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1988-11-02 第113回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月二日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 近江巳記夫君    理事 粟屋 敏信君 理事 加藤 卓二君    理事 片岡 武司君 理事 亀井 善之君    理事 柳沢 伯夫君 理事 関山 信之君    理事 正木 良明君 理事 伊藤 英成君       太田 誠一君    岡島 正之君       川崎 二郎君    北川 石松君       近藤 元次君    左藤  恵君       佐藤 静雄君    緒方 克陽君       永井 孝信君    春田 重昭君       辻  第一君  出席政府委員         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       加美山利弘君         海上保安庁警備         救難監     邊見 正和君  委員外出席者         参  考  人         (社団法人日本         海難防止協会専         務理事)    野呂  隆君         参  考  人         (元東京水質         保全部長)   田尻 宗昭君         参  考  人         (社団法人日本         船主協会理事         長)      山元伊佐久君         参  考  人         (社団法人日本         パイロット協会         理事)         (横須賀水先人         会副会長)   坂元  比君         参  考  人         (全国釣船業組         合連合会専務理         事)      田井 幸通君         参  考  人         (社団法人関東         小型船安全協会         会長)     山崎 義治君         参  考  人         (全日本海員組         合安全福祉部         長)      多筥 良三君         特別委員会第一         調査室長    寺田 晃夫君     ───────────── 委員の異動 十一月二日  辞任         補欠選任   新井 彬之君     春田 重昭君 同日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     新井 彬之君     ───────────── 本日の会議に付した案件  交通安全対策に関する件(海上交通の安全に関する問題)      ────◇─────
  2. 近江巳記夫

    近江委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  本日は、海上交通の安全に関する問題について参考人から意見を聴取いたします。  御出席願っております参考人は、社団法人日本海難防止協会専務理事野呂隆君、元東京水質保全部長田尻宗昭君、社団法人日本船主協会理事長山伊佐久君、社団法人日本パイロット協会理事横須賀水先人会会長坂元比君、全国釣船業組合連合会専務理事田井幸通君、社団法人関東小型船安全協会会長山崎義治君、全日本海員組合安全福祉部長多筥良三君の方々であります。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  本日は、海上交通の安全に関する問題につきまして、参考人各位の忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序でありますが、まず各参考人からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対して御答弁をお願いしたいと存じます。  それでは、野呂参考人にお願いいたします。
  3. 野呂隆

    野呂参考人 ただいま御紹介をいただきました日本海難防止協会野呂でございます。意見陳述に当たりまして、まず簡単に自己紹介をさせていただきます。  私、現在、先ほど御紹介がありましたとおり日本海難防止協会に勤務いたしておりますが、それまでは、海上保安庁あるいは海上災害防止センター等におきまして三十余年間にわたり救難、航行安全、防災業務に従事してまいりました。現在は、日本海難防止協会におきまして海難防止周知宣伝並びに調査研究等の事業に従事いたしております。  次に、簡単に私ども日本海難防止協会が交通安全のために行っております業務について御紹介をさせていただきます。  海難防止周知宣伝でございますが、現在、各種船舶運航者とその家族あるいは管理運用関係者等対象といたしまして全国各地講習会等を開催いたしまして、昨年までに約四千二百回、延べ二十五万人に対して安全の指導を行っております。また、カーフェリー等特別の船舶につきましては、専門家グループを派遣いたしまして実地指導を行い、安全運航に当たっております。また、海難防止調査研究につきましては、事故対策運航海上交通港湾災害気象・海象、海事法規国際協力等七百二十五項目につきまして学識経験者海事関係者関係官庁等で構成する委員会を組織いたしまして調査研究を行い、その成果を広く関係者に周知するとともに、所要の提言を行っております。昭和六十二年度は設定した委員会、部会数五十七、開催回数百六十二回、参加委員等延べ六百三十五名となっております。このような状況で現在交通安全のための防止活動を行っておるところでございます。  次に、東京湾交通安全対策について一言意見を述べさせていただきます。  まず、交通安全の基本でございますが、これは申すまでもなく、大多数の関係者合意を得られた必要最小限ルールを制定いたしまして、これを運航者が遵守いたしまして細心の注意をもって運航するということに尽きるかと思いますが、これを補完する意味におきまして、航行環境整備、すなわち、航行安全のため必要な航路設定航行援助施設、すなわち航路標識情報提供あるいは管制システム等整備も必要でございます。  私ども東京湾におきます安全対策として今までに調査研究した主な事項の概要について簡単に御説明申し上げます。  まず、浦賀水道航行容量交通安全システムについてでございます。  昭和四十年代になりまして浦賀水道交通量が非常にふくそうしてまいりました。それを踏まえまして、交通実態漁船操業実態調査をいたしまして、浦賀水道交通容量について検討いたしました。内容といたしましては、交通容量推定環境要目シミュレーション評価実用容量の推定、容量変化要素というようなものを検討いたしました。  いろんな前提条件等がございますけれども、簡単に定量的に出しました結論的なものを申しますと、航路幅七百メートルの直線状航路では七十三メートルの標準船型で一時間約六十隻という数字が出ております。ただし、この七十三メートル標準型と申しますのは、当時の約七百隻から八百隻に及ぶ航路内航行船平均値から割り出したものでございまして、トン数にしますと約千五百トンくらいかと存じます。それから、航路幅、視界、屈曲、これは航路屈曲でございますが、等による容量変化というのがございまして、視程が悪ければもちろん容量は少なくなってまいります。例えば五十メートルから二百メートルということになりますと五〇%から六〇%というふうに航行容量が落ちてまいります。また、航路幅でございますが、これは申すまでもなく、広いほど容量がふえるわけでございまして、航路幅五百メートルで大体三十三隻、それから千メートルだと百十二隻というような結果が出ております。  これらの航行容量を踏まえまして、昭和四十四年から海上交通安全システムに関する調査研究を行ってまいりました。海上交通事故を分析して、管制シミュレーションシステム情報内容管制対象水域管制人的要素航行援助システム航法システムの趨勢、航法用機器要求性能、こういうようなあらゆる分野につきまして検討いたしました。そして、昭和五十七年から八年にかけましては、現在の東京湾海上交通センターで行われております情報提供管制業務の基礎となります具体的な調査研究をいたしました。その成果は、現在、東京湾海上交通センター管制情報提供業務提言を受け入れられております。  次に、東京湾危険物積載船舶の入湾が非常に多くなってまいりました。これを踏まえまして、巨大タンカーによる災害防止、それからLNGLPG船による運航安全対策、こういうものについて引き続いて検討をいたしました。  内容は、海難の確率を出しまして、危険円それから狭水道航法防災対策、それから巨大タンカーにつきましてはバース内での危険防止というようなことも検討いたしました。また、LNGLPG船につきましては、衝突乗り揚げ等を想定いたしまして、危険ガスの拡散、船体の脆性破壊爆発火災規模消防対策、こういうものを検討いたしまして、その成果は、現在、海上交通安全法汚染防災法関係法令、それから種々の安全に関する行政指導東京湾消防体制等整備、こういうものに生かされております。  次に、航路体系についての検討でございますが、航路体系交通容量、それからその危険度というものにつきまして検討いたしました。  航路パターン設定いたしまして種々検討を加えたわけでございますが、まず前提条件といたしまして、中ノ瀬というのが東京湾の真ん中にございます、これが存在いたしますので、第一、第二海堡間に新しいしゅんせつ航路を、その航路を使いまして設定したわけでございます。  航路パターンといたしましては、分離型と環流型と二つ検討いたしました。  分離型は、申すまでもなく、浦賀水道在来航路しゅんせつ航路の二航路分離して航路体系をつくる方法でございますが、これでございますと、航路内を航行する船舶航路に出入りする船舶、あるいは横切り船舶との見合い関係が非常に多くなりまして危険度が非常に高くなりますので、余りいい体系とは申せません。  もう一つ環流型というのを考えました。これは航路分離せずに、一方通航それから右側通航の原則を適用いたしまして湾奥部で接続する、こういう考え方でございます。すなわち、浦賀水道しゅんせつ航路から入りまして、中ノ瀬東側、それから盤洲鼻沖を経まして湾奥部で迂回いたしまして、羽田川崎沖を南西進し横浜沖を経て中ノ瀬西側航路、それから浦賀水道在来航路を通って湾外へ出ていくというものでございまして、この形でございますと行き会い関係が非常に少なくなります。しかしながら、千葉川崎あるいは横浜間を航行する船舶、あるいは湾外から横浜川崎等に入港する船舶は非常に距離的に長い航海を強いられることになります。そのために、その解決方法といたしまして途中にバイパスをつけまして、いわゆるバイパスつき環流型と申しますか、こういうものを考えたわけでございます。この形でございますと、危険度という面からすれば非常に少なくなるし、また交通容量も非常に大きくなる、こういうことでございまして、その結果につきましてはネットワークシミュレーション等で一応評価をいたしております。この提案につきましては、いろいろしゅんせつその他関係者合意を得なければならない事項等が非常に多くございまして、現在、その一部であります木更津沖あるいは羽田川崎沖の迂回というような点につきましては行政指導で行われておりますが、まだ実施に至っていないわけでございます。  次に、東京湾に入湾いたします船舶避難対策でございますが、避難対策には二つございまして、台風等異常気象によるものと、それから地震津波等によるものとがございます。  台風異常気象等によるものにつきましては、東京湾の安全のための実態調査避泊対策、それから避泊の需要と容量、こういうものを検討いたしました。この問題につきましては、その後船舶大型化あるいはいろいろな形の変化というようなものによりまして対策が変わってまいっておりますので、現在、ある一定限度の船につきましては港内避泊、すなわち港湾施設整備いたしまして港内に避泊する船を多くいたしまして、その避泊錨地をふやすというような考え方を入れて引き続いて検討しておるところでございます。  また、地震につきましては、東海地震と、それから東海地震と同じような規模南関東地震が起きたときに船舶がどういうふうな状態になるか、海上交通がどういうような状態になるかというようなことを検討いたしました。すなわち、障害が起きますので、その障害予測手法障害対策、それから輸送確保システム海上輸送ネットワークシミュレーション実施をいたしましてその評価をいたしております。  これらの検討結果は、現在の東京湾台風等の避泊安全対策あるいは防災対策等に生かされておるわけでございます。  その他、カーフェリーあるいは遊漁船等の安全につきましても実態調査いたしまして、運航基準なりあるいは指導基準交通ルール周知徹底というようなものをやっております。その他、羽田空港沖沖合展開東京湾横断道路計画、京浜港の港湾整備計画、こういうものの出現に伴いまして東京湾交通流あるいは避泊等にどういうように影響をするかというような影響調査、それに伴う安全対策検討等を行いまして提言いたしておりまして、これはこれらの工事工事中あるいは完成後に、レーダー対策を含めまして実施をいたしていただくよう関係方面において現在準備中でございます。  以上、簡単に東京湾におきます私どものやっております安全対策についての検討について申し上げましたが、東京湾海上交通法の施行、その後の安全に関する各種の行政指導、それから航行環境整備等、現状においてはおおむね実行可能な安全対策は講ぜられているものと考えております。事故防止には、申すまでもなく運航者自体注意ルールの遵守が最も肝要でありまして、今回起きました「なだしお」と第一富士丸衝突事故も、今までの報道関係等状況から推察いたしますと、両当事者がルールを遵守して的確な措置をとっておれば避け得た事故ではないかというふうに考えております。しかしながら、より安全を確保するためには、航行環境整備、なかんずく港湾内の可航水域の拡大、それから管制情報提供機能充実強化等につきまして関係者意見を調整し、協力を得てこれを拡充していく必要があるのではないかというふうに考えております。  東京湾は、申すまでもなく、船舶航行漁船操業の両側面を持つ海域でございます。航行と操業の安全の両者を確保するためには、運航関係者漁業関係者のお互いの理解と協調が必要でございます。関係者合意を得るようさらに努力を重ねまして、浅いところのしゅんせつ等航水域の拡充を図りまして、また、東京湾横断道路ができますので、これによります通航分離あるいは湾奥部情報提供システムの活用、こういうものも視程に入れまして、さらに現実的な東京湾航路体系について検討を進めたいと現在考えているところでございます。  簡単でございますが、東京湾安全対策に対する意見を申し上げさせていただきました。どうもありがとうございました。
  4. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  次に、田尻参考人にお願いいたします。
  5. 田尻宗昭

