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1988-05-19 第112回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十九日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月十九日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     吉川 春子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         三木 忠雄君     理 事                 工藤万砂美君                 鈴木 省吾君                 猪熊 重二君                 橋本  敦君     委 員                 梶木 又三君                 下稲葉耕吉君                 土屋 義彦君                 徳永 正利君                 中西 一郎君                 林  ゆう君                 秋山 長造君                 千葉 景子君                 吉川 春子君                 関  嘉彦君                 西川  潔君    国務大臣        法 務 大 臣  林田悠紀夫君    政府委員        法務大臣官房長  根來 泰周君        法務大臣官房審        議官       稲葉 威雄君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        法務省人権擁護        局長       高橋 欣一君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡 定彦君    説明員        防衛施設庁労務        部労務管理課長  高倉 博郎君        通商産業省産業        政策局消費経済        課長       北畠 多門君        運輸省地域交通        局陸上技術安全        部管理課長    豊島  達君        労働省労政局労        働法規課長    渡邊  信君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 千葉景子

    千葉景子君 本日は、前回に引き続きまして、また視察参考人の御意見などもいただきましたので、それを踏まえまして質問をさせていただきたいと思います。  まず、少し法案条文に即しまして何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。  今回新設をされました法案なんですが、百五十一条ノ二、ここで電子情報処理組織によって処理をするという原則がうたわれております。この中に、登記簿磁気ディスクをもって調製をするというのが原則であろうかと思うんですが、括弧づきで、これに準ずる方法によって一定事項を確実に記録し得る物を含むと、こういうこともうたわれております。これはどういうことでしょうか。具体的な磁気ディスク以外の物を現実に何か検討されているとか、何か予定されているようなものがございますでしょうか、ここをお尋ねしたいと思います。
  4. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 磁気ディスクと申しますのは、磁気記録によってデータ記録できる磁性の表層面を持った回転盤意味しているもののようでございます。そこで、これに準ずる方法により一定事項を確実に記録することができる物と申しますのは、磁気ディスクと同じように合成樹脂などの素材に電子的、磁気的方法によって記録できるそういった物ということでございまして、具体的には磁気テープとかあるいは光ディスクとか、そういったものが考えられるわけでございます。そのようなものもここに含ましめて立案をいたしているわけでございます。
  5. 千葉景子

    千葉景子君 それは実際に今回移行をされまして、その後の実行段階でそういうものも含めてお使いになられる予定でございますか。
  6. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) テープにつきましては、実際の直接に使用いたします磁気ディスクを保全する装置として保全ファイルなどを用意するわけでございますけれども、これなどは磁気テープの方で保存をする。それはいろいろ経費的な問題とかあるわけでございまして、そういった形で使用をするということが予定されております。光ディスクにつきましては、これは現在も相当程度開発がされていると聞いておりますが、これが現実に使用される可能性が出てまいりますのはいましばらく先であろうと思っております。
  7. 千葉景子

    千葉景子君 当面は磁気ディスクそれから保全ファイルについての磁気テープと、こういうことと考えてよろしいわけですね。
  8. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) そのとおりでございます。
  9. 千葉景子

    千葉景子君 それから百五十一条ノ三、ここでは、この二項に、法務大臣の指定する甲登記所管轄に属する不動産についての登記事項証明書交付請求指定登記所中別にまた指定する登記所においてもこれをなすことができるということで、要するにほかの登記所から登記事項証明書交付請求ができるということだろうというふうに思うんですが、これは今回の移行に伴いまして全国十一カ所でございましたか、まず行われるということですけれども、これらの間では何か行われるようになるんでしょうか。それとも今後将来の移行に伴ってこういうことが出てくるということでしょうか。この具体的な進行をお聞きしたいんですが。
  10. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) この全国規模登記情報交換をやるというためには、通信回線網を利用した大量のデータ処理システムを開発整備する必要がございます。それともう一つは、会社とか官公庁とかが集中しているような地域管轄する登記所にどっと集中的に出てくるという事態が予想されるわけでございます。具体的に申しますと大都市の登記所ということになろうかと思いますが、そういうところの人的、物的施設を整備するという実際的必要も出てまいります。  そこで、もう今登記所コンピューター化されたからといってすぐにこの登記情報交換システムを始めるということは、これはなかなか困難なわけでございます。当面限定された範囲部分的に実施をして、その成果を見ながら順次広げていくということを考えなければならないのではなかろうかというふうに考えている次第でございまして、したがいまして施行期日もこの部分に限りましては公布から一年以内の政令で定める日と、こういうふうにしているわけでございまして、実際上はやや先送りしている形になります。当面移行をしてコンピューター稼働を始めようとする登記 所の中で一、二を選んでデータ交換を試みてみるということは考えているわけでございます。
  11. 千葉景子

    千葉景子君 具体的には、それをまずどこでやろうかというようなことは御検討なさっていらっしゃいますか。
  12. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 具体的にはまだ考えておりません。  ただ、抽象的な基準といたしましては、今局長が申し上げましたように、事務量の増大ということがございますので、ある程度の余裕のある登記所でないといけないのではないか。それから、やってみたけれども利用されないということでは困るわけでございまして、ある程度その間で情報の流通といいますか、そういうものが必要であるというような登記所を選びたいというふうに思っております。  したがって、この場合前から申し上げておりますように、全国へ八ブロックで展開するわけでございますが、そこで直ちにやるというよりは東京の二局をやるとか、あるいは東京と大阪をやるとか、その辺はまだ具体的には考えておりませんけれども、そういうような方向で考えてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  13. 千葉景子

    千葉景子君 次に、同じ百五十一条でございますが、四項は登記事項証明書記載事項、これは省令でこれから定められるということになろうかというふうに思うんですが、この第二項の登記事項証明書記載事項ということは、一般に登記事項証明書と言われるものと特別な区別か何かあるんですか。それとも、これは私の読み方が悪いのかもしれませんけれども、登記事項証明書全体について省令で定めるというそういう趣旨ですか、その辺御説明をお願いします。
  14. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは第二項の、特に別の登記所で他の登記所登記情報に関する登記証明書を出すものについての証明書だけについて法務省令で定めるということでございまして、一般的な登記事項証明書記載事項法務省令で定めるという趣旨ではございません。
  15. 千葉景子

    千葉景子君 これは今後省令で定められるということだとは思いますが、おおよそ具体的にどんな違いが出てくるのでしょうか。
  16. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは言うまでもなく、データが伝送されるような形で登記情報が蓄えられているものでないと、こういう二項のような証明はできないわけでございます。原則としては、現在事項につきましては全部そういう磁気ディスクの中に入るわけでございますが、例えばみなし登記簿という概念に入っております共同担保目録等は、これは直ちにそういう磁気ディスクの中に入るということにはならないわけでございまして、そういうものは管轄登記所へ直接行っていただきますと、そこで一通の登記事項証明書請求していただければ、その磁気記録したものでない部分についても証明書をお出しすることになるわけでございます。よそで請求されますと、その部分はどうもこのシステムには乗りにくいということでそこは除外する、こういうようなことを考えておるわけでございます。
  17. 千葉景子

    千葉景子君 一般的に、さきに視察の際にも、全部事項証明書は大体こうなるというような資料をいただきましたが、この部分についてはほぼほかの登記所から請求しても出てくるというふうに考えてよろしいでしょうか。
  18. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) そのとおりでございます。
  19. 千葉景子

    千葉景子君 わかりました。  それではまた同じ条文でございますが、五項、ここには「摘要ヲ記載シタル書面交付」ということが記載されております。これは今回コンピューター化ということになりまして、これまでの閲覧とい概念がちょっと当てはまらなくなる。それにかわるものとして要約書というようなものを出していただけるということだろうと思うのですが、これはどんな内容あるいは例えば種類とかいうものになりましょうか。これは不動産あるいは商業登記双方にかかわるかというふうに思うんですが、その内容を御説明いただきたいと思います。
  20. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 不動産登記につきましてはまさしく要約書でございまして、一つ所有権登記事項に関するもの、つまり甲区の記載に関するものをピックアップしていくというものと、それから甲区乙区の権利の登記事項全般をピックアップするというものと二通りを考えております。  どういう事項をピックアップするかということにつきましては、現在閲覧制度を利用している方々は、ただ頭の中に覚えていくわけではなくてメモをつくっておられるわけでございまして、どういう事項についてメモをとっておられるかということを調査いたしましてそれを分析した結果、かなりの需要を満たすことができるであろうということで、その二つの種類を選んだということでございます。  それからもう一つ商業登記の方につきましては、なかなか何か重要な事項かということについてがわかりません。区別がしにくいんですが、商号資本関係とかあるいは会社状態あるいは役員関係会社目的、それぞれの登記事項をくくりまして、それに関係する事項について一まとめの情報集団を、それぞれ会社とかあるいは各種の登記ごとに考えまして、そのうちの幾つかを申請人から選択していただく。例えば目的役員のところが欲しいというようなことを言っていただくと、その幾つかのものに限ってはその要約書で出して差し上げる、こういうことでございます。ただ、これは商業登記の場合には、かなりそういう意味では抄本に似た機能を持つことにはなりますが、しかし認証文等がつかないという点では変わっているわけでございます。
  21. 千葉景子

    千葉景子君 そうすると、不動産の方では今の御説明ですと大体二種類ぐらいの要約書。それから商業の方は少し複雑になって種類が多くなろうかと思うのですが、大体商業の方は何種類ぐらいになるのか。それから今商業の方で御説明いただくと、請求する方は何種類か必要な場合というのが出てこようかと思うんです。そういうときは、結局それぞれ一種類であるとすると手数料はその分、何種類か分必要になる、こういうことになりますか。
  22. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 先生おっしゃるように、この閲覧とい制度は非常に不安定と申しますか、目で見て頭の中へ記憶する、あるいはメモをとらなきゃならないということではありますけれども、現行制度としては全部の情報を見られるということになるわけでございます。そういう意味で非常に低廉な制度だということになるわけでございますけれども、しかしコンピューターシステムにいたしまして全部の情報を出すということにいたしますと、これは謄本を出すのと同じようなコストがかかるわけでございまして、そうしますと、その低廉というニーズにこたえられなくなる。  そこで、低廉というニーズにこたえるためには何らかの形でコンピューターコストを低減した形で、しかもなおかつ現在の閲覧ニーズを酌み取るような方式を考えたいということで考えた仕組みでございまして、コンピューターシステムをとります以上は、ある程度そこのところはやむを得ない、妥協と申しますか、決断というところがあるわけでございます。ブックシステムにはブックシステムメリットがあり、コンピューターシステムにはコンピューターシステムメリットがあるわけでございまして、それは同時にその裏返しとしてのデメリットを持っておるわけで、そのメリットデメリットを勘案した結果コンピューターシステムの方がよろしいということを決断したわけです。  その場合に、コンピューターシステムに内在するそういう閲覧とい制度をそのまま維持することはできない、こういう欠陥はあるわけでございまして、それをできるだけなくそうとしたものだというふうに御理解いただきたいと思います。その意味では限界があるわけでございます。たくさん情報が必要だというときには、やはり証明書を とっていただくということにせざるを得ないのではないか。  商業登記の場合に種類幾つあるかということでございますが、例えば株式会社の場合でございますと五つぐらいの、商号に関するものあるいは目的に関するもの、株式・資本に関するもの、役員に関するものあるいは会社構成になっているとか、そういうような会社状態に関するものというような、そういう区分をして考えておるわけでございますが、それを申請人の選択によって選ばせるということになっておりますので、その順列組み合わせということになります。  ですから、パターンはかなり多うございますが、結局登記所仕組みとしてはその幾つかのボタンを押してそれに応ずるものが山てくる、こういうような仕組みになるわけでございます。
  23. 千葉景子

    千葉景子君 御説明は大体わかったんですが、商業の場合五種類ぐらい、ABCDE型というような感じになろうかと思うんですね。そうすると、これは細かいような感じですけれども、AプラスBが欲しいとか、AプラスCが見たいとか、それからCプラスEが見たいとか、そういう組み合わせも大分出てこようかと思うんです、商業登記簿の場合。何かそういう組み合わせで何というんでしょうか、一種類さらに五種類組み合わせたようなものというのはつくっていただけないものでしょうか。
  24. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは一つだけという趣旨ではございませんので、そのうち商号関係とそれと会社状態ファイルと申しますか、そういうものは必ずお出しする。しかし、そのほかに二区プラスして請求していただけるということでAとEとは必ず出る、そしてその後にBとCと何をつけるかというのは、またそちらの方でどういう組み合わせでも結構でございますが、つけて請求していただく、こういうようなことを考えているわけでございます。
  25. 千葉景子

    千葉景子君 できるだけそのあたりも、見られるパターンといいますか、一回の請求で、それもできるだけ手数料も何度も払わずしていろいろな形をつくっていただきたいというふうに思うんです。  ところで、次に百五十一条ノ五、これは登記事項が多くなった場合、それを新登記簿登記記録に移す、移記をするというときの規定であろうというふうに思うんです。これはそうすると、いっぱいになった分は閉鎖登記簿というような形になるわけですね。
  26. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) この規定によって登記を移しまして用いなくなりましたもとの登記記録、これは閉鎖登記記録ということになります。
  27. 千葉景子

    千葉景子君 閉鎖登記記録ということになりますと、登記事項証明書交付をその後請求することになりますと、そのときに生きている現在事項というのが登記事項証明ということになりますよね。そうすると、閉鎖登記記録の方はすぐには出てこない、また経歴など必要ならばもう一度閉鎖登記記録の方を閲覧しなければいけないということになるだろうと思うんですが、それを両方あわせて登記事項証明という形で請求できるというような仕組みにはなりませんですか。  これは、いっぱいになっちゃったらやむを得なく新しくするわけです。そうすると、その前が証明の中には含まれない、漏れてしまうという形、今の登記簿でも同じようなことはあろうかと思うんですけれども、この辺、せっかくコンピューター化ということに伴いまして、それを連続したものとして証明をしていただくというような形はとれませんですか。
  28. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記記録を移しまして別々のディスクに入ることになりますので、これはどうしても両方必要であれば別々の登記事項証明書をとっていただかなければならないことになります。この規定は、現行法で申しますと七十六条で、枚数過多による移記と同じ思想に出た、それを電磁的記録にモディファイした形の規定でございまして、七十六条の場合にもやはり移記後は過去の履歴が必要であるとなりますと、閉鎖登記薄謄本をとっていただかなければなりませんので、それは技術的にはどうしてもやむを得ないことじゃないかと思っております。
  29. 千葉景子

    千葉景子君 むしろ簿冊の場合は、確かにそれがいっぱいになっちゃうと別途新しくしなければいけないということはよくわかるんですが、せっかく逆にコンピューターというのを使って記録を記憶させるという装置ですから、そういう意味では前にさかのぼったものを、今から逆にさかのぼった部分を出すというのは何かむしろやりやすくなるんじゃないかというように思うんです。どうしてもそこで切らなきゃならないという技術的な問題はございますでしょうか。
  30. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) データコンピューター処理します場合には、対象のデータが大きくなればなるほど必要なデータを選ぶというために検索の時間は多くなるわけでございます。この場合、磁気ディスク容量が決まっているわけでございますが、大体初めに入れますときはその容量の五割程度をめどにしてデータを入れておくということになります。  そして、それについて登記の書き込みがどんどん入ってまいりますとだんだんデータ量がふえていくわけでございます。そうしますと、それが容量の八割程度になりますと非常に能率が悪くなって引っ張ってくるのに時間がかかるということになるようでございます。そういたしますと、磁気ディスクというものの性格上やはりこれはお金がかかりますし、ドライブ装置をそれだけ余計に使うということになると時間的にもコスト的にも金がかかる。そうすると、利用頻度の低い情報を蓄えておくということは無意味である。ですから、それを吸い出して磁気テープ等閉鎖登記簿の形でおさめるということになるわけでございまして、人間でもぜい肉のついた体で動いていると余計なエネルギーが要るというのと同じことでございまして、ぜい肉を落とそうということでございます。  ただ、もちろんその場合に、現在の七十六条ノ二のシステムでございますと、現に効力を有する事項だけを残す。あとは閉鎖のまま入れてしまうということにするわけでございますが、過去の一定期間履歴は残しておくというようなことも今のところ検討したいというふうに思っております。これは一たん磁気記録の形でまいりますと、プログラムさえきちんとつくりますれば、ある程度期間のものは残すというようなことの操作はできるようでございますので、そういう当事者、利用者に御不便がかからないようなある程度のものは残したいというようなことを考えているわけでございます。
  31. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひそれは、むしろ過去の方から閉鎖していただくというような仕組みをできるだけ直近のもの、あるいはさかのぼって何年分とか残るような形で御検討をいただきたいというふうに思います。  それでは、少し商業登記法関係で、ほぼ今不動産の方でお聞きしたことと同じような形式の条文がございます。その点について、商業登記法関係で特にここが違うんだというような点がございましたらお答えいただきたいと思うんです、今までお聞きした範囲の問題で。もしなければほぼ同じ形であるということで御説明をお願いします。
  32. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 今御質問があった限度ではほぼ同じような仕組みになっていて、先ほど申し上げましたように、要約書等の形では先生の御質問のとおりやや違った形になっておりますが、基本的には同じでございます。
  33. 千葉景子

    千葉景子君 それでは商業登記法関係で、今回閲覧についての有料化、これが決められているわけでございますが、これについてはこれまで無料であった。前回も御質問が出ていたようなんですが、これは民行審などではどんな検討がなされましたでしょうか。
  34. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 民行審におきましてはこの点について検討がなされておりまして、お手元にございます合本の資料中の民行審答申の部 分の三十一ページに、これは電算化後における登記事項要約書交付についての有料制の提言でございますけれども、その限度検討がなされているわけでございます。
  35. 千葉景子

    千葉景子君 そうすると、現行商業登記簿閲覧については特に答申あるいは検討はなされていないということでしょうか。
  36. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) この民行審に対する諮問は、電算化に当たりまして留意すべき事項についての諮問でございますので、その限度答申がなされておる関係上、こういう答申結果になっているわけでございます。
  37. 千葉景子

    千葉景子君 そうなりますと、この商業登記簿のこれまでは無料閲覧と、それが手数料が必要になってくるということでございますが、これはどういう理由といいますか、根拠に基づくものでしょうか、ちょっと私は納得いかないところがあるんですが。
  38. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) これが無料になっておりますのは、明治三十二年の非訟事件手続法施行当時からずっとそのようになっているわけでございます。  その理由としてよく言われますのは、商業登記というのは公開をされるべきものである、商人に関する重要事項を公示することを目的とするものであるから、それを効果的に機能させるために無料制がとられているんだ、こういうふうに言われているわけでございまして、それは一面理由がないわけではないと思います。しかし、同じ登記簿公開制度を支えております謄抄本は、商業登記につきましてもこれは当初から有料制がとられているわけでございまして、公開をしなければならないから無料であるという、そういう必然的な結びつきはないのではなかろうか。むしろ商業登記閲覧というのは、実際上はそれほど国民の需要がなくて、事改めてそれを有料にするとか無料にするとかということをやかましく言うほどの事務量がなかったがために、このような制度がそのまま維持されてきたのではなかろうかと思っております。  ところが、現状におきましては、商業登記閲覧無料であるゆえもあろうかと思いますが、非常な事務量になってきておりまして、登記所を長時間占拠して大量の閲覧がなされているというふうな実態もございまして、登記所の人件費、物件費等、これに相当のコストがかかっていることは否定できないところでございます。そういった点を考えまして、閲覧によって利益を得ている人につきましては、その情報公開による利益に見合う実費をやはり負担していただくというのが、電算化後の登記事項要約書について有料にするということとのバランスから考えましても相当ではなかろうかというふうに考えたわけでございます。
  39. 千葉景子

