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1988-11-09 第113回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月九日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 箕輪  登君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 月原 茂皓君 理事 宮下 創平君    理事 山崎  拓君 理事 左近 正男君    理事 冬柴 鉄三君       柿澤 弘治君    谷川 和穗君       中川 昭一君    増岡 博之君       松田 九郎君    三原 朝彦君       武藤 山治君    安井 吉典君       渡部 行雄君    神崎 武法君       鈴切 康雄君    和田 一仁君       東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 児玉 良雄君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁建設         部長      田原 敬造君         外務省アジア局         長       長谷川和年君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         水産庁長官   田中 宏尚君         運輸省海上技術         安全局長    石井 和也君         海上保安庁次長 野尻  豊君  委員外出席者         運輸省国際運         輸・観光局国際         航空課長    土井 勝二君         運輸省航空局技         術部運航課長  松本 健治君         特別委員会第三         調査室長    中島  勉君     ───────────── 委員の異動 十一月九日  辞任         補欠選任   玉沢徳一郎君     松田 九郎君   神田  厚君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任   松田 九郎君     玉沢徳一郎君   和田 一仁君     神田  厚君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ────◇─────
  2. 箕輪登

    箕輪委員長 これより会議を開きます。  この際、田澤防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。田澤防衛庁長官
  3. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 安全保障特別委員会の開会に当たりましてごあいさつを申し上げます。  当委員会皆様には、平素から我が国安全保障に深い関心を持たれ、御指導をいただいていることに対し、深く感謝を申し上げる次第であります。  申すまでもなく、防衛庁我が国の独立と平和を守り、国の安全を確保するという、国家存立の基本にかかわる重大な使命を担っております。その責任者である防衛庁長官就任したということで身の引き締まる思いがいたしております。今後とも皆様の御指導を得て、微力ながら大任を全うすべく努力してまいる所存でございますので、よろしくお願いをいたします。  本日は、この機会をおかりしまして、皆様に私の所信一端を申し述べさせていただきたいと存じます。  御案内のとおり現在の国際情勢は、米ソ間において軍備管理・軍縮への真摯な努力が続けられているとはいえ、ソ連の一貫した軍事力増強、混迷する中東情勢などを考えれば、依然として厳しくかつ流動的であると言わざるを得ません。このような国際情勢のもとにあって、我が国の平和と安全を確保するため、引き続き日米安全保障体制を堅持し、自衛のため必要な限度において質の高い防衛力整備を行っていくことが必要であると考えております。  このため政府は、防衛力整備に当たり、「防衛計画大綱」に定める我が国が平時から保有しておくべき防衛力の水準の達成を図ることを目標とする中期防衛力整備計画の着実な実施に努めることとしております。昭和六十四年度防衛予算につきましては、現在概算要求を行っているところでありますが、かかる観点に立って、中期防衛力整備計画の第四年度として質の高い防衛力の着実な整備に努めることとし、所要の経費を要求しているところであります。  なお、中期防衛力整備計画後の昭和六十六年度以降の防衛力整備あり方については、今後安全保障会議等において御審議いただくことになろうと思いますが、私としては、長期的な視点に立って計画的に進めるべきとの観点から、中期的な防衛力整備計画を策定することが望ましいと考えており、速やかにその検討に着手したいと考えております。  また、我が国日米安全保障体制信頼性の向上のため、不断の努力を行う必要があると考えております。このため「日米防衛協力のための指針」に基づく共同作戦計画研究等の推進、日米共同訓練積極的実施FSX日米共同開発を初めとした装備技術面における日米協力の一層の緊密化等を通じて、両国の信頼関係を図るべきものとするよう努めてまいる所存であります。  以上、我が国防衛政策について私の所信一端を申し述べました。政府としては、憲法下専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならず、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力整備を進めてまいる所存でありますが、真に有効な防衛力を構築するに当たっては、自衛隊に対する国民の深い理解信頼が不可欠であります。このため私は、国民信頼するに足る真に精強な自衛隊の育成に努める一方、国民の中にみずからの国はみずからの手で守るという自衛の意識を高め、もって国の安全保障の強固な基盤を確立すべく一層の努力を傾けてま いる所存であります。  終わりに、我が国安全保障に関し、幅広く論議される場である当委員会での御審議を通じ、一層の御指導、御鞭撻を賜ることを重ねてお願いいたしまして、私のごあいさつ所信表明とさせていただきます。     ─────────────
  4. 箕輪登

    箕輪委員長 国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松田九郎君。
  5. 松田九郎

    松田(九)委員 委員各位お礼を申し上げます。不肖私が当委員会発言する機会を与えていただきまして大変恐縮です。心からお礼を申し上げます。  ところで、ただいま防衛庁長官安全保障全般に対する所見一端を伺ったのですが、今の所見の中でただの一言も、今次全国民の心胆を揺るがしめておる、また自衛隊に対してまさに無秩序な、そして集団的ないわゆる徒党みたいに言われておる、冷酷非情自衛隊であるかのごとき印象をほとんどの全国民に与えておる今次の「なだしお」、第一富士丸事件については、実は一言も触れていない。同時にまた、なぜあなたが内閣改造もないのに突然として大臣就任をされておるか、その経緯と前長官に対するそれこそ配慮したあいさつもなかったが、その点について長官は一体どのような考えなのか。余り長くやらぬから。時間の関係で、一問一答式に私はやりたいから、長官に明快に、的確に答えてもらいたい。
  6. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 去る八月、御承知のように潜水艦なだしお」と第一富士丸衝突事故責任をとりまして瓦防衛庁長官は退任されました。その後を受けまして私が防衛庁長官就任をいたしたのでございます。今、所信表明の中で「なだしお」と第一富士丸衝突事故についての経緯を申し上げなかったことは甚だ失礼でございますけれども、この問題について私は今後も再びこのような事故の起こらないよう、また賠償問題等については御遺族を第一義的に考えてこれを処理してまいりたい、かように考えておるのでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  7. 松田九郎

    松田(九)委員 補償の問題なんて、あなたが真相をはっきりさせずに口にすべきことじゃないのではないのですか。一体だれが、どちらが、自衛隊側が、第一富士丸側が、国が、どういう補償をするかは別次元、別問題である。私はそんなことを聞いておるのじゃない。  ところで、あなたにお聞きをしたいのだけれども、あなたは防衛庁長官となって、前艦長山下啓介氏及び前防衛庁長官瓦力氏がなぜ辞職までしなければならなかったか、一言でいい、当然であると思うのか、残念であると言うのか、やむを得ない仕儀であったと言うのか、ならば一体その理由、簡単に答えてもらいたい。
  8. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 瓦防衛庁長官心境については私もよく理解いたしませんけれども、私は瓦前防衛庁長官とは親しい仲にあります。私の後輩でもございますので、当時の心境について私もいささか理解する者の一人でございますが、私としてはまことに残念なことである、こう思っております。
  9. 松田九郎

    松田(九)委員 今防衛庁長官が言われた冒頭のあいさつの中で、自衛隊防衛力整備計画を充実する観点からも、国民に真に期待信頼を与える観点からも、十分に今後も国会それから国民の支持を受けながら、理解を受けながらやっていきたい、そういう意味のことを言われたけれども、ならば一体今時の国民の間に「なだしお」の問題を通じて、実はある意味においては自衛隊に対する信頼度が大変覆されんばかりになっておる。  ここに、私は週刊誌の中では最も権威のある週刊誌と思っておるが、週刊新潮にこう書いてある。「「なだしお袋叩きを演出した第一富士丸の「男」「女」」そういう見出しで、これは十月十三日号、つい最近号である。「一つウソが真実を決定的に歪めてしまう場合がある。潜水艦なだしお」と大型釣船「第一富士丸」の衝突沈没事故で、新聞、テレビは「なだしお」の横暴、非情ぶり袋叩きにしたけれども、その非難の根拠の一つが、「潜水艦乗組員たちは目の前で沈んでいく人に手を差し伸べてくれなかった」という第一富士丸女性乗組員証言だった。しかし、この証言は“偽証”だった。」はっきり偽証だったと週刊新潮は断定をして書いておる。「海上保安庁の調べで判明した。が、一度つかれたウソはエスカレートし、日本中を妖怪のように覆った。いったい、この始末はどうつければいいのか。」週刊新潮マスコミでさえもこのように現在の時点においては、「なだしお」の事件なんというのは自衛隊側に非はなかった、うそででっち上げられた一部マスコミの作為的なマスコミ操作によるものであるということが明快に書いてあるのだが、防衛庁長官国民信頼期待を今後も継続すると言うならば、あなたは積極的に週刊誌でさえ書いておる事実をはっきり国民の前にさらけ出して、その是非について批判を受けてみなければならぬ。私はまことに遺憾である。  事実問題としても、「なだしお」が腕をこまねいて艦上から第一富士丸を眺めておった。たった二分しかないのに、沈没するまでどうして腕をこまねいて艦橋まで上がってこられる時間があるか。二千二百トンという巨大な潜水艦だ。潜水艦の構造は釈迦に説法、長官自衛隊関係者が知っておるとおりだ。そんな一足飛びに、ごつんと事故があったから直ちに走り出せるものではない。ほかの軍艦と違うぞ。一人一人はしごを伝って、潜望鏡で眺めておる司令塔から、事故発生があれば下から一人一人順を追って上がってこなければならぬ。二分や三分間で一体そういう腕をこまねく暇があったのか。物理的にないことは事実。しかも、この女性うそであったということをほかの新聞にもその後言っている。この始末については、自衛隊は現在はどういう処置をとっておるか。偽証罪でやられなければいかぬのじゃないのか。それで、いかに少女であろうとも天下国家の問題をそんなおろそかにすべきではない。何十万という自衛隊員の父兄、日本の生命、財産、国土を守っておる何十万という自衛隊員の誇り、そして今後の訓練に精進をさせる意味からも、士気を鼓舞する意味からも、自衛隊に非なしとする、そういう積極的な政策というものを防衛庁長官はとるべきじゃないのか。なぜそれがとれないんだ。なぜ遠慮をするんだ。堂々と国民の前にその真を、その内容をさらけ出して言うべきじゃないの。そのせりふを聞きたい。
  10. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今回の事故原因究明については、松田先生承知のように、海難審判あるいは検察当局でこれを捜査をしているのでございますから、これはそのことにお任せして、私たちとしてはできるだけ正しい事実関係、それから原因究明が速やかに、しかも公正に行われることを期待しているわけでございます。  いま一つは、ただいま御指摘のように、捜索に当たっては、これまでも東山海幕長が申しておりますように、捜索上においては精いっぱいやったんだ、したがいまして、海上自衛隊としての失態はなかったということを申しておるわけでございます。事実また、山下艦長が文芸春秋の中に書かれておりますように、私は精いっぱいやった、しかも部下に対して、非常に涙を流したのがいる、それに対して今にわかるよという、その心境は私はようわかるわけでございますので、私は機会あるごとにこの点については、海上保安庁も既にこの捜索については自衛隊失態がない、精いっぱいやったんだということを認めておりますし、また、女性乗組員発言も、それは間違いであったということを内閣委員会でもそれを発表さしているような状況でございますので、私も機会あるごとに、この点については我が自衛隊あり方はいわゆる捜索においては間違いないのだ、しかもまた、これまでの歩み方においても自衛隊としては精いっぱい努力をしてきているんだということを主張してまいっておるわけでございまして、その点はひとつ御理解いただきたい、こう思います。
  11. 松田九郎

    松田(九)委員 私がなぜ声を大にしてこのことを言っておるかというと、先ほど長官が言われた中期防計画、今日の防衛予算というものがまことに微々たるものだ。自衛隊の官舎はまだまだ御承知のとおり水洗便所もない。訓練に必要な体育館さえない。私のところなんかもそうだ。日夜国家、民族のために、領土保全のために頑張っておる自衛隊、給与なんて十分じゃない。そして、日夜猛訓練に励んでおる現地のいわゆる自衛官の心情を思うときに、自衛隊悪党か山賊の集団みたいに言われて、しかもその事実が歪曲をされて、しかも国民信頼を裏切らしめて、一体今後の自衛隊防衛予算というものが増強していく中にあって、ほおかぶりでいけるものじゃない。この重大問題はいま少しく積極的に前向きに防衛庁としても内閣としてもとるべきだ、私はそう思っておるのだ。  山下艦長なんか、考えてごらんなさい。なぜやめなければいかぬのか。なぜ防衛庁長官はやめなければならなかったのか。やめること自体と、三十名の亡くなった方の御遺族への哀悼の問題とは異次元の問題だ。そのこととやめることとは、私はおのずから別だと思う。やめたことにおいて、一体国民の目に映ったものは、自衛隊はこの少女証言のとおりまさに冷酷非情の仕打ちをしたんだ。私なんか、至るところでこの種の話をすると、聞いた者はほとんど、ああそうですか、よくわかりました、やはり真相は聞いてみなければわかりませんな……。私は、事故発生の当日から真相かくてなければならぬということを言ったものだ。防衛庁にも、私は事故の翌日海幕長のところへ行った。真相を赤裸々に聞いて、私は私なりに勉強をして激励をした。みんな泣いておったじゃないか。そういう状況の中に一方的に悪党みたいに言われておる自衛隊を、あなたはその総帥として今後リーダーシップを握っていくわけだから、常に毅然としてやってもらいたい。自衛隊はそんなに国民から信頼されていないとは私は思わない。いつまでもこの問題での弊害というものが温床になって、今後の正当な国民に対する防衛思想というものの普及徹底がなおざりにされてはならぬと私は思う。  いま一つ防衛計画について、今後の防衛予算について、大臣現状のいわゆるGNP一%について率直なところ、是であるか、非であるか、妥当であるか、不適であるか、答えてもらいたい。
  12. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 松田先生の非常に防衛庁の将来を思っての御発言に対して本当に感謝にたえません。ただいまの御発言を私たちは体して、国民信頼される自衛隊として、積極的に有事の際に役に立つ自衛隊としての役割を果たしてまいりたいと考えますので、将来とも御指導をひとつお願い申し上げる次第でございます。  一%問題につきましては、御承知のように防衛大綱にのっとって中期防衛力計画を今進めているわけでございまして、その中で現在一%をやや上回る状況にあるわけでございまして、私たちはこれからも節度ある防衛力整備を進めるということで進めてまいりたい、こう思いますので、そういう点を御理解いただきたいと思います。
  13. 松田九郎

    松田(九)委員 長官の今の答弁については私は余り納得をしないのだけれども、時間の関係で追及して質問することはやめます。  この間我々国会議員八名がアメリカに渡って、いわゆる農産物自由化阻止問題についてアメリカ側ヤイター通商代表スミスリン農務長官等々と政治会談をしたことがある。そのときに、同僚議員である玉沢徳一郎代議士が、アメリカは事もあろうに沖縄にやってきて基地を占領している、そして、パイナップル農民を追い出して、そこに基地をつくったじゃないか、追い出された農民が山に上がって、ようやくやれやれとパイナップルが実らんとするときに、またぞろパイナップル自由化とは一体何事だ、そういう厳しい意見を出したことがある。私どもはそういう心境だ。ところが、アメリカスミスが言ったことは、何をお前さん言っているのだ、おれの息子はこのごろ、一週間前に海軍大学を出たばかりだ、親子団らんで、アメリカの国内のどこかに勤務できると思って楽しみにしておったのに、事もあろうに九千キロかなたの沖縄に行ってお前さんの国の沖縄を守っておるのだ、七百億ドルもの貿易黒字を出しながら、自分の国さえ守らぬからアメリカが行って肩がわり防衛の任に当たっておるのに、その守っておる我々をけしからぬとは一体何事だ、ならばあしたにでもアメリカは引き揚げるから、お前さんたちの国はお前さんたちで守れと言われたときは一言もなかった。九千キロのかなたにおれの息子が行っておるのだ、人間としてその気持ちがわかるか。私どもかつて予備士官学校を出て九州あたりに着任できるかと思ったら、満州に紙切れ一枚でやられたときには、三千キロのかなたに親戚、兄弟と水杯して行ったことがある。三千キロと九千キロ、長官、どっちが距離は長いのか。アメリカはそういう考え方なんだ。  この間ヨーロッパに総理のお供をして行った。まずイタリアに行った。午さん会でどういうことを国会議員は言ったか、あなたは日本防衛計画についてどう思うか。私はこれはどう言ったものか、防衛力増強せいと言ったら、これは軍事大国になってけしからぬと言いやせぬかと思ったが、しかし私は私の持論をそのとき言った。日本防衛力はまだ十分ではない。そうしたら、イタリア国会議員が皆言った。日本は甘過ぎる、自由主義国家群の一員としてやるべきことをやらぬ、金もうけばかりしておって、防衛力増強もせぬで、自分の国ぐらい自分で守れ。イギリスでも言われた。ドイツでも言われた。世界の国々の国会議員は言っておるのだ。元首は言っておるのだ。  世界各国からそういう批判と中傷の中にある日本防衛力整備計画について、いま少しく防衛庁としては正しい防衛あり方、昨年の沖縄における、専守防衛とはいいながら何で十一分間もソ連軍用機沖縄基地自衛隊基地を気まま勝手に、それこそ電波はキャッチするわ、そして施設の写真撮影をするわ、お通りください、早くお逃げくださいなんて言わんばかりの防衛有事立法について、こんな問題を含めて防衛庁としてはいかに考えておるか、専守防衛で事足りると思っているのか、そのことについてお聞きしたい。
  14. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御承知のように、我が国憲法九条では、いわゆる主権国としての日本の固有のいわゆる自衛権は否定していないというところから、この防衛の問題が始まっているわけでございまして、昭和二十五年に警察予備隊で発足し、二十七年に保安庁保安隊になり、そして二十九年に防衛庁自衛隊になったのでございます。それから三十年間皆様方の大変な御協力によって今日の自衛隊というものの存在が、二、三日前の朝日新聞を見ましても、国の平和のために役に立っている自衛隊というのが五三%にも達しているというような状態にしたことは、これは何としても私は感謝にたえないと思うのでございます。  これからもこの日本防衛力を本当に有事の際にも有効に活用していくためには、本日おいでの、いわゆる安全保障特別委員会で各党がこの中で話し合っていただいて、今お話しのような日本防衛日本の安全が必要なんだということを国会の中で合意を得て、そうして私たちを激励していただきますならば、私たちは本当に助かるわけでございます。もちろん、私たちには私たちとしての、これからの防衛力整備についてはただいま御指摘のように、もっともっと整備していかなければならないという考えを持っておるのでございますので、そういう点を御理解いただきたい、こう思うのでございます。
  15. 松田九郎

    松田(九)委員 時間がないので、大変支離滅裂な質問で恐縮だけれども、現在プルトニウム海上輸送について政府内部検討しておるようだが、これは一体どこがその任に当たろうということで内部検討しておるのか。私は、自衛隊が当然のこと、これはやるべきだと思うが、その理由経緯について説明すると時間がないから省きますが、これは自衛隊、どう考えておるのか、核燃料の再処理の問題。
  16. 日吉章

    日吉政府委員 先生ただいまお尋ねの、プルトニウム海上輸送具体化等の問題でございますが、これにつきましては日米原子力協定実施上の問題でございまして、現在関係省庁において検討されているものと承知いたしておりますが、防衛庁関係してくるとしますれば、この海上輸送護衛についてであろうかと思いますが、これにつきましては、現在、そもそもプルトニウム海上輸送具体化検討しておりますそれらの関係省庁からは何ら私どもの方に御連絡、合い議等もいただいておりませんで、私どもといたしましても、自衛艦による護衛検討というものは行っていないというのが現状でございます。
  17. 松田九郎

