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1988-04-18 第112回国会 参議院 本会議 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十八日(月曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十三号     ─────────────   昭和六十三年四月十八日    午前十時 本会議     ─────────────  第一 国民健康保険法の一部を改正する法律案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、法制局長の辞任に関する件  一、法制局長の任命に関する件      ─────・─────
  2. 藤田正明

    議長藤田正明君) これより会議を開きます。  日程第一 国民健康保険法の一部を改正する法律案趣旨説明)  本案について提出者趣旨説明を求めます。藤本厚生大臣。    〔国務大臣藤本孝雄登壇拍手
  3. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 国民健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  国民健康保険制度は、我が国国民保険体制基盤となる制度として重要な役割を果たしておりますが、制度を取り巻く社会経済が大きく変化し、人口の高齢化等背景医療費増高する中で、運営上さまざまな問題を抱えるに至っており、その解決を図ることが重大な課題となっております。  そこで、保険料負担能力の低い被保険者加入割合が高いという問題や医療費地域差問題等国民健康保険制度が当面している不安定要因に対して、国、都道府県及び市町村共同して取り組む仕組みをつくることにより、国民健康保険事業運営安定化を図ることを目的として、この法律案提出した次第であります。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、指定市町村における国民健康保険事業運営安定化推進であります。厚生大臣が指定する医療給付費等が著しく多額な市町村は、安定化計画を作成し、国及び都道府県指導及び援助のもとに、給付費等適正化等運営安定化のための措置を講ずることとしています。  この計画実施状況を踏まえ、指定市町村給付費等が特別の事情を勘案してもなお被保険者年齢構成等もとに定める基準を超える場合、その基準を超える著しく高い給付費等一定部分につきまして、国、都道府県市町村が六分の一ずつ共同負担するものとしております。  第二は、保険財政基盤安定化措置であります。市町村国民健康保険財政基盤の安定のため、市町村保険料負担能力の低い被保険者保険料軽減相当額を基礎として算定した額を一般会計から国民健康保険特別会計に繰り入れることとし、国はその二分の一を、都道府県はその四分の一をそれぞれ負担することとしております。  第三は、高額医療費共同事業強化充実であります。高額な医療給付市町村国民健康保険財政に与える影響を緩和するため、国及び都道府県は、国民健康保険団体連合会が行う高額医療費共同事業に対してその費用の一部を補助することができることとし、これにより同事業強化充実を図ることとしております。  第四は、老人保健医療費拠出金国庫負担見直しであります。保険財政基盤安定化措置等を通じ、国民健康保険運営安定化が図られることから、その財政運営への影響に配慮しつつ、特例的に高くなっている老人保健医療費拠出金に係る国庫負担率を調整することとしております。  こうした改正のほか、被保険者資格証明書交付を受けている場合の療養について社会保険診療の扱いとするなど、その他所要改正を行うこととしております。  以上申し上げた制度改正のうち、保険財政基盤安定化措置高額医療費共同事業に対する補助及び老人保健医療費拠出金に対する国庫負担見直し措置昭和六十三年度及び六十四年度における措置としております。  最後に、施行期日でありますが、本年四月一日から施行することとしております。  政府といたしましては、以上を内容とする法律案提出した次第でありますが、衆議院におきまして、この法律施行期日を公布の日とする修正が行われたところであります。  以上が、国民健康保険法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手)     ─────────────
  4. 藤田正明

    議長藤田正明君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。山本正和君。    〔山本正和登壇拍手
  5. 山本正和

    山本正和君 私は、日本社会党護憲共同を代表して、ただいま提案されました国民健康保険法の一部を改正する法律案に関して、総理並びに関係大臣にその所信をお伺いいたします。  大日本帝国が戦争への道を歩み出した昭和十三年、旧法たる国民健康保険法が施行されてから本年はちょうど満五十年に当たるわけであります。また、平和憲法もと、曲折はありましたが、基本的人権の尊重を根幹とする社会保障の重要な柱としての新しい国民健康保険法が定められてから三十年となるわけであります。この間の多くは、欧米のいわゆる社会保障先進国に学びつつ、我が国重要施策としての社会保障への取り組みが続けられてきたのでありました。  昭和三十六年、国民保険達成昭和四十八年、老人医療費支給制度実施等医療保障への国民の大きな願望実現の道筋がつけられてまいりました。老人医療が無料化されたときの、安心されたお年寄りのお姿が今日も目に浮かんでまいります。  しかしながら、臨調行革の名のもとに、昭和五十八年、老人保健制度創設退職者医療制度、六十二年、老人保健制度改革老人負担を含む幾つかの手直しがなされてまいりました。高齢者医療のあり方をめぐってさまざまな議論があることは御承知のとおりでございます。  ところが、今回、高齢者医療費増高をその理由一つとして、国民健康保険制度基盤整備のためとして本法案提出されてまいりました。そして、今回の改正案は、国の果たすべき役割責任の一部を地方自治体に肩がわりさせるものとなっておるのであります。  国民健康保険は、保険料国庫負担によって賄われるべきものであるとの常識は否定されるのでありましょうか。今日、国民健康保険改革しなければならない問題点の克服や、その制度安定化高齢化社会に対応するためになされなければならないことは、何人も否定するものではないと存じます。しかし、改革に当たって、その問題点を整理しなければならないのは当然であります。現在、各種の審議会を初め関係団体はもちろん、国民各層の中で議論が交わされていることは御承知のとおりでございます。  本法案提出は、こうした状況から考えるとき、余りにも唐突の感が否めないのであります。そして、この法案内容は、国民の間に多くの疑問と国の社会福祉政策に対する不信すら生じているのではないでしょうか。  また、一方、三千万人を超える加入者を擁する健保組合政府管掌健保公務員等共済組合船員保険等も、国民健康保険と同じく高齢者社会への対応や医療費高騰に絡んでその基盤が揺らぎつつあることも事実であります。まさに医療保障中心とした社会保障制度について、長期展望に立った根本的検討国民各層の参加と合意によってなされなければならないときにあるのではないでしょうか。