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1988-03-25 第112回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十五日(金曜日)    午前十時二分開会     ─────────────     委員長         村上 正邦君     理 事                 大浜 方栄君                 梶原  清君                 藤井 孝男君                 志苫  裕君                 多田 省吾君     委 員                 井上  裕君                大河原太一郎君                 河本嘉久蔵君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 坪井 一宇君                 福田 幸弘君                 藤野 賢二君                 矢野俊比古君                 鈴木 和美君                 本岡 昭次君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 吉井 英勝君                 野末 陳平君    政府委員        大蔵政務次官   佐藤栄佐久君        大蔵大臣官房審        議官       瀧島 義光君    事務局側        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    参考人        税制調査会会長  小倉 武一君        不動産協会理事        長        江戸 英雄君        全日本民間労働        組合連合会政策        局長       名井 博明君        日本大学教授   田中 啓一君     ─────────────  本日の会議に付した案件 ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査ため参考人として税制調査会会長小倉武一君、不動産協会理事長江戸英雄君、全日本民間労働組合連合会政策局長名井博明君、日本大学教授田中啓一君、以上四名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。参考人方々から忌憚のない御意見を賜りまして、法案審査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の進行上、最初に参考人方々からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えをいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしく御協力のほどをお願いをいたします。陳述いただきます順序は、お手元に配付してあります参考人名簿記載順でございます。それではよろしくお願いを申し上げます。  まず、小倉参考人からお願いをいたします。小倉参考人
  3. 小倉武一

    参考人小倉武一君) じゃ、失礼しまして、少しくお話を申し上げます。  昭和二十五年のシャウプ勧告を初めとします今日の税制は、御承知のとおり、その後の大変な経済社会の発展あるいは変化に対応し切れていないということは衆目の一致するところでありまして、その結果さまざまなひずみあるいはゆがみというものが生じてまいっております。  特に、過去数十年の間、サラリーマン給与所得が非常に上昇してまいりまして、他方また、サラリーマン階層の間の所得格差というものがだんだんなくなってくる、平準化してくるということになっております。ところが、日本所得課税は特に累進度が非常にカーブがきつい、強いというようなことになっております。それからまた、さまざまな特別措置がその後講じられてきておるというようなことで、給与所得について特に税負担が重いというような感じが一般に持たれておるように思います。すなわち、サラリーマン不公平感あるいは重税感が募ってまいったというような状況でございます。  なお、ごく最近におきましては、地価高騰あるいは証券市場の活況あるいはその動向などを反映いたしまして、土地住宅、株式といったようなもので代表されます資産保有についてのアンバランスが生じてきておるのではないかというようなこともありまして、これらの点について公平を確保するという点から社会的に大きな問題になっているように思われます。そこで、資産所得に対する課税が必ずしも適当でない、あるいは十分でないということがまた税制についての不信感といいますか、不満感が高まる一つ理由になっておるように思います。また、相続税につきましては、長年見直しが行われておりませんので、やはり負担の軽減という要望が強くなっているように思います。  さらに、他方におきまして、消費についての課税につきましては、御承知のとおり現行物品税が主たるものでありますが、この物品税によります個別消費税につきましては課税の品目や税の負担について公平を欠いている、あるいはバランスがとれていないというような批判がございます。ところが、高度成長以後今日までだんだんと消費のパターンが多様化してくる、あるいは物品消費ということ以外にサービスというものが消費経済において非常に大きなウエイトを占めてくるというようなことになってきますというと、個々の物品課税をするということを主にする消費税では、そういう実態に対応し切れないというような問題があるように思います。  そこで、このような間接税制度はだんだんと世界の各国の動向とあわせて考えますと、日本独特のような、日本特有な制度というようなものになってきております。その適例が酒税でございますが、酒税に代表されるというようなことで、物によりましては、酒なんかについては対外的な摩擦が、外からの苦情が非常に強くなってくるというふうなことになっております。  また、酒に限らず、国際的に考えてみますと、特に問題になるのは法人税率の高さでございまして、日本は国際的に比べて法人税率が高い水準にあるということも、国際化のこの時代においてやはり是正を要するのではないかというようなことになっております。  そこで、このような現行税制についてのゆがみを直して抜本的な改正をするという問題があるのでありますが、さらに長期的に将来を展望いたしますと、御承知のとおりの高齢化といったような局面を迎えます。そういう場合に、これまでの ようなゆがみ、ひずみを内包している税制でもって対応できるのかどうかということについては大変疑問がございます。ゆがみ、ひずみがさらに一層増大するのではないか。所得税、特に給与所得にその重圧が重なってくるというようなおそれもなきにしもあらずということであります。  そこで、昨年の十一月になりますが、総理から今後の高齢化社会の到来というようなことも考えて、今後の税制につきましての抜本的な改正をしたらどうかという趣旨の御諮問がありまして、特に所得資産消費の間の均衡がとれるような安定した税体系をつくっていく、そのため成案をひとつ得たいというような御諮問がありまして、そういう認識に立ちましてただいま政府税制調査会では相当精力的に審議を行っているところであります。  その結果、先月の五日でございますが、「税制改革基本課題」という骨子を取りまとめまして、さらに本日午後でございますけれども税制調査会の総会が予定されておりまして、税制改革につきまする素案、いわゆるたたき台といったようなものを検討することになっております。このたたき台がまとまりますれば、これをさらに広く国民に問うて、税制調査会成案をだんだんと固めていくというように進めていきたいと思いますので、御理解を願いたいと思います。  なお、ただいま御審議いただいております租税特別措置法の一部の改正に関する法律は、今申しましたような抜本改正を控えておりますので、中には相続税改正あるいは酒税改正など国内的にもあるいは国際的にも急ぐような改正の問題もございますが、これらは抜本改正の中に含めて全体として審議を重ねていくという必要がありますので、今度の租税特別法の一部改正法律案は、今のような抜本改正のことも頭に置きながら、取り上げられておりますのは土地税制見直し住宅取得促進税制拡充あるいは石油税増収措置あるいは地域産業活性化ため措置など、最近の要請にこたえるというような趣旨内容になっておるかと思います。当面、至急実施する必要があるというようなものに限られておるのでございますが、適切なものであるというふうに考えております。  以上で私のお話は終わりたいと思います。
  4. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、江戸参考人からお願いいたします。江戸参考人
  5. 江戸英雄

    参考人江戸英雄君) 私、不動産協会理事長をいたしております江戸でございます。  きょうは、ただいま御審議の行われております昭和六十三年度の租税特別措置法改正案のうち、私ども業界にとりまして関心の深い土地住宅関係税制改正案につきまして意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを厚くお礼を申し上げたいと思います。  申し上げますまでもなく、土地住宅問題の解決は緊急を要する大きな課題でございます。これがためには土地住宅政策全般の整備が必要と考えられますが、今回の改正内容は、現下の諸情勢を踏まえ、土地住宅問題の解決に緊急に対応したものでございまして、業界といたしましてはその速やかな実現を期待するものでございます。  以下、今回の改正案につきまして、次の三点について申し上げさせていただきます。  まず第一に、優良長期譲渡特例改正でございます。  この制度は、昭和五十四年度改正におきまして、個人の長期保有土地譲渡のうち、国や自治体に対する譲渡民間デベロッパー等の行う優良な事業に対する譲渡促進する目的で創設されたものでございます。  この課税特例措置は、望ましい土地譲渡を誘導する政策税制でございまして、優良な住宅宅地供給を行おうとする民間デベロッパー土地取得効果があったものでございます。  今回の改正案では、譲渡益四千万円を超える部分についても、これまでの二五%の税率を引き下げ、一律に二〇%の税率によることになっております、これは地方では別でございますが。住宅宅地大量供給ためには、その原材料である用地取得が一番大事でございまして、これが円滑に行われることが供給の第一歩でございます。  また、土地譲渡する者は、基本的には税引き手取り額でもって譲渡代金妥当性を判断して譲渡意思決定を行いまするもので、今回の措置によりまして土地供給促進が図られることと存じます。  さらに、良好な市街地環境の形成、都市不燃化防災化等の観点から都市内部における再開発事業を推進することも重要な課題でございまして、これがためには既成市街地における土地高度利用促進する必要もございます。  今回の改正におきましては、従来、住宅目的開発建設事業に限定されておりました特例措置対象を、法定再開発事業特定民間開発事業ため譲渡にも拡大されることになっております。この特定民間開発事業は、民間開発事業のうち一定規模以上の施行面積を有し、複数敷地の統合により小規模敷地の有効な利用を図るとともに一定の空地を確保するもの等、優良な再開発事業として都道府県知事の認定を受けたものとされておりまして、今回の措置によりまして望ましい再開発事業が推進されるものと私は考えております。  第二に、居住用財産買いかえ特例改正につきまして申し上げます。  この制度は、居住水準向上に伴いまする住宅買いかえを税制面においても支援しようとする趣旨で創設されたものと承知いたしております。これまで住みかえの促進都市内部における再開発用地供給に大いに寄与してきた制度でございます。  本来、居住用財産はその値上がり益期待して取得保有されておるものではございませんで、日常生活の本拠地として取得保有されるものでございます。また、これを売却する場合も、それから生ずるキャピタルゲインを得ることが目的ではございません。さらに、居住用財産売却した場合、再び居住用財産取得するのが通常でございますが、その際の譲渡益に対して課税されると、その分だけ新しい居住水準の低下を来すことになりまするので、この特例が設けられたわけでございます。  しかしながら、この制度居住用財産売却により発生した売却代金全額を再び第二の資産取得に充てられる仕組みでありまするため、近時、都心部における地価高騰周辺に波及させる一つ原因になっているというような御批判も受けるに至りました。居住水準向上に資すべきこの買いかえ特例が、地価高騰という大きな渦に巻き込まれ、その本来の姿がゆがめられたことは、まことに残念に思っているわけでございます。  今回、地価対策一環といたしまして見直しが行われまして、これまでの買いかえ特例にかえまして、低率の分離課税方式に改めるものとされております。  この措置がとられまするならば、従来のような無理をしてまでも売却代金全額を第二の資産取得に充てるという必要がなくなりまして、地価高騰を連鎖反応的に周辺に波及させることにストップがかけられると思うわけでございます。  また、課税も低率でございますので、譲渡税負担が住みかえを阻害しないようにする効果も一応は維持されておると考えます。  さらにまた、例外的に父母等から相続等により取得いたしました居住期間が三十年以上の居住用財産につきましては、現行どおり居住用財産買いかえの特例が存置され、いずれか選択できるということに相なっております。これは長期間の居住者に配慮されたものでありまして、評価できるものと私どもは考えております。  なお、地価高騰問題はいずれの日にかはこれは落ちつくものと考えられるわけでございますが、その際におきましては、居住水準向上ため、より良質な住宅への住みかえを促進するという一 層の誘導措置を検討することが必要ではないかと考えられるわけでございます。  第三に、住宅取得促進税制改正について申し上げます。  現行制度は、一定住宅ローンを抱える住宅購入者に対して、毎年末のローン残高一定率取得後五年間にわたり所得税の額から還付する制度でございますが、民間ローンにつきましては毎年末残高の一%相当額住宅金融公庫等公的ローンにつきましては毎年末残高の半分の一%相当額と、控除額において格差があったのでございます。  今回、公的ローンにつきましても民間ローンと同様毎年末残高全額の一%とされることに相なっております。これは住宅購入者資金構成のうちに占める公的ローンの比率が現在相当高いものに相なっておりまするので、この措置需要者にとっては朗報であろうと考えております。  また、これとあわせまして、対象住宅床面積の制限の上限を撤廃した、あるいは所得要件を引き上げることが図られるということに相なっておりまするほか、増改築ためローンについても控除対象とされることに相なっております。これは、住宅建設促進上、一層の効果が上がるものと評価をいたしております。  なお、今年度の住宅着工は好調でございまして、戦後昭和四十七年、八年に次ぎまして百七十万戸と、史上第三位の程度に達するというふうに思われておりますのでありまするが、これは主として貸家建設戸数の増加に支えられたものでございまして、来年度はこの建設状況も必ずしも楽観を許さないと思うわけでございます。  今回の住宅減税拡充は今後の住宅建設を下支えするものであると、この措置の実施は必要不可欠であると考えておる次第でございます。  ところで、我が国住宅減税状況は、欧米先進諸国に比較しましてまだまだ立ちおくれておるわけでございます。例えば歳入総額に占める住宅減税総額の割合を欧米諸国に比べて見ますると、日本のそれは米、英の約八分の一、西ドイツ、フランスの約三分の一でございます。  したがいまして、将来は一層の住宅減税を実現することが望まれるところでございます。その場合に、現行のような住宅ローンの多寡にのみ着目した制度ではなく、住宅建設投資額に着目した制度に改革すべきではないかと考えておるわけでございます。  以上でもって私の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。
  6. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、名井参考人お願いをいたします。名井参考人
  7. 名井博明

