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1988-05-11 第112回国会 参議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十一日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         村上 正邦君     理 事                 大浜 方栄君                 梶原  清君                 藤井 孝男君                 志苫  裕君                 多田 省吾君     委 員                 井上  裕君                大河原太一郎君                 河本嘉久蔵君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 坪井 一宇君                 福田 幸弘君                 矢野俊比古君                 山岡 賢次君                 山本 富雄君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 本岡 昭次君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 吉井 英勝君                 栗林 卓司君                 野末 陳平君    政府委員        大蔵政務次官   佐藤栄佐久君        大蔵省主計局次        長        斎藤 次郎君    事務局側        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    参考人        青山学院大学教        授        財政制度審議会        会長代理     館 龍一郎君        全国銀行協会連        合会会長    藏原 千秋君        専修大学教授   松田  修君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として青山学院大学教授財政制度審議会会長代理館龍一郎君、全国銀行協会連合会会長藏原千秋君、専修大学教授松田修君、以上三名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。参考人方々から忌憚のない御意見を承りまして、法案審査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の進行上、最初に参考人方々からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えをいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしく御協力のほどお願いをいたします。陳述いただきます順序は、お手元に配付してあります参考人名簿記載順でございます。  それではまず、館参考人からお願いをいたします。館参考人
  3. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) ただいま御紹介いただきました館でございます。  本日は、この委員会で私の考えております意見を申し述べる機会を与えていただいたことを大変光栄に存じております。早速私の考えているところを申し上げて、御参考にしていただければということで始めさせていただきたいと思います。  今さら申し上げるまでもないことでございますが、国債発行によって資金調達するという調達方法は、税による資金調達に比べてどうしても容易であるために、国債依存によって財政を行ってまいります場合にはとかく財政節度が失われて、その結果、財政の膨張であるとか財政硬直化といったような弊害が生ずる危険が大きいのでございます。財政学者は、公債発行についての見せかけのコストが非常に低いためにそういう現象がしばしば起こりやすいというように申しております。これらの弊害を除去するために、政府は、昭和五十五年度以降財政再建政策の重要な目標といたしまして、歳出節減合理化に取り組んでこられたところであります。  他方世界における日本経済の現在の状況考えてみますと、日本経済の他位の向上から、我が国世界経済の調和ある発展のために、従来の外需主導型の経済から内需主導型の経済転換することが強く期待されておるのが実情でございます。もちろん従来の外需主導型の経済は、何も日本政策責任だけによって生じたものではなくて、外の政策によって、強いドルという政策によってドル高が生じ、そのドル高が生じたために生じている面もあるわけでありますが、日本の現況を考えますと、当然日本責任として内需主導型の経済転換していく必要があるのが実情であると思います。  このような二つ要請に対して同時にこたえるために、政府は一方で歳出節減合理化に努め、特に赤字公債削減努力すると同時に、一方では不要な規制を廃止ないし緩和して、民間の活力の十分な発揮を図ってまいり、さらにNTT株売却収入活用等で、公共事業事業規模は対前年度二〇%を超える水準に引き上げる等の施策を講じられたというように了解しております。  以上のような努力の結果、特例公債につきましてはその発行額を当初予算において一兆八千三百億円減額して、発行限度を三兆一千五百十億円とされ、さらに一方では、特例公債発行しながら他方公債償還のための財源国債整理基金繰り入れるというのは、借金をする一方で借金の一部をそのまま元利返済のために積み立てておくようなもので、常識的に見てもおかしいのではないかというように考えられるわけであります。  さらに、整理基金には幸いにして国債整理基金特別会計に帰属しておりますNTT株売却収入が六十三年度も三兆八千五百億円強見込まれるので、その残高は五兆円を超えまして、償還支障を来すおそれがないというように考えるわけであります。そこで定率繰り入れを六十三年度も停止するということを提案されておるわけであります。  また、一般会計から厚生保険健康勘定への繰り入れについても、これも六十三年度も一般会計特別会計現状を勘案して六百五十億円を減額して繰り入れるということとされているわけでありまして、これらの措置は、財政現状考えた場合、やむを得ない措置であるというように考える次第でございます。  次に、そのように考える理由について述べてまいりたいと思います。  まず、財政特に一般会計現状は、毎年の歳出節減合理化予想外歳入増加等もありまして、公債依存度は五十四年度をピークといたしまして毎年低下し、六十三年度の当初予算依存度は一五・六%に下がっております。しかし、国債発行残高は約百五十九兆円、公債費一般会計歳出に占める割合は二〇%という状態にありまして、これは決して健全な姿であるとは申せないと存じます。  しばしば私自身国会でも陳述する機会がございましたが、私自身は、経済が順調に発展しているというような状況のもとでは、少なくとも赤字公債発行に依存しない状況が望ましいというように考えておりまして、そういう観点から、財政当局財政再建目標特例公債依存体質からの脱却公債依存度の引き下げとしている点は妥当な考えであるというように考えております。  したがって、赤字公債一兆八千三百億円の減額はおおむね妥当というように考えております。六十二年度のように税の自然増収が生ずるということがあれば補正においてこれをさらに減額することを考えるべきであるというように考えております。六十一年度、六十二年度の税の自然増収を一時的な現象と見るか否かという点については見解が分かれておりますが、現在の状況から見ると、私自身は六十五年度赤字公債脱却という当面の目標については、歳出合理化努力を続ける限り必ず達成されるに違いないというように考えております。  これに対しまして、外需主導から内需主導への転換を強調される人々から、内需主導転換するためには一層積極的な財政政策が必要であるという主張がなされる場合が少なくございませんが、経済構造転換にとって最も重要な役割を果たすのは何かと申しますと、それは為替レート変化中心とした相対価格変化でございます。輸出品価格が上昇し輸入品価格が下がるといったような相対価格変化構造転換にとって最も重要なものであるというように考えております。そして、そういう為替レート変化中心とする相対価格変化効果が現にあらわれつつあるというように理解しております。  もちろんそうは申しましても、財政が何もしなくてもよいと言うのではございませんが、短期的にはともかくといたしまして、財政赤字政策の長期的な効果ということを考えてみますと、かつて考えられたほど赤字政策景気に与える効果は大きくないというのが現在の通説ではないかというように思っております。財政景気対策について言えば、まさに「助け長ずること勿れ」——無理はしない方がいいという考えでございます。国内景気につきましては、一時心配されたこともあったわけでございますが、交易条件改善の結果、つまり輸入品価格が相対的に下がってくるということの結果が日本経済全体に浸透してまいりまして、その結果、景気は着実に改善しているというように申してよろしいと思います。私自身交易条件改善効果はもう少しおくれてあらわれるのではないかというように考えておりましたが、予想外に早く交易条件改善効果があらわれて、日本経済は着実な発展を示しておるというように申してよろしいと思います。  なお、以上との関連で、NTT株式売却収入を減税や経常支出増加等に充てるべきであるという考え方もあり得ると思います。しかし、一般の家計の場合でも、自分の財産を売ってそれを消費に充てるのはいわば末期的な状態でありまして、経済学の上では保有している資産を売却するのは負の貯蓄(ディスセービング)というように申しておりますが、このNTT株売却益はいわばディスセービングでありますから、緊急の場合を除いてできるだけ建設的な用途にこれを充てていくのが望ましいというように私は考えております。  さらに、赤字公債上乗せ償還にこれを充てるという考え方もあるやに伺っておりますが、歳入が減少するということになりますから、歳出が同時に減少しない限り、その分結局建設公債等公債発行せざるを得ないということになるので、これも適当でないというように考えております。  次に、減債基金そのものについてでございますが、減債基金役割についてはいろいろの考え方があります。  一番極端なのは、二重に資金を必要とするという意味減債基金というのは非常にむだの多いものであるから本来廃止すべきであるというのが一方の極の考え方でありまして、それも論理的には一つ考え方であるというように考えております。ただ、それがない場合に、設けることと廃止することとでは意味が多少違ってくるという面があります。したがって、これを廃止するというようなことについては十分慎重であるべきであると思います。  しかし、そうは申しましても、国債償還について一番重要なことは、返済の時期が一時点に集中し、これが市場攪乱要因にならないということが一番重要なことであるというように私自身考えておりまして、あとはいわば財政節度を求める一つの形として減債基金の取り扱いは慎重に検討されるのが望ましい、こう考えておるわけでございます。  大変雑駁でございますが、一応予定の時間になりましたので私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  4. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、藏原参考人お願いをいたします。
  5. 藏原千秋

