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1988-01-28 第112回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年一月二十八日(木曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   昭和六十三年一月二十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 藤田正明

    議長藤田正明君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  宮崎秀樹君から海外旅行のため九日間の請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤田正明

    議長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  よって、許可することに決しました。      ─────・─────
  4. 藤田正明

    議長藤田正明君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る二十五日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。小山一平君。    〔小山一平君登壇、拍手〕
  5. 小山一平

    小山一平君 私は、竹下内閣が誕生して最初の通常国会に当たり、日本社会党護憲共同を代表し、竹下総理を中心に質問いたします。  昨年十一月二十七日召集された第百十一回臨時国会は、短い会期ではございましたが、総理国会答弁を通して、ひ弱どころか、なかなかしたたかな総理であるとの印象を強くいたしました。総理答弁は慎重にして丁寧ではありますが、言質を与えない手がたさと守りのかたさを浮き彫りにしたからであります。  しかし、そのしたたかさは有能な官僚的答弁と言うほかなく、安全運転ではあるが行く先不明の感を禁じ得ません。政治理念平和概念の哲学を抜きにした政策論に終始するようでは、竹下政治官僚行政の範疇を超えることはできないでありましょう。  現在、日本経済、文化などの分野にとどまらず、外交防衛などあらゆる面にわたって歴史的転換期に立っていると思います。これに対処するには、確たる理念のもとに誤りなき方針政策が準備されなければなりません。  私は、この観点に立って質問を進めますが、一九八八年は竹下政治第一歩の年でありますので、総理は、今日はいかなる時代と認識されているのか、また、竹下政治は二十一世紀に向けてどんな目標を持って進もうと考えているのか、まずこの二点を明らかにしていただきたいと思います。  去る十二月八日、ワシントンにおいてレーガン米国大統領とゴルバチョフ・ソ連共産党書記長との間でINF全廃条約が調印されました。このニュースは全世界に明るい希望のともしびとなって歓迎されたのであります。INF両国が保有する膨大な核の一部分にすぎませんが、その廃棄は、核なき世界実現に向けてその第一歩となり得る可能性を持った歴史的出来事であると受けとめられたからであります。  核兵器の廃絶、軍縮、平和の流れを定着させ、緊張緩和時代を築くことは、全世界共通の願いであります。この願いを実現するには、多くの困難と障害が横たわっていることはもとよりでありますが、平和憲法を持つ我が国は先頭に立って努力すべきであります。それが総理の言う世界に貢献する道であります。  総理は、米ソ両国INF全廃条約認印をどのように評価されておりますか。また、世界緊張緩和の新時代に向かおうとする流れをどのように見られ、どんな役割を果たそうと考えておられますか。  御承知のように、米国は、ソ連世界の赤化を企図する膨張主義軍事的脅威と位置づけ、ソ連は逆に、米国は危険な帝国主義による軍事的脅威とみなし、この不信対立によって両国軍事優先主義をとり、果てしない軍拡競争に狂奔し、ともに軍事大国を築いたのであります。日米安保条約日米同盟関係は、この枠組みの中に成り立っているのであります。  米ソ両国は、巨額な軍事費先端的頭脳、技術、資源を過度に軍事部門に投入し続けた結果、民生部門の衰退と空洞化をもたらし、米国は双子の赤字と呼ばれる債務を累積して世界最大債務国に転落し、ソ連日経済的破局の危機に陥ったのであります。そして、ともに国際政治における威信の保持にも暗い影を落とす状況を招いたのだと思います。米国のいら立ちはここにあると言わなければなりません。  米ソ首脳INF全廃条約に調印して、さらに核兵器削減に熱意を見せるに至ったのは、軍事費を減らして経済活性化を図らざるを得ないと考えたからであると思います。対ソ強硬論軍拡論者で知られたレーガン米国大統領が、今までのソ連観を見直すことを公式に発言していることでもわかるように、対立を克服して協調の道を進もうとしているのであります。  竹下総理、あなたは現在もソ連脅威論に立っておられますか。また、ただいま私が申し述べた認識についてあなたの御所見を伺います。  総理は、中曽根政治を継承すると言われましたが、何を継承しようとするのでしょうか。現在、国民の目に最もはっきり見えているのは、明年度予算案において防衛費を積極的に突出させ、それを恒常化しようとしていることと、昨年、中曽根総理選挙公約を踏みにじり、欺瞞と複雑怪奇に満ちた大型間接税を強引に導入しようとして野党と国民の総反撃を受けて廃案になったのでありますが、総理は装いを変え、新型間接税と称して国会に提出しようとしていることであります。いずれもあしき遺産の継承と言うほかありません。  中曽根総理は、米国要求と期待にこたえ、日本列島不沈空母、三海峡封鎖を唱え、武器輸出原則形骸化シーレーン防衛SDI参加防衛費一%枠突破等々、防衛費の増大と戦力の増強を強行してレーガン大統領の信頼を高め、ロン・ヤス関係を誇示したのであります。我が国軍事費は、NATO算定方式によればイギリス、フランス、西ドイツをしのぎ、既に世界第三位の軍事費大国となっております。中国アジア諸国のみならず米国においても、我が国軍事大国化を予見し、危惧する声も聞こえる状況であります。  竹下総理、あなたが日本憲法制約下にあって専守防衛に徹し軍事大国にならないとおっしゃるのであれば、中曽根路線の継承ではなく、全面的に見直しを行うべきであります。総理の御見解を伺います。  防衛費GNP一%枠厳守方針は、日本軍事大国にならないあかしとして重みを持ち、説得力を持っていたのであります。総理は英断を持って一%枠厳守方針に戻すべきであると思います。総理答弁を求めます。  また、在日米駐留軍労務費日本肩がわりすることを訪米の手土産にするなどは、見え透いたこそくの手段と言うほかありません。なお、なし崩し的に肩がわり額を増大し、地位協定を改定するなどは不見識であります。総理考えを明確に示していただきたい。  米国日本に対する防衛費の増大、戦力増強日米協力など際限のない高圧的要求は、日米安保条約が避けがたい重圧となってのしかかっていることを示しております。ソ連脅威の虚構を払拭しない限り、米国は自国の軍事費削減を余儀なくされれば、ますます日本にその肩がわりを迫るでありましょう。政府がその要求と圧力に迎合し、受け入れ姿勢をとり続けるならば、自衛隊米国対ソ戦略上最も危険な最前線基地戦力として、民間も巻き込んで米軍戦力の中に組み込まれながら軍事大国が形成されていくであろうことを警告いたします。  去る十九日、瓦防衛庁長官カールッチ米国国防長官による初の日米防衛首脳協議において、「日本有事の際の米国部隊の支援を円滑にする研究」、「自衛隊次期支援戦闘機」の日米共同開発に続いて、他の装備でも共同開発を推進することが日米経済摩擦の解消のために必要であると意見の一致を見たと報じております。  これは、日米軍事同盟の強化であり、ただいま私が警告した道を足早にたどるであろうことが憂慮されるのであります。日本米国軍事面での要求受け入れれば、経済面での要求摩擦が緩和されるとお考えでありますか。それはまことに甘い観測であり、中曽根政治が失敗した道であり、危険であります。総理及び防衛庁長官見解を明らかにされたい。  総理は、昨年政府が決めた中期防衛計画十八兆四千億円の総額明示方式限度額が決定されているので心配ないと恐らく言われるに違いありません。私は、十八兆四千億という巨額な数字そのものも問題だと思っておりますが、米駐留軍労務費肩がわりツケ買いによる二兆六千億円の国庫債務負担行為などを考慮いたしますと、年次終了時には限度額突破の危険があると思います。絶対にないと断言ができますか、明確にしていただきたい。さらに、総額明示方式に伴う使用分ツケ買い分、残額、各年度別主要調達品の単価、数量など、その内訳を国会に提出することを要求いたします。ここでお約束願います。  来年は参議院選挙の年でありますが、自民党有力議員が今から来年も衆参同日選挙がよいと言っていると伝えられていることはもってのほかのことであります。憲法に規定されている二院制は、我が国議会政治の運営と発展の根幹であります。常に両院がそれぞれの独自性と権威を発揮して、議会制民主主義の健全な発展に努める責務を持っているのであります。衆参同日選挙は、参議院を軽視し、その存在意義を揺るがすものと考えられます。参議院無用論を助長するおそれもございます。我が国議会政治にとって自殺行為にも似た衆参同日選挙は避けるべきであると思います。  解散権は、もとより内閣の有する基本的権限でありますから、その行使は、総理の厳正な良識と良心にゆだねられていると言うことができましょう。総理は、衆参同日選挙は望ましくないとの意見を持っているらしいと聞いておりますので意を強くしておりますが、ここで改めて総理見解を伺います。  総理は、施政方針演説政治倫理確立、清潔な政治と規律ある行政の確立に努めると述べられておりますが、現状はどのような実態であるとお考えですか。  自民党長期政権が続く中で、政界、官界、財界が癒着し、金権腐敗構造を生んでおります。選挙にはますます巨額の金がかかるようになって金権選挙は激化の一途をたどっておりますが、この現状が改められない限り清潔な政治が生まれるはずがありません。  総理は、政治資金づくりの名人であると言われておりますが、私は、筋の通った政治資金集めは政党にとって欠かせない重要なことだと思っております。ただ、その中身が問題なのであります。  自治省発表の昨年度政治資金収支報告書によれば、対前年比一五・一%増の千六百七十五億円を超え、史上最高額となっています。さらに、個人パーティーなどの抜け穴があって、報告書にあらわれない巨額な金の動きは全く不透明で、やみの中にあって見ることはできません。また、重視すべきことは、報告書によって明らかになっている政治資金も、派閥や個人の集めた金額が政党のそれを上回っているのであります。金権腐敗を生みやすい構造が一層進行していることを読み取れるのであります。  私は、三木元総理の清潔な政治金権政治追放政治姿勢を高く評価しておりますが、三木内閣当時改正された現行政治資金規正法附則第八条は、改正後五年を経過した時点で企業献金個人献金に切りかえる見直しを義務づけております。五年はおろか十数年も経過しているのに、政府がその見直しを検討したという話を聞いたことがありません。総理自民党はこの法律を尊重する気は全くないのでありますか。  昨年、自民党選挙制度調査会政治資金小委員会は、企業献金最高額を現行の一億円から二億円に引き上げようという案を出しました。現在でも政治資金財界に過度に依存しているのに、さらに依存度を高めようとする姿勢を許すことはできません。政府財界金持ちを優遇する不公正税制の改革をちゅうちょする要因も、勤労国民に対する過酷な税負担や弱い者泣かせの政策も、自民党政治財界依存の体質にあると断ぜざるを得ません。この形をよしとしているようでは、総理の言われる政治倫理確立も清潔な政治も絵そらごとと言うほかありません。  総理は、政治資金規正法を改悪して企業献金限度額一億円を二億円にするような暴挙はやらないと確約すること、また、現行法見直しをどう進めるか、あわせて総理政治倫理確立に対する見解について御答弁をお願いいたします。  総理訪米について伺います。  総理は、先日の日米首脳会談は成功で、外交にも自信を持ったと新聞は報じておりました。従来の方針の範囲を超えた在日米軍労務費日本側負担を初め、対米配慮、譲歩ばかりが目に映るだけで、日本として何を主張し、何を得たのか、全く不明であります。  包括貿易法案歳出法に盛り込まれた対日制裁条項の削除、半導体をめぐる報復の解除なども論議されなかったのでありますか。米国ドル安防止の決め手である双子の赤字を是正することに真剣に取り組むよう主張すべきことは主張したのでありますか。懸案の農産物十二品目の自由化問題、米国企業の公共事業参入問題など、どのように処理されるようになったのか。自己主張を遠慮するようでは主体性のない追従外交と言うほかありません。  対米約束を忠実に実行することは、国際信義上当然のことであります。我が国にとって不当と思われることや合意できる限界を主体的に主張することなく、実行困難な約束をその場しのぎに重ねるようなことがあれば、不信摩擦を一層激化することになると心配されるのであります。総理米国を満足させることにきゅうきゅうとしておられるような姿に見えたのは、私の偏見でありましょうか。私は、日米関係で最も不幸なことであり、遺憾なことであると思っていることは、多くの対立摩擦のあることではありません、対等の立場で話し合いによって問題解決に当たるという基本的条件を欠いていることであります。  