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1988-07-28 第113回国会 衆議院 運輸委員会内閣委員会交通安全対策特別委員会安全保障特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年七月二十八日(木曜日)     午前九時開議  出席委員   運輸委員会    委員長 関谷 勝嗣君    理事 小里 貞利君 理事 柿澤 弘治君    理事 亀井 静香君 理事 亀井 善之君    理事 二階 俊博君 理事 吉原 米治君    理事 長田 武士君 理事 河村  勝君       魚住 汎英君    岡島 正之君       鴻池 祥肇君    田中 直紀君       津島 雄二君    増岡 博之君       若林 正俊君    岡田 利春君       小林 恒人君    左近 正男君       新盛 辰雄君    戸田 菊雄君       浅井 美幸君    西中  清君       中村 正雄君    岡崎万寿秀君       中路 雅弘君   内閣委員会    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 田口 健二君 理事 竹内 勝彦君    理事 和田 一仁君       有馬 元治君    江藤 隆美君       大村 襄治君    河野 洋平君       宮里 松正君    村井  仁君       森下 元晴君    谷津 義男君       大出  俊君    角屋堅次郎君       井上 和久君    鈴切 康雄君       川端 達夫君    浦井  洋君       佐藤 祐弘君   交通安全対策特別委員会    委員長 近江巳記夫君    理事 粟屋 敏信君 理事 加藤 卓二君    理事 片岡 武司君 理事 亀井 善之君    理事 柳沢 伯夫君 理事 関山 信之君    理事 正木 良明君 理事 伊藤 英成君       岡島 正之君    川崎 二郎君       北川 石松君    小泉純一郎君       近藤 元次君    左藤  恵君       佐藤 静雄君    岩垂寿喜男君       緒方 克陽君    永井 孝信君       新井 彬之君    玉置 一弥君       辻  第一君   安全保障特別委員会    委員長 箕輪  登君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 月原 茂皓君 理事 山崎  拓君    理事 左近 正男君 理事 冬柴 鉄三君       大村 襄治君    柿澤 弘治君       谷川 和穗君    中川 昭一君       増岡 博之君    三原 朝彦君       坂上 富男君    武藤 山治君       渡部 行雄君    神崎 武法君       鈴切 康雄君    東中 光雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障室長   佐々 淳行君         総務庁長官官房         審議官     紀 嘉一郎君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       加美山利弘君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 児玉 良雄君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         環境庁水質保全         局長      岩崎 充利君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         水産庁次長   中村 晃次君         運輸省運輸政策 塩田 澄夫君         運輸省地域交通         局長      阿部 雅昭君         運輸省海上技術         安全局長    石井 和也君         運輸省海上技術         安全局船員部長 田辺 淳也君         運輸省港湾局長 奥山 文雄君         海上保安庁長官 山田 隆英君         海上保安庁次長 野尻  豊君  委員外出席者         特別委員会第一         調査室長    諸岡 昭二君         特別委員会第三         調査室長    寺田 晃夫君         内閣委員会調査         室長      岩渕  静君         運輸委員会調査         室長      荒尾  正君     ───────────── 本日の会議に付した案件  海上保安に関する件(第一富士丸事故に関する問題)      ────◇─────
  2. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これより運輸委員会内閣委員会交通安全対策特別委員会安全保障特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、運輸委員長の私が委員長の職務を行います。  議事に入るに先立ち、この際、去る二十三日、第一富士丸事故でお亡くなりになられた多数の方々哀悼の意を表し、御冥福を祈り、黙祷をささげたいと思います。  御起立お願いいたします。——黙祷。     〔総員起立黙祷
  3. 関谷勝嗣

    関谷委員長 黙祷を終わります。御着席願います。     ─────────────
  4. 関谷勝嗣

    関谷委員長 海上保安に関する件、第一富士丸事故に関する問題について調査を進めます。  この際、今回の事故について運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。石原運輸大臣
  5. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私は、海上交通の安全の確保運輸行政の最も基本的な課題一つであると確信して、従来から安全対策に最大限の努力を傾注するよう関係者を指導してまいりました。  しかるに、去る七月二十三日、海上自衛隊潜水艦遊漁船衝突事故発生し、多数の犠牲者が出ましたことは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。  この事故により亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、御遺族方々に衷心よりお悔やみを申し上げる次第でございます。また現在行方不明となっておられる方の御家族の心情を察し、引き続き全力を挙げて捜索に努めてまいる所存でございます。  政府といたしましては、事故重大性にかんがみ、直ちに第一富士丸事故対策本部を設置し、本部では昨日まで三回にわたり会議を開き、行方明者捜索救助の推進を図りつつ、事故原因究明等全力を挙げて当たることを申し合わせたところでございます。また、昨日の会議においては、事故原因究明を待つことなく、当面船舶航行の安全に関して措置すべき事項を決定したところでもございます。  運輸省としましては、引き続き行方不明者捜索活動全力を挙げることとしております。また、この事故原因究明を急ぎつつ、関係機関協力を得て、事故再発防止に万全を期してまいる所存でございます。     ─────────────
  6. 関谷勝嗣

    関谷委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。  なお、質疑時間は申し合わせの範囲内で御協力お願いいたします。亀井善之君。
  7. 亀井善之

    亀井(善)委員 まず、今回のこの痛ましい海難事故に当たりまして、とうとい人命を失われ、お亡くなりになりました皆様方に心からお悔やみを申し上げ、御遺族皆様方にお見舞いを申し上げる次第でございます。  なお、本日までまだ行方不明の方が一名おられるわけでもございます。全力を挙げてこの捜索活動にお努めをいただくようお願いを申し上げ、また病院入院中の方もおられるわけでもございます。一日も早い御回復をお祈り申し上げる次第でございます。  なお先般二十五日に、私は自民党、また自民党神奈川県連を代表いたしまして横須賀に赴き、病院に参りまして、当時十四名の入院皆様方にお見舞いを申し上げてまいりました。あるいはまた、横須賀地方総監部海上保安部に参りまして、不眠不休全力を挙げてそのために御努力をされております皆様方をねぎらうと同時に、さらに全力を尽くしていただきたいとお願いを申し上げてきた次第でございます。  今回の海難事故は、海上自衛隊始まって以来の民間を取り込んだ最大の事故ではなかろうか、こう思うわけでもございます。政府は、二十四日に石原運輸大臣本部長として第一富士丸事故対策本部を設置していただきました。何としてもこの原因徹底的究明と、そして解明された事実を公表し、また類似事件再発防止のためのいろいろな施策を進めるということが国民の信頼にこたえる第一歩ではなかろうかと思います。  今国会、この問題に対する質疑が最初であるわけでございますが、総理は、この事件発生に対してどのような考えを抱かれ、これを契機に今後何をどのようになされようとするのか、まず御所見を伺いたいと思います。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 冒頭石原本部長から御発言申し上げた次第でございますが、今回の事故海上自衛隊潜水艦民間船舶衝突した、こういう事件であります。今御指摘がありましたように多くのとうとい人命を失い、このことにつきましてはまことに遺憾のきわみであるというふうに私自身感じております。したがって、もとより心から哀悼の誠をささげますと同時に、また、今御指摘がありましたように、御入院中の皆様方の御回復を心からお祈り申し上げますと同時に、なお不明の方の引き続きの捜索には万全を期してこれに当たりたい。  そして、まさにこのことが今後、類似のという御表現もございましたが、起こることのないよう徹底した事故原因究明を行うとともに、再発防止等に万全を期さなければならない、このように考えております。
  9. 亀井善之

    亀井(善)委員 事の重大性、このことを御認識いただきまして、なお一層の御努力お願い申し上げる次第でございます。  今回の事故発生に際しまして、事故後、防衛庁対応について、内局といわゆる制服組との確執が取りざたされているわけでございますが、実情はどうであるのか、最高責任者である総理の御所見を伺いたい次第でございます。
  10. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そもそも防衛庁におきますところの、御指摘どおりいわゆる背広組制服組という言葉を使わせていただきますならば、その間の関係についてはかねてから深く関心を持っておるところであります。私は、この両者の間にいわゆる確執という性格のものは存在していない、このように信じております。  いかなる組織におきましても同じことだとも言えましょうが、経験、知識任務内容の異なる専門家集団におきましては行動形態等に若干の差があることはあり得ると思います。しかし、制服組、そして背広組の間にはおのずと任務の役割が異なりますとはいえ、国の安全、国民生命財産を守る、この基本的な考え方においては全くずれはない、私はこのように確信をいたしておるところであります。
  11. 亀井善之

    亀井(善)委員 私も、今の総理のお考え、そのとおりではなかろうか、このように考える次第でございます。ぜひそのような中で国の安全のためにもよろしくお願いを申し上げる次第でございます。  現在関係者から事情聴取などが行われているわけでございます。原因究明され、両船の過失の程度が決定しない限り、被害者と申しますか御遺族等々に対する補償問題は解決しないものと思われるわけでございますが、総理はこの被害者等に対する補償についてどのように考えておられるのか、この点について伺いたいわけでございます。
  12. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 御指摘がありましたように、今回の事故原因については、海上保安庁等を中心にしてこれが究明を急いでおられるところであります。したがって、私どもといたしましては、その状況を見きわめた上で適切な対応をしていかなければならない、このように考えております。
  13. 亀井善之

    亀井(善)委員 大変原因究明は時間のかかる問題でもありますし、ぜひ今総理の御発言のように適切なことをお願い申し上げる次第でございます。  今回の事故発生しました東京湾は、大型船及び小型船あるいは今回の事故遊漁船であるとか、あるいはタンカー、いろいろの船の往来が激しく、名立たるふくそう海域である、このように考えられるわけでございます。今後、この東京湾に限らず、明石海峡あるいは伊良湖水道など狭水道、これにおける航行安全対策、これが進められなければならないと思うわけです。今回起きた事故の重大さを考え、あるいはこの種の事故が再び発生しないために、虚心に事故発生後の反省を十分に尽くすことが今回の犠牲者冥福を祈る道である、このように思います。  今後の航行安全対策をどのように進めていかれるおつもりか、御所見を伺いたい次第でございます。
  14. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 先ほど石原本部長からも御報告の中で申し上げましたが、この原因究明を待つことなく、まず当面の船舶航行の安全に関して措置すべき事項、これらを先般の会議でまず決定をしたところでございます。しかし、御指摘ありましたように、当面の措置として、東京湾のみでなく、船舶交通のふくそうする地域における船舶を特に対象とした航行の安全に関する集中指導、これを決めたところでございますけれども、やはり基本的には、今御指摘のありましたように、この原因究明を徹底し急ぐとともに、一方、これが再発防止等対策について遺漏なきを期すということが、御指摘なさったとおり、せめてもの御遺族皆様方に対する私どもの償い、このような感じで受けとめております。
  15. 亀井善之

    亀井(善)委員 今総理から四項目にわたりまして御所見を伺ったわけでもございます。原因徹底的究明と、そしてこの事故原因以外に余りにも多くなぜということが言われるわけでございます。救助活動がどうであったか。このなぜという点が余りにも多く指摘をされ、また報道もされておるわけでもございます。  総理、大きなこの海難事故、今もお話を伺いましたが、今後の問題、特に先ほども申し上げましたとおり、犠牲者皆様方のことを考えますときに、二度とこういうことが起こらない、こういうことが一番重要なことでもあるわけでもございま す。今後とも最高責任者として各般にわたりまして全力を挙げて御指導賜りますようお願いを申し上げる次第でございます。  それでは、あとそれぞれ所管大臣にお尋ねをいたすわけでございますが、所管大臣お越しをいただいておりますが、後ほど時間がございますのでその方で質問をさせていただきまして、総理に対する御質問はこれで終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  16. 関谷勝嗣

  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、総理質問する前に、日本社会党護憲共同を代表いたしまして、今回の事故犠牲になられた方々に対する御冥福をお祈りすると同時に、また遺族方々に心から哀悼の意を表する次第であります。また、救助されました方々にも、その御心痛を思い、心よりお見舞いを申し上げる次第でございます。  今回の事故は、浦賀水道航路のいわば超過密航路地帯における事故発生であります。ある意味ではこの事故は起こるべくして起きたのではないかとも考えられるのであります。  同時に、この事故発生状況考えますと、自衛隊側展示訓練中、しかも多くの民間人護衛艦に招待をしての、そういう艦隊の一潜水艦事故であるという事実。さらにまた、当日は視界が非常によくて、波の高さも低く、極めて平穏な状況の中で発生した事故であるということ。しかも、その潜水艦の「なだしお」の第一富士丸の発見は衝突わずか三分前。このことは、常識的に判断しますと、見張りと艦長が危険回避義務を怠ったと普通常識的には言わざるを得ない、こう思うのであります。国民の側はそういう意味でこの事故を極めて冷静な目で見、耳で聞いているものと思います。  同時にまた、事故発生後の措置を見ますと、その通報事故発生から二十一分とおくれておるという事実、そしてまた連絡通報に艦の直接連絡の方法を持ちながらこれを使わなかったということ、あるいはまた潜水艦救助活動が大幅なおくれをとったという事実、あるいはまた救助装備、あるいはまた救助のあり方、こういう点にも問題があったのではないかと思われる事実であります。また、無線での遭難発生の信号の発信は、これはなかったのであります。  そういう意味考えますと、この事故一連状況というものは、国民のだれしもが納得のできない気持ちで、いら立った気持ちでこの事実を受けとめていると言わざるを得ませんし、その気持ちは、やはり自衛隊というのは軍事優先である、人命はその次であるという印象を私は強く持っていると思うのであります。したがって、こういう一連事故状況から、総理は一体この事故に対してどういう認識を持っておられるのか、そしてこの事故に対する総理の見解を私はまず承りたいのであります。
  18. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今次の事故に対する認識につきましては、いわゆる自衛隊艦船民間船舶との衝突事故であるということについて大変心を痛めておるということは先ほど申し上げましたとおりであります。岡田委員はそれの背景についてるる御意見をお述べになりました。私自身も、その場その場でとられた措置について、法令等に忠実であり、間違った措置がとられたというようなことは考えもいたしておりません。  しかしながら、今も御指摘ありました、例えば潜水艦に直ちに使える救命ボートを備えていない制約というようなことを考えてみますときに、専門的な知識がある私ではございませんけれども、いわば水中を航行する場合でない湾内の航行等の場合に、そのような制約等については、これは事故原因究明とともに、また新たに検討をすべき課題ではなかろうか、このようにも考えておるところであります。いやしくも基本的に、いわゆる人命優先、こういう考え方でない職種というのはあり得ないというふうに私も思っております。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 かつて昭和五十六年に、アメリカ軍ポラリス潜水艦ジョージ・ワシントンが東シナ海で急浮上中に、貨物船日昇丸との衝突事故でこれを沈没させた事件があります。このときには、国民の世論の前に米側は、米軍のその詳細な行動記録をあえて公表するという態度に出たのであります。まして我が国の自衛隊でありますから、自衛隊側のいわば行動あるいはまた艦船その他の臨検の受け入れ、あらゆる面でこの際民間レベルと同じ気持ちでこれに応ずるべきである、私はこのように思うのでありますけれども総理として私のこういう気持ちに対していかがでしょうか。
  20. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この過去の潜水艦事故についての知識を今正確に持ち合わせておるわけではございません。しかし、今の岡田委員の御指摘については、私にも理解できるところであります。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 この事件発生以来、それぞれ関係者事故に対する記者会見等を通じての御意見が述べられておるわけです。先ほどの質問にもありましたけれども、どうもその際、いわば文官と制服組意見の食い違いととられるか、認識の違いととられるか、そういう点が顕著にあらわれて、私は国民気持ちを逆なでしているような状況すら出ておる、こう考えるわけであります。そういう点で、例えば瓦防衛庁長官政治的道義的責任を感じられて、その進退について総理にも内々申し出があると伝えられておりますし、そういう状況で、制服組で、しかも海自の責任者発言等はどうも、言語道断とは言わないまでも極めて不穏当なものがあると私は指摘をしなければならぬと思います。  例えば、海上保安庁自衛隊過失があると認めた場合でも、いや、海難審判庁の結果が出るまで責任などについてはこれは明確に処すべきではないとかなどというような御意見も伝えられておるのであります。私は、やはりこういう事故に対して謙虚に受けとめることが犠牲者に対する、あるいはまた遺族に対する心温まる人間的な姿勢ではないだろうか、こう思うのであります。特に、こういう事件責任というものは、総理が言うように、そのつかさつかさにおいてその責任というものがきちんととられなければならないものだ、こう思います。  そうしますと、もちろん当該潜水艦あるいはまた横須賀総監部あるいはまた潜水艦司令部あるいはまた海上幕僚長幕僚関係、そういう点がむしろこういう事故についてはきちんと責任がとられることによって、その後の事故対策、また姿勢についても襟が正されるものと私は思うのであります。防衛庁長官は、当面の原因究明、そして緊急な対策についてやはりきちっとされて、その上で長官長官としての立場を処せられるということでなければならない、かように思います。そしてまた、国防会議最高責任者であります総理責任も問わなければなりませんし、また、これらの一連責任問題、原因究明されて、責任問題というのはやはりシビリアンコントロール立場で行わなければならない問題だと思いますし、そういう意味における総理責任もまた重大だと言わなければなりません。私は、もちろん原因究明が先であり、まだ一名の行方不明者救助が今緊急かつ重大な、大切な問題でありますけれども、この機会に総理のそういう姿勢について所見を承っておきたいと思います。
  22. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず事実関係一つとしまして、二十三日の事故が起きましたその夜、瓦防衛庁長官等とまず協議をいたしました後、瓦長官から、私もこの職に指名を受けましたときから責任の存在は十分心得ております、今の私のとるべき責任は、いち早く捜索活動救助活動全力を挙げることであります、それが私の責任としてのとるべき道であります、このような御主張を聞きました。まことにしかりだと思います。そして今日なお、お一人の方の行方不明の捜索の継続中でありますが、一方国会審議に対してもみずからの責任でお答えしなければならないという瓦長官心情でもあります。そして、徹底したいわゆる事故調査、この責任も果たさなければならない、本人の心境は私には痛いほどわかっております。  私事にわたって失礼でございますが、昭和四十六年雫石の事件のとき、私は内閣官房長官でありました。その当時のことを想起いたしまして、苦しい中に瓦君がその責任を果たしてくれておる姿に対して感心をいたしております。したがって、この問題の原因究明、それが行われていくに当たりまして、あくまでも公正かつ客観的にこれは行われていくでございましょうから、その結果においては各レベルの当事者がしかるべく責任を負うことになるのは私は当然ではなかろうか、このように思っております。岡田委員かねての御主張でありますシビリアンコントロール、これはまさに鉄則である、私もそれに心がけて対応してまいります。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんので、詳細は同僚委員が後から質問をいたしますけれども、最後に、大惨事を繰り返さないための緊急な対策は、運輸大臣からも申し述べられたように、既に今着々ととられているように私は思います。だがしかし、基本的な対策としては、超過密浦賀水道民間船舶安全航行確保ということ、基本的にこれを検討し直さなければならぬのではないか。我が党はかねて東京湾実態について長年調査をしてまいりました。そういう判断からいたしますと、東京湾海上交通総合管理というものを計画的に推進しなければならない実態にある。また、これを確実に遂行するためには法的手段も必要ではないか。東京湾海上安全対策保全法というような立法も必要ではないのか。既に総理当局の方にも党として申し入れをいたしておるところであります。したがって、そういう抜本的な対策に取り組む気持ちがあるのかどうかというのが第一点であります。  また、亡くなられた遺族方々に対しては心配りのある補償措置等について、政府はそういう姿勢で、心温かい姿勢で対処するということで、積極的にひとつこれらについても総理のいわゆる思いやりを示していただきたいものである、こう思います。そして、残された今行方不明の若き女性である湯原真美さんの救助が一日も早く完了しますように努力されますことをお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  24. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今の御鞭撻の趣旨を体しまして誠心誠意対応してまいる所存であります。また、この立法措置等、貴党からお申し入れをいただいておることは十分部内に通達いたしております。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  26. 関谷勝嗣

