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1988-03-28 第112回国会 参議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十八日(月曜日)    午前十時開会     ─────────────   委員氏名     委員長         三木 忠雄君     理 事         工藤砂美君     理 事         鈴木 省吾君     理 事         猪熊 重二君     理 事         橋本  敦君                 梶木 又三君                 下稲葉耕吉君                 土屋 義彦君                 徳永 正利君                 中西 一郎君                 中村 太郎君                 長谷川 信君                 林  ゆう君                 秋山 長造君                 千葉 景子君                 宮本 顕治君                 関  嘉彦君                 瀬谷 英行君                 西川  潔君                 藤田 正明君     ─────────────    委員異動  二月二十五日     辞任         補欠選任      関  嘉彦君     柳澤 錬造君  三月四日     辞任         補欠選任      柳澤 練造君     関  嘉彦君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         三木 忠雄君     理 事                 工藤砂美君                 鈴木 省吾君                 猪熊 重二君                 橋本  敦君     委 員                 下稲葉耕吉君                 中西 一郎君                 長谷川 信君                 林  ゆう君                 秋山 長造君                 千葉 景子君                 関  嘉彦君                 西川  潔君    国務大臣        法 務 大 臣  林田悠紀夫君    政府委員        法務大臣官房長  根來 泰周君        法務大臣官房会        計課長      則定  衛君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        法務省矯正局長  河上 和雄君        法務省保護局長  栗田 啓二君        法務省訟務局長  菊池 信男君        法務省人権擁護        局長       高橋 欣一君        法務省入国管理        局長       熊谷 直博君        運輸大臣官房審        議官       金田 好生君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       大西 勝也君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  泉  徳治君        最高裁判所事務        総局刑事局長   吉丸  眞君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡 定彦君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    廣瀬  権君        警察庁刑事局暴        力団対策室長   深山 健男君        警察庁刑事局保        安部生活経済課        長        泉  幸伸君        警察庁警備局公        安第二課長    田口  朔君        国土庁計画・調        整局総務課長   川口  融君        国土庁計画・調        整局総合交通課        長        神谷 拓雄君        法務省入国管理        局登録課長    黒木 忠正君        外務省国際連合        局人権難民課長  国枝 昌樹君        厚生省保健医療        局精神保健課長  小林 秀資君        厚生省社会局保        護課長      小沢 壮六君        厚生省社会局老        人福祉課長    真野  章君        労働省職業安定        局高齢者対策部        企画課長     木村富美雄君        建設省都市局都        市計画課長    近藤 茂夫君        自治省行政局選        挙部選挙課長   田中 宗孝君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件) ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (法務省所管)     ─────────────
  2. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十二月二十六日、安永英雄君が委員辞任され、その補欠として千葉景子君が選任されました。     ─────────────
  3. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、検察及び裁判運営等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 検察及び裁判運営等に関する調査議題といたします。  法務行政基本方針について、林田法務大臣からその所信を聴取いたします。林田法務大臣
  6. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 委員長を初め委員皆様には、常日ごろ法務行政の適切な運営につきまして、格別の御支援と御鞭撻をいただき、厚く御礼を申し上げます。  法秩序維持国民権利保全を図ることを使命とする法務行政運営に当たる私の基本的姿勢につきましては、昨年の当委員会において就任のごあいさつをいたしました際に申し述べたところでありますので、ここでは、当面する法務行政重要施策につきまして所信一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。  第一は、最近の犯罪情勢治安確保及び法秩序維持についてであります。  最近における犯罪情勢を概観いたしますと、全般的にはおおむね平穏に推移していると認められるのでありますが、その内容を見ますと、身の代金目的誘拐事件保険金目的殺人事件暴力団構成員による銃器を使用した殺傷事件等凶悪事犯が後を絶たず、地方公共団体首長等による汚職事犯も依然として多発しており、さらにはコンピューターによる情報処理システムを悪用した事件、多数かつ広域にわたる一般庶民を対象とした詐欺事件、えせ同和団体による恐喝事件地価高騰背景とした不動産取引に関連する暴力事件、多額の株式売買益脱税事件等の最近の社会経済情勢を反映した事犯も相次いで発生しているほか、来日外国人による犯罪や諸外国捜査共助を要する事件増加など、犯罪国際化傾向が一層顕著となってきており、また、覚せい剤を初めとする薬物の乱用も引き続き鎮静化する兆しを見せることなく一般国民の間に拡散浸透していると認められるのであります。さらに、過激派集団は、新東京国際空港第二期工事阻止等を呼号し、過般の皇太子殿下沖縄訪問の際における皇居等に対する金属弾発射事件に見られるように悪質なゲリラ事犯等を相次いで敢行しているほか、昨年十一月には、昭和五十二年九月に発生したいわゆるダッカ・ハイジャック事件の犯人である丸岡修日本国内において逮捕されるなど、日本赤軍の新たな活動をうかがわせる動向も看取され、警戒を要するところであります。加えて、次代を担うべき少年非行は依然として高い水準維持しているのでありまして、今後における犯罪動向には、引き続き厳戒を要するものがあると申さなければなりません。  私は、このような事態に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実に意を用いるとともに、関係機関との緊密な連絡協調のもとに適正妥当な検察権行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安確保法秩序維持に努めてまいりたいと存じております。  第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇保護観察処遇についてであります。  犯罪者及び非行少年社会復帰及び再犯防止につきましては、国民各層の幅広い参加、協力を求めながら、刑務所少年院等における施設内処遇更生保護機関による社会内処遇を一層充実強化し、相互有機的連携を図る等、その効果を高める措置を講じてまいる所存であります。  そのためには、まず施設内処遇につき、犯罪者改善更生及び非行少年健全育成推進に効果的に寄与し、時代の要請にもこたえ得る適切な矯正処遇実現に努めるとともに、関係機関団体相互の緊密な連携のもとに適時適正に仮釈放を許して保護観察への円滑な移行を図り、また、保護観察等社会内処遇において、現下社会情勢犯罪情勢変化に即応した有効適切な処遇及び措置のあり方を追求し、実施してまいりたいと考えております。  また、監獄法全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、第九十六回国会に提出し、第百回国会において衆議院が解散されたことに伴い廃案となった経緯がありますが、その後、法務省では、同法律案修正を求める動きのあった日本弁護士連合会合計二十六回の会議を持って、意見交換を行うとともに、留置施設法案を所管する警察庁意見調整を図り、必要な修正を加えた上、昨年四月三十日、第百八回国会に再提出し、以後の四国会において継続審査の扱いとなって現在に至っております。刑事施設法案は、もはや時代に適合しなくなった現行監獄法を全面的に改めるもので、刑事施設の適正な管理運営を図るばかりでなく、被収容者人権尊重に配意し、被収容者収容の性質に応じて適切な処遇を行うことを目的として、被収容者権利義務に関する事項を明らかにし、その生活水準保障を図り、受刑者改善更生に資する各般の制度整備するなど、被収容者処遇全般にわたって大幅な改善を行おうとするものであります。監獄法改正作業は、昭和五十五年十一月に法制審議会答申を得てから既に七年を経過していて、立法化が急がれるのでありますが、これは刑事司法の重要な一翼を担う矯正制度近代化を図るものであって、現行法では実現不可能である国際水準を満たす法制度確立という観点からも不可欠のものであります。今国会において十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。  第三は、一般民事関係事務処理訟務事件処理及び人権擁護活動についてであります。  一般民事関係事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大するとともに、社会経済生活多様化を反映して複雑困難の度を強めてきております。これに対処するため、かねてから人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織、機構の合理化事務処理能率化省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制確立を図り、国民権利保全行政サービスの向上に努めてまいったところであります。特に、登記事件は、経済規模の拡大、公共事業活発化等に伴い増加一途をたどっているところであり、その適正迅速な処理確保することが重要な課題であります。このため、昭和六十年度に創設された登記特別会計制度の趣旨に即して、コンピューター化中心とする登記事務処理体制抜本的改善に鋭意努める所存であります。  その一環といたしまして、登記事務コンピューター化について昨年十月に得た民事行政審議会答申を踏まえ、不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。十分な御審議をいただき、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。  次に、訟務事件は、今日の社会経済情勢国民権利意識変化等を反映して、複雑困難な事件増加する傾向にありますし、訴訟の結果いかんが政治行政経済社会等の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくない状況にありますので、今後ともこれら事件の適正、妥当な処理に万全を期し、個人の権利利益国民全体の利益との間の正しい調和が図られるようにすることに努めてまいりたいと存じます。  また、人権擁護行政につきましては、従来より、国民の間に広く人権尊重思想が普及徹底するよう努めてきているところでありますが、特に本年は世界人権宣言四十周年に当たりますので、この機会に国民基本的人権保障をより一層確かなものとするため、さまざまなメディアを通じての啓発に一段と工夫を凝らしてまいる所存であります。また、具体的な人権に関する相談や人権侵犯事件調査処理を通じて関係者人権思想啓発し、被害者の救済にも努めてまいる所存であります。  なかんずく、法務省が二年有半取り組んできましたいじめの問題及び教育職員による体罰の問題、さらには部落差別を初めとするもろもろの差別事象の問題につきましては、関係各省と緊密な連携を保ちながら国民人権意識に訴えることを通じて、その根絶を図ってまいりたいと考えております。  第四は、出入国管理事務処理についてであります。  近年、我が国と諸外国との交流が、政治経済文化等のあらゆる面においてますます活発となるに伴い、我が国出入国する内外人の数が逐年大幅に増加するとともに、我が国に在留する外国人活動の範囲や内容も一層複雑、多様化しております。また、周辺アジア諸国から入国した者による不法就労等違反行為も激増の一途をたどっている状況にあり、殊に、最近の円高等を背景として、発展途上国からの男性による不法就労事案が急増し、我が国社会経済などに悪影響を及ぼすおそれも生じております。さらに、最近発生いたしました諸事件との関係から改めて指摘されましたとおり、不良内外人出入国の厳重な管理が一層必要となってきております。このような現下情勢にかんがみ、今後とも出入国管理事務の迅速適正な処理及びそのための組織体制の一層の充実強化に努めてまいりたいと考えております。  なお、さきの国会成立いたしました外国人登録法の一部改正につきましては、国会での御審議経緯等を踏まえつつ、実施へ向けて鋭意その準備を行っているところであります。  第五は、司法試験制度改革についてであります。  司法試験は、裁判官、検察官または弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を判定する国家試験でありますが、その受験者及び合格者動向を見ますと、近年合格者平均年齢は約二十八歳で、合格までの平均受験回数が約六回であるなど、特に在学生を中心とする若年者にとって非常に合格が困難な試験となっております。もとより司法試験は将来の法曹となるべき者を選別する極めて重要かつ高度な試験であり、その合格が困難であることは当然とも言えるのでありますが、現状においてはその合格が余りにも困難であるがゆえに、かえって優秀な人材に法曹への道を敬遠させ、あるいはいたずらに長時間の受験勉強を強いる結果となっているのではないかと懸念するのであります。他方法曹を取り巻く諸情勢を見ますと、我が国社会は将来ますます高度化し、また、国際化していくと思われるのでありますが、そうした中で法秩序維持し、基本的人権を擁護すべき法律家の役割は一段と重要になると考えられます。こうした新しい時代において国民に対する法的サービスをさらに充実させ、社会高度化国際化に対して法曹がより的確に対応し得る条件を整備し、また、司法権及び検察権行使の一層の適正迅速化を図るためにも、司法試験制度改革は焦眉の課題であると考えられるのであります。  このような観点から、私は司法試験制度のあるべき姿につきまして、法曹基本問題懇談会を設け各界の有識者から種々貴重な御意見を承ったところでありますが、さらに関係各方面とも十分意見交換を行った上で、可及的速やかに法務省としての改革案を取りまとめ、その実現に努めてまいりたいと存じます。  以上、法務行政重要施策につきまして所信一端を申し述べましたが、委員長を初め委員各位の御協力、御支援を得まして重責を果たしたいと考えておりますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。
  7. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 以上で林田法務大臣からの所信聴取は終わりました。     ─────────────
  8. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) この際、大西最高裁判所事務総長より発言を求められておりますので、これを許します。大西最高裁判所事務総長
  9. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) 東京高等裁判所長官に転出いたしました草場前事務総長の後を受けまして、去る二月十五日最高裁判所事務総長を命ぜられました大西でございます。よろしくお願い申し上げます。  改めて申し上げるまでもございませんが、裁判所は、具体的事件裁判を通じまして、基本的人権を擁護し法秩序維持するという重要な責務を負託されております。この使命を果たすことができますように、司法行政の面におきまして微力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。  幸いにして、今日まで当委員会皆様方の深い御理解と力強い御支援によりまして、裁判所運営も次第に充実されてまいりました。今後とも一層の御支援を賜りますよう切にお願いを申し上げる次第でございます。  簡単でございますが、ごあいさつにかえさせていただきます。     ─────────────
  10. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 去る二十五日、予算委員会から、二十八日及び三十一日の二日間、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管について審査の委嘱がありました。  この際、同総予算中、法務省所管議題といたします。  林田法務大臣から説明を求めます。林田法務大臣
  11. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 昭和六十三年度法務省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、法務省所管一般会計予算額は四千百二十一億七千八百万円であり、登記特別会計予算額は九百九十六億三千五百万円でありまして、その純計額は四千五百五十二億五百万円となっております。この純計額を昭和六十二年度予算額四千四百五十九億百万円と比較しますと九十三億五百万円の増額となっております。  次に、重点事項別予算内容について御説明申し上げます。  まず、定員関係でありますが、前年度に比較いたしますと純増九十九人となっております。  昭和六十三年度の増員は、新規四百八十四人と部門間配置転換による振りかえ増員四十四人とを合わせた五百二十八人であり、これに内部振りかえ二十八人を含めると合計五百五十六人となります。  その内容を申し上げますと、一、検察庁における特殊事件財政経済事件公安労働事件等に対処するとともに、公判審理迅速化を図るため百二十人、二、法務局における登記事件訟務事件及び人権擁護関係事件に対処するため、登記特別会計の百八十人を含め百九十二人、三、刑務所における保安体制及び医療体制充実を図るため百三十三人、四、少年院及び少年鑑別所における処遇体制充実を図るため六十人、五、保護観察活動等充実を図るため二十六人、六、出入国審査及び在留資格審査等業務充実を図るため二十三人、七、公安調査活動充実強化を図るため二人となっております。  他方、減員は、昭和六十一年八月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第七次)の実施について」による昭和六十三年度定員削減分として四百二十九人、その他削減分として二十八人、合計四百五十七人となっております。  次に、主要事項について御説明申し上げます。  第一に、法秩序確保につきましては、二千三百七十六億一千八百万円を計上し、前年度予算額と比較しますと四十九億四千九百万円の増額となっております。  その内容について申し上げますと、まず、検察庁関係では、検察活動充実を図る経費として七百三十九億九千九百万円を計上しております。  矯正施設関係では、刑務所等矯正機能充実を図るため一千三百七十億四千八百万円を計上しており、この経費の中には、被収容者処遇確保のための生活備品日用品改善及び食糧費単価改定等に要する経費を含んでおります。  更生保護関係では、保護観察充実を図る経費として百二十一億七千二百万円を計上しております。  訟務関係では、国の利害に関係のある争訟事件処理経費として十億八千百万円を計上しております。  公安調査庁関係では、公安調査活動充実を図る経費として百三十三億一千八百万円を計上しております。  第二に、国民権利保全強化につきましては、一般会計では六百八十二億三千七百万円を計上し、前年度予算額と比較しますと二十二億四千三百万円の増額となっております。  その内容について申し上げますと、まず、登記関係では、登記事務費として五百六十六億八百万円を計上しております。この登記事務費は、登記事務を円滑、適正に処理するために設けられている登記特別会計の財源の一部として繰り入れるための経費であります。  法務局のうち登記を除く関係では、国籍、戸籍等事務処理充実を図る経費として百九億七千七百万円を計上しております。また、人権擁護関係では、地域改善対策としての啓発等人権擁護活動充実を図るため六億五千二百万円を計上しております。  第三に、非行青少年対策充実につきましては、一部法秩序確保と重複しておりますが、三百六十六億一千七百万円を計上し、前年度予算額と比較しますと八億七百万円の増額となっております。  その内容について申し上げますと、青少年検察充実経費として十二億七百万円、少年院教化活動充実経費として百六十四億五千百万円、少年鑑別所業務充実経費として七十八億六千二百万円及び青少年保護観察充実経費として百十億九千七百万円をそれぞれ計上しております。  第四に、出入国管理業務充実につきましては百二十億五千六百万円を計上し、前年度予算額と比較しますと六億六千二百万円の増額となっております。  その内容について申し上げますと、出入国及び在留管理業務充実経費として六億六千八百万円及び外国人登録事務処理経費として制度改正に伴う経費を含め十八億八千二百万円等を計上しております。  第五に、施設整備につきましては、老朽、狭隘化が著しい基幹の大行刑施設継続整備を含めた法務省の庁舎、施設整備するための経費として百二十一億四千三百万円を計上しております。  第六に、登記特別会計につきましては総額一千十七億七千万円の歳入、九百九十六億三千五百万円の歳出となっております。  歳出の主な内容といたしましては、登記所等管理経費七百二十三億四千九百万円、登記事務コンピューター化計画推進及び登記簿謄抄本交付事務の適正、迅速化を図る経費百六十五億五千百万円、登記申請事件審査等経費二十四億二千七百万円、法務局支局出張所等整備する施設整備費として七十二億円等をそれぞれ計上しております。  以上、昭和六十三年度法務省所管予算概要を御説明申し上げました。
  12. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 千葉景子

    千葉景子君 今法務大臣の方から所信をお伺いしたところでございます。その中でも、ことしは世界人権宣言四十周年という年に当たりまして、人権問題にはとりわけに節目の年に当たろうかと思います。  所信の中でも、人権宣言四十周年に当たって、この機会に国民基本的人権保障をより一層確かなものにしたいということを表明していただいているところでございますが、我が国の場合は、最近諸外国からのさまざまな人権問題に対する指摘などが近年なされてまいりました。国連でのアイヌ民族への少数民族としての取り扱いの問題、あるいは障害者、とりわけ精神障害者などへの人権侵害に関する指摘、また在日あるいは来日をしている外国人に対する人権保障の問題、また中国から帰国なさった帰国者あるいは難民等の人権保障の問題、具体的にこれから解決しなければならない課題がたくさんあろうかと思います。この所信の中でも、部落差別を初めとするもろもろの差別事象の問題について、その根絶を図ってまいりたいということを表明していただいているわけですけれども、近年さまざま指摘されている人権諸問題などを含めまして、再度法務大臣人権問題に対する今後の取り組み方、こういうものについて御見解をお伺いしたいと思います。
  14. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) ことしは仰せのように、世界人権宣言が発布されましてから四十周年に当たる年でありまして、法務省は毎年人権の擁護のための活動を続けてまいっております。  御指摘のアイヌの差別の問題でありまするが、法務省としましてはあらゆる差別は許されない、人間は生まれながらにして平等であるというような観点から、アイヌの問題につきましても差別をまず許してはいかぬということで、国民にそれを周知させるために広く啓発活動を行ってきております。しかし、なおウタリの人々に対する差別でありまするとか、その他精神障害者に対する偏見というようなものもずっとありまして、今後一層その解消のために啓発に努めてまいりたいと存じております。
  15. 千葉景子

    千葉景子君 それでは、少し指摘をさせていただいた具体的な問題について伺いたいというふうに思います。  まず、アイヌ民族に対する問題でございますけれども、昨年の八月五日、スイスのジュネーブで開かれました国連先住民会議において、日本政府としてもこのアイヌ民族問題について公式な発言をなさっているかと思いますが、この内容につきまして外務省の方からお答えをいただけませんでしょうか。
  16. 国枝昌樹

    説明員(国枝昌樹君) お答え申し上げます。  昨年八月、ジュネーブで開催されました国連先住民作業部会におきまして、北海道ウタリ協会の野村理事長の御発言に対しまして政府代表が次のような、骨子でございますけれども立場の表明を行いました。   (一)我が国においては、自己の文化を享有し、自己の宗教を実践し、自己の言語を使用する何人の権利も否定されておらず、アイヌの人々も憲法の下での平等を保障された国民としてかかる権利の享有を否定されていないこと。   (二)アイヌの人々の社会的、経済的地位の向上をはかるため、ウタリ福祉対策が策定されてきていること。   (三)政府としては、単一民族国家論を主張するものでもなく、アイヌの人々の存在を否定するものではないこと。  以上でございます。
  17. 千葉景子

    千葉景子君 それに引き続きまして、昨年十二月二十四日、人権B規約、これについて国連へ第二回目の報告書が提出をされているはずでございます。この人権B規約二十七条に少数民族に関する規定がございますけれども、これについて国連へどのような報告をなさっているか。これも外務省の方からお答えをいただきたいと思います。
  18. 国枝昌樹

    説明員(国枝昌樹君) お答え申し上げます。  国際人権現約B規約第二回報告書でございますが、その中の第二十七条関連部分におきましては、アイヌの人々が独自の宗教及び言語を有し、また文化の独自性を保持していると認められる一方において、憲法のもとでの諸権利を否定されていないという趣旨を報告しております。
  19. 千葉景子

    千葉景子君 いずれにおきましても、一定の文化の独自性、独自の宗教、言語などを保持しているということは認めながらも、憲法のもとでは諸権利が否定されていないという認識を発表されているわけでございます。  現在、アイヌの人々、これは北海道庁の昨年行われたウタリ生活実態調査などによりますと、ほぼ二万四千人ほどいらっしゃるというふうに言われております。しかしながら、本当に憲法のもとで諸権利を否定されていないかどうかということにつきましては非常に疑問があるところでございます。  一つは、北海道旧土人保護法、これが施行されまして八十九年経過をしているわけですけれども、この法によりましては、取得した土地、すなわち個人財産に物権設定などをする場合は知事の許可を必要としている、こういう条項があるわけでございます。これはどう見てもアイヌの皆さんだけに適用され、一般の我々国民とは権利関係を異にしているのではないか、こんなふうに思われますけれども、現在この法に基づいて毎年どのくらいの申請あるいは許可が出されているのか。まず、これは厚生省の所管になるんでしょうか、お尋ねをしたいと思います。
  20. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) 北海道旧土人保護法第二条に基づきます北海道知事の許可でございますが、直近の数字で申し上げますと、昭和六十一年度の許可件数は二十六件、それから昭和五十二年六月から六十一年度でございますから昭和六十二年三月までの累計でございますが、その許可件数が四百四十五件でございます。それで、対象面積が百五十七・六ヘクタールでございます。
  21. 千葉景子

    千葉景子君 五十二年から六十一年まで四百四十五件という許可が出されている。これは決してほんの数例というわけではないわけですね。こういう土地の問題、物権の問題について特別な制約がなされている。これは憲法の平等原則などから見て問題があるのじゃないだろうかというふうに思うんですけれども、この点は法務省などはどうお考えでしょうか。
  22. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 憲法上問題があるのじゃないかという御質問でございますが、私どもの方といたしましてはアイヌの人たちに対する差別問題につきまして、具体的な問題が生じました場合には人権侵犯事件として処理し、またそういう問題が起こらないように一般的な啓発を日々行っておるところでございまして、特にそれが憲法上問題であるかどうかという点につきましては、現在のところ特段の問題とは認識していないところでございます。
  23. 千葉景子

    千葉景子君 それは、非常に憲法を尊重して、そして人権を守っていこうという法務省の考え方としては大変に私はおかしいと思うんですね。  こういう問題にこそ法務省が率先してやはり目を向けて、こういうものがなくなるようなそして措置をしていくというのが任務ではないかというふうに思うんですが、この点について、厚生省はこの法律をどういうわけか所管をされているというわけですけれども、厚生省としてはどうお考えですか。
  24. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) 北海道旧土人保護法第二条第二項の規定は、同法の第一条の規定によりまして無償下付した土地につきまして、無償下付の目的が達せられるよう必要な制約を定めたものというふうに理解をしておるわけでございまして、その限りにおいては憲法上問題が生ずるというようなものではないのじゃないかというふうに考えております。
  25. 千葉景子

