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1988-05-24 第112回国会 参議院 文教委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月二十四日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         田沢 智治君     理 事                 仲川 幸男君                 林  寛子君                 粕谷 照美君                 佐藤 昭夫君     委 員                 小野 清子君                 川原新次郎君                 木宮 和彦君                 山東 昭子君                 杉山 令肇君                 世耕 政隆君                 竹山  裕君                 寺内 弘子君                 柳川 覺治君                 久保  亘君                 安永 英雄君                 高木健太郎君                 高桑 栄松君                 勝木 健司君                 下村  泰君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        文 部 大 臣  中島源太郎君    政府委員        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        任用局長     森園 幸男君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        文部政務次官   船田  元君        文部大臣官房長  古村 澄一君        文部大臣官房総        務審議官     川村 恒明君        文部大臣官房会        計課長      野崎  弘君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省教育助成        局長       加戸 守行君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局私学部長    坂元 弘直君    事務局側        常任委員会専門        員        佐々木定典君    説明員        警察庁交通局運        転免許課長    滝藤 浩二君        法務大臣官房審        議百       東條伸一郎君        厚生省健康政策        局医事課長    阿部 正俊君        厚生省児童家庭        局母子福祉課長  柏崎 澄雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○私学助成に関する請願(第二〇号) ○私学助成に関する請願(第二一号外八件) ○私学助成増額に関する請願(第二二号外二七件) ○学校事務職員等の職制の整備確立に関する請願(第三三号外四五件) ○私学助成大幅増額に関する請願(第三四号外五件) ○私学助成大幅増額に関する請願(第三八号) ○私学への助成大幅増額に関する請願(第四〇号外三件) ○私学助成充実に関する請願(第五二号) ○障害者の学ぶ権利の保障に関する請願(第一一一号外七件) ○私学への助成の大幅な増額に関する請願(第一二五号外三件) ○私学助成大幅増額等に関する請願(第一三二号) ○大学院の研究条件改善等に関する請願(第二八七号) ○国立大学寄宿料値上げ反対に関する請願(第二八八号外一件) ○私学助成増額、四十人学級実現に関する請願(第三二四号外一件) ○私学助成大幅増額に関する請願(第六七一号外一六件) ○へき地教育振興に関する請願(第八六九号) ○国立大学学費値上げ反対等に関する請願(第九七五号) ○国立大学寄宿料値上げ反対に関する請願(第九七六号) ○在日留学生対策充実に関する請願(第一〇四二号) ○大学高等専門学校関係予算大幅増額等に関する請願(第一三九四号) ○臨教審関連法案反対等に関する請願(第一三九五号外二三件) ○臨教審関連法案反対に関する請願(第一六六四号外六〇件) ○臨教審関連法案反対、行き届いた教育実現に関する請願(第一九五三号外三件) ○継続審査要求に関する件 ○継続調査要求に関する件     ─────────────
  2. 田沢智治

    委員長田沢智治君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 粕谷照美

    粕谷照美君 十九日の文教委員会で私は資料要求をいたしました。先ほどその資料が出てまいりました。  嫌みじゃないんですけれども、助成局長共産党資料要求徹夜でやりますなんて文教委員会で頑張って、私の方は徹夜でやらないで審議の朝出てきたという、これはどういうことですか、大変な問題ですよ。まあ徹夜でやった部分についてもまたいろいろと意見も申し上げたいと思いますが、先日申し上げましたのは新規採用者小学校では四九・六%、その他の五〇・四%は何らかの前歴を持っていて新採用になった、その何らかの前歴を持って新採用になった方の中から初任者研を受けないで済む者と受けなければならない者と二通りに分かれる。受けなければならない者、受けないでも済む者の基準は何かということでの私の要求だったわけですが、文部省は一体どういう人は初任者研は受けないでもいいというふうに考えているか、報告をいただきたい。
  4. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 初任者研修新任教員として自立して教員活動が展開できるようなために行うものでございますから、既に教諭としての経験を有し初任者研修実施するまでもないと思われる方についてまで初任者研修実施する必要はないわけでございます。具体的なイメージといたしましては、校種間の異動がございます。例えば国立学校から公立学校異動する、あるいは私立学校教員から公立学校教員採用される、そういうようなケースについては基本的に対象にする必要がないという考え方でございます。  そこで、提出いたしました政令案考え方でございますけれども、こういったことを一般的には一応、国公私立学校において一年以上勤務した経験を有し、任命権者初任者研修対象にする必要がないと認める者という形で規定をさせていただこうという考え方資料を提出させていただいたわけでございます。あくまでも基本的な内容といたしましては、任命権者側で、初任者研修を一般の新採教員と同様にする必要がないと認められる客観的な背景といいますか、事情並びにその実施しようとする初任者研修内容等を勘案して任命権者判断すべき事柄であるというぐあいに考えているところでございます。
  5. 粕谷照美

    粕谷照美君 任命権者がそれでは初任者研修をやらないでもよろしいという、その判断というのはどこに基準がありますか。あなたは初任者研を受けなさい、あなたは受けないで済みます、この判断というのはどういうことですか。
  6. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 通常の考え方といたしますれば、先ほど申し上げましたように国公私立間の相互異動が考えられるわけでございますので、そのような、いわゆる国立から公立へ、あるいは私立から公立へといったような形態の場合には既に国立学校あるいは私立学校等において教諭としての勤務実績を有するわけでございますから、改めて初任者研修対象にする必要は一般的にはないものと思っております。  ただ、一般的にと申し上げましたのは、その当該県が行います研修内容として、すべてではなくて、この分野については新しい事柄であるから研修を受けてほしいという場合もございましょうし、それは全面的に受ける場合でなくて特定部分についての研修を受けるとか、指導教員による研修は必要はないけれども、校外研修のこういった部分には参加してほしいという考え方もございますでしょうから、その辺は任命権者判断にゆだねることが適当と考えておるところでございます。
  7. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかし、初任者研修を受けないでもとにかく立派な教師は育つということを逆に言うと言っているんではありませんか。
  8. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 当然教員はみずからを磨いていくわけでございますけれども、初任者研修のねらいと申しますのは、教員採用されてまさに教壇に立つ最初の時期でございますので、そういう意味におきまして可能な限り円滑にかつ自立していけるような体制を一年間の研修で期待をするわけでございます。そういった点で、既に教職経験を持たれた方は初任者研修を受けていられなくてもその経験に基づきまして指導教員による指導を行うまでの必要もないというような判断が一般的にはあり得ようかと思います。
  9. 粕谷照美

    粕谷照美君 全然そういうことは考えられませんね。先日も四十歳で新採用になった方がいらっしゃいます。民間のいろいろな経験なんかを持って立派な私は方だというふうに思いますけれども、こういう方は教員経験を持っていれば初任者研は受けないでもいい。しかし、その四十歳の方は民間経験をずっと持っていらっしゃって、家庭経験なども含めながら教員になった。そうすると、これに該当しないからあなたは新規採用ですよ、初任者研は受けなさいと、こういうことになるわけでしょう。その辺のところが私はわからないんですね。そうすると、初任者がデパートへ行って研修しましたよなんということは必要なくなることじゃないですか、逆に言いますと。それはどういうふうに科学的に判断したらよろしいですか。
  10. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) もう法律的な書き方といたしましては、その初任者に対しての一斉といいますか一般的な研修任命権者実施するわけでございまして、個々具体的な研修内容あるいは参加態様というのは、それぞれ実情が異なるわけでございますので、要すれば新任教員として自立して教育活動が展開できるようなための素地といたしまして、各般にわたります指導助言等が行われるわけでございます。そういうものが具体的に必要であるかどうかの認定というのは個々に即して判断される事柄でございますけれども、ただ余りにも取り扱いがばらつきますと全国的な教育水準維持向上の観点から問題も生じるところでございます。  そういった点ではいずれかの形で線を引かざるを得ない、それは線と申しますのは客観的な状況に応じて判断をする。具体的には過去において教員経験を有していたかどうか、つまり教壇に立って指導されていたかどうか、そういったことが相当大きな一つ判断のメルクマールになるであろうと思うわけでございます。そういった線引きをする結果として、具体的な個人個人について見れば既に成熟した教育活動が展開できると客観的に判断できる方もいらっしゃるでしょうし、そうでない場合もございましょうけれども、やはりそういった行政的な取り扱いとしてはどこかで線を引く、その線の引き方が客観的な書き方にならざるを得ない。そういう意味で現在のところ政令における考え方をお示ししているところでございます。
  11. 粕谷照美

    粕谷照美君 全然納得いきませんね。これからこういう方々採用されていくわけですけれども、初任者研修を受けないでいても新規採用になって立派に教師をやっていけるという判断任命権者がするとするならば、このことは全く合理性がない。しかし、このことだけで時間をとるわけにはいきませんから、例えば非対象者で私は初任者研を受けたい、私の教員経験はもう何年も何年も前になるからと、こういうふうに希望したときには任命権者があなたは必要ないと言っても一体どうなるのかというようないろいろな疑問が出てくるわけでありますから、政令の出し方が大変遅かった、そういうことを指摘しておきます。  さて、そういたしますと、この政令にしたいという条件と、加戸局長衆議院答弁しているということは全然違うんじゃないでしょうか。嶋崎委員質問をしているんですね。それに対して「小学校という校種を考えました場合には、小学校採用されます教諭、助教諭並びに講師、肩書は違いますけれども新採の教員の方を全員小学校でございますれば小学校教員全員対象としたいと」、こう答えているわけです。この政令が入れば全員にならないですね。この衆議院と参議院の答弁の違いはどういうふうに理解したらよろしいでしょうか。
  12. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ただいま引用なさいました答弁衆議院段階におきまして、いわゆる附則による段階実施のときの御質問であったと記憶いたしております。つまり附則におきまして、段階実施によりある特定年度初任者研修実施しないこととする校種教員についての説明を申し上げたわけでございますが、それは例えば昭和六十四年度に小学校校種として指定するとするならば小学校全員、例えば小学校中学校ということになれば小学校中学校教員全員という意味でございまして、言葉足らずでございますが、ただいま御質問なさっていますのは本則の方の二十条の二の第一項の規定に基づく政令の範囲でございますから、ただいまの段階実施をする場合は全員と申しますけれども、その中で過去の経験を有するために本則の方の政令で外されているものは当然含まれなくなるということでございます。あくまでも附則の中で校種別にやるといった場合には小学校は半分をやり、半分の方はやらないという意味ではなくて、小学校全員に対してやる、その全員という意味本則によって初任者研修対象外とされる一部の方は除かれるという意味でございます。
  13. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは予算の物の考え方ですけれども、小学校で大体一万三千、中学校幾ら幾ら、こうやって計算して大体新採用は三万人になるだろうと、こういうふうに答弁をしていらっしゃるわけです。小学校で既に半分は新規採用ですから、これは初任者研対象になりますね。半分以上は初任者研対象になるものとならないものが出てくる。その辺の予算はどういうふうに見ておりましたか。
  14. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 予算の問題は、また具体的に要求段階までに作業をし、詰めていく事柄になりますけれども、一般的に申し上げますと、先生今半分とおっしゃられましたが、いわゆる純粋な新規学卒意味先生は半分とおっしゃったと思いますけれども、新規学卒でなくても教員採用されました、いわゆる新規教員として任用された者を対象として初任者研修を行うわけでございます。そういう意味で、過去に他の校種での教諭経験を有している方の比率は極めて少ないのではないか、そういう意味で概括的には新規採用予定者数総員を前提とした予算要求をする考え方で現在ございます。
  15. 粕谷照美

    粕谷照美君 予算要求が大変おおらかなものであるといいますか、実態を余り調査をしないで考えているものであるということが私は明確になったと思います。  ところで、文部省アンケート、これを拝見いたしました。事前に取り寄せていましたけれども、共産党要求によって何かそれをまとめて出てきたものがあります。これを見まして私もう一体何を文部省が考えているんだろうかということを思わないわけにはまいりませんでした。ところで初任者研修は一年実施をして、一年実施をしたものの調査が先日出てきた。まだ二回目の試行は半年にしかなっていないですね、あと半年残されているわけです。この二回の試行が終わって初めてその統計をとり、何が問題点であるか、その問題点をどのように克服をしていかなければならないのか、文部省の考えるよい初任者研修をしていかなければならないのかという、私はこういう反省が出されて、そして法律が出てくるものだというふうに思うんですけれども、そうじゃないんですね。とにかくやってしまえばよろしい、六十四年度からもう全面実施だと、こういうふうに言っていることは納得がいかないわけであります。その点についてはどのように考えておりますか。
  16. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 六十二年度にスタートいたしました初任者研修試行と申しますのは、いわゆる初任者研修本格実施をする場合の問題点を探ることが一つのねらいでございます。と同時に、二つ目には本格実施に移行する際に円滑に準備体制を整え円滑な移行ができるようにしたいという考え方でございます。  ところで、今回提案しております法律案といたしましては、一年間にわたる任命権者に対する初任者研修実施義務並びに初任者研修の中核的な形といたしまして指導教員による指導というような事柄法律で提案させていただいておるわけでございますが、法律自体では具体的な初任者研修内容等について細部にわたる規定は設けておりません。そういう意味で現在の試行成果を踏まえてどのような形で改善をしていくのかというのは初任者研修実施の具体的な内容にかかわる事柄でございまして、これは法律によって規制された事柄ではございませんから、多くの点は初任者研修試行の結果を踏まえて改善をしていくべき事柄であり、法律の提案する内容影響を与える事柄では余りないんではないかと思っております。もちろん試行の結果として指導教員による指導というのが全く意味がないとか、効果が上がらないというようなことでございますれば、この指導教員による指導法律上提案することは差し控えるべき事柄だと思いますけれども、現在提案申し上げております事柄につきましては、初任者研修試行の結果によって大きく左右されるものではなくて、具体的な運用の問題、実施の中身の問題として今後改善すべき事柄として私どもは理解しているところでございます。
  17. 粕谷照美

    粕谷照美君 成果を踏まえてと言いますけれども、成果反省というのがなければだめですね。成果ばかり踏まえていられては困ると思いますよ。  例えば校内研修期間校長が適当だと言いました、なるほど六〇・三%適当と言っています。しかしもっと短くするべきだという意見が三五・八%もあるんです。指導教員に至っては適当だというのが校長よりもぐんと減って五二・二%、もっと短くしなさいというのが四二・五%あります。初任者研修対象になった人たちはさらに減りまして、適当だというのが四七・三%、半分を割っているんですね。そしてもっと短くしてもらいたいという意見が四六・七%、これを一体どういうふうに受けとめるか。つまり校内研修文部省指導よりももう少し短くしてもよろしいという指導をするのかどうなのかということが問題であります。さらに校外研修になりますと、対象教員はもっと短くしてもらいたい、こういう人が五一%もありまして、これで適当だという人よりも一〇・三%も多いんです。管理者の側、校長の側も短縮賛成というのが伸びてまして適当とする数が減っております。これは子供たちと離れることは大変だ、本当に仕事がたくさんあって大変だと、こういうことを物語っていると思いますが、文部省はあくまでもあの指導基準という日数を変える気持ちはありませんか。
  18. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 試行段階でございますので、もちろんこの日数のみならず、校内研修あるいは校外研修内容の密度あるいは負担度等も相互に関連する事柄ではあると思っております。さはさりながら、このような形での御意見ということは、試行段階であり、また試行のために各般報告書要求なりその他等がございまして、負担がかかっていることも事実であり、あるいは学校を離れる場合のそういった心理的な葛藤等もございましょうし、こういった御意見を全く無視するわけではございません。そういう意味で、本格実施に当たりましてこのままの、従来の試行でいくのか、あるいは日数短縮等をするのか、重要な検討課題だと思っておりますし、特に御意見はここでは出ておりませんが、一般的に伺っております限りでは、例えば学年当初、つまり教員として就任した直後の過密ダイヤ研修というのは負担が大きいというような御意見もございます。  そういった点も考慮する必要がございましょうし、あるいは校外研修につきましてはできる限り夏季休業期間中等に集中的に行うという方策等も必要であろうと考えております。そういった点では、このガイドラインを七十日、三十五日ということで試行段階、六十二年度、六十三年度実施いたしますけれども、このようなアンケートの結果、あるいは六十三年度の反応等、あるいは先生方の御意見、あるいは現場の御意見等も踏まえまして、十分この辺につきましては弾力的な取り扱いなりを考えていく必要があると真剣に受けとめているところでございます。
  19. 粕谷照美

    粕谷照美君 その日数については弾力的に取り扱うということを真剣に受けとめているというわけですから、もっと正確に現場意見を聞いてもらいたい。これ以上教師負担をかける、初任研あってその他の教育がだめになっちゃったなんていうそんなことのないようにしてもらいたい、要望しておきます。  今のことは、文部省調査によっても、児童との触れ合いで、さほど影響がないと校長は三五・八%答えております。ところが初任研を受けている側は一九%しか影響がないなんて思ってない。あと人たちはみんな影響があるというふうに考えているわけであります。学級経営はやりづらい、こういうふうに思っているのは校長さんは四・四%しか思っていない。ところが初任者の方は、対象者の方は、一四%もこれはもう学級経営がやりづらくて大変だと、こういうことを言っているわけで、私は管理者初任者の心をつかんでいない、こういうふうに思わざるを得ません。文部省調査なんですから、もともと文部省教育委員会配付をして、教育委員会から各学校指導教員初任者校長配付をされたものだと思いますね。文部省がやっている、やっているところへ戻すんですからね。そんなのは反対だとか何だとか言ったら大変だと思って私は正確な答えが出てこないのではないかと、こう思っておりましたが、割と正直にいろいろな意見を出しているようであります。  また、センターにおける研修の方法は大変満足だというのが一〇・五%、まあまあだというのが三〇・七%、合わせて四〇%ぐらいしかまあいいだろうと、こう思っていないんですね。ところが、要求を出しているのが五六・四%です。つまり希望にこたえるようなセンター研修はメニューになっていない。水を飲みたくない馬をどんなに湖に連れていっても水を飲まないと同じように、初任者自主性あるいは自発性、そういうものが生かされるようなセンター内における研修でなければならないと思いますが、こういう意見についてはどういうふうに考えておられますか。
  20. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ただいまの粕谷先生の御指摘まことにもっともでございまして、基本的にはできる限り本人の例えば不得意とする領域、あるいは問題意識のある領域を掘り下げて研修していただくということが大切な事柄でもございます。また現に試行段階におきましては、県によっては工夫をいたしまして、画一的なテーマではなくて、それぞれの教員が抱える課題悩みを取り上げた形で研修を行うようなところもございますし、また本格実施に際しましてはその必要も出てくると思います。  事柄といたしましては、ただ、そのためにアドバイスをする講師方々、あるいは多数、複数に上ってくる必要があるわけでございますから、経費の増等影響いたしますけれども、基本的な方向としては先生指摘のような方向で、いわゆる教員自身が持っている課題悩みを解決できるようなそういったセンター研修であってしかるべきだという方向で、これからもその御意向を踏まえましての指導に当たってまいりたいと思っております。
  21. 粕谷照美

    粕谷照美君 あと幾らも時間がありませんから、ちょっと答弁できるだけ短くお願いをします。  非常勤講師についての定年退職校長、教頭はどうかというアンケートに対して、歓迎されてないという数字が出ていますね。特に初任者研修対象者は七・〇%、物すごく拒否をしているわけですよ。お呼びじゃないという数字が出ております。定年退職者、まあ教頭や校長でないというのはまあまあ若干その数字は上回っておりますが、圧倒的に元の方というのはだめなんですね、校長さんだとか教頭さんというのは。ところが、助成局長、あなたこの教頭さんや校長さんや退職者に対して大変なねらいをつけているんじゃないんですか、ぜひ指導教員になってもらいたいと。どうでしょう。
  22. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 本格実施になりますと、約三万近い新任教員に対する指導教員をそれぞれ学校の中で確保いただく必要があるわけでございます。そういう意味で、教職員体制の整っているところもございましょうし、まだいないところもあるという点で、こういった点で一番力量を発揮していただけるのはやはり経験豊富な、みずからがたくさん持っている経験を後輩に伝えていくというような意味では退職校長、教頭先生というのは適任の方が多いと私どもは思っております。  ただ、今先生おっしゃいました事情等もございますが、地域地域の実情あるいは学校の職員体制相互の関係でどの方がよろしいかという判断をいただくわけでございますが、私どもの気持ちとしては、退職された立派な方がまた再度この教育の世界で自分の経験をお返しするというチャンスを与えるということは非常にいいことではないかと思っております。
  23. 粕谷照美

    粕谷照美君 退職された校長や教頭が立派な実績を持っているということを否定するものではないんです。しかし管理者でしょう。管理職手当もらった人が新人の生き生きした人たちにマンツーマンで当たるなんてことについては大変な重荷があるわけですね。ある学校校長よりも先輩だった、あるいはその前にここの学校校長していたなんて人は重苦しくてしようがないわけですよ。管理者だったんですからね。そういう意味で、喜ばれていないという数字が文部省の中にきちんと出ているということを大事に考えてください、こういうことを言うわけです。  ところが、「加戸守行氏に聞く」というインタビューのこれを見ますとこういうこと言っているんですね。「指導教員の代替をする非常勤講師の確保も、一つ問題点でしょうね。」、こうインタビューをした人が聞きましたら、そうだと加戸さんは言っているわけです。その中にこういう言葉があります。「そこで、各県・市には、退職されていく先生方に対して、三十数年間国民の税金で生活してきたのだから、一年ないし二年はお礼奉公していただけないかと、強く訴えてもらうようお願いしているんです。」、本当にあなたそんなこと言ったんですか。お礼奉公とは何ですか。
  24. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 言葉は適切でなかったかもしれませんが、教育の世界で生きてこられた方が去られた後、やはり自分の後を継いでこられる若い先生方に自分の経験を、あるいはいろいろな形でのアドバイスをしていただくということは、やっぱり教育の世界に身を一生ささげられた方にとって、私はそれなりのまた生きがいも持っていただけることではないかというような気持ちも含めましてそのようなことを申し上げさせていただきました。
  25. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういうことの内容じゃないんですよ。税金で生活してきたからお礼奉公したら、まるで昔の徒弟制度みたいなことを現職の教員に押しつけるという、そういう私は文部省の発想からこの初任研が出ているというところに大変な怒りを持つわけであります。  ところで、文部省調査、あなたが先日文教委員会に出されたこれを見ましても、代替教員として有能な人材が確保されているとは言えない場合もある、有能な人が確保されていないという、そういう場合もあると。これは大変なことです。それから、同じく文部省調査初任研対象者の答えは、校外研修をしているときにどういうふうにして学級に対応しているかという数字は二一%の数字でもって自習をさせていると。つまり初任研に出ていくから自習させていますよという数字が文部省調査の中に出てきているんです。大体空き時間をつくるような初任研は私は成り立たたぬと思います。必ずかわりを入れなければこれは全然意図したところと逆の効果が出るというふうに考えますが、助成局長はどういうふうに思いますか。文部大臣はこのことについてどういうふうに考えますか。
  26. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 基本的には自習は好ましいことではございません。また、このケースといたしましては後補充の先生が、例えば自分の教科とは違う教科の先生が後補充でいらっしゃったというようなケースではないかと思いますけれども、そういうようなことで後補充の先生が同一の教科であるような、校内の校務分掌の変更その他も必要でございましょうし、この二一%の数字が本格実施の際にはダウンしていくことを私どもは願っているわけでございまして、決して好ましいことと考えているわけではございません。
  27. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) アンケートに付随しましていろいろ御指摘をいただきました。自習時間については今助成局長がお答えしたとおりでございますし、また各般の御指摘につきましては、先般の御指摘の中にも、このアンケートあるいは実際の声に対して十分耳を傾けるべきではないか、私もそのように考えておりまして、いい面もそれから改善すべき点もありましょう。それを十分耳を大きくしまして、いいところは伸ばし、改善すべきところは改善をしていく。それがやはり試行を行わしていただいた重要な参考にすべき点であると思いますので、少なくとも六十二年、それから六十三年もお願いをしておりますが、さらにそういう改善すべき点にむしろ耳を大きくしまして、そういう点については虚心に改めるべきところは改めてまいりたい、このように考えます。
  28. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部大臣、私はこういうことを特にお伺いしたいんです。  校内研修というのは学校の中にいますからまあいいでしょう。校外研修をやりに行くときに生徒に自習をさせるような、そんなことであってはこれは初任者研修はできない。必ずかわりの先生が入って授業をやらなければこれは子供たちにとってこそ大迷惑です。初任者研初任者のためにあるかもしれないけれども、今授業を受ける子供たちにとってはこれは大変なことなんです。ですから、かわりは必ず入れる、入れなければ初任者研は成り立たないというふうにお考えかどうかということを聞いているわけです。
  29. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) お答えしたつもりでおりましたが、自習時間はできるだけ少なくするようにこれはみんなで協力すべきである、このように考えます。
  30. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部大臣、できるだけ少なくじゃだめなんです。必ずかわりを入れてそういうものはなくさなければならない、そしてそういう条件がつくられなければ初任者研修はもうやめだ、外して結構じゃないかと、私はそういうふうに思うんです。  それで、文部省調査ばかりではどうもよくわかりませんので、いろいろな調査がありますが、日教組の調査もあるんですけれども、文部省はそんなのを言うとなかなか正確に読み取ってくれないから、全国連合小学校長会の昭和六十二年度の「研究紀要」の中からそういう問題を引き出してちょっと質問をしてみたい。教育委員会側に校長会から質問をしている。校長にも質問している。そしてそのパーセンテージを取り上げて非常に膨大な研究をしているわけですけれども、教育委員会報告校長会のこの報告が随分数字が違うんですね。  例えば増置教員教職経験について、経験豊かな教員が配置をされているかということについては、教育委員会は三四・四%がはい、配置をされていますと、こう答えています。校長会の方は七二・三%の者が経験豊かな人が配置をされています、これ倍も答えが違うんですね。一体これどういうことなんでしょう。また、経験豊かな者と浅い者の混合で配置をしていますよという数字が教育委員会は二五・〇%。つまり経験の浅い者も増置教員になっていますよという数字を出しています。ところが校長会の方は三・二%です。余り経験の浅い者はしていませんという答えになっています。一体どっちが正しいというふうに読み取ったらいいんでしょうか。非常勤講師があります。経験豊かな者を採っています、こういう校長会の報告は五三・五%です。教育委員会は四〇・六%です。教職経験者、豊かじゃないんですよ。教職経験者と未経験者をあわせていますというのが教育委員会報告は五〇%です。校長会の方は二・〇%なんです。校長会はみんな経験豊かな人を採用していますという、こういう報告になっています。一体これを見て私たちはどういうふうに判断をしたらいいんだろうか。ここの違いが出てくるんです。  経験豊かというのはだれが豊かだというふうに判断をするのか。長ければ豊かというものでもないと思いますけれども、指導教員になるのはどういう人が好ましいというふうに助成局長お考えですか。
  31. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教育委員会の回答と学校の回答の食い違いと申しますのは、これは推測でございますけれども、多分教育委員会としてはかなり高度のレベルを要求して、そういった判断に基づいてまだまだ十分ではないなという感覚であったんではないかと思いますし、一方学校の側としては、学校の中で指導教員を選ぶわけでございますので、その学校の中としては経験豊かという判断校長先生がしているケースが多いんではないかと。これは想像でございます。  そこで、指導教員にどのような方ということでございますけれども、これはやはり豊富な教育体験を持っているということ、それから指導教員新任教員との教科、領域がなるべく合致するものであること、そして子供たちに対する指導の面におきまして新任教員の気持ちを理解し、適切なアドバイスができるような方というようなことを試行段階では申し上げているわけでございまして、本格実施に際しましても同様な観点で指導教員が確保されるよう指導してまいりたいと思っております。
  32. 粕谷照美

    粕谷照美君 いえ、経験豊かというのは、例えば年数で言うとどのくらい、この辺のところはどう考えていますか。
  33. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 年数は明示しておりませんが、考え方として教頭あるいは教務主任あるいはこれに準ずるクラスというような言い方をしておりますので、大体目安としては例えば教職経験二十年程度が望ましいんではないかというのは感覚的にはございますけれども、それは学校の中の職員構成にもよるわけでございますから、学校の中でそういった指導教員を選ぼうとします場合には、教職経験が二十年に満たない方も選ばれる可能性ございましょうし、年数で一律に決めることは適当でないと思っております。しかし、基本的には豊富な教育経験という意味でございますと主任クラスの方が望ましいとは考えております。
  34. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういう方々初任者研修実施するに十分足りるほどいるという自信のもとでなければ私は来年の本格実施はできないというふうに思うんですね。  私どもなんか、例えば育児休業をとる、その後補充は一体どうなっているだろう。産休をとる、その後補充どうなっているだろう。いろいろな現場方々に聞いてみますと、なかなかそれ見つからないんですね。本当に見つからない。もうお願いしてお願いして来ていただいている。さて、来年は小学校でやりたいと、こう文部省言っているんですけれども、本当にその指導教員が確保できるというふうにお考えですか。
  35. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 現実問題といたしまして、すべての学校にその校内職員体制等から判断して得られるという確たる大きな自身があるわけではございません。しかしながら、それぞれの学校の中でやはり校内体制の中で新任教員指導するにふさわしいという学校長が判断される方は、それはいらっしゃるでございましょうし、またいらっしゃらない場合にはいわゆる外部から、先生のおしかりを受けるかもしれませんけれども、退職されました校長、教頭、教員といった過去の経験を持たれる方を非常勤講師として、指導教員としての非常勤講師に登用するケースもございましょうし、その辺は地域の実情、学校の実情に応じて適切に判断をいただくということでございます。制度のスタートの時点においてそれが一〇〇%確保できると思いませんけれども、やはり多くの学校において指導教員が的確に得られていくことを今後とも大きく期待をし、またそのための努力を続けるべき事柄だと思っております。
  36. 粕谷照美

    粕谷照美君 一〇〇%確保する自信がないで、どうしてそんなに強硬にやるんですか。来年一年延期しなさい。そして実質的にやってみて、ああ指導教員はちゃんと入る、そして学校教師に迷惑はかからない、子供も生き生きし、新任教師も生き生きできるという、そういう見通しをつけてから全面実施に踏み込んだらどうですか。何にもまだ二年の試行が終わっていない、そういう中で反省もまだ十分とってない中で、そのことを強行することは私は許されないというふうに思います。  ところで、私は文部省の出した指導教員の大体の仕事というのを見ました。さっきから助成局長、私が質問するたびに後ろから資料をこう渡してくれるんですね。局長というのはいいもんですね。私は自分で一生懸命資料を探しているんですけど、どこかへ突っ込んじゃってなくなっているんですけどね。その指導教員の仕事、任務の大きさ、私だったらとってもこの指導教員勤まらない。自信なんかとてもないと思いますね。文部省の書いたあれ、そのうちの一つやればいい、二つやればいいというならそれでよろしいですけどね。例えばうちに病人がいたりなんかして、なるほど私は条件は合うけれども、家庭的な問題は言えないけれども、とってもこの指導教員になって初任者指導するなんてことには自信がないと、こういうふうにお考えの方もいらっしゃるわけですよ。ところが、この指導教員任命でしょう。有無を言わさずあなたはそうですよということになるんですか。本人の意向というのは重大に受けとめてちゃんとやっていけるようになるんですか。その辺を伺います。
  37. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 通常の形態でございますと、来年度は新任教員が何名本校に配属されることになる、その中でどの方がいいか、校長先生もいろいろお悩みと思いますけれども、当然のことながらそれぞれの指導教員に当たるにふさわしい方々の意向なり何なりは直接あるいは間接的に把握されるのが適当な措置であろうと思います。ただ、ここのところで余り本人の意向ということを強く出しますと、言葉お返しして恐縮でございますけれども、組織的に指導教員返上運動なんということがありますと、そういうことが危険性を招来するわけでございますけれども、一般的には確かにそういった本人の意欲、気持ちというのが指導教員に持っていただかなければならないことでございますし、そういった気持ちを確かめることは当然校長としてなさる事柄であろうかと思っております。
  38. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういうことを心配して任命制にする、こう言うのですか。組織的に返上運動が起きるだろうと。現場なんてそんなものじゃないんですよ。やっぱり初任者が入ってきた、悩みが多いだろう、じゃ、どういうふうにしてやっていくか、教員の集団指導体制でやっていこう、その中で重点的にだれが、クラスのどういう人が当たろう、こういうふうに考えていくんですよ。あなたもう悪い方へ悪い方へと考えて、そしてやってくるから問題がある。  それで、その非常勤講師ですけれども、四十七条の二に市町村教委が非常勤講師を必要と認める場合には都道府県の委員会に非常勤講師の「派遣を求めることができる。」、こう書いてありますね。もう必要とするんだから派遣するわけですよ。できるじゃないんです。これは私は派遣を要請すると思います。  それで、同じく四十七条の二の二項ですね、私はこれを読んで、求めには応じなければならない、市町村教委から派遣を求めたら都道府県はその要請に応じなければならない、こう読んでよろしいんですか。いや、金がないからちょっとそれは待ってくれと、こういうことで理解をするのですか。
  39. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) この初任者研修と申しますのは、任命権者である都道府県教育委員会が企画し、実施するものでございます。そのために各市町村段階において非常勤講師が必要になるケースが生ずるわけでございますから、当然のことながら市町村教育委員会からの要請があれば、もちろんそれは初任者研修の一環としての事柄でございますし、都道府県教育委員会は原則として応ずべき立場にあると思います。ただ、事柄としましては、お金のことを申し上げて恐縮でございますけれども、予算上の措置というのがございますから、その予算の範囲内で対応するわけでございますので、都道府県の目から見れば、市町村教育委員会から例えば二名の非常勤講師が欲しいと言われても、一名で勘弁してほしいという具体的な個々の事例は出てこようかと思いますけれども、基本的には市町村教育委員会の要請を受けて原則として応ずべき立場にあると私どもはこの立法趣旨を解しております。
  40. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は重大な問題を言っていると思うんですね。必要だから非常勤講師の派遣を求めるわけでしょう。お金ないからだめですよと言うんだったら、こんな初任者研なんかやる必要がない。やることはできない。こういうことをさっきから何度も何度も言っているわけです。  現に文部省基準で一人配置校には一人の非常勤講師を、二人あるいは三人の複数配置校には一人の増置教員をという、こういうのがありますね。ところが、小学校長会の「研究紀要」を見てみますと、一人配置校で指導教員を配置しましたよというのは九四・八%で、一人配置したところだって指導教員がいないところがある。試行段階で、人数が極めて極めて少ない中でそういうパーセンテージが出てきている。二人配置校で一人の増置教員をやったというのが四六・七%で、文部省基準を上回って二人配置しましたよというのが四〇・四%あります。また、三人配置校では文部省基準を上回って二人配置しましたというのが二八・六%、そして三人配置しましたよというのが三一・四%。都道府県は見えるんですよ、学校が。地方は見えるんです。だから、授業に穴があかないように、こうやって余計にやっているんじゃありませんか。お金がないなんてこと言わせません。もう非常に強圧的な態度で初任研をやろうという文部省なんですから、金はちゃんと出します、各県は市町村に対して求めがあったらちゃんとお金を出しなさい、それは国で保障します、文部大臣が一生懸命頑張って予算をとりますよという指導をすべきではないんだろうか、こういうふうに思いますけれども、いかがですか。
  41. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもの立場としても、県の要望を受けて、その必要な経費は国庫補助としても計上する方向で最大限の努力をすべき事柄でございます。また、試行段階でもそうさしていただきました。本格実施に際してもその取り組みの姿勢で臨みたいと思っております。  ただ、指導教員の配置の問題につきましては、それぞれ学校の職員構成が相当影響いたします。これは先生御承知と思いますけれども、例えば大きな大規模校でございますと、かなり担任外の余裕教員という状態もございますし、小規模校でございますと担任外の教員が少数である、そういったような差もございますから、今回の初任者研修試行につきましては、できる限りそういった小規模校で影響が生じないような格段の配慮をする必要は私どもあると考えております。
  42. 粕谷照美

    粕谷照美君 私の時間なくなりましたからもうこれで終わりますけれども、文部大臣、予算がちゃんととれなければ、文部省としては初任者研はできませんということを明確に言ってもらわなきゃ困りますね、閣議の中でも。銭出さぬけれども初任者研で監督することだけはちゃんとやりなさい、そういうことの態度は私は許されないというふうに思うんです。その決意をお伺いして終わります。
  43. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 当然この初任者研修というものは必要でございます。それの意味でお願いをしておりますが、この実施に当たりまして不都合の起こりませんように、私どもは最大限の努力をしておこたえしてまいろう、このように考えております。この予算につきましても、また六十四年度予算概算要求も間近でございますが、精いっぱい頑張ってまいるつもりでございます。
  44. 久保亘

    ○久保亘君 私は、今度のこの法改正は、戦後教育の否定と現場に対する不信感から発想されたものではないかという気がしてならぬのであります。  最初に、文部大臣に伺いたいことは、教育と政治の関係、行政と現場との基本的なあり方、これをどういうふうにお考えになりますか。
  45. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 私は教育行政というものは、やはり基本がなければいけない。その基本というのは、やはり教育基本法というものがございます。また、教育基本法は日本国憲法をもとにいたしまして、日本国憲法に描かれた理想的な国家をつくる根本は教育である、ここに原点があるというふうに考えておりますので、その趣旨に基づいて、その精神にのっとって教育行政を進めるべきであると、私はそのように考えております。
  46. 久保亘

    ○久保亘君 中曽根さんが教育改革を発想された考え方の出発点というのと、今文部大臣が言われたのとは、私は非常に違っていると思っておりますが、大臣のお考えはそれで伺っておきましょう。  私が聞きましたのは教育と政治の関係というので、私は政治が教育を支配してはならない。教育基本法に基づいてこの行政の立場を考えるならば、この政治や行政というのは教育条件整備等を通じて、教育に奉仕する立場にあるのであって、教育を政治が支配することは間違いである、こう思っておりますが、御同意いただけますでしょうか。
  47. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 教育と政治と分類してお考えというのはちょっとよくわからないんでございますけれども、私はやはり政治のあり方、教育のあり方、これはやはり繰り返すようですが、そのもとは日本国憲法と一致しておるわけでございますから、したがって、教育については二つありまして、一つは日本国憲法の二十三条に「学問の自由」という言葉がございます。これは学ぶことの自由でございます。また、教育につきましても、また臨教審の御答申に至るまでにいろいろ教育の自由について御意見があったように伺っておりますし、記憶もいたしておるわけでございます。そういう意味では、教育というものがそれぞれの個性の尊重というものにあらわされておりますように、これからは画一性から個性の重視だと、これが一つの方法でありましょうし、それを具体にあらわしますには、やはり基本はしっかりと据えて、しかも弾力的な運用につきましても御提言をいただいておるわけでございますから、基本は崩さない、しかしその運用につきましてはその地域あるいはそれぞれの特徴も特色もございましょうから、それに応じて弾力的な運用は心がけるべきであろう。また、教育の自由ということで、じゃ、教師は何事でも自由に教えられるかということにつきましては、やはり初等中等におきましては一応の基本線を持ちまして、それにのっとって教育をしていただくという基本線は当然あろう、これは何でも自由というわけにはいくまい、このように考えております。
  48. 久保亘

    ○久保亘君 教育の自由の問題について、今御発言ございましたけれども、私は教育の自由を律するものは憲法と教育基本法である、教育の自由は権力をもって制約されてはならぬ、こう思っております。  そういう立場でこれから提案されております法律についていろいろ御質問を申し上げたいんでありますが、法改正に当たって関係者との協議が著しく欠けているという指摘が先般参考人の公述の中にございました。私もそういう感じを持ちます。今度のこの法改正は当たって関係者との協議は十分に尽くされたと大臣はお考えになっておりますか。
  49. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 当然のことながら、この御審議をいただきます上におきましては関係者の御意見は十分聞いておると思っております。  ただ、その一方で試行を行っておりますし、その試行を行った上でまたいろいろな御意見もありましょう。これも実際に関係者といえば中枢の関係者でございますが、その御意見を十分体しまして、効果が上がっておる面、あるいは改善すべき点、これを十分率直に伺いまして、改善すべき点は改善する、いい面はさらに伸ばす、この心がけは十分必要であろうと思っております。
  50. 久保亘

