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1988-05-17 第112回国会 参議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月十二日     辞任         補欠選任      二木 秀夫君     井上  裕君  五月十三日     辞任         補欠選任      野沢 太三君     福田 幸弘君      宮崎 秀樹君     山岡 賢次君  五月十六日     辞任         補欠選任      河本嘉久蔵君     松浦 孝治君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         村上 正邦君     理 事                 大浜 方栄君                 梶原  清君                 藤井 孝男君                 志苫  裕君                 多田 省吾君     委 員                 井上  裕君                大河原太一郎君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 坪井 一宇君                 福田 幸弘君                 松浦 孝治君                 矢野俊比古君                 山岡 賢次君                 山本 富雄君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 本岡 昭次君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 吉井 英勝君                 栗林 卓司君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        大蔵政務次官   佐藤栄佐久君        大蔵大臣官房総        務審議官     角谷 正彦君        大蔵省主計局次        長        斎藤 次郎君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省証券局長  藤田 恒郎君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        大蔵省国際金融        局次長      岩崎 文哉君    事務局側        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    説明員        外務省経済協力        局審議官     久保田 穰君        文部省学術国際        局留学生課長   三村 満夫君    参考人        東京証券取引所        理事長      竹内 道雄君        全国銀行協会連        合会会長     伊夫伎一雄君        日本証券業協会        会長       田淵 節也君        横浜市立大学教授 原  司郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○金融先物取引法案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明前回聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 本岡昭次

    本岡昭次君 本法律案は、アメリカが持っています未応募株式を放棄して、それを我が国とカナダ、イタリアが譲り受けるという関係国合意に基づいて、これらの国の出資シェアを調整する特別増資を行うということであります。この出資によりまして、我が国世銀における立場は当然のこととして向上すると思います。  大蔵大臣は、今回の増資が行われた場合、世銀における我が国立場が向上するということに対して、具体的に今どのように対応をされようとしているのか。融資の面とか、あるいは役員の配分の問題とか、いろいろと我が国の果たすべき役割というふうなものを拡大させていく必要があるかと思うんですが、お考えを聞かしていただきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 世銀における我が国の現実に果たしております役割は、実は非常に大きゅうございまして、出資比率が示すようなものとはかなりかけ離れております。それは世銀発足以来、我が国が今日の我が国になりますまでの間の変化、これが十分に出資比率には反映されていない。これはやむを得ないことかもしれませんが、そういうことがございますので、したがいまして今回の改善はまことに結構なことだというふうには存じますものの、だからといって、もう既に相当大きな貢献になっております我が国貢献なり世銀に対する熱意というものが、今回シェアが大きくなりましたから特にどうということではございませんで、むしろ我が国が従来やってまいりました貢献から見て余りにもシェアが小さいではないかという、そういう理解が不十分ながらこういう形であらわれた。そう考えておりまして、御指摘趣旨のとおり、こういうことがある、ないにかかわらず、あればなおさらでございますが、今後の世銀活動について我が国は全力を挙げて支援をいたしてまいりたいと考えております。
  5. 本岡昭次

    本岡昭次君 我が国の今の立場というのは、「世界貢献する日本」ということを標榜しているのでありますから、今大蔵大臣がおっしゃっているようなことであろうと思います。しかし、今回のこの我が国増資ということに対して、アメリカが持っていた権利を放棄するということが一方にございます。私のいただいている資料を読んでみますと、今までアメリカが持っていた二〇・九一%ですか、これは拒否権を発動し得る一つ割合を保持していたということなんですが、今回これを放棄したことによって一八・九一%になるということで、拒否権を発動し得なくなった。しかし、アメリカはそれにかわって今度は、受諾加盟国投票権数の総投票権数に占める割合を八〇から八五に引き上げて、そして株式シェアが落ちても拒否権だけはしっかりと握る、こういうことをやったということが載っております。  私、これを読みまして、さすがはアメリカさんだなと思うんです。しかし、絶えずアメリカがある意味では大国意識というんですか、そういうものをむき出しにしてこうした拒否権だけを握ろうとするようなことは、やっぱりある種の大国のわがままではないかというふうなことを感じますが、これは私の考え方が間違っているのか、大蔵大臣も私のようなお考えをお持ちになるのか、聞かせていただきたいと思います。いや、大臣にちょっと、大臣の感想を聞いておるんですが、いかがですか。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、政府委員がお答えいたします。
  7. 内海孚

    政府委員内海孚君) 私から、まず事柄の経緯について若干御説明させていただきたいと思いますが、ただいま本岡委員指摘のようなアメリカが自己のシェア日本その他に分けるということにつきましては、アメリカ議会承認が当然要るわけでございまして、その関係アメリカとしてはやはり、ただいま委員指摘のような形のものが維持されることが必要だということを述べまして、それを関係国、これはそれによってふえる国だけでなくて、関係国がそれはやむを得ないということであったわけでございます。  また同時に、IMF協定の方が協定改正に要するマジョリティーというものが八五%になっておりまして、同じブレトンウッズの機関でございますので、適当な機会にそれに合わせて協定安定性を維持するという必要性はかねてから指摘されていたところでございます。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこで、本岡委員の言っておられますことは、私はおっしゃっている意味はよくわかって伺っておるわけなんでございますけれども、アメリカ国内あるいは議会の中で、こういう国際機関あり方についていろいろ批判をする向きもあるわけでございます。中には、各国に対する援助等々も国際機関で行えば、これは国際機関世話になったという感じでございますけれども、二国間で行えばアメリカ世話になったという感じがするのは、それはそうでございましょう。そういうような議論をする向きがやっぱりアメリカ議会の中にかなり御承知のようにあるわけでございます。  ですが、それは長い目で見ますとやっぱり短見であって、世界全体の平和なり繁栄が国際機関活動もあって維持されるということは、増進されるということは、アメリカ自身の国益にも長い目で見ればこれは寄与することでございますから、一方でそういう意見の人もあるが、それはしかしそういうものでもないというふうに心ある人々は、政府の中でも議会の中でも思っている人もある。我々としてはやっぱり、それはアメリカ国際機関というものは大事にすべきものだ、こういうふうに考えております。  そういう立場から申しますと、こういう増資の問題とかあるいはシェア日本に譲る、政府当局者としてはこれはかなりの英断になるわけでございますが、そのかわりにどういうことがあるんだという、議会の今度はさっき申しましたような側の人たちにそれを納得させなければならないという問題がございまして、全体を見て、やはり長い目で見て、アメリカ自身国際機関に十分に理解協力を続けていくということが大事な問題であると考えておりますものですから、私どもはそういうふうにいわばしむけていくという言葉はちょっと適当でないかもしれませんけれども、そういうふうな推移になることを我々としても力を貸して推進していきたい、こう考えておるわけでございます。
  9. 本岡昭次

    本岡昭次君 私の意見だというふうにして聞いておいていただきたいと思います。  それで、次にお尋ねいたします。  世銀授権資本について七百四十八億ドル増資して、資本金を約千七百十億ドルにするということで合意したというふうに聞いています。ことしの二月十九日、世銀理事会でこの決定がされたようであります。この一般増資協力するに当たって、今後どのような日程で我が国対応をすることになるのか。    〔委員長退席理事梶原清君着席〕 また、その応募に当たって財政負担はどのようになるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  10. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいま御指摘一般増資につきましては、その後総務会投票が行われまして、我が国賛成投票を行ったわけでございますが、この総務会決議が四月二十七日に成立いたしました。  今後の段取りといたしましては、まず今後予算上の措置と、それからまた次の通常国会におきまして世銀加盟措置法改正をお願いするということになります。  一般増資につきましては、払い込み比率が三%でございます。このうち〇・三%は現金で、それから二・七%はいわゆる出資国債払い込みを行うことになります。これに伴います我が国財政負担は、換算レート百三十五円ということで換算いたしますと、現金払い込み部分が約二十億円、国債払い込み部分が約百八十一億円となる見込みでございます。
  11. 本岡昭次

    本岡昭次君 我が国のこれに対する対応は今聞かしていただきました。  世銀一般増資合意に当たってコナブル総裁が、加盟国各国政府が迅速に批准行動を起こすことを期待する旨の発言をしているようであります。特にその増資に当たって、アメリカかなり部分を受け持つことになるんですが、アメリカは双子の赤字と言われているように、かなり財政上の厳しい問題もあるわけであります。そういう国内事情から見て、アメリカ国内における一般増資批准ということに時間がかかるのではないかと懸念する向きもあるようですが、大蔵大臣アメリカのこの状況をどのように認識しておられるのか。おわかりであれば教えていただきたいと思います。
  12. 内海孚

    政府委員内海孚君) アメリカ状況でございますが、ベーカー財務長官も大変この問題を重視し、かつ大変議会に気を使って、いろいろ議会関係事柄を、世銀一般増資について妨げにならないように配慮しながら慎重に進めているようでございます。そういう状況から見まして、米国が速やかに出資のための国内措置をとられるよう議会承認が得られるものと期待をしているわけでございます。
  13. 本岡昭次

    本岡昭次君 一九八五年から一九八七年までの「世銀部門別融資承諾内訳」という資料がございます。世銀が出している年次報告から出したものであります。これを見てみますと、いろんな傾向があります。その中で教育という部分が四・五、四・四、一・二というふうに低下をし、また農業農村開発という部門も二一・〇、二八・五と一たん上がるんですが、また一三・七%というふうに下がっていきます。開発金融会社というふうなものは四・五から一〇・一、一五・五というふうにふえていく。いろいろあるんですが、その中でノン・プロジェクトという部門がありますが、これも三・八、六・八、一二・六というふうに非常にふえています。こうした部門別融資の増減ですが、この点についてどういう認識を持っておられるのかということをお伺いをしたいのであります。  一つは、農業農村開発とか教育というものが低下していることをどう見るのかという点。  二つ目に、ノン・プロジェクトという部門が伸びていく、この傾向をどう見るのかということであります。  特に、このノン・プロジェクトというのは、融資対象を限らずに総合的な見地から、それぞれの貸し付けを受けた国がみずからの発展のために使えるという、そういう弾力性のあるもので、それはそれなりに意味を持つと思うんです。しかし、その融資対象国あり方によっては、対象がこれは限定されておりませんから何にでも使えるというところで、その使い先が融資目的から離れるということも危惧されるわけでありまして、融資そのものの性格からいえば非常に有益な部分があるけれども、しかし、やり方によっては非常に危険な要素を持つ融資ではないか、こう私は思うんです。この増加傾向についてどう思われるか。この点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  14. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいま委員指摘の点は、世銀だけではなくて、各国資金協力についても多く見られる傾向でございます。  第一が、委員指摘のように、農業とか工業についていわゆるプロジェクト細りというような現象が開発途上国に見られます。これは第二次オイルショック以降、どちらかといいますと世界経済が低成長期に入りまして、それで他方、例えば農業産品等につきましては生産過剰というような状況もございます。そういうことを反映いたしまして、どうもプロジェクトの方の融資が進まない。これが開発途上国への資金全体の流れをなかなか太くしない。そういう問題がございました。  農業関係について申しますと、世界銀行農業関係あるいは教育関係というものにかなり重点を置いてきておりまして、その基本的な考え方は変わりません。したがって偶発的にちょっと細っているということはあっても、またこれは依然として融資が続けられると思います。  他方におきまして、委員指摘のように、いわゆるノン・プロジェクト部分がふえてきております。これは先ほど申し上げましたようなプロジェクト細りというようなものの中で、どうやって開発途上国への資金流れを太くしていくかという場合に、例えばセクター融資というようなものがあります。これの例を挙げますと、中小企業セクター近代化、これは設備投資だけではなくて長期の運転資金も貸し付けるような形になります。あるいは輸出セクターというように、セクター重点を置いてそこへ融資をするという形が最近非常にふえてきておりますが、これは特に債務累積国のように、もう新たなプロジェクトをやっていくよりも、現在あるいろんなセクター近代化かつ活性化して、対外的なポジションを改善していくために必要だという考え方によるものでございます。  これは単に世銀だけではなくて、例えば我が国におきましてもいわゆる三百億ドルの資金還流の中でかなりその面は重視しているところでございまして、プロジェクト融資というものの重要性も否定できないわけですけれども、これと相並びまして、そういった開発途上国のニーズに合致したような形で資金流れを維持していく、あるいは太くしていくという関係から、方向としては適切なものではないかというふうに考えておるわけでございます。
  15. 本岡昭次

    本岡昭次君 世銀は現在、開発途上国開発援助に専念をして、商業ベース融資を行う機関であります。  この世銀融資承認先の上位を見ると、メキシコ、ブラジルなど、インドを除いていわゆる累積債務国のウエートが高いということがわかります。したがって、世銀においても返済の問題でかなり難しいことが起こっていると思うんですね。最悪の場合、債務返済不能ということに陥りかねないと言われていますが、世銀への融資返済についてどのような状況に一般的になっておりますか。また、先ほど私が言いましたように、債務返済不能というふうな危険はあるのかないのか。返済の遅延している国に対しての新規融資というものは、どのような対応をなされているのか。そういった点について伺っておきたいと思います。
  16. 内海孚

    政府委員内海孚君) 我が国出資割合がふえるということは、いわば株主としての重要性がふえるわけですから、ただいま委員指摘のような点がより重要な関心事になることは私も当然だと思っております。  世界銀行は健全な財務体質を維持するということに大変重点を置いて考えておりまして、貸付案件審査に当たっても堅実な貸付基準というものを課しているわけでございます。これまで経済困難とかあるいは自然災害というような事情によりまして、一時的な国際収支困難に陥り、それによって世界銀行に対する返済が遅滞しているという国はございますけれども、返済がもう完全に不能になってしまったという例はないわけでございます。すべて、いずれはという形で返済されております。  現状を申し上げますと、世銀で七十五日以上の支払い遅滞を起こしている国は、新規融資を含めてもうディスバースを、新規貸付を停止してしまうわけですが、その額は昭和六十二年六月末時点で約七千万ドルの債権がございます。七千万ドルが百八十日以上の返済遅滞を起こしております。具体的な国で申し上げますと、ガイアナ、リベリア、ニカラグア、それからシリア・アラブ共和国の四カ国でございます。
  17. 本岡昭次

    本岡昭次君 世銀関係は以上にさせていただきまして、前回質問しました日本の対外援助問題も大いに世銀目的と関連もありますので、その点について若干質問をしておきます。  政府開発援助の第三次中期目標昭和六十年に設定されて、昭和六十五年のODA実績目標を七十六億ドルというふうに定めています。しかし、最近の円高に伴って昭和六十二年の実績は既に七十数億ドルに拡大し、目標値意味をなさなくなったというふうに言われています。そこで政府は、この第三次中期目標見直し作業に入ったと伝えられておりまして、新聞でもその点の報道がございます。それによりますと五月十一日、総理政府与党首脳会議を開いて、サミットまでにODAの新目標を定めることを表明し、協力を求めたと報道をされております。  それで大蔵大臣にお聞きしたいんですが、このようにサミットまでにODAの新目標を定めようということで、ODA見直し作業に着手されているという、このあたりの事実関係を伺っておきたいと思います。
  18. 久保田穰

    説明員久保田穰君) 四月の下旬に、総理大臣から外務大臣に対しまして、「世界貢献する日本」の立場から経済協力具体的施策を検討するようにという指示がございました。これに基づきまして外務省としては総合的な協力構想というものを取りまとめようということでただいま検討している次第でございます。その中でODA拡充という問題は重要な柱の一つ考えております。  ただいま委員指摘の五月十一日の政府与党首脳会議におきましても、ODA拡充につきまして党のサイドで検討するということを伺っております。
  19. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は大蔵大臣にお聞きしたんですが、政府与党首脳会議という以上、これは大蔵大臣も当然御出席であったろうと思いますので、この新聞報道には五月十一日のその席上で、総理の方からサミットまでにODAの新目標を定めることについての協力を求めたと、こうあるんですが、その事実関係はいかがですかとお伺いをしておるんです。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま外務省説明員の方からお話がありましたように、この問題についてはやはり、ここで従来の方針を見直して新しい構想を立てるべきであろうという、まあそういう緩やかな合意と申しますか、そういう考え方政府与党に共通してございます。  で、政府与党の昼食の会というのは、厳密な意味でこれは決定というようなことよりは、ただいま申しましたようなみんなの意向が大体そういうことで一致したということ、総理大臣の御主宰のもとにそういう合意があったということは、そういうふうに考えて私はよろしいと思うんでございますが、さて、その内容をどのようなものにして、いつまでにどうやっていくかということにつきましては、当然のことながらこれは各省庁に、各省庁及び党内でございますけれども、問題は返ってきておりまして、そこから具体的にいつまでにどういうことをやるか。  できますならば、それはサミットまでということは大変望ましいことでございますが、まだ中身等々について十分な合意なり何なりができておらない。全体としてはしかし、前向きに事を考えなければなるまいということで共同の作業をいたし ております。
  21. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、この問題について予算委嘱審査の際に質問をいたしました。そのときにも、日本ODA実績は、世界経済大国と言われ、またみずからも「世界貢献する日本」というふうにアピールをしているにしては、我が国ODA内容が質量とも余り褒められた内容とは言えないんではないかという点を指摘をいたしました。そういう立場から、総理ODA見直しサミットまでにしてほしいと表明された点は結構であるというふうに思うわけでありまして、これは積極的にODA見直し作業を進めるべきであるという意見を持ちます。そういう立場から、現在何らかの作業に入っているんではないか。新聞紙上ではいろいろな数字も出てきております。  そこで、ODA見直しということの中で、一つGNP比何%というふうな目標値の定め方がございますし、もう一つ贈与比率というものを一体どのようにしたらいいのかということもあるわけであります。特に、贈与比率という面で見れば先進諸国の中では最低という状況が、前回の答弁の中にもありましたし、GNP比数値平均を下回っておる。平均が〇・三五、我が国が〇・二九、これは一九八六年ですか、七年ですか、そのときの数値がそのような状況だと報告を受けました。  したがって、いろいろと見直し作業の中にあると思いますが、やはり一番大事なのはGNP比で何%にしようとするのか。また贈与比率を何%までに高めようと考えているのか、あるいはまた、その最終年度をいつごろにしようとしているのか、こうしたことに一番関心があるわけであります。そうした点について、現状どのような考え方で検討を進めているのかということを大蔵省外務省双方おいでいただいておりますので、できればそれぞれの立場からお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  22. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいまの問題につきましては、先ほど大臣、それから外務省からお話のありましたようなことがありますので、いろいろ勉強はしておりますのですが、具体的に質あるいは量について、ただいま御指摘の例えばGNP比率というようなことについて新聞ではいろいろ出ておりますが、具体的にどういうめどで量をはかるかということについてもまだこれといったものは持っておりません。  と申しますのは、量も大事だということは言うまでもないわけですけれども、それにはおのずと、どういうことをやれば開発途上国のニーズに合致するのかというやっぱり積み上げが要るわけでして、ただ量をふやしていって消化不良になっても困るわけでございます。また、当然のことながら全体における財政立場からの検討が必要でございますので、この点はまだ具体的なめどを持つということではございません。  それから贈与比率につきましても、御指摘のような点は我々もよく考えている点でございますが、ただ若干御説明申し上げますと、ヨーロッパの国々の贈与比率の高いのは、ヨーロッパの国々の旧植民地であるアフリカがどちらかというと所得の低い国なものですから、借款というよりもやはり贈与という形になることが多いわけでございます。  我が国の場合には、どうしても周辺の地域が中心になってまいりますが、その場合に、アジアの国々というのはある程度借款によって経済を活性化し近代化しというニーズが強いわけでございます。そういうような事情もありまして、単純な世界的な比較で贈与比率が高ければ高いほどいいというものでも必ずしもない。  また、いわゆる資金還流計画というようなものは、予算的なものをある程度触媒にいたしながらも、そういった触媒を使いながら、民間資金とかいろいろな形の資金流れ開発途上国向けに太くするという必要もあるわけでございまして、そういったようないろいろなことを考えますと、これもなかなか、当然この贈与比率がいいんだというところを見出すのもそう簡単ではないという事情にございます点を申し上げておきたいと思います。そういう意味におきまして、現在まだ御指摘のような点について、こういう程度のめどというところまでは到底至っていないというのが現状でございます。
  23. 久保田穰

    説明員久保田穰君) ただいまの大蔵省政府委員の御答弁のとおりでございます。外務省におきましても、委員指摘のような問題点を考えまして、サミットにおける我が国対応ということも含めまして、ODAにつきましては質及び量の両点につきましての一層の改善ということを念頭に置いて、作業が進められていくということになると思います。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 大蔵省外務省を前にして、両省に食い違いがあるんではないかという質問をするのは、お答えになる方は大変お困りになると思いますが、しかし、外務省立場からすれば、このODAというもののGNP比率を当然高めていくということでなければ、経済力にふさわしい海外援助という立場から見たときに国際的な批判を受けることは当然だと思うんです。一方今度は、大蔵省にすれば出す側になりますから、GNPも高まっていく、その比率もどんどん高めるとすれば毎年毎年の財政負担というものは大変になるから、そうは簡単にいきませんよということになってくるだろうと、これは素人が考えても思うのであります。  そういう意味で、先ほども局長の方が質の問題でいろいろと言及されました。新聞報道によると、大蔵省はこのODA拡充策に対して、量的拡大より質の向上に重点を移すべきだという主張があって、そして外務省の方のGNP比というものに重点を置いて拡大するという考えとは違う立場をとっておられるというふうに書かれてあります。  それで、先ほどのお話も質に関係するお話であったのですが、大蔵省は質の向上というふうなことをおっしゃる立場から、それでは一体ODAの質というものをどのように考えておられるのか、何を質と思っておられるのかということ。それから先ほど贈与比率の問題を、必ずしもそれを高めることがいいとは思わぬとおっしゃったが、贈与比率が高いということは、ODAの国際的な評価の中では質の一つのバロメーターだと見られているように私は承知をしているんですが、大蔵省の言う質の向上とは一体何なのか、できるだけ詳しく教えていただきたいと思います。
  25. 内海孚