    千葉景子君 どうも御認識が、いま一つ人権に対するものとしては弱いというふうに思わざるを得ないんですが、現在八十九年この法律はたっているわけですね。その当時のいろいろな経緯、それが歴史的に非常にアイヌ民族の皆さんに対して同化政策といいますか、そういう政策のもとで行われてきたわけですけれども、既に現在までこのような条項を含んだ旧土人保護法というのが存在している、こういうことについてはどんなふうに今お考えでしょうか、厚生省としてはどうですか。
  26. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) 北海道旧土人保護法につきましては、名称の問題でございますとか、あるいは先生御指摘の内容的な問題とか、いろいろ御議論があるところでございます。  北海道旧土人保護法、現行法につきまして直近の改正というのが昭和四十三年に行われているわけでございますが、その際の改正内容というのは、生活保護法等他の施策で対応できます学資とか、住宅改良資金の給付というような規定が従来あったわけでございますけれども、そういう規定を削除したところでございますが、結果としまして、その際先生御指摘の二条の北海道知事の許可とか、そういう規定が残っているわけでございますが、これは当時改正をするに際しましてウタリの方々の御意見を十分くみ上げておられるところの北海道知事の、北海道の御意見が、やはり当時といたしましては、なおこういった土地に対する規制も必要ではないかというような御意見がございましたので、そういった御意見も考慮いたしましてそのまま残ってきているというところでございます。
  27. 千葉景子

    千葉景子君 別に、私は四十三年のことをお尋ねしているわけではありませんで、現在いろいろな指摘がなされている、むしろこういう法律が存在していること自体考え直さなければいけないという時期になってきて、今こういうような法律についてどう考えているか、四十三年からもう大分たっているわけですからね。事情は変わってきているわけですよ。あの周りの皆さんの意見とか、あるいは当事者であるウタリの皆さんの今の国に対する要望、こういうものも変わってきている。こういう中でどう考えていらっしゃるかとお尋ねしています。
  28. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) 先般、北海道知事の私的諮問機関でございますウタリ問題懇話会から、いわゆる旧土人保護法の関係も含めまして、北海道知事に対して御意見が出されておるように新聞報道等で承知しておるわけでございますが、その中で、旧土人保護法につきましては、これはもう役割が終わったのではないか、廃止すべきではないかというような御意見が含まれているというふうに承知しておりますが、私どもといたしましては、やはりこれは関係者の方々の御意見を最大限尊重していくべき性格のものではないかと思っておるわけでございまして、今後北海道におきまして、懇話会の意見を受けまして内部で検討されることと思いますので、そういった北海道の御意見がまとまりましたらその御意見をお聞きいたしまして、それによりまして適切に対処してまいりたい、このように考えているわけでございます。
  29. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひそれは、積極的に当事者の皆さんの意見などを尊重しながら施策を進めていただきたいと思うんですが、ウタリの皆さんもさまざまなこれまで障害を抱え、差別を感じながら暮らしてきていらっしゃるわけです。具体的に北海道庁の調査、ウタリ生活実態調査ですね、先ほども紹介をさせていただきましたが、こういう調査によりましても七割以上の人が差別をされたという経験を持っている。そして、現在でもやはり差別がなされている、現在でもそういう差別があると答えた方も八五・五%に上っている。さまざまな私も調査をし、そしてお聞きしたところによれば、学校内での差別、あるいは結婚における差別、また就職の際における差別、こういうものがまだまだ歴然として残っている、そういう状況です。  こういう状況の中では、根本的にこの旧土人保護法、これは内容を見ますと、アイヌは無知蒙昧の人種にしてその知識が幼稚である、こういうレッテルづけをして一方的に同化政策あるいは保護政策をしよう、こうしてきたことに起因しているのではないかというふうに思うんですね。この法律にやはりこれまでアイヌの人々に私たちが持っていた意識、そして政府の認識、対応の仕方というのが集約をされているのではないだろうか、こういうふうに思っております。  今厚生省の方からも当事者の意見などをよく聞きながら、この旧土人保護法の改正などについても検討をしていきたいというふうにお答えがなされたわけですけれども、これは今後、具体的に何かどんな方向でやっていこうというようなお考えはございますか。
  30. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) どんな方向と申しますか、今後の北海道の検討の結果、どのような御意見が出されるかということに尽きるわけでございますが、その前段階でございます私的諮問機関の中の意見は、もうあの法律は要らないのではないかという御意見でございます。したがいまして、その辺について北海道がどう御判断されるかというような点を十分お聞きしていきたいというふうに考えているわけでございます。
  31. 千葉景子

    千葉景子君 そういう際に、この問題は、本当に一番当事者の皆さんがこれまで苦労なさってきたわけですね。これについては北海道ウタリ協会などでも法律案作成、こういう検討などもしているということでございます。だとすれば、今後法律改正などを検討されるに当たって、やはり当事者のアイヌの皆さん、ウタリ協会などの皆さんの意見なども積極的に聞きながら施策を進めていくべきではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  32. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) 旧土人保護法の存廃につきましては、そのようなことで今後やっていきたいと考えております。  それから厚生省といたしまして、所掌事務として、ウタリの方々に対しまして予算措置で福祉対策というのを実施しているわけでございます。これは各省庁もやっておるわけでございますけれども、この予算措置でやっている事業につきましては、従来から関係者の方々の意見を取り入れて国の予算措置として実施しているわけでございますので、今後とも福祉対策につきましては、引き続きそういった形で十分御意見を聞きながら予算措置で対応してまいりたい、そのように考えている次第でございます。
  33. 千葉景子

    千葉景子君 いろいろな福祉対策というような今お話も出てまいりましたけれども、やはりこの問題は、もう基本的にその福祉問題ということで解決できる問題ではないのではなかろうかというふうに思います。基本的にはやはりアイヌ民族、これは少数民族の問題として、これまで非常に困難な立場に置かれてきたアイヌ民族の皆さんの立場というのを私たちがもう一度反省をして、そして多民族国家として少数民族であるアイヌ民族の皆さんの地位をまず明確にする。そして、これまで同化あるいは福祉を中心にしてなされてきたウタリ対策、こういうものから脱却をしてアイヌ民族としての自立とかあるいは自立的な権利、こういうものを保障した基本的な考え方をまず確立すべきではないかというふうに思うんですね。  世界におきましても、独立国における諸民族、こういうものについては統合主義的な思想というのはもう後退をして、むしろ諸民族がみずから生きていく、こういう自主的な権利尊重するという方向になってきております。まさにこれと同じような問題だろうとアイヌ民族の問題も思うわけですけれども、まず基本的な物の考え方を確立していく、そしてそれにのっとった制度をつくっていくとしても、やはりそれに対する総合的な機関というものが必要ではないかと思います。この正式な、総合的な審議機関というものはこれまでたび重ねて我々も主張し、アイヌの皆さんも要望をしてきたところでございます。北海道開発庁などを中心にして福祉対策の窓口というものはつくられているわけですけれども、こういう福祉、保護だけではない、権利確立する基本的な審議機関というものが今後早急につくられる必要があるだろうと思います。  これについてはなかなか積極的に音頭をとり中心になる各省庁というものが見当たらないわけですけれども、基本的な人権、憲法を擁護していくという意味では、法務省などもこういう問題に本来は積極的にならなければいけないのではないか。例えば各省庁にも働きかけていく、こういう機能も法務省として果たしていかなければいけないのじゃないか、こんな気もいたしますが、いかがでしょうか。
  34. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 法務省といたしましては、今お尋ねの問題につきまして、どのような機関がどこにあるべきかということにつきましてお答えする立場ではございませんけれども、人権が守られなければならないという観点からは常に重大な関心を持って対応をしていきたいというふうに思っております。
  35. 千葉景子

    千葉景子君 これは今後、私も総理を初め各関係機関お願いをしながら、また進めていきたいというふうに思っております。  それでは次に、やはりこれも国連などでも指摘をされ、諸外国人権団体などから指摘をされてまいりました我が国の障害者、とりわけ精神障害者、これに対する問題ですね、若干お聞きをしたいというふうに思います。  この精神障害者また精神医療、こういう問題につきましては精神保健法、これが改正になりまして近々施行されるという運びになってきております。大変大きな第一歩が踏み出されたと言ってよいのではないかと思います。この精神保健法は、さまざまな国際規約、国際的な人権保障規約、こういうものとの関係でこれからのさまざまな問題点があろうかと思いますが、今どんなふうにこれが実現してきたな、あるいはこういう問題点があるなとお考えでしょうか。これは厚生省の方が所管をされていらっしゃるわけですけれども、これはかなり大きな進歩があったと思うんですが、その辺についての御認識をお伺いしたいと思います。
  36. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 昨年の秋、精神衛生法の改正案を国会で上げていただきましてありがとうございました。  精神保健法の改正は大きな柱が二つありまして、一つは精神障害者の人権の擁護を進める、もう一つが精神障害者の社会復帰を進めるということでございます。精神障害者の方々、現在我が国で三十四万人ぐらいの方が精神病院に入っていらっしゃいますが、そのうち相当数の方は条件が整えば地域社会で生活できる、こういう実態調査の結果がございまして、まずは精神障害者の方々が、地域で生活できる方は地域で生活ができるようにしてあげるということが大変大切ということで、人権を守る手だてとともに社会復帰の促進ということに大いに力を注いでいきたい、このように考えております。
  37. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひこれから人権擁護、また地域で生活ができるという施策を積極的に進めていただきたいというふうに思うわけです。  その中で、今後社会復帰をしていく上で大きな問題は、やはり社会復帰のための施設、あるいはその仕組みなどを整備していくことかというふうに思うんです。ただ、社会福祉法人を設立する、あるいはそういう施設に建設費や運営費などで補助をしていく、またスタッフあるいは利用期間、さまざまな面でまだまだこれまでの経過を見ますと不十分であるという面があろうかと思うんですけれども、この点については現段階での御認識、そして今後こういう問題についてどんなふうにさらに充実強化をなさっていくおつもりなのか、その辺についてお答えをお願いします。
  38. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 精神障害者の社会復帰施策というのに本格的に取り組むというのは、今回の法改正以後になろうかと思うのであります。これからその推進をするためにはまだまだいろんな問題点があろうかと思いますけれども、それは関係者意見を聞いて進めていきたいと思っております。  ただ、今回の社会復帰施設の設置につきましては、各都道府県、市町村のほか社会福祉法人、医療法人、そういうところが設置運営することができるようになっておりまして、設置費については六十二年度予算から、運営費についてはこの六十三年度予算から新たに運営費補助をするというようなことを今度の予算案で入れておるところでございまして、今後順次大いに力を入れていきたいと考えております。
  39. 千葉景子

    千葉景子君 公衆衛生審議会などでは、精神保健法の第三条それから保護義務者の問題について、まだ今後検討すべき点があるというような指摘もしているようですけれども、これは今後再度検討なさるというような御予定でしょうか。
  40. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 今回の精神衛生法の改正案は、審議会の御意見に基づいて法案を調整したところでございますけれども、定義の問題だとか保護義務者の問題というのは大変問題点が多くて、今回では内容を詰め切るところまでは至りませんでした。そういうことから今回の法改正では、それらの問題については今後も検討するというふうに政府としてお答えをしているところでございまして、具体的には、保護義務者問題については六十二年度から実はもう既に検討を開始しているということでございます。ただ、国会修正の中で、いわゆる五年後の見直しというのを国会の方で修正をいただきましたので、それもにらみつつ一生懸命努力してまいりたいと思っております。
  41. 千葉景子

    千葉景子君 精神障害福祉元年と昨年は言われたということもございますし、ぜひこれから施策の充実に努力をいただきたいと思います。  またこの問題は、国際的に国際人権NGOの団体などの指摘から、こういう改正などの歩みが非常に急ピッチになったということもございます。また、ことしもこういう調査団なども来日されるようでございますので、こういうものについてもぜひとも厚生省なども協力をしながら今後の施策を進めていただきたいというふうに思います。  それでは次に、やはりこれも大変大きな問題になりまして改正がなされました外国人登録法、この問題につきましてお聞かせをいただきたいというふうに思います。これにつきましては先ごろ政省令、これが整備をされたところかと思うんです。この政省令の内容などを踏まえながら質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、第一点でございますけれども、これはまだまだやはりこの外国人登録法内容をこれから検討しなければいけない点も多々あるわけでして、さきの遠藤法務大臣は、この外国人登録法は三年から五年ぐらいの間に再度見直しが必要なのではないか、こういう御発言、御答弁をなさっていらっしゃるわけですけれども、林田法務大臣は、この点については今どんなふうにお考えでしょうか。
  42. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) まず、外登法の施行をことしの六月一日という日に定めまして、現在その実施準備を鋭意行っているところであります。それで、この法律が国会におきまして附帯決議をいただいておることはよく承知いたしておりまして、附帯決議を尊重しながらその実施に当たっておるわけでございます。また、実施後の状況を見まして、十分附帯決議の趣旨を尊重して、それ以後においても検討を続けていきたい、かように存じております。
  43. 千葉景子

    千葉景子君 それでは、その附帯決議の問題なんでございますけれども、参議院の方でも四項目にわたる附帯決議がつけられているわけでございます。この附帯決議、第一項目は外国人登録制度、これの基本的な問題点の検討や改善を今後図っていく。二点目としましては携帯義務、提示義務の規定の運用についての配慮。そして三項目は旧法下における指紋押捺拒否者の取り扱いについて。そして、四項目目が関係地方自治体の意見尊重。大筋こういうような内容の附帯決議がつけられているわけですが、今回の政省令、これを策定なさるに当たって、この附帯決議の内容をどのようにまず生かされているのでしょうか、その点について御説明をいただきたい。
  44. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 附帯決議、今四点御指摘されたとおり、私どももそれを尊重しながら法改正後の準備をやっておるわけでございます。  四点のうち第一点につきまして申しますと、これは今大臣の御答弁にもありましたように、今後新改正法を実施いたしましてから、基本的な問題でございますので、指紋押捺制度その他、前大臣が検討を約束された諸問題につきまして、その後の情勢それから新法の実施状況を踏まえつつ、附帯決議の趣旨も尊重しながら新法後で検討をするものでございますので、現在、今回の政省令に規定として盛り込むという趣旨のものではないかと私ども判断をいたしております。  第二点及び第三点とも今後の新法の運用上の問題であろうかと思います。改正に伴います政省令の整備をいたしましたけれども、この第二点及び第三点は、政省令を含めまして新法の運用上の諸問題であろうかと思います。一部分もう既に運用において実施も見ておるところでございますので、特に政省令で規定として明文化することはいたしておりません。  第四点につきましては、政省令及びそのもとでの通達等を決めますに当たりまして、都道府県の関係者等と密接に連絡をとりながら、担当の職員も東京に集まっていただいたり、セミナー方式でいろんな意見交換いたしたりということで、法務本省との間の意思疎通を図りながら、十分にその意見を聴取しながら整備いたした次第でございます。
  45. 千葉景子

    千葉景子君 通達等を今後出されようかというふうに思います、六月一日施行ということになりますので。これはおおむねいつごろ整備をされる予定でございますか。
  46. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 今度の改正、六月一日施行ということになりまして、私どもその施行前に各都道府県単位で各市町村職員に集まってもらいまして研修会を実施する。と申しますのは、今度の法改正におきまして、従前と事務手続が相当変わる部分がございますので、そういう研修会を四月、五月にかけまして四十七都道府県で私どもが出向きましてそういう研修会を実施する。これは先ほどの附帯決議にもありますように、自治体の方からそういう強い要望もございまして、そういうことを考えているわけでございます。  したがいまして、その研修会を実施するためには、その教材となります事務取扱の通達と申しますか、要領と申しますか、そういったものを準備しなければならないということでございまして、現在それはもう決裁を終わりまして印刷業者に今印刷をさせておりますが、相当分厚いものでございます。これが今月中には納品になりまして、四月早々には各自治体の方に配付できるのではないかというふうに考えております。
  47. 千葉景子

    千葉景子君 通達といえば、五・一四通達というのがございますけれども、これについては問題が指摘され、その内容について大変評判が悪かったということがございますけれども、この五・一四通達につきましては存置といいますか、そのまま継続をなさっていくことになりますか。
  48. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 五・一四通達は幾つかのことを言っておりまして、その中で、今度の法改正によりまして制度が変わったために五・一四通達が適用されなくなる部分がございます。そういったことから、私どもといたしましては、五・一四通達はこの機会に廃止をいたします。  ただ、五・一四通達の中には大変基本的な、重要なことを言っております。例えば指紋に関する外部からの照会については答えないで、どうしても必要がある場合は法務省に照会して、法務省の指示を得て提供するようにというような基本的な、重要な部分がございますので、そういった部分は新しい要領の中に取り込んでいく。それから最初に申しました、法律制度が変わったために適用されなくなる部分は当然のことながら廃止するということで、基本的にはこの通達は廃止するという取り扱いをいたしたいと考えております。
  49. 千葉景子

    千葉景子君 それでは、ちょっと細かい点になろうかと思いますが、法の十五条五項、指紋押捺の再命令の関係がございます。これは人物の同一性が確認できないときあるいは指紋が不鮮明なときというような場合に、指紋押捺の再命令ということになろうかと思いますが、これは具体的にはどのような内容になりましょうか。同一性の確認ができないというのはどういうような場合であり、また不鮮明な指紋というのは一体どういう場合を具体的に指すのか、ちょっと御説明お願いします。
  50. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 指紋を再押捺する場合でございますけれども、これにつきましては、一つは登録されている人物とそれから現に窓口に出頭しておる人物との同一性が指紋によらなければ確認できない場合というふうに法律では書いてございます。このことは、単にちょっと疑わしいから指紋を再押捺してくれという趣旨ではございませんで、あくまでもその人物の同一性をほかの手段によりまして、例えば市区町村職員の努力によりまして確認して、なおかつ疑いがあって最終的に指紋によって確認しなければならない場合という趣旨でございまして、この点につきましても細かく自治体の指導をしてまいろうというふうに考えております。  それから再押捺させる場合には、もう一つは既に押した指紋の指を欠損している場合というのがございます。これは、指紋が人物の同一性を確認するために必要なものということで指紋の押捺をしてもらっているわけでございますので、一度押した指紋が、肝心のその指を何らかの事故で失っているような場合、その場合は人物同一性を確認するための手段が失われておりますので、この場合は再度押してもらわなきゃならないということでございますが、これにつきましても、指のどの程度が欠損すれば押してもらうかということでございまして、私ども指紋を押しましたその部分の半分以上が失われているような場合には押してもらうということにしております。  それからもう一つは、「登録原票及び指紋原紙のいずれもが次のいずれかに該当する場合」ということで、一つが「紛失し、又は滅失したとき。」、一つが「押されている指紋がき損、汚損若しくは退色などにより不鮮明となつているとき。」ということでございまして、市区町村が保管する登録原票それから法務省が保管いたします指紋原紙、指紋はこの両方に押してもらうことになっておりますが、そのいずれもがだめになった場合ということでございまして、仮に市区町村にある登録原票が何らかの事故によりまして焼けてしまったり、水浸しになったりして使えなくなったような場合でございましても、法務省にあります指紋原紙を取り寄せることによって、それで補うことができれば当然指紋の再押捺を必要としない。  いずれもがそのような指紋としての用、役に立たなくなった場合ということでございまして、当然のことながらそういう再押捺という事態を生じないように、登録原票ないしは私どもの保管します指紋原紙の取り扱いにつきましては十分注意をしていこうということでございます。
  51. 千葉景子

    千葉景子君 これは、具体的にはだれが判断をすることになりますか。この同一性が確認できないとか、それからこの指紋じゃどうしても不鮮明でもう一度押させなきゃならないとかいうことは、個々のケースで窓口で判断するようになるんですか。その一番の責任元というのはどこになりますか。
  52. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 人物の同一性の確認ということにつきましては、これはあくまでも現場でございます。したがいまして、市区町村長がそのような判断をするということでございますが、これも単にちょっと似てないなと、先ほど申し上げましたように、ちょっと似てないなという程度ではだめでございまして、各市区町村長はいろいろ調査権、法律上調査権を与えられておりますので、本人の自宅に行ってみるとか、近所の人に聞いてみるとか、場合によりましてはその人の保証人と申しますか、間違いなくこの人物だということを証明してくれるような人の出頭を求めたりして調査をして、それでもなおかつ疑いがある場合ということで、要件はぎりぎり大変厳しく縛るというふうにしております。  それから指紋の不鮮明ということでございますが、これは不鮮明ないしは、紛滅失はよろしいかと思いますけれども、不鮮明という場合は、これにつきましては指紋と申しますのは隆線と申しますか、盛り上がった線による一つの紋様でございます。これはある程度薄くても紋様は見えるものでございますけれども、ここで言っております不鮮明となる場合というのは、結局その隆線がもう確認できない状態になった場合というふうに考えておりまして、そのような指導をしておるところでございます。
  53. 千葉景子

    千葉景子君 今回の登録証の作成におきまして、地方入管局の方でラミネートカードというのを作成するということがあろうかと思うんですが、そのようなときに、入管局の方で上がってきたものがこれは不鮮明である、あるいは同一性というのは余りないと思いますが、不鮮明ではっきりしない、もう一度とり直しをせいというような指示や、あるいは何か要求をするというようなことはありませんか。
  54. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 登録証明書の作成の権限は、これは市区町村長にございます。ただ、今度の改正に基づきまして登録証明書をカード化するということになりましたので、カード化するその作業だけを、いわゆる機械を用いて登録証明書をつくるその部分だけを地方入管局が担当する、こういうふうになっておるわけでございます。  この場合地方入管局におきましては、あくまでも市区町村長の権限に基づいて作成され、なおかつ市区町村長の依頼に基づいて機械を用いて作成する。こういうことになりますので、依頼を受けまして、ごく極端なことを申し上げますと、記載事項の半分が全然市区町村のうっかりで何ら書かれてない、半分が白紙の部分が送られてきたということになりました場合に、機械を使ってただつくればいいということで、半分何も書かれてない登録証明書をつくりましてもこれは意味がございませんので、当然のことながらその必要な事項を満たしているかどうかということは一応目を通します。目を通しまして、もし抜けているところがあれば、これは抜けていますがどうしたんでしょうかということを照会いたしまして、市区町村の方で、ああそこのところはうっかり落としましたということであれば、それは追加してもらうということになります。ただ、地方入管局長は市区町村長を指揮、監督する立場にございませんので、つくり方が悪いとかというようなことでいろいろ注意をしたり、指揮、監督するということはいたしません。  ただ、今の指紋の場合につきまして、送られてまいりました指紋が本来押されるべきであるにかかわらず転写してないというようなことがありますれば、これは何らかの間違いではありませんかと、先ほどの記載事項が漏れていた場合と同じようなことを指摘いたしまして、後から追送してもらうというようなことになろうかと思いますけれども、その写り方が、いわゆる指紋という形で送られてきている以上は、それ以上の何と申しますか、追及と申しますか、はできないものと考えております。  それからもう一つ、指紋の再押捺を、しからばどうしてもおかしい指紋が送られてきた場合に、地方入管局長、先ほど申し上げましたように市区町村長を指導、監督する立場にはございませんので、これにつきまして再押捺をさせるとか、すべきだというような指摘をできる立場にはございません。
  55. 千葉景子

    千葉景子君 それじゃ、ちょっとそれと関連をいたしますけれども、地方自治法百四十六条十二項の職務執行命令訴訟、これとこの指紋押捺命令との関連ですね、これについてはどう考えたらよろしいですか。
  56. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 外国人登録法外国人登録事務は機関委任事務といたしまして各市区町村長に事務をお願いしているものでございます。したがいまして、主務大臣、法務大臣でございますが、法務大臣のそういう命令に従わないという事務が市区町村の窓口で行われているとすれば、それに対しては、いきなり地方自治法の職務執行命令を発動するものではなくて、事務的にいろいろ指導し、相談をし、そして事務を遂行していくというのが通常でございますが、ぎりぎりのところどうしても自治体が主務大臣の命令に従わないということが仮にありますれば、それは今御指摘の地方自治法百四十六条の適用ということも理論的にはあり得るだろうというふうに思います。
  57. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、現在指紋押捺を拒否されているという方々がいらっしゃいますね。この中には、一度は指紋を押したことがあるという方と、それから一度も指紋を押していないという方といるわけです。今回の新法で原則として一回、二回目以降の押捺というのは必要ないということになったわけですけれども、この一度指紋を押したことがある、二度目以降の押捺を拒否しているという方に対して、これは何らかの配慮というのは考えていらっしゃいませんか。
  58. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 一つは、今度の法改正によりまして、指紋を押していない人につきましては次回の確認期間と申しますか、切りかえのための期間を短縮する措置が講じられております。しかしながら、理論的に現在指紋押捺を拒否している人すべてがその期間短縮の対象となるわけではございませんで、過去に一度、二度と押したことがありまして、つい最近の指紋押捺だけを拒否している人、これにつきましては過去に指紋を押したことのある人というふうになりますので、その人については期間短縮の対象とはいたしません。なり得ないと申し上げた方が正確だと思います。ところが、新規入国などをしまして、最初の登録から指紋の押捺を拒否している人が現在の拒否者の約一割ほどおります。六十名余りでございますが、この人たちにつきましては新法施行後に参りました再交付とか、引きかえ交付とか、切りかえ交付等に際しましては、そういった人の確認期間は通常の五年ではなくて短い期間にするという取り扱いを考えておりまして、一律に現在の拒否者すべてに切りかえ期間を短縮するという措置をとる考えはございません。
  59. 千葉景子

