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1988-05-12 第112回国会 参議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十二日(木曜日)    午前十時六分開会     ─────────────    委員の異動  五月九日     辞任         補欠選任      高木健太郎君     原田  立君  五月十日     辞任         補欠選任      原田  立君     高木健太郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         田沢 智治君     理 事                 仲川 幸男君                 林  寛子君                 粕谷 照美君                 佐藤 昭夫君     委 員                 小野 清子君                 川原新次郎君                 木宮 和彦君                 山東 昭子君                 杉山 令肇君                 世耕 政隆君                 竹山  裕君                 寺内 弘子君                 柳川 覺治君                 久保  亘君                 安永 英雄君                 高木健太郎君                 高桑 栄松君                 勝木 健司君                 下村  泰君    国務大臣        文 部 大 臣  中島源太郎君    政府委員        文部大臣官房長  古村 澄一君        文部大臣官房総        務審議官     川村 恒明君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省教育助成        局長       加戸 守行君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        文部省社会教育        局長       齋藤 諦淳君    事務局側        常任委員会専門        員        佐々木定典君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 田沢智治

    委員長田沢智治君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、国立学校設置法の一部を改正する法律案議題とし、政府から趣旨説明聴取いたします。中島文部大臣
  3. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) このたび政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、総合研究大学院大学新設短期大学部併設及び廃止大学入試センター所掌事務を改めること等について規定しているものであります。  まず第一は、総合研究大学院大学新設についてであります。  これは、学部を置かない大学院のみの大学を設置し、国立大学共同利用機関との緊密な連係及び協力のもとに教育研究実施しようとするものであります。  なお、総合研究大学院大学は、本年十月一日に設置し、昭和六十四年度から学生を入学させることとしております。  第二は、短期大学部併設及び廃止についてであります。  これは、三重大学に同大学医学部附属専修学校を転換して医療技術短期大学部併設することとし、また、京都工芸繊維大学併設されている工業短期大学部については、これを廃止し、同大学工芸学部及び繊維学部に統合しようとするものであります。  なお、三重大学医療技術短期大学部は、本年十月一日に開学し、昭和六十四年四月から学生を入学させることとするものであり、京都工芸繊維大学工業短期大学部は、昭和六十四年度から学生募集を停止し、昭和六十五年度限りで廃止することを予定しているものであります。  第三は、大学入試センター所掌事務を改めることについてであります。  これは、大学入試センター所掌事務につき、国公私立大学が共同して実施する試験に係る業務を行うこととするとともに、大学に入学を志望する者の進路選択に資するための大学に関する情報の提供を加えようとするものであります。  このほか、昭和四十八年度以後に設置された医科大学等に係る昭和六十三年度の職員の定員を定めることといたしております。  なお、衆議院において、施行期日に関する附則の規定の一部が修正されましたので、念のため申し添えます。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願い申し上げます。     ─────────────
  4. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 次に、教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、政府から趣旨説明聴取いたします。中島文部大臣
  5. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) このたび政府から提出いたしました教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容について御説明申し上げます。  学校教育の成否は、これを担当する教員資質能力に負うところが極めて大きく、今後の社会の進展や学校教育内容変化等に応じた教育を展開していくに当たり、教員みずからがその自覚を高め、教育力向上を図ることが必要不可欠であります。  現下の教育課題を解決し、また教育質的向上を図るため、教員には、従来にも増して教育者としての使命感、幼児、児童、生徒に対する教育的愛情教科等に関する専門知識、そしてこれらを基盤とした実践的指導力などが求められております。  このような教員としての資質能力は、教員養成教育のみならず、教職生活を通じて次第に形成されていくものであります。その場合、教員自身が研さんを重ねることによってその資質能力を高めていくことが基本となることは、もとよりでありますが、これとともに、教員任命権者教職生活の全体にわたって適切な研修の機会を提供することが必要であります。  とりわけ、初任者の時期は、教職への自覚を高めるとともに、円滑に教育活動に入り、可能な限り自立して教育活動を展開していく素地をつくる上で極めて大切な時期であります。この時期に現職研修の第一段階として、組織的、計画的な研修実施し、実践的指導力教員としての使命感を深めさせ、また幅広い知見を得させることは、この時期における初任者にとって、また、その後の教員としての職能成長にとっても、欠くことのできないものであります。  そのため、今般、臨時教育審議会答申及び教育職員養成審議会答申を受けて、教員初任者研修制度化することを内容とする法律案提案するものであります。  以下、この法律案概要について申し上げます。  第一は、初任者研修制度化することについてであります。  まず、任命権者に対し、国立及び公立小学校中学校高等学校盲学校聾学校養護学校及び幼稚園教諭助教諭及び講師に対する採用の日から一年間の初任者研修実施を義務づけることとしております。この場合、初任者研修は、教職経験に応じて実施する体系的な研修の一環をなすものとして位置づけることとし、初任者に対して一年間にわたり、教諭職務を遂行する上で必要な事項について実践的な研修実施するものであります。  初任者研修は、教育現場における実践的な研修であり、初任者は、学校において学級や教科、科目の担当その他の教育活動に従事しながら、学校内における研修学校外における研修を受けるものであります。このように初任者は、日常の実務に即してその立場に立った系統的な研修を受けるものでありますから、校内における研修について、指導者を特定することとしております。任命権者は、初任者が所属する学校の教頭、教諭または講師のうちから指導教員を命じることとし、指導教員は、初任者に対して具体的な指導及び助言を行うこととしております。  初任者研修実施に伴い、また、教員職務特殊性にかんがみ、国立及び公立小学校中学校高等学校盲学校聾学校養護学校及び幼稚園教諭助教諭及び講師条件つき採用期間を一年とすることとしております。  第二は、初任者研修制度の円滑な実施を図るための措置であります。  これは、市町村立小学校中学校等において初任者研修が行われ、各学校指導教員等として非常勤講師を配置する必要がある場合には、市町村教育委員会が、都道府県教育委員会に、非常勤講師の派遣を求めることができることとするものであります。また、その場合の非常勤講師報酬等については、都道府県の負担とすることとしております。これは、市町村立小学校中学校等教員に対する研修については、都道府県教育委員会実施者であることから、非常勤講師について、都道府県が責任を持って対処することとするものであります。  第三は、初任者研修制度化についての経過的な措置であります。  幼稚園教諭助教諭及び講師に対する初任者研修については、幼稚園実態等を考慮し、当分の間、これを実施しないこととし、初任者研修とは異なる研修を行うこととしております。  また、幼稚園を除く学校教諭等に対する初任者研修については、教員採用者数の推移その他の事情を考慮し、昭和六十四年度から段階的に実施することとし、昭和六十七年度までにはすべての校種についてこれを実施することとしております。そこで、昭和六十六年度までの間は、初任者研修実施しない学校種を政令で指定することができることとしております。  このような初任者研修実務に当たっての経過的な措置に伴い、初任者研修の対象とならない教員については、その条件つき採用期間は、従前の六月とすることとしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますよう、お願い申し上げます。
  6. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 以上で両案の趣旨説明聴取は終わりました。     ─────────────
  7. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 次に、国立学校設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 粕谷照美

    粕谷照美君 最初に、日中戦争などをめぐる一連の奥野国土庁長官発言に関して、昨日の本会議で我が党の久保議員質問をいたしました。その質問に対して、奥野長官盧溝橋事件を単なる偶発的なものであるというライシャワー氏の所感を引用いたしまして、そして御答弁をされました。私はこのことは非常に大事な問題を含んでいるというふうに考えております。    〔委員長退席理事林寛子君着席〕  昨年七月に私はちょうど北京におりまして、盧溝橋事件の起きた日に盧溝橋を訪れました。マルコ・ポーロが七百年前に、世界で一番美しい橋だと言われたその盧溝橋の上に立って、張香山先生が、あそこに日本の軍隊が駐屯していた、こういう話から始まりまして、私たちにその当時の話をしてくれました。そして、そのわきには、人民記念館だと思いますけれども日本侵略戦争の資料を展示するという会館が急ピッチで進行しておりました。残念ながら進行中でしたから、私は中を見ることができませんでしたけれども、そのような歴史をいろいろ考えてみますときに、きのうの国土庁長官発言は、まことに残念なことでありますし、残念というよりは、歴史教育を行うという立場に立つ人間として、このことはどうしても許すことができないというふうに考えるわけであります。  文部大臣は、この盧溝橋事件に対して、一体どのような認識を持っていらっしゃるか、最初に伺っておきます。
  9. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 昨日の長官の御発言に付随しまして、盧溝橋事件についての考え方をお尋ねでございますが、個々の事象に対しましてはいろいろな見方があろうと思いますけれども、私としましてはやはり歴史教育についてしっかりした考え方を持って臨むことが必要だと。そのしっかりした考え方と申しますのは、政府としては、五十七年に官房長官談話といたしまして、かつての日韓共同コミュニケあるいは日中共同声明に盛り込まれた精神、これを再確認し、そして尊重していくべきことと、このようにいたしておりますし、同時にまた、歴史教育につきましても、教科書について付言をなさっておるわけであります。それを受けまして五十七年の九月並びに十一月に当時の文部大臣から教科用図書検定審議会に諮問をいたし、答申をいただいておるわけでございまして、その中には、アジア近隣諸国、ちょっと字句を間違うといけませんので、「近隣アジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解国際協調見地から必要な配慮がされていること。」との規定を追加をいたすということで、以後この精神を尊重いたしつつ教科書の上でも、また歴史教育の上でも、この精神を生かしてまいったつもりでございますし、私としてはこれからもその精神を生かしてまいりたい、これだけははっきり申し上げておきたいと思います。
  10. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、法律の方に入ってまいります。  国立学校設置法の一部を改正する法律案は、ただいま文相から御提案をいただいたとおり、三つ部分から成っております。この三重大学医療技術短期大学部併設する、京都工芸繊維大学工業短期大学部廃止する、この点については私は異存がありません。しかし次の二つの柱、一つ大学入試センターを私大を含めた試験問題作成採点等を一括して処理する業務を行う機関に改組するという、この部分につきましては問題が大変大きいというふうに考えております。しかしながら、入試センターの問題に関して、十七日、参考人においでをいただきまして意見聴取をするという、こういう日程が設定されておりますので、質疑は、国立大学共同利用機関母体として学部を持たない総合研究大学院大学新設をするという、この部分に集中をしてまいりたいと思います。  それで、最初に、学部組織を持たない大学すなわち独立大学院必要性について構想がずっと論議をされ出したのはいつごろのことか。そして、独立大学必要性について論議が起こりましたけれども、その必要だという理論というものは一体どのように理解をしていたらよろしいのでございましょうか。
  11. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 御案内のように、我が国の大学院制度でございますけれども、これは戦後昭和二十二年の学校教育法制定の際に、戦前は各学部の中に研究科が置かれてそれが実質上大学院という位置づけになっているという仕組みでございましたものを、明確に大学院というものを制度化をいたしました。いわゆる課程制大学院というのを発足いたしたわけでございますけれども、そのとき以来大学院具体あり方につきましては、これは学部等学科あるいは講座等の上にいわば密着した形で大学院研究科専攻等存在をする、そういうような形のものが当たり前のものというようなことで存在をしてまいったわけでございます。  しかしながら、その後、いろいろ学問分野進歩等あるいは社会発展等が行われてまいりますと、従来のディシプリンにのっとったそういった講座学部講座等の上に直結するような形での大学院というものばかりでなくて、やはり学部学科の壁を越えたような総合的な研究あるいは学際的な研究、いろいろな分野での新しい要請が出てまいったわけでございます。  そういったものを踏まえまして、いわゆる三つ種類のものが必要ということが言われるようになってきたわけでございます。おおむね昭和四十年代以降のことであろうかと思いますが、一つ独立大学院一つ独立研究科、もう一つ独立専攻、こう言っております。独立専攻と申しますのは専攻段階での学部等から独立した仕組みという意味でございますし、研究科研究科段階で、それから独立大学院というのはそもそも大学そのものとして学部等とくっついていないような形のもの、そういうような三種類のものについての必要性が、いわば三段階と申しますか、必要であろうということが言われてまいったわけでございます。  昭和四十九年の六月に大学院設置基準というのを制度上明確につくったわけでございますけれども、その中におきましては、従来タイプの特定の学部に基礎を置く従来の教育研究組織としての大学院というもののほかに、学部学科組織編制にこだわらずに広く学内の学部とか研究所等と連携をして、または専任教員あるいは専門施設を設けるというような形等も含めまして、独立組織という形での独立専攻あるいは独立研究科をつくるということが可能というような仕組みがとられたわけでございます。これは昭和四十九年のことでございますが、以後それをさらに推し進めるという見地から、かねてからの課題でございます独立大学院という方式もあってもいいのではないか。これは法律マターでございますので、昭和五十一年でございますか、と思いますけれども学校教育法改正お願いをいたしまして、国会でも種々御論議を十分いただいた上で、この独立大学院という方式もつくり得ると、こういうような仕組みに相なったわけでございまして、そういう形で制度的には昭和五十一年に初めてそういう独立大学院仕組みというのができ上がったわけでございます。  以後、それを踏まえまして各方面で種々検討が重ねられました結果、現在ここに国立大学共同利用機関母体とする独立大学院ということで総合研究大学院大学創設具体お願いをするというような状況に至っておる次第でございます。
  12. 粕谷照美

    粕谷照美君 私の調査でも、今局長がおっしゃったような形でずっと進行してきているというふうに考えておりますが、私ども学部を持たない大学院それ自体は問題ではない、こういうふうに思っております。  ただいま御説明がありましたように、昭和五十一年の六月、学校教育法の一部改正が行われました。そのときに独立大学院については各党からそれぞれいろいろな疑問点が出されまして、それに対する質疑討論がありまして、大体、附帯決議をつけて全会派一致で、どの党もこれに賛成をするという立場でこの法律を成立をさせているわけですから、独立大学院そのものに問題があるというふうには考えておりません。さらに、我が党では東大や京大などの旧帝大などについては学部から切り離した連合大学院を検討すべきであるというようなことも提案をしております。  しかしながら、今回提案されました総合研究大学院大学については問題が違うというふうに判断をしているところでございます。まず国立大学共同利用機関母体にしていることであります。これらの研究所というのはそもそも研究が主体でありますね。ですから大学としての教育機能というものは極めて薄いのではないだろうか、ほとんどないのではないか、こういうふうに考えているわけであります。ここで学ぶ大学院生研究教育上の指導を十分に受けられるかどうかということが大変疑問だというふうに思います。その点についてはどのようにお考えになって提案をしていらっしゃいますか。
  13. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 御指摘がございましたように、国立大学共同利用機関というのは基本的には研究機関でございますので、研究というのをその業務の主たる内容にしているということは御指摘のとおりでございます。しかしながら、この研究機関には研究のためのすぐれた教員スタッフがおり、そして施設設備等も十分整っているという状況にあるわけでございますので、従来からこういった研究機関大学院レベル教育協力をしてもらうというようなことで、その仕組みも整えてまいりました。御承知のように研究委託制度という制度がございます。現実にもこれらの研究機関では相当数の各大学からの大学院学生を受け入れまして、受託学生としてその研究指導を行っておるわけでございます。  こういうことができますことは、結局は要すれば一般の学部における通常の教育というようなものと異なりまして、大学院、特にドクターレベル研究指導ということになりますと、学生自身が、大学院生自身がみずから研究もしながら、あるいは教官と一緒に研究をしながら研究についての能力を養い、身につけていくという性格のものでございますので、そういったたぐいの教育あるいは指導と申しますか、それはかなり研究所研究を進めるという業務と、何と申しますか、オーバーラップをするという面があり得るわけでございます。また、こういった分野での後継者を養成していくというような意味でも研究者方々も大変な意欲を持っておられるわけでございます。  そういう形で今回のものも構想しておるわけでございますが、これはまた繰り返しになるかと思いますが、こういったものを、構想具体化しているという例は従来からたくさん実はあるわけでございまして、御案内だと思いますけれども東京工業大学長津田団地にございます総合理工学研究科、これは東京工業大学附属の、附置の研究所、四つぐらいあったかと思いますけれども、その研究所の上に大学院をつくるという形で現実に動いておるわけでございます。あるいは九州大学の、春日原でございますか、ここにあります研究科もやはり同じような形のものとして、研究所研究機能というものを十分生かしながら大学院博士課程レベル学生指導もあわせて行うという形で行ってきているという経験もあるわけでございます。  そういったものを十分踏まえた上で、しかもそれぞれの国立大学共同利用機関方々がこういうことをやっていく、やっていきたい、やっていけるという自信を持っておられるわけでございますので、そういうすぐれた研究機関能力学生指導の面でも一層生かしていただくという意味で、十分意義のある方式ではなかろうか、こう思っている次第でございます。
  14. 粕谷照美

    粕谷照美君 具体的にはもう少し後で質問をしたいと思いますけれども昭和五十一年の学教法一部改正のときに私どもは確かに賛成をいたしましたけれども質疑を通していろいろな問題点がある程度解明をされたということとあわせまして、附帯決議をきちんとつけるということが通ったからでございます。その附帯決議というのは三項目ありましたけれども、  一 現行大学制度理念を十分に尊重すること  二 既存の大学内容の充実に努めること  三 高等教育あり方について総合的に再検討すること   などを重視し、かつ、今後の本委員会意見並びに設置予定大学院教育研究関係者その他学識経験者等意見を十分に取り入れ、その構想を明確にするよう特に配慮すること。 こういうふうになっていたわけであります。あれからもう十二年たっております。一体この附帯決議というのはどのような形で具体的に生かされてきましたでしょうか。
  15. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 五十一年に国会におきまして独立大学院審議に際していろいろな御意見を賜りましたし、また先ほど先生の御指摘にもございましたような附帯決議もちょうだいをいたしておりますので、私どもこの精神を十分尊重しながら、その後の具体のプロジェクトの進行等については配慮をしてまいったつもりでございます。  第一点の現行大学制度理念を十分尊重するという点につきましては、今回の大学院大学創設のプランにつきましても大学制度理念基本に踏まえてつくるということで考えておるつもりでございまして、例えば、この独立大学院組織形態等につきましても学校教育法一条に基づく国立大学であり、その管理運営につきましても学校教育法あるいは教育公務員特例法がそのまま適用になるという形での運営形態を考えているというようなことで御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それから第二点の既存の大学内容の充実という点でございますけれども、この点につきましては、大変財政状況厳しい中でございますけれども、鋭意文部省としては努力をしてまいったわけでございまして、特に大学院につきましては、国立大学のケースで申しますれば、各大学の体制の整ったところから、大学院の博士課程の創設あるいは教員養成系の学部等につきましては修士課程の創設というようなことも、体制の整ったところから逐次やってまいったつもりでございます。また昨年、六十二年度からでございましたか、大学院のための最先端設備の整備というような従来なかった特別の予算も計上いたしまして、これは国公私立にわたりまして各大学にその予算の配分をいたしまして、大学院の設備面での充実ということに鋭意努力をいたしておるわけでございまして、そういったこととあわせて、並行的に今回の大学院大学創設も考えたいということでございます。  また、第三点の高等教育あり方についての総合的な検討をせいという御指摘につきましては、昭和五十年代、特に高等教育の人口が横ばいの時代というようなこともございまして、従来からいわば、何と申しますか、レッセフェールという状況でございました大学の拡充整備等につきまして、前期計画、後期計画、そしてまた新しい新高等教育計画というような、三段階にわたりましたけれども、整備計画を立て、量的な整備についての目途を定める、同時に質的にも新しい時代の要請にこたえて、多様化、弾力化等の各大学の工夫ができるような、そういうための制度的な整備等もいろいろと行ってまいったわけでございます。またさらに、御案内のように昨年は大学審議会の創設もお認めをいただきました。これは昨年の十月に発足をいたしまして、今後の大学あり方について、もう一遍全体的に問題を見直してみようということも現在進行中であるわけでございます。  また、個別の今回の具体のプロジェクトの進行に当たりましては、学識経験者の方々の御意見等も十分伺いながら、国立大学共同利用機関の関係者の方々で原案を十分練っていただく、と同時に各種の審議会あるいはその他の機関からいろいろ御意見等もいただきながら進めてまいったわけでございまして、そういった大方の御意見を踏まえての計画であるということで御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  16. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部省としては一生懸命に努力をしているということでございましょうけれども、現場の人たちにとってみればまだまだこれでは足りない、こういうふうに思っていらっしゃるところがたくさんあるかということを私どもは耳にするわけでありますが、それではこの独立大学院がその真価を発揮する条件というのは一体何だろうかということを考えてみたいと思うのでありますが、さっき御説明がありました「大学院の改善・充実について」という大学院問題懇談会報告が五十三年の八月に出されております。その中で、独立大学院の留意点についての提言が行われておりますけれども、それ、具体的に御説明をいただけますでしょうか。
  17. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) かなりの長い部分でございますので、あるいは要約をして申し上げるのは正確を欠くような点があるかと思いますけれども一つは、これは「独立大学院構想する場合の問題点」というような表現になっておりますけれども独立大学院として取り上げる分野について「基盤的な学問分野であるにもかかわらず人材養成が十分組織的に行われていない分野や、学際的領域等新しい学問的要請が高まっている分野で、既設の大学院では十分な成果が期待し難い分野等について構想されることが」適切であろうというような御指摘がございます。あるいは学生入学定員については、博士課程修了者の就職問題の状況にも留意をして、需給関係の慎重な見通しのもとに設定すべきである、まあいろいろたくさんございますので、そういった幾つかの項目が指摘をされているわけでございます。
  18. 粕谷照美

    粕谷照美君 それではまず、その「学問分野によっては、高度の研究者養成が必ずしも十分組織的に行われているとは言い難い面もある。」、したがって、「独立大学院は、このような事情を背景とし、特に基盤的な学問分野であるにもかかわらず人材養成が十分組織的に行われていない分野や、学際的領域等新しい学問的要請が高まっている分野で、既設の大学院では十分な成果が期待し難い分野等について構想されることが有意義であろう。」、確かにそういうことになっているわけですけれども、そうすると、今回のこの総合研究大学院大学はそれに該当をするということでございますか。
  19. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 今回の総合研究大学院大学母体となります各国立大学共同利用機関は、御承知のように高エネルギー物理学研究所というような例をとりましてもおわかりいただけますように、我が国でいわば唯一の非常に巨大なサイクロトロンを利用して、我が国最先端の、また国際的にも高く評価されている研究を推進している。非常に、何と申しますか、他の大学ではそこまで扱えないというような分野のものをやっておるわけでございますし、来年の四月から再来年以降参加を予定しております大阪の民族学博物館等につきましても、個々の大学では処理できないような分野についてまさにこういった共同利用機関の性格に基づきまして全国の大学で共同利用をしようということでつくられたというような性格のものでございますので、こういった指摘にはふさわしい内容大学院ではなかろうかと、こういうふうに判断をいたしております。
  20. 粕谷照美

    粕谷照美君 次に、この「学生入学定員については、」「需給関係の慎重な見通しのもとに設定する必要がある。」、この時期には随分オーバードクターの問題が指摘をされたわけですね。この入学定員の問題はどのように勘案をしながら拝聴されましたか。
  21. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 今回の大学院大学の入学定員につきましては、各専攻ごとに三名ないし六名程度、全体を合わせましても、来年度以降の計画まで合わせましても四十八名というような規模のものでございまして、それぞれの分野が非常に専門的な分野でもございますし、また個々の分野の人数が、そういった三名ないし六名というような非常に限られた数になっているということでございます。さらにはまた、従来からこの共同利用研に委託学生として各既存の大学大学院から数百名の方々を受け入れたという実績を持っておるわけでございますけれども、そういった方々の就職の状況等を見ましても、一般の民間の研究所あるいは大学あるいは国公立研究所のほかにも民間企業等にもかなり進出をしているというような従来の実績等もあるわけでございまして、そういったものを総合的に勘案をいたしまして、いわばこの程度の人数であればまず、何といいますか、修了者の処遇の問題で非常に問題を生ずるというようなことはないであろうという自信を持って人数の設定をしたつもりでございます。  なお、オーバードクターの問題にお触れをいただきました。    〔理事林寛子君退席、委員長着席〕 オーバードクターと言われるものが、今千七百名ほど全国でございます。この数字は若干ずつ減少をいたしてきておりますが、これが最近の傾向でございますが、またその中身を見ましても、一遍オーバードクターという状態になられた方が二年後には半減をし、三年後には三分の一に減るというようなことで、次々と就職をしていかれて変わっていっているというような状況もあるわけでございまして、かなり従来に比べれば状況はよくなりつつあるのではなかろうかというような印象も持っておるわけでございますが、そういうようなことも踏まえつつ、先ほど申し上げましたような非常に限られた人数のものとして、これを設置していくということによって卒業者の問題というのは大きな問題となることはなかろうという判断をいたしておる次第でございます。
  22. 粕谷照美

    粕谷照美君 私はこの連休中にたまたま日中民間人会議で中国へ行きまして、そのとき御一緒したグループの中に前の学術会議の会長であります、ノーベル賞候補の久保亮五先生がいらっしゃいました。また、現在学術会議の会長であります近藤次郎先生がいらっしゃいました。たまたまこの問題に話が及びまして、あの法律は私たちは問題があるというふうに考えていると、こう言いましたら、久保亮五先生があれは僕が推薦したんだよと、ああいうふうにならなければ日本の科学は前進をしないんだと大変強い調子でおっしゃられました。そして、現在の会長の近藤次郎先生は、今国家公務員法には定員があってなかなか若い人たちを採用するというわけにはいかなくなってきている、したがってこの大学院に入ってくる二十二歳から二十七歳は一番の研究者としては戦力であると、こういう話もされました。  四十歳が限度だというお話を伺いまして、四十過ぎると人間は頭がだめになるのかななんとこう思いながら、とにかく科学の先端にいらっしゃる方々は世界との標準でこういうものをお考えになる、そうするとやっぱりこういうことが必要なんだというふうに痛感をしていらっしゃるんだろうなということを感じたわけでありますが、しかし、この共同利用機関大学院大学にいたしますと、その組織研究機関そのものは特定の分野の極めて専門化した目的を持っているわけでありますね。  そうしますと、この「独立大学院学生教育研究指導を適切に実施するためには、その組織が特定の狭い専門分野に限定されることなく、十分な幅広い分野をカバーし得るよう、これらの研究機関を基礎とすると同時に、大学をも含めた広い範囲の協力体制を確立することが望ましい。」というこの大学院問題懇談会報告について一体どのような具体的な対策をおとりになるつもりか、また検討もしていらっしゃったと思いますので、その点をお伺いいたします。
  23. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この大学院大学がそれぞれの母体となっております研究機関は、いわば最先端分野をやっているのがほとんどであるというようなことから申しますと、そういう意味では、かなり限られている最先端となりますと、こういうような御指摘があることは承知をいたしております。また、この計画の実施に当たります関係者もその点については十分配慮をしてきたつもりでございます。  具体に申し上げますと、一つはまずその基本としてこの大学院はいわば学部なり修士課程のレベルから自分のところで非常に限られた分野をやるんだということではなくて、まさにその点も配慮をいたしまして後期三年の博士課程ということで、いわば一般の大学院、一般の大学学部あるいは修士課程においてかなり幅広く勉強をしてきていたというような人たちを相手に新しくこの大学院に入っていただいて専門的な研究をしていこう。そういう仕組みをつくっておるわけでございますし、さらには個々の高エネ研なら高エネ研について独立大学院にするということでなくて、この共同利用機関全体を通じて一つ大学院大学とするという構想も個々のものがばらばらに存在することでなくて、こういう形をとることによって相互の交流ということがいろいろな形でやりやすくなるであろう、それによって将来すぐれた研究者となることを期待されている人たちが幅の広い知識、経験を身につけていくことができるようになるんではないか、その具体のやり方として例えば共通の講義を設けるとか、あるいは共通のトレーニングをやろうというようなことも現在具体にやろうという方針は決まっております。具体にどうやろうかということは準備室の段階で今鋭意検討をいたしておるわけでございます。  また、その他先生の御指摘にもございましたけれども、既設の大学の一般の大学院との共管の面、あるいは学生面での交流も積極的にやろうということを基本的な方針として定めておりますので、また、そういった方向が具体にこれはどういうふうに動き出していくかということになりますけれども、既設の各大学とも十分御相談をしながらそういう交流を深めるということも考えようというようなことにいたしておるわけでございまして、そういったことを総合的に講ずることによりまして、非常に限られた分野というだけでなくてもう少し幅広いものを目指していこうということをねらっている次第でございます。
  24. 粕谷照美

    粕谷照美君 研究機関はそのままあって、やっぱり各大学から研究生を受け入れるわけですね。大学院大学の方は三人あるいは六人が最高になっておりますけれども、こういう学生しか受け入れないわけですね。そうするともう極めて全国から三人とか六人ですから超エリートといいますか、すぐれた研究生しか入れない。こういうことになろうかと思うんですけれども、その点はいかがですか。
  25. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) まあこの大学院だけが特にすぐれているということで考えるのは私は正確でないと思うわけでございます。現在ございます既設の大学大学院それぞれにすぐれた特徴を持っておるわけでございます。今回のこの大学院はそういった中である特定の分野についてすぐれた者を養成していこうということでございますので、この大学院だけが他の大学院に比べてエリートの養成であるというような御指摘は必ずしも当たっていないのではないかと思う次第でございます。  こういった分野を目指していくというためには、先ほども指摘がございましたけれども大学院修了者の処遇、修了者の就職等の問題等も考えますと、人数ももちろん制限せざるを得ませんし、また実際に研究所指導能力という面からいいましてもそうたくさんはとることはできないだろうと思っております。ただ、もちろん研究所そのものは従来どおり、一般の大学から御希望があり余力があれば、研究指導の委託等は引き続きこれは受けていくという姿勢でおりますので、そういった形でこの研究所機能というのはまた一般の大学にも還元されるというふうになるものと承知をいたしております。
  26. 粕谷照美

    粕谷照美君 また大学院問題懇談会は、独立大学院が設置の趣旨に沿って活発な活動をしていくためには教員の人事が停滞したり研究教育体制が固定化するということでは困るというようなことを言っておりますね。この辺の活力ある大学院大学にするための方策というものはどのようなことをお考えになっておられますか。
  27. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この大学院問題懇談会の報告は、独立大学院一般について言っておるわけでございますので、独立大学院のタイプというのは、前の国会での御審議のときにも話題に出ましたように、更地に新しく大学院をつくるというようなやり方もございます。各大学が集まってつくる連合大学院というようなやり方もあり、あるいはこういった研究所母体にするような大学院というやり方もあるわけでございますので、研究所母体にする大学院というのは、もちろん研究所とのつながりという上で大学院運営されるわけでございますから、教官を次々とかえていくとかいうふうにそう簡単にいくわけではございません。  しかしながら、この大学院具体運営に当たりましては、これは今後の構想として考えられているところでございますけれども、例えば流動教官というような制度を設けて、制度と申しますかこれは事実上の仕組みでございますけれども、各大学から二年、三年ぐらいの期間で来ていただいて交流をするというような方式等も考えていこうということが言われておるわけでございますし、それからまた、これは総合研究科といっておりますけれども、現在の研究所母体とする幾つかの研究科構想しておりますが、そのほかに今後の新しい分野等が出てくるということを考えまして、そういった際にはその総合研究科というようなものを設けて新しい分野の進展にも対応していこうというようなことも考えられております。いろいろな工夫を凝らしまして、この総合研究大学院が生き生きと研究教育活動を行うような効果をねらっていきたい、そう考えている次第でございます。
  28. 粕谷照美

