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1988-03-28 第112回国会 参議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十八日(月曜日)    午後零時三十分開会     ─────────────    委員の異動  三月十九日     辞任         補欠選任      糸久八重子君     久保  亘君  三月二十二日     辞任         補欠選任      久保  亘君     糸久八重子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 寛三君     理 事                 出口 廣光君                 松浦  功君                 佐藤 三吾君     委 員                 海江田鶴造君                 金丸 三郎君                 久世 公堯君                 佐藤謙一郎君                 坂野 重信君                 沢田 一精君                 田辺 哲夫君                 増岡 康治君                 糸久八重子君                 山口 哲夫君                 片上 公人君                 神谷信之助君                 秋山  肇君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君    政府委員        警察庁長官官房        長        森田 雄二君        警察庁長官官房        会計課長     半田 嘉弘君        警察庁刑事局長  仁平 圀雄君        警察庁刑事局保        安部長      漆間 英治君        警察庁警備局長  城内 康光君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        自治大臣官房長  持永 堯民君        自治大臣官房総        務審議官     小林  実君        自治大臣官房審        議官       湯浅 利夫君        自治大臣官房審        議官       柿本 善也君        自治大臣官房会        計課長      富永 栄一君        自治省行政局長  木村  仁君        自治省行政局公        務員部長     芦尾 長司君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省財政局長  津田  正君    事務局側        常任委員会専門        員        竹村  晟君    説明員        法務省刑事局参        事官       馬場 義宣君        大蔵省主計局主        計企画官     杉井  孝君        大蔵省主計局主        計官       水谷 英明君        大蔵省銀行局特        別金融課長    浅見 敏彦君        文部大臣官房人        事課長      佐藤 次郎君        農林水産大臣官        房秘書課長    高橋 政行君        運輸省海上技術        安全局総務課長  野間 耕二君        建設大臣官房人        事課長      斎藤  衛君        建設省都市局都        市政策課長    足立穎一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について(総理府所管警察庁)、自治省所管及び公営企業金融公庫)     ─────────────
  2. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  去る三月二十五日、予算委員会から、三月二十八日及び同月三十一日の二日間、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち警察庁自治省所管及び公営企業金融公庫について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  予算説明につきましては既にこれを聴取しておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 山口哲夫

    山口哲夫君 まず地方財政対策から質問をいたしますが、最初に国の地方公共団体に対します補助金カットの問題です。  本会議あるいは予算委員会等総理あるいは大蔵大臣答弁を聞いておりますと、この補助金カットもとに戻すということについて非常にあいまいな答弁をしております。考えてみますと、竹下総理もあるいは宮澤大蔵大臣もこれまでの覚書の中にたしか当事者として署名をされた方でないかと思うんですけれども、にもかかわらず補助金もとに戻すことについて非常にあいまいな態度をとっていることは遺憾にたえません。  それで大臣にお聞きしますけれども、ぜひ大臣の力で必ず六十四年度には今までの補助金カットの分はもとに戻すということをここで確約をしていただきたいと思います。
  4. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 国庫補助負担率引き下げは、国の極めて厳しい財政事情を背景として、補助金問題検討会等における事務事業費用負担あり方検討などを経て、六十三年度までの暫定的措置として行われているものであります。昭和六十四年度以降の補助負担率取り扱いについては、補助負担率引き下げがあくまで暫定措置として行われていることから、原則としてもと補助負担率に戻すべきものであると考えておりますが、具体的には六十四年度予算編成時までに関係省庁協議の上定められることとなっております。  自治省としては、各事業性格国庫補助負担制度意義等を踏まえつつ、国としての責任が全うされるよう、また地方財政の健全かつ安定的な財政運営の確保が図られるよう、検討を進めていく考えであります。
  5. 山口哲夫

    山口哲夫君 原則的にとか、あるいは後刻協議をして決めるとか、そんな段階ではないと思うんです。これはもうはっきり覚書で三年間だけの暫定措置というふうにしておりますし、毎回の予算委員会でも取り上げられております。これは約束 事ですから、もしこれが戻らないということになると、地方自治体にとっては裏切られたと、そういう感じをするものだと思うんです。  実力大臣と言われているわけですから、ひとつここで約束してくれませんか、どうしても戻らないときには首をかける、腹を切る。そのぐらいの約束をしてもらわなければどうしても私どもとしては納得できないところです。
  6. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 先ほど、原則としてもと補助負担率と、こう申し上げたのは、原則という言葉は余計だと言われるかもしれませんけれども、六十年度状況と六十四年度状況では、経済状況社会状況あるいは財政状況、それぞれの状況が異なっておりますので私は原則という言葉を用いているのであります。  六十年度もとに戻せばいいということではなくて、六十四年度予算編成がどういう形でできるか、そういう具体的手法考えに入れなければなりませんので、六十年度の時代に戻せるならば、あくまでももとの、負担率カットを取りやめる、そういうことがとられるべきでありますが、六十四年度という社会情勢経済情勢財政情勢を踏まえて行うべきでありますから、根幹にはもと補助率削減以前の状態に返す、そういうことが原則でございますけれども、いずれにしても、具体的には六十四年度予算編成のときにいろいろな詰めを行わなければならないと考えております。  私はむしろ自治省側から申し入れるというよりも、その約束をした当時の財政状況の苦しさ、そういうことから大蔵省を中心にして、国の財政をどうするかあるいは内需振興をどうするかという観点から行われたものでありますから、当然向こうから近い機会に合い議があるものというふうに期待をいたしております。
  7. 山口哲夫

    山口哲夫君 新聞によりますと、大蔵省は廃止には非常に消極的な姿勢だ、こう書いていますね。それで自治省は、財源配分で手厚くしてもらう、だから、これから税制改革とかいろんな問題との兼ね合いで戻らないとしても、それにかわるべき財源を何とかしてもらえばそれでもいいのじゃないかというようなことがちらちらと出てくるわけですね。  私は、後ほども申し上げますけれども、そういう問題ではないと思うんです。これから先の見通しというのは地方財政は苦しくなる一方だと私は思っておりますから、やっぱり約束事約束事としてきちんとこの際整理をするべきなので、これは大臣としては、もしどうしてももとに戻らないときには辞職しますくらいのそういう決意で、自治体はみんな、実力大臣として今度は大丈夫だろう、梶山さんが大臣の間に必ずできるだろうと期待していますので、どうですかひとつ、腹を切ると、そういうくらいの決意を述べていただきたい。
  8. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 腹を切ることによって責任が全部免れてもとに戻らなくても結構だという、反論になるとそういうことになろうかと思いますが、そういうことではなくて、何とかこれを実現したいという執念を燃やしながらやってまいりたいと思います。今具体的なことで、その他もろもろのことが考えられるならばということでございますが、私はやはり原則補助率カットをやめると、この前提に立つわけでございます。  今皆さん方与野党間で減税協議をする、あるいは政府税調その他でも減税方向おぼろげなことが新聞等で報道をされておりますから、減税方向は私は大きな流れとなって定着しつつあると思います。しかし、補助率カットの問題はそれ以前の、いわば政府地方自治体の間の約束事でございます。どちらに優先順位を与えるかというのは、これはまた国民的な視点に立たなければならないと思います。減税ももちろん大切でございますし、質の違うこの補助率カット、これも、苦しい財政情勢内需振興というその二つを何とか解決をするためにやむを得ざる方策として前任者の方々が決められたことだと思うわけであります。  地方財政には大変きつい思いをかけております。しかしどう考えてみても、やはり具体的にはそれに相応する財源がなければ、国はくたばれ、地方自治体さえよければいいという論法も、現実には国務大臣としてはとることができない状況もございます。ですから、おぼろげに眺めて、この一兆六千億、一兆七千億になんなんとする補助率カットの原資をどこに求めるかというと、自然増収もあるでしょうし、あるいは不公平税制の是正もあるでしょうし、あるいは与野党間で言われているその他の条項もあるでございましょう。しかし、これが挙げて全部減税財源に回るとするならば、同じパイをどうやって食べるか、この問題もあるわけでございます。  私も政府部内では今懸命な努力をいたしております。どうかそれぞれの政党間におきましても、減税も大切でございますけれども、いわゆる地方自治振興というか、地方自治体を活力化させることによってむしろ国の立て直しをするということであるならば、減税問題は大きな問題として取り上げられておりますが、その中には前提条件として、まずもって補助率カット政府間の約束であるからこれを守れぐらいのことはぜひ言っていただきたい。そういうことをお互いに努力をすることによって地方自治を守っていきたいと思いますので、何とぞこの機会をかりまして御協力を願いたいと思います。
  9. 山口哲夫

    山口哲夫君 大変な演説を聞かしていただきましたけれども、我々政党立場ではそれはもう十分主張していることです。  国の財政が苦しくなれば地方も我慢すればいいじゃないかという論法は私は当たらないと思っております。国が財政が苦しければ、地方との約束だけは守ってくれるように、それだけの財源を生むような方法を国自体考えるべきなんです。今大臣がおっしゃったように不公平税制を改めたり、あるいは私に言わせれば軍事費なんか少しでも減らすような努力をして約束約束できちっと守ってくれなければ、国が苦しければ結局地方自治体が最前線でいつも苦しめられる。もうこれ以上やられたらたまったものじゃないという気持ちを自治体はみんな強く持っております。  これは自治省も大体同じ考え方に立っているのでないかなと私は思うんです、予算編成のときにこの問題については相当頑張っているようですから。だから私はむしろ大蔵大臣に聞きたいところなんですけれども、残念ながらきょうは出席いただけませんので、大蔵省、いらしていますね。  大蔵省はもう少し現場のことを考えてくださいよ。あなた方は自治省だけ納得させれば済むと思うだろうけれども、そんな簡単なものじゃないですよ。地方自治体がどれほど苦しんでいるか、そういうことを考えたら、約束だけはきちっと守ってくださいよ。しかも、竹下大蔵大臣はこの覚書調印者なんですから、責任者なんですから、その方が今ちゃんと総理大臣をやっているんですから、これを守らないようじゃ問題にならぬですよ。どうですか、大蔵省
  10. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 先生指摘のように、現在行われています補助金等に係ります暫定措置につきましては、六十一年度におきまして、補助金問題検討会の報告の趣旨等を踏まえまして、事務事業見直しを行いながら補助率見直しを行っておるものでございます。先生指摘のように六十三年度でこの暫定措置は切れるわけでございますが、この期間終了後における取り扱いにつきましては、補助負担率見直しの経緯やこれまでの措置性格を踏まえまして、今後の諸情勢の推移や国、地方役割分担あるいは財源配分あり方等を勘案しながら、関係省庁とも協議の上適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。
  11. 山口哲夫

    山口哲夫君 約束事だけはきちっと守るように、特に大蔵省に強く要望しておきたいと思います。  次は地方の後年度負担の問題です。  先日自治省の方に、後年度負担というのは一体どのぐらいになるのか償還計画を出してください というお願いをいたしましたらこういう一枚の紙が待ってこられたんですけれども、これによりますと五兆九千百三十九億。利子は全然書いてないんですけれども利子は要らないんですか。利子がわかれば数字を挙げてほしいんです。
  12. 津田正

    政府委員津田正君) 今御指摘交付税特会借入金償還は、元本の額が五兆九千百三十九億何がし、こういう数字でございます。それから利息につきましてはその年度年度金利情勢によりまして決められておるわけでございまして、そういう意味で年度ごとに変わってまいる、こういうことで計算をしておらないわけでございます。ちなみに、昭和六十三年度につきましては利子充当分として二千七百八十億程度を要するということで予算計上しておるような状況でございます。いずれにしましてもこれは毎年度金利水準によりまして変わってまいるというものでございます。
  13. 山口哲夫

    山口哲夫君 極めて大ざっぱに計算しますと二兆五、六千億円くらいの利子にはなるのじゃないかなと思いますけれども、大体そんなくらいでしょう。
  14. 津田正

    政府委員津田正君) その元本償還ベースということが、現在決まっております、総額五兆九千百三十九億三千五百万円でございますが、六十六年度に返す金が三千五百四十一億、それから上がっていきまして七十三年度で七千二百三十二億七千万円の償還、これがピークでございます。そして七十六年までに返す、このようなことになっております。したがいまして、単純に五兆九千億に現在の金利水準を掛ける数字とも実は違うかと思いまして、いずれにしましてもこれは毎年度金利情勢によって変わってまいる。大ざっぱに言おうと思えばいろんな計算が出るかと思いますが、そういうような状況でございます。
  15. 山口哲夫

    山口哲夫君 いずれにしても利子が二兆五、六千億円はかかるだろうと思うんです。  これだけじゃ済まないんですね、後年度負担というのは。再度要求してようやく出てきた数字なんですけれども、このほかに財源対策債というのがありますね。それから臨時財政特例債地域財政特例債地方税減収補てん債、これはいずれも地方負担しなければならないお金だと思うんですが、そういうのを要求いたしましたら、今持ってきたんですけれども、十五兆一千二百三十四億円、こういう数字ですね。そうしますと、これから地方が後年度負担として払わなければならないお金というのは、特会借入金利子と全部合わせますと二十三兆六千三百六十九億円という数字になるんですね、利子二兆六千億で。大ざっぱに言って二十三兆円から二十四兆円の負担をこれから地方がしなきゃならない、そういう数字になると思うんですけれども、間違いないですね。
  16. 津田正

    政府委員津田正君) 財源対策債等、あるいは臨時財政特例債減収補てん債、そういうものを個別的に積み上げますと、資料で御提出のとおり十五兆一千億何がしかになります。  ただ、私ども地方財政全般借金と申しますか今後の負担ということを考えます際に、先ほど申しました交付税借入残高が約六兆円近くございます。それから地方債、先ほど先生が個別的に申されたもの以外の建設地方債償還額というのが約四十九兆円ございます。それから公営企業等企業債で起こしましても下水道等普通会計責任を負うべき額が十一兆六千億程度ございます。したがいまして、これを合計いたしますと大体六十七兆円の地方債借入金残高を抱えておると、こういうような頭で今後の地方財政措置考えていかなければならない、このように認識しておる状況でございます。
  17. 山口哲夫

    山口哲夫君 今言ったいわゆる地方起債、それは当然これから地方負担になってくるんですけれども、それはさておいて、通常の財政状態であれば発行しないで済んだものが、財政が非常に苦しくなったために、こういう財源対策債だとか臨時財政特例債だとか地域財政特例債だとか地方税減収補てん債だとか、やらないでいいものまで起債として出したわけですね。だからこれはいわば国の都合地方の方にそれだけの借金を転嫁した、そういうことになるわけですね。ですから、その分だけを自治体の後年度負担のさっき言った特会借入金と合わせれば、国の都合自治体の方に負担をさせた分というその合計額が約二十三兆円から二十四兆円になるだろう、こういうことなんですけれども、間違いないでしょう。
  18. 津田正

    政府委員津田正君) それ自体は間違いないと思います。なお細かく議論いたしますと、減収補てん債、これは、景気の変化によりまして地方団体が当初見込んでいたものが取れなくなった、しかし景気の好況のときには自然増がそれなりにあるというようなことで、ここらはいわば年度間の財源調整の問題かと思います。  その金額が一兆三千億程度でございますが、そういう議論はあるといたしまして、財源対策債なり臨時財政特例債、この臨時財政特例債がまさしく補助金カットの問題に絡む問題でございますが、これについての償還財源をどうするか。現在でも、御承知のとおり臨時財政特例債の六十一年度カット分については元利償還時に五〇%は国に負担してもらう、あるいは六十二年度補助率カットに見合う臨時財政特例債については九〇%を国に負担してもらうとそれぞれ約束事がございますが、いずれにしましても、マクロとして地方財政がそういうような償還にたえ得るような財政措置考えていかなければならない、こういうことでございます。
  19. 山口哲夫

    山口哲夫君 要するに地方には今二十四兆円ほどのこれから払わなければならない負担があるということだけははっきりしたわけですけれども、ただ、そのうちに政府の方で返すことを既に約束しているものがありますね。臨時財政特例債の二分の一の分とか十分の九の分とか、地域財政特例債だとか、あるいは法定分だとか、そういうものがあります。だからそういうものを全部きちっと返してもらえれば、これは私の方の数字では約三兆一千四百十一億なんですけれども、それを差し引きますと、実質自治体がこれから負担を強いられるものは二十兆円、私の方としてはそういうふうに見ているんですけれども数字に間違いありませんか。
  20. 津田正

    政府委員津田正君) 国庫責任を持つというものについて、まず、いわゆる法定加算が五千二百六十九億円ございます。それからいわゆる暫定加算と言われるもの、これが八千四百四十億円になります。それから臨時財政特例債等の分で、これはかなり後年度、八十三年度までぐらい続くかと思いますが、これが大体二兆五千億程度になるのではないか、このように考えております。  そのほか借金の方でございますが、若干細かい話で恐縮でございますが、六十年度補正予算交付税総額特例措置をやりました。これが千四百億円ばかりございます。これについては今後返さなければいかぬわけでございますが、さしあたって六十三年度当初の地財対策では二百三十億円ばかり措置をしてございますので、実はこういうものでも千百億円ばかりまた別に返さなければならない金がある。こういうようなことかと思います。
  21. 山口哲夫

    山口哲夫君 もろもろのものを入れまして、地方自治体が今後負担をしていかなければならないという金は約二十兆円、こういうふうに私どもとしては踏んでおりますけれども大蔵省もこの点は確認できますか。
  22. 水谷英明

    説明員水谷英明君) お答え申し上げます。  今先生がおっしゃられた数字について、実は私手元に資料を持っておりませんのでそれを確認するということは残念ながらできないわけでございますけれども、今先生が御指摘になりましたように、国、地方財政状況の非常に厳しい中で、年年のいろいろな工夫をしていく中で地方にもいろいろ債券を出していただいた。それに対して国も、今御指摘臨時財政特例債等につきまして先生から御指摘のあったような率で将来の元利償還に対処するというできるだけの努力はしてまいったわけでございますし、年々の地方財政対策におきましても、地方財政の円滑な運営というものは支障がないように努力をしてまいったわけでござ います。これからもその点は努力してまいる必要がある、こう考えておる次第でございます。
  23. 山口哲夫

    山口哲夫君 大蔵省は年々努力しているとおっしゃるんですけれども努力していないんですよ。努力しているんだったら、後ほど申し上げますけれども、当然交付税率を上げて初めてこれが努力したということが言えるんです。  これは本来国が持たなきゃならない金なんですよ。それを、財政が苦しくなったからといって臨時財政特例債だとかやれ何だかんだと、毎年毎年よく本当にころころ変えて、その都度その都度ばんそうこうを張ったように補ってくるわけでしょう。それもちゃんと全額約束するんならいいですよ。将来必ず払いますから一時これだけで我慢してくださいというんならいいですけれども、半分は自治体負担しなさいとか、そういうことでずっとやってきたわけでしょう。そういうものが全部合わせると約二十兆円だと言うんですよ。だからこれは大蔵省として努力をしたなんてことにならないと思うんですよ、地方自治体立場からいきますと。  だからこの点はきちっと、本来当然国が持つべきものであったんだ、だからこれについては将来とも大蔵省として当然の責任は持たなければならないと、そういう考え方に立ってこれから予算折衝に応じてもらわなければ困りますよ。どうですか、大蔵省
  24. 水谷英明

    説明員水谷英明君) 今先生から厳しい御指摘を受けたわけでございますが、先生とうに御承知のように、国の方も百五十兆円を上回る公債残高がある中で財政再建に取り組んでまいっておるわけでございます。私どもとしては毎年毎年最善の努力を尽くし、自治省さんとも相談して、いろいろな措置をその時点において尽くしてまいったつもりでございます。これからもその努力は続けてまいるつもりであるということをお答えさせていただきたいと思います。
  25. 山口哲夫

    山口哲夫君 自治省協議していろいろやったとおっしゃいますけれども、一方的に押しつけたようなものですよ、これは。だから我々は、そういうやり方であれば自治体を余りにもばかにしているのじゃないんですかと。国の都合でやるのであれば、当然これは大蔵省として腹を決めてその分は負担するくらいのことを考えてもらわなければ、自治省さえ納得させればいいんだというような考え方で今までずっと納得させて、納得させたというよりも押しつけてやってきたわけでしょう。我々地方自治体立場に立ったら、こんなやり方では到底納得できない。  これは平行線でしょうからまた後ほどに譲ることにいたしますが、これだけじゃないんです。そういうふうにして自治体に対して借金を押しつけておきながら、まだ大蔵省自治省との間で決めてない暫定加算分があるんです。六十年度から六十三年度までの間に八千四百四十億円というのは、これは返すのか返さないのかも決めないんですね。これは間違いなく返してくれるんでしょうね。後日大蔵省自治省協議して決めますなんて言われていますけれども、これをまともに考えていて、後からいや協議した結果どうにもなりませんでしたというのでは、これまた加算されますからね。これだけはきちっと約束してください、必ず返す。
  26. 水谷英明

    説明員水谷英明君) お答え申し上げます。  先生指摘の、補助率カットに関係いたしますいわゆる暫定加算の件であろうかと思うわけでございますが、これにつきましては、補助率カットのいわゆる経常経費の影響額のうち交付団体が調整債により補てんした部分について、将来その元本相当額を一般会計から交付税特会に繰り入れて地方債増発による後年度負担を緩和するかどうかということについて、暫定期間終了後、補助率の今後の取り扱い、国と地方財政事情等の事情を踏まえて、改めてその時点で協議した上で決めるということになっておるわけでございまして、今後の諸情勢の推移、補助率見直しの今後の位置づけをどうするかというようなさまざまの情勢の推移を幅広く踏まえた上で検討すべきものということになっておりますし、こういう従来の経緯を踏まえまして今後誠意を持って協議してまいりたい、こう考えております。
  27. 山口哲夫

