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1988-02-20 第112回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月二十日(土曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  二月十九日     辞任         補欠選任      上杉 光弘君     斎藤 文夫君      鈴木 和美君     稲村 稔夫君      神谷信之助君     近藤 忠孝君      下田 京子君     佐藤 昭夫君  二月二十日     辞任         補欠選任      大塚清次郎君     工藤砂美君      佐藤謙一郎君     増岡 康治君      鈴木 貞敏君     志村 哲良君      秋山  肇君     野末 陳平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 工藤砂美君                 斎藤 文夫君                 坂野 重信君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 田中 正巳君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 林 健太郎君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 松岡滿壽男君                 稲村 稔夫君                 小川 仁一君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 及川 順郎君                 広中和歌子君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 佐藤 昭夫君                 勝木 健司君                 野末 陳平君                 喜屋武眞榮君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       粕谷  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君    政府委員        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   紀 嘉一郎君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        経済企画庁調整        局長       横溝 雅夫君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        沖縄開発庁総務        局長       勝又 博明君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁計画・調        整局長      長沢 哲夫君        国土庁土地局長  片桐 久雄君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        大蔵大臣官房総        務審議官     角谷 正彦君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局次        長        藤田 弘志君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生省年金局長  水田  努君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省農蚕        園芸局長     吉國  隆君        食糧庁長官    甕   滋君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        運輸省航空局長  林  淳司君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省労働基準        局長       野見山眞之君        建設大臣官房審        議官        兼内閣審議官   福本 英三君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        建設省都市局長  木内 啓介君        建設省道路局長  三谷  浩君        建設省住宅局長  片山 正夫君        自治大臣官房総        務審議官     小林  実君        自治省行政局長  木村  仁君        自治省税務局長  渡辺  功君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君    参考人        首都高速道路公        団理事長     淺井新一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十二年度一般会計補正予算(第2号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和六十二年度特別会計補正予算(特第2号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第2号)(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十二年度一般会計補正予算昭和六十二年度特別会計補正予算昭和六十二年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十二年度補正予算案審議のため、本日、首都高速道路公団理事長淺井新一郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより三治重信君の質疑を行います。三治重信君。
  6. 三治重信

    三治重信君 本日は普通よりか早くなってまことに申しわけないんですが、まず最初に、この補正予算売上税の廃案になったやつの是正が行われております。それで、私も昨年の九月の参議院の本会議意見として申し述べておいたんですけれども、このような国民に重大な義務というんですかを課すような税制改革、今度政府が抜本的な税制改革をやろうとしているわけなんですが、こういうような抜本的な税制改革の場合の税法とかいうものは、完全に国会で通って後一定の期間国民周知期間を設けて予算化すべきだ、予算に編入すべきだ、こういう考え方をこの前申し述べたんです。今度それをやらぬために、そのため今回の補正でわざわざ一兆一千億円のマイナスの補正をやらなきゃならぬ、減をやらなきゃならぬ、こういうようなことになるわけですが、こういうことがないようなためにはやはり税法予算と離して、きちんと施行されてからこの予算の中へ組むようにしてほしいと思うんですが、いかがですか。
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) お尋ね二つの問題を含んでおると存じます。つまり、新しい税あるいは税制改正を行いますときに、その施行期日税法成立後かなり時間を置くべきであると。それは周知徹底のためもございますし、いろいろな理由で。そうすべきであるかどうかという判断の問題が一つございます。その場合には、当然それは予算には歳入にも歳出にも出てこないことになるわけでございます。他方で、また何か別の判断でできるだけ早く施行したいということになりますと、今度は法と予算との整合性という問題になってまいりますので、したがってそれは歳入に計上されるし、消費税のような場合には歳出にも計上されざるを得ない、こういうことになってまいると存じます。  それで、昨年の場合は後者の場合であった。後者の場合でございますから、税法予算とは整合性を保たせるためにはああいうことになったのでございますが、むしろ三治委員の言われますことは、あのような大きな税制改正をすぐに施行するという考え方そのもの判断そのものに誤りがあったのではないか、こういう御指摘だと思います。それは私ども、昨年起こりましたことの中でいろいろに反省をいたしております。
  8. 三治重信

    三治重信君 特にこの点については、今度抜本改革をやる場合に施行上の御注意をお願いしたいと思うんです。  次に住宅対策なんですが、住宅金融については住宅金融公庫融資厚生年金還元融資、それから財形融資民間融資の四本立てに現在なっておるんですが、このような住宅金融の四本立てというものの将来の割合、伸び率、どういうふうに総合的に利用していこうかと、こういうことについてまず大蔵大臣から総括的にお願いし、各省それぞれこのような融資が将来資金的に十分あるのか、まだ伸び可能性があるのか、ひとつお答え願いたいと思います。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのような立て方で住宅融資をいたしておるわけでございますが、民間金融機関住宅ローン残高は近年順調に増加しておりますし、比較的低金利でございますので、貸し家中心住宅戸数も順調に増加をしておると存じます。  と同時に、公的金融につきましてもできるだけ低水準でということを心がけておりますし、また厚生年金還元融資財形融資等々も貢献をいたしております。そのほかにできるだけ税制促進効果を上げたいと考えております。
  10. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) お尋ね住宅金融のうち財形持ち家融資につきましてお答え申し上げたいと思いますが、この原資は御承知のとおり財形貯蓄及び財形年金貯蓄として勤労者金融機関等に預けました資金の最大三分の一までを活用することができることになっておりますが、現在財形貯蓄等貯蓄残高が十二兆円に上っておりますけれども、財形融資に活用されている資金は三%程度となってまだ資金の可能な余地は大きいというふうに考えております。  さらに、本年の四月からは財形年金貯蓄及び新しく創設されます財形住宅貯蓄一般勤労者にとっては唯一非課税貯蓄になるわけでございまして、こういった意味でこれらの財形貯蓄残高は今後とも順調に増加するのじゃないかというふうに見込まれておりまして、財形持ち家融資原資は将来にわたりまして安定的に確保できるというふうに考えております。
  11. 水田努

    政府委員水田努君) 厚生年金国民年金加入者に対しますところの年金融資は、その原資年金積立金還元融資という形で確保しているわけでございますが、年金積立金は六十二年度末六十二兆であるものが五年後には八十五兆、十年後には百七兆とふえてまいりますので、原資としては十分将来とも担保し得るものでございまして、私ども、年金加入者年金融資の需要、ニーズに応じまして的確にその財源の確保を図っていきたい、このように考えている次第でございます。
  12. 片山正夫

    政府委員片山正夫君) 住宅金融公庫関係につきましては、原資財形でございますので若干性格が違いますけれども、公庫融資伸びとしましては、第五期五カ年計画、六十一年から六十五年まででございますけれども、公的住宅三百三十万戸のうち二百二十五万戸を計画しておりまして、これは順調に推移していくと考えております。
  13. 三治重信

    三治重信君 今御説明のように、住宅金融の方は大体順調にというんですか、将来も増加することはあっても減ることはない、こういうような状況になっておりますが、その中で特に私は今のところうまくいってないのは財形持ち家融資だと思っております、見ていて。しかも、このたび、この四月からは唯一マル優制度が残されるということになってくると、さらに貯金がふえる。そうすると融資原資がふえる、こういうことになって、これを十分使えるようにいま一度の努力をしたらどうか、こういうふうに考えて御質問するわけであります。  財形貯蓄についてはずっといろいろの改善策が講ぜられておるんですけれども、どうもその伸びないのは労働省の方の事業主転貸融資がうまくいっていない、こういうことなんで、この転貸融資をさらにスムーズにするために財形金融会社をつくったわけですが、この会社がまだ伸びないというところに大きな原因があるとともに、やはりこの二つ建設労働両方から同時に融資がやれるようになっているところにも、両方ともがお互いにうまくいかないということの原因があるように思うわけなんです。その点について建設大臣労働大臣にお願いいたします。
  14. 越智伊平

    国務大臣越智伊平君) 住宅金融につきましては、先ほど住宅局長からお答えいたしましたように、できるだけ進めてまいりたい、かように思います。  ただいまお尋ね財形との問題でありますが、よく連絡をとって進めてまいりたい、かように思います。どちらかで満度にということになると非常に都合がいいのですが、両方からということになりますと、先生御指摘のように少し複雑な点もございますので、よく連携をとって進めてまいりたい、かように存じます。
  15. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 財形持ち家融資制度の実績でございますけれども、昨年十二月現在におきまして約六万五千戸、四千三百億円になっておるわけでございまして、制度が十分に利用されているとは申しがたい状態でございます。  この原因はいろいろございますけれども、第一に、何といいましても他の公的金融機関より貸付金利が非常にこちらが高かったということ、発足当時におきましては二%以上の差があったわけでございます。それだけに、PRにつきましても、高い金利だけれどもこれを借りてくれというような要請はなかなかできなかったということ。それから、融資条件としまして御承知のように三年以上貯蓄していなければだめだというようなこと。また、今申し上げましたように、PRの面で必ずしも万全ではなかったというようなことが原因だろうと思っております。  そこで、御承知のように昨年におきまして、融資条件でありまする財形貯蓄期間三年を一年に改めた。さらに融資額の引き上げ、従来貯蓄額の五倍であったものを十倍にしたというようなことの改正を行ったわけでございます。貸付金利につきましても、金融機関の協力を得まして今は〇・〇五の差でございますから、これからはPRも積極的にしやすくなったという状態でございます。さらに、従来手薄でありました中小企業向けのこの制度を徹底させていくことによりまして効果を上げていきたいというふうに考えておるところでございます。これからも真剣にPRに努めてまいりたいと考えております。
  16. 三治重信

    三治重信君 今労働大臣がおっしゃったように、従来は融資金利に差があった。これは基本的な差だと思うんです。今でも一番安いのが〇・〇五の差があるということなんですが、これは建設大臣に特にお願いしておくんですが、何も金融公庫金利を一番下げておらなければいけないということはやめて、財形融資一緒にやるんだから、金利は借りる方が最低のやつは同じ金利で借りられるようにしてもらいたい。  殊に、きのうの朝日の夕刊なんかで、大臣記者会見で、今度第四回の融資から四・五%ないし五・一%に金利を下げる、こういうように大蔵省と話が決まったというようなことが出ているんですが、こういうことも、建設省大蔵省一緒になって、下げるときには一緒に下げていくようなことをぜひやってもらいたい。金融公庫だけ先にやってほかのところはほっぽり出し、こういうことのないように、住宅金融一つとして金利なんかは歩調を合わしてやってもらいたいということが一つ。  それから、今大分調整されたんですが、まだ手数料の問題とか中小企業融資団体の規定の仕方とか、そういうようなのでいろいろ問題があるようでございますが、基本的には、建設大臣に言っていただいたんですが、やはり建設業者への指導で、建設業者分譲住宅広告する場合に、住宅金融公庫融資厚生省還元融資だけは新聞広告に出ておる。この二つはこういうぐあいな融資がありますよということが出ているんだけれども、財形貯蓄融資が抜けている、ほとんど。対象が今まで少なかったということもあるんですが、分譲をやる建設会社融資を受けられるという広告を出す場合には全部三つそろえて、民間金融機関がやる分までは出さぬでもいいんだが、政府金融として必ず三つ一緒に出してくれと。  これはひとつ労働省の方も建設省とよく連絡してやってもらうとともに、そういうぐあいにして、まず第一線の宣伝、また業者利用者にそういう各種の融資周知徹底さして、自分たちの好きなのを利用させるようなことをひとつ建設省中心になってやってもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  17. 越智伊平

    国務大臣越智伊平君) 公庫融資金利の問題につきましては、私どもはできるだけ金利を安く融資をするということでございますので、大蔵省と折衝いたしまして四・五に今回からいたしたい、かように思っております。この金利の問題につきましては労働省の方もひとつ御努力をいただきたい、かように思う次第であります。  今の宣伝のことにつきましては、今後十分連携をとってやっていくように進めてまいりたいと思います。
  18. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御意見の点は大変重要だと考えております。これからも建設省十分連携をとりながら、不動産業者あるいは建設業者を通じて申請が行われるような、そういう周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
  19. 三治重信