    千葉景子君 罰則についてはいかがですか。
  60. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) ただいま御指摘のありましたように、指紋の押捺に関しまして法の改正が行われたところでございます。しかし一方、改正法の附則でいわゆる経過規定が設けられているところでありまして、旧法の拒否者につきましての罰則の適用は「なお従前の例による。」ということにされているところであります。これらの趣旨を踏まえまして、また個々の事案のそれぞれの情状を踏まえまして、検察といたしましては適正な処理を図るものと思っております。
  61. 千葉景子

    千葉景子君 それから、附則の九でラミネート化機械というのは本来すべての自治体の窓口に置いて即日交付ができるようにする、こういうのが最もいいのではないか、こういうこともありまして、「当分の間」ということで附則が置かれております。これについては、「当分の間」というのは大体いつになっちゃうのか、よくこういう法案ではそのままずっとということもよくあるわけですけれども、この辺について解消あるいはめど、こういうものは考えていらっしゃいますか。
  62. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 具体的なめどというのは実は非常に難しゅうございまして、そもそもこれを「当分の間」というふうにいたしましたにつきましては、本来ならば市区町村の権限で調製も含めて作成するということでございましたのですが、全国三千五百余りの市区町村の窓口にすべて調製用の機器を配備するというようなことも、現在の財政事情のもとでは非常に難しいということがございます。  それから外国人居住状況というのも、これは非常に市区町村で偏っていまして、必ずしも現在直ちにすべての市区町村をカバーするようなことも必要がないという状況にございます。  そこで、ラミネートカードを調製する機器による調製事務については、第三者にゆだねるということにしてはどうかという議論がございまして、ただし外国人のプライバシーの保護の問題とか不正発給を防止しなければいけないというようなことで、地方入管が全国的規模で配置されている、設置されていることから、これは地方入管で行うことが相当であろうということでございました。  将来の外国人の居住状況とか技術革新とか財政事情等のいかんによっては、全国の市区町村の窓口でこの調製用機器を配備して調製事務を行うということも考え得るわけで、その意味で「当分の間」ということになっているわけでございますが、具体的にいつかというめどを御質問でございますが、今のような考え方で漸次市区町村の方にお願い——お願いというか、本来の姿に返すというようなことが考えられていくのではなかろうかと思いますが、まだ今は新法改正に向けての準備段階でございますので、新法を実施いたしましてその後の状況を見つつ、その辺のことは考えてまいりたいというふうに思っております。
  63. 千葉景子

    千葉景子君 これは具体的に自治体の方で、自分のところはこの機械を設置してやりたいというような話は既に出ておりますか。
  64. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) ごく一部の自治体では自費で購入させてくれというような、これは内々の相談でございます。ございますが、私どもといたしましてはそれは困ります、それはできませんということで現在お断りしております。
  65. 千葉景子

    千葉景子君 それは全体がそろうまでといいますか、個々では認めないというような方向ですか。
  66. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 地方入管で登録証明書を調製するということになりましたそもそもの理由が、全国三千数百の窓口がございます。その窓口で、例えば登録者の大変多い窓口は、仮に機械を置くということにいたしました場合に、隣の町、隣の村では人口が少ないために機械が置いてないということになりますと、外国人の多く住んでおるところの外国人はその日のうちに登録証明書がもらえるけれども、たまたまその町や村に人が少なければその日にもらえない、それから事務の手続も違ってくるという、そのようなアンバランスと申しますかが出てくるということは、これは各自治体が行政をする上において極めて困る。  しかも、国の機関委任事務でございますので、どの窓口も同じような取り扱いが必要であるということで、人口の多いところに機械を置くというのも一案ではあるわけですけれども、それは採用できないということで、結局どの市区町村にも置かないという取り扱いにしたわけでございますので、今仮に一部の窓口、自治体が自費でもいいから置かしてくれと言ってそこに置きました場合に、隣の町、村とのアンバランスが生じてしまうということで、先ほど申し上げましたように、これについてはそのことはまかりならないというような指導をしているわけでございます。
  67. 千葉景子

    千葉景子君 これはまだ幾つかお尋ねしなければならないところがあるかと思うんですが、一点、最後にちょっとお尋ねするんですが、附帯決議でも携帯義務、提示義務の規定運用については配慮していくということで、これは新法の施行後ばかりではなくて、やはり現在でも配慮しなければいけない問題だと思うんですね。ところが、大韓航空機事件などがありまして、その中で大変交通検問などに際してはその提示を求めないというような話もございましたけれども、非常に提示を求めることが多くなっているというような話も私の耳には入ってくるわけですけれども、この辺については、特にそういう事件などを契機に強化をされたというようなことはありませんか。
  68. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 昨年の九月のこの委員会におきまして、昭和六十年の五月の閣議で、法務大臣が正式に発言をしたという答弁が行われておりますけれども、昨年の九月の附帯決議を受けまして、日にちはちょっと正確に思い出せませんが、昨年の十月の初めに、前法務大臣が閣議におきましてまた同じような常識的な取り締まりをしてほしいという発言をいたしまして、国家公安委員長の方から、その趣旨に沿う御発言が閣議において行われたというふうに承知しております。  それでその後、大韓航空機事件等があったわけでございますが、それがあったから特にまた登録証名書の提示が従前と同じように、何と申しますか、厳格に行われているかどうかという点については私承知いたしておりませんけれども、しかし登録証明書のそもそもの携帯させるという目的が、在留外国人の公正な管理に資するためという目的でございますので、その範囲内において警察当局ないしはその他の取り締まり機関において登録証明書の提示を求めることは、これは職務上場合によっては当然の場合があるであろうと思うわけです。ただ、法務大臣の方から閣議において発言されましたのは、何と申しますか、むやみやたらにと申しますか、ちょっと言葉は悪いんですが、そういった運用はしないでもらいたいということでありまして、行政目的のため必要な場合は提示を求めることもこれはあり得るのではなくて、なければならないのではないかというふうに考えております。
  69. 千葉景子

    千葉景子君 基本的にそれは提示義務というのがありますから、合理的なこの法目的に沿ったものであれば、それは別に私もとやかく言うわけではありませんので、ぜひやはり乱用がないように、これは常々チェックをしてその辺の調査を怠りなくやっていただきたいというふうに思います。  それでは時間もございますので、もう一項目の方に移らせていただきたいと思います。  法務省で、まず在監者、刑務所などの在監者です、この日常の健康管理など、これの大元締めというのは矯正局の医療分類課というふうに受け取ってよろしいかと思うんですが、この在監者の健康管理に対しての基本的な姿勢、考え方、これはまずどんなように考えていらっしゃるでしょうか。
  70. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 在監者といえども人間でございますから、人間としてできる限り快適な生活、居住環境を確保したい、こう考えております。  ただ、問題はいろいろございまして、在監者特に受刑者というのは、これは一般社会で人を殺し、あるいは女性を強姦し、強盗し、人の物を盗み、大変悪いことをしたいわば市民の敵、社会の敵でございまして、それが刑務所に入ってきている。この人たちに対する居住環境を一般社会の人よりよくする、あるいはよくしないまでも同じに扱っていいのかどうか。とりわけ生活保護世帯あるいは学校、そういったところの居住環境と同じでいいのかどうか。むしろこれより下であるべきではないか、こういう考え方が当然ございます。  それから、そのほか刑事政策的に余りに受刑者の居住環境、刑務所の居住環境をよくすると、要するに懲りないんじゃないか。そういった刑事政策面からの考え方がございまして、基本的人権は守らなければなりませんけれども、必ずしも一般社会の基準よりは高いものではない、そういうふうに考えております。
  71. 千葉景子

    千葉景子君 そうすると、今の話を伺ってもよくわからないんですけれども、刑罰というのは刑務所収容する、身柄を一般社会から隔離をしていく、こういう形で自由刑というのが行われているわけですね。そうすると、医療というものもそれにプラスしてといいますか、やはり悪い人間であるから一般社会の人たちよりも下でいい、あるいは懲らしめというとおかしいですけれども、そういう側面もやはりその中に含まれて仕方がない、こういうことになるんですか。
  72. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 医療、直接的な医療に関しては必ずしもそう考えておりません。
  73. 千葉景子

    千葉景子君 すると、日常の居住環境といいますか健康管理といいますか、そういう面ではどうですか。
  74. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 例えば室内の温度がどうか、そういったようなことになりますと、必ずしも一般的な例えば小学校、中学校、そういったところと比べるとやはり若干健康管理上は落ちざるを得ない、こう考えております。
  75. 千葉景子

    千葉景子君 そうなると非常に難しいと思うのは、じゃどの程度ならいいんだと。これぐらい悪くてもこれはしようがないんだというような話にもなってくるわけですね。何らかのやはりこういうものも基本的な基準とかあるいは考え方といいますか、そういうものがやはり必要だというふうに思うんです。  それのためにお聞きをしてみたいと思うんですが、今回のこの予算でも、刑務所における保安体制及び医療体制充実を図るということで定員増加、こういうものも図られているわけですね。  私はちょっと予算書を見させていただいたんですが、医療費、医薬品とかも含めてのそれは一体どういう項目にどのくらい計上をされているんでしょうか。私にはちょっと見つからないものですから教えていただきたいと思うんですが。
  76. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 矯正医療体制充実というところがございまして、この中に例えば刑務所の項目で医療器機等の更新費二千三百八十七万五千円、医療器機等のリース料一億六千五百万、こういうふうにございます。その他外部医師の招聘手数料、臨床検査手数料、長期受刑者健康診断手数料等でございます。
  77. 千葉景子

    千葉景子君 これは医療備品費、こういう項目がございまして、これについてはお尋ねをいたしましたらば、医療用器具等の更新費というようなお話でございました。ここに例えば医薬品の総額なども含まれるわけですか。
  78. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 矯正医療体制充実経費の中に人当分費と申しますか、医療衛生資材費、これは一人当たり分になるわけでございます。それが単価が一・二%アップという形でもって人当分という形の中に入ると思いますので、言葉としては出てこないと思います。
  79. 千葉景子

    千葉景子君 この人当分というところに医療費といいますか、医薬品とかこういうものも含まれるということですか。
  80. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 医療衛生資材費ということになっております。医療衛生資材費がその中に含まれております。
  81. 千葉景子

    千葉景子君 すると、この人当分の中で医療関係費というのはどのくらいを占めるんですか。
  82. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) この人当分全体を私把握しておりませんが、人当分、つまり薬品その他の分の資材費として三億四千三百万円ほどが計上されております。
  83. 千葉景子

    千葉景子君 なるほど初めて私もわかりまして、ありがとうございます。  こういう在監者の医療なんでございますけれども、矯正統計年報などによりますと、入所後にいろいろやはり発病したり、それから経過が悪くなるというような病気もあるようでございますが、その中に腰痛とかぜんそく、こういうものもやはり入所後発病したりするというのの一つかと思うんですね。腰痛対策あるいはそれを予防する対策、これはどんなふうに基本的には行っていらっしゃいますか。
  84. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 刑法によって受刑者、特に懲役受刑者については定役に服するということで、いわば強制労働が法律上科せられることになっております。その労働がどうしても座業を伴う場合が多いわけでございまして、そういったことから腰痛に対する申し立てが比較的多いことは事実でございまして、そういうことを考えまして作業の合間に作業間体操、要するに業間体操と言っておりますが、腰痛にも効きます背伸びあるいは腰を回すとか、そういったような体操を一日のうち一回ないし二回やらしているようでございます。そのほかに、特に腰痛が激しいという訴えがある患者につきましては腰痛体操というものを一応各施設に本省の方から流しまして指導をさして行わせる、これは医者が必要と認めたときやらしている、そういうことでございます。
  85. 千葉景子

    千葉景子君 これは実際に、実態として腰痛体操というようなものが行われておりますか。
  86. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 行われていると思っております。
  87. 千葉景子

    千葉景子君 受刑者の皆さん方、それからもう既に出所をされたというような方々に話を伺いますと、ほとんど腰痛体操というのが実施されていない。そして、一日もう本当に一回ほんのわずかな時間そろってやる。そして、たまに作業の合間とかそれから日常の時間の中で少し伸びをしたいとか、それから体を動かす体操をしたいということであっても、こういうものは一切管理上だめだと言われているようなんですね。これについてはどうお考えですか。
  88. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 腰痛というのは、例えばレントゲンを撮ってはっきり原因がわかるようないわば病気の場合ですと、比較的これに対して治療もしやすいということで対処しやすいわけでございますけれども、単なる訴えだけ、本人からの申し立てだけの場合、これはいわゆる仮病の場合なのかあるいはそうでないのか、実は判断しかねる場合が多いわけでございます。先ほど申し上げましたように、医師がやはり必要と認めましたときには腰痛体操ということを行っているわけでございまして、必ずしも一般に、ただ腰痛を訴えたというわけでもって腰痛体操をしているという状況ではございません。
  89. 千葉景子

    千葉景子君 いや、むしろ腰痛というのはなってから大変なわけでして、むしろ予防するには、やっぱり人間というのは体を動かすとか体を伸ばすとか、こういうことが一番腰痛を予防するには効果的な方法だと思うんですね。これについては別に体を伸ばしたから、ちょっと体操をしたからといって施設管理上あるいは何か支障がございますか。
  90. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 受刑者のほとんどの者は、先ほど申し上げたように定役に服しているわけでございまして、その間いわば全身全霊というとちょっと大げさになりますが、作業に向かってすべての神経を集中して働いていただく、こういうことになっております。したがって、その間もし、例えば自由勝手に起き上がって体操をするとか、あるいはお互いに私語といいますか話し合いをするといったようなことになりますと、実際問題として定役に服するということが不可能になってくる、法の執行というのができないようになってくる。つまり、それぞれが勝手にいわば作業の手を休めて働かないということができてくる可能性がございます。そういうこともございまして厳しくやっているわけでございます。
  91. 千葉景子

    千葉景子君 私は私語をやりたいとか作業を勝手に休ませていいとか、別にそういうことを言っているわけじゃないんですよね。例えば一日一回ということではなくて、それだったら一日に何回か体操をやるとか、あるいはみんなそろって体を伸ばしたりそういうような時間をとるとか、別にそれで刑罰の本質をなくしてしまうというようなたぐいのものじゃないと思いますけどね、どうですか。
  92. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 先ほど申し上げましたように、業間体操というのは作業中の体操でございまして、そのほかにもちろん自由な時間がございます。自由な時間には、受刑者といえども運動場に出て自由にかつ気ままに振る舞うことができるわけでございまして、その間まあ屈伸運動を自分でする人もいるでしょうし、駆けっこする人もいる。そういうことでございまして、要するに刑務作業時間中のことを申し上げているわけでございます。
  93. 千葉景子

    千葉景子君 ちょっとこればかりやっているわけにいきませんので、ぜひこれはなってからよりもできるだけ腰痛を予防するという方向で考えるべきだと思いますので、考え直していただきたいと思うんですが。  もう一つぜんそくの問題があるんですね。これは非常にぜんそくになる患者さんが多くて、ぜんそくというのはやっぱり一番温度とか湿度とかあるいは換気とか、こういうものの影響というのは大きいと思うんですよ、転地療養というのが一番効くというふうに言われているくらいなものですから。そういう意味では、ぜんそくの患者さんあるいは在監者ですね、こういうものなど考えたときに、寒冷地について暖房を入れるというようなことなどは実施をされていらっしゃいますか。
  94. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 寒冷地においては暖房を入れるということは実施いたしております。
  95. 千葉景子

    千葉景子君 その寒冷地の暖房の基準、こういうものはございますか。
  96. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 全国的な基準は設けておりません。日本列島は北から南まで非常に長い国でございますし、それぞれの地方における生活状況というのも非常に違っておりますので、いわば地方の実情に合わせまして各施設の実情に応じた基準を設けさしております。
  97. 千葉景子

    千葉景子君 そうすると、どこが寒冷地に当たるからこういうところは暖房をきちっと入れるとか、あるいはそのときにはこれぐらいの温度を保とうとか、そういう基準というのは法務省としてつくっているということはないんですか。
  98. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 法務省としてはつくっておりませんで、各地の実情に応じまして、各地のまたその地方地方の生活程度といわば合わせるというとちょっと語弊があるかもしれませんが、各地方地方の実情に合わせて施設で決めてやっております。
  99. 千葉景子

    千葉景子君 じゃ、これを判断する責任者は施設の長ですか。
  100. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) さようでございます。
  101. 千葉景子

    千葉景子君 一つの例でございますけれども、宮城刑務所、ここはかなりのやっぱり寒冷地になろうかと思うんですけれども、ここの暖房の状況、実情を御存じですか。
  102. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 先日の予算委員会千葉委員の方からのお話がございまして、私どもの方で調査させて、近々書面による御回答を申し上げるつもりでおりますが、一応報告は受けております。
  103. 千葉景子

    千葉景子君 そうすると、それは近々その実情というのは御報告いただけますね。
  104. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 書面で御報告申し上げます。
  105. 千葉景子

    千葉景子君 それに基づきまして、また必要あらば質問させていただきたいというふうに思います。  ところで、ちょっと時間がなくなりましたが、一つお尋ねしたいと思いますが、在監者が病気などの場合、家族とかそれから代理人、弁護士、こういう者が病状照会などをさせていただくことがあるわけですけれども、これについては基本的にどういう対応をなさっていらっしゃいますか。
  106. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) まず一般論で申し上げますと、家族から被収容者の病状等について照会がなされ、あるいは弁護人から受任事件との関係で、弁護士法に従いまして被告人の病状について照会があった場合には、原則としまして説明を行っているのが実情であります。  ただ、病気にはいろいろな種類がございますし、照会に回答することが、何というか本人や家族にとって、これは弁護士の場合ですが、弁護士に対する照会に回答するのが本人や家族の意思に相反するような場合とか、あるいは関係者人権や名誉を侵害する、あるいは施設管理運営に支障を来す、こういうような場合には回答を控えることもあり得ます。
  107. 千葉景子

    千葉景子君 今のお話をお聞きしてわからないんですけれども、本人の人権とか家族の人権とかにかかわる、あるいは施設管理上問題がある。別に家族、代理人の受任関係での弁護士が聞くということで今お答えになったような内容、具体的にどういうことが問題になるんですか。
  108. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 具体的な実例ということは若干問題があると思いますが、いわば具体的な形で申し上げますと、例えばがんの患者といいますか、がんの受刑者について、これは家族の方からどうなっているという問い合わせがある場合には申し上げております。ただ家族の方が、弁護人が一緒になって働いていらっしゃるそのグループの方々、いろいろいらっしゃるわけですが、そちらの方に漏れるとそれがマスコミその他に漏れて好奇心の対象にされるので、家族としては言わないでもらいたい、こういう希望がある場合がありまして、そういう場合には家族にだけ申し上げて他には申し上げない、こういうこともあるわけでございます。
  109. 千葉景子

    千葉景子君 いや、今がんの例をお出しになりましたが、これは確かに他人にとか、それからむしろ本人に告知するかどうかという方が今問題になっているわけですよね。私が言っているのは、こういう問題ではなくて、普通に病状照会をしたというときにその家族あるいは代理人、弁護士であれば、あとは今のがんの問題は別として何か困るような、支障が出るようなケースというのは考えられませんね、どうですか。
  110. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 家族自体が例えば、これは地方によって違うと思いますけれども、法定伝染病などにかかったというようなことを非常に嫌がる場合もあると思いますし、家族には大体申し上げておりますけれども、家族の御希望で申し上げないとか、ほかには漏らさないでくれと、こうおっしゃる場合には、やはりなかなかその希望をあえて押し切ってまでも申し上げるということはできない、そういうことでございます。
  111. 千葉景子

    千葉景子君 ちょっと時間があれしますけれども、家族が聞きたいから聞いているケースを言っているんですから、別に家族が聞きたくないというケースを言っているわけじゃないんですよ。だから、まず家族が病状照会をしたらば、先ほどの特別ながんであるとか、そういうこと以外には原則として病状を知らせるということでよろしいですね。
  112. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) よろしゅうございます。
  113. 千葉景子

    千葉景子君 それをぜひ担当したお医者さんに説明をしていただきたいという要望なり、これは当然のことだと思うんですが、これについてはいかがでしょうか。
  114. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 説明をする場合に、医師の方から説明をするというのを原則としております。
  115. 千葉景子

    千葉景子君 それは実情もそうですね。
  116. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 説明する場合にはそうでございます。
  117. 千葉景子

    千葉景子君 それじゃ、家族からの病状問い合わせなどがあったときには原則として医師がその病状などを説明する、こういうふうに受け取らせていただきますので、それでよろしいと思いますが、いいですね。
  118. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 医師が直接説明するのを私どもとしても原則とさせているつもりでございます。
  119. 千葉景子

    千葉景子君 ちょっとまだございますけれども、時間でもございますので、また別な機会に質問させていただきたいと思います。
  120. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  121. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度総予算法務省所管議題とし、質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  122. 猪熊重二

    猪熊重二君 近年の大都市の地価異常騰貴は、単に地表の利用関係のみでなく地下の利用にも重大な支障を生じております。このような状況下において、先般運輸省が大深度地下空間を地下鉄道用地として利用するための特別立法をする方針を決めたようです。そこで、右の特別立法を含め地下空間利用に関連した法律上の問題点につき少々伺いたいと思います。  まず、現行の地下利用に関する法制度について一応伺ってみたいと思います。  建設省に伺いますが、建設省の所管事務のうち地下の利用に関連するものがあるでしょうか、あるとすれば簡単に概要を述べていただきたいと思います。
  123. 近藤茂夫

    説明員(近藤茂夫君) まず、都市計画法でございますけれども、都市計画法にはいろいろな制度が規定されているわけでございますが、大別いたしまして、都市施設に関する都市計画と用途地域などの土地利用に関する計画がございます。  都市施設に関する都市計画といたしましては、例えば地下鉄であるとか、あるいは道路、下水道、地下に設置されるものについても必要があれば都市施設として都市計画決定をすることが可能である。決定された場合には、その実行を担保するための都市計画制限が働くという仕組みになっております。しかし、土地利用に関する計画といたしましては、地下空間を専ら対象とする土地利用計画というのは制度的な規定はございませんので、一般的な形での地下における土地利用に関する規制はございません。
  124. 猪熊重二

    猪熊重二君 ところで、建設省が所管していない地下の工作物等があると思いますが、これはどの省庁が所管してどのような規制がなされているんでしょうか。
  125. 近藤茂夫

    説明員(近藤茂夫君) 私が答弁するのはちょっと限界があるわけでございますが、一般的に地下における工作物、これは大部分は道路とか公園等のいわゆる公共施設の地下空間に利用される場合が非常に多いわけでございます。そういったものについては道路法とかあるいは都市公園法等の公物管理法の占用許可という形で設置されることになりますので、そういった公物管理法が適用されることになります。  それから、これは建設省の所管法律ではございませんけれども、例えば地下工作物で電気、ガス、水道等の公益事業的なものにつきましては、それぞれ電気、ガス事業法等のいわゆる事業法、これを受けましてその省令等で定められておる設置基準等に従って適用されている。ただ、一般的な形では、私の知る限りで地下における土地利用規制というのはないのではないかというふうに考えております。
  126. 猪熊重二

    猪熊重二君 建設省にお伺いするのが妥当かどうかわかりませんが、要するに地下における工作物の利用は、地表における工作物の利用と異なっていろいろ問題があると思いますが、指摘されている問題点としてはどのようなものがありましょうか。
  127. 近藤茂夫

    説明員(近藤茂夫君) 地下の工作物についての特色という御質問でございますけれども、一番大きな特色というのは、土地利用の状況が外部から目で見ることができない。それからまた、地下の工作物というのは一たん使われますとなかなか変更しにくいという意味で固定性が強いのではないか。さらに安全性等の観点から特別の対策が必要になるんじゃないか。こういったことが地下における工作物の一つの特色ではないかというふうに考えております。
  128. 猪熊重二

    猪熊重二君 次に、国土庁にお伺いしますが、先ほど建設省にお伺いしましたのと同じように、国土庁の所管事務のうち地下の利用に関連するようなものがあるでしょうか、あったら概要を簡単に述べてください。
  129. 川口融

    説明員(川口融君) お答え申し上げます。  国土庁の所掌の事務におきまして直接地下について明定をしているものはございません。しかし、国土庁は国土の適正な利用に関することにつきまして基本的な政策及び計画を企画し、立案し及び推進をする、それに関連いたしまして必要な調整を行うというふうになっているわけでございます。  実際には、国土の利用に関しまして近年地下利用の需要というものは大きくなっているわけでございます。したがいまして、この国土ということにつきましては広く関連をいたしますと、そういう地下も一般的には含まれるというふうに考えております。  ちなみに、昨年六月に決定をされました第四次全国総合開発計画におきましては、都市環境の整備の一環ということで地下の問題についても触れているわけでございます。しかしながら、冒頭申し上げましたとおり、私どもの事務は基本的な施策についてのものでございます。
  130. 猪熊重二