    参考人(名井博明君) 名井と申します。公述の機会を与えていただきましてありがとうございます。  我が国の進路について先行き不透明の中であれこれ議論を呼んでいますけれども、いずれにしても国民生活の質を高めるため内需拡大をどうするかにすべて集約されますし、このことが全国民の願いだというふうに考えております。それだけに、この通常国会に大きな期待を寄せております。私たちはあえて「生活国会」と名づけているところでございます。特に税制改革土地住宅対策国民生活に密着した緊要な課題であり、ぜひわかりやすい国会論議を展開して、国民期待にこたえるよう全力を挙げていただきますようお願い申し上げたいと思います。  法案審議に当たりまして、釈迦に説法になりますけれども、まず第一に、中流意識論に浮かれ、国民生活実態が見失われがちになっているのではないかということが気になります。前川リポートの指摘を待つまでもなく、経済成長の成果が生活の質の向上に反映されていないということです。  最近各省庁が発表しました各種の生活調査消費調査貯蓄調査などを見ますと、目標とは裏腹に逆の方向に向かっているとしか思えません。中流意識前回、三年前の調査から二・四ポイントも下がっていること、将来の暮らしに悲観的な見方の人は、同じく前回の五七・一%から六五・四%とふえ、また貯蓄所得間格差を見ますと、貯蓄高より負債高の方が多いサラリーマン世帯は二〇・七%、サラリーマン世帯の五分の一が負債超過世帯です。  さらに、昭和六十二年十一月総務庁の家計調査報告によると、全世帯実質家計消費支出は前年同月比二・〇%と堅調に推移していますが、勤労者世帯実質〇・八%減となっています。一方、自営業など一般世帯は八・三%増となっており、消費面格差が顕著です。このように例を挙げればたくさんあります。  さきに、衆議院予算委員会公聴会連合山田事務局長から国税庁発表による昭和六十一年度の民間給与実態調査について述べましたが、昭和六十一年度、一年を通じて勤務しました給与所得者は三千七百二十九万人、平均給与は三百六十三万円です。これは残業手当を含む諸手当ボーナスを入れての年収です。事業所規模別に見ますと、一人から九人の規模は八百八十八万人おられまして、全体の二一・一%を占めていますが、平均給与は二百六十七万円です。五千人以上の規模は二百二十三万人おられまして、五・三%を占めています。平均給与は五百二十三万円といった状況です。  両者の格差を見ますと、給与面では一〇〇対六五、ボーナスの面では一〇〇対一七といった状況でございます。年収三百万円以下の人は四九・三%、三百万から五百万円以下は三〇・七%、五百万円以上という人は二〇・一%しかいないということです。  税制問題とか社会保障問題、土地住宅問題の議論をする際には、ぜひこういう実態についても念頭に置いて議論していただくことが非常に大事なことではないかなということであえて冒頭申し上げさせていただきます。  第二に、土地住宅対策であります。  当委員会におきましても、最近の社会経済情勢に対応するため、すなわち土地供給促進地価対策一環として土地税制改正が、さらに持ち家促進の見地から住宅取得促進税制改正が提案されています。土地住宅対策については思い切って進めてほしいと思います。  連合首都圏サラリーマン対象にして本年一月に緊急アンケート調査を実施しました。  その一部を紹介しますと、土地は「下がっていない、まだ上がっている」と答えた人が二十三区内で七五・五%、六十キロ圏外では七九・四%、その間はほとんど八〇%以上で、土地は下がっていない、むしろ上がっていると表明しております。  原因と責任についてでございますが、「何もしてこなかった政府」と答えた人が六〇・七%、「不動産業者による土地転がし」というのが一四・七%、「金融機関による土地融資の行き過ぎ」一一・五%、この三つで八七%を占めております。  対策でございますが、「土地取引政府や地方自治体が取り締まる」というのが六〇・一%、「土地が利殖、投機の対象になっていることをやめさせる」五九・六%、「政府機関を地方分散し、東京一極集中をやめさせる」五一・一%という状況です。サラリーマンは大都市での住宅持ち家についてはもうあきらめたと一般に言われておりますけれども、「年収の四、五年分で入手できれば生活を切り詰めてもマイホームを持ちたい」と答えた方が六〇%、「それでもあきらめた」という方が三〇%おられます。そして、「どうしていいかわからない」と答えた方が一〇%。国会でもこうしたサラリーマン気持ちを受けとめてやっていただきたいと思います。なお、土地について四人のうち三人までが土地私有制度のもとで社会的、公共的制約を容認しております。  土地問題は、土地税制における土地評価ゆがみが大きな原因となっておりますが、その点については後ほど述べさせていただきます。  第三に、税制改革減税についてであります。  税制改革減税はぜひ実現していただきたいと 思います。総理府の世論調査でも、不公平、重税感昭和四十六年五四%でしたが、昭和六十一年では八一・三%になっています。これは圧倒的にサラリーマンの声といいますか、怒りだというぐあいに受けとめてもらいたいと思います。昭和五十年代以降、本格的な所得減税がほとんど行われてこなかったということでございます。  昭和四十一年から五十年の十年間で減税は三兆六千九百二十五億円、昭和五十一年から六十二年の十二年間でわずかに二兆六千二百七十億円の減税しかなかったということです。特に、昭和四十九年の一兆七千二百七十億円の減税は、今日の予算規模見直しますと約五兆円に匹敵する金額でございます。貨幣価値が変わった今日でもいまだに一兆円、二兆円減税というのもおかしなものだと思います。  今回、私どもは、昭和六十三年度の減税としまして、一兆一千億円の所得減税、四千八百億円の住民税減税を主張しております。この理由は極めて簡単でございまして、昭和五十二年から消費者物価上昇率が三四・六%ございました。そのうち、昭和五十九年、六十二年の二回にわたり減税が行われまして、ちょうどその差し引きが一兆五千八百億円になりますから、ぜひ一遍抜本的税制改革の前に精算していただきたいというような考え方でございます。  昨年十一月、竹下総理所得資産消費の間のバランスのとれた税体系の確立を目的とした諮問税制調査会にされました。私たちもそのことは重視すべきだと考えております。私たち連合の基本的な態度を率直に申し上げますと、所得資産不公平是正を中途半端にしたまま、「新型間接税、秋口に結論」を前提とした税制改革を絶対に進めるべきでないということです。  本来の税制改革をぜひやってほしいという私たち気持ちを申し上げたいと思いますが、税制改革は、制度と財政を切り離して、まず制度不公平是正を中心に徹底した改革を進めていただきたいと思います。  特に、サラリーマンの立場から四つの不公平を感じております。一つは、名目賃金がふえることによる実質増税、二つは、執行上の不公平、いわゆるクロヨン問題、三つは、資産課税の骨抜きを初めとする制度上の不公平、四つは、税金の使われ方の不公平、などの不公平の改革が私たちの主張です。  それを所得資産消費の面からとらえ、問題点と改革の方向を申し上げたいと思います。  まず、所得課税について。  現行税制には不合理、不公平がございます。第一は、毎年所得減税を行わない限り、直接税とりわけ源泉徴収される所得税の比重が重くなるという事実です。第二は、申告納税者の納税の所得捕捉が十分行われないため給与所得者との間に税負担の不公平が生じ、いわゆるクロヨン問題が疑いもなく存在する事実です。  昭和五十二年から六十二年の十一年間の所得税の推移を見ますと、サラリーマンの給与はこの間に三七・九%ふえておりますが、税金は九八・五%、一%に対して二・六%ふえている。一方、申告所得者の所得でございますが、三〇・一%増に対して税金は三六・一%、一%に対して一・二%増という事実でございます。これは、いわゆるサラリーマン実質増税とクロヨン問題を如実に物語っているのではないかというふうに考えます。これは単に税額の差にとどまらず、保育料あるいは奨学資金を初めとした所得基準に基づくあらゆる福祉制度に影響を与えまして、二重三重の不公平を増幅しているということです。  世上、大幅所得減税を実施し、その財源を新型間接税の導入に求めればある程度これらの不公平是正に役立つという意見がございますが、科学的分析、これは豊田尺度による職業別の所得不平等度の変化によりますと、それだけでは大きな改善は果たし得ないというふうに言われております。したがって、所得課税そのものを基本的なところから改革する必要があると思います。  その第一は、インデクセーションの導入だと思います。物価などに中立的な所得税、住民税制を実現して、公平な税負担を進めるために、例えば消費者物価の上昇率が五%を超えた場合、人的控除給与所得控除及び税率適用所得階級区分を消費者物価指数に対してインデックスするということが必要だろうと思います。  第二は、税率構造の見直しです。特に、低中所得者層を中心に実質累進度を緩和するよう税率及び課税所得区分を改善することが必要です。その場合、所得税の最低税率は一〇%、最高税率六〇%で七段階にする。一方、住民税については最低税率四%、最高税率一五%にすることを提言しております。  なお、総合課税再建の推移を見ながら、さらに累進構造の見直しを行う必要があると考えます。  三つ目は、実効ある実額控除制度の導入です。現在給与所得者に認められている必要経費の実額控除拡充し、適用範囲を拡大することが必要です。特に、冠婚葬祭費については、給与所得控除とは別枠で一定の実額控除制度を導入することを求めております。  また、通勤手当全額課税措置を講じて、特に一定範囲内での新幹線通勤についても対象としていただきたいと思います。  そのほか、住宅取得促進税制の抜本的改善、財形貯蓄の非課税限度額の引き上げ、退職所得控除の引き上げ、医療費控除の定額基準の引き下げ、生命保険料、個人年金保険料の所得控除額の引き上げ等、政策福祉減税の実施もやっていただきたいと思います。  さらに、クロヨン問題を解決するためには、税法上、実効ある記帳義務を課す、あるいは一定額以上の収入のある者に対して総収入申告制を義務づける、こういう制度を強化していただきたいと思います。そしてまた、推計課税の導入と立証責任の仕組みの改善、罰則強化、時効延長、さらにみなし法人の撤廃、医師優遇税制の撤廃を求めております。  二つ目に資産課税についてでございます。  現行税制は勤労所得に重く、資産所得資産に軽くなっております。これはクロヨンと並んで大きな不公平の源となっていると考えます。第一は、高額所得者により多く発生するキャピタルゲインが原則非課税なのに、マル優廃止によって少額預貯金は課税されるという不公平。第二は土地税制における土地評価ゆがみ、すなわち土地保有税が余りに軽過ぎる問題があります。このことは、土地資産として魅力あるものとし、利用転換を妨げ、土地問題の大きな原因になっております。  したがって、キャピタルゲイン、土地税制についての改革を行う必要があると思います。  キャピタルゲインは、一言で言いますと、アメリカ並みにしてもらいたい。すなわち、有価証券譲渡益を原則課税として、課税方法は総合課税とする。純キャピタルロスは一定額を限度に他の所得から控除を可能とし、控除し切れない純キャピタルロスは翌年以降、一定期間を限り繰り越し可能とする。さらに、捕捉体制として、クリーンカードと私たちは言っておりますが、番号制を導入して、投資家は有価証券売買の際にクリーンカード番号を申告する。証券業者は取引の資料を国税庁に提出する。こうしたクリーンカードの導入は、あくまでも執行上の不公平をなくするため所得捕捉のため措置であって、個人のプライバシー保護を前提とする。  さらに、このカードは社会保険、年金への活用についても今後検討をしていただきたいと思います。  次に、利子配当の課税でございます。  本年四月よりマル優などの非課税預貯金制度は廃止され、一律分離課税となりましたが、課税の公平確保の面あるいは退職後の生活設計の観点からも問題があります。したがって、将来的には従来の非課税貯蓄制度を復活させ、クリーンカードによる名寄せを行い、限度を超えるものについてはキャピタルゲイン同様総合課税としていただきたいと思います。  次に、土地税制見直しでございます。  現在、日本の固定資産税の実効税率は〇・一五%程度というふうに極めて低くなっております。一言で申しますと、ヨーロッパの半分並みの保有税が課されてもいいんではないかと考えます。  第一に、土地保有税の強化を私どもはうたっております。これは多少時間はかかる問題かもしれませんが、例えば二千平米以上で価格が五億円以上のすべての土地保有者及び地権者に原則として年率一%の国税を課する。ただし、所有地を十分に有効利用し、または賃貸している場合には大幅な軽減を行うというのも一案だと思います。さらに、土地譲渡所得課税についても、税制上かなり優遇されておりますので、この税の適正化を図る必要があると思います。さらに、固定資産税の適正化。固定資産税についても、一般宅地住宅を除き、宅地及び市街化区域内農地についても時価に近い課税標準に基づいた課税とし、基礎控除制度、累進課税制度を導入する必要があるのではないかと考えます。相続税についても、最近の地価高騰を考慮し、特に自己の居住に供する一定面積以下の土地については、引き続きその住居に住めるよう課税最低限、税率構造等の見直しにより減税を行い、それを超えるものについては、富の再配分を重視し、時価に近い課税標準に基づいた課税とすることが望ましいと考えます。  三つ目は法人税ですけれども我が国の実効税率は先進諸外国に比べて高いと言われております。企業の国際化が進む中で、産業、雇用の空洞化を避けるためにも、実効税率の国際比較を重視し、実効税率を下げる必要があると思います。  ただし、一方で、国税庁の調べでは、全法人の約百七十万社のうち、法人税ゼロの企業が九十二万社近くあります。この法人税ゼロの仕組みは、法人の受取配当益金不算入、引当金が必要以上に認められている、外国税額控除制度の本来の趣旨を超えた利用土地の投資の借入金の利息で利益を相殺といった点が指摘されております。  一定の政策目的を達したものや不合理なものについては、課税ベースを拡大する方向で見直す必要があると考えます。  最後に、消費課税についてでございます。  現行の間接税については、物品税にも見られますように、矛盾、問題点が多くございます。拙速を避け、十分時間をかけて中長期的に見直す必要があることを私たちは主張しております。私たちは間接税の罪悪説はとっておりません。所得資産の不公平を明らかにし、高齢化社会の姿を示して財源との兼ね合いからその内容を慎重に検討する必要があると考えます。  その際重要なことは、税制改革が経済、産業及び国民生活にどのような影響、効果を及ぼすかあらかじめ分析する必要があると思います。特に税制改革の際には、公平性の観点から分析が不可欠でありまして、税制改革により家計間の税負担配分がどのように変化するか明らかにする必要があると考えます。それを踏まえて国民負担率も含め、所得資産消費の間のバランスのとれた課税を行うことについて広く国民の合意を得ることが重要だと考えます。  時間が参りましたので、また後ほど質問の中でお答えしたいと思います。
  8. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、田中参考人お願いをいたします。田中参考人
  9. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 日本大学の田中でございます。このような機会を与えていただきましたことを、まず感謝申し上げたいと思います。これまで既に三参考人からお話がございましたので、その重複する部分をできるだけ避けながらお話をさしていただけたらと思っております。    〔委員長退席、理事梶原清君着席〕  まず、今回の狂乱地価と言われるものでございますが、まさに土地無策、人災と言ってもいいんではないかと考えております。この狭い東京の地価がアメリカの全国土の総地価に匹敵するというようなことは、まさに異常であろうかと思います。東京の面積とアメリカの国土を比べますと、多分千分の一近くになるかと思いますが、それがほぼ一緒というのは、この一事でもって異常であるということがわかるわけでございます。  今回の狂乱地価というのは前回の列島改造論のときのこととよく比較されますが、そうではなくして、明治四十年に我が国で、日本列島がやはり狂乱地価によく似たような現象が起きたわけでございます。今申し上げましたとおり、明治、そして十五、六年前の過剰流動性のとき、そして今回という、今世紀に三回異常な地価高騰が起きたのは先進国の中では日本だけじゃないかと考えているところであります。  経済の変動期には必ずこういうことが起こるというようなことが言われております。一八四〇年ごろのイギリス、そして一八八〇年、一九二〇年のアメリカがそうでございます。金余り、土地税制の緩やかさ、こういうのがほとんど狂乱地価の背景にあるわけでございます。今回の場合、予測できた金余り、そして土地税制が適正でないということが今回の本当の狂乱地価を招いた最大の原因であるというような感じがいたすわけでございます。こういう点は終戦後の高度成長期のラテン系の国でも我が国と同様な傾向が起きましたけれども、やはり同じように金余りと土地税制の緩やかさがあったわけでございます。こういうような視点から考えてまいりますと、我が国の場合は非常に地価高騰しやすい政治、経済体質にあるということでございます。それだけにこそ、税制を含めましてそういうチェック、歯どめということが必要なことをまず考えなければならないと思うわけでございます。  このような視点から、今回の改正案でございますが、もう既に三参考人からるるお話がございましたので簡単に述べさしていただきたいと思いますが、まず個別的には、応急措置的な措置としては遅過ぎるというような感じはありますけれども、一応評価できるということを考えております。しかし、大局的、長期的にはかなり問題がある税制改正であるような気がいたします。  まず、優良宅地のものでございますが、理論的には供給促進面から一応の評価はできるように考えられます。しかし、現実的にはこれくらいの優遇措置では余り効果がないというような感じがいたすわけでございます。土地所有者に対するあめばかりではもはやもう供給促進は不可能だというような感じすらいたしているところであります。むしろ保有課税の強化などによる、そういういわゆるむち的な効果があって初めてこの制度が生かされるような気がいたすわけであります。こういう点から考えますと、どうも片手落ちだという感じがいたすわけでございます。  次に、居住用財産譲渡した場合の課税特例でございます。  今回の狂乱地価の一因になっているのが、この居住用資産買いかえ特例であるということがほとんど通説であるわけでありますので、これに対しましては一応の歯どめが必要であるという感じがいたすわけでございます。しかし、長期的、大局的にはかなりの疑問であるという感じがいたすわけであります。  まず第一番目に、フィルタリング効果といいますか、これからの我が国住宅を考えるときに質的レベルの向上が必要でございますが、欧米先進国ではほとんどの国がこの制度を適用しているわけでございます。こういうことからいくと逆行するというような感じもいたすわけでございます。  そして第二番目に、地区の詳細計画とかいうようなそういう都市計画がないままで税制だけがこのような買いかえをある程度制限しても余り効果がないというような感じがいたすわけでございます。  次に、住宅税制でございますが、これは私はかなりの評価をしたいと考えているところであります。こういう視点から今度は大局的なことから三点ほど御指摘をさしていただけたらと考えております。  我が国は、最近の円高のこともありますが、統計上のうそということも学者から批判されておりますが、とりあえずアメリカよりも所得が高い、そして、今みたいな百二十五円前後ですと完全にスイスを追い越して多分世界一であろうと思います。不労所得では世界一豊かな国と言われながらその実感がほとんど我々国民にはないわけでありまして、これもやはり社会的なインフラが非常におくれている、とりわけ住宅がおくれているという感じがいたすわけでございます。これから労働時間も短縮ということになりますと、亭主元気で外がいい、うちに余りいない方がいいと言いながら、これからそういう時代じゃなくなるわけでございますから、住宅に対する国民のニーズ、不満というものもかなり高まってくるんじゃないかというような感じがいたすわけであります。住宅の整備、そしてそれに伴います社会資本整備の拡充がこれからの最大の課題である、政治課題であるというような感じがいたすわけでございます。  こういう視点から、これまでの住宅政策は、まず第一番に基本理念を変えていく必要があるのではないかと考えるわけでございます。  これまでは福祉政策という形で平等主義というのをとってこられたような感じがいたすわけでありますが、私は欧米と同じようにやはり経済政策型へ変更すべきだというような感じがいたすわけでございます。住宅の質的レベルの拡充というのが我が国に課せられた最大の課題であるわけでありまして、欧米先進国もほとんど今は住宅問題を解決したと言われる国々がかなりあるわけでありますが、そういう中でも今でも住宅レベルの質的向上ためにはいろんな措置をしているわけでございます。できる人には税制、金融面でサポートする、それがフィルタリング効果になってくるわけでありまして、住宅拡充と質のいい、レベルのいいところへいくという形から、それを次の人が売って、そしてまた次の人が買っていくというような形で全体のレベルが上がるわけであります。そして、そういう質的レベルが自力ではできない人については公営住宅拡充とか農住組合法をさらに使うというような形でできるのではないかと思います。こういう点からは今回の住宅税制改正案は非常に評価したいと思っております。  とりわけ、増改築を含んだというようなことは時代のニーズに合致しているということ、あるいはまた床面積の制限撤廃、所得制限を三千万円に上げたということは、金持ち優遇という一面はございますけれども、フィルタリング効果ということからかなりの効果期待できるというような感じがいたすわけでございます。  しかし、先ほど申し上げましたように、居住用資産買いかえというのは長期的には問題があるわけでございまして、これを都市計画とかあるいは税制でうまくチェックできたならば、できるだけ早くもとの本則に戻した方がいいんではないかというような感じがいたすわけでございます。  第二番目に資産課税の抜本的な見直しでございます。  この点につきましては名井参考人から既に御報告のとおりでございますが、私は所得消費のアンバランス是正というのが今国会でも問題となっております大型間接税の問題であろうと思いますけれども、それ以前に私は所得資産とのアンバランスが起きているような感じがいたします。この方が解決が先ではないかというような感じがいたすわけであります。欧米先進国も資産の拡大ということが非常に大きく問題となっております。イギリス、フランス、アメリカが特にそうでございますが、こういうところから、逆に言えば、余りにもアンバランスために景気がおかしくなる、恐慌論も出てくるのは先生方御承知のとおりであろうと思います。  特に我が国の場合、株と土地にこの点がきたわけでございまして、公平さということがどうしても税の負担には要求されるわけでございます。水平的な公平というのは、確かにクロヨンがございますけれども、それ以上にバーティカルエクイティーといいますか、垂直的な不公平さが我が国の場合とりわけ大きいような感じがいたすわけでございます。これはまさに政府機能が低下しているということのあらわれであろうと思います。これらの点は特に不労所得的な側面が強いわけでございまして、今、今日の地価高騰ために三億円以上の土地資産を持っている方が一説には三十万とか五十万ともいると言われております。これを考えてみますと、我々、大学出てから約四十年間働いた生涯賃金が二億円前後と比較しますと、いながらにしてこの三倍、四倍になったということもこの辺の負担の不公平ということからやはり見直していく必要があろうかと思います。  こういう視点から、海外へ出ていく、この含み益を利用して企業のみならず個人でも出ていくという動きが出てきているわけでございまして、既に大体一兆円というぐらいの投資を海外にしているわけでございます。五年前までは我が国は海外不動産投資が第五位であったわけですが、今はダントツになっているわけでございます。これは円高だけでは説明できない問題のような気がいたします。貿易摩擦以上に、そういう土地摩擦といいますか、不動産摩擦がこれから起こる懸念がされるわけでございます。  我が国の場合、本来の土地税制というのが機能しなかった。土地税制は、地価の安定機能、供給促進機能、所得の再分配機能あるいは資源の最適配分機能、そして都市整備財源機能の五つがあるわけでございますが、我が国の場合はこれがほとんど機能してこなかったわけでございます。土地は借金して買え、そして持っておってもほとんど保有税が安い、そして絶対に売るな、譲渡税が高いというわけでございます。固定資産一つとりましても、アメリカのニューヨークは大体、ほぼ九%でございます。実効税率が五、六%となるわけでありますが、日本では一・四%、そして住宅と非住宅とが区別されていないというような不思議な税制が残っているわけでございます。これがため、フーペイ、フーレシーブ、だれが負担して、だれがその便益を得ているのかというのは、とりわけ地方政府というのは利益説から考えましても非常に便益がはっきりわかるのが住民参加意識にもなろうかと思います。この点が我が国の場合、地方税一つとりましても、県税が大体十五種類ぐらい、そして地方税は住民税、固定資産税を初め十八種類、トータル三十以上の税制によって成り立っておりますので、だれがそれを払って、だれがその負担をしているのかというのが非常にわからないわけでございます。  東京の固定資産税収入が自主財源のうち約一六%、ニューヨークは財産税で八〇%、ロンドンではレートで一〇〇%と言われているわけでございます。この辺の住民税と資産課税である固定資産税的なものとの負担是正というのもある程度必要であるような感じがいたすわけでございます。こういうところから納税者意識がだんだん希薄になってくるという点もあろうかと思います。ラテン系の国はとりわけこういう点が、納税者意識がないということも言われておりますが、だんだん日本人の感覚もこのような方向に行っている一つの趨勢がこの辺にもあるような感じがいたすわけであります。  三番目といたしまして、町づくりとの整合性が税制に欠けているという点でございます。  都心の商業地の地価、これは経済原則で動いた今回のものでございますけれども、それは需要過多、見積もり過多ということもございましたけれども、それが高級住宅地に波及をしていく、そして一般住宅地へ波及したという、まさに税制の不備でございます。こんなようなことは我が国ぐらいしか先進国の中ではないような感じもいたすわけでございます。  こういう点は都市計画、地区詳細計画とか用途指定というのも非常になかったわけでございます。あいまいもことしたわけでございまして、国公有地の払い下げの問題でもそういうような形で、本来なら住宅地が御承知のとおり商業用地として買われ、それに利用されるということですから当然高値になっていくわけでございます。日本 といいますか、東京の用途指定は約八分類にされていると思いますが、ニューヨークでは二十一分類になっているわけでございます。建築物を日本の場合では一応禁止ということを列挙しているわけでありますが、欧米先進国ではほとんど建てられるものを列挙しているわけでございます。この辺の違いがやはりこの土地税制都市計画とのアンバランスといいますか、不整合が貧弱な町づくりになってしまったのではないかと思います。きめ細かい用途地域を指定し、そしてそれで税制面で誘導していくということがこれから最大の課題であるという感じがいたすわけでございます。  当面の地価対策について簡単に述べさしていただきたいと思いますが、農地の宅地並み課税というのはやはり抜本的に私は市街化区域に農地が必要かという原点から考える必要があるような感じがいたします。どうしても必要ならば、密室的な超優遇税制でなくて住民の意見が少しでも反映できる財政支出でやるべきだと考えているところでございます。そして、監視区域はできるだけ早目に対応するんだということが必要であろうと思います。現在でも地方圏あるいは東京圏の七、八十キロ圏がまだ地価が上昇ぎみでございます。こういう点は早目に監視区域を指定していくということであろうと思います。  しかし、指導価格については再考の余地がある。今、高値安定になっているわけでございまして、実勢価格は指導価格の一割、二割低いところで動いているという全くナンセンスな状況が出てきているわけでございます。さらに、不動産金融の規制ということも継続していただきたいと思いますし、土地税制の今申し上げましたような抜本的な考え方ということも必要であろうと思います。必要ならば、欧米先進国がやって地価の安定に寄与したと言われる土地増価税、一八九六年にドイツで初めてできた税金でございますが、日本とともにイタリアは高度成長期の前半期に物すごい地価高騰がありましたけれども、一九六三年にこの土地増価税が合憲であるという形で地価がその後ぴたっととまったわけでございます。あるいはまた、資産評価税ということも考える必要があるかもしれません。  さらに、できましたら土地登録制度ということを御提案申し上げたいと思います。これはドイツでも既に成功したことでありますが、土地を買った売買価格を必ず登記簿に登録していくというようなことは、少なくとも監視区域のところとはセットして考える必要があるんじゃないかというような、これはアナウンスメント効果としても重要である、効果があると考えるわけでございます。  ロンドン・エコノミストかと思いますが、日本人というのは計画性がない、計画性がないけれども、いざ一番困難のきわみになったときには、日本人というのは知恵を出す国民であるということを、今回の狂乱地価について批判的な論調の中でも、最後の結論として述べているところでございます。我々はこういうところは、もはや経済原則ではなくして、政治が解決する段階に入ったと考えているところであります。  以上で、簡単でございますが、時間が参りましたので終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  10. 梶原清