    参考人藏原千秋君) ただいま委員長から御指名をいただきました全国銀行協会連合会藏原でございます。  大蔵委員会の諸先生方には、私ども銀行界といたしまして常日ごろ大変お世話に相なっておりまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。  本日は、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に関しまして、私ども意見を申し述べるようにということでございますので、幾つか私どもの意えますところを申し上げさせていただきたいと存じます。  まず、昭和六十三年度予算についてでございます。この予算は、財政改革を引き続き強力に推進いたしますとともに、内外からの内需拡大要請にも配慮するといった二つの命題を同時に追及する編成となっておりまして、財政当局の並み並みならぬ御努力がうかがえるものと私ども大変評価をいたしておるところでございます。  歳出面につきましては、昨年に引き続きまして景気持続的拡大及び内需主導型経済への移行という内外からの要請にこたえるべく、公共事業関係費を前年度の当初予算に比べまして約二割増というふうにいたしております。その一方で、経常経費につきましてはこれを厳しく削減しまして、その結果、歳出総額から国債費地方交付税交付金を除きましたいわゆる一般歳出は、前年度に比べまして一・二%の増加に抑制いたしておりまして、財政再建路線が維持されたものとなっております。  一方、歳入面では、景気回復に伴います税収増という要因に加えまして、NTT株売却収入を有効に活用されました結果、新規財源債は前年度当初予算に比べまして一兆六千六百億円の削減が行われ、八兆八千四百十億円と、昭和五十三年度当初予算の八兆四千八百億円以来の低い額となっております。公債依存度は、昭和五十四年度の三四・七%をピーク漸次低下が図られまして六十三年度では一五・六%にまで低下し、フロー面での財政改革は着実に前進したものと言えると思います。  しかしながら、ストックの面で見てみますと、公債残高は六十二年度末で既に百五十兆円を超え、また、利払い費歳出総額に占めます割合は六十三年度予算で一九・五%というふうになっておりまして、依然として厳しいものと言わざるを得ない状況にあるわけでございます。この点につきましては、欧州主要国はもちろん、財政赤字縮減を強く求められております米国よりもさらに厳しい状況にあるのでございます。  ちなみに、米国の一九八九年予算教書によります同国におきます国債依存度は一 一・八%、利払い費歳出総額に占めます割合は一三・九%というふうに伺っております。  今後を展望いたしますと、急速な高齢化の進展や、我が国に期待されます国際社会における一層の責任増大等にこたえてまいりますためには、財政がその対応力を早期に回復しておくことがぜひとも必要であるというふうに考える次第でございます。こうした意味におきまして、これまでも行財政改革が推進され毎年度歳出歳入構造合理化適正化に最大限の努力が重ねられてきたわけでございますが、こうした努力は引き続き持続してまいる必要がありますとともに、景気が堅調で、経済運営が安定的に推移している現下のようなときにこそ、将来的展望を持って推進しておかなければならないというふうに考える次第でございます。  次に、財確法の内容について申し述べさせていただきます。  第一に、特例公債発行についてでございます。昭和六十三年度予算におきます特例公債発行額は三兆一千五百十億円が予定され、昭和六十二年度と比べまして一兆八千三百億円の減額となっております。この発行額は、昭和五十年度補正予算特例公債発行されるようになりましてから、当初予算ベースとしては最も小さくなっております。  今回、特例公債が大幅に削減されたことによりまして、「昭和六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却」という財政再建目標実現性は以前に比べれば高まってきたと考えられますが、これを実現いたしますには、歳出の抑制を引き続き持続していくことが大前提となるわけでございます。歳出繰り延べ措置歳出項目の移動など、いわゆる臨時的な手段に頼って歳出を抑制いたしますことにはおのずから限界がございます。何としても、行財政改革基本理念のもとに、もろもろの制度改革行政機構簡素化を引き続き強力に推進してまいりますことが今後ともますます重要になってくると考える次第でございます。  第二には、定率繰り入れ停止であります。昭和六十三年度におきましても国債整理基金特別会計への定率繰り入れは引き続き停止されるということでございます。同会計の保有するNTT株売却収入によりまして、今回繰り入れ停止いたしましても現行の償還ルールに基づいた償還計画には支障が生じないということでございますので、特例公債発行縮減を第一とする見地からは、やむを得ない措置であろうかと考えております。  ただ、NTT株式売却収入は、恒常的な財源ではございませんので、財政健全性並びに財政負担世代間平準化という観点から申しましても、やはり将来の国債償還のための財源をあらかじめ積み立てて確保するという減債基金制度の趣旨が尊重されていくことが望ましいと思う次第でございます。こうしたことから、定率繰り入れ停止につきましては、現財政事情下のあくまでも暫定措置とすべきであるというふうに受けとめております。  ここで、せっかくの機会でございますので、平素から私ども考えております国債問題一般につきましての考え方を若干の要望も交え申し述べさしていただきたいと存じます。  第一は、市場実勢に即した発行条件改定であります。国債市中消化を進めますためには、金利価格といった発行条件市中需給実勢を反映させて決めることが必要であります。この点、近時は弾力的改定が行われておりますが、今後、金利上昇局面におきましても、対応がおくれるということがないよう一層市場実勢を尊重した発行条件の決定が行われますことを強く要望するものでございます。  第二は、流通市場の一層の整備、拡充についてでございます。我が国国債流通市場は、逐次整備、拡充され、今年度におきましても、二十年債先物市場の創設、海外での日本国債ワラント発行解禁等が実施に移されるわけでございますが、今後とも投資家のニーズを酌み、これを推進していただく必要があろうかと存じます。  第三は、郵便局国債窓販自主運用についてでございますが、窓販については、民間金融機関との権衡を失うことのないように、また自主運用においては、公社債市場への影響を考慮し、節度ある運営がなされますよう要望いたしたいと存じます。  また、国債定額貯金のような組み合わせ商品の開発につきましては、官業である郵貯にはおのずから節度が望まれます。いずれにいたしましても、定額貯金の見直しを含めた小口預金金利自由化を論議している矢先での郵政省の強引な姿勢には多分に問題があろうかと存じます。そもそも郵貯のあり方につきましては、臨調、行革審の答申で結論は出ているはずでございます。  最後に、国債発行方式についてでございます。我が国におきまして、戦後国債発行されることとなりました昭和四十年度以降、国債市中消化を原則といたしまして、国債引受シ団を中核に安定的な消化が図られてまいりました。この間、発行方式多様化見地から一部に公募入札制が実施され、昨年度からは入札発行がさらに拡大されることとなったわけでありますが、シ団引受制度発行額全額調達という保証機能をもちまして、一貫して安定消化のための中心的役割を果たしてまいりました。もとより、入札制には発行条件に対する市場実勢の十分な反映という利点が認められますが、反面、必要な時期に所要の調達額を常に確保できますかどうか、特に国債の市況や消化金融環境に左右される面が大でありますところ、現在の金融緩和局面転換した場合にも円滑にワークいたしますものかどうかはなお見きわめがたいものがあります。したがいまして、今後とも大量の国債を安定的かつ円滑に発行消化していくためには、引き続きシ団引き受け入札発行のメリットを生かしつつ、両者がバランスを失することのないようにしていくことが肝要と考える次第であります。  以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  6. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、松田参考人お願いをいたします。
  7. 松田修

    参考人松田修君) 御紹介にあずかりました専修大学松田でございます。  本日は、財政の問題につきまして私見を述べる機会を与えていただき大変ありがとうございました。既にもうお二人の参考人から大変参考になる重要な論点が出てきております。できるだけ私は重複を避けながら私見を開陳させていただきたい、そういうふうに考えております次第でございます。  さて、財政再建の問題でございますが、既に五十五年度以降とられてきました財政再建のそれぞれの官庁及び国会での御努力、そういうものが実を結びまして、国民経済的に見ました場合にはかなり望ましい状況が出ているところだったと私は考えておりますが、さらに最近になりまして、もう一つ新しい状況が出てきたというのが私の見方でございます。  と申しますのは、御案内のとおり、六十一年度の第三・四半期以降、日本経済はそれまでの円高不況、俗にいいます円高不況という状況からようやく脱する兆しを見せ始めまして、六十二年度になりまして以降は顕著に拡大の方向をたどるというふうな状況を見せ始めているわけでございますが、それ自体がまた財政再建にとりまして極めて望ましい効果ないしは影響をもたらしてきているということが最近になって認められる状況になってきたというのが私の認識であります。それが第二点でございます。  以上の二つの点について、もう少し具体的にお話を申し上げたいわけでございますが、国債の管理及び財政の問題につきまして、やはり一番問題になりますのは、もちろん国民経済、とりわけ国民の所得にとりまして、巨額に上ります国債発行残高から生じます利払い費負担というものがどんどんどんどん上がっていく、つまり発散的に負担がふえてくるという状況が一番望ましくない状況、まさにこれはマクロ経済的に見ても、財政破綻のケースでございます。そういう状況を避けなければならないということは、これはどのようなお方でもお考えになる問題でございますが、そういうふうな状況というのは、六十一年度ないし六十二年度以降、どうやら避け得る可能性が出てきたというのが実情だと考えております。  と申しますのは、御案内のとおり、六十一年度以降、六十二年もそうでございますが、当初ベース考えました場合でも、国債利払い費と、それから国債新規発行額とがほぼ同額になっている、あるいは六十二年度当初で見ました場合には、むしろ利払い費の方が国債新規発行額を上回っているというふうな状況でございます。これは、俗に借金利払いのために国債発行しているのではないか、これはサラ金財政ではないかという批判がないではないわけでございますが、しかし逆に観点を少し変えて見ます場合には、利払い費国債新規発行額同額であるということは、それはある意味では、GNP国民総生産)の、つまり国経済規模に対する国債残高が次第に一定水準に収れんしていく可能性を深めているということを意味すると考えられるわけであります。と申しますのは、言うまでもなくGNPというのは、名目の成長率の複利の計算でふえていくわけでございましょう。一方、国債利払い費だけが新規国債発行額として出てくる場合には、その国債残高というのは国債の利子分の複利計算でふえてくるということでございますから、残高は利子の複利計算、それからGNPは名目成長率の複利計算で伸びていく。  そこで、もしも利払い費の利子率が名目の成長率を上回りまするとこれは問題でございますが、これは恐らく両者は大体同水準に落ちついていくというのが均衡経済の常識でございましょうから、大体こういうふうに国債利払い分だけ新規国債発行されるという状況は、GNPの中に占めます国債残高の比率がどうやら四三ないし四五%というところで収れん状況に入ってきたということのあらわれである、というふうに考えてもそう大きな間違いではないと考えていたわけでございます。  しかしその後、六十三年度の予算におきまして、国債新規発行額は顕著に利払い費を下回る八兆円強、九兆円弱というふうな水準になっているわけでございますから、恐らくこの状況から考えますと、六十一年度ないしは六十二年度あたりをピークにいたしまして、GNPに占めます国債残高の比率というのは次第に漸減の方向、低下の方向をたどるというふうな、極めて望ましい状況が出てきているというふうに考えるわけであります。  ただ問題は、もう一つの問題、財政本来のあり方から見まして、俗に言います赤字国債特例公債でございますが、それがいまだにまだ発行せざるを得ないという状況である。これは恐らく今、これまで申しましたようなマクロ経済的な観点だけでは判断できない問題を持っている。つまり財政というのも一つ会計でございますから、会計というものにはやはり一つのディシプリンと申しますか、倫理観というか節度というものが必要でありまして、先ほど館参考人からお話がございましたように、特例公債発行されているということは、経済主体としての財政そのものが負の貯蓄、つまりマイナスの貯蓄というのを持っているということであります。そういうふうなマイナスの貯蓄を出し続けるということは、一つ会計としての、一般会計としてのやはり健全性節度の維持というところから確かに問題があるということは言わざるを得ないわけでございます。  その場合にもう一つ経済的に一体赤字国債が本当に悪いのかどうかという問題になるわけで、倫理観だけではなくて経済的にも問題があるのではないか、確かにございます。それは、例えば赤字国債というのは、今申しましたようにマイナスの貯蓄でございますから、したがって、例えば中央政府なら中央政府というものがありまして、それの資産と負債の関係を考えました場合、負債がどんどんふえていくわけでありますから、資産から負債を引きました分の正味資産というものはだんだん減ってくる、逆にマイナスになっていく。現実に国民所得統計、企画庁の出しました統計によりましても、中央政府の正味資産というのは大きなマイナスになっているという状況になっているわけでございまして、そういうふうな正味資産というものがあるからこそ、ある程度国民に対する公共財のサービスあるいは福祉サービスというのができるというふうに観念いたしました場合には、そういうふうな正味資産の減っていく状況というのは、果たして望ましいかどうかというのは多大の問題があるわけでございます。  しかし、この点につきましても、先ほど申しましたような六十一年度第三・四半期からの経済、俗に申します円高不況からの脱却の動きが財政に極めて望ましい影響を与えているということも見逃すことはできない点だと私は考えております。もちろんそれまでに今までの財政再建ないしは行政改革という面からの御努力が実を結んだ点、例えばNTT株の売却収益が入ってきたというふうな望ましい条件がつけ加わったことは事実でございますけれども、それだけではなくて、内需の拡大経済拡大というものを通じまして税収がそれまで以上にふえてくるというふうな、極端な言い方をいたしますと財政が、拡大均衡とは申しませんが、拡大均衡化の方向に動き出したやに見られるというところが重要な点であるというふうに考えられるわけであります。もちろん俗に申します円高不況からの脱却というのは、それだれその相対関係の変化に対する民間経済の適切なる対応というものが実を結んだことは間違いございません。しかし、それだけではなくて、六十一年度以降とられました財政面での景気の下降を防ぐようなそれなりの御努力、とりわけ六十二年度の補正予算以後のいわゆる経済対策というものがそれなりの働きをしたことは間違いないのではないかというふうに私は思っているわけでございます。  経済学の部門におきましても、財政景気刺激ないしは成長に対する効果というものは、以前ほど高くないというのがもちろん多数意見ではございますけれども、しかし、五十七、八、九年ごろの財政を見ました場合には、財政再建という問題から生じますとりわけ公的固定資本形成の伸び悩みないしはマイナスというものが経済全体の成長の足をむしろ引っ張ったという面はないとは言えないわけでございまして、例えば半年度ベース、つまり四—九、十—三月というふうな半年度ベースで見ました場合の公的固定資本形成のそのときそのときの成長に対する寄与度、これはパーセントポイントで出しますが、寄与度を見ましても、五十四年度以降は、半期ベースで見まして公的固定資本形成が二期続けて、つまり二半期を通じて続けてプラスになったことはないわけでございます。プラスになったりマイナスになったりゼロになったりしているわけでございます。それが改まりましたのが六十年度の下期以降でございます。  六十年度の下期以降は、公的固定資本形成の実質成長率に対する寄与度はずっとプラスを続けておりまして、この辺から日本経済円高不況への対応というのがどうやら軌道に乗ってくるというふうなその足がかりをつくったという可能性はあり得るわけでございます。六十年度下期の公的固定資本形成が、その前の期、つまり六十年度上期に比べましてプラスになりましたのは、恐らくこれはその当時におきまして公共投資のおくれが出まして、下期になってそれがふえてくるというふうな状況だったと思いますが、六十一年度以降はそれなりに財政の方も極端な成長の足を引っ張るというふうな状況から変わってきていたということがここにあらわれておりますのではないでしょうかというふうに思うわけでありまして、六十二年度下期以降、六十二年度の上期までしか私は手元に数字は持っておりませんが、成長の寄与度はずっとプラス、つまり四期続けてプラスということは、五十四年度以降には少なくともそういう状況はなかった、そういうふうな財政が積極的に足を引っ張ることがなくなったことが円高不況からの脱却一つの大きな要素になったんだろうというふうに私は認識しているわけでございます。  そういうわけでございますので、財政というものは、先ほど申しましたマクロ経済的に見ましても、財政そのものの中での赤字国債の問題につきましても、どうやら現状はそれほど楽観はできないにしても、方向としては若干希望の持てる状況が出てきたことは間違いなかろうというふうに考えておりますとともに、現実にも赤字国債発行額は、先ほど両参考人がおっしゃいました六十五年度に赤字国債から脱却という可能性は強いばかりでなく、私個人は、うまくいきますと六十四年度の決算ベースでは、ひょっとすると赤字国債ゼロに近いところまで持っていける可能性もあり得るのではないかというふうに考えているわけでございます。  新聞報道でございますが、印紙税を含めました税収でございますが、六十二年度は決算ベースで恐らく税収は四十五兆円ぐらいまでなるんじゃないかというふうに言われておりますが、そういうふうな状況が続きますならば、六十四年度中に赤字国債脱却というのはやろうと思ったらできないことでもなかろうかというふうに私は考えているわけでございます。  そういうことでございますので、それはやはり財政が緊縮からある程度中立的になってきたということが、これが今のような拡大均衡化の方向を出してきたということだろうと私は考えておりますので、今後、財政は極端な緊縮を避け、しかしみだりに拡大する必要はないのであって、今のような経済状況ですと財政経済全体を引っ張るという必要はないわけでありますから、少なくとも中立、つまり公的固定資本形成が名目の成長率と同じぐらい伸びるような、そういうふうな状況をつくっていく方が望ましいのではないかというふうに考えているわけでございます。  最後に、だからといってすべて楽観的というふうに申し上げているわけじゃございませんで、まだまだ行政改革は当然必要でございます。御案内のとおり、国の財政というものは、実のところ申して、ほとんどが特別会計でございますとかあるいは地方への補助金でございますとか、あるいは公社公団のようなそういうところへ繰り入れられているのが大部分でございます。一般会計独自で使っているのはそんなに多くございません。恐らく一五%以内というふうに考えております。  そういうことを考えますと、やはり特別会計あるいは公社公団あるいは補助金というものを制度的にもう一段見直しまして、そうして効率的で健全な財政支出をしていかなければならないという点におきましては、何ら以前と事態は変わっていない。ただ、方向としましては、若干と申しますか、希望が見えてきたということでございまして、私は本年度につきましては、少なくとも今のような好調な経済拡大基調が続くということを考えております。それを前提にいたしますなら、マクロ経済的に見ましても、財政本来の姿で見ましても、方向は改善方向にあるというのが私の考え方でございます。  どうもありがとうございました。
  8. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 志苫裕