    粕谷照美君 そのような問題について文部省だけが検討するということではなくて、大学審議会の部会などで十分検討が行われるのだろうというふうに思っておりますけれども、先日報道をされたところによりますと、いわゆる大学審議会で大学院部会の会合が開かれた、その中で独立大学院の設置基準づくり、これに集中的な討論が行われるということが報道されておりますけれども、この総合研究大学院、これの設置基準というものはあるのですか。
  29. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大学院の設置基準につきましては、最初に申し上げましたように、昭和四十九年につくりました大学院設置基準というのがあるわけでございまして、それが全体に今かぶっておるわけでございます。そういった中で、この新しい独立大学院のようなタイプのものも運用されるわけでございますけれども、現在のところは具体の運用の問題としては、大学設置審議会、これは現在大学設置・学校法人審議会と改まっておりますけれども、その審議会が大学院設置基準のもとで、こういった学部に足を持たないような独立大学院の場合の校地、校舎はどうするかというようなことにつきましての審査内規を持っておりまして、大学院設置基準と審査内規とこの二つの併用によって対応していくということに相なるわけでございますが、ただ、この独立大学院というものは、これからも国立ばかりでなくて、例えば私学でそういうことが構想されるというようなこともあり得ないことではないわけでございますので、そういったことも踏まえまして、この独立大学院というものを少し全体に眺めてそのための基準というのをもう一遍考え直してみようかというようなことで、現在検討が行われつつあるところでございます。
  30. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、具体的な法律問題に触れて伺います。  第三条の一項、「国立大学の名称、」とあるものを「国立大学(第三条の三に定めるものを除く。)の名称、」に改めるようになっております。これ、内容をちょっと説明してください。
  31. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 第三条の規定のところでございますけれども、これは国立大学の名称をいわば短冊の形でずらっと並べた法律規定でございます。総合研究大学院大学につきましては、それとは別個に第三条の三で、従来のものとはかなり性格を異にするわけでございますので、別の条でこれを規定したということでございますので、そのために第三条の規定で「国立大学(第三条の三に定めるものを除く。)」といたしました。これは要すれば、趣旨は、総合研究大学院はこの短冊で書いた中には一緒に並んでおりません、別の条で書いてありますという趣旨をあらわすためにこういう規定の仕方をしたわけでございます。
  32. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、この大学は、「名称及び位置等」というこれは、きちんと保証されていると読み取ってよろしゅうございますか。
  33. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 総合研究大学院大学の名称は、第三条の三に「総合研究大学院大学を置く。」と規定したとおりでございまして、名称がそのまま規定されている。これが固有名詞でございます。それから位置につきましては、これは省令で別途規定をするということを予定をしておるわけでございます。御承知のように、総合研究大学院大学の場合には、場所が実態として各県にまたがって存在をするということになりますので、法律で何県と書きますと大変誤解を招くということもございまして、これは省令で事務所の所在地というような形で書いていこうというような考え方でおるわけでございます。
  34. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかし、そこのところが大変な問題だというふうに思うわけでございます。大体普通の国立大学については、三条の一項で、名称と位置、学部具体的に定められていますね。あれだけ問題になった筑波大学ですら、法改正のときには学群とか学系及び学類、参与会、評議会、人事委員会などは具体的に法律で決められていたと思います。今、局長お話しのように省令でやるというのは大変問題があるのではないか、法律に欠陥があるのではないか、こう思いますが、いかがですか。
  35. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 筑波大学の例等を引いてのお話がございましたが、従来の国立大学というのは基本的にはそれぞれの、東京大学なら東京にある、大阪大学は大阪にある、筑波大学も筑波にある、筑波というのは茨城県でございますけれども、そういうことで、その実体がそこに存在するということでそこに規定して、それを国民の方がごらんになって、ああ茨城県に筑波大学があるなということになるわけでございますけれども、今回の場合の総合研究大学院大学につきましては、場所が茨城県にございます高エネルギー物理学研究所、それから東京都にございます統計数理研究所というような形で四つの県にまたがっている、実体がそういうふうに完全に分かれているという従来にないケースでございますので、こういうことについて一義的にいわば位置を書くとすれば本部の所在地となるわけでございますけれども、それを法律規定するということが適切であるかどうかということもございまして、これにつきましては省令で規定をしていくということが適切ではなかろうかというような考え方をとっておる次第でございます。  なお、省令で規定するということにいたしましたのは、この国立学校設置法の十三条に、組織及び運営の細目について省令で定めるという規定があることを踏まえてその省令にゆだねるという考え方をとっている次第でございます。
  36. 粕谷照美

    粕谷照美君 次に、管理運営について伺います。  本大学はこの管理運営については従来の大学管理運営の原則が適用される、このように理解してよろしいですか。
  37. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 学校教育法及び、国立大学でございますから教育公務員特例法の管理機関等の規定が適用されるわけでございます。
  38. 粕谷照美

    粕谷照美君 では教授会、評議会について伺います。  教官は「国立大学共同利用機関の教官をもって充てる」、こうありますけれども具体的に、共同利用機関のスタッフは全員大学のスタッフになるのですか、一部のスタッフが大学のスタッフになるのですか。
  39. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これは大学院大学の側でどの方をお願いするかということを決めていくわけでございます。もちろんこの研究所のスタッフの中でも、例えばまだ大学院研究指導を担当するというまでのレベルに達しておられない方、若手の方というような方もおられるわけでございますので、全体の研究所のスタッフの中から適任な方を大学院の教授等としてお願いをするということになるわけでございますので、全員がそうなるというわけではないわけでございます。
  40. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういたしますと、併任をする方と専門共同利用機関にいらっしゃる方と二とおりに分かれると思いますね。併任をされる方といいますか、大学院大学に行かれる方については教特法が適用されますね。ところが研究機関に残られる方についてはそれはどういう形になりますか。つまり二つの法律が適用されるという教官が出てくるのではありませんか。
  41. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) それぞれの職の種類に応じて法令上の規定が適用されるわけでございますので、御指摘のように研究所だけの方は研究所の教官という身分だけで、したがって教育公務員特例法規定の適用も研究所の教官という立場で適用を受けるわけでございますから、これは教特法上は準用という仕組みであったと思っております。  それから、もちろんその方がこの総合研究大学院大学の方を兼務されれば、その総合研究大学院大学の教官としては教育公務員特例法規定が純粋に適用されるということになるわけでございますので、もちろんそういう方を大学の教授にお迎えをするという場合には教授会の審議等を十分経てお迎えをするという仕組みが適用に相なるわけでございます。こういったケースは一人の方が二つの職を兼ねるという場合には往々にしてあり得ることでございます。
  42. 粕谷照美

    粕谷照美君 なぜ現在この共同利用機関にいらっしゃる教官の方々には教特法が適用されないで準用されているのですか。
  43. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 国立大学共同利用機関は全国の大学研究者の共同利用の中心的な機関として位置づけられているわけでございまして、学術研究機関でございます。そういうわけで、共同利用機関の長や研究に当たられております職員の方につきましては教育公務員特例法のそのものの適用をされているわけではございませんけれども、学術研究機関であり、かつ研究に従事をしておられるというような特性にかんがみまして、例えば採用、昇任の方法であるとか、任期であるとか停年であるとか、そういった多くの点につきまして教育公務員特例法の条項が準用をされておる、こういうものでございまして、準用と言う場合は、本来の適用ではないけれどもその特性に応じてこれに準じて適用をするという意味でございます。
  44. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、今度大学院大学になるんですから、なぜ同じところに働いていらっしゃる方が二つの法律の適用を別々に受けるのかということについて伺ったつもりであります。今の御説明では十分に納得できませんけれども、教授会の方に移ります。  この教授会については学校教育法五十九条によって設置をされる、こういうことをおっしゃっているわけですが、この審議事項というのは一体どういうことを研究されるんですか。例えば、数物科学研究科というのは東京と筑波と岡崎にありますね。生命科学研究科というのは静岡県の三島と愛知県の岡崎にあります。そういうところで一体どのような形で教授会というものを開催するのでしょうか。
  45. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 場所が分かれているということで大変運営の面で普通の大学と違ういろいろな工夫が必要であろうと思っております。もちろん重要な事項の場合には全員の方が、例えば神奈川県に事務局を置くことを予定しておりますけれども、そこに集まられるかほかの場所に集まられるかは別にいたしまして、集まって教授会としての運営をされるというケースもございましょうし、あるいはそのかわりに別の、何と申しますか、代表者の機関というような形で比較的軽微な事項は処理をするようなケースもあり得ようかと思いますが、項目に応じてそれぞれ工夫をしていただくということになろうかと思います。  もちろん先生も御案内だと思いますけれども、例えば北海道教育大学教育学部というのは南は函館から向こうは釧路にまで分かれて存在をするわけでございまして、そういった分かれて存在をする学部運営の場合には、例えば教授会を年数回行うことのほかに、比較的軽微な事項等については代表者によって代議員会議というようなものでもって処理をしていくというようなやり方もあるわけでございます。具体にこの大学がどう実施されるかは別にして、そういったいろいろな工夫をしながらやっていただく必要があろうと思いますし、またそういったために必要な予算措置等につきましても考えていかなければならない、こう思っている次第でございます。
  46. 粕谷照美

    粕谷照美君 もともと教授会というのは重要な事項を審議するために行われるわけだと思いますので、今局長が重要な事項を審議するときにはと、こうおっしゃったのはちょっと当てはまらないのではないだろうかというふうな感じがいたします。  それで、予算措置はきちんとやっていただけるんでしょうか。緊急事態などあって予算超過したんだけれどもこの教授会はどうしても必要だというような場合には、それは当然文部省としては認めなければならない、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  47. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 個別の予算の執行につきましては各大学、現在の国立大学についても同様でございますけれども、それぞれの大学にその大学実態等を踏まえて予算の配分をいたしておるわけでございますので、そういった中で対応していただくというのは基本でございます。いろいろな状況を踏まえながら各大学で適切に対応していただくということが基本でございますけれども、非常に特別な事態というふうな場合にどうするかということにつきましては、これはまた個々に御相談に応じていく事柄ではなかろうかと思っております。
  48. 粕谷照美

    粕谷照美君 評議会について伺います。  国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則というのがありまして、第六条、権限、その二項に「評議会は、前項に掲げる事項の外、教育公務員特例法規定によりその権限に属せしめられた事項を取り扱う。」と、こうありますけれども、この教授会、評議会、これ以外に何か管理運営機関というものを設ける予定があるのですか。
  49. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 管理運営機関と言うのが適切であるかどうかはあれでございますけれども、類似したものといたしまして考えておりますのは、その前に、もちろん管理運営機関としては、学長を置き、あるいは研究科研究科長、まあ学部長に相当するものでございますけれども、そういうものは当然置かれるわけでございますが、そういったもののほかに運営審議会というのを置くことを予定いたしておるわけでございます。  この運営審議会と申しますのは、この総合研究大学院大学が、先ほど来申し上げてまいりましたように、一つには国立大学共同利用機関母体として、それと密接に手をつなぎながら進めていくという必要があるという特殊な性格を持っておりますし、もう一つには、先ほど先生からも御指摘がございましたけれども、既存の各大学とも十分手をつなぎながらやっていかなければならない。そういう点を考慮いたしまして、そういった国立大学共同利用機関あるいは他の大学の関係者の方々にお集まりいただいて、いろいろその運営について連絡、協議をするというような場として、運営審議会というような性格のものをつくる必要があろうと思っている次第でございます。
  50. 粕谷照美

    粕谷照美君 この大学の重要な事項を審議するのは、教授会ではなくて、学外者、大学関係者、それから研究機関の長などによる大学運営審議会であると今お話がありました。この教授会自治というのは、伝統的な大学自治の基盤であって、それを欠いた管理運営は重大な問題だ、こう思いますけれども、この運営審議会ですか、その権限を説明していただきたい。
  51. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 運営審議会と申しますものは、先ほど申し上げましたように、そういった非常に関係の深い共同利用機関の方、あるいは他の大学の方とのいろいろな連絡等を行おうというのをねらいとしているものでございますから、そういった意味で、先生おっしゃるような意味での何らかの権限というような力の強いものを持っているわけではもちろんないわけでございます。評議会あるいは教授会あるいは学長、研究科長といったような一般の大学の、国立大学と同じ種類機関が同じような権限を持ってこの大学運営をするわけでございます。そういったものについて、それを左右するような性格のものでは運営審議会というのは全くないわけでございます。
  52. 粕谷照美

    粕谷照美君 時間がなくなりましたので、最後に一言伺いますが、こういう先端的なところに注目がいくのも当然の話でありますけれども、どうも基礎的な学術研究部分について、文部省は少し配慮が足りないのではないか。文部省というよりも、日本政府配慮が足りないのではないかということを質問いたします。  これは文部大臣にお伺いをするわけですが、日本学術会議会長の近藤次郎先生から、「大学等における学術予算の増額について」という要望書が総理大臣あてに出ていました。これは中曽根康弘氏の時代であります。これはもっともっと基礎を大事にしないと、日本の文化も豊かになっていかないし、それから科学も進歩していきませんよと。その部分についての予算を十分配慮するようにという要望でございます。文部大臣のお考えを伺って質問を終わります。
  53. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) おっしゃるように基礎研究の拡充、促進というのが今一番重要な問題だと思います。この点はもちろん六十三年度予算でも、基礎科学部分の科学研究費補助金は昨年よりも三十八億円増の四百八十九億円を計上させていただきました。  これから基礎科学の研究ということになりますと、日本国内の環境を整備するということも必要でありますし、また、若手の研究者を育てるということも必要でありまして、若手研究者に対するフェローシップ制度、これも続けております。それと、これからは国際化の時代でありますし、先生おっしゃいますように世界的視野でその研究の人的交流も図っていく必要がある。強いて言えば、今までは日本から人材が流出しておった。しかし、今の経済力からいたしますと、これからは日本が受け入れをいたしまして、そして、そういう意味で基礎科学の研究分野日本の環境を整備することによって世界に貢献をしていく時代ではないか。そういう意味で、外国の若手研究者に対するフェローシップ制度も六十三年度から進めさせていただいたと、こういうことでありまして、その中で、以上でお答えになると思いますが、さらに日本高等教育のやはり高度化、活性化が必要であるということで、学術審議会でも御審議をいただいておるところでございますし、まさに今御審議をいただいているものも、既存の大学院大学とそれ以外の分野、こういう点でこの総合大学院大学、この設置をお願いをいたしておるところでございまして、それを総合して今おっしゃったような基礎研究の充実、これに資してまいりたいと、このように考えております。
  54. 安永英雄

    ○安永英雄君 今の粕谷委員質問に対する政府局長の答弁、非常に私はわからないんですね。全く学部も持たない、修士課程も持たない、こういった大学以外のところで博士課程のみの大学院を設置するというのは、これは初めてのことですよ。だから、これは今の説明を聞いていますと、どこにもある大学院をつくるのと同じことなんだから、そう別に法律の中にも書き込んでいない。そして政令、省令で片づけることができるというふうなお話ですけれども、私不思議に思うのは、このどこを見ましても、今の大臣の方から、この大学院大学の設置のこの目的というのを探しましても、「学校教育法第六十八条の二に定める国立大学として、総合研究大学院大学を置く。」、これだけなんですよ、法律上もこれだけ。提案の方のあなたの趣旨では、「学部を置かない大学院のみの大学を設置し、国立大学共同利用機関との緊密な連係及び協力のもとに教育研究実施しようとするものであります。」、これだけなんです。  そこで、今も申しましたとおり、これは私の考えでは、筑波大学を設置するとき以上の次元の違う新しい大学院大学ができるというふうに私は思っている。またそうでしょう、この提案は。そうであれば、先ほど粕谷委員の方から質問がありましたように、私はあの筑波大学のときの審議、それはもう長い間かかってやったものですが、政府から出た資料でもこのくらいありましたよ。法律案全部その中にもう運営機構、管理機構から全部入っている。そしてこういう新しい新構想大学をつくる。こういうことで相当激しい審議をしたことを私は覚えているんです。今度は何だかどこかのところに大学院をつくるというだけで、あと説明ない。  私は、これは時間の関係ですけれども、少なくとも次のときまでにこの法律に基づく政令と省令案、これを出してください。私どもは何で勉強しよるかというと、とんでもない雑誌とか新聞とか、まあ審議会の記録もありますけれども政府からもらった資料で検討するなんということはできないんですよ、今。普通であればこれは本当に審議できないと座り込んでしまうところですけれども。そういった点についてはあくまでもやっぱり、あなたが先ほど説明したように、この総合の大学院大学というものは、何だか一般にあります大学、例えば連合大学とか、こういうのがしょっちゅうありますから、そのうちの一つでございますと言いますか。私はもう少し法的にも、我々がここで法律をつくるんですから、その中でもどういう性格の大学院大学ですということは、私ども腹の底から承知して審議しなきゃならぬと思うんですよ。ここに今まで出た提案の理由、どこ探したって、一行ぐらいで、私どもわかりません。どういう大学なんです、これは。  それから、言っておきますが、今の省令、政令、これの案はできておるはずです、十月から発足するんですから。これが出ないと審議をしないとは言いません。しかし、少なくとも次のこの委員会までに出してください。
  55. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 政令あるいは省令の案を出せというお話でございますけれども、案そのものにつきましてはある程度部内でオーソライズされたという段階でないとやはりこれはちょっと出しがたいわけでございますけれども、何を、大体どういう項目をここで政令、省令で規定しようかと考えている、こういう項目を考えているということについては、ただいま御説明をしても結構でございますし、あるいはメモのようなもので先生にお渡しをしても結構でございます。
  56. 安永英雄

    ○安永英雄君 もう一つ質問しておったんですけれども。どういう性格の大学なんですか、これは。
  57. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 法令の規定といたしましては、各種の大学、すべて大学の名称と位置といったような程度のものを法律規定をするということに相なっておりますので、今回の総合研究大学院大学についても、名称としての総合研究大学院大学、それから位置の問題につきましては、先ほど粕谷先生に御説明申し上げましたように、場所の法定するのは若干問題があろうかということで省令で規定をするという形で考えておるわけでございますが、この性格につきましては、学校教育法第六十八条の二に定める国立大学ですということで、学部を置かずに大学院だけを置く大学であるということを法律上明らかにすると同時に、国立大学共同利用機関で政令で定めるものとの緊密な連係協力のもとにやっていくんだという、これの運営基本のところについて法律規定をした。これはほかの法律上の規定と趣旨を一にするもので、規定の仕方をバランスをとったものでございます。  なお、筑波大学について先ほどお話がございましたが、筑波大学の場合には、管理運営について例えば人事委員会を設けるとか、各種のかなり従来と違った仕組みをつくりました。あるいはまた、学部をつくらずに学群、学系制を実施するというようないろいろな違った点がございましたので、そういった点については法律規定ということに相なったわけでございますけれども、今回のものは、これも先ほど来申し上げておりますように、管理運営面につきましては一般の大学と同じように従来の学校教育法あるいは教育公務員特例法規定をそのまま適用するという考え方運営をしておりますために、法律の条文としては非常に簡単な仕組みのものと相なったわけでございます。  この性格といたしましては、これは今申し上げたことをダブることになろうかと思いますけれども学部を置かずに大学院の博士課程だけを、博士の後期課程だけを置く大学ということで設置をしようというものでございまして、その設置をします教育研究の中身は、これは政令で研究科の名称等は決めていくことになるわけでございますけれども共同利用機関母体としております関係上、参加をすることになっております共同利用機関研究分野と密接に関係のある研究分野についてこれを取り上げて、研究科あるいは専攻として置いていくというようなことにいたしておるわけでございまして、個別に細かい御質問等ございますれば、また後ほど詳細にわたって御説明をさしていただきたいと思いますが、おおむねそのようなことでございます。
  58. 安永英雄

    ○安永英雄君 私はそういうことを聞いていないんですよ。法律の上であらわす文言というのはこういうものかもしれない。しかし今度できる大学院大学、特殊な大学院大学というのはどういう性格を持って、どういうねらいで設置をしていくのかということをお聞きしたかったわけです。  そこで、もう時間がありませんから私は聞きますが、至極当たり前の大学をつくっていくんだと、こう言っていますけれども、今も粕谷さんが学術会議の幹部と話しして、非常に高度なことを考えているということのお話がありましたけれども、総合研究大学大学院創設準備委員会、あるいは今までの大学審議会等のことを私は調べてみた。どうしてもわからぬから、他の方から調べてみた。  ところが、ここはあなたの言うような生易しいねらいを持っているという大学じゃないですよ。これはもう極めて画期的な、意欲に満ちた、方向は間違っているけれども、少なくともそのねらいを擁しておるという意欲を満々と出しているんです。こんな小さな報告書の中でも出ている。いいですか、既存の大学院が重要な役割を果たしたことはわかるけれども、「従来の制度にこだわることなく新しい発想のもとに導入することが急務と考えられる。」、そして「国立大学共同利用機関等の国際的にも優れた研究機能を活用して高度の、かつ国際的にも開かれた大学院教育を行うとともに、新しい学問分野を創造し、それぞれの分野及び先導的分野の優れた研究者を育成するために総合研究大学院大学を設ける。」、まだこの前にはたくさんあるんですよ、こういうものをつくるという意欲満々なのが。  例えば、今さっき粕谷さんの方から質問がありまして、エリートを集めるのではないか、あなたの答弁はそうではございません、当たり前の大学院に集まるような人間を入れてくるんですと、こう言うけれども、ここでは、「学生の受入れに当たっては、広く国の内外を問わず大きな可能性を持った少数の優秀な人材を、多様な選抜方法をもって確保するよう配慮する。」、エリートですよ。エリートを全国からあるいは外国からでも持ってきて、最高のエリート、最高の施設、その中でとにかく世界の科学技術におくれないようにこの大学院大学をつくるんだという非常に大きな目標を持っているのであって、ここらあたりを、こういう大学をつくるのがいいのか悪いのか、こういった根本的な問題がこの国会の中で、この委員会の中で論議しなきゃならぬ。そういう素材も与えないで、そして今さっきじゃありませんけれども、省令、政令で出す骨格だけメモ的なものは出しましょうかなんというような、そういうことでは済まない大体これは性格の大学だというふうに私は思いますが、あなたにとってはこれは鬼子が生まれますよ、あなたの今のような考え方で、そして実際に始まったら。  十月からこれはやるんですよ。国会で我々何も知らぬで審議して、そして神奈川県かどこか知りませんけれども、それが中心にできて、そしてこれに向かって猛烈に進んでおる。そういうはずじゃなかったがと言ったときには私どもは責任とれない。そういった意味で、私はこれはどういう大学なんだ、準備委員会はこう言っているけれども文部省としてはこれはどういう大学なんだ、大学の多様化の次元じゃないですよ、これは。こういう変わった大学がある、こういう変わった大学がある、こういうところがあるという、次元は同じの上の大学という、多様化じゃないですよ、これは。そういった意味でこの大学の位置づけ、目的、こういったものを大臣の方からお聞きしたい。
  59. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 既存の大学院大学がございます。これはもう先生御存じのように学部単位もございますし、そこですぐれた研究者あるいは高度な職業人を養成する、この意義は十二分にある、こう思っておるわけであります。  ただ、先生はエリートというお言葉を使われましたけれども、その上部にあるというわけではありませんで、恐らくこれからは学際分野あるいは複合分野、いろいろな分野が重なり合ってくる分野もございますし、また一部オーバーラップをしてくる分野もある。そういう新しい研究分野がふえてまいります。たまたまそれは既設の大学院大学でそれぞれそれを拡充したらできるんではないかということもあり得ますでしょうけれども、その一つ一つを見ますと、例えば高エネルギーの研究にいたしましても大変大きな施設を要するものでございますから、それを、いわゆる国立共同利用機関としてせっかくあるものでございます。そこを利用いたしながら、そして個々に、各県にわたっておりますけれども、それがまた各一つ一つがばらばらであってはいかぬ。それを総合的に、一つ国立大学院大学としての機能を持たせながら総合的に運営していこう、こういうことでございまして、今までの分野で包含できない分野を置いていこうということで、決して私はエリートではなくて、これからのいわゆる学際分野、複合分野をカバーしていく分野研究を兼ねた大学院大学であると、このように私は考えております。
  60. 安永英雄

    ○安永英雄君 しかし、文部大臣がおっしゃったからそのとおりの大学ができるというふうに私も信頼しますけれども、とてもじゃないがあなたのような考え方じゃないですよ、この大学の関係者というのは。そんな研究機構がいろいろあって、それをできるだけ調整してやっていくというようなものじゃないです。これは、私は手を挙げると思うんですよ、あなたは。ねらいはそういうものではないということを、そしてこれはとんだ方向にいくのではないかというふうに私は思います。  もうとにかくメモ程度しか出ないというんですから、私の方で調べた内容でどういうふうになっているかお聞きしたいと思うんですが、とにかくあなたがおっしゃったような構想であればわざわざ、今までかかわってきた人が言うような最高のエリートと最高の施設研究施設、これを持った大学、そして現在の大学院を中心にした研究というのは切って捨てる。あなたが言うように、まだ 多くなりそう、こういう話なんだけれども、そうじゃないんですよ。もう間に合わない。後で私も聞きたいと思うんだけれども大学院の看板を上げたけれども一人の博士も出ていない、そういう大学院もある。切って捨てろ、拡充でなくて切って捨てろという方向を皆、側の人は持っている。やれたまらずに最高の世界の水準に達するようなものを日本で一カ所つくろう。これが今度の発想なんですよ。私は当然大臣がおっしゃるように、現在の大学院の充実を図って、そしてそれがねらいで、ある最高の水準に持っていって、日本の科学技術の水準をさらに高めていくというふうなところまで全部を上げていくというふうな方向でなけりゃならぬのですけれども、そうじゃないんです。私ははっきりそういうことが感じられます。  ここで、時間がありませんから、どういうところをどういうところから聞いたとか、どういうところを研究したとかいうことは言いませんけれども、とてもじゃないが、あなたと局長が言うような大学院大学では、はたの者は実際にそれを進行し、そして省令か政令か知りませんけれどもそんな網の中にかかるような考え方じゃないですよ。発足したらとんだところへ行きますよ、これ。そこで、何回も、どの本を読んでみたり、どの人と話をしましても、優秀な研究スタッフによる高度の研究の推進、創造性豊かな研究者をつくる、これ一本ですよ、どこの方面も。文部省が言わないだけです。あなた方も考えているんじゃないですか、そういうことを。私は本当のねらいは何かということを何回も聞きますが、そこだと私は思うんだけれども違いますか。
  61. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) あるいはこれまでお尋ねの趣旨を取り違えてお答えをしてきたのかもしれませんけれども、この大学院大学は、もちろん最近のいろいろな世界情勢、我が国の中の情勢、いろいろな面から独創的な学術研究の推進とか、あるいは先導的分野の開拓の重要性というようなことを当然のこととして踏まえまして、学術研究の国際化、学際領域、複合領域の研究の発展に伴いまして、幅広い視野を持つ創造性豊かな研究者の養成に努力を払うということがこれは全体として重要だという考え方でございます。  そういったことを実現していくためには、一つは既設の大学の博士課程にも大いに努力をしていただくということが必要でございます。また、それとあわせて、従来なかったような分野で、しかも高度の研究を進めている共同利用機関研究機能というものを活用いたしまして、こういう新しい大学院をつくるということも大事なことだ、こう考えておるわけでございまして、もちろん関係者、もちろん私どももそうですけれども、せっかくつくるものはいいものにしたいという気持ちは皆同じだと思います。それは既設の大学がいろいろ大学院をつくる、例えば新潟大学で総合科学研究科をつくるというようなことも、大学院ドクターコースが逐次つくられてはおりますけれども、そういったところでも同様に、同じような方向を目指しつつ、御努力をいただいておるわけでございます。  私どもは、そういう努力を全体として大事なものとして考えて、できるだけの応援をしていこうという体制でいるわけでございまして、そういう意味でこれだけが特別のものでないということを申し上げておるわけで、従来のものと並んでこれも大事なものだということで申し上げておるわけでございます。それぞれの大学院が、そういった独創的な、すぐれた研究者の養成ということでみんなが全力を挙げてくれるということを心から期待してやっているわけでございます。
  62. 安永英雄