    ○理事(梶原清君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 社会党の鈴木和美ですが、参考人の皆さん、本当にきょうは大変御苦労さまでございます。冒頭、感謝申し上げておきたいと存じます。特に小倉会長には、今大変話題になっております税の問題で、日夜御苦労いただいていることに対して感謝を申し上げておきたいと思います。  さて、そういう時期でございますので、先ほどの意見陳述の中で、これからの日程みたいなことについてお伺いしたいんですが、一番最初に、二十二日に間接税部会が発表された二類型三方式というんですか、会長、これは一般的に言うEC型付加価値税と一般消費税と取引高税、こういうふうに二類型三方式というのは理解してよろしゅうございましょうか。いかがでしょう。
  12. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 今お尋ねのことですけれども、私どもそういう余り分類をしていませんので的確にお答えできるかどうかわかりませんが、一つは、お話しのように取引高税と申しますか、このタイプが一つございまして、これは累積型と俗に言います。俗といいますか、言いますが。それからもう一つは、同じく多段階方式ですが、累積を排除する形というのがございます。  お尋ねの中の問題としては、多段階式だけれども累積を排除するという形の中に二つあるんじゃないかということだと思いますが、それは多分累積を排除するための計算の方式のことだと思いますが、一つは納品書ですか、あるいはインボイスといったようなもの、これによって税を計算する一つの仕方と、もう一つは、帳簿上差し引き勘定するわけですね、仕入れ高を差し引きするというようなやり方でやる二つの方式があるというのが、今お話しの間接税部会の一応の報告ということだと思います。
  13. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 実は、これから議論をずっと詰めていかれるんだと思いますが、一般的に見ますと、政府税調は、あえて累積排除型とか累積型とかという言葉はさておいて、EC型の付加価値税と一般消費税と取引高税と、こういう三つのタイプを出しながら、実は、一般消費税というのが大平さんのときにああいうことになった、取引高税の方はヨーロッパでも評判が悪い、日本でも二十三年にやって二十四年にパアになっちゃったというような実績があることから見ると、政府税調はEC型に誘導するためにこういうものを三つ出しているんじゃないかというような世間様の見方、評価があるんですが、これについてどう思うか。これが一つなんです。  もう一つは、三月十日、衆議院竹下総理が予算が通るときに御案内のとおり六つの懸念というものを表明されたと思うんです。つまり六つの懸念というものは、もう私から申し上げるまでもなく、逆進性が強くなるとか、それから低中所得者層の負担が多くなるとか、それから税率が上げやすいとか、そういう問題があって、総理としては極力このことを重く見てその解消のために努力する、こう答弁されているわけです。さて、これから議論をずっと税調が進めていくときに、竹下総理のこの六つの懸念というものと税調とはどういうふうにこれを兼ね合わせて議論をされるのか、この点を二番目にお尋ねしたいんです。
  14. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 初めのお尋ねですが、税制調査会としては、間接税の類型について、幾つ選んでそれについて世間の意見を聞くということにつきましては、まだ必ずしも三方式と決まっているわけじゃございませんのです。ECの付加価値税という方式が一つございますけれども、これをさらに幾つかに分けてというそこまではいっていませんので、今のところは、ラフに申し上げますれば、取引高税とEC型の付加価値税方式と、この二つの中でさらに詰めまして、課税ベースはどの程度にするのか、税率はどの程度にするのかというようなことも、累積排除と同時に考えて詰めていくということになっております。必ずしも、お話しのようにECということになりましても、ECタイプと申しましてもいろいろバラエティーがあり得るわけですから、まだそこのところはどうするかは決めておりません。  それから、総理のいわゆる六つの懸念につきましてどういうふうに税制調査会では処置していくかということについては、おおよそ総理の懸念の中にもちょっと含意されているように思いますが、一つは、所得税をどう仕組んでいくかということに非常に大きな関連があると思います。いわゆる逆進性というのに対処して、所得税の方では低中所得層についてのことを考えるといったようなことが一つございます。それからもう一つは、そういう所得税ではカバーできない、所得税と関係ない国民も、関係ないと言うと語弊がありますが、住民税もありますし所得税もありますが、所得税では触れにくい階層もございますから、そう いう階層で特に恵まれない方々については、これは財政支出で考えておく必要があるんだろうと。これは、もっともしかし、財政支出でどういう方法を講ずるかということは、税制調査会自体としては細かくは申し上げられませんけれども、そういう必要性があるという指摘ぐらいは当然なすべきだろうというふうに考えております。  それからもう一つは、今度消費税の中に入るということもあるわけです。これはしかしいろいろ意見が分かれまして、まだどういうふうになるのかちょっと予測がつきませんけれども、例えば税率をどうするとかあるいは税率につきまして、何といいますか標準税率のほかに軽減税率というものをつくる、品目によりまして、あるいはサービスによりましてつくるということも考えられまするし、あるいはヨーロッパの諸国でも無論そういうこともやっていますが、同時に非課税をどうしていくか、あるいはちょっと問題にはならないかと思いますが、しかし挙げる項目としてはゼロ税率という考え方もあり得るわけです。そういうことにつきましてはなお今後の検討課題だというふうになっております。
  15. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 大変恐縮ですが、もう一つお尋ねしたいんですが、先ほどからのお話しの中で所得資産の均衡というお話が出ておりまして、キャピタルゲインの課税はしっかりやれよという意味で原則課税という方向に今大体向きつつある、向いていると言ってもいいのかもしれませんですね。さて、そのキャピタルゲインの課税について、税調としてはこれから検討していくに当たってその収益をどういうふうに見るのかとか、またはその捕捉ですね、先ほど背番号の話も出ておりますが、捕捉の問題だとか、大変重要なものを抱えていると思うんですね。こういう重要な問題をこれから検討していくと、そういうものが国民的に納得できるような税調案ができ上がるというような会長御自身の見通しで結構なんですが、時間的にどのぐらいかかるものと見たらいいでしょうか。そんなに簡単にぽっと行くような代物であると見ていいんですか。
  16. 小倉武一