    志苫裕君 どうも参考人先生方、大変所説をお伺いできましてありがとうございました。    〔委員長退席、理事梶原清君着席〕  最初、館参考人にちょっとお伺いしたいわけですが、これは松田先生にもお伺いしたいかなと思うんですけれども、実はこの委員会で大蔵当局とそれぞれ各委員の間で、そもそも何をもって財政再建と言うのか、あるいはまた財政対応力の回復というのが財政改革目標とされておるんですが、じゃそういう場合の指標というのは一体何なんだという議論が随分行われているわけです。ですけれども、なかなか大蔵当局もこれ慎重でして、いま一つ鮮明にならない。  それからまた、六十五年に特例公債発行をやめようという一つ財政目標は、今ほどお話もありましたように、まあ頑張れば実現ができそうだと、こういうところまできたんだが、そうなると当然次の財政目標は何になるのかというところにいくわけでして、そこになるとまた口がかたくなって、なかなかはっきりしてこないということを続けておるわけですね。  それで、幸い先生方おいでになったので、今私が述べたような点について、突き詰めていえば、六十五年目標まことに御同慶の至りだが、さて次はというとなかなか定まらない、そういう問題についてひとつ御所見があれば伺っておきたいと思うんですね。
  10. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) それではお答えいたします。  ある意味では大変難しい問題でございます。と申しますのは、経済理論の上で財政再建というのはかくかくしかじかであるということを一義的に規定することができるのかと申しますと、そういう理論は残念ながらないわけでございます。  そこで、財政再建を何と考えるかということについては、それぞれの経済学者の主観がどうしてもそこに介入するという点があります。そういう意味で非常に難しい問題というように私自身考えておりますが、しかしいろいろな状況を勘案して、私自身はここ約十年近くいつもそういうように申し上げておるわけでございますが、経済が順調に発展しているという状況を前提とした場合、財政赤字公債発行に依存しない状態というのをもって財政再建というように考えるのが適当ではないか。健全財政という場合に、財政収支が均衡していることをもって健全財政というふうに定義いたします。しかし、これも経済学的に非常に厳密に申しますと、それがいつでも正しいのかというような点については意見が分かれるわけでございますが、財政節度という点から、それを一つの基準とすべきであるという考え方があるのとちょうど同じような意味におきまして、私は財政再建を今のように定義する、規定するのがいいんではないかというように考えているわけでございます。  六十五年度に仮に赤字公債からの脱却が行われた場合に、それでは次の財政政策目標財政目標は何かという点でございます。私の立場がここに二つ書いてございまして、やや微妙でございます。  財政制度審議会では、御案内のように、予算の編成の際に建議をいたしております。その財政制度審議会での建議の際には、いつも単に赤字公債からの脱却だけではなく、さらに公債依存率を下げていくことが望ましいということを述べているわけでございます。したがって、それが財政の今後のあり方を考える場合の一つのよりどころになるということは申し上げなければならないと思います。  ただ今度、非常に使い分けをして申しわけございませんが、一人の経済学者として申し上げますと、赤字公債依存から脱却した後において財政目標は何かといえば、本来の財政目標に戻るのではないか。つまり、そのときどきに最も必要とされる公共財の提供を適正に行っていくというのが財政の第一の目標であり、所得再配分、適正化を図っていくというのが、これが財政目標でございますから、赤字公債に依存しない状態においてこれらの目的を適正に果たしていくということが財政目標というように申してよろしいのではないかというように考えております。  以上でございます。
  11. 梶原清