    関谷委員長 浅井美幸君。
  27. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、海上自衛隊潜水艦「なだしお」と遊漁船一富士丸との衝突事故に関してお伺いいたします。  初めに、今回の衝突事故犠牲となられました多くの方々の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、御遺族方々に対し慎んでお悔やみを申し上げる次第でございます。また、行方不明の方の捜索全力を尽くしていただきたいことをここで強く望んでおきたいと思います。また、入院の皆様の一日も早い御回復を心よりお祈り申し上げております。  このたびの事故につきましては、そもそも国民の生命と財産を守る、あるいはまた国の安全を守るという自衛隊の根幹にかかわる問題であろうとも考えられるわけであります。そのことが基本になっておる自衛艦が民間船舶衝突事故を起こし、多数のとうとい犠牲者を出したということは海上自衛隊始まって以来の不祥事であり、また極めて重大かつ遺憾なことであろうと私は思うわけであります。  我が党は去る二十五日、矢野委員長を初め私ども事故対策本部のメンバーが横須賀事故現場の海域を小さな漁船に乗って訪れました。そして、その当時犠牲となられた方々あるいは行方不明の方々に心から鎮魂の意を込めて献花をしてまいったものでございました。そしてその現場をつぶさに見てまいりました。横須賀の地方総監部も私どもは訪れて、寺井横須賀地方総監にも会って、事故の現況あるいはまた救護状況について、捜索状況について詳しく伺ったものでございました。  私は今回のこのような事故について、まず総理にみずからの責任やあるいはまた真相究明再発防止などの基本姿勢についてお聞きしたいと思います。
  28. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今浅井委員から御指摘がありましたように、自衛艦と民間船舶との衝突ということであります。まことに痛恨のきわみとでも申しましょうか、その言葉をも知らないというような心境でございます。  政府としては、引き続き残っていらっしゃるお一人の行方不明者の方の捜索に最善を尽くすことは当然のことでありますと同時に、これからまさにその事故原因徹底的究明に当たらなければならないと考えております。そしてその究明の中におきましていろいろ反省あるいは不備の指摘等もありますでしょう。それらに対しては直ちにこれに対応していきますと同時に、当面の対策といたしまして石原本部長の方で五つの項目を示して船舶安全航行ということに当たっておるという現状でございます。さらに調査が進みます段階におきまして、補償問題等につきましては適切に対応をしなければならない、このように考えておるところでございます。
  29. 浅井美幸

    ○浅井委員 今回の事件について、私ども新聞報道でその概要あるいはまたその状況について知っているわけでございますけれども、幾つかの疑問点があり、また不可解に思う点がございます。それは今回の事件の基本に、自衛隊の側に軍事優先民間軽視という気持ちが、意識が存在していなかったかということであります。この点についてはまた強い国民の批判があるやに私どもも承知をしておるわけでございます。  そこでお伺いいたしたいわけでございますけれども、最も残念なことは、沈没する第一富士丸から投げ出された乗客が必死で救助を求めているにもかかわらず、「なだしお」の乗組員がデッキでただ荘然と眺めているだけで即座に救助を行わなかったということが報道されております。潜水艦の乗組員は七十四名がおられる中で、海に飛び込んだのはたったの一人で、救助されたのは自衛隊側が三名、付近にいて駆けつけたタンカー、これは事故現場よりも一キロ離れておったところの民間のタンカーが駆けつけて救助をしておる、クルーザーが駆けつけて救助をしておる、その人たちが十六名を救助しておるのに比べ明らかに数が少な過ぎるという問題点であります。被害者の家族や関係者からは、海の男として恥ずかしくないのか、なぜすぐ飛び込んで救い出してはくれなかったのか、だれのための自衛隊なのか、こういう強い怒りと自衛隊に対する不信の声が上がっていることも事実であります。救助がおくれたというよりも、手をこまねいていたというのが適切な表現であるかのような今回の状況について、その理由をお伺いしたいのであります。
  30. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今回のような痛ましい事件発生したことはまことに遺憾である、これは何回申してもそのとおりであります。  今浅井委員の御指摘がございました事件発生後における「なだしお」「ちとせ」、これらが直ちに救助活動を行って四名の遭難者を救助したという報告は私も承知しております。私自身感じておりますことは、潜水艦は直ちに使える救命用具を備えていないといったような一定の制約があるということは聞かされておりまして、したがって、それがいわゆる法令、規則の制約等の中でそれに忠実であった場合に、今浅井委員が御指摘なすった国民感情というものが一方存在したという事実につながったではないかという感じもいたします。したがって、潜水艦というものが水上航行を主体として公海上における制約と、そして湾内に入った場合の対応の仕方とかというものには、私自身も何がしかの検討すべき問題があるではないかという感じは持っております。  いずれにせよ、これらの問題につきましてはまず事故調査を徹底的に行って、そういう問題も含めた、制度上の制約等も含めた対応の仕方でもっ て、二度とこのようなことが起きないようにしなければならない。なお御指摘にありましたように、いわば自衛隊自身が国民の信頼を失うようなことがあってはならぬ、あくまでも軍事優先だ、民間軽視だとかそういう印象を与えるようなことがあってはならないという御指摘は私も全く同感であります。
  31. 浅井美幸

    ○浅井委員 「なだしお」の後方約一キロに「せとしお」というやはり自衛艦がいたわけですね。これは全然救助活動をしないでどこかへ行ってしまった。これでは海上自衛隊国民の生命と財産を守るという使命以前に、人間としての常識すら持ち合わせていないのではないかというふうに疑われてもしようがないと思います。  海上自衛隊はことしの五月以来既に七件もの事故を起こしております。自衛隊の組織内のひずみが問われています。最近では装備のハイテク化のために技術的な面が重視されて、海の男としての教育がなおざりにされているのではないか。もう一度自衛隊員に人命の重さやとうとさを徹底して教えなければ、国民の生命と財産を守り、国民から信頼される自衛隊にはならないと私は確信しますが、いわゆる再教育を含めてこの際お考えをいただけますか。簡単に御答弁をお願いします。
  32. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる人命尊重の思想というもの、これは今浅井委員再教育というお言葉をお使いになりましたが、再教育という言葉自体からくるニュアンスもございましょうが、そういう問題ではなく、何よりも人命尊重、これが第一義であるということは今後とも徹底して教育の指針としていきたい、このように考えております。
  33. 浅井美幸

    ○浅井委員 時間が限られておりますのでいろいろとやりとりはいたしませんが、もう一点お聞きしておきたいことは、今回の事故通報についてのおくれが指摘をされております。遭難信号を出さなかった、この点がまず第一点ございますが、通報の正確さ、迅速さ、こういう問題が幾つかございまして、このようなことでは一朝有事の際にどうなるのか極めて心配であります。自衛隊海上保安庁に対する報告が二十一分もかかったという点についてどう考えているのか。また、総理連絡があったのは事故発生後どれくらいの時間が経過していたのかも説明をお願いしたいと思います。  事故当日は総理を初め官房長官、官房副長官の三人とも東京はお留守であったふうでございますし、そのような状況の中で、連絡体制が不十分で結局事故発生から八時間も経過してやっと小渕長官瓦防衛庁長官、東山海幕長らの協議が官邸で行われた、こういう状況の中では、いわゆる一朝有事の際の対応というのは一体どうなっているのか、我が国の自衛隊の存在、こういうものについて機能するのだろうかという素朴な疑問が国民の中にもあるわけであります。いろいろな会合がございまして、総理もそれはお出かけにならなければならないだろうと思います。防衛庁長官も出かけなければならないと思います。その間も的確な指示ができるような体制であってこそ初めて防衛の役割というものが果たせると私は思うわけであります。今回のこの事件は、そういう緊急事態に対応できるような体制ではない、このような感を私は深くするわけであります。今回の事件と関連してきた問題でございますが、緊急事態に対応できないというこの問題から危機管理体制自体に問題があると指摘されておりますけれども総理はこの点についてどう考えておられるか伺いたいのであります。
  34. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 総理にお答えいただく前に事実関係を御報告いたします。  いろいろ新聞に報道されておりますが、今回の事件発生後、総理大臣秘書官にかなり早い段階で第一報が入りまして、午後四時三十分には官房長官に電話で御報告を申し上げました。官房長官よりは、直ちに内閣安保室長を担当として政府としての適切な措置、情報収集、事故状況についての続報、こういう御指示を四時半にちょうだいいたしております。総理大臣には午後五時、総理秘書官から同様趣旨の御報告を申し上げ、同様趣旨の人命尊重のための捜索、救難活動最優先、こういう御指示をちょうだいいたしております。その後第二報、五時二十分には遭難の概況、この報告が入っておりまして、官房長官よりは防衛庁海上保安庁に対し捜索救助活動に万全を期すよう指示がございまして、これの伝達を行う等、総理、官房長官に対する情報報告連絡は与えられた条件の中では適切に行われたものと考えております。
  35. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、海上保安庁への連絡が二十一分後であった、こういう御指摘もございました。今回のような民間船舶にかかわるような重大な事故においては、上級機関に連絡するとともに、直ちに海上保安庁に速報すべきであった、これは私もそのように考えます。  それから、私に対する連絡でございますが、今佐々室長からお答えをいたしたとおりでございます。ただし、その段階におきましては事故の詳細については、非常に正確な詳報とでも申しましょうか、そういう状態にはございませんでしたが、宿舎へ着きまして正確な整理をいたしまして帰京し、今おっしゃいました時間に私も官房長官防衛庁長官ともども総理官邸で協議をしたわけでございます。  私自身もいわゆる危機管理の問題につきましては、国会でも御議論をいただき、いろいろな角度から御議論をいただいておりますが、今次のことも十分参照いたしましてこれに万全を期さなきゃならぬ課題だと聞いております。少し古い話でございますけれども、何か事故が起こったといえば、車に乗っておればすぐラジオのスイッチを入れろとかあるいはテレビを見ろ、これは民主主義国家でございますから報道が迅速に行われるのは悪いことではないと思いますが、それが我々に対する通報よりも先になるではないかというような議論をしたことにつきましては、私も危機管理の重要性というものは十分承知して今後とも遺漏なきを期したい、このように考えます。
  36. 浅井美幸

    ○浅井委員 今回の事故に遭遇された方々はいずれも働き盛りの年代でございますので、家族の生活不安等もございますので、政府におきましても誠意を持ってこの補償問題については取り組んでもらいたいことを要望して、時間が参りましたので終わらせていただきます。
  37. 関谷勝嗣

    関谷委員長 河村勝君。
  38. 河村勝

    ○河村委員 まず初めに、今回の事故で亡くなられた方々並びに遺族方々に対しまして、民社党を代表して心から哀悼の意を表させていただきます。  総理にお伺いいたします。  事故原因究明責任の所在を明らかにするのには今後の調査、審判にまたなければなりませんのでかなり時日を要すると思います。しかし、そうした原因が明らかにならなくとも、責任の所在がわからなくとも、今後の事故再発防止のために、このような狭水道で起こった事故でありますから、これまでにも多くの問題を含んでいるわけでありますから、当然なすべきことがあるはずであるし、それと同時に、不幸にして事故発生をした場合に犠牲者を最小限度にとどめるために、これは主として今回の場合自衛隊の側にあるのではないかと思いますが、そうした措置政府としては速やかにとる責任があるのだと私は思いますが、総理はどうお考えでしょうか。
  39. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、対策本部といたしましても、東京湾等における航行安全対策についての緊急な指示をいたしておるところでございますが、今河村委員指摘がありましたように、事故原因究明と相まってということもさることながら、その原因究明とは別の緊急措置というものは政府責任において検討し実施体制をつくるべきだというお考えは、それを旨として私ども対応してまいりたいと思います。
  40. 河村勝

    ○河村委員 そこで、今回の事故が起こってから後の自衛隊のとった措置について、国民感情からいってどうしても今日まで納得できないところがあって、それでいろいろな批判がなされております。私どもも率直に言ってどうも納得しがたいところがあるように思われる。特に、先ほども話が ありましたけれども救助態勢のおくれあるいは緩慢さ、それに対する非常に強い批判があるのです。せっかく自衛隊は陸上の災害などの場合に災害出動で国民に非常な信頼感を得ている、それが今度の事故のようなことで国民の信頼を失うようなことになったらそれこそゆゆしい問題であります。  そこで、この自衛隊人命救助のやり方について、私もこれは報道だけで聞いているわけでありますけれども衝突をした際に後進をしつつ面かじをとったために、二、三百メーター後進をして離れて、それから戻ってきたために十数分を要して、そのために時期を失したというようなことのようでありますが、なるほど潜水艦の場合にはその特殊性からいって漏水防止というようなことがあるであろう、そのために総員配置につくというようなことがあり得ると思いますけれども、それにしても二、三百メーターのところをバックするのに十数分を要して、それで手おくれになったというのは納得しがたいのですね。  それから、新聞の写真等を見ましても、来てからでも何か総員が救助に挺身をしたという印象が全くないように見受けられる、私はそれを非常に懸念をしております。今度の政府の当面の措置、第一富士丸事故対策本部から出された措置を見ましても、その中の「艦艇部隊に対する海事法規等の巡回講習」という中に「シーマンシップについての講習」というのがわざわざ入っているのですね。しかし、海軍という言葉を使ってはいけないのかもしれませんが、これはもうおよそ常識として、軍人である前に船乗りであるというのが鉄則なのですね。我々、古い海軍にいた人間でもそういうことをまずしつけ教育としてたたき込まれた。  ところが、どうも今回の印象からいいますと、余り高度な技術の塊になってしまって、テクノロジーの塊になってしまって、船乗りであるよりも技術者になってしまって、本当の船乗りの精神を忘れてしまったのではないか。だから、こういう海難の際にはとにかく何をおいても人を助けるというのが船乗りの第一の使命であって、何をおいてもそれに挺身するというものでなければならない、それがどうも欠けているという印象はぬぐえないのですね、細かいいきさつは抜きにしましても。であればこそ、この当面の対策にも「シーマンシップについての講習」というようなことが入ってきたのではないかと私は思う。その点をもう一遍反省をして出直さないといけないと私は思うのですけれども総理は一体どうお考えになっていますか。
  41. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 御指摘がありましたように災害出動等、国民に信頼と感謝を持たれておるという自衛隊が、今度の事件によりましてその信頼が失われるようなことがあっては極めて遺憾である、同感で、私もそのように思います。それを具体的事例として、いわゆる河村委員のネービーでございますが、ネービーの持つシーマンシップということ、これが本部において特に文字にされたというところに私も一つの意義を感じておりました。石原本部長もいわゆるシーマンでございます。そういうことで、これを特記したということは、今の河村委員の御指摘なすったいろいろな感情的なものにこたえるためにも、それは今さらシーマンシップ、我々は知っているんだということがあるにいたしましても特記されたということは、それにこたえる一つ考え方じゃなかったのかなと私は思っております。したがいまして、今みずからの経験から、かつての旧軍ということを申し上げるわけじゃございませんが、いわばテクノクラートに堕して本来のシーマンシップというものが失われてはならぬ、この気持ちは私どもも十分理解し、そういう考え方に立ってこれからも指導していきたい、このように考えます。
  42. 河村勝

    ○河村委員 この救助態勢に対する対応として、さっきも話が出ましたけれども、遭難通報のやり方、私にとってはこれほど不可解なことはありません。救助態勢については、潜水艦の持ついろいろな制約等があったかもしれないけれども、この通報でまず潜水艦としてとった措置は「なだしお」から艦隊司令部、それから地方総監部、それから海上保安部でしょう。そのために二十一分かかるというような始末でありますね。これは間違いないのだと思います。今後の海難の救助考えたら、なぜ直接海上保安部にやらないのか。  さらに私は不可解なのは、遭難信号ですね。当然遭難信号を打ち上げる、あるいは緊急の無線があるのですから、軍用の無線だけではなくて一般と共用される周波数を持った無線を持っているのですから、それで遭難信号を発して可能な限り周辺のすべての船に対して呼びかけるというのは海難の常識ですよね。それを聞いてかなり遠いところからでもみんな来て救難に当たるというのが常識なんです。ところがそれをやっておらない。私はテレビを見ていて一番驚いたのは、なぜ遭難信号を発しなかったかという問いに対して、潜水艦隊司令官がお答えできません、返事ができませんと言って説明を拒否しているのですね。これに至っては本当に理解の限度を超えておりまして、そこに何らかの隠密体質といいますか特権意識とかそういうものがあるのではないかと思わざるを得ないのですね。これだけは私はわからないので、ぜひこの際伺っておきたい。総理がもしお答えできなかったらこの点は防衛庁長官でも結構です。
  43. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  今回の事故におきまして、事故を起こしました「なだしお」が、先生御指摘のように上級機関及び僚艦に連絡をいたしまして、そこから海上保安庁連絡が行われましたために二十分程度の時間を要したことは事実でございます。また付近の航行船舶に対する通報は行わなかったものと承知いたしております。  このような措置が当事者艦長にはそれなりの情勢判断があったのかと思われますけれども、今回のこのような民間船舶にかかわります重大な事故につきましては、上級機関に連絡するとともに直ちに海上保安庁に速報すべきであり、また付近航行中の民間船舶等にも了知し得るような通信手段をとるべきであったと考えております。この点につきましては、今回のとうといたくさんの犠牲を出しました事件から得るところ、非常に重い教訓がございまして、その教訓の一つでございまして、私どもは今後事故発生に際しまして臨機応変、適時適切な対策がとり得るように早急にその対策を検討していきたいと考えております。
  44. 河村勝

    ○河村委員 総理、こういうことなのです。  今答えがなかったけれども潜水艦隊司令官はその理由を説明することを拒否しているのです。どうお考えです。—時間の制約のある質問時間ですから細かいことは後の時間でさらに究明いたしますけれども総理、一体これはどうお考えですか。
  45. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず最初の問題につきましては、先ほどお答えがあり、また私からもお答え申し上げました、いわゆる上級機関に連絡するとともに直ちにこの海上保安庁連絡すべきだ、これは今度のことからくる反省でございます。  それから、二番目の問題につきましては、実は事実関係を私は存じておりません。その制約上何があるかということを存じておりませんので、正確なお答えをする自信はございませんが、河村委員のお感じになったような感じを与えておるとすれば、それはまことに遺憾なことだというふうに思います。
  46. 瓦力

    ○瓦国務大臣 大変失礼いたしました。追って私から答弁しなければならない、また先生から質問を承らなければならない点がございましたので、手控えをいたしまして失礼をいたしました。  ただいま総理からお答えをいただきましたが、上級機関に対します連絡という隊の特性もございますが、また加えまして潜水艦隊司令官が信号弾につきましてその答弁ができ得なかった、このことに触れまして申し上げるわけでございますが、その近くに「ちとせ」初め艦船がおりましたこと、さようなことですぐ救助態勢に入ること、これらのことが念頭にあったかと思うわけでございまして、これらのことは私は適切なことではなか ったと思うわけであります。  今ほど総理からもお答えがありましたように、また我々も今後取り組んでまいるわけでありますが、これらの問題を反省いたしまして、民間船舶にかかわるような重大な事故につきましては、直ちに海上保安庁等に速報すべきであり、なおかつあらゆる手段を講じながら人命救助のためにその手だてを講ずべきである、かように考えるものでございます。当時の状況からいたしまして一概にこの措置は、今振り返ってみますと反省すべき点もございますので、これらのことを踏まえて今後の対応考えてまいりたいと考えておるところでございます。
  47. 河村勝