    田尻参考人 私ども反省を申し上げますと、東京湾の問題といいますと、従来ややもすると汚れの問題を中心にしてまいりました。しかしながら、東京湾の海の安全という問題が最近非常に大きく叫ばれるようになりましたが、東京湾の海の安全といいますのは、何といいましても、タンカーが一たび事故を起こしたならば油で覆われて爆発火災に至るおそれがある、そういうことを考えますと、東京湾のもう一つの問題がほとんど見忘れられていたのではないかという反省をしております。  東京湾は世界的にも最高の過密の海になったと言っても過言ではないと思います。例えば、日本における工業出荷額の約三割を占める、あるいは巨大タンカー外国船が多いことでは全国一位であります。海上保安庁昭和五十四年の海上保安白書でも次のように述べております。「著しくふくそうした東京湾などに出入港する巨大タンカーは増加の一途をたどり、衝突による危険を増大させている。もし大型タンカーなどの事故が発生し、海上火災陸岸に及んだ場合や油が港湾全域を覆い尽くした場合の被害はまさにはかり知れないものとなった。」このように言っております。ところが、東京湾では船舶乗組員やあるいはパイロット、また海上保安庁などの努力にもかかわらず、東京湾の海の安全は海の関係者努力だけではもはや守れないというのが端的な言い方ではないかと思います。つまり、陸側からの政策的な協力がなければ到底守れないということであります。例えば、東京湾内では海難が五十九年でも九十七件起きております。つまり、東京湾の中で今一番重要な問題は過密であります。水面が足りないということであります。しかしながら、一方において人工島の埋め立てが予定されているのは八カ所あります。湾岸まで含めますと、開発プロジェクトが約四十ひしめき合っているというのが実情でございます。  そこで、私はただいまから直接的な海上交通対策について九つの提案をしたいと思います。  第一は、台風や暴風雨が来たときの船舶避難錨地対策であります。  過密であり水面が足りないということは、まず第一に、船にとって一番大事な駐車場とも言うべき避難錨地が足りないということに象徴されております。例えば、現在二百三十五隻分の錨地が必要でございますけれども、百二十六隻分しかございません。横断道路人工島ができますと、これが約百三隻に減るということが言われております。そうすれば半分以下であります。このはみ出した船の錨地をどうするかということは、これは焦眉の急であります。特に横浜中ノ瀬の間やあるいは川崎扇島沖状態錨泊船で満杯という状況であります。したがって、私は、まずこれ以上の埋め立てというものは抑制をしなければならぬ、そうして二番目に、直接的にはこの錨泊水面を早い者勝ちということではなくて、大小別あるいは船種別にきちんと整理をする必要がある、そして何よりもこのはみ出した船をどうするかということの対策を総力を挙げて考えなければいかぬと思います。  二番目は、検疫錨地確保であります。  外国から帰ってきた船が検疫を受けるその錨地がないというのは、言語道断であります。横浜港の検疫錨地に至っては、もはや陸地になっております。このようなことでは船舶関係者にとっては事故を防止する手だてはございません。  三番目に、台風がやってきたときの避難体制であります。もう少し全国的に考える必要があるんじゃないだろうか。  例えば、沖縄の金武湾を出港した船あるいは鹿児島喜入を出港した船が、暴風がやってきた、台風が発生したというときには、もう東京湾に向けることをやめて、途中の宿毛であるとか佐伯湾であるとかというところに避難をする、あるいは金武湾鹿児島喜入から出港しない、そういうような全国的な連携体制が必要じゃなかろうか、そう思います。あるいは、とにかく定員オーバーでございますから、各港湾別に受け入れ適正隻数の歯どめを一応設定する必要がある。そして異常気象がやってくるときには、各港でぎりぎりの限界は何隻なんだというような隻数の歯どめを一応設定しておいて、それに見合うような行政指導がなされるべきじゃないかと思います。  四番目は、環状航路設定であります。  これはただいま野呂さんから申し上げられましたので重複を避けますけれども東京湾ではほとんどの水面国際海上衝突予防法によって衝突を防止されておりますけれども、いかんせん、これは一船と一船との関係だけを律するのでありますから、東京湾のように湾岸がすべて港で、南北東西航路が入り乱れているような状況では複数の船が向かい合う、その場合にはこの法律は役に立たないわけでありますから、何としても環状航路、そういうものを設定しなければならない。現在は、端的に言えば船長が互いにそのときの経験と勘で、法律的な根拠に頼ることができなくて、何とか衝突を防止しているというのが偽らざる実態であります。  次は、せっかく全国的に国家石油備蓄基地、つまりCTSをつくったのであります。あるいはつくっている最中であります。例えば志布志であるとか五島列島の上五島であるとか、福岡県の白島であるとか、むつ小川原であるとか福井、全国的なこのような石油備蓄基地というものをもっと活用する必要があるんじゃないか。  例えば、喜入におきます日石は、鹿児島県の喜入まで外航船で持ってくる、それから国内には今度は国内タンカーに切りかえて、そしてもう少し中型の船で運んでいるというような状況であります。このようなCTS、つまり中継基地を活用して国内では中型タンカーで運ぶというような発想が全国石油備蓄基地を総合的に運用することによってとられないだろうかということが感じられるわけであります。これは昭和四十五年の四月二十四日の六十三国会で橋本運輸大臣が同じようなことを答弁されておりますけれども、私はこの答弁には賛成であります。  次は、中ノ瀬航路の北口における航法の改善でございます。  かつて昭和四十九年十一月九日にLPGタンカーの第十雄洋丸がここで衝突をいたしました。このときの衝突原因は、はっきりした法的根処が、中ノ瀬航路に入ってきた船とそれから木更津航路を出てきた船との直角に交わる交差点で直接的な法的な整備がなかったということが原因として言われております。しかしながら、これはいまだになかなか解決されておりません。これにはいろいろな方法があると思います。困難ですが、中には中ノ瀬航路をもっと延長したらどうかという説もあるようですけれども、何としてもこの状態は官民の英知を挙げて解決をしなければ再びこのような事件が起こるおそれは十分にある。現在はパイロットが互いに話し合って何とか事故を防止しているような状況でありますけれども、このような状態は早急に法的に解決しなければ、言葉の通じない外国船なんかに対しては非常に危険性が大きいことを指摘しておきたいと思います。  それから次は、扇島LNGタンカー基地であります。  私どもは極めて大胆に誤解を恐れずに申し上げるとするならば、次に東京湾事故が起こるおそれの最も大きいところはここではないかと思います。つまり、LNGタンカーは御存じのように大変な爆発力を持っております。同時に、一万五千トンの船が横合いから直角に衝突した場合に、六ノット以上のスピードであればタンクに穴があく、そうして場合によっては六分間で全量流出する、そしてその爆発ガス状況によっては四千メートルに広がる。これは京浜コンビナートの千三百のタンクが全部含まれます。そして東京湾で通常航行している船舶発電機あるいはエンジンのスパークも火種になるわけでありますから、猛烈な爆発が起こることは決して過言ではございません。しかしながら、東京湾海難防止協会報告書を見ますと、ここに入ってくるLNGタンカーは非常に困難な条件の中で航行せざるを得ない。端的に言いますと、東京千葉から出港してくる一日二百七十五隻の船に対してことごとくLNGタンカーの方が避けなければいけない法的な義務船になるということであります。その第一の壁を突破しましたならば、第二の壁はその前に五つの危険物船舶錨地が並んでいる。その第二の壁を突破しても、第三の壁は二十万トンを含む大型タンカーのシーバースが四つ並んでいる。しかも、東京湾で最も船舶の過密な川崎扇島沖につくられたこのようなLNGタンカー基地というものは、常に大きな危険を内包していると思います。もしこれが爆発したならば大変な災害になることは海上保安白書も指摘しております。  だとするならば、何とかこれを防ぐことはできないだろうか。私は、理想的には将来これ以上LNG基地が増設されるならば、かつて運輸省が館山に中継基地をつくろうということを検討したことがございますけれども、それに類する東京湾岸に集約基地をつくるべきである、そうしてパイプで運ぶべきである、こう思います。しかし、とりあえずは扇島LNGタンカーについては特別の航行安全対策が講じられるべきである。特に出入港に対するラッシュを避ける厳重なルールを確立すべきであると思います。  それから、便宜置籍船対策であります。  世界でもこの潜り船は大変嫌われておりまして、全国で油を流し大変な劣悪な船が、税金を安くしあるいは検査を逃れるためにリベリア、パナマに籍を移して非常に劣悪な状態航行しているためにEC八カ国では入港の禁止を申し合わせたほどで、国際的にも条約は徐々に整備されておりますけれども、何と東京湾ではこのような便宜置籍船が全国で一番多いのであります。全国の二八%、七千八百七十八隻が入港しております。このような本当に設備の劣悪な船が東京湾で一番多いということを考えますと、特に東京湾では世界的にも問題化しているこの便宜置籍船対策、EC八カ国では港の外でまず整備点検をやりますけれども、このようなチェックをさらに強化する必要があるのじゃないか、こう思います。  以上が直接的な交通対策でありますが、あとはしょって二つつけ加えます。  二番目は、コンビナート防災対策であります。  残念ながら海上に消防法がございません。私たちも海上保安庁時代これで大変苦労いたしました。ということは、どういうことかといいますと、石油桟橋でも極端に言えば消火器がなくても法的には合格するわけであります。消防法は岸壁から内側だけであります。したがって、シーバースはもとよタンカーの危険物の免状も要らないというような状況ですから、特に石油企業が消防船を持つ義務すらないということでありまして、このような状態ではあの京浜港の過密の中で一たびタンカー事故があったならば湾岸のコンビナートにそれが延焼することを防げないと思う。したがって、何よりも海上消防法をつくることによって企業に法的に海上の消防体制、海上防災体制を義務づけるべきであると私は思っております。  それから、次はシーバースの設置規制であります。現在、東京湾では十一のシーバースがございますけれども、何といってもこれは多過ぎるという感じがしてなりませんので、これにもやはり海上保安庁の重要なシーバースに対する設置規制権限を与えて、そして海上交通の立場からその位置やそれ以上のシーバースを許可するかどうかということを許可制にすべきだと思います。  それから、大きな三番目としましては、現在、岸壁と防波堤をつくれば港ができる、そういうような安易な港湾造成に対するシステムが、東京湾全部を、ほとんど九割を港湾造成をしてしまった。私は、やはり港湾造成は乱開発のそしりを免れないと思います。そういうような港湾造成の場合にもし欠陥港がつくられますと、後で船舶乗組員の力だけでは事故を防げないということでありますから、海上保安庁にこのような場合の安全審査委員会を設置して船舶運航の立場から港湾造成に歯どめをかける、あるいはそれに対して十分な安全審査をやらせるという制度が必要ではないか。港湾土木と船舶運航には大きな隔たりがあるのが今日の日本の特徴であります。そのためにもタンカーアセスメントが必要ではないか。つまり、巨大タンカーについては特別な安全対策を必要とする以上、港湾造成に際して、その水深は幾ら必要であるか、航路幅は幾ら必要であるか、錨地はこんな錨地が必要なのだというような基本をベースにしたアセスメント制度というものをまさにつくるべきではないかと思います。  最後に、今回起こった潜水艦の衝突事件の関連でありますけれども、大変不幸な事件が起こったと思います。私たち海の同じ仲間としては本当に同情にたえないといいますか、人ごとではないという感じがします。しかしながら、このような事故を二度と起こさないためには、何としても浦賀水道の中における軍用艦船が複数で横切ることに対する抜本的な制度の確立が必要ではないだろうか。今日の事故を単に二人の艦長と船長の不始末で片づけてはならないと私は思っております。そのためには、浦賀水道を並んで事実上多くの軍用艦船が横須賀に向けて横切っていく、そのことに対するルールをこの際確立しなければ、今度起こるときは浦賀水道の中で大型タンカー衝突するのではないだろうか。例えば、大型タンカーが南下中とします。そうして一番艦が横切ったときにはたまたま南下船が余り見えなかったとしても、今回のように十隻も並んで通った場合に、十番艦あたりが通るときにはもう大型タンカーが南下してきた。大型タンカーはブレーキをかけても、つまり後進エンジンをかけましても三千メーターぐらいはとまりません。あるいはかじを切っても千メーターの旋回径が要るので航路からはみ出してしまう。とするならば、物理的に並んで走っている軍艦をよける方法はないわけであります。こういうような危険が急迫した場合には人力をもってはこの衝突を防げない以上、やはり制度として、このような横切りの場合には極度にこういう軍用艦船のスピードを落とさせる、あるいは複数の南下船がある場合には一たん浦賀水道を通り過ぎる、そのようなことをきちんとルール化すべきではないかと思います。昭和六十年にアメリカのロックウッドというフリゲート艦とサントニノ・Rというフィリピンの貨物船が衝突をいたしました。同じような事例が起こっているのであります。次に第十雄洋丸のような事件がここで起こりましたならば、海上保安白書が言っているように、東京湾は油で覆われ、大爆発に至るというような歴史的な災害が起こらないとはだれも保証できないと思います。私は強くこのことを求めたいと思います。  一言最後に申し上げます。  このようなことは現行法ではほとんどできないと思います。残念ながら東京湾に対する安全行政はばらばら行政であります。このことをもっと総合化して、そして東京湾全体に二度と災害が起こらないような海の安全を確立するためには、東京湾保全法が必要ではないか。瀬戸内保全法というものがかつて議員立法でできました。あの法律は非常に画期的な法律でした。しかしながら、あの法律にさらに海の安全防災をつけ加えた東京湾保全法というスケールの大きな法律が求められている。日本の玄関口である東京湾を守るためにこれが二十一世紀の展望ではないか、生意気ですがそのように考えます。
  6. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  次に、山元参考人にお願いいたします。
  7. 山元伊佐久

    ○山元参考人 ただいま近江委員長から御指名にあずかりました社団法人日本船主協会の理事長をいたしております山元でございます。  平素は国会におきまして海上交通安全対策につきまして、各般にわたり格別の御指導、御鞭撻を賜りまして、厚く御礼申し上げる次第でございます。また、本日は、当委員会におきまして日本船主協会として海上交通の安全に関しまして意見を述べる機会をお与えいただきまして、深く感謝申し上げるところでございます。  話の順序といたしまして、まず第一の柱として安全対策の基本事項につきまして、第二の柱といたしまして大型船の安全対策につきまして、第三の柱といたしまして東京湾安全対策につきまして、第四の柱といたしまして安全対策に対する希望につきまして、逐次お話を申し述べさせていただきたいと存じます。  本題に入ります前に、社団法人日本船主協会の性格なり事業活動につきまして若干御説明を申し上げ、御理解を得たいと存ずる次第でございます。  日本船主協会は、百総トン以上の船舶の所有者、賃借人並びに運航業者でありまして日本国籍を有する者を会員といたします全国的な海運事業者団体でございます。当協会の沿革は、その前身にさかのぼる組織が明治二十五年に始まりましたが、現在の社団法人日本船主協会は昭和二十三年九月九日に設立認可を受けております。昭和六十三年十月一日現在におきます会員数は百七十六社でございまして、その運航船腹は二千七百七十四隻、四千六百九十五万総トンでございまして、我が国商船船腹の大半を占めております。  当協会は、公共の福祉のために海運事業に関します諸般の調査研究を行い、海運業の公正かつ自由な事業活動を促進しまして、日本海運の健全な発展に資することを目的といたしております。この目的を達成いたすために、国際海運とも協調を図りまして、資料、情報を収集いたしますとともに、これらを常設委員会、部会等におきまして検討し、問題の公正かつ合理的な解決策を決定いたしまして、その実現に努力いたしているところでございます。活動の分野は海運業の全般にわたっておりますけれども、安全問題事項について具体的な例示を申し上げますと、港湾船舶の建造、運航、保全に関する技術、海上災害防止などの問題の処理並びにこれらの調査をやっているところでございます。  なお、一言お断り申し上げたいのでございますが、内航につきましては五つの組合、これを総括いたします日本内航海運組合総連合会がございます。また、旅客船、フェリーにつきましては日本旅客船協会がございまして、それぞれの分野につきまして専門的に問題の検討対策が講ぜられております。本日は時間もございませんので、私は主として外航海運を中心といたしまして御説明申し上げさしていただきたいと存じます。  まず、第一の柱であります安全対策の基本事項でございます。  船舶の安全を確保いたしますことは、海運各社経営上の重要な方針でございまして、業界に課せられました責務でもあると自覚をしているところでございます。これを実現いたしますために、各社はそれぞれ安全管理の徹底に努力をいたしておますが、正本船主協会といたしましてもこれを支援するために種々対策を講じております。  その主なものを申し上げますと、一つは、関係官庁が策定いたしました規制とか指導とか、そうした内容関係船社、船舶に周知し、さらに徹底をいたして万全に備えているわけでございます。二番目に、関係当局なりあるいは海難防止関係の諸団体が主催いたします各種調査研究委員会に参画いたしまして、航行上の技術的な資料や意見を提供いたしております。それから第三番目には、海運と水産、両業界の海面の利用の問題でございます。これにつきましても、日ごろから船舶の交通と漁業操業の共存ということで意見の交換に努めているところでございます。四番目に、全国海難防止強調運動に積極的に参画いたしまして、安全対策の実効が上がるように協力をいたしているところでございます。  それからもう一つの点でございますが、外国船日本の沿岸にかなり出入いたしております。この点を念頭に置きました安全対策の基本でございますけれども海上交通規則の原典でございます一九七二年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約、これが基本でございまして、日本沿岸に地域的な特別なルールが入りますと徹底が期せられないという問題もございますので、その点の配慮も必要かと存ずる次第でございます。  それから第二の柱の大型船の安全対策でございます。  先ほど田尻参考人からもお話がございましたが、巨大船は、全力後進をかけましても三千メーター走行いたしますし、また転進するにいたしましても一千メーターの海域が必要でございます。それほど大型船の運航性能には限度がございますので、まずは大型船に対する安全対策が一番重要な事項かと思います。これにつきましては海上保安庁でも種々の御指導が行われているところでございますけれども、その御指導の一環として、タンカー等に対する安全対策確約書というものを管轄の海上保安部なりあるいは管轄海上保安本部に提出をいたしているところでございます。この確約書は詳細をきわめておりまして、一船ごとに十数ページにわたる内容のものを提出いたしまして、官民相協力いたしまして大型船の安全に万全を期する体制になっているところでございます。  具体的に触れますと、液化ガスタンカー安全対策確約書でございます。これは二万五千グロストン以上の液化ガス、LPG、LNGタンカーでございます。もう一つは、東京湾に入湾いたします大型タンカーでございます。これは二十二万重量トン以上の大型タンカー対象となっております。それからもう一つは、瀬戸内海に新規に立地いたします危険物基地に係るタンカー安全対策確約書でございます。この危険物は原油、LPG、LNGその他の引火性液体類及び引火性高圧ガスで、これを搬出入するタンカー対象となっているところでございます。  以上が大型船の安全対策の最も重要な点でございます。  第三の柱といたしまして、東京湾安全対策について申し上げます。  現状でございますが、六十二年度の浦賀水道通航いたしました船舶の一日の平均隻数でございますが、貨物船が四百九隻、タンカーが百二十隻、旅客船が二十一隻、漁船が五十一隻、計六百一隻にも達しておりまして、船舶がふくそうする海域であるという認識を私たちは基本に置いているところでございます。  その安全対策でございますが、官主導による対策と私どもが自主的に行っている対策と二通りございます。  官主導による対策といたしましては、東京湾海上交通センター管制なり御指導を我々は遵守することといたしております。それから、先ほど申し上げましたタンカー安全対策の確約書も提出いたしております。それから、第三管区海上保安本部の航行安全指導につきましては、万全を期して励行に努めているところでございます。それから、東京湾区水先区が強制水先区とされておりまして、浦賀、中ノ瀬航路付近の海難防止対策がとられておりますが、その実施に私ども協力をいたしているところでございます。  次に、自主対策でございますけれども、日海防主催の東京湾横断道路海上交通安全調査に参画いたしまして、海事関係者といたしまして船舶航行の安全の面から意見を開陳し、十分に反映をしていただくようにお願いをしているところでございます。それから、東京湾海上交通センターが提供いたします東京湾台風接近時の錨泊状況の有効な利用につきまして腐心をいたしておりまして、走錨事故の防止の徹底を図るようにしているところでございます。  第四の柱といたしまして、安全対策についての希望を申し述べさせていただきたいと思います。  第一は、東京湾は、先ほども申し上げましたように、現状でも交通がふくそうしているところでございまして、そういうところに横断道路が建設されることになっております。建設工事に当たりましては船舶安全対策に十分な措置を講じていただきたいと、特段の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。  第二に、先般、第一富士丸事故対策本部が策定されました船舶航行の安全に関する対策要綱、並びに近く立法化が図られると仄聞いたしております遊漁船業の適正化に関する法律等に基づきまして、航路内あるいは狭水道の遊漁活動と船舶航行との調整を図られることとなると思いますけれども、十分な御検討と周到な配慮をお願い申し上げる次第でございます。  第三に、海洋レジャーが急速に広まってきておりますし、東京湾の各地にマリーナ設置構想が出ております。プレジャーボート及び遊漁船の乗組員に対する航行の安全思想の一層の高揚が図られると同時に、万全の措置がとられるようにお願いするところでございます。  最後に、東京湾海上交通センター並びに備讃瀬戸の海上交通センターの機能がさらに充実強化されることを願うところでございますし、また同時に、海上交通安全法が適用される海域におきます海上保安庁の巡視船艇がさらに強化されまして、安全の指導体制が強まることを念願しているところでございます。  非常に時間が限られておりまして意を尽くせませんけれども種々御配慮をお願い申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。
  8. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  次に、坂元参考人にお願いいたします。
  9. 坂元比

