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1988-05-12 第112回国会 参議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十二日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月十一日     辞任         補欠選任      井上  裕君     二木 秀夫君  五月十二日     辞任         補欠選任      福田 幸弘君     野沢 太三君      山岡 賢次君     宮崎 秀樹君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         村上 正邦君     理 事                 大浜 方栄君                 梶原  清君                 藤井 孝男君                 志苫  裕君                 多田 省吾君     委 員                大河原太一郎君                 河本嘉久蔵君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 坪井 一宇君                 野沢 太三君                 福田 幸弘君                 二木 秀夫君                 宮崎 秀樹君                 矢野俊比古君                 山岡 賢次君                 山本 富雄君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 本岡 昭次君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 吉井 英勝君                 栗林 卓司君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   河原崎守彦君        内閣総理大臣官        房審議官     本多 秀司君        総務庁長官官房        審議官         兼内閣審議官   増島 俊之君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省経済局次        長        内田 勝久君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君        大蔵政務次官   佐藤栄佐久君        大蔵大臣官房総        務審議官     角谷 正彦君        大蔵省主計局次        長        斎藤 次郎君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  足立 和基君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        国税庁次長    日向  隆君        農林水産省経済        局長       塩飽 二郎君        郵政大臣官房審        議官       木下 昌浩君    事務局側        常任委員会専門        員        保家 茂彰君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 志苫裕

    志苫裕君 何をもって財政再建というのか、財政対応力をあらわす指数は何なのか、しばしばここでもやりとりが行われましたけれども、いまひとつ不鮮明です。私はこれをはっきりさせたいなと思うのは、次の財政目標をどうするのかということとかかわってくるのでしばしばやりとりが行われたんだと思うのですが、ちょっと振り返ってみますと、そのときどきで都合よくこういうものが使われていると思うんですよね。大平内閣財政再建テーマとして登場したときの内閣ですが、このときは公債発行しないでも済む財政体質というような表現をしていたようですが、中曽根内閣のころから公債というのが特例公債に変わりまして特例公債依存体質からの脱却、さしずめ公債から特例公債に変わったのは、公債の幅が狭くなって政治的に越えなきゃならぬハードルを低くしたという意味合いでもあるのかなと、こういう感じもいたしますが、幸いというか、今の状況ではとりあえずの財政目標が達成されるという状況で次を考えようとする場合に、ここのところはもう少しはっきりしておいた方がいいという感じがしますので、大蔵大臣、改めてこの問題にひとつ見解を述べてくれませんか。
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その問題につきましてはせんだって以来御議論がございまして、私もそういうことを御質問がありますことはまことにごもっともなことだと存じつつ、実はただいまのところ、従来から考えておりました六十五年度特例公債依存体質からの脱却ということが現実になりそうになっておるので、何とかこれを現実事態にしたいということにすべての努力を集中しておることもございまして、現実にそれが実現することになりました後、さて次に置くべき目標は何かということになりますと、もうこれも御承知のように、まず建設公債をそれではどうするかということもございますし、先般来これもいろいろお尋ねのございますいわゆる後年度負担十一、二兆のものがある、あるいは国鉄清算事業団が最終的にやはり何がしかのものを、今の試算では恐らく十兆を超える負担を残すというようなこともございまして、それらを総合して次の財政整理目標をどこに置くべきかということは大変に複雑な問題でございます。かたがた、中長期の成長あるいは租税の弾性値等々のこともある程度はやはり仮置きをしなければならないかもしれませんが、そういったようなことがたくさんございまして、 ただいまのところお答えを明確に申し上げることができない。御質疑意味は極めて重要であると思いますし、私どもも時期が来ますとこの問題は当然取りかからなければならないテーマであると思っておりますが、ただいまのところ申し上げることができませんということを御理解いただきたいと思います。
  5. 志苫裕

    志苫裕君 これは抽象的に言おうと思えばできるんでしょうが、早い話が、きのうも館参考人なんかのお話を聞いていましたら、六十五年度脱却なんていうんじゃなくて六十四年中に終わっちゃうかもしらぬよと、財政審委員をなさっているんですが、割合に調子のいいお話がありました。それほど恐らくここしばらくの税収は好調なものという見方をなさっているんでしょうね、きっと。  六十二年がどうなると、ここじゃちっとも言わぬ。すぐもう先に締め切りが来ているのにまだ主税局長がちっとも言わぬけれども、きのうの毎日新聞を読んでいたら、大蔵省試算によると補正予算後三兆円を超えるなんて、あんたが試算したんじゃないかと思うけれども、まさかあんた新聞が勝手に書くわけはないだろう。だけれども、例えばそういうものの原資が出た場合にそれの使い道を考えて、税金に回せと言うのもおるだろうし、借金減らせと言うのもおるだろうし、ほかの歳出に回せと言うのもいるだろうしというふうな問題がすぐ出てくるわけでして、こういう場合に次なる財政目標は何なのかということが定まってこないと、我々としてもなかなか勝手が悪いという意味で聞いておったんですが、どうもこれはなかなかあなたは言わぬようだ。言うとそいつに縛られちゃうとか、何かいろいろなことがあるんだろうけれども、それはもう少しじゃ後回しにいたしましよう。  ただ、きのう財政審参考人は、財政本来の役割といいますか、目標に返ることだという御発言なんかもございましたけれども、今日著しく財政本来の役割がゆがんでいますから、所得配分機能なんというのはもうなくなっているんじゃないかという批判だってあるわけですから、それらのことでいずれこれは新しい目標の設定で論議をしたいと思いますが、しかし何となく税金が好調なんで財政目標が達成されそうな雰囲気の話なんですが、そんなものでもあるまいという感じも一方でしますので、しばしばここでも出ましたが、もう少しまとめる意味で来年以降今予想あるいは想定される歳出圧力歳出要因となるものにはどんなものがありますか。項目でまず挙げてみてください。
  6. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 実はまだ来年度の予算概算要求も出てきていないという段階でございますので、どのようなものが新たな歳出要因になるかについて今確たることを申し上げられないわけでございますけれども、人口の高齢化が急速に進展するとか、国際社会における我が国責任増大があるとか、公債残高が巨額でございますので依然として元利償還費圧力が多いとか、そういう財政需要増大一般的に考えられるわけでございます。そのほか、従来この委員会でいろいろ御議論がございましたいわゆる歳出削減に伴う後年度負担の問題、そういう問題もあろうかと思います。それらの問題、計数的に全部を把握しているわけではございませんけれども、六十四年度以降も歳出圧力は相当いろいろなものがあるだろうというぐあいに私ども考えておるわけでございます。
  7. 志苫裕

    志苫裕君 実は私も前にやったことがありますが、これからの財政考えるときに、一つ大蔵省が毎年出します仮定計算中期展望というのがあるんですが、あれはおよそ無味乾燥なものでして、ただ毎年数字が何%かずつ膨らんだりしぼんだりして並んでいるんですが、皆さんはわかるのかもしらぬが、あれはだれが見ても一体どのような歳出要因が想定されるのかわからぬ。あれは単純に何割伸びたとしたらとか、何割縮んだとしたらとかいうふうなことですからああなるのかもしれませんが、しかし少なくとも国民が見てわかるとすれば、こういう項目こういう項目こういう項目の後でそれが新しい歳出要因として待ち構えているんだなということがわからないといけない。それがあの仮定計算ではわからないという意味で聞いているんですが、今お話しありましたように、一つ財政再建期間中にいろいろ後ろへ繰り延べたりした部分、それから国鉄債務、それから今国際的責任というのは一口に言うと途上国累積債務とか、そういうものが財政へはね返ってくるという意味ですか。
  8. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 国際的責務増大と申しておりますのは、日本の国際社会における地位向上等に伴って、例えば具体的に申しますと、経済援助とかそういうものがふえていくということでございまして、今申し上げた中に私ども累積債務の問題を考えているわけではないわけでございます。
  9. 志苫裕

    志苫裕君 それから、借入金利子増大国債整理基金への繰り入れをどう扱うのかですね。建前は繰り入れるんですが、そっちの方に金が余っておれば入れるほどのこともないという議論もこれはあるわけですし、余計に繰り上げて返すことはないという議論もあるわけですから、余計持ったってしようがないという議論が出てくるかもしれませんが、これもしかし問題になる。何か衆議院でちょっと郵貯のことなんか議論をしておったようですが、財投資金運用部の金がうまく回らなくなって財政圧力がかかってくるということはないんですね。
  10. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 財投一般会計のいわば守備範囲というのは、片っ方は有償資金運用と、片っ方はいわば税金財源とする無償の支出であるということでございますので、そういう関係はないと私ども考えております。
  11. 志苫裕

    志苫裕君 この額は、私なりのものがありますが、一応そういうものがある。これは私の想定するだけでもあだやおろそかにできるものの額じゃない、随分でかいものだ。  このうちの国際的責務の分担の問題はちょっと後ほどに延ばしまして、もう一つだけ大臣と少しやりとりしておきたいんですが、実は私もきのう参考人等にお伺いしたんですが、この委員会でも、これから財政再建をどうする、これからの財政のありようをどうするということを考える場合に、この膨大もなく抱えておる借金国債をどう始末をするのかというのは、これは何といっても一番でかい問題です。ところが、国債必ずしも悪者ばかりでもないと。財政には、一定程度借金を抱えておっても、それはむしろそれなりのメリットがあるし合理的なんだという考え方エコノミストの間にあるようです。この間その点について同僚委員とのやりとりがあって、大蔵大臣は、民間企業借金をして業績を上げる、配当などに回す、そういうこともあるんだが、納税者から借金をする国の場合となると、国債をひとしく国民が持っているわけでもないので同日に論ずることもできないだろうという趣旨の答弁でした。  しかし、もうちょっと私は財政当局あるいは政府がやってきたことを子細に考えてみますと、いつの間にか四条債特例債とを区分けをしまして、建設債の方は社会資本整備に充てられるんだからあながち悪いものでもない、世代間の負担平準化という観点からすれば、今の世代がつくったものはずっとまた後代の人も使うわけですから、そういう人たちも応分の負担を払ったっていいという考え方に立てば、そういうふうないわば借金を残すこともあながち悪とも言えないとこういう論理が登場をして、四条債も基本的には財政法では邪道、ただし書きではありますが本則に比べると例外という扱いだけれども、むしろ例外じゃない、それに正当の地位を与えられたという感じがいたします。正当性が与えられた一つの理論的なものとしては、世代間の負担平準化という論理でもあるのかなという感じがいたします。  そしてさらに、この間もちょっと出ましたけれども、これは赤字国債もみんな同じことですが、出回った国債考えてみれば国は——財政借金する側ですが、国債を買う側はいわば資産をつくる側になるわけですから、そうやっていわば国民資産形成あるいはマクロの経済にはそれなりの貢献がある。きのうも参考人との話で、もし国債がのうなったらという話をしましたら、これがのうなったら大変なことになる、大変なことになるというのは、絶えず負ってもらわなければいかぬということになるわけでして、早い話が、長期の金利一つだってそこで決まっちゃっているんだし、というふうなお話でした。そうなると、寄ってたかって国債有用説というふうなことになっちゃうわけでありまして、もしそういう考え方が正当だということになりますと、今の財政法建前の方が少し世の中に合わなくなってきたわけであって、この財政法に手をつけようかという日程が登場することにもなる。こういう仕掛けなんですが、大蔵大臣、何かその辺に所見がありますか。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 志苫委員から今、いろんなことに制約されずに自由に物を考えてみようというお立場から御発言がございました。エコノミストの中にはそういう考えの方が少なからずおられるわけでございます。これはケインジアンでなくともそういうお方が少なからずおられますし、また金融資産としての国債我が国国債は信用がございますから、十分それは信頼できる資産であるということも本当と思います。  ただ、私の立場大蔵大臣でございますので、やはり一般会計の二割もの金額を国債費に充てるということは、いかにも財政弾力性を欠いておるということ、これはもう実感として間違いがございませんし、この二割という数字は現在高が動いていきませんとなかなか実額としては減らないという性格を持っておりますということから考えますと、何しろやはり発行額というものはできるならばなしにしていきたい、そうでなければ現在高を減らす方法はないわけでございますから。というふうに、やはり考え方はどうしてもそういうふうに基本的には考えていくべきであろう。  ただ、その際に、おっしゃいますように、建設国債というものはそれなりの積極的な意味を持っておりますから、つまり国債残高を減らきなきゃならないという大切な命題と、あるいは何か別の理由で建設国債発行してでも社会資本整備を図らなければならないことの緊急性というものがあって、その両者をどういうふうに選択するかという問題は私は時としてあるだろうと。どういう場合でももう建設国債は悪であるとまで言えるかどうか、それは選択の問題であろうという程度には私も考えております。しかしできるならば、国債残高を将来に向かって減らしていくためには、新規に発行をしないという考え方はやはり基本としては持っているべきではないか。それは財政法のやはり考え方でよろしいのではないかというふうに私は考えております。
  13. 志苫裕

    志苫裕君 もう少しこの議論を進めてみたいと思うんですが、財政対応力の問題も議論がありまして、財政対応力とは何だということに関連をして、何せ予算の中に二割も利払い費がどっかりとあぐらをかいておったんじゃ、なかなかほかの政策選択をしてみようといったって融通がきかない。非常にもう財政対応力がない。そういうあぐらかいているやつを整理して、これをもう少し自由度、自由な幅を持ちたいというのが財政対応力。そうすれば、いつでもどんなところへでも出動ができるという意味なんだろうと思うんですが、しかしどうでしょう、なるほど国の歳出の中に二割どっかりあぐらをかいていますから、実質八〇%が予算になっているわけだ。地方財政分というのは、結局地方公共団体がそれを使って橋をつくったり道をつくったりするわけですからこれは同じ意味です。あれを何か皆さん邪魔者にするようなことを言うけれども、あれは同じですよ。どこが使うかだけであって、国民の側から見ると、国民は住民なんですから、あれが多いからといってちっとも財政対応力の問題じゃない。  そんなわけで、八割でしょう。この八割というものが実質予算だとすると、これが何年も続いておるわけですわな、事実上。何年も続いておるので実はそれが予算の総額だと、利払いというものを別建て考えるとすると、八割というものが実質予算最初から八割分の予算編成をするというふうに考えればそんなに窮屈な話ではなくなってくるんですよ。そんなに窮屈な話ではなくなる。    〔委員長退席理事梶原清君着席〕 ひょっとすれば経常収入で十分賄える、おつりがくるという構造になる。問題は、その八割を別建て考えることができる——これは考え方の問題です、別建て考えることができるかということですね。そこで私はこの利払い費性格だと思うんです。利払い費は全くむだかというとそうでもないんですね。利払い費国民のうちの限られた人にではあるけれども、限られた人の収入になっているわけですね、収入になる。それはまたいろいろなところに回るわけで、経済としては動いているわけですから、死に金ではないんです。死に金ではないんですが、一般歳出と違うところは、特定の人に支出されておるということであります。借金をした元金は広く国民一般に使われているけれども利払い費国民の限られた人に使われておる。限られた人の資産形成に回っておるというこの違いに着目をして利払い費の調達の仕方を私は考えたらどうかと。元金国民一般に使われたんだから広く国民一般負担をする。これでいいと思う。そういう財源構造考えればよろしい。  しかし、この利払い費国民の限られた資産家、これのいわば国債という資産を持っておる人は七割が法人で、そして三割は所得が大体三千万以上のいわば投資家資産家に集中しているわけですから、これはもう大蔵省の資料などを見ますと、私の計算では大体所得三千万以上が八割近く持っているんじゃないですかな。というふうなことになりますと、この利払い費財源資産課税で補うというふうに考えて別枠にすれば、それは会計上の処理はいろいろありますよ、ありますけれども、物の考え方としては、利払い費というのは特定の人に払われるんだから、特定の人が税金を納めてもらっていわば利払い財源確保する。元金というのは国民一般に使われたんだから一般がそれを払うという発想方法考えれば、私が先ほど言った八割が実質予算、そうすれば経常収入だけでそう窮屈でなくて予算が編成できるという発想も出るじゃないか。そんな考え方はむちゃくちゃですか。(「むちゃくちゃだ」と呼ぶ者あり)そんなことないですよ、あなた。どうですか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず現実事態といたしまして、この国債費地方財政関係、これは決して地方悪者にするとかいう意味ではもとよりございません。この二つはいわば伸縮ができない二つ項目でございますから、これを除きましてそれを私ども一般歳出と呼んでおりますことは御承知のとおりでございます。その一般歳出をここのところをいわばゼロシーリングマイナスシーリングというのをかけてまいったわけでありまして、それはもう昭和五十八年からゼロ、マイナス〇・一、ゼロ、ゼロ、ゼロ、一・二、こういうふうにここのところが非常に厳しいわけでございます。と申しますのは、残しました二つ項目がこれはどうしても勝手に抑えられない項目でございますから、それはどうしても伸びます。したがって、一般会計そのものをある程度抑えようとすれば、残りの一般歳出を抑えざるを得ない、それがマイナスシーリングであり、ゼロシーリングであることは御承知のとおりで、そこに非常に予算のつらいところがある。  こういうことはもう御承知のとおりでございまして、そこのところが、つまり弾力性を欠いておる。それはマイナスシーリング、ゼロシーリングと申しまして、長年、言ってみれば一生懸命やってきて、ある意味で各省庁もよく辛抱してくれているし、その裏にはおっしゃるように後年度負担というようなことも必然的にどうも出てこなきゃならないこともありましたが、ともかくそれはやっぱり大変な、どちらかと申せば相当無理な一生懸命の努力であったということでございますから、その弾力性を回復したいということにほかならないわけでございます。  それで、最後におっしゃいましたことは、それは一つのお考えかもしれませんが、そのようにして発行されました国債金収入国民全体の利益のために使われておるわけでございますから、その利子負担というものはやはり一般歳入で私は賄われてしかるべきものであろう、こういうふうに考えます。
  15. 志苫裕

    志苫裕君 いや、そう言うけれども、私もそう学説を持って言っているわけじゃないので。しかし、私が一番最初に今財政目標を何にするかということを申し上げましたのは、今の財政財政本来の機能を全く失っておると、その大きいものに歳出の二割も利払い費が占めている。これはもうここでも議論がありましたように、歳出の二割というのは特定資産家に支払われるんでしょう。財政特定資産家のような者からお金を取り上げて、ない人に回すという機能を持っているんでしょう。所得配分機能というのは財政の第一番の機能でしょう。これが二割もあぐらをかいているために全く機能を失っているじゃないですか。国民から借金するんだけれども、それは国民一般じゃないんですよ。国民のうちのある、先ほど言いましたように、資産家から借金している。逆に言うと資産家資産形成なんですよ。そういう側面をいや応なしにこれは持つ。実態はそうなんだ。そして、その原資は広く国民一般から徴収をしている。貧乏人も含めて全部から取って、二割もの歳出というものを特定資産家資産形成やそういうものに配分をしておるという。事もあろうに、財政がそういう役割を果たしているということに財政担当者はもっと恐ろしさを感じぬといかぬですよ。  その上で、税制の面では、やれ所得税の累進構造が緩和するの、消費一般に課説する間接税が導入されるわ、税財政あわせて再配分の機能をめちゃめちゃにしておるということをどうするかということが次の財政改革、財政目標だと。財政改革と言うのであれば、基本的にあぐらかいておるそれをどうするかということを既存の財政法の枠にこだわらないで、新しい発想でもしない限り財政改革とは言えない。やっこらやっこらかかって昭和百二十四年までに借金返していくのも結構だろうが、しかし発想の仕方によっては、そのような財政構造というものを考えることができるんじゃないのかということを私は提案している。だから、突拍子もない話だけれども、二割は特定国民に支払われているんだから、それによって上げられるであろう、上げたであろう資産課税から、相当部分というか、それを調達するという発想で税なり財政なりの仕組みを考えることは可能だと、これぐらいのことを考えないと、それはあなた、この財政改革はならぬって。いかがですか。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはそれとしての御主張でございますから、すぐにそれに対してあれこれ申し上げる必要はないのかもしれないと思いながら伺っておりましたけれども、結局、公債というものは実際は転々して金融商品として存在しておるわけでございますから、それを資産階級が持っておるというふうに考えることは、さあどんなもんであろうか。そういうものを持っている人を資産階級という、と言うのならそれはよろしいんでございますが、商品そのものは転々しておる、しかもこの商品を持つことによってそれは特別の目的税をかけられるということになりましたら、これは商品としての流通性を私は相当やはり棄損するだろうと思いますし、実は財政のそういう再配分機能ということは、例えば所得税が累進税率を持っておるというようなことのところにむしろ私は求めるべきであって、今のようなことはいかがなものであろうか。しかし、それはいろいろ御承知の上、お考えの上でおっしゃっていらっしゃることでありますから、一つの御意見として承っておきたいと思います。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 しかし、私が非常に気にしておるのは、この財政の本来の機能が、先ほど申し上げたようなことで、本当に喪失をしておると、これをどうするかということを考えることが最大の課題だ。ただ、あぐらかいておる国債利払い費を減らしたいなという同じそういう発想であっても、今言ったような考え方で対応すべきだと。それには既存の枠にこだわらない発想が必要だという意味で主張しました。  あと時間なくなっちゃったな、総理のあれもありますので。  先ほどのこれからの歳出要因としての累積債務問題、もう既に一兆ドル、一兆二千億ドルぐらいになっているんですか、というふうに途上国債務が累積をされている。いろいろなところでいろんなことがやられているそうですが、これはやがてそれぞれの国の財政にはね返ってくるということを軽く見ておいてはいかぬのではないか。もちろん全体でいいますと公的資金よりも民間資金がまだ多いけれども、しかし、だんだん公的資金のウエートが、何といいますか、そのうちに逆転するんじゃないかという感じもしますが、そうなってまいりますと、経済財政に大きな影響を及ぼしてくるんですが、重ねて幾つか聞きますが、累積債務の発生要因をどう見ておるのかということと、日本のいわば債権を地域別にちょっと言ってもらえればいいんです。銀行別に言えといったって言わぬでしょうがね。日本の金融機関の債権というものはどういう地域に幾らある、まずこれ聞かしてください。
  18. 内海孚