その場しのぎ予算帳じり合わせのための法案いじりは、いたずらに矛盾を増大させ、事態解決を困難に追い込むのではないでしょうか。  以下、私どもが抱いている幾つかの疑問についてお伺いいたします。  まず、竹下総理大臣にお伺いいたします。  総理は、「ふるさと創生」を唱えられ、また平和で豊かな日本についてその施政方針演説でお触れになりました。また福祉についても、かねてから一家言をお持ちと承っております。二十一世紀我が国社会において、お年寄り病気を抱えた方々生活の姿をどのようにイメージしておみえでございましょうか。  四月十三日の新聞のコラムで紹介された、経済企画庁若手の方が書かれた小説の中で、二〇××年の家族に、優しく美しく老いた母親社会に満足したゆったりとした姿が示されております。そして、主人公の語る「祖父母も今の時代に生きていれば、」という感慨についてどうお考えでありましょうか。  医療保障基盤安定のためには、少なくとも十年間を展望した、財政背景とした計画の策定が必要とされると言われます。国政の中で、国家予算の中でどのように位置づけされようとしているのかについてお示しいただきたいのであります。  次に、前年度と比べて五・二%または五・五%増とも言われる高い位置づけ防衛予算と七千億円の当然増を四千億円も切り捨てた社会保障関係予算という事実は、国民の間に国の社会保障政策に対する大きな不信を抱かせるものと言えないでしょうか。  さらに、国が国庫負担金保険料で賄うとしてきた国民健康保険運営の資金を、たとえ交付税調整金で面倒を見るとはいえ自治体からの負担制度化することは、国民健康保険原点から逸脱し、国の責任の一部を放棄したものとなるのではありますまいか。  また、自治体が今日まで直接、間接に多額の負担国民健康保険のために背負ってきていることについてどうお考えでありましょうか。自治体が、その基本的任務とも言える住民福祉施策遂行に今度の法改正はどのような位置づけをされようとしているのでありましょうか。  以上につきましては、大蔵大臣並びに自治大臣の御所見をも伺いたいのであります。あわせて、両大臣に、政治家として、二十一世紀における我が国社会保障のあるべき姿についての御抱負をお伺いしたいのであります。  次に、国民健康保険を初めとする医療保険がその基盤を揺るがせている問題点についてお伺いいたします。  昨年十二月、総務庁から国民健康保険事業運営に関する行政監察結果に基づく勧告がなされました。この勧告と本法律改正案との関連について御説明を伺いたいのであります。  さらに関連しまして、医療費高騰と、その適正化対策についてお伺いいたします。  まず、医療供給体制及び医療費支払い制度には大きな欠陥があり、これが検査づけ、薬づけ医療を生み、貴重な医療財源を乱費する原因となっていることであります。  昨年六月、国民医療総合対策本部中間報告において「現状と今後の方向」以下の提起をなしております。確かに、多くの正しい指摘がなされておるわけであります。しかしながら、医療費が支払われる医療供給体制支払い制度に対する直接的な問題の指摘も、もちろん改革の提言も本質に迫っているとは言えないのであります。  医療の中に営利主義が横行しているのではないかとの指摘は、久しく続いているのであります。医科系大学への余りにも高額な入学寄附金問題や、金融業者が事実上経営する医療機関、余りにも常識を超えた薬価差益医薬分業推進に名をかりた第二薬局の設置による不当利益など、新聞紙上に報道されるさまざまな問題は枚挙にいとまがありません。  そして、まことに残念なことに、医療機関相互監視することがなされているのであろうかということに対する国民の間の不信であります。医療機関相互のかばい合いによって患者国民医療に対する不信が増大するとすれば、医療保障そのものを覆すことになるのではないでしょうか。  仮に医療費が不当に請求された場合、現行仕組みで果たしてチェックすることが可能なのでありましょうか。保険者たる市町村は、事実上これを正し得る事務能力権限を有しているのでありましょうか。レセプト審査点検支払い事務都道府県国民健康保険団体連合会に委託されておりますが、この連合会に対し、厚生省はどのような指導監督権限を有しているのでありましょうか。また連合会中央機関である国民保険団体中央会は、いかなる役割を果たしているのでありましょうか。厚生大臣の御所見を伺いたいのであります。  そして、医療費増高の温床とされてきた現物給付出来高払い制と呼ばれる医療費支払い方式に問題はないのでありましょうか。短時間に多数の患者診療薬価差益の多い医薬品の使用、検査頻繁化、治療の長期化長期入院等は、現行支払い制度によれば収入増をもたらし、医療行為の本来の目的よりも利潤追求に手をかすことになってはいないでしょうか。我が党を初め関係団体や各界から、支払い制度についての多くの提起がなされております。支払い方式についての御見解をお示しください。  去る三月、厚生大蔵の両省から示された「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障給付負担展望」にあるように、このままで推移すれば現行医療保障は破産せざるを得ないでありましょう。しかしながら、現行制度の中にあるさまざまな改善すべき問題を放置して、高齢化というむしろ国民がこぞって歓迎すべき現象をその理由一つとして、結果的には国民負担の増となるような提案は改めるべきではないでありましょうか。  ただいま高齢と言われる方々や今世紀中に高齢を迎える人々は、国家の名において青春を戦争にささげた世代であります。そして、戦後の荒廃と飢餓の中でひたすら額に汗して働き続けた世代であります。国民健康保険を初めとする社会保障を、心の底からよい世の中になったとして喜んでよい世代であります。  医療保障を悪用し、不当な利益を得ていることに目をつぶり、医療機関が本来の目的から外れていることを放置し、行政がその責任を遂行せず、これらの結果の医療費増高高齢者増加によるものとする主張があるとすれば、まことに心冷える思いがいたします。  現行制度の中で改善すべきものにまず手をつけ、医療機関相互医療本来の目的遂行のために励まし合い、監視し合う厳しさを確立し、医療関係者のすべてが「医は仁なり」の原点に立つための努力が必要なのではないでしょうか。  この国に生を受け、この国に生き、美しく老いて人生を全うしたいと願っている多くの国民の期待にこたえる厚生大臣の御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 旧法五十年、新法三十年、そういう歴史からひもとかれた御意見を交えた御質疑でありました。  まず、基本的に、二十一世紀の本格的な高齢社会におきましては、科学技術成果医療福祉に一層生かされますとともに、在宅サービス充実を初めといたします社会保障制度の確立によりまして、お年寄り病気方々生きがいを持ち、安心して生活できる活力ある長寿社会実現、これが必要であると考えております。基本的にはそういう考え方のもとに鋭意努力を続けるべき問題であると思います。  それから次が、経済企画庁若手官僚小説の問題をお取り上げになりました。  主人公と離れてひとり暮らしをしていらっしゃる年老いた母親が、その地域子供たちやボランティアとの親しい交流や、医療福祉についての科学技術成果を十分活用した地域サービスの助けを得て、生き生きと日常生活を送っておる姿が描かれております。その他、リニアモーターカーへの時代でございますとか、企業分散の問題でございますとか、朝出勤に先立って水泳、プールへ参ります問題でありますとか、そういうものが書かれてございました。  私としても、高齢者社会の一員として生きがいを持って生活し得るような福祉社会を形成していくことが重要であると考えております。今後ともこのような社会実現に向けて、一つの自分を対象とした、将来を展望した、小説の中にそんなロマンというものを感じております。  それから、医療保障制度改革位置づけの問題についてでございますが、来るべき高齢社会に向けて国民が安心して医療を受けられるようにするため、まず良質な医療を目指した医療システム合理化効率化医療保険制度を通じての給付負担公平化、これが国政重要課題であると認識しております。今後とも、このような基本方針に基づいて必要な改革について逐次努力をしてまいりたい、このように考えております。(拍手)    〔国務大臣藤本孝雄登壇拍手