今、最も深刻なのは、日米間の農業問題であります。日本農業の存立を危うくするようなことにはならないのか。結論を引き延ばして既成事実ができ上がっていくというのが、竹下流のいわゆる調整能力と言われるもののように思えてなりません。気がついてみたら大変なことになっていたでは、危険この上なしと言うほかありません。処理の見通しを明らかにして、早期に国内対策の万全を期すべきであります。いたずらに不安や不信を募らせることは無責任であります。  総理訪米が成功であったと言われるのであれば、具体的にその成果の内容を明らかにすべきであります。答弁を求めます。  六十三年度予算案について伺います。  政府は、中曽根内閣時代の一律削減緊縮一本やり予算から、NTT株式売却益社会資本への活用によって積極型予算に転換した財政再建内需拡大を図る両立て予算であると宣伝しておりますが、六十二年度当初予算対比で二割増の公共投資も、本年度補正後の比較では横ばいにすぎません。  政府は、内需拡大社会資本整備産業構造調整をうたっておりますが、厳しい内外経済社会の変化に対応するため、実績一律主義によらず、どのような優先順位によって予算重点配分をしているのでありますか。  私は、防衛費突出国民生活、福祉、教育予算圧縮の二極分化に何の変化もなく、中曽根内閣時代政策を踏襲していると思います。いかがでありますか。中曽根内閣の出発時の五十八年度を基準とすると、この五年間に防衛費三四・四%、社会保障費一三・六%、文教関係〇・八%の増加となっており、逆に中小企業対策費は二〇%、食糧管理費は実に五〇%化のマイナスとなっております。次の世代を担う子供たち学校教育や、豊かな人間形成生活に不可欠な文化関係費などの増額、充実を図るべきであります。  総理は、「好老社会」という珍語を発明されましたが、意味不明であります。高齢化社会に最も重要なのは、年金制度医療保険制度充実であり、老人に必要な社会施設日常サービスの提供であります。しかるに、前内閣は、福祉予算の国の負担分の軽減に努め、それを国民と自治体にしわ寄せをするなど福祉を後退させてきましたが、竹下内閣もその政策を継承し、六十三年度予算案はさらに国民健保国庫負担を地方に転嫁し、生活保護費を戦後初めて削減しているのであります。高齢化社会に対処する温かい配慮はどこにもございません。これが総理の言う「好老社会」を目指す政策でありますか。私は、社会保障費の増額と充実要求いたします。総理並びに大蔵大臣答弁を求めます。  次に、議会政治大型間接税について伺います。  税構造で最も問題なのは不公正税制です。納税者が最も不満を募らせているのは、トーゴーサンと呼ばれる不公正であり、キャピタルゲイン資産課税の軽課、多国籍企業税逃れ等であります。いずれも資産家金持ち巨大企業等が不当に税の優遇を受けている実態であります。例えば、上場株式時価総額は、昭和五十七年は約百一兆円、年々増加して六十二年十一月末には三百六十六兆円を超える異常な高騰を示しております。これは我が国GNP国民総生産)を上回っております。このキャピタルゲイン原則課税をすると兆単位の税収が予想されるのであります。これが見逃されているのは驚くべきことであります。  納税者や我が党が多年にわたって政府要求し続けてきたのは、これらの不公正を是正する税制改革であります。政府が今最も急がなければならないのは、徹底的に不公正を是正して、納税者の税に対する信頼を回復することであります。不公正是正をどのようにされるのか、答弁を求めます。  総理大型間接税導入を急がれるのは何ゆえでありますか。選挙公約遵守議会政治の生命とも言うべきものであります。今は亡き大平元総理が、間接税導入を総選挙主要テーマとされたのは、憲政の常道に忠実な立派な態度であったと思います。大平さんの提示した間接税は、国民の反対に遭って挫折はしましたが、議会制民主主義を尊重した勇気ある態度に敬意を表したいのであります。  総理が、さきの総選挙の公約に反する大型間接税導入我が国にとって必要だという政治信念に基づくものであるならば、憲政の常道に立って、総選挙によって堂々と国民にその是非を問うべきであります。  竹下総理、私は、個人的にはあなたに立派な総理になってもらいたいと思っております。この問題を三百議席のうちに片づけておこうなどと考え中曽根総理と同じように筋の通らない無理をやるのはおやめなさいと忠告をいたします。慎重にお考えの上、御答弁願います。  次に、経済政策転換について伺います。  今日、我が国経済大国世界一の債権国金余りなどと言われておりますが、国民一般は豊かさを実感として持つことはできません。国の大きな経済力とは裏腹に、ウサギ小屋と呼ばれる劣悪な住宅、諸外国に比べ極端におくれた下水道など生活社会資本、加えて円高メリットの反映もない物価水準などが生活小国実態であります。一人当たり国民所得世界トップレベルという統計と生活実感のギャップをどのようにして埋めていかれるのでありますか。  総理は、著書の中で、日本は貧富の差が著しく少なく、所得の平等化が進んだ国だと述べております。私も一時そのように思ったこともありましたが、現在は違います。目に見える所得の裏側で、不動産あるいは金融資産などを持つ者と持たざる者との間に際立った新たな不平等が拡大をしております。持たざる者の不満と憂うつは募るばかりであります。土地の暴騰、株価の高騰などによって生じた格差拡大の不平等に対し、総理はどのように対処されますか。  経済政策の転換に関連して、昨年春、経済審議会特別部会は、「低い居住水準」、「高い生計費」、「長い労働時間」の是正が緊急で必須の課題と指摘をしております。これだけでは不十分であるとは思いますが、いずれも緊急重要課題であります。この三項目についても、その対策目標見通しについて総理の御意見をお伺いいたします。  財政再建については、ついきのうまで財政当局さえ目標達成は不可能と観念していたと思いますが、六十三年度は一兆八千三百億円と、従来の年度平均赤字国債削減額五千億円の三・六倍の削減を行うこととなっており、政府目標達成の明るい見通しをうたっておりますが、私は疑問を感じないわけにはまいりません。  予想外税収増加に助けられた六十三年度予算編成ですが、地価の高騰株式市場の活況に伴う税の自然増収の背景がさま変わりしている情勢のもとで、内需に明るさが見えるというだけで政府の見込んでいる税収には不安を感じます。その心配はございませんか。  政府財政再建の軌跡をたどってみると、短兵急に目標を追い過ぎて、冷厳な経済原則に手痛いしっぺ返しを食らい、常に挫折を繰り返してまいりました。中でも五十六、五十七年度、当時の渡辺蔵相による税収過大見積もりは大きな狂いを生じ、赤字国債削減計画も失敗した経験は貴重な教訓であります。六十三年度にその危険がないとは言えません。いかがでありますか。  さらに、六十二年の大蔵省の試算によれば、六十五年度赤字国債脱却には今後引き続き三兆円程度の税収増が必要となっております。その自信がございますか、大蔵大臣答弁を求めます。  文化摩擦問題について伺います。  諸外国との経済摩擦に大きな関心が払われておりますが、この根底に潜む文化摩擦についても意を用いなければなりません。  総理、現在の我が国政治には血の通った人間愛が欠けておりませんか。前総理単一民族論、高い知識水準、良好な治安といった自国優越の手前みそが物議を醸したことは記憶に新たなものがあります。万民平等の人間愛に立って島国根性の排他性を改めることが、国際化時代に対応する重要な課題であります。  我が国外国人受け入れは、欧米先進国への窓は大きく開きながら、救援を求める貧しい人々には冷淡で、東南アジア難民受け入れなどはその典型であります。また、途上国からの留学生が、この急激な円高の中で生活に窮し、学業を放棄してバイトに駆り立てられている現状に、国はどれほど援助の手を差し伸べているのでありましょうか。また、超経済大国我が国発展途上国からの労働者受け入れを排除をしようとする政策は、再検討、見直しが必要だと思います。  総理が提唱する「世界に貢献する日本」になるためには、これまでの偏狭な国家観を捨て、難民はもとより、広範な外国人受け入れ留学生援助など、人間愛に立たなければできないと思います。  また、中国残留孤児悲劇は、かつての軍国主義国策犠牲者であります。戦後四十年の対策は温かい配慮を欠き、政府十分責任を果たしているとは言えません。  例えば、肉親にめぐり会えなかった多くの孤児たちが帰国した場合には、日本国籍を取得しなければなりませんが、その際、裁判所費用が五万円必要となります。この費用はだれが賄っていると思いますか。ボランティアの人々の献身的な募金活動によって辛うじて賄っているのが現状であります。経済大国政府が、この程度の金も惜しんでいるのであります。住宅問題、日本語学習職業指導などの不備によって、宿命の悲劇を背負った孤児たちが、希望の帰国ができた後に再び新たな悲劇を生んでいる事例は枚挙にいとまないのが現状であります。  今後、一千世帯の孤児たちが帰国してまいります。総理、今日までの残留孤児対策を総点検して、温かい血の通った責任ある対策を講じていただきたいと思います。中国日本に再び家族が別れ別れに分断している家もございます。御承知のように、養父母の生活問題もございます。さまざまな難問題が不幸な孤児たちの上にのしかかっております。総理の温かい誠意ある御答弁を御期待申し上げます。  国土利用と「ふるさと創生」について伺います。  昨年は狂乱的土地の暴騰に驚き、困惑し、慌てふためいた年と言えましょう。人々はどうして生まれ育った美しいふるさとを捨て、排気ガスが充満し、ウサギ小屋と言われる居住環境、長時間交通ラッシュにもまれる通勤にも屈せず東京を目指すのでありましょうか。日本政治、行政はもとより、産業経済中枢機能、高度化した情報などすべて東京に集中して、働く場所と機会を提供しているからにほかなりません。  総理は、著書に、「「ふるさと」とは、日本人が日本人として生きていく上で誇りにできるようなしっかりとした生活と活動の基盤」であると述べています。まことに立派なことを述べていらっしゃいます。しかし、ふるさと、特に農山村の現実は過疎が進行し、衰退や崩壊を招いて病み疲れております。島根県出身の総理は、この姿を一番よく知っていらっしゃるはずであります。  おくればせながら、東京に集中している中枢的機能の地方分散が叫ばれ、総理も一省庁一機関の地方移転をというまことにささやかな提案をしておりますが、今日までこの問題の重大さに気がつかなかったのではありません。  大平元総理の田園都市構想、一時は流行語のようは広がった地方の時代、いずれも大都市への人口集中、異常な過疎、過密、地方の衰退現象などの重大さに気がついて、長い歴史が生んだ地域産業、多様な地域文化の復権と地域の復興によって、豊かで活力に富んだ地域生活と均衡のとれた国土基盤を確立すべきであると考えたのであります。総理の「ふるさと創生論」も同様の趣旨だと思いますが、違いますか。  残念なことに、田園都市構想も地方の時代も、大空を鮮やかに彩って消える花火のように、ひととき人々に大きな夢を抱かせながらあっけなく消え去っていったのであります。総理、私も「ふるさと創生」には大賛成でありますが、あなたがよほどの知恵と蛮勇を振るって対処しなければ、これも花火に終わる運命にあると思います。  総理が蛮勇を振るわなければならない第一は、行政の中央集権構造を打破して地方自治に光を当て、自主性、創造性を発揮して、その責任によって活力ある地方自治が展開できるようにすることであります。  新憲法に「地方自治」の章が設けられたのは、明治憲法下における強固な中央集権的官僚行政の弊害を反省し、地方分権によって民主的で強固な国家基盤を確立することを意図したはずでありますが、いかがでありますか。  今や中央集権は一層強化され、中央は地方に君臨しているかに見えます。中央が金と権限を一手に握り、全国画一的川行政と各省庁の思いつき政策を押しつけ、地方の特殊性、多様性、創造性に基づく責任と活力に富んだ行政展開を阻んでいるのであります。  そして、今や地方団体、利益団体は、国に対するたかりと物もらいの思想に取りつかれ、自主や自治の精神を見失っている現状には慨嘆の念を禁じ得ません。これは偶然に生まれてきたのではありません。長期にわたる自民党政権の中央集権的官僚行政構造のつくり上げた結果であると言わなければなりません。  総理、このあしき構造をどのように認識されておりますか。この構造にメスを入れ、財源と権限を大幅に地方に移譲し、地方自治の確立を図るべきであります。一たん握った権限は絶対に手放すまいとする官僚相手では、総理も容易ならざる難題であることは承知しております。しかし、これなしには総理の「ふるさと創生」も絵にかいたもちにすぎず、また、東京への一点集中の解消も不可能であることは明らかであります。総理の所信を伺います。  さて、総理、年末の予算復活折衝というのは、あれば一体何ですか。年末多忙の時期に金と時間を費やして、地方からどんどんと陳情団を上京させ、各省庁や議員会館を埋め尽くすあのありさまは異常と言うほかはありません。結局は、卑屈にぺこぺこ頭を下げさせて恩を売りつけていると言ったら間違っておりますか。竹下政治はあんなそらぞらしい猿芝居はやめた方がいい。総理の決断を求めます。  総理中心の質問を続けてまいりましたが、総理の誠意ある答弁を求めて私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