    政府委員(内海孚君) まず第一の御質問で、債務累積問題の発生の要因はどういうことかということでございます。  第一には、開発途上国側の要因、つまり大変積極的な国内開発計画等によりまして、これが財政赤字とか、あるいは輸入急増の要因になったということがございます。  それから第二に、先進国側の方では第二次オイルショック後に景気が一般的にかなり低迷しまして、開発途上国の輸出の伸び悩みという形でこれが反映したということがございます。  それから第三に、開発途上国の主要輸出品である一次産品の価格の低落、これは第二の要因から来るものでございますが、価格の低落。それからさらには、一九八〇年代初めの金利の高騰による利払い費の増加というようなファクターが複雑に絡み合っているものと考えております。  先ほど我が国の民間金融機関の対地域別の残高ということでございますが、これは昨年末で見まして、LDC全体で見ますと約七百七十億ドルぐらいでございます。そのうち中南米が一番大きくて約四百億ドル、それからアジアが三百億ドル弱でございます。それから、アフリカが五十億ドル強、大体そんな感じでございます。
  19. 志苫裕

    志苫裕君 これはまた総理がおいでいただいたときにちょっとやりますけれどもね。  今のお話のように、累積債務の発生要因をどう見るかによってそれぞれがどんな対応をするかにもかかわってくると思うんですね。今の局長お話ですとね、石油価格の下落とか一次産品の値下がりとか、あるいはそれとG7以降の為替の変動とか、特に金利ですね、そういうふうなものなんでしょうが、局長も答えられたように、借りた側から見るとというのですが、したがってやっぱりこれは貸した側にも私は問題があると思うんですよ、貸した側にも。それは金の貸し借りですから、貸した側が当てが外れる場合もあれば、借りた方が当てが外れる場合もありまして、大体発生要因をひとつ考えてみると、OPECの価格の値上げで産油国にわっとドルが集まっちゃった。一方で先進国は不況に陥るわけですから、膨大なオイルダラーの行方を追いかけてみると、それはほとんど西側の銀行に集まっております。西側の銀行に集まって途上国に出ていった。何も慈善事業で貸したんじゃないのでありまして、先進国の輸出拡大策の一環として構築したいわばオイルダラーの環流メカニズムなんです。これが機能しなかったんでしょう。ということになりますと、これはいや応なしに貸した側にも問題が返ってくる。  そこで大臣、あれですか、これに対する国際機関、民間の銀行が大部分だとはいえ、特に民間が多いのは中南米なんですよね。中南米の累積債務は全世界の累積債務の的半分近くで、五、六カ国、今四百億ドルぐらいですかね、五、六カ国がそれをほとんど持っておる。アジアじゃインドネシアがその次の順番あたりにいくようですけれども。ということはアメリカですよね。今聞いたら何のことはない、日本も中南米に一番余計残高があるということがわかりましたけれども。それはともかくとして、大臣あれでしょう、この間のG7でこのことが議論になってIMFなり、あるいは世界銀行なりの役割、いわば国際機関の役割というようなものが相談もされているようで、あなたも何だかそこのところで言ったでしょう。これからこの問題に対する国際機関なり日本政府の対応をちょっと申し上げてください。どういう対応が考えられるのですか。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはちょっとぐねぐねしたことを申し上げるのでございますけれども現実に今債務を負っておる国と銀行団とが交渉をしているという事態があちこちにたくさんあるものでございますから、不用意なことを言いますと債務国の立場を非常に強くしてしまうということがございますもので、当然のことながら、そこをまず用心しておかなきゃいけないということが一つございます。  それからもう一つは、IMFがいろいろ交渉に際して債務国に今後のいわばとるべき政策としていろいろなアドバイスをする、そのアドバイスがなかなか当然のことながらきついものですから、債務国としては素直にそれを簡単に聞けるような状況にない。そういうことからも、全体を甘くしますとどうしても問題の解決に当面害があるというような要素があるものでございますから、発言というものはおのずから大変に慎重で、かつぼんやりしたものにならざるを得ないということがこの問題のどうしても逃げられない一つの制約であるわけです。  私が一般的に申しましたことは、結局交渉というのは個別にケース・バイ・ケースにならざるを得ないし、どうしても債務国側のやっぱり努力というものはこれは欠くべからざることであるが、しかしそれはそれとして、それはまず前提としておいて、もう少しIMFとか世界銀行というものがこの問題について一国対一国の銀行でなく、国際的な問題としてもうちょっと立ち入ってもらえると、我が国などの立場はラテンアメリカとはかなり遠い国でありますけれども、国際機関の国際的な努力に日本としても応分の寄与をするということは国民的にも非常に受け入れやすいので、そういう努力を国際機関としてもすべきではないか。それに対しては日本も応分の寄与をしたいと、こういう意味のことを申したのであります。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 済みません。時間が出て済みませんでした。  これでやめますが、実はまあ先ほど今後の財政歳出要因斎藤次長の答弁がありまして、ODAは頭に入れてあるが累積債務のはね返りのことは考えていないと言いましたが、もちろんそのはね返りがODAという形で対応する部分が相当大きくなるんだろうと思いますね。ですけれども、これはいずれにしても、今大臣お話がありましたが、国際機関が国際的対応をするといっても国際機関が金を持っているわけじゃないんでしてね、これは必ずそれぞれの、特に先進諸国、債権を抱えた国の財政に戻ってくるということを軽く見ておいてはいかぬだろうという指摘だけして質問を終わります。
  22. 多田省吾

    ○多田省吾君 まず、私は宮澤大蔵大臣にこの財源確保法そのものについてお尋ねしたいと思います。  言うまでもなく、この法案は財政法の形骸化以外の何物でもございません。これを十年以上にわたって政府は提出を続けてこられたわけです。大臣はこの状況を率直にどう感じておられるのか、まずお答えをいただきたいと思います。
  23. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 十年余りにわたりまして財政法の特例としてこういうことを毎年御審議を願い、お許しを得てやっておるということはもうまことに残念なことでありまして、本来財政法が想定をしたところではないということは御説のとおりと思います。  ただ私は、このよって来るところを考えますと、やはり二度の石油危機というものがあって、石油を一切産出しない我が国が世界のうちでは最も見事にそれに対応したというようなこと、その後の円高に対してもそういうことを申し上げられるかもしれませんが、それはやはりこういう財政が出動をしてこの事態に対応したということがあずかって力が大きかったというふうに考えております。  したがいまして、過去においてこういうことをお許し願ってやった努力は、そういう意味では決してむだになってはいない、むだではなかったと存じておりますが、そのいわばツケと申しますか、当然の結果がここにあらわれておる。幸いにして、我が国経済はしかしそういう幾つかの危機を乗り切って現在の状態にございますから、できるだけもうこういうことは早くやめなければならないし、また、やめる時期が近いということを祈りつつ努力をいたしておるということでございます。
  24. 多田省吾

    ○多田省吾君 今年度は三兆一千五百十億円をこの特例公債発行限度額とされるようでありますが、昨年度よりも一兆八千三百億円減額されているわけでございまして、六十五年度は赤字国債ゼロに近づいたとされております。これも結局はここ二年余りの景気回復あるいは土地暴騰、財テクブームあるいはNTT株の売却益、こういったものに頼ってこういう結果になったわけでございまして、私は本来の財政再建とは言いがたい、このように思うわけです。もう今までも、ここ数年来の予算を見ますと、福祉、文教予算あるいは中小企業対策予算等が非常に圧縮され切り捨てられているような姿がございます。  また、本年の予算委員会以降、和田議員等から再三指摘されておりますように、一般会計から五十七年度以降、特別会計へのツケ回しあるいは地方自治体への負担押しつけなどが当局の発表によっても少なくとも十一兆三千五百億円以上に及ぶ。そのほか国債整理基金特別会計への定率繰り入れ停止分が十二兆九千億円もあると、こういうことがございまして、すんなりと財政再建が行われているとは言いがたいのでございます。いわば見せかけの財政再建だと言わざるを得ません。  このことに関しまして大臣はどうお考えになっておりますか。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどもお尋ねがあって申し上げましたように、この財政再建に当たりまして、いわゆる一般歳出昭和五十七年以来ゼロまたはマイナスということで昨年まで参ったわけでございますが、その間にありまして社会保障関係費は必ずプラスでございます。マイナスになった年はございません。それだけの配慮はいたしてきたつもりでございますが、しかしそうは申しましても、さてここで特例公債が仮に二年後に、二年たちましてやめられるといたしましても、過去からの後年度負担といったようなものあるいは国鉄清算事業団債務とかいろいろなものが実はこのゼロシーリングマイナスシーリングの陰で負担として生じておるわけでございますから、なかなか財政が再建されたと申し上げる状態にはまだほど遠いということは申し上げなければなりません。
  26. 多田省吾

    ○多田省吾君 大臣は今社会保障費はマイナスになることはなかったとおっしゃっておりますが、これは当然でございまして、もう当然増が福祉予算においては毎年相当に多いわけです。その当然増さえも相当圧縮してきたわけでございますから、私はその点を含めてこれは大変な圧縮じゃないかと、このように申したわけでございますが、まあそれはそれといたしまして、大蔵大臣財政再建の次の目標に触れまして、個人的には国債費一般会計に占める割合が高過ぎる、国債費の二割というのはきついんだということで、これをまず減らしたい、次に国債依存度も下げたいというようなことをおっしゃっておりました。  昨日の参考人陳述でも、先ほど志苫委員が申されましたように、経済学者の松田参考人でございましたか、政府資産をできるものからNTT株の売却のように行って、それによってやはり国債残高を下げた方がいいんじゃないかと。そうすれば国債利払い費も自然に下がってくるわけでございまして、私たちもそういうことで今までいろいろ研究したこともございます。大臣も御存じのように、今まで民営化された会社についての株式の公開とか、あるいは今現在ある公団を初めあらゆる特殊法人を洗い直して民間移行できるものは民間移行する、そういったことでやはりNTT株のように利用すれば私は国債残高は相当減らせるんじゃないか、このように思いますが、こういう考え方について大蔵大臣はどう思われますか。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) できるものはできるだけそういう方向で考えたいと思っております。
  28. 多田省吾

    ○多田省吾君 できるだけ考えたいとおっしゃっておりますけれども、私たちは早速手がけていただきたい、このように思うわけでございます。例えば日本たばこ産業株式会社を初めとする民営化された会社の持ち株公開の問題とか、あるいは公団等のそういった民営化を進めるための公団等民営化審議会の設置とか、こういった具体的な作業に入られたらいかがかと思いますが、どうですか。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、財政の方からいいますと大変に望ましいことではございますが、今現にございます公団等々は、やはりああいう形をとるということが必要である、何かの理由があってああいう形をとって仕事をしておられるわけでございますので、民営化できるものとできないものがやはりあるということは、これは当然のことながら事実でございましょうから、私どもとしてはできるものからできるだけやっていきたいと、多田委員の言われるように考えております。
  30. 多田省吾

    ○多田省吾君 それから、国債の六十三年度末の残高は百五十九兆円に達するわけでございますが、とりわけ赤字国債の残高はそのうち六十九兆円になります。これを我が国の未成年の人口三千五百万人から計算いたしますと、一人当たり百九十七万円にも達します。今後これを六十年償還ルールで償還されていくわけでございますが、御存じのように借換債の問題ではこの前大変議論がありました。  この借換債というものは、今回の法案におきましても第二条四項、五項にありますように、赤字国債の借換債の起債は極力行わないように努め、起債した場合にはその減債に努めるとの努力規定も置いているわけでございますが、この努力をした姿が全然見られないのでございます。この点に関しまして大臣はどう考えておられますか。
  31. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 私ども特例公債の償還につきましては、十年の期限が来れば満額償還するという原則で当初お願いをしたという経緯もありまして、できるだけ早く償還をしなきゃいかぬということで努力規定も置いていただいて、その懸命な努力をしようとしているわけでございます。  現在の財政状況で申しますと、特例公債の情換債を発行しないということはそれだけ現金償還がふえるということでございまして、現在、現に新規の特例公債発行している財政状況でございますと、現金償還を行いますとその分だけ新規の特例公債発行がふえるということでございますので、そういう点を勘案して、今は六十年償還ルールで十年償還のものについては毎年六分の一だけ現金償還させていただくということで運営しているわけでございますが、今後財政状況がよくなれば、そういう努力規定もありますように、一刻も早く特例公債の償還をしていきたい、そういうぐあいに考えておるわけでございます。
  32. 多田省吾

    ○多田省吾君 法案から少し離れるようでございますが、どうしても聞いておきたいことがありますのでここでお尋ねいたしますが、今まで大蔵省予算編成が非常におくれておりまして、大正六年度予算から一月以降にいつもずれ込んでおります。本来ならば、財政法でも予算の国会提出は前年度の十二月を常例と定めてあるのにこういった姿があるわけでございまして、参議院改革問題でもこの点が論ぜられまして、国会の常会の召集を一月にしたらどうだという意見もあったわけでございます。衆議院に申し入れて断られたなんという経過もありまして大変残念に思っているわけでございます。  それというのも、大蔵省予算編成がここ数十年おくれにおくれているわけでございまして、私どもはまず第一に、やはり財政法のとおり、予算編成は十一月に終わって十二月には国会に新予算を提出するのが本来建前ではないか、このように思うわけでございまして、四月十八日に記者団との懇談で、この問題では知恵を絞ってみたいと竹下総理もおっしゃっておられたそうでございますが、概算要求基準等も一カ月ぐらい早めてもう来年度からはことしの十二月に新予算案を国会に提出する、そういう方向でいかれたらどうか、このように強く要求するものでございますが、この点、大臣はどうお考えでございますか。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕
  33. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 私どももできるだけ早期に提出しなきゃならぬと考えておるわけでございますが、なぜどうしても十二月末ということになるかという事務的な事情をまず御説明させていただきたいと思います。  できるだけ早く国会に提出したいと私ども考えているわけでございますけれども、他方、予算の編成については、御承知のように、基本的にその要求から決定に至るまで作業に膨大な日時を要するということとか、内外の経済情勢の動向等と密接不可分の関係にありますものですから、翌年度の経済情勢の動向等をできるだけ的確に把握して編成した方がいいのではないかというようなことで、どうしても予算案の決定が十二月末になってしまうという実態があるわけでございます。それから、決定後国会に提出するまでも予算の作成というのに膨大な作業がありまして、私どもも徹夜作業の連続でやるわけですが、予算書は千八百ページ余の膨大な資料でございまして、それについて、これは法律とは別個の法形式でございまして、ミスは許されないということから、休日を返上して作業に当たるということで非常に膨大な時間がかかります。そういうようなことがございまして、どうしても予算編成には相当の時日を要するわけでございます。そういうことから、従来財政法の制定以来十二月中に提出をしているということができないという事情にあるということを、まず事務的な立場から御理解をいただきたいと考えます。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今のように、仮に十一月に予算編成を終われということになりますと、予算編成の作業は多分五月から始めなければならないということであると思います。現在の国会の御審議は、仮に早く提出いたしますれば年度末までに予算を成立させていただけると思うのでありますが、その他の法案の御審議等々がその後にございますから、各省庁が予算編成に五月から没頭するということは、実際上はそういう関連もございまして、国会の通常会の会期が百五十日と決まっておりますから、延長がございません場合でもなかなかそこはやっぱり行政側としては苦しい、五月から全力を挙げて各省庁が予算編成に取り組むということが難しいという事情がございます。  それからもう一つは、年度が四月に始まるという前提を崩さないといたしますと、翌年度の経済動向というのはなるべくそれに近い時期から予測をいたしたい、最寄りの時期から、直近の時期から予測をいたしたいと考えるのは当然でございますけれど、十一月に予算ができ上がってしまうということは来年度の経済見通しを非常に早い時期にしなければならないということになりまして、このことがやはりその予測の正確度を相当損なう心配があるのではないかということがございます。  それからまた、予算の印刷が物理的にやはり二十日間ぐらいを必要とするわけでございますが、これがただいまのところでは、お正月に議員各位が御郷里に帰られまして、東京にお出ましになる間の時間というものをちょうど印刷の時期に充てさしていただくことができるわけで、そういう意味では政治的な空白になっていないわけでございますけれども、これが仮に十月とか十一月というときになりますとその間、実はその時間というものをいわば政治的には空白というか大変にむだな時間をお願いしなきゃならぬということにもなりまして、それらのことがこれはある意味で何十年の習慣でそういうふうにいろんなことがなってしまったんだと、もう一遍それを新たにし直せばいろんな新しいことが考えられるんじゃないかとおっしゃればあるいはそうであるかもしれないと存じますけれども、各方面にそのような実は事情がございます。
  35. 多田省吾

    ○多田省吾君 いろいろ理由おっしゃいますけれども、我々参議院改革の面から考えましてもこういう事態を長く続けていることは甚だ遺憾でありますし、また今度週休二日制が定着いたしまして土曜閉庁というようなことになりますと、ますます審議がおくれまして参議院に会期末にしわ寄せが来る、参議院本来の審議ができない、そういう姿にますますなりかねません。こういったところは憲法問題にも関係することでございますが、やはり大いに努力していただかないと困る、このように私たちは思うわけでございます。  次に、小口金利の自由化について先月の日米円・ドル委員会でも日本側がその実施をことしの秋と約束されたという報道もございますが、この点はどうなっていますか。
  36. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 預金金利の自由化につきましては前向きに推進してまいったところでございます。ただ、その反面におきまして金融の秩序、信用秩序に混乱をもたらすようなことはぜひとも避けなければならないということでございますので、慎重に進めている観点もあるわけでございます。最初に申し上げましたように、自由化というのは世界各国は既にほとんど自由化を終わっておりますので、我が国としてもどうしてもこれはやり遂げなければならないことだと考えている次第でございます。  そういう中で、先ほどお話がございましたようにアメリカとの間で円・ドル委員会が開かれまして、その際にアメリカ側からも日本の自由化の進展はどうなっているかという質問がございました。それに対しましては、これまで三年にわたって春秋春秋とやっておりますので、この秋にもまたそういう方向でやることを検討していきたい。具体的な中身につきましては、この四月一日からの預貯金金利に対する税の影響等でまだ十分資金シフトその他が見きわめがつきませんので、その様子がほぼ確かめられる六月ぐらいに何らかの方向、具体的な中身を明らかにしたいというふうに米側に説明したわけでございまして、そういうことで現在考えているということでございます。
  37. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほども指摘がありましたが、昭和六十二年度のいわゆる税の自然増収の問題でございます。補正後も二兆五千億円とも三兆円とも言われるような自然増収があると言われておりますけれども大蔵大臣は前に、これは自然増収があれば国債の減額に充てるんだ、こういうお話で、一兆円ぐらい赤字国債の減額にまた充てるんじゃないかというようなことも報道されたことがございます。  昨日の参考人陳述におきましても、財政審の会長代理である館参考人から、自然増収は国債の減額に充てた方がいいけれども、絶対に全部そうしなければならないということじゃなくて、やはり所得税減税、減税の財源等もあり得るんだと。また、経済学者の松田参考人も、必要があれば政治的意思によっては自然増収を減税に回してよろしいんじゃないか、こういうような陳述もされておりました。  私どももやはり税の抜本改正の前に、所得税減税等は与野党の約束もあるんですから、今国会に切り離して所得税減税等を行うべきではないか。その財源としてはやはりこういった税の自然増収を使ってもいいんじゃないか、こういう意見を言っているわけでございますが、大蔵大臣はこれをどう思われますか。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 仮にある程度の自然増収が出ました場合に、まず三税につきましては三二%を地方に交付しなければならないわけでございますからそれを減額いたしまして、残りにつきまして私としてはやはり減額できる程度発行予定の特例公債の減額をいたしたいと考えております。それは先ほど多田委員が言われましたように、特例公債そのものが財政法の本来認めるところでございませんで、十何年やってきたことについておしかりがあるのはごもっともなことでございますから、増収がございました場合にはその分だけ特例公債発行しないと、後年に利子の負担を残さないということが私はやはり財政としてあるべき姿であろうと存じます。
  39. 多田省吾

    ○多田省吾君 昨日参考人がおっしゃっていたように、必要があれば政治的意思によっては減税に回してもいいんだ、こういう意見に対してはどう思いますか。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは多田委員御自身が御指摘になられましたように、特例公債というものは本来発行することは原則でないわけでございますから、発行しないで済むという方法がありますときは、あらゆる手段を講じて発行しないということでなければならないと思います。
  41. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、減税には全然回せないと、全部赤字国債の減額に充てるんだと、こういうお考えですか。
  42. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは突き詰めて申しますと、減税財源として特例公債を出すかということになってまいりますので、それは私どもとしてはやはり避けなければならないと思います。
  43. 多田省吾

