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1988-03-11 第112回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月十一日(金曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  二月二十二日     辞任         補欠選任      斎藤 文夫君     坂元 親男君      近藤 忠孝君     上田耕一郎君      佐藤 昭夫君     吉岡 吉典君      喜屋武眞榮君     下村  泰君  三月一日     辞任         補欠選任      勝木 健司君     橋本孝一郎君  三月二日     辞任         補欠選任      橋本孝一郎君     勝木 健司君  三月十日     辞任         補欠選任      岩上 二郎君     松浦 孝治君      上田耕一郎君     近藤 忠孝君      吉岡 吉典君     神谷信之助君  三月十一日     辞任         補欠選任      降矢 敬義君     佐藤謙一郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 工藤万砂美君                 佐藤謙一郎君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 田中 正巳君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 林 健太郎君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 松浦 孝治君                 松岡滿壽男君                 稲村 稔夫君                 小川 仁一君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 及川 順郎君                 広中和歌子君                 和田 教美君                 神谷信之助君                 近藤 忠孝君                 勝木 健司君                 野末 陳平君                 下村  泰君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       粕谷  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        的場 順三君        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   増島 俊之君        総務庁統計局長  百崎  英君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        防衛施設庁労務        部長       山崎 博司君        経済企画庁調整        局長       横溝 雅夫君        経済企画庁国民        生活局長     海野 恒男君        経済企画庁物価        局長       冨金原俊二君        経済企画庁総合        計画局長     星野 進保君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        環境庁水質保全        局長       渡辺  武君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   荒木  寛君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁長官官房        水資源部長    大河原 満君        国土庁計画・調        整局長      長沢 哲夫君        法務省入国管理        局長       熊谷 直博君        外務大臣官房長  藤井 宏昭君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省経済局次        長        内田 勝久君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君        大蔵大臣官房総        務審議官     角谷 正彦君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省証券局長  藤田 恒郎君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        文部大臣官房長  古村 澄一君        文部大臣官房総        務審議官     川村 恒明君        文部大臣官房会        計課長      野崎  弘君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省教育助成        局長       加戸 守行君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文化庁次長    横瀬 庄次君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   佐々木喜之君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省農蚕        園芸局長     吉國  隆君        農林水産省食品        流通局長     谷野  陽君        食糧庁長官    甕   滋君        林野庁長官    松田  堯君        水産庁長官    田中 宏尚君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        工業技術院総務        部長       山本 貞一君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        特許庁長官    小川 邦夫君        中小企業庁計画        部長       田辺 俊彦君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働大臣官房審        議官       齋藤 邦彦君        労働大臣官房審        議官       佐藤 仁彦君        労働省労働基準        局長       野見山眞之君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        建設省河川局長  萩原 兼脩君        自治省行政局長  木村  仁君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省財政局長  津田  正君        自治省税務局長  渡辺  功君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君    参考人        日本銀行総裁   澄田  智君        税制調査会会長  小倉 武一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会開会いたします。  この際、御報告いたします。  去る二月十九日、本委員会において安恒良一君から要求のあった資料につきましては、理事会においてその取り扱いを協議した結果、要求のとおり提出されましたので、本日お手元に配付することといたしました。  以上、御報告いたします。  なお、政府は今後、「補正予算の租税及び印紙収入見積概要」については、今回再提出した内容で資料を提出するよう委員長から要望いたします。     ─────────────
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) まず、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十三年度総予算案審査のため、来る三月二十二日に公聴会開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、総括質疑に関する理事会協議決定事項について御報告いたします。  総括質疑は七日間分とすること、質疑割り当て時間は総計九百八十一分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党護憲共同それぞれ二百六十四分、公明党国民会議百五十一分、日本共産党百十三分、民社党・国民連合七十五分、新政クラブ税金党、二院クラブ・革新共闘及びサラリーマン新党参議院の会それそれ三十八分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。     ─────────────
  8. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十三年度総予算案審査のため、本日、日本銀行総裁澄田智君及び税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  10. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより総括質疑を行います。久保亘君。
  11. 久保亘

    久保亘君 二月一日の衆議院予算委員会において、我が党の山口書記長災害遺児奨学制度の実現について総理に強く要請をいたしました。これに対して総理の方から、四月一日を念頭に置きながら御要請に沿う形で鋭意検討を進めてまいりますと、こういう御回答をいただいております。また、二月十七日には公明党坂口政審会長からも同じ要請がありまして、このときには、間に合うように財源も含めて今内政審議室が中心で鋭意検討しておるという御答弁になっておりますが、この問題について鋭意検討を進められた結果について総理のお答えをいただきたいと思います。
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) きょうから参議院総括質疑が始まりますので、よろしくお願いをいたします。  今の久保さんの御質問でございますが、今おっしゃったとおりで、そもそもは昭和六十年二月六日の予算委員会等矢野絢也議員からの質問に対して、当時中曽根総理が、災害遺児実態調査については御趣旨を体し、関係団体とも協力し努力したい旨の答弁をしまして、それから実態調査をし、調査結果を発表して今日に至って、今御指摘なすったとおりの経過をたどっておることは事実でございます。  依然として、他の原因、父母の病死、失業などにより経済的に進学が困難になった方との均衡というような問題がございますので、慎重たらざるを得ないという形で検討をいたしておるところでございますが、これは党首会談でも出た問題でございますので、現在の進みぐあいについて今具体的にお答えできる段階ではございませんが、先日も私と文部大臣の間で協議をしてその促進方を指示した、こういう段階とお答えした方が適切かと思います。
  13. 久保亘

    久保亘君 四月一日に発足できるようにやっていただけますか。
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 四月一日という意味がいわゆる新学期の進学ということを念頭に置いてという考え方であろうと思っておりまして、したがって制度、施策が四月一日ということに必ずしもあるいはならぬかもしれませんが、そういうことを念頭に置いて検討をしておることは事実でございます。
  15. 久保亘

    久保亘君 そうすると、この問題は、発足させていただきましたら次年度からは交通遺児育英会に対する奨学金貸与事業財政援助などと横並びで引き続き援助をしていただけるものと理解してよろしゅうございますか。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 交通遺児の場合は御案内のように大変因果関係がはっきりしております。はっきりしない問題でございますだけに、文部省育英会の中での措置の方法をも含めて今検討しておるということでございますので、具体的に同じような制度、仕組みができてこうなりますというところまでは率直に言ってまだ到達しておりません。
  17. 久保亘

    久保亘君 これはお約束でございますから、必ずやっていただきたいと思います。  それでは、最初竹下総理政治姿勢に関して二、三のお尋ねをいたしたいと思います。  最初はまず、中曽根政治継承ということを言われておりますが、中曽根政治の何を継承し、何を継承しないのか、このことについて総理の御見解を伺っておきたいと思います。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず基本的に申し上げられますことは、政党名をあえて申し上げますならば自由民主党政権というものの継続の線上は竹下内閣というものが存在しておるという問題意識はまず持っております。したがいまして、私として今考えておりますのは、やはり戦後政治の総決算という表現ではございましたが、その表現についてはいろいろな議論があるにいたしましても、現実の改革課題として唱えられてまいりました一つ行政改革路線、次に財政改革路線、そして税制改革路線、さらには教育改革路線、これらを推進していくという意味におきましては中曽根政権継承であるというふうにお考えいただいて結構であると思っております。
  19. 久保亘

    久保亘君 中曽根政治竹下政治とで何が変わるんですか。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 非常に難しい問題でございますが、身長、体重、顔かたち、やっぱり違っておりますだけに、あるいは政治の手法とか持ち味とかいうものが違ってくるのかな、こういう感じは持っております。
  21. 久保亘

    久保亘君 それでは、私は具体的にお聞きいたしますが、大統領的首相というのをあなたは目指されますか。
  22. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その大統領的首相というものはどういうものであるか、本当は正確に勉強してみたことはございませんけれども、私自身持ち味をみずからで振り返ってみますと、かなり遠い距離におるのじゃないかなと、こう思っております。
  23. 久保亘

    久保亘君 もう一つお聞きしたいのは、中曽根さんは、憲法改正内閣として日程にのせるということはおっしゃいませんでしたけれども、自分は改憲論者であるということをはっきりされてまいりました。竹下さんは改憲論者ですか、憲法を守る立場にお立ちになるんですか。
  24. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、憲法遵守義務というものがございますので、窮屈な言い方をすれば当然守る立場に今日置かれておるわけであります。が、久保さんのお尋ねは、政治家として、俗に大別して改憲論者護憲論者とあればどっちの範疇に属するか、恐らくこういうことでございましょうが、少し話が長くなって申しわけありませんけれども、戦後、まだ学生時代でございましたけれども、戦争裁判等を傍聴に参りまして、それからまた憲法論議がかまびすしく行われるようになった当時、私自身は何だか翻訳憲法というようなものにある種の抵抗を感じておった時代があったと思います。あるいは私の戦後の青春時代の一こまであったかもしれません。  それから若干長ずるに及びまして最初疑問に思いましたのは、八十九条でございますか、公の支配に属しない慈善、宗教、教育等に公金を支出してはならぬというときに、私学助成の問題とか、あるいは私が農村の青年団長でございましたのでそういう青年団運動とか、そういうところへ財政支出がなされないというようなことはどうかなというような疑問を持ったことがございます。  それからいま一つは、さらに長ずるに及びまして暫定予算という論議をしますときに、旧憲法時代は、御案内のように、予算が成立せざりし場合は前年度予算を執行すべしというようなものがあったり、今日もドイツの基本法においては非常に厳密に規定されてそういう予算執行上の問題が正確に書いてある。ところが、我が国においてはそれが暫定予算という財政法規定のもとになっておる。この辺に幾ばくかの矛盾があるのかなと、こんなことを感じたことはございます。  したがって、やはり憲法というものには絶えず勉強していく姿勢だけは持ち続けてみたいなという気持ちは持っておりますけれども、平和主義民主主義議会主義、そういうものを否定するような考えは全くないという点、現行憲法の精神を守るという点においてはまさに私は護憲論者と、こういうことが言えるでありましょう。ただ、絶えず勉強して、お互いがそれは私学財団をつくったりして、国会の先生方協議して本当にいろんな解釈の中で合理化しておる問題もございます。それらの問題は孫子の時代にでもまた矛盾感じてくる問題もあるいはあるのかなというような気持ちでございますので、憲法というものに対する勉強というものはいつまでも続けていかなきゃならぬという考え方は持っておると言わざるを得ないと思います。
  25. 久保亘

    久保亘君 今の世界の状況その他を首相として見ておられて、日本国憲法の九条の持つ意義は非常に重いとお考えになりますか。
  26. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そのとおりに思っております。
  27. 久保亘

    久保亘君 もう一つお尋ねしておきたいのは、今教員免許を取得する場合に日本国憲法免許状取得必須単位となっていないのでありますが、採用になります場合には日本国憲法遵守の宣誓をいたします。このことは私どもとしては非常に奇異な感じがするのでありますが、総理はどうお考えになりますか。  また、文部大臣は、憲法免許状取得必須科目から外されていることについてどうお考えになりますか。
  28. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大臣からお答えします前に、ちょっと事実的なことだけ私から申し上げさしていただきたいと思います。  御案内のように、教員免許制度におきましては、戦後は一般教育科目の中の一環として憲法を必須ということで来たわけでございますけれども、昭和五十年ごろであったかと思いますが、一般教育に関する大学制度の全体の弾力化との関連でその一般教育関係規定免許制度から削りました関係上、必須科目から外れたということになっております。  ただ、文部省といたしましては、憲法教員になる者が勉強していただくことは大切なことだと考えまして、その後、文書により各大学にできるだけ履修させるようにという指導をしておるところでございます。
  29. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 教育は人づくりでございまして、その根本は憲法にございます。日本国憲法は、教育に関することと申しますか、まず議会制民主主義を定めておりますし、この議会制民主主義を守るのは国民の努力であるということが第十二条に定めてございますし、それから、すべての国民はひとしく欠乏とそれから恐怖、これを避けて平和な生活をすべきものである、それを進めるためには我が国だけでなく諸外国にも目を向けると、こういう原則は教育そのものに反映しなければならぬものと私は思います。  この憲法の精神を受けて教育基本法ができておりますし、人が人を教える人づくりの面では、これは当然、そこにあるなしにかかわらず基本といたしまして貫かれるべきものと、このように考えております。
  30. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱり専門分野である文部大臣のお答えが私も正確であるというふうに思います。  私自身昭和二十二年に一級普通免許状というものをいただいておったことがございましたが、そのときは宣誓したのかどうか本当は記憶になかったものですから、今しばらく答弁を聞いた後で答えた方がいいと思っておりましたが、やはり文部大臣がお答え申し上げたことが私も正しかろうと思っております。
  31. 久保亘

    久保亘君 次に、政党の選挙公約というものの重さをどのように御認識になっておりましょうか。
  32. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 公約とは何ぞや、どこの場合でどういうふうに表現したものが公約であるかというような議論をあえてしようとは思いません。公約というものは公の約束でございますから大変重いものであるという問題意識は持っております。
  33. 久保亘

    久保亘君 今公約に関して国民が非常に不信を持ちます代表的なものは、選挙公約の重要公約として自民党がお出しになりました、やると言ったものでやらないものに整備新幹線があります。やらないと言ってやろうとしているものに大型間接税があります。これらは政党が約束をしたその重みというものについてしっかり認識をしなければならぬ問題なんじゃないでしょうか。
  34. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 例示をして申されたことでございますが、整備新幹線問題につきましては、この竹下内閣になりましてからも今関係者で協議を続けておる、財源問題等が主体でございますが、協議を続けておるという段階でございます。  それから二番目の問題でございますが、強いて公約といいますならば、税制改革をやりますということが収れんしてみるとやはり公約であったなというふうに私は考えております。
  35. 久保亘

    久保亘君 今の後で言われた問題は、私後ほどまたお尋ねしたいと思いますが、はっきり大型間接税は導入しないというのが公約なんですよ。その辺はうまい言い回しで意味不明にされることはよくないと思うんです。  それからもう一つお尋ねしておきたいのは、重大な公約を変更するときまたは新たな重要な政策を行おうとするときは国民の合意を求めることは当然のことでございまして、このことについては竹下総理はしばしばおっしゃっていることであります。しかし、合意の尺度は何か、何で合意と見るかということは非常に重要なことでございますが、そこはどのようにお考えでしょうか。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国民のコンセンサスが那辺にあるかという言葉をよく使っておりますが、合意というものが、およその合意が得られたと判断するということは、これは私は最終的には大変な政治的決断になる問題ではなかろうかというふうに考えております。どこでそれを一番自分の決断の素材とするかというのは、これは立派な国会の論議じゃないがなというふうにいつも思っております。
  37. 久保亘

    久保亘君 国会の論議を通して合意が得られたということが非常に判断しにくい場合、議会制民主主義のもとで最終的な合意の判断を求めるものは選挙であるということは御同意いただけます
  38. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 選挙というものについて、任期満了選挙もございますれば、あるいは解散による総選挙というものもそれはあるでございましょう。が、選挙というものは、結局いろいろ戦後の歴史をせんじ詰めてまいりますと、最初本当に六十九条によりますところの内閣不信任案の提出の場合のみにしか解散はできないじゃないか、こういう議論もあって、それでたしか戦後一回だけ、したがって六十九条によって内閣不信任案が通過し、よって七条によって解散するというのが昭和二十三年でございましたか、たしか一回だけございました。あとは憲法七条によりというのがすべてはなっております。  そのときの議論を読んでみますと、言ってみれば内閣総理大臣は国会で指名を受ける、すなわち主人は国会である、それを勝手に主人の首を切るというのはおかしいじゃないかと、こういう議論から延々となされた議論がございますが、今日定着してまいりましたのは、行政権者内閣総理大臣に、内閣に与えられた最高判断に基づく最高権限と、こういうことが定着してきたわけであります。したがって、国会が機能しなくなった時点であるとかいろいろな時点でそれは判断されるべきものであるといるふうに私は考えておるところであります。  一つ一つの政策変更について、その都度いわば国民の信を問うという論理がそのまま通用する論理では必ずしもないと私は思っております。
  39. 久保亘

    久保亘君 私、重要な政策と申し上げておるのでありまして、国会でも議論が一致しないという場合には、当然に選挙によって国民の合意を求める以外に方法はないのだと思うんです。  ところで、選挙のことについて最後に政治姿勢として伺いたいのでありますが、竹下さんは年頭の抱負で、同日選挙の定着は恐ろしいことである、二院制の否定につながるという意味のことを申されました。間違いありませんか。
  40. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 恐ろしいことという言葉を私比較的使いませんので、恐ろしいこととは言ったとは思いませんが、同日選挙が定着するということは二院制の否定につながるおそれがある、だから意図してやるべきものではないという趣旨のことは、時に臨み絶えず申しておることでございます。
  41. 久保亘

    久保亘君 私も大分年をとりましたんですが、私直接テレビで聞かしていただきましたので、恐ろしいことという言葉をお使いになりました。だから、恐ろしいことはおやりにならぬだろうなと思っておるんですが、いかがでございますか。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) したがって、私自身がそういう気持ちを持っておるということは事実でございますけれども、内閣の持つ固有の権限を縛る発言というものをしてはならぬという考え方も私はまた一面持っております。
  43. 久保亘

    久保亘君 中曽根さんがそれこそ大統領的手法でおやりになったんでしょうが、別の名目で臨時国会を召集して、同日選挙をやるために国会を解散なすった。ああいう政権を握っている者が政略的に同日選挙を選択するということは、総理がおっしゃった立場からいいますとよくないことだと思うんですが、いかがですか。
  44. 竹下登

    国務大臣竹下登君) どういう表現が正しいでございましょうか、それを仕組むというようなことは私は好ましいことじゃないと思っております。  二回にわたって過去同日選挙がございましたが、第一回の昭和五十五年というのは六十九条に基づく、要するに不信任案が通過したという事実がございまして、そのことがたまたま参議院の選挙と大体同じ時期になって、たしか私も閣僚でございましたから、一週間の差をつければつけられぬことはないという感じでございましたが、二度投票所へ足を運んでいただくよりも一度投票所へ足を運んでいただく方がいいではないかと。いろんな考えでたまたま同じ日になった、一週間ぐらいの差があったというふうに思っております。  それから六十一年の同日選挙というものは、要するに違憲状態——断定ではございませんが、そういう判決がございまして、したがって可能な限り違憲的状態を早く脱却するためには、その土俵が与野党合意においてできたならばいち早く審判を受けて出直しすべきである、こういう論理でその日にちが一緒になったというふうに私は自分では理解をしております。
  45. 久保亘

    久保亘君 私は中曽根内閣が行いました政略的、だまし討ち的国会召集による解散というのは、これは憲政の常道にもとるものだと思っておりますし、また大平さんのときは必ずしも絶対多数ではありませんでしたけれども、絶対多数を与党として持つ内閣が不信任を受けた場合の選択は総辞職である、こう考えております。  それでは、引き続いて税制改革の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、衆議院審議の段階における与野党の減税合意についてであります。私もこの合意についていろいろその後政府関係者、与党の関係者の御発言も聞きまして、これはやっぱり信ぜよ、しかし検証を怠るなということだと、こう思っておりますのでお尋ねするのであります。  要求金額を含めて減税には与野党の合意があったんでしょうか、大蔵大臣
  46. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまのお尋ね要求金額を含めて合意があったかということでございますが、合意事項を政府としてはそのまま拝読しておるわけでございますが、金額というものが特にここで言われておるとは思っておりません。恐らくは、「政策担当者で協議する。」ということが第二項にございますので、そのときのお話になるのであろうかと想像しておりますが、合意事項そのものが金額を直ちに含んでおるというふうには承っておりません。
  47. 久保亘

    久保亘君 もう一つの点は、財源について合意文書にありますことを政府はどう理解されておりますか。三党の要求する歳入財源を対象として検討することで合意をされているというふうに理解されておりますか。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そもそもこの合意事項を政府が有権的に解釈する立場にございませんので、殊にこの合意事項に至りました経緯は非常に各党の国対委員長が御苦労をされた結果の結晶でございますので、その辺は大変微妙な点もあろうかと思いますので、なおさら政府があれこれ申すべきでないと思っておりますが、第二項によりますと「「その他の項目」を含め」云々と書いてございますので、そういう立場から各党政策担当者でこれから御協議になるのであろうというふうに推測をいたしております。
  49. 久保亘

    久保亘君 少なくとも野党が修正要求をいたしましたものがベースになってあの合意が生まれているのでありますから、財源についてあれだけ明示されている以上合意のないものが検討の対象になるということはない、このことは大変賢明な大蔵大臣ですからよくおわかりになっておるでしょう。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) もう一遍、政府として有権的にあれこれ申し上げるべきでないということを前提にいたしまして申し上げますが、この第二項に当たります部分には何々「を含め各党政策担当者で協議する。」と書いてございますので、御協議がこういうラインで展開をするのではないかと推測をいたします。
  51. 久保亘

    久保亘君 よくわかりませんが、後でまた具体的にお尋ねいたします。  ところで、この合意は、予算成立までに結論を得るものとするということになっております。もちろん政府も与野党の合意でありますからこれにかかわっていかれると思うのでありますけれども、修正要求をベースにして与野党の合意で予算成立までに結論を得る、こうなっているんですから、結論が出なければ参議院としては予算を議了することができない合意になっている、私どもはそう理解いたしておりますが、政府の方もそのような御理解でいいんでしょうね。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは院の御決定に関することでございますのでなおさら政府が申し上げることではないと存じますが、衆議院に起こったこと自身だけを申し上げますならば、このような合意があり、その上で政府の提案いたしました昭和六十三年度予算案が衆議院で可決をされております。これは事実そのものの御説明でございまして、お尋ねそのものは、これは参議院の院の御意思の御決定に関することでございますので、政府がかれこれ申し上げるべきことではないと思います。
  53. 久保亘

    久保亘君 あなたの方が政府立場でそういうことで非常に難しい問題を回避されるのは結構です。それはそれでよい。しかし、我々は少なくとも政府もかかわって合意をされたこの合意をそのとおり受けとめて参議院の審議をやらなければならぬ、こう思っております。特に、修正要求を受けての合意でありますから、衆議院を通過いたしました六十三年度の予算案というものと、この合意と、合意に基づく結論というものは一体のものとして受けとめなければならぬものだと考えておりますから、そのおつもりでお考えいただきたいと思います。  ここで、御出席いただいておりますから、税制調査会長にお尋ねいたしますが、今回の衆議院審議の段階における与野党の合意を政府税調としてはどのように受けとめていらっしゃいますか。
  54. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 実は、ただいまお話しの与野党の合意ができてから政府税調を開いたことがございませんので、したがってまだ正式にお聞きしておりません。新聞等で個々人が承知しておるというそういう段階でございますので、ここでどうこうと申し上げられませんが、いずれ政府から合意のほどの内容なりあるいはその後の展開については逐次御連絡があると思いますので、その折のことに譲りたい、こう思っております。
  55. 久保亘

    久保亘君 これまで随分大胆な御発言をなさっておるようでございますが、あの減税合意について政府税制調査会の会長としてどういうふうにお考えになったかということをお聞きしているんです。
  56. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 無論、会長として今申し上げたように感じておる次第であります。
  57. 久保亘

    久保亘君 そこまでおっしゃるなら、後でお聞きしようと思っておりましたけれども、あなたにお聞きいたしますが、今の税制の中での一番問題は何かといえば医者と政治家だとあなたおっしゃったようですね。一番問題なのは政治家だとおっしゃった、その中身は何ですか。
  58. 小倉武一

    参考人小倉武一君) これは税調の中の討議のことに関連いたしますけれども、不公平税制の是正ということが税調内外を通じて大きな国民的な世論みたいなことになっておりますけれども、税調の中での議論を聞いてみますと、どうやらやっぱりクロヨンとかトーゴーサンというような声が聞こえてきます。恐らくこれはサラリーマンから見た言葉だろうと思いますが、どうも余り人のことばっかりで、御自分の、サラリーマンの税金が苦しいなら、サラリーマンの税金が苦しいからそれを軽減するのが当然だというのに重点があるべきはずが、ほかの職業ほかの職域についてのことを余り大げさに言われることはいかがかということで、そういうことのたしなみとして申し上げた次第であります。
  59. 久保亘

    久保亘君 政治家が一番問題だと税制調査会長がおっしゃったんですから、政治家の問題、一番問題だと言われるその中身は何ですかと私はお聞きしておるんです。
  60. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 何か、それはどういうところにどういうふうに書いてあったのか私存じませんが、政治家が一番問題だというような発言はした覚えはございませんです。お医者さんだとか政治家というふうなことには言及したことはございますが、一番どうこうというようなことを申し上げたことはございません。
  61. 久保亘

    久保亘君 余り時間をとってもなんですが、医者と政治家には言及したと言われたんだから、それじゃ医者と政治家に言及されたその根拠は何ですか。
  62. 小倉武一

    参考人小倉武一君) ただいま申し上げましたように、サラリーマンが他の自営業者あるいは農民というものを例に挙げて、彼らは税金を免れておるし脱税をしておるがごとくクロヨンとかトーゴーサンとかいうふうに言われるはことは余り好ましくない、そういうことの関連において申し上げたわけです。
  63. 久保亘

    久保亘君 随分はっきりしたことをおっしゃる方だとお聞きして尊敬をいたしておりますけれども、ただいまの答弁は自分の言ったことに余り責任をお持ちにならぬ答弁じゃないですか。
  64. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 事柄の性質にもよると思いますけれども、国会ではお答えをするというようなことについては無論責任がございますでしょうけれども、まあ参考人ですからどの程度の責任があるかとは、これは私、法律的によく存じません。ただし、週刊誌等のインタビューに応じて話しすることについて表現がそのものであることはなかなか難しいわけです。本人の言ったことがそのままであることは非常に難しい。これは先生方もよく御経験になっておると思いますが。したがって、どういう責任をとるかとらぬかというような問題とは非常に異質、質が違う、こういうふうに存じます。
  65. 久保亘

    久保亘君 私は何もあなたの責任を追及しているんじゃなくて、よく思い切ったことをおっしゃったなと思って、だからぜひその中身を教えてもらいたい。それを今後の税制改革に当たっての重要な参考にしたいと思うからお聞きしたんです。自分の言ったことに責任を持てなくて答えないと言うなら結構です。  次に、この合意の内容を見ると、不公平是正の重要さを結果として認めることになっているわけですね。だから、五十四年の財政再建に関する決議にある不公平税制の是正とか既存税制の見直しというようなものが今まで余りやられてこなかったということが今度の減税合意のあの中身にはっきりあらわれたものだと思うんですが、もしやってきたのだというなら、どの程度行われたのか、大蔵大臣総理大臣にお聞きしたいと思います。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 何をもって不公平税制と言うかということにはいろいろ議論があると思いますけれども、例えば今ちょっとお話が出ておりました勤労所得と事業所得との課税の問題、それを例にとって申し上げますならば、先般の税制改正におきまして配偶者特別控除というものをお願いした、あるいは、みなし法人の場合に家族の給与所得をどこまで給与所得と見るかということについてやはり一定の制約を設けるべきではないかといったようなことは、給与所得及び事業所得おのおのの側におきまして、その間の不公平を制度の上で是正すべきであるということのあらわれというふうに申し上げることができると思います。  また、土地及び有価証券におきまして十分ではないという御指摘はあろうかと思いますけれども、土地の短期譲渡所得について重課をする、あるいは有価証券のいわゆるキャピタルゲインについて、従来よりも一段重課を強化したといったようなこともそれに当たると存じますし、なお行政面におきまして実地調査、いわゆる実調というものを強化し、あるいは帳簿等々の整備について指導と申しますか納税者の協力を強化するといったようなこともいたしてまいったところであります。
  67. 久保亘

    久保亘君 小倉さん、五十四年の決議当時に比べて、不公平税制の是正とか既存税制の見直しというのはどの程度進んだと思っておられますか。
  68. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 既存税制の不公平といいますか、特別措置といいますか、そういうものの見直しというものはほとんど毎年行われておるわけでございまして、それが累年でどういうことになってきておるか、今ここに集計したものを持っておりませんけれども、一方、整理すると同時に他方において新しい特別措置の要求が出てくる。特別措置というのは、名前は必ずしも不公平ということを合意しませんけれども、本則があって本則が公正であるという建前になっておるという点から見れば、例外をつくるわけですから、これは形式的には不公平なというふうにも判断できるわけであります。  これを年々再々繰り返すような状態で、それをどういうふうに押しとどめるかと申しますと、新しい租税特別措置の要求に対しては、既存の特別措置を廃止するといったようなことを身がわりにしてというようなことで、できるだけ増加を防いでおるというわけですけれども、全体としてはある程度減ってきているのじゃないかと思いますが、今申しましたように、ここにこの十年近くの表を持っておりませんので、お答えはちょっと差し控えさしていただきたいと思います。
  69. 久保亘

