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最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) まず議決の
趣旨でございますが、
被疑者林、同久保、同田北に対する電気通信事業法違反の点についての不起訴処分はいずれも不当である、同
被疑者らに対するその他の被疑事実についての不起訴処分はいずれも相当である、その余の警察官についての不起訴処分はいずれも相当であるということでございます。
その議決の
理由として、第一に電気通信事業法違反、これは通信の秘密侵害の事件でございますが、この事件につきましては、
被疑者林、同久保は、緒方方の電話を盗聴しようと企て、他の警察官と共謀の上、昭和六十一年十一月中旬から下旬にかけて数回にわたり、メゾン玉川学園二〇六号室において緒方方の電話による通信内容を盗慨しようとしたものと認められる。そして、その犯情等を考えると、検察官が両名を起訴猶予にしたことは納得できないので、両名の電気通信事業法違反についての不起訴処分は不当であるというものでございます。
次に、
被疑者田北は、みずから盗聴を実行した形跡は認められないけれども、盗聴を実行する者のために盗聴場所の
確保を担当した疑いが濃い。この点の共犯関係の成否についてさらに
捜査を尽くしてほしいと考えるので、同人についての不起訴処分は不当であるというものでございます。
その余の警察官につきましては、本件盗聴は警察官らによる組織的な犯行と推測されるので、先ほどの
被疑者林、同久保のほかにも警察官が加わっていたというふうに考えられるけれども、右両名を除いては、この犯行に加わった警察官を検察官の
捜査によっても割り出すことができなかったので、今後さらに
捜査を続けても、この点を割り出すことは難しいのではないかと思われる。そのような
意味で、これらの警察官に対する不起訴処分はやむを得ないというものでございます。
次に、有線電気通信法違反、これは有線電気通信の妨害の事件でございますが、これにつきましては、本件盗聴のための工作は緒方方の電話による通話を盗聴するためのものであって、神奈川県警の警察官らによる犯行であると推測されるけれども、しかしだれがそれをやったかということを割り出すことはできなかった。今後さらに
捜査をしても犯人を割り出すことは難しいと考えられるので、この事件についての不起訴処分もやむを得ないというものでございます。
最後に、公務員職権乱用の点でございますが、これにつきましては、本件について公務員職権乱用罪が成立するかどうかは刑法の解釈の問題である。いろいろ考えたけれども、この点に関する検察官の
判断を誤りであると言うこともできないので、不起訴処分は相当であると
判断した。
以上のとおりでございます。