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1988-08-09 第113回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年八月九日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 戸井田三郎君 理事 丹羽 雄哉君    理事 野呂 昭彦君 理事 畑 英次郎君    理事 池端 清一君 理事 沼川 洋一君    理事 田中 慶秋君       逢沢 一郎君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    今井  勇君       小沢 辰男君    片岡 武司君       木村 義雄君    近藤 鉄雄君       佐藤 静雄君    笹川  堯君       自見庄三郎君    高橋 一郎君       竹内 黎一君    中山 成彬君       堀内 光雄君    三原 朝彦君       持永 和見君    伊藤 忠治君       大原  亨君    川俣健二郎君       河野  正君    田邊  誠君       永井 孝信君    新井 彬之君      平石磨作太郎君    吉井 光照君       塚田 延充君    児玉 健次君       大橋 敏雄君  出席政府委員         厚生大臣官房長 黒木 武弘君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 北郷 勲夫君  委員外出席者         参  考  人         全国ヘモフィ         リア友の会前         会長         血友病友の会         「鶴友会会長 北村千之進君         参  考  人         (三重栄友会」         会長)     樋江井善夫君         参  考  人         (埼玉埼友会」         理事)     伊藤  修君         参  考  人         全国ヘモフィ         リア友の会会         長代行         東京ヘモフィ         リア友の会会         長       保田 行雄君         参  考  人         輸入血液製剤         被害者救援グ         ループ会員         兵庫ヘモフィ         リア友の会事         務局長     伊地知 健君         参  考  人         輸入血液製剤         被害者救援グ         ループ会員         山形ヘモフィ         リア友の会会         長       宇野 信子君         参  考  人         (輸入血液製剤         被害者救援グル         ープ代表)   石田 吉明君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 八月九日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     逢沢 一郎君   石破  茂君     笹川  堯君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     相沢 英之君   笹川  堯君     石破  茂君     ───────────── 本日の会議に付した案件  後天性免疫不全症候群予防に関する法律案内閣提出、第百八回国会閣法第九〇号)      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  議事に入るに先立ちまして申し上げます。  本日は、長崎市の被爆四十三年目に当たります。ここに広島市、長崎市において原爆の犠牲者となられた多くの方々の御冥福をお祈りし、あわせて戦没者を追悼して、黙祷をささげたいと存じます。  全員御起立を願います。――黙祷。     〔総員起立黙祷
  3. 稲垣実男

    稲垣委員長 黙祷を終わります。御着席ください。      ────◇─────
  4. 稲垣実男

    稲垣委員長 第百八回国会内閣提出後天性免疫不全症候群予防に関する法律案を議題といたします。  本案につきましては、前国会におきまして既に趣旨の説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────  後天性免疫不全症候群予防に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  6. 稲垣実男

    稲垣委員長 本日は、本案審査のため参考人から意見を聴取することにいたしております。  まず、全国ヘモフィリア友の会会長血友病友の会鶴友会会長北村千之進君、三重栄友会会長樋江井善夫君、埼玉埼友会理事伊藤修君から御意見を承ります。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序は、まず参考人方々から二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員諸君からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため参考人方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、北村参考人にお願いいたします。
  7. 北村千之進

    北村参考人 おはようございます。本日、衆議院の社会労働委員会エイズ予防法案に関する問題で参考人としてお呼び出しをいただきまして、まことに光栄に存じております。  早速本論に入らせていただきたいと思います。  私は、ただいま御紹介をいただきましたが、全国友の会昭和四十二年に結成されまして、そしてその後四年間副会長を仰せつかり、昭和四十六年八月から十六年間全国会会長を務めさせていただいてまいりました。その間昭和五十八年二月、自己注射の御承認をちょうだいをいたしました。さらに、その翌年の昭和五十九年八月に、血 友病患者が一カ月何万、何十万円医療費がかかろうとも、わずか一万円の負担でよいようになりました。今考えてみますると、既にそのころアメリカではエイズ問題が起こりつつあったわけでございます。日本では、その後約二年ぐらいおくれましてエイズ問題がやかましくなり、今日に至っておると記憶をいたしております。  現在、血液製剤のほとんどが外国製品に依存している日本状況でございます。それを知りつつも使用を認め、実施していたのが事実でございます。しかし当時としては、それにかわるべき良薬、いわゆる効き目のある薬がなかったために、お医者さんもまた患者のほとんどがこの製剤を打ち続けてきたわけでございまして、ただここで問題になることは、加熱製剤が安全と言われてからちょうど一年ほどおくれまして日本でもこれが実施になった、ここに一つの大きな問題があるわけでございます。同時に、一事が万事と申しますか、行政面責任とかあるいは製剤メーカー人命軽視というようなそういう責任が追及されているのではないでしょうか。そこで、行政官製剤メーカーも、また医師団も、さらに血友病患者も一丸となってこの問題を真剣に考えるとき、また、お互いに相手の立場を正しく理解し合って悔いのない最善策を追求すべきであると思っております。  では、その最善策とは何かと考えてみますると、今立法化しようとしているエイズ法案、この原案には私は強く強く反対をする者の一人でございます。その理由は幾つもございますが、それはもうこれまでに言い尽くし、考え尽くしてきたことばかりでございますので、ここでは省略をいたします。この法案原案反対を叫んで、ではどうすべきかとの質問が起きると思います。そこで、私の意見といたしましては、万に一つ法案成立の声が強くなった場合でも、慎重に慎重を重ねて、十分時間をかけて、その間に刻々変化してくる実情を十分に検討して、だれもが悔いのない最善策を図っていただきたい、かように思っております。  最後に、くどいようですが、重ねて訴えます。エイズ法案には強く強く反対をする者の一人でございます。さらに十分に時間をかけて、その間各方面からの英知を絞って、人権尊重を第一義に考慮して善処をしていただきたいと念願するものでございます。  次に、血友病患者現行医療費、これは先ほど申し上げましたが、一カ月一万円の負担になりました。その自己負担分が各県によって無料化の県もあれば、また国の規定のとおりの一万円負担の県もございます。あるいは三十歳までは無料、こういうふうで全く全国一定いたしておりません。国民の権利平等の原則から考えてみますると、そこに問題があると思っております。よって、まず医療費全国一律に無料化にすることが先決と思います。この件はぜひとも実行していただきたい。  次に、薬害による血友病患者エイズは、同性愛者麻薬等注射によるエイズ患者とはその根源が全然違いますので、血友病患者のARC及びその以前の状況下にある患者に至るまで薬害者救済の手を伸べていただきたいと思います。その方法の一端としては、例えば損害保険皆さん御存じの自動車とか火災なんかの損害保険による交通事故者扱いというような、ああいう処置を活用してもらいたい。すなわち、責任のある専門医師の診断によって医療費及び救済補償問題が処理できるように配慮さるべきで、そうなれば問題の告知義務その他煩わしい行政上の問題も解消されて、冷静に医師患者信頼感において処置できるものとなります。この場合、患者が幼年あるいは少年児であるときは当然その保護者医師との間の申し合わせによることになると思います。  この一から三までの条項をよくよく御理解をいただきまして、最大限の御努力を賜りたいと念願するものでございます。以上私見を述べて、良識ある最高の政策を切望いたします。  なお、血友病陽性者はここ数年が山と思われておりますが、その間にどれぐらいのキャリアが出てくるでしょうか。恐らく七、八百人あるいは二千人以上に上るとも言われております。仮にこの一〇%がエイズにかかったとしますと、現在の約三倍以上の患者数字が出てくるというわけでございます。  私は、さきに戻りまして、まず血友病治療費全国一律に無料化を提言しているだけに、このエイズ禍補償ということは、国ばかりの責任ではなくして、国と民間、特に血液製剤メーカーが主体となって合弁のいわゆる財団等によって実施することを衷心から切望するものでございます。  以上、簡単ではございますが、私ども意見を申し述べて、参考にしていただければありがたいことでございます。どうも御清聴ありがとうございました。
  8. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  次に、樋江井参考人にお願いいたします。
  9. 樋江井善夫

    樋江井参考人 私は、三重血友病友の会栄友会会長樋江井善夫でございます。  本日は、エイズ予防法案についての参考人としての意見を、時間の制限がありますので、箇条にして簡単に申し上げます。  まず、エイズ法案に絶対反対を申し上げます。この理由の最大なものは、薬害による血友病患者人権を確実に守ることができるか、大なる疑問を抱くものであるからです。血友病患者への救済補償のために告知を要するようでは、仏をつくって魂を入れないとの例えのとおりで、かえって血友病患者であることが証明されてしまうおそれがあるからです。よって、その救済補償の名称とその段階を十分に検討すること。エイズ法案成立により、かえって血友病患者差別を受け、仲間外れや入学、就職拒否にまで発展し、本人はむろん、その家庭にまで大きな被害を受けることになる。血友病患者エイズは万人御承知のとおり薬害によるものであるから、本患者は国並びに製剤メーカーに重大な責任ありと思われますので、その救済補償問題を十分に考慮してほしい。例えば国と製薬メーカーの出資による合弁財団のような制度をもって実施されたい。現在、血友病患者医療費自己負担一カ月一万円となっているが、この際、全国一律に無料化をぜひ実現していただきたい。本エイズ予防法案は、伝染病予防法の適用のことですが、国民の間に混乱を招くおそれがあると思われる。  以上、簡単でございますが、これで終わらせていただきます。
  10. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  次に、伊藤参考人にお願いいたします。着席のままで結構です。
  11. 伊藤修

    伊藤参考人 ただいま御紹介にあずかりました埼友会伊藤です。  私は、現今のエイズ禍に巻き込まれてしまった血友病患者の一人です。本日、議員の諸先生方の前でお話しできますことは、まことに光栄に存じます。  それでは早速でございますが、私の意見を述べさせていただきます。  まず第一に、エイズ予防法案に関してでありますが、私は、この法案反対であり、廃案にすることを求めます。このエイズ予防法案は、果たしてエイズ感染予防効果があるのでしょうか。感染者人権は守られるのでしょうか。私は、絶望的に理解しがたく、時として激しい怒りが込み上げてまいります。日本エイズ感染者の大部分が、不幸にして血友病患者で占められております。血友病患者の四割、約二千人が感染していると言われております。しかし、その血友病患者のほとんどが、現在医師の必要十分な指導と医学管理を受け、自覚を持った行動をしております。日本においてエイズ蔓延予防に一番心を配っているのは、私ども血友病愚者ではないでしょうか。  さて、もしこの法案が成立いたしましたときの問題点といたしましては、一、エイズ感染者の莫延を防止することにはならず、かえって隠れた感染者の増加を招く結果になるのではないかと思われます。二、多くの人間が偏見差別を受け、社会から葬り去られる危険性があると思われます。 三、国民の間に恐怖心混乱を招くおそれがあり、決して正しいエイズ知識の普及にはならないと思われます。  私は、以上述べました理由から、社会的排除差別を助長するようなこのエイズ予防法案は、感染者人権を無視し、絶望のふちに追い込む悪法であり、本来のエイズ予防効果を生まないものと考え、速やかに廃案にすることを要望いたします。  さて次に、救済について少々意見を述べさせていただきます。  私は、輸入血液製剤によるHIV感染者及びエイズ患者救済が速やかに実施されることを望みます。すなわち、発症予防治療体制の充実などの医療的救済治療費公費負担生活補償費の支給などの経済的救済患者参加型のカウンセリング体制整備拡充などの即時実現を求めます。  日本エイズ感染は、欧米と異なった状況を呈しております。それは、感染者の大部分が米国からの輸入血液製剤によって感染した血友病患者で占められているということです。つまりこれは、日本エイズ感染世界でも特異的な薬害であることの何よりの証明ではないでしょうか。血液製剤医薬品だということですが、国が責任を持って外国から輸入した医薬品を投与され、被害を受けた。これを薬害と言わずに何と呼べばよいのでしょう。私たちは全く理解に苦しんでいます。しかし、私としましては、薬事法上の法的責任を問う薬害訴訟問題を別にいたしまして、道義的責任として実効ある救済策を早急に実施されることを望んでいます。先日来から耳にいたします救済対策案は、いまだ満足するところまでには至っておりません。エイズ感染被害者経済的困惑をせずに予防治療ができる医療環境と安心して生活できるような社会環境を早く確立していただきたいのです。  最後に、私は、本日、憂うつな心の葛藤を味わいつつも、勇気を振り絞ってこの委員会に参りました。このような公共の場で自分は血友病愚者であると告白することは、大変勇気の要ることでした。私個人のプライバシーと日本血友病患者すべての将来のことを何度も心の中で反問した末に、やっと決心してここに参りましたことを何とぞ御理解していただきたいと存じます。  これで私の意見は終わりです。ありがとうございました。
  12. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  13. 稲垣実男

    稲垣委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。片岡武司君。
  14. 片岡武司

    片岡(武)委員 三人の参考人皆様には、大変御多忙のところわざわざおいでをいただきまして、まことにありがとうございます。心から感謝を申し上げます。また、血友病患者の方として勇気ある発言をしていただきました伊藤さんにも心から敬意を表し、御礼を申し上げる次第でございます。  エイズに対する関心というものは、日本国民のみならず全世界の大変憂慮すべき深刻な問題であるということは十分承知をいたしております。また、日本エイズ患者の大半の方が残念ながら血友病患者の方から出ておる、非常に悲劇的な結果であるということも承知をいたしておりますが、時間がありませんので、まず端的にお伺いをいたします。  血友病患者の方は今大体五千人ぐらいだと言われておりますが、北村さんは前に全国会長さんをおやりいただいておる。現在のこの患者の会の組織率といいますか組織の数といいますか、また加入者の数、そういったものは一体どういう状態になっておるのか教えていただきたいと思うのであります。
  15. 北村千之進

    北村参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  全国的な血友病患者、この数は五千人ぐらいということになっております。しかし、全国友の会会員になっていらっしゃるいわゆる患者の数はその約半数でございます。したがって、残りの半数の方はまだこの全国会には入っていないというのが現状でございます。これを一人一人説得しながら会員になっていただいて、そしていいことも悪いことも一緒になって苦しみ、楽しみということをやっていきたいと思いまして、私約二十年間、北海道から九州、沖縄まで歩いて宣伝といいますか、いわゆる加入することをお願いしに行った体験もございますので、今後このエイズ問題に関連してむしろ会員はふえるのじゃないかという考えを持っておりましたが、実は逆で、会員になれば血友病がわかる、血友病がわかればエイズだ、こういうふうな宣伝効果が効き過ぎまして、むしろ会から離れていくという方もある、こういうギャップもございます。現状としてはそのようなありさまでございます。
  16. 片岡武司

    片岡(武)委員 ありがとうございました。  ちょっと具体的にお伺いをいたしますが、今お三人の皆様は一応エイズ法案については反対ということを言われたわけでありますが、実際にエイズは、六月三十日現在の数字を見ますと、全世界で約十万人の患者の方がお見えになる、キャリアの方が大体五百万から一千万だと言われておるわけでありますし、また将来、この世紀末には一億人ぐらいの方が亡くなられるのではないかという大変な数字も実は出ておるわけでございます。エイズ対策を進めていく上でどうしても法律の制定というものは必要だと思うわけでありますが、その点についてどのようにお思いでしょうか。北村参考人にお伺いいたします。
  17. 北村千之進