  6. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、私に対する第一問は、今日の時代認識と二十一世紀への目標、このことであります。  今日は、内外ともに大きな変動のただ中にあります。国際経済の枠組みが日本、西欧及び米国の協調によって支えられる時代、このように変化してきております。このため、我が国の責任はかつてなく重いものとなっておりますので、世界の新たな経済秩序の構築と世界平和の推進のための政治経済的貢献、これが不可欠であります。国内的には、産業構造を初め国内社会経済秩序の国際経済社会への調和、これを国民生活充実に生かしていくということであると思います。  二十一世紀に向けては、世界に開かれた社会、真の豊かさを持つ文化経済国家、これを創設することであります。このためには、内需主導型経済成長、産業構造転換、市場開放の推進、そして土地税制、教育の改革、これらに取り組んでいくということが大切なことであると認識をいたしております。  次のINF条約の評価と我が国の役割についてお答えをいたします。  INF条約の評価につきましては、小山さんの御見解と私どもの見解と同じくするところも多々ございました。総じて申しますならば、INF条約が署名されてグローバルな全廃が実現されることとなったことは、これは心から歓迎することであります。  本件条約は、既存の核兵器を初めて削減するとともに詳細な現地査察を規定いたしたものでありますから、核軍縮のまさに第一歩として評価すべきである。同時に、軍備管理・軍縮の分野におきましては、戦略核兵器などの問題が依然として残っておりますほか、地域紛争も継続しております。  東西関係の現状は、総合的な観点から見るならば、そういうまさに第一歩を印したという喜びと、一方、現実的には楽観を許すことのできないという状態であろうと思います。  我が国としましては、より安定した東西関係を構築するため、米ソ間で実りある対話が継続されるよう、引き続き西側の一員として米国の立場を支持し、積極的な努力を続けるべきであると考えます。  そこで、米ソ関係を軸といたします東西関係は、基本的には依然として現実的に対立関係にある、こういう認識の上に立ちますと、この対話というものが、対立の存在を前提として、その対立のレベルを下げるための話し合いである、現実的にはそう認識しなきゃならぬではないか。  我が国としては、東西関係においては西側の一員であり、そして東西間の建設的対話の促進に努力を続けてまいります。  ソ連の対日政策につきましては、北方領土問題など基本的問題に残念ながら変化は見られておりません。ソ連は、我が国の重要な隣国であって、日ソ双方の努力により日ソ関係を改善していくことを心から私どもも希望しておるところであります。  それから、米ソ経済活性化にもお触れになりましたが、私は、米ソ両国がそれぞれ経済活性化のために取り組んでいることは、これは承知しております。今日の国際社会における平和が、基本的に東西間の均衡と抑止によって維持されておるということは、これまた冷厳なる事実であります。  こういう情勢のもとで、米国は、みずから抱えております経済的諸困難にもかかわらず、抑止力の信頼性の維持向上に努めておるということであります。これからも、米ソ首脳会談等を通じて一層の安定化というものに取り組んでいかれることを私も期待しております。したがって、安定的米ソ関係を構築するための努力、これを私どもも支援していかなければなりません。  中曽根内閣継承というお言葉がございました。  中曽根前首相は、行財政改革を初め、税制、教育等の諸改革を推進する一方、対外政策の積極的展開に取り組んで成果を上げてまいりました。私は、自民党政権を担当する者といたしまして、こうした内外政策の基本路線、これを継承して、二十一世紀に向かってまさに文化経済国家を創造していかなきゃならぬ。そして、現実政策を進めるに当たっては、陳腐化したものはこれを排し、新しいニーズにはまた果敢に適応していく必要があると考えております。  さて、防衛費GNP一%枠の御議論でございます。  我が国は、大綱に定める平時から保有すべき防衛力の水準の達成を図ることを目標とする中期防の着実な実施にまず努めておるということであります。  諸外国において、我が国防衛力整備に関し、さまざまな意見が述べられていることは承知をしております。我が国としては、昨年一月の閣議決定にもありますとおり、まさに専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならない、こういう基本理念に従って、今後とも節度ある防衛力を、しかも自主的に整備していくとの方針に変わりはございません。  なお、各国の防衛費の定義、範囲、これはなかなか難しい問題でございますので、正確な国際比較、これはなかなか困難なことであると思っております。  さて、在日米軍労務費負担の問題につきましては、これは一月八日の政府・与党首脳会議におきまして、労務費特別協定の改正によります在日米軍労務費我が国負担の増加方針を決定いたしましたが、これは期限及び負担の対象項目が明確にされておる暫定的、特例的、限定的な性格の措置でありまして、また、手続の面でも、必要な国会の承認を得て行おうとしておるというものであります。  また、在日米軍経費負担問題について、今般明らかにされた措置以外の措置をとろうという考えはございません。  次に、安保と経済摩擦というものを絡めての御議論でございましたが、日米安保体制は、これは我が国防衛の基調をなすものであります。そうして、この体制の円滑かつ効果的な運用を確保すること、これは大切なことであります。  他方、経済面ではいろいろな問題がございますが、先般の訪米の際、私ども話し合いましたことは、あくまで経済問題は共同作業という理念に基づいて、しかも縮小均衡ではなく拡大均衡、こういう方向を確認し合ったものでございます。ですから、あくまでも経済問題は経済問題である、そういうことの基本姿勢に立っていく所存であります。  それから中期防の問題でございますが、これは、政府は昨年一月の閣議決定、事実これを決めましたのは一昨々年の九月十八日であります。この所要経費、昭和六十年度価格でおおむね十八兆四千億円程度、この枠内で各年度の防衛力整備を実施することを決定しておりますので、この決定を守っていくというのは当然のことであります。  なお、御要求の資料につきましては、可能な限り御趣旨に沿うべきものであると考えております。  それから、次が衆議院の解散権問題についての御意見を交じえた御質疑でありました。  私も、二院制議会政治の運営と発展の根幹である、この認識は全く等しくいたしております。そこで、御指摘のとおり、解散権はみだりに行使すべきものではなく、また、いわゆるダブル選挙が普遍的なものとして定着してしまうということは好ましくない、このように考えております。  しかし、解散というものは今日の時点では全く私の念頭にはございませんし、実際四年間という憲法に定められた任期を衆議院は衆議院なりにいただいておるわけでございますから、これは大切に大切にすべきものである、このように考えております。  政治倫理確立の問題は、これはまさに国民信頼の原点ということであると思います。個々の政治家が各人の良心と責任のもとでみずから処していくべき課題であります。  それから、政治資金のあり方、いわゆる附則第八条の見直し条項をも含めた御質疑でございましたが、事柄の性格上・各党間で十分論議していただくことがまず一番必要ではないかというふうに思っております。自民党内の小委員会で、企業献金の問題についての案が私にも幹事長時代に示されたことがございました。今後、党内で議論さるべきものであろうというふうに考えております。  次は、日米首脳会談についてのお尋ねでございました。  確かに私自身、平素おつき合いいたしますときに、みずからの自己主張をできるだけ排除して他人の意見をお伺いするというのを一つの生活信条にしておりますが、これは国内のことでありまして、国際問題で相手様の意見だけ聞いて自己主張を控えるなどということは許すべからざることだということは基本的に私も承知しております。  そこで、先般の訪米の際、レーガン大統領との間で、相互依存を深める両国経済間で当然生じてくる種々の問題については、いずれにせよ共同作業に基づいてこれはやらなければならぬのだ、両国合わせれば世界GNPの三分の一以上を超しておるではないか、こういう認識のもとに立って、縮小均衝ではなく拡大均衡の中で解決を図ろうという基本姿勢をまず確認をいたしました。  米議会はおける包括貿易法案審議について、レーガン大統領から、保護主義的な貿易法案には拒否権を発動するという強い姿勢を確認をすることができました。  レーガン大統領との間で、世界経済の持続的成長の確保と対外不均衡是正のための経済政策の協調の重要性、私の方からは内需拡大構造調整、市場アクセスの改善、これについての努力を説明するとともに、レーガン大統領からは財政赤字削減努力をこれからも継続していくという決意、そしてまたもう一つは、アメリカ自身の競争力をつけるための努力、これをお互い約束をいたしたわけであります。  今次訪米では、)このような成果を通じまして日米関係の基礎を一層強化し得たというふうに思っておりますが、成功であったかどうか、いろいろな評価につきましては、これは私自身が評価すべき問題ではないと、このように考えております。  それから、防衛費突出福祉切り捨て予算と、六十三年度予算についての種々な御指摘とともに御質疑がございました。  六十三年度予算におきましては、引き続き六十五年度特例公債依存体質脱却、これを努力目標として財政改革を強力に推進するとともに、内需拡大のまさに内外からの要請、そして国民生活そのもの等を配慮して、限られた財源の重点的、効率的配分に努めてまいりました。  このため、内需拡大に資するとともに、社会資本整備の促進をするため一般公共事業費について前年度当初予算二〇%増と、極めて高い水準を確保することができました。  そして、国際社会における責任、この問題につきましては政府開発援助予算について六・五%増、また社会保障、文教関係予算については、今後の社会経済情勢の変化に対応して各種施策が長期的、安定的かつ有効に機能するように、制度面、運用面において見直しを行いますとともに、真に必要な施策についてはこれを重点的に配慮してまいりました。  防衛関係費は、厳しい財政事情のもと、他の諸施策とのぎりぎりの調和を図ったと、こういうことであります。  最後に、所得税減税につきましては、昨年九月の税制改正によりまして、昭和六十三年度において個人住民税を含めますと二兆円を超える規模の所得減税を実施した、こういうことでございます。  なお、「好老社会」という言葉についてお触れいただきましたが、これは私の書きおろしの論文の中で使った言葉でございます。言いかえれば、年老いることを忌み嫌うという「嫌老社会」という言葉があるとすれば、それに対応して「好老社会」というのがあり得るのかなと、こういう気持ちで書きおろしたものでございます。いずれにしても、私も年寄りのうちに間もなく入りますが、知識経験や働く意欲、能力、そういうものが十分生かされていくような日本福祉社会という概念が私の念頭に存在しておるというふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、不公平税制の是正問題でございますが、これは国民の理解と協力を確保する上で、これを是正するということ、いわゆる不公平是正と申しますか、公平を確保するということは、これは何としても国民の協力を得るための大前提でございます。したがって、国会におけるいろいろな御議論等を聞きながら、この一つ一つを具体化していっておることでございますが、今日なお税制調査会においても引き続き鋭意検討をお願いしておるところでございます。  それから、税制改革の手順でございます。これとまた選挙の関係、これについての御質疑がございましたが、税制の抜本的改革は喫緊の課題だ、ここは皆さん方大体合意であります。昨年提案した売上税法案が審議未了、廃案となったというこの厳粛な経緯を踏まえまして、税制調査会やそして国会でも、昭和五十三年以来の国会の論議を聞いておりますと、税が一番時間が割かれております。そういうものを伺いながら、国民の理解が得られるような税制というもの、このコンセンサスが那辺にあるかということを見定めながらこれの確立に努力してまいります。  したがって、税制と今直ちに選挙という御議論もございましたが、国政全般にわたり責任を負う者として議員に定められました任期というものは、先ほども申し上げましたように大変大変大切なものでございますから、これは大事に大事にしなきゃならぬ問題であるというふうに考えております。  それから、みずからも所得平等化という幻想を持ったこともあるが、現実の変化が大変な不平等感というものの存在を浮き彫りにしておるではないか。そうした面は私もあろうと思います。多くの面で欧米先進国並みでございましょう。平均寿命あるいは犯罪、そうした暮らしの安全度、それはあるいはそれ以上であるかもしれません。しかし、欧米諸国に比べて劣っております面がございます。これがいわゆる豊かさを実感できる国民生活の実現、これに向けて努力しなきゃならぬ。そこに住宅の問題、社会資本の問題、そうして労働時間短縮の問題、円高差益の問題、物価安定、こういうことが大切なことであると私は思っております。  格差が拡大した不平等感について御意見がありましたように、東京圏を中心とする地価の高騰、これは確かに資産格差が拡大した、こう言えると思います。  