    松田(九)委員 防衛庁に対する質疑はまだたくさんありますけれども、時間の関係で別の機会に譲ります。  せっかく水産庁長官に来てもらっておるから、あなたの方に聞きたいのだが、「なだしお」問題に関連して、自由民主党内でもかなりかんかんがくがく、従来の野放しの遊漁船というものについて許可制でやるべきだとおれなんかも言ってきたのだ。ところが、許可制じゃなくて届け出制に終わっておるが、これで十分なのか。しかも、あなた、無制限に何百人も乗せていいというようなことになっておるが、遊漁船というのはそんなものなのか。プロ化しておりはせぬか。遊漁なんというのは隣近所の者がささやかに日曜日などの楽しみ一つ釣りに行ってこようかというのが本質的なものであって、まきえまで持って、大型船で大きな漁具で大きな釣り道具で、漁民の生活権を侵してまで、沿岸漁民はそれで生活を立てておるのだ。人の漁場を荒らしまくって、海域の漁区の制限もなくやるなんということは許されるのか。  運輸省、来ておるか。まず運輸省、時間がないからおれも往生するけれども、この第一富士丸を許可した理由は一体どこにあるか、安全というのはどこが安全か、早く言え。
  18. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 第一富士丸は四十五年に漁船として建造されましたけれども、その後、五十八年の定期検査の時期に遊漁船として改造されました。そのときに、旅客船としての基準を適用いたしまして、十分な検査をやっております。したがいまして、第一富士丸につきましては、旅客船として遊漁客を運ぶのに十分な設備、構造を持っているものと思っております。
  19. 松田九郎

    松田(九)委員 逃げ場所がたった一カ所しかないのが五十人も人間を積んで、それが安全だったとか適格だったとか、老朽船を修理したものが適格であったとか。船長の資格が、なるほど学校で試験を通ったかわからぬけれども、三十歳そこそこの者が一体資格があるのか。潮の流れも浅瀬も知らなければそこにふくそうする船の種類も知らぬ者が大体船のマナーというのを知っておったのか。そんなことをなぜ安全性という面から確認しなかったのか。ほかの業界を見てみろ。建設業界なんかは、私企業は何年の実績、何億円以上でなければ公共事業の指名なんか入らないのだぞ。何でそんなものがなるのだ。どこに安全の基準があるのだ。今からどうするつもりか言ってみろ。
  20. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 遊漁船につきましては、私ども運輸省が船舶安全法に基づきまして船舶検査を通じまして安全性の確認をやっております。遊漁船の業としての許可というようなものは私どもやっておりません。  それから、船長の問題でございますが、近藤船長は商船高専を卒業いたしまして、第三級の海技士の資格を持っております。一応経験は十分あるというように思っております。
  21. 松田九郎

    松田(九)委員 それでは水産庁長官だ。時間がないから最後にあなたに聞くが、今度の届け出制沿岸漁民の生活権が守れるか、十分か、それを聞いておきたい。
  22. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 遊漁案内業につきましては、先生からもお話ありましたように野放しといいますか、行政的あるいは法律的な手がかりが従来一切なかったわけでございますけれども、今回いろいろな経緯を踏まえまして、与野党一致で議員提案という形で、届け出、登録制という法律仕組みがきのう農水委員会で決定いただいたわけでございます。  この法律ができ上がりますまでの間にいろいろな議論がありましたことを我々も十分承知しておりますし、それから、現在考えられております届け出あるいは登録というもので完全に十全な効果が出るかどうか、その辺につきましても、ただいま先生からお話のあった議論というものも十分念頭に入れまして、この法律が国会で成立いたしました暁には、我々といたしましても、なりわいとして行われております漁業と十分調整のとれるような形での運用ということに配慮してまいりたいと思っております。
  23. 松田九郎

    松田(九)委員 まさに時間がなくて氷山の一角。何を言ったか、何を質問したか私自身もわからぬくらいで残念だけれども、またいずれ機会を見て、本質的な問題についてはそれぞれの部門に応じて私は問いただしていきたいと思っておる。ただ、防衛庁長官初め関係各位、私の質問中に大変不穏当な発言があったとすればお許し願いたいし、委員各位発言機会を与えてもらったことを最後に感謝をして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  24. 箕輪登

    箕輪委員長 次に、安井吉典君。
  25. 安井吉典

    ○安井委員 外務大臣の方が参議院から到着されるのがちょっとおくれるそうですから、防衛庁関係の問題を先に始めて、引き続いて北方領土とか朝鮮の問題等について触れたいと思います。  きょうは運輸省からおいでをいただいておりますので、その問題から始めたいと思います。  一つは原子力発電所周辺における飛行禁止について、関係の自治体からぜひそういうことでやってほしいというふうな要求が出ているのは御承知のとおりだと思います。米軍の大型ヘリが六月二十五日に四国電力伊方原発から約一キロのミカン山に墜落して乗員七名の全員が死亡、そういうような事故から、原発の安全性を守る上で航空機の飛行禁止という要請が強く出てきたのだと思います。  防衛庁の前に運輸省に、今の原発上空における飛行制限というような指導がなされていると聞くのでありますが、その辺からまず伺います。
  26. 松本健治

    ○松本説明員 お答えいたします。  原子力関係施設の上空の飛行規制についてでございますけれども、これは昭和四十四年の七月でございますが、原子力施設付近上空の飛行をできるだけ避けるとともに、最低安全高度以下の飛行の許可を行わないよう通達を出しております。さらに航空路誌によりましてこれの周知徹底を図っているところでございます。なお、この航空路誌につきましては、防衛庁及び米軍に対しても当局より送付をしておるということでございます。  また、今お話のございました今年の六月に発生しました米軍ヘリコプターの墜落事故にかんがみまして、七月一日、再度原子力施設付近の上空の飛行を行わないよう通達を出しているところでございます。
  27. 安井吉典

    ○安井委員 今運輸省の御説明がありましたけれども、米軍機あるいは自衛隊機についても今のような要領で実際飛行制限というようなことが行われているわけですか、その点伺います。
  28. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  そのとおりでございます。原子力発電所等原子力関係施設周辺の飛行につきましては、その所在位置の周知徹底を図りますとともに、原則として上空を避けて飛行するよう指導しております。  また、六月二十五日に愛媛県で発生いたしました事故にかんがみまして、再度この飛行制限について周知徹底を図りました。
  29. 安井吉典

    ○安井委員 今の四国の伊方原発から約一キロのミカン山への墜落というのは、この制限に違反しているのですか、その制限の中で起きた事故なんですか。
  30. 松本健治

    ○松本説明員 伊方の事故につきましては、伊方の原子力発電所から一キロぐらい離れておるところということでございますので、上空の飛行制限というものを侵しているというふうには考えられないと思っております。
  31. 安井吉典

    ○安井委員 上空というのは、その発電所からどれぐらいの範囲内を言うのですか。
  32. 松本健治

    ○松本説明員 原子力施設の上空でございますけれども、飛行中航空機に何らかのふぐあいが生じた場合に、原子力施設に対して影響を及ぼすような空域ということでございます。
  33. 安井吉典

    ○安井委員 もう少し具体的な指導をされないと、守る方も守ろうといったって困ると思うのですよね、飛んでいる方は。原子力発電所があらわれてきたな、どこからコースを変えればいいのかということの判断ができにくいわけですね。そういう具体的な、発電所から何キロ以内とかなんとかという飛行制限のはっきりした数字的な表示というのはないのですか。
  34. 松本健治

    ○松本説明員 お答えいたします。  ちょっと舌足らずで申しわけございませんでした。その空域の範囲でございますけれども、航空機の種類、これは固定翼でございますとかヘリコプターでございますとか、それから飛行の態様、これは水平で飛んでいるとか上昇あるいは旋回の飛行をしているとか、その飛行をしております高度、速度といったようなものによって影響を及ぼす区域というものは非常に異なってまいります。したがいまして、確定的な範囲を数値で示すことは困難でございます。
  35. 安井吉典

    ○安井委員 それではどうも実効が上がらないと私は思うのですね。  そして、これは原子力発電所だけということになっているようでありますけれども、青森県に今核燃料サイクル基地の建設が始まっています。これは大臣の地元の県でありますけれども、米軍の三沢基地の比較的近いところに位置づけて建設が進んでいるそうであります。そこで、今のこの新しい施設がつくられる地点の上空を年間約四万二千回以上航空機が飛んでいるという調査結果が青森県議会で七月に明らかにされたというように聞いています。ですから、航空基地に隣接したところにそういうような施設ができた場合には、よほどはっきりした指導が行われなければいけないのではないか、そう思うわけであります。  しかも、もう一つは、原発だけじゃなしに、青森県の場合は再処理施設ですから、工場の設備そのものでプルトニウムがつくられるというわけでありますだけに、単に原発だけじゃなしに、そういうようなものも対象に入れておかなければいかぬのじゃないかと思います。原発の方はまだいろいろな防御施設があるけれども、工場の方はそれがうまくできてないということになれば、むしろそちらの方が重大な問題を起こす可能性があると思います。その点はどういうふうに検討されていますか。
  36. 松本健治

    ○松本説明員 お答えいたします。  原発以外の施設につきましても、先ほど申しました航空路誌によりましてその飛行の制限をやっているところでございますけれども、この中身につきましては、この原子力発電所以外にも、ウランの加工施設でございますとか研究炉でございますとか、これらにつきまして科学技術庁あるいは通産省の方から連絡をいただきまして、この航空路誌で場所を示しまして周知徹底を図っているところであります。
  37. 安井吉典

    ○安井委員 これからまだまだふえてくる可能性があるわけでありますだけに、今のようなそんな通達が出ているから、地図に指示があるからそれでいいというような安易な考え方では困ると思います。きょうは直接その問題が焦点ではありませんので問題提起はこの程度にいたしておきますけれども、運輸省においても、それから軍用機を処理する防衛庁においても、この問題についてのさらなる明確な対処を具体的な資料で後ほどお示しをいただきたい、検討の結果をお話し願いたいということだけ申し上げておきます。  それからもう一つ、運輸省がおいでの際に伺いたいのは、北海道の新千歳空港がことし完成しました。自衛隊の滑走路と民間滑走路とが分離をして、能力がぐうんと上がったわけですね。そして、国際空港化、エアカーゴ基地としての期待が非常に高まっているという状況であります。ところが、管制は防衛庁が担当しているということで、航空自衛隊の千歳基地もすぐそばにあるわけですから、機密保持のためと称して、国際化に防衛庁側が制限をつけてくるのではないかと言われておるわけでありますが、この点についてはどうですか。
  38. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 実は私、新千歳空港を見学してまいりましたものですから、今御指摘のような状況にございます。管制塔は防衛庁が担当しているわけでございまして、その周辺は民間空港の用地になっているわけでございまして、滑走路も、一部は民間空港が使っている、一部は防衛庁の滑走路を使う、互いに交流して使うというような状況になっておりますので、将来の千歳空港の国際化という問題になりますといろいろ問題が出てくるのかもしれませんけれども現状では自衛隊としては別にそれに反対しているという意思表示はしていません。
  39. 安井吉典

    ○安井委員 大臣そうおっしゃるからそのとおりに受けとめていいのではないかと思いますけれども、しかし、基地周辺の通信電波施設を外国の飛行機がキャッチするのではないかとか、そういうようなことで一定の制限をする考え方を防衛庁が持っているのではないか、そういううわさは地元で随分流れているわけであります。  二月の日韓航空交渉でKALの定期便開設の合意ができているはずでありますが、これはそのとおり進むのでしょうね。
  40. 土井勝二

    ○土井説明員 お答え申し上げます。  先生今おっしゃいましたように、本年二月一日に終了いたしました日韓航空交渉におきまして新たに大韓民国の指定航空企業、具体的には大韓航空でございますが、これが運航できる路線といたしまして名古屋—釜山・済州、それからただいまのソウル—札幌、それからソウル—長崎、この三つの路線を交渉におきまして追加するということにつきまして合意をいたしております。その点につきましては、四月の外交上の交換公文によりましても内容が確認されております。それで、大韓航空につきましては、この札幌—ソウル線の開設について強い関心を持ちまして社内で検討を行っていると私ども聞いておりますが、ただ、まだ具体的にいつ開設するかというところまでは私どものところには大韓航空の方から来ておりません。
  41. 安井吉典

    ○安井委員 十一月中旬にやはり大韓航空のチャーター便が入る計画があるというのですが、これも千歳におりることについては問題ないわけですね。
  42. 土井勝二

    ○土井説明員 お答えいたします。  私どもの方に来ている情報では十一月の十日に大韓航空のチャーター便が札幌に来たいという希望を聞いておりまして、基本的には私どもといたしまして、運輸省として問題がないというふうに思っております。
  43. 安井吉典

    ○安井委員 大臣の先ほどの言明がございましたけれども、大韓航空はいいがソ連機はだめだというふうなことにはならぬのでしょうね。私もこの間サハリンに行ってまいりましたけれども、サハリンが北海道との直行便を持ちたいという希望もあります。国によって差別をする、そういうようなことはありませんね。先ほどの大臣の答弁で私はそれで結構だと思うのですが、どうですか。
  44. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いわゆる新たな空路、千歳空港の新たな開設につきましては、これからいろいろ運輸省と防衛庁との間で調整してまいらなければならぬと思いますが、ただいまの時点では、先ほど申し上げましたように防衛庁としてはお断りしている、反対しているという状況じゃございませんので、御理解いただきたい。
  45. 安井吉典

    ○安井委員 大臣のそういう明確な答弁ですから、これも国際空港として十分にやっていけるという前途が開けたと思います。いずれにしても日本の国内の空港の中では欧米に最も近い空港が千歳空港です。地図を開いてみるとそういうことがわかります。それだけにその立地条件を生かして輸出入の貨物の一大中継基地を目指している、そういうようなことで、北海道の大きな戦略プロジェクトという位置づけで期待をしているわけであ りますから、共用の管制塔を持っているということから、そういうせっかくの国際化の大きな希望を挫折させることは絶対ないように、そのことだけひとつ、先ほどの答弁で私は結構だと思いますが、お願いしておきます。よろしいですね。
  46. 日吉章

    日吉政府委員 大臣のお答えで尽きるわけでございますけれども、若干事務手続上の問題等がございますので、事務的な観点からの御説明を申し上げさせていただきたいと思います。  千歳空港に限りませんで、民間空港への外国民間機の乗り入れの適否につきましては、一義的には運輸省または外務省の所管に係る事項でございまして、御指摘のように外国機の乗り入れの場合につきましては、防衛庁にも関係する限りにおいて御相談をいただくような場合があることはございますけれども防衛庁の方でこのことの適否につきまして対外的にお答えするような立場にはない、この点だけは御理解いただきたいと思います。
  47. 安井吉典

    ○安井委員 先ほどの防衛庁長官の御答弁で進めていただきたいと思います。運輸省は結構です。  そこで、先ほど来防衛費等のあり方についていろいろお話し合いがあるわけでございますが、最近の世論調査でも、防衛予算は今の程度でよいというのが五八%、今より少なくてよいというのが一九・二%、合わせて七七・二%で、防衛費の増額に対する国民の警戒心、警戒感とでもいいますか、そういうものがこれにあらわれているような気がいたします。あるいはまたGNP一%枠を政府は外したわけでありますけれども新聞の世論調査でも、一%を超えない方がよいという人が三八%、今の程度の超え方ならよいという人が三二%、それから大幅に減らす方がよいという人が一六%、もっとふやすというのが五%、こういうような形であらわれているようであります。ですから、国民防衛予算に対する率直な気持ちというのはこういうようなものに明らかにあらわれているのではないかと思います。  INFゼロオプションというようなことで世界的なデタントの方向が…それは余りに即断はできないとは思いますけれども、あるような状況の中でありますだけに、軍事力抑制の時代に入ったのではないかというふうに国民理解しているのではないか、そういう指摘をしているのではないかと思うのですが、どうですか。
  48. 依田智治

    ○依田政府委員 先ほど先生指摘の世論調査は一月のは総理府の世論調査でございまして、今週日曜日に某紙で発表された世論調査の結果は十分承知しております。  日本は戦後四十三年、本当に平和が続いておりますので、そういう平和の中にあって国民の世論としてこういう程度の世論調査が出てきたということは、やはり防衛に対する理解というものがだんだん進んできているなということを感じておるわけでございます。ただ国民の気持ちとしては、できるだけ防衛費は節度を持ってやってくれというあらわれは一貫しておるというように感じておりまして、我々としましては、現在の大綱に基づく中期防衛力整備計画を着実に、そしてまた一%枠が昨年の一月に一応なくなりましたが、その三木内閣のときの精神は引き続き尊重してまいるということで、節度ある防衛力を進めていく、それがまた国民の意思にも沿うところではないかというように考えておるところでございます。
  49. 安井吉典

    ○安井委員 かなり御自分の都合のいいような解釈をされている気がするわけであります。いずれにしても、ふやした方がいいという人もいることはいるのですよ。それを私は否定はいたしませんけれども、減らした方がいいという人の方が多いということですね。これは新聞の世論調査ですからこれ以上の正確さはない。私はそうは言いませんけれども、そういう傾向が出ているということだけは明確にしておかなければいかぬと思うわけです。  そこで、諸外国からも日本防衛力増強の問題についていろいろな見方があります。例えばアメリカ下院の軍事委員会の小委員会などでは、勇ましくもっとふやせふやせという大変な意見を出しているという状況もございます。一方、確実にふえていく日本防衛力に対して、アジアの諸国はもちろん、アメリカの中にも警戒をする声があることも忘れてはならないと思います。かつてアジアの中で振る舞った日本の行動というものも根強くアジアの国民の中に残っているようですね。ですから、こういうことに対する配慮というのもやはり必要ではないかと思うのですが、その点どうお考えですか。
  50. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今御指摘の点は大切なところだと私平素から考えております。防衛費問題は、今防衛庁がお答えになったとおりでございますが、アジアに対しましては、わずかでも伸びますとすぐそういう声も起こる面もあるということに対しまして私たちは注意をしておかなければならない、かように思います。あくまでも防衛というものは我が国国民の生命、財産を守ることを最大の目的といたしておりまするから、自主的に判断はいたしますが、節度あるものがよし、これが私の考えであります。
  51. 安井吉典

    ○安井委員 核についての意識もその世論調査に出ていて、核抑止論というもの、つまり核兵器が戦争を防止するのだという抑止論ですが、これについては賛成する人が二八%、反対が何と五四%。核抑止力論というのには国民は反発をしているということもこの傾向の中で見取れるわけであります。ことしの国連の軍縮総会に私はちょうど向こうへ参りまして、竹下首相の演説も聞きました。なかなか具体的な点に触れた論述もあってそれは有効であったかと思うのでありますけれども、しかし根本を流れるのはやはり核抑止論であって、そのことは私どもいただけないなという感じがしたわけであります。核戦争の恐ろしさ、核は安全保障になるよりも人類全滅の道具になるという思いの方が今世界じゅうに広く広がりつつあるのではないかと思うわけであります。  そこで、国際軍縮について現段階でどういうお考え政府が持っているのかということ、これは外務大臣が中心だろうと思うのでありますけれども、伺いたいと思います。  中距離戦略核の全廃というようなものが実ったとかアフガンからの撤退の問題だとか、いろいろな状況はデタント的な方向にあるということだけは間違いないわけであります。防衛白書を読んでみますと、そのことはやはり評価をしているのですね。評価をしながらも、それにもかかわらずと書いて、続いて、核兵器を含む力の均衡に基づく抑止と、相変わらず昔からの硬直した現実認識を書かれているわけであります。米ソが軍拡と不信の構造だ、私はそう言いたいわけでありますけれども、今までは一方が軍拡をすると負けずにこちらもやる、向こうもふえるから不安になってまたこちらもふやす、それが現実の核抑止力というもののあらわれ方であったように思うわけであります。しかし、今度のINFの話し合いなどを見ても、一方が減らせば、その減らしたのはおれの方が多いのだから、そこでぱっとやればいいようなものでありますけれども、向こうが減らしたのなら、ああそれならよかった、うちらも減らすという方向に、軍縮は次の軍縮を呼んでいるという形があらわれている。INFの次には何をやるかということについてもお互いにまた模索し始めている。それが今の新しい状況ではないかと思います。武田信玄の時代なら、一方が減らしたというのなら、よし、さあ攻めていけということになるのだろうと思うのですが、近ごろは財政的にも各国みんなまいってしまっているわけだし、特に核戦略については自分たちがもてあましぎみで取り組んでいるわけですから、一方が減らせばこっちも減らす、こっちも減らすのならおれの方も減らそうか、こういう方向が今度の動きだし、私たちはそのことこそ望ましいのではないかと思うわけであります。  ですから、今こそ日本が国際軍縮を提唱してその先頭に立つべきではないか。だから、一遍になくしてしまえとか乱暴なことは私は言いませんけれども、縮小均衡への方向を強く主張していく、それが緊張緩和に対する日本の貢献ではないか、 そう思うのですが、どうですか。
  52. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 昨年米ソの首脳会談で今お話しのございましたINFのグローバル・ゼロが実現しました。これは私は核軍縮の第一歩である、こういうふうに評価しております。とかくこれによって世界の緊張はすべて緩和されたというふうに解釈するのはまだ早い。しかしながら、両国の努力が実ったことは評価したい、こう言っております。続いて現在は、お話しのありました戦略核の五〇%削減等々をめぐりまして、難しい問題ですが、ジュネーブで交渉が続けられておる。だから、我々日本としては、西側陣営の結束を固めて米国を大いに応援をして、これからそうした物騒な核等は究極的には廃止されるような方向に向けてやっていくのが至当である、これが日本考え方であります。  したがいまして、竹下総理も去る軍縮総会にみずから出られまして、抑止はまだこれはお互いに尊重してやっていかなければならない。同時にまた、均衡ということは低レベルにおいても均衡ができるのだから極力低レベルにおいて均衡ができるように、そうした方向を見出そうではないかという趣旨の演説をなされておりますが、我が国といたしましては、そのような政策を用いましてこの問題に対処しておるというのが現時点でございます。
  53. 安井吉典