    ○久保亘君 加戸局長は、本委員会においてしばしば各界各層の意見を十分に聞いて初任者研修を必要だと判断をしたという意味の御発言をなさっておりますが、各界各層というのは具体的にはどういうものを指しておるんでしょうか。
  51. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教育に関係します方面多いわけでございますが、具体的な今回の初任者研修法案の提出に当たりましては、それ以前に実質的な御審議をいただきましたのは教育職員養成審議会でございまして、教育職員養成審議会のヒヤリング等も実施をさせていただきましたが、お聞きしました関係方面と申しますのは、例えば教育委員会の関係団体あるいは校長会、あるいは教育委員会には都道府県市町村教育委員会あるいは教育長等の団体がございます。それから、校長会、教頭会等、それからこれは各種学校校長会等ございます。それから教育研究団体、教職員団体、それから教員養成の大学関係の団体、あるいはその他ちょっと全部はつぶさに覚えてございませんけれども、数十団体からそれぞれ時間をかけてヒヤリングをし、御意見等も承るというプロセスを経て答申をいただき、答申の内容を条文化したというのが今回のプロセスでございます。
  52. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、各界というよりは教育に関係のある教育界と言っていいでしょうか。そういうところの意見を求められているということだと思うんでありますね。これは法律上の問題もあります。また父母の側の問題もあります。それで、各界各層と言うならば幅広い意見をもっと求めるべきではないかということもありますが、とりわけ教職員団体の意見が十分聴取されない。また、先般参考人としてここへ出席された日教組の委員長は、文部大臣にお会いしたいと考えて申し入れをしたけれども、拒否されたまま一度もお会いしていない、こういうことでございました。私は各界各層の意見を求めるというならば、現場教師の最も多い部分組織しているこの教職員団体の代表と会って率直にその意見を交換するということは、このような問題については特に必要なことではないかと思うんですが、この会見を拒否されている、会談を拒否されている理由は何でしょうか。
  53. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 各界各層のことはひとまずおきまして、ある教組の委員長の方と会談を拒否した覚えはございません。私も就任直後、これはたしかプレスの方々の御質問に対してだと思いますが、私もお会いするつもりであります、そして教育問題につきましては、たとえ方法論等はあっても考えるところは一致点も多いであろうと思いますから、そういう意味で私はお会いをしたいということは申し上げたことはございますが、拒否したことはございません。できればそういう機会が持たれるということは好ましいことだと思っております。
  54. 久保亘

    ○久保亘君 あなたも会いたいと言われて日教組の委員長も会いたいと言っているのにそれが実現しないというのはどういうことですか。
  55. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) これは、ですからある教組のとわざと申し上げたんですが、日教組の委員長さんとお会いする機会がないということだけが残念だということではなくて、それぞれの他の教組の方々とも私もお会いしたいと思っておりますし、そういう方々とも、とりたてて、まあ私の方がやや不勉強の部分を埋めるのに時間がとられているという面もあるかもしれません。なかなかゆっくりお会いできる機会を持てずにおりますのは残念なことだと、こう思っております。これはどの数組の方々と固定して申し上げるわけではございませんので、どの教組の方々、ある教組の方々というふうに申し上げておきます。
  56. 久保亘

    ○久保亘君 私が日教組と申し上げましたのは、先般ここに参考人として日教組の委員長がこの法案の審議にかかわって出席をされてそういう意見がございましたので固有名詞を挙げて申し上げているのであります。しかし、どの教組と言わず自分も会って話したいと思っているんだと大臣がそう言われると、非常に不思議な感じがするんですよ。教職員団体の代表も、ぜひ会ってこの問題については現場の自分たちの考えも大臣に話をしたい、そして大臣のお考えも聞きたい、それで、きょうにでもあすにでも、その時間をとってもらえるなら会いたいということまでここで発言をされた。それがなぜ会えないのかというのは、あなたも会いたがっている、向こうも会いたがっている、ところがどうもうまくいかないというのは、これは文部省のどこかに問題があるんじゃありませんか。
  57. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) できるだけお会いをしお話をするということは好ましいことであると思いますので、それができないというのはむしろ私のスケジュールのとり方が下手なのか、あるいはその他の勉強不足を埋めるために時間をとり過ぎているのかという点であろうと思いますので、よくすべての方々とお会いできますように調整をさらにお願いをしてまいりたいと思います。
  58. 久保亘

    ○久保亘君 日本の教育の制度の中での非常に重要な問題を議論するときに、各界各層の意見を求める、しかもその対象として教職員団体の代表とも自分も会えるならばぜひ会いたいと思っている、こう言いながらいろいろ理屈をつけて会わないということは、結局会いたくないということじゃないですか、突き詰めていけば。会う意思があればそんなものできないことはないですよ。そういう大臣の御答弁では私はこれはなかなか納得できないですね。それは例えばきょうじゅうに会えとか、この一週間以内に会えというときにあなたの御日程が調整できないということはあるでしょう。しかしここで発言されたのでは、委員長に就任して以来と、こう言っておられる。月で数える時間ですよ。それを一切自分は会いたいのだけれども会えないのよということでそれを拒否しているというのは、私は各界各層の意見を十分に聞いて判断をしたというあなた方の主張は成り立たないと思うんです。どうしてもそこのところは私釈然としませんので、ぜひ教職員団体の代表ともこの問題について会って相互に十分に話し合うということをここでお約束できますか。
  59. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 各教職員団体の方々ともそのような機会をぜひとりたい、その調整を進めてもらうように私からも双方にお願いをしたいと、こう思っております。御審議いただいている面も多いわけでございますが、一応休会になりますと多少の時間の余裕もあるかと思いますので、そのように努力したいと思います。
  60. 久保亘

    ○久保亘君 この問題は今お答えになりましたようなことでやってください。仮にこの制度が決められたとしても、まだ実施上いろいろな問題があると思います。そういう問題についても十分理解を相互に深めるということが私は大事ではないかと思っておりますので、特に要請をいたしておきます。  それから、この法改正の背景というか発想の原点というのを私先ほどこうではないかということを申し上げましたが、そのこととかかわって気になりますのは、今の問題も一つありますが、もう一つは、初任者というのは物足りない、不満が多い、だから初任者研修が必要であるという発言が何回かありました。大臣も、教員の資格を持って採用試験を受けてそして情熱を持って現場に来た教師たちに、物足りないとか不満が多いやつらだと、こういうふうにお考えになっておりますか。そういう不信感から初任者研修を試みようとしても絶対に私は成果は上がらないと思う。
  61. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 私はこの委員会その他の御質疑の中で、私は自分の発言で記憶しておる限り、こういう初任者方々も資質は十分おありになる、あるいは基本的な資質は十分おありになるという前提でお答えをしてまいったつもりでございます。それは当然ながら資質はおありになると思います。  ただ、私が繰り返し申しますのは、基本的な資質がおありでありますけれども、人が人を教える、教壇に立たれるということにつきましては、他の社会人と同じように初めての御経験でありますし、また他の社会人よりはさらに人づくりに初めて携わられるということについては大変な重責と特殊性もおありになることでありますと。少なくとも初任者の間だけとは申しておらないので、常にやはり研修、修養は必要でありましょうけれども、その初任のときには、新たな御経験でありますだけに、その間に資質をさらに伸ばしていただく、その資質をさらに伸ばすという中には、くどいようですから余り申しませんけれども、実践的な指導力ですとか、あるいは知見ですとか、あるいは意欲ですとかというものをさらに持っていただくいいチャンスであるということで申し上げておるわけで、初任者になられる前の、資質がないとか物足りないとかいうことは申し上げたつもりはございません。
  62. 久保亘

    ○久保亘君 政府委員として法案の説明に当たってこられた加戸局長、あなたは教員免許状をお持ちですか。それから教職の経験はどれぐらいお持ちですか。
  63. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 残念ながら私は教員免許状を取得しておりませんし、教員経験もございません。
  64. 久保亘

    ○久保亘君 教育現場の問題あるいは教師の評価にかかわって、やはり行政の面での豊かな経験というのを私は非常に敬意を払ってお聞きしておりますけれども、そういう体験的なものが一切ない中から初任者というのは物足りないとか不満が多いとかいうような判断を下されるということは、私も教育現場経験を持つ者として、非常に遺憾な思いがするのであります。それで、そのどちらかというと、行政の経験豊富な方々がいろいろおやりになります場合の、この現場に対する対応の仕方というのは管理という面が強調され過ぎるのではないか、こう思うんであります。  ちょっと話が横道にそれますけれども、小説「真空地帯」をお読みになったと思いますが、よくお読みになったことがございますか。
  65. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 「真空地帯」は私の学生時代に愛読さしていただいた本の一つでございます。
  66. 久保亘

    ○久保亘君 私はあの中で、野間宏さんが冒頭のところで、兵営とはさくと条文をもって囲まれた一里四方の空間であって、人間はその中で人間としての要素を取り去られて兵隊となる、こういうくだりがございます。何か今のこの行政の側から教育現場に対する対応の仕方というのを見ていると、それこそ、学校はさくと法律をもって囲まれた一里あるかどうか知りませんが、その空間であって、その中で人間が人間としての要素を取り去られて教師となるということでは非常に困ると思うんであります。やっぱりこれらの研修とかいうものが、いかにその教師の自発的な、自主的な、生涯かけて絶えずこの教育に従事をしながら、みずからも研修を深めていくというものでなければならないかということが念頭に強くなければ、私はこれらのものを人事権と法律でもって押しつけようとしてもだめだと、こういうことを申し上げておきたいのであります。  で、法律の中身について今粕谷理事から御質問がありましたものに関連をしてお聞きしたいのは、この法律に言う初任者というのはその概念をどういうふうに定義づけておられるのですか。
  67. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 初任者という言葉一つ一つを分離いたしますと、初という意味は初めてという意味でございますし、任は任用でございますので、初めて任用された者、つまり公務員の世界に初めて入ってこられた者というぐあいに考えております。
  68. 久保亘

    ○久保亘君 そういうふうに言われるなら、もう少し突っ込んでお聞きしますが、経験に応じた体系的研修の一環としてと初任者研修を位置づけておられますね。そうすると、初任者というのは経験に応じたというところで数量的にはどうなるんですか。経験ゼロ年の者を初任者と言うんですか。
  69. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 基本的には初めて任用された者でございますから、その世界におきましてはまだ経験がゼロあるいはゼロに近い方を初任者として考えておるわけでございます。
  70. 久保亘

    ○久保亘君 経験一年を経た者は初任者と言わないということになりますか。厳格にやってみてください。
  71. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 初任者と申しますのは、あくまでも初めて任用された者でございますから、通常の常識的な用語の使い方といたしましては、当該年度において任用された者、つまり常識的に言いますと一年間が初任者という概念に相当するのではないかという考え方で今回の法律を提案さしていただいております。
  72. 久保亘

    ○久保亘君 そうすれば、先ほどこの政令の案として配付をいただきましたこの資料によれば、「臨時的に任用された教諭、助教諭又は常勤講師」、「期限附で任用された教諭、助教諭又は常勤講師」、これらの人たちが臨時的に一年間その職務にあり、期限つきで一年間その職務にあった者は初任者とは言わない、こういうことで解していいんですね。
  73. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 任用形態の差があるわけでございまして、この法律の趣旨といたしましては、その当該常勤の、しかも臨時的または期限つきでない形で任用された者という考え方でおるわけでございます。  ただ、初任者という言葉、先ほど申し上げましたように、初めて任用された者ですから、臨時的に任用されても期限つきで任用されても初任者という概念に該当いたしますので、その場合の初任研対象としましては、今回提案申し上げております二十条の二の第一項におきまして、括弧書きで「政令で指定する者を除く。」ということで、恒久的に教育公務員として勤務することを前提として任用された者を対象として初任者研修実施することとし、臨時的あるいは期限つきで任用され、生涯の、例えば三十数年の公務員としての身分が約束されたわけではない方につきましては初任者研修対象としないように政令で除くことを予定いたしております。
  74. 久保亘

    ○久保亘君 いや、私が言っているのは、臨時的、期限つきでその教諭の任に一年間あった者は、これが引き続き正式に採用された場合であってもこの経験初任者研修を免れる条件となるということですね。
  75. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 私どもの現在の考え方としましては、初任者研修対象、かつて臨時的任用あるいは期限つき任用の経験があったことを理由として初任者研修対象から除くということは考えていないところでございます。
  76. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、この臨時的あるいは期限つきでこの教諭の職務についていた者は、これは経験とは認めないと、こういうことですか。
  77. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教職の経験としては、確かに期限つき、あるいは臨時的に任用された期間は教職の経験ではございます。ただ、今回の初任者研修といいますのは、いわゆる三十数年の教育公務員としての身分を約束され、採用された方、任用された方を対象として行うものでございますので、その生涯におきます教員勤務を約束され、あるいは約束された方々対象とする事柄でございます。  ただ、その場合に初任者研修対象、具体的に政令で除くかどうかという問題は、過去の体験等を踏まえまして初任者研修を行う必要があるかどうかの観点から判断されるべき事柄でございますし、また期限つき、臨時的任用のケースにつきましては、そういった過去の経験がありましても初任者研修対象にすることが適当であるという判断に立っているところでございます。
  78. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、それぞれ個人に対して初任者研修を受けるべき者、初任者研修を必要としない者というのを判断して分けられるわけですね。  そうすると、こういうこともあるわけですよ。この場合は私立学校に一年間勤めて、そして公立学校に今度は採用になった者は、この政令の案に従えば初任者研修対象から除外される者のうちに入っているんです。そうすると、その教職員のこの特に期限つきというのは、教職員の採用試験に合格したが正式採用の枠がないということで期限つきで、その学校で全然普通の教諭と変わらない仕事に従事している教職員なんです。そういう人がいるんです。そういう人たちの一年間の経験というのは、これはどういうことになるのか、その辺で全くこの法律考え方は支離滅裂なところがあるんです。  初任者というのは何かということも、概念定義を聞けば、経験一年未満の者を言われるわけでしょう。ところが、実際に教職経験を一年持ってもあれは臨時的な教諭であったんだから、これは受けさせるか受けさせぬか、おれの方が決めるんだと。それでは困るんです。そういう政令の定め方というのはないと思う。この辺は私は、初任者研修と称する以上は初任者というものにきちっとした定義をしてもらわなければ困る。研修対象となる初任者とは何かということを明確にしてもらわないと、任命権者の方が、これは初任者研修対象とする、これはもういい、こんな決め方が任意にできるというような、そんな制度を義務づけるというやり方は極めて不合理だと思うのですが、いかがですか。
  79. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 初任者と申しますのは、例えば公立学校でございますと、そこで初めて教育公務員として任用された者でございますので、過去に臨時的任用あるいは期限つき任用の経験、さらには私立学校国立学校経験がございましても、その世界といたしましては初めて任用された教育公務員になるわけでございます。そういった点では、初任者という概念にはすべて新規採用された者は該当するわけでございます。しかしながら、そのすべてに初任者研修実施する必要があるかどうかという意味では、例えば国立学校あるいは私立学校におきまして教諭としての数年の勤務経験を有する者に対してまで初任者研修実施する必要はないであろうということが政令で除く趣旨でございます。
  80. 久保亘

    ○久保亘君 そういう判断を法案を策定されるあなた方が想定をして、実施しなくてもいい者、実施すべき者というものを考えられたとするならば、具体的にはどういう基準で分けられますか。
  81. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) この初任者研修制度と申しますのは、教員が円滑に教育活動に入っていき、かつ自立してみずからの教育活動が展開できるように援助するシステムでございます。そのためには、既に豊富な経験を持って他の世界からいらっしゃった、例えば私立学校で三年の勤務経験を有するというような方に対しましては初任者研修実施する必要はないというぐあいに、任命権者判断されるものと思います。具体的には、今申し上げた基準としては、国公私立学校において一年以上勤務した経験を有し、任命権者初任研対象にする必要がないと認めた者ということで、おおむねはそういった過去の数年の体験を有する者につきましては初任研対象外となると思います。  それから期限つき任用の観点の事柄でございますけれども、これは試行段階でございますが、一部の県におきましては期限つき任用の者を初任研対象とされているところも一部ございます。その場合には、正式採用になりました時点で改めてもう一度初任者研修実施するということはないだろうと思います。しかしながら、通常の形態といたしましては、期限つき任用で一年間の勤務の経験を持った者につきましては、正式採用の時点でおおむね初任研対象にするケースがほとんどであろうかと想定いたしております。
  82. 久保亘

    ○久保亘君 ますます複雑になるのじゃないですか。期限づき採用の者も初任者研修対象としてもよいということになれば、一年間の期限を切って採用されている者が初任者研修対象ということになった場合に、この人は一年間の期限を切って任用されたその職務との関係はどうなりますか。一年のうちに非常に多くの部分研修に行くわけです。そうすると、研修のための期限づき採用ということになりますか。
  83. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 私の申し上げましたのはレアケースでございますが、研修実施する場合に、どのような研修をやるかということは、基本的な性格としましては法律で書いておりますような研修実施義務があるわけでございます。そして具体的、個別的に初任者研修を命ずるかどうか、実行させるかどうかという判断がそこに一つあるわけでございますが、おおむね基本的には原則的に運用されるわけでございますけれども、例外的な運用もあり得るであろうということを申し上げたわけでございまして、原則的には先ほどから繰り返し申し上げておるところでございます。
  84. 久保亘

    ○久保亘君 法律をもって義務づけるものを例外や任命権者判断、恣意に基づいて決めるというようなことは、法律として非常に不備である、不合理であると私はそう思います。だから、その辺は一体初任者とは何か、研修を義務づけられる初任者とは何かということを明確にしてもらわなければ困る。これはちょっと整理してきちっと答弁してください。
  85. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 初任者と申しますのは、当該研修実施します年度に新しく採用された教員を指すわけでございます。そして、具体的に研修実施するのは、原則的には新任教員全員でございますが、政令で指定する者を除くわけでございまして、除くのは、先ほど申し上げた身分の違う国公私立学校教諭経験を一年以上持って、初任研実施する必要がないと任命権者が認めた者が第一の種類でございます。第二の種類は、当該年度に臨時的に任用されている者は除く。第三には、当該年度に期限つきで任用されている者を除くということでございます。それが政令案考え方で一応の交通整理はできていると思います。
  86. 久保亘

    ○久保亘君 あなたの方は交通整理ができているのかもしらぬけれども、どうも信号の色がいろいろで、とても歩ける状態にない。そういう任命権者の恣意的な判断でもって教職経験判断できるということでは、義務づける研修ということにはならない。このことを一つ強く指摘をしておきたい。  それから、研修条件づき採用期間がリンクする必然性というのは、もう何遍もここでもいろいろ質問がありましたが、私、まだそれでもわからない。今あなたが初任者研修対象についてレアケースというのを言われたけれども、条件づき採用期間を経た者で正式採用とならない者というのは、あなた方の報告によっても年度ごとに一ないし二名。三万人以上の中で一ないし二名。これはレアケースというよりは顕微鏡的数字ですね。それにもかかわらず、この研修と結びつけて、条件づき採用期間を延長しなければならない必然性とその理由、根拠というものを私どもにもよくわかるようにきちっと説明してください。
  87. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 現在条件つき採用期間中の免職の事例は、確かに三万人について一人ないし二人のケースでございますが、その以前におきましていわゆる本人が不適格性を自覚したり、あるいは病気のために、自発的に退職されている事例は五名とか十名とか年度によって違いますけれども、あるわけでございまして、この条件つき採用期間を適用し、その免職を発動するというのは、本人がおやめにならない最後の職権発動に至るわけでございますから、今申し上げた年度途中の退職の方が不適格性を自覚しないで最後まで頑張られたとするならば、免職が発動されたであろうということは蓋然性としては予想されるわけでございますけれども、それはともかくといたしまして、そういったような最後の手段として不適格者を排除する制度が条件つき採用期間の制度でございます。  そして、本委員会でもたびたび申し上げましたが、この初任者研修実施いたしますことに伴っての一年間の条件つき採用期間の延長の理由でございますが、基本的には教員と申しますものが、いわゆる児童生徒との間の全人格的な触れ合いの活動であり、かつ職務執行の場が隔離された教室という場であるという点から、その勤務実績、職務遂行能力を実証することが従来から難しかったわけでございますが、今回の初任者研修制度の導入によりましてその勤務の形態が、研修を受けながら勤務をする、あるいは先輩教員指導を受けながらみずから教育活動を行っているということによりまして、その勤務の内容自体が研修なのか、あるいは指導を受けて行っているのか、あるいは自分の力によってやっているのかということが判然としない状態というのが出現するわけでございますので、しかもその学校教育活動は一年間にわたり展開され、その成果が一年間で実を結ぶわけでございますけれども、より慎重に一年間かけて勤務遂行能力を判定するのが適切であるという判断に立ったわけでございます。  それから、これは背景といたしましては、現在でもそうでございますけれども、いろいろな教員の問題についての指摘等もございます。不幸なことでございますけれども、数年間等の勤務経験を持った方で、途中段階で不適格な排除をされる方もございますし、それからあるいはみずから不適格を自覚されて途中退職される方もございますし、そういった正式採用後の分限免職の事例というのも年間十数名あるわけでございまして、そういった問題につきまして、より慎重に教員としての適格性を判断するのに期間を一年間かけるのが適当という判断で提案を申し上げているところでございます。
  88. 久保亘

    ○久保亘君 今あなたは非常に自己矛盾の起きる発言をされたんです。正式採用となってからでも自発的に教師として適格でないと言うてやめた人もおれば、分限免職になった者もおると言われたんだ。それなら何も六カ月を一年に延ばさなくてもいいじゃないですか。その根拠がなくなるじゃないか。そういうことに私はなると思いますよ。そして、その六カ月で、例えば健康上の問題だというならば、今まで六カ月の条件つき採用期間を健康で勤めた者は正式採用となったんです。それがなぜ今度は一年間置かなければならぬようになるのか。それから、今まで六カ月間教職に従事した者はほとんど自動的に正式採用になっておるんです。法律もだから六カ月を経たら正式採用になると書いてある。そこで、また試験を受けて正式採用の可否を決めるなどということにはなっていない。条件つき採用期間を満了した者は引き続き正式採用となることになっているんですよ。  それをあなた方が研修を理由に一年に延ばされるということならば、条件つき採用期間が六カ月のままであった場合には初任者研修実施できないということになりますか。初任者研修を一年間実施することは条件つき採用期間を一年にしなければできないのですか。六カ月のまま、公務員の法規に決められている六カ月の現行のままの条件つき採用期間でもって初任者研修を一年行うことは、これは何か不都合がありますか。
  89. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 議論としては逆になるわけでございますが、条件つき採用期間を六カ月から一年に延ばさなければ初任者研修実施できないという性格のものではございません。しかしながら、初任者研修を一年間実施しました場合の勤務形態が変わってくる。しかも教員のもともと職務遂行能力の実証を得ることが極めて難しい、今度さらに困難性が増すということによりまして、判定の期間を六カ月から一年に延ばした方が適当であるという判断に立っているわけでございます。そういった点では、いわゆる条件つき採用期間が先にあるのではなくて、実際の勤務遂行能力の伴定の困難性というものをどのように判断をするかということが今回の六カ月を一年に延長する趣旨でもございます。
  90. 久保亘

    ○久保亘君 研修は職務の中ですか、職務外ですか。
  91. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 今回の初任者研修は職務として研修を受けるわけでございます。
  92. 久保亘

    ○久保亘君 それならば、六カ月間職務に従事するんじゃないですか。法律は職務の遂行の能力を実証できるかどうかと書いてある。研修は職務であるというなら六カ月間ちゃんと職務についている者が、なぜ条件つき採用期間が他の公務員よりも長くならなければならぬのですか。そういう法律上のつじつまの合わないことをなぜこの場合だけおやりになるのか、これは我々理解できませんよ。
  93. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 条件つき採用期間が満了した後に正式採用する場合には、勤務実績が良好である場合ということでございますが、その場合は言うなれば職務遂行能力の実証をするわけでございます。その場合の職務遂行能力と申しますのは、もちろん研修も入りますけれども、本来的に教壇に立って子供たちに教えることに十分な適格性を持っているかどうかということが基本でございまして、先ほど研修も職務であるということを申しましたが、それは一年間にわたる研修でございまして、残りの三十数年はいわゆる本来的な職務遂行を行うわけでございますから、その三十数年間にわたり本来的な職務遂行に必要な能力を有しているかどうかを実証するということでございます。
  94. 久保亘

    ○久保亘君 あなた方の話を聞いていると、結局一年間完全に自分たちが生かすも殺すも自由な裁量権を握っておくことがこの条件つき採用期間を延ばそうとする目的ではないですか。研修とは関係がない。じゃ、研修の結果を一年間見なければ判定が下せないとおっしゃるならば、その判定を行うものは何ですか。  その前に私が一つ言っておきたいのは、あなたが正式採用にするかどうかはと言われたが、法律はそういう考え方で立法されていないんですよ。これは採用になった者を六カ月間は条件つきとしておく、そこを過ぎたら正式採用となるというのが、これが条伴つき採用の立法の考え方なんですよ。六カ月たったらもう一遍審査を行って、気に入らぬやつは正式に採用しない、そういう権限は与えてはいないんです。特に職務遂行上非常に問題があってぐあいが悪いという者で、これが普遍的に納得のいくものである場合に任命権者条件つき採用から正式採用にかわることを拒否できるんです。普通の場合は別に改めて辞令が出るわけじゃないでしょう。ちゃんと採用された者は六カ月たったら自動的に正式採用になる。これが法律考え方なんです。それをあなた方が今度これを一年に延長しようという考え方の背景にあるのは、一年間の間に自分たちがどうも気に入らぬ教師に対しては制裁を加える、加えやすい手段を保有しておきたい、こういう考え方がその背景にあるんじゃないですか。これは私は非常に問題だと思う。  そこで、お聞きしたいのは、それなら、一年たったときにその判断をあなた方が下す、これは正式採用にしないという判断を下すその材料は何によってなさいますか。
  95. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) まず前段のことでございますが、条件つき採用期間を良好な成績で勤務した場合には正式採用になるという法律考え方、運用も同様でございまして、特段の免職行為がなければ自動的に正式採用教員となるわけでございまして、これは六カ月を一年に延長しても考え方は同様でございます。  そこで、その条件つき採用期間中の免職の考え方でございますが、これはいわゆる勤務評定を、具体的には校長先生が行いますけれども、校長の勤務評定を第一次的に行い、それを市町村教育委員会、都道府県教育委員会という形で勤務評定が上がっていくわけでございますが、    〔委員長退席、理事林寛子君着席〕 具体的な勤務実績の評定を校長が行い、あるいは教育委員会がそれをオーソライズし、そしてその段階で免職を行うかどうかを判断するわけでございまして、特段の事情がなければ自動的に正式採用になるというシステムは同様でございます。
  96. 久保亘

    ○久保亘君 従前と何ら変わらないと言われるんだが、教職員の側にしてみれば大変な問題なんですよ。  例えば、今まで六カ月の条件つき採用期間に不幸にして職務にたえない病気になった場合には免職となった。今度は十一カ月目に不幸にして病気になった場合に、一般の公務員は病気療養のために休暇の制度が認められるが、この教職員には認められないんです。大変な差ですよ。それから同じ教職員であっても、この法律によれば、年次進行をする過程において、中学校教師になった者は六カ月たったら正式採用になるから、それから一年以内に病気になった場合には現職の身分を持ったまま療養することができるが、小学校初任者研修対象となっている人はあとの半年の間に病気になったらその権利は保障されないんです。こんなことをあなた方が研修を理由にして平気でやっていいのか。これは人権の問題ですよ。そういうことをあなた方はわかっておっておやりになっておるとするならば、私は重大な問題だと思うんですよ。  それから、今校長の勤務評定ということを言われましたね。勤務評定があなた方が判断する場合の一番重要な材料ですか。
  97. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ちょっとその前に今病気との関係でございますが、条件つき採用期間中に病気になりましても、その病気がもう回復する見込みがない、あるいは将来ともに相当長期間かかるといった特段の事情のない限り、通常、病気休暇、休職等の規定が適用されるのは当然でございまして、その間におきましては正式採用教員との差はございませんし、また六カ月が一年に延びたからといって、その六カ月経過後の病気によってやめさせるケースというのは私は出てこないと思います。一般的に申し上げて、病気にかかった結果、職務に復帰することが全くできないというような客観的な判断があった場合ということでございます。  それから、今の勤務評定のお話でございますが、具体的には勤務実績の評定ということによって各般にわたります職務遂行能力を校長が第一次的に判定し、市町村教育委員会が第二次的に判定をしというプロセスはございますけれども、実際に免職される事例の場合には、勤務実績がよくないという勤務評定の結果のみならず、免職をするに足りるような材料といいますか、これは本人が不適格であることを証する各般のいろいろなデータというのが勤務評定以外にも当然必要になってくるだろうと思います。
  98. 久保亘

    ○久保亘君 そうすれば、三万人の新任教師全員に対してそういうものを集められるわけですか。何かあなた方が目をつけて、あれはどうもおかしいぞというのだけいろいろな材料を集めてこられるんですか。全教師についてそういうデータを集められるんですか。
  99. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 通常の形態でございますと、当然勤務評定だけで自動的に正式採用になるわけでございますが、条件つき採用期間中の免職の事例というのは、教員としてはこれはいかがであろうかということが、それは学校内部のみならずあるいは父兄、児童等からのいろいろなリアクション等も出てくるわけでございまして、そういった教員としてはいかがかというような観点からの声が聞こえ、あるいは管理職としても判断しというようなことになった場合のいろいろな判断材料、免職する材料という形になるわけでございますから、先生おっしゃいますように、採用されました教員全員がそういうことではございませんで、特定のケースに限り、余りにもこれは教員として正式採用するのはいかがかというようなケースについてそのような判断材料が集められるということになろうと思います。
  100. 久保亘

    ○久保亘君 特定教師についていかがかという判断は、だれが何で下すんですか。
  101. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 当然勤務評定をなさる校長先生判断によってなされると思います。
  102. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、やっぱり校長の勤務評定が最も重要な判断の材料として考えられる。その勤務評定によって校長がこの教師は問題教師であると言ったら、それについてデータを集めてきて、そして首を切る、こういう算段になるわけですな。私はそういうやり方は妥当性を持つのかどうか非常に疑問に思うことがあります。それなら校長も勤務評定を受けるんですよ。校長の勤務評定というものの中に、誠実であるか、公正であるか、いろいろ品位の問題から書いてあります。そうすると、校長が勤務評定で公正の度合いについて非常に低いという評定を受けている人が、職員の勤務評定を行ったその評定の結果が公正なものとはならないわけですね。公正でない者によって評定されておるんだから、これは公正なものとはならないわけです。そういうことでもって校長の勤務評定や校長意見具申によって問題教師としていかがなものかという判定を受けて、そしてそのことを立証すべき材料が集められて免職となる。こういうやり方が果たして公正なものであるかどうかですね。    〔理事林寛子君退席、委員長着席〕  だからそういうものは、あなたが最初に言われたように、非常にレアケースでしかない。三万人のうちの一人か二人でしかあり得ない。これはその一人か二人のレアケースをもって全体を条件つきの期間を一年に延長しておかなければならないという理由とするには余りにも私は薄弱な根拠である、こう思うんです。一名か二名の者ならば、これは正式採用となった後でも、条件つき採用期間中の者よりももっと多く毎年分限免職や自発的退職を求められてやめているんだとあなたは言っているんだ。何にもその条件つき採用期間を六カ月から一年にしなければならない理由は存在しないと思うのだが、どうですか。
  103. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 条件つき採用制度と申しますのは、本来教員あるいは教育公務員が採用されましたときには、一定の能力の実証を行っているわけでございますけれどもパーフェクトでない、そのために不適格な教員も入ってくる可能性もある、そこのところを職務遂行能力の実証ということによりましてその実証を補完する、採用時点におきます不足分を補完するという意味でございます。しかも、それは積極的な意味ではなくて、これは教育公務員として非常識な行動がとられ、その非常識な行動というのが公務員として適しないという徴憑であると判定した場合に条件つき採用期間中の免職がなされるわけである、しかも、免職以前の状態として本人の退職もございますし、本人ががえんじない場合の最後に発動する制度であるということでございます。  ところで、この六カ月から一年の制度は、今申し上げましたように、そういった児童生徒との全人格的な触れ合いを通じる職務遂行能力というものは、今回の初任者研修の導入により先輩教員等の指導を受けながら勤務をするという状態でございますので、それは能力を判定するのには六カ月よりも一年ということの方が適当であるという判断でより慎重を期したわけでございますし、また具体的な徴憑等につきましても、先輩教員あるいはその他の研修のプロセスを経て次第に資質能力が向上し不適格性がカバーされるということもあり得るわけでございまして、この六カ月から一年の延長が職員にとって不利なものであると私どもは考えておりません。
  104. 久保亘

    ○久保亘君 不都合はない不都合はないと言われるが、不都合がなくて従来と何にも変わらぬのだと言われるんならやる必要ないんだよ、何もやる必要ないんだよ、そんなこと。従来と何も変わらぬならやる必要ないんだよ。要するに一年間身分を拘束しておくことが文部省として非常に好都合なことがあるからそれをやろうとされているのではないかといわれても仕方がないぐらいこれには理由がない。  それから、あなたがさっき言われたことで私確認しておきたいが、条件つき採用期間中であっても職務に耐えられないような病気になっても、回復の見込みがある場合には病気療養の休暇が正式採用の者と同じように認められるということは間違いありませんね。
  105. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 条件つき採用期間中の職員に適用されない規定は、地方公務員法上の例えば分限の規定でございまして、あるいは人事委員会に対する不服申し立て等の制度の適用はございませんが、それ以外は正規採用職員と同様でございますので、休暇制度、休職制度の適用があることは当然でございます。
  106. 久保亘

    ○久保亘君 それではこの公務員法によって免職にできる者の規定に「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない」者というのは「免職することができる。」ということになっておりますが、回復の見込みのある者はこの条項は適用されない、このことは確認しておいていいですね。
  107. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 回復の見込みがないか、あるいは回復するために相当長期間を要する、極めて長期間を要するといったようなケースについては免職の対象になるわけでございます。しかしながら、例えば一定期間、ある程度短期間、例えば病気休暇中あるいは休職中に回復する見込みがあると思われる者につきましては免職にすることはできないと思います。
  108. 久保亘

    ○久保亘君 次に、この条件つき採用期間の延長は国家公務員法、地方公務員法によれば六カ月ということが規定されておって、人事院または人事委員会の規則で延長を定めることができるとなっておりますね。だから、教育公務員特例法の母法である国公法、地公法は、延長の場合には人事院または人事委員会にその延長の権限をゆだねているのではないかと思うのですが、母法の規定を特例法でもってかえるということが妥当であるかどうか。それから、各県においてこの教育公務員特例法条件つき採用期間を適用していく場合には、当然に人事委員会の規則の変更が必要となるのではないかと思うんですが、いかがですか。
  109. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教育公務員特例法は国家公務員法、地方公務員法の特例法でございまして、両公務員法の精神に抵触しない範囲において教育公務員としての職務と責任の特殊性に基づいて特別なルールを定めるものでございます。したがいまして、国家公務員法、地方公務員法で規定しております六カ月の条件つき採用期間を一年に変更するということは、教育公務員特例法の精神あるいは教員の職務と責任の特殊性に基づいて可能なことでございます。  それから、一つの方法としましては、法律を変えないで地方公務員法のままで人事委員会規則によって一年に延長することも可能でございますが、その場合は四十七都道府県におきましてそれぞれ条件つき採用期間の延長の幅が異なる等の取り扱いになりますと全国的な教育水準維持向上という観点からいかがかという意味におきまして、今回、教育公務員特例法によって措置をすることとさしていただいたわけでございますが、この実質的内容法律改正をしなくて人事委員会規則で一年間に延長することも不可能ではございません。しかしながら、今申し上げたように、各都道府県教育委員会におきます取り扱いの差、ばらつきが出ますと全国的な教育という観点からの問題が生ずるわけでございまして、その意味法律規定さしていただきました。  なお、教育公務員特例法規定する結果としましては、人事委員会規則によってこのことを再度規定する必要はないものと考えております。
  110. 久保亘

    ○久保亘君 国公法、地公法に基づく特例法であるからその国公法、地公法の精神を超えない範囲で、侵さない範囲でと言った方がいいか、この特例法は決められる、こう言っているが、国公法、地公法は明確に六月というのを示している。そして、人事院や人事委員会の規則によって特別な場合に一年以内の延長を認めているのであって、その判断は人事院や人事委員会にゆだねているのが国公法、地公法の精神ではないですか。それを各県でばらばらになってはいかぬから、わしの方で取りまとめて一年と決めるからもうおまえの方の規則はかかわりないからさよう取り計らえ、こういうやり方を特例法でもってやることが国公法や地公法の精神を超えないと言えるんですか。
  111. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 国家公務員につきましては人事院規則によりまして一年まで延長することが可能でございますし、それから地方公務員につきましては人事委員会規則で一年に至るまで延長することが可能なシステムになっております。  それを今回、教育公務員特例法におきましては、初任者研修対象となる教員につきまして一年の延長措置を法律上講じているわけでございまして、そのことは国家公務員法、地方公務員法で許容されている一年の幅の中であるということが一つは一年ということでとめている理由でもございますが、先ほど先生がおっしゃいましたそれぞれ人事院または人事委員会規則で定めるべき事柄ではないかという御質問に対しましては、国家公務員については確かに国家公務員全般の問題として人事院が判断をいたしますけれども、人事委員会規則の場合でございますと各都道府県段階になりますので、四十七県それぞれの判断によってばらつきが出る可能性があるということを私申し上げました。  そのことは、現実問題として例えば警察官につきまして警察学校の教養期間中は一年とかいうことは各人事委員会規則で定めておりますけれども、それは各都道府県におきます警察学校研修期間あるいは内容等がすべてそろっているわけではないので、結果的に合っているといたしましてもそういった取り扱いがなされていることでございます。教員につきましては、一年間にわたる初任者研修によって全国的な教育水準維持向上を図るという観点から行う制度でございますので、そのことに伴います今回の勤務能力判定期間につきましては法律で一年に規定する方がよりすっきりしておりますし、また扱いを異にする危険性もないということで対応させていただこうとしているところでございます。
  112. 久保亘

    ○久保亘君 地方公務員の場合には地方公務員法に基づいて、その自治体にゆだねられている権限ですよ。それをあなた方は一律に国の法律でもって自治体の権限を縛るということは、これは地方自治の無視じゃありませんか。そんなことがやられていいんですか。
  113. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 地方公務員法におきましても、現在の六カ月という期間は、地方公務員法で六カ月という規定があるわけでございまして、これで、自治体の自由判断ではなくて、最低六カ月ということはすべての自治体に要求されているところでございます。そして、それを一年に延長するかどうかは各自治体の判断にゆだねられているところでございます。  一方、教育公務員につきましては、もちろん地方自治の本旨は必要でございますが、と同時に教育公務員は教育を通じて国民全体に奉仕をする立場でございまして、しかも全国的な教育水準維持向上を図るべき役割、その必要性があるわけでございますので、そういった教育公務員の職務と責任の特殊性にかんがみまして、このような措置を定めることは、国家公務員法あるいは地方公務員法の規定する地方自治を侵害するものではないと考えております。
  114. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、教員をあなた方がこの法律をもって指導、監督、管理をされるが、その国民全体に奉仕する教育の任務に従う者だから、一年にしなければいかぬというなら、その教員指導、監督しようかと考えているあなた方の条件つき採用期間はどうなるんですか。三年ぐらいやりますか。
  115. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 私どもの立場は、教壇に立って児童生徒との人格的な触れ合い活動をするわけでもございませんし、また一年間にわたる研修を受ける立場でもございません。そういう意味におきまして、今回提案申し上げております教育公務員の場合とは考え方の基礎が違うわけでございます。
  116. 久保亘