    三治重信君 次に、更地払い下げ民間土地値上げを誘発するといって、国有地地方公共団体、特に国鉄清算事業団所有地払い下げについては、世論の動向もあって非常に制限をしているわけなんですが、公共用地払い下げができぬからといって更地のまま、殊に東京都でも空白にしておくというのはまことにもったいないことだと思うわけなんです。  そういうことを避けるためには、やはり国鉄事業団でもまず先に土地信託を利用して望むオフィスや住宅を建てて、そしてその建てたものの信託財産そのものを後で売れば、そういうような土地の転がしや土地値上げを避けて、しかもいつまででも払い下げをできぬということがないと思うんですが、建設にそういうふうに先に着手するという手をぜひ考えてもらいたいと思うんですが、どうですか、運輸大臣
  20. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 旧国鉄用地につきましては、清算事業団資産処分審議会で地価を顕在化させない何か有効な方法はないかと今審議中でございますが、近々答えが得られると思いますけれども。ただ、信託はちょっと問題もございまして、いわゆる逆ざやの現象が起こりかねない、それから長期債務元利償還額に見合う信託配当が得られるかどうかちょっと問題がございます。ちなみに、その一般的な信託配当として予想される率は土地価格の二%から四%と。それから一方、事業団長期債務平均利率が四・七八%。しかし、これは一般会計からの無利子貸付金が地ならしされておりまして、これを除きますと七%ということになりますので、逆ざやということも見込まれますので検討を要すると思っておりますが、いずれにしろ近々審議会から回答が得られると思いますので、それを踏まえて検討したいと思っております。
  21. 三治重信

    三治重信君 確かにそういうふうなもので、土地信託で持っているとそういうことになると思うんです。その信託をつくってもらったやつを、そのまま信託財産を売ってしまえば、いわゆる受益権というものをそのまま売っちゃえば土地を売ったと同じことになる。ただ、土地転がしの非難を受けぬでその土地が売れる。そういうふうにずっと持っているということじゃなくて、売っちゃったらどうかと、こういうことですよ。受益権として、ひとつそれを検討していただきたいと思います。  それから、殊に東京賃貸住宅として官庁の出先機関高層化や、殊に山手線の線路の上に、これはまあそういう団体もできているそうですけれども、駅庁舎の近くに高層賃貸住宅を建ててやったらどうか。これも土地信託をやれば財政資金を使わぬでもできるんじゃないかと。土地がただのところで賃貸住宅を建てていったらどうかと思うんですが、これを運輸大臣並びに国土庁長官、お願いします。
  22. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) その問題でございますけれども、駅舎についてはかなり高度化した利用を現在行っておると思いますが、問題は、いわゆる線路の上の空間ですけれども、これは確かにアイデアとしては結構なんですが、周囲の事情、道路の事情などとの兼ね合いで工事はかなり難しいような気がいたします。技術が進めば何とかそれは可能になると思いますけれども。  もう一つ信託にせずにむしろJRそのものがこれに着手した方が利益が上がりやすいんじゃないかという気もいたしますけれども、これは十分に検討に値するプロジェクトだと思っております。
  23. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 山手線等の上位を利用するという考え方には大賛成でございます。今高速道路が大変な渋滞を来しておりますので、その方面の利用も論ぜられているわけでございまして、そういう意味で大いに研究していくべきだと思っております。
  24. 三治重信

    三治重信君 次に、地価高騰の大きな原因は、私は固定資産税いわゆる保有税が安過ぎるからだと思うんです。その安くしなくちゃならぬ原因は、やはり個人の居住用資産である土地から余りたくさん取るとまずいということが固定資産税を上げるのを非常に抑えている一般的な理屈だと思うんですが、そういう個人の所有、居住用の土地については固定資産税を抑えるのは私も賛成で、そんなに上げない方がいいと思うんですが、たとえ上げるならこれは住民税の減税との比較で、住民税を下げて固定資産税を上げるというような配慮が必要だと思うんですけれども。  地価上昇の大きな原因というのは、やはり何といっても保有税である固定資産税が法人その他大土地所有者にとっては非常に有利だと、持っていた方が土地の値上がりから見れば、それはもう固定資産税というものはただみたいなものだと。こういうところに大きな原因があるというのはこれは不動産関係の人のほとんど一致した意見だと思うんですよね。だから、個人の資産の課税としては無理なところは抑えなくちゃならぬけれども、一般会社や保有のための地主のやつについて固定資産税をまける必要はないと思うんですが、その点の意見と、事実私が調べたところでは、三十五年の固定資産税と住民税との割合はほとんど二四%で同じだったんですが、現在では半分以下になっている。こういうような現象をどうお考えになるか、自治大臣国土庁長官お願いします。
  25. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 土地の保有に対しては資産価値に応じて毎年固定資産税が課税されているわけでございますが、これは市町村の基幹の税目でございまして、三年ごとに評価がえを行うことにより適正な負担を求めるように努力をしてまいりました。今後、固定資産税の負担と評価の問題については、昭和六十一年十月の税制調査会の答申が述べているように、その市町村税収総額に占める割合が長期的に低下傾向にあること等にかんがみ、多くの納税者に対し毎年課税されるというこの税の性格を踏まえながら、評価の均衡化、適正化を通じて中長期的に充実を図る方向で対処することが適当であると考えております。  なお、固定資産税と住民税の割合の推移についてでございますが、委員指摘のとおり、市町村税収総額に占める固定資産税と住民税の割合がほぼ同じであったのは昭和三十七年度でございます。固定資産税が四〇・〇%、住民税が三七・四%であったわけでございますが、その後、固定資産税の割合が徐々に低下をいたしまして、昭和五十六年度においては固定資産税三〇・六%、住民税五〇・五%、その後、固定資産税の割合が若干上昇して、昭和六十年度では固定資産税三一・九%、住民税五〇・七%になっております。いずれにいたしましても、毎年かかる税でもございますので、固定資産税の強化というものは三年ごとに見直すことによって適正な評価をして課税をしてまいりたいと思います。
  26. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 土地負担のあり方につきまして、保有課税を重くして流通課税を軽くする。それは私は、土地を本来利用し得べき人が利用するという方向に持っていくためには適当な考え方じゃないかという意味で、お考え方には賛成でございます。  ただ、土地の保有者、過去に保有している人は、急激に日本の経済が上昇してきて土地の価格も上がってきているものでございますから、土地の価格が上がったからといって負担を重くしますと追い出し税になってしまうんじゃないか、こう思っておるわけでございます。  そういう意味においてなかなか慎重を要するなと、同時に、私なりに土地に対する固定資産税のウエートを調べてみましたら、昭和二十五年に固定資産税が発足したわけでございますけれども、国民総所得に対する比率は余り変わっていないわけであります。ただ問題は、租税の負担率が上がってきているわけでございますから、そういう意味からいいますと、その比率が上がってもいいじゃないかという議論はできるかもしれません。将来にわたって大変大事な検討課題だと、こう思っております。
  27. 三治重信

    三治重信君 殊に、地価に対しては、地価を上げる原因土地保有志向が強い、それを抑えるためにはやはり土地保有税である固定資産税を、個人のやつはそのままにして法人なりその他に分けて取れる、あるいは別の税にする、こういうことが私は必要だと思うんです。殊に税制抜本改革について、資産課税というものを検討する場合に、ぜひひとつこの点はほかの課税と資産課税というものを特にあり方を考えていただきたいと思います。  それから、土地値上げに対して都市再開発を地方公共団体がやらぬために、地上げ屋がどんどん入ってきて盛んに追い出しをやる。これは社会問題であるわけなんですが、こういうのは地上げ屋にかわって地方公共団体がみずからやるか、あるいは公団、公社がやるという積極的な姿勢をぜひとらぬと、地上げ屋の入ってきた都市再開発というんじゃこれは社会問題だと思うんですが、これに対する建設と国土の両大臣の御意見はいかがですか。
  28. 木内啓介

    政府委員(木内啓介君) 先生の御指摘のように、公共的な例えば市街地再開発事業とか区画整理事業につきましては、これが計画されますと建築物の建築に関する規制がなされるとか、あるいは資産の評価が適当に従前従後でなされるとかいうことで、なかなか地上げというものが入りにくい性格のものでございますので、おっしゃるようにこういった公的な再開発事業、区画整理事業をどんどん進めるということはかなり有効な対策かと思うわけでございます。しかしながら、御承知のように再開発事業は、いわゆる再開発というのは法的な市街地再開発事業以外に任意の再開発というのがいっぱいございますし、これはこれで民間の創意等を生かすためにまた必要なものでございます。そういった任意のものにつきましての対応は、現在のように再開発法その他ではなかなか難しいわけでございまして、これは不動産の取引に関する法律とかあるいは国土法とか、そういった一般的な対応を考えなきゃいかぬというふうなことになろうかと思います。  結論といたしましては、おっしゃるように再開発事業、区画整理事業をどんどん伸ばしていくということが一つの有効な方法であるには違いないと考えております。
  29. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 私も再開発、これが円滑にいくようにすることが一番大事なときだ、こう思っております。今のままで災害が起こりますと大都市は大混乱に陥るんじゃないかな、こう思っているわけでございまして、やっぱり再開発の手法を講じて道路を広げる、緑地をつくっていく、そして横に伸びるんじゃなくて上に伸びていく、狭さ制限、低さ制限、その手法を一番大事に考えるべきだ。東京二十三区は容積率四割しか使われていないわけでございますので、それが円滑にいくように建設省も大変力を入れていただいておりますが、今後も努力をしていくべきだと思っております。
  30. 三治重信

    三治重信君 殊に東京都なんかは今大臣がおっしゃるようなことが一番必要だと思うんですが、これはやはり法律だけじゃだめなんで、東京都みずから外郭団体をつくったりなんかして、ぜひみずからやるという姿勢を示していただきたいと思うんです。  それから農地の宅地化をひとつぜひやってもらいたいと思う。それは少なくとも三大都市圏、東京、大阪、名古屋の都市圏整備法というものがある、その適用範囲内で結構なんですが、それを転作する割合をほかの農業圏よりかどんどんふやして、そういう転作をするような田を宅地へ転換するようなことを大胆にやってもらう。そうすると、米の生産制限にも役立つし、宅地の供給にも一挙両得になるだろうと思うわけなんです。  それからもう一つは、去年ですか、集落地域整備法ができたわけなんです。この集落地域整備法も三大都市圏の中でまず適用して、そうして水田の宅地化を進めていただくように、一律減反ということを避けて農業圏の方の減反は少なくして三大都市圏の中における水田の転作化をぐっと割合をふやして、転作もいいけれども、宅地化を自由にさすという政策をぜひ農水省はとっていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  31. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) お答えをいたします。  おっしゃるような御意見、しばしば私も拝聴いたしておりますが、転作等の目標面積の配分に当たりましては、地域農業の実態等を踏まえつつ、水田農業確立対策の趣旨及び線引き政策との整合性、これに配慮いたしまして三大都市圏等の大都市の市街化区域等の水田につきましては傾斜配分を実は行っておるところでございます。もっと傾斜配分を強くせよという御指摘かと思いますが、さよう心がけておるところでございます。ただいま農家の自主的な努力の上に立って進めているこの対策の性格からいたしますと、市街化区域内の転作率を高めるだけでその実効が上がるものでもないということで、一方におきましてレクリエーション農園の設置、水田から畑作への転換促進等の手段を講じつつ、市街化区域内水田の転作の推進を円滑に図ってまいりたいと考えております。  なお、集落地域についてお触れになったわけでございますけれども、この法律は昨年通していただきまして、昨日の閣議におきまして施行令を閣議決定いたしたところでございます。市街化区域外の都市計画区域とそれから農業振興地域とが重複する集落で土地計画的利用を図りながら営農条件と居住環境、この調和のとれた整備を進めることを目的としておる法律でございまして、この適用あるいは事業の実施はあらかじめ三大都市圏なら三大都市圏ということで地域を特定いたしたものではないわけでございまして、それぞれの地域における土地利用の動向、農業生産基盤や公共施設の整備の状況等、地元の意向を踏まえつつ進めてまいりたいと考えております。特に三大都市圏については、御指摘のようないろんな意見が確かにあるわけでございますから、地方行政の方とそれから生産者団体の方と綿密な連絡をとりながら、実効が上がるようにさらに指導をいたしてまいりたい、かように思っております。
  32. 三治重信