    ○安井委員 とにかく核抑止力という考え方を縮小均衡という方向に私は変えるべきだということを、今外務大臣の御答弁もありましたけれども、今後とも強く主張していきたいし、政府もその点をさらに検討していただきたいと思います。  そこで、私は私なりに心配するのは、日米安保条約体制が限りなくNATO体制に変えられつつあるという現状であります。あの安保国会の激しい混乱を思い浮かべながら、そのような中からできたのが今の安保条約、その安保条約が実質的にどんどん内容が変わってきつつあるのではないかという感じがするわけであります。日本アメリカ基地を提供し、アメリカ日本防衛する、それが約束だということであったはずであります。共同防衛というのも集団自衛権の行使禁止という憲法考え方もあるわけですから、これはNATOのような相互防衛条約ではないし日米軍事同盟ではないのですという説明で政府は今日までずっときたと思います。  ところが、最近では例の米軍装備の事前集積という、ポンカスですか、あるいは戦時受け入れ国支援、WHNS、あるいは次期支援戦闘機、FSXの共同開発、海上自衛隊艦船や航空機の米軍航法衛星の活用、海上自衛隊の米海軍の戦闘指揮システムの取り入れ、そういったような報道を見るたびに、安保条約そのものは変わっているわけはないのですけれども、制服レベルでは共同作戦で集団自衛権という憲法の枠を破る、そういう行動が行われているのではないかという心配をするわけです。何か限りなくNATOの方向に寄っていっているのではないかという点であります。形はもちろんそうはなっていませんけれども、実質的にはそういうふうな方向に行っているというふうな気がするわけでありますが、その点についてはどういう認識を政府はお持ちなのか。どこまでも行っちゃえば切りがないわけなので、どこか何か歯どめがなければいかぬと思うのですが、その点はどういうふうにお考えなのか、それらの点について伺います。
  54. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御承知のように、平和憲法のもとで専守防衛に徹して他国に脅威を与えるような軍事大国にならない、そうして日米安保体制を堅持するというのが我が国防衛の基本でございますので、その線で日米安保体制の信頼性というものが確保されているわけでございますので、ただいまの御心配はない、かように理解してよろしいと思うのでございます。
  55. 安井吉典

    ○安井委員 外務大臣、どうですか。
  56. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今防衛庁長官がおっしゃったとおりでございます。特に、先ほど憲法に触れられましたが、憲法では我々の個別的自衛権は認められておりますが、集団的自衛権はなし、こういうことでございますから、その線はかたく守っております。
  57. 安井吉典

    ○安井委員 具体的な事態が進んでいるということを私は心配するわけなのであります。  シビリアンコントロールが働くからいいじゃないか、こう言われるわけでありますが、先ほどのお話の中にもありましたけれども、その最高の機関はやはり国会なんだし、国会の中のこの特別委員会というのはそういう意味では非常に重要だと思うのですね。ところが、一国会で開かれるのはたった一回ぐらい。ほかの常任委員会はどんどん開かれてもこの特別委員会はいつになってもなかなか開かれないわけです。ですから、そういう点もう少し政府の、そういうようなものを国会の立場で相談をするという機会を、これは政府だけの問題じゃありません。国会自体も考えなければならないところではないかと思うわけであります。  そこで、今の問題に関連して、海上作戦輸送の問題が報道されております。アメリカ側日米共同訓練にかんがみて自衛艦による米軍物資の輸送を要請してきた。日本側が、これは憲法等の法令に照らして問題が多いということで不可能ですと言って断ったという報道があります。これはそのとおりで、今後ともそういうことで御処置されますね。
  58. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  そのような報道が五月にございましたけれども、米軍から自衛艦による物資の輸送について正式に申し入れがあったということはございません。一般に日米共同訓練としてどのような訓練を実際にやれるかということにつきましては、従来から申し上げておりますように、第一には当該訓練の目的や内容が防衛庁の所掌事務の遂行に必要な範囲内のものであるかどうか、それから第二に当該訓練実施することが政策的に妥当かどうか、それから三番目に教育訓練上効果があるかどうかというふうな点を勘案して判断することとしておりまして、今後各種の申し入れがありました場合には、今の訓練の内容を踏まえてこれらの諸点に照らして検討するということになろうとは思いますが、それ以上のことは今申し上げられません。
  59. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃ断ったという新聞の報道は誤りだったわけですね。  そこで物品役務相互融通協定、ACSA、それの締結を日米安保事務レベル協議でアメリカは提案したと言いますが、これはどうなんですか、日本としてはどう対応するおつもりですか。
  60. 日吉章

    日吉政府委員 委員ただいま御指摘のように、物品役務相互融通協定につきましては、ことし五月の第十八回の日米安全保障事務レベル協議におきまして米側から提案があったわけでございますが、具体的に申しますと、米側の方からNATO相互支援法に基づきます米国とNATO諸国との間の共同訓練の際のこれらの仕組みについての説明がございまして、その説明がありました上で日米の間でも共同訓練等をする場合においては同種のものがあった方が有用なのではないか、こういうふうな提案があったわけでございます。これに対しまして日本側としましては、日米間におきましても米側が説明されたようにこの種のものがあることが有用なのかどうか、その点について日本側で予断を持つことなく検討させていただけないかという回答をしたところでございます。  現在、防衛庁といたしましては、このような日米の話し合いを受けまして、防衛庁内部におきまして、まず各部局で技術、専門的な観点から白紙的にこの種の仕組みというものが日米共同訓練等を行っていく上で円滑化に役立つのだろうかどうか、またぜひ必要なのかどうか、こういうふうな下調べを行っているというのが現状でございます。  今後の取り組みの段取りでございますけれども、このようにいたしまして技術、専門的な見地から白紙的に検討した結果、この仕組みというものが有効である、また必要であるというようなことになりますと、しからばこういう仕組みなりを導入するについては、法的側面等も含めましてど ういうふうな方法を講じる必要があるかという点を検討いたしまして、そういうことになりますと、防衛庁以外の関係省庁も出てくるのではないかと思いますので、外務省を初めとする関係省庁とも御相談の上で日米間で果たして協定というようなものを結べばいいのかどうかというような判断をしていくことになろうかと思います。したがいまして、現在ではまだその三番目の判断の段階にまで至っておりませんで、事実確認、そういうふうな実需が果たしてあるかどうか、これが有効かどうか、こういうふうな検討防衛庁内部で技術、専門的な立場から、繰り返しになりますが、白紙的態度で検討している、こういう段階でございます。
  61. 安井吉典

    ○安井委員 NATOでは十五カ国との間でアメリカはこの協定の締結をしているわけであります。それで、日本もやろう、こういう呼びかけなのだと思うのでありますけれども、しかし、これがなかったら共同訓練に差し支えるというものでもないのではないかと私は思います。現実に今までそんなことなしにやってきているわけでありますから。したがって、安保条約を変質するような、憲法違反になるようなおそれのあることはやはりやめてもらいたい。これから検討するのだそうでありますけれども、その点をはっきりきょう私は申し上げておきたいと思います。これはどうですか。
  62. 日吉章

    日吉政府委員 日米安保体制の中で、日米が共同で日本有事の場合に対処するということは非常に重要な対処方針の一つでございますから、それを前提といたしました日米共同訓練が円滑かつ効率的に行われるような手法を検討していくということはやはり必要かと考えております。  NATO化につながるのではないかという委員の御指摘でございますが、NATO化ということの意味そのものが必ずしも明確ではございませんけれども、先ほど来両大臣からお答え申し上げましたように、NATOのような統合軍の創設あるいは集団的自衛権を行使するというようなことは日本におきましては憲法下ではできないわけでございまして、日本防衛の基本方針もそういうことはしないということで否定しているわけでございますので、我々は、あくまでも固有の自衛権の発動に基づく日本有事の場合の安保体制下の効率的な運用という観点からの検討でございますので、そういう点は御心配いただかないようにしていただければよろしいのではないか、かように考えております。
  63. 安井吉典

    ○安井委員 私は安心できないものですから、これはひとつ重大な宿題として置いておきます。  もう一つ防衛計画大綱の見直しの問題ですが、先ほど防衛庁長官はごあいさつの中で、中期的なものが望ましい、速やかに着手したい、他国の脅威とならぬような配慮が必要だと思う、そういうような言葉をちりばめながらのお話であったと思います。この大綱の見直しの問題については、大綱の本文の修正をするということまで考えているのか、あるいはまた別表の変更ということまで考えているのかということについていろいろ疑問が提示されて、西廣防衛事務次官が就任のときにはそんなことないと言ったとか、先ほど来答弁されている日吉局長は、別表の変更もあり得るというふうな答弁をされているとか、いろいろな報道が乱れ飛んでいるわけであります。本文にまで入り込むようなことまで考えているのかということと別表の変更の問題と、これについての現段階のお考えを伺いたい。
  64. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 防衛大綱については、先生指摘のように限定的な小規模の攻撃に対して日本が独自で対応するための節度ある防衛力を目指しての大綱でございます。したがいまして、それを目標に中期防衛力整備計画を進めているわけでございまして、今三年目を迎えて、いよいよ四年度に入ろうとしているわけでございます。したがいまして、これからの次期防については私たちは、先ほども所信表明で申し上げましたように、長期的な観点から、あるいはまた計画的に進めてまいるとすれば、やはり中期防の整備計画を進めていくのが適当じゃないだろうかと考えているわけでございます。
  65. 安井吉典

    ○安井委員 長官、一%枠の問題について、その撤廃は我々はどうしても納得できないのでありますが、総額明示方式というようなことで今まで政府はやってこられた。今度の新しい大綱でもそれを踏襲されるのか、それとも新しい歯どめをお考えになるのか、どうですか。
  66. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この問題については、安井先生承知のように、五十一年の閣議決定から六十二年の閣議でいわゆる節度ある防衛力整備計画を進める、それで五十一年度の精神は尊重するという形で、防衛費の問題はこういう歯どめで進められているわけでございますので、今後もそういう形を踏襲するようになるのじゃないだろうかと思われます。
  67. 安井吉典

    ○安井委員 節度あるという言葉はなかなかきれいですけれども、そういう抽象的な言葉では国民は納得しないと思います。私どもは一%という枠決めが非常に合理的で最良だというふうなことは言いませんけれども、しかし、今のところは具体的な歯どめというか、そういうようなものがないといかぬのじゃないか。国民はみんなそういうふうな気持ちを持っておるわけです。それは世論調査の中で明らかです。その重大な点を私は一つ指摘しておきたいと思います。  次に、外交に関する問題の方にだんだん移ってまいりたいと思います。  まずソ連との関係につきまして、九月十六日、シベリアのクラスノヤルスクでゴルバチョフ書記長の演説がありました。その中でソ日関係がアジア・太平洋地域の全情勢にとって重要な意義を持っているというふうな理解といいますか考え方を示しているわけであります。そして、中曽根前首相や土井社会党委員長らと会って話をしたことでいろいろな問題点もわかったというふうなことも言っているようであります。今後のアジア外交の展開について、この演説はいささかなりともよい期待を持ち得るのではないかと思うのですが、外務大臣はどういうふうにお考えですか。
  68. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 まずゴルバチョフ書記長の登壇と申しましょうか、従来の指導者には見られないソフトな面があるということは私も評価したいと思います。特にペレストロイカとかグラスノスチであるとか非常に弾力性のある政策を進めておられることも私たちとしては評価してよいのではないだろうかと思います。  日本との間におきましては、まだそうした正式の折衝がございませんから、私自身としてはさらにもう一つ突っ込んだ話し合いによって、過般のクラスノヤルスクの演説等々に関しましても話を聞きたいと思っておるところでございますが、概して申し上げれば、一応、日本に対しましても非常に従来とは違った感想を持って臨んでおられるということは事実であろうと思います。前総理の中曽根——私の先輩ですから、中曽根先生がお聞きになった話も直接御本人から承りましたが、相当いろいろと新しい面が展開されております。だから、外相会談等々におきましてはそうした背景を十二分に考慮しながら、やはりよきチャンスはよきチャンスとして私たちはそれを正確に把握しながら対話をすべきであり、また一回の会談だけではなくして、今後もそういう対話は継続したいと思います。要は、日ソの関係改善はアジアの安定にとりましても重要な役目を果たすであろう、こういうふうに考えております。
  69. 安井吉典

    ○安井委員 ソ連のシェワルナゼ外務大臣の来日の日程等について政府はどういうふうに考えておりますか。
  70. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 日ソ間におきましては、これは各国ともさようでございますが、それぞれ外相会談は定期に開かれ、なおかつ交互に開かれるという建前でございまして、今度はソ連の外相が日本を訪問される。十二月十九、二十、二十一日、この日取りは確定いたしました。  過般来そうした関係者もしばしば訪日いたしまして、私も何人かにお目にかかっておりますが、十二分にひざを接していろいろな問題を話し合お うではないかというふうなことでございまして、私も大いに期待をいたしております。従来の、私たちが一番大切に思っております北方四島の一括返還という問題、これは当然私たちは中心課題として出さなければなりません。恐らくソ連ソ連でその問題に関しましても決して従来のようにニエット、つまりノーとは言わないと私は思う。すぐに結論は出ないにいたしましても、その問題を議論するということはソ連といたしましても決して避けないと私は思います。私は、あらかじめこの間大使には、こういう観点から日本は物を言うよ、宿題にしておくから、あなたの方も共通課題として勉強しておいてほしいと言ったこともございますが、そういうふうなことで、お互いにカードを出し合って、合わない部面はとことん議論して合うようにしていくという姿勢で臨みたいと思います。もちろんクラスノヤルスクのゴルバチョフ書記長の発言もございます。恐らくそういう問題もソ連からは出てくるであろうと思いますが、そうした問題も含めましてやはり対話を強調したい、かように思っております。
  71. 安井吉典

    ○安井委員 今おっしゃった北方領土の問題についてソ連側は、解決済みという今までの姿勢をかたくなに守りながらはねつけてきたという状況とは大分変わってきているということは、我々もいろいろな角度で理解をするところであります。その微妙な変化をこの際政府として今度の外相会談等を通して実のあるものに仕立て上げていくということが必要ではないかと思います。ソ連がこちらが言いたいような話に乗ってくれるような環境づくりを進めていくというのが今の段階で大事なことではないかと思います。  先月モスクワで開かれた第六回日ソ円卓会議におきましても、ソ連側から二島返還論が学者によって出されてみたり、それに対して政府の高官は公式の立場は変わらないと言って反論してみたり、まさにペレストロイカそのままの状況があらわれてきたという報告を聞いております。百家争鳴と言っていいのかどうかわかりませんけれども、その中に、やはり日本日本独自の争鳴の鳴き方をどんどん思い切ってやっていかなければいかぬのではないか、そう思うわけであります。  そこで、これは私はいつも、予算委員会でも言ったことがあるのですけれども沖縄の返還と北方領土の返還とを比べて、アメリカはあの戦争で沖縄を占領していた、それを日本に返したじゃないか、不当に北方領土を占拠したソ連だって返すのは当たり前だ、こういう議論であります。ただ、考えてみますと、沖縄は占領軍であった米軍がそのまま駐留してもよろしいですという形で返してもらったわけです。それで日本も納得したしアメリカも納得して、いまだに米軍がいるままで沖縄は返還されました。しかしソ連の方も、今ソ連軍が駐留しているはずですね。これはもう少し時間があればその内容も聞きたかったわけですけれども、とにかくいるわけです。だから、北方領土を返します、沖縄と同じようにソ連軍が駐留したままで返してくれるということなら、これは日本はいいですとは言えないわけですね。そんな形は考えられないわけであります。やはり駐屯しているソ連の軍は帰ってもらわなければいかぬ。そしてきちっと返してもらう。その点は沖縄の場合と北方領土の場合は違うわけであります。  ですから、ソ連から北方領土を返してもらうときにはソ連軍も撤退してもらわなければいけない。しかし、北方領土であろうと、日本の領土になれば日米安保条約がきいてきて、アメリカが貸してくれと言えば米軍基地として貸さなければいけない義務が日本はあるわけです。極端なことを言えば、きのうまでソ連軍がいたのを戻ってきたら今度はアメリカ軍が入っていったということになるのでは、これはソ連だってそういうことを知りながら返すなどという気になかなかなるわけがないと思います。ですから、北方の島々を返してもらうときにはアメリカともきちっと話をつけて、米軍基地には貸さないんだよということを明確にしてソ連との交渉を進めるということでなければならぬと思うのですよ。できれば返ってきた北方の島々に、ソ連軍も帰るし米軍も駐屯しない、自衛隊も置かない、それこそ永世中立の地帯があそこに置かれるということになれば、両方の東西の対立の中に一つのすばらしい平和の地点が生まれるのではないか、そんなような気がするわけであります。いずれにしても、これは百家争鳴の中の一つとして私は言うのですけれども、どうなんですか、もう少しそういう観点からの問題へのアプローチというのも必要じゃないかと思うのですが、外務大臣、どうですか。
  72. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今おっしゃった話、具体的な話でございますが、それは別にいたしまして、そうした具体的な話に入る段階まで日ソ間は歩み寄らなければならない、それが先決だと私は思っています。したがいまして、安井委員も御承知かもしれませんが、この間もプリマコフというお方が、これは安全保障調査会の招きに応じて来られまして、私も個人的に出会いました。また、アガニョークというソ連で有数の発行部数を誇る雑誌がございますが、その編集長のコロチッチさん、この方もお越しになられました。この方々はシェワルナゼ外相とも親しく、またゴルバチョフ書記長のブレーンであると言われる方もおられますが、いろいろな話をいたしております。  だから、具体的な話にまではまだ至っておりませんが、ひとつお互いに歩み寄ろう、そしてお互いに何度も何度も出会うぐらいの気持ちでやっていこうではないか。例えば私は一人考えておるのでありますが、昨年の十二月八日、米ソ首脳会談が開かれた。それまでアメリカは、ブレジネフ書記長の時代からアンドロポフ、チェルネンコ、そしてやっとゴルバチョフという指導者に出会うことができた。その間レーガンさんは非常に気長に辛抱しながら努力をして、そして二人の間にあのような一つのすばらしい合意ができた、こう言っております。その間にシュルツ国務長官は何度も何度も足を運び、あるいは第三国において、あるいはまたアメリカにおいていろいろな交渉を続けております。そうしたことが必要であって、年に一回でそれでしまいというようなことであってはいけない。だから、我々といたしましては、何らかの方法において接触の回数をふやすことも念頭に置きながらおれはやりたいと思うんだよ、この間もそういう方々に率直に申しておきました。  だから、今安井委員が申されましたとおり、そうしたお考え日本からいろいろな国民の方々にどんどんとおっしゃっていただく。そうしたことを私たちも、議会のそうした御意見なり国民の御意見なり十分考えて外交はやっていかなければならぬ、こう思っておりますので、そういう姿勢で臨みたいと思います。
  73. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにしても、なかなか難しい問題だから解決しないで今日まで来ているわけです。したがって、そう簡単にいく話ではないと思いますけれども、いろいろな角度からの論議を繰り返していく、いろいろな球も投げてみる、そういうような中できっかけをつくっていくということが必要ではないかと思います。その点だけ申し上げておきます。  最後に、朝鮮問題について触れたいと思いますが、私ども社会党としては、朝鮮民主主義人民共和国とは、政府は日韓基本条約の締結以来一切の関係を共和国側と拒否して今日に至っている間、朝鮮労働党との交流をずっと続けてまいりました唯一の政党であります。歴代の委員長は訪朝をして金日成主席とも話し合ってまいりました。最近になって韓国の民主化が進んで、朝鮮半島の情勢も変化してまいりました。そこで、私どもは北だけではなしに南の韓国との交流も考え、十月の上旬に石橋前委員長が招かれて訪韓をし、期待以上の成果を上げて帰ったことは報道されているとおりであります。  したがって、南とも北とも一応の交流をしているという社会党の立場から私は問題提起をしていきたいと思うのでありますが、まず、日韓基本条約についての認識についてであります。とりわけ第三条の問題です。  第三条の規定は、大韓民国は、国際連合決議第 百九十五号(III)に明らかにされておりますとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政権であることが確認されるという規定であります。この国連決議百九十五号云々というのは朝鮮の唯一合法政権を制限するために援用されたものでありますが、その百九十五号決議というのは一九四八年の十二月十二日に国連総会で採択されているわけですね。朝鮮臨時委員会が当時朝鮮半島へ行って観察して、その観察というのも南の方だけ見てきたわけです。その協議の結果で三十八度線以南の南朝鮮、そこにおける唯一の合法政権は韓国であるということを宣言したもので、朝鮮半島全体を韓国が唯一の合法政権であるということを規定したものではないということです。これは、当時日本政府も解釈としてしばしば国会での答弁その他でも一貫して言ってきたとおりであります。この点については、条約局長ですか、確認していただけますね。
  74. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 ただいま委員が御言及になりました日韓基本関係条約第三条、この規定は委員がお読みになったとおりでございまして、政府としては従来から一貫して、この基本関係条約第三条の規定は今委員がおっしゃいましたとおり国連決議一九五、この趣旨をそのまま確認しているにすぎないということでございまして、重要な点は、我が国と北朝鮮との関係につきましては何ら触れていないという解釈でございます。この一九五、これは第三回の国連総会でございますけれども、この決議の趣旨というのは、朝鮮人民の大部分が居住する部分に対して有効な支配と管轄を及ぼす政府、これは大韓民国政府でございますが、これが設立された、それからこの政府は国連の監視下に行われた自由選挙に基づくものであること、それからこの政府が朝鮮における唯一のこの種の政府である、こういったことを趣旨とするものでございまして、もう一度申しますと、この規定はこの決議の趣旨を確認しているにすぎず、我が国と北朝鮮との関係については何ら触れておりません。
  75. 安井吉典

