○
公述人(原豊君) 御紹介にあずかりました原でございます。六十三
年度予算案につきまして、特に構造調整の側面から私見を述べたいと思います。
私、これで何回か、この
予算委員会に出させていただきまして
公述人として発言をしてまいりました。二年ぐらい前でございますか、には景気が悪うございますときでございまして、その中で
財政再建ということを
中心にした
予算が組まれているというわけで、やはり景気と
財政再建の両にらみの
予算をつくるべきだということを主張した覚えがございます。
昨年もここに参りまして六十二
年度の
予算につきまして私見を述べましたけれども、このときもまた、確かにいろいろ配慮はされているけれども国際経済の危機を前にしての
予算としてはどうも説得力がない、はっきり申して危機感があらわれていないということを申しました。ちょうどそのころは半導体のアメリカの報復の措置がとられましたし、それが関係ない電動工具に及ぶとかあるいはゲパート条項というのが出てくるとか、そういうことがございました。また経常収支の黒字が非常に堆積したということも
日本側でございましたので、そういう状況を前にしては、もう少し
予算はその危機感が反映されてそれに対する対応がはっきり出た方がいいのではないかということを申しておきました。
しかし、その段階で既に補正
予算がいろいろ準備されておりまして、その後、国会では六兆円を超える緊急の経済対策と補正
予算がつくられまして、そして私のある
程度の意向というものがそこに反映されているというわけではございませんですけれども、思ったとおりであるというふうに考えた次第でございますけれども、ともあれそういうことを申してまいりました。結果的には、そうした補正
予算、非常に大型でございましたから効果も出てまいりまして、昨年を見ますと内需拡大の方向がたんだん出てきておりまして、そして景気も回復に向かってきた。ことしに入りましてからも景気の拡大基調は変わらず現在に至っている、こういう判断ができようかと思います。
六十三
年度の
予算案は、それを受けてつくられたわけでございます。率直に申しますと、
財政再建のみならず内需の拡大に対しても配慮をされております。後に述べますように、公共事業支出も、当初
予算との比でございますけれども、二〇%近くも伸びが計上されているということでございますので、そういう面からは、私が二年前に述べました景気、内需拡大と
財政再建の両にらみという点ではまずまずよろしいんじゃないかというふうに考えておりますし、全体から見てそのバランスがスマートに確保されているような形を呈している、こういうふうに判断をしております。
それはそれでよろしいんですけれども、しかし、やはり
予算というものは目的を持ってつくるものでございます。継続性もありますけれども、同時に、そのときの経済状況及び経済的な
課題にこたえる側面がなければいかぬというわけで、そういう面から考えてまいりますと、私は、現在はただ内需拡大をしてその結果を待つという側面のみならず、もっと積極的に構造を転換させていくという、そしていろいろ弊害が出ます、あるいは打撃が出る場合にはその調整をやっていくという、その非常にいいチャンスじゃないかと、こういうふうに考えている。したがって、名づけるならば六十三
年度の
予算というものは構造調整に気を配った
予算であるべきだ、こういうふうに考えているわけでございます。
確かに円高と内需の拡大という、そういう経済的な状況のもとで構造もどんどんと転換しております。そして、後に述べますように、産業構造にいたしましてもやはりソフト化、サービス化の傾向が出ておりますから、それはそれでその条件のもとでの構造調整は進んでいると申せますけれども、しかしこの状況にしても、必ずしも永続的なものじゃないという、あるいはこの一年の間に途中で腰砕けするかもわからないという状況があるんじゃなかろうかということを考えています。そういう面から見ますと、やはりもう少し積極的に構造転換あるいは構造調整の志向、目的が出ていい
予算ではなかったかと、そういうことを考えております。そしてまた同時に、