    猪熊重二君 現在、運輸省が考えている大深度地下鉄道のような建設は、国土庁設置法四条九号の「国土の利用に関する基本的な政策及び計画」というふうな中に該当すると思われますか、どうですか。
  131. 神谷拓雄

    説明員(神谷拓雄君) お答え申し上げます。  大深度地下鉄につきまして詳しく承知しておりませんので何とも申し上げられませんが、一般的に国土庁設置法の第四条第八号に総合的な交通施設について、国土庁は企画、立案及び調整権限を有するというふうなことを言われておりますので、地下鉄はその鉄道の一部をなすものでございますので、そういう意味で国土庁として関与する余地はあろうかと思います。
  132. 猪熊重二

    猪熊重二君 次に法務省にお伺いします。  民法二百七条について伺いますが、土地所有権はその土地の上下に及ぶと規定されていますが、この上と下について、限界があるかどうかについてどのようにお考えでしょうか。
  133. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 民法は「法令ノ制限内ニ於テ其土地ノ上下ニ及フ」とだけしか規定をいたしておりませんが、これは土地所有者の利益の存する限度において地上または地下に及ぶというふうに一般的に解釈をされております。そういう意味では限度があるわけでございますけれども、それではその限度はどれだけであるかということを一律に特定することは、これはなかなか困難なことでございます。
  134. 猪熊重二

    猪熊重二君 今おっしゃった利益の存する限度においてという限界があると、これは二百七条の解釈の問題としてそのように通常言われているということ、これは私もわかりますが、その「法令ノ制限内ニ於テ」という、この「法令」というものは現在規定されておりましょうか、おるとすればどんなものがありましょうか。
  135. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 一例を挙げますと、鉱業法において、国は、まだ堀採されてない鉱物について、これを掘採、取得する権利を賦与する権能を保有いたしておりまして、これを実際に鉱業権者に賦与し、掘採されてない鉱物はその鉱業権によるのでなければこれを掘採し得ないというふうに規定をされておりますので、これはそういう意味におきまして、土地所有権に対する法令による制限であるというふうに解することができようかと思います。
  136. 猪熊重二

    猪熊重二君 次に、同じ民法の条文で、民法二百六十九条ノ二の区分地上権についてお伺いしますが、この区分地上権において地下の深度について限定しておりますか。
  137. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 区分地上権は、所有権の包含しております土地を利用する権能を付与するものでございますから、区分地上権を設定することができる範囲は土地所有権の及ぶ範囲と一致する、同じであるというふうに考えられます。先ほども申し述べましたように、土地所有権の範囲は所有者への利益の存する限度で地下に及ぶというふうに解釈をされておりますので、区分地上権を設定できる範囲もこれと同じと考えてよろしいかと思いますが、これはやはり一律にどの範囲、程度までというふうに申し上げることはなかなか難しい問題でございます。
  138. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、区分地上権について民法の上では具体的に何メートルまでだとかという限定はないと。しかし、先ほどの利益の存する限度においてという、所有権の効力の範囲内に比例して区分地上権の深さというか、深さについても限定というか性質上の限定があると、こう考えられる、こういうふうにお伺いします。そうすると、利益の存する限度というのは、時代や科学技術の進歩によって利益の存する限度というものが変動する可能性はあると思いますが、いかがでしょうか。
  139. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 仰せのとおりだと考えます。
  140. 猪熊重二

    猪熊重二君 ところで、この区分地上権は工作物を所有するためということを要件としております。そうすると、この工作物を所有するという目的以外に区分地上権の設定は認められないのかどうなのか。あるいは現に工作物を設置することはしないけれども、単に地下空間を空間としてだけ利用しようというふうな場合にも区分地上権を設定し得るのかどうか、いかがでしょう。
  141. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 法律に工作物を所有するためというふうに規定してございます。これは物権でございますので、やはりそのことが要件になろうかというふうに考えます。
  142. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、工作物所有の目的はあるけれども、まだ現に工作物を現実にはつくっていないというふうな場合にも、将来の目的さえあれば区分地上権の設定の合意ないしそれに基づく区分所有権登記等は有効とお考えになりましょうか。
  143. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 合意でもって工作物設置の目的を定めて区分地上権を設定したのでございますれば、それは区分地上権として成立いたしておりますので、現実に工作物を設置しているかどうかということはこの際有効、無効には関係ないというふうに考えます。
  144. 猪熊重二

    猪熊重二君 今まで建設省、国土庁、法務省に何か前提事項的なことをお伺いしてきたわけですが、これをお伺いしたのは、運輸省の去る三月十一日発表された大深度地下鉄道の整備に関する調査研究会の研究報告についていろいろ問題があるのじゃなかろうかと考えて、これをお伺いする前提としてお伺いしたわけです。運輸省は、いわゆるトンネル敷設権に関する立法措置を検討したいというふうなことを言っておられます。私は、このトンネル敷設権に関する特別立法が直ちに賛成とか直ちに反対とかという問題じゃないんですが、運輸省の現在までやってきたことについて少々問題があるのじゃなかろうか、こう考えるわけです。  先ほども、国土庁としては運輸省が考えている大深度地下空間を通るトンネルについては知らぬとおっしゃっている。国土庁も知らぬ、建設省も知らぬ。法務省内容についていろいろ協議されたというふうな話ですが、こんなことでこの問題が果たして社会的に妥当に立法するんだろうか、このように考えるのでお伺いします。  まず新聞報道によれば、この報告を作成するについて法律的側面については法務省と協議したというふうに記述されています。  法務大臣に伺いますが、法務省はこの研究会の研究及び報告についてどの程度関与しておられるんでしょうか。また、この報告内容のうち、法律上の意見について法務省としてはそのとおりだというふうな同意ないし承知をしておるんでしょうか、お伺いします。
  145. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 運輸大臣から、大深度の地下に地下鉄を建設したいと、そのためには法律的な問題はどういうところにあるだろうかという話がありまして、これは法務省所管の民法の問題と大いに関係があるだろう。したがって、そういう法律をつくるのでありましたならば、これは行政当局がその必要な行政を遂行するために法律をつくるようにすべきであって、したがって、地下鉄でありましたならば運輸省が研究し作成すべきである。その途中において民法とのかかわりが大いにあるわけでありまするから、法務省の方へ相談されるのがよろしかろう、こういうようなアドバイスを与えておいたわけであります。  その内容につきましては、私はよく承知をしておりませんけれども、特に研究会の内容も何も相談がありませんのでしておりませんが、あるいは事務当局間において何らか相談があったかもしれないものと存じております。
  146. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、法務省で運輸省とのいろんな交渉に直接関係し、内容について詳しく知っておられる方はどなたなんでしょうか。
  147. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 運輸省で進められておりました研究会の進行の過程におきまして、運輸省の事務当局の方から法務省の事務当局の方に協議を求められまして、当省の所管事項に関する部分、すなわち民法とかかわりを持つ部分につきまして意見を事務当局の方から申し上げております。
  148. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、運輸省が発表した報告内容の中の法律的側面に関する見解というのは、法務省の見解と同じであると伺ってよろしいわけでしょうか。
  149. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 公式に同意を申し上げたとかというようなことではございませんけれども、意見を申し述べる過程で申し述べました考え方は、おおむね報告書の中に盛り込まれているというふうに考えております。
  150. 猪熊重二

    猪熊重二君 それでは、少し具体的に大深度地下空間ということの概念についてお伺いします。  運輸省はこの大深度地下空間をどのような空間、どのようなものとして考えておられるのか、簡単で結構ですから一口で説明していただきたいと思います。
  151. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 先ほど来先生が引用しておられます報告書の関係、ちょっと確認のために申し上げますと、御承知のとおり、大都市圏の鉄道につきましては役割、現状からその整備の緊要性が叫ばれているところでございますけれども、非常に空間的制約が大きいとか都心部の地価の上昇が大幅であるというようなことで、用地の取得が極めて困難で整備に多大の時間が必要となっておる……
  152. 猪熊重二

    猪熊重二君 聞いたことだけ答えればいいですよ。
  153. 金田好生

    政府委員(金田好生君) それを踏まえまして、運輸省としまして委員会を運輸経済研究センターの場へ設置をいたしまして、専門家の御意見を拝聴したところでございます。  そこでの取りまとめによりますると、具体的な中身につきましては詰めてまいる必要がございますけれども、この大深度空間につきましては、形式的に所有権が及んでいてもほとんど地権者らの利用の可能性のない地下空間と、このように整理されておるところでございます。
  154. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、運輸省はこれを立法化しようとした場合に、大深度地下空間というものについて地域的な限定、制限というふうなものは考えておられるんでしょうか。
  155. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 今申し上げましたようなことが発端になりましてこの件の御検討をお願いしたと、こういうことでございますので、大深度地下空間を具体的に設定していく場合におきましては、地域的な限定、大都市圏を中心に恐らく検討が進められる、このように理解しております。
  156. 猪熊重二

    猪熊重二君 その場合に、大都市圏と言うけれども、広さとしてトンネル敷設権に直接必要な範囲ぐらいを指定するつもりなのか、それとも例えば行政区画的にある範囲を限ってやるつもりなのか、その辺はどうなんでしょう。
  157. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 先ほど来御説明しております報告書の中身におきましては、大深度地下空間というものにつきましては、地域ごとの地下の利用状況その他を踏まえて考え方としては整理すべきである、こういうことでございますが、具体的な大深度地下空間を利用する今度は立場というものが一方でございますので、それはかなり個別、具体的な線的なものになろうかと、このように理解しております。
  158. 猪熊重二

    猪熊重二君 それから、今立法に当たって考えておられる地下の深度というものは、どのくらいを考えておられるのか、またその深度というのは地域ごとによって具体的に変更するとお考えなのかどうか。
  159. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 大深度地下空間の深さの点でございますが、今後法制化の検討に当たりまして具体的に定め方を検討してまいりたい、こう思っておりますが、一般的には基礎を含めた地下の建物利用の実態、あるいは支持地盤などの地質の状況によりまして地下利用の状況がまた変わってまいると思いますので、地域の実情に合わせた形で設定をしてまいりたい、このように考えております。
  160. 猪熊重二

    猪熊重二君 しかし、おおよその具体的な深さというものは全然まだ考えておられないんですか。    〔委員長退席、理事鈴木省吾君着席〕
  161. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 報告書の中におきましては、主として首都圏の地質の状況、それから地表からのもろもろの施設の利用状況をいろいろ整理をしておるわけでございますが、まあ一口に首都圏と申しましてもかなり地質に、特に西側、東側大きな違いがございますので、深さにつきましては、その地域によってそれぞれ違いが出てくるのではないかなと、このように考えておるところでございます。
  162. 猪熊重二

    猪熊重二君 参考までに現在の都内の地下鉄の最深度というか、一番深い深さですね、千代田線、有楽町線、半蔵門線、都営八号線のそれぞれについてどのくらいあるか、ちょっとお答えください。
  163. 金田好生

    政府委員(金田好生君) もちろん今先生おっしゃった路線によって深さの違いがございますが、具体的な地名で申しますと、銀座線で三越前、深さ十五メートル、丸ノ内線が霞ケ関で十三メートル、日比谷線が霞ケ関で二十メートル、これはいずれも駅部でございます。それから東西線が木場三丁目で二十五メートル、千代田線が国会議事堂前で四十メートル、有楽町線が永田町で二十九メートル。それから都営に参りまして、浅草線で高輪台二十一メートル、三田線の三田が二十八メートル、新宿線の新宿が二十九メートル、以上でございます。
  164. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が聞いた中で、半蔵門線と都営八号線はお答えいただきましたか。
  165. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 失礼いたしました。営団半蔵門線でございますが、大手—神保間で四十二・五メートルというところがございます。
  166. 猪熊重二

    猪熊重二君 ところで、今お話しになったように、大深度地下空間というふうに指定された場合、現に地下鉄が通るとか通らぬとかということを抜きにして、所有者に対する所有権の制限としてはどのようなものが、所有権が具体的に制限されるとお考えでしょうか。それとも指定はされたけれども、利用するのは勝手でござるということのお考えでしょうか。
  167. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 大深度地下空間に指定された場合の地権者のその地下における使い方の問題でございますが、私どもはここで報告書としては、ほとんど利用の可能性のないということを前提に置いて深さを設定してまいるということに相なろうかと思いますが、そういった場合におきまして、仮に将来画期的な技術開発その他で利用の可能性が出てきた場合は、それはそれで当然見直しということになるのではなかろうかと、このように理解しております。
  168. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が申し上げた質問は、そういうお答えとは無関係です。私が申し上げたのは、地域として指定された場合には、地下鉄が通ろうと通るまいと、その指定された地域においては、ある深度以下の土地についての利用は制限されるんですか、それとも具体的に地下鉄でも通らぬ限りは自由勝手に利用できるんですかと伺っているんです。
  169. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 失礼いたしました。この点につきましては、先ほど御報告いたしましたような報告書を受けまして、私どもの方で立法化のための検討をいろんな角度からこれから進めてまいりたい、こういう状況でございますので、今先生御指摘の点につきまして、この場で明確なお答えをする状態になっておりませんけれども、大深度地下空間が設定されたからといって、すべて地権者の利用の可能性をそれをもって排除してしまうということにはならないのではないかなと、とりあえずそのような感じを持っておるところでございます。
  170. 猪熊重二

    猪熊重二君 今の運輸省の大深度地下空間に関する構想について法務省にお伺いします。  今のような内容だとした場合に、所有権の権利内容が地域的にばらばらに制限されることについて憲法上、平等原則上何ら問題はないとお考えでしょうか。
  171. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 土地の地下利用権の制限につきましてはそのような制限をする必要性、あるいは公共性等の事情をいろいろ考慮して地域が定められるものと考えられます。したがって、これは必ずしも全国で一律に同じような制限が施されなければならないというものではないというふうに考えております。
  172. 猪熊重二

    猪熊重二君 今度は地域でなくして、同じ場所でもある地域によっては例えば三十メートル、四十メートルのところを地下の地上権として利用しようとすれば、土地の更地価格の一割、二割、三割という金銭が入ってくる。    〔理事鈴木省吾君退席、委員長着席〕 ところがわずか十メートル、十二、三メートル違っただけで全くそのような利益というか、金銭的価値というものをゼロにしてしまうということについて、やはり憲法の平等原則上何ら問題はないとお考えでしょうか。
  173. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 運輸省のお考えになっておられる大深度地下鉄は、土地の所有者による利用がほとんど考えられない、その利用の可能性が大変薄いと思われる非常に深い地下のことを考えておられるように承知をいたしております。そうなりますと、深さによって補償がある場合とない場合とが生じるのは不都合ではないかという先生の御見解のようでございますが、土地の利用の利益の有無、大小、あるいはその利用の可能性の大小によってそのような差異が生じてくることは当然考えられることでございまして、必ずしもそれは不都合なことではないというふうに考えております。
  174. 猪熊重二

    猪熊重二君 私は、非常にこのような立法は問題がある、こう考えているんです。  そこで、運輸省にお伺いします。運輸省としては、このようなトンネル敷設権に関する単独の立法を現在考えておられるんでしょうか。
  175. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 先ほど申し上げましたとおり、先日報告を受けましてこれから立法化作業に入ってまいりたい、このように考えておるところでございますので、その法形式あるいはその法律の中に盛り込まれるべき事項その他につきましては今後検討さしていただきたい、このように考えております。
  176. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が聞いているのは、単独の立法を予定しているのかどうかと聞いているんです。
  177. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 運輸省サイドでというお話でございますれば、私どもとしましては、運輸省という立場におきまして新しい単独の新規立法になるか、あるいは既存の私どもいろいろ法律がございますけれども、その一部改正という形になりますか、それは今後検討してまいりたい、このように考えております。
  178. 猪熊重二

    猪熊重二君 ただ、現在国民の意識として所有権は地上、地下に全面的に及ぶと国民が考えているわけです。このような国民の考えを前提にしてみた場合、たとえ四十メートル下だか五十メートル下だかわからないけれども、その辺のものが、全然所有権の客体とならないのと同じような効果を生ずる国民権利に関する重大な問題であると私は考えるわけなんです。国民の意思あるいは世論というか、こういうものについて運輸省はどのようにお考えですか。
  179. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 御指摘のとおり、所有権につきましては、これは憲法、民法に保障されたものでございますので、私どもはそういった法制の中におきまして、こういう新しい考え方が導入できないかということにつきまして御検討いただいたわけでございます。これから立法の作業に入ってまいりますが、その過程におきまして、こういった法令担当の部局とも十分御相談をさせていただきながら、御指摘の点を踏まえまして検討してまいりたい、このように考えております。
  180. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が申し上げているのは、こういう重大なことをやる研究会と称するものの委員の方々の中に、国民の本当の意見を聞くための方々が一人でもおられるかということを前提にして、企業の関係者だとか学者だとか、この工事をなすに関連する業界だとかこのような方々を委員にして、実際の国民の意向というものがどこにあるかということが全然考慮されてない委員会の結論を前提にして、今後立法をやるとした場合にどれだけ国民の意思を確認するかという、立法作業における運輸省の基本姿勢を伺っているんです。
  181. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 委員の構成につきましての御指摘でございますが、いろいろ法令、民事、あるいは行政、土地、御専門にするそういった方々にお集まりいただきまして、法令面、あるいはそれ以外さらに技術的な面、経済的な面につきましての考え方の整理をしていただいた、こういうことでございます。一般国民の意向の存するところにつきましても、今後いろんな形で検討の中に入れてまいる必要があろうかと、このように考えておるところでございます。
  182. 猪熊重二

    猪熊重二君 ところで、同じに運輸省にお伺いしますけれども、地下を利用するのは何も地下鉄道だけではなくて各種のものがあるわけです。例えば、道路もあるだろうし、あるいは各種の物ないしいろんな物資の輸送のための機関もあるだろうし、あるいは生活的な側面で言えば上下水道の布設というふうなこともいろいろあるわけです。何も運輸省が考えている地下鉄だけが公共事業じゃない。他の公共事業との整合性、調和、そのようなことについてはどのようにお考えですか。
  183. 金田好生

    政府委員(金田好生君) 先ほど来申し上げましたような、鉄道整備の緊要性を背景にいたしまして御検討をいただいたわけでございます。私どもとしては、こういった地下構造物による地下利用の今後のあり方につきましては、関係方面と十分協議をさせていただきながら、運輸省としては先ほど来申し上げておりますような緊要性から、なるべく早い時期に法制化の方向で進めてまいりたい、このように理解しております。
  184. 猪熊重二

    猪熊重二君 建設省と国土庁にそれぞれ同じことをお伺いします。この研究会の研究ないし報告について、この両省庁は何らかの関係があったんでしょうか。この研究会の報告内容はそれぞれの省庁の所管事務内容と何らかの関係があるでしょうか。それから今後の運輸省の考えている単独立法についての所見、この三点をそれぞれの省庁に伺いたい。
  185. 近藤茂夫

    説明員(近藤茂夫君) まず第一点でございますけれども、私どもはその報告については報告が出た後、事務的に説明をいただいております。  それから、第二点の建設省の事項関係するかどうかという点でございますが、直接関係するかどうかは別にいたしまして、先生ただいま御指摘があったように、大深度地下を利用するものについては必ずしも地下鉄だけではなくて、鉄道であるとか、あるいは部分的には都市河川、現在地下につくっている場合もございますので、そういった観点から非常に関心を持っておりますし、また今後特に大型の公共施設、これが地下利用といった点に対する需要が高まってくるということも予想されますので、実は私ども地下利用のマスタープランとか、全体的な総合調整が必要であろうという観点から、そういったことについても検討しておりますので、非常に深い関心を持っております。こういった観点から今後検討していきたいと考えております。
  186. 神谷拓雄

    説明員(神谷拓雄君) お答え申し上げます。  まず、第一点でございますけれども、研究会に参加しておりません。  第二点目でございますが、内容を詳しく把握しておりませんのでよくわかりませんけれども、先ほども総務課長の方から申し上げましたように、四全総におきましても「空間の高度利用」ということで、地下空間についても高度利用を図っていくべきだというようなことが書いてございます。したがいまして、そういう観点から、今後関連が出てくる場合にはいろいろ運輸省などとも御相談申し上げていきたいというふうに思っております。  また、単独立法についてどう考えるかということにつきましては、やはり内容を見てからでないと何とも申し上げられません。
  187. 猪熊重二

    猪熊重二君 法務大臣に伺います。  要するに、これだけの重要な国民権利に関する問題、土地所有権というのは国民にとっては命とどっちが大切かといえば命が大切だけれども、命の次に大切なんです。この土地が下の方で権利がすうっと消えていくかどうかというふうな問題、こういうふうな重大な問題をいろいろ検討するについて国民世論の、先ほどから申し上げておりますけれども、国民の意思であるとか、国民権利保全をどうするかとかいうことについて法務省と運輸省で協議してこういうものをつくったとすれば、私は法務省の態度として余り納得できない、この点について御意見を伺いたいことが一点。  もう一点は、先ほど申し上げましたように、トンネルつくって地下鉄を走らせることも重要だけれども、それ以外に地下の全体的、総合的な開発というか、利用計画というか、こういうものを国として総合的にやる必要があると考えます。これについて、法務大臣として各種関係行政省庁との統一的な結論を出すための組織、例えば関係閣僚会議というのが妥当なのかどうか知りませんけれども、そういうふうなことについてどうお考えか。  以上二点、法務大臣にお伺いします。
  188. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) これは私がやろうとしておることではございません。先生は法律の専門家でございまするので、もう釈迦に説法でございまするけれども、財産権の内容は憲法二十九条二項によりまして、公共の福祉に適合するように法律で定めることになっておりまして、また民法二百七条は、「土地ノ所有権ハ法令ノ制限内ニ於テ其土地ノ上下ニ及フ」となっておりまするので、憲法二十九条の趣旨に沿った法令によりまして所有権がどこどこまでも及ぶということではないだろう。  そこで、運輸省において運輸行政をやられる上において必要であれば運輸省でお考えになり、そしてまた、それを総合的に関係しておりまする各省で十分協議いたしまして考えていけばいい問題である。法務省だけが協議に応ずるというものではないわけでございまするので、そういう広い見地から国民の世論も考えながら決めていけばよろしい、かように考えておるところでございます。
  189. 猪熊重二

    猪熊重二君 運輸省に私は水をかけているわけじゃないんです。水をかけているわけじゃないんだけれども、もう少し国民の意向を聞くということ、総合的な開発計画というものを内閣自体として検討されたらどうだろうか、こういうことで申し上げているわけです。御了解をお願いしたいと思います。  次に、予算について時間がある限り二、三点お伺いしたいと思います。  いただきました各自明細書の八ページに、法律扶助事業補助に必要な経費というのがございます。この法律扶助事業費補助金として七千二百万円という金額が計上されておるわけです。この法律扶助事業の補助金七千二百万円は、この数年間金額的にはどのように動いてきているのか、お伺いしたいと思います。
  190. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) ただいまお尋ねの法律扶助に対する補助金の額は、昭和五十八年度以降七千二百万円ということで推移しておりまして、金額の増減がございません。
  191. 猪熊重二

    猪熊重二君 法務省としては、この予算増額については考えて、また大蔵省とも折衝しているというふうなことはあるんでしょうか。
  192. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) ただいま補助金につきましては、一般的に削減政策がとられているやに伺っておりまして、私どもといたしましては、予算折衝の都度前年同額をまず確保していただきたいということを大蔵当局に強くお願いしておりまして、その御理解をいただいて五十八年以降数年間削減を勘弁してもらっているという状況でございます。
  193. 猪熊重二

    猪熊重二君 私も不勉強ですけれども、諸外国においてはいわゆる法律扶助の補助金と言うのか、何と言うか名前はわかりませんけれども、日本の法律扶助協会に対する国の補助金のような性質の金がどの程度出ているのか、わかればお教えいただきたいと思います。
  194. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 私ども文献などで承知している限りでございますけれども、アメリカ、イギリス、フランスあるいは西ドイツといった欧米国におきまして、こういう法律扶助に関する制度が設けられているようでございます。その形態は、国が経営するものだとか、あるいは法人が経営するとかいろいろあるようでございますが、それに国家から支出されております費用というものは相当の額にいずれも上っておるというように文献で承知いたしております。  現在の具体的な数字は把握しておりませんけれども、過去のある時点における資料によりますと、現在の我が国の支出金額と比べますと格段に多いように承知しております。
  195. 猪熊重二