    坂元参考人 ただいま御紹介いただきましたベイパイロット坂元でございます。  私どもは、東京湾口から東京湾港域周辺に至るまで全域の水先業務に従事しております。これまで十五年間、一回の事故もなく水先嚮導しております。  本日は、東京湾における海上交通安全対策について意見を聴取したいとの御意向に基づきまして、参考人として出席いたしました。お手元の東京湾における航路の現状図をごらんになりながらお聞き願いたいと思います。  これより私どもの水先人としての体験に基づきまして意見を述べさせていただきます。  そもそも、海上交通安全対策と申しますのは、単に衝突を防止するだけのものではなくて、海難そのものを防止する対策でなければならないわけでございますが、海難を防止するということは、すなわち海難原因を見きわめ、その原因を取り除くことが安全対策である、こういうふうに考えるわけです。ちょうど今から十年前に、私は、パイロット協会の技術研究発表会におきまして海難原因とその防止策ということについて私の意見を発表いたしました。本日は、この件については時間もございませんので省略いたしますが、いずれまた機会があれば申し上げることにいたします。  さて、私ども水先業務に関連する法規といたしましては、海上衝突予防法、海上交通安全法、港別法という三つの法がございます。海上衝突予防法というのは、いわゆる国際海上衝突予防規則に準拠して国内法として定められたものでございまして、海上交通安全法は、海上衝突予防法の特例として特に船舶交通のふくそうする水域、つまり東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の限定水域において特定の航路設定して、そこの航路航行する船舶の安全を図るための交通法を定めたものでございます。また、港別法というのは、港域内における船舶交通の規制をしたものでございます。  ここで御注意申し上げたいのは、先ほど田尻参考人から申し上げましたように、この法規は一船対一船の法規であるということでありまして、一船対複数の船舶あるいは一船対一群の法規ではないということでございます。  東京湾は御承知のごとく極めてふくそうした水域でございまして、同時に四方から数々の船が向き合うことも珍しくないほどでございまして、一船対一船と申すよりも、むしろ一船対複数の船舶あるいは一船対一群の対応が多いように見受けられるわけでございます。かような状況を御想像いただきますれば、いかに法の運用が難しいものであるかということがおわかりいただけると思います。私どもは、このふくそうする水域内での操船に当たりまして、ほとんど衝突予防法第三十八条、第三十九条に示されます切迫する危険のある状態における臨機の処置をとることが船員の常務として求められるわけであります。もしこの処置を誤って衝突した場合には、十分な注意を払っていたか、あるいは適正な措置が講ぜられたかというその責めを問われるゆえんでございます。  今回の潜水艦「なだしお」と遊漁船第一富士丸衝突事故は、極めて不幸にして多くの犠牲者が出ましたことによって、新聞やテレビを通じて全国津々浦々にこの浦賀水道東京湾の名前とともに宣伝されました。そして、魔の海であるとかあるいは危険がいっぱいみなぎっているというように非常に悪い印象を深めておられるように考えられますが、東京湾というのはそもそも特定重要港湾に指定された四つの大きな港を持っております。横浜川崎東京千葉、これを控えます以上、多くの船が出入りするわけでございまして、一日六百五十隻から七百隻前後の船が入っております。特に午前六時前後、それから夕方は五時から八時、これがピーク時で、一時間に三十隻から三十五隻の船が大小さまざま、上は十五万総トン、長さ三百三十メーターの大型船から、下は五十メーターの小型船に至るまで、どっとこの航路に入るわけでございますから、まずそのさまたるや、まさに圧巻と言えるかもわかりません。ある人に言わせれば、いわゆる海難が起こらないのが不思議だという表現をなされるのも無理もないことでもございましょう。  時代の推移とともに社会的現象も変化し、それに応じて交通環境も大きく変化してまいりました。さらに、国際海運の構造的変化にも伴いまして、近年、日本船舶日本籍の船が非常に少なくなってまいりました。他方、外国籍の船が非常に多くなっている傾向にあります。殊に混乗船とか便宜置籍船がにわかにふえている傾向にあります。私ども、これらの実感として、その乗組員の技量というものはかなり問題があるやに見受けられます。他方、遊漁船や漁船あるいはプレジャーボートの数も圧倒的に増加いたしまして、最近は特に航路内の航行を妨害するケースが非常に多いのが事実であります。  私が最近経験いたしました中での事例を御紹介申し上げますと、パナマ国籍で総トン数十五万総トン、三百三十メーターの船を東京湾口から川崎まで水先嚮導したことがございます。船長はノルウェー人の非常におとなしい船長でございました。超巨大船というものは、運航補助能力を持つ警戒船二隻を前方及び側方に配置いたしまして入港するわけでございますけれども、たまたま浦賀水道の中央二番ブイを航過いたしまして次の針路に向けましたころに、ちょうど前方二マイルの地点に漁労中の漁船群を発見いたしました。直ちに私は警戒船を先行させまして、漁船群に対して巨大船が接近していることを通知するとともに、いずれか片方に寄っていただきたい旨を連絡いたしました。間もなく警戒船から、漁船群は左側に寄るという連絡を受けましたので、直ちに針路を右に変えるように命令いたしました。ところが、船長はにわかに私にこう申しました。どうして漁船を避けなければいけないのだ、ここは航路じゃないか、なぜ航路内の漁船を取り締まらないのか、日本の政府は何をしているのか、巨大船がかじをとれば、再びもとの針路に戻るのに大変な距離にいわゆる変位をするのだ、場合によっては航路外にはみ出てしまうじゃないか、もし航路外に出て座礁でもしたら大変だぞ、漁船のために変針するなんて大変なことだ、そういうけんまくでまくし立てるわけでございます。  私どもは、こういうケースはこれまでにも間々ございますので、それほど慌てるわけでもございませんけれども、この船長にしてみますと、航路内で平気で漁労している漁船を見ますれば驚くのはもう当然だと思います。私は、まあまあ、船長の怒る気持ちはよくわかるけれども、とにかく大丈夫だからおれに任せなさい、日本では航路内は既に漁場になっているんだ、だから、漁船を締め出したり漁業を禁止したりするとなるとこれは莫大な補償を、いわゆる漁業補償を払わなきゃいけないんだ……。いろいろと日本の漁業の実態を説明いたしました上で、とにかく当分は我慢しなきゃいけないんだ、安心しておれに任せなさいと笑いながら、船長を説得するのにも一苦労でございます。船長も苦笑しながら肩をすぼめまして、とにかくもうしようがないけれども頼む、この一言でございました。私ども正直のところ表面は非常に平静を装ってはおりますけれども、胸中は常に緊張の繰り返しでございます。外国人船長にしてみますと、日本じゅうのどこに行っても航路内で漁船が漁労に従事しているというのは、全く奇異に感ぜられるのは無理からぬことでございます。何のための航路だと言いたいのかもわかりません。やはりこういうことがひいては日本への不信感につながるのではないか、ひとり気になるところでございます。  瀬戸内海の航路ではもっと複雑な問題が多いそうであります。時には漁船が航路いっぱいにふさがりまして、これを避け切れず航路外に出ることもあるということを同僚のパイロットからよく苦情を耳にしております。  これらの問題解決のためには、大変に難しい事情も絡んでいると思います。しかし、とにかく航路を安全に航行できるように何らかの手段と方策を講じていただきたい、このことは私ども海技者が心から早期解決を願う重要課題でございます。海上交通安全法に対する附帯決議に示されました申し合わせ事項もございます。いずれにしても関係者の良識ある御審議をお願いする次第であります。  次に、海上交通安全法に定められてあります行き先表示信号について簡単に申し述べさしていただきます。  これはもう既に東京湾海難防止協会でも審議中の問題でもございますが、これは一見非常に単純な信号のように見受けますけれども、極めて複雑で、しかも面倒なものでございます。もしこれを取り違えでもしたら大変なことになるものでございます。すなわち、変針点付近で逆の方向に船が回るという信号でございますので、私どももこういう違反船を身近にいつも見ておりますが、特に小型船の違反が多いわけでございます。この際、こういう信号法規を変更いたしまして、できるだけ目的地を表示するような統一した信号にできるだけ早く変えるような御措置をお願いしたい。近く東京湾横断道路工事もいろいろ開始されるわけで、今よりさらに多くの工事船、作業船が航路内あるいは湾内を往来するわけでございます。お互いに船舶の行き先が明示されるような信号であれば、おのずから航行安全は期せられるものではないかと考えるわけでございます。言うはやすく行うはかたしとも申しますが、大変な作業ながら安全対策の上からも早期解決をお願いしたいという次第でございます。  次に、航路出入り口付近の航法規制について申し上げます。  本件はさきに行政監察によってもう既に指摘されているところでございますけれども航路の出入り口付近での出入航船とこれを横切る小型船、遊漁船、プレジャーボートとのニアミスの危険は、枚挙にいとまがありません。危険防止のためにも、航路の出入り口付近のある範囲内での航法規制を早急に御検討いただきたい。これは、ここで申し上げます航路の出入り口は、南航航路あるいは北航航路の出入り口だけではなくして、横須賀港への出入り口も同じような措置が必要であります。そういたしますと、さきの潜水艦「なだしお」・第一富士丸のあの悲劇は二度と繰り返すことはないだろうと考える次第でございます。  最後に申し上げたいことは、すべての湾内航行船舶が相互に容易に情報交換が可能であってほしいものであります。そのためには、航行船舶のすべてに国際VHFなどの無線設備を装備される必要がございます。少なくともとうとい人命を預かる客船や遊漁船等は、たとえ小型船といえども最優先的に船舶相互に連絡可能なVHF等の無線設備を装備すべきであろうかと存じます。電波監理法上難しい問題もありましょうが、人命安全第一とする以上は前向きの御検討をお願いしたい次第でございます。私どもパイロットは、常時トランシーバーを携行しておりまして、パイロット同士の連絡あるいはパイロットボートあるいはタグボートとも十分な情報の手段の確立を図って、安全対策協力しているわけでございます。  さて、今日までの海難統計を見ますと、ほとんどと申してよいくらいに小型船が事故に介在しております。このことは日本船船長だけではなく、外国船船長もひとしく小型船、遊漁船、プレジャーボートの妨害を厳しく非難しております。私どもはその事実を否定するわけにはいきません。船主経済も苦しい事情は重々察知されますが、安全対策をもっと真剣にやってほしいと思うわけでございます。対岸の火事見物、よそごとみたいに軽視される余りに、一たんこれが事故を起こしますと大変な事故につながり、ひいては国家的な大損失につながることは十分考えられるわけでございます。特に小型船乗組員に対する安全教育には一層の強化指導をお願いしてやみません。  航路も湾内も絶えずその周辺は動いております。環境、気象、海象はいつも変化しております。私どもは、常に初心に立ち戻って慎重にひたすら安全運航に努めて、事故を未然に防ぐように努力を続けております。  終わりに臨みまして、海上交通安全のために日夜大変な御苦労を願っている海上交通センターの運用管制官の方々や海上保安部の第一線の方々の御苦労に対しまして、心から敬意と感謝をささげるものであります。終わります。
  10. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  次に、田井参考人にお願いいたします。
  11. 田井幸通