    ○久保亘君 そういう立場にもない者が、教育現場にある固有の権限とか、あるいは教師自体が持っている研修の権限とかいうものを、あなた方が制約しながら一律に義務づけていくなどということは、これはいかがなものかと思いますよ。  それで、そういう点についてやはり私が最初にお聞きした、行政と現場の関係はいかにあるべきかという点について、その上下の、縦の関係であなた方が物を考えるとすれば、重大な誤りを犯すということを指摘しなけりゃならない。やはり現場と行政との間に信頼関係がきちんと確立されて、相互によく理解し合うものでなければ、法律をもって縦の関係で管理するということでは教育は私は成果を上げることはできない、こう思うのですが、大臣、どうですか。
  117. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 私は前からお答えをしておりますように、前提としてやはり教職にあられる方は主に教室において人と人が接しながら人が人を教えるという、本来教職にある方々の特殊性はある。これが前提でありまして、なおかつ、それに今度お願いをいたしておりますのは、初任者研修、この初任者研修の間は少なくとも人を教えるという職務と同時に、先輩の指導教員から研修し学ぶという両面をその間負っていくものでございますから、そういう意味では本来の特殊性にさらに特殊性はその間加わらざるを得ない。それはなぜ一年としたかというと、いろいろお考えはありましょうけれども、カリキュラムの単位はいろいろございますけれども、やはり一つの単位では一年が一つの節目としてのカリキュラムである。その間を通して初任者に対して研修を行わさせていただくのが一番よろしかろう。そうしますと、やはり職務遂行能力の判断基準は変わりませんけれども、判断の基礎はやはり一年とするのが正しいのではないか。そういう発想からお願いをいたしておるところでございます。  したがって、その一年というのを国家公務員それからあるいは地方公務員六月というものを勝手に延ばせるかということでありますけれども、これは政府委員がお答えいたしましたように、それは各自治体の判断を損ねるものではないという観点から、この法律では一年というふうに条件つき採用期間も同時に御提案をさせていただいておるところでございます。  以上であります。
  118. 久保亘

    ○久保亘君 時間が非常に短くなったんで、あと一、二点法律に関して伺っておきます。  一つは、今度の初任者研修にかかわって都道府県が求めに応じて派遣する非常勤講師の法的な身分はどうなりますか。
  119. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 今回の地教行法の改正によりまして制度化いたそうとしております派遣非常勤講師の身分の問題でございますが、これは派遣を受ける市町村と派遣する都道府県の両方の身分をあわせ持つということでございまして、双方で任用行為が行われるわけでございます。しかしながら、その身分取り扱い規定につきましては、都道府県の定めを適用するということを今回の改正の中で規定いたしております。そして身分的には非常勤講師は地方公務員法上の特別職に該当するわけでございます。なお、分限懲戒権の行使は都道府県が一律に行使するのが適当でございますけれども、服務の監督は市町村教育委員会が行うということでございます。それから、非常勤講師にかかる報酬と費用弁償は派遣する都道府県側の負担と、こういう考え方で提案をさせていただいております。
  120. 久保亘

    ○久保亘君 市町村に属する特別公務員ということですと、これは公務員法の何条のどこに該当しますか。
  121. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) これは派遣非常勤講師に限らずすべての非常勤講師がそうでございますが、地方公務員法第三条第三項第三号に言います非常勤の嘱託員に準ずる者に該当するわけでございまして、いわゆる一般職と特別職の区別がなされております特別職に該当するものでございます。
  122. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、この市町村の特別公務員である非常勤講師は派遣された学校に属する何になりますか。
  123. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 派遣された学校におきまして、学校の所属する市町村の特別職の身分を持ち、当該学校の校務の一部を分担する非常勤講師という立場になるわけでございます。
  124. 久保亘

    ○久保亘君 今言われたのが法律上の規定といいますか、もしそれを法文であらわせばそういうことになりますか。  であるならば、非常勤講師指導教員になることが可能ですか。これでいきますと、指導教員は、研修を受ける者の「所属する学校の教頭、教諭又は講師のうちから」となっておりますが、この講師非常勤講師は含みませんね。
  125. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 今回提案を申し上げております教育公務員特例法改正案の第二十条の二の第三項で、「任命権者は、初任者研修を受ける者の所属する学校の教頭、教諭又は講師のうちから、指導教員を命じるものとする。」とございます。ここに言う講師には常勤講師及び非常勤講師の双方を含んでおるわけでございます。
  126. 久保亘

    ○久保亘君 それは学校教育法その他とも照らして、学校に属する講師の中に特別職の公務員、非常勤の講師を含むという法律上の根拠をきちんとしてくれませんか。
  127. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 学校教育法におきましては、講師の職務規定を、学校教育法二十八条であったかと思いますが規定をしておりますが、ここには常勤非常勤の別なく講師という概念でございます。したがって、学校教育法では常勤講師非常勤講師も同様に講師として教諭または助教諭に準ずる職務を行うという規定になっております。そして、常勤講師非常勤講師の区別がされておりますのは、例えば義務教育国庫負担法等の場合におきましては講師で常勤の者に限るという括弧書き等がございます。  そして今回の提案申しております教育公務員特例法の改正案の中では、第二条の第二項の定義を改正いたしまして、従来は「講師(常時勤務の者に限る。以下同じ。)」ということがございますが、今回の改正案で「講師(常時勤務の者に限る。第二十条の二第三項を除き、以下同じ。)」ということでございまして、この指導教員に関する規定のところでは除いてございます。したがって、二十条の二の第三項の規定によりまして、ここで規定されております講師の中には非常勤講師も含まれるというそういう法体系にしているわけでございまして、常勤講師だけか非常勤講師を含むかは各法律のそれぞれの規定において定義を設けることによって差をつけているわけでございまして、こういった定義規定がない場合には、講師規定しております場合には、常勤講師非常勤講師のいずれも入るわけでございます。
  128. 久保亘

    ○久保亘君 学校教育法では講師教諭、助教諭に準ずるものとなっているんです。非常勤講師は準じませんよ。非常勤講師というのは時間講師でしょう。学校教育法に定める講師というのは教諭、助教諭に準ずるとなっている。だからこれでは非常勤講師意味していないと思うんですが、どうですか。
  129. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 学校教育法の二十八条では「教諭又は助教諭に準ずる職務」を行うということでございまして、それは職務の内容教諭または助教諭に準ずるような職務の形態をとるわけでございまして、身分的に常勤か非常勤かの別は規定していないわけでございます。  ちなみに、教諭につきましては現在非常勤教諭という制度がございませんけれども、それは一般的には常勤が必要であるという観点から教諭については常勤が要求されるわけでございますけれども、講師につきましてはその職務の形態が教諭と全部同じであるかその一部分であるか、そういった観点で常勤講師または非常勤講師の別が現実の運用として行われているわけでございまして、もともと学校教育法の二十八条は常勤のみを予定した法律ではございません。
  130. 久保亘

    ○久保亘君 そういう理屈でいくと、非常勤講師にも学級担任が可能になったりどうでもできるということになるんであって、この場合その学校に所属する教諭、助教諭講師というのは、教諭、助教諭に準ずる常勤の講師を指すものと解するのが常識であると私は思う。  時間が参りましたので、最後にもう一点伺いたいのは、幼稚園における研修初任者研修とは異なる研修となっているが、異なる研修とはいかなる研修か。それから幼稚園における研修については任命権者である市町村の教育委員会が行うのではなくて、都道府県がこれを実施するということになるようであるが、市町村が幼稚園の初任者について任命権者として研修をやることができない理由は何か。
  131. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 公立幼稚園に関します規定でございますが、御承知のように幼稚園の場合は任命権は市町村教育委員会が有しているわけでございまして、したがって研修を行う権限も都道府県ではなくて市町村教育委員会になるわけでございます。そしてこの場合、市町村の幼稚園と申しますのは規模も小そうございますし、あるいは職員構成も小そうございますから、したがって新任教員のケースというのは何年に一度というようなケースも零細市町村においては生じ得るわけでございまして、このような県費負担教職員の小中学校教員と同様な観点での研修は実際上難しいわけでございます。  こういった実態にかんがみまして、また今の市町村の零細市町村等で、そういった初任者研修実施するということが物理的にも難しいという点も考慮いたしまして、幼稚園教諭についても小中学校に準じた考え方をとるといたしますれば、本来の権限外でございますが、都道府県教育委員会研修を行わした方が全県的な幼稚園の研修ができるであろうという観点からの規定でございます。しかしながら、この場合市町村教育委員会研修義務を取ったわけではございませんで、都道府県が行いますと同時に、市町村教育委員会研修を行う権限は当然に有しているわけでございます。
  132. 久保亘

    ○久保亘君 私は、初任者の定義の問題、それから条件つき採用期間を延長する理由などについていろいろお尋ねしましたけれども、今文部省からお答えになりましたことで、私としては納得がいかない点が非常にたくさんあります。したがって本問題についてはなおさらにこの論議を詰めなければならぬ、こう思っておりますが、時間が参りましたので、一応私の質問を終わります。
  133. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ─────・─────    午後一時十七分開会
  134. 田沢智治

    委員長田沢智治君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  135. 高木健太郎

    高木健太郎君 直接教特法とは関係ございませんが、もう国会も終わりに近づきましたので、しかしその間に起こるかもしれないという問題がございますので、この際関連問題として質問をさせていただきます。  それは脳死及び臓器移植の件についてでございますが、御存じのように、各大学には医の倫理委員会とかあるいは生命倫理委員会というものが設けられておりまして、それらが移植をやってよいかどうかというようなことについて担当の医師から申請があった場合に、これを倫理委員会において結論を出す、それに従って移植が行われる可能性が非常に多いわけでございます。  この際お尋ねしておきたいのは、この倫理委員会の結論というものあるいはやり方、その構成、それらはばらばらでありまして、必ずしも一致しておりません。それに、出てくる結論も恐らくまたばらばらであるだろうと思っております。御存じのように、医師会から臓器移植を肯定するような結論が出ましたし、学術会議からも移植は認めるような結諭が出ております。しかし、まだ認められていないようなものがたくさんあるわけでございます。例えば、凍結受精卵というのがございまして、これらはまだ論議が一般の中でも行われていないわけでございますが、先般、新潟大学の倫理委員会が不妊症の治療の一環としましてこの凍結受精卵を臨床応用するということを倫理委員会ではゴーサインを出したわけでございまして、早速新潟大学ではこれに踏み切ったわけであります。あるいはまた、もう大分前になりますけれども肝臓の移植であるとか、心臓の移植は現在法律にはございません。しかし、これは脳死状態においてやらなければならないということは明らかでございますが、その申請が各四つ五つあると思いますけれども、大阪大学あるいは金沢医科大学、鹿児島大学、その他の国立大学におきまして、金沢は国立じゃないかもしれませんが、そういう大学におきましてこの倫理委員会に申請が出ております。  これにつきまして文部省は、新聞などではもしも倫理委員会がゴーサインを出せばこれはやるのではないかということをしきりに書き立てているわけでございます。この場合文部省としましては、これら倫理委員会のゴーサインといいますか、それの権限といいますか、あるいはそれの支持といいますか、それに対してはどのようにこれを取り扱っていかれるおつもりか、まずお伺いしておきたいと思います。
  136. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 御質問にもございましたように、最近臓器移植の問題を初めといたしまして、いわば倫理に絡むような問題というのがいろいろ医療の面において起こってまいりました。私ども文部省といたしましても、こういったたぐいの問題につきましては個々の医師の判断ということですべてが処理されるということではなくて、やはりより慎重な、しかもできるだけ幅広い議論を重ねた上での結論が出されるということが望ましいことであるというようなことを考えまして、各大学、医学系の大学、学部に対しまして、こういった問題を議論するための倫理委員会を学内組織としてつくって、そこで十分議論してほしいというような指導をかねてから重ねてまいったわけでございます。  もちろん現在は、その脳死あるいはそれに絡んでの臓器移植ということが現在の課題になっておるわけでございますけれども、こういった事柄そのものは、これは私どもは最終的には専門家である医師の判断によるものであるというふうに思っておるわけでございまして、その責任において処理されるべき事項であろうと思うわけでございます。そういう意味で、文部省としてこれをやっていい、やって悪いというような発言を国立学校を所管する立場でするということは差し控えなければならないと思っているわけでございますが、それにいたしましても大学の中で倫理委員会等を設けて十分な御議論を重ねた上で対応していくということが望ましいというようなことで対応しているわけでございまして、この倫理委員会の見解そのものは、倫理委員会の結論を出しましても、最終的には医師の責任の問題でございますので、法律的な意味において何らかの権限を持っており、その判断に左右されるということでないことは確かでございますけれども、しかしながら、この倫理委員会での御議論というのは結局はその大学あるいは大学附属病院における大勢の考え方ということにもなってまいるわけでございますので、具体の臓器移植の手術というようなことになりますと、御案内のように単に担当の外科の医師が一人で処理をし得るというものではなくて、脳神経外科であるとか麻酔科であるとか、いろいろな全学的な協力体制のもとに行われるということでもございますので、結局は倫理委員会の意見判断というものは尊重されるという結論になるものということで考えておる次第でございます。
  137. 高木健太郎

    高木健太郎君 医師の判断でありますけれども、現在脳死を認めるか否かということにつきましては国民的に論議が交わされている途中でありますし、また法律的にはこれは決められていない問題でございますから医師の判断というわけにもいくまいと、そういうふうに私は考えているわけですが、しかし事実は先行してしまうのではないかと、こういう緊迫した状態にあるということはひとつぜひ心にとめておいていただきたいと思います。  そういうわけで、法務省の方お見えになっていますか。——それでは法務省の方にちょっとお伺いしておきます。  このように各医科大学におきまして倫理委員会において脳死を容認し、また臓器移植に踏み切った場合、その決定は刑法上どのようにこれを評価されますか、あるいはそれをどのように取り扱われるおつもりですか、法務当局の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  138. 東條伸一郎

    説明員東條伸一郎君) お答え申し上げます。  脳死状態にある者からの臓器移植をある医大の倫理委員会が認めた場合に、これに従って行われた当該臓器移植の行為、これを刑法上どう評価するかというお尋ねであろうかと思いますが、問題は二点に分かれようかと思います。  一つは、先生御案内のとおり脳死というものを法的な死であるというふうに認めることができるかどうか。これは現在いろいろな議論が出ているところで決着がついていない問題でございますが、この問題について、一医大の一倫理委員会が脳死をもって仮に死と判定すると決めたことそれ自体が、脳死をもって法的な死であるというふうに認定するだけの根拠を持つかどうかと言われますと、現段階では、先ほど文部省の方から御答弁ございましたように、倫理委員会の法的な位置づけというものも明確ではございませんので、そのような倫理委員会の決定をもって直ちに脳死が法的な死になるということは言いがたいのではないかと考えております。  ただ、それでは倫理委員会の決定が全く刑法的に無意味であるかどうかということでございますが、私ども脳死状態からの臓器移植行為、つまり脳死状態にある者の体から臓器を摘出する行為及びそれをある患者さんの体に移植する行為全体を含めて考えるわけでございますが、これが医師の業務上行うべき正当な行為になるのかどうか、これが刑法上の争点になろうかと思います。  この場合に、脳死状態にあるということ、そういう特定の状態にあること、それを慎重な手続で認定をして、そして社会的に相当と認められる、あるいは医学上の水準から見て相当と認められる手当てをして、これをある患者さんの体に移植する行為、これは広い意味では医師の全体としての治療行為として評価し得る余地があろうかと思いますが、そのような行為を行うに当たって、今文部省の方から御説明がありましたような学内に設けられました機関による慎重な手続が行れた、それに従ってなされたんだということは、事件が現実に仮に起こりました場合に、捜査当局といいますか検察当局といいますか、そういうところでそのようなものの存在を全く無視できるものではない。  非常にあいまいな言い方でございますが、結局のところはそのような委員会の存在あるいは手続あるいは決定内容についてどの程度の評価がなし得るか、これは具体的なケースが起こってまいりませんと一概には申し上げられないと思いますけれども、それにかかってくるのではないか。回りくどい言い方で恐縮でございますが、結局は、刑法で申し上げますならば刑法三十五条の正当行為であるかどうかということを判断する一資料にはなり得るだろうと、このように私ども今の段階では考えておる次第でございます。
  139. 高木健太郎

    高木健太郎君 この場合に、医師の権限であると認めて、これが正当な手続をもって行われた場合に、違法性の阻却ということはあり得るとお考えでしょうか。
  140. 東條伸一郎

    説明員東條伸一郎君) お答え申し上げます。  重ねて同じようなお答えになるかと思いますが、結局のところ違法性阻却事由になるかどうかと申しますのは、法令上に明確な根拠のある行為ではございませんので、広い意味では社会通念といいますか、全法体系のもとでそれが正当と評価されるかどうかということになろうかと思います。したがいまして、その倫理委員会なるものの位置づけとかその構成員とかその決定手続ですとか、そういうものに対して社会といいますか、広く国民がどのようなものとして受けとめるのだろうか、非常に権威のある、そこでそれだけの慎重な手続、判断がなされたのであれば、それに従ってなされた行為は医療行為として正当と認めてよいというのかどうか、これは私ども必ずしもまだそこは見きわめがついていないわけでございまして、委員会の決定があったから即それに従った手続なり処置が正当行為、つまり違法性阻却事由になるということまでは断定できないというふうに申し上げておりますが、逆の意味で、それじゃ全く意味がないかというとそうでもないだろう、こういうことでございます。
  141. 高木健太郎

    高木健太郎君 ありがとうございました。どうぞお帰りになっていただいて結構でございます。  ちょっと一番最初に妙なもの、これを配っていただけませんか。    〔資料配付
  142. 高木健太郎

    高木健太郎君 今お手元に妙な絵を、写真といいますかをお配りいたしました。  この絵をごらんいただきまして、これをどんな顔にごらんになれるか。若い女の子が横を向いているというふうにごらんになる方が多いと思うんですが、いかがでございますか。実はここにありますようにW・E・ヒルという人がかいた絵でございまして、これを中川米造さんが福井で行われましたバイオエシックス、生命倫理のシンポジウムでこの絵を出して、そして物の見方ということについて意見を皆さんに開陳した、このときの絵でございます。これをちょっとごらんになると、確かに若い女の子が右を向いているように、左の横顔のように見えますが、もう少し大きくこれをごらんになりますというと、魔法遣いのおばさんが目をむいているというふうに見えるはずでございます。なかなかごらんになれないと思いますが、それは若い女の子のあごのところがちょうど鼻になっておりまして、下の方に三角形の小さな切り口がございますが、それを口としてごらんになりますと若い女の子のその耳のところが目に見えるわけです。そう見るとこれは魔法遣いのおばさんに見える、六十か七十ぐらいのおばあさん。  こんな幼稚なものをお見せいたしましたが、これは前にもごらんになった方が大勢おられると思います。ただ私がこの際こういうことを出しますのは、人間の物の見方というものは、ある一点に集中して狭く見ると、そうすると若い子に見えるけれども、また見方を変えて広く見るとこれはお年寄りに見えるという見え方、見方、考え方の問題をここで皆さん方に御提示した、私はどちらの見方をしていいかわかりませんが、できるだけ公平な見方で、これは二つあるよと言えば公平でございましょうが、またこれライオンに見えるという人もあるわけですね。一つ事柄に対しましていろいろな物の見方があって、初めそれに固執して見始めるとこれしか物が考えられないということになってしまうのではないか。お互いにこういうことは気をつけて、ああなるほど、そういう見方もあるということをこういう場の議論を通して平たんにといいますか平常心で考えていきたい、こういう意味で最初にこれをお見せするわけでございます。  さてそこで、これから申し上げることもそのようにひとつお聞き取りいただきまして、そして公正な判断をしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  まず最初に、教員養成課程における教育のことでございますが、中学校教諭の一級普通免許を取るためには教科に関する専門科目及び教職に関する専門科目というものがあるわけですが、この教科に関する場合には、例えば社会、理科は四十単位、国語、数学は三十二単位、それから教職に関するものは十四単位というようなふうになっておりますが、これは中学校教諭でございますが、小学校ではこのように教科の方が分けられているかどうか、まずお伺いいたします。
  143. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 小学校教諭の免許状を取るためには、教科といたしましてはいわゆる八教科のうち六以上の教科について二単位以上、合計十六単位以上の専門科目ということでございまして、いわゆる小学校における教科の必要な大部分はとっていただくという考え方でございまして、とらなくても済むという科目が特定されているわけではございません。
  144. 高木健太郎

    高木健太郎君 小学校では理科と文科あるいは理科と国語というように、こういう専門化した単位というものはないわけでございますか。私は小学校でもそのようにある程度専門化している科目を重点的にとるようにしておいたらどうであろうかというふうに考えているわけですが。
  145. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 小学校教員になるための教科に関する科目としましては、国語、社会、算数、理科、音楽、図画工作、家庭、体育と申しますこの八教科がございまして、そのうち六以上の教科をとることが必須とされているわけでございまして、現実の実態としては教員養成大学学部におきましてはこの八教科をほとんどとられている実態にあると思います。
  146. 高木健太郎

    高木健太郎君 もう随分自然科学あるいは文化の科学も進んでおりますので、小学校教員でもかなり突っ込んだ専門的な学問をしておく方が子供に教えるに当たって都合がよいのではないか、こう思うのでこういうことを申し上げるわけであります。  また、教職課程におきましては教育実習が中学と小学校では違うようでございますが、これはどういうふうになっておりますか、あるいは高等学校ではどうなっておりますか。
  147. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 小学校教員の資格をとるためには教育実習が四単位以上でございまして、中学校、高等学校では二単位以上でございます。現実には、一週間学校教育実習をしました場合一単位と換算しますので、現に小学校教員については教育実習を四週間以上、中学校、高等学校につきましては二週間以上という実態でございます。  なお、先ほど先生小学校教員でも特定の教科を深めた方がよろしいのではないかという御意見ございまして、確かに今の申し上げた最低必須単位以外にも、例えば国語をやりたいという方は国語の単位を二単位ではなくて四単位とられる方もいらっしゃいますが、教職に関する科目が中学校、高校に比べますと極めて多うございますので、特定の教科を多数単位をとることはなかなか難しい状況にはあると思っております。
  148. 高木健太郎

    高木健太郎君 教職のための教育実習というものはどれぐらい実が上がって、だれに対してどういう実習をやっておるわけですか。
  149. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 現在、教育実習といたしましては今申し上げた二週間ないし四週間、もちろんその中に若干事前事後の指導等もございますが、多くは実習校へ出かけましてそこでいわゆる教員の授業を参観する、あるいは学校のオリエンテーションを受ける、それから指導案の作成の指導を受ける等ございまして、その中で実習生本人が授業を行うということもございますが、これは学校によって精粗さまざまでございまして、いわゆる附属学校等のように教員養成を主目的としますところにおきます教育実習の指導というのはかなりの程度行われておりますけれども、一般の学校へ参ります実習生の場合にはどうしても授業参観の時数が多くなるわけでございまして、現実に教壇に立って指導するという形態の時間数はいわゆる附属学校等に比べますと極めて少なくなっているというような実態はございます。  いずれにいたしましても、現在、例えば昭和六十二年度でございますと教員免許を取得されます方が実数で十三万八千人ございますので、こういった大量の実習生を学校で受け入れるという関係上、一クラスにつきましても実習生の人数が多い等の関係がありますれば、どうしても実習生そのものに授業をさせる時間というのが少なくならざるを得ないというのが現状ではないかと思っております。
  150. 高木健太郎

    高木健太郎君 ここら辺が不十分であるということから、今度の研修制度というものを義務づけられたんじゃないかなと思うわけですし、また実習に来られるそういう生徒あるいは学生が、かえって授業の邪魔になるというような、いろいろの問題があることを聞いておりますが、それが今回の研修を義務づけられる一つの原因になっているわけですか。
  151. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) いわゆる教員につきまして、実践的指導力の向上を図るという観点からしますれば、今のような教育実習が相当程度要求されてしかるべきでございますけれども、今申し上げたような実際に教員採用される方の五倍に相当する方が免許を取られるという状況、しかも開放制の原則をとっております以上、今の例えば実習公害等の言葉も現場から聞こえてくるわけでございまして、なかなか教育実習の単位の引き上げ等も非常に難しい状況にあるのが現実でございます。  しかし、今回の制度自体は、教員養成とそれからこちらの初任者研修、両々相まって教員の資質向上を図るべきであるという観点から、現在提案しております教育職員免許法におきましても、教育実習の単位をそれぞれ一単位、中学校、高等学校につきましては三単位以上、小学校につきましては五単位以上という改正案を提案をさせていただいておりますが、これのみによっては実践的指導力をまた上げることも実際上なかなか期待できないし、また教育実習の実態自体が、今申し上げましたような授業参観の時数がどうしても多くなるという状況でございますので、やはり教員がみずから授業をしながら先輩教員指導を受ける初任者研修の方に実践的指導力の向上の方はウエートを置かざるを得ないという状況にあるわけでございます。
  152. 高木健太郎

    高木健太郎君 短大と養成大学との違い、カリキュラムの違いはどれぐらいでしょうか。
  153. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教員養成大学におきましては、今の申し上げました四単位、二単位という実習単位ございますが、それを相当大幅に上回っておりまして、例えば六単位、七単位というような形でとられている学校が相当数多いわけでございますが、開放制の一般大学につきましては、やはり実習受け入れ校の関係もございまして、最低の四単位、二単位で充足しているというケースが圧倒的に多いのではないかと思っております。
  154. 高木健太郎

    高木健太郎君 それから、新規採用採用試験による選考というものがあるわけですけれども、それはどういう能力をお調べになっているわけでございますか。  私がこういうことを聞いているのは、将来は教員になるという人たちがこういう養成大学に入るわけですけれども、それが、出てもその後何か非常にたくさん残っているというようでは、学校の存在というものがおかしいんじゃないか。あるいは選考もするというのに、まだそれから何か後にやらなければならぬというのでは、学校の整備の方をまず進めるべきじゃないかという意味でお尋ねしているわけでございます。その点に関してはどのようにお考えですか。
  155. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 最近、児童生徒数の大幅な減少がございまして、そのために教職員定数も自然減が相当来ているわけでございまして、それをカバーする意味におきましても、十二カ年の教職員定数改善計画を進めておるところでございます。しかしながら、現在の需給状況からいたしますと、どうしても教員養成学部等を卒業された方の就職率が下がってきているわけでございまして、一面におきまして、これは高等教育局の所管でございますけれども、教員養成大学学部におきましても、免許コース以外に免許を取らないいわゆるゼロ免コースというような形での学科転換を図られているようなケースもございますし、今の状況は、教員養成というのは、先ほど申し上げましたように、それのみならず開放制の原則をとっておりますので、養成する人数を何人と決めるわけではなくて、どうしても志願者が多くなるということは、ある意味では幅広く人材を集めるという意味において、それなりの効果はあると思っております。
  156. 高木健太郎

    高木健太郎君 教員養成大学の入学の倍率は五倍ぐらいである、まあだから、割と私、優秀な人がおいでになる。それから、それを三年ないし四年教育をする。そこで不適格者があれば早く淘汰をしておくべきじゃないか。それが、教員免許を取ったその後でやるという今度の法律のやり方は、どうも何か無情のような気がするわけです。そういうことがありますので、私は、養成大学及び資格試験あるいは実習というようなものをみんな取ったものは、それだけ資格がある、こうすべきじゃないかと、こういうように思うんです。  それから、これら今の学校先生というのは、小中学校では若い先生は評判が悪いということを聞くわけですが、本当にそうなんですか。そしてどんなところに不満があるんでしょうか。
  157. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 評判と申しますのは、統計数学のような形で把握できない事柄でございまして、まあ、各種会合等で雑談の中で出るとか、あるいは感想として出るというような事柄でございますし、私どもも耳にいたしますのは、例えば教育長の方々あるいは校長先生方とのお話しの中でそういった感想が出るわけでございます。  その感想をおおむね集約いたしますと、言えますことは、例えば一つの例でございますけれども、板書がうまくできないというような、教員としては基本的に必要な事柄が十分に教員養成段階では仕込まれていないというような感想も受けますし、また一面において、これは現在の社会環境もそうでございますが、かつては兄弟大勢の中でけんかして育った方、けんかの体験をお持ちの方が多かったんでございましょうけれども、現在の核家族の中で、一人っ子のような形で育ちますと、そういったけんかの体験がない。そういう先生教員になられて、クラスの生徒がけんかをしたときの対応に戸惑うとか、そういったような声もございますし、いろいろな形での感想のような感じでいろいろな教員に対する、もっとこうあってほしいというような意見はいろいろと耳にしているところでございます。
  158. 高木健太郎

    高木健太郎君 短大で言えば二十一 歳ぐらいで、大学を出れば二十二歳ぐらいである、非常に私、若いように思うわけです。自分のお母さんよりも先生の方が若い。昔の我々の、我々というのはもう化石時代なんですけれども、我々のときには、先生というのはもっと年をとった、落ちついた、しっかりしている人というような印象はありますけれども、非常に若い。いわば子供にとっては姉さんぐらいの気持ちにしかならない。その姉さんが時々しかるということで、小児科の先生方に聞きますと、昔大学に五月病というのがあったんですけれども、最近は小学校の子供に五月病というのがありまして、ノイローゼみたいになっている。それはどうも先生が感情的にしかることが多い、かあっとなる、そういうことをよく言われるわけですが、評判が悪いというのはそういうところにもあるんじゃないですか。要するに、学力はあるけれども、人間的にまだよくできてないというところがあるんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  159. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 確かに先生今おっしゃいましたような声もよく聞くわけでございまして、基本的に教員として教壇に立たれる方は、児童生徒にとってみてやはり師と仰ぐべき方々でございますし、それはある意味ではその方が人間的な素養、素質、資質をどのように備えているかの意味合いにおきまして、子供たちに見られているということではなかろうかと思います。そういう意味で、例えば今回の初任者研修につきましても、幅広い知見とか人間的なそういう教養というのも一つの対策ではございますけれども、やはり今の社会の中で、学校に、すぐ教壇に立って子供たちにリーダーとして教えられる、あるいは指導していくという力自体をもっと身につけていただきたいなということは、いろいろよく聞くところでございます。
  160. 高木健太郎

    高木健太郎君 学校先生の分布を見ますと、小学校先生には非常に女性の方が多いわけですね。で、もう高等学校になると、ほとんど女性の先生はおられない。中学校ではまだ少しおられる。だから、女性の方には、もう高校というと、とても持ち切れるようなそういう雰囲気にないと、こういうふうに思うのですね。だからもう少し年をとり、人間が練れてきて、高等学校では背も大きいしなかなか扱えないということもあるのかもしれませんが、同じことは私、小学校の生徒にも言えるんじゃないか。だから、どちらかといえばもう少し年配になって教えるというような形にした方がいいんじゃないかなという、基本的には教育制度について、教員の養成制度についてはそういうことも思うわけですね。  次に、それじゃ研修制度についてお尋ねをいたしましょう。  この教育公務員特例法の十九条には、教員は「絶えず研究と修養に努めなければならない。」というのがありますが、今度の改正でこれは生きるわけですね。
  161. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教育公務員特例法十九条一項で、教育公務員は「絶えず研究と修養に努めなければならない。」という基本的な規定は改正いたしておりません。これはこのまま存置したままで、二十条の二といたしまして、初任者研修に関する規定を挿入したということでございます。既存の教育公務員特例法研修に関する規定はいじっておりません。
  162. 高木健太郎

    高木健太郎君 十九条の二項には、任命権者は、研修に要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を立て、実施に努めなければならないと、こういうふうに書いでございますが、今までこの法律に従って、どの程度の施設やあるいは研修の奨励ということをやっておいでになったか。その結果として、うまくいかないのでこの二十条の改正をなされたのかどうか。今までの研修規定では不十分なのか。大体どこが悪いのか。そういうことをひとつお尋ねしたいと思います。
  163. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 十九条の第二項の規定に基づきます例えば施設に関しましては、各都道府県で段階的に教育センターあるいは教育研修センターというような形での、あるいは教育研修所という名前、名称はまちまちでございますが、集中的な研修を行う施設というのが、四十七都道府県で整備されてきているところでございます。  それから、現実の研修の具体的な問題としましては、多種多様なものが従来から行われております。例えば国が補助を行いまして奨励をしております事柄としては、新規採用教員研修として、年間二十日間の研修がここ十数年続けられているわけでございます。そのほかに、現職経験五年以上の方、五年程度の方を対象とします教職経験研修、さらには校長、教頭等の管理職研修、そのほかにも例えばテーマごとでございますが、例えば道徳教育に関する研修会であるとか、生徒指導に関する研修会であるとか、これも時間的あるいは期間的にも短こうございますし、内容的にもそれほど掘り下げたものではないわけでございまして、組織的、体系的な形の研修というのは従来からなかったわけでございます。このほか、自主的な形ではそれぞれ教育研究グループによる研究であるとか、いろいろな意味の施策は講じてまいりましたけれども、少なくとも特定の職種の教員を、相当程度の期間組織的、体系的に研修を行うというシステムはございませんでした。  例えば先ほどの新規採用教員研修にいたしましても、もちろんやらないよりはやった方がいいわけでございますし、二十日間のうち十日間が授業研修ということで、実践的な指導力の向上を期した研修が行われてきたわけでございますけれども、現下の教員の資質向上に対します国民的要請あるいは教員に対する国民の期待というものを考えましたときに、今回提案申し上げておりますような一年間にわたる組織的、継続的、体系的な形での一年間の研修をすることが適切であると、必要であるという観点から法案を提出させていただいているところでございます。
  164. 高木健太郎

    高木健太郎君 局長言われるのは、結局今までのことでは不十分であったので、もっとしっかりした体系的なものをつくりたいと、そういうことでございますね。それはよくわかりました。私も研修は十分それは、しかし一年間と限らないんじゃないか。これは生涯研修として特に私がお願いしておきたいのは、中堅の教員、これに対する研修というのはそのままになっておりますけれども、中堅というと今もう三十から四十ぐらいの人ですけれども、それらは昔の教育を受けているわけですから、そういう人に対してはもう一度再研修というものをやらなきゃならぬ。いわゆる教職研修という、これに対しては今後どのようにお考えですか。特別に何か系統的なものをお考えですか。
  165. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教員の資質向上に関しましては、臨教審答申を受けまして一昨年の五月でございますが、教育職員養成審議会に諮問いたしまして、養成免許制度の改善研修のこの二つにつきましての特別な審議をお願いしたわけでございます。  そのうちの研修につきましては、ただいま提案申し上げております初任者研修並びにそれ以後の現職研修という御審議をいただいたわけでございまして、研修教員が生涯取り組むべき事柄であるという前提に立ちまして、その諸教員のライフステージに応じたそれぞれの研修ということを御提言いただいております。ライフサイクルとしましては、例えば教職経験五年程度の研修、それから教職経験十年程度の研修、そして教職経験二十年程度の研修という、この三つの事柄が今申し上げた現職研修一つの柱として提言されたわけでございます。  考え方としましては、教職経験五年程度の時期といたしましては、今までの基礎的な職務遂行能力が一通り身についた段階で、さらに学級担任であるとか、あるいは教科担任としての力量向上を望まれる時期であるという意味の五年研修でございます。また、十年研修につきましては、学級担任、教科担任としての相当の経験を積んだ時期でございますが、さらに学級、学年の経営であるとか教科指導、生徒指導等のあり方に関してもっと広い視野に立った力量の向上が望まれる時期であるという意味研修を考えているわけでございます。さらに、二十年程度といたしましては、この時期は十分多様な経験を積んだ時期でございますけれども、さらに校内におきますリーダー的な役割を果たす教員としての全校的な視野に立った指導力の深化が望まれる時期であるというような形での今の御提言をいただいておりまして、この事柄初任者研修のように一年をかけてやるという大規模なものではございませんが、ある程度の期間それなりの時期にまたそれに適した内容等はそれぞれ各県で御工夫いただいて、これらを総合して初任者研修も含めまして体系的な研修をつくり上げていただくということを都道府県にお願いをしている段階でございます。
  166. 高木健太郎

    高木健太郎君 それでは、今度は指導教員がつくわけですけれども、この指導教員を選考する、指名する、学内の先生を充てるというお話ですけれども、どのようにしてそれをやられるのか。それから初任者の方には、いわゆる新しく任官した人ですね。初任者の者には指導教員をこちらで選択するいわゆる選択権は全然ないのか、あるいは希望は全く出せないのかというようなこと。それからまた、この学校先生よりもあちらの学校先生の方がいいというような、そういうことは言えないのか、あるいは転校はできないのか。要するに初任者の方に何ら選択権あるいは希望というものは、希望は入れられないのかということをまず最初お尋ねしたいと思います。  それから、時間がないですから、続けてお尋ねしますけれども、いわゆる指導教員というのは今のところ一人になっているわけですけれども、これを一年間研修して、それの評価を校長がされるということでしょうけれども、直接指導に当たった教員の判定が一番私は大きく響くのではないかと思うわけです。その場合に一人の人が判定するというような、一人の人が非常に主とした判定者になるということについて私は非常に危惧を持っているわけなんです。できればこれを複数あるいはできたら三人ぐらいで交代に見ていくというようなことはできないか。昔これは海軍で船に乗るときに船を三つかわるわけです。船を三つかわって、その艦長からそれぞれその人間に対する評定をしてもらう。ある二人の艦長は、あれは非常に覇気があり勇気があり、あるいは自我が確立している人間であるというのに対して、一人の艦長は、あれは言うことを聞かぬ、上に逆らうとか、そういうことを言うとその艦長の方を首にしたということも聞いておるわけですね。だから、人間を見る目が一人ではあいつは生意気だとか、言うことを聞かないというような、そういうことで判定されるおそれがなきにしもあらずだということが一つありますので、できれば一人でなくて、三人ぐらいの人がそれに当たる。そうすれば指導を受ける初任者の方もいろいろの角度から勉強ができるんじゃないか。  この前、本会議で文部大臣にお尋ねしましたところ、それはその人が中核になって学校全体としてやるんだというお答えでございました。それは結構なことですけれども、なかなか中核となって全体がと口では言っても余りやらないんじゃないか。結局その人のいわゆる指導教員に任せっきりというような姿が現実なものになりがちじゃないかなと、こう思うので、今の私の提案をひとつどういうふうにこれをとらえられるか、お尋ねしたい。
  167. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 幾つかのお尋ねございましたが、まず最初に指導教員の選び方でございますが、これは当然のことながら教職に関し豊富な経験を有し、あるいは教育的な手腕、力量をお持ちの方であり、かつ新任教員の相談に親身に乗ってあげられる方ということでございます。  それから、本人の希望で指導教員を選べないかということでございますが、これは例えば試補制度のように授業を持たないで実習的な感じで参られる方でございますれば学校もかわり、あるいは指導教官も選ぶということは可能でございましょうけれども、今回の制度は、まさに教員として任用された場合にはみずから授業を持ち、あるいはクラスを持って授業を行いながらかつ研修を受けるという体制でございますので、そういった意味では学校をかわるとかというようなことはちょっと難しい事柄ではないかと思います。  ただ、指導教官と肌合いの合わない場合等もございますから、それは学校の中で他にまた指導教官の適切な方が得られる場合には校長先生判断指導教官にかわってもらうということもあるでしょうけれども、指導教官自身は新任教員を育てることに意味がありますから、新任教員が立派になっていただかなければ指導教員の力量も問われるということでございますれば一生懸命やるに違いないと思っております。  それから、指導教官が複数のお話ございました。大臣もたびたびお答え申し上げておりますように、指導教員が中核となって全校の、校内の指導体制、協力体制のもとに指導するわけでございます。その場合、一般的に指導教員という方を中心に据えておくという意味は、その方が責任を持って新任教員の育成に当たるという中心的な存在であるからでございまして、これが複数になりますれば、ある意味新任教員を育てる意味の責任の度合いが分散され、自分のことじゃないよというような形で逃げるようなことが起こり得ないとも言えませんし、また、指導の仕方がくるくる複数の先生によってかわって、新任教員判断が迷うということもあり得ないわけじゃございません。  しかし、今先生おっしゃいましたように、例えば大規模校で数人の新任教員が配属されます場合にはもちろん数人の指導教員がつくわけでございますので、その辺は相互乗り入れのような感じでリンクしながら指導される体制も当然出てこようかと思いますし、要は、学校の中でその新任教員をどのように育てていったらいいのかということを工夫していただく事柄であろうと思います。基本的には今申し上げたようなことでございますが、応用動作はいろいろあり得るだろうと思っております。
  168. 高木健太郎