    参考人小倉武一君) それは、御質問の中にもお触れになっておりますように、そう簡単なものではないことはそのとおりでございまして、特に納税者番号制を導入し、それによってまた有価証券の取引についての損益の状況を報告を得て背番号のもとで推計するというようなことになるには、なかなかこれはいろんな制度の充実、また実際上の処理の能力といったようなこともございます。また、有価証券業界にどの程度の事務負担といいますか、そういう負担がかかるかというようなこともございます。したがって、早急にこの結論が得られるということではないと思います。  しかし、原則として総合課税というような中にキャピタルゲインを取り入れるという方向は方向として、そういう方向に沿うた検討もやりますけれども、今お話しのようにある程度時間がかかるとすれば、時間がかかった上で成案を得てから実行ということでなくて、その前に何か暫定的にやる便法はなかろうか、こういう考え方も当然あるわけでありまして、またそういうことを意見として述べられる方もございます。したがいまして、その兼ね合いだと思うんです。どの程度時間がかかるか、それからまたかかるとすればどういうような便法を講ずるかということが早急に検討すべき事項である、こう思っております。
  17. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 最後でございますが、今のお話をお伺いしておりましても大変難しいことだと思うんですね。いろんな角度から議論はしていかなきゃならぬことだと思うんです。私が一番政府税調に懸念というか、心配というのを持っているのは、それだけ大きな中身——前の税制のそのもの自体も実際も相当議論がありますね。今のようなキャピタルゲインの問題も相当議論があると思うんです。ところが、永田町の筋の方は何か秋にどうするとかこうするとかというようなささやきも現に何となくあるんですな。ですから、政府税調は国民の納得するようなものができ上がらない限りは、竹下さんにいろいろ言われても頭としてしっかりしたものができ上がるまでは出さぬぞというぐらいのお気持ちをぜひ持ってもらいたいと思うんですが、会長でなかなか言いづらいかもしれませんけれども、ちょっとだけ所見を伺っておきたいと思います。
  18. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 総理が直接私にお話ししたことはその後ございませんけれども国会等の御発言などを伺っていますと、税調に対して答申をいつまでに出せと、こういったような時期は限っていないということを明言されております。したがって、時期は、我々はそう慌てるつもりはございませんけれども、といって故意に、故意にと言うと語弊がありますけれども、悪く言えばだらだらと審議を重ねていくというつもりもございませんで、一方、減税という問題もございまするので、これも相当減税ということであればどうしても財源ということも税制上考える必要があるということでもございまするから、そういう必要性もあわせましてできるだけスムーズに早くやりたい、こういうふうに思っております。
  19. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 どうもありがとうございました。  江戸参考人にお尋ねいたしたいんですが、今回の税制改正におきまして土地住宅の優遇税制というものが出ているのでございますが、これだけの優遇税制をとりあえず認めたということになりますと、不動産業界の大御所としてどのぐらいこれ供給が可能になると思われますか。私は、個人的には供給というものが税制の面でどのぐらい本当にいくものかなということをちょっと疑問を持っている一人なものですから、理事長の見通しなどをちょっとお尋ねしたいんです。
  20. 江戸英雄

    参考人江戸英雄君) お答え申し上げます。  三点ございまして、ただいま御質問のどのくらいの効果があるのかということは、第一点の長期譲渡特例改正であるんじゃないかと私は思うのでございますが、これについては、今のところ私どもは過去の経験からいたしまして見ても現在住宅の原材料や土地供給に有効であるということはわかりますが、どのくらい果たしてあるかということはちょっと私はっきり申し上げかねますのですが、現在このままでおりますと、ずっと宅地、原材料である土地供給は減ってまいっております。過去に比べて半減しておりますね。どうしても宅地供給はその原材料である土地、原材料土地供給、買えないとは言いませんが、それが過去に比べまして大体半減しております。こういう優遇税制によって私は減るのをとめる程度ではないかと思います。どのくらいあるかということははっきり私はちょっとお答えできません、申しわけございませんが。
  21. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 同じ問題で田中先生にちょっとお願い申し上げたいんですが、先ほど土地の問題についてむち的な、たたくむちですか、そういうような税制というものをしっかり確立しておかないと大変じゃないかという御指摘がございました。今もちょっと理事長にお尋ねしたように、私はこの税制の面で土地のいわゆる、もちろんそれは効果的なことは多少ありましょうけれども高騰を抑えるとか、住宅建設促進とか土地供給の円滑化だとかいうようなこと、税制が果たす役割ですね、それは一体どういうふうに考えたらいいのかということについて、さっきのどうもそのむち論のところがちょっと理解できないものですから、もう一度御説明いただくとありがたいんですが。
  22. 田中啓一

    参考人田中啓一君) お答えさせていただきます。  私自身も確かに税制だけで供給促進とかいうことはかなり無理があるというような感じがいたします。我が国の場合、特に税制が主導型で一番バッターであると同時に四番バッターの役割をしてきたんですが、結果的にはほとんど機能しなかったということであろうと思います。これもやはり優遇税制がかなりの面で促進されたんですが、かといって、欧米ではバランスよくやっていたわけでございますが、そのむち的な点がやはり欠けていた。それとまた、やっぱり一つ公共部門の間で住宅土地政策についてかなり整合性に欠けていた。中央政府と地方自治体との間にかなりいろいろな 点で錯誤といいますか、それがやっぱり結果的には余り効果がなかったという点も指摘できようかと思います。それと、いわゆる都市計画がほとんどなかったという、実効的な価値のあるようなのがなかったとも言われております。そういう点で、やはり税制というのは補完的であるということと同時に、誘導的な機能は持っていると思いますから、この辺、先ほど申し上げましたように、持てる人にはできるだけ質的レベルを向上していただいて、その上がったところをさらにまたみんなが全体が上がっていくというようなシステムが必要じゃないか。  そのときに、今回の税制改正案でございますが、今先生から御質問のむち的な点でございますけれども、私は、これはお答えにふさわしいかどうかわかりませんが、あるところで東京の地価高騰があった。去年でございますが、去年、遊休土地をかなり持っておる地主さんの方々調査をしたことがございます。その資料を拝見いたしますと、いわゆる供給促進といいますか、土地利用の変換を、今まで遊休地的なほとんど低利用であったわけですね、これを考えようという形でどういうとき考えるかというインタビュー調査をした結果が出ております。これによりますと、まず、特に税制改正が一番供給促進といいますか、土地利用の変換を図るということを言っております。そのうちの第一番が固定資産税のアップというのが一番響くということをおっしゃっているわけでございます。第二に近隣の住宅環境の変化といいますか、だんだん住宅地がビルになってきたとか、そういうときにやはり土地利用の変換を図る、供給促進を図っていくということを言っております。三番目に結婚、相続ということを言っておられるわけでございます。このうち第一番目のやはり固定資産税というのが、ある意味では反面、反面ではありませんけれども、逆に言えば非常に今まで安かった、持っておっても何もびくともしないという、先ほど名井参考人からの御指摘がありましたように、どう見ても実質的にも形式的にもかなり日本の場合は安いということは否定しがたいと思います。そういう点では固定資産税、特に保有税を中心とした固定資産税というものがかなり安いというのが供給促進につながらない大きな問題であろうと思います。  これは明治四十年ごろ我が国地価の異常な、都市部を中心にして、今回のと非常に似ているわけですね、四十七、八年ごろの高騰日本列島全体でございましたけれども、そういう点では私は明治四十年から大正初めにかけての地価高騰の方が今回の場合と非常に似ているというような感じがいたします。そのときにはやはり土地国有論ともいうような意見民間の一炭屋さんから出てきておりますし、それ以外にも土地増価税の発想とかあるいは未利用地課税というようないわゆるむち論的なものはかなり出てきているわけでございます。これが逆に余り実行されなくて地価高騰が十年ほど続いてしまったという経過があるように私は見ておるわけでございます。
  23. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 同じ問題でぜひ名井参考人にも意見を聞きたいんですが、実は今回の土地及び住宅税制の中でまず買いかえですね、買いかえの問題はどうも不公平じゃないかというのがあるんです。一つは、親代々から住んでいた、どちらかというと自分は余り汗を流してないんですな。それで、土地を持っていたその人が出ていくときには、それなりに控除しましょう、特例を残しましょうというんでしょう。営々と働いてようやくつくった自分のうちのところへ移りたいというときにはその特例が認められない。これはちょっと不労所得の方によ過ぎるんじゃないかという、そういう片手落ちの論議が一つあるんです。  それからもう一つは、その特例を認めるのにローンを借りてなきゃだめだというんでしょう。つまり、先ほどから皆さん労働組合の立場からもマイホームを持ちたいという人が六〇%もおるというような希望があるんですが、本来であれば、もう少し建物とか土地を買ったときにそのときにも減税をするみたいなそういう制度をとればいいのに、ローンを借りてなきゃだめだと。皮肉って言えば、今金余り現象で銀行も金が余っておるものだからローンで何でもやりなさいと、ローン促進みたいな政策じゃないかという皮肉の論もあるんです。つまり、別の方から言うと今回の制度は金持ち優遇の制度じゃないか、どうも政府は口では広げると言うけれども、庶民的なことにはなっていないんじゃないかというような意見もあるんでございますが、お三人の参考人からそれぞれ御見解をいただければ大変ありがたいと思うんです。  まず、江戸参考人いかがでございましょうか。
  24. 江戸英雄