    ○多田省吾君 我々が従来主張しているように、税の自然増収というものはやはり国民が税を払っているんですから国民に減税として返すのが当然じゃないか、これが私は正論だと、このように思うんです。たびたび大臣はこれは否定されております。大変残念であります。  最後に、これからの財政再建についての見通しですね、昭和六十五年度赤字国債ゼロという姿が実現したならば次はどうするんだ。いろいろ言われましたけれども、私はまず、建設国債発行についても漸減しまして、相当早い機会に、今の国債依存度一五・六%ですか、早く一〇%以下まで引き下げる、これが第一。  それから第二には、やはり大臣もおっしゃっているように利払い費が非常にかさんでおりますから、早い機会に国債残高を対GNP比二〇%程度まで減額する。今は四十数%になっていると思います。  この二つぐらいは例えば七十年代前半ぐらいにこうしたいとか、そういう具体的目標を立てるべきじゃないかと、こう私は思いますが、いかがですか。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いずれにいたしましても、特例公債をやめることができるという見通しが立ちました段階で、今仰せになりましたような幾つかのことを検討しなければならないということと存じます。その際、建設公債をどうするか、それは原則として、これも金利負担を生ずることは特例公債と同じことでございますから、しかしその建設国債発行する必要が何かのことで内外に要請があって、社会資本の充実というようなことでございますが、どっちを優先的に考えるべきかというようなことは、あるいは考えなければならないことはあるかもしれないと思っておりますけれども。  それからもう一つは、GNP対比で国債の残高をこのぐらいにすべきだということは、実はGNPそのものが将来に向かってどのぐらいになるかということを、今の我が国の体制では五年ぐらい先よりはわからないことになっておりますものですから、その辺のこともいろいろ仮置きもしなきゃならないかもしれません。いずれにいたしましても、そのようなことを総合いたしまして、先の段階で考えなければならないと思っております。
  45. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に私は、やはりイギリスやあるいはヨーロッパ諸国でもこのような財政赤字というのは相当縮小されてきておりますし、アメリカもそういう努力を払っております、日本が今一番財政赤字でずさんな姿になっているわけでございますから、やっぱり一日も早く立派な財政再建、また財政対応力を復活するためにおきましても、また国民生活を向上する意味におきましても、こういった財政再建目標を立派に立てて鋭意努力していかなければならない、その方策を政府に立てるよう強く進言いたしまして、質問を終わります。
  46. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 一九三七年から四五年の終戦の年までですか、第二次世界大戦のときの日本の戦費を、一般会計の中の陸海軍省費、軍需省費、徴兵費、臨時軍事費等を合わせてみますと、一般会計の中では千七百五十四億二千八百万円、これを一九八七年ベースに換算いたしますと三十六兆百六十二億円、こういうことになろうかと思いますが、これを賄うために当時赤字国債——長期債を発行したわけですね。長期国債残高が一九四五年の終戦の年で千四百億円、これを日銀の卸売物価に係る戦前基準指数によって八七年価格に換算しますと二十八兆七千億円、さらに名目残高分の名目GNP比で見ますと一九四六年が三六・三%で、八七年度は四三・九%となると思うのですが、まずこの点、これでよろしいでしょうか。
  47. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 戦費につきましては実は突然のお尋ねでございまして、的確にお答えできるかどうかわかりませんけれども、井上、宇佐美両氏の共著による「日本資本主義の構造」というものに基づく御質問の数字だろうと思います。その資料に基づく限り、あるいはその価格換算についてその方法をとる限り、御指摘の数字のとおりになります。
  48. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 さて、一九八八年の国債残高は百五十九兆円ですが、ですからこれは第二次世界大戦の戦費の四・四倍、当時戦費を賄うために発行された赤字国債の五・五倍という、こういう数字になってこようかと思うのですが、この点どうでしょうか。
  49. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 国債についての今お尋ねだと思いますが、数字の比較では換算はいろいろありますけれども、一定の前提を置きます限り、そういうことになろうかと思います。
  50. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 一九七五年から赤字国債の大量発行を始めて以来、いわば平時に戦時の財政運営と同様のことを進めてきたという、こういう見方もできようかと思いますが、以前から我が党がよく指摘していたとおりのことが今日財政危機を深刻にしたのであり、この点では財政政策上の失敗であったと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  51. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 国債残高のGNP対比等の御議論でいろいろ言っておられますけれども、実はGNPのいわば推計方法とか、例えば実際には昭和二十年には全然推計値がないというようなことでございまして、方法論についていろいろ問題があるということのほかに、当時は非常なインフレが進行中でございまして、GNPを分母とした公債残高の比率を見ますと、例えば昭和十九年を見ますと、これもあくまで推計値でございますけれども一四三%、それが二十一年には三六・三%というぐあいに非常に毎年変動いたしております。したがいまして、こういういわばGNPの推計方法も確立されていない、あるいはインフレが非常に進行している時代というものと今日の時代を比較して、直ちに戦時経済よりもひどいというような推論はいかがかと思います。  ただ、私どもは現在の財政運営が正常なものであるというぐあいに考えていないことは、従来しばしば申し上げていることでございます。
  52. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 後藤さんの本なんかではあれはGNPの一・九倍ぐらいの計算を挙げておられたかと思いますが、七五年からの赤字国債の大量発行によってやはりいよいよ今日の財政危機を深刻にしてきたという点、この点での財政政策上の問題ということについて先ほど私は伺ったのですが、この点どうですか。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 第一次の石油危機が起こりましたのが七三年でございます。昭和四十八年でございますが、その翌年から国債発行されたわけでございます。その後第二の石油危機があり、さらに円高というようなことがございましてこの十何年であったわけですが、日本経済が、石油を少しも産出しないにもかかわらず、世界の中で一番この危機を上手に乗り切ったということは定評のあるところでございます。それはいわば財政がそういう対応をしたということと決して無関係ではなかったと考えております。雇用の問題を見ましても、国民生活全体を見ましても、ともかくここまでこの幾つかの危機を乗り切ったということについて、これは世界でもやはり一番いわばパフォーマンスがよかったということは疑いのないところでございますが、それは財政負担において行われたということだと私は思っております。  したがって、これだけ経済がよくなりましたら、もうそういう財政赤字国債発行というような慣習は何とかしてなくしたいと、また現になくせる時期が視野に入ってきたと思っておりますものですから、そういうことにいたしたいと思っておりますが、過去十何年間を顧みまして、国の国民生活あるいは経済社会を全体として考えますならば、私は間違っていなかったという判断でございます。
  54. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 赤字国債の六十五年発行ゼロの話はまた後ほど触れますが、七五年に赤字国債発行ではなくて、これはやはり後年度において随分大きな負担を生み出すものでありますから、軍事費の削減とか大企業優遇の税財政の是正とか、公共投資の中身そのものを国民生活重視型に転換するとか、国民本位の財政経済運営に切りかえるべきだということを当時から我が党は主張しているわけです。  さてその後、国債の残高はどんどん積もり積もってこれは大変だということで、国債依存からの脱却といって臨調行革をやって、一昨日も当委員会で論議がありましたように、文教費ですと臨調行革始まって七年間でマイナス〇・七%ですか、この文教費削減を初め、中小企業で二一・九%のマイナスとか、社会保障関係実質マイナスとか、軍事費だけは四三・一%伸びておりますかね、やはりそういうやり方が国民の暮らしの力なり内需を枯らしめて、財政危機の打開の条件を一層困難にしてきたということが言えるんじゃないかと思うんです。  そういう中で、軍事費だけはどんどんふやして世界第三位ですが、国債発行もそれに伴ってどんどんふやしたんですね。第二次世界大戦時の戦費の四・四倍ということで、いよいよ財政危機を今深めているわけですが、昭和六十五年度の赤字国債発行をゼロにしたとしても赤字国債の残高がゼロになるわけじゃもちろんないわけでありまして、財政危機は依然として深刻だということ、こういうことはまず御認識いただいているとは思うんですが、この点はいかがですか。
  55. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 先ほど大臣が御答弁されましたように、現在赤字国債の残高が相当巨額に上っていると、これについて何とかしていかなきゃならぬという認識は持っておるわけでございますけれども、先ほど来の御議論を伺っておりますと、あたかも防衛関係費の増がすべてその原因であるかのように私どもちょっと受け取れるわけでございますけれども、日本の防衛関係費というのは根っこの額で申しますと三兆七千億でございまして、総額五十兆をはるかに上回る中で非常にウエートは低いわけでございます。これは先進国の中の防衛関係費のウエートを見ても飛び抜けて低いということでございまして、私どもは、毎年度の予算編成で防衛関係費の増が予算編成の圧迫になるということは、全く考えていないわけでございます。
  56. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 さっきも言いましたように、私は軍事費だけ挙げてないんです。大企業優遇の税財政制度の問題とか公共投資の中身の問題も触れておりますので、全体の中での議論なんですが、しかし、そういう中で赤字国債残高がゼロになるわけじゃなくて、これは大変な問題ですね。その点は大変だと思っていらっしゃると思うんですが、そういう財政危機の中でもさらに軍拡と大企業減 税を進めるものとして新大型間接税を今やはり考えていらっしゃるんじゃないかと思いますが、この点いかがですか。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どうも我が国経済財政というのは、今吉井委員の言ってらっしゃるようなことになっていないように私どもは思っております。
  58. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 そこは大臣考え方が異なるところといたしましても、去る四月七日の予算委員会で我が党の上田議員が指摘しましたように、世界史を見てまいりますと、大型間接税が持ち出されたというのは第一次大戦のときとか第二次大戦のときとか、第二次大戦後のどさくさといいますか、戦争の時代から戦後経済の時代ですね。そして、参議院の方では、一昨日、国保改悪案が審議要求を無視して議了という事態でありますが、健康保険の本人負担の導入、これは東条内閣のときに見られたんですが、それ以来です。本人負担や国保、社会保険通じての保険料負担増など、医療保険制度の改悪というのはまさに戦時の財政運営のやり方、こういう見方ができるかと思いますが、この点いかがですか。
  59. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 数次の国保改革についての御指摘でございますが、医療費につきまして、医療費はだれかが支払わなければならぬということでございまして、仮に本人負担がなくて国が払うということになれば国はそれを税金で払うということでございます。したがって、どなたに負担をいただくかということが一つ。それから、全額本人負担がない場合にはどうしても医療費がこれはいろいろ趨勢的にかさむという事実もございます。そういうことを総合的に勘案して、国会で御審議をいただいて成立を見させていただいたわけでございまして、私どもは社会保障の改革の一環として大変意義のあった制度だというぐあいに考えているわけでございます。
  60. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 赤字国債発行してどんどんどんどん国債残高がたまっていって財政危機だ、大変だという中で、数年前には健保改悪、本人負担の導入、今度また国保問題ございますが、こういうふうな医療保険制度のやり方もちようど戦中に見られたやり方、国債発行も戦中のやり方、大型間接税もいつもこれを持ち出してきた時期というのは、戦争の時期に大体世界的に見ましても各国でそういう例が見られるわけです。  こういう点では財確法案に打ち出されているものというのは、赤字国債発行といい、国債依存体質といい、またこういう健保制度改悪による受診抑制で浮かしての国庫補助の削減といい、さらに国保改悪から大型間接税に至る問題といい、今政府が進めていらっしゃることというのはまさに平時にあって戦時国家財政の仕組みを持ち込んでいるやり方だ、こういうふうにうかがえるんですが、いかがですか。
  61. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 私どもは全くそのように考えてはおりません。
  62. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 これはそう考えていらっしゃらないということでございますが、しかし私の方は、これは今のやり方というのは余りにも異常である、平時にやるべきことじゃない、こういうふうに思うわけです。戦争の時代の国家財政の仕組みを、そういうやり方を持ち込むべきでないということを申し上げておきたいと思います。  さて、国の財政として考えるときには、一般会計での国債依存だけじゃなくて、政府保証債、貸付金、資金運用部資金などで経営されている事業団の債務などについても見ておかなければなりませんが、そのうち今国鉄関係の事業団の債務残高は幾らになりますか。
  63. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 国鉄清算事業団の持っている長期債務等、総額二十五兆六千億でございます。
  64. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 新幹線保有機構とか東日本、東海、西日本、貨物、その他関連で三十七兆二千億ぐらいの残高ですか。
  65. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) そのとおりでございます。
  66. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 これは一例として国鉄関係を今ちょっと挙げましたが、これらの三十七兆二千億の中のかなりの部分で償還不能が生じたときにどういう対応をされますか。
  67. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) この二十五兆六千億につきましては、それぞれ土地の売却をやっていくとか、あるいは株式の売却をやっていくとかいろいろな処理の方法考えておるわけでございまして、そういうものを時期を見ながら最終的な国民負担をどうするかということを今後決定していこう、そういう段取りになっているわけでございます。
  68. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 百五十八兆の国債の元利償還の問題がこれから出てまいりますが、今挙げました国鉄関連のほかにも空港公団その他莫大な債務残高に対応する元利償還という問題が今後出てくるわけです。このことに対して今のお話を伺っておっても、これからということでどうも見通しをお持ちじゃない、そういう感じがするんですが、いかがですか。
  69. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 国鉄清算事業団が抱えている長期債務等につきましては、閣議決定で今後の土地売却とかその他の売却収入を見て最終的にどうするかを決めていくということは明確に述べられているわけでございますが、先ほどその他空港公団の債務等とおっしゃいましたけれども、空港公団の債務等につきましては明確な償還のめどが立っておるわけでございます。  現在そういう意味で具体的に償還のめどが立っていないのはこの国鉄清算事業団債務、今国民負担になるものとして試算されておりますのは、この額ももちろん変動いたしますが、十三兆八千億ございますが、この額についての処分方法についてはこれからの検討課題ということになっておるわけでございます。空港公団等の債務とは全く性格を異にすることだけは申し上げておきたいと思います。
  70. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 私は、空港公団その他ということで、政府関係の事業団その他合わせますと随分これは一つ一つについて議論しなきゃいかぬ、よく精査しなきゃなりません。単純に言っている話じゃございませんから。しかし、その他合わせまして膨大な債務であるわけですね。それは成田にしても何にしても随分大変なわけでございまして、今の国鉄お話にもあるように、債務残高についてはこれからだということですが、百五十九兆の国債の元利償還にしても、またこれらの問題にいたしましても実際のところまだ見通しをお持ちじゃない。  そうした中で国債費の定率繰り入れ停止措置というのは昭和五十七年の補正以来七年連続ですね。NTT株売却益収入についてそれを全額基金に入れないで一部を無利子貸し付けに流用して、昭和六十二年度で四千五百八十億ですか、六十三年からの四年間で各一兆三千億の流用ということで、それでも売却益は約三兆六千億残るので、繰り入れ停止していても年度末基金残高は五兆円台が一応確保できるとしているわけですね。しかし、繰り入れ停止というのは結局将来の償還財源の先取りということになりますし、基金の枯渇を早め、そうして減債制度を事実上崩壊させる道になるわけですね。財政負担平準化財政膨張への間接的歯どめのこの役割にも大きな支障を来すという、そういうものになろうかと思うんですが、その将来の償還の見通しもあいまいならば、それに備えて少なくとも必要なこの減債基金の問題についてもこういう繰り入れ停止の措置、その他のやり方というのは余りにもそういう問題を生み出すものじゃないかと思うんですが、この点いかがですか。
  71. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 国債の問題につきましては、清算事業団債務の先ほど申しました十三兆八千億とは全く性格を異にすると考えております。  一つは、特例公債の残高につきまして、六十年償還というルールでやっているという問題は別にいたしますと、四条債については六十年でちゃんと償還をするという原則どおりきちんとやっておるわけでございます。  それから、定率繰り入れを停止しておりますのは、NTT株の売却収入があった等で、定率繰り入れを行わなくても十分に国債の六十年償還ルールでの償還が毎年きちんと行えるということでいわば停止しているわけでございまして、そういう意味で、国鉄の長期債務国債についての定率繰り入れの停止とは全く別の次元の話でございまして、私ども国債の償還につきましては減債制度を今までもきちんと守っておりますし、今後ともきちんと守っていくという所存であるわけでございます。
  72. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 あなたのお話を伺っておりますと、この国債残高がいかようにあろうとも、今は全く万々歳で、全く心配ないという、こういう話なんですよね。で、昭和六十五年度赤字国債発行がゼロ、これが財政再建の一里塚であると、あたかも深刻な財政危機が緩和されたような言い方をされるのは、私は非常にうまくないと思うんですよね。  それどころか、この財確法案のこういう定率繰り入れ停止その他のやり方というものは、今のお話ですともう万々歳という感じですが、何らめどが立たないどころか、ますますこの危機を先へ先へとツケを先送りするだけのことで、いよいよ深刻になるだけのものであって解決にならないと、私はこういうふうに思うんですが、最後に大臣、どうですか、この点。
  73. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、やはりこれだけの国債残高を抱えておるということは、毎度申し上げておりますとおり一般会計弾力性を非常に損なっておりますので、何とかやはり解決をしていきたいものだと考えておりますことはおっしゃるとおりでございまして、さしずめ新規発行というものをやめたいと。そこから始めたいと思っておりますが、なおその後、財政再建についてどういうふうに考えていくべきかは、いろいろな要素を勘案いたしまして真剣に検討しなければならないと考えております。
  74. 野末陳平

    ○野末陳平君 やがて到来するこの高齢化社会を支える財源としては、やはり行き着くところ間接税にしか頼らざるを得ないんじゃないかと。そういう点で、総論には賛成する人が多いと思うんですね。そこまではいいんですけれども、それならばいっそのこと、この新型間接税は福祉目的税にしてしまった方が受け入れられやすいといういろいろそういう話も聞いたり、そういう御主張も一部にあると思うんですが、大蔵当局としてはこの間接税を福祉目的税にしてしまうと、どういうところで問題が生じてくるのであろうか、その辺のところを少し説明してほしいと思います。
  75. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 現在取り組んでおりますところの税制改革は、税体系の中で所得、消費、資産、この均衡のとれた税制を構築するということでございますので、その中の一部のものを特定歳出に充てる、その歳出財源確保のためという見地とは現時点におきましては別のものとして考えてございますので、そうした福祉目的税的なとらえ方は現在はいたしておらないところでございます。  基本的には、やはり特定の使途、目的というものに特定の税を充てるということになりますと、政策の優先順位に従ってすべての歳出を組み立てていくという財政一般論としては、資源の適正な配分をゆがめ財政の硬直化を招くことになるのではないかということでどうも問題が多いというのが、これまでもたびたび申し上げているところではございますが、これまでの考え方でございます。
  76. 野末陳平

    ○野末陳平君 確かに財政立場からいえばそのとおりで、フリーハンドにしていた方がいいに決まっているでしょうけれども、しかしそれだって、これは単なる増税というような印象を当然与えるわけですね。今回は少なくとも増税にならないように配慮するという、大蔵大臣かねてからの主張がありますけれども、これは万一としても、今後税率を上げなきゃならないという事態がいずれ起きるかもしれないし、そういうときにもやはり福祉という目的がはっきりしていて、ここからの収入は福祉に重点的に使うんだということが明らかになっている場合と、漠然ととにかく増税だというのでは大分受け取る側も違うと思うんですね。もちろん税率をいずれ上げるとか、そういうことを言っているんじゃありませんで、導入する時点で、そもそも間接税から生じる収入はやはりこの福祉に使うんだからということを、はっきりさせておくということも非常に理解を求めるために必要な一つではないかと思うんですね。これをどういう形で打ち出すか別として、あくまでも今のように特定な目的などをはっきりさせないで、という考えにこだわるのは果たしてどうかという点で疑問を持つんですが、改めて今度は大臣にお聞きしたいんですが。
  77. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いろいろ深い御高察のもとに御質問であることはわかっておりますが、ただいま社会保障関係費というのは一般会計で十兆円をちょっと超えておると存じますが、福祉目的ということになりますと、さてその福祉のうちどの部分をいわばこの目的税が背負い、それでは足りない、十兆を超えるということでございますと、一般会計はさらにそれ以外にどういう部分を負担していくのかと、いわば野末委員のおっしゃっていらっしゃいますことを少し具体的に検討してまいりますと、これで全部をカバーするということでありますと問題がないかもしれませんが、そうでございませんだけに、どの部分を将来に向かってどういうふうにカバーするのかということを少し詰めてまいらないとならないという問題がございます。  それからまた、これは毎々申し上げますとおり、私どもの将来に向かっての長期経済計画がないということ、あるいは福祉についての、したがいまして政府が有権的にいたします計算がないということに関係するのでありますが、将来国民がどれぐらいの給付を望んでおられるかによって負担というものは決まっていくと思うのでございますが、その辺についての政策が決定されておりません。そうして、恐らくは負担は税及び社会保険料ということになろうと思うんでございますけれども、その割合というものもしたがって決まっておりませんので、保険料の形で負担をした方がいいと考えられる国民もかなりおられるでございましょうし、そういうことについても実は決まったものがございませんものですから、御質問の示唆しておられるところは私ども十分わかりつつ、現実の問題としてなかなかそういう政策決定に至りがたいと、一般に目的税に伴いますいろいろな問題がありますことは政府委員が申し上げたとおりでございますが、そのような問題がございます。
  78. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、福祉と僕は簡単に言っていますけれども、非常に中身は複雑で、また福祉のどの部分にこの間接税を充てるかということはやはり非常に難しいところですけれども、いずれにしても今後福祉面の財政需要がどのぐらいになっていくかということは、先ほどの国民負担率も含めてやはりある程度の二十年、三十年先までの計画が出てきて、それとあわせながらこの間接税も考えていかないとならないんじゃないかなと思っているんですね。初期の売上税のころはもう確実に高齢化社会を支える財源というような面が強く出ていたように思うし、このごろは所得資産、消費のバランスのとれたようにというのでちょっとそちらの説明も変わってきていますけれども、いずれにしても福祉にお金がかかるという点ではかなり国民の理解はもう行き届いている。  となると、やはりどういうふうにお金がかかるかというところをはっきり説明するのももう今チャンスだろうと思う。その場合に、大臣おっしゃるように税で負担するか保険料で負担するかという問題も出てくるでしょうから、ひとつ今後福祉の面でどういうふうにお金がかかっていくかという、その辺ももう少し議論をしていく、あるいは大蔵省国民に説明をしたらどうかなと。  というのは、そちらから発行されるいろんな資料を見てみますと、その部分の具体性がちょっと欠けているように思っていますので、それを注文のような形でお願いしておきたいと思います。  終わります。
  79. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  80. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  本日、福田幸弘君が委員辞任され、その補欠として野沢太三君が選任されました。     ─────────────
  81. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 休憩前に引き続き、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  82. 志苫裕

    志苫裕君 どうも総理、御苦労さまでございます。審議中の法案からちょっとそれますが、国政上の大事な問題について、一、二まずお伺いをいたします。  まず、奥野発言問題ですが、国内外にわたってだんだんエスカレートをしていくことは大変遺憾なことでありますが、総理は奥野発言の何が問題になっているのだと認識なさっていますか。
  83. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私も私なりの情報収集と、それから私自身が各報道機関の報道ぶり等を一生懸命で読んでおるという事実——事実そうやっておるわけでございますが、で、私に限って申しますと、外遊から帰りまして、参議院本会議において御質問をいただいたというところから公式な発言を申し上げておるわけでございますが、私が政府全体としての考え方をまず申し述べまして、そこで、答弁に当たりましては、法律は文部省関係法律の趣旨説明の際でございましたものの、あえて当該大臣からお答えをいたします、こう申し上げたのは、奥野大臣も出席要求があって出席しておられたからそのように申し上げたわけであります。それに対して奥野大臣が、大筋を申しますと、前段において、私も政府考え方と同じ考え方の上に立っておりますと、そして後段、速記録等を精査した上で不適切なものがあれば適切な措置をとります、こういう趣旨の御発言でありました。そして、その中間にいわゆるライシャワー元大使の歴史上の分析に関する翻訳された著書の一部が引用された。で、本日、その時点から考えてみますと、いわばその部分が政府の述べております見解と離れたものではないかということが大きな論点になっておるではないか、このように認識をいたしております。
  84. 志苫裕