  7. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 初めに、昨年十二月の総務庁行政監察結果に基づく勧告と今回の改正法案との関連についてでありますが、この勧告は御承知のように、被保険者の的確な把握、保険料の適正な徴収、医療費の厳正な審査支払いなど、現行制度もとにおける国保事業運営の一層の適正化を図るべきことを内容とするものであります。  そこで、今回の改革とあわせまして、こうした事業運営適正化を図ることによりまして、国保の健全かつ安定的な運営が図られるものと考えております。  次に、医師と患者信頼関係を確立することは、医療行政推進していく上で極めて重要な課題でございます。このため、厚生省といたしましては、関係団体とも協力しながら、医の倫理の高揚や医療関係者の資質の向上を図り、国民が信頼できるような良質な医療が提供されるようさらに努めてまいりたいと考えております。  次に、保険者である市町村権限等についてでありますが、市町村は、医療機関から医療費請求があった場合には、これを審査した上、支払う権限を有しております。審査専門性診療報酬請求支払い円滑化の観点から、実際上は審査支払い事務都道府県国民健康保険団体連合会に委託されておりまして、市町村が直接実施するレセプト点検とあわせ、一体として適正な事務処理がなされていると考えております。しかし、今後ともその充実強化に努めてまいりたいと思います。  次に、国民健康保険団体連合会に対する厚生省指導監督権限についてでありますが、国民健康保険法上、厚生大臣国保連に対しまして事業内容報告を求めたり実地検査を行うとともに、必要があれば改善命令等を行うことができることとされております。  また、国民健康保険中央会は、各都道府県国保連を会員として設立されました民法法人でございまして、高額医療費に関する診療報酬審査など、国保事業の健全な発展のために重要な役割を果たしております。  次に、現行現物給付、出来高払い方式につきましては、過剰診療誘発等問題点指摘されますが、一方では病状に応じた医療供給、医学の進歩に対応した医療導入などの大きな長所があるのも事実であります。したがいまして、当面は出来高払い方式の欠点を是正しながら、この方式を維持し、良質な医療効率よく確保できるように努めてまいる所存であります。  次に、御指摘医療保障の問題につきましては、高齢社会にふさわしい良質な医療を目指した医療システム合理化効率化を進めるとともに、医療保険給付負担公平化を段階的に実現したいと考えております。  最後に、私の厚生行政に取り組む決意についてのお尋ねでございます。  今後、我が国は世界に例を見ないスピードで高齢化が進みますが、私は、だれもが喜べる長寿社会の建設を今後の厚生行政基本的理念とし、お年寄り社会的に扶養されるものとして位置づけるのではなく、お年寄りの経験や知識が社会の財産と考え国民の一人一人が豊かで、明るく、健康で、生きがいを持って暮らせるような社会実現するため最大限努力をしてまいる所存であります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一登壇拍手
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 既に、総理大臣厚生大臣から大部分の御答弁がございましたが、先ほど厚生大臣も言われましたように、今回の改正は、国保制度が直面しておりますいわゆる低所得者の問題、あるいは医療費地域的に非常に格差があるといったような問題につきまして都道府県役割制度的に導入をいたしたい、こういうことでございますが、その際、都道府県におかれても一部負担をしていただくことによって積極的な役割を担っていただきたい。もともと地域保険でございますから、国民健康保険制度運営安定化にぜひとも地方全体も参画をしていただくことが必要だと考えたわけであります。そういう意味では、国は従来どおりの責任を果たしてまいりますので、国が責任を回避するということではないというふうに考えておるわけでございます。  なお、これにつきまして地方負担の増がございますが、これは地方交付税特例措置等全額財源措置を講ずるということで、地方財政運営支障がないように最大限の配慮をいたしておるつもりでございます。  最後に、今後の社会保障制度に対してどういうふうに考えておるかということでございましたが、結局、将来どのような社会保障制度考えるかは、その負担給付とをどのようにするかという国民の選択の問題になると存じますが、いずれにしても高齢化の進展に伴いまして医療、年金を中心社会保障給付あるいは負担増加は避けられないのではないかと考えております。その場合、高齢化社会に入ってまいりますと、活力ある福祉社会を形成していくためにどういう制度を維持していくか、長期的に安定的な社会保障制度をつくるということが大変大事なことでございますから、ただいまからそういう事態に備えて諸般の制度施策見直しを進めていく必要があると考えておりますことはしばしば申し上げておりますとおりでございます。(拍手)    〔国務大臣梶山静六登壇拍手
  9. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 山本議員にお答えを申し上げます。  まず、国保運営と国の責任についてでありますが、国民健康保険は、本来、国民保険の一環として設けられたものであり、その運営保険料国庫負担によって賄われるべきものであるが、その運営安定化について基本的には国が責任を持って対応すべきものと考えております。  今回の国保制度見直しは、国保に対し都道府県市町村が国と同様な立場で関与するのではなく、住民に安定した医療を保障することは地域社会にとっても重要であり、また医療費増高等により国保財政危機的状況にあること等にかんがみ、都道府県市町村としても国保安定化のための条件整備に協力することとしたものであり、国の責任放棄とは考えていないところでございます。  次に、国保への地方団体負担についてでございますが、国民健康保険事業は、原則として保険料及び国庫支出金により賄われるべきものであるが、増高する医療費等に対応するため、やむなく一般会計からの繰り入れが行われている現状等にもかんがみ、国保経営安定化に資するため今回の見直しを行ったものでございます。これに伴う地方財政への影響額については所要措置を講ずることといたしており、地方団体財政運営支障のないように配慮しているところでございます。  次に、二十一世紀における社会保障制度についての所見いかんということでございますが、私も四月十三日の毎日新聞の「余録」を拝見させていただきまして大変示喚を受けた次第であります。  我が国における高齢化は、諸外国に例を見ない速度で進行しており、二十一世紀初頭には、国民のほぼ四人に一人が六十五歳以上という本格的な長寿社会が到来しようとしているところでございます。このような大きな流れの中で、長期的な視点に立って、国民が安心して生きがいを持って過ごせるような社会保障実現に向けて努力していくことが必要だというふうに考えております。  以上です。(拍手)     ─────────────