    参考人江戸英雄君) ただいまの今度の改正案で御質問の御趣旨は、居住用財産買いかえの特例につきましてこれを廃止すると、軽微の課税をするが親の代から代々三十年以上持っているものについては、従来どおり認めてやろうというような例外を認めてやろうというようなところでございますが、これは大変税調の委員方々あるいは大蔵当局が御苦心になったんじゃないかと思うんですが、まあ実際問題としてこういうところは非常に実例は少ないと私は思うんです。我々の経験する実際からいたしましても、皆もう持ち切れなくなって売っちゃっている、親代々三十年も持っているというような例は私は余りないんじゃないかと。そういう場合には特例を考えてやろうというような、人情上ですね、これは大蔵省当局やら税調の方々がお考えになったんじゃないかと思いまして、我々としてはこれはまあ賛成してもいいんじゃないかというようなことでございます。実例としては少ないと私は思います。
  25. 名井博明

    参考人(名井博明君) 私は土地問題の専門家ではございませんので的確にお答えできないかもしれませんが、私なりの考えを述べますと、土地税制所得税と同じような発想を導入したらどうだろうか、いわゆる生活にかかわる部分についてはもう課税しないといいますか減免するという、所得税には課税最低限というのがございますけれども、そういう発想を基本的には土地税制についても導入したらどうだろうかという考え方でございます。  それで、先ほど申し上げましたのは、土地保有税が軽いとやはり土地供給というのはなされない、そして譲渡課税が厳しくて土地保有税が軽い場合には土地は売り出されないということで、やはり土地供給の側面からも土地保有税強化というのが前提で、譲渡益も若干課税するということがないと、供給増が結果的には需要増につながりまして地価が値上がりする。昭和四十四年に土地減税が行われて大幅に改革されたわけですが、翌年に地価が急上昇したというようなこともございますので、私はその辺については、両方の兼ね合いから適正な課税を行っていくべきだというふうに考えます。
  26. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 私も大体両先生方の意見とよく似ているわけでありますが、固定資産税のアップと、もう一つ学会やなんかでは譲渡課税は所有期間が短いほど優遇するという、今のこの税制改正案とは逆な御意見がかなりあるわけでございます。この方が経済原則からいったら供給促進になるということでございまして、まあ経済原則からいけば確かにそういう点も私は納得できるわけでございます。  ただし、私自身はこれには制限がある、今四十四年のお話が出ましたけれども、必ずしも私はこの税制改正だけによって急上昇したとは考えていないものでありますけれども、しかし一応受け皿の点からいきますとやはり問題があったというような感じがいたします。受け皿の一つの公共部門にある程度受け皿を持つように誘導するというような形、そして土地転がしを防ぐというようなこと、そういう税制がしっかりしておれば、ある程度この考え方、今の税制改正案と逆に、一つの期間を限ってもある程度供給促進を図るという意味からは、むしろ逆に短い保有期間ほど優遇税制をするというような考え方も一つ納得できる点であると思います。それは遊休的なものということを特に認定された場合です。それは早く売った方が いい。それは韓国で成功している例でございます。
  27. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 時間がないものですから別の問題に移らしていただきますが、名井さんにもう一度お願い申し上げたいんですが、これは小倉会長もぜひ御意見いただきたいんです。  先ほど名目所得の問題と可処分所得の問題のお話がございまして、サラリーマン酷税という、そういう時代であるから税率の構造、フラットの問題にも問題があるが、ここのところ五十九年と六十二年の二回しか減税が行われていませんから大変きつうございますね。私も先般の質問のときに、おっしゃいましたインデクセーションの問題の物価調整減税というものを研究してやったらいいじゃないか、物価調整減税という言葉に引っかかっちゃいかぬというんですね、私は。名目的に上がっていっちゃうと税が上がっていくんだから、物価という言葉じゃなくて、そういうもう少し労働者の負担実質的に軽減になるというような措置を講じるということを前から言っておったのでございますが、連合としてはその要求というものは、むしろ今政府の方は今度は四段階か六段階にして上の方ずっと下げようというお話でしょう、連合の方は七段階にして一〇%から六〇%ですね。そういうような税率を望んでいるわけでございますが、これは連合としては、どっちが主かと言ったらおかしいですけれども、力の入れぐあいというのはどちらが強いのでございますか。両方ということになりましょうか。いかがですか。
  28. 名井博明

    参考人(名井博明君) 両方とも重要でございますが、とりあえずはインデクセーションの導入、これは給与所得も率と定額で決まっておりまして、特に定額については物価スライドしないと控除額がだんだん少なくなるということでございますから、当然物価に中立的な税制ということは基本的に重要だろうと思います。欧米諸国では大体インデクセーションという制度を導入してございます。  それから、税率でございますけれども、私どもは大体所得二百万円ぐらいまでが一〇%。それから最高税率は、先ほども申しましたが、キャピタルゲインあるいは土地税制がどの程度課税の強化がなされるかという推移を見ながら、この最高税率についてはそれとの絡みで今後さらに見直していくべきだというふうに考えております。
  29. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 小倉会長、これは物価調整減税というか、こういう問題というのは今までの税調の中での取り上げられ方とか、これから取り上げようかというような、そういう革新的なというか前進的なお話というのはないんでございますか。また、それに対して会長個人の私見でも結構でございますが、御意見をいただきたいと思うんです。
  30. 小倉武一

    参考人小倉武一君) インデクセーションの必要ということは、導入すべしという意見税制調査会でないことはございません。ないことはございませんが、税制調査会全体の討議を通じて達観して申し上げますと、これに賛成する、インデクセーションを導入すべきであるという議論は非常に少ないと思います。  また、私個人としましては、それを導入するということは必ずしも好ましくないんではないか、物価その他に及ぼす影響から見まして。したがいまして、数年以上も所得税をそのままの体制として維持していくということはどうかと思いますが、数年置きには相当見直しをするということで足りるのではなかろうか。そして必要があれば、恒久的な制度としての物価スライドでなくて物価調整減税を臨時に行う、随時行うといいますか、そういうようなことがあるいは必要となるかもしれませんが、そのようなことがよろしいのではないかというように個人的には考えております。
  31. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私の最後の質問ですが、これも小倉会長にちょっとお尋ねしたいんですが、先ほどのお話でもありましたし、政府の提案の理由にもあるんですが、いいか悪いかは別にして大きな税制改正というものを後に控えているので、とりあえず緊急性というか、そういうものを出してある、そういうふうに理解してくれというお話でございましたですね。その中に酒の問題も御意見がございました。  私はたばこですが、この前の売上税のときには大きな税制改革の問題が後に控えているから、一本一円値上げを延長するのに十二月三十一日までという期間を区切ったんですね。これは税率をどうするかということの兼ね合いもあってそうしたんだと思うんです。それが売上税がこうなったから、つまりまた三カ月延長。今回、今度は一年間延ばす。そうすると、政府税調はこのたばこの消費税、一本一円値上げされた五九・七%という税率は適正税率と思うのか。片方では、一本一円値上げというのは税調には何の相談もなかったんじゃないですか、竹下大蔵大臣と自治省で決めちゃっただけなんですから。そういうような状況から見ると、税率の適正水準は幾らがいいんだということはこれから税調でもまた議論されることなんだろうと思うんですね。  したがって、そういう問題があるのに、今回税調も仕方ないやということで一年延びるのはやむを得ないということは、あれはどういうふうに理解したらいいのでございましょうか。前回は大きな問題が控えているから十二月三十一日までやった。私は、小倉税調会長の心の底は、これから一年間はこれは大きな税の改正はないんだなというようにたばこの消費税の問題から私は読んだのですが、いかがでございますか。
  32. 小倉武一

    参考人小倉武一君) なるほどそういうふうに御理解なさることもこれは無理からぬことだと思いますが、政府としては、あるいは税調としては、今日まで抜本的税制改革が延びるということは必ずしも当初予想していなかったわけでございまするから、税制改革抜本改正というものはできるだけ早く実行すべきものであるというふうなのが大勢でございますので、その間暫定的な措置として今のようなたばこの問題も措置しているということに私どもは理解をいたしております。
  33. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 それでは、時間が非常に短いものでございますので、できる限り簡潔に御答弁をちょうだいしたいと思います。  まず最初に名井参考人にお尋ねを申し上げます。  先ほど所得税減税についていろいろ御意見を拝聴いたしましたが、私ども自民党もぜひ実現をして御期待にこたえたいと思っておるところでございます。しかしながら、財政再建という大きな命題を抱え、また一方では国際化高齢化への対応あるいは消費性向の変動、直間比率のアンバランス等々を考えますときに、御指摘のクロヨンの是正とか、あるいはキャピタルゲインの強化、土地保有税を強化していく、こういうような問題だけで果たして今後の減税財政が確保できるだろうか。この点についてどうお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  34. 名井博明

    参考人(名井博明君) これからの二十一世紀を展望した高齢化に向かいますと、やはり何らかの財源措置というものは考える必要があると思います。ただし、毎年一人一年ずつ年をとっていくわけですから、まだまだ二十一世紀までには時間がございますので、その間にやはり先ほど申しました所得資産不公平是正というのを徹底的にして、そして消費の部分についても私たちは問題があるというふうに認識しておりますから、それについては十分時間をかけて、その際には高齢化時代の青写真、どの程度自分たちが自助自立で負担するのか、公的にお願いするのか、そういう国民負担率の水準等についても十分国民の合意を得ながら改革していただければありがたいというふうに申し上げている次第です。
  35. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 それでは、小倉参考人にお尋ねを申し上げます。  きょうは政府税調が素案をお決めになられると仄聞をしておるところでございます。公平、公正、簡素にして所得消費資産バランスのとれた、二十一世紀を展望した税制体系の確立へのアプローチの第一歩と、このように私どもも注目をいたしておるところでございます。同時に、今お話がございましたサラリーマン減税に私どもも大きな期待を寄せておりますだけに、その恒久財源を 二十一世紀まで長く検討しておって間に合うのかどうか。  この辺のところが私どもも非常に気になるところでございまして、なかなかお立場的には言いにくいことかもしれませんが、小倉参考人個人として、これらの財源問題をどうお考えになって今回の税制改革にお取り入れになろうとしておられるのか、率直にお聞かせをいただきたい。
  36. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 所得課税につきましては、抜本的な改正が数年以上行われていなかったわけでございますし、サラリーマン勤労者の重税感も非常に強いわけでございますので、この際相当程度の減税をする必要があるというふうに私どもも考えております。  それに対処するために財源をどうするかということでありますが、いろいろ財源のことも考えられるわけでありますけれども税制上といたしましては、一つは不公平税制是正ということはこれはどうしても避けて通れないことだと思います。これは別に減税ということがなくても当然やらなければならぬことでありますので、そうであろうと思います。  それからもう一つは、それだけでは十分でない。そしてまた公正な税制という場合に、所得税の中での公正もございますけれども所得消費との間のバランスがとれているのだろうかという問題もございまして、先進諸国あるいは先進諸国でなくても、世界のいろんな国のことをちょっと伺ってみますと、所得税のほかに消費税がやはり相当大幅な課税ベースを持ったものとして導入されているという例がだんだんと多くなっております。そういうわけでもございますので、私どもとしては財源の必要上、一つは新しいタイプの消費税というものの導入が必要であろうというふうに思っております。  それで、時期でございまするけれども、税については公正とか簡素とか、あるいは経済的な中立というようなことも言われておりますが、やはり時期が非常に重要であります。個々の税金の収納も大事でありますが、新しい税の導入の時期も非常に大事なことですね。どういう時期にやったらいいか。その時期といたしましては、政治の問題は一応別にいたしまして、日本の昨今の経済情勢から見ますというと、ごく最近の話ですが、物価も余り例がないくらい落ち着いておるし、経済も沈滞というよりは多少上向きになってきておるというようなことでございますので、こういうときに新税を導入するというのは時宜を得ているのではなかろうかというふうに思います。  いろいろ意見の中には、高齢化社会といっても、まだまだ先の話ではないかという御説がありますけれども、大型に、大型といいますか、大きな所得減税あるいはさらにそれに加えて法人税の減税等も考えますと、財源としては今申しましたような新しい消費税をこの際考えて、それを少し早目と言うと御批判がありますけれども、時期としては早目に導入するということがよろしいのではないかというふうに思っております。もっともこれは税制調査会でそういうふうに決まったというわけではありませんが、多くはそういうふうにお考えになっているのではなかろうかというふうに思っております。
  37. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。  江戸参考人にお尋ねを申し上げます。  先ほど御説明を拝聴しておりまして、今回の土地住宅税制の一部改正に伴う問題につきましてはある程度の御評価をいただいたということでございます。しかし、私どももできる限り土地の円滑な供給あるいはまた土地価格そのものの鎮静化、さらに低目誘導、こういうようなことも今後できる限りいろいろな角度で考えていかなければならないわけであります。今回の一部改正にさらにもう一つ何かつけ加えたい、こういうような問題がありましたらお聞かせをいただきたい。
  38. 江戸英雄