先ほど申しましたような経済的な条件が腰砕けになりますともとのもくあみになる、かえってまずい状況になるおそれもはらんでいるんじゃなかろうか、このように考えております。そういう点でもう少し
予算に政策的なねらいがあらわれてきてほしかった、こういうのが私の率直な印象でございます。
そういう印象のもとでもう少し中に入って考えてみたいんですけれども、構造の見方は種々ありますけれども、ここでは経済構造、産業構造、地域構造という三つの側面から検討してみたいと存じます。
まず経済構造ですけれども、これは前川
委員会の報告書の中にも書かれておりますように、これはどちらかと申しますと経済全体を大きく見ておりまして、
日本の経済構造が今まで外需依存型の
経済成長を実現する構造であって経常収支が大幅の黒字になるという体質を抱えた構造だという、こういう把握でございます。したがって、構造転換という場合にはこうした構造を変えていくわけで、外需依存型を内需主導型にする、そして経常収支の大幅黒字堆積型を変えてまいりまして経常収支とバランスがとれる方向に改善をしていくという、そういう方向への転換がこの場合の経済構造転換という理解になろうかと存じます。
その経済構造から見てまいりますと、確かに現在あらわれております正常のパターンを見ますと外需依存型から内需主導型に変わってまいりました。六十一
年度の外需寄与度を見ましてもこれはマイナス一%になっていますし、これは三年続けて
成長にとっての外需寄与度がマイナスになるという、こういう状況でございます。それから、つい
先ほど発表されました六十二年の十月—十二月期の四半期データを見ましても、この三カ月の
成長率の一・七%の中で内需が二・四%増の寄与度をあらわし外需がマイナス〇・七%と、こういうことになっている。そういう形で見てまいりますと、内需がプラスで出てきて外需がマイナスになるという、こういう姿になっておりますから、確かに内需主導型への転換が行われつつあるということが言えると思います。
しかし、果たしてそれだけで今後
日本の貿易収支の黒字がたんだん減ってまいりまして均衡型に向かうかどうか、あるいはこういう傾向が定着するかどうか言えませんし、また
先ほど申しましたようなこういう経済条件が果たして持続性を持っているかどうかということには確かに私は問題があろうと考えております。その理由といたしまして
幾つかありますけれども、簡単に申しますと、例えば個人消費にしてもそうでございます。GNPの主要内容であります個人消費が非常に伸びたということが内需拡大の大きな柱になっているわけでございますが、その中身を見ますと、これが例えば所得の八百万円以上の方の個人消費の伸びが三・四%という伸びになっている。これは六十一
年度の伸びでございます。これは三・四%のプラス。そして四、五百万円の勤労者が一・〇%という伸びになっている。
ここにたまたま持ってきております資料を見ましても、これは家計調査で個人消費を見ておりますが、勤労世帯実質消費支出を見ますと、六十二年の十月にはマイナス〇・六、十一月にはマイナス〇・八という、こういう数字が出ております。
先ほどの四、五百万円のところの伸び率がマイナスになっているということと対応しております。それからさらに自営業、自由業の方の個人消費が昨年四・三%プラスで伸びております。こういう状況を見てまいりますと、個人消費が二極分化をしておりまして、比較的所得が高い
人たちの個人消費が伸びてこの内需拡大を支えておりますけれども、一般大衆勤労者になりますとそれほどの消費の伸びはない。かえって伸びがマイナスになっている。円高による物価のある
程度の安定によりましてようやく実質的に勤労所得も伸びている。一%そこそこ伸びているので、そこで何とかカバーできているというような状況になっているわけでございます。
その面から見ますと、今日の個人消費を支えているのは八百万円以上とか自営、自由業の方々で、昨年の、あるいは一昨年以来のキャピタルゲイン、株価の上昇とか地価の高騰というようなものを通じてキャピタルゲインを獲得できるような方々が
中心になって支えているという、そういうことが言えるんじゃないかと思われます。このことは、裏を返しますと、もっと個人消費というものの力を強めていって内需拡大型の姿を定着させるためには、やはりこういう勤労者の減税というものも積極的にやるべきじゃなかろうかという