    猪熊重二君 この法律扶助事業というのは、御承知のとおり、民事上の権利を主張しようとする場合において、訴訟費用あるいは弁護士費用がない人に対する扶助事業なんでありますから、幾ら権利があるということになっても、実際にその権利実現のための手続の金銭がなくて泣き寝入りということでは、権利と言っても絵にかいたもちになるわけです。  今人権局長がおっしゃいましたように、私も数字は具体的には覚えておらないんですけれども、日本のこの七千二百万なんというのは諸外国で出している金額に比べると本当にスズメの涙みたいに僅少な金額なんです。ですから、この辺の諸外国の例も含めて法務大臣として今後、ことしはやむを得ぬとしても、次年度からにおいても、法律扶助事業に対する補助金の問題について増額に御努力いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  196. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 御承知のように、この法律扶助のために財団法人法律扶助協会がありまして、そこに対して毎年国は補助をしておるわけでございます。それで、実際は法律扶助協会から三億円ぐらいの補助が行われておるわけでございまして、大体今までのところはこれで賄っておれるという状況でございます。しかし、法律の扶助事業は貧困者に対しまする訴訟援助でありまして、裁判を受ける権利保障する、そのためにはまことに必要なものであります。したがって、今後とも真に扶助を必要とする者が救済をされるように十全の努力をしてまいりたいと存じます。
  197. 猪熊重二

    猪熊重二君 時間がございませんので、質問通告した項目をちょっと飛ばしまして、いただきました各自明細の、ページがちょっとわかりませんが、要するに宗教謝金、刑務所において千八百八十万円、少年院において三百五万円の支出が計上されておりますが、これの内容はどういうことなんでしょうか。
  198. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 宗教謝金というのは宗教教誨護に関係するわけでございますが、宗教教誨は矯正施設収容されている者の信教の自由を保障する観点から、その宗教的欲求の充足を図るために、民間の篤志家であります教誨師が希望する被収容者に対して行っているものでありまして、宗教謝金はそれらの教誨師さんたちに対して支払われるもので、内容は宗教教誨に対する対価というより、おいでになる交通費などの実費であるというふうに考えております。
  199. 猪熊重二

    猪熊重二君 服役者あるいは少年院に入っている少年たちに信教の自由があって、いかなる宗教行為をするか、そのようなことはもちろん重要なことです。しかし、特定の宗教宗派の聖職者、牧師さん、神主、僧侶を矯正施設に呼んできて受刑者もしくは入所している少年に宗教活動をするということについて、憲法上何ら問題はないとお考えでしょうか。
  200. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 憲法で、この信仰の自由に関連する条文と申しますと、憲法二十条それから公金の支出の関係で憲法八十九条の問題があろうかと存じます。  ただ、憲法二十条の定めている政教分離、非常にこれは厳格なものでございますので、実は戦前におきましては教誨師は国の公務員というような形でもってやっておりまして、新憲法が制定施行されました際、その部分は切り離しまして全くのいわば民間ベース、ボランティアベースで現在行っておりまして、この関係については憲法二十条の違背はないと信じております。  また、謝金という形で実費を支出いたしておりますが、これはいわば入っている人たち、被収容者たちが病気になりまして、そして国の費用でもって近隣の病院で面倒を見てもらうというようなこともございます。それと同じような形の実費の性格で憲法八十九条の違背の問題はないだろうと、こう考えております。
  201. 猪熊重二

    猪熊重二君 それは大問題です。病気になった人を病院に入れていく、治療させる、そのための金を国が負担するのはそれは当然です。人を取っつかまえて入れておいて、病気になってほっておくわけにはいかぬでしょう。それと特定の宗教宗派の牧師なり僧侶を連れてきて、教誨活動をやらせてそれに対して金払うのは同じだといったら、憲法二十条で言っている、国はいかなる宗教活動もしてはならない、あるいは公金は宗教上の組織の便宜維持のために支出してはならないというこの規定と全く矛盾してくるじゃありませんか。あなたが今おっしゃった病院に対する治療費と同じだということだったら、これは大問題ですよ。
  202. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 信仰の自由というのは、いわば私どもの考えでまいりますと、心の病、それを被収容者が治していただきたいということで、教誨師さんに来ていただいて心の病を治していただくわけでございまして、その関係の実費、これはボランティアでございますので、やはり実費だけはお払いしたい、こういうことでございます。
  203. 猪熊重二

    猪熊重二君 私は今まで札幌だったかな、刑務所へ行ったときにこの問題をいつも聞いている。そうすると、刑務所長の答えは篤志家がただでいろいろやってくれるのですと、こう言っておられたんです。だから、私はそうだと思っていたんです。今回予算書を見たらこれだけの、千八百八十一万七千円という金額が計上されている。これが日当だかあるいは実費弁証だか交通費だか知らないけれども、特定の宗教宗派に対する便益の供与ということになぜならないんですか。それで、私は、中に入っている人の信教の自由はどっちでもいいなんて言っているのじゃないんですよ。中に入っている人が宗教書物を読みたいとか、宗教的礼拝行為をしたいとか、こういうことは大いにやってもらったら結構、やる権利がある。また、自分が自分の銭でこういう牧師に会っていろいろ話を聞きたい、こういう坊さんに会っていろいろ話を聞きたい、それも信教の自由です。国がなぜ銭を出して特定の牧師や坊さんを連れていって本人に宗教活動、宗教行為をさせるのかということを聞いているわけです。いかがです。
  204. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 国がさせているということよりは、むしろ機会を与えるという意味ではあるいは国がさせているという、そういうふうな理解の仕方もあるかもしれませんが、入っている人たちが宗教的ないろいろなお話を伺いたいということでもって外部からボランティアで来ていただいているわけでございます。教誨師がおいでになる教誨師総数というのは年間、昭和六十二年の実績でまいりますと一万六千回でございまして、それを予算額で割りますと一回当たりせいぜい千三百円余り、実費に満たないような額でございまして、少なくとも謝金とかそういったような性格のものではない。少なくとも国がそういう宗教活動をしているものではないというふうに私どもは理解しております。
  205. 猪熊重二

    猪熊重二君 この問題は、また後日いろいろ検討させていただきます。  最後に、時間がありませんので概括的に法務大臣に見解をお伺いしたいと思います。これは、今申し上げた刑務所受刑者あるいは少年院に入っている人間、この人間がいろんな作業をするわけです。その作業によって受刑者に支払われる金額が十二億九千六百万円、少年院で仕事をしている少年に払われる金が千四百七十万円。要するに両方合わせておおよそ十三億円の金が受刑者ないし少年に支払われております。およそ十三億円です。これに対して、この作業によって国に入ってくる金が百四十四億二千六百万円あるんです。もちろんこの百四十四億二千六百万円という中には、原料費や機械の損料とかそういうものも考えなきゃならぬ問題ではありますが、いずれにせよ百四十四億の収入があって十三億だけ出している、こういうふうなことについてどのようにお考えか。  私は、刑務所のあるいは少年院受刑者ないし少年の仕事によって国がもうける筋合いはない。むしろそういう金は、原価計算はどういうふうにするか難しいけれども、材料とかそれから機械の損料とかそういう原価計算をした上で、残りは全部受刑者もしくは入所している少年に渡してやることが、出ていったときに本人が世の中で生きていく上に、非常な励みにもなるし有益にもなるんじゃないかと、こう考えるんです。この点について簡単で結構でございますが、数字なんか抜きにして大臣の所見を伺って私の質問を終わります。
  206. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 刑務所少年院におきまして労働をするということは、その労働を通じまして労働の価値を認識する、そしてまた人間性に目覚めてくれる、こういうことを期待しておるものでございます。したがって、その労働の成果としましてできました価額をそのまま本人に返すという必要はないものと存じまするが、一方、国といたしましては、そういう行刑施設経費から、あるいはそこに勤めておる看守あるいは少年院の人々の給料から、相当な額をこの行刑のために支払っておるわけでございます。そういうようなものを勘案いたしますると、国が支払っておる方が相当高額になるであろうということが考えられるわけでありまするが、先生のおっしゃることでございまするので、十分研究をしてまいりたいと存じます。
  207. 猪熊重二

    猪熊重二君 どうもありがとうございました。
  208. 橋本敦

    橋本敦君 質問に入ります前に、大臣から所信表明をお伺いさしていただきました。この中で、大臣は監獄法全面改正刑事施設法案について「今国会において十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。」、こうお述べになっておられます。  きょう私は、この問題の議論をするつもりはございませんけれども、このおっしゃった刑事施設法案留置施設法案と関連をいたしまして、日弁連はもちろん広範な国民の中から代用監獄を存置していくという意味においてまさに誤判を生む温床、これを継続し、また人権侵害のおそれを内蔵させつつ、根本的な解決にはならないという意味において重大な批判がありました。私どもとしては、速やかな成立どころかこの法案の撤回を厳しく要求している問題でありまして、これがもし議論になるとすれば、まさに国論を二分するような大論議を国会でもやっていかなくちゃならぬと、こう決意しておりますが、そういう意味においてこの点の大臣の所信については、これは私どもとしてはきょう御返上申し上げたいという意向であることを申し述べておきまして質問の中身に入っていきたいと思います。  まず最初に、私は一連の朝日新聞社襲撃事件、これについて伺いたいのであります。  竹下総理もこの問題については、許しがたい民主主義の根幹に対する不法な攻撃であるとして、厳しい取り締まりを予算委員会でも我が党の市川議員の質問に対して表明されております。私は当然のことだと思うわけであります。ところが、大臣所信を拝見いたしまして、最近の犯罪情勢治安確保について大臣の所信を表明されておりますが、るる提起をされました事案の中で、この朝日新聞一連襲撃事件、これについては一言も触れられていないので、特段の御意図はないと思いますけれども、この新聞社襲撃事件について大臣の見解をまず伺っておきたいと思うわけであります。
  209. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 所信表明は大分前にこれを作成いたしまして、まことに申しわけない次第でございます。  お尋ねの赤報隊と言われる事件でありまするが、現在捜査当局におきまして捜査中でございまして、事案の詳細が必ずしも明らかではないのでありまするが、犯行の手段、方法などから見ましてまことに凶悪な事件であると認識をしております。言論封殺を企図して暴力の行使に及ぶ本件のごとき事件は、民主主義の根幹を揺るがすものでございまして、速やかな真相の究明を期待しているところであり、検察といたしましても厳正に対処するものと存じております。
  210. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、警察庁にお伺いいたしますが、警察庁は静岡における爆弾を仕掛けた件につきましても、百十六号事件に指定をして厳重な捜査を今やっておられるというように理解をしておりますが、この赤報隊なるもの、これがその後、中曽根総理宅にも脅迫文を送りつけるという事案も発生をしておるわけですが、東京本社、阪神支局事件、名古屋の寮の襲撃事件、静岡の支局の事件及び中曽根前総理に対する脅迫事件、いずれも赤報隊を名のっておりますが、同一犯行グループというように見て捜査を今進めておられるのでしょうか、それともこの犯行グループは同一ではないというような状況があるのでしょうか。その点どうですか。
  211. 廣瀬権

    説明員(廣瀬権君) お答え申し上げます。  一連の朝日新聞襲撃事件に対しましては、警察庁で百十六号事件というのに指定をいたしまして、鋭意捜査をいたしておるところでございます。  ただいま御指摘のとおり、当初昨年の一月二十四日ごろのことであろうと思いますが、東京の朝日新聞本社に対しまして猟銃二発を撃ったという事件がございました。それから昨年の五月三日に西宮阪神支局におきまして、記者の方を一名殺害、一名重傷を負わせるという事案がございました。それから名古屋の寮におきまして、これは昨年の九月二十四日でございますが、テレビ台に対しまして猟銃を一発撃った。かつ付近の壁に対しましてもう一発を撃っている。これは別の建物でございますが、二発撃ったという事案がございました。そして本年になりまして、静岡におきまして爆破未遂事件があったということでございます。時を同じくしまして、群馬の中曽根前総理の事務所に対しまして脅迫状が送られたということでございます。  これらの事件につきましては、関係府県に捜査本部を設けまして鋭意捜査をしておるところでございますが、現在の見方といたしましては、最初の猟銃を使った事案でございますけれども、これについては散弾実包が同じものであると現在までの鑑定では認められる。それから一連の脅迫状が参っておりますが、これの封筒の形状、紙質、そして文章の中身でございますけれども、これを鑑定いたしますと同一のワープロで打たれておるということでございますので、私どもといたしましては、中曽根前総理に対します脅迫状も含めまして、同一犯人あるいは同一グループによる犯行であるという可能性が極めて強いというふうに見て捜査をいたしておるところでございます。
  212. 橋本敦

    橋本敦君 今おっしゃったワープロというのは、いわゆるシャープシリーズだというように言われておりますが、そうですか。
  213. 廣瀬権

    説明員(廣瀬権君) そのとおりでございます。
  214. 橋本敦

    橋本敦君 そうしますと、この一連の事件は具体的な動機が何かということはなかなか究明しがたいんでしょうが、一応その声明文等から見て、右翼のグループであるというように見てよろしいわけですか。
  215. 廣瀬権

    説明員(廣瀬権君) 犯行声明文に右翼の言動らしきものは確かにございます。また、赤報隊が右翼団体と関連するものかどうか、あるいは右翼の外周に存在するものかどうか、これにつきましては鋭意捜査をいたしておりますが、現在のところ各種既存の団体から赤報隊というのが出てきておりませんし、赤報隊の解明になお努めておるところでございまして、右翼であるかどうか、あるいはその外周のものであるかどうか断定するには至っておりません。しかし、関連性があるものと見て捜査をいたしております。
  216. 橋本敦

    橋本敦君 その犯行声明、脅迫文等でも一人多殺、多殺多生などと極めて凶悪なことを言っておりまして、一人一殺ということからさらに一殺どころか多殺になってきておるわけですから、こういった凶悪なグループの存在はまさに社会の敵として早く究明する必要があると思うんですね。  それとの関係でもう一点お伺いしたいことは、これは旧来右翼の範囲じゃなくて、新右翼と呼ばれているグループの関係があるのではないかというような考え方が社会的に見られておるような報道もあるんですね。新右翼というのはどういうもので、そしてこれとのかかわりで警察庁はどう見ておられるか、そこらあたりを説明してほしいんですが。
  217. 田口朔

    説明員(田口朔君) お答えいたします。  いわゆる新右翼と言われておるものはマスコミのつけた名称でございまして、確たる定義はございませんけれども、それをそんたくいたしますと、戦後における右翼運動というものは反共重視であったと、それじゃいかぬから右翼の本来である反体制、ここは革新の原点に帰らなきゃならぬ。さらに目的達成の道も右翼の伝統である直接行動でなきゃならぬというようなことを主張いたしまして、戦後体制の打倒ということを強く掲げているグループだろうというふうに考えております。そのように考えてまいりますと、どうしても年齢的にも若い人が多うございますので、現在の風潮というものに染まりやすいというようなことから考えまして、そのグループによる犯行の可能性もあるということで鋭意捜査しているところでございます。
  218. 橋本敦

    橋本敦君 静岡支局で未遂に終わった爆弾事件ですが、これの破壊効果、あの爆弾の起爆効果、こういったものを鑑定された結果わかりましたですか。
  219. 廣瀬権

    説明員(廣瀬権君) 静岡事件の爆発物の威力につきましてでございますが、現在詳細な鑑定を行っておるところでございまして、現段階では確定的なことは申すわけにもまいりません。ただ、現在までに判明したところによりますと、殺害能力につきましては疑問がございますが、傷害能力は十分あるのではないかというふうに考えております。
  220. 橋本敦

    橋本敦君 あの爆弾が爆発未遂に終わった原因は何だったのですか。
  221. 廣瀬権

    説明員(廣瀬権君) この点も今後の捜査の結果にまたないと断定的なことは申し上げることができません。故意に爆発しないようにさせたのか、あるいは偶然が作用して爆発しなかったのか、これは今後の捜査並びに鑑定結果をまたないと何とも申し上げることができません。
  222. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、言われていることはこれまでの一連の事件以上に遺留物品が多い。つまり爆発しないで残ったわけですからね。だから、あそこで使われたところの問題の火薬、これについては、我が国ではこの火薬の製造販売ルートは極めて限定されているとか、あるいはそこで使われた時計が特定性があるとか、犯人像を追求していく上で捜査上重要な手がかりが残された。これは警察にとって、この凶悪事件を追及していく上で極めて重要だということが考えられるわけですが、その点についての御見解はどうですか。
  223. 廣瀬権

    説明員(廣瀬権君) 先生御指摘のとおり、爆破未遂に終わりまして幾つかの遺留品が残されたわけでございますので、静岡県の捜査本部といたしましては、この遺留品の追跡というのを最大の捜査項目に挙げまして鋭意努めておるところでございます。しかし、何分にも乾電池、あるいはピース缶等にしましても大量生産、あるいは大量流通品でございまして、その販路の究明には相当困難が伴うのではないか。しかし、そうは言っておられませんので、懸命な努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  224. 橋本敦

    橋本敦君 私が聞いているところでは、火薬については大量販売品というよりも製造販売ルート、これが限定されるという可能性が強い。それから、缶の中のくぎですね、このくぎも一般汎用性というよりむしろ製造は特殊なものだから、製造箇所は特定され得る可能性が強いと聞いておりますが、どうですか。
  225. 廣瀬権

    説明員(廣瀬権君) 何分にも捜査の秘密、現在捜査中でございまして、具体的なことをここで答弁するのは差し控えさせていただきたいと思いますが、新聞等で出ておりますのは火薬が限定されるのではないかということであります。全国に火薬類の販売店は四千数百カ所ございまして、このうち黒色猟用火薬を扱うもの、五、六百ではないかと見ておりますが、数が少ないと申しましてもそのくらいの数がございますので、ここにつきまして鋭意今後捜査をしてまいらなければならないと思います。五、六百という数でございますからそう簡単にはまいらないということでございます。  もう一つ、時計につきましても、これまた大量生産品でございまして、なるほどナンバー物ではございますけれども、同一ナンバーを持っておる時計がかなりあるということでございまして、私どもといたしましてはあらゆる困難を乗り越えても何とかその販路追及に努めてまいりたいというふうに思っております。
  226. 橋本敦

    橋本敦君 この一連の事件について言うならば、あの西宮ではとうとい記者の生命まで奪われているということですし、今度の場合は殺傷能力は別としても、やっぱり傷害能力というのはあったということですから、依然として凶悪な事犯が続いているわけですね。それがおっしゃったように同一犯行グループということになりますと、今後も発生の重大な懸念がされるわけで、一刻も早く広域的に、しかも厳重な事前防止を含めた予備対策を含めての捜査とともに、警察庁としては全力を挙げていただいて、百十六号広域事件指定の成果をいち早く上げてもらわなきゃならぬと、こう思うんですが、その点について捜査上の困難はわかりますけれども、事案の凶悪性にかんがみて、どういう捜査体制でどう対処されるか、最後にその点についてお話を聞いておきたいと思います。
  227. 廣瀬権

    説明員(廣瀬権君) 本件につきましては、事案が発生いたしました各関係都県警察におきまして、警察本部長を長といたします特別捜査本部体制をしいております。刑事部門はもとより警備部門もこれに参入させまして、警察全組織を挙げて捜査をいたしておるところでございます。また、そういう関係都県警察でなくても、先ほどの遺留品の販路の究明等は全国警察を挙げて捜査しなければなりませんので、現在全警察組織が、これが警察の最重点課題だということで取り組んでおるわけでございます。捜査態勢といたしましては、そういうふうに従来にない態勢で取り組んでおりますし、また未然防止といいますか、あるいは現行犯的措置をとれる態勢ということにつきましても、いろいろ頭をひねりまして所要の措置をとっておるところでございます。  いずれにいたしましても、大変反社会性の強い犯罪でございますので、何としても早期に検挙、解決いたしたい、そういう所存でございます。
  228. 橋本敦

    橋本敦君 最後に、戦前は有名な五・一五事件というものがございまして、この赤報隊は次は五・一五、つまり五月十五日前後をねらうのではないかという推測までされているような状況がありますね。ですから、そういった右翼が蠢動しそうな節々というのはなるほどあり得るわけで、そういったことも含めて万全の警備態勢をしいてもらいたい、こう思うんですがいかがですか。
  229. 廣瀬権

    説明員(廣瀬権君) そういうことも頭に入れまして必要な警戒措置をとっておりますし、何とか早いところ検挙をいたしまして社会不安を取り除きたいというふうに思っております。
  230. 橋本敦

    橋本敦君 それでは、次の問題に質問を移します。ありがとうございました。  次に私は、同じ右翼の暴力ですが、具体的に公然と展開をされている正当な共産党の政治活動について凶悪な攻撃が右翼から加えられておりますので、その点について質問をしていきたいと思います。  鹿児島の問題は、主として検察庁に告訴状を提出しております関係から、検察庁に捜査状況をお伺いすることにもなりますが、まず申し上げますと、鹿児島で和田一雄という我が党の市会議員がいるわけですが、鹿児島でも暴力団追放運動が市民の中から提起をされまして、和田一雄議員は市民とともにその先頭に立って十年前から活動してまいりました。  たまたま昭和六十二年の十一月ごろ、鹿児島におきまして、暴力団三代目小桜一家というのがあるんですが、この小桜一家の総長の内妻とも本妻とも言われておるんですが、その野上律子氏名義で鉄筋五階建てビルの建設が申請をされるということになりました。これを知った市民が、暴力団事務所が自分たちの上荒田町町内にできるということは、これはもう市民にとっては重大な社会不安を惹起いたしますから猛然と反対運動に立ち上がりました。当然のことであります。  そして、市民から赤崎鹿児島市長あてに、こういった建物の建築は認めないようにという、こういった切実な要請が出されました。和田議員は、当時市議会開会中でありますからこれを受けて質問に立ちまして、こういった暴力団事務所の建物の建築確認申請が出てきても、厳重な審査をやって、住民の意思を尊重してこれについては認めないようにされたいということを厳しく要求いたしましたが、市当局もまたこれを受けまして、行政側としても暴力団関係事務所の建設は好ましくないので、建築確認申請は認めない方針で対処するときっぱりと答弁をした次第であります。  その直後から、和田議員に対して氏名不詳者からいろいろな脅迫行為が行われるということになってきたわけであります。その一つは、六十二年十二月十九日、自宅あてに妻に対して、おまえの亭主はいろいろ言っているようだが、おれたちは生活がかかっている、うちにも血の気の多い者が多い、こういったことで暗に危害を加える旨の電話がある。  それから一月六日になりますと、今度は和田議員の原付自転車のタイヤその他ずたずたに刃物で切り裂かれて損壊されるという事件があり、それから一月二十八日の朝には、今度は同じ和田議員の自宅に、月が明けたら和田を殺す、こういった電話がかかる。そしてまた、二月二十三日には、今度は官製はがきで、片仮名で「ワダカズオ氏へ」、こう書きまして、「センゲツジッコウシタウスキチクデノショケイニツヅキ」、これは氏名不詳者によって市民が凶悪な傷害を受けたんですが、その「ショケイニツヅキ キデンニテンチュウヲアタエル ショケイハキサラギノウチニジッコウスル」、こういうような脅迫文が、これは郵送されてきている、こういうことになっているわけであります。  そこで、警察庁にまず伺いますが、この鹿児島の小桜一家というのは、これはやっぱりはっきりした暴力団ですか。また組員がどのくらいで、この組員たちの小桜一家の犯罪歴はどういうものであるか、おわかりの範囲で教えていただきたいんです。
  231. 深山健男

    説明員(深山健男君) お答えいたします。  暴力団小桜一家は、鹿児島市を中心に同県内一円に勢力範囲を有しておりまして、構成員としては約四百九十名を把握いたしております。警察といたしましても、同一家に対しその壊滅に向けて徹底した取り締まりを行っているところでありますが、ちなみに、昨年は同一家構成員百五十二名を暴行、傷害、恐喝、覚せい剤取締法違反等で検挙いたしておるところでございます。
  232. 橋本敦

    橋本敦君 わかりました。  ですから、この小桜一家に対する市民の反対運動が具体的な背景となっているということから氏名不詳者、この犯行がだれによって行われたかはいまだ断定できないにしても、この暴力団追放運動と密接なかかわりがあるということはこれは明白であります。  三月一日付で、鹿児島赤崎義則市長から文書で鹿児島県警察本部長山崎毅殿あてに、「住民の不安解消について」と題して、この暴力追放の市民運動に対する嫌がらせとも見られる事件があり、まことに遺憾で厳しい対処を望むということが文書で出されておりますが、受け取っておられますか。
  233. 深山健男

