○桧垣徳太郎君 私は、自由民主党を代表して、現下の内外の重要
課題について、
総理並びに関係大臣に質問をいたします。
国民的期待の中でスタートした
竹下内閣は、組閣以来既に土地
国会をこなし、ASEAN
首脳会談で貢献し、
財政再建と
内需拡大を盛り込んだ新年度
予算を編成したほか、
日米両国の友好
発展の基礎を固めるなど、成熟への対応を求め努力しているその
政治姿勢を高く評価するものであります。
今、為政者にとって一番重要なことは、
政治が未来への戦略を示し、展望を切り開くことであると
考えます。これから
総理が先頭に立って行わんとする
税制改革、教育改革、
経済構造の転換、対外不均衡の是正など数々の改革は多くの痛みや犠牲が伴うだけに、
国民的合意を求めつつ誠実に忍耐強く取り組むことは当然ながら、時と場合には機敏な決断が必要となることもあります。改めて、国政を担う
総理の
政治目標、
政治理念についてお伺いをいたしておきたいと思います。
続いて、
外交問題について伺います。
総理、昨年末のASEAN
首脳会談の出席に引き続き、今春早々よりアメリカ及びカナダ訪問まことに御苦労さまでございました。関係者の御苦労を多とし、その意義を高く評価するものであります。
総理が申されておりますように、今、
世界は大きな変動のただ中にあります。
国際政治面で見れば、二大核保有国として長く対峙してきた
米ソ両巨
大国が
INF全廃条約の調印を行い、画期的な核軍縮の一歩が踏み出されたわけであります。
経済面では、ドル不安の中で
米国は財政、貿易の
双子の
赤字を抱え、
世界一の
債務国となり、欧州の多くの国々は失業と
福祉負担に悩み、開発
途上国の累積
債務問題は深刻さを加えているのであります。
一方、
我が国は最大の黒字、純資産を持つ超
経済大国となり、相互依存の国際
社会の中にあって自国の都合のみで行動することは許されず、国力に見合う
世界への貢献、国際的地位にふさわしい責任が問われておるのであります。
総理は、施政
演説において、「
世界に貢献する
日本」、「
日本の豊かさと活力を
世界に」生かすことを強調されておりますが、まず、厳しく流動する国際情勢をいかに認識し、
我が国として国際
社会に貢献するのか、竹下
外交の基本理念をお伺いいたします。
総理が最大の
政治課題と受けとめておられる
日米関係でありますが、さきの
首脳会談が
成功裏に終わりましたことは、誠実な
政治のあらわれとして評価をいたします。
最近の
日米関係は、貿易問題などのきしみが目立ち厳しい時期であっただけに、
日米首脳会談の成り行きが注目されておりましたが、
竹下総理と
レーガン大統領は、大変和やかな空気の中で忌憚のない対話が行われたようであります。しかも、その会談内容も、為替の安定、農産物自由化、公共事業参入の問題など
経済問題を中心に、東西関係、
防衛問題、科学技術協力など、かつての
日米首脳会談で例がないほど,広範な問題が話し合われ決着を見ましたことは、
日米関係の
信頼回復に大きく寄与するとともに、ロン・ノボルの個人的
信頼関係が図られ、喜びにたえぬところであります。
総理は、今回の訪来の意義、成果をどう受けとめておられましょうか。
このように、
日米間に横たわる当面の
課題は、
首脳会談での合意により大筋で解決いたしましたが、公共事業の参入問題や農産物自由化など市場開放に関する個別問題については、
米国議会においては包括通商法案など保護
主義の動きが依然として根強く残っており、予断を許しません。
また、
我が国においても、公共事業については参入を認める事業の規模、箇所等の調整が残っているほか、アメリカ以外の国からも参入
要求が出ておるのであります。農産物自由化の問題については後でも触れますが、国内農業が大打撃をこうむるだけに難航が予想されます。
総理は、市場開放について、