  10. 藤田正明

    議長藤田正明君) 中西珠子君。    〔中西珠子登壇拍手
  11. 中西珠子

    中西珠子君 私は、公明党・国民会議を代表して、国民会議立場から、ただいま議題となりました国民健康保険法の一部を改正する法律案について、首相並びに関係大臣に質問いたします。  総理は、医療保険制度に対する政府基本方針は、高齢化社会の到来に備えて、現在の国民保険制度を堅持しつつ、給付負担公平化を図り、国民が安心して、医療を受けられる安定的制度とすることだと言明しておられます。  しかし、給付負担公平化の名のもとに、昭和五十八年の老人保健制度創設、五十九年の健康保険法改正、六十一年の老人保健制度改革など、一連の法改正制度改革が行われてきましたが、これらは増大する老人医療費の抑制と国庫負担の削減を図り、かつまた、連帯と自助努力の美名のもと制度間の財政調整と個人負担増加を強行するものでありました。法改正のたびごとに医療保障に対する国民の信頼感が薄れ、また国の責任の低下が目立ってきているということは非常に遺憾なことであります。  警察庁の最近の発表によりますと、昭和六十二年の自殺者は全国で二万四千四百六十名、その中で六十五歳以上の高齢者が最も多く、六千百四十四名を数え、これは全体の四分の一であり、そのうち病苦などを自殺の原因、動機とする者が七五%にも達して、四人のうち三人の割合だということであります。  最近発表されました六十二年版厚生白書は、今や日本社会保障制度は欧米に追いつけ追い越せのキャッチアップ型ではなく、国民生活の質の向上を図るクオリティー・オブ・ライフ型、これを社会保障制度の目標とすると申しておりますが、本当にそうなるでしょうか。  確かに、日本は今や世界一の債権国と言われる経済大国となりましたが、一般国民生活実感はゆとりや豊かさからはほど遠いものであります。狂乱土地価格のために多くの庶民にとっては持ち家の夢は消え去り、幸いにして土地価格の高騰前に住居を手に入れた者はローン返済に追われる一方、他の先進国に比べて格段に高い食料品などの日常生活必需品や公共料金、子供の教育費などの支払いで家計は慢性赤字、ウサギ小屋に住む一般庶民は病気への不安や老後生活への不安を抱いております。  総理は、国民が安心して医療を受けられる安定的な医療制度をつくると言われ、厚生省は、医療保険の一元化、医療保障システムの長期的安定化のために改革が必要だと強調しておりますが、医療保険制度の一元化とはどのような形をとるのか、また医療保障システムの長期ビジョンとはどんなものなのか、また今回の国保制度改革案を一元化や長期ビジョンの中にどのように位置づけておられるのか、国民の前に明らかにしていただきたいのであります。総理厚生大臣に御答弁願います。  次に、法案の中身について伺います。  第一は、保険基盤安定制度創設についてであります。  これは、低所得者の軽減保険料に着目した補助制度であり、市町村国保財政基盤の安定、被保険者保険料負担の緩和などに役立つものとして一応は評価することができます。しかし、最近の所得なし世帯、また保険料六割軽減世帯の増加傾向は、高齢者の一層の増加に伴って加速度的に強まるものと思われます。このような傾向に対してどのように対応されるお考えなのか、厚生大臣にお伺いします。  第二に、いわゆる地域医療費適正化プログラムについて伺います。  医療給付及び老人保健医療費拠出金の納付に要する費用、いわゆる医療給付費等が全国的に見て極めて高いものとして、厚生大臣が指定する市町村給付費等適正化を図り、国民健康保険事業の健全化に努めるべきであり、指定市町村及び関係都道府県厚生大臣の定める指針に基づいて医療費水準の是正と国保事業運営安定化のための計画を策定することになっていますが、この市町村指定の基準厚生大臣の指針の内容を明らかにお示しください。  この安定化計画医療費抑制のみに主眼を置くと医療内容の低下を来し、患者、殊に老人へのしわ寄せとなるおそれがあると思いますが、いかがでしょうか。  さらにまた、この計画実施の結果を踏まえ、六十五年度からは、基準を超えて著しく高い指定市町村給付費等のうち、一定部分については現行国庫負担の対象外とし、国、都道府県市町村が六分の一ずつ共同負担するものとしております。これは成績の悪い地方公共団体にいわばペナルティーを科すというふうなものでありまして、国の負担は軽くなりますが、地域地域住民にしわ寄せがいくのではないかと思いますが、どうですか。またいかなる基準を定められるのか、厚生大臣の御見解を伺います。  第三は、老人保健医療費拠出金に係る国庫負担見直しについてであります。  今回の改革による国保財政体質改善に伴い、老人保健医療費拠出金に係る国庫負担率見直しを行うということで、国庫負担金を本年、早速に四百六十億円削減しています。しかし、見直しは六十五年に予定されている老人保健の加入者按分率の見直しの際に行うべきであると思いますが、厚生大臣の御見解を伺います。  第四に、地方財政への影響について伺います。  今回の改革は、六十三年度、六十四年度の暫定措置であり、改革から生ずる都道府県市町村の新たなる負担分は、六十三年度については地方交付税の特例加算を行い、また不交付団体には調整債で全額補てんするから地方への負担転嫁ではないとしていますが、六十四年度についても同様の措置をとることを保証されますか。  また、六十五年の抜本改正のときには、地方負担増、また地方への負担転嫁を暫定措置としてではなく、恒久的なものにする道を開くのではないかと懸念されるのでありますが、この二点について大蔵大臣厚生大臣自治大臣のお考えをお聞かせください。  第五に、医療供給面の問題について伺います。  診療所や病院など医療機関地域的偏在、病床数の地域格差、無医村地域の存在など、国民保険もとで平等であるべき国民の受診機会が阻害されています。保険あって医療なしと言われているこのような状況をいかにして改善なさるおつもりなのですか。自治大臣厚生大臣に伺います。  国民が本当に安心して、いつでも、どこでも、だれでも医療が受けられる安定した医療保障制度医療供給体制の確立が絶対に必要だと思いますが、最後に、総理の御所信を伺って私の質問を終えます。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、生活実感からくるもろもろの不安について、そうしてそれが医療保険制度に結びつく問題についてのお尋ねでありました。  一元化の形と長期ビジョンとでも申しましょうか、医療保険制度につきましては、六十五年度までに行うこととされております老人保健制度見直し国保制度改革の帰趨も見きわめながら、現行国民保険体制の基本を前提に給付負担公平化に向けて段階的に改革を進めていくという考え方でございます。  しこうして、今度の改革をどのように位置づけるかということでございました。  今回の改正は、現下の国保制度の抱えます問題に対して、国と地方が協力して取り組むことによりましてその運営安定化を図るものでありまして、一元化に向けての条件整備位置づけられるものであります。国保の長期的安定方策につきましては、今後さらに医療保険制度全体の中で幅広く検討する所存でございます。  最後に、安定した医療保険制度というものについての見解を求めるとのことでございましたが、来るべき高齢社会に向けて国民が安心して医療を受けられるようにするためには、まず良質な医療を目指した医療システム合理化効率化、二つ目には医療保険制度を通じての給付負担公平化、これを図ることが必要であると考えます。こういう基本的な考え方に基づいて、最終的には国民の選択ということになりますが、逐次実施していくという考え方でございます。(拍手)    〔国務大臣藤本孝雄登壇拍手