    山口哲夫君 暫定加算の中でも既に法定分としてきちっと約束をして返すというものが五千二百六十九億あるわけでしょう。こういうふうは片方は法定分としてきちっと決めておきながら、残る八千四百四十億はまだこれから決めるというんですから、我々としてはこれはどうしても納得できないですね。なぜ片方だけ法定にしておいて片方は後日決めるのか。きちっと決めるべきものだったら、これだけは必ず返すと、そういうことを覚書の中にやっぱり取り入れるべきでなかったかなと思うんです。いずれにしても、まだこれだけの二十兆円という膨大な自治体負担分が残っているということだけは大蔵省としても十分腹に据えて今後財政措置考えていただきたいと思うんです。  そこで、これから将来の地方財政ですけれども、二十兆円の借金ですから、これを全部返すとして、二十年としても毎年約一兆円ぐらいの負担ということになっていくんでしょう、極めて大ざっぱに言いまして。そういうことを考えますと、仮に補助率が戻ったといたしましても、地方交付税法の六条の三の二で言う基準財政需要額に対する交付税の不足額、これは間違いなく一〇%を超えていくだろうと私は思うんです。  私は昨年の委員会でも質問をして、もし六十三年度において一〇%を超える場合には必ず交付税法六条の三の二に基づいてきちっと交付税率を上げるなりちゃんとした財政対策をしてください、こういうふうに申し上げておいたんですけれども、それはその時点で検討すると言ったんですが、ことしは一七・三%ですよ。そうしますと、六十一年度が二四・三、六十二年度が二六・二、そしてことしが一七・三、いずれも一〇%を超えているんです。交付税法の解釈からいけば、当然ことしは交付税率を上げるなり抜本的な制度改正をしなければならない年だったはずなんですけれども、何でやらなかったんですか。
  28. 津田正

    政府委員津田正君) 交付税法六条の三の問題につきましては、統一見解と申しますか、この状況に当たるのは、財源不足額が普通交付税総額のおおむね一割程度以上という状態が二年続き、また見通される三年度以降も同様である、こういうような場合に該当するということでございます。そういうような基準に照らしますと、六十一年度、六十二年度、六十三年度、それぞれ普通交付税額の一割を超えておる財源不足の状況になっております。  ただ、この問題には二つ基本的に考えなければならない問題がございまして、この六条の三の問題につきましては御承知のとおり五十九年におきまして、「政府は、地方財政状況等にかんがみ、当分の間、第六条第二項の規定により算定した交付税総額について、法律の定めるところにより、交付税総額の安定的な確保に資するため必要な特例措置を講ずることとする。」こういうような改正を行っております。したがいまして、六十一、六十二、六十三につきましても交付税の特例加算等をいたしましてこの規定によります措置は実施しておるわけでございます。ただ、本則の問題というのがまだあるわけでございますが、これも、実は六十一年度と六十三年度補助率カットの問題で財源不足額が大幅にふえておるわけでございまして、それを除いたいわゆる通常収支におきましては地方財政は収支均衡しておるような状況でございます。  では六十四年度はどうなるかといいますと、まさしく補助金カットは法律によって六十三年度までということになっておるわけでございますので、先ほど来大臣答弁申し上げましたように原則としてもとへ戻るという状況になれば、いわゆる通常収支は少なくとも六十三年度は収支均衡しておるわけでございますから、今後の経済情勢いかんにもよるわけでございますが、財源不足額というのはそういう意味ではそれほど大幅なものにならないのではないだろうか、こういうように考 えられる事態でございます。  そういうことを考えますと、六十三年度地方交付税法第六条の三の規定によります交付税率の問題あるいは地方財政制度の問題というものに決着をつける時期ではないのではないか、このような判断をして六十三年度地方財政対策を講じた次第でございます。
  29. 山口哲夫

    山口哲夫君 補助率カットがあったから非常に財政が苦しくなったので、それさえなければ何とかバランスがとれたのだと、こうおっしゃいますが、それで私は、それでは六十四年度は間違いなく戻すんですねと聞いたわけですよ。戻しますというのであれば、百歩譲って六十四年度からは何とか一応バランスはとれるだろう、こういうことになるわけですけれども、わからないわけでしょう。大臣だって腹を切るとまではおっしゃらないんだから、それはどうなるかわからぬですよ。  だから、必ずしも六十四年度から補助率もとは戻るということにはならない、今までと同じようになるかもしれない、そう考えた場合には、当然その格差というものは一〇%以上になることは間違いないだろう。しかも、さっき言いましたように二十兆円という当然国が負担すべきものがあるんだから、そういうものを今後自治体の方で負担するということになれば、極めて大ざっぱに二十年間でも毎年一兆円ずつ負担しなければならない、そんな数字にもなるでしょう。  そういうことを考えれば、地方財政が何とか収支均衡になるんだという考え方というものは極めて甘いと私は思うんです。しかもこれは政府の側の言い分であって、我々自治体立場からいくならば決してそんなものにはならぬ。だから、この際当然交付税法の本則に基づいて三二%を上げなさい、こういう主張というのは私は正しいと思っているんです。  しかも、六十三年度の分だけをとらえてみたんですが、そうすると、財源対策債等償還だけをとってみましても一兆三千二百七十億円でしょう。六十三年度の分だけでも一兆三千二百七十億円の償還をしなければならない。これは本来自治体負担すべきものでない、国の責任においてやってきたんですから当然国が負担すべきものだと思うんですけれども、それが残念ながら自治体負担せいということであるわけでしょう。  この金額というのは、交付税の三二%は比較してみますとちょうど四・八%に当たる金額ですよ。そうするとこれをとらえただけでも、交付税法六の三の二からいけば、当然交付税率というのは四・八%上げて三六・八%にしなければならないという数字になるんです。数字からいけばそういうことになる。  だから、来年は補助率もとに戻る可能性があるんだからそうなればバランスがとれるんだ、何とかやっていけるんだと言うけれども、そんな甘いものではないということを私は言っておきたいと思うんです。大蔵省、どうですか、こういうことについては。
  30. 水谷英明

    説明員水谷英明君) お答えいたします。  地方交付税法の六条の三第二項に言う制度改正をめぐる議論でございまして、私は昨年先生が当委員会で御議論になるのを聞いておりましたし、これまでの議論もいろいろ承知させていただいたところでございます。しかし、交付税法六条の三第二項との関係では、五十九年度におきまして、国と地方財政運営の中期的な展望、いわゆる五十年代の国、地方を通ずる極めて厳しい財政状況の中で、交付税特会借入金を中心といたします苦心の結果の地方財政対策がなかなかまた困難になってきたということで、五十九年度に中期的な展望に立って地方財政対策を改革したわけでございます。  すなわち、交付税特会の新規借り入れを廃止し、既往の借入金残高の償還財政再建がなされるまで凍結するとともに、過去の借入金の国負担分を一般会計に振りかえ整理いたしまして、各年度地方財源措置としては、当分の間、地方交付税総額の安定確保に資するため法律で定めるところにより必要な特例措置を講ずることとしたところでございます。  この点でございますが、交付税率の変更等の恒的な制度改正については、六条の三第二項の本来の趣旨というものは十分私どもとしても承知しておるわけでございますけれども、過去に示された法制局の見解の中にもございますように、法律はかなり広い選択を許している。これは法律的に申し上げればということでございましょうけれども状況によっては当該年度地方交付税総額を増額する特例措置を講ずることも六条の三第二項に言う地方財政制度の改正に該当するというような解釈があるわけでございます。  従来からお答え申し上げておりますように、五十九年度改革はあくまでもこういう六条の三第二項を踏まえて、財政再建までの当分の間の措置として講じているわけでございます。今先生から厳しい御指摘がいろいろございましたが、現下の国、地方を通ずる厳しい財政状況もとで恒久的な制度改正が困難であるという前提に立ちまして、六条の三第二項をなおも踏まえて、五十九年度改革に沿った地方財政対策を六十三年度も講じてまいったということを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  31. 山口哲夫

    山口哲夫君 今のお話を聞いていますと国の財政も苦しいんだからというお話が時々出てくるんですけれども、さっきも申し上げたように、国の財政が苦しければ地方の方にその負担を転嫁していいんだということには私はならないと思うんです。だから、約束はきちっと守れるように国の方もそれなりに財政を確立をしてもらいたい、私はそう思うんです。不公平税制だって改めろと言っても全然改めないし、そういうことをきちっとやらないでおいてそして地方の方に財政負担を転嫁するようなやり方というのは私は納得できない。  それから、いろんな広い選択があるんだということを今おつしゃっていましたけれども、私は抜本的な制度の改正というものはやっぱり基本としては地方に迷惑をかけないという大原則の中でやるべきであって、毎年いろんな新しい制度みたいなものがつくられてくるそういう小手先の改革のやり方というものは、この交付税法六条の三の二の精神に沿うものではない。あくまでももっとわかりやすいような、地方に迷惑をかけないような形の中ですっきりした財政制度の改正を根本的にやる、そういう趣旨だと思うんです。  地方自治法が施行されて今もう四十年を過ぎたわけですけれども、主権者である国民が国の台所も地方の台所もさっぱりわからないようなこういう制度をつくるということは、これは憲法に書かれている主権在民の精神に反すると思いますよ。国民が少なくともそれぞれの住む地方自治体において、これからの財政というものがどういうふうはなっていくのか、国の財政との関連において、どんな国民でも大体の方向がある程度見通せるようなそういう制度の改革をしなければならないのであって、自治体財政担当者でさえこれからの地方財政がどうなっていくのか全然わからぬ。  失礼だけれども自治省だって財政担当者以外の方は、地方財政借金が今どのぐらいあって国との間にどうなっているのか、聞いたってわからぬでしょう。前の葉梨自治大臣にお聞きしたらわからないと言っていますよ。大臣でさえわからないんですから、我々でも相当これは勉強しなければわからぬですよ、複雑怪奇で。こういうやり方というものは私は主権在民の精神に反するものであるというふうに考えますので、今後の地方財政対策についてはもう少しすっきりした根本的な改革を大蔵省として考えてくれるように強く要望しておきたい、こんなふうに思います。財政問題は終わります。  次に、いわゆる天下り人事の問題について質問をいたします。  大臣にお聞きいたしますけれども、昨年十二月十一日の参議院予算委員会で竹下総理大臣が、自民党の増岡議員の質問に対して大変いい答弁をいたしております。こういうことです。「いやしくも国家公務員たる者、地方公務員に対し優越感を感じてはならぬ。むしろ自分たちの方よりより詳 しい人であるという姿勢で対応すべきである。」要するに国家公務員が地方公務員に対して優越感を持つようなことがあつてはならないんだ、こういうふうに総理大臣はおっしゃっておりました。  私はこれを聞いておりまして、さすがにやっぱり県会議員をやられた総理は前の中曽根総理とは全然違うなという感じをして意を強くしたんですけれども、しかし、残念ながらやっていることは必ずしも竹下総理のおっしゃるような内容にはなっていないようであります。例えば、自治省の職階でいけば主査とか係長が県に派遣された場合には何で課長になるんですか。自治省課長補佐が県に行けばどうして部長なんですか。自治省課長が何で県の副知事なんですか。これは明らかに地方公務員に対するべっ視、国家公務員の優越感の産物だと思うんですけれども、どうでしょう。
  32. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) いわゆる天下りという表現が私は好きではございませんけれども政府職員等の地方公共団体への採用については、あくまでも地方公共団体の任命権者の要請に基づくものであり、今後とも要請に応じて適切なあっせんを行うことといたしてまいりたいと思います。  ですから、地方公共団体自治省のいわゆる人事交流、この問題は、それぞれの能力やフレッシュな感覚を双方に持ち込むことができる、あるいは地方公共団体の職員と交流することによって相互に切磋琢磨し資質の向上に期待をすることができるとか、あるいは国と地方が相互に理解を深めるということで、私は相互に人事の交流をすることは大変いいことだというふうに理解をいたしております。  調べてみますと、自治省から地方にいわゆる出向といいますか採用されている者は役職員で約百八十名、一般職員で六十名だそうでございますから、二百四十名が地方に交流をいたしております。それと反対的に、自治省の定数五百五十名のうち地方団体からは約二百名を受け入れておりますから、数の面ではいい意味での相互交流が成り立っているというふうに考えております。  ただ、役職の地位の問題でございますけれども、私も具体的に細かくは承知をいたしておりませんが、それぞれのポストに見合う者を要請をされ、またそういう方々に出向を願っているというふうに理解をいたしております。
  33. 山口哲夫

    山口哲夫君 これはどのように弁解されようとも、政府地方自治体というのは原則的には対等平等であるというのが法律の解釈ですよ。中曽根さんはそれを間違って、国がいまだに監督権を持っていると思っていたんですから僕はびっくりしましたけれども原則としてはそういう解釈になると思うんですよ。そういうことからいきますと、自治省の若い主査の方がいきなり県に行って課長をやってごらんなさいよ、地方の方ではこれはやっぱり我々の地位というのは低く見ているんだなと、どうしたってそういうべっ視の感覚で見られているというふうにとられると思うんです。  我々の調べでは、大体二十七、八歳で十人、県の総務課長とか企画課長になっています。三十歳の人が三人、県の総務部長だとか財政部長です。四十歳から四十三歳で十五人も県の総務部長とか財政部長とか企画部長になっています。同じ大学を出ても、二十七歳だったら県では普通の平職員でしょうね。県の職員が課長になるといったら、まず早くて三十代でなったら大変な抜てき人事と言われています。大体四十過ぎです。部長でしたら、同じ大学を出ても五十過ぎなければなれないんじゃないですか。それが三十代で部長をやっておるわけですね。しかもこれは総括的な管理部門と言われる非常に重要なポストの役職についているんです。  これは私は、地方ではこんなことをやられたら職員の士気に影響すると思うんです。やる気を失ってしまいますよ。こういう人事のやり方というものは私は納得できないし、だから天下りだと言われるんです。ぜひやめてください。
  34. 持永堯民

    政府委員(持永堯民君) いわゆる交流人事の問題でございますけれども、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、基本的には任命権者、地方団体側の要請に基づいて出向いているわけでございます。その場合に、どういうような年齢と申しましょうかランクと申しますか、の人間を出すか、あるいは地方団体の側でどういうポストにつけるかということにつきましては、これはあくまで任命権者側とよく御相談をした上で行っているわけでございまして、そのことをもっていわゆるべっ視と申しましょうか、そういう考えの上でやっているわけではございませんので、御理解を賜りたいと思います。
  35. 山口哲夫

    山口哲夫君 県と協議してやっていると言いますけれども、県の方で仮にそういう二十七、八歳の人を課長で回すことについてある程度納得したとしても、これは自治省として、それこそ竹下総理考えじゃないけれども、国家公務員が地方公務員に対して優越感を持ってはいけないと言っているんだから、地方公務員をべっ視するようなこんなやり方というのはやっぱり政府みずから改めるべきだと思うんですよ。そういうことをやったら地方の職員の士気に影響するでしょう、だから、あなた方の方としてはそのぐらいの人でも結構だと言っているけれども、県全体のこと、地方自治体全体のことを考えれば決して好ましいことじゃないのじゃないですかというくらいのことを政府の方で言ったっていいじゃないですか。それを逆に政府の方から押しつけているじゃないですか。どうですか。
  36. 持永堯民

    政府委員(持永堯民君) 先ほど申し上げましたように決して押しつけを行っているわけではございませんで、これまでも事前に、発令の前には具体的な人間をお示しをしてよく御相談をしてまいっているわけでございまして、今後とも疎漏のないように、十分任命権者側の意見を尊重しながら対応してまいりたいと思っております。
  37. 山口哲夫

    山口哲夫君 それなら、これからやるときには課長課長との人事交流をやりなさいよ。部長とは部長同士でやってください。それなら私どもも人事交流ということである程度納得せざるを得ないと思うんです、自治体の方がそれでいいというのであればですね。しかし、こっちの若い人をいきなりあっちの課長に回したり、課長をいきなり副知事に回したり、そういうやり方というものは全く地方をべっ視しているものだ、そういうふうに考えざるを得ませんので、これだけは私は強く要請をしておきたいと思っております。  それで、天下りの状況を調べてみたんですが、各省に資料を要求いたしましたら、自治省が約百五十名、建設省が百四十八、農水省が百五十、厚生省六十五、大蔵省十、文部省三十、運輸省二十八、労働省十一、通産省は間に合わなかったんですけれども私の方で調べたら二十四、それから社会保険庁も出てきませんでしたけれども調べたら六十七、そのほかに二十七、全部合わせますと約七百十名の国家公務員が地方に行っているんです。  大臣は、むしろ地方の方から自治省はたくさん採っている、こういうふうにおっしゃいました。確かに数の面ではそうであります。平職員を随分各県から、一年か二年くらい勉強にということで採っているようであります。ほかの省庁ではそんな数になっておりませんけれども、これは詳しく申し上げる時間がありませんので申し上げませんが、本当に交流ということで各県から採っているのはごくわずかです。だからこれはどんなに弁解しようとも、政府の方から余計に地方自治体の方に回しているというように感ぜざるを得ません。  そういう点では、後ほども申しますけれども、これは政府が職員を地方に回すことによって地方自治体を国の考え方にだんだん変えていこう、国の方針で地方自治体の仕事をやらせようということにつながっている。そういうことからいくと地方自治の本旨に全く反しているということだけをとりあえず申し上げておきたいと思います。  それで、自治省からいわゆる天下った方の中で何と三十九人が副知事、総務部長です。副知事が二十名、総務部長十九名、財政課長二十四名、地方課長十名、いずれもこれは管理監督的な立場です。全部で六十九名の方々が四十七都道府県に散 らばって、極めて重要な管理監督の立場に立って采配を振るっているわけです。それから建設省は三十八名の人が、県の土木部長二十六名、建築部長四名、局長一名。農水省は全部で二十六名がこれも農務部長等の要職についております。文部省は、教育長、次長、部長、課長含めて二十九名。厚生省も環境保健部長とか衛生部長とかで十八名。これだけの多くの職員が管理職として地方自治体の中で仕事をし、采配を振るっているわけです。これで県や市町村を支配していると言えないですか。どうですか。
  38. 持永堯民

    政府委員(持永堯民君) 多くの職員が地方団体に出向しているという実態をお述べになったわけでございますが、今のお話は、そのことをもってして地方を支配をしているのじゃないか、こういう御意見かと思いますけれども、これは先ほど申しましたように、やはりあくまで地方団体側のお考えでそういう措置がとられているわけでございますし、現に私自身もそういう経験がございますけれども、やはり県に行った場合には、県を支配するとかいうようなことではなくして、県の職員になり切って県政の発展のために努力をするという考え方でやっているわけでございまして、御指摘のように、中央が地方を支配するというような考えからこういうことが行われているとは考えていないところでございます。
  39. 山口哲夫

    山口哲夫君 それは行かれる方は県の職員になり切ってやっていますと、言葉では幾らでも言えると思うんですけれども、現に一方で地方行革大綱というものが出て、そして行政改革を地方に押しつけているわけでしょう。これだって問題がありますよ、何でそこまで指導権があるんですかと言いたいんですけれども、それはさておきまして、行政改革をやりなさいといって各県に対して指図をして、そこへ自治省の役人が出ていってその行革大綱を指揮監督する要職につくわけでしょう。だれが見たって、政府の方針で自治体を支配しているなというふうに思うのがこれは当然だと私は思うんですよ。  だから、言葉では県の職員になり切ってやっていますとは言うけれども、実質的には決してそんなふうにはなっておりませんので、私はそういう点からいってもこの天下り人事というものは非常に地方自治の本旨に反している。地方というものはあくまでも独自性を持って自主的にやるべきであるし、仕事をやっていく面で一番大事な人事は当然地方考え方によってやるべきであって、自治省や各政府機関から天下った人間によってそういう重要な管理部門のポストを押さえて行政をやるような形というのは地方自治の本旨に全く反している、基本的に私はそういうふうに思います。大臣、どうでしょうか。
  40. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 御説ではありますけれども、私は、委員指摘のほど地方自治は弱くも甘くもないという気がいたします。  ですから、今の国、地方を通ずるいわゆる行政の仕組み、ここに問題はあろうかと思いますが、いわゆる中央政治をどう巧みに誘導をし利用をしようかという、表現が適切であるかどうかわかりませんが、自治体側の首長にはその意図があることは当然でございますし、またそれなりに任命権者は、その要請をすることは任命権者がするわけでありますから、そういうもろもろの目的意識を持ちながら、巧みにその力を利用するというか、新しい知識を吸収したり、あるいは国と地方の行政の仕組みの中でそれが有効に作動するように懸命な努力を払っているというふうに思いますので、ただ単に天下り人事というふうに私は理解もしたくないし、これからもまた相互の交流をすることによって鎖国ではない新しく開かれた地方自治体が生まれると、そういうことを期待をしてまいりたいと思います。
  41. 山口哲夫

    山口哲夫君 いろいろとおっしゃいますけれども、私は人事というものは非常に重要な、各自治体運営をやっていくためには大事なかなめになっていると思うんです。そういうところに政府の要職にある人たちを迎えてやるということについては、どんな理屈をもってしても、やりばり政府考え方というものがその中に浸透していくことはこれは間違いありません。そして、さっき言ったように現場の職員にしてみると、政府の方から天下ってきて采配を振るう、自分たちが幾ら一生懸命やって課長になり部長になって本当に住民のためにいい政策をやろうと思っても、それがどうもやっぱり思うようになっていかない、そういう気持ちを多くの職員というのは非常に持っていると思うんです。  だから本当に住民の方々に信頼されるような自治体にしようと思ったら、まず人事の中からそういう天下り的なことはやめるべきだ、そして職員がみんな意欲を持って働けるようなそういう環境を、むしろ自治省みずから、政府みずからつくってあげるのが役割でないかなと私は思うんです。そういう点では今の自治省でいえば人事交流、このやり方については私は極めて不満を持っておりますし、今までいろいろと申し上げましたので、ぜひひとつ検討をしてやってもらいたい、そういうふうに思います。  そこで、具体的な問題に入りますけれども大臣も先ほどから、県の要請に基づいてやっているんだ、原則的には県の要請なんだということが盛んに出てくるんですけれども、私はそれは違うと思います、形はそういうふうになっているかもしれないけれども。それで幾つかの面についてちょっと聞いてみたいと思いますが、まず青森県で、ちょっと古いんですけれども、一九七五年の四月に副知事が組合との交渉の中でこういうふうに言っているんです。「近年各省庁から来ている人が多くなっていることは感じている。この中では確かに要らないものもある。」これは副知事の意見、現在知事をやっていらっしゃる北村さんですが、この方が副知事の時代にそういうふうに言っているんです。中には要らないものもある。組合の方では、これは明らかにそういう点からいけば押しつけ人事にほかならないだろう、こういうふうに主張しているんです。  現に副知事自身が組合と話し合いになるとそういうことを言っているんですけれども、これはどうですか。
  42. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 具体論は後で政府委員の方から答弁をさせますけれども、私の短い狭い体験でございますが、私は茨城で県議会の議員をし議長をいたしたことがございます。そして当時の知事は現在参議院議員として本院におられる岩上二郎先生であります。やはりあの当時私どもは、茨城をどうすればよくできるか、そういう観点から、確かに鹿島開発を行い、あるいは研究学園都市の誘致をし、もろもろのことをやってきたわけでありますけれども、どうしても地方自治体の中で育った方だけでは発想なり手法なりに限界がある。ですからこの際は建設省から持ってこようとか、あるいは通産省から持ってこようとか、あるいは自治省から持ってこようと、そういう力を巧みに利用して県政の発展を図ってきたことは現実でございます。  ですから、地方自治が本当に振興されるということであれば、いわばその任命権者、首長がそういう見識とそれから実行力を持ってやるのならば、ただ単に天下りとか交流という意味ではなくて、やはり中央には中央のエネルギーがあるわけでありますから、それをどう巧みに地方自治の中に生かしていくことができるか、そういう意欲を持つことも私は大切なことであろうかと思いましたので、あえて狭い乏しい体験でございますが先ほど申し上げましたのも、私は自分の自治体における十五年間の議員活動を通じて体験をし思ったことを率直に申し上げたまででございまして、それが全国的にどうなっているかということに関しては残念ながら承知をいたしておりませんが、そういうやり方も現実に地方自治体の中では取り組まれているということも御認識をいただきたいと思います。
  43. 山口哲夫

