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1988-04-28 第112回国会 参議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十八日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      鈴木 和美君     梶原 敬義君  四月二十八日     辞任         補欠選任      杉元 恒雄君     下稲葉耕吉君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大木  浩君     理 事                 下条進一郎君                 前田 勲男君                 福間 知之君                 市川 正一君     委 員                 小島 静馬君                 下稲葉耕吉君                 中曽根弘文君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 松浦 孝治君                 松尾 官平君                 向山 一人君                 青木 薪次君                 梶原 敬義君                 高杉 廸忠君                 伏見 康治君                 矢原 秀男君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   田村  元君    政府委員        環境庁大気保全        局長       長谷川慧重君        通商産業大臣官        房総務審議官   山本 幸助君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業大臣官        房審議官     安藤 勝良君        通商産業大臣官        房審議官     野口 昌吾君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省基礎        産業局長     鈴木 直道君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        経済企画庁国民        生活局消費者行        政第一課長    植苗 竹司君        経済企画庁国民        生活局消費者行        政第二課長    吉田  博君        法務大臣官房参        事官       細川  清君        大蔵省銀行局中        小金融課長    鏡味 徳房君        文部省初等中等        教育局中学校課        長        辻村 哲夫君        厚生省社会局老        人福祉課長    真野  章君    参考人        成城大学法学部        教授       本田 純一君        社団法人日本訪        問販売協会専務        理事       増田  篤君        社団法人日本通        信販売協会会長  綾  元文君        日本弁護士連合        会消費者問題対        策委員会委員   木村 晋介君        社団法人全国消        費生活相談委員        協会常任理事   八田 眞子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十六日、鈴木和美君が委員辞任され、その補欠として梶原敬義君が選任されました。     ─────────────
  3. 大木浩

    委員長大木浩君) 訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、本案審査のため、お手元に配付いたしております名簿の五名の方々参考人として御出席願っております。  参考人方々を御紹介いたします。  成城大学法学部教授本田純一君、社団法人日本訪問販売協会専務理事増田篤君、社団法人日本通信販売協会会長綾元文君、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員木村晋介君、社団法人全国消費生活相談委員協会常任理事八田眞子君、以上五名の方々でございます。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。  ただいま議題となっております訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、皆様方から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  なお、議事の進め方でございますが、まず、参考人方々から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただいた後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  また、発言の際は、その都度委員長の許可を受けることとなっておりますので、あらかじめ御承知おきください。  それでは、まず本田参考人お願いをいたします。
  4. 本田純一

    参考人本田純一君) 成城大学本田です。  今回の訪問販売法改正に関しまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。  ここ数年来、訪問販売、広く訪問取引をめぐる消費者被害がかなり出ておりますけれども、どうもそれに対応する現行訪問販売法消費者被害を解消できないのではないか、その抜本的な改正が必要であるということが、消費者団体その他日弁連等から出されていたわけでございますが、今回提出されました政府案は、現在存在しております消費者被害、これを抜本的に解決し得るものであるかどうかということが問題になるわけでございます。  今回の政府案は、これまで問題とされておりましたいわば指定商品制、これを基本的には維持しつつ、若干の役務等を加えていわゆる指定役務制を維持したわけでございますけれども、この指定商品役務制の廃止、これがまず第一に問題になるのではないかということを私、意見として述べたいと思います。  指定商品制あるいは指定役務制を維持いたしますと、今でも問題となっておりますとおり、どうしても政令での指定までの間に被害が拡大してしまっている、また被害が拡大しなければ政令での指定もなかなか難しいということがございます。これはどうしてもやむを得ないということになります。  具体的に言いますと、例えば役務というのは大体区別しにくいということ、サービスでございますので区別しにくいということが挙げられると思います。そうしますと、指定された役務以外の形で形を変えた役務が行われると、どうしても訪問販売法脱法が行われやすいのではないか。それから、現行法のもとでも庭石、ディスポーザー、その他多くの商品指定商品にかかるのかどうか非常にあいまいである。現行指定商品制のいわば読み込みといいましょうか、そういう形で指定商品に入れているのもございますけれども、その間かなり微妙な問題を含む。こういう点で、やはり指定商品制には問題があるのではないかということが第一でございます。  それから第二に、今回の政府案行為規制をかなり入れております。五条の二以下に行為規制不当行為禁止条項というものが入っているわけでございます。これは諸外国の、特にヨーロッパ消費者法制と比べましても進んでいるということが言えると思われます。ヨーロッパでもイギリスとフランスはこういう行為規制を設けておりますけれども、例えば西ドイツ訪問取引法はこの種の行為規制を定めておりません。西ドイツでは、たしか一九八五年に訪問取引法ができましたけれども、ここではこういう行為規制を定めておりませんで、いわば訪問販売については一週間以内に消費者撤回権を行使しないときに、初めてそのときに契約が成立、こういう形になっているわけでございます。それ以上の行為規制は定めていない。  しかし、そうであっても具体的にどういう行為規制を盛るか、あるいは今回の政府案での行為規制で、果たして現在問題となっております深刻かつ広範な訪問販売による消費者被害、これが十分に解消されるかということはまた別の問題でございます。  今回の政府案は、いわば虚偽の事実の告知については、その禁止とさらには指示罰則を設けておりますけれども、事実の不告知についての規定は、これはドロップしております。つまり、当然訪問販売業者消費者との間には、その製品あるいは契約内容に関しての情報量知識にかなりギャップがあるわけでありまして、これがこれまでの民法上の契約とはかなり違う要素を消費者取引の場合には持っているわけであります。したがいまして、契約というのは、およそ対等な人間同士での間の関係ですので、全く対等な間では片一方にハンディをつける必要は全然ないわけですけれども訪問販売の場合には二段階消費者側ハンディがある。  第一は、突然押しかけてこられるという、いわば不意打ち性ハンディ、これは一定期間内はクーリングオフを認めるという形で調整しているわけでございますが、しかし、不意打ちというだけではなくて、その製品の持つ内容についての情報量それから契約やり方そのものについての知識、そういうものが、販売員プロですので、販売員と素人である消費者との間にはかなりな差があるわけで、これはクーリングオフだけでは調整ができないのではないか。つまり、プロ対全くのアマチュア契約であるということで、このいわばギャップを埋めるものとしては、クリーングオフに加えて、知っていることがあればその内容についていろんな問題点があればそれはちゃんと説明しなさいと。  ドイツ事例では、例えばソファー事例です。これは必ずしも訪問販売ではないんですけれどもソファー事例で、日に当てるとしわがつきやすいというそういう材質のソファーを売るときに、もちろん業者側は売る方ですからそれは知っているわけですが、しかしそれを告げなかった。こういう場合に、それはいわば契約の締結に問題があったということで契約解除を認める、こういう判例がドイツではございます。こういうように、業者であれば知っていることは、ただこれはいいですよ、買えば得しますよということではなくて、きちんと説明しなさい。そういういわば事実の不告知説明義務違反についても一定のやはり規制をかけるべきであろうし、まさに訪問販売で問題となっているセールストークはそこに多くの問題点を含んでいるのではないか、そういう気がいたします。  しかも、何が禁止される不当行為なのかということについての具体性をどうも欠いているのではないか。これは確かに幾ら具体的に書きましても新しい商法ができてくればそれはもちろんそこに当てはまらないということになりますから、ある程度の抽象的な書き方というのは、これは民法の例えば詐欺あるいは強迫規定を考えても当然のことかもしれません。  しかし、それにしても、いわばもう少し具体的なレベルで問題となるセールストークを盛り込めなかったのかなという感じがしているわけでございます。それは、実は実効的な被害救済方法という問題に連なってくるわけでございます。私は、この問題というのは、基本的には要するに不当なセールストークに惑わされて契約を締結した者、いわば契約上の拘束を受けた者をいかに契約から逃れさせるか、いわば代金を支払わずに済ませるか、あるいは一部支払っていればそれを取り戻させるかといういわば私法上の契約からの解放、これがこの訪問販売法の主眼であるべきはずだし、消費者の第一義的なニーズもまさにそこにあるというふうに考えております。  そうであるならば、このような不当行為によって契約を締結した者に対しては、いわゆる指示あるいは業務停止罰則という今回の政府案のいわば効果規定されておりますけれども罰則というのは非常にこれはごく例外的な場合にとどめられるべき性質のものでありますので、逆に言うと、罰則を受けるような不当行為というのはかなり限定されてくるし、そうであるならばこの不当行為の適用もかなり慎重にならざるを得ないんではないか。むしろ、そうではなくて、罰則をかける前に契約を解消させる、こういう制度がこの訪問販売法の中に入っていないと基本的には消費者保護にはならないのではないか。  そのためには何が必要かといいますと、日弁連消費者取り消し権と言っておりますけれども、むしろこれはいわばプロアマチュア契約で、段階がある契約の場合には知識量の多い者にある一定ハンディを与えて対等にする、それが本当の意味での契約の自由である。それをしなかった、つまりきちんと説明をしなかったということで説明義務違反、こういう形になる。  この説明義務は伝統的な民法上の債務には該当いたしませんけれども信義則を使いまして、全く赤の他人ではなくて、いわば契約という社会的な接触を持つ者同士の間ではやはり相手方を害しないように、相手方に不利な内容契約を締結しないようにする義務がいわばプロにはあるのではないか。それを怠った場合には民法四百十五条の債務不履行になる。したがって、場合によっては損害賠償あるいは契約解除されるということがあってもいいのではないか。そういう意味では、不当行為をした業者に対しては契約解除権を認めるべきではないか、こういうふうに考えておりますし、これは民法上の基本原則をいわば消費者取引という訪問販売法の中で鮮明にしたという意味を持つにすぎないのであって、特別に訪問販売法が特殊な権利をここで認めているというわけではないというふうに理解いたしております。  したがいまして、今回の訪販法改正案契約のいわば広い意味での解消権、私は解除権と理解しておりますが、これを入れていないのは大変残念な気がいたしております。これにつきましても、解除権につきましては、じゃ一体時効期間を何年にするのか、あるいは使ってから、あるいは物を壊してしまってからセールストークは不当だったと言って解除できるのかという細かい問題がございます。これにつきましては、実は何も我が国訪問販売法の固有の問題ではありませんで、もちろんドイツでも議論が伝統的にあるところでございます。  これはもし御質問が出れば、時間の関係もございますのでそのときに答えたいと思いますけれども、簡単に言いますと、ドイツではクーリングオフ規定の中に、目的物をいわば消費者側が壊した場合に、責めに帰すべからざる事由、つまり自分の過失によらないで壊した場合と過失によって壊した場合とで効果を分けておりまして、不注意で壊したような場合については、クーリングオフは認めるけれどもそのもの価値減損分賠償をせよと、価値賠償と言いますけれども価値補償をしなさいという規定が一条入っております。これは解除権を認めた場合の参考にもなるだろうと思います。ただ、細かいことは省略しますけれども、時間の関係もありますので先に進ましていただきたいと思います。  それから第三番目としては、クーリングオフ制度を充実させるという必要があるのではないか。この点では現金取引に今回の法案クーリングオフを認めたというのは非常に前進であろうと思います。  ただ、口頭クーリングオフは認めていない。しかし、既に一週間ぐらい前の朝日新聞紙上でも大阪簡判口頭クーリングオフを認める裁判例が出ておりますし、宮城県の古川簡判でも口頭クーリングオフを認める裁判例が既に出ております。ここら辺はそうしますと裁判例よりも現行法律がどうもそこまでもいっていないのかという問題もあるのではないかと思います。  それから、クーリングオフをしやすくさせるという点では切り取り式クーリングオフ用紙を添付する等の工夫がやはり必要なのではないかという気がしております。  それから第四番目としては、今回の、きのう成立いたしましたネズミ講防止法案も、もちろんネズミ講はこの委員会とは関係がありませんけれども、まさにあれはネズミ講脱法であります。国債ならばいいか、いや実質的に見れば結局破綻するわけで、そういう脱法行為が行われないようにする必要があるのではないか。今回の法案もそういう意味ではかなりよくできているわけですけれども、恐らく悪質業者はさらにこれを脱法してくるのではないか。ドイツなんかでは必ず脱法行為禁止条項というのを一条設けております。つまり、形式的に見れば違反していないけれども実質的に見れば違反している、こういうものを規制するためにぜひ脱法行為禁止条項というものを考えてはいただけないだろうか。民法信義則規定があるのと同じように、訪問販売法の中に脱法行為禁止条項を入れれば、例えば国債ネズミ講なんかの形で脱法されるということは防げるのではないか、そういう気がいたしております。  開業規制の問題もございますけれども、時間の関係がありますので以上にしたいと思います。
  5. 大木浩

