指導する所存でご ざいます。  ただいま既存契約についても調査をしたらどうかというお話があったわけでございます。これはただいま御答弁申し上げましたように、契約上は特定できない格好になっているわけでございます。  ところで、通産省としてはどうか、こういうことでございますが、外国の企業調査するということでございますので、我が国政府としても直接に調査権の行使はできないわけでございます。また、調査内容は、日本と外国の企業と申しますより外国と外国の企業の間の契約の内容に関するものということにもなるわけでございまして、そもそも外交ルートを通じた調査になじむかどうかという点も大変難しい問題がございます。ただ、いずれにいたしましても、せっかくのお話でございますので、私どもといたしましても、今後外務省と相談しつつ、調査可能な点があれば調査を行っていきたいと考えておる次第でございます。
  155. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間が参りましたので、これでやめますけれども、今の、可能な限り調査をするというお話、大変前向きで結構だろうと思います。今のは大臣からお答え願いたいのですが、いかがでしょうか。これで終わります。
  156. 田村元

    ○田村国務大臣 今エネ庁長官が申しましたように、どこまで調べられるものか、外国のことでございますから、また外交案件としてなじむものかどうかという問題もございましょうけれども、いずれにいたしましても、外務省と十分相談をして、可能な限りの調査ができますように努力をいたしてみましょう。
  157. 小澤克介

    小澤(克)委員 終わります。
  158. 渡辺秀央

  159. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、本日は、最近国民の間にといいますか我々の身の回りでも、原子力発電に対する不安といいますか、いろいろな問題が提起されておりますが、こういう問題について、大臣及び関係省庁の考えを伺わせていただきたい。  エネルギーという問題は、現在の日本の国の社会経済を支える、私たちの豊かな国民生活を支える上で非常に重要な、最も基本的な課題だろうと思うのです。この問題を避けて通ることもできませんし、真正面から取り組んで、国民の不安にこたえていかなければならない重要な課題でもあろうかと思います。そういう意味で、私はまとめてお伺いしますけれども、今国民の間に広がっている不安というのは、決して専門家がいわゆる専門的な用語を用いて論ずることについて云々ではないと思うのです。若いお母様方が不安に思うのは、自分の子供が大丈夫か、そういうような素朴な国民感情に通産省あるいは科学技術庁はどうこたえるか。きょうはそういう意味で基本的な問題をお伺いしたい。特に安全については科学技術庁の安全問題担当の局長からお伺いしょうと思っておったのでございますが、避けたわけじゃないでしょうけれども会議ということでお見えになりません。きょうは、資源エネルギー庁を初め科学技術庁のいわゆる安全に対する取り組み、これについてはきちんと、私に答えるというよりも、むしろこのやりとりを通じて、会議録を通じて国民の皆様にわかってほしい、そういう意味で御答弁をいただきたい。専門家が納得したということではなくて、国民が納得しなければ、このエネルギー問題は決して前へ進みませんし、解決もできないと私は思うのです。そういう意味でベーシックな課題を素朴に質問いたしますから、どうかわかりやすい形でお答えをいただきたいと思うのでございます。  エネルギーの問題でございますから、まず最初に資源エネルギー庁に伺っておきたいのですが、エネルギーの長計がある。このエネルギーの長計の中で、日本の将来のエネルギーのバランスの上で石油の依存度、どの辺に目標を置いてこれからの政策を遂行しょうとしていらっしゃるのか、その辺をお聞かせ願いたい。
  160. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 ただいま先生指摘ございましたように、我が国の場合は、他の先進諸国に比しましてなお石油の依存度が大変高いわけでございます。また、その石油は七割が中東地域から輸入されておる、国産はほとんどないという状況でございまして、エネルギー供給構造は大変脆弱なわけでございます。そういったことから、従来から積極的に石油代替エネルギーの開発、導入に努めてきたところでございます。  一次エネルギー供給に占める石油の依存度でございますが、第一次石油ショックが起きました四十八年当時七七・六%でございまして、八割近かったわけでございます。それが昨六十二年度は五六・九%ということでございまして、こういった形で着実に低下してきているということでございます。  今後の石油依存度の動向でございますが、昨年十月に紀元二〇〇〇年を目標にしました長期エネルギー需給見通しの改定を行ったわけでございます。今後、エネルギー需要が着実に増加するわけでございますが、需要の増加分はすべて石油代替エネルギーで賄う、石油の供給量は量的に横ばいさせる、こういう目標にいたしておるわけでございます。その結果全体の量がふえるわけでございますので、石油に対する依存度も、先ほど申し上げました昨六十二年度の五六・九%から昭和七十五年度、紀元二〇〇〇年では四五%程度に落ちる、こういうことにいたしておる次第でございます。なお、四五%といっても大変大きな数字でございまして、石油中心のエネルギー供給構造というのは、依存度は下がりますが、将来ともなお続いていくということではないかと思っております。
  161. 薮仲義彦

    薮仲委員 そういう方向で、やはり日本の国は基本的にはエネルギーの石油に対する依存度というのは非常に大きなウエートを占めておるわけでございますけれども、最近は、イラン・イラク戦争もおさまったという形から、原油の値段はある程度安定というのか値下がりの傾向を示しております。  しかし、やはりこれから私たちが基本的に認識しておかなければならないのは、確かに現在は価格は安定しておる、しかし中長期的に見て、今おっしゃったように中東の原油に対する依存度も相当なものがありますし、エネルギーの安定ということは国家の存立の重要な課題でございまして、やはり需給の見通し、それから価格の安定に対しては、しっかりとしたある程度の見通しを立てて取り組んでおくということは、国民生活をより豊かなもの、安心できるものにするために必要だと思うのでございます。中長期的に見て、今後の石油の需給動向と価格の変動等は、長いスパンで結構ですけれども、どういう方向と位置づけていらっしゃるのですか。
  162. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 最近の国際石油情勢でございますが、ただいま先生指摘のとおり、一部のOPEC諸国の生産枠を超えた生産によりまして、全体として大変需給が緩和しておるわけでございまして、それを反映いたしまして原油価格も軟調ぎみに推移しておるわけでございます。ただ、御指摘のように、中長期的に見ますと、世界の石油需給というのはいずれ逼迫化に向かうという予想が立てられているわけでございます。  IEA、国際エネルギー機関の見通しでも、一九九〇年代の中ごろになりますと、一方需要は発展途上国を中心といたしまして着実にふえるわけでございますが、他方供給の方はアメリカ、イギリス等々いわゆる非OPEC産油国の生産能力が、大体これらの国は可採年数が石油の場合十年足らずというような感じでございまして、いずれ生産は頭打ちあるいは減少に向かうということでございまして、世界全体としてOPECに対する依存度が再び上昇する、その結果石油供給の不安定化あるいは石油需給の逼迫化が懸念されるわけでございます。  私どもとしては、そういう中長期的な見通しの上に立ってエネルギー政策を考えていく必要がある。いずれにいたしましても、エネルギー政策というのは大変リードタイムの長い施策でございますので、特にこの点を頭に置いてやっていく必要があると考えておる次第でございます。
  163. 薮仲義彦

    薮仲委員 先ほど、将来の石油依存度として四 五%程度というお話がございました。これからのエネルギー全体を考えますと、化石燃料、水力、そういうものがございますが、やはり原子力発電というものについてはエネルギー全体の中で占める分野も非常に重要になってくるかもしれません。と同時に、発電電力総量に対するウエートも上がってくると思うのです。  今資源エネルギー庁として、エネルギー全体の中で、いわゆる原子力発電の現在のパーセント、そして将来は何%ぐらい、このぐらいなら国民の理解を得られるという将来の見通しですね、これ以上はもう国民の合意は得られない、これはつくり過ぎだというような、国民のいわゆる反原発の感情もこれあり、計画は持っておるかもしれませんけれども、これは決して一〇〇%推進できる問題ではないと思うのですね。将来、原子力発電というものが、エネルギーの総量の中では何%で、発電電力総量の中では大体どの程度と考えておられるのでしょうか。
  164. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 現在の一次エネルギーの各エネルギー源別のウエートでございますが、大ざっばにいいまして、石油が大体六割足らずということでございます。残りの四〇%のうち二〇%くらいが石炭でございます。残りの二割を天然ガスで一〇%、原子力発電で一〇%担っておる、こういうことでございます。現在原子力の一次エネルギーに占めるウェートは一〇%程度でございますが、発電量に占めるウエートで申し上げますと二九・一%、これは昨六十二年度の数字でございますが、大体三割ということになるわけでございます。  将来の見通しでございますが、昨年策定されました長期エネルギー需給見通しによりますと、紀元二〇〇〇年時点で一次エネルギー全体で一五・九%ということでございまして、一〇%から六%程度シェアが高まる。それから、発電電力量ベースでは四〇%という目標を立てております。
  165. 薮仲義彦

    薮仲委員 その四〇%の原子力発電ですけれども、現在稼働中の数と計画中の数、発電総電力量でいくとどの程度の電力量になるのか、ちょっと数字をおっしゃってください。
  166. 堤富男

    ○堤政府委員 お答えさせていただきます。  現在稼働中の原子力発電所は三十五基ございまして、六千四百二億キロワットアワーを発電しておるわけでございます。これは全体の発電量の二九・一%になります。電力全体がエネルギーの中では約四〇%弱でございますので、エネルギー全体としては一〇%になるわけでございますが、電力の中では二九・一%でございます。稼働率は七七・一%。それから、今後計画中のものでございますが、十八基ございまして、設備ベースでは千八百二万キロワットになるということでございます。
  167. 薮仲義彦

    薮仲委員 国民の間に、ある意味では反原発から脱原発という考えもほうはいとしてわき起こっているのは事実です。これは後ほどだんだんお伺いしてまいります。  そうなってまいりますと、水力、化石燃料あるいは原子力発電、次に国民が本当に安心して使える、クリーンなといいますか、安心できる理想的なエネルギーは何だろうか。あるときには太陽エネルギーを論じた。EC等では風力をいろいろと研究していらっしゃる。地熱だとか波力だとかいろいろあります。でもやはりこの次に来るクリーンなエネルギーは、やがて将来は水素エネルギーが使えないかなというような声すら出ているわけでございまして、今はこうかもしれませんけれども、将来は新しいエネルギーとして、国としてはこういう方向に持っていきたいというエネルギーはどういうものを今考えていらっしゃるか。  確かに今まで通産省は、サンシャイン計画とかムーンライト計画とか、新しいエネルギーと同時に、現在の社会構造を省エネの方向に持っていこうという、二面性を持ってやっていらっしゃるわけですけれども、この新しいエネルギーは、すべてのエネルギーの中でどの程度を考えて今政策を遂行していらっしゃり、あるいは研究開発に取り組んでいらっしゃるのか、それはどの程度の目標値を考えてやっていらっしゃるのか、時間的な問題と量的な問題を御説明いただきたい。
  168. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 先ほど御説明申し上げました昨年十月に策定されました長期エネルギー需給見通しでございますが、今後紀元二〇〇〇年までに石油換算で約一億キロリットルの需要増を見込んでおるわけでございますが、この需要増をすべて石油代替エネルギーで賄おうということでございまして、全体の四五%を原子力発電、残りを石炭とか天然ガスとか、今先生おっしゃいました新エネルギーとか、こういったところで賄おうという形になっておるわけでございます。  そこで、新エネルギーでございますが、実は今申し上げました見通しでは、一次供給エネルギーに占めるウエートを六十一年度一・三%から七十五年度四・五%に引き上げるということで予想を立てているわけでございますが、これは正直言いまして相当政策的な努力を払わないと難しいものではないかと考えている次第でございます。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕  新エネルギーの中で典型的なもので申し上げますと、例えば太陽光発電とか風力発電とか燃料電池発電等々があるわけでございますが、これにつきましては、ただいまお話ございましたように、私ども一生懸命技術開発に努力を傾注いたしているわけでございますけれども、なかなか量的に大きくまとまらないという問題がございます。それからもう一つはコストの問題でございまして、コストの低減にも一生懸命取り組んでおるわけでございますけれども、なかなかこれも大変な、今後努力すべき課題が多いということでございます。  そういったことで、新エネルギーの開発は大変重要なことでございますので、私どもとしても今後大いに力を入れてまいりたいと思います。量的には先ほど申しましたように今の一・三%から四・五%ぐらいまで引き上げるということで努力はしてまいりますけれども、四・五%というのも大変厳しいターゲットでございまして、そういった意味で新エネルギーだけに今後のエネルギーを大きく頼るというわけにいかぬ、こういうことではないかと思っております。
  169. 薮仲義彦

    薮仲委員 この問題はちょっと大臣の新エネルギーに対するお考えをお伺いしたいのですが、その前にもう一つ伺っておきたいのです。  今エネ庁長官は一生懸命取り組むという言葉があるわけです。言葉だけがあっても実体が伴わなければ国民は納得しないのです。例えば原子炉は安全ですという言葉がある。安全という二文字がひとり歩きしても国民は安全と思わないのです。これは後で質問しますけれども。  今長官はそうおっしゃいましたけれども、それでは、新エネルギーに対する予算を、六十一幾ら、六十二幾ら、六十三幾らと、数字で言ってください。
  170. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま石油代替エネルギー予算ということで原子力なども入った数字しか手元にないのでございますが、これで言いますと、昭和六十一年度が千四百四十五億円、六十二年度が千三百十六億円、六十三年度が千百八十一億円ということになっております。
  171. 薮仲義彦

    薮仲委員 千百八十一億円に通産省分を足しますと正式には千百九十六億なんです。今読まれたように、一生懸命やっていますということは、予算措置もしっかり講じて、これだけ増加しております、国民の目の前に、国民の皆さんの税金は新しい代替エネルギーのために資源エネルギー庁としては長官を筆頭にしっかりと取り組んで、予算措置も講じて、研究開発しておりますというのならわかるのです。しかし、今言われたように、六十一年が千四百四十五億、六十二年が千三百十六億、六十三年が千百九十六億。これは子供が見たって数字が減っているのです。予算がふえていないのです。そうでしょう。これで一生懸命やっていますという言葉を使うから私はいかぬと言うのです。やるのだったら本気になってやればいいのです。  今の行政の一番の欠点は何かというと、今コストの問題をおっしゃいましたけれども、例えば、 あのオイルショックのときに、タールサンドとかいろいろな形で新エネルギーをやろうと思って、国を挙げて、あるいは石炭液化とか、真剣になっておやりになった。ところが原油のコストが安定あるいは弱含みになってくると、途端にコストの面で合わなくなってくる。確かにタールサンドとかオイルシェールというのは、原油の値段がこれ以下ですととても合いません。これは我々わかっているのです。基礎研究というのは石油がだぶついているときはやらない、足りなくなったらやる、これではいつまでたってもだめなんです。私が時間的な問題と量的なスパンをはっきりして腰を据えて本気になってやるのですかと聞いたのは、そのことなんです。幾ら長官が私に答弁では一生懸命やっています、しかし数字はどうですか、これはエネ庁さんからいただいた資料ですよ。この紙に資源エネルギー庁と書いてあるんだ。いただいた資料が、こうやって予算が減ってくれば、国民は納得しないのですよ。  私が言いたいのは、原子力が不安だったら次に何とかしなければならないな、何とかして脱原発の方も、今の主婦の方の中には契約料金を下げましょうなんという真剣な取り組みをしていらっしゃる方もいるのです。そういうことにこたえるのだったら、行政がもっと本気にならなければ、我々ここにいらっしゃる現場の政治家の先生は、大臣もそうですけれども、現場で言われるのはそんな甘い話じゃないのです。私の子供をどうしてくれます、大丈夫ですかという素朴な不安に対して、やはり政治が、行政が、しっかりこたえる責任がある。だったら、代替エネルギーはどうすべきか、原子力はここまでで果たして今おっしゃったパーセントで国民が合意するかどうか、これはだんだんと問題提起してまいりますけれども、私はこれはそういう取り組みではいかぬ。こうやっております、予算もこうやります、本気になって次のエネルギーはこうしますという取り組みが肌で感じられるような御答弁でないと、私の会議録を地元へ回したらがっかりしますよ。私は、長官なり、これから大臣のお考えもお伺いするわけですけれども、やはり国民が政治あるいはそういうものに対しては期待と信頼を寄せるような施策をとっていただきたい。私の言うことを本気になって考えるのだったら、今後の長計の中で、新エネルギーは困難だと言わずに、こんな予算措置だったら困難に決まっているわけです、やはり研究には、本当にベーシックな部分は、大臣もいつも日米あるいはECとのいわゆる基礎研究ただ乗り論ということを言われるのです。だったら、本気になって基礎研究に取り組もうという姿勢を、これだけの経済力を持った日本の基本的な資産として持つことが、国際社会に対する信頼にもなろうかと私は思うのです。それは何も日本だけの問題じゃなくて、グローバルな地球全体のためにもやるべきだと私は思う。それは国民も納得するし、世界の人も必ず期待してくれると私は思うのですね。  余計なことを言いましたけれども、大臣、新エネルギーに対していかがでしょう。
  172. 田村元