    北村参考人 その件につきましては、先ほど三重代表樋江井さんからもお話がありましたが、余り法制化しますと逆に患者さん自体が地に潜ってしまうという、これは患者でなければわからない一つの心情でございますが、そういうことが実際に患者さんから発言されております。したがいまして、このエイズ法案そのもの血友病患者のためにあるのか、あるいは一般社会人、ホモとか注射とかいうものでかかったいわゆる一般エイズ、これとどういうふうにして分けていくかということが、私は政府のやり方に非常に疑問を持っておりますし、もしこれがうまくいきましても、血友病患者エイズ患者には間違いないという烙印を押されるというところに非常に恐ろしいといいますか心配、危惧があるわけであります。ですから、これは恐らく全国方々はこのエイズ法案に対しては反対の意向があるだろう、私はかように思っております。ですから、この点については政治的な面でこれを補っていくということは恐らく難しいのじゃないか。むしろ、先ほど言いましたが、廃案ということもございますが、それに近い行き方をしてもらう。私としては、現在のこの法案そのものをもう少し検討して、そして先々によりいい案があればその方向に持っていっていただきたい。こういうわけで、法案反対と同時にこれを引き延ばしをしてもらうということも考えておるわけでございます。  以上でございます。
  18. 片岡武司

    片岡(武)委員 ありがとうございました。  余り時間もありませんので、もう一つ質問をさせていただきたいと思います。  皆様方の主張の中で、具体的にただいまの血友病患者皆さんの中において自己負担の一万円の解消の要望が実はあるわけであります。これは患者さん全体のことについてなのか、あるいはエイズ感染者のみについてなのか、その点お答えいただきたいと思うのでありますが、北村さんでできればお願いしたいと思います。
  19. 北村千之進

    北村参考人 今の一万円の負担の問題は、これは血友病患者要望でございます。何となれば、一万円負担というのは血友病患者のみに与えられた一つ負担でございますので、エイズ救済はまた別と考えて、とりあえず血友病患者の一万円負担、これは現在日本では十五県下くらいは既に無料化になっております。というのは、あとの一万円は地方自治体が負担しておるわけです。約三十県以上がまだ国なりの一万円負担、あるい は中には三十歳までは無料にしてやろうというところも五、六県下ございます。  そんなような実態でございますので、この希望は、やはり全血友病患者に対する一万円の助成をしていただきたい、こういうわけでございます。
  20. 片岡武司

    片岡(武)委員 ありがとうございました。  時間が参りましたので、終わります。
  21. 稲垣実男

  22. 池端清一

    池端委員 参考人皆様におかれましては、御多用中、かつまたこの猛暑の中御出席をいただきまして、貴重な御意見を賜りましたことに厚く御礼を申し上げる次第でございますし、また伊藤参考人については、本当に勇気ある御発言をいただきまして、感謝にたえないところでございます。  ただいまもお話ございましたが、本来このエイズに無縁な血友病患者皆さん方が、エイズウイルスに汚染された輸入血液凝固因子製剤の投与によってエイズに感染したということは、まさに日本医療史上例を見ない悲惨な状況でございまして、私も心の底から国と製薬会社責任について極めて重いというふうに感じ、憤りを覚えるものでございます。ただいま、法案については皆さん反対であるというはっきりした態度の表明がございました。いろいろこの法案には問題点があるわけでございまして、私ども皆さん方の気持ちを体して、これからもひとつこの委員会で十分な審議を尽くしていきたい、こう思っております。  そこで、具体的に北村参考人伊藤参考人お尋ねをするのでありますが、実は五月十九日の本委員会でいろいろ質疑をいたしました。その席上藤本厚生大臣は、血友病エイズ患者については、一般愚者と異なっているので別に取り扱いをするのも一つの考え方であると思う、私はこの意見に賛成という立場ではございませんが、そういう趣旨発言をしておるわけで、いわゆるこの法案から血友病患者皆さん方を切り離していくことも一つ方法ではないかということを示唆されたわけでございます。この大臣の見解について北村参考人伊藤参考人はどのような御所見をお持ちなのか、ひとつその点をお尋ねをしたいと思います。
  23. 伊藤修

    伊藤参考人 予防法案から血友病患者を除くという議論ですが、これにはやはり疑問があると思います。例えば文章や言葉で除かれたとしても、エイズ予防法案自体が成立してしまったら、血友病患者の家族に対する偏見差別は救われるものではないと思われます。いわゆる血友病患者除外論には、患者配偶者及び子供といった家族に対する配慮がなされていないと思われます。
  24. 北村千之進

    北村参考人 ただいまの御質問に対しまして、実はエイズ患者の中の血友病だけを別にするという、これは水と油を分けるのは簡単なんですが、同じ水の中で水を分けるということは非常に難しいのじゃないか、もうこの一語に尽きると思います。ですから、一般のいわゆるエイズ患者血友病患者エイズ患者とを別にしてというようなことは、これは夢を見るようなことになる、かように思っております。ですから、はっきりとこれは言うなれば、先ほどから言いますが、廃案まで持っていくのが妥当じゃないかなと思いますけれども廃案というよりも私はむしろもう少し検討してもらいたい、英知を絞って検討してもらいたい、こういうように思っております。  以上です。
  25. 池端清一

    池端委員 報道によりますと、自民党の社会部会では「血液製剤によるエイズ患者感染者のための総合対策(試案)」なるものをおまとめになったわけでありますが、これは御承知でしょうか。もし御承知ならば、この七項目の「総合対策(試案)」についてどのような御所見をお持ちでございましょうか。先ほど北村参考人から、まずは血友病医療費一万円の解消、全国一律にこれを解消すべきだ、こういうお話もございましたが、この七項目の試案についての御所見を北村参考人、それから伊藤参考人にもお尋ねをしたいと思います。
  26. 伊藤修

    伊藤参考人 先ほども申し上げましたように、先日来からの救済対策案は、患者側から見ますと、これらの救済策はいまだ現実からは遠いと私は感じています。それで、エイズ救済策としましては、発症予防治療体制の充実などの医療的救済治療費公費負担生活補償費の支給などの経済的救済患者参加型のカウンセリング体制整備拡充などを先ほど挙げましたが、やはり経済的救済において、例えばエイズ患者が死亡した場合の弔慰金、それから血液製剤によるHIV感染者すべてに対する見舞い金、それから生活補償費、差額ベッド代や通院費を含む医療・療養費の公費負担、これらを早急に実施してもらいたいというのが私の気持ちです。
  27. 池端清一

    池端委員 時間がございませんので簡単に申し上げますが、救済対策を実施するに当たって、感染者患者さんのプライバシーを守ることが極めて重要でございますが、どのような措置を講じていったらいいか、何か特別な御注文あるいは御提言、こういうようなものがございましたら、北村参考人にひとつお尋ねをしたいと思います。救済策の実施に当たってです。
  28. 北村千之進

    北村参考人 先ほど私、意見発表のときに述べましたけれども、その方法といたしましては、私は交通事故を例にとりましたが、交通事故の場合は、事故を起こした場合に警察の申請、証明、それと医者からのこれだけの費用がかかるという見積もりあるいは受け取り、こういうもので処理ができるわけですね。私は、血友病エイズ患者もそのような形でやってもらいたい。ということは、余り行政、政治あるいは地方自治体が介入せずに、そのかわりに血友病専門医師団、専門医師というのはこれは厚生省の方から任命してもらって結構なんですが、その専門医師方々の証明があれば補償とかあるいは賠償とかいうことにそのままつながっていくという行き方をしてもらいたい、なれば患者と医者しか血友病ということがわからずに済んでしまうというような考えを私は持っています。ですから、交通事故の例を一応考えていただきたい、かように思っています。
  29. 池端清一

    池端委員 どうもありがとうございました。  これで終わります。
  30. 稲垣実男

    稲垣委員長 沼川洋一君。
  31. 沼川洋一

    ○沼川委員 本日はまことに御苦労さまでございます。また、血友病患者であるということだけでエイズ、こういうふうに誤認されます非常に厳しい社会の中にあって、勇気を奮い起こして御出席されました皆様に心から敬意を表するものでございます。  時間がございませんので、何点かお尋ねしたいと思います。  一つは、特に日本の場合のエイズというのは、欧米、アフリカ、そういうところと比べますと、やはりアメリカからの輸入血液製剤によって感染された。国の発表によりますと、感染者の中で九三%が血友病関係の方である。そういう点を考えますと、国あるいは医師を非常に信頼して打ち続けた薬によって感染された、まことにお気の毒だと思いますが、あわせて、やはりこれは国、企業の責任行政のミスというものは非常に重大な責任があると私は思うわけでございます。そこで、先ほどお話を承りながら私なりに感じたわけでございますが、今そういう責任をあいまいにしたまま救済策がどうも先行しているような、そういう嫌いもございます。そういう中で、ある団体からは、やはりまず国の責任、企業の責任を明確化すべきだ、これがはっきりされない段階での救済策というのはこれは全く無意味だ、本当の救済策とは言えない、抜本的な救済策を立てるのだったら国、企業の責任を明確化してきちっとした補償をすべきだ、こういう御意見がございますが、その点についてはいかがでございますか。御意見をお聞かせください。
  32. 伊藤修

    伊藤参考人 私は救済策責任問題、それを別に考えています。やはり救済策というのは、経済的に困惑する前にどうしても早く実施していただきたいことです。それから責任問題を問う、例えば薬害訴訟に関しても、かなり長い時間とそれから費用がかかりますので、個人的な薬害訴訟を起こすことは本人にとっては得策ではないと考えて います。  それで、やはり私としましては、薬害訴訟問題を別にして、責任はあると僕も考えていますけれども、その責任をはっきりさせるためにはやはり司法の側にゆだねたいと思っています。ただ、訴訟問題となりますとどうしてもプライバシーの関係がありますので、そこに踏み切れないジレンマがあるということですね。それと結局救済策とは全く別な話で、救済策はやはり被害を受けた者が早く実施してほしいという、これは願いですね。  以上です。
  33. 北村千之進

    北村参考人 ただいまの救済の件につきましては、これは先ほど伊藤さんが申しましたようになかなかデリケートな問題が起こってくる、かように思っております。したがいまして、この救済策については、これも私が先ほど申しましたように、やはり医師患者、この二点でしっかりと気脈を相通じ、信頼をし、そして医者の方もそれに対する情熱を燃やして、二者の中でそれを処理していく、私はそれを希望しておるわけであります。と申しますのは、そういうことによってほかにエイズの問題も漏れない。それから、それにはやはり医者というものを信頼しなければいけないわけなんですけれども、為政者の立場でいきますと、どうしても医者だけでは頼りないからやはり行政の面でもこれに携わっていこうというお気持ちがあると思いますけれども、やはりお医者さんはお医者さんとしてのプライドを持っていますし、自信もあります。ですから、専門医に対する尊重ということで、医師患者の中でそれを話し合いしていく、そしてそれに対する補償の問題、治療費の問題、これを考えていくというふうに私はやりたいと考えております。  以上です。
  34. 沼川洋一

    ○沼川委員 御案内のように、ひところのエイズについてのマスコミの報道の過熱ぶりといいますか、ちょっと異常と思えるほどそういう報道がなされた時期がございました。最近は幾らか静かになったというものの、やはり正しい知識の普及がなされてない、こういうことをまだまだ感ずるわけです。したがって、先ほどもお話の中に、今度のこの法案が成立すると、結局蔓延防止に何ら効果がないばかりか、かえって血友病方々社会差別がますます増大する、そういう不安を率直にお述べになっておりましたけれども、もしよければ、一つ二つの事例でも結構でございますので、そういう一つ差別の実態についてお話しいただければ幸いだと思います。
  35. 伊藤修

    伊藤参考人 例えばこの原案にあります第十一条に規定されている伝染病の適用、ここら辺をやられますと、例えば学校保健法との連動をされた場合などの状況を考えますと、エイズ感染児童が学校から排除されかねない環境になるのではないかと血友病患者の親たちは考えています。  それで、実態としては十分に把握はしておりませんけれども、やはり二、三学校の中での差別に関して、黒板のところに血友病患者エイズ患者であるというようなことを書かれて登校拒否のような感じになった例とか、就職に関しまして、就職試験におきまして血友病患者であると伝えたおかげで最初採用された者が採用を取り消されたとか、あと診療拒否の問題ですね、歯医者さんとか、そういう感じのお医者さんでも、やはり正しいエイズ知識の普及が必要にもかかわらず、診療拒否がたまに見られるということですね。それから、職場での環境がいづらくなり、みずから退職していった例とか、そういう二、三の例はあります。
  36. 沼川洋一

    ○沼川委員 どうもありがとうございました。
  37. 稲垣実男

    稲垣委員長 田中慶秋君。
  38. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 参考人皆さん、大変早朝から、また遠方のところ、御苦労さまでございます。また、日ごろ皆さん方がそれぞれ今日の社会環境の中で大変屈辱を受けたり、あるいはいろいろな問題がという形で先ほども述べられております。皆さんの御労苦に心から敬意を表したい、こんなふうに思っております。  さて、この血友病の問題でありますけれども、まず、先ほどもお話が出たわけでありますが、大体五千人程度の人たちがおりますけれども、現実に組織化されている人たちが約二千五百人程度、半分ぐらいだということで、これから医療関係の問題が、全国的に患者及び感染者の万全を期するためにということで、やはりネットワーク化といいますか組織化が心要だろうと思っておりますし、また北村さんもそれに努力をされているというお話を聞かされたわけでありますけれども、具体的にどのような形でこの組織化なり、あるいはまたこれに基づく参加といいますか、そういうことを考えられているのか、お伺いしたいと思うのです。
  39. 北村千之進