    説明員(深山健男君) その文書自体につきましては、私ども直接には承知しておりません。しかしながら、先生御指摘のとおり、暴力団追放運動につきましては全国的に今盛り上がっておりまして、その多くは地域の住民の方が本当に心から怒りを感じて立ち上がっておられるわけでございまして、警察といたしましては、そういった対象団体に対する徹底的な取り締まりはもとよりでございますけれども、関係団体から何らかの被害を受けることが絶対あってはならないという観点で、住民の保護に万全を期すよう努めているところでございます。
  234. 橋本敦

    橋本敦君 これは文書で出ていると聞いておりますので、県警本部長の方に一遍お問い合わせいただけますか。
  235. 深山健男

    説明員(深山健男君) 問い合わせいたします。
  236. 橋本敦

    橋本敦君 法務省刑事局長にお伺いいたしますが、これは鹿児島の検事正あてにも出したというように市当局が言っておりますが、御存じでしょうか、まだ御存じありませんか。
  237. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) いまだ報告を受けておりませんが、私の方でも調査いたしてみます。
  238. 橋本敦

    橋本敦君 そこで刑事局長、今お話しした第一の問題は、これは検察庁に対して関係者から、つまり和田一雄議員ですが、告訴状が提出をされておるようでありますが、これは受理していただいて御捜査いただいておりますか。
  239. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 御指摘の件でありますが、鹿児島地検におきまして本年二月二十六日に、脅迫及び器物損壊、本年三月二十四日に脅迫の各告訴を受理いたしまして、現在捜査中であります。
  240. 橋本敦

    橋本敦君 今お話が三月二十四日の告訴にも及びましたが、これについてこれからお話をしようと思っていたところであります。  これはどういうことかと言いますと、今言った和田議員に対する脅迫、器物損壊、こういった不法行為が続いておりまして、検察庁にまず第一に、先ほど告訴したとおりでありますが、その捜査中であるにもかかわらず、またまた今度は和田議員だけではなくて、我が党の、四月十日から市議会選挙で立候補を予定しております五名の予定者に対する脅迫がなされるという事態にまで発展したわけであります。  この脅迫状は、我が党の鹿児島の地区委員会あてに送られてきました。中身はどういうことかといいますと、「キサマラ シュツバヲジタイセエ」、「キサマラ」というのは「ワダイカ四メイニツグ」と、こうありますから五名の予定候補者であります。「キサマラ シュツバヲジタイセエ」と、こういうわけです。これは名前は西郷衛、平山孝、和田一雄、鎌倉俊一、竹原良子、この五名を指すことは客観的に極めて明白であります。「キサマラ シュツバヲジタイセエ」と、こういうことから始まりまして、そして「カナラズヤヨイノウチニ ソノムネヒョウメイセエ」と、辞退を表明せえと。「モシムシシヨッタラ ツライメニアウデ ウスキノヤマグチガソノイイミホンヤタダシワダハベツヤ オリテモオリンデモテンチュウヲアタエル」、つまり和田議員に対する憎しみが露骨なようですが、「オリテモオリンデモテンチュウヲアタエル」、こういうことで言ってきているわけですね。そして「ワシラニハムカッタンヤサカイシャアナイ」、つまり犯人の特定性がほぼ可能であります。暴力追放運動と関係が露骨に出てくる。「ハムカッタンヤサカイシャアナイソヤケドアンシンセエ コロサヘン ハンゴロシヤソノホウガオモロイ」、とんでもない話ですね。こういう脅迫状を送ってきている事実がありまして、これを今刑事局長受理されたように当然のこととして告発したわけであります。  だから、一議員に対する、我が党の議員の正当な市民とともに暴力追放運動を展開しているそれに対する報復じゃなくて、今度は四月十日から始まる選挙そのものに対して、共産党に立候補をやめなんだらそれこそ天誅を加えるぞということでありますから、まさに脅迫がエスカレートしてきたわけです。選挙というのはこれは民主主義政治を支える根幹でありますから、反対意見であろうが何であろうが、立候補そのものをやめい、やめなかったら天誅を加えるなどということは絶対に許せないことですね。まずその点私はそう思いますが、法務大臣の御意見はいかがでしょうか。
  241. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) まことに遺憾な事件であると存じます。既に現在捜査中でございまするので、十分捜査を速やかにしていくように努力をしてくれるものと存じております。
  242. 橋本敦

    橋本敦君 なまぬるいことでは四月十日の選挙までに本当に危害を加えられるかもわかりませんから、断固として捜査を速いテンポで進めるように刑事局長特段の御尽力はぜひとも賜りたいと思うんですが、御決意いかがですか。
  243. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 告訴を受理いたしました鹿児島地検といたしましても、その辺の事情は十分に地元でもありますので承知しているところであると思いますので、できるだけ早期に犯人の割り出しのために鋭意努力するものと思っております。
  244. 橋本敦

    橋本敦君 自治省お越しいただいておりますか。——自治省に一件伺いたいんですが、私はこんな正当な政治活動、立候補ということに対して天誅を加えるというような脅迫を送るなんというのは、これはまさに刑法上の脅迫罪であることはもちろんでありますけれども、選挙というそのことが保障される選挙の自由、これに対する重大な攻撃だと思うんですが、選挙を担当される自治省としての御見解はどうですか、こんなことが許せますか。
  245. 田中宗孝

    説明員(田中宗孝君) お答え申し上げます。  お尋ねの件についてでございますが、自治省といたしましては事実関係調査、確認する立場にはございませんので、当該案件につきましての具体的な答弁は差し控えさしていただきたいとは存じますけれども、公職選挙法におきましては、選挙に関し、公職の候補者あるいは公職の候補者となろうとする者などに対し暴行または威力を加えました場合には、同法第二百二十五条に規定する選挙の自由妨害罪が成立するものとされているところでございます。
  246. 橋本敦

    橋本敦君 刑事局長、そういうわけですから、この件の告訴については脅迫罪を理由として告訴しておりますが、今お話しの選挙の自由妨害罪が成立する法的可能性もありますので、これも含めて徹底的な捜査をお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  247. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) ただいまの選挙自由妨害の成立の可能性があるということにつきましても、もちろん鹿児島地検といたしましてもよくわかっているところであろうと思いますので、鹿児島地検におきまして適切に対処するものと思っております。
  248. 橋本敦

    橋本敦君 適切な対処を当然お願いします。  ところで、この五人の予定候補に対してとんでもない嫌がらせがわからない者から行われているんです。例えば和田一雄議員のところに、注文もしないのに十八金指輪が注文されたというので送ってくる。それから、鎌倉俊一予定候補のところには総桐タンス三点セット、こんなものを注文していないのに送られてくる。それから、西郷予定候補のところにはビデオカメラ、注文しないのに寿屋から送られてくる。それから、竹原良子予定候補のところにはこれもまた注文しないのに洋服四点、それから家具、これがそれぞれの店から送られてくる。もちろんびっくりして返しておりますよ。返しておりますが、こんなものが送られてくる。本人の名で注文されたということですから、まさにこれは詐欺的行為ですね。  それだけじゃありませんで、和田一雄議員の場合はよく太っているんですが、やせたらいいというので健康食品だとかエアロビクスの講座申込書とか、こんなものまで送ってくる。具体的に事情をよく知っている者が、殊さら的を当てて嫌がらせをやっているわけですね。これが最近合計五人の議員に対して十七件も行われているという、これは異常ですね。まさに無法地帯ですよ、鹿児島は。こういうことも含めて、まさに一刻も猶予ならぬと思いますね。  仮に刑事局長、私はようわからぬのですが、注文もしてないのに注文したと勝手に東急百貨店へ行ってこんなものを送ってきて、まあ返しますからこっちは被害はないと思いますが、これは一体犯罪にどこかでならぬのでしょうかね。その店に対しては欺罔による業務妨害になるのか。送られてきた人に対してはこれは何もならぬのか。これもやっぱり違法行為だと思うんですけれども、これはどうでしょうか。
  249. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) ただいまお話を聞きました限りにおきまして、どうも送られた方には何らかの犯罪成立するかと言われましても、どうも私思い当たる罰条等がございません。
  250. 橋本敦

    橋本敦君 私はあえてこれを犯罪にしようということでお尋ねしたわけじゃないんですが、状況としていろいろ犯罪にならないような嫌がらせも含めて、こういう無法状態が起こっているということについて注意を喚起していただきたいということで申し上げました。だから、早く処置をして、ぜひとも適切な対処をお願いしたい。これは告訴状をたまたま検察庁へ出して、検察庁で受理していただいておりますのであれですけれども、直接の調査検察庁ですが、警察の方にもお願いしたいのは、今私がお話ししたような一連の状況を踏まえて、厳重な対処については警察も努力していただきたいということでお願いしたいのですが、どうですか。
  251. 深山健男

    説明員(深山健男君) お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、暴力団のこの種住民に対する、あるいは暴排運動をされる関係者に対する嫌がらせなり暴力的な行為に対しましては、私どもとしても徹底的な取り締まりをやっていきたいと考えておりますし、また同時に、そういった方々の身辺の保護につきましても万全を期していきたいと考えておるところでございます。
  252. 橋本敦

    橋本敦君 よろしくお願いします。これはひとり我が党の議員の政治活動の自由にかかわる問題ではなくて、問題の発端からお話ししましたが、まさに日本の民主主義と国民の、市民の安全にかかわる問題、市民の暴力追放運動という当然の世論に刃向かってくる不法な行為でありますから、ひとり共産党の関係する事件とだけとらえずに、まさに国民的サイドでとらえて徹底的な取り締まりをお願いしたいと思うんです。  そういう観点で、もう一つ町田における事件について次にお伺いをしておきたいと思います。  この町田ではどういう事件が起こっているかといいますと、これは建設委員会その他でもう議論になりましたので、背景経過は詳しく申しませんが、入会金が一千万という超デラックスなテニスクラブ、これを町田市の小山田につくって、クラブハウスも建てて、ここで太陽物産という会社が事業主になり、経営主体は東京テニス倶楽部がやるということで起こった事件であります。この太陽物産の代表取締役社長が山中という女の方ですが、同時に東京テニス倶楽部の監査役、この東京テニス倶楽部の代表取締役は同じ山中という人で、太陽物産の山中社長の主人である、こういう関係です。  この太陽物産と右翼暴力団とがどういう関係にあるかということをまず最初に言っておきますが、町田の町の中にある真道会総本部、これは真道会、右翼ですが、この総本部は太陽物産所有の建物の中にありまして、ここで後でお話をする松魂塾等の右翼とのつながり、結集も進んでいくわけですが、そういう関係にあります。  そこで、まずこの違法問題については、このテニスコートの建設それ自体が最初は農地法の造成などと偽っておりましたが、実際はテニスコートであることが一見明白になってくるんですが、その過程で一つは都市計画法宅地造成等の規制、これに対して何らの届け出もしないという違法がある。第二番目に、今度はその上に建てるクラブハウスにつきましても、これは建築確認申請義務違反等で町田市が工事停止命令を出さざるを得ないほどこういった建築基準法に違反する問題も出しておる。こういうむちゃくちゃなことであります。そして、これに対して町田市が今言ったような工事停止命令等を出しますが、そういうことに対して調査に町田市の職員が行きますと、今言った山中らは、その職員をけり上げるなどの暴力を加えて明らかな公務執行妨害を行い、職員の身分証明書も取り上げるという事案が起こって町田市からも告発、捜査要求が出される、こういう事案が背景にある。  以上、簡単にこういった筋書きがあるということは警察は御存じですか、背景的事情があるということ。
  253. 泉幸伸

    説明員(泉幸伸君) ただいま御指摘の点につきまして、町田市から町田署に対し関連の告発がなされて捜査していることは事実でございます。
  254. 橋本敦

    橋本敦君 そこで私は、今言ったのは背景として申し上げたので、これに対する告訴、告発は今お話しのように受理されて捜査をやってもらっておりますからここは触れませんで、これに関して我が党の議員が、当然のことでありますけれども、こういう無法なことは許さぬということで市議会でも取り上げ、また厳しく市民とともに追及する立場をとったのは当然であります。  その先頭に立ったのが我が党の斎藤議員でありますけれども、この斎藤議員に対してどういう嫌がらせがなされたかといいますと、まず斎藤議員に対してはいわれのない盗聴行為が行われました。この盗聴事件については検察庁に告訴しておりますから、検察庁、捜査状況をまず述べてください。
  255. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 御指摘の町田市会議員の斎藤市議から昭和六十三年一月十八日、東京地検に対しまして、氏名不詳者を被告訴人、被告発人といたしまして有線電気通信法違反、電気通信事業法違反により告訴、告発がなされておりますので、現在東京地検におきまして捜査中であります。
  256. 橋本敦

    橋本敦君 これが発覚されたのはことしの一月十四日ですが、そういう事実は御存じですね。
  257. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) そうであります。
  258. 橋本敦

    橋本敦君 盗聴の態様はわかりましたか。
  259. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 加入電話の回線の途中に盗聴器が仕掛けられたというような状況だろうと思います。
  260. 橋本敦

    橋本敦君 その盗聴器はどこの製品でどういうものであるか、そこらの捜査はもう進んでおりますか。
  261. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 本件につきましては、現在そういった点も含めて捜査中でございます。捜査の具体的な中身にわたりますことは申し上げかねるところであります。
  262. 橋本敦

    橋本敦君 いずれにしても、盗聴という行為が、これが電気通信法違反であることはもちろんのことながら、民主社会において他人の電話を盗聴するなどということ、これは特に政治家については政治活動の自由の重大な侵害でありますから絶対に許してはならぬという、そういう重大事犯であるという認識で捜査を進めてもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  263. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 東京地検におきまして、諸般の事情を考え合わせまして鋭意捜査をいたしているところであります。
  264. 橋本敦

    橋本敦君 諸般の事情はわかりましたが、私が申し上げたような観点は当然踏まえて、重大事犯だという認識で取り組んでいただいておりますかと、こういうことです。
  265. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 盗聴行為は許しがたいものであるという認識のもとに捜査はいたしているところであります。
  266. 橋本敦

    橋本敦君 許しがたいことは当たり前のことなんです。  そこで、今度はその盗聴に続きまして三月十日と三月十二日に暴行事件が発生しているわけであります。これは告訴状は町田警察署に出さしていただいておりますから、当然御存じのとおりなんですが、三月十日、三月十二日、いずれも日本共産党町田地区委員会の菊池伸夫委員長を告訴人として告訴をしておりますが、これは受理されていただいておると思いますが、どういう事件で告訴されたのか、捜査は今どういう状況か御説明をいただきたいと思います。
  267. 田口朔

    説明員(田口朔君) お答えいたします。  宣伝カーが壊されたということで、告訴二件私ども確かに受理しております。  その第一件は、一二月十日、午後六時三十分ごろ、小田急町田駅の西口駅前広場付近において街頭宣伝中であった日本共産党の宣伝カーが何者かに宣伝を妨害されて、後部のバンパーに破損を受けたという事実でございます。  第二点は、三月十二日午前零時から午前八時ごろまでの間に、町田市旭町の駐車場に置いてあった同じく日本共産党の宣伝カーの窓ガラス五枚が何者かに損壊されたと、この二件であるというふうに承知をしております。  このうち、三月十二日の窓ガラス五枚を損壊いたしました事件につきましては、当日夜被疑者として松魂塾員一名を逮捕するとともに、関係箇所の捜索を行うなど所要の捜査を遂げまして、三月十四日、器物毀棄容疑で東京地検八王子支部へ身柄つきで送付をしております。  それから三月十日の事件でございますが、当日は一一〇番通報によりまして警察官合計十三人が現場に駆けつけて処理に当たりました。警察官が駆けつけたときに現場は既におさまっておりましたので、現場にいらっしゃった日本共産党の方々からその場で事情をお聞きし、必要な実況見分を行い、そして現場におりました松魂塾員一人を、その乗ってきた自動車とともに所轄町田警察署へ任意同行いたしまして取り調べを行いました。その午後、同人も含めまして松魂塾員らに対する取り調べということを実施するなど鋭意捜査中でございます。  なお、本件につきまして、ただいま現場にいらっしゃった共産党の方々に詳しい事情をお聞きするために、署の方へ御足労をお願いしているところでございますが、早期に立証いたしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
  268. 橋本敦

    橋本敦君 そういたしますと、この二件については松魂塾関係、右翼の犯行だという、そういう犯人特定が具体的に進んでおるわけですが、三月十二日の件は検察庁に既に送致をされたという今のお話ですが、検察庁八王子支部としては、これは今どういう捜査状況になっておりますか。
  269. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 私、今の段階でその点の報告はまだ承知いたしておりませんので、この点につきましては調査いたしまして後ほど御報告いたしたいと思います。
  270. 橋本敦

    橋本敦君 これは宣伝活動の妨害であると同時に、明らかに宣伝車に対してガラス五枚を破壊するなど明白な暴力、器物毀棄行為をやったわけでありますから、犯情は極めて重大であり、政治活動に対する重大な妨害行為でありますから、当然厳しい処断を、捜査を遂げた上でやっていただくのが至当であるというように思いますが、刑事局長いかがでしょう。
  271. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 八王子支部が送致を受けておりますれば、八王子支部におきまして、御指摘のありましたような諸般の事情も捜査をいたしまして適正に対処するものと思っております。
  272. 橋本敦

    橋本敦君 それで、これ以外に斎藤市議に対して、市中に斎藤市議は私利私財をふやす、斎藤勇退陣せよということで、いわれのない事実無根の中傷ビラを張り回しておりますから、名誉棄損というような状況もあるわけであります。  ところで、問題の松魂塾から一般市民にも配布された声明文というのが出ております。これによりますと、なぜこういう運動を右翼がやったかということをこう書いております。第一に、斎藤勇が共産党だから、これはむちゃくちゃでありますね。共産党だったら殺してもいいと言わんばかりであります。許しがたいことです。第二に、この松魂塾がテニスコートをつくろうという一企業の手先になっているなど全くでたらめなチラシやビラを配ったからだと、こう言っておりますが、これは具体的な事実と証拠に基づいて共産党は宣伝活動をやっているわけですから、それに対して彼らは遺恨を持っているということが明白でありますから、動機もここでみずから自白をしておる。それから第三に、こういうことを言っているのは、これはひどい話だと思うんですが、これ以上でっち上げで罪なき市民をいじめ、うそのチラシで我々を中傷したらおまえとは政治生命を絶つまで徹底して戦う、こういうことで依然としてこれからも反省することなしに、こういった暴力や脅迫をやるということを予告するようなチラシを各戸配布でばらまいているんです。  これは証拠として警察及び検察庁に後で提出をいたしますが、こういったことで全く反省もなしに依然として暴力、脅迫をやろうというような態勢にある。自分の方が数々の違法行為をやっていながら反省せずにこういう声明文を出すということも、これは重大な犯情として無視できません。  こういうことも含めて、今刑事局長がおっしゃったように、厳しい対処をぜひともやっていただくことを厳しくお願いしておくわけであります。  ところで、きょうの新聞を拝見いたしますと、総理府の世論調査結果が発表されました。これによりますと、総理府が発表した「警察に関する世論調査」でありますが、こういうことが明らかであります。昨年十一月、三千人を対象に行ったものですが、この中で暴力犯罪の取り締まりについてどういうような結果が出ているかといいますと、「まだまだ手ぬるい」というところで答えた人が四四・三%で、前回の五十九年八月の調査より一一・七%ふえた、こういうことです。だから市民はみずからの安全や生命、社会の平穏を願って警察にもっともっと暴力団対策をやってほしいということを切実に要求しているということが、これが明らかですね。  そして、もう一つ今度は問題になりますのは、これがどういうところで出てきたのかといいますと、警察官について「良い印象を持っている」というのは全体の五五・六%で半分超えておりますから、これは結構です。「悪い印象を持っている」人というのが二九・二%、三〇%ほどありまして、その中でどんなときに悪い印象を持ったかという問いに対して、交通取り締まりのときだとか、免許証申請に行ったときだとかいろいろあるんですが、その中で一番市民から見てもっとやってほしいというところで出てきたのが、今言った暴力団犯罪の取り締まり、これに対して警察に不満があるというのが四四%で一番多いわけです。  だから、あの浜松の事件にしろ、それから朝日新聞襲撃事件にしろ国民は、やっぱり暴力に対して許せぬというこの思いが非常に強いわけですね。警察も一生懸命やっておられるでしょうけれども、もっと何とか暴力団を抑え込んでもらいたいというのが、厳しい国民の世論だということがこれがはっきり出てきているわけですね。そういうことで、警察への要望として今度はその部分を見てみますと、いろいろ詐欺商法の取り締まりやあるいはいろいろありますが、「暴力団の取締り」というのが二三・六%で要望の中ではかなり高い率になっている。こういう国民世論にこたえて暴力団に対する断固たる対策を本気になって警察がおやりいただくこと、そしてまた、検察庁協力してやっていただくこと、この総理府の世論調査にこたえてやってほしいんですが、この調査結果、どういうような所見を持ってごらんになっておられますでしょう。これは突然の質問ですが、警察庁の方から御意見を聞きたいと思います。
  273. 深山健男

    説明員(深山健男君) お答えいたします。  暴力団につきましては、その取り締まりあるいはその対策というものを徹底してもらいたいという国民の声が大変高いということは、かねてから存じ入っているところでございます。またそういうことで、私ども警察といたしまして、いろんな警察行政の中でもとりわけ暴力団に対する対策というものを重点の一つに置いて強力にやってきたつもりでございます。  御承知かと思いますが、一昨年設置いたしました暴力団総合対策要綱というものをつくりましたが、その中でも警察における徹底した取り締まりと国民なり行政と一緒に暴力排除活動を徹底していきたい。それが合わさって暴力団を何とか壊滅に向けて対策をとっていきたいということを申し上げているわけでございますが、このような考え方を今後ともなお一層強化いたしまして、全国警察挙げてこの暴力団に対する国民のニーズに対してこたえていきたいというふうに考えております。
  274. 橋本敦

    橋本敦君 法務大臣、お話しておりますことから御理解いただいておると思いますが、今私が指摘したのは共産党の政治活動に対する不法な右翼の暴力攻撃、これを断固取り締まってもらいたいということを中心にお話しました。しかしこれは、あの中曽根前総理事務所に赤報隊の脅迫文が送られておりますように、共産党に限らずどの政党であっても、どの市民であってもこういった暴力追放運動を含めた正当な社会活動政治活動に対して、暴力団からの不法な攻撃や介入というものは絶対に許してはならぬ、そういう立場で私は質問をしたつもりでありますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  275. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 暴力団は仰せのように対共産党ばかりではございません、浜松における問題もありまするし、あるいは市民に対しましてあらゆる問題に介入をするというような暴力もございます。これは絶対に国民の敵でありまして、これを撲滅するためにみんなで努力をしていかなければならないと存じます。
  276. 橋本敦

    橋本敦君 では、町田の問題で最後に警察に一言要望をしておきますが、この斎藤議員の住んでおる団地に右翼の宣伝カー松魂塾が押しかけて、騒音、まさに公害ですが、大声でがなり立てて、斎藤出てこいとかなんとかわめき散らし、近所の人から警察に早く来て取り締まってほしいという電話が相次ぎました。  そしてまた、今告訴をしたこの事件でも市中公然と宣伝活動をやっているところに車を乗りつけてきて、ぶつけるわそれでガラスを壊すわ、こういうことですから、近くの人も、我が党の関係者も含めて直ちに出動して規制してもらいたいということを要請したんですが、そこへ現場に来られるまでに三十分、四十分という時間がかかって、その間右翼はわめき散らし、爆竹を鳴らし、騒然とした状況をつくり上げてまさに無法の町の観を呈している。こういうことに対して、今私が指摘した総理府の調査でも警察を頼りにしたい、しかしもっと早くやってくれぬかということも含めて意見が出ていると思うんですが、対応の速やかさ、右翼の不法行為や暴行に対して適切な、速やかな対応をもっとやってもらいたいということが世論の要望ですが、いかがでしょうか。
  277. 田口朔

    説明員(田口朔君) 町田で松魂塾等が宣伝活動を行いまして、ただいま御指摘のような事案があるということは承知をいたしております。私どもとしては、不法行為は看過しないという基本方針にのっとって厳正に対処しているところでございますけれども、現在町田警察署におきましても、例えば彼らが街頭宣伝を特に行う地域はある程度固定しております。警らの回数をふやす、あるいは松魂塾が街頭宣伝に出ておるというときには、これの動向監視に当たるということで、一生懸命市民生活の平和を守るために努力しているところでございます。
  278. 橋本敦