    田井参考人 ただいま御紹介にあずかりました全国釣船業組合連合会の田井と申します。  本日は、本委員会の席にお招きいただきまして、海上交通の安全に関する問題につきまして釣り船業者団体の立場から御意見を述べさせていただく機会をいただきましたことを、委員長を初め理事委員の諸先生に厚く御礼を申し上げます。  今回の不幸な大惨事となりました潜水艦と大型釣り船の衝突海難事故につきましては、釣り船業者側からしますと二つの不可解な疑問点があります。  一つは、第一富士丸がなぜ大型釣り船なのか。船にえさと釣りざおを乗せて乗客の一部が船上から釣りをするというから釣り船なんだ、それで船の長さが十二メーター以上あるから大型船なんだ、それだから大型釣り船なんだと言う。それだったら当然の名称なんでしょうけれども、実は運輸省地域交通局海上交通課長が五十九年の二月に九州運輸局運航部長に回答した文書の中に、次のように書かれております。第一番目に、   瀬渡船による業務は、旅客定員十三人以上の船舶を使用するものであっても、磯、防波堤等、本来、一般の利用者の乗降に適さないような場所へ釣り客を案内することが主目的であり、また、利用者は釣り客に限られていることから、これを運送業としてとらえ、航路ごとの需給調整、運賃規制等を行うことは、航路秩序を維持し、海上運送業の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進するという海上運送法の法目的になじまないものであるので、海上運送法人の運送事業として規制することは妥当ではないし、必要ないと判断する。 とあるのです。これは非常に当を得た御判断だと思います。  それでその二番目に、   ただし、瀬渡船と称するものであつても、需要内容等事業の実態から判断して、海上運送法上の運送事業に該当するものもあると考えられるので個別ケースごとに判断されたい。 と言っているのです。   船舶安全法では、旅客定員十二人を超える船舶でも遊漁の用にのみ供するものは、用途は遊漁船と記載するが、構造、設備等は旅客船としての適用を受ける。   遊漁の用に供するも、瀬渡しの用にも供するものは、用途も旅客船と記載する。 と言っておるのです。  それで最近、このような運輸省さんの御見解をもとに、海上運送法による事業認可を返上して、船にえさと釣りざおを積み込んで遊漁船の名称で旅客運送を行う業者が非常にふえてきているんだということも聞いております。第一富士丸はまさにこのようなたぐいであり、本来ならば海上運送法の運送事業に適している船であるはずなのに、遊漁船、大型釣り船ということで海難事故を起こしまして、世の批判を遊漁船、釣り船が受けまして、それで、まじめに業に取り組んでいる本来の遊漁船業者が、今回の事故で非常に客数が減りましたし、それから、危険の塊である、安全対策は何にもされてないんだということで非難を受けていたのでは、釣り船業者の立場としては、なぜあれが大型釣り船なんだろうか……。現在の釣り船は九五%が小型船舶です。それで、その九割が漁業者なんです。まさに零細の業者でありますけれども、いろいろ安全対策はそれなりに講じております。  御承知のとおりに、東京湾自体が開発に次ぐ開発で、一般の庶民の楽しむ海辺としての海の機能は全くなされなくなってきまして、大型のコンビナート、港湾等がどんどん海の海岸部を占めてきまして、その中で海と親しみたいという人が釣り船等を利用して一日の疲れをいやしているという実態にあるのです。ですから、そういったお客さんを御案内しているのですから、釣り船業者としては、サービス業でありますから安全の確保をすることは当然だと思うのです。当然だと思いますし、確かにおっしゃるとおりに船舶のふくそうが物すごく激しいということで、釣り船業者の東京湾海域で操船している状態は、例えば今度のような自衛艦、潜水艦等と会いましたら、ほとんどがスピードを緩めるとかある程度の離れた地点でもう回避行動はとっているのです。それですから、第二の疑問点が、今回の事故の第一報を聞きましてから、あの視界のきく、海上もべたなぎのような状態でなぜ潜水艦と衝突したのだろうかということが釣り船業者の一様の見方なんです、なぜ衝突を起こしたのだろうか。確かに、自衛艦は横須賀港に向かって航路から曲がってから直進してきます。それで、私どもの傘下にいる釣り船業者も再三それをよけるのに冷や汗かいたりなんかしています。ただ、釣り船業者といえども大切なお客さんを預かっているのですから、お客さんの安全のことももちろん大事ですし、自分の所有している船舶なり自分の生命自体も大切なことなので、あそこの航路東京湾全部を通るときに目を皿のようにして注意を払っているのです。  現在、東京湾で釣り船業者が営業しているのは、平均しましても年間二百八十日程度です。年間二百八十日ということは、例えば横須賀航路、あそこの航路を横切って一日一往復するわけですから、年間で五百六十回もあそこの航路を通っているのです。当然、今度の第一富士丸のように大型の船じゃありませんけれども、大型船をよけながら、いろいろ他の船舶の船長さんや何かにも批判もいただいているのですが、事故を起こさないようにということで細心の注意を払って営業もしております。それですから、釣り船業者は、回数からいきましたらそういった数多くの船が年間二百八十日も操業しておりますので、事故を起こさないようにという注意は十分に払っているつもりなんですが、たまたまこういった事故が起こりまして釣り船に乗るのに非常に怖いということになってしまって、本年あたりは天候も悪かったこともあるのですが、この事故をきっかけにして全国的に釣り船業者の操業率が落ち込みまして、五割、ひどいところは六割、七割ぐらいまで利用客の数は減ってしまいました。  いずれにしろ、私どもも釣り船業者自体の組織化なりなんなりをしませんとお客さんの安全を確保できないという見地から始終やっているのですが、実際に、我が国の現状は、釣り船業者を規制したり保護したりという法律は全くありませんで、釣り船が何隻あるのか、利用客がどれだけいるのか、利用層がどういった利用層になっているという実態を行政で把握しているというあれは全くありません。それで、水産庁さんの統計資料では、現在釣り船業者は三万四千業者いるのだ、釣り船は三万六千隻なんだということになっていますけれども、実際にどれだけの数があるのか。例えば、今度の第一富士丸的に会員制の船でああいった営業行為をなされているという船が最近物すごくふえてきています。ですから、そういった意味で、とにかく現状のままでは事故がますますふえるのではないかという懸念をしていました。  実は、今回、衆参両院の先生の御発意によって、自民党の方で遊漁船業の適正化に関する法律案というものを策定していただきまして、今国会に上程、審議していただいて全党一致で法律ができるのではないかということもお聞きしております。私どもにしてみればやっとこさっとこ私どもの団体の念願がかなったと本当に感謝いたしております。というのは、御承知のとおりに、釣り船業者というのは漁業者が九割なんですけれども、個々に業を競っていまして、例えば同じ組合の中にいましても隣の家は商売がたきということで、なかなか組織立ったあれができないでいるのです。これがてんでんばらばらな、勝手なあれでいろいろな営業形態を繰り返している。それで、釣り船の性能がますますよくなりまして大型船になっております。その定員数も二十人、三十人という定員をとっておりますから、一回事故を起こしますと非常に大変な大惨事になりますので、今回法律をつくっていただきますれば組織立った動きもできますでしょうし、それから行政の方からいろいろ的確な御指導もいただけるのじゃないかと思います。  実は私ども全国釣船業組合連合会というのは六十年の四月から発足したのです。これは全国の有志の釣り船業者の団体が、現状ではいけない、とにかく自主的に集まって組織づくりをしようではないかということで集まったのですが、任意団体ですけれども組織をつくった第一番の目的が、漁場利用の秩序化を図っていこうじゃないか、それから、利用客の安全を確保して安全対策整備していこう、船体番号の表示をしたり利用客の乗船カードを記帳していただくのを徹底しようということでつくりました。それで、万が一事故が起こったときに保険共済でその補償が完全に果たせるような方向に持っていこうということで、とにかく安全こそ第一のサービスなんだということで今日まで運営してきたわけなんですが、利用客の皆さんにいろいろお願いしています。乗船前には乗船名簿に必ず記入してください、乗船したら救命胴衣を着用してください、それから、船内、釣り場では船長の指示に必ず従ってくださいということを呼びかけまして、徐々に組織の組合もふえましたし、傘下の組合員の数もふえてきました。おかげさまでそういった組織で一応活動しているためか、三年有余の間に死亡につながるような利用客の不幸な事故というのは一件も発生しておりません。ですから、このたび遊漁船業の適正化に関する法律ができましたらば、私どももそういった法律の中で組織化を進めて、とにかくお客様の安全を確保することが第一でありますから、お客さんの安全を確保するためのいろいろな釣り船業者の守らなければならないルールをこれからつくっていこうと思っております。そういった組織化を進めていくことが世を騒がせる釣り船、遊漁船による事故を少なくする唯一の道だと思っております。  ですから私どもは、法律のことも受けてなんですが、今月の十日に全国釣船業協同組合連合会として、協同組合の連合会組織として発足して多くの仲間を集めて全国一つルール、いろいろな安全対策の措置を講じて、国民の皆様にマリンレジャーのいろいろな形態を、秩序ある安全で楽しめる釣りというものを御提供したいと思っております。ひとつ今後ともよろしくお願いいたします。
  12. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  次に、山崎参考人にお願いいたします。
  13. 山崎義治

    山崎参考人 私、関東小型船安全協会山崎でございます。  本題の説明に入ります前に、私どもの協会は一般的には余りなじまれておりませんし知られておりませんので、その性格などを簡単に御紹介させていただきます。  関東小型船安全協会は、昭和五十六年に任意団体でございました全関東小型船交通安全協議会を発展的に解消いたしまして、監督官庁でございます海上保安庁の御指導のもとに、社団法人として発足いたしたものでございます。その設立目的は、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、そして静岡県の沿岸水域におきまして小型船舶、いわゆるモーターボート、ヨット、遊漁船、瀬渡し船等の小型船舶海難を防止いたしますとともに、運航マナーの向上を図ることによりまして、安全で秩序ある海洋レクリエーションの発展、普及に寄与するということでございます。  この協会の目的に沿いまして、私どもは洋上におきましての安全パトロール、マリーナ等におきましての訪船指導等の活動を行いますほかに、プレジャーボート関係者の安全教育活動の一環といたしまして、各地におきまして海上安全講習会などを開催いたしております。このために、私どもの協会の会員が協会の推薦を受けまして海上安全指導にふさわしい人物ということで海上安全指導員を指定いたしておりまして、この方々が自分の艇を使いまして海上でのルール、正しいマナーといったものを指導させていただいているわけでございます。現在、第三管区海上保安本部長から私どもの協会員のうち約二百名がプレジャーボートに関しましての十分な知識、技能、経験を有する者といたしまして海上安全指導員に指定されております。また、約八十隻が安全パトロール艇としての指定をいただいております。これらの方々が常日ごろ指導に当たらせていただいておるわけでございます。協会の構成でございますが、ただいま約九十の団体会員と約四百名の個人会員により構成されております。  それでは、本題に入らせていただきます。  第三管区海上保安本部の御調査によりますと、昭和六十二年度の統計でございますが、この一都四県沿岸水域には約三万一千隻のプレジャーボートが在籍いたしております。これらの方々の多くは、最寄りの官公署の御指導また当協会も含めましての各種海難防止団体等の呼びかけもございまして、正しいマナー、正しいルールをよく理解されまして、安全で快適な海洋レクリエーションを楽しんでおられるわけでございますが、中には、十分な知識、技能もなしに海洋に出ておられる方もおられるようでございます。  ちなみに例を申し上げますならば、本年の十月六日夕刻でございますが、千葉県の勝浦港におきまして、勝浦港の近くにございます大原港から東京都の三宅島に向かっておりました一人乗りのヨットが、私どもの考えではよくわからないのですが、どう方角を間違えましたのか、三宅島の大久保港と勝浦港を誤認しまして入港してまいりまして、船位の不確認と操船の不適切によりましてテトラポットに乗り揚げております。幸い、地元の方が発見するのが早かったものですから、出動いたしました海上保安官等の手により人命に異常なく救助されたわけでございます。このヨットはこの一回だけではなしに、昨年の六月に八丈島からタヒチ島に向かうと称して出港いたしました。途中で機関が故障いたしましたり海潮流に流されたりいたしまして、約二カ月の間洋上をさまよっておりまして、結局は北海道の釧路沖で救助されております。その後釧路港におきまして船体、機関等を整備いたしました上で、今度は小笠原の二見港に向かうということで出港いたしましたが、十月の初めに宮城県の金華山沖におきましてかじ故障、航行困難ということで救助を求めてまいりました。荒天のさなか、巡視船艇、航空機、通航船舶の手を煩わせて救助されたというヨットでございます。私どもから見まするならば、まことに嘆かわしい事例でございます。  このほか、内陸部にお住まいの方で休日にはマイカー等にプレジャーボートを積載してまいりまして、海浜部で短期間の海洋レジャーを楽しんで帰られる方々も多いと承っております。一般的には、プレジャーボートに関しましての知識や技能を習得する機会の少ない方々にまだまだプレジャーボートに関しましての海洋でのルール、マナー、運航技能等に問題のある方がおられるやに仄聞いたしております。  このため、私どもの協会は、先ほど申し上げましたように安全で秩序ある海洋レクリエーションの発展に寄与するということから、多くの方々にお集まりいただきまして、例年各地で有識経験者を講師にお招きいたしましての海上安全講習会や、また、海上安全指導員を集めまして研修、情報交換等の連絡調整会議をいたしましたり、ほかには、沿岸各地におきましての洋上の安全パトロール、また現場におきましての航法指導海難救助訓練等の活動をいたしているほか、会誌やパンフレット等の海難防止資料を作成いたしましてこれを広く配布し、海洋レジャーを志す方々に海上のルール運航モラル等をよく認識していただきまして、快適な安全な海洋レクリエーションを楽しんでいただけるようにお手伝いをいたしておるわけでございます。特に昭和六十一年からは、日本船舶振興会、日本海難防止協会のお力添えをいただきまして、プレジャーボート同士の情報交換、緊急時の連絡、救助活動等に資するための小型船舶用の無線を整備普及する事業を展開いたしております。私どもの協会の区域内でも、ただいま約二十局の陸上局と約百八十局の船舶局が運用されておりまして、海難防止や救助活動に大きな役割を占めておると自負いたしております。  このように小型船舶海難防止の一翼を担っております私どもの協会の区域内と申しますか、テリトリアルとでも申しましょうか、その横須賀沖におきまして先般あの痛ましい事故が発生したわけでございます。私ども衷心からお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するものでございます。  衝突原因につきましては、ただいま司直の手によりまして解明が急がれておりますので、早晩明らかになるものとは存じます。私ども、あの潜水艦「なだしお」にいたしましても遊漁船の第一富士丸にいたしましても、早目にルールに基づいた適切な措置を講じていたならば、あのような悲惨な事故は防げたのではなかろうかと認識いたしております。なぜならばと申しますならば、東京湾、その他の船舶のふくそうする海域におきましても、船舶同士数知れない横切り関係、行き会い関係が発生いたしておりますが、大方は適切な措置により事故に至らず回避されておるわけでございます。したがいまして、東京湾が過密で船舶がふくそうして危険で走れない海域とまでは見ておりません。善良な船舶運航の実務者としてのルールをわきまえ、時期を失せぬ適切な措置を講じておるならば、現行の航行ルール航法で対応できるのではなかろうか、こう考えております。しかしながら、船舶のふくそうする海域におきましての海上交通の安全を確保するためには、ただ単に船舶運航実務者の責任、負担だけに期待するのは酷でございます。したがいまして、適宜しかるべき航路環境を整備するなり、また有効適切な情報を迅速に提供できる施設の整備も必要であろうと存ずるわけでございます。  当初私ども、ヨット・イブが潜水艦「なだしお」の航路近辺を帆走中であったと報ぜられまして、もしや本件事故にヨットが何らかのかかわり合いを持ったのではなかろうかと危惧いたしました。しかし、後刻、ヨット・イブは早目に回避行動をとり、緊急事態を認知するや直ちに帆走から機走に切りかえまして現場に急行した上、迅速的確な救助活動を行い、とうとい人命救助に実績を残したことを知りまして、これぞシーマンシップと安堵いたしたわけでございます。  しかしながら、今回のこの事故の当事者は第一富士丸でございます。重大なかかわりを持ったわけでございますが、この船は遊漁船ということでプレジャーボートと言えないわけはないわけでございますので、東京湾ではプレジャーボートを御遠慮願おうというような機運が一部に生ずるのではなかろうかと心配いたしております。海は公共の場であり、船舶交通の場であるとともに漁業生産活動の場であり、また、一般大衆が海に親しめる海洋レクリエーションの場でもあるわけでございます。したがいまして、海洋の利用は機会均等でなければならないのではなかろうかと存じまして、今回のこの事故がこのような機運をもたらすことを大変心配いたしております。  昨年、先生方のお力によりまして総合保養地域整備法が制定されまして、本年、その幾つかのプロジェクトにゴーサインがともされていると承っております。また、五月には新しい経済運営五カ年計画も答申されまして、たしか第三章であったと記憶いたしておりますが、「豊かさを実感できる多様な国民生活の実現」といった施策も盛り込まれておられました。今後、国民の余暇の有効利用への志向を高めるこの二つのことは、社会趨勢としてレジャーを流れに持ってくるのではなかろうか、こう感じられるわけでございます。したがいまして、海洋レクリエーションもまた国民の各層に幅広く浸透、普及していくのではなかろうかと容易に類推できるわけでございます。このような二つのことによりまして社会趨勢が流れるときに、このような事故はとうとい貴重な教訓とはなれ、決して歯どめになってはならないのではなかろうかと存ずる次第でございます。  一方、また海を利用する側も、私どもの立場で申しますならば、プレジャーボート側もまた権利だけを主張するのではなしに、やはりしっかりとした責任といったものを感ずる必要があろうかと存じます。幸い私どものプレジャーボートに関しましては、船舶職員法によりまして資格制度が確立されております。しかし、陸上におきましてペーパードライバーににわかに路上運転を強いたところで危険でできるわけはございません。やはり実務によりましての知識、経験によりましての技能が肝要かと存じます。海洋におきましてのプレジャーボートもまたしかりでございます。そこで私ども、より多くの方々に協会に参加していただきまして、海上での正しいルール、正しい運航モラル、そして習熟した技能を習得していただき、協会の目的でございます安全で秩序ある海洋レクリエーションの発展、普及に努めたい、こう念願いたしておりますことを申し添えまして締めくくらせていただきます。
  14. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  次に、多筥参考人にお願いいたします。
  15. 多筥良三