    委員長大木浩君) どうもありがとうございました。  それでは、次に増田参考人お願いいたします。
  6. 増田篤

    参考人増田篤君) 私、社団法人日本訪問販売協会専務理事増田でございます。  今回の訪問販売法改正につきまして私ども立場を申し述べたいと思います。  一言で申しますと、今回の政府原案というのは、一部の悪質な事業者が跳梁するために全体のきちんと訪問販売をやっている者にとって極めて厳しい内容になっているということが言えると思います。  先生方はもちろん御存じのように、訪問販売業界と申しますものは、オイルショック以後の経済のサービス化といいますか、そういうものを反映いたしまして、昭和五十年以降非常に急速に伸びておりまして、毎年二けた台の伸びをしておりました。しかし、最近の環境といたしましては、婦人の社会的進出ということがございまして、在宅率が非常に低下しております。このような構造的な要因に加えまして、訪問販売とは全く次元の異なっている豊田商事事件が、六十年の六月十八日にあの衝撃的な事件でその元凶となる人物が殺されたわけでございますけれども、こういうような事件が訪販と同じようなレベルで報道された、しかも非常に増幅されて報道された、こういうことが非常に大きく影響いたしまして、ここ二、三年は全体の売上高横ばい基調となっております。そういった状況にありながら、六十一年度の訪問販売売上高は一応二兆三千億という大きな規模に達しておりまして、我が国流通業界に一応確固たる位置づけを占めているということが言えると思います。  しかし一方では、こうした業界の急成長に乗じて一部の悪質な業者が参入しているのは非常に残念なことでございますが、こういうものが全国的にかつ恒常的な消費者トラブルというものを起こしております。こうした結果、そのような病理現象というものに着目しまして、一部の識者の方々の御意見では訪問販売そのものを否定するような論調が台頭しているというのは非常に残念なことだと思っております。  当協会といたしましては、この協会は五十五年にできたわけでございますけれども、よちよち歩きの段階からやっと立ち上がったという形でまだ日が浅いのでございますが、一応活動としては三つの柱を中心にしてやっておりまして、一つ倫理綱領と申しまして、きちんとした商業マナーを守るということでございます。それから訪問販売員登録制度といって教育を履修させまして、そういうことが一つの柱となっております。それから、協会の会員の中でいろいろ問題が起こった場合の相談処理体制というものの拡充ということに努めておりまして、一応健全化に努めていろいろな施策をだんだん拡充してまいっているところでございます。  今般の政府原案につきましては、当初から産業構造審議会等においていろんな議論段階で当協会からも代表委員出席意見を述べてまいりましたけれども訪問販売取引適正化のためには、協会立場としては、あくまでも法律規制じゃなく、業界自主規制が最良の選択であると考えているわけでございます。ちなみにアメリカで申しますと、アメリカでは十数年前にやはりこういう訪問販売にはドアをあけるなというような事態があったそうでございますが、倫理綱領監督官という者がおりまして、こういうものとそれから消費者教育財団というものをつくりまして、現在では市民権を確立してきちんとアメリカでは機能しているということでございます。そういう先例に学びまして我々もきちんとやりたい、かように考えております。  しかしながら、やはり最初に申し述べましたように、非常に悪質な業者がいるのも事実でございますので、こういうものを淘汰するためには、いろいろ健全な事業者に非常にきつい部分もございますが、例えば現金取引クーリングオフが導入されるということは、当初我々としては絶対これは容認できないという立場をとっておったんでございますが、やむなくこのように厳しい政府原案を基本的には容認するということにしたわけでございます。  これに加えて、先般、衆議院商工委員会でいろいろと御議論がなされたと聞き及んでおりますので申しますと、訪問販売業にする届け出制の導入であるとか、さらには指定商品制の撤廃であるとか、さらには勧誘時における書面の交付であるとか、さらにはクーリングオフ起算日の変更、要するに到着時点から起算しろとか、消費者解除権、また中途解約権というようなことがいろいろと御議論されたと聞き及んでおりますけれども、このようなことは当協会としては業界の発展を著しく阻害し、到底容認できるものではないと考えており、ここに強く反対の意を表明するものでございます。  したがいまして、今後本改正案の運用に際しましては、行政サイドに対して非常に健全な事業者に過重な負担を与えてその活力を失わすことがないように十分な配慮をお願いする次第でございます。  私ども協会といたしましても、本改正案の施行に伴いましてより充実した施策の展開を図ろうと、現在いろんな自主規制制度等の中身というものを大幅に改正する作業に入っているところでございますが、改正法の精神に沿い従来以上の強力な自主規制を展開していく所存でございます。  一例を申しますと、入会審査規程というものがございますけれども、これは内部の規程でございますが、入口の部分入会申し出事業者の悪い部分を是正し、またそういった入ってきた者の非常に不当な取引があったときには迅速、的確に徹底指導できるような体制整備強化したいと考えております。  具体的に申し上げますと、私の発言時間もありますので簡単に申し上げますと、まず第一は倫理綱領整備強化を図りたいと考えております。  この言葉は非常にかたい言葉でございますが、倫理綱領というのは当然商人として守るべき規範と申しますかそういうことでございまして、協会には、企業及びセールスマンがそういうことをきちんと守れということで、道徳的に当然商人が守らなきゃならない規範がございまして、それを遵守しろということになっておりますけれども消費者志向を体現した企業活動を展開するために、従来からの規範が今回の法律改正によっていろいろ内容的に、我々が言っておった例えばキャッチセールスの問題ですとか、それから詐術を用いた勧誘とかということはしてはいけないと言っておったんですが、今回の法制にかなりいろいろと盛り込まれておりますので、その内容法律以上に厳正なものにする必要がある、かように考えておりまして、現行規程の見直しというものを鋭意やっておるところでございます。  そしてこういうような綱領の実効を図るために、なおかつ機動的に運用するために、現在協会に設置されております第三者の委員で構成されております倫理審査委員会というのがございまして、そこで裁定していただいて、より一層訪問販売協会の会員はきちんとしたものだということを世の中に鮮明に打ち出していきたいと思っております。  次に、販売員教育でございますけれども、五十六年から訪問販売員登録制度というものを通じてセールスマンの教育の徹底を図っているわけでございまして、現在教育を終わって登録されておりますセールスマンが全国に約九十一万人おります。しかし、本制度はまだ十分整備されていない点もございますので、今後はいろいろとそれを研究しグレードアップを図ろう、かように考えております。またさらに残念なことには、こういうことが消費者方々に十分浸透していない部分もございますので、この部分の強力な啓蒙活動も図っていこうと思っております。  それから、一部の登録販売員をコンピューターで今管理しておりますけれども、非常に膨大な量でございまして、今後はその情報量をさらに拡大していこうと考えておりますとともに、非常に問題のあるセールスマンとかそういったトラブル事例というものを入力して、公正な取引効果的に活用していきたい、かように考えております。  それから、こういうような訪問販売員教育登録証を持っている者を一つのメルクマールといたしまして、正しい訪問販売業者として選択する目安として消費者方々によくわかっていただくように、一つのPR活動といたしまして一般の家庭に張っていただくようなステッカーでございますが、非常に好評を博しておりますので「訪問販売員の登録証をお持ちですか」という小さい抵抗のないようなシールを全国の自治体を通じて積極的にお願いしているところでございます。本年度もこれをさらに拡大し着実に張っていただくように、特に高齢者の家庭等に張っていただく運動を展開したいと思っております。  第三には、苦情処理体制の強化でございます。  現在協会には訪販一一〇番というものがございまして、そこで専任の消費者アドバイザーが六名、これは交代で出ておりまして苦情を受け付けておりますけれども、ちょっとまだ千件に満たない件数でございまして、母集団としてはまだ小さいということが言えると思います。そしてまた、これらの申し出というのは関東周辺部に限定されております。こうしたことから、倫理審査委員会というものを機能的、効果的に運営するため、そういった意味から全国レベル消費者トラブルの把握をなし得る体制を構築するのが急務であろうと考えております。こういった体制を整備するために数地区に現在転送電話を配置するということを既に本年に入りましてやっております。現在名古屋、大阪、福岡に設置いたしましたが、行く行くは全国規模に広げていく所存でございます。  また、六十三年度は全国に三百名の消費者モニターというものを委嘱いたしまして、そこから定期的にトラブル情報を吸い上げまして、そういうものを分析し、コンピューターで管理し、そういった苦情の多発地域に対して啓蒙、啓発活動といいますか、未然防止の活動をやりたい、かように考えております。  それから、全国の消費生活センター等との交流というのは非常に大切でございまして、私どもでも昨年は全国四十七都道府県のセンターとの交流を行ったわけでございますが、こういう交流をさらに密度の濃いものとして六十三年度以降やっていこうと、かように考えております。  それから第四番目といたしましては、消費者啓発の推進でございまして、これは何といっても消費者が自立した消費者になるということが非常に大事なことでございまして、大変協会立場からは、こういうことは何といいますか、契約意識の高揚を図ることを協会自身もやるべきではないかという問題意識を持っておりまして、こうした活動は非常に息が長いと申しますか、非常に膨大な経費を必要とするということがございますけれども、当面、以下のような施策を続けていきたいと思っております。  先ほど申しましたように、訪販一一〇番というものがございます。それ以外に、移動消費者相談室、近々、広島にも参りますけれども、こういうようなことをやって、直接消費者から訪販企業の動向について生の声を吸い上げて、こういった機会に消費者に対して訪問販売を利用するに当たっての正しい知識を修得していただくように心がけるということと同時に、訪問販売を正しく賢く利用する啓発を地道にかつ着実に行いたいと、かように考えております。このほかに、各地区で消費者セミナー、高齢者セミナーというものを開催し、また若年層に対しては啓発資料等をつくりまして啓発活動を展開することにしたいと思います。  最後になりましたけれども協会の存在を国民各層に広く周知してもらうための施策として、協会で新たに定めました、従来JDS、ジャパン・ダイレクト・セーリング・アソシエーションというのがございましたけれども、世界各国の訪問販売協会にはそれぞれそういうマークがございます。そういうようなマーク、訪販協の頭文字をとりましてHhkというマークをデフォルメした家のような形のマークでございますが、これをつくりまして、今現在、昨年の十二月に意匠登録出願をしておりますので、今後、会員企業が扱う営業用パンフレットとか契約書面などにこれを積極的に使っていただいて、少なくとも協会会員がいやしくも世の指弾を受けないような位置づけを鮮明にしてまいりたいと考えております。  こうした訪問販売適正化を推進する当協会の存在を消費者の皆様に広く認識していただくとともに、かつ先ほど申し上げましたように、消費生活センターあるいは消費者団体との連携をさらに緊密に強化するということが必要だろうと思います。そこで、各センターには協会の会員名簿が全部配付されておりまして、万一会員に係る不当な悪質な苦情があったときは直ちにお寄せいただくように昨年来お願いして、前々からお願いしておるわけでございますが、昨年は集中的にそれを全国のセンターに対してお願いいたしました。それから、それに伴い記載していただくような書面ないしはその到着までの費用は協会の方で持ちますということで御説明にも上がった次第でございます。  また最後になりましたけれども、今回の訪問販売法改正によりまして、当協会業界自主規制の中核として、訪問販売法第十条の二に規定されている訪問販売協会として位置づけられたことについての責任の重みを当協会として非常に深く感じておりまして、その名に恥じない活動を今後展開していく所存でございます。  以上でございます。
  7. 大木浩

    委員長大木浩君) どうもありがとうございました。  引き続き、綾参考人お願いいたします。
  8. 綾元文

    参考人(綾元文君) おはようございます。  私は、社団法人日本通信販売協会の会長をいたしております綾元文でございます。  私の方からは通信販売の業界の現状について御説明申し上げたいと思います。  我が国におきます通信販売は、売上高におきまして六十一年度は九千七百億円を計上いたしております。これは小売業界売上高の約一%のシェアを占めております。この十年にわたりまして通信販売は年間二けたの成長を続けてきておりますが、これは訪販と同様ですが、女性の社会進出を背景に、通販が便利な買い物の手段として広く消費者の支持を得ていることのあらわれと考えております。  通信販売の利用者は、各種統計によって多少異なりますが、一回でも利用されましたことのある主婦はおおむね六割、国民全体からいたしましても三割に達しているものと思われます。このように国民の間に広く利用されております通信販売は、いながらにしまして買い物ができるという特質から、高齢化社会の進展に応じましてますます国民の間に広く浸透することが予想されます。そして、我々通信販売に携わる者は、便利でかつ楽しく安心して買い物ができる通信販売を発展させることに責任を感じておる次第でございます。  続きまして、通信販売協会の設立と会員の構成について説明を申し上げます。  昭和五十八年に通産省の御指導を得まして、当協会は、通信販売に係る商業倫理の確立と取引適正化を通じまして、国民の消費生活における利便の増進を図り、商品の流通を適正かつ円滑にしまして、国民経済の健全な発展に貢献することを目的としまして、社団法人日本通信販売協会が設立されました。  当協会は、当初正会員九十二社を中心として設立されました団体でございますが、その後着実に会員が増加いたしまして、現在では正会員百七十四社、賛助会員百四十七社を数えております。  現在の正会員は、専業の通信販売企業のほか、百貨店、スーパー、専門店、メーカー、商社等の通信販売に携わる法人はほとんど参加しております。また、NHK、朝日新聞、毎日新聞、テレビ各社等のマスコミあるいは生活協同組合等の通信販売に携わる法人も当協会の会員であるという状況でございます。  全国の通信販売企業の数は、正確には算定できませんが、全国の一年間の通信販売の売上高は、先ほど申し上げましたが、推定で約一兆円弱でございまして、そのうち当通信販売協会の会員社のシェアはその約八割、八〇%を占めておりまして、大手の通信販売業者はほとんど当協会に参加しているという状況でございます。  次に、通信販売協会活動状況について申し上げます。  協会ができまして最初に制定いたしました通信販売の倫理綱領は、協会の外部の学識者、新聞、雑誌、テレビ等のマスコミの代表者、それから消費者団体の代表者等有識者によります倫理綱領制定委員会を設置いたしまして、慎重な討議の結果でき上がったものでございます。八項目ございまして、一番目に消費者権利の尊重、二番目に関連法規の遵守、三番目に適正な品質価格と平易明瞭な広告表示、四番目に取引条件に関する正確克明な情報の提供、五番目に消費者に安心と満足を与える取引条件の設定、六番目にプライバシーの保護、七番目に青少年対象の通信販売についての配慮、八番目に苦情処理体制の整備、こういったことをうたっております。そして、さらに倫理綱領を実施するための具体的な基準も詳細にこれを定めて申し合わせをいたしております。  また、消費者保護の観点だけでなく、通信販売に関する消費者の魅力をより高めるためにも、協会としましては、商品到着俊一定の期間内は自主的に返品を認めます自主的返品制度を普及、拡充していくことといたしております。  また、協会発足と同時に、協会の会員マークをJADMAマークというふうに定めまして、協会会員は広告にこのマークを使用することになっておりまして、このマークに恥じない通信販売を行うよう求めますとともに、安心と信頼のJADMAマークによりまして当協会会員とアウトサイダーの区別を明確にして健全な業者を育て、悪しき業者を駆逐する一助といたしておるわけでございます。  一方、協会としましては、会員社の苦情処理体制を整備いたしまして、適切かつ迅速な処理を行うよう推進するとともに、通販一一〇番、訪販と一緒ですが、一一〇番という電話を設置いたしまして、会員企業の対応でなおかつ解決しないトラブルについては、協会が直接消費者との相談に乗りまして、その解決に努めている次第でございます。なお、通販一一〇番につきましては、会員社だけでなくアウトサイダーに関する相談も受け付けておりまして、これを解決しております。  広告規制につきましては、訪販法の改正が予定される前から我が協会といたしましてはガイドライン委員会というものを設置いたしまして、倫理綱領でなお不十分な点を見直しまして、さらに強力な自主規制案をつくるべく現在作業を着々と進めております。  以上、社団法人日本通信販売協会活動の一端を申し上げましたが、ここで一言お願い申し上げたいと思います。  当業界としましては、既にお話ししましたとおり、厳しい自主規制を行い通信販売の取引適正化に努めまして、相当程度の効果を上げているというふうに考えておりますので、今回の法規制は当協会としては厳しいものと受けとめております。ただし、広告表示その他におきまして、特にアウトサイダーの場合におきましては協会規制の及ばないケースもございます。そういった点で、ある程度はやむを得ないものがあるんじゃないかというふうにも考えております。しかし、業界としましては、あくまでも自主的努力を本筋といたしまして取引適正化消費者保護を推進する方針でございますので、政府案以上の強い規制は健全な業者の活力をそぐんじゃないかというふうに思われますので、そのような規制のないようここにお願い申し上げる次第でございます。  また、今回の訪問販売法改正で、当協会訪問販売法に位置づけられましたことは、我々が今後通信販売にかかわる自主規制活動を展開する上において極めて効果が大きいものがあるというふうに判断し、期待している次第でございます。  最後に、私ども協会の会員は、法律に位置づけられました団体の一員としての自覚を持ちまして、通信販売取引適正化のために最大の努力を尽くす所存でございます。どうぞよろしく御指導のほどお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  9. 大木浩