    橋本敦君 一層その点についての具体的な努力をお願いして、この点について質問を終わります。  最後に、法務省増員問題についてお伺いをして終わりたいと思います。  最近登記事件数の激増は大変なものでありますが、東京法務局について六十二年の登記申請事件は何件で、過去五年を見るとどれぐらいの増大になっているか、お示しをいただきたいと思います。
  279. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 東京法務局についてお尋ねでございますので申し上げますと、昭和六十二年の登記申請甲号事件は二百二十四万五千件ということでございます。過去五年前にさかのぼりますと、六十一年は二百四万八千件、六十年は百八十九万七千件、五十九年は百八十五万七千件、五十八年は百七十八万五千件、こういう推移でございます。
  280. 橋本敦

    橋本敦君 局長、大まかなところで登記事務がどれだけふえているかというのを統計的に見ますと、昭和四十六年を一〇〇としますと、昭和四十六年に比べまして昭和六十一年までで大体二二五%、四十九万八千二百六十件に増大をしている、つまり二二五%ぐらいの増だというように私の方の資料では見ておるんですが、大体合っておりますか。
  281. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 何年を基準にするかによりまして指数が変わってまいりますので、私ただいま手元に四十六年を基準とした指数を持ち合わせておりませんから正確にお答えを申しかねますが、昭和五十一年を基準にいたしますと昭和六十二年でおよそ一三〇ぐらいの指数になるというふうになっております。四十六年から五十一年までの登記事件数の伸びは爆発的なものがございましたから、先生の御指摘の数字は大体それに近いものではなかろうかというふうに推測をいたしております。
  282. 橋本敦

    橋本敦君 いずれにしても爆発的な伸びがあったことは言うまでもない、社会問題にさえなったんですが、それで法務局の方は本当に国民サービスについては追われ続けている現状ですね。本当に私は、そういう点では、法務局の人員要求は毎年度予算法務省も努力をされてきたことはよくわかるんですが、実際にニーズを埋めるだけの増員がなされたかといいますと、今私が指摘した事件の伸びが二二五%に対して人員の伸びが一一六%程度ということに見ておりますので追いついていない。そういう追いついていない現状から部外者応援が年間延べ百万人だとか、パートを四千人雇うとか、それから謄抄本の作成作業を民事法務協会に下請に出す件数が大変ふえている、下請九百二十三人とか、いろんな数字が言われておる。  総論的に言って、現在の国民のニーズに対して法務局登記関係職員の増加が見合うところまでいっていない、明らかにまだまだ足らぬというのが現状だと思いますが、局長の御認識はいかがでしょう。
  283. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 登記事件数は戦後一貫して増勢を維持しておりますし、特に近年は大都市圏を中心としましてその伸びが著しいものがございます。私どもこれに対処するためにいろいろな事務の合理化も図り、また機械も最新鋭のものを導入するなどして対処してまいりましたが、やはり人員の増はこれは不可欠でございまして、これについて毎年最重点でお願いをしてまいりました。しかし、現下の厳しい定員事情、予算事情のもとではこれにもおのずから限界のあるところでございます。関係当局に最大限の御理解お願いし、また省内でもそのように進めてまいりまして今のような増員の事情になっているところでございまして、今後ともそのように努力をしてまいりたいと思っております。
  284. 橋本敦

    橋本敦君 最後に法務大臣にお伺いしたいんですが、今お聞きいただきましたように、民事局長も今後とも人員増を含めて努力をするということで御見解の表明がございました。ぜひやっていただきたいんですが、私ども委員会としても東京の法務局の現状を調査に行ったことがございますが、本当に職員は大変、また待っている国民も大変、狭いところですからね、夏など大変です。だから、法務局職員の労働条件もさることながら、国民の方も大変。これはもう何とかしなきゃいかぬなということをみんな共通の認識にしたんですが、こういった法務局の最近の事件増というのは、我が国の高度成長や土地問題でまだまだ続く可能性もあるんですね。  そこで大臣にお願いしたいのは、一度どこかの繁忙をきわめる法務局を御視察いただいて、今後ともこれの問題の解決、人員増について大臣としても特段の御尽力を今局長がおっしゃったような方向でお願いしたいと思っておるのですがいかがでしょう。これを伺って質問を終わりたいと思います。
  285. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 私も予算が決定する前に、東京の法務局やあるいは港区の登記所へ参りまして、登記官が大変な苦労をしておる状況を目の当たりにしてまいりました。  そこで、予算のときにはある程度の増員を見たわけでございまするけれども、到底それでは足りないわけです。しかし、今定員の問題は国全体として非常に困難をきわめておるときでございまするので、さらに登記コンピューター化に向かいまして、あるいは合理化近代化に向かいまして努力をしておるところでございまして、登記法の改正お願いしておりまするので、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと存じます。
  286. 橋本敦

    橋本敦君 私の質問とちょっとすれ違いがありますが、きょうはこれで終わっておきます。
  287. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 本日は出入国管理法一本に絞って質問をしたいと思います。  この問題につきましては、昨年の八月二十七日の法務委員会でも取り上げまして、今後国際化が進んでいくだろう、それに適正に対処するためには予算面及び職員面において充実していくことが必要であるということを申し上げた次第でございますけれども、けさほどの法務大臣所信表明演説の中でも、「今後とも出入国管理事務の迅速適正な処理及びそのための組織体制の一層の充実強化に努めてまいりたいと考えております。」というふうに述べられたように、予算及び人員の点で若干はふえております。しかし私は、それで果たして対応できるだろうか、その観点から質問申し上げる次第でございますが、最初に事実関係を確認しておきたいと思います。  日本人の出国者数及び外国人の入国者数がどのように変化してきているか、昭和六十年以降、六十一年、六十二年と比較した数字をお知らせ願いたい。六十二年の上半期までは前にいただいた資料に載っておりますけれども、もう下半期の方も統計が出たころと思いますので、六十年、六十一年、六十二年、その実数及び六十年を一〇〇としたパーセンテージ、わかればお知らせ願いたいと思います。
  288. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 六十二年全期にわたって統計が出ております。昭和六十年から逐年でまず日本人の出国者数について申し上げたいと思います。六十年が四百九十四万八千三百六十六人、六十一年が五百五十一万六千百九十三人、六十二年通年で六百八十二万九千三百三十八人でございます。これを昭和六十年を基準とした率で計算をいたしますと、昭和六十一年が一一一・五%、昭和六十二年が一三八%ということになっております。  次に外国人の入国者数につきましては、昭和六十年が二百二十五万九千八百九十四人、昭和六十一年が二百二万一千四百五十人、昭和六十二年が二百十六万一千二百七十五人でございます。この昭和六十年は、筑波博その他で外国人の入国者数が非常にふえた年でございますので、これを一〇〇といたしますと減ってくるわけでございますが、特殊な事情であったかと存じます。昭和六十年を一〇〇といたしますと昭和六十一年は約八九・五%、昭和六十二年は約九五・七%ということになっております。
  289. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 日本人の出国者数は確実に増加しておりますし、入国者数は今言われましたように六十年が特殊な年であったと。しかし六十一年と六十二年と比較しましても、円高にもかかわらず入国者数が非常に増大しているということは明らかだろうと思います。  次に、外国人入国者数に関しまして、不法入国でありますとか不法残留でありますとか、あるいは資格外活動などの入国管理法に違反している件数を同じように六十年、六十一年、六十二年を比較してお知らせ願いたいと思います。
  290. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 資格外活動者及び資格外活動絡みの不法残留者ということで全体合わせて私どもはとらえておりますが、昭和六十年が総数で申し上げますが、五千六百二十九名、昭和六十一年が八千百三十一名、昭和六十二年が一万一千三百七名でございます。大変申しわけございませんが、六十年を一〇〇とした率を計算いたしておりませんので、すぐ計算させます。
  291. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 大体大ざっぱに計算しましても、六十年を一〇〇として六十二年は二倍になっていると見ていいわけですね。
  292. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 約二倍以上になっていると思います、約二倍でございます。
  293. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 こういったふうな違反を防止するための出入国管理業務関係予算、もしそれだけを切り離すことができなければ入国管理業務全体についての費用でもいいんですけれども、難民センターなんかの費用も入っております。分離できないとすればその中に含められてもしようがないんですけれども、そうした出入国管理予算が六十年度と比較してどのくらいふえているかということと、それからまた、入国審査官及び入国警備官の定員がどの程度増員されているか、そのことをお知らせ願いたいと思います。
  294. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 六十年度から申し上げますと、入国審査官及び入国警備官の増員査定数を申し上げます。  六十三年度、今現在の六十三年度の予算でございますが、入国審査官が二十一名、入国警備官が二名。他方、入国審査官九名及び入国警備官四名が計画削減でございますので、差し引き純で申しますと入国審査官が増員が十二名、入国警備官が減員が二名ということになっておりまして、この年度の予算が認められますと入国審査官の人員が七百三十一名、入国警備官の人員が六百四十七名でございますが、年度別にその増員の分だけ、増員分、純増の分だけちょっと申し上げますと、六十年は対前年度で五十九年に比べて減員が二名、差し引き増員でございます。六十一年が二名増。六十二年度が三名増。それで、先ほど申しましたことしの、六十三年度の予算成立後の差し引きの純増が八名ということになっております。  予算金額の増につきましては、申しわけございませんが六十年からの比較ということでは現在手持ちがございませんが、今の審査官、警備官の増員数でよろしければそういう数字になっております。
  295. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それじゃ、私の方でいただいた数字を読みますと、出入国管理及び難民認定等に必要な経費は、六十二年度に比べて六十三年度予算では一一四・四%で若干伸びて、これはその中に難民センターの費用とかそういったのも入っております。出入国管理だけのちょっと予算というのは切り離せられないらしくて計算ができないらしいんですけれども、予算として多少ふえていることは事実です。また、審査官が若干ふえていることも事実でございますけれども、その伸び率は余りに少ないのではないか、先ほどの出入国する人数の数及び違反件数の増加、それに比べますとちょっと伸び率が非常に少ないように思うんですけれども、これで大体やっていける自信はあるのでございますか。
  296. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 激増いたします事務量に対応して職員の数が、伸びが少ないと言われますのはそのとおりでございます。これに対応いたしまして、私どもといたしましても合理化とか業務の機械化等を通じまして努力はいたしておりますけれども、非常に数は少ないということは事実でございます。  それで増員につきまして、定員の事情とか予算事情等がございますのでなかなか難しゅうございますけれども、関係の財政当局その他の御理解を得まして、適正な入管行政を今後遂行し得るように、今後ともその増員について最善の努力をしてまいりたいと思っておる所存でございます。
  297. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 入国審査官の数は、今言われた十人増ですかね、六十三年度。しかし、警備官の数は前年に比べまして減っていますね、二人ほど。
  298. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) そのとおりでございます。これは昭和六十三年度のいわゆる査定でございます。
  299. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 不法残留とか資格外活動なんかを摘発するのは警備官の仕事なんでしょう。これはかなり先ほどの数字でふえているのに、むしろ減員になっているというのはどういう理由ですか。
  300. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) この内部努力と申しますか、業務処理合理化に努めたり、内部的には必要に応じて違反調査に従事する警備官をふやすなどし、そういうようなことでかなり現実的には対応せざるを得ないという実情でございますが、入国警備官の定員が減っているということは事実でございます。
  301. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 人員をふやす、大いに努力していただきたいと思いますけれども、同時に入国関係審査官あるいは警備官の質をよくしていくことが大事だろうと思うんです。  我々外国なんかに行きましても、今国会議員なものですから割に優先的に通してくれるんですけれども、一個人として行ったような場合でも、その審査官の態度によってその国に対する印象が非常によくなったり悪くなったりする。厳正に質問されるのは結構なんですけれども、しかし、その後で何でもないということがわかったら、楽しい滞在をしなさいよというふうなことをちょっと言ってくれる、そういうふうなことが非常にその国に対する印象をよくするんですけれども、その質の向上についてどういうふうな研修をしておられますか。
  302. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 制度的に研修を行っておりますことをまず申し上げますと、幾つかの研修制度がございまして、新規採用者につきまして法務事務官系統、それから入国警備系統、両方合わせまして初任科あるいは初等科、初任科研修というのがございます。これが期間といたしまして四十日ないし六十日、研修員は二十五名が法務事務官系統でございますが、警備官は四十名ということになっております。そのほかに普通科研修と申しまして、行政職の二級ないし三級、それから公安職、警備官の場合には公安職でございますが、同じく二級、三級レベルのところが中等科研修ということで三十日間の研修をいたしております。これは二十五人ぐらいずつで年二回行っております。そのほか、行政の三から五級、公安職の三から五級レベルで高等科研修というのを年間四十日、人員といたしまして五十名ということでやっております。  そのほかに語学の委託研修を幾つかやっております。英語で申しますと、日米会話学院及び地方入管の所在地にあります語学研修機関等で、場合によって違いますが、そういうところに委託をいたしまして、六か月の場合あるいは三カ月の場合あるいは長期の一年の場合もございます。そのほか、語学的には韓国語、中国語、ロシア語等の語学につきまして、警察大学等の御協力を得まして、そういうところでの研修を一年間の委託期間でやっております。委託人員は延べ人員で七十六名になっております。  これは制度的に研修の制度を申し上げたわけでございますが、中央に参りまして、各地方から参ります研修に、入管の当局の幹部が時々、私も含めまして講話のようなものをいたすことがございますけれども、研修の講義の内容ではなくて、心構えということにつきまして私ども講話をすることがございます。その段階で警備官及び審査官それから入国管理の職員は国内における外交官である、外国の方々が日本に参りましたときに最初に接する人たちがあなた方であるというようなことで、その辺につきまして非常にそういう外交官であるという認識を持て、自覚を持てというようなこと。それから、これはあくまでも窓口である行政サービスであるから、この点についてしっかりいい行政をするようにというようなことで話をいたしております。
  303. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 大臣にお伺いいたしますけれども、量的な増大の問題ですね。今お話をお聞きしましたように、果たしてこれだけの増員でやっていけるのかどうか、非常に今後件数がふえていくのは、もうこれは必然的でありますけれども、この人員の増員について、あるいは予算増加について格段の努力をお願いいたしたいと同時に、今入管局長言われましたように、やっぱり外交官として接するんだと、その気持ちが非常に大事じゃないかと思うんで、法の執行はあくまで厳正にやらなくちゃいけませんけれども、やはり同時に、常識のある人間をそれに振り向けていくということが非常に大事ではないかと思いますので、その点について大臣の御所見をお伺いしまして次の問題に移ります。
  304. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) まず、その国へ入国しまする場合の玄関口がこの審査官それからまた警備官でございます。先生おっしゃいまするように、この人の国際性というものは極めて重要な問題でありまして、したがって今局長が申しましたように、さらに研修を強化いたしまして、立派な、国際的な認識を持った者が窓口に当たり得るようにしてまいりたいと存じます。  また、法務省は実は人によって行政を行っておるというところでございまして、したがってもう検事につきましても、あるいは先ほど問題になりました登記を行う者につきましても、すべて人が問題になるわけでございます。そして、これが十分ではない。特に出入国管理に当たっておりまする者の数は十分でないわけでございまするが、今国といたしましては行政改革として定員減を図ってまいっておるわけでございまして、これもまた一方において非常に重要な問題でございます。  したがって、定員減を図りまする場合に、必要なところには定員を回してもらってこれを充実していくということが重要なことでございまして、したがってことしの予算におきましてもそういうことを十分配慮しまして、法務省全体としては純増九十九人ということになったわけでございます。しかし、それを分配する場合におきましては、やはり当面の登記という問題が非常に重要なものですから、その方面へ多く回さざるを得ないということになりまして、この出入国の方に人員を回しておるのが少ないわけでございます。  なお、これからも大いに努力をいたしまして、しっかりした出入国管理が行えるように努力をしてまいりたいと存じまするので、よろしくお願いを申し上げます。
  305. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その点格段の御努力をお願いしたいと思います。  戦後の社会情勢変化であるとか、特に国際化の進展であるとかというので、減らしていいところはもっとたくさんあるような気がするんです。一律に減らすというふうな考え方でなしに、減らすところは大いに減らす。そして、先ほどの登記所の問題もあるんですけれども、ふやさなくちゃならないところは大胆にふやす、そういう方針を竹下内閣としてぜひやっていただきたいと思います。  それから次に、入国管理法の改正の問題について、去る三月二十四日法務大臣記者会見でお話しになったことがございます。不法就労者の増加に対応するために入管法の改正が必要であろうということを述べられましたけれども、新聞でアウトラインは承知いたしましたが、それに関連して改正の要点というのは、主としてこの入管法の第四条一項の第十六ですか、その点の上陸を許可する者でそれまでにずっといろいろ列挙してある。その列挙してある在留資格以外に、いわゆる「法務省令で特に定める者」というのが十六にあるんですけれども、それを明白にするのが目的でございますか。
  306. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 目的ないし趣旨をお尋ねでありますれば、現代の国際化時代に入りましたポツダム政令をもとにした出入国管理法がこのままでいいのかという、そういう見直しということになるわけでございます。  要点の中には、今関委員がおっしゃられましたいわゆる四の一の十六の三という、法務大臣が在留を特に認めるという非常に一見あいまいになっているというようなことで、これを直すのが一つの大きなポイントになっていることも事実でございます。二十六年に法が制定されて昭和五十六年に若干手直しをされたわけでございますけれども、この法律は、今の時代の要請に若干対応し得ない面があるのではないかという点が今回の改正の主要点の一つでございます。  現在十六の三、いわゆる四の一の十六の三という資格で入っております者の中に相当数、例えば語学教師、日本企業へ就職する就職者、それから日本語学校に通学するいわゆる就学生という者がこのカテゴリーの中で入っておりますが、この人たちは特定の、その前に列挙されている在留資格ではなくて、法務大臣が特に在留を認める者ということで、個々にこれまでは審査して入国在留を認めているというものでありますが、かなりの数がこのカテゴリーで入っておる現実がございますので、このカテゴリーについては、これらのカテゴリーのうちの幾つかについては、個別の在留資格を設けて一定の審査基準によって処理をすることによって審査事務を迅速化するとか、合理化するということにも資するとは思いますし、それから入ってまいります外国人の側から見ましても、非常にわかりやすくなるのではなかろうかということで、これが一つの改正点のポイントになっておるわけでございます。
  307. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もこれを見て外国人がすぐ理解できるようにしなければならない、そのことが改正する上において非常に重要だと思います。  それで、最近労働省でも今までの方針を再検討して、不熟練労働者は入れない、これは除外するとしても、技術者と申しますか、あるいは半熟練労働者といいますか、そういった技術者の入国も認める方向で検討しているようであります。その場合に、今第四条の一項の十六、それからそれに続いたところ、それを改正するというふうに言われましたけれども、やはり今までと同じように仕事の種類、例えば芸術活動をするとか教育活動をするとか、こういった仕事の種類を列挙して追加していく、そういう形でやられるのか、あるいは労働省あたりで考えているのは例えば労働許可を得た者、どの職種にかかわらず労働許可を得た者の入国は許すんだと、そういう方針で行かれるのか、決まっておりましたならばお知らせ願いたいと思います。
  308. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 法務省で現在考えております入管法の改正の方針と申しますのは、現在まで入国管理法がとっておりました基本的な考え方、すなわち今御指摘の第四条の在留資格制度というのを基本にいたしまして、これをもう少し明確化し、あるいは今まで十六の三で入っていたものをもう少し特定の在留資格として現在ある、列挙しているものにつけ加える等をいたしまして明確化、合理化を図っていきたいということでございまして、私どもといたしましては労働省のお考えの中にあるような、さらにこのような制度につけ加えた雇用関係の証明書の発給とか、そういうことは今現段階では考えておりません。  私どもまだ労働省の最近出されましたこの報告書、中間報告ということで新聞等に出ておりますが、この点につきましては、なお事務的に法務省の内部でも検討をしなければいけないなというふうに考えておるところでございまして、その旨は事務的には労働省の方にも伝えてございます。
  309. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まだ労働省の最後の方針は決まってないようなんで、今からどうこうということは早いと思いますけれども、要はよく労働省の方と打ち合わせをして、これを法文化する場合でも一見してすぐわかりやすいようにしていただきたい、それが私の希望でございます。  それでわかりにくい例としまして、先ほどちょっと言われましたけれども、ポツダム条令関係のやつが残っているんじゃないか、そういうのを整理しようというふうに言われましたけれども、恐らくそれは第四条の第一項の十四で「本邦で永住しようとする者」、この問題ではないかと思うんです。これは一体どういう人たちを想定してこの条項は設けられたのか。  それからまた、今までこの十四号によって在留資格を申請された人があるかどうか、上陸のときですね。その人数がわかりましたならばお知らせ願いたいと思います。
  310. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 四の一の十四の資格は、この法文の規定で申しますと、「本邦で永住しようとする者」ということで規定されております。この在留資格、すなわち永住という在留資格を取得する方法といたしましては、この四条の第一項の第十四号という方法のほかに第二十二条という規定がございまして、これも永住許可に関する規定でございます。  日本国に永住をしたいという目的で申請をいたします際に、私どもとして審査をする内容といたしましては、法律に基づきまして日本国の利益に合致する人、それから素行善良な人及び生計の自活の能力があるというような、大きく言いましてこの三つの点で審査をいたしますけれども、このほかに日本における在留状況というのが非常に審査の対象としては大きなものになるわけで、この四条一項の十四という手続で参ります方は、現在外国に住んでおってそれで入国の際に永住したいという申請をして入ってこられる方ですので、過去の在留状況というのはない方々でございますので、この方法で入ってこられる方々についてはなかなか審査が難しゅうございます。  そこで、一たんほかの在留資格で入ってこられた方々でかなりの期間日本に在留をしておられた方々が、その後日本に永住したいということで在留資格を変更するという手続によって永住許可を求めてくるのがほとんどでございます。それが二十二条の「永住許可」という手続によるものでございまして、この二十二条によります方々が年間四千件ぐらいございます。他方、四条の手続によって入国の際に永住の資格を得ようとするという方々は、そういう事情でもございますのでかなり厳格な審査が必要となるわけで、この申請を行ってこられる方々はもう希有でございます。ほとんどないということでございます。
  311. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 二十二条の、在留資格を変更しよう、これはよくわかるわけなんです。しかし、第四条の入国のときに「本邦で永住しようとする者」というのは、一体何を考えてこういう規定ができているのか。今希有と言われたけれども、ゼロと考えていいわけですか、一件でもありましたか。
  312. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 私ども近年においてはこれはほとんどない、ゼロだと思っておりますので、そのようにお考えいただいて結構と思いますが、ポツダム時代にできましてからこの申請が十四号であったかどうかにつきましてはもう少し調べさしていただきますが、希有ということでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  313. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私は、これは恐らく占領軍の命令でこういう条項が残ったんだと思うんですけれども、私は今度の改正のときに、こういうのははっきり削除してもらいたい。積極的に認めていくというのでしたならば残してその要件を詳しく書く必要がありますけれども、それを認めないというのでありますならばこれは削除してもらいたい。  と申しますのは、それ以降第四条の第五項ですか、「第十四号に該当する者が、本邦に上陸しようとするときは、法務省令で定める手続により、あらかじめ、永住許可を法務大臣に申請して、その許可を受けなければならない。」とあって、どういう者を認めるかで「永住が日本国の利益に合すると認めたとき」であるとか若干書いてある。それからその次の第五条には、例えば麻薬の常習者であるとか刑罰を犯した者、これはだめだと書いてあるんですけれども、こういう条文がありますと、これを読んで、おれは麻薬の常習者でもない、刑罰を受けたこともない、そして自分は日本に永住することによって日本国の利益に合致すると考えた人が、この条項を利用することによって申し込んでくるだろう、申請してくるだろう。そのときにそれを断るということは外国人に対して非常な大きな誤解を与えることになる。  したがって、この問題について方針をはっきり決めて、例えば最近のフィリピンあたりから、東南アジアあたりから日本の農村にお嫁に来たいというふうな人があって、観光ビザの三カ月では短いからぜひとも日本人と結婚したいんだというので、日本に永住したい、そういう人が出てくるかもしれない。日本の男性と結婚すれば日本の国の利益になるから、そう考えてこの条項を利用して入ってくる人があるかもしれない。そういうのを入れる方針であれば私はいいと思うんですけれども、入れない方針であるならばその点ははっきりさせていただきたい。そのことを十分検討してやっていただきたいと思います。
  314. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 今回の改正のポイントの一つといたしまして、先ほど御説明申しましたことのほかに、外国人が申請します際にどのような要件を満たせば入国、在留を許可してもらえるのかどうかということ、そういう基準を明確にしておく必要があろうという点も一つでございまして、従来その基準は、多くの場合いわゆる入管当局の内規みたいなそういう基準であったわけでございますが、これも例えば省令レベルでそういう基準をきちんと出して、それで申請者によくわかるようにいわゆる透明性を増大していこうというねらいも一つございます。  御指摘の「本邦で永住しようとする者」というこの号につきましてはこれから検討の対象とさせていただきますが、御指摘のように何かこれはポツダム政令時代の遺物であるかもしれませんので、これをどうしていくかということにつきまして、御指摘のような御議論を踏まえつつ考えていきたいと思います。  最後に御指摘になられました日本人と結婚をして、その後永住をしたいという人が出てきはしないかという点でございますが、これは実は日本人の配偶者ということで入ってまいりますと簡単に永住資格がもらえるようなことに現在でもなっておりますので、その辺も、それを悪用してそういう人がたくさん出てくるのが弊害であるということで認識されますならば、そういうことのないように考えて改正の際の検討にさせていただきたいというふうに思っております。
  315. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私がちょっと例として挙げましたのは、配偶者が決まっている人ではなしに、それは未定なんです。しかし、日本人の男性と結婚したい、あるいは日本人の女性と結婚したい、そういうので入ってくる人が、まあ非常に私はまれではないかと思うんですけれども、そしてそれが偽装結婚でなければ私は必ずしも拒否する必要もないのじゃないかと思うんですけれども、ただこういうのを一度認めますと、それがだんだん拡大解釈されていきますので、もし認めるにしてもその場合には十分その限定条件を付することが必要ではないか、そのことを今後の検討課題としてお願いしておきたいと思います。  これで質問を終わります。
  316. 西川潔