    ○安井委員 ところが韓国側は、その日韓基本条約第三条で日本は韓国を朝鮮半島全体に対する唯一の合法政権であることを認めたと国内では説明しているわけですね。今もその説明を変更している様子はありません。ですから、あの条約は北を抹殺した条約なんだという説明を韓国は国内でやっているわけであります。両国で解釈の違いがある、それをそのままにしてきているわけなんですが、そのとおりですか。
  76. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 韓国側が「朝鮮にある唯一の合法的な政府」という文言を非常に強調して読んでいるということは承知しておりますけれども、我が方としては、国連決議に明らかにされておりますとおり朝鮮にある唯一の合法的な政府であるというのが第三条の正しい解釈であると考えております。  ちょっと参考までに、日韓基本条約締結の際の国会の御審議におきまして、当時の佐藤総理大臣あるいは椎名外務大臣が本件について御発言なさっておりますけれども、椎名外務大臣は、「第三条は、われわれの相手国である韓国というものがどういう国家であるかというその性格を、国連の決議というものに従って、そのとおりだ、そういう性格のものであるということをただ記述しておるにすぎない。」これに対して野党の議員の「それでは、韓国の国会における政府の答弁は間違いですか」という御質問がございました。これに対して椎名外務大臣は、「第三条によってそういうことをきめたものではないと、こういうことを言っておる。でありますから、その点は韓国のその答弁とはちょっと食い違う。」そういう御答弁をなさっております。
  77. 安井吉典

    ○安井委員 食い違ったままでずっと今でも来ているというのは非常におかしいことなんですけれどもね。  いずれにしても、今も国会答弁を取り上げてお話がありましたけれども、私もいろいろ調べてみても、当時の佐藤榮作総理大臣は、北についての請求権というのは全く白紙だということを繰り返しておりますし、一九七四年の木村俊夫外務大臣などは、現在の韓国ないし韓国政府が朝鮮半島全体における唯一の政府であるという認識は日本政府は持っていませんというふうにはっきり言っていますね。これは当時大分波紋を呼んだわけであります。一九七三年の高島条約局長の衆議院外務委員会での答弁でも、北との関係日本が将来設定するに当たって第三条または日韓基本条約というようなものは何ら妨害にはなりませんという答弁もしております。これは今のアジア局長のお答えで確認されたと思います。  よく日本社会党は日韓基本条約に反対して今もそれを認めていない、韓国も認めていない、けしからぬ、こう言われるわけでありますけれども、現存している条約を認めるも認めないもないわけであります。また、大韓民国は南半分を支配する立派な国であることも、これは認めるとか認めないの問題ではありません。ただ、時の政権のビへービアについての批判があったことは間違いありません。ただ私どもは、朝鮮半島を支配する唯一の政府が韓国であるということはあの条約の中からは見ることができないわけで、それは認められません、こう言ってきているだけであります。ということになりますと、社会党の言い方と日本政府とは何も変わりがないんですよ。日本政府にかわって社会党が怒られている、そんなようなことになっているのではないかと私は思います。  そういう中で、南北の間で一種のデタントが進んでいます。日本の植民地支配から解放された後、今日まで東西の冷戦状況が非常にティピカルにあの半島の中にあらわれてきたということを言ってもいいのではないかと思います。いろいろな曲折はありましたけれども、最近は流動化して、特に南の韓国の方はずっと続いてきた軍事政権が新しい共和国となって、憲法を改正し、大統領選挙や国会の選挙、民主化の方向に進んでおり、心配されたテロもなくソウル五輪は成功しました。盧泰愚大統領の七・七宣言から各種の首脳会談の提案、またこれに対して北の金日成主席が条件つきながらもこれを歓迎する発言等があって、南北対話の機運は醸成されつつあると言ってもよいと思います。ちょうどきのうからきょうの新聞にかけて報道されている朝鮮民主主義人民共和国側の新しい決定もあります。この朝鮮半島の動向というのは日本の平和と繁栄に非常に大きな影響を持つものであるし、世界の平和にもあるいは政治情勢にも大きなインパクトを持つものであることだけは間違いないと思います。  そこで、この朝鮮半島の緊張緩和、南北の自主的平和統一、こういうことが達成できるために、日本の我々もいろいろな努力を重ねていかなければならぬのではないかと私は思うわけです。そのうちに統一問題については、もう時間がだんだん減ってきましたので、少し私のひとり語りになってしまうかもしれませんが、統一のあり方については、これはもう南北立派な国なんですから自主性に任せていくということが必要で、南には南の構想があるし、北には北の構想があります。そして、利害関係の対立もこれは当然です。しかし、徹底的に話し合ってもらうことが必要なので、日本はむしろ中立的な立場でそれを見守っていくということが大切ではないか、私はそう思うわけです。  それから、緊張緩和の問題も、これは北の軍隊と南の軍隊と米軍の駐留軍、この三つが三十八度線で向かい合っているわけであります。したがって、これもその三つで話し合って決めてもらうよりしようがないので、何しろまだ休戦協定が行われたままになって今日まで四十年来ているわけです。撃ち方やめという格好のままで今日まで来ているわけですから、いつ何どき何が起きてもしようがないという状態なんですね。やはりこの三つが話し合って平和宣言を出してもらって、平和協定にしてもらわなければいけない。そして、兵力の削減だとか平和ゾーンの設定だとか今いろいろなことが言われているわけでありますから、日本としては南北の緊張、軍事緊張が高まるような行動には加わらないということ、これが日本にでき ることではないかと思います。  ですから、日本政府としては、今申し上げましたような態度で臨んでいくべきであり、特に日本としてやることがあると思います。これは日本だけがやらなければいかないことがあると思います。それは過去三十六年間、朝鮮半島の人民に植民地支配で大変な苦痛を与えてきたわけですね。その償いを南に対しては不十分であるとはいいながらもこれまでやってきたはずです。有償、無償のお金も一兆円に近い金が向こうに渡され、いまだにまだ渡されています。そのことによって南の人民は決して満足したとは思っていないと思いますけれども、とにかくやってきたことだけは間違いありません。ところが、北に対しては戦後四十年ただの何一つやっていないというのが今日の現状であります。何しろ南と北が対立しているのをよいことにして、北を敵視する政策すらとって北の反発を受けてきたというのが日本の今日までのあり方ではなかったかと思うわけです。ですから、私は、今やることは何といっても植民地支配の反省、それを原点にして償いをするということからでなければならないと思います。  それに対して、今までは韓国側が日本の北への接触について反発があったのですけれども、盧泰愚大統領の発言の中にもそれは拒まないということをはっきり言っているわけであります。また、北の大統領もこの間の建国四十周年の記念式典のとき、社会党の山口書記長も出席したわけでありますが、そのときの演説の中で、国交のない資本主義国とも経済、文化、人的交流を進めるということを言っておられます。ですから、さまざまな条件は整ってきていると思います。とにかく償いをすること、そのことから我々は始めなければならないと思います。直接対話をやること、何か北東アジア課長はあすソ連に行くというふうな新聞記事もけさ出ておりますけれども、ほかの国の様子を聞くのも結構だと思いますけれども、やはり北との直接対話を開始するということ、そのためにはいろいろなことが必要になってくると思います。そのことが今非常に大切である、私はそう思うのですが、外務大臣のお考えを伺います。
  78. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 朝鮮半島南北統一の問題は、我々といたしましても、恐らく南北の方々の多くがそうした気持ちを抱いておられるであろう、これは私はそのように思っております。既に北の方におきましても、今安井委員がおっしゃったとおり、金日成主席が今のようなスピーチをなさっておりますし、また、盧泰愚大統領も非常に前向きの話をなさっておられます。特に国連におきまして北朝鮮の代表の次官は、今までよく非難をしたわけですが、日本並びに韓国及びアメリカを非難しなかったということもまた私たちといたしましても変わったなという印象を抱いております。  しかし、統一そのものに関しましては、やはり南北そのものの問題だ。私は、今御指摘のとおり、三十六年間日本が支配をしておったわけですから、恨みつらみというものは相当大きなものであるということはいまだに我々は謙虚に反省をしておつき合いをしなければならないと考えております。だから、よく言いますが、日本語で一番適切な言葉を申し上げれば、日本がしゃしゃり出るということは北も南も、このことに関しましては南北ともに決してお喜びにならない問題ではないだろうか、したがいまして、南北でひとつ六者会談という話ならいいな、それなら日本もやってこいやというときには私たちも喜んで参画をして積極的にいろいろな御相談に乗ればよい、かように考えております。  特に韓国とは意思相通ずるところの機会も、そういう関係も結んでおるわけでございますが、北朝鮮とは何分にも我々といたしましては全く接触がございません。しかし、第十八富士山丸等々ございますから、いろいろと接触はいたしておりまして、特にオリンピックが終わってからのやわらかなムードの中で何とか我々といたしましても、もし、それは北からの話があれば喜んで私たちもお話を聞こう、また、こちらからのお話も申し上げよう、こういう姿勢になっておるわけです。特に、社会党の山口書記長の訪問は私は非常に大切な訪問であったと思います。石橋前委員長の訪問も韓国の評価を大きく変えたと私は思っております。したがいまして、特に北朝鮮労働党を招待した、できるならばお越しになった方がよいし、お越しになったというチャンスは私たちとしても生かしていかなければならない、かように考えておるところが現状でございます。
  79. 安井吉典

    ○安井委員 これはもう少し詳しくやりとりをしたいわけでありますけれども、八分でしたか、おしまいの時間がだんだん近づきますので、はしょります。  もう一つ政府にしっかり理解しておいてもらわなければいけないのは、朝鮮民主主義人民共和国が拒否反応を示すようなことにやたらに触れるというようなことはやはり慎むべきだと思うことであります。共和国側とこれから接触をして話し合いをしようというときに向こうの嫌がることに触れていくということは、私は非常に問題があると思います。特に、今までの南北のやりとりの中で盧泰愚大統領もさまざまな観測球を投げています。あんなことまで言ってもいいのかなということまで言うわけです。言っているけれども、最後は六者会談であるわけです。その六者会談ということに北側は猛烈に反発をしております。現在の労働党新聞にしてもいろいろな主席の演説にしても、すべてそれに集中したキャンペーンをやっているという状況です。だから、盧泰愚大統領が六者会談と言ったから、ああ日本政府はそれを全面的に評価しますなどという言い方をしている限り、北側が話に乗ってくるような状況はなかなか生まれないのではないかという感じが私はします。  つまり、二つの朝鮮ということを絶対に許さないという考え方、分裂の固定化になるからですね。だから、クロス承認とかそれにつながる六者会談は困るという言い方を向こうはしているわけであります。今幾ら六者会談と言ったって、六者のうちの一者は必ず出てこないわけですから、いまだに中国もソ連もそれに賛意を表しているというところまでいっていないわけです。だから、成立しないことがわかっていてそれはいいなというふうな言い方はやはりなさらない方がいいのではないか。ですから、北の共和国側も乗ってきますよという状況がもし将来できるのならそれはもう当然それでもいいでしょうけれども、今猛烈な拒否反応の段階でそういうアプローチの仕方は慎むべき問題でなかろうかと私は思うわけであります。  そういう中で、民間航空路の開設だとか、貿易事務所の設置だとか、新聞記者の相互交換とか、通信衛星の利用だとか、それから漁業協定の問題だとか、もう解決しなければならぬ問題はたくさんあるわけです。今までいろいろ向こうからもこちらからも、例えば日朝議員連盟等もいろいろな問題を持ちかけるのですけれども、向こうがうんと言っても、だめなのは全部日本政府なんです。今私が挙げましたような問題に対する拒否回答をしたのは全部日本政府なんです。今度は違うと思うのです。これからひとつ新しい考え方を出していただきたいと思います。特にパスポート、これは、私たちアメリカへ行こうとヨーロッパへ行こうと、あの外務大臣からもらうパスポートには、「エクセプト・ノースコリア」と必ず書いてあります。タイプでそれだけ打ってあるわけです。日本人全部にそれが打ってあるわけです。日本政府にとって世界の地図の中で唯一白紙はノースコリアなんです。昔は中国あるいはベトナムがそのエクセプトに入ったことがありますけれども、今はもうなれっこになってしまってお気づきにならぬかもしれないけれども日本人のどのパスポートにも、北朝鮮に行こうなんということを考えていない人にまでみんなそう書いてあるわけですね。だから、北朝鮮を除くという言葉をパスポートから除くことが今の日本政府として非常に大切な問題だということだと私は思います。  ですから、これからの問題の中で、第十八富士山丸の問題もあります。社会党も一生懸命にやっ ているわけでありますけれども、なかなかこれも面倒だと思います。しかし私は、これだけを解決しようといったってなかなか難しいので、いわゆる関係改善をどんどん進めるというその中で、その一環として、関係改善が完全に進めばこの問題は解決しますよ、そういう筋合いのものとして取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいわけであります。  時間が来ましたので、私が今までひとり話をずっとやってきて肝心の答弁をお聞きする時間をお上げすることができなくて申しわけないのですけれども、今までの私の考え方について、我々もその問題については、南北の自主的な平和統一についてはいろいろな角度から協力しますよ。もう一度お考えを伺います。
  80. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 南北問題に関しましては、先ほどもはっきり申し上げましたとおりに、第一義的には南北の話し合い、これによってまず話をつけていただきたい、我々は決してしゃしゃり出ることはしない、もし御相談があればいろいろとその御相談にも乗りましょう、こういうことでございますから、その点あえてもう一度繰り返しておきます。
  81. 安井吉典

    ○安井委員 最後にちょっと。  アメリカの大統領選挙でブッシュ氏の当選確実が間もなく決まって勝利宣言が出る予定だという情報を聞くわけでありますが、外務大臣としてどう対応するのか。とりあえず十二月にはモントリオールのガットの会議へ行かれるのでしょう。アメリカとの新しい接触なども考えになっておられると思うのですが、どうですか。
  82. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今おっしゃったような報道があるということを私も耳にいたしておりますが、こうしたものは、従来、どちらかの方が勝利宣言をされたりあるいは敗北宣言をされたり、確定しないことには他国がその選挙の結果を申し述べることはできません。しかし、アメリカという大きな国、これは何と申し上げましても我々の同盟国でございますから、日米の関係我が国外交の基軸である、その関係が非常にスムーズに動くということは世界にとりましても大切なことである、こういう認識は私は従来と全く変わらないものであるということを申し上げておきます。
  83. 安井吉典

    ○安井委員 終わります。
  84. 箕輪登

    箕輪委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時七分休憩      ────◇───── 午後一時一分開議
  85. 箕輪登