    北村参考人 先ほど私の意見発表のときに申しましたが、この血友病の会ができたのが昭和四十二年、それからずっと約二十年間私が副会長会長をやってまいりましたが、私は患者でもなければ、あるいは自分の家族にも患者はおりません。私の場合は縁があって、ボランティアというようなことから会長を引き受けてきたわけです。と申しますのは、患者さんが会長になった場合に、軽症であればいいのですけれども、重い場合は、例えば厚生省から呼び出しがあった、何月幾日の何時に来い、行こうといっても突然の出血で行けないというような場合があるわけですね。名古屋の場合でも、愛知県の県庁ですらそういう場合があるわけなのですよ。ですから、健常な私が会長の役を仰せつかって、東から西まで走るということはたやすいことで、そのためにこの会の発展もあったろうと私は自負しております。  ところが、その後血友病そのものがだんだんと活動が地につきまして、というのは最初のころは、大会をやりましても、写真を撮ろうとすると絶対写真は拒否したものです。それが五、六年後に、写真を撮るともう自分から出ていって写真の中へ入るというところまで進んだわけですね。そうしてようやく血友病の何たるかがわかり、また社会からも理解を得てきたところ、ほっとしたときに、実は私はもう今後血友病の運動というのはちょっとやれないな、何をやろうかということを考えたときがあるのです。それは、既にもう医療の関係が完備した、医療費の問題もそこまでいったということで、患者としても家族としても非常に楽になった、さて今度はあと何をやるかというときに、先ほども伊藤君から話がありましたように、私としては就学、就職、結婚という教育問題、社会問題に重点を置いていこうと思っておった矢先に、突然エイズ問題が起こったわけです。ですから、また振り出しに戻ったというか、振り出しよりもまだひどいことになったわけです。ですから、我々としても今本当に戸惑っておるのが事実なのです。  ただ、自分たちの権利ということでいろいろ意見を出しておりますけれども、その点もひとつ御理解願って、とにかくこの法案についてのことは再三考えを新たにしてもらって、そしてだれもが悔いのないような、仮に法案をつくるにしても、血友病患者一般エイズ患者も決して地に潜らないというような、こんな法律はちょっとないでしょうけれども、何か英知を絞っていい方向へやっていただきたい、これが私の念願するところでございます。  以上です。
  40. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 やはりいろいろな諸問題があるから組織化できないのだと思うのですね。一つにはプライバシーの問題もあります。もう一つは、やはり組織化するためにはそれぞれ生活補償の面とか見舞い、さらにはまたそれをもう一歩突っ込んでいけば年金の問題、こういう形になってくるのだろうと思います。  先ほど交通傷害の問題を一つの例にとられているわけであります。そういう形でこの法案廃案あるいはまたもっと慎重にということ、それはよくわかりますし、また拙速にやるものじゃないと思っております。皆さんのいろいろな御意見を聞きながら、より充実した法案をつくるとか、あるいはまたそれに準じた行政指導を行うためにいろいろなことをしなければいけないのだろう、こんなふうに思っているわけです。特に問題は、やは り責任の問題も出てこようかと思います。行政的な問題あるいはまた血液製剤を売るという形で企業責任の問題等々含めて、これからの全体的な補償をする場合において基金をつくっていくのか、こういうことまで踏み込んでやっていかなければいけない問題ではないかな、こんなふうに私は感じているわけであります。そのことによって先ほど指摘をされました差額ベッドの解消もできるでしょうし、あるいはまた医療に関する負担のすべての解消もできるだろうと思います。ですから、そういう具体的な条件的なものと、もう一つはソフトといいますかプライバシーの問題、人権の問題、こういう二つに分けてこの問題を大きく検討していかなければいけないのだろうと思っております。  そういう点で、先ほど法制化することによって感染者が潜在化するのではないかという御指摘もちょうだいしました。また、この感染者に対して具体的に救済をするためにはという形の中で、少なくとも見舞い金、生活保護等々の問題を含めて御指摘あるいは御要望もちょうだいしたわけであります。皆さん責任でこの病気になったわけじゃないわけですから、皆さんがそういう点では法案から血友病患者を除いてもらいたいという、当初そんな話も聞きました。しかし、全体的に生活環境といいますか条件を配慮すると、逆にそれも除くとやはりそれはまずい、こういう御指摘もいただいて私たちも苦慮をしているわけです。しかし、これから問題は、行政に対する対応の姿勢、こういうことが一番重要ではないか、こんなふうに私は考えておりますので、最後にその一点だけを絞って聞かしていただきたい。これは伊藤さんですか、今まで御苦労されているわけでありますけれども、その辺いかがでしょう。
  41. 伊藤修

    伊藤参考人 先ほど言われた救済ネットワーク体制の確立、これは患者としても非常に希望しているところだと思います。これは患者参加型のカウンセリングの充実、それから治療においても補償においても、やはりその救済ネットワークの確立が一番大切だと思います。  それで、二次感染を防ぐには、やはり感染者が自発的に匿名で受診できるような検査体制だとか、偏見差別をなくした社会環境をつくるとか、そういう環境づくりのもとで正しいエイズ知識の普及が最も大切だと思います。その知識の普及の中心になるような救済ネットワーク体制というのを切に要望しているわけなのですね。それで、できれば血友病専門医を中心にしたそういう救済ネットワークの確立を求めています。
  42. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  43. 稲垣実男

    稲垣委員長 児玉健次君。
  44. 児玉健次

    ○児玉委員 参考人として参加していただいた御三人に心からお礼を申し上げます。  最初に、伊藤参考人にお伺いしたいのです。  先ほど伊藤参考人は、エイズ予防法案反対である、これは廃案にした方がいい、そのようにおっしゃった上で、この法案予防効果があるのかどうか、それからこの法案によって人権が守られるのかどうか、二つの問題を出されて、そして特に予防効果があるかどうかという点では、患者を医療機関から潜行させるというふうにお述べになったと私は伺いました。埼玉という東京に非常に近接した地域で患者団体の中心になって御苦労なさっている伊藤さんのお立場で、患者が潜行していくという、そこのところをもう少し具体的に私たちに御陳述いただけないかと思います。よろしくお願いします。
  45. 伊藤修

    伊藤参考人 エイズ予防法案の具体的な問題点になると思うのですけれども、まず第七条でありますが、医師の、エイズ感染者の氏名及び居住地の都道府県知事への通報義務は、エイズ感染者医師への受診をためらわせると私は考えています。よって、エイズ感染の蔓延を防止することにはならず、かえって隠れた感染者の増加を招く結果になるのではないかと思います。それで、先ほども言いましたようにエイズ感染を防ぐには、感染者が自発的に、しかも匿名で受診できるような検査体制が一番必要だと思います。このことは医療関係者等の論じるところだと思います。  それと、血友病患者に関して言うならば、血友病患者医師との信頼関係が今非常にいい結果を生んで、治療上の効果を非常に上げているわけなのですけれども、その信頼関係を、第三者の、例えば都道府県知事、職員だとか、そういう人間が間に入る可能性があるのではないかと危惧しているわけなのです。そのところがやはり一番心配だということです。
  46. 児玉健次

    ○児玉委員 重ねてお伺いしますが、今のお話、非常によくわかりました。医師患者との人間的な信頼関係につきましては、先日この委員会で私も取り上げたところなんですが、今伊藤参考人がおっしやったお医者さんとの信頼関係、それはどういった要素によって築き上げられているのか。ちょっと抽象的な質問で恐縮ですが、お答えいただければと思います。
  47. 伊藤修

    伊藤参考人 血友病患者の場合をちょっと申し上げますと、五十八年に自己注射の許可というのが出まして、その許可が出て前後して医療関係者と血友病患者の間でカウンセリング、講習をたくさん行いまして、医療的なことに関して密接に関係を持って、それで現在自己注射を投与を受けているわけで、その五十八年以前もやはりお医者さんと患者さんとの関係というのは非常に強いわけなんですね。その関係は、血友病患者は生まれてから死ぬまでどうしてもお医者さんに行かなくてはならないという事情がありますので、お医者さんと患者との信頼関係というのが一番大切だと思います。
  48. 児玉健次

    ○児玉委員 樋江井参考人にお伺いしたいと思います。  今、皆さんの団体の会員皆さん方の中で、一つ発症予防治療に対する希望といいますか期待、エイズの発症を予防する、その点についての治療体制を確立する、この点についての期待だとか、安全な血液製剤に対する希望が強いと思うのですが、そのあたりについて伺わせていただきたいと思います。
  49. 樋江井善夫

    樋江井参考人 薬の方のことでは、患者は全員ずっと前から国内のということで望んではきたのです。なかなか国内の血液では賄えないということで、患者日本の薬ということを希望してはおるのですが、先生方を信頼して薬はいただいておりますので、希望はするだけのことであって、実際には輸入血液製剤を使って治療していたということになるわけですね。だから、現在でも一日も早く国内の血液で何とか賄うことができないかということで、患者は全部いろいろと総会時期なんかにも念願はしておる次第ですけれども、なかなか……。この前にも日赤の方からも何か中間因子製剤が出るという話は聞いたのではありますが、それも立ち消えというような感じで、なかなかお国の方が国内の血液で賄うということに力を入れてくれない、私たちはこれを本当に残念に思っておる次第でございます。
  50. 児玉健次

    ○児玉委員 では最後質問伊藤参考人に。同じことなんですが、発症予防についてどのような体制、国側はそこにどのような努力を傾注することが必要だというふうにお考えになっているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  51. 伊藤修

    伊藤参考人 血友病患者エイズ感染した者の共通した気持ちというのは、やはりエイズ特効薬が開発されるまで何とか生き延びたい、それだけなんですね。それで現実的に申しますと、やはり日を追ってますます症状が悪化している血友病エイズ感染者どもおりますし、そういう人たちの共通した気持ちは、とにかくエイズの特効薬が開発されるまで何とか生きたい、生き延びたいという気持ちが共通した気持ちだと思います。そのために、例えば発症予防に役立つものとか免疫促進に役立つようなものとか、そういうようなものをどんどん自分ながら試してみたり、お医者さんとの信頼関係の上で試してみたりということなんですが、結局そんなふうにして早く開発されるまであすへの希望をつないでいるような状態です。  その発症予防に関してですけれども、先ほど言 いましたように、救済ネットワーク体制の確立の中から浮かび上がってくるものだと考えていますので、血友病専門医を中心としたそういう救済ネットワーク体制の中で、発症予防に関しての情報をもっと正確に早くそういう不安な患者さんたちに知らせしめることが大切だと考えています。
  52. 児玉健次

    ○児玉委員 どうもありがとうございました。
  53. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で北村参考人樋江井参考人伊藤参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。     ─────────────
  54. 稲垣実男

    稲垣委員長 次に、全国ヘモフィリア友の会会長代行、東京ヘモフィリア友の会会長保田行雄君から御意見を承ります。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序は、まず参考人から二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員諸君からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため参考人に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言を願います。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、保田参考人にお願いいたします。
  55. 保田行雄

    ○保田参考人 全国ヘモフィリア友の会会長代行の保田でございます。  私は、全国ヘモフィリア友の会代表いたしまして、エイズ予防法案に関する参考人としての意見を述べさせていただきます。  御存じのとおり、我が国の血友病患者約五千名の四割、二千人が、その治療に用いた血液製剤からエイズに感染をいたしました。他の感染原因で感染した人たちが数十名にとどまっている日本でこれだけの犠牲者血友病患者から出たということは、いかに血友病患者エイズ禍が悲惨な深刻な実情にあるかを物語っていると思います。とりわけ、昨年九月厚生省の研究班の報告にもありましたけれども感染者の約半数が未成年者であります。これは私たち血友病患者を襲ったエイズ禍の極めて深刻な悲劇性を物語るものであります。私たち血友病患者、家族そしてきょうここにはまだ来られない幼い血友病の子供たちの将来は、まさに我が国のエイズ政策が本当に正しく遂行されるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。その意味で、私たちは現在政府国会に提案をしています後天性免疫不全症候群予防に関する法律案、いわゆるエイズ予防法案に強い懸念を持っております。そして、できるだけ速やかにこれを廃案にしていただきたいというふうに願っております。  その理由について若干述べます。私たちがこの法案反対する最も大きい理由は、この法案のよって立つエイズに対する基本的な考え方が間違っているのではないかということです。  エイズは、一九八一年に報告をされました新しい疾病です。そして、感染症です。しかし当初、この感染症としての特徴がわかる極めて短い期間を別にすれば、アメリカにおける旺盛な科学的な調査によって、この感染症としての特徴、とりわけ感染経路、感染力等については極めて早期に解明をされました。当初原因がわからなかった時期においては、現代のペストであるというふうに恐れられ、そしてその致死率が高いことから極めて恐怖感を持って社会に受け入れられました。しかし、その後の研究は、輸血や周産期における母子感染を除けば、これは新しい性行為感染症の一つです。人から不特定に拡散をするということはなくて、大人の責任ある理解と行動によって回避できる病気であるということがはっきりしてきました。このことはWHOを問わず、世界の趨勢であります。また、それが科学的な見解であると私は考えております。  しかし、日本ではまだこの疾病の特徴が正確に理解されてないように思われてなりません。感染力は極めて強く、そして不特定であって、極めて恐ろしい病気であるというふうに社会に印象づけようとしているというふうに理解されてなりません。私たちは、エイズ予防法案がこのように世界での研究や対策の動静とは別に、極めて恐ろしい病気として考えて立案されたというふうに考えております。この法案を中心的に推進をしているある参議院の議員さんが「日本エイズ」という本を書いておられます。最近出た本です。その中でエイズの疾病としての特徴を明らかにしておられますが、このように書いておられます。  まず、表題は「エイズはペストをしのぐ」というタイトルの中で、「エイズはかつて人類が遭遇した疾病の中で最も恐ろしいものと言えよう。致死率が極めて高いこと、性行為による感染率が高いので拡散しやすいこと、また治療が困難なことからペストに例えられる。この恐ろしいエイズを「現代のペスト」にすることは、何としてでも防がなくてはならない。」そしてまたさらには、「エイズはある面ではペスト以上に恐ろしい。ペストはペスト菌によって起こる感染症で、ネズミからノミを媒介して感染する。しかし、エイズウイルスは人間の体液や血液に潜んでいるために人間を媒介として感染する。恐らくエイズウイルス、はペストが流行したときのスピードの何倍もの速さで運ばれるに違いない。」だから、知事が健診命令や調査権あるいは生活指導権を持つ今度の法案が必要であるということを力説しておられます。しかし、このような見解は誤りであると私たちは断言できると思います。  エイズは、極めて恐ろしい病気であるということを強調し、あたかも人を介して不特定の感染が起こるかのように描かれております。感染者は中世のネズミ以上に危険な存在だとされております。だがしかし、エイズが報告されて既に六、七年がたちますが、その中でも血友病患者エイズ感染世界的なもので、恐らく全世界に数千人が感染をしていると思われます。そしてその感染は既に終わってから数年はたっております。しかし、血友病の家庭に配偶者を除く家族に感染した例は報告されていないのです。家族内でおっても親と子、兄弟同士の感染というのはあり得ないのです。いわんや社会生活において学校や職場で感染が起こるということはあり得ないことなのです。それでは、エイズは極めて予防しなければいけない疾病であるから、社会に過剰でもいいからエイズに対する恐怖感を植えつけて予防しようという考えに出ているのでしょうか。そうであるとしたならば、その考え方は感染者人権や生活、とりわけ日本においては国の過誤によって二千もの血友病患者感染者を出してしまったこの実態を全く見ない非情なやり方、非道な考え方だと言わなければなりません。感染に加えて、さらに予防法案による締めつけによって社会を防衛する、さらに二重に犠牲を強いるということなど許されるものではないと私たちは考えています。  国がまずやるべきだったことは、法案をつくるのではなく、このようなエイズに対する無理解偏見をたしなめ、正すことだったのです。予防に関する正しい認識がされるよう努力し、感染者血友病患者に対する偏見差別をなくすことが必要だったのです。ところが、政府が行ってきたことは、神戸や高知の例のパニック騒動でも御存じのとおり、その中での法案作成だったのです。したがいまして、いまだ私たち全国血友病患者には、感染者に対するあるいは血友病患者であるということでのさまざまな差別偏見があります。これらを具体的に、就業や教育、社会生活の場面で感染者であるということであっても差別されるいわれはないのだということを正しく社会に伝えることが必要だったのです。  私たちは、エイズ予防が必要でないと言って いるのではありません。私たちは当初より、エイズは新しい性行為感染症であり、感染の予防は性に対する新しい考え方に立脚をして現実的になされるべきことを主張してまいりました。また、それが一番の対策であるということも主張してまいりました。だから法案が作成、提案されました段階で、私たちは、エイズ一つの新しい性行為感染症である、公衆衛生学上はそうであるということをはっきりさせて、欧米でとられているような感染者あるいは疑わしい人たちの匿名の検査・治療施設の創設、その他感染者の徹底した人権を守る等性病予防法を抜本的に改正をして、これを活用して対策を立てるならば立てられるべきであるということを主張してまいりました。しかし、政府でとられた方針はエイズ法案という単独立法です。これはやはりエイズを特別視し、際立たせ、あたかも感染者が何か危険なように植えつけてしまう、そういう役割を果たすのではないでしょうか。  私たちは、この点で法案エイズという病気に対する基本的な理解が間違っていると思います。したがいまして、法案については速やかに廃案として、公衆衛生学、性教育その他専門家の協議で日本におけるエイズ対策として間違いのない方策を早急に打ち立てられることを願っております。  次に、救済問題です。  私たちは、ことしの二月東京で開いた総会におきまして、血友病患者エイズ感染薬害であって、国、メーカーはその責任を認めて被害の完全救済をすべきことを決議いたしました。それは、私たちがエイズが騒がれた時期の血液製剤治療を受けた者の一人一人の体験として、エイズに感染することなど全く予想しないでこの薬は安全であると信じて使用してきたからであります。しかも、アメリカでは八二年、昭和五十七年ですけれども血友病からのエイズ症例は報告をされております。血液製剤からの感染で発症をした八二年でも、既にアメリカでは子供が発病をしております。そして、血液製剤についての対策がとられていったのです。私たちが一九八三年、昭和五十八年に厚生省に要望書を出しました。そのときに資料を作成していて私たちも鮮明に覚えていることは、日本血液製剤がそのルーツをたどれば、原料という面から見れば、国内のメーカーが国内で生産をしているものであっても、アメリカ、いわばエイズの流行地域であるアメリカから血漿を輸入してつくっている。したがって、ほとんどがアメリカの血液製剤、いわばアメリカの血友病患者と同じ感染のリスクにあるということを発見したことでした。それが国に対する要望をする動機だったのです。  私たちが素人で調べても、当時そういう認識に達していました。それがメーカーや薬事行政、血液の安全をつかさどる国にわからなかったはずはありません。そして、日本の血液は当時はエイズからは完壁に安全だったのです。日本に生まれ、日本治療をする日本血友病患者が、どうして安全な国内の血液を使わずにむざむざと四割までが感染をしなければならなかったのか。私たちは、これをやむを得なかったということは到底納得がいきません。その当時でさえも、私たちは安全な国内の血液から緊急に製剤がつくられることを要望いたしました。しかし、それは一本もつくられませんでした。それで安全な対策、必要な措置はすべてとられたと言えるのでしょうか。  私たちが一応エイズの感染から免れている加熱製剤を手に入れたのは六十年です。もう加熱製剤はどこでも手に入れられる時期と同じだったのです。そこまで何ら具体的な対策はありませんでした。だから、日本では血友病Aよりも軽い血友病Bの人たち、輸血等も十分治療できる人たち、あるいは軽症や中軽症の人たち、私たちの全国会のアンケートでも、血液製剤を月五回以上注射をする人たちというのは三〇%ぐらいです。年に数回という人たちもいます。そういう人たちも含めてエイズに感染をしていったのです。どうしてそういう危ない製剤を使わせたのですか。そのことに国は答える義務があると思います。日本において危険な非加熱製剤は一度も回収されませんでした。私たちが話し合うときによく出る話ですが、不凍液の入ったワインは回収されました。私たちが治療として血液の中に入れる製剤について重大な副作用が考えられるのに、どうして回収されなかったのでしょうか。だから私たちは、国がその責任を認めて、被害をすべて完全に補償すべきことを要求しているのです。  国は一応救済案なるものを発表しております。発病予防治療や研修やその他については、私たちが従前から要求してきたものです。しかし、エイズ法案との駆け引き的に用いられてきた新規のものとしては、発病患者に対する医療費の一万円の差額の負担、あるいは医療関連経費、交通費等の感染者に対する支給だけです。これらは感染者患者であればいかなる感染原因であっても、日本の国、福祉国家としては当然なすべき施策です。血友病患者エイズ感染被害を償うという意味ではなくて、感染者患者であれば、みんなが大変です。血友病患者であろうがなかろうが、これぐらいのことは本当に国が責任を持って、緊急であれば速やかにすべきことです。しかし、血友病患者エイズに感染していった経緯を考えると、それで救済がなされたとか一歩前進だとかいうことは到底私たちは言うことはできません。このことを強く主張したいと思います。  もう一つは、血液製剤の国内自給の実現です。私たちはいまだ日赤から安全な血液製剤を受けていません。イギリスでは国内自給を実現したと新聞報道がなされました。この開きがどうしてできたのか。私たちは、我が国の安全な献血から血液製剤が早急につくられることを望みたいと思います。  最後に、全国の家族や患者、あるいは自分の感染も知らずに今元気に過ごしている子供たちを含めて、本当に自分たちのガラスのような生活を自分たち家族で今血友病患者は守っていると言えます。耐え忍び、じっと我慢をしているというのが本当に実情ではないでしょうか。この血友病患者と家族に、エイズ禍の悲劇、重荷に加えて、さらに社会的な重荷になることを課してはならないと思います。法案をつくることは、本当に家族がぎりぎりのところで生活をしているところに決定的な一撃を加えることを意味します。私たちは、仮にも法案ができるということになれば、エイズに感染させられ、そして社会生活をも奪われるということで二重に悲劇を負うことになり、また、国や国会に対する信頼を失ったまま生涯を終わらねばならないと思います。そういう悲しい体験をさせないでいただきたいと思います。一誤りを繰り返してはいただきたくないのです。私たちは、日本におけるエイズ対策が前進することを願っています。そして、私たちのエイズに対する対策、いろいろな考え方は間違っていないと思います。エゴではないと思います。そういう意味で、私たちの今申し上げた三つの点をぜひ念頭に置いて、今後のエイズ予防法案については皆さんで十分御議論をいただきたいと思います。一刻も早く廃案として、全国患者、家族からその社会的な重荷を解いてください。それはすぐにでもできることだと思っています。  ありがとうございました。
  56. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  57. 稲垣実男