日本は自由貿易の恩恵を最も享受した国であること、最大の農産物輸入国であるが消費者の立場を
考えることが重要であると述べられています。
総理は、これらの市場開放について
レーガン大統領との間でどのような話し合いが行われたのか、お伺いいたします。
次に、アジアの重要な隣国である韓国及び
中国との関係についてお伺いします。
韓国は、二月の政権移譲、九月のソウル・オリンピックを控え、重要な局面を迎えつつあります。
総理は、盧泰愚大統領の就任式に出席されるために韓国を訪問したいとの御意向であると伺っておりますが、これを契機に、現在、基調として極めて良好な日韓関係をより幅広い分野で一層
発展させていくことが重要であると
考えます。
総理の対韓
外交姿勢についてお伺いいたします。
関連して、史上空前の参加国を得たソウル・オリンピックを
成功させるため、テロ行為の再発防止の問題があります。
我が国としても、韓国
政府と協力して、その安全確保のため最大限の努力を尽くすべきであります。
政府の
方針はいかがでありましょうか。
また、日中関係は、国交正常化以来、
政治、
経済、文化等幅広い分野において目覚ましい
発展を示しております。特に、本年は日中平和友好条約締結十周年を迎え、
総理訪中が予定されている由でありますが、
我が国としては、現在
中国が「改革と開放」の大
方針のもとに進めている近代化建設の努力に対しできる限り協力するとともに、
両国間の友好協力関係の一層の
発展のため努力を傾注すべきであると
考えます。
総理の御所信をお伺いいたします。
次は、
ソ連との関係であります。
米ソ間においては、先般
米ソ首脳会談が行われ、
INF条約が調印されるなど建設的な対話の機運が見られますが、戦略核等その他の分野の軍備管理問題やアフガニスタン等の地域問題等で解決しなければならない問題がまだたくさん残されております。
米ソ首脳会談後、一部には安易なデタントムードが生じておりますが、その
外交政策には実質的な変化が見られません。対日
政策についても基本的な立場の前進がないのであります。
かかる状態においては、安易に対ソ
外交を進めるのではなく、北方四島一括返還を実現し、平和条約を締結する。また、
経済関係においても政経不分離の
方針を貫き、筋の通った対ソ
政策を堅持すべきであります。
総理及び外務大臣の御所見を求めます。
次は、
防衛問題であります。
INF全廃条約の調印に当たっては、
米ソ両国首脳の御努力によることは申すまでもありませんが、同時に、ここに至るまで
中曽根前
内閣が終始一貫してアジアを含めた
INFの全廃を国際舞台において強く訴えてきた努力を忘れてはならないと思います。
御案内のように、この条約は初めて特定の核ミサイルを全廃すること、また、現地査察等各種の検証措置を規定している点で高く評価するものでありますが、現実には、
米ソ両国が有する五万発の核弾頭のうち、わずか五%を廃棄するものにすぎません。したがって、依然として
世界の平和は
米ソの戦略核を含む強大な
軍事力を中心とした東西間の力の均衡により維持されているのが冷厳な現実であります。
今日の国際
軍事情勢は、イラン・イラク紛争等にも見られるように、
世界各地の地域紛争は後を絶ちません。
我が国について見ても、昨年十二月九日、
ソ連軍用機が
我が国の領空を侵犯し、沖縄本島上空を通過したことはいまだ記憶に新しいところであります。いずれにせよ、今日の
国際政治面には依然として厳しいものがあることは明らかであります。
しかるに、
INF全廃条約の調印がやっと終わったばかりなのに、一部に、ムードに流され現在の国際
軍事情勢がデタントであるといった評価を下し、果ては
我が国が行っている
防衛努力の意義を軽視ないしは否定するような間違った見方をする者もあるのであります。
これに対し、例えば欧州では、
INFの全廃によって東西間の通常兵器のバランスの確保が真剣な問題になっているように、私たちは