    ○理事(梶原清君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  12. 梶原清

    ○理事(梶原清君) 速記を起こして。
  13. 松田修

    参考人松田修君) 財政再建というものをどういうふうに考えたらいいかということになりますと、六十五年度までに赤字国債から脱却するというのは一つの中間目標だったというふうに考えているわけでございまして、最終的な目標は一体何かと申しますと、やはりそれは館先生のおっしゃったように、経済が均衡的に成長していきます中で負の貯蓄が行われないということが一応の目標になるというふうに私も考えております。  それで、それ以降何を目標にやっていくか、それも館先生のおっしゃったとおりと思いますが、一つつけ加えますことがあるとしますならば、やはり歳出の中に占めます国債費の比率が二割近いということは、当然これは財政硬直化につながりやすいということは確かでございます。  この点に配慮いたしますならば、それを落としていくのに一体どうしたらいいかということになりますと、やはりそれは何らかの形でと申しますか、政府の資産をもっと適正に評価できて、それがちゃんと中央政府の資産として計上できるような状況、大変申しにくいんですが、例えばNTTの場合をお考えいただいたらよろしいかと思いますが、そういうふうな状況をつくりました場合には、より予算編成上の制約というのが精神的にも少なくて済む、財政当局も手を縛られなくて済むような状況が出てくるというふうに考えるわけでございます。  そういうふうにやって、そしてそういうふうな資産が再評価されるという状況ができまして、それが民営化という形で世間に対して、民間経済に対して何らかの形で金融資産を提供できるということになりました場合には、国債残高は減りましてもそれほど問題はないというふうに考えておりますので、国債残高だけどんどん急激に減らしていくということは金融的にも問題が生じてくると思いますので、ゆっくりとやる。もしもたくさん減らすならば、そういうふうな政府の資産の再評価というふうな措置を何らかの形で取り入れればいいのではないであろうかというふうに考えております。  以上でございます。
  14. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと私も座って発言しますので、どうぞ皆さんも座ったままで御答弁なさってください。  今の松田参考人のお話にちょっと関連をするんですが、あるいはまた何をもって健全財政と言うかということに関連するんですが、今の財政法の建前は国債なんか出しちゃいけないということになっていまして、ですから、建設国債であれ赤字国債であれ、出すのは本筋じゃないという建前になっていますが、しかしこれに対して、常にある程度の借金を抱え込んだ財政というふうなものがあるんだという、そういう説がないわけでもない。  今、ゆっくり減らしてというお話の意味の中には、国債発行している側からすれば借金だけれども、それを買っている側から見れば資産なわけでして、その資産形成、資産運用、あるいは国民経済的な観点ではマイナスばかりでもないという論理もその中にはあるんでしょうし、あるいはまた特にいつの間にか四条債と特例債を分けちゃったんですが、何となくですね、その中には余りようけになるので分けようという、見せかけを少なくするだけじゃなくて、四条債の方は社会資本の形成をしていくんだから世代間の負担の平準化といいますか、そういう論理でいけば必ずしも悪いものじゃないという論理がこの中にあるのかもしれませんね。そうなってくると、常に一定程度の借金を抱え込んだ財政というものに一から十まで全部悪いとばかりも言えないという論理が生まれてくるのではないか。そうしますと、今の財政法は世の中に合わないのであって、本則を少し見直したらどうという議論が出てきても不思議ではなくなるとも考えられるんですが、ちょっとこの辺の考え方について御意見があれば伺いたい。館先生と松田参考人、どうですか。
  15. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) ただいまの御質問でございますが、建設国債とそれから特例債とではやはり性質が非常に違うというように私自身考えております。財政学の中では建設国債とその他の国債とを区別しないという考え方ももちろんあるわけでございますが、私自身はこれは明瞭に区別するのが適当であるという立場をとっております。  御承知のように、財政法でも国によって建設国債を区別している国と区別してない国がございます。日本は区別する立場をとっておりまして、その立場に私は賛成といいますか、区別する立場をとっております。そうして、ある程度長期にわたって資産が存続するような財の建設、つまり公共事業等につきましては、そのある部分を建設国債発行によって賄っていくのが適当であるというように私自身考えております。  二つの理由がございます。一つは、将来世代と現在世代との間の負担の公平化という点でございます。もう一つは、全く国債がないという状況考えた場合に、その国の流動性が不足して金融上の支障が生ずる。そういう意味から申しまして、金融の円滑な運営のために、ある程度の公債が出ておるということは望ましいというように考えております。その二つの点から、建設国債が全くないという状態ではなくて、建設国債がある程度発行されるということ自身については、私はそれが当然であるというように考えております。  しかしそうは申しましても、建設国債であってもこれが借金であるということ自身には変わりがないわけでございますから、公共事業のためであれば何でも建設国債でやってよろしいとまで考えているわけでございませんで、財政硬直化を避けるためにはそこにおのずから節度があろうというように考えている次第でございます。
  16. 志苫裕

    志苫裕君 松田先生何か所見ございますか。別に私が今そういう意見を持っているという意味じゃないので、そういう所説もあるものだということで伺っている。
  17. 松田修

    参考人松田修君) 大変難しい問題でございますが、ただ、国債というのは、金融資産と考えた場合には特例公債も四条公債も変わりはないことは金融資産としてはそのとおり。負債として考えた場合、つまり一般会計の立場に立ちました場合にはやはり区別がある。それは特例公債というのは負の貯蓄であるという点でやはり臨時異例のもの以外ではあり得ないというふうに考えるわけでございます。  一方、建設公債、つまり四条公債というのはどうかというお話でございますが、それはそのときどきの国民経済の中におきますやはり貯蓄と投資の関係というのを十分考えまして、それによっておのずから決まってくるものではないか。例えば民間経済が非常に貯蓄超過のような状況のもとですべての公債発行というのを禁じてしまうような状況というのは、極めて貯蓄超過のデフレ経済を形成することになってしまいますから、その辺のところはやはり建設公債につきましてはそれほどリジッドに考える必要はないのではないか。  ただ、これからの経済というのは、御案内のとおり、もう恐らくそれほど財政でもって成長を促進するという状況でもございませんので、先ほど申しましたように、名目成長率とそれほど変わらない程度の建設の伸びということを考えました場合には、建設公債がどんどんどんどん出てくるようなそういうふうな状況というのは必要もないし、また考えない方がいいのではないか。つまり財政運営そのものは、でこぼこのないもう少し安定的な支出、歳出というのを心がけていくというふうな時代に入ってきたのではないかと考えております。そういうことから考えました場合には、もちろん建設公債発行というものが野方図に出されていいということではございません。それが出てしまいますと、利支い費を通じましてまた赤字国債というふうな問題が出てまいりますから、そういうことは望ましくないことは当然でございます。  なお、公債というものがなかったらどうかというふうなことを考えました場合に、例えば今金融資産の中で、国の公債を上回るほどの信用力があってしかも流動性が豊かで非常に便利である、そういうふうな金融資産はないわけでございます。それが一たん世の中からなくなってしまうような事態を考えました場合には、これは金融市場に対しては非常に大きな打撃になるだろう。現実に今金利は一体何で決まっているか、長期金利は一体何で決まっているかということになりますと、国債の相場で決まっているわけでございます。国債の相場というのは、少々買ったり売ったりしましても値段がそんなに乱高下いたしませんし、大変民間の金融市場にとっては大事な金融商品でございます。そういうものはやはり残していただかないと、全体の経済運営ないしは民間経済の活性化というものにもつながってこないというふうに考えておる次第でございます。
  18. 志苫裕

    志苫裕君 いろいろ所説を伺いまして、ただ、とかく今の財政法を見ておる限り、借金しちゃいかぬとこうなっているわけでして、いろいろ世の中は、現実の生きた経済はそうもいかぬようだというお話がありましたが、これを実際に資産として動かしておるのは銀行さんその他になるわけですが、ちょっと今の点についてあれでしょうか、藏原参考人から何か補足的な御意見でもあればいただきたいです。
  19. 藏原千秋

    参考人藏原千秋君) 今私も両先生の御意見に全く異存がございませんのであえてつけ加えることはございませんが、一つだけつけ加えさしていただきますれば、ただいま国債がその金融市場の中に組み込まれておるという状況の中に、一つ金融の自由化、国際化という観点を入れて考えてみたいと思います。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕  そういたしますと、現在国債は金融市場の中で金融資産として流通しておるわけでございますが、非居住者が円資産を保有いたしますときに、やはり非居住者の円に対する運用として格好のその運用手段の一つになっておるということも言えるわけでございまして、そういう意味からも国債が非常に安全であり、かつ流動性に富む投資物件として、今や我が国の金融市場の中に組み込まれておるということが言えるのではないかという感じがいたします。  以上でございます。
  20. 志苫裕

    志苫裕君 藏原参考人にもう一問、先ほどのお話しの最後の方で郵貯との関係とか、あるいは国債発行形態などの御要望などございまして、承りました。直接それとは関係ないんですが、きのうも同僚委員政府とのやりとりもあったんですが、マル優の導入以来、あるいはまたそれだけじゃない、いろんな金融市場のさまざまな変化も含めまして、資金シフトが一体これからどうなるんだろうかということは非常に関心のあることなんです。皆さんそれぞれのところでしのぎも削るわけですが、第二の予算である財投資金の原資というのは資金運用部資金で、そのうちの大部分が郵貯と。特に、あと一年しますと一番条件のよかった十年物を利子をつけて返さぬといかぬ、定額貯金なんかですね。そうなってまいりますと、何でも利子を含めれば二十五兆円くらいにはなるんじゃないかというお話もあるようですが、仮にこういうものをどんと一度預金者のところに、貯金者のところに返す、それがまた郵便貯金に戻ってくるという保証はないわけでして、そこからどこへ散らばるのだろうか、もう一遍その金はどこへ今度動くのだろうかということは、場合によるとこの資金運用部資金の将来予測を大変狂わしてしまう話にもなってくるわけですね。  その辺がどんなことになるんだろうかというような議論がきのうもこの委員会で行われておりましたが、御専門の立場で、郵便局と競争しておる立場もあるようですから、一体どういうふうに見たらいいのかということと、昔と違って政府資金がそんなに魅力のある資金でもないという話もあるわけです、民間もいろいろ条件のいいものを出しますから。逆に言うと、政府資金を借りた方が高くついて損だというケースだってないわけじゃないということになります、民間にも金が余っているわけですから。そんなことなどを考えると、運用部資金資金需要というふうなものはどんなことになっていくんだろうかということ、この二つをちょっとお話しいただければありがたいと思います。
  21. 藏原千秋

    参考人藏原千秋君) 最初の方の問題でございますけれども、マル優もなくなり、いろいろ制度が改正になりまして、一体資金がどういうふうに動いていくのだろうかという点でございます。  四月一日に利子非課税制度が廃止になりましてまだ一カ月ぐらいたっただけでございますので、短い期間の動き、これは別といたしまして、もっと大きな問題といたしまして、今先生のおっしゃいました郵貯の問題を考えてみたいと存じますが、私ども実は、新聞にも出ておりますように、例えば昭和六十五年のこぶがあるとか、そのときに郵貯資金がどうなるだろうかというふうなことが世間で言われておりますけれども、そういう問題よりもむしろ私ども民間金融機関の立場といたしましては、郵貯民間金融機関とをどういうふうに競争条件をそろえるように持っていけるかというところに日ごろ頭を悩ましておるわけでございます。  と申しますのは、これはあちこちでいつも申し上げておるわけでございますが、郵貯の場合には、国の信用をバックにいたしまして、法律上も元利の保証がございます。しかも官業ということでございますので、国税も地方税もかかっておりません。また、預金保険制度に基づきます保険料も支払わないでよろしい、準備預金制度に基づく準備預金も積まないでよろしいとか、そういういろいろな官業としての特典をバックにいたしまして、例えば今世間で言われておりますような、民間に比べますと有利な定額貯金というような商品を出しておるわけでございます。私どもといたしましては、そういう民間に比べまして有利な状況にあるというのは、やはり国がそういう必要性を認めておるからで、そういう有利な官業であるからには、競争を民間とまともにやるということでなしに、やはり民間の補完に徹していただきたいということを常々申し上げておるわけでございますけれども、にもかかわりませず、郵便局の方は非常にバイタリティーに富んでおられまして、どんどんと民業の方にも手足を伸ばしてこられるというのが現実の姿でございます。  私ども、競争条件が全く同じということであり、郵便貯金の方も民間と同じように常に利益を出し配当もされる、税金も納めるというふうなことでありまするならば、喜んで受けて立つ気持ちはいつも持っておるわけでございますが、残念ながらそういう今競争条件が平等でない。したがいまして、その辺を何とかできるだけ平等な条件に近づけていただきたいということを申しておるわけでございまして、郵便貯金の関係で申し上げますと、長い目で見ますれば、私どもといたしましてはやはり強力な商品を持っておられる相手であろう。現状を見ますと、ただいまは金融緩和局面でございまして、金利水準が非常に低い状況にございますのでそれほど定額貯金というものが目立つ存在ではございませんけれども、一たんこれが金融が引き締めの局面に向かいまして金利が上昇してまいりますと、六カ月たてば引き出し自由、しかも預けていればいるほど高い金利がついて十年間複利で回るというふうな非常に有利な商品でございますので、この辺のところは何とかお考え直しを願いたいということを平生強くお願いを申し上げているところでございます。  なお、次の方の財投に対する資金需要がどういうことになるかという点でございますが、これはちょっと私どもの立場からお答えしにくい問題でございますので、御容赦願いたいと存じます。
  22. 和田教美