    志苫裕君 きのうの本会議での総理の答弁も慎重に伺いました。戦前の日本の行為が侵略であるという厳しい国際的批判を受けている事実を政府としては十分に認識する必要がある、まあ少し迂遠な言い回し方でありまして、あるいはこれを竹下流間接話法とでも言うのかもしれませんが、とりようによっては、総理御自身のあるいは政府自身の主体的な判断を避けているようにも受け取れるあいまいさは感じましたけれども、かつての戦争で日本に侵略の事実があったという認識は既に政府見解としては決まりがついておることなんでしょう。
  85. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私も先輩の皆さん方のこの問題についての発言を全部整理をいたしてみましたが、一番新しいところと申しましょうか、近いところで、一昨年九月十六日の衆議院本会議における中曽根総理大臣発言、この「太平洋戦争」云々「これはやるべからざる戦争であり間違った戦争である、」、中国に対しては「侵略的事実は否定することはできないと私は考えておる」という考え方が、基本的に私ども考えておる考え方だというふうに整理をしてみたわけでございます。
  86. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、今のお話であれば、日本に侵略の事実があったという認識は中曽根総理の口を通じて政府見解になった。  で、実は奥野発言の何が問題なんでしょうかということをお伺いしたんですが、いろいろ問題の認識の仕方もあろうと思いますが、かつて我が国の行為で被害を受けた国あるいは人々の痛みがまるっきりわかってないということがやっぱり基本にあるのだと思います。そしてまあ、国内あるいは政府、日本と区切る問題にするとすれば、今ほどの総理の御発言がありましたが、いわゆる奥野発言政府の見解と離れていたという点に総理はお触れになりましたけれども、これに関して言えば、日本政府の閣僚の一員であるにもかかわらずあえて侵略はなかったという政府見解に反する発言をしていることと、奥野氏が依然としてかつての戦争を日本の侵略ではなかったという認識を持ち続けていることはこれではっきりしましたが、しかし特に我々が議会として問題にするのは、彼は日本政府の閣僚の一員であるということになるわけでありまして、その閣僚の一員が、いわばかつて我が国の行為で被害を受けた国の人々の痛みがわからない、このいわば国際感覚の欠如ですね。あるいは人間性ひいては国務大臣としての適格性が問題になるわけでありまして、このことに長く時間は使いませんが、奥野氏を閣僚の一員に加えた竹下総理にもその責めは及ぶものというふうに我々は考えます。  そのことを踏まえて、総理は内閣の長として、責任者として的確な対応を行うべきだと考えますが、いかがですか。
  87. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指摘のとおり、閣僚の任免権、これは私にございます。したがいまして、奥野国務大臣を閣僚とし、そして国土庁を所管する国務大臣として適当であると考えたから私が任命をしたわけでございます。したがって、奥野国務大臣の行為につきましては私自身に責任があることであるというふうに、これも問題意識を整理をいたしております。  したがいまして、この問題、本日十二時半から本院の議院運営委員会内閣を代表して官房長官が出かけておりますので、どのような御質疑に対してどのように答えておるかということは、私も今、同時進行でございますので、内容は定かにわかりませんが、本会議で興野大臣が、少なくとも私と同席しました本会議場において、政府の見解と変わりはない、そして自分自身に不適切な言葉があれば適切な措置をとるということが言われておりますので、今はまさにその段階にあるというふうに私は考えております。
  88. 志苫裕

    志苫裕君 ともあれ、現実には政治の問題にもなっており、国際的な問題にもなっておることであって、国会は国会なりの対応をとるでありましょう。同時に、今総理自身が奥野氏を任命したのは私であるという発言に見られますように、総理がこのことに自分の責めを含めて深刻に考えておられることはよくわかりましたが、こういう問題が長々と、どんどんどんどんエスカレートするような形で続くことはまことに遺憾なことであって、早い決着を総理の責任においてつけるように、私は強く要望いたしておきます。  第二に、これもちょっとあれですが、総理はヨーロッパへ行かれてロンドンスピーチをなさいました。このロンドンスピーチにおいて、まあ竹下ドクトリンとでも言うんでしょうか、国際協力構想を示しまして、三つの分野に分けてお話があったようであります。このうち第一のカテゴリーに入りましたのが、「紛争解決のための外交努力への積極的参加、要員の派遣、資金協力などを含む、新たな「平和のための協力」の構想を確立し、国際平和の維持強化への貢献」を高めると述べておりますが、これはいかなる意味ですか。
  89. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる国際協力構想で、一、二、三といたしまして、第一は「平和のための協力強化」であります。  我が国は平和を国是としており、憲法上も軍事面の協力を行い得ないことは御承知のとおりであります。しかし、我が国が世界の平和について供手傍観すべきでないことは申すまでもありません。私は、我が国としては政治的及び道義的見地から、なし得る限りの協力を行うべきであると考えており、「紛争解決のための外交努力への積極的参加、要員の派遣、資金協力等を含む、新たな「平和のための協力」の構想を確立し、国際平和の維持強化への貢献を高めてまいります。」これが第一でございまして、そして文化交流と経済協力問題が二、三であるわけでございます。したがって、私がロンドンスピーチの中で「要員の派遣」という言葉を使いましたのは、地域紛争に係る国際的平和維持活動等に対する文民の派遣を念頭に置いたものでございます。  さらにもう一つ念頭にあったとすれば、ああしてアフガンの撤退ということが合意されたわけでございますから、そうなるとその後国連において、いろんな監視とかあるいは時にはサゼスチョンとか、そういう機構が稼働するであろう。そういう場合に、やはり日本もただ腕をこまねいておるだけではなく、文民の派遣ということも積極的な協力の一つになるではないかということが念頭にあったわけでございます。
  90. 志苫裕

    志苫裕君 この点について確認をしておきますが、いかなる意味においても自衛隊の派遣、要員としての協力というふうなものは我が国においてはあり得ないと確認してよろしいですね。
  91. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まさに、文民の派遣を念頭に置いたものであったということを重ねて確認の意味において申し上げます。
  92. 志苫裕

    志苫裕君 これに関連をして、ボンの記者会見で今後のアジア問題のテーマを挙げ、とりわけアキノ政権支持の問題に触れておられます。一方、実はレーガン・アメリカ大統領がフィリピンに対する多国間協力構想というふうなものを提唱しまして、フィリピン再開発援助計画というんだそうでありますが、百億ドルプランで、アメリカは銭がないから余り出さないが日本とドイツでよろしく頼むという、原資の面ではそういう内容にもなっておるようでありますし、アメリカは、間もなく到来するフィリピンとの基地協定というふうなものに苦慮をして、ある意味では戦略的な観点でフィリピンへの協力、援助というふうなものを考えている、あるいは肩がわりを日本に求めているという状況があるわけでありますが、とりわけアキノ政権支持の問題をボンでクローズアップさせたのは、そのような今私がいろいろ申し上げたことが念頭にあってのことでありますか。
  93. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは特に、今次訪欧において各国首脳との会談は友好的な雰囲気で終えられたが、今後トロント・サミットに向け総理の所見いかんという質問がございました。そこで経済問題等を申し述べまして、そして自分はアジアの立場というものも表明しなければなりません、トロント・サミットにおいてはアジアから唯一の参加国の責任者でありますがゆえに。  そこで、それに対しましてはオリンピック支援を含む朝鮮半島問題、ASEANなかんずくアキノ政権の問題、カンボジア問題ということを申し上げました際に、このASEAN首脳会議にお許し得て昨年の暮れ行かせていただきましたときに、ASEAN首脳会議の中でも話されました、いわゆるフィリピン政府国民が進めておる新たな国づくりへの努力を強力に支援していく、それはアキノ大統領のリーダーシップのもとで行われておるそのことである。そして多国間協力による対比援助、これは先般シグール国務次官補が訪日いたしました際に、米国としてはアキノ政権支持の強化のため、対比支援についての国際的努力の可能性につき検討中であるという話があったわけでございますが、まだその具体的な提案があっておるわけでもございませんし、政府も今日までもこのフィリピン援助問題は現実に行っておることでございますので、まだそういう具体的な提案というようなものを承ったわけではございません。
  94. 志苫裕

    志苫裕君 今ちょうど総理はいみじくもお触れになりましたが、シグールさんが日本にも来てあるいはドイツ等にも行っているんでしょうか、このレーガン構想、百億ドルプランというようなものについての根回しを行っておるという事実が一方にあるわけであって、そしてもう一方で総理が特にアキノ政権支持の問題を取り上げた、これはそれなりに脈絡のある出来事だ。私は一般論として、いわゆるODA一般にわたる問題あるいはフィリピンに対するこの自立努力に対する我が国の積極的な協力の問題、これをとやかく言っておるのではありません。しかし、今アメリカ・レーガン大統領が出しておられるフィリピン支援計画というふうなのは何分にも非常に戦略的な観点で生臭いわけでありますね。我が国のODAなりという開発協力の基本は、別に法律はありませんけれども、人道的観点、相互依存ということで、いささかも安保上の観点や戦略的な観点は、結果としては別としてありましても、しかし直接そのこと自体を目標とはしていないという一貫した政府の方針から見て、少し生臭過ぎるんじゃないかという感じがしたのでお伺いしたんですが、その点はいかがですか。
  95. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 恐らく先生は、フィリピンには米軍の基地もあるし、したがって戦略的意図というものが感じられるんじゃないかと、こういう背景でお尋ねがあったことだと思うんであります。が、我が国といたしましてのいわゆるフィリピン、対比支援というものは、おっしゃったようにあくまでもこれは民生安定ということを基調として、それが我が国だけでなくグループ的に広がっていくならばこれはそれなりに私は意義があることであろうと思っておりますが、基本的方針として民生安定ということであります。
  96. 志苫裕

    志苫裕君 実は午前中も大蔵大臣を相手にしてこれからの我が国財政にどのようなものが大きな歳出圧力となってくるだろうかという議論などを若干いたしまして、実はこの途上国累積債務問題ですね、あるいは広く言えば、国際的貢献の問題というふうなものが相当の歳出圧力となってくるだろうというふうな議論もしておったことでありまして、今のたまたまフィリピン援助計画というふうなものと、私ども財政のこれからを検討していろいろ議論したこととは密接に今かかわっておるわけです。そこでただしてみたところであります。  なお、これに関連して一つだけ申し上げておきますと、この間宇野外相が中国へおいでになりまして九百十五億円に上る円借款の供与を表明なさったいう記事を拝見しました。もちろんそこにそうなるには相手国政府とのさまざまなレベルでの話し合い、折衝が繰り返されてのことなんでしょうけれども、実は常々苦々しく思っておるのは総理や外務大臣などが特に途上国の旅先で得意気にODAの供与を約束する、仮にそこに外交ルートでのさまざまなレベルの折衝があってその成果を発表するものでありましょうが、それを供与する日本国の国民あるいはまたそれを受ける相手側の国民にとって非常に嫌な印象を受けるのは、成り上がりの金持ちがその辺に行って思いつきの金をまいてくるようなそういう非常に嫌な印象を受ける。本来ODAはそういうものであっちゃいけないんです。今国会とのかかわりはばかに薄いけれども、しかるべきレベルで供与する日本国民の側も自分の税金を出すのでありますから、それはそれでちゃんと承知をしておる。供与を受ける相手側の国民も、それにちゃんと参加をして自分の国の自立的発展に参画できるというふうな条件の整わないこういう手土産を配るようなやり方はいかがなものかということを、またしても感じたのですね。これはこれからもしばしば出てくる。  我が国のODAは今事業費ベースで一兆五千億円ですが、国際目標で〇・七%まで持っていきたい。できれば一%までということになれば防衛費をしのぐ額になってくればくるほど財政圧力も高まるわけだし、と同時に、今言ったそういう問題にもきめ細かい注意が要るというふうに考えるのですが、総理どうですか。
  97. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 気持ちが非常に共通するところがございます。  例えば一例を申し上げて、我が国のODA予算は百億ドルを超して、アメリカのそれを超して世界一位になりましたと、こういうことを仮に演説原稿の中で見ましても、それは素直にそういう表明をすべきこともございますが、所と場所によっては思い上がりというような印象を与えてはならぬという気持ちが私自身もいたします。  そうして確かに、今度はそれを供与する際の問題になりますと、私もかつてそれを下から積み上げていく担当におったこともございますけれども、やはり最終的にそれが合意し発表されるのは両国の責任者が集まった際だということになりますと、外交上のタイミングの問題としてそういう場所になるのかなと、それもあるいは外交上重要なことではないかなというふうには思いますが、少なくとも今お言葉をおかりすれば成り上がり者が出かけていって何の下からの積み上げもないものをそこのところの懐勘定で配って歩くというような印象は与えちゃいけないと私も思っておりますので、あくまでもそれは国会等においても予算審議の際あるいはこうした法案審議の際にいろんな議論をいただく中で可能な限り、それは最終的にフィージビリティースタディーをしたものがどこまで達するかという問題は別としても、そういうことを明らかにしながら、それは最終的な決着をつけるのは責任者同士でございましても、そういう印象を与えないことがむしろ私どもが心がけていかなきゃならないことだろう。私も同感でございます。
  98. 志苫裕

    志苫裕君 この問題は終わりにしますが、いずれにしても日本の国際的地位それなりに大きくなっているわけで、それにふさわしい国際的な責任も求められておるというようなことはよく理解をしておる。それだけに開発協力等についても積極的な対応をすべきですが、しかし、それは手づかみであっていいということを言っているんじゃないんでありまして、絶えず効果の検証も必要であります。  財政圧力となるがゆえに、これはありようも含めていずれまた改めて論議をしたいと思うんですが、しかし基本になるのは、いかなる意味においても軍事的側面あるいはハードな安全保障上の観点で取り上げるべきでないというのが我々の主張でもあり、また政府もそのような観点ではございませんと言っておるのですが、外務省いますかな。なぜODAが日米安保事務レベル協議で取り扱われるのですか。
  99. 英正道

    政府委員(英正道君) 一部の報道で、先般のハワイにおける日米の安保協議におきまして、経済協力問題が安保問題と並んで取り上げられたというふうに報ぜられておることからの御質問と思いますが、この協議はもちろん安全保障問題を協議するための協議でございまして、その際にいわゆるバードンシェアリング、負担の分け合いといいますか、そういう考えがアメリカの議会を初め国内で非常に強くなっている、そういう趣旨が米側の出席者から述べられた。その関連で先ほど総理からも御答弁ございましたけれども、平和国家としての日本の経済協力面での貢献というものが大事ですよというような話があって、そういう観点で話がたまたま経済協力に及んだということでございまして、経済協力の問題をこの協議の場で討議したということではございません。
  100. 志苫裕

    志苫裕君 そういうあなたがおっしゃるようなことを栗山外務審議官は述べたという記事もありますが、そうでしょうかね。いずれにしましても、安保協議の場で取り上げられるべき性格の問題ではないということは強く指摘をしておきます。  さて、財政問題、税制問題に入りますが、まず財政問題で一つだけ総理に伺いますが、実はこの委員会もきょうで三日目になるんですが、宮澤さん初め大蔵当局といろいろやりとりをしているうちに、どうやらここ一、二年の税金が思ったよりも伸びたので六十五年には特例公債発行はゼロにしたいという一つ財政目標は随分と実現可能性が強くなった。去年の今ごろとかおととしあたりの顔つきから見ると、大分ここに出ておられる大蔵大臣以下緩んではいるんですよね。  それはそれで結構なことだと思いますが、しかしそれほど甘いものでもないぞと、後ろにはオオカミのようなものがたくさん控えておるという厳しい議論もいたしましたが、いずれにしても一つ目標が実現をするとすれば、すぐにもう次の目標を立てて財政改革に取り組まぬといかぬということは当然のことなんで、それはどうなっておると言うんですが、あちらをうかがい、こちらをうかがいして、ちょっと何かあれば、減税に回せとか言うものだからなかなか用心深くてお答えにならないんですが、総理、大変結構なことに一つ目標はまず何とか達成できそうだ。しかし、これは財政目標のすべてではない。財政のありようからすると、まだとんでもない遠くの話です。だけれども一つ目標を踏まえるとすればすぐ次の目標を構想するということでなければ、これはやっぱり場当たりの財政運営のそしりは免れないということになるんですが、総理も大蔵大臣を長くやった方ですから、あなたは次の財政目標は何だというふうにお考えになりますか。
  101. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) にこにこしておるではないかということでございますが、そういうことを言われるようになったというのは御協力のたまものでございます。私がここへ出ましたころは、とても六十五年なし得るはずはないではないかというおしかりを受けておりました。その御鞭撻があったからこそここまで来たのかな、感謝にたえざるところであります。  さて次の目標は、申すまでもなく、まずはいわゆるこの赤字公債依存体質からの脱却が行われたら、今度は公債残高を減らしていくということをやはり考えていかなきゃならぬということを言い続けてまいりました。そのための手法として何が考えられるか。やっぱり従来どおりのいろいろな御鞭撻をいただきながら歳出の削減、あるいは整理合理化とでも申しますか、そうしたことも考えなきゃならぬでございましょうし、そうしてまた安定的財源というものも考えなきゃいかぬだろう。そういうことによって、国民に対するサービスの質を落とさないながら、後世代にツケ回しになる累積債務を減していく努力というのが次の目標ではないかなと思っております。
  102. 志苫裕

    志苫裕君 ただ、随分経済も複雑多様になってますから、一本調子で残高を減らす、少しでも余格が出たら削れるところはみんな削って一切残高減らしに回るというだけでいいかどうかになりますと、これはやっぱりそれで議論があると思います。が、大蔵大臣の答弁も、何だか知らぬが何兆円だか税収が仮に上がったとすると全部借金返しに回したいというようなことを言っておりますが、こっち使ってくれということだってあるわけでして、減税に回したらどうという意見等もあるわけで、これはやっぱり総合的にもう少し多面的な財政目標というようなものが樹立されてもいいんじゃないか。残高減るだけでいいかと言ってきのう参考人の先生方に聞いたら、この世の中から国債残高がなくなると困りますという話もありましたからね。百兆円も十兆円もぐるぐる回っていまして、それはそれなり経済的な効用を果たしているんです、資産形成に回っているんだからなくなったら困ります、銀行がパンクしますという話が出ないわけでもないんですよね。そういう意味では、もう少し慎重に多面的な検討を急いで、早く財政目標を設定してもらいたいということも総理に要望しておきまして、税金問題に入ります。  政府税調が中間答申を出しまして、私は率直に言って、新聞論調もありましたが、たたき台としての素案を出して、まだ人がたたいてもおらぬうちに一カ月目にもう中間答申。大体中間というのは中途半端でありまして、ちっとも結論は書いてないと言うんだけれども、マスコミの論調等によるというと、政府が急いでおるので政治日程に合わしたもののようだというのが専らの観測ですよね。で、総理も旅先でお話しになったり、また、帰ってこられてにわかに与党自民党の税調の作業が慌ただしくなったりして、今後の日程も早まったり遅まったりする感じを受けるんですが、改めて総理の口から、野党三党と与党で合意している六十三年度減税も含めて、いわゆる与党筋の言う、政府の言う抜本改革のこれからの日程なり手続というふうなものをあらましお話しいただけますか。
  103. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 政府税調というのは内閣総理大臣の諮問機関でございますので、しかし現実には大蔵省、自治省それぞれが具体的に詰めていただいておるところでございますが、あらましという形容詞もついておりましたので、あらましで申し上げますならば、そもそも本当はあるべき税制の姿というものを諮問申し上げておりますので、こっちからいつまでにという期限をつけるものじゃないという考え方の上に立っておるわけでございます。そこでいろいろな資料要求等に対して説明しますから、税調の先生方もおよそこれぐらいなところで中間答申を出して、さらに小委員会でも詰めていくかというようなことも、こちらから要請するのではなく、自主的に運んでいただいておるというのがまさに現実の姿でございます。  そういたしますと、これに基づいてやっぱり法律を出すか出さぬかという話があろうかと思うのであります。これにつきましても、私ども二つの点において神経を使っておりますが、一つは、期限をつけたものではないから、早目に出てくればそれに基づいて作業をして可能な限り早く出さなければならないという意味において、いわゆる議院運営委員会に説明します提出予定法案の中で検討中のものという中に入れて、今日まだその中に入っておるわけでございます。それから、だんだん、今志苫さんおっしゃるように、この手順からいってあるいはこの国会に間に合わないじゃないか、こういう懸念といいますか、そういう御質疑も伺うことが時にございますが、しかし一方で、もう一つはいわゆる国会の中において各党間の話し合いにおいての政策担当者会議というものが存在しておって、そして会期中に結論が出るよう努力するというお約束がある限りにおいては、やはりそれを受けて立つだけの姿勢は持っていなきゃならぬということからいたしまして、検討中のものということに今日依然として法律そのものはあるわけでございます。  したがって、やはり私の方からいついつということを申し上げる立場にはございませんだけに、国会でも随分税の議論をちょうだいしておりますので、各方面の議論を聞きながら、それこそ最も適当な時期に可能な限り与野党の皆さん方の納得を得て、賛成していただいてという意味ではございませんが、合意の上で法律案が提示できるようにしたいものだというふうに思っておるところでございます。
  104. 志苫裕

    志苫裕君 あなたは言語明瞭、意味不明とおっしゃるが、今のところはわからないね、何分かお話しになったけれども、まるっきり意味不明で。与野党の合意を得てというか、得ぬでもいいんですが、出したいと。私が聞いているのは、手続はいつにすると答弁になりましたが、そうすると、日程としては今のところ結局総理自身にもないわけですか。
  105. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私の願望が皆無であるとは申しませんけれども、やはりいついつまでにという期限を付さないでお願いしたという立場にある限りにおいては、願望も予見の中へ入っちゃいけませんので、意味不明なところがまた意味がよくわかっちゃよくないわけでございます。
  106. 志苫裕