我が国を取り巻く国際
軍事情勢をあくまでも冷静にとらえることが必要ではないでしょうか。
政府は、
我が国をめぐる国際
軍事情勢をどのょうに認識しているか、あわせて
INF条約が効力を発した場合、
我が国を含む西側全体の安全保障にいかなる影響を及ぼすと見ているのでありましょうか。
また、中期防の第三年目という節目を迎えた今日、将来の技術の進歩と
我が国の置かれた地理的、戦術的環境を照らし合わせて、より効率的な
防衛力のあり方について長期的視点から検討することが必要であると思います。
政府は、将来の陸上
防衛、洋上防空の態勢のあり方をどのように受けとめ、次期の中期防の準備に取りかかっておらりれるのか。以上、
総理及び
防衛庁長官より御
答弁を
願います。
次に、
経済問題にいついて伺います。
まず、今後の
経済政策であります。
現在、
経済は極めて良好な状態に推移しております。昨年春以来景気は上向き始め、七—九月期には実質
経済成長が年率八・四%の高成長を記録するとともに、懸案の国際収支も黒字減少の傾向が強まっており、内需主導による
経済の拡大が顕著となっております。
昭和六十二年度の実質
経済成長率は、当初の
政府見通しを上回る一二・七%と見込まれ、失業率や有効求人倍率等雇用情勢も大幅な改善が見られておるのであります。これは
政府、日銀による積極的な財政金融
政策の成果であると思います。
現在の
経済の実勢は極めて強いと思われ、
政府が来年度
経済の
見通しとして発表した三・八%の実質
経済成長率はいささか低目の嫌いがあると思われますが、改めて
総理の御
見解を伺います。
今後の
経済政策として、私は現在の高目の
経済成長を維持しつつ、一層内需型
経済への定着を図っていくべきだと
考えます。
昭和六十三年度
予算では、公共事業を当初
予算に比較し二〇%増を確保しておりますが、今後数年にわたり、財政は
経済成長に見合った拡大が要請されているのであります。
これは諸
外国からの要請にこたえるものであるとともに、従来立ちおくれていた
社会資本の充足、
国民生活の
充実につながるものと
考えます。今後の
経済政策の基本
方針と財政
政策の方向について、
総理及び
大蔵大臣の御所見を伺います。
第二は、
産業構造調整への対応策についてであります。
現在、好景気の到来が予想される一方、前川レポートが言う産業
構造の調整という深刻な問題を抱えております。
経済の国際化や分業の促進、NIOSからの追い上げ等により、
経済産業
構造の一層の高度化が要請されてきましたが、昨今の急激な
円高はこの傾向を一層助長いたしました。
すなわち、石炭の閉山、鉄を初めとする重厚長大型産業の規模縮小により地域
経済の活力の低下、失業者の発生が起こっておりますが、さらに自動車、家電等の一層の海外進出が予想され、いわゆる
経済の
空洞化は避けられぬと危惧されておるのであります。これを避けるには、企業自身の付加価値の高い生産への移行と同時に、
政府も地域
経済の
活性化と雇用の確保を図る施策を実施することが必要であります。
政府も、六十三年度
予算で、地域の活力拠点を建設する施策や地方民活の助成、労働力需給のミスマッチを解消するための「産業・地域・高齢者雇用プロジェクト」の発足などの
対策が講じられています。しかし、やや対症療法的であり、産業
政策と雇用
対策との連携に欠けておる余地なしといたしません。地域
経済の再
活性化及び雇用
対策を一体化した総合的な
産業構造調整に向けての
対策を立案していく必要があると思いますが、
総理の御
見解を伺います。
第三は、国際
経済・金融問題であります。
来年度の
日本経済が順調な拡大を見込まれておるのに対し、
世界経済の動向はやや慎重な見方を必要とすると言わなければなりません。OECDによれば、八八年の
世界経済の成長率は八七年の二・七五%から二・二五%に低下し、八九年には一%台に落ち込むと見込まれています。この成長鈍化の背景には、