    山口哲夫君 今大臣のおっしゃったようなそういう考え方でやられる県もあると思うんです。しかし、結局それはせんじ詰めていけば、建設省の補助金も欲しい、あるいは農水省の補助金も欲し い、そういうポストにこういう人を持ってくればそこがスムーズに行くだろうというような、自治体と国との関係の中でそういう補助金行政のようなものがあるから、それを少しでも有利にしていくために何とか人を持ってこようと、私はそういる魂胆が県側にもあるのじゃないかと思うんですよ。ただ、大臣がおっしゃるように本当に純粋に技術的なものを学びたいということもあるでしょう。それならば何もそのポストにまで持ってこなくたって、そのポストにまで国家公務員をつけなくたって、幾らでも技術的な指導を仰ぐようなやり方というのは私はあると思うんです。  そこで、もう少し続けますけれども、これは一九八三年の五月二十一日に青森県の組合が山内副知事と交渉しているんです。副知事はこうおっしゃっているんですね。「自分としては組合の要望通り頑張ってきた。」ということは天下り人事はやめるということですね、人数を減らせということです。「昨年、道路建設課長と川内ダム建設事務所長の一名が帰るとき建設省からまた頼まれたけれど、拒否して、地元採用をしてきた。」確かにダム建設事務所長は地元採用したようですね。組合は「努力はわかる。今回の河川課長人事も拒否して地元登用をはかるべきだ。県から建設省に要請したのか。」副知事は「県からは要請していない。」こう言っているんです。県からは要請していない。「建設省から頼まれて、双方話し合って決めた。」  建設省、いかがですか、これでも要請に基づいてやったというんですか。
  44. 斎藤衛

    説明員(斎藤衛君) 今の件につきましては、私ども県の方からいろいろ御相談を受けまして、その上であっせんをさせていただいたというふうに理解しております。
  45. 山口哲夫

    山口哲夫君 要請に基づいてやったのではないんですね。
  46. 斎藤衛

    説明員(斎藤衛君) 県の方から、適任者をいただきたい、こういうお話を承ってやっております。
  47. 山口哲夫

    山口哲夫君 それでは何年の何月何日に、県のどなたからそういう要請の文書が来ているんですか。
  48. 斎藤衛

    説明員(斎藤衛君) 口頭でお話を承っております。
  49. 山口哲夫

    山口哲夫君 何年何月何日にどういう方から口頭で話があったんですか。そのぐらいの記録というのは役所側であれば当然とっているはずですよ。
  50. 斎藤衛

    説明員(斎藤衛君) 今はちょっと手元に持っておりませんが、そういう御要請をいただきまして、そして建設省としてもいろいろと検討をいたしました結果、その当時千葉県の中にいい方がいらっしゃるということで、千葉県の方を御推薦申し上げております。
  51. 山口哲夫

    山口哲夫君 だれをということでないんです。私は質問通告で申し上げてあるはずです。この人事については、要請だったら要請書があるでしょう、もしないというのであれば、何月何日にどういう方から要請があったのか、そのことだけでもここで答えてくれるように用意しておいてくださいと言ってあるんです。だから、そういうものがないということは、私はこれはあくまでも一方的におたくの方から押しつけたというふうに解釈しますけれども、どうですか。
  52. 斎藤衛

    説明員(斎藤衛君) 多少お言葉を返すようで大変恐縮でございますが、先生指摘の池田さんにつきましては、千葉県の職員の方が青森県の方へ行っておりますので、千葉県の方に対しまして割愛の申請の文書が来、それからまた千葉県知事から青森県知事に対しまして、職員の割愛につきましての御回答の文書がやりとりされております。
  53. 山口哲夫

    山口哲夫君 だから具体的に文書をもって、あるいは口頭でもいいけれども、どういう人が建設省の方に対して正式に要請したという、そういうものはないわけでしょう。だからそういうものが提示されない限り、協議したといっても私たちの方としては、それじゃ協議したというのだったら、県側から要請されてやったと言うんですから、いつ県の方からそういう協議の申し入れがあったんですか。
  54. 斎藤衛

    説明員(斎藤衛君) 大変恐縮でございますが、この割愛申請書のペーパーはあるのでございますが、ちょっと今手元の中には日付が入っておりませんのであれでございますが、五十八年五月十五日付で割愛の申請をされ、それからまたその回答の方でも、五月十一日付御依頼のあった件については差し支えがありません、こういう回答が千葉県知事から出されております。
  55. 山口哲夫

    山口哲夫君 ちょっと聞き漏らしましたけれども、五十八年の五月の何日に青森県の方からあったんですって。
  56. 斎藤衛

    説明員(斎藤衛君) これは文書に書いてある範囲内でございますが、青森県の方から千葉県知事に対しましての割愛申請につきましては、この文面からいきますと、五月十一日付で御依頼があったというふうに書かれております。
  57. 山口哲夫

    山口哲夫君 どうも納得できないんです。これからいけば建設省は全然介入してないようにさえ見えるんですけれども、実態はどうもそういう県同士のやりとりでやったものではなくして、県の方で中に入ってそういうふうにやったというふうに私ども承知するんですが、これ以上突っ込んでも事実関係は明らかにならないのでその辺にしておきます。  副知事は交渉の中でこんなことを言っているんです。青森県の天下りというのは「全国的にも多い方と思う。人事に関わる件なので、何年に何人とは言えないが、だんだん減らしていく。」組合の方は、「だんだん減らす、とはどういうことか。」副知事は、「年を追って減らしていくということだ。」組合の方は、「今年より来年は増えることはないと考えて良いのか。」副知事は、「何年にどのポストを落とすとは言えないが、彼等はどうせ帰るのだからその時に少しずつ」減らしていく、こう言っているんです。そして確認書において、「現状の天下りを増やさず、来年度以降減らしていく。」そして「県職労の要求を念頭におき、総務部長を含む部長ポストについても漸減する。」、こう言っているんですけれども、一向に減っていないようなんですね。そういうことを見ても、これは明らかに政府側から押しつけているというふうにしかどうしてもとれないと私は思うんです。  そこで、もう一つ事例を聞きます。これは農水省です。八七年三月二十四日付で組合の委員長から現在の板垣山形県知事に対する「天下り人事に係る申し入れ」という文書があるんですが、この中で、「昭和五十七年七月三十一日の副知事交渉において「中央人事については、今後とも漸減するよう努力する」ことを確認しているにもかかわらず、漸減どころか増加することとなり、また昭和五十九年三月三十日の副知事交渉において「農政課長の本省人事が固定しないよう次の機会に考慮する」との回答があるにもかかわらず、またも天下り者を配置しようとしています。」こういうのがあるんですけれども、現在山形県の農政課長というのはやっぱり農水省から行かれているんですか。
  58. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) 山形県の農政課長につきましては現在農林水産省から行っております。
  59. 山口哲夫

    山口哲夫君 それは県の要請に基づいてやっているんですか。
  60. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) 先ほどからいろいろお話がありますが、山形県の農政課長につきましても県側の要請は基づいてやっております。
  61. 山口哲夫

    山口哲夫君 それじゃ先ほどと同じように、何年何月にどういう文書で要請が来ているんですか。
  62. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) 県からこういうお話がある場合には一般的に公式あるいは非公式の話し合いが行われてきておるわけでございまして、我々は何月何日にどういう話があったかとかという記録は持ってはおりませんが、最終的には割愛文書という形で申請が来るわけでございまして、今お話しの場合でございますと、六十二年三月二十日付で県から文書をいただいております。
  63. 山口哲夫

    山口哲夫君 農政課長について割愛をしてもら いたいという文書ですか。
  64. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) おっしゃいましたように、農政課長として採用したいから割愛をくださるようにお願いいたします、そういう文書でございます。
  65. 山口哲夫

    山口哲夫君 県の方の文書の名前はどなたですか。
  66. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) 山形県知事からの文書でございます。
  67. 山口哲夫

    山口哲夫君 交渉の中では、なるべくそういう人事については固定しないように努力するんだ、こう言っているんですよ。副知事がなるべく農政課長というのは固定しないように努力すると言っているんですから、そういう中で県の方から割愛してくれという文書が来るということは、我々としてはちょっと考えられないですね。  だから、一応県側の要請に基づいてやっているという形をとらざるを得ないと、そういう立場から、悪く解釈すれば、農水省の方としてそういう文書を一札出してくれなければ困るんだと、そういうやり方をしているのじゃないですか。私どもとしてはそういうふうに感ぜざるを得ないんですがね。
  68. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) 我々といたしましては常に強制にわたるとかあるいは押しつけになるというようなことはないようにしておるわけでございまして、この場合におきましても、県と当省との話し合いの中で、県側といたしまして、いろいろな情勢、あるいはどういうようなメリットがあるかデメリットがあるかというようなことを判断した上での結論ではなかったかというふうに考えております。
  69. 山口哲夫

    山口哲夫君 交渉の中では副知事は、できるだけ漸減をしていきたいんだ、そして特定のポストを固定させるようなことにはなるべくしないようにしていきたいんだというようなことを言っているわけです。そういう中で同じようなことが繰り返されているということは、県側からはそういう要請がなくても、やっぱりおたくの方でいろいろと人事の配置とかそういうことを考えて押しつけているというようにしか私どもとしてはどうしてもとれない。だから今後そういうことがないように十分努めてほしいと思うんです。  文部省にも聞きたいんですが、文部省は各県の教育長を初め次長とか課長とか随分たくさん行っているんですけれども、例えば北海道にも社会教育課長のポストで行かれているんですね。それで昭和五十九年の九月一日、組合と教育長との交渉の中で教育長がこういうふうに言っているんです。「文部省からの人事については、今日まで漸減に向けて努力を重ねて来たが、結果的にその実効をあげることができなかったことは遺憾であり申し訳ない。」こう言っているんです。  ということは、道の教育長の立場からすれば、そういう天下り人事というのはできるだけ漸減していかなければならないという考え方があるからこういう意思表明をしていると思うんですけれども、依然として同じポストに文部省の職員が天下っている。これでもやっぱり地元の教育長からの要請なんですか。もしそうだとすれば、何年何月何日にどういう文書で要請があったのか教えてください。
  70. 佐藤次郎

    説明員佐藤次郎君) お答え申し上げます。  都道府県教育委員会に対しまして文部省からも二十九名の課長以上の者を推薦申し上げ、現に職員としてついているわけでございますが、御指摘の北海道教育委員会の五十九年の人事の件につきましては、北海道教育委員会と事前に十分に協議をいたしまして、文書といたしましては、昭和五十九年八月二十八日付で北海道教育委員会教育長から文部省大臣官房人事課長あてに、社会教育部社会教育課長の職として森澤良水を割愛をしてほしい旨の文書が来ております。  なお、先ほど同一ポストというお話がございましたが、前任の者は教育委員会の企画調査課長でございまして、ただいまの森澤につきましては社会教育課長、こういうことになっておりまして、その後はまた企画調査課長と、北海道の場合はポストが固定的でなくて常にポストとしてはかわっているということをちょっと申し上げておきたいと思います。
  71. 山口哲夫

    山口哲夫君 いろいろと今まで事例について尋ねてきたんですけれども、時間もありませんのでこれ以上事例を出している余裕がありませんが、共通して言えることは、各省庁とも県の要請だとこうおっしゃるんです。しかし県の方で副知事とか教育長交渉をやると、できるだけ減らしていきたいんだ、そういう努力をしているんだ、こう言うんですね。どうしてもつじつまが合わないんです。だからそれを私ども考えれば、県の方ではそういう漸減をしたいという気持ちを持っていても、政府の方から、回さなければ定数からいってもはみ出てくるわけでしょう、そんなようなこともあり、私は、話し合いという格好だとは言うけれども、やっぱり一方的に押しつけて県の方を納得させているというふうに感ぜざるを得ない点が交渉の中で随所に出てくるわけですね。  そういうことで、表向きは要請だ要請だと言っているけれども実態は必ずしもそうではない、そういうふうに考えますし、先ほども言いましたように、こういう人事のやり方というものは地方自治体の自主性を損なうものにつながってまいりますので、今後こういうことのないように各省庁に特に強く要請をしておきたいと思うんです。  それでもう一つ、人事交流とおっしゃっている天下り人事について私なりにちょっと調べてみたんですけれども、本当に人事交流というのであれば、例えば自治省の方がどこかの県に行って県で二、三年勉強して帰ってくる、そういうのならわかりますよ。しかしそうではなくして転々と自治体を渡り歩いているという方も随分いるんですね。  例えば一例を申しますと、名前は伏せますけれども、大学を出てすぐ自治省から東北のある県に行くんですね。これは平で約五年間くらい勉強するんですけれども、帰ってくると自治省だとか、それから外郭団体に二年間出まして、その次、今度また近畿の県に行って二年間働く。その後今度は中部の県に行きまして一年四カ月働いて、そして政府の方に防衛庁の職員で帰ってくるんです。それで二年四カ月働くと今度は北陸の県に三年五カ月行って、それからまた自治省に帰ってきて二カ月だけいて、今度は別な自治体にまた一年六カ月行くんです。そして帰ってきますと、今度は政府とか政府の外郭とかずっといろんなところを渡り歩いているんですね。こんなふうにまるっきり各県を転々と歩いている。  それからもう一人の方は、採用されて三カ月だけおって県に出るんですね。昔は発令するとすぐ、二十人採用すると二十人全部県に張りつけたらしいですけれども、最近は三カ月だけ自治省におって、その後今度各県に出すんですね。この方は信越の県に二年九カ月いるんです。帰ってくると、どういうわけか今度国土庁に入るんです。それから自治省に来て、それから北陸のある県に行って土地対策課長を一年やり、税務課長を一年やり、地方課長を一年やり、財政課長を二年やって、また自治省に戻ってきて一カ月おって、今度は大蔵省に行って二年働く。その後また自治省に帰ってくる、こういうやり方。まだたくさんありますよ。  もう一つだけ例を言っておきますと、東大を出て自治省に採用されてすぐ東北の県に行く。これは若いときですから四年間勉強するんです。ところが今度は東海の県の教育委員会に一年二カ月行くんですね。そして自治省に帰ってきて二年間おったら、また今度信越の県に三年三カ月行って、戻ってきて自治省に三年いて、それから今度は近畿のあるところの地方課長を一年、財政課長九カ月、参事十カ月、教育委員会の部長二年二カ月、そして最後は総務部長を務めて、それから今度消防庁に帰ってきて外郭をずっと回るんですね。こういう方が随分いらっしゃるんです。  だから、人事交流というのなら、県の職員と自治省の職員とが交流して、そして二、三年なら二、三年地方自治体でしっかり財政なら財政を勉 強してくる、あるいはその後もう一年か二年財政でなくて別なところを勉強するとかというのならわかりますけれども、一人の人間がこんなふうに幾つの県も転々と歩く。ひどいのになると、たった一年間だけで課長をやめてまた次の課長を一年間やる。これで人事交流ということになるでしょうかね。まるっきり地方自治体のポストを食い物にしているとしか我々には考えられないんですけれども、どうですか。
  72. 持永堯民

    政府委員(持永堯民君) 具体的な事例について幾つかお述べになったわけでございますけれども、私も具体的にどういうケースかちょっとすぐ頭に浮かびませんけれども、いろいろケース・バイ・ケースで非常にかわる場合が多いケースも出てくると思います。しかし基本的には、先ほど来申し上げておりますように地方自治省との交流ということでやっているわけでございまして、自治省に帰った場合に国の中で国土庁とか大蔵省とかいうところに行くというケースも、これは今度は国の役所間の交流がございますからそういうケースも当然出てまいるわけでございます。  ということと、それからもう一つは、同じ県の中でも例えば一年間何課長、一年間何課長というお話でございましたけれども、ここはまさに、先ほど来申し上げておりますように、一遍県に行った以上はどのポストにつけるかということについてはあくまでその県の知事あるいは市長にお任せしているわけでございますから、そういったことで、任命権者の判断によってそういうような措置がなされているというふうに考えているわけでございます。基本的にはやはり交流という考え方で進めてまいっているという点について御理解いただきたいと思います。
  73. 山口哲夫

    山口哲夫君 そうしますと、Aの県から自治省にこういうポストが欲しいからぜひ下さいというような要請じゃないんですか、今の話を聞いていると。発令するのはそこの県の責任なんだ、だれでもいいからくれというのですか。
  74. 持永堯民

    政府委員(持永堯民君) 最初県に参りますときは、例えばAの県でどういうポストに人が欲しいという話がありますけれども、その県の中で今度は違う課長に移るということは、これはもう一切その地方団体にお任せしているわけでございますから、そこは私どもと一々協議と申しますか相談というものはないわけでございます。ただ、そういうふうにかえますという連絡はある場合もございますけれども、基本的にはその県の中でどう動くかはその県の問題というような形になっております。
  75. 山口哲夫

    山口哲夫君 それじゃ人事交流にならないのじゃないんですか。県の方では、財政課長なら財政課長にこういうポストの人が欲しいのだからと言って自治省に頼んで来てもらうわけでしょう。だから財政課長を二年なら二年やったら帰すのが当たり前じゃないですか。それを勝手にほかの方に発令するということはこれはどうなんですかね。
  76. 持永堯民

    政府委員(持永堯民君) 県との交流と申しましても県の中の一つのポストに限っての交流という意味ではございませんで、その県の例えば課長相当職という意味での交流というふうに理解いたしております。しがたいまして、県の中で一つのポストしかやらないというケースもございます。ございますが、多くの場合は課長職を二つぐらい、あるいは三つぐらいやるということになっておるわけでございます。
  77. 山口哲夫

    山口哲夫君 それは、ポストを指定をしないでやるということは全く我々が考えている人事交流とは違うんですね。単に自治省から二人か三人下さいとか、どこの人を何年間くらいかしてくださいとか、そんな大ざっぱなやり方なんですか。それだったら、先ほど来大臣がおっしゃるように、政府の相当知識のある人をこっちの方へ連れてきて、そしてこの部署で一生懸命その知識を活用して県のために働いてもらうということにならないのじゃないですか。ただ交流ということで何人か下さい、あとは県の方で適当にやるんだ、しかも二年たったらほかの方にも回すかもしれない、中には今度別な県に飛ばすかもしれないとか、そんなやり方で、さっき大臣がおっしゃったような政府立場にあるその知識を本当に活用できると、そういう交流になっていないと思うんですがね。
  78. 持永堯民

    政府委員(持永堯民君) ちょっと舌足らずだったと思いますが、県でいわゆる交流という形でやる場合に、ケースによっては、例えば財政課長なら財政課長を二年なら二年務めてまた交流するというケースもございます。しかし一方で、特定のポストではなくて、もっと広い幅でもってポストを考えましてそこで交流をする。そして県に来た場合に、初めしかるべきポスト、もちろん何らかのポストにつくわけでございますが、その人間の能力なりあるいは仕事のやり方なりによりまして任命権者が違うポストにつけて、新しい違うポストで仕事をしてもらいたいというケースも当然あるわけでございまして、そういう意味で、具体の一つ一つのポストについてだけが交流という意味ではございませんで、もっと幅広く、いわゆる県全体と自治省との交流、そういうような御理解をいただきたいと思います。
  79. 山口哲夫

    山口哲夫君 そういう考え方でやっているから、自治省に、それじゃ具体的に各県にどのぐらいの職員が行っているか数字を出してくれと言っても、約何人としか出てこないわけですね。約というのはどういうことですかと言ったら、そんな人事記録は持っていないんだと、こういうわけです。しかも、五年間の人員について教えてくださいと言ったら二年間しか持ってこないわけですね。前のはどうしたんですかと言ったら、一々調べなければわからないというんです。  私は人事なんてそんな甘いものじゃないと思うんです。それじゃ出された人にとったってたまったものじゃないですよね。自治省はおれを出したけれども一体この先どう考えているんだろうかな、おれの履歴はもう自治省の中に残っていないのかななんて、そんなことにもなりかねないと思うんですよ。そういうあいまいな形で交流をやっているということについては非常に疑問を感じるわけです。  もう少し詰めたいところですけれども、ちょうど時間になりましたのでやめますが、私は結論として、こういう人事のやり方というものは地方自治の本旨に反するものであるし、地方自治をいわば形骸化させる、政府考え方地方自治体をだんだん支配していくということにつながりかねない、そういうふうに思いますし、どうしてもやらなければならないというのであれば、さっきも言いましたが、総理が言ったように優越感を持たないように、課長なら課長、部長なら部長というような対等のポストでもって、しかも指定されたポストに話し合いでやる。ただ二年間なら二年間県にやるから適当に使えなんて、そんなやり方ではないようにしてもらいたい。  特にこの問題については、県に働く職員、政令都市に働く職員にとっては今後の意欲にかかわる非常に大きな問題だけに、県の職員の組合、政令都市の職員の組合、そういうところともよく協議をして了解の上にやってくれることを強く要請して終わりたいと思います。  そのほか大分細かい問題で質問通告をしておりますけれども、時間がありませんので後刻に回さしていただきまして、終わります。
  80. 田辺哲夫