経済の円滑な運営と社会の安定の見地から、政府としても緊急土地対策要綱の着実な実施、また、土地問題から来ますところの不平等感等につきましては、本院における土地対策の特別委員会等の御決議もいただいております。そのような問題に基づいて対処すべき課題であると思っております。  それから、経済審議会のいわゆる「低い居住水準」、「高い生計費」、「長い労働時間」ということでございます。  先ほども申し上げましたように、引き続き物価の安定に努めるとともに、居住水準の改善、労働時間の短縮、これらに努めてまいります。  「世界に貢献する日本」というところで、国際社会における我が国の地位の向上と国力の増大に伴って、我が国の果たすべき役割と責任は大変に増大しております。各国の関心と期待も高まっております。そして、相互依存がますます深まっておる今日の国際社会におきましては、従来にも増して自国の利益のみを追求するという自己本位な行動は許されません。我が国としましては、各国と互いに痛みを分かち合いながら、国際社会の中でともに長期的な繁栄を確保していくように努力すべきであると考えております。  こうした観点から、我が国としては、御議論にございました、引き続きインドシナ難民の定住の促進に努めて、海外からの留学生などの受け入れ体制の充実なども一層知恵を絞っていくべき課題であると思います。ただ、外国人労働者の受け入れにつきましては、単純労働力は受け入れないとの政府方針を踏まえた上で、多様な角度から慎重に検討すべき問題であると考えております。  中国残留孤児問題は、申されたとおり、国民課題である、私もこのように感じております。政府部内におきましても、まさに関係各省庁が一体となって、そして地方公共団体の協力をいただきながら、住宅対策から就職対策日本語教育等各種施策を強力に進めていかなければならない課題であると思っております。  「ふるさと創生」問題について、御意見を交えながらの御質疑がございました。  私も、御指摘にありました大平内閣の田園都市構想、思い出してみますと、「田園都市構想というのは、今後相当長期間にわたって、国づくり、社会づくりの道標となるべき理念である。人と自然、都市と農村に、ひとつの視点から新しい光をあてようとするものである。」、こういう書き出しで、随分私自身も情熱をかき立てられた時期がございました。これは、いずれも地域の活力を生かして国土の均衡ある発展を目指すものと考えております。したがって、私の提唱します「ふるさと創生」というのは同じような発想にありまして、また、さらにそこに心を吹き込もうという四全総の国土計画と等しくするものでございます。  そして、地方自治に対する物の考え方は、私は同感でございます。確かに国、地方を通ずる行政の簡素効率化、また、地方自治の尊重の観点に加えて多極分散型国土形成の観点からも、住民に身近な事務は住民に身近な地方公共団体において処理できるよう、国、地方間の役割分担と費用負担のあり方については、なお幅広く検討していくべき課題であると思っております。今後とも、四全総というもの、そうして臨調、行革審、これらの指摘を踏まえまして適切に対処すべきものであると思っております。  なお、毎年の予算編成に対して、地方公共団体の代表者の方が地域の実情を訴えたり要請を伝えたり、いろいろなことでお見えになっておるということはございます。それが、おっしゃいました、いわゆる陳情合戦と言われるようなものであれば、これは望ましいものではないと私も思っております。それぞれ地方自治体と国とがまさに車の両輪として責任を分かち合っていくという態度でこれからも国民に接すべきものである、このように考えております。  以上でお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣瓦力君登壇、拍手〕
  7. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) お答えいたします。  先般の日米防衛首脳会談についてのお尋ねでありますが、この会談におきましては、まず装備の共同開発につきましては、FSXにとどまらず、各種の装備について日米共同開発を推進していくことは、先端技術に関連して日米間で生起し得る種々の問題を克服し、より健全な日米の協力関係を発展させる観点からも重要である、かように発言をし、カールッチ長官もこれに賛意を表明したものでございます。  次に、我が国に対する侵略に対して有効に対処するためには、時宜を得た米側の来援が重要であり、今回の会談で本問題について私の方から提案したところ、カールッチ長官も賛意を表し、かかる研究を行うことで意見の一致を見たものでございます。この研究は、日米安保条約信頼性あるものとするため当然のものと考えております。  以上のことからも明らかなとおり、米側からの軍事面での要求受け入れたといった御指摘は当たらないことを申し添えさしていただきます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
  8. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 総理大臣が大部分お答えになられましたので、残りました問題についてお答えを申し上げます。  社会保障と所得税減税についてでございますが、だんだん高齢化社会になりますので、それを展望いたしまして、安定的に長期的に機能するような社会保障の制度を考えていかなければなりませんで、このたび国民健康保険制度の改革考えましたのも、そのような視点でございます。地方に過重な負担がかかりません配慮は同時にいたしたつもりでございます。  なお、例えば在宅福祉施設の拡充でありますとか健康づくり対策等々、こういうものにつきましてはかなり積極的に重点的な配慮を行いました。  その結果、六十三年度の社会保障予算は十兆三千八百億円余りでございますが、前年度当初に比べますと二千九百億円余りの増加でございまして、私どもとしては最大限の努力をいたしたつもりでございます。  それから次に、やはりサラリーマン、中堅サラリーマンについての重税感が強いという御指摘がございまして、それは私どももそのように考えておりまして、昨年の国会におきまして、最低税率の適用範囲を広げる、あるいは累進を緩和する、配偶者特別控除、老年者控除の引き上げ等々をお認めいただきました。これによりまして所得税は一兆五千四百億円、今年度に行われます住民税を含めますと二兆円を超える減税になるわけでございますが、これで十分だとは思っておりませんで、なおこの線上においてさらにこれを推し進めてまいりたいと考えまして、ただいま各方面の御議論を承っておるところでございます。いずれ成案を得たいと考えております。  キャピタルゲインについて、まことに課税が不十分ではないかという御指摘がございました。  昨年も課税を強化したところでございますが、御承知のように、キャピタルゲイン、キャピタルロスをまんべんなく公平に把握するということは、実は行政的に非常に困難でございます。どういうことをやればそれが可能であるかということを、ただいま税制調査会で鋭意御検討を願っておるところでございます。  それから、六十五年度に赤字公債依存の体質から脱却するという目標を掲げておるが、昨今の税収等々との関連でそれは大丈夫なのかというお尋ねでございました。  六十三年度におきまして一兆八千三百億円の減額を行いました。これは三分の一を上回る金額でございましたので、かなりこの目標達成が現実性を増してきたというふうに私ども考えておるわけでございます。  ただ、御指摘になりましたように、確かに昨年度の税収というのはかなり一過性の部分を含んでおることは事実と思います。例えば、土地の価格が非常に高騰いたしましたので、相続税が予想以上に増収になった、あるいは個人の譲渡所得も大きくなった。それから株式の売買は非常に多うございましたので、有価証券取引税も予想外の増収になりました。それから昨年三月の法人の決算は、いわゆる営業収益もさることながら、財テクと申しますか、そういう金融収益で決算をかなり苦労をしてやられたように見受けます。  そのようなことはいわば一過性のものと考えるべきでございますから、六十三年度の歳入見積もりのときには、その点は十分排除いたしました見積もりをいたしたつもりでございますし、経済状況はかなり全般的によくなっておりますので、こういう一過性でない所得あるいは法人等の増収を期待していいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ、結局それは経済運営がうまくいくかどうかということにどうしてもかかるわけでございまして、殊に、海外の要因から経済運営が非常に影響を受ける昨今のことでございますから、為替安定等々を含めまして、よほど経済運営を気をつけてやりませんといけないということ、過去にそういう例があったではないかとおっしゃいますことはそのとおりでございますから、十分配慮いたしてまいらなければならないと思っております。(拍手)     ─────────────
  9. 藤田正明

    議長藤田正明君) 桧垣徳太郎君。    〔桧垣徳太郎君登壇、拍手〕
  10. 桧垣徳太郎

    ○桧垣徳太郎君 私は、自由民主党を代表して、現下の内外の重要課題について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  国民的期待の中でスタートした竹下内閣は、組閣以来既に土地国会をこなし、ASEAN首脳会談で貢献し、財政再建内需拡大を盛り込んだ新年度予算を編成したほか、日米両国の友好発展の基礎を固めるなど、成熟への対応を求め努力しているその政治姿勢を高く評価するものであります。  今、為政者にとって一番重要なことは、政治が未来への戦略を示し、展望を切り開くことであると考えます。これから総理が先頭に立って行わんとする税制改革、教育改革、経済構造の転換、対外不均衡の是正など数々の改革は多くの痛みや犠牲が伴うだけに、国民的合意を求めつつ誠実に忍耐強く取り組むことは当然ながら、時と場合には機敏な決断が必要となることもあります。改めて、国政を担う総理政治目標政治理念についてお伺いをいたしておきたいと思います。  続いて、外交問題について伺います。  総理、昨年末のASEAN首脳会談の出席に引き続き、今春早々よりアメリカ及びカナダ訪問まことに御苦労さまでございました。関係者の御苦労を多とし、その意義を高く評価するものであります。  総理が申されておりますように、今、世界は大きな変動のただ中にあります。国際政治面で見れば、二大核保有国として長く対峙してきた米ソ両巨大国INF全廃条約の調印を行い、画期的な核軍縮の一歩が踏み出されたわけであります。  経済面では、ドル不安の中で米国は財政、貿易の双子赤字を抱え、世界一の債務国となり、欧州の多くの国々は失業と福祉負担に悩み、開発途上国の累積債務問題は深刻さを加えているのであります。  一方、我が国は最大の黒字、純資産を持つ超経済大国となり、相互依存の国際社会の中にあって自国の都合のみで行動することは許されず、国力に見合う世界への貢献、国際的地位にふさわしい責任が問われておるのであります。  総理は、施政演説において、「世界に貢献する日本」、「日本の豊かさと活力を世界に」生かすことを強調されておりますが、まず、厳しく流動する国際情勢をいかに認識し、我が国として国際社会に貢献するのか、竹下外交の基本理念をお伺いいたします。  総理が最大の政治課題と受けとめておられる日米関係でありますが、さきの首脳会談が成功裏に終わりましたことは、誠実な政治のあらわれとして評価をいたします。  最近の日米関係は、貿易問題などのきしみが目立ち厳しい時期であっただけに、日米首脳会談の成り行きが注目されておりましたが、竹下総理レーガン大統領は、大変和やかな空気の中で忌憚のない対話が行われたようであります。しかも、その会談内容も、為替の安定、農産物自由化、公共事業参入の問題など経済問題を中心に、東西関係、防衛問題、科学技術協力など、かつての日米首脳会談で例がないほど,広範な問題が話し合われ決着を見ましたことは、日米関係信頼回復に大きく寄与するとともに、ロン・ノボルの個人的信頼関係が図られ、喜びにたえぬところであります。  総理は、今回の訪来の意義、成果をどう受けとめておられましょうか。  このように、日米間に横たわる当面の課題は、首脳会談での合意により大筋で解決いたしましたが、公共事業の参入問題や農産物自由化など市場開放に関する個別問題については、米国議会においては包括通商法案など保護主義の動きが依然として根強く残っており、予断を許しません。  また、我が国においても、公共事業については参入を認める事業の規模、箇所等の調整が残っているほか、アメリカ以外の国からも参入要求が出ておるのであります。農産物自由化の問題については後でも触れますが、国内農業が大打撃をこうむるだけに難航が予想されます。  総理は、市場開放について、日本は自由貿易の恩恵を最も享受した国であること、最大の農産物輸入国であるが消費者の立場を考えることが重要であると述べられています。総理は、これらの市場開放についてレーガン大統領との間でどのような話し合いが行われたのか、お伺いいたします。  次に、アジアの重要な隣国である韓国及び中国との関係についてお伺いします。  韓国は、二月の政権移譲、九月のソウル・オリンピックを控え、重要な局面を迎えつつあります。総理は、盧泰愚大統領の就任式に出席されるために韓国を訪問したいとの御意向であると伺っておりますが、これを契機に、現在、基調として極めて良好な日韓関係をより幅広い分野で一層発展させていくことが重要であると考えます。