米国経済への
信頼性、なかんずくドル急落への不安があると思われます。
米国も、
経済や通貨不安の原因である財政
赤字に対処するため七百六十億ドルの
赤字削減策が合意されましたが、十分な
赤字削減対策が講じられていないとの批判があります。この結果、金融・為替市場が不安定化すると危惧されますが、
米国経済の動向をどのように見ておられましょうか。
昨年一年間で円は三十六円十銭、三一・二%の史上最高の上昇率を記録いたしました。新年に入り、一月四日以降各国の為替介入によりドル水準の高目誘導が行われ、さらに、
竹下総理訪米のドル安下落防止とSDR活用による介入資金確保の合意等からドルの持ち直しが見られるのであります。しかし、協調介入には限界があるということを
考えますと、より各国が
政策調整を進め、
経済の基礎的条件を変えていくことが重要であります。
十一月の
米国の国際収支には改善の兆しが見えますが、なお
政策調整策の実現やドル安の是正に時間がかかることを
考えれば、
日米間における迅速な為替市場への介入ルールの取り決めや介入資金としてのスワップ枠拡大を
米国に要請するのも一案と思いますが、いかがでありましょうか。
この点に関連し、私は、
日本自身も円の国際化を積極的に進め、ドルの過重負担を軽減する等国際通貨安定に貢献すべきであると思います。
最近、ユーロ債等国際債の発行に占める円建ての比率はドルに次ぐなど、資本取引の面では進んでおります。しかし、経常取引では余り進んでいないのが実情であります。これは貿易金融市場の未整備も大きな原因であり、
政府も近年、円建て取引促進の手形を創設していますが、十分機能していないうらみがあります。今後、この手形の発行、流通を阻害している税制、手続を改善して魅力ある商品に工夫するとともに、国内の金融自由化を進め、
外国人が
政府短冊期証券等の円建て資産を自由に保有、処分し得る金融市場の体制整備を図るべきではないかと思います。以上の点につき、
総理及び
大蔵大臣の御所信を承ります。
次は、財政、税制問題について伺います。
まず、
財政再建と財政運営の方向についてであります。
昭和六十三年度
予算は、
内需拡大と
財政再建の両立を
目標に編成されましたが、いずれも目的を達成したと言えると思います。特に、懸案の
財政再建について、いわゆる
赤字公債を一兆八千三百億円
削減し、発行額は三兆一千五百億円と財政危機の始まった
昭和五十一年度を下回る水準に抑え込む大幅な改善をいたしております。
昭和六十五年度
赤字公債の発行をゼロとする
財政再建の達成に大きく近づいたと言えるのではないでしょうか。
一時は絶望視されていた
財政再建目標の達成が今回前進したのは、
竹下内閣に至る歴代
内閣が
財政再建の
姿勢を堅持してきたことによるものであります。特に、鈴木、
中曽根二代の
内閣によって強力に実施された行財政改革が、歳出面で高度成長
時代の水膨れ体質を改善する一方、歳入面ではNTT等の民営化による売却益を生み出し、税の
自然増収と合わせて巨額な財源が捻出され、
公共投資等に活用できたからにほかなりません。今や私たちは、長年進めてきた臨調型財政の成果の上に立ち、
財政再建を貫徹するとともに、積極的な
経済政策を推し進め得る絶好の状態をつくり上げたと言えるのではないでしょうか。
六十五年度
財政再建の達成に、今後二年間で毎年約一兆五千八百億円の
赤字公債を
削減することになりますが、税の
自然増収やNTT株の売却益等歳入面の動向を踏まえつつ、シーリングのあり方を含め、今後の財政運営の展望と再建の
見通しについて
大蔵大臣の御
見解を伺います。
第二は、
税制改革問題であります。
昨年、
税制改革をめぐって
国民の間でさまざまな論議が交わされました。現在、当時の論議を振り返り、論議の焦点が売上税導入問題だけに絞られ、
税制改革全体の目的が