    ○多筥参考人 御指名を受けました全日本海員組合の多筥でございます。  本日は、船員を代表する労働組合の立場で、本委員海上交通の安全に関して意見を申し上げる機会をお与えいただきましてありがとうございます。また、国会におきまして海上交通安全対策に重大な関心をお寄せいただきまして、その対策を課題として取り上げられたことに心から敬意を表しますとともに、心強く感じておるわけでございます。  船舶安全運航につきましては、私ども船員としましてはこれを第一義として日ごろ努めてまいっているところであります。  ところで、過ぐる七月二十三日、東京湾浦賀水道付近横須賀港沖合におきまして、遊漁船第一富士丸と潜水艦「なだしお」が衝突をいたしまして、三十名のとうとい人命が失われる大海難が発生をして世情を揺るがせたわけでございますが、犠牲となられた方に対し痛恨のきわみと存じております。当該海難原因につきましては、現在、海難審判庁におきまして原因究明の審理が行われておるところでありますが、真実が明らかにされることを願っておる次第であります。  海難事故、とりわけ衝突、乗り揚げなどの海難は、人為の錯誤が直接的な原因として追及される傾向が普遍化をしておるわけでございますけれども、私は、現在の日本海上交通実態、すなわち、先ほど来参考人の方々が申し上げられておりますように、交通量が極めて過密化しておる、加えてスピード化が伴っておるということと、それから交通の場を支える水路条件など、そしてこのような環境下で船舶運航に携わる乗組員の労働と生活環境の状況を全く考慮しないというような原因究明には少なからず不満を持っておるものでございます。もっとも、高等海難審判庁におきまして、昭和五十三年六月に海難原因の判断基準というものを定めておりますが、その中身は、今申し上げた項目を網羅をしておるわけでございますけれども、実質的には直接原因の究明に主眼が置かれておるわけでございます。すなわち、懲戒事由としての懲戒原因の究明ということでありまして、船舶運航関係者が最も欲しておりますところの間接原因、すなわち、海難防止に寄与するための海難原因の究明というのは、結果的には極めてあいまいに終わってしまっておるのが常であります。  私どもの組合は、さきの横須賀沖事故に際しまして、三日後の七月二十六日に運輸大臣殿に対しまして「浦賀水道付近海域の海難事故防止航行安全対策の強化充実について」と題しまして申し入れを行いました。この中身におきましては、当該事故そのものに対する批判、意見は一切申し上げておりません。このことは、事故当事者の調査によりまして海難審判により直接原因の究明としてなされることであるからであります。  私どもといたしましては、さきに申し上げましたように、今後の海難防止に必要なのは間接原因でございまして、これを取り除くことを重視しておるのであります。海難審判におきます間接原因の究明は、もちろん当該事件についてはこの段階では存在をしておりませんけれども、先ほど来参考人の方々の中でも御報告しておられましたけれども東京湾航行安全対策につきましては、日ごろ海事関係官民が努力をしてまいってきておるわけですが、その過程で完全に処置がとり得ない問題もございまして、危惧しつつも対応に苦慮をしてきている問題がこのたびの申し入れの内容になっておるということでございます。  以下、私は、幾つかの安全諸対策につきまして問題提起させていただきまして意見を申し上げたいと思いますが、その前に、第一富士丸事故対策本部の船舶航行の安全に関する対策要綱につきましては、基本的には私どもの申し入れの趣旨をしんしゃくされておるというふうに受けとめております。しかし、若干の具体的な面で相違がございます。また実行が懸念されるという問題もありますが、その面につきましては、これは勇断を持ってひとつ臨んでいただきたいと存じております。相違のある点につきましては、今から申し上げる中で関連して述べさせていただきたいと思います。  まず一番目でございますが、初めに、船舶交通ふくそう海域におきます船舶交通の整流を図る必要についてでございますが、まずそのためには、現行海上交通安全法規の総合的な見直しが必要かと考えます。  交通の整流を図るということでありますけれども海上交通におきましては立体交差がとれません。そこで、海域における航路交差点の数をできる限り減少させまして、交通の流れる方向をこれまた幾つかに整理をして、かつ、交通の流れをリズム化するということであります。すなわち、過密海域について船舶航行安全システム化を図るべきだということでございます。  そして法規の総合的見直しということでございますが、船舶航行の安全を支える現行法規としましては、海上衝突予防法、それから港ごとの港則法、それから東京湾等のような特殊水域におきます海上交通安全法という三つが現在あります。また、海に面した河川とか湖沼とかにつきましては、都道府県条例というもので定めておるわけでございます。  そこで、東京湾実態で見ますと、湾でございますから閉塞をされ、広さも限定されておりますが、ここに多数の港があります。今申し上げた三つの航法がその中で存在をしておるわけでございます。今度の海難現場付近では、横須賀港の港界線、港の境の線でございますが、それと東北の方向に七百五十メートル隔てまして海上交通安全法浦賀水道航路左側界線が引かれております。この七百五十メートルの帯状の間隔の間が衝突予防法の水域でございまして、これを挟んで東西両側が海上交通安全法、横須賀港の港則法で規制をされておるわけでございます。狭い水域で適用法規が三転するわけでございまして、船舶運航者の立場からも好ましいものではないというふうに思っております。  そこにまた、近来ウオーターフロント構想なるものが、これは全国的に百花繚乱に打ち出されておりますけれども東京湾だけでも聞くところによりますと三十カ所とも言われておりまして、その上でさらに幾つかの大規模なマリナー構想もあるやに聞いております。そうなりますと、湾内の新たな港域設定も予想されますし、特殊海域を設定して適用する湾内総合一元的な法体制を検討せざるを得ないのではないかというふうに考える次第でございます。  加えまして、プレジャーボートについて申し上げますが、この種船舶数の増大する中で機関故障や火災事故の発生件数は、幸いなことにここ数年は横ばいの状態でございますけれども、今後、船舶数の増大に伴ってこれは増加してくるのではなかろうかというふうに予想しております。船舶交通のふくそうする航路でこのような事故が実際に発生しますと、これは大海難の引き金になりますし、想像するだけでも肌寒い思いをするわけでございます。  これへの対策としましては、この種船舶の海技従事者への仕業点検励行思想の普及施策、小型舶用エンジンのサービスステーションの充実、そのための小型舶用エンジニアの養成などが急務でなかろうかと考えます。さらに小型船舶検査制度を、大型船の検査と同じレベルとは申しませんけれども、せめて自動車におきます車検並みの検査に拡充させる検討も必要かと考えます。  二番目に、今申し上げたこととつながるわけでございますが、新しい方向としてのプレジャーボート、遊漁船等の大量増加を予想されていることにつきまして、限られた湾内等の海面利用の仕方が非常に難しい事態に入ることになります。陸上に置きかえて砕いて申しますと、道路、これがいわゆる海の上の水路、航路になります。それから農耕地、これが漁場という考え方でございます。運動場、遊園地、これが今のプレジャーボート等の活動するレクリエーション海域になります。これらが陸上では、申し上げましたように道路、農耕地、遊園地、運動場というふうに明確に区分されておるわけでございますが、海上では現在までのところ平面無制限に開かれておるわけでございます。海は自由の象徴ということで民心の憧憬を得ているのでありますけれども、人命にかかわる問題として海域水面の安全で合理的な利用基準を設ける必要があろうかと思うわけでございます。これがありませんと、さきに申し述べましたところの航行安全システムの実行もまた不可能になるわけでございます。  それから、私ども申し入れの中で全船舶について必要な通信手段、設備の義務づけの要望をしてございますが、このことは、統一された周波数で航行安全上不可欠な事項の船間、船の間同士ですね、及び船と陸の間のコミュニケーションを即時設定できる可能性を示唆をしておるものであります。あわせまして、昼間においても使用可能な発光信号という装置がございますが、これを考慮に入れていただきたいというふうに考えております。現在、国際航海に従事する百五十トン以上の船舶以外はすべて、この信号が旧式という思想かもしれませんが、いわゆる船間に直接に利用できる機器でございますけれども、義務づけされておりません。これはこういう狭い海域では極めて有効な装置でありまして、蛇足として細かいことを申し上げたわけでございます。  三番目に、特に遊漁船の扱いについて申し上げたいと思います。  遊漁船の適正化に関する法律案というものが超党派の議員立法で上程されるというふうに伺っております。第一富士丸事故の後を受けましての世論の的確な対策要請を受けとめられた先生方の積極的な姿勢の上に行われたものとして、心から敬意を表したいと思います。しかしながら、私ども船員の立場から申し上げて肝心な点で大きく配慮に欠いていることをやむを得ずも指摘申し上げねばなりません。  要点的に申し上げますと、法律の運用所管庁は農林水産省になるとの理解で判断しますと、遊漁船業は、事業としては海上運送法上の海上運送事業ではなく、農林水産省の所管する事業ということになります。  二番目に、多数の遊漁客の人命を預かっている遊漁船を海上運送法上の旅客船から外してしまうことにつきましては、人命安全確保の観点から疑問に思っているものであります。砕いて申しますと、リンゴ狩りやミカン狩りのツアーバスを農業用自動車として、道路運送法の不定期自動車旅客運送事業から外してしまうことと同義になるのではないかと思うわけでございます。  三番目に、私ども海員組合の考え方としましては、船舶安全法上、船舶職員法上、たとえ二十トン未満の遊漁船といえども、規定数以上の客を搭載する船舶の扱いを定めます以上は、旅客の安全を第一として運航管理規程作成とこれに基づきます運用等、海上運送法の趣旨に基準を置いた立法であるべきだと思うわけでございます。  さらに、業法の関係だけではございませんで、乗組員の安全な業務の遂行を保障させるための船員の労働保護諸法令の適正な適用を講ずることが極めて重要であることを指摘させていただきたいと思います。  また、遊漁船としましても、遊漁客を扱います乗組員の資質につきましては現状のまま放置してよいのか、疑問を持っている次第でございます。すなわち、安全教育などの問題であります。新しい業界の発展を願う立場におきまして問題点として申し上げておきたいと思います。  以上、細部についての意見もございますけれども、他の機会が与えられますことを期待をしまして省略をさせていただきます。法案に対する僣越な申し上げをお許しをいただきたいと存じます。  最後に、東京湾のような内海水面におきます航行安全対策は、他動的で無制限な開発計画をそのままうのみで対応できるものではないと思っております。首都圏の一極集中化が問題になっておりますが、航行安全対策もまたこのこととは無関係ではありませんので、東京湾のみの開発観点ではなしに、海陸を総合した均衡のある構想で臨んでいただきたいと思います。そして、東京湾全国主要海域の航行安全対策の指標となり得る位置づけにございますので、今後の当局におきます対策検討に当たりましては、私どもの考えを反映させていただく御配慮を賜るようお願い申し上げて、終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  16. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  17. 近江巳記夫

    近江委員長 これより参考人に対する質疑を行います。柳沢伯夫君
  18. 柳沢伯夫

    ○柳沢委員 参考人の皆さん方には、御多用なところをお越しいただきまして、長時間にわたりまして大変貴重な御意見を数々ちょうだいいたしましたことをまずもって心から厚く御礼を申し上げたい、このように思います。  ただいまから各党一名ずつ十五分という、これは質疑応答全部の時間でございますものですから、ちょっとその辺を御配慮いただきまして、私どもも端的な簡潔な御質問をさせていただきますから、どうぞ参考人各位におかれましても、注文をつけるようで大変恐縮ですが、できるだけ簡潔に御答弁の方もお願い申し上げたい、かようにあらかじめ申し上げたいと存じます。  まず、田井参考人山崎参考人にお伺いいたします。  田井参考人のところでは、我々が今各党持ち寄っていろいろ協議をしております遊漁船業の適正化に関する法律案というもので、皆さん方の業界の方々が全国協会というようなことで公的な団体になる、そういう位置づけを持った団体になる、組成していただく、こういうようなことを考えてございます。それからまた、山崎参考人の方におかれましては、既にただいま御説明いただいたような安全協会というものをおつくりになっておられる、こういうことでございまして、いずれにしましても、こういう団体を通じましてマナーと申しますかルールの徹底と申しますか、そういうことをやっていただくということが何より肝心ではないか、また、そういう方面からの、そういう方向での御意見もちょうだいしたように思います。  ただ、この協会ができたときあるいは現在できておるにしても、そのカバレッジですね。そういう協会が実際にそういうことをやる方々に対して、本当は網羅的、一〇〇%しっかり協会のもとに参加していただくというようなことが実現できれば一番いいわけですが、そのあたりのことに関連して、現にある協会あるいはこれからつくろうという協会につきまして、メンバーを多くするためにも何か格別のことをやっていただきたいのだということがございましたら、お二方からちょっと御意見をいただきたい、このように思います。田井参考人からどうぞ。
  19. 田井幸通

    田井参考人 お答えいたします。  聞くところによりますと、このたびの法案ではすべての釣り船業者は都道府県知事に届け出なければならないということになっておりますので、届け出ないで営業すれば罰則規定もありますので、当然すべての釣り船業者が届け出ると思います。それで、そういった届け出制の上で行政の御指導もいろいろ仰げるのではないかと思いますし、民間の団体でもいずれにしろ届け出の業者に対して連絡なりなんなりの整備をしていかなければいかぬと思っております。  それから、もう一つ法律の大きな目的とするのが、そういった届け出業者の中からマル適マークの業者を出して、釣り船業の健全な発達はもちろんですけれども、まず第一に利用客の安全を確保する、それから利便の増進をする、それから利用する海域の漁場の安定的な秩序を図っていくということが目的になっておりますので、私どもの団体も傘下にいる釣り船業者も当然その届け出をした上でそういった全国協会に参加をして、全国協会自体がこれから発足するのですけれども一つの大きな枠組みをつくっていただきましたので、民間の団体として積極的に秩序化を図っていく方向に力を入れたいと思っております。
  20. 山崎義治