    久保亘君 総理大臣、その財政再建に関する決議に言うところの税制改革はほとんど実行されないまま、もちろんそのときに一般消費税は完全に否定された。また、その後中曽根内閣によって提案された売上税が否定された。それにもかかわらずこれらの税と同じ線上にあると思われる新型の税の導入を考えるというのは、あなたが言っておられるように、売上税廃案に対する反省というのがほとんどないのではないかと思う国民も多いのですが、いかがでしょう。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十四年の十二月二十一日に御決議をいただきました財政再建に関する決議、私は当時大蔵大臣でございましたのでこのことを記憶いたしておりますが、税負担公平の確保、既存税制の見直し等を抜本的に推進するということでこれから努めなさいよと、こういう御決議をいただいておるわけでございます。その後の五十九年税制改正というものが私は当時念頭にあったのじゃないかと自分でも思っております。五年後という意味でございます。  これの有権解釈をめぐりましては、長田さんが委員長のときに一遍本院の議院運営委員会で有権解釈について議論をちょうだいしたことがございますが、その問題は別といたしまして、あの際苦心してお互いが合意いたしました、いわゆる一般消費税(仮称)はその仕組み、構造等につき十分国民の理解を得られなかったという表現をあのときにも使いましたが、やはり売上税というものを私どもは提案したわけです、それぞれの手続を踏んで。そうすると、最終的にはその仕組み、構造等について国民の理解を得るに至らなかったというのがまず反省の原点にあるべきではなかろうか。  いや、その議論の前に、牛歩国会をやったりいろんな騒動をしたじゃないかと。それもわかりますけれども、その現象をとらえて言うよりも、やはり正確に言うならば、国民の理解が得られておるならばああいう騒動も起こるわけじゃございませんので、結局はその仕組み、構造等につき国民の理解を得るに至らなかったというのがまず反省の原点にある言葉ではないかな、こういう感じでおります。
  71. 久保亘

    久保亘君 私は、悪税に対する納税者である国民の反撃であり、また公約違反に対する主権者である国民の反発であった、こういう立場を明確にされないと、税制改革の機は熟したと言って独断と偏見を持ってこの新しい税制を考えるということは非常な誤りを犯すことになるだろう、こう思うんです。  そこで、きのう衆議院でお述べになりましたいわゆる大型間接税の六つの懸念というのは、これは私は懸念というようなものではないのじゃないか。これが大型間接税の持つ本質的な性格そのものであって、その制約的な本質のゆえに国民の反対を受けたのではないか、こう思うんですが、いかがですか。
  72. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 批判を受けることを承知の上で、そういう言葉もお許しの中へちょうだいして私なりの考え方を述べたものでございますが、一般論として、今御指摘なさいましたように、間接税の持つ懸念、それが大型間接税という言葉で懸念を増幅してあるということを整理して申し上げたのが大別して六つの懸念であって、その懸念が払拭される努力というものをやっぱりやっていかなきゃならぬのではないか。  すなわち、勤労所得というものがこのままにしておけばどんどんどんどん税収の大宗を担う立場になったときに、いわゆる消費の段階で国民が納税の義務を果たすのか、所得の段階で果たすのかという議論というのは当然出てくる議論であろう。そうなれば、間接税の持つ一般論としての懸念というものをぬぐい去る努力をしなきゃならぬ。それが一番の機会はいわば国会の問答等においてそれが和らいでいって、そしていま一つは歳出を伴う諸施策等によってそれが理解されてくるという問題と、もう一つは経済政策全体の中における税の構造全体の姿と経済政策全体の中におけるインフレ懸念というようなものを議論していく中に和らいでいくものじゃないかということを申し上げたわけでございます。
  73. 久保亘

    久保亘君 そういう懸念といいますか、その持っている非常に困った本質的性格というものを緩和するということは努力によってある程度できるかもしれませんが、その性格を克服するとか完全にぬぐい去って全く無害のものにするなんということは、この間接税の持っている性格からしてそれは不可能なことだということはおわかりでしょう。
  74. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわば諸施策を考慮しないままに純粋な論理を構築した場合、これは久保さんのおっしゃる論理もあり得るというふうに思っております。しかし、日本以外のところにおきましてそれぞれいわゆる消費一般にかかる税制というものが今日現存しておる限りにおいて、これはお互いの問答の中で理解に到達する課題であろうという考え方と期待感を込めた考え方を持っておるということであります。
  75. 久保亘

    久保亘君 今総理がそういうふうにおっしゃるならば、この間接税の持つ六つの懸念を最も克服しやすい類型というのは、あなたはどういうものを考えておられるんですか。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 六つの懸念というものを克服しやすい類型ということになりますと、私自身それを頭の中で論理の構築を今日しておるわけでもございませんし、やはり予見のうちに入るのかな、こういう感じがしますので、これは問答の中でお話しすることがあり得ても、私はアイシンクザット、こういう形でお答えするには少しちゅうちょを感ずるということでございます。
  77. 久保亘

    久保亘君 しかし、あなたは踏み込んで六つの懸念、そしてこの懸念は克服できるとおっしゃっているんだから、それは今政府税調でもいろいろな類型について議論している、そういうものについてあなたも十分脳裏にあってのお話ではないんですか。ただ大蔵省の役人がお書きになったものをお読みになったとは、あれだけの豊富な経験をお持ちのあなたでそういうことがあるとは思わないので重ねてお聞きしたいんです。
  78. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いろんなことを苦悩して書いたわけでございます。卒業論文というのはいい論文という意味じゃなく、苦労して書いたという意味における卒業論文であるというふうに私は申し上げたかったわけでございます。  まず第一番目に考えましたのは、一般的に言われるいわゆる所得に対する逆進性——累進性というものがある限りにおいては一方逆進性というものがあるという論議につきましては、私どもはこれは政策的な施策の中で解消できる面と、いま一つは税全体の構築の中で、中堅所得者の方に言ってみればこのような減税部分が行われることによって逆進性は全体としてこのように和らいでいきますとかいうような個々の説明はできるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ、最後の、インフレ懸念という問題につきましては、これは経済政策全体の問題ともなりますけれども、元来、仮にもしすべての経済政策を固定化したままで考えたら、ある種の物価上昇というのが転嫁がなされなければいけないという諭理もこれは成り立つわけでございます、他の合理化努力なんというのは別といたしまして考えれば。しかし、それらがまた実態として、いわば課税最低限の問題とか生活保護費の問題とかいう政策課題としてこれも中和されてくるのではないか。したがって、税構造全体、直接税、間接税、あるいは所得の中における十種類のそれぞれの所得の全体像の中でそういうものは大体中和されていく性格のものだということを申し上げるために、御議論いただくための素材として六つのことを申し上げてみたわけでございます。  したがって、久保さんは恐らく頭の中では、いわゆる多段階とか単段階とか、そういうところまで踏み込んで竹下考えているんじゃないかと、こういうお気持ちであろうかと思いますが、私も全くそういうことを知らないわけではございませんけれども、多段階、単段階とかいうような問題以前の問題として、一般論として間接税から来る懸念に対する六項目を申し上げて、それは議論の段階で中和できるものじゃないかというふうに、克服と言うと少し言葉が大げさかもしれませんが、中和できるものではないかというつもりで、苦吟の末申し上げた見解であるというふうに御理解願いたいと思います。
  79. 久保亘

    久保亘君 卒業論文とおっしゃったけれども、そもそもあれをけさ新聞でも詳しく読ませていただいて、これはもう廃止になる共通一次テストと同じで、とても評点に値するものではない、私はこう思っております。  それで、この懸念というのは、あなたがおっしゃるように、克服ということは無理だと、まあしかし、ある程度緩和の努力をすれば国民の納得は得られるのではないかと、こういうお考えだと思うのでありますが、私どもはそういう国民生活に深刻な影響を及ぼしてくる懸念、しかも今までの自民党政府のやり方からいたしますと、例えば防衛費の問題だって、GNP一%の問題を非常に中身の不明な総額明示方式にすりかえて一%を突破させるということをおやりになった方が、税率の問題については国会があるから上がらないと言われたってだめなんです。また社会保障で歳出で考慮できると言っても、現にあなたがおつくりになっている予算は社会保障や教育の予算をどんどん下げているわけです。そういう中で国民はとてもそういう問題に納得をすることはできない。国民生活に深刻な影響を及ぼすということがわかって、そういう懸念を知りながらなおかつ導入しなければならぬとお考えになるとするならば、その理由は何ですか。また、今なぜそれを急がなければならないかということについても教えていただきたいと思うんです。
  80. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今おっしゃいましたように、ちょっと短いところだけ読んでみます。   こうした大型間接税という用語にまつわって人々が抱いている懸念の中には、議論を積み重ねることにより和らぐものもあると思いますが、同時に税制全体あるいは財政全体の中で考えていくべきものもあろうかと思います。 今御指摘なすったとおりでございます。  例えば、税体系が逆進的かどうかは、税体系全体を見て判断すべきものであり、個々の税目ごとに考えるべきではないと思います。また、歳出面をもあわせ考慮する必要もありましょう。さらに、税率の安易な引き上げという点については、国会で御審議、御決定をいただくべき問題であります。事務負担の問題は、我が国の取引慣行にも十分配慮の上工夫をすることも可能ではないでしょうか。 というふうに書いてみたわけです。  国会の問題というのは、これはやっぱり最大のチェック機関だと私は思っております。久保さんの御議論がまさに一世を風靡して——一世を風靡する、表現はちょっと適切ではございませんが、この会場を風靡して私が圧倒されることもそれはあり得るでございましょうし、これはやっぱり国会というものはそれだけの大変な力のあるもので、そう安易に税率が上がるべき性格のものではないと私は思っております。  それで、なぜそんなに急ぐのか、こういうことでございますが、しかし実際今の、勤労所得あるいは源泉徴収によるサラリーマンの方というものの税に対する不公平感というものはこのまま放置しておくべき問題ではない。そうなれば、久保さんは直間でなく直直の中でまた不公平感を抱く要素はいろいろあるのではないか、こうおっしゃいますが、議論を積み重ねていけばいくほど私は結局、物をつくりそしてそれの報酬を得ておる所得の段階で国民の義務たる納税の義務を果たすのか、消費の段階で果たすのかというところへたどり着いていくというのは、また国民全体がある意味においてたどり着いてきておるのではなかろうかというような感じで国会等でも耳を傾けて御議論を承っておるというところでございますので、率直に言って直間そのものが不公平感の大きな要因であるというところはみんな気づきながら、触れるべきか触れざるべきかということを心の中で行きつ戻りつ、私をも含め、そんな感じで臨んでいるのではないかな、こういう感じはいたしております。
  81. 久保亘

    久保亘君 あなたはかつて大蔵大臣のときに直間比率は税制を改革した結果だということをおっしゃっていましたが、今は直間比率そのものを是正の対象としてお考えになるんですか。
  82. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 竹下大——総理大臣
  83. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今委員長竹下大と言っていただいたように、大蔵大臣時代に何回も言った議論でございました。  私もいまだに、本当に直間比率とはあらかじめアプリオリに決めるべきものでなく、結果として生ずるものだという考え方は今でも持っております。したがって、まず直間比率ありきというのではなく、現状において一番正しいと思う税体系を論理構築した場合に結果として出てくるものが直間比率だろう。しかし、昭和二十年代から三十年代、三十年代は直間五分五分でございますが、それから今日までの推移をずっと見ますと、結果として出ておるものに対しての不公平感というものも現実に存在しているのではないかなという感じで見ておるわけでございますが、原則的には直間比率は初めからきちんと決めるべきではなく、好ましい税制を打ち立てた結果として生じてくるものだという考え方は本当は間違っていないと思っております。
  84. 久保亘

    久保亘君 それでは、直間比率を是正するために予見を持って間接税を考える必要はない、こういうことでいいですね。
  85. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の所得税等を中心にした税率構造から出てきておる直間比率というものはやはり参考にすべき問題じゃないか、これがやはり不公平感の大きな要因になっておるんじゃないか、だからこれを直していくというのが結果として出てくる直間比率の是正ではないかなというふうに、今の税構造のところから直して結果的に出たにいたしましても、それは今の議論を積み重ねていくと直間比率の形でいわば今よりも変わったものが出てくるだろうというふうには私も思っております。
  86. 久保亘

    久保亘君 大蔵大臣、この税制改正を急いでそして増税による財源を今考えなければ、大蔵大臣として国家財政を運営できないというふうにお考えになりますか。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま政府が税制調査会に答申をお願いしております諮問は、御承知のように所得、消費、資産の間にバランスのとれた根本的な税制改正をお願いいたしたいということでございます。つまり、シャウプ以来四十年近い時日が流れておりますので、ここでひとつそれは根本的に見直しをいたしたい。  その理由は、所得税につきましてあるいは法人税につきまして、それが非常な高率になって勤労意欲、企業意欲をそいでおる、あるいは先ほどもお話がございましたが、中堅の勤労所得者に非常な重税感があるというような問題、あるいは間接税そのものが個別消費税でございますためにそれ自身がもち切れなくなっておるというような問題、そういう問題を内在しておる。しかも、これからいわゆる高齢化社会を迎えますと、このままの状況でございましたらだんだん年寄りを若い人がしょっていくその率が若い人にきつくなってまいりますから、年寄りは稼得能力がございませんから、若い人の稼得能力、勢い勤労所得から生ずるところの所得税、住民税が今の何倍かにならざるを得ない。そういうことを展望いたしまして、また国際化も展望いたしまして、この際税制の抜本的改正をお願いいたしたい。それはいわば増収を目指すと申しますよりは税制そのものが持っておる問題をここで、長いこと時間がたちましたのでどうしても根本的に見直しをする必要があるという、そういう認識でございます。  先ほど総理大臣お尋ねがございまして、直間比率の問題でございますけれども、今七二・二対二七・八であるということ、それはまことにかなり極端な割合ではございますが、それを見ていきなり、だからこれを直そうと思うのではなくて、随分極端だがこの中身は何だろうと考えてみますと、やはりこれは直さなきゃならない、そういう思考方式でいっておるわけでございます。
  88. 久保亘

    久保亘君 私がお聞きしているのは、大蔵大臣立場で、既に六十五年度財政再建の見通しが立ったと胸を張っておられる大蔵大臣が、今国家財源を確保する目的で税制改革を急がなければならない理由はありませんねということを聞いております。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはこのようにお答えすべきだと思います。  二十一世紀までを展望いたしますと、国民の負担、それは……
  90. 久保亘

    久保亘君 非常に短期的なことを言っているんです。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは社会保険によるものもございましょうし租税負担によるものもございましょうが、かなり上がらざるを得ない。その上がらざるを得ない負担は、これからの問題でございますが、あるいは自然増収によって賄えるかもしれない。しかしその自然増収は、先ほども申しましたような人口、年齢構成、職業構成の変化によりまして、非常に勤労所得に重くかかることになる。そう考えますと、今からそれに対処しておかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  92. 久保亘

    久保亘君 今いろいろ言っておられるけれども、私がお聞きしているのは、いろいろ国民の間に議論があり国会の中でもまだ入り口の前で議論があるのに、そういうあなた方が考えられるような新税の法案をこの国会に提案してまで急がなければならない理由がありますか、またわざわざ臨時国会を開いてまでそれをことしのうちにやらなければならないという財政的な理由がおありですかということを、これはもう端的なことを聞いておるので率直に答えてもらいたい。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) おかげをもちまして経済情勢はかなり好転をいたしておりますから、私どもとしては、昭和六十五年度には赤字国債依存から脱却をいたしたい、それを真剣に実現いたしたいと思っておりますけれども、しかしそれは、当面の問題として財政が何とかやっていけるかということでございましたら、経済運営を間違えなければ何とか赤字国債脱却ぐらいまではやっていける、いきたいと実は思っておるわけでございますが、しかし二十一世紀といいましてもそんなに遠くではございませんでもうじきの問題でございますから、今から国民各層に社会共通の費用は広く浅く負担をしていただく、そういう制度を今つくらせていただきたいというふうに政府考えておるわけでございます。
  94. 久保亘

    久保亘君 宮澤さんほどの人が、日本の大蔵省というのは来年の予算はつくるがその先の見通しはあなた方の中期展望を見たって何にも出てこないでしょう、そういう人たちが二十一世紀の話を今なさるというのは非常に奇々怪々なんです。二十一世紀に向けて大きな政策を論ずることは結構です。しかし今、税制改革の問題で、新税導入の問題で二十一世紀を論ずるほど大蔵省にそんな今までの実績がおありなんですか。
  95. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御承知のようにシャウプ税制が行われましたのは昭和二十四年、二十五年でございますから、それからほとんど四十年に近い日月がたっておるわけでございます。それをそのままこれ以上持っておくことは事実無理だということを先ほど申し上げましたんですが、そういうことからも、今後かなり長い間の税制というものをこの際考えさせていただきたい、その中に二十一世紀という問題意識もある、こういうことでございます。
  96. 久保亘

    久保亘君 それは、二十一世紀に向けて誤りなきよう、今責任を持つ者が十分な時間をかけてやらなければならないことだとお思いになりませんか。
  97. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 実は問題意識は、政府としては今に始まったわけではございませんで、先ほどもお話がございましたが、大平内閣時代に既にそういう問題意識を持ちましてこれに取り組んで今日に及んでおるわけでございますから、私どもとしても実は十年近い日月をこの問題に使っておるわけでございます。
  98. 久保亘

    久保亘君 その十年近い時間の間に、新税の導入については二度にわたって国民に否定されたのです。それならば、十年の経験を言われるならば、その事実を重く見なければいかぬのであって、十年の間かかってもできなかったことをこれからやろうとするならば、さらに慎重な時間をかけた論議が必要ではありませんかということを申し上げております。
  99. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昭和五十四年の国会の御決議がありますように、まず政府が行財政改革をすべきである。これについては御承知のように、予算面におきましてもあるいは行政改革におきましても政府としては随分の努力を払ってまいりましたことは、これは成果が上がっておりますからおわかりいただけると思うのでありますが、まずそういう努力を払い、政府自身が自分の身をいわばスリムにして努力をいたしてまいって今日に及んでおるわけでございます。その上で昨年もこれはと考えましたものを御提案いたしましたが、これは国会のお入れいただくところとならなかった。としますれば、問題そのものがなくなったわけではございませんから、昨年の反省の上に立って、どういう案であれば国民が、国会がこれを受容していただけるかということをただいま税制調査会にもお願いし、また私どもも一生懸命検討をいたしておるところでございます。問題がなくなったわけではございませんので、確かに二度の蹉蹉をいたしました。いたしましたが、このまま置いておくわけにはまいりませんので、何とか国民、国会のお認めいただけるところをひとつ考えなければならない、そういう意識を持っておるわけでございます。
  100. 久保亘

    久保亘君 総理大臣、国民の合意は国会の論議を通じてということをさっきおっしゃいました。それならば、このようなものをどういう手続を踏んで、どういう時間をかけて税制改革を論じていくかという問題についてまず国民の合意、国会の論議を尽くすべきであって、今財政的に短期的に必要を感じているわけではないとおっしゃるのだから、それならばそういうことを慎重におやりになるということが重要であって、七月臨時国会説などをお流しになるということはいかがなものかと思うのですが、どうでしょうか。
  101. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 七月に臨時国会を召集する、召集権者は確かに内閣でございますが、別にそれを今意図しておるわけではございません。  例えて申しますならば、今税制改革の法律案はどうなっているか、これは検討中のものとしておる。というのは、期限を付すなどということをしないで、あるべき姿というものを政府税制調査会へ諮問申し上げておるわけでございますから、したがって、その答申等がいただける状態になったらばその答申を尊重して法案をつくらなきゃならぬという意味において、今いわば検討中のものとして議院運営委員会へ御説明申し上げておるというわけでございます。それを延長して見ますと、この税制調査会等で御議論を願ったものの答申がいただけるという段階にはそれにいつでも取り組むだけの姿勢がなかったら、諮問申し上げた者としてお受けいただいた税制調査会にも非礼に当たるという考え方でございますので、いつでもそれを成案化して御議論をいただくという姿勢は貫いていかなきゃならぬ。しかし、今念頭に七月召集というようなものが必ずしもあるわけではございません。
  102. 久保亘

    久保亘君 この種の問題で非常に重要な国民の理解を得なければならないということの判断になりました場合には、私は、将来にわたっての国家の重要な政策課題でございますから、当然、過去の選挙公約との関係もあり、国民の判断を求めるということが必要だと思うのですが、そうお考えになりますか。
  103. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 問題によって国民の判断を求めるということを私は否定するものじゃございません。が、基本的には、衆議院議員にありましては四年間の任期をちょうだいしておる。その任期はやっぱり国民から与えられた任期として大切に大切にしなきゃいかぬものである。その中で国会の場等の論議を通じて国民の理解が得られ得ると判断できたものは、その中において解決していくということが第一義的に考えられる問題ではなかろうかというふうはいつも考えております。
  104. 久保亘

    久保亘君 私は、今ここで大型間接税の内容について議論をしようとは思わない。我々は、大型間接税の持つあなたの懸念こそがまさにこの間接税の国民にもたらす深刻な影響だと思っておりますから、これは導入すべきでないという立場を明確にいたしております。あなたの方でこの問題の国民的合意、納得を得てということを強調されるならば、少なくともこれらの問題の国会における合意と言う以上は、一党単独で処するなどということはおやりになるべきことではない、こう思うのですが、いかがですか。
  105. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、可能な限りに合意を得ていくという努力は、議会制民主主義の基本としていつも努力すべき問題であるというふうに私は思っております。  ただもう一方、税という問題は二つの問題がありますが、一つは、税という問題について一億二千万全員がこれは賛成だというようなことはなかなか困難な問題であるということも十分認識しておりますし、もう一つ、税という問題を離れて、議会主義というものは、とことん議論をしてその上決しがたいときには多数決主義というものも厳然として存在しておるということはまたいつも忘れてはならないぞと、我と我が身に言い聞かしておるところでございます。
  106. 久保亘

    久保亘君 時間の関係もありますから、税制問題で今度は少し私の方からのお話を申し上げたいと思うんです。  私は、今やるべきことは、五十四年の財政再建決議にもあり税制調査会でもしばしば提言をされてきている不公平税制の是正である。今日の段階において議論の非常に高まっているものにキャピタルゲインの課税の問題がございます。これは今、原則非課税となっていることが不公平の一つの典型とも見られているのでありますが、キャピタルゲインを原則課税とすることについて、大蔵大臣、何か不都合がございますか。
  107. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 総合課税制度のもとにおきましては、原則はすべての所得が総合されて累進税率の適用を受ける、これが原則でございますから、基本的に、キャピタルゲインも所得でございますからそれを課税の対象とすることに間違いはないと思います。
  108. 久保亘

    久保亘君 では、これがなぜ原則課税にならないんでしょう。
  109. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御記憶のように、昭和二十八年まで、三年間でございましたか、この課税をいたしました。今日はそれと比べますとはるかに取引も多く世の中が複雑になっておるわけでございますが、現実の問題として、すべての有価証券のキャピタルゲインを課税するということになりますればこれをどのように把握するかという大きな問題がございます。これが正確に行われませんと課税の公正を期しにくい。  そのことは、いろいろ御議論になっておりますように相当大きな費用と手数のかかることで、これはそれでよろしいとして、しかしそのために、それを徹底的に行うとすれば、例えば納税番号というようなことがどうであろうかというようなことも問題になります。そうした場合に、それが我が国において社会的に受け入れられるものであるか、あるいはプライバシーはどうなるか、その場合に番号を用いなかった経済取引というものは果たして無効になるのか無効にならないのか、たくさんの問題がございますので、今その点を税制調査会に御検討をお願いしておるところでございます。  そのような完全な把握の行政ができ上がりますまでの間、御承知のようにただいま、新しく改正されましたところでは、取引の回数年間三十回、あるいは一銘柄十二万株といったような、いわば捕捉することがまさに行政上可能であるというところの部分の課税をいたしておりますから、これはまさに部分的な課税でございますけれども、それからさらに段階的に進みますための行政上の体制いかんといったようなことが今問題になっておるわけでございます。
  110. 久保亘

    久保亘君 竹下総理は先ほどから所得、消費、資産のバランスのとれた税体系ということを言われるんですが、私ども見ておりまして、一番おくれているのは資産じゃないかなという感じがする。その中で、資産についてはマル優の廃止によってなお不公平を拡大した、低所得者に対する不公平な課税を行った、こういうことも残っているわけであります。その中で、高額所得者に多いキャピタルゲイン原則課税が行われていないということについては国民の間にも非常に不満が多いわけでありますが、総理も、今大蔵大臣が言われましたが、これは原則課税とすべきであるということについては同じお考えをおとりになりますか。
  111. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 元来我が国の所得課税というのは総合課税であるという限りにおいては所得は総合して捕捉されるべきであるという原則は、今大蔵大臣からお述べになりましたとおりに私も思っております。
  112. 久保亘

    久保亘君 税制調査会長、長い間御苦労でございましたが、最後に、今のキャピタルゲイン原則課税の問題について税制調査会長としての御意見を伺っておきたいと思います。特に、有価証券取引税との何か連動関係があるような立場でキャピタルゲイン課税についての異論もあるようでありますから、その点も含めてお聞かせいただきたいと思います。
  113. 小倉武一

    参考人小倉武一君) ただいま御質問のキャピタルゲインにつきましては、税制調査会としては近年キャピタルゲインの課税を強化していくという方針をとっております。さらにそれを原則課税というふうに持っていくにはどうしたらよろしいかということをただいま検討中でございます。御承知のとおり納税者番号といったようなものとの関係もございまして、納税者番号の導入の可否といったようなこともあわせて論議をいたしております。  それから最後のお尋ねの有価証券取引税との関係でございますが、先般も、この席ではなかったですか、有価証券取引税を導入する際は、有価証券についての譲渡所得税がかからないというその見返りに導入したといういきさつがどうもあったようでございます。そこで、あの税金をそのままに有価証券譲渡所得税の課税を強化していくというのはいかがなものかという議論も税制調査会の中にございます。それはそれといたしまして、キャピタルゲインの課税強化をいたしますれば、税の性質は違うにいたしましても、有価証券取引税についてはどう考えるかということはやはり整合的に考えなければならない問題であろう。今のところそれをどうするかという方針はまだ出ておりませんです。
  114. 久保亘

    久保亘君 次に、我が国の経済の問題について総理のお考えを少し伺いたいと思います。  私たちは内需拡大の重要性について前々から政府にも強く求めてきたところでありまして、昨年来の公共投資の追加とか一兆五千億の減税は、それなりに一つの効果をおさめてきていることは間違いありません。しかし、今の日本の国民生活の実態というものを見てまいりますと、総理が言われましたように、豊かさの実感できる生活ということにはとてもなっていないのではないか。つまり、日本経済の光と影の部分、この影の部分に多数の庶民の勤労者の生活があり、また地域的に言うならば地方の経済の格差が生まれてきていると思うのでありますが、このような国民生活と地域経済における格差が今日拡大しつつある状況について、総理はどのような御認識と対策をお持ちでしょうか。
  115. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私がいつも申し上げており懸念をいたしておりますことを一つ申し上げてみますと、一九四五年に戦争が終わりまして、一九四〇年代後半というのは言ってみればお互いもう食うに精いっぱいという時代ではなかったか。それが五〇年代に至りいわゆる前進の時代とも言うべき十年間を過ごして、暮らしの中に電気洗濯機とか白黒テレビとか、冷蔵庫とかというようなものが入るようになった。そして六〇年代に至って繁栄の時代とも申すべき高度経済成長というものがあった、それは二ドル原油に支えられたものであった。そういう経過を帯びて参いりまして、高度成長を背景に所得水準が急速に上昇する中で、所得分布が平準化してきたということは事実であったと思います。  こうした中において税の問題はいろんな議論が出てきたわけでございますけれども、それが最近、私は定かな数字までは確実に把握しておるわけじゃございませんけれども、そういう平準化問題はそれなりに先進国がうらやむように進んできたが、地域的な格差というものが、昭和五年からの統計をずっととってみますと、確かに地域格差が随分なくなっておるものがちょっと若干逆コースに戻ってきつつあるのではないか。定かにまだ数字を私は持っておりません。短期的なものでは有効求人倍率がどうなっておるかとかというようなことでも大変な地域格差というものを感じますだけに、したがって、そういうところにやっぱり前内閣が四全総というようなものを考えられたのも、そういう歴史的経過の中で今日を位置づけてお考えになったものではないか。だから、政策遂行の中では、この第四次全国総合開発計画というものを推進していく初年度としてことしが位置づけられたら幸いである、短期的にはそんなことを考えております。
  116. 久保亘

    久保亘君 今所得は平準化の方向というようなお話でございましたが、総務庁に伺いますが、最近の所得分位別、特に最も所得の低い第一分位の層と所得の高い第五分位の層との間に所得、資産、消費、貯蓄各面にわたって格差が拡大の傾向にあるのかどうか、少し数量的に説明をしてください。
  117. 百崎英

    政府委員(百崎英君) まず最初に、私どもが行っております家計調査の結果によりますと、勤労者世帯のうち実収入の最も低い第一階級に対しまして最も高い第五階級の平均の実収入の比率でございますが、これは昭和五十五年に二・六五倍であったものが六十一年には二・八七倍、金額差で見ますと五十五年の年額四百六万六千二百十二円に対しまして六十一年は五百六十一万五千八百五十六円と、短期的に見ますとここ数年で見る限りは格差がやや拡大しております。それから貯蓄でございますけれども、第一階級に対しまして第五階級の貯蓄の現在高の比率、これは昭和五十五年に四・〇九倍であったものが六十一年には四・六〇倍というふうになっております。それから消費でございますが、これは六十二年限りのものを見ますと、消費支出の対前年の実質増加率でございますが、第一階級で一・五%、第五階級では三・四%というふうに第五階級の方が伸びております。  以上でございます。
  118. 久保亘