    高木健太郎君 これは人間と人間の問題ですから、ここで幾ら議論しても始まらぬと思うのですけれども、今言ったことはぜひ参考にして、一人でなきゃならぬというのでなくて弾力的にやらなきゃいけない。というのは、今度逆に考えますと、指導教員が物すごくいじめるということもあるでしょう。逆に言うと、今度は初任者の方が非常にお愛相がうまくて、指導教員を取り込んじゃってお互いなれ合いをやっちゃって、それでいろいろなことをやるというようなこともあり得るわけです。また要領のいい人はそんなことするんじゃないかなという気持ちを私はするわけですね。だから指導教員の方にしても、これは悪いから、これは教員にはおかしいと思っても自分がその人を悪く言ったところで指導教員にとっては何の足しにもならぬ、何の利益にもならぬということになると、なるたけなら悪く言うまい。このままそっとしておけというようなことにならぬとも限らない。しかし複数で見た場合には、あれはおかしいんじゃないかというようなことがわかってくる。  そういうこともあるので、一人の場合には責任を持つということもあるかわりに、今度はなれ合いになっちゃうということもあるわけです。だから、一人の指導教員をつける、それが中核になんということを余りかたくなに考えないで、もう少し弾力的に指導教員というものを考えていくということにしないと、指導教員がちょっと病気のときにはだれかかわらなきゃいかぬ、そういうこともあるわけですね。指導教員の方が妙だということもあり得るわけですから、そういう面でこれは原則としてそういうふうに書かざるを得ないということはあり得るかもしれませんが、私はそれはぜひ弾力的に物を考えて、結果がよければいいのですから、そういうことが私は必要だと思う。  もう一つ指導教員がつくということはアンケート調査結果を見ますと喜ばれている方が多いわけですけれども、私はそれだけまたこわいという気もするわけです。というのは、行って指導教員について指導教員の言うとおりになっていればいいやというような、いわゆる甘ったれた依頼心の強いそういう教員ができ上がっていくんじゃないか。反抗すればやられるから、できるだけはいはいと言っていればいいというような人間が育っていくことになるのではないか。いわゆる依存心の強い自立性の貧しいそういう先生ができていくということを私は非常に恐れるわけです。だから指導というものは、どういう指導でも困難でしょうけれども、指導のやり方について何かお出しになるそうですけれども、その心構えというのを何かお出しになるんでしょう。それにはどういうことを心構えとしてお書きになるか。余り長くは時間がないですから簡単にお話し願いたいと思います。
  169. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) それぞれの県におきまして、試行段階で既に指導教員に対する一種の手引き、マニュアル等も作成して指導されている県もございますし、そういう形で広がっていくであろうと思います。ただ、事柄としましてはあくまでも新任教員の成長段階に応じ、その個に即して指導をするわけでございますし、また本人の自主性を尊重する必要もございますし、新任教員の持っている悩み課題あるいはテーマにつきまして必要なアドバイスを与える、それは過度に与えてもいけないし、また無責任に流れてもいけない、兼ね合いの問題は難しゅうございますけれども、新任教員に何が不足し、何を本人が求めているのか、あるいは何を悩んでいるのかという観点から指導していただくというのが一つの重要な事柄であります。と同時に組織的、継続的といいますか、一年間の流れの中で、この時期にはこうするんだよという積極的なアドバイスも過去の自分の体験に応じたものもございましょう。そういった両様の組み合わせによりまして、新任教員が自立してそのアドバイスを将来生かし、自分のものとして成長していくことを期待しているところでございます。
  170. 高木健太郎

    高木健太郎君 これは私やら局長は年も年ですからかなり知っているわけですけれども、何といりたって指導教員もそんなにお年ではないわけで、五十から五十五ぐらいの方ですね。だからここで言うのはやさしいんですけれども、現場で実際にはどういうふうに動いていくかということをよほど十分お考えにならないと一方では甘えになるし、一方ではけんかになるというようなことが起こり得るよということを申し上げているわけです。だからもう少し弾力的にお考えになっておく方がいいのではないかというのが私の申し上げたいことです。  そこで、厚生省の方とそれから国家公安委員会の方がお見えになっていますので、条件つきの採用期間につきまして、それだけを先はお聞きしておきたいと思いますが、まず、厚生省の方にお聞きしたいんですけれども、昭和四十三年でしたか、その辺だと思いますけれども、それまではインターンシップをやって、ローテーションをやって、その後で医師国家試験を受けられて、それによって医師になられた、医師免許証が取れた。それが、昭和四十三年ごろだったと思いますけれども、今度は大学を卒業したらば一、二カ月の間に医師国家試験がありまして、それで医師免許証を取るとそれでもう一生医師免許証である、よほどのことがなけりゃ剥奪されることはない。医師として一人前に働き得る、しかしインターンはぜひやりてくれという、いわゆるアドバイスといいますか希望といいますか、そういう程度にやられているわけでございますが、この今回の教員の免許証は一年間のいわゆる条件つきの採用である、ちょうど昔のような、昔の医師免許証のような形になっているわけです。  医師は、まあ学校先生も評判悪いかもしれませんが、評判の悪い人もありますが、お医者さんの方にも評判の悪い人がたくさんあるわけで、そういう意味では医師をもっとしっかり勉強させにゃいかぬという声も聞けるわけです。厚生省においては、この医師免許証とインターンのことについてどのようにお考えですか。
  171. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) お答え申し上げたいと思います。  先生の御指摘のように、四十三年にインターン問題というのがございまして、結論的に申しますと、従来国家試験の受験の前提でございました一年間のインターン制度という義務でございますけれども、これが廃止になりまして、改めまして医師国家試験を通った後二年間の臨床研修という期間が設けられまして、これにつきまして法律的には医師法に規定がございまして、医師は二年間の臨床研修を受けるように努めるものとするというふうに書かれてございます。  この意味合いでございますけれども、法律上は罰則もございませんので一種の努力規定だとは思いますけれども、ただ現実問題として一人前のお医者さんになるためには、学校で六年間を勉強し試験を受けて合格いたしましても、率直に申し上げまして、一人前のお医者さんとしてひとり立ちできるというふうには医学界の常識としてもやはりほとんどの方が考えておられないというのが率直な現状ではないかと思います。そういったふうなことも兼ねて考えてみますと、私は、法律的には一種の努力義務でございますけれども、やはり医師という非常に高度な専門家でございますけれども、それに課されました道義的な一つの義務ではないかというふうに理解しておりますし、やはりお医者さんになるためには、この臨床研修二年間でございますけれども、二年間の臨床研修というのはぜひ確実に受けてもらわなきゃならぬものではなかろうかというふうに考えております。  先生おっしゃられるように、法律上は確かに国家試験を受け医師免許証をちょうだいすれば医師というふうになるわけでございますけれども、現実問題としてお医者さんは、学校の勉強の知識があるだけでは、やはり臨床としてのお医者さんにはちょっとそれだけでは不十分でございまして、現実に患者さんを相手にしてやるということになりますと相当やはり臨床的な現場においての研修というのが絶対要件ではなかろうかというふうに考えております。したがいまして、私どもとしても、この二年間の臨床研修については、ぜひきちっとした体制のもとでやっていただくようにやっていかなきゃならぬと思っております。  ただ、残念ながら現在までのところ、若干といいましょうか、一部、例えば受けられない方も若干おられるとか、あるいは研修のやり方といいましょうか、中身が一部に偏ったり、幅広い医師、お医者さんとしての養成ということではなくて偏った面があるんではないかといったふうな指摘とかございますので、その辺についてはさらに充実を図るべく現在詳細について検討中というのが現状でございます。  以上でございます。
  172. 高木健太郎

    高木健太郎君 もう一度厚生省の方にお伺いしますけれども、努力目標であると。しかし私現実を見ておりますと、とても努力しているようには見えないわけですね。このごろはプライマリーケアというのがやかましく言われまして、いろいろな科を知っていなければいけないというのに、初めから一つの教室に入ってしまって、そこで入りびたりになっている。だから専門的にはある程度の知識はありましても全然物の役には立たない、プライマリーケアには。だからもう心臓しか知らない、ほか知らない。だから患者が行くと、これは私心臓ですからあなたほかのところへ行ってくれと、こういうことになるんですね。そういうことではいけないんじゃないか。だから努力目標というのと、今度の教特法のいわゆる義務というのとは違うわけなんです。  だから、同じ本質的には命なり人間なりを扱うところでございますから、もう一度これは文部省はそういって踏み切られるなら、あなたの方もそういうようにやっぱり考えなきゃいかぬのじゃないか、こう思います。どっちがいいか、厚生省なりに文部省がおやりになるなら、それならこっちの条件つきというのを外されればいいんじゃないか、こう思うんです。それもおかしいので、ぜひ厚生省としては、努力目標なんというのはもうだめなんですよ、もうないと同じだ。そういうことを私申し上げて、それで教特法と比べて申し上げているわけなんです。アンバランスがあるじゃないかということですね。  もう一つ、今度は国家公安委員会の方お見えになっていますか。警察の方に、いわゆる自動車の運転免許証とかオートバイの運転免許証、オートバイは十六歳で取れるんですか、自動車が十八歳か二十歳かでは取れるわけですね、練習すれば。それで仮免許証というんで、ここで言えば指導教員というのが横について、町の中を少し走れるようになると、そうすると免許証を与える。与えてしまうともう何にもないんですね。年間九千人近い人たちがいわゆる自動車事故で死んでいるわけです。その周辺のけががあって、二十四時間以上たって、四十八時間なり三十六時間なりを見ますともっと大勢の人が交通事故で苦しんでいると思うんですね。それにもかかわらず、わずか二十か十八ぐらいの人にそういう免許証を与えてしまうと、その次のいわゆる免許の検査といいますかそういうときまでは何のおとがめもない。それはそれでよいとお考えなんですか、どういうふうにしようとお考えですか。道路整備とかそういうものは一生懸命おやりになる、標識なんか一生懸命つける。条件整備はおやりになっているけれども、人間の方についてはほとんど私見られていないんで、技術ばかりじゃないか。人間をどうやって見ているかということがないので、ひとつ公安委員会の方の御見解を承りたい、こう思うんです。
  173. 滝藤浩二

    説明員滝藤浩二君) お答えいたします。  先生指摘の件につきまして、例えば一年間条件をつけて違反その他ございましたときは厳しくしまして、あるいは教育の機会を多く設けて、交通事故あるいは違反の減少と申しましょうかをなくするように努力すべきじゃないかというような御指摘かと思います。統計等を未ましても初心の運転者の事故率等は大変高うございまして、私どもも単に取り締まり上の規制だとかその他だけではなしに、教育の重要性というものは十分感じているところでございまして、そのために六十一年の一月からは初心運転者講習というものを道交法上明記しまして、これを実施しているところでありますし、あるいは初心運転者がまず受けます、ほとんどの方が入られます指定自動車学校における教育充実ということで努力を続けているつもりでございますが、この点十分かということになりますと、まだまだ私ども努力すべき点があろうかと考えております。  初心運転者の、先ほど先生指摘のような行政処分を厳しく行うとかあるいは暫定免許を行うとか制度をとってはどうかというような点、諸外国では一部例もございまして、私どもその制度を現在研究もしておりますが、我が国におきまして果たしてどのような形ですれば、先ほど来御指摘のような教育の面からの充実、事故の減少、安全確保ということで国民の期待にこたえられるのかということで、これからも慎重に努力を重ねてまいりたいというように思っております。
  174. 高木健太郎

    高木健太郎君 今厚生省と公安委員会の方のお話をお聞きいただきましたように、教員だけに非常に厳しいということになっているんじゃないかなと私は思うわけです。それは厳しければ確かにいいのかもしれませんけれども、片一方は医師という命を預かるし、免許証の方は、運転免許の方は人命をいつでも損なうようにできている、できているというのはおかしいですけれども、そういう危険性がある。こういうものは何らとがめ立てがなくて、あるいは改正ということを考えないで、それで、教員のところだけを極めて厳しく、いわゆる条件つきの採用期間を一年にしようというのには、私はどうしても納得できないところがあると、こういうことを申し上げたかったわけでございます。  それじゃ、後ひとつ。
  175. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、少し高木先生の御質問の時間をいただいて質問さしていただきます。  ただいま先生は、心臓だけしか知らないのに医者の顔しているという、これはまあ心臓の強い医者という意味ではないかと思いますが、私も免許証は持っておりますけれども、私は大変気の弱い医者でございまして、病人は命にかかわるから診ない。健康な人だけ診るというのが私の主義で、今現在の私でございます。一応ちょっと弁解をいたしまして、視点を変えまして質問をさしていただきます。  数日前に、教育助成局長名でアンケート調査結果が配られてまいりました。その最初のイントロダクションに「六十二年度の初任者研修試行における新任教員指導教員校長対象とした無作為のアンケート調査の結果をお届けする」と書いてございます。ところで、無作為のという無作為ってどういうことでしょうか、お伺いをいたします。
  176. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 今回のアンケート調査は、初任者研修試行対象となりました教員並びにその当該新任教員に対する指導教員、さらに初任者の所属する校長先生全員に対しまして無記名でアンケート調査をお願いしたわけでございまして、意図的な例えば抽出であるとか、あるいは一定の作為を持って調査をしたということではなくて、全くフリーハンド、その全員に対してそのままの状態で調査をさしていただいたという意味で無作為という言葉を使ったと思います。
  177. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 どんな世界にも約束、定義というものがございますが、無作為と使いますと、今局長のおっしゃったことは全然違うんですね。全数調査を行うことができない、つまり、母集団が非常に大きいときに全数調査はできないわけですね。そのときにランダムサンプリングという方法でとると、そのランダムサンプル、無作為標本は大きな母集団を代表することができる。それはほとんど誤差が少ないということを言っているんです。したがいまして、今のは無作為じゃないんです、これは。全数調査をなさったんですね。本来は、無作為抽出であれば、抽出比率はどれくらいにした、どういう方法をとったか、普通乱数表というのを使うことになっています。さいころを使っていただいてもいいんです。自分の意思が入らないで標本を取り出すのを無作為と言っているのでありまして、無記名調査というのを無作為とは言わないんです。一つ重要なポイントでございますので、ひとつレクチャーになってしまいましたけれども、そうなんですよ。ですから、例えば選挙の予想なんかは、選挙民に全数調査するのは投票ですよ。これできないから、それで、千分の一とかなんかの、万分の一ぐらいの調査をするんです。そのときにランダムで出すから初めて母集団を代表できると、こういうのが無作為抽出なんですね。そういうことでございます。そうすると、その次の抽出割合、抽出方法を聞こうと思ったけれども、できない。これは全数調査であったということであります。  二番目ですね。この一枚目を質問するからと申し上げてあります。皆さんお持ちでないと思いますから、一番が「初任者研修をどのように考えていますか」で、回答数が、校長指導教員試行対象教員となっておりますが、例えば最初のa、「新任教員の資質・力量等を高め、実践的指導力等の向上に役立つ」、校長九百十三、括弧六八・五%。この六八・五%というのはどういうことを意味しているか、意味説明してもらいたいと思うんです。
  178. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ここの第一問の「初任者研修をどのように考えていますか」ということにつきましては、回答者のうち複数回答をされた方が若干いらっしゃるわけでございまして、aとbとの複数回答、それからdとeとの複数回答が可能であったわけでございます。したがいまして、この結果を集計いたしましたのは、回答者数は校長先生千二百三十名のうち回答総数は、複数回答が含まれているために千三百三十四になりました。そこで、その回答数のうちの比率として九百十三の回答がございましたものが六八・五%に相当するという意味でございまして、回答者人数の比率ではなくて、回答数のうちの占める比率という意味でございまして、このような数字を入れたのがよかったのかどうかという問題はございますし、そういった点では大変恐縮でございますが、急いで数字をまとめ、急いで提供したということでございまして、先生のおっしゃるとおり趣旨は十分理解をいたしております。
  179. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 明快に申し上げまして、意味がないんですね。どんなに、解釈しようと思って私もきのうからきょうにかけて、寝ずでと言うとちょっとオーバーでございますけれども、ゆっくり寝ながら考えたんですけれども、意味がないんです。  ちょっと説明いたします。面倒ですから。皆さんおわかりにならぬと思いますので、めったにない、こんなの書いてきました。例えば今の校長先生千二百三十というのですけれども、調査を受ける人が十名だといたしましょう。その人がAというのに五人回答した、Bに十、Cに十。そうすると、十人のうち五は五〇%、十は一〇〇%でございます。よろしいですね。ところが、これの回答は、回答総数は二十五でございます、二十五。一番こっち側は二十五です。そして、二十五分の五ですから二〇%というのがAの回答なんです。何の意味がありますかね。Bは四〇%、Cは四〇%なんです。意味がないんです。複数回答の回答総数分のAの回答なんていうのは意味は全く考えることができない。つまり逆に真ん中の方が意味があるんです。総数十名があって五〇%はAを賛成したと、それなら意味があるわけなんです。Bは全員賛成した、これは意味があるんです。二十五件分の二割ってどういう意味ですか、ないんです、こんなもの、こういうこと。  もう一つ伺います。もう一つ、ちょっといじめるような形になりますけれども、このうちの計というのがあるんですね。計の総数が四千八百一、そして対象調査数が校長指導教員試行対象教員が四千八百一なんです。ところがオールトータルが四千八百一なんです。回答してくれた人の総数は四千五百十八なんです。そうすると、私非常に奇妙だと思うのは、四千八百一名というオール対象者、実際の回答を寄せたのは四千五百十八、そして何やら一番のが四千八百一という、四千八百一が何で合ったんでしょうね。私、これ一生懸命考えたんです。どうしてこれきたのかわからない。教えていただきたい。
  180. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先ほど申し上げましたように、複数回答が校長あるいは指導教員対象教員それぞれ若干名ございます。その結果として校長指導教員対象教員の回答総数を総計いたしますと、偶然にも四千八百一ということで調査対象として予定した人数と同様になったという全く偶然の一致でございまして、意図的なものではございません。
  181. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 いや、偶然の一致というのはそれは確かにあると思うんです。  例えばエイズが杯のやりとりでは一〇〇%うつらないと言ってないんですね。確率は非常に低いけれども、うつるかもしれない。しかし非常に低いからまずうつらない、ゆえにうつらないと、こうなっているわけなんです。百万回に一回であったとしましても、うつるのは非常に少ないです。九十九万九千九百九十九回うつらないんだから死ぬまでにうつらないんじゃないかと思います。しかし、百万で一回というのは最初に出てくるかもしらぬのが一回なんです。二回目かもしれないんです。ですから、確率が低いということがそれはうつらないということにはならない。うつるときには一発目でもうつるんです。ですから、そこで偶然ということはその一発目にうつったのが偶然だと思いますから、四千八百一が四千八百一と合うことは私はあったんだろうと思うんです。どう考えてもわからない。しかし、四千五百十八名が回答をよこして、その一が数字として狂うための確率は四千五百十八分の一なんです。たった一の数字ですが、四千五百十八分の一が、四千五百十八と四千八百一との差が二百八十三あるんです。ですから私、今少なくても偶然一致する確率は四千五百十八分の一よりもはるかに小さいと思うんです。ですから、文部省がおっしゃるのはそのとおりだと思いますが、統計学者は恐らく信じないということをちょっと申し上げておきます。確率論的になるんです。だからこれはどうでもいいです。偶然だろうと私は認めてもいいと思っています。  もう一つあるんです。そのaというののトータルの一番上のところなんですけれども、さっきのaという回答ですが、校長指導教員対象教員全部集めて二千四百七十三、これをさっきの四千八百一で割って五一・五%と出ている。これが意味ないことはもうお話しいたしましたから、これは聞く必要はないんです。しかし、校長指導教員対象教員を集めてどういう方法かで統計をとるという意味について意味があるかないか。これがなかったらもうこの議論が全然意味ないんですから。どういう意味がおありでしょうか。
  182. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 括弧の中のパーセンテージは確かに統計学的には意味のない数字でございますが、何となく感覚的な傾向は見ていただける意味はあったんじゃないかと思います。  ただ、ここで申しておりますa欄の合計は、少なくとも校長指導教員対象教員の中で初任者研修新任教員の資質向上等に役立つという回答をされた総数の合計数は意味があるわけでございまして、比率につきましては先生おっしゃるとおりでございます。
  183. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 局長、申しわけないけれども意味がないですよ、足しても。なぜかといいますと、この数字は母集団が違うんですよ、大きさも。それから考え方もみんな違うんです。数字だけでいいますと大きさが違うんです。だから例えば校長が十人しかいなかった。対象教員は一千人いた。そうすると、十人の中から五人、一千人のうち五百人、五百五人の五なんてゼロに近いわけです。違うんです、これ。ですから、こういうときは、母集団の大きさが違うときに全部を平均しようと思いましたら加重平均という方法を使うんです。ただ、何というか、単純に足すのというのは全然意味ないんですね。そして、それを多分意味があるらしく見せるのは錯覚中の錯覚です。私が恐れておりますのは、文部省統計は今まで全部、これだったか。私こんなに一生懸命に調べたのないんです。きのうときょうにかけて寝ずに調べたと申し上げましたけれども、それくらい、偶然見っけたらもうこれだ。一枚目でもう終わったんです。二枚目要らない。勉強する必要ない。意味一つもないんですよ。  しかし、局長さんにそれを言おうと思ったんじゃないんです。私が言いたいのは、これを取り扱われた人、これを見て判こ押した人、答弁に立たれた偉い人、全員がこれを認めている。皆さんは条件つき採用期間を通って何年たったのかということでございます。パーフェクトなんということはないということを申し上げたかったんです。いじめるつもりではなかったんです。パーフェクトはない。ですから一年の研修でパーフェクトを期す、そんなことはでき得ない。まして条件つき採用期間を一年に延ばすことの意味なんかは、これは研修と全く違うんだから。研修教員を一人一人よくしていくためだと私はそれは認めます。しかし条件つき採用期間意味がありますか。条件つき採用期間を通った文部省の高級官僚も全部これに関しては全員、判こを押した人が何人いるか知らないけれども、全員落第じゃないんですか。私が申し上げた統計学はこれで極めて初歩なんです。これはすぐそう思って見たんです。  ですから、これは失礼いたしますから、いじめたんじゃございませんから、担当者を罰しないでくださいよ、すぐそうなりますから。それしてはいけないと思います。罰するんなら答弁に立った加戸さん自身になっちゃうから。だって、御自分認めたからこれをごらんになったんだと思うんです。大臣は多分ごらんにならないから、何かあれば後ろから何か出るんでしょうから、大臣は知らなかったと思います。  だから、私が今申し上げたいのは、パーフェクトなんということを時々口にしておられるけれども、評価のパーフェクトも不可能です。だから、研修はいい。しかし、なぜ条件つき採用期間を延長することに意味があるか、私はもう全くない。それは今これで申し上げたつもりなんです。パーフェクトでない。十年たっても二十年たっても文部省にいても、パーフェクトの統計なんかないではないか、こう申し上げたかったんです。ですから、少しきつかったかもしれません。私が言いたいのは、私はやはり今度の法改正案に当たりまして、研修そのものは私は認めますけれども、条件つき採用の延長は認めるわけにはいかない、論理的に合わないということです。ですから私は、できるならば政府案は修正されるべきものであるということを、再び時間をおかりしましたので主張いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  184. 高木健太郎

    高木健太郎君 懲戒免職あるいは分限免職についてお聞きいたしたいと思います。  五十七年から六十二年までの間に懲戒、分限免職によって免職させられた方がかなりおられるわけです。その中で、いわゆる懲戒免職の中に「交通事故」というのが一年に三人とか七人とかおられるわけです。これは、交通事故を起こされて、人身事故を起こされたかなにか、いわゆる刑法に反することをおやりになったんだろうとこれはわかります。「その他」というのがあるんですけれども、「その他」は五十七年にもそれからずっと毎年二十人以上の方、六十年には三十人、「その他」として懲戒免職になっておられますが、この懲戒免職になられた「その他」の理由はどういうことなんでしょうか。
  185. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 年によって違いますが、三十人前後の毎年、悲しいことでございますが、懲戒免職者が出ております。例えば、昭和六十一年度におきます懲戒免職は二十九名でございますけれども、内訳を申し上げさしていただきますと、交通事故に係るもの、これは多分飲酒運転で人を死に至らしめた等の場合が多うございますが、七名でございます。それから児童、生徒への暴力行為によって懲戒免職されたものが二名、無断欠勤等の服務規律違反で免職されたものが二名、それから女性に対するわいせつ行為で免職されたものが六名、飲酒上の事故ということで一名、それから公費執行、手当等の受給不正ということで二名、そのほか九名という内訳になっております。
  186. 高木健太郎

    高木健太郎君 今度は分限免職のことでございますが、分限免職の中に「適格性欠如」というのがあるわけです。この「適格性欠如」というのはどういうことでございますか。
  187. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 現在、地方公務員法上の分限規定の根拠としましては、勤務成績不良の場合、それから心身の故障による場合、その他職の適格性を欠くものというのが分限免職の根拠規定になっておるわけでございます。  適格性の判断としては、基本的にその職に必要な専門知識能力を備えるとともに、かつ職務遂行に当たっては法令に従うというような考え方が判例では示されているところでございます。一般的に典型的な例としては、当人の素質、能力、性格等から言いまして、「公務員たるに適しない場合で、それが簡単には矯正できない持続性を持っている場合」というのが判例でもございます。基本的には今申し上げたようなことが、非常に抽象的でございますけれども、裁判所の判例において使われている文言でございますので引用させていただきました。
  188. 高木健太郎

    高木健太郎君 この「適格性欠如」の中には、いわゆる心身障害というものは入っていないんでしょうか、入っているんでしょうか。「心身の故障」というものはごくわずか一年に一名か二名、あるいはない年もございますが、それは含まれておりますか。
  189. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) この適格性欠如した免職のケースにつきましては、心身の故障者は入っておりません。心身の故障による免職の場合は、またその都度それはその事由として掲げるような対応をいたしております。
  190. 高木健太郎

    高木健太郎君 この「心身の故障」というのですが、その心の方には精神性疾患というものは入っているわけですか。あるいは「適格性欠如」の中にそれは含まれているとお考えですか。
  191. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 精神性疾患の場合には「心身」の最初の心の方の故障ということで入ってくるわけでございまして、適格性の欠如の場合にはあらわれました外部的な兆候によりまして職に適しないという判断をするわけでございますが、そういった外部的兆候があるいは精神性疾患に起因するということもあり得ると思いますし、またそういう蓋然性も高いと思いますが、現実に処分した事由が心身の故障によって免職したのか、あるいは不適格性を理由として免職したのかという処分理由によって分類をさせていただいている次第でございます。実情から申しますれば、確かに先生のおっしゃいますような不適格な教員として認定された場合にも心身の故障に起因するケースはあり得ようと思います。
  192. 高木健太郎

    高木健太郎君 この「適格性欠如」の中には、恐らくそういうものも入っているんじゃないかなと、いわゆる蓋然性が高いということも言われたわけですから、私もそれはあり得るんじゃないか。ただ、外見上そういうことが、医者に診断を仰いだわけでもないけれども、外見的にそうだからというので「適格性欠如」ということになったんじゃないかと思うんですけれども、今までではこの心身障害の場合には医師二人の診断によってこれを判断しているわけです。  今度の法改正になりまして、例えばその指導教員が見て、これはどうも適格性に欠けている、非常に粗暴である、乱暴も働くというような場合に、それはある程度心身性あるいは精神性疾患によるものじゃないかと思った場合には、いわゆる条件つき採用ですからして、その人の気持ちだけでこれを排除することができるわけですね。そのときにも、やはりこれまでのように医師の診断を仰がれることになりますか、どうですか。
  193. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 正式採用後の精神性疾患による免職の場合につきましては、分限の手続に関する条例の中で医師二人の診断を義務づけられておるわけでございますし、さらに教育委員会では健康診査会というものを設けているケースが多くなってまいりましたので、医師診断のほかにも健康診査会の審査を経る手続をとっている県がふえてまいっております。一方、この条件つき採用期間中につきましては今のような条例の適用はございませんので、法律的には診断を受ける手続の必要はないわけでございますけれども、事はやはりその人間の一生を左右する問題でもございますから、正式採用するにふさわしくないというような判断をするに当たる理由が今申し上げた精神性疾患であるとするならば、当然に医師の診断を経由した判断材料を備えていくことが適当であろうと思います。
  194. 高木健太郎

    高木健太郎君 だから、それは医師の診断を受けさした方がいいとか悪いとかということも指導教員なり校長がそれを判断するわけですね。だから、適格性の欠如があるという場合に、私はいきなり、いや条件つき採用期間だから、これはどうも適格性がないとして精神性の診断も受けないでこれを排除するということは、私は非常に問題があると思いますが、その点についてはこの法律ができても、私は人の一生を左右することであるからそういうことをしないで、従来どおりこれはやはりどうも医師に見せた方がいい、あるいは医師に見せるべきである、こう思うんですが、いかがですか。
  195. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 運用の問題としては先生のおっしゃるとおりだと思います。
  196. 高木健太郎

    高木健太郎君 そうしますと、今まで適格性欠如なりあるいは心身の障害等で免職をさせられたという人が何人か、余り多くはありませんけれどもおられるわけですね。これは大体幾つぐらいの年の方が多いかということはちょっとおわかりになりにくいと思いますけれども、しかし今度は一年間のいわゆる条件つきの期間があるわけですね、採用期間があるわけですよ。その間に発生してこなければ、これは今までどおりおやりになる。ところが、そうでない条件つきの場合は、これはかなり簡単にやれるんじゃないかということが私は問題になって起こってくるんじゃないかと思うんですね。  この精神科の、精神病の、精神障害者の発生率といいますか罹病率ですけれども、それを見ますと、ちょうど大学を出て初任者の二十から二十四というような場合は十万人に対して百五十人ぐらいしかいないんですね。ところが、もう三十六ぐらいから非常に高くなりまして、四十五から五十ぐらいになりますというと、十万人に対して五百人とか六百人という数があるわけですね。だから、最初のその一年間にそういう発生率、一年間の条件つきの採用期間中に発生するよりも、それよりか後に起こってくる方が非常に私は多いんじゃないかと思う。だから、その条件つき採用期間を半年から一年に延ばすというぐらいのことで、これは適格でないというようなことを判断しても、実はそれよりも後に起こってくる方がはるかに多いんじゃないか。だから、それを半年にしようが一年にしようがもうほとんど誤差のうちであると、たった半年ですからね。そういうことで、私は条件つきのその採用期間というものをわざわざ一年にそのために延ばす必要もないのではないかと、こう思うのですが、その点はいかがお考えですか。
  197. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 条件つき採用期間の延長の問題は、その新任教員についての職務遂行能力の実証を得るのに必要な期間が六カ月から一年という考え方をとっているわけでございまして、当委員会でもたびたび申し上げておりますように、教員の職務遂行能力の判定という事柄が極めて全人格的な触れ合いの中でその能力が発揮されるというような教員の特殊性があるわけでございますし、また、その職責自体も一年間のサイクルで行われる学習活動の中で展開される事柄であり、また、その勤務する場所が教室という場所であるというような状況を前提といたしまして、今回の初任者研修の導入によりまして一年間指導教員による指導を受けながら勤務をする。つまり勤務として外部的にあらわれる形態と申しますのは、本人その者が自分の能力の発揮がすべてではなくて、指導教員による指導を受けながらの勤務であるという状態におきまして判断の困難性が極めて高まるという観点から一年にさしていただいているわけでございます。そのことによる効果としましては、適格性を判断する場合のその判断に慎重を期するという期間を延長する考え方でございまして、理論としては先ほど申し上げたところでございます。
  198. 高木健太郎