    ○田村国務大臣 いささか通産大臣らしからざる御答弁になるかもしれませんが、今私の言いたいことをみんな言ってくれたという感じなんです。私は、原子力発電というものを推進しなければならない、あるいは絶対反対であるということの議論の前に、日本の将来の子供や孫やひ孫や子孫たちのためのエネルギー対策を今からどうするかということを朝野を挙げて、とりわけ国会で真剣な議論がなされてしかるべきものと思います。  例えば、先ほど申し上げましたように、油といいましてももう四、五十年しかない。では、石油はもう終わるのか。それは探せば少々あるかもしれない。しかし、その後に来る油というものは、オイルシェールでありオイルサンドというものから搾り取る、つまり非常に高価な油になってしまう。では、石炭はどうするか。これは世界じゅうが使えば、酸性雨が降って野山が枯れ果てるだろう、あるいは温室効果が起こって、そして天変地異が起こる可能性もある。新エネルギーがなかなか開発できない。私は本来、極端なことを言えば、私自身のいつも言っておりますことを言えば、こんなようなことでおったら、孫やひ孫たちは恐ろしくて子供を生まなくなってしまう、我が子にそういう苦しみを与えることは避けたい、そういうような事態すら起こりかねない。だから、賛否を論ずる前にとにかく徹底して議論をすべきであるということを常に申しております。今おっしゃったとおりでありまして、私はがん撲滅対策と新エネルギー開発のためにはどれだけ予算を使っても、他の予算をちぎって使ってでも国民は文句言わないと思う。でありますから、そういう点で、率直に言いまして、今まで新エネルギー開発に対して、私も、大臣といいますか一個の政治家として、若干の危惧の念を持っておりました。非常にいいことを言っていただいたわけでありまして、これで私も大いにまた役人たちを叱咜勉励いたしますが、これは単にエネ庁の役人だけでどうにもなるものじゃないのですね。すべてをくるんで、電力会社もすべてをひっくるめて、そして国会が中心になって大議論を展開していく、そういうことが必要な、もうそういう時期に来たのじゃなかろうかというふうに思います。大変通産大臣らしからざる御答弁になりましたけれども、あえて私の真意を申し述べて御答弁といたします、
  173. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣の答弁を聞いて、私もある意味では国民の一人として納得できますし、そうあってほしいと願っている一人でございますので、新エネルギーについてはこれで終わらせていただきます。  それでは次の、いよいよ本論の方の原発の問題。最初に申し上げておきますけれども、私は今の大臣のお考えと基本的には同じなのです。原子力発電反対だとかとめろとか、そういう立場には全くないのです。原子力発電に対して国民が許容するとか納得するとかどう理解しているかということを素朴に考えた上で、では原子力発電をどうすれば国民がどう思ってくれるのだろう、次世代のエネルギーはどうあらねばならないのかという今のスタンスでお伺いしますので、賛成とか反対とかという立場じゃないという今の大臣の御発言と同じスタンスで聞きますから、偏見なく素朴に国民に答えるようにお答えを私はお願いをしておきます。  まず、冒頭ちょっとお伺いしますけれども、国民が最近、世論調査等も出てまいりますけれども、非常に原発に不安を抱いております。国民がなぜ不安を感ずるのか。これに対して、その責任の庁たる資源エネルギー庁あるいはきょうは原子力安全局長に答弁を求めたかったのです。お見えにならなかった。公明党が今変な方へ振れると大変ですよ、科技庁さん。私はそういう意味で原子力安全局長に前々から、きょうは出てきて原子力安全局長としての考えをはっきり言いなさい、私は国民を代表して聞くから。資源エネルギー庁長官は国民が不安に思っているのを具体的にどう理解しているのか、原子力安全局長は安全面からどう認識しているのか。その認識に対して国民は、ああエネルギー庁長官はこう認識している、科学技術庁はこう認識しているのだ、ならば大丈夫だと思うか、あるいはきょうのように御答弁にいらっしゃらないと、私は科技庁の方に言ったのですよ、お見えにならないと、私は自分の現地に浜岡もあります、柏崎にも行きました。あるいは玄海も行ってまいりました。党としてもいろいろ今原発論議をしているときなのです。だから私は、きょうは大事ですよ、出てらっしゃい、こう申し上げておるのに、お出にならない。それは委員会が違うかもしれないけれども、こういう重要な課題に対しては、科技庁どなたが御答弁になるのか知らないけれども薮仲会議録に残るようにこうはっきり言っていたとお伝えいただきたいのです。私は、きょうもお出になれないというからあえて申し上げたのですけれども、普通はこういう無理は言わぬのですよ。大体物わかりのいい方ですから、そうですかと聞くのですが、きょうだけは私は聞きませんでした。私は納得したわけではありません。そういう意味で、国民が具体的に何 をどのように不安を感じているのか、それをどう認識していらっしゃるか、まずエネ庁とそれから科技庁と御答弁をいただきたいと思います。
  174. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 午前中、私どもの大臣からも御答弁申し上げたわけでございますが、原子力発電の推進に当たりましては、国民の理解と御協力をいただくことが不可欠の前提でございます。そのためには、まず何よりも安全運転の実績を積み上げることが大切なことだというふうに考えておりまして、今後怠ることなく安全運転の実績がさらに積み上がるように努力をしてまいりたいと思っております。  最近、先生指摘のように、原子力についての国民各層の関心が大変高まってきているわけでございます。私どもとしては、これをむしろ前向きにとらえまして、国民の皆様方に原子力発電の問題を御理解いただくいい機会である、こういうふうに認識いたしまして全力を尽くしてまいりたいと考えているわけでございます。  国民の皆様方が不安を持っておられる点でございますが、原子力発電は大変大きな技術、いわゆる巨大技術でございまして、大変理解しにくいというようなこともございましょうし、また放射線につきまして、放射線が目に見えないというような御議論があって、放射線の影響を受けたら遺伝的障害が起こるのではないかという議論とか、あるいは特にチェルノブイリの事故の後、輸入食品中に放射性物質が含まれる例があった、こういったことから大変関心が高まっているということでございまして、漠たる不安を皆様方が抱いている背景も私どもなりによく理解できるわけでございます。そういった意味で、国民の各層に対しまして多面的にわかりやすい広報活動ということで、今後その広報活動に十分力も入れていきたいと考えている次第でございます。とにかく、わかりやすく、それから国民といってもいろいろな方がおられるわけでございますので、それぞれの方々立場で御理解いただけるような原子力問題についての広報に、ぜひ取り組んでいきたいというふうに考えておる次第でございます。
  175. 尾藤隆

    ○尾藤説明員 お答えいたします。  私、原子力安全委員会の庶務を任せられている、そういう立場お答えさせていただきますけれども、原子力安全委員会は今から十年前、先生御承知のとおり、当時「むつ」の放射線事件、そういうような国民の行政に対する不信というものを背景といたしまして、政府において新たに基本法等を改正してつくられたものでございます。したがって、そのときの反省に立ちまして安全委員会は安全審査に当たりまして、例えば地元の御意見を審査に反映させるなどの公開ヒアリングの制度を励行してくるなどのことをやってまいりました。  ただ、安全委員会は、従来から、安全というのは宣伝するものではないのだ、実績によって御理解いただくものだ、そういう立場を堅持してきたこともあったかとは思うのでございますけれども、その活動につきまして国民の皆様方からなかなか見えにくい面があったかということを昨今反省しております。したがいまして、今後、先生初め皆さん方のそのようなお考え等を参酌させていただきまして、どのように国民の方々から見えるようにしていったらいいのか工夫してまいりたいと考えております。
  176. 薮仲義彦

    薮仲委員 ここが非常に大事な点ですから、私は質問通告したときに、書面で御答弁くださいと言って、わざわざ書面を科庁さんとエネ庁さんからもらったのです。ここに、表現は違いますけれども、今の御答弁もそれに関連した、ほかの分は違うのですが、両庁の似ているところがあるのです。最後の段で、「原子力発電に関する正しい知識を普及することにより、国民の不安解消に努めてまいりたい」、今のがエネ庁さんです。科技庁さんも、「原子力開発利用を円滑に推進していくためには、国民の理解と協力を得ることが必要不可欠であり、」「放射線をはじめ原子力に関する正しい知識の普及に努めてまいる所存」でございます。両方とも「正しい知識」「正しい知識」という表現をしておりますね。「正しい知識」とは一体何を言っているのですか。正しい知識を普及するというのは、どういう知識を普及することが国民の理解を得られると思っているのか、具体的に両庁ちょっと言っていただけますか。
  177. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 私の乏しい体験の中から一つだけ例を挙げて申し上げたいと思うのでございますが、例えば自然放射能の問題でございます。  実は私ども人類というのは太古以来自然放射能とともに生き続けているわけでございます。日本の場合でございますと、私ども一年間に平均百ミリレムの自然放射能を受けているわけでございます。これは太古以来自然放射能とともに暮らしているということでございますが、そういったことで、放射能の問題というのは、オール・オア・ナッシングと申しますか、定性的な問題というよりも量の問題なわけでございます。要するに自然放射能と比較いたしまして微量の放射能については特に安全上問題がないわけなんでございますが、私の乏しい体験からいたしましてもそういうふうに感じるのでございますが、私の周囲にいる人間でも、放射能というのはちょっとでも自分の周りにあると大変危険なものだというようなことを、自然放射能の存在を知る前に、そういうふうに思い込んでいるというようなこともあるわけでございますね。こういったことなども、もっと私ども一般国民の方々に御理解いただく必要があるんじゃないかというふうに考えておる次第でございます。ちょっと一例ということで申し上げました。
  178. 林幸秀

    ○林説明員 科学技術庁の方も同じように正しい知識の普及をやっていきたいというふうに考えているわけでございますが、一例を挙げますと、例えば十年ぐらい前にアメリカの方でスリーマイルアイランドというところで原子力発電所の事故があったわけでございます。最近いろいろ、特に反対派の方々がおっしゃっている話によりますれば、TMIの事故の後、TMIの周辺でいろいろがんの発生率が高くなっておるといった話がございます。これにつきましては、アメリカの方のペンシルベニア州の州当局、健康保健局ですけれども、これが相当詳しい綿密な調査をしておりまして、そういうことはないという調査結果を出しておるわけでございます。こういったことも、我々としては、がんがふえているという不必要な不安感が出ているのではないかと考えまして、そういうことはないのだということを伝えていく、そういったことが正しい知識の普及になるのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  179. 薮仲義彦

    薮仲委員 科学技術庁さん、では、そのスリーマイルアイランドの事故から、科学技術庁は、一生懸命正しい知識の国民に対する普及に努めたのですね。
  180. 林幸秀

    ○林説明員 具体的な点でどういうふうにやるかというのは、いろいろあると思いますけれども、例えばいろいろな科学技術庁の関係しております新聞なりいろいろなPRのところで常にそういうことを伝えておるつもりでございます。
  181. 薮仲義彦

    薮仲委員 だから私は我々政治家と行政マンの感覚が違うと言うのですよ。今お二人の御答弁に対して私が反論しますと、あなたはスリーマイルアイランド以降正しい知識の普及に努めたと言うけれども、これは総理府の世論調査ですよ、これは最近の六十三年、あなたも知っていると思うのです、私が質問するんじゃないかと思って。私はそうじゃないんだ。もっと前だ、心配しているのは。五十五年、原子力発電所に対する国民の不安感、当時は五六%です。その次の五十六年、五九%です。それから、その次の五十九年の世論調査です、七〇%です。これは六十三年。これが八五・九%。あなたは正しい知識の普及に努めてきたとおっしゃるけれども、正しい知識の普及に努めたらますます不安感が国民に、今八五・九%ですよ、八六%。安全と思っている方はわずか数%ですよ。このアンケート御存じでしょう。あなたは、安全についてやってまいりましたというのは行政マンのあれです。ここにある世論調査を見ますと、「不安(心配)に思うことはない」と答えた者はわずかに八・一%です。五十数%から八六%まで年々ふえて、科学技術庁が国民に対して正しい知 識、安全の普及に努めてきました、この数字が如実に物語っているのではないですか。国民の不安が八六%も、この間に、スリーマイルアイランドとチェルノブイリ以降ぐっとふえたのですよ。何をあなたはおっしゃっているか。だから私は、国民の間に、あなたのような答弁をしているから、原子力安全局長に出ていらっしゃいと言ったのです。納得しませんよ、この会議録を見ていたって。エネ庁長官に大変失礼なんですけれどもね。  このアンケートをよく詳細に見ますと、この中で、こういう重大なことが書いてあるのです。原子力発電についての不安、心配との関連では、見聞きしたことがある者に不安、心配に思うことがあると答えた人が多いのですよ。不安だと思って、原子力発電所を見学に行きましたか、見たり聞いたりしたことがありますか、これは九〇・七なんです。その方の方が不安に感ずるのですよ。だから私は言うのですよ。「正しい知識」とお書きになるけれども、国民は原子力発電所に行って勉強してきたはずなんだ、ところが帰ってきてアンケートをとると不安ですという答えが出る。そのほとんどが、九割は、見たり聞いたりした方が不安ですとおっしゃっているのです。  だから、そういう自然放射能であるとか、そういうことをおっしゃったところでだめなんです。今定量的な問題とおっしゃった。しかし我々政治家が直面するのは、定量とか定性の問題じゃなくて、むしろ、例えばお年をとられた方とか、さっき大臣が子供さんやお孫さんのことまで言及されました。我々直面しているのはその問題なんですよ。あなたが若い奥様に会ってごらんなさい。自分の子供大丈夫ですか、こういう素朴な質問なんですよ。そこで幾ら高邁な理論を言ったところで、多重防護ですどうでございますと言ったところで、コンピューターはみんなとまる方にセットしてあります、プログラミングしてあります、こう言ったところで、その奥さんは納得しないのですよ。こういうのは、むしろ、お母様がかわいい自分の子供、子々孫々に至るまで本当に大丈夫かなという、お母様として子供がかわいい、母性本能というか本当に生命の尊厳というか、命を大切に思うというお母様の気持ちだと思うのですよ。大臣がおっしゃったように、子供の出産ということすら不安に感ずるのですよ。そういうことに我々ここにいる政治家はもろに直面するのですよ。そういう言葉だけでは納得できないのですよ。むしろこれは理論よりも感性なんです、女性の、お母さんの、生命の尊厳というか、かわいい子供を守ろうとする。そういうことにもっと本気になってこたえないと、私が冒頭に言ったように、エネルギーというのは大事なんだ、国民生活に、経済社会に、福祉のために絶対必要なんだ、避けて通れないのだ。だったらどうするかということを本気になってもっと、そんな私にちょっと反論されるような答弁、あなた方がそういう答弁をしていると私はやりきれなさを感ずるのですよ。だから私はもう私の気持ちを幾らでも言いたいのだけれども、きょうはもう時間が本当になくなってしまうのですよ。ですから、残念ですけれども、ちょっと次の質問に素朴に答えてください。  これはもう安全局長いないから、課長さんにお答えいただいても余り意味がないから、エネ庁長官にちょっと質問しますけれども、素朴に聞きますよ。原子力発電というのは安全なんですか。一〇〇%安全なんですか、こういう質問を我々受けるわけです。これが一つ。それから、もしそうでないとするならばどういう事故が起きるのですか、私たちが危険を感ずるような事故あるいは要素、原子力発電の持っている何が危険なんですか、こういう素朴な質問を受けるのです。何と答えますか。
  182. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 ただいまの御質問お答えする前に、私どもの広報のやり方でございますが、先生指摘ございましたように、最近の原発をめぐる国民の関心というのは従来とは相当違った形であるということは私ども十分認識いたしておりまして、従来の広報のやり方だけでいいのかということについては十分反省いたしております。従来は、ややもすると、私ども定食的と言っているのでございますけれども、だれに対しても同じようなPR活動をやってきたということでございます。ただいま感性というお話がございましたけれども、これからは、御婦人なら御婦人、あるいは若い人なら若い人、お年寄りならお年寄りと、それぞれの方に合わせて、メニュー方式と申しますか、私ども、とにかくわかりやすい、場合によっては相手に問いかけるというような形でのPR活動と申しますか広報活動に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  原子力発電は安全なのかと聞かれた場合にどう答えるかということでございますが、これはもちろん安全だということでございます。とにかく我が国に原子力発電が生まれまして約四半世紀たつわけでございますが、この間、外部の方に影響を及ぼすような事故は一切、一件も起きていないわけでございまして、こういう安全運転実績が如実にそれを示しているというふうに思うわけでございます。原子力発電自体は、放射性物質という裸にすれば危険なものを扱っているわけでございますので、これは先生にはこんなことを申し上げるのは釈迦に説法でございますけれども、多重防護というような考え方に基づきまして何重にも安全対策をとりまして、絶対という言葉はこの世の中に存在しないという話があるわけでございますが、私ども常識的に使っている、そういった意味では絶対安全なものだというふうに考えておる次第でございます。
  183. 薮仲義彦