    久保亘君 今総務庁の調査結果を御報告いただきましたように、国民生活の中には非常な格差の広がりが起こっているわけでありますが、この原因はどこから生じているとお考えでしょうか、答えられる閣僚の方で答えてください。
  119. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 経済企画庁でございますが、その理由はいかんと、こういう仰せでございます。  先ほど申しましたように確かに先生御指摘のとおり、第一分位に対する第五分位からの比率はここ数年若干の上昇が見られていることは事実でございます。この要因は、今回の円高不況のもとにございまして、どうしても企業規模間での賃金格差の拡大が見られたことが一点ではないでしょうか。それからまた預貯金の金利が低下したということ。一方でまた同時に株価が上昇しておる。この間はブラックマンデーがございましたけれども、株価の上昇もこれまた比較対照としては出てきておるということとか、あるいは東京圏を中心に地価が高騰したことなどということも大きな要因として考えなければならないと思います。理由としてはそのようなところが大別して挙げられるのではないかと思います。  対応といたしましては、私ども今後とも、緊急土地対策要綱なども着実な実施を含めまして考えていかなければならない。同時に、この間も土地対策委員会をやったわけでございますが、その方向づけで土地対策の問題も総合的な推進力としてこれを片づけていかなければなるまい、その努力もやるべきである。同時にまた、内需を中心にした景気の着実な拡大というものも図っていかなければなるまい。同時にまた、経済構造調整の円滑な促進、これも私ども前向きに鋭意努力をやっていかなければなるまい。このような成果等を国民生活の質的向上に一層振り向けていくような努力を私どもはしていくべきである、このように考えておる次第でございます。
  120. 久保亘

    久保亘君 労働大臣、日本の場合には今の世界の各国、先進諸国家と比べた場合に、労働分配率が低下の傾向にあるという特徴を持っていることについては、そのようにお考えでしょうか。
  121. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 労働分配率の問題でございますけれども、一概に数字で出ておりまするそのことによって比較対照はできない。要するに統計のとり方にも問題があると思うわけでございます。しかし、概して今の時点ではそういう方向にあることは間違いないのではないかというふうに考えております。
  122. 久保亘

    久保亘君 そういう中で、最近日経連は賃金抑制の考え方を非常に強く出しておられるのでありますが、今のこの所得格差の拡大、資産格差の拡大、消費支出にまでその格差が及んでおりまして、これはもちろんマル優廃止の問題とかいろいろ政府政治政策の誤りも私はあると思っておりますけれども、根本のところに賃金の抑制の問題とそれから実質増税が長く続いているという問題があるわけであります。今度の春闘における労働者の賃上げの問題について労働大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  123. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 春闘につきましては、労使双方からいろんな意見がありますことも十分承知をいたしております。しかし、賃上げ等につきましては、最終的には労使の自主的判断に基づいて決定されることでありますから、労働大臣という立場でこれに予見を与えるようなことは差し控えるべきではないかなというふうに思っております。  ただ、経済成長の成果というものを勤労者の生活あるいは福祉の向上のためあるいは内需拡大をいたしまして均衡ある発展を遂げる、そのためにも適正に勤労者に配分されることは望ましいことであるというふうに承知をいたしております。
  124. 久保亘

    久保亘君 これは、今国民生活に起きている格差というのは政治政策の面、経済政策を含めて政府の政策で責任を持たなければならない問題が余計あるんじゃないでしょうか。土地の問題、今お話がございました土地の問題もそうです。税制の問題もそうなんです。それから賃金にかかわる問題もそうであります。また労働時間短縮などの問題についても。これらのいろいろな問題についてやっぱり国民生活という立場に立って、国民生活をどうやって引き上げ、そして所得の平準化の方向を目指すかということで政策が裏打ちされていかなければならないのじゃないかと思うんですが、これはさっき何か大蔵大臣がお答えになりたいようでございましたから、大蔵大臣の御意見をお聞きしましょう。
  125. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど統計局長が答えておられました御質問の趣旨は、結局、昭和五十五年から最近までの間に第一分位と第五分位の格差というものは縮まらないで開いたのではないか、そういうことに関しての質疑応答でありました。  それは、まさに石油危機があり円高がありまして、それで日本経済が苦労をしたということであったと私は思うのであります。この間の日本経済の苦労というのは、余裕のある人が生活がちょっときつくなったというのではなくて、どちらかといえば余裕のない人にきつく当たった。それだからこそ大変なことであって、お互いに力を合わせてこの事態の打開を図ったということであったと思いますので、それが私は統計的にああいう形であらわれたというふうに思っております。  また、労働側も、実際その間には賃金よりは雇用の確保ということをどうしてもお考えにならなければならなかったし、政府としても雇用の確保、雇用の改善ということが現在に及びますまで一番の問題であったのでございますから、私は、おっしゃいますことはそのとおりだと思います。
  126. 久保亘

    久保亘君 やはり総理大臣、この際どうしてもこれらの問題について、今の日本の経済の拡大基調の中で内需拡大というのを国民生活主導型のものに向けていくということが非常に重要だと思うのでありますが、この格差是正の問題について総理大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  127. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、先ほど昭和五年ということを言いましたが、それから見ますと、それは先進国が目をみはるようないわゆる所得水準の均衡化が行われた。が、私も申しましたように、しかし最近それがやや逆行の方向にあることが心配だ。  内需拡大という問題は二つの面があろうかと思います。すなわち、国際的要請にこたえていくといういわば経常収支の黒字の面から来る一つの問題があろうと思いますが、今御指摘なさいましたとおり、内需というものを振興していくという上において、それが国民生活により貢献する性質のもの、これに対していろんな刺激を与えていくということは大切なことだというふうに私も考えております。
  128. 久保亘

    久保亘君 時間の都合で少し順序を変えまして、日銀総裁に御出席願っておりますから二、三お尋ねしておきたいと思います。  日銀は、今回の円高で外貨建て資産に評価損が生じていると思うのでありますが、六十二年度の評価損、それによる利益の減額、国庫納付金の減少の実情というのはどういうふうになっておりますでしょうか。
  129. 澄田智

    参考人澄田智君) お答え申し上げます。  日本銀行は中央銀行として通貨の価値の安定というような本来の負託された責務を持っているわけでございますが、そのほかに、これはどこの国の中央銀行もそうでありますが、政府の代理人として政府の会計の処理のようなことをいたすものでございます。そういう意味におきまして、外貨の売買というような点は、これは外国為替特別会計からの委託を受けその会計の代理人として売買行為を行う、こういうことになっておるわけでございまして、したがいまして、円高になりその分だけ外貨資産が差損を生じたという点につきましてはこれは外為特別会計の差損である、こういう形になっておる次第でございまして、日銀本来の損益ということにはならない仕組みになっている次第でございます。
  130. 久保亘

    久保亘君 いろいろお尋ねしたいこともございますんですが、午前中ということでお招きいたしましたので時間がございませんが、今総裁が、日銀の使命は通貨価値の安定にあるということを言われました。今の日銀法には、日銀のそのような使命というのが明示されておりますか。
  131. 澄田智

    参考人澄田智君) 現在の日銀法は昭和十七年、戦時経済体制のもとで制定されたものでありますだけに、その表現等におきましては必ずしも現状にそぐわないという面があることは事実でございます。  したがいまして、通貨価値の安定ということは、正面からうたわれているというよりは、現在の日本銀行法におきましては、当時の要請というようなものもございまして、国家の政策は即し通貨の調節、金融の調整並びに信用制度の保持育成に任ずることをもって目的とする、こういうことになっておりまして、このことは表現としては必ずしも適当ではないわけでございますが、しかし言わんとするところは、通貨の調節、金融の調整並びに信用制度の保持育成ということの背景には通貨価値の維持ということが大きな前提になっている、私どもはかように理解している次第でございます。
  132. 久保亘

    久保亘君 今の日銀法を業界でヒトラー法と呼んでいることを総裁は御存じですか。
  133. 澄田智

    参考人澄田智君) 私は聞いたことがございません。
  134. 久保亘

    久保亘君 それは、政府・大蔵省と中央銀行である日銀との関係について先進諸国家に例を見ないような強い監督関係があるのではないかということから言われていることと、これは戦時中の立法でありますから戦時色の非常に濃い法律になっている、そういうことだと思うのであります。  今、総裁も、日本銀行法にいろいろ検討しなければならない問題があるようにお話がございました。また、あの法律の文章を読んでみましても、これは今の日本で通用するのかなというような法律の文言になっておりますですね。だから、この日本銀行法を抜本的に改正するということについて日銀の総裁はどういうふうにお考えですか。
  135. 澄田智

    参考人澄田智君) 先ほども第一条の文言を引用してお答え申し上げたわけでございますが、そういう日銀法の規定表現等におきましては現状において必ずしもそぐわない、かように思っているわけでございます。私どもといたしましては、あくまで通貨価値の安定ということを日銀の最大の使命といたしまして、そしてそういう意味合いにおきまして、日本銀行の独立性、そうしてまた金融政策の中立性ということはこれを堅持してまいらなければならない、そういう心がけを持って当たっている次第でございます。  そういう意味合いにおきまして、今の日本銀行法で適切かどうかということになりますと、現在、日本銀行のそういった根本的な使命についての理解はこれを十分いただいておると思っておりますし、また日本銀行もその点に対しての最大の努力を払っている次第でございまして、具体的に今の法律が直ちに支障を生ずる、こういうふうなことはない、かように考えておる次第でございます。したがいまして、法律を改正するかどうか、あるいはいつまでに改正しなければならないかとかいうような点について、具体的には考えておるわけではございません。これはまた一つには、国会で決定いただくわけでございますし、私どもとしては、もし改正をするというようなことであるといたしますれば、我が国の経済政策の中の重要な要素であります金融政策の一番基本に当たる法律でございますので、性急でなくて、それだけ内容を十分練ってそうして改正さるべきものである、かように考えておる次第でございます。  重ねてでございますが、しかし日本銀行として現在、その業務を遂行するに当たって特に今の法律が支障になっているというような状態ではございません。そうしてまた、日本銀行といたしましては事柄の性質上、常に政府と密接な連絡を持って我々は業務の遂行に当たるものでございますが、しかしその判断はあくまで独自の判断で決定をする、こういうことで行ってきている次第でございます。
  136. 久保亘

    久保亘君 総裁のそういう御説明でございますが、日本銀行の使命にかんがみて、日銀法の中に、その本来の任務とすべき通貨価値の安定の問題について、法の条文に明確にされていないということも問題でありますし、戦時立法でありますから、国家経済の能力を発揮させとか、国家目的の達成のためとか、そのためには政府は日銀総裁に指示できるというような非常に強い監督権を持つ条文等もございます。  それで、こういう問題について、日銀の独立性とか、中立性とか、そういうものについてやっぱり法律でも明文化しておくことの方が私はよいと思うのでありまして、日銀法の改正について検討を行う必要があるのかどうか、大蔵大臣いかがお考えでしょう。
  137. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今日銀総裁がお答えになられたのに実は尽きておるわけでございますけれども、まあ理屈から言えば新しく立て直すのがいいのでございましょうけれども、今のままでも結構使い勝手はいいし、特に急には困らないなというようなことで来ておるわけでございます。
  138. 久保亘

    久保亘君 あなたの方は使い勝手がいいんです。
  139. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いや、私の使い勝手ではなくて、家の使い勝手。今のままでもやっていけるというようなことでございまして、日銀総裁の言われましたようなことがお答えになっているわけです。
  140. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 久保亘君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  141. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、久保亘君の質疑を行います。久保亘君。
  142. 久保亘

    久保亘君 地域経済格差の問題を象徴するものとして、整備新幹線の問題について少しお尋ねをしたいと思います。  六十二年度の着工予算は、財源問題等検討委員会を壁にして凍結される結果に終わりました。六十三年度には、今度は建設促進検討委員会が八月までに着工順位や財源等の結論を出すということになっておりますが、官房長官、この検討委員会は八月には必ず結論をお出しになるものと理解してよろしゅうございますか。
  143. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 私、座長を仰せつかって、この推進のための委員会のもとに置かれました財源と順位を定める専門委員会の方の取り進めをさせていただいております。双方一回既に行いまして、それぞれ地元からの強い御熱意を三知事さんからも拝聴いたしておるところでございます。これから精力的に努力をいたしまして、お約束の八月末までには結論を得るべく最善の努力をいたしていきたい、こう考えております。
  144. 久保亘

    久保亘君 この着工順位については、一線完成後第二位の建設に入るというのではなくて、時差着工の順位を決めて、三線は同時に進行していくものという理解をしておけばよろしゅうございますが。
  145. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 第一回の順位検討委員会の場で意見が述べられた中では、順位を決定する場合には、結局三線同時着工ということでは実際問題としてなかなかこれは予算関係上その他から無理な点が出てくるのではないか。したがって、やはり順位を決定する以上は順番を定めていかなければならないのではないか。その点につきましては、それぞれ三県の知事さんも御出席をされておりましたが、その場でも委員各位の御意見はそうした意見が大変強うございましたことだけ申し上げておきたいと思います。
  146. 久保亘

    久保亘君 私がお聞きしているのは、着工の順位があっても、工事はそれぞれ着工されていって結局同時進行の状態が生まれる、こういうことで着工の時差順位を決める、こういうことで検討が行われていると考えればよろしいんですかということです。
  147. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 率直に申し上げまして、まだそこまで至っておりませんで、とにもかくにも三線の順位をまずは定めさしていただきたい、それに並行的にそれぞれの財源についても勉強していこうと、こういう段階でございます。
  148. 久保亘

    久保亘君 その順位の基準は何でおやりになるんですか。
  149. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) これはまさにこれからの検討にゆだねられておることだろうと思いますが、青森の知事さんは、既に東北新幹線につきましては青森までは残工事であるという御主張をされておりますし、また北陸新幹線につきましては富山の知事さんが、非常に第二東海道新幹線に類する経済効果も得ておることだし、長い間の歴史のあることである。それから九州新幹線につきましては、その建設のための費用が極めて三線のうちでは低いことでこれが完成できるのではないかと、それぞれの特徴を御主張されておりまして、そうしたお考えをもとにいたしまして専門委員会委員の各位でこれから詰めていく、こういうことになろうかと思います。
  150. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 運輸省の立場から少し補足をさせていただきます。  順位を決めます際の基準は幾つかございまして、やはり建設費、需要の予測、それから収支並びは実現したときの採算性の見通し、他の交通施設の状況、JR各社の経営の見通し、それからまた整備新幹線にほぼ並行してあります在来線を廃止するかしないかその可能性、そういったものを勘案して順位を決めようと思っております。
  151. 久保亘

    久保亘君 総理大臣お尋ねしたいのは、財源についていろいろな方式が検討されているようでありますけれども、既につくられております新幹線は地元負担なしに建設されているわけでございまして、地域間の平等、とりわけ財政力の非常に低い地域に対して建設の負担を過重に負わせるということは地域経済にとっても非常に大きな問題だと思うのでありますが、この財源問題での地元負担という問題はついてどのようにお考えでしょう。
  152. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに私が大蔵大臣であります当時から御議論がありまして、公共事業方式にするとか、あるいはいわゆる今おっしゃった地元負担を一〇%にするとか、いやそうじゃなくて用地費にとどめるべきだとか、いやたまたま用地費とその一〇%はほぼ一致するじゃないかとか、こんな議論がいろいろあっておりましたけれども、その際も、今おっしゃいましたように既存の新幹線についても、もう三十年弱の歴史がたったとはいえ、それが通るときはいわば日本国有鉄道が全額これを負担する形において行ったから、そういう平等性においてはその地元負担ということがあること自体がおかしいじゃないかとか、そんないろんな議論がなされておったことは私も承知しておりますが、それらの問題すべてを含めて恐らくこの財源問題等検討委員会検討をしていくということであろうと思っております。
  153. 久保亘

    久保亘君 地域格差の問題はついて最後に総理のお考えを伺っておきたいのは、「ふるさと創生論」の中では「地方が知恵を出し、中央が助成する」時代、こういうことを言われておりますが、それだけでは十分でないのではないか。むしろ中央政府の財源、権限をもっと地方に移譲するということによって地方に活力をもたらすということがふるさと創生ということにつながるのではないかと思うんですが、地方への権限移譲についてのお考えを承っておきたいと思います。
  154. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 従来のいろいろなことを見てみますと、中央で一つの企画を設けて、その中で地方で計画されたものに中央がこれを指定していく、こういうような姿であったものを、地方の知恵というものを絞り出して、それに対して国が可能な限り財政等乗っかっていくというような発想にすべきだ、こういう考え方はかねて持っておるところでございます。  ただ、権限移譲の問題がいわば税源配分ということになりますと、やっぱり税源というものはへんぱな存在をしておりますので、いわゆる税源問題以外の問題における地方への権限移譲というのに対してはある程度勇敢に取り組めますが、税源配分ということになると、はてと、やっぱり立ちどまって考えなきゃいかぬ問題が多いという感じでございます。
  155. 久保亘

    久保亘君 権限を移譲すればその権限に伴う財源というものはやっぱり地方が必要とするんじゃないでしょうかね。そういう意味では税財源の配分ということについても検討をすべき時期ではないかと思うんです。
  156. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわばこの権限移譲に伴ってそれに要する財源というものについての必要性、これは当然出てくると思うんですが、それをあらかじめ税源を配分することによってそれらに対応する態勢がとれるかというと、必ずしもそうでないというところに悩みがあるという意味で申し上げたわけでございますが、可能な限りいわばこの権限移譲というのは地方自治の本旨の上に立ってもやるべきことであるし、ただそれに対する総括的な財源問題ということになりますと、その税の問題からすべてを包括してやらなきゃならぬという問題にぶち当たるとでも申しましょうか、そういう感を深くしながらいろいろ模索しておるというのが現実の姿であります。
  157. 久保亘

    久保亘君 時間が余りありませんので、次に財政再建の問題について少しお尋ねしたいと思います。  この財政再建が、今日大蔵大臣が言われるよう約六十五年度達成が可能となってきているということについてはいろいろな要素があると思うのであります。そのことについてはきょうはもう申し上げませんけれども、一つだけこの財政再建との関係で、六十三年度で終了いたします補助率カットについては、六十四年度からは本則に戻すということについてはこれは聞違いのないことだと思うんですが、自治大臣最初に伺いたいと思います。
  158. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 国庫補助率の引き下げは、国の極めて厳しい財政事情を背景として補助金問題検討会等において事務事業や費用負担のあり方の検討などを経て、六十三年度までの暫定措置として行われているものであることは御案内のとおりであります。ですから、六十四年度以降の補助負担率の取り扱いについては、補助負担率の引き下げはあくまで暫定措置として行われていることから、私は原則としてもとの補助負担率に戻すべきものであるというふうに考えております。そうして、具体的には六十四年度の予算編成時までに関係省庁の協議で定められるというふうに理解をいたしております。  ただ、こういう議論を衆議院でもやってきて大変胸を張って言ってきたのでございますけれども、今ここで一つ心配をいたしますことは、過日減税について与野党の合意がなされまして、そのこと自身、減税は一般論として大変喜ばしいことでございますけれども、その三党要求のいわば財源について、後ろ向きのことかもしれませんしあるいは次元の違う問題かもしれませんが、この補助率カットで現在約一兆七千億弱でございますけれども、こういうものが果たしてその財源論の中に頭の中に考えられておって今回の減税要求がなされたのかどうなのか、この辺のところを少しく心配をして、小さい胸でございますけれども痛めておる現況でございますので、御声援のほど願いたいと思います。
  159. 久保亘

    久保亘君 今度の三党要求にはそのことは関係ありませんよ。三党の修正要求はちゃんと財源も明示してあったのでありまして、補助率カットの問題とは関係ありませんから、そこはあなたの衆議院で胸を張られたとおり今後も張り続けてください。  このことについては、大蔵省の「財政の中期展望」も六十四年度からは本則化されるということで試算が行われておりますが、大蔵省としてもそれでよろしゅうございますね。
  160. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 「展望」では、本則化いたしました場合のいわばこれは機械的な計算でございますが計算と、それから注の方にそうでない場合の計算と、両方お示ししておるつもりでございます。
  161. 久保亘

    久保亘君 その注書きの方は、これはもしも補助率カットが引き継がれる場合にはこうなるということを例示してあるのであって、中期展望の本表の方ははっきりしておるんだから、その点は明確にしておいてもらわぬと困りますね。
  162. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それで本題に戻りますと、暫定措置でございますので、六十四年度の予算編成までの間に関係各省また御相談をさせていただいて、今月治大臣の言われましたように、今後のことを決めさせていただきたいと思っておりますのですが、たまたま自治大臣のおっしゃいましたようなこともいろいろありましたりいたしまして、どうも私も胸を痛めておるわけでございます。
  163. 久保亘

    久保亘君 非常に不謹慎な話だと思いますよ。与野党が合意した問題をとらえて、それで補助率がどうなるかわからぬので胸を痛めていると大臣が二人も言われると、これあなた方与党はどういう責任を持つんですか、あの合意に。
  164. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私の申しましたのは、いろいろの収支、歳出歳入の財源関係一般という意味でございます。この間のことを申し上げたわけじゃございません。
  165. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。大木正吾君。
  166. 大木正吾

    ○大木正吾君 久保委員質問と関連いたしまして、もう少し総括的な話に入った中だと思っていましたが、まず一つ伺いたいことは、私が今年度予算を見ましたときには財テク膨張型予算、こういうふうにちょっと拝見するんです。そこで、NTTの株式の売却益、わかりますね、これは総額的に幾ら財政に貢献していますか。総理と大蔵大臣、両方に伺いましょう。
  167. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 多少将来までの展望を含めまして大変大ざっぱにまず申し上げさせていただきますならば、仮に大体二百五十万円といったような値段で考えますと——ちょっと失礼いたします、正確に政府委員から申し上げます。
  168. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 数字の問題でございますから、私からお答えいたします。  NTTの株式につきましては、三分の二まで売却するということが法律上認められているわけでございます。それで、株数が全体で一千五百六十万株でございますが、その三分の二が一千四十万株。法律上は一千四十万株まで売れる。さしあたってはその半分である七百八十万株まで売ろう、そういう方針でございまして、六十一年度に百九十五万株売却しましてから、昨年同株、このペースでいきますと七百八十万株を四年間で売る、一応そういうペースでいけるだろう、こういうふうに思っております。
  169. 大木正吾

    ○大木正吾君 私どもの試算によりますと、ことしの六十三年度予算には約四兆九千億前後の売却収入が入っています。これはいわば法人税、所得税その他税収に見合わせていきますと、結果的にはこれ約四十六兆でございますし、同時に公債発行等を含めて約五十七兆でありますから相当なウエートを占めている、こういうふうに見て間違いがないし、その使途もばらんばらんになっていますから、結果的には国債整理基金の方に入って突き出しながら一般財政を助けているし、同時に公共事業関係の方にも向いていますから、もう少しやっぱりこの問題について将来的に、百年もこれは売り続けるものじゃないですから、そういう点ではしっかりした予算の組み方、展望を持ったものにしてもらいたい、こういうふうに考えていますが、総理、大蔵大臣、どうですか。
  170. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 大体の考え方といたしましては、毎年どの価格で売れるかということにもよるわけでございますけれども、これから何年かの間かなりのものが先般お認めいただきました社会資本整備勘定から出まして地域及び一般の公共事業等々に役立って、これは御承知のようにその年の売り上げ余裕金から国債償還を引いた残りでございますが、引いた残りを無利子のような形で貸し付けまして、そしてそれがまた還流をする、したがいましてその年々の公債償還をしながら社会資本の整備に今後三年ぐらいは、あるいは四年になるかもしれませんが、役立つと、こういう計画を考えております。
  171. 大木正吾

    ○大木正吾君 財確法の二条の四項、これは定率繰り入れ問題等も含んで書かれていますが、借換債の発行について相当厳しい規定がございますね。私どもが考えますに、やっぱりこの種の、当初総理がたしか大蔵大臣だったころに決めたものでは、国債整理基金特別会計をつくってそこにわざわざ突っ込んだんですね、これは。そういったものを去年の八月にまた法改正したわけですね。そういった目の先がくるくる変わることは困るんですよ。ですから、やっぱり実際問題として、とにかくその財確法二条四項に基づくものに戻してもらいたいことが一つ。  もう一つは、今大蔵大臣がおっしゃったんですが、結果的には公共事業に対して出したBタイプ一兆七百七十五億円というものはこれはぐるっと回って結局補助金に返ってくるわけでしょう。だったら、なぜ真っすぐに補助金を出さないんですかということになるんですよね。そんなややこしいことをなぜするかという、この二つについて総理と大蔵大臣から答えてもらいます。
  172. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まず、昨年法律改正をお願いいたしまして社会資本整備勘定を設けさせていただきましたのは、この金の使途の本則は国債償還でございます。その年度に現金償還の来ます部分についてその償還に充て、及び国債整理基金特別会計にある程度の余裕金を置く、それが第一でございますが、二百五十万円というような売却ができましたので、それを上回る余裕が出てまいりました。  そこで問題は、今大木委員の言われましたように、その余裕をなお繰り上げ償還してでも国債償還に充てるか、それともその年に現金償還をすべきものを償還しました残りは社会資本の整備に充てた方がいいかという、そういういわば選択の問題に昨年度の補正予算を編成する段階で直面いたしまして、それが緊急経済対策を講じたときのあの補正予算でございますが、私どもとしては、償還期の来た公債を償還した残りはやはり社会資本整備に、いわば公共事業系統のものに使うことが我が国の内外に対するあの段階での要望にこたえるゆえんであると考えましたので、そこで償還いたしました残りをA、B、Cというタイプに分けまして使うことを法律でお認め願ったわけでございます。ただ、これは使い切りにいたすのではございませんで、貸し付けでございますから、返ってきましてやがてまた国債償還に将来向けられる、こういう制度を設けました。それが第一でございまして、これはなぜ繰り上げ償還までしなかったか。繰り上げ償還をするか公共投資をふやすかというその選択の問題に当たりまして、私どもは社会資本整備の方に充てる方がいいと考えたわけでございます。  第二の問題に関連いたしますが、その際、殊に地方の経済の落ち込みがひどうございますので、なるべく地方の面的な開発というものにこれを充てたらどうであろうか。すなわち、毎年十億円の下水工事を十年で百億やるよりは、いっときに面的開発で、下水も要る、街路整備も要る、あるいは河川も要る、そういうところへいっときに百億円なら百億円投入をする。それによって地方のいろんな意味でのプロジェクトを応援することができるわけでございますから、そういう形にした方がいいのではないかということを考えましてああいう制度を設けました。これはしかし貸し付けでございますから、何年かたちますと返ってこなければならないわけでございますが、そのときには先々いずれにしても公共事業の予算を計上するわけでございますから、それを計上する形で、いわば右のポケットから左のポケットへ返ってくるよるにいたしておけば、今緊急に地方のそういう開発を、いわばこれは公共事業の補助金の前渡しのようなものでございますが、取りまとめて渡すことによって地域づくりができるではないか、こういうふうに考えましたのが第二の理由でございます。
  173. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の時代のことにもお触れになりましたが、私の時代においては、国民のいわば共有の財産である、したがってそれは国民共有の負債の償還に充てるべきだ、こういうことで法律改正をお願いしたという時期でありまして、そして政策選択の上でそれが公共事業等にその運用によって活用され、そしてその裏打ちは今まさしくおっしゃった補助金の前渡しというような形でこれを措置しようという政策選択に至ったということは、宮澤大臣からお答えしたとおりであるというふうに思います。
  174. 大木正吾

    ○大木正吾君 意見が合いません。  私は、いずれにしても、これは前の大蔵委員会の質疑も全部読んできましたけれども、減税問題とも全部絡む問題でございまして、いずれ本質問段階で再度また聞かせていただきます。  終わります。
  175. 久保亘

    久保亘君 防衛問題について二、三質問をいたします。  最初に、報ぜられるところでは、アメリカ国防総省は東芝機械のココム違反製品輸出についてソ連原潜のスクリュー音が静かになったこととの因果関係を否定していると言われておりますが、このことについて政府としてはどのように把握をされておりますか。
  176. 田村元

    国務大臣(田村元君) 私の承知しておる範囲内で申せば、否定はしておりません。東芝機械の一件より三年ほど前から静音化したソ連原潜というものを、何というんですか、掌握しておるというんでしょうか。ところが、それはもちろん原潜のスクリュー音なんというものは、ある時期にぱっと低くなってそのまま横ばいで継続するという趣旨のものじゃないと思いますが、東芝機械のものが一切関係ないということを言っておるわけじゃないわけです。  私どもが今日まで言ってまいりましたのは、東芝機械のココム違反にかかわる工作機械が西側陣営に重大な影響を及ぼしたと思われる懸念、嫌疑濃厚という心証を得たということであって、我々もまたそれを決めつけたわけでもありません。  ただ、日本が世界各国からココム違反の問題で随分厳しい対応を強要されておりましたし、アメリカ側の姿勢も非常に厳しいものがありました。でございますから、もちろん法令改正あるいは審査員の増員等は一生懸命にやったわけです。今度もそれは高く評価されておるようでありますけれども、そういうことで、我々は国内法を犯した犯罪行為というのでこれを取り上げました。  私は過去二回、アメリカへその件で行きましたけれども、それはあくまでもココム違反というものは国内法で処罰するものであって、第三国から制裁を受ける、報復を受けるということはあり得ないことだ、これはココムの精神にも違反する、こういうばかなことではココムの結束が乱れるであろうと、こう言って厳しい抗議を申し込んだということでありまして、米議会に台頭しております保護主義に対して厳しい対応をするようにアメリカ行政府にもお願いをいたしましたし、また下院軍事委員会の強硬論者を初めとしていろんな人人に会って、私は日本政府としてむしろ非常に厳しい態度で抗議を申し入れたということでございます。  そういうことを踏まえて申しますならば、今度の国防次官補のレターというものは、私はまだ原文を読んでおりませんけれども、このレターが今までの我々の対応あるいはアメリカ政府の対応というものをいささかでも変更するものではないというふうに考えております。
  177. 久保亘

