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○
高桑栄松君 この問題は、私は主張しているわけじゃございませんが、
因果関係ということでまず原因の追及があって、結果としてということではないかと、私はそう思ったものですから、多分
環境庁が
主管する
法律で
通産省が応援するというのが筋ではなかろうか。それで
田村元先生に、初めに
通産があったかといって伺ったわけでございます。
-
○
国務大臣(
田村元君) いずれが所管になりましても、こういう問題でございますから十分の横の連絡はありますし、また何といっても
環境庁は
専門でございますから、
環境庁の的確なアドバイスを受けて
製造面での対応をしていくということでございますから、特に
通産省が現実の
作業面での担当ということだというふうにお受けとめいただいたらいいんじゃなかろうかと思います。
-
-
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-
○
国務大臣(
田村元君) これは
先生のおっしゃるとおりなんですけれ
ども、問題は、
家庭排水の場合、特に
ディスポーザーによる
排水の場合、それを受けることのできる
下水道の
整備が十分であるかどうかという問題だと思います。
今
日本では
販売台数が
アメリカの約二十分の一でございますから、人口からいえば一割ということになりましょう。でございますが、
アメリカやヨーロッパの場合は
下水道がもう十分にできております。でございますから、
日本の場合、
地域によっては受ける
能力を持っておるし、
地域によっては受ける
能力を持っていないということでございまして、当然
下水道の
能力がついていけない場合は、これはちょっと禁止しなきゃならぬということだと思います。
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○
政府委員(
植木浩君) お答え申し上げます。
昭和六十二年度で四百五十億八千万円でございます。なお、六十三年度は四百八十八億八千万円で、三十八億円の増を予定いたしております。
-
○
高桑栄松君 今
環境庁と
文部省の
研究費を比較さしていただいたわけですが、
研究所予算、
国公研の方は年々七%、一〇%、一三%と次第に減ってきております。
科研費の方は四%、八%と年々前年に比べて上がっておりますね。これはやっぱり
研究というものはそういうものだと思いますので、
環境庁はぜひひとつこれは
努力をしていただきたいなと思っております。
なお、国際的には
データを比較する
モニタリングシステムが必要だと思うんですが、これについても、
環境庁はやはり
先進国の中の今有力な
科学先進国としてイニシアチブをとっていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
-
-
○
高桑栄松君 では、医療問題に入らしていただきますが、
最初に
肝炎のことを伺います。
これは、私が前に
質問をいたしましたのが昨年の五月でありますが、
青森県三沢市の
産婦人科医院で連続して八人の産婦が
止血剤の注射を受けて、いずれも
急性肝炎を起こした。この
調査結果を承りたいと思います。
-
○
政府委員(
坂本龍彦君)
青森県の
肝炎の感染の事件の
調査結果でございますが、私
ども、このときに使われた医薬品をほかに全国的に使っているであろうということで
調査をいたしました。その結果、この
肝炎というのは非A非
B型肝炎でございますが、同時にこのときの
製剤と
輸血と両方をされている方がおられますので、私
どもとしてはそのどちらかであるということがなかなか
特定しがたい。そういうことで、この
製剤のみを使って
輸血をしなかった例を調べましたところ、全国的には三十一例ございました。これを実際に使用されたであろうというこの
製剤の量から逆に推定いたしますと、
発生率が大体〇・二一%から〇・三五%の間にあるというように理解をいたしております。
なお、この
青森県における病院につきましては、確かに八例出ておりますけれ
ども、そのときには二十人の患者に投与をいたしまして、その八例のうち六例は同時に
輸血も行われておりましたので、この
製剤のみによって感染したと推定される例は二例というようなことになっておる次第でございます。
-
○
高桑栄松君 その際、その後
製薬会社の方から
加熱処理の新製品を申請しているということがありましたが、それについてはどうなっておりますか。
-
○
政府委員(
坂本龍彦君) 当時こういう事例が出ましたので、その後この
血液製剤につきましてはやはり
加熱をして
安全性を高めた方がよいであろう、こういう
考え方のもとにその後
加熱製剤の
開発をいたしたわけでございます。
ただ、この非A非
B型肝炎というのはまだ
病原体も確認されておらないという面もあって、なかなかこれを的確に排除するというのは難しいわけでございますが、一応
専門家の間では
加熱によって感染の危険性を減弱できると
考えられておりますので、できるだけ有効な
加熱方法を
開発するという方向で
研究を進めてまいりました。現在、その中で厚生省に対しまして新しい製法による品目の承認申請がなされまして、一部のものについては三月の初旬に承認をされておりますし、残る品目にいたしましてもできるだけ厚生省として審査を急いで、新しい型の
製剤が使えるようにしたいと
考えておる次第でございます。
-
○
高桑栄松君 極めて最近の
新聞報道でございますけれ
ども、これによりますと、荻窪病院のドクターの発表によりますと、
加熱製剤を使用した血友病者の二十八名中六人が
肝炎に感染したということなんですね。そうすると、
加熱ということが果たして効果があるのか。二十八分の六というと、やっぱり一五%または二〇%の確率ですからね。これは一体その
加熱処理は効果があるんでしょうか、どうでしょうか。
-
○
政府委員(
坂本龍彦君) 先ほど御説明いたしました
青森の病院の場合には、二十例の中のこの
製剤のみを使用された方が二例でございます。六例は
輸血と両方やっておりますので、どちらが感染源であるかというのはなかなか確定がいたしかねるわけでございます。いずれにいたしましても、非A非
B型肝炎の
病原体もまだ確認されておりませんので、これを根本的に排除するというのは大変現在の技術水準では困難でございますけれ
ども、いろいろな見地から
考えて、できるだけ
加熱をするということが恐らく有効であろうというような推論がなされておりますので、有効な
加熱方法をできるだけ採用していくというのが現在とるべき最良の道であろうかと
考えておるわけでございます。
-
○
高桑栄松君 同じく
輸血感染の問題ですけれ
ども、ただいまのノンAノン
B型肝炎の感染防止ということで、厚生省は新しく血液の肝機能検査をしてGPTの値でこれをセレクトするということを
考えておられて、大変私はいい
考えだと思うんです。そこで、男性がGPTが二十五、女性が二十と書いてあったんですが、これはなぜ男女で差をつけたんでしょうか。
-
○
政府委員(
坂本龍彦君) 現在非A非
B型肝炎予防対策として血液のGPT値を見直すという
研究をいたしておりますが、まだこれは
専門家の間で御議論いただいておる段階でございまして、厚生省として決定する段階には至っておりません。
現在
専門家の御意見として、ただいまお述べになりましたようなGPT値について男性二十五以下、女性二十以下としてはどうかという御提案があったというのが現在の状況でございます。
ただ、この提案された学者の方の御説明によれば、GPTの正常値の分布に男女差があるので、それに応じて差をつけてはどうかと、こういうような御意見でございますが、いずれにしてもまだこれは
研究段階でございますので、この報告がまとまりましてから具体的な結論についてはさらに
検討をいたしたいと
考えておるところでございます。
-
○
高桑栄松君 実は、
新聞には男の方が高いのは飲酒の機会が多いからということがあったんで私大変興味を持ったわけです。飲酒といっても酒の中にウイルスがあるわけはないんで、そうすると杯だな、杯以外に何か別な行為が飲酒のときにあるというのかと、こう思ったんですが、これについてのコメントございますか。
-
○
政府委員(
坂本龍彦君) いろいろなお説があるかと存じます。私
どもその点に関しましては特に申し上げるほどの
考え方は持っておりません。
-
○
高桑栄松君 それで、GPT値をそこまでとりますと、どれくらい献血量に影響しますか。
-
○
政府委員(
坂本龍彦君) この計算の方法というのがいろいろ細かい点につきましては意見が分かれる面もございますが、一応非常に大まかな
考え方でまとめてみますと、現在GPT値につきまして、ある
データによりますと、三十五を超えるものを外しておるわけでございますが、これが二・五%に相当する量でございます。そこで先ほどの御提案を仮に採用するとして、GPT値が男性二十五、女性二十を超えるものを外していく、こういうことになりますと、外れるものが全体の六・二%ということになるわけでございまして、逆算いたしますと現在確保している量の大体九六・二%ぐらいになる。単純計算でございますが、そういう推論が一つできるというように
考えております。
-
○
高桑栄松君 それでは、
B型肝炎のワクチン接種のことでこれも私が前に
質問をさしていただいて、外交官、特にアジア、アフリカ、中近東に赴任をされる外交官及びその家族が、非常にキャリアが六%もあると、百人のうち六人が
B型肝炎を持っている、そういう国へ赴任された
方々は非常に
肝炎を恐れておられます。それで私は
質問をさしてもらったんですけれ
ども、現在どれくらいワクチン接種をしておられるのか承りたいと思います、外務大臣から。
-
○
政府委員(藤井宏昭君) お答え申し上げます。
六十二年度にアジア、中近東、アフリカに赴任しました赴任者数は四百一名でございます。内訳は職員が二百三名、家族が百九十八名でございます。このうち
B型肝炎の予防接種をいたしましたのは百十一名でございます。ちなみに六十一年度におきましては、全体で四百五十六名の赴任者数のうちで三十六名が接種をいたしておりましたので、六十二年度においては大幅に接種者数が伸びておるということでございます。
-
○
高桑栄松君 大ざっぱに三〇%以下ぐらいですから、これはやっぱり安全というのは何といっても大事ですから、できるだけワクチン接種をしてあげた方がいいと思うんです。公費ですか。
-
○
政府委員(藤井宏昭君) 昨年の五月に、先ほど
先生おっしゃいましたように、本
委員会におきまして
高桑先生から御
質問もございまして、その後外務省におきましても関係の各省などと相談いたしまして、昨年の十月から新しい制度を設けまして、赴任するに当たりましてはできるだけ
B型肝炎のワクチンの接種を行うようにということを奨励すると同時に、それを公費の中から支弁するということを昨年の十月から
実施いたしておるわけでございます。
-
○
高桑栄松君 同じく職場感染の予防について、まず厚生省に。
ともかく、これは
日本人の
肝炎陽性者が二%ということでありますから非常に危険で、エイズよりもずっと感染率は高いということでありますが、国立医療機関それからその他の医療従事者、監察医、それから廃棄物
処理業者等についてはどういうふうな対策をしておられるか、厚生省にお伺いいたします。
-
○
政府委員(北川定謙君) 医療機関等感染機会が多い場所での
B型肝炎の予防策につきましては、事業主の責任によって
実施されるべきとの
考え方のもとに、ワクチン接種を中心とした対策を講ずるよう昨年の八月に各都道府県知事あてに通知を出したところでございまして、この線に沿って指導しているわけでございます。
具体的なワクチンの接種状況等についてはまだ
調査がございませんが、出庫量が非常に増大をしておるという状況から見て、大幅に進展をしているのではないかというふうに
考えております。
-
-
○
政府委員(北川定謙君) 費用はそれぞれの事業主の責任ということでございますので、それぞれの事業主の出費というふうに
考えております。これは一般の健康管理の体制全般の中での物の
考え方でございます。
-
○
高桑栄松君 それではエイズに
質問を移らしていただきますが、まず献血血液による感染の問題を知りたいと思います。
私が一昨年、六十一年三月に初めてエイズの
質問をさしていただいたわけですが、四月以降献血血液の抗体検査をする体制を整えておられたわけです。つまり、六十一年四月以降献血チェック体制に入ってからの陽性者の率というか実数、どれくらいのものでしょうか。
-
○
政府委員(
坂本龍彦君)
輸血血液のエイズ抗体検査につきましては、全国の血液検査で
実施しておりますが、六十一年十一月に本格的に全国
実施をいたしました。それ以前の試験的
実施分を含めまして
昭和六十三年二月末現在まで、延べで約千二百六十万件の検査を
実施いたしました。そのうち、ウエスタンブロット法によりまして陽性が確認されたものは二十四件となっております。
-
○
高桑栄松君 私が六十一年十一月に
質問したときに、厚生大臣は百二十万人で八名であったと。そうすると、一年間九百万人というと換算で六十名になるんで、今のは何か大変少ないんじゃないかと思うんですが、それでもそれだけあったということだと思います。
もう一つは、献血者と献血量が昨年はたしか減ってきているんですが、どれくらい減ったか。それから、その減った理由は何でしょうか。
-
○
政府委員(
坂本龍彦君)
昭和六十二年一月から十二月、つまり六十二年の年間の献血状況は、献血者数が約八百二十二万人でございますが、前年に比べて約三十八万人減少でございます。
一方、献血量でございますが、これが年間約百八十六万リットルで、献血量は前年をわずかながら上回ったという状況でございます。
また、この献血者が減少している原因がどういうところにあるかということでございまして、私
どもとしては、本年の二月に全国二十一カ所の血液センターで約七千名の人を対象にアンケート
調査を
実施いたしました。その結果、献血経験者のうち、今後献血したくないという意思表示をした人につきましては、その理由として体力に自信がない、エイズ等にかかるおそれがある、それから四百ミリリットルへ全面移行するのではないかといったような回答がございまして、特にエイズにかかるのではないかとか、あるいは全部四百ミリリットル採血されるのではないかというような、これは誤解でございます。同時に、献血をそのとき初めてした、つまりそのときまで経験をしていなかった人は、どちらかというと献血への不安感あるいは面倒であるというようなことを献血したくない理由として挙げております。
私
どもとしては、この本当の原因がどこにあるのかというのはなかなか断定しにくい面もございますが、先ほど申しましたように、エイズにかかるのではないかとか、あるいは全員四百ミリリットル採血されるのではないかというような誤解はこれはぜひとも解いていかなければならない、こう思っておりまして、今後学校、職域、
地域を通じまして新しい献血者の確保に努めるとともに、正しい知識を身につけていただくようにできるだけ広報活動を進めてまいりたいと
考えておる次第でございます。
-
○
高桑栄松君 献血者が減ってくるというのは大変困ることだと思うんです。献血量は確保されているような気がいたしますけれ
ども、外国からの輸入が次第にできない
状態だと思いますので、やはり厚生省は献血ということは一生懸命にPRしなきゃいけないんじゃないか、こう思います。それで、エイズの関連で落ちてはいけないと私も思っておりますけれ
ども、献血をすればエイズにうつるかというと、これは余りにも何というか誤解も甚だしいわけで、これは違うんですが、もう一つは献血をしたときにチェックをしたら陽性に出やしないかという心配で来なくなるとすると、これは本質的にPRではだめだということになりますので、私はそちらの方を心配しておったんです。
ところで、
アメリカの最近の報告を見ますと、抗体検査をしていなかった一九八四年は
輸血によるエイズ感染が七千二百人と出ておりますね。それで、検査をしてマイナスであった血液で、なおかつ年間四百六十人が感染をする。それは、感染をしてから抗体が陽性になるまでに二ないし八週間、遅ければ六カ月、さらにその三倍、一年半、ビールスは持っているが抗体が陽性に出ないという場合がある。
我が国だって同じことでありますが、これについてはどうお
考えか承りたいと思います。
-
○
政府委員(
坂本龍彦君) ただいま御
指摘ございましたように、エイズに感染はしたが抗体検査で陽性の結果が出ないという期間が確かにあるわけでございます、人によって長短ございますが。この問題につきましては、現在の技術をもってしては完全に感染の有無を確認できない時期というのがやはりどうしてもございまして、これは国際的にも同様の事情でございます。
私
どもといたしましては、とにかくできるだけこの危険な血液を排除しようということで、いわゆるエイズのハイリスクグループと言われる方などにつきましては、できるだけその方の献血を遠慮していただくために従来献血時の間診を行ったわけでございます。エイズに感染した可能性があるかどうかということを献血者みずから申告をしていただこうとしたわけでございますが、実はこれは献血者の方には大変評判が悪うございまして、そういうプライバシーに関するような問題を頭から聞くというのはおもしろくない、献血もしたくないというような声も出て、これまた献血に影響を与えては大変でございますので、私
どもは少し方法を改めまして今試験的にやっておりますけれ
ども、献血をしていただいた後でできるだけそういった感染している可能性があると
考えられる方からは電話で後ほど申告をしていただく、こういう方法を現在試験的に
実施しておりまして、その結果を踏まえまして、できるだけ早い時期に全国
実施に移してまいりたいと
考えておる次第でございます。
-
○
高桑栄松君 これも
新聞報道でありますが、三月十九日の夕刊に、エイズ感染者には医療費の補助をする、
研究費名目で厚生省はそうするというふうに出ておりまして、私は非常にすばらしい一つの前進であったなと、こう思っておりますが、これについての御説明をお願いいたします。
-
○
政府委員(北川定謙君) 御
指摘の三月十九日付の
新聞報道でございますが、これは
昭和六十三年度におけるHIV感染者の発症予防・治療に関する
研究、これは主任
研究者が山田兼雄教授でございますが、この進め方についての報道であったわけでございます。私
どもはあくまでもこれは
研究であるという
考え方をとっておるわけでございます。この
研究班では、もう既に
昭和六十一年度から発症予防可能性のある薬物を試験的に投与する、そういうことによって免疫の機能の改善が図られるかどうかというようなことを少数例で進めておったわけでございます。
六十三年度からはこれらの先端的医療を希望する感染者全員に拡大して
実施していこうというようなことを
考えておるわけでございます。さらにはまた健康管理の方法もあわせて
検討をしたいというふうに
考えております。まだその具体的な
実施方法等につきましては
検討中でございますが、今後血友病患者の主治医等を中心にいたしまして感染者の医療の
専門家と十分相談しながら対応していきたい、このように
考えているところでございます。
-
○
高桑栄松君 その
予算ですけれ
ども、厚生省でキャッチしておられる感染者は現在千十六名ですね。それで二億一千万円というのはどういう計算になるんでしょうかね。
-
○
政府委員(北川定謙君) これはあくまでも
研究でございますので、把握率とか具体的に進める上に当たって一遍に広がらないというような問題もございまして、大体このような枠でいけるのではないかと現段階では
考えているところでございます。
-
○
高桑栄松君 先ほど陰性者のというのを申し上げましたが、
我が国でチェックをしなかった六十一年四月以前ですね、三月以前の感染者のフォローアップをすべきであろうと思うんです。
というのは、昨年十一月に
新聞報道されたお方がおりまして、三十歳の女性ですね、この方は六十一年の三月に東京都内の病院で手術を受けて、そのときに
輸血を受けた。そのときに彼女は、この血液はエイズは大丈夫でしょうねと確認をしたというんですね。そして感染をした。私はこんなにかわいそうな例はないと思うんです。確認をしてもそれをイエス、ノーと言える医者はいなかったわけで、こういうのがありますので、私が血液検査をしなさいと言ったのが六十一年三月です。それ以前はチェックしていなかった。そうすると、毎年何十名か知りませんが、数十名は
輸血感染はあったはずです。これをフォローアップして、プライバシーを侵さない範囲でやっぱり厚生省は何らかの形で医療補助をすべきではないか、こう私は思います。いかがでしょう。
-
○
政府委員(北川定謙君)
先生の御
指摘のように、そういうケースにぶつかった場合非常にお気の毒であるわけでございますが、いずれにしましても、
我が国ではまだ感染者が非常に少ないという状況にある。それから
輸血の血液は国内の献血によっておるというようなことで、そういうケースは極めてまれなケースではないかというふうに
考えております。
しかしながら、全献血血液の抗体検査開始前に
輸血を受けられた
方々にとってそういう不安は当然あるわけでございますので、そういう状況の
方々に関しては、現在エイズのいろんな相談所を保健所等に開設しておりますので、こういうところを利用していただくとか、あるいは主治医との関係で御相談をいただくとかいうことで対応することが適切ではないかなというふうに
考えておるところでございます。
-
○
高桑栄松君 今の
お話ですが、千二百六十万件で二十四件陽性であったんですね、献血血液で。そうすると、九百万件を年間に直すとやっぱり二十名いるわけです。それは前の年も前の年もほぼ二十名ぐらいはいたと思います。これは間違いなく確率論からいっても年間二十名前後の者が二、三年の間はあったんですね。ですから、これはかわいそうだと思いますから、御
検討いただきたいと思います。
それで、検査をしてもマイナスの血液で感染することもあるということと、それから
加熱製剤によってもエイズがうつるということ、
肝炎はもちろんうつるということ、こういうことを
考えますと、私は、例えば手術を受ける人が自分の血液をあらかじめ預けて、そしてそれを手術のときに使うということを前に提案をいたしましたが、今厚生省はどうお者えでしょうか。
-
○
政府委員(仲村英一君) 手術を受けるような患者さんがあらかじめ血液を採血しておいて手術を受けるときにまたその自分の血を用いるということは、先ほどから出ておりますような
肝炎とかその他の感染症あるいは血液型不適合の
輸血に最適であることは申すまでもないわけでございますけれ
ども、これをシステム的にやるとなりますと、手術をする予定の人が一体どういう人かということを
特定するのも難しい場合もございますし、その血液を大量貯蔵しておくと申しますか、冷凍して保存するというふうなことで設備も要りますし、あるいはむだになるケースも起こり得るわけでございますし、それから適応症をどのように
考えたらいいかといういろいろの問題がございまして、理論的には非常に理想的なことでございますけれ
ども、実際上制度として取り上げるのはなかなか難しい問題があると
考えております。
そういう観点で、今私
どものところで
輸血療法の適正化に関する
検討会というのを設置して、それらの問題も含めましていろいろ
検討をお願いしているところでございます。
-
○
高桑栄松君 いや、今のは使わなくたってむだにはならないんです。これは献血に回せばいいんですから。細かいことを言っていると時間がございませんから、ひとつ御
検討ください。
それで、エイズの告知の問題ですが、けさNHKのテレビでがんの告知の問題を取り上げて、かなり真剣にやっております。しかし、エイズとがんとの告知の違いは、がんは何といってもうつらない。うつるのもあるようですけれ
ども、一般的にうつらない。うつらないから本人だけの問題で済むんです。エイズは伝染病なんだから、だから本人に知ってもらわなきゃいけないんです。ですから、これは告知をしなければならない病気なんです。その告知体制があるかと私はこの前厚生省に
質問したんですよ。カウンセラーというふうな方を置いてやったらどうだと。医者は忙しくて、その人の顔色を見てひょっとしたら自殺するかもしらぬなんということを
考えられないわけです。
アメリカの統計では、エイズ患者が自殺する率が同年配の男性の三十六倍と言っておる。物すごいです。ですから、私はやっぱり心理学者等の入ったカウンセリングシステムが要ると思います。
ことし一月のロンドン・サミットで、どういう会議かわかりませんが、
日本はそのエイズのカウンセラーを引き受けたということになっておりますが、いかなる会談で、いつごろ、どんなことを
内容としてなさるのか、承りたいと思います。
-
○
政府委員(北川定謙君) ただいまの
先生の御
指摘の会議は、来る八月二十二日から二十七日までの六日間、東京において、WHOと
日本国厚生省の共催で開催することを予定しております。
その
内容は主なものが三つございまして、まず第一はエイズ感染者の抱えているいろいろな問題点の把握、それから第二はエイズカウンセリング手法の
開発、第三はカウンセリングガイドラインを作成するなどが課題となっております。
-
○
高桑栄松君 私は、口幅ったいことですけれ
ども、政治もやはり予防医学と同じように未来予測に立ってやるべきものだと、私は自分ではそう思っているんです。したがいまして、私が一年前に申し上げたことが、国際会議で
日本でやるという段階なんで、私、やっぱり一年前に申し上げたときに積極的に取り組んでいただいたらよかったなと思うんです。
日本にはカウンセラーがいないわけだ。だから、それで国際会議を主宰なさるということは、ちょっと私はやっぱりどうかという気がいたしますが、しかしやらないよりはいいので、ぜひやって新しいそういうことを
開発していただきたい、こういうふうに思います。
それで、時間が少しずつ減ってきましたので少し予定の
質問を飛ばさしていただきますが、
研究体制につきまして、エイズが、まあ細かい数字はいろいろございますが、
昭和六十一年三月に私が
質問したときに、厚生省の