一つの指標になろうかと考えます。
それからさらに
住宅投資でございますけれども、これも昨年非常に伸びてまいりまして内需を支えておりますが、アパートや個人
住宅も盛んに建築されてこれが伸びております。やはりこれは金利が安い、いろいろ政策的な措置も講じていらっしゃいますから、その影響も多少ございますけれども、同時にこれもまたやはり地価が上がった結果でもございます。地価が上がると建築が伸びないということじゃないんで、むしろ地価が上がると建築は伸びるというのが過去の歴史でございますけれども、今回におきましても同様でございまして、アパート建築を初めとして資産価値が高まる、あるいは資産課税が高まるという予想がつきますような
土地を積極的に利用しようというわけで建築が伸びた側面を持っているわけでございます。したがってこれも、そういう状況が変わりますと
住宅投資という、建設の伸びというものは締まる
可能性を持っている、こういうことでございましょう。
それから、あと設備投資がございます。円高に対応していろいろ合理化を行う等々がございますし、また新しい技術で新しい製品をつくるという、新しい事業に乗り出すというような積極的な投資もございます。それから
先ほど申しました内需拡大に対する
生産能力の拡大、これは非常にオーソドックスなものでございますけれども、こういうところが設備投資が盛んになった原因であろうかと思いますけれども、この先を考えましても円高対応の合理化というのも行くところまで行っておりまして、そしてまたこれも先が見えているという、この新技術と新製品、新事業ということになりますと、
日本の
企業はバイタリティーに富んでおりますから、しかも割合長期的な展望で
企業行動を行っておりますから、これはかなり続くと思われますけれども、三番目の内需拡大に応じた
生産能力の拡大というのは、これは内需次第でございまして、
先ほど申しましたような形で個人消費が伸びなくなるとすれば、これもまた落ち目になる
可能性を持っている、こういうことでございます。
ただ、設備投資というのは、これはやっておきますとやはりストックとして役に立つわけですけれども、場合によって今度はまた一層伸ばすという形になる、転換する
可能性を持っておりますから、その辺は注意を要するところであろうかと思いますが、ともあれこういうもので支えられてきた。
それから最後に公共投資でございます。私もどちらかというと積極論者でございまして、
先ほど申しましたように景気もにらんでおけということを主張してまいりました。六兆円を超える、その中で五兆円を超える投資でございまして、一兆円は減税でございましたけれども、そうした効果が出たことは非常に喜ばしいと考えております。経済学者の多くは公共投資の乗数効果というものは現在じゃ余り大きくないんだということを言う人もおりますし、いろんな前提で数字計算がされておりますけれども、私は公共投資の出し方によっては決してそんなことはない、やはり波及効果の大きいようなところをねらって出るような形で投資を行うと必ず実際の事業としては出てくるんだということを申しておきました。
確かに昨年の公共投資、昨年の後半に強く出てまいりまして景気の下支えをしておりますし、年間を通じて
成長率を〇・五%から〇・七%ぐらい支える要因になったんじゃないかという数字も出ております。これもこれで結構でございますけれども、これがこの三月期までで終わりました後、継続して景気の下支えになるかどうか、あるいは積極的に景気を引っ張る要因になるかどうかということでございましょう。今回の
予算ではかなり積極的に公共投資の
予算が組まれておりますから、その点はいいわけでございますけれども、昨年の当初に比較して二〇%でございますが、補正後に比べますと伸びていないわけですから、その辺、中だるみの
可能性もあろうか、こういうことでございます。
特に心配なのは
成長率でございまして、既に政府見通しにおきましても、三月で終わります六十二
年度は三・七%の見通しをはるかにオーバーし、四・五%ぐらいまで出るんじゃなかろうかということも言われておりますけれども、六十三