    千葉景子君 法務省の方の御認識としては、この商業登記簿の方の閲覧がかなりふえ、事務量が増加をしているというような今お話ですけれども、一体それはどんな方がと言うとおかしいですけれども、どういう目的閲覧をしているケースが、長時間にわたり占拠をして閲覧をしているというお話ですけれども、どんなケースが多いというふうに御認識になっていらっしゃいますか。
  40. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 積極的に私どもが認識しておりますのは、類似商号を検索するためにというのは非常に正当な目的閲覧しておられるんだろうと思いますが、やや問題があるというふうに認識しておりますのは、信用調査機関の業者が閲覧をしてそのデータを入手している、こういうものでございます。これは、要するに無料でございますから、アルバイトを雇ってそこでメモをしてやっているということが非常に多いようでございます。あとは司法書士等が登記をする前提として見るというようなこと、これは不動産登記の場合も当然やっているわけでございまして、不動産登記の場合には手数料は要るわけでございますが、商業の方はお金なしでそこはやっているということでございます。  そういうことで、これは金がかかる以上はだれかの負担になるわけでございまして、現行特別会計の制度のもとで申しますと、それは不動産閲覧をする人あるいは謄抄本の交付請求する人の負担になっているわけですが、そういう人の負担において商業登記閲覧だけはただだというふうにするのがいいのかどうかということのバランス論を考えたわけでございます。
  41. 千葉景子

    千葉景子君 今のお話から、確かに信用調査機関などが膨大な量をアルバイトなどを使って閲覧をしているというケースはないわけではないと思うんです。ただ、おっしゃいましたように、司法書士の方とかあるいは一般の方が正当な目的で、合理的な理由商号調査をしたり、あるいは取引の前提としての調査をされたりということが当然あるわけでして、何となく今の理由ですと、どうも信用調査機関のようなところが余りにも勝手に莫大な閲覧をしてそれがほっぽっておけない、少し有料にしたらどうかというような感じがしないでもないんです。そうすると、本当に正当な業務なり、本来は公開をしてあるものを閲覧するという権利といいますか、そういう利益がそれで何か逆な面で損なわれていくというような気がしないでもないんですが、この辺は少し区別するなり何か特別な措置をつくって、できるだけ低廉に閲覧をできるというような方向は考えられないものでしょうか。
  42. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは、ある意味ではNTTの一〇四番の有料化と若干そういう意味では似ている点があるのかもしれませんけれども、基本的に先ほど申しました正当なもの、商号閲覧、類似商号の検索というような問題につきましては別の手段、例えば商号見出し簿というようなものを窓口に配付しまして、それを無料で見ていただくというようなことは考えているわけでございます。  さらに一般の利用者がどうかということでございますが、経済界にもいろいろお聞きをしたわけでございます。商業登記コンピューター化関係しましては経済団体等にもお聞きをして、この問題についても御意見を伺ったわけでございますが、それについては閲覧というような形で情報公開を得るということは非常に少ないと。むしろ謄抄本なり新しいシステムで申しますと登記事項証明書ですが、そういうものを利用するという形で商業登記の取引の安全というものは図られている面が非常に大きいようでございまして、余り一般の利用者の方々が閲覧が有料になるから困るというようなことをおっしゃらないわけでございまして、そうだとするとかなりへんぱな利用がされているのではないかという感じがするわけでございます。  もちろん、ただで利用できれば何でもただの方がいいわけでございますけれども、しかしそれはほかの人の負担においてやるということになりますと不公平ではないかということもまた逆に言えるわけでございまして、そういう意味で、先ほども出しましたように、商号見出し簿等をつくりまして一般の利用者の正当な利用についてはできるだけ便宜を図るという方向で考えてまいりたいというふうに思っております。
  43. 千葉景子

    千葉景子君 そうすると、今類似商号の調査などにつきましては商号見出し簿というようなものを備えたいとおっしゃっていらっしゃいます。商号見出し簿以外にも、何か無料でこれまでどおり閲覧できるような形というのはほかには考えていらっしゃいますか。
  44. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 今のところは、そのほかには特にニーズとの関連でどういうニーズがあるかということを考えてまいりますと、閲覧という形で利用されているのは一番それが大きいのではないかというふうに考えておりまして、特にほかの形は今のところは考えておりません。
  45. 千葉景子

    千葉景子君 わかりました。  それでは、次の問題点をお聞きさせていただきます。  今回、不動産登記法の改正で休眠抵当権の抹消の問題が改正になっております。これは百四十二条ということになろうかと思います。この休眠抵当権の抹消につきまして、これは供託金を納めて ということになろうかと思うんですが、この供託の性格等を含めて御説明をいただきたいと思います。
  46. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 抵当権などで明治時代とか大正時代とか非常に古い時期に設定されたものが、そのまま抹消されないで現在まで残っている、そのために地方公共団体の買収であるとかそのほか任意売買その他で、これがあることが非常に障害になって何とかしてほしいという要望がかなりあるわけでございます。  それは登記義務者、つまり抵当権で申しますと抵当権者が行方不明であるがために、任意に抹消に応じてもらえないという場合でございますけれども、そのための規定が百四十二条にあるわけでございますが、なかなかこれでは賄い切れない。そこで、債務者の方が任意に弁済して債権証書や受取証書の交付を受けられない、そのために抹消できないのでは困るということになりますので、債務者のみですることのできる供託という制度を活用して、債務者単独で抹消登記をする道を開こうとするものでございます。したがって、ここでいう供託というのは弁済供託であるというふうに把握をいたしております。
  47. 千葉景子

    千葉景子君 これは取引上、これまでもいろいろと問題を生じていた点でございまして、こういう形で処理ができるということは非常に効果があろうかというふうに思うんです。これにつきましては今弁済供託ということ、それで債務を消滅させるという効果をもたらすということと受け取っていいですね。
  48. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 債権者の所在が不明であるために受領不能であると。そこで弁済供託の要件を満たすわけでございますから、債務の弁済をして債務を消滅させるということでございます。
  49. 千葉景子

    千葉景子君 それでは少し総論的な面、前回にもお聞きいたしておりますけれども、何点かお尋ねをしたいと思います。  一つは、ずっとこれはお尋ねしているわけですが、移行に伴う登記事項範囲の問題、もう十分御説明をいただきまして、現在事項移行するということで承知はしているわけなんですけれども、前回参考人の御意見等をお聞きいたしましても、やはり登記の経歴など非常に必要性があるのじゃないかというふうに私は思うんです。川井先生もおっしゃっていたのは、むしろ登記に公信力がありません。となると、やっぱりこれが正当な真実の内容のある登記かどうかというのは前にさかのぼって見なければはっきりしないという点もございます。  また、参考人から御説明がありましたように、その前が譲渡担保であるとかあるいは非常に短期間に転々と登記移転がなされているとか、そういう点が取引をするに当たって非常にいろいろなそれを見る材料になってくるということがあろうかというふうに思うんです。そういう意味では、移行について現在事項だけで足りるかということを私は非常に疑問に思っております。  それから、法務大臣官房参事官でいらっしゃった田中康久さんも、ある文の中で、この問題点というのは外国の例なども引いて御指摘をなされていらっしゃるんですね、法務省の内部でも。そういうことになりますと、本当に現在事項移行だけでよろしいかというのは、どうももう一回検討し直すべきところではないかというふうに思うんですが、それはいかがでしょう。
  50. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは、先ほども申しましたように、事項過多移記の場合には、そういうことを先生御指摘のような方向で考えるということをやるわけでございます。これは既に電子情報の形でデータ処理データが蓄えられておりますので、そういうことが簡単にできるわけですが、これはもしそれをやりますと、かなり紙の上の情報を電子情報に移さなければならないという手間がかかるわけでございまして、現在事項情報だけでいいという人ももちろんいるわけで、その人たちがかなり多いというふうに思われるわけでございまして、そういう人たちとの関係ではそういう余計な情報移行するための費用を制度全体として負担しなければならないということになるわけでございます。  そういう点で基本的な情報だけはともかく入力しておいて、あとそれに対してプラスアルファの付加価値のある情報を求めようとする方は、それなりのコストを別に負担していただくというやり方が現在のところ、こういう事業をやっていくためには一番適当なのではないかというふうに考えているわけでございます。ただ、もちろん過去の情報というのが非常に多い頻度で求められるということになりますと、登記所の手間自体も、別々にこれを出すというのは非常な手間でございますし、むしろそれは電子情報の形で一通の証明書の形に処理した方がいいということになろうかと思います。  ただ、これまでの枚数過多移記あるいは粗悪用紙移記とか、そういうのは現に効力を有する事項しか移記していないわけでございますが、そういうものの例を見ますと、それほど利用頻度が高いわけではないという実態があるようでございます。  そういうことで、若干そういうことをおっしゃる方々は観念論と申しますか、抽象的にはそれは多いにこしたことはないわけでございますが、それと実際の需要とのバランスというものをどこに求めるかということについてそれぞれ確証があっておっしゃっておるわけではないように思います。  したがいまして、私どもとしては、さしあたりはそういうことで処理させていただきたいと思いますが、将来にわたりまして利用状況を長期的に観察いたしまして、もしそういう需要が、ニーズが非常に多いということでございましたら、その移行のやり方というものについて見直しをするということはやぶさかではないというふうに考えております。したがいまして、さしあたりはそういう意味では、こういう型で基本的な情報移行する、そしてできるだけ経費を節減するという行き方が正しいのではないかというふうに思っているわけでございます。
  51. 千葉景子

    千葉景子君 今観念論というお話も出ましたけれども、むしろこれは登記の本質の問題でして、やっぱり経歴が公示をされているということ自体が不動産登記意味ではないかというふうに思うんです。そういう意味では確かにいろいろな経済的な問題、それにかかる手間ということもあろうかと思うんですけれども、ちょっと安易ではないかというふうに考えざるを得ません。  ただ、今後需要に応じては再検討なさる余地があるということでございますので、ぜひそこは考えていただきたいと思うんです。実際にこれは、この間から費用の問題というのも出ておりますけれども、現在事項移記するという場合と、それからこれまでの今登記簿にあるものを全部移記する、あるいは例えばその間の一定の年限の分を移記するとかいろいろな形があろうかと思うんですが、それでのかかる予算といいますか費用の違い、これなどは具体的に御試算をなさって、今のような非常に経済的な不利益があるというようなことをおっしゃっていらっしゃるんでしょうか。その辺もお聞かせいただきたいんですが。
  52. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) この移行コストの問題は、不動産の所在する地区であるとかあるいはそれが土地であるか建物であるかなどいろんな要素によって必ずしも一律でないのでありますけれども、移行コストのうち、特に登記事項の入力それから移行確認に関する部分移行範囲が大きいか小さいかによってそれが直接にコストに影響してまいるのであります。  それで、甲区及び乙区の全登記事項のうち、現に効力を有しない事項の占める割合は推定で約六割、逆に申しますと現に効力を有する事項は四割、こういうふうに推定をされるわけでありまして、これをベースに費用の比較を行いますと、現に効力を有する事項移行した場合の費用は全部移した場合の約五五%というふうに推計されております。ですから、平たく申しますと、全部移行 をすると二倍近くの経費がかかる、こういうことになる計算になります。  今先生のお話ですと全部じゃなくて一定範囲、ある年限のものだけでも移行をするという御趣旨のように伺ったわけですが、これが電算化されてコンピューター登記簿に入った後ですと、一定の年数の範囲内のものは、履歴事項でも移行するということは電算機の機能によって容易にできるようですが、紙に書いてあるものの中から一定範囲のものを拾い出すということは、入力原稿をつくる上で非常に判断を要するし手数がかかるということで、技術論あるいは経費論を申し上げて申しわけないんですが、これはどうも必ずしも実際的でないというふうに私どもは考えております。
  53. 千葉景子

    千葉景子君 先ほど、全部移記をすることとそれから現在事項移記する、大体五五%だというお話ですが、具体的にはどういう部分に一番費用が、コストがかかるんでしょうか。五五%というのが出てくる根拠といいますか、大体どういう計算でこういう五五%というのが出てくるんでしょうか。
  54. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 移行の段階でございますが、入力原稿を作成する、それから登記事項を入力する、そして移行を確認するといったような手順を踏むことになりますし、それらの全体を通じて管理費がかかる、こういうことがございます。そこで、入力原稿の作成とか管理費の部分は全部移行するか一部移行するかでもってそれほどの違いはない。ですから、それは全部の事項移行したからといって特に大幅にふえるといったような要素はないということです。  しかし、入力作業それ自体、それから入力後の移行の確認、これは現在事項のみを移行するか全部を移行するか、つまり移行の量にほぼ比例をして経費が増減をするということでございます。そういったことをベースにいたしまして試算をしてみますと、現在事項は全部の事項のおよそ四割である、それに要する経費は五・五割である、こういうふうな計算に達するわけでございます。四割では済まない、五・五割ぐらいはかかるということでございます。
  55. 千葉景子

    千葉景子君 確かにそれは、多いよりは少ない方がコストは安いのは当然でございますけれども、登記の一番の生命といいますか、そういう部分でもあるわけでして、コストがかかるあるいはコンピューター化をするということでそれが損なわれてしまうということであれば、まさにコンピューター化が何か逆転した作用をもたらすということにもなりかねませんので、ぜひこの点は慎重に今後も利用の推移などを見ながら対策を講じていただきたいというふうに思います。  ところで次に、前回参考人からもお話をお聞きいたしましたが、コンピューターというのは今後の開発とか、それからそれの情報処理の仕方、そういうことによっては非常にさまざまな使い方あるいは発展性、こういうものが秘められておろうかと思うんです。そうなりますと、この情報をどう処理していくか。例えばさきにも出ておりましたけれども、現在の確かに登記簿というのは物を中心にして編成をされております。しかしながら、人を単位に抽出をしていくというような機能も全く不可能ではない、こういうことも出てこようかと思うんです、将来の問題としては。それから、ほかのコンピューターとのネットワーク、こういうことも可能である、さまざまな問題を考えますと、やはりこれから情報の保護、個人情報の保護というようなことも今のうちに考えておかなければいけない問題ではなかろうかというふうに思うんです。この点については、法務省としては今の段階それから将来も見越した上で、どんな方向を考えていらっしゃいますか。
  56. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記はただいま御指摘のとおり、物について、物を単位として編成をされております。いわゆる物的編成と申しておるものでございますが、これは取引の安全を図るために物件について物件ごとに権利関係を登録して一般に公示するというものである、公開するということが本来的な要請であるというものでございます。問題になりますのは、これがコンピューターに入りました場合に、コンピューターそのものの機能によりましてどういうふうにでも編成が可能である。人を単位に目録をつくる、ある人が東京都内であるいは全国でどれだけの不動産を持っているかということが一目瞭然になるような、そういう編集の仕方が可能であるということが一番懸念になるところであろうかと思うんです。  しかし、そういうふうな人的編成をするということは、コンピューターにそういう指令を与えるプログラムをつくらなければそれはできないことでございます。登記目的が先ほど申し上げましたようなところにあります以上、それを人的に編成し直してほかの目的に使うということは、私どもは毛頭考えておりません。  ですから、そういうプログラムをつくるという考え自体がないわけでございます。プログラムがなければ、そういうふうに人の名前でもって物件を寄せ集める、いわゆる名寄せというものはできないわけでございます。これは、私どもがそうしないと申し上げているわけでございますから、それを御信用いただくほかないわけでございますが、人的に編成をするということになりますと、これは人に関する情報として情報それ自体が最初登記されたときの情報と変質をしてまいるわけでございますので、完全な目的外利用でありますから、そういう目的外利用は事柄の性質上当然に規制されるはずでございます。さきに提出されました個人情報保護法案でもそのことははっきりうたっておるわけであります。  いま一つ御指摘がありましたのは、ほかの行政情報をこれにのせるということで、行政全般にこれが利用されることになるのではないか、こういうお話だと思いますけれども、民事行政審議会の答申の一番終わりのところに載っておりますのは、私どもがそう考えたというのではなくて、むしろそういう御意見が出たということであそこに将来の検討課題として付記されているわけでありますが、ここにはっきり書かれてありますように、これはあくまでも登記情報を中核といたしまして、それ以外の公的情報をもし国民のニーズがあれば付加をする。そうすると、登記を見るだけで国民はその土地についてのいろいろな公的情報を一挙に入手できる、それは登記の付加価値を高めることになるのじゃないか、こういう発想であろうと思います。  それはそれで考えられることであろうかと思いますけれども、これは私どもが一存でやることでももちろんございません。各行政官庁とまたがることでございますし、それは法律の手当ても必要なことではなかろうかというふうに思っております。
  57. 千葉景子

    千葉景子君 法務省がまさかその目的外の利用をするとか、そういうことをなさるというふうに、わざとなさるというふうには私も思いませんし、そうだったら困るわけですけれども、ただコンピューターというそういう性格の問題もあり、それからこれが将来また発展をしていくという、今開発途上といいますか、先端の技術に関連する機能でございます。またそれから、今おっしゃったようにさまざまな今後運用の仕方あるいは利用形態、こういうものも出てこようかと思います。そういう意味では将来に向かっても常にこの運用あるいは利用についての何かこうチェックをしていくようなシステム、それから運用を変えるときにはそれを検討する機構とか、こういうものを今つくっておく必要があるのではないか。常にそこの検討を経た上でいろいろな利用の形態を考えたりあるいは変更をしていく、あるいは新しいコンピューターの導入を図っていく、こういうことが必要になってこようかと思うんですが、この辺の何か制度の整備についてはお考えですか。
  58. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) このコンピューター化は、登記所の内部での事務処理を薄冊からコンピューターに変更する、それによって事務処理の適正迅速化を図ってサービスの一層の向上に資するという目的でやるわけでございまして、そのような目的に使う登記ファイルの保全あるいはそれに ついてのいろいろな対策、個人のプライバシー保護などにつきましては、これはまさに法務省の責任において十分な配慮をしてまいらなければならないわけでございます。  その行政事務それ自体は、大臣の監督のもとに行われるわけでございまして、特に日常の業務運営について改めて第三者的な監査機関を置くということは考えていないわけでございますが、今後、今お話のございましたように、新しい制度を導入するとか、コンピューターシステムの見直しをするとか、システムの基本的な構造を変更するとかといったような場合には、これはやはり国民にもいろいろ影響を及ぼすことがあり得るわけでございまして、そういう必要があるというときには、これはしかるべき機関に諮問をするということが必要であろうと思います。  現に、法務省には法務大臣諮問機関として民事行政審議会というのがございまして、これには民間の学識経験者、その他の方々を委員といたしまして、民事行政の運営について法務大臣諮問に答えていろいろ建議をするという役割を担っていただいているわけでございまして、そういう必要が生じました場合にはいつでも民事行政審議会に諮問をしていただいて、そこから適切な御意見をいただくということが考えられると思います。
  59. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひさまざまな懸念のないように、今後の運用も行っていただきたいというふうに思っています。  ところで、この間視察をさせていただきまして、あそこはパイロットシステムということですので特別な環境に置かれているといってもいいかと思うんですが、今後コンピューター化ということになりますとそこで働いている皆さんですね、職員の皆さんの労働衛生といいますか、環境づくり、こういうものが非常に大きいかと思うんです。最近大変OA化に伴う精神的な疲労であるとか目の疲労であるとか、そういうことが指摘をされている中で、非常にこれは今後の問題として大きい課題だと思いますけれども、そのあたりについては既に基準づくりとかそれからその整備、検討をされていらっしゃると思います。その点についてどんな方向になっているか御説明をいただきたいと思います。
  60. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) コンピューター化をいたしますと、職場内で今まで簿冊を持ち歩き、それを開いたり閉じたりあるいは外したりといったようなそういう作業がなくなります。そういう面では職場の執務環境がかなり大幅に改善される面があると思います。騒音とかほこりとかいろいろな点では良好な執務環境を得ることができるというふうに今考えております。  反面、コンピューターによる事務処理ではVDT作業による健康への影響が考えられるところであります。ディスプレーの画面を見て仕事をするということが人の健康上あるいは作業上、そしてまた職場環境上どういう影響を与えるかということの問題がございまして、これには十分配意してまいりたいというふうに考えております。  板橋出張所におけるパイロットシステムの検証評価の中でVDT作業の職員に与える影響、これに対する適切な管理ということが一つのかつ重要なテーマになっておりまして、その中でも一定の報告がなされております。  VDT作業それ自体につきましては、労働省の労働基準局長通達で「VDT作業のための労働衛生上の指針について」というのがございます。さらに人事院職員局長通知の「VDT作業従事職員に係る環境管理、作業管理及び健康管理について」というものもございまして、ここに一定の基準が示してございますが、パイロット・システム評価委員会は登記事務の特殊性を勘案した上で、いろいろな方面から分析をいたしまして、先ほど申し上げました労働省あるいは人事院の通達等にも準拠いたしまして、「登記事務におけるVDT作業のための労働衛生上の指針」というものを策定して報告がなされております。そこで、基本的にはこの指針に基づいて環境管理、作業管理、健康管理を行っていきたいと考えております。
  61. 千葉景子