    ○田辺哲夫君 私は、警察庁予算に関連いたしまして、テロ、ゲリラ等の対策につきましてお尋ねいたします。  過般全世界を震憾させました大韓航空機爆破という陰湿なる事件がありました。政府、またはマスコミ等の報道によりまして、国民の大多数は北朝鮮の犯行であると信じております。そしてその犯人と目されます金賢姫は、一九七二年に平壌で韓国代表団に花束を渡した少女の写真がありますが、これが自分であると自供しておるところであります。ところが本年の三月十五日の朝鮮総連の発表によりますと、その写真の少女は金さんでなく鄭姫善という少女である、こんな発表がなされたわけでございます。  警察庁におかれましては韓国に係員を二回ほど派遣して実情調査をやっておるところでございま すし、との写真につきましても強い関心を持ちましていろいろ調査研究をしておると私は思います。もしこの写真が金さんでないといたしますと、金さんの供述というものは大変間違っておる、この事件そのものに大きな一点の疑惑が生ずるという結果になります。私は極めて大切な事柄であると思いますので、もし警察庁でお差し支えなければ、この写真の人物はだれか、その真実を知りたいわけでございますので、お尋ねいたします。
  81. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  金賢姫の供述は全体として極めて自然であり、かつ具体的でございまして、これは一月十五日のテレビの公開インタビューでも明らかでございます。御質問のように、警察庁におきましても係官を韓国に二回派遣いたしまして聴取に当たっておるわけでございますが、同じような心証を得ておるところでございます。また、同人の供述した事柄についての裏づけも数多く得ておりまして、金賢姫の供述は信憑性があるものと判断をしております。  お尋ねの花束を持つ少女の関係でございますが、私どもにおきまして科学警察研究所の専門家によりまして顔の形態学的検査を実施いたしましたところ、御指摘の花束を持つ少女は、顔の形、耳の形、下あごの形などから見て金賢姫との同一性が認められますが、鄭姫善なる者との同一性は認められなかったという結果を得ております。
  82. 田辺哲夫

    ○田辺哲夫君 次に、去る二月六日衆議院予算委員会におきまして共産党の正森委員から、政府はテロに対し泳がせ政策をとっておる、こういう発言がございました。これに対しまして浜田前委員長の共産党官本議員云々という発言がありまして国会が大きく紛糾いたしましたことは御案内のとおりでございます。この問題はマスコミ等で大きく取り上げられまして、政府がテロを泳がしておると、この論議が国民に強く印象づけられておるのでございます。竹下総理も直ちにこれを否定したところでございますが、その後赤報隊と称する一味が朝日新聞の静岡支局を爆破したとか、これは未遂でございましたが、また中曽根前首相に脅迫文を出したとか、またサウジアラビア航空に対しまして過激派が時限爆弾によりまする爆破をしたと推定されるようないろいろな事案が続出しております。  国民の中にはこの泳がせ政策はあるいは本当かなというような一点の疑惑が生じておる憂いもあるわけでございまして、私はこの際、治安問題を担当する当委員会におきまして国民の前でこれをはっきりさせたい、こんな考えからまず警察庁にお尋ねいたしますが、政府から泳がせ政策を指示されたことがあるか、また警察庁は泳がせ政策をしていたことがあるか、もしこれを否といたしますると、テロ等に対しどんな基本的態度で臨んでいたか、これをお尋ねいたしたい。  次に、梶山国家公安委員長に対しましてこの問題をお尋ねいたしますが、政府は過去、現在、テロ等に対しどんな基本的考えで対応していたか、将来はどのような考えでこれに対処するのか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  83. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 警察が極左暴力集団を泳がせているというようなことは全くございません。このことは、極左暴力集団の取り締まりに当たりましてこれまで十一名のとうとい殉職者や二万人に及ぶ負傷者を出しながら、極左暴力集団の壊滅を目指している私どもの姿勢からも御理解いただけると思います。今後とも断固として極左暴力集団を取り締まってまいりたいと思います。
  84. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 極左暴力集団が法と秩序を乱し暴力を用いて事を遂げんとすることは、断じて許されるべきことではございません。警察としては総力を挙げて極左暴力集団の違法行為を取り締まってきたところでもあり、今後ともこの基本方針のもとに治安の確保に万全を期してまいる所存でございます。
  85. 田辺哲夫

    ○田辺哲夫君 国家公安委員長並びに警察庁より毅然たる所信をお聞かせいただきまして、安心したところでございます。  ところが、一般刑事事件に比べましてこのようなテロ、ゲリラ事件の犯人検挙率は極めて低いわけでございます。これは私が推測いたしますのに、犯罪の国際性、地下性、またはハイテク等を利用いたしまするところの手口の巧妙性、こんなところに起因するとは思いますが、ひとつその辺の犯人の検挙率が低い原因またはその犯罪の特異性、こんな点につきまして簡単に御答弁いただきたいと思います。
  86. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  テロ、ゲリラ事件の検挙が困難な原因につきましてはただいま御指摘のようなことがございますが、とりわけ、一般刑法犯が主として個人による犯罪であるのに対して、極左のテロ、ゲリラ事件は組織によって計画的に実行される点にあると思われます。特に、極左暴力集団のうちでテロ、ゲリラ事件を敢行しておりますのは地下に潜っているいわゆる非公然軍事部門と言われているメンバーでございまして、これらの者は厳しい規律のもとで訓練され、お互いに相手の本名さえわからないほどの厳格な防衛体制をとっておるので容易に捕捉ができないということであります。しかも、犯行は、事前に綿密な調査を行いまして、現場で逮捕されない場所をねらって敢行するということであります。また、多くの場合ハイテクを利用した時限装置を使っておりますので、事件が発生したときには既に犯人は現場から遠ざかっておる、あるいは犯行に使用した車両等も燃やしてしまうといったような徹底した証拠隠滅工作を行っておるわけでございます。  こうしたことから捜査は大変困難が伴うのでありますが、粘り強い捜査によりまして、昨年は、地下に潜行していた成田、羽田両空港に対する爆発物発射事件の犯人とか、東京サミットのときに迎賓館に向けて爆発物を発射した犯人などを逮捕しております。また最近では、福島県下で中核派の非公然軍事要員三名を逮捕するとともに大量の爆薬を押収しておるところでございます。
  87. 田辺哲夫

    ○田辺哲夫君 昨日は成田空港第二期工事阻止のための大会がありました。警察庁の御努力によりまして何ら不祥事は起きなかったわけでございますが、成田空港というものは日本の空のかなめでございますし、また日本の国際的信用のかなめでもあるわけでございます。六十三年度警察庁にも七十二億円という予算がついておりますが、これで十分かどうかはともかくといたしまして、ひとつこの警備に万全を尽くしていただきたいことをお願い申し上げます。  また、今のいろいろの答弁を聞きまして、テロとかゲリラ等を未然に防止し犯人の検挙率を上げるにはどうしても警察力の充実強化というものが必要だと思います。治安の確立というものは民主主義の原点でございますし、政治の大きな責務でもあるわけでございます。この警察力の充実強化にはいろいろの要素がございますが、主たるものは警察官の量と質の充実、装備の充実、これに帰するわけでございまして、これには当然予算措置というものが必要でございます。ひとつ国民生活を安定させていただくとともに日本が国際的にも信用を受けるように、政府としてぜひともこの警察力の充実に意を尽くしていただきたい。そして万全を期していただきたい。こんなことを考え梶山国家公安委員長に警察力の充実につきましてひとつ意のあるところを御答弁いただきたいと思います。
  88. 城内康光

    政府委員(城内康光君) それでは私から第一点の成田空港警備に関しまして御答弁いたします。  成田空港の警備は、現在供用されております空港、それから航空燃料パイプラインの安全を図りながら広範な工事区域にわたる警備を実施しなければならないという問題点を抱えておるわけでございますけれども、千葉県警察を中心に全国警察が一体となって警備の万全を期する方針でございます。
  89. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 極左暴力集団によるテロ、ゲリラ事件は、国民の平穏な生活を根底から破壊しようとするもので、民主主義に対する重大な挑戦であり、断じて許さるべきではありませ ん。警察としては、現在の人員、装備等を最大限に活用するとともに、これらの今後一層の充実強化に努め、市民社会の安全確保に万全を期する所存でございます。
  90. 田辺哲夫

    ○田辺哲夫君 よろしくお願い申し上げます。  次に都区制度の改革という問題につきまして御質問申し上げますが、まず都区制度の改革とは何かといいますと、東京二十三区は今特別地方公共団体でございます。これを普通地方公共団体すなわち基礎的自治体に格上げする、そしてそれに伴いまして自治権を拡大する、これが都区制度の改革であります。  実は昨年の九月三日、当委員会におきまして私は葉梨自治大臣にこの問題を質問いたしました。葉梨自治大臣は、十分理解し、地方制度調査会の結論を待って最大の努力をすると、このようなお話でございましたが、ひとつ梶山自治大臣からこの問題につきまして御認識のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  91. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 特別区及び特別区住民の自治権拡大運動は、東京における地方自治の一層の充実を図ろうとする真剣な気持ちのあらわれでございまして、二十一世紀における都区制度のあり方考える上で重要な運動であると理解をいたしております。
  92. 田辺哲夫

    ○田辺哲夫君 ありがとうございました。  実はこれは私見でございますが、私は現行の都区制度というものは大変変則的であり矛盾点が多い、このように理解しておるわけでございます。それを概括的に申し上げますならば、まず形式面でございますが、憲法の地方自治の規定に基づきまして地方自治法というものが制定されておる。そしてこの地方自治法によりますと、基礎的自治体といたしまして市町村、広域自治体といたしまして都道府県というものが設けられることになっておりまして、我が国の地方自治体はいわば二層制、二重の地方公共団体によって地方自治を賄う、そして住民の福祉向上を図る、こういう建前でございます。ところが東京二十三区だけは二層制になっておりません。一つだけでございます、都道府県だけ。区というものは特別地方公共団体でございまして基礎的自治体と認めてない。だから全国で唯一の例外である。こういう憲法上または地方自治法上一つ矛盾点がある。  また、この実態面をちょっと申し上げますと、東京二十三区には八百三十五万人の人間が住んでおります。昼間人口は一千百万人、昼は全人口の一割というものがここにいるということで、人口的には極めて大きな割合を占めており、また予算等におきましても普通会計で約二兆円弱という予算がある。そしてまた区長は公選制であり、議会制度がある。実態面におきましても市町村に準ずる格好を持っておるし仕事もしておる。これが特別地方公共団体であるということはどうしても私には理解できない。やはり普通地方公共団体、基礎的自治体にするのが正しい道ではないか、このように信じておるのでございます。  そしてこの運動の背景にどういうところのものがあるかといいますと、これは東京二十三区八百三十五万都民の長年の悲願でありまして、具体的に申しますと、百万人以上の署名による陳情が自治省その他関係機関になされておるわけでございます。そして区長会とか議会すべて全党的に賛成でございます。共産党が若干異論がございますが、これは中身において異論があるということでございまして、基礎的自治体に昇格することには共産党も異論がない。全党的賛成である。  そして昭和六十一年二月十九日、東京都と二十三区で基礎的自治体にしようということで合意がなされておりますし、昨年の知事選挙におきましても鈴木都知事は、都区制度を改革して東京の自治を守る、これを大きな公約に掲げておるわけでございます。また、私が所属しております自由民主党東京都連におきましても、国会議員が三十六名おりますが、この問題を何とか解決しようということで合意しておりまして、小委員会を設けてその推進方を図っておる。私もその小委員になっておりますが、このようにいろいろの機関が一致してこの運動を推進しておるわけでございます。  そこで、何とぞ自治省におかれましては、地方制度調査会が今審議中ではございますが、この運動を理解していただきまして積極的に実現方を図っていただきたい。このことにつき、ひとつ簡単明瞭で結構でございますが、大臣の所感を伺いたいと思います。
  93. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 先ほどもお答えいたしましたとおり、これらの運動は東京における地方自治の一層の充実を図ろうとする真剣な気持ちのあらわれであり、重要な運動であると理解をいたしておりますが、特別地方公共団体を普通地方公共団体とすることは自治制度の根本的な仕組みにかかわる問題でもあり、また、首都、大都市の一体性の確保、こういう問題もございますので、地方制度調査会で十分御審議をいただいてまいりたいと考えております。
  94. 田辺哲夫

    ○田辺哲夫君 地方制度調査会で審議中でございますからそれ以上は言えないと思いますが、地方制度調査会に諮問したということは、その運動というものが正しい、何とか前進させてやろう、こういうお考えで諮問したと思います。諮問いたしましたときの自治省の心境と申しますか、お考えをお願いしたいと思います。
  95. 木村仁

    政府委員(木村仁君) 自治省といたしましては、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、自治権拡大のための真摯な運動と理解し、かつまた都区合意も成立していることでございますので、地方制度調査会の審議にかけて真剣に検討していただく価値がある、こういう判断で御検討をお願いいたしているわけでございます。
  96. 田辺哲夫

    ○田辺哲夫君 ありがとうございました。ひとつよろしくお願い申し上げます。  次に、極めてローカルと思われるかもしれませんが決してローカルでない問題でございますので、御理解いただきまして質問させていただきます。今この国会の所在しておりますのは千代田区でございますが、この千代田区の都議の定数につきまして、私見を申し上げながら質問するわけでございます。実は来年都議選があるということで今都議会は定数是正に全党が真剣に取り組んでおりますが、そこで一番苦慮しておりますのがこの千代田区の都議定数の問題でございます。  この千代田区というものをひとつお考えいただきたいわけでございますが、まず日本の三権分立の頂点の所在地である。国会もそうでございますし、首相官邸、最高裁、中央官庁、すべてこの千代田区に所在しております。また宮城もある。また丸の内に行きますと日本の有数の大企業の本社がある。これは私は極めて大切な場所であろう、いわば日本の頭脳であり心臓部である、こう申しましても過言でないと思いますが、この千代田区の今申しました日本におきますところの重要性の問題につきまして、御認識をお伺いしたいと思います。
  97. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 千代田区は御説のとおり宮城が存在をし、国会、中央省庁、最高裁判所等の国の中枢機関や企業の本社が集中をしている地域であることはよく承知をいたしております。このため、定住人口は約五万人にすぎないが昼間人口は約百万人に達し、昼夜間人口比率は二十倍と他の特別区に比較して極端に高くなっている地域でございます。そういう現状を踏まえて、何をなすべきか今いろいろと考えているところであります。
  98. 田辺哲夫

    ○田辺哲夫君 千代田区を非常に御理解いただきましてありがとうございました。  この千代田区が、最高裁の都議会定数問題の判決によりますと、一票の格差が現時点でたしか三・五倍ぐらいになっておりますから、最高裁の判決に忠実に定数を是正するといたしますと、千代田区は単独選挙区でなくなる、大きな区と合併しなければならない。そうすると、東京二十三区で単独選挙区でなくなるのはこの千代田区だけでございます。  公職選挙法で特例選挙区制度というのがございますが、東京では島嶼が一つの特例選挙区といたしまして認められております。これは最高裁の判 決によりましても、有権者は少ないけれども違法違憲でないということになっております。千代田区というものは今申しましたようほ非常に特異性がある。だから、私どもといたしましてはこれはどうしても単独選挙区にしておくべきではないか。  具体的に申しますと、この国会の水道でも下水でも道路でもみんな東京都政がやっております。そしてこの千代田区の部会議員が都政の窓口になりまして一生懸命働いておる。これは皆さん余り日ごろぴんとこないと思いますが、国会におきましても非常に恩恵を受けておるんです。議員宿舎にいたしましてもみんな水が出るようはなっておりますし下水が流れるようになっております。これは都政の恩恵であり、千代田区の都会議員が一生懸命やっておるということでございますから、都会議員といたしましても非常に重大な役目を背負っておるのが千代田区の都会議員でございます。ところが、これが公職選挙法または最高裁の判決によりますと単独選挙区でなくなってしまう、どこかに吸収されてしまうということで、都議会で非常に苦慮しておる。  そこで、私はお願いでございますが、このような特殊性というものを自治省で十分御理解いただきまして、できるならば来年の選挙に間に合うように何か特別立法をつくってもらいたい、そして千代田区を単独選挙区として残してもらいたい、こんなお願いがあるのでございます。これが島と同じように特例区となりますと、また最高裁に対しましても一つの理由づけにできますが、ところが特例区の要件にも合致しない。実質は今配当基数〇・五を切っておりまして特例区でございますが、国勢調査が昭和六十年を基礎にいたしますから、現時点では形式的にはだめ、実質的には今配当基数〇・五を切っておる、こういう谷間にあるわけでございまして都議会全党が非常に苦慮しておる、こういう実情でございます。  ひとつ日本の中心千代田区が、外国の方が来ても、国会のあるところとして立派である、宮城のあるところとして立派である、水道も下水道も完備しておる、こういう千代田区にしたいわけでございますので、できましたら大臣は御理解を賜りまして、公職選挙法の特別の改正ということで検討をしていただきたいと心からお願い申し上げまして、御所見を伺いたいと思います。
  99. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 公職選挙法では、東京都議会議員の選挙区については原則として郡市または特別区の区域はよることとされておりますが、その区域の人口が都議会議員一人当たりの人口の半数に達しないときは、隣接する他の郡市または特別区と合区すべきであるとされております。昭和六十年国勢調査によりますと、千代田区の人口は五万四百九十三人であります。議員一人当たりの人口九万三千百四十五人は達していないが、その半数以上であるので、合区すべき旨の規定は働かないわけでございます。また、仮に将来において千代田区の人口が議員一人当たり人口の半数に達しなくなった場合においても、公職選挙法二百七十一条二項の特例選挙区として存続し得る道が開かれておるところであります。  なお、今田辺委員の御要請のありました公選法を改正して単独選挙区にすべきであるという御意見でございますが、公職選挙法では都道府県議会議員の選挙区の設定についての一般的な規定を設けており、特定の地方公共団体の選挙区を法律で直接定めることは困難であると考えられますが、選挙区を定める場合、特別な状況はある地域についてどのように考えていくべきかについてはなお今後検討してまいりたいと思います。
  100. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間も短いわけですが、質問に入る前に、先ほどやりとりのございました補助金カットの問題、これは大臣、やっぱり大事なことですから、私からもお願いしておきたいと思うんです。  先ほどから要請もございましたが、何か聞くところによりますと、自治体関係と社会保障関係を除いての補助金については復元した、もしくは復元するというようでございます。ですから、そういう差別的な取り扱いじゃなくて、今度の場合はこれは六十三年度までという期限がございますから、六十四年度についてはきちっと復元させる、こういった努力を私からもひとつお願いしておきたいというように思います。  そこで、きょうは三つほどに絞って御質問したいと思うんですが、一つは、いわゆるふるさと創生論に基づく自治省のふるさとづくり財団、これが報道関係その他でいろいろ取り上げられておるようでございますが、大蔵、通産の方はかなり反対の動きもあるやに聞いております。ある新聞では宙に迷っておるというような見出しもついておるようでございますが、これは一体どういう現状はなっておるのか、自治省側考え方を聞いておきたいと思います。  それからもう一つは、ふるさとづくり特別対策事業、これを六十三年度予算に計上しておるんですが、これに対してまた建設省が反対という報道もなされておる。こういった問題について、まず自治省からどういう現況にあるのか聞きたいと思います。
  101. 津田正

    政府委員津田正君) まず前段のふるさと財団構想でございますが、これは、いわば多極分散型国土の形成をするために、地方におきます公共施設の整備を図ると同時にやはり地方民活というものを図らなければならないのではないか。ところが地方におきます民活と申しましても、民間企業にとっては進出基盤というものは非常に脆弱である。また呼びます地域の方も、正直申しまして財政力というものが非常に苦しい。  そういうような状況もと地方におきます民活事業を活発化するためには、地方団体が自主的な意欲のもとにいわば低利の融資措置というものを講ずる。この場合にも、各団体がばらばらでやるのではなくて、もちろん賛成する団体でございますが、共同して組織をつくりそのような低利資金融資制度というものをつくる。自治省としましては、それに要する資金を地方債で調達をして低利で貸すというわけでございますので、地方団体利子負担に着目いたしまして地方交付税措置しよう、こういうような発想でございます。  このような構想が出されまして、地方団体でもそれぞれ御検討いただいておるわけでございますが、また他面各省庁におきましても、それぞれの省庁におきます施策との調整というものを要するのではないか、このような御意見がありまして、私どもとしましては、種々の点がございますけれども、各省との意見調整を今後とも続けてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから、ふるさとづくり特別対策事業でございますが、御承知のとおり、自治省におきましてはまちづくり対策事業というのを昭和五十九年度から発足させております。そのほか、地域経済活性化、あるいはリーディングプロジェクト、あるいは経済緊急対策、こういうようなことで地域の活性化というものに対する施策をやっておるわけでございます。ただ、まちづくりの場合にはどちらかと申しますと市町村単位の事業が中心で、いわば地域の、それぞれの市町村の抱えておる問題解決を支援するような体制をとっておるわけでございますが、やはり多極分散型国土の形成というためには、そういうような市町村単位というよりももうちょっと広い規模での措置が必要であろう、このように考えておるわけでございます。  手法としましては、まちづくり対策事業と同機は地方債を活用願いまして、それの元利償還金について交付税措置をする。あるいは、地方債と申しましても一〇〇%充当されるわけではございませんので当該年度地方負担があるわけでございますが、その部分につきましても事業費補正等の制度を活用いたしまして、財政力の弱い団体におきましても円滑に事業が進められるようなもの、このように考えておるわけでございます。いわば、ふるさとづくり特別対策事業の方は公共施設中心、ふるさと財団の方は地方民活、こういうような観点で、両制度とも相まって今後の地域振興に役立つのではないか。  ふるさとづくり特別対策事業につきましても若 干の省からいろいろな意見が出されております。そういうものにつきましても十分意見調整をして、そして、何か中央各省で意見が分かれたままやって地方団体に御迷惑がかかるというのは得策ではございませんので、十分な調整を図った上でやってまいりたい、かように考えておるような次第でございます。
  102. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ふるさと財団、地方民活、これは趣旨その他については、私も読ましてもらったんですが、今までにないなかなかユニークな施策を出しておるんですが、具体的に今後どういう日程になるんですか。今各省庁の意見調整ということなんですが、いつごろまでに意見調整を終わって具体的にどういうふうにするのか。  また自治体関係では、これは恐らく自治体の方から手を挙げなきゃならぬわけでしょうが、そういう手を挙げておる自治体は今どの程度あるのか、もう少しそこらを掘り下げてお願いしたいと思います。
  103. 津田正