    参考人江戸英雄君) お答え申し上げます。  私どもは、この改正案につきましては業界といたしましては評価いたしておりますものでございますが、根本的にはまだまだ大きな問題が残っておると思います。一番大きな問題は、私は供給にあると思うんです。私は戦後ずっと不動産業界に関係いたしておりますが、土地の値の動きを見ますと、戦争直後は倍か三倍ぐらい、物価は、物によって違いますが、百倍ないし三百倍に達しました。地価消費者物価に追いついたのは昭和三十二年でございます。その後現在では、昨年末では消費者物価が倍、それから地価は、これは一番高い三大都市圏の住宅地、これは十倍になっています。  それで、私は政府のいろんなお手伝もいたしてまいりましたが、今までの政府の努力は、いかにして土地を上げまいか、いかにして供給をふやすかということでございましたが、日本は宿命的に土地が狭い、人口が多い、それから非常に豊かになってきている、こういうことから、常に住宅に対する需要が多いわけでございますね。その住宅は、私は非常に政府の政策はよくいったと思うんですが、昭和五十八年に、先生方よく御存じと思いますが、既に三千五百万世帯に対して三千八百万戸以上、要するに八%以上の空き家ができております。しかし、質がいかにも悪いんです。質がいかにも悪いですから、国民が豊かになりますと、住宅に対する需要が非常に多いということでございます。  そこで、この税制改正を私は評価をいたしておりますが、根本的にはやっぱり何としても、いかにして土地供給を増すか、こういう点であろうと思うんです。今までの税の繰り返しは、保有税を強くするとかあるいは流通税、そういう繰り返しでございますが、根本的にはやっぱり宅地供給を増すということにありまして、それにつきましては、今首都圏におきましては特に市街化調整区域というのがございまして、そこに企業が既に持っているような土地がたくさんありますから、これを開発許可をすれば大体五万戸ないし十万戸は直ちにできる。それからまた、皆さんがいつも御案内の首都圏の市街化区域内の農地ですね、これの宅地並み課税、これを実施すればこれも直ちに五万戸ないし十万戸の供給ができる。要するに、供給をいかにして増すかということで、その点についてもぜひひとつ先生方の御検討をお願いしたいと思うんであります。
  39. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 わかりました。  最後に、大変時間がなくて失礼ですが、田中参考人にお尋ねをいたします。  私も、御指摘がございましたように、税制だけでは土地問題は解決せず。例えば都市計画との絡みとかいろいろ御説明がございました。将来を展望して、日本土地政策と今後の税制のあり方、特に土地の問題には取得から、保有から、譲渡からいろいろ税制体系が考えられるわけでありますが、一口に言って今後どうしていったらいいのか、長い御説明がきっと期待されるところですが、一言だけで結論的にお聞かせいただければありがたい。お願いします。
  40. 田中啓一

    参考人田中啓一君) それはやはり、開発利益といいますか、地価上昇分が土地所有者だけに帰属しない、国民全般に所属する、すなわち公共部門の公共財政力を強めるということが税制面からできる一つの大きな役割であろうと思います。もう一度土地税制の原点に振り返るということが結論だと思っております。
  41. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。
  42. 和田教美

    ○和田教美君 まず、小倉税制調査会会長にお尋ねをいたします。  先ほども話が出ておりましたように、新聞の報道によりますと、きょうの税調の総会でいわゆるたたき台(素案)というのをお決めになるということでございますが、それはそのとおりかということと、その報道によりますと、直接税部会、間接税部会の報告でそれができて、例えば間接税部会については今話題になっておりますいわゆる新型間接税について累積型と累積排除型を入れるというふうなことも報道されておりますが、ただ、例えば新型間接税についても税率をどうするかという問題はまだ決めていないということなんですね。それから、直接税の問題でも、所得税につい て六段階にするというふうなことは部会の報告にもあるようでございますけれども課税最低限の引き上げをどうするかというところがまだ決まっていない。  そうなりますと、素案というものは、全体にそういう意味では大体幾らぐらいの減税になって、増税になるのかということが一つかみにつかめるようなものにはならない、こういうタイプがあります、こういうタイプがあります、というふうなことをとにかく投げ出すということになるのかどうか、その点まずお聞きしたいのであります。
  43. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 最初の御質問は、きょうの午後の総会で結論が出てそれが決まるのかということでございましたが、そういうふうになると期待していますけれども、これは総会にかけて、いろんな議論が出ますから、果たして原案どおり決まるかどうか、多少修正意見も出るかもしれませんのでちょっとはっきりは申し上げられませんが、御質問のように、大体きょうの午後素案が決まることを期待いたしております。  それから中身の話でございますが、きょう出ます素案は総会でいろいろ質疑あるいは意見が出るでしょうけれども、今お尋ねのような、要するにどの程度減税になるとか、どの程度の消費税の増税になるだろうとか、既存の消費税もありますから先々どれぐらい増税になるだろうかというふうなことがわかるようなところまではデータが入っておりませんので、それはまだないままの、まあどんな考え方で消費税を組んだらよろしいか、どういう考え方で所得税、法人税あるいは住民税を減税したらよろしいか、こういうような考え方と、それに伴って若干の方式といいますか考え方の選択肢を決める、こういうようなことでございます。
  44. 和田教美

    ○和田教美君 これは小倉会長個人の御意見でも結構でございますけれども、やっぱり国民のサイドから見ますと、おれの税金は所得税減税とそれから新型間接税の導入とで差し引き一体減税になるのか増税になるのか、あるいはとんとんなのかというふうなことは非常にやっぱり関心が強いと思うんですね。  そこで、小倉さん個人の見解でも結構ですけれども、全体として今度考えられておられる抜本改正というものは、いわゆる増減税同額という考え方に基づいてやっておられるのか、それともやはり所得税を中心とする減税が先行して、そしてそれを埋める一つの手段として新型間接税を考えるという考え方なのか、それとも将来に備えてこの際十分財源の措置を確保しようということでむしろ増税になるのか、その辺のところはどういうふうな考え方で取り組んでおられるのでございますか。
  45. 小倉武一

    参考人小倉武一君) その辺はしかと税制調査会としてまだ決めているわけではございませんけれども、おおよそは、少なくとも差し当たりは、減税財源を調達するために必要な増税というような方向でございます。  それから、素案をごらんになって納税者の方々が自分自身にどの程度の増減税になるんだろうということがおわかりになるようなことが本当は好ましいわけですが、まだそこまではまいりませんので、きょうのところはおおよその考え方の枠組みというふうなことにとどまると思いますけれども、公聴会は四月の十日ごろから始まりますので、まだその間二週間ぐらいございまするので、その間には多少目鼻がつけられるのではないかというふうに考えております。
  46. 和田教美

    ○和田教美君 もう一つ小倉さんにお尋ねしたいんですけれども、先ほどからも名井参考人あたりから意見が出ておりましたように、間接税の問題というものもいろいろとぐあいの悪いところもあるから将来直さなきゃいかぬかもしれないけれども、とりあえず直接税の内部の所得税それから資産課税、このバランスというふうなものを中心にとにかく不公平税制是正ということをやっていったらどうだ、そして新型間接税の導入というふうなものは、政府にしても税調にしても主として財源論という形よりも、むしろ二十一世紀のつまり高齢化社会に備えるというふうな観点からの論議が今多いわけですけれども、そのためにはまだ時間があるではないか。こういう議論がかなりあるわけで、我々もそういう考え方なんですけれども、その点について、先ほどちょっと触れられておりましたけれども、改めて小倉さんの御見解をお聞きしたいと思います。
  47. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 税制調査会の中にも今お尋ねのような趣旨で御意見をお述べになる方もございます。ただ、大方の方々はやはりそうこれから幾年もというふうな勉強の時間といいますか、あるいは国民方々に御理解を願う期間を置くというのがよろしいというふうには必ずしもおっしゃっていませんで、やはりできるだけ早い機会に新しい税金がどんな体系になるかということを国会なりあるいは国民の方にお示しして、その上で成立、実施の時期はいつになるか、これは私ども判断はできませんけれども、しかるべき機会には政府税調としての今後のたたき台だけではなくて、さらに実質的な答申に近いようなものまで固めるというのはできるだけ早い機会に作業を進めて、あとは政府の御判断あるいは与野党の御判断にまつ、こういうことにしたいというふうに個人的には考えております。
  48. 和田教美

    ○和田教美君 ありがとうございました。  それでは次に、名井参考人にお尋ねをいたします。  御承知のとおり、竹下総理は前に衆議院の予算委員会で、この大型間接税、新型間接税について六つの懸念ということを言われました。労働組合の立場からこの六つの懸念というものについて、特に竹下さんも指摘されました逆進性の問題だとか、それから税率が安易に政府によって引き上げられる懸念とか、そういうような問題については我々もこれは懸念どころかこれがまさに大型間接税、新型間接税の本質であるということで批判をしておるわけですけれども、そういうものが総理は中和できるというふうに言っているわけですね。ですから、労働組合の立場からして、中和できると考えるのかどうか、その点どうお考えになりますか。
  49. 名井博明

    参考人(名井博明君) 逆進性の問題等については、いろいろ先ほどから支出面で面倒を見るとか、いろいろなお話がございましたけれども、この間接税の問題については、先ほども申しましたように、それが社会、産業にどのような影響を与えるか、さらに国民生活にどのような影響を与えるのか、これはやはり科学的な分析というのはやろうと思えばできると思いますから、そういうものをやはりまずやる。そしてその中身については、まだ政府の方もこれから示されるということでございまして、私たちはまだ勉強の段階でございまして、その辺についてはこれから検討をしていきたいと思います。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕 今具体的にお答えすることはちょっと難しいと思います。
  50. 和田教美

    ○和田教美君 次に、所得消費資産、この三分類ですね。その中で資産課税という問題について、今の名井参考人にしても田中参考人にしても非常にこれが少し緩過ぎる、もっと強化すべきだというような御意見が出たわけでございまして、私も全く賛成なんですね。  どうも政府所得消費バランスということばかりを言って、私もこの間参議院の予算委員会で大蔵大臣に聞いたのですけれども資産については日本は欧米各国なんかと比べても決して資産課税は低くない、こういう議論を展開をされておるわけなんですね。この点について私たち資産課税がやっぱり低過ぎる、特に最近の土地の暴騰、株の高値というふうな問題から見て、資産格差というものがどんどん広がっているじゃないかというふうなことを主張をいたしておるわけなんですけれども、その点について具体的にそういうふうな観点からのデータがあるかどうか、またお考えがどうかという問題。  それから、きょうの新聞に出ておりまして、さっきも御説明ございましたけれども土地保有税、これを提案されておられるようですけれども、 我々は違った形で、私は公明党・国民会議ですけれども資産評価税というものを五年ぐらいのなだらかな形でかけたらどうか、要するに、それを減税財源に充てるということを考えたらどうかとこういうことで、ただし、大法人を中心に考えて、一定レベル以下のものにはかけないというふうなことの配慮はもちろん必要であるということを言っておるわけなんですけれども、その辺の土地保有税という考え方ですね、それをもう少し具体的に御説明願いたいと思います。
  51. 名井博明

    参考人(名井博明君) 先ほど大土地保有税の話を申し上げましたけれども、ある学者先生の分析によりますと、東京都だけでございますが、個人について二千平米以上の面積で時価五億円以上の方が四万二千五百六十四名おられるということで、所有面積が約十万坪、これを時価の九割ぐらいの評価額にして仮に五%の税率をかけると七兆三千三百億円の税収になるというような試算もございます。私ども先ほど一%程度と申し上げたんですけれども、こういうようなデータに基づいて少し検討してみたらどうかということでございます。個人だけではやはり問題もありますので、企業についてもどうするのか、この辺についても検討する必要があると思います。
  52. 和田教美

    ○和田教美君 次に、田中参考人にお尋ねいたします。  田中先生に税体系論というふうな形からちょっとお聞きしたいわけなんですけれども、私はシャウプ税制以来の所得税を中心とする直接税中心主義というものは今後も維持すべきではないかというふうに思うんですね。最近は、どうも直接税の所得税の特に累進性というふうなものについて風当たりが強くて、間接税をもっとふやせというふうな議論になっているわけですけれども、間接税はあくまでも補完税として位置づけるべきものではないか、そして今の所得税の累進構造、これによっていわゆる応能負担原則というふうな問題ですね、これもやはり当然維持すべき考え方ではないかというふうに思うわけなんですけれども、そういう基本的な考え方について、先生はどういうお考えなのか。もっと間接税の比率をふやした方がいいと、場合によっては半分半分ぐらいにした方がいいというふうにお考えなのか。その点はいかがですか。
  53. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 御承知のとおり、我が国はアメリカに次いで直接税のウエートが高い国でございます。これにつきましてはいろいろな御意見があろうかと思いますけれども、財政学者のサイモンズやなんかはこの所得税こそ、しかも包括的な課税ベースと申しますか、コンプリヘンシブ・タックス・ベースこそ、すなわち目に見えるような所得じゃなくて含み益的な資産の増加とか、あるいは妻の働き分とか、あるいはまた持ち家のメリットとか、そういうものを含めて累進課税でやるのが一番究極の理想的な税制であると言っているわけでございます。  この点につきましては、かかる視点からいきますと、当然直接税中心主義、とりわけ所得税中心主義がいいというのがこの考え方になろうかと思います。やはりこの点にシャウプの根本理念があるんじゃないかと思っているところでございます。しかし、現状から考えますと、やはり所得税にウエートを置きながらも、相当の不公平が今現実に出てきておりまして、これがいわゆるプレッシャーグループかもしれませんけれども、なかなか是正できないということならば、このウエートが今の現行税制のもとではどんどん高まってまいりますので、これを是正することに全力を挙げていただきながら、しかし同時にちょっとやや直接税にウエートがかかり過ぎる、半々とは私は申しませんが、個人的な見解では約六、四ぐらいの形が我が国には合致するんじゃないかというような感じがいたします。約一〇%下げて、一〇%上げるという方向の方が現状と比べますといいんじゃないかと個人的には考えているところでございます。
  54. 和田教美

    ○和田教美君 江戸参考人に最後にお伺いしたいんですけれども、今度の租税特別措置法改正案で、当面の土地税制というものが出たわけですけれども、これが非常に緊急のもので、いわゆる土地対策税制面からバックアップするという点においては非常に力の強いものではないと思うんですね。  そこで、これからの土地政策というのは、私は土地の値段を高値安定させるのではなくて土地の値段を下げていく、それが必要だと思うんですね。そういう観点から、土地の値段を下げながら、しかも土地供給をふやすという点についてどういう税制が一番効果的であるか、お考えがあったらお聞かせ願いたいと思います。
  55. 江戸英雄

