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山田耕三郎君
我が国の農林
水産業を取り巻きます最近の経済情勢はますます厳しく、諸外国からの、わけても
米国からの市場開放の要求は殊のほかに厳しく、よほど冷静に対応しないと方向を誤りかねない
状況にあります上に、
国内における構造
政策の推進も諸般の障害に阻まれ停滞を余儀なくされておりますのが現状だと思っております。このことは今日の
農政の難しさがそうさせておるのだと思います。そのことが原因となってか、歴代の農林水産大臣の所信表明を見てみましても、その表現や配列には変わりがあっても、本質的には
変化がないように見受けられます。
例えば、農地の規模拡大を目指される
政策をとってみましても、
政策そのものは
理解ができても、規模拡大への具体的プロセスも拡大への実現にはつながらない、こういった
状況にあり、特定の篤農家の
努力に任されておりますと言っても過言ではないようであります。今回の所信表明においても、
生産性の高い担い手への農地の集積や作業の委託の促進を通じて規模の拡大を地域の実情に即して進めるとは言っておられますけれ
ども、そのまた後段では経営規模の拡大の停滞、
生産性の向上の立ちおくれ、農産物需給の不均衡などの諸問題に直面をしていると嘆いておられますのがいつに変わらない現状であります。
以上の前提に立って、私は次の三点についてお尋ねをいたします。
まず第一点は、農業経営改善のための農用地の効率的利用促進に関する措置についてでありますが、
法案の提案を見なかったので論議の的を外れるかもしれませんが、この点についてお尋ねをいたします。
比較的経営規模の大きい農家を
調査してみました。経営農地のエリアは十ヘクタール程度の経営農家で、直径二十キロメートルから二十五キロメートルくらいでありますが、経営者に尋ねますと、このエリアはさらに拡大をしていかないと農地の取得は困難であります、こういうことでありました。もし当局において経営規模の拡大を市町村単位を限度として考えておられたり、ましてや部落単位で考えておいでになりますとすれば、それは角を矯めて牛を殺すことになるのではないかということの心配をいたしました。
ある
一つの部落を
調査いたしましたときに、その部落には二十五ヘクタールの農地を三十七戸で経営をしておいでになりました。たまたまその中の一農家は、広いエリアの中で散在した農地をまとめて十ヘクタール耕作をしておいでになります農家がありました。お尋ねをしますと、私の世帯だけで息子夫婦も農業をやっておりますから私の部落の二十五ヘクタールを経営することは可能でありますけれ
ども、たった
一つ不可能なことがあります。ただいまのところその二十五ヘクタールのかんがい用水として部落内に散在をするため池約一ヘクタールを五カ所所有をいたしております。三十七戸で維持管理に当たっておりますからできますけれ
ども、私が全部しなければならないとすればそれは不可能であります。さらにまた、その農地を私が全部耕作をするとすれば農家は私一軒になってしまいます。それで果たして地域の社会組織が保てるだろうか。さらにはまた、農協の組合員としては実質上一人になってしまうようになりかねませんが、農協の経営にも
影響を及ぼすのではないか、こういった問題を取り上げられました。
農林水産省で、効率的な利用促進についての
法案審議の中でお考えになられましたのは、こういう問題点についてはどのように考えられましたのか。また大規模経営農家をつくるとしても
日本の現実からいったら一カ所に集めて持つということは不可能なことであります。ある程度のエリアを考えてやっていかなければならない非効率性は残ると思います。そういった場合に、
日本的効率のよいせめてもの理想はどの程度の広さに散在をすればよろしいとお考えになっておいでになりますのか、その辺のところを承りたいと思います。