    委員長大木浩君) どうもありがとうございました。  それでは、続いて木村参考人お願いいたします。
  10. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 今度の改正案でございますが、幾つかの点で改善がなされることになるという点は一応の評価をするわけでございますけれども、しかし、やり残された仕事もかなり多いわけでございまして、その点について幾つか不足を言わしていただいて、将来さらに訪問販売に関する被害の予防や回復がスムーズにいくような世の中が来ることを進めるために幾つかの点をお話ししたいと思います。  第一は、開業規制が採用されなかったことでございます。  これについてはいろいろな理由があろうかと思いますが、やはり私どもが一番頭を痛めておりますのは、訪問販売業界がすべて悪いというわけではないんですけれども、中にいる悪質な業者をどういうふうに排除していくかという点にあるわけです。開業規制を入れないで、今回の改正では一定行為規制について刑事罰ないし行政的な指示ないし業務停止、そういう行政処分を規定したわけですけれども開業規制をしないで業務規制をしようとしましても、なかなか難しいことになってくるわけです。  同じようなケースとしましては、皆さんのお手元にお配りしました「昭和六十二年中における生活経済事犯」という資料があります。その二枚目をめくっていただきますと、悪質な被害が最近でもなお多発しております海外先物取引についての相談の状況ですとか、検挙の実情ですとか、行政処分の状況などが表になっております。かなり多額の被害が出ている、たくさん相談が来ているという状況が御理解いただけると思うんですが、それに比べまして、発せられました行政処分、これは五十八年中に四件、それから六十二年中に三件となっております。  例えばこの中で、五十八年の四月二十八日にプラングッドインベストメントジャパンという会社が、香港の大豆、砂糖などの海外先物取引で悪質な勧誘行為をしまして、一カ月の業務停止になったということが記されているわけでございますが、この会社はその後も決して業態が改善されたわけではありませんで、六十二年の十月八日に同じ会社がさらに一カ月の業務停止になっております。この間大いに悪質な勧誘行為を継続していたわけでございます。こういうわけで、開業規制と結びつかない行政処分というものが、無力というわけではないんですけれども、十分な効果を発揮し得ないという点は、海外先物取引関連の状況で理解できるところではないかと思うんです。  そういうことで、開業規制を入れない、いろいろな事情があるにせよ今回はどうも入れないでいくということになりますと、悪質業者をどうやって有効に排除するかという点でかなり困難な状況が生まれてくるんじゃないか。そこをどうカバーしていくのかということを考えていく必要があろうかと思います。  悪質業者を排除するためには開業規制が最も抜本的な方法であることは間違いないんですが、今回それが回避されるとすれば、業務停止が一年ということになっているんですが、これなんかも近い将来もう少し長い業務停止ができるように持っていくべきではないかというようなことが感じられますし、それから業務停止の権限、これをどういうふうに消費者相談の最先端におろしていくのかということも十分考慮する必要があるだろうと思います。  海外先物取引の行政処分の発令された状況などを見ますと、一件は大阪のものがあるようですけれども、それ以外ほとんど東京のものでございまして、そういう意味では、中央に行政処分の権限を集中しますと、なかなか地方までそういう監督の目が行き届かないということになりやすいのではないか。今回の行政処分では指示業務停止ということが法律に定められているわけでございますけれども、この指示及び業務停止の権限をそれぞれやはり地方の最先端の部署におろしていただいて、地方行政と結びついた業界規制ができるようにしていただきたい。いろいろ報じられているところによりますと、業務停止の権限までは地方におろさないというふうなことも検討されているように聞いておりますので、そうではなくて、すべてやはり最先端の部署におろしていただけるようにお願いをしたいと思います。  それから、これは私の意見でございますけれども、悪質な前歴を持ったセールスマンがある企業で悪質な勧誘行為をします、それでその会社が仮に業務停止になったとしても、そのセールスマンは生き続けるわけですね。ほかの会社に入ったりあるいは会社の名前を変えたりして生き続けていく。まあ会社の名前を変えるといいますか新しい会社をつくったりして生き続けていくわけですね。これをどうするかという点では、今回の改正には入らなかったわけですけれども、私は、そういう法令に違反するような訪問行為、勧誘行為をするおそれのあるセールスマンについては、これがこの業界に生き残っていけないようにする方法というものをとる必要があるんではないかというふうに思っております。  参考になりますのは、貸金業法の二十四条の三項に、法令に違反するような取り立て行為を犯すおそれが明らかな者については取り立てを委託してはいけないということで、雇用することもできない、雇用した者が行政処分を受けるというような形で規制がなされております。これなどを参考にして、そうした悪質な前歴のあるセールスマンが再び雇用されないようにしていくというようなことも、もし開業規制をとらないとすれば、補足的な方法として考えられるんではないだろうか。近い将来そういうこともお考えいただきたいというふうに思っております。  それから、もう一つ指定商品制度がとられなかったという点であります。この点は先ほど本田参考人からもお話がありましたので、私の考え方は述べないことにいたしますけれども、ただ、今度の法律関係でいきますと、指定商品制度、これは本来は、やってはいけない行為というのは、商品が違うからこちらでは許されて、ある商品については許されないという性質のものではないと思うんですね。ですから、全体について指定商品制度が維持されたということは、そうなってしまったことは残念ではありますけれども、やむを得ないとして、少なくとも業務規制についてだけは指定商品制度というものを外すことができなかったんだろうかということについて私はかなり残念に思っているわけでございます。  この禁止行為、今度の改正法の五条の二などを見ますと、要するに訪問販売勧誘をするときに重要なことについて不実のことを告げてはいけない、あるいは威迫したり困惑さしてはいけない、こういうわけですけれども、不実のことを告げてはいけない、あるいは人を威迫したり困惑さしてはいけないということは、何もこれは商品の種類によって決まることではないはずでして、少なくともこの禁止行為についてだけでも指定制度というものを外してよかったんではないか。この法律ではまず訪問販売の定義のところで指定商品の販売というふうに入れてしまっていますので、この指定商品制度が全部にかぶってしまっているわけなんですが、そうせずに実際にいろいろな規定が置かれているわけですので、その規定の種類で本当に指定商品制度をとる必要があるのか、ここは外してもいいんじゃないかという、そういうフレキシブルな検討がなされていてもよかったんではないだろうか。もし今回全面的に指定商品制度が維持されるとすれば、近い将来そういうこともお考えいただきたいというふうに考えております。  それからもう一つは、私ども弁護士でございまして、消費者被害がありますと、その被害回復のために払ったものを取り戻せというような裁判ですとか交渉ですとかいろいろやるわけなんですが、私ども、例えば豊田商事なら豊田商事、そこと話し合いをしまして五百万円のお金を返すという約束をしますと、それを分割払いにしてくれ、こう言われるわけですね。じゃ五十万ずつ十回払いということで仮にまとまったとしましょう。なぜそれが分割払いになるのかといいますと、これは、その悪質な業者が五十万円を毎月払うためにこれからいろいろな人をだますわけですね。ですから、私どもが個別の被害を回復するということは、逆に言うと業者にとってはさらにもう少しだまして取ろうじゃないかという行為を刺激するような結果になってしまうという、非常に私どもとしてはむなしさを感じているわけです。これは、今の制度がやっぱり悪質な行為がやり得になってしまうという結果を認容するような制度になっている点に大きな問題があるわけです。  今回、日本弁護士連合会の出しました意見などでは、単に被害を受けた分だけが回復されるということではなくて、そういう悪質な被害を与えたところに対しては懲罰的な損害賠償ができるようにしようではないかというような提案がなされております。これは、今までそういう制度が日本では余りとられていないという点もあって、なかなか難しい点はあろうかと思うんですが、要するに、やり得ではなくて、やっぱりやったら損をする、やり損ということを悪質な業者にわからせていくという点ではかなり有効な手段ではないか、なかなか考えられた提案ではないかというふうに自画自賛しているわけでございます。  今回は直ちにそういう制度を新設するということはできなかったわけですけれども、単に刑罰とか業務停止とか、そういうことだけではなくて、民事的な不利益を課していくという方向ですね、これはいわばお上が取り締まるということだけではなくて、被害を受けた人が自分の力で業者を懲らしめていく、いわば悪質な業者を排除するために被害者の民間活力を導入する、こういうことでございますので、ぜひ将来の方向としてそんなことも考えていただきたいというふうに思う次第でございます。  それから、最後になりましたけれども開業規制ですとか指定商品制度などの点で私どもとしては不足が残ったわけですが、これは法律としては通産省の管轄になるわけでございます。そういう開業規制をとる、あるいは指定商品制度を外すということになりますと、どうも非常に包括的で網羅的な規制になっていく。訪問販売というのはいろんなサービス商品を扱う業種ですので、それを一通産省だけで全部握ってしまうということになると困るというようなことも私は政策的な配慮として働いているんではないか、そういう面からいきますと、今の消費者行政がいろいろなところで縦割りの行政になっているという点が一つの障害になっているようにも思われますので、将来のこれも方向となりますが、公害問題で環境庁ができたように、消費者行政を一本化して消費者庁のようなものをつくって、網羅的で包括的な消費者保護のための規制法律というものができるような、制度ができるような工夫というものを基本的な行政の仕組みとして検討していく必要が出てきているんじゃないだろうか、今回の改正で不足が残りましたところをつらつら見ますとそういう気がしてならないわけでございます。  そういう点で、この立法だけで終わるわけではありませんので、今後の法改正ですとか行政の仕組みの改善に生かしていただきたいというふうに思っております。
  11. 大木浩

    委員長大木浩君) どうもありがとうございました。  それでは、最後になりましたけれども八田参考人お願いいたします。
  12. 八田眞子

    参考人八田眞子君) 社団法人全国消費生活相談員協会八田でございます。  本日は、消費生活センターで苦情相談を処理しております現場の人間として意見を述べさせていただきます。  既にお手元にレジュメがお配りしてありますので、レジュメに沿いまして、まず一番として、本改正案を相談員はこういうふうに見ているということをお話しします。  訪問販売に対する法規制の充実強化につきましては、消費生活相談の窓口についている相談員全員の願いでありました。今回は十年ぶりの改正ということで非常に熱い期待を持って法案を待っておりました。  改正案を拝見した率直な気持ちを申し上げます。  役務、権利を適用対象にしたこと、クーリングオフ現金取引への適用を明確にしたこと、悪質行為に対して一部規制を設けたことは一歩前進と考えますが、私ども協会から意見書として田村通産大臣あて提出しておきました消費者取り消し権指定商品の撤廃、開業規制、これらが見送られたことは、現在の深刻な訪問取引被害を根絶することができないものと私どもは考えております。特に、訪問取引において弱者と言われる情報量の少ない高齢者及び若年者層の救済は困難であり、全国二百七十三カ所の消費生活センターで非常な御苦労をなさっている消費生活相談員の皆様の今後の苦情処理の厳しさを思うと胸が痛みます。  次に、じゃどうして私どもがこのような指定商品撤廃制などを入れてもらいたいかということを、実際の被害の実態というものを御説明して、皆様に御理解をしていただこうと思います。  一番最初に原野商法の二次被害例でございます。  五十六年、北海道の土地を五年後倍額で引き取るという契約をし、権利書を現在持っている定年退職後間もない男性からの訴えでございます。六十一年になりまして、五年後に処分できるからということでそのときを楽しみにしていたので、土地処分のために販売した会社へ電話をしましたところ、全然電話が通じないんですね。そして、会社のあった住所まで行き、そのビルの管理人に調べてもらうと、その会社は契約を交わした五十六年にたったの五カ月しかそこのビルにはいなかったことがわかりました。これはいわゆる原野商法に引っかかったのかなと思ってあきらめかけていたんですね。  そうしたら、六十二年の初めになりまして、電話で、あなたが購入したあの北海道の土地を売った会社は倒産しましたよ、あの土地はあのままでは売れませんよ、あなたがもしお売りになりたいのならば、測量、整地をすれば今の別荘ブームに乗って売れるでしょう。そして、そういうことの取引はもうあなたが一度おとりになっているんだから、必ず権利書と交換に現金を差し上げますよというふうに言ってくれたんですね。  普通、権利書と交換に現金をくれる取引なんというのは非常に安全な取引で、自宅まで来てもらい、その売却条件の前提になる測量代三十万円というものを払ったわけなんです。そして、測量が大体一カ月で済みます、そうしたら御連絡させていただきますと言ったんですけれども、一カ月たっても何の連絡もないのです。これがいわゆる原野商法の二次被害と言われているものの実態です。  測量代のほかに、あの土地は宣伝しなきゃ売れませんよと言うので土地を売るための広告代、売却を任せるための委託保証金、税金対策を兼ねて、あんな北海道の土地じゃなくて、もっと条件のいいところへ替え地をしましょうよと言ってその差額分と、名目はいろいろでございますが、だましの手口は非常に巧妙でございます。  この一事例についてはまた後からコメントしますが、続いて二番目の、呉服のクーリングオフ回避についての事例を申し上げます。  これは皆さんのところにお配りしてあります注文書の赤の部分をごらんになっていただきたいんです。電話で産直、格安の店だから反物を見るだけでも見ていただけませんかと言って申し込まれたんです。ですけれども、一応今その必要がないからと断ったんですね。三十分後、玄関のブザーが鳴るので玄関に出てみますと、大きなふろしき包みを抱えた男性が立っていて、先ほどお電話した者でございますが、御近所まで来ましたので、眼福でございますので見るだけでも見てくださいと、非常に優しそうな声で玄関で荷物を広げ始めたわけなんです。  高いものはうちは買えませんからと言えば、分割が今あるんですから、奥様、一遍にお払いになろうなんて考えないでください。また、夫に相談しなければ決められないと言えば、あす京都の本社に帰るので、来月上京になりますと、またそのときはそのときでお値段が上がってしまうから、きょうお考えになった方がと言ってしゃべり続けるわけなんですね。あげくの果てに、奥さん、のどが渇きましたからお茶を一杯ごちそうしてくださいと言うのです。お茶を出したら帰ってくれるのかと思えば、せっかくお茶をごちそうになったんだから、五十万円のつけさげを四十六万円に値引くと言って契約書を記入し始めたわけなんですね。もう既に来訪時より二時間近くの時間がたって、夕飯の支度どきになっておりましたので購入を承知したわけなんです。  そのとき、不思議なことに、奥様、ちょっと印鑑を貸してください、三文判で結構なんですと言ったわけなんですね。ここが問題のところなんです。そして、その三文判を、呉服には大抵紋様の一番端のところに白地の部分というのがあるんです。紋様のない白地の部分というのが反物には必ずあるものなので、そこに、お仕立て上がりまでおたく様のお品物をお預かりするわけですからここに二つおたく様の判こを押しますと、なぜか二つ端に押したそうなんです。どういうことなのかなと思って、余り気にしないでいたんですけれども、そういうふうにして押したということなんですね。  ですけれども、夫に反対され、翌日解約を申し出た。当然消費者の権利としてこれはクーリングオフ中の解約ですから、どなたも今どきクーリングオフがきかないなんてことをお考えになる方はここにいらっしゃる方はいないと思うんですけれども、解約を申し込んだところ断られたんです。その理由は、反物に印鑑を押したからということでした。それでしたら、印鑑を押したその損料だけでも払うからこの話は断らせてくれないかと言ったんですね。そうしたら何と言ったと思いますか、その業者は。四十六万円もする反物をわやにする気か、お茶まで出して買いたいと言ったから契約してやったのに、何なら裁判してもええんよと言ったそうです。この一言消費者は驚いてしまったんです。大抵の消費者はこの一言で恐ろしくなって、裁判なんという言葉を聞くとすぐ買ってしまうんです。  三つ目の事例を申し上げます。子供の夢を踏みにじる少女雑誌の通販広告というものでございます。  少女向け週刊誌に載っている通信販売広告には非常に夢を追う商品がございます。中でも十四歳の中学生が購入したジプシー瞑想球セット、これがどういうものか、この言葉を聞いただけではきっと皆さんは商品を頭に描くことができないだろうと思うんですけれども、これは直径約四・五センチぐらいのガラス製と思われる球なわけです。それに合成皮革の袋がついていて四千円の商品です。そして、それにはこういうことが書いてあります。この球に手をかざしながらじっと見詰めるんだそうです。そうしますと脳のアルファ波——アルファ、ベータというあのアルファ波ですが、あれが活発になって集中力が高まり、やがて超能力が発揮される、こういう商品なんです。  大人から見るとばかげた商品だと思うし、大人だったら買わないと思うんです。でも、大人の基準で判断しないでもらいたいと思うんです。子供は子供の基準で判断して、超能力が発揮できるかもしれないと思って、自分の大切なお小遣いからこれを四千円で購入したのです。ですけれども、超能力が発揮できないと判断したときにはもう返品期間は過ぎていて、返品はできません。大切なお小遣いを失ってしまうことになったんです。また、この広告には送料サービスと最初のときは表示されておりましたが、請求として来たときには送料が入っておりました。  以上挙げました三事例をもとに、消費者被害をではどうしたらなくすことができるのかということを考えてみました。  一番目の原野商法のように、被害に遭ったと気づくころに販売会社をつぶしているという現状に消費者は何をもって対抗したらよろしいのでしょうか。指定商品役務制をとる場合、測量代、広告代などはエアポケットのようにどこにも入りません。救済されません。指定役務指定権利という網をかぶせたとしても、その網を逃れる者が必ず出ます。法と業者の知恵比べのはざまで被害をこうむるのはいつも消費者なんです。ぜひ指定商品制度を廃止し、訪問取引によるすべての有償契約規制対象にしてください。  二番目の呉服のクーリングオフ逃れについて申し上げます。  だれもがクーリングオフ期間中の解約は当然と考えるでしょうが、消費生活センターへの苦情というのは統計上全苦情件数の一ないし二%、あとの九八%ないし九九%は潜在苦情というこの数字を考えるとき、ほとんどの消費者が、先ほどのように裁判してもええんよの一言であきらめ、泣き寝入りがほとんどです。消費者は、裁判などという言葉は日常生活にほとんど関係のない生活をしております。その言葉によってうろたえ、困惑してしまうのです。  この事例のように、電話での訪問申し込みを断っているのに、不意打ちに訪れ、長時間に及ぶ執拗な勧誘の結果契約し、翌日解約申し込みをしても応じない。このような業者を淘汰するのには開業規制以外にないと考えます。罰則規定で担保しても、先ほど木村先生が既に述べられているのでここでは省略いたしますが、悪質な業者は別会社をつくり営業を続けていくでしょう。  またここで、クーリングオフ関連のことで現金取引におけるクーリングオフについて、先般衆議院で足切り論が出たようでございますが、支払い金の足切りをせず消費者に全額戻してください。足切り額を例えば五千円にすれば、四千九百九十円の商品が集中的に売られクーリングオフ逃れをすると思います。そうすれば現行法と何ら変わらないと思います。法改正の精神が生きる省令を考えてください。  三番目の通信販売について。  通信販売の需要がふえると同時にトラブルも増大しているということですが、通信販売というのは隔地者間取引なので、業者の信用の有無がわかりません。広告された表示が唯一の判断材料となります。  そこで、時間がないので提言だけさせていただきます。  取引条件が明確に表示されていない場合、割販法同様罰則をつけていただきたい。  テレビ、ラジオなど放送メディアに対する表示方法を細かく規制していただきたい。  前払い式取引については禁止していただきたい。前払い式を取引上必要と認めるならば、業者の許可制を導入していただきたい。  特に、子供向け雑誌の広告、商品、販売方法については、大人(販売業者、媒体業者を含む)は道義的責任を持つよう指導していただきたい。  次に、改正案では訪販法改正に連動させて割販法の第四条の三項、五項の改正を行い、割賦販売であっても訪問販売法指定商品についてクーリングオフができることになりましたが、しかし改正案では、割販法三十条の四の抗弁権の対抗ということが明確になっておりません。クーリングオフ期間以降、クレジット会社に抗弁を対抗しようとしてもできません。これではせっかく仏をつくっても魂を入れないので、真の被害救済にはなりません。  訪問販売法の施行から十年余りがたっていますが、消費者被害というのは全然減っていないのです。通信販売で被害を受けた少女が、大人はずるいと言った言葉が私の耳から離れません。被害実態を正しく把握し、消費者保護基本法で制定されている消費者の権利がこの改正案に盛り込まれているか、もう一度考え直していただきたいのです。  消費者保護の徹底こそが事業者の公正取引を確実なものにするものと考えます。十年ぶりの改正です。悔いを残すことのない、消費者の求めている改正をしてください。今から省令で救えるものは十分に手立てを尽くしてください。  最後に、本日意見を述べる機会を与えてくださったことを感謝いたしますとともに、この法案が施行され、今後へ向けて訪販法適正化委員会などがつくられる場合、ぜひ私どものような現場で働く者をメンバーに加えてください。さもなければ、現場の声、本当の被害の声が伝わらないのではないかと感じております。  ありがとうございました。これで終わります。
  13. 大木浩