    志苫裕君 総理、期限をつけないで、いいことを考えてくださいよとお願いをしたのは、一つ政府税調ですよね。政府税調の方は、中間とはいえ、こんなことでいかがでしょうと言うて返事をしたわけです。返事を見たら、選択肢が幾つもあって大事なところは数字がなくて、えたいのしれぬ答申、税調からの返事だったでしょう。これは中間ですから、また何かいろいろごちゃごちゃあって政府税調の方が最終と、結論これですというふうな作業手順にまさかなるのではないんでしょう。これは大蔵当局でいいですが、そこのところは、何かちょっと今の返事を聞いているうちにわからなくなっちゃった。自民党税調にも返事——これは向こうで諮問しているわけじゃないんだから、あなたの言う、期限をつけないでお願いしたというのはどこの話ですか。税調は返事をしたじゃないですか。
  107. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いつまでにという期限は付さないで、例えば六十三年度税制のあり方とか、六十二年度税制のあり方とかいうときにはおのずから期限が予算編成までにつくわけでございますが、それこそ所得、消費、資産、バランスのとれたあるべき姿というのは期限は付していないわけでございます。  したがって、今中問答申をいただいて、さらに小委員会等でいろいろ御議論いただけるということになっておりますが、いま一つ自由民主党税調というのがあることも、これは事実でございます。これは政党内閣で、政府、与党一体の立場からこれが大いに機能しなければならぬことであると思っておりますが、自由民主党税調というのはやはり政府税調の進みぐあいというものも十分念頭に置き、一方、やっぱりちょっと今睡眠——睡眠ではございませんが、休眠でございましょうか、各党の税制協議会というのも、あれ死滅してはおりませんし、ちょっとお休みになっておるという感じでございましょうか。それから一方、ホットな問題ではありますけれども、いわゆる六十三年度減税問題についての実務者会談も行われておる、そういうこともこれは自民党の税制調査会ですから、当然念頭に置きながら作業を進めてくれておるというふうに思っております。
  108. 志苫裕

    志苫裕君 あっちこっちでいろんなことをしておるのでちょっとはっきり言えぬという返事のようです。それはそれ以上言っても始まらぬのですが、いずれ税制問題は政府が言い出す言い出さぬにかかわらず、我々も真剣に、今の税制がいいわけじゃないんで、議論しなければならぬし、また政府が少し無理なことをして法案でもまとめて、来れば来たなりにじっくり審議を詰めなければならぬ問題ですから、そう多くはきょうのところ触れません。  総理、皮肉な現象ですけれども、売上税騒動があって、国民の税に対する関心が大変高められました。ですから、例えば政府なり大蔵サイドが新型間接税を導入するための方策とはいえ、不公平税制というものを税制改革の前面に押し出したわけでしょうし、また、税調の中間答申が税に対する国民の信頼回復というふうなことをうたい込んだんだろうし、そういうふうなものの背景にはやっぱり国民の税に対する関心の高まりがあるというふうに見るのが普通だと思うんです。  こういう背景に加えて、総理もどこかでお述べになっている、国会の答弁でしたかね。今までは税制論議をするといつでも財政事情がくっついておって、税プロパーの議論がしにくかった、幸い今は税本来の論議をできる環境だというお話もあったりしました。ですから、私どももこういう機会に税本来の理念を問うとか、あるいは積年にわたる税制のゆがみを根本的にただすとか、国民的合意を形成したいものだという念願を持っておりまして、これは何も大蔵当局だけの専売特許でも何でもない、みんなの悲願。こういう悲願のようなものを共通項にしていろんなところで議論したりけんかしたり研究したり努力したりしているうちに、私の見るところでは所得課税における負担の公平確保であるとか、あるいは資産課税の適正化であるとか、あるいは法人課税ベースの見直し等も含めて合理的な法人課税のありようとか、そういうふうな課題についてはまだまだ細部が大分違っていますが、大まかに言葉のうたい文句から言う限りでは、大分合意点が出てきているんじゃないかと思うんです。合意点が出てきているんじゃないかと。  ですから、これに加えて総理みずからが国民各界各層、あるいは政党などの代表と直接話してみるとか、あるいは生臭い連中を抜いて、本当に学者のレベルで税のありようを学問的に詰めるとかというような作業を若干補足するとかというふうにしていくと、およそそんなに時間をかけないで合意点が出そうだ。長い論争を重ねた税制改革の大命題はまずは一つステップは踏めそうだ。ただ一つ障害になるのは、消費一般ににわかに負担を求めるという間接税改革は、間接税の問題にもいろいろアンバランスがあったり、だれでもこれが合理性があるとは思っていません。それはそれであるが、じゃにわかに消費一般に課税するのが最良なりやとなると、まだ少し合意を形成するには時間がかかるというふうな状況というのが今の税に対する大まかな状況じゃないんでしょうか。そうすれば、ここへきて選ぶ道はそんなに面倒じゃない。十のうち十やらなければ税制改革の意義が失われるというものでもないというふうな発想方法に立てるとすれば、これから夏から秋は静かになるという感じもするんですが、いかがですか。
  109. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 前段としての御意見、国民的合意のある種の環境は整いつつあるではないかというような点は私もほぼ認識を同じくしておるなと。後段のところで、消費一般にかかる税制そのものが、まさに昭和五十三年以来十年間議論されてきてこれが国会の場ではもう詰まるところまで詰まっておるんじゃないか、そこのところの認識がちょっと差があるだけで、そしてただ国民次元ではどうかということについては、今志苫さんのおっしゃった国会の議論よりは少し後追いという感じではあろうかと思いますが、売上税問題に関する反省も私どもにもあろうかと思うのでございますけれども、やはりそういう環境の成熟の度合いとでも申しますか、それはかなりのところまできておるではないかというふうに私は見ております。
  110. 志苫裕

    志苫裕君 あなた、前段の私の言い分に合意したら、後段も大体そういうことに合意するのが論理的なんですが。これは私ども前々からの主張で、我々も税制改革に熱心なんです、これは。長い間にこれだけゆがんでしまって、ゆがんだというのもひとりでゆがんだんじゃないです。たび重なる税制改正のときに、政府与党が支持基盤の声の大きい方にいつでも配慮をして、そのときはそのときなりの合理性があったんでしょうが、税制改正をする。それは時間を過ぎれば不合理に転化をする、邪魔になる、不公平になる。だけどもそれは、既得権としてもう改正できないというふうなのが不公平税制の歴史でしょう。今度だって、何だかいろいろ自民党、特に与党の税調の方はさまざまな利害関係者を呼んで聞いているように、利害関係者を呼べば、ほかのところをこれ取ってくれ、おれのところから取るなと言うのは当たり前でありまして、これは、冗談話じゃないけれども皆さんの意見を聞いて、出た答えは一般消費税導入、ただし全部非課税というなら、これならまとまるでしょうな。そういうふうなものなんでしょうが、あれでしょうね、きっと私は、与党が利害関係者の調整ばかりしてないで、もう少し今やるべき作業と第二段を踏むべき作業というようなものを考えたら、本当に国民的合意のあるものができるのになということだけは強く感じておるのでこの際主張しておいて、いずれ本格的に論議をする前に一つ二つだけこれは総理の見解。  総理、私は去年来この委員会で今度の税制改革、政府のですね、基本的な考え方の中に、所得が全体として上がって上下が縮まった、所得平準化が進んだ、だから今までのように金持ちから余計取って金の少ない者から少なく取るというふうな累進税、いわゆる応能負担原則よりもみんなから平らに取る、所得が平らになったんだからみんな平らに取るというこういう税理念の転換がある。果たしてそれが正当かということをよくいろいろやってきました。仮に所得平準化が進んだとすれば、それは応能負担原則をとった我が国税制の成果なのであって、そのようにして均質化、平準化されたというのは日本社会の活力だと、これは税制の成果と言っていい。それがまことに気に食わぬ、それがまことにけしからぬ、活力を失って、もう一遍上下の差をつけろというふうに税制理念を転換することに、実は消費税で幾ら税金がかかるということによる懸念よりも、そのような税理念の転換に対して国民は危惧を持っていたと思うんですよ。ところが総理は、これはある新聞の記事ですからわかりませんが、これを読む限り、税制改革の骨組みになっているのは、今の社会が上下くっつき過ぎたからここを開く、それが税制改革の目的だと、念願だと、このように述べておられるようですが、総理は、今度の税制改革の理念は日本における階層格差、所得格差を拡大させることに目的があるんですか。
  111. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私もそのようなことを申し上げた事実はございませんが、要するに諸外国に比し、いわゆる志苫さんおわかりの第一分位、第五分位の格差というのが二・九倍と他の国と随分その開きは少なくなっておりますと、このように平準化した今日、この広く薄いということを消費の段階においてお願いする、あるいは納税者の方から消費の段階でこの義務を果たそうというようなことは好ましいことであるというふうに申し述べた事実はあるわけでございます。  したがって、やっぱりシャウプ勧告以来ずっと経緯を見てみますと、確かにおっしゃったような応能主義における所得税中心主義であり、そしていわば申告総合所得を中心に打ち立てられた税制というものがいろんな経済社会の推移に基づいて、あるいは御指摘なさった租税特別措置等が既得権になった点もそれはあろうかと思います、そういう問題でゆがみひずみが生じてきた。そこで、こういう事態になったときにあるべき税制やいかにと、こういう議論を今日までしていただいておるわけであります。  したがって、私も先般ヨーロッパ三カ国でございますけれども、バチカンは別といたしまして三カ国でございますが、むしろ私は、あのヨーロッパの考え方の中に我々もやっぱり参考に、いい意味においても悪い意味においても参考にしなきゃならぬなという感じも持つわけであります。すなわち、やっぱり何といいますか、平易な言葉で言えば努力と報酬の一致とでも申しますか、そうい,うことは一つの活力につながるものであるという概念が浸透して、この所得税と消費税とのバランスがずっと変わってきて、それが余り変わり過ぎちゃならぬなという感じも率直に私は持っておりますが、努力と報酬の一致という簡単な言葉ですが、それらもやはり活力の一つではあろうというふうに思っておりますが、基本的にこのせっかく生じてまいりました、それは昭和二十年代、三十年代は酒、たばこで三分の一とか二〇%の税金をいただくような時代、すなわちまだ応能主義の「能」が不足しておる時代でございますから、そのときの形にまで返すべきだとかどうとか、そんな議論をしようとは思っておりませんけれども、そういういわば所得の再配分機能をやはり果たしておるということは私も原則としては認めております。
  112. 志苫裕

    志苫裕君 最後にしますが、これからいろいろあるでしょう。総理がちょっとどこか訪欧中の記者団に述べたのがちょこっと載ってましたな。政府がいろんなこのような状況を収れんをして国会に法案を出すというのは通常の状態です。だけれども、まさに四十年ぶりの税制改革をこれだけの国民的関心の中でやるという場合、政府は通常の方式にこだわらないで、政府もまたたたき台となる大綱を出してみる、そしていろいろな意見を聞いて素直に直すものがあったら直して法案とするという手法を採用する用意はありませんか。
  113. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やっぱり原則的に言えば、一生懸命でつくり上げたものを出して御議論をいただくということがあるいはノーマルな姿かもしれませんが、私の考え方の中に、本当は各党の税制協議会というようなものが継続しておるであろうという前提のもとに、大綱みたいなところからたたき台で議論してもらったらいかがなものかなという気持ちを持っておったことは事実でございます。今でもないわけじゃございませんが、ちょっと休眠状態にあるものですから、今お控え申し上げておるというところでございます。     ─────────────
  114. 村上正邦

    委員長村上正邦君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、山岡賢次君が委員辞任され、その補欠として宮崎秀樹君が選任されました。     ─────────────
  115. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、初めに奥野国務大臣の一連の発言問題について竹下総理に質問いたします。  奥野国務大臣の一連の発言、すなわち中国に対する侵略という意図がなかったとか、あるいは盧溝橋事件は偶発的な事情に始まったとか、あるいは中国に対する不拡大方針をとったとか、こういう一連の発言は、中曽根総理の三年前の中国に対して侵略の事実もあった、また二年前の侵略的事実は否定することができないという国会答弁、あるいは竹下総理の昨日の参議院本会議における国会答弁等と明らかにこれは違っている、矛盾しているのでございます。すなわち私は、閣内不統一であると、このように思います。  しかもこの奥野発言は、日中両国の共同宣言や平和友好条約の趣旨あるいは国会決議にも反する重大問題だと思います。そういう意味で、中国や韓国からの大変な批判がございます。  私は、総理が奥野国務大臣を任命した責任者といたしまして奥野国務大臣を罷免すべきである、このように要求いたします。いかがですか。
  116. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 先般の本院における本会議におきまして、私が今多田さんのお述べになりました戦争に対する認識等について申し述べました際、当該大臣として奥野大臣が出席をしておりまして、私も基本的にその認識には変わりありませんと、しかしながら、事実関係を精査の上でございましたか、不適切なものがあればこれに対して適切な対応をいたしますと、こう答えております。したがって、私は基本認識そのものに変わりがあるというふうには思っておりません。
  117. 多田省吾

    ○多田省吾君 奥野国務大臣発言はますますエスカレートしているわけです。そして、明らかに私は総理あるいは前中曽根総理等の意見とも違っていると思う。先ほど十二時半から衆議院の議院運営委員会も開かれているそうでございますが、その席上、官房長官は、内閣不統一ではないというような答弁を繰り返しているそうでございます。また、ただいまは総理も相違はないと言っている。じゃ奥野国務大臣が言っていることを全部内閣は認めるのか。どうですか。
  118. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これだけのいろいろな反響を呼んでおるわけでございますから、それがそのような反響を呼ぶように伝えられたことに対しては、これは外遊前でございましたが、遺憾の意を表しておるわけでございます。  発言一つ一つのこと、私も一生懸命読んでみてはおりますが、中に前後の脈絡を欠いた発言もあるなという感じは持っております。
  119. 多田省吾

    ○多田省吾君 奥野国務大臣は全然まだ撤回してないんですよ。遺憾だと言いながら、その後も衆議院の決算委員会や参議院本会議で、また侵略的な意図はなかったというような発言を繰り返しているんですよ。明らかに内閣不統一ではありませんか。不統一でないとすれば、総理はこれを認めたことになります。また、総理、この前宇野外務大臣が中国に行かれた際、不快感の表明もあったと聞いておりますが、そういった報告も受けておられるのか、あわせてお伺いします。
  120. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず私は、重ねて申し上げるようでございますが、前後の脈絡の中で私自身もその部分だけ取り上げて報道された場合は誤解を招くことになったであろうという面がないわけでもございませんが、最終的にはやはり先般の——一番最後が本院における本会議の場合でございますから、奥野大臣から不適切な言動があった場合は適切な対応をいたしますということにおいて、おおむね整理されてきたんではないかというふうに思っておるところでございます。  それから、宇野外務大臣が中国へ参りました際に、銭外務部長官でございますか、からのお話があったことなどは私も報告を受けております。
  121. 多田省吾

    ○多田省吾君 奥野国務大臣衆議院決算委員会発言、昨日の参議院本会議の発言等はマスコミによってもほぼ一字一句違わないような状況で報道されているんですよ。ですから、一部分だけ取り上げてということは当たりません。また、前後の脈絡で何だかおかしいところがあるような発言もありましたけれども、それも含めて奥野国務大臣は全然まだ言葉を撤回してないんですよ。前々回の本会議で遺憾だと言いながら、また二回も決算委員会やあるいは本会議でこういった侵略的意図がなかったというようなことを表明しているんですよ。はっきりしているじゃありませんか。その上で不統一がないと言うのならば、総理みずから奥野発言を認めたことになります。どうですか。
  122. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 一番最後の場面は昨日の参議院本会議でございます。そうすると、今多田先生御指摘なさったのは、前段、政府の方針と変わりありません、後段、不適切なものがあれば適切な対応をいたしますと。恐らく真ん中のところのライシャワー元大使の論文を援用されたところの部分についておっしゃっておるのではなかろうかというふうに思います。私も読み直してみました、おととし出たものでございますけれども。昨晩読み直してみましたが、前後の脈絡からすると、あるいはその部分だけ取り出しての発言というものについては誤解を招くおそれがあるいはあるのかな。こういう印象でございますが、奥野大臣自身が不適切な表現等があればこれに適正に対応する、こう言っておりますので、それらについて恐らくいろいろな措置といいますか、適切な措置というようなものを考えておられるのかな、こういうふうに思っておるところでございます。
  123. 多田省吾

    ○多田省吾君 私も「ジャパン」という本をもう七、八年前に求めておりましたので、そのところあるいは前後を読んでみました。総理もおっしゃるように、本当に誤解させます。事変だと言い、また偶発的な事情で始まったと言い、またその前の侵略的な意図がなかったということを全部引っくるめますと、もう中国に対する侵略はなかったというふうに受け取らざるを得ない表現になっているわけですが、そういう意味政府の方針に従うと言いながら、その後でまた事変であると言い、また偶発的な事情に始まったと言う、そういう発言をしているわけでございます。また、前回も今回も全然言葉の撤回はしていない。そういった事実を踏まえて、私は総理からきちっと奥野大臣に対する処置を、また場合によっては罷免もやっていただきたい。強く要求いたします。  中国に対して二千万人以上の生命と財産を奪った大変な我が国の侵略戦争でございます。その痛みを考えれば、こんな奥野発言があり得るはずはありません。私は、日本政府の閣僚の一員としてまことに大変な暴言だと思いますし、総理大臣として的確に厳しく処置すべきである、このことを強く要求するものでございます。いかがですか。
  124. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 先ほども申し上げましたように、国務大臣の任命権者は内閣総理大臣たる私でございます。したがって、奥野大臣自身が適切な対応ということを本会議で話されておるわけでもございますので、私自身も考え方を聞いてみなければならないというふうに思っておるところでございます。御指摘の御趣旨は私自身が受けとめさせていただきます。
  125. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に私は、総理府汚職について質問いたします。  政府広報を請け負う広告代理店選定などに絡みまして、総理府大臣官房の前管理室長橋本哲曙が業者から約二百三十万円のわいろを受け取っていたことがわかりまして、東京地検特捜部は昨日午前橋本を収賄容疑で、また広告代理店社長二人を贈賄容疑でそれぞれ逮捕をし、また大阪市内の広告代理店の前社長も贈賄容疑で昨晩逮捕したわけでございます。  それで、総理府の広報予算は、御存じのように、昭和五十九年度は百三十三億五千万、六十年度は百二十億四千九百万、六十一年度は百十七億四百万、六十二年度は百十五億六千四百万とだんだんやはり引き締めに伴って削減されてきたのに、もう六十三年度急にふえまして百十八億二千七百万円と増加しております。このことに関しましては、総理府の広報予算につきまして、公明党・国民会議の草川昭三代議士が、九日の衆議院決算委員会でこの予算の規模が非常に大きい、不正運用の内容、管理体制の強化をせよと主張いたしまして、総理府側も適正運用を約束していた矢先でございました。国民税金をもとにした汚職でございますから、大変私は悪質だと思います。また、総理府だけではなしに、他省庁の予算も含めますと、六 十三年度予算でほぼ二百三十五億円という膨大な政府広報予算がつけられております。こういったことにかんがみまして、再発防止、また予算が多過ぎるのじゃないか、これに関しましての総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  126. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今回の事態はまことに遺憾、かつ確かに残念なことでございます。事実関係は司直の手にゆだねられておりますので、その結果を見守るということになろうかと思っております。いわば内閣官房におきまして、事務担当の石原官房副長官等が立案いたしまして、そういうものの、言葉はあるいは間違っておるかもしれませんが、監視体制のようなものを早速発足させるというきのう報告を受けたばかりでございます。  そこで、もう一つの御疑念の広報予算、これが多きに過ぎるではないか、簡単に言うとそういうことでございますが、政府の重要施策に関して、その背景、必要性、内容を国民にわかりやすく伝えていく。これだけ経済的にも変動のあるときでございますので、広報活動そのものは大変に重要なことになっておるわけでございます。  特に、予算総額百五十八億円で、省庁別に見ますと、総理本府が百十八億円とその大宗を占めておりますので、その監視、執行に当たって厳正を期するための体制等を早速とることによって、国民の不信をぬぐい去らなければならないというふうに考えております。
  127. 多田省吾