年度の見通しになりますと三・八%ということになっております。いろんな状況から見てやや六十二
年度から下がるんじゃないかということが予測されもいたします。ただ、これは後半、アメリカの選挙が終わりました後でアメリカ景気がどうなるかということも絡んでまいります。アメリカの景気が停滞まではいかなくとも下降いたしますとやはり影響を受けるということでございますから、私は前半拡大、後半横ばいというふうに見ているわけでございますけれども、
成長率が下がることになりますと内需依存度が当然下がってくるということになろう。というのは、やはり外需で急に賄うというわけにいかないものですから、そういうところが全体から見た経済構造について心配な点、あるいは持続性についての問題点であろうかと考えております。
次に、産業構造でございます。
これはマクロというよりはセミマクロあるいはミクロに近いところでございますけれども、産業構造を高度化していくという、あるいは
先ほど申しましたような経済構造を転換させる、目標に沿って産業構造も変えていく、そして直接響いてくる貿易収支の黒字の削減というものにつなげるということが
一つのねらいでございますけれども、これも一応、
先ほど申しました経済構造と並んで成果があらわれてきております。もっとも、産業構造の転換というものはどちらかと申しますと市場メカニズムを通じて実現するものでございますから、政策的に手をとり足をとりということではございませんで、やはりマクロ的な経済の外枠的な形でのいろいろの国の政策によりましてこれが促進されますけれども、確かにソフト化、サービス経済化の方向にこれが転換しつつあることは言えるかと思います。特に円高が急速でございましたから、それによる相対価格の変動効果によりまして
生産も大きく、あるいは資源配分のあり方も変わってきたということでございましょう。
ただ、そうした意味での外面から見ました産業構造の姿が、一応高度化する方向、あるいはソフト化、サービス化といった方向に転換しているということは言えるかと思いますけれども、しかし、その中身を見る場合には必ずしも問題がないわけじゃないと私は考えております。
その
一つは雇用の状況あるいは就業構造といいますか、就業状態といいますか、これでございます。確かに数字で見ますと完全失業率は二・六%に下がり、有効求人倍率も〇・八五に上がってきたということが言われておりますけれども、実は常用雇用を見ておりますと、これがずっと減少を続けております。そしてパートを見ておりますと、特に三十代、四十代の技能
生産者の中に女性のパートタイマーやら随分入ってまいりまして、
生産を支えているという形が出てきている。と申しますと、結局は需要が伸びてもそれが常用雇用に結びつかずパートでカバーされているという形になる。そうでなければもう
一つは労働時間の延長でございまして、本来ならば生活の中身を豊かにするという方向、また国際的な要求にもこたえるという意味で労働時間の短縮が実現すべきところにもかかわらず、逆に労働時間が最近伸びているという、こういう状況になっております。
それからさらに、
先ほど申しました有効求人倍率も、地域格差がかなり出ております。そのために全体から見て、例えば今申しましたように〇・八五等々と申しておりますけれども、地域的な差が出ておりますから、そうした意味では
東京都とか、数字で見ますと名古屋とかそうしたところの有効求人倍率が非常に高くてその他がそうでもない。ちょっと例で申しますと、六十一
年度に有効求人倍率が全国で〇・六二ですが、札幌が〇・四〇、仙台が〇・四一、
東京が〇・七五、名古屋が〇・八六、
大阪が〇・五一、広島が〇・六三、四国が〇・五八、福岡が〇・三一というばらつきが出ているわけでございます。
したがって、雇用状況あるいは就業構造等々を見ておりますと、産業構造が高度化したのを中身でそれを支えているという状況は必ずしも出ていないということなんです。して見ますと、産業構造の転換と申しますとなかなか問題が多かろうということでございます。
それから、さらに外国人労働者、これは正式であれそうでない場合も随分ありましょうけれども、流入も増大しているという数字が出ております。それで、現実に内需が拡大いたしましても、建設が伸びておりましても技能労働者は不足しておりまして、