    ○安永英雄君 口ではそう言えますけれども、東大のごく最近の動き、あるいは今度の総合大学院大学の設置、これあたりの一番基底にあるものは、これは研究の費用、研究費、そういったものについて非常に絡んでいるんですよ。たくさんな研究費やって存分にやれということを我々としても今まで主張してきたけれども研究費、これは数字その他はもう時間がありませんから聞きませんけれども研究費が非常に少ない。少ないから業績を上げようと思ってもなかなか上がらない、研究が進まない。やれたまらずに傾斜配分をやる、予算の傾斜配分をやる。あなたのところでもこの研究費あたりのときにはやっぱり業績が出るようなところに重点的に出そうという方針を持っている。そのことで東大もそういった方向をねらっておる。業績の上がらない、それに焦り、とにかく別の総合的な大学院大学をつくって、そこに集中的に研究費をぶち込んでいって最高のスタッフを置く、こういうふうになるんであって、どんぶり勘定で、あなたが言うようにそういったところはぐんぐん進めてもらわなければならぬけれども、一般のところもぐんぐん伸ばしていくぞという、口では言えるけれども、実際はそういった業績の上がらないときは打ち切りですよ、これは。切り捨てですよ。その方向を示しているというふうに私は思います。  それともう一つ、私は筑波の問題を思い起こしますと、私の方は筑波以上だと思っているけれども、あなたの方は筑波以上じゃないような態度なんですけれども、私は筑波のときの審議から今日までずっと高等教育の問題について関心を持ちながら勉強してみたんですけれども、実際昭和三十年から四十年代の半ば、そこまであたりは、いわゆる大学大学院、個々の科学技術に対するいわゆる研究の質というものは非常に高かった。したがって、この時期の審議あたりは専ら産業界、企業、こういったところが大学研究に依存をするという時代でした、レベルが高いから。したがって、この委員会でいつもやるのは産学共同でどこそこの大学が民間から金をもらって、そしてそこで研究したものをその企業に渡している、特許も一緒に渡したとか、そういう、裏を返せば大学院の科学技術についてのレベルが非常に高いという、裏返せば。そういう時代であったわけですよ。  ところが、四十五年から大体五十年代の終わりまで、非常に長い間ですけれども世界的な科学技術の発達がぐんぐん伸びていく。そして、各企業、産業関係ではとてもじゃないが日本の中にある大学の科学技術のレベルというものじゃとても参考にならないし、自分自身でとにかく研究所を開いて、そこで研究していかないと間に合わないという時代が長い時代になるんですよ。だから、各企業大きな研究所をどんどん企業それ自体がつくってやってきたわけで、裏を返せば大学のレベルが非常に低くなったという時期なんですね。  これあたりの今度のこの委員会における審議というのは、必ず大学による教育が、大学には行かずに企業の研究室に入り浸り、そして企業の研究機材を使いながら研究をしておる。ましてやその大学から許可もなしに毎日その企業の研究所に務めておるという者については手当その他が出ておる、これはどういうことかというのが大体この委員会審議であったわけです。名前は言いませんけれども、新しい話なんです。それが今またさらに世界の情勢、その他の問題から企業の限界が私は来たと思うんですよ。企業の限界が来ています。  これはいつでも私は言うんですけれども、名前は言いませんけれどもある大企業の研究所に行った。その当時はまだ大学のレベルは高いと、こう思っていますから大討論をやりましたけれども、私の方は大学から学ぶものは一つもありません、大学が必要であれば私のところに習いに来るように言ってくださいなんて私に傲慢なことを言う。私は研究室を全部回った、雑誌全部、書類全部、一切が外国の研究用の企業論文、日本大学の企業論文、それをどんどん引っ張ってきてそれで研究している。これはおかしいじゃないか、これはもうその当時からわかっていましたね。もうとにかく基礎科学といいますか、そういったものは全然なしに、とにかく直ちに役に立つような、商業化できるようなそういった研究開発ばかりやっているから、当然世界中の基礎になる研究というものがぐんぐん伸びてきたときには、とてもじゃないがそういった企業が一つずつ持っておるぐらいの研究では間に合わない。  ちょっと長くなりましたけれども、私はそういう時期が今来ておるから産業企業界というものは、こぞってまた国の力、大学個々でそういった形でぐんぐん伸びてもらわなければ、自分のところではとてもじゃないが持てないという、私は作用が今度の総合大学院大学の底流にその人たちにはある。私はいつも産学共同の問題やりますけれども、そういった産業界と大学研究、こういったものが無縁じゃないと思うんですよ、これは。当然国益というものをねらいながら研究もし、それの実用化、これに企業はもっていくというのはこれは当然なことではありますけれども、余りに今まで私が言ったような長い間のこの大学院構想とか、高等教育における特に科学技術、そういった問題についての研究は常に私は企業の要請が大きく動いておる。  これはどうにもごまかしようがない。企業が常に要望することを国の方で受けて、あるときはばかにされる、あるときにはまた帰ってくる。そしてやりなさいと、こういう協力体制をやりましょうと。こういうふうなことですから、今予算の問題にもちょっとと触れられましたけれども、今度のこの大学院大学ができたときの予算、研究費の面だけで結構ですから、十月から発足しますけれども、どう考えておられるのか。そしてごく最近はまた、時間がありませんけれども、とにかく門戸を開いて民間だろうが、自治体だろうが、どこだろうが、とにかく投資してください、こういう門戸をこのごろあけ過ぎている。こういったところも私はある実業家と話を飛行機の中で会いましたから聞きましたが、知っていますよ。これについては私どもはもうとにかく金を惜しみませんと、こういうことを九州の方面の財界の者は言う。責任者ですが、私はそういった意味で、一つはこの点はいわゆる産業界、企業界の要請というものにこたえるという意思があるのではないか、あるいはこの学校が開校し、大学が開校し、研究に入っていった場合には企業、産業界の要請というものが大きく研究テーマの中に出てくるのじゃないか、教育研究のための大学自体のとにかくプログラムというものを壊していくような私は企業の進出があるのではないか、要望があるのではないか、そういったものに対する対処の仕方は文部省としてどう考えているか。長くなりましたけれども、お答えください。
  63. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) お答えいたします前に、先ほども政府委員からお答えしましたけれども、既存の大学院大学につきましても決してこれは軽視するという意思はございませんし、より充実をしていく。それは口で言ってもなかなか難しいことではないかとおっしゃいますが、一層努力をいたしていくということをまずつけ加えさせていただきたいと思います。  今の御質問でございますが、確かにお話を伺っておりまして、おっしゃるような流れというか、経過があったであろうし、また、私自身もそういう記憶がございます。間違っておるかもしれませんが、先生おっしゃるように三十年代から四十年代、四十年代半ばから五十年代とお分けになりましたけれども、恐らくそのときには科学技術と申しますか、むしろ科学技術の方の後半の技術が生産技術に速やかに結びついていく、商業ベースに速やかに乗って、そのまいた種の収穫が早いという部分につきまして企業は相当な関心を持ち、あるときには大学研究に依存し、あるときにはそれを追い抜くようなスピードで各企業が努力をしたという時期は確かにあったであろうと私は思います。  ただ、今の時代で大きく叫ばれておりますのは大学あるいは企業という分野分けよりは、より大きい世界的な視野で、日本のおくれておるのは科学技術と申しますよりは基礎科学の分野の拡充である。これはやはりサイクルが長くなりますから恐らく商業ベースで考えてはとても成り立たない。したがって、公財政支出で研究を進めるということは、これはやはり我が国の産学のあり方というよりは世界的な視野でそういう時代に入っておるのであろう、私はそう考えます。  したがいまして、予算の面でも、これから六十四年度、六十五年度とさらにその拡充に努力をいたしていかなければなりませんけれども、ある意味では、先ほど申したように、これからの基礎研究ということになりますと世界的な視野でおくれをとらないように、そして日本がむしろ環境を整備して日本に人が集まっていただくような、そのような先進的な環境もつくっていかなければならない。これは言葉と一緒に相当な努力をしていかなければならぬことでありますが、そのように感じながら、努力をしてまいりたいと思っております。
  64. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大臣からお答えを申し上げましたが、ちょっとつけ加えまして予算についての御質問がございましたので申し上げさせていただきたいと思います。  国立大学の予算につきましては、運営経費については教官当たり積算校費、学生当たり積算校費、教官研究旅費、この三本立てで、三本柱と言っておりますけれども、対応をいたしてきておるわけでございまして、それぞれが、例えば博士課程を持っているか持っていないかというようなこと、あるいは理科系であるか文科系であるかというようなことによって単価が決まっておるわけでございまして、そういう単価において対応してきておるわけでございます。  今回の総合研究大学院大学の場合にも同様の考え方で他の大学と異なることなく対応するつもりでございますので、例えば学生当たり積算校費は、学生四十八名ということであればそれに応じて一般の大学大学院のケースと同じ金額を人数分だけ措置する、こういうことになってくるわけでございます。ただ、教官当たり積算校費につきましては、この総合研究大学院の場合には共同利用研の先生が兼務で来られるというケースでございますので、丸々一般の大学院と同じ額を措置するということではなくて、兼務をしております方であるという関係上、国立大学の一般にそういう兼務をされた方の場合のためには客員講座方式というのがございまして、大体一般の大学の半分ぐらいの経費でございますけれども、そういうものを措置するということでございますので、他の大学に比べて特にこの大学について特別の措置をするとかいうようなことではないわけでございまして、一般の国立大学のルールそのままで対応する、こういう考え方でおる次第でございます。
  65. 安永英雄

    ○安永英雄君 余り時間がありませんけれども、私はノーベル賞をもらわれました利根川教授の書かれた論文その他を読んでみましたが、いわゆる最高のエリート、最高の施設、設備、研究、こういったものを選ぶ、そしてそれが世界の科学にも貢献していくというには日本の今の状態はなっていない。むしろ、今日本がやはりやらなきゃならぬのは、難しい言葉を使っておられますけれども、国家が運営よろしく生産力がまず上がること、これが第一条件なんだと。それから二番目に、社会が創造的な精神活動を奨励するような社会である、具体的に書いてありますが、国民全体が大学院研究その他について国の予算をどんどんつぎ込んでも結構なんだというふうないわゆる意識、こういったものが生まれない限り日本はだめなんだという言い方をされて、むしろ今日本は創造性の高い科学活動の重要性を理解する社会通念、こういうものを養う時期なんだということをおっしゃっておるわけなんで、私はやっぱり突出したそういった先端を行くようなというよりも、現在の制度の中にある大学院一つ一つを引き上げていくような、いわゆる底辺といいますか、そういったものの中からやはり世界に伍していくような科学技術の発展もあるのではなかろうか。  だから、何度も先ほどからもおっしゃいますけれども、特に現在の大学院、こういったものについては先ほどちょっと私触れましたけれども、特に私学が多いんですけれども、ことしの大学院の申請どうなったか、もう時間がありませんから聞きませんけれども、とにかく学校の看板という形で何とか大学院という看板をかけなけりゃ大学はやっていけないという看板程度に考えまして、そしていろいろな条件というものを満たして出してくると、その条件を満たしておればもうそれは右から左に大学院の申請をしていく、そうするとそれを許可する。こういった形で、それ以降は教員の補充あるいは予算、そういったものにはもう見向きもしないということで、大学院があるだけで、先ほど言いましたように、まだ博士一人出ていない、もうほとんど研究員はおらない、こういう形のところあたりをぐんぐん引き上げていく。  文部省としては高等教育の何といいますか振興計画、これは今あるわけで、三つの柱という先ほどお話がございましたが、三つの柱で進めていくということですが、むしろ私はその計画を相当やっぱり予算もぶち込んで早くレベルをずっと上げていく。そして、そこから研究者も出るでしょうけれども研究者にならないで実社会に出ていく。そういったレベルの高い人が日本の国にたくさん出ていって、科学技術の重要性、あるいは大学教育それ自身の重要性、こういったものをやっぱり国民全体が何といいますか文部省を支援していく形になる。そういう体制をつくらないと、先ほど言いましたように、どんぶり勘定で今国の予算が少ないから研究費はこれだけです、そしてその研究費を分けるとしたって薄くなるので、非常に有能な研究の結果が出るような、そういうところに重点配分する、こういうことにしかならないのでありますから、私はそういったところに重点を置いて高等教育は進めてもらわなければならぬというふうにこれは要望をいたしておきます。  そこで、時間もありませんから、先ほど、メモ程度じゃ困りますのでお聞きしたいと思います。政令、省令で出てくるということでありますが、まず第一番に、先ほど粕谷委員から質問がありました点で重ねてお聞きしたい点をまず申し上げます。第一にやっぱり教育機関と言うことができるようなものかということですよ、今度でき上がったものが。先ほども答弁がありましたように、研究というのが主体でございます、教育というのは、その研究をする間の中でみずからがとにかく積み上げていくものでございますということでございまして、これは初任研等と多少つながるような気もしますけれども、初任研というのはそういうものでありまして、授業をしながらその中でみずからが培っていくのが研修だと。ここのところもそういうことをおっしゃいますけれども、ただでさえ、今筑波大学だって、あれは普通教育と、それから研究と初めてあのときに分けたんです、筑波大学の。分けたその弊害がもう出ていますよ。研究ばかりに偏重しておるでしょう、筑波は今。研究機関がちゃんとあるにかかわらず、研究ばかりになって、教育がおろそかになっておる。  ましてや、ここのところには初めから教育機関はない。研究しながら自分で勉強せい、こういうことを思い切っておっしゃるわけですけれども、これはもうもやしみたいな学者ができます。偏狭な、社会性のない、とんだ科学者ができていきますよ。どうしてもここのところは、教育機関というものがないとこれは大学じゃないですよ、研究ばかり朝から晩までやって。何か成果を上げればそれでよろしいなんというような、そんなあなた、もやしみたいなものが神奈川県で生まれちゃ困るんですよ。大げさな言い方ですけれども、原爆でも何でも勝手に動かすような人間ができていくんですよ、これは。教育機関はあくまでもこれはつくれませんか。教育機関のない大学というのは、これは大学じゃないです。そこをお聞きしたいと思うんです。
  66. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 先ほど申し上げましたことが、少し私の意図どおりに御理解いただけてなかったような感じがいたします。私が申し上げましたのは、博士課程の後期三年というレベルになりますと、研究所研究というのと一般の学部教育を行うのと違いますので、研究所で行われておる研究とのなじみというか、密着の度合いが高くなってくるということを申し上げたわけでございまして、そういう意味ではなじみやすい面があるということを申し上げたわけでございます。今回のものは、もちろん大学院大学として、大学としてつくるわけでございますから、これは教育研究を両方あわせて行う機関でございまして、この機関そのものがもちろん教育を行う機関だということでございます。  そういった中で、この大学院大学の場合には特に、一般の博士課程では必ずしもそうはなっておらないわけでございますけれども、ここでは教育科目もちゃんとつくりますし、教育課程もつくりまして、その中で例えば十単位、二十単位といったような単位も教育指導によって取らせるというようなことも行いまして、教育として一つのまとまりのある教育をやっていこうという考え方で対応していくつもりでございますので、先生の、教育の後ろにだけくっついているというような格好で考えてはおらないわけでございます。先ほどは言葉が足りませんでしたので、つけ加えさせていただきます。
  67. 安永英雄

    ○安永英雄君 次に、この法律案の中にも出ていますけれども、共同機関大学母体というふうに言われておりますが、法律の上では「緊密な連係及び協力」というふうになっています。この意味は結局共同機関のスタッフ全員が大学院のスタッフとなるのではなくて、一部のスタッフが別個の組織である大学院に併入される、そういうことで今みたいな表現になっているんですか。これはあいまいですから、はっきりしておいてください。
  68. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 母体という言葉を俗語で私ども使っておりますけれども、なかなか母体というのはどういうことかというのがはっきりいたしませんので、法律上の用語としては連係、協力という言葉で措置をさせていただいたわけでございます。具体の連係、協力の中身といたしましては、一つ先生ただいま御指摘がございましたように、その教員組織につきましてこの共同利用研究所におられる教員方々の中から、兼務ということで相当数の方にこの大学院先生になっていただくということで、全員というわけではございませんけれども相当数の方になっていただくということを予定しております。またそのほかに、施設、設備、その他についても共同で利用さしていただくというような面が出てまいりますので、それを連係、協力と表現さしていただいたわけでございます。
  69. 安永英雄

    ○安永英雄君 だから、共同研究機関の全員が今度の大学院大学に行くというんじゃなくて、一部のスタッフが行くということになるとなれば、共同利用機関の中で、ある人は二重の性格を持って、ある人は依然として研究機関におる、こういう人が研究機関の中にできるわけです。これは何か身分とか給与とか、こういったもので差ができますか。
  70. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 通常国立大学の中でもそうでございますけれども、一般の教官の中で大学院を担当される方については特別の重い仕事を背負うということがございますので、大学院担当手当と俗称しておりますけれども、俸給の調整額という格好で若干の上積みが行われておるわけでございますが、それと同じように今回の場合にも、これはこれから具体に発足する際にまた人事院等の了解を得てやっていくことになるわけでございますけれども、俸給の調整額についてはほかの大学の場合と同じように考える必要があろうと思っておる次第でございます。その他の点につきましては特別処遇と申しますか、給与等での差等はないわけでございます。
  71. 安永英雄

    ○安永英雄君 次に、これが一番私お聞きしたいところなんですけれども、大臣も先ほど答弁の中に、この種の総合大学院大学というものをさらにこう、私学という言葉も出ましたけれども、私立とか、とにかくこれをずっとふやしていきたいというふうな意向がちょっと出た、私の聞き違いかもしれませんが、そこがちょっと心配なんですが。そうしますと、結局、先ほど言いましたように、政令ということで総合研究大学院を拡大していくということになるわけですね。ここが政令と省令との関係で一番聞きたいところなんです。ふやそうと思ったらあなたのところで政令をぽっと変えれば、あそこの学校ははいって言って、こう国会のこの委員会にはかからずに政令でどんどんこの種の総合的な大学院大学ができるというふうになると、私はさらにこれは二日や三日の審議じゃ終わらぬと思うんです。どうですか。
  72. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この総合研究大学院大学というのは、これは一校を現在念頭に置いておりますので、他に第二の大学院大学ができるとかいうようなことを念頭に置いているわけではございません。ただ、共同利用機関の中でも国立大学共同利用機関がかなりの数でございますけれども、そのうちで体制が整っているところがここに参加をいたしておりますので、それ以外のものが、例えば具体の例が適当かどうかは別にいたしまして、大阪の民族学博物館というようなものでございますとか、あるいはそのほかにも幾つかの機関が参加をできる体制になってきたときに、これが参加をするということは政令の段階研究科の設置ということでそれは措置ができるということであると思っております。  ただ、繰り返しになりますけれども、この種のものをさらに第二の大学院大学、第三の大学ということでつくっていこうという予定は全くないわけでございます。
  73. 安永英雄

    ○安永英雄君 国立民族学博物館とか、その他国立大学共同利用機関がたくさんありますが、こういった形のものをつくるという考え方は全くありませんね。政令で定めるなんというようなことはもう全くありませんね。
  74. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この大学院大学の中で、現在入ることが予定されております四つの共同利用機関母体にする研究科が政令で書くことになるわけで、どういう研究科にするかということが書かれるわけでございますけれども、それに相当しない新しいものが入ってくる場合に、それについて研究科として増設をしていくということはあり得ることだと思っております。  現実には、例えば先ほど例に出しました民族学博物館というのがさらに第五の機関で入ってくるということを私ども予定をいたしておりますので、これがもちろん、これは国立大学としては予算措置という関係になりますから、予算の段階での予算審議国会の御審議を得るということになると思いますが、形式的には研究科の設置というのは政令で規定をするということに相なるわけでございます。
  75. 安永英雄

    ○安永英雄君 念を押しておきますが、先ほど、これ以外にはないとおっしゃったけれども、今研究科の話になってきて、ちょっと性格が違うんですね。私が言っているのは、今提案されているこの種のものはつくらないということですね。
  76. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 今現在国立大学共同利用機関というのは十二あるわけでございます。そのうち、その関係者が相談をしてこういう大学院大学をつくろうではないかということになって、しかし体制が整ってすぐ最初からはいれるのが四つでございますので、したがってそれ以外のものが、体制が整って今後参加をしたい、この大学院にということになってまいった場合には、研究科の増設という格好でふえることはあり得るということでございまして、これと違う、また同じような種類大学を別個に大学としてつくっていくというようなことは、現在私どもの念頭にはないということを申し上げておきます。
  77. 安永英雄

    ○安永英雄君 終わります。
  78. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  79. 田沢智治

    委員長田沢智治君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国立学校設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  80. 小野清子

    ○小野清子君 午前中に引き続きまして、いろいろ拝聴さしていただきまして幾分重なるところもあろうかと思いますけれども、御質問さしていただきたいと思います。  本法案は、臨時教育審議会答申に基づきます教育改革の推進の一環として提出したものと受けとめておりますけれども教育改革の中でも高等教育の改革は極めて重要な課題であろうと考えております。この高等教育の改革を推進するために、昨年、学校教育法改正によりまして大学審議会が設置され、文部大臣から「大学等における教育研究の高度化、個性化及び活性化等のための具体的方策について」という諮問が行われたと承知しておりますけれども具体的にどのような方向で高等教育の改革を推進していくのか、まず文部大臣の御所見と御決意をお伺いしたいと思います。
  81. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今おっしゃりますように、高等教育につきましては、大学審議会に諮問をいたしまして、高度化、活性化あるいは個性化について今御審議をいただいておるところであります。  三つの要素があろうと思いまして、高等教育というのは一つには、これから多様化する各分野への研究者を育てるということが一つ、それからもう一つは、社会的に高度な職業人を育成する、こういうこともありましょう。それからもう一つ大きい面では、生涯学習の一環として、高等教育といえども生涯学習の中の一環であり、またその生涯学習に資する開放体制を持たなければならない、そういう面もございます。そういう中で、今の高等教育そのものが不十分とは言いませんが、これで十分かと言われますとさらに補うところがある、その点が今小野委員おっしゃいましたような三点に集約してお願いをしているところでございまして、高度化の中には大学院制度の改革あるいは学位の問題もございます。個性化、多様化の中には学校設置基準の見直しあるいは大綱化の問題、あるいは活性化の中には教員の選択的任期制の導入とか、そういうものも含めまして御審議をいただいておるところでございまして、そういうことを総合いたしまして、大学審の結果を尊重しながら高等教育の改革に資してまいりたいと、このように考えております。
  82. 小野清子

    ○小野清子君 それでは、本法案の内容についてお伺いをしたいと思います。  まず、総合研究大学院大学創設についてお尋ねをしたいと思います。総合研究大学院大学は、国立大学としては初めて学部を置かない、大学院のみを置くという大学として設置するということでございますけれども大学院問題については、臨時教育審議会答申の中におきましても大学院の飛躍的充実と改革がうたわれまして、またさきにお尋ねをいたしました大学審議会におきましても、その改革と充実というものが最優先の課題として審議されているというただいまの御答弁でございました。私も、我が国は今後とも活力ある社会と高水準の経済、文化活動を推進するとともに、さらに国際社会におきまして貢献をしていくためには大学院を充実し、そして基礎研究をより一層推進するということがすぐれた人材を養成していくことの上で不可欠であるというふうに考えるわけでございます。  現在我が国の大学院の整備はどの程度進んでいるのか、また諸外国と比べてどのような状況にあるのか、この大学院の点についてお伺いしたいと思います。
  83. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 我が国の大学院の整備状況でございますけれども昭和六十三年五月現在におきまして国公私立の大学、四年制大学でございますけれども、四百八十八校に及んでおるわけでございますけれども、そのうち約六割に当たります二百九十三の大学に現在大学院が設置をされておるわけでございます。これをちなみに新制大学がある程度整備されました昭和三十五年当時と比較をいたしてみますと、当時は大学数二百四十五で大学数においては約二倍、大学院を置く大学は当時八十四大学でございましたので、大学院を置く大学は三・五倍ということで、かなりのペースで大学院が置かれてきております。また、その中で博士課程を置くのが二百四大学、修士課程だけの段階のものが八十九大学というような状況に相なっております。細かい数字を申し上げて 恐縮でございますけれども大学院の在学者数について申しますと、昨年の五月現在でございますが、七万八千九百十四人、約七万九千人という数字でございまして、昭和三十五年当時とこれまた比較をしてみますと、約五倍という人数の伸びをしておるという状況にございます。  このように大学院の規模は、大学数におきましても、それからまた学生の数におきましても相当ふえてきているということはあるわけでございますけれども、これを諸外国の大学と比較をいたしますと、学部学生数に対する大学院学生の比率という数字で見ますと、アメリカでは学部学生に対して大学院学生が一七・五%、イギリスは三一・二%、フランスは二二・七%というように大体二〇%から三〇%ぐらいは大学院学生である、こういう状況にあるわけでございますが、これに対しまして我が国の場合は四・四%が大学院学生だということで高等教育の中での大学院の占めるウエートというのは欧米諸国と比較しますと大変小さいということが大きな問題の一つであろうと、こう思っておるわけでございます。こういったような観点からも現在臨教審の答申等でも御指摘をいただきました、先生にもただいま御指摘をいただきましたような大学院の飛躍的な充実あるいは改革ということがこれからの大きな課題であるということで、ただいま鋭意その問題に取り組みつつあるところでございます。
  84. 小野清子

    ○小野清子君 そういたしますと、今回の総合研究大学院大学創設というのは大学院の充実と改革という課題にこたえるものとして構想したものと考えられるわけでございますけれども、この数字からいたしますと、我が国の大学院状況というのは既設の大学大学院の整備、一緒に進めていかなければならない、これからまだまだ力を入れていかなければならない必要があろうかと考えるわけでございますが、この点については文部省のお考えをもう少し具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
  85. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 今回新しいタイプの総合研究大学院大学創設ということを御審議をいただいておるわけでございますけれども、もちろん我が国全体の、先生も御指摘いただいておりますような基礎研究の推進でございますとか、あるいは社会全体のレベルを向上させていくというような見地から見ますと、大学院というのは総合研究大学院をつくればいいというようなものでは全然ないわけでございまして、全体の既設の大学大学院というものがそれぞれ充実をし、向上をしていくということが極めて重要な事柄であると思っておるわけでございます。  そういったような観点から、私どもといたしましても従来から国立大学大学院の整備につきましても、最近では特に充実したものについては修士課程は大体置き終わっておるわけでございますけれども、博士課程の創設内容的に充実したものについては認めるというようなことで毎年幾つかの大学に博士課程の創設を新たに行ってまいっておりますし、またそれ以外にも、例えば国公私立を通ずる大学院の充実のための方策といたしまして昨年度から、これは金額は三十数億円でございますけれども、初めて大学院のための設備費というものを予算計上いたしました。これは国立大学ばかりでなくて、公立、私立にも補助金の形でお配りをするというような新たな施策も行っておるわけでございまして、大学院の拡充の問題と質的な充実の問題ということについて鋭意努力をしておるわけでございます。  まあ、こういったような事柄と、それから今回のような新しい分野についての総合研究大学院大学をつくっていくというようなことが両々相まって日本全体の水準の向上に役立つものと、こういうふうに信じておるところでございます。
  86. 小野清子

    ○小野清子君 今回の総合研究大学院大学創設ということによりまして、従来の大学院というものに対する力の入れ方にアンバランスが生じては困るというのがすべての大学院を抱えている大学の危惧しているところではないかと思いますので、十分今の御答弁にございましたように御配慮をいただきたいと、そのように思います。  また次に、総合研究大学院大学国立大学共同利用機関施設設備やあるいはスタッフを活用して教育研究を行うということでございます。その目的、趣旨はどのようなものなのか、また新しい構想大学院大学としてどのような教育研究上の特色があるのか、お伺いをしたいと思うわけでございます。  私も筑波大学の高エネルギー物理学研究所を一度視察をさせていただいたことがございます。大きな炉の周辺に各大学から寝袋を持ったりあるいはテントを張りながら、それぞれの大学が出向いて一生懸命時間をずらしながら研究をしているんだというその姿を拝見いたしまして、研究という言葉の厳しさといいますか、大変なものだなという実感を味わわせていただいたわけですが、この施設設備を利用するということとスタッフを活用するということになりますと、これは大学院大学のメンバーだけではとてもやり切れるものではなかろうかと思いますし、また、たしかあの当時は大学院生はおろか大学生までもが何か参与していたんではないか、そのような気持ちで拝見してまいりましたんですけれども、その辺につきましてぜひお答えをいただきたいと思います。
  87. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 今回の総合研究大学院大学でございますけれども、これはこの大学に限らず日本全体の問題として、これからの我が国の将来のことを考えますと、独創的な学術研究の推進でございますとか、あるいは先導的分野の開拓ということは大事なことでございます。また、単に日本の国内だけあるいは一分野だけでやることではなくて、研究と国際化の問題とか、あるいは学際領域や複合領域の研究の推進といったような新しい要請というものがたくさん出てきておるわけです。  こういうものにこたえていくために、幅広い視野を持った創造性の豊かな研究者の養成ということがこれは大事なことでございまして、既設の大学大学院にも大いに努力をしていただかなければならないことでございますが、加えて、先生ごらんいただきましたような共同利用機関、筑波の高エネルギー物理学研究所のようなああいう機関が持っておりますスタッフと、それから施設設備というようなものを活用する、こういう大学院をつくることによりまして一層の研究の推進を図っていきたいというのが今回のねらいとするところでございます。  この共同利用機関におきましては、これまでも各大学の委託を受けまして大学院学生研究指導ということはやってまいったわけでございますけれども、より組織的に教育を行って研究者の養成というのを目的的に達成をしていくというようなことでこの総合研究大学院大学という組織をきちんとつくって、そこで後期三年の博士課程を置いて教育研究活動をやろうということをねらいとするものでございまして、ほかの大学等で既に修士課程レベルまでの能力を身につけた方々を対象にして博士課程に入れて研究指導をする、教育をするということでございます。教育研究上の特色といたしましては、先ほど申し上げましたようにこういった共同利用機関研究機能の活用ということが一つの大きな特色でございますけれども、さらに具体的には学生のそれぞれの個性に応じた教育研究指導を行っていこうということでございまして、ある程度のレベルに達した者、あるいはその研究内容いかんによっては国立大学共同利用機関の共同研究の中にも参加をさせるというような形で研究者としての大成を図っていくというようなことも考えたいと思っております。  そのほか、この大学院の場合にはできるだけ狭い範囲の教育あるいは研究にとどまらないようにというようなことで、他の専攻あるいは他の研究科の教官や学生との協力、交流というような体制もこれは組んでいかなければならないと思っている次第でございまして、先生方の交流はもとよりといたしまして、学生教育の面におきましても共通の講義をやるとか、あるいは共通のトレーニングを実施するというようなこと等も行いまして、他の分野学生の持っているものをやはり吸収していくというようなことで幅広い能力の育成ということにも努めたい、そんなような点を種々考えているところでございます。
  88. 小野清子

    ○小野清子君 何か私自身が考えていたものよりも大変広い視野に立って広い皆様に対する研究の波及というんですか、いい意味の刺激が行われるということを大変うれしく感じているところでございます。  それで、総合研究大学院大学というのは今お答えがありましたように、すぐれた研究者の養成を目指すものということでございますけれども、ノーベル賞を受賞されました利根川博士も若手研究者研究環境の改善、これについていろいろ御提言をされておられるわけでございますが、我が国の研究環境というのは若手研究者にとって必ずしも十分なものではないような気がいたします。これは三月十一日の読売に、やはり利根川先生が言われている中では大変厳しいことをいろいろおっしゃっているわけですが、アメリカでは三十歳前後で助教授、日本の場合には助手ということになろうかと思います。そして、研究グループのリーダーになるのが大体この年代である。日本の場合ですと、大体この時期というのは教授の従属である、なかなか自分の研究がやらせてもらえない。今の御答弁にも、個性に応じた研究をということでございますが、この総合研究大学院大学というものが創設されることにおいて、そうした若手の研究者に明るい光が見えるものなのか。利根川教授は「彼らを独立させる法律でも作らないと独創的研究は生まれない」と、こういうことが書かれておるわけでございますが、こういった意味総合研究大学院大学というものが大きな役割を果たすのかどうか、その辺もお伺いしたいと思います。  また、このことにつきましては、文部省としても若手研究者に対するフェローシップを実施しているということを午前中のお話の中にもおっしゃっておられました。この制度をより一層積極的に拡充していく必要があろうかと、そのように思います。お話では外国の若手研究者もこの中へという大臣のお話がございましたが、やはり研究者というのは常に生活が日本の場合に不安定でございまして、何かそういうことが研究者になろうとする若者に対する希望というものを阻害しているところがあるのではないかと思います。やはり生活の安定とか研究の資金面、これも先ほどからお話が出ております。それからスタッフですね。こういうものが日本の若手の研究者の上に希望が与えられるのかどうかお答えをいただきたいと思います。
  89. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 若手研究者の育成の問題でございますが、確かに独創的な学術研究を進めるという意味では学問の分野によってはいろいろございますけれども、一般的には大変重要な課題でございます。そういうわけで、昭和六十年度から文部省の方におきましては日本学術振興会の事業といたしまして、若手研究者の養成、確保のための本格的なフェローシップ制度、特別研究制度をスタートさせ、年々その人員をふやしているわけでございます。  その趣旨は、今先生がおっしゃいましたように、やはり研究能力が急速に高まる若い時期に適切な研究の場を与え、かつかなり自由濶達な発想のもとに主体的に研究ができるように、こういう趣旨でございまして、学術審議会等の答申あるいは臨教審の答申にも指摘をされてきたわけでございます。二年間、こういった若手研究者、博士号取得直後の方あるいは博士課程に在籍している方、こういった方に二年間研究奨励金を支給いたしまして、今申し上げましたように研究に専念をさせるという制度でございます。大変これが、やはり研究者の間からもぜひこれを拡充してほしい、こういう御要望が強うございまして、昭和六十三年度には五百六十八人からさらに七百二十八人へと増員をいたしたところでございます。今後とも総合研究大学院におきましても、いろいろとそういう研究者の養成ということが行われるわけでございますが、ただいまのフェローシップ制度運営を通じまして、そういったことに尽力をしてまいりたいと思います。  なお、今のは日本研究者でございますが、大臣からもお話がたびたびございましたように、外国人のそういった年代の特別研究員にもぜひ日本に来て研究に励んでいただきたい。これがまた非常に日本研究者にも刺激になり、日本の学術研究の振興にも大変寄与するであろうということもございますし、また日本の学術研究水準も世界第一線級になってきたものがいろいろございますので、そういったことから外国人の若手研究者のための外国人特別研究制度も今年度から発足をさせる、こういうことになっております。
  90. 小野清子

    ○小野清子君 ありがとうございました。  総合研究大学院大学は、今お話がありましたように諸外国の大学研究機関との交流、さらには国際共同研究というものを積極的に推進していくということでございますけれども、今後は総合研究大学院大学に限らず、大学というものが国際的に開かれたものに各大学していくべきではないか、そんなふうに思います。留学生などを受け入れるだけではなくて、それももちろんですけれども日本の方から外国の大学研究所に積極的に派遣をしていくということ、これは従来も行われていたことではございますけれども、その相互交流という、行って自分の研究だけではなくて、ともに一つ課題に対して研究し合うという相互交流によります教育研究の実を上げるということがこれからなお一層必要になってくるのではないかと思うわけですが、在外研究員という制度が文部省にあるというぐあいに伺っておるわけですが、こういうものを活用して広く大学教員研究者、あるいは特に若手の研究者が海外において研究研修というものを積む機会を積極的に拡充していくということに対するお考えの具体的な点をちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  91. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 国際化を図っていく、国際的にも開かれた大学にしていくということは大変大きな課題でございまして、大学審議会で現在いろいろ検討しております大学改革の中でも、一つの大きなテーマとして、常にそれを念頭に置きながら各般の問題について御議論をいただいておるところでございまして、その御結論をまってできるだけ実現に努めていきたいと思っておるわけでございますが、その中で、先生のただいま御指摘のございました在外研究制度、これはかなり古い歴史を有する制度でございまして、恐らく日本の有名な学者、研究者方々というのは大概はこれで外国留学の御経験をお持ちになっている方であったと思っております。  特に御指摘のような若手研究者の育成という観点を考慮いたしまして、これは昭和五十九年度からでございますけれども、従来の在外研究制度の中では、特に戦後は五十代あるいは四十代後半というような方々が多くなるような傾向がございましたので、その中で特に五十九年度以降、三十五歳以下の若手の方々のための特別に枠組みをしようというようなことで、こういう方々を、若手の助教授、講師あるいは助手といった方々でございますけれども、積極的に行っていただくような配慮をいたしておりまして、五十九年度に始めましたときには五十三名をお送りしたわけでございますが、今日まで逐次ふやしてまいりまして、昨六十二年度では百三名という約倍増を四年間ほどの間でいたしておるわけでございまして、今後ともこういった方々の海外での勉強の機会というものの充実には鋭意努めてまいりたいと思っております。
  92. 小野清子