研究予算が二千七百万、年末補正で約一億になりました。六十二年度で二億三千万になりました。六十三年度は、私が昨年五月にお願いしたときに十億
研究体制ということを申し上げましたらほぼ十億になりました。大蔵大臣には大変よく面倒を見ていただきました。出せない金ではないとおっしゃいました。
しかし、一九八九年度に対する
アメリカ大統領の年頭教書は、エイズの
研究についてはトータルで円換算、百三十円換算で千九百五十億円であります。エイズだけですよ。
日本は余りにもプアだと思います。約二千億。一%で二十億です。どうでしょう大蔵大臣、一%は。
アメリカの一%というわけにいきませんでしょうか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 六十三年度は十億円というところに来たわけでございますが、非常に大事な問題でございますから金を惜しむつもりはございません。ただ、今この十億円で不足である、追加をする必要があるという御要求は受けておりません。
-
○
高桑栄松君
文部省、厚生省、科学技術庁、今の大蔵大臣の
お話を承りまして、ぜひひとつこの際追加をお願いいたします。
-
-
○及川順郎君 医療活動に関連しまして、私の方から食品衛生に関する問題を若干伺っておきたいと思います。
健康食品のブームが続いておるわけでございますけれ
ども、品目件数で見まして最近の動向はどうなっているのか。できましたら、五十八年以降の統計
データがありましたらお示しいただきたいと思います。
-
○
政府委員(古川
武温君) お答えします。
健康食品につきましては、世論といいますか、
国民の健康志向、こういうふうなことで厚生省においても五十九年に健康食品対策室を設置してそれに対応してきたわけでございます。そういうことで、健康食品についてどういうふうなものだという定義はしてございます。
ただ、五十八年、五十九年と二年かけましていわゆる健康食品についての実態
調査をしてございます。これによりますと約二千品目健康食品というものがある、こういう実態でございます。これはあくまでもいわゆる健康食品でございます。
-
○及川順郎君 私のところで聴取しました声には、健康食品の
内容、成分、
安全性のチェックが非常に弱いのではないか、やはりそうした不安の声が非常に強いわけですね。特に、健康食品につきましては企業秘密と称して
内容が明らかにされていない部分が多い。中には有害物の含有の危険性が
指摘されているものもあるということでございまして、やはりこの認定基準については強化すべきではないかというこういう声が強いんですけれ
ども、この点に対する厚生省の対応、
考え方、そして現在のこの点に対する対応のための組織、陣容、こういうものの
現状をお聞かせいただきたいと思います。
-
○
政府委員(古川
武温君) 健康食品につきまして、先ほど申し上げたようなことで、
国民健康といいますか、いわゆる健康食品というふうな表示に惑わされて、今
委員御
指摘のようなことがあってはならないということで、これについて所掌をまず明確にしたわけです。これは五十九年でございます。その後、先ほど申し上げました健康食品対策室を設け、そしてこれに対応したと。そこで、この健康食品対策室はとりあえずの組織でございますので、来年度の
予算、というのはことしの四月からですが、正規の組織上の室として出発させたいというところでございます。
そこで、今の御不安に対応してこういう組織をつくってきたわけでございますが、五十九年あるいは六十年度の
予算でこうしたいわゆる健康食品につきましては、これが健康被害、慢性の健康被害も含めまして、こうしたことがないように現在
調査分析を続けております。今後とも、正規の対策室によってさらにしっかりした対策を進めていかなければならない。
このことにつきましては、もう一つ健康食品協会というものを六十年度でしたか、これをつくりました。そして、この協会において、健康食品についてこれを営業販売するときの綱領といいますか、そうしたものをまずつくり、コードですね、その上で健康食品というものについての基準というものを定めまして、これに合致しているものについては学者の
検討委員会をその中に設けまして、そして認可され、よろしいというものについてはいわゆるマル適
マークといいますか、こうしたものを張って、
国民に見やすいわかりやすい
行政をしていこう、こういうふうなことで食品衛生協会にそうした仕事をお願いしているところでございます。
-
○及川順郎君 これまでに健康食品に関して不良品を売りつけられて社会的な問題になった、こういう主な事例はございますか。
-
○
政府委員(古川
武温君)
委員御
指摘のように、そういうふうなこともあります。
それで、先ほど二千と申し上げましたが、健康食品協会がそうした基準を決めまして、この基準で定めましたのが二十六品目につきまして六百余りの健康食品をマル適
マークとしております。このマル適
マークにつきましては、しっかりした売られ方、しっかりした
内容のもの、こう心得ております。
-
○及川順郎君 ぜひ
国民の健康的な食生活、安全衛生については今後とも充実をお願いしたいと思います。
関連しまして、食品添加物の
安全性チェックの体制はどうなっているかという件ですが、過日私は輸入食品につきまして
質問をいたしました。できましたら、その中で
行政検査、自主検査合わせまして不合格件数になったものの中で、添加物基準で不合格になったものは何件ぐらいありますか、お示しいただきたいと思います。
-
○
政府委員(古川
武温君) 直近の
データで申し上げたいと思います。
添加物で違反となったものには、認められていない添加物を使ったものと、それから添加物の基準が決まっておりますが、その基準を超えたりあるいは使っていけない品目について使ったものがございます。それを合わせた数で六十一年が二百六十七件でございます。六十二年度は途中までの数字はございますが、一年の数字ですと六十一年でございます。
-
○及川順郎君 そうした輸入食品をこっちは受け入れる側ですが、輸出している方の国の数ですね、最近の
データで何カ国ぐらいになっておりますか。
-
○
政府委員(古川
武温君) 答弁がおくれて申しわけありません。数字をここに持ちませんでしたので、後刻
委員に御連絡を差し上げたいと思いますので、お許しを願いたいと思います。
-
○及川順郎君 後ほどお願いしたいと思いますが、私の調べでは大体百カ国を超えているという状況がございます。ほとんど各国がそういう状況になっておりますけれ
ども、この輸入食品の添加物の許可状況が
我が国の認可基準と食品輸出国の基準が異なるために不合格になる、こういうものがあるわけですが、どういう品目がございますか。
-
○
政府委員(古川
武温君) 異なるものについての品名を例示しろということでございますのでそれについて申し上げますと、例えば安息香酸で申し上げますと、
我が国では使用の品目はキャビア、清涼飲料水等五種の食品に限られておりますが、
アメリカでは全食品に使ってよろしいと。それから、食用赤色四〇号あるいはパラオキシ安息香酸メチル、こうしたものは
我が国では未指定でございます。指定しておりませんが、
アメリカでは指定しておる。こういうふうな相違はございます。
-
○及川順郎君 食生活の習慣とかそれから食文化、これは各国の特色があると思いますけれ
ども、安全衛生に関しての医学的な見地というのはこれは万国共通でございまして、やはりこれだけ食料の国際化が進んでいる状況の中では、一面では輸入しやすいような
規制基準の見直しというものもあってしかるべきだと思いますが、その安全衛生管理基準に対しては一定のやっぱり国際水準が必要ではないか、このような時代になってきているのではないかと思いますが、この点に対する厚生大臣の所見を伺いまして、関連
質問を終わります。
-
○
政府委員(古川
武温君) 輸入食品の安全につきましては、その
国民の口に入れる食品の三分の一、こういうふうな大きな量でございますから、
国民の健康の上で、安全の上で大変大きな問題だと
考えております。
一方、こうした食品については国際流通の輪が大きく広がっておりますので、やはり
先生御
指摘のようなことになればその生産にしても流通にしても大変便利だと思います。しかし、このことにつきましては、先ほど御
指摘のありましたように、食習慣あるいはその食べる量、こうしたものが各国まちまちで、
我が国と外国では大変相違のある部分もございます。したがいまして、そうした国際的な基準というものを踏まえながら、
我が国の
国民の健康というものに十分留意しながらこの基準を決めていく、こういうふうな
考えで対処してまいりたいと思います。
-
○
国務大臣(藤本孝雄君) 今御答弁申し上げましたとおりでございますが、まず国際的に通用する基準のあるものにつきましては適宜、便宜上それを使っていく。しかし、ないものにつきましては国内の基準をつくることは当然でございますし、そういう方向で
国民の健康を守るためにこれからも最大の
努力をしてまいりたいと
考えております。
-
○
高桑栄松君 時間の都合上、私、予定
質問を少し飛ばさせていただきますので御了承ください。
教育改革に入らせていただきますが、改革というのはラジカルチェンジということでございまして、改善とは違うんですね。全くシステムが変わるとか、本当に原理的に変わるというのが改革ということだと思います。教育改革の中で本当に改革と
考えていいものは、私の解釈では大学入試、それに九月入学だと思いますが、きょうは入試だけに絞らしていただきます。
中曽根前総理は、教育改革において偏差値、輪切りを解消するということを大きく主張されましたが、私は、偏差値、輪切り解消は採点方法が一点を争う限りこれはあり得ない、間違いなく偏差値、輪切りの序列をつくるのは一点を争うからであると思います。
それで、私が主張しておりましたのはハードル論ということで、共通一次と同じような形式の試験をいたしまして、そしてあるハードル、例えば六割なら六百点、千点で六百点をオーバーすればこの大学への第一次ハードルは越したと、第二ハードルは例えばクラブ活動とか、第三ハードルは論文を書かせるとか、もう一つは例えばどうしても将来その志望学科に必要な最小限度の科目はペーパーテストするとか、幾つかのコンビネーションでやることを私は主張してまいりました。これは元の松永文部大臣は賛成してくださいました。海部さんも今度の一月一日のある
新聞の対談でハードル論とはっきり書いておられますが、文部大臣どうお
考えでしょうか。
-
○
国務大臣(
中島源太郎君) 改革の重点についてお尋ねでございました。
改革というのは、そのときのその社会の変化に対応できるような人間をつくっていく、それが大前提でございまして、その中の一つにおっしゃったような入学の改革、改善というものがあるわけでございます。
おっしゃるように、ハードル論、これはある意味での御提案としてはよくわかるわけでございます。それである意味では活性化するかもしれません。ただ、一方におきまして高校卒業者をもって大学入学の資格を持つというこの整合性からいたしますと、そこでどの時点で切るのか、例えば大学でやるのかあるいは高校卒業時にやるのか、いろいろあろうと思いますけれ
ども、そういう意味で一つの御提言としては拝聴いたしますけれ
ども、他に
考え得べき整合性もやはり
考えなければいけませんので、そういう点を
検討さしていただきたい、こう思っております。
-
○
高桑栄松君 それで、新テストには何を期待されるんでしょうか。文部大臣、もう一つお願いします。
-
○
国務大臣(
中島源太郎君) ちょっと前段に申しましたように、多様化、個性化を進めていきますためには、教育そのものが個性化重視ということになります。したがって進学、あるいは大学からすれば採用でございますが、高校生からすれば大学入試に対しまして、やはり自分の個性の得意な部分を評価してもらえるような、つまり逆に言えば高校生としてはある一定の水準を修得すればあとは自分の得意な分野で勝負できると申しますか、そういう点を高めていきたい、こういう点でございまして、そういう意味では大学の方でも受験者の個性、人間性あるいは創造性を引き出すためにいろんな意味での、
マークシート方式以外の例えば小論文を出させますとか、あるいは時には面接をいたしますとか、そういうことで受験者のいい面を引き出していく。したがって、教科としては一教科あるいは二教科に絞っていただいて、その他の点を新テストを自由に参考に引き出してもらえばよろしいと、そういう
考えでおるわけでございます。
-
○
高桑栄松君 済みません。
もう一つお願いしますが、九月入学について大臣どうお
考えでしょうか。
-
○
国務大臣(
中島源太郎君) 確かに、国際化の点ではこれから留学生もいらっしゃいます。それから、こちらから留学に出られて帰国子女という場合もありますので、そういう面の整合からいたしますと、九月入学ということはある意味では積極的に
検討すべき事項であろうと思います。
ただそれも、ある意味で九月入学を空白なしにやりますと生徒がダブってくる一時期があるというのと、それから例えば空白を置いて四月から入学すべきものを九月まで待たせるとそこに空白があいてくるという物理的な面をフォローする知恵が必要であろう、こう思いますのと、また大学でも学期の境目を活用いたしまして秋季にも入学者を採る、こういうことをやっておられる面もありますので、これを広く活用していただいたらどうかなと、このように
考えます。
-
○
高桑栄松君 文教関係のことは私も意見を述べたいことがありますけれ
ども、文教
委員会の方に譲らせていただきます。ありがとうございました。
それでは、その他のところで青函トンネルの問題で、去る三月十三日、青函トンネルの竣工開業式が行われて、運輸大臣おいでになって、何かドボルザークのフロム・ザ・ニュー・ワールドの曲に乗ってテープカットをされたと
新聞に出ておりました。そして大臣は、新幹線はトンネルを走らせて札幌までと、こうおっしゃったというので北海道民は大変期待をしておりまして、太陽の季節が北海道にやってくると、こういうふうに
考えているわけでございますが、ひとつ石原大臣のもう一度
お話を承りたいと思います。
-
○
国務大臣(
石原慎太郎君) 三月十三日の開通式に私も一番列車に乗りまして、しかも運転席に便乗させていただきましてトンネルをくぐって
青森から函館まで参りました。トンネルに入ります前も、既に新幹線の用地があちこちに確保されておりまして、在来線に交わるところなどの何か準備の工事も一部あったようでございますが、トンネル内の軌道は明らかに広軌用でありまして、高速列車新幹線が走った際の何というんでしょうか、区分の板のようなものが明らかに在来線より幅広くとってあったりしまして、また架線も在来線用と高速列車用と二つかかるような装置が既にできておりまして、まさしく我々が持っております高速鉄道網にのっとって青函トンネルがつくられたということはもう明らかでございます。ということで、私は高速鉄道網の背骨をつくるべく、でき得れば北海道の首都であります札幌まで東京から高速鉄道をつなげることが望ましいし、また、そうすることによって初めて青函トンネルの意義が一〇〇%発揮されるのではないかということを申しました。
しかし、現実はなかなか厳しくございまして、東北新幹線、つまり盛岡から
青森まで、それから北陸新幹線、それから九州の鹿児島ルートの三つが今促進
検討委員会で財源とそれから順位というものを決めるべく二つの分科小
委員会で
検討されているところでございます。
それから、カテゴリーとしてちょっと混乱しがちでありますけれ
ども、
青森からトンネルを通って函館までの、つまり北海道新幹線、これは六十三年度の
予算編成に当たっての政府・与党間の申し合わせにおいて、JR各社の意見も踏まえ引き続き所要の
調査を進めるということになっております。さらに函館から先の札幌までの路線に関しましては、函館—札幌間の建設については、函館開業の実績等を踏まえた上で判断しようということになっております。
そういうものを踏まえてこれから鋭意
検討し対処していくつもりでございますが、しかし時点は別にしまして、遠い将来か近い将来か、いずれにしろ私は東京から札幌までが、一部はリニアになるかもしれません、特に札幌から千歳、非常に北海道の
方々は意欲を持っていらっしゃいますし、そういうものをつないで高速鉄道がつながるべきだということは四全総の精神にのっとっても自明のことだと思います。
-
○
高桑栄松君 青函トンネルは世紀の偉業でありますし、英仏海峡トンネルの全くモデルになっておりまして、
世界注視でございますから、ぜひひとつこれは新幹線を適していただきたいとお願いをいたします。
次に、HIMEX構想について伺います。
HIMEXというのは、ホッカイドー・インターナショナル・メディカル・アンド・インダストリアル・コンプレックス・シティーとこういうので、北海道の国際医療産業複合都市ということでありますが、この目玉は高度医療センターを置くということで、この所長予定は能勢之彦という、今クリーブランド・クリニックの所長でありますが、
世界の人工心臓
開発のもう間違いないトップなんですね。この人は牛を使って人工心臓の埋め込みの百九十日だったかのレコードを持っているんです。それで、この人を中心に
アメリカの半永久的埋め込み型人工心臓
開発が何十億円だったかで五つのグループとNIHが契約をしたと書いてあります。五年後には完成の予定だというのですが、この能勢君を所長に迎えるということは
世界をリードするということでございまして、私はやっぱり
日本の医学をいつも
アメリカのおぜん立ての中でやらせるのではなくて、この人は北大の出身でございますが、腎臓の人工透析もこの人のお弟子さんが
世界じゅうにいるんです。初期のころは全部この人のお弟子であったんですね。ですから、こういう人の頭脳というか
能力というか、そのグループを早く北海道に招きたいと思うんです。この規模は一兆円と言っておりますね。人口十万を予定して、三千五百ヘクタールということになっております。これについて関連の各大臣にお願いをいたしたいんですが、医療ということでまず厚生大臣お願いいたします。
-
○
国務大臣(藤本孝雄君)
地域振興のプロジェクトとして、高度医療を中核としたHIMEX構想を承っております。私はすばらしい構想だと思います。
地域振興にとりましては、画一的なものではなくて
地域の特性を生かしていく、これは望ましいことでございまして、すばらしい計画構想だと思います。
そこで、我々といたしましては、よくその
内容を承りまして、厚生省が受け持つ分野につきましては十分に協力をしてまいりたい、かように
考えております。
-
○
高桑栄松君 人工心臓ができますと、心臓移植はもうこれでいいことになりますから、大変すばらしいことだと思います。
続きまして、
通産大臣、自治大臣、
北海道開発庁長官、それぞれお願いします。
-
○
政府委員(安楽隆二君)
先生御
指摘のHIMEX構想でございますが、私
どもも地元の北海道の経済界を初めとして産学官が一体となって
検討が進んでいるということを十分
承知しております。
地域振興、
地域活性化のためにこうした地元の創意工夫により取り組みが非常に重要でございまして、これからの北海道の
地域振興を図っていく上で極めて重要な推進力になるものと
考えておりまして、
通産省といたしましても今後のこの構想の推移を十分見守っていきたいと
考えております。
-
○
国務大臣(梶山静六君) 自治省といたしましては、今後の構想の具体的な推進状況を踏まえつつ、
地域の振興や多極分散型国土の形成を進める観点から、必要があれば積極的な支援、協力をしてまいりたいと存じております。
-
○
国務大臣(粕谷茂君) 御造詣の深い
先生にちょっと私からお答えをするのはいささか身が引けるのでございますけれ
ども、今
通産の方からも
お話がありましたように、地元の産学官が協力しまして建設推進協議会というのを設置したようでございます。
北海道は大変地理的に言いましても欧米に一番近い位置にありますし、それからこれからの国際交流の北の基点でもあるだろうと、こんなふうに私
ども思っておりますので、意欲的なこのHIMEXの高度な医療構想というものについてはできるだけ実現のできるように我々も支援をしていきたい、こういうような気持ちでおります。御構想につきましては、
先生も今
お話しになりましたので詳しくこの機会に申し上げるのはちょっと省略させていただきますが、何かにつけてまたひとつお知恵を拝借したいと、こう思います。
それから、先ほど青函トンネルの点で御
質問がありまして、このことにつきましては、私はやっぱり北海道
地域の
開発振興という担当大臣でもありますので、石原
先生ともよく相談をしながらやっていきますが、いかんせん東京のように交通網を張りめぐらすというわけにはいきませんが、北海道は交通過疎なんですね、これをやっぱり解消しないと北海道が発展をするということは非常に難しいなというようなことを私は就任早々から現地に行きまして感じておりますので、またこれも一生懸命やらしていただきたい、こう思っております。
-
○
高桑栄松君 大変ありがとうございました。
この問題の最後に、大蔵大臣に伺いますが、このプロジェクトはやはり規模からいってどうしても国のプロジェクトだと私は思うんですが、大蔵大臣としてバックアップしていただきたいものだと思って
質問をさしていただきます。お願いいたします。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 各省庁いろいろ御相談の上で
お話がありましたら、よく
考えさしていただきます。
-
○
高桑栄松君 それでは、宍道湖・中海の淡水化問題について
質問をさせていただきます。
実は現地で
昭和五十九年にシンポジウムがございまして、私が座長をさせられましたが、そのときに島根大学の伊達教授というお方が、淡水化賛成のお方であったんですが、その
昭和五十九年に全窒素量で中海よりも低かった琵琶湖でアオコが発生したという事実が出てきまして、それをもって伊達教授は、間違いなく中海はトータル窒素量が少し多いんだからアオコが発生する、それで私は反対であるということを明快に言われました。そのときの座長としての私の結論は、アオコが発生するということは前提である、そしてアオコが発生してもなおかつ住民はどちらをとるのかということが問題だと、こういうふうに座長として取りまとめたんです。
それから二十五年、着手されて二十五年
たちました。アップ・ツー・デートの目で、農水大臣、どう見直しをしてくださるのか、承りたいと思います。
-
○
国務大臣(
佐藤隆君) 中海干拓事業は、鳥取、島根両県及び関係者の強い要望を受け、干拓地の造成と、宍道湖・中海の淡水化による干拓地及び周辺耕地に対するかんがい用水の安定確保を目的として進めてきたのは御
承知のとおりでございます。
本事業着工後の事情の変化に対応しまして計画
内容の見直しを行ってきましたが、経営規模が小さく、平たんな用地に乏しい当
地域において、干拓地を活用して高生産性農業を可能とする、また周辺農地等にかんがい用水を安定的に供給するといった意義を持っております。
本事業につきましては、促進を要望する声もありますが、一方、宍道湖・中海の水質悪化を懸念する声があることは十分
承知をいたしております。このような事情を踏まえ、昨年九月、本格淡水化の
検討に資する目的で、水質、魚介類等に極力大きな影響を与えないよう配慮しつつ限定的淡水化試行を行うという案を我が方が両県に提示いたしました。現在、その
検討をお願いしてまいりましたが、三月末までには両県から御返事が来ようということで待っておるところでございます。三月末ということになりますともうすぐ目前にあるわけでございますけれ
ども、その両県、地元の声をお聞きいたしましてそして参酌いたしてまいりたい、こう
考えておるわけでございます。
一般論として申し上げまするならば、相当な金をつぎ込んでおるものについてそれが実効が上がるように、しかしむだにむだを重ねるようなことがあってはならぬということも一般論として当然のことでございますことを申し添えておきたいと思います。
-
-
-
○
委員長(
原文兵衛君) 次に、千葉景子君の質疑を行います。千葉景子君。
-
○千葉景子君
総務庁行政監察局が昨年「
昭和六十一年度
行政サービス改革運動の推進」という報告を出されましたが、その
調査によりますと、そのたびに印象が悪いというような省庁が次第にふえておりまして、警察をトップに、陸運支局、社会保険事務所、職安、市町村役場などが挙げられているところです。
これを受けてかどうかわかりませんが、竹下内閣は六十三年一月二十六日に、
国民の立場に立った親切な
行政を目標とした「さわやか
行政サービス運動」、こういうものを展開することを閣議決定されていますが、まず総務庁の方からその趣旨とその後の進捗状況を御報告いただきたいと思います。
-
○
国務大臣(高鳥修君) お答え申し上げます。
行政サービスの改善につきましては、中曽根
行政管理庁
長官のとき、たしか
昭和五十五年であったと思いますが、窓口サービスの改善ということを中心に取り上げまして総点検をされたところでありまして、それ以来今日まで、毎年そのような点検をしているところでございます。その結果を先ほど
委員がお取り上げになったのではないか、このように思うわけであります。
ただ、
昭和五十五年以来相当年月が経過いたしておりますので、この辺でひとつ
行政サービス改善運動について見直しを行ってみようというふうに
考えたことが一つであります。
さらにまた、竹下総理が御就任になられましてから、
日本は物の豊かさではなるほどある程度のところまで来たかもしれないけれ
ども、心の豊かさというものに欠けるではないか、それを
行政サービスの面でどのようにかひとつ受けとめて、何か
行政サービスの面で改善して心の豊かさに資するようなことができないかというような総理の御指示もございまして、総務庁において
検討いたしました結果、真心のこもった親切な
行政サービスというものを、ただ単に窓口だけではなくて、政府が取り組んでおります
行政サービス全体についてひとつ
考えてみよう。さらにはまた、ただ単に政府の機関だけではなくて、特殊法人とかさらにはまた地方自治体などにも御協力いただいてひとつ推進してみようではないか、こういうことで今取り進めているところであります。