    薮仲委員 これも本当は原子力安全局長に聞きたい質問が次にあったのですけれども、これはエネ庁さんも当然関係省庁でございますからお伺いします。  今、安全とおっしゃった。これは嫌みで言うわけじゃありませんよ、国民はこういうことは理解できないし納得できないという意味で申し上げるのですから、お答えいただきたいのです。例えば原子炉のいわゆる立地審査、安全審査をやるわけですね。そのときに指針があるわけですよ。これはエネ庁さんからいただいた、科技庁さんも同じ資料を下さるが、黒々と書いてあるのですね。ここに、こう書いてあるのですよ。「原子炉立地審査指針に定める立地条件原子炉からある距離の範囲内は、非居住区域であること非居住区域の外側の地帯は、低人口地帯であること原子炉敷地は、人口密集地帯から離れていること」こう書いてあるのですよ。そんなに安全だったら、なぜ人口密集地域で、この永田町のど真ん中へ原子炉をつくったらどうなんですか、銀座のど真ん中に原子炉をつくったらどうなんですか。よく反原発の方がおっしゃる表現かもしれませんけれども、私はそういう立場の人とは立場が違いますけれども、こういうことが書いてあったら、山間僻地ならいいのか、人が住んでいないところは構わないのか。これは何を言っているかというと、言葉には書かなくたって、安全ではない、不安要因がある、人のいないところに建てろ、こういうことでしょう。エネ庁長官、本当は原子力安全局長に答えてもらいたかったのですけれども、口では安全を言ったって、こういう指針を見れば、本当に大丈夫なの。例えば私が私の子供に、お父さん本当に大丈夫と言われたときに、じゃなぜこんな指針があるの、被害を最小限に食いとめるためなの。後はと被害想定の話も論じたいのですけれども、こういうことが書いてあると、国民は納得しますか。いかがでしょう。
  184. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  今先生お示しになりました立地審査指針、これは原子力発電所の設置許可の段階の安全審査、そのときに平常時の運転がどういう状況になるかという想定ももちろんしますし、事故、トラブルが起こったときにどういう事象になるか、その中で特に重大事故、仮想事故ということで、技術的に起こり得ないような事故あるいは重大事故を超えるような仮想事故、こういうものを考えまして、そのときの敷地境界での目安がどのくらいになっておればいいかということで、その指針が決められているわけでございます。  それで、起こり得ないということをちょっと御紹介させていただくために例を一つ挙げますと、原子炉の設計に当たりまして、太い配管が一瞬に破断して冷却材が喪失するという事故を想定しております。かつ、そのときに、外部電源がなくて、内部のディーゼル等で、内部電源で処理する。さらに、そういうときに期待されております安全装置があるわけでございますが、二系統ある場合はその一つが働かないというような厳しい仮定をして、敷地境界でどういうような数値になるかということを想定しまして、安全性を確認するわけでございます。  そういうことで、我々は原子力発電所の安全審査の段階で、平常時はもちろんでございますが、事故を考えましても、敷地の境界で周辺公衆への影響が問題ないということを確認して建設を始めるというものでございます。
  185. 薮仲義彦

    薮仲委員 だから、あなたのような答弁だから納得できないのですよ。国民はそれほど原子炉に対して知識がないわけじゃないのですよ。今あなた方は、原子炉は安全です、そんなことは設計の段階から事故は起きません、安全だから。例えば静岡県なんというのは大規模地震が来るときの避難に対する訓練もやっているのですよ。しかし、後でやりますけれども、被害想定とか避難とかそういうことを論じようとしない。それはいたずらに国民の不安を呼び起こすのじゃないか、それはわかるのです。でも、いいですか、審議官、顔を上げて聞いていらっしゃい、私の言うことを。  IAEA、国際原子力機関、この「原発の基本安全原則」という勧告があったでしょう。二月ごろ東京でもいわゆるマン・マシン・インターフェースという会議が持たれたはずです。あの国際原子力機関がどういう原則に立っているか、国民は知っているのですよ。あなたみたいに、そんな空論を言ったってだめなんですよ。私はその会議の中にいたわけじゃないから資料を見て仄聞する限りですけれども、国民が知っている立場で言いますと、「あらゆる人間活動に絶対の安全はない」こういう大原則に立っているのですよ。あらゆる人間活動に絶対の安全はない、その上に立って深層防護と安全文化ということを提言しているのです。  さらにもっと大事なのは、東京でやったマン・マシン・インターフェースの国際会議の冒頭の、あのブリックス事務局長の演説の中に何があったか。「世界の人々が何を訴えているのか、きちんと耳を傾けるべきだ」。あなたの言うようなことは、きちんと耳を傾けていないで、答弁書を読んでいるのですよ。生きた対応をしていないから、そんなことが言えるのです。  しかも、ここが大事なんです、IAEAの安全に対する基本的な認識としてどう言っているか。スリーマイルアイランドといわゆるチェルノブイリ以後の考え方はこうなったんだ。多くの専門家は炉心に重大な損傷を及ぼすような事故の可能性は全くないと、私だって、ここにいる諸先生だって国会議員を何年もやっていらっしゃるのだ、当時幾ら説明を受けたって、炉心の損傷はないと科技庁さんだってエネ庁さんだって我々に説明したのですよ、絶対炉心に対しては安全ですと。しかし今はどうですか。チェルノブイリのあの黒鉛の原子炉は、設計段階から低出力になったときに異常に反応が上昇するような設計になっていて、設計が悪いとか、人間のやったことが何重にも重なったとか。でも、この国際原子力機関は、人間は間違う。しかも、ここで言っているのは、あなたがおっしゃったようなことじゃないのです。考えられない事故はあるという前提なんです。シビアアクシデントは起きます。月これは過酷事故なんです。もう最悪の状態、安全システムはあるというけれども安全が全部きかなかった、人間が全部間違った行動を行った。人間の行うことだって思い違いもあるけれども、チェルノブイリはどうか知りませんけれども、人によってはこのことは絶対間違いないと思って誤操作をやる場合もあるのです。  あなたは専門的なことをおっしゃるけれども、スリーマイルアイランドだって、あそこの配電盤の前に集まった専門家が、今炉の状態がどうなっているかわからなかったんですよ。あなたは都合のいいところだけ切り張りして御答弁になるけれども、私はそういう賛成とか反対じゃないと言っているんだ。本当に国民がわかるように取り組まなきゃだめだ。そんな空理空論をやってたって、国民は白々しいと思う。あなたの答弁を聞いたって私は納得できない。何を言っているんだ。今、国際原子力機関だって、過酷事故は起こり得る、その前提に立ってどうするかが大事なんです、そう言っているじゃないですか。しかも、日本の専門家は、ソ連の科学者に、日本はどうですか、日本はそんなことありませんと答えている。そうじゃなくて、あると考えてどうなんだということを国民はある意味では知りたいのですよ。軽水炉にしたって、水があれば大丈夫ですよ、ECCSが瞬間に働いて炉心の温度は二百八十数度ですよ、温度を下げれば反応は減速します、そんなことは我々どこへ行ったって聞いているんですよ。国民の大方は知っているんです。だから、何が知りたいのかといったらば、安全だと言う前に、最悪の事態でもこれくらいの被害しか、そんな域内でどうのこうのなんていうんじゃなくて、今日本の中で稼働している三十五基の原子炉というのは、仮に人間も誤った、安全も誤った、すべて誤ったとしてもこれ以上の被害は出ませんよとはっきり言えばいいじゃないですか。仮にこれが暴走したらどうなるか、むしろその方が国民はわかりやすいのです。ああそうか、これはこの程度の被害なのかな、この程度の怖さなのかな。怖さをしっかり教えないから、正しい知識、正しい知識と言うけれども、最悪の事態がどうなるかということをはっきり言って、なおかつ本当に大丈夫なんだということが徹底されないとだめなんだ。  あなたの御答弁聞いても国民の大方は納得しないから、これは大臣にお願いしたいと思うのですけれども、いいですか、安全に対して私の考えを申し述べたいんです。一〇〇%安全はない、だれでもそんなことは知ってますよ。階段だって落ちるんです、自転車だって転ぶんです。そんなこと、我々国民は知っているんです。でも、なぜそれを受け入れているか。例えば、エネ庁長官だって、局長だって、自動車にお乗りになる。あのエンジンのメカニックというのは、燃えやすいガソリンを燃焼さして、それをエネルギーにかえて走っているんですよ。しかも自動車には可燃性のガソリンが何十リッターと入っているんですよ。しかも、ある特定のスピードが出るんですよ。でも国民はなぜあれを受け入れているか。ガソリンを燃焼させるというメカニックに対して、技術的なあるいは機械的な安全について国民は納得して受け入れているんですよ。しかもスピードや何かを制御できるという制御のメカニックも国民は理解しているんですよ。  私が今何を一番言いたいか。皆さん方が答弁することは白々しいんだ。皆さん方が言っている安全と国民が受け入れる安全との乖離があり過ぎるというのです。これを僕は本当に考えるべきだと思うのです。何が問題かということ。皆さん方がしゃべっているのは、私だってこれは何を言っているのと言いたくなるようなことをここで答弁しているんです。ましていわんや、多くの国民の方が、八割以上の方が反対するのは当たり前なんだ。安全と口に出すのだったら、国民のレベルで受け入れられなければ本当の意味での安全じゃないと私は思う。自動車にしたって自転車にしたって、なぜ国民が受け入れているか。さっきエネ庁長官は、安全の実績の積み重ね、そのとおりですよ。しかし機械的にもある程度我々は理解している部分があるかもしれない。確かに巨大な原子炉の機構やなんかについては我々は理解しようといったって無理かもしれません。でも、冒頭でおっしゃったように、これから原子炉というものの位置づけをしなければならないんだったら、国民が本当に受け入れてくれるものでなければならない。あなた方は国民の理解と合意とかなんとか言うが、そういうのじゃなくて、本当に国民が、じゃ私のと ころにもつくりましょう、私もいいですよ、これが国民の安全に対する合意であり、受け入れなんですよ。国民が納得するのですよ。その辺を真剣に論議をしなければならない。そんな、ここに私がいただいたようなペーパーでは、国民は納得しないのです。冒頭に私は、国民の不安をどう考えていますかと言った。何を不安に感じ、何をどうこたえてどうすれば、今おっしゃった主婦のレベルであるいは青年のレベルで、専門家のレベルで御理解いただけるか、これがなければ非常に危険だと私は思うのです。そういう意味で私は、この安全について本気になって取り組むことが、目下の急務であろうかと思うのでございます。  これは行政マンの御答弁を聞いているより私は大臣にお願いするのですが、私たち国民が本当に抱いている素朴な、しかし日本の将来を考えたときに避けて通れないエネルギーの問題で、本当に国民が納得して受け入れてくれる安全のレベルがどうなのかということは、私もわかりません、でも何とかそこを乗り越えないといけない。八十数%の方がノーと言う、これを単なる反対者の意見ということじゃなくして、通産行政全体として、どうしても大臣に、国民の一人として、何とかこれに期待の持てる、安全を確保した将来の原子炉のあり方について対策をお考えいただきたいと思うのでございます。大臣、いかがでございましょうか。
  186. 田村元

    ○田村国務大臣 私は、この原子力発電というものを論ずるのに、二つの角度から論じなければならぬと思うのです。  一つは、今おっしゃった安全の問題であります。安全の上にも安全、これは当然のことでございます。でございますから、大変率直な言い方をすれば、野党の質問に対して逃げを打つ答弁であってはならぬと思うのです。野党の方々の共感を求めていくと同時に、疑問があれば自分もまたぶつけていくということがあってしかるべきだ。それほど重要な、重大なものだと私は思っているのです。でございますから、技術的にもいろいろな面で安全の上にも安全。私は、冗談話ではございますけれども、エネ庁長官に、もし大きな事故でも起こったらロープを用意してやるから首をつれ、こう言って、その晩うなされて、翌日悪いことを言ったなと言ってわびたこともありましたが、実際それは国民の気持ちだと思います。安全の上にも安全。  と同時に、今度はなぜ原子力発電が必要なのかということももっと掘り下げていかなければならない。私、今お話のあったIAEA等々に出まして、いろいろな意見も聞きました。例えばスウェーデン、イタリー、これが原子力発電を要らないよということでありますけれども、よくよく聞いてみますると、スウェーデンには水が幾らでもあって、水力発電だけで賄えるのですね。イタリーへ行って聞いてみますと、イタリーは隣国から安い電力を幾らでも買えるのですね。ですから、わざわざ国民的論争を巻き起こすかもしれない原子力発電に手を出す必要はないわけです。日本は、そういう点ではまさに無資源国でございますから、いろいろ考えなきゃなりません。  でございますから、今申しましたように、一方においては原子力発電に関して安全の上にも安全、一方においては原子力がなぜ要るんだろうか、これを使わないでも日本の快適なエネルギー供給というものを続けることができるんだろうか、そのためにはどうしたらいいんだろうか、あるいは、できないならできないで今度は原子力に対してどういう位置づけをしていったらいいんだろうかということを真剣に議論する必要がある、私はそう思います。  でございますから、例えば国会の場において徹底してエネルギー全体を論ずる。これは単なる与党と野党の議論でなしに、子孫のために徹底した議論をしていく。そして識者の意見もどんどん聞いていくことも必要かもしれません。それほど重要な問題でございます。私自身が原子爆弾の被爆者でございますので、非常に私は神経質な面がございます。しかし、原子力発電に関しましては、神経質の上にも神経質であってよい、私はそう思っているのです。必要ならば徹底して安全に留意する。幸いにして二十五年ほど大きな事故もなしに来ましたけれども、だからといって、それでもう大丈夫というものではない。もっともっと気をつけていく。科学の進歩、技術の進歩は無限でございます。そのために今後とも大いに役人たちを叱咜勉励して、大いにこの点で私の意見を進めていきたいというふうに思っております。
  187. 薮仲義彦