    三治重信君 土地問題、住宅問題の方はまた土地特別委員会の方でさらに質疑を重ねていきたいと思っております。  ところで、きのうも安恒さんの質問で、予算の見積もりに大間違いというんですか、があったというようなお話もあったんですが、私は、円高経済の中でなぜ円高になったかというと、貿易黒字が物すごくたくさんになったから。そういう中で今までの経済学や我々がやったやつとどうも体質的に違って、日本経済の動きが非常に変わったんじゃないか。その結果こういうふうな非常な税の見積もりも間違えるし、景気の見通しも間違える。しかし、結果としては予想以上にいい結果というのですか、経済成長が高くなってきつつある。マクロとしては非常にいい格好になってきているんだが、いわゆる貿易黒字経済、円高経済に対する日本経済の見方というものを従来の考え方と相当変えぬことには今後の対策はうまくいかぬのじゃないかと私は思うんです。それについての御感想を経企庁長官と総理にお願いしたいと思います。
  33. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 三治委員にお答えいたします。  ただいま先生の御指摘のとおりでございまして、大体方向づけとしては、そのような円高のメリットもありますけれども、デメリットも兼ね備えながらずっと推移したことだけは事実でございます。  特に、我が国の経済が六十年の秋以降急速な円高に相なりまして、輸出製造業を中心に景気の後退が強まった、こう判断できるかと思うのでございます。その後六十二年にかけましてから、一つは円高・原油安のプラスの効果が行き渡りまして、それが家計や企業の支出を増大させたということが一点。それからまた、緊急経済対策を私どもはずっと実行しておるわけでございますが、なかんずくその中の財政の拡大策あるいは金融の緩和といった効果がだんだんだんだんに今浸透しつつあるのではないか、こういう見方をしております。  また、我が国の産業構造の中で円高に対する調整をなおかつ進めまして、今内需転換を図っていきつつある。こういうことから国内需要が増加して景気の拡大をもたらしておるということもございまして、その点では、今の段階で先生の御懸念、私どもも当然持っておる考え方でございますけれども、言うなれば円高によるプラスアルファの問題点も含めましてそのようにとらえておる。おかげさまをもちまして、本来ならばこういう点は物価の上昇もあり得る可能性があるわけでございますけれども、その点も大過なく、卸売物価あるいはまた消費者物価におきましても実に安定を保っておるというのはそういうところにあるのではないか、このように解釈しておる次第でございます。
  34. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 大筋、今経済企画庁長官からお話のあったとおりだと思いますが、三治先生が経済学を学んでおられるころは当然固定相場制の時代でございます。私もそうでございます。したがって、この昭和四十七年から若干の変化が出てきたのが、固定とはいえ三百六十円が三百八円のスミソニアンレートになったときから本当はかなりの変化が生じたのではないかと思っております。したがって、変動相場制における経済運営、こういうことになりますと、昭和六十年九月二十二日のG5というのが一つは期を画したかもしらぬ。それから私はその当時、勘で、一年半ぐらいたてば円高メリットが出ますと、こう言っておりましたが、二年ぐらいで出てきたという感じがしておりますが、そういうことからいたしまして、従来の原則が確かに変化してきたと思っております。  これは私見でございますので必ずしもいい答弁ではないかなとも思いますけれども、法人税収が上がったというのは、もちろん地価の問題とかいろんな一時的要因もございますけれども、末端の物価が上がらないでそうして輸入物価が下がっていく。少しずつその各段階で上乗せされた利益というのがあるいは法人税増収の一因にはなっているのじゃないか、自分でもこんな感じがしております。  そうなると、もう一つマネーサプライ、大体いつでも八%ぐらいならいいぞよと思っておりましたが、今二けたになっても、大体原則からいえばインフレ傾向なんという、かつての学説ならそうでございますが、これも、国民の知恵もございますけれどもインフレということにはならぬ。それから金融緩和、手元流動性が多い、こういうこともインフレの要因にはなってこないようになっておる。  したがって、やはり経済理論というものが生きた経済社会の中で変質してきたなという感じは私も常日ごろ持っておりますので、だから、新たに三治経済学理論にするか竹下経済学理論にするかは別として、そんな勉強を経済企画庁を中心に一生懸命やっておられるのが現在だなというふうな認識を持っております。
  35. 三治重信

    三治重信君 お気づきになっていただいているのはうれしいわけですが、その中で私が一つ心配しているのは、やはり株高と土地高、殊に土地高、そこへ過剰の金が集まっている。これが今また一部で「一九九〇年の大恐慌」という本がえらい飛ぶように売れる大きな原因にもなっていると思うんです。  株や土地に対するやつが今現に高過ぎている。これを、株なんかはどうしようもないかもしれぬが、土地なんかは積極的に抑えるべきだ、こういうふうに考えるわけですが、どうですか。
  36. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 全く三治委員の御指摘のとおりでございまして、ちょうど昨年、すなわち言うところのブラックマンデーと申しましょうか、上昇を続けていた東京市場も、大体ざっと計算しますと、日経平均株価で前日比三千八百三十六円下げたというのが当時でございました。  東京市場で昨年十月二十日が期央最大の暴落ということになりましたが、これも考えてみますると、日本の場合は去年の四月の時点に今戻った、春ころの時点に戻った、こういう株価でございまして、したがいまして今度の場合、先ほど総理から御答弁を賜りましたように、ある意味においては景気の回復の基調も非常にきちっとしておる、また個人の消費も非常に堅調である、こういうようなことから株価が今戻りつつある。きのうあたりの計算でいきますと、二万四千円をはるかに超えてまた二万四千八百円くらいにまで戻っている。こういうことがございまして、多少その点はアメリカのブラックマンデーの影響を受けたことは受けましたけれども、日本の場合はその点では大いに助かった面もある、こう言えると思うんです。  ただ、一つは個人の金融の、何といいますか、資産に占める株式の割合が日本の場合は割合低かったのではないのかなと。アメリカ側はもう相当に個人的な売買があるらしいんですが、日本の場合は低いということ、それが一つの大きな効果原因ではないかというふうに考えておりますし、同時にまた、我が国経済がここのところ国内需要が非常に堅調に推移しているという点と、それからまた、あと一つは、株価急落後の相場が意外に、私どもが思っていた以上にまで堅調に伸び続けてもらった。こういうようなことから、日本経済に与える影響が軽微なもので済んでおるのではないかと私は考えておる次第でございます。
  37. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で三治重信君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  38. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、野末陳平君の質疑を行います。野末陣平君。
  39. 野末陳平

    野末陳平君 総理と大蔵大臣中心に質問いたします。  これは私個人の考え方ですけれども、これからなすべき税制の抜本的改革は、まず大減税、それから不公平の是正、それから新しい間接税の導入、この三本柱だと思うんですね。これは三位一体ですから、どれが欠けてもだめだと私個人は考えている。ところが、間接税については国民の理解を得られないことも当然ありますから、そのときにはもう税制改革を見送らざるを得ないと思うんです、それは残念なことですけれども。  そこで、総理にまずお聞きしたいんですが、ことしを逃したらば税制抜本改革のチャンスは当分ないだろう、そんな気がするんですが、総理の認識はどうでしょうか。
  40. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 税議論が行われて十二年ぐらいになろうかと思います。それで、第一回がやっぱり五十三年度の答申に基づくいわゆる一般消費税(仮称)の、五十五年から入れる準備をしなさいという答申に基づいたときからの論議が一つの盛り上がりの山だったんじゃないか。その後、五十九年赤字公債脱却ということとやっぱり税制改正ということにも相当な意欲を持っておったんじゃないかなと思います。国会の議論もそうであった。  ところが五十九年には、ほぼ八千億でございましたか減税等をやりましたものの、抜本というところまでは届かなかった。その後、今度は税制調査会における作業も進むし、各年度ごとの答申を見ましても抜本改正抜本改正という空気が出てきて、それが出てきてそれから直間比率というような言葉が、いろいろあらかじめ固定的に決めるものではない、結果として出るものだという議論もございましたけれども、国民の税論議の中へうんと入ってきたと。しかし、いろいろな経過を経たが、いわゆる売上税というものは、これは結果として廃案になった。その反省に基づいて今税論議が大変に盛り上がってきておるから、客観的に見て私は機が熟しておるというふうな認識は持っております。ことしやらなきゃだめだというほど総理大臣として肩を怒らしておるというわけじゃございませんが、客観的な環境はまさに熟しておるんではないかなと、こういう認識でございます。
  41. 野末陳平

    野末陳平君 少なくも今度は抜本的にやらなきゃだめだと思いますね。  そこで焦点の間接税なんですけれども、これについて総理にちょっとお伺いしたいんですが、消費に広く薄く課税するこの新しい間接税、どういう仕組みになるかは別として、この間接税が総理や大蔵大臣も所信表明でおっしゃっているような不公平感の払拭という、この点に果たしてどの程度役立つのであろうかという、この辺のところをちょっと説明していただきたい。特に、サラリーマンが持つ不公平感の払拭に幅広の間接税を導入することは、これはどの点で役立つとお思いでしょうかね。
  42. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは私だけのお答えで足りないかもしれませんが、私自身考えてみておりますのは、いわゆる間接税というのが、間接税の原則論理から言うところの選択の自由があるとか、あるいは累進というものに比しては逆進性が強いとか、そうした間接税議論というのが行われてきておりますが、本当のところは、今もちょっとお触れになっておりましたが、最近十年間の推移を見ますと、勤労者の源泉所得税を中心に負担が上昇してこのまま放置すればますますその傾向が進んでいく。そうして高齢化社会の到来とか進行を展望すると、現行税制のままでは若い世代の、なかんずく勤労者に重税感をも含めてますます重い負担が出てくるんじゃないか。  そこで、現行の所得税制を見ますと、一つは執行面の点も若干はございますけれども、できる限り不公平感をなくすように努めていくべきは当然のことであるけれども、やっぱり間接税も含めた税制全体としての実質的な公平を求めることが本当の税体系のバランスを見直す時期だなというのが、何となくの認識としては私は一つの側面として完全に浮かび上がってきたんじゃないかなと思います。  そこで、税にいつも言います水平的不公平感とか垂直的不公平感とかいう言葉が使われておりますが、自分の働いた所得には、なかんずく給与所得、勤労所得にこれだけの税金がかかっておる。ところが、自分と同じ程度の生活をしておる方が、いわば別の事業所得であるとかそういう状態の場合にかかっていない方もあるし、あるいは自分よりも少なくお払いになっておる。そういうところに今度は水平的な不公平感というものが生じてきますと、そうするとやっぱり所得の段階の重税感というものを減らしていくならば、公平感というのが一面どこにあるかというと、いわゆる消費の段階というものに着目した場合には、これは公平感というものは、その水平的公平感というものがそこに存在するではないか。そうすると、やっぱり間接税の方へ結局もう少し負担がかかっていくことによって、いわば勤労所得にかかる重税感というものがなくなっていくんじゃないかなと。  だから、直間比率というものは、やはり不公平感の一側面を持っておるというふうな認識にだんだんそういう考えが定着してきておるのではないかなと、私なりに初めて少し勇気を持って申し上げたお答えでございます。
  43. 野末陳平

    野末陳平君 今のお答えは、やはり具体的な数字が件うとかなり説得力が出てくると思うんですね。しかし、特に勤労者中心の不公平感を払拭するという、まさに重大なポイントはやはりこれからも国会で議論していかなきゃならぬだろうと思うんです。たまたま全国の公聴会を通していろいろな議論が徐々に盛り上がってきているように思うんです。  さてそこで、私もちょっと提案を幾つかしてみたいことがあるんです。いわゆる公聴会が終わったころに税調の答申が出るのだろうと思うんですが、この税調の答申が出たところで、総理と大蔵大臣が公開で国民との対話集会のようなことをやる、これは絶対今回必要だろうと思うんです。もちろんアメリカのようにテレビ中継、これから当然ですが、この構想に乗りますか。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま政府税調が御承知のように全国で公聴会をやっておられるわけでございますが、ここはいわばたたき台なしの国民のお話を聞くというようなことでやっておられますが、ある段階でやはり一つではございませんでしょうが、多少話を具体的にしたところでもう一遍ああいう機会を持たれてはどうかということを検討しておられます。これは野末委員の言われますような意味を幾らか持っておるわけなんでございますが、それも拝見しながら今の御提言のことはその段階でまた考えさせていただきます。
  45. 野末陳平

    野末陳平君 これはもう何十年に一遍の大改革ですから、法案をつくる前にやはり今までにない努力と手間をかけるべきだと思います。税調とそれから国会の議論だけでは今回抜本改革を前にしては不十分である。ですから、国民の生の声を聞くというためにはやはり公開でやるべきだ、しかも対話集会、形式はいろいろと難しいところはあると思いますが、少なくも総理と大蔵大臣が出ていって、四月、五月で全国で何回かはやる、それが一番望ましいので検討を具体化していただきたいと思うんですが、どうでしょう、総理。
  46. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今宮澤大蔵大臣からお答えがあったように、税調そのものでももう一遍ある時期にやろうかなと。それから、折々今のおっしゃったような構想が我々の耳にも入っております。どういう形でお願いするかということはこれから検討してみなきゃいかぬ問題でございますが、ざんごうの中へ入っておって税制改革をお願いしようという姿勢であってはならぬと自分でも思っております。
  47. 野末陳平