    稲垣委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤静雄君。
  58. 佐藤静雄

    ○佐藤(静)委員 保田先生、お忙しい中を本日は本当にありがとうございました。また、ただいまは貴重な御意見をお聞かせ願いまして、本当にありがとうございました。  ところで、保田先生のやっておられる全国ヘモフィリア友の会というのは、先ほどの北村会長の会から分派された会だとお聞きしておりますけれども、加入されておる世帯数は何世帯なんでございますか。
  59. 保田行雄

    ○保田参考人 従来の全国ヘモフィリア友の会と 同一でございます。先ほど意見を述べられた北村会長は昨年の三月一日に会の方で解任ということになりまして、その後を受けて北海道の会長会長を受け継いだ。その後、北海道の会長辞任をして、私が副会長を務めた関係上代行を務めさせていただいている。  全国ヘモフィリア友の会で今のところは別段脱退等はありませんので、従来どおり約二千世帯、二千人ぐらいの会であります。
  60. 佐藤静雄

    ○佐藤(静)委員 わかりました。  保田参考人は、弱い立場にある感染者を保護することが必要であり、先ほどもお話しになりましたけれども、国が教育、職場、医療など社会生活のあらゆる分野で差別を禁止する施策を実施することが求められているのであって、それを法律をつくって対応するということはおかしいことだ、そういうことをいろいろな分野でも述べられておるわけでありますけれどもエイズ法案そのものエイズの蔓延防止に全く役立たないものだと言っておられるわけです。  しかし、大阪の事例にもあるように、多数の人々に感染させた可能性の高い者も現実に存在しておるわけです。これに対して、行政として蔓延防止のために本人から詳しく聞いて対処したいと思うのですけれども、プライバシーにかかわる問題でもあり、思うようにいっていないのが現実です。こうしたケースに対応するためには、行政としてある程度の権限を持って対処していくことが蔓延防止につながり、多くの人々に不安感を与えずに済むと思うのですが、その辺をどのようにお考えでしょうか。
  61. 保田行雄

    ○保田参考人 まず第一に、日本エイズ対策は、その大阪の例は詳しくは知りませんけれども、やはり特異な例をもってするのではなくて、大多数の国民を対象として、そして蔓延防止に役立つという観点から立法はまずされるべき必要があるだろうと思います。それにも増してやはりエイズは、感染をする、あるいは感染の疑いがある人たちにとってはそれ自体が一番の脅威なんです。だから、恐らく安心して検査を受けられる医療機関であるとか、あるいは抗体が陽性であるというふうにわかった場合の治療であるとか、そういうものがあればおのずとそういう弱い立場にある人たちの選ぶ道は決まってくるのじゃないでしょうか。神戸の事件でも、あれだけのパニックが起きましたけれども、結局保健所等で検査をした人たちから感染者は出ませんでした。大阪の例でも、写真週刊誌等に顔写真から載っています。いわばもう指名手配犯人ですね。だから、そういう犯罪扱いすることが感染予防につながるというふうには私たちは考えておりません。むしろそういう人たちも含めて、まじめに治療というものが大事なんだということがわかるような環境づくりが求められているのではないでしょうか。
  62. 佐藤静雄

    ○佐藤(静)委員 もう一つ参考人は、国や企業が責任を認めた上で救済策を講ずべきだ、また、エイズ予防財団を通じての給付は不適当である、そういう救済の内容、方法についていろいろな意見を今までも述べてきておられるわけですけれども、一方、血液製剤によるエイズ感染者は健康的にも精神的にも、また経済的にもまことにお気の毒な状態であります。一刻も早くできるだけの救済措置を講じてほしいというのが多くの皆さんの考えです。先ほどお話しになりました伊藤参考人お話にもありましたとおり、早く救済対策をしてほしい、そういう意見が非常に強いわけでありますけれども、先生はその辺はどうお考えでございますか。
  63. 保田行雄

    ○保田参考人 救済については、エイズ感染者患者というのはそれ自体で病人であり弱い立場の人たちです。そして、治療を受けるということになりますといろいろな経費がかかります。だから、今言われているような医療費であるとか医療関連経費の軽減措置等は、血友病患者であるかどうか、血液製剤で感染したかどうかを問わず、広く日本国民一般がそういう救済を受けられるように早急にすべきだと私たちは思います。そしてその責任は、やはり障害者福祉に責任を持つ国が責任を負うべきだというふうに考えています。  ただ、血友病患者エイズ禍について見ますと、これはやはりそれだけで救済だと言うには余りにもひどいことです。そういうことでは償い切れない内容があるのではないでしょうか。そういう意味で私たちは、生ずる被害の全面救済を求めているのです。だから、早急な救済措置、感染者一般あるいは患者一般に通ずるような救済措置を必要ないと言っているのではないのです。それは全員を対象にすぐさま国でやっていただきたいと思います。
  64. 佐藤静雄

    ○佐藤(静)委員 時間ですので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  65. 稲垣実男

  66. 池端清一

    池端委員 保田参考人、本日は本当に御苦労さまでございます。まことに貴重な御意見をいただきまして、非常に参考になりました。  そこでお尋ねをしたいわけでありますが、保田先生は、血友病患者エイズ禍薬害であり、かつまたプライバシーの侵害である、したがって、この法案は速やかに廃案にすべきだということを強く主張されました。十分理解できる点でございます。問題は、法律をつくることではなく、エイズに対する無理解差別をなくすることが重要である、こういう御主張でございました。  そこで、具体的にお尋ねをいたしますが、いかなる内容にせよ法律によるエイズ予防対策というものには反対である、こういうお立場なのかどうか端的にお尋ねをしたいのであります。先ほど先生はちょっと、例えば現行の法制、性病予防法等の改正のようなもので事足りるのではないかというような趣旨の御発言があったように私は聞いたわけでございますが、この点も含めていかなる形の法律をも必要としない、問題は予算措置あるいは行政指導等において十分なし得る、こういうふうにお考えなのかどうか、その点をお尋ねをしたいと思います。
  67. 保田行雄

    ○保田参考人 エイズ予防法案は、一つは単独立法である点、もう一つはサーベイランスとともに知事の二次感染予防の措置権を非常に強力に広範に規定をしています。それと守秘義務、大体この三つくらいの構成から成っていると思いますけれども、私たちはエイズが性行為感染症として公衆衛生的に問題になるであろうということはわかります。ただそうであるならば、その性行為感染症の拡散を防止する施策として現在何が求められているのか。法律が必要とするならば、どういった法律が必要なのか。例えばサーベイランス一つとっても法律が本当に必要なのか、そのためにはどういう内容を盛り込む必要があるのか、専門家でもいろいろ意見があります。私たちもそこまでは深くわかりませんが、すべての法制化一般が問題あるとは考えていませんけれども、現行の出されている政府案は知事の予防措置権を中心とし、そして単独立法である点、これはやはりエイズを特別視しているのですね。そういう点で廃案にしていただきたい、到底認められないという考え方です。
  68. 池端清一

    池端委員 保田さんは先ほど、国及び企業は薬害としての責任を明確にすべきだ、こういうことを強くお述べになられました。また、お聞きしますと、弁護団を結成して法廷闘争も辞さない、今こういう状況であるということもお聞きをしておるわけであります。そして被害の完全救済を国やメーカーはすべきだ、こういうことを強く御主張になりましたが、国やメーカーの責任被害の完全救済をすべきだという具体的な中身はどのようなものをお考えになっていらっしゃるのか、その辺ひとつ具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  69. 保田行雄

    ○保田参考人 現在、血友病感染者の多くは元気です。ウイルスが体の中に入りましても元気であればいいわけです。もちろん、出産ということになればかなり問題があると思いますけれども。  だから、今私たちがなぜ責任を認めてほしいと言っているかといいますと、この元気な血友病患者が発症する前に発病予防治療を本当に真剣にやっていただきたい、そのための責任はだれが持つのかということをはっきりさせるべきだという ことです。やはり、もとの体に戻してほしいというのが血友病患者皆の願いだと思います。もとの普通の血友病に戻してほしいということです。それが私たちが主張しています発病予防治療です。これは道義的とかそういうことではなくて、国とメーカーは責任を持たなくてはいけないということをはっきりさせたい。それと不幸にして亡くなられた、あるいは発病されている人たちの被害は悲惨なものです。それは私たちはお見舞い金程度では済まないものだと思っています。そういう意味で完全な救済をしていただきたいということを申し上げています。
  70. 池端清一

    池端委員 時間でございますので、終わります。ありがとうございました。
  71. 稲垣実男

    稲垣委員長 沼川洋一君。
  72. 沼川洋一

    ○沼川委員 本日は、保田参考人にはまことに御苦労さまでございます。また、ただいまは大変貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。  時間が余りございませんので、二、三点お尋ねしたいと思います。  冒頭お話の中にございましたように、現在日本エイズ感染者というのが特に血友病患者の中に絞られておりまして、五千人の中で約四割が感染していらっしゃる、しかも半数が未成年である。本当にお話にありましたように、私もまさにこれは深刻な問題であると思います。そこで、はっきり申し上げて、私もやはりこれはまさしく薬害であって、企業、国の責任は極めて重大であると思いますし、まさしくこれは行政のミスだと思います。  お話の中にもありましたように、五十八年にアメリカで第一号のエイズ患者が発見されて、その一年半後ですか、アメリカでは凝固因子製剤に問題がある、そういう警告をして、直ちに加熱処理製剤を承認したわけですが、残念ながら日本は二年四カ月もおくれてしまった、その間に確かに血友病の中でエイズ感染者がふえている、こういう問題を考え合わせますと、悔しいというか歯がゆいというか、皆様のお気持ち、私も想像以上のものがあるだろうと思います。したがって、先ほどもちょっとお話があっておりましたが、やはり救済対策がいろいろと問題になっておりますけれども、国及び企業の責任を明確化しない救済策というのは抜本的対策とは言えない、たしかそういう御主張を保田先生はずっとなさってきていると思いますが、この点について御意見をお聞かせください。
  73. 保田行雄

    ○保田参考人 現在幾つかの救済案が出ています。既に六十三年度予算として実施されているものも多くあって、新規事業としては先ほど申し述べたとおりのものです。やはり私が思いますのは、血友病エイズ感染の悲劇といいますか、その重荷を家族や患者だけに負わせていいのかということなんです。いやしくも国の認可した医薬品から感染をし、そしてそのことを、感染の危険性についてはつとに早くから指摘をされていたわけですね。そういう意味で私たちは、国が本格的な救済をやるには、それこそ裁判を待たなくても責任を認めて、本当に完全救済だと言える中身をやっていただきたいという考え方からそういう主張をしているわけです。
  74. 沼川洋一