  13. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) まず、今後の医療保険制度につきましては、これまでも給付負担公平化に向けて逐次改革を実施してきたところであります。今回の国保制度改革も、したがいましてその一環としての位置づけ考えております。  さらに、六十五年度までには老人保健制度及び国保制度見直しを予定しておりまして、今後、その帰趨を見きわめた上で、現行国民保険体制の基本を前提にしながら給付負担公平化に向けて段階的に改革を進める所存であります。  次に、今回の国保改革位置づけについてでありますが、今回の改革は、国保が当面する不安定要因である低所得者問題や医療費地域差問題等につきまして、国と地方共同して取り組む仕組みをつくることにより国保安定化を図るものでありまして、一元化に向けての条件整備位置づけております。  次に、低所得者の問題でありますが、従来から国保には他の制度に比べまして高率の国庫補助を行っておりますが、さらに今回の改革案で保険料軽減相当額に着目いたしました新たな補助制度を設けることによりまして、所得なし世帯や六割軽減世帯の増加に対応できるものと考えております。  次に、指定市町村基準についてでありますが、年齢構成のほか原爆や災害その他の特別の事情を考慮いたしましても、なお全国的に見まして医療給付費等の水準が著しく高い市町村を指定することを考えております。  また、厚生大臣が定める指針では、高医療費の要因分析に対応した種々の適正化対策市町村の実施体制など、市町村が作成する安定化計画に盛り込むべき事項を具体的に示すことといたしております。  次に、安定化計画でございますが、指定市町村におきまして地域の実情に即した適切な医療費適正化等の対策の推進を図るものでありまして、医療の質の内容の低下をもたらしたり、患者へのしわ寄せをもたらすものではございません。  次に、指定市町村における基準超過費用額の共同負担制度につきましては、これは国、都道府県及び指定市町村に対しまして医療費適正化への努力を促すために設けるものでございます。また医療費全体の中でごく一部分に限定され、かつ安定化計画に基づきまして的確に取り組めば適正化が可能な部分であります。したがいまして、地域にとって過重な負担となるものではございません。  また、基準超過費用額の算定に当たりましては、年齢構成のほか、原爆や災害等の実情を考慮し、さらに一定の上限を設けることといたしております。  次に、老人保健医療費拠出金に係る国庫負担につきましては、今回の改革によりまして国保制度財政体質が改善されることを踏まえまして、特例的に高い水準となっております国庫負担率国保財政への影響にも配慮しながら調整しようとするものでございまして、御理解をお願いいたしたいと思います。  次に、六十四年度の地方交付税措置等につきましてのお尋ねでございますが、地方財政支障が生じないよう政府におきましては昭和六十三年度と同様の措置を講じてまいりたいと考えております。  さらに、昭和六十五年度の見直しにつきましては、今回の国保改革実施状況等を踏まえまして、国保の長期的安定を図る観点から見直しを行い、所要措置を講ずる所存でありますが、その際に地方財政支障が生じることのないよう適切に対処してまいりたいと考えております。  最後に、医療供給体制整備の問題でございますが、地域における医療供給体制整備につきましては、厚生省といたしましては、各地域の実情に応じて住民が必要な医療を適切に受けられるよう都道府県医療計画の作成を推進しております。また特に僻地につきましては、第六次僻地保健医療計画に基づいて必要な医療の確保のための施策を進めております。今後とも、こうした施策を通じまして医療供給体制充実を図ってまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一登壇拍手
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今回の制度改革におきまして、保険基盤安定制度、それから高額医療費共同事業の拡充、この二つにつきまして、これは昭和六十三年度及び六十四年度の措置であって、六十五年度においては見直しを行うということが規定されております。  そこで、六十三年度におきましては、所要地方負担について財源措置を講ずることとしておりますことは御承知のとおりでございますが、六十四年度の場合どうするかというお尋ねでございました。  特段の事情の変更がございませんようでしたら、六十四年度も六十三年度と同様に地方財政措置を講ずる必要があるというふうに考えております。  それから、六十五年度ということになりますと、今回の改革実施状況を踏まえまして長期的な安定を図る見地から見直しが行われるわけでございますが、その場合、見直しに伴って所要措置を講ずるということになっております。その場合、いずれにいたしましても地方財政の円滑な運営支障が生ずることのありませんように財政といたしましても適切に対処していかなければならない、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣梶山静六登壇拍手
  15. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) お答えをいたします。  六十四年度の地方財政措置等については、ただいま大蔵厚生大臣からお答えのありましたとおりでございまして、今回の制度見直しは二年間の暫定措置中心であり、六十三年度のみならず、六十四年度においても地方負担増加額が生ずることとなりますが、これについても地方財政運営支障のないよう所要地方財政措置を講じてまいる所存であります。  なお、六十五年度以降の国保のあり方に関しましては、医療保険制度一元化の具体的方策、保険料負担水準のあり方、国と地方役割分担などの基本的な問題についてなお幅広く検討を続け、国民健康保険制度充実安定化を図ることが必要と考えているところでございます。  次に、受診機会の不公平是正についてでございますが、過疎地等においてはなお医師不足の地域があり、この是正が地域医療を確保する上で重要な課題でございます。自治省としては、自治医大の卒業生の活用のほか、関係省庁、自治体病院協議会等とも協議しながら、地域医療において不足する医師の確保に努めてきたところでございまして、今後とも一層の努力をいたしてまいります。  また、過疎地等の医療の確保、充実のため、従来から不採算地区病院などに対する財政措置を講じておりますけれども、今後ともその拡充に努めてまいる所存でございます。(拍手)     ─────────────