    ○小野清子君 総合研究大学院大学に関してはこの辺で終わらせていただきたいと思いますが、当初御質問申し上げましたように大学院の従来の充実をより一層図っていただきたいということとあわせて、これからの時代というのは地球観、宇宙観的な非常に大きな構想の中での研究が必要になり、特殊な器具、機械がなければ各大学研究し得ない部門が出てこようかと思います。そうした意味での、それぞれの研究者がいい意味でこの総合研究大学院大学というものを通しまして、それぞれの専門分野とともに横の分野でのつながりをよくしていくことがそれぞれの研究分野にも非常に大きな私は効果が生まれるものではないかと思いますし、さらにまた若手の方々に対する先ほどからお話し、御答弁いただいておりますような芽を伸ばしてやる。それが日本の若手研究日本の将来の科学研究、学術研究にも大変大きな力になろうか、そのように思います。ぜひとも積極的にこの体制づくりというものに今後とも御尽力をいただきたいと思います。  それでは次に移らせていただきますが、三重大学医療技術短期大学部創設についてお尋ねをしたいと思います。今回の改正は、従来ありました医学部附属の看護学校廃止いたしまして短期大学を設置するというものでございますが、看護学校というものを短期大学に転換するメリットは何なのか、その辺をちょっとお伺いしてみたいと思います。
  93. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 看護学校等を逐次短期大学に転換と申しますか、昇格と申しますか、そういうことを進めてまいったわけでございますが、従来この看護学校等は学校制度の中では専修学校あるいは各種学校と言われる位置づけを受けておったものでございますが、具体教育内容等もかなりいわば実務的な実技的な面について非常に効果を上げておったと思うわけでございます。ただ最近のようにいろいろな面で社会状況あるいは諸般の状況が変化をいたしますし、医学、医療の面でも随分進歩をしてまいりますと、より高い水準での医療技術者の養成ということが大切な課題となってきたわけでございますので、そういった意味で全体的に教育の水準を引き上げていきたいというようなことをねらいとしておるものでございます。  具体に申しますと、専修学校と短期大学というのは教育課程、教員資格あるいは教員組織、数あるいは施設設備等のいろいろな基準が短期大学の方がかなり高い基準で定められておりますので、それに基づいた内容の整備をすることによって充実した教育条件のもとでよりレベルの高い教育が行われるということがあるわけでございます。  特に教育内容について申しますと、専修学校の場合には、一般的には先ほど申し上げましたように技術習得を目的とした実習中心のカリキュラムということでございましたけれども、短期大学におきましては、一つは一般教育の重視ということで人格の形成を目指すと同時に、いろいろな将来の変化に対応できるような基本的な能力を持っていただくということもございます。また、専門教育科目につきましても、時代の変化に対応いたしまして、例えば老人医学でございますとか、救急医学でございますとか、あるいは情報関係の理論あるいは医療電子工学、いろいろな分野についてやはり看護婦になられる方々も知識、能力を持っておいていただく必要があるわけでございます。そういった新しい分野のカリキュラムも加えるというようなことで全体的に内容的な水準の向上を図ろうということをねらいとしているものでございます。
  94. 小野清子

    ○小野清子君 以前、新聞で見習いの看護婦さんがB型劇症肝炎で死亡したという切り抜きを私もあえて持っているわけでございますが、専門家であるべきこういう方々がちょっとしたミスで命を落とされるということは大変な悲劇ではなかろうかと思いますし、時代の変化の中で病気そのものが大変大きな変わり方をしているというんですか、新しい病気も生まれてきている。そんな意味から考えますと、これからの教育内容というものを一層充実していかなければならないものかと、そのように考えます。ぜひとも今後とも充実に力を入れていただきたいと存じます。  次に、京都工芸繊維大学工業短期大学部廃止についてお尋ねをしたいと思います。この短期大学は科学技術の進展に応じまして発展的に解消する、これを学部に統合するというぐあいに伺っておるわけでございますが、このように大学教育研究組織について時代の変化や社会の要請に応じて見直しをして積極的に転換を図っていくということがやはり大切なことではないかと、そのように思います。特に技術革新が急激に進みますと産業構造の転換、こういうものにかんがみまして工学系の技術者養成というものが、大学、短期大学、高等専門学校を通じまして積極的に教育研究組織を見直しをして、そして教育研究内容の現代化に努める必要があろうかと思います。こうした点につきましては文部省はどのように取り組むお考えなのかをお伺いをしたいと思います。
  95. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 御指摘にございますように、最近の技術革新あるいは産業構造の変化というものは大変著しいものがあるわけでございまして、工業系あるいはそれに準ずるような理科系の分野において特にその必要は高い状況にあるわけでございます。こういった内容的な変化等を踏まえまして各大学での、あるいは高専、短大におきましていろいろな要請を受けとめての対応という動きが目立ってきておるわけでございますが、特に大学の工学部、農学部等分野について申しますと、最近では、例えば工業系の大学は過去三年間で国立大学の例でございますけれども、二十七学部百二十の学科が改組いたしまして、新しい時代の波に乗れるようにというような改組等も行っておりますし、農学系の学科も十一学部五十二の学科がそういう形での改組を進めてきておるわけでございます。もちろん高等専門学校におきましても、従来の例えば商船の系統みたいなものが逐次エレクトロニクスの系統に転換をしていくというような改組等もかなりの学校で行われておるわけでございます。  そういった御指摘の中での一つの方向といたしまして、先ほどの例にお引かれになりました京都工芸繊維大学短期大学部、これは三年制の夜間の短期大学でございますけれども、これを既に夜間の短期大学でなくてもう少し高いレベルのものをというような地域の要望等も踏まえまして、これを学部レベルにいわば昇格をさせるというようなことで、しかもその教育の形態につきましては、主として夜間で行うけれども昼間の授業もある程度聞けるようにいたしまして、昼夜開講制と俗称いたしておりますけれども、そういった方式で新しく発足をするというような改組も行われようとしておるわけでございまして、こういったようなことを、全体的にそういう方向を目指しながら、各大学等の御要望を踏まえて逐次そういった方向に推進をしていきたいというふうに考えている次第でございます。
  96. 小野清子

    ○小野清子君 ありがとうございました。  工芸学部繊維学部という形に京都工芸繊維大学学部形式になって、そして夜間のコースを設けて、夜間のコースを設けるということはその周辺の企業の皆さんがやはり参加できるという、こういう理解でございますね。これからの生涯学習時代においての大学あり方としてはまことに的を射ていることではないかと、そのように思います。  生涯教育の推進は、教育改革における主要な課題であると考えるわけですけれども、特に我が国のような高度産業社会におきましては、国民の学習要望、これも大変高い水準になってまいりまして、これからの大学等の高等教育機関にあるいはさらに入学、再入学ということを希望する社会人が増加するのではないかと、私はそんなふうに思います。家庭の主婦が改めて社会人入学として騒がれて数年たっているわけでございますけれども現実に企業関係では、まさに繊維といいましても二十年前の繊維と今の繊維ではもう品そのものが違ってきているわけでございまして、こういうことに対しましても高等教育機関の側でも積極的な対応が必要ではないかと、そんなふうに思います。  今回の京都工芸繊維大学のように、大学において昼夜開講制度というものを実施しているものの現状、これについて、文部省の方針についてもう少しお伺いをしたいと思います。
  97. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 昼夜開講制という方式を最近、特に勤労しておられる社会人の方々を対象ということで考えてきておるわけでございまして、従来と違ってそこへ入ってこられる学生方々の生活実態、いろいろ変わってきているということを念頭に置きまして、夜間のは夜間だけということではなくて、夜間とそれから昼間の自分の勤務の都合その他でもって都合のいいときには昼間の授業も聞けるというような形で、かなり弾力的な対応をしようというのがこのいわゆる昼夜開講制でございまして、現在の制度では、大体卒業に必要な単位のうちの三十単位程度、四年制の大学としては約一年間分に相当するぐらいのものについては昼間の授業が聞けるような仕組みをとっておるわけでございます。こういった昼夜開講制をとっておりますところは、昭和五十一年に千葉大学の工学部について初めて実施をいたしたわけでございますが、その後逐年各大学の御要望等を踏まえてそういう組織をつくってまいりまして、昭和六十二年度までに全部で国立で六大学学部でございますけれども、こういったコースを設置しておるわけでございますし、六十三年度については先ほどの京都工芸繊維大学、それから九州工業大学の工学部の二部につきましても、従来は夜間専門でございましたけれども、これも昼夜開講制に直すというような形で、こういう形での社会人の方々の御要望にこたえるという努力をしておるところでございます。  なお、つけ加えて申し上げさせていただきますけれども大学院の方でございますが、大学院につきましては、従来通常のケースとして修士課程は二年間、これは昼間やるのが当たり前という感覚であったわけでございますけれども大学院設置基準の第十四条という特例規定を設けまして、要すれば一年目は昼間に通学をして普通に勉強をしていただくけれども、修士課程の二年目は夜間その他の時間帯で先生研究指導を受けるというようなやり方もできるというふうに改めたわけでございますが、これに基づきますこういうタイプの大学院もこれまでに、これは国立もあり私学もございますが、既に六大学研究科も設けられておりますし、六十三年度もさらに五大学研究科が設けられるというようなことで、こういった学部レベルばかりでなくて、大学院レベルまで含めて生涯学習的観点での対応という新しい仕組みをつくりつつあるところでございます。
  98. 小野清子

    ○小野清子君 次に、大学の入試改革についてお尋ねをしたいと思います。  現在の大学入試につきましては、偏差値偏重あるいは学力偏重の状況が見受けられまして、これが高等学校以下の教育にさまざまな悪影響を及ぼしていると我々親の立場からも大変憂慮するところでもございますし、また教育現場にいる者も大変気を使うところではないかと思います。大学入試は受験生の多様な個性というものや能力を多面的に適切に評価をするということ、これを基本として関係者の皆様方が一致協力をして、よりよい入試というものに努力をしていく必要があろうかと考えるわけですが、大臣は大学入試のあり方についてどのような御所見をお持ちでいらっしゃるか。また、臨時教育審議会第一次答申の提言や、あるいは大学入試改革協議会の最終報告を受けて今後どのように大学入試改革を進めていくおつもりなのか、その辺をちょっとお話をお伺いしたいと思います。
  99. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 高等教育に関する御質疑に続いて大学入試についての御質問でございました。  先ほど申したように、高等教育そのものが社会の変化に対応していく必要がある、またそこに学ぶ者、また教える者につきましても、社会の変化に対応したあり方が必要である、そう思っておりまして、今回の大学入試の改革につきましてはやはりそれぞれのおっしゃるように受験者の個性、能力、適性というものをそれぞれに応じてできるだけ正しく引き出し判断するという方法が必要であろうと、こう思っておるわけであります。平たく言いますと、御当人あるいは御父兄にとりまして二つの問題がございます。  一つ大学入試、これをいわゆるマル・バツ式解答だけで能力が判定できるものであろうかということもありますし、それにつきましては、できればその判定したい教科につきまして重点的に、あるときにはマル・バツ以外のテストをする、あるいは小論文を出していただく、あるいは面接をする、そういう面で多角的に受験者の能力を判定をしようと。じゃ、そのほかの面はどうするか。そのほかの面は、たとえば高校ですと、高校の一応の水準をマスターしていていただくことを前提としまして、そしてそれを新しいテスト方式で、今度は学校の方はそれを自由に活用し、選択をして、受験者の能力を一応参考にする。そして重点的なものは自分の建学の精神に従ってそれぞれが工夫を凝らした試験制度を培っていただく。こういう面が新しいテストの重点でございまして、それにはあくまでも、私どもは、国公私立を通じましてこれを自由に工夫し、選択をしていただくということを重点にお願いをいたしておるわけでございまして、そういう面でこの新テストのあり方というものを幅広く御理解をいただきたいと、こう思っておるところであります。  しかし同時に、これは高校の側の御意見も十分聞く必要がございますので、六十一年にこの新テストの基本方向をお示ししたわけでございますけれども、その前後におきましてさらに高校の関係者の方々の御意見も十分に伺いまして、そして試験あり方、それから試験の期日などを決めさせていただいたわけでございます。また同時に、複数化の問題につきましても、ただいま国大協その他でお願いをしておりますが、やや試行錯誤的な面がございまして、なかなかに御理解しにくい点もございますが、これはさらに改善をしてよりよいものにしてまいりたい。これあわせて大学入試の改革に資してまいりたいと、このように考えております。
  100. 小野清子

    ○小野清子君 私どもが一番懸念をしておるのは、高等学校側の意見は十分聞いてこういうものがなされているのか、この辺が大変気になるところでございましたが、今大臣の方から先にその辺は十分に伺ったということでございますが、新しいテストについての検討経緯というものがどんなものであったのか。  また、大学入試改革というものが緊要の課題であるということはだれしもが否定をしないわけでございますけれども、共通第一次学力試験導入の際に比べますと非常に急いで何か物事が決められたのではないか、非常に性急であるというような指摘もございます。これらを踏まえますと、このテストが昭和六十五年度からの導入について大臣はどのように考えておられるのか、二年前ということが規約としては存在しているわけですけれども。そして、十二月に実施をするということにつきましても、これもまた議論のあるところではないかと思いますが、その辺をちょっとお話を伺いさせていただきたい。
  101. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ちょっといろいろ従来の経緯等がございますので私からまとめて御説明をさしていただきます。  このいわゆる新テストを中心とする入試改革でございますけれども昭和六十年の六月の臨時教育審議会の第一次答申でこういう方向ということが示されたわけでございます。この考え方は、先ほど大臣も申されましたことでございますけれども、個性化、多様化ということを進めていくということが教育全体について必要な中で、その学生、受験生の個性、能力、適正というものを、従来のように学力一辺倒でなくて、多面的に判定をしていくというような入試のあり方が望ましい、そちらに向かっていくための一つの手段、方法としてこの新テストというのが有益ではないかという形での御提案であったわけでございます。  以来、直ちに大学高等学校の関係者から成る入試改革協議会というものを文部省の肝いりで設けました。これは国公私立の大学の代表者、それから公立、私立の高等学校の代表者等の方々による一種の協議機関でございますけれども、ここで御検討いただきまして、その具体的な中身につきましては六十一年の夏にまとめを行ったわけでございます。これは天下に公表をいたしておるわけでございます。以後、それをさらに各大学あるいは高校等で御検討をいただき、この入試改革協議会が引き続き御検討いただきました結果、最終的な結論をこの二月に発表したということで、そういう意味ではかなりの時間をかけ、天下に内容をさらしながら進めてきたつもりでございます。  共通一次のときには、この共通一次でそもそもどういう試験問題になるのかという試験の中身そのものが大変重要なわからない要素でございましたので、そういう意味で共通一次の場合には何度も試行テストというものを行いまして、こういう中身の試験ならば大体これぐらいの能力が判定ができるというたぐいの準備を随分重ねたわけでございますけれども、今回の場合にはそういった中身そのものについては共通一次のかなりの経験があるわけでございますので、あとは具体実施の方法についてというあたりのところでいろいろ御議論いただいたということでございますので、期間的にはかなりの期間をかけてきたというふうに私どもは思っておるわけでございます。  こういった中で、特にその十二月実施の問題、この問題につきましては、もちろん高等学校関係者の側、あるいはそれにかかわらずごく全体的な判断として、できるだけおそい時期にした方が高等学校教育の完成のために望ましいということはだれしも意見の一致をするところでございますが、またもう一方で大学の入試、これを国立公立、私立にわたりまして、その年度中におおむねでき上がって、新入生が四月から入るということを念頭に置きますと、そのための時間、期間というものも必要になってくるというようなことを総合的に考えまして、先ほど申し上げました入試改革協議会の中で種々御検討いただき、大学関係者と高等学校関係者の間でいろいろと協議をいただいて、結論的に十二月、しかも高校教育をできるだけ乱さないということで、十二月の最後の時点にしようということで、いわば意見の合意、一致を見ておるわけでございます。  そういうような経緯で今日まで進んできておりますので、私どもといたしましては、せっかくのこの新テストでございますが、こういった個性化、多様化という方向を目指した一つの歩みとして予定どおりスタートをさせたいということで、現在関係者と御相談をしながら、鋭意周倒な準備をしたいと考えておるところでございまして、受験生に対するアナウンスは、従来からかなり大幅な改革があるときには二年生の夏ごろまでにわかるようにするという仕組みで進めてきておりますので、今回の場合にもそういった方向でことしの夏というのをめどに各大学がこれを利用するかしないかというようなことが一般にアナウンスされるように考えていきたい、このような構えで進めてきているところでございます。
  102. 小野清子

    ○小野清子君 今お話を伺いまして、十分な話し合いがなされた上でこのような形が進められているということでございます。個性、能力、適性、受験生のそうした多面的な判断のために、この新しいテストが大変有効であるということがよくわかったわけでございますが、各大学の入学者選抜全体の中でこのテストはどのような位置づけをされるのか、その辺の御説明を伺いたいと思います。
  103. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大学入試全体は、基本的には各大学が自主的に判断をしてやっていくという性格のものであろうと思います。私どももそれを大事にしていきたいと思っておりますので、この新しいテストにつきましても、これの利活用をどういうふうに、利用するかしないかも含めまして、それから具体にどういうふうに使っていくかということも含めまして、各大学の自主的な御判断で適切に個性的な方法を考え、あるいは工夫を凝らして対応してほしいと思っておるわけでございますが、例えば具体の位置づけの仕方といたしまして、従来の国立大学共通一次が行っておりましたように、五教科五科目なら五教科五科目というものを実施いたしまして、いわば第一次選抜の格好で使っていくというやり方もあろうかと思いますし、それからまた、あるいは特定の一科目、二科目というようなものを取り上げて、これについてこれをその個々の大学実施をいたします試験の成績とあわせて総合的に総合判定をするというようなやり方もあろうかと思います。あるいは、専ら面接あるいは小論文等で最終的に合否を決めようというような場合に、その前段階のまずこの御本人がどの程度一般的に能力を持っているかというのを判定するための面接用の資科として使っていくというようなやり方もあろうかと思います。  いろいろなやり方があり得るかと思っておりますが、それぞれの位置づけの仕方というのは、各大学で工夫をしてやっていただきたいというのが私どもの考えでございます。
  104. 小野清子

    ○小野清子君 国立大学の入試につきましては、共通一次試験の導入とか、あるいは受験機会の複数化などさまざまな改革が行われてきているわけでございます。これらの改革に対しましても積極的な評価があるものも、あるいは種々の批判もあるものも両面ございます。本来、大学入試改革というのは、これは国公立に限らず、国公私立大学全体を通して行われるべきものだと考えるわけでございます。このような観点からしますと、今回の入試改革というものが私立大学がどれくらいこの新テストに参加をするのか、これが非常に大きなかぎになるのではないかと、そんなふうに考えさせられます。この点につきまして大臣の御所見はいかがなものか、またこのテストへの私立大学の参加見込みはいかがなものか、この辺をちょっとお伺いをさしていただきたいと思います。
  105. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 参加の見込みは、七月をめどにいろいろ表明をいただくわけでございます。ただ、おっしゃいますように、国公私立を通じましてこの新テストに御理解をいただきたい、これは私ども心から考えておるところでございますが、しかしこれはこの新テストを、あり方を強制するというものではなくて、新テストのあり方精神を御理解をいただきたい、こういうことでありまして、この大学入試改革協議会の方々もそれを願っておられるわけでありますが、しかしこれはある時期一斉にということではございませんで、したがって、たとえ最初どのくらいな御希望が七月までにあるかちょっと予測できませんけれども、しかし必ずこれは年を追って御理解をいただき、そしてその参加がふえてくるものというふうに確信をいたしつつ御提案をいたしておるところでございます。この点をまず御理解をいただきたいと思います。  また、予測その他の点でもし具体にお答えすることがあれば政府委員からお答えさせます。
  106. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大臣からお答え申し上げましたように、七月に各大学、国公私を含めまして、それぞれこのいわゆる新テストにどう対応するかということを表明していただくということを予定をいたしておりますので、現段階で予測というのは大変難しいわけでございますが、昨年の暮れであったかと思いますけれども、全部の、国立大学は従来からの経緯がございますので、私学につきまして、現在どんなふうな状況であるかという問い合わせをいたしました。ごく少数のものが現在のところこの使用は全く考えていないというのがございましたけれども、前向きにこの問題について検討している、検討したいと思っているというようなところが数十校ございました。あとのところはどうするか、まだ前向きとも後ろ向きとも言えないけれどもというところというような状況でございまして、もちろん前向きに考えておられるというところも初年度から入るか、二年目、三年目、ほかの大学の様子を見てから入るかというようなところはあり得ようかと思っておりますけれども、それにしてもかなり真剣に各大学御検討いただいているという状況がわかりまして、ある程度心強く思っているところでございます。
  107. 小野清子

    ○小野清子君 国立大学につきましては、昭和六十二年度から受験機会の複数化が図られました。この複数化に対する関係者の努力には大変敬意を払うところでございますが、グループ分けのあり方などに大変問題も多く指摘されておるところでございますし、定員数割れとかいろいろな問題が出てまいりましたが、今後受験機会の複数化についてさらに改善が図られなければならないと考えるわけでございますが、大臣、この辺の御所見をちょっとお伺いさせていただきたいと思います。
  108. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) この点は先ほどもちょっと申し上げましたように、受験機会の複数化ということはぜひとも必要であろうと思っております。これに対して国大協その他で鋭意御検討いただいて、よりよいものにするために実施をし、そして改正すべきところは改正するというその途次にある、その途中にあるというふうに考えていただけばいいのかもしれません。例えば複数化の場合にもA日程、B日程の連続方式、さらには一方では分離分割方式というものも考えられるわけでありますが、当面はこれを選択的に並行して行われるという点で、一般の受験者にとりましては非常にシステムは複雑に考えられると、こう思いますので、これはあくまでも受験者の方々の身になって考えなければならないことでございますから、複雑多岐にわたって非常に判断しにくいというようなことは決して好ましいことではございませんので、今後国大協のさらにお考えを進めていただく、それに従いましてよりすっきりしたものに改革をしてまいるべきものであると私どもも考えておるところでございます。
  109. 小野清子

    ○小野清子君 最後に、大学入試センターの情報提供事業についてお尋ねをいたします。  入試センター所掌事務変更の柱の一つといたしまして、大学に関する情報の提供があるわけでございます。現在の偏差値偏重の進路指導、いわゆるブランド志向と言われる受験生の特定校集中を改善するという面におきましても、大変有効な方策の一つであろうかと思います。どこの学校に子供が行きたいのか、あるいはどういう道に将来子供が進みたいのかといったときに、子供が目指しております学部学科なりが最も適した情報を即得られるということがなかなか今まで難しゅうございまして、これはベテランの先生たちが今までいろいろ御経験があろうかと思いますが、非常に教育内容が多岐にわたってまいりますと、その辺なおなお情報提供というものが必要になっていくのがこれからではないかと思います。  そんな意味で、この情報提供というのは具体的にどのようなものなのか、またこのような情報というのは私は国立大学に限らないで、すべての公私立、全部を対象にしてこそ意味があろうかと、そのように思うわけでございますけれども、これはどのようなものなのかを御説明をいただきたいと思います。
  110. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 現在の大学進学の際に、いわゆる偏差値輪切りということが言われておりまして、確かにそういう傾向があることは否めないと思うわけでございます。先般もある学校関係者の方とお話しをしておりましたらば、いや、それが最近大分違ってきているのだ、どういう大学がいいのか中身を知りたいという学生、生徒がかなりふえてきたという、大変私どもうれしい話を聞いたわけでございまして、そういったことにおこたえしたいということで、かねてからこの情報提供というのをもう少し偏差値輪切り的な情報提供ではなくて、どの大学へ行けばどういう分野のどういう先生がいて、そこではどんな勉強ができるんだということがわかるような仕組みというものを何か考えていきたいと思っておったわけでございますけれども、これをいよいよ昭和六十三年度、本年度からその実現を図ろうという運びになったわけでございます。  やり方といたしましては、いわゆるキャプテンシステム、こう言っておりますが、ビデオテックスというものを使いまして、要すれば電話回線で情報が引き出せるというような仕組みでございますけれども、これにつきまして、具体の現在入力をする情報の内容の整理等を鋭意行っている段階でございますが、例えば大学学部概要、例えば特色とか、学部構成はどうなっているか、教育課程はどうなっているか、あるいは教員の構成や研究内容、講義内容がどうなっているか、サークル活動、アルバイトの状況はどうかとか、あるいは就職先とか、大学院の進学はどうかとか、入試のやり方は過去どんなふうになっているかというようなたぐいの、単に入試の問題も入れますけれども、入試ばかりでなくて、その大学全体の姿がわかるような仕組みというものを考えたいということで、現在鋭意その準備を進めておるところでございます。  当面、昭和六十三年度は全部一遍というわけにもまいりませんので、国立大学についてそれを実施する、入力をするということを考えておりますが、もちろん将来の構想といたしましては公立、私立に含めていって、全部の大学についての情報がそこから引き出せるというふうな仕組みをつくりたいと、こう思っている次第でございます。
  111. 小野清子

    ○小野清子君 ありがとうございました。
  112. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私は、午前中はちょうど環境と商工の連合審査で質問があったものですから、そちらへ行っておりましたので、午前中の質問された方々とひょっとしたら重複するところがあるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。  最初に、総合研究大学院大学についての質問をさせていただきますが、私は北海道大学の教授もしておりましたし、また国立公害研究所の副所長もしておりましたので、ちょうどこの総合研究大学院大学というものがどんなものになるのかなと思いながら考えてみたわけでありますが、研究が主たる研究大学院ですから、研究テーマの選定というのは、私は研究者にとって非常に重要なポイントになろうかと思うんです。国立研究所は国の要求するそういう研究目的を持った機関でありますが、大学というところはそうではなくて、それ自身テーマが自由だというのが大学であり、大学院だという今までの了解というか、考え方が定着をしているわけです。それで、この場合は従来の国立研究機関をそのまま総合した大学院なわけですから、研究テーマについては自由度というものがどれくらいあるのかなと、私はそれがちょっと気になっているんですが、いかがでしょうか。
  113. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 今回お願いをしております総合研究大学院大学は、もちろん大学でございますので、その教官がどんな分野のどういうことについて研究をするかということについては、その研究家の目的あるいは専攻の目的の範囲内で行われるんだと思いますけれども、どういうテーマを選んでいくかというのは、まさに自由な事柄であろうと思っておるわけでございます。  ただ、もちろんその方々国立大学共同利用機関に、特定の専門的なテーマを持って国立大学共同利用機関の中で研究をされておる方々でございますから、研究の範囲というのがおおむねそういう分野ということになってくるだろうとは思うわけでございますけれども、しかし共同利用機関の中で研究している分野にがっちりそこに限られるということではなくて、やはりこれは観念的な議論になるのかと思いますけれども大学の教官としてはかなり幅広い研究の自由は持っているんだというふうに私は考えておるところでございます。
  114. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私も大学にいた人間なものですから、その辺大変気になるところでありますが、大学の教授がすべてオーソリティーを持って最高であるという考えは私はとっておりませんので、ある意味では年齢的なその人の特徴がありますけれども、その人の成長というのかな、ありますからあれですが、人によってはというか、ある年齢に達しますと動脈硬化が起きてくるわけで、柔軟な考え方というものが少し薄れてくる。  ノーベル賞をもらった利根川教授も研究の飛躍的な発展というのは三十代ではないか、こういうことを言っておりますが、プロフェッサーというのは三十代でなかなかならないわけです。そこへ若い大学院学生が入ってくると、これは非常に今までのスタッフにとっては新鮮な刺激があってしかるべきなんですね。そして、そういう人たちの新しいアイデアをうまく引き出してやるというか、それをサポートしてやるというところに研究の非常に発展があるということでありますので、私は国立研究機関はそのテーマに従って予算を請求してもらっているのが今までであります。これはもう間違いないです。だから、研究所先生が幾ら偉いといってもやっぱり本省の事務次官以上ではないと、こういうことがあるんです。これはもう現実の問題ですからね。ですから、私はその意味で、この大学院ができたときに私が一番気にしたのはそこですね。  あとはそれに関連して派生してくる問題をこれから伺いたいと思うんですが、私も少し古くなりましたので、ちょっとこれは伺いたいんですけれども国立大学、昔は国立大学国立研究機関もそうだったと思いますが、ある発明をいたしますと、それは月給をもらって光熱水料を使って、時間も使ってやったんだから、その特許は国のものだと、今まではそうでした。いつからだったか、それでは研究者がうまくないかもしらぬから、まあ半分はというのでたしか二分の一になったと思うんです。私は国立研究機関に行きましたけれども、そういう状態に出くわさなかったものですから、理解がないんですが、今までの国立研究機関はそこに勤めている人が発明、発見をいたしますと特許はどうなる、どこへ属するんでしょうか。
  115. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 特許法第三十五条の、いわゆる「職務発明」というものを大学研究者等の発明にどう適用するかということでございますが、今先生がおっしゃいましたように、文部省は昭和五十三年の三月に大分いろいろと議論をいたしました結果、統一的な基準というものを大学の方にお示しをいたしたわけでございます。この基準によりますと、応用開発を目的とする特定の研究課題のもとに国から特別の研究経費を受け、あるいは特別の大型設備を使用して行った研究の結果生じた発明につきましては、これは職務発明に該当するということで国に権利が帰属をする。それから、それ以外の発明は発明者個人に帰属するということで、これも今先生おっしゃいましたように、研究者個人の研究意欲のインセンティブということも十分尊重しなければいけない。片や国の方でいろいろ経費をかけたり、設備を使ったりということで国に権利が帰属する場合。それから、それ以外は個人に帰属する場合。こういうふうに分けまして、それで現在まで至っておるわけでございます。  各国立大学等におきまして、この基準によりまして発明が生じる場合には学内規程による発明委員会等にかけまして、それで今申し上げましたような、これが国に帰属するものか個人に帰属するものかそこでよく議論して振り分けていただく、こういうふうになっております。
  116. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 勉強させていただきましたが、しかし今伺った範囲で私が思うのに、鉛筆と紙で、非常に極端な今比較なんですけれども、鉛筆と紙で発明したのならいざ知らず、湯川さんがそのようですね、ノーベル賞。しかし利根川さんは絶対大型機械が要ったわけですよ。ですから、今の少なくとも自然科学系の発明には鉛筆をなめなめというのはあり得ない。小型という試験管をいじくってやるなんていうのはもうだめなんです、ないです、そんなもの。やっぱり大型機械ですよ。コンピューターを使いますよ。そういうのが全部そうすると国に帰属するのではないかなと、大型とは何を言っているのか私にはわからないんです。もうすべて大型でなければ研究は進まないんじゃないかと思うんですが、いかがなものでしょうか。
  117. 植木浩