    参考人江戸英雄君) 大変難しい御質問でございまして、これは御専門の野末先生とか斎藤先生あたりに妙案があるかと思いますが、先ほども申し上げましたとおり、日本が宿命的に土地が狭い、人口が多い、豊かになってきている、それでいかにも住宅に対する要請が多い、宅地に対する要求が多い。こういう中にありまして、税制の努力でもって果たしてどのくらいいけるか、長い間の経験から見て、私はこの土地が上がっていくというのはどうも抑え切れないんじゃないかという気がするのでございます。今度これは上がり過ぎでございますね。東京のこれはもうべらぼうなものだと私は思います。もっともっとこれは政府の例の監視区域制度発動とか、金融機関を抑えるとか、転がしを抑えるとかいうような応急措置で一応上がりどまりはしていると思うんですが、我々の思っているより下がってないですな。ここで御質問もあるかと思いまして専門筋の方に聞きましたが、大体二、三〇%です、大体言って下がりますのは。もう上げどまり、これは首都圏だけでございます。しかし、ところによってはまだ上がっているところがあるんですね。  それで、どうもこれは日本が豊かになっても、人口が多い、土地が少ないとなりますと非常に土地を下げるというやつは難しいんじゃないかという気がするんでございます。今の東京のあれは異常でございます。これは湾岸開発とかあるいは再開発とかいうことで業務地区は私はもうこれ以上上がらぬと思います。私どもの方もそろばん合いませんから、何千万なんて土地を買ってビルつくっても、合いっこないですからやめております。それでも買う者がいるんです。それは金余り現象で金があり余っていると思うんですが。しかし、これは業務地区についてはもう大体峠が来ているんじゃないかと思います。  問題は住宅、首都圏内の住宅地。先ほども先生方からの御意見もございましたが、殊に大衆の住宅ですね。今のような土地の値段ですと、これはもう首都圏内にまともな庭つき一戸建ての住宅を買うことは、これは絶望だと思います。それからまた、大衆にとって通勤に便利なところにまともなマンション一つ、これはちょっと不可能じゃないかと思います。何としてもこれは思い切った手を打つ必要があると思うんですが、結局私どももこれは供給対策を考える以外ないんじゃないか。まだまだ首都圏五十キロ圏前後にはたくさん土地があるんです。それが交通アクセスがないところ……。
  56. 和田教美

    ○和田教美君 時間がありませんので簡単にひとつ。
  57. 江戸英雄

    参考人江戸英雄君) それじゃそういうことでお答えとさせて、大変不十分でございますが。
  58. 多田省吾

    ○多田省吾君 田中参考人にお尋ねしたいと思います。  先ほど田中参考人は、所得消費の問題よりも所得資産のアンバランスが激しい、したがって不公平税制是正あるいは土地価格の抑制のためにも土地増価税あるいは資産評価税といったものが必要なんだというお話をなさいました。私もそのように思いますが、具体的にどのようにするのか、また欧米の例はあるのか。また、我々が政府にそれを強く要求いたしますと、利益の出ないところに税をかけるのはいかがなものかという非常に消極的な答弁しか返ってこないわけでございますが、それについてもう少し詳しく田中先生のお考えを聞きたいと思います。
  59. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 私はこれがすべてではないと思いますが、非常に有効的であるという感じがいたして、先ほど必要ならば今その時期にあるんじゃないかということをお話をさせていただいたわけでございます。  そして、土地増価税というのは御指摘のとおりもう十九世紀末当時のドイツで適用されまして、そしてイギリスでも一九〇四年にこれが適用されたわけでございます。戦後のスウェーデンでも地価高騰がございましたときにこれを抑えました。それで、先ほど申し上げましたとおり、イタリアでもできたわけでございます。欧米には既にこれによって相当効果を上げている。そして、明治四十年代の我が国高騰のときにもこれが識者から提案されたわけでございます。だから、いろいろ技術的には資産評価税も含めましてかなり難しい点があろうかと思いますけれども、しかし開発利益といいますか、地価高騰分が土地所有者だけに帰属しないということから考えますと、これは非常に税制面からは究極の税である、そして欧米先進国ではこういう技術的な困難を解決しながらやってきた例があるということだけをお答えさせていただきたいと思います。
  60. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからもう一点。先ほど先生は土地取引価格を登記簿に正しく記載し、また監視地域においてはそれを早急にやることが土地価格の抑制につながるんだ、こういうお話をなさいましたけれども、登記簿に具体的にどのようにすればいいのか、また、たやすくできる方法があるのか、外国の例なんかはいかがなものかお答えいただきたい。
  61. 田中啓一

    参考人田中啓一君) これは通常ドイツが一番有名でございます。グルンドブッフと言っておりまして土地登録制度と訳されていいかと思いますが、これは売買の場合は両方とも正しく価格を必要な登記所というところに出すわけでございます。その間に弁護士とか何かが入る制度通常行われるわけでございますが、それによって不正というのが許されない。もしやった場合には罰則をするということでございます。そして、そういうことによりまして、我々地価と考えますと、今言っているのは地域全体を言っているわけでありまして、何%上がった、何倍になった、この拠点、拠点で土地は個別性が非常に強いわけですから全然違うわけです。ところが、概念からいくと地域全体を面で言っているわけでありまして、本当の地価が上がったというのは角地のあそこが一年間で何倍になったというのが本当の地価であろうと思います。  こういう点からいくと、そういう効力もあるわけでございまして、それは価格を登記簿の、日本の場合には乙欄に私は十分できるんじゃないかと思うわけでございます。今乙欄には例えばローンをほとんど借りておりますので、違約金で何%違約した場合には日歩何%とかいうようなことが長くにわたって書いてありますけれども、あんなことこそ私はプライバシーだと思いますし、そんな必要は銀行とローン会社と個人の相対の関係だけでございます。それを登記簿にやる必要は全然ない。これははっきり幾らだということになれば——一カ月前に坪百万円だったのがあっという間に一カ月後に二百万円になるという、こんなだったらあほらしくて買わないと思います。そういうアナウンスメント効果もございますし、そしてまた本当の地価という動きも認定できるわけでありますし、また価格の査定ということ、あるいはまた相続税とかなんとかというような、そういうような点からいきましても税務署員の削減にも相当役立つというような感じもいたすわけでございます。
  62. 多田省吾

    ○多田省吾君 ありがとうございました。  小倉参考人に一点お聞きしたいと思います。  私どもは大型間接税反対でございますが、小倉税調会長が地方の公聴会にいらっしゃったときにいろいろお話しなさったことが報道されたわけでございますが、その真意をお聞きしておきたいと思います。というのは、小倉税調会長の話の中で、EC型付加価値税が望ましいんだ、こういうふうに報道されるかと思えば、いやそうじゃない、政府や大蔵省に任せておけばEC型付加価値税になりそうだということを客観的に言っただけだと、こういう報道もなされる。あるいはEC型付加価値税というようなきちっとしたものじゃなくて堕落したものがむしろ必要なんだ、その堕落したものとはどういうものか。あるいは食料品や教育費は、これはもう除くのが当然なんだ、こういうようないろいろな話が伝わってまいりますけれども、どのようなお考えでおっしゃっているのかお尋ねしておきたいと思います。
  63. 小倉武一

    参考人小倉武一君) まだその辺は税制調査会で深く詰めておりませんので決まっていないことでありますのでいろんな意見が出るというわけでありますが、私自身もそういうことでいろいろ聞かれれば御返答申し上げるというわけであります。  御指摘のように、これは必ずしも衆目の一致するところかどうかは多少疑問がありますが、仮に新しいタイプの間接税を導入するとすれば、EC型の付加価値税というのが一番よかろうというのが衆目の大体一致するところではなかろうかと思います。ただ、EC型の付加価値税と申しましても、これを日本に導入する場合にはいろんなタイプが考えられるわけであります。例えば非課税の範囲をどうするかとか、あるいは税率をどうするかとか、その税率も単一の税率でやるのか複数の税率でやるのか、あるいは税金の計算の仕方をどういう方法でやるのか、均等してやるのか、あるいは先般の売上税のような税額控除票でやるのかといったようないろいろのやり方がございまして、EC——先ほどちょっと間違えました、売上税はちょっと違いますが、要するに帳面上の差し引き計算でやるということでありますが、そういうふうに計算の仕方もいろいろございます。  それらを組み合わせれば幾つかのバラエティーがこう出てまいるわけでありますが、それをバラエティーにして長短を論ずるのか、あるいは税率はどうするんだ、あるいは課税範囲はどうするのか、あるいは税額の計算の仕方をどうするのかというふうなことからいろいろ個別に論じて、どういうタイプがいいのかという結論があるいは出るかもしれませんが、いずれにしてもそれはこれからの話でございまして、ただいまのところは税制調査会の全体の意向としてどういうタイプがよろしいかというふうなことを申し上げる段階には至っておりません。
  64. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 日本共産党の吉井英勝でございます。  小倉参考人に最初にお伺いしたいと思うんですが、政府税制調査会直接税特別部会は三月二十三日の会議で、所得税税率を最高六〇%から五〇%に引き下げるということにしております。昨年の中曽根内閣のときに七〇%から六〇%に下げておりますので、二〇%の引き下げということになるわけですね。これで、例えば松下幸之助氏クラスで計算しますと二億円を超える大幅減税となりますが、先ほど小倉参考人の冒頭の御意見では所得間格差は平準化しているというお話でございましたが、今回のはこれは明らかに大金持ち減税ということで平準化とは大分逆じゃないかと思うんですが、この点で所得税減税についての税調での議論などについてお考え方を聞かせていただきたいと思います。
  65. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 所得税減税についての考え方としましては二通りありまして、これまでのように各種の所得を総合しましてそれに累進税率を掛ける、しかもその累進税率相当高い方がよろしいと、こういう考え方ができるわけです。私どもも数年前まではそういう考え方が税調の中ではどうも支配的でなかったかと思うのでございますが、どうも近ごろは風向きがちょっと変わってまいりまして、これは日本だけじゃございません。イギリスであろうとアメリカであろうと余りひどい累進税率、総合でもってしかも累進税率を掛けていくということであるから税逃れといいますか、というようなことが起こって、かえって不公平なことになっていくという指摘もあります。  そういうようなこともありまして、税調の全体の空気としては、あるいは大方の意見は、余り高い七割というような税率は好ましくないと。他方、また段階も、そう幾つも段階があるのも好ましくないというようなのが大方の意見となってまいっております。これは私の個人の意見というよりは、税制調査会の大勢の意見がそうであるというわけであります。
  66. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 税調の議論としてお聞きしたわけですが、先ほど私は例を出しましたけれども、明らかにこれは、片方は二億円とか大幅な減税になって、庶民の場合はそうなりませんのでこれは所得の平準化とは大分逆じゃないかと思いますが、この点についての会長御自身のお考えを聞かせていただければと思います。
  67. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 所得の平準化と申し上げましたのは、税金の結果の所得の平準化ということではなくて、所得の配分自体が平準化してきたと、戦争直後の下級サラリーマンと会社の社長、重役との間の格差と現在の格差と比べれば現在は非常に格差が小さくなってきている。そういう意味で平準化というようなことを言われておるようなんですけれども、その点については大勢としては私はそうだろうと思います。したがいまして、所得税はどういうふうにするか、累進税率を圧縮して高い税率はやめた方がいいのかどうかということについては、これまた意見の分かれるところかと思います。
  68. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 法人税の基本税率についても四二%から三七・五%、四・五ポイント引き下げ、中小法人に対する軽減税率は三〇%から二八%、二ポイント下げるということだけですが、大企業減税の半分以下ということになりますが、この点では明らかに大企業優遇の考え方ではないかというふうに思うんですが、法人税減税についての税調の議論、また会長御自身のお考えなどをお聞きしたいと思います。
  69. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 法人税率については、基本的には、私個人としてはちょっと理解しにくいんですけれども、法人というものは税率は一本でよろしいという意見がどうも特に学者先生を中心にして、学者にもよりけりでしょうけれども、税調の中におられる学者の先生方は、法人税率はそもそも一本でいいんだ、中小法人だとか公益法人だということで区別する必要はないというのが大勢でありまして、したがって、だんだんと一本化していくという方向に近い。しかし、どうもそうきれいさっぱりと一本化もできませんので、そこまで主張する人もまだ現実にはございませんので、多少ずつ幅を縮めていくというようなことになっておるわけです。  ただいまの普通法人の三七・五とかおっしゃいますのは、これは何年か別に計画はあるわけではありませんが、目標はそこであるということであります。一遍にそこまで持っていくというわけでもございません。  それからもう一つは、法人税の中での工夫、財源をほかから持ってくるということも必要になるかもしれませんが、法人税の中でのいろいろのやりくりでもって基本税率は下げていくというのが主眼であって、ところがそういうことについてはやはり納得できないというような企業サイドの意見もございまして問題があるわけでありますが、そこのところはもう少し議論してみないとはっきり決まらないという段階であります。あるいはきょう恐らくおおよそのことは決まるかもしれませんけれども
  70. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 直接税減税について見ただけでも、所得の平準化どころか格差の拡大という方向に私は行っているというふうに見かけるわけです。  実はせんだって、三月二十三日の予算委員会で我が党の近藤委員の方から、政府資料を使いまして、今日所得の平準化どころか格差が拡大しているという事実をデータで示しまして、宮澤蔵相もこの点については、この五年間を見れば拡大していることを認めておられるわけです。ですから、税調の直接税特別部会の決定によると、格差がこの五年間開いていると、さらに不公平の拡大ということになっていくんじゃないかと思うわけですが、この点について会長のお考えをお聞きしたいと思います。
  71. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 所得の配分の全体の傾向といたしまして、普通長期的に見るのか、あるいはごく最近の状況で見るかによって私は違ってくると思うんです。恐らくごく最近のことで見れば、所得の配分、それから資産の配分、格差は拡大してきているというふうな、数字は私存じませんけれども、じゃないかというふうに思います。しかし、もっと長期的に見ますと、少なくとも所得配分については格差が縮小してきているということかと思います。
  72. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 終戦直後との比較は別としまして、今日の時点では拡大してきているということなんです。  次に、国際比較をした場合に、日本税負担、これは勤労所得では高い反面、勤労所得と不労所得を合わせた総合課税になっていないために、大金持ちほど外国と比べても税負担が軽い、極端な優遇措置というものが見られるという、こういう点については小倉会長がエコノミストの八六年の十一月十八日号でしたか、認めていらっしゃるように思うんですが、この点について御意見伺っておきたいんですが。
  73. 小倉武一