いろいろと、窓口サービスや公共施設利用サービス、その他
国民と接触する公務サービス全般について行うことといたしておりますが、この運動の進め方といたしましては、総務庁では、懇談会あるいはアンケート、特別
行政相談等によりまして広く
国民の皆様方の御意見や御要望、苦情などの把握に努める、あるいはまた現場を視察いたしまして直接
国民の皆様方から御意見を承るというようなこともいたしまして、さらにまた各省庁からも同様のことをやっていただき、各省庁の総点検結果を取りまとめまして、五月にこれを閣議に報告いたしまして公表するというふうに
考えております。さらにまた、
行政サービスの改善評価
調査を十月ないし十一月に
実施いたしまして、その結果を閣議に報告し、同じく公表するというようなことをいたしまして、
国民の皆様方から幅広く吸い上げました声を具体的に
行政サービスの改善に反映してまいりたい、このように
考えておる次第であります。
-
○千葉景子君 今の
お話をお聞きいたしますと、
国民の意見、要望などを積極的に取り上げていこう、そういうことも含まれているようでございます。だとすれば、各省庁でも
国民から寄せられた苦情とか意見、そういうものをできるだけ集約して
国民にも提供する、公表していく、こういう必要がまずあるのではないかと思いますけれ
ども、総務庁としては今後も
国民にいろいろな苦情の
内容などを公表されていかれますか。
-
○
政府委員(
山本貞雄君) ただいまの御
質問でございますが、まず、私
ども行政監察業務と並びましていわゆる
国民の
行政苦情のあっせん業務というものをやっておるわけでございます。この
行政苦情のあっせん業務につきましては、その
処理の
内容、結果は全般にわたりまして毎年公表いたしております。
それからまた、先ほど大臣から申し上げましたように、今回いわゆる総理の御提唱によりまして「さわやか
行政サービス運動」というものを全国的に展開しておるわけでございます。もちろんこれは各省庁、特殊法人、地方公共団体がいわば主体としてやっておるわけでございますが、私
どもといたしましても、全国の出先機関を通じまして
行政懇談会をもう既に百二十回ほど、各界有識の方から意見、要望を伺っております。また、全国に展開しておりまする
行政相談員、五千人の民間の
方々がいらっしゃいまして、こういった方を通じまして
行政サービスに関するアンケート
調査なんかもやっております。
こういった結果を、相当集まりつつございますが、各省庁、特殊法人、地方公共団体のそれぞれにフィードバックいたしまして総点検活動に反映さしていただく。もちろん、先ほど来大臣が
お話し申し上げておりますように、そういった苦情の
内容あるいは意見、要望の
内容、これが総点検活動にどのように反映されたか、こういったことは、私
ども取りまとめまして閣議に報告いたしますとともに
国民の皆様にも公表してまいりたい、そのように
考えております。
-
○千葉景子君 各省庁でぜひ取り組んでいただきたいんですが、先ほどの
調査の結果印象の悪いトップは警察ということになっているわけですが、警察の場合は苦情などの受け付け
処理、これはどういうところで受け付け、あるいは
処理をされていらっしゃるのか、そこのところをお尋ねしたいと思います。
-
○
政府委員(森田雄二君) 警察における苦情
処理の窓口についてのお尋ねでありますが、各都道府県警察におきましては、警察本部及び警察署に公聴担当という係を置きましてこれを受けております。警察庁におきましては、他省庁同様、
行政相談所でこれを受理しているところでございます。
-
○千葉景子君 警察庁の方にもさまざまな苦情が持ち込まれているかとは思いますが、警察に関して警察庁の方に持ち込まれた苦情、これはどんな数でどんな
内容か、そしてそれはどのように
処理されたか、その実態を御報告いただきたいと思います。
-
○
政府委員(森田雄二君) 各都道府県警察における数字は
承知しておりませんが、警察庁におきましては昨年一年で千百五十件という数字を持っておりますけれ
ども、これは苦情と申しましていいのか要望と言っていいのか、あるいは情報の提供と言っていいのか、何分苦情という言葉が余り明確な定義がありませんのでよくわかりませんけれ
ども、いろいろ入れまして千百五十件でございます。
役所の性格からいいまして、警察庁自体の
行政に対する苦情、要望のごときものは余りございませんで、大部分が都道府県警察に関係するものでございますから、それぞれの関係警察に伝えまして、誠実に
処理するよう努めさしておるところでございます。
-
○千葉景子君 警察庁では、最近
新聞等の報道で見ますと、一一〇番でなく一一一番というものを構想されているそうでございますけれ
ども、この一一一番というのは一体どういうことをなさろうという構想でございますか。
-
○
政府委員(森田雄二君) 警察という職場は、仕事の性質上一般市民からの電話をいただくことが極めて多い組織でございます。現在は、これらの電話のうち緊急の用件にかかわるものにつきましては一一〇番を御利用いただく、それ以外のものにつきましては、一般の加入電話のほかに用件に応じまして各県警で、あるいは覚せい剤一一〇番でございますとか運転免許一一〇番とか、そういうのを設置して対応しておるわけであります。
ところが、これが数多くなってまいりますとなかなか市民の
方々にその電話番号を覚えていただくことが難しいので、できることなら第二・一一〇番ということで、急ぎのものは従来どおり一一〇番、急ぎでない御用件につきましてはその種の第二・一一〇番のごときものを設けまして、全国北海道から沖縄まで同じ電話番号で警察に話ができるようにしたい、こういう構想でございまして、目下技術的な問題を
検討しておるところでございます。
-
○千葉景子君 そうしますと、この一一一番という中では苦情の
処理ということは
考えていらっしゃらないんですか。
-
○
政府委員(森田雄二君) でき上がりますと、それはもうかけていただけば結構だと
考えております。
-
○千葉景子君 ただ、かけて受け付けていただいただけではどう
処理されたのかわからないわけですけれ
ども、その
処理の結果等は、当人にあるいは一般にきちっと報告をされるわけですか。
-
○
政府委員(森田雄二君) 先ほ
ども申しましたとおり、警察へ寄せられる苦情のたぐいは種々千差万別でございますが、お答えした方がいいものにつきましてはそのように
処理していきたいと
考えております。
-
○千葉景子君 警察法によりますと、監察官の制度といいますか、あるかというふうに思うんですけれ
ども、この監察官の職務の概要を御説明いただきたいと思います。
-
○
政府委員(森田雄二君) 監察官と申しますのは、組織的かつ能率的な警察業務の運営を図り、また警察職員の厳正な規律を保持するために、業務監察など各種監察事務に従事している者でございます。
-
○千葉景子君 これは部内の規律を中心として行われている職務ですか。
-
○
政府委員(森田雄二君) そのとおりでございます。
-
○千葉景子君 この中で
処理されている
内容ですね、どんな問題がどのように解決されたかということは部外には公表をされておりませんか。
-
○
政府委員(森田雄二君) 今申しましたとおり、監察官の職務というのがそういうものでございますので、これは結果を外に報告、発表すべきものとは
考えておりません。
-
○千葉景子君 これは内部チェックの機構かと思うんですけれ
ども、同じような内部チェックの機能を持っている省庁として郵政省、防衛庁などがあろうかと思います。それぞれ郵政省、防衛庁、どのような制度、どのような仕組みになっているか、お答えいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(中山正暉君) まず郵政省からお答えを申し上げたいと思いますが、郵政省は御
承知のように貯金、簡保それから郵便と、大変伝統の古いいろいろな
国民に密接するサービス機能を持っておりまして、それを内部的に、内部的な検察庁とでも申しましょうか、監察官制度というのがございまして、首席監察官以下全国に五十カ所ばかり、七百名ばかりの者がおりまして、それがいろいろな不正に対しまして、逮捕権はありませんが、
国民の公僕として相反する行為をした場合には訴追をいたしましたり、また金銭上の問題はこれは会計検査院に報告をするようになっております。事件は検察庁に送致する。
六十一年を見てみますと、二千八百件ぐらいの事件が起こっておるというのが実態でございます。そのほか全国には二万四千カ所の郵便局がございます。
特定郵便局一万九千、それから簡易郵便局が四千四百、それから普通局が千三百ございまして、
国民と接触する機会が多い役所でございますので、三十一万人の職員それぞれがさわやか
行政サービスに徹したいということで、さわやか
行政サービス
委員会というものを省内につくりまして対応をしてまいりたい、かように
考えております。
-
○
政府委員(依田智治君) お答えいたします。
防衛庁では
行政考査に関することというのが
長官官房の仕事として与えられておりまして、
昭和三十七年、防衛庁の
行政考査に関する訓令というのをつくりまして、随時ないし定期的に
行政の実態を把握し、庁全体的見地から個々の業務について
検討し改善を推進するということで
実施してございます。
それから先ほどのさわやか
行政につきましても、一月の閣議決定を受けまして、現在、官房長が長となりまして推進
委員会を設けて、各幕僚監部その他内局等で総点検を
実施しておるというのが実態でございます。
また、現在推進しております中期防等を受けまして、その中でも業務全体の効率化を図るということで大きな重点として取り上げておりますので、数年前から次官を長とする
行政改革
委員会、さらに業務監査小
委員会というようなものを設けまして、官房長が長となって自衛隊業務の全般三十数項目にわたっておおむね点検を終了したというような状況でございます。随時ひとつ効率的な、また
国民に対してもさわやかな印象を与えるように
努力しておるところでございます。
-
○千葉景子君 郵政省、防衛庁ともに、この監査結果あるいは考査結果等は公表はなさっていますか。
-
○
国務大臣(中山正暉君) お答え申し上げます。
公表をいたしておりません。
-
○
政府委員(依田智治君)
行政考査につきましては、内部の
検討資料ということで特に公表しておりません。
ただ、先ほど申し上げました
行政改革
委員会等で自主的に
検討した中身につきましては、適宜公表さしていただいておるという状況でございます。
-
○千葉景子君 公表なさっていないということなんですが、先ほどの政府のさわやかサービス運動としては
国民の意見も取り入れてというようなこともうたわれているんですが、総務庁としては、各省庁ともこういう
行政監査あるいは考査、こういう結果もやっぱり
国民に公表して批判を仰ぐ、こういうことが必要だというふうにはお
考えになりませんか。
-
○
国務大臣(高鳥修君) 総務庁がただいまこれから
実施しようといたしておりますことは
行政サービスの改善運動でございまして、ただいま郵政省などがお取り上げになってお答えになっておりましたいわゆる内部の監察等とはちょっと性格が違うのではないかというふうに思いますし、他の省庁がそういうことで独自に
実施しておられるものにつきまして、私の方からそれは公表すべきだとかすべきでないとかと言う立場ではございませんので、その点についてはお許しいただきたいと思います。
-
○千葉景子君 総務庁は六十一年の六月にオンブズマン制度
研究会報告というのを取りまとめられまして、これを受けた形で六十二年十二月には
行政苦情救済推進会議というのを発足させているようでございます。こういうような政府の姿勢から見ても、できるだけ苦情の
処理状況あるいはその
処理内容、こういうものを
国民に明らかにしていくという必要があろうかと思います。
この
行政苦情救済推進会議、これはどのような
内容で、今どんな進捗状況にございますか。
-
○
政府委員(
山本貞雄君) ただいまお尋ねの
行政苦情救済推進会議ということでございますが、御
指摘のとおり、これは臨調・行革審の答申におきまして、
我が国の風土に合ったいわゆるオンブズマン制度の導入につきましての
検討、それからもう一つは、今御
指摘の
行政相談等既存苦情救済制度、これの活性化の必要、こういう二点を
指摘いたしておりまして、政府といたしましても閣議決定でこの
検討方を決定してまいったわけでございます。今御
指摘の六十一年のオンブズマン制度
研究会報告についてもほぼ同じことを言っておりまして、特にただいまの点で申し上げますと、民間有識者の意見の反映など既存苦情救済制度を活性化する、こういうことを提言しておられます。
ただいまのこの
行政苦情救済推進会議、これはこういった提言を受けまして、既存の苦情救済制度の活性化の一環といたしまして、総務庁に申し出られました
行政に関しまする苦情等のうち
行政の制度運営の基本にかかわるようなものにつきまして、高い識見を有する第三者によるいわば
国民的立場からの意見を伺いまして的確かつ効果的に
処理していく、こういうことで開催することにいたしてございます。
この運営でございますが、既に二回ぐらい開催いたしておりますが、総務庁が受け付けました苦情事案の中から、会議のメンバーの意見を伺いながら、先ほどの
行政の制度運営の基本にかかわるような事案を選びまして、そうしまして、そういった関連しまする
行政監察の結果だとか、あるいは類似
行政の実情などをも参考としながら問題点や改善
方策を御審議いただきまして、そしてその結果を総務庁の行いまする
行政苦情のあっせんに反映させていく、そういうふうなことでただいま動き始めたところである、そういう状況でございます。
-
○千葉景子君 政府全体で総務庁を中心にしてこの
行政サービス改善の取り組みが進められているんですけれ
ども、いろいろな苦情の中でやはり一番日常生活で接する機会が多い、窓口が多い、先ほど申しました警察ですね、苦情が多いんです、いろいろな形で。アンケートでも一番悪い結果が出ている。こういう警察こそ取り組みを強化し、できるだけ
国民の意見を取り入れて、さわやかな警察と、こういう方向で頑張っていただかなきゃいけないんですけれ
ども、これからのサービス改善について警察はどのように進められていこうとするか。これは一番その長であられる
国家公安委員長、どんなふうにお
考えですか。
-
○
国務大臣(梶山静六君) 先ほどの総務庁のアンケートでワーストワンの評価をちょうだいいたしまして大変不名誉に存じておりますけれ
ども、警察では現在窓口サービスの
充実強化を図るため全国挙げて市民との応接を向上させる運動を展開しており、私としてもこの運動が浸透し成果の上がるよう指導してまいる所存でございます。また、市民から寄せられている苦情、要望等につきましては誠実な取り扱いに努めているところでありますが、今後一層市民の立場に立ち、迅速的確な取り扱いが行われるよう指導してまいりたいと存じます。
-
○千葉景子君 警察というのは、市民の相談にあずかる、そしてもう一方では捜査という機能を持っているわけですから、大変強制的な機能、そして市民のプライバシーにかかわるそういう職務に携わっているところなわけですね。その関係で、最近捜査で非常に行き過ぎが見えるのではないだろうか、そういうことが見受けられますので、若干その点についてお尋ねをしたいと思います。
まず、捜査をするにはさまざまな手続がございますけれ
ども、
日本国憲法のもとでは、捜査をする、あるいは人を逮捕する、こういうものについては令状主義というのをとっているわけでございますが、そもそもこの令状主義の趣旨ですね、これはどんなものでしょうか、最高裁の方にお伺いしたいと思います。
-
○
最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 逮捕、勾留あるいは押収、捜索のような強制処分につきましては、これが被疑者その他の関係者の人権に直接影響するところが大きいこと等を考慮いたしまして、原則として裁判所または裁判官の発する令状によらなければならないものとして、いわゆる司法的抑制を図ったものであるというふうに理解いたしております。
-
○千葉景子君 この令状については、こういうチェックを図るということから必ず提示をするということが求められていると思いますが、この令状の提示というのはどういうもので、そしてこれはどうやらねばいけないか。どういうふうに指導なさっておられますか、警察庁の方では。
-
○
政府委員(仁平圀雄君) お答えいたします。
御
承知のとおりでございますが、令状執行に当たりましてはこれを提示しなければならないということになっておるわけでありますが、提示の程度といいますか、につきましては、私
どもの理解といたしましては、処分を受ける相手方がその
内容を十分に知り得る程度に明確に示すということだと理解しておりまして、そのように指導いたしているところでございます。
-
○千葉景子君 どうもこの辺は、実際の現場ではきちっと行われていないというのが実情だと思います。細かい点は省きますけれ
ども、場合によっては本当に、水戸黄門の印籠ではありませんけれ
ども、ぱっと見せてぱっと隠してしまう、こういうような実態がまかり通っている、こういう状況なわけですね。この辺の実態は
御存じですか。
-
○
政府委員(仁平圀雄君) 先ほど答弁申し上げましたように、十分その相手方に
内容が理解できるように示すよう指導しておるところでございまして、今御
指摘のようなことはないのではないかと思っておるわけでございます。
ただ、令状を提示いたしますと、ちょっとそれを貸してくれとか、あるいは
内容を書きとめるから時間をくれとか言われる場合があるわけでございますけれ
ども、これはケース・バイ・ケースでございますが、そういうことになりますというと捜索、差し押さえ等に支障を来す場合もございますので、そういうふうな運用はいたしておらないということでございます。
-
○千葉景子君 書き写すと何で捜索、差し押さえに支障を来すのかよくわかりませんけれ
ども、この問題は個々さまざまな弊害を生ぜしめておりますので、個々の問題はまた別な機会にさせていただきますが、これはむしろ、今のような
状態であれば令状の写しあるいは謄本などを交付して、これこれしかじかで令状を執行するということが当人にはっきりわかる方が混乱も少ないと思いますが、この点、令状の写し、謄本などが今交付をされておりません。この交付できない理由というのは何かございますか。最高裁いかがでしょうか。
-
○
最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 御
承知のとおり、現行刑事訴訟法百十条は、差し押さえまたは捜索に当たっては差し押さえ状または捜索状を処分を受ける者に示さなければならない旨を規定しております。このような規定の趣旨からしますと、法は、令状の執行の際処分を受ける者に謄本を交付すること等は予想していないと
考えられるわけでございます。したがいまして、これら令状の発付の際裁判所において執行を受ける者に交付するための謄本を作成するというようなことは、現行法の趣旨とするところではないように思われます。
-
○千葉景子君 司法でのチェックが十分に機能するのであればこれもある程度理由があるところかと思うんですが、近時この令状について大変偏りがあるように思われます。
そこで、お尋ねをしたいんですが、最近逮捕状あるいは勾留状、捜索、差し押さえ状、こういうものの簡裁への請求が大変増加している、それから捜索、差し押さえ状などは却下率も大変に低下しているというように資料からはうかがわれますが、この辺、まず警察については、簡裁に請求が非常に増加している特別な理由があるか、それから裁判所の方としては、その却下率の低下についてどんなふうに認識され評価をなさっているのか、お尋ねしたいと思います。
-
○
政府委員(仁平圀雄君) 御
指摘のように、令状請求の約八〇%が簡易裁判所に出されておるわけでございます。しかし、御
承知のように刑事訴訟規則によれば、令状請求は司法警察職員の所属する官公署の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所の裁判官にこれをしなければならないとされているだけでございまして、いずれに対して請求しても差し支えないことになっておるわけでございます。
実態として、簡易裁判所は地方裁判所の約二倍半ぐらいございますし、また捜査を急ぐ必要等から最寄りの裁判所に令状を請求しているというのが通常でございますので、そういったことからいたしますと、特段簡易裁判所に偏って請求しているということはないのではないかというふうに理解いたしております。
-
○
最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 御
指摘のとおり、近年逮捕状及び勾留請求に対する却下率は低下しているようでございます。ただ、捜索、差し押さえ令状の却下率につきましては、特に近年却下率が下がっているという状況はないように思われます。
その原因についてでございますが、これにつきましては、それを分析する基礎となる確たる資料、統計その他の資料がございませんので明確なことは申し上げられないわけでございますが、あえて原因を推測いたしますと次のような点にあるのではないかと思われます。
まず逮捕状につきましては、一つは、事件の性質、
内容等がこの却下率に影響しているということが
考えられるわけでございます。例えば覚せい剤の事犯が最近非常に増加しておりますが、これらがこの却下率に影響しているということも推測されるところでございます。また、実務上、事案によっては警察が請求の取り下げをするということもございまして、このあたりの運用が却下率に影響しているということも
考えられます。
次に、勾留につきましては、やはり一つは先ほど申しましたような事件の
内容ということが
考えられるところでございまして、例えば覚せい剤事犯等につきましては、一般に勾留の理由、必要が容易に認められる場合が多いように思われるわけでございます。次に
考えられますのは、現行刑訴が施行後、長年にわたりまして勾留の理由または必要に関する裁判例が積み重なってまいりまして、これに関する実務的な
研究も進んできたという状況がございます。そのようなことから裁判所における実務が安定してきた。これに対応して検察官においても勾留請求に当たり事件を選別し、また勾留の理由または必要に関する疎明資料の添付についても十分意を用いるようになった。これらの事情が却下率が下がっている重要な要素をなしているのではないかというふうに推測されるわけでございます。
ただ、これらの点につきましては、冒頭申しましたように、統計その他の資料というものは直接のものはございませんので、明確なことは申し上げられないという状況でございます。
-
○千葉景子君 令状執行の実態については、かなり乱発をされている。そして、その執行自体についても個人のプライバシーあるいは人権を極めて侵害するような事実が非常にたくさんあらわれているようですので、この点についてはまた別の機会に個々にお尋ねをしたいというふうに思います。
ところで、次に若干基地問題についてお尋ねをしたいと思います。
神奈川県に厚木海軍飛行場というのがございます。厚木基地の米空母艦載機による夜間離着陸訓練、NLPですけれ
ども、この騒音被害というのは現在非常に大きな社会問題となっています。厚木基地の周辺では、住民の皆さんが長年にわたり航空機騒音あるいは墜落の不安などに悩まされておりまして、特に最近は離着陸訓練が激化して、昼夜を分かたぬ航空機騒音により、住民の皆さんは睡眠、会話、電話、テレビあるいは読書、受験勉強、生活のすべてにわたって妨害をもたらされている。家庭や職業生活の破壊というものがあらわれて我慢の限界をはるかに超えている、こういう
状態になっているところです。こういう実態、この
現状に対して
防衛庁長官、施設庁
長官、それぞれ率直な御感想、どういうふうに住民に対して今言葉を発せられるか、まずお聞きしたいと思います。
-
○
国務大臣(瓦力君) お答えいたします。
厚木の騒音、特にNLP、艦載機の夜間離着陸訓練、大変地元の皆さんに御迷惑をおかけいたしております。
御理解をいただきたいと思いますのは、同訓練は大変高度な技術を必要とすることでございまして、この練度維持のために欠くことができない訓練のものの一つでございまして、日米安保体制の効果的な運用、かような点から必要不可欠であるという点がございます。今
委員御
指摘のように、騒音が周辺住民にとりまして深刻な問題である。また、訓練を
実施する飛行機の機種が変更されましたこともございまして、地元神奈川県を初め周辺自治体より強い御要望があることも認識をいたしておるところでございます。
このため防衛庁として、米側に対しましていわゆる日米合同
委員会合意、この遵守の徹底をさせなきゃなりませんし、また時間帯等につきましても十分注意してまいらなきゃいかぬ、こういうようなことを申し入れいたしておるわけでございます。加えて、対策といたしまして住宅防音工事等周辺対策を進めさしていただいておりますが、なお解決策といたしまして、立地条件が極めてすぐれております三宅島の代替施設といいますか、この問題にも誠意を持って取り組み、一日も早く地元の理解を得たい、かようなことで現在鋭意
努力しておるところでございます。
-
○
政府委員(
友藤一隆君) ただいま
防衛庁長官から
お話し申し上げたとおりでございますが、私
ども自衛隊及び米軍の基地の管理、それから周辺対策を所管いたしておりまして、こういった基地の存在というものは、今大臣から
お話ございましたように、日米安保体制の効果的運用のために必要不可欠なものでございます。ただ、こういった防衛上の必要性と地元の住民の
方々の生活あるいは
地域の発展、こういったものをやはり適切に調和をしてまいる必要がございますので、そういった施策について私
どもいろいろ地元の皆様の御要望等も承りながら今日まで
努力をいたしておるわけでございます。
騒音等も大変ひどうございますので、今
お話ございましたように、住宅防音等については重点的に力を入れて
実施をいたしているところでございますし、代替施設等の建設のための
努力というものも現在鋭意やっておるということでございます。