    野末陳平君 さすがに早稲田ですね、これは。挑戦するということも必要ですから、やはり今までの総理もいろいろ努力なさいましたけれども、早稲田出身の竹下総理は一味違うというところも見せてほしいとは思うんですが。  ただ、もう一つ提案があるんです。この対話集会とかは形式的になりがちなんですね。そうでなくて今回は、私考えるに、やはり間接税というものが焦点になっておりますから、税調の答申が、例えば小倉会長が何度かおっしゃっているように、仮にEC型の付加価値税に落ちついたとしても、それを結論としちゃだめだと思うんです。やはりほかにもいろんな型があるわけですね。ですから、小売売上税でもいい、取引高税でもいいんですけれども、そういうタイプをやはり国民に示して、その一長一短というものを総理と大蔵大臣がひざを交えて語り合うというような、これがやはり大事で、その結果出てきた結論をもとに法案をつくるという作業の方が今回はより税制改革をスムーズに進めるために必要であると、まあそういうふうにこれは私個人で考えているわけなんです。  ですから、ぜひこれを実現していただくということで、よそでそういう構想があるのでなくて総理と大蔵大臣がイニシアをとってやろうと、これはやるべきだというところで、何とかこういう画期的なことを実現してほしいと、こう思っているんです。その辺のことをもう一度お願いします。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今第二段に仰せられましたことは、一つ案を決めてしまってこれでということではいけないと、こういう御指摘であったのですが、そういうことを考えまして今政府税調の公聴会は案を持たずにいろんなことを伺ったり、こちらからもまた申し上げてみたりということでやっておられるわけですが、これはまたこれで何にもないと、こういうことではどうも議論のしようがないという御批判もあったりしておるようでございます。  そこで、次の段階というものが考えられるといたしますと、野末委員の言われることは、だから今度は一つということはいけないと、今度の段階でもやはり複数でいろんなことがあり得るということで、しかし何にもないわけではない、幾つかの案はあると、こういう状況をつくれと言っておられるのだと思いますので、それはよく考えさせていただきます。
  49. 野末陳平

    野末陳平君 ぜひともひとつ総理、大蔵大臣、公開の国民との対話集会のようなものを実現していただきたいと思います。  さて、税制改革の中身にちょっと入るんですが、その前に、大蔵大臣に何度かこの場でもお答えいただいているんですけれども、やはり周辺でいろいろと聞かれるものであえてお聞きしますが、この相続税ですね、まあ仮に秋に改正案ができるとしても、冬はちょっと亡くなるお年寄りが多いようですから、一月—三月の間の相続発生、これ秋かどうか知りませんが、とにかく今後の税制改革までに相続税の申告期限が来てしまうケースが当然出てきますので、そういう場合はどうなんでしょう。待っていていいんでしょうか、申告をしないで。その辺、たださかのぼるというだけじゃちょっと当事者にとってはなかなかその言葉の意味がわからないようなんですが、これ申告しないで待っていていいという意味を含めておられるのかどうか。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まずもうなるべくお体をお大事にしていただくことを祈るわけでございますが、おっしゃったような問題がございまして、抜本改正をお願い申し上げますときに何かのことは考えなければならない。普通路線価が一月でございますので、そうしますと一月というものがやはり一つの考えの起点になるということが過去にもございました。そういうことも考え、また、そうしますと、今度は申告をどうするかということもあるわけでございます、御指摘のように。その辺はできるだけ昨今の情勢に沿いますようなことを、秋でございますか、いずれ抜本改正をお願いいたします立法の際に考えさせていただきたいと思っております。
  51. 野末陳平

    野末陳平君 じゃ、もうくどいようですが、要するにことし少なくも一—三月ぐらいの相続発生に関しては半年という申告期限にこだわらないで、しばらく待っていても一月にさかのぼって改正を適用してくれる、まあはっきり言えばこういうふうにとってもよろしいんでしょうかね。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこまで実はいろんなことで申し上げかねておるわけでございますが、できるだけのことは考えさせていただきます。
  53. 野末陳平

    野末陳平君 さて、税制改革の中身なんですが、先ほど私言いましたように、三本柱で、大減税、不公平是正、それから新しい間接税の導入、これはやはり三本柱と思うんですが、法人税と相続税の減税は先が見えてきたような感じもいたしますが、肝心の所得税、住民税の減税ですね、ここがいま一つはっきりしないわけで、これは当然お金との絡みもありますから。  そこで私の考え方は、財源をにらみながらちびちびやるような所得減税はもう今回は通用しない。むしろあるべき姿を考えて、サラリーマン中心というならばどういう税体系にするかそこを先に考えて、それに見合う財源を後から何とかつくり出す、こういう考え方でないとだめなんですね。少なくも、抜本的な税制改革をやるためには、三兆円近いぐらいの規模の所得減税は当然なくちゃいかぬと思っているわけなんです、これは私個人の考えですからね。このぐらいのお金は大蔵大臣できますか。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは大変難しいことをお尋ねになられました。というのは、野末委員は最初から三つのことを三位一体で考えるんだと、こういう前提をとっていただいておりますので、そういう前提で考えさせていただいてよろしいわけでございますね。
  55. 野末陳平

    野末陳平君 そうです。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そうしますと、その三兆ということが、なかなかきちっと申し上げかねますけれども、そういう前提ならばかなりの抜本的な改正がやはり考えられるのではないかと思います。
  57. 野末陳平

    野末陳平君 仮に、予想以上に自然増収がまた出てくるような気もするんですね。そういう場合はもう自然増収というのは当然減税に全部回してもいいんじゃないか。そこまで考えていますが、それはどうでしょうかね。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは申し上げるまでもないことでございますが、ただいまの状況で申しますと、自然増収というものが目先考えられるわけでございますけれども、先々まで考えるわけにまいりませんので、それでいわばその三位一体というような発想のもとで考えさせていただきたいと思うわけでございます。
  59. 野末陳平

    野末陳平君 これはやっぱりもう度胸を決めるといいますか、目先的には確かに所得大減税をやりますと財源が苦しい。でも、一年か二年でいずれこれは間接税もという、その抜本改革の中で考えていることですから、これをためらう理由は全くないと思うんですね。ですから、ひとつ自然増収は全部つぎ込んでも大減税をやる、当然また不公平税制も方向だけははっきり決めなきゃならない、まあそんなふうに考えておりますから、ひとつ鋭意頑張っていただきたいと、こう思いますね。  そこで、問題は土地ですね。税制改革はこれからだんだんに案が出てきてから細かく議論さしていただきますが、土地が気になっておりまして、土地税制その他でいろいろ手は打ちましたけれども、最近地価が鎮静化する傾向があると聞いておりますが、さてどの程度のものなのか。大都市と全国的な事情を踏まえて最近のいろんな手を打った結果の効果の上がり方、これをちょっと国土庁長官にお願いしたいと思います。
  60. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 幸いにして東京都心は一部下落を見せているところもございまして、全体的に鎮静化してまいりました。その鎮静化が多摩地域、神奈川県等にも及んでいるわけでございます。ただ、全国的に見ました場合に、埼玉県、茨城県、千葉県——東京への通勤圏内におきましても、都心を離れて遠いところで若干地価の上昇気配がございますので、監視区域を広げるなどの対応もいたしておるわけでございます。  大阪や神戸におきましても、中心地では鎮静化しておるわけでございますけれども、周辺の優良住宅地域が若干上昇を見せている。やはり中心土地を売って買いかえ地を求めている傾向などもあるのじゃないか、こう思っております。あるいは関西空港、大規模プロジェクトが行われている地域でも若干上昇の気配があって、監視区域の手を打ったりしているわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、地価の問題は仮需要を抑えていくことが大事でございまして、国会が土地委員会をつくってくださる、土地国会を開けと言ってくださる、政府も総理大臣中心にして内閣総がかりで土地問題に当たっていくようというようなことを国民の皆さん方が理解してくださって、将来土地が上がっていくんだ、どんどん早く買っておかなきゃならないというこの仮需要がやはり抑えられた。同時に不動産業者も、ただどんどんつり上げていって買いあさっていく等批判を受けて、やはり自粛が兆しを見せた。この仮需要が抑えられてきたことが鎮静化に大きく役立ってきているのじゃないか、こう思ってるわけでございます。  精通者の調査、私の手元に届いているものをひとつ御参考に申し上げますと、横浜市と川崎市でございますけれども、昨年の七月から十月までの三カ月間に二五%内外の上昇を見せております。十月からことしの一月までの三カ月間は一%内外の上昇にとどまっておるわけでございます。やはりそれなりの効果が出てきていると、こう思っているところでございます。
  61. 野末陳平