    西川潔君 いよいよ最後になりました。長時間お疲れでございますが、よろしくお願いいたします。何分法律には素人なものですから、ひとつわかりやすい御答弁をよろしくお願い申し上げます。  私は、第百七回の国会委員会におきましてビデオテープの遺言ということでお願いをいたしました。きょうはまずそれに関連した質問からお願いいたします。  昨年の十二月でございますが、殺人現場を収録したビデオテープが動かぬ証拠となりまして法廷に提出され、検察と弁護側が真っ向から対立した事件がございました。殺人か正当防衛か、このホテトル嬢の客室殺人事件はその異常な内容もさることながら、一本のビデオテープがどのような判断を導くか注目を集めました。私も大変興味がございました。そしてまた少し古くはなりますが、ロッキード事件の控訴審のときに弁護側が現金の受け渡しの難しさを立証するために再現ビデオを提出するなど、ビデオテープが法廷に登場する例が大分ふえてきております。これはいつごろから登場し始めたのでしょうか、まずお伺いしたいと思います。
  317. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) ビデオテープが、刑事事件において犯罪事実に関する立証に使われる例が近年ふえておりますことは御指摘のとおりでございます。そして、実際にはこのテープに大きく分けますと二つの類型があるように思われます。一つは、犯行の状況等をいわば直接撮影したものでございます。もう一つは、警察等における取り調べの際、被疑者に犯行状況を再現させてその模様を録画した、こういう性質のテープもございます。  そして、これらのビデオの利用がいつごろから始まったということにつきましては、私どもも的確な資料を持っておりませんではっきりしたことは申し上げられませんが、私どもの知る限り、昭和四十年代の終わりから五十年代の初めころではないかと思われます。もっともそのころはごくその例が少なかったわけでございますが、それが最近次第にその数がふえてきている状況にある、そのようなことであろうと思います。
  318. 西川潔

    西川潔君 大体これまで全国でどれくらいの事例があるか。それとまた、去年とか三年前、五年前、十年前ぐらいにわたりましてどれぐらいあるかということはおわかりになりますでしょうか。
  319. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) まことに残念でございますが、これに関する統計等が全くございませんので、実際に行われた数等については把握し得ない状況でございます。
  320. 西川潔

    西川潔君 僕が一つお伺いしたいのは、今は御家庭ではテレビが二台の時代でございまして、それにまたビデオテープも大変な普及率でございます。今後ビデオテープの法的な位置づけはどのように進んでいくか、また現在皆さん方の方ではどのようにお考えになっているかというのをお伺いしたいと思います。
  321. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) まず、ビデオテープがどのような要件があれば証拠になるかということが最初に問題になります。これにつきましては、犯行の状況等を撮影したビデオにつきましては、それが客観的な状況をいわば機械的、光学的な方法で録画したという性質のものでございますので、いわゆる伝聞証拠には当たらず、そのビデオが、その事件の犯行現場等を間違いなく撮影したものであるということが明らかにされれば証拠とすることができるというふうに一般に考えられております。この点はほぼ一致しているところだろうと思います。  次に、警察等の取り調べの際、被疑者が犯行状況を再現してみせた模様、これを録画したビデオにつきましては、実際の問題として被疑者が再現してみせた動作やしぐさが、被疑者のこうやりましたという供述と一体となって証拠となるというような性質がございます。そのようなことから、このビデオにつきましてはそのビデオが被疑者の動作、しぐさ等を正確に録画したということだけでなく、被疑者が強制によらずに、いわば任意にそのような供述や動作をしたということが明らかにされる必要があるわけでございます。このようなことから、このビデオの証拠能力につきましては学説上いろいろな考え方が出ているわけでございます。  ただ、そのいずれの説をとりましても、実際上は今申しましたような二つの面について十分調査した上、それが証拠とすべきかどうかを決めるということについては、これまた争いがないところであろうというふうに考えております。  次に、問題となりますのは、そのように証拠になったビデオの証明力と申しますか、信用力と申しますか、その評価の問題でございます。これにつきましては、ビデオはありのままを映すという意味ではその証明力が高いわけでございますが、ただ、撮影や編集の過程で作為等が入る余地はないかということが問題になることもあります。またよく写真を読むという言葉が使われますが、一枚の写真につきましても、その内容をどう見るかということについてはいろいろな解釈が成り立つ場合もございます。ビデオの場合にも程度の差こそあれ同様の問題が起こるということでございまして、これらにつきましては実際の訴訟でも検察官、弁護人からいろいろ主張がなされ、論争が行われるということもあるわけでございます。裁判所としてはそのような当事者の意見を十分に聞き、また他の証拠の内容とも十分対比いたしまして慎重にその証明力を考えていく、こういうことになろうかと思っております。
  322. 西川潔

    西川潔君 ありがとうございます。  自分でもメーカーの方々、そしてまた、今までテレビ局の専門家、お友達等にいろいろお伺いしまして、手を加えて例えば悪意を持って編集したりすることはできるものなのか。今大変進みまして素人でも編集する機械がございますのですが、そして悪意を持って編集をしてフィルムをつなぎ合わせるというようなテクニックは、これは素人では、そしてまた特別なそういう副調室だとかという専門的な機能を備えてないところでないと多分不可能ではないか。例えばテロップを入れまして、何年何月というようなよくテレビででも、こちらの方にこの品物のプレゼントの欲しい方はおはがきをくださいというようなテロップが出ますが、テロップ以外にも必ず編集ができないようにいたしますのは、例えば後ろにBGMを流しまして、バック・グラウンド・ミュージックというのを流しますと、オタマジャクシと言いまして譜面の音楽の部分ではもうこの編集は皆無でございます。こういうこともまた検討していただきますよう、よろしくお願いいたします。  ここに、ことし一月五日の朝日新聞の家庭欄の記事を持ってまいりましたのですが、その中に「法的効力はないが高齢者が家族らに生前の姿を残そうという「遺言ビデオ」などは、一般にもかなり広がって」きているそうでございます。社会的現象とまでなってきておりますので、ぜひよろしく重ねてお願いをいたしたいと思います。  そしてまた、昨年十月ですか、失明者の自筆遺言作成に当たり、運筆の助けだけならば他人が添え手をするいわゆる二人書きの遺言についての最高裁の判断がくだりました。判決の内容、二人書きが有効となる条件をお伺いしたいと思います。
  323. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 御承知のように民法九百六十八条は、遺言の一つといたしまして自筆証書遺言というものを定めております。その要件といたしまして、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日附及び氏名を自書し、これに印をおさなければならない。」、こういうふうに規定しております。  委員御指摘の昨年の最高裁の第一小法廷の判決は、この自書すなわち自分みずから書くという要件に関して判断したものでございます。  若干事件内容を紹介さしていただきますと、この事件は、視力が衰えましてかつ手が震えて一人では満足な字が書けない七十三歳の方が、遺言書を作成するにつきまして奥様が背後からその手を握って、遺言者がその書こうとする語句を一字ずつ発声し二人が手を動かして遺言書を書き上げた、こういうものでございます。  この判決は、今御指摘のありましたとおり、病気その他の理由により、運筆について他人の添え手による補助を受けた自筆証書遺言が、自書の要件を満たして有効であるというための要件として三つの要件を掲げてございます。  第一は、遺言者が証書作成時に自書能力、すなわち文字を知ってこれを筆記するという能力を有すること。  二番目は、他人の添え手が遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、または遺言者の手の動きが遺言者の望みに任されていて、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えをかりただけであること。  それから、添え手が今申しましたようなものにとどまるということが筆跡の上から判定できること。  こういった三つの要件を掲げておりますが、この事件におきましては二番目の要件で、結局遺言者の奥さんが積極的に手を誘導して、奥さんの整然と字を書こうという意思がその中に介在して作成されてしまったと、こういうことで、この事件の遺言は無効というふうに判断した、こういう事件でございます。
  324. 西川潔

    西川潔君 このような目や手の不自由な方々、そしてまた高齢者の方々は、例えば余り学校にも行っていらっしゃらない方は字も本当に書けない方もいらっしゃいます。微妙な問題を含むと思いますが、二人書きよりも、一日も早くビデオテープによる遺言、これは大変僕は子々孫々まで、いわゆる御先祖さんの顔もちゃんと残って、大変子供たちの道徳にもいいのではないかなと、こう思っております。ひとつ実現に向けましてこれからもお願いしていきたいと思います。難しいことが多々あると思いますが、どうぞ検討、努力していただきたいと思いますが、この時代にして、大臣、ビデオ遺言いかがでございましょうか。
  325. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 百七国会において西川先生から御提言になりましたビデオ遺言制度でありまするが、極めて新しい考え方であると存じております。そこで、その後法務省におきましてはいろいろ研究をしておりまするが、法律的にはなおいろいろ問題があるようでありまして、遺言についてだけ特にビデオの利用を認めるということがよいかどうかという問題もあるのでございます。そういうことで、さらに今後とも十分検討をしてまいります。
  326. 西川潔

    西川潔君 それでは、次に移らしていただきます。  次は、更生保護施設保護観察、保護司についてお伺いいたします。  まず、更生保護施設とはどのような施設でしょうか。そしてまた、例えばそちらへ参りますとどういうふうなお世話をしていただけるんでしょうか。
  327. 栗田啓二

    政府委員(栗田啓二君) お答えいたします。  更生保護施設とは、ごく簡単に申し上げてしまいますと、更生保護事業を営みます収容保護施設でございますが、もうちょっと詳しく申し上げさしていただきます。  この更生保護施設におきましては、刑務所から出てまいりました者、この中には満期で出てきました者、仮釈放で出てきました者、両方含めております。それから、起訴猶予になりまして検察庁限りで釈放になってきました者、あるいは裁判所で刑の執行猶予の判決をいただきました者、その他の理由によりまして保護観察になっております者、こういった人たちの中で、自分は更生したいという意欲が十分あるのですが、家族とか縁故者とか面倒を見てくださる方がない、あるいは家族や縁故者はあるんだけれども引き受けて面倒を見てもらうことができない、こういうような人たちに対しまして宿泊する場所を提供いたしまして食事を供与し、あるいは就職を援助する、あるいは生活の相談に乗るというようなことをいたしまして、こういった人たちが健全な社会人として社会に復帰するための指導、力添えをしておりますのが更生保護施設でございます。
  328. 西川潔

    西川潔君 実は、埼玉県ではこの施設が一カ所もないと聞いております。現在、浦和市内の更生保護施設建設予定地ということで住民が反対しているということを聞いておりますが、現在はどうなっているんでしょうか。また、その反対をする理由などもお伺いしたいと思います。
  329. 栗田啓二

    政府委員(栗田啓二君) ただいま御指摘のとおり、全国都道府県の中で、厳密に申しますと青森県と埼玉県とで具体的な施設がございません。いずれも建設しようとしましていろいろな反対に遭いまして、立ち悩んでいるというのが実情でございます。  埼玉県の方の問題につきましては、昨年の十一月末に財団法人清心寮という財団法人が設立されまして、この民間人のボランティアによります財団法人が主体となって、ただいま問題になっております更生保護施設を建設する準備を進めておりますが、地元の方たちから更生保護施設をつくってもらうのは困るという反対が寄せられております。  これにつきましては、その理由といたしまして建設予定地が、これは県庁や保護観察所のすぐ近くの場所でございますが、こういった公共施設の多い浦和市内の中心部であるということをまず挙げておられます。また別の言い方としては、付近に住宅が多い住宅密集地域である、住宅密集地域に犯罪を犯した人たちを収容する施設をつくると近隣の住民の日常生活に不安を来す、特に子供たちの教育に差し支えるんじゃないかというようなことをおっしゃり、またこの近辺は学校施設も多くて文教地区だ、だから子供たちに悪影響があるというようなこともおっしゃいます。あるいはこのあたりは埼玉県が行政センターというのを構想しておられるようでございますが、その一角に入るからどうも似つかわしくないんじゃないかというようなことなどを、いろいろと地元の方々が生活環境を守る会というような会をおつくりになって反対の意見をおっしゃっておられます。  これに対しまして、私どもの方では、出先にございます浦和の保護観察所、あるいは建設いたします当事者でございますところの財団法人清心寮の役員の方々などが、地元の方といろいろお目にかかっては更生保護会の必要性を御説明し、御理解をいただくように努力いたしているところでございます。
  330. 西川潔

    西川潔君 住民にとりましても、その施設を地域内につくらず人里離れたところにつくると望まれる、それはわかるような気もいたします。  現実に、ことし一月十五日の夜、大阪の地下鉄谷町四丁目駅構内での保護観察対象者による女子大生の刺殺事件が起こりました。保護観察制度の見直しも必要ではないかという意見もありますが、しかし罪を犯した者だからといってのけものにし、社会からの隔離を繰り返しては、本来の地域の中から更生をさせてあげるという意味が損なわれると思うのであります。  また、老人や身体障害者の方々についても、できるだけ住みなれた地域社会の中で生活をしていただくことが僕はいいことだと考えます。そのためには、例えば老人の場合でしたら、在宅福祉サービスの充実等を図る入所施設についても、地域住民の理解を得ながら地域社会との交流が可能なところに立地すべきと思うんですけれども、例えば大阪に住んでおりまして、本当にああいう事件がありますと不安でございます。例えばこういう施設について厚生省の考えと今後の取り組みの方針などをお伺いしたいと思います。
  331. 真野章

    説明員(真野章君) 障害者施設並びに老人の福祉施設につきましては、私ども障害者対策並びに老人福祉施策におきまして、お年寄りや障害者などハンディを持つ方々につきましては、健常な方々と同様の生活が送れるという、いわばノーマライゼーションの理念に沿って行われるべきものと考えておりまして、厚生省といたしましては、寝たきりのお年寄りなどもできるだけ家族や隣人とともに生活を送れるような施策を講じております。例えばホームヘルパーの派遣でありますとか、デイサービス事業でありますとか各種在宅福祉サービスを拡充いたしまして、できる限り地域でお暮らしをいただけるという施策を講じております。また、御指摘のありました特別養護老人ホームなどの入所施設につきましても、人里離れたところではなくて町場につくっていただきまして、またその機能をデイサービスセンターでありますとか地域へ開放するということで、孤立化することなく地域の福祉の拠点として活用をしていただきたいということで、最近では施設整備を行う場合にも、地域特性も勘案しながらできるだけ都市部で施設整備を指導しているところでございます。
  332. 西川潔

    西川潔君 それでは次に、保護観察対象者と密なる接触を必要とされている保護司の具体的な内容、そしてまた経歴、年齢構成についてお伺いいたします。
  333. 栗田啓二

    政府委員(栗田啓二君) 保護司の方につきましては、保護司法という基本法がございまして、これに保護司になるべき方の使命あるいは要件等を記載しておりますが、ごく簡単に申し上げますと、保護司になるべき方につきましては、人格、行動等について社会的信望がおありのある方で、このような事業に対して力を注いでくだされる肉体的なあるいは社会的な条件が整っているという方を法務大臣が委嘱してなっていただくわけでございます。定員としましては、全国に五万二千五百人ということになっておりますが、実際には現在は、昨年末の人数で四万八千六百人ほどの方が保護司として御活躍いただいておられます。  保護司の方の従来の経歴などを拝見しますと、宗教家、教育家、あるいは公務員、一般家庭の主婦の方、いろいろございまして、非常にバラエティーに富んでおります。
  334. 西川潔

    西川潔君 よくわかりましたですが、重要な、大変な本当にお仕事だと思います。でもこの方々が、聞くところによりますと、本当にほとんどの方が愛情を持ってボランティアでということですが、今の時代でなかなかボランティアという、無料でお世話になるということに少し僕は疑問を抱くのでありますが、何とかこれは有償には、お金をお支払いしてもっと人数をふやしていただくような、足らない部分をリカバリーしていただくようなことにはならないものでしょうか。
  335. 栗田啓二

    政府委員(栗田啓二君) まことにありがたい御指摘をいただいております。私どもといたしましても、保護司の方に対して報いるところが少ないことを非常に残念に思っているところでございます。  ただ、この保護司制度、大体常時九万人ぐらいの者が保護観察になっているわけでございます。この対象者をカバーいたしますために、先ほど申し上げました約五万人弱の保護司の方にいろいろ御活躍いただいているわけでございますが、この九万人という中には、保護司さんにお願いしていない交通事件の軽微なものを対象にします交通短期処遇というのも入っておりますので、九万人全部が保護司さんの対象ではございません。しかしながら、多数の事件につきまして保護司さんに御活躍いただいているわけでございます。  我が国におきましてほかの国ではなかなか成功いたしませんこういう保護観察制度が、私どもが申し上げますと大変口幅ったいようでございますが、世界的に評価される成果を上げておりますことは、実はこの保護司さんの制度に負うところが大きい、このように思っております。保護司さんは、まさに委員御指摘のようにボランティアでございます。職業公務員ではございません。職業公務員の場合でございますと勤務時間でございますとか、その成果に対する適正な給与というようなことで非常にややっこしい話が出てまいります。そのようなことで、職業公務員をもって保護観察を担当させました諸外国ではいずれも思うような成果が上がりませんで、こういう制度を縮小したり撤退したりしつつあるのが現状のように私ども聞き及んでおります。  これに対しまして我が国の保護司さん方は、自分たちはもちろん保護司法で報酬を支給しないと書いてございますが、それをいわば勲章のように我々は無報酬でこの保護観察に従事していると、そのことに大いに意義を感じてくださって、それこそ時間の制約もなしに夜、夜中でも対象者が訪ねてくる。あるいは電話をかけてきて先生助けてと言うと、自分でタクシー雇って飛んで行って相談に乗ってくださる。これはいわゆる役人根性ではとてもできないものだと思っております。このような御活躍をボランティアなるがゆえに発揮してくださっている。私どもは正直に申し上げまして、保護司の方々だからやってくださっているんだと申さざるを得ないと思っております。  そういうことで、この保護司さん方のお働きを報酬に換算するということはとても難しいような感じがいたしております。その保護司さん方のお気持ちに甘えているというのは大変申しわけないことでございますが、ただわずかながら私どもといたしましては、いわゆる実費弁償金という名目で、事件を担当していただきますと月にわずかずつの実費ということでお渡ししておりますが、これが必ずしも実費を満たすものではないと思っております。例えば、対象者が訪ねてきたと、まあ晩飯でも食っていけということで食事をなさる。その費用なんかとても出る費用ではございません。しかし、保護司さん方も、今お国の財政事情がきついことはわかっているんだと、政府の方も努力してくれているのはわかっているんだから、まあ何とかこれで辛抱して一生懸命やってやるというお気持ちで、そういうことをおっしゃらずに大変な御努力をいただいているところで、この席をかりて全国の保護司様方に厚く御礼を申し上げる次第でございます。
  336. 西川潔

    西川潔君 いい御答弁をいただきまして本当にありがとうございます。  僕もそういう方々を何人か存じ上げておるんですけれども、本当にお金がかかります。たまの休みに訪ねてくると、シーズンですと一緒に花見に行こか、映画に行こかというようなことで、潔さん、金要りまっせというような話も聞いております。まあよくしてくれるからおんぶにだっこというのは余りよいことではないと思います。  ここへ来てまだ二年足らずですが、法務省というのは予算のとり方が下手なとこやなというふうに感じておる。これは大臣の答弁は結構でございますが、もう少しそういうふうな方面には予算をとっていただいてもいいんではないかなというふうに、僕個人、大阪弁で言う何でやろと、そんな気持ちがいたします。また、保護司一人当たりの観察対象者がそれだけの人数を担当するのならば、いわゆるお金もかかります。たくさん訪ねてもきます。一人で二人も三人もというのは本当に大変なことだと思いますが、観察対象者の本心まではとてもつかみ切れないと本当に思います。  そこで、労働省の方にお伺いしたいんですが、我が国も高齢化社会になります。定年後働く意欲があっても働く職場がない。これはもういろんなところへ、老人ホームに参りますと潔さん元気やねん、仕事ないかと言う、おばあちゃんでもおじいちゃんでもそうですが、仕事欲しいわと。女性はもう八十・九三歳です、男性は七十五歳です、それも平均でございます。こういうお仕事についていただくということが僕は本当にすてきなことであると思うんですが、現在のそういう状況、将来の推計をお伺いしたいと思います。
  337. 木村富美雄

    説明員木村富美雄君) 先生御指摘のように、現在見てみますと、雇用情勢全体としては改善傾向にございますが、産業構造の転換が進んでおるというような状況の中で、高年齢者の雇用情勢というのは依然として厳しい状況が続いております。ちなみに、例えば完全失業率で見てみますと、昨年全体としては二・八%という数字でございましたが、五十五歳を超えた方たちを見てみますと三・四%というような数字になっております。また、これから日本の社会も本格的な高齢者社会を迎えようとしております。そうした中で、我が国として活力のある社会維持していくということのためには、高年齢者の雇用の場を確保していくということが非常に重要ではないかというふうに考えております。  こういった観点から私どもといたしましては、高年齢者雇用安定法、この法律に基づきまして六十歳定年の定着あるいはこれを基盤とした六十五歳程度までの継続雇用の推進、また失業しておられる高年齢者の方たちの再就職の促進といった点に努めてまいりたいと考えておりますが、特に、六十三年度につきましては、今申し上げましたような政策を重点的に行うという点から、産業・地域・高齢者雇用プロジェクトというものを労働省としては推進するということにしております。こうした中で、高齢者雇用の問題について鋭意努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  338. 西川潔

    西川潔君 ありがとうございました。二十分までということでございましたが、最後に一問だけ質問さしていただきたいと思います。  全国いろいろ回りまして本当にお元気なお年寄りが仕事が欲しい。そしてまた、先ほどの外国の就労者でありますが、自分は心配するところ、本当にこちらへ単純労働で入ってこられます。長く日本にいて結婚でもされて、今でも我が国の将来の社会保障の問題なんかが多々ございますが、そういう人たちが結婚し子供をつくり、その子供たちが学校へ行き、また外国から来た人たちが高齢者になる。そうすると将来のその人たちの社会保障などもどうなるのかなと、そんな不安も抱いているわけでございます。  そこで、そういう人たちの豊富な知識と経験を生かしていただき、保護司の職務についていただく。この場合、ボランティアというよりも政府が本当にこのお仕事に対し報酬を出していただければ雇用対策にもなると思いますが、現実には難しいことはよくわかりますが、生活の安定されている方々の生きがい対策のまた一つとしてやれる方はやっていただくということで、また保護司の増員を図り保護司と観察対象者を一対一のマン・ツー・マンにすれば観察対象者にも目が行き届き、地域の住民の方々も少しは安心し、また理解していただけると思います。そうすると、一つでも二つでも施設もふえるのではないか、こういうふうに考えておりますが、最後に法務大臣にお伺いしたいと思います。
  339. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 保護司さんの現在の平均年齢が六十一歳でございます。そこで、七十歳になられましてもなお元気に活躍をいただいている方もございます。ところが、この保護の対象になる人は四分の三が少年でございます。そしてまた、犯罪を犯してきた人もあるというようなことでありまして、なかなかこの保護というのが面倒な仕事でございます。そういうことから、実はこの保護司さんをお願い申し上げまするのは各地域の保護観察所長が推薦をいたしまして、そして保護司選考会というのがありまして、そこで選考してもらって法務大臣が委嘱を申し上げる。こういうことになっておるんですが、そういうのにかけまして元気な方でやっていただけるという方がありましたならば、またお願いを申し上げたいと存じます。
  340. 西川潔

    西川潔君 どうもありがとうございました。
  341. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 以上をもちまして法務省所管に関する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十二分散会