    箕輪委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。冬柴鉄三君。
  86. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ただいまの昼のニュースで、一年余り争われてきましたアメリカの大統領選挙の投票の結果、ブッシュ氏が新しい大統領に就任することが確実になったというニュースが流れています。ブッシュ氏はレーガン大統領の政権下での副大統領でもありますし、また運動中もレーガンの諸政策を引き継ぐ意向を明確にいたしておりますので、我が国にとりましては、継続性あるいは安定性という意味からは歓迎すべきことであろうと私考えます。しかしながら、いずれにいたしましても、アメリカの膨大な財政、貿易、あの双子の赤字問題を背景に、我が国に対する政策がより厳しいものになってくるのではないか、このようにも考えられるわけでございます。  ことしの四月、公明党の委員長のお供をいたしましてアメリカへ参りました。そのときに、ブッシュ副大統領とも会見の機会を得ましたが、このようなことを言っていました。レーガン大統領時代を超えて将来を見通したとき、農業を初め日本へのアクセスが問題となるのであり、共和党であれ民主党であれ、次の大統領は同じ問題を抱えることになるのであります、このようなことを言っておりました。また、米国には潜在的に孤立主義があります、私はこれは決して好ましいものとは思いません、日本側に制約があることは承知いたしておりますが、貿易、防衛、こう言ったと思うのですが、両面にわたって障壁を取り払うことによりこういう考え方を払拭できるのではないかと私は考えています、このようなことを言われて、そこに防衛という言葉が入っていたので私はちょっとショックを受けたのです。  いずれにいたしましても、このような基本的考え方を持っておられる方が新しい大統領に就任をされることになろうと思いますが、外務大臣、いろいろ制約はあろうと思いますけれども、この段階における我が国に対する影響とかその他の点につきまして所感を伺いたい、このように思います。
  87. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 御承知のとおり、日本時間一時がちょうどカリフォルニアの投票の締め切りでございます。そういうことで投票の済んでいないときに、アメリカの両陣営ともにどちらも勝利宣言あるいは敗北宣言をしないというのが一つのエチケットになっておりまして、また国際的にも大切でございますから、私はブッシュさんが優勢だからこうだとか、いろいろな意味でお話しするのではございません。それだけは一応除外いたしまして、だからどなたが当選なさろうともという前提でお話をいたした方が適切ではないか、こう思っております。  今、冬柴委員が御指摘になりましたとおり、やはり日米関係というのは我々外交の基軸でございますから、したがいまして、日米があらゆる問題で確たる関係をより一層拡大をし、スムーズに運営していくということは世界の安定につながるものだ、こういう基本姿勢で米国に対しまして私たちは臨みたいと思います。  なおかつ、その米国でございますが、やはり双子の赤字があるということも事実でございますから、当然どなたが大統領になられましょうとも双子の赤字問題には真摯に取り組まれるのであろう、私たちはそういうことを期待いたしております。  しかし、最近の傾向から申し上げますと、やはり日本に対するいろんな感情があるということも事実でございますから、二国間の問題は、たまたまレーガン現大統領と竹下総理との間におきましてこの一月、一つ一つ着実に解決をしていこうではないか、貿易摩擦であれそのほかの問題であれ、そういうふうな確認がなされました。そしてともどもに、インフレなき持続的成長というのがサミットのお互いの公約であるから、この実現のために、日米間は特に世界に対しても大切な役目を果たすので、いろんな面で縮小均衡というよりも拡大均衡だよ、こういうこともお互いに確認されておりまして、そうしたことは政府間におきましても非常に確実にそうした約束が履行されておるのではなかろうか、だから今後もいろいろな問題におきまして、私たちアメリカとの間におきましてはそういう気持ちで臨んでいかなければならない、かように私は考えております。  特に防衛問題ということになりますと、政府もあるいはさようかもしれませんが、特に議会面におきましては、やはりバードンシェアリングというふうないろんな意見もございます。それに対しまして、私も過般、御承知のシュローダーさんという女性委員長でございますが、お目にかかりました。だからこういう方々との意見交換の際にも憲法上の制約、さらには近隣諸国に与える影響からくる日本のいろんな制約、そうしたことも我々は考えなければなりませんから、日米というものは本当に大切な関係であるが、防衛においては我々は自主的にすべて判断していくので、いろいろとその点も特に御配慮願いたい。  特に私は、それを離れた一般的な経済問題等々においては、これは具体的にどこがどうだとか、ここがこうだとかいろいろな問題があるかもしれない。それはその都度お互いに腹蔵なく意見の交換をして、やはり世界に貢献し得る、あるいはまたアジア・太平洋に貢献し得るというならば、我々といたしましても非軍事的面ならば、いろいろそのケース・バイ・ケースによりまして貢献をいたしたい、かように思っております、だからこ れもやはり自主的判断だけれども大いに話し合いをしなくちゃいけない、こういうふうに私はずっと申してまいりましたので、いずれの候補者の御当選が確実になりましても、そういう意味アメリカとの関係を推進いたしたい、かように考えております。
  88. 冬柴鐵三

    冬柴委員 あわせて防衛庁長官にも同じ問題につきまして伺いたい。米ソの戦略核半減条約の行方についても、若干で結構ですがお願いしたいと思います。
  89. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 レーガン政権後の新しい政権につきましては、私は、レーガン政権と変わらない状況にあるということは、ただいま外務大臣の答弁のとおりでございます。  それでバードンシェアリングにつきましても、やはり経済力の強い日本に対しては、かなりの要求があるようにも受けとめられます。しかしながら、私たちは自主的な態度で防衛力整備を進めていきたい、いかなければならないという態度をこれまでもとってまいりましたし、今後も、そういう態度を貫いてまいりたい、かように考えております。また、戦略核五〇%削減については、これは非常に好ましい状況だと思うのでございます。したがいまして、米ソのいわゆる軍備統制、いわゆる軍縮の交渉というものは今後とも積極的に進められるべきものである、こういうように考えておりますので、私たちはそういう状況に対しては非常にいい、将来とも非常に積極的にそういう方向にあってほしいという希望を持っているような次第でございます。
  90. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、ソ連のゴルバチョフ書記長が、ことしの九月十六日、東シベリアのクラスノヤルスクで行った演説には、我が国安全保障とも直接関係をし、また我が国を当事者と指名をする多くの提案を含んでおります。この提案を外務大臣はどのように評価をされるのか、また積極、消極両面においてどう対応しようとされているのか、現段階のことで結構でございますので、簡単に所信を伺いたいと思います。
  91. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 クラスノヤルスクのゴルバチョフ書記長の提案、これは私たちも大いに関心を持って眺めておったところでございます。その前段には、もちろん日本という国名を挙げて、やはり関係改善をしたいものだという願望はあらわれておる、私はこういうふうに思っておりますが、おおむねの線におきましては従来の主張というものが繰り返されておるのではないだろうかな、かように思っております。特に、昨年の十二月八日にINFのグローバル・ゼロが両国において合意されました。その後、では日本に与える大きな影響はあったろうかと思いますと、やはりまだまだ太平洋方面におけるところの緊張というものが緩和された、私たちはこうは思わないわけでございます。したがいまして、来る外相会談において恐らくこの問題は当然出ますから、私もそうした提案というものは大切に考えながらお話を聞きたい。そして、やはり話をされる内容についても、いろいろこちらも質疑をし、お互いに議論をし合いながら進めるべきだろうと思っておりますが、現在のところは、先ほど申し上げましたとおりにペレストロイカ路線というものが出ておるけれども、従来の繰り返しが多いなというのが感想でございます。
  92. 冬柴鐵三

    冬柴委員 地域紛争につきまして、ソ連のアフガニスタンからの撤退とかあるいはカンボジア問題についての重大な進展あるいはイラン・イラクの停戦の実現、それから近くは中ソの和平が緒についたとか等々、グローバルで全般的な和平へのうねりというものがあるように感ずるわけでございますが、政府はそれをどう評価をされるのか、また我が国の総合安全保障政策にどのような影響を及ぼしつつあると考えておられるのか、まず外務大臣、次いで防衛庁長官にお伺いしたい、このように思います。
  93. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 幸いなるかな、米ソ両国の話し合いの結果、幾つかの地域紛争に関する問題がおいおい解決されつつあるということは我々も大いに歓迎をいたさなければなりません。しかしなかなか難しいもので、アフガンにも我が国はいわゆる文民を派遣いたしまして、非常に難しいところで一人の文民が活躍していてくれますが、あのようにソ連の撤兵がまだ不完全である、これはゲリラがなおかつ戦火を交えているからであるというソ連の説もございます。  また、イラン・イラクに関しましても、日本は大いに関心を持ちまして両国に対して手を差し伸べ、そしていろいろと御相談にもあずからなければならない立場でございますが、まだ入り口のところでもう少しくすっきりしない面があるというふうなことでございまして、本当に地域紛争というものは、長年戦えば戦うほどそうした何かしこりが残っておるというようなことを痛感せざるを得ませんが、しかしいずれにいたしましても、去るサミットでこうした地域紛争は先進国、西側が協力してぜひともその終結の日が一日も早いことを我々として望み、努力をしようではないかというふうにお互いに努力をいたしております。特に地元の、地元というと東南アジアという、アジアという意味で地元という言葉を使わさせていただいたのですが、足元のアジアにおきましてもカンボジア紛争があるわけでございますが、既にこれに対しましては、シアヌーク殿下と二度にわたりまして会談をいたしておりますから、本当に日本考え方を殿下といたされましても大いに評価をし、なおかつ、ASEAN諸国も日本の立場というものに対する評価をしていただいております。したがいまして、私たちは今後、やはりODA等々の経済的協力ということもこれはもう一番大切なことでございますが、そうした紛争解決のために非軍事面では幾らでも協力をしようではないか、単にお金だけではなくして、人についても要員を派遣する等々あるいは公正な国家樹立のための選挙を監視する等々いろいろな問題があろうと思いますから、そうしたことには大いに協力しますというような姿勢で今日臨んでおるわけでございます。  また、米ソ間もそういうような気持ちでお互いに従来の東西関係という関係をある程度は改善しながら臨んでいるのではないかと思いますが、局所においてはまだ東西という意識が角を突き合わせておると申し上げても過言でないのではないか。最近、特に中国とソ連関係改善をせられるような様子でございまして、銭其シン外相がまず訪ソ、シェワルナゼ外相が続いて訪中、そして明年には首脳会談が行われるであろう、時期並びに場所はどこかわかりません、未定でございましょう、まだ決まっておりませんが、そうした雰囲気というものは大切にしていかなければならない。したがいまして、そうしたものと我が国との安全保障関係は、環境はそうやってよい方向に向かっているけれども、しかし、やはり我々といたしましては本当に東西の対立というものが大きな立場でなくなることを望んでおるものであり、同時にそれまでにはお互いにやはり準備をおさおさ怠ってはいけない面もあるのではなかろうか、かように思っております。  したがいまして、防衛関係におきましても、十二分に四囲の環境を見詰めながら、なおかつ米ソの間におきまして戦略核の縮減等々の話が進んでおる、そうした問題に関しましても我が国としての意見を表明しつつ、やはり新しい時代が来ることを望んでおります。しかしながら、防衛というものは、やはりそうした間におきましてもこれは我が国民の生命、財産のために必要欠くべからざるものでございますから、節度ある防衛はこれはぜひとも守っていかなければならない、これが私たち考え方であります。
  94. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今御指摘のように、米ソ間でINF全廃条約の発効、さらに地域的にはイラン・イラク紛争の停戦、あるいはソ連軍のアフガニスタンの撤退開始等がありますし、また、朝鮮半島において南北の話し合いも進められようとしている。また、中ソ関係もかなり進展の状況にある。加えて、今米ソ間ではやはり軍備管理あるいは軍縮の話し合いが進められている。こういう傾向については、私たちは本当に歓迎するものでござい ます。世界の平和にとっても喜ばしい状況だと思うのでございます。  ただしかし、先生御案内のように、軍事的な面を考えますと、米ソを軸として軍事的な対峙というものは依然として存在するというのが現状ではないかと思うのでございます。したがいまして、国際社会における平和、米ソあるいはまた安全保障というものは力の均衡による抑止というもので支えられているのが現状じゃないか、こう私たちは見ざるを得ないわけでございます。そういう面からいって、我が国の安全を確保する、独立国として、侵害を受けない日本としては節度ある防衛力整備をする。加えて、日米安保体制の信頼性を向上させる方向でこれからも進めていかなければならないのじゃないだろうか、こう考えておるような次第でございます。
  95. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ことしの九月二十七日ですか二十八日に、アメリカのカールーチ国防長官が講演をしまして、その中で、日本に対しては年間五%以上の防衛費の増大は望まない。もし日本がこれ以上の支出を行えば自衛的な軍隊から攻撃的な軍隊へと形態を変えなければならなくなると言いたい。そして、それはだれも望んではいないことだとの趣旨の演説を行ったと新聞に報ぜられています。これをどのように受けとっていらっしゃるのか。これは簡単で結構でございますが、これも外務大臣防衛庁長官にそれぞれ所感を伺いたい、このように思います。
  96. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 カールーチ国防長官としての対日観がそこに出ているのではないか、かように思います。
  97. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 最近のカールーチの演説の際に御指摘のような発言をされているわけでございまして、これは日本に対し過大とも言える防衛努力を求める米国内の動きに対して、米国国防当局の考え一つのあらわれであろう、こう見ているわけでございます。したがいまして、私たちはしばしば申し上げておりますように、我が国防衛というものは自主的に防衛力整備を図っていくのだということを御理解いただきたいと思います。
  98. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この演説の中で、そのかわりに国際収支の黒字を海外の開発援助資金として劇的な規模に拡大するように話し合い、日本も同意している、こういうふうなことを述べたと伝えられています。そのような同意をしたのかどうか。その事実だけで結構でございますが、外務大臣に事実の確認をお願いしたいと思います。
  99. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 カールーチ国防長官と一月にお話ししましたときには、そうした問題はなく、二回目の米ソ首脳会談が行われた帰途、イの一番に日本に立ち寄られまして、首脳会談の結果を日本にも伝えておこうというときに、お互いにいろいろな話をしました。だから私の方からも、日本は軍事的な面には幾つもの制約がありますよ、向こうから問われるまでもなくそういう気持ちで、直接言葉にはあらわしませんが、しかしながら経済大国日本だからいろいろな要請がある。これに対しては当然日本としても極力おこたえしなければならぬでしょうねと私は申し上げたわけで、カールーチさんから質問があったから答えたとか、要請があったから答えたというのじゃなくて、期せずしてそういうお話をしながら、カールーチ国防長官日本のそうした面の努力というものに対しまして非常に高く評価をしておりましたということがそういうような表現になった、私はかように思っております。
  100. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これも四月に訪米したときカールーチさんと話したときに、カールーチさんはこのようなことを言われたのです。  日米安全保障にとって必要で重要なことを申し上げたいと思います。それは、GNP比三%も途上国援助に使ってほしいとは申しませんが、日本の経済援助の規模を劇的に増大されてはいかがかということです。先ほどの講演と符節する表現を四月の段階で使っておられるわけです。もちろん、これに対して我が党の矢野委員長は、劇的という点はいただけないということを反論はしていますけれども、やはり外国人にはこういうふうにきちっと言うておかないと、合意したように受け取られる面があるように思われます。いずれにいたしましても、この演説の中で、日本も同意しているというくだりは、今外務大臣がお答えになった程度だと受けとめておきます。  我々アメリカに行ったときに三十名ほどの要人とお話をさせていただいたのですが、異口同音、バードンシェアリングに論及をされました。そして、軍事についてはもういい、こういうことを言われました。しかしながら、非軍事のそのような経済援助を日本はふやしてほしいんだということをいろいろな方が言っておられます。したがって、これは先ほど外務大臣もおっしゃったように、アメリカの対日観といいますか、そういうような大きな流れのように考えるわけでございますが、竹下首相がヨーロッパに行かれたときに国際協力構想ということを言われて、これは大きな反響を呼んだと思います。  ODAの拡大等を内容とするものだと思いますけれども、これと、さっきのバードンシェアリングが絡んでしまいますと問題がちょっと大きいのではないかと思うわけでございます。我が国には我が国の経済理念と申しますか、そういう哲学に裏づけられた援助でなければなりませんし、そうでないと国際的にも無用の誤解を招くことになりかねないと思うわけでございます。政府の開発援助というのは政府の御努力、あるいは我が党もこれについてはかねて主張しているところでありますけれども、もっと拡大すべきであるということをかねて申してまいりました。西欧並みのGNP比とか、これはなかなか難しいことですけれども、あるいは無償援助中心を内容とすることに努力しなければならないということも当然だと思います。しかしながら、これに戦略的色合いをつけることは絶対に避けなければならないと思います。この点について外務大臣の明確な所信を伺っておきたいと思います。
  101. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 竹下外交の三本柱は、御承知のとおり、まず世界の平和に貢献しましょう、二番目は文化交流、三番目はODAの拡充、こうなっております。したがいましてサミットでは、出席前に第三次ODAの中期目標が達成されましたので、直ちに第四次に切りかえまして、過去の倍額を出しましょうというので、御承知の五百億ドル以上、なおかつ最貧国に対しましては過去十年、累積五十五億ドルほどになりますが、これをキャンセルしましょう。これはサミット参加国の他国からすればまさに目をみはるような思い切った措置であったのではなかろうか。したがいまして、これに対してはアメリカを初めECも大いに共鳴をし、評価をしていただきました。  それは一応ODAでございまして、もちろん内容は今後ともです。極力無償の方を多くするとか、有償の場合はその条件を緩和するとか、いっぱいございます。そういうふうなことをやっていきたいと思いますが、大体援助国、いわゆるDACでございますが、その参加国のうち一七%くらい日本が持っているのではなかろうか、こういうふうな勘定になっております。だから、我々は、将来二〇%くらいをめどとしようねと言っておるのですが、それをオーバーしますと、今度は日本は経済侵略でないかと、すぐにそういうふうに、事あるにつけてもなかなか批判というものはおさまらないものだ、そういうところも十分注意しながらやっております。したがいまして、あくまでも非軍事的面ならばという前提がついておる。ただし、では経済面においては無制限かというふうな話になってはこれまた大変でございます。やはり我が国の手元もなかなか不如意でございます。そうした中において、経済大国第二番目の日本としてのいわゆる世界に貢献するという立場を重んじているわけでございます。  したがいまして、総理のこれからのいろいろな新しい構想という中には何でもかんでもというようなことは絶対なくして、甘んじていろいろな問題に受けましょうという問題でもない。特に、サミットにおきましてはっきりいたしましたのは、政治問題と経済問題の二つに分かれております が、アジアにおきましてもフィリピンが今日いろいろの面において安定をしてもらうことが一番大切だ。ASEAN諸国もフィリピンの安定が一番大切だ、民政の安定が大切だ、こういうふうに言っております。そういう面は、この間は経済面の一つの課題としてサミットの合意事項として並べられたわけでございまして、ミッテランさんが途中で南米を意識されてそれも入れとけというようなことになったわけでございます。  そういう経緯を通じまして、やはりきちっとした国民に説明のできる協力でなくちゃいけない。バードンシェアリングという言葉がいいのかどうなのか。私はそういうことが事実アメリカにおいて議論をされておるということは認識いたしておりますけれども、私は関係者に申し上げました、日本流に言うと、何か更正決定をされてどうしてもそれを税務署へ納めなくてはだめだ、そういう問題ではないと思うと。だから、一から十に至るまでお互いにまた先進国が話し合って、そしてかくかくしかじかというのならば喜んで我々も協力いたしましょう、これが日本の立場であります。
  102. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これもアメリカへ行ったときのマクファーソン財務副長官との話し合いの中で、そのような点について若干示唆をされる発言がありました。  これはマクファーソンの言葉です。バードンシェアリングには、軍事にかかわるものと非軍事のものがあると承知しています、日本は非軍事について、急速に増大しておられることを知っています、それに対して私どもはありがたく感謝をいたしております、その分担に関して、日本の援助は量的にはふえていますけれども、質の面では改善すべき点があります、このように言っていました。そしてその中で、世界銀行や国際機関が行うときには、被援助国に資金使途についてのプログラムを提供させて、途上国にとっては耳の痛いこともどんどん言っています、しかし、日本はバッドニュース、耳の痛い話については途上国に余り言いませんね、もっと言うべきではありませんか、こういうようなことをマクファーソン財務副長官がおっしゃっていまして、むしろ耳の痛い話は言いにくいんだ、言いにくいことを言うのはこれもバードンシェアリングなんだというような発言もありました。  どうもいろいろ見てみますと、確かに我が国のODAは、ことしにもアメリカを抜いて世界最大の援助国になるのが確実だと論評されていますし、「世界に貢献する日本」をキャッチフレーズにする竹下政権にとってこれ以上アピールすることはないというような、非常に高く評価する論評が出ていますけれども、その中でも、国会の論議というものが余りこれに反映してないという点等が非常に問題点だと指摘されています。援助の実施体制とか公開性というような問題、そういうものが必要だということが指摘をされていますので、今後、非常に大きくなったこの援助、被援助国からも喜ばれ、世界からも高く評価されるものにしていくために、参議院で行われているような基本法の制定等も真剣に考えるべきときではないか、このように思います。  これも一言で結構ですが、外務大臣の所感を伺っておきたい、このように思います。
  103. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ODAは経済大国日本といたしましても当然なさなければならない問題でありまして、額は先ほど申し上げましたように一応大きくいたしまして、これを第四次として着実に実行したい、その効果も上げたい、かように思っております。  そして、これはたとえ無償といえ、それによってやはり実質的に国力をつけてくださいよ。現にアジアにおきましてもNIES、四カ国地域、こういうふうに言われておりますが、そういうふうなみずから努力をされた国々もあられておるわけであるから、ひとつ我が国もそういう意味で、今日の途上国は永久に途上国にあらず、ぜひとも中進国、先進国になっていただきたい、その思いを込めて、日本国民の方々が税金としてお払いになっている、それを政府が預かってお使い申し上げておるのだ、このことを相手国に対しまして私はしょっちゅう申し上げております。したがいまして、その点もぜひとも理解を仰ぎながら相手国の要請をこなすように努力をしておりますが、そのためには無償をふやし、さらには条件緩和という問題もございましょう。特にアンタイドということも我々は最近強く主張いたしまして、日本だけがその援助にぶら下がっていくんじゃない、あなたの国々においてもいろいろな調達に関しては十二分に国の事情を反映していただいても結構ですよ、そうしたことにおいてとにかく民生を安定して将来に伸びてください、これが私たちの願望であります。  ところが、しばしばそうした過程において醜聞を耳にすることがある。これは一番情けない話であって、援助国としてもこれほど情けない話はないし、また、それを受けておられる国としてもこれは注意をしていただかなければならぬ。最近その点におきまして私はこれといったようなものはないのではないかと思っておりますが、今おっしゃるとおりに行政監察も受けまして、一応無償の面は非常に大切な答申をちょうだいしています。続きまして、有償の面も明年は行ってほしいと思っておりまするし、同時に、会計検査院も出かけていきまして、それぞれ視察をしておる。相手国がございますから、相手国の機関に手を突っ込むというようなことは内政干渉、大変なことになります。したがいまして、そうした許される範囲内において視察をしておるというふうな状態でございまして、やはりそういう点は今後とも十分考えて、フォローアップもしていかなくてはならないだろうし、あるいはアセスも考えなくてはならないだろう、かように思っております。  ただ、国会であらかじめ審議したらどうだという声もなきにしもあらずでございますが、やはり各国それぞれ立場がございますから、横並びに前もってあれがこう、あれがこうというふうなこともどうかと思われますし、また、せっかくプロジェクトが決まりましても、その審議の状態によっておくれたとか、あるいは修正されたというような面があれば、これはまた約束違反等々いろいろな問題が出てまいりますので、十二分に慎重に、しかも積極的にこの面は推し進めまして、現在のこうした姿が一つの最も適切な姿ではなかろうか、かように思っておるような次第であります。
  104. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、次期防衛力整備計画の策定についてお伺いをいたしたいと思います。  瓦防衛庁長官も、今年度は策定に着手をしたいということを言っておられました。それで、ポスト中期防につきましても、国防の基本方針とかあるいは「防衛計画大綱」の枠組みの中で策定されるべきものであるということはもう疑問の余地がないと私は思っているわけでございますが、この大綱を見直すとか、それから私は、この大綱のいわば眼目、命と申しますか、それが別表にあるように思うわけでございます。そのように評価する一人でありますが、その別表を修正するというような思想はないと思うのですが、その点についてまずお伺いをしたい、このように思います。
  105. 日吉章