    政府委員(植木浩君) これを別な意味で申し上げますと実感をおつかみいただけると思いますが、六十年度の発明委員会で審査した件数というのが総数五百五十五件でございます。そのうち国に帰属すべきものとして判断されたものが五十三件、残りの五百二件が個人に帰属すべきもの、こういうふうに判断をされたということで、先ほど来申し上げておりますやはりどちらかというと研究者の、特に独創的な基礎研究でございますから、やはり研究意欲をかき立てるという方向が基本的には正しいのではないかということでもともと議論があった末での基準でございますので、実態におきましても個人に帰属すべきものと判断されるものが圧倒的に多いわけでございまして、今先生がおっしゃった設備という場合はかなり大きな設備ということを考えております。
  118. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そうすると、私が今申し上げた部分をそのまま新しい大学院大学にも適用されるということですね。
  119. 植木浩

    政府委員(植木浩君) これは全く同じような基準で考えております。
  120. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それから、研究費の配分について伺いたいんですけれども、今ここに出てきているのは全部文部省の研究共同利用機関ですね。国立の文部省の所管であるということですが、文部省は研究費については科研費があるわけで、私のおりました先ほど申し上げた国立公害研究所も科研費を応募してとっておりますけれども、ほとんど主たるものは本省に申請をしてとった研究費と、これがもうとったというのか予算の中でいただいたものということでしょうね。今度、私が今伺いたいのは国立の今の総合研究大学院になる前ですから、今、現時点で科研費というものはどれくらいの割合でもらっているのだろうかと、文部省の研究機関ですね。割合というのは例えば件数で言えばとか金額で言えばとか、純粋の研究費の中で科研費、科学研究費の占める割合というのはどの辺なんだろうかと、ちょっと知りたいんですけれども
  121. 植木浩