総理の対韓外交姿勢についてお伺いいたします。  関連して、史上空前の参加国を得たソウル・オリンピックを成功させるため、テロ行為の再発防止の問題があります。我が国としても、韓国政府と協力して、その安全確保のため最大限の努力を尽くすべきであります。政府方針はいかがでありましょうか。  また、日中関係は、国交正常化以来、政治経済、文化等幅広い分野において目覚ましい発展を示しております。特に、本年は日中平和友好条約締結十周年を迎え、総理訪中が予定されている由でありますが、我が国としては、現在中国が「改革と開放」の大方針のもとに進めている近代化建設の努力に対しできる限り協力するとともに、両国間の友好協力関係の一層の発展のため努力を傾注すべきであると考えます。総理の御所信をお伺いいたします。  次は、ソ連との関係であります。  米ソ間においては、先般米ソ首脳会談が行われ、INF条約が調印されるなど建設的な対話の機運が見られますが、戦略核等その他の分野の軍備管理問題やアフガニスタン等の地域問題等で解決しなければならない問題がまだたくさん残されております。米ソ首脳会談後、一部には安易なデタントムードが生じておりますが、その外交政策には実質的な変化が見られません。対日政策についても基本的な立場の前進がないのであります。  かかる状態においては、安易に対ソ外交を進めるのではなく、北方四島一括返還を実現し、平和条約を締結する。また、経済関係においても政経不分離の方針を貫き、筋の通った対ソ政策を堅持すべきであります。総理及び外務大臣の御所見を求めます。  次は、防衛問題であります。  INF全廃条約の調印に当たっては、米ソ両国首脳の御努力によることは申すまでもありませんが、同時に、ここに至るまで中曽根内閣が終始一貫してアジアを含めたINFの全廃を国際舞台において強く訴えてきた努力を忘れてはならないと思います。  御案内のように、この条約は初めて特定の核ミサイルを全廃すること、また、現地査察等各種の検証措置を規定している点で高く評価するものでありますが、現実には、米ソ両国が有する五万発の核弾頭のうち、わずか五%を廃棄するものにすぎません。したがって、依然として世界の平和は米ソの戦略核を含む強大な軍事力を中心とした東西間の力の均衡により維持されているのが冷厳な現実であります。  今日の国際軍事情勢は、イラン・イラク紛争等にも見られるように、世界各地の地域紛争は後を絶ちません。我が国について見ても、昨年十二月九日、ソ連軍用機が我が国の領空を侵犯し、沖縄本島上空を通過したことはいまだ記憶に新しいところであります。いずれにせよ、今日の国際政治面には依然として厳しいものがあることは明らかであります。  しかるに、INF全廃条約の調印がやっと終わったばかりなのに、一部に、ムードに流され現在の国際軍事情勢がデタントであるといった評価を下し、果ては我が国が行っている防衛努力の意義を軽視ないしは否定するような間違った見方をする者もあるのであります。  これに対し、例えば欧州では、INFの全廃によって東西間の通常兵器のバランスの確保が真剣な問題になっているように、私たちは我が国を取り巻く国際軍事情勢をあくまでも冷静にとらえることが必要ではないでしょうか。  政府は、我が国をめぐる国際軍事情勢をどのょうに認識しているか、あわせてINF条約が効力を発した場合、我が国を含む西側全体の安全保障にいかなる影響を及ぼすと見ているのでありましょうか。  また、中期防の第三年目という節目を迎えた今日、将来の技術の進歩と我が国の置かれた地理的、戦術的環境を照らし合わせて、より効率的な防衛力のあり方について長期的視点から検討することが必要であると思います。  政府は、将来の陸上防衛、洋上防空の態勢のあり方をどのように受けとめ、次期の中期防の準備に取りかかっておらりれるのか。以上、総理及び防衛庁長官より御答弁願います。  次に、経済問題にいついて伺います。  まず、今後の経済政策であります。  現在、経済は極めて良好な状態に推移しております。昨年春以来景気は上向き始め、七—九月期には実質経済成長が年率八・四%の高成長を記録するとともに、懸案の国際収支も黒字減少の傾向が強まっており、内需主導による経済の拡大が顕著となっております。  昭和六十二年度の実質経済成長率は、当初の政府見通しを上回る一二・七%と見込まれ、失業率や有効求人倍率等雇用情勢も大幅な改善が見られておるのであります。これは政府、日銀による積極的な財政金融政策の成果であると思います。  現在の経済の実勢は極めて強いと思われ、政府が来年度経済見通しとして発表した三・八%の実質経済成長率はいささか低目の嫌いがあると思われますが、改めて総理の御見解を伺います。  今後の経済政策として、私は現在の高目の経済成長を維持しつつ、一層内需型経済への定着を図っていくべきだと考えます。昭和六十三年度予算では、公共事業を当初予算に比較し二〇%増を確保しておりますが、今後数年にわたり、財政は経済成長に見合った拡大が要請されているのであります。  これは諸外国からの要請にこたえるものであるとともに、従来立ちおくれていた社会資本の充足、国民生活充実につながるものと考えます。今後の経済政策の基本方針と財政政策の方向について、総理及び大蔵大臣の御所見を伺います。  第二は、産業構造調整への対応策についてであります。  現在、好景気の到来が予想される一方、前川レポートが言う産業構造の調整という深刻な問題を抱えております。経済の国際化や分業の促進、NIOSからの追い上げ等により、経済産業構造の一層の高度化が要請されてきましたが、昨今の急激な円高はこの傾向を一層助長いたしました。  すなわち、石炭の閉山、鉄を初めとする重厚長大型産業の規模縮小により地域経済の活力の低下、失業者の発生が起こっておりますが、さらに自動車、家電等の一層の海外進出が予想され、いわゆる経済空洞化は避けられぬと危惧されておるのであります。これを避けるには、企業自身の付加価値の高い生産への移行と同時に、政府も地域経済活性化と雇用の確保を図る施策を実施することが必要であります。  政府も、六十三年度予算で、地域の活力拠点を建設する施策や地方民活の助成、労働力需給のミスマッチを解消するための「産業・地域・高齢者雇用プロジェクト」の発足などの対策が講じられています。しかし、やや対症療法的であり、産業政策と雇用対策との連携に欠けておる余地なしといたしません。地域経済の再活性化及び雇用対策を一体化した総合的な産業構造調整に向けての対策を立案していく必要があると思いますが、総理の御見解を伺います。  第三は、国際経済・金融問題であります。  来年度の日本経済が順調な拡大を見込まれておるのに対し、世界経済の動向はやや慎重な見方を必要とすると言わなければなりません。OECDによれば、八八年の世界経済の成長率は八七年の二・七五%から二・二五%に低下し、八九年には一%台に落ち込むと見込まれています。この成長鈍化の背景には、米国経済への信頼性、なかんずくドル急落への不安があると思われます。米国も、経済や通貨不安の原因である財政赤字に対処するため七百六十億ドルの赤字削減策が合意されましたが、十分な赤字削減対策が講じられていないとの批判があります。この結果、金融・為替市場が不安定化すると危惧されますが、米国経済の動向をどのように見ておられましょうか。  昨年一年間で円は三十六円十銭、三一・二%の史上最高の上昇率を記録いたしました。新年に入り、一月四日以降各国の為替介入によりドル水準の高目誘導が行われ、さらに、竹下総理訪米のドル安下落防止とSDR活用による介入資金確保の合意等からドルの持ち直しが見られるのであります。しかし、協調介入には限界があるということを考えますと、より各国が政策調整を進め、経済の基礎的条件を変えていくことが重要であります。  十一月の米国の国際収支には改善の兆しが見えますが、なお政策調整策の実現やドル安の是正に時間がかかることを考えれば、日米間における迅速な為替市場への介入ルールの取り決めや介入資金としてのスワップ枠拡大を米国に要請するのも一案と思いますが、いかがでありましょうか。  この点に関連し、私は、日本自身も円の国際化を積極的に進め、ドルの過重負担を軽減する等国際通貨安定に貢献すべきであると思います。  最近、ユーロ債等国際債の発行に占める円建ての比率はドルに次ぐなど、資本取引の面では進んでおります。しかし、経常取引では余り進んでいないのが実情であります。これは貿易金融市場の未整備も大きな原因であり、政府も近年、円建て取引促進の手形を創設していますが、十分機能していないうらみがあります。今後、この手形の発行、流通を阻害している税制、手続を改善して魅力ある商品に工夫するとともに、国内の金融自由化を進め、外国人政府短冊期証券等の円建て資産を自由に保有、処分し得る金融市場の体制整備を図るべきではないかと思います。以上の点につき、総理及び大蔵大臣の御所信を承ります。  次は、財政、税制問題について伺います。  まず、財政再建と財政運営の方向についてであります。  昭和六十三年度予算は、内需拡大財政再建の両立を目標に編成されましたが、いずれも目的を達成したと言えると思います。特に、懸案の財政再建について、いわゆる赤字公債を一兆八千三百億円削減し、発行額は三兆一千五百億円と財政危機の始まった昭和五十一年度を下回る水準に抑え込む大幅な改善をいたしております。昭和六十五年度赤字公債の発行をゼロとする財政再建の達成に大きく近づいたと言えるのではないでしょうか。  一時は絶望視されていた財政再建目標の達成が今回前進したのは、竹下内閣に至る歴代内閣財政再建姿勢を堅持してきたことによるものであります。特に、鈴木、中曽根二代の内閣によって強力に実施された行財政改革が、歳出面で高度成長時代の水膨れ体質を改善する一方、歳入面ではNTT等の民営化による売却益を生み出し、税の自然増収と合わせて巨額な財源が捻出され、公共投資等に活用できたからにほかなりません。今や私たちは、長年進めてきた臨調型財政の成果の上に立ち、財政再建を貫徹するとともに、積極的な経済政策を推し進め得る絶好の状態をつくり上げたと言えるのではないでしょうか。  六十五年度財政再建の達成に、今後二年間で毎年約一兆五千八百億円の赤字公債を削減することになりますが、税の自然増収やNTT株の売却益等歳入面の動向を踏まえつつ、シーリングのあり方を含め、今後の財政運営の展望と再建の見通しについて大蔵大臣の御見解を伺います。  第二は、税制改革問題であります。  昨年、税制改革をめぐって国民の間でさまざまな論議が交わされました。現在、当時の論議を振り返り、論議の焦点が売上税導入問題だけに絞られ、税制改革全体の目的が国民に周知されぬまま終わった傾きのあったことはまことに不幸だったと思います。  税制改革を私たちが提案したのは、税収の七割をも直接税に依存する現行の税制体系を放置するなら、サラリーマンや一部企業に過重な負担を強いる結果となること、急速に迎える高齢化社会に円滑に対応するための福祉財源の不安定性を懸念したからにほかなりません。  昨年夏の第百九回臨時国会で、規模を縮小し、所得税の減税と貯蓄非課税制度が見直され、税制改革の一部が実施されました。しかし、中堅所得層を中心とする所得税の軽減はなお要望が強く、また、諸外国と比べ実効税率の高い法人税の軽減は手つかずであります。  特に、国際化が進む中で、国際水準とかけ離れた法人税率は、資本の海外流出を一層招くことになりかねません。加えて、最近の大都市と周辺の地価高騰により、固定資産の評価は急上昇し、相続税や固定資産税等、土地に対する税制の改革が望まれております。速やかにこれらを一体化した税制の抜本改革の必要性はますます緊急性を帯びております。間接税の導入も、これらのひずみを是正し、さらに現在の複雑な個別間接税体系を直すために導入さるべきだと考えます。税制改革に対する基本方針及び今後の進め方について、総理の御所信を伺います。  税制改革に対して、国民の間にもかなり理解が深まってきたと思います。最近の世論調査でも税制改革を支持する比率が高まっていることは、このことを裏づけておるのであります。  しかし、その一方、間接税の導入に理解を示しつつも、現行税制のもとでの不公平の是正を求める声も少なくありません。脱税の摘発や所得捕捉の改善等、税務執行と並んで政策税制や資産課税の軽減が批判の対象となっております。  既に企業に対する政策税制は、近年の税制改正でほぼ中小企業関係や環境保全、資源確保の措置に限られておりますが、資産課税のうち貯蓄非課税が見直された今日、キャピタルゲイン課税について検討すべき点が残っております。しかし、経済取引の複雑化や国際的な資金移動の増加の一方、国民の消費の高度化と資産保有の増大考えますと、今後の税制のあり方として、累進税率の高い一本調子の総合課税を進めることには問題なしとしないと思います。むしろ、所得、消費、資産について均衡のとれた、いわゆる薄く広くの課税をそれぞれ実施する方が今日的税制と思いますが、いかがお考えでありましょうか。  税制改革を進めるに当たり、国民に税の役割を理解し負担の必要性を納得してもらうことが重要であります。政府は、国民に一層の理解を求めるべきでありましょう。その一方、国民に負担を求める立場から、国民に対する負担の限界もまた意識されねばなりません。その意味で、現在二四・四の租税負担率、あるいは社会保障負担を含めた三五・四の国民負担率を今後どの程度にとどめるのか、国民に明示すべきと思います。大蔵大臣の御見解を承りたい。  次に、教育改革について伺います。  教育は、人づくりであり、文化、経済社会を支える基盤であります。