    ○河村委員 どうもその御説明では納得できませんけれども、時間がありませんので……。しかし、この問題で時間をとってしまって肝心なことを一つだけ残してしまったので、そのことだけ簡潔にお尋ねしますので御返事をいただきたいと思います。  この浦賀水道航路、中ノ瀬航路は、前々から大変な船舶ふくそうで危険なところで、そのために海上交通センターというものを五十四年につくって、それで監視レーダーでコントロールしているのですね。ところが、自衛艦はその枠外になっているのです。ですから少なくとも平時の艦隊行動ぐらいは、浦賀水道横須賀に対する出入港、とにかく反対方向から船列を横断して、航路を横断するんですから、そのぐらいのものは当然レーダーのコントロールに入れるべきであると思う。それが一つ。  それと、こうしたふくそうする船列を横断すること自体が避けられるものなら避けるべきなんで、かつて、横断をしなくても横須賀に入ろうと思えば入れる、浦賀水道を直行して、北進して、沿岸を迂回してくれば、そうすれば横須賀浦賀水道航路で横断しなくても危険を避けて入れる、そういう話が出たんですけれども、当時は石油ショックの後で石油の値段が非常に高くて、普通の船は経費がかかるというような理由もあって繰り延べになった経緯があるんです。この問題、全体として取り上げるべきだと思いますけれども、少なくとも艦隊だけは、自衛艦だけは浦賀水道航路の船列を横断するのではなくて、迂回して入るぐらいのことを率先してやるべきだと私は考えておるので、時間が来ましたので簡潔に総理のお答えを聞いて質問を終わりたいと思います。
  48. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 海上交通センターとの情報交換というのも先般の当面の措置のところへ対策本部として決めたわけでございますが、具体的な河村委員の提案、私にはその知識はございませんが、十分検討させていただきます。
  49. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  50. 関谷勝嗣

    関谷委員長 中路雅弘君。
  51. 中路雅弘

    ○中路委員 最初に私は、党を代表して、事故で亡くなられた方々、また遺族の皆さんに、心からの哀悼の意を表したいと思います。  私は、衝突事故が起きた直後の二十三日夜から二十四日、現地横須賀に参りまして、衝突事故救助の活動の状況、また海上自衛隊地方総監部海上保安部等も訪ねまして、関係者からいろいろ事情もお聞きをしました。横須賀沖の現場に船で出かけまして理地も調査をしてまいりました。この痛ましい事故責任が、私も調査もいたしましたけれども、何よりも、海上衝突予防法からいっても、早くから第一富士丸を右の方に見ていた「なだしお」が、これは法律でいえば義務艦、できるだけ早く回避の処置をとらなければならない義務艦。富士丸の方は直進をしていくわけですから権利船。それが艦長の証言でも、直進をする、衝突直前になって右へ曲がるということですから、この直接の原因潜水艦のこうした直進した行動、ここにあったということは明白ですが、特に私は、事故直後からの自衛隊対応、大変無責任な、不誠実な態度に終始をしている。  とりわけ許しがたいのは人命軽視の問題、ここに今国民的な感情、怒りも集中していると思うのです。多くの証言もお聞きをしましたが、海中にほうり出された、そして必死に救助を求める人々に対してこれを放置する。新聞でも報道されていましたが、余り反応がないので、アメリカの潜水艦かと思ってヘルプミーと声をかけたという証言も報道されています。自衛隊最高の総括指揮監督者でもある総理のこの問題についての責任を最初にお聞きしたいと思います。
  52. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は、そのつかさつかさにあって、この海上自衛隊の皆さんがとられた措置というものは法律、規則に基づいて正確に行われておるもの、このように確信をいたしております。いろいろな事態がございますが、今御指摘になりましたこの新聞記事等を私も読ませていただいたわけでございます。その部署部署は異なるにしても、いやしくも防衛庁自衛隊というものは国民生命財産の安全を守るという大義にすべての行動の原点が存在するものである、このように私は考えております。
  53. 中路雅弘

    ○中路委員 海事専門の関係者でも、こういう衝突事故では五分間の初期行動が勝負だと言われているのですね、油の海水を飲んでしまうわけですし、あるいは体が弱る、おぼれる、そういう溺死を次々するわけですから。後の質問で取り上げますけれども、こうした初期において、通報も二十一分かかってからしか通報ができない、信号施設も持っていながらこれも使わない。子供や婦人を含んだ多数の民間人犠牲にしたこうした事故について、私は心から糾弾をしたいと思うわけです。  私がきょう取り上げますのは、先ほど資料で配られました地図は本当にずさんなわかりにくいものですから、色刷りで浦賀水道の周辺の事実を示しながらお話ししたいのです。  今回の事故の起きた東京湾浦賀水道は、東京港、横浜港、京葉の工業地帯、一日の交通量が八百隻という世界有数の海路です。その東京湾の入り口に、また米軍自衛隊の最大級の海軍の基地がある。そして、米軍自衛隊艦船横須賀に入る場合はこの浦賀水道をみんな北に上がってくるわけですね。だから、この横須賀港に入る場合は全部浦賀水道を横切らなければならない。出るときは割り込んでいくわけですが、入るときは全部横切らなければならないのですね。これが基地と浦賀水道との関係なんです。したがって、この湾から出ていく、南下する民間船舶と必ずここで交差するわけです。これが浦賀水道状況なんですね。途中で横切って西の方に転針しなければ艦船は港へ入れない。したがってこの位置から言いますと、いつも一般的には米軍自衛隊艦船の方が絶えず義務艦になるわけなんです。衝突予防法ですと、右の方に船を見た方が義務艦になるわけです。衝突の危険があると思えば回避行動を必ずこちらがとらなければならない。だからこの浦賀水道横須賀の湾の基地の関係から言えば、自衛艦と米軍艦船の方がいつも回避をしなければならない、そういう位置関係にあるのです。  私はこの問題で、総理ごらんになったかもわかりませんけれども、かつて十五年間巡視艇の船長をやり、そしてその後海難事故の担当官であった、七年やってまいった、公害の専門家である田尻宗昭さんが、最近岩波書店から出ている「公害研究」という雑誌で、米軍自衛隊艦船横須賀入港における危険性への対策の確立という具体的な提案を行っておられます。この中で今私が取り上げたこの位置関係の問題を特に強調されているわけです。そこで田尻さんが強調しているのは、とりわけ艦隊ですね。一隻ずつ入るのではなくて、今度の場合も護衛艦潜水艦が艦隊を組んで航行してきた。この艦隊行動の場合は、艦隊行動として縛られますから一隻ずつの自由な行動というわけにいかない。だからこの艦隊行動の場合は今までしばしば強引にここを横切ってきているということを指摘されているわけです。ここに衝突事故発生する一番の危険があるんだ、だからこうした浦賀水道とか湾内における少なくとも艦隊行動はやめるべきだ、中止すべきだということを具体的に事例を挙げて提起をされています。私は、この航路からいって、今の状況そしてここで艦隊行動が続く限りいつもこうした危険が伴うというふ うに思うわけですけれども、この公害の雑誌では詳しくそうした事情について述べておられます。  先ほど同僚委員から説明がありました、北側に一遍上がって入ってくるということも一つの提案でされておられますけれども、私は、ここに基地があるということ、存在そのものが根本的には問題だと思いますけれども、当面の対策として少なくとも湾内で艦隊行動をする、これは取りやめるべきだと思います、こうした位置関係からいっても。いかがですか。
  54. 瓦力

    ○瓦国務大臣 総理の先にお答えをいたしますが、浦賀水道から確かに五番ブイを越えた地点で横須賀港に向かうわけでありますが、一定方向に向かって艦艇が移動をいたす場合、それを見ますと、いわゆる艦隊という御判断ができようかと思いますが、別段艦隊を組むということは湾内においては考えておる措置ではございませんし、とっておる措置ではございませんで、それぞれが航路の安全を確保するために順次移動するわけでございますので、今御指摘のような、艦隊を組んで湾内を移動するということはないわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  55. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私に必ずしも専門的な知識はございませんが、ただいま防衛庁長官がお答えしたとおりである、このように理解しております。
  56. 中路雅弘

    ○中路委員 防衛庁の説明でも、編隊航行をやっていたということを認めているのですよ。護衛艦八隻、潜水艦二隻で、後から二番目が事故を起こした潜水艦なんですね。その前が護衛艦の「ちとせ」なんです。それでどういう編隊で入ってきたかということを説明しているのです。防衛庁長官、いいかげんですよ。私はこういう編隊航行をやめろということを言っているのです。編隊行動で入ってきたということは事実なんです。
  57. 瓦力

    ○瓦国務大臣 お答えいたします。  これは、展示訓練からの帰途でございまして、それぞれの艦艇が帰港するわけでございますが、言ってみますれば、展示訓練を終えて帰るわけでございますので、同一方向になるわけでございますし、これを見て編隊を組むという形に見えるかもわかりませんが、湾内におきましての航行につきましては安全を確保してまいることが最も肝要なことでございますから、先ほどお答えいたしましたように、それは艦隊、かようなことではないということを御理解をいただきたいということであります。
  58. 中路雅弘

    ○中路委員 この潜水艦「なだしお」の艦長が、事故が起きたときに通報したのは「ちとせ」でしょう。その次に通報したのが「ちとせ」から旗艦の「くらま」じゃないですか。編隊航行をやっているから、この事故が起きたときに、その編隊行動をやっている上級に、それから潜水艦隊司令官に連絡が行っているのでしょう。編隊行動をやっているから、こうして順番にその編隊行動の指揮官に連絡をしているのですよ。いいかげんなことを言ってはいけないですよ。  もう一つ、私は例を挙げますけれども、この浦賀水道米軍艦船の場合、同じなんですね、全部横切るわけです。これは例えば例で挙げますと、かつて八五年の十二月に米軍のフリゲート艦ロックウッドとフィリピンの貨物船が衝突しました。これも今の同じところなんですね。米軍艦船は、この浦賀水道を南下中の一般船があっても、権利船があっても、どんどん横切って行ってしまうんですね。そしてこうした事故を起こしていますから、当時この問題については海上保安庁が捜査をするというので、このロックウッドを業務上過失往来危険罪で取り調べようとしたのですけれども米軍はこれに出頭しないで、事故処理も海難審判も行われないままになっているのですよ。少なくとも海上衝突予防法に基づいた航行については、米軍艦船であっても日本のこうした法律をここでは必ず遵守させる、従わせる。自衛隊の方は少なくとも艦隊の航行は中止をする、そしてやめる、米軍艦船の方は日本のこうした衝突予防法の法律に従うということがなければ、今の軍事優先のこの体制は変えられないのですよ。民間船舶航行の安全は保障できないのです。  外務省はおられませんけれども防衛庁長官か、運輸大臣総理か、いかがでしょうか。米軍艦船についても、ここを横切る場合は日本の衝突予防法を厳格に遵守させるということをひとつ明確にしてほしい。
  59. 日吉章

    ○日吉政府委員 担当は外務省でございますから外務省からお答えいただくのが筋かと思いますが、御出席でないようでございますので、私が間接的に外務省から了知いたしている点を御紹介させていただきます。したがいまして、必ずしも正確でない場合にはお許しをいただきたいと思います。  外務省といたしましても、航路の安全を図るという意味では、米艦、自衛艦、日本の民間船舶、いずれも同じでございますので、航路の安全航行のためには、絶えずその趣旨を徹底させまして、その趣旨に沿った形で航行するように常時米側の方にコンタクトをとり、要請をしているというふうに了知いたしております。
  60. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 米国艦船横須賀港入港に際しましても、海上衝突予防法の適用がございまして、米国艦船もこれに従うということでございます。さらに、この地域につきましては、東京湾の特殊性をも考えまして、米国軍艦が横須賀に出入港する際には、巨大船等の通報については、対米軍専用テレタイプ回線で本庁経由で海上交通センターへの通報をするように申し合わせをしているところでございます。
  61. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですので終わりますが、今の事件ですね、従わせるといっても海難審判もやれないじゃないですか。取り調べもできないままどうして従わせるのですか。これはひとつ厳格にやっていただきたい。  最後に一問だけ。東山海幕長の問題ですが、いろいろ海幕長は責任逃れの態度をとっていますが、昨日ですか、記者会見で、海難審判庁の判定が出るまで責任者は皆辞職させないということを言っています。これは大変重要な問題だと私は思うのです。自衛隊法によっても、隊員の任免、懲戒、人事管理の権限はだれにあるのですか。
  62. 依田智治

    ○依田政府委員 人事管理の責任防衛庁長官にあるわけでございます。海上幕僚長発言関係は……
  63. 中路雅弘

    ○中路委員 防衛庁長官にあるわけですから。シビリアンコントロールなんて全くやってないじゃないですか。幕僚長がやめさせるのはいつだとか言っている。これはけしからぬですよ。こうした幕僚長を罷免しなければだめですよ。シビリアンコントロールにはなっていない。これは強く主張して、終わります。
  64. 関谷勝嗣

  65. 亀井善之

    亀井(善)委員 引き続いて御質問をいたしたいと思います。  まず防衛庁に、事故直後における海上自衛隊がとった通報等先ほど来いろいろ御指摘もあったわけでございますが、事故発生以来の海上自衛隊通報連絡や公表ぶりを見ると、自衛隊にとって基本的に重要な情報の伝達、整合性に問題があるのではないか、こういう憂慮せざるを得ない問題が指摘をされるわけです。有事における自衛隊の役割にも絡む重要な問題ですが、緊急時における通報連絡体制の現状はどうなのか、何か手順というものがあるのかどうか、また、これが今回どう機能したのか。先ほど来、無線電話で潜水艦司令、地方総監、それから海上保安部に、こういう二十一分というような問題の指摘もございました。あるいは「なだしお」は緊急周波数における遭難通信系も補充しておったわけでございますが、これが使われていない。こういう通報連絡の問題について御答弁をいただきたいと思います。
  66. 瓦力

    ○瓦国務大臣 私から御質問に答える前に、今回の事故につきまして、民間船舶との衝突事故であり、乗客、乗員の方々多数のとうとい生命を失うという極めてざんきにたえない事件でございまして、心から遺憾の意を表しますと同時に、多数のとうとい生命をなくされた方々に心からなる哀悼の意を表させていただきたいと思うわけでありま す。また加えて、御入院方々の一刻も早い回復を祈念するものでございますし、各方面に多大なる御心配をおかけいたしておりますことも、この席をかりましておわびを申し上げさせていただきたいと思うわけであります。  ただいま亀井委員からの御質問に答えさせていただくわけでありますが、海上自衛隊艦船と各基地及び各艦船との間では固有の通信系が整備されておるわけであります。かつ、今回の場合、事故現場は横須賀基地に近いわけでございますし、さらに近くに自衛艦もおりましたので、このような海上自衛隊の通常の通信系によることが確実に連絡がつき救助態勢がとれる、かように判断したものでございます。  なお、その間、御指摘のような疑問を提起いたしておりますことにつきましては政府委員より答弁いたさせますが、今回のような民間船舶にかかわるような重大な事故におきましては、上級機関に連絡するということは当然でありますけれども、直ちに海上保安庁に速報すべきであった、かように考えておるわけであります。  今御指摘の通信機関等の問題につきまして、政府委員より答弁をさせたいと思っております。
  67. 日吉章

    ○日吉政府委員 お尋ねは、事故発生いたしました場合、その事故概要等についての報告に関する手順のようなものが防衛庁内部で定められているのかどうかということであったかと思います。  これにつきましては、自衛隊の性格上、もろもろの事態に対処し得るようにいろいろな手順といいますか内部の取り決めがございますが、その中の一部といたしまして、艦船事故発生いたしましたときの連絡の方法は定めてございます。それによりますれば、上級機関、さらには最寄りの僚艦、最寄りの基地、さらに要すれば関係官庁等に通報しなければならないことになっております。なお、通報の内容につきましては、事故の概要を詳細に報告するようにその報告すべき事項が定められてございます。
  68. 亀井善之

    亀井(善)委員 時間の関係がございますので、まだこの問題につきましてもいろいろ御質問したい点もあるわけでございますが、ぜひこの反省、こういう中で今後の問題等々につきましても十分なる取り扱いをお願い申し上げる次第でございます。  次に、衝突に至るまでの両船の航法上の関係についてお尋ねをいたしたいと思います。  今回の潜水艦「なだしお」と第一富士丸事故に関する海上衝突予防法の航法準則はどのようになっておったのか、このことについてお伺いしたいと思います。
  69. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  今回の事故に関する海上衝突予防法の航法準則でございますが、この適用関係が問題になりますのは主として同法の十五条、十六条及び十七条かと存じます。  それに関して御説明申し上げますが、一般に動力船の二隻が互いに相手の進路を横切る場合のルールとしては次のように決められております。  まず十五条では、二隻の船舶のうち相手方を右側に見る船舶は相手船の進路を避けなければならない。そしてその場合の避け方は、進路を変えて相手船の船尾方向に避けても、減速、停止しても、あるいは相手の船をやり過ごすなど、そのような方法で行うことになっております。  また十六条におきましては、この避航動作はできるだけ早期に、かつ大幅に行う必要があるということが定められております。  また、さらに十七条一項におきまして、この二隻の船舶のうち相手方を左側に見る船舶は、その針路と速力を保持しておかなければならないということが規定されております。さらに十七条の二項では、もし相手方を右側に見る船舶が明らかに避航動作をとっていない場合には、相手方を左側に見る船舶は、相手との距離が間近に接近したくても、衝突を避けるための動作をとることができるということになっておりますが、ただし、やむを得ない場合を除き左側に針路を転じることはできないということでございます。最後に、十七条の三項におきまして、両船が間近に接近した時点で相手方を左側に見る船舶は、このままでは相手船が避航動作をとっても衝突すると判断するときには、衝突を避けるためにあらゆる最善の方策を講じなければならないということが規定されておる次第でございます。
  70. 亀井善之

    亀井(善)委員 次に、衝突直後の潜水艦の救難活動についてお伺いをしたいと思います。  海上自衛隊幕僚監部の発表によれば、最善の措置だった、こう主張しておられます。西廣防衛事務次官は、助けを求める人たちを飛び込んででも助けてほしかった、こう語っておられます。瓦防衛庁長官も、自衛官たる者常にそうした心意気を持っていることが大切だ、こう述べておられます。認識対応のずれが際立っているわけでございます。また、海の関係者の中から潜水艦の救難活動に批判的な声が上がってもおります。潜水艦の救難活動として実際どうであったのか、問題はなかったのか、この点について伺いたいと思います。
  71. 日吉章