    千葉景子君 VDT作業につきましては、いろいろな指針といいますか、基準づくりがなされていますけれども、まだ固定されたものではなくそれで十分だろうかという論議も今進んでいるところかと思うんです。そういう意味では、今後ともぜひ一番携わっている方が経験上あるいは自分の健康を一番よく認識しているわけでございますので、そういう職員の皆さんの意見等を尊重していただいて健康破壊などのないような措置をお願いしたいと思います。これは時間とかあるいは照明とか明るさとか、登記所そのものの構造にもかかわってこようかと思いますので、ぜひこの点については十分な御配慮をいただきたいというふうに思います。  時間も限られてまいりましたので、今回のコンピューター化に直接はかかわりませんが、不動産登記法などの今後の問題点等について一、二お尋ねをさせていただきたいというふうに思っております。  一つは、前回参考人から御指摘があった問題でもあるのですけれども、現在不動産登記におきましては登記原因証書、それとそれがない場合申請書副本でかえる、こういう二本立ての制度がなされております。これについては多々意見がございまして、登記原因証書をも必要的な添付書面とすべきではないかという意見と、それから逆に、いやこれは余りもう現実的には原因をそのままあらわしているとは限らず、むしろ申請書副本で一本でいった方がいいのでないか、こういう御意見もまた一方ではあるようでございます。そういう意味では、一体これは今後どういうふうに考えていった方がよろしいのか、その辺をお聞きしたいのですが。  これは似たような制度で道路運送車両法ですか、これに基づきまして車については登録の場合に譲渡証書を添付するということになっているわけなんです。きょうわざわざ運輸省の方からお越しいただいたんですが、これは必要的な、これを添付しなければいけないという書類だと思います。これの理由、根拠というのはどういうところにございますでしょうか。
  62. 豊島達

    説明員(豊島達君) 御説明いたします。  未登録の自動車の登録、すなわち新規登録でございます。または、既登録で所有者の変更を伴う自動車の登録、すなわち移転登録でございますが、こういう登録に際しましては、登録の原因を証する書面として道路運送車両法の規定に基づきまして、譲渡証明書という書類の提出を要することになっております。この自動車の所有権の移転を証する書面としましては、一般的には売買契約書を用いることも考えられますが、自動車の新規登録または移転登録の場合には、所有権の譲渡につきましては三つ大事なことがございまして、一つは譲渡の年月日、もう一つは車名、車台番号等の自動車の同一性、もう一つは譲り渡し人と譲り受け人、これが必要最小限度事項でございまして、こういった点につきまして、様式を定めましてこれらの事項だけを定型的に記載するようにした譲渡証明書によりましてこれを確認しているものでございます。  この譲渡証明書制度によりまして、申請人の余分な負担の軽減を図るとともに、大量の申請を短時間に取り扱います陸運支局等における審査業務の効率化を図っているものでございます。  なお、この譲渡証明書につきましては、道路運送車両法によりまして、二通以上の交付または虚偽の記載を禁止いたしておりまして、このようにすることにしまして譲渡証明書記載と自動車の所有権の真正な得喪の合致を期しているということでございます。
  63. 千葉景子

    千葉景子君 今御説明をいただきました。これも必ずしも契約書そのままというような問題ではございません。そういう意味では、現在使われている原因証書もやはり契約書そのものとも限らないわけでございます。この辺については、今後車の場合と同じような何か一定の統一的なものにするとか、いや今のままで問題点としてはとりわけなさそうだと考えていらっしゃるか。車と土地の 違いとか、こういうこともあろうかと思うんですが、法務省はこの点については今後御検討なさるとか、そういうことはございますか。
  64. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 車の場合に比べますと、不動産をめぐる権利関係というのは極めて複雑でございまして、多種多様の権利関係が招来するということがあるわけでございます。それとともに、この原因証書というのは二つの機能を私ども持っているというふうに考えておりまして、その一つの基本的なものは、登記済み証を作成する素材になるということでございます。そして、登記済み証というのは、さらにその次の登記申請の真正と申しますかがきちんと行われる、登記の移転を公証するというものとして登記済み証というのが極めて重要な役回りを演じているという、登記済み証というのはそれ自体有価証券ではないわけですが、それの所持人が権利者であるということを強く推認される証拠書類としての意味を持つという意味でございますが、そういう意味を持っているわけでございます。  それとともに、権利変動が真実であるということの確かさを証明するという機能もあわせて持ち得るだろうというふうに思っているわけでございまして、そういう意味では、登記済み証が基本的には原因証書によってつくられるということの方が望ましいというように思っております。  これも地域差がございまして、関西地方では原因証書によって登記済み証をつくる、つまり登記申請書には原因証書を添付するという、そういうことが一般的であるようでございます。関東、東の方でございますと、謄本、あるいは北海道もそうでございますが、そういうふうな地方ですと、どうも副本で処理するということがかなり多いようでございます。これはそういう商慣行と申しますか、そういうものが背後に潜んでいるのではないかというふうに思っておりますが、基本的には私どもとしてはそういう機能を持っている以上は、これはできるだけ原因証書というのは利用した方がよろしいと思います。  しかし、その利用のやり方についても限度があり得るというふうに思っておりまして、それは時効取得なんというのは、多分車の場合にはめったにないと思いますけれども、土地等の場合には、これは十分あり得るわけでございまして、こういうものについてはそんな原因証書というようなものはちょっと考えられないということになるわけでございまして、そういう点あれこれ考えてまいりますと今の制度でしばらくやってみて、なお各界の御意見等を伺って今後どういうふうにこの制度を直していくのがいいのか、特に登記済み証がなくなった場合の保証書の制度とも関連いたしまして、今後なお詰めてまいりたいというふうに思っております。
  65. 千葉景子

    千葉景子君 今ちょうどお言葉が出ました保証書の制度ですね。これも前回少し見直しというか、検討をしたいというような御回答をいただいていたような気がするんですけれども、これは今後どんな方向で御検討なさるおつもりでしょうか。
  66. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 保証書の制度登記済み証がない場合、なくした場合等に、その登記申請の真実性というものを担保するために保証人が保証書を出すということによって賄おうということでございますけれども、現行制度が古い制度でございまして、必ずしも本当に保証をするのに適する人が選ばれているかどうか、あるいは真実その保証書制度というのがうまく機能しているかどうかという点について疑問があるわけでございます。近代の権利関係の流動化ということにかんがみまして、その保証人となる者の適格性というようなものについて、特にこれは今後検討してまいらねばならないのではないかというふうに思っております。
  67. 千葉景子

    千葉景子君 時間が参りましたので、これは特に質問の通告はさせていただいておりませんけれども、法務大臣、ぜひこの改正に当たりましては利用する者の便宜といいますか、こういうものを損なわないような形でやはり進めていただきたいというふうに思っているんですけれども、ぜひ法務大臣としての今後の取り組みに向けての考えの基本、御決意をお話しいただきたいと思います。
  68. 林田悠紀夫

    ○国務大臣(林田悠紀夫君) 今回の登記コンピューター化登記を明確にしあるいはまた、登記が違う場所においても引き出し得るというような利用者の便宜ということを十分考慮いたしまして行い始めておるものでございまして、今後とも、したがって登記を利用する人たちのことを十分配慮いたしまして取り進めてまいりたいと存じます。
  69. 千葉景子