    ○沼川委員 企業の責任という問題が実はこの委員会でも相当いろいろと突っ込んで論議されたわけでございます。ただし残念なことに、結局政府の答弁では、やはり感染者患者の場合に、実際にある時点で感染の原因に遭遇したという時間的、時期的問題を限定するというのは極めて難しい、したがって、どこの会社のどの製品で感染したかということはなかなか立証できない、こういう答弁がずっと続いたわけでございます。また、結局は不可抗力であった、こういうことが審議の中における政府の答弁でございますが、こういう点についてはどうお考えになりますか。
  75. 保田行雄

    ○保田参考人 一つは、危ないと思った段階で使用をやめさせるべきだったということです。やはり血友病患者エイズ感染の疑いのある製剤であるならば使わなかったということです。  それともう一つは、エイズ対策が問題になる以前から血液事業に関する中間答申等で血液製剤は自給すべきだということが言われておりました。エイズ感染が本当に問題になった時期に国産の、国内の血液を原料とした安全な製剤に転換できなかった真の原因は、この勧告を無視して輸入一本やりに頼ってきた国の政策の誤りにあります。広い意味では、国の責任を問う場合はまずそこが第一です。  それともう一つは、やはり医薬品である以上、危ないものは使わせてはいけないということです。だから私は先ほど申し上げたように、どうして数回しか使わないような患者が感染をしたのか、あるいは感染者の中には感染した時期が〇歳や一歳という子供たちもいます。こういう子供らがなぜ感染をしなければいけなかったのか。本当に危ないというふうに考えなかったのかどうか。そのことが今後こういった問題を起こさないためにも当委員会でもぜひ究明していただきたい点です。私たちが責任を追及するのは、そういう意味で国民の健康や生命が侵されたんだということをきちんと社会のルールにのっとって解決していただきたいということです。
  76. 沼川洋一

    ○沼川委員 これは最近のイギリスの事例で、私も非常に興味深く読んだ新聞の記事ですけれども、イギリスで血友病感染者の方が国を相手取って訴訟を起こしていらっしゃいます。日本の場合、今のままで行きますとなかなか国が責任を認めない、企業も責任を認めない、そういう状況がずっと続いた場合、訴訟も辞さないということを本気でお考えになっているのかどうか。  さらに、実は先ほどの団体の方の御意見では、日本の裁判は非常に時間がかかる。またそれを立証するというのは大変難しいし、そこまで待てない。それよりか救済措置をというような御意見もございましたが、その辺もあわせて保田先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  77. 保田行雄

    ○保田参考人 日本においても裁判をしたいという人はおります。私たちの会の目的は、やはり一番困難な状態にある切実な要求を持つ患者の利益を最大限に擁護してあげたいという気持ちです。そういう意味で、そういう患者さんや家族で裁判をしたいという方が出てきましたら、私たちの会としても全力を挙げて支援をしたいと思っています。  それと私は、血友病の今回のエイズ禍は、一つの疾病の四割が医薬品から感染をしたという、恐らく日本の戦後史にもない大きい事件です。この問題を単にかわいそうだということで終わらせるのではなくて、なぜこんなことが起きてしまったのか、その原因を徹底的に究明をして、二度とこういうことが起こらないようにしてほしいのです。そのことが恐らく感染をした血友病患者の方の真の願いではないでしょうか。それと、やはり私はエイズの感染の悲劇は本当に深刻だと思います。そういう意味で、見舞い金程度で済む問題ではないということをぜひ認識していただきたいという意味で申し上げています。  裁判の問題は、具体的にはわかりませんので……。
  78. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。
  79. 稲垣実男

    稲垣委員長 田中慶秋君。
  80. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 保田参考人、大変御苦労さまでございます。  今それぞれあなたのお話、貴重な考え方等々聞かせていただいたわけでありますが、今おっしゃられているように、この血友病の問題の原因というのは薬害である、こういう認識でおやりになっているわけでありますけれども、その責任が国及び企業、こういう形でその責任を明確にしなさいという、確かにそういうことも言えると思います。  もう一つは、それぞれ患者皆さん方といろんな話をさせていただいているときに、個人のプライバシーを守ってほしいという人権の問題がありました。もう一つは、今あなたもおっしゃられているように、その具体的な補償や生活環境、社会 環境を含めて何とかしてほしい。すなわち年金や、あるいはまた生活補償という問題を重点的に考えてほしい、おっしゃられること、そのとおりだと私は思います。  しかし、そういう責任という問題の中で、国及び企業の責任、こういう前提からして、訴訟という問題だけでその問題が解決できるかどうかということを考えたときに、むしろそういうことよりも、もっともっと今の制度の充実、これは法律にするのかどうか別問題として、これからいろいろな議論をしていかなければいけないと思うのですけれども、プライバシーの問題、あるいはまた今言った補償の問題等々をより患者の、あるいはまた感染者皆さん立場に立ってそのことの解決が先決ではなかろうか、こんなふうにも聞けるわけですけれども、その辺いかがなんでしょう。
  81. 保田行雄

    ○保田参考人 問題は、やはり救済の給付の内容だろうというふうに思います。プライバシーの問題、非常に大事です。しかし、これは社会理解が一歩一歩本当に前進していかなければ実効性の伴わない問題です。  それともう一つは、責任を認めて救済をということは、何も裁判をするということではありません。今まで日本の公害や薬害でも、国やメーカーによってきちんとした対策がとられたという事例は幾つかあります。それは、実質的には明文で責任を認めるかどうかという最終的な局面での問題はあるにしても、やはり責任を追及する被害者たちの声によって国がやり始めた施策です。そういう意味では、今度の血液製剤の問題は物すごく深刻です。議会において懸命な調査等をやられて、本当に責任があるかどうかを問わずに、本当に十分な救済ができているという中身ができることが一番望ましいことだと私は思っています。
  82. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 私はなぜそんな話を持ち出したかというと、一つにはプライバシー、人権という問題があって非常に難しいという問題があります。訴訟という問題も、確かに積み重ねかもわかりません。しかし、それより原因がこういう形である程度明らかになってきているわけでありますから、そういう点ではむしろこの救済問題等々含めて患者皆さん方との話し合いを積み重ねながら、例えば先ほどもお話が出たわけですけれども、交通災害、交通問題等と同じような形の中で、年金の問題等々含めて将来とも私どもはこういう形の中で国の責任、企業の責任等々含めた中で、例えば基金をつくっていくとかいろいろな問題があろうと思う。そういうことを含めて皆さん方が不安のないような形を今後とることが一番先決ではないかな、こんなふうに感じていたわけでありますけれども、その辺はいかがなんでしょう。
  83. 保田行雄

    ○保田参考人 やはり問題は、給付の内容だということに尽きます。  私が言っているのは、責任を認めてというのはだれがやるのかということで、国とメーカーが本当に真剣に今度の悲劇を償うという気持ちにならなければ、本当の意味の救済にはならないだろうということです。それと、感染をしていった血友病患者さんたちの思いもやはり晴れないと思います。そういった金銭的な償い等では解消し切れない面があるんではないでしょうか。そういう意味での本当に誠意ある対応を望んでいるということだと思います。
  84. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 確かに金銭で患者さんの気持ちは処理できない問題だ、こんなふうに思います。  しかし要は、生活不安とか、あるいは社会的にその人たちの人権問題というのは、それ以上にもっと厳しい問題だろう、私たちばそんなふうに考えながら、国あるいはまた企業等がこれを責任を持って処理するために、当委員会としてもきょうの参考人皆さん方お話を聞かしていただいたり、これからもまたあらゆる機会をとらえて皆さん方なり患者の団体の皆さん、そういう点でのお話し合いもさせていただかなければいかぬと思います。  もう一つは、やはり現実にこれからの問題として予防という問題も大変重要なことだ、こんなふうに私は思っております。予防問題について何か先生の考え方があったら教えていただきたいと思います。
  85. 保田行雄

    ○保田参考人 エイズについて、これが新しい性行為感染症であるということを社会が広く認識することだと思うのです。それと、やはり感染者社会が受け入れていくことだと思います。一人一人がエイズをそういう意味では排除するのではない、よそのことではなくて身近にある問題として受け入れていく、一つの病気として受け入れていくということがその予防につながっていくことだというふうに考えています。
  86. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 私は、今先生がおっしゃられた中で正しい認識といいますか、このエイズに対する知識、認識というものが必要であろう、こんなふうに思うのです。  そこで、例えば従来もマスコミ関係の報道等々含めて、このエイズという問題についてとかくいろいろなことを言われてまいりました。いろいろな媒体の正しい認識の仕方があろうと思いますけれども、先生の場合、このマスコミ等の報道についてどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  87. 保田行雄

    ○保田参考人 マスコミ等の扱いは、当初のいろいろな好奇心から来るような扱いと現在は違ってきているように思います。ただ、マスコミ等で大騒ぎになったのは高知の事例であり、神戸の事例であり、大阪の事例、すべてこれは厚生省の方で発表しておられる事例です。だから、情報はすべて医療機関か行政庁から出ています。そして、それは厚生省のサーベイランス委員会あるいはその過程の中で出て大騒ぎになっています。だから、マスコミを云々する前に、国が真に必要だと思った情報のプライバシーの保全をどれほど重要として考えているのか、ここがまずはっきりさせられなくてはいけないと思います。その上に立って、マスコミ関係者につきましては、やはり正しい理解ということと、感染者一人一人、日本国民がいるんだという認識に立って、その人たちに対する思いやりの気持ちを忘れないで、一つ一つ、一語一語書いてほしいなというのが私たちの気持ちです。
  88. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 時間が参りましたので、またいろいろな形でこれからも教えていただきたいと思います。きょうは大変御苦労さまでございました。
  89. 稲垣実男

    稲垣委員長 児玉健次君。
  90. 児玉健次

    ○児玉委員 全国の多数の会員皆さん代表されて非常に貴重な御意見をいただいたこと、まず最初にお礼を申し上げます。  先ほど参考人は、エイズに対する国の考え方が基本的なところで間違っているという点から御意見をお始めになったのですが、私もそのように思いますが、そういった状態の中で、学校や病院、職場などで現実に友の会の会員皆さん方社会的に差別を受けている、そのことで非常に悲しく、かつつらい思いをなさっていると思うのですが、そういったものの代表的な事例を一つ二つ、まずお聞かせいただきたいと思います。
  91. 保田行雄

    ○保田参考人 典型的な事例としては、公立の保育園でたまたま、それもおかしいのですが、抗体が陽性であるというふうにわかった血友病の園児がそのゆえをもって退園処分になった。そして、いろいろな関係者の御努力があったのですが、保育園問題としてはきちっとした解決ができなかったという例があります。また、保育園、幼稚園や学校等でどうしても血友病患者でプラスかマイナスかということを知りたがる、いわば結果はどうですかというような質問をされる、あるいはされた保護者方々は多いということが言われます。そういう場合に、そういう結果を知らなければ感染予防ができないという善意の誤解から出ていると思うのですが、学校生活や社会生活でそういう結果の云々にかかわらず、エイズは人に迷惑をかける病気でないのだということがまだ十分徹底していないということの証拠だろうと思うのです。それと、血友病児を子供に持っているということで解雇されたお父さんの例もあります。あるいは患者本人が解雇された例はかなりあると思いま す。それは血友病であるということ、感染者であるかどうかを問わず、血友病であって仕事に耐えられないとか大変じゃないかということで、事実上退職なり解雇に追い込まれていくという形をとっています。  それらはいずれもそういう意味では、一緒に食事をしていてうつるのじゃないかとか、手洗い等を共用していて大丈夫かという、非常に初歩的な考え方の誤解から出てきている事例だと思います。そういう意味では、厚生省なり政府の方で、たとえ感染をしていたとしても一緒に仕事ができるし、学校も一緒にできるのだという基本的な原則を打ち立てない限り、そういう誤解はなかなか解けないのではないかというふうに私は感じています。
  92. 児玉健次

    ○児玉委員 先ほど参考人は二つ目の論点にお入りになるときに、エイズの本当の意味での予防、それが必要だという点を強調されて公衆衛生学、そして性教育の二つについてお触れになりましたが、そこのところについてもう少し御説明をいただきたいと思います。
  93. 保田行雄

    ○保田参考人 私たちが普通いろいろな意見をお伺いする公衆衛生学の先生方で、この法案を支持される方はほとんどいないと言っても過言ではありません。やはり実効性に疑問だということがその第一の理由です。それと、エイズ教育ということが非常に言われますけれども、究極的には性教育の問題だろうと私は思っています。人の性をどう考えるのか、人にどう迷惑をかけないかということも含めて、その性の問題がそういった性行為感染症の問題も含んでいるのだということをきちっと理解させる必要があると思います。特別エイズの教育というのは私たちは考えられないと思っているのですが、そういう意味では性教育そのものが進まないとエイズそのものの予防という面でも実効性は上がらないように考えています。そういう意味で、代表的なそういう先生方がいらっしゃるところを挙げてみたのです。
  94. 児玉健次

    ○児玉委員 前のこの委員会の審議の中で、先ほどもちょっとありましたが、このエイズ予防法案の対象から血友病関係の患者さんを対象外とするという議論が若干ありまして、その点についてどのように皆さん会員はお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  95. 保田行雄

    ○保田参考人 私たちの反対が強くなれば必ず除外論が出てくるわけですけれども一つは、感染症ですから技術的には不可能だということと、あと運用の問題ではないということですね。それと、私たちは血友病患者に対する同情を求めているのではなくて、感染をした、あるいは仲間の四割もが感染をした私たち血友病患者、家族としては、エイズに対する社会の正しい認識が進まない限り将来の生活の保障がないのですね。そういう意味では、エイズ対策そのものが基本において間違っていては、私たちの血友病患者に幾ら配慮をと言ってもそれは土台のない話になってしまいます。そういう意味で除外論では全く救われません。むしろ血友病患者を除外しなければいけないような法律であったならば、それはだれにとっても有害な法律に間違いありません。だから、非常に安易に便宜的に考えられたものだと私は思っています。そういう意味では、国には、だれもが安心して信頼できるエイズの対策というものを推進していただきたい。そういう意味で、除外論には全く反対です。
  96. 児玉健次

    ○児玉委員 最後にもう一つ伺いしたいのですが、この委員会の論議の中でも、薬害かどうかという議論になってきますと、医薬品副作用被害救済基金法、あそこでいう副作用かどうか云々という議論がかなり形式的に議論されていまして、それが一つの壁になっております。薬事法五十六条の六で言う「病原微生物により汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品」、そういう医薬品については輸入、陳列、販売等を禁止するという規定もございます。そのあたり、この後速やかな救済、そして責任を国と製薬メーカーにおいて明らかにしていく場合に、これは参考人個人の御見解でいいのですが、今の二つの法律の絡みについてどのような考えをお持ちか、お聞きしたいと思います。
  97. 保田行雄