国民に周知されぬまま終わった傾きのあったことはまことに不幸だったと思います。
税制改革を私たちが提案したのは、
税収の七割をも直接税に依存する現行の税制体系を放置するなら、サラリーマンや一部企業に過重な負担を強いる結果となること、急速に迎える
高齢化社会に円滑に対応するための
福祉財源の不安定性を懸念したからにほかなりません。
昨年夏の第百九回
臨時国会で、規模を縮小し、
所得税の減税と貯蓄非課税制度が見直され、
税制改革の一部が実施されました。しかし、中堅
所得層を中心とする
所得税の軽減はなお要望が強く、また、諸
外国と比べ実効税率の高い法人税の軽減は手つかずであります。
特に、国際化が進む中で、国際水準とかけ離れた法人税率は、資本の海外流出を一層招くことになりかねません。加えて、最近の大都市と周辺の地価
高騰により、固定資産の評価は急上昇し、相続税や固定資産税等、土地に対する税制の改革が望まれております。速やかにこれらを一体化した税制の抜本改革の必要性はますます緊急性を帯びております。
間接税の導入も、これらのひずみを是正し、さらに現在の複雑な個別
間接税体系を直すために導入さるべきだと
考えます。
税制改革に対する基本
方針及び今後の進め方について、
総理の御所信を伺います。
税制改革に対して、
国民の間にもかなり理解が深まってきたと思います。最近の世論調査でも
税制改革を支持する比率が高まっていることは、このことを裏づけておるのであります。
しかし、その一方、
間接税の導入に理解を示しつつも、現行税制のもとでの不公平の是正を求める声も少なくありません。脱税の摘発や
所得捕捉の改善等、税務執行と並んで
政策税制や
資産課税の軽減が批判の対象となっております。
既に企業に対する
政策税制は、近年の税制改正でほぼ中小企業関係や環境保全、資源確保の措置に限られておりますが、
資産課税のうち貯蓄非課税が見直された今日、
キャピタルゲイン課税について検討すべき点が残っております。しかし、
経済取引の複雑化や国際的な資金移動の増加の一方、
国民の消費の高度化と資産保有の
増大を
考えますと、今後の税制のあり方として、累進税率の高い一本調子の総合課税を進めることには問題なしとしないと思います。むしろ、
所得、消費、資産について均衡のとれた、いわゆる薄く広くの課税をそれぞれ実施する方が今日的税制と思いますが、いかがお
考えでありましょうか。
税制改革を進めるに当たり、
国民に税の役割を理解し負担の必要性を納得してもらうことが重要であります。
政府は、
国民に一層の理解を求めるべきでありましょう。その一方、
国民に負担を求める立場から、
国民に対する負担の限界もまた意識されねばなりません。その意味で、現在二四・四の租
税負担率、あるいは
社会保障負担を含めた三五・四の
国民負担率を今後どの程度にとどめるのか、
国民に明示すべきと思います。
大蔵大臣の御
見解を承りたい。
次に、教育改革について伺います。
教育は、人づくりであり、文化、
経済、
社会を支える基盤であります。今後、
我が国は、二十一世紀に向けて活力ある
発展を目指すとともに、相互に依存する国際
社会にあって平和と繁栄に大きく貢献するためには、戦後教育のあり方を原点に立ち返って問い直し、心の通う伸び伸びした教育制度に抜本的に改革すべきであります。
こうした
時代の要請を受けて、臨時教育審議会は、昨年八月、大学入学者選抜方式の改革、初等中等教育における教育内容の改善、教員資質の向上、生涯学習体系への移行及び大学運営の改正等について答申しました。
また、暮れには、文部省の教育職員養成審議会は教員免許の学歴別三段階制を、教育課程審議会は道徳教育の重視、国旗・国歌の明確化、中学校における必須教科の弾力化、小学校低学年における
生活科の新設等について、それぞれ答申をいたしております。