東京などでは最近はコンクリートを打ち込むときに使います板ですね、木の板をつくる大工さんが非常に不足しておりまして、これは数が限られておりますから、そのために建設が非常に延びてなかなか行われていないという。聞いてみますと、
幾らでも出すから来てくれと言われるけれども、このいっときにそうした形で高いところ側に回っていると、後になりましてそうでない時期になった場合に、落ちついたときに今度はしっぺ返しを食うから、したがって順番に公平に仕事をやっているんだというふうな言葉が近くの工事場から返ってまいりました。そういう現実があるわけでございまして、こういう面から見ていきますと、労働面、雇用面におきましてはかなり問題を抱えているんじゃなかろうか。
さらに、
農業でございますけれども、これがこの構造転換がなかなか進められない、低
生産性のままであるというわけです。
農業はほかの産業とは少し違いますし、また
土地の
生産性と深くかかわるものでございますから、したがって普通の産業と同日の談にするわけにいかないことは当然でございますけれども、これをどうするか、食管会計のあり方を含めてどうするかの問題、これもやはり構造転換という産業構造の高度化という点から考えますと、当然考慮に入れなきゃいかぬということでございます。この辺のところも、
農業だけ別個に扱っておりますとやはり全体のバランスに欠けるところが出てまいりましょうし、ほかにいろんなリアクションも出てまいりますから、この辺のところを、今問題になっておりますけれども、
先生方は積極的にこれに取り組んでいただきたいものと考えております。
それから、中小
企業も同様でございまして、今度の
予算ではサチコ
予算が組まれまして、産業と地域とそして高齢者社会、この三つに対応するというわけで労働省の方は胸を張っているようでございますけれども、イイヨメサンだそうですが、一千百四十億円ぐらいではどうも今言ったような状況に対応できない。
〔理事林ゆう君退席、
委員長着席〕
三十万人の雇用プログラムもございますけれども、現在心配されております、俗な言葉で言えば産業の空洞化ということを考えてまいりますと、百万人以上のレベルでの過剰雇用がある。例えば野村総研の資料によりますと、六十二年三月に百二十五万人ですか、それだけの過剰雇用があるという数字も出ている現状でございます。したがって、それを考えますと、産業構造のいわば外のスマートな変化の陰に隠れているこういう問題点というもの、こういうものを解決していかなければ本当の意味で産業構造が高度化したとは言えないし、またこういう点で再びもとに返るおそれを大いにはらんでいる状況だというふうに考えます。そうした意味でも構造転換、今のチャンスを積極的に生かす必要があろうかということです。
最後に、地域構造でございます。
私常々考えておりますけれども、
日本の今までの産業政策あるいは産業構造の転換政策というものは、産業全体を重化学工業とか輸出産業とか、そうしたバランスで考えていた。これは産業の
生産のバランスでありますけれども、地域と結びついた、現実の
人間が生きてそこで物をつくるという産業のバランスではなかったということですね。
私、OECDに今から十年ちょっと前に勉強に行きましたけれども、そのときに実は産業政策の
研究に行ったわけです。ところが、そうした電化学工業化のパーセンテージとか輸出をどうするかというような形での、あるいは技術革新をどうするかというような形での産業構造の外面的な形の転換とか姿の判断というものは、それは我々の方がはるかに進んでおりまして、向こうでそういう受けとめ方は余りやっておりませんです。むしろ向こうで考えるのは、地域にある産業のことなんですね。だから非常にどろどろしたものがあるわけです。そこに住んでいる
人間をどうするかです。
我々は、かなり流動性の高い社会ですから、したがって八幡製鉄の人々を君津に、千葉県まで引っ張ってきてやらせようと思えばできるわけですけれども、そうできないところがたくさんある。彼らは石のうちに住んでおりまして、じい様のまたそのじい様のつくったうちみたいなところに住んでおりますから、地域に対する定着性が非常に強いわけなんで、そうしたところの