    ○保田参考人 法律の詳しい内容はわかりませんけれども政府の御答弁を聞いていますと、副作用基金に適用がないので薬害ではないと言っておられるにすぎないように思います。副作用基金の適用がないのは厚生省令で除外されていることで、考えるまでもなく明らかなことです。問題は、血液製剤やそこからの混入微生物によるものがすべて副作用ではないと言えるのかどうか。副作用基金の対象にもほかの血液製剤はなっていますから、そういうものからいろいろな病原微生物に感染した場合、恐らく適用はあるのではないかと私は考えているのですが、そういう意味では非常に形式的な議論です。  問題は、やはり国の認可した医薬品薬事法で言うところの医薬品から、それを用いてエイズに感染をするという有害な反応が出たわけです。これが社会で広く言うところの薬害ではないでしょうか。そういう意味で、広い意味での薬害であることは間違いないし、薬事法で国が予防すべき、絶対こういうことを起こしてはならない一つの作用であったというふうに私たちは信じております。そういう意味では、国はその上に立って、なおかつ薬事法上の何らかの回収や改善等の処理ができたのに、それをしなかったがゆえに国には責任があるのではないかと考えています。  素人の考えですけれども、私たちは血液製剤でなったのにどうして薬害でないと言うのか、法律的にもちょっと理解できないところです。
  98. 児玉健次

    ○児玉委員 ありがとうございました。
  99. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で保田参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  100. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前中に引き続き、参考人から意見を聴取いたします。  輸入血液製剤被害者救援グループ会員兵庫ヘモフィリア友の会事務局長伊地知健君、輸入血液製剤被害者救援グループ会員山形ヘモフィリア友の会会長宇野信子君、輸入血液製剤被害者救援グループ代表石田吉明君から御意見を承ります。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序は、まず参考人方々から二十分程度御意見を述べていただき、その後、委員諸君からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のために参考人方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言を願います。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、伊地知参考人にお願いいたします。
  101. 伊地知健

    ○伊地知参考人 私は、輸入血液製剤被害者救援グループ会員兵庫ヘモフィリア友の会事務局長をしております伊地知と申します。  本日は、発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。  私たちは、血友病という病気を持ちながらも、自分たちの健康を自己管理することによってそれぞれに社会生活を営み、社会の第一線に出て活躍しております。ところが、私たちの命の綱ともいうべき血液製剤の中にエイズウイルスが混入していたために、私たちはHIV感染という被害のうちに巻き込まれることになってしまいました。私 たちが信頼していた医者から、そしてまた薬に裏切られたという形で私たちは絶望のどん底にたたき落とされました。医者は大丈夫だと言いました。確率は低いと言いました。けれども絶対に安全とは言いませんでした。新聞その他でエイズがだんだんと蔓延していることが伝えられまして、私たちのそのときの心のうちをわかっていただけるでしょうか。この薬を入れなければならなかったのです。それにかわるものを用意していただけなかったのです。そのときの悔しさをわかっていただけますでしょうか。  その薬害の上に、一時期の高知とそれから神戸事件によりまして、血友病イコールというイメージが定着いたしました。血友病患者全員が感染したわけではありません。血友病患者エイズなのではありません。どうして私たちがエイズ法案反対をこんなに叫ばなければならないのでしょうか。ここに出てくるのにどれだけ私たちが悩み苦しみましたか。血友病と名のればエイズではないか、感染者ではないかと疑われるに決まっているのです。どんなに私たちが血友病エイズは関係ない――関係ないのではありません、一部の人にすぎないのだ、ほかにもいっぱいいるのだということを訴えても、血友病エイズに一番可能性があるということが一たん広められてしまいましたら、それを打ち消すことができないのです。私たちが名前を隠し、顔を隠してどんなに訴えても、それは効果がないのです。  ですから、私たちは決心いたしました。私たちにも家族がいます。どんなに迷惑がかかるかわかりません。もちろん理解を示してくださる方もたくさんいます。全員が差別するわけではありません。けれども、心ない一部の人たちがいる限り私たちの苦しみはなくならないのです。その上にこんな取り締まり的性格の強い管理法案をつくったら、私たちへの差別が恒久化してしまうことは目に見えています。これから生まれてくる血友病の子供たちはエイズとは何の関係もないのです。もう加熱製剤によって血友病患者の中から感染者が出ることはありません。これから生まれてくる子供たちは何のかかわりもないのです。それにもかかわらず、こんな法案ができることによって、エイズ予防エイズは怖い病気だ、そのことだけを強く訴えることによって、どれほどの被害者がこれから先何十年と出てくるかわからないのです。ですから、私たちは絶対にこの法案廃案にしていただきたい、強く要望するものです。  決して私たちはエイズ法案が必要ないと言っているのではありません。対策が必要だということは我々自身が一番よく知っています。日本エイズ患者に一番かかわりを持ってきたのは、一番最初からかかわっている私たちです。私たちはエイズ患者感染者人権を守るために、そして、発症予防をするために、痛い足を引きずって、自分のお金を出して、忙しい中仕事を休んで駆けずり回ってきました。にもかかわらず、専門家の方がどんなにこの法案は間違っていると言っても、こうして審議の場に出されてしまいました。このことに関して私たちがどんなにつらい思いを持って毎日を過ごしたか、ぜひともおわかりいただきたいと思います。  私たちの薬害の問題は、このエイズ法案廃案になって真の実効性のある方策がとられて後、それから考えたいと思います。私たちが今訴えたいのは、とにかくこのエイズ予防法案を一たん廃案にしてください。そして、これから先本当に必要な対策を、各方面の方々からたくさんの方々意見を聴取して、その上で専門家の方に協議をしていただきたいと思います。それと、私たちがこうしてエイズ法案反対ということを声高に叫び続けるために、血友病はイコールエイズであるというイメージをますます定着させることになるのではないかということを一番恐れております。私たちがこうして叫ぶのは、ほかに実際の自分の体験として話してくださる方がいないからです。同性愛の方、薬物中毒の方、そのほかいろいろな原因で感染された方はあります。けれどもエイズはそんなに怖い病気ではありません。何だか非常に恐ろしい、もうそばに行っただけでも感染するようなイメージを一部の報道によって植えつけられてしまったために、いまだにそんな初歩的な知識の不足から起こる差別偏見が続いております。このことを十分に御理解の上で、本当に実効性のある対策をおとりいただきたいと重ねてお願い申し上げます。  大変感情的に申し上げました。申しわけございません。私たちが本当に対策を望んでいることは、最も望んでいることは、皆さん承知していただけると思います。私たちの輸入血液製剤被害者救援グループは、単なる血友病患者の団体ではありません。どんな原因においてもHIVに感染してしまった人たちがお互いに助け合い、情報を交換し合ってよりよい対策を見つけていこう、あしたを見つけていこうというためにつくられた会であります。どうぞ一般方々ももっと正しいエイズに対する知識を、そしてまた血友病に対する知識を、日本におけるエイズ感染の特殊性というものを十分考慮の上で、本当に実効のある対策を重ねて重ねてお願いするものです。  終わります。
  102. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  次に、宇野参考人にお願いいたします。
  103. 宇野信子

    ○宇野参考人 私は、輸入血液製剤被害者救援グループ会員山形ヘモフィリア友の会会長宇野といいます。  きょうは、友の会会長である前に一人の母親として、それも遺伝病である子供の母親としての立場でここへ参りました。もし感情的になりましたら御勘弁ください。  血液の病気というだけで、それも六〇%が遺伝というだけで、家族以外だれにも血友病という病名を言えずにじっと胸の中におさめ、ただひたすらかかりつけの病院にひっそりと治療に通わせながら、子供の成長を楽しみに、常にけがをしないで、出血をしないでと祈りながら暮らしてきました。出血すると、足の関節であったり頭の中であったり、その都度その都度夢中で病院に運ぶのです。確かにここ東京のように先生方がそろっている病院がたくさんあれば、どこの病院に行っても治療を受けられると思います。ところが残念ながら、各地方の会員さんたちや母親は大学病院に行くのに車で二時間かかる、隣近所の個人医院さんでは治療という治療を受けられない、ただお薬だけをいただくだけ、それが本当に事実なんです。これはまだ今も現にあるんです。  私ごとしか言えませんので、私ごととして言いますけれども、私の子供はもう成人しています。血液製剤ができるまでというのはずっと全血輸血でした。出血するたびに病院に運びました。たまたま私の血液型も同じですから、その都度私の手から百ccずつとりながら子供に輸血してまいりました。それは親である以上みんながやってきたことなんです。  それと、一番悔しい思いをしたのが中学校の修学旅行のときでした。入学当時から、うちの子は出血しますととまりにくいです。足も悪いです。松葉づえをついています。それでも修学旅行にだけは行かしてやりたい。入院、退院の繰り返しで学校は休み休みでした。ですけれど修学旅行にだけは最後の思い出として行かしてやりたい。一人の生徒なんだ、みんなと同じ生徒なんだということがありました。担任の先生、学年主任の先生、みんなからはずっと了解を得てきたものと私は思っていたのです、そのころは。ところが二年の終わりになりまして、夕方子供が松葉づえをつきながら泣いて帰ってきました。最初は何を聞いても何を泣いているのか言わないんですよ。そうしたら、お母ちゃん、みんなに迷惑かけると悪いからおまえ行くなと言われたと。それが出発の三日前でした。持ち物検査もすべて終わって、バスの乗り方も順番もみんな決まった。それですら担任の先生から言われたんです。  私はそのとき本当に悔しかったです。それで学校に行きました。何で行けないんだ、何で連れていってくれないんだ。そうしたら担任の先生はそのとき、お母さん、養護の先生がお話があるから 養護室に行ってください。行きました。養護の先生は、お母さんをとにかく説得してくれと頼まれたそうです。その理由は、学校の行事だから一人の足の悪い出血性のある患者のために、そこまでは言ったかどうかわかりませんけれども、スケジュールがハードだから一人の生徒のために行動時間から何からおくらせるわけにはいかない、そういう理由だったそうです。ところが、ずっとその養護の先生とお話ししまして、それが東北中央病院の先生だったのですが、その先生が、宇野さん、きょう一日待ってくれないかという返事をよこしました。私はその日一日待ちました。次の日の朝早くに先生がお電話くださいまして、宇野さん、僕の責任で連れていくよと言ってくださいました。養護の先生ですよ。そのときにその先生は、宇野さん、僕が血友病ということを知らなくて申しわけなかった、だけど学校長が何と言おうと、担任が何と言おうと僕も随行する、僕が連れていってあげる。私は本当にそのとき救われました。たった一人のお医者さんに私は救われたんです。  周りの人からはいろいろな目で見られても、何度かの入院、退院、手術を繰り返しながらも、その子も間もなく三十に届こうとしています。何とかかんとかやっと二年前に就職もしました。でも就職してもやっぱり差別はあるのですよね。会社側は直接は言いません。ところがすぐ上の上司とか心ない人たちは、血友病ですと説明しても、抗体検査はマイナスなのか、おまえ証明書持ってきたか、やっぱり言うんですよ。彼も相当悩んでいたようです。でも、私も親としてとにかくどんなことがあってもこれだけは渦中に巻き込ませてはならないと思っていましたから、自分で判断しなさいと、そのときは申しわけなかったですけれども、子供には突っぱねました。悔しいですけれども、親といえども救ってやることはできないのです。ずっと今まで育ててきた中で、血友病でさえなかったら、何度も何度も血友病を憎みました。それだけでなくて、遺伝性のある者は子供を生んじゃいけないのか、本当に悩みました。毎日毎日がそんな日の連続でした。何度か子供自身が死にかけた毎日で、でも繰り返しとにかくみんなに、温かい気持ちある人たちに支えられながら生きてきたのです。それと、医療は昔と違い、すばらしい進歩をしています。血液製剤もでき、遺伝だけでなく四〇%が突然変異で起こる、それが血友病なんだということもわかった今、少しでもその血友病というハンディを乗り越えられるのではないか、そう思ったやさきでした。エイズです。神戸の事件以来、マスコミ報道の関係からエイズイコール血友病という何となく嫌なイメージが周りの人たちに定着し始めました。そういうことは地方であるからこそなお深いんです。これは地方だけにかかわらず、大都市でもあると思います。でも、この血友病イコールエイズという間違ったとらわれ方が、母を子をも、それだけでなくて親戚も学校の友だちも、すべて失う羽目になったのです。  ところが、エイズは性行為でうつる、血液でうつると言われます。血友病は大人の患者だけではありません。食べることも眠ることもセックスをすることも、人間に生まれてきた限り本能じゃないでしょうか。それを血友病のためにエイズに感染している、抗体陽性である子供たちにどう説明してやるのでしょうか。先生方も、説明の段階までにいっている先生方というのはまだまだ本当に少ないです。血友病自体でも、完全に把握してくださっている先生方というのは少ないです。血友病という病気は一般の人たち、ここにいらっしゃる皆様方も、そのお子様やお孫様が突然変異で発症する可能性のある病気なんです。そこで、皆さん一人一人の身に置きかえて、もし自分の子が、自分の孫が突然変異でそうなったら、本当に自分のこととして考えて、もう一度慎重にお考え願えませんでしょうか。  ありがとうございました。
  104. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  次に、石田参考人にお願いいたします。
  105. 石田吉明

    ○石田参考人 本日は、私ども意見の発表の機会をつくっていただきました先生方感謝申し上げます。私は、輸入血液製剤被害者救援グループの代表をしております石田と申す者です。  朝からそれぞれの参考人方々が、法案なり救済策について多様な意見を述べられてまいりました。私の方は結論から申し上げますと、現行のエイズ法案はまず廃案にしていただきたい。  それの理由を具体的に申し上げますと、九月からHIVの治療のネットワークがいよいよスタートするということをお聞きしております。その中心眼目といいますのは、カウンセリングの事業、そういうものをつくることが中心になっておると聞いております。つまり、性行為感染症というものは個人個人に帰する病でございますので、それを蔓延を防止するためには、一人一人の悩みとか相談窓口を拡充していく、それがキーポイントと私は考えます。それにはカウンセリングの事業というものが大きな事業としてこれから展開していくだろうと思うわけです。  具体的にそういうものを考えていく場合において、現行のエイズ法案というものは、第五条から始まって、良心的に、献身的にそういう治療体制をまさに進めようとしていらっしゃる先生方のところに土足で上がり込んでくるようなものだと私は感じております。今政府が、厚生省が、自民党の先生方が考えておられるようなものは、そういうHIV治療のネットワーク体制の推進と矛盾するかのようなエイズ法案を同時進行されようとしているところが、私が一番危惧をしておる点でございます。まず一たん現行のエイズ予防法案廃案にしてください。それから考えてください。どうしても矛盾をどなたも感じておられることです。先ほどの参考人の方もおっしゃいましたように、私たち自身がだれよりも病気の深刻さとか、他人に感染させたくないとか、広がってはだめだということを一番感じておる。私たちがそういうふうに感じておるわけですから、これは真実味を帯びた声だと思うわけです。  次に、輸入血液製剤によって被害を受けた方々に対してどうこれから救済していこうかという話を、二点目に私たちは要望しております。これをつまり薬害ときっちり国なりが認めて施行していく方向と、二月の竹下首相の発言のように、一たんそういうものは棚上げして、政治的にできるところから救済していこうというところに中心眼目があるように見受けられます。私たち当事者からすれば、日ごと仲間たちが倒れていっている現状を見ますと、薬害論争というものは政治の場じゃなくて法廷の場できっちり、何年かかろうとそういう時期が来ればやっていけばよいと考えます。今いたずらに薬害論争を繰り広げておる間にも仲間たちは倒れていっておる。そういうものを無視していいのかどうかということを皆さんよく考えていただきたいわけです。  そういうことで、かつてスモンという病気がございました。薬害です。この際に、ウイルス説というものとキノホルム説というものがあった際に、その決着を法廷の場において明らかにしていこうという機運が盛り上がって、次第にウイルス説がなくなっていってキノホルムというものが原因となって裁判に突入したということが過去にございました。しかし、我々の今度の病気というものは、そういうウイルスとかその他の原因とかいうものよりも、ウイルスというもので因果関係ははっきりしておりまして、しかもアメリカからの輸入血液製剤によって感染したという因果関係がすべて明らかになっているものを、今さら十年、二十年かかって法的論争といいますか、そういうものをやることのむなしさといいますか、そういうことをすべてクリアして今なされるべきものは何かというところに着手していただきたいと思うわけです。  三番目といたしまして、救済と同時に大切なことはHIVの治療体制ですね。医療現場の忌避の問題とかさまざまな問題が吹き出しております。感染被害者にとって、医療現場から忌避されたらおしまいなんですね。国民一般からじゃなくて、まず医療の現場において今忌避的な現象が相次いで起こっております。こういう機会を通しまし て、また後で質問の時間等に具体例を挙げながら、よりよき治療体制といいますか、完全救済エイズ法案の撤廃をも含めた完全救済を求めていきたいと思っております。  時間がございませんので、あとの部分質問にお答えするという形にさせていただきます。  ありがとうございました。
  106. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  107. 稲垣実男