    ○和田教美君 参考人方々大変御苦労さまでございます。ありがとうございました。  まず、三人の参考人方々にそれぞれお考えを聞きたいんですけれども、お三人とも、当面政府財政再建目標としております六十五年度赤字国債ゼロというこの目標の達成は非常に可能だという点においてはまず一致されておる。松田参考人は、場合によって六十四年度の決算でそういう状況に近いものが出るかもしれないというふうな、いわば楽観的な見方をされたわけでございますが、それには、今税の自然増収が六十二年度も補正後の状況から見ても二兆数千億の自然増収があるというふうな状況とか、それからNTTの株の売却益が引き続き国債償還及び公共事業として使えるというふうな、そういう問題がやはりあると思うんですね、そういう判断の中には。  しかし、六十三年度予算については、一般財政再建とそれから内需拡大、これの両にらみ予算だと、二兎を追う予算だというような批評もあって、そこにはやっぱり僕はある程度の不安定要因もあるんじゃないか。景気の見通しというのは、ことしじゅうは何とか続きそうだと言うけれども、国際状況によってはまたこれもあるいは変わるかもしれないというふうな不安定要因もあるし、それからNTTの株の売却収入というものも六十六年度までで終わりということになりますから、これもまたいわゆる恒久的な財源ということは言えないわけでございますね。  そこで、そういう楽観的な要素とやや不安定な要素とをいろいろ勘案をして、とにかく当面の財政再建目標は達成できるというふうにお考えになる理由ですね。それともう一つ、それが仮にそうでなくって、財政再建とそれから内需拡大というこの国際的な要請、この両にらみということができないと不可能だというふうな状況景気の波などによってですね、そういう状況があらわれた場合に、皆さん方としては一体どちらを重点に置いて考えていくか、その辺のところについてお考えをひとつ述べていただきたいと思います。  それからもう一つは、先ほどからも出ておりましたように、また藏原参考人意見の中にもありました財政対応力ですね、これからの高齢化社会あるいは国際化の要請というふうなことから財政対応力を回復しなければいけないと言うんですけれども、これは政府も同じことを言っておるわけですけれども、この財政対応力の回復というのは、指標として見れば一体どういうことを重点に見ていけばいいのかという点でございます。  財政再建が始まってからの経過を見てみますと、国債依存度は確かに減ってきております。五十四年度が三四・七%だったのが六十三年度は一五・六%に下がってきている。これは非常によくなっているデータです。しかし反対に、国債費一般歳出に占める割合はこれが現在二〇%ですね、これはいかにも高いと思うんです。それから国債残高、これも皆さんの意見はある程度国債を抱いた財政という考え方のようですけれども、これも六十三年度で国債残高が百五十九兆円というのはほかの国に比べてもやっぱりちょっと高過ぎるのではないかということで、しかも国債残高は、五十四年度が五十六兆円でしたから、ずっとふえてきているわけです。そういう二つの要素は悪くなっている要素なんですね。ですから、そういう幾つかの指標というものが考えられますけれども、その辺のところのどの点を一応我々として見ていけば、大体財政対応力ができたというふうに判断していいのか。  この二点について皆さん方のお考えをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  23. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 大変難しい問題を幾つか提起されましたので、的確なお答えになるかどうかわかりませんが、まず最初にお断りしておかなければなりませんが、私大変楽観的に聞こえるような発言をいたしましたけれども、実は歳出合理化努力を続けるならばということを申しており、そうであれば当面の目標は達成されるに違いないというように申し上げたわけでございまして、その努力を怠って自然に達成されるというようには考えておりません。そしてその歳出合理化努力をなぜ続けなければならないかというのは、続けることによって目標が達成されるということと同時に、一度目標が達成されても、また赤字国債を出さなければならないというような状況になってしまえば、これは財政再建とは言えないというように考えておりますので、そういうことがないように、そのもとになっているいろいろな制度の見直しをこの間に行って六十五年度の赤字脱却を達成する、こういうことでございます。その点、私の説明が不十分で誤解を与えたのではないかと思いますので、訂正さしていただきたいと思います。  なお、財政再建が可能になる重要なファクターとして、景気が順調に回復しつつあると、そして税収が上がっておるということ。特に最近の税の弾性値が非常に高くなっております。これは一時的なものであるという判断ももちろんあるとは思いますけれども。そしてその中には一時的な要素が含まれていることも事実というように考えますが、かつて景気が悪かったときほど弾性値は低くないのではないかと私自身考えているということをもう一つ申し上げておきたいと思います。  二兎を追う、その二つの問題が同時に起こってきたときにどうするかということ、どちらを重視するかということでございますが、それはそのときの景気情勢を見て判断していかざるを得ないのではないかというように私自身考えております。
  24. 藏原千秋

    参考人藏原千秋君) 先ほど冒頭に申し上げましたのは、六十五年度に赤字国債からの脱却が可能であるという可能性が大分高まってきたということを申し上げたかと思います。  今先生のおっしゃいましたように、六十二年度も恐らく二次補正に比べましてもかなりの自然増収が出てくるのではないかというふうに素人ながら考えておりますが、そういたしますと、六十三年度の税収につきましても発射台が高くなった分、またある程度の自然増収が期待できると。今日本景気は、先ほど来お話が出ておりますように、昨年ぐらいから非常に内需の拡大が力強いテンポで進んできておりまして、この状況内外、特に海外情勢あるいは油の情勢その他に大きな急変がない限りは、いましばらくは続くと見てもよろしいのではないかというふうに私考えておりますが、そうなりますと、少なくともここ一、二年、ある程度この六十三年度予算を編成したと同じような状況が続くと、やや楽観的過ぎるかもしれませんが、そう見ることが可能ではなかろうか。ということになりますと、六十三年度予算で三兆一千億ほどの計上されてあります赤字国債、これをあと一、二年で半分ずつ減らしていくということはそれほど困難ではなかろうという気がいたしておる次第でございます。  今度はその内需拡大財政再建どちらに重点を置くかというお話でございますが、館先生が今おっしゃいましたように、まさにそのときの状況でございますが、今の現状をもし前提ということにいたしますと、今申し上げましたように、非常に円高メリットの浸透、あるいはオイル価格の落ちつきというふうなことの効果がございまして、物価が落ちついている状況の中で非常に内需が力強い拡大を続けておるというふうな状況にございますので、現状を前提といたします限りは、もはや財政によるこれ以上の内需の刺激は必要ではない、したがって、もしそういう余剰のものがあれば赤字国債減額に充てるべきではないかというふうに私は考える次第でございます。  なお、財政対応力回復というものは、どういう指標で見ていけばよろしいかという点については、私専門家でございませんので、何とも難しい御質問にお答えいたしかねるわけでございますが、こういう問題に定量的な何かこう一つの指標を置いて、定量的にこうなれば対応力が回復したというふうなことがそもそもあるのかどうかという点については、私若干疑問に思っております。  先ほど来お話に出ておりますように、一応特例債から脱却する、それが外形的にも見て比較的はっきりした財政再建の時期ではなかろうかというふうに思いますが、さらにあえてつけ加えて申し上げますれば、これも定性的なことで大変恐縮でございますけれども、そのほかに、赤字国債発行がゼロに仮になりましても、従来厳しい財政事情のもとでいろいろ財政のツケ回しと申しますか、あるいは後年度負担、後年度に繰り延べるといったようなものが、詳しい数字を私存じませんけれども、かなりの額に上っておるのではないかという気がいたします。
  25. 和田教美

    ○和田教美君 十二兆円ですね。一番枠が小さくても十二兆円。
  26. 藏原千秋

    参考人藏原千秋君) 例えば私の記憶にありますのでも、地方交付税の関係で運用部からの借り入れがございますとか、ですから、そういうものが今後どういうタイムスケジュールでどういう形で正常化されていくのか、この点もつまびらかにいたしませんけれども、少なくともそういう過去の非正常なもののツケが財政当局の足を引っ張るというふうな状態である限りは、まだ財政再建が完全にできたとは言えないのではなかろうか。もうそういうことが正常化されるめどがはっきりついたということが、本当に財政対応力が回復したというふうに言える時期ではなかろうかというふうに考えます。
  27. 松田修