    久保亘君 この東芝の問題は、アメリカ側からは因果関係が非常に濃いということで、日本はそのことによって経済制裁の問題とか防衛力増強の要求とか、いろいろとアメリカから押しつけられてきた動機になった問題です。原因になった問題です。だから、このことが従来説明されてきたことと違って、国防総省自体が、三年前から静かになっておったので直接これが因果関係を持っているかどうかわからないと、こう言っているわけですから、この問題は日本政府としても重大な関心を持って、今までの経過に照らして態度を明確にしなければならぬのではないでしょうか。これは外務省はどう思いますか。
  178. 田村元

    国務大臣(田村元君) 東芝機械の工作機械が因果関係がないと言っておるとは思いません。  アミテージ次官補の書簡の詳細を知る立場にありませんけれども、いろんな情報を総合いたしますと、このレターは直接に因果関係を論じたものではない、米側に追加的なコストが生じたか否かについて議論したものであって、したがいましてソ連原潜のスクリュー音につきましても、ソ連は東芝機械の最初の不正輸出の三年前から静かなプロペラを有していたと述べているだけでありまして、東芝機械の不正輸出とソ連原潜のスクリュー音低下との間の因果関係を否定しておるわけではありません。と同時に、我々もまた嫌疑濃厚という心証を得たということで終始しておるわけでございます。
  179. 久保亘

    久保亘君 これは今の説明で我々はよくわからない。  従来、国会で報告されてきたのは、嫌疑濃厚ということで言われてきたんだけれども、三年前に既に音を静かにする技術を持っていたということはアメリカも認めた、こういうことなんでありまして、その書簡を詳細に調査の上、従来の政府の国会に対する説明と食い違う点があれば明確にしていただきたいと思うんですが、よろしいですか。
  180. 田村元

    国務大臣(田村元君) 十分検討いたします。  もし私どもの従来の対応を変更しなければならないような事態になりましたならば、もちろんそれは国益優先でございますから率直に変更しなければならぬでしょうけれども、今までの私が得ておる情報によりますと、特に変更の必要のないような感じでございます。いずれにしても十分検討いたします。
  181. 久保亘

    久保亘君 竹下総理は「ふるさと創生論」に、日本の防衛政策は転換のときに来ていると再度にわたって書かれておりますが、防衛政策の転換のときという意味を少し御説明いただきたいと思います。
  182. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が書きおろした書物でございますが、今読み返してみて、総理大臣になると思って書いたわけじゃございませんのでやめておきゃよかったな、こういうのもたくさんございますが、今の点について別にやめておこうと思うわけじゃございません。  従来、私どもの体験上、防衛費等を査定いたします場合に、いわゆる近代化の速度と現実の計画とどういうふうな整合性があるだろうかという疑念を持ったことがありましたり、あるいはよく国会等で議論される陸海空のシェアというものが従来とほぼ寸分たがわず来ておるが、これに対して質的な問題はどうであるとか、いろんな議論がなされておるようなことを考えながら、その一つの型にはまったもので物を考えるべきでないというのが私の基本にあった事実でございます。
  183. 久保亘

    久保亘君 なかなかとらえにくい答弁なので、これ以上お尋ねしても同じ答弁が返ると思いますから次へ行きます。  六十三年度に導入を計画されているイージス艦は海上自衛隊のいかなる役割を果たすのですか、防衛庁長官
  184. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 海上自衛隊は現在四つの護衛隊群というのを持っておりますが、この八隻で船団等を護衛する一つのユニットになっております。いずれも対潜護衛艦でございますけれども、船団等を防衛する際に当然空からの攻撃がありますが、それの防空中枢艦ということで従来から八隻の中の二隻は対空ミサイルを積んだ護衛艦を持つということで考えられております。  従来はターターというシステムを積んだ護衛艦を持っておりましたが、最近のミサイルの性能向上あるいは航空機の数がふえたとか、長距離爆撃機等がふえた、そういう状況にかんがみましてターターミサイルからイージスシステムミサイルのものにかえたいというものでございます。
  185. 久保亘

    久保亘君 いや、イージス艦がどんな役割を果たすかと言っているんです。  また、海上自衛隊の防衛の仕組みにはポイント防衛、内側防衛、外側防衛とありますね。このイージス艦はそのうちのどこを担当するんですか。
  186. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 大綱にございますように、水上艦艇というのは、大きく分けまして沿岸防備用のものと、それからもう少し外洋に出るものと二つに分かれております。そして先ほど私が申し上げた護衛隊群というのは外洋まで出て行動する部隊でございまして、大きな一つの任務は海上輸送の保護ということでございまして、先ほど申し上げたように、船団護衛等をやる、それからもう一点は、もう既に日本に対して上陸侵攻等が行われておるというときに、作戦輸送と申しますか、増援部隊を送るとか増援資材を送るとか、そういった任務がございます。そういった場合には、相手方の航空優勢といいますか、相当空からの脅威の厳しいところへ持っていかなくちゃいけない。そういうときの任務につくのが今言った護衛隊群が中心になるわけですが、護衛隊群の中でもそれぞれが対潜能力を持つと同時に防空能力を持ったものを数隻加えてあるわけです。先ほども言ったように二隻今のところやっておりますが、その任務の中枢になるものでございます。
  187. 久保亘

    久保亘君 そうすると、洋上防空における対潜の任務につく艦艇の護衛、こういうことでいいですか。
  188. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 艦艇及び艦艇に守られておる船団、いわゆる商船でございますね、そういったものの防空任務を担当するというようにお考えいただきたいと思います。
  189. 久保亘

    久保亘君 仮に有事の場合に、今海上自衛隊が考えているのは、バックファイアによるかなり遠い距離からのミサイル攻撃が艦船に加えられる場合に、このミサイルをイージス艦から発射された迎撃ミサイルで落とす、こういうことなんだけれども、それは艦艇が戦闘状態になったときに商船を保護しているなんということはないのであって、これはあくまでも護衛艦の護衛の任務につくんでしょう。
  190. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 船団護衛の形式にはいろいろございますが、一番ティピカルな、典型的な形を申し上げますと、例えば五十隻なら五十隻の商船団があるとします。その周辺を通常八隻の護衛艦で、潜水艦からの攻撃を守るために外周を護衛艦が守っておるという形をとります。そしてその八隻のうちの両わきといいますか、両端のところに防空中枢艦というものがあって、その船団なり船団を護衛している艦艇に対する空からの攻撃に対応する、そういった仕組みになっております。
  191. 久保亘

    久保亘君 イージス艦がアメリカ海軍で就役したときの本来の任務は何だったんですか。
  192. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) アメリカの場合は日本と若干違う思いますが、同じ面もございますけれども、御承知のようにアメリカという国は海外依存度の非常に少ない国であります。したがってアメリカの海軍の大部分のものは、そういういわゆる海上輸送といいますか、輸送路の護衛の中でも作戦輸送なり自分たちの空母打撃軍であるとか、あるいは戦場に対していろいろな物資等を送る、そういったものの防空任務を持っている、いわゆる艦隊防空任務が日本よりも強い性格を持っていると思います。
  193. 久保亘

    久保亘君 アメリカでは航空母艦を護衛するために開発された軍艦じゃありませんか。
  194. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 防空のための艦艇でございますから、航空母艦もその対象になると思いますし、航空母艦に限らず、艦隊防空、船舶の防空、そういったものを担当するものでございます。
  195. 久保亘

    久保亘君 東山海上幕僚長は、やっぱりアメリカではこれは空母の護衛のためにつくられたものであるということを言っておられるんですよ。
  196. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 最初にお答えしたと思いますが、アメリカの海軍の任務そのものが、日本のように他国からたくさんの資源を輸入したり、あるいは物資を輸出したりする国じゃございませんので、いわゆる船団を守るという考え方は、アメリカの海軍の中の思想ではありますけれども、日本ほど比重は高くないということでございまして、アメリカ自身の海軍の中の大きな思想というのは、やはり海上打撃部隊であるとか、あるいは揚陸部隊、そういったものを自由に、相手に妨害されずに所望のところまで持っていく、所望のところに展開をするためのものというようにお考えいただく部分が非常に多い。そのためのそれぞれの任務は応じた艦隊の動きに対して、それを防空する任務に一番比重を置いていると思っております。
  197. 久保亘

    久保亘君 まあ押し問答しても仕方がありません。  それじゃもう少しこれを先へ進めた話でお聞きしたいんだが、私は、これはアメリカでは空母の護衛のためにつくられた艦艇だと承知をいたしております。アメリカの中には、特に議会筋でも日本の自衛隊に空母を持たせるという意見は前から非常に強いのであります。だから、このイージス艦の導入は、アメリカの考え方としては将来日本の防衛庁に空母を持たせる、持ってもらう、そういうことの布石としてイージス艦を日本に売ると、こういうことになっているのではないか。この点について、将来とも、あなた方の言われる専守防衛の立場に立つとしても、日本の自衛隊に空母を導入することは絶対にないと言い切れますか、防衛庁長官に答えてもらいます。
  198. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 我が国におきまして専守防衛の精神は守っていかなければならない大切なことでございまして、空母を擁する、かような考え方はございません。
  199. 久保亘

    久保亘君 将来とも。
  200. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) さようなことは考えていないところでございます。
  201. 久保亘

    久保亘君 これは、ポスト中期防で既に話題になっております空飛ぶ司令塔と言われるAWACSについても、かつて十年くらい前に防衛庁は同じようなことを言われた。ところが、今AWACSは具体的に防衛庁の計画の中に入ってきつつあるんです。このイージス艦を日本に持たしたといることは将来空母艦隊を展開させるその布石だ、私はこう思うんで、今防衛庁が確認されたことを、これは自衛隊の総指揮官にもなります竹下総理、日本の防衛庁が空母を保有することは絶対にないということをおっしゃっていただけますか。
  202. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 従来のお話がありますのでそこだけお答えさしていただきますが、AWACS等について、AWACSを将来とも持たないという御答弁をしたことはないと思いますが、たしか中曽根防衛庁長官のときだったと思いますけれども、E2CにするかAWACSにするかという論議が若干あったと思います。そういった際に、要するに当時の早期警戒機の目的というのよ、レーダーサイトがやられたときにそれをふさぐとか、レーダーサイトの間隙を埋めるという意味で、そういう使用目的であればE2Cの方がよろしいというような形の御答弁を申し上げたと思います。  なお、空母ということにつきましても、空母にもヘリ空母とかいろいろございますが、もう随分前でございますけれども、昭和四十年ごろヘリコプターを積んだ対潜空母を持つという計画を練ったこともございます。いずれにしましても、それは取りやめましたけれども、従来から攻撃型空母というものは持たないというように申し上げております。
  203. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今防衛局長から後半の部分で申し上げた攻撃用空母などというものを持つ考え方はございません。
  204. 久保亘

    久保亘君 結局そういうのが将来問題になるんです。攻撃型空母は持たない、これは防御型空母だという理屈をつける、ヘリ空母だというへ理屈をつけて、それで空母を持つ、こういうことになるんですよ。だから、要するに空母は持たないということを明確にしてもらわないと困る。
  205. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) ただいま答弁申し上げましたように、我が国は専守防衛でございまして、ただいま防衛局長から答弁がございましたが、攻撃型の空母、かようなものは持たないわけでありまして、専守防衛、我が国の国益を守ってまいる、かような観点に立ちましての空母につきましては持ち得るわけでございます。
  206. 久保亘

    久保亘君 そんなことはない。さっきの答弁と違うじゃないか。さっきは空母を持たないと言った。そんないいかげんな話があるか。役人に言われてくるくるくるくる答弁を変えるようではつまらぬ。しっかりしてくれや、今の。きちんとしてくれ。さっきの答弁と違うじゃないか。
  207. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 再答弁いたしますが、我が国の専守防衛を踏まえまして、攻撃型空母は持ち得ないところでございますが、防衛のための空母は持ち得ると、かように御答弁さしていただきます。
  208. 久保亘

    久保亘君 それじゃ防衛庁長官、攻撃型空母と防御型空母との区別を説明してください。
  209. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 性能にわたる問題でございますから、防衛局長より答弁をいたさせます。
  210. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 初めにお断りしておきますが、私ども空母を持つ計画があるとか、そういうことじゃございませんが、かつてそういう計画を考えたこともあるという意味で一例として申し上げたわけでありますが、対潜ヘリコプターを積んだヘリ空母というものが、三次防のときだったと思いますが、あの当初段階に、ヘリコプターが対潜兵器として、装備として非常に有効であるということで、当時、ヘリコプターを今現在のように護衛艦に一機とか三機、少数の小さな船に載せ得ないという考え方がありましたので、ヘリ空母というような構想もあったわけでございますが、現在その種のものを考えておるわけではございませんが、将来的にも、例えば対潜用のものとしての空母とか、そういった形の防御型の空母というものは理論的にはあり得るということだけは申し上げますが、それを持つ意向があるとかそういうことではございませんけれども、対地攻撃等を主要にするいわゆる攻撃機を搭載した空母とは別途の航空機を積んだ艦艇というものは決して今後とも考えられないわけじゃないという、理論的な可能性だけ申し上げておきます。
  211. 久保亘

    久保亘君 だめだよ。攻撃型空母と防御型空母というのがあるか。きちんとしてもらわぬというと。空母は持たないと言ったんだ、最初
  212. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 従来から政府の統一見解としまして、我が国が持てない装備としましては、ICBMのような、あるいは攻撃型空母、そういった他国に壊滅的な打撃を与えるような装備は持ち得ないということで、空母一般というように従来の政府答弁はなっていないと思います。
  213. 久保亘

    久保亘君 航空母艦は持たないと言っているんだ、前から。だめだそんな、いかなる空母なら持てるのかね。はっきりしてくれよ、それなら。
  214. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  215. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記を起こして。  ただいまの久保君の質問に対しては、統一した見解をまとめさせ、後刻答弁をさせます。  そういうことで進めていただきたいと思います。
  216. 久保亘

    久保亘君 もう一つお尋ねしておきたいのは、イージス艦の本来の役割というものを考えてみました場合に、また海上幕僚長が日本の海上自衛隊は第七艦隊との共同を考えずには存在し得ないということを言っておられます。あくまでも日本の海上自衛隊というのは第七艦隊と一体のものである、こういうことなのでありますが、とすれば、日本の防衛庁が保有したイージス艦は共同作戦の中でアメリカ海軍の空母の護衛の任に当たることがあり得るのではないかと思うんですが、この点についてお答えいただきたい。
  217. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  従来からシーレーンの防衛についてお答えを申しておりますように、アメリカとの共同対処行動中の米艦艇との対処行動につきましては、我が国防衛のために行動いたしております米艦艇、これが相手国から攻撃を受けたときに、自衛隊が我が国を防衛するための共同対処行動の一環としてその攻撃を排除するということは、我が国に対する武力攻撃から我が国を防衛するための必要な限度内だということでできるというように考えております。
  218. 久保亘

    久保亘君 何ですか、アメリカの空母の護衛に海上自衛隊のイージス艦が当たるということがあると言うんですね。
  219. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 幾つかの前提を置いたと思いますが、アメリカの第七艦隊、先生は今空母と言われましたが、空母も含めた第七艦隊でございますが、そのアメリカの艦隊が、あるいは船が日本防衛のために我が自衛隊の海上部隊と共同の対処行動をしておる、そういう任務につき一緒に行動をしておる、同じ戦闘行動をとっておる。そのときに相手側が攻撃をしてきた、一緒に行動しておる米艦艇に対して攻撃を加えた、それに対してこちらが対応するということは可能であるというように申し上げました。
  220. 久保亘

    久保亘君 このイージス艦が積んでいる迎撃ミサイルは一発一億円するんです。これを九十発イージス艦の上に積んでおるわけですかね。そうすると、これが結局日本の自衛隊に、アメリカ第七艦隊の任務を肩がわりさせるためにイージス艦が日本に売り渡される、こういうことなんじゃないですか。
  221. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 二つの面からお答え申したいと思いますが、私どもがイージス艦を今回予算でお願いいたしておりますのは、我々の任務行動に対してこの種の性能を持ったものを持つことがどうしても必要であるということでお願いしておるものでありまして、アメリカがこれを買えというものではない。一部にはアメリカが売ることは反対だという声さえ出ておるぐらいでありまして、我々の方からこれをぜひ整備いたしたいというように考えておるものでございます。  もう一点、米側の行動に関して、確かにアメリカの空母というものが行動する際には十分な防空措置というものが必要だと思いますが、アメリカとしては日本に頼って裸で空母が来るというようなことではなくて、自分自身が相応の防空能力なり、そういったものを備えた状況でないとやはりなかなか来援してもらうのは難しい。もちろん我我が行動しておるときに一緒に行動しますれば、共同対処しましてこちらが守ってもらうこともあり、向こうが守ってもらうこともありましょうけれども、本来的にはアメリカ自身はやはり自分なりの行動が可能な状況でないと来援してもらうことは難しいというようにお考えいただいた方がいいと思います。
  222. 久保亘

    久保亘君 今言われたように、アメリカの下院軍事委員会海軍力等小委員会では、このイージス艦の売却を禁止する法案を八対二で可決いたしましたですね。そのときに国防総省は、アメリカとしてはこのイージス艦の対日輸出は必要だとの考え方に変わりはないという談話を発表しているんですよ。アメリカが売りたいんですよ、日本に。はっきり国防総省がそう言っておるじゃないですか。
  223. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 海上交通保護につきましては、先生も十分御承知のように、我が国としましては我が国沿岸海域、あるいは航路帯を設けるような場合には一千マイルぐらいというものについての海上保護能力を持ちたいということで防衛力整備をいたしておるわけでございます。それより先であるとか、そういった問題につきましてはアメリカに依存せざるを得ないということでございまして、アメリカとしては、やはり日本がみずから持つべく努力している部分については十分な防衛能力を持ってほしいということを国防総省なりアメリカ側が考えておるということはこれまた事実であり、当然のことながらそのための整備についてアメリカとしてはそれを賛成している、あるいは進めておるということは事実でございます。
  224. 久保亘

    久保亘君 イージスシステムというのは、アメリカ国防総省にとっても今では最高の軍事機密に当たるわけで、本来ならば八三年に就航したばかりのものを日本に今売却するというようなことはなかなかやらないものなんです。しかし、大変高価なものでありまして、アメリカとしても今日本に肩がわりしてもらわにゃならぬ状況になってきている。  しかし、そこで一つ問題が起きているのは、果たしてこのイージスシステムを日本に譲り渡した場合に機密が守れるかということで、今アメリカ側は日本の防衛庁に対して特許の保護について機密保護協定を求めているはずですが、どうなっておりますか。
  225. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 従来から我が国としましてはアメリカから、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定というものに基づきまして各種の装備そのもの、あるいは装備をつくるための各種の情報なり技術というものの提供を受けております。これにつきましては、相互防衛援助協定の第三条に「この協定に従つて」「供与する秘密の物件、役務又は情報についてその秘密の漏せつ又はその危険を防止するため、両政府の間で合意する秘密保持の措置を執るものとする。」と書いてございまして、それを受けて、もう大分古い時期でございますが、昭和二十九年に日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法というのができておりまして、それによって現に我々は十分秘密保護は保たれておるというように考えております。
  226. 久保亘

    久保亘君 それはアメリカ側もよく承知しておるが、アメリカはその協定ではだめだと言っているはずです。そして、特許を防衛庁に保管させる、そういう保護協定について協定を求めていませんか。
  227. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) そういう事実は全く承知しておりません。
  228. 久保亘

    久保亘君 じゃ、後からもしそういうものが出てきたときに、そういうものはありませんでしたと言った者は責任をとってもらうよ。  既に、アメリカの防衛専門誌「ディフェンスニュース」とか、あるいは東京にも支局のあります「ウォール・ストリート・ジャーナル」などは、日本政府は国会の状況に配慮し、四月末まではこの協定の発表や発効を控えてもらいたいということを言ってきている。しかし、アメリカ側としては三月末までにやってもらわぬと困るということで話をしている。こういうことが報道されておりますね。このような事実は全くないことでありますか。
  229. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) ただいま委員の御指摘の件は、実はイージスシステムとかFSXの導入に伴う、あるいは共同開発に伴ういわゆる装備品の関係のものではございません。それ以外に実は特許の取り扱いにつきまして一九五六年に協定ができておりまして、今委員御指摘の点は、その五六年協定の特許問題の実行と申しますか、細目取り決め、この関係のことだと承知しております。それにつきましては、これは直接的には特許庁とか外務省、いろいろ関係省庁ございますけれども、これは事務的に今アメリカ側と話し合いをしているものと私どもも承知しております。
  230. 久保亘

    久保亘君 話し合いをしているものと承知していると。  だれがやっているんですか。
  231. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま装備局長の方から御説明のありました話し合いというのは、現にアメリカと行っているところでございます。それは、既に国会の御承認を得て締結されております協定、この中に、既にアメリカにおいて秘密にされている特許は我が国においても類似の扱いを受けるものとするという規定がございます。これをいかに実際上確保するかというための、その実際の取り扱いぶりについて話し合いをしているところでございまして、これは現在外務省、特許庁等が中心となりましてアメリカと話し合っているところでございます。
  232. 久保亘

    久保亘君 それが今防衛庁が導入しようとしている非常に高度の技術特許、そういうものを含む兵器に関連して、アメリカ側が今ある協定では日本ではそれが保護できない、だからこれについて国内法を整備したりいろいろやってくれということでその話し合いをやっているんでしょうが。それを言わぬでくれと言っているんだよ、日本側から。
  233. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま御説明申し上げましたとおり、現在アメリカ側と行っております話し合いというのは、既に一九五六年の時点において国会承認条約という形でアメリカ側と合意しました内容を実地の面におきましていかに確保するかという話し合でございます。したがいまして、その結果国内法の手当てが必要になるとか新たな協定が必要になるとかいう性質のものではございません。
  234. 久保亘

    久保亘君 じゃ、国会で認められた協定に基づいて細目の取り決めをやっているのなら、今アメリカとの間で協議をしている内容をここへ出してください。
  235. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) これは現在交渉中でございますので、その交渉の内容をここで公表することは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、アメリカとの間で合意ができまして、その具体的な取り扱いについて何らかの取り決めができた場合には、これは当然のことながら通常の手続に従って公表されることになると考えております。
  236. 久保亘

    久保亘君 この二国間の協定に基づいてやられているその細目の協議事項というのは、これは既にアメリカ側では合意に達したということになっているんですよ。日本政府の側が、国会で今予算審議をやっておるからぐあいが悪い、ここでこれを出してしまうと国会の中で野党のリアクションを起こす、これでは困るから待ってくれと、こう言っていると向こうでは報道されているんだよ。あなた方もその報道は知っているはずじゃないか。
  237. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) その報道があるということは承知しております。
  238. 久保亘

    久保亘君 それじゃその報道はうそかね。
  239. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) その報道自身については承知しておりますけれども、我が方の側におきまして、完全に合意ができたものをわざと合意ができてないふりをして公表の時期を延ばしているというようなことはございません。
  240. 久保亘

    久保亘君 きょうは時間がないから、またこれは後で問題にします。  それからもう一つ、三月三日、上院予算委員会、カールッチ長官証言、在フィリピン米軍基地貸与料の肩がわりを日本に求めることを検討している、スーピック、クラーク両基地でフィリピンが今アメリカに増額要求をしているのは年間十二億ドル、これを日本のシーレーン防衛にアメリカ側の基地が役割を果たしているという理由で日本に分担をさせるということが報道されているが、このような事実を承知していますか。
  241. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) そういう報道があったことは承知しております。また、調査もいたしました。
  242. 久保亘

    久保亘君 その調査の結果を報告してください。
  243. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 今の報道によりますと、カールッチ国防長官がそのように言ったというふうな報道になりかねないわけでありますが、調査の結果、質問者が、我が国にも佐々という人がいますが、サッサー議員でございます。そのサッサー議員が今おっしゃったような内容の質問をした。で、サッサー議員の発言でございまして、カールッチ長官の発言ではないということがわかりた次第であります。
  244. 久保亘

    久保亘君 どこで確認をされたんですか。
  245. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) そのような報道がございましたので、在米の日本大使館を通じてどのような実際のやりとりがあったかということを記録に当たって調べたわけでございます。ワシントンでございます。
  246. 久保亘

    久保亘君 総理に伺っておきますが、将来このようなことがあったとしても、これは思いやり予算というよりは完全な思い違い予算でありますから、このようなものに日本政府が応ずることは絶対にないということをおっしゃっていただけます
  247. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 在比米軍基地の借料を日本が肩がわりすべきであるという考えをアメリカが持っておるとも思えませんし、私どもはそのようなことを全く考えておりません。
  248. 久保亘

    久保亘君 ただ日本の場合には、ペルシャ湾の問題に関連をさせて在日米軍経費の負担をやるという全く関連性のないことをやってのけようとしている。これはまあ前科にはまだなっておりませんけれども、前科ができようとしているわけでありまして、そういう点では私どもは非常に憂慮をするわけであります。だから、全くそういうことは考えていないということではあり得ない、そういうことはあり得ないということをはっきりしてもらいたいと思うんです。
  249. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ペルシャ湾に関する幾つかの決定をいたしましたのは昨年十月七日でございます。そのときに、在日米軍の経費軽減という問題も、実はなお書きの中に書いてあるようなことで、それが一番よかろうというふうなことになりました。で、ペルシャ湾の問題で、そのものではないということを御理解願えますし、なおかつアメリカがグローバルな役割を果たしておる、そのグローバルな役割に対するそうした措置かと、そうでもないと、あくまでも日米安保体制の円滑な運営、効果的な運営のために我々として考えましょうと、こういうことでございますので、その点はっきりと分離しております。
  250. 久保亘

    久保亘君 GNP一%にかえて中期防十八兆四千億の総額明示方式を新たな歯どめとして政府が一方的に決められたことは御承知のとおりでありますけれども、今このイージス艦の導入とかあるいは思いやり予算の急激な増額、こういうものを見ておりますと、これは、中期防による総額明示方式は即に防衛費の歯どめとしては破綻をしているのではないかと思うのですが、防衛庁長官、いかがですか。
  251. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 政府は一昨年一月の閣議決定におきまして、中期防に定める所要経費、昭和六十年度価格でおおむね十八兆四千億円程度、この枠内で各年度の防衛力整備、これを実施することと決定したところでございます。この決定を守ってまいるということは私どもに課せられた大切なことだと、かように心得ております。
  252. 久保亘

    久保亘君 十八兆四千億を守ると言われるんですが、中期防の当初計画にはなかったものが次々に入っているはずです。それで、十八兆四千億で守れるというなら、初めから内容をごまかして大まかな数字で一%を突破するために十八兆四千億という総額を明示したにすぎないということになりませんか。
  253. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今先生の御質問は、例えば昨年の特別協定等に伴う給与の一部、手当の一部日本負担等が中期防に入っていなかったもの、それを入れた、そういったものが入ってくるということは中期防が、例えば少し油が多過ぎたんだとかそういう御質問であろうかと思いますが、正直に申し上げて中期防策定当時、昨年決めました特別協定等の予測はいたしておりません。  それではどうしてその中期防の中でできるかということでございますが、一つは、中期防というものはさらに年度年度で精査をすることになって厳しくもう一回査定を受け、我々としても整理をしてより絞り上げているということもございますし、同時に当初計画しておりましたもの、後方経費については個々に積み上げて、計画としては決めておりませんけれども、一応念頭に置いて積算しておったもののおくれというものがございます。そういったものを見ながら、その範囲内で、この程度であれば負担をできるということでにらみながらやっております。  したがいまして、昨年六月に国会で御承認いただきました特別協定分の負担増につきましては、従来の施設庁で五カ年計画中に必要とすると思われた経費というものが、一応の見積もりがございますが、その中で事業をずらすことによって、あるいはやめることによって、そういったところでほぼ賄い得るものである。若干飛び出す部分がありますが、その分につきましては防衛本庁分の方の経費を節減してその中で賄うということになろうかと思います。
  254. 久保亘

    久保亘君 そこまでおっしゃるならば、六十一年度からのこの中期防の年次ごと計画、その年度の予算細目、それを資料として提出してください。そうしないと、防衛庁の経費だけが十八兆四千億というどんぶり勘定で、そしてその枠内なら何でもやっていい、こういうことでは困るんです。シビリアンコントロールというのは一体何がやられるのかということが国会で全部わからなけりゃだめだ。だからその内容を全部ここへ提出してください。
  255. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 各年度の予算の内容につきましては、当然のことながら詳細御審議いただいておりますし、資料として提出することもできるわけでございますが、一方、中期計画の方は御存じのように年次計画というのがございませんので、それと対比をすることは困難であるということは御理解いただきたいと思います。
  256. 久保亘

    久保亘君 その中期防の十八兆四千億の年次ごと内訳というのはあるでしょう。それは何となく一%超えるためには十八兆四千億円ぐらいにした方がいいということで決まった金額ですか。
  257. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 中期防は、これは過去の五カ年計画等もそうでございますが、五カ年間の総事業と総経費ということで定められておりまして、年次ごとの事業、年次ごとの経費というふうに定められておりません。それらについては、やはり年度予算の中で逐次決めておくということになっておりますので、年次計画というものはございません。
  258. 久保亘