    稲垣委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山成彬君。
  108. 中山成彬

    ○中山(成)委員 本日は、参考人皆様には大変お忙しい中、また遠方よりお越しいただきまして、大変貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  特に血友病の方、そして血友病のお子さんをお持ちのお母さんの陳述には本当に深い感銘を受けた次第でございます。あす感染するかあるいは発病するか、そういう不安の中で毎日を過ごしておられる血友病方々の心中はまさに察するに余りあるものがございます。私どもといたしましても、自民党の中に小委員会を設けまして、エイズの感染あるいは患者救済のための総合対策をいろいろ検討しておるわけでございますが、伊地知参考人にお聞きしたいのですけれども参考人は、予防法案よりも何よりもまず救済策だ、このようなことを陳述されたわけでございますけれども、具体的に何が緊要なのか、どういったことから先にやっていただきたいのか、この辺から先にお答えしていただきたいと思います。
  109. 伊地知健

    ○伊地知参考人 私たちが今一番望んでいることは、まずこの法案をやめていただきたいということです。先ほども申しましたように、法案は管理するのみでかえって潜在化を招く、血友病患者は医者に把握されておりますからもう逃げようがありません。けれどもほかの感染者が、こういう法案ができて自分たちのプライバシーが侵されるとわかっているのにどうして検査を受けに来るでしょうか、医者にかかるでしょうか。これがもし完全に治る病気ならば医者に行って治してもらおうと思うかもわかりません。ちょっとくらいプライバシーが損なわれても仕方がないと思うかもわかりません。けれども今、治療法がありません。そんなときにこんな管理法をつくったら潜在化することはもう目に見えています。これは本当に各界の方が声をそろえて反対をしていらっしゃることで、もう皆さんもとっくの昔に御存じのはずだと思います。私たちが今望んでいることは、感染者のカウンセリングを中心にして、難病対策その他によって感染者が安心して医者にかかれる、検査にかかっても経済的な負担を感ぜずに本当にその病気の治療に専念できる体制をつくっていただきたいということ、まずこれが第一番です。  それから、今本当に困窮している発病してしまった患者さん、そういう患者さんに対する治療費、その他もろもろのたくさんの経費がかかっております。それをすべて国が公費負担をしていただきたい。この二点が主な柱です。
  110. 中山成彬

    ○中山(成)委員 私は昨年の春に自民党のエイズ調査団の一員として、ヨーロッパに参りました。いろいろな方々お話しをする中で、大変印象に残っている話がございます。これはエイズを火事に例えまして、日本はまだカーペットがちろちろ燃えている段階、ヨーロッパは壁が燃えている段階、アメリカはもう天井が打ち抜けている段階。だから日本の場合にはできるだけ早く、まだカーペットが燃えている段階で消しとめなければいかぬ、こういうふうな話をしていただきました。  それから先々月ですが、私はアフリカに出張してまいりました。これは海外援助の関係で出張したのですけれども、アフリカのエイズについても大変関心がございましたので非公式にいろいろな方々お話を聞いてきたのです。なぜアフリカでエイズが多いのか、どういうふうな対策をとっておられるのかというようなお話を聞いてきたのですけれども、そのときに為政者の方が言われるには、まず無知だということ、エイズに対して何も知識がない、そして知識を普及しようとしても手段がない、それに限界があるという話でございました。  御承知のように今エイズ患者というのは世界に十万から十五万、キャリアは五百万から一千万と言われておりますし、今世紀末には一億に達するのじゃないか、こう言われておるわけでございます。今、日本はまだ初期の段階ですから、これをこのまま手をこまねいておってエイズがどんどん蔓延していくのをほったらかしにしたら、私どもの子や孫たちに余りにも無責任ではないか、こう思うわけでございまして、何らかの対策が必要だということでエイズ法案を今審議しておるわけですけれどもエイズ法案の中に正しい知識の普及とかあるいは蔓延を防止するとか、その一方では患者人権の保護のために守秘義務を強化するとか、いろいろなことが盛り込まれておるわけでございますが、参考人方々エイズ法案反対だ、こう言われました。重ねて、私が今申し上げましたような観点からエイズ法案反対なのか、ひとつ石田参考人にもう一度御意見を聞かせていただきたいと思います。
  111. 石田吉明

    ○石田参考人 今の御質問の中心点は、プライバシーの問題と社会防衛との整合性をどこに見つけていくかというところだと思うのですけれども、私どもの考えは、二十一世紀はウイルス病との闘いであろうというふうに言われておる中で、いわゆる新しい病気、感染症に一つ一つこういう法的な規制でもって縛っていくことが果たしていいのかどうか、気がついてみたらとてつもない管理社会に陥っていたということを危惧するわけです。だから未来予測というか、例えば一年前の予測と今日の現状と見比べたらどうなったか。いわゆる神戸のパニックの事例から一年後どれだけふえてきたのかということは、一年たってみてわかったことは、やはり一般感染者よりも我々血友病患者輸入血液製剤によって被害を受けた実態が明らかになったにすぎないのであって、今数字のマジック的なものをまず皆さんが認識していただいた上でなければ話は進まないと思うのです。だから、私たち自身が静かに治療行為を受けられる社会環境というか医療環境、それを保障することによって新たな感染者を拡大していかない。  例えばこういう具体的な事例で申し上げると一番わかりやすいと思うのです。五月でしたか六月でしたか、大阪で四十歳ぐらいの男性が、過去の遍歴といいますかいろいろなことを挙げられて、発症した、例えば麻薬静注者であったとかソープランドを経営したとか、そういうことが書き立てられまして、まさに入院患者が公開されてしまった。あそこで一番肝心だったのは、その入院患者の方と接触された人たちは今どうであるのかということだったと思うのです。ここに一番肝心なのは、感染されている方のプライバシーを保護して、例えばその男性と接触した方が感染していたとして、その人が病院に来て受診をして発症予防治療をしていく過程において、絶対この間のその男性のような二の舞が、例えば入院治療中に特だねみたいな形で公開されたり、発症して寝込んでしまったら特だねみたいな形でまた新聞に出てしまうということであれば、だれも怖くて受診さえもしないわけなのです。結局ああいうことはマイナス以外の何物でもなくて、地下に蔓延させてしまう。だから、規制をやるよりも感染者と言われる人たちのプライバシーをいかに国が守っていくか、そういうものが確立した上でないとなかなかこれは厳しいんじゃないか。それは国だけじゃなくて医療機関も含めて、きょういらっしゃっているマスコミの方々も含めた課題だと僕は思います。
  112. 中山成彬

    ○中山(成)委員 どうも貴重な意見をありがとうございました。  時間が参りましたので、これで終わります。
  113. 稲垣実男

    稲垣委員長 永井孝信君。
  114. 永井孝信

    ○永井委員 きょう、遠いところをわざわざ御足労願いました参考人方々に心から感謝を申し上 げたいと思います。  非常に短い時間でございますから十分な質問はできませんけれども、午前中からの質疑を通しまして気になったことを二、三お聞きをしてみたいと思うわけであります。  午前中からの参考人を含めてのお話でございますが、この法律を制定することによって、医師との信頼関係が果たして回復できるのか、あるいは今いろいろ意見が述べられておりますように、今までの医師との信頼関係というのは、エイズを感染する血液剤を承知の上で使用されてしまったということに対する不信感が一番大きいと思うのですね。これから法が制定されて、プライバシーを保護すると言うているのですけれども、果たしてそのことによって信頼関係が保たれるとお考えかどうか、一言ずつお答えいただけますか。
  115. 伊地知健

    ○伊地知参考人 医者との信頼関係におきましては、もちろんある程度の複雑な思いを医者に対して持っていることは事実です。ですけれども、それはあの時点では仕方のなかったことなんだという思いも確かにあります。ですから、そのことに関して医者との信頼関係が崩れるというふうには私は思っておりません。  私たちは、治療法のなかった時代からそのお医者さんによって命を救われて、痛みから解放されてきたのです。ですから、そのことから考えて、今すぐ医者をどうのこうのなんということを本当に思っておりません。そんなことを思っている方は本当に一部だと思うのです。ですけれども、この法律ができて、そしてこの法律によって医者が私たちの名前や住所を都道府県に通告するようなことになったら、その時点でもう医者を信用できなくなると思います。医者は私たちを本当に小さいときから守ってくださいました。そのことによって本当に感謝をしてきたのです。それがこの法律ができることによって医者との信頼関係が崩れるということを私たちは訴えています。
  116. 宇野信子

    ○宇野参考人 私も、それは届け出制が、法律ができた時点で信頼関係も何もかも崩れます。
  117. 石田吉明

    ○石田参考人 今先生御案内のように、我々は小さいころから主治医と親子の間のようないい関係を維持してきた。しかしながら、今回のHIV禍によって感染させた側とさせられた側に対立関係、その度合いはいろいろあると思うのですけれども、そういう関係になってしまった。しかしながら、それで対立関係で遮断されるということではまたないわけです。依然として血友病患者には違いないわけです。そしてまた、発症予防治療もそのドクターからまたずっと受けていくという、物すごい、何か言葉にはなかなか言いあらわせない複雑な関係が続いております。だから、こういう関係はいずれは修復していく作業が双方の間で必要だと思います。それをまたもや今お二人の方が述べられたように、エイズ法案というものが通りましたら、その関係が、せっかく今修復関係が実りつつあるものがまた破綻してしまうのではないか、そういう危惧を持っております。
  118. 永井孝信

    ○永井委員 三人のそれぞれの参考人方々意見陳述をされました中に、私一言で言いますと、血友病患者皆さんがイコールエイズ患者だというふうに見られてしまったり思い込まれてしまったことに対する悔しさというものがにじみ出ておりました。私は、その悔しさを何とかなくしていくことが私ども一つの大きな責任だと思うわけですね。とりわけ宇野さんが言われておりましたように、人間の本能との関係があります。私も正直申し上げて、法案ができたからといって、例えば人間の本能である性行為にかかわることを仮に知事が特定の人を把握したとしても、監視なんかできっこないわけですね。  総理府がたまたまアンケート調査をしているのですが、私はここに一つ国民の全体の良識というものに一定の信頼感を持つわけでありますが、この総理府の調査によりますと、七〇%を超える人がエイズ対策というのはまず正しい知識の普及だ、こう言っているわけですね。あるいは感染予防薬、治療薬等の研究開発こそが大切だということを七割以上の人が言っているわけですね。私は、ここに依拠して、政策を立てる国会の役割というものがここになければならないと私自身は思うのですね。  そこで、時間がないものですから詳しくやりとりはできませんけれども、例えば石田さんからお話が出ました中に、既に医療機関から忌避されたという話がありました。質問の中で具体的に明らかにしたいということがありましたけれども、時間をとらないで、忌避された実例というのを一つ挙げてくれませんか。
  119. 石田吉明

    ○石田参考人 今私どもが常時使っております血液製剤は第三段階に入ってきた。当初は二人のドナーからつくった低単位の製剤で、次に移行したのが高濃縮製剤、今まさにエイズで問題になっている製剤ですね。次に、それが加熱処理だとか、それを第二段階としますと、今新しいバイオの技術によって濃縮製剤が出てきております。それが薬価の差益が少ないという理由で今まで製剤を導入されてきた医療機関がもうけが少ない、はっきり言ったら、関西弁で言いますともうけにならぬということで、あっちへ行きなさいというふうな事例があります。それで、あっちへ行けと言われた患者はセンター病院的なところに集中し出しております。だから、そこのまた経営を、例えば個人病院なり私立病院とかというところでまた圧迫していくということは、主治医が頑張っているにもかかわらず、経営者とか医療スタッフの組合とかがまたその主治医をサンドイッチにしてつついてくるという現象が起こっておるわけです。だから一番問題なのは、そういう発症予防治療、HIV治療のネットワーク、治療体制がまさにスタートしているということは、本当に大丈夫なのか、現場はそんな甘いことはないということを皆さん先生方も認識していただいて、もっと強固な治療体制を確立させていただきたい。お願いいたします。
  120. 永井孝信

    ○永井委員 時間が来ましたのでこれ以上質問を続けることができないのですが、いずれにいたしましても参考人皆さんが言われておりますように、法律をつくってそのことでこの問題の解決にならないということは皆さんの御意見でしっかりと受けとめました。人権を守ること、そして知識を完全にみんなに持ってもらうこと、そのことによってこの問題の根本的な対策を立てること、そして血友病患者皆さんの現在の状態に置かれていることについての国の責任あるいは薬剤会社の責任など、そういう問題について救済措置を含めて私も全力を挙げます。皆さんの御意見を受けて対応することをお誓い申し上げて、質問にかえます。  ありがとうございました。
  121. 稲垣実男

    稲垣委員長 沼川洋一君。
  122. 沼川洋一

    ○沼川委員 本日は大変御苦労さまでございます。また先ほどは大変貴重な御意見をお聞かせいただきましてまことにありがとうございました。  時間が限られておりますので二、三点お尋ねをしたいと思います。  冒頭にお話がございましたように、医者を信じ、国が承認した薬を信じた結果がいわばエイズに感染した。ですから皆さんのお気持ちというのは、諸外国の例と日本の場合は全く違っておりまして、まさしく薬によるいわば薬害であるという点を考えますと、まことにお気の毒だとも思いますし、私どもの想像以上の悔しさといいますか、そういうのがあるだろうということをお話を承りながら感じた次第でございます。  そこで、先ほどもお話がありましたように、現在いろいろな血友病の関係の方の中からもいろいろな意見がございまして、やはり徹底的に薬害を認めさせ、国ないし企業に責任を認めさせるということを優先すべきだ、実はそういう御意見もございますが、先ほどお話がありましたように、そういうことをするよりか、はっきり言いますと日本の裁判というのは非常に時間がかかりますし、また人権、プライバシーという問題を考えますと、こういう問題はなかなか大変な問題であると思います。それよりか救済策を一日も早く進めてほしい、そういうお話がございましたが、具体的 に今、現段階で皆様が一番早急にやってほしいという救済策について、できたらぜひ御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  123. 石田吉明

