○柳澤錬造君 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となりました
国民健康保険法の一部を
改正する
法律案に対して、竹下内閣
総理大臣を初め、
関係各
大臣に質問をしてまいります。
まず第一に、今や
我が国の平均寿命は男性七十五・二歳、女性八十・九歳となり、男女ともに世界一の長寿国となりました。同時に、六十五歳以上の
高齢者が今は全人口の一〇%程度でありますが、
昭和百年には二三%と欧米先進国でもいまだ経験したことのないスピードで
高齢化社会への道を進むことになります。これは
高齢化社会到来というような言葉だけで済ませられるようなものではありません。
我が国を今日までこれだけの経済力を持つ
国家とするために貢献された
国民の皆さんが、安心して喜んで暮らしていただけるような
長寿社会を建設すべきであります。その青写真を作成するのが政治であり、そのために、この国会は本音で
議論をして、それを
実現させるのが私たち
政治家に課せられた使命でありましょう。このような基本的な姿勢について、竹下
総理の御見解をお伺いいたします。
第二としては、この
国民健保法の適用を受ける人は約四千五百万人であり、
国民の四割近くの人々が対象となる重要な
法律であります。今回の
改正案を見ると、国も
地方自治体も
負担増とならないようつじつまを合わせており、しかも
保険料は一世帯千七百円安くしますというのですから、まあ一歩前進したものと評価をいたします。
しかし、六十一年度決算によりますと、全国三千二百七十
市町村のうち、三百三十七
市町村が赤字となっており、その額は千二百四十五億円です。六十三年度、六十四年度は今回の
措置で明らかでありますが、六十五年度以降はどうなるのか、このままの延長でいくのか、抜本的
改正を
考えているのか、この点、
厚生大臣の御見解をお聞きいたします。
第三としては、今回の
改正案の
内容について具体的問題を質問してまいります。
一点目に、
医療費の
地域差の問題です。
府県単位で見るならば、一人当たりの実績
医療費は最高二十一万七千円であり、最低十万二千円の二・一倍でありますが、これを
市町村単位で見てみますと、最高は四十二万九千円であり、最低は七万円と、その格差は六・一倍と開いております。この要因は何か、どう分析しているのか、そしてどのような対策をもってこの
国民健保を
安定化させようとしているのかです。
二点目は、
保険基盤安定
制度についてです。
国民健保
加入者の中で七百五十万人という低
所得者に対する
保険料軽減
措置は、今回の方法程度で大丈夫なのですか。今の
社会情勢からすれば、これら該当者はますますふえていくと思うのですが、その点どのような予測をして、どう安定させようとしているのかです。
三点目は、
高額医療費共同事業についてです。
この
共同事業の構想はよろしいです。ただ、だれも好きで
病気になり、入院する人はいません。
社会情勢の変化に応じて
病気も複雑となり、予想外の治療費を要求され、それで家庭が破滅しかねないでいる例もあります。この際、この
共同事業を思い切って強化拡充したらと思うのですが、いかがですか。
四点目は、この
国民健保の
安定化を
目的として他の被用者
保険に
負担増を求めるようなことは断じてしてはならないと思うのですが、その点は明確になっているのですか。
以上の諸点について
厚生大臣の明快な御
所見を求めます。
第四として、
地方財政についてです。
今回の
法改正によって、
地方自治体の
負担増加分は
地方財政に
支障の来さないよう
措置されていますが、六十五年度以降も
地方財政の
負担増はないと確認してもよろしいのかです。
また、
負担分を
地方交付税で補てんするというやり方をとっていますが、本来、
地方に
権限と
責任を持たせるのであれば、むしろ国の税財源そのものを
地方に移譲するという方法をとるのが本筋ではないかと思うのですが、これらの点については
自治大臣の御見解をお聞きいたします。
第五としては、各府県の
地域医療計画についてであります。
今回の
改正で、
都道府県が
国民健保の
運営に関与することになりますが、これは
都道府県が
権限と
責任を持って
国民健保の
運営にかかわっていくことが望ましいとする我が党の主張に沿うものであり、歓迎いたします。
都道府県が
医療費の
適正化に果たすべき
役割は極めて大きいものがあります。しかるに、
昭和六十年に
医療法が
改正され、各
都道府県が
地域医療計画を策定することになっておりますのに、策定したのは昨年末でわずか十七
都道府県です。これは早期に
計画を策定するよう
指導すべきであると
考えますが、
厚生大臣の御答弁を求めます。
最後に、
総理に申し上げたいのです。
これだけの経済力を持った
日本として、
国民の
生活は、
日本人の心は豊かになったのでありましょうか。今や
我が国の
国民医療費も十八兆円になりました。これはGNPの五%です。それでもこれが有効に使われて、
国民の生命が保持され、喜んで
生活できるのであれば安いものです。しかし、時折、
新聞が報道していますが、
老人がだれにも見守られず、一人寂しく息を引き取って、そのまま何日間も放置されていたというのです。これほど非人道的なことはありません。
総理、このようなことがあってよろしいのでしょうか。胸が痛みませんか。
国の価値は、GNPの高さではありません。今こそ物の豊かさとともに心も豊かになり、隣人を愛し、だれもが
日本人として生きていてよかったと誇りと喜びを感じ、人間的幸福感を味わえる真の
福祉社会をどうやって誕生させていくかです。それが政治であり、私たち
政治家の
責任でありましょう。そのために竹下
総理がどう御
指導なさる御
決意か、お伺いして私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣竹下登君
登壇、
拍手〕。