    委員長大木浩君) どうもありがとうございました。  以上で各参考人の御意見の開陳は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 福間知之

    ○福間知之君 ただいま参考人それぞれのお立場からの大変貴重な御意見を拝聴して、問題の認識を新たにさせられたわけでありますが、時間が答弁を含めて一人二十分ということになっておりますのでなかなか意を尽くせないと思うんですが、まず本田先生それから木村弁護士さんにもお伺いをしたいんです。  それぞれお話の中にもありましたように、聞いていますと、訪問販売そのもの制度が果たしてどうなのかというふうな感じを抱くんです。特に日本の経済のマーケットというのは大きなものですから、ヨーロッパの例などを見ても、日本の場合はそれを上回るような適切な規制措置を講じなければならないというふうなことをまず念頭に置いてお伺いをするわけです。  本田先生は、この指定商品制度や役務制度というのはやはり疑問がある、ドイツあたりでもそれはない、イギリス、フランス等で若干見られるというふうに述べておられますし、国会の先般の議論でも私が除外指定という逆の方向の方がいいんじゃないかと言えば、それは通産省の研究会の中でもとてもじゃないが複雑で手数がかかってそれは無理だ、こういうふうに言われるわけです。じゃ、それにかわる何かいい方法はないのか。世の中にはもう五万、十万と物品サービスはあるわけですから、そういう中で確かに指定するにしろ除外指定するにしろなかなか煩雑なことは煩雑だと思うんですが、今までの木村先生なんかの経験からも果たしてどうなのかということが一点。  それから禁止行為ですが、禁止行為について、先ほど来反物の話、お茶を出した話が出ましたけれども、まさにそうなのでありまして、不退去罪というふうな罰則もあるんだからそれを知っている人はそういう話をすればいいんだけれども、それはまず少ないと思うわけなんです。あるいはまた、威迫とかいうふうな言葉が今度の法律でも使われているんですけれども、威迫と脅迫とどない違うんだとか、あるいはまた詐欺まがいのこととそうでないのはどう違ってくるんだとかいろいろ疑問が出てくるわけですけれども、そういう禁止行為というふうなものをもっと明確に消費者側がわかるようにすべきじゃないか。今回の改正ではこれは一歩前進をしている面は感じられますけれども、果たしてそれで木村さんなどの弁護士さんが今までよりも円滑に対処できるのかどうか、こういう点が少し疑問だと私は思うんですけれども、その点をお伺いします。  それから、中途解約権だとか解除権だとかいうふうなことを我々はやっぱり入れるべきじゃないかと思うんですけれども、今回は入っておりません。そういう点についての御見解を伺いたい。  それから、訪販協会増田専務理事さん、先ほど来、言うならば悪貨が良貨を駆逐するようなことじゃやっぱり困るんだ、まじめにやっている我々としては規制はなるべく少ない方がいいんだ、こういう御趣旨のお話がありましたけれども、先ほど述べられました、さりとて今協会に参加している企業なり団体なり、通産省の報告では千五百ほどインサイダーでアウトサイダーが千五百ほどある、こういうふうに報告を受けましたが、その細部の数字は別にしまして、アウトサイダーがすぐれて被害者を拡大するような行為に及んでいる、こういうふうにまず常識的に思うわけです。しかもそれは、浜の真砂やないけれども、どんどん拡大をしていく傾向をたどってきたと思うんです。かつて宅建業法で規制された業者とか、あるいはサラ金業法で規制された業者がこの訪問販売、通信販売の方に雪崩を打つように参入してきているんじゃないのか。そういうアウトサイダーの業者をしからば協会はどこまで自主的に組織し、あるいは統制権を及ぼすことができるのかどうか、その点が私はかなり疑問だと思うのであります。  この業界、まだ誕生して十年程度の新しい業界だと。しかし、御説明にあったように、小売業の中でも二兆数千億というかなりのシェアを占めるに至っているということを考えますと、これは将来に向かって極めて我々は重要視しなきゃならない課題を持った業界だと、こういうふうに思っております。したがって、業界立場でそういう悪質な被害者拡大を目的にしたような、特にアウトサイダーの業者に対してどういうふうに対処していくのか。これは業界の自主的な自助努力だけでは私はどうもいかないと思うので、例えば開業規制だとか届け出制だとかいうふうなものが議論になってくるわけですけれども協会の方はかねて開業規制というようなものはあってもいいと、こういうふうにお聞きしたようにも思うんですけれども、どうなんでしょうか。
  15. 本田純一

    参考人本田純一君) まず第一点の指定商品役務制の維持、これは問題ではないかという御質問ですけれども、私が参考資料として付しましたジュリストの論文、私の書いた論文ですけれども、ここに諸外国の例が出ております。指定商品制につきましては、どうも諸外国、特にヨーロッパではそういう形で限定している国はないようでございます。  ドイツの例が私の専門との関係で紹介されておりますけれどもドイツでは従来、営業法という形で行政取り締まり規定がございまして、そこに一定の許可を得ればできるという許可制をとっているわけですけれども、そのかわりに指定商品制はとっていないわけでございます。そのかわり、やはり今出ました除外事項をかなり詳細に規定しているわけでございます。例えば、当然のことながら農産物等の生鮮食料品等の場合については当然それは除外されるとか、こういう形で一定商品については逆に除外していくと、こういう形。さらには、場合によっては、そもそも訪問取引になじまないそういう物品についてはそれを禁止する。つまり、基本的には指定する、指定して訪問取引をしてよろしいという場合と、それから除外して、要するに訪問取引法の適用も受けない、ドイツでは営業法ですけれども。さらには、そもそも基本的にこういう形での訪問取引になじまない商品、こういう三本立てというふうに言いましょうか、そういう形になっているわけで、営業法上に詳細ないわゆる除外事項が規定されているわけであります。したがって、立法上不可能かというと必ずしもそれは不可能ではないと思われます。  ただ、必ずしもドイツと日本とは一緒ではございませんので、日本固有の商品その他も恐らくあると思いますので、多少の紆余曲折はあるかと思いますけれども法律規定することは必ずしも不可能ではないと思われます。ただ、事実上これまでは指定商品役務制をとっておりますので、そう容易ではないという気はいたします。  それで、中間的に何かいい方策はないかということですけれども、これはやはりかなり厳しいわけです。現行指定商品役務制問題点というのは、先ほども八田参考人から出ましたけれども、要するに脱法が容易であるということが考えられるわけですけれども、やはり現行指定商品制を仮に維持するという前提に立った場合には、やはり政令その他で速やかに指定ができるような体制を運用面で考えていくべきではないか。指定商品というのは、これだけが認められるという性質のものではむしろないと思う。単に例示にすぎないわけでございますから、それ以外のものは基本的に、やっていいというわけではありませんし、新製品は当然入っていないわけでございます。そうなればむしろ体制としては、被害が拡大してから指定するというのではなくて、もうかなり被害が少ない段階指定商品の中に入れる、あるいは被害を早くつかむという運用面、やはりこれはかなり改善する必要があるのではないかというふうに考えております。  それから第二の質問は、禁止行為をより具体的にわかるようにすべきではないかという点でございます。  これは私もまさにそのように考えております。ただ、いかにどの範囲で具体化するかというと非常に難しいわけでございまして、日弁連の要綱試案の中にはおよそ二十二項目ですか二十一項目ですか、具体的な禁止項目が並んでおります。  例えば、早朝深夜に電話で契約の勘誘をする行為、ないしは執拗に電話で契約勧誘をする行為、消費者に対して過大な数量の取引を押しつける行為、こういうものがあるわけで、これは大体、例えば宮城県あるいは大分県その他、滋賀県でもございますけれども消費者条例あるいはその条例の施行規則等に具体的に列挙されている事由でございます。そういう意味では現に運用されているわけであります。ただ、恐らく今回の法案で見送られたのは、例えば長時間というのは一体何時間かその他で争いになるのではないかというようなことが恐らく見送られた原因、理由ではないかと思います。また、逆に余り具体的ですと、これ以外の抜けた場合にそれはやってよろしいのかという、逆に脱法の問題もあるかと思われます。  したがいまして、私はある程度は抽象的にならざるを得ない。現に民法規定なんかも抽象的に詐欺、強迫の規定があるわけです。ある程度抽象的にならざるを得ないけれども、この改正案よりはさらにもうちょっといろいろ加えてほしい項目、先ほど言いましたような説明義務違反等の場合ですが、こういうものを加えていただけないものなのか。現行法ですと、いわば民法九十六条の詐欺まがいと強迫まがい、これしか入っていないわけで、むしろそういうものではなくて、これですと故意行為、いわば故意の行為しか入っていないわけですけれども、やはり必要な説明を不注意で怠ったというケースがかなり現実には多いのではないか。本来は説明すべきなのに説明しなかった。  これは消費者取引と言えるかどうかわかりませんけれども、三和銀行のインパクトローンの事例が大阪の地裁の判例で出ましたけれども、これは為替についてリスクヘッジといいましょうか、損をしないようないわばストップボタンというのがあるわけですが、それを説明しないでインパクトローンを行わせてしまったということでかなり消費者側に大きな損害が出たことで、三和銀行側が説明義務違反で裁判では、第一審では負けております。  こういうケースがあるわけで、必ずしも故意行為だけではない説明義務違反、宅建業法上で言えば重要事項の告知義務違反みたいなのがございますけれども、こういうものをもうちょっと入れるような規定の方が本来は望ましいのではないか。仮にそういうものを入れた場合であっても、例えば政省令で具体的な項目を規定しておくということでさらにそれが明確になるのではないか。  それから被害救済手段の、第三番目の御質問ですけれども、まず、中途解約権は後におきまして、解除権の問題ですけれども、これはやはり先ほどの禁止行為で何を置くかという問題と絡むと思うんですけれども、どうもこれまでは詐欺まがい、いわば強迫まがいということで、民法には詐欺取り消し、強迫取り消しとの観念で消費者取り消し権というふうに観念されてきた。そうすると、どうしても故意行為という形になっていたのではないか。むしろそうではなくて、基本的な説明を怠ったということで解除債務不履行なんだという認識、ここではそれが必要なんだと、したがって、逆に禁止行為も不注意なものも入るという形に考え方を改めるべきではないのかなというのが私の持論でございます。  それから中途解約権につきましては、これもやはり、本来預託法等でもありますので、役務等で継続的なものに関しましてはやはり置く必要があったのではないかなと、個人的には考えております。  以上でございます。
  16. 木村晋介