    政府委員内海孚君) 質ということを申し上げましたときに、例えば贈与比率一つのファクターではないかと。これも一つのファクターだと思います。一番基本的なことは、我が国ODA開発途上国のそれぞれの国の事情におきまして一番歓迎される。日本にこういうことをやってもらって、これが一番我が国のためになったと受け入れ側から思われるようなことに、どう対応していくかということであろうと思います。初めに量ありきというよりも質だということを申し上げたのは、そういうことでございます。  一例を挙げますと、従来どちらかというと、予算ではこういう病院をつくったとか、そういう入れ物をつくるというようなことが多かったわけでございますが、例えばそこでの必要な医師あるいは看護婦の養成に我が国がもっと力をかすとか、ハードからソフトへということがよく言われますが、そういったきめの細かく、かつ本当に相手国のニーズがどうかということ。これは先ほどプロジェクトローンからセクターというか、ノンプロジェクトに変わっているということも申し上げましたが、開発途上国の方の側のニーズというのも大変変わってきておりますので、そういうことをきめ細かく、したがって、その辺を各省がよく接触している相手方からの意見というものを吸い上げた上で、積み上げる必要があるだろうということを申し上げたいわけでございます。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の話であれば、別にGNP比数値が拡大をしていく、例えば〇・二九であるのを〇・三五に、あるいは〇・四に、あるいは〇・五にと拡大することが別に質の向上を阻害する要因にならないんじゃないですか。  あなたのおっしゃるように病院をつくることだけじゃなしに、医者とか看護婦とかいうふうな医療従事者の養成、教育というものに重点を注ごうということなら、GNP比の比率を高めてそういう援助をどんどん行えばいいわけで、大蔵省の言っている量的拡大より質の向上ということになってくると、全体の量的なものはふやさずに、一方、むだな海外援助があるからそれをカットして、そして箱物じゃなくて中身の働く人の養成などに切りかえていくのだというふうにとれるわけなんですよね。  だから、大蔵省考えというのは、現在のGNP比〇・二九というものの中でむだな援助、役に立たない援助を、役に立つ、あなたがおっしゃったその国に歓迎されるような援助に切りかえていくことなんだというふうになっていくと、これは非常に問題がある。それは当然そのこととしてこれはやっていかなければならぬことですよね、むだな援助があってはならないわけだから。  むだな援助じゃなくて、日本にとっても有益であり、そして特に受け入れ国がそのことを歓迎し、そこの国民が喜び、日本に対する信頼とか友情とか、そういうようなものがより高まっていくという援助にしていくことは、これは何も量と質の問題じゃなくて当然なことでありまして、量をふやす必要はないというふうな形での関係を持たすことは、私は大変おかしいと思うんですね。だから、質の問題を論議されるときに、量については拡大しなくてもいいというふうな発展のさせ方は、これは大蔵省が海外援助にブレーキをかけているということ以外の何物でもないと思うんですよ。
  27. 内海孚

    政府委員内海孚君) あるいは私の申し上げ方が悪かったのかもしれませんが、我が国といたしまして国際社会へ貢献するという立場から、ODA拡充ということについては何ら異議はない、むしろそれは非常に重要なことだと考えているということでございます。ただ、その場合にまず量ありきということでそれが決まってというのじゃなくて、やはり相手のニーズを考えながら、どうこれを積み上げて実のある拡充のめどを立てていくかということを申し上げたかったわけでございます。  それから新聞に、大蔵省は質、外務省は量というふうな形で出ているようでございますが、そういう形ではなくて、私が申し上げたかったのは先ほどのようなことでございます。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 今、私は回りくどく言ったんですが、要するにあなたは現在の政府の海外援助の中にむだがあって、それを改めにゃいかぬといってある意味ではそれを批判されたわけでありまして、むだがあるのなら、私は一体どういうむだがあったのかということの詳細な報告をあなたに求めたいと思うんですよ。これだけの援助をしている中で、実際大蔵省がむだな援助がある、それをもっと有益な、有効なものに変えにゃいかぬとおっしゃるのなら、何が一体むだなのかという問題を政府立場からこれははっきりさせていかにゃいかぬと思います。これは改めて別の場で具体的に、あなたと直接お話し合いをさせていただきたいと思うんです。  それで、私は最初にODA中期目標見直しは賛成だと、こう言いました。ぜひともそれはやっていただきたいという立場で三点お伺いするんですが、宮澤大蔵大臣委嘱審査のときの私の質問に対し、こういう答弁をされております。「これから二十一世紀を展望いたしますと、我が国は言ってみれば世界第一位ぐらいの援助国になりませんと、」「国際平和に貢献できない」。また、「国際的に我が国としては批判を受けることも多かろうと思う」というような答弁を実際されておるのであります。  「世界第一位ぐらい」ということでありますから、その「ぐらいの援助国」ということを目指さにゃいかぬという大臣のお気持ちであろうと受け取るんです。そうしますと、やっぱり今期の見直しもそれに大きく近づいていくことでなければならぬと思います。そうなりますと、GNP比も〇・三五という先進諸国平均値を上回るということが最低の当面の目標として上げられると思います。それは〇・七という最後の到達目標に一挙に近づけるわけにいきませんから、やっぱり当面ということになれば〇・三五という国際水準をどれだけ突破するのか。〇・三六にするのか、あるいは〇・四%というところまで持っていけるのかという問題は、大蔵大臣の「世界第一位ぐらい」ということの目標数値として決して私は無理な数字ではない、こう思います。  また贈与比率の問題にしましても、現在六三%か四%ということで、援助をやっている先進国の中で最下位だという状態を脱出させていくためには、七〇%にすれば脱出できるのか、あるいは平均値に持っていくためにはどうすればいいのかというふうな目標値を、積極的にこの中期見直しの中で定めるべきであるというふうに思います。  さらに、宮澤大臣は答弁の中で、援助というものはどういうものかということをお伺いしたときに、世界各国の相互依存の問題と人道的な考慮が必要だということをおっしゃいました。この人道的な考慮というのは哲学的な一つ考え方の表現だと、こう思うのであります。質か量かということが絶えず議論になるというのは、日本の海外援助に対する哲学というものがきっちり定まっていないというところから四省庁協議というものでいろいろと混線をしているんではないかと思うんですが、今度中期見直しの中ではやはり海外援助の哲学、理念、こうしたものをはっきりと確立させることが必要ではないかと思います。  それから三点目といたしまして、機構の問題も四省庁会議でうまくいっているとおっしゃいますけれども、私はうまくいっていない、こう思います。早急にそのための独立した省庁をつくれなどと言えば、これは非常に極端な意見になりますが、そうでなくて、そのことを専門的、総合的、集中的にやれる一つの機構というもの、権威ある機構というものをやはりつくらなければならぬじゃないか。  それの発展として独立した一つ省庁になる、そのワンステップをぜひとも次の段階では踏んでいただきたいし、宮澤大臣も、国会がこういう問題に関与していただくことは非常にありがたい、非常に有益であるという答弁をこの前なさいました。国会の関与の仕方について検討もしてみたいという答弁も前回いただいておるんですが、こうした海外援助問題が国際平和という問題に絡む極めて重要な事柄として位置づけられるとすれば、やっぱり国会の中でそうした問題を責任を持ってやっていくという関与のあり方、そういうようなものをどうしてもつくる必要があるんではないか、こう思います。  それから最後に、配分ということが起こってくるわけでありますが、先ほど局長贈与比率の問題について、日本はアジアに集中して配分しているところから、アジア各国が贈与よりも借款を好むのでどうしても贈与比率が落ちるんだというふうにおっしゃいました。しかし、「世界貢献する日本」、アジアから世界となったら、やはりもっと幅広く援助対象をアフリカ等にも広げていかなければならぬし、その目指すところは最貧国である。日本はバングラデシュ、ビルマしかないからということでなくて、世界に散らばっている最貧国に重点的に配分していくということも、やはり質の問題の一つとして考えていく。  そのことをこの中期見直しの中でやっていかなければ贈与比率の問題も解決しないのではないかというようにも思いますし、文字どおり「世界貢献する日本」という立場から見たときに、アジアだけに余りにもウエートを大きくかけ過ぎているということからくる批判にもこたえられないんではないかと思うんです。  たくさん申し上げましたが、以上のようなことを含めて大蔵大臣の方からひとつ総括的にお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御趣旨には私は共感をする点が実は多いのでございますが、私は国務大臣でございますけれども、同時に大蔵大臣という立場だものでございますから、こういう場合の四省庁協議というようなときに、おのずから各省庁の間にちょっとした役割みたいなものがもう御想像のようにございまして、全体の協議の中でチェックス・アンド・バランスの中からいい結論が出ていくということも御理解をいただけることだと思いますので、そういう意味で多少控え目な発言をさせていただいておるわけなんでございますが、しかし、いろいろ考えてみますと、やはり将来、我が国の国際的な責務というものはこの対外援助にあるということは、私はもう疑いを入れないところであると思います。  それは質か量かといえば、結局質も量もということにならざるを得ない。ならざるを得ないのでございますが、ただ、我が国のように国民総生産が非常に大きな国になりまして、しかも毎年の成長は比較的高いという国になりますと、GNP比を上げていくということがなかなか小さい国に比べまして苦労が多いということも御理解いただけることであろうと思います。  それで、しかし私はやはり国会がこういう問題について、ただいまのお尋ねのような関心を持っていただくことはぜひとも必要であり、ありがたいと思いますのは、今後我が国の国民負担の恐らく非常に大きな部分がこういうことになってくるだろう。それは国民的な理解がありませんと、なかなかやりにくいことでございます、直接自分の目先の利益にならないことでございますので。そういう意味で、国会の御理解と御支援がなければなかなかやりにくいことである、こういうことだと思いますが、しかし、ただいまおっしゃいました各観点について、やはり我が国はこれから大変な努力をいたさなければならないというふうに考えております。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕  最後に、各省庁の体制の問題でございます。  私はたまたま、その四省庁のどこにも勤務をした経験があるものでございますから、みんなの観点をまあまあ自分で体験して知っておるつもりなんでございますが、どうもこれを一つにまとめて、一つ政府機関と申しますか、一つの行政機構にまとめるということは、形の上ではいいような感じがいたしますけれども、現実の事態としてはどうもうまく動きそうもない。私はそういうふうな感じを自分の経験からは持っておりますものですから、やはり今の四省庁体制というものをできるだけ円滑に上手に動かしていくということの方が、いわばベストではないかもしれませんけれども、現実にはベターではないかという気持ちを持っております。  ただ、恐らく本岡委員の御批判は、もっとそれは円滑に迅速に動かなければならないんじゃないかというそれでありますと、確かにそういう心構えは大事であると存じますけれども、一つの機構を改めるということにつきましては、私は実際の問題としては、自分の経験から多少の疑問を持っておるということでございます。
  30. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最初に、開発途上国に対する累積債務の現状はどうなのか。また、今後の見通しをお伺いしたいと思います。
  31. 内海孚

    政府委員内海孚君) 債務累積問題につきましては、このところ若干、全体として明るさが出てきていると言われておりますが、これはその中の主要の国の一つであるブラジルにつきまして、ブラジルがようやくIMFと政策についての話し合いに入り、ややその先も見えてきて、また民間金融機関との話し合いも順調に進んでいるという点で、大きな変化があったということでございます。しかし、いずれにいたしましても、一九八七年末の途上国の債務残高は全体で一兆二千億ドルということでございます。依然としてこの問題が世界経済の動向、その安定と成長を図る上で、その解決を図っていくことが極めて重要な政策課題であるということはいささかも変わらないわけでございます。  そういう中で、ただいまブラジルのことを申し上げましたが、順次その国その国の状況に応じましてケース・バイ・ケースで対応を進めているわけでございますが、こういったことを粘り強く続けていくことが重要であるというふうに考えております。
  32. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 我が国の金融機関のこういう累積債務国への融資残の現状はどうなのか、これをお伺いします。
  33. 内海孚

    政府委員内海孚君) 東ヨーロッパを除きまして、開発途上国に対する我が国の民間金融機関及び公的機関の中長期の対外貸付残高は、六十二年末で千百三十三億ドルでございます。そのうち民間金融機関からの貸付残高は七百七十億ドルでございます。民間機関とそれから輸銀等の公的機関を合計いたしますと、地域別にはアジアが五百五十八億ドル、中南米が四百五十億ドルでございます。アフリカが九十億ドルとなっております。
  34. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 こういう累積債務国への貸倒引当金等の問題について、我が国として預金者保護の観点からそういう点は心配ないのか。  それともう一つは、外国の銀行等はこういう債務を不良債権として処理をしている。これもある意味では発展途上国に対する協力、ある種のやはり協力になるんじゃないかと思うんでありますが、そういう問題については我が国はどういう方針で臨むのか、これをお伺いしておきます。
  35. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 御指摘のように、このような累積債務国への債権が我が国の金融機関の資産の中でもかなり大きなウエートを占めてきているわけでございますが、その結果といたしまして、今、銀行経営にもいろいろの影響を与えてきておりますし、与えることが今後予想されるわけでございます。  したがいまして現在、このような累積債務国への債権につきましては、一つは有税の引当金である特定海外債権引当金勘定というのがございまして、それへの繰り入れ率が今まで五%でございましたが、先般これを一〇%へ引き上げることによりまして、一つは銀行経営のより一層の健全性を確保いたしますとともに、他方、米英の主要銀行等が引当金を積み増しておりますので、それとの関係でこちらも積むことによって、邦銀等に対する国際的評価にいい影響を与える方向で措置をとったわけでございます。  それからもう一つ、このような債権に対しましては、いわゆる貸し倒れ等に備えるために、通常の貸倒引当金にかえまして、特定海外債権の増加額等に係る金額の一%に相当する金額を準備金として、無税で積み立てる仕組みがあるわけでございます。ただ、こちらの方は税と絡んできておりますし、しかも五十九年度の税制改正において創設された制度でございますので、現在これにつきまして金融界としては、さらにこれを拡充してほしいという要望をしておるところでございますけれども、財政当局の立場としては、厳しい財政事情のもとで税制面から精いっぱいの配慮を行っているということで、この積み立て率の引き上げにつきましては消極的な感触を我々は得ているわけでございます。  いずれにしましても、このような対外的な債権の問題につきましては、銀行経営に問題がないように、我々といたしましてもいろいろ今後とも配慮してまいりたいと考えている次第でございます。
  36. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣にお尋ねしますが、こういう発展途上国に対する協力ですね。これは、本法案のような国際通貨基金あるいは国際復興開発銀行への加盟に伴う、そういうのを通して国の力で協力していくというやり方と、それと民間金融機関のいろんな融資、そういう官と民とがあると思うんですけれども、民の場合はある種の危険もあるわけですが、危険があるからやらぬというわけにもいかない。そういう問題があると思うんですが、今後、民間の金融機関としての開発途上国への協力というものについては我が国としてはどういう姿勢で臨むのか、これをお伺いしておきます。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御承知のように、累積債務の中心はやはりラテンアメリカの国々でございますし、勢いそこにはアメリカの銀行が一番大きな関係を持っておるということがございまして、したがいましてアメリカの動向というものはやはり一つの大きなポイントになるわけでございますけれども、アメリカ議会なんかの気持ちの中に、結局貸したのは銀行である、したがってその始末は銀行と債務者との間で本来すべきものであって、国民の税金を使っていろんな形でそれにあれこれするということは本来、本質的にはそういう問題と違うのではないかという、かなりそういう強い考え方がございます。  それからもう一つは、そういう銀行の立場からいたしましても、なるほど貸した借りたではありますが、さらに、債務者として払えない、払えない状況でもう少し貸し増しをしてくれないかと言われれば、あなたの国はこれから一体どういう経済運営をなさるのですか、例えばIMFのようなところの専門家の意見もお聞きくださって、いわば引き締めた経済運営をやってくださらなければ、また金を貸せと言われてもなかなか貸せないじゃありませんかという、そういう立場もこれもある程度もっともなことであるといったように、なかなかこの問題については複雑な要素がございまして、その中で我が国としてはまさにそれは、今申しましたようなことは大切なことでございます。  いたずらに甘いというか温情的な態度をとることによって、かえって債務国側の努力をいわば弛緩させてしまう、緩ませてしまうというようなことは確かにございますものですから、そこは十分気をつけてしなければならないことでございますが、さて、それだけのことを申し上げた上で、しかし、やはりこういう問題については、世銀でありますとかIMFでありますとかいう国際機関がもう少し今よりも深くかかわり合ってもいいのではないか。何となれば、これは一つの銀行と一国との関係であるには違いありませんが、今や世界の経済の一番大きな問題になっておることは疑いがございませんので、そういう意味では国際機関自身がもう少し関心を持つべきではないかというふうに私としては考えております。  そして、この法案とどういう関係にあるかということもごもっともなお尋ねでありまして、そういうものとして国際機関を我々はやはりできるだけ力強いものにし、協力をしていきたい。こう考えておりまして、そのために増資が必要ならば、あるいは特別の資金が必要ならば、我が国としては応分の負担をすべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  38. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、多少これに関連をいたしまして金融行政についてお尋ねしますが、現在、第一相銀に対する検査が行われていることは、いろいろ報道されておりますが、これはどういう検査をやっているのか、どういう目的でやっているのか、これをお尋ねしたいと思います。
  39. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 第一相互銀行に対しましては、本年四月四日から検査に入っておりまして、現在検査を続行中でございます。通例、相互銀行等に対しましては平均二年で一度検査に入るわけでございます。第一相互の場合は四カ月ほど早いわけでございますが、通例の検査ということで入っているわけでございます。  そして、店舗への臨店検査は四月四日から十二日まで七カ店について行いました。現在本部の検査を行っておるところでございます。したがって、今後検査がいつごろまでかかるか等々につきましては、まだ検査中でございますので、現段階では具体的に申し上げる状況にはなっていないのであります。
  40. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、通例の検査ということになると、そういう検査に行く人数とかそれから期間とか、そういうのは大体通例どおりなんですか。
  41. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) これは、検査のやり方といたしまして特別検査というのも特に従来からございませんし、検査というのは、検査ということで常に入っているわけでございます。ただ、たまたま今回の検査におきましては、検査官の人数が若干多くはなっております。いろいろな事情がございまして、そういうことになっておるということでございます。
  42. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 けれども、普通の通例検査であれば、連日マスコミでも報道されておるわけですが、これはやはり銀行局としてはこういう情報をリークしてそうなっておるのか。これはどうなんですか。
  43. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) これまでもそうでございましたが、検査においていろいろ知り得たことにつきましては厳重に対外的に漏れないよう、きちっとやっておりますので、今回も行政当局からそういうものが漏れるということはないと考えている次第でございます。
  44. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、あれほど記事になって、しかも通常の検査、普通ならばこれほど記事になると営業妨害になるんじゃないかと思うんだけれども、その点、いつも大蔵省のやり方というのはどうもはっきりしない。通常の検査だ、通常の聞き取りだ、表面はそうしながら、現実的には裏では一つの意図を持って何かやっているんじゃないかという、非常にわかりにくいんですけれども、こんなに記事になるのは大蔵省は悪くないわけ、書く方が悪いということなんでしょうか。あるいは銀行が漏らしているんでしょうか。
  45. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) なぜいろんな記事が出るかにつきましては、我々としても非常に関心を持っておりますし、知りたいところでございますが、私自身としては、一体どこから漏れたか、それが事実であるかどうかという点につきましては、特に漏れたのはどういうことか、事実かどうか、その点につきましてはここで申し上げるわけにいかないわけでございます。
  46. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 マスコミ報道では、いわゆる法定融資限度額を超えて融資をしている、そういうことが調査の一つ目的であるというように書かれておるわけでありますが、そういう面の調査の意図はないのかどうか。その点はどうですか。
  47. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 検査に際しましては、小口融資の問題につきましては常に検査官が調査しているところでございます。しかし片方におきまして、先ほど委員がおっしゃいましたように、新聞等でその問題がいろいろ取り上げられているという事実もあるわけでございまして、したがって検査官としては、この問題についてはそういう情勢等も十分念頭に置きながら調査を行っているというふうに考えております。
  48. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣、今銀行局長はこれは通常の検査であると。けれども、全く大蔵省の言っていることとは違った方向にマスコミでは報道されておるわけですね。こういう点はおかしいと思うんですけれども、もしマスコミが間違っているんであるならば、やはりちゃんと抗議すべきだと思うが、そういう点、本当に通常の検査と理解すべきなんですか。
  49. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど政府委員が申し上げましたのは、いわゆる特別検査といったような、そういう俗語がございますけれども、そういったようなものが特にあるわけではなくて、検査はいわば検査という一つのカテゴリーのものだということを申し上げたのでありますけれども、同時に、大体二年ごとに検査をいたしておりますが、この際はそれより何カ月か早めて検査をしておりますということも申し上げておりまして、これは特別とかいう名前がついておるわけではございませんが、時期を幾らか早めておる。早めておることには、早めることが適当であろうというそれなりの判断が行政側にあったということは、これは私は事実であると存じます。いろいろな状況から判断して、少し検査を早めた方がいいのではないかと考えたことは私は事実と存じます。  それから、いろいろな報道がございまして、これはまことに私も総合的に考えて残念なことで、役所がそのような機密に属すべきことを報道機関に話すというようなことは、これはあってはならないことでございます。が、いろいろな報道がなされておりまして、私はそのなされておる報道が誤りであるか誤りでないかということを今申し上げる立場にございませんけれども、役所の側はかなり私が厳しく申しておるつもりでございまして、それにもかかわらずいろいろな報道がなされておることについては、二、三こういう事情ではないかということを聞いたりしておることはございますけれども、それはしかし真実であるかどうかということがまたわからないことでございますので、そのゆえにということは申し上げることができませんが、いろいろ複雑な事情もあるのであろうかと存じます。役所側がそういうことについて無責任なことをいたしませんように十分に気をつけていたします。
  50. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、今回の第一相銀に対する検査は多少時期が早い、目のつけどころが違うという点はあっても、今回の第一相銀に対するような検査は全金融機関に対して順次行っておるものである、そのように理解していいわけですね。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、時期を早めたということは、それなりの一つの判断がありまして早めたということを申し上げておくべきだと思います。  それから、検査に入りましたが、各支店等々も含めましてかなり広く、かつ時間としても相当長くかかっておるというような点におきましても、これはいわば普通の検査に見られるところとは幾らか違ったところがあるということも私は事実であろうと存じますが、それが何ゆえであったか、またその結果どういうことが発見されるのかされないのかというようなことは、ただいままでのところ、検査の途中でございますので申し上げることができないということだと存じます。
  52. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵省は、いわゆる土地関連融資の適正化につきまして、昭和六十二年十月十九日に通達を出しております。また、その前から特別ヒアリング等も実施をしてきておるわけでありますが、どういう具体的な行動をされたのか、これは何人ぐらいで何社ぐらいに対して特別ヒアリングをやったのか。それからその効果は、どういうように効果があらわれてきたと判断をしているのか。この二点をお伺いします。
  53. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今委員がおっしゃいましたように、昨年七月以降、特別ヒアリングを実施してきております。当初の対象機関に比べまして、その後いわゆる監視区域がふえておりますので対象機関を漸次ふやしてきているところでございます。たしか現在百三十の金融機関対象になっております。そして、それぞれの金融機関につきまして、平均的に言いますと数回にわたってヒアリングを行っておりまして、問題が指摘された金融機関につきましてはその回数もおのずから多くなっておるわけでございます。このようなヒアリング等を通じまして、各金融機関に対して土地関連融資について細かく融資あり方その他について厳正な指導を行っておりますので、漸次そのようなものが営業店へ徹底してきております。  したがって、大数的な数字で申し上げますと、銀行の不動産向け融資はその後急速に伸びが鈍化してきております。ちなみに伸び率で申し上げますと、最高の伸び率のときは対前年三六、七%で伸びていたわけでございますが、毎月その後減っておりまして、十月は二四・六、十一月は二一・九、十二月は一七・三、一月は一六・六、二月に至っては一四・五ということでございまして、ほぼ金融機関の現在の全体の融資の伸びと同程度のレベルまで落ちてきているということでございますので、そういう数字的な、大数的な観察から言いましてもいわゆる不動産向け融資の過熱な状況はほぼ鎮静化したのではないかというふうに考えているところでございます。
  54. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、こういう土地関連融資につきまして、銀行だけではない、最近は生命保険、損保ですね、それからいわゆる賃金業の範疇に入るわけでありますが信販会社、特に信販会社がかつては割賦販売とかあるいは消費者金融、そういうものが主体でございましたが、最近は都銀からの借り入れを大幅にふやし、あるいは起債等で資金調達をして融資額も急激にふえておるわけでありますが、そういう点に抜け道がある。それともう一つは銀行からの融資もこういう信販会社等を通して貸している、こういう抜け道。それともう一つ運転資金として短期の融資をしてつないでおる、こういうことが非常に指摘をされておるわけでありますが、そういう点はどうなっていますか。
  55. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 金融機関に対しましては、先ほど答弁申し上げたようなことで進んでいるわけでございますが、いわゆる金融機関でないノンバンクスの大きなものである、委員が今おっしゃいました信販会社、貸金業、これが場合によっては土地融資を抜け道的に行っているという御批判も非常に強かったわけでございます。そこで、これらの信販会社等の貸金業者のうち、金融機関の関連会社、これにつきましては金融機関に対する特別ヒアリング等を行います場合に、あわせて厳しく指導を行ってまいったところでございます。  問題は、金融機関の関連会社でない一般の信販会社等でございますが、これにつきましては大蔵省として直接の監督権限はないわけでございますけれども、こういう機関につきましても、やはり過剰な土地融資を自粛していただくということが必要であるわけでございます。こういう機関に対しましては、業界団体に対しまして、関係省庁等にもお願いしつつ、それぞれ自主ルールを決めていただいたところでございまして、その後、折あるごとに大蔵省及び関係省庁においても注意を喚起する等の指導を行っておるわけでございます。  したがって、このような効果がやはり急速に浸透してきておると考えているところでございまして、最近の地価の上昇等を見ましても、都心等においては一部地価が下落するというようなところも出てきているわけでございまして、そういう意味では金融機関あるいは信販会社等の貸金業者等を含めまして、指導の効果は十分に出てきているものと考えているところでございます。
  56. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣にお尋ねいたしますが、かつての貸金業も大分変わってきていますね。いわゆる信販業というのは非常に内容も変わってきておるわけで、したがって、そういうところで土地関連融資を一兆円以上やっている会社もたくさんある。そういう点で、今そういう業界は大蔵省の指導下にはないので自主ルールを策定をしておる。  私が大蔵省からお聞きしたのでは、六つの業界が自主ルールを持ってやっておるわけでありますが、一番いいのは自主ルールに基づいて節度ある金融をやってくれればいいわけですけれども、しかし場合によっては、こういう金融行政というものが二分化するというのもいかがなものか。やっぱり貸金業もこれは大蔵省所管の業界ですから、これがだんだん大きくなれば、その行政に差があってはいけないんではないか。これは今後検討すべき課題だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま政府委員も申し上げておりましたと思いますが、金融機関の関連会社でございますと、そのような関連融資を排除するために当該金融機関を通じて指導をしておりますし、また、それは有効に行われておるということでございますけれども、金融機関の関連会社でない信販会社等は一般的な指導監督という権限がないという、そういう限界はございますけれども、しかし、これだけの世論の盛り上がりもあり、この業界も業界団体が自主ルールのようなもので自分たちで自粛をするというようなふうに、私どもも直接的な権限はございませんが、そういうふうにしむけるために最大限の努力をいたしております。  確かに、法制的にはもう一つというところがございますので、今後とも十分注意してまいらなければならないと思っております。
  58. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから最近、特に土地ブームが一段落をしまして、そういう資金株式市場に流れておるんではないか。最近はいろいろな報道で、いわゆる株の買い占め事件が非常に多い。例えば東証上場企業のうち、もう百二十から百四十社が買い占められておる。そういうところの株価というのは急に上昇しているわけですね。それで後、経営権の譲渡を迫るとか、あるいはまた株の買い戻しを要求するとか、そういうようなことが非常に行われておるようでありますが、そういう現状を証券局としてどう考えているのか。  それと、そういうものに資金を供給しているのはやはり都市銀行である。銀行である。もちろん銀行以外に企業が資本市場で直接調達する場合もあるわけですけれども、そういう土地や株を担保に融資が行われておる。けれども、そういう融資には全くルールもないわけでありまして、今後、今のような状況でいいのかどうか、非常に将来を憂慮する意見もあるわけですが、そういう点、銀行局としてはどう考えているのか。この二点、余り時間がありませんので、できるだけ要点でお伺いしたいと思います。
  59. 藤田恒郎