    ○日吉政府委員 まず今日の救難措置に関連いたしまして、防衛庁長官並びに防衛事務次官の発言を御引用になられたわけでございますが、より具体的にこれについて発言をいたしておりますのは防衛事務次官でございますが、私ども救難に当たりました諸艦艇からの報告を受けました内容は何名救助したというような内容でございまして、当初通報を受けました状態におきましては、いかなる状況のもとに、いかなる方法によって何名を救助したかという報告は受けておらなかったわけでございます。  そういう前提に立ちまして西廣防衛事務次官は、一般のいろいろな御意見等も耳にしているものでございますから、自衛隊の艦艇がどのような行動をとったかということは了知しない上で、一般論といたしまして、かつ個人的な見解といたしまして、自衛隊というのはいざというときに身命を賭して国民、国家、国土を守るのが任務であるから、仮に潜水艦に救命胴衣の幾つかでもあるならば、そういったものをつけて飛び込んでくれる、これがあらまほしき姿だ、こういうふうに申し上げたのが事実でございます。ところが、後刻報告を受けましたところ、具体的に二名の乗組員が海中に飛び込み救助いたしておるということがわかったわけでございます。  ところで、具体的にどのような行動を行ったかという点を御説明申し上げたいと思います。  事故発生の当事者でございます「なだしお」は直ちにこのような行動を起こしております。艦内の態勢を、艦長が直ちに溺者救助態勢というものをとりまして、救助要員、ゴムボートを甲板に上げるとともに、約三千メートル前方を航行しておりました僚艦「ちとせ」に救助を依頼いたしております。ところが、残念なことに、事故発生いたします前にこの「なだしお」は、事故を避けんがために機関停止、面かじいっぱいの後、後進いっぱいという形をとっておりまして、おおむね停止したような状態で衝突をしたわけでございます。直ちに機関を停止いたしましたけれども、後進いっぱいの惰力が働いておりまして、それで二、三百メートル後ろに後退してしまった、事故発生現場から後退してしまったわけでございます。ところが、通常、遭難者を救助いたしますときには、大型の艦艇は、スクリューその他の問題がございますので、事故現場に接近することは非常に危険でございます。したがって、通常の場合にはそこから内火艇をおろしまして、非常に敏速に小回りのききます内火艇で救助をいたしているわけでございます。  今回非常にとうとい御協力をいただきました小型タンカー第三松和丸も、やはり近くから内火艇をおろして救助に当たっていただいております。ところが、残念ながら潜水艦は、水中におきます自己の事故あるいは自己が攻撃を受けた場合の救助用具等しか入っておりませんので、内火艇がございません。したがいまして、潜水艦みずからが現場に到達しなければならないわけでございますが、これは通常の速力を出しますと泳いでおられる方々に非常に危険でございます。したがいましで、超鈍足といいますか、極めて緩やかに接近を していったわけでございます。その接近の過程におきまして二名の方を見つけまして、お一人の方にはブイを投げ、浮き輪を投げて救助いたしました。それからお一人の方は乗組員が海中に飛び込んで救助いたしました。それから残りお一人の方はゴムボートで救助したということでございます。  そういうことでございまして、これは本当に最善、これ以上のことができなかったのかどうかということは確信できませんけれども、主観的には艦員たちは最善の努力をして救助に当たったものと私たちは信じたいと思っております。
  72. 亀井善之

    亀井(善)委員 最後に、第一富士丸に対する海事法の適用の問題。  船舶の構造、独航船を改装して、十八年という若干老朽船でもあるわけでございます。これらの問題あるいは定員の問題等が指摘をされております。この第一富士丸に対する海事法上の問題、さらに先ほどから指摘がありました東京湾海上交通センターの管制について、指摘のとおり浦賀水道航行安全あるいは遊漁船航行安全を図るために今後どのような措置をお考えなのか。あるいは東京湾には第一から第三までの海堡があり、従来から船舶安全航行に障害があるのでその撤去が計画されていたがまだ実現をしていない、こういう問題もあるわけでございまして、早急に撤去すべきではなかろうか、こんなことも考えるわけでございます。このことにつきまして御答弁をいただきたいと思います。
  73. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 まず、東京湾における航行安全を図るための現在とっておる措置並びに今後どういう対策をとるかという点について御説明申し上げたいと思います。  現在、海上交通センターにおきましてはレーダーの映像と船舶交通に関する各種の情報をコンピューターで処理いたしまして、その情報をもとにいたしまして無線電話等の通信手段を利用いたしまして巨大船の通行予定時間あるいは漁労船の操業状況、こういった情報を提供いたしますとともに、船舶からの要請に基づきましてその船舶の船位であるとか他船の動静などの情報を提供いたしております。また、さらに衝突等の危険が予想される場合には、危険回避のための注意喚起を行っているところでございます。また、海上交通安全法に基づきまして、巨大船等の航路通報を受理いたしますとともに管制計画を策定し、航路入航予定時刻の変更、進路警戒船の配備等の指示、勧告を行っておるところでございます。そして今後の対策といたしましては、東京湾海上交通センターの業務対象の拡大について検討をいたしたいと考えております。  また、先ほど来当面の措置ということで御説明申し上げましたけれども、このたびの事故にかんがみまして、東京湾船舶交通のふくそうする海域におきます船舶を特に対象といたしまして、航行の安全に関する集中指導というものを関係機関と協議しながら実施いたしたいと考えております。さらに遊漁船安全対策につきましては、水産庁といったような関係の機関とも協議をいたしまして、事業者団体への加入を促進し、それによって安全指導を効果的に行いたいというふうに考えております。
  74. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 第一富士丸昭和四十五年四月に漁船として建造されたものでございますけれども昭和五十八年十二月に遊漁船に改造され、その時点で行われました定期検査におきまして、船舶安全法上旅客船としての復原性、救命設備、構造等の基準に適合していることが確認されております。また、その後も引き続き毎年検査が行われておりまして、最近では昨年の十二月十五日、定期検査に合格しております。  また、同船の船舶職員の資格につきましては、船舶職員法上、甲板部は船長としての五級海技士、機関部は機関長としての五級海技士の計二名の職員の配乗が必要でございますが、本船には三級海技資格を有する船長及び三級海技資格を有する機関長が乗り組んでおりますので、船舶職員法上問題はなかったものと考えております。
  75. 亀井善之

    亀井(善)委員 今東京湾における第一ないし第三海堡の撤去の問題についてお答えがなかったわけでございますが、これらの問題について。
  76. 奥山文雄

    ○奥山政府委員 御案内のように、湾口には第一から第三までの人工の海堡がございまして、このうち特に第三海堡につきましては関東大震災の際に崩壊いたしまして、全体が暗礁の状況になっているというのが現状でございます。殊にこれが浦賀水道に接しておるということからしまして大変危険な状況にあるところでございます。したがいまして、この撤去につきましては、昭和五十三年四月に港湾法に基づく開発保全航路という指定をいたしまして、撤去の計画をつくって鋭意推進してまいるということでございました。  以来、技術的に大変難しい面もございますので、そういった調査を進め、一方、並行いたしまして漁業関係者との調整を進めてまいったところでございますが、残念ながらまだ同意に至ってない状況にございます。したがいまして、本格的な工事に着工できない状況にございますが、今後さらにこの調整を強力に進めてまいりまして、できるだけ早く着工できるようにしてまいりたい、さように考えている次第でございます。
  77. 亀井善之

    亀井(善)委員 どうもありがとうございました。
  78. 関谷勝嗣

  79. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今回の事故でたくさんの死者が出ました。いまだに行方不明の方もおられます。そうした皆さんに心からの御冥福を祈りながら、同時に、幸いにして救助された人たちの中にも、けが人もおりますし、まさに心身にショックを受けていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるわけであります。そういう立場考えながら、ぜひこの問題が真相が明らかになりながら、同時に対策が具体的に進むこと、そして補償の手だてなどについても政府の誠意のある態度を要望しながら質問をさせていただきたいと思います。  最初に、これは運輸大臣かあるいは海上保安庁長官にお伺いをしたいと思うのですが、私、今度の事故が起こったときにとっさに思ったことがございます。それは、一九八五年の十二月十日十九時二十六分、今度の衝突地点とほとんど同じところで、御存じのようにアメリカのフリゲート艦ロックウッドとフィリピンの貨物船が衝突をいたしました。この事例は、浦賀水道を南下中の貨物船、これは海上交通安全法のいわば権利船でございます。それが、義務艦であるロックウッドが横切っていくというところで衝突を起こした事件であります。この事件と今回の事件というのは非常に類似をしております。海上保安部は、この事件はロックウッド側を業務上過失往来危険罪などの疑いで調べようとしましたけれども米軍はこれに応じないで、出頭しないので、事件処理がいまだに進んでおりません。海難審判にも出てきません。この処理は一体どうなっているのか、そして今後どのような形で事件の処理をなさるつもりなのか、お答えをいただきたいと思います。
  80. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 昭和六十年十二月十日に起こりましたフィリピンの貨物船サント・ニーノR号と、横須賀港入港のために同航路を横切ろうとしておりました米国フリゲート艦ロックウッド号との衝突事件につきましては、海上保安庁におきまして捜査をいたしたところでございますが、ただいま先生のお話にもございましたように、この法規の適用関係につきましては、国際法上の関係もございまして、必ずしも十分捜査が進んでおるわけではございません。ただ、この事故を含めまして、米国艦船との航行の安全の問題につきましては、現在、海上交通センターに対しまして米軍から米軍艦船航行について通報をするようにとの申し合わせを海上保安庁米側との間でいたしておりまして、米側に対しましてその励行をするように申しているところでございまして、現在までのところ、米国側としてもほぼこの通報を行っているというふうに承知しております。
  81. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 山田さん、これからのことを聞いているのじゃないのです。この事件の処理がどうなっているか。例えば外務省を含めて、アメリカが 出てこない、米軍といえども治外法権があるわけじゃないのですから、その辺のきちんとしたけじめをつけておかないと、今後もさまざまな問題が起きる心配がある。その点についてもうちょっとしっかりした答弁をしていただきたい。
  82. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 米艦船につきましては処分がまだ未定でございまして、今後とも関係機関とも連絡をとりながら、米艦船について処分方について調整を図りたいと思います。
  83. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 処分について調整を図ってまいりたい、こう言うのです。海難審判庁の作業ができないわけですから、処分について調整をいたしてまいりますじゃ答弁にならぬと私は思うのです。これはいかぬです、こんなことでは。
  84. 石原慎太郎

    石原国務大臣 保安庁は海の警察でございまして、警察が強さに弱く、弱きに強いのでは困ります。保安庁のこけんにかけましても、外務省を通じて、これから相手が米軍であろうと自衛隊であろうと、我々は完全に職務を果たしていくように努力をいたします。
  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私がなぜそのことを言ったかというと、今のロックウッドの事件を教訓にしていれば今度のような事件はあるいは避けられたかもしれないという思いが実はあるからなんです。  率直に言いますと、例えば海上交通安全法を完全に守らせていく、あるいは軍用艦、今石原大臣が言われましたけれども、それは米軍といえども、自衛艦に対しても、これに違反することは許さないということを法律にきちんと明記する、このくらいの態度が私は必要だと思うのですが、これは海上保安庁長官、どうですか。
  86. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  米国艦船についての捜査につきましては、先ほど来申し上げましたけれども、現在まだ未起訴でございまして、これは米国艦船が取り調べに応じていただけないためでございまして、今後ともなお取り調べに応じていただけるよう説得に努めるつもりでございます。  なお、この米国艦船に関する安全航行の問題につきましては、私どもとしては、海上交通センターへの通報、こちらからの情報提供等をさらに今後強化いたしまして安全の確保を図りたいというふうに考えております。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私が法律に明記しろと言った意味は、つまり今のように海難審判にも出てこない、そして時間がいたずらに過ぎている。まごまごしていれば、これは時効になることはないんでしょうけれども責任の所在が極めてあいまいな形で始末をされてしまう。これはフィリピンの船だということがあるいはあるのかもしれない、それじゃまずいのです。それは運輸大臣がおっしゃるとおりです。そういう点でも私は法律の中にそのことを明記する必要があると思う。  それから、瓦長官、さっき編隊航行はやらないとおっしゃった、やってないとおっしゃった。実態としてやはりそういうことになっているケースが間々あるのです。私も実は東京湾、選挙区ですから、よくわかります。何回か中を船でも歩いたし視察もしました。実際問題としてそういうことがあるのです。だから、浦賀水道へ入るときにばらばらにして入ってくるというふうな仕組みにしないことには、そこのけそこのけ軍艦が通ると言った人がいますけれども、ずっと入ってくると漁船どころかタンカーまで大変な危険を感じますよ。これは石原大臣一番わかっていると思う。そういう点では編隊なら編隊航行をやめさせるということもきちんと法律で明らかにするということが必要だと思うけれども、いかがですか。その努力をするくらいのことを答えたらどうですか。
  88. 瓦力

    ○瓦国務大臣 岩垂委員にお答えいたします。  湾内航行につきましては船舶は十分注意してまいらなければならないわけでありますが、わけても東京湾内の航路を確保してまいるということは、周辺を航行する船舶に関心を払わざるを得ない環境にあることは実は委員指摘のとおりでありまして、湾内の安全航行確保するために自衛艦は編隊を組むというそういうことはとっておらないわけでありますが、結果におきまして一定方向を向いて、また一定間隔をもって移動しておるということが編隊と、かようにとられることは私は否定できないと思うわけであります。よって、航行のあり方につきましては、安全を確保してまいる、こういう観点から十分検討を要する課題である、このことを御答弁さしていただきます。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今回の事件に関連をいたしまして具体的にお伺いをしてまいりたいと思いますが、海上保安庁に今日までの捜査の経過についてお尋ねをしておきたいと思うのですけれども、容疑は過失往来妨害、業務上過失致死罪というふうに考えてよろしゅうございますか。
  90. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 業務上過失致死及び往来危険罪の容疑で現在捜査を行っております。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そこで、新聞やテレビの報道を丹念に私も調べてみたのですが、関係者の証言によると、潜水艦「なだしお」が浦賀水道を横切って一般海域に出たところで、つまり第五ブイを通り過ぎたところからちょっと来たところで右前方に釣り船を確認した、こうなっています。  さっき山田さんが法律を説明いたしました。海上衝突予防法、この法律を私も読んでみますと、今条文を言いませんけれども、相手の進路を避けなくてはならない、つまり避航船という義務をここで負っています。だとすれば、釣り船の前を突っ切ろうとした「なだしお」の判断というのはやはり問題があったと私は言わざるを得ないと思うのです。これは法律のとおりに読みますが、山田さん、その点そういう認識でよろしゅうございますか。
  92. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 海上衝突予防法におきましては、条文におきまして避航船あるいは保持船の関係を規定しておりますが、これはまず、衝突予防法におきましては、衝突のおそれがある場合において、しかも二つの動力船が、一方の動力船が他方の動力船の進路を妨げようとする場合において、相手船を右側に見る船舶は避航しなければならないという規定が書いてありますが、それ以外に緊急の場合ですとか例外的な規定もございます。したがいまして、一概にこれをどちらが避航船であるか、あるいはどういう義務が生ずるかということを具体的なケースについて判断をすることはできないわけでございまして、現在海上保安庁としては、そのような関係船舶からいろいろ事情聴取するなどいたしまして、その際にどのような判断がなされるべきかということについて捜査を行っているところでございます。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 捜査の内容にまで立ち入って質問するつもりはございませんけれども、やはり客観的に潜水艦が突っ走っていこうとしたところに問題の出発点があるのです、何だかんだ言っても。それは今の法律をどう読みかえるかということは別としても、やはりいろいろ問題がある。この点を申し上げておきたいと私は思うのです。それに関連をいたしまして、衝突予防法の八条と十六条、条文は読みませんけれども、避航船は十分余裕のある時期に避航動作が相手にわかるよう大幅に行うことを書いてございます。つまりそれは船首を右に向けてエンジンをとめるなどの動作をとることが一般論として必要だということをいっているのだと思いますが、それはよろしゅうございますか。
  94. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 そのとおりでございます。
  95. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 にもかかわらず、潜水艦「なだしお」は、海幕長の訂正発言を含めて言うと、十一ノットのスピードで走っていて、ところがヨットが出た。そこで要するにエンジンをストップしてということがあるわけですが、このときにやはり潜水艦の右舷ではなくて左舷側の安全確認というものが不十分であった。つまりヨットの発見がおくれたということだけは、これは客観的な事実だと私は思うのです。それが結果的に衝突に結びついている。もしもっと早くヨットの存在というものに気がついていたら、あるいは直進行動を中止して早目に右舷、右の方へ山がって回避することができたというふうに私は思うのですが、因果関係をやはりそういうふうにとらえていらっしゃいますか。
  96. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 今回の衝突事故におきましては、衝突に至る前に自衛艦の前方左方向にヨットの航行が認められております。このヨットの航行と、それから自衛艦との関係につきましては、ただいま先生が御質問の中で言われたわけでございますけれども、その発見が遅過ぎたかどうかという点については、現在それは捜査のいわば対象でございますので、それについての判断は差し控えさせていただきますが、それが捜査の判断の対象であるということは申し上げられるかと存じます。
  97. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 第一富士丸の方について言うと、数人の乗組員が実は証言をしているのですが、潜水艦「なだしお」は第一富士丸に直角に交わるような形で西に向かって進んでいたが、百メートルの近さになって突然針路を右に変え第一富士丸とほぼ真っ正面に対面する状態になった、第一富士丸は汽笛を鳴らしエンジンをとめ、かじを左に切った、それから二、三秒の間に衝突をした。こういう判断というのはあなたの今の認識として正しいというふうに考えていらっしゃいますか。
  98. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  今回の衝突に至る直前の行動並びにその行動をとるに至った両船の船長の判断というものは、この衝突事故責任問題を明らかにするために非常に重要な問題でございまして、かつまたその判断もどのように私どもがまた判断するかということは捜査の非常に微妙な点にわたりますので、この場での発言は控えさせていただきたいと存じます。
  99. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それじゃ伺います。  海幕長の発言もあるわけですが、第一富士丸が左にかじを切ったのはあたかも違法であってというふうな、そういう意味にとれるような発言をなさっている。海上衝突予防法十七条三項によれば、事態が急迫したときには船長が臨機の措置をとることが認められている。こういう意味では左にかじをとったのは違法だとは断定できないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  100. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 先ほどもこの席で御答弁したわけでございますけれども、十七条三項においては、いわば緊迫した事態におきましては、左へ向きをとるとか右へ向きをとるとかあるいは前進させるか後進させるか、そういうあらゆることを含めましてその船にとって最善の動作をとる、それも協力動作をとるということが定められているところでございます。
  101. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 したがって違法ではない、まさに十七条第三項の規定に基づく行動であるというふうに私は理解をさせていただきます。  私がここでどうしても指摘しなければならぬことは、東京湾は非常にふくそうしています。船の出入りというのは大変なもので、しかも毎年毎年ふえているのです。ちなみに昭和五十七年度の統計で六大港の入港隻数十七万七千八百四十一隻。浦賀水道は超過密状態で一日七百八十四隻。これは実は古い統計なんです、五十七年ですから、最近のものがないものですから。こういう数字が出ています。そのうちタンカーが百五十一隻です。これこそ世界一の難所であります。海難事故というのは湾内で昭和五十七年に九十九件、五十八年に九十五件、五十九年に九十七件も起きています。もしこの釣り船がタンカーだったらどうなったんだろうなということを、私は国会議員になって二年後ですけれども、中ノ瀬の航路で起きたLPGタンカー第十雄洋丸とパシフィック・アレスの衝突炎上事故というものを思い浮かべざるを得ませんでした。  そのような超過密状況のもとで、海難事故は平均すれば三日か四日に一件という計算になるわけです。しかもこの浦賀水道の指定航路、全国に十一しかないそうですけれども、横に自衛隊米軍の基地がある、指定航路のすぐわきに。したがって軍艦の横切りが行われる。日常的にそれが繰り返されている。そういう状態というのを何とかしなければ、これからだって事故が起きないという保証はない。私はここで改めて横須賀基地の存在自体を問題にせざるを得ませんけれども、これは運輸大臣どんなふうにお考えになっていらっしゃるか、御答弁をいただきたいと思います。     〔関谷委員長退席、近江委員長着席〕
  102. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  大臣から横須賀港の問題等について御答弁をいただく前に、私から、現在この浦賀水道海上交通状況並びにそれに対して私どもがその航行安全対策をどのようにしているかということを御説明させていただきたいと思います。
  103. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それはもういい、時間がかかってしようがないから。大体聞いていますから、そのようなポイントだけについて大臣からお答えをいただきたい。
  104. 石原慎太郎