今後、我が国は、二十一世紀に向けて活力ある発展を目指すとともに、相互に依存する国際社会にあって平和と繁栄に大きく貢献するためには、戦後教育のあり方を原点に立ち返って問い直し、心の通う伸び伸びした教育制度に抜本的に改革すべきであります。  こうした時代の要請を受けて、臨時教育審議会は、昨年八月、大学入学者選抜方式の改革、初等中等教育における教育内容の改善、教員資質の向上、生涯学習体系への移行及び大学運営の改正等について答申しました。  また、暮れには、文部省の教育職員養成審議会は教員免許の学歴別三段階制を、教育課程審議会は道徳教育の重視、国旗・国歌の明確化、中学校における必須教科の弾力化、小学校低学年における生活科の新設等について、それぞれ答申をいたしております。  このように、六・三制発足後四十年を経た昨年は、懸案の教育改革についての論議が大方結論を得た年であり、今後はいかなるテーマより実行するかが問われる段階となってまいりました。  総理は、今後この教育改革にどう取り組まれるのか、その御決意を伺いますとともに、ポスト臨教審の推進機関をどのように性格づけられるのか、また、具体的にどのような課題を優先して教育改革を行う考えであるか、改革の基本的方向を示されたいと思います。  さらに、関連して答申のあった事項のうち、大学改革、なかんず、大学教員の任期制の問題についてお伺いいたします。  今日、大学の改革に対する国民的期待は大きいものがあり、臨時教育審議会の指摘を受けて、昨年、学校教育法及び私立学校法が改正され、大学審議会が創設されたことは御案内のとおりであります。もとより、大学改革は大学みずからが率先してその殻、因襲を打破し自己改革を行うことが先決でありますが、同時に、広く各界の意見を集約して国としてその方向を示すことも肝要であります。  今日、我が国の大学における教育研究は、基礎研究の面で充実が急がれているほか、それぞれの大学の個性、特色が薄くなり、学園自治の名のもとに閉鎖的、硬直的であるとの指摘がなされております。  特に、私がここで指摘したいことは、大学教員の任期制の導入と助手の位置づけであります。  昨年の広島大学における学部長殺しという、十七年間も助手に据え置かれた怨念がもたらした忌まわしい事件は、期せずして大学における閉鎖人事を露呈したものであります。一部の教授においては、一たん任用されれば定年まで何ら論文も書かない、研究実績がなくともその身分が保証され、助手の人事権を意のままに握り、間々助手の研究を横取りするということもあると聞いております。  この際、学術研究の進展に対処して、象牙の塔の人事を明朗、適正にし、かつ教授としての適格性の保持を図るため、教授の任期制の導入を考えてはいかがでありましょうか。あわせて、助手制度も改める必要があります。  以上、大学改革に臨む決意と大学教員の任期制、助手制度についての御所見を総理に伺いたいのであります。  さらに、スポーツの振興についてでありますが、国民の心身の健全な発展を図るために国民全般がスポーツを愛好することが大切であり、そのための環境の整備に努めることが必要であります。  同時に、スポーツの国際交流が果たす国民外交の意義は極めて大きいものがあります。そのため、国際競技の場で通用するすぐれた強い選手を養成することは、国際国家日本が果たすべき重要な課題であると考えます。とかく選手層の弱化を憂える声が聞かれる今日、特に学生スポーツの振興を中心に、中期的な展望のもとに、選手の強化や引退後の処遇も含めたスポーツの振興策を、計画的に、組織的に、体系的に講ずることが強く要請されておりますが、総理の御所見を伺いたいと思います。  次に、農業問題について伺います。  現在、我が国の農業は、内外の厳しい環境のもとで深刻な苦悩と不安におののいておるのであります。  農産物需要の停滞、円高と輸入の増大のために農産物価格は低落し、農家経済を圧迫している状況の中で、アメリカ初め諸外国からの農産物の市場開放要求は一段とその厳しさを増しておるのであります。一体、我が国の農業と農村の将来はどうなるのか、不透明な先行き不安に駆られているのが現状であります。  一国の食糧政策、農業政策の基本は、自国の農業資源を効率的に利用することによって、食糧の自給力を維持強化し、健全な農村社会の保持、国土、自然環境の保全等、農業の持つ多面的な機能を有効に増進させていくという点にあることは、いずれの国においても例外はないと思うのであります。  御承知のとおり、我が国は、わずか五百四十万ヘクタールという狭小な耕地の制約を受け、食糧自給率は安全保障の上からも後退の余地はないものと考えます。総理は、国政の統括者として、農業を政治的に、国民経済的にどう位置づけられておられるのか、お伺いをいたします。  次に、当面する農産物自由化問題について伺います。  十二品目問題の決着は、来月早々のガット理事会の場において行われると承知していますが、余す日時は幾ばくもないわけであります。政府としては、昨年十二月のガット総会におけるパネル裁定の採択の延期決定以来、米国等との現実的な解決策について接触を続けてこられたと仄聞しておりますが、ガット理事会においてどのように対応されるのであるか、総理及び外務大臣の御所見を伺います。  農林水産大臣は、衆参両院の農林水産委員会、予算委員会において、譲るべきは譲る、守るべきは守ると言明されており、特に、乳製品、でん粉の二品目については譲るわけにはまいらない旨の発言をされていますが、この点は国内農業の将来について極めて重大な問題であります。ガット理事会を前にして、農林水産大臣のお考えに変わりはないか、御決意のほどをお伺いいたします。  また、牛肉、オレンジ、果汁についての日米貿易協定もこの三月末に期限切れとなりますので、協定の趣意に従って二国間の協議が行われるべきものと考えます。  アメリカ側は、四月一日以降自由化すべきであり協議の必要はないと主張してきたようでありますが、従来の協定の経緯から見ますと、余りにも一方的であり、協議によって解決すべきものであります。この問題について、政府としてどのように対応されるか、伺います。  こうした状況——農産物市場の国際化のうねりは、我が国農業の上に覆いかぶさっているのであります。今や日本農業は、極めて厳しい試練の前に立たされているのであります。そして、その試練を越えなければ日本農業の将来はないのであります。政府としては、避けがたい国際的な協調と国内農業を守る立場をどのように調整し対応されようとしているのか、農林水産大臣にお尋ねいたします。  国際化が進む中で日本農業が生き残っていくためには、消費者、国民の期待にこたえつつ、生産性の向上を図り、農業経営の体質を強化していくことが喫緊の急務であります。それには日本農業の零細性の克服、経営規模の拡大のための構造改善施策の展開を急がなければなりません。政府としては、今後具体的にどのように構造政策を進めていくのか、現在、農林水産省において検討中と聞いているいわゆる構造立法の取り扱いも含めて、総理並びに農林水産大臣にお伺いいたします。  次は、中小企業問題であります。  最近の景気拡大により、中小企業の業績は総じて好況を呈し、倒産件数は減少していますが、将来に向かって中小企業はアジアNICSという手ごわい競争相手の出現、円高や内需主導型経済に対処して市場開放と産業構造の転換を図らなければなりません。企業体質の弱い中小企業にとってはまさに死活問題であります。  また、異なる業種の企業が、互いの技術、経営、マーケティングノーハウを出し合って新しい事業を興す中小企業の融合化は、今全国的に全業種に普及しています。これは我が国経済の国際化や構造転換の進展の上から好ましいものと思われますので、政府としても異業種企業の交流、経営資源の複合化による中小企業の融合化の促進を積極的に支援すべきであると思います。  さらに、円高定着により親企業の海外進出が進み、関連して下請中小企業も海外進出を迫られていますが、その準備や情報不足でかなり混乱を来しておると見受けられますので、適切な指導、助言が必要と思います。  以上、円高下の中小企業が抱える転換対策、融合化及び海外進出について、総理にその対策をお伺いいたします。  次は、土地問題と首都機能の分散であります。  昨年における首都圏を中心とする大都市の地価高騰はまさに異常でありまして、これが大きな政治社会問題化し、この是正を図るため、我が党の緊急土地対策の提言があったほか、土地国会が開かれたことは御案内のとおりでございます。応急の対策が功を奏し、昨年秋以降、都心部では鎮静化傾向が見受けられますものの、一方、首都圏周辺の各都市や地方の主要都市には依然として上昇機運が根強くあり、先行き予断を許さないのであります。  今こそ我々は、働く者のマイホームの夢を踏みにじる地価高騰の原因を徹底的に解明し、必要な法改正を含む具体的方策を早急に確立することが政治に課せられた重大な責務であると思います。改めて土地問題に対処する総理の決意をお伺いいたしますとともに、土地暴騰の再発防止のため、政府は具体的にいかなる施策を今期国会において講ずる所存であるか、お尋ねいたします。  ここで、私が特に配慮願いたいことは、今回の地価高騰の主因は投機及び買い急ぎ需要にあるのでありますので、土地の投機的取引は何としても抑制していただきたいのであります。既に土地の短期譲渡に対する重課税制度が施行されているものの、地方においては今後とも土地に対する投機的取引の発生がなお予想されることから、政府は、関係自治体とともに土地取引及び地価動向を事前に十分監視して、国土利用計画法に基づく監視区域の指定、届け出対象面積の引き下げや規制区域の指定を積極的に行うとともに、悪質不動産業者に対する指導の徹底した強化、さらには、地方を中心とした金融機関に対する大蔵大臣の特別ヒアリングの積極的推進を願いたいのであります。これらの対策について、御所見を承りたい。  さらに、土地問題の解決、地価鎮静の決め手は、これまで述べた投機の抑制とあわせて土地の有効利用、供給の促進が重要であります。この観点から、高次の都市機能を持った東京都心・臨海部の大規模プロジェクトの推進、また、市街地の高度利用を図るための都市再開発、さらには、東京圏の土地供給のため市街化区域内の土地の有効活用、市街化調整区域制度の適切な運用等を促進すべきと考えます。これらについて、どのような対策をお持ちでありましょうか。  今後、行政が積極的推進を図らなければならない課題は、首都機能の分散であります。  昨年六月に決定した四全総では、国土の均衡ある発展を図るためには、高次都市機能を東京圏が一元的に担うのではなく、その多極的な分担によって東京一極集中を是正し、地方圏を重点的に整備することを基本目標として掲げるとともに、地域の特性を生かした国土づくり、地域の行財政基盤の強化を図るとしておるのであります。政府は、今後四全総の実施をどう進めるのか、その方針を伺いたい。  今般、政府の提唱している一省庁一機関の地方への転出は、行政が率先してその姿勢を示すという意味で十分評価されるものではございますが、将来にわたっては各省庁画一的ではなく、積極的にその推進を図られたいと思います。将来は省庁ごとに一括移転をさせるというようなことは考えられませんか。  また、総理の唱える「ふるさと創生」を支えるものは、地方の活力であります。そのためにも、東京における土地需要の緩和を図り、あわせて地域経済発展を担う産業の地方分散、再配置を進めることが必要であります。さらに、地方みずからが実力を持っためには、国としても思い切った権限委譲や財源配分を実施すべきであり、これらの一本化が新しい地方の時代を築く原動力となるものと考えます。これらについて、総理の構想をお示し願いたいのであります。  最後に、総理は、かつてどの総理も経験されたことのない歴史的試練の場に立ち、解決を急がなければならない幾多の難題を抱えておられるのであります。  私たち自由民主党は、この立ちふさがる障壁を国民の理解、英知、活力を結集して克服し、新しい創造に向かって挙党一致前進しなければなりません。中曽根総理より新総裁に推挙された竹下総理は、強いリーダーシップを発揮して、時代が真に要求するものを大胆な発想で追求し、大隈精神のもと誠実な政治の展開を期していただきたいのであります。  以上をもって、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