    参考人松田修君) 私が一番赤字国債からの脱却について楽観論を述べましたので若干責任を感じておりますが、そういうふうに見ました根拠でございますが、それは既にもう新聞報道等で明らかになっておりますように、六十二年度の税収がかなり大きな自然増収を出すという状況でございまして、決算ベース考えました場合には、六十三年度一般会計予算におきます印紙税を含めた税収でございますが、そういうものの見積もりと同水準か、ひょっとするとそれを上回るぐらいの税収が上がりそうであるというふうに私は考えておりまして、そういうふうにげたがまず大きくなっておりますので、六十三年度の楽観論については、恐らくこれはほとんど危なくない、つまり達成の確率はかなり高いと考えておいた方がいいんじゃないかと思っております。  問題は六十四年度でございますが、今の日本経済拡大基調、六十一年の十一月と言われておりましたあの底から上がってきました状況を見ておりますと、どうやら石油ショック以降の景気の回復の中では少し性格が違うように見られる面が多いわけでございます。  具体的に申しますと、企業の設備投資、とりわけ製造業の設備投資が去年の秋ごろから盛んになってまいりまして、企業活動というものが五十年代に入りましてから一番今が活発さが出てまいっておりますし、かなり先行きに対する見通しにある程度の見通しが立ったというふうな状況ではないかと思っております。したがって、国内の経済状況から考えました場合には、六十四年度につきましてもそれほど大きな問題はない。問題はむしろ海外要因が一体どうなのかということでございます。恐らくアメリカの財政再建、向こうの方の財政再建その他によりましてひょっとするとデフレ経済的な影響が出てくる可能性もあり得るわけでございます。  ただし、今までのGNP成長率に対する税の弾性値を見ておりますと、やはり大きく落ち込みましたのは五十年代の初めとそれから五十年代の半ばでございまして、いずれも第一次石油ショック、第二次石油ショックという大きなショックを経験しておりまして、あのときは石油の値上がりによりまして短期的には価格弾性値が非常に低い石油というものをどうしても輸入しなきゃならぬ、そういうことによりまして値上がり分だけ日本の国内の所得が海外に流出するというふうな状況が出てきたわけでありまして、このときに税の弾性値が物すごく落ちているという状況がございます。先ほど藏原参考人もおっしゃいましたように、今バレル当たり十五、六ドルから十七、八ドルしております石油が再び倍に上がる、三倍に上がるという、そういうふうな状況になりますと税の弾性値というのは格段にまた落ちてくる可能性はあり得ますけれども、今問題になっているのは、アメリカを中心としました先進国の不況がどうなるかという問題でございます。その程度ですと、それほど税の弾性値が落ちるとはちょっと考えづらいというふうに思いましたら、六十四年度も含めまして、かた目に見ましても今見られているよりはかなりの大きな税収が上がるのではないか。もちろんそれは片っ方において歳出合理化という努力を続けながらの話でございます。そうしますと、やはり赤字国債脱却はうまくいけば六十四年度でできるかもしれないというふうに考えているわけでございます。  その意味では、今の景気拡大というのは、今までの五十年代にありました何度かの景気拡大とはちょっと性格が違うように、むしろそれよりか少し力強く考えた方がいい新しい局面ではないかというふうに考えているわけでございます。  もう一つ財政対応力は何で見るか。これは大変難しくて私はその指標というのはどうも見つけがたいのでございますが、財政赤字が多い場合にはそれがだらだらとふしだらな財政運営になって、そしてとめどなく財政が崩壊状態に陥っていくというふうなことがよく言われておりますが、ただ日本の場合はどうもそうじゃございませんで、財政が赤字になりますと、日本財政当局というのは極めてそういう面ではまじめでございまして、赤字になればやっぱり一生懸命引き締めるように努力してくれる財政当局だと考えております。したがいまして、その努力というのは我々はやはり買わなきゃならないわけでございますが、しかし万が一、歳出をどかっとふやさなきゃならぬというときに、そのまじめさがひょっとするとあだになって手おくれになるということはあるかもわかりません。  そういうことを考えますと、やはり財政硬直化というものが財政の機動力を失わしている可能性はあり得るわけでございまして、そういうふうな財政硬直化と申しますと、国債費というものが一般会計の二割近く占めている状況はやはり財政当局の手足を縛ってしまう、それが機動的な対応力をややもすれば失わせがちであるというふうな心配はないとは言えないと思っているわけでございます。としますと、やはり金融資産を何か民間に対して供給なさる一方、国債残高を減らすというふうな方法ということになりますと、NTT型のああいうふうな政府のお持ちになっている資産を再評価して、民間に任せていくというふうなことをもう少しおやりいただいた方がよろしいのではないかというふうに考えているわけでございます。  お答えになりましたかどうかわかりませんが。
  28. 和田教美

    ○和田教美君 次に、先ほどの御意見の中で税の自然増収の問題について、館先生は六十三年度も六十二年度と同じ自然増収がある場合にもこれをやっぱり赤字国債減額に使うべきであって、これを減税だとかそういうものに使うのは、まさに資産を売却したものを消費に充てるというふうなことで末期的なことだと非常に否定的な、かなり否定的な表現を使われたんですが、その点について松田先生が去年の日経に書かれた論文のこの写しを配られたものですから読んでみたんですが、その中に、ちょっと意見が違うんじゃないかと思うのは、こういうふうに書かれておりますね。「少なくとも今後五年間は、利払い費に限って国債発行を認め、租税などの経常的な自然増収歳出拡大に充てるようにし、国債の現金償還をやめる。」というふうなことが書かれておる。  つまり、これには減税という問題は入っておりませんけれども、それはどうなのか。減税に充てるという考え方も含めて歳出拡大というふうに言っておられるのか。その辺のところを確めたいのと、その考え方はちょっと違うように思うし、現実に今の政治の状況でも今の六十二年度の税収、自然増というものを大蔵省はなるべく国債償還、つまり赤字国債発行減額に充てようということできているわけで、我々野党はこれをある程度は一回とにかく、第二次補正のときに赤字国債減額自然増収を使ったんだから、今度は減税財源に使ってもいいじゃないかという意見を述べているわけで対立をしているわけなんですが、その点について両先生の御意見もちょっと対立しているように思うんですが、そう理解していいんでしょうか、簡単で結構でございますから、館先生から。
  29. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) お答えいたします。  これも私ちょっと誤解を引き起こすような発言をしたかもしれませんが、税の自然増収が生じた場合、それを必ず全部赤字公債償還に充てなければならないというように申したわけではございませんで、実はNTT株売却収入について言えば、それを減税財源等に使うというのは適当でないということははっきり申し上げたわけでございます。  したがいまして、自然増収について申しますと、場合によってはそれを減税に充てるということもあり得るというように私は考えます。しかし同時に、一方で赤字公債というものをどういうように考えるか。赤字公債というものは本当に望ましくないという考え方に立てば、財政に余裕があるときにはできるだけ赤字公債を減らしていくという方向にそれを使っていくのが適当ではないだろうかというように考えておりますが、絶対というようにまで考えているわけではございません。
  30. 和田教美

    ○和田教美君 その点ちょっと誤解しておりました。確かにNTTの株のことをおっしゃった。
  31. 松田修

    参考人松田修君) 経済考えます場合にはだれでも認識のラグというのがあるわけでございまして、例えば私がそれを書きましたときはたしか六月ごろだったですよね。そのときにははっきりと今のような力強い経済拡大というものを予想して書いたわけではございません。経済は少し拡大しかけておりましたけれども、しかし依然として巨大な経常収支黒字の問題で日米関係が非常に緊張していた最中だったと思います。したがいまして、何でもかんでも自然増収を全部支出で使ってしまえというわけでございませんで、今の経済状況から考えてみますと、それほどすべてを歳出に回せというふうな状況ではない。先ほど申しましたように、むしろ歳出は自然中立型でよろしいというふうに考えて、そのときにも私はそう考えておりましたけれども歳出は中立型でよろしい。  それから、あとは自然増収を減税に回す問題でございますが、それは必要があれば政治的な意思によってやっても構わないと思いますが、必ずやるべきだというふうには考えておりません。今のところはそれをやらないと大変経済が落ち込んでしまって困る状態ではない、むしろ政治的な意思によっておやりになるなら、それはそれで別に問題はないだろうというふうに考えている次第であります。  なお、赤字国債をなくす問題でございますが、やはり赤字国債、今のような経済が順調に拡大しております状況におきましては、景気を促進するよりは、そうする必要はないのであって、むしろ赤字国債を減らしておいた方がいい時期であることは間違いございません。現実に赤字国債はそんなに膨大なものではございませんで、このごろ年々の発行額は大分減っておりまして、恐らく六十三年度もかなり当初ベースよりは減るように私は期待しておりますが、そういう状況でございますので、あと一息のところでございますから、膨大なお金を出さないと赤字国債から脱却できないような状況でもございませんから、今ことでやっておく方がいいような一般経済情勢であるというふうに考えます。ただ、政治的に減税が必要だというと、それはまた別の問題である。経済的にはそうでございますということでございます。
  32. 和田教美

    ○和田教美君 藏原参考人にお尋ねいたしますが、国債の引き受けとそれから市中消化の問題ですけれども、先ほどの御意見の中で、国債発行の問題については市中消化を円滑に進めるためには、金利価格といった発行条件市中需給実勢を反映させて決めることが必要であるということが強調されておりました。  これは、かつて六・一国債というのがございましたね。つまり、五十四、五年ごろに発行された利率六・一%の国債だと思うんですが、当時は非常に高金利時代で、郵貯定額貯金は八%ぐらいだったと思うんですけれども、それが市場の実勢に合わない非常に安い金利で結局シンジケート団が引き受けさせられた。ところが、後で国債価格が暴落したというふうなことがございました。そういうことは絶対起こしてくれるなという意味なのか。その辺のいきさつ、事情をちょっと説明していただきたい。  それから、今は非常に金融機関にも、金がだぶついていると言ったら怒られるかもしれぬけれども、金余りという状況だし、国債というのはやはりそういう意味でも引き受けにはある程度魅力のあるものだと思うんです。ですから、シンジケート団の引き受けあるいは入札というものも順調にいっているんだろうと思うんですが、これは、今後金利が非常に上がってくるというような状況になってきた場合に、果たして今のような大量の、つまり借換債も含めてかなりの大量の国債の引き受けというものが順調にいくのかどうか。その辺はどういうふうにごらんになっているのか。その二点をお聞きしたいわけであります。
  33. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 時間も来ておりますので簡単にお願いを申し上げます。
  34. 藏原千秋