    政府委員(植木浩君) あるいは御質問の趣旨を正確に受けとっているかどうかわかりませんが、科研費は現在は、昭和六十二年度では四百五十八億八千万ということで、そのときの申請件数が五万七千件、約一万七千件が採択をされたということで採択率約三〇%と、こういう状況になっております。大学等におきます研究経費は先生も御案内のとおり積算校費に始まりまして、あるいは特定研究経費とかいろいろな経費がいろいろな形でこれを足しますと相当膨大な金額になるわけでございまして、科研費は全体の大学におきます研究経費の一部ではあるということでございます。その割合はちょっと今数字を直接持っておりませんけれども、私どもとしてはそういった基盤的な研究経費の確保とともに、こういった個人あるいはグループによりましてプロジェクトをつくって研究をする場合の科学研究費につきましても、これを両々相まって充実をしていきたいということで、特に科学研究費につきましては六十三年度は四百八十八億八千万円ということで三十八億円増、先ほど大臣も申し上げましたように八・四%増ということになっておるわけでございます。
  122. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私が伺ったのは、データお持ちでなかったか私の質問の仕方が悪かったか、ちょっと違っていたように思うんですが、よろしいと思います。  私の聞きたいと思っているのは実はその後でありまして、大学ですと講座を持っている場合、ここに該当するのは大学で言うと講座だと思うんです。それで総合研究大学院大学があって何々研究科、何々研究科というのは生命科学とありますが、これは言うならば学部であって、その下の統計科学とか加速器科学とかというのは講座に匹敵するものだと、そういうふうに私は理解しておるんですが、大学ですと講座費というのがありますね。そして古い昔は講座費がかなり研究費の上にウエートがあったわけです。しかし講座費は全く昔からもう変わりないですね。物価からいいますと、これはほとんど研究費としての用をなさなくなってきた、それで科研費に移っていったわけです。文部省を非常に私が高く評価しているのは、科研費がマイナスシーリングにあっても依然としてかなり高い率で多くなってきた。それは私はもう文部省のやっぱり非常に努力をされた点だと思うし、今後とも研究費はそうでなければならぬと、こう思います。  それで、この場合、今度はこういうのになると講座費に匹敵するものが与えられるんだろうか。つまり私は講座費というものがもし与えられるとすると、自由テーマ、特に大学院学生が来て自由テーマで仕事をしようとするときに、せめて百万でも二百万でもあればそれなりに機器を使って自由テーマも進めることができるのではないか。だから講座費対応の研究費が入るのかなと思って、それを伺いたいのです。
  123. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 先生講座費とおっしゃっておられますのは、現在教官当たり積算校費と、こう言っておるわけでございますけれども国立大学の経費の仕組みといたしましては教官当たりの積算校費と、それから学生当たりの積算校費と、それから教官の研究旅費と、この三つ運営がなされておるわけでございまして、要すれば教官当たり積算校費も学生当たり積算校費も、まあ旅費は旅費でございますけれども、校費の方はあわせて大学教育研究のために必要な部分に使われているという経費でございますけれども、要すればそれを教官の頭数で配分するものと学生の頭数で配分するものとあるとこういうことでございまして、講座費とおっしゃっておりますのは従来からの経緯で教官当たり積算校費を指しておられるものと思いますが、そればかりでなくて学生当たり積算校費、教官研究旅費、これも既設の国立大学の基準に準じて配分をするというふうに考えておるわけでございます。  ただ、その中で学生当たり等教官の研究旅費は完全に同じでございますけれども、教官当たりの積算校費につきましてはここの大学院大学に教授として来られる方はそれぞれ本職として研究所の方に教授のポストを持っておられるという方の併任という格好になるわけでございますので、こういう場合には東京大学その他にもそういうたぐいの客員講座というのがございますが、そういう講座の場合の基準のつくり方にあわせて金額を上げるということで大体半額程度のものを教官当たりとしてはお配りをするということになろうかと思います。それをあとは学生当たり積算校費とあわせましてこの教育研究にどういうふうに使っていただくかというのは、それぞれの大学がこの大学の中で自主的にお考えをいただくということになるわけでございます。
  124. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 その辺ちょうど話がいきましたので伺いますと、博士課程で我々が大学院指導しているそういう人は研究指導手当というんでしたかね。博士課程の場合に何手当といったのかな。研究指導手当だったかと今思っているのですが、それがプラスアルファでついていましたね。この場合にどうなります、この新しい大学は。
  125. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大学院担当手当とかあるいはいろいろな呼び方をしておるかと思いますけれども、正式には俸給の調整額という言い方でございますが、従来から大学院担当の先生方には特別の金額が若干プラスして支給されるわけでございまして、今回の場合にも同じように特別のロードを負われるわけでございますから、それに対する俸給の調整額の支給については考えたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  126. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 なかなか、そうすると新しい大学院大学はそれなりのプラス面が出てきている、今まで私たちが知っていた大学と同じような体制になる。そしてさらに研究費は従来のとおりの目的研究研究費は与えられるわけですね、施設費とか。そうすると、普通の国立大学よりもよくなるような感じですね。ちょっとうらやましいような気が少ししてきたわけであります。  それで、今度は学生定員ですけれども、これは一つ講座に四、六、三、六と三人から六人までの間で各講座、まあ面倒だから講座と言わせていただくと、ついているわけで、この学生の積算の根拠は何なんでしょうね。指導員の数なのか、どういうので出したんでしょうか。
  127. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ちょっと先生、言葉でございますけれども専攻というのは学部学科に相当する、したがって、専攻の中にまた細かく講座が分かれる、学部講座に相当するものはやっぱり講座と呼んで専攻の中に置いていくという考え方でございます。研究科学部で、専攻学科に相当する、こんな感じでございます。こんなことを申しまして恐縮でございますが。  それで、それぞれ一専攻当たり三人ないし六人御指摘のように入学定員を考えておるわけでございますけれども、この定員につきましては一講座当たり幾らとかそういうことでは必ずしもございませんで、やはり一つは、かねてからこの大学院修了者の需給の問題ということについてのいろいろな御心配等はあるわけでございますので、そういった需給の状況等をある程度想定をする。同時に、もう一つは、指導に当たる教官のロード等の関係等も総合的に勘案いたしまして、ここの専攻の場合には大体これぐらいなら受け入れられるであろうというようなことを判断して専門家の方々にやっていただいたというものでございますので、一般の大学院の入学定員を決めるような数字で出てくるようなルールではなく、総合判断でやっているということで御理解いただきたいと思います。
  128. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 なるほどその学科、例えば工学部とか理学部がそうだったので、どうも医学部的になっちゃっているのでうっかりしていました、申しわけない。なるほどそうですね。  そうすると、要するに四とか六とかというのは、多分講座が四つあれば四とかという大ざっぱに言うとそんな感じで考えればいいんですね、きっと。そうでしょうね。
  129. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 講座数とは必ずしも一致をしておらないわけでございまして、ただ、やっぱり全然関係ないわけじゃなくて、ある程度その指導をするスタッフの数と、それからそれぞれの専攻分野でこれぐらいの人数ならば研究機関や何かへ将来出ていくにしても、オーバードクターで全部たまってしまって困るとかいうようなことにならないのではないかというような、需給についてのそれぞれのある程度の見通し等をいろいろ総合判断しておるということでございます。
  130. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 ここで卒業生の就職のことを伺いたいんですが、御承知のように、特に理学部系ですとオーバードクターがあるわけです。私、北海道大学大学院環境科学研究科という学部を持たない大学院を多分我が国の国立で初めてやったかなと今思うんですが、そのときの私が設立の準備委員長でございまして、十幾つかの欧米の大学を回って環境科学の教育研究を見てきたんです。それから国際会議にも出て、ディスカッションしてきました。私が大学人として、自分としては医学部なものだから、卒業生の就職なんか考えたこともなかったわけで、行ってみて驚いたのは、環境科学は重要なアップ・ツー・デートの問題ではある、しかし大学学生教育してそのマーケットはどうだろうか、非常にマーケットがきついんですね。あれ、と思いましてね。私は必要だから研究し、研究するからそこに学生がいるんだというふうな、医学部的単純な考えでおったので、就職を考えたことのない人間はこれは失格だったなと思ったんですが、マーケットというのが非常に重要な要素で、売れないのなら学生の養成はしない。こういう話ですね、簡単に言うと。これは非常に重要だと思うんです。  さて、ここの場合かなり何となく、医学部の私から見ると、難しいハードなものがいっぱい乗っかっているんですけれども、ここを出た人たちのマーケットはお考えになっているのか。それから、医学部は今申し上げたように別といたしまして、ほかの学部ですと、従来は大学先生側が就職の世話をしているわけです。そういうマーケット及び就職の世話については何かお考えがあるかどうかですね。
  131. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この大学院大学の場合の卒業生は、やはり一般の大学院の場合の卒業生と同じように、大学とか研究機関等に研究者として勤めるということのほかに、さらに一般の民間あるいは企業といったようなところへも行くということを想定をいたしておるわけでございます。特に近年企業等におきましても、従来の開発研究あるいは応用研究というレベルから基礎研究のところまで含めて研究活動に大変熱心になってきているというような状況等もあるわけでございまして、実は実態といたしまして、共同利用機関それぞれが筑波の高エネ研でございますとか、岡崎の分子研等々で、これまで現実に既設の一般大学大学院から受託学生という格好で学生を受け入れてまいっております。それがこれまで既に数百名ということで、卒業していった者も百名を超える人が卒業していっているわけでございますけれども、そういう方々の就職口も、大学あるいは共同利用機関後継者になる、そのほかに他省庁の研究機関へ行かれたとか、それからかなりの数の方が民間企業の研究者として出ていっているというような従来の実績があるわけでございます。この人たちは、もちろん大学院大学できておりませんから、純粋のここの卒業生ではございませんけれども、ここで指導を受けた方々がそういう分野へ就職している。そういうような就職の実績等も踏まえまして、この程度の数字の人数を、かなり絞った一専攻三人ないし六人という程度の人数で、いろいろな就職口の可能性が十分あるというような判断をしておるわけでございます。  もちろん実際の就職に当たりましては、私もそこまでちょっと詳しいことは承知いたしておりませんけれども、それぞれの教官が就職のお世話等についていろいろなルートを通じておやりになるということはあり得ることだろうと思っておりますが、ちょっとその点は今お答えする用意がございません。
  132. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 文部省は設置側ですから、一応御参考までにとさっきのも申し上げたので、どうも新しい大学をつくるときにはアメリカ、ヨーロッパですと、まずマーケットリサーチをやるんですね。そして、どれくらい需要があるのかというのを見きわめるようです。御参考までにということにさせていただきます。  そこで、これを見まして、学位の称号は何博士ということになるのか、腹案があろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  133. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 研究科によりましてそれぞれいろいろなタイプになってくるわけでございますが、基本的に申しますと、学際領域あるいは複合領域に関するものであれば学術博士を出す。それから従来の学問分野に入るような研究の中身であれば従来のタイプの理学博士、工学博士等を出すということを予定しておるものでございまして、研究科別あるいは専攻別に申し上げますと、文化科学の研究科では学術博士と文学博士と両方用意しておる、それから数物科学の研究科では学術博士、理学博士、工学博士、この三つを用意しておる、それから生命科学の研究科では学術博士と理学博士と、この二つを用意しておるということで、あとは学生具体に従事した研究の中身によってどちらを出すかを考える、こういうような予定をしておるわけでございます。
  134. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 次は、大学の自治とのかかわりなんですが、多分どなたかもう御質問済みなことかなと思いながら私なりに質問さしてもらいたいと思うんですが、大学には大学の自治がある。大学の自治というものの中にも研究の自由も含まれているわけですけれども、その意味でやっぱり国立研究所がそのまま大学になるということは、何かこう大学の自治とは少し違いが出てくるのではないかということで伺うんです。  最初一つ人事ですけれども、人事は大学の教授会がこれを行っているわけで、最も重要なことで、人事でいろいろもめたり云々というのが近来東京大学にもあったわけで、その人事はどういうふうにして決まるのかというのをちょっと伺いたいですね。
  135. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この大学院大学につきましては、人事関係では教育公務員特例法規定がそのまま適用になるというふうに考えておりますので、したがって教授等を採用するというような場合には、教授会の審議を経て決めていく、こういう方式になるわけでございます。ただ、その教官のソースが共同利用機関母体としてということでございますから、共同利用機関先生方の中から適任者を大学の方で選んでお願いをしていくということに、教授会で決めてお願いをしていくということになるわけでございます。そういう意味では、その形式、格好というか、権限の所在その他につきましては一般の大学と全く同じ仕組みになるということでございます。
  136. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そこで、これでいきますと研究科学部というのの実体がない。ないみたいなんですね、これ。次の専攻研究所でしょう。そうすると研究所長、まあ学科長みたいなものですが、研究所長の権限というのは、大学学部長の権限から比べますと、はるかに私は強いと思うんです。一遍なったらやめるまで所長だ。多分平に戻らない。大学ですと二年一期、国立ですと普通は二期四年でやめる。やめて、もとの教授に戻るということなんですが、私は所長権限というものは非常に大きいと思いますので、この所長権限と学科長というか、専攻の今の科長権限というものが今後どうなるのか。つまり専攻の科長は教授会で選ぶのか、任期を決めて選ぶのか。あるいはその学部の方ですね。研究科の科長は同じようにして選ぶのか、その辺はどうですか。
  137. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) まず、研究所大学の関係でございますけれども研究所の所長という方がこの大学の方の教授として迎えられるかどうかということは必ずしも、必ずこの大学に来ていただくというふうには考えておらないわけでございますので、研究所の所長がもちろん一教授としておいでいただくこともあるかもしれませんけれども、しかしそうでないケースもあり得るというふうに考えております。要すれば、研究所の中で適任者の方々に何人かこの大学へ来ていただくということでございます。  したがいまして、後は、その来ていただく方をどうするかというのは、この大学の教授会が選んで、あの人とあの人に来てもらおうということにするわけでございます。その教授会の中で研究科長という、今度は大学の方の研究科の長というのは普通の大学で言えば学部長に相当するかと思いますけれども、これは教授会の中で選んでいくということになります。したがいまして、共同利用機関の方の管理職の方々とこっちが兼務になるということは必ずしも、それはあり得ないことではないかもしれませんけれども、そうなるという予定をしているものではないわけでございます。
  138. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 いや、確かに教授会を構成するための教授選任には資格審査があると思いますから、当然研究所長がそのまま教授になるということはないと、これは私もそう思っていたんですけれども、何だか研究所長が迎えられないなんということがあるのかなと今思って、そんなオーソリティーのない人が所長になったらこれはしようがないなと今思ったんですけれども、それは論理の上ではあり得ても、実際にはあり得ないのではないかと思ったわけです。しかし、おっしゃるとおり、研究科長は別である、それで所長も別であるというと、所長権限の中で、何かそこで勢力争いみたいなのが起きやしないかなと思うんですね。どこかでぶつかるんじゃないか。研究指導したり、指導というか、アドバイスをしたりするときに、研究科は、研究所長は全く知らないと言ったって、同じ材料で同じ人間が同じ研究をしているわけだから、そうはいかないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  139. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これは申し上げるまでもないことだと思いますけれども、結局こういう大学運営等につきましては、組織仕組みというのはきちんとつくるわけでございますけれども、あと先生がおっしゃるような面でいろいろな葛藤みたいなものが起こってくるということについては、これはそれぞれの方々の良識にまってやっていく以外に、あらゆる組織についてそうでなきゃならないと思うわけでございますが、ただこの大学の場合には、そういうふうに仕組みをきちんと分けまして、それぞれの立場を明らかにしておくという、仕組みをきちんとしておくということと、それからさらにはこういう常時同じ場所におられるわけですから連絡がとれるわけでございますけれども、さらに加えまして運営審議会というような組織も設けまして、そこでこの大学院大学研究所とのいろいろ連係プレーの問題について常設的に議論をしていただくというような仕組み仕組みとしては整えて、両者の意思疎通をし、あるいは意見の違い等があったらば、できるだけそこの調整が図れるようなというような御相談の機会というものはつくっていこうと思っているわけでございます。  そういった中で、それぞれのポストにつかれた方々が良識を持って対応をしてくださるということを期待をし、願っていくということでございます。個別の方々の、東京大学の例が出ましたけれども、ああいうたぐいのことが、真相は承知しませんけれども、起こることはそれは事柄としては制度的に避けられるというようなものでないわけでございますので、良識にまつと申し上げるしかないかと思います。
  140. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 これはもう私の意見ということで、御参考にと思いますけれども、私は現場の大学を踏んできた人間といたしまして、大学附置研究所がございます。その附置研究所長はやっぱり選挙で選ばれていく。そして、学部長も同じですが、学部長は教授と同格なんですね。ですから、任期が二年または四年で終わると、さっさともとの教授に戻るんじゃなくて、併任なわけですから、何にもそこに下げられたという意識なんかこれっぽっちもないわけです。下げられてほっとしたというようなものでございますからね。ところが、研究所になると私は違うと思うんです。所長が下げられるというのはやめるということじゃないかと思うんです。  ですから、私のアドバイスは、せっかく大学院になるんだから二つの組織を持たない方がいい。今のお話を伺って、初めて聞いたんですけれども、やっぱり一挙に今私が申し上げたような研究所長イコール科長であると。そして、今度現職のふさわしくない人は、教授にできなかったら助教授にしておいても、選手交代したときに教授を持ってくるとか、やっぱり何かルールをきちっとしておきませんと、やっぱり人間ですから、良識を持って円満にとおっしゃるけれども、良識を持って相争うということだってあり得るわけなんです、いつもうまくいくわけではないから。これアドバイスですよ。全く御意見伺うわけじゃないし、そういうことは現場を踏んでみてそう思うなということでございます。  もう一つですが、これを見ますと、例えば文化科学研究科というのは大阪に限られていますね。これ見ますと、同じ大学でも東京、茨城、愛知、静岡等々になっているわけで、これだけではやはりある意味専門分化し過ぎてしまうかもしれない。もうちょっと関連をしたほかの学問も何単位かとりたいというのがあってもいいわけで、そういうときにほかの大学との単位互換制度というものはお考えだろうともちろん思いますけれども、どうなっているのか。そのときに私立大学でもいいのか。私的研究所はだめなんだ、大学じゃなきゃだめでしょうね、きっと、単位ですから。私立大学の場合に受講料と研究指導手当等々はどうなるのか。この辺一括ひとつ教えていただきたい。
  141. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) もちろんこの大学院大学は幅の狭い研究者の養成になってはいけないということもございまして、個々に大学院大学にするのではなくて、こういった違った分野のものを総合して一つ大学院大学にしようという考え方をとったわけでございます。学内でもできるだけ学生の相互交流やあるいは共同講義などを行いたいということを計画しておりますけれども、御質問にございましたように、他の大学との単位互換というようなことも必要に応じて適切な分野についてはぜひやっていこうという考え方で対応を具体的に検討しているところでございます。  御指摘の他の大学と申します場合に、国立大学との単位互換というのはいろいろな制度仕組みが同じでございますからやりやすいわけでございますが、私立大学との単位互換というのは、残念ながら国立と私立の間の単位互換というのはこれまで一般的な他の大学についてもまだないわけでございます。これは結局、先生が御指摘になりましたように、受講料みたいな問題をどう扱うのかというようなことが種々ございまして、一時、著名な二、三の大学の間でかなり突っ込んだ議論をしていただいたことがあるわけでございますけれども、やはり国立、私立、いろいろ相談をいたしますと、その辺のところに大きなネックがございまして、現在直ちにできるという状態にないわけでございますが、これはこの大学院大学の問題に限らずもっと総合的に全体的に国立、私立の関係の問題として、私どもももう少し何か道がないか、これから研究していかなければならないと思っている一つの宿題でございます。
  142. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今局長のお話、大変これ大事なところですね。やっぱり国立と私立大学との間で単位互換、人間交流、いろいろなことがあってしかるべきだと思います。  それで、これはもう蛇足かなと思いながら、せっかく私のメモに入れておいたものですから今伺うのは、国内外の学会出張、それは今国立研究機関大学の教官と同じように職務専念義務免除ということで行けることになったということなんですけれども、学術交流促進法でちょうど私が質問をしてそういうふうになったんで一たん喜んでいるわけですけれども、ただ、この場合にもう一つ、私は大学の教官時代に知っていたのは研修旅行というので海外に出られたんです。研修旅行というのは大変幅が広いんですね、これは。この国立研究機関母体とする大学院大学もこれは同じなんでしょうね。許されるんでしょうね。どうですか。
  143. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 先生おっしゃったとおりでございまして、国立大学教員につきましては、もうかねて教育公務員特例法の中で、研修について勤務場所を離れて研修を行うことができるという規定が設けられておりまして、それによって研究集会への参加あるいは海外研修への参加等を行ってきたわけでございまして、最近の例でも研修旅行という形で六十二年度に海外へ行かれた方が一万人を超えるというような数字の方が、まあ期間の長短はあろうと思いますけれども研修旅行という形で行っておられるわけでございまして、これもこれの手続も従来文部大臣の承認というようなことがございましたけれども、各大学の学長にお任せをするということで事務の簡素化を図っているわけでございます。今回のこの総合研究大学院大学についてももちろん一般の国立大学と同じようにこういった仕組みは適切に運用されるように配慮してまいりたいと思います。
  144. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そこで、今度はほかの省庁なんですけれども、医学で言えば例えば予防衛生研究所とか、労働省では産業医学総合研究所だとか、環境庁は国立公害研究所だとかあるんですが、この他省庁のはここに一緒になっていないわけだ。これは文部省だけですわね。それで他省庁とは多少相談なさったんでしょうか、入りませんかとか。どうですか。
  145. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 今回のこの構想国立大学共同利用機関十二ございますけれども、文部省所管のものが、その中から出てきた発想で、そういう方々の御相談の結果、その中で態勢の整ったところということで四つの機関が中心になってこれを実施しようという形になってきたという経緯のものでございますので、国立大学共同利用機関の問題として進めてきておるわけでございます。したがいまして、この問題についてこれまで他省庁の研究機関とお話し合いをした、あるいは向こうから御要望があったというようなことはございません。
  146. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 いや、私は他省庁側の研究所にいたものですから、それでえらく国立のほかの研究機関に比べてメリットが多いなと今思いながら質問しているんです。例えば学生を入れるとロードがふえないかというのも間違いなくありますけれども学部学生教育と違いますから、もう少し指導の仕方が自由度が非常に大きいですね。そしてしかも博士何とか手当がつけば、指導手当がつけばやっぱりメリットがあるんで、これはほかの省庁の研究所との間に差別ができるんでないか。私はそう思っているので将来構想としては他省庁の研究所も一緒に包み込むという考えはおありでしょうか。
  147. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 今後この総合研究大学院大学をどうするか。特に主として十二の国立大学共同利用機関のうちにまだここに入っていないところが相当あるわけでございますが、そういったものがある程度態勢が整い、希望してきた場合にどうするかというようなことを中心に、今後の問題については総合研究大学院大学の中で検討していただくということで若干の調査費の計上もいたしているわけでございますが、先生指摘のような他省庁の機関ということがございました場合にはもちろんどうするかは別にして、そこで議論をしていただくということになろうかと思っております。ただ、かなりいろいろな面での仕組みが、国立大学共同利用機関というのは国立大学共同利用機関ということでございますから、国立大学といろいろな面で予算措置その他かなり似通った形で組まれております。そういうこととはかなり違う性格の機関でございますので、現在そういうものが入ってくるであろうということを念頭に置いているということではないわけでございますので、そういう問題が起こりました段階でその問題は検討させていただきたい、こう思っておる次第でございます。
  148. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 ところで、文部大臣に伺いたいんですが、きょうのテーマと違うんです。  おとといの新聞に、厚生省は大病院志向を抑制するために大きな病院には紹介外来制をとる、まっすぐ行ったら保険の補助がなくなるよというような、全額自分持ちだよというふうなことを言っておるわけですが、その最初は東京の国立がんセンター、それからもう一つは大阪の国立循環器病センター、この二つから開始するということになっておりますね。つまり大病院には開業医からの紹介がなければ受け付けません、まっすぐ行ったら金は高いよ、こういうことを言っているわけです。それでしかも、その後には、行く行くは大学病院にも広げる、こういうふうにのたまわっているわけで、私は私の意見がありますが、私の意見を押しつけるよりも、文部大臣はこれに対して大学病院の立場ではどうお考えかということをお伺いいたします。
  149. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今の御指摘の紹介制の導入でございますが、これはいろいろ話がありまして、結局本年四月から社会保険診療報酬改定において大学病院等高度専門病院にも導入する、ただそこで、希望するものについてその申請に基づき個別指定によって導入するものとされたわけでございます。  それが形の上でございますけれども、私どもとして率直にどう考えるか、こういうことでありますが、この紹介制の導入ということにつきましては、私どもは結論としてはこれは慎重に扱っていってもらいたい、こういうことであります。これは紹介制の導入ということが行われますと症例数が減ってしまう、疾病の種類に偏りを生ずる、したがって総合的な医療技術の習得が困難になる、そういうおそれがあるものでありますから、一つのこれが歯どめにというふうに受けとってよろしいんだと思いますが、手を挙げて自分のところへ導入するというものについて導入されるというシステムにされたわけでございますので、その点については極力慎重な対応が必要だ、このように私どもは考えております。
  150. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 大臣は慎重な対応が必要だと慎重なお答えでございましたけれども、私のところへ幾つかの大学の主として病院長あるいは学部長から、まあ陳情ではありませんが意見の開陳がございまして、これはみんな一律に困ると言っているわけです。高度医療を要するのだけが来たんでは、日常ぶつかる風邪引き、下痢には遭遇しない、そのときに医者が戸惑ってしまうのではないか、プライマリーケアができないではないかと。ですから、一般外来と同じ患者が来てくれなければ大学医学教育はできない、こういう強い反対でございまして、今大臣言われたように、手を挙げることになったというからだれも挙げないと言っているわけですが、挙げそうなところはございますか、手を挙げてそれじゃやってみたいというのは。
  151. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 一般的に申しまして、大学の場合には先生おっしゃいましたように、医者を養成していくわけでございますから、目病み、風邪引きといったたぐいのごく一般的な患者さんを扱うということがまずは第一歩として必要なわけでございます。ですから、重病の患者だけしか診たことがないというお医者さんでは困るわけでございますので、そういう意味ではこういう紹介外来制で重病患者だけだというような方式はそもそも大学病院の教育病院としての仕組みからいっても適切ではない、私どもはそう思っているわけでございまして、したがいまして紹介制の導入につきましては大学関係者と御相談をしながら我々の意見を主張してまいりました。ただ、専門病院というものの中には大学病院に限らずそういうたぐいの病院があることも決して否定できないということでもございますので、手を挙げて申請したところについて認めるという方式ならばそれは結構でしょう、こういうことで妥結をしたわけでございます。  大学病院の中にも、実は例えば研究所附属病院みたいなタイプのものの中にはあるいはこういうものに該当するケースのものが出てくるかもしれないというようなこともございますので、大学病院に一切だめだと言うつもりはないわけでございますけれども、しかし一般的には望ましくないことだという考え方大学病院の立場を考えて各大学十分慎重に対応してくださいよというのが私どもの気持ちであり、大臣からお答えしたことでございます。
  152. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 ここでもう一つ、大臣にお伺いしたいんですけれども、昨日の本会議教育関係のことの質問があったのにお答えされたところで、教育改革についての基本的な考え方というところだったと思うんですが、教育の個性化、多様化が非常に重要な方向であるというか方針であるとおっしゃったわけですが、私は前々から個性ということについては大変表現について異議を申し立てておりますので、ここでひとつ教育の個性化というのはどういうことか、ちょっと伺いたいと思ったわけです。
  153. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) これは臨教審の中にも今までの画一性に対する個性化重視という言葉が入っていると記憶をいたしております。画一化と申しますか、画一性という言葉だったか忘れましたけれども、これは臨教審第一章に、明治以来日本が先進国に追いつき追い越せということで全体の水準を上げることに専心をした結果、気がついてみたら画一的だ、それを社会の変化に対応して個性重視の教育に変えていこう。それは臨教審の前にもう既にその前提はあったかと思いますが、言葉としては臨教審答申の中に個性重視の教育と、こういう形で入っております。また、そういう意味で私ども社会の個性化、多様化というふうに常々使っておりますものでございますから、ごく一般的な感じとして個性というのが個人の素質と申しますか、あるいは私どもは個性的とかいろいろな言葉で一般化された言葉として使っております。ただ、個性というのが全く個人の資質なのかどうかということについては、私も不勉強でございますけれども、例えば教育基本法の中にも「個性ゆたかな文化」、この「個性ゆたか」というのは個人の個性なのか、ある集団の個性なのか、ある風土の上に成り立った文化を「個性ゆたか」と、こう言ったのか、その点はなかなか難しいところでございますけれども、個人の資質のいい面を引き出し伸ばしていく、そういう面で簡単に言えば使っているのでというつもりで私は使用いたしたところでございます。
  154. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、若干レクチャーをさしていただきたいと思いますが、大臣の一番後で言われたのは非常に大事なことですね。能力を引き出すというところですね。我が国のは教育と文字そのものが教えるというので、上からかぶせているわけで、はみ出したやつはだめだといっていじめられるわけですね。それで、教育なんといって、教えるんですね。ところが外国は、エルツィーウンクという、ドイツ語ですが、エルは外へ、ツィーエンて引っ張るというんで、引っ張り出すということですね。エデュケーションも同じなんですね。語源も同じなんです。エデュケーションも引っ張り出すんです。だから、外国の教育という言葉は、その人の持っている能力を引っ張り出すということがエデュケーション、エルツィーウンクなんですね。日本はそうじゃなくて、おまえたち知らないんだから教えてやるというものなわけですよ。その言葉がそうですよ。  そこで、個性化に戻りますと、個性豊か、個性というのは個にくっついた性なんで、そんな個がたくさん持っているわけないんです。例えば昔ですが、例に挙げました、鼻が低いというのはその人のもう生まれついてからの遺伝的素質なわけでしょう。これをこの人が鼻に関しては低いということ以外に高いというのも持っているなんてことはないわけです。一つなんですね。だから、個性というのはその人にだけしかないものを個性と言っているわけです。それは方面を変えると幾つかあると思うんです。走るのが速いとか鼻が低いとかというのはあると思うんです。それを教育はその中のいい点を引っ張り出して、まずい点は自分で抑えていけるようにするのが教育なんですね。だから、個性にはいい点と悪い点があるということです。  つまり鼻の低いことで言うと、整形手術をするときれいになる。これは環境によってカバーしたわけですね。じゃ生まれた子はどうなるか。やっぱり低いんです。それが個性というやつなんですね。ですから、個性豊かというのは個性一人一人違っているのがいっぱい集まったのを上から見ると個性がいっぱいあるなと、これを個性豊かと言っているんですね。個性豊かというのはおかしいんです。教育は個人対象なんですね。集団を対象にして教育なんかしていない、個人なんです。だから、個性重視というのは一人一人を重視するという意味ですね。集団じゃありません。そうすると、個性豊かという言葉はないはずなんです。臨教審で書いてあるのはもう金科玉条じゃありませんので、間違いは直さなきゃいかぬと思うんです。  その中で臨教審第何次答申だったかに、あるページを見てびっくりして、これはコピーをとって皆さんに、当時の文教委員に差し上げたんです。たった一ページの中に二十五「個性」という字が出てくる。これほど、いわゆる個性豊かな文章は見たことないですね。とにかく二十五ですよ、「個性」が。その中では個性は個人だけでなくて、社会にも、国家にも、夫婦にも、家庭かな、学校にもあるというんです。冗談じゃありませんね。学校で個性があってたまりますか。個性というのはその人だけ、あるいはそのものだけ持っているものですから、学校先生がかわり、生徒がかわっていても学校は変わらないということはないわけですよ。変わらないとすれば建物じゃないか、焼けるまではですね。そうすると、学校の個性という臨教審の言っているのは建物を言っているわけです、それ以外個性なんてあり得ないんだから。  それから、建学の精神ってよく出てきます。建学の精神は、私は絶対不変なのかなと思うんです。時代に即応して、大元は同じでも少しずつ変わっているんじゃないんでしょうか。私はそうでなければ、何十年、何百年のこの時代の流れの中でそういうのは存在し得ませんよ。大臣は慶応の御出身で昔は少数エリートだったと思うんです。今うん万人いるわけだ。その人たちがみんな同じ人の集団ではないんですね。やっぱりこれは時代とともに変わります。ですから、学校に個性があるなんて思って文部大臣をお務めになるととんでもないことになるんじゃないかと思っているんです。何だかレクチャーが長くなって。  そういうことで、したがって大臣のおっしゃった個性化、多様化、その個性化という言葉はやっぱり私うまくないと思うんです。個性的というのはいいんです。的というのはそういう特色のあるものという意味ですから、形容詞ですからいいんですね。もう一つは、多様化というのは一つ一つの個性の変わったのの集まっているのが多様化なんです。だから、多様化はいいと思う。だから、教育は個性的であり多様化というのならいいのかもしれませんが、個性化、多様化というのはあり得ないんじゃないかと思うんです。  言葉の話になりましたので、ついでにちょっとお話しをしたいと思うんです。ここに大学入試改革協議会、六十三年二月十五日、「大学入試改革について」という報告書が出ているんですね。その七ページに「テストの利活用例」、利活用と書いてあるんです。一番から七番まで項目がありまして、「一、総合的な利活用」、二、何々「のみの利活用」、三、何々「分野のみの利活用」、四、「前段階としての利活用」、五、何々「としての利活用」、六、何々「の利活用」、「七、成績の多様な利活用」、こう書いてあるんです、項目が、ヘッディングですね。文章を見ますと、一、「総合的に利用する」、二、「科目のみ利用する」、三、「結果を利用する」、四、「テストを利用する」、活用というのが抜けているんですね。利活用というヘッディングで、利用があって、これ利活用例でないんですね。活用が抜けているんですよ。これどういうわけなんでしょうか。利活用と、利用と活用との違いが何かあるのか。これは利活用例じゃないわけだ、全部利用と書いてあるんです。今局長笑っていますけど、五番だけが「参考資料として用いることも」、これ用いるだけはここです。あと七つのうち六例は、ヘッディングが利活用で内容は利用なんです。利活用と利用の違いについてひとつ教えていただきたい、こういうわけです。
  155. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 利活用という用語でございますけれども、利用と活用を足し算して利活用という言葉になったんだと思います。利用というのは、今回の入試改革のこの協議会の報告に至るまでのいろいろな御議論の中で利用という言葉が使われ、活用という言葉が使われておりまして、利用というのはこのテストを使うか使わないかということの方に主点を置いて言われております。活用というのは使う場合に具体にどういうふうに使うのかというような感じで使われておったわけでございますが、それを分けずに利活用ということでここは書いたんだと思いますが、確かに御指摘をいただきましたようにヘッディングとそれから中身の文章とで言葉の使い方が必ずしもきちっとしていないということは十分整理された言葉でなかったというふうに今反省をしておるところでございます。
  156. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 どうも何か本題をそれてしまったようで済みませんが、私は本当は広辞苑でちゃんと字引を引っぱっていますけれども、またレクチャーすると長くなりますからやめますけれども、私が今申し上げたのは個性という言葉もそうなんですが、やっぱり文字、表現というのが文部省というのは非常に大事な省庁だと思うんですよ。間違わない方がいいんですね。法律に幾ら詳しくても表現がうまくなければ意思が伝わらないわけです。利活用とあって、利用とあったら活が落ちているというのもやっぱりおかしいわけですね。そうすると活を入れなければいけないのじゃないか、私はきょう活を入れるつもりで今ちょっとお話をしたわけで、御参考までにということです。しかし急がないとだめでありますから大学入試センターについてお伺いをいたします。  今後の入試検討は今ここの資料に出てきましたが、大学入試改革協議会が全部請け負うのか、つまり従来の国大協、私大協はどういう役割を果たすのかということをちょっと伺います。
  157. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 入試改革協議会は国公私立の大学関係団体とそれから公立、私立の高等学校関係の団体の代表者ないしはそれに準ずるような方にお集まりいただきまして、これからどういう方向に入試改革をもっていこうかということについて御議論をいただき、協議をしていただいたと、そういう機関でございますので、これはこの組織機関と申しますか協議体でございますので、これはある程度新しい入試改革についての方向が立ってきた場合には、永続的に存在するというたぐいのものではないのではないかと思ってお るわけでございます。  ただ、具体に今後いわゆる新テストを実施してまいります場合に、これまでは共通一次試験の場合には国立大学が集まって共通一次試験をやるということで実施の主体は国立大学の集合である。そのためには国立大学協会というものが実質的に具体運営基本方針を決め、入試センターに方針を伝えて実施をさせるという役割をしておったわけでございますけれども、これから今後は公立あるいは私立の大学と一緒になってやっていくという基本的な方向を立てますと、公立関係の団体、私立関係の団体との間で適切な機関をつくって実施をしていくというような方向をとることが必要になってくるのではないか、これは入試改革協議会を越えた一歩先へ出た段階の問題でございますけれども、そういうことで、現在準備協議会のようなものを関係者の間でつくって御検討いただいているところでございます。
  158. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 新テストの問題点を一、二お伺いしたいと思います。かねて私もそう思っておったんですが、私大参加をしていただくのに科目の選択は自由である、どうとってもいい、五教科十八科目、そのうちのどれをとってもいいということなんですね。それは大学側が言っているのか、受験生の方でのメリットがあってなのかと思うんですが、複数受験をしようとする受験生にとってはその学校によって取り上げる科目が違いますと全部違うのを勉強することになるわけですね。ですから、複数受験者にとって科目の選択が異なったら自然に受験生は入りたい学校と入れる学校との選択が違ってくるんでないかと思うんですが、それについてはどうお考えですか。
  159. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 現在でも受験者は全国的な平均で見ますと、大学あるいは学部の単位でいいまして平均的に五校あるいは五学部程度のところを受けているわけでございまして、それぞれが別の形での、特に私学の場合には科目設定をし、入試をやり、入試のやり方も考えているというわけでございます。今回新しくこの新テストというものを考えました場合に、私学が参加する場合にどういう使い方をするかというのは各大学自由ということになっていますので、まさにこれからの問題であろうかと思いますが、私ども一般的に想定をしておりますのは、これまで各私学がより個性的といいますか、大変特色のある試験をやっていただくということを考えますと、それだけの時間的な余裕等も、ロードの余裕等も必要になってくるであろうということがございますので、そうしますと、私学の場合に従来、自分の大学で三教科なり五教科なりやっていた試験のうちの数科目、一ないし二教科というようなものをこのテストによって変えていこう、それによって出た余裕で面接その他もやっていこうというような形が出てくるというのが普通のタイプではなかろうかと想定をしておるわけでございますが、そういうことでございますれば、受験生の側から見れば数学のIなり数学のIIなりという科目をその私学で受けるかあるいは今回の新しいテストの方で受けるかということでございまして、多数の大学を受ける場合にそれぞれの科目がある程度違うということは現在でも申し上げましたようにあるわけでございますので、そういうたぐいのものではなかろうかと、こう思っている次第でございます。
  160. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 先ほど局長のお話で、大学入試センターの情報サービスは偏差値輪切り的情報ではなくてどんな内容学校かということを情報として提供したいと。これは受験生側から言うと入りたい学校の情報なんですね。入れる学校というと偏差値輪切りになっちゃうんですね。ですから、今受験生は入りたい学校よりも入れる学校を探しているというのが受験地獄の実情だと思うんです。  それで、私が申し上げておりますことであり、これもちょうどもう時間ですから文部大臣に伺った方がいいかなと思うんですが、大学入試の最も根本的な問題点は偏差値輪切りの解消ですよ。新テストはこれは中曽根さんがそれをひっ提げて何か大演説を打っておられたんですから。それはいまだに達成していないではないか。ですから、私は、教育改革のいろいろな部面があるんですが、一番最初に出発するのはそこでないか。この偏差値輪切りを解消できたら、その前段階高等学校教育は非常にとげとげしくなくなるようになっていくんですね。ですから、偏差値輪切りで一点を争うから問題なんであって、教育が、大学入試が偏差値輪切りを解消できれば、あとは高校、中学ともっと人間教育に重点が置けるんだろうというのが私もう何遍も申し上げたことなんです。そこで、新テストは偏差値解消に役立つと思われるかということで、文部大臣はどうお考えになりますか。
  161. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大臣がお答えになる前にちょっと私の方から答えさせていただきますが、偏差値輪切りの問題というのは確かにいろいろ問題になっているわけでございます。これまで共通一次が行われます前からも、先生御承知のように各種の受験雑誌等を見れば、そこの段階で、この大学は偏差値ならばどれからどれぐらいの人がこの学部なら幾つだというようなことがずらっと並んでおるわけでございまして、そういう形のものができ上がってきてしまっておるということでございます。  これは、やっぱりその一番基本をたどっていけば、一つには我が国の終身雇用制の社会というものがあり、それがもとになって学歴偏重の社会というものがあり、そして大学というのはみんな一律ではないものでございますけれども、各大学が必ずしもそれぞれが十分な特色を持っていないために、序列をつくって、並べられやすいような形のものになっているというようなもろもろのことが全部基礎にあって現在の状況が出てきておるわけでございますので、私どもこの新しいテストを利用すれば、それによって現在入試地獄と言われている事柄、あるいは偏差値輪切りと言われるような事柄が一発で解消する、そういうような妙薬であるというふうには考えてはおらないわけでございます。ただ、一歩一歩こういうことを行い、各大学の入試というものがいろいろ多様なものになっていき、ただ学力検査一辺倒でない、いろいろな分野の多角的な能力を判定するような方式が普及していくということが逐次行われていくことによって、その偏差値輪切りの弊害というのもだんだん薄らいでいくであろうということを考えておるわけでございまして、そういったための一つの一歩ということで今度の新しいテストというものを考えているということでございますので、ひとつぜひ御理解をいただきたいと思います。
  162. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それじゃ、文部大臣に今の最後のところ、新テストが役に立つかということと、やはり大学入試改革についてのお考え、どうしたらいいと思われるかということを伺って私の質問を終わります。
  163. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 大学入試は、やっぱり選抜する方の考え方と、それから受験者にとってどうなるだろうかと。例えば受験者の立場で、私は余り偏った教育というものは、やはりさっき先生もおっしゃったように、それぞれの素質があれば、いい素質は伸ばす、欠けたるものは補う、それが教育環境であるとおっしゃった。これは正しいことだと思うんです。ただ、私ども自分のことを考えますと、やはり得手不得手というのがありまして、理数系は得意だけれどもどうも語学、社会関係は不得手ですとか、その逆もあるわけでありまして、ある程度小中高である水準の教育を学ぶことは必要でありますけれども、その辺からそろそろ自分の得意な分野で勝負していくということがあってもいいのではないか。  なぜならば、今の社会が多様化しておりますので、社会人として生涯を全うするのに、やはり一芸に秀でるという面も確かにあるわけでございますので、自分の持っている素質のいい面を伸ばす、その点で自分の得意な分野で勝負できる、たとえそれが難しくても自分の能力を十二分に精査し引き出してくれるテストであれば私は喜んでそれに対応していくのが青少年ではないだろうか、こう思いますので、こういう比較は端的過ぎて悪いかもしれませんけれども、受験地獄の一つが、自分の得手も不得手も丸暗記して受験に臨むというところに非常につらさがあるとするならば、ある一定の水準を保った後は自分の得意な分野で勝負できるというところに意義を感ずるならば、私は一つの活性化につながっていくでありましょうし、そして受験者にとっても一つの活路になっていくんではないか。そこから今までのこの水準のものはこうだというような輪切り、それから序列化が徐々に変わっていくきっかけになるんではないか、ちょっと甘いかもしれませんが、そのきっかけになると思ってはおります。  同時にまた、政府委員が言いましたように、そこの確かに学校だけで言いますと、上級の高等教育試験から直せば徐々に今度高校、中学と変わっていくであろうと先生もおっしゃっておられるわけでありますが、とするならば、少なくとも今度社会に出たときの社会の学歴偏重を変えていく、その両方からサンドイッチで変革をしていくことが当然必要でありますけれども、それの方向に少なくとも即しているものであろうと思いますし、またそうでなければならぬ。これで一挙に解決するというほど言い切れるものではございませんけれども、少なくともその方向に資するものではないか、私はこう考えております。
  164. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 まず、総合研究大学院大学の問題について質問いたしますが、午前中も、粕谷、安永両議員からも、この大学院大学管理運営の問題で質問が少しくありました。既に当局の答弁で、運営審議会が設置をされるということでありますが、この運営審議会の機構と権限、構成がどういうふうで、人数はどうかということと権限、これはどうなるんですか。
  165. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この総合研究大学院大学には運営審議会を置くということを予定をいたしておるわけでございますが、これまでも申し上げてまいりましたように、総合研究大学院大学は、国立大学共同利用機関のすぐれた研究機能を活用して、いわばそれを母体として新しいタイプの大学院大学をつくろうということでございますし、また一般の大学の修士課程の卒業者がここの博士課程へ入ってくるというようなことを予定しているというようなこともございます。そういった教育研究面での特色に適切に対応するためにということで、運営審議会という組織を考えてはどうかということで計画をいたしたものでございます。  したがいまして、この運営審議会の趣旨、目的は、連係協力をしていく国立大学共同利用機関と、それから今後いろいろな意味での交流をやっていこうと思う国公私立の大学との定期的な連絡調整等をここで行っていきたいというための、そういう目的を持っているものでございます。したがいまして、その構成につきましても、この総合研究大学院大学母体となる国立大学共同利用機関の長の方、それから他の大学の関係者の方、国公私立の大学関係者の方等の方々をもって構成をするということを考えておりまして、これの学内での位置づけといたしましては、学内での一つ機関としてこれは置かれるということでございますが、もちろんこの具体の運用とかあるいはそこで出た意見大学運営に今後どう取り扱うかというようなことつきましては、その当該大学、この場合、総合研究大学院大学自体で判断をする事柄である、こういうふうな位置づけのものとして考えている次第でございます。
  166. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 学外の有識者が入るということで、私立大学の関係者などと、こう言われていますけれども、それだけじゃありませんね。企業の代表が入るということもあり得るんでしょう。
  167. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この大学院大学の性格から申しまして、基本的には先ほど申し上げましたように、国公私立の大学との交流あるいは国立大学共同利用機関との連係協力という面での御相談をする機関ということでございますから、先ほど申し上げましたような方々が中心になるということが当然のことであろうと思っておりますが、もちろん若干の学識経験者の方が入るということも、これはあり得ないことではないと思っております。
  168. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 聞いておるのは、大学ないし研究所外の有識者が入るという、その有識者なるものの中には企業の代表も含まれ得るわけでしょう。
  169. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 企業の代表と言うかどうかは別にいたしまして、いろいろな方で、この大学運営についての参考になるような御意見を述べてくれるような方であれば、どういう所属であるということを問わず、この中に入り得る性格のものであろうと思っておりますが、具体にどういう方をお願いするかというのは、まさにこの大学院大学が発足して、この大学院大学として考えていくことであろうと思います。
  170. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 企業の代表が入り得るということ自体は最終的には否定をされてないわけでございますけれども、それはそうでしょう。この総合研究大学院創設準備委員会、この委員会でどういう内容運営をやっていくかということについていろいろの検討を進めてきておる。これの昭和六十二年七月の中間まとめを見たって、この準備委員の中に日本電気株式会社副社長植之原道行さんですか、こういう人がそもそも出発時点で入っているんですから、企業の代表が入ってくることは明白なんです。  そこで、まだはっきりしないんだけれども、この運営審議会の権限というか職務内容、いろいろ検討はやっているんでしょう。安永議員の質問のときに政省令を出せという御意見が出ていましたけれども、私も全く同感だと思いますが、この運営審議会の定めは、法案を見ますと、政令ではなく、限定的に政令で決めるものはうたっていますから、国立学校設置法施行規則の改正でいくんですね。
  171. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 国立学校設置法の中で、十三条であったかと思いますけれども運営の細目等について省令で定めるという根拠規定を持っておりますので、その中で、省令においてこの運営審議会の設置ということを規定していくことになるであろうということを予定いたしております。
  172. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、その運営審議会の権限、職務内容は、どういうことで定めようということで今のところ考えているんですか。
  173. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) まだ用語等を決めたわけではございませんけれども、先ほど申し上げましたように、運営審議会というのは、そういう関係の機関との連絡調整等のための協議をする機関ということで考えておりますので、法令の定め方といたしましては、例えば大学の定めるところにより次の事項を審議するということで、母体となる幾つかの国立大学共同利用機関との連絡調整に関すること、それから既存の大学との連携を行う上での連絡調整に関することといったようなことが、どういう表現になるかは別にいたしまして、そういう趣旨のことを書きたいと、こう思っている次第でございます。
  174. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 余りいつまでもとぼけたらだめだと思うんですね。私は、国立学校設置法施行規則の新旧対照表、さらにこの国立学校の評議会に関する暫定措置を定める規則の新旧対照表、これは文部省がつくっておる資料でしょう。それに別表がついていまして、管理運営についての案、もちろん案でしょう。案ということですけれども、「運営審議会の主たる職務内容」ということでこういうふうに書いてある。「学長の諮問に応じて次の事項を審議する」ということで、あなたが言うている、「一、大学運営に関する母体となる国立大学共同利用機関との連絡調整、」、「二、その他大学運営に関する重要事項」、ここが重大なんですよ。大学運営に関するこの重要事項、これをこの運営審議会は権限として持っていこう、職務内容として持っていこうというのが文部省の腹案でしょう。
  175. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) いろいろ事務的な検討をしているようないろいろな段階があるわけでございますけれども、その段階のものがどういうわけか先生お持ちのようでございますけれども、私どもが現在考えておりますのは、先ほど申し上げましたように既設の大学との連携の問題と、それから母体となる国立大学共同利用機関との連携の問題、この二点を中心に規定をしようというふうに考えております。
  176. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 今なおそうやってとぼけることについては私は承知ができません。ここまで言っているんですから、政令で定めるもの、それから省令、規則で定めるもの、今現時点で文部省の腹案としてはどういう案を考えているかというのを正式に資料として出してもらいたい。それがなければ、出さなければまともな審議になりませんよ。  局長、そう言うのだったら逆に確認を求めますけれども、私が言った「その他大学運営に関する重要事項」、これは運営審議会の権限、職務内容になるということは絶対ありません、そんなようなことが将来飛び出てくるというようなことは絶対ありませんとここで約束できますか。
  177. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 規定の仕方といたしましては、先ほど来お答え申し上げているような方向で規定したいということで現在検討しておるところでございます。
  178. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 将来ともそういうことは絶対出てこないかと聞いているんです。
  179. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 未来永劫将来のことを言えと言われてもそれは無理でございます。
  180. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 だから、この場限りの答弁で私は信用できないんです。そうなればひとつ政令の案を出してください、案でいいから。今こういう内容で考えているというのを資料として出してもらわぬことには、それこそ軽々たる審議で済む問題じゃないですよ。  さらに重大な問題があるんですけれども、さっき表題だけ触れましたけれども国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則というのがありますね。この規則の文部省のつくりつつある改正案第十条、ここで数個の研究科を置く学校教育法第六十八条の二の国立大学の評議会についての定めをしています。その第十条第一項で、その構成はこれこれで評議会を構成する。第二項でこう書いている。ここが大事です。「前項の評議会には、第二条第二項から第六条第一項まで、第七条及び第八条の規定を準用する。但し、第二条第二項を準用する場合においては、同条同項中」各学部及び教養部とあるのは各研究科と「読み替えるものとする。」と。ここで非常に重大な問題は、第二条第一項、これは定義を書いているんですから大したことでないとして、問題は第六条第一項までを準用すると。第二項がすぽっと抜けているんです。この第二項が重大なんです。言葉をかえれば、この教特法の規定によってその権限に属せしめられる事項、こういうものが、準用が排除される。具体的に言ったらその問題は何かと言えば、この研究所教員について、教育公務員特例法の第五条の転任問題、第六条の降任、免職問題、第九条の懲戒処分問題、こういう不利益処分については必ず大学の管理機関の審査なしに行ってはならぬというのが教特法の精神なんです。ここのところがすぽっと今文部省のつくりつつある案の中で外されようとしている。事実でしょう。
  181. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) どういう資料をお持ちであるか私も承知しておりませんけれども、私どもの現在の考え方というか、従来から評議会に関する暫定措置を定める規則の第六条第二項の規定をこの大学院大学について適用しないなどということは考えたことはございません。適用します。
  182. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それは、もう一遍念を押しますけれども、今後ともそういう問題を、私が危険性を指摘しておるその問題を俎上にのせるということは金輪際あり得ないと約束できますか。
  183. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) もう毎回申し上げておりますように、一般の大学運営と同じように教育公務員特例法の適用をしていくという基本線に立って考えております。それがこの大学院大学運営について私ども基本的な考え方でございます。
  184. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 金輪際ということがあり得るかというようなちょっと不規則発言が出ていますから、私はあえて言っているんだけれども、この教特法の問題というのは、それこそこの教特法の適用を排除するというようなことになったらこれはもう根幹にかかわる問題だから念を押しているんです。しかし、私はその危惧がまだ消えません。やっぱり正式に政令でかくかく定める、省令、規則でかくかく定めるという、今文部省の現時点の案を資料として出してください。それを見ないことには、私は現に持っているんだから、ここにタイプ印刷して。だから信用できません。委員長によくお願いしておきます、後の委員会運営に関しますから。  そこで、この準備委員会の報告書、中間まとめとなっておるんです、昭和六十二年七月二十一日。最終報告出ましたか。
  185. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 現在お願いしております総合研究大学院大学創設を十月予定ということでお願いしておるわけでございますが、この創設準備の事業をそれまで継続して準備としてやってまいりますので、その準備が大体終わる時点で最終報告をまとめようということでございますので、この中間まとめ以後のまとめのようなものはまだでき上がっていない段階でございます。
  186. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうすると、これはまた見切り発車じゃありませんか。せっかく準備委員会というものをつくって、中間まとめは出たけれども、最終まとめ、最終報告出ぬままにこの法律で強引に見切り発車的にやろうというんでしょう。もう文部省も大体与党と御相談しておると思うけれども、次の十七日あたりと考えておるんでしょう。そんな見切り発車は許されるものじゃないですよ。当然手続として、最終報告がちゃんと出されて、その内容を踏まえた上で本法案の中の一つの柱である総合大学院大学について国会としてどういう態度をとるかという、これが正当な議論のあり方ですよ。ということで、まだできてないというんだから、それは出せと言うたって出せないから、要するに文部省の怠慢ですよ。それを法案を出してくるなんて本当に不届き千万というふうに大臣に申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、去年私ども共産党、社会党が反対しました問題の大学審議会です。しかし、ああいう形で無理やり大学審議会をつくって、あの審議会の中の重要な柱として大学問題を議論するということが上っていましたね。ところが、この大学審議会の方のこの大学院問題についての審議の結論も出てないんですよ。例えば設置基準のあり方をどうするかということについて結論出ていないじゃないですか。そういう状況でつまみ食いみたいに総合大学院大学の問題だけをぱっと見切り発車させようというのは、これこそけしからぬじゃないですか。大臣どうですか。いや、大臣、政治的な、政治家のあり方としておかしいでしょう。
  187. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 設置基準がないというようなお話がございましたり、準備が途中ではないかというお話がございました。これは十月一日、国立大学というのは法律が成立をして初めて大学ができるわけでございますので、その大学ができるときまでの間は準備期間ということに相なるわけでございますから、十月に設置ということを予定して法案を御提案申し上げ、御審議をいただいておるわけでございますので、十月設置ということはお認めいただいて十月になって大学ができる、それまでの間は大学は準備段階にあるわけでございますので、その間、準備が続けられていくということは、これはぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。準備が終わらない段階で、準備が終わったということで最終まとめができ上がるというわけにはいかない性格のものであるということでひとつ御理解をいただきたいと思います。  それからまた、設置基準の問題についてお話がございましたけれども、設置基準につきましては、現在、大学院設置基準がございまして、その中で、こういった独立大学院の場合の具体の適用については大学設置審議会の審査内規がある、それでやっておるわけでございます。もちろん、将来いろいろなタイプの独立大学院という構想があるいは出てくるかもしれないということを念頭に置きまして、そういう問題についての御審議大学審議会でいただくことにしておりますけれども、それができるまではこの大学院大学についての審査基準がないというわけではないわけでございますので、この点もひとつ御理解をいただきたいと思います。
  188. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 設置基準問題は一つの例として挙げたんでありまして、私が強調しているのは、去年あれだけ大きな議論を呼んだ大学審議会、それを無理やり発足をさせた。大きく三つの柱で検討をやるといううたい文句でした。その中の一つ大学院問題というのがあるんですよ。そこでも、以降もう何回やられてきているんですか。それはともかくとして、しかしまだ大学院問題についての結論も出てないままにこの総合大学院大学なるものを見切り発車をさせるというこのやり方が、本当に慎重に慎重を期すべき教育制度の改変問題でしょう。そういった点で余りにもちょっと性急じゃないか、慎重さを欠くんじゃないかということを言っているんですよ。大臣どうですか、何の反省もないですか。
  189. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) これは大学審議会にお願いをしております三点の中にまさに大学院制度改革もあるわけであります。しかし、これは前にもお答えをいたしましたように、既に既設の高等教育、これを今のままではまだ不十分なところがある。それを高度化し活性化し、あるいは個性化しというふうにあるわけであります。この三つの方向を諮問いたしまして、特にその中で大学院の飛躍的充実と改革が必要である。これは臨教審第二次答申にもあります。これは、学術研究水準の向上とか社会の人材養成、これを早く進めるべきである、そういう視点で諮問をし、しかも大学院の飛躍的充実と改革というものは既に出されておるわけでありますから、したがって私はこれが出ない間にやるのは見切り発車だというのは、これはむしろ、そういう方向にあるのをいち早く、できるだけ早くやっていくということが私はこれの精神に即することだと思いますので、これは褒められこそすれ、しかられることではない、私はそのように感じております。
  190. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 冗談言いなさんな。この文教委員会の席上ですよ。そんなふざけたような、褒められこそすれしかられるようなことじゃないというふうな、そんなようなことを文部大臣の口から言いなさんなよ。  それで、この大学院大学の問題でまだ言わなくちゃならぬことはありますけれども、それは次に回しまして、次に十七日の午前中、参考人、主として大学新テスト問題で意見聴取をすることにもなっておりますので、それに先立って文部省に少し、あと残りの時間、聞いておきたいと思うんです。  そこで、この新テスト、これは国大協、公大協、私大連盟または全国高校校長会、こういう関係団体の合意はできているんですか。
  191. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ちょっと御質問の趣旨をあるいは取り違えておるかもしれませんけれども、入試改革協議会というものをつくって、そこで御検討、御協議をいただき、そこで結論が出たわけでございますので、そこへ御出席になっておられた国立大学協会、公立大学協会、私立大学連盟あるいは私立大学協会、それから高等学校長協会、それから私立の中高連というような代表の方々にお集まりいただいて、御議論をいただいてこの方向が出たということでございますので、基本的な方向については団体の代表の方々は御理解、御了解をいただいている、こういうふうに思っております。
  192. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 しかし、今言われた大学入試改革協議会というのは文部大臣の私的諮問機関でありますから、文部大臣が、言うならお手盛りの、気に入った人を集めたという、こういうお手盛りの協議会だというふうに言われてもしようがないような実態だと思うんですよ。問題は、この国大協とか公大協とか私大連盟または私大協会、高校校長会、これらのそれぞれの単位の団体が総会などで、大体今文部省の言っておるこういう方向でよろしいというような、そういう意見まとめをやったということにはなってないと思うんですよ。  そこで聞きますけれども、入試改革協議会がこの間、二月の十五日、報告を出しましたね。これに対して国大協の中に設置された入試改善特別委員会、これが四月の二十六日、前の第一次見解をさらに各大学にアンケートなんかもとって詳細に意見まとめをした第二次見解というものを発表した。これは新聞報道などでも相当批判意見が多数を占めているというふうに報道をされているというんですけれども、これは文部省としても今後新テストのあり方、いかにあるべきかということを判断していく上で、共通一次に中心になってきたのが国立大学でしたから、この国大協の意見というのは十分傾聴をしてしかるべきものだと思うんですね。そういった点で、また国会としても本法案を審議するに当たって、ぜひよくその内容を見ていく必要があるということで、この内容は、今言いました国大協の四月二十六日の第二次見解、これはどういう特徴になっているかということについて、文部省としてはどんなふうに把握していますか。
  193. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 国立大学協会におきましては新しいテストの検討はこの協会の入試改善特別委員会という組織の中で行われておるわけでございまして、既に昭和六十一年の六月の定例総会におきまして、新しいテストは共通一次学力試験の改善の延長として受けとめて、これまでの成果を踏まえて検討するというような委員会の見解が了承されておるわけでございまして、その後、さらに詳細な点について検討するということで現在検討中というふうに伺っておるわけでございます。  御指摘の中間報告あるいはアンケート結果云々ということにつきましては、新聞報道等で見ましたので国大協側に問い合わせましたところ、現在検討の途上の段階のものであってこういうことが決まったというような格好で外部に公表したこともないということのようでございますので、国大協のこの委員会として固まり、国大協の組織として、ある考え方が固まった段階で文部省に説明をする、こういうことでございます。現在内部で検討中という段階であるというふうに聞いております。
  194. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 確かに六月に年次総会を開いて国大協として最終まとめをするということになっているんですけれども、しかし一方、今法案を審議しているもうこの局面でしょう。この局面であればこそ両方に責任があると、無責任だと思うんですよ。国大協は国大協で進んでその内容を文部省にも届けるし、我々国会議員、文教委員に対しても配付をして、国大協の多くの意見はこういうところですという、そういう努力がやられてしかるべきだ。文部省は文部省で、国大協の方が公表する意思がないと言っていますので、はあさようかと。そんな、はあさようかというようなそんな態度じゃないですよ。本当にどういう意見が出ましたかということをよく内容を聞いて、これもちゃんと出ているんですよ、文書が、この第二次見解ということで。それをちゃんと文部省として入手をして、それで文教委員会審議に役立てる。どっちも私は文部省も無責任、国大協も無責任というふうに言わざるを得ませんね。  ぜひ、次回、国大協の方は参考人で副会長が来ますから私聞きますよ。それで問題は文部省。文部省としてぜひ第二次見解書、それを取り寄せて当委員会に参考資料として提出をしてもらいたい。
  195. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 国大協という自主的な団体が現在検討されておって、その中で検討の途中であるということで、現段階で固まったという状況にないということで、資料等の提供をできないと言われておるわけでございますから、それを文部省が無理やりに取り上げるというようなことはできないと思っておりますので、ひとつ御理解をいだたきたいと思います。
  196. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私今言いましたように、今回のこの国立学校設置法改正案、この内容と非常に深いかかわりを持つものですから、そんな形式論だけで向こうが出したくないと言っているからどうこうという、そういうことで済まされる問題じゃないと思うんですよ。  ならば少し変えて聞きますけれども、私立大学の参加を求めていくんだと言うんですね。今どこか一つの私立大学でも参加を決めた大学はありますか。名前言ってください。
  197. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 七月に各大学の態度を表明していただくということで予定をし、各大学にも御連絡を申し上げておりますので、どこか個別に決まったかどうかというような情報と申しますか、御報告はいただいておるところはございません。各大学でも恐らく現在最終的な検討をしている段階であろうと思います。
  198. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 これも無責任論法ですよ。七月まで法案はペンディングしていこうというんだったら話は別。しかし、法案は今国会で通してしまおうというのが文部省の腹でしょう。それで私立大学が一体どれだけ参加してくるのか、そのめどがつくのは七月だ。そんなばかな話がありますか、そういう物事の進め方が。  高等学校長協会は、この二月十五日文部省の高等教育局長あてに大学入試改革についての要望、特に十二月のテスト実施問題、これについてはどういう意見が来ていますか。
  199. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 高等学校長協会でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように高等学校長協会の代表者が大学入試改革協議会の中のメンバーの一人として、あるいは一人ではなく二人でございますか、入って議論に一緒に参加して決めたことでございますが、その後この二月に協会から御要望と申しますか、要望書が出ております。これは十二月下旬の実施については国立大学及び多数の私立大学の参加ということを前提に考えたいという趣旨で、これは毎回おっしゃっておったことでございますけれども、そういうことでたくさん参加をするように努力をしてほしいという意味であろうと理解しております。
  200. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 国公立大学はもちろん、多数の私立大学の参加を前提であることを踏まえて十二月実施という、高校教育にはいい影響出てこぬけれども、やむを得ないと。その多数の私立大学の参加ということを前提にしてというこの前提が、いまだにどこか私立大学一つでも参加を決めたところがあるかと言えばないわけでしょう。七月にならぬとそのめど立たぬというわけでしょう。そして、さっきの国大協の問題でも文部省は文部省の都合のいいところだけつまみ食いしていますけれども、重大なことを言っているじゃないですか。この共通一次の改善として、高等学校の一般的、基礎的な学習到達度を評価し、高等学校教育の正常化に寄与するという、この共通一次の目的、理念が継承、発展されていないと、この入試改革協議会のまとめは。また、新テストの実施時期十二月下旬は高校教育に悪影響を与えるとの意見が多数であったというふうに特別委員会のまとめはなっているんですよ。  こういう点からいって、本当に見切り発車をやるというやり方はもう日本の未来にとって大変重大なことだと思います。軽率な見切り発車をしてはならないということを強く要望をするものですけれども、もう一つこれは参議院の関係でいけば、昭和五十二年の四月二十一日、文教委員会附帯決議第六項で「この入試制度の改善措置に」、「この」というのは共通一次ですね、あの時期。「この入試制度の改善措置については、その実施結果を踏まえた見直しのため、適当な時期に国会に報告する」、こういう決議を全会一致でやっておられるわけですけれども、文部省として国会に正式に報告したことありますか。
  201. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 共通一次につきましては、実施の途中の段階と申しますか、ある程度時期を経た段階で御承知のように臨時教育審議会審議が始まったという状況があるわけでございますので、私どもそういったことも踏まえまして、その後入試改革協議会の御検討の状況等につきましてはできるだけ先生方のところへこれは資料としてお配りをするというようなことで、その後の何と申しますか、事態の動きについては御報告を申し上げたつもりでございますし、またしばしば国会でもこの委員会の席でも御質問をいただきましてお答えを申し上げてきたということで、その御趣旨にはこたえてきたつもりでございます。
  202. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 臨教審報告をお届けをしていますと、そんなようなことで逃げ込める問題じゃないですよ。あの附帯決議には政府並びに関係機関はと、政府はという主語が入っているんですから、そんな答弁ではもうだめです。  加えて、衆議院の五十二年の十一月十五日、入試問題に関する小委員会、その小委員会決議第一項で、試験日は「第三学年のなるべく遅い時期」、この「法に定めた高校教育の全課程が終了した時点で、その到達度を判定する」のが原則だと。要するに、十二月にやるなんというのはもう暴論だという何回も会を重ねた衆議院の小委員会の決議になっている。この決議にも違反をする暴挙ですよ。私はもう断じてこの法案は、衆議院であんなむちゃくちゃな送り方やってきたからあれですけれども、参議院では本当に慎重に審議を尽くさなければいかぬ。できたら文部省に撤回をするよう求めるんですけれども、ひとつよく文部大臣考えてもらいたいということを最後に言って終わります。
  203. 勝木健司