    日吉政府委員 大臣から御答弁いただきます前に、事務的に御説明申し上げたいと思います。  中期防後の、昭和六十六年度以降の防衛力整備あり方につきましては、ただいま委員指摘のように、中期防終了までに改めて経済情勢や国際情勢等を勘案しまして、国防の基本方針はもとより、専守防衛等の我が国の基本方針のもとで決定を行うべきものだ、かように考えております。現在、その具体的な方針について述べられる段階ではございませんけれども防衛庁としましては、防衛力整備の性格から考えまして、長期的な視点に立ちまして計画的に進めるべき問題であるという考え方をしておりますので、現在の中期防のような中期的な防衛力整備計画を策定することが望ましいと考えておりまして、安全保障会議等にお諮りいただいた上で速やかにその検討に着手させていただきたいと考えております。その際、大綱との関係でございますけれども大綱の前提としております国際情勢等に基本的な変化が ない限り大綱の基本的な枠組みを見直す必要はない、かように考えておりまして、少なくとも現時点におきましては、この前提とする国際情勢等に基本的な変化はないのではないか、かように考えております。  もう一つのお尋ねであります大綱の中の別表でございますが、委員ただいま大綱の眼目というふうにおっしゃられたわけでございますが、別表はあくまでも大綱を策定いたしましたときに保有しております、あるいはそのときに取得することを予定しておりました装備を前提にいたしまして作成いたしておりますので、その後の国際情勢あるいは軍事技術の動向等によりましては、大綱の精神そのものは変えませんでも、変え得るという理念的な弾力性、可能性を持っている性格のものではないか、かように考えております。しかしながら、いずれにいたしましても、昭和六十六年度以降の防衛力整備あり方そのものをどうするかということは、政府計画をつくるのかつくらないのかということも含めましてこれから検討していくということでございますから、その具体的な内容について、それでは六十六年度以降別表を変えるのか変えないのかというようなことをお答え申し上げる段階ではないのではないか、かように考えております。
  106. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今防衛局長から答弁したような状況でございまして、次期防については、今御答弁申し上げましたように、やはり長期的にあるいはまた計画的に防衛力整備というものを見ていかなければなりませんものですから、これまでのようにやはり中期的な規模の防衛力整備というものは必要であろう、こう考えます。したがいまして、その基本は、防衛大綱によるいわゆる限定的な最小限度の侵略に対して原則として日本が単独で対応する、そういう小規模な防衛力整備を図るのだというこの原則に立って私たち整備をしていきたいという考えでございますので、御理解をいただきたい、こう思います。
  107. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今答弁の中に答えがあったようにも思うのですけれども、次期防の期限を三年説とか五年説とかいろいろ言われていたようですけれども、五年と考えていいのかどうか、その点が一つでございます。  時間をはしょる意味でそのことを確認をいただきたいことと、もう一つ防衛費の上限についてでございますけれども、やはりGNP比の一%枠を再び求めるべきではないか。先ほど来カールーチの話もあります。それからゴルバチョフの演説の中にも一%に言及をしておりますけれども、ほかのことは別としましても、どうもこの一%というものでやっていけるのではないか。今長官がおっしゃったような大綱に基づくそのような精神を実現していくためには、我が国のGNPは大きいですから、いけるのではないか。私たちの国は軍事大国によらなくても大国の地位を達成できるということを世界に実証した偉大な国だという評価を受けているわけでございますし、その平和のあかしがほかならぬ一%枠ではなかったのかというふうにも私は思うわけでございます。このように全人類にとってかくも有益にしてユニークな、この栄光に満ちたあかしをみずからの手で減殺したりする必要はないのじゃないか、私はこのように強く思うわけでございます。六十二年度の予算は一%を超える額が組まれていましたけれども、幸いにして、円高あるいは原油の価格の低落等がありました関係でしょう、一%枠以内に実質支出はおさまったというふうに報ぜられていますし、本年度もそのような努力をされるべきではないか、このように私は思います。  それと次期防の内容ですけれども、その重点をどんなところに置くつもりなのか。かいつまんで、次期防の期限の問題、それから費用の問題、それから内容、重点的な問題、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  108. 日吉章

    日吉政府委員 ただいま幾つかの御質問がおありかと思いますが、そのうちの私の担当する分についてお答えをさせていただきたいと思います。  まず、次期防を策定するといたしました場合の期限でございますが、これにつきましては、ただいま申しましたように具体的な方針について述べられるような段階ではございませんけれども、仮に政府計画をつくるというふうになりました場合には、中期的な防衛力整備を計画的に進めるという観点からはある程度の期間の見通しが必要である、これは事実でございます。ただ、余りにも対象期間が長くなり過ぎますと、正確な見積もりが難しい、あるいはまた国際情勢等の変化に対応しがたくなる、こういう問題がございます。したがいまして、この両方の要請をどこで調整するかという判断かと思いますが、そう考えますと、極めて常識的な回答になろうかと思いますが、一応五年とかあるいは三年とか、こういうようなところが常識的な線ではないかと思いますが、これは今後次期防を策定するということになった暁あるいは策定するということになりまして策定の作業を進めていく過程で決定していく問題ではなかろうか、かように考えております。  それから第二点目は、次期防を策定するというようなことになりました場合に、いわゆる中期防でとっております総額明示方式ではなくして、GNP一%枠の中で整備をしていくというような考え方はないのか、こういう御質問であったかと思いますが、これにつきましては、中期防の執行の過程におきまして政府部内におきまして種々議論をした結果、経済情勢等に直接リンクさせない形で、防衛力整備はいかにあるべきかということで、まず防衛力整備の内容を固めまして、それに要する金額は幾らか、その金額が経済財政状況等から考えまして調整のとれたものであるかどうか、こういうふうな執行の過程で決定するのがより望ましいといいますか適切ではないかというような判断で総額明示方式を採用しているわけでございますが、次期防に当たりましても、こういう中期防の執行の過程におきました検討経緯も参考にしながら、今後どういうふうな形でやっていくのがいいのか検討することになるのではないかと考えております。  その次に、現六十三年度執行についての見通しのお話がございましたが、これは経理局長からお答えをしていただきたいと思います。  それから最後に、次期防の内容の重点は何か、こういうお尋ねでございましたが、これも次期防の検討作業に入っていない段階でございますからなかなか言いがたいのでございますが、私どもは日ごろからいろいろ中長期的な検討をいたしておりますので、そういう検討から考えますと、我が国の地理的な特性等を踏まえまして、国際軍事情勢とか諸外国の技術的水準の動向に有効に対応し得るような効率的な防衛力あり方を追求していく、こういうことが重要ではないかと思います。その際、後方分野にも十分な意を払いたいと考えておりまして、単に正面のみではなく、正面と後方の均衡のとれた形で真に有効な防衛力が発揮できるようなものを整備していきたい、かように考えております。
  109. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 六十二年度の防衛関係費が、当初一%を超えておったのが結果的には一%以内に入ったということから、六十三年度においても同様の努力をすべきではないかという御質問だと思います。  御案内のように、六十三年度の防衛関係費の当初予算段階におけるGNP比は一・〇一三%でございます。これがどうなるかといいますのは、実は現段階では、分母でございますGNP、分子でございます防衛関係費の今後の推移がよくわかりませんので、非常に難しいということに尽きるわけでございます。分子でございます防衛関係費について申し上げますと、確かに六十三年度予算は百三十五円という為替レートで組んでございます。これが最近若干円高になっております。それから油の値段も若干下がっております。こういう減額要素があるわけでございますが、例えば為替による不用額というものを考えましても、これは百三十五円がどう推移するかというのも問題でございますが、過去に契約をいたしましたその契約のときに用いた為替と、企業が実際に部材等を輸 入しますときに用いる為替、この差がどうなるかという問題がかなりの部分を占めておりまして、この辺を予測することが大変難しいということでございます。また、増の要素といたしましては給与改定の問題がございまして、現在積算中でございますが、これは防衛関係費を押し上げるという要素でございます。私ども今後とも予算の執行に当たりましては極力これが節約に努めてまいる所存でございますけれども、現段階でこれが最終的にGNPとの関係でどういうふうに推移するかというのを予測するのは大変難しい、こういう状況でございます。
  110. 冬柴鐵三

    冬柴委員 日米安保の問題について、二つほどお伺いをしたいと思います。  その一つは、リムパック88で補給艦「とわだ」がアメリカの艦船に給油をしたという事実が報ぜられています。新聞をよく読んでみますと、これはアメリカ側から預かった油を給油したものであって、今までの五十八年十二月二十六日付の補給についての次官通達外の扱いである、このようなことが報ぜられ、また議員からの質問主意書に対する政府答弁もそのようなことが書かれているようでありますけれども、もしそうだとすると、これは歯どめがないことになると思います。アメリカから油を預かったというこの契約は、法的に評価をいたしますと消費寄託、同種、同等、同量のものを返還するということを約束して預かった、こういうことになると思うのですが、まずその点、結論だけで結構ですが、それでいいのかどうか、消費寄託として預かったものだ、そういうふうに考えていいのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  111. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 本年夏に行われましたリムパックに補給艦として「とわだ」が参加しまして、実戦的な訓練環境下での訓練として、日米共同訓練のために同一グループに所属するその中の日米両国の艦艇へ洋上給油訓練実施いたしました。その法的な根拠でありますが、この洋上給油訓練は補給艦の戦術技量向上のために防衛庁設置法第六条十二号の権限、すなわち「所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行うこと。」という規定に基づきまして実施したものであります。  この訓練は、いわゆる実戦環境下と申しますか、水中、水上それから空中からの複合脅威のもとで継続的に行動する艦艇部隊に対して補給するという観点から行うものでございまして、非常に貴重な機会が生かせたと我々は考えているものであります。先ほど申し上げましたとおり、根拠は防衛庁設置法の六条の十二号であります。
  112. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そんなこと聞いているのではなしに、預かった行為は消費寄託、いわゆる物を預かるという契約ですかということを聞いているのです。
  113. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 その際に米国の油を給油いたしましたけれども、これは物品管理法による寄託というふうに考えております。
  114. 冬柴鐵三

    冬柴委員 寄託契約というのは債務負担行為であります。要するにアメリカ日本国が油を返すという債務を負担する行為であります。その手続をとられたかどうか、それをお伺いいたします。
  115. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 米国の油を輸送いたしまして、これは訓練のために必要だからやったのですが、そのときに、米艦に給油した時点で寄託物を返還したという関係になるというふうに思います。
  116. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は返還を聞いているのではなしに、預かる契約は債務を負担するわけですから、双務契約ですから、そういう債務を負担したのではありませんか。その点についてお伺いします。
  117. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 物品管理法の関係は所管が別の局長でございますので、ちょっとお待ちください。
  118. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 アメリカから油を預かるという場合には寄託という形で処理しておりますけれども、これは私どもは債務負担行為とは考えておりません。
  119. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それでは、預かったら返す義務が起こるわけですけれども、返す義務はないわけですか。
  120. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 返す義務があるのは当然でございます。しかしながら、返す義務がある場合に、それを債務を負担するという形では取り扱っていないというのが私どもの了解でございます。
  121. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は弁護士をやっておりますが、そのようには少なくとも理解しないのが法律家の常識であります。物を預かったら返す義務を負担する、国が国に債務を負担する、そういうことでありまして、今の答弁には納得ができません。どういう手続を事後とられているのか、国会に対して報告されたのか、あるいはどの範囲でそういう債務を負担することができるのか、どう了解しておられるのかを伺いたいと思います。
  122. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 私どもの行った手続といたしましては、物品管理法に基づきまして、米艦との間で油を借りる、それは貸し借りの契約でございます。それから、返済するときには、それを返すという形をとっておりまして、これは物品管理法上、たしか物品の整理のための、もちろん帳簿への登録はいたしますけれども、そういう形で処理をしているというように了解しております。
  123. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これはおかしいですよ、今の答弁は。それは物品管理法の何条ですか。油を借りて、そして返したのですか。それとも一つの契約なんですか。どっちなんですか。預かったものを返すのであれば一つの契約、借りてまた返すというのであれば二つの契約、どっちなんですか。まず、物品管理法何条なんですか。
  124. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 物品管理法の根拠といたしましては、二十九条でやっております。しかし、物品を寄託してそれを返すというのについては、根拠法は今別途調べてまいりますけれども、それは今は暗記してはおりません。
  125. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっと委員長、これは私、非常に重要な問題なので、時間が来ましたと書いてありますけれども、もっと明快に答えてもらいたいと思います。  まず、寄託契約で債務負担行為じゃないのかどうか、そこら辺をきちっと整理してもらいたい。
  126. 箕輪登

    箕輪委員長 冬柴先生に申し上げますが、何か、あるそうですから、今ここで答弁をするそうでございますので。山本局長
  127. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 整理して申し上げますと、国内法上の手続といたしましては、次のとおりでございます。  まず、米軍の給油施設から油の受領をいたします。この場合が寄託になるわけでございます。これは、海上自衛隊の補給艦が米軍の給油施設から油を受領いたしまして、これを同艦において給油時点まで保管したものという法律的なつかまえ方をしております。したがいまして、これでは法律上寄託ということで解しております。この寄託につきましては、その返還または購入が行われるまでの間は国が寄託を受けて管理する物品について物品管理法が適用されますが、その条文はたしか三十五条の規定が適用されるというように私どもは解釈をしておるわけでございます。
  128. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっと時間があれですけれども、やはり寄託契約ですよ。寄託したら、預かったわけですから、返す義務、いわゆる国家が債務負担したのですよ。それについて所定の手続をきちっととってもらわないと困る、こういうことを指摘いたしまして、次の機会に、これが拡大されないように私は厳重に見守ってまいりますけれども、寄託契約は債務負担行為である、これははっきりしていますから、その手続をきっちりとってもらいたい、このようなことを申し上げて、時間が来ましたので、私の質問を終わります。
  129. 箕輪登

  130. 和田一仁

    和田委員 先日、私の知り合いでアメリカの元国防総省におられた方が退官をされまして今大学の教授をしている人ですけれども、大変な日本通のアメリカ人が約十日ほどくらい前でしたか来日したときお会いいたしました。  着くや否やだれかに、今日本人の最大の関心事は何かと聞いたら、それはまず第一にリクルート問題である、二番目に天皇の御病気のことであ る、三つ目に税制問題である、こう言われたけれどもそうかと言うから、まあ大体そうだな、こう言いました。ところで、今アメリカ人は何に関心を持っているかとこっちから聞きましたら、まず第一に大統領選挙、二番目に大統領選挙、三番目も大統領選挙、こう言って笑っておりました。それほどアメリカが挙げて新しい大統領の選出のために大変な時期であったわけでございますけれども、それがきょうようやく新しい大統領選出ということになってまいりました。きょうはそういうことで、後は、これは正式には十二月の十九日ですか、大統領選挙人によって正式に選出をされるわけですけれども、これは手続の問題で、新しい大統領が誕生した、こう思うわけでございます。  この新しい大統領が生まれることによりまして、ブッシュ大統領、これは現職の副大統領が立候補して当選されたというのはアメリカの歴史でも大変珍しいことだそうでございますが、現職の副大統領が大統領に当選して昇格するということですから、大方の政治路線は見当がつくわけでございますけれども、この新しい大統領の選出を見て、外務大臣としてどのようにお考えになっておられるのか、まず日米関係はいかがかをお伺いしたいと思うのです。
  131. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先ほど冬柴委員の御質問のときには、まだカリフォルニアの投票を開票したてのときでございましたので私のコメントを下げさせていただいた次第でございますが、日本時間一時二十四、五分ごろにデュカキス候補から敗北宣言をされたということでございますから、副大統領ブッシュさんがめでたく次期大統領として選出されたことでございます。いずれにいたしましても、私は衷心より祝意を表したいと思います。  もちろん、ブッシュ候補は八年間にわたってレーガン大統領の副大統領として本当によく頑張っていただきました。副大統領が当選されたというのは、何か歴史によりますと百五十年ぶりくらいという一つの記録らしゅうございますが、レーガン大統領がこの八年間本当に日本との関係を常に考慮しながら、太平洋時代を迎える新しい世紀のためにも両国の親善をなお一層深めよう、こういうことでやっていただきましたので、私は、当然副大統領をお務めになったブッシュさんはそれを踏襲していただくであろう、かように考えております。しかし、事実私たちから考えますと、現在アメリカ合衆国の景気は、一応物の統計によりますと約六年間、七十一カ月間ずっと好況が続いておる。そうした中で大統領選挙が展開されたわけでございます。したがいまして、今後双子の赤字征伐には新大統領も努力をされることであろう、私はかように考えます。  しかしながら、やはり一面におきまして日本に対する風当たりも議会方面から相当、包括貿易法案のごとくどんどんと吹きつつあるときでございますから、今後日米間は世界の安定のためにも大いに寄与しなければならない重要な関係でございますから、なお一層確たる関係の構築のために私たち努力をし、二国間の問題もきちょうめんにひとつ話し合いながら解決をいたしたいと思いますが、やはり議会が、率直に申し上げまして野党の方が多いんじゃなかろうかというふうなこと等々を考えますと、新政権が来年の一月誕生するわけでございますが、我が国といたしましても十二分に、これまで以上に関係を尊重いたしまして、そしてやはり日本の外交の基軸は日米関係であるということをなお一層強く推進いたさなければならぬ。同時に議会に対しましても与党、野党の差なく、私たちは常に親善を結ぶことを第一義として考えなければならない、かように思っております。
  132. 和田一仁