  16. 藤田正明

    議長藤田正明君) 内藤功君。    〔内藤功君登壇拍手
  17. 内藤功

    ○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、国民健康保険法改正案について、竹下総理並びに関係大臣に質問いたします。  今、全国各地で保険料加入者負担限度をはるかに超え、払いたくても払えない人が激増し、その結果、保険料の滞納を理由保険証が交付されず、手おくれでとうとい命が失われるという冷酷かつ深刻な事態が生じ、国民の怒りの声が高まっております。本改正案は、この国民の声に全くこたえないばかりか、逆に保険料の一層の引き上げ、医療水準の切り下げをもたらすもので、国民への挑戦と受けとめざるを得ません。  国際的にも低い水準でおくれて出発した我が国社会保障制度は、国民の運動により幾つかの改善をかち取ってきたのであります。    〔議長退席、副議長着席〕  しかるに、戦後政治の総決算路線のもとで、臨調行革により年々国庫負担の削減が強行されてまいりました。政府が最近の五年間に直接削減したものだけでも五兆九千億円に上り、削減分のほとんどを国民地方自治体負担に転嫁してきました。このような社会保障福祉の切り下げは、憲法二十五条二項の定める、国は社会福祉社会保障の向上及び増進に努めなければならないという政府の重大な責務に真っ向から反するものではありませんか。総理の明確な答弁を求めるものであります。  アメリカのレーガン政権は、軍事費確保のためには社会保障費の圧縮こそが最適との道を選択しましたが、その路線の忠実なパートナーを自任してきた中曽根前内閣と竹下現内閣は、核兵器廃絶と軍事費削減の広範な世論に背を向け、軍事費増強を絶対的命題として、その財源の安定的確保のために社会保障福祉関係予算の連続する削減、さらに新大型間接税の導入さえ意図しているのであります。  総理、本法案は、以上の見地から健保本人負担を二割にし、給付を引き下げ、労働者加入保険から国保へ支出させるなど、年間三兆円近い医療保険の国の負担を限りなくゼロに近づけることをねらった、いわゆる医療保険制度の一元化を図るステップの一つではありませんか。そのために、これまで住民保険料負担国庫負担とで運営されてきた国民健康保険に新たに地方負担制度導入し、国の負担を削減しようとするものではありませんか。総理の答弁を求めるものであります。  以下、数点にわたり具体的に質問いたします。  第一は、いわゆる地域差調整システムについてであります。  藤本厚生大臣は、衆議院で医療内容の質の低下はもたらさないと答弁されていますが、既に北海道ではモデル事業が実施され、お年寄りが病院から退院を強要されるという事態が起きているではありませんか。このシステムを導入すれば、市町村はペナルティーを避けるために際限のない医療費抑制競争を強いられることは目に見えております。厚生大臣、お年寄りを病院から追い出すことなく、国民に必要なよい医療を実施することを保障されますか。  第二は、保険基盤安定のためと称して、低所得者に対する保険料軽減分にも新たに地方自治体負担制度導入する問題についてであります。  昭和六十年度の国保の納税義務者の一八・一%、二百九十二万人、つまり六人に一人が所得のない者となっています。また年間所得百五十万円以下の世帯が六二・一%にもなっており、抜本的な低所得者対策が求められているのであります。にもかかわらず、六割軽減の対象となるのは年間所得二十八万円以下、四割軽減の対象となるのは四人世帯で年間所得九十一万円以下となっており、住民税の非課税限度額以下の人であっても国保料軽減の対象にならないという厳しいものであります。本当に低所得者対策を考えるならば、このような所得制限を大幅に引き上げ、軽減枠を拡充する道こそ国民保険の精神であり、政府がとるべき道ではありませんか。厚生大臣の答弁を求めます。  第三に、政府も認めるように、国保加入者にはもともと所得の低い方が多いという不安定要因が大きいのであります。したがって、本来政府がとるべき姿勢は、十分な国庫支出を行うことであります。しかるに、この不安定要因を口実に地方自治体負担を転嫁するがごときことは国の責任放棄であり、地方財政を一層困難に追い込むものであり、本末転倒も甚だしいと言わざるを得ません。保険基盤の安定を言うのなら、国庫負担率もとの四五%に戻すことこそ政府のとるべき姿勢ではありませんか。厚生大臣並びに自治大臣の答弁を求めるものであります。  第四に、この法案と引きかえに政府が支出するという退職者医療制度への国の補てんについても、厚生省はこれを保険料の引き下げに使うことはまかりならぬという通達を出しております。保険料高騰で苦しむ国保加入者をこれくらい愚弄した話はありません。市町村への不当な介入をやめ、保険者の裁量に任せるべきではありませんか。厚生大臣の答弁を求めるものであります。  第五に、医療費の抑制を言うなら、国民の健康保持と疾病の早期発見の努力こそ優先させるべきであります。ところが、政府はいまだに労働者健康診断において成人病に着目した最低必要な血液検査や心電図検査を労働法令上義務づけておりません。速やかに改正に着手すべきではありませんか。労働大臣の答弁を求めるものであります。  また、学校保健法に基づく児童生徒の健康診断の実施状況を文部省としては全く把握していないのであります。無責任ではありませんか。文部大臣の答弁を求めるものであります。  今、国保加入者もとより、国民が切実に求めているのは、十分な医療の保障と国民負担限度を超える高過ぎる保険料の引き下げ、そして保険証の無条件交付ということであります。この願いを込めて、五百五十四自治体議会の反対決議を初め国民健康保険改悪反対の運動が力強く進められております。国民の願いに反する本法案は断じて容認することができません。  日本共産党は、国の責任国民医療国民健康保険制度充実強化を行うことを強く求めて質問を終わるものであります。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず第一番目は、いわゆる憲法二十五条問題についてのお尋ねであります。  これまでの社会保障制度改正は、今後の高齢化社会展望しつつ、社会経済情勢の推移、最近における国、地方を通ずる厳しい財政状況及び臨時行政調査会の答申、これらを踏まえまして社会保障制度安定化を図るという観点から実施してきたものでございますので、第二十五条第二項の理念に反するということはないというふうに考えます。  次が、国庫負担の削減問題でございました。  今回の国保改正は、現下の国保制度の抱えます問題に対して国と地方とが協力して取り組む、そうした国保制度安定化を図る、こういう考え方でございますので、いわゆる国庫負担の削減が目的ではない、このように考えておるところであります。(拍手)    〔国務大臣藤本孝雄登壇拍手