    ○多田省吾君 再発防止は総理としてきちんとしていただきたいとともに、マイナスシーリングによって福祉予算とか文教予算とか圧縮されているのに、総理府の広報予算は百十五億から今年百十八億二千七百万円と、三%近くぐんと三億円も増額されているということは、私は納得できません。この問題もやはり対処していただきたいと思いますが、いかがですか。
  128. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 総理府の広報費予算につきましては、従来財政再建の路線というようなことで、実はずっと減り続けております。それは先生が御指摘のとおりになっておるわけでございますが、今年度につきましては、そういう従来の傾向からまだもとの水準には戻りませんけれども政府広報の重要性ということで、これはいろいろな個別の積み上げを背景に持っているわけでございますが、三億程度の増額をいたしたわけでございます。
  129. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私も詳しくわかりませんでしたが、今主計局次長から、要するに、私がお世話になっております時代にどんどん減らしたものが少し返ったということでございます。
  130. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、福祉、文教予算なんかはマイナスシーリングでどんどん減らしておるのに、また圧縮している、また横ばいだというのに、広報予算だけは急にふやしたことは、私は納得いきません。  それでは、次に御質問したいのは、総理が訪欧しておる間に、佐藤農林水産大臣が二回目の訪米をされたが、牛肉、オレンジ問題が御存じのように不調に終わった。大変残念なことでございますが、総理はこの牛肉、オレンジ自由化問題の決着をどうなさろうとするのか、農水大臣に任せきりなのか、総理が乗り出されるのか、その時期はいつごろなのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  131. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) おっしゃるとおり、日米間の牛肉、かんきつ交渉につきましては、佐藤農林大臣がぎりぎりの努力を行ってまいりましたが、残念ながら米側の理解を得るに至らなかった、こういうことになりました。それと同時に、五月四日のガット理事会においてパネル設置が決定された。  これからどういう具体的な対応をするかということにつきましては、昨日も政府・与党首脳会議を開きました。とにかくパネル設置が決定しても、なおやはり我々は農民の立場考え、そして国際的立場にも考慮をしながらこれが妥結のために努力をしなきゃならぬが、ここ一、二日といいますか、今週いっぱいぐらいなつもりでございましたが、いろんな情報等をお互いがその立場立場で寄せ合いながらさらにまた対応策を考えよう、こういうことで終わったわけでございます。  したがって、政府、与党一体ということを申しておりますので、私が出かける出かけないという問題よりも、一体の中で最高責任者たる農林水産大臣がまさにそれに対応するそのつかさにおるわけでございますから、そのもとで解決を図りたい、このように考えております。
  132. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、予算案提出の問題で総理に御質問いたします。  御存じのように、これは参議院の運営にも大変関係の深い問題でございまして、もう大正六年以来、財政法によって本当は前年十二月までに予算案を出さなければならないのに、いつも年を越してしまいます。そのために参議院審議がいつも会期末になるとせっぱ詰まって大変な姿になってしまいます。参議院改革の意味からも、一月に国会召集をしたらどうかということを衆議院に申し入れたこともございます。しかし、憲法第五十二条によって国会の常会は年一回これを開くんだということで、非常に憲法上の問題もございます。ですから、衆議院も当然断ってきたわけですが、やはりこれは従来の線に返って、財政法の精神で十二月までにきちっと国会に予算案を提示するのが当然だと思います。  それから、今後週休二日制とかあるいは土曜閉庁ということになりますと、ますます審議がおくれて、参議院の審議が、会期末になると法案が何十本も押し寄せて、本当にまともな冷静な審議が到底できないという姿になってくるじゃありませんか。こういった意味からも、私も先ほど大蔵大臣やあるいはまた大蔵省にもお願いしたのでございますけれども、いろいろ作業が大変だとか経済見通しがどうのこうの、こういうことでなかなか前向きに、積極的にいっていないようでございます。  竹下総理は、たしか四月十八日ごろ、記者団との懇談におきまして知恵を出してみたいとおっしゃったそうでございますが、どういう知恵を出されたのか、またどういう指示を大蔵省になさっているのかお伺いしたいと思います。
  133. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 恐らく憲法で、年一回常会は召集する、国会法でございましたか、十二月に召集する、それから財政法では、予算は十二月に提出するを常例とするでございましたか、そういう言葉があったと思っております。しかしながら、現実はそれが行われていないじゃないかと、そのとおりでございます。  だから、古くて新しい議論であり、新しくて古い議論だというふうにも言えるわけでございますが、幸い、私が聞きかじったところでは、本院の議院運営委員会で御勉強いただいて、そこで本当は、一回召集をいたしまして、そして今度は法律を通して、そのことによって新しく一月召集というものに変わっていって、憲法違反のこの批判を避けながら法律改正をしていく技術もあるというように私も承っております。したがって、財政法どおりに十二月に出す出さぬの議論になりますと、それは確かに先ほどおっしゃいました十二月に議了するということになると一月の年度区分——年度区分が変わっていく議論はちょっとまた別問題でございます。まだそこまで詰めた議論は私自身したことがございませんが、あの参議院で御議論いただいたような議論が、たしか衆議院もこれで勉強しろというふうなサゼスチョンをちょうだいしておるというふうに私も理解しておりますので、この間のように、暫定予算等でいろいろ、これも毎年議論することでございますけれども議論をしてお互いがうんちくを傾け合う中で、国会法というものが絡んでまいりますから、議論していただけたらいいもんだなという願望は常々持っておりますが、この間またそれを深く持たせていただいたということでございます。
  134. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理のいわゆるお知恵というものがわかりましたけれども、これは一月召集に向かってのお知恵でございまして、私はそうじゃなくて、やはり十二月に国会に予算案を提出するという、そういう方向へのお知恵を出していただきたかったと思いますが、いかがでしょうか。
  135. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 年度区分が今の年度区分、会計年度が四月から始まり三月末で終了するという場合において十二月に予算書を提出すると、たしか予算書の印刷が十三・五日かなんかかかったはずでございますが、それを計算してみますと、経済見通し等が少し間があき過ぎるなという感じはないわけでもございません。それは、この予算編成を仮に年内編成を終わって印刷が正確なものができる世の中かどうか、私も科学技術の方は余り強くありませんので、非常に早目にできるようなわざが整えばいいなとは思いますが、勉強させていただきます。
  136. 多田省吾

    ○多田省吾君 なお勉強していただくことにいたしまして、財確法について御質問をいたします。  もう十数年来、そしてその大半は竹下大蔵大臣の時代にこの財確法が本委員会においても審議されたわけでございますが、今回は一兆八千三百億円の減額をして、発行限度額を三兆一千五百十億円とするということで今度の財確法の提出になったわけでございますが、昭和六十五年度赤字国債ゼロに向かって近づいてはきております。しかしながら予算の内容を見ますと、相続いたマイナスシーリングのもとで福祉予算、文教予算、中小企業対策予算等が大変圧縮されまして、そしてそのほかに一般会計から五十七年度以降御存じのように特別会計へのツケ回しとか、あるいは地方への負担の押しつけとか後年度負担の繰り延べが大蔵省の発表だけでも少なくとも十一兆三千五百億円に及んでいる。そういう姿がございまして、いわばこれは見せかけの財政再建ではないかと言われるわけでございます。  今申し上げたツケ回し、繰り延べというのは、御存じのように、厚生年金等への繰り入れとか住宅金融公庫利子補給金の問題、国民年金特会平準化措置、それから自賠責特会からの借入金とか、政管健保の国庫補助減、それから道路特会の運用部借り入れ、交付税特会の運用部借り入れ、地方財政対策に伴う繰り延べ分、こういったものが何と十一兆三千五百億円もあるわけでございます。これは当然これから措置していかなければなりません。そのほか、国債整理基金特別会計への定率繰り入れ停止分が、本年度分も合わせまして十二兆九千億円にも及んでいるわけでございます。こういったものも含めてこれからやはり財政再建は進めていかなければならない、このように思います。その認識において総理はどう思われておりますか。
  137. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに今、俗称ツケ回しについての御指摘がありました。大体みんな私の時代に御了承いただいたことでございます。その中で、一部解決しつつあるものもございますけれども、そういうふうにして御苦心をいただきながら財政運営をやってきたわけでございます。その御鞭撻があったからこそ、六十五年赤字公債依存体質脱却も夢ではないというところまで来たのかなと思いますが、これを少なくともお約束した形の中で正常化していかなきゃならぬ問題である。しかし、どれもこれも一遍に正常化できるかということになりますと、それはまさに歳出そのものが急場に至っておるというようなものからの正常化というようなことも常識的には考えられるわけでございましょうけれども、これを正常化していく努力は、毎年毎年の予算編成のときに苦労しながら、これからもお知恵をおかりしてやらなきゃいかぬ問題だなというふうに思っております。  もう一つ、ちょっと長くなりましたが、やっぱり財確法というのは、向こう何年間とかいうような法律ではございませんで、すなわち、毎年毎年こうして御審議いただくということが我々提出する方に緊張感というものも与えていただくことであるし、また御発言いただく皆さん方も鞭撻していただける機会だというふうに私はいつもありがたく考えております。
  138. 多田省吾

    ○多田省吾君 我々は、緊張感を持つのは結構ですが、しかしそれが国民に対するしわ寄せになって、国民が苦しむということは大変これは遺憾なことになりますから、この点はやはり留意していかなければならない、このように思います。  それで、今の日本の国債状況は、もう申すまでもなく六十三年度末で百五十九兆円の残高になる、あるいは今年度の予算を見ましても国債の依存度が一五・六%ですか、また利払い費が二〇%を超えて二〇・三%ですか、もう大変な財政硬直化の姿を示しております。    〔委員長退席理事梶原清君着席〕 赤字国債だけで百五十九兆円と言われております。それが、たしか竹下大蔵大臣の時代に借換債の問題が本当に四条国債と同じように最高となりまして、六十年の償還期間にまでできるということになったわけでございます。赤字国債といえども、もう昭和百二十四年まで残ってしまう、そういう姿になります。六十五年度末ゼロになっても、赤字国債ゼロになってもそうでございます。そういう意味で、次のやはり財政再建目標というものが具体的に私は想定されなければならないと思うんです。  例えば国債の依存度におきましても、総理はイギリスにいらっしゃいましたが、イギリスはサッチャー首相の英断で大分財政再建がなされているようでございまして、国債は減らされております。また、西ドイツやフランス等を見ましても、日本の何分の一かの赤字国債でございます。アメリカでさえ、この前法案が成立しまして、相当な努力をしております。ですから、我が国もやはり財政硬直化を防ぐためにも、例えば利払い費を早く今の二〇%をもう少し縮小するとか、あるいはGNPに対する国債残高を今の四六%から早く二〇%ぐらいにすべきであるとか、あるいは利払い費は今二〇%を超えておりますが一〇%以下にするとか、それをいつまでにやるとか、そういったやはり私はこの国債についての財政再建目標というものを定めるべきだ、このように思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  139. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指摘のことはよく私にも理解できます。  まずは、第一目標であります昭和六十五年特例公債依存体質からの脱却をする。そしてその後、例えばと申しながら、対GNP比幾らにするとか、それは利払い費であり、そして依存度を徐々に低下さすことであり、そしてその残高全体を減すことであり、そのことを第二段階としては当然一つ目標として模索すべきだと、これは私もわかります。  そうなりますと、今度は別の意味で、将来における現行制度そのままでどのように歳出が伸びていくかということもいろいろ議論がなされて、それが社会保障の面とかいろんな点で、長期計画で一定の前提を置いてのいろいろな計画が国会の要請に基づいて議論のたたき台として出されておりますが、それらも一方詰めていかなければならぬだろう。そうするとまた、今度はそれに対応したいわゆる安定的歳入財源、こういうものも議論していかなければいかぬというようなのを総合的に考えまして、おっしゃるような目標というようなものは検討していくべき課題であろうというふうに考えております。
  140. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、財政再建の次の目標がまた大型間接税導入の話をちらつかせてやろうというような話に切りかわるというのは非常に遺憾でございまして、やはりそんなことなしに財政再建は進めていかなければならない、いわゆる増税なき財政再建が本来の筋であろう、このように思うのでございます。  それから、今回昭和六十五年度において赤字国債ゼロに近づいたと言われておりますけれども、それを見ますとやはりもう一つの原因に、ここ一年半以来の景気の回復の問題とか、あるいは土地の暴騰、財テクブーム、それからNTT株の売却益、こういったものを利用してやっと赤字国債を減らしたわけでございまして、これは六十三年度もそういった傾向は続くとは思いますが、六十四年度からは非常に不透明だということは昨年の参考人陳述なんかでも言っております。  そういう意味で、六十二年度の補正後のいわゆる税の自然増収というものが二兆五千億円だ、あるいは三兆円だ、こういうふうに言われておりますけれども、もしそれがあった場合ですね、大蔵大臣も三二%は地方交付税の方に振り向けるんだと、これは当然であります。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕 その残りは全額ほとんど赤字国債の減額に使うんだというような御答弁もありましたけれども、私どもは全部とは言わないまでも、相当部分やはりこれは税の取り過ぎによって生じた自然増収でございますから、所得税減税の財源にしたらどうだ、また、抜本的税制改正の前にこの六十三年度におきまして所得税減税等の法案を出したらどうだ、こういうふうにも言っておるわけでございますが、その自然増収分は総理としてどのように措置しようとなされているのかお尋ねしたい。
  141. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは本当は財源確保法の趣旨、そしてその親法と申しますか、母法である財政法の趣旨からいって、一方、この財確でもいわゆる出納整理期間内発行というものを許されておるという立場からいいますと、自然増収の見通しがついて、なおその際発行を授権いただいておる赤字公債発行しなくてつじつまが合うならば、それは今御指摘がありましたとおり、赤字公債の減額に充てるというのが財政法、財確法に忠実であるならば、それをまず念頭に置くべき筋合いの法律ではないかなという感じがしております。  しかし一方、今財政法上はそうだが、経済全体の動きとかいうことの中に弾力的な考え方もあってしかるべきじゃないか、こういう趣旨はちょっと財政法とは若干離れるが、あり得る議論だということは私もわかります。
  142. 多田省吾

