○青島幸男君 まず、六十年度の
決算のお話でございますけれども、これが
予算として提出された時期には私は賛成をしておりますし、いろいろ御報告を受けますと、
NHKさんの
経営努力のかいあってか、
黒字まで出しておられて、
会計検査院の報告によれば、何ら疑点を差し挟む余地はないということでございますし、そうした一連のことから考えますと、反対をする理由はないわけでありまして、本件についても、私は本日賛成に回るつもりでおります。
ただ、再々話が出ておりましたけれども、
NHKのやっております
事業の総合的な負担金として、そのことを受信者の方に理解していただいて、そのために
受信料、名目は
受信料ですけれども、負担金を支払っていただいて、それを拠金にして
事業が
運営されておるということになりますと、これはもう基本的に
NHKと受信者との間の信頼
関係以外にはよって立つところはないわけでありまして、だからこそ今回のような疑点が生じて、さまざまな論議を呼ぶようなことは厳に避けなければならないことであったと私は思います。
そういう存立の基盤を持った
NHKの
運営のあり方と、広告収入に頼る民放のあり方が両々相まって国民の上に種々の
情報を流す、これを受信者は、それぞれの
情報を自己によって
判断しながら、さまざまな
情報の中からみずからの指針なりを見出していく。しかも、それが民主主義にのっとった方向で、自己
努力に基づいて国の一員として
責任を果たしていくということになるはずでございまして、私は民放と
NHKがそういう形で共存することにも心から賛意を示しておりましたし、今までの
NHKのやり方にはおおむね反対をしてこなかったつもりでおりますし、それからこの
逓信委員会に私も二十年近くいさせていただいていますけれども、割合私は
NHKさんにはむしろ好意的であったつもりでおりますし、
NHKさんは不偏不党を貫かれようとして
経営に
努力をなさっていらっしゃるという認識を持っておりました。ですから
予算案の
審議につきましても、
決算につきましても、余り反対という
立場をとってきたことはないわけです。
でも、今までの一連の報道にもありましたことも背景にしまして、けさほどから
及川委員初め各
委員の
方々のお話、
質疑の間に見られましたことは、やはり牽強付会とまでは申しませんけれども、
会長しばしば言われましたように、あの
時点で現場がとった
判断は間違いではなかったと思うということを再三発言されましたけれども、ほかの
委員の方も、それはそうかもしれないけれども、事の経過に従って、これを歴史的な経緯としてとらえてくれば、恐らくあの現場の
判断は必ずしも正しくはなかったんではなかろうかというぐらいの御発言があっても、決して
会長に傷がつくこともなかったろうし、そういう率直な態度でおられた方が間違いが少なかったと、ほかの
委員の
方々と同様に私も思います。
及川委員初め多くの
方々がもう細かく御質問になりましたし、その点について再々お答えも承りました。ですから、もう私も重ねて御質問申し上げることはない。しかし、腹の底にあります
NHKへの信頼が非常に損なわれたということは、私にとってもとても残念です。
やはり私は、この報道をすればタイミングが悪いから、もしかしたら誤解を生むかもしれないという
判断こそ誤解であったし、それが誤解でなかったと言い繕って、しかもそれに固執なすっていらっしゃる態度は、全く一般の
方々の認識を誤解しているということでしかないと思いますし、よってもって
会長の御発言も、そのまま私は正直に、素直に認識する、了承するというわけにはいかないというのが今の心境であります。このことも私は大変残念です。もし今後もこのような態度で
NHKさんがおられるならば、大したことはできませんけれども、不払いの先に立って旗を振すらうじゃないかというような気分までいたしておるところでございます。その辺は重々御理解をいただいて今後に期していただきたいと思うんですけれども、そういう
NHKさんのひとりよがりといいますか、それが非常にここのところ目立ってきているような気がしてならないんです。
例えば、先ほども出ました衛星放送の話ですけれども、私再々申し上げておりますけれども、衛星放送がうまくいく、いかないの問題は別にしまして、これを無理やり推し進めようとなさっているということが私にはどうしても理解できないわけです。これが一般の受信者の
方々の信頼を深く損ねやしないかという、そういう危惧も持っております。