    千葉景子君 終わります。
  70. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 私は、電子情報処理組織、いわゆるコンピューターシステムを用いまして、不動産登記であるとかあるいは商業登記を行おうとする今回の制度の導入は時代の趨勢に沿うものであり、当然であるというふうに思うわけでございます。  先般来、審議の過程で伺っておりますと、十五年間も全国的な制度が整う、気の遠くなるような話でございまして、もう少し早くできぬものかなという強い感じを持っておるわけでございます。それはそれといたしまして、登記業務は直接国民の権利に深くかかわり合いがあるわけでございまして、国民生活に強い影響を与えておりますだけに、この移行がスムーズに行われるようあらゆる配慮が必要であろうと思うのでございます。  そこで、コンピューターに関連いたしまして新聞等を見ておりますと、よくコンピューターの事故が報道されましたりあるいはまたコンピューター関連の犯罪の報道等がなされるわけでございます。他面、今回は政府がおやりになることだから間違いないだろうという国民の信頼感というふうなものもあるだろうと思うのでございます。  そこで先日、東大の教授の大須賀参考人の意見にもございましたように、私はこの制度がうまく運営されるかどうかという問題の一つの大きな柱は、安全性、信頼性という問題であろうと思うのでございます。いただいている時間が大変少のうございますので、きょうはこの点に絞りまして御質問をしていきたいと思うのでございます。  まず質問の前提といたしまして、私の理解を確認したいために三つほどお伺いいたします。この制度が完成されました暁には法務省民事局、これは登記情報センター、こういうふうに書いてございます。それから法務局、地方法務局、これは五十ぐらいある、それから約千二百の登記所がある、これが分散処理とはいえリアルタイムの全国一つのネットワークで結ばれる、こういうふうに理解いたしておりますが、これが正確かどうかというのが一つ。それから第二点は、入力できる端末装置が今申し上げましたおのおのの部署に全部置かれるということになるのかどうか、これが第二点目。それから第三点目は商業登記の場合、この制度ができましたときには本店の所在地の登記所に行けば、本店と同時にほかの登記所の管内にある支店の登記につきまして本店所在地で登記の申請手続ができるというふうに理解しているわけでございますが、この三点についてイエスかノーだけで結構でございますから御回答いただきたいと思います。
  71. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 第一点でございますが、登記所において登記されますと、それは直ちにバックアップセンター及び登記情報センターにデータが伝送されまして三カ所において蓄積をされるということになります。  それから第二点でございますが、全国の法務局、地方法務局、それから支局、出張所全部に原則としてコンピューターをそれぞれ設置するという考えでございますけれども、小規模の出張所につきましては端末のみを置いて隣の登記所コンピューター本体につなぐというシステムでございます。  それから第三点の商業登記でございますが、これは電算化された暁には本店において本店の登記と支店の登記と同時に行えるということでございます。
  72. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そこで、私は私なりに安全性、信頼性を保つためには三つの要件がある、こういうふうに考えるわけでございます。一つは、人的 要件といいますか、この業務に携っている人の問題。二つ目は、組織的な要件。安全性、信頼性のために組織というものが十分機能しているかどうかというふうな問題。三番目は、この組織を運営するために法律的なバックアップといいますか、例えば刑罰法令の適用だとかというものが十分に行われているかどうか、そういうふうに考えるわけでございます。  そこで、人的要件につきましては、これはもちろん法務省の関係者の方々がおやりになるわけでございます。特に重要なのは、いわゆる登記官の方であろうと思うのでございます。もちろん人格的に立派な方が、しかも経験豊富で職責の重大さを自覚いたしまして、本当に正義感に燃えてお取り組みいただくというふうに思います。  先般現場を見させていただいて、登記官の方はそういうふうな意味では比較的責任の重い方でございますので、年齢的にも機械に弱いみたいなお話も伺いましたけれども、そういうふうな問題は、今申し上げましたような人的な問題はいろいろ法務省でお考えになっていてこれは万全である、万全にしていただきたいということで、きょうは二番目のまず組織的な要件と申しますかをお伺いしたいと思います。組織的な要件というのは一番最初におきまして、人的要件というのは、これは信頼関係が中心になるわけでございます。ただしかし、信頼がもちろん前提に立つわけですが、信頼するしないとにかかわらず組織的に問題が起きないように体制をつくるということが大事なことだと思うわけでございます。  そこで、組織的な問題として御説明を受けましたのは、分散処理・三階層ネットワーク方式と、それから登記官コード及びパスワードを入力しない限り登記ファイルに変更を加えられない。これが大きな柱であろうと思うのでございます。これは当然のことでございまして、結構なことだと思うわけでございます。三階層で従来どおりおやりになって、そして天災等に対しても、例えばそれぞれの段階でバックアップされるというふうな処置ができておるわけでございまして、結構なことだと思うわけでございます。ただ、最初に確認のために申し上げましたけれども、従来なかったことは何かといいますと、全国のリアルのコンピューターによるネットワークができるということでございます。その点は従来余りなかったわけです。その辺についての安全性の点検というのが私は大事じゃなかろうか、このように思うわけでございます。  昨年の五月に、刑法等の一部改正によりまして、電子情報処理組織に関連する不正行為に対処するための刑法の一部改正というふうなものもなされました。そういうようなこともその一つのあれだと思うわけでございます。  そこで、その当時いただきました資料を見てみますと、「コンピュータ関連不正行為の発生状況」、法務省の関係資料でいただいたものでございますが、これは「CD犯罪以外のコンピュータ関連不正行為」ということで犯罪の認知状況が出ております。「不正データの入力」、「データ・プログラム等不正入手」、「コンピュータ破壊」、「コンピュータ不正使用」、「プログラムの改ざん・消去」、そういうようなこと、それから犯行の業種別及び部内か部外かというふうなことで「銀行」、「農協」、「信用金庫」、「郵便局」、「サラ金・クレジット」、「大学」、「官公署」、「その他」というふうなことで資料をいただいておるわけでございます。これによりますと、内部犯行が六十二件、外部犯行が九件、不明が四件、計七十五件、こういうような実態になっておるわけでございます。  そういうふうなことを前提とし、そしてまた最近の新聞報道でもおわかりになりますように、例えば西独のハッカーが数年にわたって五十の米軍コンピューターシステムに侵入しまして、その中にはSDI計画関係も入っていたというふうに伝えられております。あるいは国内におきましても、端末機の不法な操作によりまして他人のデータを盗用いたしまして、年金を引き出した事件等も報道されております。あるいは筑波の文部省高エネルギー物理学研究所のコンピューターに西独のハッカーが侵入して、西ドイツで捕まったというふうな事例等もあるわけでございます。  先ほどお話しのように、Aの登記所でBの申請を受けられる、商業登記の場合の先ほどのお話ですね。そういうふうなことでございましたけれども、私は、組織的にそういうふうなのを防止するためにどういうふうな対策をお考えになっているかどうか。これをお伺いしたいのが第一点です。  それから第二点は、パスワードだとか登記官コードに関連いたしまして、私もプロ野球が好きですのでよくテレビを見ておりますと、キャッチャーとピッチャーがよくサインを出しております。あるいは監督がサインを出している。あれが毎日同じサインだったら盗まれると思うんです。そういうふうに思います。あるいはかつての戦争のときに、日本の暗号が米軍にとられちゃいまして、解説されちゃって、そして大変ひどい目に遭ったというふうなこともあるわけです。それから、現実に今度は暗証番号を使いまして、CD犯罪等を見てみますと、暗証番号というのは大体生年月日だとか電話番号だとか、そういうふうなのがよく使われているわけなんですけれども、そういうようなことで盗用されるというふうなこともあるわけです。  そこで、登記官コードあるいはパスワードの更新につきまして、十年一日のごとくだとやっぱり組織的な問題が必ず起きてくる、そういうふうなことについて何か配慮しておられるのかどうかということをお伺いいたしたいと思います。  それからもう時間も参りましたので、せっかく刑事局長がお見えになっておられますから一言だけお伺いいたしておきたいと思いますが、先般の刑法改正によって、先ほど態様別にいろいろ申し上げましたけれども、あれで十分対応できるのかどうか、ハッカーなんかについてどういうふうなことなのかどうか、あるいは資料を不正に入手された場合に手数料を出せば見れるんですが、手数料も払わぬでごそっと持っていかれるような場合等もあるだろうと思います。その辺についての法的要件、これについてお伺いいたしたいと思います。
  73. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 組織的な対策でございますけれども、既に先生御承知のように、登記ファイルの更新のためには、受付、調査、記入、校合という登記事務の手順に従ってそれぞれの端末を順次操作し、かつ登記官カード、パスワードをもってしなければできない、登記ファイルの更新のための業務プログラムを稼働させるには当該登記所の端末からしかできない、こういう仕組みでほかからはできないというふうなことにいたしております。  なお、パスワードは一定時期でもってこれを改めるということにいたしております。
  74. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 委員の方から御指摘のありましたコンピューター犯罪の類型別の資料の点でございますが、当時の資料によりますと先ほど御指摘のありましたように、不正データの入力等五つの類型に一応分けて資料をつくっておったところでございます。これらの類型に当たるかどうかということにつきましては、具体的事実関係をどう見るかということでございますので、具体的事実関係を離れて一概にお答えをいたしかねる点もあるわけでございます。  五つの類型につきまして一般的に申し上げますと、データ、プログラム等の不正入手という類型とコンピューターの不正使用という類型につきましては、正面切ってこれを処罰するための新たな罰則の規定は設けておらないところでございます。  しかしながら、例えば窃盗であるとか業務上横領であるとかいったことがデータ等の不正入手の場合に適用され得る余地というものはあるわけでございます。それ以外の三つの、不正データの入力、コンピューターの破壊、プログラムの改ざん、消去、こういった類型のものにつきましては、例えば電磁的記録の不正作出であるとか電子計算機損壊等の業務妨害であるとか電磁的記録の毀棄であるとか、こういった新たな犯罪類型を設 けまして適切に対処できるようにいたしたところでございます。  なお、ハッカーという問題がございましたが、これも具体的事実関係いかんによるわけでございますけれども、事実関係によりましては、電磁的記録の不正作出とか毀棄あるいは電子計算機損壊等の業務妨害といった新たな罰則で対応することは可能であるわけであります。
  75. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 終わります。
  76. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 きょうは、この法案の改正条項について少々伺いたいと思います。  細かい点で非常に恐縮でございますけれどもよろしくお願いします。改正の条文に従って逐次お伺いしたいと思います。  まず、二十一条に附属書類に関して規定があるわけですが、甲号事件、要するに権利関係登記申請における添付書類はここに言う附属書類の中に含まれるわけでしょうか。
  77. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 附属書類に含まれます。
  78. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ほかのものは、地図とか建物所在図とかこういうものについては閲覧と同時に写しの交付請求ができますけれども、添付書類、すなわち附属書類についてはなぜ閲覧だけが認められて写しの請求ができないんでしょうか。
  79. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記は、登記された結果を公示するという制度でございまして、登記をするために登記官の審査の必要上添付させた書面につきましてはそこまで公開の必要性がないというふうに考えられていたものと思います。
  80. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ただ御承知のとおり、閲覧というのは見ることなんです。映画や絵だったら見るだけでいいけれども、添付書類は見ても頭の中に入れて持って帰るのが大変なんです。添付書類を見るだけでなくして、写しがもらえるということは非常に実務の上において便利だし重要なことなんです。添付書類、すなわち附属書類についても写しが請求できるような手を考える余地はありませんか。
  81. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 添付書類は非常にいろいろなものがあるわけでありまして、量も非常に多いし、実際的な問題を申しますと、これの写しをつくるというのは大変な手間がかかるという問題がございます。  それから添付書類の中には戸籍謄本であるとか住民票であるとかというような、これはまさにプライバシーにかかわるようなものもございまして、そのような写しを登記所の方から卒然と出すということがいいかどうかという問題もございます。あるいは印鑑証明とか委任状とかいったようなものの写しをつくるということで、それを私人に渡すのがよろしいかどうかという問題も出てまいろうかと思います。先生御承知のように、訴訟にでもなれば、これは裁判所からの送付嘱託でもって送りまして、その写しがつくられるということがございますが、そういう公的な手続以外の場面でもって添付書類の写しを交付するということについては現在のところ消極でございます。
  82. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 確かに二十一条で「何人ト雖モ」といって、全くだれにでもということなら別ですけれども、この附属書類の閲覧ないし写しがもらえる場合には、そこに書いてあるように「利害ノ関係アル部分ニ限リ」というふうに限定があるわけですから、全くだれにでも自由にいろんな添付書類を見せてそれで写しを渡す、こういうわけじゃございませんから、いろいろ検討していただきたいと思います。  というのは、今局長がおっしゃられたように、仕事をしている上において登記所へ行って目で見て何とか頭の中へたたき込んで覚えてくる。実際に印鑑がどうだとかあるいは委任状の署名がどうだとか、こういうことを明らかにするためには裁判所から嘱託して送ってもらわないと見れないわけです。手元に置いて見ることができないということになるわけで、この辺また検討してみてください。  次に、二十四条ノ二についてお伺いします。  閉鎖登記用紙の保存期間を一般的に二十年から三十年に延長し、また土地については二十年から五十年に改正法で延長しているわけですが、この延長した理由についてお伺いします。
  83. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 現在二十年となっておりますのは、昭和三十五年に改正をしたものでございまして、従前三十年であったものを短くしたわけでありますが、これは一つには、登記所における閉鎖登記簿の保存スペースにも事欠くといったような状態があったことが背景をなしておるわけであります。しかし、これについてはいささか短いという御批判がございました。特に、土地につきましてはそういう御意見が非常に強かったようでございます。  そこで今後、順次移行作業が終わって電磁的記録として保存されるようになりますと、閉鎖登記簿それ自体は利用の頻度が非常に少なくなるということもございますし、登記所のスペースの上で余裕ができるということも考えられますので、そういった物理的状況もあわせ考えまして、この際延長した方がよろしいのじゃないか。土地については特に必要性が高いものでございますから五十年にし、建物は、その建物の寿命などがございますのでそれほど長くなくてもいいのじゃないかということで三十年といたしたわけでございます。
  84. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この条項に直接関係があるわけじゃありませんが、先ほど申し上げた添付書類、特に附属書類と言っても添付書類、これの保存期間、保存の始期、終期はどういうことになりましょうか。
  85. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 附属書類の保存期間は、不動産登記法施行細則によりまして十年となっております。
  86. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 始期、終期。
  87. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 申請書受け付けの日が始期でございます。
  88. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 次に百四十二条についてお伺いいたします。  この百四十二条で、一項に「登記義務者」ということが書いてあるわけですが、この「登記義務者」というのは登記簿上にあらわれている登記義務者だけに限定するのか、それともその承継人をも含む趣旨なのか、いかがでしょう。
  89. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 承継人を含む趣旨でございます。
  90. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、例えば共同相続人中の一人が行方の知れないような場合はどのように処置するわけでしょうか。
  91. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 全員の共同申請ということに原則はなるわけでございまして、その場合には、その者だけが問題になるということになろうかと思います。
  92. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 いや、その者だけが問題になるという答えじゃちょっとよくわからないんで、結局共同相続人中行方不明の方がおられれば、この方についてはこの条項による手続ができる。他の共同相続人についてはもちろん通常の手続が必要でそれを一括してできる、こういうことでしょうか。
  93. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) そういう趣旨でございます。
  94. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それから、先ほど千葉委員質問に対する局長の答弁の中に、行方の知れないということは結局受領不能であるということに考えられる、したがって受領不能を理由にする弁済供託というふうに考える。こういうふうにおっしゃられたと思うんですが、もしこの登記義務者の行方の知れざるときということを受領不能というふうにお考えになるんだったら、受領拒絶の場合をこの中に含めて考えることはできますか、できませんか。
  95. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 受領拒絶の場合は考えておりません。
  96. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ただ、行方が知れないということで受領不能だということであれば、受領拒絶の場合であっても受領不能とほとんど供託のための法的効果としては同じなんであって、もしこれを含めればこの条項に従って簡易に抹消できるけれども、受領拒絶は含まないのだということになる と、受領拒絶を理由にして供託まではできるけれども、抹消するためには結局判決なりをもらわにゃならぬということになって手続が非常に面倒になる。だとすれば、この行方不明ということが即受領不能というふうにもし考えられるなら、受領不能と受領拒絶はほとんど概念的に取り扱い上同一にできるから、そうしたら、その方が簡易抹消のためには便利だと思いますが、いかがですか。
  97. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは共同申請の例外規定でございまして、要するに、相手方が所在不明で共同申請ができないということを理由にしているわけでございます。  その受領拒絶の場合には、あくまで人はいるわけでございまして、共同申請ができる以上は共同申請の原則どおりやっていただきたいというのが登記法の精神ではないかというふうに思っております。
  98. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 同じ条文の三項、新設の部分についてお伺いいたします。  この新設条項によると、債権の弁済期より二十年を経過するということが一つの要件になっています。そうすると、債権の弁済期の問題で、まずこの債権の弁済期は何によって確定しますか。
  99. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 古い登記でございますと登記簿記載してございますので、それを基準にいたします。  登記簿記載がございません場合には、債権証書その他の書類によってこれを認識することになります。
  100. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 債権証書等もなく、他に書面的には確定できるものがない場合の弁済期はどのようにして確定しますか。
  101. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記官は、提出された書類に基づいて審査を行う形式的審査権しか有していないわけでございます。これは登記事務処理を迅速に行うためにも必然的に出てくるところでございます。したがって、書類によってそれを明らかにすることができないというときには、この制度を用いることができないという結果になります。
  102. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、結局弁済期が確定できない場合には、この条項による簡易抹消はできないということですか。
  103. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) この規定は、一定の場合に本来要求される共同申請の手続をとらなくても単独でもって抹消できるという簡易な、便宜的な措置を定めたものでございまして、そのためには、それが許容されるだけの合理的な範囲内のものでなければなりませんし、登記官の審査できるような状況のものでなければならないわけでございまして、その要件に当てはまらない以上は簡易手続を用いることができなくてもこれはまたやむを得ないのではなかろうかと思います。つまり、そういう場合、あくまでも本来的な手続は常に存在するわけでございますので、一定の限界を設けるのは制度としていたし方のないところではなかろうかと思います。
  104. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 債権の弁済期、証書でもあって確定できればいいけれども、その辺がはっきりせぬとだめだとおっしゃられたんじゃ、三十年も五十年も昔のことで証書も何もないといったらほとんど使いようのないような規定になってしまう。民法五百九十一条二項には「借主ハ何時ニテモ返還」、返還というのは借りた金、消費貸借の目的物です。「借主ハ何時ニテモ返還ヲ為スコトヲ得」というこの消費貸借の規定をもってくれば弁済期はすなわち借り入れした日だと、借り入れした日を弁済期と考えてここから二十年ということを計算すれば弁済期は全部特定できると思いますが、いかがですか。
  105. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) これは返還の時期を定めていない場合のことでございまして、期限が決まっていない。そういたしますと、例えば時効期間を考えるに当たりましては、時効が即時に進行をするというふうなことは考えられるわけでございますけれども、それと今当面の事柄とはちょっと場面が違うのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  この百四十二条は、債権の時効消滅を理由として簡易抹消を認めるものではございませんで、あくまでも債務者が単独でやれる債務消滅行為である弁済供託という制度を利用して初めてできるわけでございますので、その供託をする際の要件としてこのような定めをしているわけでございます。
  106. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 どうも今の説明では私は納得できませんが、また難しいことですから検討しておいてください。  次に、供託しろということのその供託の内容について、債権、利息、損害、これを供託しろと書いてあります。債権というのは債権元本なんでしょうが、利息を供託しろといった場合のその利息はどのように計算した金額になるんでしょうか。
  107. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 利息は、こういう抵当権が付されているような債権でございますから、約定の利息ということになろうかと思います。
  108. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 損害は、債務の不履行によって生じたる損害の額はどのようにして計算しましょうか。
  109. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 約定利息がございます場合にはその額で処理する。特約で損害金については特別の定めがある場合もあり得るとは思いますが、そういうことによって処理するということになります。
  110. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 利息の場合には約定がなければ発生しない、これは当然のことです。損害金については約定の有無にかかわらず、金銭債権については弁済期後は遅延損害金が法定利率によって発生するということになっていると思いますが、その辺の法定利率による法定の損害金ということについてはどのようにお考えでしょうか。
  111. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) もちろん先生御指摘のように、債務不履行ということの評価ができるような場合でございましたら、これは法定の利率による損害金が発生するわけでございます。
  112. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 非常に細かくて恐縮ですけれども、この法定利率による損害金といった場合にも、民法の場合だったら四百四条に基づいて年五分、商法の場合は五百十四条に基づいて年六分ということで五分と六分の開きがありますが、この損害金に対して適用する五分、六分をどのように区分けして計算しますか。
  113. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) それは被担保債権の種類と申しますか、そういうものが商行為によって生じた債務というふうに被担保債務が評価される場合でありましたら商事法定利率が適用されるわけでございます。それ以外の、そう認定できない場合には民法の規定によるということになります。
  114. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それから別のことですが、供託した時期とその供託書を添付して登記申請した時期との間に間隔がある場合、この間隔の間の損害金というふうなことは全然考慮することなく登記申請ができるわけでしょうか。
  115. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは債務がその時点で消滅しているということをメルクマールにしている、要件にしているわけでございまして、その時点で適法な供託がなされますとそこで債務は消滅するわけでございます。したがいまして、その後登記申請が遅延したとしてもそのまま登記は受理することになります。
  116. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 わずかな金額でごちょごちょ言うのもおかしな話ですけれども、しかし理屈の問題ですのでお伺いします。  例えば三十八円であろうが百六十五円であろうが供託した。この供託についての被供託者の還付請求権は時効にかかるんでしょうか。かかるとすれば何年で、その時効の始期はいつでしょうか。
  117. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 一般の民法の原則による債権の消滅時効にかかるというのが判例の考え方でございまして、十年の時効にかかる。その始期は事情によって行使することができるようになった時期である。例えば紛争中であるとその紛争が解決したときだというのが判例ですが、この場合には争いがないということが原則だろうと思いますので、供託したときから進行するということ になるのではないかと考えております。
  118. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 供託者の供託金取り戻し請求権について伺います。  供託者は供託金取り戻し請求権を有していますか。もし有していないとすれば、有していないことの法的根拠はどこにありますか。
  119. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは一般の弁済供託だというふうに考えておりますので、いつでも取り戻しができる。したがって、取り戻し請求権は有しているというふうに考えております。
  120. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、その供託書に基づいて登記申請をして登記は抹消できた。できた後、保有している供託書に基づいて供託金を取り戻しちゃっても構わぬ、こういうことになりますか。
  121. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 民法の四百九十六条の二項によりまして、供託によって抵当権が消滅した場合には取り戻し請求権がなくなる、こういうふうになっておりますので、抹消登記された後は供託者の取り戻し請求権は消滅をいたします。
  122. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 普通供託したんだから登記抹消することになるんでしょうが、そういうふうになると取り戻し権はなくなる。しかして、被供託者の還付請求権も時効によって消滅した場合、この供託金はどのような処置になるんでしょうか。
  123. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 供託金は国庫に帰属いたします。
  124. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 次に、百五十一条ノ二についてお伺いします。  この百五十一条ノ二には、法務大臣の指定する登記所においてはコンピューターシステムでやる、こういうふうに書いてあります。ここにある登記所法務大臣の指定という意味じゃなくて、この条項に書いてある「登記所」というのはどのように理解してよろしいんでしょうか。
  125. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記所というのは登記事務を担当する官署という意味でございます。実際に組織法令上登記所という名前の官署、役所があるわけではございませんで、これは不動産登記法の八条によりまして、法務局、地方法務局またはその支局、出張所が登記所としてこれをつかさどるということになっております。
  126. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、ここにある登記所というのは、具体的に登記事務を所掌している法務局、地方法務局、その支局、出張所というふうに考えるわけでしょうか。
  127. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) そのとおりであります。
  128. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、いわゆる登記事務を取り扱ってない法務省本庁だとか、あるいは登記事務を取り扱ってない法務局もしくは地方法務局があるかないか私は知りませんけれども、仮にそういう登記事務を実際には取り扱ってない法務局ないし地方法務局あるいは場合によれば支局、出張所でもいいんですけれども、そういう登記事務を取り扱ってない役所はここに言う登記所には入らないんでしょうか。
  129. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 法務省は登記事務を取り扱っておりませんので登記所ではございませんが、法務局、地方法務局及びその支局、出張所はすべて登記事務を取り扱っております。
  130. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、この百五十一条ノ二という条項によると、いわゆるバックアップセンターとしてのコンピューターによる登記事務の取り扱い、あるいは法務本省における登記情報センターとしてのコンピューターシステムによる登記事務の取り扱い等に関しては、この条文は全く無関係ということになりますか。
  131. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記所登記をされましたデータは即時にバックアップセンター及び登記情報センターに伝送されますので、その限りにおいては登記所の手がそこまで伸びているということは言えようかと思います。  しかし、例えば登記情報センターであるとかバックアップセンターであるとか、それ自体が登記所であると言うのはいかがであろうか。それは物の考え方でいろいろ考え方ができるかもしれませんけれども、直ちにそう言うのはどうであろうかというふうに思います。ただ、登記所の延長線上にあるということはもう間違いないわけでございまして、一体としてデータが保管されているということは言えると思います。
  132. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 手が伸びているとか延長線上にあるというふうなことでははっきりしないんであって、私が言いたいのは今回のコンピューターシステム導入において、いわゆる末端というか直接的なコンピューターによる登記事務を取り扱う登記所というものと、それのバックアップセンター、それから本省につくる登記情報センターという三階層ネットワークが今回の目玉なんだとか、あるいはこの後の条文でも伺いたいと思いますけれども、法文で言えば乙登記所において甲登記所登記事項証明がもらえるとかいろいろ言っている。その一番中核的な三階層ネットワークにおけるバックアップセンター、中核になる登記情報センター、これについての法律の規定が何もなしにそういうものをつくりますとか、そういう仕組みになるんですとかということだったら非常に重大な問題だと思うんです。  それで、この百五十一条ノ二に言う登記所の中にバックアップセンターの機能を保有するものとしての法務局もしくは地方法務局あるいは全国ネットワークの頂点にある登記情報センター、これについての規定はどこにあるんですかと、この百五十一条ノ二の登記所の中に入っているんですか入ってないんですかと、これを聞いているわけなんです。明確にお願いします。
  133. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) この百五十一条ノ二で言っております「電子情報処理組織」というものが、民行審答申に言っております分散処理・三階層ネットワークのコンピューターシステム意味しているわけでございます。  登記事務を処理するコンピューターシステムの特性あるいは機能、構造といったようなものは、これは技術的問題に属するわけでございますので、特にそこまで法律には書いていないわけでございますが、そういったものを全部含めた組織として「電子情報処理組織」、こういうふうに言っているわけでございます。バックアップセンターとか登記情報センターというものは、この処理組織の中にあるわけでございますけれども、ここに言う「指定登記所」とかあるいは管轄登記所とか、それ自体には当たらないと言うべきではなかろうかと考えております。
  134. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 これには当たらないとして、それでそんなことが書いてある条文は今回の改正法には一つもないんです。しかし、バックアップセンター、登記情報センター、これを設置するということの費用の問題だとかその機能の重大性だとか、そういうことを考えたら当然単に行政事務の問題だということだけでなくして、法律に規定するべきが妥当だと思いますが、これは見解の問題ですからこれだけにとどめておきます。  次に、百五十一条ノ三についてお伺いします。  この登記簿記載したる事項の全部または一部を記載するということになっていますが、この全部または一部というのは従前のというか、現行謄本と抄本という概念とほとんど類似というか対比されるようなものでしょうか。
  135. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) そのとおりであります。
  136. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 同じ条文、百五十一条ノ三の二項についてお伺いいたします。  この二項によると甲登記所登記事項証明書を乙登記所請求し得るということだけが書いてあるように思いますが、それだけの規定だというふうに読んでよろしいわけでしょうか。もう少し質問趣旨を申し上げれば、要するにこの二項には乙登記所において甲登記所登記事項証明書交付申請ができるということが書いてあるんです、日本語で。だけれども、どういう仕組みで乙登記所において甲登記所登記事項証明がもらえるかという、その方法とか手続についてはこの条項は何ら規定していない。ただ、乙登記所甲登記所の分がもらえるよということが書いてあるだけなんです。  そうすると、乙登記所において甲登記所のもの をもらうときに、今申し上げたような三階層ネットワークによって、電子情報処理組織によってネットワークに従って来るんだとか、あるいは甲登記所の職員が担いでくるんだとか、こんな方法については何も規定していないんです。ですから、この乙登記所において甲登記所登記事項証明書をもらえるということについての手続は、方法はどこに規定してあって、それはどういう仕組みになっておりますかということをお伺いしたいんです。
  137. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 不動産登記法の立て方の問題でございますが、ここでは専ら国民と行政とのかかわり合い、つまり国民の権利義務について直接の影響の及ぼす事項についてのみ規定をするという形になっております。  したがいまして、利用者の立場からいたしますとここで指定されて、例えば板橋で渋谷という登記所登記事項証明書交付請求はできますよということがこの規定によって指定が行われますと、その結果として板橋の登記所で渋谷の不動産登記登記事項証明書がもらえるという結果が出てくるわけでございまして、そのプロセスがどうであるかということは、直接国民の権利義務には関係はない。しかし、私どもとしてはそういうことになった以上は、その結果はきちんと守られるようにシステムとしては構築する、こういう形で制度としてはできているわけでございます。
  138. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私が意地の悪いくだらぬような質問ですけれども申し上げたのは、先ほども申し上げたように、三階層ネットワークについても何ら法文に規定していないから、担いで来るんだか電子処理組織に基づくオンラインで来るんだか何もわからぬでしょうということになってくるわけなんです。余りそんなことを言っていてもしようがないんで、次に移ります。  五項で、登記事項要約書は当該登記所にのみ交付請求し得るのであって、先ほど申し上げたような、二項のような乙登記所甲登記所登記事項要約書交付を受けるというふうなことはできないということでしょうか。
  139. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 御指摘のとおりでございます。
  140. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この登記事項要約書は、郵送料を納付して送付請求することは得ないんですか。得ないとすればその理由はどういうことですか。
  141. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは郵送の請求を認めません。現行のやはり閲覧にかわる制度だというところが基本にあるわけでございまして、閲覧とい制度は、その登記簿原簿があるところでないと本質的にできないわけでございまして、それと横並びにしたということでございます。
  142. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 六項の条文、文言中、「第一項及ビ前項ノ手数料」という規定がありますが、この「第一項」というのは、具体的にはさらに細かく言うと第一項だけなんでしょうか。それとも、第一項の督促的な意味での第二項も包含されているというふうに読むんでしょうか。
  143. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは先生御指摘の後の方の考え方でございまして、第二項のものも含んでいるというふうに考えております。
  144. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 次に、百五十一条ノ四についてお伺いします。  本条に言う「登記事項証明書」、すなわち現行謄本もしくは抄本とみなす規定の適用を受ける「登記事項証明書」という用語の中には、先ほどの登記事項要約書は包含されていませんか。
  145. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) それは包含されておりません。
  146. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 百五十一条ノ五についてお伺いします。  これはどういう趣旨規定で、この規定が適用されるのは具体的にはどんな場合なんでしょうか。  それからこの条項は、今回の磁気ディスクによる新しい登記システムをつくる場合の移行に関する事務とは無関係規定なんでしょうか。
  147. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 後の方からお答え申し上げますが、この規定は、磁気ディスク記録されている登記簿ディスク容量に比較して非常に多くなった場合に新しい登記記録に移すための規定でございます。現在存在する、紙でできております登記簿磁気ディスクによる登記簿に移す、その移行とかかわりのある規定ではございません。  この百五十一条ノ五の規定、こういう規定が必要になりますのは、磁気ディスクの中に納められているデータの量が多くなってまいりますとコンピューター処理のスピードが落ちてまいる。そのために事務処理上非常に支障が生じる事態が生じますので、大体容量の八〇%ぐらいに達しますと、新しい磁気ディスクの方に現在事項を移して身軽にしてやる必要があるということのために、こういう規定を設けておるわけであります。
  148. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると現在は、例えばある土地の登記用紙、ある建物の登記用紙が非常に大部になったから、この地番もしくはこの建物の登記用紙を閉鎖登記簿にしようと、それで遺棄して新しい登記簿の用紙をつくろうと、こういうふうなことになるわけですが、この磁気ディスクの場合には、ある土地、ある建物の記載事項が非常に分量が多くなったからそこのところだけを、技術的にどうするのか私は素人でわかりませんけれども、何かちょん切るのかどうか知らぬけれども、そんなことで移すんですか。その辺はどういう方法を考えておられるんですか。
  149. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) その個々の登記事項が多くなって登記簿が、登記事項証明書と申しますか、そういうものが非常に読みづらくなった、一覧性が確保できなくなったというのは、今までと同じように七十六条ノ二という規定の準用によって処理するということになるわけでございます。この百五十一条ノ五自体はそうではなくて、今局長が申し上げましたように、全体として登記簿の分量が多くなったということになるわけでございまして、機能は七十六条ノ二とはちょっと違っているということになろうかと思います。
  150. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それから、この百五十一条ノ五の一項、二項に「登記記録」という用語が突然出てくるわけですが、この「登記記録」という用語の概念定義を明らかにしていただきたい。特にこの「登記記録」という用語と「登記簿記録シタル事項」という概念とはどういう関係にありましょうか、簡単にお願いします。
  151. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 「登記記録」という言葉は、条文の上ではここで初めて出てくるわけでございますが、百五十一条ノ八という条文で後ろの方でございますが、「登記用紙」とあるのは「登記記録」と読みかえるという、こういう処理をやっているわけでございます。その最も基本になる条文は、不動産登記法の十五条という規定あるいは十六条という規定でございまして、「用紙」という言葉が出てまいります。結局一筆の土地あるいは一個の建物ごとに登記用紙というものができて、それが一つの単位になっているということを基本にして、この不動産登記法という法律はできているわけでございます。  ところが、「用紙」という言葉は紙でございますから、これは使えるわけでございまして、コンピューターの場合には「用紙」という言葉はそのまま使えない。そういたしますと、ほかに何かそういう情報が一筆ごとあるいは一個ごとに一くくりになっているんだということをあらわす言葉はないだろうかということを考えたわけでございまして、その言葉としてこの「登記記録」という言葉を使ったわけでございます。  そういう意味ではなじみのない言葉でございまして、そういうものだというふうに御理解いただかないと、なかなか卒然として「登記記録」という言葉だけを聞いて、それでそういうものだというふうに御理解いただくというのは非常に難しいと思います。私どもとしてはほかに適当な言葉が、そういう一くくりの情報だということを明らかにする、コンピューターの中でそういう情報だということを明らかにするという言葉が適当なものがなかったものでございますから、こういう言葉を使ったわけでございます。  そういう意味では登記簿記載されている事項 という言葉も、そういうことの中身と申しますか、一くくりになったものに記載されている事項を具体的に言っている、例えば甲区の記載とか乙区の記載とか、所有権に関する事項とか、そういうものを総体として言っている言葉というふうに御理解いただければと思います。
  152. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この条項がいわゆる移行事務に、コンピューターシステムへの移行事務に関する規定でないというと、コンピューターシステム移行するについて、移行範囲であるとか移行するべき事項範囲の問題等、先ほど千葉委員からもいろいろ問題が出ておりますけれども、この移行事務に関する規定はどこにあるんでしょうか。
  153. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 附則の十一条というところでございますから十八ページでございますが、この規定、「この法律の規定による不動産登記法商業登記法その他の法律の改正に伴う登記簿の改製その他の必要な経過措置は、法務省令で定める。」、こういうことになっておりまして、これによって処理することになります。
  154. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 移行をする場合にどういうふうに移行するか、移行する記載範囲はどうしようか、こうしようかというこんな重大な問題が、私みたいにぼうっとしているやつだとどこに書いてあるかわからぬ。ようやく見つけたら附則の十一条だと。しかし、ここには移行に関する事務的なことはほとんど何も規定していない。そうすると、現行登記簿磁気ディスク移行するということは、この条文で言った場合の「登記簿の改製」という概念の中に入るということでしょうか。
  155. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) そのとおりでございます。
  156. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 しかし、改製というのは、御承知でしょうけれども不動産登記法細則の附則の、昭和三十五年改正の二条とか、昭和五十八年改正の三条二号とか、その辺には改製という用語がありますけれども、そのほかにどこに改製という用語があるか、私はちょっとまだよく見ていませんが、どうもそんなような現在の磁気ディスクへの移行事務をこの改製という用語の中に含めて考えられるかどうか、甚だ疑問だと思います。いかがでしょうか。
  157. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 不動産登記法で申しますと、三十五年の改正のときの附則の第二条でございますが、この中で表題部を「表題部に改製」するという言葉を使っているわけでございます。そういう点で移記というよりはもう少し登記簿の中身が、中身といいますか、登記簿仕組みがやや変わってくるわけでございます。むしろ普通の言葉で申しますと、登記を移すというような言葉を使っているわけでございますが、それよりは改製の方がもっと実態に即しているのではないかというふうに考えたわけでございます。
  158. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 これもお互いの見解の問題ですけれども、登記簿の改製という中に今回の移行事務による移行範囲とか、そういうふうなことまでここに含めてやるというふうなことだと、条文としてはどうか知らぬけれども、国民が法律を見るときにこんなところへちょこっと書かれただけでは全然わからない。  しかも、この移行事務の範囲がどうだとか、先ほどから千葉委員あるいは前回も橋本委員から、せめて甲区欄だけについては現に効力を有する部分だけでなくして、既に効力を失った部分についても移行するべきが妥当じゃないかというような意見もいろいろ出ているんだけれども、そんなようないろいろな重大な問題があるにもかかわらず、こんな附則のこんなところにちょこっと書いてあるだけ。しかも、現在の登記簿磁気ディスク移行するということに対する莫大な費用というふうなことを考えたら、こんな附則十一条の改製なんていう用語の中にそれが入るか入らぬか知りませんけれども、私は入らぬと思っているんです、改製というこの用語の中には。今回の移記移行の事務なんというものは入らぬと思います。  いずれにせよ、もう少しこの条文を書くについて、先ほどの三階層ネットワークもこの条文からは全然出てこない。あるいは乙登記所から甲登記所登記事項証明がもらえる、もらえないなんということについても、どういう方法でということも全然書いてない。こんな移行事務の重大なことについても附則の十一条でこちょこちょっとわからないようなことが書いてあるというふうなことじゃなくして、もっと見たらなるほどなとわかるような条文をつくっていただきたい。  いずれにせよ、磁気ディスクによる登記事項証明書の申請と同時に、移行直前の閉鎖登記簿謄本交付申請を同時になした場合には、一件の申請として手数料を一回だけ、一回分だけでよろしいかどうかというふうなことについて法規的にどのように可能、不可能、あるいはそのように処置し得る余地がある、ない、その辺についてお伺いします。
  159. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 現行法で申しますと、登記事項証明書とそれから閉鎖登記簿謄本と両方請求されましたならば、それは両方について格別に手数料をいただくということになっておりまして、これは今度の登記簿の改製によって初めてそういう事態が生ずるというわけでなくて、これまでにおける登記簿の改製あるいは移行という出来事がありました場合にも常にそうであったわけでございまして、これを一通分でよろしいというふうにするわけにはまいらないと思っております。
  160. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 条文の最後に、百五十一条ノ六について、今後登記事項証明書電子情報処理組織によりてつくるべき書面にはアラビア数字でいいと、こういうふうに書いてあります。役所でつくる書面についてはアラビア数字でいいと、こういうふうになっているわけです。それでは、国民が申請する登記申請書については、アラビア数字を用いることについてはどうなっているんでしょうか。
  161. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 現行法ではできないわけでございますが、今後はこれが動き出しますれば申請書についても同じようなことになるというふうに考えております。
  162. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 同じようになるというのは、そのときになったらそのような法改正をするという趣旨ですか。もしそうだとすれば、今回ここへ入れておけば申請書の方も、それから登記の記入にしても縦で見て、横に頭を曲げてアラビア数字を見るなどということをしなくても済むんだから、今回一括してやっておいたらどうなんですかということを申し上げたいんです。  以上、法案自体についての、直接の条文についての質問を終わらせていただいて、あとプライバシーの問題について少々お伺いします。  これも、先ほど千葉委員がいろいろお伺いしましたので簡単にさせていただきますが、パイロット・システム検証評価報告書によればこのようなことが規定されています。特定物件を検索するについて、登記名義人等の指定入力により迅速に当該登記簿抄本を出力する機能があり、これが非常にすぐれているんだと、こうおっしゃるんです。  そうすると、地番等がわからなくても、登記名義人がわかれば登記簿謄本、抄本はすぐ出てくるということ。今度は逆に、所有者の名前はわからないけれども、所有者の住所等を入力することにより物件を検索することができるというふうに書いてございます。そうすると、名前はわからなくも住所、あるいは住所がわからなくも名前がわかれば、物件そのものの特定がなくても現行磁気ディスクシステムにおいては、直ちに物件を検索することができるということは間違いないんでしょうか。
  163. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) この物件の検索は、最近特に住居表示が実施されましてから、住居表示のみ御存じで地番を御存じない方がふえてまいりまして、そういったことで登記所の窓口を煩わせている一つの問題でございます。  ですから、今後コンピューター化されました場合に、例えば住居表示に基づく住所だけ御存じの方のためにそれから地番を検索するという、そういう検索システムを用意しまして住民サービスにこたえようというわけでございます。それはせい ぜい一定の狭い地域、例えば地番区域でございまして、霞が関一丁目なら一丁目という範囲内で正確な地番はわからないが、何のたれ兵衛の土地の地番は何か、あるいは住居表示番号はこうであるがこれの地番は何かということを検索するための、それだけのサービスはいたしたい。その範囲を超えて、日本じゅうあるいは東京じゅうどこからでも検索できるというようなシステムを考えるつもりは毛頭ございません。
  164. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 大臣にお伺いしたいんです。  というのは、今のプライバシーの問題に関連して、確かに先ほども局長は、登記システムについていろいろ現在予想しているようなことと違うようなことをやる場合には、民事行政審議会等の諮問を経て間違いなくやります、国民のプライバシー侵害というふうなことが起こるようなことはないように万全の策を講じてやります、こういうふうなことを先ほどおっしゃられたわけです。  しかし、私に言わせれば、今回の不動産登記法の改正法自体において三階層ネットワークの問題、それからオンラインによる甲乙登記所登記事項証明書交付の問題、それから現行登記簿謄本磁気ディスク移行する移行に関する問題、こういうふうな重大な問題が法律の条文の中にほとんど出てこないか、出てきてもわけがわからないような形になっている。しかも、民事行政審議会というのは法務大臣諮問機関にすぎぬ。要するに全国ネットワークによる個人の財産、不動産、全面的把握というふうなことを仮にやるにしてもやらないにしても、先ほどの審議官のお話によれば、それは国民の権利義務に直接関係があることじゃないのだと、単なる行政事務の問題だということになったら、あさってやられたってそれきりの話になってしまう。  要するに国民のプライバシーの侵害になるようなことにならぬように、民事行政審議会の諮問ということももちろん必要なことですけれども、もう少し現在予想しているシステムを変更するというふうなことの場合には、単に任意的諮問機関である民事行政審議会の諮問だけじゃなくて、できる限り法文化して国会の批判の目にさらすべきだと私は思うんです。その辺に関して、法務大臣の今後のプライバシー侵害予防に関連してのコンピューターシステムによる登記事務の履行ということについて、御意見をお伺いして終わりたいと思います。
  165. 林田悠紀夫