  11. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ただいまのお尋ねは、政治姿勢外交防衛経済、金融、財政、税制、教育改革、農業、中小企業、そして土地、首都機能の分散等多岐にわたるものでございました。  それぞれの問題に対しての意見を交えての御質疑でありましたが、基本的に意見を同じくするところが多い、これは当然のことでございます。したがって、私からお答えいたしました後、具体的な問題につきましては、御指名いただきましたそれぞれの所管大臣からもお答えをすることといたします。  まず、政治目標の問題でありますが、内外の諸課題に対して国民的合意を求めながら、「調和と活力」の政治、これを目指してまいりたいと考えます。同時に、みずから判断することが必要な際には、責任を持ってみずからが決断してこれを実行に移す、このような基本的な考え方であります。コンセンサスを求めるがゆえに絶えず聞いてばかりおりまして結論は出ない、このようなことではないということをあえて申し上げたかったわけであります。  次に、外交問題でございます。  政治経済の両面で国際情勢が依然流動的である中で、今や国際秩序の主要な担い手の一人となった我が国、これに対します諸外国の期待と関心は大変顕著に増大をしております。我が国が戦後享受してきました平和と繁栄、それから恵まれた国際環境、そうして国民の不断の努力、これがあったからであると思います。  平和国家としての立場を堅持する我が国といたしましては、みずからの長期的平和と繁栄を確保するためにも、率先して国際平和に貢献していかなければなりません。国際社会の繁栄のための国際協力を推進していくことが必要であると基本的に考えております。したがって、地域紛争等の解決のためにも一層努力をしますとともに、世界経済の健全な発展への貢献、開発途上国の安定と発展への協力などを誠実に進めてまいります。  さらに落としてはならないことは、政治経済面での貢献に加えまして、文化、学術、科学技術、これらの分野でも国際交流を促進していかなければならない、このように考えております。  訪米の問題でございますが、基本的にまず日米両国世界GNPの三分の一以上を占めておる。こうなった今日、確固たる日米関係を維持することは、我が国自身の平和と繁栄に不可欠であることは言うまでもありませんが、世界全体の安定と繁栄にとって大きな意義があると思います。そうした認識の上に立ちまして、首脳会談、私といたしましては、首脳としてはもちろん初めての会談でございます。忌憚のない意見の交換を通じて世界的視野に立って密接に協力し、それぞれの役割と責任を果たそう、そして二国間の経済問題は共同作業によって解決を図ろう、このような考え方をお互い確認し合ったわけでございます。したがって、今回の訪米を通じまして日米関係の基盤を強化し得たのではないかというふうに思っております。  それに関しての市場開放問題でございますが、レーガン大統領との間で、いわゆる両国経済問題というのは、これはこれだけ交流関係が深くなれば必然的に生じてくる。これについては先ほど申しましたように、まずは共同作業という理念に立ってやると同時に、縮小均衡ではなく、やはり拡大均衡でこれに当たろうということを基本的に考えておるわけであります。したがって、今後やはりそういう路線を踏まえながら、個々の問題、いろいろな段階でそれぞれの交渉があろうかと思いますが、すべて共同作業という認識の上に立つべきだと考えております。  対韓外交姿勢でございますが、基本政策は、韓国との友好協力関係を維持発展させていくという大前提に立ちまして、一九六五年の国交正常化以来、とにかくあらゆる分野でますます良好な関係が伸びてきております。  そうして、この二月には、平和的政権移譲を契機として、より安定的かつ国民的基盤に立って良好な両国の関係が構築されていく、発展していくことをもとより期待しております。  御説にありましたとおり、ソウル・オリンピックの成功のため、善隣友好関係の発展のためにも青少年を含むあらゆるレベルにおける分野の幅広い交流等を含めまして、オリンピックの成功のための協力に加えてそういう青少年交流等も広げていきたいと考えております。  そこで、テロ防止の問題につきましては、国際テロは民主社会に対する挑戦で、断じて許すべきものではありません。政府としては、この大韓航空機事件に対する毅然たる姿勢を示すとの観点から、対北朝鮮措置をとることとし、また、ソウル・オリンピックの安全対策のため、韓国と協力して万全の措置をとる旨発表した次第であります。  かかる協力を具体化するための具体的協議体制については、早急に韓国側と合意を得るべく努力をいたしてまいります。  中国近代化に対する我が国姿勢につきましては、もとより対中関係というものは我が国外交の主要な柱であります。貿易、投資等の活発な経済交流、経済協力等を通じて中国の近代化への努力に対して支援をしております。経済協力につきましては、我が国政府開発援助が最も多くの援助中国に対して供与しておるところであります。我が国としては、今後とも中国の近代化努力に対しまして可能な限りの協力をしていく。  そうして、基本的には日中共同声明、日中平和友好条約及び日中関係四原則に従いまして、今後ともこの発展に努力してまいります。特に、本年は御指摘のように平和友好条約締結十周年に当たります。したがって、双方の都合のよい時期に私は訪中して両国首脳間の相互理解を深めたい、このように考えております。  対ソ関係でございますが、デタントムードを戒められた御意見を交えての御指摘でございました。  御指摘のとおり、ソ連との間におきましては、北方四島一括返還を実現することによって北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定した関係を確立すること、これが我が国対ソ外交の基本方針であります。また、したがって、無原則な政経分離はとるわけにはまいらぬ、政府としては対ソ外交に当たっては今後とも基本方針をきちんと堅持して対応すべきものであると考えております。  次に、INF交渉とそしてそれが西側に対する安全保障の関係等についての御質疑でありました。  昨年十二月に署名されましたINF条約を通じて、一九七〇年代後半よりアジアの平和と安全を脅かしてきたソ連のSS20がグローバルに全廃されることになったことは、それは評価さるべきものであると思っております。しかし、SS20が全廃されたとしても、いわゆる質量ともに今日の極東ソ連軍の増強というものは続いておるわけであります。その行動の活発化など、我が国を取り巻く情勢は依然として厳しいものがあるという現実認識には立っていなければなりません。  今次INF条約により全廃されることになる核兵器は、御指摘のありましたとおり、米ソ両国核兵器の一部を占めるにすぎないことに加えまして、戦略核の大幅削減、通常戦力の不均衡是正、それから化学兵器の撤廃、そうして地域問題、西側の安全保障を確保するためには依然として解決さるべき多くの問題が存在しておるという現実認識は、やはりきちんと持っていなければならない課題であると思っております。  次期中期防の問題でございますが、御指摘のとおり、我が国防衛力のあり方については、国際軍事情勢、諸外国の技術水準の動向等に有効に対応し得るよう常日ごろから研究していかなきゃならぬ問題であると思っております。こうした観点で、防衛庁を中心として将来の効率的な防衛体制のあり方について、我が国の地理的な特殊性、それから科学技術の進歩等の状況等を考慮して各種の検討が今進められておるというふうに承知しております。  それから、経済見通しの問題でございました。  我が国の持つ潜在成長力をどう見るかということがいつも問題になるわけでございますが、六十三年度の我が国経済につきましては、御指摘にもありましたように、内需の寄与度は好調な個人消費及び設備投資を中心に四・七%程度、外需の寄与度は対外不均衡の是正過程を反映してマイナス一%程度と見込まれますので、全体として実質三・八%程度の着実な成長を見込んでおるということが言えると思います。  内需経済への定着の問題につきましては、国際的に調和のとれた対外均衡の達成と国民生活の質の向上等を図りますために、構造調整の推進と内需主導型成長への転換、定着が必要なことはまさに御指摘のとおりでございます。  そこで、昨年十一月、新しい長期経済計画の策定について経済審議会に諮問して、今審議が進められておる。我が国経済の一層の発展を期していくために、内外経済の展望の上に立って経済運営の中長期的な方針を明らかにして、国民の皆様や企業の方に自信と活力を与えていこうということを考えております。  それから、不況地域の活性化、雇用対策、いささか対症療法的に過ぎる、こういう御批判もございました。私どもも、その意見に対しても耳を傾けるべきであると思います。  産業構造転換に伴いまして大きな影響を受ける地域、それの活性化を図って雇用の安定を確保するために、産業構造転換円滑化臨時措置法等に基づく地域活性化対策等、特定不況業種雇用安定法、これに基づく雇用安定対策、各種施策を精力的に講じてきておりまして、今後とも経済政策、産業政策、雇用政策、これらは密接な連携のもとに総合的に推進していかなければならないと考えております。  米国経済をどう見るか、こういうことでございました。  現在アメリカの輸出は順調に伸びてきておりまして、アメリカ経済は今後とも全体として緩やかな拡大を続けるものと思われますが、世界経済の安定的な拡大を確保するためには、アメリカの貿易収支の改善と財政赤字の縮小が必要であります。これについては、先般の首脳会議におきましてもその努力への決意を承ってまいりましたが、これからも一層の努力を求めていかなければならないと思います。  それから、金融面にわたりまして、スワップの拡大問題でございますとか円の国際化の問題がございました。  為替レートの安定というのは、基本的には政策協調ということでございますが、これについては大蔵大臣からお答えがあることであります。  税制改革の基本方針でございますが、国民の税に対する不公平感を払拭して、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を早期に構築していくこと、これはだれも原則的に異議のないところであります。  これから国会の場における論議を承りましたり、そうして税制調査会における審議、これを十分に伺いながら、何としても納得が得られるような成案をまとめ、その実現のためには渾身の努力を払わなきゃならぬ。税負担の公平確保というものについて思いをいたすことは、これまた当然のことであります。  教育改革につきましては、創造的で多様な教育の実現を図って、二十一世紀の我が国を担うにふさわしい青少年の育成を目指して教育改革を推進することは、これはお説のとおり国政の重要課題であります。  臨教審の諸提言を受けまして、生涯学習体制の整備、徳育の充実を含む内容の改善、それから資質向上の課題、これらを逐次進めてまいります。  そして、ポスト臨教審については、臨教審答申を受けての教育改革を円滑かつ効果的に推進するための審議機関として総理府に臨時教育改革推進会議、これは仮称でございますが、設置すべく今所要の準備を進めておるということであります。  大学改革につきましても、いろいろな意見を交えての御提言でございました。大学等の改革を適切に進めていくことは重要であると思っております。  そこで、昨年九月、大学審議会を新たに設置して、具体的方策について鋭意検討をいただいておる。  大学教員の選択的任期制の導入でありますとか、今お話しのあった助手の位置づけとか、そういう問題もこの審議会で検討していただくということでございます。  それからスポーツ振興の問題は、中曽根総理がいわゆる私的諮問機関としてスポーツ関係の懇談会をつくっておられました。私も臨教審からの御提言をまずいただいてありますが、さらに具体的に、その懇談会を引き続き開催しまして関係者から意見を承っておるというのが今日の現状でございます。  農業の位置づけにつきましては、農業は国のもとであり、御指摘のとおり、その役割は食糧の安定供給を初め活力ある地域社会の維持、国土、自然環境の保全等極めて重要であります。  基本的には、一昨年の十一月でございましたか、農政審議会の報告をいただきました。国内の供給力確保を図りつつ、国民の納得し得る価格での食糧の安定供給に努めることを基本として、しかも与えられた国土条件の制約のもとで最大限の生産性向上を図るということから展開すべきものであるというふうに考えます。  十二品目問題。牛肉、オレンジ、そしてその他の農産物市場開放問題への対応は、国際的な経済関係と多様な消費者ニーズへの対応といった観点を踏まえまして、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおける交渉との関連を十分考慮した上で適切に対処してまいる。詳細は関係大臣からお答えを申し上げます。  それから、中小企業の構造転換対策でございます。  円高下の中小企業の構造転換対策につきましては、新転換法、特定地域法等によるきめ細かな各施策に加えまして、六十三年度より御指摘のような異業種の中小企業の融合化施策、これを講ずることといたしております。  そうして、中小企業の海外進出に対しましても、情報提供、金融・信用保険制度の整備によりこれらの円滑化を図ってまいりたい、このように考えております。  それから、土地問題について御言及がありました。  臨時国会の所信表明にも申し上げましたように、現下の内政上の重要な課題であります。そして、国会においても特別委員会が設置されました。十月十六日に閣議決定しました緊急土地対策要綱、これに基づいて監視区域制度の機動的運用、それから金融機関に対する指導、さらに地方分散、住宅・宅地の供給の促進、土地需給の緩和、そして地価の安定、ひいては地価の引き下げに努力していくというのが基本的な考え方でございます。  これらの施策を強力に進めるために、今国会において所要の法案の御審議をお願いすべく準備をしておるという段階でございます。  投機的な土地取引の抑制については、これは当然のこと緊急の課題でございます。これに対して、不動産業界に対して、関係省庁とも連絡して、引き続き指導の徹底強化に努める、なお特別ヒアリング等を実施する、このような方針でございます。  それから東京の都心及び臨海部における大規模プロジェクトにつきまして、これは各関係省庁から成りますところの協議会において検討を進めておるところでございます。  それから四全総の実施と国の行政機関の地方移転の問題でございますが、種々御鞭撻をいただきました。  その一環として、今般、政府機関等の移転方針についてまず基本的な方針が決まったわけでございます。したがって、それが第一弾であろう。引き続き、この問題は御協力をいただいて進めていかなければならない重要課題だと思っております。  その際、これは官庁のみでなく産業の地方分散、それから国と地方とのそれに伴う役割分担の見直し、これらは四全総や臨調、行革審等の答申もございますので、権限委譲等も含めた問題につきましては、引き続きこれに真剣に対応すべき課題である、このように思っております。  以上でお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣宇野宗佑君登壇、拍手〕
