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1988-08-25 第113回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年八月二十五日(木曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君    理事 畑 英次郎君 理事 池端 清一君    理事 沼川 洋一君       粟屋 敏信君    伊吹 文明君       今井  勇君    小川  元君       小沢 辰男君    大野  明君       片岡 武司君    木村 義雄君       佐藤 静雄君    笹川  堯君       自見庄三郎君    高橋 一郎君       竹内 黎一君    中山 成彬君       堀内 光雄君    三原 朝彦君       持永 和見君    川俣健二郎君       河野  正君    田邊  誠君       永井 孝信君    新井 彬之君      平石磨作太郎君    吉井 光照君       塚田 延充君    児玉 健次君       田中美智子君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君  出席政府委員         厚生大臣官房長 黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 北郷 勲夫君  委員外出席者         文部省体育局学         校健康教育課長 石川  晋君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 八月二十五日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     小川  元君   石破  茂君     笹川  堯君 同日  辞任         補欠選任   小川  元君     相沢 英之君   笹川  堯君     石破  茂君     ───────────── 八月十二日  カイロプラクティック等医業類似行為に関する請願石井一紹介)(第五六号)  年金受給者等に対する福祉灯油支給制度化に関する請願中沢健次紹介)(第五七号)  同(池端清一紹介)(第九五号)  同(串原義直紹介)(第九六号)  同(坂上富男紹介)(第九七号)  同(安井吉典紹介)(第九八号)  同(安田修三紹介)(第九九号)  同(関山信之紹介)(第一六三号)  同(奥野一雄紹介)(第一九四号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第一九五号)  同(辻一彦紹介)(第一九六号)  同(五十嵐広三紹介)(第二一六号)  同(岡田利春紹介)(第二二五号)  同(嶋崎譲紹介)(第二二六号)  同(池端清一紹介)(第二二九号)  同(小林恒人紹介)(第二八〇号)  高齢者就労対策充実に関する請願伊藤茂紹介)(第九三号)  同(安田修三紹介)(第九四号)  同(五十嵐広三紹介)(第二一七号)  同(高沢寅男紹介)(第二一八号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第二一九号)  同(五十嵐広三紹介)(第二三〇号)  同(緒方克陽紹介)(第二三四号)  同外一件(中村茂紹介)(第二八一号)  同(細谷治嘉紹介)(第二八二号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願野呂田芳成君紹介)(第一六一号)  同(海部俊樹紹介)(第二二七号)  同(井出正一紹介)(第二三一号)  療術の制度化促進に関する請願外一件(野呂田芳成君紹介)(第一六二号)  同(上草義輝紹介)(第二三五号)  同(橋本龍太郎紹介)(第二三六号)  身体障害者雇用に関する請願船田元紹介)(第一六四号)  同(古川雅司紹介)(第一六五号)  同(宮里松正紹介)(第一九九号)  身体障害者福祉行政改善に関する請願船田元紹介)(第一六六号)  同(古川雅司紹介)(第一六七号)  同(宮里松正紹介)(第二〇〇号)  重度障害者寒冷地対策に関する請願船田元紹介)(第一六八号)  同(古川雅司紹介))(第一六九号)  同(宮里松正紹介)(第二〇一号)  総合リハビリテーションセンター設置に関する請願船田元紹介)(第一七〇号)  同(古川雅司紹介)(第一七一号)  同(宮里松正紹介)(第二〇二号)  脊髄神経治療技術研究に関する請願船田元紹介)(第一七二号)  同(古川雅司紹介)(第一七三号)  同(宮里松正紹介)(第二〇三号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願船田元紹介)(第一七四号)  同(古川雅司紹介)(第一七五号)  同(宮里松正紹介)(第二〇四号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願船田元紹介)(第一七六号)  同(古川雅司紹介)(第一七七号)  同(宮里松正紹介)(第二〇五号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願船田元紹介)(第一七八号)  同(古川雅司紹介)(第一七九号)  同(宮里松正紹介)(第二〇六号)  国立腎センター設立に関する請願正森成二君紹介)(第二七八号)  同(村上弘紹介)(第二七九号)  総合的なパートタイム労働対策早期確立に関する請願小沢貞孝紹介)(第二八六号) 同月十八日  腎疾患総合対策早期確立に関する請願三塚博紹介)(第三〇一号)  小規模障害者作業所助成等に関する請願外三件(大原亨紹介)(第三〇二号)  年金受給者等に対する福祉灯油支給制度化に関する請願川俣健二郎紹介)(第三〇三号)  同(戸田菊雄紹介)(第四〇五号)  高齢者就労対策充実に関する請願上坂昇紹介)(第三〇四号)  同(田中恒利紹介)(第四〇六号)  身体障害者雇用に関する請願奥田敬和紹介)(第三〇五号)  同(池端清一紹介)(第三〇六号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三〇七号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三〇八号)  同(水田稔紹介)(第三〇九号)  身体障害者福祉行政改善に関する請願奥田敬和紹介)(第三一〇号)  同(池端清一紹介)(第三一一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三一二号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三一三号)  同(水田稔紹介)(第三一四号)  重度障害者寒冷地対策に関する請願奥田敬和紹介)(第三一五号)  同(池端清一紹介)(第三一六号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三一七号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三一八号)  同(水田稔紹介)(第三一九号)  総会リハビリテーションセンター設置に関する請願奥田敬和紹介)(第三二〇号)  同(池端清一紹介)(第三二一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三二二号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三二三号)  同(水田稔紹介)(第三二四号)  脊髄神経治療技術研究に関する請願奥田敬和紹介)(第三二五号)  同(池端清一紹介)(第三二六号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三二七号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三二八号)  同(水田稔紹介)(第三二九号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願奥田敬和紹介)(第三三〇号)  同(池端清一紹介)(第三三一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三三二号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三三三号)  同(水田稔紹介)(第三三四号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願奥田敬和紹介)(第三三五号)  同(池端清一紹介)(第三三六号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三三七号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三三八号)  同(水田稔紹介)(第三三九号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願奥田敬和紹介)(第三四〇号)  同(池端清一紹介)(第三四一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三四二号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三四三号)  同(水田稔紹介)(第三四四号)  総合的なパートタイム労働対策早期確立に関する請願小川元紹介)(第四一三号)  同(小坂善太郎紹介)(第四一四号)  同(中島衛紹介)(第四一五号)  同(井出正一紹介))(第四六七号)  同(羽田孜紹介)(第四六八号)  同(宮下創平紹介)(第四六九号)  同(若林正俊紹介)(第四七〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  後天性免疫不全症候群予防に関する法律案内閣提出、第百八回国会閣法第九〇号)      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  第百八回国会内閣提出後天性免疫不全症候群予防に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野呂昭彦君。
  3. 野呂昭彦

    野呂委員 エイズ法案エイズ予防法律の方は、国会に昨年四月に上程されまして、本年の通常国会で審議に入っておるわけでありますけれども関係団体の中で大変強い反対もございまして、私どももある意味で困惑をしておるところもあるわけでございます。そういう中で、先般八月九日に血友病関係団体皆さんおいでをいただいて、参考人として意見を聞かさしていただいたわけでございますが、きょうは、その中で出ておりました意見も踏まえながら幾つかをお尋ねをしてまいりたい、こう思います。  そこで、まず世界エイズ状況でありますけれどもWHOが本年の六月に発表しております数字におきましても患者が、確定しておるだけでも十万人、あるいは十五万人という推測も出しております。実態はそれぐらいであろうということでありますし、感染者の方は五百万から一千万人ぐらいいるのではないか、そういう数字が出ております。一方我が国では、一番最近のサーベイランス委員会のものはことし五月に発表になっておりますが、患者が八十人、そして感染者が一千三十八人で、感染者については推定では二千数百人だろう、こうも言われておるわけであります。今後このエイズ感染が急激にふえていくということが私ども一番心配なわけでございます。いろいろな予測を見てみましても、例えば、我が国においても五年ぐらいの間に四・五倍になるだろうとか、あるいは世界におきましては六、七倍に患者がふえていくのではないか、あるいは恐ろしい数字でありますけれども、近い将来一億人ぐらいの感染者を出してくるのではないか、そんなそら恐ろしいような話も聞くわけであります。  こういう状況の中にありますので、まずは大臣に、我が国保健衛生医療体制責任者であるというお立場で、こういう状況を今どうお考えになっておるのか、その点からお聞きをしていきたいと思います。
  4. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今お話がございましたように、ごく最近の全世界患者報告数は十万四百十件でございます。また、一例以上の報告のありました国の数が百三十八カ国、最近の傾向として、特に直近の六カ月間で二万五千人患者が急増しておる、こういう状況WHO報告で私どもも承っておるわけでございます。  先般パリでOECD厚生大臣会議がございましたときにも、医療問題で各大臣が発言する中で必ずエイズ問題、強い発言がございました。ヨーロッパにおきましては大体患者数が千人から四千人ぐらいの状況でございますから、もっともなことだと思いました。特に今申し上げたいのは、英国で聞きました話でございますが、英国は大体千五百人の患者数でございまして、日本の場合、今の傾向で推移いたしますと、ほぼ四年先に大体英国状況になるということも予測されるわけであります。アメリカは七万人、ヨーロッパの国々は今申し上げましたように千人から四千人、日本は八十人、非常に幸いなことだと私は思っております。  このような状況にあるということは、言ってみれば、神様が我々に対してエイズに対する対策を立てる時間的な余裕を与えてくれているというふうに認識をいたしておるわけでございます。死亡率の極めて高い、しかも現段階において治療法が発見されていない、このような難しい病気の対策患者数が少ない現段階において十分に進めてまいりまして、国民の生命、健康を守る立場である厚生省のこれは大きな責任であるというふうに考えているわけでございまして、今後、この患者が少ない段階で全力を挙げて患者発症増加というものを防いでいきたいというふうに考えております。
  5. 野呂昭彦

    野呂委員 今大臣は、先般のOECD閣僚会議等お話も出たわけでございますが、このエイズについての保健担当大臣会議というのがことし一月にロンドンで行われておりまして、我が国の方からは長野政務次官大臣の代理として御出席をされております。WHOの方では、一応目標として二つぐらい挙げられて、エイズウイルス感染のチェーンを断ち切っていくということが一つと、それから感染した人たちに対するケア支援の推進、この二つ目標に六つの世界戦略というのを掲げておりまして、ロンドンにおきますロンドン宣言においても、それを世界的に協力して推進していこうということ、そして各国に迅速な対応を求めておるわけでございます。  ところで、今大臣からも少しありましたが、我が国エイズというのは世界各国大分状況が違う。それはアフリカタイプ、それから欧米タイプ、そしてアジア、特に日本タイプは異なっておるわけでありまして、数の上でもエイズバージンと言われるような、まだ低い数字であります。同時に、感染源の問題を見てみましても、アフリカ異性間性交渉を中心とする男女同数発生状況や、あるいは欧米男性同性愛がかなり多い、そういう状態に比べまして、我が国の場合には血液製剤による感染者あるいは患者というものが極めて大きいわけであります。感染者のわかっておる 数字からいきますと、九三%の人たち血友病血液製剤によるところの感染者である、こういうことでございます。  そうなってまいりますと、世界戦略を進めていこうということで我が国も積極的な協力を表明してきておるわけでありますけれども我が国エイズ対策が諸外国の対策とそういう意味では違いが出てきても当然ではないか、あるいはその違いがあるのかどうか、そういう点についてお伺いをいたしたいと思います。
  6. 北川定謙

    北川政府委員 我が国エイズ感染現状におきましては、今野呂先生が御指摘されましたように、血液凝固因子製剤による感染ということが現段階においては非常に多いわけでございます。そのために、今日本の世論ももちろんでございますし、国会におかれましても、血液凝固因子製剤による感染者に対する対策を最大限早急にやっていく、こういうことで御指摘をいただいておるわけでございまして、厚生省といたしましても、六十三年度予算におきましても、そのための必要経費を確保してこの対応に最大の努力を払っているところでございます。  その一つの具体的なやり方といたしましては、まず発症予防ということが当面の非常に大きな問題でございまして、これと、それから発症した方の治療法の開発、ここに重点を置きながら、さらにいわれなき偏見を社会につくらないということのための一般に対するPRとか、いろんなことをやっておるわけでございます。  しかしながら、先ほど大臣からもお答えがございましたように、これはあくまでもやはり感染症でございまして、特に異性間の感染という状況がぼつぼつ起こっておる。ヨーロッパあるいはアメリカ一般社会における感染の広がりという状況を見ると、決して日本はそういう状況から別の状況にあるということは言えないわけでございまして、近い将来にやはりヨーロッパ社会あるいはアメリカ社会がたどった経過を当然たどるということが考えられるわけでございます。そういう点についても今の段階から早急に総合的な対応を立てていくということが必要ではないかというふうに考えるわけでございまして、そういう意味から申せば、WHO総合対策の一環として十分今のうちに力を尽くす必要がある、このように考えておるわけでございます。
  7. 野呂昭彦

    野呂委員 我が国の場合、まだ発生状況が少ない中で極めて早く手を打っていかなければならない、これは世界の趨勢を見ましても私ども感じるところがあるわけでございます。ところが、またいろいろな状況の違いというものもあるわけでございますが、そういう意味ではいろいろなきめ細かい対策を考えていただくということが大事であろうかというふうにも思います。  私、ロンドン宣言を拝見いたしておりまして特にちょっと注意をとめたのは、ロンドン宣言の中でわざわざうたっておることで、専門家、若者、ハイリスクグループなどのグループ別にきめ細かな対策が必要ではないか、こういうふうなことが言われておるわけであります。我が国の場合、血液製剤感染者患者というものが極めて多いという現状がありますけれども、今後異性間性交渉によるところのエイズ増加というものが危惧もされておるわけでございますし、我が国としても今後こういったグループ別のきめ細かな対策を考えられておるのか、その点とういうふうにお取り組みでございましょうか。
  8. 北川定謙

    北川政府委員 我が国の場合に、まだエイズ一般社会への淫浸度というものは非常に低いという状況にありますので、それぞれのいろいろなグループに対する対応というものが現段階では必ずしも十分ではないのでございますけれども先ほども申し上げましたようにヨーロッパ社会あるいはアメリカ社会の、これは本当に前車の轍でございますから、そこからいろいろな教訓を得ながら年齢階層別とか性別、あるいは海外に渡航する人たち、あるいは海外から帰ってくる人たち、それぞれエイズ感染と非常に密接な関係のあるところに重点を置きながらきめ細かな対応をする必要がある、そういうふうに考えております。
  9. 野呂昭彦

    野呂委員 この点は私も重要なことじゃないかなと思いますので、より一層ひとつ御努力をお願いしたいと思います。  そこで、我が国エイズ対策でありますけれども、昨年の二月にエイズ問題総合対策大綱というのを政府がまとめられております。そこで、早急に手を打っていく必要がある。先ほどからのお話の点を基本にしまして、我が国エイズ対策というものが打たれてきておるわけでございます。対策基本として、自分なりにいろいろと整理をしてみますと四点ほどあるのかなというふうに思っております。  それは、まず第一は、我が国においては患者大変少数であるけれども社会防衛という観点からこれの蔓延防止のために今から早く総合的な対策を立てていくんだということが第一点であろう。それから第二点としては、不幸にしてエイズ感染したり発症しておる人たちがおるわけでございまして、この人たちに対してどう対策をとっていくのか。これは発症予防とか治療といった医療面対策、あるいはカウンセリングや相談事業等精神面まで及ぶ十分なケア支援措置が大事であろう、こういうふうに思います。第三点は、とりわけ我が国患者感染者の中に血友病皆さんが多いということでございまして、ここらへの特段の配慮というものがやはり我が国の場合欠くことのできない問題である。そして四番目には、特に今回エイズの問題については人権プライバシーの問題が指摘をされておるわけでございまして、この人権プライバシーの尊重をどう確保していくか。こういう四点かなというふうに思うわけでございます。  それに対しましていろいろな対策を今厚生省も必死に展開を図っていただいておるわけでございまして、その対策救済策も含めて若干後でまたお聞きをしていきたいのですが、時間の関係もございますので、法案位置づけというものについて少しお尋ねをしていきたい、こういうふうに思うわけでございます。  血液製剤感染者患者皆さんというのはまことにお気の毒な立場でございます。先般参考人としておいでをいただいて御意見を聞きましたが、まさに悲痛な訴えでございまして、私どもも本当に心の痛む思いを同じように持ったものでございます。この皆さんが、今回厚生省が出されております予防法案に大変な不安を抱いておる、あるいは心配をされておりまして、強く反対をしておられるのであります。この皆さん心配とか不安、それがこの法案が成立することによって現実のものとなるというようなことがあっては大変なことでございます。そういう意味からいけば、私どもはこの国会の場でやはりただすべきはただしていかなきゃならない。同時に、誤解があればそれを解いてもいかなきゃならぬだろう、こう思っておるわけでございます。法案についてはもう既にいろいろな議論も出ておりますが、そういった観点から私も今改めていろいろと厚生省の方からも説明していただく機会にもしていきたい、こう思っておるわけでございます。  そこでまず第一に、エイズというのはウイルスによる伝染病一つであることは言うまでもありませんし、また性行為感染症としての位置づけも今日ちゃんとされておるわけでございますね。そこで厚生省法案を出す過程の中で、どういう形でこの対策法案としてやっていくんだという御検討をされたと思うのです。我が国には伝染病予防法だとか性病予防法という法律があるわけでございます。考えてみればエイズというのは、先ほど申し上げたような形からいけばこれらの適用ということも考えられるわけでございます。しかし、今回単独立法として出されてきた。そこで、これらの他の法律と比較して今回単独立法で出してきた理由、それから一部性病予防法を改正してもいいじゃないかという御意見参考人の中にあったわけでございます。その点も含めてお答えいただきたいと思います。
  10. 北川定謙

    北川政府委員 今の野呂先生の御質問にお答え をする前に、まず基本的にこれから私ども国民皆様方十分理解を深めていただかなければいけないことは、エイズは確かにウイルスによる感染症であるということは事実であるわけでございますけれども、ただ他の非常に急性の、例えばインフルエンザだとかあるいはコレラだとかいうふうな種類急性伝染病とは違いまして、感染形態が非常に特異であるということだと思うのですね。通常社会生活をしている中で他の人に、隣におる人に感染をさせるというような心配はまずない種類疾患である。この点を社会によく理解をしていただかないとエイズ問題について非常に差別とかいう問題が起こってまいりますので、これが一番の重要な点ではないかと考えておるわけでございます。  そこで、今野呂先生指摘の、エイズ予防法案を提案するに当たって、伝染病予防法性病予防法との関連がどういう点にあるのか、どういうことから単独立法として提案したのかということにお答えするわけでございます。  まず、伝染病予防法でございますけれども、この法律は非常に急性伝染病を対象に考えておるわけでございまして、患者の隔離だとか収容という強制的な措置がとられるようになっております。それから、医師が患者の氏名だとか住所をすべて市町村長に届けるというような非常に強い性格の法律になっておるわけでございます。これがエイズ感染形態プライバシー保護観点から見ると適切ではないというふうに考えておるわけであります。また性病予防法につきましては、患者性交等に対して罰則を設けて禁止をするとか、あるいは治療薬の存在を前提としておりますので、治療命令だとか入院命令などの規定があるわけでございます。こういう点もやはりエイズ現状からして、この法律を適用することは非常に困難であるということであります。  さらに、エイズ予防法案では、とりわけプライバシー保護ということに非常に重点を置いておるわけでございまして、関係者守秘義務を広く厳しく定めておる。さらに人権保護を国、自治体、さらに国民一般の責務として明記するということでございまして、伝染病予防法性病予防法とは異なった人権配慮をしたという点で、むしろ現在のエイズ状況に適切な体系で構成をされているというふうに考えるわけでございます。
  11. 野呂昭彦