    野末陳平君 土地問題についてはいろいろと意見もありますので、本予算のときにもっと言わせていただきます。  時間がないですから最後になりますが、この土地絡みでもって遷都のことがにぎやかにいろいろと話題になっております。竹下内閣としてはこの遷都問題というのはどの程度重要な政策課題になっておるのか。竹下内閣のときにどうしてもある程度のめどをつけたいというところまでの意欲なのか、それともしばらく時間をかけて研究しようというところであるのか、遷都についてのその辺の総理の最近のお考え方を聞いて終わりにしたいと思います。
  62. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 遷都問題というのは、潜在的にはもう五、六年前から勉強が行われてきておるわけでございますけれども、やはり今回の地価問題からますますその議論が高揚してきたのじゃないかと思っております。そうする一方に第四次全国総合開発計画というものが出て、一極集中から多極分散へと、それがちょうど路線が合致してきた、そこに遷都問題というのが今大変な問題として議論されるようになった。  私なりに考えてみますと、四全総というものを推進していくために、大きな遷都から見ればみみっちい話と言われますが、昨年の八月、概算要求基準に全くないいわば一省庁一機関の地方分散というようなものも、ささやかながらその大きな多極分散への一里塚というふうな位置づけで今鋭意取り組んでおるところでございますが、やはり最終的には、おっしゃったような大きな問題をひとつ描いて、そこへ向かって進む政策の一環として位置づけしたいと率直に思っております。  ただ、遷都ということになりますと、遷都と分都と展都と、大体三つあるのじゃないか。分都は分かれる、展都は広げるという展でございます。転居するの転ではございませんが、その定義からひとつ勉強していかなきゃいかぬなと。そうしてさらに、遷都論議の中へもう少し基準を示した中でそれをくみ上げていって、それは一遍にできることじゃございませんけれども、将来はそういう日本列島の本当に均衡のとれた国土づくりというものを、私の総裁の任期わずか二年の間にできるとか、そんなようなことではなしに、やはり二十一世紀を展望した日本国民全体の参加の中にそういうものが描かれ、着々実行に移されていくようなことが好ましい。  私自身はこのような普通の人間でございますけれども、そういうしょせん歴史の中の一こまにすぎなくても、民族悠久の歴史の中にそうした雄大な目標というものが欲しいものだというふうに思っております。
  63. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で野末陳平君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  64. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、喜屋武眞榮君の質疑を行います。喜屋武眞榮君。
  65. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄には、我が国の外交あるいは防衛政策ともかかわって、国内政治のひずみが集約されております。そこで私は、与えられたわずかな時間でございますので、国政のひずみを正すという観点から沖縄の諸問題の幾つかをお尋ねしたいと思います。  まず総理に要望したいことは、どうか建前論ではなく具体論で答えてもらうことを要望しておきます。  総理は施政方針の中で、「沖縄の振興開発のための諸施策を引き続き積極的に推進してまいります。」と述べておられますね。また、「日本と世界の調和を図り、国内におけるさまざまな不均衡や不公平の是正に努め、活力に満ちた社会を築くこと、」が課題であるとも述べておられます。そこで、次の点についてどのように考えておられるか、その見解をただしたいと思います。  まず、沖縄の振興開発の前提であり、在日米軍基地面積の四分の三、七五%が沖縄一県に集中することによって、総理のいわゆる国内におけるさまざまな不均衡や不公平の代表的存在の一つになっております在沖縄米軍基地の整理縮小計画については、どのようにお考えになり、かつ対処される御所存であられるか、そのことをお尋ねいたしたい。
  66. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今さらここで訓示めいたことを申し上げるつもりもございませんが、    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕 日米安全保障条約の目的達成のために米軍が駐留しておって訓練を実施し、そうして今七五%というお言葉にございましたように、それがいわば国内の不均衡なりというものを感ぜしめるほど沖縄に基地その他が集中しておる、この事実は冷厳な事実として私も十分認めるところでございます。  したがって、沖縄振興開発計画というものについて私なりにかねて思っておりますのは、がしかし、それを要望として可能な限り縮小整理していって、いわば沖縄県民の皆様方のお考えになる産業振興を含めた開発計画の中でそれらのものが生かされるようにしたいというお考えは嫌というほどわかりますので、振興計画に示された方向に沿ってこれからも努力していかなきゃならぬ問題だというふうに思います。  所信表明にお触れいただきましたが、実は、例えばポスト沖縄国会とでも申しますか、沖縄国体が済んだ後、今度はどういうふうにして、いわばもろもろの公共施設等が行って急激な経済の変動が起こらないようなことも考えるような節を所信表明の中へ入れたかったわけでございますけれども、限られた時間の中でそれを書くというのはなかなか難しいものですから、ちょうどの機会でございましたので、お述べしました行数の沖縄振興の問題でございましたけれども、それにどういうふうに筆を加えようかと施政方針のときに苦心いたしましたのも、そういう今喜屋武先生がおっしゃったようなもろもろの問題を認識しておるからそのような意欲を持っておったということをこの機会につけ加えさしていただきます。
  67. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 歴代の総理の所信表明の中にはなかなか沖縄問題には触れてもらえなかった。今度は竹下総理の所信表明にあることを、このことを県民は非常に期待しておることを申し添えておきます。  次に、日米合同委員会における返還合意施設、区域の返還状況、すなわち進捗率、それから未返還の部分に占める移設条件つき返還合意施設、区域の割合、件数、面積を明らかにしてもらいたい。これは外務省に。
  68. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えをいたします。  第十四回、十五回、それに十六回の安全保障協議会において了承されております沖縄県におきます施設、区域の整理統合計画の実施に伴う進捗状況でございますが、四十八年の第十四回の安保協にかかわるものは三件ございましたが、これは一〇〇%返還をいたしております。それから、十五回、これは四十九年に行われた安保協でございますが、返還計画は四十八件ございまして、現在まで三十六件、面積にいたしまして千七百九十ヘクタール、返還割合は面積で六六・一%になります。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕 それから、十六回の安保協、これは五十一年に行われておりますが、返還計画といたしましては十二件計画をいたしておりまして、そのうち五件、面積にいたしまして三百十三ヘクタール、面積の割合は一二・六%の割合になっております。合計いたしまして六十三件の返還計画に対しまして四十四件の返還が行われております。面積の割合は四五・六%となっております。  それから、もう一つの御質問がございました、返還されていないもののうち移設を条件として返還が合意されているものの割合、件数、面積でございますが、これは十五回、十六回でございますが、十五回のものは十二件未返還がございますが、そのうち四件、九三%のものが移設条件つきでございます。十六回のものは七件未返還施設がございますが、そのうち四件、面積にいたしまして四〇%のものでございます。合計いたしまして十九件未返還施設がございますが、そのうち八件が移設条件つきでございまして、面積の割合は五六%、かような次第でございます。
  69. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それで次、防衛施設庁に聞きますが、私のこれまでの質問主意書によりますと、移設先を沖縄県に限る、こう限定されておりますね。一体その理由は何なのか。と申しますのは、このような条件下では沖縄の米軍基地の整理縮小ということは、これは単なるアドバルーンにすぎない、永久に実現しないのではないか、こう思われるからであります。その理由を示してもらいたい。
  70. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答え申し上げます。  返還につきましては、先ほど申し上げました安保協で決めていただいたわけでございますが、その際作業の段階でいろいろ討議されました中で、やはり沖縄の移設条件がついておりますものは当該施設、区域が沖縄県に駐留をいたしております米軍の使用するものでございまして、当該米軍の運用上ほかの地域には移設しにくい、当該部隊が沖縄で駐留をしておる、こういう実情から移設が難しい、かような理由から移設条件としてそのような条件がついておるわけでございます。
  71. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄に限定することは絶対これはまかりなりません。沖縄返還の大前提が本土並みという前提があることを強く述べておきます。  次に、沖縄県の国頭村におけるハリアーパッド建設計画を初めとする米軍基地機能の強化、対潜作戦センター建設計画を初めとする自衛隊基地の機能強化などなど、沖縄を永久に軍事基地化する動きにほかならない。これは総理の言われる調和と活力との観点から沖縄の振興開発指針である第二次振計でうたわれておる、平和で明るい活力ある沖縄県づくりという目標と調和するのかどうか。総理の見解を求めます。
  72. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 振興計画と基地建設、こういうものに対する調和を図っていかなきゃいかぬという大原則は私もそのとおりであると思っております。したがいまして、安全保障上の目的達成と振興計画の推進の調和を図っていくという基本方針に基づいて、今の具体的な事例については定かにお答えするだけの私今用意をしておりませんが、そういう基本的な考え方に沿ってこれからも対応していくべきものであるという原則は喜屋武先生と私は等しくしておるつもりであります。
  73. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私が冒頭に建前論じゃなく具体的に述べてもらいたいと言うことは、国土の百分の一、人口規模も百分の一足らず、その中に七五%の基地を占めるということは何といってもこれはアンバランスである、我慢できないということであります。  そのことを思うときに、次にハリアーパッド建設については提供施設、区域内だから米軍の自由だという考え方がたびたび今日までも述べられております。狭い沖縄では、米軍の施設、区域の中のことでも県民生活と密着していることが多い。爆音はもちろん、事故の危険と絶えず隣り合わせて生活しているのが沖縄の現実であることをおわかりにならないはずはないと思います。したがって、その計画は撤回さるべきである。防衛施設庁に強く求めます。
  74. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えをいたします。  ただいま御質問いただきましたハリアーパッドの設置の件でございますが、現在北部訓練場等でいろいろ検討が行われておるわけでございますが、御案内のとおりハリアー機の訓練というものが在日米軍にとって必要である、こういうことでございまして、安保条約の目的達成上これはぜひ進めていく必要があるというふうに米軍の方では考えられておるわけでございます。  一般的に、今先生お尋ねがございましたが、施設、区域内という中での工事について御質問いただいたわけでございますが、地位協定上は施設、区域内におきましては必要な工事を米側が行うことは認められておるということでございます。  ただその際、米軍サイドで先生から御指摘がございましたような自然環境の保全でございますとか、周辺住民の安全の確保でございますとか、騒音障害の防止等、こういった点につきまして十分配慮していただいた上でそこで工事をされる以上は、私どもとしては提供の趣旨から見まして、米軍に対してこれらの工事の中止を求める、こういった立場にはないということは御理解を賜りたいわけでございます。ただ、私どもといたしましては、地元周辺の住民の方々との関連等もございますので、本件につきましては円満に解決されるようにできる限りの努力をしていきたい、かように考えておるところでございます。
  75. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これは地元村民はもちろん、県ぐるみで総反対をしているということを強く申し入れておきます。もしそういう前提でこれを決行されたとするならば、ただではおさまらぬでしょうということを警告いたしておきます。  次に、那覇基地に対潜戦作戦センターを建設する計画だとのことでありますが、これは事実であるのかどうか。事実であるとするならば、その目的、規模、構造、費用、建設予定地を明らかにしてもらいたい。防衛庁に求めます。
  76. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 沖縄にP3Cを配備する計画について申し上げますが、御承知のように従来我が国周辺海域の哨戒を行います対潜哨戒はP2Jという航空機を使っておりましたけれども、逐次P3Cに置きかえていくということで、五十六年に厚木にP3Cを配備して以来八戸、下総ともう既に配備が終わりまして、六十四年には鹿屋基地のP2JがP3Cに入れかわります。すると最後に残りますのが沖縄でございますが、沖縄につきましても六十五年ごろにはP3Cに置きかえる必要が出てくるということになります。  P3Cを運用することになりますと、このP3C部隊にいろいろなデータ等を提供したり、それからとりました情報、音紋等の照会をする、そういったためにASWOCという対潜作戦のためのセンターをつくる必要がある。あるいはそれとP3Cと通信するための送受信施設を整備する必要があるということで、現在衆議院の方で御審議いただいております六十三年度予算案におきましてそれのための施設の費用を計上いたしております。なお、構造等につきましては担当の方からお答えいたします。
  77. 児玉良雄

    政府委員(児玉良雄君) お答えいたします。  P3Cに対する指揮所の構造でございますが、これはおよそ千平方メートル程度の敷地が必要な建物になります。それから、送信所と受信所は基地の外につくることにしておりますが、面積としましては送信所の方が約十八ヘクタール、受信所の方が約八ヘクタール程度でございますが、これはその場所の地形によって変わり得るものでございます。
  78. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の御答弁によりましても、このことがただではおさまらぬであろうということを強く申し上げておきます。  次に、この同施設を那覇基地に建設することが、私の質問主意書に対しても、望ましくないという答弁をしておられます。那覇空港の軍民共用を恒久化するものではないのかとこう思われてなりません。運輸大臣いかがでしょう。
  79. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) この問題につきましては、以前質問書をいただきまして閣議決定を経た回答をいたしております。すなわち、現在のところ那覇空港の共用をやめる考えはございませんが、一般論としては自衛隊の使用する飛行場と民間の使用する飛行場は分離されていることが望ましいと考えております。その意味では那覇空港についてもこの問題を長期的に検討することはあり得ると考えております。
  80. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 望ましい方向に一日も早く実現されることを要望しておきます。  次に、米国がガットに提訴した農産物十二品目問題で、政府は八品目については異議なくガット裁定を受け入れて自由化に応ずることになりましたが、その中には沖縄の基幹作物であるパイン缶詰、果汁などが含まれております。この措置は沖縄のパイン産業に壊滅的打撃を与えるものであり、沖縄の社会、経済に及ぼす影響ははかり知れないものがあるということは重々御承知だと思います。これは沖縄の振興開発の前途に暗雲を生じさせるものである。この点について、総理は我が国農業の健全な発展という立場からどのように解決していこうと思っておられるのか承りたい。
  81. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 具体的には農林水産大臣からお答えすべきことであろうと思っておりますが、今お読みになりましたとおり、私自身もろもろのことを考えまして一括採択に応じた。これは我が国の利益を確保していく上でのぎりぎりの選択であったと思うと。したがって、今後本件の処理に当たってはガットの精神を尊重しつつ、また国際的な経済関係に十分配慮をしながらも、国内農業に不測の悪影響を与えることがないように十分配慮しなければならぬ、そのことは今おっしゃったとおりでございます。  沖縄の問題を振り返ってみますと、本当は、沖縄の祖国復帰なくして戦後は終わらないと。これは昭和四十年。それから国会、国政御参加になってから、喜屋武さんの小指の痛さを知らないか、そういうところから核抜き本土並み、そういう形で今日に至って、それから振興計画というものに乗っかっていわば沖縄の振興が図られておる、その中の農業政策の一環として、パインの適地であるということからいろいろ御慫慂も申し上げたりしてきた今日までの経過がある。しかしこれが、自由化の方向を考えてみた場合、さあどうしたらパインそのものがいわば国際競争場裏の中においてもきちんとした位置づけができるかということで、それこそ農林水産省の方で鋭意検討しておられるというのが現状であるというふうに私自身は思っておるところでございます。
  82. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それで、農水大臣に今の問題を尋ねますが、大臣は沖縄県の中央会の代表に言明しておられますね。沖縄のパイン産業を崩壊させるものであり、社会的経済的混乱を招くことは明らかだから自由化阻止を訴えた。それに対して農水大臣は、沖縄のパインは守ると、こう明言しておられますね。どのようにして守ろうとしておられるのか、その実施の時期あるいはその守る具体的な施策を述べてもらいたい。
  83. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) お答えをいたします。  いわゆる八品目の自由化時期、このことにつきましては個別品目ごとの事情に応じまして国内生産への影響を考慮しつつ検討をいたしております。その場合、ガット加盟国の一員としてパネル報告の実行に必要以上の長時間を費やすのは適当でないと考えられ、今後対内対外調整を図っていく中で適切なスケジュールを定めてまいりたいと思っております。  なお、具体的な対策はどうか、こういうことにも触れられたわけでございますけれども、乳製品等あるいはでん粉を除く品目についてはガットに適合する措置に移行することになりますが、我が国農業の将来に禍根を残すことのないよう関係各方面からの意見の聴取等十分手順を踏みつつ国内措置、国境措置について最大限の努力を傾注してまいる所存でございます。そのために省内に、今総理からも触れられましたが、農林水産省といたしましては農産物自由化関連対策検討プロジェクトチーム、これを二月一日発足をさせたところでありまして、これにより農林水産省の全力を傾注して検討をいたしておるところでございます。パインが相当な影響を受けるということについては承知をいたしております。また、今お触れになりましたいろんな陳情がたび重ねてございました。その際、地域農政のことも考えながら十分ひとつ考えてまいりたいと誓ってきたところでございます。
  84. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 具体的になりますが、内外価格差補てん制度、このことも考えておられますか。
  85. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 沖縄産パイナップルを原料とする缶詰と外国産パイナップル缶詰との間には少なからぬ価格差が存在することから、パイナップル缶詰が自由化された場合、缶詰を主要な仕向け先とする沖縄パイナップル栽培農家及び沖縄産パイナップルを原料とする加工業に少なからぬ影響が生ずるものと予想をされております。このため、関係各方面と密接に連絡をとりつつ所要の対策につき最大限の努力をしてまいります。
  86. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 万全を期してもらいたいことを要望します。  最後に、開発庁長官お尋ねいたします。  第二次沖縄振興開発計画、十年計画が六年次を終了しようとしておりますが、後半に来ておりますが、その進捗状況と計画目標達成の見通し、及びその御決意と今後の重点課題について所見を承ります。
  87. 粕谷茂