    参考人木村晋介君) かなり本田さんから詳細にありましたので、ちょっと付加だけさしていただきますが、まず指定制度については、商品についてはかなり網羅的にリストをつくるということはできると思うんですけれども、今度は新しく役務が入ってくるわけですね。役務というのは無形のものですからかなりデリケートなサービス内容の違いというのが出てくるだろう。恐らく何かを指定役務指定すると、ちょっとそれを外したものが出てくるという形がとられるんじゃないか。だから、役務について指定制度をとったことの弊害というのがより強く出てくるんではないだろうかというふうに思っております。  ごく最近、きのう出したばかりの内容証明なんですけれども、ある新入生、女子大生なんですが、渋谷駅でモデルのいいアルバイトがあるといって呼びとめられまして事務所まで連れていかれて、名刺を渡されたときには入会金は取らないとか、あるいは未成年者については親の同意が必要だと書いてあったんで安心してついていったら、結局契約をさせられて、その場で持っていた七千円を受講料として取られて、さらに写真代として二万円払えということで毎日電話をしてくるということでおびえて相談に来たというようなケースがあります。こういうのをどういうふうに、これも一種の役務だろうと思うんですが、どういうふうに特定していくのかということになるとなかなか苦労されるんじゃないだろうか。また、特定をするとちょっと変えて出してくるということになるんじゃないだろうかという気がしております。  それから、禁止行為の関係では、今度の法律内容を見ますと、不実の告知は別として、威迫して困惑させてはならないという方は、貸金業法の取り立て行為の規制に近い規定の仕方をしているんですが、しかし、貸金業法の場合には生活や業務の平穏を害する行為についても規制をしているわけですね。私、貸金業の場合には少なくともお金を貸して、相手は支払い義務を負っている人のうちへ行くわけですから、訪問販売の場合には何ら権利義務のないところへ行くという点からいくと、貸金業者よりも訪問販売業者の方が少し訪問行為については厳しく規制されてもいいんじゃないかと思っているんですが、結果的には貸金業の規制よりも狭い規制になっているという点でも私としては非常に不足を感じております。  それから、中途解約権、取り消し権のお話がありました。中途解約権は、これは継続的なサービス契約ですね。これなんかかなり長期のもの、例えば学習塾なんか三年分一括して契約をしまして、途中で解約ができないというような形のものとか、英会話のセンターとかそういうのでかなり長期の契約のものがあるんですね。これなんか、契約したんだけれども途中で嫌になって行かなかった、そういう場合でも後からばんと請求が来てびっくりするとか、その間何にも言ってこないで急に五年ぐらいたってから請求が来てびっくりしたとか、そういうようなものがあるんですね。これについてはたしか国生審でも問題になっていたと思うんですけれども、合理的な期間内で途中で解約できるようにするべきじゃないだろうかというふうに考えております。  今回、何か衆議院の方を見ますと、その点が約款の適正化ということで衆議院の附帯決議に入っているようですけれども、約款の適正化というのも、インサイダーについては通用しますが、アウトサイダーについてはこれは通用しないという点でいくと、やはり法律的なものでやっていただくのがベターではないかというふうに思っております。  取り消し権に関しては、これは法律に違反した形での契約があった場合に、相当クーリングオフよりもかなり長期の解約権を認めていこうという提案でございますけれども、これもやはり先ほど申しました要するにやり得にならないように、違法な行為をやっても結局契約さしてしまえば契約が有効だというのであると、結局やり得になってしまうわけですね。ですから、解約はできないんだよというふうに言って解約させなかったという場合でもそれが有効だということになってしまうと、やっぱりやり得になってしまうというためには、こういう禁止行為に違反したようなケースについては相当長期の取り消し権を認めるということで対処しないとやり損にはならないという気がいたします。
  17. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、増田参考人お願いしたいと思うんですが、これ一人一人の持ち時間がお答えも含めて各質問者二十分でございますので、大変恐縮ですがよろしく御協力お願いします。
  18. 増田篤

    参考人増田篤君) じゃ簡単に先生にお答えいたします。  先生の御質問は、アウトサイダーに対する要するに協会の対応はいかん、そういうようなことをどう考えていくかという御質問だったと思います。もう一点は、開業規制について訪問販売協会としては賛成なんではないかと、二つたしかあったと思いますので、簡単にお答えいたしたいと思います。  まず第一に、アウトサイダーでございますが、先ほど申しましたように、アウトサイダーというのは、名のある訪販企業と申しますのは、いろいろ御議論の過程で千五百ぐらいあると申しておりますけれども、実際に訪問販売という次元でとらえますと、一人とかなんとかというのは無数にあるわけでございます。ただ、訪販協の会員で全体の売上高のカバレージは八〇%ほどを占めておりますから、全体の売り上げでは多いんでございますが、企業数ですと本当にとらえにくいというような実態でございます。こういうものを協会の方で零細なアウトサイダーを組織していくということは、協会がこういうような法律に書かれたということを厳粛に受けとめまして、たとえアウトサイダーでも健全な企業というのはどんどん加盟を促進していきたい、基本的にさように考えております。  それから、協会の権限と申しますのはやはりアウトサイダーには及ばないわけでございますが、こういうものは協会の基盤が整備されてくると、世の中に認知されることによって悪質なアウトサイダーというのは当然のことながら私は減っていくんではないか。理想論を申しますと、これは独禁法に触れますので、こういうことはここの席で発言するにはちょっとあれと思いますけれども協会の会員以外は物が売れないような環境ができるというようなことが一番望ましいんではないかなと、かように考えております。  それで、先ほど来申し上げましたように、協会の中でいろいろ考えておりますのは、協会自体の力も弱いですから、行政とか消費者団体とか全部が連携して悪質なアウトサイダーを駆逐していくということが一番大事なことだろうと思っております。今回の訪販法の改正がございまして、新しい法律でかなり法規制が強化されておりますけれども協会としても自主規制をさらに強化し、そういうものを徹底して、そうして消費者の信頼をかち得る、そういう方法を講じていきたいと思います。  先ほど申しましたステッカーと申しますのは、ここにございますような「訪問販売員の登録証をお持ちですか」というようなものでございまして、これを各消費者の戸口に張っていただくということを既にやっております。これは一昨年でございますか、通産省の消費生活改善監視員というのが通産大臣から任命されて、七百十五名の方がいらっしゃいますが、この方々の御協力を得まして、全国津々浦々一万戸に張っていただきまして、その効果を全部測定したわけでございます。そうしたら、悪質な販売員が来なくなったということがはっきりデータとして出ております。これはプレスで発表しております。この事業を強力に展開していこう、要するにこういうものを張ることによって、どういうふうに悪いアウトサイダーが来なくなるかということが明確に出ておりますので、そういう活動を一層展開したいと、かように考えております。  そういうことをやり、なおかついろんなトラブル情報を吸い上げながら協会が未然防止の措置というようなものもやらなければならぬと考えております。  それから、もう一つの御質問の登録について、開業規制については協会は賛成したのではないかという御質問ですが、これはちょっと先生のお考えがどうかと思いまして、協会としては開業規制については大反対でございます。なぜならば、開業規制をしても、訪問販売というのは企業の登録だけでは済まないということでございまして、実態として、訪問販売からどういうものを欠格要件として排除するのかということになりますので、そうすると、犯罪歴でもないようなものはみんな入ってしまうということになります。したがって、豊田商事などは訪販とは次元が違うわけでございますが、こういうものが名前を変えたりなんかして登録してきてもそれをどんどん受け付けるというようなことになりますと、むしろかえって悪質業者には国のお墨つきを与えることになるだろうということで、我々としては基本的にこの開業規制というのは大反対でございます。  以上でございます。
  19. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 本田参考人にまずお願いしたいと思います。  八田さんも、木村さんも、本田さんも同一的に指定商品の撤廃をすべきであると、こういうふうにお話をされていらっしゃいますが、一つは西ヨーロッパ諸国で指定商品制自体をとる国が非常に少ないと、なぜそうなのかということが一つと、二番目には消費者を守る意味で、訪問取引という取引形態の中で、先生は結論的にクーリングオフ権と解除権との二つの救済手段で重畳的に保障することが真の意味消費者被害の救済という観点からは望ましいものと考える、この二点を非常に強調されておりますが、この点についてお願いしたいと思います。  一応私の時間ございませんので、質問をまとめて先にいたしまして、後で答弁いただきたいと思います。  綾参考人には、通信販売における広告規制でございますが、これはたしか八田先生からもお話が出たと思いますけれども、確かに詐欺的な誇大な広告、こういうようなことが大きな問題になってくると思うんですけれども業界自主規制に対してどういう努力というものをなされているのか。倫理綱領とか通信販売、いろいろのそういうような厳しい枠というものを持っていらっしゃると思うんですが、それを業界立場からまずどういう努力をしていらっしゃるのか。  これにつきまして、木村先生にお願いしたいことは、こういう問題に対して法規制の中ではどうもう少し厳しくしていけばいいのか。第八条の二に誇大広告等の禁止云々とあるわけでございますけれども、この点について木村先生の具体的なお話を伺いたいと思います。  それから、八田参考人お願いを申し上げたいんでございますが、やはり指定商品制の撤廃というものを非常に強くさっきも言われましたけれども、この点簡単で結構ですが具体的に申し添えていただきたいことと、もう一点は、こういう非常に悪質な業者とか悪質なそういうふうないろんな問題等々が出てまいりますけれども、特にデータを見ますと、高齢者の方とか、そして非常に情報網が少ない場合、これは本田先生も論文で言われておりますけれども、いきなり家に踏み込んでまいります。そういう不意打ち性の中で対応ができないで、さっきの呉服の関係とかいうようなやりとりの中での非常に心理的についてくる問題もあるんですけれども消費者保護のための教育、いろいろ努力をされていらっしゃるが、資料はいただいておりますけれども、若い者の教育は文部省でどうすべきであるとか、成人の方々の家庭における問題についてはほかの省庁でどうすべきであるとか、もし行政に対して御要望がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。  以上でございます。
  20. 綾元文

    参考人(綾元文君) 広告規制でございますが、これについては一番私どもが頭を痛めておるんですが、通販協会では当初から倫理綱領をつくりまして申し合わせをしておりますが、ここ数カ月前から、こういうふうな化粧品の場合はこういう広告をしようというように、ガイドライン委員会をつくりましてもっと具体的に協会メンバーには指導をしております。そういう点で効果は上がりつつあると思うんですが、アウトサイダーについてはそういったことができませんので、どういうふうに対処するか、多少ある程度の広告規制というのはやむを得ないんじゃないかというふうに思っております。ただ、協会の内部ではそういったことに違反した場合は除名とか会員停止とか、そういった罰則を行いまして規制を行っております。
  21. 八田眞子

    参考人八田眞子君) 時間の関係で簡単にお答えします。  最初に一点目が、指定商品撤廃についてということは既に事例で述べていますけれども、私が日ごろ消費生活センターの相談で感じますことは、相談者は、この商品は安心でしょうかとか、この商品について伺いたいと聞いてくる人はだれもいません。今はほとんど商品に対する表示その他は放送媒体とかそういうカタログなんかでもって知ることができます。大抵は、この業者はどんな業者でしょうか、安心して取引のできる業者でしょうかというふうに聞いてきます。既に契約を結んでしまっていたとしても、何となく一抹の不安が残る、そして業者の状況を聞いた上で態度を決定しようというんで、まず大抵、相談の開口する言葉というのは、こうなったんです、こうなったんですというふうに言う方もいらっしゃいますけれども、この業者取引をして安心な業者でございますでしょうかというふうに聞いてまいります。そういうことを考えるとき、商品指定制ということよりも、むしろもっと先にやらなければならないことがあるのじゃないか。お時間の関係でこのぐらいにさせていただきます。  二番目に、悪質業者に対して消費者保護をするための教育ということなんですが、私は実際に消費生活センターの相談員であるとともに、また神奈川県の学校教育の場でとか、ボランティアとして婦人会とか老人会とか、それから新入社員の研修の場に啓発出前講座なんという形でもって行っておりますけれども、つくづく感じるんでございますが、例えば四月に新入社員の研修の場に行って講座をしますよね。そうして、四月のお給料を初めてもらって五月のゴールデンウィークに町へ出て、そして会員券を最初の給料で、会員券といっても、別に映画が割引になるからとか劇場が割引になるからといって、大してメリットもないようなんですけれども、買わせられるんですね。そして、それを返したいと連絡してもいつも留守番電話しかないなんという業者に対して、もう社会に出た社会人一年生が社会ってこういうものなんだろうかと言うんですね。こんなことをしているときにやはり消費者教育の必要性というのは非常に感じます。  私は、自立する消費者とかそういうことを皆さん頭の中に考えていらっしゃると思いますけれども消費者教育とそれからその法とが車の両輪だってよく言う人がいると思うんですね。だけれども、法の規制の方が私は優先だと思うんです。もっともっと法を拡大して優先にしていただかなければ、消費者教育を後からやったって追いつかないんです。それほど被害の実例というのがひどいんです。  時間の関係もありますのでとどめさしていただきます。
  22. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 今度誇大広告等の禁止が八条の二に入ったわけです。その内容自体は景表法その他の規定などをベースにしてできているものだろうと思うんですが、通信販売というのは非常に広告が重要な要素を持ちますので、この点についての規制というのは厳正にやっていただきたいと思うわけです。  もう一つの問題として私どもがいつも感じておりますのは、広告媒体の方の責任をどう考えたらいいのかということなんです。不当広告ないしそれにかなり近い広告である、あるいは社会的に問題のある広告であるというふうなことがわかっていても、まあ新聞にもよるわけですが、スポーツ紙ですとか女性週刊誌になりますとかなり載っております。そういうものについて、広告媒体についても、ある程度明確にわかるものについて載せている場合については責任を問うていくような制度というものを考えていく必要があるんではないだろうかということを感じております。
  23. 本田純一

    参考人本田純一君) まず第一の御質問ですけれどもヨーロッパ指定商品制がとられていない理由でございますが、私はヨーロッパの全部の国にわたって必ずしも熟知しているわけではございませんけれども、根本的に要するに訪問取引被害というのは、商品にかかわるものではなくて契約方法にかかわる、訪問といういわば不意打ちによる契約に構造的に内在する問題だという認識がやはり強くて、要するに取引方法が問題なんで商品が問題ではない、こういう発想だろうと思います。  それから第二の、要するに訪問取引に対する被害救済手段としてクーリングオフ解除権が両輪である、私の考え方でございますけれども、これは理論的に言いますと、要するに訪問取引というのは、簡単に言いますけれども不意打ち性が非常に強いわけでございます。したがって、契約締結意思も、例えばさあこれから洗濯をしようと思っている主婦のところへいきなり来て、ふっと買ってしまう、そのときだけそのものが欲しい、その前後は全然そんなものを買う気はなかったという場合が結構あるわけです。そうしますと、契約の締結意思、主体的な意思が非常に弱いということで、やはり考え直す、いわば頭を冷やす期間、そういうことで、売り方が悪いとか悪くないとかいう問題とは別個に、やはり頭を冷やす期間としてクーリングオフが必要なわけでございます。  それと並びまして、いわば不意打ちに訪れて、これをこれからどうやって売ろう、セールストークはどういう順番でやろうということを全部決めてきているわけでございます。片一方はプロであります。したがいまして、どうしても誘導といいましょうか不当な、いわば違法に近いセールストークが行われやすいというそういう構造を持っているわけであります。したがいまして、いわば対等な当事者間の契約ではございませんので、ある程度情報量のある者はその情報を出しなさい、それをうっかり出さない、あるいは説明しなかった場合にはやはりこれこそまさに債務不履行ではないか、そういうことで解除権を保障する意味があるのではないか。  私は今回の、いわば訪販取引業者の中の悪質なものだけを排除するという考え方が強いので、この不当行為についての救済手段というのをかなり強く認めていくべきではないか。その結果どうしてもそれでもだめだということになれば、やはり訪販業全体に法の網を例えば登録制というような形でかぶせざるを得ないということになると思いますけれども、現状ではやはり悪い部分だけを取り除くというのがベターなのではないかと考えております。
  24. 市川正一

