○千葉景子君 私は、
日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました
昭和六十三年度
予算三案に対し、反対の討論を行います。
竹下総理、あなたがふるさと創生をスローガンに対話と協調を国民に訴えて登場されてから五カ月が過ぎました。しかしながら、この間、国民の目に映った竹下政治の特徴は、一見、国民、その代表機関である国会において対話を進め、協調するかに見せながら、実は言語明瞭意味不明と評されるように、あいまいな言動を繰り返しながらなし崩し的に自分の主張を国民に押しつける極めて危険な手法であり、それはこの
予算審議を通じて見られた減税問題、大型間接税の導入問題などから一層明らかになったと言わなければなりません。
さて、今日の経済は、マクロ的には好調だと言えるかもしれませんが、個別には産業の空洞化、失業問題など多くの問題を抱えております。また、国民生活も、賃金の抑制、
政府の無策による土地高騰などにより極めて苦しい状態に追い込まれていると言わざるを得ません。そして、所得、消費、資産にわたる持てる者と持たざる者との格差拡大、東京一極集中を背景に顕著化した地域間経済格差など、解決すべき問題が山積しております。
このような問題を真剣に解決するとすれば、
昭和六十三年度
予算は、大幅な所得税減税を実施して国民の負担を軽減するとともに、立ちおくれた地域への積極的な投資、社会保障等の福祉充実の施策が最重要課題として取り扱われなければなりません。しかし、
政府予算案は、INF全廃合意という国際緊張緩和の方向が定着しつつあるにもかかわらず、
防衛費を突出させ軍拡路線を続ける一方、減税措置を講じないばかりか、社会保障、教育など国民生活関連
予算を厳しく切り詰め、さらに地方財政、住民への負担転嫁を強める国民生活犠牲の軍拡
予算であり、到底認めることができないものです。
以下、数点にわたって反対の主な理由を申し述べます。
反対の第一の理由は、喫緊の課題である所得税減税等が講じられていないことです。
近年、財産所得や財テクによるキャピタルゲイン等により巨額の利益に潤う一握りの大金持ちがいる一方、大多数の国民の生活は、昨年の春闘での賃上げが史上最低水準であったことからも明らかなように、賃金は抑制され、異常な地価暴騰により住宅関連経費が増大し、社会保障負担が年々上昇するなど極めて圧迫されているのが実情です。
長期にわたり課税最低限が据え置かれ、期待するほどの減税が実施されなかった結果、社会保障負担と合わせた非消費支出の収入に占める割合は、五十年代当初一けただったものが今や一六%にもふえております。したがって、昨年度の減税
程度では到底埋め合わせできるものではなく、所得税、住民税の減税を柱とした大幅な負担軽減の早急な実施が六十三年度にまず必要とされております。しかるに、
予算編成時はもちろん、今日になっても
政府は、減税を大型間接税導入を主要な柱とする税制抜本改革とセットにしようとの思惑を持ち続け、その実施を先送りしようとしており、絶対に容認できるものではありません。
減税財源としては、我々が提起した不公平税制の是正を初め、景気回復による税の自然増収が見込まれており、大型間接税によらずとも与野党の合意に基づく減税を実行することは可能であり、まず我々は大幅な減税の早期実施を強く
政府に要求いたします。
反対の第二の理由は、福祉対象経費を削減する一方で、二年連続して
防衛費の対GNP比一%枠を突破させ、これを既定路線化しようとしていることであります。
今日、世界が、
米ソのINF全廃合意に象徴されるように、軍拡から軍縮への新時代へと大きく方向転換しつつあることはだれしもが認めるところです。しかるに、六十三年度
政府予算案における
防衛関係費は三兆七千三億円、対前年度当初比五・二%増、しかも昨年廃案となった売上税分を除けば五・五%増と他の経費に比べ突出し、その対GNP比も六十二年度の一・〇〇四%から一・〇一三%へとさらに拡大しているではありませんか。特に新規に計上されたイージス艦、OTHレーダーなど
米国でさえ最高の軍事機密と言われるハイテク装備の導入は、日米軍事同盟強化を図る米軍
有事来援研究と相まって、
我が国の
軍事大国化を一気に進めるものであり、決して見逃すことができません。