    薮仲委員 エネ庁長官、余り下を向かないでくださいよ。私も今大臣の御答弁を聞いて、本当にそうあってほしいと思いつつしゃべっているわけでございますけれども、エネ庁長官、大臣も今おっしゃられましたけれども、我々国民が受け入れるに足る原子炉の安全性のところまで、どうかこれからの原子力行政、直接的にはこれから御尽力いただくわけでございますが、安全の上にも安全、自動車のように国民がそれを受け入れてくれるような時代を我々も願っていますし、そうあらねばならないと思っていますし、決してだれが悪いかれが悪いという立場じゃございませんので、国民が本当によかったなと言うように、大臣のもとでしっかり頑張っていただきたいと思います。余りやゆばかり言って、ちょっと悪かったかなと思っていますから、ちょっと御決意を。
  188. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 大臣の強い御指示を承りまして、私どもとしても、全力を挙げまして、原子力発電の安全性、信頼性の一層の向上のために、最大限の努力を傾注してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  189. 薮仲義彦

    薮仲委員 では、この問題は、もっといろいろありましたけれども、やめます。これでしっかりと安全に努力をしていただきたいと思います。もっと聞きたいことが数多くありますので。  次は、何点か事務的に聞きますので、お答えいただければ結構でありますけれども、廃炉の問題を伺いたいわけです。  商業用の原子力発電所の寿命というのは、まあ三、四十年と我々伺っておるわけでございますけれども、日本の国の原子炉も一九九〇年代後半になりますと相当そういう問題を抱えてくるのじゃないかなと思うのですね。世界でも二百数十基の原子炉がそういう時期を迎えるわけでございますけれども、この廃炉をどうするかという、安全に廃炉にする技術的な問題が非常に重要かなと思います。特に、廃炉にするのに巷間言われておりますのは建設費の十分の一、三千億も四千億もかかるわけでございますから廃炉にするのにざっと三百億前後かかるのかな。これは現在の原発のコストに含まれておりませんので、後世代の方にこういう大きなお荷物を残しておいて、負担を後世代にだけ残していいのかなという思いもございます。そういう予算面を含めまして、どうお考えになっていらっしゃるのか。  それから、こういう原子炉を廃炉にした場合に、高レベルあるいはもちろん中低レベルのいわゆる廃棄物といいますか、そういうものが相当量出ると伺っております。こういうものの処理について今から考えておかなければならないし、技術的なきちんとしたものが必要かなと思うのでございますけれども、その辺は今どうなのか。事務的で結構でございますから、御答弁いただきたいと思います。
  190. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  まず廃炉につきましての技術的な面についてお答え申し上げたいと思いますが、原子炉の廃炉の措置につきましては、総合エネルギー調査会の原子力部会でいろいろ議論されておりまして、六十年七月に報告が出ております。この報告によりますと、密閉管理それから解体撤去方式というのが望ましいということになっておりまして、運転終了後五年ないし十年密閉管理をしておきまして、その後三年ないし四年かけまして解体撤去するという方式でございます。  それで、我が国といたしましてはこの解体技術を今現在いろいろ勉強しているということでございますが、実はアメリカではシッピングポートという原子炉がございます。十万キロワットでござ いますが、解体の例がございます。それから、我が国でも、今、日本原子力研究所のJPDRが解体中でございます。こういうことで解体技術というのは現時点でもあるわけでございますが、より安全性の向上、作業の効率という観点から、現在原子炉の廃止措置技術ということのいろいろ技術開発をやっているというのが現状でございます。
  191. 堤富男

    ○堤政府委員 お尋ねの廃炉の費用の方についての部面をお答えさせていただきます。  現在、確かに、廃炉が予想されるにもかかわらず、電気料金の中の算定はされておりません。したがいまして、我々といたしましては、廃炉の技術の確立が目に見えてきたところで、費用の問題についてもこれを結論を出さなければいかぬということで、六十二年、昨年の三月に、電気事業審議会料金部会を開きまして、現在そこで中間答申を受けた段階でございます。その中にあります基本的な考え方といいますのは、これは発電に伴う費用である、しかも発生することは確実であるというふうにもちろん考えておりまして、合理的な見積もり、これは現在の技術が確立した中で大体三百億円という予想がつきますので、その範囲内で理論的な見積もりが可能である。したがいまして、先生心配のように将来の世代間の負担の公平さという観点から、発電を行っている現在の時点から引当金というような形でやることが適当ではないかという答申をいただいておりまして、それを現在具体的にどういう形で実際の経理の中あるいは税制上の中に入れていくかということを鋭意検討中ということでございます。
  192. 福原淑弘

    ○福原説明員 先ほど原子炉解体技術の研究ということでJPDRの研究が進んでおるというような御答弁がございましたけれども、そこをもう少し補足させていただきます。JPDRの解体は五十六年から始まりまして、当初それに必要な解体技術を開発してまいりました。その中には、プラズマアークを用いたものあるいは水ジェットを用いたものということで、いわゆる放射能のあるところを遠隔的に解体していくという技術が必要でございまして、そこを鋭意開発してまいりまして、六十一年から実際にそれを使いまして解体作業に入っておりますので、そのような技術につきましては、現段階では単なる研究段階を越えまして、もう実用化段階に入っておりまして、そのようなJPDRで開発されたものは、将来予想されます実用発電炉の解体におきましても十分対応可能なもの、そのように考えております。
  193. 薮仲義彦

    薮仲委員 次も、これはどう考えているか、お考えをお聞かせいただきたいのですが、例えば私は災害県の静岡におりますので地震に対してはいろいろな機会にいろいろなことを感ずるわけでございます。地震が発生すると、通常テレビに出てくるのは震度階で出てまいります。有感地震ということで出てくるわけでございますけれども、あれを例えばマグニチュード幾つなどと言われると、我々はぴんとこないわけでございます。国民の間で、地震に対して、強度であるとか、どの程度の負傷者あるいはどの程度の被害が出るかなというのは、三度とか四度という、あの震度階を見ると我々わかるのですね。特に我々のように原発を抱えた地域とか、全国的な課題もそうですけれども、さっき安全の実績の積み重ねと言いますが、イメージのよくないのは、事故と故障という問題についてのはっきりした理解が国民にできない点があるのですね。ボルトがどうのこうのとか、いろいろなことが出てくるわけでございますが、これは原子炉本体にどの程度の影響があって、私たちの生活にどうなんだろうということが、新聞の報道の中では必ずしもきちんと理解できない。何となくおっかない。事故ばかり起きるということ。当然法律によって報告を義務づけられております。通達によって大臣に報告を義務づけられている。私はこれは非常にいいことだと思います。そういうことがきちんと報告されることはいいことです。ただ、国民の方が、これは重大な事故なのかな、あるいはちょっとしたトラブルといいますか故障なのかな、これが理解できません。こういうことについて理解のできるようなこともこれから非常に重要で、我が党でもいろいろ論議した中で、トラブル度指数といいますか、トラブルについて段階をつけて、これはこういうことですよということが国民にわかることがこの段階では必要なんじゃないかなという意見もあるわけでございます。先ほどの正しい知識からいいますと、この辺も非常に重要なことだと思いますが、どう考えていらっしゃるか。
  194. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  先生お話しのとおり、原子力発電所の運転に伴います故障、トラブルを正しく評価するということは大変重要なことでございまして、現在三十五基の原子力発電所が運転しております。そうしますと、法律によりまして、昨年ですと十九件の故障、トラブルが起こっております。それから、法律以下の軽微なものが二十二件ということで件数があるわけでございます。これをいかに正しく理解していただくかというのは我々大変重要な仕事だというふうに考えております。  それで、我々は現在こういうものを何とか今先生お話ございました指標であらわすことができないかということで研究しているわけでございますが、フランスが先生御承知のとおり六段階にこういう事故、故障を分けまして、PAの観点から試験的にやっておるということもございます。米国の考え方もございます。そういうことで、諸外国の考え方あるいは国内での専門家の意見も聞きまして、ぜひこの点を勉強し、日本としての指標というのをつくり上げたいというふうに考えております。
  195. 薮仲義彦

    薮仲委員 それから、これもやはりチェルノブイリ事故以降いろいろ国民の間に不安感がありますが、これは払拭する必要があろうと思うのは、いわゆる輸入食糧といいますか輸入食品の汚染の問題がいろいろな形で論ぜられます。こういう問題はお母様方の間で非常に不安に思いますから、やはり国の体制として、そういう心配は、ないならない。あるいは放射能汚染に対する我が国の基準、厚生省は三百七十ベクレルですか、これが本当に安全なのかどうかということは国民の間では必ずしも正確に理解されておりませんし、そういう意味でもうちょっと国民に、本当に放射能汚染された食糧というのは大丈夫なんだなというような理解が得られるような方策も、これは私は重要な課題だと思います。そういう意味で、検査のサンプリングがどうであるとかいろんな書かれ方もしますけれども、本当に大丈夫ならば、こうこうこうで大丈夫だということをこの際御答弁いただきたいと思います。  それから、放射能測定器も非常に普及してまいりましたから、こういうお母様方といいますか奥様方が簡単に生活の周辺の中で検知できるということもあるいはいいのかなという感じもしますけれども、そういう問題を含めて、やはり国民の不安感を払拭するといいますか、もちろんあっては当然いけないことですから、国内には水際でお帰りいただくということが当然だと思うのですが、その辺の体制は現在どうなっておるのかということ、本当に国民が安心できる体制を私は確立していただきたい、こういう立場から実態を御答弁いただきたいのですが。
  196. 松田朗

    ○松田説明員 お答えいたします。  まず、輸入食品の放射能の検査体制でございます。現在、検疫所におきましては、二十の空海港の検疫所において一般の輸入食品も含めて検査体制をしいておりますが、その中で特に放射能検査についてでございますが、放射能検査につきましては、二十の食品監視所窓口の中で特にヨーロッパ地域から輸入食品の多い五つの海空港を選びまして、そこには精密測定器、放射能測定器を配置する、あるいはその他のところには簡易測定器を置くというようなことで、測定器に精密なものと簡易なものと両方分けて配置してございます。そうしまして、精密な器械を置いてないところにおきましては、そこで異常反応があったものを国立の衛生試験所に送りまして再チェックをする、こういう体制で実は挑んでおります。  その場合に、対象となる輸入食品でございますが、現在放射能検査を行っておりますのは、特にヨーロッパ地域から輸入される食品につきまして、過去の検査の結果あるいは諸外国の情報等に基づきまして放射能汚染が疑われるもの、例えばナッツ類だとか香辛料あるいは牛肉、そういうものについては一〇〇%行っております。それ以外のものについても、大丈夫だと思っておるわけでございますが、念のため一〇%のサンプリング検査を実施しております。もしそこで仮に異常な高い値が発見されれば、それは一〇〇%の対象にする、こういう体制でやっておるわけでございます。  もう一つの御質問の、厚生省が定めております放射能基準についての御質問でございます。  現在、我が国におきましては、輸入食品中の放射能濃度については、専門家の御意見に基づきまして、セシウム134及びセシウム137を指標といたしまして、先生指摘の食品一キログラム当たり三百七十ベクレルという値を、暫定値を設定しております。この基準値以下でございますと、現在最も放射線医学あるいは防護に関する権威ある国際機関でございます国際放射線防護委員会というものがございますが、この委員会が一九八五年に勧告しました線量当量限度というのがございますが、これを下回るということになりますので、輸入食品の安全性は十分確保できるものと考えておるわけでございます。  以上でございます。
  197. 林幸秀

    ○林説明員 放射線測定器の関係につきまして、科学技術庁からお答えいたします。  ちょっと、前に、先ほどの件につきまして、簡単に補足させていただきたいと思います。  先生おっしゃいましたように、総理府の世論調査で原子力に対して不安を感じる層がどんどん上がっておるということにつきまして、我々従来より一生懸命原子力に対してのいろいろな広報をやっておるわけでございますが、まだまだ努力が足りなかったということで、非常に深く反省しております。先ほど先生お触れにならなかったのですけれども、例えば朝日新聞の世論調査などを見ますと、国なり電力会社がきちっと原子力について広報しておるかという問いに対しまして、一〇%程度の人しかきちっとしていると答えていない、七割程度の人がちゃんとやっていないという回答もございまして、そういうこともございまして、科学技術庁におきましては、九月より、講師派遣制度、これは非常に微々たるものだと思うのですけれども、原子力関係の専門家、私なんかも入っておるわけでございますが、七十名を選抜いたしまして、それで一般方々のいろいろな勉強会に派遣する。これは賛成、反対を問わず、きちっと冷静にお話を聞いていただけるところであれば、どこへでも出かけていくという格好でやっております。そういうことで、非常にふえておるということは非常に残念ではありますけれども、我々もそういう努力をしておるということでございます。  それから、ただいまの質問の点でございますけれども、国民の方々の多くは、確かに、目に見えない放射線というものに対しての心配といった面で、原子力に対して非常に不安感をお持ちであるということは事実でありまして、そういうことも我々よく承知しております。したがいまして、先生指摘のように、簡単な形ではかれるという測定器がありますれば、みずからの手で放射線をはかれるということになるわけで、結果的に原子力一般についても理解が促進されるのではないかというふうに考えております。  ただ、一方におきまして、放射線測定というのは、機器の扱い方といったものなどによりまして正確な測定ができないという点もあるのじゃないかということもありまして、そのような形ではかられたものが、数字だけがひとり歩きするということになりますと、国民の間に無用の不安とか混乱が生じるのではないかというようなことも懸念されるわけです。そういうこともありまして、科学技術庁においては、放射線についての関心の高まりを受けまして、今言ったようなことを受けまして、現在パブリックアクセプタンスの一環ということで放射線測定器の貸し出しということをやった方がいいのじゃないかというようなことを議論しているところでございます。そういう中で、先生指摘の簡易測定器の開発あるいはその普及といったことについても、あわせて検討していきたいというふうに考えております。
  198. 薮仲義彦