    久保亘君 年次計画がないなら当初計画を、当初計画を事業計画に基づいて積算したと言うのならば、その当初計画のそれを出してください。
  259. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 全体計画の中で過去三カ年、今お願いしております六十三年度予算を含めて三年度分でございますが、それの進捗率等については資料をお出しいたします。
  260. 久保亘

    久保亘君 それはだめなんだよ。十八兆四千億を決めておいて、そこに合わせるように毎年やっていったんじゃそれはだめなんだよ。中期防をつくったときのあなた方の事業計画、積算、そういうものがあるでしょう。それを出してくださいと言っているんですよ。
  261. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 十八兆四千億と申しますのは、たびたび御説明申し上げておりますように六十年度価格でございますので、その間のノミナルなもの、ノミナルで上がったものもございます。例えばベースアップ等でふえたものがありますし、それから例えば円高等で下がったものがあります。そういったものは省いて比べますので、私ども決して五カ年間で十八兆四千億ぴったりにするように逐年合わせていくということじゃございませんで、それぞれの事業の中身、実質価格に直したところで進捗状況をお出しいたしますので、それで御了解いただきたいと思います。
  262. 久保亘

    久保亘君 中期防を計画決定したときの事業計画、それから十八兆四千億の計算基礎があるでしょう。それを見せてくれと言っているんですよ。
  263. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 中期防として決定いたしておりますものは全文発表いたしております。
  264. 久保亘

    久保亘君 発表された中期防のあの文章は知っていますよ。しかし、あれでわからないでしょう。護衛艦何隻と書いてあるだけで、何を買うのか、イージス艦があすこへ入っておったのかどうかわからないでしょう。それを言っているんです。だからあの内訳を出してくれと言っている。
  265. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま先生のお尋ねになったような問題につきましては、実は本委員会で、たしか矢田部先生だったと思いますが、御同様の御質問がありまして、内訳として正確に決まっておるものにつきましては従来も出しておりますので、それを参考にしながら進捗状況とあわせてお出ししたいと思っております灯
  266. 久保亘

    久保亘君 私が言っているんですよ。(「出す」と呼ぶ者あり)出すって。いや、中期防の発表されている文章を持ってきたってだめだよ。そんなものなら見ればわかるんだよ。
  267. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま久保先生から改めて御要求がありましたので、中期防として個別に決まっておるもの、それから後方のように全体経費として決まっておるものと種類がございますが、中身の精粗の差はございますけれども、お出しをいたします。御説明に上がります。
  268. 久保亘

    久保亘君 中期防が終わります六十五年度末に後年度負担が幾らになると計算されておりますか。
  269. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 後年度負担につきましては、中期防としましてはいわゆる正面経費、個別に積み上げが可能なものについては、中期防として二兆五千五百億であったと思いますが、というものが予定されておりますが、一方、後方というのは非常に種々雑多、アイテムが非常に多うございまして、これについてはまた特段の定めがございませんし、最終的にそれを含めた数字がどうなるかということは、現在のところ申し上げる段階にございません。
  270. 久保亘

    久保亘君 中期防の期間中に買われる品物というのは、これは中期防の計画の中にあるわけでしょう。そうしたらあなた、後年度負担が何ぼになるかわからぬというのはおかしいじゃないですか。計画にないものを買うのかね。
  271. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) たびたび申し上げていますように、中期防と申しますのは、五カ年間に整備する計画について主要なもの、正面装備、例えば航空機であるとか船であるとか、あるいは戦車であるとかミサイルであるとか、そういったものについては個別に積み上げといいますか数量等も定めておりますが、一方、例えば修理費の部品がどうなるかとか、その種のものにつきましては積み上げが不能でございますので一応の積算と、それから過去の正面、後方の比率であるとか、過去の予算の伸び率であるとか、そういうものをにらみながら、総額として、金目として決めておりますので、それらについてまで現在わからないという点だけを御了解いただきたいと思います。
  272. 久保亘

    久保亘君 最終年度に買いだめをして、そしてそれを全部後年度負担で送ってしまうと十八兆四千億の外へ飛び出すわけです。そういう操作というのはできないんでしょうね。
  273. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 理論的に全くできないということじゃないと思いますけれども、財政当局もこういうものを精査いたしますわけでございますから、ある年、翌年にどんと全部ツケが来るというようなことではなくて、ふえるにしろふえないにしろ、なだらかな平準的な予算ということが非常に大事でございますので、そういったようなことは事実上は不可能でございます。
  274. 久保亘

    久保亘君 中期防の最終年度に後年度負担となるものは、ポスト中期防の総額の中に含まれるんですか。
  275. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 当然含まれてまいります。
  276. 久保亘

    久保亘君 各省の予算を調べてみますと、後年度負担というのは圧倒的に防衛庁が持っておるんです。防衛庁が圧倒的に持っている。しかも、今年も予算ゼロ、全額後年度負担というのもあるんです。そうすると、六十五年度に買う品物を後年度負担にツケ回しすれば、十八兆四千億を突破してもこれはポスト中期防の予算になるということになれば、防衛費の総額歯どめのごまかしが起こるんじゃないですか。
  277. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 例えば航空機、艦艇あるいは陸の装備品というように、それぞれ過去長い間の契約に対しての、これは何カ年でできる、その場合の支出の仕方、金の払い方はどうするという一つのルールがございまして、それにのっとってやっておりますので、先生のおっしゃるように、怒意的にあるとき全部ゼロにしておいて最終年度にすべて払ってしまう、あるいは次の計画のときに払ってしまう、そういうようなことはございませんので、そのような御懸念はございません。
  278. 久保亘

    久保亘君 いずれその中期防の計画を精査させていただくときに、また今の問題については詳しくお尋ねをしたいと思っております。  時間が非常に短くなりましたので、防衛庁に最後に、宮崎県えびの市に建設を計画しているVLF基地に関連をして防衛庁とえびの市との間に交換された覚書の内容を御報告いただきたい。
  279. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えいたします。  えびの市に超長波の送信所を設置いたしますことに伴いまして、えびの市当局から当該地域の特性を考慮した振興措置について要望がございまして、当事者間でいろいろ協議を行いました結果を覚書としてつくってございますが、覚書そのものにつきましては、市当局とのお約束で公表しないということにしておりますので公表は差し控えさしていただきたいと思いますが、お尋ねでございますので、その概要についてここで申し上げたいと思います。  五項目ございまして、第一項目が霧島演習場内の市有地の早期買収でございます。これはかねてからえびの市から要望がございました市有地の早期買収について防衛施設庁は誠意を持って最大限努力する、こういう内容でございます。  それから二番目が周辺整備事業でございまして、周辺整備事業につきまして、超長波送信所の設置を念頭に置いて市と協議、調整を図りつつ逐次その実現に努力する、これが第二番目でございます。  第三番目に、環境保全等につきまして、送信所の建設に当たり進入路となる市道の整備について必要な措置を講じ、環境の保全を図り、また周辺における住氏の生活及び事業活動に支障を及ぼさないよう措置する。これが第三番目でございます。  第四番目といたしまして、防衛関連企業の進出について、国は私企業の立地について関与する立場にないが、側面的に協力をする、こういう内容がございます。  それから最後に第五番目として、その他といたしまして、特定防衛施設の指定等については今後引き継き検討する。  この五項目の内容になっております。
  280. 久保亘

    久保亘君 VLF基地は特定防衛施設に該当いたしますか。
  281. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 防衛施設の中で、特にその周辺に影響の大きなものについて特定防衛施設というような形で対象にしておるのがございますが、現在話題になっております超長波の送信所は、この特定防衛施設の対象には現在の規定ではなっておりません。
  282. 久保亘

    久保亘君 法律や規定をお変えになるんですか。
  283. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 私どもといたしましては、地元から非常に強い御要望はございますが、現行制度上は今申し上げましたように、VLFにつきましては大変適用は難しい、こういうことでございますので、この問題については今後の検討課題として受けとめております。  なお、当地には防衛施設につきましては演習場それから駐屯地がございますので、そちらの方につきまして、例えば現在ございます霧島演習場、これはかねてから逐次整備を進めておりまして、これの効率的運用というような事態になりました場合には、その指定について検討がなされる可能性はございます。
  284. 久保亘

    久保亘君 VLFの基地は該当しないのは、法律の対象とならないのに、これを対象とするかのような期待を持たせる覚書を結んでおる。そして、それができないとなったら別の演習地を特定施設に指定しようとする。この演習地自体も今対象にならないんでしょう。
  285. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えいたします。  霧島演習場につきましては、こちらにえびの駐屯地を設立いたしました際にその整備を図るということでかねてから懸案になっておりまして、その演習場の整備について現在民有地あるいは市有地の購入等も実施をいたしておりまして、整備が進みました段階ではある程度の対象というような形で考慮できる形になろうかというふうに考えております。
  286. 久保亘

    久保亘君 特定施設となるためには、演習の日数とか、演習の内容とか広さとか、いろいろあるはずです。今の霧島演習場はそれに該当しない。これに該当させるためには防衛庁としてこの演習場を格上げするための条件をいろいろ整備せにゃいかぬです。どういうことをおやりになるんです。
  287. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えいたします。  これは、私どもが直接演習場を使うわけでございませんで、陸上自衛隊の方でお使いになるわけでございまして、陸上自衛隊の御計画では、現在の整備が進みますと演習場の活用できる地域というものがある程度整備をされてくる。こういうことで対象になるような使用実態が出てくる可能性もある、こういうことでございます。
  288. 久保亘

    久保亘君 特定施設となるためには、砲撃演習が行われたり、射爆場になったり、そういう問題がその条件としてありませんか。
  289. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 現在、その指定の条件といたしましては、砲爆撃のいろんな態様でございますとか頻度でございますとか、そういったものについていろんな条件はございます。
  290. 久保亘

    久保亘君 VLFをつくるのに地元の了解を得るために特定施設の対象にしてやる。それが難しくなったら、隣の演習場を砲爆撃の演習をやる基地に格上げして、そしてVLFを地元に了解させる、そんなむちゃなやり方がありますか。防衛庁長官、これをどう思いますか。
  291. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 演習場の方は、先ほど申し上げましたように、えびの駐屯地の開設のときからの懸案でございまして、逐次整備を進めてきたものでございます。  今回、VLFについてえびのに立地を予定しておるということで大変御協力をいただく、こういうこともかねて私どもといたしましては勘案をいたしまして、将来そういった演習場の態様というものが整備をされてくる場合には検討の対象といたしましょう、こういうようなことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  292. 久保亘

    久保亘君 VLFの代償に我が鹿児島県も含めてあります演習場が砲爆撃の演習場になるなんということは、これは絶対に認められない。それで、そういうやり方で地元を納得させるというようなそういう防衛庁の姿勢を改めてもらいたいと思う。長官、どうですか。
  293. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 我が国の安全を守り、維持するということは極めて重要なことでございまして、このたびのVLF、超長波送信所、委員御承知のとおり、海上自衛隊の潜水艦に対する命令、情報を伝達するための施設でございますが、地元にとりまして今御理解をいただきつつその建設を進めたい、かように考えておるわけでございまして、今ほど施設庁長官よりるる説明がございましたが、御理解をいただきましてこの施設の建設を進めさしていただきたいと思っておるところでございます。
  294. 久保亘

    久保亘君 何でよそから来て砲爆撃を受けなきゃいかぬのかね。長官に私の聞いたことに答えさしてください。
  295. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 補足を私の方から申し上げますが、先ほど大臣から答弁されましたように、VLFは非常に重要な施設でございます。ただ、直接には、先ほど先生から御指摘がございましたように、特定防衛施設ということではございません。しかしながら、非常に大きな面積をここで防衛施設として使用する。こういうものを一方に念頭に置きながら、かつまた現在既に使用いたしております演習場、これの整備も、従前からの地元とのお約束がございまして逐一整備を進めてきておるわけでございまして、VLFに関連してこれが大いに拡張されるとか、そういう直接の因果関係というのは実はそれほどあるわけではございませんで、もともとそういった整備計画というものが実は片方にあったわけでございます。ただ、その用地の取得とか、そういった面につきまして今回市側からもいろいろ御要望が出てまいって、我が方でもそういった要望にこたえて整備を進めることが可能ではなかろうかなというような検討があるということでございます。  それから、補足をさしていただきますと、現に実はこの霧島演習場、迫撃砲の砲撃それ自身は演習項目としては入っておりますので、その辺は御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  296. 久保亘

    久保亘君 VLFと関係はないと言われるけれども、VLFにかかわって覚書が発展してそうなっておるんです。だから、この問題については私どもとしては絶対に了解できないということを申し上げておきます。  最後になりましたが、厚生大臣あるいは厚生省にお尋ねをしておきたいのであります。  国民年金の適用について、任意加入となります二十歳を超える学生について、任意加入のために国民年金に加入をしないでいるというか、手続が面倒でなかなかやりにくい、こういうものがあるためにその期間に起きたいろいろな障害その他によって生涯無年金となる者が発生をしている事例がございます。したがって、学生に対する国民年金の任意適用について、健康保険の被扶養家族になっている学生については厚生年金の妻の場合と同じ扱いにする、それから年金保険料の払い込みは親が親の居住する市町村において行うことができるようにしてもらえば、これらの学生が任意に加入をしておることによって無年金となることがなくなるのでありますが、厚生省はこの点について御配慮願えるかどうか、お伺いしたいと思います。
  297. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 御指摘のように、任意加入の制度でございまして実効が上がっていない。推定二万人ぐらいの加入者でございますから、全体が私立、公立を合わせて二百万人、その半分の百万人と考えますと二%前後、こういう実態でございます。  それで、御指摘のように、事故に遭った。そうしますと、国民年金に加入していない人は障害基礎年金をもらえない。確かにおっしゃるとおりでございまして、それを救うために国民年金の任意加入率を上げていく、こういうことになるわけでございますが、その場合に今の居住地主義から親の居住地の方から加入できる、こういうふうにすればいいじゃないか、こういう御指摘であるわけでございまして、まことに傾聴すべき御意見でございますので、いろいろ難しい問題は確かにございますけれども、そういうことができるようにやってまいりたいと考えております。
  298. 久保亘

    久保亘君 終わります。どうもありがとうございました。
  299. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で久保亘君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  300. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、林ゆう君の質疑を行います。林道君。
  301. 林ゆう

    ○林ゆう君 私は、与えられた時間内において、今日我が国が抱えている内外の重要課題につきまして、竹下内閣の基本姿勢や政策の取り組み方について質問を行いたいと思います。どうか総理以下関係閣僚におかれましては、簡潔明瞭に、わかりやすくお答えを願いたいと思います。  竹下政権が誕生してからはや四カ月を経過いたしました。まず順調な滑り出しと思います。マスコミの世論調査によりますと、内閣支持率も大体五〇%前後で、歴代内閣と比較いたしまして高い水準が確保されております。このようなことは、国の政治を担当するに当たりまして、竹下流といいますか、合意形成を求めて誠実に慎重に事に対処していることが国民的共感を呼んでいるのではなかろうかと思います。  就任当初、外交の方は余り経験はなく、御自分から未知の荒海を行くがごとしなどと言われておりましたが、ASEAN首脳会議、日米首脳会談での成果、カナダ訪問、韓国における新大統領との会見など着実に実績を上げておられ、内政と一体化した主体的外交の展開にむしろ一段と自信を強められたのではないかと思います。  御承知のように、今日我が国は国際国家日本としていかにして世界に貢献するかが問われております。経済大国としてドル不安の中で対外不均衡の是正や経済協力などの問題を抱えているほか、国内的には税制改革、教育改革、経済構造の調整、経済摩擦の解消などの重要問題が山積しております。  総理は、施政演説におきまして、これら内外の課題に取り組むことは調和と活力を目指すことであると強調されておられますが、私もまさにそのとおりだと思います。戦後四十年、我が国が国民各位の営々とした努力と我が党の先達の適切な政治運営によりまして、世界で最も平和な国となり、そして豊かな社会を実現いたしました。今日、内外ともに激動と模索の時代を迎えておりますが、豊かさが真に実感できる社会、公正と活力のある社会を築いていくことが国民的課題であります。総理、新しい時代の展望をどのように受けとめて今後政権を担っていかれるのか、その御決意と基本姿勢を承りたいと思います。
  302. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、林さんおっしゃいましたように、実感としての幸せ感を感ずるということをやはり無限の理想への挑戦として続けていかなければならない、最終的にはそう思っております。  今お話がございましたように、政権ができましてから既に四カ月を経過いたしました。その間マスコミの評価等いろいろございますが、それは確かに今までの私の経歴を振り返ってみますと、予算編成等についてはややなれた仕事でございましたし、また外交交渉ということになりますと、率直に言って通貨外交という範疇から外へ飛び出した外交の経験は持っていなかったことも事実でございます。こうなれば、やはり自分の得手不得手の分野は別として、一つ一つ誠実に対応していくことが国民の皆様方の負託にこたえるゆえんのものではなかろうか、このような考え方で今日進んでまいりました。  しかし、何はさてあれ、やはり国民の合意というものを求めながら進まなければいかなる政策も実現することはできないわけでございます。したがって、これが合意形成には忍耐強く対応しながら、まさにおっしゃいましたように調和と活力の政治ということを目指してこれからもやっていきたいと思います。  ただ私なりの、みずからの性格を振り返ってみましても、確かに聞く耳を持っておるということは自分で意識しますが、いつもいつも話を聞いておるばかりで何ら決断しないことになってはならない。やはり決断すべきはみずからの責任で決断しなければならないということは、絶えず自分に言い聞かしておるつもりでございます。  いずれにせよ、対立と抗争の中に進歩はなく、対話と協調の中にこそ進歩があるという考え方をもとにして今後も努めてまいりたいと思います。
  303. 林ゆう

    ○林ゆう君 以下、具体的政策課題について順次お尋ねをいたしますが、まず外交問題からお伺いをいたします。  総理が外交理念として「世界に貢献する日本」を姿勢として打ち出しておられますが、これは私も同感でございます。御案内のように、世界は大きく変動しております。国際経済の面で見ますと、世界の主要国は経常収支の不均衡が依然として続いております。また、累積債務の問題はますます深刻になっていくようでございます。一方、国際政治の面では、懸案であったINF全廃条約が昨年十二月に米ソ首脳会談において署名が行われ、米ソ両国の核軍縮に向けての軍備管理・軍縮交渉に大きな前進が見られました。しかし他方、イラン・イラク戦争、中東和平問題、カンボジア問題など各種の紛争は解決の見通しがつかず、不安的要因は依然として残っております。  こうした中で、我が国に寄せる世界の期待は大きいものがございます。我が国が現在世界の一〇%以上のGNPを有し、一人当たり国民所得は世界一となっておりますが、生活実感としては余りぴんとはきませんけれども、これというのも我が国自身の絶えざる努力もさることながら、一番大事なことは、米国を初めとして西側の先進国と一緒になって協力関係を維持しているからその恩恵をこうむることができ、それにより我が国の平和と繁栄があるものと思います。それだけに、我が国の持てる力、経済力、政治力を西側の一員として世界のために貢献すべきであり、同時に、アジア・太平洋地域の一員としても域内の発展に尽くさなければなりません。  総理は内政と外交の一体を唱えておられます。また、我が国の国際社会への貢献を標榜されておられますが、竹下外交の基本理念をお伺いいたします。
  304. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的にやはり平和と繁栄というのは、これは人類共通の課題であると思っております。しかし、平和とか繁栄というものは、結局みずからが懸命に汗を流すということなくして、ただ他にこれを依存するだけで享受できるものではないというふうに考えております。そういう考え方の中に立って今日に至った我が国でございますから、我が国の持つ豊かさというようなものを世界全体の中にこれを生かしていかなければならないというのが「世界に貢献する日本」ということを私が申し上げたゆえんのものでございます。  そうして、御説にございましたように、もとよりその場合、ウィリアムズバーグ・サミットにおいて当時の中曽根総理が発言をされました、私もたまたま同席いたしておりましたが、我が国が西側の一員であるということ、その西側の団結というものがあってこそ初めて私はいわゆる軍縮・軍備管理等の問題についてもそれが実現を見る基礎ではなかったかというふうに考えております。同時に、アジア・太平洋地域の一国であるという基本的立場というものをこれはしっかりと持ち続けていかなければならない。これが、私がたまたまでございましたが、外遊いたしますところの最初の訪問国がフィリピンであり、そしてマニラで行われましたところのいわゆるASEANのサミットであったということは、私自身にとっても幸いしたことであるというふうに思っております。  そうして、さらに御意見としてございました東西関係の安定という問題。INF条約というものが締結されましたからにおいては、これが批准されるはもとよりのことでございますが、さらに戦略核の問題、そうして通常兵力の問題、そうしてアフガニスタン等地域紛争の問題の解決へ向かって進まなければ、現実というものはなお力の均衡の中に世界の安定が保たれておるということを否定するわけにはまいりませんし、そういう厳しい現実というものを絶えず踏まえながら、このINF条約に見られた大きな第一歩というものをさらに進めていかなければならない課題だと思っております。  そうしてまた、我が国がいわゆる国際国家へ果たすべき役割というもの、これは途上国の安定と平和ということはもとよりでありますが、今日まで、とかく物の面における海外経済協力とかいうことのみにとどまることなく、文化あるいは人材交流、そういう点についても果たさなければならない役割がなお大きくなっておるということを問題意識として絶えず持ち続けておるところでございます。
  305. 林ゆう

    ○林ゆう君 総理が日米関係が最重要課題と申されるように、日米安保体制を基軸とする日米関係の維持発展は我が国の外交の基本であります。新春早々の総理の初の訪米により日米協力の重要性が認識されるとともに、ロン・ノボルという日米友好協力の一層の基礎固めができたものとして喜びにたえません。私は、竹下総理の訪米によって両国のパートナーシップがますます強固なものとなったと喜ぶものであります。総理は今次の訪米を踏まえて今後の日米関係の発展にどう取り組まれるのか、御決意のほどを承りたいと思います。
  306. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 何としても日米安保条約、すなわち日米安保体制というものを基軸とする日米関係でございますから、まさに日米関係というのは外交の基軸に置くべきであるという考え方に立っております。したがって、その関係というものは今後、両国のみならず、何分両国足しますと三分の二のGNPというものの大きさでございますだけに、世界全体に対して大きな影響をもたらすものでございますだけに、この関係というのはあくまでも大切にすべきものであると思っております。  したがって一月の訪米につきましては、そういう世界的視野に立って今後密接に協力していこう、その場合、それぞれの役割と責任というものがあるということをお互い意思を確認いたしまして、したがって二国間の経済問題、これだけ交流が深く広くなりますればなるほどに、さまざまなトラブルも起きてくることもまた当然のことでございます。これらは、どちらの責任だという姿勢でなくして、共同作業によって解決していこうという基本姿勢を確認いたしたところでございます。このような考え方に立って世界に貢献する日本というものをこれからも築き上げていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  307. 林ゆう

    ○林ゆう君 私は、当面する国際問題で我が国が何としても早急に解決を図らなければならない問題は対外不均衡の是正であり、そのための市場開放の促進であると思います。農産物輸入自由化問題につきましては後ほどまとめて御質問いたしますが、この問題と公共事業への参入問題についてはレーガン大統領より言及があったそうでございますが、現在の進捗状況はどうなっているのか、今後の見通しを含めて外務大臣あるいは建設大臣からも御答弁をいただきたいと思います。
  308. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 公共事業について申し上げます。  その根底には、竹下・レーガン会談で日米今後の問題は一つ一つ協議において片づけていきましょうということが確認されておりまするし、そのときの公共事業も既に問題化しておったわけでございますが、私とシュルツ長官との間におきまして、両国の代表団によって解決していただきましょうと申し上げたわけで、そのときには実は日米の間において不信感がありましたが、日本の公共事業そのものは内外無差別であるから、したがってどうぞ入ってきてください、なおかつ日本の公共事業には日本としての実績というものがあるけれどもアメリカの建設業界には日本における実績がない、その点もアメリカの実績を日本の実績として見ましょうと、そこまで実は思い切って言ってあるわけでございますが、そうしたことを中心に両国が相寄りまして、この間もさらに民間事業等々拡大されていっておるわけでございます。    〔委員長退席、理事伊江朝雄君着席〕  ただいまのところは、細かなところでもう少しく話が合わないというので、両国ともに上層部に上げてその判断を仰いではどうかというふうなことで、今夕担当者が帰ってまいる予定になっております。そこで私は、十二分に話を聞き、運輸、建設両省とも協議をしたい、かように考えております。  率直に言いまして、我が方もせっかく竹下総理とレーガン大統領のそういう話し合いが相当実っておるわけですから、一つ一つの懸案を実らさなくちゃなりませんので、実のところは関西空港に始まりまして公共事業にまで来たわけですが、はっきり言いますと、交渉当事者から申し上げますと、ゴールのところまで行くとそのゴールがまた向こうへ行ったというふうな感じだと。それであってはやはりいつまでゴールを置いてもしようがないから、その点も松永大使を通じましてアメリカの担当の最要職のお方には伝えてあります。友好ということを中心として、我が国も大いに市場を開放しておるんだから、ひとつアメリカさんもその点は十分理解しなさいと。まだもう一回そういうような会議が残されておるという段階でございます。
  309. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) ただいま外務大臣からお答えしたとおりでありますが、建設省といたしましても早く妥協に導こう、こういうことで誠心誠意努力をいたしております。今外務大臣がお話しになりましたように、もう妥協寸前に参りましてまた逆戻りするというような状態になっておるのが事実のようであります。御承知のように、日本の公共事業を含めて建設業、内外無差別であります。これを基本にして、今お話しのありましたように外国の実績等を加味する、こういうことで鋭意努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  310. 林ゆう

    ○林ゆう君 さて、韓国では平和的に政権交代が行われ、盧泰愚氏が大統領に就任されました。竹下総理はこの就任式に参列されて、いち早く新大統領との会談を持たれ、両国首脳が近くて近い関係にしたいと熱意を表明し、両国間の友好関係をさらに強化することで合意されたことは、日韓新時代の幕あげとして大きな期待を寄せるものであります。  まず韓中橋渡しの問題でありますが、この問題については、盧泰愚大統領は就任前から朝鮮半島における緊張緩和の観点から強い意欲を持たれておりました。今回我が国に対し協力要請があったわけでありますが、我が国としても側面から韓中改善のためにその環境づくりの支援を行うべきと思いますけれども、総理の御抱負を承りたいと思います。  またさらに、二国間における緊密なパートナーの維持発展を確約し、文化交流の拡大を初めとして日韓二十一世紀委員会の設置が決まりましたが、今後の対応の方針はいかがであろうか、お伺いいたします。
  311. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御指摘がございましたように、確かに韓中関係の改善、こういうことになりますと、朝鮮半島の緊張緩和のための環境づくりという観点からも望ましいというふうに考えております。朝鮮半島を取り巻く現下の情勢が一挙に大きな進展を可能とするものであるかは必ずしも明らかではございませんけれども、今後、韓国を初め関係各国とも十分協議の上に細心の注意を払いながら着実に努力していかなきゃならぬ課題である。したがって、端的な表現をしますならば、ムードだけに乗っかってという考えはなく、いろいろな細かい配慮というものの中に積み上げていく我が国でなすべき協力というものを模索していかなきゃならぬと思っております。  それから、これも御指摘のありました二十一世紀委員会、これは先般訪韓の際、盧泰愚大統領と会談をいたしまして、良好かつ緊密な日韓関係を今後さらに国際的視野から長期にわたり安定的に強化発展していくというために、早期設置ということを合意したわけでございます。この問題につきましては、さらに飛躍、発展することを期待いたしておりますが、幸いお許しをいただいて、今月の連休の際、宇野外務大臣が定期外相会議ということで訪韓されることになりますので、具体的に物事が進むであろうということを期待いたしておるところでございます。
  312. 林ゆう

    ○林ゆう君 また、当面の課題はソウル・オリンピックの成功と安全対策であります。今回、テロ防止のため日韓五輪安全対策連絡協議会を設置することで合意がありましたが、平和の祭典としてぜひ成功させ、朝鮮半島の平和増進に我が国として大いに協力することは当然のことでございます。この取り組み方についての御所見を承りたいと思います。
  313. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国際テロ、これは民主国家に対する挑戦でありまして、断じて許すべからざるものであります。こういう基本的な考え方に立ちまして、さて今の韓国の問題について考えますと、ソウル・オリンピックを何としても立派に仕上げていかなければならない。その安全対策のために首脳会談において合意いたしましたのは、日韓オリンピック安全対策連絡協議会の設置が合意されております。この詳細も、先ほど申しました宇野外務大臣のお許しをいただく連休中の訪韓の際、細部を詰めていこうと、こういう段階にまで到達いたしております。
  314. 林ゆう