    ○国務大臣(林田悠紀夫君) コンピューターシステムの導入に当たりまして、いろいろな問題を御指摘いただいたわけでありまするが、そういうようなプライバシーの侵害をもたらすことがないように、これから政省令の制定に当たりましても、また制度の運用に当たりましても登記の適正を図り、そして制度を効率的に運用し、また利用者の利便を図っていくというような見地から総合的に十分検討をいたしまして万全を期して対処してまいりたいと存じます。
  166. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 最後に、今回の登記事務のコンピューター化実施のために、ここ数年間非常に鋭意努力された法務省の担当者や、あるいは現場の事務処理に直接御苦労された板橋登記所関係職員に対して非常に感謝の念を申し上げて、いろいろな細かい質問に対して詳しく御答弁いただいたことにお礼申し上げて終わりたいと思います。どうもありがとうございました。     ─────────────
  167. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として吉川春子君が選任されました。  午前の審査はこの程度にとどめ、午後三時再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ─────・─────    午後三時開会
  168. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  169. 橋本敦

    ○橋本敦君 本日の法案に入る前に、一般調査案件としてお尋ねしたいことがありますので、まずその問題から質問に入らしていただきます。  その問題といいますのは、最近大きな問題になっております米軍基地で働く日本人従業員に対しまして、米軍の方が秘密保全を名目にいたしましてうそ発見器、つまりポリグラフの使用を事前に承諾するようにという、その同意書をとるという問題であります。この問題は、基本的人権にもあるいはまた我が国の憲法の根幹である自由の問題にも深くかかわることでありますので、この法務委員会で取り上げる次第であります。  そこで、まず施設庁にお伺いいたしますが、この事柄の発端は米本国の海軍作戦本部から指令第五五一〇号で出されました昨年の九月三日付の通達が出発点だというように聞いておりますが、事実でございますか。
  170. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) そのとおりでございます。
  171. 橋本敦

    ○橋本敦君 この米軍の通達はだれに対する通達ですか。
  172. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 米海軍のすべての艦船及び施設の長ということになっております。
  173. 橋本敦

    ○橋本敦君 この通達の内容は、かいつまんで言いますとどういうことですか。
  174. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 海軍の従業員のうち、例えば日本にいる日本人従業員のように米国籍以外の従業員につきましては原則的に秘密事項には携わらせないということが一つございます。それから、ただし業務の遂行上やむを得ざる理由がある場合には、その秘密保全に関する適格性を確認して限定的な許可を与えるということでございます。その限定的な許可を与える場合の一つの手続として、ただいま先生御指摘のような措置がとられるということでございます。
  175. 橋本敦

    ○橋本敦君 現に、その秘密事項を取り扱う限定許可を受けて従事している日本人従業員の数は全国でどのぐらいございますか。
  176. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 限定許可といいますのは、その通達によって今後逐次そういうふうに切りかえていくということでございまして、従来秘密業務に携わる従業員は当然若干名いたわけでございますが、正確な人数は我々も承知しておりませんけれども、米側の説明によりますと、今回の通達によって影響を受けるのは在日米海軍関係では約五百人ぐらいじゃないだろうか。これは当然見直しの対象になるわけでございますから、その数は動くと思います。
  177. 橋本敦

    ○橋本敦君 その約五百人というのは、報道によりますとそのうち約三百人が横須賀と佐世保の両基地艦船修理部門所属、それからあと残りの二百人は嘉手納、厚木、三沢の各基地に所属している労働者であるというように報道されていますが、これは間違いありませんね。
  178. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 横須賀の艦船修理所、その支所といいますか、それが佐世保にも一部ございますが、その数はおおむね三百人ぐらいであろうということでございます。そのほかのただいま先生が指摘されました各施設につきましては、軍としては正式には言っておりませんけれども、一般的には各施設の中に在日米海軍関係のがそれぞれおりますので、そういう中に該当する者がいるかもしれない、可能性はあるということでございます。
  179. 橋本敦

    ○橋本敦君 随分と全国に基地があり、基地の労務に従事する人たちがいるわけですが、今出されている通達はネイビー、海軍ですね。これが同じような通達が陸軍や空軍関係でも出されてくる可能性もあって、これは基地を持つ我が国においては今後とも大きな問題になる可能性があります。特に沖縄など嘉手納といった基地を含めて大変広大な基地が存在するものですから、沖縄にとってももちろん重大な関心でありますが、全国的にも大きな問題になるわけであります。  そこで、今おっしゃった米軍が秘密と考える業務に人選をした上で従事させておる業務が今もあ るわけですが、それを今後引き続いてやらせるということについて、今お話しのような秘密事項取り扱い限定許可をこれから出していく。その許可を出す際に、ポリグラフで調査をされることがあることについてはあらかじめ同意するという同意書を出しなさい、これをやらせるという通達、こういうことですね。
  180. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 大筋はそういうことでございますけれども、この同意書にサインした人はすべて将来ポリグラフにかけるということではもちろんございませんで、何か具体的な事件がありまして、その特定の人についてポリグラフの調査も必要だというときに、本人の同意があればかけることがあるということでございます。
  181. 橋本敦

    ○橋本敦君 ちょっと違いますよ。本人の同意があればかけるんじゃなくて、かけるかかけないかもちろんわからないけれども、この限定許可を出して米軍が秘密と考える業務に従事させるためにはあらかじめ将来ポリグラフを使用することがある場合には、それは承諾をいたしますよという、こういう同意書でしょう。
  182. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 今回の同意書というものはそういう性格のものでございますが、今回同意書を出したから将来何か起こったときに、自動的にポリグラフにかかるというものではございませんで、その際改めて本人が拒否することはもちろん可能でございます。
  183. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうおっしゃいますが、具体的にその同意書なるものがここにあるわけです。  その同意書のまず冒頭では、「秘密事項取扱限定許可が付与されるに先立って、防諜のためのウソ発見器による調査を後日要求された場合は、自己の自由意志において当該調査を受けることを承諾します。」、こういうことなんです。おわかりでしょう。今から承諾しますという同意書なんです。だから、あなたがおっしゃるように、そのときになって承諾することを拒否することが可能だというようなものではありません。今からそうなった場合は承諾しますという承諾書なんです。事実上拒否することは可能かもしれませんよ。しかし、一たんこういう同意をしたら、同意も契約の内容ですからそれに従うのが当たり前ですから、この同意に違反することになることは明白なんで、今おっしゃったように、そのときに自由に改めて同意を撤回できる性質のものではありません。これが第一の問題です。  それからもう一つは、この同意書の中にはこう書いてあります。「防諜のためのウソ発見器による調査を辞退すると、私は秘密事項取扱限定許可を取得できなくなることがあり、秘密事項取扱限定許可を必要としない他の職位への転任もあり得ることを了解しています。」、これに署名して判を押さねばなりません。こうなっていることも御存じですね。
  184. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 承知しております。
  185. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、本人の自由意思でこれを承諾しないということは容易でない、もしそうなれば今まで従事していた仕事と違う仕事に、そしてまた具体的には秘密事項取扱限定許可を取得できなくなることがあることも了承するとまで、こう確認をさせられるという仕組みになっているわけであります。だから、果たしてこれが自由と人権を侵害しない同意たり得るかどうかということが極めて重大な問題になるわけであります。  もう一つ伺いますが、これは海軍作戦本部からの指令に基づくということですが、米軍人に対しては同じような同意書をアメリカはとっておりますか、とっていませんか。
  186. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 米軍人、軍属についてはもっと厳しい適格の確認がなされていると聞いております。
  187. 橋本敦

    ○橋本敦君 ポリグラフを使うということについて同意書を全部とっていますかと、こう言うんです、米軍人からは。そんなことはやってないでしょう。厳しい規則はいいんですよ。
  188. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) もちろん軍人もすべてじゃありませんで、そういう秘密事項に携わる者については厳重な適格性の審査をしているということでございまして、その中にはそういう措置も含まれているように伺っております。
  189. 橋本敦

    ○橋本敦君 そんなことはないですよ。それじゃ、具体的に私にそれを資料として出してくれますか、はっきり。ポリグラフを使うことを承諾させている承諾書、出してくれますか。
  190. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) そういう資料は我々は入手しておりません。
  191. 橋本敦

    ○橋本敦君 資料も知らない、資料も出せないのにそんな答弁は承知できませんよ。  きょうはこの問題を聞くわけですが、この問題で基地で働く皆さんの労働組合、この労働組合からは、これは人権侵害であってとてもじゃないが応諾できない、撤回すべきだという強い要求があり、施設庁と話し合いがなされていることは事実ですね。
  192. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) そのとおりでございます。
  193. 橋本敦