    ○勝木健司君 今回の国立学校設置法の一部改正案で新設されることになります総合研究大学院大学の設置についてでありますけれども現行大学院社会実態に合ったものと考えておられるのか、また大学院存在意義というものはどこにあるのかということでまずお伺いをいたしたいというふうに思います。
  204. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 大学院、これは高等教育の一環でございますけれども、これは再三申しておりますように、高等教育を通じまして一つにはよき研究者を育てる、また社会に出ていくために高度な職業人を育てる、そういう意味でその充実が急がれておるところでございます。特に社会も国際化、多様化しておりますし、また研究分野も年々広まっておるわけでありますから、既設の大学院大学、この意義も十分認識をしておりますし、それを含めて内容の充実、活性化を図っていくという途次にございます。  しかし、既設の大学院大学ではそれぞれの研究分野がございますが、それでカバーできない新たな研究分野もあるわけであります。その研究分野を各大学院でということが物理的にできればまた別でありますけれども、大きな施設を必要とする研究、こういうものはやはり国立大学の共同利用研究機関、これを活用することによって新たな大学院大学というものをつくりまして、先ほど申した優秀なる研究員、研究者あるいは高度な職業人を育てることに一層資してまいる、それがこの目的である、このように申し上げるわけであります。
  205. 勝木健司

    ○勝木健司君 現行大学院という大事な国家的な資源というものが必ずしも今現在有効に活用されているとは言いがたいような状況も、オーバードクターとかいろいろな問題であるんじゃないかというふうに思います。また、学問分野によって高度の研究者養成が必ずしも十分行われていない分野なり、あるいは学際的な領域など新しい学問的要素というものが存在する分野等多くの課題を抱えておるように思います。そういった中での新しい独立大学院を設置しようとされておられるわけでありますけれども、当然のことながら現在ある大学院制度の改革というものを検討された上で、その一環として新設されるものであるというふうに考えるわけであります。大学院並びに大学院教育の充実について、文部省として文部大臣としてどのような基本的な考え方あるいは構想をお持ちなのか、お伺いしたいというふうに思います。
  206. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 言葉が足らなかったかもしれませんが、既存の大学院大学、それからここに新たに独立大学院大学、これは相補い合うものでございまして、片一方に重点が移れば片一方が重点薄れるというものでは全くございませんで、したがって、今申し上げましたように既存の大学院大学もその充実、活性化にますますこれを努力していかなければならない。これは申し上げるまでもないことでございますが、さらに先ほど申したように、この両方は相補って研究の拡充に資するもの、このように考えております。
  207. 勝木健司

    ○勝木健司君 現在あります大学院研究し、修士課程とかあるいは博士課程を卒業してもなかなか職につけないという、いわゆるオーバードクターの存在というものは無視できないんじゃないかというふうに思います。言ってみれば優秀なる人材を活用し切れていないというのが現実であるというふうに思われるわけでありますけれども、そういった意味でこの新設大学院大学で養成された人たちの活用というものはどのようにしようとされておるのか。経済的処遇とかあるいは社会的な処遇をも含めて御説明をいただきたいというふうに思います。
  208. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 御指摘にございましたように、現在の大学院はいろいろな問題を抱えておるわけでございまして、高度な学術研究、基礎研究を推進するという意味で十分に活躍をしているかどうかといったような質的な問題もございます。あるいは社会が要請しているいろいろな人材の養成というものを社会のニーズに合うような形でつくり上げて、社会に提供しているというような役割も十分果たしているかということになりますと、やはりいろいろ問題があるように思うわけでございまして、先生がただいまおっしゃいましたオーバードクターの問題というのもやはりいろいろ深い根があるように思っておるわけでございます。  オーバードクターというのをちょっと御説明をさせていただきますと、現在全国で全部で千七百人ぐらいいると、こう言われております。この数は毎年最近は少しずつ減ってきているように承知をいたしておりますけれども、こういう方々研究者の道を歩みたいということで、いわば待機の状態にあるというケースが非常に多いと思うわけでございますが、そういった方々が、研究機関の数というのはもちろんそう無限にふやせるものではございませんので、民間へも出ていっていただくというようなことも大事なことだと思いますが、そういった意味での教育指導というようなものも現在の大学院、ドクターコースでそういった進路も考えての指導というのが行われているかということになりますと、その辺にもオーバードクター問題は基礎的な、基盤になる問題があるように思うわけでございます。これらの点につきましては、ただ若干減少しつつあるわけでございますし、それからまたこの中での入れかえと申しますか、同じ方がずっと、千七百人がずっといるというわけじゃなくて、その中から新しく一年後二年後にはどこかに就職していかれる。また新しく大学院出た人がオーバードクターでたまるというような形でかなりの入れかえは行われているようでございますけれども、そういうような状況も出てきましたので、逐次改善されることを期待をしておるわけでございます。  そこで、今回の大学院大学の場合の終了者の進路につきましては、もちろんこの定員そのものも一専攻当たり三ないし五名、全体で四十八名という非常に限られた規模で構想しておるのでございますけれども、これはその大学の教官の指導の、何と申しますか、いわばロード、キャパシティーの問題というような観点と、もう一つは将来の就職の問題ということをあわせて考えましてこの程度の人数ということにしたわけでございまして、この方々の進路という点につきましては、これは各種の大学あるいは国公立研究機関、あるいはその当該共同利用研究所後継者になられる方も出てくると思いますし、そのほかにかなりの数の方は民間の研究所あるいは民間企業の研究所というようなところへも行かれるものということを想定しておるわけでございます。これは手ぶらで想像しているわけではございませんで、これまでこの共同利用機関研究委託ということで受託をしておりました学生たちの進路等から見て、この程度のところへ進んでいくことは可能であろうというような想定等もいたしておりますので、就職という面では私どもオーバードクター問題になってくるというふうな不安は持っておらないわけでございます。  また、これらの方々の、終了者の経済社会面での処遇の問題についての御質問があったわけでございますが、我が国の社会へ出ていくわけでございますので、公務員になる場合は公務員としてのルールがございますが、一般の社会に出られた場合にどうするということが、国としてどうこうできる問題ではございませんけれども大学院終了者に対する需要の高まりというようなことも民間ベースでかなり出てきているということもあるわけでございますので、そういった中での積み上げとして適切な処遇が行われていくということを期待をしておる次第でございます。
  209. 勝木健司

    ○勝木健司君 新設大学院大学教育研究研究科名を見てみますと、理工系というものが中心になっておるということで、文化系は文化科学のみとなっております。もちろん理工系の学問なり研究というものは基礎的にも文明の進歩という面から大事なことは当然のことでありますけれども、目前に控えた二十一世紀の社会を考えてみます場合に、今まで以上に文科系の学問なり研究というものも必要になってきておるんじゃないかというふうに思います。ハード以上にソフトの進歩というのが大事になってきておるように思われます。この点、文科系の比重というものが極端に小さいのは何ゆえか、将来文科系の研究科というものもさらにふやすつもりはあるのかどうか、お伺いをしたいというふうに思います。
  210. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 確かにおっしゃいますように、これからの我が国の将来というものを考えました場合に、科学技術といった面ばかりではなくて、先生のお言葉をおかりすれば、ソフトの面という意味での文科系の人材の養成ということも社会全体のバランスをとり、バランスのある成長を遂げるというためにも大事なことだというふうに私どもも思っておるわけでございまして、そういった意味で、これから人文社会系の分野についても大学院の整備充実を図っていくということは大事な課題になってくると思っているわけでございます。  ただ、現状から申しますと、理工系の分野につきましては研究者の道、大学の教官等にストレートにいくというようなルートのほかに、先ほどもちょっと触れましたけれども、民間企業等に出ていくというようなルートも現実にかなり出てまいっておるわけでございますけれども、人文社会系の方ではやはりそういった意味での研究者以外に、研究者と申しますか、純粋な意味での研究者以外に、一般の社会の主要なメンバーとして出ていくという慣習と申しますか、そういうことがなかなかでき上がってないというような点でございますとか、あるいはまたこれは学位の問題でございますけれども、理工系の大学院の場合にはある程度の能力のある方には学位規則の精神にのっとりまして学位が授与されるわけでございますけれども、人文社会系の場合には旧帝大のそういう大学院の担当で教えている教授ですらまだ学位を持っていないというような、学位がなかなか出にくいというような実態もあるわけでございますので、そういった面でのいろいろな隘路があるわけでございますが、これらの面につきましては現在大学審議会でも御議論をいただいておりまして、何とかスムーズに学位等も出ていくというようなことも考えなきゃいけないだろう、いろいろな面での御検討もいただいておりますので、そういう状況等も踏まえながら、今後とも人文社会系の分野の整備の問題ということは大事な問題だというふうに考え、対応に努めていきたいと思う次第でございます。  それからなお、総合研究大学院大学の中での文科系の問題につきましては、御指摘のございましたように文化科学研究科というのが、これは大阪にございます国立民族学博物館が一年おくれで参加をしてくるということを予定をいたしておりますので、これが一つできる予定になっております。そのほかにも、国立大学共同利用機関といたしましては国文学研究資料館、それから佐倉にございます国立歴史民俗博物館、それから京都に新しくつくりました国際日本文化研究センターといったようなものがあるわけでございます。これら今整備の途上でございますので、にわかに大学院大学に参画というのも難しいかと思いますけれども、こういったような機関も適切に整備が進み、また体制が整ってきて、その機関自体が希望してくれば参加をしてくるという道もあり得るわけでございますので、そういったことも十分念頭に置いてこれから考えていきたい、こういうふうに考えております。
  211. 勝木健司

    ○勝木健司君 教育の成果というものは、一年や二年先に出てくるようなものじゃないというふうに思います。十年先二十年先、あるいは次の世代に出てくるものであろうかというふうに思います。そうした意味からも、教育というものは短期的な面だけでとらえるのではなく、まことに長い目でもって将来を見詰め、長期的な計画のもとで実施されなければならないだろうというふうに思います。そういった意味で、焼け火ばし的なものであってはならないというふうに思います。当然、この新設大学についてはその観点から検討した上で今回の提案ということになったというふうに思いますが、そこでこの大学の将来設計というものを教えていただきたいというふうに思います。六十三年度予算では、先端科学技術大学院の準備調査等々も予定をされておりますので、将来の独立大学院はどうあるべきかということも含めて、ビジョン等々将来の設計について御説明いただきたいというふうに思います。
  212. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 総合研究大学院大学の将来構想でございますけれども、これにつきましては、国立大学共同利用機関のすぐれた教育研究機能を活用して、これを母体として新しいタイプの大学院大学をつくろうということでございまして、六十三年十月開学の予定でございますが、当初数物科学と生命科学という四つの共同利用機関母体としてこの二つの研究科を開設をいたします。そしてさらに、六十四年度には、先ほどもちょっと触れましたけれども、民族学博物館を母体とする文化科学の研究科をつくろうというような計画を当面持っているわけでございます。  また、この大学院大学自体の今後の、さらにその後の計画といたしましては、一つは各種のセンターということで国際性豊かな研究者の養成に資するというような意味を含めまして教育研究交流センターをつくる、あるいは教育研究資料センターをつくるというような二つのセンターの創設構想もあるわけでございます。さらに総合研究科というような言葉を使っておりますけれども、現在の国立大学共同利用機関、あるいは現在参加しているもの、あるいはまだ参加をしないで存在している共同利用機関でやっているような分野以外に、また新しいいろいろな学問的な要請等が出てきた場合には、そういうものにも柔軟に対応できるような研究科創設ということもあり得るのではないかというような問題も検討をされている次第でございます。  こういったタイプの大学院大学についてはこの総合研究大学院大学ということで対応していこうと考えているわけでございますが、それ以外に先生のお言葉にございましたけれども、さらに新しいタイプのものとして、いわゆるハイテク先端科学技術の分野大学院大学創設というようなことも現在鋭意検討している最中でございますので、具体的にはそういうものを今後の計画としては我々の頭の中に持っておるわけでございますが、そのほか民間の、民間のと申しますか、私学というような格好で大学院だけの大学をつくろうではないかというような御構想も、具体化はまだいたしておりませんけれども、ちらほらと耳にするケースもあるわけでございます。そういったものについては、その実態をよく見て、また認可できるものであるかどうかということは慎重に判断をしながらやってまいりたいと思う次第でございます。  ただ、つけ加えて申し上げておきたいのは、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、こういうものだけをつくれば日本大学院がよくなるというわけではなくて、やはり既存の一般の大学院も充実していかなければならないということでございまして、大学審議会があるいは臨教審が言っております大学院の飛躍的な充実と改革というのは、やっぱりこういう新しいものと同時に、一般の大学院をそうしていかなければその目標は達成できないものでございますので、あわせてそういったことも十分に対応するように努力したいと思っている次第でございます。
  213. 勝木健司

    ○勝木健司君 臨教審の第二次答申では、大学院を置かない大学とか、あるいは大学以外の高等教育機関における学習あるいは研究の成果を評価して、それらの修了者に学士号を含む学位を授与する道を開くための学位授与機関創設について検討するというふうに述べられております。現在、修士号、博士号等の学位授与は大学院に独占されておるように思います。しかし、今や民間企業や大学以外の研究機関でもすぐれた研究というものがどんどん生まれている中で、大学大学院にのみ学位授与の権限を与えるのは時代に合わないのではないかというふうに思われます。大学人以外も含む学位授与機関創設というものを考えておられるのかどうか、お伺いいたしたいというふうに思います。
  214. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 臨教審の答申で、確かに御指摘にございますような指摘がなされておるわけでございまして、今日高度の教育研究というのは大学がもちろん中心であり中核でございますけれども、それ以外にもいろいろな形での研究所におけるすぐれた研究でございますとか、あるいは高度の教育機関等も存在をするようになってきたわけでございまして、こういったものが別々のものとして一切間に壁ができているという存在であってはいけない。やっぱり相互にいろいろな意味での交流連携というものが必要だということがこういった臨教審答申の根本にもあるんだと、こういうふうに思っておるわけでございます。  そういったことを貫いていくという段階の中で御指摘のような学位授与機関というような構想も出てまいるわけでございますが、先生も御承知のように、学位というのは国際的に見ても大学が出すものということに相なっておりますので、そういったこととの調和をどういうふうに考えていくかというあたりのところから、学位授与機関というような学術に相当の重点を置いた機関をつくって、大学以外から出すとすればそこから出すというような方式にしてはどうかというのがこの臨教審提案の趣旨であろうかと思うわけでございますが、また、これはいろいろなやり方が具体のやり方としてはあり得ると思うわけでございますので、大学との関係というものを十分注意をしながら具体にどういう構想にしていくかということを検討したいと思っておるわけでございまして、この点につきましては大学審議会の大学院部会での検討の課題としても取り上げて話題に供しておるところでございまして、いずれその検討の方向等も見きわめながら対応を文部省としても検討したい、こう思っておる次第でございます。
  215. 勝木健司

    ○勝木健司君 同じくまた臨教審の第二次答申では、大学院社会への開放というものがうたわれております。大学院の昼夜開講制、夜間大学院創設、パートタイムスチューデントの受け入れ等が提言されておるように思います。一般社会人受け入れのためのこれらの施策について具体的にどう取り組んでいこうとされておるのか、どれか一つでもやるつもりはおありなのかどうかということ。また大学審議会でこれらの課題についても審議しておられるのかどうか、お伺いをいたしたいというふうに思います。
  216. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これからの生涯学習の時代を迎えてまいりますと、大学学部レベルへ社会人を受け入れていくということも大事なことでございますが、さらに大学卒業生がこれほど多くなっている社会でございますので、さらにはより高いレベルで、大学院で生涯学習として引き続き勉強したいという方々社会の中には随分多くなってくるだろうと思うわけでございまして、そういった方々を受け入れるという大学院あり方というのもこれから大事なことになってくると思っておる次第でございます。  私ども文部省といたしましては、これまで大学院設置基準の中で特別の規定を設けまして、夜間その他の特定の時期において教育を行うような大学院も設けることはできますという特例規定を設けたわけでございまして、現在昭和六十三年度までに国公私を合わせまして十一の大学院、十一の研究科でそういう体制を既にとっております。これは具体的には修士課程の教育方法の特例ということでございますが、修士課程は二年が原則でございますけれども最初の一年間は大学院に通って勉強するということでございまして、次の一年、二年生の段階になりましたらば今度は夜間その他の時期において教授のところへ通いまして研究面での指導を受ける、授業という格好での勉強ではなくて研究について個別指導を受けていくというような形で修士論文をまとめていく。そういう格好で、一年目はフルタイムで、二年目はいわばパートタイム的にやるというような形の大学院が先ほど申しましたような格好でできてきておるわけでございます。こういったことをさらに進めまして、大学院の昼夜開講制の問題でございますとか、純粋の夜間大学院の問題でございますとか、いろいろな課題がこれからあるわけでございまして、大学審議会の中に大学院部会を設けておりますが、その中での検討課題一つとしてこれらの点も取り上げて御研究をいただくということを予定している次第でございます。
  217. 勝木健司

    ○勝木健司君 先端技術分野での研究教育の振興を図るためには民間企業と大学院との協力体制づくりというものが必要じゃないかというふうに思われます。いわゆる産学協同についてどのような基本的な考え方をお持ちなのか、お聞かせいただきたいというふうに思います。
  218. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 近年、すぐれた民間研究機関もいろいろと出てまいっております。また同時に、科学技術の振興という観点から、やはり科学技術の最先端は学術の中心である大学の基礎研究に期待するところが大きいということも言われておるわけでございまして、実際産業界と民間等からも大学に対する学術研究に対しての多くの要請が寄せられているわけでございます。大学研究教育という本来の使命を踏まえながら、大学の主体性のもとに、今先生がおっしゃいましたような社会的な要請に適切に対応するということは、社会の要請にこたえるという面もございますし、同時にまた大学研究活動自体に大変な有益な刺激を与える、両面あるわけで、大変有意義なことと思っております。  そういうわけで、文部省では、従来からございます受託研究制度の充実に加えまして、昭和五十八年からは民間等との共同研究制度というものを設けたり、あるいはそういった共同研究を行う場としての共同研究センターというものを昨年から各大学に設置を始めたということで、これを推進いたしているところでございます。
  219. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、いわゆる新テストについてお伺いをしたいというふうに思います。  まず、今後の大学入試改革の内容及び進め方についてお伺いをいたしますが、今回の新テストは各大学の多様な活用に資するものとしておりますが、具体的にはどのような利活用の仕方を考えられておるのか、また今現在行っております共通一次とはどこがどう違うのかということも端的にあわせてお伺いしたいというふうに思います。
  220. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 最初に、二点御質問のうちの後半の部分から申し上げさせていただきたいと思いますけれども、これまでの共通一次試験というのは国立大学実施をいたしまして、全部の国立大学はこれに参画をする、そして公立大学もこれに全部協力と申しますか一緒にやっていく、私学についても、道は開いてございますけれども、これは一校だけが参加をしていくということで、国立大学がやっております試験国立大学の全部とそのほかに公立大学と私学の一部がこれを利用しているというような形のものであったわけでございますけれども、今回は、大学の入試の問題というのは国公私を通じて考えていかなければならない問題でございますので、そういう観点からの新しいテストの提言も国公私立を通じて、要するに国公私立の大学が共同してやる試験というような形で、実施の主体もそれから利用する側も要するに国公私立平等の立場で参画をするという性格のものにするということが一点。  それからもう一点は、実際の利活用のやり方につきまして、従来国立大学の共通一次試験の場合には五教科七科目、あるいは六十二年度から改善をいたしまして五教科五科目以下といたしましたけれども、いわばそういった形での七科目なり五科目なりというものを基本的にこれを各大学が、言葉は悪いかもしれませんけれども、画一的にと申しますか、これを利用するというものでございましたけれども、今回の新テストにつきましては、この利活用の方向につきまして利用するしないの自由まで含めまして具体にどういうふうに利用するか、活用するかという点は各大学の自主的な御判断にお任せする、自由に利活用をしていただくということにしている。この二点が主な違う点であろうと思うわけでございます。  そこで、その利活用の仕方としてどんなことが考えられるかという御質問についてでございますけれども、これはいろいろなやり方があり得ると思いますので、各大学がそれぞれ自分の大学にふさわしいやり方というのを工夫して考えていただきたいと思っておるわけでございますが、幾つか例を申しますと、一つは、総合的な利活用と申しますか、従来の国立大学共通一次のように五科目なり七科目なりといったようなものを総合的に受験をさせて、その成績によって例えば第一次の成績の判定をするというようなやり方があるわけでございます。そのほかに、今度は特定の教科あるいは特定の科目だけを利用する。数学なら数学だけをやるというやり方もございますし、あるいは理科の中でもって物理だけを見るというようなやり方もあろうかと思いますが、これはそれぞれの大学学部特殊性に基づきまして、この分野のところだけはこのテストの成績で見てみたいというようなことの場合に利用していただくというようなやり方であろうかと思います。  それからまた、面接、小論文というようなことを主体に選抜をしようというような大学の場合には、その前段階として全く資料なしに面接というのをやってもということもございますので、そういった、この新テストを受験させておいてその成績を眺めながら面接をするというようなやり方もあるわけでございます。あるいはいろいろ入学定員の全体についてやるのではなくて入学定員の一部についてこれを使うというやり方をしてみて、そして将来の入試改革のためにこういうタイプのやり方とこういうタイプのやり方ではこちらの方がいいからこれでいこうとかいうようなやり方もあり得るわけでございます。いろいろな格好のことが考えられると思っておるわけでございまして、これはまさに各大学が自分のところにふさわしいと思う方式を考えて適切に利用していただきたいと希望しておる次第でございます。
  221. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、新テストの実施時期についてでありますが、文部省は十二月実施を考えておられるようでありますが、四月二十六日に開かれました国大協入試改善特別委員会では、十二月実施については早過ぎて高校教育に支障が出るのではないかという、そういう懸念の意見が続出したようであります。しかも五十四年度に共通一次がスタートした際も、高校サイドからは大反対が起こったということで十二月実施を断念したということであります。文部省として、今回も同じ懸念する声をどのように受けとめておられるのかということでお伺いをいたしたいというふうに思います。  また同時に、新テストの導入時期を六十五年度大学入学者選抜からということでありますが、これも先ほど申し上げました先日の国大協入試改善特別委員会での意見としては、六十五年度実施までに国公私立合わせた統一実施母体が果たして確立できるのかどうかという問題点指摘されておるように思います。最近の大学入試については猫の目入試であるということで受験生や父母に無用な不安を与えているとされております。しかし考えてみますと、共通一次そのものは基本的には不変なまま行われてきており、むしろ国立大学の思惑によってこの入試日程というものをたびたびいじられてこういう形になったんじゃないかというふうに思います。余りにもそういった意味では大学エゴというものが出ておるわけで、無用な不安を与えないためにも、文部省として今後どのような働きかけをしていかれるのかということをお伺いしたいというふうに思います。  同時に、六十五年度から新テストを導入するにしても、その進め方については国立大学だけでなく、私大や高校教育の関係者の意見というものを十分に聴取していくべきだというふうに思います。大学入試改革協議会での審議大学入試センターでの調査研究に際しての高校関係者の意見というものをどのように反映されたのかということであわせてお伺いをいたしたいというふうに思います。
  222. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この新しいテストの実施につきましてはたびたび御説明も申し上げてまいりましたけれども、国公私立の大学関係者と公立私立の高等学校関係者にお集まりをいただいて、そこの協議の中からこういう形のものでやっていこうという結論をいただいたという経緯のものでございまして、当初の昭和六十年の臨教審答申が出ましてすぐにそういう形の協議の組織をつくりまして、関係者の方々で御議論をいただき、そして六十一年には既に現在のものとほとんど同じ基本的な考え方を整理して発表するというような形で関係の大学あるいは高等学校等にもその考え方をお示しし、さらにそれぞれの御意見等をいただきながら、また協議会で協議をするというようなことを重ねてまいりました。丸々三年ぐらいの間いろいろなフィードバック等を行いながら先般の二月に最終的な結論を取りまとめた、こういうような経緯になっておるわけでございます。したがいまして、その中にはもちろん国立大学方々ばかりではなくて、ほぼ同数の私学や公立方々あるいは高等学校の関係の方々等でやっていただいたものでございますから、三者、四者と申しますか、そういう方々の御意見が総合的に意見の一致した段階ということで今のような形のものになっているという経緯で御理解をいただきたいと思うわけでございます。  その中で実施の時期の問題でございますけれども、この点につきましては、もちろん高等学校教育が全部完全に終了した段階大学の入試が行われるというようなことが望ましいということはだれしも一致をするところであろうと思うわけでございますし、私どももできるだけそうしたいわけでございますけれども、ただ一方で、もちろん学年暦の関係等もございまして、四月には新しく大学へ入学する者が決まっていて大学教育が始まるという関係にございます。その間に国立、私立の大学の入学試験というのはいろいろな形で次々と行われていくというような物理的な条件が他方であるわけでございますので、そういった中でいつの時期がいいかということについてのいろいろ本当に熱心な御議論が行われたわけでございまして、その結果として十二月というような時点を選ばざるを得ない。しかしながら、それにしても高等学校教育への影響を最小限と申しますか、できるだけ少なくするために十二月ぎりぎり最後の時点ぐらいのところでいこうというようなことで一般的に合意が成立をしたというような状況にあるわけでございます。  国立大学協会のアンケート結果というのは、十二月実施の問題について多数の大学から反対の意見が出たやのように新聞で報道されました。私どももこの点については国立大学協会にこういうことがあったのかということを問い合わせをしたわけでございますけれども、要すれば、いずれまとめた御意見として国大協の意見が固まって出てくると思いますけれども、この新聞報道に関しましては、十二月実施について反対が多いという報道についてでございますけれども、これは実施時期について、したがってずらせとかなんとかということでは必ずしもなくて、高等学校側と十分協議はしてあったんであろうかというような疑問のことであるとか、あるいはもちろんできるだけさらに延ばした方がいいけれども、検討の余地があるのかどうかといったような懸念を表明する、そういうたぐいのものが全体のうちの一部にあったということだそうでございまして、したがって、そういう反対である、日にちを変えろという意見が多数を占めたというようなことではないということを聞いておるわけでございます。  いずれにいたしましても、これからもさらに実施までの段階におきましては、基本的な線というのは大体これで決まったということにいたしませんと、具体に参加するしないということ自体がはっきりしなくなってまいりますので、基本路線は決めて進むようにしておりますけれども、微調整というようなことはもちろんいろいろな実施段階についてはあり得ないことではないと思いますけれども、そういう点につきましては、今後とも国公私立の大学の関係者あるいは高等学校の御意見も十分伺いながら具体実施についての準備をさらに進めていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  223. 勝木健司