    政府委員(藤田恒郎君) まず、株の買い占めにつきましての御質問でございますけれども、委員も御指摘ございましたように、株の買い占めにつきましてはいろいろな方法もございますし、いろいろな目的もございます。また、株の買い占めそのものが証券取引法に正面から違反すると必ずしも言いかねる点もあるわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、この株の買い占め、特に特定者による株の買い集め等が市場の価格形成に非常に悪影響を与える。しかもその間、相場操縦とか相場操作とか、そういった明らかに証券取引法違反的な行為があるのではないかということにつきましては、証券取引所とも協力しながら厳重にこれをモニターをするという考え方対応してきているわけでございます。現に常時、約五、六十件程度、東京証券取引所におきましても、この特定者の株の買い集めが価格に悪影響を及ぼしているんではないかとかいう観点からチェックをいたしてきております。  したがいまして私どもといたしましては、基本的には、繰り返すようでございますけれども、株の買い集めが株価に悪影響を与える、しかもその間、証券取引法違反でございます株価操縦とかそういった行為がないのかどうか、そういう観点からこれを厳しく取り締まるというふうに対処してきておるところでございます。
  60. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 御存じのように、現在、いわゆる市場性の資金、マーケットマネーが巨額の残高になっておりまして、そのようなお金が機会的に動き回っているという事実がございます。したがって、そういうお金が土地に行きましたり株に行ったりということでございますが、そういうのに対して銀行がさらにお金を融資して、株式取得資金を過剰にファイナンスするということはやはり問題があろうかと存じます。  銀行としては銀行業務の公共性ということを十分踏まえながら、かつまた健全経営確保の観点から経営を行うべきでございます。したがって、そういう意味で行政当局といたしましても、常日ごろからそういう方向で指導しているところでございます。
  61. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この法案は、世銀に対するアメリカの未応募株式二%が放棄されて、我が国がそのほとんど、相当部分を取得するというものでありますが、その関係でまずお聞きしたいのは、アメリカの放棄の理由とこれに対する我が国の評価の問題であります。  第一に、考えてみますと、レーガン政権は二国間援助を重視しまして、世銀など国際援助機関への増資などについては消極的な姿勢をとっております。それだけじゃなくて、もう前にもありましたけれども、これについての日本政府としての見解は、まずどうなのか。
  62. 内海孚

    政府委員内海孚君) 米国は、世銀グループの全機関に対しまして依然として最大の出資シェアを持っております。また、各国際開発金融機関において大きな出資シェアを占めているわけでございます。  最近の例を申し上げますと、特に先般のIDAの第八次増資におきましては二十八・八億ドルの拠出を行いまして、総融資原資が百二十四億ドルでございますが、この二三・二%に当たるシェアを占めております。依然最大の拠出国でございますし、また今般まとまりました世界銀行一般増資におきましても積極的な役割を果たしておりまして、現在の米国の財政的な制約あるいは議会におけるいろいろな動きのもとでは最大限の努力を行っているものと思っております。  ちなみに、米国のIDA第八次増資における出資額は、その前の第七次増資に比べまして約二八%の増ということになっております。
  63. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それはそれでいいんですが、問題は努力しているといいながら、むしろ二国間援助の方を強化する、そういう努力をし、こういう国際機関からはだんだん引いていく。それを日本が肩がわりしていくという、これが一つ傾向になっているんじゃないかと思うんですが、それについての見解なんです。となると、これはむしろ政治的な問題になるので大臣、御答弁いただけますか。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、先ほど本岡委員にもちょっと申し上げておったところでございますけれども、アメリカ議会の中に一部近藤委員の言われるような考え方をする人が確かにおりまして、それで政府国際機関を強化しようとする説明がなかなか通りにくいというようなことが、事実問題として一部ではございますが、あります。しかし、それは結局アメリカの長い目で見て利益にならないことであるというふうに私どもは考えておりますので、そのようなアメリカの一部の議会の動きに対しては、私どもはやはり我々としての考えを実行することによって、考え直してもらいたいというふうに常々考えておるところでございます。
  65. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 アメリカの利益にならぬとお考えであれば、今回の場合、アメリカ国際機関からはむしろ減らしていく方ですからね、そうせずにという、そういう意見をむしろ述べるべきなんですね。そういう状況に応じて、むしろここぞとばかりかどうか知りませんけれども、我が国がその二%のうちの一・五%だから、ほとんど大半ですよね。それを引き受けるから、アメリカは安心して、じゃ後を任すよというんで、こういう国際機関への出資をだんだん減らしていく。こういうことになるんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはそうではございませんで、他方アメリカ拒否権というものをやっぱり確保しておきたいということがありまして、それはそれなりのことをしておるわけでありますから、まあ普通考えまして、いかにも我が国シェアが小さいということは、貢献度に比べてだれが考えてももう明らかなことで、それをどこからもらうかといえば、これは非常に大きいアメリカからもらうしか、やっぱり現実の問題としてはないわけでございますから、それは私はそれで、どうもそれしか考えようがないんではないか。アメリカもそれは決して渡したくはなかった、正直を申しましてそういう交渉をするのにかなり手間がかかったことは確かでございますから。今おっしゃったような事情では必ずしもなかったということでございます。
  67. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、それはそれとして次の質問に入りますが、先ほど話もありました拒否権の問題ですね。二〇%が拒否権、今まではそれをわずかに〇・一%超える、本当にわずかな分の株式保有だったんです。ところが今回、アメリカの放棄によって、アメリカの投票権は一八・〇七%になりますね。となると、当然拒否権が消えてしかるべきですが、しかし、これは別の案件我が国は反対しましたけれども、世銀協定を変えることによって一五%まで拒否権を下げましたよね。だからアメリカが一八・〇七%に投票権が下がっても拒否権は依然として残っている。  となりますと、こういう国際舞台でみずからの拒否権を確保するために協定まで変えてしまう、それに日本政府は賛成したんだと思うんですけれども、こういうこと、これはむしろフェアではないんじゃないか。出資が減って、当然拒否権がなくなれば、それは各国との協調の中で自分たちの立場を貫いていくべきであって、アメリカは自分の国の拒否権だけは何としても確保する、そのために協定まで変えちゃう。これは少しフェアじゃないんじゃないかと思うんですが、どうでしょう。
  68. 内海孚

    政府委員内海孚君) 先ほども御答弁申し上げたとおり、IMFにおきましては八五%の多数をもって協定改正をするということで、協定の安定を図っております。世銀におきまして世銀協定というのはいわば憲法のようなものですから、そんな簡単に変えても困るわけでございますが、IMFが八五%というふうにいたしましたときに、世界銀行も同じブレトンウッズの機関ですから、これをどうするかという議論は次の適当な機会ということはみんなの頭にあったわけでございます。  また同時に、今回アメリカが自己の投票権シェアが減るということ等の絡みで、これを当然国内で説得をする必要がありますので、そういうことで、この際IMFに合わせるということにつきまして、ほかの加盟国ももっともだなというふうに考え我が国もそう考えまして賛成をいたしたわけでございます。
  69. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今のお話を聞きましても、やっぱり憲法を変えちゃうんだから。それはやっぱりIMF、世銀、それぞれ別の機構ですから、そういうことで一五%、二〇%はそれぞれの条件であったと思うんですね。しかも、それをアメリカ出資割合が減るその時期に憲法まで変えちゃう。私はそこに我が党が従来から批判してきた、IMFも世銀も結局アメリカ中心の、アメリカ世界戦略のための一機構ではないかという指摘をしてきたことが今の局長の答弁でも確認されたというぐあいに理解しまして、これはもう次に進みます、時間の関係で。  そこで次に、このIMF、世銀役割であります。  累積債務が大変途上国では深刻な状況で、その繰り延べの条件としていろいろな措置をとってきたことは、それはそれでいいと思うんです。ただ、そこで条件として出されている内容を見てみますと、例えば輸入の削減、賃金の凍結、増税、財政支出のカット、これも福祉や教育など補助金力ット。この間メキシコへ行って見てみましたら、こういう補助金がどんどんカットされて、大学教授でも日本円に直して五万円程度にまでなっている。こんな状況も見てきましたけれども、私はこれは債務国に大変深刻な影響を与えているのではないか、この条件が。この辺は日本としてはどう見ていますか。
  70. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいま御指摘のとおり、IMFは加盟国に対しまして、加盟国が国際収支の困難に陥りますとIMFからの資金を借り入れて何とかしのぎたいということになるわけでございます。この場合IMFといたしましては、現在の困難からいかにして脱するか、また今後そういうようなことが起こらないように、予防するためにいろいろな経済的な政策についてアドバイスをするわけでございまして、こういったアドバイスに耳を傾けてそういう政策を実施するということで一般資金を貸し付けるわけでございます。こういういかなる経済措置を行うかということのアドバイスにつきましても、相手国の事情に十分配慮を行いまして、当該国の意見を踏まえて行われるべきものでありまして、その点、IMFは当然のことながら十分念頭に置いて対処しているわけでございます。  我が国におきましても、過去、今はそういうことはありませんけれども昭和二十年代の終わりから三十年代にかけまして、しばしば国際収支の危機に直面して、IMFと話し合いを行いアドバイスも受け、また資金の借り入れも行うというようなことを行いながら今日の成長を遂げてきたわけでございまして、そういう経験からして、そういったIMFと開発途上国との間の話し合いというものは、私は開発途上国にとって非常にプラスになるべきものでありますし、またなっているものというふうに考えておるわけでございます。
  71. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 プラスになっておれば私もこういう質問はしないんですが、実際、これはむしろ債務国に対する経済の破綻の進行という面で大変深刻な状況であります。  メキシコへ行ってきた関係でメキシコの点を若干紹介しますと、六年前に行ったときには為替の取引停止とか銀行国有化という大変ショッキングな後でして、失業率が五〇%でまさしく騒然という中へ私は行って、今でも印象が強く残っていますが、つい最近、一カ月ほど前で、メキシコにはそういう統計はないんですけれども、聞いてみると約四〇%だと。失業は四〇%なんですね。  それから対ドル為替レートの切り下げ、これを円で見てみますと、五年ほど前に一円イコール一ペソだったんです。三年ほど前に一円イコール三ペソ。私が行ったときには一円イコール二十ペソですから、これは円では随分使いでがありましたけれどもね。そういう状況です。(「随分買物に使える」と呼ぶ者あり)たくさん使うほどお金なかったけれども。それでもそういう状況ですからね。わずか五年の間に二十倍ですよね。対ドル関係で見てみますと、七年間に、一九八〇年に自由レートが一ドル・二十三ペソであったものが、昨年の暮れで千三百九十二。だから七十倍で、今はもっとこれが強まっていますが、その事態一つを見ましてもいかに経済が深刻な状況にあるかということだと思います。  インフレの状況はもう大変ひどいことも、これは省略しますが、大体預金の金利がすごいですね。一カ月物定期預金金利が年末ペースで一二二%。だから倍以上になってしまうという、こういう状況を見てみますと、そういう厳しい条件を押しつけられている、経済はよくなっていない、逆に深刻な事態が進んでいる。貿易収支だってよくなっていませんよね。だから返していけない、こういう状況が逆に出ておるんです。  それで私は行った機会に、議会人ですから、率直に、IMFのあんな厳しい条件を大体あなた方は受けられる状況にないじゃないか、どこが厳しいか言ってみなさいと言ったけれども、やはりIMF優等生です、メキシコは。ブラジルはもう関き直っちゃって、利子なんか返さぬというのに対比されてIMF優等生と言われているだけありまして、ほとんど言わないんです。言わないけれども、やっぱり数字は結局、先ほど紹介したのを僕言ったんです。数字は正直ですね。経済の実態は局長が言ったのとは違って余計深刻化しておるんです。  ということは、IMFなどがつけている条件が、結局は先進諸国の銀行などの債権の返済に主眼を置いて、決してその国の経済を本当に立て直そうという観点が欠けている。だから、とても実際にはやっていけないような条件を押しつけ、経済を悪化させている。こういうことになっているんじゃないかということを私はわずかな期間でしたけれども実感として感じてまいったんですが、経済がよくなっている、よくなるなんと言うけれど、ひとつその関係で御答弁をいただきたいと思います。
  72. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいま大変生々しいメキシコの状況のお話がございまして、そういう状況であるからこそ、いろいろ困難を克服するためにIMFとも話し合いを行い、そういうようなインフレを克服するためにはどういう手段があるか、それによって通貨の安定、貿易の不均衡をいかに是正するかという真剣な話し合いをした上で政策を遂行しよう。大変これはメキシコの国民にとっても厳しいことだと思いますが、遂行しようとしていることでありまして、その点の御理解をいただきたいわけでございます。  また同時に、メキシコが今後とも成長を続けるためには金融機関からのニューマネーというものも必要なわけですが、そういった意味で現在、IMFがこういうようなコンディショナリティーをメキシコとの間で合意をする。それによって経済が再建するという見通しがあればこそ民間金融機関もニューマネーを出すわけでして、その点はあたかも民間金融機関とそれからメキシコの経済再建との間が相克するような感じのことも若干おっしゃいましたけれども、そうではないんで、やはりメキシコの経済の再建の見通しというものに基づいて民間銀行もニューマネーを出すという形で解決に向かっていくべきものでございますので、その点は申し上げておきたいと思うわけでございます。
  73. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今後IMFとの協調、やっぱりそれは大変強調しておったと思いますね。それは大変大事なことだと思うんですが、そういう中で私がたまたま会った公債局長のグリア氏ですね、かなり率直に物を言っておりまして、そのIMFの関係でこういうことを言っておりました。これは大変私は興味ある発言なんで、ひとつお伝えし、見解を求めたいと思うんですが、こういう見解です。  IMFの問題は常に短期の問題だと。そして先ほど申し上げた諸条件、いろんな条件については苦痛を意味するが、その調整が行われるべき。調整のために先進国がつくり出した協議機関は短期ではない。これは私は意味があると思うんですね、IMFは結局資金から見ても短期のものですから。これは前に宮澤大蔵大臣がIMFで演説されたこととも関係するかもしれぬけれども、別の協議機関がやっぱり必要ではないか。そして、IMFはその意味で累積債務問題解決のための最も適切な機関とは言えない、累積債務問題を根本的に解決できないからだと、こういう発言がありました。興味ある発言だと思うんですが、この見解はどうですか。
  74. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいまのグリア局長の発言に関してでございますが、IMFは先ほど申し上げましたように一般的なケースにおいては短期的な資金を貸し付けるとともに、短期的な経済政策についてのアドバイスをするというのが通常ではございますが、同時にIMFは相手国との話し合いに応じまして、いわゆるEFFというような中長期のお金を貸し付けながら、構造的な政策についての話し合いもするというような手段も持っているわけでございます。したがって、IMFが単に短期的なものだけに適しているのだという、一つのそういう性格はありますけれども、それだけに局限されるものではないのではないかと思うわけでございます。  現在、こういった債務累積問題にどこが中心的な役割を果たせばいいのかということについては、いろいろな意見関係者の間にあると思いますが、我々が全体的にいろいろ見ておりまして、やはりIMFというのがその国の状況を一番よく勉強し、また同時にそれを助けるだけの政策的なアドバイスのためのいろいろな機能あるいは資金的な協力の問題等からいって、IMFを中心に考えていくのが一番現実的ではないかなと思うわけでございます。  新しい機関ということもありますが、IMFとか世銀とか、あるいは中南米についていいますとIDBというような機関もあるわけでございますが、これまた新しい機関をつくって屋上屋というよりも、既存のそういった能力のあるところをさらに補強しながら対処していく方がより効率的ではないかなという感じが、そのグリア局長の発言に関していうと、するわけでございます。
  75. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私もちょっとまたひとつ勉強してみたいと思います。  それからもう一つ、大変興味があったのは債務の債券化問題です。この間、その一端を申し上げましたが、結局、借金のある部分が棒引きになるという、こういう要素もあるものでありますが、実際落札の結果は、落札平均価格、新債権への交換比率は六九・七七%。百億ドルの債務減少を目指したけれども実際には十二億ドルという結果になったわけです。私は、これは今後、全体にも波及する可能性もあるし、ある意味ではささやかであるけれども解決策の一つだという側面もあるんじゃないか。  私たちの立場から見るとそうでない面もありますけれども、いわゆる資本主義経済を前提にして一つのそういう面もあるかと思って、関心を寄せて、これもグリア氏に率直な質問をぶつけてみたんです。  まず、大体百億ドルに対して十二億ドルでそんなに成功したと喜んでおれるのかという質問と、それから、これがだんだん制度化しますと、まあ彼らは制度化したいという要望もありまして大変成果を喜んでおりますけれども、しかし今度新しく先進諸国の銀行が、メキシコだけじゃなく、そういうことが進んだ場合には、新しい出資をしなくなってしまうんじゃないか。それはかえってあなたの国のためにならぬではないかという、こういう趣旨質問をぶつけてみました。  それに対する回答を申し上げ、そしてそれに対する見解をお聞きしたいんですが、要するに、ともかくもこういう制度が進んだということを評価したい。額が少なかったのはこれはがっかりしているけれども、ともかくもこういう制度が進んだということをかなり評価しておりました。そして、こう言っております。日本がこの保証人になってくれるとこれは大変ありがたいと言うんですよ。だから、この前、アメリカ政府がゼロクーポン債を発行しまして、それを担保にしたんだけれども、日本がそういう保証人になってくれるとこういう制度はもっともっと拡大するんじゃないか、それを期待したいと。  それから、もう一つの問題、新しい出資がなくなるんじゃないかということについては、こう言っておりました。要するに、古い、もう大変よろしくない債権よりは、やっぱり安定的なものができればいいという、そういう趣旨の発言でありましたけれども、古くなった資産を新しい資産に変えることは金融機関にとって決してマイナスではない、こういう趣旨の発言なんです。その辺、私は金融関係に実際携わったことないのでよくわかりませんけれども、こんなことを期待し、そしてこんなことをこれから日本政府にいろいろ要望やなんかあるんじゃないか。  現に彼は東銀、興銀その他、日本の有力銀行のトップのメンバーを全部知っていまして、そういう意味では私よりも日本の金融機関に詳しいんです。そういう立場から言っておりましたけれども、これに対して局長と、最後にまとめとして大臣から御答弁をいただくとちょうど時間になると、こう思います。
  76. 内海孚