-
○千葉景子君 片方では必要不可欠だ、しかしながらそれのためには住民には大変な迷惑がかかるという二律背反の御答弁だというふうに思うんですけれ
ども、今代替施設の問題が出ましたが、これも三宅島の住民の皆さん、当然片方で被害をこうむっておるようなものを持ってこられたらそれは迷惑千万なことです。そういう意味では、選挙の結果を見ても反対の声が強まっている。向こうにも行けない、こっちでは迷惑をかけている。一体この中でどういうふうに今後厚木基地を進められていこうとしているのか、周辺の住民の皆さんに対して。防音工事の話もございましたけれ
ども、基本的な
考え方をお聞かせいただきたいと思います。
-
○
政府委員(
友藤一隆君) お答えいたします。
厚木に対する対策といたしましては、先ほど大臣から概略御答弁申し上げましたが、いずれにいたしましても、騒音が大変ひどうございますので、発生源についての対応策、いわゆる音源対策というものがまず問題になるわけでございますが、サイレンサーの設置でございますとか、あるいは早朝、休日の自粛とか、そういった関係もございます。
そのほか、当然運航対策というものも私
ども意を用いていかなければいけないわけでございますが、これは米側の部隊運用上の必要がございますのでなかなか難しい問題がございますが、日米合同
委員会の合意事項というものがございまして、この中で飛行時間の制約あるいは飛行高度の制約、それから場周経路上の機数等の制限、こういったものをお互いに合意いたしておりまして、例えば飛行時間の場合では、夜の二十二時から翌朝の六時までは緊急時以外は飛行しない、こういった一応合意をしております。
それから飛行高度につきましては、海面上千六百フィート、厚木はほぼ二百フィートございますので厚木の上千四百フィート以下には飛行しない、あるいは場周経路上、これはNLPをやります場合基地の周りをぐるぐる回るわけでございますが、そういった場周経路上の一緒に入る機数というものは二機に限定しよう、こういった合意事項を守っていただくということが一つでございますし、それから先ほど申し上げましたが、土、日あるいは祭日等の訓練を自粛していただく、それから訓練等については厚木に集中しないようにお願いする、あるいは遅い時間帯には騒音の低い機種を使っていただく、こういうことをお願いしてございまして、これは機会あるごとに米側に申し入れております。
それから、住宅防音工事等につきましては非常に重点的に
実施をいたしております。
それから先ほ
ども申し上げましたが、代替施設として三宅島の代替施設の建設について現在
努力しておる、こういうことでございます。
-
○千葉景子君 それで、ちょっと幾つかお聞きしたいんですけれ
ども、代替施設の三宅島三宅島というふうにおっしゃるんですが、三宅島に代替施設をつくって、そしたら厚木はもうなくなるという御趣旨ですか。
-
○
政府委員(
友藤一隆君) これは、三宅島で私
どもお願いをしたいというのは、いわゆるナイト・ランディング・プラクティスと申しますか、夜間の空母への着艦訓練の部分をお願いしたいということでございますので、一般的な厚木飛行場における部隊運用と申しますか、運航というものは残るわけでございます。
しかしながら、現在厚木において騒音の程度が非常にひどいという部分の相当部分はこのNLPの部分であるというふうに
承知をいたしております。
-
○千葉景子君 相当部分ということですけれ
ども、結局は基地が三宅島に一つふえる、それだけのことじゃないかというふうに思うんですね。
それから飛行に対する
規制、これについてもその都度申し入れをしているということですが、昨年の飛行を見ても、二十二時から六時の
規制、それから機数が二機に制限をしている、あるいは土、日、祭日の飛行
規制、こういうものが守られていないケースがかなりあるわけですね。これ申し入れをしているだけじゃちっとも効果が上がらない。一体こういうことについては今後どのように取り組まれるおつもりでしょうか。
-
○
政府委員(
友藤一隆君) 先ほど申し上げましたが、運航
規制、これは部隊運用あるいは天候でございますとか、いろんな事故等そういったものとの関連がございまして、緊急時にはそれ以外の時間でも運航せざるを得ない場合もございますし、あるいは他基地でできるだけお願いをしたいという部分の航空機が帰ってまいりますときに若干音が出るというような問題もございまして、一律にはいかない部分もあるわけでございますけれ
ども、私
どもはできるだけそういった合意事項を遵守していただくようにお願いをしておるということでございます。
-
○千葉景子君 できるだけじゃこれは困るんですよね。せめてこの
規制くらいはきちっと守ってもらう。そもそも飛行機の騒音自体で相当な生活の被害をこうむっているわけですから、土曜、日曜ゆっくり休みたいときあるいは深夜、そして機数、こういうものについてはできる限りではなくて、はっきりと
規制を守っていただく、こういう断固とした姿勢をとっていただきたいと思いますが、いかがですか。
-
○
政府委員(
友藤一隆君) たびたび同じようなことを申し上げて申しわけないのでございますけれ
ども、運用上の要求等緊急の場合もございますので、そういった例外的事項を除きましては原則どおりきちっとやっていただきたいということは私
どもも重ね重ね申し入れておりますし、米側もそのための
努力を一生懸命やっておるわけでございまして、十時ということでなくてもっと早くやめてほしいというような地元の御要望についても、私
どももそのような申し入れをたびたび米側にもお願いをして、可能な限り時間も短縮をしていただくというようなことについての
努力も行っておるわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。
-
○千葉景子君 どうも余り理解はできません。こういうことになりますと米軍に遠慮をなさっているという気がどうしてもするわけでございます。
ところで、こういう大変被害をこうむっている中、また本年一月二十八日に開かれた日米合同
委員会で、この厚木飛行場についても新しい建設などが合意をされたようですが、この合意
内容について御説明をいただきたいと思います。
-
○
政府委員(
鈴木杲君) お答えいたします。
この一月二十八日に
昭和六十三年度に
実施します提供施設の
整備について日米間で合意をしたわけでございますが、厚木につきましては厚木海軍飛行場における家族住宅、汚水
処理施設等の
整備というふうに公表しております。この「等」につきましては、今申し上げました二つのほかに、倉庫それから
整備格納庫、それから貯油施設が含まれているわけでございます。
-
○千葉景子君 この格納庫というのはどういう種類のものでしょうか。
-
○
政府委員(
鈴木杲君) 厚木飛行場における既存の航空機
整備用の施設が狭いかつ老朽化しているということで米軍の運用に支障を生じているということで、米側から強い要望があったわけでございます。
昭和六十三年度におきまして大型機を二機収容できる
整備用の格納庫を建設しようとしているものでございまして、これは現在厚木を使用している対潜哨戒機、輸送機等を対象とするものでございます。
-
○千葉景子君 もう一つは、貯油施設というのはこれはどういう種類の施設ですか。
-
○
政府委員(
鈴木杲君) 貯油施設につきましては、綾瀬市の基地のフェンス沿いに現在貯油施設がありまして、これが基地の外に隣接していること、それからこれは大分老朽化しているということで、これを基地の中に移設するように地元から強い要望がかねてからあったわけでございます。
昭和六十一年度、六十二年度と
調査をいたしまして、
昭和六十三年度から一部移設に着手しようとしているものでございます。
-
○千葉景子君 この格納庫あるいは貯油施設、こういうものにつきましては、地元でも貯油施設などは爆発とかそういう事故の危険性、また格納庫などにつきましてもこの基地のさらなる恒久化につながるということで非常に懸念を強めているわけでございますけれ
ども、これらの建設につきましては地元の住民あるいは自治体などとどのような話し合いあるいは了解などがなされているんでしょうか。
-
○
政府委員(
鈴木杲君) 提供施設の
整備につきましては、例年一月の下旬ごろに次の年度の
予算案に基づきまして国会の承認が得られるということを条件に、先ほどの日米合同
委員会の合意がありまして、その後にその
内容を公表しているところでございます。防衛施設庁といたしましては、公表後関係市町村等から照会がありましたら、改めてその
内容等について理解を求めているところでございます。
-
○千葉景子君 このような施設が建設をされる、あるいは基地の機能がさらに強化されるということで一番影響を受けるのは、地元の周辺の住民、あるいはそれを責任を持ってまとめている自治体ということになるわけですね。そういう意味ではできる限り地元の意向をきちっと反映をさせる、そして了解を得るという作業がこれからも必要になってこようかと思いますが、今後の地元自治体、住民とのいろいろな問題に対する話し合いあるいは協議、そういうことについてはどんなふうなスタンスでお
考えですか。
-
○
政府委員(
友藤一隆君) 私
ども施設
整備につきましては今関係
政府委員から答弁をいたしました手続でやっておりますが、その選定に際しましては社会経済的条件等についても十分配慮をしておるわけでございまして、かねてからの地元の御要望でございますとか、
地域の
方々の御意見等につきましてはふだんからいろいろな形でいただいておりますので、そういった条件等も私
どもとしては十分参酌しながら、しかし一方において日米安保体制の円滑な運用を図るという必要もございますので、そういった安保条約の目的達成との関連を十分勘案しながら個々の施設ごとに判断をしておるということでございます。
-
○千葉景子君 では、今後も地元の意見、意向、こういうものをできる限り最大限に反映をさせていくというふうに確約はいただけますね。
-
○
政府委員(
友藤一隆君)
最初に申し上げましたとおり、自衛隊、米軍の防衛目的が十分達せられますように、かつまたそれと
地域の発展、生活とが調和していくように私
どもとしては
努力をいたすということでございますので、そういった形でできる限りの
努力はいたしていきたいというふうに
考えております。
-
○千葉景子君 基本的に調和はしないかと思いますけれ
ども、ひとつ防音工事についてお聞かせいただきたいと思いますが、厚木基地周辺の防音対策の
内容、現在の
実施状況、それから六十三年度
予算で行われる防音工事の
内容、工事予定をお聞かせいただきたいと思います。
-
○
政府委員(
鈴木杲君) お答えいたします。
住宅防音工事でございますけれ
ども、厚木飛行場周辺におきます対象世帯数は、この飛行場が人口稠密
地域にあるということから、約十一万世帯ございまして、ほかの飛行場と比べて極めて大きな数字になっているわけでございます。防衛施設庁といたしましては、ここ数年間全国の住宅防音工事
予算全体の約三分の一強を厚木飛行場の住宅防音工事に充てましてその促進を図ってきているところでございますが、何分にも世帯数が膨大でございまして、
昭和六十二年度末までで対象世帯数の約五三%に当たります約五万六千世帯に対する一、二室の防音工事が終わるという見込みになっております。
それから
昭和六十三年度、これはまだ
予算をお願いしている段階で確定した数字ではございませんけれ
ども、これも全体の
予算の三分の一以上でございますが、約一万三千世帯程度を充てる計画をしております。
-
○千葉景子君 周辺十一万世帯ということで、それだけ図らずも住宅が密集する中にこの基地があるということをあらわしているかと思います。これ今五三%、しかも一、二室の防音工事ということになります。一、二室ですとその部屋に閉じ込もっているというわけにもいきませんし、本来ならば全室防音工事がなされるというのが本来の目的であろうと思います。
実際はこの十一万世帯、全室防音工事をやり切るとしたらどれぐらいかかるんですか。
-
○
政府委員(
鈴木杲君) お答えいたします。
御
指摘のように、防衛施設庁といたしましては、まず一、二室の工事を早く全体に行き渡らすことを目標として仕事を進めておりまして、全室化につきましては一部音の激しい飛行場に近い方から手をつけているという段階でございます。
いつ完了するかというお尋ねでございますが、これは今後の
予算がどの程度に推移していくか、またはかの飛行場がどういう状況になっているか、こういうことが明らかでございませんので確たることを述べることは難しいのでございますけれ
ども、いずれにせよ早期完了に向けて最大限に
努力してまいりたいということでございます。
-
○千葉景子君 結局この分でいくと何年かかるかわからない、何十年ということになるんでしょうか。そういう状況ですし、それから騒音はますます激化する。そして、三宅島の問題も出ましたが、これもある意味では被害をさらにまた別なところへ拡大していくだけだ。こうなってきますと、この間厚木周辺住民としては我慢を続けなきゃいけない、それだけなんですね。
やはりこれほかにも迷惑をかけないし、騒音被害を解消するような方法をもっと
考えなければいけない。
〔
委員長退席、理事林ゆう君着席〕
基地を撤去しちゃうのが一番早い道ですけれ
ども、そうでないとすれば、一体第三の方法というのを何か知恵を絞らなきゃいけないと思いますが、その辺はいかがですか。
-
○
政府委員(
友藤一隆君) お答えいたします。
私
どもとしましては、五十八年当時から厚木の騒音問題等を解決するためにいろんな方法を
検討いたしたわけでございますけれ
ども、当時から今日にかけても同様でございますけれ
ども、実現可能な案ということになりますと、やっぱり現在お願いしておる三宅島が一番最適である、こういう結論で今お願いをしておるということでございます。
-
○千葉景子君 余りおかしなことを言わないでいただきたいんですよね。先ほど言ったように、また騒音を新たにこしらえる、こういうことで解決などは絶対図れないわけです。
こういう今の実態をごらんになって何の
方策も結局出てこないわけですよ。こういうことについて
防衛庁長官としては一体どんなふうにお
考えですか。
-
○
国務大臣(瓦力君) 艦載機の離着陸の騒音問題は大変御迷惑をかけておるわけでございまして、今ほど施設庁
長官から御答弁ございましたように、私
どもといたしましては、三宅島がすぐれてその立地条件を備えておる、ぜひ三宅島の皆さんにも御理解をいただくと同時に、三宅島のためになるような形で飛行場の建設をさせていただく、こういうことで、各種の
調査を含めて今お願いをしておるところでございまして、何といいますか、離発着につきましてもそれぞれ七、八十日という期間になりますと、他の期間はその空港を使いまして民間のジェット機等の輸送にも役立つわけでございますし、また三宅島の経済にも資するところができる、そういうようなことも
考えていかなきゃならぬ、こういうようなことも
考えまして、実は三宅島問題に真剣に取り組んでおるわけでございます。
そういうようなことを踏まえて、厚木の問題を、できるだけ他に代替施設を求める中で解決する道を求めておるところでございます。
-
○千葉景子君 どこもこれはもう求めていないんですよ、三宅島であろうが厚木であろうが。
これについてだれにも迷惑がかからないという方法、例えば浮体空港などは御
検討なさったことはございませんか。
-
○
政府委員(
友藤一隆君) 私
ども、厚木の代替案をいろいろ
検討いたします過程では、浮体飛行場についても
検討をいたしておりますが、やはり技術
開発の方向としては、将来を否定するものではございませんが、現段階では私
どもといたしましては採用することができないというふうに
考えております。
-
○千葉景子君 この問題、三宅島等につきましてはまた同僚議員などからも
質問があろうかと思いますので、一応また別な機会に譲らせていただきたいと思います。
ところで、これはちょっと緊急な問題でございますが、文部大臣いらしていただいておりますが、障害児の就学問題についてお尋ねをしたいと思います。
まず基本的には、子供
たちが自分の生活の基盤の中で教育を受けることができる、とりわけ義務教育においては親がその教育の種類を選択し、そして
地域の中で自分の生活の範囲で教育を受けられるというのがまず基本原則ではなかろうかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
中島源太郎君) 障害児の教育についてお尋ねでございました。
これは臨教審の答申にもありますように、障害者の
方々、まず家庭、
地域社会から孤立しないということ、それから障害の種類、程度に応じまして適切な教育を受ける、それから幼少時から本人の
能力を最大限に伸ばす
努力をいたさなければならぬ。要するに、そのお子さんにとりましてどのような教育をすることが、教育の場を与えることが将来一番幸せであるかということを中心に
考えられていくことであろう。お尋ねに対してはそう思います。
もちろん、そのお子さんあるいは保護者、父兄の
方々の御意向も十分参酌しなければいかぬことでございますけれ
ども、そのお子さんがどこで学ぶのが一番よろしいかという点につきましては、まずそのお子さんの障害の状況を総合的にとらえるということが必要でございましょうし、それからどのような教育を行うか、それについては健康診断その他の状況を把握して、さらにお医者さん方等の
専門家による就学指導
委員会にもお諮りをする。そういうことによりまして、市町村の教育
委員会、さらには都道府県の教育
委員会が最終的には判定をいたす。もちろんその間に御父兄の方の御意見あるいは御理解を十分に得ることが必要でございますが、結果的には教育
委員会の権限と責任において決定をいたすものと、このように
考えます。
-
○千葉景子君 静岡県の清水市の石川重朗君という方と、愛知県岩倉市の池田円君、このお二人なんですが、御両親の納得のいかないままに教育
委員会の方から強引に障害児学校に就学をさせられている、こういう実態があるようでございます。そしてこれに対して、今現地で支援者の皆さんなどがハンストなどの行動を行っている。大変緊迫した異常な事態になっているんですが、ぜひこれについて
文部省の方としても
調査をしていただき、あるいは実際に親御さんと会っていただいて納得のいく話などをしていただきたい。これはもう入学時期がすぐでございますので、進学時期が。こういう取り計らいをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
-
-
○
政府委員(西崎清久君)
先生御
指摘の静岡県のケースでございますが、地方での障害児の就学問題すべてが
文部省に参るわけではございませんが、たまたまこのケースにつきましては照会もございまして、私
どもも
承知しておるところでございます。
そこで、私
どもとしては県教育
委員会に指導いたしまして、できるだけ保護者とそれぞれの当局との話し合いが必要であるというふうなことで、当局の方も
努力をしたわけでございますが、親御さんの方が支援者と一緒でなければ会わないとか、いろいろな事情が現地であったようでございまして、私
どもが現在
承知している範囲では、若干その話し合いの道がとぎれていると、こんなふうな状況でございます。
〔理事林ゆう君退席、
委員長着席〕
当局の方としては保護者の方と会う点についてはやぶさかではない、やはり保護者の方と直接会いたいと、こういうふうな気持ちでおりますので、また保護者の方のお気持ちと、それから御来訪を持っているというのが数日前の私
どもの把握の状況でございます。
それからもう一点、愛知県の方につきましてはまだ私
ども——ただいま申し上げましたのは愛知県の方でございます。
静岡県の方につきましてはまだちょっと私
ども十分把握しておりませんので、これからまた少し
調査さしていただきたいと思います。
-
○千葉景子君 ぜひこの三月中に
文部省の方としても担当の方なりが直接出向かれて、実情を
調査され、親御さんと話をなさる、こういうことをしていただきたいというふうに思いますが、その辺はやっていただけますでしょうか。それが一番解決の第一歩になろうかと思うんですが。
-
○
政府委員(西崎清久君) 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、この障害児の教育、就学の問題は、都道府県教育
委員会と市町村教育
委員会がそれぞれの権限と責任で責任を持ってやっておるわけでございます。私
どもとしても、必要に応じて
文部省としての指導助言の体制をとっておるわけでございますが、本ケースにつきまして、出向いてまで指導をする必要があるかどうかにつきましては、現地の状況等もございますので、なお私
どもの判断にお任せをいただきたいと思いますし、多くの場合におきましては、やはり都道府県教育
委員会がその
地域の責任ある機関として
処理しておるケースがほとんどでございますので、私
どもとしては連絡の方法をもってこの事態についての対処をさしていただければというふうに
考えておる次第でございます。
-
○千葉景子君 ぜひ納得のいく解決の
方策を探っていただきたいというふうに思います。
それでは、次の問題に移りたいと思います。
最近、来日アジア女性、いわゆる言葉ではじゃぱゆきさんなどというふうに言われておりますけれ
ども、このアジア女性の人権侵害、こういう問題が大変大きな社会問題になってきているところです。その中でも売春の強要などが横行しているという実態、これは
国際社会において
我が国の恥すべき面とも言わなければならないわけですけれ
ども、まずこういう実態について、そしてこれに対する対応として、厚生大臣、どんなふうに
考えていらっしゃるか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
-
○
政府委員(
小林功典君) いわゆるじゃぱゆきさんの売春の問題のお尋ねでございましたが、売春防止法、各省が数省にまたがって共管しておりまして、私
ども厚生省といたしましては、人権問題等ではなくてむしろ売春対策の一環として婦人相談所というのを持っています。その婦人相談所に附置される施設として要保護女性の一時保護所というのを持っております。そこでの対応をやっておりますので、今の全般的な
お話になりますと、厚生省としてはなかなかお答えがしにくいのでございます。
-
○千葉景子君 そうなりますと、その一番の中心になります婦人保護事業ですけれ
ども、この概略についてまず御説明いただきたいと思います。
-
○
政府委員(
小林功典君) いわゆるじゃぱゆきさんにつきましては、
先生も御
承知のようにそもそも出入国管理法上の問題がありますので、第一義的には出入国管理事務所に送致をされるわけでありますが、その送致に至るまでの間、一時的に保護が必要な場合には婦人相談所の一時保護所、先ほど申しました、そこで一時的な保護をしているということでございます。
それで、実績を若干申し上げますと、六十一年度の数字を申しますと、全国十一県の婦人相談所の実績が出ておりますが、全体で七十七人、延べ日数で参りますと七百三十一日これを保護しておるという数字が出ております。
-
○千葉景子君 これは一般の全体の婦人保護事業、そういう中で見るとその占める割合というのはどれぐらいになるんでしょうか。
-
○
政府委員(
小林功典君) 細かな資料を持っていませんのでちょっと即答いたしかねますが、かなり微々たる数字だろうと思います。
-
○千葉景子君 首都圏などではこの婦人保護事業の中で保護されているケースというのは極めて少ないように思われるわけですけれ
ども、こういうような実態について首都圏などでも問題は大変多く発生しているとは思うんですね。こういう実情についてはいかがでしょうか。先ほど言いましたように入管の問題、不法就労という問題が背景に控えておりますので、なかなか利用しにくい、あるいは保護しにくいという面があろうかと思いますが、いかがですか。
-
○
政府委員(
小林功典君) 各県別の状況を見ておりますと、確かにおっしゃいますとおり首都圏では非常に少のうございます。ただ、これは聞くところによりますと、例えば東京都なんかの場合には、この我々がやっております婦人保護事業とは別に財団法人が一つございまして、そこが自発的にこの種の相談を受けたり収容したりしているという実態がありますので、それが原因かなという気もいたします。確かに首都圏は少のうございます。
-
○千葉景子君 ところで、やはりこういうものを実質的に効果的に運用するには言葉の問題というのが大きな障害になろうかと思うんですね。各婦人相談所において外国人女性を保護するような場合、通訳などはどのような仕組みになっているでしょうか。何か確保されておりますか。
-
○
政府委員(
小林功典君) 現場の婦人相談所の実情を調べてみますと、件数が大変少ないということが一つございます。それと、大体片言にしろ
日本語か英語がどちらかしゃべれるというケースが大部分のようでございます。仮にその本人がしゃべれませんでも連れの女性がしゃべれると、それを通訳してもらうというケースが大部分だそうでございまして、特に通訳は置いていないのでございます。ただ、婦人相談所に英語のできる職員がいないというようなケースもあるようでありまして、そういう場合には関係部局から応援を頼むというケースはあるように聞いております。
-
○千葉景子君 英語ばかりとは限りませんで、東南アジア、タイあるいはそのほかの言葉というのも必要になってくるんですが、いろいろ保護をしていく上でも、公費による通訳の確保、あるいは通訳に対して公費での補助をする、こういうようなことも必要になってこようかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
-
○
政府委員(
小林功典君) 先ほど申しましたように、現実問題としては通訳を改めて置く必要はないだろうと思っておりますが、仮にどうしても置くというようなことになりますと、現在婦人相談所の一時保護所につきまして措置費が流れておりまして、一事務所当たり九百数十万ぐらいの金額が交付されておりますので、その中でやるとすればやれるということだと思います。
それから、英語に限らないというお言葉がありましたが、確かに現場で一番困っておりますのは、英語もしゃべれない、