    参考人藏原千秋君) 最初の御質問でございますが、五十四年度でございますか、たしか五十三年の終わりから五十四年にかけまして第二次オイルショックがございまして、そのときに引き締めがございました。引き締めということで、その前に発行されました六・一国債、これが暴落した事実はございます。引き締めになりますと、当然今おっしゃいましたように、定額貯金の利率も八%と、国債の利率もうんと上がってくるということでございますので、その前の第一次オイルショックの後の緩和時代に発行されましたクーポン六・一%の国債が値下がりをする。これはある程度経済的には当然と申しますか、自然の事情で値段が下がったということに相なっております。  当時、都市銀行十三行だけで売却損、評価損を合わせて約七千億円の損害であったということが言われておるわけでございますが、今後はどうかということになりますと、当時と大分状況が変わってきております。当時に比べますと、売却制限の緩和ということもございましたし、銀行といたしまして窓販あるいはフルディーリングもやっております。それから、国債発行条件そのものも当時よりさらに一層市場実勢を反映したものになっておる。あるいは先物市場中心とする流通市場整備も行われているというふうなことで、現状におきましては当時のような暴落の影響を銀行がもろにこうむるといったような可能性は少なくなっているように思われます。  今後、それでは国債消化はどうかということでございますけれども、今後一体どういうふうな金融情勢が生じ、どういう金融情勢のもとでも必ずその国債支障なく消化されるかということについては、私として確言を申し上げる自信はございませんけれども、やはり国債発行そのものにつきまして財政当局として節度を持った状況で進まれるというふうに思いますし、またその国債発行が非常に苦しい、クラウディングアウトの心配があるというふうな状況でございますれば、当然財政なりあるいは金融なりであるいは適当なポリシーミックスをやりまして、なるべくそういうクラウディングアウトのような形が生じないような政策運営がなされるというふうに私は信じておりますので、ただいまの国債の引き受けシ団あるいは一部についての入札制というふうな二つ発行方式をもちましてそれほど国債消化支障が生ずるというふうなことはないんではないかというふうに考えております。
  35. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初に館参考人に質問いたしますが、長らく財政審に関係されてこられたわけですけれども、一番基本的な質問をしたいと思います。  国債の安易な発行を食いとめるという立場から幾つもの歯どめがありました。制度としてあったんですが、それが次々に崩れてきたというのがこの間の歴史だと思います。赤字国債発行自体が初めは歯どめとされていた。整理基金への繰り入れ、そして赤字国債の場合は十年償還、こういう制度がずっと崩れてきたことについての基本的な御見解、これをひとつお願いしたいと思います。  また、これと関係すると思いますが、先ほど発言の中で、経済が順調に発展している状況では赤字国債に依存しないことが望ましい。このお言葉を裏を返して考えてみますと、そうでない場合には赤字国債発行は是認される。この是認にもいろいろありまして、仕方がないというので渋々認めるのと、いや発行すべきだというふうなことがありますが、もし後者の方だとしますと、全く歯どめなんというものはないような状況になってしまうんではないか、こういうふうに思うんですが、この辺についての端的な御意見をいただきたいと思います。
  36. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) ただいまの質問の二番目の方からお答えさしていただきますが、赤字公債につきましては、これは順調に発展しない状態で、景気が悪く予想外に税収が減少するというような事態が起こるようなときにはやむを得ないというように考えているわけでございまして、積極的にいつでも公債発行するのが望ましい、そういう考え方ではございません。  赤字公債発行される場合であっても、歯どめとしていろいろな措置がございますが、その中の例えば市中消化の原則といったようなものは、これは絶対に守っていくというような形で歯どめをかけておくということは必要であるというように考えております。確かに、従来の歯どめの中で特例債の発行が行われたという点については、財政法が本来的には予想していない発行であった。そういう意味では、発行が行われざるを得なかったということは、それ自身歓迎すべきことであるというようには私は考えておりませんで、そういう状態がないように運営をしていくことが望ましかったと思っておりますが、しかし何と申しましても、外的な要因によって急に石油価格が上がるというような状態から、予想外景気後退と税収減が起こってしまったようなときにはこれはやむを得ないというように考えます。もしそれを、歳出削減という対策をその場合とったとすれば、これが経済に与える影響はもうドラスチックであって、大変望ましくないというふうになっただろうというように考えております。
  37. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 では、次に藏原参考人に、これはぐっと実務的な質問をいたしますが、先ほどの御発言の中で、御要望の第二に国債流通市場の一層の整備という点がありました。これはどんな整備を期待しておるのかということが一つです。  このことと関係しまして、個人の国債離れという現象が起きております。それはやっぱり低金利一つあると思うんです。もう一つは、金融機関による国債のディーリングが急増しているという面がもう一方にあると思います。六十二年で見てみますと千五百六十六兆円ですし、これは六十一年の二・五倍近い水準。これはやっぱり債券相場がどんどん上がって利ざや稼ぎをいわば目的とした短期の売買が激しく行われたと。これについては、例えば日経新聞なんかでも、マネーゲームに狂奔する金融機関という、これはかなり批判的に見られている面もありますが、こういう点では全体の国債取引の中で金融機関の比重が大変ふえていると思うんですが、どの程度の比重を占めているのか。また、この金融機関が国債のディーリングによってどの程度の収益を上げているのか。また、その経常収益に対する比率はどれくらいか。この辺がお答えいただければお願いしたいと思います。
  38. 藏原千秋

    参考人藏原千秋君) 流通市場整備の問題でございますが、これは大分整備が進んできております。売却制限もほとんどなくなっておりまして、一部に若干残っておりますが、こういうものは早くやはり取り除いていただきたい。それと、やはり先物市場におきます、これは既に先物市場は一部できておりますが、これからここら辺の整備をもう少し進めていただきまして、リスクヘッジなりなんなりがもっと十分にできるようにしていただきたいということが重点であろうかと思います。  それから、国債取引におきます金融機関のかかわり方でございますけれども、まず数字を申し上げますと、公共債の店頭売買高でございますが、六十年度が全体で二千五百兆円の中で金融機関が七百七十兆円、三一・三%、六十一年度が全体三千四百兆円の中で金融機関が九百二十兆円、二六・九%、六十二年度が全体で約五千兆円の中で金融機関が、今先生のおっしゃいましたように、約千五百兆円、約三割、こういうことに相なっております。  なお、金融機関のディーリングにおきます収益でございますが、六十年度が有価証券の売買益が、これは全国銀行ベースでございますが、二千百五十八億円、経常利益に占める割合でございますか、これが九・四%、それから六十一年度が売買益が三千三百二十五億円、比率が一〇・三%というふうに相なっております。  なお—個人の国債離れという点でございますけれども、おっしゃいますように、非常に機関投資家の間で短期の回転売買がされているというふうな事情もあろうかと思いますけれども、やはり一つには国債金利水準そのものがやや低いという点に私は一つの理由があるのではないかというふうに思います。もちろん国債発行条件というのは、先ほど来申し上げておりますように、流通市場状況を十分反映して決められておりますし、そういう意味でいわば教科書的に非常に正道を歩んで決められておる、これは間違いございません。  私は、もちろん流通市場の利回りそのものにけちをつけるつもりは毛頭ございませんので、今の発行条件の決まり方そのものにも疑問を持っておるわけではございませんけれども、あえて評論家的にやや第三者的に申し上げますと、やはり今の流通市場の利回りそのものがやや低く出ているんではないか。これはやはり機関投資家の間の売買が非常に盛んだということと無関係であるとも思われませんけれども、そもそも日本におきましてはマーケットにおきますセンティメントというのがどうも一方的に傾きがちであるというふうな感じが私はいたしております。つまり、金融が緩和しておりますとき、金利が先安のような感じがありますときにはどっとみんな買いの方に向かう。ということは、債券で言えば値段が上がる、利回りが下がるというふうに向かう。逆に金融の引き締めのときには、みんなが債券を売り一方になって買い手が少なくなって、したがって利回りが上がる、値段が下がる。これが引き締めのときも緩和のときもややオーバーシュートがあるんではなかろうかというふうな気がいたします。  そういう見地からいたしますと、これで随分金融の緩和の状態が長く続いておりますけれども流通市場の利回りそのものが感じといたしまして、これどうも感じの問題で恐縮でございますが、どうもやや低い。仮に今一人の個人といたしまして、四・六%の国債を君は十年間持つ気持ちで投資するかと言われますと、やっぱりちょっとちゅうちょをされるというのは、何かやはり感じとして低いなという気持ちがやっぱり一般の個人投資家にもあるのではなかろうか。で、それが国債離れとまでは言いませんけれども一つ、十年間投資するというつもりで国債を買うということをちゅうちょさせている理由ではなかろうか。  それからもう一つでございますが、これはむしろこれからの問題かと存じますが、今まで個人の投資家国債を購入いたしておりましたのは、大部分の方が例のマル特を利用して御購入になっておったわけでございますので、これがなくなりますということは、やはり個人の国債離れということを生じさせる一つの誘因にはなろうかというふうに考えております。
  39. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 もう一つお願いしますが、今の話でも、金融機関の国債による収益が大変多くなっておって、結局国債の購入に積極的になっているという点だと思うんですね。その点で三点ばかりですが、一つは金融機関の保有債券に占める国債の比率の状況が第一点で、このように積極的になっている理由は、国際決済銀行、BISですね、BIS規制で総資産の中でリスクウエートが低い債券保有が多いほど自己資本の比率が高くはじけるようになっているということから、金融機関の中で、リスクウエートがゼロになると考えられる国債の購入に積極的、こういう面があるんではないかと思いますが、その点どうか。  もう一つは、BISは銀行の自己資本比率について国際基準を設けておりますが、我が国の銀行はこの国際基準の水準から見てまだ低いようですね。しかし所有株式の含み益は相当大きいという一面もある。そこで、今後BIS規制水準達成のためにどういう方法をとると考えておられるか。  それから、その関係で今まで預金獲得競争から総資産の伸びをふやすことに専念してきたと思いますが、今後は、利ざやの薄い資産をふやすと自己資本比率低下要因にしかならないので、貸し出しなどで選別が強まるんではないかという心配がありますが、どういう分野が選別の対象になろうかという点ですね。時間の関係もありますので端的にひとつ。
  40. 藏原千秋

    参考人藏原千秋君) お答えいたします。  全国銀行の国債の保有でございます。これは所有有価証券の中に占める割合でございますけれども、五十九年度末が二七・三%、六十年度末が二五・三%、六十一年度末二五・三%というふうに相なっております。  なお、自己資本比率規制との関係におきまして国債のリスクウエートというのがゼロでございますか、こういうことで非常に低いので金融機関としては国債をどんどん持つようになるのかという点でございますが、確かにリスクウエートの低い点は魅力的な点であることは間違いございません。ただ、そのリスクウエートの大小だけで金融機関として資産を持つわけではございませんで、御承知のとおり国債価格変動商品でございますし、マーケットにおけるリスクがあるわけでございます。さらに利回りということも考えていかなくちゃならないわけでございます。そういうことをいろいろ考えながら投資をするわけでございます。もちろんどの程度国債にこれから投資をしようかということは、個別の銀行の判断になるわけでございますので、私からはなかなかお答えしにくい問題であるということを御理解いただきたいと存じます。  なお、自己資本比率規制の問題でございますが、おっしゃるようにこれはなかなか達成が難しいことでございまして、金融機関といたしましては極力その自己資本を増強する方策を考える、あるいは資産を減少する方策を考える、あるいは資産をふやさないで手数料とかそういういわばサービスの提供による対価によって収益を生む機会を広げていこうと、いろいろの方策でこれから自己資本比率の達成に邁進しなくてはいけないわけでございますが、その場合に、それでは資産の選択がどうなるかという問題でございます。  この辺もなかなか先の見通しが難しい話ではございますけれども、御承知のとおり、このところ日本の国内のマネーフローと申しますか、大きく変化をいたしておりまして、それに従いまして金融機関の融資構造というのも随分と変わってまいっております。大企業の方はむしろ金融機関からの借り入れに依存しないで資本市場からの調達あるいは海外からの調達に切り変えるというふうなことで、都市銀行を含めました比較的大きな銀行も、このところ中小企業あるいは個人向け住宅ローンというふうなところに非常に力を入れてきております。こうした基調は基本的には今後ともそれほど変わらないんではないだろうかというふうに私は思っております。具体的にどういう取引分野に進出し、どういう取引先を開拓していくかという問題は、これはもちろん個々の銀行の経営戦略の問題であろうかと思いますけれども、そう御心配になるような問題は生じないのではないかというふうに考えております。
  41. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 あと松田参考人に。
  42. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 時間が参りますが。
  43. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 参考人に質問と答弁含めて二、三分で一つお聞きしたい。
  44. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 二分しかありませんのでそのつもりで。
  45. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先ほど利払い費とそれから国債発行額とほぼ同じ、もしくは利払い費の方が多くなっているという、その関係からGNPに対する国債残高が一定のところに収れんしていくんだという、こういうお話があって、それは楽観論の一つになっているんじゃないかと思うんですが、しかし成長率も利子率もこれは常に変動するものですよね。かつて利子率の方が高かった時期もありますし、経済景気変動がどうなるかわからないですね。こういって、これがある日また突然国債大増発ということになりかねないと思うんですが、その辺のお考えを端的にお述べいただいて私の質問を終わります。
  46. 松田修