    政府委員内海孚君) 大変メキシコのスキームについて具体的なお話を興味深く私も聞かせていただいたわけでございますが、第一の点につきまして、成功と言えるかどうか。これにつきましてはグリア局長の言われるように、ともかくある程度の目的は達したということで、当初の期待ほどではなかったかもしれませんがほどほどの成果という感じ関係者は受けとめているんであろうと思います。その点は私どもの評価もおおむねそういうことでございます。  それから第二点でございますが、日本が保証人になったらということ。これはちょっと趣旨が、実はグリア局長の言っていることが若干はっきりしないわけでございますが、少なくとも民間銀行の対外債権について、そのリスクを日本政府が全面的にタックスペイヤーのお金でするというようなことは、これはなかなか難しいと思いますので、グリア局長の希望はそれはそれなりでわかりますけれども、私どもとしては保証というようなことはできません。アメリカの場合もこれは保証したのではなくて、アメリカがゼロクーポンボンドを出して、それをメキシコが買いまして、これをいわば利付債の元本の保証に使ったということでございます。そういうことでございますので、なかなか日本がというような形で対処するのは難しいのかなという感じはいたしております。  それから第三の、ニューマネーが出なくなるんじゃないかという点は、近藤委員の御指摘に、実は私どもも若干そういうような心配がありまして、つまり割引で債権を売ってしまうということは、いわばもうこれでそういう問題からグッドバイしてしまうんだということになっては困るわけでございまして、今回も大きな銀行がそれほどこの入札に積極的に応じなかったということは、決して悪いことだけではない。やっぱりこの問題、債務累積問題あるいは債務累積国への融資関係というものは維持しなきゃならないというふうな気持ちも裏にあるんではないかということを考えると、こういう格好で債券化しちゃってそれをマーケットで売れば、もうニューマネーは出さなくてもいいというようなことにならない方が、全体的にはいいのかなと思います。そのような所感を持ったわけでございます。
  77. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだってのメキシコの今の問題につきましては、私も関心を持って見ておりましたので、思ったほどの金額は実現いたしませんでしたが一つのアイデアではあった、こういうことでございましょうか。ただ、これは御承知のとおり、アメリカであったから、メキシコであったから、できたという感じがいたします。つまり、アメリカがゼロクーポンの国債を出したということは、やっぱりアメリカというのはメキシコとは国境を接しておりますから、何だかんだ言いながらちょっと他人と違う関係がございますので、それでアメリカもああいうものも出した。  それからもう一つは、それを買えたということが、やっぱりメキシコは産油国でもあり、ある程度の経済は持っておりますので、買うだけの資力を持っておったということでございますね。この条件はなかなかほかの場合には成就しないわけでございましょうから、よそがひな形にするわけにもなかなかいかぬのかなというふうに私は見ておるわけでございます。しかし、おもしろい試みであった。  それから、日本が保証してくれたらいいんだがなというのは大変端的な表現で、本当にこれだけ大きな世界の問題に日本も何かができるといいんだがな、しかしメキシコのために日本が保証に立つということは、これは国民の気持ちとしては到底ついていけないということでございましょう、無理もないと思います、いわんや銀行の債権でございますから。それで私が申しますように、こういう問題に国際機関が入ってくれますと、私どもは国際機関を助けることはできるし、国民もそれならば受け入れやすいということがあるんだと思っておりますものですから、それで国際機関のことを申しておるわけでございます。
  78. 野末陳平

    ○野末陳平君 法案とは直接関係ないんですけれども、日本で学ぶ外国人留学生のことでちょっとお聞きしておきたいんです。それはこれから非常にこの留学生対策というものが今まで以上に大事になると思いますので、大蔵大臣予算面の充実も含めてちょっと聞いておいていただきたい、そういうつもりもありまして質問するんですけれども。  最近、留学生が物すごくふえまして、急激にここ数年でふえてきまして、特に私費留学生がふえているんですね。僕なんかが関係している学校にも毎年のようにたくさん来るんで、改めてそのふえ方について僕も驚いたわけなんですが、文部省に聞きますけれども、ここのところ東南アジアを中心に留学生がふえていると思いますが、その実態を簡単に、どこの国が多いとかそういうことも含めて説明してください。
  79. 三村満夫

    説明員(三村満夫君) お答え申し上げます。  昭和六十二年五月一日現在の調査によりますと、現在我が国に来ている外国人留学生は約二万二千名という数になっております。  このうち、日本政府が直接に奨学金を支給するいわゆる国費留学生の数が三千五百人程度となっておりまして、また中国それからマレーシア、インドネシアの政府からそれぞれその政府の経費負担でもって日本に派遣してきまして、我が国が受け入れ協力をやっている留学生、これを外国政府派遣留学生と申しておりますが、約千名ございます。残りの約一万七千七百人がいわゆる私費留学生ということでございまして、近年、留学生は過去四年前に比べまして約二倍以上の伸びを示しておる。大変急速な伸びでございます。この伸びを引っ張っておるのが私費留学生の急速な増加ということでございます。  地域別に見てみますと、アジアからの留学生が八八・四%というふうに非常に多い数でございまして、このうち東南アジアからの留学生、いわゆるASEAN諸国からの留学生は全体の一二・六%、約二千八百名程度ということになっております。我が国に来ている留学生は、実は国別に見ますと中国からの留学生が一番多うございまして約五千六百六十名程度、台湾が同じように五千三百名程度、あと韓国四千八百五十名程度ということでございまして、中国、台湾、韓国を合わせますと留学生総数全体の七〇%程度を占めているというのが現在の状況でございます。
  80. 野末陳平

    ○野末陳平君 国費留学生は、この枠をこれからも拡大してたくさん受け入れていくという方向にあるようですけれども、私費留学生ですが、中国の場合などはもう希望者が殺到して、行列して待っていても取れないというか、制限を加えているようですけれども、無条件に出したらもう何万人にもなっちゃうらしいんですね。そのぐらいに中国人の日本で学びたいという学生が多いようなんですが、問題は、この増加に受け入れがなかなか追いつかないんですね、突然ですから。  それで、この受け入れ態勢の問題なんですが、当然これは予算を伴うことばかりですけれども、それ以外にも何かできないだろうかということを考えました場合に、やはり住むところ、これは住む環境が非常に難しいんですね。僕の知る限りなんですけれども、いわゆる日本の学生は苦学生というのはもうほとんどおりません、アルバイトしてもいいお金取れますから。ところが、東南アジアから来る留学生は苦学生が男女ともに結構多くて、はっきり言うとお金もろくに持ってこないで勉強に来ちゃうんですね。  これもまたちょっと困ったものだという気もしますですが、しかし日本に来て悪い印象を持たれてかえってマイナスになっても困るしと、いろいろ考えますと、やはりまず彼らの住む環境というものを、ある程度我々が援助をする形でもう少し充実しなきゃいけないなと思うんですが、まず、この住む環境については今後文部省としてはどういうふうに考えていますか。
  81. 三村満夫

    説明員(三村満夫君) 先ほども申しましたように、近年の留学生の増大は大変急速でございまして、この受け入れ態勢を、先生御指摘のとおり十分に整備していかなければならないと考えております。  大学における教育指導体制の充実であるとか、それから宿舎の整備であるとか、私費留学生対策など関連施策を総合的に推進してまいりたいと考えておりますが、特に宿舎の問題は我が国事情からしまして大変重要な問題になっておりまして、従来からこの点につきましては格段の努力を注いでおるところでございます。大学の留学生宿舎を毎年増設を図っていくということで、現在そのような留学生会館に二千数百名の留学生が入居しておるという状況でございまして、そのほか一般の学生寮にもこれはまだあいておるところもございまして、こういうところにも留学生の入居を促進していくということをやっております。  また、財団法人日本国際教育協会は、これは従来国費留学生のための宿舎を経営しておったわけでございますけれども、東京都の世田谷区に新しい三百五十人収容規模の留学生会館の建設を現在進めておるところでございます。  このような留学生会館の建設とか一般学生寮への入居の促進のほかに、地方公共団体や民間等の協力も最近大変盛んになってきておりまして、例えば地方公共団体が県営住宅であるとか市営住宅であるとか、こういうところに留学生の入居を認めるようになっておる、こういう地方公共団体もふえてきております。それからまた、企業が社員寮をたくさん持っておるわけでございますが、このあいている独身寮等に留学生を入れまして、若いビジネスマンと留学生との日常生活のレベルでの交流を図っていくというような、企業ボランティア的な活動も最近高まってきておりまして、この入居がふえておるというようなところであります。  住居の問題というのは、地域事情も絡みまして大変複雑なことでございますので、そのようないろんなアプローチをやりまして多面的に宿舎の確保を図っていきたいということでございまして、今後とも文部省といたしましては各方面の協力を得ながら、宿舎の整備を含め留学生の受け入れ態勢の整備充実に努力してまいりたいと考えております。
  82. 野末陳平

    ○野末陳平君 確かにいろいろな手は打って、それでもまだ足りないのが実情ですけれども、ここらでシルバーパワーを活用して、何かそういう留学生の世話をするというようなボランティアを中心としたグループでもつくったりとか機関をつくったりとか、そんなことも考えているんですけれどもね。  それからもう一つ、仕事をやはり与えないと困るんで。お金がないんですよね。だから留学生たちのアルバイトについては、雇う方、雇われる方ともに、ある程度の特別な扱いができるように配慮していって、出稼ぎに来ている東南アジア中心の外国人たちはもぐりで不法就労ですが、しかし留学生の場合は勉強するためにどうしてもバイトが必要ですから、何か特別なことを考えてやれないかなと思ったりするんですが、彼らの仕事についてはどうでしょうかね。
  83. 三村満夫

    説明員(三村満夫君) 留学生のアルバイトにつきましては、これは法務省の入国管理の問題となるわけでございますが、一週当たり二十時間までのアルバイトにつきましては、これは特に許可なしでアルバイトができるという規則になっておりまして、そういう留学生のアルバイトが合法的にやれるような仕組みには現在なっておるわけでございます。  問題は、そのような条件の中で具体的によいアルバイト先を見つけて適切なアルバイトができるかどうかという、こういうところがあるわけでございますが、従来から大学の窓口を初めいろいろアルバイトあっせんには努めておる。それから昭和六十三年度の予算におきまして、新しく財団法人学徒援護会に下宿アパートやアルバイトのあっせんを行う体制を整えるようなものも新たに計上されるようになっておりまして、この方面につきましても逐次努力してまいりたいというふうに考えております。
  84. 野末陳平

    ○野末陳平君 その中でも週二十時間をもうちょっとふやしてあげるように、ひとつ法務省などにもかけ合ってもらいたいと思うんです。  最後に、大蔵大臣にお願いしておくんですけれども、どうもこの私費留学生がこういうようにふえて、その受け入れ態勢が追いつかないというのは、国費留学生の枠をもっと、国費外国人留学生をさらに受け入れる枠を拡大していくように、今までの計画は十万人目標でやっているんですけれども、それをさらに拡大して充実していかないと、私費留学生がこうして余りにもふえ過ぎる。ひとつこの方向で、特に東南アジアの留学生に対する対策を予算面で考えていただきたいと思います。  それで、さっきのは中国と台湾と韓国が中心だったんですけれども、マレーシアなんかも物すごくふえているんです、このごろ。ですから、驚くような国々から若い人たちが勉強に来ていますから、国費でできるだけそういうのを迎えてあげられないかというふうに考えていますんで、それを大臣に要望を含めてお願いしておきたいんですが。
  85. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題は、恐らく我が国としては初めて直面いたします、しかも将来に大変に大きな影響を及ぼしそうな問題でございまして、私どもも大切なことに考えております。せっかく日本に勉強に来てくれた人々が、日本が嫌いになって帰ってもらってはこれは困るのでございますから、十分に日本に来てよかったと言ってもらって、帰ってもらわなきゃなりませんが、そのためには、ただいまおっしゃいましたような国費留学生の問題というのは十分考えなくてはいけないと思います。  それにしても、しかしなお私費留学生は数が減らないと思いますし、それからさらに、実は困っておりますのは、いわゆる就学生と言われる人々でございます。野末委員の御関係のような場合には、大学で管理をしてくださいますから状況も国にわかりますし、よろしいんでございますが、各種学校であります日本語を習いに来るという人たちは文部省の所管に属さないものでございますから、どこでどうしておられるのか、都道府県の状態はわからない。しかも、おっしゃいますように、まあ二十万円ぐらいの金でございますと、労働に使いたい方はそんなに高いコストでないものでございますから、日本語学校へ上げてやると言って呼びまして、実際は労働に使っているというようなケースが……
  86. 野末陳平

    ○野末陳平君 夜の。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 夜ばかりでないのかもしれないというようなことがございまして、そこらは大変に実態がわからないものでございますから、大きな問題であろうと思っております。で、閣僚会議を実はせんだって設けましたので、この問題につきましては十分、非常に難しい大事な問題だと政府としても考えておりますので、いろいろな対策を立ててまいりたいと思っております。
  88. 村上正邦

    委員長村上正邦君) これにて質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  89. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部の改正案に反対の討論を行います。  本法案に反対する理由の第一は、世銀がIMFとともにアメリカの戦後世界支配の有力な武器として機能しており、今回の措置もこの実態を何ら変えるものではないからであります。今回の株式放棄による出資減により、アメリカの投票権シェアは一八%台に落ち込み、世銀協定改正についての事実上の拒否権消失の事態に直面して、世銀協定改正してまで引き続き拒否権の確保を図ったのであります。  この結果、アメリカを中心とする発達した資本主義諸国の投票権シェアは優に六〇%近くを維持しており、今回の措置でも、アメリカ主導、先進国本位の世銀の実態は何ら変わらないのであります。  第二に、現在レーガン政権は、アメリカにとってでき得る限り低いコストで国際機関が西側経済社会の広範な利益に貢献し続けることを保障するとして、世銀等への出資の削減を図りながら、拒否権確保など影響力を保持し続ける政策を進めていますが、世銀に対する日本の十一億七千九百六十万協定ドル、日本円にして約千九百二十一億円の追加出資は、このレーガン政権の政策に沿ってアメリカ出資減のほとんどを肩がわりするものであり、同時に、一層の海外進出のため、国際機関での我が国の発言力強化を求める大企業の要求に沿ったものだからであります。  第三に、発展途上諸国の累積債務は、一九八七年末現在で一兆一千九百億ドルの巨額に達しておりますが、IMFや世銀はこれら諸国に対して、債務繰り延べの条件として輸入の削減や公共サービス、福祉への補助金大幅削減など、財政赤字の縮小、賃金凍結、外国資本等への規制緩和などを押しつけ、その結果、国民所得の激減や失業の急増などの深刻な事態を招いております。これは、IMF、世銀が債務国の経済と国民生活を犠牲にして、アメリカなど先進国の大企業と銀行への債務支払いを促進させるものにほかなりません。  先進国の政府や大企業が、みずからの政治的経済的利益追求の道具として二国間援助や国際援助機関を利用し、これを通じて発展途上諸国を収奪するという今日の国際援助あり方は根本的に改め、被援助国の国家主権、経済主権を尊重し、真に途上国の経済発展と国民生活向上に資するものとしなければなりません。また、その重要な一環として、世銀等の国際援助機関の非民主的な機構と運営の根本的な是正を図ることが必要であります。  以上の理由により、本法案に反対の態度を表明し、討論を終わります。
  90. 村上正邦

    委員長村上正邦君) これにて討論は終局したものと認めます。  それでは、これより国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  91. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  93. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 次に、証券取引法の一部を改正する法律案及び金融先物取引法案の両案を一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  94. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました証券取引法の一部を改正する法律案及び金融先物取引法案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、証券取引法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近の証券市場の現状等にかんがみ、証券先物市場の整備、企業内容開示制度の見直し、内部者取引規制の整備等を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、証券先物市場の整備であります。  有価証券取引に係る価格変動リスク回避の要請にこたえるとともに、今後とも我が国証券市場が国際市場としての機能を発揮し得るようにするため、有価証券指数等先物取引を初めとする証券先物取引を導入することとし、その取引を証券取引所において行うとともに、有価証券の売買取引に係る投資家保護の規定を適用する等の措置を講ずることとしております。  第二は、企業内容開示制度の見直しであります。  有価証券発行市場の健全な発展のための基盤整備を図る観点から、発行開示制度を簡素化と充実の両面から見直すこととし、発行登録制度の導入、担保付普通社債についての発行開示の義務づけ等の措置を講ずることとしております。  第三は、内部者取引規制の整備であります。  証券市場の公正性と健全性に対する投資家の信頼を一層確保するため、有価証券の発行会社の役員等が、その職務に関し内部情報を知った場合等において、その公開前に当該有価証券の取引をしてはならないこととし、この違反に対して刑事罰を科することとしております。また、会社の役員及び主要株主による自社株等の売買の報告義務を設ける等の措置を講ずることといたしております。  以上のほか、証券会社の営業年度を変更する等所要の改正を行うこととしております。  次に、金融先物取引法案につきまして御説明申し上げます。  先ほど証券先物市場の整備について申し上げましたが、金融市場におきましても、近年の金融の自由化、国際化の進展を背景として、金融取引に係る各種のリスクが増大し、こうしたリスクを回避したいとする要請が高まっております。このような要請に適切に対応するとともに、今後とも我が国金融市場が国際市場としての役割を果たしていくためには、金融先物市場の整備等を図ることが不可欠となっている状況にあります。  このような状況を踏まえ、国民経済の適切な運営及び金融先物取引等の委託者の保護を図るため、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、金融先物取引所の制度の整備であります。  金融先物取引所は、会員組織の法人とするとともに、その設立には大蔵大臣の免許を要することとしております。また、金融先物取引所の会員等について所要の規定を設けることとしております。  第二は、金融先物取引等の受託業についての規制であります。  委託者保護の観点から、金融先物取引等の受託業を営むには、大蔵大臣の許可を要することとするとともに、その受託業者に対し、受託契約締結前の書面交付義務、不当な勧誘行為の禁止等必要な行為規制を定めることとしております。  以上が、証券取引法の一部を改正する法律案及び金融先物取引法案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  95. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。     ─────────────
  96. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、本委員会に、東京証券取引所理事長竹内道雄君、全国銀行協会連合会会長伊夫伎一雄君、日本証券業協会会長田淵節也君、横浜市立大学教授原司郎君、以上四名の方々を参考人として出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  98. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  証券取引法の一部を改正する法律案及び金融先物取引法案の両案を一括して議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人として東京証券取引所理事長竹内道雄君、全国銀行協会連合会会長伊夫伎一雄君、日本証券業協会会長田淵節也君、横浜市立大学教授原司郎君、以上四名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、本案審査の参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の進行上、最初に参考人の方々からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしく御協力のほどをお願いをいたします。  陳述いただきます順序はお手元に配付してあります参考人の名簿の記載順でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、まず竹内参考人からお願いをいたします。竹内参考人
  99. 竹内道雄

    参考人(竹内道雄君) 東京証券取引所の竹内でございます。  本委員会の皆様方には、平素何かと証券市場の諸問題につきまして、御支援、御指導をいただいておりますことを、まず厚く御礼を申し上げます。  また、本日は、証券取引法の一部を改正する法律案の審議に当たりまして、意見を申し述べる機会を得ましたことを大変ありがたく存じております。  御案内のように、昨年十月、ニューヨーク市場に端を発しました株式暴落は、世界各国の市場に連鎖的な反応を引き起こしました。幸い、東京市場では混乱はほとんどなく、その後の回復状況も諸外国に比べて著しく、現在の株価は、ほぼ暴落前の水準に戻しております。これは、基本的には、日本経済の状態が他の国に比べてよいということが背景にあるからであると言えるのかと存じます。  近年における日本経済の順調な発展に伴って、東京の市場は、ここ数年急速に国際化のテンポを速め、今やニューヨーク、ロンドンと並んで世界の三大金融資本市場の一つと言われるまでに発展してまいりました。  東京証券市場に対する内外の期待と関心も非常に大きなものとなっております。このような時期に、このたびの証券取引法改正が行われますことは、証券市場の運営に携わる者として極めて意義深いことと受けとめておる次第でございます。  以下、今回の改正法案につきまして簡単に意見を申し述べたいと存じます。  まず、証券先物市場の整備についてでございます。  我が国株式市場では、最近、急速に取引の規模が拡大し、また、株価上昇に伴って株価変動幅も大きくなってきております。こうしたことを背景に、機関投資家を中心に株価変動リスクをヘッジしたいというニーズが非常に高まってきております。  一昨年、ヘッジニーズを具体的に把握するため、私どもでは、機関投資家を対象にアンケート調査を行いましたが、その結果から見ましても、先物取引等に対する強い関心と利用ニーズをうかがうことができるのであります。  東京証券取引所におきましては、金利変動リスクに対するヘッジニーズを満たすため、六十年十月に債券先物市場を開設いたしました。債券先物市場は、その後順調に発展、定着し、今や金融資本市場の一翼を担うものとして欠かせない存在となっております。ちなみに、昨年中の売買高は、一日平均で六兆六千億円強となっておりますし、本年に入りましてもほぼ同水準に推移いたしております。  また、大阪証券取引所で昨年六月から行っております現物株式五十銘柄のパッケージ方式による株式先物取引の状況を見ましても、同様のことが言えようかと存じます。  一方、米国等の海外市場におきましては、株価指数先物取引を初め、各種証券先物取引や証券オプション取引が世界的な広がりを見せております。東京市場におきましても、今後、国際資本市場としての地位の向上を図る意味合いからも、証券先物市場の整備を行い、その機能強化を図ることが不可欠であると考える次第であります。  証券先物取引の導入により、リスクヘッジだけでなく、市場全体への投資を目的とした取引や裁定取引が可能となり、機関投資家等の資産運用の効率化に大きく寄与するものと期待されるわけであります。  同時に、証券先物取引の導入は、現物・先物市場間の裁定取引を通じまして現物市場の流動性を高め、ひいては現物価格の安定性に資するものと考えております。このように、現物・先物両市場は、極めて密接な関連を持っております。新しい先物取引の導入に際しましては、現先両市場一体となった管理運営を心がけてまいりたいと考えております。  第二点は、内部者取引規制の整備についてでございます。  内部者取引の規制について整備が図られますことは、我が国証券市場に対する内外投資家からの信頼を確保し、国際資本市場としての発展を図る上で必要なことであり、まことに時宜を得た立法であると存じます。  法の改正に伴い、取引所といたしましては、売買管理部門の体制整備を図るとともに、行政当局などと有機的な連携をとりながら、内部者取引の未然防止に一段と努力をしてまいりたいと存じます。  証券取引所は、従来から上場会社に対し適時適切な情報開示を要請しておりますが、今後は、さらにその趣旨を徹底いたしたいと考えております。特に、適時通告を怠った上場会社に対しましては、再発防止の観点から改善報告書を求める等の適切な措置を講ずることといたしたいと存じます。  また、内容が不明確な情報、あるいは重要な情報であるが広く周知されていないというようなものが流れているような場合には、現在、発行会社による適切な情報開示により、それが広く一般投資家に周知されるまで売買取引の停止を行っておりますが、今後そのような運用を一層機動的に行ってまいりたいと考えております。  第三点は、企業内容開示制度の見直しについてであります。  今回の改正案では、発行市場の変化、拡大に対応するため、発行登録制度の導入が図られておりますほか、発行開示制度に関しましても、簡素化と充実の両面から見直しがなされております。これらの見直しによりまして、社債市場の活性化を期待することができると存じております。  冒頭にも申し上げましたように、東京市場の国際化はこのところ著しい進展を見せております。外国人の我が国への株式投資は拡大しており、外国上場会社数も大幅に増加いたしております。  東京証券取引所の正会員にも外国証券会社が既に六社加入いたしておりますが、今月、さらに十六社が加入いたすことになります。この結果、東証正会員数百十四社のうち二十二社が外国証券会社となり、約二割のシェアを外国勢が占めることとなるわけであります。  国際的な資本交流は今後もますます活発になると考えられ、取引所といたしましては、国際資本市場としての基盤強化をいかに図っていくかがこれからの最も大きな課題であると存じます。そして、そのために基本的に大切なことは、市場での取引が公正かつ効率的に行われているということについて、内外の投資家からの信頼を受けることであると存じます。  これを言いかえれば、投資家が安心して取引のできる魅力のある市場とするということであると言うこともできると存じます。このたびの法改正は、そのような意味で、今後の我が国の証券市場の発展に寄与するものであると考えております。  私どもといたしましては、法律改正を機会に、さらに一層東京市場の健全な発展に努めてまいりたいと存じます。  委員会の皆様におかれましては、証券市場の運営に関しまして、今後とも引き続き格段の御高配を賜りますようお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  100. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、伊夫伎参考人にお願いをいたします。
  101. 伊夫伎一雄