    ○勝木健司君 もう時間も来ましたので、最後に。  いずれにしてもこの制度というものは、やはりつくる側の論理だけではだめじゃないかなというふうに思います。あくまで適用される側、つまり受験生とかあるいは国民、高校側とか、そういう受験する者の立場に立ってどうかということが最も大事なことじゃないかなというふうに思います。  最後になりましたが、文部大臣に、大学入試についても入試そのものの方法論とか技術論というものも確かに大事なことでありますけれども大学そのものあり方というもの、また大学の役割というものが明確にされていなければならないなというふうに思います。我が国がこれから迎えようとしております二十一世紀の進むべき社会の方向にどう立ち向かっていくのか、そしてまた生涯学習ということが求められている中で、これからの大学が担う役割というものについて文部大臣の御見解をお伺いし、私の質問を終わりたいというふうに思います。
  224. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) まさにおっしゃいますように、二十一世紀に向けまして社会も多様化してまいります。国際化もしてまいります。そういう中で高等教育の置かれた立場というものは大変重要でありますし、国民の関心も高いものがあると思いますので、当初申し上げましたように、高等教育の活性化を含めましてその充実に努力をいたさなければならない。またおっしゃるように生涯学習の貴重な学習の場といたしまして、これが開放され広く活用されることにも努めていく必要があろうと思います。最後に、またそこで学ぶ方々の受験者の立場に立って考えるとおっしゃることは非常に重要でございまして、確かに私どもも受験者の立場でより自分たちの意欲を増して、そして高等教育に、そしてあくまでも自分たちがどのように意義ある社会人として全うできるか、自分の能力をフルに生かし、しかもその能力、個性あるいは創造性を十分に酌み取って伸ばしてくれるような受験体制であり、教育体制である、それを目指しまして、心に置きまして私どもも努力をいたしてまいるつもりでございます。
  225. 下村泰

    ○下村泰君 阿部局長にちょっと伺いたいんですけれども、午前中からずっと伺っていますと総合研究大学院大学ですか、これもう一回ちょっとくどいようですけれども説明願いたいんですけれども昭和六十四年度から学生が入るんですが、大体どういう学生が入れるんですか、もう一回聞かせてください。
  226. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 総合研究大学院大学でございますけれども、これは後期三年だけの博士課程とこう言っておりますが、要すればドクターコースのシニアの段階ということでございまして、これに入ってまいります学生たちは一般の大学大学院で修士の段階まで済んだ入たちが今度は博士号を取るための勉強をするために入ってくるということでございまして、分野といたしましてはこれがそれぞれ専門分野がいろいろ理学系あるいは生物学系のものもございますし、それから民族学博物館のように文化系のものもございますが、それぞれの分野について大体そういったたぐいの分野について他の大学大学院の修士課程で勉強してきた人たち、それが入ってきてより狭い専門を突っ込んで勉強をする、こういう性格のものになろうかと思います。
  227. 下村泰

    ○下村泰君 それで私は心配するんですが、例えば障害を持った方々でも大学へ進む方がいますがね。そういった方々に対して、その方が実に学術的にも優秀であり学問、学識としても優秀な頭脳を持っているけれども障害を持っている、その障害がまさに障害になるから入学はさせないなどということになりますか、将来。
  228. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) かなり高いレベルの研究者ということでございますので、そういうケースが具体に出てくるのかどうかということをちょっと私も予想できておりませんけれども、そういう非常に優秀な方が修士課程を卒業して出てきて、この大学院に入りたいというような事態が出てまいりましたらば、私どもも真剣にこの大学院と相談をして対応を考えたいと思います。
  229. 下村泰

    ○下村泰君 これはあり得ないことはないわけですね、将来。将来にわたってそういう門戸が開かれているならばいいんだけれども、今の段階からもう既にそれはあかんというような事態になったら何のための大学院だかわけわからぬということになりますね。これ、大臣、しかしずっと残してくださいね、この言葉、今の言葉を。そうしませんとそんな話は聞いておりませんなんと言われたら非常に困りますからね。  共通一次の、この大学入試のこういう入学者選抜実施要項というのが出ておりますけれども、「共通第一次学力試験実施上の配慮」の中に(2)として「身体に障害のある入学志願者については、障害の種類・程度に応じ、出題、解答の方法、試験場の整備等、特別な配慮を行うものとする。」、それからあと「注意事項」の中に   身体に障害のある入学志願者については、その能力・適性等に応じた学部等への進学の機会を広げる観点から、受験の機会を確保するよう配慮すること。   また、これらの者の試験に当たっては、障害の種類・程度に応じ、出題、解答の方法、試験場の整備等特別な措置をとることについて配慮すること。 とかもろもろ書いてございますが、こういった注意書もきちんとできておるくらいなんですからそれ相当の受験者がいたと思います。まず、ことしの共通一次の障害を持った受験生ですね。特に配慮を求めた学生の実態、障害別の数と障害別の配慮、どんな数になっておりますかお聞かせください。
  230. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 御指摘のように、国立大学の共通一次学力試験におきましては基本的にこういった対応をするということにいたしております。昭和六十三年度の共通第一次学力試験の受験者でございますけれども、身体に障害のある者で受験上特別の措置を講じて受験をしていただいた方々というのが視覚障害者で三十七名、聴覚障害者で五十五名、肢体不自由者などで百四十九名、合わせまして二百四十一名の方に特別の配慮をして受験をしていただいておるわけでございます。  なお、ちなみに昭和六十二年度、前年度の数字も参考までに申し上げようかと思いますけれども昭和六十二年度の同様の試験の場合には……、どうも失礼をいたしました。
  231. 下村泰

    ○下村泰君 それじゃ、今そのまま続けてください。二次の実態はどうなっていますか、それを今お尋ねしようと思っていました。
  232. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 昭和六十三年度のデータはまだ出ておりませんので、昭和六十二年度の二次の数字で申し上げますけれども、共通一次の試験を受けましてさらに二次試験で受験をした者が、これが視覚障害が二十三名、聴覚障害が六十四名、それから肢体不自由者等が七十四名で、合計百六十一名の方が二次試験を受けておるわけでございます。そして、合格をして入学をしたという方が視覚障害が六名、聴覚障害十名、肢体不自由の方が十六名で、合計三十二名の方が国立大学学生として入学をいたしております。
  233. 下村泰

    ○下村泰君 大学院の方は。
  234. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大学院については恐縮でございます、ちょっとデータを持っておりません。
  235. 下村泰

    ○下村泰君 とにかくこういったいわゆる試験を受ける学校学校によっては全然これ受け付けてくれない学校もありますわね。現在のところ国立が十九校です。公立が九校です。それから私立が六十、短大が十四、合計百人、大学では全体の一九%、短大に至っては二・五%、これしかないです。それから大学院は国公立、私立合わせて十七校、これが現状なんですね。ですからこれがもう少し門戸が開かれるようにいつも申し上げておるんですけれども、ぜひお願いしたい。これは要望です。  それから新テスト、これから行おうとすればどういうふうになりますか、これから。
  236. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私どもといたしましては、現在の共通一次についてもこういうことで障害者の方に配慮しながらやっていくという構えでまいりましたので、新テストの場合にも同様にそういうことを考えていきたいというふうに考えております。  なお、大学入試センターには六十三年度から特別試験研究部門というのを設けまして、こういう身体障害者の関係の方々等に対する試験のやり方等について研究をするための部門まで設けるようにいたしましたので、そこでさらにいろいろな新しい方法が発見され、発明といいますか、開発されてお役に立つようになるということを期待をしておるわけでございます。
  237. 下村泰

    ○下村泰君 それは障害者の方たちにとって本当に心温まる方向に向いていけばようござんすけれども、逆の方向に向かわぬように気をつけてください、何のための研究だかわけわからなくなる。  さて、国立病院とか療養所の統廃合、こういうふうになりますと、そこに併設されている養護学校があります。殊に院内学級というのがあるわけですね。この院内学級についてお伺いしたいと思います。どういうふうになりますか、これ。
  238. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先生指摘のとおり、国立療養所等には院内学級として特殊学級が置かれておるという実情がございます。  現在施設内学級につきましての全体の数でございますが、私どもの統計上の把握といたしまして、学校も含めますと小中学校合計で五百七十三学級、それから生徒数、児童生徒数にいたしまして二千五百四十四名というのが病弱、身体虚弱者の特殊学級でございますが、先生指摘の院内学級は約半数でございます。ただ、この問題といたしましては都道府県によりまして院内学級のあるところないところが非常にばらつきがあるという点がございます。私どもはこの点につきましては全国的な問題でございますので、できるだけ病弱、身体虚弱の子供たちの教育を充実するためにはこういう施設についても院内学級を設けるべきだ、これが都道府県ごとのばらつきがあっては好ましくない、こういう立場指導をし、これからも都道府県にその設置について努力してもらいたい、こういうふうな考え方を持っておる次第でございます。
  239. 下村泰

    ○下村泰君 私の手元に、これは文部省の初等中等教育局特殊教育課、去年、八七年ですね。資料もありますけれども、これを見て驚くんですけれども、県によってはまるでないんですね。しかも、この県がどうしてないのかなというような県が意外と多いんですよ。例えば茨城、栃木、群馬、これ病弱身体虚弱のところですね。学級数というところなんですけれども、そこを見ますと、群馬、それから富山、福井、山梨、静岡、三重、京都、京都なんか全然ないです。それから鳥取、島根、岡山、この鳥取、島根の少ないのはうなずけますが、香川、愛媛、佐賀、長崎、宮崎、沖縄、こういうふうにあります。これは病弱身体虚弱という項目のところが院内学級がないわけなんですけれども。そうかと思うと非常に多いところもあるんですよ。大阪なんか非常に多いんです。このばらつきというのはどこが原因なんですか。
  240. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先生指摘のとおり、私どもの把握では、四十七都道府県ございますが、そのうちで先生お挙げになりました県を含めて全体で十一県が置かれているという実情にございます。この点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、未設置の都道府県に対する指導ということで、先般五月十日に特殊教育の担当の指導主事を集めまして、この点につきましても実情等についての事情聴取をし、その設置方についても指導したところでございますが、やはり県によっていろいろな理由があるようでございますけれども一つはやはり病院からの要請と申しますか、そういうふうなものがなかなか出てこない、その要請がなければなかなか教育委員会としてもそこに特殊学級を置こうというふうな形がとりにくい、そういうふうな理由をおっしゃる県もあるわけでございます。しかし教育委員会としては病院との連携の問題としてよく協議をして、しかるべき数の子供さんがおられる場合には特殊学級の設置について両者の話し合いを進めるようにと、これがまた一つの筋でございますので、私どもは今後その方向での努力を県に促してまいりたい、こういうふうな考えでおる次第でございます。
  241. 下村泰

    ○下村泰君 入院中は療養、治療を優先するのはこれは当たり前のことなんですけれども、二週間、三週間と日がたちまして、急性期といいますか、病気が激しいとき、それが一応落ちつきますわね。そうなると、子供たちの不安というのは勉強のおくれに対するものが非常に大きくなるんだそうです。学年が上がるにつれてその不安が増大していくそうです。受験を控えていたりすると相当な不安になる。ただ、その御両親ですね。父母もこうした制度について理解している方が意外と少ないということも理由の一つなんですけれども、学習意欲があっても、こうした院内学級もなくて義務教育から放置されている子が多い。こうした放置されている子供の実態を果たして文部省でつかんでおられるかどうかということが問題になりますが、どうですか。
  242. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先生案内のとおり、六カ月以上やはり治療その他ケアが必要な子供たちは病弱の養護学校に就学をしていただくのが一つの児童生徒への配慮である、こういうふうな考え方がございまして、そういう重症の子供たちについては養護学校へ、そして病院内の特殊学級につきましては六カ月に満たないような治療の子供たち、こういうふうな考え方一つの私どもの路線でございます。  したがいまして、養護学校に就学しない、病院で治療を受けて六カ月未満で退院できる子供たちへのケアの問題として必要な特殊学級の設置ということが必要になるわけでございまして、この点につきましては一、二カ月で退院するという子供たちのためだけに特殊学級を置くというのはなかなか難しいんでございます。これは御理解いただけると思うわけでございますが、しかしそのような短期間の子供たちが恒常的に年間を通じて何人もいる、こういう場合にはやはり特殊学級を置いてもらいたい、こういう気持ちも私どもあるものでございますから、そういう点で実情がいろいろではございますが、先生指摘のように、放置されて教育を受ける機会がないような子供たち、こういう子供たちが出ないように養護学校以外のこのような施設内の特殊学級についても設置の促進を図ってまいるように努力をいたしてまいりたい、こんな考えでおる次第でございます。
  243. 下村泰

    ○下村泰君 実は局長、これは局長も御存じだと思う。名古屋で積極的に院内学級に取り組んでいるある病院の副院長という方がおるんですよ。この方がこういうこと言っているんです。「治療をしつつ学ぶ子供たちは、学習の機会のない子供と比べ、目標のある張りのある生活を送り、病気の克服にも好影響を及ぼしている。治療と学習は無関係ではなく、双方相まって子供の心身の成長に役立っている」、こうおっしゃっているんです、この副院長は。ですからこういう問題を私は取り上げたんですけれども。  それから山形のある例を申し上げますと、腎臓病で長期入院しておったんですね。三学期に担任の先生に留年を勧められた。出てもむだじゃというようなもの。ところが、院内学級で学んだのですね。それで試験をした、ところが進級できる成績だったので留年せずに済んだ。こういう例もあります。  ですから、六カ月未満の大半の子供は見放されたままになっている。だから六カ月以上でなきゃいけないとかなんとかというのでなくて、私が先ほど言った、二、三週間である程度症状が落ちついたら、その辺からもしできればやってほしい。つまり、今申し上げましたように規約によって見放されるわけですから、何にもされないままほったらかして入院生活を送っていることになる。これは何にもならぬでしょう。ですから、実態調査をして、こうした子供たちが正当に義務教育を受けられるように何とか整備すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  244. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先生の御指摘の愛知県は三十一学級がございます。それから山形も十六ありまして、この両県はなかなか熱心な県かと思われますし、御指摘のとおり、やはり治療だけではなくて学業という点で励みと申しますか生きがいと申しますか、そういう点を子供たちに与えるということはメンタルな面で身体的な面への治療効果も非常に大きい、これは先生指摘のとおりだと思います。そういう意味で私どもも、六カ月という一つの期間は養護学校の方の期間の問題でございますから、特殊学級につきましてどのような期間でこれを病院との連携で置くかについては、それぞれの事情によりましてできるだけ努力をする、こういう方向で県との話を今後とも進めてまいることは先ほど申し上げたとおりでございますので、今先生指摘のような趣旨も踏まえてこれから私どもも努力してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  245. 下村泰

    ○下村泰君 大臣にちょっとお伺いしますが、大正時代に全盲の女子大生がいたなんという話は御存じでしょうか。別に御存じなくたっていいんですよ、御存じでなきゃ何だというわけじゃないんだ、これは話ですから。  おととしの六月に「光に向って咲け 斎藤百合の生涯」という本が出たわけです。一八九一年から一九四七年までの生涯の方なんですが、こういう本が出ました。これは斎藤百合という方が実は全盲で、大正時代に女子大へ入った方なんです。この方が二十八歳のときに東京女子大の創立を毎日読んでもらう新聞によって知ったわけですね。まあ友達か肉親の方が読んだか。こういう大学ができるよというので、入学願書を出した。そうしましたら、その面接のときに学長代理の女性に——これから出てくる言葉は差別用語が出てきますから、これは原文のままですからお許し願いたいと思いますけれども、学長代理の女性に「ここは勉学の意気にもえるお嬢さんたちの大学ですよ、結婚しためくらの女が、妊娠でもしてどんな勉強ができるというんですか」、こういうふうに言われたというんですね。ところが、どういうわけか、この女性は特別生として入学できたんです、この東京女子大へ。原因は何だかわからないんです。ただ、いろいろ考え合わせると、まず学長ですね。この学長が五千円礼の方なんです。新渡戸稲造さん。それから、この方はまた若いときに失明の危機の経験があるんだそうですね、新渡戸さんという方は。お若いときに危なく見えなくなるところだったらしい。それから理事、その学校の理事がライシャワー夫妻、元駐日大使の御両親です。こういう方々、殊にライシャワー夫妻は障害を持った娘さんがいらした。こういった方たちの配慮ではなかろうかと言われているんです。この人は在学中、五年半在学しまして三人のお子さんを生んだ。在学中に三人生んでいるそうです。それから七十年、確かに先ほど言われたように入試における配慮は改善されてきました。けれども、まだ受け入れは不十分なんです。けれども大正時代にもう既にこういう前例があるわけです。しかも、周りの方の理解によってはこういう進路が得られるわけです。今もうとにかく各大学の受け入れ態勢についての情報が全くといっていいほど障害の学生には届いていません。  昨年の四月、盲学生のための盲学生情報センターというのができたんですね。これは昨年の四月です。目の不自由な大学生に点字出版や情報サービスをする国内ただ一つ機関として事業を始めた。この方たち、なかなか自分たちの事務所が持てなくて今弱っていらっしゃるそうですけれども、高田馬場の近所に事務所を構えて、行く行くは法人を目指そうとしたんだそうですが、何か三千万か四千万で借りられるアパートが今もう八千万円だっていうんです、地価が高騰して。それで募金の目標額を改めて変えて、今また一生懸命やってらっしゃるというんですけれども、この情報センターができればこれから学校を目指そうという目の不自由な方々が情報が幾らでも得られるという、こういうニュースが出ているんですけれども、文部省はこの情報センターのお話を伺っていらっしゃいますか。それとこういうことに対する何か対応というのは考えていらっしゃいますか。
  246. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) まだ私ども寡聞にしてその点については詳細に承知しておりませんが、また別の機会に先生からいろいろお教えいただきたいと思います。
  247. 下村泰

    ○下村泰君 こういうことは私はこういう方たちにとっては非常に朗報だと思います。すぐに教えていただける、どこの大学がどうなってこうなってということがあるわけですけれども。  それからもう一つは、入試センターで十月から入試情報キャプテンシステム、これは始めるんですか。
  248. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 入試センターにおきまして現在そういう各大学に関する情報を受験生に提供するようなシステムを実施しようということで現在準備をしている最中でございます。
  249. 下村泰

    ○下村泰君 これは記事を見ますと物すごいですよ。「このところ大学受験は、大学の特性よりも偏差値が志願の決め手といわれる。この入試情報は、受験生や高校の進路指導担当者らに、それぞれの大学の特色を知らせて「入れる大学」より、「入りたい大学」選びに向きをかえてもらおうという試み。臨教審の答申や高校関係者らからの要請もあって文部省と共通一次試験大学入試センター実施すること」、たまにはいいこともやるんですね、これは。これを見ますと「各大学ごとの概要、入試方法、教育研究内容など約三十項目を大型コンピューターに記憶させ、約四十万枚の画像からパソコン操作で検策する。国公立大学教官約十一万人の氏名、研究テーマ一覧、就職状況」、すごいですね、ぱぱぱっと出るわけです。悪い先生も出るんでしょうねこれは、きっと。  それはそれといたしまして、こういうのが出ますと、今非常に障害者の大学進学希望者も多いわけです。そうしますと、養護学校の高等部とか、あるいはそういう身障者に対する高等学校の受け入れの方、こういうのも配慮していただけるんですか、どうなんですか。ただ、入試センターでこんなのやったってどうにもならないでしょう。
  250. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 入試センターのこのシステムの開発についてどういう項目を入れていくかというのは、現在検討し、準備をしているところでございますけれども先生の御指摘は今後こういったところでも特に障害者の受け入れ等についての情報等も提供できるようにという御趣旨かと思いますが、この点につきましては入試センターと十分相談をして具体化できるような努力をしてみたいと思います。
  251. 下村泰

    ○下村泰君 障害者の学んでいる方の学校にそういう端末があればこれは楽ですね。そしてどこかの学校へすぐ行ける。意外とそういう情報というのが少ないために迷っている方もいらっしゃると思うし、悩んでいる方もいらっしゃると思いますから、せっかくこういうものができるんですから、文部省も本当に鼻高々と威張れるようなことをやってください、余りたたかれることばかりやらないで。  さて、これ大臣にお伺いすればまた大臣の答えは同じように返ってくると思うんですけれども、まず大臣にお伺いしたいのは、一つ、障害児というのは不幸な子供だと思いますか。一般に不幸な子供と見られるのはなぜだと思いますか。
  252. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 障害にはそれぞれ種類、重度差がおありであろうと思います。したがって委員も予見されるように、私は委員の言葉を心に焼きつけておりますので、いろいろな障害おありでしょうけれども、その障害を持つ方々が不幸であるか不幸でないかは我々の責任にかかっておると思います。また委員おっしゃったように、障害があるから障害者ではない、障害があることによって普通の人と同じことができないという生活、同じような生活ができないから障害者と呼ばれるのであると。とするならば、障害があるためにできない隘路を一つ一つ環境その他周りからその隘路をつぶしていくというか、不幸な面を一つ一つ改善していくことによって不幸を少なくすることができるであろう、こう思います。これはなかなか至難なことでございますが、身近なところから一つ一つ気をつけていけば不幸は少なくとも減らしていくことができるであろう、このように感じます。
  253. 下村泰

    ○下村泰君 私なんか高等教育を受けた人間でもありませんし、余り高い角度から物を言える立場じゃございませんけれども、この子供たちは本当に金持ちになることも、権力を持って人を動かすことも、高い地位についたり名声を博すこともなく一生惨めな思いで過ごすんだろうと思われます。けれどもこの考えにも問題がありますね。これは裏返して言えば一般に金持ちになること、権力を持つこと、高い地位につくこと、名声を博すること、これが幸せだと暗黙のうちに信じているかどうか。でも、金と力と地位と名声を得ても不幸せな人が随分いると思いますよ。あるいはこの中にもいるかもわからない。障害児と一言に言っても、その障害のありさまは個々さまざまなんですから、彼らは周囲の無理解や偏見の中でも結果を問題にせず、そのことに打ち込めることがうれしくて一生懸命その仕事に打ち込める。こういう姿勢というのは我々本当に見ていてうらやましいぐらいの姿です。  例えば、私は藤沢の方へ行きましてある電機メーカーの工場に行ったんです。そこに目の不自由な方がいまして、そしてテレビの一つの部品でしたかね。右の手にコードを持ちまして、左の人さし指で穴を探すんです、その物品の器具の。そこへ右の手に持っていたコードの先端をすぱっとはめ込むんです。この仕事、単純な仕事です。ただこれだけの仕事なんです。これ全部目の見えない全盲の方がやっているわけです、それを。ところが、この全盲の方々のやっている仕事の能率の方が目の見える人よりはるかにいいんです、数が。そして早いんです。それだけの仕事なんですから。ところが、晴眼者の人たちにそれやらせるとずっとおっこっちゃうんです、能率が。何でかといったら、目が見えるから周りはきょろきょろ見るわ、いい女が走ればいい女だと見る、そうかと思うと隣の者とべらべらしゃべる。能率が上がらない。ところが、この目の不自由な方はそれしかない。ですから倍上げるんです、仕事を。こういうのもあります。  そうかと思いますと、大阪の岸和田というところに作業所があります。これは共同作業所です。そこへ行きますと、もう脳性麻痺とかあるいは知恵おくれのお子さんとか、そういうお子さんたちが、結婚式の引き出物のお弁当やなんかの上にビニールでできた松竹梅の飾りがありますが、それを穴ぼこに入れていくんですね。とめていくんです。その仕事をやっているんです。そうしますと、精神障害のお子さんであろうとあるいは知恵おくれのお子さんであろうと、それから脳性麻痺の子供さんは、手を持っていく意思があったって脳性麻痺ですから動かない。それでも懸命になっているわけですよ。そういう姿を見ていますと、五体満足な我々は実にいいかげんなものだなと、もっとも私自身がいいかげんですから。物すごく反省させられるんですね。  それで、この間も予算委員会で申し上げましたが、ボランティア刑、福祉刑ですね、こういうことを申し上げたんです。イギリスやオーストラリア、ニュージーランド。イギリスなんて国はよくこういうことを考える国なんですが、日本でも考えてもいいんじゃないかなと。この間申し上げましたら、法務当局は余り調べてないらしいんですね。ここにも資料がちょっとありますけれども、これ向こうでは社会奉仕命令というんですね、社会奉仕命令。「拘禁刑を科しうる犯罪で有罪が認定された一七歳以上の被告人に対して一年以内に四〇時間〜二四〇時間の範囲で特定された時間、無報酬の社会奉仕作業を裁判所が命ずるというものである。」、これは福祉刑というんです、ボランティア刑。私はこれ日本でやった方がいいなと思うんです。やってみたらどうかなとは思います。余りこの間時間がなかったものですから、総理初め文部大臣に御説明できませんでしたけれどもね。この今申し上げたような障害児の姿に心を打たれて、このいわゆる今申し上げた社会奉仕命令、ボランティア刑を受けた人たちが心打たれて改心して、そしてその方たちの語った数多くの物語、データがいっぱいあるわけなんですよ。  この子の生きざまというのは本当に生きている。もう例は幾らでもありますけれども、それほどにこの子たちの生きざまというのは底力があるわけですね。本当にそれしか考えて、それしか動かないんですから。そうすると、教育技術の面からのとらえ方ではなくて、この子らの人生を支えている教育の心が必要だと私は考えるんです。まさに教育の原点だとこれが思うんですよ、こういうことが。  大臣、いかがでしょうね。今言われている教育現場の中で欠けているものが見えてくるような思いがするんです。いじめとか何とかかんとかありますよ、いろいろと。それに対する先生の対応とか。そういうふうなお考え、ちょっと頭に浮いてきませんか。
  254. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) お話の中で、むしろ一つ事に熱意を持って取り組まれる、まさにやっぱり私ども打たれるんでありましょうし、それから先生だけでなく、その方々の熱意を見ますと、自分がまだできることの至らなさというものを知る機会が多いであろうと思うんですね。私どもはやっぱりそういう場をかりまして、みずからもまた学ぶという機会を持つことになる貴重な場であろうと、お話を伺ってそう思いました。
  255. 下村泰

    ○下村泰君 私、大臣にお願いしたい。それから各局長にもお願いしたいんです。いじめられる子供の中には障害を持った子供もおります。私、きょうこれ三回目なんですが、各学校で突っ張りの生徒とかいろいろありました。その中にも一番もう私は情けないのが、知恵おくれの子供たちを学校に登校さして統一教育してくださった。それは結構なんですね。ところが、その子供たちが肝心の卒業するときには全然写真にも写してもらえない、何にもしてくれない、受付もなかったということの事件が起きたのはもう局長あたり御存じでしょう。相模原の市立大沢中学校の問題ですね。  この問題をめぐって市の教育長と当時の校長ら関係者五人が減給、文書訓告という処分になっています。私はこんな処分なんかどうだっていいというんです。これが問題じゃないんですね。そうして、市議会でこの方たちが質問されて、「一貫して「組織上の連絡ミス」」と。何ですか、これは。「組織上の連絡ミス」って、そんなにややこしいんですか。あっち行ってこっち行って、こっちとこっちで。何百人も間に入るわけじゃないでしょう、日本の流通機構じゃないんだから。もう腹立つ、私はこれは。それで、この人たちがこういうことを言っている。市教育委員会の幹部は「忘れていたなんていったら、人権問題ですよ。そんなこといえますか」、それは表向きと裏向きとは違うでしょう。結局こんなことを言っているということは、市の教育委員の幹部がこういった問題に対して全然軽視しているわけですね、福祉問題、殊に障害者問題、障害児の教育問題に関して。そうでなけりゃ私はこんなばかなこと言えるはずがないと思いますよ。何のための市の教育委員会なんだ。ですから、私はこの間も予算委員会で言ったんです。こういう教育委員にもっと福祉問題を研究させなさい、勉強させなさいと。この人たちを教育する必要がある、本当に。頭にきている、これは。  そして、父母の一人がこういうことを言っていますよ。「今回の問題は、障害児の存在そのものに「学校」が目を向けていなかったということではないのか」、そして「障害児が健常児から受ける多くの教育的刺激。反対に、障害児とのふれあいを通じ健常児が心豊かに育ってほしい。そしてゆるやかでもいい、そのことで社会全体が少しずつ障害者を受け入れるようになってほしい、と思いました。しかし、今回のことで、こうした選択がよかったのかどうか自分自身、わからなくなりました」、そして、こうも言っております。「責任問題よりも、これからの障害児学級がどうなって行くのか、卒業しても今後を見守りたい」、これが母親とお父さんの気持ちですね。せっかく受け入れたこの学校が、こういう問題が起きたからというので、これから先やめないとも限らない。六十年四月からダウン症、自閉症などの精神薄弱児の受け入れを始めた。これは結構なんですね。ところが、結果がこれじゃ何にもならない。こういうことに関して文部省当局はどういうふうにお考えになり、今後どういうふうに対処なさいますか、お聞かせください。
  256. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 本件につきましては先生からたびたび御指摘のところでございますし、私どもは該当の神奈川県それから静岡県とも十分連絡をとり、かつ先般五月十日に行いました指導主事の会議でも、この事例についての扱い、今後の指導の方法等について打ち合わせをしたところでございます。  まず、神奈川のケースにつきましては、今父兄のお話を御紹介になりましたけれども、まさに障害児に対する理解と申しますか、配慮ということについての学校全体、教育委員会全体の姿勢の問題、これは確かに御父兄の指摘のとおりでございますし、この点については教育委員会学校も十分その点についての反省をしておるというふうに私ども県からも聞いておるところでございます。  それから、静岡のケースにつきましては、これはいろいろ扱いがあるわけでございますが、八幡中学、北星中学、積志中学と三校がございます。この卒業アルバムの件につきましては、やはり今後の扱いとしては、十分父兄と相談をしながら、卒業名簿でこのような事態が起きないようにしようというのが全体三校を通じての姿勢でございます。  二校につきまして、ことしのアルバムでは特殊学級としてまとめた名簿にしないで、交流をした一般学級の中にその子供たちをはめて、そして交流した学級の子供として卒業名簿に載せたと、こういう配慮をしているようでございます。これは確かに一つの扱いとしてはいいことだと思います。特殊学級として、十人か十二人の一つの特別のクラスとして載せるよりも、これは確かに配慮の行き届いたやり方ではないかと私は思います。  それはそれとしてやっておるようでございますが、八幡中学につきましてはまた別のあれがあったわけでございますけれども、これについても今後は父兄やいろいろ学校の方針を相談しながら扱いを十分考えていきたいというふうに言っておりますので、この問題を一つの事例として、全国の問題として、こういう事例が今後も起きないようにという配慮指導お願いしたところでございます。  この点につきましては、先生たびたび御心配をかけておりますが、十分今後も各学校において配慮してもらえるように私ども期待しておるということでございます。
  257. 下村泰

    ○下村泰君 大臣からも一言お答えをお願いしたい。それで終わりにします。
  258. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 具体には今政府委員から答弁をいたしましたことをよく気をつけてまいりたいと思っておりますし、また一つつけ加えさしていただければ、先ほどのお話の中から共同活動の場を持つことによって、その触れ合いからお互いに学び合うものがあるとすれば、共同活動の場についてもっと活用できる方法があるのではないかな、それを心に描きながら先ほどからお話を伺っていたんです。学級あるいは学校におきます取り扱いについては、教育者自身が心して一層取り組んでまいるように私ども指導してまいりたいと、こう思います。
  259. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございました。
  260. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 本日の質疑はこの程度といたします。     ─────────────
  261. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国立学校設置法の一部を改正する法律案の審査のため、来る十七日の委員会に、国立大学協会副会長田中郁三君、日本私立大学団体連合会会長石川忠雄君、大学入試センター所長有江幹男君、全国高等学校長協会会長代行中沢浩一君を参考人として出席を求め、その意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会