    石原国務大臣 非常に過密な水路の近くに軍事基地があるという例は、日本に限らず外国にもあると思います。また、横須賀近辺の状況でありますけれども、各船が一〇〇%シーマンシップというものを発揮して、そして海上交通法、衝突予防法を守れば今回の事故もまた回避できたと思います。
  105. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは私が言うように基地を撤去しろというふうにおっしゃるはずはないと私は思っていましたけれども、そうであるならば、政府米軍も、交通安全についてもっともっと責任を持たなければいけません。それこそまさに国民の生命や財産を守る安全保障なんです。  そうなると、海の上には交通信号はないわけです。そこで一つ一つ私は御答弁を、これは大臣じゃなくて海上保安庁長官で結構ですが、自衛艦にも米軍の艦艇にもパイロットが乗っていません。これはやはりつける方がいいと思うのですが、そういうことはできませんか。
  106. 田辺淳也

    ○田辺(淳)政府委員 強制水先制度につきましては、当該海域にふなれな船舶につきましてパイロットを乗船させまして航行の安全を図るということでございまして、通常、自衛艦につきましては一定の基地を中心に行動をとっているということで、当該海域の周辺の状況を十分に把握しておるわけでございます。それから、海上保安庁の船艇と同じように緊急性がございますので、そういう意味で強制水先制度にはなじまないと私どもは思っております。
  107. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 横須賀の、あるいは東京湾のことを余り知らない船がふえているわけですから、やはりそういう手だてを含めて考えるべきだと私は思いますが、御答弁ですから次に進みます。  さっきから東京湾海上交通センターの機能の強化のことを言っていらっしゃる。これは言うまでもないけれども、軍艦、自衛艦、アメリカ軍を問わずですが、全船舶に対して必要な情報、指導、指示ができるようにすることが大切だと思います。これは同時に各船舶に通信手段の設備を義務づけるということにもつながるわけでございますが、そういう改善措置をとるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  108. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 現在、海上交通センターにつきましては、巨大船等の航行管制、それから一定の旅客船あるいはある程度の大きさの船について位置通報を受け、それに対して情報提供をする、こういうような業務をやっております。現在、自衛艦につきましても自発的に自衛艦の方から位置通報をいただいておりますが、これについては海上自衛隊との間で、今後海上交通センターとの間の情報交換の緊密化について励行をさらに徹底させるということにいたしたいと思っております。  それから米国艦船につきまして、先ほど来申し上げましたけれども、これも位置通報を受けまして、それに対して必要な情報の提供を行って安全な航行確保しておるわけですが、これについても今回の事故を契機としましてさらに米側にも要請を行うことといたしていきたいと思っております。  また、小型船等の問題でございますが、全部の船舶に対象を広げるということは、海上交通センターの業務量からいっても非常に難しいということ、それから、今先生の御指摘がございましたように、そのためにはレーダーで監視をする必要が ございますが、小型船の場合にはレーダーに映らないわけでございます。レーダーに映るためには、リフレクターであるとかあるいはトランスポンダーといいますか、レーダーの電波に反射するような装置をつけさせる必要があると同時に通信手段の確保を行う必要がございますが、これらが小型船については現在ないわけでございまして、それをつけさせますと非常に負担増加になる。同時にまた、レーダーに余りにも多くの小型船が映りますと、かえって見ている方がちかちかして肝心の巨大船の発見等が困難な場合もございます。このような問題点がいろいろございますので、私どもとしてはその拡大の対象を、必要と思われる船舶について、今のままでいいということではなくてこの拡大の方向で検討いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  109. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは実は一番早急にというふうにお願いをしたいことなんですが、防衛庁長官運輸大臣、お二人に御答弁をいただきたいのですが、軍艦を含めて、さっきから問題になっている横切り、朝のラッシュと夕方のラッシュ、ここに船が非常に集中するのです。これは、有事というようなときにはそれはいろいろ立場があるだろうけれども、やはり普通の状態のときには原則として制限すべきだ、このことについて御協力いただけませんでしょうか。非常にこれは重大な問題です。
  110. 日吉章

    ○日吉政府委員 今回の事故海上自衛隊潜水艦民間船舶との衝突事故でございまして、それによりまして乗客乗員の方々のとうとい命を失うという多大の被害を生じたものでございまして、この事実は極めて重大に受けとめておるところでございます。したがいまして、浦賀水道のようなあるいは東京湾のような過密航路におきましていかなる航路航行がよろしいかという点は基本的に検討課題かと思いますが、先ほど保安庁長官のお答えの中にもございましたように、自衛艦につきましては緊急性等の特殊な任務を帯びてございます。したがいまして、こういう過密な地帯におきます交通の安全をいかなる方法で図るかという点は検討の課題とはなろうと思いますが、即それを時間帯を設けましてのいろいろな制限というようなことにつなげるのがよろしいのかどうか、その点は慎重に検討を要するところではないかと思います。
  111. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 今回の事故にかんがみまして、当面の措置としては、海上自衛隊の艦艇について東京湾海上交通センターとの緊密な情報交換の励行を図りまして安全の確保に努めてまいりたいと思っておるわけでございますが、ただいまのラッシュ時におきます防衛艦といいますか自衛隊艦船の規制につきましては、私どもとしては基本的には各船舶が海上衝突予防法等海上交通のルールを忠実に実行することによって安全に航行できるものと考えておるわけでございますが、なお防衛庁とも今後いろいろ意見の交換をして、より一層の安全の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
  112. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は原則としてというふうにあえて言ったのですが、それについても考慮の余地がないような答弁でございます。まさに軍事優先と言わざるを得ません。  特に、第五ブイを越して左折するときに、横須賀港に戻るまでの速さ、スピードです。これは正直なところ言って五ないし六ノットみたいな形で帰っていけばいいのですが、十一ノットぐらいで走っている。それからもう一つ大事なことは、南下船が非常に多いときには横切りしないでずっと奥まで行って、先ほど河村議員も言っておられましたけれども、やり過ごして、そして回ってくるというふうなことをやはり考えなければいかぬというふうに思うのですけれども、そういう意味では——遊びと防衛と言うけれども、人の命はどうするんだよ。人の命を守らなくて何の防衛なんだ。自衛隊は自分の命を守るための軍隊かと言われているじゃないか。そのくらいのこと考えたらどうかね。  そういう意味で私は、そういう具体的な手だてをやはりとっていかなければならないというふうに思いますけれども、そういうことについての御配慮をいただくことができないかどうか、お尋ねしたいと思います。
  113. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 第五ブイの通過後スピードダウンさせるということにつきましては、これは海上交通安全法の関係で申し上げますと、その航法の規定で、各船舶はできるだけ速やかに航路の横断をしなければならないということが定められております。したがいまして、スピードダウンをするということでなくて速やかに横断するということが肝要でございまして、このようなルールを守る、もちろんその際に見張りを十分する、衝突の危険がたいように十分配慮して横断するということは当然でございますけれども、スピードダウンすることが直ちに安全につながるということは言えないものですから、要するに安全を確保してルールどおりやっていただくということかと存じます。  それから、航路のもっと北の方で左折したらどうかというお考えがあろうかと存じますけれども、この航路の北方部分につきましては、東京港であるとか千葉港であるとかあるいは横浜港、それらへの入出港船舶が多数ございまして、かえって混雑、ふくそう化する場合がございまして、必ずしもそれが安全につながるというわけではございません。したがいまして、これは左折の場合に、常にケース・バイ・ケースで、安全を確保して、確保したという判断のもとに左折をするという、そしてその左折の方法については海上の交通ルールで決められたとおりに行うということが肝要かと存じます。
  114. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 運輸省関係はひとまずここでやめまして、防衛庁にお尋ねをしたいと思います。  防衛庁長官は、今回の事故に関連をして潔く責任をとるとおっしゃっておられるようですけれども、その責任とはどのような責任意味するのか、そしてどのような形でとられることをお考えか、大変失礼でございますけれども御答弁をいただきたいというふうに思います。
  115. 瓦力

    ○瓦国務大臣 お答えいたします。  今回のような大変痛ましい事故発生いたしましたことをまことに残念に思い、遺憾に考えておるところでございます。また、多数のとうとい人命が失われたという事態の重大性といいますか、このことも十分に認識をいたしておりまして、まことに痛恨のきわみでございます。  現時点におきまして、なお行方不明となっている方の一刻も早い捜索全力を挙げて取り組まなければならない、かように考えておるわけでございまして、今日なおダイバーに五十メートルの海底において捜索活動をとり行わせると同時に、上空からも、また艦船も張りつけをいたし、また周辺海域におきまして、陸上自衛隊におきましてもその努力をいたさせておるわけでございますが、なお徹底してこの努力を続けさせていただきたいと思っておるわけであります。  事故原因究明する、このことは再発防止策を確立する上でも重要なことでございます。今時点におきましては事故原因を徹底的に究明をし、さらに再発防止策を確立することが何よりも重要であると考えておるわけでありまして、これらの職責を果たすことが自衛隊最高責任者として私に課せられた最大の職務である、かように心得まして日々努力をしておるところでございます。
  116. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 個人的には本当にお気の毒でございますけれども、あなたの責任は、いわばトップとしての政治責任というものを免れないと私は思います。私は率直に言って、それではそれで全部済むのかということにはなり得ないと思うのです。  さっき総理大臣が、つかさつかさのいわば責任といいましょうか、一つのけじめをつけることが必要だという意味のことを、正確な言葉遣いじゃございませんけれどもおっしゃいましたけれども、これだけ自衛隊に対する国民の強い不信というものを配慮したときに、関係者責任というものもまた免れないのではないだろうかと思いますが、この点は長官はどんなふうにお考えですか。
  117. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいまもお答えをさせていただきましたが、現在捜索を続け、さらに事故再発防止、このことにも取り組む、いわゆる責任放棄ができないわけでございますから、目下これらの職責を果たすということに全力を挙げることが、国民から信頼される自衛隊、このことにつながる、かようにも考えまして努力をさせていただきたいと思っておるわけであります。
  118. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それらのことについては、国民の目が何を考え何を見詰めているかということをしっかりお考えの上で御判断をいただくことだろうと私は思いますけれども、それはそれとして、さっき防衛局長が、西廣事務次官の発言というものは、知らなくてしゃべったけれども、後で時間がたって聞いてみたら、飛び込んで救助した、だからそれは、取り消すという言葉ではないにしても、それに近いような御発言をなさいましたけれども、そういうことではないのでしょう。大臣、これはちょっときちんと答えていただけませんか。
  119. 日吉章

    ○日吉政府委員 先ほど私が御答弁申し上げましたので、私からまずお答えを申し上げさせていただきたいと思います。  西廣次官は、当該事故後の救難活動に対しまして防衛庁の自衛官がいかなる対応をとったか、救難措置の結果は承知しておったわけでございますが、いかなる状況のもとに具体的にいかなる救難活動を行ったかというところまで、非常に混乱した状況の中にございましたのでそこまで次官には内部的に報告ができていないという段階で感想を記者から求められまして、一般論といたしまして自衛隊員の心組みを述べたものでございます。ところが、事実は、具体的な救助の方法を聞いてみますと、先ほども御紹介いたしましたように、潜水艦という非常に救難には適していない艦の中にありましても彼らなりに最善の努力を払ったのではないかというふうなことになってございます。決して取り消したとか取り消さないということではございませんで、西廣次官の最初の発言は一般論としての我々のあるべき姿勢を、心意気を申し述べたことでございます。     〔近江委員長退席、関谷委員長着席〕
  120. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 僕は西廣さんの発言というものは、やはり国民の常識にかなったというふうな感じを持っています。それとかなり食い違っているのが東山海上幕僚長の記者会見、全部見たわけではないのですけれども海上自衛隊のトップとしての彼の公式な発言を通して、私は自衛隊の体質をかいま見たような感じがいたしました。  事故直後の会見と、後で非常に重要な点で訂正をなさっていらっしゃる。例えば右舷と左舷を間違えたり、あるいはスピードを五ないし六ノットを十一ノットと言ったり、救助された人の数が合わなかったり、これはいろいろな混乱があったからそういうことだったのかもしれませんけれども、そういう不確定な情報しかつかんでいないときに、「なだしお」の艦長は規則にのっとって最善を尽くしたと思う、第一富士丸が左に曲がらなければ衝突は避けられた、「なだしお」に過失はない、それこそ海難審判庁と同じような発言をなさっていらっしゃる。このような発言は、たとえ身内をかばう気持ちがあったとしても、私は社会的には通用し得ないだろうと思う。いわんやあの痛ましい事故の後だけにいかがかと思いますが、長官はそれらのことについてどんなお感じを持っていらっしゃるか、率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。
  121. 瓦力

    ○瓦国務大臣 大変大きな不幸な事故が生じたわけでございますが、実はこうした事故は、もちろん各方面からその状況について説明を求められる、これが一般的なことでございます。今度の海上幕僚長発言についてでございますが、今回の事故原因につきまして、これはあくまで海上保安庁における調査並びに海難審判によって明らかにされていくのでございますから、一方の当事者であり相手方の主張を了知しない自衛隊が確定的なことを言うべき立場にないということをお断りをしながら、その情報の収集に努めておったわけでありますが、なお当時の状況を説明するに当たりまして、ただいま申し上げたことを申し上げ、お断りをし、そして当方の艦長等から独自に聴取した内容をもとにいたしましてその状況を説明した、かように聞いておるわけであります。私は当然そうあるべきと思うわけでありまして、事故原因について判断を述べた、こういったものではないということを、委員指摘のように決して身内とかそういう立場ではなくて、海幕長もそれだけの見識を持ってその立場に立っておるわけでございますので、こうしたことをお断りしつつ、その状況について説明をしたという経緯をお伝えをいたしておきます。
  122. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 率直に国民気持ちの中にあるものに対して謙虚に対応するということを、この際私は強調しておきたいと思います。  さっきから議論になっている海上保安庁に対する二十一分の通報のおくれ、細かいことはもう私言いません。言いませんけれども自衛隊というのは、ミサイルの装備を持って秒刻みで訓練しているのだろうと私は思うのです。そのときに、率直に言えば現場でミサイルの戦闘が始まってしまったのに、二十一分どころか、あなたのところや総理大臣のところを含めて、時間のそれはいろいろなことがありますが、知らなかったというふうな実態なんです。これは現実なんです。これはやはりシビリアンコントロールのあり方というようなものも問われても仕方がないと私は思うのです。  そういう点で、海幕の自衛艦隊司令部の一佐が、このくらい時間がかかるのは当たり前と考えていただきたいということを答えているわけでしょう。これは開き直りですよ。だからおくれたこと、そのことについてはやはり問題がある、そういう点について検討をし、そういうことを直していくくらいなことをお答えをいただくのが当たり前のことじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  123. 瓦力

    ○瓦国務大臣 海上保安庁への通知に二十一分の時間を経過した等の内容につきましては政府委員よりさらにお答えをさせますが、国民から信頼を得る自衛隊、こういうことを考えてまいりますと、私は、大変厳しいことでございますが、不幸にしてこうした大きな事故が生じ、とうとい多くの生命を奪う、痛恨のきわみ、こう申し上げ、おわびをするわけでありますが、しかし、いろいろ反省すべきところ、そうしたことを本当に謙虚に受けとめながら、あり方というものを考えていかなければならぬ、こう私は思うわけであります。  また、自衛隊に対する信頼を寄せていただくことを考えてまいりますと、本当に今度の事故につきましても全員がそれぞれの部署につきまして最善の努力をいたしました。そして、事故原因究明というもの、それはこれから海上保安庁においてなされるわけでありますが、海上自衛隊の諸君が連日にわたってこの問題に当然といいながら努力しておる姿を私は見まして、この願いを通して、もう一人の行方不明者が早く発見されることを念じておるわけであります。  いろいろ国会を通じましたり、またマスコミを通じまして、自衛隊に対する御批判は御批判として承り、私どもといたしまして、それが信頼につながるための努力はさらに一層続けたいと思うわけでありますが、各般にわたりまして我々の努力につきましても御理解をいただきたいと思うわけであります。
  124. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 人命救助のことについてももう細かくは言いませんが、救助された人々の証言が新聞やテレビで報道されています。子供が助けてくれと言って声を限りに叫んでいる、しかし、それに手をかしてくれなかった、あるいは何とかしてくれと言っても、見ていながら何の行動もなかったというようなことも言われています。生々しい証言です。これは新聞で見たのだから、私は事実かどうかわかりません。しかし、そういう人たちが自分の生命が本当に危なくなるときに思っている気持ちというのは、私は誇張がそれほどあるとは思われない。そういう意味では、やはり今度の措置というのは、例えば見えなかったとかあるいは そんなことはないとか、ないならないできちんとそのことをおっしゃったらいいと思うのです。自衛隊も一生懸命やったのだというふうな言い方だけでは、亡くなった人たちの魂は浮かばれないと私は思いますよ。率直に言ってやはりその点では不十分であったと思います。  それは、いろいろな言いわけはあるでしょう。しかし、現実にそのために亡くなっている人がいるのです。そういうことを考えて、やはりこれからのことですけれども、同時に、今回そのことについての厳しい反省というものを、潜水艦の構造やあるいは何メートルか移動したからとかなんとかというようなことでは言いわけにならないと思うのです。衝突事故というのは、衝突したところでちゃんとブイを置いて確認してこなければいかぬ。その手続もとっていないのですよ。そういうふうなことも含めて見ると、やはり問題があったと言わざるを得ない。この点は、長官は率直に国民に対してこの機会を通しておわびをすべきことはおわびをする、こういう態度が必要だと思いますが、御答弁を煩わせたいと思います。
  125. 瓦力

    ○瓦国務大臣 委員の御指摘も当然踏まえまして、私は、すべて最善の努力であった、かように申し上げるものではございません。いろいろこの反省をいたしながら、さらにあるべき姿につきまして検討して、再発防止、そしてまた海難にありましては人命救助ということも心がけていけるような、そして信頼され得る自衛隊、こういう形になるように検討を加えるべき課題があることを承知いたしております。
  126. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最後に一問だけ。  私も現場を見たのですが、海面にかなり油が流れていますね。そして、それに対して、何というのですか薬品をまいたということも言われていますが、その量はどのくらいになっているのか。正直なところを言って、海水浴のシーズンでございます。そういうことに被害はないかどうか、影響はないかどうか、これらについて保安庁、御答弁があったらしてください。
  127. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  現在、今回の事故による油の流出量がどの程度であったか数値は把握しておりませんが、第一富士丸の燃料油、これはA重油でございまして十八キロリットル積んでおりまして、その一部が沈没後流出いたしました。しかしながら、直ちに油処理剤等によりましてこの処理は現在もう既に終わっておりまして、私ども聞いておりますところでは特に大きな影響があったというふうには承知しておりません。
  128. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。吉原委員の時間をいただいて少し延長したことをおわびいたします。
  129. 関谷勝嗣

