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政府委員(
水野勝君) イギリスのまず例でございますと、イギリスの現政権が発足いたしましたのは一九七九年でございます。五十四年でございます。その年におきましては、
税制改革の第一段といたしまして、
所得税率を思い切って下げる、その最高税率は八三%でございましたけれ
ども、それを六〇%に下げる。それから基本税率としては三三%を三〇に下げるということといたしております。その一方におきまして、従来付加価値税におきましては八%と一二・五%の二本立てでございましたけれ
ども、これを一五%に引き上げて
おります。これでもって
所得税の大幅
減税の
財源を賄ったということでございます。
次に、第二段といたしましては一九八四年、
昭和五十九年でございますが、この年には
法人税の
見直しを行っております。この年におきましては
法人税の税率を五二%でございましたのを三五%に下げる。これは、
段階的ではございますが、最終的には八六年以降三五%になるという引き下げ計画でございます。一方におきまして、
法人税の中におきまして課税ベースの抜本的な拡大を図ってございます。機械設備の初
年度一〇〇%の基礎償却というのがございました。こうしたものは思い切って廃止するという
措置でございました。これが第二段の一九八四年の改正でございますが、またこの年には付加価値税の課税対象の拡大を行ってございます。
一九八六年に至りまして、
所得税の基本税率を三〇から二九に下げるということを行い、さらに八七年にはその二九%を二七%に下げてございます。
これがこれまでの経過でございますが、さらに今
年度の
改革案といたしまして
提案されておりますのは、
所得税を再び抜本的に取り上げまして、基本税率、最高税率ともに思い切って下げるとともに税率の刻みを思い切って減らす。結論といたしましては、
所得税の税率を二五%と四〇%、この二
段階にするという
改革案のようでございます。また、相続税の税率も四
段階の刻みがございますのを、これを四〇%の単一税率にする、そういうことのようでございまして、これは国会で
審議が行われておるというふうに聞いておるところでございます。
このようにいたしまして、イギリスの
改革におきましては
所得税におきましても思い切って累進を緩和する、それによりまして、労働者、勤労者の勤労インセンティブ、労働インセンティブの回復を図ったということでございます。また、法人企業活動につきましても、課税ベースを拡大しながら税率は思い切って下げた、そういうふうなことで取りまとめられるかと思います。こうした
税制改革だけの結果かどうか、これは私
どもとしてよくなお勉強すべき点でございますが、その後のイギリスの
経済は活性化してまいりまして、
自然増収の拡大もあり、一九八七
年度からは
財政が黒字に
転換しておるということのようでございます。これがイギリスの
税制改革の経緯でございます。
一方、アメリカにおきましては、レーガン政権が発足いたしましたときからいろいろ
税制改革は
提案し、実施に移されてございますが、その第一段といたしましては、一九八一年に発足しました政権のもとで一九八二年、
昭和五十七年でございますけれ
ども、やはり
所得税の最高税率七〇%を五〇%に引き下げるという思い切った
改革をいたしてございます。さらに、
法人税につきましては、この年は課税ベースの
見直しを行うということでございました。
このように思い切った
所得税の大幅
減税を行いましたところ、
財政的には若干の苦しい面も出てまいりまして、その後逐次、
法人税を中心として課税ベースの拡大が行われてきておりますが、基本的な
税制改革は一九八六年でございます。一九八四年の一月に大統領から
税制の
抜本的改革をするという教書が発表されまして、財務省におきましてその原案が作成され、それが一九八五年に至りましてまとめられまして議会に提出された、これが実現を見たのが一九八六年
改革法でございます。
これは八七年から実現に移されておりますが、御承知のとおり、
所得税は一五%と二八%の二
段階にフラット化する、それから
所得税におきまして課税ベースのやはり拡大を目指す。これは支払い利子控除の縮減でございます。また、キャピタルゲイン課税の強化も行われております。
法人税につきましては、税率は四六%から三六%に下げる。しかし一方におきまして、投資税額控除の廃止、また加速度償却
制度の廃止によりまして大幅な課税ベースの拡大を行ってございます。
大きな方向としては、これはイギリスと同じように
所得税の累進構造を思い切って緩和する、
法人税におきまして課税ベースを拡大し、税率を思い切って下げるということでございますが、
税制改革の始まりました当初からこれが
かなり経済を活性化し、
税収の増大をもたらし、それがひいては
財政の体質改善に寄与するということは言われておったわけでございますが、この点はイギリスと違いまして、その後
財政赤字の縮減の
努力は行われておりますけれ
ども、現
時点におきましてはイギリスのように黒字に転ずる、こういうふうな劇的な結果としてはあらわれていない。これは
税制改正がすべて原因なのか、あるいはその他の
経済要因によるものでございますか、なお検討を要する点でございますが、同じような方向での
改革ではございますが、特に、
財政の収支に対しますところの
効果としては、アメリカとイギリスではやや際立っておる、これが両国の概要でございます。