    薮仲委員 時間が参りましたから今の問題でやめておきますけれども、やはり国民は避けられないですね。どんな事態であったって我々静岡に住む者は地震に立ち向かっていこう、こういう気持ちだと思います。我々政治の場にある者は、原子炉というものの必要性は、やはりこのエネルギーの全体の問題から含めまして、我々は避けない、逃げないという姿勢で立ち向かっていかなきゃならないと思っていますから、いたずらな不安とか憶測はやめて、本当に国民が理解してくださるまで思い切ってやることが国民の共感を呼ぶのじゃなかろうかと私は思います。  きょうはそのほかに被害想定とか放射線医療の問題も聞きたかったのでございますけれども、この問題はちょっと一言だけ触れて終わりたいと思うのです。  「原子力発電所等に係る防災対策上当面とるべき措置について 昭和五十四年七月十二日 中央防災会議決定」というのがありますね。これは米国のスリーマイルアイランドの事故の経験にかんがみて中央防災会議で決定された事項でございます。ここの中に、具体的な問題の中で、  三 緊急時に、直ちに現地へ国が派遣する原子炉、放射線防護等に関する専門家からなる組織体制を常時整備・維持する。  四 緊急時に直ちに現地に動員すべき緊急モニタリング要員及び機器の動員体制を常時整備・維持する。  五 緊急時に現地における緊急医療活動を充実強化するため、国の緊急医療派遣体制を常時整備・維持する。 こうあるわけです。今の「三」「四」「五」という具体的な問題の「三」「四」が科学技術庁に関することだろうと思うのです。これに対して科学技術庁は具体的にどういう体制をおとりになっていらっしゃるか、また厚生省はどういう体制をとっていらっしゃるか、もう時間が来ていますから簡単にお答えをいただきたいと思うのでございます。  私は最後に大臣に重ねてお願いでございますけれども、どうかこのエネルギーの問題、よろしく安全を担保した上で本当に国民が安心できるような時代、社会をおつくりいただきたいということをお願いをいたしておきます。私の質問、もう時間が来ていますから要点だけ簡単にお答えください。
  199. 酒井彰

    ○酒井説明員 先生指摘のありました緊急時における専門家の派遣体制、それからモニタリング要員、資機材、こういったものの派遣体制につきましては、まず資機材につきましては電源特会におきまして毎年度県等に資機材を配付するとともに、動燃、原研それから放医研といったところでまた別途予算措置を講じております。また、専門家につきましては、この名簿を作成して常に緊急時に対応できる体制を科学技術庁においてとっております。こういうことで、いざというときにも万全の対策がとれるように今後とも努力してまいりたいと思います。
  200. 澤宏紀

    ○澤説明員 中央防災会議の決定の五番目の、緊急時の現地におきます緊急医療活動についてでございますが、厚生省といたしましては、中央防災会議の決定を踏まえまして、科学技術庁とも十分相談の上、現地の医療活動への協力について適切な対応を行ってまいりたいというように思います。
  201. 薮仲義彦

    薮仲委員 終わります。
  202. 尾身幸次

    尾身委員長代理 青山丘君。
  203. 青山丘

    青山委員 私は、通産大臣並びに通産省資源エネルギー庁、大蔵省に質問をいたします。  私は、去る九月九日、現行石油関係諸税の抜本的見直し等に関する質問主意書を提出いたしまし た。そして九月二十日付をもってその答弁書をいただいたところでありますが、答弁書の内容を読みますと、まだ十分理解していただいておらない、また私自身納得できない、そういった点がまだありますので、この機会に改めて通産大臣並びに関係者の皆さん方に見解をただしておきたいと思います。  まず冒頭、我が国経済がこの石油によって支えられてきておると申し上げても過言でないほど石油というものが我が国経済社会にとって不可欠な最重要の基礎物資である、こういう認識は通産大臣も私と同じであろうと思います。この石油に対しての課税が、ことしの予算で見ますと所得税、法人税に次いで大きい三兆二千億円というかなりの額の税金がかかっております。石油に対する課税が重いということはどういうことになるのか。もちろん石油産業がこれまで大変低い収益で苦しんできておるわけですが、石油を原材料としておる製品価格がどうしても上がらざるを得ない、またエネルギーコストが引き上げられてくる、こういう要因になってまいりまして、結果としてこれは国民生活を圧迫していくことになります。  ちょっと話がそれるかもしれませんが、我が国は国際的にも所得の非常に高い国、しかし国民生活は非常に低い、経済は一流であるが生活は二流であると言われているのは、いろいろな原因がありますが、その中の一つは物価が高い、これを先進国並みに抑えていかなければならないという重要な命題を政府は抱えています。その一つに、石油に対する課税が極めて重い、そのためにいろいろな製品価格であるとかエネルギーコストを引き上げざるを得ないという状況であります。  そこで、まず通産大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、この石油に非常に重税感が強い状況の現行石油関係諸税に対する通産大臣の理解は、どんな受けとめ方をしておられるのですか。
  204. 田村元

    ○田村国務大臣 今おっしゃったように、石油の諸税三兆二千億、つまり石油の総販売額に占める石油関係諸税の割合は三〇%を超えるものとなっています。  石油は他の物品に比して間接税負担が大きいという実感が確かに事実であります。とは言い条、石油関係諸税は、各石油製品等の消費に着目して受益者負担的な観点等から課されておるものでございまして、その税収は道路整備あるいはエネルギー対策等の財源として使途が特定されております。これらの各税にかかわる税負担も、その使途との関連において適正に定められたものであろうと思いますが、あるいは私の記憶違いかもしれませんが、記憶に間違いがなければたしか昭和二十九年ごろであったと思いますけれども、ガソリン税というのが創設された。あのときにガソリン税収に見合う一般財源ということで約束があったように私は記憶しておるのです。ところが実際にガソリン税がどんどんと税収がふえたということで、もう一般財源から補てんしなくてもそれだけでいけるというようなことになったというふうに記憶しておるのです。もしその記憶が正しければ、当初のガソリン税収に見合う一般財源ということでガソリン税の税率をその分だけ下げて、むしろ一般財源で補てんしていくべきではなかったのかな。しかし、高度成長を志向した時代に入っていきましたから、みんなが、だれしもがガソリン税を特定財源としてしっかり抱え込んでいこうということになったのかな。率直に言って役人というのは私たちと若干というか基本的に考え方の感覚が違いますから、特定財源で抱え込んでおけば大丈夫、一般財源に移したら下手をしたらまた値切られるというようなこともあったんじゃなかろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、特定財源ということで金額が大きいということはやはりそれなりに大きな意義があって、それに根本的な改革を加えることは非常に困難であろう、一応私は適正に配慮されたものというふうに受けとめておきたいと思います。
  205. 青山丘

    青山委員 大臣は適正に配慮されたと言われましたけれども、しかし石油の関係者には、大変な重税だ、ほとんどその考え方は大体浸透しておりまして、政府の重要な閣僚の一人であられる大臣が慎重に言葉を選んで発言されたというふうに私は理解しておりますが、大臣の本音の中ではこれが公正で妥当だというふうには私は思っておられないのではないかと思いますよ。やはり石油には随分負担をかけておるな、本音ではそう思っておられるに違いないと私は思います。また後で違っておれば訂正してください。ただ、しかし、今おっしゃられたように、石油関係諸税は道路財源などに使われている特定財源、目的税であるから、目的税というのは目的税の目的が達せられなければこれの軽減というのは極めて難しい、そういう受けとめ方を大臣はしておられるのだろうと思うのです。しかし、もう一つ、やはり日本の産業を考えていただく通産大臣の立場で、いや、やはり何と考えても石油関係諸税は重い、本来なら抜本的見直しの取り組みをしなければいけないのだという理解が私はあってもいいのではないかと思うのです。これは本音の話。いかがでしょうか。
  206. 田村元

    ○田村国務大臣 先ほどいみじくも青山君がおっしゃったように、石油というものはエネルギーの基本でありますし、それから経済に及ぼすその波及効果というのははかり知れないほど大きなものでありますから、それは安いにこしたことはない。でございますから、三兆二千億という数字が、私は数字自体もすべてが適正と言っておるわけではございません。重税感というのは確かにございます。ございますが、道路だとかあるいは石炭だとかいうふうな特定した使途というものを考えますときに、それとの見合いで適正な配慮がなされたものというふうに私はお答えをしたつもりなのでありますけれども、それは三〇%という税金、しかも三兆二千億、これは大したことないと言えばうそになります。非常に大きな税金だと思います。
  207. 青山丘

    青山委員 まさに適正に理解していただいているという気がいたしました。大臣が言ってくださったとおりだと思います。  ただしかし、これまでの取り組みは、何といっても政府は財源不足になってくるとどうしても取りやすいところから取っていく。したがって、どうしても石油に対する課税ということがこの三十数年安易にずっと続いてきておるわけです。先ほどお話が出ておりましたように、道路整備事業にはガソリン税は一〇〇%、その他の目的税も使われておるわけでございますけれども、ただ、道路を整備していくときに受益者負担という考え方は、これは私はよく理解できます。したがって、ガソリン税が果たしてきた役割も私は率直に評価しています。しかし、もっと深く考えてみますと、道路整備事業というのは極めて公共性が高い。これは石油に対する課税というような特定財源だけに依存して道路整備事業を進めていって妥当であるのかと考えますと、当然一般財源にも依存していくべきではないかと私は思います。  これは大蔵省、今申し上げたことは、あなたの方でどういうふうに理解しておられるか。道路整備事業というのは、なるほど受益者負担でガソリン税が果たしてきた役割は大きい。しかし特定財源だけに依存して整備事業を進めていくということには、私は道路整備事業の公共性を考えてみますと、当然一般財源に依存するということも考えるべきだというふうに考えます。この点が一点。  したがって、そういう考え方からすれば、現行ガソリン税は暫定税率を適用しておりますけれども、基本税率にできるだけ早く戻すべきだという考え方が私は妥当だと思います。そのあたり、いかがですか。
  208. 伏屋和彦

    ○伏屋説明員 お答え申し上げます。  先生の御質問はまさに財政負担をどうするかとか資源配分をどうするかという観点が含まれていると思いますが、私ども財政立場から考えますと、公共性が認められる財につきまして、これは公的部門から供給すべきであるということになりますと、その負担をどういうぐあいに求めるかということがまずあるわけでございます。  それから、およそ世の中、限られた資源をどういうぐあいに資源配分するかということになるわけでございますが、その場合に、例えば道路の場 合に、産業基盤でありかつ生活基盤である道路整備を安定的に進めるためには、やはり一つ大事な視点として受益者負担という観点があるかと思います。そういう意味で従来から揮発油税等をいわゆる道路整備のための特定財源としてこれを投入しているわけでございますが、それ以外にも一般財源、財政投融資というものも活用して行っておるわけでございます。一体どの程度一般財源を投入するかということは、そのときどきの財政状況等を判断して予算国会に御提案申し上げておるわけでございますが、そういう意味では、特定財源、一般財源、財政投融資等の活用によって今まで道路整備を進めてきたということを御理解いただきたいと思います。  税率の話につきましては、主税局の方から答弁させていただきます。
  209. 坂篤郎

    ○坂説明員 お答えいたします。  ガソリン関係の税金、揮発油税とか地方道路税とかいうものにつきまして、暫定税率、今暫定税率になっておるわけでございますけれども、これを基本税率に戻すべきではないかという御質問でございましたけれども、今主計官が御説明いたしましたように、揮発油税やなんかはいわば特定財源になっておりまして、受益者負担的な観点から決まっておるものでございまして、そういう意味でその税負担と使途との関係を考えてみますと、適正になっておるのではなかろうかなというふうに思っておるわけでございます。ただ、いずれにいたしましても揮発油税等の今後のあり方あるいは石油税等の今後のあり方にいたしましては、今申し上げましたような税負担水準のあり方あるいは財政需要の問題等広範な角度から今後とも各方面の御意見も承りまして、総合的に検討をいたしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  210. 青山丘

    青山委員 私は、道路整備事業はぜひ進めていただきたい。日本は相当な経済力のある国としてアメリカやヨーロッパからある意味で期待もされている。そしてまた、日本の政策として社会資本をぜひ進めてほしいというOECDあたりの強い要請も受けている。また、国民生活の経済力に見合った質の高さを確保しようとすれば、やはり社会資本は整備していかなければいけない。それから、経済の活性化のためにも道路を整備していくというのは非常に意義深い。私は、だから財源は確保していかなければならないという基本的な考え方です。しかし、余りに石油に依存して、特定財源にだけ依存していくというのは、現行石油関係諸税をいろいろ幅広く考察してみるとかなり負担が重い。負担が重いためにいろいろまた国民生活を圧迫してきている一面もある。そういう点から、石油関係諸税を抜本的に見直していかなければいけないという立場で今質問させていただきました。  何といっても今回の税制度の理念というのは公平、簡素、活力、公正、国際性、通産大臣の御見解もぜひいただきたいし、大蔵省の方にもお尋ねいたしますが、現行の石油関係諸税というものを抜本的に見直していくべきだと私は考えて、先般質問主意書を出しました。それが、政府の内部ではいろいろな既得権益の関係で調整が難しい、そういうことも私は理解しております。したがって、一つの考え方として、利害関係者に遠慮していただいて中立機関を暫定的に臨時的に設置して、そして幅広い検討や調査をしていただいて、まさに公正な石油関係諸税というものを確立していただきたかったし、これからもまだ十分検討していただく必要があると私は思うのです。そういう意味質問主意書を提出したのですが、税制調査会等で検討してきたので今その必要はない、全くそっけない返事で、私はそれは納得できない。現在までの税制調査会で審議されてきた結果が現行の石油関係諸税の非常に不公平感の高い税制度になってきておる。これを正すということなんだから新しい考え方が必要だと申し上げたいのでありますが、通産大臣、それから大蔵省、いかがでしょうか。
  211. 田村元

    ○田村国務大臣 これは難しい問題でございます。私が自由民主党の建設部会の副部会長というのをやったのが昭和三十一年でございました。それから、建設省の政務次官をやったのが三十五年でございました。三十五年の政務次官時代に、予算折衝があって、三十六年度を初年度とする二兆一千億の道路整備五カ年計画というのができたのです。第二次池田内閣です。そういうことで大変な時代だったわけです。  私は考えてみれば三十年以上、つまりガソリン税というものが創設されたころからの歴史を全部知っておるし、それに直接かかわり合ってきた人間なんです。通産省関係の石油税ももちろんございますけれども、何といっても超大物はガソリン税だということになりますと、これは言うはやすく行うはかたしというか、もしガソリン税というものに抜本的なメスを入れる、メスを入れることが悪いとは申しませんが、メスを入れるとすれば、与野党入り乱れての大騒ぎになってしまって収拾がつかなくなると私は思うのです。これは政治論です。あるいは皆が良識を持ってそうだとぱっと割り切るかもしれませんけれども、しかし第三者にやってもらったとか裁いてもらったところで、立法行為は国会にあるのですから、これは大変なことになるな。しかし、今青山委員がおっしゃったことは、確かに正論であり理想論だと私は思うのです。ですから、今の御意見を時々思い出しながら石油税問題と今後長いおつき合いをしていこうと思っております。
  212. 坂篤郎

    ○坂説明員 お答えいたします。  先般の質問主意書と全く繰り返すようになって恐縮でございますけれども、石油関係諸税のあり方につきましては、従来から税制調査会等におきまして審議してきていただいているところでございまして、御指摘のように新たに機関を設けるという必要は必ずしもないのではないかというふうに私どもとしては考えております。
  213. 青山丘