    参考人伊夫伎一雄君) ただいま委員長から御指名をいただきました全国銀行協会連合会の伊夫伎でございます。  大蔵委員会の諸先生方には、日ごろ金融市場の諸問題につきまして何かと御支援、御指導をいただいておりまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。  本日は銀行界を代表いたしまして、主として金融先物取引につきまして意見を申し述べる機会を得ましたことを大変ありがたく存じております。  さて、御高承のとおり、我が国の金融資本市場は、世界の三大市場の一つといたしまして大きく成長してまいりました。しかしながら、この市場が真にグローバルな市場といたしまして認知され、機能してまいりますためには、総合的な金融先物市場がどうしても必要不可欠となっているのでございます。そうした意味で、今般、金融先物市場創設のための法手当てがなされますることは、我が国にそうした真に国際的に通用する金融先物市場をつくってまいりますための一里塚といたしまして意義のあることであり、私ども銀行界といたしましても喜ばしいことであると思っております。  このところ、我が国におきまする金融の自由化、国際化には目をみはるものがあり、これに伴いまして、金融取引に占めまする自由金利商品の比重は著しく増大をし、また、各種の金融資本市場におきまして幅広い市場参加者によりまする自由な価格形成が行われるようになっております。こうした中、金利変動リスク、為替変動リスク等、各種のリスクもまた急速に増大をいたしておりまして、個々の金融機関、投資家が金融取引の安定性を確保してまいりますためには、さまざまなリスクを何らかの形でもって回避することが必要となってきております。こうした各種のリスクに対しまするヘッジニーズの拡大に対応してまいりまするためには、我が国における金融先物市場の整備と、我が国投資家によりまする海外金融先物取引の一層の自由化が急務となっているわけでございます。  こうした中で、全銀協といたしましては、昨年来、金融先物特別委員会を設置いたしまして、我が国における金融先物市場についての検討を続けてまいりました。その基本的な考え方は、昨年の三月、「金融先物についての銀行界の考え方」といたしまして発表をいたしております。  その中で、私どもは、オプションを含みまする広範な金融先物を取引し得る総合的な金融先物市場を我が国にも早急に創設する必要があること、あわせまして、金融先物取引を包括的に規制する統一的な法規制が必要であることを主張いたしております。これを一言で申しまするならば、統一的な法規制のもとで、総合的な金融先物市場を創設するというのが私ども銀行界のかねてからの主張でございます。  なお、昨年末の金融制度調査会、外国為替等審議会の合同報告書におきましても、海外に通用する統一的な金融先物市場をつくっていくという基本的な認識のもとに、金融先物市場の整備等を提言されております。そして、その報告書の中で、金融先物市場整備の必要性我が国金融の国際化の進展により生じていること、その点を考慮し、市場整備に当たりましては、国際的な視点、すなわち海外市場との整合性、連関性を重視すべきであることが指摘されているのであります。  ちなみに、世界の主要な金融先物市場を見てみますと、いずれもオプションを含みまする通貨、金利、株式の先物取引は、現物の市場とは全く別の先物専用の市場で総合的に取引が行われております。例えば、アメリカにおきましては、シカゴにシカゴ商品取引所とシカゴ・マーカンタイル取引所が存在し、両取引所とも株式、金利に関しまする先物の商品を上場いたしておりまして、投資家の多様な先物取引のニーズにこたえる総合的な先物市場となっております。  我が国における市場の仕組みも、こうした海外の主要な金融市場とできるだけ共通であることが望ましく、我が国におきましても幅広い金融先物商品を取り扱うことのできる総合的な市場を創設することが本来望まれるわけでございます。そういたしますことによりまして、海外の市場との相互決済やクリアリングの共有といった取引所間の国際的リンクも可能となるわけでございます。また、投資家にとりましても、総合的な市場が実現いたしまするならば、多様な先物取引ニーズを満たすことができることになり、利便性を増すことになります。  以上、るる述べましたが、そうした観点から、今般の先物取引につきましての法律手当てを見てみますと、証取法上の有価証券を除きまする金融商品に係りまする先物取引につきましては金融先物取引法でもってカバーし、証取法上の有価証券に係りまする先物取引につきましては証取法でカバーするといったぐあいに、広義の金融先物につきましての法手当て、上場市場が二本立てとなっておりまする点、率直に申しまして金融制度調査会の答申の趣旨を十分踏まえたものとなっていないのではないかと思うのでございます。  しかしながら、今回の法律の手当てが、本年一月の大蔵省銀行局、証券局、国際金融局によりまする裁定の精神をそのまま反映したものであり、そしてその裁定は、現実の問題といたしまして、国債先物取引が証券取引所におきまして既に行われている等を踏まえました上での御当局の深い思慮によって出たものでございまする以上、私ども銀行界といたしましては、この裁定を尊重し、私どもなりに与えられました枠組みの中で金融先物市場の開設に向けて最大限の努力をしてまいる所存でございます。  今般の先物市場の整備は、我が国経済史に残る大事業であるとの認識に立ちまして、投資家にとりまして少しでも使い勝手のよい立派な市場としてまいることが私どもに課せられました課題であると考えております。法案及び関係政省令成立後、御当局へ新市場創設のための申請が遅滞なくできまするよう、全銀協会内に昨年六月来設置しておりまする実務家による金融先物プロジェクトチームにおきまして、具体的な先物創設作業を行うべく実務的な準備を鋭意進めてまいってきております。  具体的には、金融先物取引の決済履行の確実性を担保いたしますために、主要な金融先物市場に共通に設けられておりまする清算機関を設置する方向で検討しておりまするほか、妥当な証拠金率の設定、適切な値洗い制度の運営、会員資格の一定の制限といった、投資家保護のための制度的な手当てに留意いたしました定款等の諸規定につきましても検討を進めております。  なお、当初取引所開設時の上場商品につきましては、取引所が市場利用者のニーズを踏まえ、大蔵大臣の認可を得て決定するものではございまするが、短期金利先物といたしまして、米ドル短期金利先物及び日本円短期金利先物を、通貨先物といたしまして円・ドル通貨先物の三商品をその候補に考えているところでございます。もちろん、市場の開設後は、市場のニーズを踏まえながら、上場商品をさらにふやしてまいる所存でございます。  また、以上を前提といたしまして、取引所のコンピューターシステムにつきましても、売買登録、集計、突き合わせといったような業務、さらには相場情報の提供等をすべてコンピューターによって処理できまするように開発に着手をいたしております。  ただ、裁定でも法律改正を含めました見直しをすることが明記されておりまするので、ぜひとも市場開設二年後には、世界の主要な金融先物市場を参考にいたしまして、真に国際的に通用する統一的な金融先物市場が実現できまするよう、その時点で制度全体を見直していただくことを希望をいたしております。これからの市場づくりに当たりましても、私どもはこうした二年後の見直しをも展望いたしまして準備をしてまいりたいと思っております。  なお、市場創設の暁には、私ども銀行界はみずからのリスクヘッジの手段としてこれを活用するだけにとどまらず、この市場が内外のニーズに適切に対応し、国民経済の発展に寄与いたしますとともに、我が国が国際的な金融資本市場としての役割を果たしていく上で有用なものとなりまするように、主導的な役割を担ってまいる覚悟でございます。  また、今般の法手当てでは海外金融先物取引の受託に関しまする法整備も同時に行われまするが、これによりまして、一般の居住者も、私ども金融機関等の受託業者を通じまして、海外金融先物取引に参加し得る手だてが格段に拡大されることになります。私どもは、こうしたニーズにも的確に対応いたしまして、我が国が国際金融資本市場における相応の役割を果たすことができまするよう、努めてまいる所存でございます。  ところで、金融先物取引に対しまして、税当局は取引所税を課することを検討されているとのことでございますが、この点につきましてもぜひとも国際的な視点で御判断いただきたいと存ずるわけでございます。証券を含めまして、広義の金融先物取引にかかわりまする取引所取引税は、海外にも全く例がございません。金融のグローバリゼーションが進展いたしております中にありまして、我が国においてのみこのような税金を賦課いたしますことは、我が国金融市場の円滑な発展という見地から見ましても決して好ましいことではなく、ひいては我が国の金融の国際化、税の国際化に悪影響を及ぼすおそれがあると思うのでございます。金融先物取引に取引所税が課せられるようなことになりますと、取引が海外に逃げましたり、顧客の取引インセンティブを損ねる等、我が国金融先物取引所の成長の足かせともなりかねないのでございます。  特に、短期金利先物取引は、債券先物や株式先物に比べまして、担税力の源泉でございまする価格変動の極めて小さい取引でございまするので、取引所取引が成り立たなくなるということも御理解いただきたいのでございます。こうした理由によりまして、私どもは、ぜひとも金融先物取引につきまして取引所税を課さない方向で、慎重に御検討いただきたいのでございます。  最後に、証券取引法改正につきまして一言意見を申し述べたいと存じます。  内部者取引規制の整備についてでございます。私どもといたしましては、内部者取引規制の整備は、投資家の証券市場に対しまする信頼性を確保いたしまする上で、望ましいことと考えております。今回の証取法の改正は、我が国の実情を踏まえた上で諸外国の規制とのバランスにも配慮したものと、前向きに受けとめております。今後、政省令をおつくりになられる際におきましても、取引の実情を十分踏まえられますとともに、実際に取引する者にできるだけわかりやすく、明確な規定にしていただきたいと存じます。私ども銀行界といたしましては、従来より取引先情報につきましての守秘義務を徹底をいたしておりますが、今回の規制の趣旨に沿いまして、より一層情報管理体制を整備をいたしまして、その徹底を図ってまいりたいと考えております。  以上をもちまして私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。
  102. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、田淵参考人にお願いいたします。
  103. 田淵節也

    参考人(田淵節也君) 日本証券業協会会長を相務めております田淵でございます。  本日は、ただいま審議が進められております証券取引法の一部を改正する法律案に関しまして意見を申し上げる機会を与えていただきましたことを厚く御礼申し上げたいと存じます。  まず最初に、証券先物市場の整備につきまして意見を申し上げます。  先ほどの竹内理事長のお話にもありましたが、既に我が国に導入されております証券の先物取引は、おかげをもちまして順調な発展を遂げております。  申し上げるまでもなく、こうした先物市場の活況の背景には、我が国融資産残高が二千兆円に達する中で、金利変動、株価変動に対するリスクを回避したいという要請が我が国機関投資家を中心として高まっており、そうした投資家の要請にタイミングよく対応できたということがございます。そのような意味から申しまして、今回の法整備は、株価指数先物取引あるいは証券オプション取引などの導入を可能にし、リスクヘッジ手段の一層の充実に資するものでありますので、まことに時宜を得たものと考えております。  また、改正法案におきましては、証券先物取引については証券取引所において導入することとし、法規制は証券取引法によって行うこととされておりますが、これについても大いに賛意を表するものでございます。  証券現物市場と証券先物市場とは密接な関係を有しておりますので、その一体的な管理運営を図ることが両市場双方の健全な発展に寄与すると確信いたしているからでございます。ちなみに、米国でも、さきのブラックマンデーにおける両市場の混乱を教訓として、現在両市場の一体的な管理運営を図るべきとの声が高まっているとのことでございます。  さらに、当然のことではありますが、私ども証券会社といたしましては、証券先物取引に関して十分な投資者保護を図るため、証券取引法の精神を十分に反映させまして、内部の自主的な規制をさらに一段と確立し、健全な証券先物市場の発展のためなお一層の努力を傾けていく所存でございます。具体的には、取引開始に当たっての顧客基準でございますとか、取引開始後の顧客管理体制の整備等の体制整備には万全を期すつもりでございます。  なお、本法律案とともに審議されております通貨及び預金等を対象とする金融先物法案に関しまして意見を申し上げます。  金融市場におきましても、証券市場と同様に、近年の自由化、国際化の進展を背景として先物市場導入のニーズが高まっておりますので、金融先物市場の整備等を図ることが不可欠となっている状況にあると考えております。証券会社といたしましても、市場参加者として市場の適切な運営及び健全な発展に助力する所存でございます。  次に、企業内容開示制度の見直しにつきまして述べさせていただきます。  今回の法律改正は、発行登録制度の導入、有価証券届出書の簡素化、効力の発生期間の短縮等、発行の機動性の向上に役立つ内容を含んでおり、極めて重要な改正であると考えております。これにより、我が国の発行市場は、機動性のより高い国際的に通用する市場として、今後ますますの発展が期待されることとなると信じておるものでございます。  次に、内部者取引、いわゆるインサイダー取引を規制する法制の整備につきまして意見を申し上げます。  インサイダー取引は、証券市場に対する投資家の信頼を損なう不公正な取引であり、有価証券の公正な価格形成を基本とする証券市場の機能を大きくゆがめてしまうものでございます。こうした取引は絶対に許してはならないというのが私ども証券市場に参加する者の共通の信念でございまして、これまでも証券会社はインサイダー取引の未然防止に全力を傾けてまいった次第でございます。  しかしながら、これまでは、どういう取引がインサイダー取引に該当するのかなど、法律上の規定が必ずしも明確でなかったこともあって、内外からいろいろな批判がございました。こうした批判に対しまして、行政当局の適切な御指導のもと常日ごろから公正な市場運営に努めてまいった者としましては、非常に残念なことと思っていた次第でございます。  今般の改正により法律が明確となり、基準が明らかにされますことは、法律を実際に守っていくべき立場にある証券会社といたしまして、非常にありがたいことであると考えております。  改正案では、従来から私どもが主張してまいりましたように、何がインサイダー情報か、だれのどのような取引が処罰の対象となるかが明確に定められており、取引の時点で、自分の行為が処罰の対象となるかどうかを市場参加者が判断できる内容となっております。また、行政当局や証券取引所を通じた未然防止体制の強化も手当てされております。こうした点から、法案が成立し、周知徹底された暁には、国際的にも平仄の合った実効性の高いルールになると存じます。  私ども証券会社といたしましては、これからもチャイニーズウオールの強化など、率先垂範してインサイダー取引の未然防止に努めてまいる所存でございます。あわせて、上場会社ではタイムリーディスクロージャーの徹底を、また、その他の市場関係者においてもチャイニーズウオールの設置等の情報管理の徹底を実行していただくなど、各市場参加者が責任を持って法改正趣旨に沿った努力をしていくことが大切ではないかと考えている次第でございます。  以上が今回の証券取引法改正案に対する私どもの考え方でございますが、いずれの内容につきましても、我が国証券市場の機能強化、国際化の観点から大変意義深い改正であると考えております。委員の皆様方におかれましても、御支援のほど深く御願い申し上げる次第でございます。  以上をもちまして私の意見陳述を終わらしていただきます。御清聴まことにありがとうございました。
  104. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、原参考人にお願いいたします。
  105. 原司郎

    参考人(原司郎君) 横浜市立大学の原でございます。  日ごろ金融論を勉強しておる者の一人といたしまして、二つの法案につきまして意見を述べさせていただきます。  諸先生方に初めにお断りをしておきたいことは、私ども金融の問題を勉強しておる者から見ますと、今回の二法案というのは、私どもが通常言っておりますホールセール業務といいますか、大口投資家であるとかあるいは機関投資家であるとかあるいは金融機関相互の取引であるとか、そういういわばプロの世界での取引という問題でございまして、きょうの私の考え方も、そういった意味ではホールセール業務についての私の考え方を述べるわけでございまして、小口、個人のようなリテールの分野についてはこの場では意見を留保する、こういうことでございます。  私の申し述べたい点は大きく四つございます。  第一は、金融自由化、金融革新あるいは金融国際化というようなことがもう叫ばれて久しいわけでございますが、こうしたことに伴いまして、金融システムにおける諸現象の変化がもたらされておるわけでございます。金融自由化、金融革新、金融の国際化、いずれもそれぞれが相乗作用を引き起こし、新しいサービスを伴った新商品の開発を国内だけでなくて国際的な分野で生み出す、そうした動きといいますか、働きを示すわけでございます。この結果、新しい金融資産が登場してくるわけでございます。新しい金融資産が登場してくれば当然新しい市場が形成されることになるわけでございます。特に近年におきます短期金融市場の規模の拡大と多様化は目覚ましいものがあるわけでございまして、きょうの主題ではございませんけれども、今後CP市場の育成であるとか、短期国債市場の拡充を通じてオープンマーケットの充実を進めていくことが必要であるというふうに、若干横道にそれますけれども、一言申し述べておきたいと思います。  こうして新しい市場が生まれ、市場規模が拡大してまいりますと、自由競争を通じまして、金融システムの効率化と市場と市場との間、この市場と市場との間には国際的な側面も含まれておるわけでございますが、金利裁定等による市場間の調整が行われるわけでございます。そして、この調整を通じて金融システムの安定性が図られるということになるわけでございます。従来、日本の金融システムは、競争制限的な規制というものによって、主として信用秩序の維持なり金融システムの安定性を図ってきたわけでございますが、今後は自由競争を前提とした市場の規模の拡充と多様化を通じて、金融システムの効率化と安定性の両者を達成していくということが望ましいわけでございまして、金融先物市場あるいは証券先物市場の創設もこのような金融システムの流れの中で位置づけることができるわけでございます。  すなわち、リスクの分散や金融の証券化の促進といった要因からさまざまな市場をつくり出すということが最近の金融システムにあらわれた変化でございまして、このさまざまな市場をつくり出すことによりまして、その市場機能の活用を通じて、金融システムの効率性と安定性を図ることができるということを重ねて強調しておきたいわけでございます。そういった意味で、金融制度という観点から見ましても、できるだけ各種の市場が創設され、自由競争が行われるような制度をつくることが望ましいというふうに考える次第でございます。以上が第一点でございます。  第二に、こうした見地から金融制度というものを眺めてみた場合に、私個人は、現在のような業法を基本とした形をとった金融制度というのは間違っているのではないか、証券会社を含めまして各種金融機関の業務範囲を業態別に規定する、あるいはある種の業務というものがある業態の金融機関に付着した形で定められているというのは、金融機関間の自由競争を阻害し、金融機関の経営上の創意と工夫による比較優位のポイント発揮とリスクの分散ないし回避を妨げてきたのではないかというふうに考える次第でございます。むしろ、市場の機能の活用を十分に行うため、取引法というものを中心とした金融制度に改めることの方がよいのではないかということでございます。もちろん、金融制度は長い歴史を通じて形成されてきたものでございますから、これを一朝一夕に変えるということは困難であるということはよくわかるわけでございますけれども、基本的には、そうした視点に立って考えていくべきではないかというのが私の主張でございます。  その意味で、金融システムにおける取引というものを考えてみますと大きく四つに分けることができるのではないか。第一は、決済システムでございます。ペイメントシステムといいますか、決済に伴う取引、決済取引というようなものでございます。第二は、金融機関が間に媒体として入ります金融仲介取引というものでございます。第三番目は、有価証券の発行であるとかあるいは売買の仲介であるとかいうふうなことに見られる証券取引でございます。そして第四番目は、信託取引でございます。これは金融仲介とは私は違うのではないかというふうに区別しておるところでございます。  こうしたそれぞれの取引の健全性の上に立った活性化を促すために、必要な最小限の規制を法制度上加えておく、加えるといいますか、法制度上の規制を付しておくということで、つまり取引法というものがあることによってだけで十分ではないか、各業界はそれぞれの取引法に従って自分の得意とする分野というものの取引のどれに重点を置くかというのをお決めになればよいわけでございまして、そこに経営上の創意と工夫が生かされる余地があり、またリスク回避の手段というものを発揮する道が通じてくるのではないか、こういうことでございます。今回の金融先物法とそれから証券取引法改正につきましては、つまり金融仲介取引の中に金融先物取引というものを入れる、それから証券取引の中に証券先物取引というものを入れるということでございまして、それぞれの取引の場である市場の健全な発展を目指しているという意味で、私は二つの法案の成立に対しまして賛成できるわけでございます。  例えば、金融先物について見ますと、通貨先物であれ、あるいはCDのような預金先物であれ、金利先物であれ、そうした金融先物取引というものが成立することによって、各種の金融仲介的な意味での金融資産に投資をしている機関投資家であれ、あるいは法人企業であれ、投資家のリスク分散に役立つわけでございます。その上、今回の金融先物取引法案を拝見いたしますと、金融先物取引所あるいは金融先物取引業に携わる者を規制しており、一定の資格があれば認可を得てだれでも参入することができるといういわば金融先物取引業法でないという意味で評価するものでございます。  証券取引法改正についても同じでございまして、証券先物取引について特に証券取引法の中で規制を加えることを通じて、有価証券指数等、先物取引、有価証券オプション取引または外国市場証券先物取引について、先物取引業者、取引所についての投資家保護のための最低限の規制をしているという点で、私は異議を差し挟むところはないわけでございます。  ただ、若干ここで私なりのコメントをお許しいただくならば、先ほども申し述べましたとおり、自由競争を通じて投資家にその収益を還元していくということが本来望ましいわけでございます。そういう意味では、金融先物取引所をつくる、あるいは証券取引所で先物取引を行うという二つの取引所の区別はあったとしても、それに参加できる者に明確な垣根を設定するということについては私は疑問があるわけでございます。そういう意味では、今すぐということでありませんけれども、将来について証取法六十五条についても見直しが行われるということの方が望ましいのではないか。ただその際、証券業務と銀行業務との利益相反の問題であるとか、あるいは寡占の弊害であるとかいうふうな問題については十分に留意しなければならないということになるわけでございますけれども、いずれにせよ、取引を規制する法律というものと業法とは違うんだという観点から、私は今回二つの形で先物取引の法律が整備されるということに対して賛意を表したい、こういうことでございます。  第三点は、金融先物あるいは証券先物市場、先物市場そのものについての私なりの考え方を述べさせていただきたいと思います。  第一は、先物取引というものが経済に与える影響、特に現物市場に与える影響について触れておきたいと思います。  理論的に考えましても、仮にもし現物市場しか存在しないということでありますと、現物の需給のみならず、あらゆる相場観といいますか、期待感というものに基づく将来の取引ニーズがすべて一つの市場に集中されることになるわけでございまして、どうしても形成される価格というものは不安定になりがちでございます。他方、先物市場が導入された場合には、将来の価格に対する相場観はまず先物市場で形成されることになり、さらに先物市場での取引商品が規格化、標準化されたものであると需給の統合がされやすく、約定された先物価格は人々の最大公約数的な価格予想値と見ることができ、将来の価格情報としても精度の高い値決めがなされることとなるわけでございます。そして、この分離された市場の価格との裁定により現物の需給を反映した現物市場の価格決定が行われるため、その値決めはよりスムーズに、かつ、より安定的に行われることになると考えられるわけでございます。  先般のアメリカにおける株価の暴落に際しまして、先物市場の果たした役割についてさまざまな調査がなされておるわけでございますが、先物市場が暴落の主要因であるといった報告は特にありませんで、逆に先物市場が暴落の歯どめになったというものもあったほどでありまして、そういった意味では私は、現物市場における健全な価格形成に先物市場の存在が貢献するのではないか、こういうふうに評価したいと思うわけでございます。  もう一つ、先物取引につきまして過度の投機性が出てくるのではないかという懸念が生ずるわけでございます。やはり過度の投機性というものは抑制されなければならないわけでございまして、そういった意味から考えますと、これを何らかの形で制度的に保障しておかなければならないというふうに考えるわけでございます。  投機的な取引を抑制するという場合には二つの見方がございまして、一つはマクロ経済的な見方、もう一つはミクロ経済的な見方でございます。ミクロ経済的に見ますと、受託業者の詐欺的行為等により、一般投資家が被害を受けることがないようにするといった観点から論ぜられる場合が多いわけでございますし、マクロ的な観点からは、投機的な取引が価格決定に際し攪乱的な影響を与えることは好ましいことではないということになるわけでございます。  そこで、この点について両法案を見てみますと、マクロ的には、相場操縦等の禁止あるいは取引所が値幅制限等を設けられる旨の規定が設けられている、ミクロ的には、委託者の保護のため各種行為規制等が定められているということでございまして、私なりに一応の評価ができるというふうに考える次第であります。したがって、この両法案が成立した後、運用に当たりましてこうした先物市場が過度の投機性を持つことなく、健全に発展するように最小限の公的な規制というものが適切に行われることはやむを得ないことではないかというふうに考える次第でございます。  第四点は、証取法改正のその他の二点についてでございます。  その一つは、内部者取引の規制についてでございます。私個人、従来からその整備が我が国証券市場の健全な発展にとって不可欠であるというふうに考えてきたところでありますが、今回新たに明確な構成要件のもとに、違法な内部者取引に対して刑罰を科することを内容とする立法が行われることは、まことに結構なことではないかというふうに考える次第であります。  最後に、今回の企業の内容開示制度の見直しに当たりましては、機動的な資金調達を可能にする発行登録制度の導入等、発行開示手続の簡素化が図られる一方、簡素化措置により投資者保護を損なうことのないよう、開示内容の充実にも十分配慮がなされておるというふうに考えるわけでございまして、バランスのとれた望ましい改正ではないかというふうに評価する次第でございます。  以上で意見の発表を終わります。
  106. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  107. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 本日は、参考人の皆様大変お忙しいところ当委員会に御出席いただきましてありがとうございます。なお、ただいま四人の皆さんから御意見なり御提言が行われた内容につきましては、これから法案審議に当たりまして十分に参考にさせていただきたいと思っております。  そこで、最初に竹内理事長にお伺い申し上げます。東証は、御案内のとおり六十年十月から国債の先物取引を開始いたしまして、いわゆる先物取引の先駆的役割を果たしてきたと思います。実績におきましても今やTボンド先物取引を超えて世界最大の先物取引に仕立て上げてこられたことに対しまして、最初に敬意を表しておきたいと思うんです。  そこで理事長、一般論で結構ですから、この二年半余りを経過した中で国債先物取引を実際に実施してこられた経験を踏まえて、御感想やらまたこうした方がよいというような御示唆があれば、一般論で結構ですからこの際お聞かせいただきたいと思います。
  108. 竹内道雄