    政府委員津田正君) ふるさと財団の問題につきましても、実はこの構想はまだ素案の状況でございまして、細部はこれは各省との意見調整も含めて考えていかなければならないわけでございますが、今年一月に地方団体に呼びかけたわけでございます。その後地方団体も御検討いただいておるわけでございまして、予算の計上状況等を見ますと、都道府県は大体全団体がこういう仕組みというのはいいのじゃないかということで、さしあたって出資金を計上しておる状況でございます。それから指定都市につきましても、横浜を除いて予算計上しておるという状況でございます。  私どもも、基本が地方団体の共同組織ということでございますので、各部道府県の議会の御審議の状況ども踏まえ、そして先ほど申しました各省の御意見も十分調整をして早期にこの問題の解決を図ってまいりたい。いつまでというよりはなるべく早急に解決を図ってまいりたい、かように考えております。特別事業につきましても同様な関係で精力的に各省と意見調整を図ってまいりたい、かように考えております。
  104. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大蔵省はこれに何か反対というか特別な御意見も持っておられるようですが、どういうことですか。
  105. 浅見敏彦

    説明員(浅見敏彦君) いわゆるふるさとづくり財団につきましての大蔵省の反対理由といいますか、見解を述べよとの御質問でございます。  まず、地域活性化の重要性という点につきましては、ただいま自治省御当局からも御答弁がございましたし、また梶山自治大臣を初め竹下内閣において大変熱心な取り組みがなされておるところでございますように、今日の我が国にとりまして多極分散型の国家を目指していくということ、すなわちいわゆるふるさとづくりを進めていくということは、私どもといたしましても極めて重要な課題である、かように認識をいたしております。ただ、御質問のこの財団構想というものにつきましては、実は大変大きな問題が数多くあるというふうに考えております。せっかくの御質問でございますので、幾つかの代表的な問題点につきまして簡単に御説明をさせていただきたいと存じます。  まず第一に、政策金融との整合性を損なうという点でございます。  御承知のように、地域活性化のための政策金融といたしましては、まず開発銀行あるいは北東公庫、中小公庫などのいわゆる政府関係金融機関がございまして、それぞれの根拠法及び予算等によりまして定められたところに従い、政策目的に沿った出融資を行っておるわけでございます。さらに、ただいまお話のございましたいわゆる地方民活、すなわち地域活性化のための最近の措置といたしましては、御高承のように、昨年十月に民間都市開発推進機構というものが設立されまして、開発銀行を通じる低利融資制度が発足いたしております。また、昨年五月でございますが、産業基盤整備基金というものがやはり法律に基づき設立されまして、さまざまな債務保証あるいは出資、利子補給等を行っておるわけでございます。  これらはいずれも法律に基づきまして、政策金融全体としての整合性を保ちながら、間接的な融資を行うといったことなどを行っているわけでございます。さらにはNTTの無利子融資制度が法律に基づきつくられ、開銀等を通じまして地域活性化融資を行っておりますことは御高承のとおりでございます。  このように、政策金融の諸制度は国会におきます貴重な御審議を経ましたそれぞれの法律に根拠を持っておりまして、その対象ですとか金利あるいは融資の方法などにつきまして、政策の重要性に応じてそれなりのバランス、整合性、あるいは体系というものができているというふうに考えているわけであります。その理由と申しますのは、これらの制度が原資といたしまして国民の貴重な貯蓄、資産等を使っているということとともに国民の税金も使われるということで、我々国民の負担につながっているからである、かように考えておるわけでございます。  ところが、ただいま御質問の本件財団につきましては、自治体が独自に、全国に一つ民法三十四条の法人としておつくりになるという構想と承っておりまして、しかも極めて広範な対象分野について無利子融資を行う制度であるというふうに承知をいたしておりますので、法律または予算という形での国会での御審議ですとか、あるいは予算編成過程を通じる関係省庁間の調整という手続が基本的にはなかなかとられないといった点で、手続的にも実態的にも既存の政策金融との整合性が保たれ得ない制度になってしまうのではないか、かように考えているわけでございます。  それから第二でございますが、行財政改革の精神に反するのではないか、あるいは議会制民主主義のルールにもとるのではないかというようなことも御指摘をさせていただいております。  と申しますのは、本件財団は、地方債起債あるいは交付税措置など国の制度ですとか国民の税金を使って長期低利融資を実現するための組織でございますから、その本質はいわば地域開発銀行という政策金融機関をつくろうというものと考えてもいいのではないかと思うわけでございます。ところがそのような組織を、法律に根拠のございます特殊法人または認可法人、あるいはいわゆる指定法人というようなものもございますが、そういったものではなく単なる民法上の財団法人としてつくるということは、内容的にはそれらと何ら変わらない組織を事実上国会でのチェックなどの手続を経ないでつくるということに相なりまして、行財政改革の観点からも、あるいは財政に関する議会のチェックと申しますか、財政民主主義のルールからも大きな問題ではないかなと、かように考えているわけであります。  ちなみに、本件構想のような広範な対象に対しまして直接低利で融資する財団というようなものは、現在まで我が国には全く例がないと承知しております。  その他、例えば、個々の民間営利事業への転貸のために地方債起債いたしまして、その利払いを交付税措置するというようなことが果たして妥当かなというような問題点も指摘されているところであります。  以上、時間がございませんので若干の問題点の例示にとどめさせていただきますが、いずれにいたしましても、本件構想につきましては極めて問題があると考えておりまして、今後、地域活性化のための政策金融上の措置に関しましては関係各省ともよく御相談し、政府部内における十分な調整が必要である、かように考えている次第でございます。
  106. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 なかなか大蔵省の意見を聞いてみると、行革精神や議会制民主主義、政策金融の整合性との関係でかなり手厳しいようですね。  これは率直に言って、そういう点は自治省でも立案過程では十分吟味をした上で、なおかつ今自治体の要望にこたえてないという点でなされた発想じゃないかと私は思うんですけれども、これは私の時間が限られておりますからこの議論をやるというのにはちょっと不十分な感じがしますの で、ひとつ大臣、あなたは国務大臣という立場もあるでしょうが、ここら辺の問題についてどういう決意を持ってやろうとなさるのか、またどういう調整をなさろうというのか、こういう点でもし御意見があればいただいてきょうのところはおさめたいと思うんですが、いかがでしょう。
  107. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) いわゆるふるさと財団について、局長からもその理想というか、そういうものについて答弁をさしていただき、大蔵省の見解も聞いたわけでございますけれども、今我々国政の場で何が一番大切かというと、内政の問題ではやはり、一極集中が深刻化をする、加速をする、これをどうやって政治や行政の力で多極分散型国土形成というものに振り向けるか、それぞれの感じ方によってそのウエートは重さあるいは軽さの問題があろうかと思いますが、およそ内政上の一番大きな問題点であるという認識は、私はどなたも各党も同じだという感じがいたします。  そういうことを考え、しかも、絶えず言われている国の縦割り行政の弊害、中央からのみで地方のものを全部律することが果たしてできるのかどうなのか、これを考えますと、今大蔵省が言われたような筋論でのいろんな問題はあろうかと思いますけれども、私は一般的に言って、国の補助制度や融資制度があっても、地方公共団体が自治の権能に基づいて単独政策として上乗せ補助をしたり融資あっせんをしたり同様の制度を創設することは全く自由なものだ。ですから、今までの縦割り的な行政の発想から横軸的な横割りの発想にもう一回転回をしなきゃならない。  これは政治や行政の大変根本的な仕組みの問題でございますが、本当の意味で地方自治を伸長させようという気があったならば、国ないしは国会、そういうもののいわば大きな意味での網の目はあるとしても、地方みずからが選ぶ権利を持たせていいのではないか。そしてまた、それをしなくて地方分権あるいは多極分散型の国土形成ができなかったときに、国家の、国会の、政府責任はどうなるのかということを考えてみますと、私はやはり、みずから持てる自治の権能を生かしてそれぞれの自治体が本気になってやってもらおう、そういう仕組みをつくることが大切だと思います。  ある意味で何か整合性が欠けるのではないかとかいろんなことを言われますけれども、よく私は浪花節的に言うんですが、おやじはいつまでたっても子供が小さく見えて何をやっても危ないと思うかもしらないけれども、おやじ、おふくろが子供にある部分を委任をして任せれば、いかでかおやじよりもおふくろよりも立派にやることも多いわけでございますから、自治省もこの意味で、今度はある意味では門を開いたという気もいたします。  大蔵省や他の省庁が我こそはオールマイティーなりと考えることがいかがなものかという感じもいたしますので、口幅ったい言い方でございますが、総理大蔵大臣やその他とこれからもろもろ協議を調えながら、私はやってやれないことはないと思いますけれども、それはお互いの協調がなければ、江戸のかたぎ長崎ということがあっても悪いわけでございます。地方自治に迷惑のかかるようなことがあっては万々なりませんので、自治省が独走をするようなことではなくて、やっぱり地方の盛り上がる、沸き上がる力にどうやって我我がこたえていくか、私はこれこそ中央政治の責任ではないかと思いますので、懸命な努力をしてまいりたいというふうに思います。委員の御理解や、後ろにいる他省庁の方々の御理解もちょうだいをしたいと思っております。
  108. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 なかなか大臣張り切っていますが、やはり省庁間の話し合いも大事ですけれども、今言われた、これは横の意味での、草の根民活というか、そういう発想であるようですから、これはひとつ大臣が前面に乗り出して省庁調整をやる、こういう決意をぜひ持っていただいてまとめていただきたいということを要請しておきたいと思います。  そこで、もう一つの特別事業に対して建設省の方からいろいろ御意見が出ておるようですが、どういうことかちょっと聞かしてください。
  109. 足立穎一郎

    説明員足立穎一郎君) 建設省でございます。私、恐縮でございますが、特別対策事業について直接所管しておりませんので詳細についてお答えできないかと思いますけれども、聞き及んでおる範囲内で建設省の見解を御説明したいと思います。  ふるさとづくり特別対策事業の内容を見ますと、その対象とします事業の範囲とか事業推進の仕組み等につきまして補助事業制度に極めて類似しておる、このまま実施されるとすれば、現在五カ年計画等に基づきまして計画的に推進しております公共事業の実施体系に混乱をもたらす等の問題もあるというふうに受けとめておると聞いております。  ただ、建設省といたしましては今後とも十分協議に応じる方針であるというふうに聞いております。
  110. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私はこの問題を聞くということで事前に求めたわけですから、担当の方が来なきゃ話にならぬことですが、これは自治省の方で、建設省が具体的にどういう意味合いの意見を持っておるのかということを知っておれば聞かせてもらいたいんです。あわせて、それに対して自治省はどういう考え方なのか。
  111. 津田正

    政府委員津田正君) 私どもが伺っておりますのは、一つは建設省と、公共事業、特に長期計画に基づく事業について、いわゆる公共事業として取り上げるのか、このふるさと特別対策事業の分野でやるのか、そこの仕切りがはっきりしないではないか、こういうようなこと。それから、国の補助事業に対する財政措置と今回の特別事業との財政措置というものの薄い厚いという点について調整してもらわなければ困るのではないかということ。なお、技術的な問題でございますけれども、私ども地方債の許可をする場合にどういうような観点で事業審査をするのか。建設省は、道路なら道路なり、あるいは河川なら河川なりで技術的な検討を含めて査定しておるわけでございますが、そういうものと地方債の許可との関連はどうなるのであろうか、こういうようなことが建設省の方の大体の意向と承っております。  第一点目の公共事業との振り分けというものにつきましては、いずれにしましても基本的には都道府県が、具体的な事業をどちらの事業でやるか、そういうような判断が第一義的でございますが、自治省と建設省なりでもそこらの区分けというようなことも調整が可能ではないか。財政措置の問題でも同様でございます。  あるいは査定の問題にしましても、査定というよりは地方債の判断でございますけれども、私どもの判断というものは、財政状況等の観点であるとか、事業ごとの適債性の観点であるとか、あるいは総体の範囲内におきます、要するにこの地域は教育関係を重視した方がいいのか産業基盤関係を重視した方がいいのか、そういうような政策判断での観点ということでございまして、建設省のおやりになります査定というような観点とはバッティングするものとは考えておらないわけでございますが、なお建設省側はいろいろな意見があるようでございますので、私どもとして調整してまいりたい。  ただ、これは大臣からも怒られているわけですが、特別事業の例示として道路だとか公園だとか、こういうふうに個別事業を書いたわけでございます。これは私どもはあくまでそういうような個々の事業という観点ではなくて、産業振興としてどういうものがいいのか、あるいは生活環境施設整備としてどういうものがいいのか、そういうようなむしろプロジェクトの趣旨というものを主体にして考える。それがたまたま中身としていろんな事業があるわけでございまして、これは建設省の行政とは違った、先ほど来出ております横断的な観点での事業債だと、このように考えておりますし、今後十分関係省とは意見調整をしたい、かように考えております。
  112. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは大蔵省は別にないんです ね。何かあるんですか、どうですか。
  113. 水谷英明

    説明員水谷英明君) お答えいたします。  ふるさと特別対策事業につきまして、いわゆるその事業を新たに六十三年度から行うことにつきましては、昨年末、予算編成の過程でよく自治省とも御相談したことでございます。
  114. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 地方自治体から見ると非常に期待も大きいと思うんですね。ですから、このことは中央省庁で問題の決着をつけないままでやると自治体の方に大変迷惑がかかってきますから、そこら辺はひとつ大臣の方でも万全な御指導をお願いしておきたいと思います。  時間がございませんから最後に一つだけ聞いておきます。  衆議院の定数是正の問題で、一昨年八増七減を行ったわけでございますが、この基準が二・九九ですか、これは既に突破したということで、今回また衆議院議長が違憲状態を解消するための各党の協議を再度要請して今入っておるわけです。同時に参議院の地方区の場合も、違憲判決は出ておりませんけれども、いわゆる人口対比で逆転区があることは事実でございまして、この解消というのはこれもやっぱり緊急を要することだということについては、もう私がここで強調するまでもないと思うんです。  事は政党政治の基本にかかわる問題ですから、自治大臣としても所管大臣としてこの問題については黙過できないと私は思うんですけれども、どういう認識を持っておられるのか見解をお聞きして、時間がございませんからここら辺で私の質問を終わりたいと思います。
  115. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 衆参議院の定数是正問題、これは、衆議院の決議を踏まえ、何よりも何よりも大切な問題、重要な問題という認識をいたしております。しかし、今佐藤委員指摘のとおり、まさに議会制度あるいは政党政治の根幹にかかわる問題でもございますので、自治省として先行すべきものではなくて、むしろ各党各会派においてそれぞれの大まかな基本的なもの、これを定めていただきませんと、実際に議論を進めようがございません。  定数の問題であるとか選挙区割りの問題であるとか、あるいは半数改選の問題であるとか地域代表的な考え方であるとか、そういうもろもろ状態を加味して一応その基本が各党合意が得られるならばその後の作業は進むわけでございますけれども、なかなか言うべくして大変難しい問題でございます。幸いに衆議院の方では議長発議で、議長からのあれもありまして議運でそういう問題の検討が始まったやに聞いておりますし、各党間で精力的に詰められた基本的な問題をこれから取り上げて、早くそういうものが俎上にのることを期待をいたしております。
  116. 片上公人

    ○片上公人君 警察庁にお伺いいたします。  朝日新聞社の連続襲撃事件は、去る三月十二日、朝日新聞社静岡支局の駐車場にピース缶爆弾が仕掛けられるという大変卑劣で許しがたい行為がまた繰り返されました。この時限装置つきのピース缶爆弾というのは幸い不発に終わったわけでございますが、もし爆発していれば歩行者など一般市民まで大変な被害を受ける惨事になっていたところでありまして、改めて強い怒りを覚えております。  朝日新聞社に対する襲撃事件は、六十二年一月の東京本社、同年五月の阪神支局、九月の名古屋本社の新出来寮、そして今回の静岡支局の四回目でございます。四回の事件につきましては、赤報隊を名乗る者からの犯行声明があるものの、まだ犯人像の輪郭すら浮かんできておりません。警察庁、警視庁及び各県警が捜査に全力を挙げていることは十分承知しておりますし、私は日本の警察の捜査能力を信じて疑わないわけでございますけれども、この朝日新聞社連続襲撃事件の捜査上の隘路というのはどの辺にあるのか、お伺いしたいと思います。
  117. 仁平圀雄

    政府委員(仁平圀雄君) 一連の朝日新聞社襲撃事件につきましては、警察庁指定事件といたしまして、関係都府県警察に警察本部長を長とする異例の特別捜査本部を設置しまして全国警察を挙げて懸命に捜査しているところでございますが、御指摘のようにいまだ犯人を特定するに至っておらず、捜査が長期化しているところでございます。  その理由といたしましては、強いて挙げてみますと、犯行声明文なるものが出されているわけでございますけれども犯行の動機というものは必ずしも明確でないということ、それから犯人像、逃走手段等に関しまして有力な目撃情報が得られていないこと、それから、静岡支局で発見されました爆発物関係の紙袋とか時計とか乾電池、ピース缶等遺留品を初めといたしまして、犯行に使用したと認められます散弾銃や実包、犯行声明文作成に使用したと認められるワープロ等、物は相当たくさんあるわけでございますが、いずれも大量生産品、大量流通品ということから購入者の割り出しというものが難航しておるわけでございます。さらには、犯行声明文において自称しております赤報隊なるものが、既存の団体の中からはその名称は出てこないわけでございまして、その実態解明に苦労しているというようなことによるものでございます。  しかし、警察といたしましてはそういうことは言っておれないわけでございまして、ぜがひでも早期に解決すべく全力を挙げて捜査しているところでございます。
  118. 片上公人

    ○片上公人君 朝日新聞への一連の襲撃事件は、単に朝日新聞に対する個別攻撃ではなくて言論の自由に対する重大な挑戦であり、民主主義の原点を踏みにじろうとする行為であります。今回の声明文には、朝日、毎日、東京などの反日マスコミをできる方法で罰していこう、こういうふうにしていることからも、一連の凶行は言論に対する挑戦であることが一層明白になってきました。また、自分の価値観とは相入れない他人の意見を暴力や脅迫によって封じ込めようとする犯人の態度というものは、我が国の民主主義の将来のためにも見過ごすわけにはいきません。  警察当局に対しては一日も早い犯人の検挙を強く期待するものでありますが、犯人の早期検挙に向けて、大臣決意を伺っておきたいと思います。
  119. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) お尋ねの事件につきましては、社会的反響の極めて大きい凶悪事件であるとの認識をいたしておりまして、警察としては、事件の社会的重大性にかんがみ、関係警察を中心として全国規模で捜査を推進中でございます。私といたしましても、この事件の反社会性、重大性にかんがみ、犯人をぜがひでも早期に検挙してもらわなければならないと考えておりまして、多大の関心を持って捜査の推移を見守り、また督励をしてまいる所存でございます。
  120. 片上公人

    ○片上公人君 次に、警察庁はさきの総務庁の行政サービスに関するアンケート調査でワーストワンはなったわけでございますが、そのことを反省して、庁内に設けた市民応接推進委員会で汚名返上のため、各種相談・照会専用の一一一番電話の新設、犯罪捜査で収集した関係者指紋の返還、交通規制の全面的見直し検討に入ったと報道されておりますが、現在どこまで検討されているのか、お伺いいたします。
  121. 森田雄二

    政府委員(森田雄二君) 警察におきましては、必ずしもこれだけを理由にしたわけではございませんが、総務庁の例の窓口アンケートの結果をも厳粛謙虚に受けとめまして、昨年の十一月から市民応接向上運動というのを全国警察の組織を挙げて展開しておるところでございます。  その中で具体的な検討状況ということで三つばかり御質問いただきましたが、最初のいわゆる一一一番構想でございますが、これは、警察と申しますのは仕事の性格上市民の方々から電話をいただくことの極めて多い組織でございます。現在はこれらの電話のうち緊急の用件につきましては一一〇番を御利用いただくことにしておりまして、それ以外のものにつきましては、一般の警察本部、警察署の加入電話のほかに、用件に応じましてあるいはヤングテレホンでございますとか困り事相談電話、あるいは覚せい剤一一〇番、運転免 許一一〇番といったようなものを、これも一般の加入電話を利用して設置いたしまして対応しておるわけでございます。  ただ、県警本部、警察署の電話番号もさらにふえてまいりますと、このような用件別の電話の番号も常に市民の方々に覚えていただくわけにはなかなかいかない、そういう反省に立ちまして、この種の電話番号を全部束ねまして、全国、それも北海道から沖縄まで同じ電話番号にして市民の方方の御利用をいただくことはできないか、こういうのがいわゆる一一一番構想でございます。第二・一一〇番と言っていいのかもわかりません。急ぎの用件は一一〇番、必ずしも急がないものについてはその電話番号を回していただく、こういう構想でございます。いわば窓口サービス向上の一環として位置づけているものでございまして、目下技術的な問題を検討しているところでございます。  なお、新聞には一一一番ということで報ぜられたものですから、既に国民の方から一一一番を本当におかけになる方がおられまして大変御迷惑をかけておるんですが、あれはいわゆる一一一番、言ってみれば一一一番ということでございまして、いろいろ組織的、技術的な検討をしておるところであります。  それから二つ目の関係者指紋でございますが、これは犯罪の現場等から採取いたしました指紋の中から犯人の残した指紋を選別いたしますために、被害者やその場所に出入りしたと認められる関係者からとらせていただいているものでございますが、被疑者の指紋との選別が終わりまして用済みとなりました後は廃棄処分としているものでございます。ところが、この関係者指紋ということで指紋をとらせていただいた方々から若干の不安感があるという声もあるものでございますから、処分の前に関係者から特に返してほしいという要求がございますればそれに応ずるという方向検討を進めておる、これが関係者指紋の返還の問題でございます。  それから三つ目に交通規制の見直しについて御質問をいただきましたが、交通規制につきましては、道路の利用者、住民、有識者等の意見を踏まえつつ行っているところでございますが、現状に不備な点がないか、ドライバー、住民の声を十分勘案しつつ点検しているところでございます。中でも一番問題になります速度規制につきましては、交通の円滑化という観点からかねてから見直しを進めておりまして、また駐車禁止につきましても、必要やむを得ない駐車需要に対応するためのパーキングメーター等の設置や週末等における駐車禁止の解除といったものを、交通の実態を勘案しつつ見直していくべく努めているところでございます。
  122. 片上公人

    ○片上公人君 警察庁は六十三年度の予算で薬物対策課の新設及び覚せい剤対策の予算を従来の四十二・五倍にふやすことを認められた。このような要求が認められた背景には、昨年の覚せい剤の押収量が六百キロを上回り四年連続して史上最悪を記録し、検挙者も七年連続して二万人の大台を超えているという背景があるようでございますが、現状の覚せい剤犯罪の動向について、警察庁の方から正式に伺っておきたいと思います。
  123. 漆間英治