    青山委員 あとまだたくさん持っておって、こんなところでとんざしたくないのだけれども、ただ、現行の石油税制度をそのままにしておいて、次に消費税に進んでしまうと、後へ戻るのは嫌だから申し上げるのだけれども、現行の石油関係諸税というのは本当に重いのです。そういう意味で基本的に見直しの段階にきておったし、今回の税制度の改革のときにきちっとやるべきであった。ところが、それは全くそのままにしておいて、今国会提出されておる消費税は、さらに三千億円上乗せをしていく。一体今回の税制度はどこが公平なのか、全然わかっていない、石油関係者は悲痛な声で言いますよ。それはさっき大臣おっしゃられたように、いろいろな問題があって、既得権益の問題で難しかった、だからこういうふうになったのかもしれません。しかし、納税者の立場から見れば、たやすいことではない。今国会提出されている消費税法案内容を見れば、新たに三千億円の消費税が上乗せされる。しかも、現行石油税制はそのまま維持させておいて、さらに増税になる。どこが税制改革なのか。この一点だけは私は絶対に、今回の消費税導入の致命的というか、納得できない点です。  現行石油税制だけがどうしてそのままになっておって、しかも単純に併課されてきたのか。石油関係者から見れば、我々はまさに泣き面にハチ、これ以上品の悪い言葉を私は知っているけれども言わないが、こんな不公平なことはない。これは公平でなくて、税制の抜本的改革などというのは名ばかりで、むしろ不公平の拡大です。これは絶対に承服できない。そこで、なぜ石油だけが単純併課になってきたのか、その理由をぜひ国民にわかりやすく説明していただきたい。これが一点。  もう一つは、資源エネルギー庁、今回の単純併課をやむを得ない措置と考えておられるのか、むしろ賛成と考えておられるのか、はっきりさせてもらいたい。これが一点。  例えば百歩譲りましょう。私は譲ったと言っておりません、例えばです。調整併課になぜできなかったのかという声もあります。三兆二千億円といえば物すごい金額です。この中で三千億円ぐらいはなぜ調整併課ができなかったかという声もあ ります。そういう声にどうこたえていくのか、わかりやすく説明していただきたい。これが三点目。
  214. 田村元

    ○田村国務大臣 まず私から大まかなお話だけ申し上げておきたいと思います。  単純併課、なぜ調整併課にできなかったのか。それは今度の消費税というものの性格が、消費に対して薄く広くということで原則非課税を認めなかったということがあります。定義上これはもう仕方がなかった。一つ例外をつくればもう収拾がつかなくなるということもあったと思います。  しかしながら、この石油諸税というのはいかにも重うございますから、金額も大きゅうございますから、何とかこれを実質調整したいものだというふうに考えまして、今いろいろと財政当局とも話し合いをさせております。これは直接私が指揮をとっております。原油関税の再検討を含めいろいろな面で話し合いをさせております。  私は、大蔵省の諸君にも、大蔵大臣にももちろんそうですが、申しておりますし、また税制特別委員会でもはっきりと発言しておきましたことは、大蔵省という一つの役所で主税局、主計局は言うならば家族なんだ、兄弟なんだ。しからば主計局は、我々、つまり他省に対して、いろいろと主税が今度は消費税で御苦労をおかけしております、申しわけありません。しかし、国のためにどうしても必要なんですからよろしくお願いいたします。そのかわり、もしこの問題でひずみが出てきた場合には、どうぞ遠慮なくおっしゃってください、あなた方のおっしゃるとおりに我々はいたしましょう。そういうふうにいたしますから消費税のことをどうぞよろしくというのが社会常識であろうかと私は言っておるわけであります。  ですから、エネ庁に対しても、断じておれの指示を曲げてはならぬ、おれはおりる意思はない、こう言って頑張っておりますので、中身のことはとにかくとして、その点ちょっと一言だけ申し上げておきたいと思います。
  215. 植松敏

    ○植松政府委員 今大臣から御答弁申し上げたことに尽きておるわけでございますが、この消費税法案政府案として固まるまでの過程におきましてはいろいろな議論がございました。おっしゃられますように、石油関係諸税が石油については重くのしかかっておるという点も配慮しながら、いろいろな議論が尽くされてまいりましたけれども、先ほど大臣も申しましたとおり、今回の消費税法案につきましては、消費に広く薄く負担を求めるというこの消費税の趣旨にかんがみまして、定義上非課税となるものを除きまして非課税品目を設けないという原則で、石油について単純併課がなされるという結論になったわけでございます。  また、調整併課につきましても、その過程でいろいろ議論がございましたけれども、受益者負担的な性格等を有します特定財源である石油関係諸税と、この新しくつくられます消費税とは課税の趣旨が異なるということから、これも調整併課とはならなかったわけでございますが、この石油に対しまして消費税が単純併課されることに伴いまして税負担が加重されることについては、私ども重々認識しておりまして、今後引き続き、石油に係る税負担のあり方につきましては、総合的に精力的に検討をしていくということで、現在検討作業を進めておるところでございます。
  216. 坂篤郎

    ○坂説明員 お答えいたします。  大蔵省主税局でございますけれども、大蔵省といたしましても、今資源エネルギー庁さんから御説明がありましたような認識でこれから検討させていただきたいというふうに思っております。
  217. 青山丘

    青山委員 大臣の御答弁で私もいささか感ずるところがありまして、大臣が今考えておられることを、この内閣の責任ある有力大臣として、ひとつぜひ取り組んでいただきたいと思います。  と申し上げますのも、石油産業が長い間過当競争下にあって低い収益で苦しんできておる。今日、石油産業が、業界としてそんなに強い体質業界ではない。これは業界だけの責任ではないと私は思っています。一つは輸入からガソリンスタンド経営まですべて監督してきた石油業法を中心とした日本の石油政策が結局大きく影響してきた。そのためにどうしても体質としてなかなか強くやってくることができなかった。  この間、資料を調べておりましたら、他の産業に比べて本当に売上高、経常利益率は低いのですね。具体的に他の産業の名前を挙げるのもどうかと思うから、具体的に挙げませんけれども、他の産業に比べて極端に利益率は石油産業は低い。そこへもってきてまた三千億円の税が上乗せされてくる。どういう残酷な政治かということですね。しかも、過当競争ですから価格転嫁できない。資料をちょっと調べておりましたら、ガソリンの方は少し価格転嫁できておる。例えば、ことし八月のあの増税になった石油税はなかなか価格転嫁できておらない。軽油、灯油なんかもほとんど価格転嫁できておらない。結局その産業が新しい負担をしょい込むということになるのです。  特に今回の消費税なんかはまさにそのとおり、石油産業が新しい負担をしょい込んでしまう、こういうことになります。そのあたりをどういうふうに見ておられるのか。
  218. 植松敏

    ○植松政府委員 御指摘のとおりでございまして、石油業界は、製品、商品の特性もございますけれども、大変な過当競争の状態でございまして、税負担が増大すると同時に、その税負担を十分に製品価格転嫁できるかどうかということについては、大変な懸念が持たれておるわけでございます。  今回の石油税の従量税化につきましても、資源エネルギー庁といたしましても、できるだけ転嫁がスムーズにいくようにということで、ユーザー業界を初め一般的なPRも含めまして本税の趣旨を御理解いただくと同時に、転嫁円滑化のために協力をしていただくようお願いをしているわけでございますが、新しく設けられます消費税につきましても同様の問題があるわけでございまして、これにつきましては、一般的に転嫁を可能ならしめるための共同行為等についてもいろいろな便宜が図られるようになっておりますが、政府としてのPR対策あるいはユーザー業界に対する協力要請ともども、そういった共同行為等も活用しながら、できるだけ転嫁も容易にできるように、あわせて税負担のあり方について総合的な検討をしていこうと思っております。
  219. 青山丘

    青山委員 まあ理屈は価格転嫁できそうなことにもなるかもしれませんが、現実にはかなりの過当競争で、低い収益でゆとりがなくて苦しんできておって、なかなか価格転嫁できないという実情にあるのです。そこはやはりぜひわかっていただきたい。  それからもう一点は、石油産業は十兆円産業、だから三%ならば三千億円ということですが、ことしはその中の三兆二千億円は税金なんです。ですから、十兆円の中から三兆二千億円引けば六兆八千億。六兆八千億に対する消費税なら私は理屈はよくわかる。しかし、十兆円に対して消費税がかけられるというのはタックス・オン・タックス、こんな税制度というのは世界じゅうありますか。仮にあっても、税金にまた税金をかけるなどというのは、こんなばかげたことをのさばらしては絶対にいけない。これは全く理屈に合わない。だから、六兆八千億に税金をかける、消費税をかけるというのなら、それは全くよくわかる。理屈としてよくわかる。だけれども、十兆円にかけていくというのが承服できない。これが一点。それはいかがでしょうか。  それから、先ほどもちょっと触れておられましたが、私の方にもちょっと答えていただきたいのですが、自民党の「税制の抜本改革大綱」は、「消費税が併課されることによる石油に係る税負担については、引き続き総合的に検討するものとする。」政府はこれを受けてどのような具体的な対処方針を持っておられるか、現時点でわかるだけひとつお答えいただきたい。
  220. 坂篤郎

    ○坂説明員 お答えいたします。  最初の方の、消費税と石油関係諸税を併課するとタックス・オン・タックスになるのではないかという御質問でございますけれども消費税のような一般的な間接税と、例えば石油関係諸税ある いはお酒の税金の酒税というようなものも似たようなものでございますけれども、同じようなものでございますけれども、いわゆるそういう個別間接税でございますね、特にそういうもののうちでも製造段階で課税されていわば物の値段としてくっついていくような個別の間接税、こういうものを併存させます場合には、消費税の方の、一般間接税の方の課税標準に後者の方、すなわち個別間接税の税額を含める、つまり売り値そのものを課税標準とするということになるわけでございますけれども、そういうのが取引の実態にも合うわけでございますし、実務上もその方が簡素であるというふうに考えておりまして、実はほかの欧米の国におきましても、石油関係諸税でございますとかあるいはお酒の税金、酒税につきましては、付加価値税をかける際に、石油関係諸税などもその付加価値税の課税標準に含めて課税しているというのが一般的ではなかろうかというふうに思っております。
  221. 植松敏

    ○植松政府委員 後者の問題でございますけれども、「引き続き総合的に検討」すべきという中身の話でございますが、自民党の「税制の抜本改革大綱」におきまして御指摘のようなことが述べられておるわけでございますが、通産省といたしましても、消費税が併課されることによります石油に係る税負担につきましては、私どもとしても検討すべきであるということで、現在、原油関税問題を初めといたしまして、租税特別措置を含めまして税制面での措置があるかどうか、また先ほど申しました転嫁対策等について、より転嫁を円滑にする方法はないかどうか等々を含めまして、現在鋭意検討を進めておる段階でございます。
  222. 青山丘

    青山委員 これはもう時間がないから先に進みたいのですが、一言だけ言っておきます。現在のガソリン税であるとか軽油引取税であるとかその他の石油関係諸税、これは消費税なんですよ。この消費税にまた消費税をかけていくというような考え方は私は不当だと思う。 それから、ニットの提訴問題に入らせていただきます。  日本繊維産業連盟並びに日本ニット工業組合連合会から、本年十月二十一日、韓国産セーター類についての不当廉売関税を課するよう求めて提訴がなされました。訴状によりますと、韓国産セーター類の対日輸出量は六十三年一―七月で対前年比六一%の増加、八月度に至っては実に八六%と物すごい輸入攻勢、まさに集中豪雨的な輸入急増。このことによって、セーター類の生産業者は生産がぐんと落ちちゃった。それから価格が引き下げられてきておる。経営は極端に悪化してきておる。  通産省、どなたが答えてくださるかな、今回の提訴についてどのように受けとめておられるのか、また今回のこの提訴についてどのような対処を考えておられるのか、まず明らかにしていただきたい。
  223. 田村元

    ○田村国務大臣 仮にダンピングの事実が明らかになりました場合に、自国産業を守るための正当防衛措置としてダンピング関税を賦課することはガット上認められた権利であることは申すまでもございません。これは我が国の輸入促進という基本政策に何ら逆行するものではないと認識をしております。  このような考え方の上に立ちまして、ガットの諸規定及び関係する国内法令等にのっとりまして、大蔵省とも十分協議、協力の上、公正に対処してまいる所存でございます。
  224. 青山丘

    青山委員 我が国の不当廉売関税の発動手続によりますと、提訴受理から二カ月をめどに政府による調査が開始される。政府はひとつそういう手続をしっかり、迅速に進めていただきたいと思いますが、今の大臣のお考えのようにぜひひとつ進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。  ただ、心配されておるのは、日本が今国際的に置かれておる立場を考えますと、貿易黒字の問題であるとか対外的な問題でいささか妥協的な解決策になってはならないと私は考えます。いかがでしょうか。
  225. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 お答え申し上げます。  今回の提訴につきましては、ニット業界がダンピング提訴するということは、先ほど大臣御答弁申し上げましたように、損害を受ける産業界に認められた当然の権利であるというふうに考えておるわけでございまして、仮にダンピングの事実が明らかになった場合には、白国産業を守るための正当防衛的措置としてダンピング関税を課することはガット上認められた権利であるということでございまして、これは我が国の輸入促進といった基方方針に何ら逆行するものではないというふうに認識いたしております。したがいまして、政府といたしましては、ガットのルール、関係法令にのっとりまして、ダンピング輸出が行われているかどうか、及びそれによって国内産業に被害が生じているかどうかということを公正に審査をしてまいる所存でございます。  また、御質問ガイドラインの件でございますが、御指摘のとおり、受理から二カ月をめどに政府としての訴状についての判断をするということになっておるわけでございまして、ガイドラインに定められました手続にのっとりまして公正に対処してまいる所存でございます。
  226. 青山丘

    青山委員 ぜひひとつ迅速に的確に対応していただきたい。  十年前、私はアメリカに行ったときに、当時、USTR、ウルフという次席代表が、日本の市場開放をもっと進めてくれと強く言っておりました。それからずっと言い続けてきたわけですから、日本も市場開放は進めていかなければいけない。そういう意味では、自由貿易体制をとっている日本としては、こういう国際情勢の中で市場開放をという要請にこたえていくべきである、その点については私も全く同感です。しかし、ダンピング行為というような不公正な貿易についてまで私は受け入れる必要はない。その点で、今御答弁いただいたように、ひとつ的確に迅速に対応していただきたい。  そこで、今回の提訴について韓国の業界ではいろいろと非難の声明も出しております。これを政府はどう受けとめておられますか。
  227. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 先生指摘のように、韓国の業界が今回の提訴につきまして不当であるとの声明を出したという新聞報道は私も読んでおるところでございますが、これにつきまして、我が方に対して直接関係業界、カウンターパートの方に連絡があったということは聞いておりません。また、韓国政府からも私どもに対しまして直接何らの申し入れもないという状況でございます。
  228. 青山丘

    青山委員 ニット製品に限らず繊維製品の輸入というのは、もう近年増加の一途をたどっております。とりわけNIES諸国の我が国への輸出攻勢はすさまじいものがある。そのために国内においては雇用の問題も深刻化してきております。こうした状況下で、秩序ある安定した繊維貿易を確立する必要がある。そういう立場からしますと、MFAに基づいて主要な輸出国との間に二国間協定を結ぶ必要があると私は思う。これは日本も伝家の宝刀をいよいよ抜くときが来ておる。大体この宝刀を余り抜かないとなまくらになってしまって何の使い道もなくなってしまう。そろそろそんな時期かと実は私は感じておるわけです。二国間協定を結ぶべきではないかという強い思いがしておりますが、いかがでしょうか。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕
  229. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 御指摘の二国間協定はMFAに基づく政府間協定のことを言っておられるというふうに考えておりますが、近年の円高等を背景といたしまして、先ほど先生も御指摘のとおりニットを中心として輸入の急増が見られ、関係業界非常に懸念が高まっているということは十分承知いたしております。このような特定品目の輸入急増に対しまして、国内産業に重大な被害が生ずるような場合には、まず輸出国との意見交換をする、あるいはそこに不公正貿易があるような場合には、先ほど来お話がございましたアンチダンピング制度を活用するといったような、種々の努力を講ずるべきであるというふうに考えておるわけで ございまして、MFA協定につきましては、我が国の膨大な貿易黒字の現状あるいはアジアNIESとの間の多大の二国間貿易黒字があるという現状に照らしまして、現段階におきましては、MFAの発動については慎重に対応すべきであるというふうに考えておるわけでございまして、前段に申し上げました種々の努力の結果、実効が上がらなかった場合の最後の手段というふうに位置づけるべきであるというふうに考えておる次第でございます。
  230. 青山丘