    ○橋本敦君 その組合との話し合いの中で、施設庁の山崎労務部長が神奈川県を通じてこういう同意書を労働者にとることは問題があるのじゃないか、どうなのかという照会があった際に、法務当局とも協議した上で問題はありませんという、こういうことを施設庁が米軍にも回答し、神奈川県にも回答したということが交渉の場で明らかにされておりますが、事実ですね。
  194. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) それは正確ではございません。我々は法務省当局とこの問題について……
  195. 橋本敦

    ○橋本敦君 法務当局。
  196. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 法務当局と話し合って決めたということは言っておりません。
  197. 橋本敦

    ○橋本敦君 それじゃ、法務当局とと私が言ったんですが、組合もそう聞いたんですが、これは全然法務省や法務当局と言われるような機関との相談はやっていない、こう聞いていいんですか。簡単でいいです、結論だけ。
  198. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 法務局の人権擁護相談の方には御相談に行ったことはございます。
  199. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはどこにある人権擁護相談ですか。
  200. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 東京法務局でございます。
  201. 橋本敦

    ○橋本敦君 だれに会いましたか。
  202. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) そのとき担当されていた弁護士さんでございます。
  203. 橋本敦

    ○橋本敦君 担当された弁護士というのは法務局の職員でも何でもないですし、東京法務局の中にある法律扶助協会がやっている無料法律相談、そこにたまたま担当で来ていた弁護士、こういうことです、正確に言うと。おわかりですね、間違いないですね。
  204. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 多分そのとおりだと思います。
  205. 橋本敦

    ○橋本敦君 全く話にならぬじゃないですか。施設庁が無料法律相談所に相談に行く、これはどういうことですか。そういうことで法務当局の見解、相談も得た、やった、こういうことで組合に話しをするというのはもってのほかですよ。  人権擁護局に伺いますが、正式にこの問題で施設庁から法律上、人権上の問題について見解を聞かれたことはないわけですね。
  206. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) はい、そのとおりでございます。
  207. 橋本敦

    ○橋本敦君 まさにそんなことで組合に対して、あたかも法務当局も了解したかのごとく言って話をするのは許されません。  そこで、さらに進んで聞きますけれども、労働省来ていただいておりますね。——個別的な労働契約、それから使用者と労働組合との労働協約といういわゆる集団的なそういう意思形成、これにつきまして労組法の十六条は労働協約に規範的効力を付与しているわけですが、この趣旨はどういうところにあるんでしょうか、ちょっと御説明いただけますか。
  208. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 御指摘のように、労働組合法は十六条で労働協約と個々の労働契約の効力との関係について規定をしておりまして、労働協約 が労働契約の効力に優先するということを定めております。  これは、労働者は団結を背景としまして労働条件の維持、改善ということで使用者と交渉するわけですが、その結果、労働協約を締結しますと個々の労働契約に優先するという、これはいわば労働協約にとって本質的な効力でございまして、この規定はいわば当然のことを定めた規定ではないかというふうに考えております。
  209. 橋本敦

    ○橋本敦君 労働法という近代的な法体系の中で、使用者と個々の労働者が結んだ個別的労働契約よりも、今あなたがおっしゃった労働協約を規範的な効力では優位に認めるというようになったのは、これは個別的な労働契約は労使対等といっても実質的には労働者の従属性が強い、だから本当に労使対等ということにするためには労働者の団結とそれによる交渉力、これが必要だという近代的な考え方が当然基礎にあるわけですね。
  210. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 憲法二十八条が労働基本権を保障しているわけですが、その趣旨は、勤労者について実質的に使用者と対等の立場に立つ、そういったことを保障するために設けられているのだというふうに解しております。
  211. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、おっしゃるとおり二十八条の趣旨を受けて当然十六条の規定が生まれてくる、それを受けている、こう言っていいわけですね。
  212. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 憲法二十八条が労働基本権につきまして、団結権や団体交渉権、争議権を保障しておりますが、やはり基本的なものは団体交渉及び労働協約の締結権ではないかと思っておりまして、この労組法の規定もそういった憲法の規定を受けて定められているというふうに理解をしております。
  213. 橋本敦

    ○橋本敦君 施設庁、私がなぜわざわざ労働省にお越しいただいたかという趣旨説明しますと、基地で働く個々の労働者は、使用者である米軍及び政府からこの同意書に同意しなさい、こう言われますと、それを拒否することはこの同意書に書いてあるように「他の職位への転任」、そういった不利益を受けることを覚悟しなければ拒否できないんです。また、あなたがおっしゃったように、これを同意しておいて将来ポリグラフを持ってこられてどうかと言われたときに、そのときに拒否することはこの同意書違反になり、同時に今この同意書で言われておるように、担当職務から外されるという不利益をこうむるその危険を覚悟しなければならないわけです。これはまさに個別的な労働契約の関係。  こういった使用者と労働者との、労働者の弱い立場を実質的な労使対等の立場に高める憲法的な理解のもとで、労働組合との話し合いを労働条件の基準の効力として労働協約に規範的効力を持たせるという構造ができている。  だから、私がここで言いたいのは、今全駐労の労働組合は組合としてこれを撤回しなさい、こういうことを要求して協議中ですから、こういう労働組合の協議は尊重するのが当然だということをまず私は考えてもらいたい、このことを言いたいために労働省に御説明を願ったんです。労働組合との協議は当然尊重するということはおやりになりますか。
  214. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 御理解いただきたいのは、我々としましては米軍の軍隊の特質というものもやはり考えなきゃいけない。したがって、米軍の基地に働いて、しかも特に秘密を要する仕事につくという場合の要件といいますか、そういうことの一つとしてそういう措置がとられた場合に、それが現実に、その同意書をとること自体が従業員の人権を侵害するというようなことが明らかであれば、もちろんそういうことはいけないわけですけれども、今回の場合はそういう人権についても十分配慮されているんじゃないか、そういうふうに考えております。その米軍の秘密保全という要請とそれから労務者といいますか、労働者の人権への配慮、そういうところの調和というところから考えますと、今回の措置は合理的な範囲に入っているんじゃないか、そういうふうに考えているわけでございます。
  215. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは、とてもじゃないが納得できません。納得できない上に私の質問にまともに答えてないんです。労働省の方、もうそれで御退席いただいて結構です。  いいですか、人権を十分これが保障しているなどとどこで言えますか。断ったら首にならないまでも転勤ですよ。断ったら秘密業務従事限定許可証をもらえないとはっきり書いてあるんです。そういう不利益を受けて、そして今後米軍からにらまれるという、いわゆる不安感がつきまとうんです。  そして同時に、こういうポリグラフをかけるという問題は、あなたは人権との調和と言いますが、何の調和もない、一方的じゃないですか。刑事事件を起こして逮捕をされた被疑者となった者でさえ、捜査のためにうそ発見器にかけるという問題は、人権上重大な問題としてさんざん刑事法廷でも争われてきた大事な問題なんです。まして、この人たちは何の犯罪の嫌疑もない、被疑者でもなければ堂々とした立派な労働者でしょう。刑事犯罪の嫌疑もない者にあらかじめうそ発見器をかけるぞというようなことを同意させるという、そのこと自体が基本的人権に何らかかわりない調和のあることなどとはどうして言えますか。米軍が秘密保持のためと言うなら、日本国憲法が適用される日本領土の中で、米軍は憲法に違反することでも通達一本でオールマイティーでやっていいんですか。絶対にそんなことは日本の法構造はなってないはずです。  そしてしかも、今私が指摘したように、ここには何のためにこれをやるかといいますとはっきり防諜のためにと書いてある。防諜のために、具体的にスパイ行為をやる可能性も危険性も、やってもいないすべての労働者にスパイ行為をやる可能性があると見て、全部防諜のためにということでうそ発見器にかける、これはもう人権侵害じゃありませんか。明白にこれは許されませんよ。  施設庁に聞きますが、基地で働く労働者については米軍の機密保持のために特別に厳しい規定があるでしょうが、刑事特別法。この刑事特別法で、これが施行されたのは昭和二十七年ですから、米軍の秘密を漏らしたり、探索したり、こういうことをやった者は十年以下の懲役という重罰に処せられる。この刑事特別法で三十五年この方裁判に付せられた事件はどれだけありますか。御存じでしょう、言ってください。
  216. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 私どもは、従業員の労務管理ということを担当しておりまして、刑事特別法一般のことは承知しておりません。
  217. 橋本敦

    ○橋本敦君 電話をかけてちゃんとそれを調べておけよと言ったじゃないですか。法務省の刑事局長に聞いたら裁判になったのは、昭和三十二年一件、昭和四十八年一件、三十五年間にたった二件だけなんです。刑事局長、わざわざたったこの二件を答弁するのにここへ来るのを勘弁してくれとおっしゃるから、委員長、私は了解したんです。だから、施設庁に調べておきなさいといって電話したんです、知っていますか。
  218. 高倉博郎

    説明員(高倉博郎君) 先ほどその御質問が追加されたということを承知いたしまして、法務省の刑事局の方にも御照会いたしました。その結果、いずれも駐留軍従業員には関係のない事件でございます。
  219. 橋本敦

    ○橋本敦君 たった二件で駐留軍従業員は関係がない。だから、基地で働く日本の労働者の皆さんは誠実に労働契約上の義務を遵守しておるんですよ。たまたまアメリカで秘密漏えい事件があったからといって、日本人労働者、従業員を全部スパイ行為を行う危険性ありと見て、海軍の通達一本でこんなポリグラフ、うそ発見器を将来かけることをあらかじめ承諾せよという、これは行き過ぎじゃありませんか。現実に何かかあって米軍機密の特別の保護の必要上、具体的な現実理由がある場合に本人の同意を得てやるということならまだしもです、何のスパイ行為の可能性、また事実も、事実のおそれもないときに全部あらかじめうそ発見器にかけることを承諾せよということなど は、これはどう考えても現実的危険性も、合理性もまさにリーズナブルなものではありませんから、憲法に照らして絶対に認められるものじゃありません。  人権擁護局長に伺いたいのでありますが、こういうような包括的かつ無差別、事前の現実的危険性もないときに、うそ発見器にかけることをあらかじめ承諾せよというような承諾は、今私がお話ししたような状況でこれに承諾しなかったら不利益配転も覚悟せよという、こういう内容つきで要求するということ自体は人権問題として重大な問題があるのではありませんか。いかがですか。
  220. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 今回のこの承諾に際しまして、これを拒否した場合にいわゆる不利益配転を受けるかどうかということにつきましては、私ども事実を承知しておりませんので申しわけありませんけれども、一般論として申し上げれば……
  221. 橋本敦

    ○橋本敦君 同意書に書いてある点。
  222. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) いわゆる秘密事項の許可は得られないと、その仕事にはつけられないというようなことは書いてあるようでございますけれども、ほかの仕事につけられることが対抗上不利益になるかどうかということにつきましては、私ども承知しておりませんが、一般論で申し上げますならば、先ほど来委員も何度もおっしゃっておりますように、自由なる意思に基づく承諾であるならば、これは人権上何ら問題ではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  223. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が長々とお話ししたのはまず第一に、自由なる意思ということがあり得ない状況ですよと、基地の労働者一人一人について言えば、労働組合が同意したならば別です。  それからさらにもう一つは、本人が自由な意思で承諾したらというけれども、現実の労働関係の中で、その本当の自由はないという状況に労働者は置かれているという、その状況をあなたはもっとしっかりつかむべきです。  それからもう一つは、本人が同意したからいいという性質のものとこれは違います。何の現実的必要性、危険性、重要性もないですよ。  それからもう一つは、今あなたがおっしゃったけれども、他の職務への転勤という不利益はあるかないかわからぬとおっしゃったが、この同意書自体に、私がさっき読んだように、これを不承諾するならば秘密事項取扱限定許可を取得できなくなることがあり、秘密事項取扱限定許可を必要としない他の職務へ、草引きかもわかりませんわ、荷物運搬だけかもわかりませんわ、そういうところへ転任もあり得ることを了承していますと、これに判を押せというんです。  まさにこれは強制じゃありませんか、不利益威迫を伴う強制じゃありませんか。こんなものが今の我が憲法のもとで、正常に働き、現実のスパイ行為の危険性が何一つないような状況でうそ発見器をあらかじめ承諾せよというような同意書をアメリカがとりに来るのを、日本の憲法と人権の名において問題があるとやはりはっきりするのが人権擁護局長の務めじゃありませんか。もう一遍、この問題について本当に問題があるのかないのか、真剣に考えて答えてください。
  224. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 個々の従業員のなされた承諾につきまして、それがどういう状況のもとでなされ、あるいはどういう考えのもとでなされたかということは、その事案事案で事実を調べないと私ども判断できないわけでございまして、委員が先ほど来おっしゃいますけれども、例えば自分はそういうことを承諾することについて何の抵抗も感じないという人があるいはあるかもしれません。将来にわたっても、そんな秘密漏えいなんておよそあり得ないからいいですよという人もあるかもしれないわけです。  ですから、私はもう強制されてしましたと、これは人権上問題ですということで、私ども人権機関へ訴え出てこられた人がありますれば、それはその人に関しての個別の事情を調査することになると思いますけれども、一般論としまして、この制度自体に対する論評を現段階で私どもがすることは差し控えさせていただきたいと、こう思うわけでございます。
  225. 橋本敦

    ○橋本敦君 もっとしっかりしてもらいたいですな。本当に局長、そう思いますよ。  それじゃ結構ですとみずから進んで同意した人が仮にあったら、それは問題ないとあなたは言いましたが、私はそういう人を問題にしておりますよ。拒否したいと、何かがあったらうそ発見器にかけるよと、あらかじめ承諾せい。まるでスパイ扱いをされてそれを承諾させられるというのは屈辱だ、私は嫌だ、断わりたい。当然憲法はこんなことを認めぬはずだ、こう考える労働者がたくさんいるから労働組合が今頑張っているんです。その労働者が、やむを得ず今度のこの許可証をもらわにゃ職務に従事できぬということになるために、これに判を押さなかったら許可証ももらえぬ。また、他の職務へ転任させることもあり得るよと書いてあるから、これがつらいからやむを得ず私は泣く泣く承諾したんだという、こういう状況ならば、これは自由な意思とは言えないんじゃありませんか。どうですか。
  226. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 具体的なそういう訴えがございまして、そして私どもの方で調査した結果、おっしゃるような自由意思を抑圧した形と判断せざるを得ない、こういうことになりましたら、それは人権上の問題になってくる場合もあろうかと思います。
  227. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、今私が言った状態では訴えがあれば当然調査し、人権上の問題になることもあり得るということはお認めになったわけですが、実際は制度的に通達によって、使用者たるそういう立場の者が、使用者たる権限で労働者を支配しているときに、こういうことを一般的にとる、そのこと自体がもう既に社会的強制力があるということなんです。こんなことがわからないでどうして近代的な労使関係の真相やあるいは人権擁護が貫けますか。私はきょうの答弁は全部不満ですけれども、人権擁護局が一層憲法を守る立場を貫いてもらうことを期待するし、また本当に自由な意思が問題だとなれば人権上の問題は起こり得るということは、これはお認めになったわけですね。最後にこれだけ確認しておきます。
  228. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 契約に当たって自由な意思が何らかの要因により抑圧された状態で、いわば契約を強制されたということになれば、これは人権上問題になり得ると考えます。これは一般論でございますけれども。
  229. 橋本敦

    ○橋本敦君 今の点からいっても、この同意書はあなたのおっしゃる自由な意思が強制されたものと見て差し支えない大事なことです。施設庁は、きょう私が議論したこの問題を労働組合との関係でも誠実に協議を尽くして本当に日本の政府らしく対処してもらいたい。そのことを厳しく要求してこの質問は終わります。  施設庁、人権擁護局長、ありがとうございました。  それでは、本案に入ります。  法務省に伺うわけですが、この登記問題に関連をしまして、事の起こり、そもそもというのは何といっても近年の登記事務の激増、そしてそれに伴って国民サービスへの低下、また労働者の労働条件の過酷化、こういったものをどう合理的に乗り越えていくかということでの近代的なコンピューター化ということが出てきたわけですね。そこのところは私も理解しておるんです。  そこで、お聞きをしますけれども、具体的に近年の登記関係が事件としてどれぐらい伸びて、その伸び率と比べて人件費の伸び率がどれくらいかということはこの資料の末尾にもあるわけですが、確認しておきたいので藤井局長いかがですか。
  230. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記事件数の伸びと登記従事人員のふえ方につきましては、この資料のおしまいの方ですが、参考資料の6といたしましてこれに表示をいたしております。六十一年度までは実数が出ておりまして、六十二年度はいまだ会計年度といたしましては数字が確定いたしておりませんが、ほぼこれに近い数字でございます。 ここにごらんになればおわかりのように、登記事件数は一貫して増加を続けておりまして、遺憾ながら従事職員の増加はこれに見合うには到底至っておりません。
  231. 橋本敦

    ○橋本敦君 これは法務大臣も歴代努力をされ、法務委員会でも超党派で各党合意で法務局の人員増については請願も採択をしてまいりました。  ここ四、五年で結構ですが、毎年実増どれぐらいふえたかおっしゃっていただけますか。
  232. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記従事職員の増員は、一方において増員措置と他方において計画削減とございまして、その差の数字という形であらわれてまいります。六十二年度は純増が三十八でございます。六十一年度は三十四、六十年度は二十四でございます。
  233. 橋本敦

    ○橋本敦君 以上で結構です。  全国的な増員要求から見ますと、これはもうとてもじゃないが足りない数で、例えば一番多い六十二年度の三十八を全国の繁忙法務局に割り振ったところで、とてもじゃないが行き渡らないわけですね。  一方お尋ねしたいのは、三段階、三階層システム登記コンピューター化をやるといたしまして中央の情報センターに何人、それから各県全国約五十カ所につくるバックアップセンター、それぞれに何人、この要員計画はどれぐらいを見込んでいらっしゃいますか。
  234. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 現在における大体の見通しでございますが、各法務局、地方法務局単位に設置いたしますバックアップセンターでは、一カ所当たり三人程度の職員が必要であろうと考えております。それから中央に設けます登記情報センターにおいては、将来全部のバックアップセンターが稼動するようになった最盛期においては三十五名ぐらい必要なのではないかと見込んでおります。
  235. 橋本敦

    ○橋本敦君 今おっしゃったバックアップセンター三名というのは、これはもう最低ぎりぎりのところをはじいておられるように思いますが、三名では実際足りない、五名、六名が必要な状況もあり得るというように私は思いますが、いかがですか。
  236. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 仰せのとおり、最低この程度は必要であろうという数字でございまして、一つのバックアップセンターで移行作業を行う登記所が二つになり、三つになりというふうにふえてまいりますと、やはりどうしてもさらに一、二名の増は必要であろうというふうに考えます。
  237. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、中央情報センターが最終的、一番業務がずうっと集まって大きくなったときが三十五。バックアップセンターもそういうわけで十五年先か十三年先かわかりませんが、システムがずっと広がっていったときに五名ないし六名としますと、全国五十カ所としてバックアップセンター関係で二百五十、中央で三十五、約三百という、これだけの要員というのが最低限必要になってくるという計算も出てくるんです。  そうしますと、今までの実増が毎年二十四名、三十四名、こういうわけですから、これでたとえ十五年にしろこれだけでバックアップセンターとそれから中央情報センターだけで三百名近い要員確保というのは、これはもうとてもじゃないが大変なことである。しかも、これが今の大蔵との関係、人員増が毎年こういう状況ですからそう簡単にいかないとなりますと、全体計画に支障も出る以上に職員の労働条件がとんでもない過重なことになるという、そういう状況を私は心配しておりますから、そういう問題については労働組合とこれは誠実に話し合いをして、誠意を持ってこの人員問題は労使で協議を尽くすことが必要だと思いますが、局長いかがですか。
  238. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 中期的に見ますと、いずれそのうちにコンピューター化による省力効果が出てまいりますので、必要人員を埋めることが可能になってくる時期があろうと思います。それに至るまでの過程が、おっしゃるとおり確かに人員の必要性の方がより省力効果よりも高い状態が一時的にございまして、非常に苦しい時期があることは否定できません。そこに至るまでの過程をどのようにして要員を確保していくかということが問題でございまして、これまでもちろん内部努力はしてまいったわけでございますけれども、これ以上に事務の合理化その他あるいは能率器具の導入等によって努力をする。しかし、それでも足りない部分につきましては関係当局の御理解を得るように努めまして、増員努力を今まで以上にいたさなければならないと思いますし、予算などによって賃金職員の増も図って一時的な増でしのいでいくということで、私どもとしては努力をしなければならないと思っております。
  239. 橋本敦