幾つか羅列して、質問の形よりも私、意見だけ申し上げて終わろうと思いますけれども、まず衛星の性能に全く全幅の信頼を寄せるというには至ってないですね。現状の片肺飛行のような不安定な状態を見ましても、次に上げられる衛星のことを考えましても、一〇〇%安全だということは、まずどなたも保証できない。それがまず第一です。しかも、衛星によらなければこの放送が不可能だということです。さまざまな実験を繰り返した上で、一〇〇%安全だという認識が得られて、それにのっとって前へ進むならともかく、それがだれも保証し得ないという状態を大
前提にしてスタートしたということ。しかも、これを本放送にして料金を取ろうという、そういう考え方に立ち至ろうとするには、
前提として余りに不安定
要素が多過ぎるんじゃないですか。
それからもう一つは、第二点は、たとえ行われましても、受信者一人一人に二十万なり三十万なりという新たな負担をかけるわけですね。これが量産になれば幾らか安くなるとは言い条、やはり新たな負担をかけることは事実でありますし、その負担をかけることを
前提としているのに、盛んに衛星放送の利点ばかりをうたい上げて皆さん方を誘い込もうとしているという姿勢、それもちょっとおかしいと思いますし、それから受信者の増大に私は期待が持てません。というのは、金や太鼓で宣伝しました文字放送にしましても、大変文字放送はいいですよ、便利ですよということで、あれ出たときに随分宣伝もなさいましたが、いまだに
局長に伺いますところによると、十数万台しか普及していないということですね。
確かに今受信機の台数が四千万とかあるそうですね。これだけになるには、三十年代にいろいろな時代的な背景もありますね。我が国は高度経済成長に乗って非常に経済の進展を見た。それと同時に、世界的な視野も開けて、オリンピックもあった、あるいは皇室における結婚式などもありまして、非常にそういう
意味でテレビに対する関心が高まってきました。量産によってテレビの受信機の金額も安くなりましたし、技術の進展によりましてカラーもきれいになりました。そういうさまざまな背景があってこそ、今の保有台数に短期間の間に伸びたんだ、そういう認識でおります。
こんなような背景は、今の衛星放送にはないんですよ。四六時中七チャンネルで放送して、その上にビデオがあったり、レンタルショップなんて大変な繁盛しておりますね。人間一日二十四時間しか一人頭ないわけですからして、どう頑張ってもそんなに見られるものじゃないですし、職業として
情報を集めている人間でも、ついにはくたびれますね。ですから、これ以上衛星放送を幾ら力入れておやりになっても、そんなに普及が見込まれるというふうには私は考えません。
もう一つ、一番大事なことは、四点としましては、
NHKは受信者の利便とか期待とかというものを考えるより先に、何より衛星放送ありきと、先に衛星放送を考えて、それを何でもがむしゃらに普及発展せしめようとしているような姿勢がうかがわれるわけですね。それは国策であるかもしれませんけれども、別に
NHKは
郵政省でもないし、
文化庁でも文部省でも通産省でもないんですから、それをこんなに率先、旗を振ってですね、何千億
産業だか何兆
産業だか知りませんけれども、新たなパラボラアンテナとその施設、受信施設をしゃにむになって旗振って、経済力を喚起するかもわかりませんけれども、そんなにする必要はないんじゃないかということですね、
NHKの
立場から考えて。これが一般の
方々の中から、衛星放送というのは大変便利らしい、どこにいてもよく見えるらしい。だから何とか
NHKでやってくれないだろうかというような声が沛然として起こって、皆さん方の御需要にこたえましょう、ニーズの多様化にこたえられるように我々も
努力しますという格好でやるんなら理解できるんですけれども、そんなにリスクの多いものを率先して旗振らなきゃならないというのは、どうして営利目的でもない
協会の
事業として、ここまでの姿勢で取り組まなきゃならないのか。私はどうしても理解ができません。
しかも、衛星放送はどこからでもよく見えるとは申し条、市街地などではむしろ東南の方向ですか、その開かれた方向にパラボラを、衛星が視界に入るような状態に向けなければ受信ができないんですね。現在のような市街地の
状況からしますと、これは新たな、もしそういう見たいという要求があれば、これは新たな難視聴を生みます。ですから、新たな格差を生みますね。その辺はどういうふうにお考えなのか。
もうどんどん続けてまいりますけれども、
受信料の徴収の問題にしましても、今も橋本
委員からお話出ましたけれども、共同受信しているのと自分でパラボラ持っているのと、それから見ている人と見てない人と、再々
NHKさんが言われますように、
NHKの