    青山委員 時間がありませんから、最後にお尋ねしたいと思いますが、現在の日本のニットセーターの生産者に先日いろいろと実情を聞きました。もうこんな状況ではとても経営が成り立たない、転業、廃業はもう避けられなくなってきておる、倒産の状況になってきておる、とても大変だと言うのです。  そこで、緊急対策として産地対策をひとつぜひ考えていただかなければならない。これが一点。  それから、繊維工業構造改善臨時措置法というのがあります。繊構法は来年の六月で期限切れになりますが、これをどのような取り組みにされるのか。法改正をして、さらに延長していくというようになっていくとすれば、どのような改正を考えておられるのか。繊維産業が今後生き残っていくための繊維産業の今後のビジョンみたいなものをぜひ示していただきたい。いかがでしょうか。
  231. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 二点の御指摘がございまして、まず第一点でございますが、御指摘のようにニット業界は輸入の増勢もあって国内の生産が減少傾向にあるということは、私ども調査においても認識しておるところでございます。このような厳しい状況にある繊維産地につきましては、いわゆる特定地域法あるいは新転換法に基づきまして低利融資あるいは債務保証等の特例適用できるように制度を開いておるわけでございまして、具体的に申し上げますと、特定地域法ではニット関係の主要な産地をカバーいたしておりますし、また新転換法ではニットにつきまして、いわゆる女性用の靴下、パンティーストッキングでございますが、その業界を除いてすべてのニット業界を業種指定しておるという状況でございまして、この政策によって何とか対応してまいりたいと考えておる次第でございます。  それから第二点の、現在の繊構法は期限が来年六月に切れる、その後どうするかということでございますが、現在、繊維工業審議会・産業構造審議会におきまして、長期の繊維産業のビジョンの検討を進めておるところでございますが、この中間取りまとめが五月末になされておりまして、そのラインに沿いまして現在法律の改正、延長を考えておるわけでございます。具体的には需要構造の変化に対応した新たな構造改善事業を進めるということ、それから商品企画機能を向上させるために基盤設備としての繊維のリソースセンターを整備するということ、もう一点は新たな情報化のための環境整備をするということを三本の柱といたしまして、所要の財政金融上の支援措置を考え、現在大蔵省に要求中でございます。
  232. 青山丘

    青山委員 時間が来ました。やめます。ありがとうございました。
  233. 渡辺秀央

  234. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 お疲れのところ、皆さん御苦労さんでございます。通産省の皆さん、今流通業界では大店法の規制緩和、この問題が大変な話題、焦点になっております。  そこで、お聞きをしたいわけですけれども、一九八〇年前後からの大型店出店ラッシュが起こりまして、通産省は、これに対応するために一九八二年出店抑制措置、これをとられました。また二年後にこの措置を継続し延長しているわけですが、これは今でも生きているんでしょうか。
  235. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 お尋ねの大規模出店をめぐります抑制指導措置でございますが、御指摘のように昭和五十七年二月に始められておりまして、二年後に改めて同様の対策を実施したわけでございますが、現時点におきましてもこれを継続してございます。
  236. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 最近、新経済五カ年計画経済企画庁の流通問題研究会報告、または新行革審の公的規制の在り方に関する小委員会、ここでもって、大店法の運用の改善であるとか出店調整期間を大幅に短縮する、つまり大店法の規制緩和が一つのテーマとして検討をされてきております。報道によりますと、新行革審は年内にも報告を作成して、竹下総理、首相に答申をするという準備が進められているようです。こういった政府の最近の動きを見ておりますと、私にはどうも大型店の出店規制を緩めるというような方向に動いているのではないか、こういうふうに思うのですが、通産省は、この規制緩和の問題につきまして現在どういうお考えを持っていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  237. 田村元

    ○田村国務大臣 大店法につきましては、昨年六月の大規模小売店舗審議会会長談話におきまして、法の基本的枠組みは維持しつつ、その運用について経済社会の変化に対応して柔軟に見直しを行うことが必要であるという指摘がなされました。この趣旨は本年五月の新経済計画にも盛り込まれたところでございます。また、流通に関する規制の見直しにつきましては、本年六月のトロント・サミット経済宣言におきまして、我が国の遂行すべき課題とされております。現在、臨時行政改革推進審議会及び産業構造審議会、中小企業政策審議会の合同会議の場でも所要の検討が行われているところでございます。通産省といたしましては、こういう経過を慎重に見守りたいというふうに考えております。
  238. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 それではお聞きいたしますが、過去十年間の第一種の大規模小売店舗の届け出状況をお聞かせください。
  239. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 最近十年間の第一種大規模小売店舗の新設の届け出の状況でございますが、御案内のように、昭和四十八年に大規模小売店舗法ができまして、その後おおむね二、三百店のオーダーで新設の届け出が出ていたわけでございますが、昭和五十年代に入りましてスーパーの進出が目覚ましくなりまして、昭和五十四年度には五百件台の数字を記録しております。その後、最近では大体百件から二百件ぐらいということでございまして、最近を見ますと、昭和六十二年度では二百三件、それから本年度に入りましてからは、第一・四半期しかございませんが、四十三件でございまして、この四十三件という数字はおおむね過去の同時期の水準とそう変わったものではないということでございます。
  240. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 今の御説明と資料をいただいた状況を見ますと、八二年に出店抑制策の措置がとられましてから後、毎年百三十から百五十ぐらいということでずっと推移をしてきておりますね。昨年度は一転いたしまして二百三件、前年に比べますと四十六件の増、これは約一・三倍ということになっているわけですが、ずっと数年横ばいであったものが大きくふえてきているのですね。こういう状態を見てみますと、出店抑制策が十分とられているというふうには私には思えないわけです。大型店の出店が上昇傾向にある。昨年度の届け出数が過去になくふえたのは、昨年六月に大店審の会長談話というのが出ているわけですが、こういうものが影響しているのではないかというふうに私は大変心配しているのですが、いかがでしょうか。
  241. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、六十二年度につきましては二百三件ということで、今先生指摘のように、前年の百五十七から四、五十件ふえているわけでございますが、私どもの見ましたところ、これは過去にいろいろ事前の説明等の関係でたまっておった案件が、たまたまこの年にずれ込んできて新設の届け出が出てきたという部分もございますし、また、そういった事前の調整が終わりまして、たまたま経済動向が景気が非常に上向きであるということから、全般的な中でふえてきたという部分もあろうかと思います。いずれにいたしましても、御指摘のような大規模小売店舗審議会の会長談話が出たがためにふえたというものではないというふう に私どもは認識をしております。  六十三年度になりますと、四―六月で四十三件でございまして、仮に四倍いたしましても百のオーダーになるわけでございまして、最近になってそれほどふえているという認識はないわけでございます。
  242. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 それでは、大店審会長の談話の性格についてお聞きをしたいと思うのです。  八二年、八四年に出されました通達の内容は、先ほども確認しましたとおり出店抑制策の措置ですね。つまり自粛を要請したものであったわけです。しかし、この会長談話の内容は、適正化という名のもとに、事前説明の簡略化であるとか大店審の活用であるとか、あるいは営業時間の弾力化、そして輸入拡大に果たす大型店の役割まで述べている。自粛や抑制の立場でないことははっきりしていると思うのです。  そこで、まず、輸入拡大に果たす大型店の役割についてお聞きをしたいと思うのですが、会長談話ではこう書かれております。輸入拡大のために、大店法に基づく調整時に適切な配慮を加えるとともに、真剣に検討されることが望ましいと述べられているわけですが、調整の対象の中心というのは面積ということですから、輸入品を扱うならば調整時に床面積に配慮を加える、言うならばもっとふやしてもよいということになるではありませんか。これがどうして出店自粛や抑制というような通産省立場と一致をしているのでしょうか。
  243. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 御指摘がございましたように、昨年六月の大規模小売店舗審議会会長談話におきましては、輸入拡大に果たす大型店の役割について言及をしておりまして、適切な配慮を加えることが重要ということに相なっているわけでございますが、これらについては、今後とも経済社会情勢の変化に応じて柔軟に対処していく必要があって、その中でこういった問題を検討すべしという検討課題を出されたものでございまして、具体的に面積を例外的にふやすとかそういったことを言及しているものではないということで、全体といたしまして、輸入の観点も含めて、大店法の運用について今後検討していくようにという精神で会長談話が出されたものと受けとめておるところでございます。
  244. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 三月一日の本委員会におきまして、我が党の工藤議員に対して田村通産大臣がこうおっしゃいましたね。「輸入拡大と大店法の規制とを短絡的に直結させる議論には疑問がある、」こういうふうに答弁をされたわけですが、通産省規制緩和によって輸入の拡大が大幅に伸びるとは思えない、こういうふうに言っていらっしゃるではありませんか。規制緩和によりまして輸入拡大が図られるというのでもないのにこういうことを言うのは、結果として大型店の増床を認めるためのものでしかない、こういうふうに思うわけです。外圧を受けて輸入拡大と称して、実際には床面積をふやすということがこの会長談話の趣旨ではないか。これでも緩和の方向ではない、こう言えるのでしょうか。
  245. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 過去の国会論議において、今先生から御指摘のあったような問題が取り上げられたことについては、私どもも当然承知をしているわけでございます。輸入拡大に果たす大型店の役割というのはそれなりに大きな役割を果たしているという認識でありますが、製品輸入全体との関係でいけば、これは大型店を増加させることと直接輸入増加を結びつける議論には短絡したところがあるのではないか、こういう議論でございまして、やはり貿易黒字の解消その他の観点から、輸入品の拡大のためには大型店に輸入消費財の販売拡大というものを今後とも期待していかなければいけないということでございまして、事実これまでも、円高メリットの還元等の観点から、インポートフェアの開催であるとか、あるいは輸入品小売価格の引き下げ、新規輸入品の開拓等、いわゆる円高活用プランを三度にわたって当省としても要請しておりまして、その結果として、その線に沿って百貨店、スーパー各社は輸入促進に積極的な取り組みを示しているところでございます。
  246. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 それでは、大型店と中小小売業のどちらが輸入品を多く売っているのでしょうか。どちらが輸入拡大に貢献しているのか、はっきりしたデータを示していただきたいと思います。
  247. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 私ども調査によりますと、主要百貨店、スーパーの製品輸入の状況でございますが、昭和六十一年度で七千六百億円程度となっておりまして、六十二年では、その調査の時点では一部計画が入っておりましたが、八千五百億円程度ということになっております。これは主要百貨店、スーパーの状況でございます。  他方中小企業につきましては、残念ながら統計が統一的なものがないわけでございます。しかし、六十二年度の中小企業白書などにも指摘をしているわけでございますが、輸入品を扱っている企業というものは逐次ふえておりまして、各地の商店街あるいはボランタリーチェーン等における輸入品フェアの開催等、輸入品への取り組みが行われているところでございますけれども、比率からいえば定性的な感覚では大型百貨店並びにスーパーの方が多いのではないかという感じは持っておるところでございます。
  248. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 感じで物を言われては困ると思うのですね。きちっとしたデータを挙げるということがまず第一だと思うのです。輸入拡大を理由にして床面積の増床を認めるのは根拠がない、科学的根拠は今の御答弁でもはっきりしたようにない、こういうことだと思うのです。そういうものもないのに、会長談話が出ているために実際現場では大変な混乱が起きているわけです。  例えば、会長談話のもう一つの柱、営業時間の調整ですね。これも各地の商調協では、この会長談話が通産省のお墨つきのように扱われております。それで時間延長を押しつけられてくるという事態が起こっているのです。このために、中小小売業で働く労働者の労働時間が延長されている。代休もとれない。こういう中で健康破壊が起こって、事は深刻な状態になっているわけです。  通産省は口では出店抑制策などと言いつつ運用ではなし崩し的に緩和を図ってきている、このように断ぜざるを得ないわけです。この実態は、アメリカや日本の財界の要求にこたえるべく、大店審の会長談話に名をかりた方向転換ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  249. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 この大規模小売店舗審議会会長談話の性格につきましては、先生も御案内のとおりでございますけれども、正式の通産大臣からの諮問に対する答申ということではございませんで、大規模小売店舗審議会がそれまでの経験を踏まえて大店法の運用状況の吟味をいたしまして、その結果として今後のあり方等を検討して整理、取りまとめたものを会長の談話ということで公表したわけでございまして、強いて申し上げれば、通産大臣の正式の諮問機関の長としての見解として、私どもとしても一つの重みを持った参考意見として考えるべきものという性格のものかと思うわけでございます。  ところで、ただいまお尋ねの営業時間の延長でございますが、これはそういった会長談話とは関係なく、大店法施行以来延長の方向で続いておりまして、昭和五十年では六時台というのが約半分、四九%あったわけでございますが、六十年には四一%に相なり、最近六十三年五月の時点では三〇%ということでございまして、これはやはり消費者ニーズに対応した商店側の対応ということでございまして、消費者の生活パターンがいわば夜型化して各地域の実情が変化してきたというふうに理解するのが適当であろうと思います。
  250. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 日本人は大体働き過ぎ、労働時間ももっと短縮するように諸外国から批判を受けているところですけれども、この輸入拡大などの都合のよいところだけ外圧外圧といって対応しようとしているのに、こういう問題に対しては何にもしないということでは全く片手落ちではありませんか。  そこで、もう一つお聞きをしたいのですが、会長談話の中の、事前説明の簡略化とか大店審の活 用についてですが、実際に起こっている例をここで申し上げたい、こう思います。  それは私が住んでおります京都の北野白梅町に進出するイズミヤ・スーパーの問題ですけれども、このスーパーは大店法三条に基づく設置者届を国に提出しまして以来十年に及ぶ調整が図られてまいりました。しかし、ことし一月、地元の商調協は意見の一本化ができないままに三条届、五条届の両段階とも各委員に書面で意見を聞きまして、両論併記ということで大店審に上げて審議の場を移したわけです。そして結審をさせるという、異例の事態になったわけです。これはまさに大店審会長談話の事前商調協を早く済ませて大店番を活用しなさいという趣旨どおりのことが行われたわけです。  そこで、お聞きいたしますが、この三条届け出というのが済めば、建物の見やすい場所に通商産業省令で定めるところにより表示を掲げなければならないわけですね。これはいかがでしょうか。
  251. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  252. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 ところが、この三条届の公示も出ていないのです。ずっと不思議に思ってまいりましたが、私はけさもう一度電話で地元に確認をしたのですけれども、この表示というのはありません。それでいて建築だけがどんどん進んでいるのですね。こんないいかげんな状態を放置しておいていいのでしょうか。
  253. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 京都の現場の話でございますので、表示がただいま現在行われているかどうかについては、私どもも現在の段階では承知できないわけでございまして、早速確認をしてみたいと思います。
  254. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 私はけさ地元秘書に見に行かせて確認をしたのですから、今確認できないとおっしゃっても、事実はそういうことになっているわけです。ぜひやらせていただきたいと思います。  今申しましたように、やるべきことをやらないのは、三条の公示だけではないのですね。出店当事者でありますイズミヤは、住民との話し合いに出てきたのは不動産部門の担当者です。肝心の物流部門の責任者は出てこないわけですね。通産省は常日ごろ、大型店と中小小売業者との共存共栄だ、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、建物という入れ物だけを住民は知らされただけで、大型店にどんな業種が一体どれだけ入るのか、年収は一体どれくらいになるのか、一切わからない。大型店進出に対応して、独自の特徴を持った近辺の商店街のビジョンをつくれと幾ら言ったって、どうして経営の合理化近代化計画というのがこれで立つのでしょうか。  私自身はイズミヤ進出に対しまして絶対反対であるとか阻止するなどと言っているのではないのです。しかし、このままでは、大型店と中小小売業者との共存共栄を目指す通産行政として、問題があるというふうに思うわけです。住民に対して、イズミヤの、あるときはごまかし、あるときは高飛車な態度をとり、一方、工事だけは平然と進めるという傲慢な態度をこのまま放置すれば、中小零細業者の営業と暮らしは破壊をされてしまいます。たまったものではないし、私はこれは不当なことだと思っております。官庁、官僚の民間企業に対する出過ぎた過度の指導というのはよくないと思うのですけれども、共存共栄とおっしゃるならば、正当で適切な指導をして対応していただきたいと思うのです。もう一度、明確に御答弁をいただきたいと思います。
  255. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 御指摘のように、イズミヤの京都白梅町の店につきましては、三条の届け出をされてから大店審で結審をするまで十年間かかった案件でございます。先ほど来先生から御指摘のございます出店抑制問題に関連して、事前説明であるとかいう制度ができたわけでございますが、これはその後の話でございまして、本件については、中にどういうテナントが入るか、そういった点について地元の方々に必ずしも制度的な担保がなかったかと思うわけでございます。ただ、承りますところによりますと、会社の方では内容についても地元の方に説明をしているという話でございます。  現在は店舗建設の段階で、これは私どもの手を離れまして、京都市の指導のもとに近隣町の自治会等への建築説明が行われている段階でございまして、むしろ地元の問題として適切な対応を期待するものでございます。  なお、小売商業の発展という観点からは、私どもとしては、中小企業対策におきましても、この中小小売商業対策に万全を期すように努力しているところでございまして、今後とも中小小売商業の振興のために努力をしていきたい、かように考えております。
  256. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 万全を期しておられるのはよそのことでありまして、このイズミヤに対しては万全が期されていないから本日ここで取り上げて質問をしているわけです。会社が地元に対する説明はしていると言っても、先ほど言ったように、中身に何が来るのか、そういうことは一切していないのですから、通産省自身もだまされないようにしていただきたい。おっしゃったとおり、市の指導は、建築に対する説明とかそういうものでありますから、やはり側だけの説明でありまして、市におきましても中身の説明というものは何もないという状況があるわけです。  先ほど三条届の公示をしてないのに対してすぐ指導するとおっしゃったわけですから、このチャンスを利用して、このこともきちっと対応していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  257. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 一般論といたしまして、大規模小売店舗法の運用については、今後とも十分注意をして、だまされないようにしたいと思っております。
  258. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 一般論で言っているのではありません。日本語がなかなか通じないようですが、イズミヤ・スーパーの横暴に対して適切な指導対策をしていただきたいということです。  イズミヤ問題を調整した商調協は、ことしの一月、附帯条件としまして四百台分の駐車場を確保することなどをつけ加えて結審したわけです。しかし、駐車場に関してどのような影響があるかは、商調協、大店審でも論じられておりません。だから、これを知りましたこの付近の住民であるとか近くの小学校のPTAの父母の方々が「大将軍・衣笠の街づくりを考える会」というのを結成されました。そして、交通問題等付近に与える環境問題などについてどうなっているのか知りたいということで、このイズミヤに対して説明を要求しているのですが、これにも全く応じようとしていないわけです。イズミヤの予定しております駐車場に入る道路というのは大変細いのですね。ですから、警察でも交通量や車の流れについて大変心配をしている、こう西陣署は言っているのです。また、商品の搬入は、平日は通学時間帯とも重なるわけです。こういうように地域への影響が大変大きいにもかかわらず話し合いに応じない。全く不当だと思うのです。さきに申し上げたように、イズミヤは概要さえ十分な説明をしておらない。どのような影響があるのかわからないというのが現状であるわけです。だから一般論では済まないのです。ですから、説明会を開くように住民も求めているわけです。  都市計画の問題や周辺地域の影響について地元で十分話し合いができるように、八二年あるいは八四年の通達で自治体への事前報告を義務づけたという経緯からいたしましても、出店者側が地域住民に十分な説明をするということは出店者の最低の義務ではないのですか。イズミヤは住民に対して説明をしないのですから、これは通産省が何らかの対応を必要とする社会的な問題だ、こういうふうに私は思うのです。適切な対応を強く求めます。
  259. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在は大店法の段階を離れまして京都市の指導のもとに建築説明会が行われている段階でございます。しかしながら、先生も御指摘になられましたように、大型店の出店については当該地域の商店街との共存共栄ということは極めて大事な問 題でございますので、私どもといたしましても、京都市あるいは関係の会社の方に先生の御趣旨について申し伝え、できるだけそういうことが実現するように伝えることといたしたいと存じます。
  260. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 厳しく伝えていただきたいと思います。  大臣に最後にお尋ねするんですが、私がなぜこの点を強く主張しているのか。大変しつこく主張をしているわけですけれども、それはなぜかといいますと、京都の場合にはこの北大路であるとか二条駅周辺であるとか、または全国各地でイズミヤの面積の数倍というような大型店の出店計画が出ているわけです。イズミヤの地域住民に説明しない、それで強行するというようなやり方が認められるならば、知らなかったと言ってでも黙認をされるというようなことを許すならば、周辺の小売店との商業調整だけで、周辺住民、環境問題について配慮しなくても、三条、五条の調整だけで出店できるというような前例となっては大問題だというふうに思うからです。共存共栄なんかは絵にかいたもちになるということを心配するから私は主張をしているわけです。そういう点で、今高橋審議官は指導するというふうに聞こえるようにおっしゃいました。明快にはおっしゃってないというふうなんでちょっと心配なんですが、大臣いかがでしょうか、この御見解についてお尋ねしたいと思います。
  261. 田村元

