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参考人(小林大助君)
全国漁業共済組合連合会の副
会長をやっております小林大助でございます。
本日は、
漁業災害補償法の一部を改正する
法律案につきまして、意見を述べる機会を与えていただきまして感謝申し上げ、お礼を申し上げます。
平素から漁業共済事業につきましては非常な御指導をいただいておりますが、これも重ねてお礼申し上げます。
私は、漁業共済事業実施団体である漁済運の副
会長という
立場から、漁業共済事業の当面している課題等について簡単に御
説明申し上げ、その後改正
法案について所信を申し述べたい、こういうふうに思っております。
漁業災害補償制度は、御高承のとおり、
昭和三十九年に法律に基づく制度として発足を見たものであり、以来きょうまで二十四年を
経過いたしております。この間、
昭和四十二年の法律改正で
政府の保険事業が開始されたことにより、名実ともに災害補償制度となったわけであります。以来、時代の変遷に応じ、制度の仕組みがより漁業の実態に即応するように、また、普遍的拡大が図られるように、四十九年、五十七年と二度にわたる法律改正をしていただくとともに、政省令、告示等の改正を重ねてまいっており、恒久制度としての充実強化が図られてまいったわけでございます。
申すまでもなく、この制度は、漁業経営にとって宿命的とも言える自然的な制約に対し、その損失を救済し、再
生産の確保を目的として創設されたものであります。そうして、中小漁業者の相互救済の精神を基調としており、これに
政府が保険事業、また、漁業者の
負担する掛金に対する助成等の財政的な裏打ちをすることにより、農災制度に見合う制度として確立されているものでございます。
したがいまして、私
どもは、この制度の担い手はまず系統組織であり漁業者であるという
認識のもとに事業を進めてまいっております。漁業経営にとってはまことに厳しい近年の環境でございま
すが、この中にあって漁災制度が漁業経営の安定と漁業再
生産確保のために重要な役割を果たしてきていると確信しているわけでございます。
しかしながら、一方、加入の状況を見ますと、残念なことに依然として普遍化がいまだ不十分であるという問題があります。これが私
どもの最大の課題と
考えているところでございます。
共済・保険制度におきましては、全国的な普遍的加入がなされ、危険分散が図られることにより事業の健全化が確保されていくということが不可欠でございます。全国の漁業者がこぞって利用していくことが理想であります。私
どもも日夜加入推進には最大の努力をいたしているわけでありますが、任意加入の建前の中で思うように普遍化が図られていないという問題が残されているわけでございます。
このような状況を打開すべく、我々といたしましては総加入運動を展開し、あるいは加入普遍化に努めるために最大の努力を払っておりますが、加入が進まない原因を
考えてみますと、漁獲共済にあっては水揚げ金額の把握ができないというものもまだ相当ございます。これは漁協の共販体制の整備等にまつしか方法がないわけでございます。このほか、漁業者の
理解がなかなか得られない、すなわち、義務加入制度が導入されているわけでございますが、全体がなかなかまとまらないという実態、あるいは条件の面において漁業者の感覚といいますか期待といいますか、希望というものと十分マッチしないというような問題もございます。加えて近年は、掛金調達が非常に苦しいというような問題もありまして、思うように加入してくれないという実態にあるわけでございます。
しかしながら、一方では漁業者の漁業共済事業への期待は極めて大きく、また、事業基盤を安定化させ、長期的に収支の健全化を図っていくためにも、加入促進のための措置がぜひ必要と
考えております。このため、国初め地方公共団体も漁災制度に対しては各種援助をいたしてくださっており、この制度を漁業者が広く利用し、自然災害に備えるというようなことは、法の目指す政策目的にかなうものであると
考えております。この
観点から、私
どもは、今回の改正に当たって、加入の普遍化を最大の課題として要望してまいりました。改正
法案ではおおむねこの方向に沿って取り入れられているものと思います。
特に、今回の改正の一番大きな柱は、漁業協同組合が直接共済契約に関与する漁協一括契約という方式が導入されるということであり、これは加入を広げていく上で大きな前進になるものと期待いたしております。
現在、
我が国漁業の将来展望といいますか進むべき方向につきまして、各方面において真剣に討議されているわけでございますが、資源の維持管理を今後どう図っていくか、漁業者の営漁対策をどう進めていくか等が大きな課題と
考えており、このためには漁協自身が海の
生産面に関してもより積極的な役割を果たしていくべき時期にあると
考えております。これは、個々の漁業者が従来のように単に魚を競争してとるという方向からの転換を
意味するものではなかろうかと思うところでございます。このためには、漁協の指導力、統率力がますます必要になるものと