    関谷委員長 吉原米治君。
  130. 吉原米治

    ○吉原委員 今回の痛ましい事故で亡くなられました多くの方々及び遺族方々に心からお悔やみを申し上げながら、以下諸点について質問をいたします。残された時間はわずかでございますので、質問も簡潔に申し上げますから、御答弁もひとつできるだけ手短にお願いをいたします。  最初に保安庁にお尋ねしますが、保安庁の方から事故の概略説明の段階で略図が出されております。衝突状況を説明するための略図でございます。この略図の中で、海上自衛隊潜水艦「なだしお」と遊漁船の第一富士丸、この潜水艦が確認をしたときにはどのぐらいの距離が一体あったのか、まずそこからお尋ねします。
  131. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  私どもが現在まで「なだしお」艦長から聴取したところによりますと、「なだしお」は浦賀水道航路の中央にございます第五ブイ付近を通過後、横須賀港に向かうべく左転をいたしたわけでありまして、速力は約十一ノットでございます。そして、西に向かって航行中、間もなく艦首右方向南下中の第一富士丸を初認したということでございますが、その距離等詳細につきましては現在捜査中でございますので、具体的な数字を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じます。
  132. 吉原米治

    ○吉原委員 捜査を待たなければその距離すらお答えできませんか。初認をしたというのですよ、潜水艦は。初認をしたら何メートル先に、例えば千五百とか二千メーターとかいう概略の距離は当然出てくると思うのですが、距離も言われぬぐらいあれですか。これは別に捜査に関係ないでしょう。
  133. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 初認したときの距離ということでございますけれども、客観的な距離といたしましては、相手船がどこにあったということと「なだしお」がどこにいたかという、この位置の確定が必要になるわけでございます。現在私どもが承知いたしておりますのは、「なだしお」の艦長が初認したときに何メートルぐらい距離があったかという判断については、これは承知しております。ただし、それが事実何メートルあったかということには必ずしもならないわけでございます。
  134. 吉原米治

    ○吉原委員 私は、この相手の遊漁船を初認したときに一体どのくらいの間隔があったのかということは、これはどうしても知りたいわけですよ。マスコミの報道によりますと約二千五百。この報道は間違った報道ですか。
  135. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 「なだしお」が最初に視認したときに、その当該乗組員が何キロあるだろうかというふうに判断した距離につきましては、ただいま先生おっしゃいましたように二千数百メートルということでございます。
  136. 吉原米治

    ○吉原委員 そこで、同僚議員も質問の中で触れられておりましたけれども、海上衝突予防法第八条に「衝突を避けるための動作」、これが規定してございます。読み上げますと、「船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、できる限り、十分に余裕のある時期に、船舶の運用上の適切な慣行に従ってためらわずにその動作をとらなければならない。」第八条にきちっと衝突予防法は規定してございます。二千数百メーターあるということは十分に余裕のあるときでしょう。したがって、衝突を避けるための動作を直ちに「なだしお」はとらなきゃならぬ。とったという報告はございますか。
  137. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えさせていただきます。  衝突予防法第八条におきましては、「衝突を避けるための動作」といたしまして、「船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、できる限り、十分に余裕のある時期に、船舶の運用上の適切な慣行に従ってためらわずにその動作をとらなければならない。」このように規定されていますが、同時に、先ほど来の行き会い状況の場合の規定が別途ございまして、これは十五条でございますが、「二隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。」ということを原則として定めておりまして、この二千数百メートルの距離というものが、「進路を横切る場合において衝突するおそれがあるとき」、十五条に規定されるケースに該当する場合には進路を避けるための操作をしなければならないということは規定しておりまして、その動作をとるときには第八条に規定したような方法でとらなければならない、こういう規定でございます。
  138. 吉原米治

    ○吉原委員 法律の解釈を今どうこう言っておるわけではなくて、それは今長官おっしゃったのは、ちゃんと運輸六法を持ってきておるからそんなことを言う必要はないんだ。要は、衝突を避けるためのそういう動作をとったのか。しかも十分に余裕のある時期に、二千数百メートルあるなら十分余裕があるのでしょう。十分な余裕のある時期になぜその動作をとらなかったのか、衝突を避けるために。そのことを聞いておるのだ。
  139. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 十分に余裕のある時期に避航するための措置をとったかどうか、これは捜査の重要な点になるわけでございます。  したがいまして、二千数百メートルのところで初認した時点において直ちに必ずしも操作をとっておりませんけれども、操作をとった時点において果たして、先ほどの十五条に言ったような条件になったときに操作をとったかどうかということ が、これが非常に重要なポイントになるわけでございまして、そのような点については現在捜査中でございますので、コメントをさせていただけないということでございます。
  140. 吉原米治

    ○吉原委員 八条の前の七条の五項には、「船舶は、他の船舶衝突するおそれがあるかどうかを確かめることができない場合は、これと衝突するおそれがあると判断しなければならない。」七条の五項にはまたそれも規定してございます。  いずれにしても今、十分に余裕のある時期に衝突を避けるための動作はとってないということを保安庁、あなたは今言われたような気がするのだが、二千数百メートルのときには十分な動作ができるのに、それはとってなかった。直前になってからとった。こういうふうに今の答弁は理解してよろしいか。
  141. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 「なだしお」は、相手船を初認した後、ある時期において回避操作をとっておるわけでございますが、その時点がこの第八条に言う「できる限り、十分に余裕のある時期」であったかどうかということが、捜査の一つのポイントになろうかと思います。
  142. 吉原米治

    ○吉原委員 その十分に余裕のある時期にはしかるべき動作はとってない、そういうことでしょう、裏返して言いますと。
  143. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 とってないか、とったかということはまだ捜査の途中でございます。
  144. 吉原米治

    ○吉原委員 保安庁長官たるお人が、あなたの責任で、この略図を出されたのでしょう。これはとった形跡がないんだ。衝突寸前になってから面かじいっぱいになっておる。今の答弁、どうも納得がいかぬ。二千数百メートルの十分な距離のあるときには、衝突を避けるための動作はしてないということでしょう。もう一遍確認しておく。
  145. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 私が申し上げましたのは、初認をしたときに直ちに操作はとってないということでございます。ただし、その後、一定の時期に自衛艦は操作活動を行っております。第八条で決められておりますのは、そのとった時期が十分に余裕のある時期であれば差し支えないわけでございます。その判定を今現在捜査中だということでございます。
  146. 吉原米治

    ○吉原委員 その衝突を避けるための動作をとった途端にもう衝突しておるんだよ、保安庁長官。十分な余裕のある時期に衝突を避けるための動作をとっておれば、衝突なんか起こるはずはないんだ、そうでしょう。
  147. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 海上衝突予防法の十五条では、衝突のおそれがある場合に回避操作をとらなければならないというふうに決められております。その回避操作をとらなければならないという事態になったときに、その事態において八条によって余裕のある時期にとらなければならないということでございます。その衝突のおそれがあるときには直ちに、余裕がないときではないわけでございますね。
  148. 吉原米治

    ○吉原委員 海上保安庁長官は、ちょっとこれは答えができない、答弁になってない、私に言わせれば。  そこで、直属の瓦長官にお尋ねをいたしますが、先ほど竹下総理が退席されましたけれども総理は海上の諸法規、規則はきちっと守ってやっております、竹下総理はさっきそのように答弁されておった。この海上衝突予防法八条にしろ十五条にしろ、きちっと理解をされておるなら、私はこんな事故は起きなかったはずだ。しかも、緊急に出されました政府対策本部のこれにもちゃんと、自衛官に対する各種諸法規の徹底、シーマンシップについての講習をやろうというんだ。これは対策本部としても、自衛官に諸法規が徹底してないということをみずからお認めになっておると同じことなんだ。長官、どうですか。
  149. 日吉章

    ○日吉政府委員 私たちは、常日ごろから自衛隊員一人一人に法令等を遵守すべきことを指導教育いたしております。それぞれ彼らなりに最善の努力を尽くしていると思いますが、現実に痛ましい事故が起こったのは事実でございます。したがいまして、その事実を踏まえまして、どのような点に反省すべき点があるかを総点検しようというのが今回の当面の措置でございます。
  150. 吉原米治

    ○吉原委員 同僚議員、地元でもありますし、精いっぱい時間を使っていただいて、私の持ち時間もなくなりましたが、あと五分ぐらいですから。  救助された方々発言がそれぞれ報道されておるわけでございますが、同僚議員も質問をしておりましたように、助けを求めておるのにかかわらず、十数名潜水艦の上から傍観をしておったという。一、二名何か飛び込んで助けられたようでございますが、こういった、目の前に溺者が助けを求めておるあるいは悲鳴を上げておるというのに、民間人だって見ておれば飛び込んで助けようという気になるんだ、少なくとも海上自衛隊自衛官と称される皆さんが、一般の民間人がまさにおぼれる寸前の悲鳴を上げておるのに、なぜ飛び込んで助けるぐらいの機転をきかさないのか。今回は海上自衛隊でございますが、自衛隊の皆さんはそんな度胸のないことでよくもまあしゃあしゃあと自衛官でございますと言って、私は国民の血税をもらっておると思うのです。精神的な訓練は一体どういう訓練が日常やられておるのか、瓦長官、お答えください。
  151. 日吉章

    ○日吉政府委員 私は、報道されておりますことの真偽につきましてコメントをつけ加えるために答弁に立っているわけではございません。ただ、私は、先ほどからも潜水艦というものがいかに水上の事故救助に不向きな船であるかということをるる申し上げたつもりでございます。したがいまして、彼らは、溺者救助要員は甲板に救命具をつけて、潜水艦は現場に復帰すべく徐々に徐々に、進んでおったわけでございます。その過程におきまして、漂流しております方、見つけた方々に対しましては、浮き輪を投げ、ボートをおろし、あるいは飛び込んで救助しているわけでございます。おぼれている方を目の前に見ながら自衛艦員がそのままにしておったということは私は考えられません。
  152. 吉原米治

    ○吉原委員 現実にこの被害に遭われて海へほうり出されて結果的に救われたという方々の証言というのは、今答弁された防衛局長は想像ですからね、片一方の報道は、まさに信憑性があるわけなんです。だから、客観的に見てどっちを信ずることができるかどうか、これはよくお考え願いたいと思います。  先ほど、通報が二十一分もおくれたことは認められた。ところが、通報がおくれたことにより溺者を救助する時間が結果的にはおくれた、こういうことを考えますと、潜水艦は自分の船がまず安全かどうかということをいち早く点検、確認をするということがそのおくれた理由の中にあるようでございますが、これはあくまでも私どもに言わせれば、国民生命財産を守るという自衛隊考え方にはまことになじまない考え方じゃないのか。それは自分たちの潜水艦の安全は、七十人も乗っておれば何人かで点検すれば済むことで、目の前に数十人が投げ出されておるのに救助しないというようなこと、あるいは命令が出ぬから勝手なことはできないなんという小回りのきかぬようなことでは、戦争があるかどうかわかりませんが、戦争のときにそんなこと言って、命令が来ぬからと言って、味方がやられる、相手が救助を言っておるのに、そういう精神的な訓練というのは余りにも軍事優先考え方ではないのか、私はこう言わざるを得ないわけでございます。防衛庁長官、ひとつそこら辺をお答えください。
  153. 瓦力

    ○瓦国務大臣 吉原委員にお答えいたしますが、先ほど防衛局長が答弁いたしましたように、「なだしお」は二百メートルくらい後退をいたしました。機関停止、後進いっぱいということで艦をとめるわけでございますから、それから救助の現場に向かっておるわけでございますが、この間、潜水艦の性能、機能が一般船と違った機能であるということも先ほど説明をいたさせております。  なお、自衛官はこれを傍観しておったということの御指摘もありますが、これまた浮き輪を投げ、また泳者に対しまして一名、ゴムボートで一名、「なだしお」は三名、さらに「ちとせ」は泳者一名と、それぞれ努力をいたしておるわけでご ざいます。ただ、現場は海でございますから、そこに救助を求める者がいるかどうか、それも確認しなければならぬわけでありますし、全力を挙げてそれぞれが任についておったわけでありますが、私も実はこの報告を聞きまして、全負が前線で最善の努力をした、かように信じたいわけでありますけれども、なおそれですべてか、こう問われますと、他に方法がなかったかということにつきまして、なお今日反省する諸点を反省してまいらなければならぬ。自衛官たるもの、見捨てて傍観をしておったということは私にとりまして信じがたいことでありますし、それぞれが任務につきまして最善の努力をしたと私も信じたいわけであります。これらにつきまして、またこれからも調査を進めまして、その実態につきましては御報告もできようかと思いますが、私の手元にある資料から申し上げまして、かようにお答えをさせていただくものでございます。
  154. 吉原米治

    ○吉原委員 私の受け持ち時間は終わりました。引き続いてまた運輸委員会質疑をしたいと思いますので、本日はこれで終わります。ありがとうございました。
  155. 関谷勝嗣

    関谷委員長 冬柴鉄三君。
  156. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党・国民会議冬柴鉄三でございます。  死者、行方不明者三十人という大惨事となった横須賀港沖の衝突海難事故は、その一方当事者が、海上自衛隊の最新鋭システム潜水艦であっただけに国民に大きな衝撃を与えております。公明党は、党内に事故対策本都を設置するとともに、去る二十五日、矢野委員長を含む衆参両院議員八名が事故現場海域に赴きまして、悲しみの海へ黙祷し、献花をささげ、視察調査を行ってまいりました。今改めて不慮の事故に遭われた方々の御冥福を祈念するとともに、御遺族被害者の方に心よりお見舞いを申し上げ、あわせて行方不明の方一名の一日も早い発見を願うものであります。  さて、自衛隊存立の基礎は、言うまでもなく広範な国民の支持と信頼にあります。その意味で、この国会審議の過程を通じて国民に対し事故原因をすべからく明らかにするとともに、それに呼応した再発防止策を確立し、あわせて遺族並びに被害者への補償に万全を期する措置をとることが信頼回復の第一歩であり、またそれこそが国民より我々が負託を受けたシビリアンコントロールの道であると信じます。  殊にこの事故によって亡くなった方あるいは被害を受けられた方、遊漁船に乗っておられた乗客の方には何ら責められるべき点はありません。政府事故の帰すべき責任事由やその過失割合のせんさくとは別に、早急に遺族被害者に対する賠償の措置を講ずるべきであると考えます。まずその点につきまして官房長官の所感をお伺いしたいと思います。
  157. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 今回の事故原因につきましては、現在海上保安庁調査中でございますので、政府としてはその状況を見きわめつつ適切に対処いたしてまいりたいと存じます。ただいま委員指摘のことを十分踏まえながら、対処いたしてまいるつもりでございます。
  158. 冬柴鐵三

    冬柴委員 あわせて、この点につきまして、防衛庁長官の所感をお伺いしたいと思います。
  159. 瓦力

    ○瓦国務大臣 冬柴委員から、再発防止策を確立し、さらに国民の支持、信頼を基盤とするためには、さらに全力を挙げて行方不明者捜索に努めるようにということでございました。  今回のような痛ましい事件発生いたしましたことを、まことに遺憾に存じております。二度とかような不幸な事故、出来事が起こることのないよう、事故原因徹底的究明を図り、再発防止策の確立に努めてまいることは、自衛隊最高責任者である私の国民に対します最大の責務である、かように心得、努力をさせていただきたいと思っております。また、しなければならぬと考えておるわけでございますし、一名の行方不明者につきましても、ただいま全力を挙げて取り組んでおるところでございます。  遺族への補償、これらの問題につきましては、ただいま海上保安庁等調査中でございますし、これらの事故原因につきまして、状況を見きわめるということが重要なことでもございますので、これを見きわめつつ適切に処理してまいらなければならぬ、私どもといたしましても、このことにつきまして心を砕いてまいらなければならぬ、かように考えております。
  160. 冬柴鐵三

    冬柴委員 事故原因を見きわめつつ、それとは切り離して考えていただくことを御要望いたしておきたいと思います。  それでは続いて、事故の背景等について若干伺っておきたいと思います。  その当日、大島付近海域において自衛隊展示訓練が行われたようでありますけれども、それの終了後、横須賀港へ帰投した艦船は、この「なだしお」を含めて何隻であったのか。「なだしお」の前には「ちとせ」が航行していたようでありますけれども、「なだしお」の後には何隻の艦船が続いて帰投していたのか、その点について、簡単で結構ですが、お伺いをしておきたいと思います。
  161. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  展示訓練が終わりまして横須賀港へ帰投しました際、艦船十隻であります。護衛艦が八隻、潜水艦が二隻であります。「なだしお」の後には「せとしお」だけがおりました。潜水艦「せとしお」だけであります。
  162. 冬柴鐵三

    冬柴委員 このような多くの艦船が、一日七百隻を超える船舶でふくそうする狭隘な水道を航行して、あわせてこの五番ブイというところでほぼ直角に、南航航路帯を連続して横断する。これは、周辺海域航行船舶にとって非常に危険な行為であり、また危険を感ずる行為であると思います。現に、民間釣り舟業者の話によれば、これまでもこの付近でしばしば自衛艦とのニアミスが起きており、その際いつも民間船舶が回避行動をとっていた、このようなことも言われております。  そこで、海上自衛隊は、このような艦隊と申しますか、多くの艦船が連続してこのような水路を通過するに際して、適当な回避手段、例えば見張りの船あるいは警告措置をするための手段、そのようなものを講ずるような思想があったのか、またそういうことをされたのか、今後そういうことをされる考えがあるのか、そのような点についてお尋ねしたいと思います。
  163. 日吉章

    ○日吉政府委員 東京湾のような交通の過密なところにおきましては、潜水艦が水上運航をいたします場合に、通常は二名、艦橋に見張りとして立つわけでございますが、それの倍の四名立ててございまして、今回の場合にも四名、艦長、副長、哨戒長、見張りという四名を立てております。
  164. 冬柴鐵三

    冬柴委員 航行する艦船という趣旨ではなく、五番ブイ付近に特定の船舶等を出して誘導させる、そういうような考え方があったかどうか、そのようなことを伺いたかったわけでございますけれども、そういう点についても今後配慮していただきたい、このように思います。  さて、海上自衛隊から事故の概要説明とともに概要図というのを過日受け取りました。これによりますと、「なだしお」は五番ブイ地点で左折した後、針路を横須賀港に向かって、真西に向かって航行していた、そのときに自船の左舷方向に帆走中のクルーザーを認め、それから右舷には問題の第一富士丸を認めた、このような記載があるわけですけれども、その事実に間違いがないか、そしてこのクルーザーは専ら帆を用いて走っていたのか、それとも動力を用いて走っていたのか、その点についてあわせてお答えいただきたいと思います。
  165. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 「なだしお」がクルーザーを発見した際には、クルーザーは帆走中であったというふうに承知しております。
  166. 冬柴鐵三

    冬柴委員 防衛庁にお伺いしたいのですが、クルーザーと第一富士丸、これはいずれを先に認めたのか、そしてそれぞれはこの潜水艦の進路を横切るような形、いわゆる交差するような形で走っていたのかどうか、その点についてあわせてお答えをいただきたいと思います。
  167. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 お答えいたしますが、今の件は、どちらが先だったか、第一富士丸であったかあるいはクルーザーであったか、ヨットであったかという点、これはやはり調べの結果はっきりすることが正しいのではないかと思います。私どもの方には私どもなりの報告がもちろん上がっておりますが、ここで申し上げるのは適当でないように思うのです。  それから、クルーザーと我々の「なだしお」との関係は、やはりこれも専門家であります海上保安庁長官から有権的に御説明していただくのが正しいと思いますけれども、結局行き会いの関係、ここでは横切り関係になりそうな状態があったんだろうと思われますが、これも私どもの部内の報告といいますか、そういうふうなものをベースにしておりますので、実は、詳しく申し上げるのは適当でないのだろうと思うわけであります。
  168. 冬柴鐵三

