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説明員(
近長武治君) お尋ねは、今回
米価審議会の小
委員会の報告書にございます新しい
算定方式についてのお尋ねであるわけでございますが、まず新しい
算定方式の対象になる
農家をなぜ一・五ヘクタールとか五ヘクタールというふうに考えたかということについて簡単に前提としてお話ししたいと思います。
まず、これからの育成すべき中核的な
担い手というようなふうに
評価し得るのは個別経営で見たときにはどういうふうになるか。これは
稲作労働時間でございますとかあるいは
生産性、それから
農家経済の中におきます
稲作所得のウエートあるいは機械の経済的利用、こういう点から見ますと五ヘクタール以上層というのが出てくるわけでございます。現在のいろんな
稲作機械、新しいのが出てきておりますが、こういう機械を効率的に使っていくというふうになりますと技術的な点では五ヘクタール以上ということが
規模の面では大変重要な点になってくるわけです。しかし、現実の農村は欧米とは違いまして農場性
農業ではないわけです、日本の場合には。やはりいろんな形で、地域の中で農地が動いていったりしているわけでございます。
そうやって考えてまいりますと、
一つは、これから中核的な
担い手として大変強い
発展可能性を持っている
農家の
規模ということも考えていかなきゃいけないわけです。いろんなデータを集約してまいりますと、そういうような
規模の下限としては全国レベルで見ますと一・五ヘクタールぐらいになっていくというような点が
一つあるわけです。
それからもう
一つは、日本の
稲作というのは個別経営だけではなくて
生産性の高い
生産組織あるいは集団の今後育成すべき
稲作農業についての中核的な
担い手である、こういうふうに考えられるわけでございます。したがいまして、この
米価審議会の
答申の中では、中核的な
担い手を対象とする
算定方式が妥当であるが、当面は
生産、販売実態から見て現在の
稲作の
担い手層、つまり一・五ヘクタール以上の個別経営
農家とそれから
生産組織集団をも対象として考えていったらどうだ、こういうような
考え方でございます。それが前提でございます。
そういうふうに考えてみますと、現在の米の中でそれぞれどのくらいのウエートを持っているのか。まず五ヘクタール以上層も含めました一・五ヘクタール以上層の個別経営
農家、これは販売
数量の中の大体四四%ぐらいを占めているわけでございます。したがって、個別
農家という点だけで見ますと一・五ヘクタール以上層の販売
数量の中に占めるウエートは大体四四%ぐらい、こういうふうに考えられるわけです。しかし、
生産性の高い
生産組織集団というのがどのくらいあるのか。いろんなデータを総合して、これはかなり推計が入りますが、大体
生産組織が抱えているそういう中から出てくるお米のウエートというのは、販売実績で見まして大体四分の一ぐらいになると考えられます。
それからもう
一つは、これははっきり
生産組織集団というふうに加入しているかどうかという点はございますが、一・五ヘクタール
未満の層の中で一・五ヘクタール以上層よりも高い
生産性を持っている
農家というのが約一割ぐらいございます。これは、例えば作業受委託だとかいろんな形で、
生産組織集団ではないけれども、いろんな形で実質は高い
生産性を持っている、こういうふうに考えられるわけです。したがいまして、仮に一・五ヘクタール以上層を中心にする
価格を
算定した場合には、以上のような経営あるいは
生産組織あるいは
生産集団から
生産される米というのが実際は
米価算定の中の対象になってくる。こういうふうになりますと、大体販売量の中の四分の三ぐらいになる。これは一部重複がございますのでまだラフな推計でございますが、そのくらいの実態に考えられる、こういうようなことでございますので、先ほど
数量的な点については違う見方があるということを申し上げておきたいと思います。
それから、後段で御指摘になった
食糧管理法の条文との
関係でございます。
食糧管理法の第三条二項に、
生産者米価は「
生産費及物価其ノ他ノ
経済事情ヲ参酌シ
米穀ノ再
生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、こういうふうになっているわけでございます。
米穀の
政府買い入れ価格の決定についての
基本的な
考え方をこの条文は示しているわけで、大変重要な条文でございます。
そこで、こういうような
考え方を
もとにして具体的な
算定、あるいは特に今回の場合には
対象農家の
とり方というところが重要でございます。今までの――今までといいますか、ことしも適用して
諮問米価を
算定いたしました場合には、
潜在需給ギャップということを考慮いたしまして、必要
生産比率で、
数量でやっております。今回の場合は七六%でございますが、その七六%というのは結局
生産性の高い
農家、つまり
生産費の低い
農家からずっと積み上げてまいりまして、そして全体の
生産量が七六%に該当したところのその内側に入る
農家について、それを
算定農家にして計算しているのが現在の計算でございます。これからはもう
一つそれと同じように、今度一・五ヘクタール以上層の
農家をやっていくときには、同じような
考え方でどこかのところで
算定農家の範囲を定めていく、こういうふうになるわけです。
法律的にはどういうふうになってくるか。これは、結局最終的には
米価に関する政策上の判断の問題というところに帰着してくるわけでございます。具体的な
算定方式における
対象農家の
とり方というのは、例えばお米についての
生産事情、全体として同じような
規模の
農家がまんべんなく行き渡っているような大体
昭和三十年代ぐらいまでの日本の農村の場合と、現在のようにかなり
規模の間が分かれてまいりまして、大きな
規模の
農家あるいは大きな
生産組織と、それから何といいますか、第二種兼業
農家の中のほとんど土曜日、日曜日を中心にする
稲作農家というふうに分かれている場合とはかなり
生産事情も違ってまいると思うんです。あるいは
需給事情を中心にする
経済事情も違ってくる。
そういうようなことを踏まえながら米についての政策的な判断をどうするか、こういうことでございまして、最終的には
食糧管理法に基づいて
農林水産大臣が決定をするわけでございますが、当然のことながら、この政策判断に当たっては
米価審議会の
意見を聞くということになるわけです。
今回は、昨年の九月以来小
委員会を設けまして、
米価審議会の中で十分御議論をいただいた上での
担い手層を基礎にした
米価算定方式、こういうことでございますので、
米価に関する政策判断としては慎重なる手続がとられているというふうに考えるわけでございます。かような
状況でございますので、政策判断の上でも妥当であると思いますし、
食糧管理法の条文の上では何ら問題はない、かように考えている次第でございます。