このように、六・三制発足後四十年を経た昨年は、懸案の教育改革についての論議が大方結論を得た年であり、今後はいかなるテーマより実行するかが問われる段階となってまいりました。
総理は、今後この教育改革にどう取り組まれるのか、その御決意を伺いますとともに、ポスト臨教審の推進機関をどのように性格づけられるのか、また、具体的にどのような
課題を優先して教育改革を行う
考えであるか、改革の基本的方向を示されたいと思います。
さらに、関連して答申のあった事項のうち、大学改革、なかんず、大学教員の任期制の問題についてお伺いいたします。
今日、大学の改革に対する
国民的期待は大きいものがあり、臨時教育審議会の指摘を受けて、昨年、
学校教育法及び私立学校法が改正され、大学審議会が創設されたことは御案内のとおりであります。もとより、大学改革は大学みずからが率先してその殻、因襲を打破し自己改革を行うことが先決でありますが、同時に、広く各界の
意見を集約して国としてその方向を示すことも肝要であります。
今日、
我が国の大学における教育研究は、基礎研究の面で
充実が急がれているほか、それぞれの大学の個性、特色が薄くなり、学園自治の名のもとに閉鎖的、硬直的であるとの指摘がなされております。
特に、私がここで指摘したいことは、大学教員の任期制の導入と助手の位置づけであります。
昨年の広島大学における学部長殺しという、十七年間も助手に据え置かれた怨念がもたらした忌まわしい事件は、期せずして大学における閉鎖人事を露呈したものであります。一部の教授においては、一たん任用されれば定年まで何ら論文も書かない、研究実績がなくともその身分が保証され、助手の人事権を意のままに握り、間々助手の研究を横取りするということもあると聞いております。
この際、学術研究の進展に対処して、象牙の塔の人事を明朗、適正にし、かつ教授としての適格性の保持を図るため、教授の任期制の導入を
考えてはいかがでありましょうか。あわせて、助手制度も改める必要があります。
以上、大学改革に臨む決意と大学教員の任期制、助手制度についての御所見を
総理に伺いたいのであります。
さらに、スポーツの振興についてでありますが、
国民の心身の健全な
発展を図るために
国民全般がスポーツを愛好することが大切であり、そのための環境の整備に努めることが必要であります。
同時に、スポーツの国際交流が果たす
国民外交の意義は極めて大きいものがあります。そのため、国際競技の場で通用するすぐれた強い選手を養成することは、国際国家
日本が果たすべき重要な
課題であると
考えます。とかく選手層の弱化を憂える声が聞かれる今日、特に学生スポーツの振興を中心に、中期的な展望のもとに、選手の強化や引退後の処遇も含めたスポーツの振興策を、計画的に、組織的に、体系的に講ずることが強く要請されておりますが、
総理の御所見を伺いたいと思います。
次に、農業問題について伺います。
現在、
我が国の農業は、内外の厳しい環境のもとで深刻な苦悩と不安におののいておるのであります。
農産物需要の停滞、
円高と輸入の
増大のために農産物価格は低落し、農家
経済を圧迫している
状況の中で、アメリカ初め諸
外国からの農産物の市場開放
要求は一段とその厳しさを増しておるのであります。一体、
我が国の農業と農村の将来はどうなるのか、不透明な先行き不安に駆られているのが
現状であります。
一国の食糧
政策、農業
政策の基本は、自国の農業資源を効率的に利用することによって、食糧の自給力を維持強化し、健全な農村
社会の保持、国土、自然環境の保全等、農業の持つ多面的な機能を有効に増進させていくという点にあることは、いずれの国においても例外はないと思うのであります。
御
承知のとおり、
我が国は、わずか五百四十万ヘクタールという狭小な耕地の制約を受け、食糧自給率は安全保障の上からも後退の余地はないものと
考えます。
総理は、国政の統括者として、農業を
政治的に、