    ○林ゆう君 次は経済協力の問題でございますが、我が国のODA予算をドルに換算いたしますと約百億ドルにも達し、金額では世界一となりました。このことは、我が国のODA重視の姿勢を内外に示すものとして評価すべきものと考えます。しかしながら、我が国のODAについてはまだまだ改善すべき点が多いと考えます。例えばODAの中身について見ますと、他の先進国は贈与がほとんどであるのに対しまして、我が国の場合には借款が約半分を占めており、最近は円高の影響もあって、途上国にとってはその返済が重荷となってきております。したがって、我が国が真に国際的な貢献をなすためには、これらの諸点について今後改善を図っていく努力が不可欠であろうかと考えます。  さらに、貴重な国民の税金によって賄われる我が国の援助を将来にわたって推進していくためには、その内容について従来以上に国民に知らしめることがぜひとも必要であろうかと考えますが、これに関しまして総理並びに外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  315. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 本年度予算におけるODAは、いろいろと先生方の御支援もいただきまして初めて七千億円台というものにのることができたのでございます。そして、前年対比政府全体で六・五%、外務省で六・二%の増と、これは非常に高く諸外国から評価されております。しかしながら、やはりおっしゃるとおりに、援助の中身はおきまして無償ということを我々といたしましてはさらに拡大する必要があるということがまず第一点。お互いに二国間の借款とはいえ、その内容におきまして、最近はもう低金利の時代でございますから、だからそれでよいのかというようなお話もありますし、加うるに円高ドル安、返済のときどうなるんだというお話もございますし、この点にかんがみましても、ひとつODAの内容に関しましてはさらに御理解を賜りまして御支援をいただきたい、かように考えておる次第であります。  また、貴重な国民の税金を使わしていただいてナンバーツーの国としての義務を果たしておるというのがODAの性格でございますから、だからこの点も国民の方々にもっともっとやはり御支援を仰ぐべく、理解を深めるいろんなことをやっていかなくちゃならぬ、こういうふうに思っておるような次第でございまして、昨年は十月六日に経済協力の日であるというふうな日も設定いたしておりますが、もう少しく本年は内容を伴って、多くの国民の皆さん方が理解を深め協力を惜しまないというふうな体制に持っていきたい、かように考えております。    〔理事伊江朝雄君退席、委員長着席〕
  316. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ODAの基本的考え方について今外務大臣からお答え申し上げたところでございますが、まずやっぱりODAを計画的に進めなきゃいかぬというのが、昭和六十年九月十八日未明でございました、先ほど来論議のあっておりました中期防衛計画とODAの七年倍増、四百億ドルというのを決定いたしたわけでございます。  それで、中身の問題についても御意見がございましたが、私自身もある種の反省もいたしております。と申しますのは、新幹線にいたしましてもあるいは高速道路にいたしましても、また黒四ダムでございますとか製鉄所でございますとか、そういうものをかつて世界銀行へ一生懸命借りに行きまして、それは返きなきゃならぬ金であるということから非常に勇気を出して先輩が働いていただいて、今や債務国ではなく世界一の債権国になっておる。したがって、私の考え方の中には、やっぱり返す金であるからそれが勇気をさらに鼓舞するというような考え方がございました。  しかし一方、いろいろな情勢を考えてみますと、今贈与というお言葉がございましたが、そういうことが必要であるということも当然考えなきゃいかぬ。それで、そういう贈与に関する問題で日本なんかにどういう例があるだろうかと思って振り返ってみますと、ガリオフ、エロア、あるいはユニセフ、そういう資金で粉ミルクでお育ちになった方が本院にももう既に出ていらっしゃいますし、それからフルブライトで留学されて、大変な頭脳を日本へお持ち帰りになった方が六千人で、これもまた本院にも衆議院にも既にフルブライトの方もいらっしゃるわけです。  そういうことで、我々もいわゆる贈与分において随分今日に至るまで大変なお世話になったことがあったんだなということになりますと、先ほど宇野大臣から言われた質的問題ということをこれからよくよく検討してやらなきゃならぬ課題だというふうに思っておるところであります。そういうことで、御趣旨の御意見というものをやっぱり尊重しながら今後ともこれに対応していかなきゃならぬ課題だというふうに思っておるところであります。
  317. 林ゆう

    ○林ゆう君 経済大国としての我が国は、諸外国との友好をますます増進させて、国益を踏まえて国力にふさわしい強力な外交を展開していくことが必要であります。これには外交体制の強化を図らなければならないと思います。我が国の外交予算の割合は、先進国はもちろん途上国に比べても低く、業務量の増大に対して陣容が貧弱のように思われます。外交官の数だけではかるわけではありませんけれども、ワシントンには百六十カ国の各国の大使館があります。その中で、ソ連、英国は本国派遣職員は約四百五十名、フランス、西ドイツ、カナダあたりで約三百名、中国が約百八十名、国交のない台湾でさえ約二百名だそうであります。これに対しまして我が国は九十名、これでは十分な日米関係の樹立は少々困難ではないでしょうか。  外務省では、五十四年以来定員五千人体制へ向けて増員に努力中であります。より積極的に拡充を図って、情報、対応のおくれにより国益を損なうことのないように体制整備をすべきと思います。外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  318. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) まことに御指摘のとおりのような状態でございます。  この間私は本会議でいろいろと外交方針を申し述べましたが、それを聞いていたある人が、なるほど今日の日本の大きさ、また責務というものは、言うならば世界各国から要請があり希望が寄せられておるなと、こういう話でありまして、宇野外務大臣は南極と北極だけに触れなかったね、ほかの問題は全部触れたねというぐらい大きな期待が我が国に寄せられておると考えましても間違いでないと思います。その意味におきましては、もっともっと在外公館を初め内容を充実したいと考えておりますが、いかんせん財政再建あるいはまた行政改革の最中でございますが、ことしもそうした中におきまして関係各省庁の御協力を仰ぎまして若干ながらふやしておりますけれども、とてもとても、少数精鋭主義で頑張れと私は気合いをかけておるわけでございますが、やはりこいねがうらくは速やかに五千名体制というものがしけるということが私たちの願望でございます。よろしくお願いを申し上げます。
  319. 林ゆう

    ○林ゆう君 今、市場開放との関連で、外国人労働者の受け入れ問題が大きな社会的問題とたっております。  これまで我が国におきましては、長期の商用者、特殊技術者などについては入国を許可いたしまして、例えば外国人の知識労働者について見れば、現に上場会社の三割が雇用をしております。これに対しまして、労務的作業に従事する単純労働者は、国内における労働市場を考慮して受け入れないことを決定しております。しかし現実には、アジア諸国から観光目的で入国し不法に就労している例はたくさんあります。いわゆるじゃぱゆきさんの数は十万とも二十万とも言われております。これはもはや出稼ぎでございます。  我が国が国際国家として世界に貢献するには、ただ単に経済援助などの金目のものだけでなく、人的交流も今後重要であることは十分過ぎるほどわかっておりますけれども、他方、第二次大戦後の欧州各国における外国人労働者の流入は、今や底辺労働者は外国人という差別を生み、送り返しや同化政策で苦慮している実情を見るにつけまして、果たして国際化の視点からのみで取り扱うこともいかがかと思います。  まず、法務省は不法就労の実態をどう把握しているか、あわせて入国管理上の問題点をお示し願いたいと思います。
  320. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 先生御指摘のように、現在の不法就労者と言われておりまするものは、観光ビザでありまするとかあるいは就学ビザで入国をしてまいりまして不法に残留して単純労働に従事しておる者でございます。  そこで、これは国際国家日本として世界に貢献しなければいかぬと、先生がおっしゃったとおりでございまするけれども、やはり日本の労働政策上、単純労働につきましてはこれを拒否していかなければいかぬ、こういうことでございまして、したがって、まずビザを出す場合にそういうことをよく調べまして拒否をする。それから入国してまいりますると、空港とかあるいは海港におきましてよく審査をいたしまして国外へ出てもらう。大体現在その数は四千百五十一人、これが六十二年で追い返したというところの数でございます。しかし、それでもなお残留をしておる者がありまして、それについては摘発をしております。それが六十二年で一万一千三百七人に及んでおるわけであります。それから不法残留者がどれぐらいあるかという推定もしておりまするが、大体五万人程度あるであろう、こういうように言われておるわけであります。  したがって、法務省といたしましては、労働省、外務省と十分連絡をとりまして、これは在留資格があるわけでありまするから、その在留資格に基づきまして十分精査をして厳重にしていくということとともに、今後さらにどうしていくかということをこれら各省と十分打ち合わせまして、連絡のもとに対処をしてまいりたいというような次第でございまして、要するに目下のところは厳格にこれに対処していくということを進めてまいりたいと思っております。
  321. 林ゆう

    ○林ゆう君 こうした不法就労の増加は、これを放置いたしますと、我が国の労働市場の全般にわたって悪影響をもたらしかねないものと憂慮されます。現に、不法就労として摘発される者の中には労働関係法令の違反が見受けられるところであります。また、我が国の今後の労働力需給を展望いたしますと、内外に厳しい要因も抱え、失業率が上昇しやすい状況が続くなど、雇用失業情勢としては楽観できる状況ではありません。こうした国内の労働市場の現状やそれへの影響、さらには国内労働者の労働条件の問題などとの関連が極めて重要であると考えられますが、労働省はこの外国人労働者の受け入れの問題についてどのようにお考えになっておられるか、労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  322. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 御指摘のように、最近不法就労がふえておるわけでございます。前の前の労働大臣を前にして私が物申すことは何となくやりにくいわけでございますけれども、それだけに足らないところはあなたの方が御存じでございますので御了承いただきたいと思うわけでございます。  労働省としましては、既に外国人の不法就労に対しましては厳正に対応するという方針を固めておるわけでございます。この一月下旬には都道府県知事並びに都道府県労働基準局長あてに、外国人の不法就労の実態の情報をつかみなさい、その場合、もし労働関係法規の違反があった場合には厳正に対処しなさい、それから、同時に出入国管理行政機関へも通報しなさいというような通達を出しまして、目下鋭意調査に当たっておるところでございますし、二月に入りましてからは、事業主の団体でございまする四十団体に向かいまして不法就労者の雇用をしないようにという周知徹底を図ると同時に、協力方を要請いたしたところでございます。  これからの外国人労働者の扱いをどうするかというお尋ねでございますけれども、昭和四十二年以降一貫して、単純労働者を受け入れないというのが政府の方針でございますけれども、そういうことで今の厳しい国内の雇用情勢を考えましたときに、その原則は今後とも踏まえるべきではないかなということで、今労働省内に学識経験者によりまする外国人労働者問題研究会を発足させまして、鋭意検討を進めております。三月の下旬になりますると大方研究の成果、結果が出てまいりますので、その後におきましては労使の代表者、さらに学識経験者等を加えまして、多様な角度からさらに一層の論議を進めてまいりたいというふうに考えておるところであります。
  323. 林ゆう

    ○林ゆう君 本件は、単に外国人雇用問題というだけではなく、我が国の将来における経済的、社会的影響が大きいだけに慎重な対応が必要だと思います。現在我が党内におきましても法務、外交、労働の各部会におきましてそれぞれ小委員会を設置して鋭意検討中のところでありますが、政府といたしましてはいかが考えておられるのか、アジア諸国などとの国際関係もあって高度の政治判断を伴うものと受けとめておりますが、総理の御所見を承りたいと思います。
  324. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私自身もASEAN首脳会議に行きました場合に、いわゆる当該国の日本国への渡航に関する諸問題で二つの点からお話がございました。一つはいわゆる国際的な対日イメージを壊しておるという角度からの問題と、それからもう一つは技術労務者の方がもっと簡単に入れないかという二つの側面からのお話がございました。  これについての具体的な対応策については今法務、労働両大臣からお話がありましたが、御指摘のとおり、この問題はただ入国管理の問題あるいは労務者の日本市場への参入の問題、それだけをとって考えるのじゃなく、総合的に考えていかなきゃならない問題であるということは私も問題を整理いたしておりますので、御趣旨の方向を生かすべきではなかろうかというふうに考えております。
  325. 林ゆう

    ○林ゆう君 次に、安全保障の問題についてお伺いいたします。  昨年の外交問題のビッグイベントとしては、何といってもINF条約の調印と思われます。六年に及ぶ交渉で条約に署名が行われたわけでございますが、特に同条約が、アメリカが当初より主張し我が国も強く支持してきたグローバル・ゼロという形で解決を見たことはよかったと思います。既に米ソ外相は、戦略核兵器の削減を初め軍備管理交渉についての交渉を始めているようでありますが、この帰趨は我が国の安全保障にも重大な影響を及ぼすだけに、我々といたしましてもこの推移を見守っていくとともに米国の外交努力を支援していくことが必要であろうかと思います。外務省といたしましては今後の交渉の推移をどう見通しておられるか、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  326. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) INFのグローバル・ゼロという署名は、私たちといたしましても核軍縮の第一歩だと、こういうことで評価し、歓迎いたしております。米ソ両国の御努力に対して敬意を表する次第でございますが、続いて第二番目の交渉がなされようといたしております。ここでは仰せのとおりに戦略核の五〇%削減、これは非常に難しい問題でございましょうが、検証を伴いながらやってみようということでございますから、ぜひとも成功されるようにお祈りする次第ですし、そのほか軍備管理、さらには二国間の問題、人権問題、そうして各地における紛争等々も同時に米ソ間において話し合いが持たれるということであります。  だから、まずINFが成功したゆえんは、ウィリアムズバーグ・サミットにおきまして我が国からもグローバル・ゼロということを強く主張したのであります。このことが実現されたということはアジアにとりましても大きな収穫でありました。と同時に、西側が団結したから言うならば成功したと思うのであります。総理とともどもにその苦労話をお伺いしたことがありますが、やはりレーガン大統領はゴルバチョフ書記長以前にも歴代の書記長と粘り強く交渉を開始した、そして今日を得るに至ったと、こういうような感想を漏らしておられまして、我々もその労を多とするところでございますが、次回のやつも、やはりまず西側陣営が結束して、当然我が国も米国を大いに支援しましょうというふうに持っていきたいと思います。  アフガンに関しましては、この間、日本は平和にも貢献をしなければなりませんから、イラン、イラクの問題と同様にアフガン撤兵ということに関しましてパキスタンに御承知の栗山審議官を派遣して、本日帰ってまいりました。先ほど報告を受けたばかりでございますが、三月十五日にソ連は署名、調印をしたい、それが終われば五月十五日ごろから九カ月にわたって撤兵する、こういう話が煮えております。しかし、当事国ではもう少しくいろいろ処理をしなければならない問題があるので、その過程においてはいろいろとまた話がなかなかまとまらない面があるかもしれませんが、おおむね私たちといたしましては、五月末には大体ある程度の目鼻がつくのではなかろうか、こういうふうに米ソ両首脳の話が一つ一つ確実に実っていくということは大変よいことであろうと評価をいたす次第であります。
  327. 林ゆう

    ○林ゆう君 このようにINF条約が特定の核ミサイルの全廃とか検証措置を講じている点では確かに評価ができます。しかしながら、現実には今回全廃することになっている弾頭はわずか五%でございます。世界には戦略核を含む巨大な核の量が依然として存在するという冷厳な事実には、変化はございません。また、世界における各地域では、イラン・イラク戦争を初め紛争が継続中でありますし、昨年十二月九日、米ソ首脳会談でまさにINF全廃条約の署名が行われたその日に、事もあろうにソ連軍用機が沖縄上空を二度にわたり侵犯したことはまだ記憶に新しいところであります。  このように、ワシントンにおける対話ムードとは裏腹に我が国土を侵犯するとは、これは一体どう受けとめればいいのでしょうか。政府は、我が国をめぐる国際軍事情勢、特にソ連軍の極東配備の状況をどう認識されておるのか、防衛庁長官より御説明を願いたいと思います。
  328. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 私に対する御質問は極東におけるソ連軍の配備状況でございますが、御指摘のとおり、INF条約により確かに極東地域のSS20、百六十二基も廃棄されることになるわけでございますが、極東地域には依然として約八十五機のバックファイアを初め多様な核戦力が存在するわけでございます。通常戦力につきましても、ソ連の艦隊のうち最大の勢力を持つ太平洋艦隊、ソ連が現在就役させております三そうの空母のうち二そうを配備するなど最新の艦艇を増強しておるわけでございます。戦闘機も最新型のものが配備されておりますし、地上軍も北方領土の一個師団規模の部隊を含めまして三十九万人という大きな勢力を維持しております。委員御指摘の配備状況細部につきましては政府委員より答弁させたいと思います。
  329. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ただいま大臣から答弁ございました点、多少補足させていただきます。  極東ソ連軍は、今日でも、ソ連全体に配備しております兵力の四分の一ないし三分の一に相当する核及び通常戦力を極東に配備し続けており、かつ、これを増強している状況でございます。  SS20につきましては、今度のINF条約で廃棄されることになっておりますが、バックファイア爆撃機八十五機、これは核能力を持っております、その他にも航空機、艦船等で多様な核戦力が配備されております。  地上兵力につきましては、四十三個師団三十九万人が極東に配備されておりまして、これはただ単に量のみならず火力、機動力において継続的に向上が図られております。さらに、我が北方領土につきましては、各島に一個師団相当の部隊が配備されておりますし、それからミグ23航空機のような新型の兵器も配備されております。  海上兵力につきましては、約八百四十隻、百八十五万トンが太平洋艦隊に展開しております。太平洋艦隊はソ連の四つの艦隊のうちの最大の艦隊になっております。この艦隊につきましても、先ほど来の空母二隻のほかに巡洋艦、駆逐艦——駆逐艦につきましては昨年末に最新型の駆逐艦が三隻ヨーロッパから回航されたというような事実もございます。潜水艦につきましては約百四十隻の潜水艦が極東艦隊に配備されております。  航空兵力につきましては、作戦機二千三百九十機、これも量だけではなく質につきまして約八割が第三世代の航空機にかわっておりますし、先ほどのバックファイアのほかにSU27、ミグ31というような非常に新型の戦闘機が配備されておりまして、このように三軍ともに近代化が進められているという状況でございます。
  330. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ソ連機の領空侵犯に関しまして御答弁いたしたいと思います。  なお、大変大切なことでございますから、この経緯は政府委員から説明させたいと思いますが、侵犯が行われましたその翌日に、防衛庁は速やかに諸種の確認をした後、外務省に連絡をしてくれまして、外務省といたしましても直ちにソ連大使館に抗議を申し入れ、大使がやってきたわけであって、その大使の応対もまれに見る——今までなかったと言われますが、非常に驚き慌て、そして誠意を果たしてくれました。飛行士の処罰ももう決まっておりますし、そういうようなことでございますから、その経緯に関しましては政府委員からひとつ御説明申し上げたいと思います。
  331. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 経緯を御説明させていただきます。  昨年十二月の九日午前十一時半ごろでございますが、沖縄地域において二回、ソ連の軍用機が日本の領空を侵犯いたしました。早速その翌日、実はこの侵犯事件が起こりました直後から外務省防衛庁間で密接な連絡をとっていたわけでございますが、ただいま大臣から御答弁がありましたように、具体的な事実を確認した上で、翌日、十二月の十日に私が東京のソ連大使を招致いたしまして、本件について厳重に抗議するとともに、責任者の処罰、それから適切な措置をとるように要求いたしました。その後、その翌日、十二月の十一日でございますが、東京の大使から遺憾の意を表明してまいりまして、ソ連側としてはこういった事件が起こらないようにしかるべき措置をとる、そういうことを言ってきまして、その際に私から関係者の処罰を要求しまして、その後、十二月の十五日にモスクワでソ連軍の参謀本部の局長が日本人の記者に対しまして、パイロットの処分を行う、こういうことを申しました。  ただ、これはモスクワでございまして、これに対して宇野外務大臣から直接、たまたま東京に参りましたソ連のアダミシンという外務次官に対して、きちっと外交ルートでもって回答をするように申し渡されまして、その結果十二月の二十五日に、東京におります大使が私の方に再発防止措置、例えば侵犯機と同型飛行機の航行設備の改善を行う、あるいは単独飛行を禁止する、あるいは飛行中は僚機を目視——目で見ることができるように間隔を三キロを超えないようにする、それから故障を起こして誘導機とのコンタクトを失ったときはすぐに基地に帰るとか、パイロットの訓練を強化する、こういったような通報があったわけでございます。  その後、在京のソ連大使館から、これは二月の三日でございますが、侵犯した飛行機の機長の名前はノゴヴィツィン、機長は一階級の降格処分、こういったような措置をとったと。さらに二月の十九日、モスクワでソ連の国防次官が、当該侵犯機の機長はすべての航空機への搭乗禁止処分、それから部下のパイロットは同機種への搭乗禁止処分を科されたと。  外務省としては、直後から防衛庁と緊密に連絡をとりまして、具体的な事実を把握してソ連側に抗議等の必要な措置をとったわけでございまして、政府としては本件につきましては迅速かつ適切に対応したと考えております。
  332. 林ゆう

    ○林ゆう君 ここで洋上防衛についてお伺いいたしますが、ここ数年、洋上防空体制のあり方が大きく取り上げられてまいりました。その背景としては、約四千キロすなわちグアム島にも達する行動半径を有するソ連のバックファイア爆撃機が十年前に極東に登場して以来、先ほど防衛庁からのお話にもございましたように約八十五機まで増強されてまいりました。また、艦艇の対艦ミサイル装備化が進んでまいりました。さらにはバックファイア爆撃機などに搭載されるミサイルの射程が長くなるなど、その性能が非常にすぐれたものになってきております。  こうして見ると、我が国の生命線であるシーレーンに対する空からの脅威は著しく増大してきており、これに対してしっかりとした対策を講じていく必要があろうかと思います。政府は、これらの事態をどう認識されているのか。また、六十三年度予算ではOTHレーダー、超水平線レーダーやイージス艦が認められ、私は時宜を得たものと思っておりますけれども、この必要性を国民にわかりやすく御説明していただきたいと思います。防衛庁お願いします。
  333. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま先生の御質問にありましたように、従来洋上にある船に対する脅威というのは主として潜水艦の脅威が大部分であったわけでございますが、先生御指摘のように非常に足の長い航空機が出てきた。そして、しかもそれが相当長距離まで届くミサイルを使用する、そのミサイルのスピードが上がってきたというようなことで、従来の艦艇が持っております対空火砲であるとかあるいはミサイル等では対応できなくなってきているということで、相手方としては全く自分の方は傷つくことなく船舶の攻撃ができるという状況が逐次激しくなりつつあるというのが現状でございます。  それに対応するためには、まず相手方の航空機の動向というものを早く察知する、そうしてできるものなら船舶等がその回避をする、相手の航空攻撃を受けないように回避活動できるというようなことが大事だと思いますが、そのためには早期に遠距離にある敵を発見できる機能が必要であるというようなことで、OTHレーダーがそれに最敵ではなかろうかということで、設置についてあるいはOTHレーダーの性能等について今検討いたしておるところであり、来年度六十三年度につきましても調査費なお願いしておるところであります。  一方、そういったもので発見したものに対して途中で要撃するということも考えなければいけませんが、それらについてはいろんな考え方がございまして、今後まだ研究を続けていかなくてはいけません。最終的には、いずれにしろ相手の発射をしたミサイル等に対して全く無防御であるということでは、船舶等に乗っていただく方に申しわけないというか、乗っていただくわけにいかない。そうなりますと、そういったミサイルに対応するためにミサイル対処のできるミサイル、例えばイージスシステム、そういったものをやはり採用することがどうしても必要であろうということで、六十三年度予算でお願いをいたしておる次第であります。
  334. 林ゆう

    ○林ゆう君 聞くところによりますと、米国下院の軍事委員会海軍力小委員会で、高度な洋上防空システムを日本に輸出すれば第三国に軍事技術が流出するおそれがあるとして、いわゆるイージスシステムを日本に売却することを禁止する法案を賛成多数で可決したと伝えられておりますが、これは六十三年度予算に計上されておりますイージス艦の建造につきまして、予算執行に当たって支障は起きてこないのか、お聞かせ願いたいと思います。
  335. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) アメリカの下院の一部で、イージス艦、イージスシステムにつきまして、日本に売却することに反対の動きがある、かようなことは承知をいたしておりますが、米政府としては本システムを日本が整備することな強く支持しておるわけでございまして、このような観点から、かかるアメリカの下院の動きに積極的に対応してくれるものと、かように理解をしておるわけでございます。  私といたしましては、本件について現在のところ必ずしも重大な懸念を抱いておるわけではございませんが、いずれにしても米議会の理解を得るということも重要な問題でありますし、今後ともこれらの動向を注視してまいりたい、かように思っております。
  336. 林ゆう

    ○林ゆう君 今の御説明でほぼわかりましたけれども、中期防のことでお伺いしたいと思いますが、洋上防空の一部にようやく着手できるという段階になったようでございます。問題は、中期防の後の防衛力整備計画をどのようなものにして、いかにして日本の平和を守っていくかであります。私は、今回のINFの合意という核軍縮の意義を認識すると同時に、これによって通常戦力の果たすべき役割は一層高まっていくとの認識を持つべきではないかと思います。  さきの本会議におきまして、防衛庁長官は、中期防の後も新しい防衛力整備計画をつくりたい、またしかるべき時期を見て作業に着手したいと答弁をされておられますが、私が申し上げた点を十分に踏まえて次の計画を作成すべきものと考えます。長官といたしましては、どのような点に留意して柱を立てるのか、新しい防衛力整備計画の期間をどのように考えておられるのか、国民にわかりやすく、率直な御見解を承りたいと思います。
  337. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 中期防後の昭和六十六年度以降の防衛力整備のあり方につきまして、中期防終了までに改めて国際情勢、経済財政情勢等を勘案いたしまして、専守防衛の我が国の防衛の基本方針のもとで決定を行うべきものと考えております。現在その具体的な方針につき述べられる段階ではございませんが、長期的な視野に立って計画的に進めてまいる、こういう観点から中期的な防衛力整備計画を策定することが望ましいと考えておるわけでございまして、安全保障会議にお諮りした上で年内にもその検討に着手していきたいと考えております。  いずれにいたしましても、六十六年度以降の防衛力整備については、庁内それぞれの分野で今行われております各種の検討を踏まえまして、南北に長いとか、かような我が国の地理的特性等を十分に踏まえ、国際軍事情勢、諸外国の技術的水準の動向は有効は対応し得る、そうして効率的な防衛力のあり方を追求してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  なお、どのくらいの期間を考えておるかというようなことでございますが、安全保障会議等におきまして検討されることはなるわけでございまして、私といたしましては、長期的な視点に立って計画的に進めるという観点から、例えば現在の五カ年間を対象とする中期防、この中期的な防衛力整備計画が策定されるといることは望ましいことだ、かように考えております。
  338. 林ゆう

    ○林ゆう君 総理はこの六月に第三回国連軍縮会議出席される由、まことに歓迎をいたしたいと思います。  私たちは、戦争の悲惨な経験、特に被曝を最初に受けた国民として平和への決意には強いものがございます。さきにも申しましたように、外交防衛政策の基本は、軍事大国となることなく、専守衛防に徹し、非核三原則を堅持して世界の平和と繁栄に尽くすことを国是としております。私は今後米ソ間の核軍縮交渉の推移に大きな関心を持つものでありますが、同時に、軍備管理や軍縮については、ただ米ソは任せるだけでなく、国連やジュネーブ軍縮会議などにおいて関係団の努力も重要ではないかと思います。その観点から竹下総理に大いに期待するものでありますが、どのような御決意で臨まれるのか、御抱負をお伺いいたしたいと思います。
  339. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 軍縮特別総会への日本政府の見解というものを去る六十二年四月三十日付で国連事務総長あては提出した要旨をちょっと読み上げてみますと、我が国は第三回国連軍縮特別総会の開催を重視し、核の惨禍が繰り返されないととを強く念願し、みずからも非核三原則を堅持している我が国としては、同特別総会において全面完全軍縮、特に核兵器の廃絶という人類共通の究極の目標に向かってたゆまぬ国際的努力が払われることを強く期待する、こういう見解を既に送っておるわけでございます。したがいまして、国際政治の重要な課題である軍縮問題について討議を行う重要な会議でございますので、私もこれに出席をし、我が国の考え方を述べ、そして総会が成功裏に終わりますことに対して尽力をしたい、このようは考えております。
  340. 林ゆう

    ○林ゆう君 次は、経済問題についてお伺いいたしたいと思いますが、最近の経済の状況を見ますと、個人消費、住宅建設、設備投資など、着実な伸びを示し、拡大傾向で推移しております。これは、昨年五月に我が党及び政府が一体となって作成した緊急経済対策の効果が出たものと思います。また、六十三年度予算におきましても、公共事業費の二〇%伸び、公共事業関係費、産投会計繰入分を含めまして七兆二千百七十三億円が確保されており、来年度も本格的な内需拡大が行われ、景気定着から拡大の年となるものと思われます。  まず、景気動向をどう見ているのか。政府見通し三・八%は低過ぎはしないか。内需主導型の経済を定着させる上から六十二年度と同様に五%台に引き上げる努力をすべきではないかと思いますが、いかがなものでございましょうか。経済企画庁長官にお伺いいたします。
  341. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 林委員にお答えいたします。  六十三年度の経済運営に当たりましては、景気回復の二年目ということで、景気の足取りを確実なものにするために内需の拡大を今目下振興中でございます。  ただパーセントの問題につきましてはいろいろございまして、六十二年度のときにも民間の見通しは大体二・二から二・四というような見通しでございました。ところが私ども経企庁は三・五と打ち出しておりまして、非常に慎重にやった結果がいい結果になったな、こう私ども判断しておるわけです。このために、主要国との政策協調は推進しつつ円レートの安定化を図る、同時に、引き続きまた適切かつ機動的な経済運営を行っていくということに全力を投球して、六十三年度の予算においては一般公共事業費六十二年度の当初予算の二〇%増、先ほど御指摘いただきましたような水準を確保して、内外から内需拡大の要請に配慮するなどの努力を大変に買われ、なおかつ実行しておるところでございます。  そこで、以上のような経済情勢の中でございますから六十三年度の経済成長率は実質三・八%程度を見込んでいるところでございますが、その内訳を見ますと、まず外需は対外不均衡の是正過程を反映して引き続いて減少、このように考えております。寄与度はマイナス一・〇%程度が見込まれているのに対しまして、内需は個人消費さらにまた民間設備投資を中心は着実な伸びが期待されておりますから、その寄与度は四・七%程度に見ていくのが大体実情じゃないかな、このようなわけで、私どもも慎重の上に慎重をきわめまして、五%という声もございましたけれども、いずれにしてもこの方向で考えていこうということで、実質我が国経済は六十三年度においても引き続き堅調な内需主導型の形でいこう、そのために三・八%と打ち出した次第でございます。  以上でございます。
  342. 林ゆう