    山崎参考人 私どもの協会は任意参加ということでございまして、笛吹けど人踊らずという傾向がございますので、でき得れば強制制度、それともう一つは、これに加入したためのメリットというものを強調された方が組織力がよろしいかと存じます。
  21. 柳沢伯夫

    ○柳沢委員 本当にそのとおりだろうと思います。私どもとしても今の御意見の方向で、これから立法が必要であれば立法に向けてのいろいろな努力をしてまいりたいと思います。  第二に、大変恐縮ですが、山元参考人坂元参考人にお伺いをさせていただきます。  ただいまのお話を聞いておりますと、主体的な操船の方々、今私指摘したように、例えば遊漁船、小型船舶の操船者というような方々のマナーとかルールとかが必要だと同時に、航行環境、特に可航水域の拡張があれば一番ベストであるというようなお話も承っておるわけでございます。  そこで、今回の事故に関連をいたしまして、私ども委員長のもとで現実に現場にも行ってみたのでございますけれども東京湾の中における第三海堡の存在、これにつきまして撤去の方向でこれから考えていきたいということを言っておるのですが、また他方、千葉県でございましたか漁業関係者の中からは、あれは魚礁的な機能をしておって大変貴重なものであるというような御意見の表明もあったやに聞いておりますが、第三海堡の撤去の緊要性というようなことについてどんなふうにお考えでありましょうか。もちろん、その他しゅんせつをしてもっと航路を広げるべきであるとかいうようなお話も承って、これはこれで参考にさせていただきたいのでございますけれども、特に可航水域の拡張という観点で第三海堡の撤去の緊要性についてお二方の御意見をちょうだいいたしたい、このように思います。山元参考人からどうぞお願い申し上げます。
  22. 山元伊佐久

    ○山元参考人 お答え申し上げます。  第三海堡の撤去の問題につきましては、十年以上も前にそういう検討がされたわけでございますけれども立ち消えになった、今回再度これが問題になったのでございますが、結論から先に申し上げますと、今回はぜひこの第三海堡の撤去を実現していただきたいというのが海運業界の多年の念願でございます。  理由でございますけれども、先ほど来いろいろ皆様方から御指摘がございましたように、浦賀水道航路を南航いたします船舶は大型船等がふくそうする航路内で他船の動きを十分注意しながら航行しなければいかぬという環境にある上に、同航路の西側に近接してありますところの第三海堡により、付近の海域において避航等のために航路外に進出できないというようなことから、操船者にとっては大きな心理的圧迫を感じている実情にございます。また、第三海堡は潮汐の干満によりまして水面に見えたり隠れたりするというような状況になっておりますので、特に悪天候あるいは濃霧のときにおきましては海堡の確認が困難な場合がございまして、乗り揚げ事故も発生しているという状況にございます。したがいまして、第三海堡が撤去されれば航行の環境が改善されまして操船者も安心して航海ができるということから、事故防止に大変なメリットがあると存じております。
  23. 坂元比

    坂元参考人 お答えいたします。  ただいま御質問がありましたが、この第三海堡の撤去ということは非常に問題が深いわけでございまして、第三海堡を撤去することによって航路幅が広がるということは、端的に申しますと確かに安全につながることは事実でございます。しかし、これを掘るところに問題がありまして、一体何メーターまで掘り下げるのか。この周辺は約四十メーターの深さを持っております。ここにもし二十メーター程度、二十五メーターで抑えるのなら、さらにここが新しい魚礁になる。そうすると、またここに漁船が入って新たな問題を提起する。これは同じことの繰り返しでございます。しかも、この第三海堡がなくなった場合に、今度は横須賀港に入る航路をどうするか。これまでどおり五番ブイを通過して入るのか、それともどこからでも横須賀港に進入させるかということになると、それこそこの南航航路は大変な混雑を来すということは考えられますので、やはり入進航路は明確にしなければいけないということと、掘るならもう徹底して最後の根まで取っていただかなければ意味をなさないというふうに私どもは考えるわけでございます。  ただ、私どもは心理的に非常に安全であることは十分考えられますが、航路幅を広げるということは、考えようによりましてはただ横に広がるということで、果たしてそれが安全に直つながるかどうかというのは運航者として疑問を抱くところでありますけれども、これは取っていただくことにこしたことはございません。我々もそれは大いに期待するところでありますが、これがさらに新たな原因をつくらないことを期待したいと思います。
  24. 柳沢伯夫

    ○柳沢委員 大変現実に即したお話かと思います。これまた十分参考にさせていただきたい、このように思う次第でございます。  最後に、時間もあれでございますものですから野呂参考人にお伺いを申し上げたいのでございます。  今回の事故を契機に立法府としても、我々国会でございますけれども、法律の上で何か改善すべき点はないか、こういうような観点で関心を向ける、これは当然でありまして、私どももそういうような気持ちを持っておるわけでございますが、他面、法律の限界と申しますか、法律というものはただ書けばいいというものではなくて、やはり遵守をしていただけるということが第一でありますし、それからまた海上交通の場合には、先ほど坂元さんのお話にもございましたように、法律はあっても実際には船長の臨機の対処というものの余地が非常に多いというのが海上交通実態である、こういうようなお話も承ったわけでございます。そういう観点で、今度の事故に関連して法改正の必要というかそういうようなことについて海上交通の安全の見地から何かあるのかどうか、その辺のことについてお考えを重ねてお伺いいたしたいと思います。
  25. 野呂隆

    野呂参考人 お答え申し上げます。  今回の事故は、先ほども申し上げましたとおり、間接的な原因はいろいろあろうかと思いますが、直接的な原因といたしましては、運航者自身のルールの遵守とそれに伴う的確な行動判断に基づく動作というものがあれば避け得た事故であろうかと思います。先ほど来御指摘のとおり、ルールというものはやはり関係者の大部分の合意を得られて、かつまた必要最小限にとどめるべきものであるというふうに考えております。そういう観点からいたしますと、現在施行されております諸法令並びにその後の行政指導、これは特に安全に関する行政指導でございますが、そういうことでもって東京湾における現在の交通はまずまずおおむね安全に運航されているのではなかろうか、こういうふうに考えております。しかしながら万全とは申せませんので、先ほど来申しておりましたとおり、航行環境整備、特に航行援助施設等の整備につきましては、今後とも早急に特段の御配慮をお願いしたい、かように考えております。
  26. 柳沢伯夫

    ○柳沢委員 私どもも、東京湾という大変重要な海域における交通の安全の問題でございますので、この海域の航行がとにかくできるだけ理想に近づくように航行環境の充実に力を尽くしてまいりたい、このように思っておりますので今後とも御指導をお願い申し上げます。  本日は、どうもありがとうございました。
  27. 近江巳記夫

    近江委員長 次に、永井孝信君。
  28. 永井孝信

    ○永井委員 早朝から参考人の皆さんには大変御苦労さまでした。貴重なたくさんの御意見をいただきましたことを心から感謝を申し上げたいと思うわけであります。全部の参考人の方々にお聞きしたいのでありますが、限られた時間でありましてそうもまいりませんので、特定の方々になるかもしれませんがお許しをいただきたいと思います。  初めに、田尻参考人にお伺いしたいのであります。  実は今、東京湾の、とりわけこの浦賀水道の問題で集中的な議論がなされて、検討もされてまいりました。これは「なだしお」事件があったからです。私はこの前の当委員会でも質問に立ったときに申し上げたんですが、私は明石海峡を目の前に見るところに住んでいるんですね。ここは浦賀水道以上に、浦賀水道の二倍の船が航行しているのです。日本で一番通航量の激しい危険な水域でありますが、たまたまことしの十月の二十六日に「明石海峡”SOS”」という新聞記事が出たんですね。どういうことかというと、実は、御案内のように今明石では淡路島と本土を結ぶ明石大橋の建設が始まりました。この架橋工事航路を制限してしまいまして、わずか幅一・五キロの狭い航路の両脇に幅五百メートル、長さ一キロに渡って航行禁止区域が設けられた。ですから、なおこの狭いところを通航しなければいけないということで、ことし八月までの八カ月間で昨年一年間の海難件数をはるかに上回る海難事故がもう既に起きました。同海峡で救助を要するほどの海難事故を起こした船が二十隻を超えた。その中に、田尻参考人も大変心配されておりました大型LNG船、タンカー、これが航行禁止区域を示すブイに接触したという事故も起きました。極めて憂慮すべき状態でありますが、たまたま田尻参考人から、横断道路計画に関連をして海上交通にどんな影響が出てくるかということを心配される御意見がございました。明石と浦賀とは違うのですが、しかしその同じような危険な水域で横断道路計画がなされている。まだ工事にかかってませんからわからぬわけでありますが、田尻参考人の言われましたいろいろな、九つも十も問題提起されたのですが、その中においてこの横断道路計画がどのように海上交通に問題を起こすと想定されますか、あるいはそれに対してどのような対応が必要なのかを御参考までに聞かせていただきたいと思います。
  29. 田尻宗昭

    田尻参考人 率直に申し上げさせていただきますと、当初、東京湾横断橋といって全部橋をかける計画が建設省の監督のもとに発表されました。そのときに、私たち海事関係と言ってもいいと思いますが、ほとんどがこれに対しては大変な危惧を持ちました。これは単に海事関係者が危惧を持っただけではございません。私たち非常に驚きましたのは、昭和四十九年に監督官庁である関東地方建設局の報告書東京湾船舶航行調査報告書」の中に、一言だけ申し上げますと、東京湾船舶のふくそうは年々増加している、この状況の中で、「更に東京湾を二分する横断道路の築造は船舶の安全な航行と、台風や突発的災害時の避航、避泊に及ぼす影響もまた極めて大きい。」という文章があります。時間がありませんので一カ所申し上げただけですが、非常に長い文章で明確に危険性を申し述べておる。もう一つの点は、錨地に対する心配を極めて数量的に割り出しまして、現在二百七十五隻分の錨地が要るのに横断橋ができたならばそれが七十三隻に減る、つまり三分の一に減るということを非常に明確な根拠のもとに示したわけです。私たちは監督官庁の報告がこれだけのことを証明しているということに驚きました。私たちもいろいろな場で発言もいたしました。海事七団体が反対をいたしました。幸い昭和六十年に川崎から木更津に向けての三分の二、十キロが海底トンネルになりました。一般的にはトンネルになったからもういいじゃないかというような雰囲気が流れましたけれども、しかしまた昭和六十一年の六月にこういうような日本道路公団からの報告書が発表されました。  この中に、特に私たちが注目をいたしましたのは、人工島が二つできる、川崎沖五キロ、もう一つ木更津沖五キロ。したがって、船舶の可航水面は十五キロの中の三分の一、つまり人工島と人工島の間の五キロということに絞られてくるわけでございます。そこに、ただでさえ狭い東京湾が三分の一の可航水面になる、大型、小型入り乱れてそこを走る。特に大型船の場合には浦賀水道に入ってから場合によってはエンジンをとめて惰力で走りますので非常にかじがききにくいというようなことで、まずこれが心配になります。そのこともこの報告書にはっきり書いてありますが、特に明確に書いてあるのは、川崎沖人工島は東京湾船舶の最もふくそうする海域であって、特にパイロットの意識調査をしてみたら、この付近が、人工島を中心とする海域が一番困難性を意識する海域であるということがこの本の中に書いてありまして、結論として「船舶交通流変化や死角の発生により、特に川崎寄り水域では、船舶間の衝突が増加するおそれがある。」こう書いてある。私たちはこれを非常に重視しまして、道路公団の横断道路建設室長にたまたまヒアリングをする機会がありましたのでこの点を指摘いたしました。これに対して何ら有効な答弁ができませんでした。  私は、特に川崎沖人工島については、このまま安易に工事を進めることがもしもこの人工島付近での巨大タンカー衝突につながったときにはゆゆしい事態であろうと思います。特にこの人工島に対する危険性については、この報告書の中に、例えば島が船舶の死角にある、突然船がやってくるからそこで衝突が起こる、あるいはレーダーに偽像が発生する、あるいは船舶人工島付近で横すべりをする、そういうようなことを全部逐一挙げておりまして、航行障害物であるというような指摘もしているわけです。だとするならば、横断道路の建設は既に法案によって決定はされましたけれども、このような人工島、しかも責任者が答弁できないというような、しかもみずからの報告書に官民の専門家を集めてこのことを明記しているということを、私たちは、これに当たる監督官庁並びにこれを担当する組織の責任として何らかの解決をしなければこれは無責任だと思います。特にLNGタンカーもこの付近を航行いたします。LNGタンカーの基地である扇島には自動車航送船の基地もできました。こういうことを考えますと、ここでもしも事故が起こったならば恐らく横断道路建設の技術的な責任が非常に大きい問題として問われるのじゃないかと思いますので、この点は何とか解決をしてもらいたい。そうしなければ、海難の責任というのは計画側に生ずるだろうと思います。  もう一つは、木更津側の人工島でありますが、これが川崎側の人工島が直径二百メーターの島であるのに比べまして後楽園球場の二十八倍という実に大きな島でありまして、ここに観光施設とかいろいろな施設をつくるようですが、ただでさえ狭い東京湾でこのような過大な島をつくるということは、本来の換気塔を支えるだけの使命である島としては過大である。この報告書にも浦賀水道から千葉の沖合に入港してくる船の待機錨地の針路上にこの島はひっかかるということも書いてございます。これも操船者にとっては重要な問題だと思いますので、この二点は何とか解決をしなければ、横断道路というのはこれは後で重大な責任を生ずるのじゃないか、このように思います。
  30. 永井孝信

    ○永井委員 大変恐縮ですが、時間の関係でひとつ御答弁は簡単にお願いしたいと思うのですが、その次に、同じく田尻参考人野呂参考人にお聞きしたいと思うのです。  今も指摘がありましたように、LNGタンカー対策が非常に心配をされているわけですね。もしも衝突が起きて重油が流れ出して爆発すれば大変なことになるということは、どなたでしたか、そういうお話も参考人から私は聞きました。果たしてLNGタンカー対策というものは東京湾で大丈夫なんだろうか、今必要なことは何をやればLNGタンカー対策となるだろうか、端的にひとつ田尻参考人野呂参考人からお伺いいたしたいと思います。
  31. 田尻宗昭

    田尻参考人 私は大変困ったものだと思います。もう既に四つの基地をつくってしまいましたのでさほど名案というのはございませんけれども一つだけ端的に申し上げたいことがございます。  それは、LNGタンカーが荷役中に、タンクが半載の状態になったときに、もしも台風や暴風がやってきまして沖合に避難をした、そしてそこで船が動揺した。そのときに、学問的にはまだはっきりしていない部分もございますけれども、ロールオーバーといって爆発が起こるということが最近浮かび上がってきている。そうしますと、一体これに対してどうするのかということは重大な問題です。その意味では台風や暴風のときに安易に避難勧告もできないということで海上保安庁は大変困るのじゃないかと思います。  そう考えますと、せめてやれることは何だろうというと非常に難しいのですが、冒頭に申し上げた集団移転基地を湾外につくるということは別としましても、LNGタンカーについては特に出入港の場合、特に扇島の場合には出入港の時間に厳重な制約を設けて、そして少なくともラッシュ時期は避ける、そして前広に船舶通航計画を周知せしめる、あるいは異常気象に対する非常に神経を使った予報の確認体制といいますか避難体制を普通のタンカーよりより以上に強化するということ以外にはないだろうと思います。特にモス型といって、タンクがデッキの上に盛り上がっていますと、千メーター前が死角で見えない、あるいは扇島の基地の付近を航行するときに横から風を受けると、この船は浮かび上がっている部分が非常に大きゅうございますので、南下船に向かって近寄っていくという欠点もございますので、特にそのことを指摘したいと思います。
  32. 野呂隆

