○松前達郎君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました日米地位
協定第二十四条についての特別
協定の
改正議定書につきまして質疑を行うものであります。
政府は、
我が国防衛
政策の枠組みとして、平和憲法のもと、集団的自衛権の不行使、専守防衛、非核三原則、武器輸出三原則、海外派兵の禁止等を基本とすることを表明してまいりましたが、日米安全保障が発効して三十六年間の現実の推移は、これらの原則の形骸化の歴史であったと言っても過言ではないと思うのであります。特に、日米防衛
協力のための指針、いわゆるガイドラインが作成されました
昭和五十三年以降の十年間には、日米共同作戦計画、シーレーン防衛、極東有事、相互運用性等の共同研究が進められ、また今年一月には、有事来援の共同研究が合意されましたが、それらの内容は国会にも
国民にも知らされないまま、日米安全保障体制が変質化されつつある現実に危惧の念を抱かざるを得ないのであります。
在日米軍
経費の
日本側
負担につきましては、日米地位
協定第二十四条において、
日本側の
負担とされる基地、
施設の提供を除いて、在日米軍を維持することに伴うすべての
経費は
日本国に
負担をかけないでアメリカ側が
負担すると明らかに規定されているのであります。しかるに、
政府は、本来アメリカの
負担であるべき在日米軍従業員に支給される諸手当を
肩がわりするため、昨年、特別
協定を
締結し、今回さらにこの
肩がわりを拡大しようとしていることは、地位
協定の
趣旨を一層ないがしろにするものであり、対米外交のあり方から見ても極めて重要な問題をはらんでいると思うのであります。
私は、このような認識に立って、以下、
総理及び
関係大臣に具体的に
質問を申し上げます。
第一に、本特別
協定改正の経緯について、
竹下総理にお尋ねをいたします。
今回、
政府が在日米軍
経費の
日本側
負担を増加することとしたのは、昨年十月七日に
政府が決定した「ペルシャ湾における自由安全航行
確保のための
我が国の貢献に関する方針」によるものであることは明らかであります。そこには、「米国が、ペルシャ湾を含め国際的な平和と安全の維持のためにグローバルな役割を果たしている
状況の下で、
我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制のより一層の
効果的運用を
確保する見地から、適切な
対象について在日米軍
経費の軽減の方途について米国と協議を行う。」と明記されているからであります。
そこで、お伺いいたしますが、今回の特別
協定の
改正は、中曽根内閣が決定したこの
政府の方を具体化したものであることに間違いはないかどうか。もしそうであるならば、ペルシャ湾におけるアメリカの役割と在日米軍
経費の
我が国の
負担増加とはいかなる
関係にあるのか理解に苦しむものであります。アメリカは、アメリカの戦略に基づいて行動をしているのであります。また一たんこのような理由を認めることになりますと、
我が国の防衛費はアメリカの戦略上の理由によってとめどもなくふえ続ける可能性がありますが、この点、
総理はどのように認識されますか、お伺いいたします。
さらに、
政府は、今回の
措置がアメリカの要求によるものであることは明白であるにもかかわらず、あくまで
我が国が自主的に決定したものであると主張しております。しかし、
改正の背景となった為替相場の変動は、昨年の特別
協定の成立以降一三%程度の
円高となってはおりますものの、
負担の限度を諸手当全額に引き上げるほどには上昇していないのであります。何ら切迫した事情もないのに
協定発効後一年も経ずして
改正を行うことは、余りにも定見のない無節操な態度と言わざるを得ないのでありまして、
政府が自主的に決定したと言う以上は、その理由を明らかにしていただきたいのであります。
第二は、思いやり
予算のあり方について
竹下総理にお伺いいたします。
昭和五十三
年度から実施されている
我が国の思いやり
予算は、この十一年間で二十倍となり、その総額は六千九百億円に達しようといたしております。本来アメリカが
負担すべきであったこの巨額な費用が、
政府の
財政再建の名のもとに
国民生活関連経費が厳しく削減され、大型
間接税の導入が図られようとしている
我が国の困難な
財政事情のもとでさらに増加されようとしていることは問題と言わざるを得ません。
今後、アメリカからの防衛費分担の要求はますます強くなると予想されるのでありますが、
政府は、これにいかに対処されるつもりか。条約上の義務とはなっていない支出が思いやりという形でふえ続けることは、
国民にとって許しがたいところであります。
政府は、思いやり
予算のあり方を見直すつもりはないのか、
総理の見解をお伺いいたします。
第三に、
政府の対米外交姿勢について、
竹下総理及び宇野外務
大臣にお伺いいたします。
昨年十二月十七日、アメリカ民主党のジョン・ロックフェラー上院議員は、議会で次のように演説をしたと言われております。すなわち、
日本は現在、
世界で六番目の軍事費支出国であり、一九九〇年には
イギリス、フランスを抜いて
世界第四位になる。また
日本の防衛費の伸び率は、過去五年間で実質五・六%となり、NATO諸国の一・八%をはるかに上回る。また
日本の航空機は、米国がアジアで展開している全航空機よりも多く、艦船については米第七艦隊の二倍近い駆逐艦を保有している。さらに、