    ○林ゆう君 景気の動向を見通すに当たりまして重要なファクターは、円レートをどう見るかはあると思います。さきの日本首脳会談で為替相場の安定、ドル下落の防止が確認されたことは大いに評価をされるところでございます。しかし、これまでの経緯を見てみますと、ルーブル合意など国際的約束をすると途端にドル安はなった例が数多くあるだけに、今回の米国の介入は本物と思いたいのでございますけれども一抹の不安もまたあるわけでございます。特にことしは米国大統領選挙があり先行き不透明でございます。  政府は米国経済の先行きをどう推測しておられるのか、また円レートをどう見通して為替安定に取り組まれるのか、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  343. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昨年の暮れにG7の合意がございました際に、これ以上ドルが下落することは関係国すべてにとって非生産的であるというそれまでにはなかった一つの認識に到達いたしまして、したがって、それを防ごう、政策協調並びに必要があれば市場対策を通して防ごうということの合意がございまして、今日までのところそれはほぼ貫かれてまいりました。アメリカ自身にとってこれ以上のドルの下落ということが実は非常にいろいろ問題があるということが広く認識されてきた結果であると思っております。このことが今日まで比較的為替が安定的に推移をしている理由であろうと思われますし、その点は今後も基本的な事情は変わらないのではないかというふうに考えております。  アメリカの今年の景気というのはなかなか私にもわかり得ないところでございますけれども、やはり輸出が非常に強くなっておる、これは当然であるかもしれませんが、輸出産業がかなり強くなっておりまして、製造業の稼働率もほとんどもう事実上のフル稼働に近い、失業率も非常に下がっておるということから、まあまあ比較的底がたい八八年のアメリカの経済ではないかというふうにほぼ言われておるのではないか。輸出入の貿易赤字の動向はただいまのところは比較的順調でございますが、多少のジグザグはあるかもしれません。しかし、輸出産業が非常に強くなっている、好況ということは、貿易赤字もある程度のところでそれ以上大きくならずに推移するのではないかというふうに考えておりまして、八八年に関する限りは比較的楽観をしていいのではないかと思っております。
  344. 林ゆう

    ○林ゆう君 次は、産業の空洞化の問題についてお伺いいたします。  我が国製造業の海外直接投資は、六十年以降の円高などによりまして、組み立て加工部門を中心に急激に拡大の機運が高まっております。貿易摩擦回避のため自動車、電機などのアメリカ、ECなど先進国での現地生産が進む一方、加工度の低い部品、半製品などはNICS、新興工業国群などでの現地生産が進んでおります。このような働きは特に最近の一層の円高によりまして加速され、さらに傾向は中長期的に続くものと思われます。このため日本企業が海外に進出した後に産業の空洞化、失業の発生も懸念されるところであります。特に企業城下町、輸出型産地などの地域経済が大きな影響を受けて、非常に厳しい状況に追い込まれております。政府といたしましてはこれに対してどのような対策をとっていくのか、通産大臣及び労働大臣の御所見を承りたいと思います。
  345. 田村元

    国務大臣(田村元君) 今おっしゃいましたように、円高等を背景ぽ製品輸入の増加、また輸出の停滞が生じております。同時に、海外生産の動きも活発化するなど産業楯造転換の動きが加速されつつございますけれども、これは今日の我が国の国際的な立場、置かれておる立場というものを考えるときに、真正面から受けとめざるを得ません。その上で我が国産業の活力の低下、雇用情勢の深刻化、地域経済の疲弊などいわゆる空洞化が生じることのないように適切な対応をしなければならないわけであります。具体的には大体三つの対応というものが考えられますし、また現に我々はそれをやっております。  その第一は、適切で安定的な為替レートの実現、これはもう申すまでもないところであります。それから、内需拡大に向けての適切なマクロ経済の運営ということが何よりも必要であります。  第二は、技術革新あるいは情報化等の成果を生かした新規産業分野の開拓、また新事業分野への転換の円滑化等を通じまして、経済活力を維持しあわせて雇用機会の創出を図るということであります。  第三は、雇用それから関連中小企業及び地域経済への影響の軽減のために、御承知の産業構造転換円滑化臨時措置法及び特定不況地域中小企業対策臨時措置法を柱とする事業転換及び地域産業の活性化支援等を講じておりますし、今後も強力に講じてまいる所存でございます。  なお、労働問題に対しましても密接不可分の関係があります。御指示のとおり労働大臣からお答えを願いたいと思います。
  346. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 仰せのように、最近の企業の海外進出に伴いまして国内の雇用への影響は心配をいたしておるわけでございます。実はこの問題に対しましては雇用問題政策会議から既に提言をいただいております。その提言を踏まえながら、今労働省としましては、一つには海外進出する場合には離職者を出さないよう、離職者が出るおそれのある場合はまず第一に企業の内部において雇用の継続するような確保対策を図ること、その次は企業のグループ間、下請とかあるいは関連会社等を通じまして移動をして、その中で雇用機会を開発するというようなこと、もし職種転換する場合にはやっぱり適切な能力開発事業を実施すること、いずれにしても企業が海外進出する場合は労使間でじっくり話し合ってそごのないように協議システムを確立すること、このことを柱としまして諸般の施策を今実施しておるところでございまして、今後におきましてもこの方針を踏まえながら最大限の努力をいたす所存であります。
  347. 林ゆう

    ○林ゆう君 次いで、円高差益の還元についてお伺いいたします。  ここ二年余りの間に円高、原油安が大きく進みまして、特に円は六十年九月のいわゆるプラザ合意以降、ドルに対して約二倍の水準となっております。その中で、卸売物価はここ五年連続前年水準を下回るなど大きく下がりまして、消費者物価も極めて落ちついた動きを続けていることは事実でありますが、国民の間には円レートなどの動きに比べて物価の下がり方がまだまだ不十分だという声が強く聞かれるところであります。  経済構造調整を今後も進めていく上で円高差益の一層の還元が必須であると考えますが、政府はこの問題につきましてどのような考えを持っておられるのか。また、特に消費者物価の下がり幅が卸売物価の下がり方に比べて小さいのはどういう理由によるものでしょうか。政府は円高差益の還元は七割近くが進んでいると説明しておられますけれども、生活実感からはぴんときません。ではあとの三割はどこへ行ったのでしょうか。あわせて、政府としてもその所管する公共料金分野において、より一層の差益還元の努力の余地があると思われますが、いかがでありましょうか。経済企画庁長官から御答弁をいただきたいと思います。
  348. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) お答えいたします。  円高問題は、確かに御指摘のとおりいろいろ問題がございまして、非常に説明にも苦労するのでございます。まず第一に、円高差益還元が行われているか、こう聞かれますると、例えば三度にわたる電気、ガス料金の引き下げ、また各般の還元策などを実施してきておりまして、これはこれなりに円高のメリットはおおむね順調に反映されつつあるのではないか、こう思っておるわけでございます。ただ、原材料の費用の低下を通ずる円高効果は薄く広く、しかもタイムラグをもってあらわれるわけです。タイムラグと申しますのは、大体二から二・四半期半くらいのタイムラグで出てまいりますから、ちょっとおくれて参るということは事実でございます。  そこで、委員案内のとおりでございますけれども、七割方、実質で言いますと六九・六%ぐらいの円高差益還元が行われている。しかし、なおかつその量が三十兆円なんだから、もう少し何とかなるべきではないかという声があってしかるべきであろうと思っておるわけでございます。ただ、その中に、ちょっと私どもも考えておかなければなりませんのは、例えばブランド品などにつきましては、高級品イメージの維持のために値下げをされないという面もあるわけでございます。さらにまた、国内制度などに絡むいわゆる内外価格差の問題、あるいはまた航空運賃の方向別格差の問題、例えばニューヨークで東京行きの切符を買うのと東京でニューヨーク行きの切符を買うのといささか値段の差がある、こういう問題もございます。これも逐次だんだん解決していかなければならぬ問題であるとして急がせているということもまず申し上げておきたいと思います。  消費者にとりましては必ずしも円高メリットの効果が実感されていないということは御指摘のとおりではございます。しかし、いずれにしても、政府としては、為替レートなどの動向を踏まえまして、公共料金について差益の的確な反映を行っていくということに、また必要な輸入消費財などもこれは動向などを十分調査して、実施、公表することに努める。具体的に言うならば、アメリカの市場に向かっては、日本の中ではどういうマーケットが必要なのかあるいはどういう部品を必要としておるのかの宣伝をさせていただく、あるいはまた日本の国内においてはどういうものが今輸入品として出ておるのかということをパンフレットなりブローシュアなりでいろいろと広めて、これをまた大いに宣伝する、PRということも必要であるかな、これを実行していかなければなるまい、このように考えておる次第でございます。  このように時間のかかる問題ではございますけれども、まず経済構造の調整、それから規制あるいは規制の緩和、あるいは従来ずっとつくられておる慣行、これに対しての緩和というようなものも必要であろうかと思いますし、また、それの見直し、輸入の拡大などを通じまして内外格差等の縮小に努めることが極めて重要である、こう考えておる次第でございます。
  349. 林ゆう

    ○林ゆう君 円相場の推移について伺いたいと思います。  プラザ合意以降の日本経済は円高に揺れてきました。二百四十円から現在百三十円に近いところで推移をいたしております。一時は百二十円を突破するのではないかと危惧されたわけでございますけれども、昨年の主要通貨国の共同声明とそれに基づく協調介入あるいは竹下総理とレーガン大統領との間の共同声明などによりまして、現在、為替レートは安定的に推移をいたしております。しかし、現在高目に安定している為替水準がどう動くのか、特にアメリカの一部学者らの中には、一ドル百円くらいまで行かないといけないという主張をする者もございます。こんなことから、再び急激な円高へ逆行するのではないかとの危惧があるわけでございますが、現在の価格で安定するのか、その辺のところ、政府の見通しをお願いいたしたいと思います。大蔵大臣お願いします。
  350. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは事の性質上どうもこれといって申し上げにくい話でございますけれども、今、林委員が言われましたような事情がありまして、ことしに入りましてから、これ以上のドルの下落ということがアメリカ自身にとっても実は非常に問題が多いということが広く認識されるように米国内でもなりましたことが一つ大きな原因になりまして、米国も介入もいたしましたし、今日のところその後落ちついておるということでございますが、それに加えまして、先ほど申し上げましたように、米国の輸出産業が非常に好況になってきておるということは、長年問題でありました米国企業の国際競争力というものがこれだけドル安になりますとかなり回復をしてきたのではないか、多分そう見てよろしいであろうと思われますので、それはアメリカの国際収支がこれ以上悪くならない、場合によってはかなり好転するのではないかということにつながるかと存じますので、為替相場につきましては、何ともそれは事の性質上申し上げにくいことでありますが、少なくとも安定する、また安定するためにG7は政策協調その他の方法によって共同行為をとるということが約束されておるわけでございます。
  351. 林ゆう

    ○林ゆう君 財政、税制についてお伺いいたします。  経済と同様、財政面でも明るさが見られる状況になってまいりました。ひところもはや破綻したとの酷評を受けておりました増税なき財政再建でございますが、歳出の削減、節減合理化に向けた政府のたゆまざる努力と一昨年からの大幅な自然増収やNTT株の売却収益に支えられて、今日その達成が射程圏内に入ってきたと言ってもよい状況になってまいりました。六十三年度予算における特例公債の発行額は三兆円強となっており、残り二年で約一兆六千億ずつ削減すれば六十五年度の特例公債発行額はゼロになります。過去の例から見ましてもこの額は決して小さなものではありませんが、現在の経済財政状況を考えてみますと必ずしも不可能な数字ではないように思われます。六十五年度財政再建達成に向けての政府の確信をお聞かせいただきたいと思います。
  352. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昭和六十五年度に赤字公債依存の体質から脱却するという目標は、まさに林委員の言われますように現実の射程の中に入ってきたというふうに考えておりまして、全力を挙げましてこれを達成いたしたいと考えるものでございます。やはりそのためには経済が正常に運営されるということ、ただいま幸いにしてそのようになりつつございますが、これがやはり何より一番大事なことでございまして、それによりまして税収が好調でありますれば、まず六十五年度には現実に脱却できるという射程にこの二年かけまして接近し、目的を達成できるのではないか、ぜひしなければならないとただいま考えております。
  353. 林ゆう

    ○林ゆう君 我が国の国際的地位が高まるにつれまして、経済協力など、世界に貢献するため積極的に海外援助をしていかなければなりません。一方国内では、高齢化社会という必ず到来する事態にも対応していくことを考えなければなりません。したがって歳出増加圧力は高まりこそすれ減ることはないと思いますが、今我が国の歳入構造を考えてみますと、所得税、中でも勤労者に対する源泉所得税の歳入に占める割合は三〇%近くに及んでおりまして、現行税体系を維持していくことは不公平感を一層強め、また世界的に見ても実効税率の高い法人税を放置していくことは資本の海外流出を促進いたします。税制改革はどうしても必要でございます。  私は、現在過剰に負担を担っている所得税を軽減して、消費、資産に適正に課税すべきだと思います。特に消費課税について、逆累進との批判もありますが、広く浅く消費に課税することは、同じものを買えばだれしも同額の税負担をして、消費を通じて税払いの選択もできるのでございますので、所得の高い人ほど消費も多いのでありますから非常に公平な税だと言えます。直間比率の是正など衆議院議長裁定にある税制改革の中身の論議に入らずに反対する向きもございますが、どうかと思うわけでございます。新しい税が創設されることを喜ぶ人はございませんが、税制改革の内容につきましては国民に十分理解をしてもらうことと、さらに拙速を避けることを強く政府に望みたいと思います。大蔵大臣の御見解をお聞かせください。
  354. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘になりましたように、ただいま勤労所得者が負担しております所得税、法人税は国民所得の四・八%であったと記憶をいたしますが、これがこのままでいきますと紀元二〇〇〇年にはちょっとその倍を超える率になり、二〇一〇年には三倍に達すると考えられます。人口が老齢化いたしますので勤労所得者というものは相対的には増加が少ないわけでございますが、その人たちが現在より三倍の住民税、所得税を負担するということは現実にはなかなか容易な事態でない。むしろ考えられないに近い事態であろうと思われますが、しかしそれだけの財政事情は他方であるわけでございますから、そうだといたしますと、そのような負担というものはやはり今から広く薄く社会全体で背負っていただくようなことにいたしませんと、到来すべき高齢化社会における我が国の社会福祉政策というものは現実には行い得ないような状況になるのではないかということを心配いたします。  その上に林委員の言われましたように所得税そのものが、また法人税も国際的に見ましても高く、また勤労意欲、企業意欲を阻害するほどになっておりますから、願わくは何かの方法でそれらの負担を広く薄く国民の皆さんがしていただくような税制の抜本的な改革をお願いできないかというふうに政府としては過般来考えておるところでございます。
  355. 林ゆう

    ○林ゆう君 次に、農業問題に入りたいと思います。  最近の我が国農林水産業をめぐる内外の情勢は極めて厳しいものがございまして、解決を迫られている問題が山積いたしております。そこで、農政を初めとする林業、水産業のあり方について政府の御見解を伺いたいと存じます。  まず、農業につきましては、農業は人間の生存にとって最も重要な物資である食糧を国民に安定的に供給する産業としての役割のほかに、農村地域における農林業の生産活動を継続することによりまして、緑豊かな自然環境の維持、土砂流失、土壌浸食の防止、洪水調整などの公益的機能を果たしております。我が国経済は目覚ましい発展を遂げていますが、それを大きく支えたのは農業、農村であったことは今さら私が言うまでもない自明のことでございます。竹下総理はかねてから「ふるさと創生論」を唱えておられますが、そのバックボーンは農村社会に存在すると思うのでございます。その中で農業の位置づけをどのように考えておられますか、まずお伺いいたしたいと思います。
  356. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 農業、この役割は、食糧の安定供給を初めといたしまして、活力ある地域社会の維持と、そしていま一つ国土自然環境の保全、こういう極めて重要な役割を担っておるというふうに考えております。一方また一極集中、こういうことが言われてまいりますと、その機能を地方へ分散して国土の均衡ある発展を図るということになりますと、今度は農村の有する役割、機能、こういうのが新たにまた大きくクローズアップしてくることになろうかと思われます。  このため、農業そのものにつきましては、おととしの暮れでございましたか、農政審議会の報告、これを踏まえまして、まず構造政策を推進して、国民の納得し得る価格での食糧安定供給、すなわち、お互い振り返ってみますと最終的にはだれしも消費者であるわけであります。したがって、そういうことを念頭に置いて農業の振興を図りますとともに、農村社会を構成しておりますそれぞれの方々が農村の構成員としての役割分担を通じて所得の機会が確保されて、そうして農村社会全体が活性化していくというようなことを私は農業、農村の基本的な位置づけとして考えておるところでございます。
  357. 林ゆう

    ○林ゆう君 現在農業にとりまして最も深刻な問題となっているのは農産物の市場開放問題でございます。さきのガット理事会において我が国は農産物十二品目に関する勧告を受け入れることを表明したのでありますが、勧告を受け入れるに当たりまして、脱脂粉乳、練乳及びでん粉の二品目のパネル解釈への疑義、国家貿易品目への解釈の不当性を指摘したのであります。各国の今回のパネルの解釈に対する対応を見ましても、それぞれ抱えている農業問題の複雑さを示す発言も見られたのでありまして、これらに対する政府考え方、今後の対策についてお伺いいたしたいと思います。  また、勧告を受け入れた以上、自由化する農産物の国境調整措置をどうするか、該当する農産物の国際競争力をどのようにして高めるかが今後の最重要課題となると思いますが、これに対する政府の対応をお聞かせいただきたいと思います。
  358. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 後段でおっしゃいましたとおりの対処方針で臨まねばならぬと思っております。内外特に厳しい折柄でございます。そういう中にあって、特に数量制限を撤廃する八品目につきましては、プロジェクトチームをつくりまして鋭意検討をいたしております。我が方が窓口になって進めておりますけれども、政府全体の問題としてこれにしかるべく対応をしていく、こういうことでございます。
  359. 林ゆう

    ○林ゆう君 ことしの三月をもってアメリカとの牛肉、オレンジ輸入協定が期限切れとなります。あくまで自由化を求めるアメリカと枠拡大で解決を図ろうとする我が国との間で厳しい折衝がなされておりますが、この問題の経緯と今後の政府のとらんとする基本的な施策、方針を聞きたいのでございます。  私は、市場開放問題については、守るべきものと譲れるものとをはっきりと示して、言えば引っ込むという、そのような印象を与えることが一番よくないことと思うのでございます。政府の見解をお伺いしたいのでございます。
  360. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 牛肉、かんきつにつきましては、竹下総理訪米時にレーガン大統領との会談において例示をされた品目でございます。その中にあって、一日も早くテーブルに着いて話し合おう、こういうことになっておりますが、残念ながらただいま現在テーブルに着いていただいておらない状況にございます。何としてもテーブルに着いていただく。テーブルに着いていただいた以上は我が方の事情を十分理解させるために全力を挙げなければならない、かように思っております。
  361. 林ゆう

    ○林ゆう君 日本農業の中心的作物といたしましてはやはり米でございますが、我が国の米は、一昨年の全米精米協会の提訴とこれに続くアメリカの輸入自由化要求など、数年前なら考えられなかったような外圧に今やさらされているのでございます。また、国内に目を転じて見ますれば、四年連続の豊作となり、三度の米過剰が懸念される状況となっております。  そこで、まず米輸入自由化問題でありますが、さきの本会議代表質問の際、農林水産大臣は米の自由化はしないと言明されました。まことに心強いお話でございます。今後とも自由化圧力はますます強まると思われます。そこで、国際国家日本といたしましては、米国を初めとする各国の理解を得られるよう一層の外交努力が必要かと思われます。この点の政府の基本姿勢をお伺いいたします。
  362. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) おっしゃるとおり、昨年の臨時国会の際からも再々にわたって総理から答弁を申し上げておりますし、私も答弁をいたしてまいりました。米の自由化はしない、こういうことでございます。しかし、このことがおっしゃるように広くいろんな国々に理解をされなければならない。私は今日の段階でも十分理解は得ているものと思っておりますけれども、しかし、日米間におきましてはそう甘く考えるなという私に対する直言もございます。決して甘く考えることではなしに、重々、さらにさらに説明を続けてまいりたい。しかし、具体的に正式に米の自由化について迫られておるという状況ではございません。
  363. 林ゆう

    ○林ゆう君 国内の米の生産対策でございますが、御承知のように本年度より水田農業確立対策がスタートをいたしまして、七十七万へクタールにも及ぶ転作が農家、生産者団体などの協力によりまして行われておるところでございます。ところが、最近の米需給動向は過剰基調で推移いたしまして、昨年暮れには米需給均衡化緊急対策が発表されたところでございます。  そこで、水田農業確立対策を中心とした米生産対策の今後の展開について政府のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  364. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 御案内のように水田農業確立対策を進めておるところでございますけれども、ただいま現在、去年時点のことで過剰と言われるような状況にある。過剰という言葉を私は余り使いたくないのでありますけれども、しかし、言い方によっては第三次過剰を招くのではないかという心配をしなければならない状況もあることは確かでございまして、緊急対策を実施したところでございます。  そういう意味におきまして、七十七万へクタールの転作面積の上に、さらに加えて特別のこととして緊急避難的に関係者に御協力をいただくということで御説明を昨年末にしたところでございまして、これからの水田農業につきましては、特に稲作につきましては、需給関係を十分踏まえつつ、改善に改善を重ねながら主食の完全供給体制、米の完全供給体制を実現してまいりたい、こう思っておるところでございます。実現してまいりたいというのは、これから実現するということでなくて、従来実現を図ってきたところでございますがなお心していかなければならぬ。需要のないところに生産はない、消費のないところに生産はないという意味での需給関係、これを十分頭に置きながら進めてまいりたい、こう思っております。
  365. 林ゆう

    ○林ゆう君 農業問題に関連いたしまして、環境問題の見地から有機農業について質問をいたします。  欧米では、化学肥料や農薬から離れまして、土を育てながら生命力の強い農畜産物をつくる動きが始まっています。いわゆる自然とともに生きる楽しみを求めた有機農業の動きでございます。化学肥料のやり過ぎにより土の生命力が失われているほか、化学肥料に含まれた硝酸塩、また除草剤、殺虫剤などによる人体への影響も大きな問題であります。今こそ食の安全の立場から環境保全を目指した行政対応が求められていると思うわけでございますが、環境庁長官の御見解を伺いたいと思います。
  366. 堀内俊夫

    国務大臣(堀内俊夫君) 有機農業それ自体が二千年の我が国の農業基盤そのものであったわけであります。私たちが現在おるというのもそのおかげだと思っております。ところが、最近になって有機農業を言わなければならないということ自体が問題でございます。  先ほど御指摘がございましたように、土壌は汚物を浄化する、あるいは汚れた水をきれいにする、あるいは作物を生育さすというような環境保全機能を持ったものでございますが、これが崩されていくということになると自然生態系に変化が起きてくるということになるわけでありますから、これは人体にも影響を持ってくる重大問題だと受けとめておるわけでございます。
  367. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。中西一郎君。
  368. 中西一郎

    ○中西一郎君 ただいまの環境庁長官のお話につきまして、農水大臣、御所見はいかがでございましょうか。
  369. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 有機農業には大きな関心を持っております。
  370. 中西一郎

    ○中西一郎君 環境問題の見地から、有機農業について今関心が高いというお話がございましたが、いろいろな問題が含まれておると思うんですが、もう少し詳しく御所見を伺いたいと思います。
  371. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) その筋からのお達しにより、できるだけ簡単明瞭に答えろ、こういうことを言われておりますので、いささか遠慮して答えておるわけでございます。加えて、有機農業につきましては、中西委員におかれてはその議連を主宰しておられる、そういう立場にもございます。私もその中での一員、部下でございまして、先生の方がよく存じておられるわけでございます。  それで、消費者のニーズ、これが実際あるわけでございますから、また手づくりで高品質な農産物の生産による地域農業の振興、農業が有する物質循環機能の一層の発揮等の観点から、最近特に注目を集めているところでございます。我が省におきましても、今後に向けて大きな関心を持たなければならない分野であると考えておるわけでございます。現状ではさまざまな生産形態がとられている状況もございます。その実態をまず的確に把握することが重要だと考えておりまして、御審議をいただいておる六十三年度予算案の中でも有機農業技術実態調査と銘打ちまして、予算が通ればこれを行うことにいたしておるわけでございます。  この結果も踏まえながら、ひとつ委員の常日ごろおっしゃっておるような方向に対応をしてまいりたい、こう思っております。
  372. 中西一郎

    ○中西一郎君 最近の総理府と環境庁の調査がございますが、農薬などの化学物質による健康への影響、さらに土壌汚染についての懸念が表明されておったように思います。ただいまの環境庁長官あるいは農水大臣のお話の線で一層消費者のニーズにこたえるように御努力をいただきたい。お願いをいたしておきます。  そこで、農水大臣と建設大臣でございますが、農用地、森林など、今既にお話が出ました環境、生態系とのかかわりが深いということでございまして、工業とは違っておるわけでございますが、宅地並み課税で市街化農地を追い出せという話が他方あるわけでございます。それとの絡み合いで建設大臣、農水大臣の御所見を伺いたい。
  373. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) まさに農林、建設両省にかかわる問題でございます。  都市農業には都市農業なりの機能というものがあるわけでございます。これは先刻御承知でございましょうから詳しくは申し上げませんが、その機能を生かすべきは生かすということでなければならぬと思っております。そこに地域農政ありということで、農林水産省といたしましては、建設省の所管である都市計画そのものとの連携も頭に置きながら、地域農業という観点からは地方行政庁とのかかわり合い、その中での地方農政、地域農政、こういう観点から接触を重ねながらその地域ごとの実効を上げてまいりたい、かように考えております。
  374. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 先生のお説ごもっともな点もございますが、建設省の立場で申しますと、今や非常に地価高騰の時期でありますので、やっぱり宅地化をしていく。しかしながら、確かに緑地は大事でございますから、今の、場所によっては線引きの見直し——線引きの見直しといいますのは逆線引き、実際に宅地化できないところで立派な農地でありますれば、市街化区域を調整区域に返すというような見直しも必要であろう。いずれにいたしましても、農林関係とよく連絡をとって進めてまいりたい、かように思います。  最初に申し上げましたように、建設省としてはやはり宅地の供給面、このことを十分考慮して進めなければならない、かように思う次第であります。建設省も決して追い出すという気持ちではございませんから、よく連絡をとって進めてまいりたいと思います。
  375. 中西一郎

    ○中西一郎君 次に、えさ米の問題なんですけれども、食糧の安全保障とか国土の有効利用とか保全、そういったような環境の面にも配慮してもっと増産したらどうかという意見もあるんです。同時に、主食用米の万一の場合といいますか、異常事態に備えての緩衝在庫にもなるという効用もあろうかと存じますが、農水大臣いかがでございましょうか。
  376. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) えさの問題はこれまた大きな問題でございます。特に穀物の自給率等を考えるときに、これを入れるか入れないかによってまた大きな違いがある。対外依存度の高いえさ作物、そういう中にあって私どもは大きな関心を払いつつ努力を重ねているところでございますが、これは食糧庁長官からさらに補足をさせます。
  377. 甕滋

    政府委員(甕滋君) 大臣の御答弁を補足いたしまして若干御説明を申し上げます。  お尋ねの飼料用米でございますけれども、現在の水田農業確立対策におきます転作作物としまして、また米需給の均衡のための緊急対策で導入されました需要開発米という形で実は生産者の自主的な判断によりましてこれを生産する道が開かれておるわけでございます。ただしかし、何分えさ用ということでございますので、現在トン当たり一万五、六千円というふうになろうかと思いますが、大変価格差が大きいわけでございます。量的にはまだ極めて小さいものでございます。そこで、主食用米の緩衝としてこれを活用できないかという御提言でございますけれども、どうしても、こうした大きな価格差の問題なんかもございまして、本件は中長期的に慎重に検討を要する課題であろうかというふうに考えておるところでございます。
  378. 中西一郎

    ○中西一郎君 環境の問題から話が始まっておるわけですが、総理も環境ということに言及をされまして、そういった観点からいいますと、ガットの問題なんですけれども、ガットは農業を産業としてしかとらえていないと言えると思います。そして、農産物をめぐる二国間あるいはガットの場での議論がいろいろございますが、近年特に問題になってきたそういった環境あるいは国土保全、人命への影響といったような観点がガットの場の議論に欠けておるということを指摘したいんです。そういうことを踏まえてこれから政府部内で寄り寄り御協議をしていただきたいことが一点。  それからもう一つは、農業基本法制定後もう近く三十年を迎えるはずでございますが、今申し上げたような環境の問題ということに大きな関心を寄せながら、特に生命の問題にもかかわりがある汚染の問題が指摘されました。そういうことを踏まえて食糧の安全、これは量だけでなしに質の安全も含めまして食糧安全保障法みたいなものが考えられないか。基本法農政以来大分たちました。そろそろそういうことを考えていい時期に来ておるのではないかということを痛感しております。  その二点についてお答えいただければありがたいと思います。
  379. 眞木秀郎