    参考人小倉武一君) そういうことがございまして、資産所得、特に資産から生ずる所得については必ずしも十分税制上も所得税の中に把握されていないというようなこともございまして、そこはひとつ十、十ずつといいますか、公平にひとつ把握して、給与所得であろうと資産所得であろうと同じような取り扱いをすべきであるというのは、考え方としてこれ恐らく当然でございましょうし、そういう方向で税制調査会も研究をいたしておるというところであります。
  74. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 さて、直接税の方では所得格差が広がる方向に行き、さらに間接税については、逆進性を持つためにいよいよ格差を広げるという結果になるんじゃないかと思われるわけです。  ところで、間接税特別部会の方では三月二十二日、三つのたたき台というものを決定しておりますが、そこでまず、EC型付加価値税というのが昨年の売上税と同じではないのかという点ですね。もう一つ一般消費税は大平内閣のときの一般消費税と同じではないのかと見られるわけですが、この点について少し会長のお考えを詳しくお聞かせいただければと思うんですが。
  75. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 売上税なりあるいは一般消費税なりというものと、これから御提案申し上げる新しいタイプの間接税とどこがどう違うかということは、まだちょっと申し上げる段階ではないと思います。  と申しますのは、これから税制調査会としてまとめていくものにつきましては具体的にまだなってない部分が相当ございます。したがいまして、個々にどう違うかということはちょっと申し上げにくいんですが、しかし、例えばあるところだけを取り上げれば、例えばあるところだけと申しますと、課税ベースをどうするかということになりますというと、売上税では非常に課税ベースが狭くなっておったわけです。また、一般消費税でも食料品等を除くというようなことになっておりましたから、必ずしも課税ベースが十分広かったわけでもない。その点につきましては、今のところの議論の多くは、できるだけ課税ベースは広くする、当然消費税になじまないものは除かれるわけですけれども、というようなことでまだ決めてはおりませんけれども、そこはこれからの審議でありますが、これまでの点を総合すると、課税ベースはうんと広げておくというような感じでありますので、売上税なり、あるいはさかのぼってその前の一般消費税よりは若干違っておるというふうに思います。  もう一つ課税、税金の、税額の算出の仕方でありますが、これはまだ決まっておりませんけれども、簡単な方がいいという、何といいますか、公平、簡素の中で簡素ということばかり声も大き くなってまいりますというとちょっと違ってまいりましてはっきりはしないわけですが、本来の消費税で、本来といいますか、EC型の消費税で、しかもある程度いろいろの考慮の加えられるものとしては、やはりインボイスでもって納品の都度税額が計算されて買い手にそれが渡っていくというようなシステムの方がより公正、妥当であるというふうに思います。それをどっちにするか、帳簿上の計算でいくのか、個々の納品証あるいは送り状でもって計算するのかというようなことの可否についてはこれからのことでありまして、したがいまして売上税なりあるいは一般消費税というものとの違いというような中身はまだ挙げることのできない状態であります。  税率については、これまた同様に、減税、増税幅が全然まだこれからの問題でありますからちょっと比較の可能性もまだない、こういうわけであります。
  76. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 小倉会長には最後に一点。  竹下首相にとって公約違反になろうがなるまいが、税調審議としては公約違反かどうかの議論とは別に、無関係に進めていかれるという、そういう立場ですか。
  77. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 税制調査会として今回の決議なり竹下総理の御発言なりということについてどう処理するかという、どう態度を決めるかといいますか、どういう心構えでやるかということは決めておりませんです。個人個人といいますか、委員それぞれが意見のおありになるところでありますから、各委員の御自由な御所見によって考えていただくということにいたしております。
  78. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 次に、江戸参考人に一点お聞きしておきたいんですが、異常な地価高騰を生み出した原因と責任について参考人の御意見を伺っておきたいと思います。
  79. 江戸英雄

    参考人江戸英雄君) お答えいたします。  私は、これ繰り返しますが、需給の不均衡が大きくなったと、特に世界的に東京が情報、金融情報のセンターになった、ニューヨーク、ロンドン並みになってきたということで世界の需要が東京に殺到した。それから経済の活況によって国内の需要もふえた、それに対する対応の仕方が遅かった。地価が暴騰し始めたときにもう少し早く私は手を打つべきだったと思うんです。例えば国有、公有地、国鉄用地を競売して、国土価格の四倍になりました。ああいうやつが一つの発火点になったと思うんですが、あの時点でもっと早く手を打つべきだったと思います。そういうふうに私は思っております。
  80. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 田中参考人にお伺いしたいんですが、たしか著書の中などでも書いていらっしゃったと思うんですが、地価高騰原因の大きな一つとして、国公有地、JRなどの土地の払い下げとか民活論による異常な土地需要の急増、土地投機などを挙げておられたというふうに思うんですけれども、異常な地価高騰問題について御意見を伺っておきたいと思います。
  81. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 今までこれまでいろいろなところで書かしていただきましたけれども、やはりもう大体コンセンサスは得ているような感じがいたします。端的に言うならば、やっぱり金余り現象、そして国際化というような、しかも、これも過剰な需要を予測したということもあろうかと思います。そういうようなこと。さらに土地税制の緩やかさ、それに伴いまして企業なども土地投資が活発であったというようなことで、これはやはり私は明治四十年代、そして前回の過剰流動性時と今回も基本的には変わらず、欧米もやはり狂乱地価を招いたときも変わらないという考え方を先ほどから述べさしていただいたところであります。
  82. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 今おっしゃった金余り、そして過剰需要を生み出し、またそれを見込んでの土地投機ですね、これは大体一致するところじゃないかと思うんですが、その点で企業の土地転がしに対する課税の強化ですね。土地投機がもうからない仕組みを税制上もつくる必要があるんじゃないかと思うんですが、投機的土地転がしの不当なもうけにスウェーデンなどは一〇〇%課税ですか、日本もこの一〇〇%課税にするという、こういうふうな考え方について先生のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  83. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 一〇〇%課税というのは私は必ずしも賛成ではございません。ただしかし、それに今のようなある意味では無制限と言ったらしかられますけれども、かなりの部分、税制も強化されてきておりますけれども、まだまだ所有意欲あるいは投機意欲があるようなことを抑制するという形が一〇〇%に近づくということは必要であろうと思いますけれども、現在時点ですぐ一〇〇%というのはいろいろ問題があろうと思います。しかし、その方向に行くという税制の基本的な姿勢というのは必要であると考えております。
  84. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 時間が参りました。
  85. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 はい、終わります。
  86. 野末陳平

    ○野末陳平君 きょうは参考人方々には非常にたくさん御指摘とそれから御意見ありまして、とても参考になりましてありがとうございます。  そこで、小倉さんにはお休みいただくとして——まあいつでも話は聞けますから。  江戸参考人にまずお伺いしますが、今度の税制改革、これは租特ですけれども評価しておられますが、これらの一連の優遇税制によって今後土地の値段はどういうふうになると業界では予測されているのか、そこをお聞きしたいんですけれどもね。もちろん、商業地とか住宅地によって違いますし、大都市圏とか周辺地区で違いますから、一律にはそれはどうなるとはわかりませんが、アバウトにどういうようなことをお考えになっているか、業界の御意見をちょっとお伺いしたいんです。
  87. 江戸英雄

    参考人江戸英雄君) お答えいたします。  私は、この第一点の長期譲渡所得特例を廃止しての改正、これによって多少その供給増が見込まれやすくなる。  それから、居住用財産買いかえの特例をやめるということで、これは御案内のように、これのために東京で周辺の高級住宅地が暴騰いたしましたが、こういう勢いはとまると思います。  それから、この最後の住宅税制でございますが、これは非常に住宅を買う人たちにプラスになると思います。ただ、宅地供給が増すかどうかということについては、ないよりもいい程度ではないかと思いますが、大きな期待は寄せがたいと私は思います。
  88. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、土地供給が半減したということをおっしゃっていましたけれども、それがこれによってもしふえていくとすれば、少しは土地の値段は下がりそうだということになるんですか。それとも横ばい、上げどまりという言葉もありましたけれども、あれは商業地だと思いますが、そこのところなんです。つまり、下がりそうなのか横ばいなのか、まだまだ一部では上昇するのか、そこら辺のところをお伺いします。
  89. 江戸英雄

    参考人江戸英雄君) お答えいたします。  これは私見でございますが、私は東京都周辺土地は上がり過ぎだと思います。業務用地はもう上がらないと思います。問題は住宅用地でございますが、これもところによりまして五倍くらいになっているところもございますし、大体二、三倍というところでございますが、私はもう上げどまりじゃないか、ところによって局地的に上がるところもあるかもしれませんが、まあ東京周辺ではまずこれ以上上がるまい、当分はですね、と思います。
  90. 野末陳平

    ○野末陳平君 今度、名井参考人にお伺いしますけれども、固定資産税が低過ぎるというのはそのとおりだと思うんですけれども、かといって、じゃそれを強化するという場合に、たくさん持っている部分にだけ着目して、あとは例えば自宅の場合は当然上げない方がいいとか、むしろ減免した方がいいとか、いろいろ考えられるわけですね。またそういう意見もあるんですけれども。しかしどうでしょうね、固定資産税が低過ぎるので、これはまず自宅などもひっくるめてある程度まで上げていく方向というのが望ましいので、さらに広大 なる土地を持っている場合、まあこれは大都市圏ではそうたくさんないと思うんですね、むしろ地方都市の方が多いでしょうけれども、そういう人にはさらに重課ということもあるかもしれない。いずれにしても、この固定資産税の低過ぎるのは全体にもっと上げていく方向の方が今後の対策としていいんじゃないかという気がしたんですけれども、御意見いかがですか。
  91. 名井博明

    参考人(名井博明君) 私、先ほど申し上げましたように、生活にかかわる部分については減免する、それを超えてかつ有効に利用されていないような土地について、やはり一定の国税で大土地保有税のようなものを課したらどうかという考え方でございます。  さっき申し上げた面積と価格、両面からしますと、地方の県では恐らくこの対象になるところはないであろうというふうに考えるわけです。したがって、大都市でなおかつ有効に利用されていないようなところが、恐らく対象になってくるのではないかなという考え方を持っております。
  92. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、農地の宅地並み課税なんかもまた別の意味ではそこに入ってくるということになっちゃうんですかね。
  93. 名井博明

    参考人(名井博明君) 恐らく対象になりますけれども、例えばその農地のうちの三割ぐらいは優良住宅の建築用に回すとか、あるいは緑地のために回すというようなことがあれば、そのものについては、また残りの部分については軽減するというようなことも考えられるのではないかというふうに思います。
  94. 野末陳平

    ○野末陳平君 それからもう一点、名井参考人にお伺いします。  先ほどのお話でちょっと聞き逃したかもしれないんですが、いわゆる土地譲渡所得課税が優遇されているかのごときお話がちょっとあったんですけれども、その辺のことを補足していただけますか。
  95. 名井博明

    参考人(名井博明君) 私、申し上げたのは、土地保有税の強化だけだとやはりその土地供給、そしてそれを上回る需要ということになると土地の値上がりにつながる。したがって、その譲渡益についてもやはりある程度の適正な課税を行う方がいいのではないかというふうに申し上げたわけです。かつ勤労所得とやはり資産所得との課税バランスという面もやはり着目する必要があるというふうに考えます。
  96. 野末陳平

    ○野末陳平君 ありがとうございました。  それから、田中参考人にお伺いしますが、あめの部分とむちの部分は非常によくわかるんですが、なかなか簡単じゃないような気もしますがね。  もう一つ、固定資産税とともに最近では相続税関係で評価のことが一般の人にかなり関心を持たれていますね。ですから、土地の場合、路線価が中心でしょうけれども、この評価は今後どういうふうにあるべきだとお考えでしょうか。
  97. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 御承知のとおり、経済原則では一物一価の原則ですけれども、この土地については一物四価というようなことで私もある本にも書かせていただいたことがございます。今御指摘のとおり、相続税は路線価でございますが、基本的には一本化して税率で直していくというのが前から私は主張しているところでございます。土地臨調もそのような方向に行くというような御意見があるというようなことをマスコミではお聞きしておるところですが、それは歓迎すべきだと自分では考えております。  評価額自体は、確かに相続税という問題は、我が国の場合かなり外国から比べますと財源収入の中で大きなウエートを近年ますます占めつつありますけれども、これにつきましては、やはり小規模のものとかそういう点については配慮しながら、やはりこれも資産課税であるという原点からいきますと、一応、応分の負担という基本原則は守るべきではないかと思っております。
  98. 野末陳平

    ○野末陳平君 ありがとうございます。  そうしてもう一つ田中参考人にお伺いしますが、固定資産税の話もさっき出ましたけれども、固定資産税はこの間の見直しでも随分問題になっておりまして、それはそれでいいんですけれども、これは地方税ですから地方自治体の方に増収になってきた場合に、話はちょっとそれますけれども、そうすると地方自治体だけ潤うでしょう。それをどういうふうに使うかということになると、またいろんな問題が出てきたりして、必ずしもプラス効果になるかどうかわからないということをよく考えるんですがね。そういう点についてお考えになったことがありますか。もしあったら御所見を伺って終わりにします。
  99. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 土地税制の役割は、先ほど私は五つ目で都市整備財源の確保ということを御指摘させていただいたと思います。  我が国の場合、非常に都市の整備財源という、地方自治体の自主財源よりも、むしろ中央政府からその所得、法人、酒税の三二%を持ってくるというような、そういう地方配分で中央政府から持ってくるというところに自主財源が行っておりますから、都市の住民意識というのが、自分たちの町づくりというのが非常に少ないわけですね。そういう点からいきますと、私はある程度固定資産税を適当に評価しながら、しかも一律というのは我が国中央政府の一・四%というのは非常におかしいと考えておりますが、行財政サービスによって異なっていいと思います。そういう点からある程度固定資産税の財源が豊富ならば、それで町づくりをやり、同時に住民税や何かの負担を軽減していくというバランスが必要であると考えております。一面ではマイナス面がありますが、私は一つ都市住民という方、住民サイドからはある程度歓迎すべき時点も側面にはあるという考え方をいたしております。
  100. 野末陳平

    ○野末陳平君 どうもありがとうございました。
  101. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、まことに御多忙中のところ御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきありがとうございました。おかげさまで真剣な議論ができました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会