    冬柴委員 クルーザーの場合、帆走中の船舶が進路を横切るような場合には、海上衝突予防法十八条一項四号では、航行中の動力船は、この場合潜水艦ですけれども、帆船の、ヨットの進路を避けなければならないと書かれています。それは、ヨットは動力船に比べて急激に避難することができない、動きが鈍いというようなことが前提になっていると思うのですが、そのように考えますと、クルーザーを認めながら、それを避けなければならないというこの規定があるにかかわらず、その進路を横切ることができると過信をして十一ノットで引き続き航行したという点が第一番目に問題であったと考えるわけであります。  二番目に、防衛庁からいただいた「事故概要図」によれば、クルーザーとの衝突の危険を感じて「なだしお」は警告の汽笛を長く鳴らして、そしてエンジンを停止した、このように書かれているのですが、その事実はお認めですか。
  169. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 そのような報告を受けております。
  170. 冬柴鐵三

    冬柴委員 すなわち、急ブレーキをかけたということは、さっきの十八条一項四号に定める帆船の進路を妨げてはならないという規定に対して、「なだしお」がこの規定に反して航行をしたという事実が認められると思います。これは評価でありますから答弁は求めませんけれども、そのようなことがあったことは事実であると思います。  続いて、クルーザーが衝突を回避して離れた後、艦長が前進を命じて十一ノットで再び西進を始めた、このようなことがこの報告書には書かれていますが、その事実は間違いありませんか。
  171. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 そのように報告を受けております。
  172. 冬柴鐵三

    冬柴委員 さて、艦長が再び十一ノットの速さで横須賀港の基地に向けて走ることを命じた。この際、右舷に南進をする、すなわち、潜水艦の進路に交差する形で南側に向かって走っている第一富士丸をどのように認識していたのか、そのときの両者の距離は、防衛庁が出されたこの概要図では何メートルと書かれていたか、その点についてお尋ねをいたします。
  173. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 まず初めにお断りしなければならないことがございます。  その資料は恐らく「事故概要図」と書いてあるものだと思いますが、これはまさに大変忙しい混乱の中で、しかし非常に強い求めがありましたために我々の方で概念図として速報的な意味の性格のものとしておつくりしたものでありまして、その正確度については全く制限、条件がついたものだったわけであります。そのものとして御理解いただきたいと思うのです。その時点では約千メートルと聞いておりましたのでそのように書いておりますが、これは海上保安庁の御調査に待つべきものであります。その後、海上保安庁の方で概念図をつくられましたので、この資料はお出ししておりません。
  174. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いろいろ言われましたが、概念図によれば両者の距離は約一千メートルと書かれています。  さて、先ほど来から同僚議員の質問で、避航船と保持船ということがいろいろ述べられていますから、もう詳しいことはここでは申し上げませんけれども、この場合、この航行について優先権を持っていたのは明らかに第一富士丸であって「なだしお」でない、これははっきりしていると思うわけですけれども、その点についてはいかがでございますか、海上保安庁長官
  175. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 ただいまの御質問の点は、再々にわたって申し上げておりますとおり、現在、捜査の対象でございまして、しかも捜査の非常に微妙な点にわたるところでございます。私どもといたしましては、一般論として海上衝突予防法の適用関係についてはお話し申し上げられるわけでございますけれども、それの具体的な適用については、現在そういう立場にございますので、コメントを差し控えさせていただきたいと存ずる次第でございます。
  176. 冬柴鐵三

    冬柴委員 一般論といたしましては、この十五条に書いてあるわけでありまして、「他の動力船を右げん側に見る動力船は、」動力によって走っている船を自分の船の右側から見る船は、この場合明らかに「なだしお」は右舷側に第一富士丸を見ているわけでありますから、「動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。」このように書かれていますから、優先権は富士丸にある、抽象的にはそのように言えると思います。しかるに、一千メートルに近づいて進路が交差するような関係において十一ノット、陸上で言えば時速約二十キロの速さでその前を突っ切ろうとしたところに問題があった、私はそのように考えます。  衝突原因等については今捜査中ですから詳しく聞くことは避けますけれども、いずれにいたしましても、この潜水艦「なだしお」は短い距離の間に二つの義務違反をしているおそれが非常に濃厚である。一つは、進路を譲らなければならない帆船の進路を妨げた、衝突しそうになって急ブレーキをかけた、このような行為が一つ。その後に、民間船が優先権を持っている進路を先に横切ろうとして前進の措置をとって十一ノットで西方に走り出した。この二つの行為は今後大きな問題ではありましょうけれども、そのような命令をしたという現実、そこが大変に問題であると思います。このような命令の基礎には、先ほど来防衛局長から答弁がありましたけれども潜水艦では艦長を含む四名が見張りをしていたようでありますけれども、その四名は、第一富士丸の位置や速度あるいは進行方向などの状況をだれが見張り、どう伝達をし、艦長はこれをどう把握して再度前進を命じたのか、この点については明らかにしなければならないと思います。捜査中でありますけれども、答えられる範囲で防衛庁の答弁を求めたい、このように思います。
  177. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 その点につきましては、今調査中でありますのでお答えできません。
  178. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、この「なだしお」がクルーザーや第一富士丸航行のいわゆる法律上の優先権を無視してその前方を強引に通り抜けようとした、そのような行動をとった艦長の意識下に、私にとってはまことに嫌いな言葉ではありますが、民間船舶航行軽視、軍事優先、このような意識が見られて仕方がないわけであります。国民が本件衝突事故を通じて最も自衛隊に対して危惧を感じているのはまずこの一点にある、私はこのように思っております。  軍事優先あるいは優越意識、そういうものがなかったとすれば何があったのか。これは、「なだしお」が避航行動を大きくとることにより、いわゆる展示訓練を終えて連続して帰投している艦船の隊列を乱すのではないか、このようなことをおもんぱかったのではないかとも推測するわけでありますけれども、そうとすればまことに重大であります。防衛庁長官のこの点に関する御答弁をいただきたいと思います。
  179. 瓦力

    ○瓦国務大臣 お答えいたします。  今回の事故原因につきましては、最終的に海上保安庁における調査並びに海難審判によって明らかにされるものでございます。今、現時点におきまして防衛庁といたしまして判断を申し上げると いうことは差し控えなければなりませんし、また委員からの御質問に対しまして的確にお答えでき得なかったことを御理解はいただけると思うわけであります。  いずれにいたしましても、今委員指摘のように、軍事優先という言葉、大変私も残念に思うわけでございます。そういう言葉は、もう新しい世代の自衛隊の諸君になりましてよく憲法も承知をいたしておりますし、自分の国をどうやって守るかということにつきましての教育も行き届いておる時代でございますので、大変この言葉につきまして、私も戦後のいっときを知っておるものでございますから、格別気遣ってやらなければならぬと思うわけでございますが、まさにこうした意識というものはない、私はかように考えておるわけでありますし、今後ももちろんそういう意識で行動するということであれば国民の理解を得がたいものにするわけでありますので、十分注意してまいらなければならぬことだと心得ておるわけであります。
  180. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、事故後の行動について伺います。  衝突後「なだしお」が三名の被害者の救出しかできなかったということに対する弁明、弁解は、潜水艦救助施設等に欠けたとかあるいは後進して現場を離れたとかいうことがあった、このようなことをるる言われていますけれども、それでは、当日展示訓練に参加した他の艦船はどのような動きをしたのか。潜水艦は二隻、そのほかに八隻の護衛艦、これは船橋の上に多くの救命ボート等を持っていたはずであります。そのような艦船は、民間船舶が命を賭して救助をしていたのに、それでは潜水艦以外の護衛艦はどのような動きをしたのか、その点についてお伺いをいたします。
  181. 日吉章

    ○日吉政府委員 事故を起こしました「なだしお」につきましては先ほども御説明申し上げましたので省略させていただきますが、事故を起こしました直後、「なだしお」は近くの海を航行しております「ちとせ」に連絡をとってございます。したがいまして、護衛艦「ちとせ」は直ちに現場に赴いております。ただ、「ちとせ」は「なだしお」と約三千メートル離れてございました。第一の速力で、二十ノット近くであったと思いますが、二千メートル航行してまいりまして、先ほども申しましたように約千メートルのところで内火艇をおろしまして現場に到達いたしておりまして、一名救助いたしております。  それから、「なだしお」の後ろに一隻潜水艦がございましたが、これは千メートル程度離れてございました。これも現場に到達いたしましたが、「なだしお」と同じく潜水艦でございまして内火艇を持ってございませんので、非常に遅い足で到達をいたしたものでございますから、実は到着いたしましたときには現場には既に遭難された方を見つけることができなかったということでございます。こういう点を考えますと、こういう事故は二度とあってはならないわけでございますけれども、私どもといたしましてもいろいろ非常に貴重な教訓、経験、痛ましい経験ではありますが、これを無にしないように、今後こういうような場合の対応策を真剣に考えないといけない、かように考えております。
  182. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私が事前にお聞きしたことと一つ違うことがあります。それは、「なだしお」の後に四隻の護衛艦が続いて帰投した、このようなことを聞いたのですが、誤りですか。
  183. 日吉章

    ○日吉政府委員 展示訓練から帰港しております自衛艦は、「せとしお」という潜水艦一隻でございます。というふうに申し上げますと、他の自衛艦があったのかというふうに誤解をされると困るのでございますが、ございません。「せとしお」一隻でございます。
  184. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その点については後日調査をさせていただきますが、次の質問に移ります。  このような事故後の対応連絡の問題とかはもう他の委員がお尋ねですのでここでは繰り返しませんけれども、このような対応というものが、国民自衛隊に対して戦後一貫して緩やかに醸成し、形成をしてきたコンセンサス、これは過日の総理府のアンケート調査等にも非常に好意的にあらわれていたと思うわけでございますけれども、それに沿うものではないのではないか、このように思われます。そのような中にあって、瓦防衛庁長官や西廣事務次官が海に飛び込んでも救助するという気概を持ってほしかった旨の率直な発言をされたことに多くの国民は共感を覚えたというふうに思いますけれども、反面、そのような言葉が意味するところかどうか、海上自衛隊はことしになってからも数件の事故を起こしているということが新聞にも報道されておりますが、海上自衛隊を初め、自衛隊組織内の緩みが問われているのではないか。したがって、今回の事故を契機として、隊員の、溺者救助ということはもう当然ではありますけれども、内部基準やマニュアルあるいは指揮監督を再検討する必要はないのか、そのような今後の明確な方針をお聞かせいただきたいと思います。
  185. 児玉良雄

    ○児玉(良)政府委員 委員指摘のように、隊員の規律あるいは士気は、自衛隊の精強性を維持し、また国民の信頼を得る上で基本的な重要な要素であると考えております。  御指摘のような艦船事故、ここのところ起こっておりますけれども、私どもとしては、これが隊員の規律や士気の低下によるものではないと信じてはおります。しかしながら、事故につきましては、その事故原因究明いたしまして、その中から改善すべき点があるかどうか、これからその究明を急ぎたいと思っております。また、この事故にかかわる当面の措置として実施することになっております部隊に対する監察であるとか船舶運航に関する教育の再徹底であるとかいうことを図っていくことにしております。
  186. 冬柴鐵三

    冬柴委員 運輸大臣にお尋ねしたいと思うのですが、先ほど来もいろいろと問題になりました東京湾海上交通管制センターの問題でありますけれども、私は他の委員会におきましても、これを大阪湾にも設置すべきではないか、このような提言もかつていたしました。いずれにいたしましても、しかしこのようなものをつくっても、自衛隊艦船については通報の義務を課していないという事実があるようであります。交信ができない船舶管制制度そのものに大きな欠陥がその意味ではあるのではないか。  きょうの新聞によりますと、この点について改善をされるようなことが書かれておりましたけれども、その点について一つお伺いしたいことと、もう一つは、大臣もヨット等にお乗りになるようですけれども、最近プレジャーボートの事故、漁船等の事故、それから大型船、そういうようなものの事故、こういうものが非常に伝えられています。そういう意味から管制制度の抜本的な見直しというものが必要ではないだろうか、このように私は考えるわけです。  そのような意味で、この二つの問題、自衛隊艦船についても通報義務や管制制度そのものに服するような制度を考えていただきたいということ、それからあわせて、二百メートルというような巨大船だけじゃなしに、もう少し小さなものについても、いわゆる適用範囲を広げるという意味でこの管制制度を見直すということ、そういうことはできないものかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  187. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 東京湾海上交通センターでは、現在いわゆる管制業務というものと情報提供業務というものを行っておりまして、二百メートル以上の船舶については管制業務を行っておるわけでございます。それから一万トン以上の船舶であるとか、あるいは定期旅客運送事業の旅客船、こういったものにつきましてはいわゆる情報提供業務を行っております。  この情報提供業務といいますのは、レーダーで船舶を監視しておりまして、必要な情報を当該船舶通報するわけでございます。その前提となるものとして、当該船舶からは海上交通センターに位置通報等を受けておるわけでございます。この ような制度は、自衛艦についてもこの要件に該当する場合には同じようにやっていただいております。ただ現実問題として、自衛艦はこのような比較的大きい船舶が少ないということ、ごく例外ということでございます。  それで今後の問題といたしましては、私どもはこの対象船舶の拡大につきましては、自衛艦ということのみでなく、一般の船舶についてもこの適用の拡大について今後検討を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  188. 冬柴鐵三

    冬柴委員 あわせて民間船舶安全航行というものを図る観点からも、この事故を契機といたしまして、横須賀に出入りする自衛艦の航行マニュアルというようなものを作成していただいて、浦賀水道あるいは東京湾の徹底した安全航行を早急に確立していただきたいと思うわけでありますが、この点についての防衛庁の答弁をいただきたい、このように思います。
  189. 日吉章

    ○日吉政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、今回の事故にかんがみまして、私どもといたしましてはいろいろと改善すべき点が多々あるように思われますので、それらを検討いたしまして積極的に対応していきたい、かように考えております。
  190. 冬柴鐵三

    冬柴委員 同一の問題につきまして、運輸省考え方についてもお尋ねしたいと思いますが、いかがですか。
  191. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 海上自衛隊の艦艇のマニュアルにつきましては防衛庁で検討されるべきものでございますけれども安全航行に資するようなマニュアルが作成されるということは海上保安庁といたしましても望ましいというふうに考えております。
  192. 冬柴鐵三

    冬柴委員 最後に、今この事故によりこの浦賀水道が非常に脚光を浴びるわけですけれども、大阪湾におきましても、今関西国際空港の埋め立て、それから明石海峡大橋の架橋等で非常にふくそうをしている水路の上になお不規則にバージ、土を運ぶ船あるいは作業船等が入り乱れて動いております。私はこの事故というものを契機に、このような場所でも大きな事故が起こらなければいいがな、このようなことを常に考えるわけでありますけれども東京湾海上交通管制センターは、できてから大型船事故が顕著に減っております。そういうことを考え合わせますと、大阪湾につきましてもこのようなものをぜひつくるべきではないか、このように思うわけでありますけれども、そのような点について答弁をいただきたいと思います。
  193. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 東京湾海上交通センターの設置によりまして確かに東京湾における大型船事故が大幅に減っておりまして、私どもはその効果を認めております。と同時に、東京湾以外にも、ただいま御指摘にございましたように大阪湾あるいは来島海峡近辺、関門海峡または伊勢湾海域、こういった船舶交通のふくそう地域が全国にほかにもございます。それらの海域について、私どもとしてはこのような海上交通センターのようなシステムをつくるということを考えておりまして、大阪湾につきましては既に海難関係の団体を通じまして現在調査を進めておるところでございます。
  194. 冬柴鐵三

    冬柴委員 時間が来ましたので運輸大臣に、今の、大阪湾にもこういうような管制センターシステムを前向きに取り組んでいただくことの決意について一言お伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  195. 石原慎太郎

    石原国務大臣 日本の経済社会というのは、東京と大阪を二眼レフにしたメガロポリスで成り立っているような感じがいたしますが、これから先関西の意味合いというのはもっと高まってくると思いますし、海上の交通ももっと煩雑になると思います。当然そういう措置を積極的に考えなくてはならないと思っております。
  196. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。
  197. 関谷勝嗣

    関谷委員長 和田一仁君。
  198. 和田一仁

    ○和田委員 私は、まず初めに、今回の事故犠牲になられ亡くなられた方に心から御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族の皆さんにお悔やみの言葉を申し上げる次第でございます。そして、この事件にかかわって大変な捜索救助活動に従事しておられる皆さん方の御努力にも感謝を申し上げたいと思います。そして、私は、そういう意味で大変な犠牲を伴った今回の事故、これを絶対に再び起こしてはならないという観点から、再発防止の点から若干お聞きをしてまいりたいと思います。  先ほど民社党の河村委員が御質問を申し上げまして、私納得のいかない点もございますので、その辺からもう一回お尋ねをしたいと思います。  事故が不幸にも起こりまして、その事故直後の緊急体制について、緊急時の対処のあり方について先ほども河村委員の方から御質問がございました。なぜ普通ならばとっさにやるべき緊急信号をやらなかったのか、VHFは持っているし、それを使わなかった、そういう理由について記者会見等質問が当然出たわけですね。それに対して、潜水艦隊の司令官は、そのことについてはお答えできない、こう言って拒否をされた事実があるようですが、これに対して総理は、私はそういう事実関係認識していないが、しかしそういう感じを与えたとすれば大変遺憾である、こういう御答弁がございましたが、長官の御答弁がどうもそうなっていないので、もう一回その辺をお伺いしたいと思うのです。河村先生が感じておられるのは、そういう姿勢の問題だと思うのですね。何事でも隠してしまうという姿勢なのか、それとも権威主義的に、軍のやることだからぐずぐず言うなというような姿勢なのか、私は大変大事だと思うのですね。ですから、そういう意味で、やらなかったということが、船乗りとして第一義的にやるべきことをやらなかったのでまずかった、だから言いたくないのだという黙秘権なのかどうかも含めて私はお尋ねしたいと思うのです。  なぜこんなことを聞くかというと、世界一と言われるような非常に交通頻繁な航路ですから、細心の注意を払ってあそこは横断しなければなりません。しかし、私の認識からいうと、軍艦と商船、この関係というのは、列国でも商船が一応軍艦に敬意を払う。我が国の自衛艦も、外国の港に行けばあの昔の軍艦旗、今の自衛隊旗を掲げていけばすれ違う商船はこれに敬礼行動をとる。つまり自分の国の、その国籍の旗をおろして、それに対してよその国の軍艦は軍艦旗を半分下げて、そしてまた上げる。それに対してまた商船の方はもとへ戻す。こういうふうに非常に軍艦に対する敬意を払う。したがって優先度みたいなものがおのずからできている。これは日本の自衛艦も外国の港に行くとそういう敬礼行動を受けているわけですよ。だからといって、それがああいう頻繁な航路帯で、あの潜水艦も私が見た限り自衛艦旗がはためいておりました。そういう思いがあってあそこを強引に突っ切ろうというような姿勢があったのではないかということも含めて、私は、この潜水艦隊司令官のそういうことについては、緊急の最初の行動について答えられないと言った点について、監督者である長官の御意見を伺いたいと思います。
  199. 日吉章