日本語もしゃべれない、例えばタガログ語しかしゃべれないというケースがまれにあるようであります。ただ、これは通訳云々というよりもむしろそういうのをしゃべれる人は
日本にはまずいないという、そういう現場の悩みがあるようでありますが、これはちょっと通訳という問題の以前の話であると思います。
-
○千葉景子君 ぜひ、まずコミュニケーションの
最初は言葉です、そして安心して保護を受けられるという意味でも言葉のわかる人間がいなければならないわけですので、その辺についての対処もぜひお願いをしたいと思うんです。売春問題以外にも労働契約でのトラブルあるいは賃金の不払い、監禁、暴行、さまざまな人権侵害がまかり通っているわけですけれ
ども、まず一つは国際人権条約でも国籍による差別は禁止をされている。当然労働基準法な
ども保障をされるはずだと思うんですが、労働省はいつも保障はしているとおっしゃいますが、待っていてはなかなか、それはよろしくお願いしますと保護を求めてくるわけではないわけで、今後いかなる対応をなさっていくおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
中村太郎君) 先般の法務省の発表を見ましても、入管法違反で摘発された案件一万四千件、そのうち不法就労絡みのものが約一万一千件と聞き及んでいるわけでございます。労働省としてもかねてから重大な関心を寄せておるわけでございますけれ
ども、何せ不法就労の実態の把握ということが実は大変な困難でございました。しかし、今の無法
状態というものを放置できませんので、実は本年の一月に至りまして各都道府県と都道府県労働基準
局長あてに、まず情報の収集をしなさい、そして実態の把握をしなさい、そしてまた悪質、重大な違反があった場合には厳正な対処をしてくださいという要請をしたところでございます。
先生御案内のように、労働法規というものは、これは
日本で働く限りにおいては、
日本人たると外国人たるとを問わず一様に適用されるわけでございますので、第一段階には何といいましても実態を把握する、それによって悪質、重大な違反に対しましては断固たる態度で臨むというこの姿勢で今後とも積極的に取り組んでまいりたいというのが今の実情でございます。
-
○千葉景子君 ちょっと外務省にお聞きしたいんですが、国連人権
専門委員会による国際人権B規約第四十条第四項による一般的意見、その五という部分、訳がないものですからこちらではちょっとあいまいにできませんので、その
内容をちょっとお知らせいただきたいと思います。
-
○
政府委員(遠藤實君) 御
指摘の一般的意見は、一九八六年の七月二十二日にB規約人権
委員会が作成したものだろうと思いますが、これにつきましては仮訳でございますけれ
どもちょっと読み上げさせていただきます。
規約は外国人が締約国の領域に入国し、又は居住する権利を認めていない。自国の領域に誰の入国を認めるかは原則として国家が決定する事項である。しかしながら、
特定の状況下、例えば無差別、非人道的扱いの禁止及び家庭生活の尊重への考慮が生じた際には、外国人は入国及び居住との関係においても規約による保護を享有し得る。
以上でございます。
-
○千葉景子君 ありがとうございました。
この趣旨から
考えますと、やはり東南アジアの女性、入国については一定の問題があろうとも、不法残留だというだけで強制退去あるいは刑事罰に処するということができずに、むしろ人権を尊重し保護をしなければいけないということになるのではないかと思うんですね。
こういうことについては、なかなかどこの省庁がこれをきちっと対処をするかというのがはっきりしておりませんけれ
ども、少なくとも人権擁護の立場、それを推進する立場にある法務省などが率先してこのような問題について対処していかなければならないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
林田悠紀夫君) 法務省はもちろん人権擁護をやっておりまするけれ
ども、それよりも入管法につきまして今
努力をしておるところでありまして、そういういわゆるじゃぱゆきさんですが、これは入管法によりまして単純労働としまして入国を認めていない範疇に属するのであります。したがってやはりこういう
方々には、人権ももちろん重要でありまするけれ
ども、国外に退去していただくということが必要でありまして、そういうことから今
努力をしておるという次第でございます。
-
○千葉景子君 どうも先ほどの条約などの趣旨から
考えても、その態度というのはいかにも今の
国際社会の中で後ろ向きではないかというふうに思います。人権
先進国という意味でもこの問題について取り組みを強化していただきたいというふうに思うんですが、一点、人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約というのに基づきますと、生活保護あるいは医療扶助あるいは本国への送還費用、これらの問題についても何らかの措置をしなければならない、このように
考えますが、この点については法務省いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
林田悠紀夫君) 今おっしゃいました人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約という条約がありまするが、そこで法務省はこの送還費用につきまして問題にいたしております。
この送還費用につきましては、国の費用で送り返す場合もありまするが、しかしそれよりもむしろ本人が
日本に参りまして働きまして、自分の費用で帰る、あるいはまたその
人たちを運送してきておるいわゆる業者がおりまして、その費用で帰るという場合が多いわけでありまして、やむを得ない場合は国の費用で帰ってもらっておる。十分対処をいたしております。
-
○千葉景子君 厚生省いかがですか、医療などの面について。
-
○
政府委員(
小林功典君)
我が国の生活保護法は
日本人を対象とするものでありますけれ
ども、外国人でありましても、本邦内において生活に困窮した場合、一定の入国目的から在留資格が認められ外国人登録を行っている者に対しましては、
日本人に準じた生活保護の取り扱いを認めているところでございます。
しかし、今
お話にありますようないわゆるじゃぱゆきさん、これは法務大臣からもお答えがありましたように、外国人登録を行っておりませんし、いわば出入国管理に関する
法律に違反している方でございますので、やはりこれは生活保護の適用を認めるのは困難であろうと思います。
-
○千葉景子君 かなり民間のボランティアの
方々に負担をかけているという側面もたくさんあるというふうに聞いております。これらはこれから根本的な解決が図られなければいけない問題かと思いますが、できるだけこれらについても目を向けていただきたいというふうに思うところです。
時間がなくなりましたので、最後にちょっと獄中者の問題について、二点お伺いしたいと思います。
在監者の日常の健康管理、これを担当しているのは、法務省、どこですか。
-
○
政府委員(河上和雄君) 健康管理一般でございますと被収容者に対応するすべての職員、つまり食事あるいは休養、作業すべての関係でもって健康管理が安定するわけでございますが、衛生と医療、これについては矯正局の医療分類課が所掌しております。
-
○千葉景子君 刑務所などに入所後、腰痛、ぜんそくなどになる者が大変多いというふうに統計に出ておりますが、これらについての対策はどのようにとっておられますか。
-
○
政府委員(河上和雄君) 御
承知のとおり約四万六千ほどの受刑者が
我が国に現在おりまして、年間約三万人の受刑者が入ってきて三万人が出ております。このうちの六〇%がいわゆる累犯者でございまして、また全体の三〇%、これが実は暴力団関係者、一般社会においては相当悪いことをたくさんしている犯罪性向の進んだ人間が入ってきているわけでございます。かつ、必ずしも勤労意欲があるという人ばかりではございませんので、何とかあれこれいろいろ体の故障を申し立てる人が多いようでございます。その中の一つとして腰痛を非常に訴える患者が多いわけでございます。
腰痛患者に対しましては、症状に応じまして、刑務所に勤務します医師が必要と認めています牽引療法あるいは薬物・注射療法、そういったものを行っております。
また、腰痛の原因としましては、骨性あるいは椎間板性、筋筋膜性等の疾病に基づくもののほか、まあ行刑施設でございますのでどうしても拘禁性の心因性の腰痛というものが非常に多いものでございます。そのほか、やはり座業をさせる、作業でもって座業をさせる関係で、不自然な姿勢からの作業による腰痛というものも訴えの中にあるようでございまして、そこでこういう心因性の訴えに対しましては、カウンセリングなどを行いまして何とか治す方向に
努力する、また刑務作業就業者に対しましては、
特定の作業の姿勢を持続していますとどうしても各部の関節や筋肉が過度に緊張してよくないので、いわゆる作業間の体操、業間体操と言っておりますが、そういったものを
実施するように指導しております。
-
○千葉景子君 ぜんそくは……。
-
○
政府委員(河上和雄君) ぜんそくにつきましては、一般に気候の急変、あるいはハウスダストと言っておりますが、室内じん、こういったものが気道を刺激して発作が誘発される、こういったようなことでございまして、当然刑務所に勤務します医師が厚生省の治療指針に基づきまして必要な治療を行っている、そういうことでございます。
-
○千葉景子君 ぜんそくなどには温度、湿度、こういう管理というのも必要かというふうに思うんですが、実際に一体どのような
環境管理が行われているのか、その辺はいかがですか。
-
○
政府委員(河上和雄君) 現在の監獄法、これは八十年前の
法律でございますが、非常に懲らしめ的な性格の強い
法律でございまして、十分な
考え方、つまり一般社会と同じような
考え方はなかなかしておりませんが、室内の温度を定時に
測定したり、あるいは加湿、換気、そういったようなことを行っております。
-
○千葉景子君 宮城刑務所などの場合は、暖房がもうほとんどきいてない、房内が外気温と同じである、こういう中でぜんそくなどがふえていると収容者などからの声が強くなっているようですが、ぜひこの辺は実態を
調査して、一体どんな温度で房内が保たれているのか
調査報告をいただきたいと思いますが、いかがですか。
-
-
○
委員長(
原文兵衛君) 以上で千葉景子君の質疑は終了いたしました。(拍手)
─────────────
-
○
委員長(
原文兵衛君) 次に、小島静馬君の質疑を行います。小島静馬君。
-
○小島静馬君 まず、経済企画庁にお伺いいたします。
今月十七日でございますが、四半期別
国民所得統計速報、
昭和六十二年十月—十二月期ですね、これは通常QEと呼ばれているそうでありますが、大変興味のある数字が示されたと思うのでございます。実質GNPの伸び率あるいは暦年の実質成長率、名目成長率、それから一人当たりのGNP、それからその内需外需別に見た増減、こういった数字につきまして御説明をいただきたいと思います。
-
○
政府委員(勝村
坦郎君) お答えを申し上げます。
昨年十—十二月期のGNP統計は、御
指摘のとおり、経済成長率といたしましては実質一・七%、年率にいたしますと七・〇%、これは前期比でございますが、成長いたしております。これを内外需別に寄与度で分けますと、内需の寄与度が二・四、外需の寄与度がマイナス〇・七、差し引きまして一・七のプラスということになっております。ということで、七—九月期、その前期でありますが、これは成長率が二・〇、年率八・四という非常に高い数値でございましたけれ
ども、むしろ内需がより高くなって外需がマイナスで黒字減らしに寄与しているという、より望ましい形に十—十二月期の数字はなっていると思います。
それから暦年のお尋ねがございましたが、暦年につきましては実質は四・二%の成長になっております。これも内外需別に分けますと、内需の寄与度が五・〇、外需の寄与度がマイナス〇・七ということで、やはり前年に比べましてかなりいい形になっているのではないだろうかと思います。
なお、名目の御
質問があったかと思いますが、暦年の名目の成長率は四・一でございまして、実質よりやや低目になっております。
それから一人当たりでありますが、暦年の一人当たりのGNP統計でありますが、これはドル換算のものをただいまちょっと手元に持っておりますのでドルで申し上げますと、百四十四円レートで換算いたしまして、一九八七年が一万九千六百四十二ドル、
アメリカはこれに対しまして一万八千四百三ドルということで、
アメリカを上回った数字になっております。
以上でございます。
-
○小島静馬君
昭和六十二年度の政府経済見通しでございますが、この三・七%を大幅に上回って暦年では四・二%、そしてこれをさらに推定いたしまして、年度で見ますとどういうふうに推定することができますか。
-
○
政府委員(横溝雅夫君) 今御答弁申し上げましたように、暦年では四・二%という成長率であったわけでございますが、これが年度でどうなるかということなんですけれ
ども、確かに経済の実勢が非常にようございますので、三・七%程度という実績見込みをある程度上回る可能性は否定できないと思いますけれ
ども、四半期ごとの成長率はかなりぶれることもありますので、今後の経済諸指標の動向を見守ってまいりたいと思っております。今のところ確たる数字を持ち合わせておりません。
参考までに申しますと、一—三月横ばいでいって、年度で四・一%、一—三月期一%増加いたしますと、年度で四・四%という数字に
機械計算上はなります。
-
○小島静馬君 私
どもが
考えていた以上の政策的な効果が浸透してきているという、実は大変喜ぶべき数字であろうというふうに私自身は
考えております。
今、年度の経済成長率を見ますと、上方修正されて三・七%という数字をさらに大幅に上回りまして、もし一—三が横ばいでいったとしても四・一%、それからもし一%でいった場合であっても四%台の半ばに達するであろう、四・四%であろうと。
機械的な計算であろうと思うのであります、そういう注釈つきではございましたけれ
ども、しかし、現在のこの経済の状況から推移をいたしますと一—三月が横ばいだということはどうしても
考えられないわけでございまして、四%台の半ばに経済成長率は実質が達するであろうというふうに大変私は喜んでいるわけでありますが、これに関しまして
経済企画庁長官、何か御感想がございましたらお述べいただきといと思います。
-
○
国務大臣(中尾栄一君) お答えいたします。
日ごろ大変小島
先生には経企庁の方もお世話に相なっておりまして、本当に心から感謝申し上げたいと思います。
経済成長が相当大幅に上回っているのではないかということで先ほどから御
質問も賜っておりましたし、御激励も賜ったわけでございますが、実質GNPが十—十二月期において七—九月期に引き続きまして高い伸びを示したのは、内需がまず第一に住宅投資、設備投資、政府支出を中心に順調な伸びを、寄与度が二・四と思いますが、示したためでございまして、一方外需の寄与が対外不均衡の是正過程を反映しましてマイナスの寄与度、大体〇・七%を示していくというような状況下になっておるわけでございます。
したがいまして、以上のような状況をもとにいたしますれば、六十二年度の実績が実質見込みで三・七%をある程度上回る可能性は否定できません。しかし、四半期ことの成長率はかなりぶれることもあろうと思いますので、したがって、今後の経済諸指標の動向を見守ってまいりたい、このように
考えております。
いずれにしましても、六十二年度は対外不均衡の是正過程を反映しまして、外需は大体マイナスの寄与度になる一万、内需を中心に着実に、一歩一歩ではございますけれ
ども成長が見込まれているという点は、
先生の御
指摘のとおり大変に望ましい経済
状態になっていることだけは事実であろうかと、このように判断しております。
-
○小島静馬君 大臣の御答弁は大変、何といいますか、つつましいお控え目の御答弁であろうかと思うのでありますが、一—三月が、いろいろ内需外需の寄与要因というものを
考えてみましてすぐわかることであろうと思うのでありますが、四%台にのせるであろうということはまず間違いないだろう、一—三月が横ばい以下ということは恐らくないんじゃないかというふうに想像いたしております。しかし、御担当の大臣がそこまで御心配になって控え目におっしゃっておられるという御意中もわかるわけでございますが、それはそれなりにきょうの私のテーマでもございますので、後刻さらにお
考えをお聞かせいただこうと、こういうふうに思っております。
続きまして、国際収支のドルベースにおける数字でございますけれ
ども、これは聞くまでもございませんが、六十一年度実績九百四十一億ドルですね、経常収支。六十二年度が実績見込みで八百二十億ドル。六十三年度は見通しで七百二十億ドルですね。それから貿易収支で見てみますと、これは実績で六十一年度一千十六億ドル、六十二年度九百二十億ドル、六十三年度八百十億ドル、こういうふうな数字がいただきました資料に出ておるわけでございます。これは「
昭和六十三年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」という、いただきました政府の資料でございますが、さらにさかのぼりまして、
昭和三十年ぐらいまでさかのぼれるかどうか存じませんが、この数字を大蔵省、五年置きぐらいで結構です、直近の数字をなるべく一年ごとに欲しいんですけれ
ども、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
-
○
政府委員(岩崎
文哉君) お答え申し上げます。
実は四十一年度から国際収支を公表いたしましたので、古い数字が
先生お申し越しのようにとれるかどうかわかりません。
利用可能な数字で区切って申し上げますと、
昭和三十六年度、これが貿易収支マイナス五億五千万ドルでございました。
昭和四十年度、これが二十億八千四百万ドルでございました。
昭和四十五年度が四十四億ドルでございました。
昭和五十年度が五十八億ドルでございました。それから
昭和五十一年度に、初めて百億ドルを超えまして、百十一億四千八百万ドルのプラスの数字でございました。その後、例の第二次オイルショックがございまして、ややマイナスの数字がございましたが、
昭和五十五年度六十七億六千六百万ドルのプラス、
昭和五十六年度二百三億五千八百万ドルのプラスと、ここで二度目に百億ドルを超える黒字を記録いたしました。その後推移をいたしておりまして、先ほど
先生がお申し出になりました
昭和六十年度で六百十六億百万ドル、六十一年度が千百億ドルということで最近の数字につながってございます。
-
○小島静馬君 今の数字でわかるわけでありますが、経常収支が初めて三けたにのせたのは
昭和五十二年でございます。それを挟みまして、実は
昭和四十八、九年、それから
昭和五十四、五年というふうに第一次、第二次オイルショックがあったわけでありますが、このときには完全に二けたあるいは三けたの、第二次オイルショックにおきましてはマイナス百三十九億ドル、三けたにも達しているわけでございます、赤字がですね。そういうふうなことで、しかし初めて
昭和五十二年に三けたに上ったわけでございまして、私
ども昭和三十年代、四十年代あるいは五十年代の初めにかけましても、本当に感慨無量でございますけれ
ども、特に三十年代なんというのは、ことしは二十億ドル黒字だったと言い、いやことしは二十億ドル赤字だったと、
日本経済がそれこそ国際収支の動向に注目をいたしまして、その赤黒に一顰一笑したという時代を想定いたしますとまことに感なきにあらずでございまして、よくぞこれだけの大型の経済を持つに至ったというふうに感ずるこれは一つのよき事例であろうというふうにも
考えるわけであります。
ただこれが、
昭和五十年、まだそんなに長い昔のことじゃありませんけれ
ども、初の二百億ドル台にのせたわけでございまして二百四十二億ドル。それが三百七十、五百五十、九百四十六、八百二十、こういうふうにウナギ登りに国際収支の黒字が増大をいたしております。この傾向は私
どもが
日本経済のこれからを
考える上でどうしても大きな関心を払っていかなければならない問題点の一つであろうと、こういうふうに受けとめる次第でございます。
それからもう一点お伺いいたしますが、
昭和四十年度以降の
我が国の輸出依存度、これは輸出額の対GNP比で見てみたいのでございますが、最高と最低でもよろしゅうございますし、五年置きでもよろしゅうございますが、どんなふうになっておりましょうか、大蔵省にお聞きします。
-
○
国務大臣(中尾栄一君) 私の方から全面的に答えさしていただければと思います。
ちょっと細かい数字になりますけれ
ども、御
指摘の各年度の実質GNPの伸び率は、それぞれ五十年度には三・九%、五十五年度には四%、それから六十年度には四・四%さらになお内外需別に見ますると、いずれの年度におきましても外需がプラスに寄与する姿となっております。ただ、六十三年度の
我が国経済というものは、確かにただいま
委員が御
指摘いただきましたとおりに、ちょっと
考えられないような状況にまで私
どもの経済が繁栄したことは事実でございまして、外需は対外不均衡の是正過程を反映して、六十二年度に引き続いて初めてマイナスの寄与になるものと見込まれておりますし、一方内需は、景気回復二年目を迎えて個人消費あるいは設備投資を中心に引き続き好調を持続すると見込まれておりまして、全体として内需を中心とした実質が先ほど御
指摘をいただきましたように三・八%程度、このような着実な成長を見込んでおると、このように
考えておるわけでございます。
-
○
政府委員(岩崎
文哉君)
先生お尋ねの数字は、名目GNPに対する輸出の比率ということで御
質問いただいたと私
ども解釈いたしますが、古い数字を用意してございませんので八四年以降で申し上げますと、八四暦年が一三・四%、八五暦年が一三・〇%、八六年が一〇・四%、八七年が九・四%と次第に比率を下げてきておるというのが
現状でございます。
-
○小島静馬君 私の資料と若干違いますけれ
ども、大体数字は同じでございます。ただ、この数字もひとつ注目をしていかなければならない問題であろうと思うのでありまして、私の資料では
昭和五十九年が一三・五%、六十年が一三・二%でこれに続いております。最低は
昭和四十二年に八・四%ということでございまして、ここに棒グラフも実は持っておりますが、これが意味するものというのは、輸出依存度というものが予想するほど
我が国は高くはないと、こういうことですね。言われるほど意外に高くはない。しかし、これはやはり列国に比べますと相当高い水準でありますが、この数字から推して言えますことは、少なくともこういった対GNP比で見た輸出依存度と輸出額を見まして、輸出依存度ということで
考えてみますと、大体これが八%とか九%台にいっているときには国際関係が非常にうまくいっているということが、どうも過去の数字では出てきているわけであります。
昭和六十三年度のGNPが恐らく三百六十五兆円というふうなことが言われておるわけでありますが、文字どおり一日一兆円時代に入った今は、その一%の意味、あるいは〇・一%の意味というものも極めて大きくなっているわけではありますが、どこまでも拡大均衡を目指すという上で、輸出の対GNP比の抑え方と言いましょうか、めどと言いましょうか、防衛費の一%枠じゃございませんけれ
ども、こういった面での経済企画庁の今後の御配慮をぜひひとつ煩わしておきたい。めどと言いましょうか、そういうものについてお
考えがあれば、伺いたいと思います。
-
○
政府委員(横溝雅夫君) 輸出のGNPに対する依存度の比率につきまして特段の目安というものは持っておりませんけれ
ども、私
どもの
考えといたしましては、やはり拡大均衡でいくべきで、輸出も伸びるけれ
ども輸入もさらに伸びるという格好で貿易収支なり経常収支の黒字が減っていくことが望ましいと
考えております。
それで、
御存じと存じますが、経常収支の黒字幅の名目GNPに対する比率という点から申しますと、六十一年度が四・五%でございました。これは諸外国を歴史的に見ましてもかなり高い数字で、
日本の黒字が非常にやはり
世界で突出して大きいというのが問題視されたわけでございますけれ
ども、
先生申されましたように、六十二年度の実績見込みが八百二十億ドル、六十三年度が七百二十億ドルという経済見通しどおりに参りますと、これが六十二年度は三・二%、六十三年度は二・六%程度に下がるという計算になりまして、その点でも顕著に経常収支の黒字減らしが進む経済運営を
考えているということでございます。
-
○小島静馬君 対外純資産の残高の問題でありますが、最高であった
アメリカが赤字国に転落をしたと。
日本が今
世界一の対外純資産国になったということが言われておりますが、数字でお示しをいただきたいと思います。
-
○
政府委員(星野
進保君)
我が国の対外純資産でございますが、一九八六年で千八百億ドルでございます。
-
○小島静馬君 動向、例えば一九八二年と一九八六年を比べてみたらどうですか。
-
○
政府委員(星野
進保君) 歴年の数字、各年の数字を申し上げます。
一九八二年が二百四十億ドル、一九八三年が三百七十億ドル、一九八四年が七百四十億ドル、それから一九八五年になりまして千二百九十億ドル、これ、ポツ以下はちょっと省略しておりますが、一九八六年が千八百億ドルという実績が出ている。以上でございます。
-
-
○
政府委員(星野
進保君)
アメリカの純資産でございますが、一九八二年から申し上げますと、一九八二年が千三百七十億ドル、一九八三年が八百九十億ドル、一九八四年になりますと三十億ドル、実際は三十六億ドルでございますが、それから逆転いたしまして一九八五年がマイナスの千百十億ドル、それから一九八六年がマイナスの二千六百三十六億ドルと、こういう経緯でございます。
-
○小島静馬君 この対外純資産残高の問題は日米の今日の経済関係というものを端的に示す数字ではないだろうか。一九八二年末が二百四十七億ドルであった
日本の対外純資産は、一九八六年つまり
昭和六十一年でありますが、千八百四億ドルに達していると。そしていろいろ民間の試算によりますと、恐らく紀元二〇〇〇年には一兆億ドルに達するであろうと。これは明確な根拠がないかもしれませんが、これがふえ続けていることは間違いのないところだろうと思います。