    政府委員(眞木秀郎君) ただいまの御質問にございました二つの点のうち、最初のいわゆるガット等国際的な場での議論に関しましてお答えを申し上げたいと思います。  御指摘のとおり、農業につきましては、食糧の安定供給といったほかに国土自然環境の保全なり、あるいは地域の発展、雇用の確保といった多面的な役割があるわけでございます。昨年、例えばOECDあるいはそれに続いて行われましたベニス・サミット等の場で、農業あるいは農業改革の問題が議論されました際にもこれらの点が議論されまして、その結果得られました合意の中でも、今後の農業なり農政改革、これを進めていく上でこれらの点に配慮することができるといった点がうたわれておるわけでございます。ただ、委員御指摘のございましたそのガットというのは御案内のとおり、より一層の自由な貿易の達成を目的として、主として貿易問題を議論し、あるいは交渉をするという場でございます。この中で、もちろん農産物貿易につきましては、あるいは農業につきましては、工業と違った特殊性ということで工業とは異なった一定の取り扱いも認められておりますけれども、やはり環境の問題、そういう問題を真っ正面からとらえての議論というのは、これまでは少なかったというような感じもいたします。  しかし、最近始まっておりますウルグアイ・ラウンドの中での農業の議論というのは、単に貿易あるいは国境措置といった面だけではなくて、国内の農業のあり方、そういう点にまでも議論が入ってきておるわけでございます。我々といたしましては、これからみんなでつくろうとしております新しいルールづくりの中で、我が国の農業の実態といったものを踏まえまして、農業の多面的な役割と、ただいま御指摘のあったような点をできる限り反映されたようなルールづくりをするように努力してまいりたい。昨年末日本が提案をいたしました日本提案についても、その点十分強調して、そういうことを頭に置きながら提案をつくったいきさつがございます。
  380. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 後段の方、私からお答えを申し上げますけれども、土であるとか環境であるとかあるいは人の命ということで食糧は極めて重要だ、そういう意味で食糧の安全保障というようなものを特別に考えることをしたらどうかと、こういう意味のお話でございます。  委員おっしゃる意味はよくわかります。今やられておる施策の中でその御趣旨を生かしていかなければならぬなと。そして特に安全性の問題等につきましては、厚生省と随時話し合っていかなければならない。環境問題は環境庁と話し合っていかなければならぬ。こういうようなことで縦割り行政と指摘を受けないように横の連絡をとりながらやってまいりたい。今直ちにそのような全部そういうことをまとめた法律をつくるというようなことまでは考えておりませんけれども、御趣旨は生かした施策を進めてまいりたい、こう思っております。
  381. 中西一郎

    ○中西一郎君 アメリカはガットのウエーバー等で十九品目あることは御承知のとおりでございます。そのウエーバーをアメリカが今までずっと続けてきておる。当初に組み入れたその発想の中に、私はやっぱりアメリカの国土保全とか環境という問題は当時なかったと思いますが、国土保全とか何かそれらしい配慮を、やはり守るべきものは守らにゃいかぬのだという何かそういった背景があったんじゃないかと思うんです。そうでなければ、こちらの日本の方に輸入をもっと開放しろ、アメリカの方は開放しない、おかしいじゃないかという議論もございますから、そういったようなことを考えますと、ウエーバーの基礎に何かそういったような考えが潜んでおるんじゃないかという、これは私見でございますが、そんな感じがするんですがね、御意見ございましたら……
  382. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) ウエーバーの問題につきましては、ここで今、外交交渉の一つの種としていろいろな面で議論をされておるところでございます。もう言わずもがな、御存じのところでございます。ですから、ウエーバーがいい悪いとかということをここで議論しようとは思いません。思いませんが、また、よって来るゆえん、その経緯は私自身つまびらかにいたしておりません。  しかしながら総じて言えることは、それぞれの国のやはり食糧政策というものがあって、それぞれの経過をたどってきて今日がある。しかし、急速な国際化の中でいろいろ自国の利益のためというか、いろんな意見が出てくる。その意見のすり合わせに困難を来しておるという現状にかんがみまして、私どもは日本の食糧政策の立場というものをちゃんと守りながら相手をまた説得をしていかなければならない。また同時に、ウルグアイ・ラウンドにおきましても、さっき経済局長から御説明申し上げましたように、我が方の提案、これを十二分に理解をさせながら世界の食糧政策に貢献をしていく、我が国の食糧政策に実効を上げていく、こういうことにいたしていかなければならぬのではないかと思います。
  383. 中西一郎

    ○中西一郎君 終わります。
  384. 林ゆう

    ○林ゆう君 林業の問題についてお伺いいたします。  我が国の経済社会が多様化するに伴いまして森林・林業に対する国民の要請は高まりつつあります。しかしながら林業は、木材需要の低下に加えて円高による外材の価格競争力の高まり、山村からの労働力流出などによって生産活動が停滞し、長期にわたって不振をきわめております。そのため政府は森林・林業、木材産業活力回復五カ年計画を策定いたしましてその実施に努めております。このような努力を高く評価いたしますが、ただこれまでの各種方策の目標が必ずしも実現しなかった面もあります。それは林業の環境がそれだけ厳しかったことを物語るものでありましょう。そのことはさておきまして、官民が一体となって今後の林業の健全な発展に意欲を持ち得る明るい環境づくりを行うことであります。その林業の明るい将来展望を総理並びに農林水産大臣にお伺いをしたいと思います。
  385. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 先に私から答えをさしていただきたいと思います。  森林は木材の供給のみならず国土の保全、水資源の涵養等の公益的機能を持っており、国民経済の安定、国民生活の向上の上からも重要な役割を果たしている、また果たしてきたということは御案内のとおりでございます。  また、森林・林業をめぐる情勢は、最近木材需要が回復傾向にあるなど明るい一面もありますが、このような中で林業、木材産業の活性化を図るとともに、多様化する国民のニーズにこたえた森林整備が必要となっております。このため木材需要の拡大、林業生産基盤の整備、森林の総合的利用の促進など各般の施策を推進し、森林・林業の振興に鋭意努力をしてまいりたい、こう思っております。
  386. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今農水大臣からお答えがあったとおりでございますが、私は特に国土保全ということを考えますときに、先ほど中西委員のお話を聞いておって、私はウエーバーというのは本当は創業者利得のようなものかなと、こんな感じで見ておりましたが、ウエーバーということが、日本がそれこそガットへ頼んで入る時点の話でございますけれども、あれが生じたのは、私は創業者利得というふうな認識でおりましただけに、やっぱりもう一つその奥にそういう基本的理論というものが存在しておったのかなと、こんな感じすら受けたわけです。  実際水田のなくなった農村なんというのは、国土保全の面からもおよそ考えられない。と同じように、林業そのものにつきまして、いわゆる林業というものが材そのものを販売することによる利益と、国土保全のためにこれを育てていく労務等を主として林業と位置づけるべきかというようなことについても、やはりお話を聞きながら私なりの勉強をしてみなきゃいかぬなと、こういう感じを受けましたことを率直に申し上げまして、お答えそのものは農林水産大臣のお答えで私のお答えとさしていただきます。
  387. 林ゆう

    ○林ゆう君 私は地元の高知県で森林組合連合会の会長を務めてまいりました。直接林業に携わる地域森林組合、林業経営者の悩みを聞き、見てきた経験を踏まえまして具体的に今地域林業が直面している問題点につきまして、地元の例を持ち出して恐縮でございますけれども、若干申し上げまして政府の御見解を伺いたいと思います。  地域林業の現状は、一言で言えばかつての活力と生気に満ちた山は消え去り、山に対する希望も前途への期待も失ってしまった活気のない山村の姿でございます。この原因は国際的な問題、木材需要の低迷と価格の低落などであることは言うまでもありませんが、地域的な視野で考えてみますると、超長期の林業経営計画が大きく狂い、資金的に持ちこたえ得なくなったことにあろうかと思います。昨年の施策といたしまして、融資制度の画期的な返済期間の延長が図られたのでございますが、なお金利の低減などを含めてこうした林家の救済制度の確立の検討も今後の大きな課題でございます。  高知県森林組合連合会では、間伐促進の一環といたしまして、採算を度外視して中国への間伐材の輸出を行い、大きな成果を得たのでございますが、急激な円高のため中止をせざるを得ない状況となりました。地域の林家の要望は強いものがありましたが、地方の組織といたしましての経済的限界とはいえ残念なことでございました。海外への輸出につきましては何とか国のあっせんをお願いすることができないものだろうか。  間伐対策はコストの問題であろうかと思います。独自の工夫によりコストの低減に努めてはおりますけれども、何といっても林道網、作業道の整備が決定的要因ではないかと思います。山の活力の回復は動脈とも言うべき道の整備にあります。今後とも林野行政の柱として強力に推進していただきたいと思いますが、農林水産大臣の御所見を承りたいと思います。
  388. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 後で林野庁長官から具体的なことは補足答弁をさせたいと思いますが、委員が森林組合連合会という現場の最高の責任者におられることは私も承知をいたしております。であればこそまた緑の羽根もちゃんときょうはつけてきていただいておる、ありがたいことだと思っております。私どもは、やはり山は大切である。森林は大事に育てなければならぬ。そして、そこに川があって、そして村があり、町があり、都会があるのだと、こういう一つの山から始まる哲学を持つべきである。その哲学の上に立って森林政策というものが進められていくべきである。  近いうちに花と緑の万博も大阪で行われますけれども、先般も建設大臣のお供をいたしまして大阪の万博現場に参りまして、そこでも申し上げたことでございますが、この万博が単なる大阪の箱庭で終わってはならぬ、山、森、川、その一連の哲学を日本全体に、世界全体に徹底し得る機会になれば幸いであると、こう申し上げたところでございまして、そのような考え方を私ども初めみんなで持つことによって、私は林業経営者に対する一つの答えになってつながっていくのではないかと、かように思っておるところでございます。  残余は林野庁長官から答えさせます。
  389. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 私も高知営林局に在職いたしておりましたので、先ほど生先からのお話のございました間伐材の中国輸出の問題につきましてちょっと御説明を申し上げたい次第でございます。  間伐材の需要拡大を図ることが間伐の促進にもなるということで、高知の森林組合の皆さんが大変に努力をされまして、五十九年、六十年にかけまして間伐材の中国への輸出をされたわけでございます。当時は円レートが二百四十円でございましたので、大変厳しい状況ではございましたけれども、実現できたわけでございます。それが現状においてはなかなか難しい状況になっておりまして、道が閉ざされている、大変残念なことでございます。  我が国全体で見ますと一千万ヘクタールの人工林が造成されておりまして、現在緊急に間伐を要する森林が大変多いわけでございます。五十六年度から間伐促進総合対策を実行いたしまして、間伐の実行率は上がってきております。しかし、まだ十分ではございません。このため、今お話がございましたように、林道、作業道等の整備を進めまして、コストの引き下げを図る、あるいは間伐のための機械の開発を行う、さらには集団的、計画的に間伐の推進をする、そういったようなもろもろの施策を推進することによりまして間伐の推進を積極的に進めてまいりたい、このように考えているところでございます。
  390. 林ゆう

    ○林ゆう君 また、山村における大きな問題に山林労働者の高齢化と後継者の不足がございます。山村をふるさととして育った人々はだれ一人として林業が苦しい肉体条件を要するものとは思っておりません。原因は、雇用の場である森林組合にしても林業家にいたしましても、他の職場のように安定していないからでございます。まして昨今のように林業が疲弊し、民間の造林育林事業はほとんどないとも言える現状ではなおのことでございます。  公有林、国有林事業を大幅は森林組合に移譲し、組合事業が長期的は計画的的安定した事業を確保してやることが山村地域の雇用の場を広げて、そのことが意欲的に取り組む若い後継者の確保につながり、山村経済の唯一とも言える林業の活性化を呼び起こすことになるのではないかと考えます。国有林事業の再建は極めて重要なことでありますが、これまで以上に事業を地元の森林組合はやらせてほしいものでございますし、また収穫、伐採につきましても当然経済価値を重視しなければなりませんが、一方、地域林業の振興をてことした経済活性化のためにも、できる限り地元森林組合などを主体に考慮していただきたいと思います。  まだまだ林業の第一線ではさまざまな問題を抱えて、必死の思いで山を守り続けようとしております。我が国の伝統的産業としての地道な林業の育成の視点も忘れてはならないことだと思います。問題山積の民有林対策につきまして、農林水産大臣の御見解を伺いたいと思います。
  391. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 国有林野事業は、これまでも地域の林業事業体の育成に努めるなど、農山村地域の振興に寄与いたしてきたところでございます。森林組合については、地域の林業事業体の中核として位置づけております。今後とも、森林組合の経営基盤の整備を進める一方、国有林野事業の推進に当たっては、計画的な事業の発注等その育成強化を図り、地域の活性化に資するよう努めてまいります。
  392. 林ゆう

    ○林ゆう君 次に、漁業の問題でお伺いいたします。  近年、我が国の漁業を取り巻く状況はさらに厳しくなってきております。諸外国による二百海里規制が一段と強化をされ、急激な円高の進行により水産物の輸入が急増して魚価を低迷させるといった状況であります。このため、漁業経営は中小漁業を中心に債務の累積にあえぐなど、悪化の度を強めております。このような局面を打開するには、漁業構造の再編整備を一層推し進めることが必要不可欠でございます。  しかし、水産業界はこれまでにも多大の犠牲を払いながら構造再編を進めてまいっており、経営環境の悪化と相まって、これ以上の負担には耐えられない業種も多いと思います。したがって政府の抜本的な対策が望まれるわけでございますが、農林水産大臣、どう対処されるか御方針を伺いたいと思います。
  393. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 漁業構造の再編整備、この基本的な姿勢について申し上げたいと思います。さらに踏み込んだ具体的なことをお尋ねであれば、水産庁長官から答えさせたいと思います。  今おっしゃいますように、我が国の漁業を取り巻く情勢は非常に厳しいわけでございます。二百海里体制の定着による漁業規制の強化、あるいは、マイワシを除き全体として低水準にある我が国周辺水域の水産資源、魚価の伸び悩みによる漁業経営体質の脆弱化、食糧消費の多様化と円高等による水産物輸入の増加等々、厳しさを増しておるわけでございます。このような環境のもとで漁業経営の安定を図るためには、資源の管理培養を積極的に推進しつつ、中長期的な展望に立って資源と漁場に見合った漁業生産体制を確立すべく、遠洋漁業のみならず我が国漁業全体の再編整備を進めていく必要があると考えております。  なお、つけ加えて申し上げますと、第三次沿岸漁場整備開発計画、あるいは第八次の漁港整備の長期計画、これを六十三年度から発足させる予定にいたしておるところでございます。
  394. 林ゆう

    ○林ゆう君 一方、遠洋漁場の縮小に伴いまして我が国周辺漁場の重要性が増大しているところに対応いたしまして、その整備開発を図るためのマリノベーション構想の推進が当面漁業政策の大きな課題となってきております。  ところで、最近、いわゆるウオーターフロント計画の名のもとに、人工の島やリゾート施設の建設など、漁業以外の利用を目的とする沿岸域開発の機運が急速に盛り上がってまいりました。申すまでもなく、沿岸域をこのように総合的に開発利用することは、現在我が国が最も必要としている内需拡大に大きな力を発揮することにはなりまして大変結構なことだと思いますが、しかしここで考えなければならないのは、漁業は、生命を維持するための食糧産業であるとともに、海の生産力に依存して昔から多くの人々が生計の道を立ててきた古い産業ということでございます。海なくしてこの産業は存在し得ないのであります。したがって、沿岸域の開発に当たっては、この点に十分な配慮がなされなければならないと思います。  そこで、総理にお伺いいたします。政府としては、今後我が国沿岸域の開発に当たって、どのような基本方針で臨まれるのか。また、その中で、漁業に対してどのような配慮をなされるのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  395. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 総理という御指名でございますけれども、私から便宜申し上げたいと思います。  レジャー部門が、海岸の開発との関係で、漁業に対しても大きな影響を与えておるというお話でございます。海洋レジャーも相当な需要が高まっておる、国民のニーズもよくわかります。しかし、このような海洋レジャーの展開と漁業者との漁場競合という問題は、従来とも、立場の違う者同士で円満な話し合いを進めてまいりまして、海洋レジャーと漁業との共存が図られている事例も増加いたしております。しかし一方、養殖漁業等について、海洋レジャー関係者からは、漁場が栽培漁業のために汚れているではないか、こういうお話もございます。まあしかし、こういうことについて理屈を言えば、それじゃヨットが先にあったのか、魚が先に泳いでいたのか、こういう議論になります。魚がもともと泳いでいたわけでございます。これは我が方の立場からだけで言うのではなく、そういうことははっきり言えるわけでございます。  しかし、現在レジャーが非常に盛んになってまいりまして、確かに競合しておる、そして意見がが分かれていることも事実ございますので、今後とも、地元の雇用機会の増大とか水産物の需要喚起、漁村の活性化、そういうことを全部整合しながら円満な解決を図っていく、そこに発展の余地十分ありと、こう考えておるところでございます。
  396. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には佐藤農水大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、その種の、いわゆる近代人としてのレジャーというものがこれはますます必要になり、そのニーズも高まる。それと既存の産業、それの調和点をどこに求めていくかということで種々工夫がなされるべき問題だというふうに整理をいたしております。
  397. 林ゆう

    ○林ゆう君 次に、教育問題についてお伺いいたします。  教育改革は、国家百年の大計とも言われておりますように民族の悠久の課題でございます。我が国は、明治以来西欧先進国に追いつけ追い越せをモットーに、国民の教育に対する情熱と努力により世界でも有数の教育水準の高い国となって、今日の我が国の目覚ましい発展と繁栄を築いてまいりました。しかしながら、これまでの教育を振り返ってみますと、どうも教育の機会均等を確保する余りに、画一的な教育に徹し過ぎた気配はなかったろうかと反省するものであります。むしろ、時代の進展や国民の多様化したニーズを踏まえて、各人の個性を生かし伸び伸びした教育、生き生きした教育が必要ではないでしょうか。  総理は、将来の日本を担う青少年が、自主独立の気概に満ち、日本人として国際性を備えたものでなければならないと申されておりますが、私も全く同感でございます。改めて人づくりの重要な視点と申しますか、総理が、期待する人間像をどう受けとめて教育改革を断行されるのか、その御決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  398. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和四十一年の十月三十一日でございますか、いわゆる「期待される人間像」についてというのが中央教育審議会の答申の中に盛られておるわけであります。これには、当面する日本人の課題、あるいは個人としてどうあるべきか、家庭人としてどうあるべきか、社会人としてどうあるべきか、国民としてどうあるべきか、こういうようなものが書かれておるわけでございます。  やはり私は、「期待される人間像」、こういうものを考えてみますと、日本人として身につけるべきもろもろの特性と実践的な規範を参考として示されたものである、今の考え方は。そういうふうに受けとめておる次第でございます。特に、二十一世紀というものを展望してみますと、我が国を担うにふさわしい青少年の育成、なかんずく国際化した今日でありますが、国際化しながらも日本人としてのアイデンティティーというものをしっかり持って、しかも個人個人がその特性を伸ばしていく、そうした教育環境の整備等に努めなければならないではなかろうか、このように考えております。
  399. 林ゆう

    ○林ゆう君 次いで国旗、国歌の問題についてお尋ねをいたします。  本年はソウル・オリンピック開催の年であります。私は、オリンピックに限らず、国民が今日の国際社会において幅広く活動するには、狭い自国の利害のみにとらわれることなく、より広い国際的人類的視野に立って物事を判断し行動することが必要であり、そのためにはまず国民が自分の国を愛する心を持つことが何よりも肝要であろうかと思います。その意味合いにおきましても、国民が自国のシンボルである国旗、国歌を大切にするということは今日ますます重要な事柄になってきていると考えます。  我が国においては、国民の間に定着した考え方として従来から日の丸、君が代が国旗、国歌であるとされており、最近の各種世論調査でも大多数の国民がごく自然な気持ちとしてそのように考えていることを示しておりますが、私にはどうも自国の国旗、国歌を掲揚、斉唱することについて、諸外国に比べるとまだ国民が十分にはなれ親しんでいないのではないかと思われてなりません。総理はどう受けとめておられますか、そしてその原因は何かと思われますか、お伺いをいたします。
  400. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘のとおり、学校教育におきまして児童生徒が日本国民としての自覚を持ち、将来国際社会において信頼されるに足るような日本人に育つ、そういうふうな、教育におきまして国旗、国歌を大切にするというふうな教育が大変重要なことでございます。その意味におきまして私どもとしては、学習指導要領におきまして小学校の社会科、あるいは中学校、小中高を含めてでございますが、特別活動の儀式的行事では国旗を掲揚し国歌を斉唱するというふうな指導をしておるところでございます。  ただ、国旗、国歌につきましていろいろな考え方をお持ちの方が一部あるわけでございまして、今いろいろと指導が徹底しておりまして多くの学校で国旗を大切にし国歌を斉唱するということが行われておるわけでございますが、ごく一部において行われていないところがあるいは先生御案内の点があるかと思います。これらの点につきましては私どもも今後とも指導に努めてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  401. 林ゆう

    ○林ゆう君 総理、教育改革は息の長い課題でございます。どうか二十一世紀へ向けての改革を実効あらしめるためには、厳しい財政事情にあっても人づくりのための必要な金を惜しんでは国際社会で生きる日本国を担う人間はできないと思います。教育改革は寄せる国民の期待と要望にこたえて各般の政策を引き続き精力的に断行していっていただきたいと思いますので、この点を御要望申し上げておきます。御答弁は結構でございます。  それでは、首都機能についてお伺いいたします。  この問題は、最近とみに大きな政治問題として浮上してまいりました。国土の均衡ある発展を図るには、東京に一極集中している人口や諸機能を抑制して産業の地方分散を進めることが必要と思います。しかしながら、首都機能の移転問題はその影響するところが極めて大きいものがございます。どこに移転するのか、移転した結果はどうなるのか。ただ東京の人口の何十万人が一地方に移っただけでは国土の均衡ある発展にはなりません。  まず、首都機能の移転の必要性、目的を総理はどのように御認識されておるのか、お伺いいたします。
  402. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は東京の人口がある地方、あるいはそれぞれ分散していくということをそれ自体全く無意味であるという考え方には立っておりません。しかし、その中におよそ政策としてのバックボーンが一つ存在していなきゃならぬことだということは、私自身もそのように思っておるところであります。したがって、首都機能の移転、再配置につきましては、東京圏への諸機能の過度の集中を是正して国土の均衡ある発展を図る上からも、また第四次全国総合開発計画というものの趣旨からしても、私は重要な課題ではなかろうかというふうに考えております。  今度は首都移転と、こういうことになりますと、これはまた国土政策の観点だけでは決定できない問題がございますので、東京一極集中への基本的対応として重要と考えられますが、政治行政機能、経済機能の相互関係のあり方等を含めて国民的規模で考えなければならない課題だと。今日、いわゆる遷都でございますとかあるいは分都でございますとかあるいは展都、そういうことについてのいろいろな議論が国民的次元で盛り上がっていくということは好ましいことであるというふうに考えておりますが、今日私は、特に行政機関そのもの、東京都二十三区内にあらねばならないもの以外のものはやはりそれぞれの機能分散ということが必要ではないかという観点に立って、まず第一歩といたしまして、言葉は余り適切ではございませんでしたが、いわゆる一省庁一機関というような言葉を使ったことは必ずしも適切ではございませんでしたが、そういう方向で方針を決め、これから具体的な施策にかかっていく。何せ概算要求ももうすべて終わってから後の政策でございましたので、問題はこれからだというふうに考えておるところでございます。
  403. 林ゆう

    ○林ゆう君 首都機能の移転を論議するに当たって重要なことは、皇居の移転をどう考えるかであろうかと思います。  立法府たる国会を初め国の行政機関や産業などの移転分散は論議の当然なテーマではありますが、皇居の移転については軽々に諭ずべきものではないと思います。それゆえに、我が党の首都機能の移転に関する調査会におきましては、共通認識として皇居はその対象としないことを決定しております。政府の四全総では、遷都問題は国土政策の観点のみでは決定できない、政治行政機能と経済機能の相互関係のあり方を含め、国民的規模での議論を踏まえ引き続き検討すると書かれて、皇居のことは直接述べてはいませんが、遷都とは文字どおり都を他に移すことの意味でございます。総理は首都機能移転に関する将来構想をどう描いておられるのか、また皇居の移転についてどう受けとめておられるのか、御所見を承りたいと思います。
  404. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、林さんから御指摘があったとおり、いわゆる東京一極集中への基本的対応として重要な検討課題である、が、その中で皇居につきましては検討の対象としてこれを考えたことはないというのが実情でございます。これからの問題というのは、やはり国土の均衡ある発展を図る上からも、いわゆる首都機能の移転、再配置ということにつきましては重要な課題であるという問題意識を持っておるところでありますし、御指摘ありましたとおり、首都移転、遷都というようなことになりますと、まさに国土政策の観点のみでなく、総合的な経済社会すべての問題から、国民的課題として議論をしなきゃならぬ課題であるので、今はそういうものを検討しようという雰囲気が醸成されたということについて私どもはそれを多としておりますが、特に御指摘がありましたように皇居そのものを対象にして議論をしたことはいまだございません。
  405. 林ゆう

    ○林ゆう君 首都機能の移転に当たってまず考えますことは、ただ東京にあるものを地方に移しさえすれば済むものではありません。地方の時代と言われて幾久しくなりますが、それに伴って国の地方公共団体に対する関与や機能、権限分担の適正化が十分なされたという声は聞いておりません。私は、四全総構想に基づきまして多極分散型の国土を形成するには、まず地方自治を尊重するという前提に立って、中央集権的な行政機能を改めるべきだと思います。そのためには、財源と権限を地方に移譲して地方自治を確立すべきではないかと思うわけでございます。総理並びに自治大臣の御所見を伺いたいと思います。
  406. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 林委員御説のとおり、多極分散型国土の形成を推進するためには、各地域がその創意工夫により自主的主体的にそれぞれの特性を生かした地域づくりができるようにすることが必要であります。そのためには、住民に身近な事務は住民に身近なところで処理することができるように、国から地方公共団体への権限移譲等をさらに進めるとともに、地方税、地方交付税等の地方一般財源の充実確保を図っていくことが重要であるというふうに考えておりますが、顧みて遅々として進まないことにいら立ちを感ずるわけでありますが、思い直して一生懸命頑張ります。
  407. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国と地方は車の両輪であるというようなことを私も何度か言ってまいりました。しかし、おっしゃいますように、身近な事務は身近なところで処理していく、まさに事務そのものをとらえてみましてもかくあるべきだと私は思います。したがって、権限移譲の問題——財源の問題になるとまた別の角度から税源配分等についての議論も起こってまいりますけれども、引き続き絶えず検討していかなきゃならぬ課題だというふうに思っております。
  408. 林ゆう

    ○林ゆう君 首都機能の地方移転に関連いたしまして、東京の文化を守る見地から、そのシンボルとも言うべき東京駅丸の内駅舎の復元と保存についてお伺いをいたします。  御案内のように、東京駅丸の内駅舎は大正三年に建築、明治、大正期を代表する赤レンガの東京駅と言われて重要な文化財的建造物であります。現在の建物は、過ぐる大戦において被災をいたしました。応急的修理を施したままのものですが、長く親しまれてきた日本の玄関としての東京の顔であります。今般、国、JR東日本など関係者による連絡会議が発足いたしまして、東京駅を含む地区の再開発計画が進行中とのことでございますが、万が一にも取り壊すようなことがないように、重要な歴史的記念建造物として創建当時の姿に復元して永遠にその保存活用を図っていくべきではないかと思います。文化に極めて御造詣が深い総理の御所見を承りまして、私の全質問を終わらしていただきます。
  409. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今おっしゃいますように、東京駅は大正三年でございますか、現在に至っておりまして、もちろんこれはJRそれから東京都話し合いの中で行われるべきものと思いますが、おっしゃるように今の東京駅は、首都の顔とは申しますけれども本来の姿ではございませんので、できれば大正三年の元の、これが東京駅という威容に戻して、そして親しまれる東京駅、首都の顔として保存されることがあれば好ましいことだと思っておるわけでございまして、その方向に、再開発を阻むわけじゃございませんが、再開発の中でその伝承される美しさも人の心に残りますように、その方向で進みましたらば文部省としても最大の協力をさしていただきたい、こう思っておるところでございます。
  410. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 御案内のとおり、東京駅は建物は大変古うございますけれども、あくまでも現役の駅でございまして、新幹線もやがて上野から東京にもつながりますし、駅としての機能はこれからますます増すわけでございます。そういう点から立ちますと、パリのオルセのようにそっくりそのまま復元して美術館として残すということもなりませんので。同時に、今おっしゃられましたように、あそこは非常にビジネス街の中心地でもありまして、地価も高騰しておるということで、再開発して事務所のスペースを提供してもらいたいという声もございます。そういうものを勘案しまして連絡会議関係者でつくっているわけでございますが、また所有者でありますJRの方の意見もしんしゃくいたしまして、できるだけ多くの人々に喜んでいただく、納得していただく適切な処置をしてもらいたいものだと思っております。
  411. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それで、JR社を監督する立場にある石原運輸大臣にいたしましても、またまさに文化そのものである中島文部大臣にいたしましても、私よりは数段文化人であるお二人からお答えがありましたが、お二人の考えも聞きながら、やはり文化人としての物の考え方を基本的に踏まえながら対応しておられるのだなと、そういう方々の意見をよく間かなきゃならぬものだという思いを深くいたしました。
  412. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で林ゆう君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十分散会