    野呂委員 性病予防法を改正したらどうだという点もあったのですけれども、時間がありませんので質問をちょっと先に進めさせていただきます。  いろいろと今の観点ではよくわかるお話であります。ところが、さきにエイズ対策をいろいろ打っていただいているということを申し上げたのですが、発症予防治療体制の確立あるいはカウンセリング、救済策、いろいろと対策を打たなければならない。だけれども、これらは別に法律がなくたってできるじゃないか、参考人の中にも、そんな法律をつくらなくても対策は打てるじゃないですか、こういう強い意見がございましたね。考えてみれば、例えば発症予防治療体制の確立が法律がなければできないのか、そうでもないし、私は法律を必要とされる政府側の主張を少し強めてまた重ねて聞いていく格好にもなるのですが、どうしてもやらなければ、法律がなければ困るんだ、これがないとできないことがあるんですよというところをひとつ明確に出していただきたい。
  12. 北川定謙

    北川政府委員 確かに、エイズに対する対策、これは法律がなくてもできる部分もかなりあるわけでございますが、特に法案で規定をしている中の重要な点を申し上げますと、まず感染者発生状況を全体として的確にとらえる、これは今後の対策を進める上でぜひ必要なことであるわけでございます。そのために、サーベイランスという体系で現在でも医療機関の医師の協力をいただきながらやっておるわけでございますけれども、これはあくまでも医師の協力を求めるという形であって、すべての医師にその義務を課しているわけではございません。法律を定めることによってこの義務づけをきちんとする必要がある。それから二に、プライバシー人権保護に特段の配慮を払って守秘義務の強化をするという点にこの法律のポイントがあるわけでございますけれども、この点も法的な義務づけを国民に対しても受けていただく、こういうことであります。それから第三に、医師との信頼関係が崩れた上で不特定多数の者に感染をさせるような反社会的な行為を重ねて行うケースについて、これは公衆衛生行政の立場から知事が必要な措置をとれるようにしておるわけでございますけれども、これも権利義務にかかわることでございますので明確に法的な規制をする必要があるだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  これらは、いずれも法的な裏づけが必要である事項であります。それ以外の点につきましては、行政指導あるいはいろいろな社会努力対応していただける点も多々あるわけでございます。
  13. 野呂昭彦

    野呂委員 政府側の、今回の予防法に対して基本的にどうしても必要だという理由を挙げていただいたわけでございます。例えばプライバシー人権の問題でも、ある意味ではこの予防法ができることによってむしろ人権問題等を法が積極的に擁護できるのではないか、そういうお立場でもあろうと思うし、あるいは反社会的な行動をとるという人たちに対する必要最小限の行政処置という観点でも、これは医師と患者との信頼関係が大原則であるということを認めながら、なおかつ、しかしその信頼関係をわざわざ破っていくという反社会的な行動をとるような患者さんがあらわれたときの必要最小限の処置だ、こういうことだろうかと思うのです。  しかし先日の参考人は、大変このことについて、この法案については強く反対しておりますね。例えば、この予防法ができればかえって感染者を地下に潜らせることになりはしないか、あるいは偏見や差別を助長する危険があるじゃないか、あるいは国民の恐怖心をあおって混乱を招いていく可能性がある、それから医師と患者の信頼関係も失わせるのだ、こう言われておるわけですね。この辺、どういうふうに答えられますか。
  14. 北川定謙

    北川政府委員 確かに御指摘の点が大きな議論になっているわけでございますけれども、これは法律案そのものの問題ではなくて、法律が提案される周辺の状況との関連でこういう問題が出てきていると私どもは考えておるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、エイズ感染の形態というようなことを十分に国民の皆様にも御理解をいただきながら、しかも法律の体系ということもよく御理解をいただくPRをすることによって御理解を得ることができるのではないかと考えておるわけでございます。
  15. 野呂昭彦

    野呂委員 それから、対策の方のお話を少しお聞きをしていきたいのでありますが、WHOなんかの中身を見ましても、エイズ対策で一番肝心なことは正しい知識の普及であるというふうな位置づけがあるように思います。この間、参考人の御意見でもそういったことが随分言われてきておりまして、特に気になりましたのは、職場や学校等で一般皆さんの正しい知識がないために差別問題も起こっておるというようなことでございまして、これは極めて重大な問題であろうかと思うのです。これに対して、政府がいろいろと対策をとられておる中でこういうのをどういうふうにお進めいただいておるのか。これは特に性教育等の問題もございまして教育問題もございますので、厚生省お答えをいただいた後、文部省にも少しお答えをいただきたいと思います。
  16. 北川定謙

    北川政府委員 先ほども御指摘をいただきましたエイズ問題総合対策大綱の中にも、正しい知識の普及ということが非常に重要な事項として掲げられておるわけでございまして、このために総理府の御協力も得ながら、テレビ番組にも非常にたくさんエイズの問題を取り上げていただいておるとか、各種の広報紙、ビデオの作成あるいはポスター、リーフレット、あるいはタクシーのリア広告等、いろいろな媒体を使って、エイズの病気の実態というものについて国民の皆様に理解を深めていただいておるわけであります。  それから、差別や偏見を解消するのにはどうしてもエイズに対する正しい認識が必要であると考えておるわけでございまして、特に医療従事者あるいは学校関係者にもさらに広報を深めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  17. 石川晋

    石川説明員 文部省におきましても、対策大綱を受けまして昨年二月に体育局長通知を出しまして、現在、学校教育において正しい知識の普及、こういうことを図ることに努めている最中でございます。特にその際、御承知のようにエイズ感染し、発症した場合の致命率が高いという知識が先行しておりますが、反面、通常の生活の中で感染する心配がないというようなことについてまだなかなか理解がいってないということを踏まえ、特に血友病患者に関しては、いたずらに不安を持ったりあるいは誤解に基づいて差別をすることがないよう、教職員が一致して指導するよう、この辺を特に留意しているところであります。  このような観点から、今年手引き書を作成いたしまして配布する、それとともに「エイズってなあに」という映画をこちらでも選定いたしまして配付し、これらを通じて、性教育あるいは保健体育の指導等を通じて指導に努める、こういうことを行っておるところでございます。
  18. 野呂昭彦

    野呂委員 この正しい知識の普及は私も大事なことだと思いますので、行政側のお取り組みをぜひお願いしたいのですが、同時に情報提供、教育の体制というのは、感染者患者あるいは医療関係者等に対しても大変重要な問題でございます。  先日、参考人おいでいただいた中で輸入血液製剤被害者救援グループというのがございました。代表の石田さん、きょうも傍聴に来ておられるようでございますが、このグループ皆さんから「京都からの手紙」という資料を私どもいただいたわけでございます。これは通称「京レタ」ということでミニコミ誌を発行しておられて、。これは特集号でございますが拝見して、大変立派なものだと私感心をいたしました。特に、研究開発の情報だけじゃなくて、マスコミの報道の情報やら感染者同士の情報交換あるいは医学講演会のレポートなど満載をされておりまして、心理面のケアに至るまで大変役立つような形にされております。感染者患者の方々というのは、プライバシーとか差別とかいう壁に囲まれておる中で、エイズの特効薬が開発されるまで、そして自分が治療を受けられるまで何とか生き延びたいという切実な叫びがあるわけであります。そしてそのために発症予防の情報を正確に、早く、たくさん欲しいのだ、こういう願いを持っておりまして、私は、石田さんたちがボランティア活動として、そしてともに同じ悩みを持っておる方々の集まりとしてやっておられる、そしてこういったことにこたえてやることが生存権を保障することになるのだと活動されておるわけでございまして、まさに敬服しております。  国は、こういうグループの活動をむしろ国のケア一つ基本として進めていくべきではないか、こう思っておりまして、これらについてどう取り組んでおられるのか、お聞きをしたい。
  19. 北川定謙

    北川政府委員 野呂先生の御指摘は全くごもっともなことでございまして、私どももその線でさらに力を入れて努力をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  20. 野呂昭彦

    野呂委員 それから我が国の特色として、血友病という生まれながらに大変な病気、生まれながらといいますか、とにかく不治の病という大変な病にかかられた方々でありますが、その方々が生きる命の綱であった血液製剤によって今度はエイズ感染した、これは何ともショッキングなことでございます。そういう中では厚生省対応が大変おくれておったではないか、あるいは血液行政に不備があったのではないか、こういうふうな指摘もされております。私ども一人の国民という立場で素朴な考えを持ちましても、安全な薬を供給するということは薬務行政をつかさどっておる御当局の責任、あるいは薬をつくったメーカーの責任といいますか、安全な薬の供給を使命としておるわけです。そういうことからいくと、患者皆さんが医療機関で受けた血液製剤エイズになった、我々を普通の血友病に戻してくださいという本当に絶叫とも言えるような声があるわけであります。責任論はいろいろありますけれども、今その道義的な責任をどういうふうに考えておられるのか。私は、一刻も早い救済処置といいますか、政治的な判断によるところのものが必要とされておると思うのであります。  私ども自民党も、七項目の対策をこの四月に発表いたしております。既に取り組んでいただいておるのもございますけれども患者の医療の確保とか感染者の健康管理等につきましてどう取り組んでおられるのか。一部新聞報道もありまして、あるいはそのとおりのことなんですか、今の段階でどういうふうに厚生省が取り組んでおられるのか、道義的な責任の問題、それから先般の新聞報道もあったので、あの辺の取り組みはどうなっておるのだということについてお答えいただきたいと思います。
  21. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 法律的な責任論の面からはいろいろな議論がございます。予算委員会等におきましても、また当委員会におきましてもいろいろな議論があったわけでございますが、私といたしましては、血液製剤という医薬品の使用を通じましてエイズ感染の被害が発生した、そのこと自体につきましては厳粛に受けとめなければならないと考えておるわけでございまして、被害救済の必要性は強く感じておるわけでございます。  今後、関係者との意見も調整いたしまして、総合的な対策を現在考えておるわけでございまして、できるだけ早く実施に移したい、かように考えておる次第でございます。
  22. 野呂昭彦

    野呂委員 ぜひ、これは早急に厚生省としてお取りまとめいただかなければならぬことだと思います。  先般の参考人の御意見の中で、これは直接血友病そのものに対する対策というわけではありませんが、血友病の医療費の自己負担月額一万円というのがございますが、これを全国一律に公費負担をしてほしいという本当に強い要望がありまして、その後私のところにも、特にこれは最低限の願いなんですよというようなお手紙もいただいたりしました。今国はこれをどういうように検討されておるのですか。
  23. 北川定謙

    北川政府委員 血友病患者さんの方々から今野呂先生指摘の自己負担の問題が強く指摘され、要望されておるということは承知しておるわけでございます。しかし、疾病対策一般の中でこの問題をどのように位置づけていくのか。仮に自己負担を解消した場合に、他の疾病対策とのバランスがどうであるか、これは非常に事務的な問題でございますけれども、なかなか大きな壁があるわけでございます。先般の参考人の陳述の中で改めて強い要望が出されたわけでございますが、今申し上げましたような点を解決することがなかなか困難であるということで、私どもも苦慮をしておるところでございます。
  24. 野呂昭彦

    野呂委員 厚生省はなかなか明快に、ぱっとお答えいただくことは難しいのであります。だけれども大臣、ここまでエイズの問題が大きくなりまして、そして血友病の問題もこれだけ大きく浮かび上がったのですね。いろいろな議論はあるかと思いますけれども、これについては政治的な決断が必要であろうかと思うのです。私、どうも今のようなお答えのままではこれはなかなか納得しがたいところがあるのじゃないだろうか、こういうふうに思いまして、きょうはこの後の部分、我が党の笹川さんが関連質問に立たれる予定をしておりますので、最後の質問としてこの点をお伺いしたいと思うのです。大臣に、政治決断が必要だという観点お答えをいただきたいと思うのです。
  25. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 血友病患者の自己負担月額一万円の公費負担の問題、事務的には今政府委員が申し上げましたように、非常に難しい問題が確かにございます。しかし私といたしましては、先般の参考人の方々からの強い希望の表明も承っておりますし、また先ほど申し上げましたような私の考え方からいたしまして、今後救済策全体について 内容を煮詰めていく中でこの検討を進めてみたいと考えておるところでございます。
  26. 野呂昭彦

    野呂委員 ひとつ大臣よろしく、これはお願いを申し上げるだけでございます。  以上で一応私の質疑を区切りまして、笹川議員に後を譲ります。ありがとうございました。
  27. 稲垣実男

  28. 笹川堯

    笹川委員 時間がございませんので、当局に単刀直入に質問いたします。大臣初め政府委員は言語明瞭、意味明瞭にひとつお答えをいただきたいと思うわけであります。  なお、質問に入る前に、このたび輸入血液凝固因子製剤の使用によりまして不幸にしてエイズウイルス感染、そして発病、死亡された方々の御冥福を心からお祈りいたします。同時に、御遺族の方々にも心からお悔やみを申し上げる次第であります。  さて、私は、今回のこの事案につきまして、患者皆さんには全く責任がない、しかし、国及び製薬会社の法的責任は別にいたしましても、政治的、道義的あるいは倫理的に何らかの責任を国あるいはまた製薬会社はとるのが至当でないか、このように考えておりますが、まずこの点につきまして、野呂先生お尋ねをしたと思いますが、最高責任者大臣のお考え方を承りたいと思います。
  29. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 血液凝固製剤を使いましてエイズ感染をいたしました血友病患者皆さん方の問題でございますが、これは先ほど野呂先生にもお答え申し上げましたように、この責任問題については今までいろいろと議論がございました。それはそれとして、予算委員会において総理からも、これは政治的に判断すべきものだというお答えもございましたし、私も同様に考えているわけでございます。  特に、血液製剤という医薬品を使って、そしてエイズ感染の被害が発生した、こういうことでございますから、これはまさしく不可抗力、避けられない。また、患者になられた方々については非常に申しわけないことでございまして、そのこと自体については、申し上げておりますように何らかの政治的な解決をしていかなければならぬと考えておるわけでございます。今、総合的な対策をいろいろ検討中でございまして、関係者の御意見を承りながら、これからさらに煮詰めてまいりまして、その対策を早期に実施してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  30. 笹川堯

    笹川委員 ただいま大臣からお話がございまして、内容につきましては私も了解をするところでありますが、なお、さきの国会で竹下総理が政治的救済をする、この中身についてお尋ねします。  具体的に、感染者に対するお見舞い金、あるいはまた亡くなられた方に対する弔慰金、あるいはまた遺族に対して生活補償費等のそういう名目で厚生省としてはお考えになっているか、この三つについてお尋ねいたします。
  31. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 現在考えられております救済対策といたしましては一医療の確保、それから医療に関連する経費の軽減措置、こういったことを中心に考えております。こういった基本的な枠組みの中で、今お話ございました弔慰金の問題あるいは生活補償的な問題というものを加えますことは、事務的には非常に難しいというふうに認識をいたしております。同じような考え方のもとで対策が講じられております原爆被爆者、こういったような措置につきましても、死亡した場合に葬祭料というような形での支給だけが行われている、こういうような状況でございます。
  32. 笹川堯

    笹川委員 ただいま政府委員からお答えがありましたが、この問題は大変大切な問題でありますので、政治的救済というのは、あくまでも厚生大臣大臣として、また政治家としてこの三つをどういうふうにお考えになるか、大臣としての御答弁をひとつお願いいたします。
  33. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 事務的また制度的な面からいたしますと、政府委員からお答え申し上げましたように弔慰金の支給については困難な点がございます。しかし、先ほどから御指摘の点につきましては、私も十分に傾聴すべき事柄であると理解をいたしておるわけでございまして、この問題につきましても何らかの給付が行えないものかどうか、引き続いて検討してまいりたいと思います。
  34. 笹川堯

    笹川委員 患者皆さんも心から期待をいたしておりますので、どうぞひとつよろしくお願いいたします。  血液行政につきましてちょっとお尋ねをいたします。  御承知のように世界の三分の一の血漿を使用し、その九六%を輸入に依存してきた我が国の血液行政は、残念ながら貧困と言わざるを得ないわけであります。その結果として、我が国に不幸にもエイズ感染者の多くを発生させた。厚生大臣は、昭和四十八年五月、大臣の諮問機関として血液問題研究会を設置し、昭和五十年に答申を得ております。その答申の基本的理念は、御承知のとおり「医療に必要な血液は、すべて献血により、確保されるべきであり、血漿分画製剤についても、今後はすべて、献血によって、製造されるべきである」、実はこういう答申が出ております。約十三年前でございますが、完全な血液の国内自給体制をそのときから整備しておれば、約二千人と言われる輸入血液製剤によりエイズウイルス感染された方々を防止できたのではないか、このように考えておりますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  35. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 その当時、五十七、八年ころ、アメリカエイズが発生いたしました当時でございますが、日本国内にはエイズの蔓延といいますか患者の発生はなかったわけでございますから、全部国内血に原料を頼るということであればエイズの伝播は国内になかったということは当然でございます。私もそう考えます。ただ、そのときの血液、国内献血で全部賄える状態であったかというと、残念ながらそういう状態ではなかったわけでございまして、御存じのように血液分画製剤がいわば爆発的と申しますか一挙に需要がふえるという状態の中で、国内献血ですべて賄うというのは非常に困難な情勢であった。残念ながらそういう状態であったわけでございます。
  36. 笹川堯

    笹川委員 ただいま政府委員かち、そうしておればなかったという点は確認できたわけでありますし、法的問題は別にしても、やはり厚生省の血液行政は私は貧困であったと同時に、間違っておったということを指摘したいと思います。  さらに血液問題についてお答えをいただきますが、現行の薬事法では血液は一種の医薬品扱いとなっております。生きた人間からしか得ることのできない貴重な血液が単なる医薬品として扱われているのは、私は根本的に間違っている、このように考えております。したがって、外国からむやみに輸入をしたり、あるいはまた乱用をされておった、これは厚生省数字を見ても明らかでございます。そこで、血液や血漿分画製剤をこの際薬事法上の医薬品から外して臓器移植としての位置づけをすべきだ、私はこう思っております。実は、これは自民党の社会部会においても前の厚生大臣にもお願いをいたしました。ほかの医薬品と同等の扱いをしないように、ぜひこの際取り扱いを慎重にしてほしいという希望を表明したいと思いますが、いかがでしょうか。
  37. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 おっしゃいますとおり、血液というのは人体の一部でございます。基本的に臓器と同じ性格のものであるという面で普通の医薬品と違う、これはそのとおりであろうかと存じます。ただ、現に医薬品として使われておるものでございますし、製造のために経費もかかるわけでございます。原価を考えまして価格をつけるということは、これは私は現段階でやむを得ないのじゃないかと考えますが、ただそういった原料の性格の差というものを考えますと、いわゆる薬価と実際の販売価格との差、こういったものがあるというのは非常によくない。価格がいわば実費でそのまま売買といいますか、譲渡されるというような姿にできるだけ持っていかなければならぬ、こういうふうなことはぜひ進めていかなければならぬというふうに考えております。
  38. 笹川堯