  12. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 外交問題はほとんど総理がお答えになって、おられますが、重複を避けまして桧垣議員にお答えいたしたいと思います。  韓国のオリンピックに関しましては、百六十一の国家及び香港等の地域が参加を表明されております。特に、ソ連中国も既に参加を表明されましたし、久方ぶりに東西融合のオリンピックになるわけでありまして、朝鮮半島緊張緩和のためにもよき資となるため、その成功に対して私たちも全面的に協力をいたしたいと思います。  そのためには、先般残念にして国際テロが起こりましたが、こうしたことに対して万全の措置をとらなければならないと思います。特に韓国のソウル・オリンピックにつきましては、内外の選手あるいは役員あるいは観光団の方々が日本を通過される場合等々も多いということを考えますと、そのテロ対策には万全を期さなければなりません。外務省は、既に担当課長を派遣いたしまして韓国と十分協議さしておりまするが、その対策を速やかに練り、合意いたしたいと考えております。  次に、INFのグローバル・ゼロに関しましては、先般申し上げましたとおりに、これは我が国が主張したところであり、また西側陣営がさきにもサミットにおいて合意をし、団結をしたたまものでああいう成果が生まれたということを私は申し上げました。もちろん米ソ両国の御努力に対しまして、我が国といたしましても敬意を表します。そしてまた、このこと自体は核軍縮の第一歩であると定義をいたし、評価をいたしておりますが、これによりまして決して世界の緊張が緩和されたとは私たちは考えておりません。そのことに関しましては、総理がただいまお述べになられましたとおりでございます。  また、対ソ関係につきましては、常に改善をしなければならない問題がたくさんございますが、本日もソ連の商工会議所会頭が早朝にお越しになられました。そうしたソ連の要人が来られるたびに、日本といたしましては、平和条約の早期締結、その前提としての北方四島一括返還、このことを申し述べております。したがいまして、ソ連がこのことに対してより積極的に行動をとられるように我々といたしましては期待するところでございます。  いずれにいたしましても、ソ連は、言葉だけではなくして、その行動も私たちは十二分に注目をしたい、かように思っておるのが私たちの対ソ外交観でございます。もちろん、今申されましたとおり、我々は政経分離はとらない、この原則は一貫いたしております。  十二品目問題でございますが、昨年、ガット総会に私も出席いたしました。そして、そのとき、ただいま桧垣議員が申されましたとおりの考え方を旨といたしまして我々代表団は発言し、また行動をとった次第でございます。その結果、二月行われまするところのガット理事会においてきちんとした対応をするということを申し述べた次第でございますが、もちろん国内農業への影響、国際的な経済関係等を十分配慮いたしまして私たちは対処いたしたいと思います。  なお、その具体的対応策に関しましては、ただいま政府といたしましても十分なる態勢のもとに検討をいたしているところでございます。  以上、お答え申し上げます。(拍手)    〔国務大臣瓦力君登壇、拍手〕
  13. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 私からは、防衛力整備のあり方につきましてお答えをいたします。  防衛力の整備を進めるに当たりまして、軍事情勢や諸外国の技術水準の動向等に有効に対応し得るよう常日ごろから研究しておくことが重要でございます。かような観点から、防衛庁におきましてもそれぞれの部門で防衛体制のあり方について検討を行っているところでございます。  まず、将来の陸上防衛体制のあり方については、我が国の地理的特性、将来の軍事科学技術・兵器体系の趨勢、これらが陸上戦闘様相に与える影響等を踏まえて検討をしておりますが、その際、北部日本防衛を重視し、師団のあり方等を含め、基礎的研究を深めていくこととしております。  また、洋上防空のあり方については、近年の経空脅威の増大にいかに効率的に対応するかという観点から研究を進めておりますが、海上交通の安全確保にかかわる場合のあり方については、早期警戒監視機能としてOTHレーダーが、ミサイル発射母機対処機能としては要撃機と早期警戒機の組み合わせ、ミサイル対処機能としては護衛艦の対空ミサイルシステムのイージスシステム級への性能向上がそれぞれ効率的であるとの検討結果を得たところでございます。  中期防後の昭和六十六年度以降の防衛力整備のあり方については、長期的な視点に立って計画的に進めるべきとの観点から、中期的な防衛力整備計画を策定することが望ましいと考えております。私といたしましても、しかるべき時期を見てその検討に着手していきたいと考えておりますが、その際、これらの諸点を十分に踏まえて、真に効率的な防衛力のあり方を追求する所存でございます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
  14. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 六十三年度予算におきまして、公共事業の水準を前年度当初に比べまして二〇%の高さに置いておるということにつきまして、これはNTTの株式の売却代金を利用しておるわけでございますが、そのこと自身は、まさに御指摘のように、歴代内閣行政改革の成果でございます。おっしゃるとおりでございます。  それから、しかし一遍だけこういう予算を組んで済むわけではあるまいと言われましたことも、まさにそのとおりに存じます。我が国社会資本の整備の状況、あるいは、御指摘がありましたように、産業構造調整という仕事の困難さ、あるいは国際的な期待、どれを考えましても、今後何年かにわたってこういう努力を続けてまいることが必要であると考えておりまして、したがいまして、昨年法律を御制定いただきまして、このために社会資本整備勘定をおつくりいただいたわけでございますが、これも政府のそのような心構えを示すものでございます。  次に、為替の問題でございますが、御承知のように、昨年の暮れにG7の合意がございまして、これ以上ドルが下がるということはだれにとっても迷惑なことである、逆効果であるということから、政策協調と介入についての合意を確認したわけでございますが、その後総理大臣がアメリカの大統領と会われまして、共同声明の中においてアメリカ側の必要な資金の確保の枠組みについて合意をせられましたことは意義深いことであったと考えております。  おっしゃいますように、円が国際化をする、そのことによって基軸通貨としてのドルの役割をいわばある程度補完をする、それで国際通貨体制が安定していくということは、時間の経過の中で我が国としてそのような応分の役割を果たすことは望ましいことだというふうに思っております。  そこで、円の国際化のためには、円が使用されることに対する障害を積極的に除去していくこと、それから取引の実際の需要に基づいて円が選択されるようにしていくといったようなことが重要でございます。それは、おっしゃいますように、金融・資本市場の自由化あるいは国際化のための措置を進めていくということにほかなりません。  そういう具体的な方法といたしまして、円建ての銀行引受手形であるとか、あるいは政府の短期証券等の短期金融市場の整備をする、一般に金利の自由化はもとよりでございますけれども、そういうことを進めていく必要がございまして、かなりそれは進捗しつつございます。かなり進捗しつつございますが、今後とも引き続きまして短期金融市場を含みます金融・資本市場全般にわたりまして自由化、国際化を進めまして円の国際化に資していきたいと思っております。  昭和六十五年度に赤字公債依存の体質から脱却するということにつきましては、今回、六十三年度予算におきまして現在高の三分の一以上の一兆八千三百億円の減額をいたしましたので、現実性を増してまいった努力目標であるというふうに考えております。今後ともその努力を続けまして、六十五年度には赤字公債依存の体質から脱却をする努力を続けたいと考えております。  なお、国民の租税負担についてのお尋ねがございまして、どの程度の水準が適当かということでございました。  これは、申し上げるまでもないことでございますが、結局、給付の水準と負担の水準とは関連をいたしますから、国民がどのぐらいの公共支出の水準を望まれるかということによって決まるわけでございまして、固定的に考えることの難しい問題であろうと思っております。  最近、経済企画庁が作業をしておられます、「新経済計画の基本的考え方と検討の方向」、ごく最近発表されたものでございますが、この中では、「高齢化社会への移行、国際的責任の増大等により、今後、租税負担社会保障負担とを合わせた国民負担率は、長期的にある程度上昇するものと考えられる」と、こう述べておられます。と同時に、それは極力しかし抑制する努力が必要だとも述べられておりまして、従来、政府が正式にこのぐらいな水準が望ましいということを決定をしたことは恐らくなかったように存じます。ただ、一般的に、今のヨーロッパのような水準にまでいくことはこれは行き過ぎではないだろうか、それより低くとどめるべきではないかという意見が多いように私は存じておりまして、私個人もそのように思っております。  それから最後に、土地の問題につきまして、昨年の七月以降、東京を中心に金融機関に対してかなり立ち入ったヒアリングをいたしまして、それが土地価格の鎮静化に役立ったと考えております。  地方との関連につきましてお尋ねがございましたが、今後、地方におきましてそのような地価動向が生まれ、あるいは地方で監視区域の指定を広げられるといったようなことがございました場合に、投機的な金融はどこで行われても好ましくないのでございますから、必要がありますれば、いつでも地方に対しましてもこのヒアリングの範囲を広げてまいりたい、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣佐藤隆君登壇、拍手〕
  15. 佐藤隆

    国務大臣(佐藤隆君) 桧垣議員とは農政に関する認識は全く共通でございます。  御質問のございました三点を中心に、簡潔にお答えを申し上げます。  ガット理事会への対処方針についてでありますが、二月の理事会でいかなる考え方を表明するかは、現在、最終的な詰めを行っておるところでありますが、乳製品、でん粉についてはこれを守っていくという我が国の基本的立場には変わりございません。  この二品目については、自由化が困難であるという事情を十分説明し、関係国の理解を求めてまいりたいと考えております。  十二品目とは違いますが、牛肉、かんきつについても触れられました。一日も早く日米両国がテーブルに着いて、そして話し合うことができるよう最善の努力を続けておるところでございます。  二番目は、国際的な協調と国内農業を守る立場の調整についてでありますが、国際化の進展の中で国際国家を志向する我が国としては、農業問題といえども国際的に孤立するようなことがあってはならないことは言うまでもないところでございます。  同時に、我が国農業の果たす役割は、食糧の安定供給、活力ある地域社会の維持、国土、自然環境の保全等極めて重要であること等にかんがみ、将来に禍根を残さないようにするとの見地から、基本的には農産物を安定的に供給する体制を維持していくことが何よりも重要であると考えております。  このため、農政審議会報告を踏まえ、国内の供給力の確保を図りつつ、国民の納得し得る価格での食糧の安定供給に努めることを基本として、与えられた国土条件の制約のもとで最大限の生産性向上を図るとの観点から農政を展開してまいる所存でございます。  三番目に、経営規模の拡大についてお触れになりました。  現在、農業の担い手として中核農家が約八十万戸、営農集団が約五万集団あります。これらの担い手の規模拡大を図っていくことが、我が国農業の体質強化のため不可欠であります。  このため、農地の売買や貸し借り、農作業の受委託など地域の実態に応じた多様な形での規模拡大を促進し、農業の中核的な担い手を育成することが重要でございます。  今後、地域ごとの農業の将来展望を踏まえ、関係機関・団体が連携を強化しながら、農地の流動化とその前提となる土地基盤、近代化施設の整備を推進していくことが必要であります。  いわゆる構造立法につきましては、以上のような考え方を踏まえ、担い手への農地利用の集積を促進することを主眼として我が省において検討をいたしているところでございまして、今後各方面とも十分協議の上、成案を得たいと考えております。その際はよろしくお願いをいたします。  以上でございます。(拍手)
  16. 藤田正明

    議長藤田正明君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 藤田正明

    議長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十九分散会