    高木健太郎君 時間が参りましたけれども、私、研修反対しているんじゃないんです。指導教員がついて研修されるのは非常にいいことだと。何もそれは一年じゃなくてもいい、二年でもいい。しかし条件つき採用期間というもので、そこで排除しようという気持ちで条件つき採用期間というものをつくられたのなら、私はそれはよくない。排除するんじゃなくて、その間に育てるので一生懸命させるためにそういう条件つきがついているんだというんならいいですけれども、そこで悪いやつがいたら外すという意味条件つき採用期間をおつくりになったんならおかしいじゃないか、それならば、もっと五十でも六十まででもそういうことにしておかなければ本当の意味の適格性というのはわかりませんよと、こういうことを言っているわけなんです。  時間が参りましたので、これで質問を終わります。
  199. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それでは、前回に引き続いて質問をいたしますが、まず初任者研修本格実施内容がどうなるのか、その重要な判断の基礎となる試行実施のための文部省モデル、これに関して若干質問をいたします。  午前中もちょっとありましたが、指導教員による指導、年七十日程度、センター研修、年三十五日程度、宿泊研修四泊五日、これについては弾力的な幅があるというんですけれども、どの程度の弾力性があるんですか。半分ぐらいにしてもいいんですか。
  200. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) これは地域、学校の実情に応じてそれぞれの、例えば学校が予定しております学校行事との関係その他いろいろ多様にあると思いますが、基本的にこういったモデルをお示しいたしまして、試行段階では校内研修としては七十日程度を実施していただいた県がほとんどでございます。ただ校外研修につきましては三十五日間程度ということで、多くは三十五日でございますが、都府県市によりましては、これが年間三十日程度あるいは二十五日程度といった実施をされたところも一部ございます。
  201. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私の聞いているのは半分ぐらいに減らしてもいいのかと聞いている。
  202. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 要は全国的に教員の資質を確保するわけでございます。また全国的な教育水準維持向上ということが国の課題でもございます。そういう意味では、この研修期間の大幅な違いによって資質向上に差がつくといたしますれば、それは国民的な要請にこたえないということになるのではないかと思います。そういう意味で、例えば半分程度ではどうかという御質問でございますれば、私どもは半分というのはいかがなものかと考えております。
  203. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 だから、弾力性あると言いながら、文部省指導方法を事実上押しつけるということになりかねないわけでしょう。この試行実施と同様に、新任教員への指導、助言、これは試行実施の場合に「校内体制」ということで述べておったんですが、全学校の教職員の援助のもとに進めるというこの観点はそのとおりですね。
  204. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 校内体制としましては、要項モデルの中におきまして、「関係学校校長は、試行対象教員に対する学校全体としての協同的な指導体制を確立するため、」云々というのもございますし、また「指導教員は、他の教員と協力して試行対象教員指導に当たるものとする。」というような考え方もお示ししているところでございます。
  205. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ちょっと私の質問に的確に答えてくださいよ。試行実施の場合にどうなっているかということは承知の上で聞いているんで、本格実施も同様ですねと聞いているんです。
  206. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 本格実施に当たりましても、指導教員による指導を中核としながら、全校的な協同的指導体制初任者新任教員指導に当たっていただくという考え方でございます。
  207. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣、先日私はこの委員会で、昭和五十一年の学テ最高裁判決、すなわち任命権者研修を企画するときも教員自主性自発性を尊重すべしという判決の引用提示をしたわけでありますけれども、文部大臣もそのとおりだということで答えられたわけでありますけれども、初任者研修に当たってもこの原則は当然貫かれるべきですね。
  208. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 具体的な裁判例の証でございますので私の方からお答えさせていただきますが、五十一年の学テ最高裁判決で言っております事柄は、研修の基本的な考え方でございましょうけれども、今回の初任者研修はいわゆる初任者研修に必要な考え方、言うなれば自主的、自発的に行われるべき研修というより、むしろ必要なものとして教育委員会側で受講をお願いする性格のものでございますので、考え方がそのとおり初任者研修に当てはまるというわけではないと思います。研修一般論としてはそのとおりでございます。
  209. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 余りややこしいことを言ってもらったら困るんです。前回私確かめたでしょう。今回の法律改正によって教特法本来の教員の自主研修権を否定するものでもないし弱めるものでもないということはあなたも確認をした。だからその立場からいって、行政研修を計画する場合に、その教特法の今回何ら改正をするわけじゃない、従来を踏襲する、そこのことも踏まえて今回の行政研修が計画をされているということでしょう。
  210. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教員研修は生涯を通ずる研修でございまして、その研修の基本的な考え方先生のおっしゃるとおりでございます。今回の初任者研修は、その生涯にわたる研修の一部として行政的な意味合いにおきます法令上の措置をしようとする性格のものでございます。
  211. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、試行実施の場合にはいわゆる一年間とはいえ条件つき採用期間半年間、こういうことであったんですから、そのことから見ても勢い初任者研修成績が条件つき採用から本採用、不採用への判定に影響することはないというのは自明の問題であったわけでありますけれども、本格実施の場合ははどういうことになりますか。
  212. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 研修の効果、成果ということを、条件つき採用期間満了の場合の正式採用となるかどうかの判定の基準に使うものではございません。あくまでも学校長の勤務評定者としての立場の勤務評定に従って判断が行われる事柄でございます。
  213. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 きのう文部省のお役人が説明に来てくれたときに、現在の試行実施文部省モデル、これでいきますと、初任者研修記録を義務づけるということは文部省としては示してないという説明でありましたが、実際は記録作成のために深夜まで忙殺をされる、こういう各地の報告が多々あるわけであります。これは文部省指導方法とは違うんですね。
  214. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 初任者研修試行対象となります教員について、その報告書の作成を義務づけるような内容のものはモデル条項等でも示しておりません。しかし今回の六十二年度、六十三年度の試行と申しますのは、本格実施に当たりましての問題点を探るための、あるいは問題点を解明するための試行でございますので、その意味におきましては各般報告を受け、その報告に基づいて今後の本格実施への大きな参考材料とさせていただくわけでございますので、結果的には各都府県、指定都市におきまして多様な報告の作成をさせている実態であると承知をいたしております。こういった事柄は六十四年度以降の本格実施の際には必要なくなる事柄でございますから、現在試行対象教員が非常に負担と感じておられますようなレポート、報告の作成等につきましては、本格実施の際はそういうような負担は軽減されるものと思っております。
  215. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 現在も六十三年度試行実施段階です。しかし、その試行実施段階で、片や文部省報告作成のために初任者が深夜まで忙殺されるということは、これは避けるようにというのが文部省指導方針だけれども、実態は違うんですよ。だから、ひとつ実情をよく把握して、そういう過重な負担になっておるようなことがあれば、それは正すということで、鋭意この状況を把握し、指導をしてもらいたい、どうですか。
  216. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 新任、試行対象教員アンケート調査等でも負担がある程度ございますし、またそういった一部の声も耳にするわけでございます。もっとも、もちろんこれは試行に取り組まれます各市町村教育委員会あるいは学校におきまして熱心さの余り過度のレポートの要求等があるケースはあったと思いますし、またそういったような事柄は当然に負担軽減のために御努力いただかなければならない事柄だと思っております。
  217. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 とにかく指導の徹底をしなさい。  次は、昨年の洋上研修文部省を代表する形で加戸局長が講演を行いました。三十五年も前の山口日記などを例に挙げて教職員組合運動の違法呼ばわり、また社会主義国の誹謗等々重大な話をしておりますことは、マスコミ報道でも多々報道がされておるところで事実であります。この講演の要旨を当委員会の資料として出せということを繰り返し私は早くから要求をしてきたわけでありますけれども、テープもとってないしメモもない。文部省の随行者が何人も行っているんですけれども、二けたも行っているんですけれどもだれもメモもとっておらぬという、これは私はおよそ信じられないことだ、こういうことは。ということで、引き続き講演の要旨を資料として提出をすることを重ねて主張をするものでありますが、ことしもだれがやるのか知らぬけれども、この講演をやるでしょうね、洋上研修で。これについては、きちっとひとつ委員会の参考資料として提出をするということを約束してもらいたい。
  218. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 初任者研修で、講師の方を十人か十一人乗船いただきましてお話しをいただいておりますが、これらの方々についてのテープ録音等はいたしておりません。  現在、著作権法におきましては、他人の著作物等を録音するにつきましては……
  219. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ちょっと問題を広げたらいかぬ。あなた自身のテープもとってないというのは何だと。ほかの講師のことを話をしているわけじゃないんですよ。文部省を代表することで講演をやっているんだから、当然そのことについてはその責任があるはずだから、せめてテープか記録ぐらいしてしかるべきじゃないか。これからはそういうことできちんとやるかと、こういうことを聞いているんです。
  220. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 講師につきましては、本人の了解なしでは録音できない事柄でございます。その点は著作権法上の問題があるということをまず認識していただきたいと思います。  それから、私自身が仮に次回の洋上研修に参加し、お話し申し上げるといたしますれば、じゃ、話の要点等はメモにつくりまして、こういった概要の話をしたということは当委員会で報告することはできるであろうと思います。
  221. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 当然のことです。  次に、指導教員の問題で若干聞きます。指導教員の業務は、対象新任者の研修成績の評価、これも業務の中に含まれますか。
  222. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 指導教員指導新任教員の手助けをする、あるいはアドバイスを与えるという性格のものでございまして、評価するために指導するわけではございません。
  223. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 指導教員初任者との間には指導、助言という関係があるということは法に書いていますね。そこでそういう指導、助言という、特に指導ということは指導と被指導の関係、これがあるということでありまして、同時に、先ほども確認したように、研修については本人の自主性が尊重されると。そうしますと、指導教員から憲法、教育基本法に反するような指導があったとき、初任者は拒否できるんでしょうか。そしてその拒否をしたということが不利益となるということはないですね。
  224. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 具体的イメージがわかないところでございますが、通常そういった指導、助言というのは事実上の行為でございまして、およそ法に触れるということはあり得ないことと思いますが、仮にあり得たとすれば、それは当然のことだと思います。
  225. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 教科の指導、国語とか算数とか等筆教科の指導、あるいは子供に対する生活指導、こういう問題で新任の教員とそれから指導教員との間で意見が違ったとき、これは最後は私は実際にクラスを担任しておるその教員初任者判断に任されるという問題だと思うんですけれども、そういうことでいいのか。そしてそのときに指導教員意見反対をしたということで不利益を受けるということはないでしょうね。
  226. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 中国の言葉にも「教学相長ず」ということでございまして、教えることは学ぶこと、学ぶことは教えることでございますから、指導教員初任者教員とが相互に、また指導の関係を通じながら相互に切磋琢磨する関係になるだろうと思いますし、そういった事例の一つとして、今お互いの考え方が食い違うということは当然あり得ることでございますし、それはお互いでまたお話し合いをする事柄でもあろうと思います。ただ、指導自体は強制でございませんから、その適切な指導を受けながら新任教員が成長していきますと同時に、万が一それは指導教員に過てる指導があったとするならば、もちろんそれに従う必要もないわけでございます。
  227. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それに従わなかったからといって不利益を受けるということはありませんね。
  228. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) そういうことはないと思います。
  229. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 次に、この文部省試行実施要領、これによりますと、市町村教育委員会校長の作成した年間指導計画及び指導報告書、これを付して都道府県教育委員会研修報告書を出す、こういう仕組みになっているわけですけれども、この仕組みというか、このフローというか、これは本格実施でも同様ですね。
  230. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 現在、試行段階でございますので、試行問題点、実情把握のために現在はかなり詳細な報告をとっているところでございますが、本格実施の場合には試行段階ほどのそういった詳細なデータは必要なくなると思いますけれども、県が実施計画し実施する研修でございますので、その実施権者である都道府県に対します報告はほぼこれに近い形での手続はとられるものと思います。
  231. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、校長初任者指導をしたその報告書を市町村教育委員会に上げる。そういう際にはこれはなかなか一人でこの判断するということは難しいと思うんです。当然指導教員を含めて教頭等と、いずれにしても指導教員などの意見を聞く、そして校長報告書をつくる、こういうことになるんでしょうね。
  232. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 学校で作成いたしますのは年間の指導計画でございますから、一年間の間にこういうような計画で実施をする、実施した結果がこうであったということでございますので、それは当然のことながら教頭先生あるいは指導教員等に事情を聞いた上で校長が作成するものと思います。
  233. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうしますと、そういうふうにして校長報告書がつくられていくというプロセスでいきますと、結局校長指導教員意見初任者教員の本採用、不採用に大きく影響をするということになるんじゃないでしょうか。
  234. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 研修報告書研修の実態の報告でございまして、勤務評定と申しますか、条件つき採用期間の職員の正式採用に当たりましては、その免職をする場合の基準というものは、あくまでも一般的に対外的にあらわれた兆候等によって判断をするわけでございますから、研修による報告書ということではなくて、まさにその教員教員としての適格性を有するかどうかということを、適格性を有しないというようないろいろな形の外部的材料、これは父兄、児童生徒あるいは校内職員その他いろいろな方面からそういった声が出てくるわけでございますから、研修そのものとは関係しない別途の形での資料提供によって判断をすることになろうと思います。
  235. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 その研修報告、評価と人事といいますか、新任教員の本採用、不採用、これとは別だというふうにおっしゃるんでありますけれども、別なら別ということをはっきりそれは一つは確認しておきましょう。しかしそうは言うものの、さっきの文部省としてモデルとして示している年七十日の指導教員による指導、三十五日のセンター研修、四泊五日の宿泊研修、これに洋上研修が十日間ほど。一年の半分近くを研修に義務づけられるわけでありますから、そうしたらいわゆる勤務評定の対象となる勤務成績、この評定、一年間の半分は初任者研修に従事しているんですから、この勤務成績の評定に大きくそれが左右をするということを通して本採用、不採用に大いに関係するということは私は明らかじゃないか。あなたのようにそれは別問題だと言ったって、それは詭弁じゃないかというふうに思うんです。  逆に聞きますけれども、初任者研修がどんなに不成績でも、あるいはもっと言えば初任者研修どんなにふまじめでも人事には影響はないですか。
  236. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教員としての適格性を有するかどうかの視点から判断される事柄でございます。その現象としては、いろいろな形で外部的にあらわれる兆候によって総合的に判断して適格性があるかないかを判断するわけでございますから、その不適格な要素がたくさん並んだうちの一つとして研修に不熱心、ふまじめというような状態がワン・オブ・ゼムで加わることはあり得ないわけではないと思います。
  237. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうすると、ちょっと二つ一緒に聞いたから不正確で、研修の不成績、これは影響しますか。
  238. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 初任者研修はその成績を求めるものではございません。あくまでも本人の資質向上をねらいとするものでございますから、研修によって指導力あるいは教育活動力が高まっていくことを期待するものでございまして、これを点数に換算したり成績を把握するといった性格のものではございません。
  239. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうすると成績は関係ない。不熱心な場合には、ワン・オブ・ゼムだということであるから、ここは非常に主観が働く問題でしょう、熱心か不熱心かは。というこの点で私は依然としてこの初任者研修という問題が人事に悪用をされるというおそれ大いにありというふうに思うんです。  そのことをさらに裏づけるもう一つの問題としてお聞きをしますけれども、教養審答申はこういうこと書いてましたね。「教育教員児童・生徒との全人格的な交流を基盤として行われることから、教員の職務遂行能力については、全人格的な資質能力を把握しなければその実証が困難である。」、この立場は当委員会でも局長が相当繰り返し言っている考え方であって、繰り返し答弁の中にも出てきている趣旨であります。そうすると、そういう全人格的な資質能力を把握しなくちゃならぬ。そうすると、この人格の評価というのはどうやって評価するんですか、一人の人間の。これは恣意的な評価であってはならないということで、しかもこれは、さっきも話出てました勤務評定項目についての文部省の案、この中に教員の場合についても一、二、三、二の(一)が適性、(二)性格。性格というのはどうやって評定するんですか。この性格、人格を評価する客観的基準は何か説明してもらいたい。
  240. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 勤務評定を行います場合には、勤務成績と適性、性格に分かれるわけでございますけれども、勤務成績につきましては五段階評価が行われます。この性格、適性につきましては、例えば性格でございますと、積極的であるか、消極的であるか、謙虚であるかあるいは驕慢であるか、こういったような性格の評語を記載するわけでございまして、いわゆる勤務成績のような五段階評価は伴わないものでございます。
  241. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そういう評価をするとして、その評価が本採用するか不採用をするかという一つの分かれ目が出てくるんでしょう。判定を行うわけでしょう。それで、どこで判定するんですか、性格について。私のような性格は不合格ですか。
  242. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 条件つき採用期間満了後の取り扱いにつきましては、通常の勤務をされた者につきましては自動的に正式採用となるわけでございまして、その免職を行う場合の基準が、勤務成績が不良の場合、心身に故障がある場合、その他職に必要な適格性を欠く場合ということでございまして、これはたびたび申し上げておりますが、その教員がとられております対外的にあらわれた行動態様、兆候というものを多くの材料の中で積み上げて見ますれば、教員として通しないというような結果で判断されて免職をされるわけでございます。そういう意味では、個々の一つ一つの材料だけに即して判断するんではなくて、その行動の全般の中から兆候として出るものを集約して判断をするということになります。
  243. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣、ずっとこの間の議論聞いておられたと思います。一応建前としては初任者研修の成績などは、これは本採用にするか不採用にするかそれには関係ないというふうにおっしゃるんだけれども、いろいろ聞いていきますと、さっきこの成績は関係ない、しかし初任者研修の態度、熱心であるか不熱心であるかという態度、これは関係ないとは言い切れない、ワン・オブ・ゼムだと、こういう話が出てきた。そしてもう一つは、今度は人格はこれが勤務評定の項目にあるんですよ。さっき言いましたように文部省の勤務評定項目にある。それで、この人格をどうやって評価をするんですかと聞くと、これは五段階評価のようなそういう点数評価はやりにくいということで、消極的であるか積極的であるか。しかし、これは消極的であるか積極的であるかというのはそれを見る人によっていろいろ見方が変わるでしょう。そういうことからいって非常に主観性が入りやすい、恣意的判断になりやすい。こういうものが一つの項目になって本採用、不採用が決められていくというおそれがあると思うんです。  かつて教員の勤務評定の問題になったとき、教育愛という項目があったんですよ。しかもこの教育愛を点数で入れ込めというのが最初の文部省案で、あの当時京都の蜷川知事などは教育愛とは何ぞや、抱きつく力かということなんかを言ったことがあるわけですけれども、それと同じように人格を評価するというのはそんな生易しい単純な問題じゃないですよ。しかしそれがこの勤務評定の項目に入っている。で、採用、不採用が決められる一つの項目になる。私はこんなあいまいな基準で人の、新規教員の一生が左右されたらたまらぬと思うんですよ。これはどうしてもこういうやり方というものは改めて、だれが見ても客観性のある基準によって判定をするということでなくちゃならぬという、これは地方公務員法の前提に書いていますね、分限処分を行う場合、その場合には恣意的であってはならないというふうに書いてある。そのことに照らしても客観的な基準をきちっとしなくちゃいかぬというふうに思うんですけれども、文部大臣どうですか。
  244. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 教育公務員のあり方というものももちろんございますけれども、そのいわゆる職務遂行能力の判断は今までと変わらない、こういう大前提に立っておるわけであります。先生がさりながらということで御心配な点は、指導教員初任者、教え、学ぶという立場にある、これは評価対象にはならない。あるいはまた指導教員が教えそれから初任者が教わるということは採点基準にも評価基準にも原則的に入れないものというお答えをしております。ですから、それで、多数の幾つかの問いの中の一つにその他の問題が入ってくるかもわからない。恐らく、私が前提として申し上げたいのは、この初任者研修本格実施されるとしても判断基準は原則的に変わらない、こういうことであります。しかし、じゃ何をもって判断基準にするのか。これは多角的に、いろいろな点がありましょうから、その多角的な面の一部を見て判断基準にはし得ないものという答えを政府委員からも申し上げておりますように、これは恐らくあらゆる面の多角的、総合的な面で判断基準が行われるものと、その基準は今までと変わりません、こういうことでございます。
  245. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そういう抽象論では依然として納得できませんね。さっき高木委員おっしゃっておった心身の故障ある場合ですか、表現どうでしたか、そういうあれなんかについても、これはちゃんとした医学的客観データをもとにして判断するわけでしょう。あるいはいわゆる成績という場合には、点数をつけるとすればこういう点数だということで客観性を持たせるわけでしょう。ところが、人格という問題をどうやってそうやって客観性を持たせるのかということについては、そんなものはできるはずがないんですよ。だから、これは条件つき採用者を本採用にするか不採用にするかの問題にとどまらない。例えば、一般の教員から教頭にする場合、教頭から校長にする場合も、人格という、これが評定の一つの項目に入っているんですからね。こういうあいまいな、怒意的な主観が働くようなそういう基準というのはこれを機会に撤廃をするということで、よく考えてもらいたいというふうに思うんです。時間が迫ってきますので、次の問題にいきます。  昭和六十二年度の各県の試行実施のまとめが、この間私が相当言いまして、ようやく二十日提出をされました。しかし、その内容を見ますと、極めて文部省の都合のいいように、県からの批判的な意見、これをぼかして抽象化した作為的なものだというふうに言わざるを得ないのでありますが、特に重大だと思いますのは、子供にどういう影響を与えているかという問題についてほとんど掲げてないんです、一番肝心な問題を。教員の関係で過重負担が起こってくるとか、あるいは代替の教員を見つけるのが難しいとか、そういうことはいろいろ文部省の出したペーパーにはあるんです。しかし、子供にどういう悪影響を及ぼしているかということが全然ない。しかし、実際に府県教委の側からは具体的な報告が上がっているはずでしょう。どういうふうにとらえていますか。
  246. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 初任者研修試行に伴います児童生徒への影響につきましては、既に試行に参画されました校長先生指導教員あるいは新任教員に対しますアンケート調査によってある程度の数字は把握はできているわけでございます。県としては、全般的なそういう状況を個別的に把握しているわけではございませんので、研修自体の全体的な評価に関しまして事項別に御報告をいただいたわけでございまして、特にこのことについての細部の報告等はございません。
  247. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そんなことないですよ。私は子供への影響という問題を一つ言いました。しかしその他の問題でも、相当具体的に生々しく各県教育委員会からの報告文部省に届いておるはずだ。だから、その生資料を一遍委員会の参考資料として出せということをこの間から言うておるのだけれども、それを出したら都合が悪いのか、それを出さないというのはまことに不届きだと思うんですけれども、言い逃れができない証拠を一つ示しましょう。  全国を五ブロックに分けて、教員の資質向上地区連絡協議会というものを開いていますね。これは別名で言えば、要するに初任者研修試行に関する経験交流会みたいなものですよ、教育委員会レベルの。ただこれは何も秘密会ではないので、ここにもちろん文部省も入っておるし、それから私学関係の教育学担当の研究者の方なんかも入って、自由にいろいろディスカッションをしている、こういうものでありますから、私はたまたま資料を入手しておるんです。例えばこういうふうに書いてある。これは関東ブロックで行われた連絡協議会に配付された資料です。  「研修全体に関すること」ということで、あと個別に、「児童生徒への影響」とか「学校運営への影響」とか「教育研修センター運営」とか「指導方法」とかいろいろ書いていますが、一番基本になる「研修全体に関すること」というところで、「指導教員や補充の教員初任者の出張時等の代替授業に当たっているが、一人の教員が一連に指導するようには」——一連にというのは通しでという意味ですね。「円滑な連携が取れず、学習の一部に重複・欠落などが出来て学習進度がおくれがちである。特に二、三人配置校」——要するに初任者が二、三人おる、「では初任者が同時に出張したときなどは学校全体として補教を出さなくてはならず、学校運営が難しくなるとともに、自習なども生じている。」、だから、きちっと穴埋めしているわけじゃないんです、自習が起こっている。それからさらに「児童生徒は同じ教科でも授業者が週のうち何回か担任代替者と交互に変わるので、落ちつきがなくなる傾向と学習に対する不安感をもつ者も出てきている。」、「児童生徒への影響」というようなところでは、「学級担任や教科担任として授業などが断続することから精神的に落ち着かないとか、学習の進度や学力などにやや不安を持つ傾向がある。」、その他、いろいろ書いていますけれども、時間の関係ですべてを紹介するわけにはいきませんけれども。  こういうことでありまして、この五ブロックに分けてやっておる教員の資質向上地区連絡協議会というのは文部省予算をつけて、それで、さっき言いましたように、いろんな人も加わってディスカッションをやり報告書をつくっている。文部省予算をつけて報告書を出しているんですよ。これはもう公の資料だから、当委員会にひとつ資料として、法案がどうなるならぬにかかわらず、初任者研修試行がなお本年度いっぱい続くわけですし、資料として出してもらいたいと思います。
  248. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ちょっと今、事務的にどのような資料かはわかりませんが、私の想像でございますけれども、そのブロック会議等でそれぞれの報告者等が討議資料として内部的につくられた資料ではないかと思います。そういう意味で、当委員会に提出するにふさわしい資料とは考えません。
  249. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私がさっき言いましたように、文部省予算をつけているんでしょう、この協議会に。
  250. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) このブロック会議の開催費につきましては、文部省予算を執行いたしております。
  251. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうであれば、文部省予算をつけておるそういう公の会議においてそこに出された資料、そうして、それは参加者は自由にもらえるという形になっておるんです。だから、自由にもらえる、そういう人から私はちょっと貸してもらったわけだ。だから、それをなぜここの委員会の資料として出せないんですか。文部省も参加しているんでしょう。参加した文部省の職員はそこへ出された配付資料一式をもらってきているはずだ。だからそれを出したらいいんですよ。それを出せませんというような、そんな態度で、これはいよいよ議了はできませんな、この法案は。  時間ですから、最後にもう一問聞いておきます。今の私が引用しました報告の中でも、初任者が二人、三人にもなると大変だと言うんですが、もっと大変なところがある。養護学校です。京都での実例ですが、南山城養護学校というところでは、八七年度、教員総数三十七人中初任者が十人です。それで、八七年度は試行実施で、部分実施でありましたからまだしも、これが初任者全員対象とする本格実施になれば、これは大変なことになるんです。こういう初任者の比重の非常に高い学校、こういう学校を機械的にやったらそれこそ学校運営は大混乱するということを、こういう学校があるということを、この十人が校外研修ということで出てしまったら、それこそ大変なことになるでしょう、学校運営は。特に障害者という、この子供を世話をする仕事は、その日に臨時パートで行った人間でうまくやれるものじゃないですよ。本当にその障害者の子供の生い立ちやら心やら、性格やら、そういうことをわきまえて、よく知っておってちゃんと援助をしていかなくちゃならぬという、こういう実態があるということを知っているかどうか。そして、これに対してはどういう方針で初任者研修をやっていくのか、どうですか。
  252. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 通例でございますと、全教職員に占める新任教員の比率は三十数分の一でございますか、今先生おっしゃいましたようなケースは、恐らくは例えば新設校であるとか、そういうような事態によって新採教員の大量配置があり得たケースではないかと思います。そういった特殊なケースにつきましては、当然のことながら、校外研修全員一斉に出るということは、また学校運営を阻害するわけでございますので、子供の教育が第一でございます。そういった点での配慮等は当然行われてしかるべきケースでございますし、また、初任者研修実施される段階に至りますれば人事配置方針等もそういった初任者を大量に一校に配置をするというケースは考え方が変わってくるであろうと思いますし、しかし、さはさりながら、そういった特殊なケースにつきましてはそれなりの特殊な対応ということはあってしかるべきことだと考えております。
  253. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 終わります。時間です。
  254. 勝木健司

    ○勝木健司君 いわゆる条件つき採用期間延長の問題でありますが、延長される理由というものは一体何なのかということと、また、延長により正式採用に至る基準そのものというものも厳しくなるのではないかというふうに思います。    〔委員長退席、理事林寛子君着席〕 また、そういうことはないのかどうか、また、どのような基準に基づいて正式任用にせず、免職としているのかもあわせて御説明いただきたいというふうに思います。
  255. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 条件つき採用期間の制度の趣旨と申しますのは、本来教員が公務員として本採用されるわけでございますから、本採用の時点でそれなりの職務遂行能力の実証をした上で採用しているわけでございます。しかしながら、採用試験の成績あるいは面接の結果等によって完璧を期することができませんために、その後の一定期間の間に能力の実証の補完をすという観点から、不適格者排除の趣旨で設けられた制度でございます。  教員につきまして、この職務遂行能力の実証をするということは極めて難しいということはたびたび大臣も申し上げてはございますけれども、いわゆる職務遂行の形態が児童生徒に対します全人格的な触れ合いの中で行われるということで、対外的に事務処理はこの程度ができたというような観点からではございません。そういった評定の難しさがございます。さらに、学校という、特に教室という隔離された場におきます教育活動を遂行するわけでございますから、そういった難しさもございます。さらに、教育課程が一年のサイクルで行われるということで、一年間の児童生徒の成長に応じてその教員の能力の発揮も見られるわけでございますから、そういった統合的な意味におきます勤務能力の判定というのに要する期間が果たして六カ月でいいのかという問題が基本的に根っことしてあるわけでございます。  今回、初任者研修制度を導入いたしまして、指導教員による指導を受けながら勤務を遂行する。その形態といたしましては、片面から見れば研修でありますけれども、また逆の面から見れば職務遂行である。そういった両面性を持つと同時に、職務遂行のいわゆる教育活動そのものが指導教員によるアドバイスを受けながら行われていて、本人の本来的能力によって職務が遂行されているかどうかという問題が生ずるわけでございまして、そういった判定の困難性というのは一般の公務員に比しまして極めて困難性が高まる。そういう意味におきまして、この一年間の研修活動の終了した時点で適格性の判定をすることが妥当であるという考え方をとったわけでございます。  また、教員の適格性の問題につきましては、国民の目からも国民の負託にこたえた教育実施するわけでございますから、よりよい先生を確保してほしいという声もあるわけでございまして、そういった国民の批判、非難を招かないような形で適正な制度を運用することが現在の教育公務員に対します、あるいは求められている事柄ではないかと考えておる次第でもございます。さような理由によりまして現在の六カ月間を一年間に延長さしていただく提案を申し上げているところでございます。
  256. 勝木健司

    ○勝木健司君 条件つき採用期間につきましては、臨教審の答申でも新任教員に無用な不安というものを与えないようにすることが求められておるよう佐思います。そういった意味での運用というものを具体的にどのように行っていくつもりなのかということで、具体的には条件つき採用期間中に免職になった事例とか、あるいはその理由は何であったのかということ、またここ五年間の状況を示していただいて、今そのうち現在係争中のものがどれくらいあるのかということもあわせて御報告をいただきたいというふうに思います。  あわせて正式な採用職員と条件つき採用職員とでの免職の基準とかあるいは手続とか、身分保障の点で具体的にどのように違いがあるのかということもわかりやすくお示しいただきたいというふうに思います。
  257. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 条件つき採用期間中におきます免職の基準は六カ月であろうと一年であろうと考え方は同じでございますが、過去の運用実態を申し上げますと、五十九年度には条件つき採用期間中に免職になった者は二名、六十年度は一名、六十一年度は二名でございます。ただ、これ以前の段階におきまして既に本人が適格性が欠如していることを自覚して退職されたケースというのは毎年五名ないしそれを超える人数がいらっしゃるわけでございますが、最後にこういった免職制度を発動した意味におきます数字がただいま申し上げた一件ないし二件でございます。  その具体的な事例としましては、例えば昭和五十九年度に起きました二件の事例のうち一つは、その教員が体罰を加える、教科経営が不良である、研修に不熱心である、校長の指示に従わない、PTAに暴力を振るうなどといったいろいろな形の兆候が見られまして、全般的に判断して適格性を欠くという判断をしたケースでございます。それからもう一つの五十九年度の事例は、いわゆる事務処理能力が著しく低くて勤務にたえないといったようなケースでございまして、これに対しまして適格性を欠くという判断で免職処分を受けております。それから、六十年度の一件は、これは精神性疾患によるものでございまして、精神性疾患によって適格性を欠いているという判断をされたものでございます。それから、六十一年度の二件の一つは、女生徒に対する処分決定前に処分案を生徒に漏えいした、あるいは授業における指導性が欠如している、それから女生徒との交際を行っている、無免許運転をするなど問題行動が多くて適格性を欠いているという判断された事例でございます。それから、六十一年度の二件目は、教員としての基本的な素養に欠け、教科指導や校務処理がずさんで、教員としての節度を失するなど適格性を欠くということでございます。こういったようなことが処分の理由でございます。  なお、これらのうち裁判上争われたのは二件でございまして、一件については既に処分を認める判決がなされ、現在一件が係争中の段階でございます。  それから、正式採用の者と条件つき採用期間中の者との免職の基準、手続、身分保障についてでございますが、一つは、免職の基準でございます。正式採用職員につきましては、地方公務員法二十八条の分限免職の規定が適用されるわけでございまして、その考え方としましては、勤務実績がよくない場合、心身の故障のため職務の遂行に支障があり、またはこれにたえない場合、これらの場合のほかその職に必要な適格性を欠く場合等が分限免職の事由でございます。条件つき採用教員につきましてはこのような地方公務員法の分限規定は適用されませんけれども、これらに準じた考え方判断されるということで、基本的には勤務実績が不良な場合、心身に故障がある場合、その他の事実に基づいて必要な適格性を欠く場合と、ほぼこれに準じた形での運用がされているところでございます。  なお、裁判所等におきましても、合理的な判断を超えてはならない、あるいは社会通念上許容されるものというような判断の縛りはございますけれども、考え方としては正式採用職員と大幅に考え方が違うということではなくて、考え方はそれに準じた対応で現実に運用され、また裁判所でも認定をされているというところでございます。  なお、懲戒免職につきましては、条件つき採用職員につきましても地方公務員法の懲戒免職に関します二十九条の規定が適用になっておりますので、正式採用職員と同様に法律上の規定に基づき懲戒免職が行われております。  それから、懲戒及び分限の免職の手続でございますが、正式採用職員の場合には処分者が処分事由説明書を交付しなければならないこととされております。条件つき採用教員につきましては、条例等で定めた場合には処分事由説明書の交付が必要ということでございます。法律上は制度の適用外になっております。  それから、処分に対する不服申し立てでございますが、懲戒免職、分限免職等の不利益処分につきましては人事委員会に対し不服申し立てができることになっておりますが、条件つき採用教員につきましてはこのような地方公務員法上の不利益処分の申し立てをすることはできないこととされております。ただし、裁判所への出訴は人事委員会を経由しないでストレートに裁判所に出訴できるということでございます。  以上のような制度上の取り扱いの差はございます。
  258. 勝木健司

    ○勝木健司君 確かに採用段階で万全を期したつもりでも、父母とかあるいは子供の信頼を失うような、ほんの一部たりとはいえ、問題教師といいましょうか、そういう先生がたびたび報道されております。しかし、このようにだれもが納得する理由は別にいたしまして、余り安易に免職が行われても教師というものを萎縮させ、教育現場を沈滞したムードにさせるとともに、優秀な人材というものを採用する上で、誘致する上でも問題となるわけであります。そういった意味で、勤務態度、内容等についてはできるだけ客観的なそういう正式任用基準というものを示すべきじゃないかというふうに考えますけれども、文部省考え方をお聞きいたしたいというふうに思います。
  259. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先ほど申し上げましたように、条件つき採用期間中の職員につきましては分限に関する規定の適用はございませんけれども、やはりその条件つき採用期間中の職員といえどもおのずから処分をする場合の制限が客観的に存在するわけでございまして、例えば先ほど申し上げました最高裁の判例等におきましても、客観的に合理的な事由が存し、社会通念上相当とされるものであることを要すると言われております。また、現在までに処分されました事例は、だれがどう見てもそれは余りにもひどいという評価を受けるような職員でございまして、今申し上げた事柄は、これを基準として書くということは非常に難しいわけでございますが、考え方は分限免職の規定に準じた取り扱いということでございます。  この考え方は、繰り返しになりますけれども、勤務実績がよくない場合とか、あるいは心身に故障がある場合、あるいは引き続きその官職に登用しておくことが適当でない場合という考え方は、分限免職の事由に準じて判断される事柄でございまして、運用の問題としては、従来からも提訴されました事例はすべて裁判所の認容するところでございますし、客観的に合理性があるという判断をされてきたところでございます。    〔理事林寛子君退席、委員長着席〕 事は教員の身分にかかる事柄でございますから、この方を残しておくことが教育の世界ではとても許されないという判断をしたときであり、しかもそれは客観的にだれもが処分事由を見、そして十人が十人納得し得るようなものということで、おのずからその辺の抑制機能は従来からも働いておりましたし、今後とも働くものと思っております。
  260. 勝木健司

    ○勝木健司君 一年後に免職になりましても、我が国の雇用慣行ではなかなか再就職先というものが確保しにくいのが現実であろうかというふうに思います。例えば、教員としての適格性は有しないけれども、社会教育施設や一般行政、そういう公務員としては適性がありそうだという、そういった人材についてはそうした分野に積極的に転身させるといったような、そういう柔軟なフレキシブルな制度、運用も考えるべきじゃないかというふうに思うわけでありますけれども、お考えをお伺いしておきたいというふうに思います。
  261. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 現実の運用といたしましては、条件つき採用期間中の免職はよくよくのことでございまして、それに至りますまでの段階に本人が適格性を欠くという自覚をしていただいてみずから身を引いていただく、なるべく本人に傷をつけないように、そしてその方が別の職で生きる道を見つけていただくというようなことの配慮は各県でもそれぞれされているところでございますし、先ほど申し上げました分限免職の一名、二名の以前の段階で毎年五名ないし十名程度の方が自発的に退職をされていっているわけでございますので、そういった配慮は相当なされていると思います。  ただ、我が国の雇用慣行等種々の問題がいろいろあるわけでございまして、今後の問題といたしましては、適格性を欠く教員への対応は、もちろん条件つき採用期間中の職員のみならず正式採用職員の場合にありましても、そういった新しい教育ではない別の分野で生きる道というのを、転換できるような方途というのは当然研究してしかるべき事柄でもございますし、私どもも真剣に考えていかなければならない事柄と思います。要するに周りを、その方が向いていない職業から向いていく職業へ変わっていただけるような、そういう一つのムードづくりといいますか、本人に傷をつけないで新しい道が選べるような、そういった配慮というのは考えられてしかるべき事柄でございますし、何も免職だけがベストではございません。最後にやむを得ない形で抜く手段でございますし、そういった対応はそれぞれ各県はおきましても真剣に今後十分考えていかなければならないことと思っております。
  262. 勝木健司

    ○勝木健司君 いずれにしても、優秀な人、教師として適性というものを十分持った人が教師にぜひともなりたいという、そういう教職界の環境というものを整えていくのが先決だろうというふうに思います。一般に言われておりますような、でもしか先生では、どんなに環境を整えてもむだであり、初任者研修をやっても意味がないことではないかというふうに思います。でもしか先生の精神というものを持っている以上、教え、また育成するという喜びなど感じることはどだい無理な話じゃないかというふうに思います。文部省として、そういうでもしか先生でなく、やはり自分の天命として、教師というものを自分の天命だという、そう思う人たちが一人でもより多く採用できるような魅力のある職場環境、またそういう条件というものをつくるべきであるというふうに考えます。採用方法も含めて、文部省のお考えを聞いておきたいというふうに思います。
  263. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先生おっしゃるとおりでございまして、教員にとりまして学校が魅力ある職場であることは必要でございます。そのために、私どもは力及ばずでございますけれども、やはり何と申しましても教員の、例えば人材確保法という大きな施策によりまして教員の給与改善がなされたところでもございますし、また今後ともその人材確保法の精神に基づいた処遇の改善が図られるべきであると思います。また、職場自体の問題としましても、学校が生き生きと明るく活動できることが必要でございまして、校長のリーダーシップのもとに活力ある教育が展開される、そういった職場であればあるほど教員が自分でまた生きがいを感じ喜びを感じることであろうと思います。そういった学校運営も期待したいわけでございます。  それから、教員採用の問題でございますが、各都道府県におきましてもそれぞれ採用に当たりましての工夫をいろいろ凝らしているところでございます。一つの例としましては、筆記試験のほかには面接、論文、実技、体力テスト、適性検査といったような各種、多種多様な選考を導入してきている段階でもございますし、また、この採用に当たりましての評価の基準一つとして、クラブ活動の経験、奉仕活動の経験あるいは教育実習、そういったものにおきます評価を取り入れていくところもございますし、あるいは民間との競合関係になりますけれども、定数問題あるいは予算上の関係等もございまして、教員裁定時期がどうしてもおくれがちな点がございます。この辺は改善していただきまして、民間企業へ人材が逃げていかないような採用時期の内定を早めるということも必要でございますし、そういった各般の施策を通じましてよりよき教員を誘致し、そしてまた学校自体が教員にとって魅力ある場とするような努力を今後とも続ける必要があるということを今後の私たちの努力も含めまして頑張りたいと思っております。
  264. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、幼稚園教員に対する研修についてお伺いをいたしたいというふうに思います。  改正案では、幼稚園、盲聾養護学校の幼稚部の教員に対しては当分の間各都道府県で行う研修に任される、そして初任者研修実施しないこととしておりますが、初任者研修が見送られるに至った事情というものは何であったのかというその理由をお聞かせいただきたいというふうに思います。それと同時に、幼稚園における初任者研修本格実施というものはどういう条件が整ったら行うつもりなのかということもあわせてお伺いいたしたいというふうに思います。
  265. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 基本的には幼稚園のスケールが、それは市町村による地域差はございますが、おおむね小規模のものでございまして、教員組織も園長のほかに教員数が数名といったようなのが現在の実態でございまして、例えば小中高等学校に比べますとその教職員構成自体も何分の一であるというような状況でございます。そういった点で、市町村はもよりますが、新規採用される幼稚園の教員の数というのは特定の市町村について見れば何年に一回しかあり得ないという形でございますので、そのために指導教員を配置する等の措置というのは極めて困難な状況もございます。  そこで、今回の法案の中におきましては、こういった初任者研修につきましては市町村教育委員会ではなくて、都道府県教育委員会に行ってもらいたいという考え方一つ示しているわけでございますが、今言った幼稚園におきます職員構成が基本的に問題であり、またかつ市町村において採用される何年に一回という状況であり、かつその幼稚園におきます研修を行うにつきましても、小中高等学校のような場合の体制が組みにくい、諸般の事情等もございまして、現在提案しております法律案におきましては幼稚園については初任者研修と異なる研修実施していただくということで、具体的には年間二十日間程度、そのうち十日間程度が園内の研修、十日間程度が園外の研修というようなことを想定してとりあえず対応さしていただくという考え方で、六十四年度から六十七年度までの間におきまして、この初任者研修とは異なる別途の研修をスタートさせたいと思っているところでございます。
  266. 勝木健司

    ○勝木健司君 初任者研修実施されるまでの間は初任者研修と異なる研修を都道府県別に行われるということでありますけれども、この研修というものを円滑に実施していくためには、都道府県教育委員会に幼稚園担当指導主事等々の配置促進というものが必要と思われるというふうに思うわけでありますが、現状と促進策をお示しいただきたいというふうは思います。また、国の補助等拡充のためにはどのような具体策をとられるおつもりなのかもあわせてお聞きをしておきたいというふうに思います。
  267. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 現在、都道府県教育委員会には幼稚園担当の指導主事といたしましては四十七都道府県、総計といたしまして六十五名いらっしゃるわけでございますが、そのうち専任の指導主事が二十九名、兼任が三十六名という状況でございます。文部省といたしましても、幼稚園教育の重要性にかんがみまして、できる限り専任の幼稚園教育担当の指導主事が配置されることが望ましいと考えているわけでございますが、御承知のような国、地方を通じました行政改革、いわゆる定員削減の方向の中で大変これは難しい問題はあろうと思いますけれども、今の幼稚園問題に関する限りは力を入れてまいらなければならない事柄だと思っております。
  268. 勝木健司

    ○勝木健司君 幼稚園等の教員に対して行われる初任者研修にかわる研修ということで昭和六十四年度から段階的に実施されていく、そしてまた六十七年度から完全に実施することとされておりますけれども、幼稚園における初任者研修というものも本格的に実施になりますと、同じ幼児の保育に当たっております保育所、保育園の保母さんの資質等が並んで同じように問題になってくることはないかというふうに懸念するわけであります。両者の保育内容に差があってはならないということが前提である以上、保育所、保育園の保母さんに対する施策というものも問われてくるんじゃないかというふうに思うわけであります。幼稚園と保育所、保育園の調整というものが必要ではないかというふうに思われますが、厚生省としての御所見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  269. 柏崎澄雄

    説明員(柏崎澄雄君) 御説明申し上げます。  保母の資質向上は重要な課題であると考えておりまして、従来から保母につきましては、各種の研修を行っているところでございます。保母は保育所、養護施設など、児童福祉施設で児童を直接処遇いたしている職員でございまして、このような観点を踏まえ、今後ともその研修のあり方などを研究してまいりたいと、かように考えております。
  270. 勝木健司

    ○勝木健司君 文部大臣として厚生省との調整の必要性は感じられておりませんか。
  271. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 保育園に関しましては、今お答えがあったとおりでございますし、私どもは一貫した初任者研修の中で、残念ながら幼稚園、幼稚部につきましては一斉に行う状態にない、こういうことでありますが、その点におきまして今お答えしましたように、当面二十日程度のことで始めるわけでありますけれども、少なくともその資質の向上につきましては、できるだけ私ども心して、やはり当面私どもの方では幼稚園、幼稚部部分についての資質向上に努力してまいりたいと、こう考えております。
  272. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に移らせていただきます。  私立学校初任者研修についてお尋ねいたしますが、まず私立学校新任教員に対しては、現在どのような研修というものが行われておるのか、実態をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  273. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) 御承知のとおりに、私立学校研修につきましては、それぞれの私学が建学の精神に基づきまして、どういう教育をするかということを決めておるわけでございます。したがって、新任教員研修につきましても、それぞれの学校法人が個々に責任を持って具体的な研修実施しているというふうに私ども承知しております。ただ、全私学共通的な新任教員研修は、一部私学教育研究所で行っておるところでございます。
  274. 勝木健司

    ○勝木健司君 今の財団法人日本私学教育研究所は、どのような活動をしておるのか、お聞かせいただきたいというふうに思います。
  275. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) 日本私学教育研究所というのは、私立学校の中等教育の振興を図るという観点から、学校教育及び学校経営に関する研究並びに私立学校の教職員及び学校法人の職員、役職員に対する研修を行うことを主たる目的として設立された財団法人でございます。理事長は日本私立中学高等学校連合会、略称中高連と言っておりますが、中高連の理事長をやっております堀越先生が兼務しているところでございます。  主な研究内容でございますが、例えば六十一年度の事業で見ますと、私学教育の基本、言いかえれば私学教育の使命、特質、理念などに関する研究、それから私立学校の独自性に基づく特色ある教育実践に関する研究、それから私立学校の学習指導、生徒指導等の改善、向上に関する研究、各教科科目並びに特別活動の改善、向上に関する研究などを行っておりますし、研修活動といたしましては、研究所が直接研究所にお越しいただいてやっております直轄研修会と称しておりますが、これが二十四県二千百三十人参加しております。それから全国レベルの全国の私学教育研究審議会というのを年に一回やっております。これに千六百九十六名が参加しております。さらに各地区ブロック、これは六ブロックに分けて地区別の研修会を行っておりまして、これが二千百十六名参加、それから都道府県別の研修会をやはり行っておりまして、全国で四千八百八十二名の参加をしているところでございます。全体で毎年研修対象人員というのは一方人前後で実施しているというふうに私ども承知いたしております。
  276. 勝木健司