    笹川委員 薬務局長から御答弁いただきました が、ぜひ一日も早くそうなるようにお願いをいたします。  なお、御婦人が出産のときに使いますフィブリノゲンという製剤がございます。出産のときの出血に際し止血のためなどに使用される乾燥人フィブリノゲンという血液製剤を御存じだと思いますが、去る昭和六十三年五月一日付の毎日新聞に記事がずっと掲載をされております。内容については厚生省の方で詳しく御存じだと思いますが、これは専門家に言わせれば、血漿から血友病の凝固因子と分離し精製する際、フィブリノゲンの方に多くのエイズウィルスが吸着する、こういうことを言われておりますが、もしそうだとすると大変大きな問題でございます。厚生省の方で、五十六年以降は我が国にフィブリノゲンがどのくらい輸入されて、どのくらい使用されたか、あるいはまたそれによって患者さんが発生したかどうか、この点についてお尋ねをいたします。もしも本人に感染しておりますと、次の出産で子供たちに感染するとか、そういう大変危険な問題も含んでおりますので、お答えをいただきたいと思います。
  39. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 毎日の報道でそういう報告があることは承知いたしておりまして、その後調査をいたしました。関西医大の報告でございますが、その問題の製剤につきまして、原料の血漿にさかのぼってロットを調べまして検査をいたしました。関西医大の検査では陽性と出たようでございますが、原料血漿に当たりましたところ、これは陰性と出ております。それから、念のためまたさらに製品からの問題についても検査をいたしておりますが、陰性であるということを確認しておりますので、当該製品については安全だというふうに私どもは考えております。  それから、なお現在使用されております原料血漿のフィブリノゲンにつきましては、原料血漿段階で御承知のとおりエイズ抗体検査を行っておりますし、加熱処理も行われておりますので、エイズ感染という点では心配はないというふうに考えております。  使用量につきましては、申しわけございませんが、私どもまだ調査をいたしておりません。
  40. 笹川堯

    笹川委員 大変大事な問題でありますので、今後ともひとつ厚生省はよく監視をしていただきたいと思うわけであります。  最後になりましたが、関連として、日本赤十字の問題についてお尋ねをしたいと思います。  御存じのように日赤は国民の善意による献血を取り扱うことのできる日本で唯一の団体でございます。しかしながら、その規模、社会的使命の割には予算や人的交流においてまだまだ不十分であろう、私はこう思うわけであります。特に民間の技術に比べますと、まだまだ技術的には未熟であろう、こういうように考えます。現在の日本赤十字の状況として、今まで全血で使用していた時代はいいんですが、分画製剤等がどんどん進んでまいりますと、どういう病気がまた中に入ってくるとも限らない。特に国民の善意の献血がどういう形で最終的に国民に使われるかというのは大きな関心事だろうと思いますので、今後ともひとつ日本赤十字に人の面あるいはまた財政的にも技術的にも、国の直轄事業みたいなものなんですから、厚生省はうんと力を入れていただきたい、こういうように希望を申し上げたいと思いますが、今後日本赤十字の取り扱いを厚生省としてどのように考えておられるのか、お尋ねをいたします。
  41. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 日赤には献血で大変御協力を賜っておりまして、おっしゃいましたように全血については扱いは比較的なれておるのでございますが、新しい技術を使います分画製剤、これも日本赤十字社である程度担当していただかなければならぬという問題もございます。そういった面での新しい工場の建設とか、こういうものに助成をするとかあるいは技術的な面でもできるだけの援助が得られるように側面的な努力をしてまいりたい。新しい日赤の使命というものもまた始まるわけでございますので、協力してやってまいりたいと考えております。
  42. 笹川堯

    笹川委員 今、薬務局長からそういう御答弁がございましたが、日赤の場合は血液事業に関しては薬務部、そしてまた人的あるいはまた認可条件につきましてはほかの局で担当いたしておりますので、どうぞひとつ横の連絡を密にしていただいて、国民の負託にこたえるような日本赤十字をつくり上げていただきたい、このように希望を申し上げます。  最後に、ちょっと時間がありますのでお尋ねをいたします。  厚生大臣、私ども国民は薬害というと、簡単に薬を飲んで悪くなった場合に薬害というふうに普通解釈すると思うのですが、厚生省の用語では、その薬害の解釈が国民になかなかわかりにくい。薬というのは副作用があるものだ、だからこそ専門家の医師の処方せんがなければ使ってはいけないのだ、こういうことになると思いますが、どうぞひとつ国民がわかりやすいような用語を今後は使っていただいたり、解釈のできるような法律の整備等をぜひお願いしたい、こう希望を申し上げまして、ちょっと時間より早いのですが、大変前向きの答弁をしていただきましたし、また自民党を中心といたしましてエイズの方々にできる限りの行政上の恩典をつくっていただいておりますが、まだまだその緒についたばかりでございますので、なお一層努力をしていただきたい。  最後にもう一度、亡くなった方々に、同じにならないように、政治は温かいのだ、日本の厚生行政は温かみがあるというふうな理解をいただけるような処置をとっていただけることをお願いして、質問を終わります。
  43. 稲垣実男

    稲垣委員長 永井孝信君。
  44. 永井孝信

    ○永井委員 初めに、委員長お尋ねをしておきたいと思うのであります。  本日のこの委員会の審議は、過日大変御苦労いただきました七名の方々の参考人の御意見を聞いて、それに基づいて当面緊急的にどういう救済を行えるかということを中心とした審議にするというふうに私は聞き及んでいるのでありますが、そのことで間違いございませんか。
  45. 稲垣実男

    稲垣委員長 はい、議員のとおりです。
  46. 永井孝信

    ○永井委員 よろしゅうございますか。--そういうことでございますから、法案の中身について、きょうの質問では具体的な質問は一応除外をしておきたいと思います。  まず初めに、大臣お尋ねをしておきたいと思うのであります。  去る八月九日に当委員会血友病患者団体の代表の方々が七名おいでいただきまして、参考人として率直に御意見を述べていただきました。これを伺って私は深い感銘を受けたのでありますが、本日の質問に臨む決意をそれゆえに私は固めたわけであります。参考人皆さんから私が何を学んだかということは後でまた機会をとらえて申し上げていきたいと思いますが、まず厚生大臣としてどのようにこの参考人の御意見を受けとめて理解されていらっしゃるか、どういうふうに考えていらっしゃるかをお伺いしておきたいと思います。
  47. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 血友病患者の方々につきましては、常日ごろ血液製剤を必要とするわけでございまして、その血液製剤を通じてエイズ感染されたということにつきましては、まことに痛ましく、お気の毒の限りであると思っております。法的責任の問題はともかくといたしまして、できるだけの救済措置を講じていく必要性を痛感いたしておる次第でございます。
  48. 永井孝信

    ○永井委員 具体的な内容についてはこれから申し上げていくわけでありますが、私の感想を申し上げますと、血液製剤によるエイズ患者あるいは感染者の方々には国として償う責任がある、私はそういうことをまず第一に感じたわけであります。国全体の責任というのは、この委員会厚生省をいわゆる被告席に着かせて私がその責任を追及するという性格のものではないと私は考えています。  しかし、昭和五十八年五月にアメリカ政府が非加熱製剤に疑いありとして加熱化促進の行政指導に踏み切った当時、日本においては、厚生省のみ ならず医学界あるいは薬学界、それぞれの専門家も、そして私たち国会において政治に携わっている者も、結果としてこれを対岸の火として甘く考える傾向があったのではないか、私自身もそのように深く反省をしているわけであります。すなわち、製造国であるアメリカ自体で疑われているものの輸入に頼らざるを得なかったその事態を直ちに改めるという積極的な熱意を持たなかったという一点で、行政府も立法府も同罪だと私は思うのであります。それだけではなくて、一年以上前でありますが、昨年の予算委員会当時の議論を見ましても、例えばエイズに対する受けとめ方として、日本独特の何か宴会でもやるときに杯のやりとりをするだけでエイズ感染する、こういう指摘がありました。これに対して当時、中曽根総理が十分に勉強させてもらいますという答弁をし、閣議でもそのことが議論されたというふうに受けとめているのでありますが、結果として、対岸の火として見るだけではなくて、エイズということに対する正しい知識を本来普及すべき立場にある国あるいは立法府を含めて、あるいは専門家皆さんを含めて適切にそのことを知識として持っていなかった。だから、そのことで結果的に血友病エイズという図式が定着をしてしまった。このことは参考人皆さんが先日意見を述べられましたときにも強く指摘をされました。そのことから人権侵害であるとか、いろいろなことが具体的に噴き出してきているわけであります。  したがって、エイズに対する正しい知識を普及するということがまず何よりも大切であることは、もう議論をまたないところであります。だからこそ、私どもはそういう実態を踏まえて、さきにエイズ対策議員連盟が超党派でつくられたわけでありますが、どうしたらこれを償えるかという思いによるものだったと私は解釈をしているわけであります。このような立場からきょう質問に立っているわけでありますが、あの当時、行政としても国会としてもさほど重視をしていなかったということの反省、これは大臣、共通の原点として確認ができますか。政治家としてお答えをいただきたいと思います。
  49. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 法的責任という問題については、これまでいろいろ御議論のあるところでございますが、大臣もたびたび申し上げておりますとおり、救済対策については、その患者さんの状況にかんがみましてできるだけの努力をするということを私ども考えておることでございます。その間のいろいろな経緯を踏まえまして、法的責任を離れましてできるだけの措置を講じたい、これはたびたび私ども申し上げているとおりでございます。
  50. 永井孝信

    ○永井委員 法的責任、例えば国が過ちを犯したとか、法律に基づいてなさねばならないことをやらなかったとか、そういう責任ではなくて、私が申し上げましたように、当時血液を主として日本に供給してきたアメリカのその当時のエイズに対する対応策あるいは認識、このことを我々は対岸の火として見ておったのではないかという反省を私自身持っているわけです。昨年の予算委員会の杯論議を私は提起をいたしましたけれども、そういう感覚で当時問題の対応をしてきたということが、血友病皆さんにすれば血友病イコールエイズ患者だと言われかねないような社会的な受けとめ方が定着をしてしまった、私はこれは大変な人権問題になっていったと思うのです。ですから、大臣が悪かったとかだれが悪かったとかという意味ではなくて、厚生行政をつかさどる立場として、政治的な感覚からこのことについての国あるいは政治家それぞれが、あるいは医療に携わる立場専門家皆さんも含めてでありますが、それに対する共通の認識というものについてどのように受けとめていらっしゃるかを大臣にお聞きをしたいのであります。
  51. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今までたびたび議論が行われた問題でございますが、御意見の中にございました、アメリカが非加熱から加熱に切りかえました時点におきましては、御承知と思いますけれども、まだエイズという病気が認知されていない、まだ発見されていない、そういう段階であったわけでございます。同時に、整理をして申し上げますと、アメリカ血液製剤の加熱の問題と我が方が加熱に切りかえました時期、一年半のおくれ、これが一番問題になるわけでございますが、この点につきましてはしばしば御答弁申し上げておりますように、日本におきましてもやはり国内の法律に照らしまして対処しなければならないわけでございまして、この非加熱から加熱に切りかえるにつきましては、たんぱく質がどのように変質するかということについて、我が国には残念ながら臨床的な知見がないわけでございまして、その点を確かめた上でそういう措置をしてまいらなければならない、そういう判断に立って対応をしたわけでございまして、結果として一年半程度のおくれがあった、その結果として血液製剤を使われた血友病患者の中からエイズ患者が発生した、こういう不幸な事態になってきておるわけでございます。  そういう事情を考えてみますと、法律論とかその当時の科学的ないろいろな問題とか、そういう問題は別として、病気の性格上血液製剤を使わなければ生きていけない、こういう血友病患者の方々がその血液製剤を使うことによって病気になった、エイズになった、こういう事態についてはまことに申しわけない、お気の毒なことだというふうに考え、その考えに立って、政治的にはこれらの方々に対してできる限りの救済を申し上げるということは政治家として当然考えなければならない、そういう考え方であるということを今までも申し上げたわけでございます。
  52. 永井孝信

    ○永井委員 法的責任云々というよりも、国全体がやはり正しい知識の普及を昨年の二月以降怠ってきた。マスコミにいろいろなことが報道されたのですが、それにきっちりと対応し切れなかったということは、やはり行政としてその意味での責任は免れないと私は思っているわけであります。そのことについて時間をかけて議論をする余裕もございませんから、それはそれとして次の質問に入っていきたいと思うのでありますが、この血液製剤によるエイズ患者感染者に対して国全体で償うといっても、厚生省当局がその視点にきっちり立脚をしない限り実行に移せないと思うから、私は今もお尋ねしていったわけであります。  ところで、きのうの産経新聞にエイズ患者に対する救済の記事が出ました。「エイズ患者に月十三万 厚生省が救済対策 感染者には年八万円」という見出しであります。ごらんになっていると思うのでありますが、これは事実かどうか。その中身をちょっと読んでみますと、厚生省は「近くエイズ予防法案を審議中の衆院社会労働委員会に提示する。」こういうふうに書かれているのでありますが、このことは事実かどうかをお尋ねしておきたいと思います。
  53. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 きのうの新聞の報道でございますが、厚生省が案を決めた、こういうふうな報道のようでございますが、そういうことは事実ではございません。大臣先ほど申し上げましたように、今後国会でのいろいろな御議論を踏まえて決めていくべきものと考えております。ただ、あの中の数字で若干考えつきますものは、自民党の小委員会のいろいろな案、七項目の案が出ておりまして、それに基づいて幾通りかの試算をいたしておるものがございます。その試算の一つにやや似た数字はあるということはございます。
  54. 永井孝信

    ○永井委員 事実でなくて、そういう試算をしている段階であるということでありますが、当委員会でどういうふうに救済をしていくべきか、あるいは国や国会がどういう責任を果たしていくべきかということが、これから本格的に議論が始まっていきますし、自民党さんの方も救済策というものについても触れていらっしゃいましたけれども、超党派にそういう対策委員会を設けられたことでありますから、党派を超えてこの救済策を積極的に推進していかなくてはいけない。こういう段階で予断と先見を与える数字がぽんぽん出てしまうと、これは患者皆さんにも誤解を与えるし、委員会の審議にも支障を来すのではないかと私は思いますから、お尋ねをしたわけであります。火の気のないところに煙だけ立ったということには なっていかないと思いますので、こういう問題は非常に大事な段階でありますから、ひとつ慎重に扱っていただきたいということをお願いを申し上げておきたいと思います。  さて、血液製剤によるエイズ患者感染者対策を推進するに当たりまして、その救済策でありますが、何を法的根拠として求めて果たそうとされるのか、それについてお尋ねをしておきたいと思います。
  55. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 法的根拠という御質問、私、御趣旨を正確に理解しているかどうかわからない点がございますが、たびたび大臣も申し上げているように、法的責任を離れまして、一つの経緯を踏まえ、それから患者さんの状況に着目しまして、救済対策努力するというのは私ども一つの責務である、こういうふうな考え方に立っていろいろ検討しておるわけでございます。
  56. 永井孝信

    ○永井委員 道義的責任、政治的に救済をするということだと思うのでありますが、そういうことだけで果たして十分な必要な予算が確保できるだろうかということを私はまず心配するのです。そういう意味で、私は、患者皆さんあるいは感染された方々、とりわけ最前から強調しておりますように血友病イコールエイズというふうに見られてしまっているという不幸な現実、こういうことから考えまして、患者皆さん血友病皆さんが要望されている救済の内容を可能最大限満たしていくというそういう前提に立ちますと、十分な予算が確保できなくてはその対策がとれないわけでありますから、そういう意味で私は、単にあいまいな国の救済策の根拠ということだけでは問題があろうかと思いますので、その辺のところについては当委員会の議論も踏まえて、予算が十分に確保できるようにまず冒頭にお願いしておきたいと思います。  そこで、血友病患者エイズ感染された方は、諸外国を例にとるとどの程度いらっしゃるのか。あるいはまた、その感染経路として、日本の場合はアメリカの輸入製剤がその原因となっているわけでありますが、そのアメリカの輸入製剤というのは主要各国ではどの程度のウエートを占めているのか。あるいは、それぞれの国が国内で血液を確保する際に売血を認めているのかどうか。お答えをいただきたいと思います。
  57. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 血友病患者エイズ感染されている方の率で申し上げます。日本の場合、御案。内のとおり約四〇%でございます。アメリカの場合には、第VIII因子によるものと第IX因子によるもの、いわゆる血友病Aあるいは血友病Bと申しておりますが、第VIII因子製剤による方の感染率が九〇%でございます。それから第IX因子の欠乏症の方の感染率が五〇%でございます。それから、イギリスの場合には平均いたしまして三二%、西ドイツでは六〇%、こんなような血友病患者の方々のエイズ感染率でございます。  それから、感染の経路としてアメリカからの輸入製剤がどの程度の割合を占めているか、アメリカからの原料輸入依存率でございますが、日本の場合には、これもたびたび申し上げておりますけれども九〇%でございます。イギリスは約七〇%、西ドイツが、これは年によって変動があるのでございますが七〇から八〇%ぐらい、こういうふうになっております。  それから、売血が認められておるかどうかということでございますが、イギリスでは認められておりません。西ドイツ、アメリカでは認められております。  以上でございます。
  58. 永井孝信

    ○永井委員 私の質問の中で、国内で売血を認めたのは西ドイツだけだ、こう言われましたね。そのほかの国々の関係についてもう少し幅広くはわからないのですか。
  59. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 いろいろ調べたのでございますが、現在はっきりしておりますのは以上の国でございます。
  60. 永井孝信

    ○永井委員 今私が質問しましたことについて不足する分については、できるだけ早い機会に、各国状況を把握するためにも調査をした結果をまた御報告をしていただきたいと思いますが、どうですか。
  61. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 その点は承知いたしました。
  62. 永井孝信

    ○永井委員 続けて、諸外国のそういう血友病患者が結果的に血漿製剤によって感染した場合の救済策はどのように取り組まれているのか、主だった国でいいですから、わかっている範囲でお答えください。
  63. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 アメリカでございますが、連邦政府によります特別の対策はとられておりません。州によっては若干損害賠償的なことが行われているところもあるようでございますが、これは詳細はまだわかっておりません。  それからイギリスにおきましては、本年三月に政府が、患者団体である血友病協会に対しまして救済のための一千万ポンド、円換算いたしまして約二十三億円を拠出いたしております。  それから西ドイツでは、薬事法におきまして一つの民間保険の加入が義務づけられておりまして、未知の被害についてはその無過失責任が課せられるというような形になっておりまして、エイズ感染者についてもこの制度が適用されるというようなことになっております。
  64. 永井孝信

    ○永井委員 西ドイツとイギリスの救済策を今お答えいただいたのでありますが、例えば患者皆さんに対する給付金の性格あるいは患者または感染者一人当たりの金額など、救済内容まで今わかっていますか。
  65. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 イギリス政府の一千万ポンドの使い方につきましては、血友病患者御本人あるいは配偶者、親、子、その他扶養家族、遺族、そういった方々で生活に困窮されている方の生活費、食費でございますとか衣服、住居、教育、こういった費用の補助に充てるというふうに聞いておりますが、これは三月に拠出が行われたばかりでございまして、まだ運用のスタートを切ったばかりでございますので、運用の詳細な中身はまだ判明いたしておりません。まだいろいろ登録をしている段階というふうに聞いております。  それから、西ドイツにおきましては、先ほど申しましたように保険制度に適用されるわけでございますが、感染者、発症者、死亡者それぞれのケースに応じまして四万ドイツ・マルクから二十五万ドイツ・マルク、日本円にしまして約三百万から千八百万円ぐらいまでのお金が支払われているという報道がございます。保険の内容につきましては、いろいろ個々の保険、どういうケースにどうということはなかなか調査は難しいのでございますが、現在調べておるところでございます。
  66. 永井孝信

    ○永井委員 できるだけ早く、それも参考にすべきものは参考にした方がいいわけでありますから、調査をしていただいて御報告を願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  67. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 承知いたしました。
  68. 永井孝信