  19. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) まず、高医療費市町村における安定化計画に対するお尋ねでありますが、今回の措置は、地域の実情に即した適切な適正化対策推進を図るものでございまして、必要な医療を受けることを阻害したり、医療内容の質の低下をもたらすようなものではございません。  次に、国保の軽減制度でありますが、その適用対象となる所得水準は毎年見直しを行っております。また軽減割合につきましては、現行の六割、四割という水準は適切なものと考えておりまして、これを拡大することは考えておりません。  次に、国保国庫負担率でありますが、先般の老人保健制度改革等を通じまして国保財政負担は大幅に軽減されること、また国保社会保険制度である以上、国庫負担給付費の二分の一が一つの限度と考えられることから、御指摘のような国庫負担率にすることは考えておりません。  最後に、六十二年度補正予算によります一千八億円の特別交付金についてでありますが、これは退職者医療制度創設に伴いまして生じました財政影響に着目をして国保運営安定化を図るための措置でございます。したがいまして、国としては国保の安定的運営に資するよう有効に活用していただくよう指導したものでございまして、これをやめる考えはございません。(拍手)    〔国務大臣梶山静六登壇拍手
  20. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 国民健康保険に対する国庫負担率は、制度の成熟化に伴いいろいろの経緯を経ておりますけれども、現在は給付費に対して五〇%という負担割合になっているところでございます。国、地方を通ずる厳しい財政状況医療をめぐる最近の情勢から見て、種々の問題は生じているけれども、現段階としては国民保険制度もとでの国保制度の根幹を守っていくことが必要と認識をいたしております。このため、今後とも国保制度をめぐる諸般の課題に対し的確に対応できるように努力してまいる所存でございます。(拍手)    〔国務大臣中村太郎君登壇拍手
  21. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 労働省といたしましては、労働者の高齢化の進展に伴いまして高血圧症あるいは心疾患等の増加が見られますので、この疾病構造の変化にかんがみまして、なお一層労働者の健康の保持、増進に関する措置推進することを目的としまして、御承知のような労働安全衛生法の改正案を提案いたしまして、今御審議を煩わしておるところでございます。今後におきましては、この法案の成立にあわせまして、御指摘のような血液検査の必要性等健康診断項目の見直しにつきまして十分検討いたしてまいることといたしております。(拍手)    〔国務大臣中島源太郎君登壇拍手
  22. 中島源太郎

    国務大臣(中島源太郎君) 学校健康診断についてお尋ねでございました。  児童生徒の健康診断は、学校保健法に基づきまして学校において毎学年定期に行わなければならないこととされておりますし、学校現場におきましては、法令にのっとりまして適正に実施されているものと承知いたしております。  また、児童生徒の学校健康診断の結果につきましては、文部省は毎年、学校保健統計調査を実施いたしまして全国的な傾向の把握を図っているところでございます。(拍手)     ─────────────
  23. 瀬谷英行

    ○副議長(瀬谷英行君) 柳澤錬造君。    〔柳澤錬造君登壇拍手
  24. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となりました国民健康保険法の一部を改正する法律案に対して、竹下内閣総理大臣を初め、関係大臣に質問をしてまいります。  まず第一に、今や我が国の平均寿命は男性七十五・二歳、女性八十・九歳となり、男女ともに世界一の長寿国となりました。同時に、六十五歳以上の高齢者が今は全人口の一〇%程度でありますが、昭和百年には二三%と欧米先進国でもいまだ経験したことのないスピードで高齢化社会への道を進むことになります。これは高齢化社会到来というような言葉だけで済ませられるようなものではありません。  我が国を今日までこれだけの経済力を持つ国家とするために貢献された国民の皆さんが、安心して喜んで暮らしていただけるような長寿社会を建設すべきであります。その青写真を作成するのが政治であり、そのために、この国会は本音で議論をして、それを実現させるのが私たち政治家に課せられた使命でありましょう。このような基本的な姿勢について、竹下総理の御見解をお伺いいたします。  第二としては、この国民健保法の適用を受ける人は約四千五百万人であり、国民の四割近くの人々が対象となる重要な法律であります。今回の改正案を見ると、国も地方自治体負担増とならないようつじつまを合わせており、しかも保険料は一世帯千七百円安くしますというのですから、まあ一歩前進したものと評価をいたします。  しかし、六十一年度決算によりますと、全国三千二百七十市町村のうち、三百三十七市町村が赤字となっており、その額は千二百四十五億円です。六十三年度、六十四年度は今回の措置で明らかでありますが、六十五年度以降はどうなるのか、このままの延長でいくのか、抜本的改正考えているのか、この点、厚生大臣の御見解をお聞きいたします。  第三としては、今回の改正案内容について具体的問題を質問してまいります。  一点目に、医療費地域差の問題です。  府県単位で見るならば、一人当たりの実績医療費は最高二十一万七千円であり、最低十万二千円の二・一倍でありますが、これを市町村単位で見てみますと、最高は四十二万九千円であり、最低は七万円と、その格差は六・一倍と開いております。この要因は何か、どう分析しているのか、そしてどのような対策をもってこの国民健保を安定化させようとしているのかです。  二点目は、保険基盤安定制度についてです。  国民健保加入者の中で七百五十万人という低所得者に対する保険料軽減措置は、今回の方法程度で大丈夫なのですか。今の社会情勢からすれば、これら該当者はますますふえていくと思うのですが、その点どのような予測をして、どう安定させようとしているのかです。  三点目は、高額医療費共同事業についてです。  この共同事業の構想はよろしいです。ただ、だれも好きで病気になり、入院する人はいません。社会情勢の変化に応じて病気も複雑となり、予想外の治療費を要求され、それで家庭が破滅しかねないでいる例もあります。この際、この共同事業を思い切って強化拡充したらと思うのですが、いかがですか。  四点目は、この国民健保の安定化目的として他の被用者保険負担増を求めるようなことは断じてしてはならないと思うのですが、その点は明確になっているのですか。  以上の諸点について厚生大臣の明快な御所見を求めます。  第四として、地方財政についてです。  今回の法改正によって、地方自治体負担増加分は地方財政支障の来さないよう措置されていますが、六十五年度以降も地方財政負担増はないと確認してもよろしいのかです。  また、負担分を地方交付税で補てんするというやり方をとっていますが、本来、地方権限責任を持たせるのであれば、むしろ国の税財源そのものを地方に移譲するという方法をとるのが本筋ではないかと思うのですが、これらの点については自治大臣の御見解をお聞きいたします。  第五としては、各府県の地域医療計画についてであります。  今回の改正で、都道府県国民健保の運営に関与することになりますが、これは都道府県権限責任を持って国民健保の運営にかかわっていくことが望ましいとする我が党の主張に沿うものであり、歓迎いたします。  