    参考人(竹内道雄君) 今、鈴木委員からお話がございましたように、私ども六十年の十月から国債の先物取引を開始しておりますが、実はアメリカにおきましてはちょうどその十年前、一九七五年から国債の先物取引というものを開始しておりまして、私どもが始めましたときには既にアメリカでは十年の経験を持っていたわけであります。その十年の経験から見ますと、国債の先物取引というものはむしろ現物価格の安定に資しているのであって、大きな投機的取引はされていないという実情を私どもは見ておりましたけれども、それにいたしましてもおよそその先物取引というものは、戦後、司令部の命令で先物取引をやってはいかぬという禁止を受けまして、先物取引というものは日本ではおよそ行われていなかったわけでございます。初めての経験でございます。  そういう意味で大変心配はいたしておったのでございますけれども、実行してみますると、心配しておりましたような弊害は全く見当たらない。しかも、取引高につきましては、予想よりも非常に伸展拡大をいたしまして、昨年一年で見ましても千八百兆円の取引がございます。ことしの一月から四月までを見ましても五百兆円ぐらいの先物の取引がされておるというような状況でございます。こういう状況を見ますと、先物取引が有効なヘッジ手段として活用されておって、既に日本の金融市場において重要な一つの分野として定着したということが言えるのではないかと存じます。  そういった非常な市場の拡大といいますか、大きな取引ができましたことにかんがみまして、この二年の間にいろいろなことをやりましたけれども、私どもやりましたことは、一つは委託手数料の引き下げでございます。最初決めておりましたものよりも約三分の一まで引き下げをいたしました。三分の二ちょん切っちゃった、こういうことでございます。それからもう一つは、取引が非常に繁盛であることにかんがみまして、最初は電話取引でやっておったのでございまするけれども、ことしの四月三十日から機械による取引ということに改めたようなことでございます。  今のところこれからまた様子を見てみなければ、さらに何か改善すべきことがあるかどうかという点は、さらに先物取引をやっていった上でまた考えなければいけないことがあるかもしれませんが、むしろ私どもの力に及ばないことですけれども、先ほど伊夫伎参考人の方からもお話がございましたように、およそ先物取引というものについて外国で税をかけておる、流通税をかけておる国が一つもないわけでございます。日本では昨年の九月から先物取引につきまして、とにかく課税がされておるわけでございます。日本の国債先物も近くシカゴで取引をされることになると存じます。また、日本ではアメリカのTボンド国債の先物というものを恐らく来年の初めに上場することになるかと思います。そうしますと、お互いにアメリカでも日本でも同じ商品が上場されて取引されているというようなときに、片や流通税がかかり、片や流通税がかからないというときには国際競争上も将来大きな問題になってくるおそれがあると存じますので、これは私どもができることじゃございませんが、ひとつ委員会の皆様方にはそこら辺のところにつきましても御配慮をいただければ大変ありがたいというふうに思うわけでございます。
  109. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 恐らく取引所取引税とか有価証券取引税も、いずれキャピタルゲインの問題が議論されるときに大いに議論になると思うんですが、理事長の御意見も伺っておきたいと思います。  そこで、もう一つお尋ねしたいのは、このペースでいきますと、この五月でこの法案が恐らく成立するような状況だと思うんです。そうなりますと、東証ではその後一体タイムスケジュールで金融の先物市場の整備をどんなぐあいに進めていかれるのか、これも聞かしていただきたいと思います。
  110. 竹内道雄

    参考人(竹内道雄君) 私ども当面やりたいと思っておりますものは、株式の指数先物取引というものでございます。この株式の指数先物取引につきまして、どういう指数を使うかと申しますと、私ども普通TO PIXという名前を使っておりますが、東証に上場されておりまする全銘柄の株価総額でございます。言いかえますと、全銘柄の価格をウエート計算をした価格であるというふうにお考えいただいていいわけでありますが、そのTOPIXというものを上場いたしたいというふうに思っておるわけでございます。恐らくこれは、ほかの取引所のことでございますから、私から申し上げるのはなんでございますが、大阪の証券取引所では日経指数、まあ最近普通幾ら上がったとか新聞に出ているのは日経指数の方でございますが、その日経指数の先物を大阪取引所では上場することに相なろうかと存じます。  その次に私ども考えておりますのは、これは来年のなるべく早い時期にやりたいと思っておりますが、アメリカのTボンド国債の先物をやりたいと思っております。これにつきましては、今日本機関投資家でも米国の国債を保有しておるところが非常に多うございまして、やはりニーズが大変強うございます。これも来年のなるべく早い機会にやりたいと思っております。  その次に考えておりますのは、先ほど申し上げました東証株価指数のオプション取引というものを、来年いつごろでございますか、なるべく早くやりたいというふうに考えております。  さしあたって考えておりますのはそんなものでございます。将来また投資家の方からいろいろなニーズが出てきますれば、例えばアメリカで大変繁盛に取引の行われておりますS&P五〇〇という五百種類の株価の平均株価指数というようなものがございますが、日本の投資家がアメリカの株をたくさん所有するようになりますると、そういうものについてのヘッジニーズというものがまた生まれてくるかと思いますが、そういうときには、これはいつと決めているわけではございません、将来としてはそういうものも考えられるというようなことでございます。
  111. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 理事長にもう一つ伺っておきたいんですが、近々新本館ビルができるわけでございますね。大変コンピューター関連の経費で膨大になるといって頭を抱えているような新聞報道も見せていただきました。同時にそのときに理事長は、先行きの見通しとして、取引所の収入も売買高に応じてふえてくるから、証券会社から受け取る会費を値上げしないでも済むんじゃないかというみたいな新聞をちょっと見せてもらったんですが、これをちょっと、それはそれで結構なことだと思うんですが、裏を返せば大体鳴り物入りでこれ始まってくるんですが、新聞を見ていても弱気の人も強気の人も、見通しでございますね。ですから、会費を値上げしなくても済むよというようにおっしゃった裏のバックデータから見ての判断でも結構なんですが、どのぐらい程度の規模になると予見されておるのかをお聞きしたいと思うんです。
  112. 竹内道雄

    参考人(竹内道雄君) どうも大変難しい御質問で、私どもはいろいろな取引について会員証券会社から定率会費というものをちょうだいをしておるわけです。それは株式についてもそうでございますし、それから国債の先物についてもそうでございます。また、これから始まります株価先物指数についても同様でございます。株価先物指数につきましては、一体どのぐらいの取引になりますか、アメリカなんぞの様子を見ますと、大体現物の取引に比べましてまあ一・五倍前後の規模の取引が株価指数先物についてされておるというような状況でございます。まあこれは日本の方では初めて始めるものですからよくわからないわけでございまするけれども、そういうことを含めまして、やはり証券市場というものがどういうふうに発展していくかということは、最近のアメリカにおける暴落の状況なんかを見ましても、その国の経済が発展していけば証券市場というものは必ず発展していくというふうに考えておりますので、日本の経済のこれからのことはなかなかよくわかりませんけれども、私は順調に伸びていると思いますし、特に経済が大変悪くなるような要因というものを現在はらんでいないというふうに考えております。そういう意味では証券市場もこれから順調に発展をしていくんじゃないかと思っております。  建物については、大変お金がかかっているわけですけれども、あれは実は私どもの所有ではございませんで、平和不動産という会社がございまして、そこが所有権を持っている、土地は三井不動産が持っているというようなことでございます。したがって、私どもはたな子として毎月家賃を平和不動産に払っているということで、まあその家賃を払うのに、私どもの収入が多ければ定率会費を上げなくて済むわけでございます。そういうものは上げずに何とか賄っていけるように私どもも努力したいし、また、証券市場がそういうふうに発展をしていくということを願っておるような次第でございます。
  113. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 どうもありがとうございました。  次に、伊夫伎参考人にお尋ねを申し上げたいと思うんです。  伊夫伎さんは、神谷前会長から引き継がれまして、今後予定される先物市場の整備とか小口預金金利自由化とか各種の垣根の問題であるとか、大変困難な問題を抱えておって、大変御苦労なことだと存じます。  そこでまず、ことしの秋に予想されています小口預金金利自由化について、いわゆる懸案となっております郵便局の定額貯金の見直しですね、これが決着しないものだから、なかなかこの秋に実施ができないんじゃないかというようなことが先般も財確法の審議のときに藏原副会長からもいろんな御主張がございました。  そこで会長、再度で恐縮でございますが、本件に関する見通しと、例えば郵貯とイコールフッティングをするというようなことにするために業界として配慮してほしいというような項目があれば、この機会にお聞かせいただきたいと存じます。
  114. 伊夫伎一雄

    参考人伊夫伎一雄君) 大変御丁重なごあいさつをちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。せいぜい一生懸命頑張らせていただきます。  預金金利の自由化でございますけれども、大口から小口へと切れ目なくスムーズに行われていく、これが筋ではないか、私はこういうふうに思うわけでございます。  それで、これまでの二年半の間でございますけれども、御案内のとおり大口預金は段階的に金利の自由化が図られまして、一方、期間の短縮等も行われるというようなことで、現在では大口定期預金は、それからあとCDでございますけれども、最低の預入限度は五千万円に相なっておるわけでございます。それで、さらにそれを三千万に引き下げるとかあるいは二千万に引き下げるとか、さらにはまたCDの預入期間でございますが、これは現在二週間になっておるわけでございますけれども、これを一週間に短縮しよう、こういうような案もあるわけでございます。これは対外的にはそういうことでいいのではないか、こういうふうに思うわけでございますけれども、むしろやっぱり小口の預金金利の自由化の方を急がなければいけないんじゃないか、こういうふうに私は存じておるわけでございます。  御案内のとおり、私どもいつも新聞を気にしておりまして、社説とかそれから家庭の主婦からのいろいろな投書欄、これなんかを拝見をしておりますと、やっぱり大口のみを優遇してけしからぬのじゃないか、こういうような非難、批判というものが日ごとに強まっているような感じを私は受けるわけでございます。したがいまして、ここら辺のところを読み違ってまいりますると、金融機関に対しまする国民の批判、こういうような形で国民の支持を失うんじゃないか、仮にもそういうようなことになってはならない、こういうふうに非常に懸念を持っているわけでございます。  現在、私ども小口預金金利の自由化を着実に進めていきたい、このように考えておるわけでございますが、これにつきましての基本的なスタンスでございますけれども、これは民間の方も郵貯もこれは変わりはないんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。ただ、小口預金金利の自由化に際しましては、定額郵貯の商品性の見直し、それから預金金利の民間追随ルールの確立、これを私どもとしては大前提としていただかなけりゃ困る、こういうことなんでございます。現在小口預金の三分の一を占めております郵貯は、官業といたしましていろんな恩典を受けておるわけでございますけれども、そういう恩典を受けたままで小口預金の世界に自由金利のメカニズムを持ち込める、こういうことはなかなか難しいんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  で、この問題の解決の糸口を見出す、こういうようなことで大蔵御当局を初めといたしまして、私どももそれなりにこれまで真剣な努力を続けてまいったつもりなんでございますけれども、御案内のとおり先般、郵政省は一方的に国債定額貯金の発売の実施に踏み切ったわけでございます。これは各金融機関が自分の持っておりまする既存の商品をいろいろと組み合わせまして、それでいろいろと工夫を凝らしながら新しい商品というものを開発して預金者のいろんなニーズにこたえていく、これは一般論といたしましてはごく自然のことではないか、こういうふうに思っておるわけでございますが、ただ小口預金金利の自由化を控えまして、定額郵貯の見直しというものをお願いをしておりましたやさきだけに、その定額郵貯を使った一方的なやり方に対しましては私どもといたしましては大変ショックが大きかったわけでございます。そういうことでございまして、小口預金金利の自由化がおくれていく、これを私どもは大変懸念をいたしておるわけでございます。  それで、これはまあ申すまでもないことでございますけれども、郵貯の存在目的でございますけれども、これは郵便貯金法でもって、簡易で確実な国民の貯蓄の手段を適用すると、こういうふうな位置づけが行われておるわけでございます。そうであるといたしますならば、みずから貸し出しや投資等でもって運用する、こういうようなことは考えられないのではなかろうか。郵貯さんが今やっておられまするゆうゆうローンとか、それから国債担保の貸し出し、こういったものはあるいは郵貯法の改悪とか、国債の流動化の変型である、こういうようなふうにも解されますので、せいぜいこれくらいが限度ではなかろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。  それからまた、臨調とか行革審の答申等におきましても、官業は民業の補完に徹すべしと、こういうことが繰り返し指摘されておるわけでございます。で、郵貯の業務の範囲の拡大でございますけれども、これは郵便貯金法の趣旨に反する、臨調、行革審の答申に背くものではなかろうか、こういうふうに思っております。今後、私どもは民間の金融機関でございますけれども、国内はもとよりでございますけれども、世界の金融機関と対等の条件の中でもってこれから自由競争をしていかなければならない、そういうような状況にあるわけでございます。しかしながら、そういったような状況の中で、その競争相手の中に商品とかあるいは税制とか、そういう面におきまして大変著しくすぐれた巨大な公的な金融機関がある、こういうことでは金融の自由化というものを今後円滑に進めていく、こういうことはできないんじゃなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
  115. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 もう一つは、自己資本の比率規制の問題もお尋ねしようと思ったんですが、時間もございませんので先に進ましていただきまして、田淵参考人にお尋ね申し上げたいと思うんです。  先ほど竹内理事長も今後の見通しについてまあそう心配はないんじゃないか、隆々たるものだというような御見解のようでございましたが、今度は業界の方から見てこの先物関係がどういう見通しに予測されるのか、御所見を承りたいことと、もう一つは、先物取引はいわゆるスペキュレーションというのがありますね。こういう取引が可能になるものですから、投資参加者の財産保全という面から広告規制など市場参加者のモラルの維持が重要と考えられると思うんです。この点について、業界としてはどのように対応されるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  116. 田淵節也

    参考人(田淵節也君) お答え申し上げます。  今後行われます証券先物取引がどういう規模になるであろうかという見通しでございますが、私もここで確たることを予想するのはなかなか難しいと、そう思っております。  アメリカにおきまして代表的な株価指数先物取引でございますね、インデックスフューチャーと簡単に言っておりますが、その中で一番商いができているものはCMEで商いをやっておりますS&P五〇〇の取引でございます。このS&P五〇〇なる株式のインデックスフューチャーが導入されたのは一九八二年でございますが、その年は二百九十万、向こうではコントラクトと言っておりますけれども、日本語で訳しますと、二百九十万枚というようなことだと思います。それが昨年千九百万コントラクトと急拡大をいたしております。この千九百万コントラクトと申し上げました数字は、昨年のニューヨーク証券取引所の現物の売買金額の約一・五倍でございますので、やはり先物市場というのは非常にこれはまさにヘッジ機能を有するマーケットでございますから、商いが短期間にふくそうして割にたくさんできるマーケットだと、そう思います。  もう一つは、大阪証券取引所でちょうど一年前の昨年六月に開始されました株券先物取引、これは最初は全くできなかったのでございますが、九月二十六日に、先ほどから問題になっております取引所取引税を引き下げていただいたわけですね、なおかつ取引税は徴収されておりますが、それを引き下げていただいた途端に商いが急拡大いたしまして、昨年十月から今年三月までの六カ月間の売買代金は約二十二兆円になっております。ということは、昨年十二月一カ月だけ例をとりますと、株券先物の売買代金が大阪証券取引所の現物株式の売買代金の二倍に達しております。  今後我が国に上場される株価指数先物取引等の市場規模の予測、これは最初申し上げましたように非常に難しくて、経済環境やそれから具体的な問題として取引所取引税等の諸要因に左右されるわけでございまして、ちょっと数字は申し上げにくいところでございますが、市場の担い手であります証券会社といたしましては健全な市場の拡大のために努力してまいる所存でございます。  それから第二番目の御質問は、投資家保護の観点から、例えば先物取引などの広告規制をどういうふうに考えるかという御質問でございます。  一般論としまして、広告規制につきましては、証券業協会は協会員が行う広告につきまして、広告に関する規則というものを持っております。これは公正慣習規則第七号で制定をいたしておりまして、広告は原則として届け出制ということになっております。そういうふうにして現在も証券会社の行う広告の表示及びその方法の適正化を図っておるわけでございます。  そのほかにも証券業協会におきましては、現在やっております先物、すなわち債券先物取引、国債の先物取引ですね。それから、大阪でやっております株先五〇という株券先物取引について、投資家保護の観点から次のような自主規制を講じております。  まず、お客様が証券知識あるいは投資経験、これを持っておられるかどうかということ、さらに一定の預かり資産を置いていただいておるかどうかというようなこと、そこら辺を勘案しまして、お客様の取引開始基準、選別基準と申してもいいわけでございますが、そういう基準を定めております。当然先物取引の仕組み等について十分説明し、理解させるよう努めております。また、取引の最終日、これは限月末になっておりますが、最終日が近づいたときには、顧客サービスという意味も兼ねまして、一体あなたは反対売買をするのか、それとも証券を、現物を受けるのか、あるいは売られた方は品渡しをして決済するのか、というような受け渡し決済方法を確認するというようなそういう現在自主規制を講じております。今後新たに導入される株価指数先物取引等につきましても、投資家保護の観点から十分な自主規制を行い、例えば広告規制に関しましても、当然のことながら過大な広告がなされることのないよう十分留意していきたいと、そういうふうに考えております。  以上でございます。
  117. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 原参考人にお尋ね申し上げますが、実はこれ時間がなくなっちゃったものですから、本当は先生が一昨年五月、イギリス、ドイツ、フランス三国を回られて、「エコノミスト」とか「金融ジャーナル」とか見さしていただきました。小口金融の問題についても実はお聞きしたかったのでございますが、時間がございませんものですから、たった一つだけ。  先ほどシステムの四つの区分のお話を聞かさしていただきまして大変参考になりました。そこで、そのときにも述べられたと思うんですが、もう一度お尋ねしたいんですが、今回この市場の厚みを持たせるという意味で、証券と銀行の相互参加方式をとることになったわけですね。諸外国の先物取引の例を見ますと、単一の法律に基づく統一的な法規制のもとで総合的な市場として存在しているように思うんです。先生の表現をかりれば、いろんな業界の歴史があってというお話もあったんですが、証券取引所と金融先物取引所というふうに二つに分かれて、まあ二年後に見直すというようなことも書いてあるみたいでございますけれども、どうも私は納得がここのところはいかないんです。原参考人はこの件についてどんな見解をお持ちでございましょう。
  118. 原司郎

    参考人(原司郎君) 諸外国における先物市場というのは、金融より先に商品から出てきたと思うんです。したがいまして、商品先物市場というものが金融の分野に発展をしていった。したがって、証券もそれからいわゆる私の言う金融仲介取引も皆同じ取引法で規制する、こういうことになったんじゃないかというふうに思いますが、本来理論的に考えれば、私はやはりこの二つは明らかに性格が違うんじゃないかというふうに思います。  ただ、制度的に、例えば将来一つの取引所でこれを行うというような形にしてもそれは構わないわけですけれども、基本的な考え方がちゃんとはっきりしていて、そしてそれぞれの取引の性格の違いが投資家の側でよくわかるというようなことが行われることが望ましい、こういうふうに考えております。
  119. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 終わります。
  120. 山岡賢次