    ○永井委員 さて、我が国の医薬品副作用被害救済基金制度というのがありますね。「医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においてもその医薬品により人に発現する有害な反応」について救済対象としているわけですね。医薬品副作用被害救済・研究振興基金法第二条第二項にそう定められてあります。今報告されました諸外国の例の中では、西ドイツの例でありますが、医薬品被害保険が日本にとって最も参考になるのではないか、私はこう思うわけであります。しかし、日本の被害救済基金制度というものは「がんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品であって、厚生大臣の指定するもの」は対象外とされているわけですね。この血液凝固因子製剤大臣指定を受けているために、最前私は法的な根拠は何に基づいて救済の予算を確保しようとしているのかというお尋ねをしたのでありますが、救済の法的根拠とすることがその意味ではできないことになっているわけですね。日本では対象外となってきているものが、私どもの調べた資料によりますと西ドイツでは適用対象にされています。これは後でお調べ願って御報告いただければいいのでありますが、この違いは一体どこに由来するのですか。どのように御理解されてい らっしゃいますか。
  69. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 西ドイツの保険の場合には、要するに異物の混入もいわば対象にしておる、それなりの保険料の計算がなされている、こういう一つの保険給付、拠出等の設計がなされているのだと私は想像いたしております。それに対して日本の医薬品副作用被害救済基金につきましては、先生もおっしゃいましたように医薬品そのものの性格、薬理作用に伴う副作用を対象にすれば足りる、こういう考え方のもとに設計されているわけでございまして、今回のようなケースが結果的に外れてしまったわけでございます。どういうやり方をするかというのは一つの選択の方法でございまして、どういうやり方が一番いいかということは一つの研究課題であろうかというふうに考えております。
  70. 永井孝信

    ○永井委員 保険には無過失損害賠償責任という制度もあります。日本の国内でも、例をとりますと自動卓の自賠責の法律などがそうですね。この間参考人の御意見を聞きましたときにも、例えばこの被害者に対する、患者に対する補償とか、そういう問題につきましても、自賠責保険のように簡単な手続で現実を認証して救済策がとれるような方法はないものかという訴えがありましたけれども、こういう保険制度そのものについても、西ドイツのものがすべていいとは私は言い切れるかどうか自信はありませんけれども、そういう保険制度のあり方についても十分に検討を加えてもらいたい、このことを申し上げておきたいと思います。  さて、その次に薬事法の関係でありますが、我が国の医薬品副作用被害救済制度を西ドイツのようにいつでも役に立つ性格のものに改めるという検討をそういう意味からすべきだと私は思っているのです。私が命ずっと申し上げてきました西ドイツなどの例を参考にするということは、結果としてそういうものもよいところがあればそれを取り入れるということで検討をすべきだと思うのでありますが、それはどうですか。
  71. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 各国の仕組みを勉強いたしまして、いいものをよく検討して取り入れるようなことは当然のことだと考えます。
  72. 永井孝信

    ○永井委員 国によって薬事法の違いもあることは事実でありますが、日本の薬事法第五十六条は「病原微生物により汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品」について製造、販売等を禁止しているわけです。一方、この間の今までの経過を振り返りますと、アメリカ政府が非加熱製剤に疑いを持ち、メーカーに加熱製剤の開発を急げと指示したのは昭和五十八年五月です。そして、実際に加熱製剤の製造が始まったのは翌年の昭和五十九年二月だったと報道されている。これは間違いございませんね。どうですか。
  73. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 そのとおりでございます。
  74. 永井孝信

    ○永井委員 日本の場合は、最前も大臣が一年半ばかりおくれたということの説明をされた中にも触れておられましたけれどもアメリカの場合では今申し上げたように昭和五十八年五月に指導、指摘がされて、製造が始まったのは五十九年二月ですね。日本の場合はかなりこれからおくれていったわけです。そこで、そのおくれていった経過というものは、なぜそこまでおくれなければならなかったのかということについて、その主たる理由は何でございますか。
  75. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 先ほど大臣お話の中にも若干触れさせていただいておるのでございますが、当時安全性についての認識が非常に高かった、法律制度上も安全性とか有効性についての試験、臨床試験とか、こういうものについての厳格な考え方が一つございました。そういった中で、特に安定性の悪いたんぱくから成っております凝固因子製剤について非常に疑念、心配、懸念がなされたわけでございまして、十分な安全性、有効性についての試験が国内的にやはり必要なのではないかという考え方が一番大きかったのではないかと考えております。
  76. 永井孝信

    ○永井委員 理由はどうあれ、日本の場合はかなり着手することがおくれた、そのために被害が広がっていったということは事実なんですね。最前野呂議員も触れられておりましたけれども、一年半すれ込んだことによって、本来なら広がらなくてもよかった感染者というものが広がってしまった。五千人の血友病患者の中で二千人が感染をしている、こういう事実が生まれてきたわけです。  そこで、アメリカでそういうエイズに関する非加熱製剤に対する疑念が明らかにされて指示があった、その時点のことでありますが、その時点で厚生省アメリカの輸入製剤が相当程度売血によるものであるというふうに推察をしておったかどうか、これをお尋ねしておきたいと思います。
  77. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 血漿分画製剤の原料がかなり売血にあるということは知られておりますので、そういうことであろうかということは当然その当時推定しておったというふうに考えます。
  78. 永井孝信

    ○永井委員 病気を治療するわけでありますから、当然良質の血液が必要になってまいります。血液が臓器であるかあるいは医薬品であるかという論争はさておきまして、良質の血液を確保するためには売血というものは避けた方がよい、このように考えていらっしゃいますか。
  79. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 血液の質の問題の以前に、こういった血液というものの性格、先ほど笹川委員の方からの御質問の中にもございました、血液の性格の中から考えまして、売血というのではなくて献血でやるべきだ、こういういわば倫理的な観点からの議論がWHOの勧告の中であるわけでございまして、そういった角度からまず第一に献血をできるだけ優先すべしというふうに考えます。  それから、血液の質という観点からの考え方でございますが、少なくとも全血製剤につきましては献血に頼るのがよろしい、こういうのは当然出てくる考えでございます。と申しますのは、売血の場合に、何回も回数を重ねて売血をいたしますので、そういたしますと貧血とかそういう方の割合が多いわけでございます。そういった点から考えまして、当然献血の方が望ましいというふうに考えます。血漿分画製剤なんかにつきましては、いろいろな議論があるわけでございますが、一般的に考えまして、献血が望ましいということは考えられることでございます。
  80. 永井孝信

    ○永井委員 今の御答弁からいきますと、売血を中心とする血液に頼ることは、これはいけないことはもうはっきりしているわけです。そうだといたしますと、アメリカ政府が非加熱製剤によるエイズ感染に疑いを持ったいわゆる五十八年五月の時点、この時点で輸入血液は全体として危険だ、このように判断すべきではなかったかと私は思うのであります。当時は非加熱製剤しかない段階であり、しかもエイズウイルスが混入しているかどうかの検査方法もなかった段階だったと思うのでありますが、だけれども売血依存のアメリカの輸入製剤全体を疑ってかからなければならない、そういう責任は当然厚生省にもあったと私は思うのです。それが薬事法第五十六条の基本的な立場ではなかったかと私は思うのであります。これについてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  81. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 御指摘の薬事法第五十六条は、要するに危険な医薬品の流通を防止するというのが基本的な精神でございます。この点はもう御指摘のとおりでございます。ただ、この規定を発動するというのはなかなか大変なことでございます。既に現に流通している医薬品の流通を停止するわけでございまして、特に血液凝固因子製剤のように代替する薬を得ることが難しいものにつきましてその販売、供給をとめるということは、かなり慎重な判断を要するということが一つございます。  それから、もう一つの問題といたしまして、おそれがある、あるいは危険のおそれがある、こういうことの判断をいたしますのは、一つの科学的な根拠、科学的な知見に基づく判断でございますので、その当時の科学的な知識経験というものに従わざるを得ないわけでございます。当時の科学的知見という観点から申しますと、先生も若干お触れになりましたように、当時ウイルスがまだ確 記されていない状態でございます。それから、おっしゃいましたように原料とか製剤の抗体検査の方法もなかった、こういう状態でございまして、五十八年五月の当時というお話でございますが、その当時のそういった科学的知見の状況から見まして、当時の輸入血液製剤が薬事法第五十六条に該当する医薬品であるというふうに判断することは困難であったというふうに私は考えております。
  82. 永井孝信

    ○永井委員 そこで、具体的にその当時の対応について、それとの関連でお尋ねしたいと思うのであります。  五十八年五月にとにかくそういう危険性があることがわかった。しかし、今言われておるように血液が圧倒的に足りない。血液製剤が足りない。その当時、もしも国内ですべての必要な血液を確保するという前提に立って、アメリカの危険な疑いのあるような血液製剤の輸入を禁止する、ストップする、こういうことに仮に踏み切ったとすると、その当時の状況からいって、年間、一年間に換算をしてどの程度の国内における献血が必要だったのか、数字的にお答えいただけますか。
  83. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 当時もし国内献血で全部賄うとした場合に、献血分であれば何万人に相当するか、こういうことでございます。  まず、所要の量でございますが、五十八年当時の原料の輸入依存率、血液凝固因子、第VIII因子製剤の問題を考えますと、依存率が八四%でございます。ちょっと難しくなるのでございますが、当時の輸入の、単位があるのでございますが、一億四百万単位の非加熱の濃縮血液凝固因子製剤、第VIII因子でございますが、確保されております。この単位と申しますのは、健康な人の一CCの血に含まれております血液凝固因子の数、活性と申しますかこれを一単位、こういうふうに申しております。難しくて恐縮でございますが、そんなことを基礎に計算いたしまして八四%、八千八百万単位が輸入されている、こんなような計算になります。  この八千八百万単位をすべて国内の献血で確保する、こういうことでいたしますと、献血者数で約五百五十万人分、これは二百CC採血ということで考えまして五百五十万人分というふうな人数に当たりまして、五十八年の献血者総数のほぼ七割に当たります。ですから、七割の献血者数の増がもし仮にやるとすれば必要であった、こういうふうなことになります。
  84. 永井孝信

    ○永井委員 確かに大変な数字ではあります。最前も委員が質問されておりましたけれども、昭和三十九年に、国内で売血をしないで新鮮な血液を確保するための献血の推進ということについて閣議決定がされているわけですね。これは最前触れられておりました。したがって、多くは言いません。しかし、その閣議決定から十九年たちまして、なおかつこの血液凝固因子製剤のほとんどを対米依存しなくてはいけない、こういう事実に置かれているということがやはり行政の大きな責任ではないか、こう私は思うわけであります。  この五十八年の当時、アメリカ血液凝固因子製剤血友病皆さんが使う場合にエイズ感染するおそれがある、こういうふうにアメリカ政府も認めまして指示を与えた、その時点で本当に厚生行政が国民の医療というものをもっと真剣に考えていたとするなら、その時点でアメリカからの血液の輸入に依存するという政策はもっと違った方向に変わっていったのではないか、こう私は思うわけであります。閣議決定の趣旨というものは、本来、完全に国内で自給体制を確立する、こういうことだったと私は思うのでありますが、仮にそのときに私がその担当だったと仮定すると、そんな危険な血液を輸入してそれに依存するわけにいかない。だとすると直ちに、この際思い切って、三十九年の閣議決定をした当時からのいきさつを考えますと、この機会にこそ国内で大々的に献血をやって国内で必要な血液を確保するというところに、その際そのことをばねにして踏み切っていったんではないか、私がその担当だったらそうしたのではないか、こう思うわけであります。  したがって、そのやり方でありますが、確かに今五百五十万人と言われました。大変な数字であります。しかし、五百五十万人が果たして不可能な数字だろうかと思うと、私はそうではないと思うのですね。例えば厚生省には七万五千人の職員がおります。この七万五千人が率先をして献血をするということをすれば、かなりの国内に対するインパクトも与えるし、献血運動に弾みがつくと私は思うのですね。この七万五千人が一回限りでなくて一年間を通して、年間の数字でありますから、仮に年間に五回厚生省の職員が献血をしたとするとこれは四十万人、五十万人の数字になっていくわけですね。仮に各省庁がそういう厚生省の積極的な姿勢を受けてそういうことをやったとすると、どうでしょう。五百五十万人という数は不可能な数ではない。閣議決定をして十九年間も具体的に献血の拡大が実現できなかった。そういうことにしていった行政の怠慢というものは、私はここで指摘をせざるを得ないと思うのであります。  ですから、法的な責任を追及する云々という以前に、行政の本来あるべき姿というものはそういうものではなかったのか、こういうふうに思うのでありますが、これについてどのように大臣は政治家としてお考えになりますか。
  85. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 当時、今先生言われたようなこと、現在のようなことが予見できたとすれば、五百五十万人も当然できた、献血が集められたであろうということは、可能性としてはあり得ると思います。おっしゃることも、もし現在の血友病患者の方々にこれほどの感染の可能性の予見が正確にできていたのであれば、当然国内献血でそれこそ死に物狂いてやる。それは日本国民は連帯の思想を持っている国民でありますから、そういうことは可能であったろうと私も思います。
  86. 永井孝信

    ○永井委員 大臣お答えにならないのでありますが、私は最後にもう一回大臣に聞きますから、続けて質問いたします。  昭和三十九年に献血についてその推進方を閣議決定したという当時から、必要な血液というものは売血に頼っていたのではいけないんだ。売血をするという立場の人々は生活が苦しいとかいろいろなことがあって、そこから売られる血液というものは必ずしも信頼がおけないということがいろいろ問題になりました。黄色い血液とかいろいろなこともありました。だから昭和三十九年に閣議決定をしたと思うのですね。閣議決定をしたけれども、閣議決定に基づいて具体的にその実践を積極的に行うことを怠ったのではないかということを私は申し上げているわけであります。しかも、昭和五十八年にアメリカでそういうエイズ感染するという疑いが持たれた。ところが、その疑いのあるアメリカ血液製剤を大量に輸入している。ほとんど九〇%以上日本はそれに依存をしているという現実を考えたときに、やはり医療行政に携わる、国民の健康を守る立場に立つ厚生省としては、事前に石橋をたたくわけじゃありませんけれども、これは大変なことだから、この際思い切ってということに、なぜ発想がそこに行かなかったのか。これは悔やんでも悔やみ切れないことでありますが、もしそのときにそうされておったら今のような状態を防げだということは事実なんですね。  だから、私はそのことをこれからの積極的な救済策に生かしてもらいたい。私は法的にどこに根拠があるかどうかということを聞きましたけれども、しかし厚生省は本来もっときちっとした対応を、対岸の火として見るのではなくてみずからにかかってきた火の粉として考えておったとするなら、もっと事前に防げる方法があったのではないか、こう思いますから、私はその行政の努力の不徹底をここで御指摘するとともに、救済策に万全を期してもらいたい、このことを申し上げているわけであります。  もう一つ問題がありますのは、五十八年七月からアメリカのメーカーに、原料血漿がエイズ感染のハイリスクグループのものでない旨の証明書を添付させ、検査方法が開発された六十年七月からはこの抗体検査も済ませているという証明書を添付させたわけですね。そこで、まずこれらの証明書の真偽のほどを確かめる手段はあったのだろうか、これはどうでございますか。時間がありませんから、簡潔に答えてください。
  87. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 国内でその証明書の真偽を確かめる手段はございません。ただ、アメリカでの措置はFDAの指示、その指導のもとに行われているものでございまして、これは私どもは十分信頼に足るものというふうに考えております。
  88. 永井孝信

    ○永井委員 そうすると、証明書を添付したもの、この証明書が添付された製剤を使って、それでなおかつ感染した者がいるかいないか、証明書のとおり全くいなかったのかどうなのか、調査されたことはありますか。もし調査されておるとするなら、答えてください。
  89. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 証明書を添付したものから発病したかどうかという調査は、技術的には非常に困難でございます。調査はいたしたことはございません。
  90. 永井孝信

    ○永井委員 この間参考人の方も言われておりましたけれども、現在は加熱製剤が入ってきているわけですね。非加熱製剤は一切使っておりません。それ以前に、この証明書を添付したものを使った時点から、常識的に考えれば新たなエイズ感染者は発生しない、これが常識でありましょうけれども、しかしそのことが果たして間違いなくそうなっているかどうかということは検証しませんと、これからの救済策についてもいろいろ問題が出てくると思うのですね。ですから、私はあえて聞くのでありますが、その当時日本で、今でもそうかもしれませんけれども日本で完全にそのことが保証され得る検査体制あるいは検査技術がないとするなら、いわばそのラベルを、証明書をうのみに信用する以外にないわけですね。もし仮に、本当に間違いのない製剤ではなくて証明書だけが添付されておったとすると、これは大変な犯罪行為になりますね。そういうこともありますから、私はその点をあえて聞いているわけであります。したがって、この製剤の安全性を確保するということについて、さらに厚生省努力をしてもらいたい。このことは時間がありませんから、ここで要望にとどめておきたいと思います。  今私がずっとここまで約一時間かけて申し上げてきましたのは、厚生省のとった措置というのは最善の努力と言えないのではないか。法的に違反とか云々ということは別にして、私は最善であったとは言えないのではないか。血友病患者救済策というのは、そういう行政努力の不徹底に対してその責任を果たすというものでなければならぬと思うわけであります。単なる道義的な責任などではなくて、行政努力の不足が招いた結果に対して責任を果たしてもらう、こういうことで私はこの救済策をとる基本的なスタンスというものを確認しておきたいと思うのですが、どうですか。
  91. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 救済策につきましては、大臣もたびたび申し上げておりますように、法的責任を離れて、患者さんの置かれている状況を踏まえましてできるだけの努力をするということは私どもの責務である、こういうふうに深く認識して対処する考えでございます。
  92. 永井孝信

    ○永井委員 局長は今そのように答弁されましたけれども、これは大臣、やはり政治家として政治的な救済ということも言われてきた経過もありますが、厚生大臣として、さらに政治家として、私が今ずっと問題提起をしてきましたような経過から考えまして、この救済策について大臣の決意のほどを聞いておきたいと思いますが、どうですか。
  93. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 たびたび本委員会におきましても私の考えは申し上げておるところでございますが、血友病患者の方々の中で血液製剤によるエイズ感染をされた方々につきましては、まさしく不可抗力であったわけでございまして、その置かれている現状につきましてはまことに御同情申し上げなければならないと思っております。  総理からの予算委員会でのお答えもございましたように、いろいろ責任問題は別といたしまして、これらの方々に対する救済は、政治の責任において十分になすべき事柄であるという御答弁もございました。私も同様の認識を持っておるわけでございまして、目下総合的な対策を検討している最中でございまして、できるだけ早く結論を出しまして、早期に対策を講じてまいりたいと考えております。
  94. 永井孝信