考えられますが、この場合の災害、不漁等に対する保全策としての漁済の役割は漁協自身にとってもますます重要な位置を占めることになるわけでございます。
今回改正を予定されております漁協契約方式は、漁業者の個人加入意向いかんが原則であることは申すまでもありませんが、まさに漁協の指導力に期待して事業展開を図ろうとするものであり、漁協みずからが資源管理等を進める上にも必要なものとして、傘下組合員漁業者のために漁済加入に取り組むということが明確にされたものと受けとめております。共済団体といたしましても、この漁協契約方式の導入は今後の本制度の総合的発展のために大きな力となるものと
考え、今回の法律改正の一番大きな柱と
評価し、また漁協が率先して取り組めるように、魅力ある仕組みとなるように希望いたしている次第でございます。
次に、特定養殖共済の本格実施に関する改正であります。
ノリ養殖業につきましては、制度発足時から物損方式の仕組みとして実施されてまいっているわけですが、その後のノリ養殖実態の変化に
対応する仕組みが必要ということから、
昭和四十九年以後今日まで、長期にわたって漁協の共販を基礎とする収穫金額方式を試験的に実施してまいっておるわけでございます。この試験実施は既に十四年を
経過しており、
前回五十七年法改正時における国会
審議におきましても、「すみやかに本格実施に移行するよう努めること。」という附帯決議を付せられているという
経緯がございます。
今回の改正案におきましては、試験実施の方式が養殖実態及び漁業者の共済需要にも適合していることから、この仕組みを改正し本格実施とするというものであり、私
どもの要望が相当
程度取り入れられた
内容となっております。
仕組みの改正としての大きな点は、個別加入、個別てん補を基本とすることであり、また漁協契約方式をも採用していることであります。さらに、義務加入、長期共済の導入を実施しようというものであります。私
どもも本格実施を強く要望してまいったものであり、この実現によってノリ養殖業の加入の普遍化が図られるものと期待している次第でございます。ただ、試験実施が長期にわたっており、また、従来からの物損方式である本則共済で加入してきている漁業者も多いことから、本格実施に伴って、この新制度への移行が円滑にいくための措置も必要と
考え、特段の措置を
政府にお願いしているところでございます。
さて、今回の法律改正案では五つの項目が盛り込まれているわけでございますが、この中には漁業者及び共済団体の
立場から見ますとやや厳しくなるという改正事項もございます。
このことは、近年の共済事故多発という事実の中で、この制度が恒久制度として確立していくためには、共済事業収支を長期的には均衡させていくことが必要であるという視点に立って改正がなされるものと受けとめており、サケ・マス大型定置漁業に対する基準漁獲数量方式の導入という問題であり、また
一つには再共済、保険段階における
責任分担の見直しの問題でございます。
すなわち、サケ・マス定置漁業の数量方式の導入は、金額的に事故に該当していても、漁獲数量が
一定量以上確保されている場合には
一定の方式で共済金を逓減するというものでございます。サケ・マス定置は、ふ化放流事業をもとに
我が国河川に回帰してくるシロザケを漁獲するという漁業であり、この点に着目しての数量方式の導入と聞き及んでおります。この漁業が五十八年から四年間連続して非常に大きな事故に該当したということで、今回の措置もやむを得ないものと受けとめてはおりますが、漁獲共済の基本は何といいましてもPQ方式でありますので、今回の措置はあくまで特例としてサケ・マス定置に限定されるべきものであるというふうに
理解しているところでございます。
また、
責任分担の見直しの問題につきましては、通常の事故発生の場合にあっては特に大きな問題はないと
考えておりますが、仮に集中的に大きな事故が発生しますと、
負担が現在よりも増加するということになります。今回の改正によって、私
どもといたしましても従来にも増して自主的な運営努力を強化いたさねばと前向きにとらえておりますが、現在でも相当の赤字を抱えている組合もございますので、共済団体の経営に支障の生じないよう、指導、援助を
政府にはお願いしたいものと
考えているところでございます。
なお、これからの沿岸漁業に占める養殖業のウエートはますます高くなるものと思われ、新しい養殖種類もふえてきております。このため、共済の追加需要も多くなってまいりますので、新規事業の実施につきましても希望をいたしているところでございます。
以上、多々申し述べましたが、漁業にとっても、また漁済事業にとっても非常に難しい時期での制
度改正でございます。したがいまして、改正案の
中身は私
どもから見ますと
改善される面と厳しくなる面とがあるわけですが、これらは相互に切り離せない一体となっての法律改正案と受けとめ、全体を総合的に見て改正
法案を
評価し、前向きにとらえていこうと現実的判断をいたし、賛成しておる次第でございます。
大変面倒な陳述を展開いたしましたが、私
ども共済団体の
立場も十分御
理解いただき、この法律改正案の御
審議を促進されますようお願いいたして、私の意見陳述とさせていただきます。
どうもありがとうございました。