    山岡賢次君 きょうは参考人の皆様にはお忙しいところをありがとうございました。大変御達見を伺いまして参考にまさになった次第でございます。  今、鈴木委員から最後に御質問がありましたので、インサイダー取引というのは後の方に時間があればさしていただきますが、わずか十分でございますから、せっかくそこまで行ったんですから、そのことで原参考人も、業務範囲の規制はおかしい、こういうふうに言っておられましたし、また伊夫伎参考人におかれましても、これは一里塚である、そしてもっと言葉をそのとおり言わしていただけば、当局がそうされた以上、こういうふうに言われましたけれども、しかし二年後には見直しを展望しております、こういう御意見でございました。両参考人からは、先物市場そのものは賛成であるが、今回の金融先物と証券先物も結構なことだが、本来シカゴやロンドン、外国でやっておるように統一すべきである、こういう御意見のように承ったわけでございます。  そこで、田淵参考人にお聞きしたいわけでございまして、田淵参考人からはその辺について十分触れられてなかったような感じがするわけでございますが、その点についていかがお考えか。そしてちなみに、時間がありませんから、もう一つつけ加えていただきたいのは、原参考人からも垣根という話が出ましたが、このことに限らず、伊夫伎参考人、田淵参考人はもう現場で直接指揮をとっていらっしゃる御両人がここにおいででございますので、この問題と、それから垣根のことですが、今鈴木先生からは垣根はよくないというふうにも承ったんですが、私はまた別な観点では、海外からのものを日本に入れなきゃならぬ、こういう場合でやむない、対応しなきゃならぬと。国際化時代にこれは結構かもしれませんが、しかし今までの業態もそれなりに成功し、今日世界一の日本というものにもなっているわけでございますから、その点を御勘案をいただいて御意見伺いたい。時間が残れば伊夫伎参考人にもお願いをしたいと思うんです。
  121. 田淵節也

    参考人(田淵節也君) 先物取引、特に証券先物取引に関しての私の基本的な哲学のようなものでございますが、この先物取引は現物市場における価格変動リクスのヘッジ手段として利用される。このヘッジという言葉は、まあしょっちゅう先物即ヘッジと、これは裏腹に使われている言葉でございますが、ともかく価格変動リスクのヘッジ手段として利用されることが非常に大きいわけでございます。ということは、現物取引と極めて密接な関係を有しているわけでございまして、現物取引と一体的な管理運営が行われることが必要であるというふうに確信をいたしております。  先物取引を利用する投資家は、そのほとんどのお方が現物市場の利用者であるというふうに考えて差し支えないと思います。先物だけを取引される方ももちろんパーセンテージとしてはいると思いますけれども、しかし全く株の現物と関係なしに先物取引される方はアメリカでもほとんどいないというふうに考えられますので、現物取引と先物取引が同一の取引所内で行われ、かつ整合性のとれた管理運営が行われることが投資家の利便性、ニーズに合致するものである、そういうふうに考えております。  先ほど原先生が、昨年十月十九日のブラックマンデーでこの先物取引がむしろ現物市場を混乱さしたんではないかという意見が非常に多いということに対して、いやそうではない、むしろ先物があったから暴落がニューヨークダウ五百ドルぐらいで済んだんだという意見もあるということをおっしゃられましたけれども、随分、今調査をいたしておりまして、やはり大統領の特別調査委員会がこの間まとめたレポートを読んでみますと、先物と現物市場は一緒に考えた方がああいう混乱を招かなくて済むんじゃなかろうかというレポートを出しておるのを最近読んだ次第でございます。  銀行、証券の垣根論議に関する基本観でございますが、我々といたしましては、銀行、証券の垣根は今後とも維持されるべきものである、そういうふうに考えております。銀行の担う間接金融市場と証券会社の担う直接金融市場とをこれを競争関係に置くことによりまして、両市場が車の両輪として切瑳琢磨する、企業の資金調達をより効率的なものとすることが肝要かと考えます。我が国融資本市場の一段の発展のためには銀行、証券の業務の垣根は今後とも必要である、そういうふうに確信をいたしております。  以上でございます。
  122. 山岡賢次

    山岡賢次君 ありがとうございます。  では伊夫伎参考人、三分ほどでお願いをいたします。
  123. 伊夫伎一雄

    参考人伊夫伎一雄君) 田淵さんを前にしましてまことに申しわけないのでございますけれども、垣根問題でございますが、御案内のとおり、昨今金融の証券化というのが大変なスピードでもって進んでおるわけでございます。したがいまして、どれが銀行業務あるいはどれが証券業務か、こういうことを峻別するということが次第に難しくなってきているんじゃないか、こういうのが私どもの実感なのでございます。  資金の運用とか調達に関しまするお客様のニーズでございますけれども、このところ大変高度化それから多様化してきておるわけでございます。私どもはお客様のそういったようなニーズに対しましてこれに的確にこたえていく、そういうために一生懸命努力をしておるわけなんでございますけれども、いわゆる証取法の六十五条によりまして銀行、証券の業務分野規制がございまして、なかなかその円滑な対応がお客様に対してできない、こういうのが偽らざる実感でございます。  したがいまして、銀行、証券の業務分野規制の見直しにつきましては、これまでのような個別案件ごとのバーター的な処理で積み重ねていく、こういうことではもう限界に近づいてきているんではなかろうか。したがいまして、顧客ニーズへの円滑な対応とか、国際的にも通用する金融システムをつくる、こういうような高い観点に立ちましてそろそろ抜本的な見直しが避けられないような時期に入ってきているんではなかろうか、そういうような感じがいたします。
  124. 和田教美

    ○和田教美君 参考人の方々、御苦労さまでございます。  まず、竹内参考人に御質問申し上げたいんですけれども、先物取引は、先ほどからも話が出ておりますように、金利あるいは株価変動、さらに為替相場というふうなものの変動に対するリスクヘッジの手段であって投資家のニーズが非常に強くなっているというふうなこと、さらに金融資本取引の国際化というふうな状況から見ましてもこれはやはり必要だというふうに思いますし、我々もそう考えるわけでございます。  ただ、先物取引は、現物取引と比較しますと、少ない証拠金で多額の取引ができるために多額の利益が得られることもある反面、多額の損失をこうむる危険性もあわせて持つ取引であることは否めない。つまり、投機性がより強いというふうに我々は考えるわけです。それだけに、投資家の保護についてはより一層の配慮が必要だというふうに思いますが、先ほど田淵参考人から証券業協会としての投資家保護のいろいろな対策というものはお話を聞いたんですが、取引所として特にどういうことを中心に考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  125. 竹内道雄

    参考人(竹内道雄君) 先物取引について投資家保護の必要性が強いことは和田委員がおっしゃるとおりでございまして、私ども考えておりますことは、一つは過当投機を防止するためにどうしたらいいかということでございます。  それにつきましては、証券会社に対して一定の委託証拠金というものを顧客から差し入れてもらう、また証券会社からは取引所に対して売買証拠金というものを差し入れていただくということにしております。    〔委員長退席理事梶原清君着席〕 また、日々の損益の結果をその都度計算をいたして値洗いというものをいたしまして、その結果、損をした場合にはすぐにまた証拠金を徴収する、余ったものは返すというようなことをやることにいたしております。また、毎日の値上がり値下がりが余りに大きくなりますと問題がございますので、それに対しては一定の値幅制限という規定を設けようというふうに考えております。また、この値幅制限でありますとか証拠金の額というものは最初に決めまするけれども、緊急のときにはその値幅制限を縮めるとか、あるいは証拠金率を引き上げるとかいうようなことによって、過当投機の防止に資することができるのではないかというふうに思っております。  もう一つは投資家保護ということでございますが、根っこにはやはり投資をする人自身がこれはある程度リスクのあるものであるということを承知をいたしてもらわなければいけないわけでございます。  そういう意味では、株式の先物取引というものがどういうものであるかということについてのPRを私どもとしては十分しなければいけませんが、さらに証券会社との間でお客が取引を開始いたす場合には、先物口座設定約諾書というものを差し入れてもらうわけでありますが、そのときに、株式先物というものはリスクの高いものであるということを自分としては十分承知をして契約をするのであるということを書いた確認書を差し入れていただくということにいたしたいというふうに思っております。  また、もう一つ大事なことは、やはり投資家としては、先物取引を扱う場合に、情報というものがまず一番大事であると思います、取引をする場合。そういう意味におきまして、先物取引の値動きでありますとか、あるいは毎日の取引量でありますとか、そういうものにつきましては迅速にまた正確な開示をいたします。また同時に、先ほどから申し上げておりまする株式先物指数でございますけれども、それの値動き、これはコンピューターを使って、一分置きにどのぐらいの指数になっておるかということを表示をいたしまして、投資家にわかるようにいたしたいというふうに思っています。そんなようなことでございます。
  126. 和田教美

    ○和田教美君 先ほどから出ておりました一月の大蔵省の行政裁定をめぐる問題、つまり金融先物取引は新しい金融先物取引所で、それから証券関係は現在の証券取引所でといういわゆるすみ分けですね、二本立てということについては伊夫伎さんもそれから田淵さんも両雄譲らずという感じで、なぜそういうことなのかということの説明をもう少し詳しくお聞きしたいと思ったんですが、時間がたってきましたのと、それから、もう既にかなり説明がございましたのでそれは省略をさせていただきます。ただ、二年後の見直しのときが大変楽しみだということだけつけ加えておきます。  さて、横浜市立大学の原先生にお伺いしたいんですけれども、先ほどリスクヘッジの問題でいわゆる十月の株価の大暴落のときに、アメリカではやはり先物取引というものはリスクヘッジの機能を果たしたという御見解のように承ったのでございますけれども、先ほど田淵さんからもお話があったように、それと違った見方もあって、一斉に要するにとにかく先物も現物も売り売りで、それが相乗効果を伴って余計暴落を促進したというふうな見方も私は雑誌か何かで拝見したことがあるんです。その問題はともかくといたしまして、日本での一つのテストケースは、私は去年の六月から大証で始まっているいわゆる株先五〇、これは一種のやっぱり株式に関する先物取引だと思うんですけれども、これがこの十月の暴落のときに一体どういうふうにヘッジとしての機能を果たしたのかどうか、これをうまく使って要するにほとんど現物での損をしなかったと、そういう保険会社もあるというふうな説も聞いたんですけれども、その辺は一つの実験としてどういうふうに先生はごらんになっておりますか。
  127. 原司郎

    参考人(原司郎君) ちょっと誤解がございまして、私は、むしろ株価の暴落を防ぐ……下支えをしたというようなことを私の意見として述べたのではなくて、そういうふうな報告書もあるというふうに申し上げたわけでございまして、まだ現在の段階ではどちらとも評価はなかなか難しいんじゃないかと。ただ、今のアメリカの中ではそちらの説の方が強いというふうに聞いておるというふうに申し上げたわけでございまして、ちょっとその点、本来理論的に考えれば、前段で申し上げた部分の方をとっていただきたいと思います。ただ、昨年の事例につきましては、なお今後私も勉強したいと思っております。  それから、日本のことにつきましては、ちょっと私余りそこを専門にして勉強しておりませんから的確なお答えはできないんですけれども、これはむしろ専門の方に間違っていたら後で直していただいた方がいいかもしれませんが、大阪の事例で果たしてそれが実験というような名に値するほどの規模であるかどうかということについて私は非常に疑問に思っておりますので、あれ自体を余り評価するということは避けたいというふうに思っております。
  128. 和田教美

    ○和田教美君 竹内さんにもう一つ伺いしたいんですけれども、東証の債券先物、国債の先物市場ですね、これは二年半余り経過したわけですが、先ほどから御説明がありましたように、とにかく予想以上に発達したというか、飛躍的に発達をしてきたということはそのとおりだと思っております。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕 そしてこの運用についても全く支障がないというふうにもお聞きをしたわけでございます。規模も今やアメリカを抜いて世界最大だというふうなことも報道されておるわけでございますが、債券の先物が今や現物の取引を上回るという状況、これは東証の場合も、それから大証の場合も同じですね。それは非常に健全な望ましい姿なのか、それとも、金余りの結果そういう形になってきているのか。  つまり、もちろん先物の場合には国債の場合でも取引の単価が一億円というふうに非常に大きいから、したがって金額が非常に大きくなっていくということはよくわかるわけですけれども、それにしても、現物市場よりも先物市場の方がとにかく取引高がどんどん大きくなっていくというふうなことは、これはどういうふうに判断をしたらいいのか、その辺についてのひとつ御見解をお伺いしたいわけです。
  129. 竹内道雄

    参考人(竹内道雄君) 先物の場合には、現物を抱えておってそれをヘッジするために一年に一遍ヘッジをすればいいというものではなくて、現物そのものの売買は何回も回転して行われておる、またヘッジ手段としての先物の方も何回も回転しておるということで、必ずしも現物売買の大きさと債券先物の大きさとをそのまま比較するということもなかなか難しいんじゃないかと思います。  例えば今、日本で言えば長期国債は百五十兆ぐらいある。ところが、国債の先物の方は年に千八百兆ということですから、大ざっぱに十倍ぐらいの取引が現物の残高に対して言えばされているわけでございます。それから、そういったような数字を今度はアメリカで見てみますと、アメリカのTボンドの残高に対して約二十倍の先物取引がされておるというようなことでございますので、現物と比べてどのぐらいであれば投機的でないのかとか、あるいは取引が多過ぎるのかということはなかなか言えないのではないかと思います。債券の先物の場合でございますと、一日の間に何回も回転するというようなこともあるわけでございますので、そこは一概に比較して議論するのも難しい点ではないかというふうに思っております。
  130. 和田教美

    ○和田教美君 次に、インサイダー取引の問題について、今まで質問が出なかったので、少しそれを二、三御質問したいと思うんです。  竹内理事長は、インサイダー取引については内外からの信頼性の確保、国際資本市場の発展のために、これは絶対に必要だということを強調されておるわけですけれども、どうも最近までインサイダー取引の問題についてヨーロッパなどでは、日本ではこれまでインサイダー取引の摘発がなかったと、事実なかったわけですけれども、だから日本の市場はインサイダー取引の天国であるというふうなことを新聞や雑誌で書いたりしております。そこで、実際に実情はそんなひどい、つまり天国のような状況であったのか、その点についてはひとつ田渕参考人のお話をお聞きしたいと思います。
  131. 田淵節也

    参考人(田淵節也君) 日本の市場がインサイダー天国であると書いた雑誌、これはアメリカの週刊誌的な経済雑誌が、たしか去年おととしぐらいですか、そういうタイトルで書きまして、それで私もぎくっとしてそれを読んだ記憶があります。たまたまニューヨークから日本に特派員が来て、それであちこちいろんな話を聞いたのだと思います。早速向こうの編集長に対して抗議をしたわけでございます。中身が事実と非常に相違しているということを抗議いたしまして、その編集長もよく調べた上で、結局私に対しては、それに対して一応謝ってきました。そのときに私が気がついたことは、インサイダー取引に対する法律規制がないということに対して、アメリカ人というのはまさに法律世界の中で仕事をしている、法律を犯さないぎりぎりのところで仕事をしてもこれは一向に差し支えない、法律さえ破らなければいいという、そこら辺は我々日本人の極めて儒教的な道徳観に基づいて行動しているのと随分違うなと思ったわけですが、処罰規定がないからインサイダー天国であると、観念的にそう思った節がございます。  したがいまして、今度インサイダー取引に関する法律がきちんとして、刑法による処罰規定というものもがっちりできたということは、そういう国際的な平仄を合わすということで、最初の陳述で申し上げましたように、非常にありがたいと思った次第でございます。  なお、欧米の場合にインサイダー取引は、実を言うと、調べてみますと、ほとんどM&AとかTOBとかいう株の買収、そういうものに絡んだものでございまして、しかも証券会社の役職員がその当事者となっているケースが多いようでございます。これに対して、これまで日本ではM&AとかTOBの例が極めて少ないということでございまして、欧米と比べましたら、証券会社の役職員の有価証券投資というのは向こうと比べて比較的よく管理されているということは言って差し支えない、そんな気がいたしております。
  132. 和田教美

    ○和田教美君 今のインサイダー取引の問題について伊夫伎参考人にお尋ねしたいんですけれども、この問題については大体今度のインサイダー取引規制という問題の起こってきた発端は、例の去年のタテホ化学工業ですか、タテホ事件が発端だったですね。タテホが国債先物で損をして、そして経営がおかしくなったということの情報を地元の相互銀行がいち早く探知をして、その内部情報、今で言う内部者情報、それでタテホの株の売り逃げをしたということがインサイダー取引に当たるかどうか、ということで大分問題になったわけですけれども、そういう点で金融業界もこれからもいろいろそういう問題で関係が非常にあるわけですけれども、その点について自己規制というか、何よりもやっぱりどんどんどんどん摘発されるというようなことを望む人はだれもないんであって、未然防止ということが非常に重要だと思うんですけれども、その点も含めて全銀協としてのひとつ対策ということを伺いたいと思います。
  133. 伊夫伎一雄

    参考人伊夫伎一雄君) 銀行界に身を置く者といたしまして一言申し上げますけれども、銀行は何と申しましても信用が第一、こういうことでございますので、法に触れるとか触れないとかというような以前の問題といたしまして、世間にいやしくも疑惑を持たれる、こういうような行為というのはやっぱり慎まなければいけない、こういうのが私の持論でございます。  タテホ事件につきましては、新聞程度でもって、聞く程度で詳しい事実関係というのは存じないのでございますけれども、もしもあのようなことが 事実であるといたしますと、あれは本当のところを言って論外なことではなかろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。総じて申しますと、銀行界は、行員に対しまする取引先情報の守秘義務でございますけれども、これは非常に徹底をいたしておりまして、内部情報の管理につきましてはこれまでも大変細心の注意を払ってきたと言えるのではなかろうかと、こう思うわけでございます。したがいまして、その意味日本はインサイダー取引天国、こういうことにつきましては銀行界に身を置く者としてはいかがなものかと、こんな感じがいたすわけでございます。  銀行としてはどういうような情報管理をしているか、こういうことなんでございますけれども、内部情報の管理につきましては、証券会社さんのように対顧客売買をやっておられるところと、銀行のようにポートフォリオの一部といたしまして所有するために売買しておる、こういう機関とでは具体的な中身は当然違ってくる、こういうふうに思うわけでございます。しかしながら、インサイダー取引というものを未然にこれから防止するための措置をとる、こういうような必要がある、こういう意味におきましては証券界も銀行界も、銀行業もいささかも変わりはないと。銀行界といたしましては、これまで取引先情報につきまして守秘義務というものを大変徹底してきたわけでございますけれども、この規制の趣旨に沿いましてより一層情報管理体制をこれから整備し、徹底すべく関係の方々とも十分御相談しながら検討していきたい、このように考えておるわけでございます。  私見ではございますけれども、具体的には、業界といたしまして例えば株式取引部門の場所の問題でありますとか、それから人事面とかを含めました情報管理といったようなこともこれから考えていかなきゃいけない、このように思っております。
  134. 和田教美

    ○和田教美君 今の未然防止体制、これは非常に重要だと思うんですけれども、田淵参考人に、今金融界の体制準備のお話がございましたけれども、証券業界としては一体どういうことを自己規制として考えておるかという問題と、もう一つは例のチャイニーズウオールの問題でございますけれども、大和燈券が株式の引受部門と営業部門をビルを切り離すという形で、形の上であらわすというふうなことに決めたというふうな報道もございました。具体的に情報の壁をはっきり設けるということは、言うはやすくしてなかなか困難なことではないかと。もともと同じ社員でもあるし、確かにセクションは違っても、友達であったりということでつい情報が流れるということだって十分あり得ると思うんですね。ですから、その辺のところについて一体具体的にどういうふうな手を考えておられるのかですね、その点をまずお聞きしたい。  もう一つついでに、先ほどの御意見の発表で、今度の法改正によって何をやったらいけないかということが非常にはっきりしたと、だからかえって非常に結構なんだというお話がございましたけれども、果たしてそうかどうかですね。まだあいまいな灰色の点がないかどうか。例えば今度の法案では、内部者と準内部者と一次情報受領者と、これだけが取り締まりの対象になるわけですね。ところが、一次情報受領者と二次情報受領者というのがそうはっきり区別できるのかどうか。我々専門家でございませんからよくわかりませんけれども、そういうふうな点についても御意見があったらお聞かせ願いたいと思います。
  135. 田淵節也

    参考人(田淵節也君) お答え申し上げます。  ちょっと順序不同な答えになるかもしれませんが、まずチャイニーズウオールに関しまして、御案内のように、大和燈券さんが引受部門を別のビルに移すということを実行されております。これは非常にいいことだと思っております。ということは、もちろん精神的な面というのは大事ですが、やはり形式的に物理的にきちんとするということは、これは当然必要だと。チャイニーズウオールとかそれからファイヤーウオールとかいう言葉はそういう物理的なことだと、そういうふうに理解いたしております。恐らく内部者情報などに関する資料については、他部門から物理的に隔離して管理するということを各証券会社は今後実行していくと、そう思います。たまたま私が所属いたしております野村證券でも今具体的にそういう検討をいたしております。  それから、このインサイダー情報、インサイダーに関する範囲というのは、どうしてもこれは刑法にかかわることでございますから、きちんと明確化していただかなくちゃならない。これは法律上は当然だと思いますし、そういうお願いをいたしております。やはり構成要件があいまいでございますと、市場参加者は果たしてみずからの行為が処罰の対象になるのか、それとも適法なのかという区別が容易に判断できません。いたずらに円滑な有価証券取引を阻害してしまうおそれがあると思うわけでございます。ただ御指摘のように、基準を明確にすればするほど何といいますか狭くなりまして、そこから当然こぼれ出るものもあるということは否定できません。このこぼれ出るものにつきましては、この法律の範囲よりか広目の自主ルール、これを設けまして、証券会社内部での情報管理等を徹底することによりまして、インサイダー取引の未然防止に全力を挙げて取り組まなくちゃいかぬということを、証券業協会それから各証券会社は法律が国会を通って実施されるというまでの間に検討をして、かつきちんと実行に移すべく今進行中というところでございます。  それから、証券会社の役職員に関することでございますが、これはまず第一に証券会社の健全性の準則等に関する省令という厳格な省令が今ございまして、お客様の売買注文の動向など、職務上知り得た特別の情報を利用した有価証券投資、それから当然投機取引、これはかたく禁じております。今検討中の自主ルールにおきましても、法人営業社員でございますね、上場会社に我々の営業社員がしょっちゅう参上しているわけでございますが、この担当会社の株式をその人が自分のために売買するというようなことは今後禁止するという予定にいたしております。  以上でございます。
  136. 和田教美