    ○永井委員 その際に、血友病患者皆さん団体なりいろんな関係の方から救済策の具体的な内容が要求されていますね。これについて、一つ一つそれが是か非かということじゃなくて、患者皆さんが安心して医療を受けられるようにする、そして経済的にもそのことが全く負担になっていかないようにする、こういう絶対的な前提に立って、患者皆さん関係団体皆さんが御要望されていることについては一〇〇%そのことが満たされるような、そういう立場での救済策努力をお願いしておきたいと私は思うわけであります。  もう一つは、総理府の、これは昨年の五月でありますが、「エイズに関する世論調査」がありました。いわゆる血友病イコールエイズ患者だというようなことがどんどん広がっていった当時でありますが、そのときに、正しい知識の普及をすべきだという人が七二%ありました。その次に、これは複数の回答でありますから数字はダブっていくわけでありますが、感染予防薬、治療薬等の研究開発を急げというのが七一・一%ありました。私は、これは国民の正常な感覚だと思うのですね。ですから、片方で救済をする、そういうこととあわせて、正しい知識が間違った社会認識というものを一日も早く排除をして、人権問題に発展しないような対策を全力を挙げて取り組むべきだし、この薬剤の開発研究などについては、言い過ぎかもしれませんけれども極端なことを言えば、予算に糸目をつけないくらいの決意を持って早急にこの問題に取り組むべきだということを私は御要望申し上げておきたいと思うわけであります。  そこで、最後になりましたけれども、私はこれだけの質問をごく短い時間に走ってきたものですから、個々の問題について七人の参考人の方々の意見を聞いでいろいろなことを勉強させてもらったり、たくさんの資料をもらいました。これについてもっと掘り下げた議論というものは到底一時間などでは細かくできないわけですね。ですから私は、委員長にも要望しておきますが、この問題の救済策などを中心に、さらにこれからも時間をかけてこの委員会で審議ができるように御配慮いただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。  そして、この血友病だけじゃなくて、もう一つこの際に私は提起しておきたい問題がありますが、それは白血病であります。閣議決定の趣旨がらいたしましても——この白血病患者が現在四万三千人いらっしゃる、こう言われているわけでありますが、この患者を救うためには、骨髄液についても現在血液が足りないから外国から買ってくるというようなことになっていくのではないか、私はこのことを心配いたします。正常な骨髄液の提供者を確保するためには、最近、初めてのことだそうでありますが、名古屋の方で関係する医師たちの皆さんが、この八月から骨髄液の提供者の公募に踏み切られたということがありました。厚生省はそこまで御存じかどうか私は知りませんけれども。あるいはその前に、東海大学で学内でキャンペーンを張って、もう具体的に骨髄の提供者を何人か確保しているという具体的な事実があります。したがって、血液の問題に関連をして、この骨髄液の提供者の増大を図る努力もこの際要望しておきたいと思うわけであります。そして、骨髄の提供を求めなくて済む方法というのは、例えば患者自身に残っている正常な細胞を増殖したり培養したりして注入する方法などの研究がもし成功すれば、画期的なことだと思うのですね。  つい最近も、私の友人の十六歳の高校生が急性骨髄白血病にかかりまして、つい一週間ほど前でありますが神戸の医大病院に入院いたしました。本人は全く知らないのでありますが、医師からは三カ月の生命だというふうに家族に宣告がありました。もうどうにもならぬわけですね。そういうことを考えますと、こういう四万三千人と言われ ている白血病患者についても、血友病患者の問題を一つの大きな教訓にして、国内でそういう対策がとれるようなことを考えてもらいたいと思うのでありますが、どうでございましょう。これも含めて大臣のお考えを聞きたいと思います。
  95. 仲村英一

    ○仲村政府委員 白血病に対します骨髄移植の治療に関してのお尋ねでございますが、御指摘のように、現在は主に血縁者から骨髄をもらうということをやっておるわけでございます。これはリンパ球の型合わせというのが非常に難しいわけでございますので、HLAという検査の型が合わなくてはいけないということがあって非常に得にくいということが一つ。それからもう一つは、骨髄移植をする場合には、輸血と違いまして提供者の方も入院をしていただいて、全身麻酔をして二十カ所も針で刺して骨髄液を集めるという非常に独特の治療法でございますので、今は先ほど申し上げましたように血縁者がほとんどでございますが、アメリカなどでは骨髄バンクみたいな形で一部やっておるというふうに聞いておりますし、今御質問の中にございました東海大学、名古屋大学、あるいは兵庫の方でもおやりになっているということで、それはやはりボランティアという形でやっております。またもう一つは、この骨髄移植で必ず全部が治るということではなくて、成功率というのは二年間で見ますと五〇%というようなこともございます。いろいろそういう状況があるわけでございますので、私どもとしては、やはり最後におっしゃいましたような自家骨髄移植とか、そういう方向での研究開発にもっと力を入れていただきたいということで、従前からがん研究助成金等で研究をいただいておるところでございますが、今直ちに骨髄バンクをシステム的に動かすことをするというのは、なかなかいろいろの問題があるということで考えておるところでございます。
  96. 永井孝信

    ○永井委員 時間が来ましたからおきますけれども、今局長お答えになったように、アメリカのシアトルでは骨髄バンクがあるというのですね。そのために、国内では治療がなかなか困難なものですから、金を集めて、カンパを求めて、その金でシアトルまで行って骨髄液を提供してもらうというようなことまでやられているやに聞いているわけであります。そして、今局長が言われたように、この種のあちこちでやられていることについてもボランティアが中心になっているわけですね。だから、血友病患者皆さんに対する救済を求めてきた経過でも申し上げましたけれども、ボランティアに頼るとかということでそれが前面に出ていくような医療行政では困ると思うのです。ですからこの際、私は、白血病の関係についても国内でその体制を確立してもらいたい。そして、血友病患者皆さん救済策についても、今までの政府のとってきた、行政のとってきた、言葉は悪いのですが私はあえて言わせてもらうと、そのときそのときにもっとやるべきことがあったことがやられなかったという怠慢に対してやはり責任を感じてもらわなければいけない。国会もそうであります。立法府の中で頑張っている我々もそのことについて認識をすることが非常におくれてきた。そういうことも含めて、国全体がこれに対する責任を果たしていくという立場での救済策をさらに強くここで求めまして、時間が来ましたので、一応私の質問をこれで終わりたいと思います。
  97. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、暫時休憩いたします。  なお、午後一時から再開することといたします。     午後零時十分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  98. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沼川洋一君。
  99. 沼川洋一

    ○沼川委員 去る九日、この委員会の席で、国のエイズ対策につきまして血友病患者団体の代表の方々からいろいろと御意見を聴取いたしました。その内容についてはもう既に大臣初め各局長よく御承知のことだろうと思いますので、その中から何点かお尋ねをしたいと思います。  特に法案につきまして、それぞれの団体から全く共通した御意見として出てきましたのが、この法案はぜひとも廃案にしてほしい、こういう声がございました。特にその具体的理由として、この法案一つの柱が二次感染の防止、こういうことがうたってあるけれども、これはエイズの蔓延を防ぐどころか、かえって逆効果になる、こういう厳しい御指摘がございました。それからもう一つは、人権プライバシーを守るというけれども、結局この法律ができて一番弾圧を受けるのは血友病患者の方々であり、こういう管理法案みたいな法案は上げてほしくない。言ってみれば、これはもう現場の、血友病でしかもエイズ禍に本当に苦しんでいらっしゃる生の声がこの委員会で披瀝されたわけでございます。こういう御意見をお聞きになりまして、まずどのようにお考えになっているか、大臣お尋ねをいたしたいと思います。
  100. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 このエイズ予防法案につきましていろいろな御意見、御批判があることは私も承知をいたしておりますが、厚生大臣立場は、あくまで国民の健康、生命を守るということが第一の務めでございます。  それで、今の我が国エイズ患者数が八十名ということで、世界各国に比べて幸いにも患者数が少ない、そういう状況から、あるいはこの法律についてはまだ時期尚早ではないかというような御意見もあるかと思うわけでございますが、考えなければならないことは約十カ月余りで患者は倍増しておるということでございまして、患者数がふえないということであれば、今八十名のエイズ患者というこの日本現状からして、あるいはもう少し慎重に検討したらという御意見一つの御意見として理解できるわけでございますが、患者が確実にふえていくというこの点については十分に受けとめていただかなければならない大きな点だろうと思います。  私、ことしの七月にOECD厚生大臣会議に参りまして、英国お話を聞きましたが、ちょうど四年前の英国が百名のエイズ患者であったそうでございまして、当時、いろいろな意見の中でエイズ対策については時期尚早というような御意見が主流であったために、積極的な対策を行わなかったようでございます。その結果として四年後に千五百名の患者、つまり四年間で十五倍にふえている。その現状を見て、あの当時積極的なエイズ対策を行っておけばと非常に反省といいますか、そういう気持ちを持っておることを私承りまして、そういう現実にございます外国の貴重な体験も十分に念頭に置きまして、我々としては、幸いにもまだ国内におきましてはエイズの蔓延が少ないこの段階に徹底的な対策をとりまして、国民をこのエイズという極めて恐ろしい病気から守っていくということをしてまいらなければならぬと思うわけでございます。
  101. 沼川洋一

    ○沼川委員 今大臣から英国の例やら外国の例をお引きになりまして、特に英国の場合は早く手を打たなかったことが結局エイズ患者の倍増につながった、日本の場合においてはそういう欧米と比べると今ならまだまだ手が打てる、そういうことでという大臣の御答弁でございましたが、私もはっきり申し上げまして、この二次感染をいかにして防止するか、これは極めて大事であり、日本の国としてもこれは早急に手を打たなければならぬ、このことに対しては全く同意見でございます。そのことが即法律をつくらなければならぬ、そういう問題になってくるとちょっといささかその辺において認識が異なるわけでございます。  そこで、あえてお尋ねしたいわけですけれども、この二次感染防止ということで、感染一般的広がりを示す指標として献血の感染率というのがございますが、たしか私の記憶では、この法案が提出されましたころは三百万例について十八、こういうデータを記憶いたしておりますが、その後この感染率がどうなっておるか。特に陽性率が低下しているのではないかと私は思いますが、この辺について教えていただきたいと思います。
  102. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 献血される方の中でエイズの抗体検査で陽性と出る方がどれくらいいるかという 数でございます。昭和六十一年の十一月から全献血血液につきましてエイズ抗体検査を実施しておりますが、その陽性の数でございます。昭和六十一年に二百四十三万人の献血された方につきまして検査をいたしました。十一人陽性の方がおられました。率は〇・〇〇〇五%になります。昭和六十二年八百二十一万人の方について調べました結果、十一人の方が陽性になっております。率は〇・〇〇一%でございます。昭和六十三年、ことしでございますが、一月から六月までの間の献血者四百六十一万人に対しまして五人、〇・〇〇〇一%、こんなような陽性の反応者数になっております。
  103. 沼川洋一

    ○沼川委員 今の感染率で見ますと、この法案がないから感染が広がっているということじゃなくて、むしろ今の数字の上からいくと感染率はずっと低下しているわけですね。〇・〇〇〇一とかいうとこれは百万人に一人、あるいは〇〇〇二でも五十万人に一人、感染率は極めて低いわけです。そういう中で、この法律がないので感染が拡大したという事実を具体的に挙げて説明できますか。
  104. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 私が今申し上げましたのは、献血された方の中で陽性の反応が出た人の率でございまして、献血率が七%ぐらいでございますので、この数字をもって正確な推計というふうに国民全体の率を推しはかることはできないわけでございまして、そこを念のために御説明させていただきます。
  105. 沼川洋一

    ○沼川委員 それではあえてお尋ねいたしますけれども我が国エイズ拡大防止のためにはこの法案が必要だ、ずっと一貫してそのようにおっしゃってきているわけでございますが、この一年間法律がないために拡大したのだと言える具体的事例があったら、ちょっと教えてください。
  106. 北川定謙

    北川政府委員 厚生省といたしまして、法律があるから拡大をしない、法律がないから拡大をするというふうに申し上げているわけではございませんでして、現在の段階我が国ではまだエイズ患者の発生数が非常に少ない、しかし近い将来この数は必ず増大をしていく、エイズの拡大を抑える手段は法律がすべてということではなく、いろいろな手段があるわけでございますけれども、個人の人権にかかわる問題が非常に関与するわけでございますので、そういう問題に適切に対応していくためにはどうしても法手続があるべきである、こういう観点法律の制定をお願いしているわけでございます。
  107. 沼川洋一

    ○沼川委員 今いろいろと御説明ありましたけれども、結局私どもには、どうしても今この法律をつくらないと感染する、そういうニュアンスで厚生省の説明は聞こえてくるわけですね。それでいろいろ調べてみても、異性感染が特に広がっているという事実もありませんし、しかもエイズという病気についても、最初のころと比べますと、研究調査が進んでくるにつれて感染経路にしてもその原因等にしてもだんだん明らかになってまいりました。  今日本では、輸血あるいは母子感染、この輸血については、もう既に加熱処理が使われるようになってから感染が全くなくなっております。母子感染それから麻薬、こういう問題は日本では事例がほとんど報告されておりません。結局はこれは性行為感染だということが明らかになってまいりました。しかも、その中で日本エイズ感染者というのはもう九〇%以上が血友病の方である、こういう独特の日本の、日本エイズとよく言われますけれども、中身を考えていきますと、要するに逆に一般の人が九〇%も感染している、血友病の方はごく少ない、そういう観点であれば法案をつくられるということも幾らか納得いきますけれども日本の場合はそういう実情をよく踏まえるならば、何か無理やりに法案をつくらなきゃ防げないというような、そういう考え方というのはやはりもう少し検討の余地があるのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  108. 北川定謙

    北川政府委員 お言葉を返すようで大変恐縮でございますけれども我が国エイズ感染現状というのが血液凝固因子製剤によるということが現在では非常に多いわけでございますけれども、これが今日本の非常に特徴的なところだ、こういうふうにとらえられているわけでございますが、これをもっと経時的にさかのぼって見てみますと、ヨーロッパ諸国におきましても同じような状況がある時期にあったわけでございます。先ほど大臣が御答弁申し上げておりますように、毎年倍、倍とふえていくわけでございまして、我が国におきましてもそういう国際的な文化の交流が非常に強くなっておる現状において、島国であるからといって決して将来安全である、エイズ患者血友病以外にはふえないということは全くないと我々は断言して差し支えない、こう思うわけでございまして、そういう観点からいたしますと、今のうちに法体系も整備をしていただいて、それ以外の研究の問題あるいは一般的な社会に対する教育の問題、いろいろな体制をあわせて整備をしていくということが必要であると考えておるところでございます。
  109. 沼川洋一

    ○沼川委員 あえて北川局長お尋ねしたいわけですが、午前中の質問の中で、これは野呂議員から法律がなくてもできるという主張があるが法律は必要か、こういう御質問に対して三点ほどお答えになりましたね。まず一つは、局長お答えになったのが、やはり法律をつくらないと感染者の実情を的確にとらえることができない。特にサーベイランス、この体制の中で医師の協力を求めるという形ではどうもうまくいかない、法律をつくるといわば義務を課すわけですからいいんだ、こうおっしゃいました。この辺も何か非常に根拠が薄いのじゃないかと思うのです。協力が足りなければ、いろいろな研修をやり、広く呼びかけてもっと協力体制をつくる努力をすべきであって、それを法律をつくったからうまくいくという考え方はどうも私には解せません。それからもう一点、人権プライバシーという問題で、法律をつくると守秘義務を課すことができる、そういう面でこれは法律は必要だ、こうおっしゃった。もともとお医者さんには守秘義務はあるわけです。国家公務員にもございます。もともとあるわけですから、これを無理やり法律をつくって守秘義務を課す、こういうことが何か本当に根拠になるだろうかと思って実は聞いておったわけでございます。それからもう一つは、医師と患者の信頼関係が崩れた場合に、そういうケースの場合に知事に権限を与えて、そうい中でいわば実態を把握する、こうおっしゃったわけです。私に言わせれば、患者と医師の信頼関係が壊れたら対策も何もあったものじゃないと思うのです。これは患者と医師の信頼関係をより深く、やはりそういう体制ができ上がるように行政は対処すべきであって、きつき三つおっしゃいましたけれども、こんなもので法律をつくるなどと言われたのでは、特に血友病患者の方々から言わせると、国が承認したものの薬剤で被害を受けた被害者です。それに対して救済措置を十分やってくれるどころか、追い打ちをかけるように法律をつくってさらに自分たちを管理する。どう見たってそういう御主張は私もよくわかりますし、何か法律をつくる根拠というのが、いろいろと局長は答弁されましたけれども、何が何でも法律をつくらなきゃということに余り力が入って、本当のエイズ対策というものを見失っているのじゃないか、こういう気がいたしますが、いかがでしょうか。
  110. 北川定謙

    北川政府委員 現在我が国で一番緊急に対応しなければならない問題は、先ほど来先生から御指摘をいただいておりますように、血液凝固因子製剤感染をされた患者さん方の点でございます。この点につきましては、先ほど来厚生大臣並びに薬務局長の方から御答弁申しておりますように、先般来の参考人皆さんの御意見を踏まえ、あるいは国会での御議論を踏まえて最大限の努力をしていくというふうに考えておるわけでございます。そういう状況をやりながら、なおかつ将来、一般異性間の性行為によるエイズ感染というものが拡大をしていくことは目に見えておるわけでございますから、そういう場合に社会の中でいろいろな混乱が起こらないように今から体制をつ くっておくというのが、この法案提案の一番の根拠になろうかと思うわけでございます。  ただいま先生から患者と医師の信頼関係の重要性を御指摘いただきましたけれども、私どもも全くその点は同感であるわけでございますが、しかし実際には社会の中でいろいろな対応があるわけでございまして、通常一般国民の皆様にこの法律が適用されるということはないと考えていいと思うのですが、非常に極端なケースもいろいろ出てくることが想定をされておりまして、そういう場合にこの法律が発動をするというふうに御理解をいただいた方がいいのではないかと思うわけでございます。  サーベイランスの問題は、これは日本のみならず世界の先進主要国におきましても、法に基づいて疫学的な追跡を明確にやっておる、こういう状況にあるわけでございまして、日本だけが飛び抜けて難しい体制をつくっておるということではなく、むしろ日本の今回御提案申し上げておる法案の方が非常に人権にも配慮し、合理性を高めておるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  111. 沼川洋一

    ○沼川委員 先ほどから何回も申し上げますように、私は二次感染防止がどうでもいい、決してこんなことを言っているわけじゃないのです。その二次感染を防止するためにはどういう手だてが最高の方法なのかと考えてみますと、先ほどから何回も申し上げておりますように、一番大切なことはやはりキャリアの方々に協力を求める、これなくして二次感染防止はできないと私は思うのです。今みたいな形で法案ができますと、恐らく潜ってしまいます。そうなると防止どころか、かえってこれはエイズが蔓延する、そういう心配が率直にこの法案にはあると思うわけです。したがって、これは厚生省の方でもいろいろと検討されているやに聞いておりますけれども、例えば匿名で検査を受けられる、そういう施設、しかも検査を受けた後どこまでもプライバシーが守られるという保証がある、そういう機関で安心して治療が受けられる、そういうことの整備をやることが即二次感染防止にも効果があるし、ただいたずらに法律をつくって何か危険視するということよりか、もっととらなきゃならぬ大事な方法じゃなかろうかと思うのですが、この辺はいかがでしょうか。
  112. 北川定謙

    北川政府委員 沼川先生の御指摘は大変ごもっともな点でございまして、私どもも今御指摘の匿名検診ということについては最大限の努力を払ってまいることとしているわけでございます。昭和六十三年度の予算におきましても、エイズの疫学的研究という柱が立っておるわけでございますけれども、この中で匿名で、かつ無料で検査を受けることができる体制を整備してまいりたい、このように考えているところでございます。  なお、また法案に戻って恐縮でございますけれども通常の場合には個人のプライバシーには全く触れない形でデータがとられる、こういうことでございまして、特に多数の人に感染をさせる異常な行動が多い場合にのみ、先ほど来申し上げておる知事の機能が働いていく、こういうことになっておりますので、念のためによろしくお願い申し上げたいと思います。
  113. 沼川洋一