    ○田村国務大臣 そうしつこいとは思いません。非常に真剣に尋ねていらっしゃるわけですから。  私は、藤原さんが御質問なさるということで報告を受けておるわけでございますけれども、一応適法にパスして、あとは京都市の段階でいろいろと説明を求めているとかなんとか、そういうことをちょっと聞きました。いずれにいたしましても、スーパーマーケットとか生協とかというものが入りますと、いろいろなトラブルが起こることは事実でございます。そういう点で、これは不思議なことに、私どもの方でもそうでございますけれども、デパートが来ると周辺の小売店は非常に人が入るのですね。あれは一種の人寄せパンダになる。ところが、スーパーとか生協とかいうのが来ると、近隣の専門店等が相当困る場合も多々あるようでございますから、私自身いま少しく勉強をしてみたい、このように思います。
  262. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 次の問題に移りたいと思うのですが、天皇の病状悪化に伴いまして、お祭りや各種の催し物を中止するというふうなことなど、各種行事の自粛ムードというのが全国的に広がっております。お祭りやイベントの中止というのは、単に。祭り用品の専門店だけへの影響にとどまらずに、中小零細業者に深刻な影響を及ぼしまして、地域経済全般に影響をしてきているわけです。  京都市の場合を申し上げますと、観光都市として、お祭りは欠かせないものなのですね。この観光収入に依存しております関係業者は大変数多くいるわけです。この京都市内では、大きなお祭りが四十一あるんですが、ことしはそのうちの二十四のお祭りが自粛や中止をされたわけです。そういう中でも、十月二十二日の時代祭であるとか、その夜あります鞍馬の火祭り、この中止による影響というのは、京都府の職員労働組合がこの間試算をいたしましたが、観光関係業界に及ぼす損失というのは、これを例に引いてみますと、市内交通費が一億四千二百十七万円、宿泊費が二億一千七百二十四万円、土産品代が二億八千八百九十万、食事代が二億七千七百五十二万、その他二億一千百五十六万円ということで、約十一億円強、こういうふうな試算が出ているわけです。十月二十二日付の京都新聞によりますと、観光客は昨年の秋よりも一〇%から一五%減る、こういう見方を市の観光協会はしているというふうに報じております。京都府バス協会貸し切り委員会委員長はこう言っておられます。時代祭の中止で観光バスの予約取り消しは百二十台から百三十台、各種イベント絡みを含めて四百台前後がキャンセルとなっている、そうしますと約四千万円の減収となったはずだ、こういうふうに述べておられるわけですね。  関連業界などは、今、死活にかかわると営業危機を訴えて、天皇不況などという新しい言葉さえ生まれているわけです。この自粛によります影響を通産省は全国的に把握する必要があるというふうに思うのですが、いかがでしょう、その意思はおありでしょうか。
  263. 松尾邦彦

    松尾政府委員 中小企業の景気の動向につきましては、常々私ども全般的な動向の把握に努めますとともに、個別の地域あるいは産地にかかわります動向につきましても、通産局を初めといたしまして種々の全国的な窓口を通じまして把握に努めていることは御高承のとおりでございます。ただいま御指摘の天皇陛下の御病状との関係に関しましては、御指摘のように、各種行事の中止とか延期の動きがあること、そしてまた、その影響が中小企業の分野に見られるということにつきましては、私どもも承知いたしております。ただ、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、そのようなことも含めまして、中小企業の動向につきましては絶えず十分な注意を払っていく必要があると考えておりまして、御指摘の点も含めまして今後とも通産局等各窓口を通じまして状況を注意をもって把握してまいりたいと考えております。
  264. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 自粛がこのまま続いていけば、例えば印刷業者は来年用の年賀はがきの印刷ができない。それから、大阪の泉州では地場産業でありますタオル、これに大変影響が大きいということです。各種イベント中止のために引き出物のタオルがキャンセル、こういう状態になっております。その上、赤とかピンクなどの派手な色物は全部返品、こういう状態が続いているのです。お正月初売りということでお客さんへ御祝儀のタオル、この注文が関東以北から北海道までストップ、こういうように大変な状況になっているわけですね。京都の西陣では来年の成人式がどうなるのか、これによって大変な影響を心配しているわけです。和装問屋筋の室町では、さっき申しました中止になりました時代祭、この日に毎年お得意様を招待いたしまして商談をまとめるわけです。ところが、ことしはこのお祭りの中止で商談ができない。百億円の売り上げ減少ということになっているわけですね。室町では五百数十社の着物取引をやっているんですが、六千五百億円から七千億円、そのうち二千億円以上を占める成人式用であるとかお正月用であるとか、こういう晴れ着、振りそで、訪問着、これはもう既に生産をされているわけです。問屋を通して小売店に卸されているわけです。しかも、御承知のとおり、生産されたときの絹糸価は大変高かったわけですねそういうもので製品が小売店まで行っている。ところが、これが自粛となれば返品となって戻されてくるのではないか。こういう関係者は夜も眠れないというふうな状況が生まれているわけですね。  通産大臣、この点で、天皇病気に伴う行事の自粛、このために起こっている不況というのはほんの一部の地域に限られているのじゃないのですね。日本列島青息吐息というふうな状態にまでなっているというところに心を向けていただいて、円高対策と同様な措置として、前年より売り上げが五%以上減少しているとかあるいはまたこれはどうも減少する見通しがあるぞというような業種を不況業種に指定して、融資など具体的な対策を検討していただく必要があるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  265. 田村元

    ○田村国務大臣 まず申し上げておきたいことは、政府が自粛を求めたことは一切ございません。むしろ逆でありまして、官房長官談話として、過度の自粛を戒める談話を発表しております。十月十三日、参議院の内閣委員会で、あなたの党の吉川春子さんに対する小渕官房長官の答弁をちょっと読みますが、「しかしながら、各種行事が過度に中止、延期になるという事態は、やはり国民の社会経済生活に著しく影響を及ぼすということであればこのことは好ましいことでないことは言うまでもないことと思いますし、このことは日ごろから国民の御幸福を願っておられる陛下のお気持ちにも沿わない、こういうことでございまして、私自 身も九月の二十九日にこの気持ちを記者会見で申し述べたところでございます。」云々というふうに答弁もいたしております。また、マスコミもあらゆる機会を通じて、過度の自粛というものは国民生活に悪影響を及ぼす可能性もあるから、これは慎んだ方がいいのじゃないかというキャンペーンをしているわけです。でございますから、この自粛という問題は、これは自然発生的なものでございます。私は藤原さんのお人柄大変好きでございますけれども、事天皇陛下に関しましては考え方を基本的に異にいたしております。これだけ政府があるいはマスコミが自粛を自粛するように訴えても、なおかつそういう現象が出る。天皇陛下という方は何と国民の敬愛を一身に集めておられるのだろう、国民が皆陛下の御回復を心底から祈って、そして自粛をしておるのじゃなかろうか、このように私は思います。別に自粛を礼賛するわけでも何でもありません。これを、そのような国民大衆の自然発生的な天皇陛下に対する敬慕の情から出ておる自粛というものを災害と決めつけることには、断じて承服いたしかねます。
  266. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 災害と私は決めつけたりはしていないのですけれども、また、政府がこの自粛を促進しておられるとも思ってないのです。官房長官の御発言もよく存じております。自然発生的に生まれたとしても、現実今国民の生活、とりわけ中小零細企業、ここが大変困っている。また、通産省は、地方のイベントを地域経済社会の活性化と位置づけて、イベントの振興をうたっておられるわけですね。その切り札であります各地の地方博でも、客寄せイベントが中止というようなケースが続出しているわけですね。ですから、自粛による影響は、中小企業とか下請業者、飲食業はもとより音楽家とかミュージシャンに至るまで起こっているわけですから、このまま、勝手にやっているんだから政府は知らぬという態度をとれば、国民生活に大変重要な影響をもたらす。ですから、ぜひとも国民の痛みや苦しみに対して耳を傾けて、具体的な対策を急いでとっていただきたい。とりわけ今年末を控えまして中小零細企業の営業は本当に危機状態を免れないというふうな事態に至っているわけです。そういう点で、だれが自粛を言ったとか言わなかったとか、それは別として、ぜひ今の国民の痛み、苦しみを御理解いただいて、手を打っていただきたいと強く求めて、私の質問を終わりたいと思います。
  267. 田村元

    ○田村国務大臣 私が災害という言葉を使いましたが、今藤原さんは円高不況と同じようにという表現をなすったわけですよ。そして天皇不況という、それはそういう言葉をお使いになるのかもしれませんけれども、今天皇陛下が非常な苦しい、人生の苦しい瞬間を迎えていらっしゃる。そのときに天皇不況とか円高不況とか、そういうことを、言葉を、言うなれば口汚く天皇陛下に対してそれをおっしゃる。これは私は率直に言って人間性の欠如だと思う。天皇陛下であろうとなかろうと、私は、人間性、一人の人間として考えても、苦しんでおられるときにそれはいかがなものでございましょうか。そして、政府が何もしていないようなお言葉でございましたけれども、官房長官がそのようにして戒めをしておる。マスコミも随分とそれをキャンペーンしておる。我々もまた、事あるごとに、過度の自粛はいかがなものであろうかということを言っておる。こういうことでございます。それを、天皇制ということとイデオロギーで結びつけられて、円高不況だあるいは天皇不況だという表現をなさいますことは、どうしてもこれは藤原さんらしくありません。私は藤原さんの優しさを一番よく知っておりますから、それだけに、どうしてもこれは了承できません。承服できません。私は、自然発生的な国民の陛下を思う、御回復をこいねがう心情というものをむしろ高く評価したいと思っております。
  268. 渡辺秀央

    渡辺委員長 藤原君、既に時間は経過いたしました。これをもって質疑を終わりたいと思います。  次回は、公報をもって……(藤原(ひ)委員「はい、申しわけありませんが、ちょっと大臣に誤解があると思うので、その点は改めたいというふうに思います」と呼ぶ)委員長職権で発言を停止させます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十八分散会