    ○日吉政府委員 事故後の対応でございますから、私の方からまずお答えをさせていただきたいと思います。  まず、事故発生いたしましたときに上級司令官に対します報告連絡は直ちにいたしておりますにもかかわらず、海上保安部の方への報告は直接いたしていないということを申し上げておりますが、それと同じように、自衛隊という組織の特殊性から、通常におきましては直近の上級司令官を経由して物事を報告する、あるいは外部の方と接触をするというような習性がございます。そのことがいいことか悪いことかというのは別といたしまして、やはりそういう本来的な習性を持っております。そのことが、今回図らずも民間船を巻き添えにしました事故に際しましても通常のそういうふうなルートを選んだのだと思います。これは先ほども申しましたように、一つの大きな反省点だと私どもは思っております。  それと同じように、今回の事故に遭遇いたしまして中間司令官が外部の方々との接触を求められましたときに、そういう訓練等ができる体制になってございません。したがいまして、物事を隠すということではなくして申し上げられないということを申したのではないかと私は考えておりますが、先生ただいま御指摘のように、私ども国民からよく理解される自衛隊にならないといけないと思いますから、その点は今後十分反省をしていきたいと思っております。
  200. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいま防衛局長から答弁がございました。先ほど若干駆け足の答弁で舌足らずであったかと思うわけでございますが、やはり我々は今度の大きな事故を踏まえまして、率直に申し上げましていろいろ反省すべきことがございます。それらのことをこれから、安全航行につきましてもどうあるべきかという御指摘、まさにそのとおりと思いますので、そういう研究をさせていただきたいと考えておるわけであります。
  201. 和田一仁

    ○和田委員 私は、もう本当に、事故原因究明については海難審判によって明らかにされるその結果を待っていたいと思うのです。そういう思いでいるのに、これは運輸大臣潜水艦側に判断ミスがあったというようなことを運輸省の首脳が示唆する、こういう記事が出ておりまして、これは二十六日の新聞ですけれども、いわゆる運輸省の首脳あるいは海保の見解というようなことでこういう予断みたいな判断が、これは「潜水艦が判断ミス」、両方の新聞ともそういう見出しです。そういうことについて先ほど長官は、警察権がある海上保安庁責任者として今回の結果については厳正にやるんだ、米軍だろうが自衛隊だろうがそんなことはもう考慮しない、こういうきちっとした御答弁があったのですが、そういうことをきちっとやる前に関係省庁の首脳がこういう予断を与えるような発言をすることについてはどうお考えですか。
  202. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 海上保安庁といたしましては、本件の事件の捜査につきましては厳正、公正に行うこととしておりまして、御質問の記事に関する発言の事実があったかどうかは承知いたしておりませんけれども、この記事によって捜査が何ら影響を受けるものではないということを申し上げたいと存じます。
  203. 和田一仁

    ○和田委員 再発を絶対させないという意味で、先ほど河村委員質問にもございましたけれども、あそこの東京マーチスができて、そしてみんなその管制下に入ってあの航路帯を通るわけです。私は、自衛艦も五十メーター以上の船ですから当然その航路帯に入って、そして管制を受けたから行くべきだと思うのです。さっき山田長官のお話では、もちろん位置通報はあって連携はとっている、こう言っておりますが、私は、法的にそれはやはり五十メーター以上の船であれば現行法からいってもきちっと管制下に入るべきだと思うのです。これは当然だと思うのですがいかがでしょうか。そういうものがまだ便宜的に位置通報があるというだけでいいのかどうか、もっときちっとした方がいいように思うのですが、その点はいかがか。
  204. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  東京湾海上交通センターが行っております管制業務につきましては法律できちっと決められておりまして、その際には民間船であると自衛艦の艦艇であると区別はしておりません。当然自衛艦にも適用があるということでございます。
  205. 和田一仁

    ○和田委員 わかりました。それではそのようにしていただいて……。  そのほか非常にたくさんの船が錯綜して通るわけですけれども、先ほど長官のお話で東京マーチスの能力の問題を言っておりました。全船舶をいろいろな管制下に置くことは難しい、拡大の方向で努力するというお話でしたが、それはぜひやっていただいて、でき得る限りそういうことで管制下に置いてもらうように前向きに検討していただきたい。そのために予算が必要であるとか人員をふやさなければならぬということならそんなものはぜひやってもらわなければいかぬ、こう思うわけですね。  そこで、大変時間が少ないので大急ぎで御質問いたしますけれども、最近遊漁船というものが非常にふえてまいりました。これがどういう法的な位置づけであるのか、これをもっときちっとしないといけないと私は思うのです。釣り舟だということで、向こうのいそ渡しのように三十人、四十人を一時間ぐらいで渡してしまうという船とは違って、この遊漁船を見ると四十人からのお客さんを乗せて相当外洋まで出ていって、そして夜を徹して何泊かしながらやるというような能力のある船、そういう船が、十三人以上は旅客船と言われているにもかかわらず旅客船の規定にも入っていない、こういうような現行上の扱いはこのままでいいかどうか、大臣いかがでしょうか。
  206. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 構造、設備につきまして船舶安全法上旅客船として取り扱っております。したがいまして、旅客船の基準で検査をやるということになっております。
  207. 和田一仁

    ○和田委員 そうすると、今度事故を起こしました第一富士丸は、旅客船としての定期整備あるいは構造上のいろいろな規制をクリアしているということでしょうか。
  208. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 そのとおりでございます。
  209. 和田一仁

    ○和田委員 そうすると、救命ブイあるいはジャケットあるいは浮器、こういうものは全部完備していたわけですね。
  210. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 検査の時期には完備いたしておりました。検査で確認いたしております。
  211. 和田一仁

    ○和田委員 私は細かい技術的なことはわかりませんけれども、船が改装されて今のような格好になった。そして、もともとなかったキャビンがデッキの上にできた。そしてまた魚を入れるような船倉に居住区をつくっている。したがって、防水区画というようなものは本来旅客船として計画、設計をされているものとは随分違うような気がするのですが、これはそれでもよろしいのですか。
  212. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 漁船を遊漁船に改造いたしましたときに、旅客船の基準を適用して検査をいたしております。したがいまして、旅客船の基準に合致いたしております。復原性の検査もやっておりまして(発言する者あり)それは上の……
  213. 関谷勝嗣

    関谷委員長 答弁をきちんとやって、よその質問におかしなことを言わないでください。
  214. 和田一仁

    ○和田委員 私は、今の答弁が正確であるとすれば、もっと時間のあるときにきっちり詰めていきたいと思います。  その旅客船というものにはVHFはつくようになっているのですか、VHF、電話。
  215. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 百トン以上の沿海区域を航行する旅客船でございますので、無線電話はついております。
  216. 和田一仁

    ○和田委員 これは潜水艦にもついているのです。そして第一富士丸にもついている。お互いに目視し合える距離にいて何でこういうときにVHFを使わないのか、これはおかしいと思うのです。これはお互いに危険があれば交信しながら、見ながらやれるのではないかと思うのですが、大臣、何か御見解があるのですか。これは使えないのですか、何か今おっしゃっていたけれども
  217. 石原慎太郎

    石原国務大臣 それは相手を視認しているのですから、それはあくまで船長あるいは操船しているスタッフのシーマンシップで衝突をかわすのが常道で、一々電話をかけて航路を譲り合うなんという話は私は余り聞いたことございません。
  218. 和田一仁

    ○和田委員 それでは、これはどういうときに使うためのものなんでしょうか。私が聞いた限りでは、こういうものがあれば利用すべきだという話を聞いているわけです。ですから、これはもっと専門の、本当ならここに制服の人に来てもらうのです。制服の人が来て、現場で操船している人からこういうことは聞かないといけない。それを防衛庁は制服を絶対国会に呼んでこない。来てくれといってもだめだという、シビリアンコントロールだからだめだというだけです。これはいろいろな細かいことを一々制服の人から聞かなければならない。この点はまた後でやります。  そしてこれは少なくも、先ほども言っていまし たけれども、ここは交通頻繁ですから、絶対に起こさないためにはやはり一方通行がいい。しかし、商船、民間の船は一方通行で遠回りになれば経費や時間のロスが多いから、それはなかなか実現できない。これは前に一遍そういう案を検討したことがありますが、できなかった。少なくも自衛艦は入港のときには一遍湾内に入って広いところまで行ってUターンしてくる、横切らないという方法がとれるのではないかというのが先ほど河村質問の最後の質問でしたが、これはいかがでしょうか。
  219. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  この浦賀水道の航路の北側の部分、この航路を外れた部分は、付近に横浜港、東京港、千葉港といった港湾がございます、これは先ほども御答弁させていただきましたけれども。そのようなところにほかの船をすべて集中させるということは、逆に言えば、ある意味ではそこでふくそう化するということにもなりかねないと思いますので、十分今先生のおっしゃった御指摘の点も含めて、今後管制のやり方等に、管制といいますか東京湾における航行安全の方法を検討する際には念頭に置かれるべき事項かと思いますけれども、一方でそういう問題があるということも申し上げておきたいと存じます。
  220. 和田一仁

    ○和田委員 もう時間がないようなので、その点について防衛庁長官、管理している方では検討に値すると言っておられるわけです。ですから、安全を最優先考えたら、そういうふうにより安全な航路があるのだから、そういう方法を自衛艦だけはとろうというようにひとつ御指示いただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  221. 瓦力

    ○瓦国務大臣 今度の大きな事故につきましていろいろ反省すべきところがあろうと思うわけでありますが、湾内におきましての航行、運航につきましては格別安全を踏まえなければなりませんし、また、これらのことにつきまして研究をしなければならぬ課題がさらにあろうと思います。これらのことを含めまして、今後の再発防止、こうした問題に取り組んでいくべきと考えておる次第でございます。
  222. 和田一仁

    ○和田委員 終わります。時間が来ました。どうもありがとうございました。
  223. 関谷勝嗣

    関谷委員長 中路雅弘君。
  224. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほど総理への質問で、私は、事故直後から現場に行き、現地の関係者からお話も聞き、あるいは一般の新聞、テレビ等でも報道されている証言等も御紹介しながら総理の見解をお尋ねしました。私の質問に先ほどは全く具体的には答えられていない。そして、海上自衛隊のとった処置は部署部署で正確に行われたと確信しているというだけの答弁でありました。これは不誠実なあれで、今国民のいろいろ怒りを買っている東山海幕長とこの答弁は変わらないわけです。  改めて、具体的に私がお尋ねした問題について二、三、長官に最初にお聞きをしたいと思います。  海中に投げ出されたこの事故後の対応の問題でありますけれども、必死に救助を求める人たちの救助について海上自衛隊が万全であったか、放置されたという問題について幾つか実例をお話しました。この救出の問題が万全だったのか、今反省すべき点はないのか、最初にお聞きをしたいと思います。
  225. 日吉章

    ○日吉政府委員 これまでもたびたびお答えいたしております過程におきまして私どもの反省点を御理解賜っているかと思いますが、まず、かかる事故が、あってはならないわけでございますが、起こりました場合の連絡通報の方法につきましての再検討は一つの検討課題かと思います。  それから、不幸にしてこういう事故が起こりましたときの救難の方法でございますが、今回の場合には非常に不幸が重なりまして、潜水艦という、水上におきます事故に対する対応力の非常に弱い船であったわけでございますが、この潜水艦の救難態勢というものはどのような態勢にすることがよろしいのか等々は検討課題ではないかと考えております。
  226. 中路雅弘

    ○中路委員 長官、いかがですか。救難の問題です、今度の事故の問題について。
  227. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいま政府委員より答弁させましたが、さように私どもも検討を加えてまいるつもりであります。
  228. 中路雅弘

    ○中路委員 通報が二十一分おくれたということがしばしば指摘されていますが、当初、この潜水艦は外部への通信の装備をしていなかった、施設を持っていないということを海幕で言っていました。その後で、これがある、緊急の信号もできる、あるいは緊急の無線の電話も十台持っている。全く使われていないわけです。そしてこの大きなおくれが、海上保安庁が特殊救難隊を出動させたのは事故から三十七分後です。この特殊救難隊というのは、潜水もできる特別の訓練をされた救難隊です。事故後あるいは五分、十分というのがこうした衝突事故の救命の最も重要な時期であります。それが特殊救難隊、海上保安庁連絡が行ったのは二十一分後、出動したのが三十七分後という事態ですね。こうした通報のおくれが大変大きな問題点だろうと私は思いますが、こうした問題についても万全だったのか、全く反省すべき点がないのか、長官からもお聞きをしたいと思います。
  229. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在与えられております条件の中で、各隊員は少なくとも彼らなりに最善の措置を講じたのではあろうと思いますが、客観的にその後の事態を調査してまいりますと、やはり反省すべき点は多々ございます。その点は私どもは、事情の重要性にかんがみまして極めて真摯に受けとめておりまして、早急なる検討結果を出したいと考えているところでございます。
  230. 中路雅弘

    ○中路委員 事故の直後、海上保安部にも行きましたけれども、もう私が夜行ったときには船長は同じ建物で取り調べが始まっていました。どうして艦長を呼ばないのかということを言いましたら、当時はまだ救難の活動をしていたということですが、最近の新聞で海上保安庁は、最初出頭を拒否されたということを述べています。実際に始まったのは事故から七時間後であります。しかも海上保安庁の建物に呼んでいない。艦長の方は、出かけていって地方総監部で取り調べをする。一昨日からですか、私、長官が来られたときにこのことを指摘しました。当日、その日から一緒に呼んでいるそうですが、公正、厳正にと言いながら、取り調べにおいてどうしてこんなことをやっているのですか。こっちから出かけていって、しかも七時間後に調べる。しかも最初と違って、最初は出頭を拒否されたということが後で報道されていますが、事実はどうですか。
  231. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 まず、私どもとしては、今回の事故調査につきましては、原因究明等の調査の正確を期するためにできるだけ早く調査を行いたいということが一つございます。他方、衝突後「なだしお」は相手船第一富士丸の乗客、の救助活動に当たっておりまして、海上において衝突船がまず相手船の乗客、乗員の救助活動に当たるということは艦艇の乗組員からして当然の行動であるわけでございまして、当庁といたしまして当初「なだしお」艦長などの取り調べを差し控えておったわけでございます。しかしながら、最初に申し上げましたように、できるだけ早い時期に行う必要がございますので、同日の二十三時四十分ごろに取り調べ官を「なだしお」に派遣いたしまして初動調査等を直ちに行ったわけでございまして、海上自衛隊側が私どもの出頭命令に対して応じなかったというような事実はございません。
  232. 中路雅弘

    ○中路委員 通報の問題で一問聞いておきたいのです。  これは朝日新聞が出しています英字夕刊紙ですね、アサヒ・イブニングニューズ、二十七日付で出ていますが、在日米海軍司令部事故発生から数分以内に海上自衛隊から連絡があったということですね。これは文書で米軍司令部から回答が寄せられている問題でありますけれども、いろいろその後の通信も出ています。アメリカの司令官から文書で回答をされている問題です。正確にして いただきたい。
  233. 日吉章

    ○日吉政府委員 突然の御質問でございまして、私、事実関係及び質問の内容も正確に理解しがたいものでございます。
  234. 中路雅弘

    ○中路委員 これは後で正確に調査をしていただきたい、新聞で報道されているわけですから。そして、文書の回答も出ているわけです。米軍司令部から文書で、数分後に、ウィズイン・ミニッツですね、自衛隊から連絡があったということが、回答が寄せられています。後でこれはぜひ調査をしていただきたいと思います。  時間が限られていますので、あと事実問題で一、二お聞きをしておきたいのですが、「なだしお」がブイを回って右舷に第一富士丸を見た、確認したから、艦長の証言でも、直進をする、行けると思って直進をするということで行ったわけですけれども、右舷を見て確認してからどこまで直進していったのかおわかりになりますか。
  235. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 どこまで直進したかという点はまさに捜査のあるいは調査の対象でありまして、お答えすることができません。
  236. 中路雅弘

    ○中路委員 右に回避するということですね。回避したのはどこで回避したのですか。
  237. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 防衛庁としては、その点はお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  238. 中路雅弘

    ○中路委員 まだ一切捜査中ということでお答えありませんけれども、報道されています艦長の証言でも、直進していく、しかも十一ノットですから、潜水艦の浮上している高速最大は十二ノット、ほぼそれに近い速度で直進をしたわけですね。海上衝突予防法でも、右の方に船を見た側が回避船、衝突を避けるための措置をとらなくてはなりません。まさにこれがどこで、直進をしたのが最終的に右へ回避をとったのか、もう衝突直前だと思いますけれども、第一の義務である回避船ですね、義務船、これが直進をしていったという中に、衝突直前に右旋回をとったというところに重要な原因があるということは明白ではないかと私は思いますが、先ほど事実の問題についてまだお答えがないので、これは控えたいと思います。  最後に、これも総理質問のときにお尋ねして、ちょっと時間切れになって長官の見解は聞いていないわけですけれども、東山幕僚長がこう言っているのですね。海難審判庁の判断が出るまでは、海上保安庁自衛隊過失があると認めてもそれぞれの責任者の引責辞任はさせない、こう言っているのですね。全く人事権のない制服が、それぞれの責任者過失を認めて引責辞職をさせない。この問題は、今までのいろいろな発言とは違って、無責任発言とは違って重要な問題です。まさにこうしたことが通れば、シビリアンコントロールあるいは総理防衛庁長官、人事権を持つ防衛庁長官自衛隊法を全く無視される。私は、この発言については防衛庁長官から見解をはっきりお聞きしたい。
  239. 依田智治

    ○依田政府委員 記者会見に係る問題ですので私からちょっと。  昨日海上幕僚長、遺体が続々と上がるという状況の中で現地にお見舞いに参上しましたときに記者会見で聞かれた、その際にそのようなことを申し上げたわけですが、後ほど報道等で見て、これは全く自分の真意と違っていたということで、実は幕僚長は、現在は行方不明者捜索とかそういう対策最高責任者として全力を尽くすべきである、したがって、ある程度原因等が判明する時間までは何とかこの対策をしなければいかぬという気持ちを申し上げたということでございまして、審判が、裁定が出るまでというのは間違いであったということで、昨日夜、訂正させていただきました。  そんな状況でございまして、どうかひとつ……。
  240. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですので終わりますけれども、訂正といっても、これは実際に発言しているのです。自衛隊過失があると保安庁が認めても、それぞれの責任者は引責辞職をさせない、全く人事権を持たない幕僚長がこうした発言をしている。発言を取り消すということでは決して済まない問題です。  防衛庁長官は先ほどから発言を控えておられますが、これは長官の人事権にかかわる発言ですから、最後に長官、この問題についてはひとつ発言してください。あなたの権限の問題です。
  241. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいま官房長からお答えがございましたが、真意はかようであるという東山海幕長の真意をただいま官房長から答弁をいたしておりますので、私は、そのことで間違いはないと考えるものでございます。
  242. 関谷勝嗣

    関谷委員長 佐々内閣安全保障室長より訂正の発言を求められておりますので、これを許します。佐々内閣安全保障室長
  243. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 先ほどの浅井先生に対する御答弁で言葉足らずの点がございましたので、補足説明をさせていただきます。  正確に申しますと、防衛庁から内閣総理大臣秘書官に通報がございましたのが四時二十五分、四時三十分に官房長官秘書官を通じまして私に、官房長官に報告をするので情報収集協力ということがございました。  言われるまでもなく私ども、直ちにその実施に当たっておりましたところ、官房長官から正式な任務付与がございましたのが五時半ごろでございまして、海上保安庁及び自衛隊に対して、人命救助、救難活動を最優先で行え、事故原因究明せよ、こういう御指示がございました。  ちょっと御説明が不正確でございましたので、修正させていただきます。
  244. 関谷勝嗣

    関谷委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後一時二十九分散会