    ○多田省吾君 実は、昨日の参考人陳述でも、財政制度審議会の会長代理の館参考人、それから松田参考人等経済学者の方々が、減税に自然増収を回しても、政治的要求があるならばよろしいんじゃないかというような意見も述べておりましたので、私はぜひそうしてもらいたい、このようにも思うわけでございます。  それからもう一つは、やはり財政再建にとって大事なのは行政改革でございます。中曽根総理時代と比べると、どうも竹下総理になってから行政改革に対する姿勢が消極的になったのではないかと、このように言われております。省庁移転問題等もやっておられますけれども、どうも小手先にすぎない。あるいは規制緩和の問題についても、臨時行政改革推進審議会が答申を出そうとしておりますけれども、もっともっとそういった本来の行政改革を強力に進めるべきではないか、このように言われておりますが、いかがですか。
  143. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、行政改革の問題でございますが、今御指摘いただいたような御批判を時にいただきますので、これは本当に私自身も困っておるところでございます。言葉の上では、せっかく押し上げた荷車が手を放すとそれこそ坂道をがらがらがらっともとへ返ってしまう、だから行政改革は断じて手を緩めてはならぬと、まさに行政改革は天の声である、こういうことを言ってみましても、国民の皆様方の目に映っております目に見えるもの、すなわち目に一番見えるものというのは、国鉄の分割民営であり、電電公社の民営であり、専売公社の民営である。何だかあれで大目玉だけは済んだじゃないかという印象を国民の皆様方自身もお持ちいただいちゃならぬなと思いながら、一生懸命この口で言っているわけでございますが、そういうまさに大改革的な目玉というものが目の前に派手に見えてこないということを私も感じております。  したがって、今お話しいただきましたように、新行革審等におきまして、地価、土地対策、公的規制のあり方、これらについていろいろ議論をいただいておるところでございますので、そういうことをやりまして、いわば本来の行政改革と申しましょうか、確かに行政改革は天の声なりと、こういう雰囲気がございました。税制改革もまた天の声なりという雰囲気になることも期待しておりますがそれは別として、そういう空気がありましたが、本体のところに実際必ずしも手がついておりません。それは地味な仕事でございます。総定員法に基づくところの定員削減計画でございますとか、行政組織法に基づく機構の問題でございますとか、デレギュレーションの問題でも地味な問題でございますが、今の御意見にこたえて進めていかなければ、本来の行革、まさに天の声であるというその声にこたえることにはならないというふうに思っております。  そしてもう一つは、それに付随して省庁移転の問題についても御指摘ございました。  この問題は、先般その方針を決定いたして、実現に取り組んでいるところでございますので、所要の調整を行って着実に推進してまいろうと。ただし、ちょっとこれは御理解をいただかなきゃならぬ問題は、事によってはそれは行政改革じゃないんじゃないかと、こういう議論もあるということでございますので、行政改革をもっと大きく広げた場合の、まさに行革審において土地問題等もやっていただいておる、そういう一環であるという形でとらえて御支援いただくことをお願いをいたします。
  144. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、赤字国債六十九兆円、またすべての国債百五十九兆円というような残高を早く減らすためにも、そして財政硬直化を防ぐためにも、私は提言といたしまして、昨日も経済学者の参考人等が言っておられましたけれども、すなわち民営化した会社の株式公開とかあるいは公社公団、特殊法人等で委員会をつくって三分の一ぐらいは民営化できるものは民営化して、そしてその政府資産をもって赤字国債返却に充てて早く身軽になった方がいいんじゃないかと、こういう御意見もございました。私どもも賛成でございますが、そういった意見に対して総理大臣はどういうお考えでございましょうか。
  145. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この国民の財産、株式、一応はすべての例外なく最初は国が全部持っておって、一人株主さんで民営化して逐次これを放出していくわけでございますが、これはあくまでも国民の財産であるから、国民の負債に充てるべきであるという原則的な考え方は私も賛成でございます。  したがって、それらのものをただ一遍に売ると何ぼになるという議論は別といたしまして、市場等に大変適応したいろいろな額というものも考えられるわけでございますから、逐次そういう方向に努力すべきであるということは賛成であります。
  146. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 最初に、奥野発言につきまして御質問いたしたいと思います。  奥野国務大臣本人は、昨日も参議院本会議の中で偶発的事件という評価をされるなど全く反省していないといいますか、問題はいよいよエスカレートしてきているというふうに思うわけです。昨日の参議院本会議で我が党の佐藤議員が質問いたしまして、それに対して総理の答弁の中で漏れておりました点について特に重ねて伺いたいと思うんですが、総理御自身のお考えとしては、あれは侵略戦争であったという評価をちゃんとしておられるのかどうか、この点をまず伺いたいと思うんです。
  147. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この問題はずっと整理してまいりまして、正確に読み上げますと、中国に対して「侵略的事実を否定することはできないと私は考えておる」ということの中曽根総理の答弁がございますが、基本的に一致いたしております。
  148. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 外国の評価とかいろいろ言っておられましたけれども、そういう評価はともかくとして、総理御自身のお考えとしては、今の発言どおり中曽根総理の言われたように、あなたも侵略戦争であったという御認識であると、重ねて伺っておきたいんですが、そういうことでいいですね。
  149. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) その私の考え方は中曽根総理の答弁と変わりません。
  150. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 さてそこで、奥野国務大臣について結局罷免をされるのかどうかですね、その点はいかがですか。
  151. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、だれを任命するか、だれを罷免するかというようなことも、国会で御指名をいただいた私に与えられた権限でござ いますので、軽々に発言すべきものではないというふうに思います。
  152. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 軽々は結構として、罷免の可能性というものはあるということですか。
  153. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは人事の大権に対してみずから論評をすべきではなかろうと思います。
  154. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 奥野大臣発言というのは極めて重大なものでございまして、これは特に罷免を要求しておきたいと思います。  次に、財確法に関連して、財政再建についてお考えを少し伺っておきたいんです。  午前中の質問で、我が国国債残高は、あの第二次世界大戦の戦費の四・四倍に達するということを私は指摘しまして、まあ主計局もこの数字については認められておられるわけです。したがって、今税収の好調ということから、昭和六十五年度に赤字国債発行をゼロにしたとしても、それで財政再建ができたということにはならないと思うわけですので、財政再建にはほど遠いと思うわけなんですが、この点のお考えを伺いたいと思います。
  155. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 財政再建の定義をどこのところへ持っていくか、例えば歳入歳出が完全に均衡のとれた状態とこう見るか、いろいろな議論があろうと思いますが、いつも申し上げてまいりましたように、第一義的には六十五年度、五十九年からずっと延びてきたのでございますから、六十五年度赤字公債依存体質脱却、これを第一義的には目標にしようと。第二義的には、残高をどうして減していくか、対GNPでこれを目標値を位置づけるのかどうか、これはまだ議論を詰めておるところじゃございませんが、そういう段階で進まなきゃならぬと思っております。
  156. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 NTT株問題につきましては午前中に少し触れておりますので、中身は随分と省略いたしますが、NTT株は売却益を昨年に引き続いて本年度も一兆三千億公共事業に回していくということですが、このような公共事業拡大が今日の財政危機を招くきっかけとなった五十年代初期当時の誤りを繰り返す方向に進むという懸念を持たざるを得ないと思うわけですが、その点についてはどうお考えですか。
  157. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 五十年代と申しますと、要するに四十年から公債発行して、四十九年までは建設国債であった。しかし、五十年からいわば特例債発行した。特例債発行体質がもたらした要因が、建設公債全部合わせて九兆六千億ぐらいだと思いますが、それそのものが赤字体質を招来したものであるというふうにはこれは必ずしも見ておりません。その間にございましたドルショックでございますとか第一次石油ショック、第二次石油ショックもつながって参りますが、そうした要因もやはり経済論、そういう財政論の中でも考えていかなきゃならぬ問題だというふうに思っておるところでございます。  さてそこで、NTT株の活用というのは、いろいろ国会の御同意をいただいて、財政当局もいろんな知恵を絞っておりますので、これが将来の財政運営の破綻要因につながるものであるということは、私はそのようには考えておりません。
  158. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 本来やはり国債残高を減らす方向に持っていくなり減債基金の方向でもっと考えるべきものが、税収好調ということで、やはりNTT株の売却についても違った方向に向かっていることについては、これは随分問題があるということを申し上げておきたいと思うんですが、午前中の質問の中で主計局次長は、赤字国債のもともとの十年償還ですね、借換債の発行で六十年償還方式に事実上したから心配ないということを言っておられますし、従来より大臣も言っておられましたが、昭和六十五年の赤字国債発行ゼロは財政再建の一里塚というお話のとおり、どうも伺っておりますと、昨年のあの大型補正予算以来、今日のこの財政危機の深刻さについての御認識は随分甘くなってきているんじゃないか、こういうふうに思うわけですが、この点いかがですか。
  159. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 昨年の大型補正でございますか、これも端的に言いまして、いわゆるNTT株の売り払い代金というものが大きく活用されたものであるというふうに思っておるところでございます。  要するに、補正財源で大型が出ると財政当局として緩みが出るんじゃないかという御指摘については、そういう緩みが出てはならぬというふうには、それは私も思っております。しかし、いわば我が国が外需から内需型へ転換し、それが定着しつつある段階において、昨年度の補正予算というものは、私は大変効果的に機能したというふうに評価をいたしております。
  160. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 やはり午前中の議論を聞いておりましても、財政危機についての御認識はかなり甘くなってきているといいますか、先ほども触れましたように、それはこの赤字国債についても六十年償還方式に事実上の切りかえみたいなものですね、それで心配ない、万々歳と言わんばかりの御発想に伺えるんですが、毎年二割の国債費負担というのは国民生活への予算を圧迫しておりますし、しかも国債残高にはもちろん利息がついてきて、それに伴って償還財源がさらに必要になるわけでし、ますます深刻になるわけです。ですから、早い時期にこの国債残高の縮減の努力をやっぱりやらなきゃいけない、そういう点について努力は足りないと思うんですが。しかも、百五十九兆の今年度末の国債残高があっても、さらにふえているのに償還についてのお考えも非常に甘い。私は、この点では非常に今日の財政危機の問題についての御認識がかなり甘くなってきているということを指摘しておきたいと思うんです。  次に、私ちょっと税の問題について、この間、実は大型間接税の表をまとめてみて気がついたんですけれども、別に気がつくというほど大層なことじゃありませんが、大平内閣のときに竹下総理は大蔵大臣でいらっしゃって、このときに一般消費税ですね。そして中曽根内閣の時代にはちょうど政府税調に諮問されたときが大蔵大臣で、売上税として法案を提出されたときが自民党の幹事長。今回総理大臣として、新消費税というのは政府税調の中間答申で、名前はこういう名前も使われておりますが、いよいよ三度目の挑戦といいますか、そういう感じを受けるんですが、この税の名称や理由づけはそのたびに、大平内閣時代は財政再建財源確保とか、中曽根内閣時代は減税財源確保とか、今は不公平の是正とか、いろいろ言っておられますが、この名称、理由づけは変わっておるんだが、結局これまでの三回を通じて中身はどこが違うのか。国民に広く薄く課税するというこの大型間接税の導入という点では変わりがないというふうに思うんですが、この点いかがでしょう。
  161. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今御指摘なさいましたように、五十四年でございますですね、国民福祉充実のためには安定した財源が必要である、しかし政府が意図したいわゆる一般消費税(仮称)は、その仕組み、構造等について国民の理解を得るに至らなかった、よってその手法をとらずして、行政改革、経費の節減、そして税制改革等でこれを行うべきである、こういうことを本院でつくっていただいたんです。私も一緒に相談してつくったわけでございますが。そのときは、やっぱり国民福祉充実のため安定した財源が必要であるということと、「財政再建に関する決議」まさに表題のごとくそうであったと思います。そうしてその後、ずうっとその後にもう一つございますよね、いわゆるグリーンカードというのがあります。一遍全部通していただいて後からこれはやめた法律でございますが、それも通したのも私、やめたのも私でございましたが、これは哀れなことであったなと思うわけでございますが。そういうことで、税制改革が一歩踏み込めたというのは、五十九年を当初いろいろ念頭に描いておりましたが、昨年度の臨時国会の際じゃないかなというわけであります。いわゆる資産所得、なかんずく利子に対する課税というものが行われたというのが第一段階ではなかったかなというふうに思います。  そこで、この間接税問題というものがいわゆる個別消費税からくるところの不公平感というものから、資産、消費、所得に対して適正な配分のとれたものというものが残っておるということに位置づけるべきではなかろうかなと、こういうふうに考えております。
  162. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 いろいろ伺ったんですけれども、この本当の理由ですね、進めようとしておられる本当の理由、本当のねらいというのは結局のところどこなんですか。
  163. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) それはまさに国民の方の不公平感というものがなくなって、そしていわば資産所得、消費にバランスのとれた、重税感、痛税感等も取れた税体系をつくっていこうというのが、まさに本当の考え方じゃないかなというふうに思っております。
  164. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 そのバランス論をいろいろおっしゃるわけですけれども、やはり初めに大型間接税ありきということが、今回総理はどうもこの三回目の挑戦ですが、名称、導入の理由はそれぞれ変わっているけれども、しかし中身は結局大型間接税ですね。本当の理由というのはやはり初めに大型間接税ありきじゃないですか、その後に理由がついているんじゃないですか。
  165. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まあこれも税の学者さんの間でいろんな議論があるところでありますが、大体いつかも本院で上田さんと議論しましたが、社会主義体制の最初は恐らく全部間接税だと私はそう思っております。これは国有企業のもとで、そしてそれが価格に転嫁されて消費者に回るわけでございますから、まさに大型消費税だというところから出発しておるんじゃないかなと。しかし、そこに若干近代資本主義というようなものが中和してきた場合に、いわば所得税というものが頭をもたげ、そしてそれが所得配分機能をもたらしていく。  こういう経過をたどって、それが少し進みますともう一度そのいわば努力と報酬の一致という感じからして、この間接税と直接税の調和のとれた形に移行していくという税の一つの歴史というものがあるんじゃないかなと、そんな感じはしておるところでございます。
  166. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 その社会主義税制については既にもうこの前決着済みでございまして、それは違う御認識だということと、マルクスの間接税についての議論もちゃんと上田委員の方から予算委員会でやっておりますので、きょうは私ここでは繰り返しませんが。  次に、そこで伺いたいんですけれども、不公平の是正ということを近ごろ盛んにおっしゃるわけですが、この政府税調の中間答申では、垂直的公平よりも水平的公平が問題であると言っておりますが、しかし、私は幾つかの新聞のアンケートなどを見たわけですが、例えば朝日新聞のアンケートなどを見てみましても、あなたの感じとしては、税金の面でどんなところが得しているかという、そういう問いかけに、まあいろいろ載っておりますが、政治家が一九%であるとか大企業一一%とか資産家九%とか載っておりますが、いわゆるよく言われる中小企業や農民についてクロヨンで得して不公平だとか、そういう見方を国民はしていないんですね。これは実は四%の国民しかそういう見方はないわけです。それはやはり多くの国民は、大企業なり大金持ちへの優遇税制に不公平感を持っているということがアンケートにも見られるわけです。したがって、本当に税制改革でなすべきは水平的公平より垂直的公平の確保こそ大事だと、こういうふうに思うわけです。  そこで、具体の例としてちょっと見ていきたいと思うんですが、実は引当金について見てみると、これは昨日国税庁の方にも申し上げておきましたけれども、退職金引当金九兆五千九百二十六億円、昭和六十一年のあれに載っているわけですけれども、この引当金で計上しているのは資本金十億円以上の大企業が六九・九%ですね。また、貸倒引当金では六一・三%が大企業であって、実はこれは十年前との比較も私調べてみたんですけれども、十年前よりもいずれも伸びているわけです。それから、準備金の方で見ますと、海外投資等損失準備金など九四・六%、圧倒的に大企業が活用しているんですね。これも十年前の八六・九%に比べても九四・六というのは大幅に伸びているわけです。  つまり、大企業に対するこういう優遇した税制度あるいはこの制度の活用が大企業に偏っているというところに国民は不公平を挙げている、あるいは不公平を感じている一つがあると思うんですが、実はこの点で見ておりますと、自民党税調の方の山中会長は、新聞報道等でも載っておりますが、国民が挙げている大企業に対して不公平感の是正という点から政府税調が賞与引当金などの各種引当金の廃止を挙げているのに対して、廃止の見送りを宣言したということが新聞等で報道されておりますが、こういう問題について総理御自身のお考えとしてはやはり各種引当金の廃止を見送るというふうなそういうお考えなのか、この点は是正しなきゃならぬというお考えなのか、この点伺いたいと思います。
  167. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) もろもろの優遇措置というのは、まあまあ租税特別措置という中でございますから、特別措置という言葉があるように、ノルマルな姿からは特別な措置がなされておる。それが優遇の場合の一つの例としていつも議論されることでございますが、それは中にこの是正すべく指摘されておるものも数ございますので、そうしたところへ税制調査会、また本院における議論等も集中していくであろうということは考えられますが、それぞれの段階でそれぞれそのときの国民のニーズに対応をしながらできたものであるということは間違いないと私は思っております。  ただ、それはあくまでも特別措置だから、ノルマルな姿というものを念頭に置いておかなきゃならぬということは事実でございます。それが大企業であれ中小企業であれ、これはいろいろございますけれども、ただ大企業というものを考えるときに、私はこの社会におきましては、そこには多くのいわばそこに生活の根拠を置くたくさんの勤労者の方がいらっしゃる一つのまさに法人であるということを、まず念頭に置いてやっぱりお考えいただくのが常識的ではなかろうかなという感じをいつもお話を聞きながら思っておるところでございます。  そこで、引当金廃止見送りというのはたしか新聞紙上で私も読んだことがございますが、正確にまだその結論が出たわけではございませんが、その経過についてはちょっとお答えするだけの勉強といいますか、準備が必ずしもできておりません。
  168. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 まあ会長のお話お話として、総理御自身のお考えとしてはいかがなものかということを伺っているんです。この引当金の廃止について、廃止するのか見送りのお考えなのか、この点について。
  169. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 賞与引当金の廃止問題につきましては、やはり私の今日の時点において結論が出ておる問題ではないと思っておりますが、私がいつも整理をして申し上げるのは、政府税調の中間答申における意見というところまでを私の整理した言葉でいつも申し上げて、それ以上突っ込みますとある種の予見ということになると思いますので、そこで控えさせていただいております。
  170. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 ところで、中間答申などでは、大企業減税については四二%の法人税率を三七・五ですから四・五%引き下げ、中小企業については二%の引き下げ、軽減税率ですね。率ではもとより、所得が大きい分だけ絶対額においても大企業の方が大幅な減税になるということは、これはだれが考えてもわかることです。  最近、帝国データバンクは昭和六十二年の全国法人所得ランキングというのを発表しておりますが、これの第一位の東京電力から第十位の富士銀行まで、非常にラフな計算になりますが、というのは私いろいろ控除すべきものをお伺いしたんですがプライバシー云々をされてなかなか正確にお聞かせいただけないものですから非常に粗っぽいことでいきますと、現行四二%の税率を中間答申が言う三七・五にしますと、極めてラフな計算ですが、この十社だけで千四百五十八億円の減税となる。実際はそうはなりません、もう少し低くな るわけですね。  ですから、中小企業には減税効果はもともと所得が少ないですから絶対額としてはなくて、しかし大企業の場合には、率ももちろん大きいわけですから、減税効果は非常に大きいわけです。このアンケートに見る不公平感というのは、こういうふうなやり方をしますと、大企業というのはたくさん税金まけてもらっていいなあ、自分たちは減税は少ないなあと、こういう不公平感がますます広がると思うんですが、この点総理はどのようにお考えになりますか。
  171. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やっぱり法人でありまして、むしろ考えようによればその中小企業の軽課措置というものそのものがいわば特例措置であるわけでございますので、やはり法人所得というものに関するもろもろの措置というものは、私はそれなり論理構成はできる話じゃないかなというふうに思っております。
  172. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 実は、アメリカのレーガン政権が行った法人税率の引き下げ、このときは同時に大企業向けの特権的減免をなくして、逆に大企業は五年間で千二百四億ドルの増税になっているわけですね。こういう世界の流れの中で、法人税率を下げるだけじゃなしに一方ではそういう措置があって、そして必ずしも大企業が法人税率の引き下げによって税金がうんと安くなった、そういうことだけじゃなしに逆にこういう場合があるんですね。しかも、これが世界のかなりの流れともうかがえるんですが、この点は総理いかがですか。
  173. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ちょっと必ずしも私も専門家ではございませんが、いわば法人税の減税というものの国際性の中で、やっぱり活力というものが中心になって減税というものが行われてきたんではないか。さようしからば、その間にある特別措置に関するようなものがそれぞれ、あるいは残るものもございましょうが、統合されたりあるいは償却等、陳腐化の問題等は世の中の推移とともに違ってまいりますから、そういうものを総合的に組み合わせた税制というものが流れとして定着しつつあるんじゃないかなというふうに思っております。
  174. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 大企業同士、中小企業との不公平だけじゃなしに、アンケートを見ますと政治家についても得しているという見方がありますが、ここで私はもう議論は時間の関係でおいておきますが、例えば昨年の閣僚の皆さん資産公開ですね、公表された分だけで見ましても、三五%の税率からマル優廃止で二〇%の税率に変わったことによって、大蔵大臣計算させていただきますとかなり大きな減税になっておりますが、庶民の場合はこのマル優廃止で税金がふえて、こういうところにも政治家の皆さんは得をしておられるんだな、こういうふうに国民皆さんがいよいよ不公平感を持って見られてくる、こういう点もあると思うわけです。  この点については、この不公平の問題につきましては、実は「エコノミスト」でも静岡大学のグループが試算しているのがありますので、いよいよ中間答申でいくと逆進性が強くなるということですね。これは全国税なんかもそういう試算をやっておりますが、いろんな団体が既に試算をやりましてそれで大型間接税の逆進性の問題について指摘しておりますが、私は、最後に、汚職で問題になりました……
  175. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 時間が参っておりますことを通告します。
  176. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 汚職で問題になっております総理府がブルーのパンフレットで、こちらの方では当初三十万部、改訂版で二十万部で四千四百万、黄色のパンフは当初は四十万で改訂版三十万の合計四千八百万、大方一億使って大型間接税のPRしておられますね。NHKは反対四八%の報道をしなかったことをこの間もこの委員会で問題になりましたが、まず税制論議の論議の仕方の不公平の是正が私は必要だと思うんですね。反対意見の指摘も載せたパンフレットならともかく、政府の方のPRですね。それで非常に偏ったやり方じゃないかと思うわけです。  最後に申し上げますと、新大型間接税についての世論調査というのは、朝日、毎日、日経、NHK、これは報道機関によって違いますが、六割合の反対とかそういう反対の意思、世論は圧倒的に反対を示しておりますし、やはりまず公正な論議を進めること、そういうことを避けて世論に背いて進められることはやはり問題がある。私はこの点では、今の時点では大型間接税というのは断念されることが世論に従うことだと思いますが、最後にこの点だけ総理の意見を伺って終わりたいと思います。
  177. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今のような御意見をおっしゃることは結構でございますが、短い時間の中でずっと述べて、私の答える時間が短いのもこれも不公正かな、こういうふうに思うわけでございます。今撤回する用意はありません。
  178. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 総理にお尋ねをいたします。  税制の抜本改革問題でありますけれども、私なりにいろんな国民の方々の御意見を聞くように努力をしているんでありますけれども、いろいろお話を伺ってまいりますと大体共通して一つの御意見に集約できるような気が私はするんです。それは何かといいますと、抜本改革にとってプロセスが一番大切なんだ、そのプロセスを踏まえてやってもらいたい、このプロセスを無視をして税制改革が歩き出されたのでは、それは拙速と言わざるを得ない、こういう御意見でありまして、ごもっともだと思うんです。  じゃ、プロセスとは何か、こう伺いますと、一つは、抜本的税制改革の理由の一つとして高齢化社会への移行ということが言われますけれども、そう言われただけでは国民の受益と負担関係があからさまになってこない。したがって青写真を示してもらえないか、いかなる理念において高齢化社会、長寿社会をつくるのか、これが一つであります。  もう一つは何かといいますと、国と地方を含む行政改革をどうやって進めるのか、確かにごもっともな御意見であります。  もう一つは何かといいますと、一般歳出のうちの相当部分を公債費が占めておるわけでありますから、したがって公債の残高を減らせば一般歳出も大分節約できるんではないか、その方策やいかん、これが一つでございます。  残る一つは、言うまでもなく税の負担の公平をどうやって実現をするかということでございまして、これは要約しますと、一つは税の公正をどう実現するかということは、これは税制そのものにかかわりがある問題でありますけれども、あとは長寿社会をどう構築をするのか、国と地方を通して行政改革をどう進めるのか、あるいは公債発行残高をどうやって縮減を図るかという問題は、税制というよりやはりこれは行政のあり方に深いかかわりがある問題でありまして、税制だけによるアプローチではこれはなかなか国民の方々のそういった御要望にはこたえられないのではないか。こう思いながら、実は総理が、総理におなりになる前に、お出しになりました「私の「ふるさと創生論」」を拝見しまして、そこの中に「開かれた税制改革」というくだりがございます。読んでいて全く同感なものですから、以上についての総理の御所見を伺う前に、読みながら今どうお考えですかとお尋ねした方が間違いないと思いますので若干御披露申し上げます。  「誰にもわかりやすく、納得して負担できるような公平な税制を追求しなければならない。」こうございまして、「その際には、個別の負担関係がどのように変化するかということと合わせ、税制が全体として行財政国民経済社会、国際取引などにどう影響するかという幅広い視野も大切である。」こうお引きになっております。全く同感であります。そこで総理は、「そういう意味で、新たに税制と行財政などのあり方を総合的に検討する場を設けることも考えられてよいのではないかと思う。」、そして「こうした開かれた税制論議の積み重ねによって、」とこうありまして、「新しい時代に対応できる税体系の再構築を進めて行きたいと考えている。」こう結んでおられます。  私は全く同感でして、政府税調が御努力いただいておりますけれども、これは税制に偏っておりまして、そこで行財政のあり方、いわんや行政のあり方について御議論をいただくということは、もともとそういう仕組みにはなっておりません。では党税調、これもどちらかといいますと税制に偏っておりまして、行政のあり方にまで御論議が進む機関として承知をいたしてはおりません。そうしますと、実は政府税調とか党税調でなくて行政をひっくるめた何がしかの機関を、全国民が直接間接を問わず参加ができるようなそういう検討の場がどうしても要るのではないか、それが抜本税制改革に対する私が知る限りの多くの国民の方々の御要望にこたえる道であり、しかも総理の年来の御所見ではないのか、こう考えますので、この点についての総理の御所見を伺います。
  179. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私が前に書きおろした書物にお触れいただきましたが、私もあのことを考えながら、実は一つ趣旨に機能しておる点があるなと思っておりますのは、大蔵省におりますと例の財政制度審議会そして税制調査会、ただし税制調査会は総理大臣の諮問機関で財政審大蔵大臣の諮問機関だと、それは私は余り関係のないことで、こちらは地方税もありますから、したがって総理府が事務局を扱わしていただいているから内閣総理大臣の諮問機関でございますが、あの二つを見ておりますと非常にうまく効率的に運用されておるのが大蔵省じゃないかなと実は思っておるわけでございます。  大体それぞれの方々を見ますと、同じようなそれぞれのバランスからお出になっておりますので、あれが私が思っていることを巧みに機能しておる運営の仕方じゃないかなと実は思っておるところでございます。ただ、どうしても派手に税制調査会の方が出ておるではないかという感じはいたしております。
  180. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 何がしか新しい機能と広がりを持った検討の場所が必要だなという御感触はお示しになったと思うんですが、そこで、多くの国民の意見さらに声に耳を傾けてまいりますと、今回の抜本税制改革は直接税の減税と間接税、新税の導入が組み合わせになっているわけですが、組み合わせた結果として、要するに減税になるのかね、増税になるのかね、これが自問自答しても全然わからない、この実証研究はぜひやってもらいたいという声がございました。これは実は行政と税制だけではなくて一つは流通が絡んでおりますから、産業経済の多くのひだひだまで触れた相当の知識と経験がないとできないんですね。これは仮に納税コストの問題に踏み込んでまいりますとよりはっきりするわけです。そこまで既存の財政制度審議会とか何かということだけのことでおろしても無理なんでありまして、そこで今度やはり思い切って新しい機能の検討機関をつくらなければやっぱり無理なんではないかという私の意見を添えて、御所見を伺います。  あわせて、実はこの実証研究をやりたい、これはある人によってはシミュレートというしゃれた言葉を使っているんですが、そうなんでしょう。さあ、それが政府の権威を持って臨んだとして何カ月あればできるのでありましょうか。前回の売上税のときのように、法人税の減税分の半分が個人に帰着とするとか、ああいう粗っぽい議論はもう御免でありまして、きちんとした実証研究で示してもらいたい。これは人によっては一年かかっても政府でできるかどうかではあるまいかと言っておりました。これは権威を持って言ったわけではないでしょうが、私もそういった仕事ではないかとひそかに感ずるんです。このことと、ことしの秋には成立を図りたいと世上伝えられていることといかにも平仄が合わないのであります。この点につきまして国民が納得して初めて税制は成り立つのでありまして、余りことしの秋にと思い詰めてしまいますと、結局拙速のそしりを免れないのではないかと思います。  以上につきまして御所見を伺います。
  181. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 最初御指摘なさいました高齢化社会の青写真、あるいは国、地方の行政改革。高齢化社会の青写真というのを描いてきますと現行の制度、施策をそのままに置いたらこの程度の二十一世紀には歳出増が出てまいりますとか、それらは現行の制度、施策をそのままに置くというような、あるいは経済成長率を四%なら四%に前提を置くというような一定の前提を置いた数値というものは国会の要求において作業しながら出しておりますが、これはこれなりにやるべきことだし、一方、行政改革によってのいわゆる人員削減計画とか総定員法に基づく問題などについては、これもベースアップを何ぼに見るかということもありますが、この程度の減が生じますとかいうような計算は一定の前提を置けば可能である。  それで今度は、今おっしゃったのは、売上税のときに中堅のこれぐらいな人は間接税の余計支払う分がこれだけできてきますが、結果においてこれだけのものが所得税減税で出てきて、さらにそれが法人税等の減税が物価の安定によって幾ばくか出るというような点、それが大変アバウトなものだったという御指摘だろうと思うんでありますが、シミュレーションをやってどの程度のものが出ますかちょっと専門的知識がありませんが、いわゆる御提言としては私もおっしゃっている意味はわかるような気がいたします。
  182. 野末陳平

    ○野末陳平君 最初に、総理府の汚職のことにちょっと触れたいんですけれども、先ほど多田委員質疑にもありましたけれども、これは政府の広報関係予算が大きいかどうか、これについてはいろいろ判断が違うと思うんですが、最近、私の見る範囲において、総理府だけではありませんが、政府関係の広報は非常によくなってきているんですね。工夫の跡が以前に比べればはっきりわかりますし、それから内容もかなりよくなっているんですが、ただ、PR効果がどのぐらいかということになるとこれはなかなか難しいので、そこまで望むのは無理かもしれませんが、しかし効果があるにこしたことはありませんね。ですから、内容的にはまずまず努力しているなと評価していいと思うんです。  問題は、今回こういう事件が起きたことと関連があるんですが、政府関係の仕事というのをビジネスという面から見ますと非常にここには競争原理が働いていないことと、マージンがかなり大きくて、まあ率直に言いましてもうかる仕事というか、おいしいビジネスなんですな。となると、いわゆる政府側はスポンサーになりますから、現場の担当などは当然民間レベルのスポンサーと代理店それから媒体との関係で、スポンサーがいろんな点で陥りやすい誘惑があるんですけれども、まさにそこら辺に現場担当者が姿勢を正していかないと、今回の話は氷山の一角だと、こういうふうに僕などは思っているんです。  ただ、この企画から制作については、皆一生懸命やって国民の金をむだにしないようにと、やや宣伝臭くて反発買うところもありますけれども、そこらはいいんです。むしろ発注から取引、営業のそのあたりの実態をひとつ見直さないと、やはり利権と言わないまでも、かなりその辺がいろいろな問題がある。現にほかにもあると思うんです。  そこで総理、今回の事件をきっかけに、どうでしょうかね、この政府関係の広報の仕事を扱う人たちの実情を少し洗い直すというか、見直してみるというか、その辺をきちっとする方向で指示を出されたらいかがかと思うんですけれども、どうでしょうか。
  183. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 公務員は国民全体の奉仕者であるという立場から、今回は遺憾なことでございまして、したがって、昨日報告を受けまして、事務担当の石原官房副長官がそういう監視と検討と両方のチームをつくりまして、早速これに取りかかると言っておりました。それが一面、今おっしゃったようなことに対する方向で動き出したなというふうに私も感じておるところでございます。
  184. 野末陳平