    野呂参考人 お答え申し上げます。  一たん事故を起こしますと恐らく手に負えないような災害になると思います。したがいまして、現在は事故を絶対起こさないということに重点を置きまして対策が講ぜられておると思います。したがいまして、十分かどうかという御質問でございますが、さらに安全を期するために、先ほど田尻参考人から申しましたように、入湾あるいは荷役の条件その他にさらにシビアにこれを監督し、安全対策どおり実施させるということが必要かと考えます。
  33. 永井孝信

    ○永井委員 その次に坂元参考人、多筥参考人にお伺いしたいと思うのであります。  御指摘のように法律が三つに分かれているわけですね。あるところの航路を通っておって、その航路を過ぎた途端に適用法が違う、こういうことで水先案内人の皆さんも非常に御苦労なさると思うのでありますが、これを一元化することとルールを守らせること、これは不可欠な問題だと思うのですが、法律を一元化すればそれによって果たして法律に基づいて実施をする場合の問題点が全部解消し得るかどうか、一言ずつお答えいただけますか。
  34. 坂元比

    坂元参考人 お答え申し上げます。  非常に難しい質問でございまして、今の時点で私たちが端的に申しますれば、法律を幾ら厳しくしてもこれを守らない者があれば、これは実際に何の価値もございません。要するに、法を守るためにはまず行政指導を徹底していただく、これが前提だと思います。
  35. 多筥良三

    ○多筥参考人 お答えします。  非常に難しい問題であるということは私もただいまの坂元参考人と同様でございますが、やはり三つに分けておくよりも、これだけ今後の東京湾の開発計画がもし進められるならば、国際海上衝突予防法の趣旨に従って、独自な一元化されたものが必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。ただ、法律でございますから、守る守らないまで行きますと大変問題があろうかと思いますので、守りやすくする形の法律を衆知を集めて御検討する価値はあろうかというふうに存じておりますので、お答えします。
  36. 永井孝信

    ○永井委員 最後に、田井参考人にお伺いいたします。  この遊漁船、小型レジャーボートというのですか、こういうものが非常に問題になっているのですが、例えば無線装置が全部ついていて、何かのときに全部連絡がとれるようになっているのかどうなのか、あるいはその遊漁船の関係田井さんの所属される組合に参加されている方々については、今言われたようにルールを守るということを徹底した講習がどの程度されているか、お答えいただけますか。
  37. 田井幸通

    田井参考人 お答えいたします。  私どもの団体の中で無線装置等の方法が五種類あるのです。ということは、基本的に漁船であって兼遊漁船という格好の船が一番多いものですから、漁業無線に入っているのが第一番。それから例えば東京湾等でやっている船舶については、現在使っているのはほとんど電話です。船舶、舶用の電話です。ですからいろいろな方法を使ってやっているのですが、無線ですと、これはオープンになっているものですから、緊急の場合にほかが通話していると使えないという場合もありますし、海域によってある程度船が固まっていますので、緊急の場合に仲間が助けるという動作はやっているようですけれども、ただ私どもの方でお願いしたいのは、釣り船業をやっている者が何らかの統一のとれたそういった緊急時の連絡ができるような方法を、波の割り当てなりなんなりやっていただきたいと思っておりますし、そういったルールが確立すればある程度の業者は加入すると思います。
  38. 永井孝信

    ○永井委員 これで終わりますが、たくさんの貴重な御意見をいただきました。全部についてただしたいのですが、その時間もございませんので、不十分でありましたことをおわびして、参考人の皆さんの御意見を可能最大限私どもも生かし切るような対応をしてまいることを決意として申し上げまして、終わります。  ありがとうございました。
  39. 近江巳記夫

    近江委員長 次に、正木良明君。
  40. 正木良明

    ○正木委員 本日は、お忙しい中を本当にありがとうございました。  では、二、三の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。特に田尻参考人の御意見について、非常に感銘の深いお話をいただきましてありがとうございました。  そこで、田尻参考人にお尋ねをするわけでございますが、この中で海上消防法の制定ということをおっしゃいましたね。これをもう少し詳しくおっしゃっていただけないでしょうか。
  41. 田尻宗昭

    田尻参考人 私、四日市海上保安部におりましたときにこの点は大変苦労いたしました。といいますのは、消防法は各石油企業の岸壁まででございまして、そこから突き出した桟橋とか海上の桟橋には及ばないのでございます。したがって、法的には消火器も備える義務がないということで、この点の指導を大変苦労しました。特に石油港湾の中でタンカー事故を起こしましたときに、受け入れ企業であっても消防船を持たないわけですね。海上保安庁の船だけではどうしようもないわけですから、私は石油企業に応援しなさい、船を借りてでも応援しなさい、こう言ったところが大変強い抗議を受けました。それは、消防法が海上に及ばないのだから我々がやる義務はない、義務のないことをやったときに従業員がけがをしたりあるいは死んだ場合に労災の救済が受けられないではないかということで大変苦労しまして、私の方ではやむなく、任意でお互いに応援させるという港湾災害対策協議会というものをつくりまして、石油企業に船をそれぞれチャーターさせて任意で協力させるという苦肉の策をとりましたが、これは日本の石油港湾では初めての試みでございました。しかしその点はいまだに変わっておりませんので、やはり石油港湾の石油企業ともあろうものが、タンカーを自分の企業が受け入れてそして危険な油荷役をするのにその部分に消防法の適用がないというのは、もういいかげんに解決すべきだと思います。だから、海上保安庁も、消防船というのは実は海上消防法に基づいた正式のものではなくて、海難救助の一環でやっているというような苦肉の策でございまして、やはりその点でも大問題だ。  それからもう一つタンカー乗組員の場合、これは皆事実上は教育訓練をよく行っておりますけれども、特に心配なのは、小型タンカーの場合なんかに、海上消防法がないために、乗組員に危険物の免状が要らないわけでございます。私は四日市で東幸丸というタンカー爆発を取り扱いましたときにも、捜査報告書にそのことを書きました。免状が要りませんから、作業の指揮に当たっていた一等航海士はカツオ・マグロの漁船から乗り移ってきてほとんど石油の知識がないというような者がいわゆる危険な作業をやっていて爆発したわけです。これもやはり基本的におかしいと思います。  ですから、何としても消防法を海上に及ぼす、あるいは海上消防法をつくるということがなければ、コンビナートの防災は本当は達成できない。特に京浜港の場合には幅五百メーターという狭い水路でございますから、あそこでタンカーの荷役中の爆発なんかが起こったときには大変な災害になるのではないか。そのことを強くお願いしたいと思います。
  42. 正木良明

    ○正木委員 それで、今もちょっと議論になりかけた問題がございますが、一つは、いわゆる行政指導と言われるものがたくさん出されているようなんですね。この前もこの委員会で私も質問をしたわけでございますが、行政指導がやがては法律になるというような形で出されるものとそうでないものとがあるわけなんで、ほとんどが行政指導のままで終わっているというのが実情のようでございます。それで、この行政指導というものがどうしても法律に書かれたり政令で書かれたりしたものよりも軽く見られがちになるおそれがある。行政指導というものが果たしてちゃんと守られているのかどうか、これは野呂さんと田尻さん、それから山元さんにお願いしたいわけです。
  43. 野呂隆

    野呂参考人 安全に関する行政指導については、その徹底方法もございますけれども、一応守られておるものと考えております。
  44. 田尻宗昭

    田尻参考人 野呂さんと違ったことを言うつもりはありませんが、現場の行政官としては行政指導というのは歯がゆいですね。なぜかというと、企業の責任者によっては行政指導と法の規制とを明確に区別して、行政指導は守る義務はないんだ、一応の指導だから、そういう受けとめ方をするという企業も結構ございます。私は、四日市ではそれで苦労しました。例えば、行政指導一つとして石油桟橋の安全距離というのがございます。これは行政指導でございまして、海上保安庁の内部指導の中に三十メーターというのが、この三十メーターもちょっと時代おくれだと思いますけれども、ございますが、現実に四日市では桟橋の安全距離ですら守られていない桟橋がございます。ですから、行政指導にゆだねるということは、行政官に非常に多くの努力を要求するし、企業側にそれを守ろうという責任感を前提としなければ成り立たない。その力関係がもしアンバランスになった場合には守られない例が非常に多いと思います。かつての日本の公害行政指導もそういう歴史を繰り返して、そういう経験から法規制に変わっていったわけでございますから、残念ながら私は、やはり守らせる根拠というのはきちっと法律で定めて、そして行政官の恣意や企業側のアンバランスを許さないという体制をとらなければ重要な事項については担保できないと思います。
  45. 山元伊佐久

    ○山元参考人 お答え申し上げます。  結論から申し上げますと、私は行政指導は必要であり適切な措置の一環だと存じます。理由は二つございます。一つは、海域はそれぞれの時期によって状況なり環境は違います。したがって、きめ細かい対策を必要とする場合もございます。それから一方、私、民間に下りまして感じたのですが、民間サイドは行政指導に対して法令と同様に重要な事項と受けとめて、本当に誠心誠意、励行に努めているというのが現状でございます。
  46. 正木良明

    ○正木委員 どうもありがとうございました。
  47. 近江巳記夫

    近江委員長 次に、伊藤英成君。
  48. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 民社党の伊藤でございますけれども参考人の皆さん方、お忙しいところありがとうございました。そしてまた、それぞれの方から貴重な提言等も伺いまして、ありがとうございます。時間も余りありませんので、若干の質問やら、あるいはこの点をもう少し詳しくお聞きしたいというところについてお伺いをしたいと思います。  まず最初に、多筥参考人野呂参考人にお伺いいたします。  多筥参考人から、船舶交通の整流化を図る、あるいはシステム化するということについて言われましたけれども、この整流化を実施するについて何が一番ネックだと思われるのか、その点についてまず多筥参考人からお伺いをいたします。そして、同時にまたそれについて野呂参考人からお伺いしたい、このように思います。
  49. 多筥良三

    ○多筥参考人 お答えします。  野呂参考人の方から冒頭の陳述でありましたように、業界関係者が集まりまして日本海難防止協会東京湾航行システム化を検討した経緯がございます。その中で一番ネックになりましたのは、やはり経済性の問題でございます。それから、根づいております漁業権との関係、要約すればこの二つが大きな問題でなかったかと思います。一応、野呂参考人の方からの陳述で申し上げておるとおりでございますので、二点ではないかと私は思っております。  以上でございます。
  50. 野呂隆

    野呂参考人 まず、整流をいたしますためには航路体系、すなわち航路整備しなければなりません。そのためにはしゅんせつその他の工事作業等が必要になってくるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますとおり、東京湾におきましては船舶運航漁船操業、この両方の場となっておりますので、まずこの関係者合意を得るということが非常に難しいというのが第一点でございます。それから第二点といたしましては、あるいは先ほど申されましたように経済性の問題もあろうかと思いますが、まず関係者合意を得て実施可能な航路体系をつくる、こういうことが大事であろうかと思います。
  51. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 多筥参考人にまたちょっと確認をしたいわけであります。  東京湾船舶交通が最もふくそうしているというところから、船舶航行を規制する三つの法令ですね、衝突予防法、海上交通安全法、港則法が狭い海域でふくそうするということで、統合した法体制というのでしょうか、一元的な法体制とさっき言われたでしょうか、そういうことを言われたと思いますが、どういうことなのか、もう少し詳しく説明をしていただきたいと思います。
  52. 多筥良三

    ○多筥参考人 お答えします。  基本的には国際海上衝突予防規則、これに基づきまして万国共通で船は全部海でつながっているわけでございまして、これが基礎になろうかと思います。したがいまして、その上に立って、東京湾のような非常にふくそうする、あるいはかつては広かったのですけれども同じ面積でも狭くなっておるということでございますので、そこの中で安全を守ることを第一義として、新しいといってはなんですけれども、今申し上げた国際海上衝突予防法の趣旨に沿って二元化をしていくという考え方でございます。  ただ、海交法とか港則法も原則はそうなっておるのですけれども、地形だとかいろいろな入り組みによってそれぞれ特色が出てまいりますので、そこでの切りかえが、遠く離れておれば別ですけれども、ラインを出たらすぐ次のラインへ入るという形になりますので、そこら辺を海上衝突予防法の原則に従った一元化を図る必要があるのではなかろうか。これが例えば一平方キロのところに一隻おる場合は非常に広いわけでございますけれども、五隻になると非常に狭くなってくる、十隻になると過密になってくるということでございますから、衝突予防法の解釈上からいきまして、広い海域という場合に、今申し上げたように一隻のときは広い海域と判断できても十隻になったら狭い海域になってしまう、その狭い海域の判断基準すらも国際海上衝突予防法では海面によっては律し切れない、したがって、東京湾実態というものを考慮しまして、海上衝突予防法の趣旨に照らして二元化ができないものだろうかということを申し上げておるわけでございます。
  53. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 山崎参考人にお伺いをしたいのですが、先ほど多筥参考人の方から小型船舶の検査制度について触れられて、いわば自動車の車検並みにすべきではないかということを言われたわけでありますけれども、今の実態とその意見についてどのように考えられるか、お伺いいたします。
  54. 山崎義治

    山崎参考人 お答えいたします。  ただいまプレジャーボートの検査制度につきましては、運輸省の制度によりましてほとんど全部が小型船舶検査機構の検査を受けておりまして、私どものプレジャーボートに関しては問題はなかろうと存じております。
  55. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 同じ問題でありますが、多筥参考人実態等について御意見ございますか。
  56. 多筥良三

    ○多筥参考人 車検並みという意味は、いわゆるメンテナンスの面で極めて大ざっぱという表現は言い過ぎですけれども、緩やかである。例えば機関の種類等によりましては、マリーンエンジンの場合には余り開放し過ぎるとまた問題という要素もございますが、例えば一年ごとの開放点検というのは自動車にはあります。しかし、実態を整合しながら厳密な検査体制に持っていくべきではなかろうか。これは、中身につきましては相当研究を要するところでありますけれども、エンジンの火災事故は「なだしお」以降引き続いて東京湾で二件も起こっておりまして、いずれもエンジンルームからの火災発生でございますので、そこら辺をメンテナンスのチェックを車検並みに、せめてその程度までは引き上げていただいた方がいいのではなかろうか。方法につきましては検討をすることはありますが、ひとつ検討に着手をしていただけたらというふうに思って申し上げておるわけでございます。
  57. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 山元参考人にお伺いをいたしますけれども、最近の海洋レジャーの活発化に際しましては、先ほど万全の措置をしてほしいという言い方をされたと思うのですが、具体的にこういうふうにというような構想というのでしょうか、アイデアというのでしょうか、そういうものがあればお聞かせ願いたいと思います。
  58. 山元伊佐久