    ○沼川委員 そのことでいつまでも議論しようとは思いませんが、今のような御説明がこの委員会ではもう何回もなされるわけです。しかし、一般理解されてないという現実をもっとしっかり見るべきだと思うのです。委員会で幾ら同じ説明をやったって、一般の受けとめ方というのは、どうしてもこういう法律じゃ人権プライバシーが侵される、その点に対して厚生省は説明されているようだけれども、やはりまだまだ説明が不十分じゃないか、もっと言葉をかえて言うと本当の意味で答えてない、そういう感じがしてならないわけでございます。  時間がありませんので、先に進みたいと思います。  私がぜひとも申し上げたいのは、この法案ができた経緯をずっと考えてみますと、神戸で女性患者が出た、高知で問題がありました。言ってみれば、世間がエイズ騒動、エイズパニックというさなかに実はこの法案はできておるわけですね。ある専門の学者の方がこういうことを言っております。騒動とかパニックに乗じでつくられた法律にはろくなものはない、これは古今東西の歴史が示している、エイズ予防法案というのはその典型だ、このように酷評する人もおりますが、特にその過程を振り返るときに、法案作成の準備から提出に至るまでの期間が極めて短かったわけですね。厚生省エイズ予防のための法制化の方針を表明したのが昨年の一月十七日です。二月の十日ごろには原案をまとめて、三月六日には法律案要綱を発表して、三月三十一日には法律案を閣議決定して国会に提案した。非常に短期間で、しかも要するに、エイズパニックと言われるさなかにつくった法案であるだけに、今ある程度エイズ騒動がおさまって、冷静な観点から、特にまた研究、調査が進むにつれて現状を見てみますと、あの当時と現在と随分隔たりもありますし、違いがあります。  私が言いたいのは、そういうさなかに慌ててつくった、そういうところに言ってみれば、臨床医とか法律学者という方々の意見を聞いたという節はうかがえるものの、本当に広い意味で臨床医や学者あるいは市民に意見を述べる機会などは全然ありませんでしたし、まして今回の法律で強い影響を受けられる血友病の方々の団体意見などは全く無視してこの法案ができてきているわけです。そういう点を踏まえますと、大臣の御答弁の中にもございましたけれども、時期尚早、拙速ではないか。そういう観点からもう一遍見直されるおつもりはございませんか。
  114. 北川定謙

    北川政府委員 物事にはいろいろな見方があるわけでございますけれども、ただいま先生が御指摘なされましたように、昭和六十二年の当初の状況は、確かに社会的にパニック的な状態があったわけでございます。しかし、エイズ感染の態様というものはそういうことだけで進んでいるのではなくて、実際にはじわじわと社会の中に淫浸していっているわけでございまして、そういう点についても目を向けていく必要があるのではないかと考えるわけでございます。  それから、今御指摘をいただきました血友病患者さん方は、まさにそれぞれ主治医の方を持っており、長い間主治医の指導をもとに闘病生活を続けておられるわけでございまして、先般の議論の中でも御答弁申し上げましたが、私ども血友病患者さん方がこの法の具体的な対象になるという心配はまずないというふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、血友病患者さんに対する対応対応として、将来の異性感染一般化をしてこないうちに法的な整備を整えておく、こういう観点からぜひ法案の成立方をお願い申し上げるわけでございます。
  115. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間がございませんので、救済策について何点かお尋ねしたいと思います。  今、厚生省の方でいろいろと考えていらっしゃる救済策一つに、発症予防治療研究事業というのがございますが、これは全国の血友病医療機関をブロックごとに組織化を図って、すべての血友病の主治医の参加を得て、希望者全員に最新の薬剤を用いた発症予防治療を行う、こういうことでございます。非常にこの希望は高いとも聞いておりますし、これはぜひともひとつ進めていただきたいと思うのですが、この最新の薬剤というのをお使いになるわけですが、どういう薬を予定されておるわけですか。
  116. 北川定謙

    北川政府委員 エイズの発症防止につきましては、まだ明確な研究成果がないわけでございますが、基本的にはエイズが免疫力の低下によって他の感染を起こすという医学的な原理のもとに認識をされておるわけでございまして、それに対応するいろいろな免疫、抑制の機能を持つ薬剤を化学的にフォローアップをしながら使ってみる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  117. 沼川洋一

    ○沼川委員 具体的に薬品の名前はわかりますか。
  118. 北川定謙

    北川政府委員 例えばインターフェロンですとかグリチルリチンですとか、あるいはレンチナン あるいはAZTでございます。こういうような薬剤が今考えられておるところでございます。
  119. 沼川洋一

    ○沼川委員 これは大変希望者も多いというふうに聞いておりますし、今後ひとつそういう対策はぜひともしっかり進めていっていただきたいと思うのです。  それからもう一つは、カウンセリングの事業をされるわけです。これも非常にいろいろな関係団体からも要望が高い事項でもございますし、ぜひとも御推進いただきたいと思うのです。  そこで、ここでお尋ねしたいのは、自民党さんがこの救済策として七項目を発表されております。今、厚生省ではこれに基づいていろいろと検討をされているようでございますが、その中の一つに、要するに医療費の自己負担について、何かエイズ予防財団の方で一万円現在がかっておる自己負担を何とか解消してあげたい、こういう意向があるようです。それと同時に、交通費を見てあげよう、これは感染者に限ってということなんですね。それで、いろいろ救済策を進めるのは結構なんですけれども、この交通費の問題一つ取り上げてみましても、感染者に限ってということになると、感染者であるということを証明しなければこれはもらえないわけです。お金を出すということですから悪いことじゃないというものの、非常にまた人権プライバシーの問題が出てきますし、いろいろと検討されている案を聞いておりますけれども、金額にしても何かわずかな金額であるようです。ですから、私に言わせれば、そういうことよりか安心して医療を受けられる、医療費の心配がない、要するに医療費は一切ただにする、むしろそういうところに重点を絞った対策というのがもっと検討されていいのじゃなかろうかと思うのです。  特に血友病の場合、患者団体から難病の指定をという要望が今まで何回もございました。ところが、現行の法律上はどうしてもこれに該当しないということで、これは棚上げになっているわけですけれども、少なくとも国が今回のこの問題で責任を感じるならば、こういう自己負担の一万円の解消については、エイズ予防財団からその金を出すというようなことじゃなくて、国のきちっとしたいわば制度によって、予算の枠組みをつくって、きちっとした対応をむしろやるべき問題じゃなかろうかと私は思うのですね。いろいろとこれは問題あると思いますけれども、竹下総理がエイズの問題の答弁の中で、政治の面で誠意を持って対応したい、そういう御発言もあっております。いろいろと難しい事項があるにしても、少なくとも難病に準ずるようなそういう扱いで、公費でもって予算を組んで、いわば国の行政としてきちんとやる、こういう対応をまずすべきじゃないかと思いますが、この点についていかがでしょうか。
  120. 北川定謙

    北川政府委員 エイズ感染をされた血液凝固因子製剤を使っておられる皆様方の医療を確保する、これは先生御指摘のように、私どもも最大の眼目としてとらえておるわけでございまして、特に発症防止あるいは治療方法の開発、こういう研究の中でもそういう考え方を一つ貫いておるわけでございます。  ただ、先生から今御指摘をいただきました血友病患者全体の医療費の問題でございますが、けさほども野呂先生の御質問にお答え申し上げておるわけでございますが、制度的にはいろいろな難しい点があるわけで、非常に難しいと私どもは考えておるわけでございますが、大臣の御答弁もございましたので、そういう点も踏まえて今後さらに検討をさせていただきたい、このように考えております。
  121. 沼川洋一

    ○沼川委員 これは同じ質問を大臣にいたしたいわけでございますが、今申し上げました難病と同じような扱いで、そして医療費をただにしてあげる。これは医療費の負担というのが非常に大きな負担の中の一つでもございますし、交通費を出すよりか患者全体について国が対応する、しかも何らかの制度をつくって対応する。難しい問題があることは重々わかっておりますが、こういうことをやることが政治的責任でもって対処するという具体的な一つのことになるんじゃなかろうか。そういう姿を国がぜひとも誠意の一端として示すべきじゃないかと思いますが、大臣、こういう問題いかがでしょうか。
  122. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 血友病患者の医療費の自己負担分、これを公費で持て、こういうお話でございます。事務的にはいろいろ他の病気との関係その他難しい点もございまして御答弁を申し上げておるわけでございますが、それはそれとして、沼川先生からの御意見を交えた今のお話、私も同じ考えの点もあるわけでございまして、何とかこの自己負担一万円について解決できる方法が考えられないかという点について今真剣に検討をしておるところでございまして、いましばらくお時間をいただければと思います。
  123. 沼川洋一

    ○沼川委員 そこで改めてこれはお尋ねしたいわけでございますが、今回のこの薬剤被害、この委員会でもその責任の所在を求めるいろいろな質問が相次ぎましたけれども、結局具体的に責任の所在というのを現行では明らかにするというのは非常に難しいようです。  しかしいずれにしましても、これは国が承認した血液製剤でもって感染されたわけですから、国の責任は重大だと私は思います。それ以前の問題として、ぜひとも二度とこういうことを繰り返さないという反省に立って対応していただきたいのは、これは患者団体の陳情の中にもございますけれども、やはり日本において血液の自給自足体制をつくる、こういう問題に対する取り組みが外国と比べますと日本の場合は非常におくれておるように思うわけです。確かに、今厚生省の中に血液事業検討委員会とかあるいは血液製剤使用適正化小委員会とか、いろいろつくって検討されているようですけれども、例えばその中でやはりどうしても私が認識が違うんじゃないかと思いますのが、輸血で使う血液と血漿分画製剤、何か血漿分画製剤の方は一般医薬品並みな、どうもそういう認識があるように思えるわけです。きょうも午前中の薬務局長の御答弁の中に、血液は臓器の一部であって臓器移植、そういうものだという御指摘がございました。血液に対してはわりかたそういう考え方があるものの、分画製剤となると何か医薬品みたいな、もう一段軽くとらえているような、そういう受けとめ方があるんじゃないか。ですからはっきり言って、輸血用の血液については日赤初め公的視野でほとんどやっていらっしゃいますけれども、分画製剤となると全部民間任せで、ほとんどこれは国がタッチされておりません。言ってみれば、これは前から言われてきたことでございまして、何もWHOの勧告を引くまでもなく、厚生省の中でも何回も検討されまして、日本で自給自足体制をつくらなければだめだ、こう言われてきて今回のまた薬害被害。ですから、ウイルスが混入したという以前の問題として、やはり国の行政として、外国に九六%もいわば輸入に頼っているという現状から脱皮できなかった、そういうところにも大きな一つの原因があるように思えるわけですが、この自給体制についてどういう取り組みをなさっているか、教えていただきたいと思うのです。
  124. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 今御指摘の、いわゆる日赤の取り扱っております全血製剤及び成分製剤に対する認識と分画製剤に対する認識とに差があるんじゃないかという御指摘でございますが、その御批判、御指摘については、全部が全部というわけじゃございません、そういう面が必ずしも全くなかったということではないんではないかというふうに私は考えます。  これは一つの原因としては、血液分画製剤の需要が急激に伸びてということとか、あるいはまた形といいますか印象といいますか、一つの供給の形態面でもいろいろな相違があるというような、いろいろな要素があると思うのでございますが、今回のいろいろなこういった血液製剤をめぐる事件を契機にいたしまして、血液の国内自給、分画製剤を含めました国内自給というような道を目がけて、きちっとした政策目標を持ちまして進むべきだというふうに考えています。ただ、このプロ セスとしては、いろいろな現状を考えますと、現在の供給量、現実の供給量と献血の量、この差が非常に多うございますので、この差を埋めるための努力がかなり大変なものがあると思います。その方法として、一つは需要面で、医療で使う量の適正化、本当に医療に必要なものかどうかということをよく調べまして、本当に血液製剤が必要なものにだけ使っていただくような方向をとる、これが急ぐ問題ではなかろうかと思っております。  それから、当然のことながら献血者のそういった御協力を賜るということ。それから、非常に需要が伸びておりますのは分画製剤でございます。その分画製剤の原料に絞って献血していただくという意味で、成分献血、血漿だけを献血していただくようなやり方をできるだけ伸ばしていく、こんなようなことをいろいろ組み合わせまして、今おっしゃいましたような、WHOにも言われております国内自給というような方向を目指して一生懸命努力しなければならぬ、こう認識いたしております。
  125. 沼川洋一

    ○沼川委員 日本の取り組みは非常におくれていると指摘したいのは、御存じだと思いますけれども血液製剤の国産化ということで英国はもう昨年から多額の金をつぎ込んで取りかかっておるわけですね。昨年の四月に五千五百万ポンド、これは約百二十六億円ですから、これだけの金をかけてロンドン郊外のエルストリーというところに最新設備の血液製剤施設を英国の場合はいわば新設しております。早速ことしからこれが稼働するわけですけれども、これは一切国産で賄えるという体制ができ上がる。手の打ち方も非常に早いし、そういう取り組みに対しても国を挙げて真剣な取り組みをやっているわけです。日本でこれだけいわば薬害被害が問題になって、さらに血液行政に対しての国の対応がいろいろな面で指摘されておる中で、日本の取り組みはただ検討委員会だけつくって、全然取り組みがおくれています。言ってみれば、本当に二度とこういうことを起こさないという反省に立つならば、そういう対策についても思い切って金をつぎ込んでやるべきじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  126. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 例えば日赤でつくっていただくための血漿分画製剤の補助金を出すとか、あるいは献血の推進のためのPR費を考えるとか、予算面においてもできるだけ努力をいたす考えでもございますし、何といいましても国民連帯、助け合いというのが献血の一番の基本の考えでございますので、そういった面で国民各層の御協力をお願いするというようなことを含めまして、お金だけで解決できる問題ではございませんので、そういった基本的な精神について理解を各界に求めながら対策を進めてまいりたいと考えます。
  127. 沼川洋一

    ○沼川委員 一方では、先ほど局長もおっしやったように、血漿分画製剤の使用量が世界の三分の一から四分の一、これはまさしく日本の使い方というのは異常なんですね。いろいろと原因があるでしょうが、その中で私もぜひここで指摘しておきたいのが、薬価基準の問題です。特に血液製剤の場合、薬価基準と実勢価格の差があり過ぎて、要するに薬価差益がある、こういうことが使用量がふえる一つの原因になっているのじゃないかと私も思っております。  一つの具体的事例としてこれはお尋ねしたいわけですが、今新しい血友病の薬としてヘモフィルMという薬が出ております。御存じだろうと思います。これは血友病治療とあわせてエイズの発症抑止の効果も期待されておりますし、モノクローナル抗体を使った新型の濃縮血液凝固因子製剤、これは米国のバクスターというところがつくっておるわけです。これが実は七月一日から発売になりました。この早期投与を求めて血友病患者の方々が待っていらっしゃったわけですが、これは新聞の報道で見て私びっくりしたのですけれども、関西地区の病院が、他のメーカーの製剤に比べて仕入れ値の値引きが低くて薬価差益による利益が少ないとして拒否したという例がございます。ですから、せっかく新薬ができてそれに患者が期待されておるのに、薬価差益が少ないから出せない、こういう考え方に対して何か厚生省は実態調査されるように新聞では読みましたけれども、どのように把握されていらっしゃいますか。
  128. 仲村英一

    ○仲村政府委員 一般論といたしまして、ある患者さんにどの薬を使うかというのはお医者さんの裁量でございますので、私ども行政当局はとやかく言う筋合いのものではないと思いますが、このような報道が事実とすれば、やはりお医者さんと患者の間の信頼関係を損なうということで、私どもとしてもまことに残念だと思いますし、その理由は薬価差益が少ないからだという、新聞報道によりますれば事務長さんの言のようでございますが、そういうことは私どもとしてまことに遺憾なことだと思うわけでございます。ただ、個々にこのようなケースに行政が立ち入るということはいかがなものかということでございまして、それこそ先ほどから先生もおっしやっておられるように、医師と患者の信頼関係に基づいて十分説明をした上で医療が行われる、あるいは薬剤が変えられるということを期待するということで私ども考えております。
  129. 沼川洋一

    ○沼川委員 これは、ただ単なる一つの病院の事例というようなとらえ方じゃなくて、医療機関全般にある考え方だと思うのです。やはり同じような同質の薬ならば少なくとも病院経営にプラスになるような薬を出す、こうなってくると、これは患者優先じゃなくてまさしく病院経営優先。しかも、血友病患者の方々が非常に期待して待っていらっしゃった薬がそういうことのために手に入らない、こういう問題に対しては徹底的にメスを入れていただきたいと思うのです。またさらに、今もおっしゃったように、こういう問題がありますと一番大事な患者と医師の信頼関係というものが崩れてしまいます。ぜひとも、ただ単なる大阪の事件というようなとらえ方じゃなくて、今後特に血液行政の中でこういう問題に対してはもっと厳しく対処していただきたいと思うのです。  あえてこれは薬務局長お尋ねしますけれども、現在血液は薬品であるということになっております。薬価基準にも収載されております。ところで、一方では臓器である、人間の臓器の一部だ、だから大事に扱わなければならぬという考え方も基本的にあります。ところが、どうしてもいろいろこういう事件を通して見ますと、何か一般医薬品と同じように軽く取り扱われている。そういう大事なものであるならば、薬価差益があること自体これはおかしいと思うのです。そういう問題について、例えば薬としての収載から外すとか、薬価基準をいわばゼロにするとか、何かいい方法はございませんか。
  130. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 考え方は私も同じなのでございますが、いろいろ考えているのですけれども、今のところいい方法はなかなか考えつきませんのであれですが、少なくとも薬価差益をできるだけ減らすようなことで、むしろ全くないのが自然なんじゃないかと私は思うくらいでございますが、もう少しいろいろ勉強して、いい方法を考えさせていただきたいと思います。
  131. 沼川洋一

    ○沼川委員 薬価差益をなくせと言ったって、一般医薬品に見る限りアリ地獄で、幾ら実勢価格を下げても、薬価基準を切り下げても、この薬価差益はなくならないという現状の中でこれは非常に難しいことだと思いますが、あえて私が申し上げたいことは、患者にとって非常に貴重な薬品であるのにもかかわらず、薬価差益のためにそういう薬品を受けられないという事態は、これは徹底してなくしていただきたいと思うのです。とんでもないことです。そのことを強く要望申し上げておきます。  時間が参りましたので最後に重ねて申し上げますけれども、このエイズ予防法案は今後いろいろと審議されていくわけですけれども、申し上げましたとおり、あのパニック騒動の中でいわば短い期間で法案が提出されたといういきさつがあり、また専門家意見も十二分に聞いて出されたという法案でもありませんし、現に二次感染防止といっても患者が潜るんじゃないか、蔓延を防止するどころか、かえって逆効果だという強い指摘も ございます。それにもまして非常に心配されておるのが、この法律ができることによって血友病患者の方々が二重にも三重にもいわば圧迫を受ける、そういう心配がございます。したがいまして、この法案はむしろ一遍撤回して再検討すべきものではないか、私はそういう考えに立っておりますし、どうかひとつ何としてでも法案を上げなきゃならぬ、そういう拙速だけは自重していただきたい。もっともっと幅広い意見を聞き、現実のエイズ現状をしっかり頭に入れて慎重に対応すべき問題じゃないか、このように思っております。そういう意味で、私も今後とも対処してまいりたいと思っております。  以上を申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  132. 稲垣実男