かつて
世界の最大の
経済大国であった
アメリカが、実はこの対外純資産という面で見てみますと、一九八二年の末には千三百七十億ドル、これはまだ
世界のトップであったと思います。わずかに四年たった一九八六年、
昭和六十一年にはマイナス二千六百三十六億ドルというふうなところに転落をしているわけでありまして、ここに私は何か
アメリカのいら立ちを示す一つの要因があるような気がいたします。そんなところから日米経済関係の実績と、さらに問題点は何があるかというふうな問題について触れてみたいと思います。
昭和六十二年の日米間の貿易収支でございますが、その数字をお教えいただきたいと思います。
-
○
政府委員(畠山襄君)
昭和六十二年の日米間の通関輸出入でございますけれ
ども、
日本側の統計で見まして、輸出が八百三十六億ドル、輸入が三百十五億ドル、通関収支じりが五百二十一億ドルということでございます。
-
○小島静馬君 それから、ついでにと言っちゃなんですが、
通産省にお伺いしたいんですが、今の日米間の懸案の摩擦の問題でございますね。摩擦という端的な言い方は悪いかもしれませんが、これは
新聞に毎日出ている問題でございますが、同時に今日までの戦後の過去の集積として、自主
規制であるとか協定であるとかいろいろあろうかと思いますが、列挙していただきたいと思います。
-
○
政府委員(吉田
文毅君) 日米経済関係、御案内のとおり最も
世界の中で重要な経済関係を構築しているわけでございます。しかし、歴史をひもときますと、
先生おっしゃられたとおり、六〇年代におきましては繊維、雑貨品、七〇年代におきましてはカラーテレビ、鉄鋼、八〇年代におきましてはもう少し高度の技術水準にある品目等につきまして、いろいろな貿易摩擦を生じてまいっております。
性格的に見ますと、当初
日本側の輸出摩擦という性格が強かったわけでございますが、最近では
日本へのマーケットアクセスの改善に関する問題等に摩擦の範囲が広がってまいっておるというふうに感じます。さらに性格的には、単に輸出の問題に限らないいろいろな、例えばで恐縮でございますが、国防等にかかわるような問題も生じてまいっておるというようなことが
現状であろうかというふうに
考えます。
-
○小島静馬君 そのとおりだと思います。
今私が調べ上げたもので、例えば現在ココム違反問題なんというのも係争中でございますし、あるいは半導体問題、スーパーコンピューター問題、新MOSS分野、輸送機器の問題、日米工作
機械問題、日米繊維問題、鉄鋼問題、自動車問題、いずれも自主
規制とか協定とかいう形で輸出
規制に関連するものでございまして、これは二国間の協定で行われていることでありますから、ガットの上での判断は別といたしまして、さらにその延長線上といいますか、現在の問題としては公共事業の参入問題がございますし、農産物の十二品目の問題がございますし、牛肉、かんきつの問題がありますし、米がどうなっていくかというような問題がありますし、半導体のごときは三百一条が発動されていまだに解決をされておらない、こういうふうな状況を私は見るわけでございます。
これを貿易というふうな端的な立場からとらえまして、保護主義と自由主義との間に一体これはどっちに律するものだろうかというふうな疑問もわいてきます。また、そういう問題で日米関係を
考えましたときには、私は
日本の国会議員としてもう少し
現状に対して文句を言ってみたいなと思う点もたくさんございます。しかし、私はきょうこれを申し上げるのは本意ではございませんのでやめておきますが、具体的な数字で申し上げてみますと、いわゆる主要な輸出自主
規制品目という、これは
内容的には自動車と繊維と鉄鋼だそうでありますけれ
ども、その全体の輸出に占める割合というものは八六年、
昭和六十一年には三〇%になったということを大蔵省の貿易統計は
指摘しているわけでございまして、私
どもこれについてはやっぱり
考えるところが相当あるわけでございます。
昔マッカーサーかだれかが言った言葉でありますが、十二歳と呼んでみたり、あるいは
アメリカの経済がくしゃみをすれば
日本経済は風邪を引いたと言われた時代は、どうやら通り過ぎたようでございます。
戦後の日米関係というものを眺めてみますと、そしてこれからを展望いたしましても、日米の関係というものは最も緊密な提携関係の中にあらなければならないということは言うまでもないところでございますが、それが現実には経済関係だけでなく相当幅広い関係の中で、やや
行政府は冷静でございます。しかし立法府のごときは、例えば国会議員が言論に訴えるのではなくして、国会の正門の前でもって
我が国の有力な電気機器メーカーのラジカセをたたきつぶして見せる。これが
日本の全国のテレビに報道をされるということでございますと、対米感情としても
日本国民に与える影響は極めて大きい、憂慮せざるを得ない状況でございまして、この関係の修復をどうしたら図っていくことができるか。
例えば現在の牛肉あるいはオレンジのクォータの問題にいたしましても、テーブルにさえ着かないというふうな態度というものは明らかにジャパンバッシングの最たるものと言わなければならない。非常に憂慮いたしておるわけでございまして、こういう今
日本が生きていくための
世界の中の
日本としての国際的な責任を自覚しながら、特に日米関係というものをしっかりと
考えることの中でその修復を図っていくということは極めて大切なことであろう。
日本にとりましても、
アメリカにとりましても、いやもっと大きく
世界の問題、
世界の経済の問題として非常に重要なことであるというふうに認識をいたしているわけでございますが、大蔵大臣、今日までいろいろ為替の問題あるいはその他日米協調の問題で大変な御苦労をなさっておられるわけでありますが、これにつきましての御感想、そしてまたそれに処する政府の姿勢というものをお聞かせいただければ幸甚でございます。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) これは私がお答えすることが適当かどうか、いろんな分野がございますので、いわば抽象的に申し上げるということでお許しをいただきたいと思うのでございますけれ
ども、今るる小島
委員が述べられましたように、お互いが意識がそこまで変わっていきません間に
我が国の経済力というものが非常に大きなものになってしまいました。本来それにいろいろな責任が伴うわけでございますけれ
ども、意識の方の成長がややどちらかというとおくれたというか、実は
我が国の変貌がむしろ早過ぎたというのでございましょうか、その間にギャップがございます。我々が
日本を見ている
日本と、外から見られている
日本との間にまたギャップがあるものでございますから、そこでいろんな問題が起こってきておりますので、やはり
我が国としては、これだけの経済力を持っているということから来るいろいろなそれに伴います貿易あるいは国際経済における責任、殊に
我が国は軍備で
世界平和に貢献することはほとんどできない国でございますから、余計そういう責任を自覚して、それをいろいろ実行に移していくという、
国民のそういう意識の進歩というものが必要なのではないかと
考えております。
-
○小島静馬君 ありがとうございました。
具体的な政策的な要請というものを大蔵大臣はどういうふうに受けとめておられましょうか。内需拡大政策の必要性であるとか、そういった国際的な問題です。問題としての受けとめ方です。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 今まさに例としてお挙げになられました内需拡大、これはいわばG5でございましょうか、G7でございましょうか、その中において、
我が国の持っている立場からいいますと、やはり殊に
アメリカに対して貿易赤字を縮小し、財政赤字を縮小してほしい、またしなければドルというものの価値が維持できないという立場から、
我が国はそれにかわってやはり内需の振興をしていくということでありませんと、
世界経済は縮小するわけでございますから、当然そういう責任を持っておる。またこれは、
我が国は立派に今果たしつつある。そのことは
世界も認めておるわけでございます。
そういう意味で、そこからもう少しずつ円が、基軸通貨はドルということはこれはもう当分変わらないことであると思いますけれ
ども、円なりの何がしかの役割が果たせるであろうか。あるいはまた、累積債務国の問題というのはいずれにしても今
世界経済の一番大きな問題の一つでございましょうから、
我が国がそれについて国際機関と結んでどういう貢献をすることができるであろうか。さしずめ、そこらのところが
我が国に求められておる。無論、我々がいわば対外援助と称しますものは、これは
我が国のいわばこういう置かれた立場から申しますともう当然のことで、これも中期計画では目覚ましいいわば増加を示しておるわけでございますが、そのような
我が国に求められておる役割を果たしていくということであろうと思います。
-
○小島静馬君 ありがとうございました。
冒頭申し上げました直近の経企庁の発表いたしましたQEにつきまして私は
考えるのでございますが、こういう
状態をもたらした最大の原因は財政発動にあった。昨年五月の緊急経済対策というものが今日の事態を招いている。もちろん
日本の潜在的な成長力とか、いろんな政策的な発動というものがあったと思いますが、その量とその政策の方向と質、すばらしかったと思うわけでありまして、宮澤財政を心からたたえたいと思いますが、御感想をひとつ、
因果関係というような形でも結構ですし。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 昨年の五月に政府、与党が相談をいたしまして緊急経済対策をとりました。六兆円という規模の、これはかつてない大きな規模であり、またかつてない年度開始の早い時期であったわけでございますが、これによりまして
我が国が国際的に持っております責務、並びに国内でかねて緊急な問題であります社会資本の
整備、あるいはもっと申しますれば、前川報告に言われておりますところの恐らく数年を要するであろうところの
我が国の経済社会のいわばアジャストメントとでも申しますか、調整といったようなことに乗り出したのがあの緊急経済対策であったと思います。
後になってわかることでございますが、
我が国の経済の底は経済企画庁の
調査によればその前の年の十一月ごろであったと言われますが、それは後からわかることでございますが、そういうこともございまして、経済がまず非常に順調に動き出して今日に至っておる。これは
我が国が本来持っております社会資本充実という要請も、また対外に対して負っております先ほど小島
委員がまさに言われましたようなそういう責務を果たすという意味からも、有意義なことでありましたし、また、まだ産業により
地域によりまして雇用に心配はございますけれ
ども、やはり全体の雇用状況が明るくなってきたということは大変に喜ぶべきことではないかと思っております。
-
○小島静馬君 もう一つお伺いしますが、しばしば本
委員会におきましても大蔵大臣が苦衷を述べられているところでありますが、少なくとも
昭和六十三年度の経済というものが積極的に、例えば公共事業を二割もふやしたということの中で、その財源となるものが自然増収に負うところが多い、もう一つはNTTの売却資金だろう。こういうふうに思うわけでありますが、NTTは六十六年までは当てにできるという状況、同時に、緊縮財政か積極財政かという問題はなかなか難しい問題であろうと思うんですが、財政再建との関連の中で、財政再建の必要性があることは言うまでもありませんが、また六十五年の当面の経済再建の見通し、特例公債発行をゼロにするというお見通しについてはお立てになられたということもこの
委員会で承ったわけでありますが、その後のことまで
考えますと、それほどの長期には及ばないかもしれませんが、それはそれなりの対策が必ず出てくるだろうというふうに
考えましたときに、当面、思い切った財政発動というものは適時適切に行っていこうという御決意はおありでございましょうか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 六十五年度には特例公債依存の体質から脱却をいたしたいということは、現実のもう課題になりつつございまして、ぜひ実現をいたしたいと思っておりますが、そのためには、御
指摘のように、経済がそのように順調に動いてまいりませんといけないことでございますし、またこの節は、
我が国だけでなく国際経済からの影響を非常に敏感にお互いに受け合うのでございますので、そういうことも注意してまいらなければなりませんが、何とか経済運営よろしきを得て赤字公債体質から脱却をいたしたい。
その際に、今NTTの
お話がございまして、ことしNTTの社会資本
整備勘定に一兆三千億円計上しておるわけでございますが、これは一般会計の公共事業費の二割強でございます。NTTの売り上げが今後とも比較的順調に進むといたしますと、この財源はかなり何年か後まで使える見通しがございまして、殊に一兆三千億円でございますと、かなり何年もそのペースでございますと使える感じでございますので、私は、前川報告で言っておりますああいう問題は、恐らく数年かかる課題だと思うのでございますが、そのためにこのNTTの財源というのは相当役に立つのではないか。他方で、おっしゃいますように特例公債をやめていく。こういう両方の目的を達することが可能であると思いますし、またそのように経済を運営していかなければならないと
考えております。
-
○小島静馬君 限られた時間でございますので大分省略をしなければならなくなったわけでありますが、
日本の戦後の長期計画というものが幾つかあったわけでございまして、それはそれなりの一つの成長率の目標を立て、あるいは経済の各種の指標の目標を立て、それを達成したり達成できなかったりということの繰り返しであったわけでございます。今、竹下内閣になりまして、新しい経済計画として新経済計画が登場しようとしているわけでございまして、これは昨年の十一月でございましたか、諮問が。ことしの一月の二十二日であったかと記憶しておりますが、その中間報告的なものが発表されまして、五月にその最終答申が出ようかと、こういうことで、中身に対して非常に大きな期待を持って私
どもその最終答申を持っているわけでございます。
幾つかの
内容があるわけでありますが、一つまずお伺いいたしますが、労働大臣せっかくお見えでございますが、この六十三年から六十七年に至る五年計画の中で、労働時間二千二百時間を千八百時間に短縮させようというようなことがございましたが、労働省ではそのことについて何かお
考えになっておられましょうか。
-
○
国務大臣(
中村太郎君) 御
承知のように、労働省としましては、今までの時間対策というものは、
昭和六十年に策定をいたしました「労働時間短縮の展望と指針」、これに基づきまして今までやってまいったわけでございます。しかし、御
指摘のように前川レポートの中で二〇〇〇年に向けてなるべく早い時期に年間労働時間千八百時間程度とするという御提言がありましたし、さらには週四十時間労働制に向けての改正労働基準法がこの四月から施行になるわけでございます。
これらのことを踏まえまして、今
お話がありましたように、やっぱり経済計画に合わせまして新たに中長期的な視点に立った時間短縮計画というものを策定しなければいけないということで、経済計画に合わせましてこの五月をめどに策定すべく目下中央労働基準審議会労働時間部会に諮問を行い
検討を重ねておるところでございまして、私
どもとしましては、この新しい計画に沿いまして計画的な時間短縮を図っていくということを目標としておるわけでございます。
-
○小島静馬君 新経済計画の二つの何か柱のように私は思うわけでありますが、一つは調和ある対外均衡を実現するためという言葉があります。もう一つは内需主導型の経済構造への転換、定着を図るとこう言っておりますが、この二つにつきまして大蔵大臣、
経済企画庁長官、お
考えをお聞かせいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(中尾栄一君) ちょっと御
質問の前に、私も全く小島
委員と同様でございまして、この十数年間の動きを見ておりますると、日米関係におけるフリクションが非常に大きいので、これをどのような形で解決していくかということは、私
どもの責任ある立場としても本当に
考えていかなきゃならぬことは全く同感でございます。
そこで、私
どももまずもって、新しい経済政策をつくっておるけれ
ども、この柱をどのように
考えていくか。他方、財政再建と内需拡大をどのように
考えていくのか。こういうような御
質問かと思いますが、
我が国経済にとりましては、構造調整そのものの推進等内需主導型成長への転換、定着がまず必要であるということが論点でございます。その際、財政の果たすべき役割は当然重要でございまして、特に財政の資源配分機能を活用することが大切である、こう
考えております。一方、今後の高齢化社会への移行、これも考慮の中に入れなければならないと思います。また、国際的責任の増大等の展望を見ますると、引き続き財政改革を推進いたしまして、財政の対応力を回復することがこれまた大事である、このように
考えます。
新経済計画の策定作業を進めている経済審議会においては、先般まとめられました「新経済計画の基本的
考え方と
検討の方向」というものにおきましては、財政再建と内需拡大の両立を目指していくということが柱になっておりまして、「財政・金融政策については、今後とも、経済状況の変動に応じ適切かつ機動的な運営に努める。」としておるわけでございます。この大筋に沿いまして、審議会において中長期的な財政運営のあり方について幅広く現在御
検討を願っておるという最中でございますので、満足のいく結論的な答弁にもなりませんが、その作業を目下急務の的として最終段階の詰めに入っておる、こういう段階でございます。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたように、財政自身の再建ということも実は
日本経済が順調に推移をしてくれませんとなかなか難しいのでございますので、かえって財政自身が
日本経済の順調な推移のためにある程度の貢献をするということは、中尾
長官のお
考えになっていらっしゃいます目的に沿うものであると思っておりますものですから、財政も先ほど申しましたようなNTTの関連のこともございまして、これは恐らく数兆円のオーダーの金が数年間使えるということであろうと思っておりますので、少なくともこういうことなりとでもして新経済計画に財政も寄与して、それによってまた財政も受益をいたしたいと、こう
考えておるわけでございます。
-
○小島静馬君 政策の方向といたしましては全くそのとおりだというふうに私
ども理解いたしまして、ぜひこれをお進めいただきたいわけでございます。
ただ心配になりますのは、もっと思い切った政策の目標を立てるべきだと。例えば一つの経済成長率をとりましても、外需がマイナス要因に働くことはわかり切っているんですから、外需のマイナス要因を一というふうに置くならば、これは内需のプラス要因というものを五に置かなきゃいかぬ。五マイナス一で四だということで、やっぱり今の「展望と指針」におきましても四%台は平均やっていかなきゃならぬということを言っておりますし、前川リポートあるいは新前川リポートでも明確にこのことは、「近年のペースを高める必要がある。」という言葉であるとか、あるいはまた、プラザ合意以来今日までのたび重なる国際会議におきまして国際公約になっている、四%台の
日本経済の成長は国際公約であるというふうにすら私は
考えるわけでございまして、赤字国は内需を抑制する、黒字国は内需を活発化する、積極的に進めていく、これはもう三つ子でもわかるわけでありまして、そのことを実現するために憶病であってはならぬだろうということを私は痛切に感じます。
ここに
新聞がございますが、「成長率、年三・八%に 新経済計画 時短推進で四%無理」と出ておりますが、これはいわれのない数字であると理解しておりまして、労働を短縮したら逆に内需は拡大するというふうに理解をしております。そういう面で、今作成中でございますけれ
ども、時間が参りましたのでやめます。どうぞひとつ当面する困難な諸問題に、その先頭にお立ちになっておられる両大臣でございまして、日ごろ心から尊敬をいたしておりますが、その政策手腕を思う存分に発揮されましてこの困難な時局を、日米関係を正して
世界の中の
日本として、そして本当に
世界一の
日本人の豊かな幸せというものを身近に感じ得るようなそういう新経済計画をぜひ策定していただきたい、このことをお願い申し上げまして私の
質問を終わるものであります。ありがとうございました。
-
○
委員長(
原文兵衛君) 以上で小島静馬君の質疑は終了いたしました。(拍手)
─────────────
-
○
委員長(
原文兵衛君) 次に、近藤忠孝君の質疑を行います。近藤忠孝君。
-
○近藤忠孝君 きょうは私は税制問題を中心に議論をする予定でありますが、そこに入る前に、官房
長官もお見えですので、災害遺児育英制度問題についてまず
質問をいたします。
この問題についての従来の総理答弁などを見ておりますと、災害遺児の育英制度の創設は四月一日実現、これはほぼ間違いなしと期待してしかるべきものでありました。そこで官房
長官、そのための準備作業はどうなっているか、まずお答えいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(小渕恵三君) お尋ねの災害遺児育英制度につきましては、その対象とする特別の育英制度を設けることにつきましていろいろ
検討してまいりましたが、
検討すればするほど実は他の原因、例えば父母が病死だとか失業したとか、こういう条件下でございまして、災害でない形での御不幸の中で勉学にいそしみたいという
方々に対する対策、そうしたものとの均衡の問題がいろいろ生じてまいりまして、現在そういう問題も含めまして慎重に
検討中でございます。
いずれにいたしましても、かねて来各党からも強い要請のあることでございますので、現在、内政審議室を中心にいたしまして各省庁と連絡をとり合いながら、実現方に向けて懸命の
努力をいたしておるさなかでございます。
-
○近藤忠孝君 三月二十日付の記事によりますと、「育英制度創設せず「育英会」拡充で対応」という報道があるんですね。これは党首会談それから本会議、
予算委員会での総理などの答弁や約束を踏みにじる結果になってしまう、そういったことがあってはならないと思いますが、
長官どうですか。
-
○
国務大臣(小渕恵三君) 今御答弁申し上げましたように、せっかくの
努力をいたしておるところでございます。
いずれにいたしましても、総理もしばしばその問題に触れて意のあるところを申し述べておるところでございますから、そのために各省庁と今連絡をとり合って
努力をいたしている最中でございます。
-
○近藤忠孝君 そうしますと、この記事のような「「育英会」拡充で対応」というようなことではないんだと、こう承っていいのかどうか。と申しますのは、今均衡の問題を申されましたが、これは全母子家庭を対象に制度を拡充するという方向でむしろ行くべきですね。この報道のように、災害遺児だけ制度を拡充するというのはむしろ矛盾だと思うんです。
そこで具体的に、今先ほどのような答弁ですが、昨年末総理の指示を受けたと思います。それ以来どういう準備作業をしてきたのか、各省庁を集めてどうやってきたのか、その辺についてお答えいただきたいと思います。
-
○
政府委員(的場順三君) 昨年総理から御指示がございまして、関係省庁にまたがる話でございますので、私のところでいろんな話をしているわけでございます。
先生御
指摘の点につきまして申し上げますと、災害遺児等に係る奨学援護事業というのは社会保障制度の中にもきちんとございまして、例えば世帯更生資金でございますとか、母子福祉資金等で対応しているわけでございます。こういった政府の資金とは別に、各種の財団等で民間の善意等を主体にしてやっておられる事業もございます。そういうものとのバランス、それから、どこを要するに
主管省庁とするかといったことを含めて関係省庁でせっかく
努力をしているところでございます。なかなか難しい問題がございますが、党首会談で出た話でもございますので、その重みを踏まえてせっかく
検討中でございます。
-
○近藤忠孝君 この間に各省庁集まった連絡会議は一回しか開いていないと、こう聞いておるんですがどうですか。そして、そんな準備作業では、これは四月一日
実施、これが問題なんですよ、それに間に合わないんじゃないか。もっと細かく申しますと、三月二十九日に交通遺児育英会理事会があります。それまでに間に合わせないと育英会の
予算措置にも大分影響を与えるんじゃないか、こういう状況ですが、どうですか。
-
○
政府委員(的場順三君) 関係各省、数省庁にまたがっておりますが、一回しか開いてないということではございませんで、例えば
文部省、大蔵省等たびたび来ていただきまして、随時開いているわけでございます。
それから、国庫資金につきまして、これをどうするかというのが大問題でございますが、御
承知のとおりこれは当初から要求官庁があったわけでもなく、現段階で国庫補助金をどうするということを決めるということについては非常に大きな問題がございます。したがいまして、社会党の方からも官房
長官にその三月二十九日の育英会の理事会という話がございましたけれ
ども、それに間に合わすべく
努力をしておりますが、結論を出すことはいろんな意味で難しかろうと思っております。仮に政府としてせっかく
努力をして何らかの結論が出た場合には、また臨時理事会を開いていただくというふうなことでも対応可能ではないかというふうに
考えております。
-
○近藤忠孝君 副総理、これは国会の答弁や約束だけじゃないんです。一昨年の国政選挙における自民党の選挙公約、ここにあります。時間の関係で省略しますけれ
ども、ちゃんと言っておるんですね。これは私は、いろいろ言っているけれ
ども、一つはやっぱり財源問題じゃないか、こう思います。そこで、これは大蔵大臣が去年の党首会談で、この問題を予備費で