都道府県医療費適正化に果たすべき役割は極めて大きいものがあります。しかるに、昭和六十年に医療法が改正され、各都道府県地域医療計画を策定することになっておりますのに、策定したのは昨年末でわずか十七都道府県です。これは早期に計画を策定するよう指導すべきであると考えますが、厚生大臣の御答弁を求めます。  最後に、総理に申し上げたいのです。  これだけの経済力を持った日本として、国民生活は、日本人の心は豊かになったのでありましょうか。今や我が国国民医療費も十八兆円になりました。これはGNPの五%です。それでもこれが有効に使われて、国民の生命が保持され、喜んで生活できるのであれば安いものです。しかし、時折、新聞が報道していますが、老人がだれにも見守られず、一人寂しく息を引き取って、そのまま何日間も放置されていたというのです。これほど非人道的なことはありません。総理、このようなことがあってよろしいのでしょうか。胸が痛みませんか。  国の価値は、GNPの高さではありません。今こそ物の豊かさとともに心も豊かになり、隣人を愛し、だれもが日本人として生きていてよかったと誇りと喜びを感じ、人間的幸福感を味わえる真の福祉社会をどうやって誕生させていくかです。それが政治であり、私たち政治家責任でありましょう。そのために竹下総理がどう御指導なさる御決意か、お伺いして私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手〕。
  25. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず最初の質問は、長寿社会建設についての基本的な姿勢、これでございます。  人生八十年時代を迎えて、国民の一人一人が長い生涯を安心して生きがいと喜びを持って過ごせるような社会実現する、このことが重要であることは申すまでもありません。  このため、一昨年、長寿社会対策の指針として策定をいたしました長寿社会対策大綱、これに沿いまして、一つには高齢者の雇用・就業対策、二番目には公的年金や老人医療の安定的運営の問題、三番目には保健・医療福祉サービスの供給体制の整備など、これらの指針を踏まえながら積極的に推進してまいりたい、このように考えておるところでございます。  それから、最後に御指摘になりました、だれもが日本人として生きていてよかった、そういう誇りと喜びを感じ、人間的な幸福感を味わう真の福祉社会の建設、こういう御意見でございました。私も同じように最重要課題であると認識をしております。  さらに、今日、経済力を持ち、あるいはGNP、そういう数字の上の物の豊かさ、確かに世界一がいっぱいございます。しかし、真の心の豊かさ、今御指摘なさいました日本人として生きていてよかった、あるいは昔はよかったなあではなく、今の時代に生きていてよかった、このような基本的考え方をもって今後政治の基本に据えるべきものである、このように考えております。(拍手)    〔国務大臣藤本孝雄登壇拍手
  26. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) まず、六十五年度以降の国保制度につきましては、今回の改革実施状況等を踏まえまして見直しを行い、国保の長期的な安定が図られるよう所要措置を講ずる所存であります。  次に、医療費地域差についてでございますが、この原因としては人口の年齢構成の相違のほか、地域生活習慣や診療パターン、ベッド数等のさまざまな要因が複雑に絡み合って生じるものと考えております。  今回の改革案におきましては、高医療費市町村における安定化計画の策定及びその実施に国、都道府県市町村が一体となって取り組むこと等が盛り込まれておりますので、これによりまして国保安定化が図られるものと考えております。  次に、保険基盤安定措置につきましては、当面、保険料軽減世帯の割合がふえていくものと見込んでおりますが、保険料軽減相当額を完全補てんする今回の措置によりまして国保安定化が大きく図られるものと考えております。またこの措置実施状況等を踏まえまして、六十五年度におきまして見直しを行い、所要措置を講ずる所存であります。  次に、高額医療費共同事業についてでございますが、今回の措置によりまして共同事業事業規模が相当大幅に拡充されます。その関係国保安定化に大きく寄与するものと考えております。またこの措置につきましても、その実施状況等を踏まえまして、六十五年度において見直しを行い、所要措置を講ずる所存でございます。  次に、被用者保険とのかかわりでございますが、今回の改正に当たりまして、国保安定化目的として被用者保険負担増を求めることは念頭にございません。  次に、地域医療計画についてでありますが、厚生省といたしましては、都道府県に対しまして計画を一日も早く作成し、その円滑な推進を図るようあらゆる機会をとらえて指導しているところでございます。現在、都道府県におきまして医療計画の作成作業が精力的に進められておりまして、既に全体の六六%、三十一道府県におきまして公示され、本年度中にはほぼ全県で完了する見込みでございます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣梶山静六登壇拍手
  27. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 柳澤議員にお答えをいたします。  私に対する質問は、六十五年度以降の地方負担等についてでございます。  今回の見直しは、国保制度安定化を図るため、六十三年度及び六十四年度の暫定措置中心として行うこととしたものであり、六十五年度以降の国保のあり方に関しましては、今後、医療保険制度の一元化の具体的方策、保険料負担水準のあり方、国と地方役割分担などの基本的問題について幅広く検討を行い、必要な措置を講ずることといたしているところでございます。  なお、今回の見直しに伴う地方負担増加額の全額について地方交付税総額の特例加算など所要の財源措置を講じており、見直し趣旨をも勘案し、この措置が適当と考えているところでございます。(拍手
  28. 瀬谷英行

    ○副議長(瀬谷英行君) これにて質疑は終了いたしました。      ─────・─────
  29. 瀬谷英行

    ○副議長(瀬谷英行君) この際、お諮りいたします。  本院法制局長浅野一郎君から法制局長を辞任いたしたいとの申し出がございました。  同君の辞任を承認することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 瀬谷英行

    ○副議長(瀬谷英行君) 御異議ないと認めます。  よって、承認することに決しました。      ─────・─────
  31. 瀬谷英行

    ○副議長(瀬谷英行君) つきましては、この際、法制局長の任命についてお諮りいたします。  議長は、法制局長に中島一郎君を任命いたしたいと存じます。  これを承認することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 瀬谷英行

    ○副議長(瀬谷英行君) 御異議ないと認めます。  よって、承認することに決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午前十一時三十六分散会