国際的に緊張緩和の機運が盛り上がる中、平和国家
日本のあかしであるGNP一%枠をなきものとし、限りない軍拡の道を歩もうとする
政府の態度は、平和憲法のもと、世界の中において軍縮を率先して推進しなければならない
我が国の責務に反するものであり、絶対に容認できないものであります。
反対の第三の理由は、六十三年度もまたいわゆるツケ回し、先送りが行われ、本
予算案が
我が国財政の真の健全化にはほど遠いものである点です。
政府はこれまで、一般歳出抑制と言いながら、その一方では政官健保の繰り入れ特例など、毎年、後年度への負担繰り延べを行ってまいりました。本
予算案においても、厚生年金等への繰り入れ特例三千六百億円、住宅金融公庫補給金の繰り延べ千百四十七億円、国民年金の平準化措置六百一億円など負担の先送りが行われ、その結果、五十七年度以降累積した繰り延べ総額は一般歳出の三分の一を上回る十二兆五千億円にも達しているというありさまです。
さらに、極めて厳しい財政事情を理由に暫定措置としてとられた国庫補助率の引き下げなど地方へのツケ回しは、国庫が税の大幅な自然増収に恵まれたにもかかわらずなお継続、強化されており、とりわけ今後将来にわたり地方に多大の負担を強いる国民健康保険の改悪は全く遺憾千万と言わざるを得ません。
まさに
政府の言う財政再建は上辺だけの見せかけにすぎず、実体は粉飾
予算のあげくの借金財政にすぎないことを私はここで強く指摘しておかなければなりません。
反対の第四の理由は、
政府税調を隠れみのに、
政府が三たび大型間接税の導入にひた走ろうとしていることであります。
昭和五十四年の一般消費税、そして昨年の売上税という
政府の大衆大増税のたくらみは、大型間接税には断固反対という国民の意思表示の前にもろくも崩れ去りました。国民不在の施策の強行は必ずや失敗に終わるということから考えれば、当然の帰結と言わなければなりません。しかるに、竹下総理は、これまでの失敗を反省するどころか、一般消費税を否定した五十四年の国会決議の
趣旨をねじ曲げ、さらに六十年の
政府統一見解、一昨年衆参同時選挙の選挙公約までことごとくほごにし、またしても大型間接税の導入を画策しているのです。国会決議をないがしろにし、公約違反を何とも思わぬ総理のやり方は、
議会制民主主義を否定するものと断定せざるを得ません。その上、税制改革を急ぐ余り、税制改革に関する有識者アンケートと称して新型間接税導入のための世論工作をもくろむなど、全く言語道断であります。
さらに、大型間接税が逆進性、安易な税率の引き上げ、事業者事務負担の増大など、国民に多大な負担を強いる悪税であることは我々がこれまでもたびたび指摘してきたところですが、総理、あなたみずからが表明した六つの懸念、これこそまさに大型間接税の欠陥
そのものではありませんか。しかも、
政府の言う税制改正には、いまだその目的たる二十一世紀を展望した具体的政策指針もなければ、総理が繰り返し主張する所得、消費、資産の間で均衡がとれた税体系の中身さえ明らかになっておりません。税制改革に当たっては、まずキャピタルゲイン課税の強化、医師優遇税制等の租税特別措置及び各種引当金等の企業優遇措置の廃止など、不公平税制の是正を徹底することが先決ではありませんか。
国会での十分な議論を尽くさず、国民の合意が形成されぬまま、拙速に欠点だらけの大型間接税導入を進めようとする
政府のやり方には断固反対するものであります。
最後に一言申し上げます。
五十七年度以来、本
委員会は
予算の空白除去を
政府に要請し、本年度も
予算委員長から暫定
予算編成の準備に入るよう申し入れを行ってまいりました。ただいまも
委員長からその旨の発言があったところでございます。しかるに
政府は、暫定
予算の年度内提出を怠り、憲法、法律上も認められない
予算の空白を生じさせ、四月二日になって急遽暫定
予算を提出するという極めて異常な事態を招き、その間、確立したルールがないことを奇貨とし、国会の議決を得ることもせずに
政府の独断で財政支出や債務負担を行うなど、その政治責任は厳しく糾弾されなければなりません。今後、二度と
予算の空白はつくらず、適法な財政運営を行うことを強く
政府に要求して、私の反対討論を終わります。(拍手)