    政府委員(漆間英治君) 御承知のように、終戦直後の覚せい剤の乱用は強力な取り締まり等によりまして昭和二十九年をピークにして減少いたしました。その後ほぼ根絶状態にあったわけでございますけれども昭和四十五年ころから再び増加をし始めまして、昭和五十六年以降、ただいまおっしゃいましたように毎年二万人を超える検挙人員を見ておりまして、高水準で推移をいたしております。六十二年中の検挙が三万八百三十件、二万六百四十三人を検挙いたしておりまして、覚せい剤の押収量もただいまおっしゃいましたように年間六百二十キログラムというように、四年連続して史上最高を記録いたしております。  覚せい剤の乱用は、最近では暴力団だけではなくて少年でありますとか女性でありますとかそういった一般の市民層にまで浸透を続けておりまして、特に近年女性の検挙者が増加をいたしております。さらに、覚せい剤中毒者による殺人でありますとか強盗等の凶悪な犯罪でございますとか、あるいは覚せい剤を購入するための窃盗等の犯罪、そういったいわゆる覚せい剤関連の犯罪が後を絶たないという状況にございます。  最近の覚せい剤問題における最も重要な特徴でございますけれども、これは昭和二十九年当時と違いまして供給源がすべて海外に移行したということでございます。密輸入の実態を調べてみますと台湾ルートによるものが主流となっておりまして、昨年、年間に、一度に一キログラム以上押収する事件を大量押収事件と申しますが、その大量押収事件を分析をしてみますと、覚せい剤の仕出し地別、輸出した側の別でございますが、これによりますと、台湾ルートが四百六十三・四キログラムで七八・二%でございます。次に韓国ルートによるものが六十二・八キログラムで一〇・六%というように、台湾ルートが八割、あと残りが韓国ルートというようなことでございます。  以上のような状況でございます。
  124. 片上公人

    ○片上公人君 覚せい剤対策について具体的に伺いたいと思いますが、まず、予算の内訳として高性能ファックス、覚せい剤対策の備品などを充実することになっておりますが、これは具体的にはどのようなものなのか。また、新聞報道によりますと、問題は末端の捜査員の確保と質の向上であるというふうに書かれておりますが、具体的にどのような対策を考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  125. 漆間英治

    政府委員(漆間英治君) 覚せい剤事犯につきましては、先ほど申し上げましたように、供給源が現在海外に移行するとともに、国内におきましても広域化、巧妙化をいたしております。このために、全国警察の懸命な努力にもかかわりませず、増加を始めてから十数年たちましても現在なおかつ鎮静化していないという状況でございます。  このような状況にかんがみまして、警察庁におきましては昨年の六月に薬物乱用防止対策要綱を制定いたしまして、全国の警察が一体となりましてより強力かつ総合的な対策を推進することといたしました。この要綱の柱でございますけれども、一つは国際化対策の強化、二つはプロの捜査官による専門的取り締まり体制の強化、三つは科学的捜査支援システムの整備、四つは薬物を拒絶するための広報啓発活動の強化といったような事柄でございます。現在その具体化に努めております。  御質問のように、昭和六十三年度予算におきましては、いわゆる密輸、密売人を捜査するために必要な機材の整備でありますとか、あるいは国際化対策の第一線を担うものとして水際での警戒体制を強化するために、海港でありますとか空港、こういった海空港等における第一線の捜査官と警察庁とをリンクさせまして、必要な情報でありますとかあるいは被疑者の写真等を迅速かつ正確に送受信するためのシステムの構築を開始したところでございます。具体的には、全国の警察署、あるいは海空港管轄の派出所、警察本部の担当課、管区警察局、それから警察庁にファックスを入れまして、そのファックスを駆使して必要な情報を流すということを考えております。  また、お尋ねの第一線捜査員の確保と質の向上についてでございますが、先ほど申し上げました要綱におきまして、薬物捜査専従の捜査官の育成配備等を図りますとともに、この捜査官の指導に当たる薬物事犯捜査指導官というのを全国の都道府県警察に置きまして、実践的教養の充実でありますとか、あるいは適正捜査の推進でありますとか、あるいは新しく登場する薬物に対する捜査手法の開発でありますとか、あるいは視聴覚教材等の整備充実でありますとか、そういうもろもろの手段を講じまして、プロフェッショナルと言われるにふさわしい捜査官の育成に努めてまいりたいというふうに考えております。
  126. 片上公人

    ○片上公人君 警察庁、どうもありがとうございました。  次に地方公営企業に関してお聞きいたします。  地方公営企業は上下水道、病院、地下鉄、バスなど地域住民の日常生活に密着する行政サービスを提供しており、地方財政における地方公営企業の位置づけは大変高く、また地域住民の福祉向上に果たす地方公営企業の役割はますます重要なものとなっていると考えますけれども、まず自治大臣に、地方公営企業の現状についてどのような認識を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  127. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 地方公営企業は、水道、交通、病院など住民の日常生活に不可欠なサービスを提供しており、住民福祉の増進にとってますます重要な役割を分担しております。  その経営状況については、オイルショック前後に急速な悪化を示したものの、近年においては、物価の安定、適時適切な料金改定等、経営安定のための努力等により全体として改善の方向にあります。しかしながら、路面交通事業等一部の事業については、経営環境の悪化等から赤字で推移しているものがあり、その健全化が重要な課題であると認識をいたしております。
  128. 片上公人

    ○片上公人君 地方公営企業の昭和六十一年度決算が公表されました際の新聞報道を見ますと、おおむねいずれの新聞にも収支状況が改善されたことが大きく取り上げられております。例えば「黒字、最高の二、二六二億円」などの見出しを見ますと、公営企業の経営状況に不安はないかのごとく錯覚を覚えるわけでございます。  決算の数値につきましては正確な分析を行い的確な認識をすることが公営企業に対する適切な施策につながると思いますが、自治省では主要事業の六十一年度決算についてどのような分析を行っているのか、特徴的な点について概要を御説明願いたいと思います。
  129. 柿本善也

    政府委員(柿本善也君) お答えいたします。  御質問のとおり、地方公営企業の六十一年度決算は、全体といたしましては前年度に引き続き若干黒字が増加するような、そういう意味におきましては、報道といたしましては、改善された、あるいはよくなった、こういう報道が行われたところでございます。しかし、公営企業というのはやはり個別の分析が大切なことは御指摘のとおりでございます。  全体といたしまして六十一年度がそういう状況になりましたのは、一つは六十一年度の給与改定が従来に比べて比較的低かったとか、あるいは金利が安くなったとか、あるいは、円高あるいは原油の値下がりで経費が軽減されたというような、主としてそういう費用が低い伸びにとどまったということが要因になって黒字が続いたと考えております。ただ、事業数で見ますと、全体のうち大まかに見ますと七分の六程度、全体で七千三百ほどの事業数がございますが、七分の六程度が黒字で七分の一程度は赤字でございます。  それから事業別に特徴的な点を簡単に申し上げますと、水道事業は全体で千二百十五億の黒字ということで、比較的黒字幅も拡大しておるわけでございますが、やはりこの中でも六分の一程度事業は赤字でございます。  また、下水道につきましても四百三十億ほどの黒字ということになっておりますが、これは実は本来使用料で賄うべき部分を、汚水処理費について多額の一般会計繰り入れを行っているというのが現状でございまして、それによって黒字が支えられているということで、もしそれがなかりせばむしろ赤字要因を抱えている、こういうふうな理解をしております。  それから病院事業につきましては、経費の伸びの低かったことや診療報酬の改定が行われた、こういうことで前年度と違って赤字から黒字に転じたわけでございますが、御承知のように全体として六割が累積欠損金を持っている、その額も四千百八十億に達するということで、大変厳しい状況でございます。  もう一つ厳しいのは交通事業でございまして、バス事業につきましてはそういう経費の減少によりまして黒字でございますが、どちらかというと乗客数は年々減少しております。それから地下鉄が、これは多額の建設費を要する事業でございまして、経常収支で言いますと全事業赤字でございまして、事業の赤字も相当な額に達しております。  工水もおおむね下水道と同じような状況で、一般会計の繰り入れに支えられている、こういうことでございまして、御指摘のように全体としては好転している傾向にございますが、個々に見ますといろいろ構造的な要因を持っている、こういう認識をいたしております。
  130. 片上公人

    ○片上公人君 ただいま決算の総括的な概況を伺ったわけでございますが、公営企業を取り巻く経営環境は相変わらず厳しく、その中で経営基盤の強化や健全化が強く求められているのが実態だろうと思います。  そこで伺いますが、これまでの経営健全化措置の成果等につきまして自治省としてはどのように考えておられるのか、御説明いただきたいと思います。
  131. 柿本善也

    政府委員(柿本善也君) 従来から公営企業は、その体質上、財政再建あるいは健全化措置ということをたびたびとってきたわけでございますが、法律に基づきます財源措置初めいろいろな主要な措置の目的は、不良債務を抱えている事業につきまして他会計、一般会計等からの支援と同時に、当該企業の経営健全化の努力をしていただきまして、この両方の措置によりまして経営の健全性を回復するというのがねらいでございましたが、それぞれの措置につきましては現在のところそれぞれ所期の目的は一応達している、こういうふうに考えている次第でございます。
  132. 片上公人

    ○片上公人君 特に経営状況の厳しい路面交通事業と病院事業について伺いますが、これまで路面交通事業につきましては財政再建計画が、また病院事業につきましては経営健全化措置が講じられてまいりましたけれども、いずれも六十二年度をもって終了したと聞いておりますが、その結果はどうだったのか。また、両軍業におきましてはこうした健全化措置等の対象となっていない事業で不良債務を有するものが数多くあるなど、その経営状況には依然と厳しいものがあると聞いておりますが、その状況についてお伺いいたします。
  133. 柿本善也

    政府委員(柿本善也君) 御質問の路面交通それから病院事業につきまして、それぞれお尋ねのとおり、バス事業につきましては地方公営交通事業の経営の健全化の促進に関する法律に基づく再建措置、あるいは病院事業につきましては、法律はございませんが健全化措置要綱というものに基づいて措置をしてきたわけでございますが、基本的にはいずれも、先ほどお答えいたしましたように他会計からの支援とそれぞれの自主努力によりまして計画的な健全化措置を実施いたしまして、それなりの成果を上げているわけでございます。    〔委員長退席、理事松浦功君着席〕  事業別に若干御説明申し上げますと、まずバス等の路面交通でございますが、これは国あるいは地方団体みずからの補助によりまして不良債務の解消を図りますとともに、そのほか自己努力におきまして、路線やダイヤの見直し、あるいは施設規模、職員配置の適正化、勤務条件の適正化等を通じまして経営体質の強化が図られてきております。  それから病院事業につきましても、住民検診の実施による患者数の増加とか、あるいは病院規模に応じた適正な職員の配置とか、そういうことによりまして経営改善を図ることによりそれぞれの年度で収支の均衡を図るとともに、不良債務の解消についても自己努力及び一般会計からの繰り入れにより計画的な解消を図ったところでございまして、いずれも六十二年度でその不良債務の解消の目的は達する予定でございます。  そういうことでございまして、二番目の問題でございますが、御指摘のようにこの事業の対象にならなかったといいますか、しなかった事業もございます。あるいはその後の厳しい企業環境から悪化した事業もございます。そういうことで、六十一年度決算におきましては路面交通で二十一団体、市町村立の病院で百二十六団体がそれぞれ不 良債務を抱えるに至っております。このほとんど、二十一のうちの十二、百二十六のうちの百七、これはいずれもただいま説明いたしました健全化措置の対象になっておらなかった事業でございます。
  134. 片上公人

    ○片上公人君 昨年の七月、地方公営企業研究会で地方公営企業の財政再建に関する中間報告を取りまとめておりますが、その概要を説明していただきたいと思います。
  135. 柿本善也

    政府委員(柿本善也君) 御指摘地方公営企業研究会の中間報告でございますが、概要を申し上げますと、この報告書は、従来からの公営企業の先ほど来お尋ねにありました財政再建の実施状況をそれぞれ分析いたしまして、その結果として、現下の公営企業につきましては全般的な財政再建制度を設ける必要はないけれども事業の種目別に見て、事業全体としてかなり多額の不良債務を有するなど経営体質がよくないと思われるものについて経営改善措置をとるべきであるという提言をしているところでございます。具体的にはその提言の対象になっておりますのは路面交通事業及び病院事業でございますが、それぞれにつきまして従来とってきたと同じような健全化措置をとるべきではないかという提言がなされているところでございます。
  136. 片上公人

    ○片上公人君 研究会の報告では、今も御説明がありましたけれども、経営が悪化しておる路面交通事業、病院事業で経営の健全性を積極的に回復しようとしているものについて新たな経営健全化方策を講ずべきものと提言を行っておりますが、この提言を踏まえまして自治省として具体的な検討を行っているのかどうか。また、六十三年度のこの予算で具体的な方策を考えているのであればその内容を明らかにしていただきたいと思います。
  137. 柿本善也

    政府委員(柿本善也君) 自治省といたしましては先ほどの研究会の報告を受けまして、路面交通及び病院事業につきまして経営悪化の著しい事業、しかも今御指摘のとおり事業体が積極的に経営健全化に努力しようという、こういう事業を対象にいたしましてやはりそれなりの援助と指導をすべきであるという考え方に立ちまして、六十三年度から新たな経営健全化措置を講ずることとしております。  具体的には、それぞれに従来からやってまいりました措置と同じように、不良債務の発生原因とかその程度を勘案しながら、不良債務の計画的な解消、あるいはどういうように収支を均衡させるか、あるいは経営健全化をするためにどういう措置をとるべきかというようなものを盛り込んだ経営健全化計画というものを各事業体に立てていただきまして、その実施につきまして適切な指導を行いながら、一方、不良債務の解消に要する経費につきまして、そういう改善努力前提といたしまして一般会計から繰り出すことを認める、それに対して必要な財政措置を講ずる、こういう考え方で対応することといたしたいと考えております。具体的な予算措置といいますか、地方財政計画上その所要額として八十億円、これは当面六十三年度分でございますが、路面交通分十五億円、病院事業分六十五億円を計上しております。
  138. 片上公人

    ○片上公人君 また中間報告におきましては、下水道事業や工業用水道事業、地下鉄事業につきましては事業自体あり方に関して検討を加える必要があって、経営の改善合理化により不良債務の解消を図るという財政再建の手法では適切に対応できないと考えられるために、それぞれの特殊性を踏まえながら別途検討することが適当であるということを言っておりますけれども、この点につきまして自治省としてはどのように対応されるのか、お考えを伺いたい。
  139. 柿本善也

    政府委員(柿本善也君) お尋ねのとおり、それぞれ特殊性のある下水道事業、工業用水道事業、地下鉄事業につきまして、再建策とは別途のことを検討すべきであるということになっております。実はこれにつきましては、例えば下水道事業は、先ほども申し上げましたように決算上黒字ではございますが、かなり使用料で賄うべき部分を一般会計からの繰り入れによって対応しているとか、あるいは工業用水道につきましても同様の関係がございますほか、予定したとおり契約がされない末売水という問題も抱えております。それから地下鉄事業につきましては、現在大都市で路面延長が進んでおりまして、そういう意味におきましては未成熟な路線をかなり抱えておる。そういうことで年々多額な赤字を出している、こういうことでございます。    〔理事松浦功君退席、委員長着席〕  それで、共通していずれも資本費負担の大きな事業でございますので、御承知のように従来から資本費平準化とかあるいは高資本対策というようなものをやってきておりまして、今後ともこの充実に努力いたしたいと考えておりますが、事業別にいいますと、一つは、下水道事業につきましてはそういうことでございますので個別によって対応は異なるとは思いますが、使用料の適正化等、経営の安定化のための指導をしていくことが特に重要ではないかと考えております。  それから工業用水道につきましては、経費の節減はもとより、いろいろな多角的な資金調達、あるいは適正な料金の決定、あるいは先ほど申し上げました未売水対策などのいろいろな多面的な措置を、事業体の自主努力も基本に踏まえながら検討していかなければならないと考えておりまして、今後の検討事項であると考ております。  それから地下鉄事業につきましては、大変資本費の負担の高い事業でございますので、これは関係省庁とも連携しながら、事業の収支構造を踏まえ、出資者補助のあり方あるいは低利資金の手当ての仕方など総合的な検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  140. 片上公人

    ○片上公人君 どうもありがとうございました。  次に、東京都江戸川区の江戸川競艇場で主催者の東京都六市競艇事業組合幹部の不正発券が発覚いたしましたが、同事件について監督する立場にある運輸省に報告を求めたいと思います。また事件の再発防止にどのような措置を講じようとするのか、あわせて御見解を求めたいと思います。
  141. 野間耕二

    説明員(野間耕二君) 江戸川競走場問題につきましては今年の二月二十三日に報道によりまして表面化したわけでございますが、報道によりますれば本件は、舟券の発売が締め切られてレースが始まってから施行者側の当時の事務局次長が担当者に中央集計装置のコンピューターを操作させまして、当たり券の発行枚数をふやすようにデータを訂正させた、さらに予備の発券機から当たり券を追加発券させていたということでありまして、本件につきましては警察当局が三月十二日に、施行者であります六市組合の当時の事務局次長、現在参事でございますが、これを業務上横領の疑いで逮捕したというふうに聞いております。具体的な犯罪事実につきましては今後の捜査当局の判断を待つ必要があるのではなかろうかというふうに考えております。  さらに、今回のような不祥事の再発を防止するためにどういう措置を講ずるかということでございますが、運輸省といたしましては、再発防止のためには、一つは不正防止を図るための人事交流の活発化といったものを含めました組合内の管理体制及びチェック体制の確立というものが必要でありましょうし、また、競走場において発券の締め切り後発売票数の確定をして、発走からレース結果が確定するまで継続してこれを表示するといったようなことが最低限必要なのではなかろうかというふうに考えておりまして、二月二十七日に六市組合は対しまして今回のような不祥事の再発を防止するための対応策について報告を求めておりまして、三月十四日に同組合から報告書が提出されたところであります。  ただ、運輸省といたしましてその報告書の内容を検討したところ、具体性に欠けておりまして十分な対策であるというふうには考えられなかったものですから、さらに六市組合に対しまして追加報告を求めているところであります。
  142. 片上公人

    ○片上公人君 次に自治省にお伺いしますが、現在の競艇の施行団体数及び収益の状況はどのよう になっておるのか。また、競艇を施行できる地方団体の基準はどうなっているのか、人口、財政力等から見て具体的内容をお伺いしたいと思います。
  143. 湯浅利夫

    政府委員(湯浅利夫君) 昭和六十二年四月一日現在で競艇を施行している団体は、都道府県では一県、それから市町村では百五十一市町村でございまして、合計百五十二団体が施行いたしております。そして六十一年度の決算におきまして、収益事業会計から普通会計、公益企業会計などに繰り出しているいわば収益金と申しますか、その金額は千百十六億円というふうになっております。  それから競艇を施行できる地方団体の指定基準につきましては、モーターボート競走法第二条第一項の規定によりまして、都道府県、それから人口、財政等を考慮して自治大臣が指定する市町村が施行することができる制度になっているわけでございます。  この施行の基準になっております規定は沿革的にはいわば議員立法の形になっておりまして、その点で人口とか財政等という要件の内容につきまして必ずしも明確な点がないわけでございますが、私どもが今運用上考えてやっております点は、まず市町村の指定要件における人口につきましては、実施組織とかあるいは施設ごとに見てある程度の人口規模などがあるというふうなこと、それから財政要件につきましては、個々の団体ごとにその収益の使途となる財政需要から見て適当かどうかという点を判断しているわけでございます。
  144. 片上公人

    ○片上公人君 六市の六十一年度財政力を見ますと、八王子市が一・〇五、武蔵野市が一・六三、昭島市が一・〇〇、調布市が一・一二、町田市が一・〇七、小金井市が〇・九八とおおむね財政力が高いと思いますが、この場合の財政を考慮というのはどう理解すべきなのか。  また人口につきましても、人口急増の要件について例えば消防施設強化促進法は、住民基本台帳の人口が五年間で五千人以上、一〇%以上の増加としておりますけれども、六市の状況を見ますと、これは国調人口で見たのですけれども、一〇%を超えるのは八王子市の一〇・二だけで、武蔵野市などは一・四である。この点についてもどう理解すべきなのか、御見解を伺いたいと思います。
  145. 湯浅利夫

    政府委員(湯浅利夫君) 先ほど申し上げましたとおり、財政の要件あるいは人口の要件につきましては解釈でいろいろな考え方が読み取れるかと思うわけでございますが、現在私どもがこの法律を運用するに当たりまして財政を考慮するということは、いわゆる財政力指数というような一律の指標によってやるということではなくて、個々の団体につきましてその収益の使い道となります財政需要について個別に判断をしていくというような形でやっているわけでございます。そういう点で、必ずしも財政力指数が高い低いというようなことだけで判断がなされているものではないわけでございます。また、財政需要が必要かどうかの第一次的な判断は東京都が実施をするというような形で、東京都から副申を求めてやるというような形にいたしておるわけでございます。  それから人口要件につきましても、人口増加率が高いか低いかというよりも、どうもこの法律が制定されたときの議事録などを拝見いたしますと、むしろある程度の人口が固まっていて、この競艇事業をやることによって損をするかしないかというようなことも人口という要件の判断要素にはなっているのじゃないかというようなことが推察できるわけでございます。そういう意味におきまして、この人口要件というのは、実施組織とかあるいは施設ごとに見ましてある程度の人口規模というものがある方が望ましいというような趣旨でこの規定が入ったのではないだろうかという感じがいたしておりまして、必ずしも人口の増加率というものだけを基準にするというものではないのじゃないかという感じがいたしております。
  146. 片上公人

    ○片上公人君 モーターボート競走を行うことのできる市町村の指定で、本年三月三十一日で期限となりますもののその後の継続につきまして自治大臣は保留する方針と伝えられておりますが、これはどうなのか、お伺いしたいと思います。
  147. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 江戸川競走場における昭和六十三年度以降の競艇事業の実施については、少なくとも江戸川競走場の施設について必要な改善措置が講じられるまでの間は、六市競艇事業組合及び三市収益事業組合の構成市に対し施行者としての指定を行わない方針でございます。
  148. 片上公人

    ○片上公人君 これは非常に単純な疑問なんですが教えていただきたいと思いますが、この六市というのはいずれも東京都下の西の方に位置しておる団体でありまして、地元の江戸川区は入っておりません。どうして反対側にある団体が東京の一番東側にある江戸川で開催するのか。また、六市の組合のほかに江戸川で開催している三市収益事業組合に加盟の多摩市、稲城市、秋川市にしましても、東京の西の外れに位置しております。収益事業というのは開催権さえ認めてもらえばどこで開催してもいいのか、例えば他府県でも可能になっているのか、この辺を伺いたいと思います。
  149. 湯浅利夫