    和田委員 新政権は来年一月に誕生いたしますけれども、誕生すれば相当大幅な人の入れかえ等も行われると思うのですね。ですから、そういう入れかわった後が本来ならばいいのかとも思いますけれども、いずれにしてもやはり新しい大統領、新しい政権ができたときに当然我が国からもどなたかが行かれて、新しい政権のあり方等について打診をしてくるということは当然あると思うので、外務大臣の御予定としてはいつごろ行かれる御予定でございますか。
  133. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 国際的な行事として御承知のトロントのウルグアイ・ラウンドの中間レビューが十二月五、六、七と行われることになっております。日本としても大いに関心の深い会合でございますから、ぜひともこれには出なければならない、かように存じております。したがいまして、その一つの国際的な会議というものをめぐりまして、やはり日米間におきましては意見等々交換しておく必要があろう、私はこう思いますから、できたならばそうした機会に訪米もいたしたい。そして新大統領にも祝意を表し、現大統領並びに国務長官とも会談をしたい、かように考えております。まだ日程は確たるものが決まっておりません。
  134. 和田一仁

    和田委員 十二月というお話でございました。十二月にはやはりもう一つ大きな日ソ間の外相会談、十二月の十九、二十、二十一日ですか、先ほど大臣、確定という御答弁がございました。そういう日程を踏まえておられます。これから非常に大事な外交シーズンに入っていくと思うのです。  そこで、こういう事態を踏まえてもう一つお聞きしておきたいのは、ブッシュ大統領になった後の米ソ関係、大筋レーガン政権の継承だということはわかっておりますが、やはりいろいろ細かいことになるとニュアンスも違ってくるやに思いますが、米ソ関係の基本的なあり方についてはどのようなお感じを持っておられますか。
  135. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 このことに関しましては既にレーガン大統領も言っていらっしゃいますが、私もシュルツ国務長官との会談、そのほかの米国要人との会談を通じまして、レーガン大統領の後継者としてどちらの政党の大統領が就任なさろうとも、やはり米ソ関係の今日続けられている話し合いというものは継続してもらわなければならない、こういうことでございまして、私もさように思っておりましたが、なかんずく副大統領であるブッシュさんが新大統領に就任されるわけでございますから、今日までの米ソ関係は、一応難しいSTARTという幾つかの議題を抱えておりますけれども、現在ジュネーブで話し合いがどんどんと行われております。だから、こういうムードというものに対しては去るサミットでも大いに歓迎の意を表し、世界じゅうも大いに米ソ間の話の熟することを、また実ることを期待いたしておると思いますから、当然新政権もこのことは継続していかれる、かように私たち考えております。
  136. 和田一仁

    和田委員 それでは重ねてもう一つ、米韓関係について変化があるかどうか、このことについて大臣の御見解を伺いたい。
  137. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 米韓関係に関しましては変化はない、私、かように思っております。米韓関係ということも、現在の朝鮮半島の緊張という面から考えましても、やはりその緊張が緩和され、また安定される方向へ持っていくためにも必要な関係である、私はこう思っておりますから、変わりはないと思います。
  138. 和田一仁

    和田委員 外務大臣の御見解で、新しい政権はやはり日米同盟関係を基本にした姿勢で、極東に対しても余り大きな変化はないというような御見解と承りました。しかしながら、今アメリカは、さっき大臣もおっしゃっていたように財政、貿易面で大変な赤字を抱えております。この双子の赤字に対する対策というものはこれまた継承して何としてもやっていかなければいけない大変な課題を抱えておるわけでございます。同時に、アメリカ国民が新しい大統領を選んだ、それはやはり強いアメリカ、力による平和、こういうような従来のレーガン政権の路線を、さっき大臣非常に、六年近い好景気というようなお話もありました。そういう経済的な背景やら失業は少なくなったという国民のそういう評価もあろうかと思いますが、やはりレーガン政権が志向してきた強いアメリカ、こういうものを変えたくないという選択であったかなと思うわけです。  同時に、そういうことを踏まえながら、この双子の赤字を退治していかなければならないという ことになりますと、先ほどのように日米関係について基本的な変化はないということの中で、さらに従来の日米関係の中で、新しいブッシュ政権が求めてくるもの、これは従来の路線の上でそれが強まってくるのではないか、こういう感じもいたします。特に安全保障面でバードンシェアリングの問題等、あるいは具体的には在日米軍の経費の肩がわり、これ等がしきりに強く要求されてくるのではないか。特に先般八九年の会計年度国防歳出の中で、ミッドウェー等のああいう修理費を横須賀等でやる場合にはその費用を負担してもらおうというようなこと、そうでなければかわりに在日米軍の労務費まで含めてこれを負担してもらうというような意向が伝わってくるわけでございますけれども、そういう懸念はございませんでしょうか。これは外務大臣とともに防衛庁長官はどのようにお考えかも伺いたいと思います。
  139. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 バードンシェアリングに関しましては特に軍事面に対して皆それぞれ非常に関心を持たれるわけでございますが、我々といたしましては節度ある防衛費というものを毎年考えております。そして、やはり防衛大綱の水準を達成すべく中期防を着実に実行しよう、これが今日の日本防衛政策でございますから、その点はアメリカに十分わかってもらっておるのではなかろうか、かように思います。したがいまして、現在のところ個々の問題でこうせい、ああせいという問題は来ておりませんし、また私たちはそういう問題はすべてやはり日本のいろいろな制約があるということも十二分に説明していかなければなりません。もちろん、安保体制というものの重要性、これによって今日の平和が保たれておるということを我々は看過するものではありませんけれども防衛費は節度のある、みずから編成するものである、かように考えております。  バードンシェアリングの他の面におきましては、日本といたしましても経済大国である以上、世界に貢献すべく、日本を含む同盟国にアメリカから相談があった場合には、それは相談に乗るということは一つの大切なことではないか。その場合といえども、私たちの自主的な判断、またそれの効果、国民にどのように説明できるか、そうしたことをも十分考慮いたしまして私たち考えていきたい、かように考える次第であります。
  140. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ブッシュさんのことについて、過般大河原前アメリカ全権大使と懇談する機会がありましていろいろ話し合っておりましたら、ブッシュさんが優勢であろうということで、私は早速、最近出版されておりますブッシュさんの著書の「未来を見つめて」という本が今出ておりますが、それをちょっと最近読んでいるのです。そうしますと、その当時、ブッシュさんがレーガン政権の副大統領になった当時、その前は恐らくフォードさんが副大統領になるだろうということが盛んに宣伝され、また、フォードさん自体もおれが副大統領になるだろうということだったそうです。それで、レーガンさんには経済をやってもらい、フォードさんは、私は外交、防衛をやるんだというような区分までして宣伝をしたものですから、途端にそれがひっくり返りまして、やはり共和党の有力な党員であって有力な経歴を持ったブッシュさんこそレーガンの副大統領であるということで、レーガンさんが土壇場でブッシュさんを推薦したという記事を今読んでおるわけでございます。  それともう一つ、ブッシュさんについては、小笠原諸島攻略のためにB29で日本を攻撃のために来られたんだそうでして、父島で遭難したんだそうですね。そこで洋上を遭難している間に潜水艦で救われたというような記事なども出ておりまして、日本との関係などそういう内容を書いておりました。そういうような関係からいいますと、レーガン政権の最も強い後継者じゃないだろうか、こう私は見ているのでございますので、バードンシェアリングについても、これはそれぞれ経済力の強い日本に対して大きな要求があるだろうと思う、防衛についても他の農業その他以上に要求があるんじゃないだろうかと私は思います。しかし、私たちは常に申し上げておりますように、我が国防衛というのはやはり自主的に防衛力整備を図っていくということでございますので、そういう点を御理解いただきたいと思います。
  141. 和田一仁

    和田委員 防衛庁長官は、そういう意味では軍事面での負担の要請が強まってくるという感想をお持ちのようですが、具体的にそうなると、やはりクラーク次官補等が議会で言っているように、在日米軍の基地従業員の手当、こういうもののうち幾つかは先般肩がわりになりました。しかし、やはりそれを全額肩がわりしてほしいというような発言が出ておりますけれども、具体的にそういうことになった場合には、これはいわゆる地位協定を改めなければできないと思うのですが、そういうようなことがあり得るというふうにお考えでしょうか。
  142. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 地位協定を改正する考えはございません。また、特別協定によって今いわゆる手当等を日本人労働者に我が国は負担をいたしておりますが、それ以上のことは、地位協定の範囲内でのことはいたしますけれども、地位協定を改正するという段階ではただいまございません。
  143. 和田一仁

    和田委員 今の段階は確かにそれでやっていますけれども、全額負担してほしいというように要請が強まってきた場合にはこのままではできない、しかし、そういうこともありそうだという御答弁だったので、そうなった場合には地位協定を改めなければできないはずだ、そのときにはどうされるかということをお聞きしております。
  144. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この点については外務大臣の方が、地位協定の問題については外務大臣の担当と相なりますけれども、私たちとしては地位協定の改正ということには今考えていないということを申し上げるより道はないと思います。
  145. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 過般の通常国会で、既に特別協定として従業員の手当に関しましては御審議願いました。それ以上のことは考えておりません。
  146. 和田一仁

    和田委員 それでは、別の問題でお尋ねいたしますけれども、先ほどもちょっと触れましたが、十二月にシェワルナゼ外相が来日されます。この日ソ会談が行われるに当たりまして、外務大臣としての基本的な姿勢と心構えについて、基本的なことをお伺いしたいのですが。
  147. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先ほど和田委員もおっしゃいましたとおり、十二月の十九日、二十日、二十一日、三日間にわたりまして東京で日ソ外相会談が開かれることが、これはセットされました。当然我が方といたしましては、戦後未処理の問題として残っておりますのが御承知の北方四島問題でございます。これは一括返還、これは我々強く主張していきたい、かように存じております。しかし、これに関しましては、従来指導者がかわるたびに、もう既に解決済みであるとか、ヤーニェズナーユ、つまりロシア語で私は知らないとか、いろいろな表現がなされておりましたけれども、私は、やはり何と申し上げましても、こうしたとげがあるということ自体が日ソ間の国交のいろいろな面の改善に大きな支障を来しておるということは率直に申し上げなければならないと思うのでございます。  受けられるソビエトといたしましても、ゴルバチョフ書記長という、従来の指導者よりは極めて柔軟なお方であろうと私は思います。この間七月に、極東問題に関しまして若手学者が二、三十人でしょうか、集まりまして座談会をしています。次官のロガチョフさんも出ております。一団の官僚も出ております。私、全部読みましたけれども、スターリン時代だったら恐らくシベリア流刑確定だろうと思うような発言がどんどんなされておるということは、相当変わった。これが国内において出版されておる。確かにペレストロイカであり、確かにグラスノスチである、私はこういうふうに感じておりますから、そういうふうなものがやはり日本にも及んでくださいよ、我々日本国民もお隣の大切な国家であるから、やはり関係を改善いたしまして、未来永劫にわたって仲よく暮らしましょうということが私たちの気持ちだから、あなたたちも同じだろうから、どこかでそれがお 互いにニェット、ニェットかもしらぬから、私たちは継続して対話をしていきたい。そうしたことを土台にいたしまして、先方からもいろいろな問題が出てこようと思いますが、私も大きく門を広げましていろいろな問題を議論することは必要だ、一回限りで、はい、さようならと、ばかなことをやってはいけない、これは継続しなくてはいかぬ、こういうふうな気持ちで臨みたいと思っております。
  148. 和田一仁

    和田委員 まさにおっしゃるように、この日ソ外相会談の中でやはり四島返還が大事な議題になってくると思うのです。この問題に関しては、従来とも非常にいろいろ経緯はありましたけれども、第二次大戦後に確定した国境線というものを動かすわけにはいかない、現状固定ということが強い姿勢にあったと思うのですが、それが最近、今おっしゃるようなグラスノスチ、ペレストロイカ等によって比較的自由な議論が行われるようになった。来日する人やあるいはこの間の日ソ円卓会議等の報告を聞いても、非常に違ってきているなという雰囲気は受けるわけなんです。しかし、これはいずれも、かつては外交官の肩書きを持っていた方もおるかもしれませんけれども、民間の人がそれぞれの機会に二島返還ならというようなニュアンスの物の言い方に変わってきている。確かに変化はあると思うのですが、そういった現象をとらえて、ソビエトの基本的なこの領土問題に対する姿勢がやはり変わっているという認識で臨まれるわけですか、いかがでしょうか。
  149. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今のところ、北方四島は日本の固有の領土である、ソビエトは不法占拠しておる、こういう私たちの主張に対しまして、同時に一括返還を求むということに対しまして、ソ連の態度が従来と変わったとは、私は現在ではまだ思っておりません。しかしながら、話に入るということが大切なのである、どこにその問題があるか、そうしたこともひとつお互いにざっくばらんに話そうではないか。  私は実はこの間駐日大使に、モスクワへ帰るとおっしゃいますから、はっきり申し上げておきました。一つは、歴史的にお互いにカードを見せ合おうではないか。一八五五年、そのときに国境が設定されておる、同時に二十年たった一八七五年、これはもう千島樺太交換条約である、三十年たった一九〇五年、このときはポーツマス条約で樺太の五十度以下は日本に割譲された、そして一九四五年、いわゆる第二次世界大戦の終結を迎える、ここまでどうだ。それはひとつ勉強しておきなさいよ、にわかに言ったってわからぬだろうから、ひとつ十二分に勉強してください。我が方の各条約におけるところの北方四島のあり方について、我々はこれは固有の領土と主張するゆえんをそのとき申し上げよう、でなければあなたたちは不法占拠になるよと、そこまで私はざっくばらんに、話し合いならまだほかにたくさんございますが、そこが一つの歴史の原点ではなかろうか。そうやってお互いに腹蔵なくしゃべろうということが大切ではないか。隠していたカードをぱっと出して、イエス、ノーというようなことでなくして、お互いに問題点を出し合って、一つ一つ解決しようじゃございますまいか、私はこういうふうに申し上げておきまして、大体そういう気持ちは伝わっておるのではないか、かように思います。
  150. 和田一仁

    和田委員 大臣のそういった姿勢、大変うれしく思うわけでございます。  私どもも四島の返還を、固有領土の返還については沖縄返還以来叫び続けてまいりまして、具体的に集会や運動を、国民運動として起こしながら世論喚起に努力してまいりました。民社党だけではないのですけれども、旧同盟がそういう意味で労働運動の中に四島返還運動を国民運動としてとらえ込んで、そして毎年毎年納沙布岬で集会をやって固有領土の返還を決議して声を大きく世論喚起に努めてまいりました。ことしは連合になりまして、連合がこの運動を継承して、十月の初旬に初めて同じように納沙布岬に連合傘下の各産別、一つだけ来なかった産別があったようですけれども、各産別の代表が約一千人集まって、この北方領土返還要求の集会を持ちました。これは非常に大きな意味合いがあると思うのですね。そういう意味で、日本の労働運動の大きな流れの中で連合がこういうふうな新しい運動を継承して展開、発展させていくということをぜひひとつ頭の中に置いていただいて、そして、来るべき四島問題、日ソ間における領土問題については対応していただきたいと思うわけです。  今その話し合いに入る雰囲気が出てきたということは大変いいことだと思うのですが、そういう変化を示してきたソ連側の中身、これは日本国民の中にある固有の領土四島は返還してほしいという声がだんだん大きく日々に高まって、それが聞こえてきたということももちろんあろうと思うのですが、そのほかの要因がソビエト国内自身にあるかどうか、このことはいかがでしょうか。  聞くところによると、やはりソ連から見た、今占拠されている四島の極東における軍事的意義がいささか変わってきているのか、こういう見方をする人もおるわけですね。現にウラジオストクにおける軍事基地の分散化等があって、基地の分散化が行われているためにオホーツク海の内海化を、もうペトロパブロフスクの方に潜水艦基地、原潜基地を移したりして、あるいは艦船の基地も今の基地からもっと沿海州の方に移すというようなことで、いわゆるウラジオストクの開放というようなことを考えたり、見せたりし始めている、そういうことが一つこの問題の変化の中にあるとお考えでしょうか。  これは同時に、防衛庁長官も、極東におけるソ連の軍備計画に変更があったのかどうか、むしろ増強されているとお感じになるのか。これはレーガン政権のときと同じように、新しいブッシュ政権との間にやはり緩和の方向でいって、極東においても同じような軍備縮小の方向にいくとお考えなのかどうか、この辺の御見解を伺いたいと思います。
  151. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 よく言われますが、米ソの昨年のINFのグローバル・ゼロというのは、いろいろ理由はあったでございましょうが、両国が際限なき核兵器開発の競争に挑んだということが民生を著しく圧迫した、こういうことからつまらない競争はやめようかというふうな一つの事柄が端緒になったとも伝えられております。それと同じように、やはり現在ソビエトにおきましては経済が大変だろうと私は考えております。特に極東はこれという産業がなく、また労働人口も少ないので、先ほど申し上げました座談会でも、そうしたことが一番大きな問題として議論されております。私がコメントをするのではなくして、そうやってソ連の人たちが既に議論をし、なおかつ書記長がクラスノヤルスクに行かれたときには、あのような地方の人たちが書記長を取り囲んで、いつまでおれたちに行列をさせるのだと言われるようなこと等とも重なっておると思います。だから、ソ連は、現在ペレストロイカの最大の問題はやはり経済の立て直しであろうと私は思います。そのためには、社会主義は守っていくけれども、社会主義の中においていろいろな面で改革をしたい。 ちょうど中国も開放改革経済を進めようというわけでございますから、ウラジオストクを言うならば中国の経済特区と同じような扱いにして、大きな窓口を日本海並びに太平洋に上げたいものであるというお考え方があろうと我々は推測するわけであります。  そうしたことも外相会談によって話し合いをするのならばいろいろな問題が出てきましょうし、ウラジオの価値というものも出てきましょうし、北方四島に対するいろいろな考え方も出てこよう、かように思っておりまするから、我々といたしましては、今和田委員のおっしゃいましたようなことも、ソ連考え方のどこかにはあるのであろう、こういうふうに推測いたします。
  152. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ウラジオストクの開放問題等につきましては、新聞あるいはテレビ等で私たちもよく眺めておるわけでございますが、これが日ソの関係に有効な兆しを生み出してくださるなら私たち非常に喜ばしいことでございます。ただ問題 は、ペレストロイカがヨーロッパとの関係で果たしてそれがどういうような成果をおさめるかということは大きな課題じゃないだろうかと思うのでございます。  それともう一つは、イギリスの動きだと思うのでございますが、ハウ外相の言葉をかりますと、ゴルバチョフ書記長は確かにいいお話をしておるけれども、その陰に軍部がある、そして保安委員会があるので、それが果たして将来ゴルバチョフの主張をそのまま受け入れてくれるだろうかというような御発言などを承りますと、現状はやはり軍事的な対峙という状況で見ざるを得ない状況じゃないだろうか、こう考えまして、私たちはこの防衛力整備に当たっては現実を眺めながら、いましばらく防衛力整備をしていかなければならないのじゃないだろうか、こう考えているような次第でございます。
  153. 和田一仁

    和田委員 時間が参りましたので、まだ伺いたいのですがやめますが、先ほど外務大臣に申し上げました納沙布岬の集会というのは、社会党、公明党、民社党、社民連、こういったところの代表も参加してやっておる大変幅広い国民運動でございます。ぜひひとつ念頭に置いていただいて、来るべき日ソ会談の中で新しい糸口をお開きいただくようお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
  154. 箕輪登