    ○勝木健司君 私立学校新任教員に対する研修については本改正案では触れられておらないわけでありますけれども、教育職員養成審議会の答申の「教員の資質能力の向上方策等について」の中では、「公立学校新任教員の場合を参考にして、初任者研修実施することが望ましい。」というふうに提言をされております。私立学校初任者研修実施については積極的に進めてほしいところでありますけれども、一方で公立校と全く同じことを強制されることへの反発もあろうかと思われます。私立校に対しまして初任者研修についての理解を得る努力は文部省としてなされておるのかどうか。あわせて私立学校に対してどのような研修というものを期待されておるのか、どのように私立学校に対しての理解を求められていこうとしておるのか。また、どのような研修援助策とかあるいは私立学校に対しての振興策というものをとっていくおつもりなのか、あわせてお伺いをいたしたいというふうに思います。
  277. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教育職員養成審議会におきます議論におきましても、国公立だけではなくて私学についても目を向けるという御意見もございました。先生ただいまお触れになりましたような答申になっているわけでございます。  基本的には私学は先ほど私学部長が申し上げましたような建学の精神等もございます。そこで、私どもとしましては、公立学校におきます初任者研修を参考としながら設置者がそれぞれの学校の実情に応じて自主的に判断して進めていただくことが望ましいと思っておりまして、公立学校におきます初任者研修と同じようなことを求めているわけではございません。しかし、現実の問題としまして、それぞれの都府県、指定都市におきまして初任者研修実施いたします場合に、これは私立学校側の意向にもよりますけれども、例えば都府県で行います公立学校教員研修初任者研修の中にあるいは一部参加して、参加を希望する方を受け入れるということも可能でございましょうし、あるいは私学団体がそれぞれの自主的な対応をすることも可能でございましょうし、取り組み方は多様にあると思います。  いずれにいたしましても、私立学校におきます初任者の資質向上に資する施策をどのような観点から進めようとするかという学校側の判断が優先するわけでございますけれども、やはりこの初任者研修制度自体が実践的な指導力の向上を目的としておるわけでございますので、私学側もそれなりの対応をお願いしたいと思っておりますし、国公立私学とのそういった意味におきます制度的な格差ということがあってはならないことと思っております。しかし、その対応の仕方につきましては、公立学校あるいは都道府県教育委員会側でも援助できること、あるいは共同してできる事柄もあるし、その辺は私学の対応の出方を今見ているというのが現実の実態でございます。
  278. 勝木健司

    ○勝木健司君 言うまでもないことでありますけれども、私立学校の存在意義というものは独自性、自主性にあろうかと思います。一つ研修の制度、方法、内容というものを押しつけるのではなく、各私立学校がその要望、必要性に応じて初任者研修実施しやすい仕組みというものが必要じゃないかというふうに思われます。  こうした観点から、私立学校の自主的団体であります、また研修にも力を入れておるということで先ほども説明をお伺いいたしましたが、日本私学教育研究所の事業の拡充というのも不可欠じゃないかというふうに思われます。この研究所の研究事業費及び設備費に対する補助というものは、六十三年度もわずか四千八百五十一万円ということで、五十九年度から据え置かれたままであります。補助増額の必要性と今後の取り組みの方針というものもどういう方針をお持ちかお示しをいただきたいというふうに思います。
  279. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) 確かに今先生指摘の補助金の問題につきましては、五十九年度から四千八百五十一万円でストップになっておりますけれども、この種の補助金は原則毎年一〇%カットということでほかの補助金は処理されてきておりますが、私学教育研究所に対する補助金については前年度同額を私ども最大限の努力をして維持しているところでございます。  ところで、今後も研修の拡充のための手だてとしてこれを拡充すべきではないかという御意見でございますが、今加戸局長からも御説明申し上げましたが、私学側がどういう仕組みを最も望ましいというふうに考えておるのか。言いかえれば、この日本私学教育研究所を通じた研修を拡充することによって初任者研修を円滑に実施していきたいというふうに考えておるのか。それとも各都道府県別に中高連というのがございますが、各都道府県別の中高連に国から何らかの援助をし、そしてその都道府県別の中高連で当該都道府県の中の私学初任者研修するという仕組みが望ましいと考えておるのかということによりましても、国の取り組み方あるいは都道府県の御協力のお願いの仕方も変わってまいりますので、私ども非公式に一度私学の中高連の幹部の方々とは意見の交換をいたしましたが、今後六月に入りましたらば鋭意関係者と意見を詰めまして、関係者が日本私学教育研究所の事業を拡充することによって対応してまいりたいというような御意見でございましたらば、私どもとしましてもそういう方向で事業の拡充のための国の何らかの措置というものを考えていかなければいけないというふうに今考えているところでございます。  いずれにしましても、私学の皆さん方とも十分意思の疎通を図りながら対応してまいりたいというふうに今考えております。
  280. 勝木健司

    ○勝木健司君 また話は変わりますけれども、教員の資質の向上ということは、何も新任の教員だけに要求されるものではなかろうというふうに思います。初任者研修とあわせて現職研修の強化というものも進めていかなければならないと思うのであります。今後の現職研修のあり方について教養審での答申なども踏まえて、どのような基本的なお考えを持っておられるのか、お伺いをいたしたいというふうに思います。
  281. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教員は生涯研修という言葉が言われますけれども、一生を通じ不断の切磋琢磨が必要なわけでございます。また、そのためにも行政サイドとしてのそれなりの仕組みを提供し、そして資質向上に資する役割を果たすべきであると考えております。  ところで、今回の初任者研修につきましては、先生指摘のとおり、初任者研修だけではございませんで、生涯における研修の一環としてという考え方で、本法律案におきましても、それぞれの教員経験に応じた段階的な研修の一環として初任者研修の計画を樹立しなければならないことといたしております。ここで「教員経験に応じて実施する体系的な研修」という書き方をいたしております考え方は、教育職員養成審議会において提言されました、例えば教職五年程度の研修、教職十年程度の研修、教職二十年程度の研修といった節目節目におきまして、それぞれの一定の期間そのライフステージにふさわしいような研修内容に基づく研修というものを想定しているわけでございますし、こういった現職研修に関します体系的な研修計画の樹立ということを今回の法律案では都道府県側に要請するわけでございますし、また県側におきましても現職教育の重要性にかんがみまして、今後その発展充実を期していく事柄だろうと思います。  ただ、要するに今申し上げました事柄といいますのは、やはり研修実施するためにそれぞれの所要の経費等もかかるわけでございますので、そういった財政的な努力も必要でございますし、また国からもそれに対する援助の方策等も今後考えていく必要がございます。とりあえずは、初任者研修を鳴り物入りでスタートさせるわけでございますけれども、それなりの現職研修につきましても年次を追いまして充実を図っていく方向に向かうべきであると私どもも考え、またその努力もいたしたいと思っております。
  282. 勝木健司

    ○勝木健司君 研修はみんな公平になされなければならないということは当然でありますけれども、幾ら公平に研修の機会を設けられましても、研修しても研修を受ける教員によりましては成果はまちまちであろうかというふうに思います。真剣に研修に取り組み、信頼される教師になられる方とそうでない教師と、全く待遇等で差がないとする考え方でありますと、余りにも不公平になりはしないかと思うわけであります。そこで、教員の資質向上策として教員研修努力なども待遇に十分反映させるようなことは考えられないものかどうか、お伺いをしたいというふうに思います。
  283. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先生の御意見ごもっともでございますが、教育の世界というのは大変難しい、複雑な過去の歴史を持っているわけでございまして、言うなれば同一学歴、同一経験年数で同一の給与を受けるということで長年まいっているわけでございます。一般行政の世界でございますと、例えば一般職の地方公務員につきましては、特定研修を受けた場合に一号俸の特別昇給を受ける等の制度が運用されているわけでございますけれども、教育の世界は今までそういった教員間の処遇、待遇の格差をつけることに絶対反対するという空気がございまして、そういった措置を導入することは大変難しいことではないかと思っております。先生考え方、十分受けとめさせていただきますし、またそのことが、努力し資質向上された者が報われるというような空気が教育の世界でも御理解いただけるような時期になりますれば、可能な措置ではないかと思っております。
  284. 勝木健司

    ○勝木健司君 初任者研修の導入は、教師の専門的力量の向上に資することも目的の一つになっているというふうに思うのであります。教職という職業の持つ専門性につきましてはいろいろな議論があり、教師は専門職だという主張もあるようであります。一方に、教師は労働者であるとかあるいは聖職だという議論もあるというふうに聞いております。このことにつきましては、教師というものは、あるべき教師像というものとも関連するようでありますけれども、教師という職業の性格についてどう考えておられるのか、文部大臣にお伺いをしたいというふうに思います。
  285. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 特に教員の資質が大切だということは、この法案の御審議を通じてお願いもし申し上げてきたところでございますが、特に人づくりのもとになります教師像としては、もちろんその児童生徒あるいは教育に対する愛情がまずなければならぬ。同時に、それに対して幅広い知見ですとか、また教育に対する意欲、その職業に対する責任感、それと同時に、もう一つは実践的な指導力、こういうものがあって初めて培われていくものであろうと思いますし、また、先ほど先生もおっしゃるように、教員たる者はこれでよしとするところはございませんから、教員生活を通じまして常に学び、研修をし、そしてまた、私どももそれをサポートするような研修の機会をつくっていくことに努力をしていかなければなりませんし、そういう面でまたこの初任者研修の面では指導教員初任者のマンツーマンだけでなく、それを囲みます学校全体がサポートし、また、初任者研修初任者の資質を向上させるということを通じまして、学校全体が活性化をしていくということが望ましい、そのために私どもも最大限の努力をしてまいろう、このように考えております。
  286. 勝木健司

    ○勝木健司君 最後になりましたけれども、重ねて文部大臣にお伺いしたいというふうに思います。  初任者研修が本格的に導入をされて実施されたとしても、制度のみがひとり歩きしていたのでは意味がないのではないかというふうに思われます。やはりこの研修に関係する方々の御理解と信頼というものがなければ、幾らよい制度でも空洞化し、生きてはこないと確信するものであります。この初任者研修を成功に導き、より効果のあるものに育てるために、文部大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わりたいというふうに思います。
  287. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) まさに人対人でございますから、制度というものは根幹をなすものでありますけれども、制度ができたからといって、それでよしとするものではございません。それを培うものは人の協力もございますし、また周囲の熱意もございます。また先ほど先生から適切な指摘をいただいておりますように、これが国公立のみならず、私立方々にも建学の精神のもとにこれを御参考にして、こういうものは教員の資質向上に一層の御努力をいただくということがあれば幸いでございますし、また、御質疑の中にもありましたように、その指導する立場にあられる中堅の教員みずからもまた前進、前を見てみずからを研修し、そして教養を高めるということにつきましても御努力あるべきでありましょうし、重ねて申し上げるようでございますが、私どももその研修の機会をつくって教員の資質向上に資することができますように今後とも努力をいたしてまいりたい、このように考えます。
  288. 勝木健司

    ○勝木健司君 終わります。
  289. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 速記とめてください。    〔速記中止〕
  290. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 速記起こしてください。
  291. 下村泰

    ○下村泰君 既にこの法案につきましては幾日かの審議日数がとられてきたわけでございますけれども、お話を伺っておりますると教職に携わっている方たちは大変だなと私は私なりに感じました。大変だなと思う反面、文部省というのは実に先生方に大きな期待をかけているんだな、その割にはそれだけの物を払っているのかいなとも思いますし、わりかた安い給料でこき使われているような気もしますし、本当に先生も大変だなと思います。私は研修そのものというのはこれはまるっきり否定するものではありません。問題は、目的を明確にして、その内容、方法が現状に沿ったものであり、教員自主性に由来したものであることが基本だと私は思うんです。  そこで、本日の締めくくりとしてちょっと整理してみたいと思うんです。もう何回もこれは出ていることなんですから、私余り重複したことをお尋ねするのはいやな性格なんですけれども、あえてちょっとやってみたいと思います。まず、研修の目的、言葉少なにして明瞭にひとつお願いします。
  292. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 教育というのは人づくりでありますし、また教育をいたしますのも人でございます。したがって、教員方々の資質をより高めていただくということが教育の一番根幹になるであろう。教員になられる方々、新しく任用された方々は基礎的な資質はもちろんお持ちでありましょうけれども、その方々が初めて教壇に立たれる、教鞭を持たれるということについては、やはり主に教室で人対人の中で教え学ぶわけでございますから、先生がおっしゃるように、教員たる者は自主的研修で常に学んでいくべきではないか、もちろんそうでございますけれども、その中の初任の間、一番大初な時期でございますから、これはもう学校全体、そして、特に経験豊かな指導教員方々の実践的な指導を得まして、その間に、資質向上の一番もとになるときでありますから、資質を高める基礎的な研修を積んでいただこうという意味で、この一年間の初任者研修というものを御提案をしておるところでございます。
  293. 下村泰

    ○下村泰君 今、大臣のおっしゃいましたいわゆる教員の資質ですね。こういった過去のいろいろな委員会のものを読ませていただいても、何かぴんと来ないんですね。これは私は頭が悪いのかなと思って読むんですけれども、一体資質というのはどういうものなんだろうか、もっとわかりやすくひとつお答えを願えませんですか。
  294. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 私がそれを申し上げるほど専門的知識があるかどうかは別といたしまして、資質というものはいろいろなものが要求されると思います。その教員たる者の基礎的な学力もございましょうし、幅広い知見もございましょうけれども、恐らくそういう基本的な資質と教員としての資質の一番のプラス要因というものは、もちろん教育に対する愛情とそれから経験の不足している部分を早く補っていただくということに一番あるんではないかと思います。それはあくまでも御自分自身の研修もありましょうけれども、児童生徒諸君のいろいろな喜び、悩みがありましょうし、それからまた言葉にはなりませんけれども、自分の悩みをいろいろなシグナルで子供さんあるいは生徒さんは家庭にも先生にも友達にも出されると思うんですね。そのシグナルをどのように早くキャッチし、どのように理解するか。そして先輩の先生方としてそれを自分の体験を通して早くキャッチできるように、間違いなく対応できるように、これも私は大きな一つの資質ではないかと思うわけでございます。そういうものをプラスしていただく、それを早く身につけていただくということを私ども、私どもと言って間違いであれば、私は望んでおるところでございます。    〔委員長退席、理事仲川幸男君着席〕
  295. 下村泰

    ○下村泰君 その資質問題をこっちへひとつ置きまして、一つ教えていただきたいのですが、現在休職中の教員で精神的な疾患によって休んでいらっしゃる方の実態をちょっと教えていただきたいのです。その数、そして原因、対応。
  296. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ちょっと古い数字で恐縮でございますが、最新のデータとしましては昭和六十一年度でございますが、現在病気によりまして休職中の人数が三千七百七十名でございます。そのうち精神性疾患によります休職者数が千七十八名でございまして、病気休職者全体に占めます比率が二八・六%でございます。ちなみに四年前でございますが、昭和五十七年の時点におきましては、病気休職者総数が四千四百名中、精神性疾患による休職者数が九百九十四でございまして、比率が二二・六%でございますから、この四年の間に二二・六%から二八・六%まで高まったということが言えるわけでございます。  実態につきましては、その原因別には把握しておりませんけれども、おおむね各県からの状況等を聞いてみますと、やはり生徒指導とか教科指導上の悩みに起因するものとか、あるいは職場内の人間関係に起因するものとかといったようなことが主たる理由のように承知はいたしております。
  297. 下村泰

    ○下村泰君 結局、もちろんいろいろな原因はあるでしょうけれども、いわゆる教育体制教育のあり方、そんなところに由来するようなものがある。それから構造的なものも含まれていると私は思います。しかし、子供も悩み教師も苦悩する現場がそこにあるような気がいたします。少し見方を変えまして言わせてもらいますと、こういう例があるんです。  これは軽い知恵おくれのお子さんなんですが、こういうふうに書かれている。これは文章でできていますから読みますけれども、   小学生になったカズオは、文字も数字も読めなかったので、勉強はおもしろくなかった。机の前に坐っていることもできなかった。みんなが静かに勉強していると、かれは急に立ちあがって、机の上に乗り、「バンザーイ」と叫んだり、隣席の子どもの頭をポカンと殴ったり、教卓の上のチョーク箱をひっくり返したり…。先生がたしなめると、廊下にとび出していく。   「中に入れ!」と先生が命令すると、これみよがしに、廊下を走って、遠くへ逃げていく。先生が追いかけると、校舎からグランドにとび出し、校門めがけて走っていく…。   困りはてた先生が、教室にひきかえして、子どもたちの指導をしていると、カズオは、いつの間にか戻ってきて廊下から窓ごしに教室の中の様子をうかがっている。   「カズオ、中に入れ!」と先生が命令すると、またパッと廊下を走って逃げていく、というぐあいであった。   一度、職員会議でカズオを物置小屋に閉じこめておこうという案も出されたが、それはいくらなんでも可哀そうだということで、実施されなかった。   カズオが校門から出られないように、門に鍵をかけておいたこともあったが、かれは塀をよじのぼって表へ出て、ちょうど停っていたバスに乗りこんで、郊外まで行ってしまったのである。   カズオのためにエネルギーを使いはたした先生が病気で倒れ、代わりにKという若い男の先生が担任になった。   カズオは、このK先生と初対面のときから、わるさをはじめたのだった。K先生は、最初の時間に、子どもたちの名前を次々に呼んでいった。呼ばれた子どもは「ハイ」「ハイ」といって、手をあげた。やがてカズオの番になった。   「カワカミ カズオくん!」と、K先生が名前を呼ぶとカズオは先生のところに、つかつかと近づいていった。そして先生の顔にむかって、ツバをぱっとかけたのである。   K先生は驚き、カズオの頭をポカンとやった。ところが、カズオはニコッと笑って、こんどは先生の向こう脛を、足で蹴りあげたのだ。K先生は「痛い」と叫んで、しゃがみこんでしまった。その背中にカズオはぴょこんと、とび乗った。怒ったK先生はカズオの首の根を抑えて、もう一度、頭をポカンとやった。   カズオがわるさの限りを尽くしたのは、そのときからであった。   K先生とカズオの「争い」は、毎日のようにつづいた。K先生が「してはいけない」と命令すると、カズオは逆に、そのしてはいけないことをするのだった。   カズオが教室にいると、K先生はほかの子どもたちの指導が、思うようにできなかった。「しょうがいじ学級」のなかったその学校では、カズオに対して特別な配慮はできなかった。   勉強のできないカズオにはK先生は絵をかかせたり、粘土細工をさせるのだったが、長つづきするはずもなかった。飽きると、机を押し倒したり、ランマによじのぼったり、奇声を発したり…。教室はそのために騒然となった。   K先生校長に、カズオに自宅謹慎を命じてほしいと、かけあった。しかし、カズオは遠い親類に厄介になっているため、自宅での望ましい指導は期待できなかった。   K先生は、毎日、頭が痛かった。朝起きて、学校での指導の準備をしているとき、ふと、「きょう、あのカズオが休んでくれないかな。休んでくれたら、どんなに助かるか」と思うことがあった。K先生は疲れていたのだ。ところが、そういうときに限って、カズオは早くから登校していて、K先生の顔を見るなり、パッと、ランマによじのぼってみせた。カズオは元気いっぱいなのである。   「こら! そんなところにのぼるな。危いじゃないか」とK先生が注意すると、ひらりと先生の頭上めがけてとびおりる。先生があわてて両腕で受けとめると、カズオはニコッと笑って、次の瞬間、パッと先生の顔にツバをかけ、さっと教室の外へ逃げていく…。   「こらぁ!」と、K先生が追いかけると、カズオは「ここまで、おいで」といわんばかりにグランドを横切っていく。教室での指導は、そのために、できなくなってしまうのだ。   五時限が終わり、カズオをはじめ全部の生徒たちを家へ帰すと、K先生は、ほっとして、あとはしゃがみこんでしまうのが、毎日だった。口もきけないほど、疲れてしまうのだ。   肩をおとして、家へ帰るが、食欲もわかない。風呂に入って、フトンにつくが、なかなか眠れない。ウトウトすると、夢を見る。きまってカズオが登場する。カズオを追いかけるが、なかなかつかまらない。追っても追っても、つかまらない。カズオはどんどん逃げていく。「アッ!」カズオが絶壁から飛びおりた。K先生は驚いてその崖っぷちまで行ってみると、カズオは下の谷底へ真っ逆さまに落ちていく…。と、目がさめる。背中が汗でびっしょりとぬれている。   もう朝だ。眠い。頭が重い。からだがだるい。起きられない。   おいしくない朝食をとって、学校へ向かう。そんなとき、「きょうは、あのカズオが休んでくれないかな」とつぶやいてしまう…。 これがこのK先生という方の寄せられたあれなんですけれども、しかしこの場合、この先生は一体どうしたらいいかということですよ。    〔理事仲川幸男君退席、委員長着席〕 この先生はもちろん新任じゃありません。新任じゃありませんが、まだ若いですね。  障害者を例に出しましたけれども、いわゆる健常の児童においても、このK先生以外の初任であれ経験豊かな教師であれ、一人の児童の心をつかまえるということは並み大抵のことではないということですよ。一般論を教えても役に立たないその子を真に理解するためには、その児童と必死に接しつき合うことから始まると思います。前回私は、教師児童の心をうまく理解できずに悩んでいることを御紹介いたしました。それは経験のあるなしによるというよりも、その現場のあり方によって大きく違ってくると思うんです。  局長に伺いますが、この先生は一体どういう研修を受ければいいのかということですよ、このK先生というのは。また、どういう研修を望んでおられると思いますか。もちろん局長教育者じゃないんだし行政官なんだし、そんな方法はわかりませんと言われりゃそれまで。それでも結構なんです。ただ、今の例はレアケースじゃなくてあくまでも多くのケースとして考えてもらいたいことなんです。一体このK先生はどんな研修を望まれるか、こういうことなんですが、局長、もしおわかりになったら、お答えがあったら言ってみてください。
  298. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 今回の初任者研修は、新任教員が授業を持ちながらあるいはクラス担任をしながら、先輩教員による指導を受けるわけでございますから、当然そのような授業の中で、あるいは教育活動を展開する中でアドバイスを受けるわけでございます。当然そのためにはそういった先輩教員が過去の豊富な経験の中でいろいろ指導されるわけでございます。そして、そのいわゆる経験豊富な先生が果たして今下村先生が読み上げられましたようなカズオ君のようなクラスを持たれたかどうかという過去の経験をお持ちかどうかによって指導の仕方も違うと思います。自分の自己体験に基づいて、過去の事例はあのときはこういう対応をした、こういう場合はこうではないかというアドバイスもできると思いますし、あるいはそういったような経験がなかったとするならば、自分ならばこうするであろうということの助言をするであろう。それは実地体験に基づかないとしても、別の長い教育体験の中からそれぞれのお考えを示されると思います。そういった意味では、一つの対応の仕方は試行錯誤になることもあるしあるいは過去の貴重な経験を生かしたアドバイスになるかもしれません。  いずれにいたしましても、新任教員としてはそういった先輩のアドバイスを自分の大きな悩みとして当然求めるでありましょうし、先輩からも指導を受けることであろうと思います。それが結果的に十分解決につながるかどうかということは難しいと思いますけれども、いずれにいたしましても自分一人では悩まなくて先輩教員とともに悩んでもらえるということの心の安らぎは一つあるだろうと思います。
  299. 下村泰

    ○下村泰君 結局、ただこのK先生が就任する前の先生は先輩なんですよ。その先輩の先生が悩んで寝込んでしまって学校を休んだ、その後へこの若い先生が来たわけですね。ですから今の局長のお話だとちょっと間尺が合わなくなるんですけれども、こういうところですからこういう状況もあったということなんですね。  一番気になるのは、今ここにいらっしゃる委員の皆さんも、じゃ一体この先生がどうなったかということはやっぱり気はなるところだと思います。そうしますと、これ概略を申し上げますと、このクラスの子供たちがこの先生にいたずらをするわけですな。そして山というのがあります。子供たちの間に山と言われている言葉がある。それはその学校の裏にある山なんですが、その山はがけがありまして、そこからよく子供さんが落ちて負傷するわけですね。ですから山というだけでみんなそちらへ行くことを嫌がる、あるいは鬼門にしておるわけです。そこへカズオが行ったといううそをついて、途中の草原に大きな穴ぼこを掘るわけです。いわゆる落とし穴ですよ。先生は、カズオが山へ行ったというから、あら大変だと、がけから落ちれば自分の夢の中が正夢になるんですから。先生が行きますとその穴ぽこへ落ちるわけですね。そうしますと、その穴の上からクラスの生徒たちが、先生がおっこちた、先生がおっこちたとはやし立てるわけです。そうすると、そこへ上から一人するするおりてくる子供がいる。これがカズオなんですな。さんざん悪さをしたカズオが実は一番先生のことを心配していたということなんです。  そのくだりをちょっと読んでみましょう。   K先生は、はっとした。その子どもはカズオだった。と同時にK先生は、不思議な気持ちになった。   自分はカズオを憎んでいたが、カズオはこんなにも自分を思っていてくれたのだ。   カズオは悪い子どもではなかったのだ。   K先生は、カズオの心のなかが手にとるように読めてきたのであった。不思議な体験であった。   「カズオよ、ありがとう」先生は思わず、カズオを抱き寄せて、その頭をなでてあげた。カズオは逃げなかった。なにしろ狭い穴の中である。   上の方では「カズオ! カズオ! 先生に叱られるぞ。はやく逃げろ!」と、どなっている子どもが何人もいた。   カズオをみると、いつも叱っているK先生を、子どもたちは知っていて、カズオに逃げろ、といっているのだ。   —私は悪い教師であった、とK先生反省した。   この落とし穴事件をさかいに、カズオのわるさは消えていった。教室では、先生の手伝いをよくするようになった。生徒たちに紙を配ったり黒板をふいたり、花ビンに花をいけたり…。   カズオはこれまでの七年間、だれからも愛されたことがなかったのである。   K先生の顔にツバをかけたのも、逃げ出してK先生に追いかけてもらったのも、また叱られても叱られても、わるさをくりかえしたのも、みなカズオの「愛情」の表現だったのだ。 これはやはり知恵おくれのお子さんのいわゆる特有のこういうような症状なんですね。こういう経験です。これは本当にとうとい経験だと思いますよ。ですから、この先生にとっては、このカズオというお子さんのおかげで先生というのはどういうものかということを肌でおわかりになったと思うんですね。  ですから、教育は人なり、大臣もよくおっしゃいますが、衆参の審議を通してこの言葉が大変よく出てまいります。全くそのとおりだと思います。しかし、そして人と教師との、児童生徒との触れ合いの中で創造されるもの、つくり上げられてくるもの、これは画一的なものじゃないんですね。だから画一的なことを研修をしてもこれは無理だということがこの例でよくわかります。そのときそのときの状態に応じて、その状況に応じてアドバイスは必要だと思います。これが研修だと思うんですよ、私は。ですから、そのテーマ、形態、期間はおのおのその教員現場のおのおののケースによって違ってきます。だから、自主性に任せておくとやらないという意見があるが、これは私はちょっと間違いじゃないかと思いますね。こういうもの、すべての時間的精神的余裕というものを全部保障してあげたら、そう御当局の考えているほど新任先生もいい加減じゃないと思います。  それについていろいろ事例がございますけれども、ある養護学校講師を呼んで研修会を開こうとした、勉強しようとした。そうしたら、Aという人に頼もうとしたら、そのAという人は養護学校を否定する人だからだめだと校長が拒否した。だけれども、その学校先生たちはAさんの考えに賛同するから呼ぼうとしたんじゃなくして、否定をしているAさんというのは一体どういう人なのか、その人に否定をしている意見を、つまり自分たちの考えと違っている意見を聞こうとして呼ぼうとした。それをだめだと言うのは、これはやっぱりおかしいと思いますね。そんなことをしていたらいつまでたったってプラスとマイナスはかみ合わないと、こういうことになります。  こういうこともあるんですが、これ福岡県のある投書なんですけれども、「教師のやる気をそぐ福岡県の教育現場」というんです。これは女子の先生です。   今年三月末、突然の辞令で、普通科全日制高校から、一八〇度状況の異なる定時制高校へと転勤した。前任校にはまだ四年間しか勤めておらず、しかも、昨年度一年生担任で、今年度は引き続き二年生担任になることが決まっており、張り切っていた矢先のことだった。   四月一日、かなり不服ながらも、新しい職場を訪れると、早速、今まで一度も担当したことのない科目の授業をしてくれということと、三年生の担任をしてくれということを頼まれた。科目の件は引き受けたものの、担任の件は、とても自信がなく断ったところ、「あなたがやらないとすれば、新採の先生が担任をやらなければならないのですよ。あなたは、新採の先生にやれとでも言われるのですか」と、かなり強い語調で言われ、結局、学校のしくみも学校の地図もよくわからない状態で、担任をもつことになった。 この先生大変苦しんだ。   つい先ごろ、九大の心理学の教授をなさっている方が「では、カウンセリングを本格的に勉強してみないか」と声をかけてくださった。私は飛びついた。   しかし、またもや上司から「ダメ」との連絡。「勤務時間中だからダメ」(定時制の勤務時間は一時から一〇時までであるが、生徒が来るのは六時で、それまでは実質的に時間は、あいている。講義は、週二度、それも午後三時までで、差しつかえはない)。「自分の趣味や好みで勉強するのは許されない」(どうしてカウンセリングが教師にとって個人の趣味や好みになるのだろう)。  「研修をしろ」「研修をしろ」と言っておきながら、教育センターで行う行政主導の官制研修以外は、すべて受けさせない、県の教育委員会現場の管理職。日ごろ「生徒のために」と言いながら、県の教育委員会の言うことだけにつきしたがっている上昇志向の校長、教頭たち。   今、私は全くやりきれない心持ちでいる。 こういうふうなあれも出ているんですね。  そうしますと、一体今まで議審されてきている、やれ研修だ何だかんだということは一体どこに意義があるのかな、どこにこういうあれがあるのかなという、だんだん私は疑問を持ってくるんですけれども、これに対して局長何か御意見ありますか。
  300. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 教員がみずからテーマを持ちあるいは悩みを持ち、そのことのためにみずから研修しようとする姿勢、立派なことだと思いますし、またそのために学校運営等に支障のない限りは承認をしていただくというのが現在の法制度の仕組みでございます。  さはさりながら、今の教育界に求められております国民の期待と申しますのは、やはりそれぞれの先生方について、新任の段階でそれぞれ身につけていただきたい事柄というのが多々あるわけでもございますし、そういう意味ではまず学校へ入って教職としての自覚を高め、まず自分として自立できるようなための必須条件というものが客観的に存在すると思われます。そういった基礎的な研修あるいは先輩教員によって実践的指導力を高めてもらうということも大きな必要な事柄でございますし、両々相まって初めて教員の資質は向上していくものと私どもは考えております。
  301. 下村泰

    ○下村泰君 しかし本当に局長はまことに何といいますか、弁舌さわやかというか、実にお上手ですな。私はしゃべるのが商売で四十年やってきたけれども、何を言ってもこたえないし、何を言ってもするする抜けられる。実に見事なものですよ。話術家としては最高ですな。ただ情がないんだよね、全然。  今私いろいろ例を出して申し上げましたけれども、初任者にとってこそ最も必要なことは現場に即した自主的な研修だということですね。子供との触れ合いの中での研修こそが大切だということです。障害児の場合それはもう極めて特徴的なんです。  現在盲聾養護学校の新卒採用時の教員免許の所持の状況、これはどうなっておりましょうか。
  302. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 新採の免許状所有状況というのを把握いたしておりませんが、現在盲聾養護学校に勤務しております本務教員数の中の特殊教育免許状所有者の比率は、特殊教育小学校総合いたしますと四四・一%でございまして、したがいまして残りの五五・九%の方は免許外の教科担任という形で勤務をされている実態でございます。
  303. 下村泰

    ○下村泰君 これはもちろん各都道府県で違うと思いますけれども、採用方法はどうなっていますか。
  304. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) それぞれの任命権者ごとに各都道府県、指定都市で校種別教員採用募集をいたします。そしてもちろん特殊教育の枠の中で合格されて採用される方もございますし、また特殊教育小学校の職員採用枠を設けていないで、つまり全体の教員採用枠の中で採用された中から特殊教育小学校に発令される、そういったケースもございます。一応今のところ四十七県のうち特殊教育小学校教員採用枠を設けているのが二十二県でございます。——失礼いたしました。ちょっと今の数字は不正確でございました。一応教員採用枠を設けている県の方が多うございますが、その採用の仕方は県によってさまざまでございます。
  305. 下村泰

    ○下村泰君 障害児学校教員さんですけれども、暫定的措置として教免法の特例があって全く障害児のことを見たこともないという先生も結構多いですが、西崎局長はよく御存じでしょうが、障害児童というのは触れ合う時間の長短がそのまま結果となってあらわれることが多いわけですね。ですから、先生との顔を合わせる時間が多ければ多いほど効果がある、短ければ短いほど何にもならないということなんですね。  ところが、先ほど東京都の、これは昨年何か試行的におやりになったんですね。「新採研指定校としての一年間を省みて」とあります。これは立川の聾学校なんですね。ここのアンケートに対する答えが出ているんですよ。「毎月、大体二回、月曜日ばかり、午後出かけるので、その新任者が担当した学級又は、教科の教育課程の消化へのマイナスの影響が大きかった。」、これはそうでしょうね、その先生がいないんですから。それで、ほかの人がやるにしてもその先生と合うやつがないから要するに時間少なくなるわけですね。ですから、結局マイナスの影響の方が多かった。で、「管理者は、新任者が子どもを指導している時間であったり、担任として、参加しなければならない行事や授業がある時間に新任者を集めて、課題研修や宿泊研修説明をしたり、計画を立てたりしていた。(管理者も、この研修に新任者を参加させることだけに目が向いてしまい子ども達へのこまかい配慮がぬけてしまっていた。)」、こういったような報告が出ているわけですね。そうしますと、こういったお子さん方に接し方が今の研修のあり方でいくと大変お粗末になってきているというのが現状のようですが、どうなんですか、これは。
  306. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 特殊教育の諸学校につきましては、先生指摘のとおり、児童生徒が一般の健常児と異なる子供たちですから、先生方についてもそれぞれの子供たちの心身の程度に応じての理解というものが必要である、そういう意味では一般の子供たち先生とはまた異なったいろいろな勉強をしていただくということが必要になるわけでございます。この点につきましては、免許状は特別にそのためにあるわけでございますが、今お話出ましたように、その免許状を持たない先生方もかなりおられる、そのためにはやはり研修が必要だ、どういう研修が要るかということで、例えば私どもで直轄しております特殊教育研究所がございます。久里浜でございますが、先生もごらんいただいたと思うんですが、そういうところではやはり例えば精神薄弱の子供たちの心理の特性とかあるいは病弱児の心理の問題あるいは情緒障害教育の概論、そういう心身の故障のある子供たちの特性に基づく研修ということをやっておるわけでございますが、このことは直轄の研究所以外に都道府県それぞれが心がけていただかなければならないというふうに私どもは思います。  この点の問題と、そのための研修によっていろいろな学校教育本体の支障が起きるではないかという先生の御指摘、この問題が別途あるわけでございますから、心身に障害を持つ子供たちのための特別の研修、そしてそれは必要であるとして、それに伴ういろいろな学校管理運営上の配慮はまたそれぞれの設置者なり学校長が配慮していかなければならぬ課題である。今法案御審議いただいている初任研につきましても、初任研の、何と申しますか、実施に伴う、学校をあげる場合、そこにおけるケアという問題もいろいろ考えられておるところでございますので、両々相まって充実していく必要があろうかというふうに考える次第でございます。
  307. 下村泰

    ○下村泰君 とにかくこういった養護学校その他で先生が例えば研修で一割出ていってしまったとします、仮に、それだけの規模の学校で。そうしますと、下校時などは障害児のお子さんが排せつ作業とかいろいろあるわけです、身体上の構造から。そして、まずはその面倒は見なきゃならない。それ一割も人がいなくなっちゃったらもう倍の重労働になります、先生は。しかも今度は連絡帳ですね、こういったものの記入もおろそかになる。障害児の子供さんを預かっている学校先生にとってはこの連絡帳の記入というのは大事なことですからね、これは。そのお子さんの健康状態あるいはリハビリの程度とかいろいろな症状が、よくなっていたものが悪くなってくる、あるいは悪くなっていたものがよくなってきたとか、いろいろな連絡がありますね。これは親御さんにとっては大変なことであり、後々のリハビリにも大変に重要なものなんです。  だから、こういったことや何かを総合して考えていきますと、先ほどから申し上げておりますこの障害児のことに関する研修問題というのは、これよほど文部省当局も考えていただかないと、ただ単に普通の学校と同じようなことをやったんではこれはえらいことになるよというのはおわかりいただけたと思うんです。中には、先生によって——危なくなってまいりました。この後たしか総理がおいでになって皆様方と御一緒に総合的にお話をしなきゃいけない、委員会を開くわけですが、総理が五時に参りますので、その前に片づけたいと思いますから。  これ大臣に一言だけお願いしたいと思いますが、大阪で、Nさんという方かおりまして、この方は車いす教師を目指して採用試験を受験したんですが、不採用になった。結果内容は市の教育委員会が公表してくれません。同じ大阪のTさん、これは視覚障害、目の方ですね。採用試験に受かりながら受け入れる学校がなくて長い間苦労しておりましたが、現在ようやく多くの問題を抱きつつ中学校に勤務しています。つまり制度上の締め出し、まあ制度上の締め出しはしていなくても、運用上また実際上締め出している実態があるわけなんです。そうしますと、せっかく先生になろうとして障害を越えて努力している青年が全部閉ざされてしまう。これも毎度毎度申し上げておるんですけれども、こういう制度をもう少し温かい、それこそ温かい感情で見直してはいただけませんか。これは大臣に、西崎局長何かあったら一言おっしゃって、あと大臣に一言お願いします。
  308. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先生指摘の、障害を持つ方々が教職におつきになるという門戸開放の問題でございますが、現在、先生御案内のとおり、盲学校におきましては視覚障害の先生がたくさんおられます。これは理療科等ではかなりおられまして、今公立学校では四百四十七人でございますか、盲学校についてだけちょっと私ども数字がございますが、四百四十七人の障害を持つ先生がおられるわけでございます。  御指摘の点は、そういう盲学校以外にも、一般の学校にも障害を持つ先生方が門戸開放の意味で教職につく道ができるだけ開かれるようにというふうな御指摘だと思うわけでございますが、これはやはり、教育助成局長の所管ではございますけれども、教員任用の問題につきましては、それぞれの学校段階、それから教員の配置状況、教科別の問題、いろいろございまして、設置者がそれぞれ苦労していろいろ考えておるところでございますので、この点につきましてはやはりそれぞれの設置者の問題としての配慮を求めることが必要でございますけれども、今後の一つ課題として、心身障害者の雇用促進法というものもあるわけでございますから、そういう点は政府全体の方針でもありますし、文部省もその一環として努力して指導しておるところでございますので、先生の趣旨は私どもも受けとめてまいりたいというふうに考えております。
  309. 下村泰

    ○下村泰君 大臣、積極的な御意見をひとつ。
  310. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 障害のある方々教員の道を選ばれるということにつきまして、少なくともその他の要因で道を閉ざすようなことがあっては、これは大変なことでございます。私どもも、むしろ障害のある方々、その障害を克服して教員の道に立たれるということについては、積極的にその御努力に報いたいと思っております。ただ、数字を見ますと、六十二年度で五十八名の方方が志されまして、結局採用されましたのは十六名、こういうふうにございます。ですから率は、まあ普通の方々よりもむしろ率は高いとは申すものの、もともと希望なさる方々の絶対量がまだ少ないとは申すものの、この方々に道がさらに開かれますように私どもも努力をいたします。また、初中局長から申し上げましたように、目の御不自由な方につきましては割にその道が開かれて教職の道につかれておる方々が多いようでございますが、またそういう痛みも分かち合える方々でございますから、私どもも積極的にその方々の道を開いてまいりたい、このように考えております。
  311. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございました。
  312. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  313. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 速記を起こしてください。
  314. 久保亘

    ○久保亘君 最初に総理にお尋ねいたしますが、総理は教職の経験もお持ちでございますので、体験的なお立場も含めて、戦後教育をどのように評価をなさっておられますか。
  315. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 今、経験という言葉をお使いになりましたが、私は現場におりましたのは三年三カ月でございますから、そう長い経験があるわけではございません。ただ、戦後の三大改革と申しましょうか、憲法改正、それから農地解放、それから六・三・三・四制の教育改革というような、私が教師をしておりましたときはちょうど一遍旧制で入った諸君がまた帰ってきたというような、ちょうど端境期であったと思うわけでございます。しかし、そのとき六・三・三・四制というのは、何か必ずしもなじんでおったとは思いませんけれども、その後やっぱり国民の教育に対する熱意というようなものからいたしまして、六・三・三・四制というのは今日定着し、そしてまた大変水準的には高くなったものではないかというふうに評価をいたしております。
  316. 久保亘