    ○野末陳平君 いずれにしても、発注、営業、取引というそのあたりに権限が集中するとまずいんですけれども、余計なことは言いませんので、成果が上がることを願っておきます。  さて、税制改革なんですけれども、例えば間接税でも総論賛成で各論反対、こういうことが今後予想されるし、あるいは不公平税制も世論調査を見ればどれも間違いなく不公平税制が先だという声でまとまっているんですが、この不公平税制もいわば総論賛成で、各論でそれぞれ既得権を奪われる段階になるとまたいろいろな文句が出てくるだろう。現に法人税もどうなるやらちょっとわからぬと。本来、法人税制の中にある優遇措置あるいは租税特別措置などかなりこれを削って、大蔵大臣は課税ベースを広げてということをしょっちゅうおっしゃっていたんですけれども、これも果たしてどういう具体的な国民の目に見える形で今度法案に盛り込まれるやら、余り期待できそうにないような雲行きになったりして、まあ非常に心配はしているんです。  そこで、総理にお伺いしたいんですけれども、この不公平税制というものは、百点満点の答案というのは無理だろうと、またそれを願うのは短時間でできる話ではないんですけれども、少なくもまあ合格すれすれというぐらいの答案を出してもらわないと、秋の抜本改正というのは国民に受け入れられないだろうと思うんですよ。ですから、当然間接税を受け入れてもらう前提にこの不公平税制というものがありますから、僕は具体的に総理がどの程度までの切り込みを願望しておられるか、もうそれすらも予見になるからとおっしゃいますが、少なくも中間答申に出た段階でお聞きしたいと思うんですよ。  そこで最初国民がよく言う不公平税制は、当然のことながら医者と宗教法人と大企業と政治家とこう一応なっていますけれども、この医者の場合でも地方税における事業税の非課税、これを撤廃しろということになっていますが、これについてはどういう形で改正案には盛り込めそうですか。
  185. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私も、中間答申というものの範囲内で、やっぱり指摘されたものについては詰めた議論をしていただいて成案を得るべきものだというふうに考えております、基本的には。
  186. 野末陳平

    ○野末陳平君 それから、法人税は先ほども質疑に出ましたけれども、具体的には法人税における優遇あるいは租税特別措置、いわゆる各種引当金の問題なんです。何か全くこれも結果的には手つかずで温存されたまま法人税率の引き下げと、こういうことになりかねない。そんな感じもするんですが、これはどう考えても少しおかしい。ですから、これは大蔵大臣がもうたびたび言明なさったことですから、やはり課税ベースを広げるということで優遇に対して切り込みの何らかの手を打たざるを得ない。この辺についてはどうでしょう。
  187. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 引当金の問題につきましても、中間答申というのをやっぱり基準に置いて、これからさらに詰めていくべきものじゃないかなというふうに思っております。基本的には、おっしゃいましたように、やっぱり行政改革は天の声だというようなのが新聞にずっと出るようになっても、税制改革は天の声だというようになかなかならぬのは、やっぱり総論賛成、各論反対と申しますか、そういう心理というものが存在するからじゃないかなと思いますので、合格すれすれとおっしゃいましたが、精いっぱいのやっぱり努力はしていかなきゃならぬなというふうに思っております。
  188. 野末陳平

    ○野末陳平君 前回予算委員会でも言いましたとおり、結局不公平税制というのは、既得権を受けているところから既得権をはぎ取るわけですから、どうしても反対が出てくるけれども、結局その声に反対に押されちゃうと何ら是正にならないというところなんで、頑張ってもらいたいと思うんですけれども。  それから、もう一つの宗教法人ですけれども、結局あれは、ちょっと中間答申は僕も詳しいんですけれども、要するに今回は法人税率、中小企業の軽減税率を引き下げるけれども、公益法人の方は引き下げていないというところで差が縮まったと、ここらを不公平是正と勘違いしているようなんですね。あるいはそれを主張しているかのごとく見えるのですが、どうもその辺もおかしいと思うんですけれども、これはどうでしょうね。これだけでなくて、これを含めまして、宗教法人というものが不公平な税制の恩恵を受けていて、納税者にかなりの反感を買っている。この事実について、これをどういうふうに是正するかという点では、総理の願望はどうでしょうかね。
  189. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いささか専門的にわたりますのでお答えにあるいはならぬかもしれませんが、実際問題として、私も従来からいわゆる収益事業というものの限界、言ってみれば心に対して課税するというのはなかなか困難だと。私は出雲でございますので、出雲大社へ行ったら、ある人から、いやここで結婚式の披露宴もやります、しかしやはりあそこでやりたいなという心があるから、それでちょっと軽減税率になっておりますと、こういう説明を聞きまして、なるほどなと思ったこともございました。その心の問題は別として、いわゆる収益事業等々についての問題というのは、やっぱり厳格にやられるべきものでありますが、元来、宗教法人というのは心の団体でございますから、本当は不公平が存在しておってはいけないなと。むしろ宗教法人を、いつかも野末さんの御議論にもありましたように、買ってきて別の事業体をつくるというような風潮そのものがまさに間違いで、そこから是正しなきゃならぬもんじゃないかなと。元来、宗教というのは聖なるものであると私は思っておりますだけに、そんな気がいたしてしようがございません。
  190. 野末陳平

    ○野末陳平君 それからもう一つは、政治家についてこれが非常に問題になっているわけですが、これについては僕はこう考えるんですね。確かに我々は税制上の特典を幾つかもらっていて、それがみんな法律的な根拠もありますし、それなり意味もあるのはわかるんですが、あくまでもそれは我々の論理であって、一般納税者にはなかなかそれが納得してもらえないわけですね。ですからあの文書通信費、交通費の問題もあれば、パーティーの問題もある、政治資金の問題もある。結局これは納税者に納得してもらえないならば、やはりこれはこういう既得権の幾つかは捨てるといいますか、削るといいますか、血を出すというところを見せないと、これまた税制改革ではここだけがまたまた政治家は勝手に自分たちの都合のいいことだけは残しておいて、我々に悪いところを押しつけてという反対の理屈に結びつきやすいですね。それで、こういうばかなことをして税制改革にけちがつくよりも、僕はやはり政治家も既得権のどれかは少なくもメスを入れる、不公平税制を直すという建前からやるべきだなと、こう思っているんですよ。  そこで、もう時間がないんですけれども、例えば総理が、大蔵大臣も派手にパーティーをなさいましたけれども、あのパーティーに税金をかけるといってもなかなか考えたって難しいですね。やはり税の立場から、どういう税金がある、それよりも税金ではないが、そのうちの一部だけでも社会に拠出するような形で何か知恵が絞れないかとか、そんなようなことを考えるんですがね。ですから、何と何を課税しろということじゃありませんで、これは正しいんだから、政治家は特別なんだからということでやはり既得権を温存する、あるいはほっかぶりをして過ごすというのは、今回の抜本改革を前にして非常にマイナス要因になるとこれを痛切に感じますので、これについて御所見を伺って終わりにしたいと思います。
  191. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 一つは、いわゆる政治家といいますか、あるいは国会議員の、例えばこの特権とでも申しますか、そういう問題につきましては、今の野末さんの政治家としてのお考えというのはそれなりに承らなきゃいかぬことでございますが、まさに院の相談でお決めになって、役所も余り査定しないでという性格のものでございますので、それはその院の協議にゆだねるべきでございましょう、行政府の側から申しますならば。  それから、今のパーティー券の問題でございますが、私の所属いたしております自由民主党の中においても選挙制度調査会の中でいろいろこの議論をされて、時たま新聞もにぎわしておるわけでございますけれども、これらに対して主催団体を少なくとも政治資金規正法届け出団体にしようかとか、あるいはその明細をどのようにしようかというような検討がかなり込み入ってなされておるように聞いております。今の御提言のありましたような問題についても、恐らくは議論の対象として一部議論がなされておるではないかというふうに思っておるところでございます。
  192. 村上正邦

    委員長村上正邦君) これにて本案に対する質疑は終局したものと認めます。  総理ありがとうございました。
  193. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) どうもありがとうございました。
  194. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 御懇切なる御答弁、感謝いたします。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  195. 志苫裕

    志苫裕君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、反対の討論を行います。  既に成立している昭和六十三年度予算は、我が党がさきに本会議の討論の中で明らかにしたように、国民生活に背を向け、財政本来の役割を失ったものであります。  本法律案は、その予算に見積もった財源の不足分を特例公債発行や健康保険に対する国の負担を停止することなどによって調達しようとするものでありますが、歴代自民党政府の政策や財政運営の失敗のツケをこのような形で後世代にわたる国民一般負担や保健事業などに回すことは到底容認できないところであります。  政府は、みずからが招いた財政の危機に対処して、昭和五十五年以来「財政再建」を標榜し、「財政対応力回復」を掲げて、国民の暮らしや社会資本整備などに多大な犠牲を強いながら、例年のように法律をつくっては特別の財源を調達してきたのでありますが、その額は既に特例公債七十二兆円を含め、八十六兆円に達したのであります。  かくて国債発行残高は、赤字国債を含み百六十兆円を超え、GNPに占める債務の比率は世界一位に位し、仮に六十五年に特例債発行を停止したとしても、その返済には西暦二〇四九年、昭和百二十四年までを要するという財政事態に陥っているのであります。  私は、このような無秩序で緊張感のない財政運営を免罪にして、新たな財源調達を図ることに同意することはできないのであります。  昨年以来景気が上昇に転じ、税収が予想を超えて上回ったことから、昭和六十五年に特例公債発行を停止するという当面の財政目標が達成できる可能性が強まったとされております。だが、それはしばしば明らかにしたように、後年度への負担繰り延べなどの虚構に立つものであり、目標に対する財政努力の成果として手放しで喜べるものではないのであります。  また、景気の局面を子細に見ると、税収の好調さには経済政策や財政運営の的確さよりも、むしろ失敗が招いた地価高騰やマネーゲームの側面が見られることに注意を払う必要があります。  その当否の判断はしばらくおくとしても、当面六十二年度そして六十三年度において相当規模の税の増収が期待でき、一つ財政目標が達成可能な状況のもとにおいては、当然次の目標が設定されるべきであります。にもかかわらず何らの構想も示されないことは、依然場当たり的な財政運営とのそしりを免れず、的確な財政運営目標も設定のないままにひたすら税制改革、すなわち新消費税の導入によって安定的な増収装置だけを手に入れようと狂奔する政府、大蔵当局の姿勢を糾弾するものであります。  相当額の前年度税収増が見込める現段階においてなお意図的にか額を明示せず、剰余金の精査もないまま財源の調達枠だけを議会の同意を求めるというやり方は、白紙に借金の保証人としての判こを押せと言うに等しく、法律案の出し方として遺憾であります。  以上をもって反対討論を終わります。(拍手)
  196. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、賛成の意を表明いたします。  現下の我が国財政は、国債の累増により国債利払い費歳出予算の二割を占め、政策的経費である一般歳出を極力抑制しなければならないなど、依然として厳しい状況にあります。  このため、六十三年度予算においては、引き続き歳出面において既存の制度、施策の見直しなど徹底した節減合理化が行われておりますが、一方において内外からの内需拡大要請に配意し、NTT株式の売り払い収入を活用することにより、高い水準の一般公共事業費を確保するなど、限られた財源が重点的、効率的に配分されており、適切な対応であると考えます。  幸い、我が国経済もようやく上昇局面を迎え、税収が好調に推移しており、六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するという努力目標を達成できる見通しが立つようになりました。  しかしながら、このような厳しい歳出歳入両面からの見直しにもかかわらず、六十三年度において適正な財政運営を期するためにはなお財源が不足するため、本法律案によって、特例公債発行国債費の定率繰り入れの停止等の措置を講ずることは、いずれも必要にして、やむを得ないものと考えます。  まず、特例公債発行については、なお三兆一千五百十億円が予定されておりますが、前年度当初に比べ、一兆八千三百億円減額されております。  この結果、本年度の建設国債を含む公債依存度は、一五・六%と特例公債発行が始まった五十年度以降最低の水準に引き下げられたことに関して、政府努力を高く評価するものであります。  次に、国債費の定率繰り入れについてでありますが、国債の償還財源に充てることが制度的に確立しているNTT株式の売り払い収入により、現行償還ルールに基づく公債の償還に当面支障は生じないと見込まれることから、これを停止することは、必要かつ適切な措置であると考えます。仮に、定率繰り入れを行うとすれば、その財源特例公債に依存せざるを得ないからであります。  また、政府管掌健康保険事業に係る国庫補助の削減についてでありますが、この措置を実施しても、政管健保の事業運営に支障の生じないことが見込まれ、仮に将来、保険事業の適正な運営に困難な事態が生じた場合には、補助金の減額分の繰り戻しを行うなど適切な措置を講ずることとされております。  以上、本法律案に対する賛成意見を申し述べましたが、今や、国民的課題となっている財政改革の推進は、今後急速に進展する人口の高齢化や、国際社会における我が国責任増大など、今後の社会経済情勢の変化に対応していくためにも、また、我が国将来の発展にとっても、極めて重要な意義を有するものであります。  政府におかれましては、引き続き、国民の理解と協力を得て、国、地方を通ずる行財政改革に積極的に取り組み、歳入面におきましても、税制の抜本改革との関連に留意しつつ、財政対応力の回復に、万全を期されるよう強く要望して、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  197. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は公明党・国民会議を代表して、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し反対の立場から討論を行います。  反対理由の第一は、真実の財政再建から全くほど遠いということであります。すなわち、表面的には景気回復や土地暴騰、財テクブームなどで税収が上がり、またNTT株式の売却収入等を利用して六十三年度の赤字国債発行限度額は一兆八千三百億円減額して三兆一千五百十億円となり、六十五年度赤字国債ゼロに近づいたとされております。しかし、その実態を見ますと、相続いたマイナスシーリングのもとで福祉、文教予算初め中小企業対策予算等が全く圧縮され、また一般会計から五十七年度以降、特別会計へのツケ回しや後年度負担の繰り延べは地方への負担押しつけを含めて少なくとも十一兆三千五百億円に及び、そのほか国債整理基金特別会計への定率繰り入れ停止分が十二兆九千億円にも及んでいるのであります。これでは全く見せかけの財政再建にすぎず、今後の対応はまことに厳しいものが予想されるのであります。  第二には、六十三年度においても国債償還のための繰り入れを停止しており、償還財源としてのNTT株式の売却収入にも限度があり、今後の減債基金制度は非常に厳しい状況にあることであります。すなわち六十八年度以降には定率繰り入れを三兆円近く再開せねばなりません。  また第三には、今後の財政の立て直しを大型間接税の導入によって行おうとする意図があからさまに示されていることであります。  本来の財政再建は、不公平税制の是正や積極的な行政改革、補助金の整理などによって行うべきであります。その取り組みを怠り、逆進性が強く国民に大きな負担を強いる大型間接税の導入を画策していることに強く反対するものであります。  最後に、内需拡大を着実に進めるためにも与野党で合意した六十三年度の所得税等のこの減税を、税制抜本改革と切り離して、速やかに実施すべきことを強く要求いたしまして私の反対討論といたします。(拍手)
  198. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保特別措置法案に反対の討論を行います。  今日の財政危機の根本原因は、石油危機以来、政府・自民党が、財界の要求に沿い、極めて無謀な国債大量発行による財政ばらまき政策を強行したことにあります。  さらに、中曽根・竹下両内閣が、「財政再建」と称してこの六年間に進めてきた臨調行革路線のもとで、軍事費四三・一%増、経済協力費四四・八%増など、軍拡、大企業奉仕の歳出は異常突出させる一方、科学技術振興費を除く文教費〇・七%減、中小企業対策費二一・八%減、食糧管理費五四・七%減など、まさに福祉、教育、国民生活関連予算の軒並み大幅切り捨てを強行し、その結果、我が国財政借金体質は一層拡大、深刻化し、再建どころかまさに破綻に至ったのであります。  本法案に反対する理由の第一は、このような重大な財政破綻をもたらした政府・自民党と財界の責任を棚上げし、そのツケをNTT株売却など、国民の財産の食いつぶしと、膨大な量の赤字国債の恒常的な発行や借りかえなどで、現在及び将来にわたって、全く責任のない国民に転嫁し、乗り切ろうとするものだからであります。  反対理由の第二は、本法案による三兆一千五百十億円の赤字国債発行や二兆八千八十六億円の赤字国債借換債の発行は、国民本位の財政再建に背を向けた当面を糊塗する安易な財源確保策であり、財政危機を一層拡大深刻化させる根本原因であるとともに、元金償還を先送りして当面の負担を軽減するものの、将来にわたって国債残高の累増と利払い費の急増をもたらし、二十一世紀に向けて財政危機の圧迫を不可避にするものだからであります。  政府は、最近の金余り現象を背景にした財テクや土地投機など脆弱な税収増の好調持続、NTT株の円滑な売却、国民生活切り捨て型のより厳しい歳出抑制などを前提として、昭和六十五年度赤字国債依存体質からの脱却という財政再建目標は達成可能と述べています。しかし、これが仮に達成できたとしても、昭和六十五年度末で百六十八兆円に上る膨大な国債累積残高、財政再建の口実のもと本来一般会計負担すべきものを地方自治体や特別会計にツケ回ししてきた過去七年間の繰り延べ分の累積額約十一兆三千四百五十二億円、国の歳出繰り延べに当たる過去七年間連続の国債整理基金への定率繰り入れ停止措置の累積額約十二兆九千億円など、我が国財政借金体質は膨れこそすれ、いささかも改善されないのであります。  反対理由の第三は、四年連続の政管健保への国庫補助削減は、健保大改悪による受診抑制と患者負担増による黒字の発生を安易に国庫に召し上げるもので、断じて認められないからであります。  反対の理由の第四は、本法案がアメリカ・レーガン政権の世界戦略に追随しGNP一%枠連続突破の歯どめなき大軍拡の推進、民活の名による大企業奉仕の拡大、福祉・教育など国民生活関連予算の大幅削減、異常円高是認・経済構造調整の名による石炭、農業、中小企業等の切り捨てなどを強行し、公約違反の新大型間接税導入を意図する昭和六十三年度政府予算案の財源対策だからであります。  以上の理由により、本法案に断固反対であることを表明し、討論を終わります。(拍手)
  199. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対して反対の討論をいたします。  準憲法規範とも言うべき財政法では、国の歳出公債または借入金以外の歳入をもってその財源としなければならないことを定めております。これは財政が厳守すべき基本的秩序であります。この基本的秩序に背馳するがごとき特別措置は、正常な神経の持ち主であれば到底耐え得るものではありません。  しかるに、特別措置の国会提出になれてくるに従って政府当局はもう何も感じなくなってきたのでありましょうか。なれほど怖いものはありません。  今、百六十兆に及ぶ借金が子孫の世代にのしかかっております。急ぐべきは今の世代のうちに借金の残高を減らすことであります。その手段が今の世代国民に対する増税であることは論ずるまでもありません。生涯愚直を信条とされ、率直に増税の必要性を国民に問いかけられた大平元総理を今心から懐かしく思い、かつ評価する一人であります。  政府は今こそ財政の基本的秩序の原点に立ち戻るべきであります。もし政府国民に増税を問いかければ、国民から発した激しい指弾のあらしが政府と国会を襲うでありましょう。しかし、それに耐えることが、そして行政と国会が自己浄化に努力の限りを尽くすことが今求められていることではないのでありましょうか。  以上申し上げて、私の反対討論を終わります。
  200. 村上正邦

    委員長村上正邦君) これにて討論は終局したものと認めます。  これより昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  201. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、志苫裕君から発言を求められておりますので、これを許します。志苫裕君。
  202. 志苫裕

    志苫裕君 私は、ただいま可決されました昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新政クラブ・税金党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について所要の措置を講ずべきである。  一 我が国経済の安定的発展と国民生活の質的向上を期するため、引き続き徹底した歳入・歳出両面における見直し、特に、歳出における施策の優先順位の選択を一層厳正に行い、可及的速やかに特例公債依存体質からの脱却を実現するとともに、財源対策としては、中長期的観点からの対応を図り、財政の健全化 をすすめること。  一 今後とも公債に対する国民の信頼の保持に万全を期するため、その償還に支障なきよう、所要の償還財源確保に努めるとともに、日本電信電話株式会社の株式売払収入による資金の社会資本整備への活用に当たっては、国債整理基金の円滑な運営に支障が生じないよう十分配慮すること。  一 直面する内外経済情勢に対応し、我が国の均衡と調和ある経済発展を図るため、引き続き財政・金融政策の運営に当たっては適切かつ機動的に対処すること。  一 為替相場の我が国経済に与える影響が極めて大きいことに配慮し、今後とも各国との政策協調等を通じて、安定した為替相場の実現に努めるとともに、円高メリットが国民生活の向上に十分反映されるよう配慮すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ皆様の御賛同をお願いいたします。
  203. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいま志苫君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  204. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 多数と認めます。よって、志苫君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、宮澤大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。宮澤大蔵大臣
  205. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。
  206. 村上正邦

    委員長村上正邦君) なお、本案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  208. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  209. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  国際復興開発銀行、いわゆる世界銀行は、開発途上国に対する開発援助を促進する上で中心的役割を果たしている機関であります。  先般、世界銀行において、我が国を含む一部の加盟国の出資額を増額する総務会決議が成立し、我が国の出資シェアは五・一九%から六・六九%に引き上げられることとなりました。政府は、開発途上国の社会、経済開発における世界銀行の役割の重要性にかんがみ、同行の活動を積極的に支援するため、この決議に従い、追加出資を行うこととしております。  本法律案の内容は、政府が同行に対し、十一億七千九百六十万協定ドルの範囲内において追加出資を行うことができるよう、所要の措置を講ずるものであります。  以上が、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  210. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は次回に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時七分散会