日本は在日米軍駐留費の二十億ドルを
負担し、これは米将兵一人当たり三万五千ドルで、NATO諸国のどの国よりも高いと述べているのであります。
自衛のための戦力とされている
我が国自衛隊が、今や西欧諸国をしのぐほどに強化されているこの実態を
総理はどうお考えでしょうか。
しかしながら、一方では、本年二月二日のアメリカ下院軍事委員会の同盟国の責任分担に関する部会公聴会で、リチャード・パール前国防次官補は、特に
日本の
努力不足を取り上げ、強く
我が国を非難したと伝えられているほか、
貿易摩擦に
関連した
日本の安保ただ乗り論は依然として根強いものがあると見受けられるのであります。
我が国防衛力の増強に加えて、在日米軍基地がアメリカの
世界戦略にとってどれほど重要な役割を演じているかを考えますと、
我が国の実態が安保ただ乗りとはほど遠いものであることは明らかであります。
アメリカからの防衛分担強化の圧力は、アメリカの議会、
国民各層に
我が国の実態が理解されていないためであり、その責任の一端は
我が国政府にあると思います。
政府は、アメリカの対日理解に対して積極的に行動するとともに、広くアメリカの各層に
我が国の実態を知らせる
努力をする必要があると考えるのでありますが、御見解を伺いたいのであります。
政府のこれまでの対米外交姿勢は、アメリカの一方的要求を唯々諾々と受け入れているように見受けられるのであり、このような姿勢はかえってみずから安保ただ乗り論を肯定する結果となっているのであります。安全保障はあくまでも国益優先でなければなりません。
政府に毅然たる自主性を要請したいのでありますが、無理でしょうか。
総理の御決意をお聞かせいただきたいのであります。
第四に、在日米軍基地従業員の雇用の安定について、宇野外務
大臣にお伺い申し上げます。
大臣は、ただいまの
趣旨説明で、この
議定書の
締結を行うことは在日米軍従業員の安定的な雇用の維持に資するものと確信すると述べられました。このことは、仮に本
議定書が
承認された場合、
協定の有効期間である
昭和六十七年三月三十一日までの間、これら従業員の雇用は完全に
確保されるものと理解されますが、この点を明確に約束していただきたいのであります。
第五に、沖縄の基地問題について、宇野外務
大臣、瓦防衛庁長官にお伺いいたします。
思いやり
予算は、これまでその多くが沖縄の米軍基地の提供
施設の整備に充てられてまいりました。沖縄は、改めて申し上げるまでもなく、
日本のわずか〇・六%の面積であるにもかかわらず、在日米軍専用の
施設、区域の七五%がそこに集中しており、復帰後もいまだに占領
状態が続いているとの県民の不満が強いのであります。このような
状態は、沖縄の振興開発の大きな障害となっているのであります。
さらに見過ごすことができないのは、米軍の訓練などによる航空機騒音、流弾事故、軍人軍属等による交通事故や刑事事件、麻薬事犯などの住民への物心両面にわたる被害であります。
政府は、
昭和五十七年の第二次沖縄振興開発計画あるいは昨年七月の第二次沖縄振興開発計画後期の展望と戦略において、いずれも土地利用上大きな制約となっている米軍
施設、区域の整理縮小をうたっているのでありますが、
施策は遅々として進んでおりません。
そこで、
政府にこの際、提供
施設、区域の全面的な
見直しを求めるとともに、基地の整理縮小の問題を日米事務レベル協議の
対象とし、一日でも早く基地の整理縮小が実現するよう要請いたします。またあわせて、キャンプ・ハンセン、あるいはキャンプ・シュワブの両
施設での実弾演習の廃止と訓練の安全管理の強化を求めます。これらの点につきまして、
政府の今後の方針と決意をお伺いいたします。
最後に、有事における米軍の来援研究の問題について、
竹下総理並びに宇野外務
大臣及び瓦防衛庁長官にお尋ねをいたします。
今年一月、日米防衛首脳協議において、
我が国有事の際の米軍来援に関する共同研究が合意されました。この問題をめぐる国会の論議から、
政府は、
日本有事における体制整備を着々と準備しつつあることが明らかになりました。一九八一年のアメリカの国防総省報告書には、アメリカが
地球的規模での戦略権益を守るためには、二国間取り決めを通じて、戦時に米軍の兵たん支援を行う旨の約束を受け入れ国から取りつけることが絶対に必要であると明記されているのでありまして、有事来援研究はやがて新たな
協定に結びつくことが予測されるのであります。
ポンカス、すなわち米軍装備等の事前集積は、この研究の中核的な課題であると推測されるのでありますが、研究の内容はつまびらかにされておりません。
政府は、有事来援研究の合意に際しては、有事来援に密接に
関連のあるホスト・ネーション・サポート、事前集積、有事立法等の諸問題の
関連性について十分な検討を行ったと思いますので、これらの
関連について明確に
お答えをいただきたい。
また、有事来援研究問題に対するこれまでの
政府の国会における
対応については、シビリアンコントロールの実効性に疑問を抱かざるを得ない場面が見受けられたことはまことに遺憾であります。
総理は、有事来援研究の合意に先立って、事前に十分なシビリアンコントロールを行っておられたのかどうか、また今後、シビリアンコントロールの実をいかに
確保されようとしておられるのか、
総理の見解と御決意をお伺いいたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣竹下登君
登壇、
拍手〕