    ○橋本敦君 努力目標はわかりますが、これは人の問題、予算を伴う問題ですから容易なことじゃありません。現に人手不足で法務局は大変だという状況はもう言うまでもない。その人手不足で法務局が大変だという状況、そのことが国の責任であるというこのことは、局長はお認めになるわけですか。
  240. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 法務局は国の事務を所管しているわけでございまして、国の予算で賄われているわけでございますが、これは国家として全体としての財政の中でおのずから我々の占める地位も決まってくるわけでございまして、現在財政的にとり得る可能な限度でいっぱいのところをお願いして行政事務の適正な処理を図っていかなければならないと思っているわけでございます。
  241. 橋本敦

    ○橋本敦君 局長、私が今お聞きしたのは、もっとぴしゃっとお答えになる必要があるのではないかと思って聞いたんです。  言うまでもありませんが、職員の数が少ない。登記所へいろんな人が来る、登記簿閲覧する。だから、それの監督をするということがなかなかできない。そのことを悪用して悪徳者が登記原簿を改ざんするというとんでもない不法行為をやりまして、それで例えば一筆の土地百坪をAという所有者が持っている。これを三百坪に改ざんをして、そして登記謄本をとって三百坪土地があるというようなことで売りつける。こうなりますと、これは大変な被害を受けるのは国民ですわな。そういうような事件があって国に対する損害賠償請求事件が岩手で起こされたというのは局長も御存じですね。  そこで一審では、これはもう人手がないからそこまでの監督は事実上不可抗力だと、だから国に責任はないと法務省は一生懸命言って、一審の裁判所はそうかいなと言って原告の請求を棄却しました。しかし、東京高裁へ来たらひっくり返って、そうはいきませんと、国はもっと予算もつけ人員も配置し、こういう不法行為が起こらないように厳重に監督して、国民に被害が起こらぬようにするのは国の責任だということで、国は裁判に負けたんじゃありませんか。
  242. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) そのとおりでございます。
  243. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間がありませんから判決文は引用しませんが、局長もベテランの裁判官でもいらっしゃるので、だから裁判所の考え方はもうおわかりなので省略したんです。国の責任なんですよ。そして、こういうような状況はコンピューター化ということで今これから急ごうとしているけれども、毎日毎日がそういう国の責任を果たせられぬ繁忙と人手不足の状況ですから、このコンピューター化という、十五年ということはさることながら、今毎日の登記業務、登記所で国民に対するサービスをするためにはこれに五千億、一兆円つぎ込むのかしらぬけれども、さしあたって緊急に必要なのはやっぱり毎日毎日の繁忙登記所を中心とする登記所の人員増を含む整備体制、依然としてこれが大事だと、私はこう思っておりますが、大臣お考えはいかがですか。
  244. 林田悠紀夫

    ○国務大臣(林田悠紀夫君) そういうこともよく考えましてことしは五十五人の増員、昨年より十七人ふやしたわけでございます。私としましては人員が非常に国として困難な中におきまして、特に登記所の増員を図ってまいったわけではございますが、しかし余りにも今権利関係の異動が激し いですからこれで足りません。したがって、これはやはり抜本的に考えていかなければならぬというので今コンピューター化法をお願い申し上げておるわけでございまして、十分よく承知をしておりまするので、さらに努力を続けたいとかように存じております。
  245. 橋本敦

    ○橋本敦君 二、三ちょっと小さな問題を伺っておきます。  今度は全国的にこのコンピューターによる登記情報ネットが完備をすれば、大阪なら大阪から北海道の法務局にある登記情報証明書ももらえるというようになるというのも、この計画の法務局が宣伝なさっているメリット一つですね。この費用はどうなるかということがこの委員会で議論になったときに、その費用は長距離のシステムを使いますから、長距離電話と同じように、自分が住んでいるところの法務局で登記事項証明書をもらう費用では済みませんよ、それプラス、ロングレンジのシステムを使う料金は払ってもらいますよ、こういうことでした。そんな料金は一体どこでどう計算してどういう基準で決めてどうなりますか。
  246. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは私どもまだ厳密にコスト計算をやっておりませんので、何とも具体的な数字を申し上げられないわけですが、国民に与える利便とコストとの兼ね合いの中で決めざるを得ないというふうに考えております。  でございますから、需要の程度がどのくらいになるか、いずれにいたしましても私どもとしては、全国ネットで三階層ネットワークを組む限りにおいては各バックアップセンターとそれから登記情報センターとの間を専用回線で結ばざるを得ないわけでございます。その際に、どの程度の需要が生ずるかということによって専用回線の回数と申しますか容量というものを積算し直して、それに見合うようなものを出さなければいけないわけでございまして、それが本来のもので賄える、つまりどちらにしてもやらなきゃならぬ、そういう設備投資で賄えるというようなことでございましたら余りその費用はかからないわけでございますが、それがかなり利用の程度が大きくなるというとそれを増さなければいけない。  しかしまた一方で、そういう需要によってたくさんの方が利用していただけますと、それに見合って全体としての収入が上がるということはございますので、そういうもろもろの要素を加味して考えてまいりたい。その際には、初めに……
  247. 橋本敦

    ○橋本敦君 短くていい。もうわかった。
  248. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) そういうことです。
  249. 橋本敦

    ○橋本敦君 さっぱりわからぬということだ、さっぱりわからぬ。結局何ぼか取られる。  NTTでも長距離電話は、今度は民間競争で東京、大阪でもどんどん安くなっているしね、政府はそういうわけにいきませんよ、専用回線だから。どれだけの負担が国民にかぶさるかということもこれではっきりしないというのも、これはやっぱり問題ですね。  しかも、需要予測がどれくらいになるかという、需要予測は正確に言って立たないでしょう、合理的に立ちますか。
  250. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは今のところは正確な推計はできません。したがって、実験的にだんだん拡大していってそれを推計してまいりたいというふうに考えております。
  251. 橋本敦

    ○橋本敦君 需要予測も立たない、全体の資金計画も明白でない、だから登記特会で乙号を中心に国民の負担にするというんだが、その負担はどれだけ高くなるかわからない。こういう問題があることを前回、私も指摘した一つの大きな問題なんです。  それでもう一つ、小さなことのように思えますが、大きなことかもしれません。お伺いしたいのは、商業登記簿閲覧制度がなくなって今度は有料になるということです。問題は、審議官局長も午前中おっしゃったと思うんですが、これの閲覧の必要性というのは、実は会社設立登記の際に類似商号、これにひっかかったら登記が却下されますから事前によく調査しなきゃいけませんので、この類似商号調査というのが実は一番需要が多いだろうと思うんです。その場合に、閲覧制度がありますと次々閲覧ができます。「あ」なら「あ」の項でずっと会社名を繰っていけますが、今度は閲覧制度がなくなって一々登記事項証明書をもらうために適当にアストラクトしなきゃならぬ、こうなりますと見当はつきにくいし検索は合理的にできないし費用はかかるわと、こうなると国民の負担は大変ですが、ここらあたりはどうなるんですか。
  252. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 午前中にもお答えしましたように、商号見出し簿というものを備え置くつもりでございます。これには会社商号とそれから目的記載されていて、そして今先生御指摘のような五十音順で並べるというような形でリストアップしたいというふうに考えているわけでございます。
  253. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはすべての商業登記をやっている法務局に一覧表として、あるいは一冊のものとして、どういう形のものでつくる予定をしておりますか。
  254. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは東京法務局のように、たくさんの会社があるところではかなりの量になっているわけでございますが、バインダーにファイルするという形で今やっております。
  255. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは、東京などはたくさんの人が見に来ますからバインダーにとじるのはとてもじゃないが一冊で足りませんね。需要に見合ってどれくらいのものをつくるのか、それを見る費用はどうなのか。どうですか。
  256. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 現行法のもとでも登記簿冊というのは一冊しかないわけでございまして、閲覧だって一冊しかできないわけでございますが、庁によっては利用の頻度を考えまして複数つくっているところもあるようでございます。そして、その点は利用頻度との兼ね合いで私どもも、それとスペースの問題がございますが、それで需要を満たすようなことを考えていきたいと思っております。  それから費用は無料というふうに考えております。
  257. 橋本敦

    ○橋本敦君 話は変わりますが、もう時間がありませんので最後にお伺いしたいのは労働者の労働条件でありまして、これも委員会では議論の対象になりましたが、この労働作業というのは非常に神経疲労それから視覚疲労、肩こりを初めとして労働者に対するいろんな悪影響を及ぼすことは、これはもう産業衛生研究所の研究だけじゃなくて労働省も人事院もこれは言っておるわけです。  この点で全法務の労働組合の方は、六十分のうち四十分作業をすれば二十分休憩をとるということを原則にして、労働者の労働条件の保護をぜひとも厳密に貫いてもらいたいということを要求しておりますし、そうであっても全体の延べ労働時間が長時間になりますと、これもまた弊害を及ぼすわけですから、全体の労働時間の調整とともに、今言った実労働時間の制限を厳しく要求していることは御存じのとおりですが、当局はどう考えておられますか。
  258. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 端末装置の画面を見るVDT作業に伴ういろいろな健康上、その他の問題には十分配慮していかなければならないと思っております。  板橋出張所で行いましたパイロットシステムに関連いたしまして、評価委員会がVDT作業に関する部分に相当の力を割いて報告をいたしておりますが、その中に一連続作業時間の基本を一時間を超えないものとするという、そして一時間を超えない連続作業時間の後にインターバルを置く、こういう考え方を示しているわけでございます。こういった点につきましては今後とも職員団体の方と十分協議をしてまいりたいと思っております。
  259. 橋本敦

    ○橋本敦君 ぜひともその協議は遂げてもらいたいと思います。  局長もお認めのように、これからのプロセスの中では減員効果が機械化によって出てくるまで時間もかかるわけですし、その間どんどん進めてい くとなると労働強化も一層きつくなりますから、そういうことの中で労働者の健康保全のためにはぜひとも今おっしゃった、労働者との誠実な話し合いで問題を解決していただきたい、このことをお願いして、ちょうど時間になりましたので終わります。
  260. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 本日の議題であります不動産登記法及び商業登記法の一部改正の法律案につきましては、既に同僚議員からかなり専門的な質問がございましたので、素人である私が質問することもほとんど重複するんですけれども、若干確認しておきたいこともございますので、重複する点は御了承願いたいと思います。  まず最初に、今度のコンピューター化につきましては、事務の取り扱い件数によってはコンピューターを置かずに端末機だけを置く、それで他のコンピューターとつなぐ、そういう登記所があるわけです。それとその端末機だけのものと、それからコンピューターを置いているのと、そういった分ける基準は申請件数だけで決められるわけですか、その点をまず最初に聞きたいと思います。
  261. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 申請件数は一つの基準でございますが、そのほかに近隣の登記所との間の距離が問題になってまいります。非常に遠距離でございますと、かえって回線の使用料の方が高くなるというふうなマイナスが出てまいります。それから、一つ登記所が端末庁を幾つ抱えられるかというその限度もございまして、余りたくさんの端末庁を抱えることもできないというようなこともございますので、そういったことを総合的に勘案をして決めることになります。
  262. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その場合、申請件数は少なくても登録件数が非常に多いところなんかもあるわけですね。そういう点も考慮されますか。
  263. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) それも一応考慮することになります。
  264. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これも既に同僚議員が質問されたことですけれども、今回の改正によりまして、登記ファイルに入力するのは現在事項だけだということになっていると了承しているんですけれども、ある雑誌の論文を読んでいましたら、同じ方法を用いてコンピューター化したスウェーデンの例では、その後必要に迫られて現在の所有者だけじゃなしに、その前の所有者も入力し始めたということをその雑誌論文に書いてあったんです。日本でもそれと同じような問題が起こりはしないかということを考えるんですけれども、その前の所有者を入力するというお考えはございませんですか。
  265. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは午前中からお答えしているわけでございますが、やはり前の所有者等を入力いたしますと、局長もお答えしましたように、これは入力原稿の作成自体のコストがかさむというようなことがあるわけでございます。  要するに制度として、これはいずれにしてもお金がかかる話でございますので、なるべく低廉にやりたいという、私どもとしては至上命令だというふうに考えておりますので、もちろんそれが非常に利用頻度があるということになりますれば、将来の問題として考え直すということはやぶさかではございませんが、今までの例ではそれほどそのこと自体について、前の所有者自体を入れることについてそれほどメリットがあるというふうに具体的に確証が出ているということではございませんので、さしあたりはその表題部の登記、表題部の部分を除きまして、表題部の部分履歴を入れるということにいたしたいと思っておりますが、所有者欄につきましては原則として現在事項ということで対処してまいりたいというふうに考えております。
  266. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これはコストとベネフィットの関係で、余り利益がないのにコストだけ高くするというのも考え物だと思うのですけれども、外国なんかでそういう例が起こっているということを書いてありますので、注意を喚起する意味で今質問したわけでございます。  それから、まず財源の問題、これも既に同僚議員から質問があったことですが、国それから地方自治体及び特殊法人による登記簿謄本、抄本の交付あるいは閲覧請求、その他は無料になっているわけですね。しかし、特別会計でやること自体が私は一つの問題だと思うんですけれども、もし特別会計でコンピューター化を行おうとするのでありますならば、当然そういうふうな国、地方公共団体云々のやつも有料化すべきではないかと考える、それの方が筋が通っているんじゃないかと考えるんですけれども、いかがでしょうか。
  267. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 国、地方公共団体の請求無料としているのは非常に歴史が古いわけでございまして、そのような扱いをしてきたことにはそれなりの理由があったと考えられます。請求の公益性であるとかあるいは官庁間の相互協力関係とか、予算配分の合理性の問題とかいろいろあったと思います。  しかし、御指摘のように、登記特別会計の制度のもとでは受益者負担の原則に立ちますと、国、公共団体関係のその処理経費が一般利用者の負担に帰することになり不合理である、こういう意見もございまして、民事行政審議会でもそのような指摘がなされており、それはそれなりに説得性のある議論だというふうに考えております。しかし、これは他面では国の財政制度全体にもかかわることでございまして、当省だけで決められることでもございませんし、今後関係省庁と十分な協議が必要ではないかと思っております。
  268. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 十分関係省庁と強力に交渉していただきたいと思うんです。  これと直接関係があるかどうか知りませんけれども、よく国あるいは地方公共団体なんかで民間からいろんな統計資料を要求しますですね。ただですよ、金を払わない。ただだものだから、もうほかの省庁でやったやつを見ればすぐわかるようなダブっているやつまで請求したり、それほどの重要性のない資料までも要求したり、これはやっぱりただだからね。金を取られればやはり多少セーブするのじゃないかと思うんですけれども、何か国とか地方公共団体なんかただでやるという習慣は、私はちょっとよくないことじゃないか。全般的にこれは考える必要があると思うんですが、その一環としてこの問題もぜひ強力に考え、交渉していただきたい。  それから、これを大体十五年計画でやられるということですね。それで、先般参考人から教えてもらったんですけれども、コンピューターというのは大体定期的に更新していく、新しいやつが生まれてきて、それで大体五年ぐらいで更新していくんだということを言われたと思うんです。そうすると、法務省としては今度の計画で減価償却の期間はどの程度を見込んでおられますか。
  269. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) このコンピューターにつきましては、法務省が固定資産として抱え込むということではなくてレンタルをしていこうというふうに考えております。そのレンタル期間を五年ぐらいに設定して逐次更新していくということを考えておりますので、減価償却の問題は起こらないというふうに考えております。
  270. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その点はわかりました。  それから将来のコストについて、登録ファイルに対する入力に伴うところの人件費、これはアップする、だんだんアップしていくだろうけれども、機械の記憶装置部分関係コストダウンしていくというふうなことを言っている人もあるそうですが、コンピューターの更新に伴いまして従来の機械よりも性能がだんだん改良されていけば、コンピューター価格はだんだん上昇していくことが予想される、レンタルにしましてもそれが高くなっていくことが予想される。そうすると、ハード面でのコストダウンというのは余り期待できないのではないかというふうに考えるのですけれども、いかがでしょうか。
  271. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これまでの例で考えてみますと、コンピューターのハードにつきましては性能がよくなって、しかもレンタル料は安くなっているというのがこれまでの経過でございまして、この趨勢は、この前の参考人の御意見でも一定の限界はあるけれども、まだ限界に来ているということではないという御指摘でございまして、 かなり長期にわたってなお続くのではないかというふうに考えております。
  272. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうですか、だんだん長期的な低下傾向、性能が向上していくにもかかわらず低下傾向にあると見ていいわけですか。それじゃその点は結構です。  それから移行期の問題なんですけれども、登録ファイルの入力のミスが生ずる、それでそれが発見されないケース、いろいろ校合なんかやられるでしょうが、発見されないケースも確率は非常に少ないにしましても入力件数が非常に多いために全然あり得ないことではない、あり得ると考えていいんじゃないかと思います。その誤記のためにトラブルであるとか権利者間の損害が起こった場合にどういうふうな救済措置が講ぜられることになりますか。
  273. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは終局的には国家賠償の問題になって、国がその生じた損害を賠償するということになろうかと考えております。
  274. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 登記官の責任としての国家賠償の対象になり得るということですね。  今後の問題にも関連するんですけれども、これも同僚議員から質問がございました十七条地図、これもコンピューター化して登記ファイルと一緒に使えるような形にした方が効率的ではないかと思うんです。地図の問題は現在のところは全然考えておられないわけですか。
  275. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 地図はもとのデータ、地図自体が正確なものでないとコンピューターに入れたから正確になるというものではないわけでございます。そして、コンピューターへの地図の入力方式としてはイメージ処理方式にするか、あるいは座標値でデジタル化して入力するかという問題はあるわけでございますが、基本になるもともとの地図の整備を図るということが私どもとしては最大の課題でございまして、前から局長も申し上げておりますが、両方一緒にやれるものであればやった方がもちろん望ましいわけでございます。  これは前からお話ししておりますように、登記簿コンピューター化だけでも相当の経費と時間がかかるわけでございます。それで二兎を追いますとますますその費用は膨大になり、しかも時間も延びるということになりますので、さしあたりは登記コンピューター化に全力を注ぐ。それとともに、地図についてはもともとの地図の整備を図りたい。十分図ってその方面で力を注いでまいりたいというように考えております。
  276. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 先般の参考人の川井一橋大学学長の意見の中にあったんですけれども、登記法そのものについていろんな根本的に考える問題があるというふうなことを言っておられました。それはつまり登記法上の条文が文語体のままであるとか、そういったふうな技術的な問題以外に、現在のような登記を第三者に対する対抗要件にするのか、公信力を付与するか、これは民法なんかに関係してくることで登記法だけの問題ではないんですが、そういったふうな課題は残されているというふうな御意見だったように思うんです。それからまた、登記はだれでもできるという原則のために司法書士以外の資格のない者が繰り返し繰り返し代理登記を行って、司法書士法には罰則があるんですけれども、実際はその罰則を適用されている例が非常に少なくて、司法書士法に抵触している例がかなり多いというふうなことも聞きました。  それから、債権者であるサラ金などの金融業者が任意代理で介入して所有者の利益を損なう、そういったふうなトラブルも起こっているということなんですけれども、代理権が今のままでいいのかどうか、そういうふうな問題もあると思うんです。そういう問題について改正の検討をされるおつもりがありますかどうか、もし大臣、お考えがあればお伺いしたいと思います。
  277. 林田悠紀夫