    ○久保亘君 中曽根前首相の教育改革の発想は、その根底に改憲を目指すお考えがおありになったことはもろもろの発言やお書きになった物はよって明らかでございますが、竹下総理も戦後教育というのは否定的に総決算せられるべきものというお考えをお持ちでしょうか。また、竹下内閣が今日進められる教育改革は何を目指して進められるのでありますか、お尋ねをしたいと思います。
  317. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) そのとき、私は英語と社会科の一級普通免許状をいただいておりましたので、特に社会科のときには現行憲法の特徴についてわかりやすく、言語明瞭に、意味も明瞭に一生懸命子供たちに教えたという記憶を持っております。ただ、憲法問題につきましては、ちょうどあわして青年運動をやっておりましたので、憲法八十九条でございますか、公の支配に属せざる公金を支出してはならないということについて、社会教育団体に対する助成ができないというようなことで矛盾を感じたことはございますけれども、本筋、現行憲法の基本についてはよく教えてやったというふうに私は思っております。  それから、結局大変水準は上がりますし、そして高等教育についても普及徹底したということは、私も十分今評価をしておりますが、他方、いわゆる大変な変化が、社会の急激な変化とでも申しましょうか、私どものときには考えられもしなかった校内暴力でございますとか、まあ私が国会議員になりましてからちょうど三十年目になりますが、その間、小学校六年生でたしか男女とも身長が十一センチ、目方が三・四キロふえておりますから先生より大きくなったということもあるかもしれませんけれども、やっぱり校内暴力とか、そういうような我々の時代に意図せざるものが起こってきたというようなこと、それからもう一つは、やはり我々の時代、のんびりして、まあのんびりという表現が適切かどうかしりませんが、あくせくいたしておりませんでした受験地獄の問題とかというような点についてのひずみというものが出てきたではなかろうかというふうな感じがしておりますので、そういう、それぞれ個性を伸び伸びと伸ばすとか、あるいは私が携わってきた社会教育関係も生涯教育のつもりでやっておったこともございましたけれども、そういう点について、新しく出直さなきゃならぬではないかな、こういう感じは持っております。
  318. 久保亘

    ○久保亘君 教育改革に関する臨教審の三年前に出されました第一次答申は、当面の改革の課題として、学歴社会の弊害の是正、受験競争過熱の是正、この二つを掲げております。この二つの課題について余り積極的に取り組まないでおいて、今日、教育改革の最も主要な課題のように初任者研修が取り上げられていることについて、私は大変疑問を感じております。  もちろん、教師が立派な教師になるために研修をすることは大事なことであります。しかし、中曽根さんだって教育改革に関する七つの構想を鹿児島で最初に発表されましたときに、教員養成制度、それから採用の多様化、研修充実、社会人の導入というようなことを一体のものとして主張されております。また、臨教審も養成と採用研修と評価は一体的に検討されるべきものと提言をいたしております。にもかかわらず、当面の改革すべき重要な課題が非常におくれておって、そういう中で一体的に提言されているものの中から研修、しかもその研修初任者研修という形で部分的に抜き出して提言をされているということについて、これが竹下内閣の教育改革の最も大きな問題であったのであろうか、私は大変疑問を感じておりますが、総理のお考えを伺いたいと思います。
  319. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 確かに戦後の経過を見てみますと、昭和五十五年度予算編成のときでございましたか、いわゆる十二年間かかって四十人学級実現するというような問題が大きくクローズアップしてまいりました。そのときも、私は過疎の学校でございますので四十人もいなかったわけでございますけれども、私自身そのいわば四十人学級というものと、教育に対する使命感と愛情と、もう一つはやっぱり能力の問題というのが先生として持つべき要素であるとすれば、やっぱり能力という問題が、専門的知識と言った方がいいかもしれませんが、そういう問題がいつの日か問題になるだろうという感じは率直に持っておりました。それが今こういう法律案として御審議をいただけるようになった。ですから考えてみますと八年かかったという感じがしておりますが、教育というものはやっぱり時間をかけて少しずつ改革していくものではないかなという感じを深くいたしております。
  320. 久保亘

    ○久保亘君 余り私の質問、お聞きしたかったことと総理のお答えとかみ合わない点もございますけれども、時間が限られておりますからなお幾つかお尋ねしたいと思いますが、中曽根さんの臨教審設置の伏線となりました京都座会というのがございまして、この京都座会の教育改革に関する提言の中に「でき得る限り公的機関からの束縛や指導を排除」しなければならぬというのがございます。私もこの言われた意図が那辺にあるのかというのはいろいろと検討してみなければならぬと思っておりますが、この文言どおりに読ましていただくと大変よくわかるような気がいたすのでありまして、今度のこの初任者研修が殊さらに研修条件つき採用期間の一年への延長とをリンクさせる形で、本来関係のないものをリンクさせる形で提案されているということについて私は公的機関による束縛や指導が強化をされるものだということについて大変大きな疑問を持つのであります。これは総理にお聞きいただいておけばよろしいと思います。  私がお尋ねしたいのは、教育というのは現場と行政が双方立場を尊重して、その理解と協力の上に成り立つものだと思うのでございますが、我が国の教育現場を総理はどのように御認識になっておりますでしょうか。
  321. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 専門家でもございませんので一口に答えるだけの準備が率直に言ってございませんけれども、私は教育基本法というものがあってそうして長い間の議論の末教育委員会というものの質的な変化もなされた今日、教育行政の立場からの教育委員会というものとそして現場先生方と今大変に効果的に機能していらっしゃるんではないかと、こんな感じで見ております。
  322. 久保亘

    ○久保亘君 残念ながら余りよくおわかりはなっていないのではなかろうかと、私こう思いますね。  それじゃ、具体的にお聞きいたしますが、研修の新たな制度の対象となる教職員の団体と行政の側というのは、やはりこれらの新たな制度をつくるに当たっては相互に理解を深め合うという努力が必要だということについては、総理同じお考えをお持ちいただけるでしょうか。
  323. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私もあの当時ジャパニーズ・ティーチャーズ・ユニオン、JTUというバッジをいただきましたときに大変誇りを持っておりました。がしかし、その後だんだん変化してまいりまして、そのうち私も県会議員になったものですから先生をやめたわけでございますけれども、そういう変化した中に何か私の人生観とでも申しましょうか、対話と協調の中にあってこそ繁栄があって対立と抗争の中には進歩がない、何かその方にだんだん傾向が動いていったような感じがいたしております。しかし、本来は私は絶えず協調して、対話と協調を重ねられていくべきものであるという感じは持っております。
  324. 久保亘

    ○久保亘君 私もJTUのバッジをつけていたころがございまして、総理とその意味では同志であらうかと思っておりますが、今私は総理がおっしゃられました本来の立場というものをつくり上げていくために行政もまた努力すべきものである、こう思いますがいかがですか。
  325. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やっぱり当時は行政の方も大変接触しておったような感じを持っております。それは私自身いわゆる市町村に教育委員会が設置される前という感じで都道府県教育委員会というものが設置された時期であったと思っておりますが、そのときは最初は双方に何かそういう努力というようなものはあったような印象を今でも持っております。
  326. 久保亘

    ○久保亘君 いや、それで今日においてもなおそのような努力を双方努めるべきものだ、それが日本の教育を発展させる力になるのではないか、こういうことについて総理の御意見を伺いたいと思っているわけです。
  327. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 双方とおっしゃいましたが、私はそのことはそれでいいじゃないかと思っております。
  328. 久保亘

    ○久保亘君 それでは一つ具体的なことを伺いますが、本来研修というのは自主的、自発的に生涯教師が続けるべきものだと私は理解をいたしております。その中でやっぱり自主的研修一つと考えられる教職員団体による教育研修も戦後一貫して重要な役割を果たしてきたと思うのでありますが、この研修には、まず最初に日光で開かれました日教組の教研集会に対しては、文部省は当時のたしか私の記憶に誤りがなければ文部政務次官を代表として派遣をいたしまして、この教育研究集会こそ日本の教育の新しい夜明けだというあいさつを送られたと記憶をいたしております。その後松田竹千代文部大臣だったと思いますが、教研集会に御出席になられたことがございます。また三木内閣の文部大臣を務められた永井道雄さんは、教研集会の講師を務められたこともあると私は、これは間違いかもしれませんが、たしかそうであったと記憶をいたしております。  それで、そういう教職員団体が自主的に行う研修、そして相互経験を交流し合う研修の役割というのは、今日の日本の教育にとってやはり大きな役割を持つものだ、このことについては総理も御同意いただけますでしょうか。
  329. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 教研集会というのに私も出かけたことがございます。この間その資料を、古いものでございますが見ましたら、平衡交付金の話を私がしておりました、今の交付税の前身でございますが。なかなか勉強しておったもんだなと思って、みずから感心しておりましたが、ただその教研集会がいわば組合活動の一環としてという、相互切磋琢磨は私はいいと思っておりますが、そういう印象を与えるような傾向に変化してきたんじゃないかなという、専門的にいつごろからということを申し上げるほどの自信はございませんが、そういう変化があったような感じがいたしております。
  330. 久保亘

    ○久保亘君 私は逆ではないかと思っているんでありますね。戦後非常に教育条件の悪かった時代には、総理が教研集会のメンバーとして御出席になって、平衡交付金のお話をなさったというほど財政問題などについて、組合の本来的な問題についても議論もしたんだと私は思っております。  今日においては、子供の教育に関して父母も参加する形で非常に熱心な教育そのものに関する議論が行われている。ところが、行政の側がこれを今総理が言われたような位置づけを一方的にすることによって、この教研集会を援助しない、協力しないというような考え方が強まっているのではないか。そのことが今回初任者研修を義務的な研修として位置づける法律をおつくりになることと裏腹の関係だと私は思うのでありまして、もっと教職員側が自主的に行う研修等についても行政としては積極的に協力、援助をすべきものではなかろうか。義務的な研修だけを押しつけていくことが本当にこの教師研修として意義を持つのであろうかという点について深い疑問を持っております。それで、きょうはあえて総理に御経験もあられる教研集会のことについてお尋ねしたわけであります。  時間が限られておりますから、最後に一つ伺いたいことは、総理が大蔵大臣を長期にわたってなさっておりますころ、大変教育についても深い理解を示していただいたこともございまして、私記憶をいたしております。しかし、残念ながらその時代に文教予算は年々国の予算に占める率が低下をいたしまして、今日ではついに八%という状況に相なっているわけでございますが、今回この教師としての御経験もお持ちで、教育に大変御造詣の深い総理として、この文教予算の問題について、総理のお考えをぜひ承っておきたいと思います。
  331. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私が記憶いたしております、私が大蔵大臣になってからは四十人学級十二年間でというのが出だしでございました。しかし義務教育費国庫負担法の中で、教材費とかそういうようなものを地方に持っていただくとか、そんなことを随分お願いをして、やりくりして予算編成をしておったわけでございますが、ただ一般歳出に占める割合というのは大体同じように推移しているんじゃないかな、こういう認識の上に立っておったわけでございます。
  332. 久保亘

    ○久保亘君 これは大変記憶力抜群の竹下総理とは思えない御答弁をいただいたと思っております。一九六〇年は一二%台でございますが、今日は八%でございまして、その間ちょうど大蔵大臣をなさっておられるころ一〇%を切ったんじゃないでしょうか。そういうことなんで、この文教予算が非常に窮屈になっておりますこのときに、初任者研修を義務づけることによって八百億の経費が必要だと試算されております。少なくとも内閣総理大臣として、この初任者研修に八百億を投じて義務づけようとなさる場合に、国費としては二百八十億でございますが、これらの経費が文教予算を圧迫することにならないようにしなければ、初任者研修を義務づけることによって、経済大国ではあるがますます教育文化小国になる心配を私どもはするのでございます。その中には、義務教育費国庫負担法の中で最も基幹的な職員の一つとして言われておる事務職員、栄養職員の人件費をこの国庫負担から排除しようとする考え方も財政当局に長年ございました。  文部省はこのことに対して強く反対をされてきたと思うんでありますが、今度のこの初任者研修にかかわる非常に多くの予算が必要となることによって、これらの問題に影響が及ぶというようなことは絶対にないということをお約束いただけますでしょうか。
  333. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やっぱり私の記憶で一般歳出、いわゆる国債費、交付税除く、そうしますと大体一四%程度でなかったかと思っております。  今の問題でございますが、恐らく先生は、かつて私どもがやってまいりましたいわゆる概算要求基準、俗称シーリングのときにその予算の中でのみ込め、そうすれば他のものが幾ばくか枠外に出ていくと、こんなことを御経験上の念頭に置きながらの御質問だと思いますが、大事なことは大事なこととして予算化しなければならないことでございましょうし、それがいわゆる従来の手法の延長の中で数字的にどれだけのみ込めるか、私も今それだけの知識を持ち合わせておりませんけれども、大事なものを大事な予算として獲得するということは可能なことではないかな、こういうふうに思っております。
  334. 久保亘

    ○久保亘君 総理がお答えになりましたのがいわゆる一般歳出ということでおっしゃったのでありますならば、その点は私も理解ができる点でございます。私は一般会計予算の中の率を申し上げたんでございます。  それで、最後になりますが、こういう初任者研修にかかわる問題などは国民の間にも非常に分かれた議論がございます。とりわけ条件つき採用期間という、この教育公務員にとって身分にかかわるような問題が研修に事寄せて一年に延長されるというようなことについては大変強い反対があるわけでありまして、合意を絶えず旨とされております総理として、こういった問題については慎重の上にも慎重に国民の合意を求める努力をなさっていただきたいと思うんですが、最後に総理の御意見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  335. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いわゆる研修期間というものが身分不確定である、こういう考え方での御質問かと思うのでございますが、私は従来から、やっぱり物すごい情熱とそして愛情と、そしていま一つがこの専門知識というようなことをお互いが教育者として備えなければならないということを念頭に置きますと、研修期間というものが今御指摘のような状態であったといたしましても、それは、その道に生涯の情熱を燃やそうと思う者にとってはマイナスの負担というふうには私は考えません。
  336. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合の三党及び二院クラブが協議をしてまとめました点につきまして、代表して内閣総理大臣並びに文部大臣に質問をいたします。  第一点は、教員研修は、教育公務員特例法第十九条及び第二十条に照らしても自主的、自発的に行うことが基本であって、行政はその条件の整備と機会の保障のために絶えず努力しなければならないものと思いますけれども、いかがですか。
  337. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) おっしゃいますように、教員研修は、一方におきましては自主的、自発的に行うことが基本でございます。また、前前から言っておりますように、一方行政は、そのために条件整備、つまり計画し、その機会を与えというようなことに絶えず努力し、その両方が相まちまして研修の実を上げる、こういうことでございます。初任者研修実施に当たりましても、その理念を尊重しつつ行ってまいるべきものと、このように考えております。
  338. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私も、行政は条件整備あるいは機会の保障とか、要するに環境の整備というようなことに当たるべきものである、新しい教育委員会制度になった当初からそういうものではなかろうかというふうに思っておりますので、今、研修に対する物の考え方も文部大臣からお答えしたと同じでございます。
  339. 粕谷照美

    粕谷照美君 第二点は、初任者研修の具体的な内容については、各地域や各学校の実情も考慮し、適切に定めるものとする。また、教職員団体等の意見も聞いて、十分な理解の上に進めていかなければならないものだと考えますけれども、いかがでしょうか。
  340. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 初任者研修の具体的内容につきましては、地域や学校の実情も考慮いたしまして、適切な計画が行われることは当然であります。また、教職員団体ともその理解を得られるように努力してまいりたいと存じます。
  341. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは全く文部大臣と考え方をひとしくしております。
  342. 粕谷照美

    粕谷照美君 第三点は、初任者研修実施に当たっては、研修内容の精選、重点化を図ることによりまして、初任者はもとより、学校全体の負担が増加することのないようにしなければならないと思いますけれども、文部大臣いかがでしょうか。
  343. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 初任者研修実施に当たりましては、質問の趣旨を尊重申し上げまして、研修内容の精選、重点化を図ることによりまして著しい負担の増加をもたらさないように努力をいたしたいと存じます。
  344. 粕谷照美

    粕谷照美君 第四点は、初任者研修経験に応じて実施する体系的な研修の一環をなすものとされておりますけれども、今後さらに法制化するという考えはないと理解してよろしゅうございますか。
  345. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 初任者研修経験に応じる研修と体系的に一貫性を持つものとされておりますが、経験に応ずる研修を今後法制化する考えはございません。
  346. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 法制化の考えはないということを私からも確認をいたします。
  347. 粕谷照美

    粕谷照美君 次に、研修におきましては教職員団体のあり方等に関して不当労働行為と思われるような指導を行ってはならないと考えますけれども、いかがですか。
  348. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 研修において不当労働行為と思われるような指導は、これはやってはならないことだと私も思っております。
  349. 粕谷照美

    粕谷照美君 第六点は、指導教員の任命に当たっては、本人の意見を聞いて行うべきであり、本人の意に反して職務命令を行うようなことは避けなければならない、こう考えますが、いかがでしょうか。
  350. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 指導教員の職務の性格から見ましても、任命に当たりましては本人の意欲を考慮することが望ましい、こう考えております。
  351. 粕谷照美

    粕谷照美君 第七点は、指導教員は、初任者に対し実践的な研修指導及び助言を行うことが任務であって、初任者に対する服務監督の権限はないし、したがって研修の評定を行う立場にはない、こう考えますけれども、いかがですか。
  352. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 指導教員初任者に対しまして実践的な研修指導及び助言を行いますが、服務監督権を有しておりません。したがいまして、指導教員初任者の評定を行う立場にはありません。
  353. 粕谷照美

    粕谷照美君 派遣をされます非常勤講師は、初任者研修に係る代替の職務を主たる任務とするものと考えます。したがいまして、必要に応じて出席することができますが、職員会議の構成要員ではない、こう思いますけれども、いかがでしょうか。
  354. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 派遣されます非常勤講師は、初任者研修に係る指導教員または後補充を本来の任務とする者でございます。職員会議の扱いにつきましては、学校において判断すべきものでございますが、おおむね御指摘のような扱いになるものと考えております。
  355. 粕谷照美

    粕谷照美君 次に、初任者研修を受ける者は、指導教員指導及び助言について任命権者または服務監督者に意見並びに要望を述べることを認めるべきであると思いますけれども、いかがですか。
  356. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 初任者意見や要望を聞きますことは重要でありますと考えますので、そのような方向指導してまいりたいと存じます。
  357. 粕谷照美

    粕谷照美君 次は総理並びに文部大臣。初任者研修に要する費用は、現在進められております教職員定数改善計画及び今後策定される計画など教育条件整備のための予算影響を及ぼさないように努力をすべきであると思いますけれども、いかがですか。
  358. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 教職員定数改善計画等への影響の問題についての御指摘でございますが、そのような意を体して適切に対処することに努力する所存でございます。
  359. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 私どもも最大の努力をいたしてまいります。
  360. 粕谷照美

    粕谷照美君 初任者研修に必要な定数は定数改善計画には含まない、今までの御答弁がそうだったわけですけれども、文部大臣いかがですか。
  361. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 初任者研修実施に係る教員定数につきましては、現在進行中の教職員定数改善計画に係る教員定数とは別建てで措置する考えでございます。
  362. 粕谷照美

    粕谷照美君 非常勤講師の手当など自治体の負担とされております経費は、実質的に自治体の負担とならないように財政的な努力を行うべきだと思いますが、総理いかがでしょうか。
  363. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 今おっしゃいましたような意を体して、適切な対処に努力をしてまいります。
  364. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 最大の努力をいたしてまいります。
  365. 粕谷照美

    粕谷照美君 以上をもちまして私の質問は終わりますけれども、引き続きましてその他数点につきまして公明党・国民会議の委員から質問が行われます。
  366. 高木健太郎

    高木健太郎君 それでは、私の方で条件つき採用期間に関する日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、二院クラブで協議の上まとめましたものにつきまして三点だけ質問させていただきます。  第一は、条件つき採用期間を経過した教員の正式採用に当たりまして、その職務遂行能力の実証の基準は従来どおりであって、正式採用となることが原則であるということに変わりはないだろうか、総理にお尋ねいたします。
  367. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) ただいまの御質問につきましては、条件つき採用期間を経過した者の正式採用に当たりましての能力の実証の基準は従来どおりと理解をいたしております。
  368. 高木健太郎

    高木健太郎君 第二点は、条件つきの採用期間中の教員を免職しようとする場合、または条件つき採用期間を過ぎて正式採用とならない場合は、事前に本人から事情を聴取するなど、適切かつ慎重な運用を図るべきであり、また人事院並びに人事委員会は、条件つき採用期間を規則で延長する場合は提訴する権利を保障すべきだと思いますが、いかがでしょうか。人事院総裁並びに文部大臣にお伺いいたします。
  369. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 条件つき採用期間中の職員につきましては、勤務実績が非常に不良であるとかあるいは心身に故障があるというふうな場合には、引き続き任用することが適当でない場合等含めまして免職することができるというふうに定められておりますけれども、この場合におきましても、やはり一身上極めて大事なことでございますから、お説のようにその措置については適切かつ慎重にこれを行わなければならない、こういうふうに私どもは理解いたしております。
  370. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 先生指摘のような場合は、適切かつ慎重な措置をとりますために本人の事情を聞くことも一つの方法であると考えております。
  371. 高木健太郎

    高木健太郎君 第三点は総理にお伺いいたしますが、条件つきの採用期間中、教職員団体等に加入することによって差別や不利益を受けるようなことがあってはならないと思うのですが、いかがでございますか。
  372. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは先生おっしゃいますとおり、条件つき採用期間中に教職員団体等に加入することでいかなる差別も不利益も受けてはならないものであるというふうに私も認識いたしております。
  373. 高木健太郎

    高木健太郎君 ありがとうございました。  それでは、協議の上まとめましたものの質問は以上で終わりまして、私からもう少し質問させていただきます。  その一つは、生命にかかわるような仕事をしているお医者さんの免許証交付や自動車の運転免許証交付は、教員のように条件つきではありません。このような状況で、教員のみに条件つきの採用期間を六カ月から一年に延長するということは、余り教員に対して厳し過ぎる、かえって教員の志向意欲を減殺するものではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。総理にお願いします。
  374. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やっぱり児童生徒の人格の形成に大きな影響を与える、そして、教育の成否というものは結局先生方に依存するということに尽きるではなかろうか。したがって、私は教員としての素地をつくる重要な時期、一年間の研修制度ということにつきましては、そして条件つき採用期間もそれと同じ一年とするということにつきましては、私は情熱と愛情と、そして資質の向上という、三つ目の点において大体整合性があるんじゃないかなと、専門家じゃございませんが、そのような感じを持っております。
  375. 高木健太郎

    高木健太郎君 総理にお伺いしますが、条件つきの採用期間を一年に延長することや、教員としての適格性を欠いた者に対する分限処分は、教育の国家の将来への影響を憂慮する余り、個人の尊厳と自由を拘束するおそれがないかと思うものでございますが、総理はこれについてどのようにお考えでしょうか。
  376. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 適格性を欠く先生方の分限処分、これは他の公務員と同じく客観的基準に基づいて行われるべきものというふうに考えております。採用された先生方、職員が公務員として真に適格かどうかを判断することは、成績主義の原則を貫くために必要不可欠なものであるという基本認識でございます。先生方条件つき採用期間を一年に延長する措置は初任者研修制度の導入に伴います先生方の勤務形態の特殊性と職務の重要性に基づくものではないか、私なりに、専門家ではございませんが、合理性があるというような考え方で認識をいたしております。
  377. 高木健太郎

    高木健太郎君 臨教審はその第一次答申で「教育改革は、教育基本法の精神にのっとって進められるものである。」ということを前提とするとしておりますが、答申の教育目的には基本法の精神が歪曲されたものになっている、そういうふうに日教組は批判をしておりますが、これに対しまして総理はどのようにお考えでしょうか。私は政府と日教組の相互理解ということは、日本の教育の将来にとって非常に重要であると思いますので、この点をお伺いいたしたいと思います。
  378. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いわゆる新憲法ができて、その後教育憲法とでも申すべき教育基本法が制定された。それに基づいてもろもろの教育行政というのが展開されてきたわけでございますので、私はやっぱり教育改革はあくまでもそのことが基本にあるものであるというふうに考えておるところでございます。臨教審答申はいろいろな多岐にわたる問題でありますが、それが教育基本法そのものの範疇の外にあるというふうなことは私は考えたことはございません。
  379. 高木健太郎

    高木健太郎君 終わります。
  380. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、私は条件つき採用期間六カ月を一年に延長するという改正案について質問をさせていただきたいと思っております。  まず文部大臣に伺いたいのは、法律というのはやはり何かそこにメリットがなければならないと思いますが、この条件つき採用期間を半年を一年にすることによって初任者が、つまり当事者ですね、受けるメリットあるいはデメリットがあるならばその辺を伺いたいと思います。
  381. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 今までたびたびお答えをいたしておりますように、いい点と申しますと、この初任者研修制度を導入することによりまして、そもそも教員というものは職務の特殊性がある、その職務遂行能力の判断がなかなか難しいものでございますが、その実証の困難さというものが救済されるという点では、まずこれはいい方の面であろうと思います。また、職員の採用を能力の実証に基づいて行うという公務員法上の成績主義の理念が生かされるという点もまたあると思います。  また一方で御心配をいただく点があるとすれば、正式採用職員に適用される分限規定の適用がない期間が長くなるという点で御心配の御指摘をいただいておるところでございます。しかし、条件つき採用職員の分限も正式採用職員に準じまして客観的になされますので、そういう面では今言ったメリットとデメリットとすれば、デメリット面はそれでカバーをすることによりましてメリットの方が多いというふうに私どもは理解をいたしております。
  382. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 大臣は研修のメリットをかなり出されたと思うんですが、研修に伴って条件つき採用期間を延ばすということですね。  そこで、今デメリットで触れられた条件つき採用期間というのは正規の職員に準ずるということでありますから、したがってこれはやはり身分が不安定である。法律を読みますと、取り扱いは同じだ同じだとおっしゃいますが、確かに項目はそうでありますけれども、条件つき採用期間というのはいつでもやめさせることができると書いてございます。これはかなりやっぱり表現から私はそう思うのですけれども、非常にこれはストレスになるというかそういうものだと思うんです。したがいまして、条件つき採用期間、半年を一年にするということは大きな当事者の身分上の相違がはっきり出ているのではないかと思いますが、文部大臣、そこはどうお考えになりますか。
  383. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) これもお答えをいたしておりますように、そもそも教職の身にあります方々は職務の特殊性がございます。それに対しまして初任者研修を行っていただくということでその単位を一年間とさしていただいたものでございますから、その一年間は一方で教え一方で先輩教員から学ぶという二面性を持ちます。その間の職務遂行能力の判断というものはさらに困難性を増すという点で、今までの六カ月よりは一年の方がより正しかろう、こういうことでお願いをいたしておりまして、今私の申しましたデメリット面は、そういう御心配があるとして御指摘をいただいた部分であるということで、実際には今までも六カ月の条件つき採用期間、これは御自分の条件以外にその職務遂行能力が不可能だという点でおやめいただいた方は一名ないし二名の範囲。そこで、先生が御心配になる半年で一名ないし二名といっても、これを一年に延ばすということは事故が起こる確率は倍になるではないかという御心配ではございますけれども、その後の半年間でそれが大幅にふえておるという実績もございませんし、それからまた同時にもう一つつけ加えさせていただければ、職務遂行能力の判断は六カ月であれ一年であれ、その判断基準は全く変わるものではございませんということを申し上げまして、その不安の要素が大きくなるということには直ちにつながるものではない、このように考えております。
  384. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 せっかく総理大臣おいでになっておりますので、私たち何遍かやりとりをした質疑でございますけれども、ちょっと解説をさしていただきます。  三万人に一人とか二人とかいう確率は非常に少ない、だから本当にゼロに近いではないかということでありますが、半年で一人、二人ということは、期間が倍になればその発生率は倍になるわけです、期間ですから。それでも三万人のうちの二人が四人になってもゼロに近いということは言えるわけですね。しかし、それは確率だけを見ている人の話であります。エイズのときと同じなんです。百万分に一回でうつるかもしらないという確率であっても、かかった人、それはもうその人にとって一〇〇%なんですね。ですから、この場合も心身の故障がもし起きる確率が前の半年で一人または二人、後も一人または二人、三万人ですから二万九千九百何十人かはほとんど問題でないではないかということでありますが、そこにぶつかった人は一〇〇%の不利益をこうむる。そこが私は指摘したところなんです。エイズも同じなんです。百万人に一人という確率のうつることがあっても、絶対にうつらないというんでない限りは、うつるときにはその人がトップにぶつかるかもしれない。これは確率論と、それから感染あるいはそれに遭遇したその人とは、これは違うということです。これは総理大臣の御見解を承るつもりじゃなくて、ついくせが出まして、レクチャーちょっとさしていただいたわけでございます。  そこで、総理大臣に伺いたいんですが、教員について条件つき採用期間を一年間にする。これは文部大臣からの前の質問に対するお答えをいただいたときにも言っておられたんですが、まず研修というものがある、そして研修にリンクをさして条件つき採用期間を一年にした。これは私は条件つき採用というのと研修とは全く違うものだと私は思っております。皆さんの質問の中でも、研修は生涯研修なんだから、その意味では長い方がいいのではないかということは言えると思うんです。したがいまして、私はなぜリンクをさせるか。文部大臣何遍もおっしゃっているんですけれども、この辺の御認識は総理大臣いかがであろうかと、こう思います。条件つき採用期間研修というもの、私は性質が違うと思いますけれども、これをなぜ一緒にするのか、その理由をどうお考えか伺いたいと思います。
  385. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私ども専門家でないものには大変難しい質問でございますが、本当は先生方というのは、いい先生とか悪い先生というのは、本当は教え子が評価してくれたときに一番うれしいものでございます。先生もそうでございましょうし、私もそうでございました。しかし、いわば要するに一方で教えながら一方で研修を受けるという考え方が一年間あるといたしましたならば、やっぱりそれの適性というようなものをこの採用条件とするには、それとリンクしておった方が極めて常識的ではないかなと、こんな感じで私自身は承らせていただきました。
  386. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは文部大臣に伺いたいんですけれども、私の時代はやっぱり条件つき採用期間があったはずなんですけれども、私もう忘れちゃいましたけれども、あったと思うんです、私も公務員でございましたから。しかし改めて半年を一年にすると言われれば、やっぱり不安感というものが出ると思います。  これは法律をつくる側のお方は、それは自分は済んでいるからその痛みは直接ではないと思うんです、そのフィーリングでやっているだけでしてね。受ける人は本当にダイレクトに直接それを身にこうむるわけです。よく我が身をつねって人の痛さを知れと、こういう言葉がございますが、これはやっぱり為政者の心ではないかと私は思います。ですから、法律をつくるときには、それを適用される人がどんな立場になるだろうか、どんな気持ちになるだろうかと、こういうことを常に考えるのが為政者の心ではないかと思うんです。管理者の心で法律をつくるのではなくて、それは管理が必要でしょう。しかし、それを受ける人がどんな痛みを覚えるかということが非常に大事だと思うんです。その意味で私は適格性の判定を半年よりも一年にした方がいいと、もしそういう一般論が、これは一般論だと思うんです。教員だけ特別であるわけがないと私は思うんですけれどもね。  というのは、何度もお話ししましたが、教員が確かに子供にとっては神様ですよ。私なんか、小学校でそう思いましたから。しかし我々が大人になってみれば、教員は神様であるわけがないです。三万人も神様が毎年生まれたんでは、日本じゅう神様で埋まってしまって、神様以外の人いなくなるんじゃないかと思いますが、まあそれはしかし、子供にとっては神様ですね。しかし、それは教員だけではなくて、公務員だって同じわけだと思うんです。  したがいまして、今の職務遂行能力が、半年よりも一年の方がそういう何かが起きる確率が多くなるわけだから、それで判定しやすいんだという一般論が通るのであれば、改めてちょっと、御提案というほどではないんですが、全公務員を一年にするという考えはないか。特に、教員をどうしてもというんであれば、教員と特に関係の深い文部省のお役人、それから教育委員会の公務員の方方は同じ痛みを同じように受けるという意味で、すべて新規採用は一年間の採用期間になさってはいかがかと、これは見解を承りたいんですが、いかがですか。
  387. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) これは確かに各公務員ともそれぞれ重要でございますし、また六カ月の条件つき採用期間というものを設けておるわけでございます。その中で、私が再三申しておりますように、教育公務員の方々は、主に教室で人と人と相対して、人が人を教えるという、その面では本来特殊性がございますと、こう申し上げておるわけでございます。  その特殊性が本来ある方々に対して研修を行うということにつきましては、いろいろな考え方がありますけれども、やはり学ぶことのカリキュラムというものは、教育のカリキュラムはやはり一年と押さえるのが常識であろうとするならば、一年を通じて研修を行っていただく。となりますと、その間、先ほども申したことで、重複して申しわけないんでございますが、教員方々にとっては教えるという職務と、それから学ぶという両面が付随して一年間お過ごしになるわけでございますから、その職務能力の遂行を判断いたしますのもやはり一年というふうに考える方がより正しくはないかということでお願いを申し上げておるところでございます。  そこで、先生がおっしゃるように、さはさりながら何か起きる、例えば事故が起きる確率は倍になるではないかとおっしゃることにつきましては、先ほど、いやそれは大差はございませんということについて、先生は、いや大差がないといってもその当人にとっては一〇〇%のことである、したがって先ほども申し上げたことでございますが、その御当人の不測の例えば御病気ですとか、その他の事故によります問題につきましては、やはりそれで長期間、相当の長期間やはり療養を必要とされる、あるいは職場に復帰されることが不可能であるというような場合に本採用にならざる場合があるということを申し上げておるわけでございまして、そのときにほんのたまたま六カ月前には健康だったけれども、十二カ月直前でちょっと体を壊したという場合にそれで本採用のチャンスがなくなるという意味ではございませんで、それほど身分が不安定だということを決して増幅するというようなことは私どもは考えておらないところでございます。
  388. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 身分が不安定でないというお考えであれば、半年にしていいわけではないか。ですから、一年にする意味が特にないような御答弁なら半年でよかったはずではないか、こう思うんです。  それから、研修期間というものがその人の職務遂行能力を評価するための重要なステップだとすれば、どうして今まで二十日間の研修なのに条件つきは半年であったか。そのときに二十日間でやめるならなるほど理論は通ると思う、それは合っていない。なぜここは合わないであとを合わせようとするのか。これはちょっと私は論理的には合ってないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  389. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 現在まで一般的に行われております新規採用職員研修は年間二十日間の研修でございますが、これは集中的にということではなくて、一年間を通じてその中で二十日間の研修が行われるという状態でございまして、言うなれば通常の一般の職員の勤務状態と同じような形で、二十日間程度の研修の場合はこれは教員に限らず通常の公務員等にも行われているわけでございまして、そういった意味の差異はないわけでございます。  今回の制度の問題といたしましては、初任者研修制度を導入いたしまして、まさに先輩教員指導を受けながら勤務に従事するという形で、その勤務遂行が本人の能力そのものなのか、あるいは先輩教員による指導の結果なのかというような状況が出てくるわけでございまして、基本的には今一般的な六カ月の期間との差は当然合理性があると考えられますし、また先ほどから大臣が繰り返して申しております教員の職務の特殊性に由来する勤務遂行能力の実証の困難性がいや増すということの意味におきまして、適正な成績主義の理念を達成するために一年とするということの考え方で提案をしているところでございます。
  390. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 精神病、精神病というまでいかないな。やっぱり神経性疾患かな。拘禁性疾患ストレスというのがあるんですね。監禁をされているという状態でストレスを起こしてノイローゼになるという拘禁性ノイローゼというのがあるわけですが、今の指導教員がついて初任者指導を受けるということ自体はいいことだと思いますけれども、それが毎々皆さんの御質問にもありましたが、どうしても性が合わない、しかしやむを得ないと。一年間はどうしても我慢して離婚できないという状態なわけだ。それは、それでも監督する側はやはり指導者だし、指導する側は指導者、受ける側はどうしても受けるんで、受ける側というのは拘束を受ける、監禁を受ける形になると思うのです、監視されるわけですから。ですから、そしてメモをとって、行動のメモが出てくるわけで、それはやはり受け取り方によっては拘束性、拘禁性のノイローゼを惹起することもあるのではないか。半年なら今までそうだったのだからそれはもういいと。  そこで、これに対する御答弁いただくに当たって、総理大臣にやはり最後に、私は公務員だって同じではないかと思うのです。ですから、公務員が六カ月なんだから、どうしてこれをやはり一年にしなければいけないのか。その職務遂行能力云云というのはパーフェクトではないんですね。それは午前中の質問にも私、入れましたけれども、午前中ではなかった、午後でしたか、パーフェクトではない。そして何年たっても人間パーフェクトでないです。職務遂行能力が一年終わったら完璧だなんという人はありませんから。間違いなく間違いが出てくるわけです。ですから、それを思いますと、やはり教員だけというのは、私どうしても納得できないんです。ですから、他の公務員とのその意味での整合性というのはやはりここではどうなるんだろう。  例えば、総理大臣に聞いてもだめかとは思いますけれども、何年か、三年ぐらいやったらもう一度考え直すとか、何かやはりお考えいただきたい。私はできるだけ半年にした方がいいと思っています。研修は一年があれだったら二年にしてもいいと思う。そう思っておりますけれども、総理大臣のお考えを承って私の質問を終わりたいと思います。
  391. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これも極めて専門的なお尋ねでございますので、正確にお答えするだけの知識が私に不足しておると私自身も思っております。  ただ、お話を聞きながら感じておりましたのは、一つはいわば既得権というものが既に存在しておったとすれば、半年が一年になるというのはこれは問題だ。しかし、既得権というものが発生してないところに新たに教職公務員の特殊性からする研修期間との整合性の中で一年というこの期間が設定されたとすれば、それはそれなりに整合性があるんじゃないかなと、こういう感じで承っております。
  392. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 竹下総理に専ら質問をいたします。  まず第一は、去る二十二日、自由民主党安倍幹事長は、遊説先の秋田市内のホテルで講演し、いわゆる奥野発言について、奥野発言はそう間違ったことを言っているわけではないと述べたと報道されました。その後、奥野さんを擁護したものではないと釈明もしているようですが、さきの五月十三日の閣議での中尾経企庁長官の発言といい、火のないところに煙は立たないのであります。  要するに、問題の根源は、総理、あなた自身が、中曽根前総理でさえ示した十五年戦争は侵略戦争であったというその見解をあなた自身が明確にしないということが、こんなふうに閣僚や党幹部の誤った発言が次々と出る原因ではないかと私は思うわけでありますけれども、改めて竹下総理自身の見解を明確にしてもらいたいと思います。
  393. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これもいつも申し上げておるとおりでございまして、政府として昭和四十七年の日中共同声明の中で述べられておりますとおり、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省するというところからの認識というものは不変であるというふうに考えております。
  394. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、国会、本会議の場でもしばしばそういう言い方をされました。あるいはまた諸外国が十五年戦争で日本が侵略したと言っている事実があることを認め、それを反省しておるという、こういう言い方をされたときもありますけれども、侵略戦争という認識かどうかということをずばり聞いているんですけれども、そこにずばりとした答えがないんですね。だから、いろいろ言われても、何か答弁をはぐらかしている。片一方、ある時期には奥野発言について、あれも一つの歴史観だというふうに言われたとかということでありますので、なぜこの問題を改めて聞くかと申しますと、教科書記述に当たって、侵略を進出という用語に改めるべしという文部省指導方向をとっておるだけに、一体最高責任者である総理があの十五年戦争を侵略と見ているのか見ていないのか、ここをはっきりしていただかないと、教育上の問題にも影響を与えてくるということで、あえてお尋ねをしているわけであります。  お尋ねします。十五年戦争は侵略戦争と考えているのか考えていないのか、もう一遍お答えください。
  395. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これも戦前の我が国の行為について、これが侵略であるという厳しい国際的批判を受けてきたということは事実であって、この事実は政府として十分認識しておる。これをいわば昭和四十七年以来お答えしておることでございます。
  396. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 もう一遍尋ねます。  諸外国があの十五年戦争を侵略戦争だとして批判をしておるというその認識は、政府として、外国がそういう批判をしているというその事実については、政府として認識をしているという言い方ですけれども、あなた自身、最高責任者である竹下総理大臣としては十五年戦争をどういう認識か、くどいようですけれども、もう一遍きちっとお答えください。
  397. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは昭和四十七年以来、今私がお答えしたようにお答えしておることでございますが、本来これについてはいろいろな経緯があったと思っております。先般お亡くなりになった高島判事が当時の条約局長でございましたが、私もその辺の事情を若干承知いたしておりますが、したがって、政府として答えたのは、十五年戦争というものの定義があるのかとか、あるいは侵略戦争というものの定義があるのか、そして、この行為は侵略かどうかとか、そうしたことに質問が追っかけられまして、その中で片言隻句が誤解を与えてはならぬという立場からいたしまして、正確に、蓄音機のようにお答えしてきたわけでございます。したがって、私はその認識の上に十分立っておるということでもって、これが統一した考え方であるというふうにこれまでも申し上げておるところでございます。  君自身が歴史家としてどう思うかとかいう質問もあるでございましょう。しかし元来この種の問題につきましては、後世の史家これを評価するという答弁も繰り返していたしておるというところでございます。
  398. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 総理自身が蓄音機のようなという、そういう表現をされることについては、私は一国の総理としていかがかなと、こう思うんでありますが、それはさておきまして、なぜ私がこういう質問を繰り返すのか、実は国民の中に疑問があるからであります。というのは、中曽根総理の時期に同じような発言をして物議を醸した藤尾文都大臣というのがおりました。あの藤尾文部大臣の発言のときには、結果は当時の中曽根総理が藤尾文部大臣を罷免するという措置をとりました。今回は竹下総理が罷免という措置ではなくて奥野国土庁長官が辞表を出すという、こういう措置でありました。だから、中曽根前総理と竹下現総理とはこの十五年戦争の認識の問題について、それにかかわる閣僚の一人の発言について態度が違うのかなと、こういう疑問が国民の中から出てくるのは当然かと思います。こうした点で、いや中曽根前総理のその態度と、昭和四十七年日中共同声明で、あれは既にそのころからあった声明であります。中曽根前総理の十五年戦争は侵略戦争と考えるというこの認識と違うのか同じなのかお聞かせください。
  399. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは私もよく記憶しております。中国に対して侵略的事実を否定することはできないと考えておる、こういう御答弁が中曽根総理からあっております。私はそのときの閣僚でもございました。したがって、その認識は等しくいたしておるところでございます。
  400. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それでは次の問題に進みます。  初任者研修制度についてでありますけれども、本法案によって条件つき採用期間を六カ月から一年間に延長する。これは教育基本法で保障され、教育公務員特例法で一般の公務員にも増してその身分が尊重されなければならないとされている身分保障の原則の根本的転換を意味するものだと思うわけでありますけれども、しかも初任者研修の成績や態度いかんで正式教員への採用拒否もあり得るという仕組みをつくることは、必然的に権力と上司に迎合する教員をつくろうとするものじゃないか。そこで教師の権力統制が教育全体を戦争の道具にしたというあの戦前の苦い反省の上に立って、戦後教育公務員特例法教員の自主研修権を特別に定めた、この経緯は教職の経験も持つ総理自身もよく御承知のはずのところだと思いますけれども、こうした点についての総理の御見解どうでしょうか。
  401. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私は今回の措置は、先生方の身分を、まず教員の身分を取得した後の条件つき採用期間についての取り扱いでございますので、研修期間が一年、そして条件つき採用期間というものがそれと整合性のとれた一年になっておるということに私自身は抵抗を感じておりません。
  402. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 総理が大蔵大任を務めておられました時期、いわゆるこの四十人学級問題でありますが、当初の文部省の九カ年計画、これを十二年計画に延長させるということになって以来、逐年進んできたわけでありますが、言うまでもありませんが、教員の真の力量発揮のためにはいっときも早くこの四十人学級、これを完成させて行き届いた教育条件の整備が必要であります。しかし現状は、九年目のこの一九八八年度、九年目であるにもかかわらず達成率は四〇・〇五%ということで非常におくれている。政府自身の計画に照らしてもおくれている。いわんや国際的に見れば、今や三十五人学級、三十人学級という時代でありまして、国際的には極めて日本はおくれているというわけでありますけれども、こういうおくれを来したことについてかつて大蔵大臣を務められたあの時期も振り返りつつ、総理としてはどういう反省をなさっているんでしょうか。
  403. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 昭和五十五年度予算編成の際、最終的に十二年間と。それはいわゆる小中学校の生徒数の社会増、社会減等を念頭に入れましてそして十二年というものが、昭和五十五年といえば財政再建の始まった年でございますが、一番適当であろうというので最終的に決断をいたしたわけでございます。決断いたしました限りにおいて、私は四十人学級というものの達成のためにはそれは計画どおり物を進めていかなければならないというふうに考えております。ただ四十人というもの、もう踏み切ったわけでございますが、されば三十五人がいいのか二十人がいいのか、いろいろなそれは議論があろうと思うわけでございます。先生方が一人の生徒に一人ついておればいいという議論もそのときいたしてみましたが、やっぱり子供たちがそれぞれ切瑳琢磨する中に教育というものがあるという限りにおいて幾らが適正であるということを、私は教育の専門家ではございませんので申し上げる自信はございませんが、当時決めました四十人というものはやはり適正なものではないかというふうに考えておるところでございます。  ただ、その後の予算関連等につきまして、いわば地方と国との負担分任というようなことについて、教材費でございますとかいろいろな点につき御議論をいただきながら予算編成をさせていただいたという苦しい体験というのは今でも持ち続けております。
  404. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 三十五人が適当か三十人が適当かというそのことを問うているわけじゃないんです。当面国が立てた計画自身も九年目に入りながら約四〇%と、こういう状況のおくれを来しておるというこのことについて、かつて財政を取り仕切ってきた大蔵大臣の経験も持つ総理として心の痛みは感じていますかと、ここを聞いているんです。
  405. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) その都度毎年毎年、今は忘れましたけれども、生徒数の社会増、社会減というものがあって、昭和六十六年にはきちんと対応できるという考え方は私は今でも持ち続け、その線に沿ってやってきたと、こういう感じがいたしております。
  406. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 終わりますけれども、反省はないですね。
  407. 勝木健司