    ○石田参考人 まず具体的な面でお答えする前に、私たちが七月五日に厚生大臣に出しました救済策を御説明させていただきますと、亡くなった方の遺族に対して六千万から五千万なりの弔慰金を要求しております。次いでHIV感染者、年齢問わず一律に三千万円要求しております。次に障害年金的なものなんですけれども、これを二十五万から二十万要求しております。まず、これが具体的な金額の要求策で、あとは治療面に関しては、我々は一般病棟における総室治療ということをこの病気に関しては推進しておるのですけれども、しかしながら状態が悪くなるとどうしても個室治療というふうにいかざるを得ないというところで、差額ベッドを実際に払っている方もあるわけなんですね。こういう矛盾をまず解消していただくこと。あわせて月々の医療費も要ります。家族が見舞いに行くための交通費も要るということは、これは治療一般にかかわる救済として速やかにやっていただく。それはあくまでも日本だけの問題ではまさにないわけでありまして、イギリスでは国家によって賠償しております。西ドイツでは保険金を使って既に二千万円なりの賠償をしております。救済をしております。だから、諸外国の例を引用しながら具体的な救済策を進めていただきたいというように思います。
  124. 沼川洋一

    ○沼川委員 先ほどから、法案については断固廃案にしてほしい、こういう御意見、またその背景も詳しく承ったわけでございます。確かに法案の前提として考えてみますと、一つにはやはり日本には人権、プライバシーを守るという確立された土壌がない、こういうことを指摘できると思います。もう一つは、先ほどもおっしゃったように血友病イコールエイズだと、非常に間違った偏見といいますか間違った認識といいますか、こういうのが世間にございます。一方では正しい知識を普及することが大切だということを国でも言っておりますけれども、現場に行きますとやはり血友病であるということだけで差別がある。こういう前提条件が除かれない限り、やはり法案が成立するということになりますとどうしても血友病皆さんが管理されてしまう。ですから、まず当面そういう問題を考えますと廃案にしてほしいというその背景はわかるわけでございますが、この正しい知識の普及ということに対して、具体的に国なりあるいは地方自治体なりに皆さん方からもっとこういう面をこうしてほしいという御意見がございましたら、ぜひひとつお聞かせいただきたいと思います。
  125. 宇野信子

    ○宇野参考人 国に対しましても地方自治体に対しましても、例えば一つの例として申し上げますならば、正しい知識の普及といいますのは、まずは医療スタッフの充実だと思います。あと一般市民への正しい知識の普及というのは、市報やそういうものが一般家庭に各一枚一枚配られます。それは地方自治体を通して配られます。ですけれどもエイズということ自体、まずは名前が悪いと思います、今こうなっては。それなら名前を解消した上で、各家庭にその市報と一緒に配布をする。それには難しい、わかりにくいような説明じゃなくて、だれにでもわかる、お母さん方でも話せる、そういう言葉を、現実にウイルス学の先生方、免疫学の先生方、感染症の先生方、凝固の先生方、すべてを集めまして、ここの先生、ここの先生というのじゃなくてすべてを国が集めまして、厚生省なら厚生省で集めていただきまして、その上での検討を重ねた結果、一般国民に、一市町村に同じようなルートで分けていただくのが本当じゃないのでしょうか。
  126. 沼川洋一

    ○沼川委員 御説明の中にいろいろありましたように、二次感染防止ということを考えた場合に、血友病方々はほとんど医師の監視下に、その治療体制の中に組み込まれていらっしゃいますし、ましてその約四割が小中学校の生徒さんだと聞いています。これはもうはっきり言って、そういう心配は全くない方々なんですね。ところが法案ができることによってその防止はおろそかになり、かえってそちらの方が強化される、こういう点に重大な問題があるということを私たちも非常に感じておりますし、その点十分配慮しながら、この対策に当たっては救済策も含めてしっかり頑張ってまいりたい、このように思っております。  本日は、どうもありがとうございました。
  127. 稲垣実男

    稲垣委員長 塚田延充君。
  128. 塚田延充

    ○塚田委員 本日は、参考人皆様方におかれましては大変お忙しい中お越しくださいまして、ありがとうございました。  皆さんお話を聞いておりますと、薬害であるにもかかわらず、その薬害を裁判で争う、そんな時間的な余裕もない、とにかく一刻も早く完全救済を求めるというようなことで、本当に皆様方の開陳の御内容はもう魂の叫びである、そんな感じで聞かせていただきました。また、エイズ予防法案につきましては絶対に撤回すべきであるというその背景についても理解をさせていただきました。  そこで、参考人皆様方にお聞かせいただきたいのですが、まず石田参考人にお伺いいたします。  本日、この陳述に当たりまして、同時に「八・九アピール」というような文書をいただいております。その第二項目に、いわゆる完全救済を可及的速やかにやれという御要望の中に、とにかくHIV禍をまず激甚災害救助法に指定したらどうかというような御提案がございます。この激甚災害救助法、いわゆるこういう厚生案件にはなかなかなじまない法律でございますけれども、このようなことを思いつきと言ってはなんですが、せっぱ詰まっての御提案かと思いますけれども、この考え方について御説明いただけたらと思います。
  129. 石田吉明

    ○石田参考人 私どもは当初、今度のHIV禍について医薬品副作用救済基金の適用を要望してまいりました。しかし、これは自賠責の保険のようなものでございまして、第VIII因子ないしIX因子の血液凝固製剤は最初からその保険の対象から除外されておりました。しかし、この除外された部分についての整合性といいますかを調べていきますと、血液製剤、成分製剤、血漿分画製剤、いろいろございますけれども、例えばその中のアルブミンなんかを対象医薬品として登録されております。なぜVIII因子とIX因子が除外されたのか、その根拠といいますか、それは厚生省に聞いてもメーカーの方に聞いても明確な答えをいただけなかったわけです。しかしながら、今からこれを後から適用するということがどうかということで約二年ぐらい交渉を行ってまいったのですけれども、遅々として進まない。我々が相談している弁護士の方は、先ほど午前の部でたしか児玉先生から御案内がありましたように、輸入商品としての許可条項に合致するものであるから、これは適用されるべきものであるというようなことも我々の勉強の中ではあるわけですけれども、しかし交渉の中では依然として前へ進まなかった。  それで、我々が次に考えたのは、とにかく救済せよ救済せよと叫んでいてもちっともらちが明かないので、あらゆる今の法体系の中でできるものは何かといろいろ考えた末に、かつてのいろいろ風水害があります。家が流された、死者が出た。現実に河川の決壊にしてもその国の責任とか、山崩れにしても国の責任とかいうものを問う前に、現実に死んでいる方があって、生活困窮者があるわけですから、これを救うのが国の責務だと僕は思うのです。これを放置して何が福祉なのかということで具体的に一番わかりやすいものとして出してきたのが激甚災害。これは皆さんが一生懸命勉強してくださったら、僕はいけると思うのですけれども
  130. 塚田延充

    ○塚田委員 次に、宇野参考人お尋ねいたします。  宇野参考人は山形県在住でございますね。先ほどの陳述の中でも医療機関、地方のために大変苦労されておるというお話でございましたが、厚生省筋におきましても、今後の総合対策の一環として全国的な医療機関のネットワーク化ということ を重点施策として打ち出しているわけでございます。その中で地域在住者として細かな配慮、これをしなければやはり大都市中心とか中央中心になったりして困ることがあると思いますけれども、地方の立場からこのネットワーク、どういうことに気をつけてほしいという御意見伺いたいと思います。
  131. 宇野信子

    ○宇野参考人 ごらんのとおり、山形は端から端までというのが物すごく遠いのです。車で行きますと、県内を真っすぐ直線的に行きましてもやはり五、六時間かかります。そういう中での厚生省からの医療の確立といたしましては、私はほかの県も似たようなものだと思っていますから、地域の中身はよくわかりませんので、ただ山形を例えて言いますならば、庄内地方に一つ、山形に一つ、あと東置賜地区に一つ、米沢あたりに一つ、米沢までも一時間以上かかります。ということは、その地域によってですけれども、確立した医療スタッフ、ブレーンをとにかく山形には最低三軒は欲しい、そういうことでございます。
  132. 塚田延充

    ○塚田委員 先ほど石田参考人の方から委員質問に答えて、いわゆる厚生大臣あての、例えば弔慰金であるとか、その他医療費補償など細かな話がございましたけれども、この件につきまして伊地知参考人にお伺いいたしますが、例えば医療費補償などになりますとどうしても匿名というわけにはいかなくなるのではないか。プライバシーの問題との絡みが出てまいりますけれども、これはどのように解決しようと考えられておるのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  133. 伊地知健

    ○伊地知参考人 その問題に関しましては、非常に難しいと思います。国が本当に責任を持ってプライバシーを守るということを明確にしなければ、幾ら救済しようと思いましても、そのことが原因でその患者のプライバシーが漏れてしまっては何のための救済かわからなくなってしまいます。ですから、そのことに対しては本当に慎重の上にも慎重の審議が必要だと思いますけれども、私たちは、やはり今の医療体制の上で医者との信頼関係というものを本当にもっともっと充実させていくこと、それが一番肝心なんじゃないか。都道府県とか知事とかにもしも通報などの義務が課せられてしまった上では、幾ら救済策をしようと思ってもできません。ですから、救済策をする上でも、この法案廃案にして、それで、いかにして感染者のプライバシーを守るか、どういう形をもって救済策が可能かということをもっともっと関係者の方がいろいろな意見を、公衆衛生の立場から、いろいろな立場から検討していただきたい、そういうふうに思っております。
  134. 塚田延充

    ○塚田委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  135. 稲垣実男

    稲垣委員長 児玉健次君。
  136. 児玉健次

    ○児玉委員 きょうこの委員会に御出席いただく上で随分葛藤がおありだったと思うのですが、貴重な御意見をいただいて心から感謝をしております。  今問題になっているエイズ予防法案患者管理法である、これはともあれ直ちに廃案にしてほしいという御三人の御意見はよくわかりました。私たちもそのように努力をしたいのですが、まず石田参考人にお伺いしたいと思います。  皆さんの会は、輸入血液製剤被害者救援グループ、こういう会で包括されていると思うのですが、この輸入血液製剤によってこれほどまで多くの血友病患者感染者が出てくる、何とかそれを、防げなかったものだろうか、それを大きく広がる前に防止するという点で厚生省が有効に手を打つとすればどのポイントが最も重要であったか、この点について石田参考人にお伺いしたいと思います。
  137. 石田吉明

    ○石田参考人 一九八三年、昭和五十八年八月十五日に、私はこのまさに今と同じ暑い日に厚生省に参りまして、国会に参りまして、そのときは九月にNHKの「ルポルタージュにっぽん」に出るための一連の運動だったのですけれども、速やかに安全な血液製剤をつくっていただく、それには国内によって自給していただくということを書類でもって、私の方は京都の血友病友の会というところで文書を出しております。だから、その時点で我々の気持ちと強い希望としまして、今からその当時のことを具体的に申しますと、アメリカではその年の春に加熱処理、これは肝炎防止のために加熱したというものだったと思うのですけれども、既にもう出回っておりました。西ドイツでも出回っておりました。だから、これを緊急避難的に治験をなしで入れておけば、これほどまでに蔓延といいますか、我々の被害はひどくならなかったのではないかという思いが今あります。現実に私どもはそういう要請を出しました。しかし、いろいろ流布されているようなことで、それから二年程度あって六十年の八月に認可されたということなんですけれども、その点についてはもっと速やかにしていただきたかった。  それで、その運動を今まさに展開しているのは、今の加熱処理の仕方にも粉による加熱の仕方、液体による加熱の仕方とか、例えばバイオテクニックの問題とかいろいろありますので、まだまだ過渡期の製剤だと思います。だから、より一層安全な薬、それは何も輸入だけではなくて、献血率は日本は恥ずかしくないような状態ですので、国内血を今の最高技術によって精製して患者治療に使うというようなこと、例えば国内血、献血のものをアメリカに送って、モノクローナル抗体に応用してそれをまた日本に入れてくるというような発想の転換を、過去のそういう苦い経験を生かして今なすべきだと思うのです。
  138. 児玉健次

    ○児玉委員 もう一つ石田参考人伺いたいのですが、この法案の対象から輸入血液製剤被害者を外す、こういう議論がございますが、この点についてどのような御意見をお持ちでしょうか。
  139. 石田吉明

    ○石田参考人 HIVによって病人、感染者となられた人たちの感染経路はいろいろ多様です。それを論議することはいいでしょう。しかし、一たんHIVにかかったら何もないわけです。すべて同じだと思います。病人を差別してはいけない、そういうものをしたら大変なことがいろいろ現場において起こる。もうそれだけです。
  140. 児玉健次

    ○児玉委員 宇野参考人にお伺いしたいのですが、先ほど友の会の会長である前に一人の母親としてここに立っているとおっしゃいました。血友病患者方々の中で不幸にしてキャリアになられた方々、そういう方々の発症を予防する、この点で世界で努力も始まっておりますし、日本でも研究者が懸命に努力をしておりますが、その努力を国としてさらに促進をする、この点でどういう希望、願いをお持ちか、伺わせていただきたいと思います。
  141. 宇野信子

    ○宇野参考人 具体的な案、考えというのは、私は本当に無知なものですからそれはできないのですけれども、ただ、例えば今国にお金があるならば、この間厚生大臣がおっしゃいました、十二兆の福祉のお金がある、一番福祉でとっていると。確かに大きいお金だなというのはわかるのです。だけれども今、例えばその発症予防に関する研究、治療に使うお金というのは、極端な話、何十億使ったって足りないのではないかな。人の命もかかっている。ましてや、私は一母親として出ました。というのは、またもとに戻って申しわけありませんが、家の中でも、主人に対してもいつも申しわけないという気持ち、あと子供に血友病患者で生まれてしまったという負い目、そういうことが常に渦巻いているからです。だからこそ私は一母親としての意見として今国にお願いしたいのは、どのような膨大なお金がかかるかわかりません。だけれども、研究、治療に従事する先生方をすべて含めまして一堂に会しまして、それで、金に糸目はつけぬからやってみろとこの日本でやっていただきたいのです。
  142. 児玉健次

    ○児玉委員 では最後質問ですが、伊地知参考人にただいまと同じことについてお伺いしたいのです。発症予防治療体制をどうすることが今一番必要か、この点でお伺いしたいと思います。
  143. 石田吉明

    ○石田参考人 済みません、伊地知さんから私の方に来ましたので……。  まさにその発症予防治療が僕たちが一番求め ていることです。つまり、今いろいろ受けられている方があります。レンチナンとか強力ミノファーゲンとかインターフェロンとか、いろいろ通院し、入院しながら受けられております。しかし、今まさにその病気を進行をとめるというものはないわけです、残念ながら。AZTにしても、副作用が強くて貧血の状態の方もまさにいらっしゃいます。だから、今は残念ながら発症予防治療というものが果たしてあるのかどうか、そういう言葉があるのかどうかというふうな思いでいっぱいなんです。まさに絶望的な状況です。まあ気休め的なものとして、何にもせぬよりはましやろという程度で通っている人がほとんどなんです。  だから、こういう開発予算といいますか、これは日本だけの問題じゃありません。全世界において、やはりどこかで進行について歯どめをかけていただきたい。それは国の予算をもっとかけて――それはなかなか日本はアメリカのように、もうアメリカではエイズ患者そのものの治療に専念するといいますか延命効果日本はまだ感染で発症していない人の状況ですので、アメリカよりもそういう作業が具体的に成果を上げる人たちがいらっしゃると思うのです。だから、もっともっと予算をつけてやっていただくことと、それにはやはり告知の問題もここに絡んできます。  また振り出しに戻りますけれども、それにつけても、やはりエイズ法案廃案にしていただかないと何事も始まらないということです。
  144. 児玉健次

    ○児玉委員 どうもありがとうございました。
  145. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  次回は、来る八月二十五日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十九分散会