    稲垣委員長 塚田延充君。
  133. 塚田延充

    ○塚田委員 先日は、血友病患者団体皆様方参考人としてお越しいただきまして、魂の叫びとも思われるような大変悲痛な陳述をされたわけであり、私も篤と胸に銘記をさせていただいた次第でございます。  参考人の方々がいろいろ述べられたそのポイントというのは、やはりエイズイコール血友病という社会的な認識のもとに人権問題が大変多発しておるし、これからもその苦労が大変なことになるであろうという御心配、そして何とか救済策について思い切り手を打ってほしいという悲痛な御要望、こんなものがあるわけであり、それらをくくるような形で今厚生省が予定されておりますこの予防法案、これはかえって逆効果があるから絶対にやめるべきである、これこそ魂を振り絞って皆さん方がお述べになっていたわけでございますが、これにつきましては厚生省の方もその議事録などを取り寄せて、十二分に参考人の方々の御意見に傾聴していただいたものと私は信じております。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕  ところで、このエイズ対策について今申し上げたような救済策であるとか、また、この法案をどうするかという大問題もあるわけでございますが、それ以上に私としてエイズ対策上大切なのは、この世紀の業病とも言われるものに対しまして今なお治療方法そのものが確立されておらない、すなわち感染、発症したならばもう致命的と言われるくらい致命率が高いわけでございますから、もうこれで一巻のおしまいであるというような恐怖感があるわけでございます。となりますと、エイズ対策の最も抜本的な対策というのは、治癒方法について一刻も早くこれを開発し、確立することだと思います。これにつきましては、まだこのウイルスが見つかってから間もないということもありますので、各国がそれぞれの医学技術の粋を生かしながら競争的に治癒方法の確立に取り組んでいると思うわけでございます。  そのようなことを念頭に置きまして、まず最初にお伺いしたいのが、同様に人類にとって目下のところ最大の課題と言われておりますがん征服の問題でございます。これは感染性とは違うわけではございますけれども、やはり今の人類にとって大変な難敵であり、これを克服することが人類共通の課題であるとされて認識されているわけでございます。という次第で、中曽根内閣におかれましては「対がん十カ年総合戦略」として閣議決定されて、現在それを強力に推進しているはずでございますけれども、この総合戦略につきまして計画の概要そのもの、そして、この十カ年にわたりまして総予算どのくらい予定しておるのか、そして六十二年度なり六十三年度なりどのくらい予算をつぎ込んで、どのような事業に中心的に当たっておられるのか、その辺について御説明を伺いたいと思います。
  134. 北川定謙

    北川政府委員 「対がん十カ年総合戦略」は、昭和五十九年度から実施をされておるわけでございます。人類の最大の課題であるがんを撲滅する、こういうことにねらいを定めて、幾つか重点的な柱を持っておるわけでございます。例えば重点的に研究課題を設定して、集中的に多角的に研究を進めていく、若手研究者を育成する、国際協力を推進する、いろいろな実験材料の供給等研究の支援体制の整備を図るというような五つの柱を持っておるわけでございまして、これを厚生、文部、科学技術庁等、政府を挙げてこれに取り組もうということでございます。昭和六十三年度予算におきましては、この戦略のために八十八億が計上されております。その結果、これまでに人の胃がんの遺伝子あるいはテレビカメラの内臓内視鏡の小型化などという具体的な成果を上げておるところでございます。
  135. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは、エイズ対策の方でございますけれども厚生省が現在取りまとめております六十四年度の概算要求があるわけでございますが、その中でどのような救済策を盛り込んで、そしてどのくらいの概算要求をされようとしているのか、御説明いただきたいと思います。
  136. 北川定謙

    北川政府委員 六十四年度の事業につきましては、六十三年度に重点的に取り上げております発症予防あるいは治療研究の推進でございます。それから、カウンセリングの問題あるいは教育の問題等、六十三年度から取り上げている問題をさらに拡充整備をするという基本的な方針に沿って現在予算要求案を作成している段階でございますが、そういう状況でございますので、金額の点につきましては、もう少し時間をちょうだいいたしたいというふうに存じます。
  137. 塚田延充

    ○塚田委員 がんは人類共通の敵と言われておりますけれども、いわゆる感染性であるという意味においてはエイズは、これは余り危機感をあおることはよくないかもしれませんけれども、一部喧伝されましたように本当に世紀の業病、人類がこれによってやられてしまうのじゃないかと言われるくらいの大変な病気であることは、皆さんも認識を同じにしていると思います。となりますと、これにつきまして、厚生省としてはエイズ問題総合対策大綱を取りまとめておりますけれども、私は、このエイズについての取り組みは、がん以上の取り組み姿勢イコール予算のつぎ込み、体制の確立、これを図るべきじゃないかと思っております。  そういう観点からすると、がん征服に対して中曽根前総理大臣が示した決意から比べると、エイズに対して何とかしなければいけないのだ、しかも経済大国として資金的にも、また同時に医学研究技術といいましょうか、こういう面においても他国と比べるとかなり最先端をいっており、また研究の余力があるという事情から踏まえて、人類に貢献する、世界に貢献するというくらいの気持ちで総合戦略、国家政策として立てるべきだと思っておりますが、その辺のことにつきまして、エイズ問題総合対策大綱との関連においてそのくらいレベルアップさせる、もしくは国の防衛予算に匹敵するくらいの構えで取り組もうとする姿勢につきまして、考え方を御説明いただきたいと思います。
  138. 北川定謙

    北川政府委員 先生御指摘のように、昨年の二月に厚生大臣を主宰として十四閣僚を構成メンバーとするエイズ対策関係閣僚会議を設け、政府を挙げてエイズ対策に取り組んでおるわけでございます。その閣僚会議での対策要綱ということで定められた五つの柱があるわけでございますが、まず第一は「正しい知識の普及」、第二は「感染源の把握」、第三は「相談・指導体制の充実及び二次感染防止対策の強化」、第四は「国際協力及び研究の推進」、第五が「立法措置」、このようになっておるわけでございます。  エイズの問題につきましては、予算の上では昭和六十二年度に一億五千万余の経費を計上しておったわけでございますが、六十三年度におきましては十二億四千三百万、前年度に比べて八倍増というような予算の規模になっておるわけでございます。予算の規模だけで物を論ずるわけにはまいりませんが、国際的に見てもエイズの問題は非常に深刻な状況を呈してまいっておるわけでございますので、厚生省といたしましても、具体的に研究体制をどこまで整備できるのか、研究者の層の厚さをどう見るかという問題とあわせまして、研究費の増あるいはその他の必要な対策費用の増 額を図るべく、六十四年度におきましても最大限の努力を払ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  139. 塚田延充

    ○塚田委員 局長がおっしゃいますように、確かに取り組みの意欲というものは単に予算というような金額のみではないのだということはわかりますけれども、やはり何事であれ、先立つものが大切である。そうした場合、私は、いわゆる人類共通の敵と言われるような今の情勢においては、余力のある日本の国家としては、国家政策、戦略として予算の単位が一けたどころか数けた違うのではないか、そのくらいの意気込みを持って今後当たるべきではなかろうか、そのようなことを通じて世界に貢献して、このような人類共通の敵を日本がイの一番に治療方法を開発し、確立し、救ったと言われるような、人類史上に残るような業績をぜひつくるべく努力してほしいと思います。そうなった場合に、今局長から総合対策大綱について御説明いただきましたけれども、そんななまぬるいものではなくて、もっと社会学的にも、また医学技術上の問題においても徹底した戦略を立てていただきたい、このように強く要望しておくわけであり、血友病の方を初めとするエイズ患者がとにかく治療方法が確立するまで生き延びたいのだ、こんな悲痛な叫び、これに一刻も早く我が国がこたえるようにしていただきたいと切望するわけでございます。  さて次に、全く常識的、基本的なことをお尋ねいたしますけれども血友病の方々がエイズ感染されているわけでございますが、これは端的に言って薬害でしょうか、ずばりお答えいただきたいと思います。
  140. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 薬害かどうかということにつきまして従来からいろいろな議論があるわけでございまして、薬害という言葉の定義が何かということで、私もいろいろな議事録を調べてみたのでございますが、薬害という定義が実はないわけでございまして、従来から使われております薬害という言葉の意味としては薬の作用、薬理作用に伴って起こる副作用、こういうような意味に従来から使われておるという現実がございます。そういう意味からは薬害ではない、こういうふうな御説明を従来から申し上げておるところでございます。
  141. 塚田延充

    ○塚田委員 私が御質問申し上げましたのは一般的、常識的な意味において聞いておるわけでございまして、ならば重ねてお伺いいたしますけれども、薬害でなければ何が原因でもって血友病の方々はエイズ感染されたのでしょうか。
  142. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 血液製剤に病原、エイズウイルスが混入していた、こういうことが原因であるということでございます。
  143. 塚田延充

    ○塚田委員 大臣、お聞きいただいたと思いますね。とにかく定義は別としても、今局長から御答弁いただいたように、血友病の方々がお使いになっておった血液製剤が原因となってとにかくエイズ感染されるようなことになってしまったということですから、これは法律的なのか、それともお役所定義か知りませんけれども、そんなことは抜きにして、全くごく一般的にいわゆる薬害であるということは間違いないと思いますし、その認識が大切だと思います。となりますと、この薬害について法的な因果関係がどうかとか法的責任がどうかは別として、この件についてもたびたび委員の質問で出されており、当局側もお答えいただいておりますけれども、今言った一般常識に基づく薬害であって、ほかに持っていくところがなくて九九%常識上の薬害ですから、竹下総理もおっしゃられておりますように、政治的責任に基づいて今後事を処していかなければならないであろうと考えられるわけでございますけれども、この政治的責任について御認識されるでしょうか。大臣、御答弁願いたいと思います。
  144. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今の御質問にお答えする前に、先ほどエイズ対策ナショナルプロジェクトのような考え方でしっかり頑張れというお話、私も全く同感でございまして、国内は無論のこと、国際的にもさらに日本のできる範囲、可能な援助をしていかなきゃならぬという考え方でいるわけでございまして、WHOに対する日本の拠出金も倍増しようというようなことも今考えておりまして、これからも大いに頑張っていきたいと思いますので、ひとつ御支援をお願いいたしたいと思います。  それから、今の御質問でございますが、おっしゃるように血液製剤という医薬品を用いてエイズ感染した、こういう事実は私ども厳粛に受けとめているわけでございまして、そういう考え方に立って総理も、まさに政治的な見地からこの対策は考えなきゃならぬ、こういうことを申されているわけでございます。  それで、私もしばしば同様な趣旨を申し上げておるわけでございまして、これから総合的な対策を一刻も早く打ち立てまして早期に実施するという考え方で、できる限りのことはいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  145. 塚田延充

    ○塚田委員 大臣の御答弁は大変誠意あるものと私は受けとめさせていただきます。  そして、いわゆる定義は別として、薬害でございますし、これは別な言い方をさせていただければ、本人の責任なしに事故に遭ったようなもの、すなわち不可抗力のもので苦しんでおられるわけでございます。不可抗力の事案によって国民が大変な苦しみを味わった場合に国家としていろいろ救済処置を行う。例えば豪雨などによって、これは天が豪雨をもたらしたのだからどうにもならぬとか、地震などというものもこれは内閣総理大臣責任じゃございません。けれども、それで大変な被害を受けてしまったというときに、激甚災害法などによって緊急かつ手厚く立ち直れるように国家として災害救助するわけでございますけれども、このような考え方をとって血友病の方々の救済、そして特にエイズ感染者への弔慰金であるとか生活補償であるとか、きちんとすべきだと思います。この件について、激甚災害法的な考え方ということとの絡みで、だからいわゆる因果関係がどうの、法的責任がどうの、訴訟がどうのということなしにお考えいただきたいと思いますが、これはずばり大臣お答えになっております政治的責任という言葉にも置きかえることができると思います。そういう見地から、先ほど参考人の御意見にもあった激甚災害法、ずばりこれはとれませんけれども、このような考え方において生活補償や弔慰金を手厚く行うということについて、お考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  146. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 現在考えられております対策の主眼は、医療と医療に関連する経費の軽減、こういうところにございますことと、それから類似の一つの仕組みでございます原子爆弾被爆者に対する措置、こういったものを考えますと、弔慰金というふうなものが事務的には非常に困難と申し上げざるを得ません。しかし、大臣の御指示もございますので、できるだけの検討をいたしたいと考えております。
  147. 塚田延充

    ○塚田委員 厚生省当局のおっしゃるように、事務的とか制度的とかいったら一歩も進まないようなものでございますから、私は今言った天災的なこととして考えてほしいし、大臣が政治家として政治責任的な考え方とこの辺のところをうまくミックスしながらとにかくやるべきことについててはきちんと救助の手を差し伸べていただく、この精神に基づいて今後厚生当局、頑張っていただきたいと思います。  さて、そういう救助方法の中の一つの具体的な方法でございますが、既に午前中の委員会審議でも出されましたとおり、英国におきましては一千万ポンドの基金をつくって救済を行うというようなことが伝えられております。しかし、このような基金などをつくって基金経由でやるというようないわゆる間接的な方法も一つの方法かとは思いますけれども、これまた指摘されたように、そんなことではなくて、国当局がもっと直接的にいろいろ手を打つべきであるという考え方もございます。しかしながら、私お伺いしたいのは、とにもかくにも英国においてはこんな進んだ制度をつくっておられる。これに対して我が国の場合には、これを他山の石として、これに倍するような規模とかもしくは内容のものを研究されるとかいうよう な御意思がおありや否や、考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  148. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 イギリスで一千万ポンド、約二十三億円を拠出したということはございますが、イギリスでは血液製剤の供給というのは、国がといいますか、一元的にいわば公社のようなもので行っているわけでございまして、供給者としての立場というものも含まれた一つのやり方というふうに思われます。  我が国では、既に発症予防とか相談事業とかいうことで国が国の事業としてやるというような方向と、それからそのほかの民間の拠出を求めながら何らかの形で進めていこうとしているものがございまして、国あるいは民間の拠出を含めまして、全体としてできるだけのことを進めてまいりたいと考えているところでございます。
  149. 塚田延充

    ○塚田委員 とにかく血友病の方の救済、特にエイズ感染者に対する救済につきましては、何度も申し上げたごとく、薬害と言っていいような原因に基づいているわけでございますので、ぜひ政治的な立場から、制度がどうの法律がどうのじゃなくて、どんどんナショナルプロジェクト的な考え方もとりながら救済に当たっていただきたいと思います。  そして、この問題につきまして最後に、これも何度か話が出ておりましたけれども、今の血友病患者の方の自己負担について先ほどから前向きの答弁がございますけれども、ぜひ言葉どおりの前向きの結論を出してくださりますよう大臣に重ねて御要望して、救済問題についてはこれで打ち切らせていただきたいと思います。  次に、血液製剤関連のことでございますけれども厚生省では既にその安全性のために献血者の自己申告制度を実施されてそれなりの効果を上げておられるようでございますが、この制度の運用状況、効果の上がった状況などについて、具体的に御報告いただきたいと思います。
  150. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 献血者の自己申告制度と申しますのは、例えば職場で皆さん一緒に献血をなさるという場合などがよくあるわけでございますが、そういう場合に、例えば血液に異常を来すようなおそれのある、心当たりのある人がいるというような場合に、どうしても一緒に行ってやらざるを得ない場合に、後から電話で御報告いただく、そうして少しでも安全性を高めるというような趣旨のものでございますが、献血者総数、これは昭和六十三年の五月から七月までの状況でございますが、百九十万人に対しまして、自分がどうもやや危険性があるので外してもらいたい、こういう連絡のあった方、申告された方が千三百四十一人おられました。
  151. 塚田延充

    ○塚田委員 大変不幸な血液製剤によるいわゆる薬害が起きたことにかんがみ、これは根本的にほとんどが輸入に頼っておったということに遠因といいましょうか、最大の原因があったわけでございます。となりますと、当然その対策としては、これについて安全な方法による国産化ということがスケジュールアップされなければいけないわけでございますが、血液製剤関係についての国産化のスケジュールについて御説明いただきたいと思います。
  152. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 国産化を目がけまして、国内自給体制を目がけまして、二百ミリリットルから四百ミリリットル採血ということへの拡大、それから成分献血の推進、それから需要量、使用量の適正化、こんなようなことをいろいろ進めてまいりたいと考えております。  具体的な目標といたしましては、血液凝固因子製剤の原料血の国内自給をぜひいたしたいと考えておりまして、これは六十五年度末までに何とか血液凝固因子製剤の原料血の国内自給を行いたい、当面の目標としてそれだけは行いたい、こういうふうな目標を持っております。
  153. 塚田延充

    ○塚田委員 自給化のための量の確保も重要ではございますけれども、やはりその製剤そのものの安全性が大切だと思います。この内容の安全確保の対策についてどのような対策を講じようとされているのか、お聞きしたいと思います。
  154. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 これも御承知のとおりでございますが、採血の際にいろいろな検査を行っております。まず第一にそういったことがございます。エイズ、ATL、B型肝炎、梅毒その他の検査をいたしております。こういった検査によりまして汚染されていることがはっきりしました血液は、いわばはじくわけでございます。  それから二番目に、エイズにつきましては、ただいま御質問のございました自己申告制というようなことを導入いたしまして、できるだけ危険なものははじく、こういう措置をとっております。  それから、血液凝固因子製剤につきましては、製造工程なんかに加熱処理の過程を入れまして、加熱処理の仕方につきましても、乾燥加熱から液状加熱へというようなことで、できるだけ安全性を高めるというような措置を講じているところでございます。
  155. 塚田延充

    ○塚田委員 さて、話はがらっと変わりますけれども血友病の方々イコール業病であるエイズということで、社会通念的に大変御苦労されているわけでございます。そこで、CI、コーポレートアイデンティティーというものがございます。いわゆるイメージでございますけれども、イメージをよくすることによって社会の受けとめ方をある程度変えるということもあり得るわけでございます。これは通常企業社会において行われているわけでございますが、例えばこの国会の中といいましょうかお役所の中においても、高齢社会とかなんとかいうことに対して、最近では長寿社会の方がいいのじゃないかとかいうような、いわゆるネーミングによって感じを変えるということもあり得るのじゃないかと思うのです。このエイズというのは余りにもおかしな響きを国民に与え過ぎてしまったというところから、このネーミングをうまく官民あわせて変えるような方法はありはしないか。優秀な頭脳をお持ちの厚生省でございますから、この辺考えたらいかがと思っております。  似たような例では、本当に苦しい、いやな響きがございましたらい病は、今らい病という言葉は消えております。これもネーミングの効果だと思うのですけれども、こういうことを考えることはできないかどうか。しかし、これは国際的にエイズという言葉が使われているから云々という言い方はあるかもしれぬけれども、何も我々は外国語放送、外国語新聞ばかり見ているわけじゃございませんから、あくまでも日本語としてこのネーミングをもし変えることができればかなり感じが違って、新しく白紙状態から手を打つことができるのじゃないか、こんな感想を持っているのですが、いかがでございましょうか。
  156. 北川定謙

    北川政府委員 確かに言葉と概念というものは非常にかたく結びついておる場合が多く、しかもそれが間違った印象を強めているというケースは、今塚田先生が御指摘をなされた幾つかのケースにやはりあるわけでございます。エイズ関係いたしまして、血友病イーコールエイズという認識は、エイズについての感染予防という観点からも、正しい認識を持っていただくという意味からも、非常に問題があると私どもも考えているわけでございます。厚生省といたしましても、血友病によるエイズというような表現をダイレクトには用いないで、血液凝固因子製剤によるHIV感染というような用語を使うなど、かなりこういう短絡したイメージをつくらないようにという努力はしておるつもりでございますが、なおもっとよりよい言葉があれば、さらに簡潔な言葉があればよいわけでございますので、今後ともそういう観点からも注意をしてまいりたいと思うものでございます。
  157. 塚田延充

    ○塚田委員 時間が参りましたので、最後に大臣に一言。この前の参考人陳述について大臣もその内容を熟知されていると思いますけれども、それに対して大臣の感想と決意を簡単にお述べいただきたいと思います。
  158. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 先ほども申し上げたわけでございますが、血液製剤という医薬品を用いることによりまして思いもかけないエイズ感染した、こういうわけでございますから、その特殊な置かれている状況、またそのお立場、その事実というも のについては極めて厳粛に受けとめなければならないというふうに考えております。そして、その方々の救済こそはエイズ対策の中で非常に大きい問題であるというふうに受けとめておるわけでございまして、この救済対策につきましてはできる限りの努力をいたさなければならないという考えを新たにいたしておる次第でございます。
  159. 塚田延充