検討すると、こういう回答をされておりますが、これは現在でも同じ
考えですか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 党首会談でこの話が出たことをよく記憶しておりますので、政府としても大切に
考えておりますが、ただいまちょうど、的場
政府委員が言われましたように、的場さんのところが中心になられまして各省庁いろいろ調整をいたしておりますので、それを私としては見守っております。必要であればいつでも支援をいたしますけれ
ども、的場さんのところで十分いろいろ御調整ができるのじゃないかと思っております。
-
○近藤忠孝君 これはぜひ聞いていただきたいのは、この問題実現についての要望、期待が大変大きいということであります。
災害遺児の実態
調査を災害遺児の高校進学をすすめる会と交通遺児育英会で行いました。
調査対象の遺児の数は千三百十四名、そのうち生活保護の遺児が二百三十二名、教育費に困る遺児が四百九十名、合計七百二十二名で五五%に達しているという、こういう状況であります。そしてまた、ぜひこれを実現してほしいというたくさんの要望が、例えば総理大臣への手紙などでも、また我々への手紙でもたくさん来ております。たくさんあるうち時間の関係で一つしか紹介できませんが、この方はお父さんがほかの子供が水におぼれそうになっているのを救うために水に飛び込んで逆に亡くなってしまった。そういう意味じゃこのお父さんを大変尊敬している人ですが、こう言っています。これは中学三年の伊藤宏治君。
父の死後、母は働きに出ました。もう二回も転職しています。口には出しませんが、たいへんそうです。そういえば、近ごろ、頭に白いものが目につきます。母は苦労をかくすかのように、白髪をそめています。
こんな母を見ていると「悪いなー」と思います。僕は将来、設計や
開発の技師になるのが夢です。そのためには、高校、できれば大学まで進みたいと思います。でもお金が心配です。
総理大臣にお願いがあります。交通遺児の人にはしょう学金がでるが、災害遺児には出ないそうです。災害遺児にも育英会を作ってしょう学金を出してください。全国で六万五千人の災害遺児が「高校に行きたい」と言って、しょう学金がでるのをまってます。
お願いします。こういうのが寄せられております。これは総理大臣あてだったんです。副総理ですからひとつこれに対する御感想をいただきたい。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 大切なことでございますので、内政室が中心になりまして各省庁の調整をいたしておりますので、遠からず何かの結論が出ることと思っております。
-
○近藤忠孝君 これはもうぜひ急いでお願いしたいと思います。
官房
長官どうぞ結構です。
そこで、税制問題であります。昨日、これは政府税調特別部会からたたき台が出ました。見て、予想はしておったけれ
ども、しかし本当にけしからぬものですね。EC型というのは売上税と同じですよ。それからもう一つは一般消費税。これはかつて大平総理が選挙に出して敗れて、国会決議で明確に否定されているもの。もう一つは取引高税。もうこれは議論の範囲外、いわば改善されたものが付加価値税ですからね。こういうものが出てきて、しかし問題は、政府として仮に最終案をつくる場合にこの三案から選ぶことになるんじゃないか。どうですか。今言った三案の中から政府案を選ぶんじゃないか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) これは税制
調査会がこれからまた幾つかのところで公聴会と申しますか、そういうことも御
検討のようでありまして、それに向かいまして、先般いたしました二十カ所の公聴会は案を持たずにむしろ自由に意見を聞くということでございましたが、今度はそれに基づきまして幾らか具体的な幾つかの可能性を御提示して世論を聞くということにまず使われる。その上で税制
調査会がどのような最終的な結論を出されるかということはまだ先のことでございますので、政府としては答申を待ちたいと思っておるところでございます。
-
○近藤忠孝君 この政府税調なるものが、これは私は先日の総括
質問の関連でも
指摘をしましたけれ
ども、公聴会の
国民の意思とは全然違う、むしろあれ自身がつくられたところ。しかし、それと違うものが現に出てきている、
国民の意思とは。お聞きしたというけれ
ども、やはり
最初から
考えておったものを出してきておるんですね。そうしますと、三つぐらいに大体絞られて、政府も出してきたからそれをと。となりますと、これは明らかに公約違反ですよ。私は、もう大体これ以外に余り
考えられないとしますと、今の段階で、これはむしろノーだというのが
国民の審判なんですから、やはりこれは選挙で
国民の意思を問うとか、あるいは撤回するとか、そういう段階だと思いますが、また改めて答弁をお願いしたい。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) まだまだ御提案もいたしませんので撤回をするものは存在していないわけでございますが、昨年のこともございましたので、今度はよく世論の御意見を聞きまして、誤りなきを期したいと思っております。
-
○近藤忠孝君 どっちみちわかっているんだからというので先走って申し上げたんですが、そういうものだと思うんです。
そこで、中身に入りますが、一つは直間比率問題です。これがやっぱり大型間接税導入必要論の根拠にされてまいりました。しかしこれは、竹下さんもそうですし宮澤さんもそうですけれ
ども、直間比率というのはあくまで結果なんで、それ自身を何対幾つがいいということの議論はむしろ好ましくない。これは私は普通の
考えだと思うんです。ただ、宮澤さんの答弁を聞いていますと、しかし現在の比率は余りにもバランスを外れているので直す必要があると。お聞きしたいのは、じゃなぜ現在の数字が是正を必要とするほど異常数値なのか。お答えいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) それは確かにおっしゃいますように、七二・二と二七・八というもの、これ自身というか、その中身がやっぱり問題なんだろうと思いますね、本質は。思いますが、そもそも七二・二まで来ました経緯は、かつてはもう五〇、五〇であったものがだんだん、シャウプ以来余り根本的な手直しをしないものでございますから、直接税の方の累進が効いていく、そうして
国民の所得水準が上がっていくということで、ずっとそういう両方が離れる傾向を追ってきたわけでございますから、そのことはやっぱり私は異常なんだろうと思うのでございますね。
中身で見ますとそれは非常にやはり重税感を伴う所得税であったり国際的に高い法人税であったりいたしておるわけですし、また他方で言えば、消費税でありますのに、例えば自動車とか家庭電器とかいうごく少数のものに税収の大半を頼っているような物品税といったような、これ自身ももう非常に問題がある、直も間も両方やっぱり問題がございますから、こういう七二・二対二七・八という極端な数字になってきたんだろうと思っております。
-
○近藤忠孝君 私が聞いておりますのは、かくあるべし、何対幾つがいいということは、そういう議論ではないと言いながら、漠然としたバランス論を言うのは矛盾ではないかという
質問なんです。バランス論を言うのならばその基準は何か。その基準と根拠があるはずですね。そいつをお示しいただきたいということなんです。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) それはこの間も御議論がございまして、総理大臣も答えていらっしゃいましたように、この姿がアプリオリに理想的なんだということはなかなか言えないんだと思いますし、殊に
我が国のようにこういうふうに非常に激しく変化しております社会ではなおさら言えないんだと思いますけれ
ども、例えば総理大臣がこの間基準にとられた
昭和五十年という年は、
日本が
先進国に既に仲間入りをして、しかし石油危機等で非常に悩んだ、そのあたりのもとになる年でございますが、それからの比較で物を言われました。これは五十年が理想的だという意味では全くございません。しかし、それからずっと継続して一つの傾向を直接税と間接税がおのおのたどってきたということはやっぱり問題があるのではないか、こういう相対的な問題としてこの間総理大臣が言われたと思います。
-
○近藤忠孝君 あくまで漠然としたバランス論で、根拠は示し得ていないんですね。
私は、基準はどこに求めるべきか。これはやっぱり憲法から要請される基本理念で決定すべきだと思うんです。となると、それは応能負担の原則と生活費非課税の原則ということになるんじゃないかと思います。となると、直接税中心がむしろ憲法から要請される理論じゃないか。この点は否定できないと思いますが、どうですか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) それは、その国そのときの状況によってこれも一義的に言えないことだと思いますけれ
ども、仮に二七が直接税で七三が間接税であったら、それはやっぱり多少問題があるなということは言えるのかもしれません。
-
○近藤忠孝君 多少の程度ですか。それじゃ、こんな大騒ぎして税制改革なんかする必要はないじゃないですか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 今申し上げましたのは、二七が直接税で七三が間接税であったらそれはやっぱり問題だろうとおっしゃられれば、そうでございましょう、こう言っているわけです。
-
○近藤忠孝君 結局、何度議論しましてもやっぱり、しっかりした基準は出てこないんですね。
次に入りますが、次は、これはいつも大蔵大臣が言っている話です。きょうも本会議で申しましたね、所得は平準化しているので云々と。私はこれが税制改革、大型間接税導入の論拠の中の一番大きなものだ、こう思っています。ただ、この点については私は、昨年のこの
委員会でも具体的にジニ係数などを示しましたね。むしろこれは逆なんだ、格差は広がっているんだと、こういう
指摘をしました。あの論戦では私勝ったはずだけれ
ども、依然として宮澤さんは同じことを言い続けているわけです。それで、改めてその主張に論拠がないことをお示ししたいと思うんです。
その前提として、所得税の負担が重くなっていることは事実なんです。問題は、どの階層にその負担が行っているのか。それが公正、公平になっているのか。是正の必要があるのかないのかということなんですね。その状況について、大蔵大臣はどうつかんでおられますか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) それは直接税で申せば、
我が国はやはりこれほど所得水準が高くなりましたし、格差も少ないのでございますから、中堅サラリーマンと申しますか、子供さんの教育費あるいは住宅のローンの返済、そこらが非常に苦しい。その辺のところのサラリーマンの重税感をやっぱり緩和するということが大事なことではないかと思っております。
-
○近藤忠孝君 そこで、所得は平準化しているというんですが、宮澤さんから、これこれしかじかの
データによって平準化しているという、そういった話は聞いたことがないんです。何を根拠にそういう主張をされるのかお答えいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) それは何度も申し上げたと思うのでございますけれ
ども、例えば第一分位と第五分位の格差は今
我が国では多分二・九でございますけれ
ども、これが
アメリカあたりですと九・五でございましたか、うんと違っておりますし、ジニ係数も、
我が国が
アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツあたりの中では一番低い、これも事実だと思うのでございます。
それで、そう言いますと、近藤
委員が言われることは、最近そうじゃないとおっしゃる。それは確かに
我が国にとって石油危機というもの、円高というものがやっぱり非常につらかったのでございますから、こうやって雇用の問題にまで及んだのでございますから、確かに最近それが相当つらい何年かであったことはこれは間違いございません。しかし、戦後三十何年とまで申さなくとも、仮にこの十何年あるいは二十年、先ほ
ども小島
委員が言われましたように、
日本の社会というのはそれだけよくなって安定したということは、これは近藤さんといえ
どもやはりお認めいただいていることに違いないので、この何年かはそれはございましたです、それは私もわかっておりますけれ
ども、まあまあ早くまたもとの正常な姿に戻していきたいなと思っていますが、それは
我が国が一番所得格差が少なくて、比較的所得水準の高い社会であるということは常識的に私は言えることじゃないかと思っています。
-
○近藤忠孝君 じゃ、まあここのところ格差は広がっているということはお認めになりましたね。
それで、一つは国際比較の問題です。これはいつも大臣がそう言うんですが、私はこれは正確な議論じゃないと思うんですよ。ジニ係数というのは、もとの
データのとり方は各国で違うんですから。また計算の仕方によっても違ってくるんですよ。だから、そういう意味では、単なる国際比較はこれは間違っていると思うんですね。
それからもう一つ、シャウプ税制との比較、その時代との比較、あるいはもっと長期の比較ね。私は、それ自身戦争直後の混乱期と比べて現在の社会が平準の方向になっていることは当然だと思うんです。それは曲がりなりにも直接税中心のシャウプ税制が有効な機能を発揮してきた一つの証拠だと思いますね。問題は、最近それがずっと崩れてきまして、しかも最近、その所得格差がどういう方向にあるのか。今問題は、過去のことじゃなくて二十一世紀をにらんだ税制改正をやろうということですから、最近どうなっており今後どうなっていくのか、ここが大事なことなんですね。この点は御承認になりますな。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) つまり、石油危機が起こりましたのが
昭和四十八年でございますが、二度危機があり、そしてここへ来て何年か円高がございましたから、もう本当に
国民全体の、これは組合の
方々はもとよりでございますけれ
ども、関心の的は雇用の確保ということであった。どうやって失業をこれ以上悪くしないかということであった。今日でも
地域的に産業的にはまだそういう部分があるのでございますから、そういう意味での賃金の上昇というものはやっぱり雇用の二の次になったということは、これは私は残念だったがやむを得ないことだった。そういう時代を反映いたしますと、どうしたってそれは格差というものはやっぱり前のような傾向のとおりにはいかない。そういう何年間があったことは私は事実と思いますが、ここへ来まして、やはりまたもとのそういう
日本経済が好調になってまいりますと、恐らくやはりその点は改善に戻っていくだろうというふうに私は思っていますし、またそうでなければならぬわけでございます。
-
○近藤忠孝君 そうでなければならぬということとそうなることとは別のことですね。
それから、シャウプ税制時代との比較で申しますが、これは決して大蔵省の言うこと、そのとおりじゃないんです。ここに資料一がございます。給与所得税で申しますと、大体七九年以降からジニ係数は拡大の方向にある。拡大ということは要するに格差が大きくなってきているということですね。この二つの表はいずれも大蔵省の数字ですよ。実際に税金を納めたその関係の数字ですからね。申告所得税の方で申しますと、シャウプ税制時代には〇・三台だったのが最近は〇・五一台、こういう状況で、シャウプ税制時代に比べたってこれはジニ係数は大きくなっているということは、格差は広がっておるんですよ。大蔵省の言うことと違うじゃないですか。
-
○
政府委員(水野勝君) ジニ係数によりますところの分配状況、これは一つは専ら——税制も関係しますが、一つは所得の分布、その種類、それによることは御
承知のとおりだと思います。特に申告所得税の場合、これは税務統計からとるということについてはいろいろ問題もあるところでございますが、一点だけ、この申告所得税のところでごらんいただきますと、これは専ら土地の譲渡所得、これの影響するところが非常に大きいわけでございます。御
承知のように
昭和四十四年の改正におきまして、一〇%、一五%、二〇%という一律分離二年おきと、こういうことを行いました。その時点におきまして一斉に、それまで未実現とされておりました土地の譲渡益が、この一律分離二年おきに上げていくという時期に爆発的に出てまいった、それがこの
昭和四十三、四、五年から五十年代の前半まで響いておる。そういう攪乱要素がございますので、この申告所得税の実態によりますところのジニ係数というのは、その点を十分割り引いて
考える必要があるのではないかと思うわけでございます。
-
○近藤忠孝君 今の
局長の答弁でしたら、その時期にジニ係数は大きくなっても、その後、そういう事情がなくなった後は下がって、それで逆にシャウプ税制時代よりも数が少なくなってしかるべきですよ。〇・三を割ってしかるべきじゃないか。答弁は全然違うじゃないですか。
-
○
政府委員(水野勝君) 先ほ
どもちょっと申し上げましたが、税務統計からのジニ係数と申しますのは、税は御
承知のとおり全く個人単位で取っております。したがいまして、これが世帯の収入ということとは全く別でございますし、それからまた、給与の場合でございますと何カ所かから給料をお取りになる、それぞれが一人一人として算定される、そういったことも影響しますので、税務統計資料からのジニ係数というものと一般的に所得分配、主としては世帯を単位といたして議論されます分配の状況を示すジニ係数というのとは、少し結びつきがたいのではないかという感じがするわけでございます。
-
○近藤忠孝君 いや、大蔵省は数字をつくらぬから。現にこれはもうちゃんと確定している、はっきりした、申告された税金から計算したんです。
それからもう一つ。個人の問題だ、世帯とは違うと。世帯の問題は、私は昨年具体的にこれは厚生省の数字で申し上げましたよね。それが拡大方向に向かっている、世帯が。個人もそうなんです。大事なことはね、世帯も個人も両方とも
データは格差が拡大している方向を示している、これが重要なんです。
それでお聞きしたいことは、その関係でよく言われることは、税制の所得再配分機能を考慮する必要が低下したと言っておるんですが、その実証的
データはあるのか。今の答弁の中で、もう既に格差は縮小しているということは、
データは何もないし、逆に私の方の
データは拡大している。もう一つは、所得再配分機能についてのそういう
データがあるのかどうか。
-
○
政府委員(水野勝君) 先ほど大臣からも申し述べましたように、戦後のシャウプ税制当時が前提といたしました社会経済情勢から比べますと、圧倒的に平準化しているわけでございます。ただ、五十年以降につきましては、先ほどの雇用の問題、それから女性の方の、世帯主以外の方の職場進出、あるいは高齢者の就労がふえる、そういうことからいたしまして、五十年度以降につきましてはそれが横ばいあるいは若干の変動は来してございますけれ
ども、高度成長期以前の
状態、シャウプ税制が基準と申しますか、前提といたしておりました社会経済
状態とはざま変わりに平準化している。そうした長い経緯をもっての税制改正で乙ざいますので、そこは平準化していると。したがいましてそうしたシャウプ税制時代の所得再分配機能といったものとは次元が違う話ではないかということを申し上げているところでございます。
-
○近藤忠孝君 平準化している平準化しているということを何度も何度も言えばそうなると、そういう
考えは、これはヒトラーと同じ
考えですよ。
私は大蔵省に、縮小したというのならば、その資料を示しなさいと。何も示さないじゃないですか。逆に私の方は、拡大しているという資料を出したんです。どうしてこれが縮小しているんです、この資料が。
-
○
政府委員(水野勝君) 私
どもの方から税務統計でもってジニ係数を御提出したということはないようでございます。
平準化したと申しますのは、従来から申し上げておりますように、一分位と五分位との倍率、これが約六倍近くであったものが今三倍弱になっているという中長期的な趨勢を毎回申し上げているところでございます。
-
○近藤忠孝君 申し上げたからといってそうなるものじゃないということはもう一度
指摘して、次に入りますが、結局、所得配分機能を考慮する必要性は低下したということを示す実証
データはない。私はここで逆に、むしろ必要性が高まっているということを具体的
データで
指摘したいんです。
まず、収入配分がどうなっているか。これを実収入について、年間収入五分位別、階層別推移をお示しいただきたい。一九六三年から八六年までの重立った年代でいいです。
-
○
政府委員(百崎英君) まず、実収入でございますが、とりあえず第一階級と第五階級だけにさせていただきます。
一九六三年、第一階級が、構成比でございますけれ
ども一〇・二%、これに対して第五階級が三三・三%。これが一九八六年には第一階級が一一・一%、第五階級が三一・七%となっております。
-
○近藤忠孝君 これが資料二であります。本当はこれは大蔵省が答弁してしかるべきなんです。私はもう十日以上前からこういう資料をつくれと。全然つくらぬですよ。宮澤さん、大蔵省は自分のところに不利な資料はつくらぬし出さぬと、この間言ったばかりです。それと同じなんですね。ただ、総務庁が答えてくれたからそれに基づいてやります。
これで見ますと、一番下の方も上の方もほとんど変わっていないんですよ。だから、政府統計資料によっても所得平準は出てこないじゃないか、どうですか。これは大臣に答えてもらわなきゃならぬ。大臣の言う平準化は、この政府資料からは出てこないじゃありませんかと言っているんです。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 近藤
委員の言われるのはあれでございますか、税制による再配分機能を言っていらっしゃるんですか、今。
-
○近藤忠孝君 いやいや、平準化したと言うから、平準化の基礎資料としてはこれはどうかと。一つの資料です。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) でございますから、さっきちょっと申し上げましたが、ここへ来まして、これはいわゆる女性が参入しましたりあるいはお年寄りが所得を得られましたりということがありますから、十分でありませんけれ
ども、全体としてはやはり
世界で一番平準化に近い社会だということを一分位と五分位の関係で申し上げておるわけでございます。
-
○近藤忠孝君 この資料をごらんいただければわかるとおり、一番最低の第一分位につきましては、要するに全体の五分の一の世帯数で、配分の方はほぼ一〇から一一でずっと変わっていないんです。一番上の方も大体三三%か二%で変わっていないということは、これだけ年数は経たけれ
ども、約二十五年間ほぼ配分の状況は変わっていないじゃないか、ということは平準化していないじゃないか。いや、むしろ平準化の根拠が政府資料からもこれは出てこないではないかというのが私の
質問なんです。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 私が申し上げているのは、一分位と五分位の差というものは大体二・九ぐらいである、これは
世界の中でも一番格差が小さいのだということを申し上げておるわけなんでして、それは差があるのは当たり前なんですね、全体を五つに分けるわけでございますから。差をつけるために分けるわけでございますから差があるのは当たり前なんで、その一番上と一番下の格差が
世界で一番小さいということを申し上げようとしているわけです。
-
○近藤忠孝君 それは
質問に答えていないんですよね。平準化したということは、二十五年前に比べてこの配分の比率が、例えば一番低い方がふえたということになれば、それで第五が減ったとなれば、それは平準化ですよ。同じじゃないか。
-
○
政府委員(水野勝君) このお示しの数字が六三年。そのずっとさかのぼりまして
昭和二十五、六年のころは一分位と五分位で五・八倍。これが三十八年のころでございますと三・三倍、それが現時点では二・九倍ぐらいになっておるということで、そういう趨勢をもちまして平準化と申し上げてまいっておるところでございます。
-
○近藤忠孝君 さっきから本当にまともに
質問に答えない。
委員長から御注意いただきたいと思う。私は、この資料についてどうかと言っているのです。
では、もっと聞きましょう。年間収入五分位階層別収入配分を全世帯、今のは勤労世帯でしたけれ
ども、全世帯でお示しいただきたいと思う。
-
○
政府委員(百崎英君) 全世帯の第一と第五階級だけについて申し上げますが、一九七〇年、第一階級が九・〇%、第五階級が三六・三%、これが一九八六年には第一階級が八・三%、第五階級が三八・一%となっております。
-
○近藤忠孝君 全世帯では高額所得者も入るからかもしれませんが、少し数字が違っていましたね。低い方は配分が下がっている。所得の高い方は配分がふえている。これは平準化の逆じゃないんでしょうか。要するに全世帯を見てみますと、低所得者では低下、高所得者では増加の傾向を示している。これに反論する資料がありますか。
-
○
政府委員(水野勝君) この一九七〇年、
昭和四十五年がまさに四・五、六倍の数字になっており、それを先ほどお示しの一九六三年の時点に参りまして、さらに三十年まで参りますと、これが五・七倍、ただ全世帯につきましては
昭和二十年代がございませんので、三十八年からでとりますと、先ほどの一九六三年でとりますと、これが五・七倍、これが現時点のこの八五年、八六年では四・六でございますので、そこはやはり趨勢的に下がってきたということは言えるのではないかと思うわけでございます。ですから、ここに上の表と同じように六三年をお示しいただければ、その傾向が出てくるのではないかと思うわけでございます。
-
○近藤忠孝君 無理にそんな倍率をやらなくても、この数字を大臣、じかに私はこれを直視すべきだと思います。
そこで、大蔵省はどうもこういう調子だから、厚生省。各階層別平均所得金額の推移、これを対前年でお示しいただきたい。