    政府委員(湯浅利夫君) 市町村が収益事業、特に競艇をやりたいということで指定の申請を行う際には、申請書に使用する競走場について記載するということにはなっているわけでございますが、法律上は開催地の制限というものは特に明記をされておりませんので、極端な場合には他府県において開催するということも可能なわけでございます。
  150. 片上公人

    ○片上公人君 このような事件が起きました背景として、開催権を持つ六市団体との関係が一部事務組合であることが挙げられております。単独の団体の開催であれば、当該団体の職員との交流があったり、また議会の監視もしやすいけれども、一部事務組合ではうまくいかないのだということが言われておりますが、一般に一部事務組合の場合加盟団体は制度上どのような形でチェックができるのか。一部事務組合にも組合議会があるけれども、その実態はどうなっているのか。さらに、全国の一部事務組合の数は六十一年七月現在で二千九百四と聞いておりますが、これらの実態はどうなるのか、お伺いいたします。
  151. 木村仁

    政府委員(木村仁君) 第一の問題でございますが、一部事務組合は特別地方公共団体でございますが独立の地方公共団体でございまして、特別な法令の規定がない限り、普通地方公共団体に関する地方自治法の規定が準用されるわけでございます。したがいまして、その一部事務組合の首長であります管理者、組合の議会あるいは組合の監査委員によってチェックがなされる建前で、そういった制度の中で公正かつ効率的な事務が執行されなければならないという建前でございます。  そういうことでございますから、構成団体が直接に一部事務組合の事務事業の執行につきまして公式のチェックをするというシステムは確かに余りないわけでございます。ただ、ほとんどの一部事務組合におきまして、各構成団体が負担金を支出し、あるいは利益の配分金を収納するという関係がございますので、そういうものにつきましては、予算、決算の審議等を通じて行財政運営についてチェックすることは間接的には可能でございます。また、人事的にはほとんどの場合、管理者、議会の議員、あるいは職員につきましても、併任でありますとか兼務でありますとか充て職というようなことになっておりますので、事実上はかなりチェックが効いているのではないかと考えられますが、御指摘のように、やはり単一の団体がやる場合に比べると確かに少し距離があるだろうということは言えるのではないかと思います。  それから第二の、一部事務組合の組合議会の問題でございますが、御指摘のようにすべての一部事務組合に組合の議会がございます。その議会の議員の選挙方法というのは、規約でいろいろな形で可能でございまして、直接公選にすることも可能でございますが、現在の実態では、ほとんど九〇%を超える一部事務組合におきまして、関係地方公共団体の議会の議員の中から互選される、あるいは選挙されるという形で代表が組合議会に参 加しているのが通常でございます。  二千九百四あります一部事務組合の行っております事業は、環境衛生、あるいは福祉、病院、地域開発、学校、さまざまでございますが、いずれもほとんどの場合構成団体の議員が議員となり、構成団体の首長の中から管理者等が選任されて、通常の地方公共団体の場合と同じような議会運営、執行管理が行われている状態でございます。
  152. 津田正

    政府委員津田正君) 公営競技につきまして一部事務組合の形態が多いのは、まず公営競技場の設置が地理的あるいは社会的に非常に限られておるわけでございます。当該市町村あるいは周辺市町村単独でやらすよりは多くの団体に収益を均てん化した方がいいのではないか、こういうような趣旨で、実は五十四年の公営競技問題懇談会におきましても、なるべく一部事務組合でやらせるようにしろと、こういうような答申をいただいておるわけでございます。反面におきまして、先生指摘のとおり、その管理の問題というものにつきましても私ども今後十分注意してまいりたいと思います。
  153. 片上公人

    ○片上公人君 次に在外邦人の選挙制度について伺いたいと思います。  最近国際化ということが盛んに言われておりまして、我が国から海外に出て働いている人がふえておりますけれども、その人々には選挙権行使の機会が奪われているという重大な問題があることは周知のとおりでございます。政府は五十九年四月二十七日第百一国会に、在外邦人の選挙制度を創設しようとする公職選挙法改正案を提出しましたけれども、百五国会まで継続した後、たまたま衆議院定数是正の問題が論議されていたことなどのため、質疑に入ることなく衆議院の解散とともに未了となったものでございます。政府は今後法案の再提出を行う意向があるのかどうかを確認したいが、どうでしょうか。また、その後制度の内容について御検討もあったと思いますが、どのような御検討をなさっておられるのか、進捗状況をお伺いいたします。
  154. 浅野大三郎

    政府委員(浅野大三郎君) ただいま御指摘をいただきましたように、在外邦人に選挙権行使の道を開くための公職選挙法の改正案は百一国会に提案いたしたわけでございますが、百五国会において廃案となったわけでございます。この間実質的な委員会等での審議はなかったわけでございますが、この法案につきましては各方面からさまざまな御意見や問題点の御指摘もいただいておるところでございます。例えば、一体在外邦人に対して選挙が実施されることや立候補者の氏名、政見といったものをどうやって周知したらいいのか、ほかにもございますが、例えばそういうような御指摘どもあったわけでございます。そういうところでもございますもので、現在引き続き検討を行っておるところでございます。
  155. 片上公人

    ○片上公人君 外務省の資料によりますと、在外邦人の人数は六十一年十月一日現在で総数四十九万七千九百八十一人、一年で約一万人の増加がありますので、恐らく今では五十万人を超えているのではないかと思われます。そして、このふえたのはほとんど海外赴任などの長期滞在者の分でありまして、長期滞在者の占める割合は六十一年に初めて五〇%を超えたようであります。例えばこの方々の投票制度を提案した五十九年当時に比べ事態はますます深刻になっております。  永住者の扱いや郵便による投票を認めるかなど、確かに検討すべきこともあるわけでございますが、諸外国では当然制度化されていることでもあり、我が国だけ五十万もの人々が参政権の行使をする道を閉ざされているということはやはり異常なことでありまして、早急に改善しなければならないことであります。国際化とか経済大国とか、昨今もてはやされておりますけれども、その最先端で働いておる人々の基本的な権利も保障できないようでは内容のないものになってしまいます。政府側にはぜひ積極的な取り組みをお願いしたいと思いますが、自治大臣の御所見を伺いまして、質問を終わります。
  156. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 外国に居住する日本人について選挙権行使の機会を保障することは大切でございますけれども、さきに提案をした法律案について、ただいま政府委員から御答弁をいたしましたとおり、種々の御意見、御指摘があったところでありますので、関係省庁とも協議の上さらに検討を重ねてまいりたいと思います。
  157. 神谷信之助

    神谷信之助君 まず法定外公共財産の管理の問題についてお伺いしたいと思います。  この問題は長い間よく議論になっているんですが、いまだに解決を見ていないわけであります。自治省の方は八月の概算要求の前に各省庁に対して要請をなさっていますが、その中で建設省に対して法定外公共財産の法的位置づけ等についての要請を行っておられます。まずその趣旨と内容について御説明をいただきたいと思います。
  158. 津田正

    政府委員津田正君) いわゆる法定外公共財産というのは、道路であるとか公園であるとか緑地、あるいは広場、山であるとか原野、海浜地、あるいは海岸、河川、そういうようなもので一般公共の利用に任されているものでございまして、しかしその管理につきまして特段の法律の規定がないもの、こういうようなものでございます。かつて土地台帳等では赤線、青線とか言われたようなものでございます。法律上現在の体系で申しますと、国有財産法第九条第三項に「国は、国有財産に関する事務を、政令の定めるところにより、地方公共団体又はその吏員に取り扱わせることができる。」としまして、国有財産法施行令で、その取り扱いをさせるときには大蔵大臣は通知しなければならないと、わずかに法律規定としてはその程度しかない。  ところが実際問題としましては、正直申しまして管理が不十分なため、また最近におきます土地需給の逼迫した情勢も背景にしまして不法占拠あるいは無断使用というのがある。それでは正式に認可なり許可をもらいに行けば、ではどこに行ったらいいのか、国なのか県なのか市町村なのか、そこらもはっきりわからない。地方団体としましては、災害復旧等につきましてはもうしようがなくて自前で工事を、若干国庫補助金も参る場合もあるわけでしょうが、やらざるを得ない場合がある。わずかに国の補助金としましては、境界確定事務、用途廃止事務、それから大蔵省に引き継ぐための引き継ぎ事務等に要する経費についての若干の補助金がある。ですから財源措置としてもどうも不明確なままで置かれておる。  そしてまた対住民との関係においても不明確な状態に置かれておるわけでございまして、そういう意味におきまして私どもとしましては、その法的な位置づけを行い行政上の管理責任、経費負担等について早急に明確にされたい、このように申し入れをしておるわけでございますが、実はこの問題はもう多年にわたりまして、十年来ぐらいから申し入れて解決を見ておらない状況でございます。
  159. 神谷信之助

    神谷信之助君 私もこの問題は十年余り前に普通河川問題でやっているんですけれどもいまだに解決をされていないんですが、建設省は自治省のこういう要請に対してどのように対応されてきたのか、あるいは検討なり協議がなされてきたのかどうか、この辺はいかがですか。
  160. 鹿島尚武

    政府委員(鹿島尚武君) 法定外公共物の管理制度につきましてはこれまで何回か検討を行ってまいったわけでございます。しかしながら、土地の所有権の帰属の問題、あるいはまた実態の把握を含めまして管理対象の範囲をどうするかといったような問題がございまして、現在のところ立法化の段階に至っておりません。私どもといたしましては、今後とも関係機関等の御意見を承りながら御相談をし検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
  161. 神谷信之助

    神谷信之助君 先ほどの財政局長の説明にありましたが、機関委任をされて知事が管理をするということになっている。機関委任そのものはついては私どもいろいろ意見がありますが、しかし、事務を委任するにはすべて法律またはこれに基づく政令によることが必要なんですね。今言った境界の確定とかなんとか、そういう財産管理の面に ついては若干の金も来るという話ですが、しかし道路なら道路の、あるいは河川なら河川の維持管理、いわゆる行政管理ですね、これについては、それは含まれている、あるいはそれは外れているということになるわけですか。知事に機関委任をしている中身としてはどういうふうになっていますか。
  162. 木村仁

    政府委員(木村仁君) いわゆる法定外公共財産の財産面の管理につきましては国有財産法の系統の管理で一種独特の委任が行われているわけでございますが、その公共物としての機能の面の管理の責任については、法令上必ずしも明確でないと私ども考えております。したがって、各主務省におかれまして適切な措置を講じていただきたいというのが私どもの意見でございます。
  163. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると自治省としては、機能維持等の管理の責任、これは法的には明確でないけれども、実際上現在はどうなっていますか。
  164. 木村仁

    政府委員(木村仁君) 管理の実態は区々であろうと思いますが、行政事務条例のような形の条例で管理しようとしている地方公共団体もございますし、何にもやっていない団体も多いわけでございます。いずれにいたしましても、そのあたりがまだ法制上明確にできないという状態でございます。
  165. 神谷信之助

    神谷信之助君 建設省はこの点はどういうようにお考えですか。
  166. 鹿島尚武

    政府委員(鹿島尚武君) 私ども、財産管理につきましては国有財産法の規定によりまして都道府県知事に機関委任をいたしましてその管理の万全を期していただいております。一方、公物としての機能を維持保全をするという立場の行政管理につきましては、そういった財産が地域住民の日常生活に密接なかかわりを持って利用されているということも事実でございます。また、地方自治法の第二条第三項第二号それから第四項の規定によりまして、一般的に市町村の事務であるというふうに規定もなされてございます。これら勘案をしてまいりますと、市町村の固有の事務としてその地元のこの施設の利用に関する要請にこたえまして管理することが適当であり、また妥当であろうかと思います。  ただいま御発言ございましたとおり、条例で管理をしている団体というのもたくさんあろうかと思いますが、さらに私どもといたしましては、五十九年に最高裁判所の判例が一つございます。この中でも、そういった地域の住民の生活と密接な関連を有します施設ということでございますので、当該地域住民に最も近い関係にあります地方公共団体の事務とすることが適当であるというような考慮に出たものだというような解説がございます。こんなことを勘案いたしまして、行政管理につきましては市町村におかれまして固有事務として管理していただければというふうに考えます。
  167. 神谷信之助

    神谷信之助君 今会計課長がおっしゃったのは八四年十一月の最高裁の第一小法廷の判例だと思いますが、これは実は京都市なんです。京都市が、法律上の管理権を持たない場合であっても、市内を流れる普通河川について、もと農業用水路であった右河川が周辺の市街化により都市排水路としての機能を果たすようになって、したがって地域住民の要望にこたえて、都市排水路の機能の維持及び都市水害の防止など地方公共の目的を達成するために河川の改修工事をして、これを事実上管理することになったときは国家賠償法二条一項の責任を負う公共団体に当たると、こうなるわけですね。  先ほど自治省の説明のように、これは京都府に機関委任をされて財産管理をやる。しかるに、どんどんどぶ川が溢水して災害をもたらすものですから、住んでいる住民の生活を保障しなければいかぬ京都市としては、わしは権限はないと知らぬ顔はできない、こうなるわけでしょう。そしてそれを補修してやると今度は賠償責任まで問われる。法律上の明確な規定はないけれども、慣習としてもうずっと揺るぎなく維持管理をやらされている、その実態に基づいて賠償責任が問われてくる、こうなってくるんですね。  この辺の問題というのは、知事なら知事に機関委任をして、それは財産管理だけではなしに行政管理、いわゆる機能維持の管理も含めて責任を持つとか、あるいは知事から委任をして市町村にやらせるとか明確な規定をすれば、そうすれば自治省としても財政的保障もできるし必要な措置ができるわけですよ。  今、京都府で調べてみると、建設省から財産管理のわずかな補助が来るわけです。それから府下の市町村に委託をして維持管理をやってもらう。これはわずかな補助を出す。京都府自身もそれに継ぎ足さないと配れない。京都市のような指定都市には金はやらぬ。こうなっているわけですね。こういう状態になっているというのは、今言った法的位置づけといいますか、どこが管理責任の権限を持っているのか、これが不明確のままで十数年来ている。自治省も建設省も、本来こうあるべきだというようなことをお互いに言っていまだに解決しないという状態が起こっているんですよ、大臣。  また、早急に解決しなければならない問題も実は起こっているんです。去年の九月二十二日、京都市東山区の今熊野宝蔵町というところの法定外道路ですが、ちょうど国鉄の東海道線が京都駅から東へ行ってすぐトンネルに入る手前の、その線路わきの道路です。そこは法定外道路ですから舗装もしていない土道ですが、たまたま穴があいていて、そこを通りかかったおばあさんが足をとられて転倒してけがをした。これはもともと国鉄の土地だったんですけれども、東海道線を広げるときに建設省と土地を交換したので今は建設省に所管がえされて、そして京都府が管理を機関委任されているという状態のところです。その道路自身は常日ごろ小学生も通るし、幼稚園の子供も通るし、保育所へ行っている子供も通る、一般の生活道路になっているんです。ところが法定外道路、認定外道路ということで穴があいたままになっていたということで、たまたまけがをされた。  そこで、その八木さんというのが治療費の補償をどうしたらいいかということで、府が管理しているというので京都府へ行ったら、京都府の方は、財産管理だけでそんな機能管理をする予算なんかはありません、京都市へ行ってくださいと、こうなんですね。それで京都市へ行ったら、市は、委任を受けておるのは京都府やから府で管理してもらうのが筋やと言うて、初めはもう要望書も受け取らぬ、こうなったわけです。しかし市会議員が間に入っていろいろ話をしてやっておる中、で、市の方も、市民生活にかかわる問題ですから、穴を埋め、道路を補修もし、その後街灯も一つつけましたよ。これはもう現在の法律の建前からいって京都市がやらにゃいかぬ責任のものではないわけです。しかしそこで生活する市民の生命財産にかかわる問題ですからいや応なしにやらにゃしようがない、こういう状態が起こるんですよね。  先ほど言いました、これはどぶ川に二歳の子供がはまって死んだ事件ですよね。それから大東水害の大阪高裁の二審判決も同様の判断をしています。だから、事実上そういう状態だからもうしようがないからやっている。法律的な責任や管理責任は一つもなくても、いや応なしに泣き寝入りで市町村はそれを全部やらにゃならぬ。一体どっちかにはっきりしてもらわないといつまでたってもこれは解決しない。自治省と建設省、これは私は無責任だと思うんですよ。自治省の言い分はあるでしょう。建設省は建設省の言い分もあるかもしれない。そしたら全体としては国ですが、それやったらどうしてくれるんや、大体管理責任を明確にしておらぬ国が悪いんや言うて建設大臣のところへ行ったり自治大臣のところへ行ってもこれは始まらぬわけですね。  この辺についての大臣の御見解をひとつ聞きたいんです。じんぜん日を延ばすわけにはいかぬ問題だと思いますが、いかがですか。
  168. 津田正

    政府委員津田正君) この問題につきましては、法律問題、財源問題、それから住民に対する 責任問題と、種々の観点から問題を残しておりまして、私どもとしましても、かつて大蔵省、建設省、それから六団体の方々も入れた検討会も持ってやった時代もあったわけでございます。その場合においても、それぞれの立場での意見が分かれるということと同時に、まず実態が把握できていない。一部国で払い下げする段階になりますといろんな境界測量だとか何かやるわけですが、そういうような事態がないとどこにどういうものがあるのかわからぬ。実は実態の把握というのがまず大切ではないか。  もちろんこれは建設省だけではなくて、農水省にもございますし、非常に各省にわたった問題でございますので、そこいら、まず実態の解明というものから進みませんと実はこの問題はなかなか解決できない。しかし私ども毎年毎年のように関係省についてはその解決策を申し上げておるわけでございますが、実情はそういうようなことになっておるわけでございます。
  169. 神谷信之助

    神谷信之助君 そういう実情は知っているんですよ。そして国会で各党の議員さんもしばしばあっちやこっちで取り上げておられます。決算委員会でやられたりあるいは衆議院でやられたりしているんだけれども、ちっとも、協議をしているとかそういう状態の話が出てくるだけで結論はいつまでたっても出ない。  これはやっぱり自治大臣、建設大臣と、特に建設省が多いですから、あるいは関係する大臣などと話して政治的にはっきりしてしまうという決断をしなかったら、これはずっと続きますよ。それでまた何か事故が起こったときに、一体どうなんだと。国民の方は、いやおれのところじゃない、あっちへ行け、こっちへ行けと言われてたらい回しされるんです。そういう事態が現実に起こっている。そして最高裁までいかぬと結論が出ぬというようなばかな話はないと思うんですよ。そういう状態を解決して早急にこれに決着をつけるために、ひとつ大臣、これに努力をしてもらうということをお約束いただけませんか。
  170. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 問題のやりとりを聞いておりまして、大変エアポットがあるというか、行政の責任所在のはっきりしない分野でございますので、この法定外公共財産の帰趨とそれから責任やあるいは財源等、そういうものをひっくるめましてこれから早急に関係各省庁ともう一回協議をしてまいりたいと思いますけれども、それぞれ臭い物にふたでそう手を触れられない、いわゆる縦割り行政の弊害もあろうかと思います。建設省やその他に強く要請をし、あるいは最終的にその処分というか帰趨をどちらにするか、こういう問題の詰め方についてもこれから検討を進めてまいりたいと思います。
  171. 神谷信之助

    神谷信之助君 実態についてなかなか把握できないというのは、逆に言うとそれは行政の怠慢ということになるわけであって、やろうと思えば各省協力してやればできる問題だと思うんです。それで大臣、問題は、結局大臣がその気になって、よしこれはもうひとつやってやろうと言うてやってもろうたら話は早い。それだけのやっぱり政治力を持っておられる大臣だろうと思うので、私はこの点はもう一遍特にお願いをしておきたいと思います。この問題はこれで終わります。  次は、我が党の幹部の緒方国際部長宅の電話盗聴事件です。これは去年の九月三日当委員会で取り上げて、当時の山田警察庁長官といろいろやりとりをした問題であります。きょうは時間もありませんからそれを前提にしていきますが、当時の山田警察庁長官は後で読んでみると非常に意味の深い答弁をなさっていますので、もう一度よく改めて聞いてみたいと思うんです。  「起訴猶予処分を受けたということにつきましては、大変遺憾なことと認識」をするということで遺憾の意を表明された。そして「事件そのものが憲法に違反をし法律に違反をする、」「あってはならない犯罪だ」、そういう認識に対して、「検察庁の処分を受けたということ、それがただいま御指摘の罪質に係る事案であるということ、これは厳粛に受けとめております。」と言われた。この「厳粛に受けとめております。」という意味は、検察庁が起訴猶予処分にした二人の現職の警察官の行為、これが電気通信事業法違反の罪による起訴猶予処分である。したがって、そういう行為そのものの存在をお認めになった発言と理解していいですか。
  172. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  当時の御質問、それから山田警察庁長官の答弁ぶりについては私もよく読んではおるわけでございますが、そこで申し上げていることは、神奈川県警察としては個々の警察官の関与について内部で調査をいたしたわけでございますが、どうもその関与のほどが判然としなかったということでございます。しかるに検察庁において一部警察官が関与したというような認定がされた、そのことを受けまして、内部調査においては確認できなかったけれども、地検でそういう認定がされたということ自体まさにあってはならないことなので、そのことを厳粛に受けとめるということを申し上げたというふうに理解しております。
  173. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、あってはならないことが、神奈川県警の内部調査では明らかにならなかったけれども、東京地検ではそう言っている。だから結局、内部調査では判然としなかった、だからなかったということになるのか、あるいは、内部調査では明らかにならなかったけれども、東京地検がそうおっしゃるならば、あってはならないことだけれどもあったと言わざるを得ないという意味でおっしゃっているのか、どういう意味ですか。
  174. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 個々の事実関係につきましては今後さらに上級裁判所の審理にゆだねられるというようなことを承知しておりますし、また、現在住民訴訟あるいは検察審査会における審査などで事実関係が争われるというようなこともございますので、個々の点については答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、そこで述べていることは、警察官の行う情報収集活動というのは常に適法妥当に行われるべきものであって、その手段方法において国民からいささかの疑惑も持たれてはいけないということでございますので、一部警察官がそういうことで問擬されたこと自体がまさにあってはならないことだというふうに厳粛に受けとめたという趣旨でございます。
  175. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、そういう行為をやったかやってないかはわからない、そういう意味ですか。
  176. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 先ほど申し上げましたように、神奈川県警自体において内部調査をしたわけでありますが、その点が判然としなかったということでございます。
  177. 神谷信之助