    ○塚田委員 終わります。
  160. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 児玉健次君。
  161. 児玉健次

    ○児玉委員 日本における血友病患者エイズ感染は国とメーカーの責任によって生じたものであって、国は被害者に対して完全な補償、救済策をとるべきであると以前から私たちは主張しておりますし、そして今もその点強くなりこそすれ、全く変わりがありません。この主張について冒頭明らかにしておいて、きょうは法案の審議やその他とは切り離して、今度政府が提起されている緊急の対策に限定して質疑をしようということですから、私もそれが今必要なことだと思いますので、提起されている対策に即して何点かお聞きをしたい、そう思います。  まず、発症予防治療研究事業についてです。  全国ヘモフィリア友の会、東京ヘモフィリア友の会、そこで会誌を発刊されておりますが、それの三十七号、一九八七年十一月二十一日の会誌ですが、座談会が載っております。「私たちは今…エイズとどう向きあっていくか」こういうタイトルです。出席されたAさんという方、もちろんこの方は成人に達していらっしゃる。こう述べておられる。「私の場合は、カンジダをやった時です。」「そのうち口腔に白いザラついたものができて、病院でうがい薬を出してもらいました。三ケ月ぐらいその薬で治療していましたけど、だんだん痛みで食べれなくなり、ついに話すのもつらくなってしまいました。」血友病の主治医から薬を出してもらった。今のように話すこともできなくなった。「その時、東友の会報を見て、感染症の専門医のいる病院に行きました。そこで出してくれた薬をのんだら四、五日で治りました。危なくカンジダで命を落とすところでした。その時その病院で「HIV感染を受けている、つまり陽性だ」と言われました。」血友病の主治医からは告知されていなかった。「それはショックでした。目の前が真暗になったような思いでした。そしてそれから相当落ちこみました。でも、もしかして妻にうつっていたら、子ども達は大丈夫だろうかと家族のことが心配になりました。」で、続いて、適切な感染症に対する治療があれば長く頑張ることもできるし、自分のようにカンジダについて言えばもう痛みがとれたという経験をここで語っていらっしゃいます。  それで、私は最初にお伺いしたいのですが、今度の発症予防、そして治療の体制、その中で、厚生省からいただいた資料によりますと、全国の血友病の主治医約八百名の方を全体網羅して進める、全国幾つかのブロックで大学を中心とした方が、言ってみればその取りまとめ、推進に当たる、そういうことですが、この全体の体制は、基礎医学、臨床医学を網羅した総合的な体制が今急がれているのじゃないかと思うのです。とりわけこの体制の中に発症予防治療研究を専門とする医師、先ほどのAさんの言葉を使えば感染症の専門医、それがどのように参加することになっているのか、まずその点を伺います。
  162. 北川定謙

    北川政府委員 ただいま先生の御指摘のように、医療というのは極めて経験的ないろいろな認識の積み上げということによって前進をする場面も非常に多いわけでございます。それで、いわゆるHIV感染をした血友病患者さんたちの治療が問題になるわけでありますけれども、先生が御指摘なされましたように、必ずしも感染症専門家でない方が多いということは事実であります。そこで私どもも、ここのところは組織的に、合理的に新しい治療方法を的確に普及をしていこうという観点からこの研究事業を考えておるわけでございまして、この九月からいよいよスタートをしようとして今最後の準備を進めておるところでございますが、この研究班は全国部会というのがあります。それから基礎部会、それから臨床部会、こういう三つの部会から成り立っているわけでございます。  この全国部会が、ただいま御指摘のありましたように血友病あるいはHIVの感染者の担当医師でありまして、小児科の先生あるいは血液関係専門家が中心であるわけであります。基礎部会の先生は、治療効果を判定するために必要なウイルス学あるいは疫学などの研究者が中心になっております。それから臨床部会は、エイズの主な死亡の原因となっておりますただいまの日和見感染症、こう言っておるわけでございますが、こういう種類感染症予防あるいは治療方法に特に経験のある専門家の先生に入っていただこう、こういうことで総合的に班を組織しまして、発症予防及び治療研究班を組んでいこうとしておるわけでございますので、先生が御指摘なされたような御心配のないようにこの仕事は進められるというふうに考えております。
  163. 児玉健次

    ○児玉委員 その点、全国どの地域でもこの事業に進んで参加される患者さんに対しても手落ちのないように、今の日本の全体の感染症に対する治療の最高のレベルが行われるように厚生省として努力をしてほしいのです。今も局長からは主に中央における全体の体制についてのお話がありましたが、皆さん方は、ここで提起されている北海道から九州まで九つのブロック、それぞれの第一線のところでも今局長が言われたことが十分に保証されるようにしてほしい、その点で努力を求めたいのですが、どうですか。
  164. 北川定謙

    北川政府委員 幸いなことに、我が国は全国どの地域においても非常に均等に専門家がおるという状況に恵まれておるわけでございますので、先生が御心配になるようなことはまずない、こう考えておりますし、さらにこの研究班の組織の中で情報の流通伝達というものを積極的にやっていくことによってそういう点についても十分配慮をしていきたい、このように考えております。
  165. 児玉健次

    ○児玉委員 この事業ですべての希望者全員に最新の薬剤を用いた発症予防治療を行う、こういうふうになっております。私たちが承知しているところによれば、昭和六十一年度から厚生省が中心になって、端的に言えば国が責任を持って、発症予防治療研究事業は小規模ではあるけれども開始されている。そこで対象となった患者の方は約百名。先ほど同僚委員の御質問にもありました五つの薬剤を使って研究治療が進められている。この場合に特定の地域、特定の医師の部分で五つの薬剤の中の特定の部分が使用されるというふうなことがもしあるとすれば、そのとき患者に対して最も適切な薬剤の使用ではなく、あるグループはこの薬というふうな区分けがもしされているとすれば、それは国家事業としての薬剤の治験というべきものになる危険性があると思うのですが、実態は今どうなっているでしょうか。
  166. 北川定謙

    北川政府委員 実態は決して先生が御心配いただくような形にはならないと考えております。薬剤の種類や投与の方法につきましては、研究班の全体会議でいろいろ合意をした基本的な考え方に基づきまして行われるわけでございますけれども、実際にはまだまだ確立をされてない治療方法を追求をしていくことでございますので、個人個人の患者さんについてどういう薬物を使っていくかということについては、患者さんの状態を最もよく把握をしております主治医の判断ということが主体になるわけでございますので、そういう点を中心としていろいろな治療方法の成果がきちんと体系的に集められて、それが次の治療方法の開発につながる、こういうことでございますので、御心配の点はないというふうに考えております。
  167. 児玉健次

    ○児玉委員 この事業の中で「最新の薬剤」という言葉があります。日本は言うまでもなくアメリカ、フランスなど国際的な研究の最新の成果、治療薬開発の最新の成果、そういったものが今後とも取り上げられていかなければならない、こう思うのですが、その点はどうでしょうか。
  168. 北川定謙

    北川政府委員 具体的な内容につきましては研究班の先生方のお考えが中心になろうかと思いま すが、恐らくいろいろとこれから考えられるであろう新しい薬剤あるいは治療方式、そういうものに対応して実際の治療が行われていく、このように思います。
  169. 児玉健次

    ○児玉委員 この事業が出発をする、その際、対象は希望者ということになっております。この際、医師による告知の問題が問い直される必要があるだろうと私は考えます。先日もこの委員会でその問題を多少議論したことがありますが、この治療研究の事業の研究班長に就任される御予定の山田兼雄教授が次のようにおっしゃったことがあります。ちょっとそれを引用します。「エイズ感染した事実を医師らが患者に教えないと、患者本人のエイズ発症予防治療が遅れることになり、周囲への二次感染の可能性も高まる。告知がエイズ予防につながることを理解してもらわなくては」。医師に理解してもらわなくてはならない、そういう意味で山田先生は言われていると思うのですが、この山田先生の見解について厚生省はどういう受けとめをなさっていますか。
  170. 北川定謙

    北川政府委員 基本的にはやはりエイズ感染の実態について患者に告知をし、適切な治療、総合的な治療対応をしていくということが必要であろうというふうに思います。しかし、一口にエイズ感染者といいましても、いろんな状況に置かれている場合があるわけでございますので、それぞれの状況につきましてはやはり主治医の先生が総合的に判断して、どのように患者理解をさせていくのか、告知の時期をどのように選定するのか、非常に微妙な点があろうかと思うわけでございます。基本的には告知ということを前提としながらも、やはりある時間をかけて十分に納得のいく対応をしていくことでいいのではないか、このように考えております。
  171. 児玉健次

    ○児玉委員 先日の委員会の私の質問に対する厚生省お答えも今のと同じような内容だったと思います。あのときも私は言ったつもりですが、幼児や児童、そういった部分について医師が告知をするということは恐らく考えられないだろうと思うのです。それから、家庭の事情や本人の置かれているさまざまな状況を医師がその専門家性に基づいて適切に判断することを私は否定するものではありません。そのことを明確にした上で、現在、HIV抗体検査の結果が本人に対してどのように伝えられているのか、その点で最新で最も規模の大きいアンケートは、全国ヘモフィリア友の会が昨年六月から七月にかけて実施されたものだと思うのです。それによりますと、全体の回答者が四百五十四名です。検査を受けて、結果を知っている、二百三十人五〇%、検査は受けたが、結果は知らない、百六人二三%、検査を受けていない、五十三人一二%、検査をしているか、まだしていないかわからない、四十四人一〇%、無記入、二十四人五%、こういう状況です。検査を受けて結果を知らされている人が二人に一人しかいない。去年の六、七月の段階でこういう状態になっている。その点、私はひとつ強く指摘をしておきたいのです。  そして、ことし五月十九日の毎日新聞の報道によりますと、「血友病患者の夫からエイズ感染した妻の発症が初めて厚生省によって確認された。医師が夫に感染告知をしていなかったために起きたとしか考えられない新しい悲劇。」こういうふうにその報道は述べておりますが、この点について厚生省はどのようにお考えでしょうか。
  172. 北川定謙

    北川政府委員 今の毎日新聞の報道の結論が真実かどうかについては、私ども承知をしておりません。しかし総合的に考えて、医師が患者に告知をしないということにはそれなりの理由があり、あるいはそれなりの環境、状況があるのではないかというふうに思われる点もございます。そういう観点からすれば、原理的にはあくまでも感染症でありますから、告知をして十分な防衛措置をとりながら治療をするということが基本であろうかと思いますが、なおそういうことが十分に理解をされた上で告知をされてないという現実もあるというのが現状ではないかと思います。
  173. 児玉健次

    ○児玉委員 今の御答弁の最後のところが私は非常に重要だと思うのです。先ほど私が紹介しました「私たちは今… エイズとどう向きあっていくか」の座談会に、もちろん仮名ですがBさんという方が登場されています。この方はただいまの告知の問題にずばり触れて、こうおっしゃっています。「主治医には「プラスかマイナスか教えてくれ」と頼んでいましたが、「多分、マイナスだと思うよ」とか、「心配ないよ」「わかんないよ」ということばかりで、のらりくらりとして教えてくれませんでした。だから別のところで検査を受けました。そこの先生が教えてくれました。だからその先生には本当のことを教えて下さったので感謝しています。本当のことを知りたかったし、隠したりしたのでは主治医を信頼できなくなります。大人をだましてもしょうがないと思います。」こうBさんは言っている。主治医からはどうしても教えてもらえない。ここに何らかの医師の専門家性に基づく適切な判断があったとは私には思えないのです、この発言に限定して言えば。この点、どうですか。
  174. 北川定謙

    北川政府委員 私がその点について的確にお答えする材料を持っていないわけでありますので明確な御答弁ができないわけでございますが、やはり十分に話し合いをして、患者さんの状況に応じてできるだけ告知をしていくというのが基本ではないかと考えるわけでございます。
  175. 児玉健次

    ○児玉委員 この点は今血友病患者さんたちの中で、非常に苦しい論議ではあるけれども発症予防のために医師から告知をしてもらうということが出発点だ、こういう議論が始まっておりますので、私はもう少し立ち入って触れたいと思います。  皆さんが出されている「エイズ診療の手引き」、そこの三十ページに厚生省のお考えが出ております。「二次感染予防観点から、陽性者に対しては、病名又は抗体陽性であることを告知することを原則とする。」私はこの原則が貫かれるべきだ、そう思います。若干のことをお述べになった後、次のパラグラフで「手引き」はこう言っております。「告知の有無にかかわらず、医師は二次感染防止の観点から、日常生活での注意事項の徹底を図るとともに、陽性者本人を通じて、性的接触者等が速やかに医療機関を受診し、」云々、こういうふうになっております。「告知の有無にかかわらず、」と頭で述べてありますから、医師の方はその患者が陽性者であるということはよく知っているのだけれども、陽性者本人はそのことを知っていないわけなんですから、「性的接触者等が速やかに医療機関を受診し、」云々というところは実際の意味を持たないのです。  それで、この「手引き」を皆さん方は改訂する予定があると伺っているのですが、山田教授が述べていらっしゃるように、医師の告知が発症予防治療と二次感染予防の前提である、そのことを一歩踏み込んで明記すべきだと思うのですが、いかがですか。
  176. 北川定謙

    北川政府委員 先生が御指摘になりました「手引き」は、そういうことで告知の有無にかかわらず感染防止の対応をとれ、こういうことを申し上げているわけでございます。これは非常に断定的に宣告をしないでも、ある程度の状況を伝えて感染防止の注意を促すということを考えておるわけでございますが、しかし、だんだんと社会の中でもエイズの病気の本体というようなことについても理解が深まってきておるわけでございますから、そういう点も踏まえて今後の改訂の段階でこれをどう扱うか、これは専門家のドクターとも十分に協議をしてみたい、このように思います。
  177. 児玉健次

    ○児玉委員 その協議が実ることを私は強く期待します。この点では患者の方から、告知がされていない、特にキャリアの方が御主人である場合に「最愛の人への感染を防ぐのは最低の責務。感染予防の機会を与えられない悔しさは言葉にできない。」という言葉で強く指摘されているところでもありますから、厚生省の積極的な検討を私は重ねて要望します。  次の問題です。保健福祉相談事業についてです。ここではエイズ予防財団に委託して、ブロックごとに拠点となる医療機関を中心に実施する、そう 提起されております。現在全国的にも幾つかの病院で医師、看護婦、ケースワーカー等による適切なカウンセリングが既に開始されています。それを国が全国的に充実強化するという方向で取り組みを具体化されるべきではないのか、こう思うのですが、いかがですか。
  178. 北川定謙

    北川政府委員 国からはこの相談事業をエイズ予防財団に委託することにしております。このエイズ予防財団は必ずしも十分なマンパワーを持っているわけではございませんので、今後いろいろな形でそういう機能を持った方々を組織化して全国的にネットワークをつくっていく、こういう考え方をとっているわけでございまして、決して今先生が御指摘をなさいました既に現在やっておられる方々を無視するということではないわけでございます。そういう方々の協力体制をこのエイズ予防財団を中心につくってまいる、こういうふうに考えてまいるわけでございます。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  179. 児玉健次

    ○児玉委員 この予防財団がカウンセリングに深くかかわる場合に、患者プライバシーが守られるのかどうか、この点について患者、家族の皆さんの中に深刻な不安、危惧がございます。この危倶に答えることができるでしょうか。
  180. 北川定謙

    北川政府委員 このプライバシーを守るということへの配慮、それからプライバシーを侵害されるのではないかという御心配、これはまだまだこれからいろいろな具体的な仕事が進む中でどういう状況になるのかということは当然あるわけでございます。どういう体制でやればプライバシーが守られるのか、どういう体制でやればそこが危ないのかというようなことについてはいろいろと意見があろうと思うわけでございますが、私どもとしては、一つ団体を核にしまして、ここからのいろいろな情報ネットワークを通してプライバシーの確保、それからカウンセリング事業の効果をどのように発揮できるか、そういうことを総合的にこれから具体化をしてまいるわけでございますので、予防財団を活用すればプライバシーが守られないのか、そういうことは今の段階では申し上げられない、このように思うわけでございます。
  181. 児玉健次

    ○児玉委員 私はそういうふうに短絡しては言っていないのですよ。予防財団がここに深く関与する、委託すると言っているのですから、そうなった場合にプライバシーが守られないと言っているのでなく、プライバシーが完全に守れるという保証があるのかとお聞きしているのです。医師や看護婦には職業的な倫理がある。大体確立しております。そして、今度の全国的な拠点になるところを拝見いたしましても、そのほとんどが国立の大学を中心にして進められている。そういった中で、この予防財団という全体的な仕組みの中で、率直に言えば多少異質のものがなぜそこにコミットしなければいけないのか、ここがどうしてもわからない。どうでしょうか。
  182. 北川定謙

    北川政府委員 個々の現場は、先生が御指摘になりましたように個々の医療機関における医師あるいはその医師との関連に置かれるカウンセラー、こういうことになるわけでございますので、財団の職員がすべてそこのそれぞれの地域に出向いてカウンセリングの仕事を担当する、そういうことを考えているわけではなくて、カウンセリングの事業全体をどうやって進めるかということを財団に委託をするわけでございますから、財団はその経費を運用しながら、具体的に現場で活動をしておられる医師あるいはカウンセラーの仕事をサポートする、あるいは全くそういう機能のないところへは全国的にあっせんをしてしかるべき人を配置してあげるというような形で具体的な仕事が進められるわけでございます。
  183. 児玉健次

    ○児玉委員 時間もそろそろ来そうですから、じゃ率直に私はお聞きをしますが、ここで予防財団がこういう形で登場してくるというのは、この後国の救済策、冒頭に言いましたように当然国の責任を明らかにしての補償の問題がこの委員会の中でも、そして社会的にも議論されていくだろう、それはもうぜひそうしなければいけない。そういうとき、国が行うべき救済策その他を国にかわって予防財団を窓口にして行う、そのための布石ではないのかという危惧を私は持ちますが、その点はどうですか。
  184. 北川定謙

    北川政府委員 救済のための仕事をどういう形で仕組んでいくのかということにつきましては、まだいろいろな議論が煮詰まっていない段階にございます。今先生が御指摘になりました布石論は、特に考えているわけではございません。
  185. 児玉健次

    ○児玉委員 じゃ、お言葉のとおり受けとめたいと思います。  最後に、藤本大臣にお伺いしたいと思います。  一つは、先日の参考人の方々からの陳述でも繰り返し強調されたわけですが、差額ベッド代を含む医療費、そして通院に要する費用等、そういった患者皆さん方の切実な、かつ緊急に実施してほしいと思うことについてぜひ国の責任で速やかに措置してほしい、こう思うわけですが、その点どうか、これが第一のお尋ねです。  もう一つ、重ねてお伺いします。それは治療発症予防のために国が今回行おうとする対策は、血友病患者だけでなく、希望するすべてのエイズ感染者、患者を対象として行われるべきだと思うのですが、この点についての大臣の考えを伺います。
  186. 北川定謙

    北川政府委員 順序が逆になって恐縮でございますが、後半の部分について私の方からお答えをさせていただきます。  救済対策のうちの発症予防及びカウンセリングにつきましては、血友病エイズ感染者を主たる対象として私どもは考えているわけでございますが、その他の感染者につきましても希望がある場合には対象として対応していきたい、このように考えております。さらに、血液製剤によってエイズ感染をした血友病患者の方々につきましては、その感染原因が非常に特殊な状況にあるわけでございますので、ただいま申し上げました発症予防の事業以外の医療関連の特別な対策を講じよう、こういうように考えているわけでございます。
  187. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御指摘の問題につきましては、できるだけ早い時期に実施に移してまいりたいと考えております。
  188. 児玉健次

    ○児玉委員 終わります。
  189. 稲垣実男

    稲垣委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四分散会