    国務大臣(粕谷茂君) まず最初に、喜屋武先生には大変沖縄行政に平素御鞭撻をいただいておりまして、ありがとうございます。  進捗状況から先にお答えをさしていただきますが、今日まで学校施設、それから道路、港湾、空港などの交通通信施設、上下水道などの生活環境施設、これはかなり改善をされてよくなってきている、こういうふうに思います。しかし、一方では生活産業基盤でまだまだてこ入れをしなきゃならぬ部分がたくさん残っております。そのあらわれとして、県民一人当たりの所得が六十一年速報値で約百六十万円、こういうことで全国でも非常に低位にあるわけでございます。そういったことを、本土との格差の是正という沖縄振興開発計画の大眼目を達成するために、産業振興を積極的に行いまして、沖縄経済の自立的発展を図っていく、これからも全力投球でその方向に目的達成のために努力していきます。  なお、御承知おきと思いますけれども、来年度には新規に主要事業として那覇空港の自動車道路など十指に及ぶ大きな事業を盛り込まさしていただいております。
  88. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一分ありますので、最後に総理に要望いたします。  戦後四十三年、復帰十五年、もう沖縄の現状は見直さなければいけない時期に来ております。そういう状況の中で、見直す姿勢は、日本政府の対米姿勢、沖縄はこのままではいけないという対米姿勢を再確認していただいて、その上にしか日米安保の問題は開けてこないということなんです。このことを強く強く要望いたします。対米姿勢のいかんが沖縄を前進させるのか後退させるのか、このことを総理に御答弁を求めまして、私、時間が参りましたので終わります。
  89. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今さら日米安保条約、それに従っての沖縄の位置づけ、こういうようなのを申し上げようとは私は思いません。本日展開された喜屋武委員考え方等を十分に体して沖縄振興のために今後とも全力を傾倒したい、このように考えます。
  90. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で喜屋武眞榮君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  91. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、青木茂君の質疑を行います。青木茂君。
  92. 青木茂

    ○青木茂君 まず総理にお伺いをいたしますけれども、税制改正の問題は非常に論議をにぎわして、それはそれで結構でございますけれども、その陰でいわゆる行政改革という問題は何となく影が薄くなってきた。総理は行革三昧と言われた中曽根前総理の路線を継承されるわけですから、この行政改革ということについて旗をおおろしになったわけではございませんね。
  93. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) とかくいわば法律に基づく総裁というものがかつて、今十九名でございますから二十四名おりまして、その総裁が国鉄総裁、電電総裁、専売総裁、東北開発株式会社総裁、電源開発株式会社総裁、この五つがなくなりました。この五つがなくなったというのは、まさにJRになり電話会社になりたばこ会社になった。それはやっぱり五十四年に最初行革の議論をしたときにはそこまで考えが及ばなかった。それがいわば果実となって今や公共事業等の内需拡大の予算にも使われるようになった。これでやあ済んだ済んだと言ったらもうおしまいだという問題意識はいつも持っております。せっかく押し上げた荷車がまたがらがらがらと後ろへ下がっちゃいけない。だからこの行革という路線は絶対にこれは後退さしてはならぬというふうに考えております。
  94. 青木茂

    ○青木茂君 そうしますと、これからもいろいろな行政機関にむだがあり不合理があるというようなことが明らかになった場合は、それを正すのには全く勇断を振るうというのか、やぶさかではないわけですね。
  95. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そのとおりであります。
  96. 青木茂

    ○青木茂君 そこで、ちょっと首都高速道路公団の問題について伺いたいんですけれども、理事長お忙しいところどうもありがとうございました。  今度の首都高の値上げ一般で五百円から六百円になったんですけれども、あれはどうなんですか、国民の理解としては三十年たったら最初の路線はただにしてもらえるという理解が共通にあったと思いますけれども、ただどころか上がってくるわけなんですけれども、ここら辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  97. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) お答えいたします。  御指摘のように、昨年九月に首都高速道路の料金は五百円から六百円に上がったわけでございますが、これは先生御承知のように昨年の新規供用二十七・七キロは東北道から湾岸線までの間がつながれたわけで、あの地域、特に東北の玄関口という位置では非常に高速道路を利用する場合の利便性が増したわけでございますから、やっぱりそれに伴ってあの区間の建設費が四千数百億かかって、それを今までの料金の中に、今までのプール制の料金の中に織り込みますとどうしても三十年で償還するためには百円の値上げはやむを得ないということで値上げをしたわけでございます。  今お話しの、三十年で償還を約束していながらそれが永久に続くというような形はおかしいんじゃないかというようなお話でございますが、実はこの首都高速道路は、都市基盤として高速道路網の整備を早急に進めるためにいろいろな制度をとりまして、そのネットワークの全路線をプールしてこれを三十年で償還するという建前でやっておりまして、ネットワーク全体が一つの路線というふうに理解していただかなきゃならぬと思います。これは、言ってみれば昭和三十七年から最初の供用四・五キロを毎年のように延ばしてきましたが、これは一つの路線のうちの何といいますか、部分供用という形で年々延ばしてきたわけでございまして、その部分を三十年が来たということで無料開放いたしますと、結局その前後にどうしても料金所を設けて、一日大体十万台も流れている路線の途中でやはり相当車の流れを遮ることになって、非常に渋滞をさせ、かえって混雑させることにもなりますし、それから料金所を設けることによりましてまた莫大な金がかかりますが、その金がまた料金にはね返ってくるというようなことでございまして、やはりそういう区間につきましては全体をプールするということで、全体のものが完成するまで最後まで持っていって同時に無料開放するという姿が、一体的に管理しながら最後までプールで持っていくという姿が一番合理的だろうという考え方で経営しておるわけでございます。
  98. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、これからどんどん進行しますわな。進行してもう九割方完成した、十キロぐらい残っておったと。そうすると、今度はその十キロをやるために、そこから起算してまた三十年待つわけですか。
  99. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) ただいまの先生の御質問に具体的な形でお答えした方がいいと思いますが、現在二百キロの供用延長を持っております。それに対して今度は六百円の料金を設定いたしますと、無料開放になるのは大体昭和八十五年ということになります。今の形でずっと持っていきますと八十五年の時点で無料開放になるわけでございます。その時点で例えば一キロ新たに路線が加わったことによってさらに三十年延びるかということでございますが、それはもとの二百キロの建設費が膨大なものでありますから、それに比べて後で追加される一キロ程度の路線に対する建設費、これはもうネグリジブルなものでございまして、そういう場合には、それは計算上は数カ月というような延長が考えられますが、やはりそれは実質的にはほとんど延びないという姿で、それからさらに三十年延ばすということじゃなくて、その時点で無料開放になるというふうに御理解いただいていいんじゃないかと思います。
  100. 青木茂

    ○青木茂君 どうもよくわからないんですけれども、その場合、それじゃ一キロが仮に十キロだとしたらどうなりますか。
  101. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) それは、一キロというのは例え話でございますが、二十キロになった場合、その時点に加わればやはりそのプール採算計算の中にそれが入りますからそれは延びることになります、その分だけ。しかし、その時点でその二十キロの路線をプール採算の中へ取り入れるかどうかということはまた別途の判断があると思います。その部分は別に単独の路線として別の料金体系にするということもありますし、入れるということにすればそれはその分だけ延びますが、もとの路線に対する建設費に比べますとその路線は比較的には非常にわずかな建設費になりますので、無料開放の時点が大きく延びるということはないわけでございます。
  102. 青木茂

    ○青木茂君 どうも……。  とにかく今まで、償却が進めば進むほど値上がりになったという逆現象が起きているわけですよ。今度のやつだって、最初のところは無料にして一般道路にしたらいいと思いますけれどもね。国民はみんな、三十年たったら無料になると思っているんですよ。それが値上がりになる。とにかく、国家機関の約束がほごにされるということはこの問題だけではない。例えば年金だってこれ、積み立てておるけれども、約束を破る国家だからいつだめになるかわからぬという大きな問題にまで発展しますからね。ここは気をつけていただきたいんですよ。  どうですか、今度の路線の一番最初のところだけやめる、ただにするということはできませんかね。
  103. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) 先ほどちょっと御説明しましたけれども、確かに先生おっしゃるように、最初の区間、昭和三十七年に四・五キロの区間を供用しましたわけですが、もう数年来ると三十年たつわけで、その区間を無料開放にいたしますと、これは御存じのように今のああいう一日当たり十万台流れている本線の途中に、その前後に料金所をつくらなきゃいけない。これは膨大な金がかかりますし、物理的に無理な点もございます。そういうことによって本線の流れが阻害されるということで、ネットワークの効果をそこで大幅に阻害するわけでございまして、首都高速道路はネットワークを完成するということで今まで建設を進めてまいったわけでございまして、そういう考え方で、流れを阻害し、しかも金もかかる、料金もそのために上がるというような姿はかえって全体としてとるべき方法じゃないと。それよりも、一体的に管理しながら全部の路線、ネットワークが完成した時点で無料にするということで、言ってみれば一蓮托生の形でやっていくのが一番とるべき方法だと思います。
  104. 青木茂

    ○青木茂君 完成というのは一体いつを言うんですか。それから、料金所をずらすだけで金がそんなに膨大にかかりますか。
  105. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) これは都市間高速道路について考えていただければわかると思いますが、一日十万台の交通量をさばくということは大変なことでございまして、首都高速道路の料金所で回数券とか、あるいは現金操作を非常に簡単な形でやっているからこそあれだけ流れているわけでございますが、本線にそういうブースを設けるということは相当な数を設けなきゃいけないわけです。それは今のああいった宝町あたりのことを考えていただくとおわかりだと思いますが、あの掘り割りの中に相当な幅の土地を確保しなければ、その無料区間の前後にそういうものがなければこの間を無料にするということはできないわけでございまして、そうなると金がかかるだけじゃなく、料金所でつながるということも考えなきゃいけない。そうしますと、全体として車の流れが大きく阻害されることはこれはもう目に見えて明らかなわけでございまして、そういう形をとることが全体としてメリットがある方法なのかどうか。その辺はやっぱり十分考えなきゃいけないわけでございまして、無料にすればしただけそれだけの金がまた一般の料金のアップにはね返ってくるということでございまして、やはり部分的な供用ということでありますので、その間を次々に無料開放にしていったらば首都高速のネットワークの整備は最後には行き詰まるということになるわけでございまして、スタートしたときの考え方から大きくそれてしまうということだと思います。
  106. 青木茂

    ○青木茂君 私は急ぐときは高速道路は乗らぬことにしていますからあれですけれども、そういうことを今度の料金値上げのときに、三十年たったら最初のところはただになると信じ込んでいる国民にどういうふうに詳細に御説明になりましたか。
  107. 越智伊平

    国務大臣越智伊平君) 御承知のとおり、首都高速道路はネットワークから成り立って、プール制であります。でございますから、先生御指摘のように、最初供用を開始いたしました部分、それから次々供用を開始しておるわけであります。でございますから、最初に供用開始した部分は三十年ということでありましたが、次に供用開始いたしますと、計算をいたしまして、全体の供用開始がいつか、こういうことの換算をしております。これを換算起算日ということで換算をしておるわけであります。でございますから、ネットワーク全体的に言いますと三十年以内、こういうことでございますから、最後の部分の三十年ということではございません。平均値の三十年で無料になる、こういうことであります。
  108. 青木茂

    ○青木茂君 それは裏からいえば永久にということと同じですよ。そういうことを国民にどういうふうに説明なさってそういうふうにしたか、国民に対する理解が一番必要なんだから。それはどうなんですか。
  109. 越智伊平

    国務大臣越智伊平君) 永久ではございません。換算起算日というのを設定しまして、それからやっておりますから、全体的に言いますと平均値の三十年になるわけであります。でございますから、次々延ばしていきますと遅くなりますけれども、全体的に言いますと平均の三十年でございますから、決して最後の三十年ではないと、こういうことであります。
  110. 青木茂