事業を総合的に理解していただいて負担金を払っていただくということになりますと、その総合の中には衛星も入る話でしょう。それで衛星料金は、見ている人と見てない人とどういうふうに分担して負担するんですか。ちょっと考えられませんよ、それは。さまざまな疑点があります。で、もしうまくいったと考えましょうか、それでは。あるいは非常にうまくいったと考えますと、衛星放送が
NHKの思惑どおりに何千万台という格好で普及したとしますね。そうすると、今ある地方のUHFの局はどうなるんですか。これ放送のチャンネル体系がまるで変わっちゃうんじゃないですか。全部UHFに変えろとおっしゃるわけですか。利害がやはりぶつかってくるでしょう。民放も一波とって、そこで共同で民放の
経営による波もつくろうということだとすれば、それは地方のUHF民放局はみんなそこに集合して乗れと、こういうことですか。
それからもう一つ。
NHKのおっしゃるように、衛星放送が大層魅力あるものとして皆さん方に受け入れられて発展していったとしますと、地上波で放送している総合放送と
教育放送はどうなるんですか。屋上屋を重ねる形で三波、今の人数でやっていけるんですか。どうしたってどこかで手抜くか、あるいは労働強化につながるか、あるいは資金不足で新たな値上げに結びつく方向に行くんじゃないですか。
そういうことを一々考えてきますと、何回も言うようですけれども、利益追求型の企業だったら私は何も言わないんです。なるほど多少新たな
分野に向かってでかい収入を得ようと思ったら、少しぐらいのリスクはしょっても、やがては日本国家の
文化のためにもなるのかもしれないから、社運をかけてやりましょうというんなら、勝手におやりいただいて結構なんです。ところが、
NHKはるる申し上げておるように、受信者の
方々との信頼の上に負担金を分担していただいているという性質から言いますと、何も受信者の
方々はそんなことを望んでいませんよ。なぜそんなことをしなきゃならないんでしょうね。
それで、うまくいっていて、皆さん喜んで見ているとしましょう。星がふぐあいになったらどうするんですか、それは。シャトルに乗ってあそこまで出かけていって、手を伸ばして直すことできないんでしょう。新たな星が上がるまで、あるいはふぐあいが直るまで放送できない。料金体系はきちんとできたし、一般には普及したし、今まできのうまで見えていたやつが、きょうは見えない。これは食でもない、何でもないんだ、ふぐあいを生じたらしい、あるいは落っこってしまったらしい。そのときに大慌てしてもだれも保証できませんね。しかも、もっと悪いことには、この先つなげていきたいハイビジョンというのがあるんだそうですね。
そんなこんなを考えますとね。今十分に満足しているんですよ、一般の受信者の
方々は。
機械の技術の進展もありまして、ハイビジョンとまがうんじゃないかと思われるほど各社の今の一番新しい受像機を見ていますと、とても絵がきれいになりました。それで本当に絵のきれいさに関心のある方、音のきれいさに関心のある方は既にそういう機器を選んで見ていらっしゃいます。でも、大部分の受信者はそれほど、ハイビジョンほどクリーンな絵を望んでないですよ。御近所の御家庭とか皆さんの御家庭の中を考えてください。もう本当にゴーストのないきれいな絵を年じゅう見ていらっしゃいますか。相当このチャンネル調子悪いけれども、今野球おもしろいからといって、隣からのぞくと、ゴーストは出ているし、時々ちゃかちゃかいうしなんというようなひどい映像でも見ていますよ。
そういう実態から考えますとね、そのハイビジョンに対する要求、確かに絵はきれいでしょうけれども、それが今の技術水準の先端の三十何インチかのいい受像機で見ますと、それは確かに私もハイビジョンを研究所で見せてもらいました、ハイビジョンはきれいですけれどもね。遠目にはそのハイビジョンと見まごうばかり美しいですよ、今はね。無理やりハイビジョンまで持っていってしまおうという、そういう一連の流れを何のためにやっているのかということが私には全く理解できませんし、そういう今申し上げましたような独善的な
経営のあり方が、勝手に誤解を生むんじゃないかといってアンケートの結果を一方は発表し、一方は発表しないという不手際を生じさしているんじゃないですか。もうこれ最後に言って私、終わってしまいますけれどもね、
NHKさんは、はっきり言って現在の地上波をきちんとやっていただいて、不偏不党、だれからも信頼される
NHKを築いてくだされば、それでいいんです。技術開発も大事だと思います。これやめろとは言いません。それ試験所に任せればいいんです。試験放送で確実なものになるまでどれだけでもお続けになったらいいじゃないですか。答弁は要りません。言うことだけ申し上げまして、ただ最後に、非常に残念なことは、私は
NHKに対する信頼を持ち続けることができなくなったという事実だけは申し上げておきます。
終わります。