国民経済的にどう位置づけられておられるのか、お伺いをいたします。
次に、当面する農産物自由化問題について伺います。
十二品目問題の決着は、来月早々のガット理事会の場において行われると
承知していますが、余す日時は幾ばくもないわけであります。
政府としては、昨年十二月のガット総会におけるパネル裁定の採択の延期決定以来、
米国等との現実的な解決策について接触を続けてこられたと仄聞しておりますが、ガット理事会においてどのように対応されるのであるか、
総理及び外務大臣の御所見を伺います。
農林水産大臣は、
衆参両院の農林水産委員会、
予算委員会において、譲るべきは譲る、守るべきは守ると言明されており、特に、乳製品、でん粉の二品目については譲るわけにはまいらない旨の発言をされていますが、この点は国内農業の将来について極めて重大な問題であります。ガット理事会を前にして、農林水産大臣のお
考えに変わりはないか、御決意のほどをお伺いいたします。
また、牛肉、オレンジ、果汁についての
日米貿易協定もこの三月末に期限切れとなりますので、協定の趣意に従って二国間の協議が行われるべきものと
考えます。
アメリカ側は、四月一日以降自由化すべきであり協議の必要はないと主張してきたようでありますが、従来の協定の経緯から見ますと、余りにも一方的であり、協議によって解決すべきものであります。この問題について、
政府としてどのように対応されるか、伺います。
こうした
状況——農産物市場の国際化のうねりは、
我が国農業の上に覆いかぶさっているのであります。今や
日本農業は、極めて厳しい試練の前に立たされているのであります。そして、その試練を越えなければ
日本農業の将来はないのであります。
政府としては、避けがたい国際的な協調と国内農業を守る立場をどのように調整し対応されようとしているのか、農林水産大臣にお尋ねいたします。
国際化が進む中で
日本農業が生き残っていくためには、消費者、
国民の期待にこたえつつ、生産性の向上を図り、農業経営の体質を強化していくことが喫緊の急務であります。それには
日本農業の零細性の克服、経営規模の拡大のための
構造改善施策の展開を急がなければなりません。
政府としては、今後具体的にどのように
構造政策を進めていくのか、現在、農林水産省において検討中と聞いているいわゆる
構造立法の取り扱いも含めて、
総理並びに農林水産大臣にお伺いいたします。
次は、中小企業問題であります。
最近の景気拡大により、中小企業の業績は総じて好況を呈し、倒産件数は減少していますが、将来に向かって中小企業はアジアNICSという手ごわい競争相手の出現、
円高や内需主導型
経済に対処して市場開放と産業
構造の転換を図らなければなりません。企業体質の弱い中小企業にとってはまさに死活問題であります。
また、異なる業種の企業が、互いの技術、経営、マーケティングノーハウを出し合って新しい事業を興す中小企業の融合化は、今全国的に全業種に普及しています。これは
我が国経済の国際化や
構造転換の進展の上から好ましいものと思われますので、
政府としても異業種企業の交流、経営資源の複合化による中小企業の融合化の促進を積極的に
支援すべきであると思います。
さらに、
円高定着により親企業の海外進出が進み、関連して下請中小企業も海外進出を迫られていますが、その準備や情報不足でかなり混乱を来しておると見受けられますので、適切な指導、助言が必要と思います。
以上、
円高下の中小企業が抱える転換
対策、融合化及び海外進出について、
総理にその
対策をお伺いいたします。
次は、土地問題と首都機能の分散であります。
昨年における首都圏を中心とする大都市の地価
高騰はまさに異常でありまして、これが大きな
政治、
社会問題化し、この是正を図るため、我が党の緊急土地
対策の提言があったほか、土地
国会が開かれたことは御案内のとおりでございます。応急の