    ○青木茂君 次々延ばすから永久だと言っているんですよ。  今度は回数券問題をちょっとお願いしたいと思います。  首都高速道路公団の下請に道路協会というのがございますね。これは何をやる機関でございましょうか。
  111. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) 首都高速道路協会への御質問だと思いますが、この協会のやっておる仕事を申し上げますと、例えば高速道路の緑地帯の管理それから清掃、その他高架下の駐車場の経営、管理、それから休憩所の設置、管理、あるいは首都高速道路にかかわる広報宣伝活動、また、首都高速道路での事故に伴う交通遺児に対する修学資金の援助というような仕事もやっております。公益の法人でございまして、発足は昭和四十一年でございます。
  112. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、回数券販売の流れはどうなりますか。
  113. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) 回数券の販売の流れでございますが、全体の約三〇%は公団の直営で販売いたしております。残りの七〇%は大部分、今御説明をいたしました首都高速道路協会で販売いたしておりまして、首都高速道路協会はさらに百三十二の委託店に販売を委託しておるわけでございます。
  114. 青木茂

    ○青木茂君 回数券なんというのは料金所のところで売ればいいんで、そんなにいろんなことをやる必要はないと思いますね。  イースタンロードサービスという民間会社がございますけれども、これは何をやっていらっしゃいますか。
  115. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) イースタンロードサービスという会社でございますが、この業務の内容は有料道路の料金徴収業務がほとんどでございまして、その他若干、有料道路附帯施設の保全とか清掃とかいう仕事もやっております。
  116. 青木茂

    ○青木茂君 やはり下請機関ですね。この会社の社長はどういう経歴の方でしょうか。
  117. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) 社長は小阪祐義さんという方でございまして、経歴は、古くは建設省にずっと勤めておられた方でございますが、最近は、直前の経歴で申し上げますと、全国建設業協同組合連合会専務理事をやっております。その後首都高速道路協会の理事、これは非常勤でございますが、になりまして、六十年六月からイースタンロードサービス株式会社の代表取締役になっております。
  118. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、建設関係出身の方が協会の理事をやり、その協会から仕事を受ける民間会社の社長をやっておるわけですね。そういうことですね。
  119. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) 理事と申しましてもこれは非常勤で首都高速道路協会の理事をやっておりまして、あわせてイースタンロードサービス会社の代表取締役をやっておるわけでございます。
  120. 青木茂

    ○青木茂君 そこが天下りというのか、行政のむだというのか、そういうもので、時間がないから言いませんけれども、もう一つ首都高速道路補償センターというやつもあるんですよ。「東京シティ、エアターミナル」というのもまた民間にあるんですよ。とにかく屋上屋を重ねて行政が行われておる。これは総理、やっぱりむだとはお思いになりませんか。
  121. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私がお答えするのが適当かどうかわかりませんが、私もかつて建設大臣を、もう昔の話でございますけれども、しておりましたが、その行政に従事しておる間に習得したノーハウ等が生かせるものならばそれはいいことじゃないかなと、そういうふうに当時は考えておりました。
  122. 青木茂

    ○青木茂君 いいことではないとおっしゃったんですか、いいことではないかなとおっしゃったんですか。
  123. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いいことだなと思っておりました。
  124. 青木茂

    ○青木茂君 その感覚では行政改革はできませんな。  もう一つ伺います。例えば下高井戸から市川までの距離と下高井戸から霞が関までの距離、どれぐらいですか。
  125. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) 下高井戸から市川までの距離が三十八キロになります。これはルートの選び方にもよりますが、三十八キロ。下高井戸から霞が関までは約十三キロでございます。
  126. 青木茂

    ○青木茂君 それが同じ料金ですね。
  127. 淺井新一郎

    参考人淺井新一郎君) 同じ六百円でございます。
  128. 青木茂

    ○青木茂君 運輸大臣に伺いますけれども、JR線で東京から名古屋までと東京から大阪までと同じ料金だったらどうですか、おかしいと思いませんか。
  129. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) それはもう当然苦情が来ると思いますが、しかし首都高速の場合には、先ほど言いましたネットワークということもありまして均一料金制をとっております。それを、委員がおっしゃるみたいに距離別にしたらどうかという案もないではございませんが、ただ、そうしますとまた新規に料金所を設けたりいろいろ混乱もありまして、技術的に大変難しい点がありますので均一料金という形をとっておるわけでございます。
  130. 青木茂

    ○青木茂君 まだまだいわゆる特殊法人その他のむだというのはいっぱい資料があるんですけれども、与えられた時間がございませんから、この問題はこれでやめにいたします。どうも大変御健闘いただきまして、ありがとうございました。  今度、税制問題に入りたいんですけれども、改革案、改正を見まして、いわゆるクロヨン、サラリーマンの不公平を正す、これは技術的なクロヨン、制度的なクロヨン全部含めまして、それへの踏み込みがどうも足りないような気がするんですけれども、これからもそういう方向で、この問題というものを改革の中心視点に据えようというお考えはもうないのかどうか、これをちょっと大蔵大臣に。
  131. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) クロヨンという言葉の是非はともかくといたしまして、給与所得者に対して、非常に重税感が多いということは事実でありますから、それを何とか解消したいと考えております。これからもその方向で考えたいと思っております。
  132. 青木茂

    ○青木茂君 総理、大蔵大臣と御見解は一緒でございますか。
  133. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 一緒でございます。
  134. 青木茂

    ○青木茂君 ありがとうございました。そうすると、これからの税制抜本改革はサラリーマンの不公平というものを中心視点にして展開される、こういうふうに考えていいわけでございますね。  その次は、総理は施政方針演説その他では新型間接税ということは余りおっしゃらなかったと記憶しておりますけれども、何かこのごろばかにこの問題が論議をにぎわしているんですけれども、総理自身もうぼつぼつ、こういうものだとリーダーシップをとっていただかないと困る、そういう状況に入ってきているんじゃないですか。
  135. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに私は、偉い先生方にお願いする場合予見を挟んではならぬということは原則的に今日まで申してきましたが、しかしながら、過去の税調答申等の中で一応合意に達したものは既に自分の発言の土台としてそれは使っております。さらに踏み込めとおっしゃるのは、皆さん方の方が踏み込んでいただければ私も踏み込めるなと、こんな感じで率直に御高見を承っておるということでございます。
  136. 青木茂

    ○青木茂君 しかし、総理は一国の指導者ですから、指導者がやはりぴしゃっと出していただいて、それに対する論議というのが私は正しいと思いますよ。総理がおっしゃらない間にいろんな人がいろいろなことを言って論議が混乱してくるんですよ。  また、総理自身もハワイで金丸前副総理とお会いになったとき、金丸前副総理のいろいろな案について、ああ、おれもそう思う、それはいいと思うというような新聞報道もあったんですから、余計疑惑を深めます。だから、ここでもうぴしゃっと、総理の考え方はこうなんだということを言っていただけませんかね。
  137. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 基本的な考え方というのは、まさに所得、資産、消費の間でどうバランスをとっていくか、こういうことでございます。そうなってくれば当然、先ほど私なりに少し踏み込んだと申しましたが、いわば給与所得者、サラリーマンという言葉を使わせていただくならば、サラリーマンの方々が垂直的にも水平的にもある種の重税感を感じておられる、さようしからば、所得の段階でちょうだいするものを消費の段階でちょうだいできるような形になったら、サラリーマンの方のいわば重税感というのはそれだけ少なくなっていくだろうなという気持ちは私にもちろんございます。
  138. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、どうしてもこの新型間接税というものが話題の中心にならざるを得ない。これについてはもう時間がありませんから本予算のときに譲りますけれども、とにかく、いつまでに税制改革をやるんだということはいわばもう結婚式の日取りなんですよ。ところがどういう人と見合いをさせてくれるのか全然わからないのでは、僕は公聴会みたいなものを何回やっても意味ないと思います。  そこで、ちょっと政府税調の公聴会で聞きたいんですけれども、いろいろ公述人を選定しますね。非常に有名な、テレビにしょっちゅう出ていらっしゃるような方が出てこられるんですけれども、選定基準というのは何なんでしょうか。
  139. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 最終的には会長がお決めいただき、御連絡をしておられるところでございますが、私どもは事務局としてお手伝いをしておるところでございます。  意見発表者につきましては、基本的には財務局に一応事務をお願いしていまして、その地域での地元の御意見をも踏まえまして、開催地域の経済的、社会的な特性、あるいは全国的に見た分野別バランス、こういったものを考えて選定をしておられるようでございます。  要はできるだけ広範な分野の方々からお考えをお聞きできるようにという、抽象的にはそういうふうな基準であろうかと思います。
  140. 青木茂

    ○青木茂君 それなら大変結構なんですけれども、何か花を添えないとああいうものができないような感じがあって。実りのある公聴会をやってくださるように特にお願いを申し上げておきたい。そして、公聴会というのはやはり国民の生の声を聞く試みであって、公聴会を通じて何か一つPR、世論誘導というようなことにならないようにということを特に強くお願い申し上げまして、私の質問は終わります。
  141. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で青木茂君の質疑は終了いたしました。  これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  142. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより昭和六十二年度補正予算三案に対する討論に入ります。  討論の通告がございますので、順次これを許します。なお、発言者は賛否を明らかにしてお述べ願います。小川仁一君。
  143. 小川仁一

    ○小川仁一君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度補正予算三案に対し反対の討論を行います。  今、政治に求められるものは、アメリカを初め諸外国に対し毅然とした態度で我が国の国民の利益を主張する政治であります。それが国際交流が深まる中では当然のことでもあります。同時に、国民の求める声に耳を傾け、国民生活を充実させる努力をすることであると考えます。その立場に立って、本補正予算案に対して反対の理由を申し述べます。  最初に、政府の財政運営が余りにずさんであり、本補正予算が財政法第二十九条に反することであります。補正予算の中には本来計上すべきではない事項が盛り込まれております。国保交付金一千八億円などがその例であります。このような便宜的な違法的な補正予算について、強く批判するものであります。  反対理由の第二は、政府の税収見通しが大幅に狂い、歳入見積もりが余りにもずさんであることであります。  六十二年度当初予算において税収増を前年度比約六千三百億と見積もりながら、補正予算において六倍にも当たる三兆六千億を超える税収を見込んだことは重大な誤りであります。誤差率が四ないし五%にも達する誤りは許されるものではなく、政府の責任は免れません。税収を過小に見積もったことは、売上税を通すための意図的な政策としか考えられません。また、税の増収分は納税者である国民に返すべきで、野党の共同減税案要求にこたえることが当然と思います。強く要求いたします。  反対理由の第三は、防衛費の対GNP比が一%枠を突破し、一層拡大していることであります。  米ソのINF全廃条約の調印といった国際的な軍縮潮流に反して、補正予算において対GNP比が一・〇〇七%と拡大しています。断じて認めることはできません。加えて、装備事前集積を日本側から持ち出したことは言語道断であります。このようなことは、今後の対米交渉において撤回するよう要求いたします。  なお多くの反対理由がありますが、いずれ機会を見て申し述べます。  最後に、竹下総理、売上税と同質と思われる新型間接税は、その経緯や国民の反対意見の強さを十分認識されて、新設を取りやめるよう要求します。  以上で私の反対討論を終わります。(拍手)
  144. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、吉川芳男君。
  145. 吉川芳男