人間を動かすわけにいきませんから、資本を持ってきてそこで産業を興そうとする。逆に言いますと、そこの産業が倒れるということは大変なことなんですね。ですから、産業政策というのは常に地域政策と結びついている。むしろ地域的な発想、地域的な安定ということを主にして考えるわけなんです。そうやっていますから、非常に保守的ですから、変化についていけなくて
日本との競争力に負けてしまうというような現状があったわけですけれども、これはやはり考え物ですね。どちらかに重点を置くという、やはり一方ではだめなわけです。
そういう点を考えますと、これからは地域構造を考えた産業政策の必要があるわけでございます。そうした意味で、私はこの辺のところはまだ詰めておりませんけれども、
都市と
農業とうまくリンケージさせまして、そこで
生産、生活のシステム化を図っていくというやり方、こういうことがこれからの非常に重要な役割になってくるということでございましょう。アグリシティーということもございますけれども、そうした形で
農業とか地域社会を生かしていくという、生活の
一つのシステムをつくっていくということでございましょう。パリなどでは、卵を除きまして、当時ほとんど野菜なんかは一時間で
生産地から届くというようなシステムが組まれておりまして、
東京じゃ無理かもしれませんですけれども、そういう考え方もできようかと思います。
それからもう
一つ、情報のネットワークを形成していく。遷都、展都いろいろお考えのようでございますけれども、情報というのは、ただ資料があるわけじゃありません。目的を持った資料でございます。したがっていろんな目的を持った資料があっていいわけであって、シティーにしても同様で、やはり目的を持ったシティーでなきゃいかぬ、目的を持った情報でなきゃいかぬわけですから、それぞれの地域におきましてそれぞれの目的を持った、こうしたアグリシティーなりあるいは
都市と
農業との結びつきのシステムをつくっていくということは、それだけで非常に意味がございます。そうしたものの結果として産業構造が変わっていくという姿ならば、実質的な生活の内実を持った産業構造の転換になっていく。そうでなきゃ、表面的にバランスとかパーセンテージで考えただけの、あるいは重化学工業とか軽化学工業が何%になった、ハイテクが何%になりたというような表面的な産業構造の転換にとどまってしまうんじゃなかろうか。そうすると、表面は非常に進んでいるように見えても実はそうではないという状況が出るんじゃなかろうか、こういうふうに考えております。
地域自治体が
中心にやるべきものでございましょうけれども、やはりネットワークとなりますと
中心的なものが必要でございますし、全体をカバーする意味で国の大きな力が必要でございますので、こういう点で特に地域にも力を注いでまいっていただきたい、四全総がございますけれども、もっと早い期間にこういうことも進めていただきたい、このように考えております。
最後に、そうした形でいろいろ
予算を見ていったわけでございますけれども、やはり政策の中には規制緩和、市場の自由化をどんどんやってそしてグイナミズムを生かしていい側面と、それからそうしたものをある
程度規制して全体の福祉のためにある方向づけを行わなきゃいけない部門がございます。したがって、その辺の取捨選択と組み合わせというものを考えていく。そしてその間に出てきます利害の対立を調整するのが
政治であろうと考えております。そうした面で、最近確かに市場開放とか規制緩和が盛んに言われておりますけれども、アメリカでも既に規制緩和の行き過ぎに対して批判が出ている、反省も出ている最中でございますから、この辺のところもじっくり腰を据えて考えていただきたい。と同時に、誘導すべきところは積極的に国の力で誘導すべきですから、公共投資も大いに活用していただきたいと思いますし、減税もやっていただきたい。その際に、特に投資の配分と減税をどこで行うかという配分の問題、これはじっくりと考えて詰めていただきたいものと考えております。
言い足らないところはまた御質問の中でお
答えすることにいたしまして、時間が過ぎてまいりましたから、私の話はこれで一応打ち切りたいと思います。
終わります。