    神谷信之助君 東京地検が取り調べをして最終的に起訴猶予処分にした。東京地検はその中でも、二人がそういう盗聴をやった、あるいは少なくともやろうとしたということは立件をしても有罪を得るだけの証拠はあるということまで、当時緒方さんやそのときの弁護士さん、あるいは諫山参議院議員に次席検事は言っていますね。そのことは九月三日のときに私も述べています。  その後、先般の付審判の決定がありました。決定の結論は、まさにこっそりやられたんだから職権乱用にはならないと、何かそういうようなことで門前払いになっていますが、その決定の中にこう言っているでしょう。  「職務上の行為として、」「請求人らの電話による通話を継続的もしくは断続的に盗聴しようとしたことを十分推認することができる。」林、久保両警察官ですね、両被疑者。そして「盗聴行為が行われたと証拠上確実に認定できるのは、」「同年一一月中旬から下旬にかけての期間中に限られるというべきである。」として時期を特定しています。「しかしながら、当裁判所における事実取調べの結果によっても、被疑者林及び同久保が上司の指揮命令を受けることなく、その独自の判断により本件盗聴を行ったものとは到底認められず、それが何者であるかを特定することはできないが、他の警察官と共謀のうえの組織的行為と推認することができるのであり、」「使用後消去された 形跡のある録音テープが存在していたことなどからみても、具体的日時を特定することはできないが、警察官において盗聴に成功したものと推認することも十分に可能である。」  東京地検の捜査の結果だけではなしに付審判法廷で裁判官自身の取り調べによっても、「盗聴に成功したものと推認することが十分に可能」だ、こういうふうに判断していますが、それでもなお、神奈川県警の内部調査で確認できなければ警察は認めることはできない、こういうことですか。
  178. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  まず第一点の、どなたかが立件しても有罪を得るだけの証拠があると言ったというようなことについては、私は承知しておりません。  それから第二の点でございますが、この付審判請求についての決定文を読みますと、ただいま読まれたほぼそのとおりでございますが、「被疑者林及び同久保が直接盗聴に成功したとまでは認めることができない。」というのをちょっと飛ばして読んでおられますので、そういうこともあると。それで「認めることができない。」と言って、「しかしながら、」と言い、「推認」ということを申しておる、こういうふうに理解しております。
  179. 神谷信之助

    神谷信之助君 それはあなたの言うのは、盗聴した期間をどう特定をするかという点で触れている部分ですね。「一一月中旬から下旬にかけての期間中に限られる」それ以後は「被疑者林及び同久保が直接盗聴に成功したとまでは認めることができない。」それは緒方さんが雑音に気がついて「極力電話の利用を控えていたうえ、」云々と若干書いてね。だから期間を特定しているんですよ、「一一月中旬から下旬にかけての期間中に限られる」その期間は盗聴をしていた、これは明白だ。  それからもう一つおっしゃったのは、先ほど言った九月三日の会議録にちゃんと私が言っています。八月四日に東京地検の増井次席検事は、告訴人の緒方さんやそれから諫山参議院議員、それから弁護士らに対して不起訴処分について説明を公式に行った。そこで「昨年一一月中旬から下旬はじめごろにかけて三回にわたって盗聴をしようとした事実については有罪判決をうるに足りる証拠を得たと考えている。」こういうふうにちゃんと説明をして、しかもその二人については、指紋それから、足紋、筆跡などから確実にアジトに入ったと認定した、こういう説明を告訴人らに行っています。それに基づいて言っているんですよ。
  180. 城内康光

    政府委員(城内康光君) ただいまの二点は、先ほどと順序を逆に御答弁いたしますが、まず一つは、「直接盗聴に成功したとまでは認めることができない。」と言って、「しかしながら、」「推認することができる」というふうに言っているというふうに理解するのが素直であろうというふうに思います。実は、先ほど冒頭に申し上げましたように、そういった事実関係については現在いろいろと係争中でございますので余りそのことについて触れることはいかがかと思いますが、素直に考えれば、「推」というのは推しはかることでございまして、例えば推察するとか推量するとか言うときの「推」でございます。「認」というのは認めることというようなことで、推しはかって認められるということをここに述べてあるというふうに思います。  それから第二点のどなたかがおっしゃったというようなことについては、私ども聞いておりませんので何ともコメントのしようがないということでございます。
  181. 神谷信之助

    神谷信之助君 増井次席検事から当時どういう説明を受けておられるか、我々はその場に立ち会っているわけじゃないし知りません。しかし、告訴人及び弁護士等に対して不起訴処分の理由について法律上の措置として説明をする、このことは当然の法律的行為です。その際にそういう明言があるというわけですから、我々はそのことを言っておる。警察の方がだれかが立会をする必要はないんですから、だからそれは聞いていないから知らぬというわけにはいかぬと思うんです。  それで法務省にちょっとお聞きしますが、先般の岩手県西根町の町長選をめぐる電話盗聴事件で、二十三日、盛岡地裁が判決を言い渡しました。その判決内容について、これはまだ判決文ができていないようですからあれですが、報道されている内容でそれがそのように確認できるかどうかということでお伺いしたいと思うんです。  判決では、みずから聞く意思はなくても録音すること自体が通信の秘密を侵害する。通話内容を録音すれば通信の秘密の侵害だ。聞いたかどうかではなく、録音されたかどうかが問題だ。録音できることは科学的鑑定で明らかであり、実行行為者も一部を確認しているから、録音されていることを明言し、発信器を取りつけたことで実行の着手が明らかだ、こういう判断を下されているようでありますが、そのとおりでしょうか。
  182. 馬場義宣

    説明員(馬場義宣君) お答えいたします。  委員指摘のとおりまだ判決書が作成されておりませんので、検察当局もまだ入手しておりません。ただ盛岡地検の立会検察官から報告を受けている限りにおきましては、判決における表現部の詳細についてはちょっと正確には申し上げられませんけれども、お尋ねの点につきましては、それぞれおおむねそのような内容の判決の言い渡しがなされたと承知いたしております。  以上でございます。
  183. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうしますと、これは、発信器を取りつけたことで実行の着手が明らかだ、実際に聞いたかどうかが問題ではなしは録音されたかどうかが問題だ、録音できるということはこの岩手の事例によると科学的鑑定で明らかで、実行行為者も一部を確認しているからはっきりしている、こう言っているんですね。録音しているかどうかが問題だ。  ところが今度こちらの盗聴事件の方は、使用後消された形跡のある録音テープが存在していたこと、これを付審判の決定の中でも判断を下しています。そうすると、まさにこれは発信器を取りつけ、しかもこれは証拠物として領置されていますし、それから録音を消された形跡のある録音テープが存在する。だから少なくともそこでは盗聴が行われたと岩手の判決から言うならば断定できるわけじゃありませんか。どうお考えですか。
  184. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 事件の中身のことにつきましては、先ほど申し上げたように私の方でコメントする立場にはないわけでございます。  ただ、この決定書は私ども読むことができますので、これを読みますと、室内には録音機二台、使用後消去した形跡のある録音テープが残されていたというようなことが書いてあるということは承知しております。ただ、これは何に使われたかというようなことまでは一言も触れられていない。使った後に消された跡のあるというのは、いわゆるさらの、俗語で言うとさらの録音テープではないということを言っているわけでございます。ですから、それだけのことというふうに理解をしております。
  185. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃお伺いしますが、あの二人の警官が電話盗聴していなかったとすれば一体だれがやったんですか。真犯人はだれですか。
  186. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 本件につきまして神奈川県警におきまして内部調査を行いましたけれども、盗聴について職務命令を出したことはないという報告を受けておりまして、神奈川県警として行ったものではないというふうに承知しております。
  187. 神谷信之助

    神谷信之助君 いや、質問はそう言っているんじゃないんですよ。職務命令でやった神奈川県警の犯行かどうかというのを聞いているんじゃないんです。あの林、久保両警察官が盗聴行為を行ったということをお認めにならないというならば、だれか盗聴したんですか、真犯人を捜査なさっていますかというんです。無実の罪を林、久保両警官が着せられているというようにお考えなんですかどうですかと言っているんです。
  188. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 先ほども申し上げましたように、この事実関係については現在係争中であるというふうに理解しております。
  189. 神谷信之助

    神谷信之助君 やばいところになるとすぐさっ と逃げるね。  それじゃ聞きましょう。神奈川県警が内部調査をなさった、それでどうして事実関係がわからないわけですか。林、久保両警官が少なくとも関与をしていた疑いは多分にあるわけでしょう。だから、関与していたというのか否定をしたのか、どういうことですか。
  190. 城内康光

    政府委員(城内康光君) もちろん神奈川県警察としては関係していると言われた警察官について事情聴取もしておるわけでございますけれども、当人たちと事件との関係は、先ほど申し上げたように判然としなかったということでございます。
  191. 神谷信之助

    神谷信之助君 判然としなかったということはどういうことですか。事実を知っているのは本人です。自分がやったかやっていないか、あるいはメゾン玉川学園のあの部屋に行ったことがあるのかないのか、これは本人が知っている。だから本人が一切そういうことを言わなくて判然としないということなのか。一体どういうことなんですか。
  192. 城内康光

    政府委員(城内康光君) そういうようなことについては本人たちが説明をしなかったというふうに報告を受けております。
  193. 神谷信之助

    神谷信之助君 いわゆる自白をしなかった、黙秘をしたと、そういうことなんですね。黙っていたんですか。現場に行ったということも、あるいは行かなかったということも言わなかったということですか。
  194. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 私が聞いている範囲では、本人たちはそういったことについて承知していないということでございます。
  195. 神谷信之助

    神谷信之助君 警察官同士の取り調べというのは非常に緩やかですな。虚偽の自白を強制したり、拷問したり、そういう冤罪事件が次々と明らかになっている。一般の国民に対しては、耳元で大声を立てたり拷問をやって自白を強要したり、日通の旭川事件もそうでしょう。そういうことをやるけれども、自分の身内に対してはやらない。そして本人たちが知らぬと言うたらそれで済むわけですか。
  196. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 私どもは絶えず適正捜査ということを心がけておりまして、拷問というようなことはあってはならないことだというふうに考えております。
  197. 神谷信之助

    神谷信之助君 自白を強要した、強制した、そういった裁判所の判決したやつは私は前に当委員会でも何回か取り上げました。事例はたくさん判例の中にあります。だからそんなことをおっしゃってもだめなんだ。  そこで、警察庁自身は、林、久保両警官を初め関係者のあの二人、名前がわかっているのは田北、家吉ですか、そのほか関係者と思われる者について直接お調べになったことはないんですか。
  198. 城内康光

    政府委員(城内康光君) これら警察官は神奈川県警察の警察官でございまして、神奈川県警察において身分上の監督を受けるというように理解しております。
  199. 神谷信之助

    神谷信之助君 憲法を守ります、法律を守りますという誓約をして警察官になった。それが違憲違法であることを熟知しながら犯罪行為を犯す。しかもそれは、今度の付審判の決定の中にもあるように職務上の行為としてなされた。そして何人かのグループでやった組織的犯行だ。付審判の決定では職務命令が出たとか出ていないとかいう言い方はしていません、そういう犯行だと。それから東京地検が起訴猶予処分にした理由の一つに、末端だけ罰するのはぐあいが悪いとこういうお考え、しかし指揮者がわからぬ、だから起訴猶予と、こういうことを起訴猶予の理由の一つに挙げているんですね。  そうすると、神奈川県警の中に二人以外に何人かの協力者がいる、あるいはその中には上司も含めて存在するらしいと。それを神奈川県警に内部で調べなさいと言って調べることができますか。泥棒のグループに泥棒を調べろと言ったって調べようがないし、真実は出てこない。だから、監察官が行って直接やったのか、あるいは警察庁が直接やったのか、それは一体どういうことでありましたか。
  200. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 神奈川県の警察に勤務する職員というのは地方公務員でございますので、神奈川県警において指導監督するというのは極めて当たり前のことではないかというふうに考えます。
  201. 神谷信之助

    神谷信之助君 なかなかああ言えばこうと逃げるようにやっていますね。しかし、警察庁長官は警察法で、各県警本部についての指揮監督権といいますか、ありますね。第一義的にはそれぞれの各県警本部長がやる。同時に全体として警察庁長官は目を光らせていなければいかぬということで、今ちょっと持ってきてないからわからぬのですが、そういう規定があるのじゃないですか。  だから、事は神奈川県警に起こった問題だ。しかし、当時山田警察庁長官もたびたび言っておるように、警察の威信にかかわる重大事件だと。だから神奈川県警でできなければ警察庁自身が乗り出してやる、そういうことをやらなければ、当事者にやらせておったってできやせぬでしょう。そういう状況だというのが一般的、常識的考えで、これはだれにでもわかるんです。なぜそれがやれなかったんですか。
  202. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 先ほど来申し上げておりますように、神奈川県警察という一つの特別権力関係の中で職員が勤務するわけでございまして、そこにおきます事柄についてもし非違がございましたら、神奈川県警察に設けられている例えば懲戒審査委員会などにおいて判断をするということでございます。日常の指揮監督というのは本部長以下の幹部がしておるということでございます。  それから、警察庁の方はそういうものに対して報告を徴するというようなことは当然できるわけでありますが、みずからそれを調べるというようなことではございません。
  203. 神谷信之助

    神谷信之助君 二、三年前、兵庫県の尼崎の署長、それから竜野の署長、これが署長官舎でかけマージャンをやっていたという問題がありましたが、処分は諭旨免職。だから退職金はもらえる、少し減りますがね、いろいろなものがつきませんから。しかし懲戒免職はしなかった。その問題についても、これは本当に遺憾だ、警察庁から一言言うべきやったやろうという趣旨のあれがあるんですよ。  それは形式的にはそうなるでしょう。しかし、そのときの処分のやり方なり何なりで社会的な批判を受けるような事態があるとするならば、これは責任を持っている警察庁として、あるいは警察庁長官としてしかるべき措置をとるのは当たり前だ。神奈川県警が職務命令を出してやらせたことはないと、こう言っているんだが、しかし、やらせたのかやらせていないのか、何ぼ本人が言うたってそれを信用することはできないわけです。グルかもわからないからね、実際は出していたとすれば。  しかし出したということになれば、神奈川県警挙げての違憲違法の犯罪行為をやったということになりますから、そんなことは困るわけでしょう。だから、それを調べようと思うたら別のところが調べなきゃならぬでしょう。そういうのが当然のことだし、警察庁なり、あるいは監察官制度を持っているんですからそういうのがしかるべき措置をすると。国民の不信を招かないように、納得できるような措置を警察自身が自分の力でやれないとなったらもう自浄能力なし、警察なんか信用できるかと、こういうふうになるでしょう。そうは思いませんか。
  204. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 警察活動が法に基づき法に従って行われなければならないということは極めて当たり前のことでございまして、これは神奈川県警の本部長以下、十分そういうことについてはわかっておるわけでございます。そこでいろいろ問擬されるようなことがありましたときには、当然監督権の作用としてそういうものについて精査をする、これも当たり前のことでございます。警察庁長官の立場では、そういった事柄について報告を徴し、あるいは事務の調整をするとい うようなことが場合によってあるということ、これも当たり前のことでございます。
  205. 神谷信之助

    神谷信之助君 形式的な答弁をしたからといって国民は納得するわけにはいかぬですよ。  しかもこの付審判の決定では、「少なくとも被疑者林及び同久保の両名については、職務上の行為として、日本共産党関係の警備情報を得るため、同党中央委員会国際部長である請求人の前記自宅に設置されている電話による通話を盗聴しようと考え」そういう器具を設置して、そして「請求人らの電話による通話を継続的もしくは断続的に盗聴しようとしたことを十分推認することができる。」だから職務上の行為としてやっている、そういう判断を示しています。しかも、「当裁判所における事実取調べの結果によっても、被疑者林及び同久保が上司の指揮命令を受けることなく、その独自の判断により本件盗聴を行ったものとは到底認められず、それが何者であるかを特定することはできないが、他の警察官と共謀のうえの組織的行為と推認することができる」  これ自身の判断をすることがこの裁判の目的でありませんから「推認する」という表現になるのは当たり前なんで、それをとらえて、推認というのは推察しているだけです、推測しているだけですとあなたがおっしゃろうと、それは同じ意味を持ちますよね、全くイコールとは言いませんけれども。そういうように言っているんです。そういう組織的犯行であるということもお認めにならないわけですか。
  206. 城内康光

    政府委員(城内康光君) これは先生、こういうことを申し上げるのは失礼でございますが、これは検察庁の処分に対する裁判所の判断でございまして、とりわけ職権乱用に当たるか当たらないかというところがポイントになっておるわけでございまして、事実関係などについてもある程度の範囲で触れておるということでございます。再三申し上げておるように、裁判所としてはいろいろな状況で推認をしていることというふうに私ども理解をしておるわけでございます。  先ほど来お答えしておりますように、推認するということであるにせよ、そういうようなことで問擬されたことは大変私どもとしては遺憾であるというふうに考えておりまして、再びかかることのないように指導の徹底を図ってまいりたい、こういうふうに考えておるのであります。
  207. 神谷信之助

    神谷信之助君 あの事件が起こって山田警察庁長官は、この事態を再発させないために管理体制をちゃんとするのが私の責任だというようにあのとき述べておられます。ということは、関与したかどうかということを確認することができなかったけれども、しかし再発の防止をしなきゃならぬ。再発防止とおっしゃっているんですよ。その責任が私にあるんだと。だから管理体制のチェックやらそういうようなのをつくらにゃいかぬということをお述べになりました。責任をとってやめなさいと私が言ったらそうおっしゃった。やめないでそれをやりますとおっしゃった。  だから、そういう事件を起こしたということ、だから再発防止でしょう。確認をしようとしたけれどもそれが確認できないような管理体制の不備、これをお認めになっている。だから、そういうことがあったであろうということは、言葉では言っていないけれども、そのことを認めてそういう事後措置をおとりになった、対策をお立てになった、こういうように理解しなきゃならぬのじゃないですかね。
  208. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  内部管理のことにつきましては、その任務付与が明確であったかどうかとか、あるいは幹部が仕事を管理していたかどうかというようなことなどにつきまして、確かにお説のとおりに業務管理が不徹底であった、あるいは人事管理が不徹底であった、あるいは指導教養が十分でなかったというような点があるのではなかろうかというような反省を深くしておるわけでございます。  再発ということでございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、私どもの調査では判然としなかったわけでございますが、地検において関与があったというような認定を受けたということ、そのこと自体が大変国民の信頼を損なう重大なことだということで、かかることのないように再発防止ということを申し上げたわけでございます。
  209. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう時間がありませんが、いずれにしても、メゾン玉川学園の一室を借りて、そこに契約もし家賃も払い、それから録音の機械その他を設置をし、そして電話線の分かれをやり、そういう工作もし、そして現場には消去された録音テープが存在をしている。これだけ証拠が備わっているというのは非常に珍しいんで、その後の事件、例えば上田副委員長宅の電話盗聴事件はいまだにだれがやったのか明らかにならない。  そういうように、その後の事件というのは幾つも出てきています。警察官がやったらどうもないんだと、まさに盗聴天国のような状況で、自民党の議員さんのところにも盗聴が行われるというようなことが起こったりしているでしょう。まさに取り締まるべき警察官がみずからの周囲をきちっとしない、そういうことが盗聴天国を生んでいると思いますし、まして警察権力がこういう盗聴事件を起こすこと自身が違憲違法の許しがたい犯罪だというように私は思います。だからこの点は、またその後の新たな事実が明らかになればさらに追及していきたいと思います。  それから、神奈川県警はなおまだ引き続いて内部調査を継続してやっているんですか、やっていないんですか。
  210. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 当時いろいろと問題になりましたので、内部調査をやりまして、それに基づいて必要な懲戒処分などの措置をとったというふうに承知しております。
  211. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう一件落着しているんですね、判然としないままで一件落着。  先ほどおっしゃったように、これから検察審査会の結論が近く出るでしょう。あるいはそのほか民事訴訟やらいろいろなやつがありますから、それらの公判を通じて事実が明らかになってきたとき、警察庁は重大な責任をとらなきゃならぬということになるでしょう。  最後に、先ほど田辺先生が御質問の中で、衆議院の予算委員会で正森議員が質問した泳がせ問題をおっしゃいました。私も、時間がありませんから、言っている根拠だけ申し上げておきたいと思います。  中曽根総理が代議士時代、一九六九年五月三日付の朝日新聞のインタビューの記事で明らかにしております。あるいはまた、保利茂代議士は一九六七年十一月十二日の談話の中で三派全学連について述べています。あるいは官房長官であった木村俊夫さんが一九六七年十月八日の羽田事件の直後に発言をなさっているものがあります。最近では、あの問題を起こしました浜田幸一代議士ですが、自民党本部の放火事件の翌日に日本テレビのワイドショーに出て、テレビを通じて国民にはっきりと述べておられます。それから警察と極左暴力集団との関係については、六〇年安保闘争時代の全学連中執の東原吉伸が週刊サンケイ六六年六月二十日号に発表した手記に、警察庁長官をやられた三井さん、当時公安一課長でしたが、その方との接触について公表しています。  少なくとも私の知っている限りでは、以上の問題についてどなたも公式に否定をされたという事実は聞いていません。以上申し添えて、私の質問を終わります。
  212. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 今正森委員の衆議院予算委員会での質問の問題がございましたけれども、私はあの場所で国家公安委員長として明確にお答えをいたしております。泳がせという事実は全くございません。そしていろんな問題、週刊サンケイその他に全学連との接触云々ということはございますけれども、いずれにしても極左暴力集団をいかに防圧するかというのは警察の一番大切な役目の一つでもございますので、そういう意味で、接触があったとすれば私はそれなりの努力をしたと思いますが、それが泳がせということではないわけでございます。  この極左暴力集団の行為というのは反社会的であり、国民のひんしゅくを買い反撃を買っていることは御案内のとおりであります。そういうことを見ますと、そういうものが横行することは、あるいは国民的なひんしゅくを買うために、いわば春秋の筆法をもってすればそれが泳がせではないかという推理推論をする小説家もあるかもしれませんけれども、現実に犠牲者を出しながらだれが泳がせをいたしておりますか。それは大変な間違いでございますので、私はその際も指摘をしたとおりでございますので、御認識を願いたいと思います。
  213. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時五十八分散会