    吉川芳男君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和六十二年度補正予算三案に対しまして賛成の討論を行います。  今我が国経済を概観いたしますと、内需の高まりを中心に景気の回復には目覚ましいものがあり、新たな好況局面を迎えたと言ってもよい状況になってまいりました。住宅建設が増加の一途をたどっているほか、消費も堅調に推移し、企業設備投資は増勢を強め、その収益も向上しております。心配された雇用情勢も失業率が低下し、有効求人倍率が上昇し続けるなど著しく改善しているのであります。  これらは、国民各位の英知と努力のたまものであることはもちろんですが、それを先導しあるいは支えた政府の経済財政運営の正しさを証明するものでありましょう。  ここ数年の我が国にとっての最重要課題は、過度の輸出依存型経済からの転換と円高デフレ克服のため、内需を中心とした景気の回復を図ることでありました。もちろんこれらは財政再建との調和を図ることが必要であり、このため政府は、国費は抑制しつつも公共事業の総事業費は拡大させるという努力と工夫によって景気の下支えを行ってきました。そして昨年七月、経済の反転期をとらえ、六十二年度第一次補正予算では、行財政改革の果実であるNTT株売却収益の活用や思い切った建設国債の増発により、一兆七千億円を超える国費を投ずることとし、総額五兆円にも上る事業費を追加したのであります。同時に、一兆五千億円を超える所得税減税も行いました。この絶妙のタイミングで行われた財政出動によって景気は回復から拡大に向かい、昭和六十二年度の実質経済成長率は三・七%と政府の当初見通しを上回ることが見込まれるに至っております。  他方、貿易摩擦の問題も、とかく指摘の多かった製品輸入が著しく増加し、輸入の伸びが輸出の伸びを大幅に上回っており、貿易収支の過度の黒字も逐次調整されてきております。  現下の課題にこたえるため政府のとった対策の適切さに対し、私は惜しみない拍手を送りたいと思います。  さて、昭和六十二年度補正予算三案は、給与改善費、国民健康保険特別交付金、義務的経費の追加等、本予算及び第一次補正予算成立以降特に緊要となった事項について措置を講ずるものでありますが、あわせて自賠責再保険特別会計に対し財政が特に急迫した当時の借入金を返済するなど財政体質改善の措置を講ずることとしており、極めて適切な内容となっております。  ここで私が強調したいのは、財政再建目標達成に向け大いに前進を見た点であります。先ほど申し上げましたように、政府の時宜を得た適切な措置によって景気は拡大し、所得税減税を行ってもなお二兆円近くの増収が見込まれることになりました。このほか、前年度の決算剰余金の残額も二兆円近くに上り、特例公債を一兆三千二百二十億円も減額することができたのであります。補正予算で特例公債を減額するのは昭和五十五年度以来実に七年ぶりのことであり、建設国債と合わせた公債依存度も一八%台と、特例公債が恒常化した五十年以降で最も低い水準となりました。  衆議院で現在審議中の六十三年度予算においても、特例公債の発行は厳に抑制され三兆円強にとどまっており、目標年度まであと二年と迫った今、特例公債依存体質からの脱却は夢でなく現実のものとなってきた感があります。  これまでの行財政改革に対する歴代内閣の並み並みならぬ努力の結果が今日財政体質の強化と財政再建を射程圏内にとらえることに成功したものであり、私はこれに対し深く敬意を表するとともに、竹下内閣におかれても財政再建目標達成と経済の安定的拡大の両立に向け邁進されるよう望みまして、賛成討論を終わります。(拍手)
  146. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、矢原秀男君。
  147. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 公明党・国民会議を代表して、ただいま議題になりました昭和六十二年度補正予算三案に対し反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、大幅な税の自然増収があるにもかかわらず追加の減税が実施されていないことであります。  我が国の所得税制においては、累進税率の適用区分見直しがおくれてきたことから、毎年なし崩し的に実質増税が行われてきました。私たちは、六十二年度当初予算審議の際、このことを指摘し、大幅な所得税減税を要求してきました。ところが、六十二年秋に確定した減税は、所得税減税一兆五千四百億円と我が党が要求した二兆円を値切り、しかも住民税減税が六十三年度実施に先送りされており、極めて不十分に終わっているのであります。その一方、政府国民の切実な零細預金であるマル優を廃止し、逆に金持ちの利子課税を軽減する不公平税制を強行したのであります。  しかしながら、本補正予算を見ると、六十二年度の減税額を差し引いても、なおかつ一兆八千九百三十億円の自然増収を計上しております。我々が当初から要求した二兆円規模はもちろん、さらにそれ以上の所得税減税が可能であります。もともと自然増収は国民からの予定せざる増収であり、取り過ぎでありますから、国民に減税として還元するのが筋であります。したがって、既に年度末であるとはいえ、この際六十二年度において相当規模の所得税減税の追加を要求いたします。  昨年の賃上げは極めて低い水準に抑制されている上に、一年間に二倍に達しようとする異常な地価高騰による家賃の急激な上昇等により、著しく圧迫されている国民生活を少しでも改善する一助となるはずであります。  反対の第二の理由は、内需拡大を持続させる施策が盛り込まれていないことであります。  我々は、本年度当初以来、日本経済の中長期的な内需型成長を図るとともに、産業構造転換の実現を要求してきました。現在、確かに景気は回復しておりますが、六十二年度経常収支は当初見通しを五十億ドルも上回る八百二十億ドルの巨額な黒字が見込まれるなど、なお強い外需依存となっております。この結果、昨年じゅうを通じて一段と円高が進み、日本たたきが繰り返されてきました。我が国は、言葉としてではなく、真に経済政策の修正や産業構造の転換を図らなければ、国際社会で生きていくことは困難であります。  その観点から、本補正においても引き続き積極的に、今立ちおくれている生活関連社会資本の整備に重点を置いた公共投資の追加見通しなど、経済を内需適応型に転換させる努力が必要であったはずでありますが、何らの具体策が講じられておりません。単に景気循環型一過性の景気対策といった観点での政府の対応は、現在国の内外から強く要請されている産業、経済並びに国民生活に及ぶ構造転換にこたえることにならないばかりか、早晩政策破綻を招くことは必至であり、ここに強く警告しておきます。  反対の第三の理由は、政府が防衛費のGNP比一%枠を無理やり突破させようとしていることであります。  本補正予算で防衛費は、廃案となった売上税分の減額、円高に伴う経費の節減等の減額補正が行われておりますが、その額は極めて不十分であると指摘せざるを得ません。すなわち、円高による外貨関連経費の減額、物価の超安定による諸経費の節減等、大幅な修正減額が見込めるにもかかわらず、その減少額は一次補正分と合わせても二百七十一億円、そこから売上税分九十三億円を除けばわずか百七十八億円と、六十一年度補正での減少額三百五十二億円の半分にすぎないのであります。その結果、防衛費の対GNP比は、当初段階での一・〇〇四%から一・〇〇七%へとさらに拡大しております。  昨今の大幅な円高差益、さらには不要不急の経費をも削ることで、防衛費をGNP比一%枠におさめることは可能であります。にもかかわらず、こうした経費の節減、不用捻出を怠り、GNP比一%枠突破を既定路線化しようとする政府の態度は容認することができません。我が党は、日本が再び軍事大国とならないことを示す、いわば平和のあかしであるGNP比一%枠の厳守を強く要求するものであります。  最後に、昨年五月売上税が既に廃案となっているにもかかわらず、現在まで何らその補正を行わず、予算実体と異なる財政運営を行ってきた政府に対し猛省を促すとともに、為替相場の安定、実効ある土地対策の早急な実施、不公平税制の是正を強く要求し、そうして大型間接税導入には反対であることを申し述べて、私の反対討論を終わります。(拍手)
  148. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、吉川春子君。
  149. 吉川春子

    吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の昭和六十二年度第二次補正予算案に対する反対討論を行います。  本補正予算案は、当初予算の軍事費突出、国民生活切り捨ての性格を何ら変えるものとなっていません。世界の軍縮の流れに逆らって大軍拡の道を歩み続け、他方では、国民生活に関連した文教、福祉、農業、中小企業予算をさらに削り取っているのです。以下、反対の理由を具体的に述べます。  第一は、軍事費を実質的には一層ふやしていることです。当初予算で対GNP比一%枠を突破した三兆五千億の軍事費は、NATO方式で計算すれば既に世界第三位になっており、ドル換算でこの一年間に約百億ドル増大し、四百二十七億ドルにもなっています。それにもかかわらず、軍事費をほとんど削減していないことは極めて重大です。  第二は、国民の圧倒的な反対を受け廃案になった売上税相当分の削減を今日まで棚上げにしてきたことです。そればかりか、総理は抜本的税制改革について渾身の努力を傾けると述べ、政府税調の小倉会長はEC型付加価値税が一番よいと国会で述べておられます。政府が性懲りもなく大型間接税導入を企てていることは断じて許すことはできません。  第三は、我が党が当委員審議でも指摘したごとく、国民生活関連予算を節約の名のもとにさらに削減していることです。生活保護費が当初予算では実質据え置きであったものを、今回九十七億円削減されています。最近四年間で生活保護世帯が二十万人も減らされ、自殺者まで出ています。これは憲法二十五条の生存権の保障を踏みにじるものです。文教費では、国立学校特別会計への繰り入れ減額八十四億円を初め、私学助成の削減、育英事業費、体育、文化関係予算など、修正減額は合計百三十億円にも達しています。政府が進めている臨教審による教育改革は、このように予算面から見ても国民の願いに反するものとなっています。  第四は、大企業向けには手厚い配慮を加えている反面、円高で苦しむ中小企業、農業に対しては何ら有効な手だてを講じていないことです。とりわけ、質問を通じて明らかにしましたように、ガット十品目の輸入自由化一括受け入れに見られるような、日本農業破壊を進めている対米従属ぶりは断じて許すことができません。その一方で、大企業向けの民活事業のための無利子貸付金は、五百八十億のうち、ほとんど支出されていないにもかかわらず減額修正は行われておりません。今必要なことは、INF条約に見られるように核廃絶、通常兵器削減を求める国際世論の中で、唯一の被爆国として日本が世界平和のために大きく貢献することです。  我が党は、世界の平和と軍縮の流れとともに歩む政治を実現するために、現に日本国民の苦しみの根源であるばかりか再び戦争への道につながるおそれのある日米安保条約を廃棄し、日本国民の福祉、教育、生活を守るために全力を尽くすことを表明し、反対討論を終わります。(拍手)
  150. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、勝木健司君。
  151. 勝木健司

    ○勝木健司君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度補正予算三案に反対の討論を行うものであります。  反対する第一の理由は、本予算案が内需拡大、対外貿易摩擦の解消など今日の緊急課題の解決に何らこたえるものではなく、国民の期待を裏切るものとなっている点であります。  我が国経済は、マクロの統計上におきましては堅調な回復を示しておりますが、他方、多くの面で深刻な問題が生じております。経済大国という世界における位置づけとは裏腹に、国民の生活水準は欧米諸国と比較して見劣りするものとなっております。円高メリットの還元も不十分であり、急激な為替変動により打撃を受けた産業に対する救済措置も小手先に終わっています。さらに、首都圏への一極集中と地方経済の疲弊に見られるごとく、国の経済は著しくバランスを欠いております。  既に成立した第一次補正予算は、五兆円の公共事業を含めるなど規模におきましては評価できるものでありましたが、内容につきましては、固定的、硬直的シェアが踏襲されており、極めて遺憾であります。二次補正を編成するのなら、公共事業の配分を国民生活向上につながるよう大幅に手直しすべきだと考えるものであります。しかし、本予算案においてはしかるべき措置が全く盛り込まれていません。  内需拡大を進めるためには大幅減税を断行することも不可欠であります。約二兆二千億円の減税が成立いたしましたが、これでは不十分であります。現在、中堅所得者層を中心に現行税制に対する重圧感、不公平感が一層高まっております。この声にこたえ、中堅サラリーマンに厚い大幅所得減税を進めることこそ政治に課せられた最優先課題であります。また、国際的に見て高い法人税の減税も必要であります。さらに、政府の失政によって引き起こされました土地の高騰は、住宅ローンや相続税に苦しむ人々の数を増加させています。住宅減税の拡充、相続税減税もまた喫緊の課題であります。大幅減税及び不公平の是正こそ税制改革の手始めであり、これを飛び越え、国民に信を問うこともせず新型間接税の導入を強行するやり方は絶対に容認できるものではありません。  反対する第二の理由は、行政改革の断行が盛り込まれていない点であります。経費の節減は甚だ不十分であり、行政府みずからが骨を折ることなくそのツケを国民に回すという従来の安易な体質にメスが入っておりません。竹下内閣の行政改革に対する姿勢は、中曽根内閣と同様、口約束だけにとどまっております。官僚機構に大なたを振るうことのない行革は、無責任との批判を免れるものではありません。  反対する第三の理由は、財政再建がないがしろにされている点であります。税収が好調だからといって場当たり的に国債費を減額するやり方は、哲学のないずさんなものと言わざるを得ないのであります。竹下内閣に対し、これまでの赤字国債脱却一本やりのやり方ではなく、総合的な指標を掲げて新たな財政再建計画を策定するように提唱するものであります。  今回の予算案は、六十三年度予算案に先駆けて審議されるものであり、竹下内閣が初めて取り組む予算となりました。しかしこの予算案は、竹下総理が声高に主張しておられます「活力と調和」という崇高なスローガンに全く反し、国内外の期待に背くものになったことを強調いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  152. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で討論通告者の発言はすべて終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  昭和六十二年度一般会計補正予算昭和六十二年度特別会計補正予算昭和六十二年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して採決をいたします。  三案に賛成の方は起立を願います。    〔賛成者起立〕
  153. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 多数と認めます。よって、昭和六十二年度補正予算三案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十三分散会