    ○国務大臣(林田悠紀夫君) 今回の登記法の改正案が、登記コンピューター化を主たる内容としておりまするのは、かねてから国民の批判を受けておりました登記事務処理の遅滞を抜本的に解決する方策としてのコンピューターの導入が緊急の課題である、こういう認識によるものでございます。  御指摘のような根本的な問題でございまするが、これは民法上の基本問題でありまして、今これの見直しを求める強い意見はなおないように承知をしておるところでございます。しかし、今後社会の動向やあるいは学説の推移などを見きわめまして、必要がありましたならば法制審議会の意見を聞くなどいたしまして慎重に対処をしてまいりたいと存じております。
  278. 西川潔

    ○西川潔君 最後になりました。どうぞよろしくお願いいたします。  本当に、長時間にわたって審議官局長さんも御苦労さんでございます。最後になりますと本当に質問が重複いたします。お疲れのところ申しわけございませんが、よろしくお願いいたします。  法案に入ります前に、最初に通産省の方にお伺いいたします。  まず、悪徳商法のことでお伺いしたいんですけれども、いわゆる消費者トラブルに敏速に対応しようと通産省と消費者関連十一団体を結ぶ消費者のトラブル早期警戒システムがこのほど稼働いたしました。そのシステム内容についてお教えいただきたいことと、またどのような効果が得られるか、一般庶民から直接問い合わせるにはどういうふうにすればいいのか、その点お伺いしたいと思います。
  279. 北畠多門

    説明員(北畠多門君) 通産省の方から先生の御質問に対して御説明をいたしたい、こういうふうに思いますが、先生御指摘の消費者トラブル早期警戒システムにつきましては、これは私ども通産省ばかりではございませんで、ほかに消費者トラブルを扱っている十一の団体がございます。例えばクレジットの関係であれば全国信販協会とか、あるいは消費者に関する問い合わせであれば日本消費者協会等々十一の団体がございまして、これらの団体の間をコンピューターで、ホットラインで結びまして情報交換ができるようにしよう、こういうシステムでございます。  それで、今回のこのシステムにつきましては、各団体がおのおの持ち合わせております情報について相互にホストコンピューターの中に入れるわけでございますので、十分迅速な情報交換が可能になる、こういうことでございます。  特に今回このシステムをつくりますに当たりましては、一昨年の九月でございますが、十一の団体及び私ども通産省を入れまして消費者トラブル連絡協議会という月一回のペースの会合を開いておりまして、そこでいろいろ皆さんの間で検討をいたしました結果、迅速に情報を収集しいわゆる悪徳商法でございますが、これらについて把握をしていくための体制をつくるにはどうしたらいいだろうか、そういうことをいろいろ議論もしていただいたわけです。その結果、やはりコンピューターでおのおのの持っている団体の情報交換し得るようにしたらどうだろうか、こういうことで約一年以上の期間をかけて検討もし、関係コンピューター会社の方とも御相談もし、NTTとも御相談をしたわけですが、今回そういうような経緯に至ったようなわけでございます。  それで、これにつきまして特に消費者の方から問い合わせがあった場合ということでございますが、個別の企業についてこの企業がいい企業であるか悪い企業であるかということについてお答えをするというのは、これはなかなか難しいわけでございますけれども、しかしその中でも特に一般的な意味で気をつけなければいけない商法とかあるいはかたり方といいますか手口がございますので、そういうようなものについては問い合わせがあったりした場合においてそれに対して対応をする、こういうことでやってきております。  私ども通産省の方には、霞が関の本省を初めといたしまして各通産局に消費者相談室がございます。それとか各部道府県の方にも消費者センターがございますので、そちらの方で問い合わせがあれば、今どんなようなことが問題になっているかあるいは気をつけなければいけない点ということについてはいろいろな示唆がもらえるのではない か、こういうふうに考えております。  それから先生御指摘の、悪徳商法の中で訪問販売の関係なんかが特に注意をしなければいけないだろう、こういうふうに思っておりますが、今回国会の方でもいろいろ御議論いただきまして訪問販売法等の一部改正案を法律としてお通しをいただいたわけでございます。その中でも訪問販売協会につきまして法律的な位置づけも与える、そのかわり消費苦情でございますが、苦情を迅速に処理する、こういうような体制を整えていくということにいたしておりまして、現在鋭意その準備を行っている、こんな状況でございます。
  280. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。  次に、こういう問題になりますとお年寄りの方々が本当によくだまされております。どうしても核家族化されまして一人で寂しい生活、そこへセールスマンがやってくる。まあやさしい言葉で言葉巧みに表面だけ繕うわけなんですけれども、ついつい話し相手の少ない生活のために口車に乗せられてとらの子をだまし取られるということが本当に多いわけです。こういうシステムでセールスマンがまずきょう来るとします。最初に訪れた時点でどうも怪しいなというときに、おばあちゃん、また、おじいちゃん日を改めてあしたでもあさってでも来るからね、どうも怪しげな人だけれどもどうしたらいいだろうかというようなときに、すぐにお年寄りの方々でも短時間でもって照会するようなことはできないものなんでしょうか。
  281. 北畠多門

    説明員(北畠多門君) お年寄りの問題につきましては、具体的にセールスマンが家庭を訪問した場合において、そのセールスマンが信頼の置けるセールスマンかどうか、あるいはそのセールスマンが属している会社が信頼の置ける会社であるかどうかということについて公的機関が、この会社はいいですこの会社は悪いですということを言うに当たっては、やはりちょっと問題があるかと思うわけでございます。  先ほど御説明をいたしましたように、具体的にどういう商法が今問題になっているのか、訪問販売の中でも特に傾向としては手口が複雑になっているものはどんなものがあるだろうかとか、そういうようなことについて注意をするためにはどうしたらいいかということについての問い合わせですが、これに対しては各私どもの相談室であればそれに対して対応をしていくことができると、こういうふうに考えております。  それと同時に、老人ホームとかあるいは関係の施設等に対してやはり啓発活動といいますか、それをしていく必要がございまして、私どもの方といたしましても厚生省の方ともよく連絡をとりまして、どんなふうにしたらそれができるかということも御相談もいたしておりますし、それから豊田商事の問題があった際におきましては老人ホームを中心といたしまして、厚生省ともお互いに協力をいたしまして、必要なチラシを配るとか啓発に努める、こんなようなこともしたわけでございます。
  282. 西川潔

    ○西川潔君 どうもありがとうございました。どうぞお帰りいただいて結構でございます。ありがとうございました。  それでは、次に法案に移らしていただきます。お疲れのところ本当に申しわけございません。  同じ質問になるかと思いますが、まず三公社、素朴な疑問でございまして、公社のことをお伺いしたいんですけれども、三公社の民営化によりましてこの登記事件は増加しているものと思うんですが、その現状はただいまはどうなっておりますでしょうか。また、登記事件が増加することによりまして職員の方々は大変なお仕事でございまして、仕事量はもちろんのことですが、負担は大変だと思います。  例えば国鉄清算事業団からの嘱託登記、国鉄の計画によりますと約千百万筆個について昭和六十二年度から七年間の予定で行われるということであります。これは聞いただけでも僕なんか本当に気の遠くなるような気持ちがするんですけれども、今後民活の推進によりまして公団の特殊法人などで民営化がされるものと思います。たくさん出てくると思いますが、例えば関西新空港、東京湾の横断道路などの民間も含めた形での公共事業の登記がふえるものと思われますので、今後こういうものをどのように対処をしていかれるか、お伺いしたいと思います。
  283. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記事件の増加につきましては、お手元の法律案関係資料の中に数字が挙げてございますが、特に登記所の事務上非常に負担の重い登記申請事件、いわゆる甲号事件を見ましても、昭和五十一年度と比べまして三〇%もふえているという状況でございます。この中に三公社関係のものがどれだけあるかというのは必ずしも正確につかむことができません。三公社と申しましても、一番問題になりますのは国鉄でございまして、ここには未登記のものなどいろいろありましたものが今回登記事件としてあらわれてくるような状況になっております。  そこで、これが一度にどっと出てきて登記所の事務を混乱させ、職員の過重負担になることのないように国鉄清算事業団の当局とも十分な協議をいたしまして、円滑な事務処理ができるように努めてはおるところであります。そういった事務量の増がございますので、職員の過重負担になるという御指摘はまことにごもっともでございますが、私どもいろいろな健康診断の実施とか、医薬品の配付とかそういった措置まで講じましていろいろと配慮はしているつもりでございます。  今後民活の推進、大型公共事業の増加等、確かに予想されるわけでございます。私どもの方ではかねてより、予算上は公共事業関係特殊登記事務処理経費といったようなものも手当てをしていただいて対策を講じているわけでございますけれども、要するにこういう事件増がある、これからもさらに予想される、それだからこそ将来のために今こそ登記事務のコンピューター化を図って、その事務処理体制の抜本的な改善を図らなきゃならない。将来の対策は何だとおっしゃられますと、まさにこれが対策だというふうに申し上げたいと思います。
  284. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。もう一度自分の質問で確かめたいと思いまして……。  今度は商業登記についてお伺いしたいと思います。  現在は会社名についてアルファベットを使用して登記することは認められておりません。しかし、現在の生活では朝起きて眠るまでアルファベットを全く目にしない一日というのは考えられないんですけれども、これだけアルファベットが普及しておるわけです。例えば商号でも認められておりますので、現実にも非常に多く使われている以上登記についても認めてはいかがでしょうか、こういうふうに思うんです。また、その方が何かコンピューターになじむんじゃないかなというふうに素人考えですが、いかがでございましょう。
  285. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 御指摘のとおり、現在では商号登記に関しましてはアルファベットの使用を認めておりません。アルファベットを事実上使用している会社もございますけれども、そういう会社登記をするときには仮名書きにして登記をしているというのが実情でございます。  ただ、これは基本的にはやはり登記法が、登記という制度が日本の登記制度、公示制度であるということから日本文字を用いて名称を明らかにするという建前と申しますか、そういうものによっているわけであります。そうは申しましてももともと漢字という、これはもちろん日本文字というふうに観念されておりますけれども、これも遠く沿革をさかのぼれば中国から来たので外国文字ではないかという話もあるわけでございます。  そして、先生も御指摘のように、アルファベットというローマ文字、ローマ字でございますけれども、これは小学校の初等科教育でも取り入れられておりまして、かなり人口に膾炙しているというふうには考えられますが、その建前を一たん崩しますとどこに歯どめを求めるかというところが問題になるわけでございます。  隣の韓国のハングルはどうだとか、それからァ ルファ、ベータ、ガンマといったギリシャ文字はどうだとか、ロシア文字はどうだとか、そういうようないろんな問題が出てこないとも限らない。そして、それが外国語の言葉そのまま、例えばABCだとかCECだとか、そういうふうに本当にローマ字で商号として使っているんだということが明らかなものでありますとまだいいんですが、外国の言葉そのものを商号にするということも考えられるわけでございまして、そういうものをどの程度商号として評価していくかということは、これはかなり難しい問題というか今後さらに検討してまいらなければならないのではないか、そういう御指摘は私どもあるということは前から承知しております。  また、さらについでに申し上げれば、アラビア数字なども商号には使えないということになっております。これは記号であって文字ではないという理屈なんでありますけれども、それが果たしていいのかどうかというような点は社会的なニーズ、それから関係の国民の皆さん方の受けとめ方というようなものを総合的に判断して将来の問題としては検討してまいりたいというふうに思っております。  ただ、この問題は現在でもコンピューターを使っていない登記簿でもある問題でございまして、コンピューターを使ったからローマ字がやりやすくなるという問題では必ずしもないわけでございます。現在でも商業登記に関しましては横書きになっておりますので、そういう意味ではそれを書くこと自体はそれほどコンピューターでなくたって問題はないわけでございますが、今申し上げたような事情があって長期的になお検討してまいりたいというふうに考えております。
  286. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。  聞く方は本当に好き勝手なことを聞いて、質問をして、本当に往復だったらどんなことになるのかなといつも思うんです。じゃ、おまえら考えてみろ、どうしたらいいんだと言われると僕らは何も答えることはできないんですけれども、本当に一方通行で申しわけないんですが、またひとつ検討していただきたいと思います。  次に、またまた同じ質問になろうかと思いますが、商法の十九条、二十条で述べられているように同一市町村におきましては、同じ営業をする人は同一または類似の商号を使用することは許されていないので、商号登記または変更するときはあらかじめ類似商号の有無を調査しておかなければなりません。今回のコンピューター化でその調査方法はどのようなものになるか、ちょっとお願いいたします。
  287. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは現在でございますと、登記簿閲覧するというような形でやられているわけでございます。ただ、今回の改正によりまして、近い将来登記簿閲覧というものを有料化するという方向になっております。そうなりますと、類似商号の調査という、登記をするのに必要な作業のためにお金が要るということになってはこれはまた国民の皆さん方に迷惑をおかけするということになりますので、私どもとしては今までの調査方法の延長と申しますか、それに閲覧無料制にかわるものとして商号見出し簿というものをつくって、それを無料閲覧に供したいというふうに考えているわけでございます。  そして、この商号見出し簿と申しますのは、普通は会社が非常に多いわけでございますが、会社の場合には類似商号というのは目的会社がやっている仕事でございますが、会社のやっている仕事と、それから商号との相関関係で決まりますので、その両方を記載したものを一枚の紙にまとめまして、会社ごとに一枚ずつ紙をつくりましてそれをとじた、ファイルしたものをつくって、要請のある皆さん方に無料で見ていただくというようなことにしたいというふうに考えているわけでございます。
  288. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。  最後に、現行登記では支店の所在地の登記は大変難しいと伺っております。今回の法の改正によりまして、支店所在地での登記の手続はどうなるのか、ひとつ素人にわかりやすく最後によろしくお願いいたします。
  289. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 現行法のもとでも支店の所在地の登記はそれほど難しいわけではございませんで、本店でまず登記をいたしまして、その本店でした登記をどういう登記をしたかということを証明する書面、具体的には謄本あるいは抄本ということになるわけでございますが、それを添付いたしまして各支店の所在地の登記所に申請をする。それは普通の登記でございますと本人または代理人が出頭しなければならないということになっておるわけですが、郵送でも構わない、本人出頭主義が外れる、こういうことになっているわけでございます。  そういうことでございますけれども、二つ問題がございまして、本人が行かないまでも郵送しなきゃいけないということと、それから本店でした登記を証する書面をつけなければならない、こういう面倒さがあるわけでございます。  それを今度の制度では、本店で登記をするときに同時に支店でも同じ登記をしてくださいという申請をしますと、ほかの添付書面は全部なしで、本店でその登記をしますと支店の所在地の登記所へその登記がされた事項が伝送されまして、そしてそこで支店の所在地の登記官がそれを見まして、それで間違いないということであればこれでさらに登記をする、こういうような仕組みになるわけでございまして、申請書をわざわざ別に郵送するという手間が省けるというのと、それから本店でした登記の中身の証する書面というものをわざわざ別にもらってそれをつけなければならないという手間が省ける、こういうような仕組みにしたいというふうに考えているわけでございます。
  290. 西川潔

    ○西川潔君 どうもありがとうございました。  本当に今節、登記のことでは大変長時間にわたって勉強させていただきましてありがとうございました。  これで終わります。
  291. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 他に御発言もなければ、本法律案についての質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  292. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより本案に対する討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  293. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、本法案に対して反対の意見を申し述べます。  我が党としても、登記コンピューター化という発達した科学技術の進歩の利用そのものには反対ではないのでありますが、現状においてこの法案で進めていくということには多くの問題点があって賛成できないわけであります。  まず第一の問題は、この質問でも明らかになりましたが、全体計画そのものがまだ具体的に明確化されておりません。およそ十五年程度という展望ではありますが、年次計画が具体的に立っているわけでもなく資金計画そのものも五千億円あるいはそれ以上という程度、一説には一兆円と言われる話もある、こういった状況であります。  さらに人員の確保の保証の点から見ましても、三階層システムをつくるためには中央情報センターに加えまして全国でバックアップセンター約五十カ所、この要員を合わせて約三百人近く必要だということも明らかになりましたけれども、現在の厳しい予算の体制、人員削減、総枠の中で日常増員に苦労している現状から見ましても、三百名の新しい配置確保などというのはとてもではありませんけれども、これの実現というのはなかなか容易でない現状が現にあるわけであります。いわばそういったわけで見切り発車という状況になっておりますので、この点はそれでよいかどうか重要な問題があるわけであります。  第二番目には、国民サービスの向上、そうなるかどうかという問題であります。なるほど登記事務極めて繁忙な法務局におきましては、事務の合理化あるいは国民へのサービスという面が登記コンピューター化によって図られる側面もあるでし ょう。しかしながら、一面考えますと登記閲覧制度がなくなるという問題、それから移記される範囲が限定されますから、不動産登記の経歴を全部知りたいと思う場合には閉鎖登記簿を一々閲覧しなきゃならないという問題、そういった問題も出てくるわけであります。  こういったサービスの面で多くの問題がまだまだあるわけですが、一面国民負担の点、これを考えてみますと、いわゆる乙号手数料を中心とする登記特会制度の中でこれだけの費用を賄っていくためには当局も認められたように、この十五年の間に二回の手数料の引き上げは最低限必至あるいは資金計画のそれ以上の拡大があれば、通常の二回の物価上昇等に見合う引き上げ以上にさらに引き上げも必要になるかもしれないということを答弁されているような状況でありまして、こういった国民負担の増大という面から見ても拙速を急ぐ必要があるかどうか、これは疑問のあるところであります。  そしてまた、現実に増員要求は毎日の重要な緊急課題となっておりまして、当委員会でも各党挙げて請願が採択をされ、歴代大臣も人員要求については極力努力すると答弁をなさっているのでありますが、実際は毎年の実増は三十名前後で、全国登記所の繁忙業務に比べますとはるかに足らない現状であります。こういうことの中で、増員要求が的確に確保されないために国民サービスが欠けるあるいは国民に被害が及ぶというそのこと自体が、これは重大な国の責任だということは裁判例も示すとおりでありまして、急ぐべきはこういった当面の増員要求ではないかと思うわけであります。  そしてもう一つつけ加えたいことは、コンピューター化によりまして労働者の労働条件が大きく変わりまして、VDT労働に対する人事院規則による安全の問題もありますが、さらに超えてこの問題については、当該労働組合と労働条件と健康の保全についてさらによく検討を進めていかねばならぬ問題も多々残っておる状況であります。  以上のような状況で我が党としては反対という意見でございます。
  294. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 他に御意見もないようですから、これより採決に入ります。  不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  295. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  工藤君から発言を求められておりますので、これを許します。工藤君。
  296. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 私は、ただいま可決されました不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合の各派及び各派に属しない議員西川潔君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、電子情報処理組織を用いて登記事務を行う制度登記情報システム)の導入に当たり、次の諸点について格段の努力をすべきである。  一 登記情報システム移行し、登記事務の円滑な処理を図るための長期的・総合的計画を速やかに樹立するとともに、その達成のために必要とされる予算及び人員の確保、施設・設備の整備並びに職員の研修の充実について遺憾のないよう万全を期すること。  二 登記情報システムへの移行に当たっては、関係諸団体の意見を十分聴取し、事務処理の円滑化及び関係職員の健康その他勤務条件について十分に配慮すること。  三 登記情報システムへの移行に伴う登記簿の敬製については、その効率的実施に努めるとともに、移記事項範囲等に関して登記制度利用者の利便に十分配慮すること。  四 登記情報システムの管理・運営に当たっては、その信頼性及び安全性について遺憾のないよう万全を期するとともに、国民のプライバシーの侵害をもたらさないよう十分に配慮すること。  五 登記情報システムへの移行のための経費は、過度に登記手数料に依存することなく、その額の適正を期すること。  六 登記申請手続の整備を図るとともに、登記情報公開制度の運用については利用者の利便に十分配慮すること。  七 地図整備の諸方策を更に積極的に推進すること。   右決議する。  以上でございます。  委員各位の御賛同をお願いいたします。
  297. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいま工藤君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  298. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 全会一致と認めます。よって、工藤君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、林田法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。林田法務大臣
  299. 林田悠紀夫

    ○国務大臣(林田悠紀夫君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえまして適切に対処してまいりたいと存じます。
  300. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  301. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十九分散会