    ○市川正一君 私、共産党の市川でございますが、まず本田木村八田の三参考人にお伺いいたしたいと思います。  消費者問題と申しますか、豊田商事や霊感商法などの被害救済に携わってこられた皆さん方の経験と教訓に基づいた御見解については拝聴いたしましたが、二十六日の本委員会で私も取り上げました指定商品制の廃止とかあるいは行為規制の強化などの点で同じ見解を示されたことについて大いに意を強うしたところであります。  実は、我が党は今度のこの改正案一定の改善案を盛り込んでいることを評価いたしつつも、しかしよりよいものにするために修正案を提出することにいたしておりますが、そのためにもお伺いいたしたいのは、三点なんですが、一つは、悪質な訪問販売などの被害から消費者を守るために不可欠なものは一体何だろうか。それから二つは、その立場から今回の政府案問題点はどこにあるのか。それから三つは、行政府の対応としてどん なことが必要なんだろうか。この三点について、残念ながら時間がございませんので、まことに恐縮でありますが、項目的といいますか要項的に整理して御意見を承りたいと思います。  次に、増田、綾両参考人には、今回の法改正で一層その社会的責任が重大になったということを前提にしつつお伺いするんでありますが、悪質業者、例えば霊感商法の事業者の場合ですが、これを自主的に協会から脱退させ、そしてアウトサイダーにしただけで、結局具体的措置はとっていないというふうに聞いておるんでありますが、増田参考人にはその経過について御説明をいただきたいと思います。  それから、先ほどたしか綾参考人だったと思いますんですが、アウトサイダーに規制が及ばないのはやむを得ないというような趣旨のことを述べられたように承りましたが、アウトサイダーによるトラブルは結局は両協会にはね返ってくる。そうすると、悪質なアウトサイダー業者にどう対応なさるのか、この点は無視できない、回避できない問題だと思うんですが、その点について承りたいと思うんです。  先ほど木村参考人が悪質セールスマンが結局いつまでも野放しになっている、生き続けるという事態について指摘をされましたが、そのことについて両参考人はどうとらえていらっしゃるのか、どう対応されようとなさるのか、御見解を承りたいと思います。  以上よろしくお願いいたします。
  25. 八田眞子

    参考人八田眞子君) まず第一点でございますが、不可欠なものとして法改正とそれから自立する消費者のための消費者教育と考えます。その方法については、時間の関係から割愛させていただきますし、今まで述べてきております。  二番目として、改正案に対してはぜひ開業規制して商品の撤廃だけは現場サイドからは盛り込んでいただきたいということです。  三番目として、行政の対応については、これはもう皆さん御承知と思うんですけれども、豊田商事が——豊田商事の話をすると、業者の方は今はもう自分のところはあれとは関係ないと言って蛇蝎のように嫌うけれども、現実は豊田商事のマニュアルなんかを使っている業者がいまだに多いんです。まあそれは余談ですけれども、豊田商事が短い期間にこれだけもうけられたということはやっぱり行政の対応のおくれだと思うんです。そして、例えば五十六年に通産省に対しては約二百件、五十六年だけで五億二千万円ぐらいの被害相談というのが入っているわけなんですね。  それから消費者被害、いろんな歴史的なもの、スモン病でもカネミ油症でも何でも全部行政の適切な対応の立ちおくれのために消費者被害をこうむっているということを考えたとき、企業への規制の抜け穴が余りにも多い法律というのが現実であり、それを後追い後追いしているということなんですね。だから今度の訪販法改正に関しては今までと同じ過程を通らないようにしてほしいと思うんです。  そして、私はずっと考えてきたことなんですけれども、本当に消費者にとって顔を向けている行政というのがどこなのかなと思って考えてきたんです。そうしたらないんですね。こういう名前が適当かどうか知りませんけど、さっき木村参考人の方からちらっと出ましたけれども消費者保護庁のような、そんなところがあったらばもう少し今の消費者被害を救えるのじゃないかなと考えております。  以上でございます。
  26. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 私は、先ほども言いましたように、悪質なセールスマンが生き続けるということをどういうふうに排除していくかという点が一番大事だと思うんです。その点で開業規制をとらないとすれば、それにかわるものを真剣に考えていく必要がある。悪質なセールスマンを業界から排除するための措置として、先ほど私も申しましたけれども、雇用を禁止するような措置というものが必要なんではないだろうかというふうに考えております。  それから問題点ですが、問題点は、そういう悪質な業者を排除するという点を、基本的に今回の法律はやはり業界自主規制をベースに置いてやっていこうという考え方をとっている点にあるんではないかと思います。  その点で、先ほど増田さんからも実情の報告がありました。例えば登録証、現在は協会の方で登録証を出していますが、あれもやっぱり法的裏づけがないものですから、実際にその業界の方で登録証を取り上げる法的な手段もないわけですね。そういうようなことがありますし、それからそのステッカーも確かにいろいろ悩まれた結果つくられたものだろうと思うので、それはそれなりに評価するんですが、結局ステッカーを張った家からステッカーを張っていない家に悪質なセールスマンをシフトするだけの結果に終わってしまうんじゃないだろうかという気がいたします。確かにステッカーを張ったところには来ないかもしれませんが、張っていないところにはますます集中してくることになるんではないかというような気がします。そういう意味で、やはり自主規制ベースで考えていくというのはなかなか難しいのではないだろうか。そこに今回の法律上の私どもが不足を感じている根本的な点があるんじゃないだろうかという気がいたします。  以上の二点にとどめておきます。
  27. 本田純一

    参考人本田純一君) まず第一の問題ですけれども、極めて悪質なセールスマンの排除ということは確かに不可欠な要素であろうかと思いますけれども訪問取引問題点というのは、どこまでかという限界はありますけれども、必ずしも極めて悪質な者だけではない、通常のセールスマンにも起こりやすい、要するにトラブルを内在しているのではないか。そういう意味ではやはり行為規制といいましょうか、不当な行為の禁止、それがあった場合の契約からの解放手段、これを消費者に認めるということがやはり消費者を悪質な訪販から守る不可欠な要素ではないかと考えております。  その立場から考えますと、今回の法案につきましては、まず指定制をとっているということが第一の問題点でございます。したがいまして、指定制を撤廃しまして行為規制をさらにある程度具体化して、その救済手段を消費者に付与する、やはりこれは私法上の取引ですので、私法上の義務から消費者を解放してやる、そういう方策がやはり必要なのではないか。  それから行政府の対応としましては、現行この法案を前提としますと、やはり迅速な指定を行ってほしいということと同時に、私が今述べましたのは、いわば被害が起こってからの個別的被害に対する消費者の救済でございます。行政府の対応としては、そうではなくて事前の包括的な消費者救済、やはり同じような起こりそうな類型につきましては、行為類型についてはこれは早くチェックする。例えば、豊田商事のような形で、ああいう形で全国に広がる前になぜチェックできなかったのか。こういう意味ではいわば情報の連絡といいましょうか、そういうもの、あるいは悪質業者に対する氏名公表制度をもっと徹底して、かつ迅速に、速やかに行う、こういう処置が必要なのではないかと考えております。
  28. 増田篤

    参考人増田篤君) 二点あったと思いますけれども、最初は霊感商法の御質問だったと思います。  六十二年のたしか三月十九日だったと思いますけれども、国会の議員会館でございますか、その会議室で問題が非常に大きく提起されまして、その後協会におきまして当該企業を招致しまして、数回にわたって事実関係等について事情聴取を行った経緯がございます。それで幾ら聞いても先方は、私どもはきちんとしたことをしているのであって問題はないということを繰り返し押し問答のような形で過ぎましたけれども、その後いろいろな世論の風圧といいますか、そういうようなこともございまして、六十二年の四月六日に当該者から、今後こういった誤解を与えるような販売は一切行わないという書面が提出されまして、その後六十二年四月三十日付をもって協会から自主的に退会しております。  ちなみに、私自身がNHKの「NC9」に出まして、訪販一一〇番ということを一応そこで報道したところ、うちの方の消費者相談室にこういった霊感商法についての相談というのが二、三件は参りました。非常に古い、二年か三年ぐらい前の埋没したような苦情が発掘されたという事例がございますけれども、私どもの相談室にはこういうような商法についての相談件数というのはほとんどございません。  それからもう一点、悪質なアウトサイダーに対してどう対応するのかという御質問でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、こういう悪質なアウトサイダーというものがあるのは非常に残念なことでございます。そのために健全な企業までがかなり厳しい規制を受けるというのは我々非常に残念に思っておりますけれども、これを一応厳粛に受けとめまして、私どもの訪販一一〇番ではアウトサイダーでも何でも相談を受けておりますし、消費者方々にそういうように納得いくような解決といいますか、行政との連携とかいろいろやっておりまして、最近は訪問販売協会の相談室の認知度も高まってまいりまして、それぞれのセンターとかのかなりの問い合わせもふえております。瞬間風速ですと前年同期比で七〇%ぐらいの増加になっております。  そういうような形で、アウトサイダーについても、我々は直接アウトサイダーを指導するという立場は強く振えないわけでございますけれども消費者方々に未然にそういうようなことにかかわらないようにいろんなサゼスチョンなり指導できる部分は指導しております。  それから、先ほど来申し上げておりますようこ、トラブルを未然に防止するという観点から、ことしは全国三百名の消費者モニターというものを全国に任命しまして、そこから定期的にトラブルのようなものを吸い上げて管理し、そこに未然防止、これはアウトサイダー対策の意味を兼ねまして啓発を大いに図ろうと。それから、消費者相談室というものは私の方は一つしかございませんので、移動相談室というのを、先ほど来申し上げておりますように、そういうような動いていってそれで巡回しつつそういうような啓蒙を図っていこう、かように考えております。これはアウトサイダーには協会一つだけではとても力が及ばないものですから、どうしたらこういうものをなくせるかということは、もちろん行政とか消費者団体との連携のもとにやらなければならない、かように考えております。  以上でございます。
  29. 綾元文

    参考人(綾元文君) 通信販売協会でも悪質なアウトサイダー対策につきましては腐心しているところでありますが、先ほども申し上げましたように、通販業界売り上げ一兆円のうち八千億が協会のメンバーでありまして、あとの二割がアウトサイダーのメンバーです。けれどもこの業者は、恐らく協会のメンバーが三百社ぐらい、これは賛助会員合わせてですけれども、ほかの業者は恐らく数千業者いると思うんです。こういった業者協会としてどういうふうにしたらいいかということは、やはり私どもJADMAマークという、新聞広告が大体一番顧客との接点でございまして、商品のところの隅のところに、私は通販協会の会員でございますというマークをつけておるんです。ジャパン・ダイレクトメール・マーケット・アソシエーション、この略ですけれども、この会社以外の会社は、商品は信用できないというふうなイメージづくりを現在やっておりまして、お客さんにも大分それが浸透しております。  ですから、それ以外の会社の商品については安心できないというふうなことをPRする、そういったことによって、通販協会に入会しないと商売できない、通信販売の商売ができないというふうなイメージを与えていくということを指導しておるんですが、現在その入会についての指導を業界その他でお願いしておるわけです。しかし、入会していない業者にも苦情処理関係については直接協会からその会社へ電話しまして、窓口に対して顧客との接点を設けまして従来ずっと解決に当たっております。そういうところで、今後とも入会を勧めながら通販業界全体としての信用を高めるということでリカバーしていきたいというふうに思っております。
  30. 市川正一

    ○市川正一君 一つだけ増田さん、木村参考人が言った要するに言葉を選ばずに言えば札つきの悪質なセールスマン、それを雇用しないとか排除するとか、そういうふうなことについて構想はどうなんですか。
  31. 増田篤

    参考人増田篤君) 一応、訪問販売協会ではセールスマンの登録というのを先ほど来先生に申し上げておりますようにやっておりますけれども、少なくともインサイダーの登録をしているセールスマンが今九十一万人おります。この情報を電算管理に取りかかっている段階でございますが、何分にも数が非常に多く……
  32. 市川正一

    ○市川正一君 考え方として。
  33. 増田篤

    参考人増田篤君) 考え方としては、今後非常に悪いものについての情報を蓄積する必要があるだろうという問題意識を持っております。そういうものを企業に周知して、そういう札つきなセールスマンは採用しないというようなことも問題意識として持っております。
  34. 井上計

    ○井上計君 幾つかの問題点を簡単にちょっとお聞きをして、お答えをいただいた後で実はまた質問をしたいと思いますので、簡単にお答えをいただきたいとこう思います。  まず、木村参考人八田参考人のお二方にお伺いしたいんですが、現在行われておるようなと申し上げると若干問題が、もちろん問題があるんですけれども、全般的に見て現在の我が国の消費生活に対して訪問販売あるいは通信販売が必要とお考えになっておるかどうか、これをまずお二方。  それから、もう一つお二方にお聞きしたいのは、もちろん企業全部が悪いとは思っておりません。しかし、また一面に消費者がすべて善だということもこれまた問題があると思うんですね、実情からいって。だから、それらの点について、業者の中でパーセンテージからいってどの程度悪質なものがおるであろうか、それから逆に今度は消費者の中にも不注意あるいはまた何といいますか、逆に消費者が自分の欲のために乗っかって失敗をしたというふうな、そういうようなものがどれぐらいあるであろうか、もしおわかりならその二点をまずお伺いいたしたいと思います。  それから、増田参考人、綾参考人にも同じことをお伺いしたいんですが、今度の改正案の中で私どもずっと見ておりまして、かなり業者には厳しい内容改正案になっておると、こういうふうに判断をしております。その最たるものは現金取引によるクーリングオフ、これは一般的な従来の商業慣習からいうと大変なことになるんではなかろうかなという気がするんですが、業界企業としてはこれについてどのような受けとめをしておられるのか。  それからもう一つは、それぞれ業界側が、今までこれは消費者側からいうと全部外交員にだまされたというふうな事例がたくさんあるわけですけれども、逆に企業の方から言わせると消費者にだまされたというふうな、そういうふうなトラブル案件があるということを聞いておるんですが、それはどのように今まで見ておられますか、この二点をお二方にひとつお伺いをいたしたいとこう思います。  後、若干それによってまた質問がしたいので、端的にお答えいただければ結構であります。
  35. 木村晋介

    参考人木村晋介君) まず、必要かどうかという点ですが、きょう資料としてお配りしました「消費者問題に関する世論調査」、これは総理府がやったものですけれども、一番最後の表を見ていただきますと、便利であるというふうに考えている人が八・八%、利用したくない、または必要ないというふうに考えている方が八四・二%という数字が出ております。これがまた業界が改善されていくと少し数字が変わってくるのかもしれませんけれども、私自身は訪問販売は余り必要ないと いう方のグループに属しますが、しかし便利であると言う人が八・八%あるとすれば全く無視できる需要というふうにも言えないというふうに私は考えております。
  36. 八田眞子