    参考人松田修君) 一言申し上げます。  長期的に見ました場合には、GNP成長率とそれから金利というのは大体収れんするということは言われていることでございます。おっしゃるとおり時期によりましては、それは大変動するという可能性はあり得るわけでございます。ただし、それがもしもそういう状況になりましたとしましても、実は六十二年度以降の状況は、むしろ利払い費よりも発行額の方がどんどん減ってきているわけでございますから、実は六十一年度までぐらいの感じでその話を申し上げました。さらに加えて、実は発行額の方が減ってきてということでございますが、これは確実に減っているということと考えてよろしいかと思います。GNP比が減っていくというふうに考えてよろしいかと思います。
  47. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、時間の制約があるものですから、館参考人松田参考人一つだけお尋ねをしたいと思います。  というのは、日本財政はいかなる国際的環境下に置かれているだろうかということでございまして、日本を含む世界景気考えますと、アメリカの財政赤字、あるいは貿易収支の赤字が果たしてきた役割というのは、これは無視できないものがあろうと思います。しかし、今後とも寄与し続けてくれというわけにまいりませんので、そうしておりますと、アメリカの累積債務が危機的な水準に達してまいりますし、といって、この双子の赤字をでは急激に減らそうという政策を仮にアメリカが選択いたしますと、日本世界経済に相当なインパクトを与えるということになるだろう。こういった状況下に置かれているわけでございまして、そういった中で、こうした変化状況というのは、日本財政にいかなる課題をしょわせるのであろうか、そういった課題を解決をするために一体日本財政は今何をすべきなのだろうか。  この点につきまして、館参考人、あるいは松田参考人からそれぞれ御所見を承りたいと思います。
  48. 松田修

    参考人松田修君) おっしゃるとおり、来年度以降、アメリカを中心にしまして、財政再建に伴うデフレ効果というのは出るかもわかりません。そういうふうには考えております。ただ、その前には、恐らくそれを受けとめます民間経済の力がどのくらいかというものにかなり依存してくる問題だと考えております。そういう観点から日本経済をもう一度達観してみますと、必ずしも五十年代初めのような混乱期と同じような弱さ、あるいは五十年代半ばの第二次石油ショック当時に見せたようなもろさというものが、十分ではございませんけど、かなり改善しているということは間違いないと思います。  で、財政のそれに対する対応でございますが、それはやはり今まで申し上げてまいりましたように、機動的に対応しなきゃならない面が出てくるかもしれない。しかし、実のところを言いますと、そういうふうな対応というのは、財政その中でのみ対応し切れる問題ではないし、また対応して望ましいことではないと私は考えているわけでございます。つまり、デフレ効果が出た場合には財政だけしか成長を促進するものがないんだ、引っ張るものがないんだというふうな状況から、もっと経済全体、とりわけ民間経済の活性化というものにどうつなげていくかということが、実のところを言いますと、海外からのいろいろなインパクトに経済全体が対応できる、過大なるショックも受けないということになるんだろうと思っておりまして、その意味から考えますと、日本経済全体の中でまだまだマーケットが十分に働かない部門がいろいろある。とりわけ、申しわけないことですけれども、やはり国が関与していらっしゃるところの規制とか、あるいは価格に対する強制でございますとか、あるいは輸入の規制でございますとかいろいろ残っているわけでございます。ですから、そういう面を十分に解決していく。  例えば、一番早い例が、やはりこれだけの円高になりましても、日本の場合には円高のメリットというのは消費者のところになかなか行き届いてこないというふうなことになりますと、円高を利用しました事業機会というのも失われるということになるわけでございまして、そういうふうな規制を緩和する、そしてもっと民間経済に対して事業機会を与えていくというふうな方向を財政以外のところでとっていく。    〔委員長退席、理事梶原清君着席〕 あるいは、財政の局面におきましては、まだまだ日本財政というものは、確かに一般会計で見ました場合には、それほど大きな財政ではございませんが、財投機関を含めますとかなり大きな財政であることは間違いないし、それ自体が、先ほどの郵貯の問題にも絡みますけれども民間の事業機会を奪っている可能性さえないとは言えない面があるわけでございます。  したがって、財政対応力というのは、先ほど申しましたように、もちろん財政硬直化を防ぐ努力をしておく、今のうちに減らせるものならば赤字国債を減らしておくというようなことは大事ではございますけれども、むしろ主力は民間経済で、日本経済全体のそういうふうな活力をどういうふうに維持するか、民間経済に対する事業機会というのをどれだけ与えていくか。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕 今の円高でございますから、幾らでも与えられる可能性はあるわけですから、それを失わせているいろいろな規制の問題とか、あるいはマーケットが十分動かない問題とか、そういうところを解決する方が本質ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  49. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) お答えいたします。  この問題は、アメリカが政策転換をどの程度のスピードで行っていくかということと非常に深くかかわっておりまして、アメリカが本当に異常なスピードで双子の赤字を解消していくということになりますと、日本のような経済大国がそれに応じて非常に急速な対応策を講じていかなければ世界的な混乱が起こってしまう可能性があると思います。ただ、幸か不幸か、アメリカの政策転換はそれほど急激なものではないというように私は予想しておりまして、したがいまして、日本は十分その国際的責任ということを自覚してやっていかなければならないと思いますが、しかしドラスチックな政策の変更を必要とするというようなことではないのではないか。  ただ、そういう日本の国際的な責任ということを考えれば、財政支出の中においても対外協力とかそういう面にウエートをかけていく必要があると思いますし、さらに財投資金をできるだけ効率よく使って、例えば累積債務問題やなんかについても、根元からいつでも資金を提供するということではなく、保証等の手段をもう少し利用する等の工夫をしながら責任を果たしていくということが望ましいのではないかというように考えております。
  50. 野末陳平

    ○野末陳平君 まず、藏原参考人にお伺いしますけれども、先ほど小口金利自由化のことをちょっとお触れになりましたので、それをさらに、せっかくの機会でございますから、もう少し具体的にお話しいただきたいと思います。
  51. 藏原千秋

    参考人藏原千秋君) 御承知のとおり預金金利自由化につきましては、まず大口の方から始められまして、ただいま大口の方では定期預金あるいはCDにつきましては五千万円、MMCにつきましては一千万円というところまできておるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、大口から入るのが常道であり、かつやりやすいというところで、よその国の状況から見てもそうでございますが、ここまで進んできたわけでございますが、やはり小口預金金利につきましても、大口だけを優遇するというのはいかにも公正を欠くということでございますので、できるだけ早い機会に小口預金につきましても金利自由化を実現させたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、これも先生もう重々御承知のように、小口預金金利自由化いたしますにつきましては、何としてもやはり郵便貯金をどうするかという問題が絡んでくるわけでございます。この点につきまして私どもはかねがね、郵便貯金の例の定額貯金の商品性を見直していただきたい、それから民間金融機関金利を追随するような形で郵便貯金の金利も決めていただきたい、この二点をお願いしておりますし、この二点につきまして大蔵省と郵政省とが今お話し合いをしておるというふうに伺っております。その話し合いがつかなければ五百万円より上のところでやればいいではないかとか、あるいは今五千万まで来ている大口定期預金の単位をもうちょっと下げるところから始めたらよいではないかとか、世上いろいろ御議論もあるところでございますけれども、私どもとしては基本的にはやはりここまで小口の預金者の方をお待たせしておるわけでございますので、何としても郵便貯金の御理解ある態度を得まして、一緒に小口の預金金利についても自由化をスタートさせたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  52. 野末陳平

    ○野末陳平君 ありがとうございました。  それから、館先生と松田先生に同じことをお聞きするんですけれども、両先生とも景気の力強い拡大という、これがもう目に見えていることをおっしゃっておられましたが、ここで税制改革で減税がかなりの規模で行われる可能性があるわけですが、この減税が行われた場合、景気拡大は個人消費が支えになっているわけですから、その辺でどういうような影響が出てくるか。当然ながらプラスですね、さらに好調になるという面と、それから、ひょっとして過熱してくることもないとは言えないとか、いろいろ考えられるかもしれませんので、両先生のその辺の予測といいますか、御意見などをお聞きしたいと思います。
  53. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) お答えいたします。  減税の規模によって経済効果は非常に違ってくると思います。基本的に消費が増大するかどうかということは、その時点における可処分所得が増加するか減少するかにもちろん依存するわけではございますけれども一般的には将来を見通した所得の大きさに依存するわけでございますので、若干の減税が行われたからといって、直ちにそれが非常に大規模景気刺激効果を持ってくるというようなことは余りないのではないかと私自身考えております。
  54. 松田修

    参考人松田修君) 減税がどのような規模でどの時点で行われるかにもよるかと思いますけれども、恐らくそれが一般の可処分所得をふやしていくのは、暦年でいきまして来年ぐらいからになるのかなという感じを持っているわけでございます、実際に手元に入って。そういうふうな状況のもとで経済がどうなっているかということにも依存するわけでございますが、御存じのように、財政景気刺激的であるかどうであるかということは、基本的にはやはり財政の収支が一体どうなっているかということに依存しているわけでありまして、ある意味では、自然増収がどんどん出るような状況ですと、これは財政自体が景気をそれほど刺激していない、むしろ、ひょっとすると足を引っ張っているかもわからないという状況になるわけでございます。したがって、これから自然増収がふえてくるような状況のもとで、ある程度減 税が行われるということは、財政の方から見れば中立化の方向に動いていくというふうに考えたらいいと思います。  そこへもってきまして、もう一つはアメリカの経済その他は、今までお話がございましたように、そう急速に財政デフレという状況にならないことは間違いないとは思うんですが、しかし、恐らくことしよりは来年の方がアメリカとしても財政再建の方向に財政の運用を動かしていかなければならないというふうな状況にあるのではないかと思います。そういうふうに考えますと、規模にもよりますが、しかし今考えられております減税が来年以降に動いてくるとするなら、それほどインフレ的であるかというと、そういうことではない。経済を過熱させるかというと、そういうことでもなさそうだというふうに私は楽観しているわけでございます。
  55. 野末陳平

    ○野末陳平君 ありがとうございました。
  56. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、御多忙中のところ御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。おかげさまで真剣な議論ができました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十九分散会