対策が功を奏し、昨年秋以降、都心部では鎮静化傾向が見受けられますものの、一方、首都圏周辺の各都市や地方の主要都市には依然として上昇機運が根強くあり、先行き予断を許さないのであります。
今こそ我々は、働く者のマイホームの夢を踏みにじる地価
高騰の原因を徹底的に解明し、必要な法改正を含む具体的方策を早急に
確立することが
政治に課せられた重大な責務であると思います。改めて土地問題に対処する
総理の決意をお伺いいたしますとともに、土地暴騰の再発防止のため、
政府は具体的にいかなる施策を今期
国会において講ずる所存であるか、お尋ねいたします。
ここで、私が特に
配慮願いたいことは、今回の地価
高騰の主因は投機及び買い急ぎ需要にあるのでありますので、土地の投機的取引は何としても抑制していただきたいのであります。既に土地の短期譲渡に対する重課税制度が施行されているものの、地方においては今後とも土地に対する投機的取引の発生がなお予想されることから、
政府は、関係自治体とともに土地取引及び地価動向を事前に十分監視して、
国土利用計画法に基づく監視区域の指定、届け出対象面積の引き下げや規制区域の指定を積極的に行うとともに、悪質不動産業者に対する指導の徹底した強化、さらには、地方を中心とした金融機関に対する
大蔵大臣の特別ヒアリングの積極的推進を
願いたいのであります。これらの
対策について、御所見を承りたい。
さらに、土地問題の解決、地価鎮静の決め手は、これまで述べた投機の抑制とあわせて土地の有効利用、供給の促進が重要であります。この観点から、高次の都市機能を持った東京都心・臨海部の大規模プロジェクトの推進、また、市街地の高度利用を図るための都市再開発、さらには、東京圏の土地供給のため市街化区域内の土地の有効活用、市街化調整区域制度の適切な運用等を促進すべきと
考えます。これらについて、どのような
対策をお持ちでありましょうか。
今後、
行政が積極的推進を図らなければならない
課題は、首都機能の分散であります。
昨年六月に決定した四全総では、国土の均衡ある
発展を図るためには、高次都市機能を東京圏が一元的に担うのではなく、その多極的な分担によって東京一極集中を是正し、地方圏を重点的に整備することを基本
目標として掲げるとともに、地域の特性を生かした国土づくり、地域の行財政基盤の強化を図るとしておるのであります。
政府は、今後四全総の実施をどう進めるのか、その
方針を伺いたい。
今般、
政府の提唱している一省庁一機関の地方への転出は、
行政が率先してその
姿勢を示すという意味で十分評価されるものではございますが、将来にわたっては各省庁画一的ではなく、積極的にその推進を図られたいと思います。将来は省庁ごとに一括移転をさせるというようなことは
考えられませんか。
また、
総理の唱える「
ふるさと創生」を支えるものは、地方の活力であります。そのためにも、東京における土地需要の緩和を図り、あわせて地域
経済の
発展を担う産業の地方分散、再配置を進めることが必要であります。さらに、地方みずからが実力を持っためには、国としても思い切った権限委譲や財源配分を実施すべきであり、これらの一本化が新しい地方の
時代を築く原動力となるものと
考えます。これらについて、
総理の構想をお示し
願いたいのであります。
最後に、
総理は、かつてどの
総理も経験されたことのない歴史的試練の場に立ち、解決を急がなければならない幾多の難題を抱えておられるのであります。
私たち自由民主党は、この立ちふさがる障壁を
国民の理解、英知、活力を結集して克服し、新しい創造に向かって挙党一致前進しなければなりません。
中曽根前
総理より新総裁に推挙された
竹下総理は、強いリーダーシップを発揮して、
時代が真に
要求するものを大胆な発想で追求し、大隈精神のもと誠実な
政治の展開を期していただきたいのであります。
以上をもって、私の代表質問を終わります。(拍手)
〔
国務大臣竹下登君登壇、拍手〕