    ○山元参考人 私、海技従事者の出身者でございませんので余り技術的なことを申し上げる立場にないのでございますけれども、最近、海上レジャーあるいはプレジャーボート、そういうものに対して非常に関心が大きくなってきております。東京湾、瀬戸内海等のふくそう海域におきましては、やはりルールがきちんと決められまして関係者の間にそれを徹底がされるということが一番大事だと思います。実は私、第六管区の海上保安本部長を十数年前にやって海上交通安全法の施行に当たったのですけれども、法律なり施行令なりをただ官報に告示すればいいという問題でなくて、何回も何回も漁業関係者の方にお集まりいただいてその趣旨なり細目のルールについて御協力をお願いし、やっと無事に円滑にスタートしたということでございます。そういう体験からいいますと、やはりルールはただ言いっ放しではいけないので、これが徹底的に末端に浸透するということが大事だと思います。  それからもう一つ、やはりそういう海上レジャーの行動が行われる環境が船舶の交通との間に調整が十分図られていくということがまた一つのポイントではなかろうかと思います。  以上でございます。
  59. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 多筥参考人、それから田井参考人にお伺いしたいのです。  実は海員組合から運輸大臣あてにこの間出されました要請書の中に、きょうもちょっと触れられたことでありますが、「一定の旅客定員を超える遊漁船について、旅客船としての法適用を検討すること。」ということがありますが、その考え方について多筥参考人、それからそれについてどのように思われるのか田井参考人にお伺いいたします。
  60. 多筥良三

    ○多筥参考人 お答えします。  遊漁船につきましてはあのように申し上げておりますが、中身につきましては、種々規模的にあるいは船型別に非常にバラエティーに富んでいるのではなかろうかと思います。ただ、今回事故を起こしました第一富士丸のようなもの、それから旅客定員が三十名、四十名、日帰りの場合でもあるわけでございますが、これらを業として、漁業としてやることであるから旅客運送ではないという考え方は余りにも短絡しているのではなかろうか。明らかに業者はお客さんの料金の支払いによって生計を立てるわけですから、これは自分が漁業をしているわけではないわけですね。そうしますと、これを業法的に旅客扱い事業ではない——あえて運送というところになるとまた論争が出てくると思いますけれども、旅客扱い事業には間違いないわけでございます。したがいまして、それに私、運送法にしろとすっきり言っておりませんけれども、運送法に準じた形でやらないと労務管理とか労働条件とかも密接にこれにかかわってきて、安全にかかわってくる問題でありますので、でき得れば海上運送法に基づく旅客事業の扱いを改正をしてでも対応できるはずですし、どうしても、そうでなければ、それらの要素をすべて含んだ法律体系で立法していただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  お答えになったでしょうか。
  61. 田井幸通

    田井参考人 お答えいたします。  運輸省の方から私ども書類をいただきましたし、それから各単協においても運輸省の出先機関から御指示、御連絡いただいているのですが、十三人以上の釣り船について旅客船の適用を受けていますので、それに伴って船員の安全に関する、利用客の安全に関するいろいろなあれをしろということで、当然そういったことはしなければいけないのですが、問題は一つあるのです。  小型船舶検査機構の検査を受けたときに乗組員定員を何人にしろというあれはないのです。ということは、小型船舶さんで検査を受けるときに、例えば二、三年前まで釣り船業者の多くは十二人までしか旅客定員をとれないのだという考え方が強かったのです。それが小型船舶さんの方で旅客船のあれでやれば十三人以上とれるんだということになって、釣り船業者の方は一船にお客さんを余計乗せればそれだけ収入が上がるということだけで定員をある程度確保しているわけです。ですから、確かに言われる御趣旨はわかるのですが、第一富士丸的な形状の釣り船の構造になってない船にあれだこれだと言われても、早急に、すぐ対応できるかどうかというのが現状だと思うのです。  ただ、このたびの遊漁船業の適正化に関する法律の中で、当然マル適マークの業者については種々の講習なり何なりをやるような仕組みになっているかにお伺いしていますので、そういった面で安全面のことについての各釣り船業者、それから釣り船を操船する操縦士に関してそういった講習会なり何なりをやっていってそういった安全の確保ができるんじゃないかと思っております。
  62. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 時間が来ましたので終わります。  どうもありがとうございました。
  63. 近江巳記夫

    近江委員長 次に、辻第一君。
  64. 辻第一

    ○辻(第)委員 共産党の辻第一でございます。きょうは、参考人の皆さん方お忙しい中をお越しいただきまして貴重な御意見を聞かせていただき、大変勉強させていただきました。ありがとうございます。  東京湾海上交通の安全の問題というのが極めて深刻な状況になってきているんだなと、皆さん方のお話を聞かせていただく中で改めて認識を強めたわけでございます。殊に大型船がふえ、しかも、タンカーやLPGですかLNGですか、そういうような危険船がふえている。また外国船、それもいろいろの問題点を含む外国船がふえてきている。また軍用船もふえている。その軍用船の中には原子力潜水艦だとか、私どもからいえば核兵器を積み込んだ艦船が入ってきている、こういう状況、また東京湾が乱開発とも言うべき状況の中で防災体制が十分でないんだ、こういうお話を聞く中で本当に大変な問題だなというふうに思っているわけでございます。  そこで、この間の「なだしお」と第一富士丸衝突事件が起こったわけでありますが、このことにかかわってまずお尋ねをしたいと思うわけでございます。  今度の事件の中に私どもは自衛隊の軍事優先、民間軽視、さらに言えば人命軽視、そういうような状況があって一層この問題に輪をかけたのではないかというふうに考えているわけであります。しかし、その基本はあの過密航路浦賀水道を横断する、こういうことに一つの大問題があろうかと思います。その上、自衛隊は編隊を組んで横切る、そういう中に強引に横断をする姿勢というようなものもあるように思うわけであります。  田尻参考人はその問題について、昨年の「公害研究」という雑誌、八七年十月の中にも「東京湾開発と海上安全対策への提言」という論文を発表しておられる。それも読ませていただいたわけでありますが、そういう中で、米軍、自衛隊の船舶は「浦賀水道を北航し、途中でこれを横切る形で西方へ転針するが、山湾するため南航中の船舶航行を妨害することになる。海上交通安全法の規定により、航路航行中の船舶があるときは、横切り船はこれを避けなければならない。しかし上記軍用船はしばしば編隊航行しているためもあって、強引に横切りを強行し、衝突の危険が発生する例が少なくない。航路外に一旦出てから入港するよう措置すべきである。」こういうような御指摘もあるわけであります。  そこで、参考人の皆さんにお尋ねをしたいのですが、パイロット協会坂元参考人さんにまずお尋ねしたいのです。  やはり私どもの考え、あるいは先ほど来田尻参考人の論文の中にもありましたような、自衛隊の艦船が横切る、そのことの危険をお感じになったこと、しかも編隊を組んで通るということの危険をお感じになるということはしばしばあることだと思うのですが、いかがですか。
  65. 坂元比

    坂元参考人 お答えいたします。  私どもパイロットの方は、常時、海上交通センターと緊密な連携をとりまして、自衛艦が編隊行動をとるときあるいは米国の軍艦が編隊行動をするときには事前に情報を受けておりますので、しかも最近自衛艦は、編隊行動をする場合でもやはり航行船舶のいわゆる流れに対してある程度の間隔を、三隻あるいは二隻でその間を十分通り得るだけの間隔をあけて航行しているのは、あの事件以前からもそういうふうになっております。そういうこともございますので、私どもは危険を感じたことはございません。
  66. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは多筥さん、簡単にお答えいただきたいと思います。
  67. 多筥良三

    ○多筥参考人 その件につきましては、私ども先ほど陳述の中で申し上げましたけれども、個々の対応については特に批判なり申し上げておりませんが、そのことはこれからの海難審判、事故に直面した瞬間の対応でございますので、これはやはり的確な、真実に近い資料をもって裁定さるべき問題でございますので、現段階では触れておりません。ただ、艦隊行動なりあるいは船団行動なりというものは、ああいう狭い水域では確かに問題があるということで、申し入れ事項の中に、できるだけそういう船団なり艦隊として通るようなことは避けてほしい、単船、単船でルールを守っていってもらいたいという趣旨で大臣に対する申し入れ事項の中に入れさせていただいたわけでございます。  そういうことでよろしゅうございましょうか。
  68. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、田尻参考人にお尋ねをいたします。  一九八五年の十二月十日にも米軍フリゲート艦とフィリピンの貨物船の衝突事故というようなことがあったようであります。私どもも一九八一年に、その前に事故があった問題で、軍用船との事故の問題で私どもの中路議員が当委員会で質問をしているわけであります。軍用船と民間船との関係ですね、この問題の解決をということで質問しているわけでありますが、この問題は、今のままではまたこういうことが起こりかねない。田尻参考人はもう昨年そのことを警告をされておったわけであります。そういうことで、先ほど少しお聞きしたわけでありますが、積極的な対策をとらなくてはならないと私は思うのですが、もう一度その対策について簡単にお答えをいただきたいと思うのです。
  69. 田尻宗昭

    田尻参考人 私は、二十二年間海上保安庁に在籍しまして、いろいろな事故を扱ってまいりました。特に四日市の石油港湾では本当に冷や汗の出る思いもいたしました。その生身の体験から、ここにおられる参考人もいろいろ立場は違うと思いますけれども、私自身は、やはり安全を守るということは、よほどのシステムあるいは法律、法的な規制というものが整備されていないと、個々の注意に依存したりあるいは個別の単なる指導に寄りかかっていては防げないという実感を得ました。  確かに事故というのはふだんは余り起きないかもしれませんが、たまにその事故が起こったときには大変な結果となって、例えば第十雄洋丸事件のように、事件が起こった後から制度というのは整備される歴史を繰り返してきました。そういう点からいいますと、確かに今の浦賀水道で個々の自衛隊の艦船は年とともにそれなりの注意はして、昔のようにかなり強引な、編隊を組んで強引に横切るということが少なくなってきたかもしれませんが、しかし、現場というものはよほどの制度的な担保がないと、人間の注意というものにはえてして限界がある、あるいは間違いをしでかすものなんです。ですから、事故が起こってみると、どうしてこんな勘違いをやったか、どうしてこんなことをやったかというようなことが起こるものなんです。そういう意味では、私は制度論として、浦賀水道という非常に重要な過密水道の、しかも法律に保護された航路航行船を守るということは、その守るべき具体的な措置を制度化しなければ、その操船に当たる個々の良心だけに依存することは間違っている、そう思います。  したがって、どう考えても自衛隊の艦船があるいは米軍の艦船が並んであそこを横切るということは、艦船自体にも大変な緊張と注意が求められる、それは相互に非常に大きな問題である。それを救済する制度がなければ安全に対する対策なり政策と言えないと思う。そのためにはやはりちゃんとしたルールをつくって、自衛隊は完全な東京湾海上交通センターのコントロール下に入って、十分な情報連絡を義務づけて、そして横切るときはスピードを極度に落とさせて、そして当然東京湾の外でできるだけ単船航行に切りかえて、もしも複数の南下船があるならば、あと十分走れば浦賀水道を通り抜けますから、通り抜けたら絶対安全とは言えませんけれども、より法律の趣旨に沿うためには一たんは通り過ぎさせるとか、そういうような制度をこの際つくっておかなければ、人間の注意だけでは防げないと思います。その点は法律の趣旨から見て当然のことだと私は信じて疑いません。したがって、今回の横須賀の事故の教訓を今後の事故防止に生かすためにはそういうような制度的改善をしなかったならば、単に「なだしお」の艦長と釣り船の富士丸の船長だけが悪かったという事件ではない。やはり人間ですから、しょっちゅう横切っていますと横切りに対するなれというものが——私は怠慢とまでは言いませんけれども、なれというのが起こるのは当然でありますから、そこをやはり救済する必要もあるんじゃないか。  それから、一つだけ具体的なことを申しますと、海上交通安全法には、浦賀水道を横切るときは速やかに横切れ、こうなっておるのですね。あれは私はよく取り違えると思うのです。スピードを出して横切るというぐあいに解釈されると困るんで、あれは斜めに横切ったりわざわざゆっくり横切ったりするのを防止するためだと私は解釈しますので、そういう点の詰めもこの際必要だろう。そうすれば、海上保安庁の現場の指導だけに任せる、交通センターの諸君だけにそれを負わせるのではなくて、ちゃんとしたルールをつくってあげて両方がそのルールをちゃんと守っていれば、そんなに個人の判断や緊張感にゆだねなくても事故が防止できる制度をこの際つくらなければあの犠牲は生きないんじゃないか、私は真剣にそう思います。
  70. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、自衛隊を中心とした軍用船ですね、これの対応というのは、今、田尻参考人がおっしゃいましたような積極的な対応をとらない限り重大問題がまた起こるというふうに思うわけであります。さらに言えば、私どもは基地の撤去ということを主張しているわけでありますが、もう時間になりました。  いろいろとお尋ねしたいことがあるのですが、もう時間がほとんどなくなってきたのですが、巡視艇をもっとふやしたらどうか、こういう意見も私は聞いているわけでありますが、その点について田尻参考人、それから野呂参考人にお尋ねをいたします。
  71. 田尻宗昭

    田尻参考人 海上保安庁におりましたOBとして感じますことは、海上保安庁に対して余りにも負担が大き過ぎるということは言えます。といいますのは、単なる交通規制とかあるいは事故が起こってから駆けつけて始末をするという段階を東京湾は通り越していると思うのです。とにかくでっかい船がどんどん入ってきて錨地も足りないような状況で、そして港はどんどんつくられて、島はこれからあちこちにつくられるというような状況の中で、ただ交通規制だけで事故を防げというのは無理だと思います。ですから、おっしゃるように巡視船艇は幾らあっても足りません。もう多いにこしたことはありません。しかしながら、巡視船艇をふやすだけでいいかというと、やはりそれは外科的な治療であって、内科的な治療は、定員をちゃんと守るとかあるいは錨地をちゃんと用意するとか、一番基本のことをしないで、そうして事故の責任だけを海上保安庁に負わせるというのは私はやはり無理だと思いますので、この際東京湾には総合的な立法も必要だし、総合的な対策も必要だし、東京湾の安全には、海の私たちからいいますと、長い間恨みがあるのは、陸上が実に海に対して認識が甘いですよ。海の人間に対して実に無理解です。私たち船乗りとしてはそのことを何十年も思ってきました。そういう意味では、運輸省の港湾局とか地方自治体の港湾局にはもっと船乗りを雇ってもらいたいですね。船のことを何も知らぬ人が設計図をかいていたらたまらないという思いがします。まずそこら辺から始めないと、幾ら海洋政策を論じても本当に実現しません。そのことから始めないとこういう議論が定着しない。大変失礼なことを申し上げました。
  72. 野呂隆

    野呂参考人 海上交通ルールをいかにつくりましても、これを指導徹底して遵守させなければなりません。そのためには、私の経験から申しましても、海上交通法施行のときに私は第三管区でその衝に当たっておりましたが、現場におきまして巡視船艇あるいは保安官の指導というものが一番効果を上げております。事故防止についてもしかりでございまして、やはり現場においての指導が一番効果が上がる事項だと思います。  海上保安庁は、御承知のように海上における安全の確保、その他犯罪防止とかいろいろな取り締まり等に当たっておりまして、巡視船艇は非常に多面にわたり活動を余儀なくされている状況でございます。安全確保のためにさらに巡視船艇を、特に東京湾におきましては増強して、現場における指導を徹底させていただくことが事故防止につながることと思いますので、どうかよろしく御配慮のほどをお願いいたします。
  73. 辻第一

    ○辻(第)委員 時間が来ました。終わります。
  74. 近江巳記夫

    近江委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十四分散会