    参考人八田眞子君) 大体木村参考人と同じような意見でございますけれども、少しだけ、パセンテージにして一〇%弱の人のためにほとんどの人が必要ない、あるいは被害をこうむったというような数字が上がっているとき、一〇%弱の人のために非常にほかの人が手段その他で迷惑をこうむっているとしたら、やっぱりこの辺で何かを考えるときではないかなと私は考えます。
  37. 井上計

    ○井上計君 消費者業者の問題。
  38. 木村晋介

    参考人木村晋介君) その点、付加して。悪質な業者がどれくらいいるか私も実態よくわかりませんが、被害体験という点でいきますと、この同じ総理府のアンケートですと、約六〇%ぐらいの人が被害体験があるというふうに言っておりますので、その程度の被害体験を生むだけの問題のあるセールスが行われているというふうには感じております。  消費者側の不注意という点ですが、確かに相談に乗っておりますと、消費者の方が不注意だということを痛感する場合は多々ございます。ただ、何といいますか、日本の民族というのは非常に人を信用しやすい民族のようでございまして、熱心なセールスマンに対してはっきり断るということはなかなか難しい民族のようであるというふうに私は感じております。
  39. 八田眞子

    参考人八田眞子君) 私が二番目の点についてお答えします。  消費者がすべて善かということに対しては、やはり相談の処理の過程でもって、無知ゆえに、知らなかったゆえに陥れられたというようなケースが多々あります。でも、全然そういうことに対して知らなかったから返事をしてしまい、また意思を変えたということです。ですけれども、じゃ業者は悪くないかというと、業者消費者の悪さというのをはかりにかけられるかどうかわかりませんけれども、そのはかりにかけた場合、いつも悪い方、悪いというか、積極的に、意識的にこういうふうなぜひ禁止していただきたいというような行為をするのは私は業者だと考えております。
  40. 増田篤

    参考人増田篤君) お答えいたします。  現金一括取引クーリングオフの適用ということについての御質問にお答えいたします。  これについては、非常にこれが乱用されるという懸念があると思います。それで私どもといたしましては、現金で契約の履行の完了したもの、こういうものにクーリングオフを導入することは基本的に取引の安定を著しく損なうものであると考えておりますし、また企業の経理処理上も少なからぬ影響が出るということを非常に考えております。善良な企業は、こういう法律に書かれないまでも自発的にクーリングオフ、自分の方に落ち度があって消費者から何かあったらばそれはやっているわけでございますけれども、これが法律に書かれますと、何が何でも一たん使ったものを全部クーリングオフしなければならない、こういうことに強制されますので非常に影響が大きい。それでまた消費者は、先ほど来先生御質問のように善意の消費者ばかりではございません。非常に悪質な消費者というのもおりますので、その乱用というのは非常に懸念される。  それからまたもう一つ申し上げたいことは、消費者教育という面でも自立した消費者という意味でも、契約が安易に破棄できるんではないかということを植えつけるという意味からも私は問題があるんではないかと考えます。  この一部の悪質な者のために全体の企業がこうした規制を受けるのは非常に残念なことでございますけれども、現実に悪質な者がおるわけでございますので、こうした者を排除するためにやむを得ざるものとして我々は受け入れた、かように申し述べたいと思います。  それからもう一つの御質問で、訪問販売の方の企業が悪い消費者からいろいろだまされたことはどうかという御質問でございますが、これは非常にまた難しい御質問でございまして、私自身そういうような相談案件には余り直接関与しておりませんのではっきりしたことは申せませんけれども、私自身が訪問販売協会の専従役員の一人でおりますけれども、たまたま私が受けた案件などを見まして日ごろ痛感しておりますのは、相談してくる消費者というのは非常に主体性がないということが言えると思います。要するに自分で自分の名前をはっきり言わない、そういうのが非常に特徴であると思います。他人が、友達がだれだれのことをこうだとか、それから本人であるにもかかわらず本人が言わないで親が言ってくるとか、こういう意味で、それはセールスマンと消費者との関係で力関係を思いますと、法律知識とか商品知識とかというのは企業の方が私は相対的に強いと思いますが、消費者の方にも非常に契約に対する認識というのが欠如していて、そういう欠落している部分がある。そういう意味で、協会としてもそういった消費者教育にこれから取り組んでいかなければならない側面があると認識しております。  以上でございます。
  41. 綾元文

    参考人(綾元文君) 二点ある一つの通信販売に対するクーリングオフ関係ですけれども、原案では一応適用外になっておりますが、これは通信販売は返品自由でございまして、ある会社ではもう取りかえする袋を注文したときに入れて出しているような業者がありまして、その九五%がもし色が気に入らなかったらお取りかえしますということをやっております。そういったことで自主規制その他でこれは十分補えるんじゃないかと思っています。  それと考え方ですけれども、訪販と多少違いますのは、訪販はある程度お客さんが業者から話しかけられて自分の意思で買いますけれども、通販の場合は広告を見まして自分の意思で買おうということがありますので、ある程度買いたいという気持ちは変わりませんので、それをほかのものにかえるということは自由にやっておりますので、こういった苦情関係も六千五百万件あるうち数千件でございまして、パーセントでいいますと〇・〇一ぐらい、非常に現在のところは少ない。そういった意味で返品自由、自主規制ということでやっていきたいと思っております。
  42. 井上計

    ○井上計君 今木村参考人八田参考人から、総理府の調査に基づいての御意見だろうと思いますけれども訪問販売、通信販売が事実上必要ないというふうな意味の御意見があったんですが、これは大変なことだなという実は感じを持っているんですね。  今後の我が国の消費構造あるいは消費者のニーズ等々からして、ますます無店舗販売、通信販売がふえることはこれは必然だ、こういう考え方の中で、これは必要あるかないかというふうな論議まできょうするつもりじゃありませんが、これは大変なことだと。しかし、必要ないと言われる理由の一つには、法規制が緩やかで消費者がだまされるから必要ないという御意見であるのか。これはもう質問じゃありませんから、私の意見ですが、それらについては今後やはり我々としてもまたいろんな方々の御意見を聞いて十分考えていかなきゃ、検討しなくちゃいかぬ、こういう感じがしました。  そこで、今度は八田参考人にお伺いしたいんですが、先ほどあなたから実例を二、三御説明いただきました。いささか合点がいかないことがあるんですが、その前にあなたが先ほど、知らなかったという消費者が多いので、消費者に対する指導、啓蒙等々が必要だということをおっしゃった。これはもうごもっともだと思います。私もそう感じます。  ただ、ここで知らなかったでは済まされないというふうに、ちょっとさっき実例をお伺いしておって思うんです。まず、原野を買って、だまされたということがわかって、その次また電話がかかってきて、高く売ってやるから云々ということで、測量費を現金で払った、あるいは航空費その他を現金で払った。よほどその方は、もう神様、仏様みたいに全く人を疑うことを知らない人であるのかという感じをさっきお聞きして実はしておったわけですね。だから、それが知らなかった、だまされたということはちょっといささかいかがであろうかなという感じがするんです。消費者がだまされたという立場に立っての御相談ですから、あなたのおっしゃることはわかるんですが、その辺をただ知らなかった——そういう方に対する啓蒙、指導は、お立場上、御奉仕いただいている皆さん方のお立場から、今後どういうふうにやっていけばいいとお考えか、これが一つです。  それからもう一つは、呉服物でだまされたということなんですが、先ほど御説明の中に、白生地に判を押された、こう言われましたね。これは事実とすれば、消費者が知らなかったというよりも非常識きわまりないわけですね。白生地に判を押すなんということはあり得ないわけですからね、普通の常識を持っている家庭の主婦なら。
  43. 八田眞子

    参考人八田眞子君) 本人が押したんじゃないんです。
  44. 井上計

    ○井上計君 だけれども、目の前で押したわけでしょう。その御本人の目の前で判を貸したら押したと、こういうことでしょう。ちょっとこれは考えられない。  それからもう一つ、注文書ですが、ここに寸法が、身長、体重、これは聞いて書いたんでしょう。あと、袖丈だとか袖付、繰越し、身丈肩より、前巾、後巾、裄、つま下なんというのは、こんなものは本人から聞かなきゃわかりませんよね、外交員は。
  45. 八田眞子

    参考人八田眞子君) いや、奥様一枚お着物を出してくださいと言って、自分ではかりますよ。
  46. 井上計

    ○井上計君 ですから、それを言われたということは、だまされたという反面、同時にここで明らかに買う意思があってということでしょう。だから、それは買う意思があるように持っていった外交員の口のうまさといいますか、ということになりますが、それはだまされたということと若干違うんじゃないんでしょうか。やはりその時点では買う意思があった。  とりあえず、二つお伺いしたいんです。
  47. 八田眞子

    参考人八田眞子君) 私は、ここでだまされたという事例で例示したんじゃなくて、クーリングオフ回避というふうな事例でもって御紹介申し上げたんです。  その中で、やはり先生には私の説明の少なさからだまされたというふうに受け取られましたけれども、現実にはこのほか白生地に判こを押すんじゃなくて、生地の一部を切るんです。目の前で切っちゃうんです。そして、これはおたくにお仕立て上がりまで持っていてくださいと。別にその消費者が切ってくれというわけじゃないんです。頼んだわけじゃないんです。判こを押してくれと頼んだわけじゃない。判こをちょっと貸してくださいと言われたから、だからちょっと貸したらばということなんですね。  もう外交員のやっていることというのは、この着物のこと以外にも、例えば健康食品なんかで、ここにある健康食品の飲み方をお知らせしますので、まずあなたがセロハンをはがしてくださいと、そういうふうな事例が幾らでも挙げればございます。
  48. 井上計

    ○井上計君 わかりました。そういうふうなことについて、私も今まで聞いたことがあります。その場合、クーリングオフの申し入れをして、向こうがそれでは裁判で云々と言って、それですっかり萎縮して泣き寝入りをしたというふうな事例がたくさんありますけれども、それらのことについては明らかにこれは訪問販売法違反というよりも、通り越して詐欺行為にもなっているわけですからね。そういうふうな人たちが堂々と皆さん方のところに相談に行って事件として立証するというふうな、そういう指導をぜひこれはお願いしなくちゃいかぬなと、こういう気がします。  時間がないのでもう一問、今度は木村参考人にお伺いしたいんですが、先ほど御説明の中に、また同僚委員から質問もありましたけれども、悪質な販売員を徹底的に排除するために一切雇用をしないような方法と、こういうふうなお話がありましたけれども、現実論としてどういう方法があるであろうか。それからその場合に人権問題とどう関連をするのかということが一つ。  それからもう一つは、日弁連としてお出しになっているこのパンフレットの中に、「御用聞き販売のように被害を生ずるおそれのないものは、現行訪問販売法と同様に適用除外」ということがありますが、御用聞き販売と訪問販売とどう区分、定義づけることができるであろうか、この二点お伺いいたします。
  49. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 今私の方で雇用の問題を申し上げましたので、その点からお話ししますと、貸し金業者の場合で債権の取り立て、これについて、取り立てに当たって犯罪を犯すおそれがあることが明らかな者を、それを知りながら、あるいは知ることができるのに債権の取り立てを委託した場合、この場合が禁止されているわけですね。これは、たしか罰則はなかったと思うんですが、行政処分の対象になることになっておりまして、この場合の取り立ての委託というのは、従業員として雇う場合も含むということになっております。  ですから、このようなかなり悪質な行為をたびたび重ねてきて、それをセールスマンとして雇えばやっぱりそういうことをするだろうということがはっきりわかるようなケースについて排除していくということは、消費者の権利保護という点との調整を考えていけば憲法上問題はないんじゃないだろうかというふうに思っております。
  50. 井上計

    ○井上計君 憲法上はね。ただ、それをだから具体的に排除する方法なんですね。今法律論でなくて、一切雇用しないという、排除する方法が現実的にどういう方法がありますか。
  51. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 雇用行為を禁止するということですね。ですから、禁止行為の中に、そういう者に訪問販売を委託する行為を禁止していけばいいんじゃないか、貸し金業法に準じて考えていったらいいんじゃないか。
  52. 井上計

    ○井上計君 法律条項をつくれということですね。
  53. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 禁止条項の中に入れたらいいんじゃないかと思っております。
  54. 井上計

    ○井上計君 時間がないですから、いいです。
  55. 木本平八郎

    木本平八郎君 私、あらかじめお手紙を差し上げましたように、結論的には訪問販売全体を禁止した方がいいんじゃないかと思うわけですね。  これは、今日本は物があふれているし、ほかに幾らでも買う方法があるわけですね。しかも、これだけのいろいろリスクを伴う行為をもうやる必要ないんじゃないか。リスクが何もなければ、それはいいんですけれども、リスクがあるんだから訪問販売全体を禁止すればいいじゃないかという乱暴な意見を持っているんですが、それで逆に、もしも訪問販売禁止されたら消費者として一体どういう商品の購入、サービスの購入に困るだろうか、そういう例を具体的にちょっと教えていただきたいと思うんですが、まず八田参考人お願いします。
  56. 八田眞子

    参考人八田眞子君) 私は、たまたま木本先生の御質問は書面で前もっていただきましたので、私の仲間の相談員とも相談しまして、改めて指定商品制四十三品目について検討してみました。その結果、禁止されて困る商品というのはございません。  それで、どうしてこういうことになったかということを私ども考えてみたんです。そうしたときに、かつて訪販のメリットと言われるものがあったわけですね。訪販されて幾つかのメリットがあったんです。それは商品説明をいながらにして聞くことができるとかということでしたが、現代は情報化社会でありまして、もうかつてのメリットがメリットとして通用しなくなっているんですね。そしてまた、わざわざ訪れてくるということはかなり売る意識というものを持っているので強引になってきている。そして、商品によってはかつては訪販で買いたい商品があったわけです。特に衛生用品なんかについては対面販売じゃなく て、うちでできたらこっそり買いたい、買ったという人も中にはいたわけなんです。  それがどうして、あれだけはもう、あの業者とは接したくないというふうに消費者がなっていったかということは、それは非常にやり方が強引かつコストが高いんですね。そしてなおかつ、一人に対してああいう商品を二千個も販売していくなどという非常に訪販業者としてはおかしいやり方をやってきたんですね。ですから、消費者離れといいますか、そういうものが今は起きてしまって、訪販でこれらのものを買わないということなんです。  自立する消費者というのは、商品に対してどういうことを考えているかということを考えてみたんです。人間が生きていく上で本当に必要なものは何かというふうに考えた場合、価値基準をそこに置いた場合、ある日突然訪ねてきた人間からほいと商品を買うようなことは余りないんじゃないかと私は考えます。そして、さっき冒頭に言いましたような結論になりました。
  57. 木本平八郎

    木本平八郎君 ほかの先生方で、今申し上げましたように、もしも訪問販売禁止されたらこういう商品とかこういうサービスが困るんじゃないかという例がございましたら、どなたでも結構ですがお願いしたいんですが。
  58. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 関連して、私も商品そのものとして訪販でなければ困るという商品というのはないと思うんですが、しかし訪販というのは商品というよりもむしろ一つの販売形態ですので、いい健全な業者さんがやってくれる限りにおいては、いろいろな販売形態がとられるということは消費者にとってこの自由経済の中ではありがたいことのはずなんですね。ですからそういう意味で、訪問販売形態というものが健全な形で残るということに関しては私は意味がある。ニーズも、先ほど申し上げたように、少ないけれども確かにあるというふうに思っています。  ただ、通販に関する需要に比べるとかなり違うんじゃないだろうか。通販に関してはこれからもっとさらに需要は伸びてくる可能性はあるんじゃないかというふうに思っております。
  59. 増田篤