    ○和田教美君 ありがとうございました。
  137. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 参考人の皆さん、随分お疲れのことと思いますが、いましばらくお願いいたします。  伊夫伎参考人に最初にお伺いしたいと思いますが、銀行は大衆の預金を預かっているというところから高い公共性が求められておりますし、またそれだけに安全な資金運用についての義務が課せられておりますし、これまでは銀行法で銀行業務の範囲を定め、本業に専念しなさいとでもいいますか、そういうことがあったと思いますし、証取法でも銀行の証券業務の禁止ということで、これらはもともと一九三〇年代の教訓の中から出てきたということがあるんじゃないかと思うんです。  さて、今回先物市場の開設ということで、銀行がこれに直接参加するということになっていくわけですが、最初に一点まずお聞きしておきたい点は、先物取引というのは非常に投機性が高いという点で、この点についてどういうふうにお考えになっておられるかということと、もう一つは、もともとリスクヘッジということから先物取引ということが考えられていくわけですが、同時に先物そのものにリスクがつきまとってくるといいますか、先物そのもののリスクですね、そういうものがまたあるのではないかと思いますが、そういう先物についてくるリスクについてはどういうふうにして回避していくという、この点を考えていらっしゃるか、そこのところをまず最初に伺いたいと思います。
  138. 伊夫伎一雄

    参考人伊夫伎一雄君) 御案内のとおり、金融の自由化、国際化の急速な進展に伴いまして、各種の金融取引にかかわります金利変動リスクとか為替変動リスク、これは大変増大をいたしておるわけでございます。私ども金融機関におきましても、このところ資金調達に占めますところの自由金利商品の比重でございますけれども、大変増大をいたしておりまして、私どもの銀行だけとってみましても、大体五割以上を超えている、こういうような状態でございます。また、運用面におきましても、有価証券の保有あるいはまた外貨建て資産のウエートが非常に高まっている、こういうようなことで、資金の調達、運用の両面におきましてリスク管理の必要性が一段と増大をいたしておるわけでございます。  先物取引というものは、そうした金融取引にかかわりまする各種のリスクをヘッジいたしまして、金融取引の安全性を増すための不可欠な取引の手段である、こういうようなことで、銀行の経営基盤の安定化には資するものではなかろうか、こういうふうに思っておるわけです。  ただ、もちろん銀行というのは公共性の高いものでございますので、過度の投機的な取引にまで踏み込むと、こういうことに相なりますと、預金者保護等の観点からいろいろな問題というものが起こってくる、こういうことは十分承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましても、先物取引のポジションでございますけれども、これを一定の範囲に抑える等、先物取引にかかわりまするリスクコントロールでございますけれども、これにつきましては万全を期したい、このように考えておるわけでございます。  それから、取次業務と健全性の問題なんでございますけれども、銀行の先物取次業務の進出、それから銀行経営の健全性維持の関係でございますけれども、それからさらにはまた進んで融資業務と利益相反、そういうような関係もございますのですが、これにつきましては次のように考えておるわけでございます。  金融先物取引につきましては、先物市場が余り投機的にならないように、また投資家保護に問題が生じないように、先ほど来お話がございましたように、いろいろな制度的な工夫が凝らされておるわけでございますね。さらに、銀行とは申しましても、先物業務に進出するに当たりましては、こういったような厳しい開業規制とかあるいは行為規制が課せられておるわけでございます。こういったような制度的な枠組みがそろっている以上は、銀行が先物取引業務に進出をいたしましても銀行経営上の健全性には特段問題を生ずるようなことはない、こういうふうに思っておるわけでございます。  また、銀行が金を貸しまして投機的な取引等をあおらないか、こういうような利益相反行為に対しまする疑問につきましても、私どもといたしましてはお客様のヘッジニーズについて先物取引をお勧めする、そういうようなことでございまして、その場合もお客様の投資経験とか資力等に対しましてその取引を本当に行えるような力があるかどうかというようなことにつきまして十分配慮するつもりでございまして、少なくとも疑義を持たれる、こういうような行為があってはならないというふうに思っておるわけでございます。
  139. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 リスクヘッジのためにと考えながら、先物そのものにもまたリスクが伴うんじゃないかという点を私考えまして、何かこの点でお考えになっていらっしゃる方策がございますれば、あわせてお聞かせいただければ結構ですし、今のところなければ、それはそれで結構です。  もう一点お聞きしておきたいのは、通貨の先物取引についてそれに似た取引が外為市場で既に行われている為替予約ですね、通貨の先物市場で投機的な動きによって例えば円ドルレートが急激に変動すれば外為市場の為替予約にも波及してくる、そして外為市場そのものに大きな影響が及んでくると思うんですが、この点はいかがでしょうかという点が一点。  もう一点、この点に関しては外為市場で急激な変動があった場合に、日銀が介入してその変動をある程度抑えることは可能だと思うんですが、しかし幾ら介入しても先物市場でどんどん投機的動きが高まってまいりますと、日銀の介入も及ばなくなる可能性が出てくる。そのとき金融機関は従来行われてきた外為市場での取引について、今後先物市場でも同様の取引ができるということになるわけですから、この点は今後どのような使い分けをしていかれるかという点ですね、この点をお聞きしたいと思います。
  140. 伊夫伎一雄

    参考人伊夫伎一雄君) お答えを申し上げますが、先物取引でございますけれども、先物取引は機動的な反対売買が行える、それから少額な証拠金で多額な取引ができる、こういうことからいいまして、リスクヘッジ手段といたしまして先渡し取引、いわゆるフォワード取引でございますけれども、これに比べますと幾つかすぐれた点があるんじゃなかろうかと、こういうふうに思うわけでございます。したがいまして、この二つを機動的に使い分けることによりまして、金融機関や投資家のリスクヘッジはより的確に行えると、こういうふうに思っておるわけでございますけれども。  それからまた、通貨先物取引導入に伴いまする現物市場への影響でございますけれども、既に通貨の現物市場というものが流動性に富む厚みを持った市場として現在非常に大きく発展しておると、こういうことから考えまして、通貨先物取引の導入によって現物市場の相場形成が大きくその影響を受ける、こういうようなことは基本的にはないんではなかろうかと、こういうふうに思うわけでございます。また、仮にあったといたしましても、むしろ先物市場の導入によりまして現在の為替相場と将来の為替相場が関連性を保ちながら整合的に形成されると、こういうことに相なるわけでございまして、市場全体としてはより安定的な価格形成につながるんではなかろうかと、こういうふうに期待をいたしておるわけでございます。  ただ、先物市場において取引が過度の投機に陥る、それから現物市場の適正な価格形成を損なう、こういうようなおそれがある場合におきましては、取引所は必要に応じまして適宜値幅制限の導入をやるとか、あるいは受託の制限など、適切な市場の運営を図らなければならないんじゃなかろうかと、こういうふうに思っておりますが。
  141. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 もう一点お聞きしておきたいのは、金融先物市場については東京だけに開設をお考えなのか、大阪と二カ所でお考えなのか。現在の開設準備の状況などもあわせてお聞きしたいと思います。
  142. 伊夫伎一雄

    参考人伊夫伎一雄君) 場所につきましては現在どこというふうに決めてはおりません。確かに関西の方から関経連を中心といたしまして大阪の方にというようなお話がございますけれども、これも確かに一極集中を避ける、こういうような意味合いからうなずけない面もないわけじゃございませんですけれども、実際金融取引がどういうふうに行われているかと申しますと、金融取引を行っておりまする投資家の大半がおるところ、それからまた外国の証券会社、あるいは外国の金融機関、それがディーリングをもって商売をやっている、あるいはインフラを整備している、そういうようなところに置くのがこれから金融先物市場が発展するために一番適切なところではなかろうか、こういうふうに思っております。
  143. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 次に、竹内参考人にお伺いしたいんですが、既にいろんな観点から御質問ございましたけれども、昨年のブラックマンデーについて、その原因と対策についていろんな機関が調査とか研究発表もしておられまして、いわゆるポートフォリオインシュランスといわれます先物で、現物にまたがるコンピューターを利用した取引が大暴落を加速したというようなそういう見方もありますし、その点で我が国も今後コンピューターを利用した株式取引がふえると思うんですが、今後の見通しはいかがなものかというのが一点。昨年のような大暴落のような有事の際の話として、証拠金率や値幅制限などを機動的に規制できる仕組みとか、サーキット・ブレーカー・システムなどの安全装置をつくっておく必要があるのではないかというこの点について、二点お伺いしたいんです。
  144. 竹内道雄

    参考人(竹内道雄君) この間のアメリカ株式の暴落でございますけれども、その原因は、一体主因が何であったかということはいろいろな議論があって、どうも必ずしもはっきりはいたしておりません。いろいろな機関がお互いに犯人捜しをやって、おれのせいじゃないというようなことで、いろいろなことを言っておるというのが現状であろうかという気もいたしております。  私は、やはり基本的には、アメリカの株価というものがどうも少し上がり過ぎになっているんじゃないかという一般的な感じがあるところへもってきて、アメリカの経済に対する不安、いわゆる双子の赤字というようなものが噴き出して、それが直接の原因になって株価が下がったんだろうと思いますけれども、例えばニューヨーク取引所のフェラン理事長というのは、なぜ下がったかというのは、みんなが下がると思ったから下がったんだというようなことを言っているんですね。これはある意味で名言なんで、やはり株が下がるという、少なくともああいうふうにどんどん大幅に下がったということについては、投資家の心理的な要因というものが非常に大きかったんではないかというふうに私は思っております。そういう意味で、あのときに早速にアメリカの連銀が、金は幾らでも出すぞと、流動性はうんとつけるから心配しないようにということで各銀行と話をつけて、証券会社に対する資金供給を行ったわけでありますが、それがあの株価の暴落をあそこら辺まででとめるのに非常に効果があったのではないかと思います。  いずれにしても、株価の暴落というものが国内要因によって起こるのか、国際要因によって起こるのか、そのときの態様でわかりませんけれども、そういう場合の心理的な要因というものを排除するために、国内要因に何か問題があればそれを排除するように、またこの間のときのように、日米独の間の協調体制が崩れたんじゃないかというような不安があるときには、すぐにそういう協調体制というものはやはり守られているんだというような態度を国際的に打ち出すというようなことが必要なんであろうと思います。  それは一般的なことでございますけれども、制度的な取引所としての対応といたしましては、お話がございましたように、緊急のときには値幅制限の縮小をいたしますとか、あるいは立ち会い時間を短縮するとか、あるいは場合によっては立ち会いを一時停止する、あるいは委託証拠金を引き上げるとか、さらには信用取引の規制を緩和するとか、いろいろな措置考えられようかと思うんでありますが、そういうものを適宜、抱き合わせてというのは言葉が悪いですが、つきまぜて使っていくということが必要なんじゃないかというふうに思います。  長くなって恐縮でございますが、この間の米国の場合に、その後でいろいろな報告書で、暴落が再び起こらないようにどういう対策を講じたらいいかということについていろいろな考えが出ております。  そのときの一つは、現物と先物の市場というものが別々になっているのがいけないんだと、この現物と先物市場を一体的に管理するようにすべきであるという議論が非常に多かったというふうに思います。それからもう一つは、コンピューターの能力が小さ過ぎたので、この能力をもっと拡大すべきであるという議論もございます。それからもう一つは、アメリカの証券会社、殊にスペシャリストという存在でございますが、そのスペシャリストの資力が小さ過ぎたので、あの暴落のときに株価を支え切れなかったので、スペシャリストの資金力、資本力というものをもっと拡大すべきであるという議論もございました。また、サーキットブレーカー、いわゆる悪循環を切るための値幅制限、その他のサーキットブレーカーの措置が必要であるという議論がありました。もう一つの議論は、今もちょっとお話が出ましたプログラム売買そのものがいけないというのではないけれども、そのプログラム売買のそのプログラムの組み方が暴落を加速したんじゃないか、そういったプログラムの組み方についてもこれからもう少し検討をしてみる必要があるんじゃないか。こういうような五つぐらいの意見があったように思います。  日本の場合には、今のそれに当てはめてみますと、既にサーキットブレーカーについてはいろいろな措置考えられておりますし、米国のスペシャリストに比べますと、日本の証券会社の資力というものは相当大きいと考えてよろしいかと思います。  それから、現先一体という問題については、先ほどから議論が出ておりますように、証券取引所で現物と先物を一緒に扱うということでございますから、この点にも問題がないと思いますが、残っておるコンピューターの能力をさらに拡大する必要があるという問題、それから、将来日本でも先物を実施いたしますればプログラム売買というものは出てくると思いますが、それに対する対応をどうするかということはこれから十分検討をしていかなければいけない問題であるというふうに存じております。
  145. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 既に多岐にわたってお話を伺っておりますので、私は一点だけお尋ねをして、教えていただきたいと思います。  そこにリスクがありヘッジの必要性が高まる限り、先物市場の拡大というのはとめることができない流れだと私は思います。ただ、先物市場の拡大というものがとどめることができない流れだとして、日本の金融市場、証券市場にいかなるインパクトを与えるのであろうかとこう考えてみますと、結局これは金利の自由化に対して少なくも中立的ではないし、むしろ加速するようなインパクトをまず与えるのではあるまいか、そう思いますので、その点につきまして伊夫伎参考人にまず教えていただきたいと思います。  また、あわせていわゆる垣根問題でありますけれども、先ほど田淵参考人から垣根問題が持っております意義について詳細に御説明ございました。よくわかったのでありますが、しかしこれでこれからの証券金融市場における先物市場の拡大発展を軸とする変化を考えてまいりますと、実は垣根そのものをも薄めるようなそういうインパクトを結局この先物市場の拡大発展というのは持つのではあるまいか、そんな気もするものですから、このインパクトについてどのような見通しをお持ちなのか、お伺いをしたいと思います。  最後に、原参考人にお尋ねいたしますが、金利の自由化についてこれもまたとどめることのできない、むしろ金利の自由化をアクセラレートするようなインパクトをもたらしまして、西ドイツでは既に郵便貯金が民営化する旨議会決定しそうでありますが、いよいよ郵便貯金につきましても我々は腹をくくって新しい時代に対応する努力を開始すべきではないかとひそかに思っているんでありますが、そのときにいかなる準備、順序、段取りでこれを進めていったらよいとお考えかどうか、御所見をぜひ伺いたいと思います。  以上であります。
  146. 伊夫伎一雄

    参考人伊夫伎一雄君) ちょっとお答えが違うと思うんでございますけれども、現在、日本は御案内のとおり有力な国際金融センターの一つになっておりまして、諸外国におけると同様に、先物等によりまするリスク・ヘッジ・ニーズでございますけれども、これは近年急速に高まっている。こういうことを考えてまいりますと、先物市場の潜在的な成長性、こういうことでは海外の市場と比べましても引けをとらないのではなかろうかと、こういうふうに思っております。  で、それからもう一つ、金利の自由化につきましてのあれでございますが、御案内のとおり、国債の大量発行と内外資金の交流の活発化、それから企業とか家計におきます金利選好がこのところ非常に高まっている、それから資金調達、運用の多様化と相まちまして、日本の金利の自由化を促進する要因となっておるわけでございます。こうした環境の変化の中でもって、自由金利商品の拡大等によりまして、金利の自由化が発展しておると、こういうことは御案内のとおりでございます。  で、預金金利につきましては、先ほど申し上げましたとおり、これまで二年半の間、段階的ではございますけれども、当初我々の予想を上回りますようなスピードでもって進んできたわけでございます。スピードが速過ぎるのではないかと、こういうような心配もあったわけでございますけれども、これまでのところは幸いのところ、環境が金融緩和基調であったというようなこともございまして、それに比べまして銀行の経営努力も進んだ。こういうようなこともございましたものですから、現在のところ非常に順調に進んでいるのではなかろうかと、こういうふうに思っております。
  147. 田淵節也

    参考人(田淵節也君) 垣根問題に関しまして先ほど私の信念を申し上げたわけでございますが、垣根のぎりぎりのところというのは、御存じのように証取法六十五条でございますし、それから証取法の本家といいますか、アメリカのグラス・スティーガル法でございます。アメリカのグラス・スティーガル法に関して、これを改正すべきであるという意見アメリカの銀行さんの側から随分出ておりまして、御存じのようにアメリカの国会、すなわち上院、下院にその問題が提出されております。相当長い期間がかかっておりまして、私の存ずる限りではもう四、五年がかりじゃないかと思いますが、議論はいつも一九三〇年に戻るわけですね。やはり一九三〇年に戻るということは、銀行が証券業務をあわせ行うことは、預金者保護それから銀行経営の健全性確保、利益相反、そういう問題になってくるわけでございます。  それと、これはアメリカ現状を申し上げたわけでございますが、この問題を論ずるに際しましては、やはり我が国の場合は、我が国特有の金融慣行と申しますか、例えば金融による企業支配というような問題も戦前戦後を通じて随分あったわけでございまして、これも十分考慮されなければならない問題だとそう思っております。  しかし、時代がどんどんどんどんこのように変化をいたしておりまして、銀行さんとそれから我々証券業界との間の何といいますか、中間で判然としないというような、よく周辺業務と申しておりますけれども、例えばコマーシャルペーパーの発行、それからその販売というようなことは、一体これはどちらが扱うべきか。これはアメリカの場合は自然発生的にコマーシャルペーパーというものができたわけでございまして、自然発生的に証券会社が扱ってきて、今現在も証券会社が扱っておりますが、日本の場合はこれを行政でどういうふうに考えるか、これはちょうど真ん中辺の周辺業務であるということで、銀行さんも我々も全くイコールフッティングで仕事をさしていただいているというようなことでございます。  今後もそういう問題はいろいろ起ころうかと思いますが、基本的には私は垣根はきちんとした方が将来大きな問題は起こらないであろう、そういうふうに思っております。
  148. 原司郎

    参考人(原司郎君) 冒頭にきょうはホールセール業務について御意見を述べたいというふうにお断りをしまして、リテールのような小口の話はまた留保させていただきたいというようなことをちょっと申したんですけれども、せっかくの御質問でございますのでお答えをさしていただきたいと思います。  金利の自由化はもうほとんど浸透してきておりまして、残っておりますのは小口預貯金金利の自由化だけだと思います。しかし、それが進まないために金利構造にひずみが出ておりまして、金融機関の特に預貯金を通じての調達コストと、それから、より自由化されております運用利回りとの間にギャップが出て預貸し金利ざやはもう広がっているんじゃないか、そんな意味で民間の金融機関も郵便貯金もそれぞれ収益を生んでおるわけでございまして、この金利のひずみをなくすためには、まず小口預貯金金利の自由化ありきというふうに私は考えております。  仮に、方法としては、先ほど伊夫伎参考人がおっしゃったように、小口MMCのような過渡的な段階を経て完全自由化に行くという方法がありますが、時間がありませんので簡単に述べますと、私は、大口預金市場のように金融機関と預金者とが相対で交渉して値を決めることができるような市場じゃない小口の預金市場については、一挙に完全自由化した方がいいんじゃないかというふうに考えておりまして、そこでいろいろな商品開発が行われて、いろいろなサービスの提供が行われるということが望ましいんじゃないか。  ところで、郵便貯金につきましての御質問でございますけれども、先生は民営化というのを前提にしておられますけれども、先ほど申し述べましたように、まず小口預貯金金利の自由化が先にありきということで、その場合に光と影が出てくる。光というのはやっぱりスモールセーバーに利益が大きく還元されるという可能性がある。しかし、影の部分というものもあるんじゃないか。じゃその影の部分というのを一体どうするのか。例えば地域の切り捨てであるとか、あるいは小口預貯金者の排除であるとか、そういうふうな問題について一体どう考えるのかというようなところを見定めてから、郵便貯金がどうあるべきかというのをもう少し検討してみなくちゃならないというふうに考えております。  以上でございます。
  149. 野末陳平

    ○野末陳平君 きょうはありがとうございました。  先物市場から離れてお尋ねするのでちょっと恐縮なんですけれども、田淵参考人と原参考人にお聞きしたいと思います。  田淵さんには、マル優の廃止でもって大衆のお金が株式市場に流れ込んできたという話をよく聞くんですけれども、実態はどうなのかどうか、あるいは今後どういうふうにそれを受けとめておられるのか、その辺の事情を差し支えのない範囲でお答えいただければありがたいと思います。  それから原参考人には、これまた恐縮なんですけれども、最近キャピタルゲイン課税が新聞などであれやこれやと記事が出ておりますのでおおよそのことは御承知だと思うんですけれども、キャピタルゲイン課税は不公平の是正ということを前提に始まった話ですので、この辺をどういうふうにお考えか、第三者的な意見でも結構ですけれども、同時に、納税者番号制度についてどのような御所見をお持ちでしょうか、それを伺って、それで終わりにしますのでよろしく。
  150. 田淵節也

    参考人(田淵節也君) マル優制度が廃止されて分離課税二〇%ということが実施されたわけでございます。マル優の金額が相当大きな金額でございましたので、その金が移動すればこれは大移動であるということで、特に経済関係のジャーナリズムのお方たちが相当取り上げたわけでございます。  しかし基本的に、マル優でお金を預ける主として預金それから郵便貯金あるいは証券業界の公社債を中心としたもの、それから公社債を中心とした投資信託、そういうものがマル優だったわけでございますけれども、何といいますか、マル優を利用されていたお客様は非常にかたいお方でございますね。そんなリスクは嫌いである、ともかくきちっとした利息があればいい、利息はわずかでも少しでも高い方がいい、だから当然マル優は税金がそれだけかからないわけですから一番利用されていたわけで、たまには悪用もあったわけですけれども、マル優の悪用をされている方は、リスクの方は嫌いであるという方が非常に多かったような気がいたします。したがって、マル優から株式には余り来ておりません。来るんじゃなかろうかということを随分言われたんですが、やはり株式の方は知識も要りますし、それからリスクも多いし、もともとマル優をやっておられる方は投機的なことは嫌いなお方でございますから株式には来ておりません。  ただ、そういうお方たちですから、何といいますか、確定利率の世界ですから、より有利であるとか不利であるとかいっても、もう本当に〇・何%の世界でございますけれども、それでも〇・何%でもより有利なところを探してそちらに資金を移動しているということはございます。証券業界の中のマル優利用者がかわっている姿を見ましても、〇・一%の利回りのいいものにかわっているというようなのが現状でございまして、リスクを持った株式市場そのものには余り資金が移動してないという報告を受けております。
  151. 原司郎

    参考人(原司郎君) 私は財政学の専門家でございません。特に税制については余り専門的な研究をしておりませんので的確なお答えになるかどうかわかりませんけれども、貯蓄に対して課税をするということはやっぱり所得税を原則とする考え方ではないかということで、私はどちらかというと所得税よりも支出税の方が公正という意味では公正ではないかというふうに考えておりまして、そういう観点から貯蓄に対する課税そのものに対して疑問を持っているということでございます。  かといって、仮にそれが支出税中心といっても、例えばみなし家賃に対してどういうふうな評価をするかとかいうふうな問題も出てまいりますから一概には言えませんけれども、仮に貯蓄に対して税をかけるといたしましても、やはりあらゆる貯蓄商品に対して税制上の公正さが保障されなければならない、こういうことでございまして、やっぱりそういう見地からキャピタルゲイン課税という問題も考えなくてはならないんじゃないかというふうに考えております。  それから、納税者番号につきましては、条件によりますけれども、いろんな条件が考えられると思いますが、条件をつければ決して悪いことではないというふうに考えております。  ちょっとお答えになったかどうかわかりませんけれども。
  152. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々には、御多忙中のところ御出席を賜り、短い時間ではございましたが貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。おかげさまで真剣な論議ができました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十一分散会