    箕輪委員長 東中光雄君。
  155. 東中光雄

    ○東中委員 潜水艦なだしお」の衝突問題について、私どうしても納得いかぬ点がありますので、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。  この間私「アナザーウェイ」という題名の映画を久しぶりに見ました。その中で、第二次大戦の末期、一九四五年になってから日本潜水艦伊号がドイツまで行くという過程で、二回の戦闘場面が出るのです。  一つは、夜間で浮上した潜水艦が航行しているという状態で、相手方の連合軍側の駆逐艦に発見されて追いまくられるというものなのですね。向こうの駆逐艦は釣り舟みたいな十ノットとか七ノットじゃないですよ。全速力で攻撃してくる、迫ってくるわけでしょう。それを回避するのですね。その回避の状態が非常にリアルに映画に出てきます。それは相手方の動きを推測し、どういう武装を持っているか、どういう能力かということがわからぬ、たまたま発見されたということで、しかし回避し切るわけですね。潜水艦は戦闘艦として、そういう場面が一つあります。  最後の場面で出てくるのは、浮上している状態でほかの作業をしているときに相手方の艦隊を発見するのです。今度は潜水艦が駆逐艦に守られている大型艦に向かって追っていくのです。向こうは逃げるわけでしょう。それに迫っていって、そして魚雷を撃つし砲撃もするという、そういうことをやるのが防衛庁から見た本来の潜水艦の性能であり、そういう任務で操艦をするというべき性質のものだと私は感じたわけです。  そうしますと、釣り舟が衝突しに来るのでも追ってくるのでも何でもないのです。低速で動いておる。それはもう衝突なんかしたらかなわないと思っている。向こうも回避しようとしている。それで今度は「なだしお」は潜水艦として回避しようと思っているのでしょう。衝突はすべきじゃない、何としても回避しなければいかぬと思っておるのでしょう。どっちも回避する立場で最善を尽くした、しかし衝突したんだ。こんなことがあるのだろうか。防衛庁は、最善を尽くしたのだから、最善を尽くしたのだからと、こうおっしゃっておる。これはもう何としても納得がいかぬですね。回避をしようと思って最善を尽くして、そして衝突して相手方の船を沈めて三十人の命がなくなった。  私は、刑事責任のことを言っているのじゃないのです。民事責任のことを言っているのじゃないのです。防衛庁として、潜水艦の操艦がそういうことでいいのか、防衛運営がそういうことでいいのかどうかということについて、あなた方は本来ならば検討し反省をし改善をする。刑事責任の問題は裁判所に任せればいいのです。最終的には裁判所です。民事責任の場合は海難審判所です。そんなことをとやかく言うのではなしに、防衛庁としてどうなのかということを聞いているのですから、その点について長官の大筋の話を聞かせてもらいたい。どうですか。
  156. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 事故原因の究明については、今東中先生、いろいろ防衛庁として、防衛庁として、こう言われますが、海難審判検察当局で今捜査を進めているわけでございますので、これについては正しい事実関係、あるいは速やかなる究明、それから公正な究明というものを私たち期待いたすわけでございます。そういう点で、今お答えするわけにいかぬわけです。  ただ、これまで海上自衛隊潜水艦は、海上衝突予防法だとかあるいは海上交通安全法等をよくわきまえながら、浦賀水道等のああいう過密な地域に当たっては隊列を組まずに、そして静々と進んでいるんだということでございますので、そういう点は御理解いただきたい、こう思います。
  157. 東中光雄

    ○東中委員 依然として刑事責任の被疑者の立場で物を言われるが、あるいは民事責任の追及について、責任があるかないかということの海難審判所の判断の問題に対応するものとしてしか発言されていない。これは防衛庁長官としては非常に遺憾だということを私は申し上げたいと思います。  それで、今言われている海難審判所ですね、横浜地方海難審判庁の十月三日開かれました「なだしお」の衝突にかかわる海難審判の第一回口頭弁論で山下前艦長発言をしていますね。そこでこういうことを発言しています。  七月二十三日午後三時三十四分、右前方約二千六百メーターの地点に第一富士丸を初認した、初めて認めたその時点で山下前艦長はこういう判断をしたのだということを述べているのです。直進しても、だから二百七十度ヨーソロで進んでいたわけですね。そのまま直進しても五百メーターぐらいの距離を置いて第一富士丸の前を通過できると思った。これは艦長がそう言っておるのです。そしてその三分後、三分後という意味は、大体十一ノット近くで三分間走ったということです。そうすると九百九十メーターぐらい進んだということになるのです。三分後には左から接近してきたヨットを回避するために機関停止をした。それで回避ができたので、すぐに速力をまたもとへ戻した。その理由は、第一富士丸の速力が落ちていたので十分前を行けると思って再加速して前進した、こういうのですね。三十四分に出発して三分後ですから、三十七分ですね。それで、そうやって次に、だから三十七分から八分に向かっていく過程で再加速をした、前を突っ切るのだという判断をしたのだ、こういうふうに言っているのです。そして、三十八分になったときに面かじいっぱいをとった、こういうことになるのですが、こういう山下前艦長発言は、防衛庁としてはあのときの公の行動はそういうものであったということを認められるのか、あるいはそんなことは信用できぬということなのか、どういうことなんでしょう。答えてください。
  158. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 海難審判あるいは検察当局に山下前艦長初め関係者が臨むに当たっては、防衛庁の名誉にかけても我正しいと思ったことは堂々と主張しなさいということを私はお話ししてございますので、ただいまの山下前艦長証言は正しいものと思っております。
  159. 東中光雄

    ○東中委員 正しいものだと思っていらっしゃる。そうしますと、三十七分の段階で一回とめかけたが、またすぐ加速をした。三十八分になって面かじいっぱい、それから機関停止、そして後進いっぱいをかけて右へ曲がったというのですね。何度曲がったのかといったら、三十度曲がったことになるのです。二百七十度で走っておって、三百度で衝突しているのですから、三十度曲がったことになるのです。衝突したのが三十九分なんですよ。だから、加速するのだということを決めてから後進をかけなければいかぬという判断をするまでの間は三十秒もないのですよ。前を突っ切れるのだという判断をしておったのが、その三十秒の間に今度は後ろへ回るのだという判断をとっ て、面かじいっぱいしておるのですよ。こんなむちゃくちゃな操艦というのはあり得ぬのですよ。しかし、山下前艦長はそういう行動をしたのですということを言っているのですから。その言っていることが正しいとおっしゃるのだったらこれはもう、それは行けると思ったが、ぴゅうっと急に何か突発的なことが起こったから面かじをとったというのならわかるのだけれども、山下さん自身の発言でも、第一富士丸の速力が落ちていたのです。保安庁の説明によれば、十ノットで来ておったのを三ノットに減らした。だから、速力を落としておったので、前を突っ切れると思ってやったのが三十七分ちょっとなんですね。そして、三十八分になったら、ほんの二、三十秒の間にぐるっと後ろへ回らなければいかぬという判断に変わったというのだから、こんなことはちょっとでも船を操艦した経験のある者だったら何ということを言うのだということになるのです。しかし、それでも最善を尽くしたのだと防衛庁はおっしゃるわけですね。
  160. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今の山下艦長の主張あるいは近藤船長の主張等を踏まえてこれから海難審判で行うことでございますので、海難審判にお任せする、あるいは検察当局にお任せすべき事項だと思います。
  161. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁防衛庁として海上自衛艦がとった行動について何の評価もできない、それはそのまま民事責任を追及する、あるいは刑事責任を追及するそれぞれの国家機関に任せるのであって、一切防衛運営としては何にも意見を言うことができないということだと私はお聞きをして、極めて無責任であって遺憾であるということを申し上げておきたい。  それからもう一つ聞きたいのは、衝突をするときには面かじいっぱいをかけておった、後進いっぱいをかけておった。そして、衝突するときの速度と、それからその衝突直後に機関停止をしたというのが日吉防衛局長の今までの答弁なんですが、その衝突する直前の「なだしお」の速度と、それから機関停止を直ちにしたということを言われてきたのですが、防衛局長、間違いありませんか。
  162. 日吉章

    日吉政府委員 私がかつて答弁したことでございますので、私から答弁をさせていただきますが、私が答弁いたしましたことは、艦長防衛庁の上部機関に対して報告いたしましたことを私が答弁いたしているわけでございます。  衝突いたしました時点の「なだしお」の行き足についてでございますが、私ども艦長からはほとんど行き足がとまっていたという報告を受けております。これにつきましては、海上保安庁の説明書、それから海難審判理事所の説明書は若干ニュアンスを異にいたしておりまして、海上保安庁の送致書の中に書かれておりますのは、艦長の私どもに対します報告と同じように、ほとんど行き足がとまっていたと思われる、こういう表現であったかと思います。それに対しまして、海難審判理事所の送致書でございますか、これには三ノット程度というふうに書かれていたのではないかと記憶いたしております。したがいまして、この点につきましては今後、大臣からも申し上げましたように、第三者機関等で客観的、公正な判断がなされるものだと思います。  それから、私が申し上げましたのは、衝突いたします前に、ただいま東中委員が御指摘になられましたように、衝突を回避するために面かじいっぱい、後進いっぱいをかけてございますので、そういたしまして右に旋回をいたしまして、艦長証言あるいは海上保安庁のお調べのように、ほとんど行き足がとまっていたということになりますと、その段階で後進がききまして後ろに下がり始めるわけでございます。ただ、そういたしましたときには後ろに下がってしまいますので、機関を停止いたしているわけでございますが、衝突いたしました段階で、この衝突はある程度の時間潜水艦の水面下の艦体の上に相手の第一富士丸がのし上げていた状態が続いていたのではないかと思われます。したがいまして、それが衝突いたしまして二つの艦と船が離れた後可及的速やかに艦長は機関停止の措置をとった、かように認識いたしております。
  163. 東中光雄

    ○東中委員 潜水艦が後退したのは約二、三百メーターということを言われておったときもあるし、二百メーターというふうに言われていることもありますが、どっちにしても衝突地点からこの「なだしお」が後退をした距離は二百メーターないし三百メーター、こういうことが日吉さんの言われることですね。
  164. 日吉章

    日吉政府委員 事故後初期の段階におきましては、初期の報告に基づきまして、二、三百メートルというふうに私は申し上げていると思います。その後艦長等から子細に報告を受けました段階では、その後の委員会等での発言では、私は約二百メートルというふうに申し上げているかと思います。現時点におきましては、約二百メートルということではないかと考えております。
  165. 東中光雄

    ○東中委員 それで、前艦長が文芸春秋の十月号でインタビューに答えて述べておるのが活字になっています。これによりますと、インタビュアーが「「なだしお」は衝突前に後進一杯をかけ、衝突後、およそ百五十メートルほど後ろに下がって停止したわけですね。」と聞くのです。それに対して山下氏は「いや、二百メートルくらいかもしれません。」これは合っています。そこで「そのあと」、二百メーターぐらい後退した後「すぐに後進を止めて前進をかけ、溺れている人を探しながら低速で衝突地点に近づいていった」こう言うんです。だから二百メーターまで後進をかけてきたんです。そして二百メーターくらいのところで後進をとめ、前進にかけてそしてゆっくりゆっくり行ったんだ、こういう証言なんです。これはもう活字になっているんですから。  ところが日吉さんの言うのは、その点については衝突してちょっと乗っておった、あなたは相当の時間とか言うておるけれども、何秒という時間ですよ、相当というのは。沈没するまで一分ということになっているんですから、乗っておる期間が相当といったって、そんなものせいぜい何秒ですよ。しかしそのときにすぐ停止したというのでしょう、停止してそこから二百メーター下がったとあなたは言うんですよ。そんなもの、機関停止してほとんど前へ行くのがとまっておったということは、まだ少し残っておったということです、前行きの行き足があるときに後進機関を停止して何で船が後ろへ行きますか。そういうことはあり得ない。だからあなたの今の……(「後進はかかっていたんだよ」と呼ぶ者あり)後進を停止したと言っているんです。  そして、このことについては海上保安庁長官が十月十一日の参議院内閣委員会で、板垣さんの質問に対してこれに関係することを答えています。それを読んでみますと、これは第一富士丸の婦人の発言のことに関連してですが、衝突直後、海上に投げ出され海面に出た際に見たときに、その女性潜水艦との間の距離は十メートルほどであった。その女性が「潜水艦に向かって助けてくれと叫びましたのはそれから三十秒もたってからということでございます。」「投げ出されてから三十秒ぐらいたちますと、そのころ「なだしお」は機関を後進としておりましたので、衝突直後から足しますとその間に」三十秒の間に「相当距離が離れているということになりまして、「なだしお」側が女性乗組員の声や姿を確認することは困難であったというふうに考えられるところでございます。」こういうふうに答弁しているのです。長官の答弁ですよ。  ですから、きょうは海上保安庁から来ていただいていると思いますが、このとき機関を後進としておりましたから後進しておったんですと。後進は何ノットぐらいで動いておったのか。そして相当距離が離れていたというんですが、それはどれくらいの距離を相当と言っておられるのか。この場面を聞き取りをして調べてということで答えていますので、その点を明らかにしてほしい。一ノットで一分間に三十メーター動きます。三十秒だったら十五メーターですよ。そういうことを前提 にして海上保安庁、しかと答えていただきたい。
  166. 野尻豊

    ○野尻政府委員 捜査の結果によりますと、「なだしお艦長衝突回避動作の一連の措置といたしまして機関を後進いっぱいとしまして、衝突後しばらくしてこれを停止しております。  今先生の御指摘の中で何ノットぐらいで何百メーター後進したか、後退したかという御質問でございますが、私どもの捜査では、その点の詳細については捜査をしておりません。
  167. 東中光雄

    ○東中委員 今、次長はしばらくと言いました。日吉防衛局長は直ちにということを前に言っているのです。しばらくと直ちに、明らかに違うのです。これは本当の三十秒が問題になっているのですよ。そのときに一方は直ちにと言い、一方はしばらくと言っている。二百メーター動いたということが人を救助できるかどうかという決定的な要因になったんだということをこれも海難審判庁で山下さん言っているのでしょう。だから、今、しばらくしてからと言われたが、そのしばらくというのは何分なんですか。
  168. 野尻豊

    ○野尻政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、衝突回避動作の一連の措置として機関を後進いっぱいとしまして、衝突後しばらくしてこれを停止した。その停止した時間と衝突した時間との間は何分であったか、あるいは何秒であったかという御質問であろうかと思いますが、若干の時間の差があるというように御答弁申し上げておるわけでありまして、その時間が正確に何分であるとかあるいは何十秒であるかといったような点については捜査しておりません。
  169. 東中光雄

    ○東中委員 しばらくという言葉で表現している場合はどういうものを描いているのかということが頭になければ、しばらくという言葉、捜査の結果しばらくということはわかったけれども、そのしばらくはどれくらいの期間のことを言っているのかわからない。このとき三十秒が問題になって答弁しているんですから。三十秒たっておるから、だから距離が相当離れてしまって聞こえなかったんだろう、こういうふうに長官が答えているんですよ。三十秒が問題になっておるときに、しばらくという言葉でやるというのは——私はこういう問題でがたがた言わなければいかぬというのは本当に不幸だと思います。こんなことはちゃんと言えばいいじゃないかというように思うのです。  しかも後進してから、山下前艦長は「二百メートルくらいかもしれません。そのあとすぐに後進を止めて前進をかけ、」こう言うのですよ。停止にしたなんて言っていないのです。停止の期間が相当あったみたいなことを言っていますけれども国民に向かってこうやって言っているんでしょう。公にしているのでしょう。こういうことをごまかして、そして救助をちゃんとしないというのは、救助の義務を果たさなかった、あるいは救助しなかったということについての責任を明らかにしないというのは、非常に遺憾であります。  特に十月五日の第二回審判で、山下前艦長が、「現場にとどまっていればもっと救助できたのではないか」ということを質問されて、「その場にいればもう少しの方を救助できた」というふうに認めたということが報道されていますね。だからとどまっていればいいものを後進でずっと下がって二百メーター離れたということを言っているのでしょう。被害者というのは現場におるのですよ。何で二百メーター離れるのだ。後進をかけておったのなら後進をとめたらいいじゃないですか。行き足があったというようなことを言うのは言語道断ですよ。後進しかけたらすぐ前進をかけて、船の操艦をやったことがある者ならだれでもわかりますよ。後進しかけたら前進かけてすぐとめる、そしてとめるんですよ。かじだって面かじ切り過ぎたら、すぐ取りかじにして面かじの行き過ぎをとめるんですよ。だから、後進かけておったらすぐに前進にかけて戻ってきましたと言っているこの山下さんの証言は正しいのです。しかし、二百メーター下がった、そのことによって、現場を離れたことによっておぼれている人の姿も見えなかった、そしてもう少し現場にとどまっておれば救助できたのだろう、こういうふうになっているときに、その非を認めないという姿勢は私は何としても許せないと思うのですよ。  だから、もうこうなってきますと姿勢の問題ですよ、長官。私は出てきた事実について言っているのですから。二百メーター離れた、ゆっくりゆっくり来たんだ、微速で、超鈍速で来たんだと日吉さんが言っていますよ、近寄ってくるのに。だから二百メーター三ノットで戻るとしたら約二分かかるのですよ。二ノットだったらもっとかかるのですね。だからそういう状態で今度はまた戻ってくる。十分ほど必要としたから、十分の間に救わなければいかぬときに二百メーター離れた、戻ってくるのが遅くなったということで救助が三人しかできなかった、一千メーター先の民間船が来て救助した、こういうことになっているのですから、これははっきりすべきだということを指摘しておきます。  時間がなくなりましたので、せっかく外務大臣に来ていただいておりますので一言だけお伺いしたいのです。  いわゆるバードンシェアリングの関係でありますが、米国が日本に対してODAの拡充を要求してきました。米国の、集団安全保障にとって重要な諸国に対するODAをふやせという要求ですね。米国の希望する援助対象国の国名まで挙げています。例えばカールーチ国防長官の六月七日の講演でも、軍備力増強などと異なり、ODAについては日本憲法上制約がないのだから、それをふやしてくれという趣旨のことを言うています。だから、アメリカ側は従来のODAに対する日本政策を変更してアメリカの戦略に沿うような戦 略援助に転換せよという要求をしているのじゃないかと私たちは見ているわけです。  それに対して、五月二十四日の世界経済研究会での村田外務省事務次官の講演が明らかにされておりますが、それによりますと、「従来、日本のODAというのは、英語でいうべーシック・ヒューマン・ニーズ、あるいは途上国の経済開発を主眼にして行われてきたわけで、これは正しいアプローチですが、これからは広く世界の平和と安定ということを頭に置いて、援助を質量ともに改善していかなければならない。」今までのことは正しいけれども、これから変えるんだ、質、量ともに変えていかなければいけないんだというふうに言うています。  この間明らかにされましたことしのODA白書「我が国政府開発援助」では、このことがまずははっきり書かれていますね。「我が国援助の基本的性格と課題」の中で、「我が国の援助が目指すものは何であろうか」というふうに提起をして、我が国援助の今後の進むべき方向……
  170. 箕輪登

    箕輪委員長 東中君に申し上げますが、時間が過ぎておりますので、早く結論を急いでいただきたいと思います。
  171. 東中光雄

    ○東中委員 だから、「今後はより積極的に援助を活用し、国際社会の平和と安定に資するという観点から、援助対象国、地域を考えていくというアプローチも益々必要となってくる。」だから、低開発国の経済発展、民生向上のための援助よりも平和と安定のための積極的援助、こういうふうに初めてこういうODA白書になりましたね。これは、バードンシェアリングに対するこういうODAについては政策を変えられたとしか思えないのですが、戦略援助をやめるべきだ、こういうやり方に対して強く反対するものだということで外務大臣の御意見を承りたい。
  172. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ODAというものは受益国からは要請されるものでありますが、先進国、なかんずくアメリカからは要請されたり強要されるものではない、それをまず性格上、申し上げておきます。したがいまして、バードンシェアリングというものとODAというものをそういうふうな関連においてお考えになっていただきたくはない、これが第一点でございます。  もちろん量並びに質に関しましては、いわゆるODAの国々がございますけれども、DACと言います、このDAC諸国のせめて平均まで持って いきたいな、それを量の面においても考え、なおかつ質の面におきましても有償より無償の方がふえることを我が国としても志さなければならぬ。そうしたものを通じて私たち世界の平和と安定に貢献する、これは村田次官の言うとおりでございまして、ODAそのものは南北に横たわる人道上の問題への考慮と、なおかつ相互依存である、これが定義でございますから、こういう定義に従いまして我が国はODAの拡充をしているということでございます。
  173. 東中光雄

    ○東中委員 不満ですが、質問を終わります。
  174. 箕輪登

    箕輪委員長 本日は、これにて散会いたします。 午後三時十五分散会