    ○勝木健司君 昨年八月に臨教審の最終答申が提出され、今国会には教育改革の関連法案が六本提出されるなど、ことしは言うなれば教育改革元年と位置づけることができると思います。現在本委員会でも審議されておりますこの初任者研修導入のための教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律改正案は、その中でも最も重要な法案だと考えております。本法案を含めて、今後の教育改革に臨まれる竹下総理の基本的な考え方をまずお伺いしたいというふうに思います。
  408. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 最初お話しいたしましたが、戦後の三大改革の一つとして学制改革が行われ、そしてそれが先生方や父兄や国民全体の情熱でもって成熟してきた。しかし一方また大変なひずみができてきた。したがって、いつの日にも教育問題というのはこれは国政の最大課題でございますから、そのいろいろひずみ等が生じてきた変化に対応して、ここでもう一遍見直そうというところから、いわゆる臨教審というものが設置され、そしてそれの答申に基づくその一つのこととして初任者研修制度というものがまず始まりつつある、法案を審議いただいておるわけでございますが、    〔委員長退席、理事林寛子君着席〕 そこで大学入試の改善でございますとか、あるいは生涯学習体制の整備など、これからなお積極的に引き続いて情熱を燃やし続けて遂行していかなきゃならぬ課題だというふうに考えております。
  409. 勝木健司

    ○勝木健司君 竹下総理は教育改革の今後の進め方を含めまして二十一世紀へ向けて日本の教育はどうあるべきだと考えられておられますか、お伺いしたいというふうに思います。  国際化への対応のおくれ、教育費の高騰、いじめや登校拒否など教育をめぐる問題は山積をしております。また深刻化の度を加えているように思います。未来を担う子供たちを健やかに育てるため、政治あるいは教育行政は今後どういう課題に取り組み、どういう責任を果たすべきだと考えられますか、御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  410. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 大変、理想をいかに掲げるかという問題になりますと、私のささやかな教育者としての体験などというものはそう片意地張って申し述べるほど体験を積んでおるとは自分でも思っておりません。ただ、教育というのは人づくりでございますから、いつの世にあっても一番国政上の重要な課題だという意識は持ち続けていかなければならない。  その中にあって、今御指摘なすったいわゆる入試制度の改善でございますとか、そして現実いじめの問題でございますとか、校内暴力の問題でございますとか、あるいは別の角度からおっしゃった国際化への対応の問題でございますとか、こうすればすぐこのものは即効薬としてこのような結果が出てくるというものではないではなかろうか。したがって、一億二千万が総教育者であるぐらいな認識で、人の意見に耳を傾けながら、それを代表する臨教審等の答申に目を移しながら進めていかなければならないものではなかろうかというふうに考えております。
  411. 勝木健司

    ○勝木健司君 中でも教員の資質向上というものは今次教育改革の最大の課題一つであるというふうに思います。教育のかなめが教師であることは言うまでもありません。子供を愛し、情熱にあふれるとともに、高い専門知識と指導能力を備えた教師の育成、養成というものが今父母、国民の強い願いだというふうに思います。そこで、竹下総理はこれからのあるべき教師像についてどのような考え方を持っておられるのか、率直にお伺いをしたいというふうに思います。またそういう教師を養成し、教員の資質を向上させるためには今後どういう施策を講じていかなければならないのか、考えられておられるのか、御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  412. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私も昔から先生というものには三つの条件が必要じゃないかなと。教育に対する使命感とそれから愛情ともう一つが能力とでも申しましょうか、専門的知識というようなこの三つではないかなというふうに思っておるところでございます。    〔理事林寛子君退席、委員長着席〕 使命感とか愛情とかはなかなかこれは評価する物差しというのが非常に難しいわけでございますが、少なくとも専門的知識というようなものについては研修等によってそれが十分に充実されていく性質のものではないか、そして新たに免許法の問題等、私の時代と同じようにまだ一級免許状という言葉が使われておりますことをこの間私も法律を見ながら感じたわけでございますが、そういうもの等の充実が必要になってくるではなかろうか。その後になりますと、やっぱり生涯学習のような形になるんではないか。私の時代には、まず地域青年団というものがあって、地域婦人会というものがあって、それらがある程度生涯学習の一つのコースかなと思っておりましたが、今はそのほかにいろいろなものもできておりますので、そういう環境を逐次整理していけば生涯学習の環境もそろうんじゃないかな、こういうふうな感じで見ておるところでございます。
  413. 勝木健司

    ○勝木健司君 そこで、この初任者研修法案に対しては一部教職員団体の間に強い反対があり、場合によってはストライキを組む、ストライキを含む反対闘争を組むとも公言をいたしております。これまで文部省と一部教職員団体とはたびたび不毛な対立を繰り返し、これが学校現場に大きな混乱をもたらしてきたことは既に御承知のことと思います。このような状況に対して、竹下内閣として、政府として今後どのような対応をとっていかれるのか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  414. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やっぱり今御指摘なすったような行為が行われてきたというのは、これは学校に対する信頼というものが失われてしまって、国民全体のそれが教育に対する子供を通じての不信感というものになることはゆゆしいことだというふうに考えております。したがって、考え方としては、いわば正常なものになるように絶えずこれらに対しての努力というものを行われてきたのであろう。歴代文部大臣、不毛の対立とおっしゃいましたが、会うとか会わないとか、長い歴史がございましたが、しかしそういう現実問題として教育そのものに対する不信感をもたらすようなことが行われてきたというのは、これはまことに残念なことでございまして、それなりの今日まで努力はされたわけでございましょうけれども、本当にストライキなどをすることなく、我が国の教育というものの正常な発展のために努力なすっていただけないものかなと思って、私はいつでも丁寧に丁寧にお話をしておりますが、必ずしも丁寧に対応していただけないこともございますけれども、丁寧に丁寧にそういうふうにおなり賜わることをこいねがいつつ、努力をこれからも続けなきゃならぬと思っております。
  415. 勝木健司

    ○勝木健司君 本法案が成立また施行せられた暁には、再びこれまでのような反対運動による混乱というものが生じないよう、万全の体制をとられるとともに、円滑な実施というものを図っていかなければなりません。初任者研修を円滑かつ内容あるものとして実施していくためには、どのような点に留意して進めていかなければならないとお考えか。また総理として文部省への督励ということを含めて初任研実施に臨む決意のほどというものをお示しいただきたいというふうに思います。
  416. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 御審議いただいております改正法案におきまして、任命権者に対します初任者研修実施義務、それから初任者研修の中核となられる指導教員による指導、これらが規定されておるわけでございます。したがって、これからは研修の方法とか日数等の基本的な事項について国の考え方を示していかなきゃならぬというふうに考えております。で、それぞれの地域の実情も異なるでございましょうから、初任者研修が円滑かつ効果的に行われますように、各県市と、着実に行われるような指導助言とでも申しましょうか、そういうことにおいて万全を期していくべきものであるというふうに考えております。
  417. 下村泰

    ○下村泰君 私、ただいまより二つの事例を総理に聞いていただいて、障害児教育に対する総理の御見識を伺いたいと思います。  こういう記事がございます。   精神遅滞児教育についていえば、去る昭和三八年に「養護学校学習指導要領」が、また、昭和四〇年には「指導要録」が、それぞれ文部省からだされ、その教育の目標なり方向づけなりが示され、一応の形はととのった観があるが、一方、一般教育があまりに画一的で、知的に偏重した教育であることに嫌気をさして、教師としてみずからの創意工夫で全人間教育をめざすことのできる障害児教育に無限の魅力を感じて、この道にとび込んで、いままでコツコツと歩みつづけてきていた教師たちからは、最近、障害児教育もおもしろくなくなった、という声がだされるようになってきていることを見逃すことはできない。   彼らは文部省の「学習指導要領」がだされる前は、文字どおり、主体的に創意工夫をこらして、ちえおくれの子どものための教育のねらいや指導方法などに、独自の思考と実践を展開していたのだが、「学習指導要領」の出現を契機にすっかり主体性を喪失してしまい、受動的になってしまった、と嘆くのである。   文部省はいうまでもなく教育行政を扱う機関であり、教師たちがもっとも望ましい形でその職責を果たすことができるよう、種々の調整をはかることを、その一つの任務としているのであり、当然、教師教育者としての生きがいを感じ、また、子どもはそのことにより、望ましい人間に育成している場合、その任務がまっとうされていると考えるべきであろう。もし、「学習指導要領」の出現によって教師の主体性や研究心や、さらには教育者としての生きがいまでも萎縮し、障害児教育に、もはやなんらの魅力を感じなくなってしまったのであるならば、これは障害児教育の発展にとって、由々しき問題である。 まずこれが一つです。  いま一つは、   「勝弘君」は重症心身障害児施設・わかくさ病棟にいます。在院八年目ですから、入院時は一歳三カ月でした(現在九歳三カ月)。両眼球形成不全(一方の目には瞳孔がない)、高度の難聴、重い脳性マヒ、言語によるコミュニケーションはまったく不能、歩行不能(運動の自発がまったくない)、重度のちえおくれ。   同病棟の指導員の話によると、「この子は自分から動くということがまったくなく、親や病棟の職員にも何の反応も示さず、本能的に食べて排泄し、ただ生きているだけ」ということでした。とても九歳とは思えない、痩せた身体を海老(えび)のように折り曲げて、蒼白い顔にはまったく表情というものがなく、いつ見ても同じ恰好をして、ひとつの物体がおいてあるように、うすぐらい病室のベッドに横たわっています……。   わかくさ病棟に隣接して養護学校がありました。そこの教師である安藤哲夫先生が、多忙をきわめる公務のあいだから五分、十分と、わずかの時間をつくって、わかくさ病棟に出向き、「勝弘君」にふれあっていきました。   安藤先生は「勝弘君」の、生まれたばかりの赤ちゃんのようにやわらかくて小さい手を握って自分の頬にあて、自分の手に「勝弘君」の頬をあてて、ベッドの上におおいかぶさるようにして、耳もとで「勝弘君、安藤先生だよ」と声をかけつづけました(耳はまったく聞こえないと、医師にきかされていたのですが)。毎日、かならずおなじことばとおなじ動作で接しました。二カ月たっても何の反応もありませんでした。しかし、安藤先生はこの日課を一日も廃することなくつづけました。   そして、ついに三カ月目に安藤先生の心は「勝弘君」に通じたのでした。「勝弘君」は、安藤先生が呼びかけをくりかえしているうちに、最初はかすかに、そしてやがてはっきりと、笑って応じたのです。 この報告を書いた人は、これはまさに奇跡が起きたと言っております。   この「勝弘君」への安藤先生のかかわりこそが教育であり、その教育は生きること、そのことであり、いのちの流れそのものなのです。その流れにそっているゆえに教師の生きがいがうまれてくるのです。   教育とは、あらかじめ用意された知識を子どもに教え込むことだと思っている教師は、「教育の本質」に無知なのです。 こういうふうにこれはつづられておるんですけれども、この二つの事例を総理はお聞きくださいまして、障害児教育において教師に求められているものは一体何か、これこそが資質を問われる問題だと私は思います。これは障害児ばかりじゃありません。一般の健常児についてもそうなんです。この際に、私はこの一つだけです、総理にお伺いして私はやめます。
  418. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先に技術的なところを私からお答えを申し上げます。  第一点の先生指摘の学習指導要領の問題と実際の教育指導における先生方のあり方の問題でございます。学習指導要領につきましては、やはり義務教育におきましては水準の問題、機会均等の問題、特に大切なものでございます。したがいまして、義務教育、高等学校につきましても同様でございますが、国において教科の基準を定める、そしてその基準に基づく教科書を使っていただく、これが学校教育法に定められている基本でございます。ただ、学習指導要領のあり方につきましては、先生指摘のように、時代の変化に応じて、それぞれ児童生徒の教育にマッチしたものであるべきでございます。先生方も創意工夫をしていただかなければなりません。障害児教育につきましては特に大切であるということで、昨年実は教育課程審議会に学習指導要領の改善を諮問いたしております。  大きく分けて三点ございますが、重度重複障害児童生徒の問題、大変今喫緊の問題でございますので、そこを中心とした教育内容のあり方をどうするか。第二点といたしましては、障害の種類と程度に応じた教育、これは特に盲聾養護学校で大切でございますから、その点につきましての教育内容のあり方、それから最後に養護訓練のあり方、こういう点について一年かけて指導要領のあり方の改善を図りたい、こういうふうに思っております。  この指導要領の改善先生指摘のように行いますとともに、実際の教育指導においては先生方が創意工夫を凝らしてやっていただくというふうな方向で、私どもは国のあり方の問題としては心がけてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  以上でございます。
  419. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 率直に感じたことを申さしていただきますならば、今のような論文をお書きになった先生こそ、いわゆる教育に対する使命感と、そして障害児教育に対する物すごい愛情というものを持っていらっしゃるから、そのような論文になったのだな、こういう感じでもって聞かしていただきました。
  420. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 速記とめてください。    〔速記中止〕
  421. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 速記起こしてください。  暫時休憩いたします。    午後六時四十九分休憩      ─────・─────    午後七時十六分開会
  422. 田沢智治

    委員長田沢智治君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  以上で本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。(「異議あり」「賛成」「反対」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  佐藤君。
  423. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ただいまの本法案質疑終局の委員長提案に以下の理由により反対し、質疑継続を強く求めます。  第一に、戦後教育政策の根幹にかかわる今次法案が、衆議院文教委員会でのファッショ的採決によって本院に送付されてまいりましたが、参議院でこそ二院制の真価を発揮し、徹底審議が必要であります。私の当初からの五時間要求に対し、わずか二時間質疑を行っただけで、なお多くの問題を残したままであります。  第二に、公務員公平の原則に照らして、我が党は地方行政委員会と内閣委員会での連合審査、すなわち本法案の条件つき採用期間を六カ月を一年に延長する、この件の可否について連合審査を要求してきたところでありますが、自民党などの反対で合意に至っていませんけれども、なお再検討を願いたいのであります。  第三に、会期末であり、特例として明二十五日も一定時間質疑を継続をするのも検討すべしと私としては考えるものであります。  以上意見を述べまして、各位の御賛同をお願いいたします。
  424. 田沢智治

    委員長田沢智治君) それでは、質疑終局に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  425. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 多数と認めます。  よって質疑は終局することに決定いたしました。  本案の修正について高木君から発言を求められておりますので、この際許します。高木君。
  426. 高木健太郎

    高木健太郎君 私は、ただいま議題となっております教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出するとともに、その趣旨を御説明申し上げます。  修正案の案文は、お手元に配付されておりますので、朗読は省略させていただぎます。  次に、修正案の趣旨について御説明申し上げます。  政府原案は、教員条件つき採用期間を現行の六カ月から一年に延長することといたしております。しかしながら、身分の不安定な条件つき採用期間教員についてのみ延長することは、他の公務員との均衡や、権利保護の面で問題があるとともに、自主的、創造的な教育研修活動や優秀な人材を教員に誘致するという観点からも不安を感ずるのであります。  したがいまして、修正案では、これを現行どおり六カ月といたしております。これにより、初任者研修の後半の半年間は正式採用教員となり、安定した身分のもとで教員としての責任感を一層自覚し、より意欲的な教育研修活動が期待できると思うのであります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  427. 田沢智治

    委員長田沢智治君) それでは、ただいまの修正案に対し、質疑のある方は順次御発言願います。
  428. 安永英雄

    ○安永英雄君 初任者研修それ自身は必要だというふうに認めつつも、条件つき採用者の六カ月を一年に延長することはこれは断固として反対だ、こういった修正案を出されましたことについては私ども敬意を表したいと思います。  そこで、お聞きしたいのは、新任教員は身分保障その他を含めて非常に不安になるわけであります。常に不安に脅かされる。そして自主性あるいは創造性の抑圧をこの期間に受けるわけであります。政府の方は、この六カ月を一年にするといっても不安はないということを繰り返し繰り返し強調するわけでありますけれども、これは実態を知らないものでありまして、明らかにこれは不安でたまらない時期というふうに考えられ、今申したように、自主性あるいは創造性をみずから抑えていくような状態になってくる。  例えば、指導員というものがこの期間、一年間の中で、この指導員みずからの人生観あるいは社会観あるいは極端な場合は偏った教育観、こういったもので一年間とにかく指導をする。私は、下村委員からもこの前の当委員会で発言があったように、相性というふうなことで嫌いなのはもう初めから理屈なしに嫌いなんだと。こういった指導員からこの一年間指導される。これは本人にとって一年間は地獄ですよ。そういったことから、この六カ月を一年に延長するというのは、不安というのがこれは倍増するというふうに私は思います。高木先生の専門の見地から、先ほどもいろいろ意見を出されましたけれども、この際もう少し医学的な、あるいは御識見から掘り下げた御意見をお聞きしたい。  そこで、まず身分の不安定ということについて、この提案の理由にもあると思いますが、御説明を願いたいと思います。
  429. 高木健太郎

    高木健太郎君 お答えいたします。  法律的には、条件つき採用期間中はいつでもやめさせることができる、そういう期間になっております。いわばその教員にとりましては一種のむちでもあるわけでございます。むちで働くということはその自主性をゆがめることになるのではないかと考えるわけであります。そういう意味では、不安定なそういう状態で自主性を失った教育が行われるのではないかということを私は憂慮するものであります。  第二番目は、適格性の欠如という条件の中の一項を例にとりますと、心身の故障ということがございます。それは、先ほど私が何回も申し上げておりますように、その時間の危険率は、一年になることによりまして半年の倍になることになりまして、これは一般公務員に比べて不利益が倍になるということになろうかと思いますし、心身故障あるいは適格性欠如の中には精神性疾患が含まれておりまして、その精神性疾患は何もこの半年や一年の間に起こる確率よりもそれ以後に起こる確率の方がよほど大きいのでありまして、ここで決定をするということに意味が見出せないということでございます。また罹患率は、三万分の一人とか二人とかという話でございますが、そういう率は大変小さくありましても、高桑委員が何回も論じておりますように、その罹患者本人にとりましてその不利益は一〇〇%になるという意味で不安定な状態だと、こういうふうに考えるわけであります。
  430. 安永英雄

    ○安永英雄君 もう一つお聞きしますが、いつでもやめさせられるという不安感は常につきまとうわけであります。あるいは性の合わない場合はこれはもう地獄ですよ。そういった意味で、ストレスの影響というふうな問題についてお聞かせ願いたいと思います。
  431. 高木健太郎

    高木健太郎君 ストレスにつきまして御質問があったと思いますが、いつでもやめさせられるという不安というものは、その本人にとりましては大きなストレスになろうかと考えるわけでございます。これは精神的なストレスになり得ると思うのでございまして、それも一年間にわたっておりまして、その間そういうストレスがかかっているということになるわけであります。また、その間に指導教員による指導があるということで、これはよいことであるかもしれませんが、不安定な身分のままそういう指導教員から指導を受けるということは、見方によりますとその指導教員から監視されているという、そういう期間の延長ということになろうかとも思いまして、これは高桑委員も申し上げましたように一種の拘禁性のストレスというものを引き起こす可能性が大きいと思います。  さらに、指導教員と性格的に合わないということの場合に、これは本人にとっては非常にストレスがふえるということになろうかとも思います。あるいはまた、ストレス、これによりまして御存じのように自律神経の失調を起こす。あるいはまた消化器の疾患、あるいは呼吸器の疾患、その他の疾患を起こしてくることはよく知られているところでありますし、さらに精神的にはノイローゼ等に発展するということも考えられるわけでございます。
  432. 安永英雄

    ○安永英雄君 終わります。
  433. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 他に発言もないようでございますので、これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  434. 安永英雄

    ○安永英雄君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となっております教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、高木委員提出の修正案に賛成、原案に反対の討論を行います。  まず、初任者研修制度については、国民的合意の形成がなされておらないのであります。  教員研修制度が我が国の学校教育全体や未来を担う子供に与える影響の大きさを考えると、教育関係者や国民全体の合意を得ながら制度化を図るという慎重さが必要であります。  しかし、初任者研修制度については、教育関係団体でも反対の声が強く、あるいはマスコミ等におきましても、教員を鋳型にはめ込むなどと危惧の念を表明しているのは周知のとおりであります。  政府は、初任者研修制度の試行実施しておりますが、その結果を制度に生かすどころか、いまだにその結果を公表していないのであります。  さらにまた、衆議院文教委員会における委員会審査の暴挙、法的根拠もなしに試行を強行する一連の動きを見ますと、政府は、臨教審答申を口実に何が何でも制度を発足させたいという意向であると断ぜざるを得ないのであります。  ただいままた、今参議院のこの当委員会におきましても、我々としては、この三日間の審議でこの初任者研修についての討議は尽くされておらないし、我々も常に時間を要求し、そして当面の問題として、私どもはその時間内でいろいろ解明をしたいということで今日に来て、参議院らしい審議をやったつもりです。にもかかわらず、いよいよ最終段階においてこの質疑を一方的に打ち切るということは、これはまさに私どもは暴挙であると思うのであります。このことは、今後参議院の各委員会の審査において大きな汚点を残し、悪例を残したと言わなければなりません。絶対に今後こういうことがあってはならないということを委員長にも申し上げておきます。  次は、初任者研修制度が憲法、教育基本法及び教育公務員特例法の理念に反する制度であるということについてであります。  教育という仕事は、一人一人の子供との人格的な触れ合いを基礎といたしており、これは文部大臣も認められたところであります。各教員がそれぞれの基本的な価値観、信念に立脚した上で、自主性を基本として教育活動が営まれなければならないことは当然であります。したがって、国等の行政機関が研修内容、方法等を拘束することは間違いであり、このことは教育、研究の自由、教育行政の中立性を定めた憲法、教育基本法の精神はもちろんのこと、自主研修を基調とした教育公務員特例法に照らしても明らかに法的に逸脱いたしておるのであります。  しかし、この初任者研修制度については、研修の方法、形態等を事細かに法律で明文化しており、地域や学校自主性、創意工夫を認めない画一的で硬直した制度なのであります。また、研修内容も、既に試行で明らかなように、教育技術偏重の指導が行われるとともに、校外研修においては、国や都道府県教育委員会など行政側の考えが一方的に押しつけられるのであります。  このように本制度は、憲法、教育基本法及び教育公務員特例法の精神にもとるばかりか、学校現場を一層管理化するものと指摘せざるを得ないのであります。  次は、初任者研修制度が教員に与える影響についてであります。  初任者研修制度は、初任者のニーズに応じてではなくて、事前に一定の指導をしようとするものであるために、画一的、技術的な指導になるのであります。こうした指導を受ける初任者は、指導教員の目を意識するので、教員にとって一番大切な自主性、創造性、情熱、バイタリティー等を抑制せざるを得ないのであります。ひいては、学校全体の活力が減少、喪失する懸念を指摘せざるを得ないのであります。  次に、初任者研修制度が子供や父母に与える影響についてであります。  新採用教員指導教員にマンツーマンで指導されることは、いわば半人前の教員として扱われることであり、教育の基本である教員と子供、父母との信頼関係を損ね、学校教育に大きな混乱を招くことは必至であります。  また、初任者指導教員のクラスは、非常勤講師等によって授業の穴埋めが行われることになっておりますけれども、週三日も非常勤講師に依存するために、授業や学級経営、生徒指導影響が出ないはずはなく、子供や父母の不満が爆発することは必至であります。  次は、条件つき採用期間を現行の六カ月から一年に延長するという件についてであります。  この制度は、臨教審の審議でも明らかなように、教員を容易に罷免するための試補制度、あるいは教職適性審議会制度の代替措置として考えられたものであり、非常に危険性を有していることは当然であります。  条件つき採用制度は労働者の身分を不安定にするために、労働者の権利保護という観点から、公務員法はその期間を六カ月と限定しているのであります。教員だけを他の公務員と異なり一年にすることは公務員法上の理念に反し、権利保護の面で労働法上も間違いを犯すことになるのであります。  また、このように不安定な身分の期間を延長すれば、教員に不安を与え、自主性、創造性も抑圧され、学校現場の活力が失われ、ひいては優秀な人材を教育界に誘致することが困難になることは明白であります。  したがいまして、高木委員提出の修正案に賛成するものであります。  以上、申し述べましたように、この初任者研修制度については立法上の欠陥がある、問題がある。しかも国民的な合意も形成されておらず、このまま見切り発車をすれば、将来に禍根を残すことは明白であり、大きく日本の教育方向を誤ると断ぜざるを得ないのであります。  初任者研修制度を完全実施したときには、国費で二百七十六億円、地方負担を含めると約八百億円もの経費が年間必要であることが推計されておるのであります。貴重な財源をこのような問題のある制度に使用することなく、国民だれもが望んでいる四十人学級実現教育条件の整備に回すべきであるということを主張いたします。  以上で本案に対する反対の討論を終わります。  私は、どう考えても日本の教育のためにはならない。研修とは教師のためにならなきゃならぬのです。教師反対をしておるということ、それ自体もう既にそのことを証明しているわけです。押しつけで研修は効果は出てこない。そのことをあくまでも私は大臣にお話しを申し上げて、撤回を要求します。(拍手)
  435. 林寛子

    ○林寛子君 私は、自由民主党を代表いたしまして、教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、原案に賛成、高木委員提出の修正案に反対の討論を行います。  我が国は、世界に例を見ない速さで、社会経済の成長と高度化、科学技術の発達、国際化、情報化、高学歴化などが進展しております。さらに、学校教育についても、受験準備偏重教育、いじめ、非行、登校拒否の多発など困難な問題が山積しているのであります。  このように、教員学校教育を取り巻く今日の環境背景は厳しく、教員の資質向上を求める国民の声は日増しに高まっているのであります。こうした国民的要請にこたえることは、国、とりわけ教育行政の大きな責務であると考えるのであります。  もとより、教員の資質能力は、大学における養成教育とともに、教職生活を通じて教員自身が研さんを重ねることや、任命権者実施する研修への参加などにより、向上が図られております。しかし、その中でも初任者の時期における研修は、教育技術や指導力を磨く上で効果的であるばかりではなく、教職への自覚を高めるとともに、その後の教員としての成長にとって不可欠のものであると考えるのであります。  こうした理由から、現職研修の第一役階として組織的、計画的な初任者研修を制度化しようとする本法律案は時宜にかなった措置と確信するものであります。  ところで、初任者研修制度に関して具体的に危惧されている点は、大きく分けて二点であったと思うのであります。  すなわち、その第一は、初任者研修制度が初任者自主性を抑制し、鋳型にはまった教員づくりとならないかということであります。しかし、初任者研修制度の中心は、学校内における指導教員によるマンツーマン指導にあります。すぐれた指導力を有する教員指導教員に選ばれ、その指導教員が自分の経験や知識、創意工夫により初任者の立場に立った指導を行うのであります。指導教員指導の方法や内容等については、国はもちろん、教育行政が画一的に拘束することなど当然あり得ず、初任者自主性、創造性を抑制することはあり得ないのであります。むしろ、指導教員を中核とする学校ぐるみの指導体制が確立し、一層の活性化につながるものと考えます。  第二は、条件つき採用期間が現行の六カ月から一年に延長されるため、教員の身分が不安定になるのではないかという懸念であります。しかし、新採用教員条件つき採用期間中に免職にするには、従来同様、客観的な基準に基づいて行われることは当然であるため、身分が不安定になるという指摘は杞憂にしかすぎないのであります。むしろ、一年間に延長することにより、慎重に判断することになると考えるものであります。  以上の理由で原案に賛成をいたすのでありますが、最後に、初任者研修制度が各地域、各学校で創意工夫され、よりよい制度に育成され、教員の資質向上に寄与するとともに、学校教育が一層充実発展していくことを期待いたしまして討論を終わります。
  436. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、日本共産党を代表して、教育公務員特例法等一部改正案並びに高木委員提出の修正案に対して反対の討論を行います。  本法案に反対する第一の理由は、自主的な研修教員の権利として保障することによって、子供たちが人間として、主権者として成長、発達することを目指す教育公務員特例法の基本理念を否定し、行政命令による研修初任者研修の名によって強制するものであることです。  教師が子供の心に触れて人間形成を図るという極めて崇高で精神的、文化的な責務を果たすためには、人間としての尊厳と地位が保障され、科学的真理と真実、自己の良心にのみ忠実に教育活動に取り組む権利と機会が保障されなければなりません。  教育基本法が「教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」と述べ、教育公務員特例法第十九条が「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」としているのもこのためであります。  ところが、本法案はこの崇高な使命を担う教員条件つき採用期間を、公務員とは別みに六カ月から一年にと身分の不安定な期間を延長し、さらに行政の権力的な研修を新任の時期から一年間教員に強制するものであります。これは自主性自発性を生命とする学校教育を破壊するのみならず、教員を国の政策、すなわち日米軍事同盟の強化、財界の先端技術の研究開発での国際競争力の強化などの国家目標に従属させる教師づくりとなる危険性を持つものであります。  洋上研修における君が代、日の丸の強制、小学校教科書に軍神と言われた東郷平八郎を登場させようとしている動きを見ても明らかなように、軍国主義教育の復活が進められています。初任者研修初め行政研修の強化は、教員の資質向上の名のもとに不適格者を排除し、上からの命令に従順な教師づくりを目指すものと指摘せざるを得ないのであります。  第二の反対理由は、今も進む教育荒廃に加えて、初任者研修子供たちに深刻な影響を及ぼすことであります。既に六十二年度から初任者研修試行実施されていますが、新任の教員校内研修七十日、校外研修三十五日、宿泊研修四泊五日、洋上研修九泊十日と、実に年間二百十日の授業日数のうち半分以上を初任者研修に当てています。このため、教員はもちろん、教育委員会からも児童生徒との生活が断続して、望ましい人間関係がなかなか醸成できない、児童生徒は同じ教科でも授業者が週のうち何回か担任代替者と交互にかわるので落ちつきがなくなる傾向と学習に対する不安感を持つ者が多いなど報告されているところであります。  この行政研修の押しつけによって、新任の教員から自主的な研修の機会を奪い、半人前の扱いなどによって、子供の教育の理想に燃え新鮮な気持ちでスタートした新任教員の意欲を阻害するのみならず、教育にとって最も大切な教師児童生徒との信頼関係、父母との信頼関係、同僚教師との連帯関係にも深刻な影響をもたらしています。  政府が真に教員の資質の向上を願うならば、このような権力的な行政研修ではなく、教師が一人一人の子供に目が届き、おくれた子供にもその個性と能力をしっかり伸ばすための教師の力量が真に発揮できるよう基本的な教育条件の整備、四十人学級の早期完成、さらに三十五人学級実現などを目指すべきであります。また、研修負担新任教員を追い詰めるのではなく、自主的、自覚的に研修ができるように、学問的研究、創造的教育活動に打ち込めるようにむしろ負担を軽減する措置を講ずべきであります。  行政の第一義的責務を放棄し、教員統制に狂奔することは、教育基本法の精神に照らしても断じて許されません。我が党は、戦後打ち立てられた憲法、教育基本法にのっとった民主教育を守り、発展させるため全力を挙げることを改めて表明します。  さらに、高木委員提出の修正案については、本法案の根幹部分である権力的初任者研修の中止を求めるものではないので賛成しがたいことを表明し、審議の不十分さはさきにも指摘したところでありますが、あくまで本法案の廃案を断固要求して反対討論を終わります。(拍手)
  437. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  438. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認めます。  まず、高木君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  439. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 少数と認めます。よって、高木君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  440. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  粕谷君から発言を求められておりますので、これを許します。粕谷君。
  441. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、ただいま可決されました法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、二院クラブ・革新共闘の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、教員研修の重要性にかんがみ、左記の事項について、特段の配慮をすべきである。  一 条件採用期間中の教員が、身分上の不安を特に感ずることのないようにすること。また、条件採用期間後の措置については、従前のとおりとすること。  二 初任者研修の方法・内容については、初任者の意向の把握に努め、各地域、各学校の創意工夫ができるよう配意するとともに、教育関係団体等の理解を得るよう努力すること。    なお、各地域、各学校の様々な実践については、情報提供に努め、初任者研修制度の充実に資すること。  三 研修成果が十分期待できるよう、初任者の適切な配置に努めるとともに、指導教員の選任については、指導力、担当教科等を勘案して、当該学校意見を尊重し、人事や勤務評価の一環として行うことのないよう配意すること。  四 初任者が所属する学校教育活動に支障が生じないよう、代替教員については、できるだけ定数上の措置で対処するなどその拡充に努めるとともに、非常勤講師については、優秀な教員が確保できるよう処遇面でも十分な配慮をすること。  五 長期研修代替教員の確保など、教員の自主的な研鑽の機会を 一層拡充すること。   右決議する。  以上でございます。
  442. 田沢智治

    委員長田沢智治君) ただいま粕谷君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  443. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 多数と認めます。よって、粕谷君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、中島文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中島文部大臣。
  444. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして、対処してまいりたいと存じます。
  445. 田沢智治

    委員長田沢智治君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  446. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  447. 田沢智治

    委員長田沢智治君) これより請願の審査を行います。  第二〇号私学助成に関する請願外二百二十四件を議題といたします。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  448. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 速記を起こしてください。  それでは、第三三号学校事務職員等の職制の整備確立に関する請願外四十八件は採択すべきものにして、内閣に送付するを要するものとし、第二〇号私学助成に関する請願外百七十五件は保留と決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  449. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  450. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  451. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 次に、継続審査要求に関する件についてお諮りいたします。  学校教育法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案、女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律の一部を改正する法律案、以上二案の継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  452. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  453. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  454. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  教育、文化及び学術に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  455. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  456. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時五十九分散会