-
○
政府委員(黒木
武弘君) 私
どもの厚生省の
国民生活基礎
調査によって御説明申し上げますが、
昭和六十年の一世帯当たり平均所得金額の対前年伸び率でございます。全体では四・四%増でございます。あと四階級でとってございますけれ
ども、第一・四分位では一・三%の減、第二・四分位では一・八%の増、第三・四分位では四・二%の増、第四・四分位では六・三%増となっております。
なお、第一・四分位の伸び率がマイナスとなってございますので、あわせて同
調査でお示しをいたしております世帯人員一人当たりの平均所得金額の対前年の伸び率で申し上げますと、全体では五・二%の増、第一・四分位では三・七%の増、第二・四分位では四・二%の増、第三・四分位では四・六%の増、第四・四分位では三・九%増となってございます。
-
○近藤忠孝君 これは対前年というだけでは偶然的要素も入るかもしれぬということで、その前の五年間、この間の平均所得の増加率はどうか、この資料は四の資料です。
-
-
○近藤忠孝君 五年間の。
-
○
政府委員(黒木
武弘君) はい、五十六年から。
五十六年から
昭和六十年までの間の一世帯当たり平均所得金額の伸び率でございますが、全体では一四・八%の増、第一・四分位では八・一%増、第二・四分位では一三・八%増、第三・四分位では一五・四%増、第四・四分位では一六・〇%の増となっております。
-
○近藤忠孝君 ですから、ちょっと時間を見てみますと、このとおり第一と第五では、第五の方が倍も伸び率が多いんですね。
そこで厚生大臣、厚生省がつくったこの資料から見まして、所得は平準していると御判断でしょうか。
-
○
国務大臣(藤本孝雄君) 所得分布状況につきましては、統計的に見てみますと、最近若干所得格差が拡大ぎみに推移しておりますけれ
ども、長期的に見れば、私は平準化しているものと認識をいたしております。
最近の動向につきましては、高齢化に伴う高齢化社会の進行、進展によりまして高齢者の世帯がふえておるわけでございまして、そのような変動とかさまざまな要因が絡んでおるわけでございますので、実質的に所得格差が拡大してきているかどうかの判断を行うには十分な
検討が必要であるというふうに
考えております。
-
○近藤忠孝君 厚生省の長なんだから厚生省の資料に基づいて的確な答弁をいただきたいんです、同じ内閣だというので遠慮をしているのかもしれませんがね。ただ宮澤さん、この五年間で見ますと、このとおりむしろ格差は広がっていると見るべきじゃないんでしょうか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) それは先ほど私が申し上げたことです。ですから、この何年間かというものはなかなか思うように参りませんでしたと申し上げております。
それに、今おっしゃいましたように、今まで世帯ではなかった若い女の人とかあるいはお年寄りが一つ世帯を構成しますと、それはフルの所得がございませんから、やっぱり世帯としては、一世帯立てますと所得が小さくなるということはやややむを得ないことで、この数年間はせっかく縮まってきたのがどうも少し違うようであったということは経験でも言えることで、残念なことでございましたけれ
ども、それはそうだと思うんですが、長い目で申し上げて間違っていることを言っておるとは思いません。それは先ほど、六三年の数字と八七年の数字で、これは御自分でお示しになった数字です、六三年は第一分位が一〇・二ですね、それから第五分位は三三・三でございますから、これは目の子でやっても三・三ございますね。一九八七年が一一・一と三二ですから、これは二・九ぐらいですから、やっぱりこれだけ違いますと大きいのじゃございませんか。
-
○近藤忠孝君 自分の方に都合のいいところばっかり持っていくんですよね。私はこの数字を、これはやっぱり総務庁の資料でつくっているんだから、これをまず直視すべきです。しかし、長期にわたってもこれはむしろ拡大しているということは、申し上げたとおりです。
それで、所得再配分機能を考慮する必要はないと。とんでもないんです。これは逆に低下をしております。これは、先ほど資料を一応ごらんいただきましたね。それぞれのところに再配分効果と。例えば給与所得で見ますと、かつて九%台のものが今は半分以下ですね。それから申告所得で見ましても、かつては一〇%台以上、多い場合は二〇%に達しておった。それがやっぱり五%台というんだから、これは明らかに所得再配分機能が低下をしていますが、この事実はお認めになりますか。
-
○
政府委員(水野勝君) 基本的にまず、この税務統計の資料からそういう御議論をいただくというのはやや結びつきがたいという点があるということは先ほど申し上げたとおりでございますが、この趨勢的なものを見まして、
昭和二十年代後半あるいは三十年代前半におきまして非常に所得税が高かった時代、そういった場合におきましては、その所得税によりましてかなりな再分配の機能が果たされた。しかし、その後減税もかなり進みまして、だんだんそうした機能が、税制として機能が二十年代に比べて定性的に落ちてきている面があるということは否定はできないかと思いますけれ
ども、それが安定してまいりました
昭和三十年代以降、このお示しの数字でも三になったり五になったり四になったりまた四になったりということで、税制が
昭和三十二年の大減税と申しますか、そうしたものを経て後はおおむね平準化しているのではないかという感じもとれるわけでございますが、いずれにしましてもとの税務統計からの分析というのは、やや私
どもそのままではなかなか用いがたいということを申し上げたいと思うわけでございます。
-
○近藤忠孝君 いや、大蔵省は何も資料をつくらぬから、私が大蔵省の資料をつくったら、そいつを使うとはおかしいなんということ、一体これは何ですか、これは議論できないじゃありませんか。
それで、問題は、こういう所得再配分機能は低下して、そしてしかも低所得者ほど税負担が高まっている、高所得者は逆に税負担が軽くなっているということを私申し上げたいと思います。
まず、実収入に占める税・社会保障負担の割合がずっとふえておりますね。その支出額は消費支出の四分の一に相当する。これはほぼ食料費に匹敵するものであります。そういう意味で私は、税の所得再配分の役割は一層高まっていると思います。問題は、その負担がふえているのがどの層に負担がいっているのか。
そこで、年間収入五分位別税・社会保障負担配分の推移をお示しいただきたいと思います。
-
○
政府委員(百崎英君) 税と社会保障負担を合わせたものにつきまして六三年と八六年を比較したいと思いますが、第一階級は六三年は五・二%、第五階級は四七・二%、これが八六年には第一階級が七・二%、第五階級が三九・四%となっております。
-
○近藤忠孝君 これは資料五であります。勤労所得税で見てみましても、第一分位は一・六がずっといって四・四になっていますし、逆に第五分位は六〇・七であったものが勤労所得税が四八・三にこれは減っているんですよね。税と社会保障負担の比率は先ほど言ったとおりであります。要するに、低所得者の方は年々負担が重くなる、高額所得者の方は年々負担が軽くなっている。中から上にいくに従って負担増の割合が少なくなっておるということが明らかであります。
そこで、この二十五年間、税・社会保障負担はどのように伸びたかということが次の問題です。そこで、家計収入の伸びと税・社会保障負担の伸びをお示しいただきたいと思います。
-
○
政府委員(百崎英君) まず実収入でございますが、六三年と八七年を比較いたしますと、第一階級でこの二十五年間に九・三倍、これが第五階級では八・三倍。それから税と社会保障負担を合わせたものを比べますと、第一階級につきまして二十五年間に二十五・九倍、これが第五階級では十四・六倍となっております。
-
○近藤忠孝君 これが資料六でありますが、要するに、実収入の伸びは第一分位も第五分位もほぼ同じ。八から九です、ほぼ同じですね。ところが、税プラス社会保障負担の方は第五に比べて第一の方、低い方は倍近いんですよ。片っ方が十四・六に対して二十五・九。要するに収入の伸びは同じ程度なのに税・社会保障負担の伸びは低所得者の方が倍近く多いということ、大臣、この資料を見て一体これをどう思いますか。
-
○
政府委員(水野勝君) 御
承知のように、所得税には課税最低限というものがございまして、五分位で分けますとおおむね二分位と三分位、かつてはそのあたりにあったかと思うわけでございます。
日本はかなり課税最低限が
世界的に見て高い。課税最低限がございます。さらに、累進税率でございますので、一定の倍率で収入がふえましても、下の方の方につきましてはそれが課税最低限を超えますとすぐに税金がかかり始める。高い方の方は既に高い累進税率がかかってございますので、ブラケットがそう大きく変わらない。
そういうことからいたしまして、所得税の累進構造のもとでは、当然のことながら、下の方の方と上の方の階層の方とでは税額の伸びに違いがあることは当然でございまして、これがまさに累進税率の効果でございまして、もしこれがおかしいということであれば、すべて課税最低限もやめ、比例税率にしてやれば、こういうことは起こらないのではないかと思うわけでございます。
-
○近藤忠孝君 その論は当たりません。というのは、この資料は勤労世帯ですからぬ。大資産家は含まれていないんですよ。だから、下の方は含まれてない、上の方も含まれてないんだから、それはやっぱり公正じゃないですか。
それで次の
質問は、これの実収入比の変化をお示しいただきたいと思います。
-
○
政府委員(百崎英君) 実収入に対する税と社会保障負担の合計の割合でございますが、第一階級では六三年から八七年までの二十五年間に二・八倍、第五階級ではこの二十五年間に一・八倍となっております。
-
○近藤忠孝君 これが資料七でありますが、いずれにしましても今の同じ傾向が言えるわけです。
そこで大臣、具体的
データは、最高所得者、五階層の負担がこの二十五年間大幅に緩和されているのに対して、最低所得者、これは一分位の方ですね、この負担は逆に増大していること、その中間はそれなりに応じてそういう一つのカーブになっているということがこの資料から明らかであります。このことは、税制の所得再配分機能の重要性が低下したどころか、逆に再配分機能が低下しているんだからこれを強化しなきゃならない、このことを意味しているんじゃないのか。だから、ここで直接税中心の税体系をこれ以上崩しちゃったらこの傾向はますます強まるんじゃないでしょうか。いかがですか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) そうでないと思うのでございますね。
つまり、今も
政府委員が申し上げましたけれ
ども、所得税は累進になっておりますから、一番下のところはゼロでございますね。それで、ある程度所得が上がってまいりますと課税最低限を突破いたします。そうすると、税金はいわばどんなに小さい税金でも何倍というような感じにそれはなります。しかし、高いところ、一番高額の
人たちは突然税金が何倍になったりはいたしません、もう既に高いのでございますから。そのことを防ごうとすれば、全部フラットな税率でしたらこういうことは起こらないわけです。ですから、一定の累進構造というものがあって、私なりに申せば、
国民のかなり多くの
人たちが所得がふえてきて何がしかでも所得税を負担してもらえるようになるということは、やっぱり私は大事なことなんだろう。
要は全体の格差が小さければよろしゅうございますので、
国民全体が社会の費用を少しでも負担してくれるということは私はいいことじゃないか、こういうふうに申し上げたいのでございます。
-
○近藤忠孝君 今ここで大臣が私の言ったことをそのとおりでございますと言えば、ここでもう税制改革は必要なしということになりますからなかなか言えないと思いますが、私がここでせっかく示したこの資料を直視してほしいと思うんです。
そこで経企庁、「
国民生活
研究」という雑誌があります。これは経企庁関係だと思いますが、その中で
国民生活センターの所員である藤森昭という人が、私が使ったような資料とほぼ同じような計算をしましていろいろな論文を書いておりますが、その中でこういう
指摘があります。「家計構造の変化をもたらすほどに税・社会保障負担が大きくなっている現在、所得再分配の役割は一層高まっているというべきであろう。」。
それから、これは白書で、これは大蔵省とほぼ同じようなことを言っているんですが、それに対してこう言っています。「「経済白書」が
指摘するように税制の所得再分配機能の重要性が低下するほど、所得分布が平準化してきた、という点については大いに疑問である。」。これは経企庁関係です。
時間がないので、そういう
指摘があるかどうかだけの御答弁をいただきたいと思います。
-
○
政府委員(海野恒男君) 御
指摘の「
国民生活
研究」という雑誌の中にそういう
指摘がされていることは私も
承知しておりますが、これは私
どもの管理しております
国民生活センターの
研究雑誌でございまして、私
ども、個人の論文に対しましてはそれをとやかく言う筋合いのものではありませんけれ
ども、
先生の御
指摘になった点につきましては、経済白書で、昨年だったと思いますが、
指摘はしております。
-
○近藤忠孝君 以上の事実は、最高税率の引き下げではなくて課税最低限の引き上げこそ必要であることを示していると思うんです。しかし政府は、なすべきこと、要するに課税最低限の引き上げはなさずに、逆になすべからざること、最高税率の引き下げによる金持ち減税を行っています。一体だれの政府かという疑問が当然きょうのこの議論から出てくるんですが、その批判にどうお答えになりますか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 既に昨年課税最低限はかなり引き上げさせていただいておるわけでございます。それで
日本はやはり
世界では一番課税最低限が高い。簡単に申しますと、
日本というのはみんなの人が少しでも所得税を納めてくれるような社会になりつつあるということ、それは私は大事なことだというふうにやっぱり
考えています。
-
○近藤忠孝君 この議論は、引き続いてやりたいと思います。
次の
質問に入りますが、教育費に関する課税問題であります。
ここに六十三年一月二十五日付、「新型間接税についての私学関係要望」事項なる文書があります。
文部省、これは大蔵省に提出したんでしょうか。
-
○
政府委員(
坂元弘直君) お答えいたします。
この文書は私立学校関係者が非公式にまとめたものでございまして、私
どもの方にも正式にこういう要望書を提出してきたという段階にはまだ至っておりませんし、大蔵省にも私
どもから提出したり、あるいは私学団体から大蔵省に正式に提出したというようなことは聞いておりません。
-
-
○
吉川春子君
文部省にお伺いいたしますが、大蔵省の方から教育費に対する課税の問題について何か打診があったんでしょうか。
-
○
政府委員(川村恒明君) 現在進められております税制改正の御審議の経過でそのようなことは私
どもは
承知をしておりません。
-
○
吉川春子君 教育費の課税問題について大蔵省からどんな打診も来ていないと、こういうふうに理解していいんですね。
-
○
政府委員(川村恒明君) 打診というのがどういう形のことを御
指摘になっているのかよくわかりませんけれ
ども、私
どももちろん平常の仕事のつき合いで大蔵省といろいろ意見の交換その他はしておりますが、教育費について課税をするぞ、こんな形で課税をするぞというふうな
お話を承ったことはございません。
-
○
吉川春子君 つき合いの中で、もし教育費に課税するようなことがあればどうなるかなということぐらいは
検討しているんですか。
-
○
政府委員(川村恒明君) 現時点でそのようなことを
考えたことはございません。
-
○
吉川春子君 文部大臣にお伺いいたします。
授業料その他教育費に対して一般的に間接税をかけるというようなことはやるべきでないと私は思うんですけれ
ども、大臣のお
考えはいかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
中島源太郎君) 今
政府委員からお答えしましたように、全くそういう話は
承知しておりませんので、仮定の問題であろうと思いますが、仮定の問題とすれば、前回いろいろございましてあれは廃案になりましたものでございますから、それを今申し上げても、もう廃案になりましたものを数えても仕方がありません。税制につきしまては今まさに
調査会で御審議をいただいておるところでございますから、それを見守ってまいりたい。
ただ、一つだけ申し上げられるのは、やはり家計支出の面で教育費が圧迫をしないようにということにつきましては、
文部省としてはそういう面で、別の意味で税制上、そういう教育費が重くのしかかるであろう分野の層に対しまして所得税を軽減してもらっておりますし、また一方で、それを助けるために奨学制度その他の歳出面で意を注いでまいりたい、こう思っていることは事実でございます。
-
○
吉川春子君 大蔵大臣に伺いますが、授業料、教育費にまさか広く浅く間接税をかけるなどということはお
考えになっておられないでしょうね。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 間接税につきましてはまだまだ税制
調査会等々で御審議中でございまして、政府としては何らの成案を持っておりません。
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吉川春子君 一般論としてで結構ですけれ
ども、授業料に税金がかかるなどということは好ましいことではないと思いますが、大蔵大臣、いかがですか。
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国務大臣(宮澤喜一君) ただいま、現実の問題でございませんのでお答えができません。
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吉川春子君 授業料に税金をかけるなどということは現実の問題ではない、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
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国務大臣(宮澤喜一君) 政府はただいまそういうことの御提案を全くいたしておりませんので、それにつきまして何も申し上げるわけにはいかないと申し上げておるわけであります。
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吉川春子君 先ほど近藤議員から
指摘いたしました資料には、新しい間接税が教育費にかかるということは大変なことになるという
指摘がされております。それによりますと、教育は国家百年の計だ、しかし教育の機会均等の立場に反するような結果になるんだということが
指摘されておりますし、また、父母、学生の教育費の負担がもう限界に来ている、だから大型間接税のようなものがかかりますと私学への進学の道が断たれてしまう、こういうことも
指摘されております。そして、私立学校に通う者の父母は二重の税負担になるんだ、こういうことも
指摘されているわけですけれ
ども、去年の売上税のときも、あの売上税に私
たちは絶対反対でしたが、教育費は非課税にされておりました。
こういうような立場から私は文部大臣に再度お尋ねしたいんですけれ
ども、教育費に税金がかかるというようなことは、さっき大臣もお触れになりましたように、所得の少ない階層に対して大変酷な結果にもなるわけですから、今後大蔵省からどんなことがありましても、ぜひそういうことはやらない立場で頑張っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
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国務大臣(
中島源太郎君) 先ほどお答えいたしましたように、過ぎたるものは言及できませんし、これからのものはまだ仮定の問題でございますからお答えできません。
ただ、精神としては、先ほど申し上げましたように、税制面あるいは歳出面でできるだけ負担が軽減されるように
考えていきたい、こう思っております。
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○近藤忠孝君 最後に、相続税問題に入ります。
二つ問題がありまして、最近の地価高騰などで庶民が住んでいる土地を売らなければ相続できないような人々に対する緊急措置の問題、それからもう一つは、相続税の補完的性格、富の集中抑制などに関する本来の性格ですね、から諭ずべき問題があります。
ただ、もう時間がありませんし、宮内庁を呼んでおりますので、宮内庁に対しての
質問にとどめたいと思うんです。
問題は、一方で大変苦しんでおる反面、天皇家の相続問題がやがて問題になると思うんですが、それに関して聞いておきたいと思うんです。まず、天皇家の相続税は
法律上どうなっていますか、これは大蔵省だね。
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政府委員(水野勝君) 相続税法におきましては、関係の規定といたしましては十二条に非課税財産の規定がございます。「皇室経済法第七条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物」というのが一号にございますが、これは二号に一般的な話として「墓所、霊廟及び祭具並びにこれらに準ずるもの」、これも一般的に非課税でございますので、こうしたものとの並びでこうした規定があるものと思われます。その以外のものとしては特段の規定はございません。
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○近藤忠孝君 「皇位とともに皇嗣が受けた物」、そうでないいわゆる私有財産、ですから相続税の課税対象となるものとならないもの、この区別は実際どうなっていますか。
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政府委員(
山本悟君) 皇室経済法第七条の規定による「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」、これは先ほど主税
局長から
お話がございましたように非課税でございますが、これの範囲というものにつきましてはいろいろ言及をいたしておるわけでございますが、この法制定以来からのいろいろな諸論議というものを踏まえて
考えますと、三種の神器はもとより、宮中三殿でありますとか、皇室がずっと伝承されてきました御由緒の図書、例えば東山御文庫といったようなものでございますとか、あるいは壺切の御剣といったような、これはずっと何百年と続いているようなものでありますとか、その他御由緒の美術品の一部といったようなものが相続されるのではなかろうかというように存じております。
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○近藤忠孝君 そうすると、それ以外は私有財産で課税対象と。
そこで、株や各国王室から相当な贈り物が来ていますね。その他相当な私有財産があると思うんですが、どういうものがどれほどあるのか。どうでしょうか。
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政府委員(
山本悟君) ただいま御
質問の御私有のものの中身が幾らかという点につきましては、御私有でございますからお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
ただ、どんなものがあるかということでございますが、戦後皇室の財産は、御案内のとおりに戦争直後の各種諸税を納め、さらに憲法八十八条の規定によりまして、ごく一定のものを除きましてすべて国有に移ったわけでございます。したがいまして、御案内のとおり、現在、陛下を初め、内廷の皇族は不動産等は一切所有されていない、お使いになっているものはすべて国有財産であります。
そういうようなことで、当時私有といいますか、内廷に残されました国有以外のものといたしましては、これはGHQの承認を得てという話でございましたが、現金千五百万、そのほかお身の回り品でありますとか、御養蚕所の器具でありますとか、あるいは御生研のものでありますとか、そういったようなものが中心になって残されていた。その後は御案内のとおり、新宮殿ができましたときに特別に、美術品といったようなものはすべて
予算によりまして国有財産として購入させていただいて飾っているわけでありまして、特段にそういった意味のものがふえているというぐあいには存じておりません。
また、ただいま御
指摘のございました外交交際上の贈答品、これはまだ国有財産としての取り扱いはさせていただいておりませんが、必要なときには必要な処置を
考えたいと存じております。
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○近藤忠孝君 今の範囲だと、私的財産がほとんどなくなってしまうような感じもしますがね、私は問題は、区別が不明権なまま非課税対象が多過ぎるというようなことになりますと、それからまた、あるいは高松宮のときのような、特例で寄附をして、そして実際に使うというようなことはやっぱり避けるべきだと思いますね。一般
国民と同様な扱いをすべきだと思うが、どうでしょうか。
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政府委員(
山本悟君) ただいま申し上げたような概要でございますが、現行法制のもとにおきましては、その法制に従うということだけを申し上げておきます。
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委員長(
原文兵衛君) 以上で近藤忠孝君の質疑は終了いたしました。
明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後七時四分散会