    参考人増田篤君) それじゃ、お答えいたします。  私の方からまず申し上げますけれども、先ほど来訪問販売は九割が必要がないというような総理府の統計があるということを木村参考人がおっしゃっておりますけれども、正確に読んでいただければわかると思いますが、あの中で約九%が訪問販売は有用であると言っている。訪問販売について、これが非常に問題があると言っているのは三十数%でございます。そのほかに言っているのはグレーゾーンでございまして、これらの人々は訪問販売がいけない、困ると言っているんではなくて、近くに店があるからいいという点でして、必ずしも訪問販売を否定しているものではないと、かように御理解いただきたいと思います。  それで先生の御質問にお答えいたしますけれども、この御質問にお答えするのは非常に難しいことでございまして、具体的な実例、商品名のお話というので若干の例をもって御説明申し上げますと、まず消費者方々が日ごろ愛用されている消耗品のたぐい、例えば化粧品とか健康食品、こういうものについては非常にリピートといいますか反復して買われる。そういう意味で非常に不便をおかけすることになるんではなかろうかと思います。  それから、先ほどの八田参考人の御意見とちょっと対立するようでございますけれども、産制用品なんというものは非常に店舗で購入するのになかなか消費者が抵抗を感じている側面もあると聞いておりますので、こういった面でも不便をかけるんじゃなかろうかと思います。こういった意味で、訪問販売について何回にもわたって利用されている人がたくさんいるわけでございます。したがって二兆円以上の規模の市場があるわけでございます。これは押し売りだけでこのような企業が存在するということは絶対あり得ないということをここで申し述べたいと思います。  それからそれ以外に、直接家庭へ抜き打ち的に来て攻撃的だとかいろいろなお言葉が出ますけれども、確かにそういう悪質な業者はおりますけれども、現在の訪問販売の形態というのは、そんなことをして物を売れる時代ではなくなってきているということが言えると思います。突然家庭を訪問するというより、むしろ最近は友人、知人を介して一応紹介を受けて、コンタクトを受けて、そういう無理のないような販売形態が行われております。  そういうことから、先生の御質問の趣旨とは若干角度が異なりますが、例えば店舗で売っております牛乳とか豆腐、米、こういったものを見た場合に、こういうものは店舗で売っているよりは良質なものがスーパーで既に売られているわけでございますね。しかし、小売店は不要かというと、それにもかかわらずこうした業種の小売店が定着しております。これはどういうことかというと、宅配の利便性のために消費者のニーズにマッチしている、そういった部分があるからだろうと私は理解しております。  こうしたように現在は経済がサービス化の時代に突入しておりますし、訪問販売の原点と申しますのは行商であります。そうして店で売っている品物と同様の物を家庭に、納得して消費者に売ってくれる場合、あるいは付加されたサービス、いろんな説明を受けられる、そういった流通形態が消費者のニーズにマッチすれば、今後も私は伸びていくんではないかと思います。ただし今は非常にボトムでございまして、経済犯罪、先ほど来先生方いろいろおっしゃっておりますけれども訪問販売とは非常に次元の違う海外先物取引とか金融犯罪のようなものがいろいろ跳梁しておりますし、残念ながら訪問販売にも悪い者もおりますので、その辺で非常に健全な業者が影響を受けていると思いますが、こういうものを克服した暁には私は、今後高齢化社会の進展に伴って訪販というのは本来、高齢者にマッチした販売形態としてきちんとした無理のない販売形態をとれば、今後も伸びていくと認識しております。  以上でございます。
  60. 木本平八郎

    木本平八郎君 今、増田さんからそういうお話は当然だと思うんですけれども、それでちょっと角度を変えてお聞きしたいんですけれども、今度の訪販問題が国会にかかって、あるいはこの法案自身で一番迷惑しているのは協会のメンバーじゃないですか。綾さんにもその感触をお聞きしたいんですけれども、私の意見を言いますと、私はこの法案というのは善人取締法だと思っているんですよ。あるいは優良業者たたき法案だと私は思っているんですよ。  これはどうしてかというと、まず皆さん方のメンバーは少なくともこんな法案に何にもひっかかっていないわけですね。それにもかかわらず、クーリングオフの期間を一日また延ばすと、こういうばかなことを考えた人もおるんですけれども、そんなものをやるとコストがかかるだけですよ。そんなもの七日で十分だと思うんですよ、日本の教育程度は高いんですから。それを延ばす。そんなことをやると倉敷料からその間のリスクから全部かかってくるからコストが高くなるの当たり前なんですね。だれも喜ばないコストをかける。それから、例えば書面を交付しろとか、現金でもクーリングオフやるとか、今までの良心的にやっているあなた方の協会のメンバーさんにはもう迷惑な話ばっかりなんですよ。何にもプラスないんですね。私は、問題はアウトロー対策だと思うんですけれども、まず今の点で、あなた方の協会にとっては極めて迷惑な法案になるんじゃないかという点をお二人からお聞きしたいんですがね。
  61. 綾元文

    参考人(綾元文君) 私ども、口幅ったいようですけれども、一応まじめに商売をしている協会にとっては、会員の中では自主規制もしておりますし、余り必要性を感じないんですが、通販業全体ということにつきましては、やはりアウトサイダーも含めまして、長い将来の発展のためにある程度のこういった一つの牽制法といいますか、そういったものをつくりまして、それで全体の業界の 発展ということを考えた方がいいんじゃないかというふうに考えております。
  62. 増田篤

    参考人増田篤君) 私の方も、先ほど来申し上げていますように、自主規制が一番最良な選択だと思っておりますし、この法律自体非常に厳しいものと受けとめておりますけれども、やはり悪いものを駆逐するという意味で、やっぱり業界が先生がおっしゃるようにいろいろかなりの犠牲を強いられるわけでございますが、またそれを消費者に価格を直ちに転嫁するというわけにもいきませんので、その中で苦しみながら克服していくという対応をしなきゃならない。法律規制することによって全部世の中がよくなるというのは私は幻想だと思いますし、やはり法律というものは消費者保護企業の健全な発展というバランスの中にあるものだと考えます。ただ、我々としてもそういう悪い者を駆逐するためには、ある意味で健全な業者にかなり厳しいと受けとめますが、やむを得ず今回はのんだという次第でございます。
  63. 木本平八郎

    木本平八郎君 実は私不勉強で知らなかったんですけれども、霊感商法が訪販協会の会員だったというのはちょっと聞いてびっくりしたんですが、そういう会員がおるんならやっぱりこういう法律をつくって取り締まることも仕方ないかなということでさっき聞いていたんですけれども、ただ問題は、私はこの対策というのは、先ほどから言われたインサイダーは全然問題ないと思うんですね。アウトサイダーでも問題ないんじゃないか。むしろこれはアウトローですね、もう詐欺だとか強迫だとかだましだとか何かインチキだとかとという、これはもう刑法にひっかかる分野なんですね。訪販法の問題じゃなくて刑法の問題じゃないかと私は思うんですね。  そうすると、そっちの方からアプローチしてそういう悪いやつを退治するようなことを考えないと、善人の方から幾らつついてみたって、彼らはすばしっこくとっととっと逃げちゃうわけですな、次から次から新手でやって。先ほどの原野商法じゃないけれども、ああいうことまで考え出すというのはよっぽど頭がいいと思うんですね。そういうことを考えますとやはり規制というのはむしろ刑法の側からやらなきゃいけないのじゃないかと思うんですが、その辺木村参考人、いかがでしょうか。
  64. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 悪質行為の排除を刑法でやらなきゃいかぬという……
  65. 木本平八郎

    木本平八郎君 刑法側からね。というのは、訪販法からやってもちょっとリーチが届かないのじゃないか、どんどん逃げられちゃうんじゃないかということです。
  66. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 確かに訪問販売業だけが悪質セールスの対象ではないわけですが、ただ、他のいわゆる店舗取引の場合には悪質な商売をやればいわば店そのものの評判が悪くなってつぶれてしまうという、ある意味では経済法則的に悪質業が成り立ちにくいベースというのがあると思うんですね。ただ、訪問販売の場合にはそういうものがありませんので、経済的だけでは悪質業者を淘汰することができない。やっぱり経済の外から手を伸ばしていく必要がある、規制をしていく必要があるということだろうと思うんですね。  そういう点でいきますと、一般刑法というよりはやはり訪問販売という形態の特殊性に着眼して訪問販売法の中で規制をしていくという方向が私は正しいと思います。
  67. 木本平八郎

    木本平八郎君 最後に、本田参考人にお聞きしたいんですが、今の話でどうも今回のアプローチは私はつぼを外しているというか的の外れたところで一生懸命努力しているということで、やはり悪質業者に直接薬が効かないんじゃないかという感じがするんですがね。しかし、訪問販売というのが一つ市民権を得た販売方法であるので、私はどうしてもしようがなければこれを禁止しなけりゃしようがないですけれども、何かいい方法があるんなら、アウトローですね、そういう非常に質の悪い連中を排除する方法があればこれはもちろん残しておいていいと思うんですけれども、その辺で何か外国の例か何かでそういうものをうまく外しているという例がございましたら教えていただきたいと思うんです。
  68. 本田純一

    参考人本田純一君) 今回の法案悪質業者の排除に実効的ではないんではないかということなんですけれども悪質業者が現在の訪販業者の中に何%いるかという、これも議論があると思うんです。私は、例えば先ほどからの議論の刑法の問題ではないかということなんですけれども、やはり基本的には刑法の例えば詐欺罪その他に係るものももちろん豊田商事その他であると思うんですけれども、やはりそれは訪問販売をめぐる消費者被害の必ずしも全部ではなくて、むしろごく一部ではないか。逆に言いますと、例えば刑法あるいは民法で詐欺取り消しをされるようなセールストークを使えばこれはセールスマンとしては三流であるということになるわけです。むしろ、それぎりぎり、もちろん刑法の場合には構成要件は厳格ですが、しかし民法の詐欺あるいは強迫にさえ当たらない詐欺的あるいは強迫的なセールストークが一般に行われているというこういう実態があるのではないか。  それから、例えば霊感商法で消費者が告訴してもなかなか私法上の取引に警察権力が介入してくるというのは、これは民事に介入しないという原則でなかなか動いてくれないという実態がある。また、刑法上の問題としてこれを解決するというのはやはり難しい。やはり考えられるのは今回の通産省の出した法案のような形でいかざるを得ないのではないか。ただ、私はそれではまだ不十分であるという認識を持っているわけです。  それで、外国では悪質業者の排除はどうなっているのかということなんですけれども、例えばドイツなんかですと、これは先物ですから必ずしも訪問販売ではないと思いますけれども、やはりおよそ訪問販売にはなじまないそういう商品があるのではないか。それはやはり禁止すべきではないか。ただ、現在のいわゆる行政、縦割り行政といいましょうか、どうもほかの省庁にかかわるものについては規制がかけられないという限界もありまして、そこら辺がむしろ問題なんではないか。  むしろ私は、悪質業者というのがいわば極めて刑法上の犯罪に当たるような悪質なものだけなのかというと、必ずしもそうじゃなくて、一般の業者セールストークでかなり危ないといいましょうか、そういうのがあるので、だから全体にむしろ網をかけた方がいいのではないかという感じを持っています。そういうことです。
  69. 大木浩

    委員長大木浩君) 以上をもちまして、参考人に対する質疑は終わります。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には大変お忙しいところわざわざ御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴させていただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時四十五分まで休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ─────・─────    午後一時四十七分開会
  70. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  71. 青木薪次

    ○青木薪次君 午前中の参考人の御意見や皆さんのいろんな質問のやりとりを聞いておったわけでありますが、悪質な訪問販売とか通信販売による消費者トラブルを防止するためにこの訪問販売法改正案をまとめて提案されているのでありますが、改正内容についてはまだ不満足であるけれども消費者立場というものも考慮したものをいろいろと考えているようであります。  しかしながら、ある日突然家庭にあらわれて、その人によって相当な迷惑を受ける、威迫という言葉を使っておりますけれども、威迫を受ける、 そういうようなことについては、私はやっぱりこういった流通社会における大きな、二兆円を超すところの一つの流通機関とでもいうような訪問販売、あるいはまた七千億ですか、通信販売というものの役割というか、その影響力というものはあるというように思えば思うほど、私はこのことに対する消費者被害というものは無視できないというように考えているわけであります。  昭和五十一年に現行訪問販売法が制定されまして十年以上経過をいたしました。しかしその間、年を追うごとに消費者被害がふえ続けてきているために、例えば昭和五十五年に五万一千件、それから六十年に十五万件、これを見ただけでもざっとこのところ三倍にふえたのでありまするけれども訪問販売法改正の必要ありとされていたのにもかかわらず、今日まで延びてしまった理由というものは一体何かということについて、ひとつ通産省の説明を求めたいと思います。
  72. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 確かに、過去何回か当委員会でそういう御議論がございまして、早急に訪問販売に伴うトラブルの是正のためのいろいろな手を打つべきではないかというお話がございました。私どももその点については全く同じ認識に立っていたわけでございますけれども、何せ現象が非常に広範、複雑でございますし、そしてまた自由な営業活動に対する相当きつい制限を伴う話でございますので、どうしてもそれだけ慎重に検討せざるを得なかったわけでございます。  特に今回、役務を対象にすることにしたこと、それから現金取引クーリングオフの対象に加えたこと、これなどは午前中の参考人の陳述の中にもございましたようにかなり大きな改正でございますし、そういう意味民法、商法等ほかの法体系との関連を考え、専門家の御意見も伺いまして、研究会で十六回にわたって検討を加え、さらに正式の審議会の議を経て今日に至ったわけでございまして、私どもとしましては一生懸命やったわけでございますが、そういった手順を踏んでまいりましたものですから、それだけの時間がかかったわけでございます。  もちろん、こういったことについてはできるだけ早くやらなきゃいけない性質のものだということはよく心得ておりますので、今後とも同種の仕事に当たりましてはできるだけ速やかにやるように心がけてまいりたいと思っております。
  73. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) ちょっと私からも一言申し上げますと、私が着任いたしましたのが一昨年の七月、その一昨年の十二月から今お答えしましたように産業政策局の中に訪問販売等問題研究会というのを設けまして、それから十六回にわたる検討をやる、そしてこの研究会の報告を踏まえて、今度は去年の十二月から一月にかけまして通産大臣の諮問機関であります産業構造審議会、これの流通部会、消費経済部会、これの合同部会というので詰めに詰めた。もちろん訪問販売といえども昔の富山の薬売りにしても、一部の、一部のといいますか、昔からの化粧品等においてもあるいは大島つむぎの訪問販売でも褒められるべきものもあるんですから、そこでいろいろな点で虎視たんたんとねらって十分の準備をしてかかったということで、ちょっと時間をとり過ぎたような印象をあるいは与えたかもしれませんけれども、事務方はその間本当に休むこともなく、あらゆる角度から詰めに詰めたということだけちょっと申し添えておきたいと思います。
  74. 青木薪次

    ○青木薪次君 大臣、中には今おっしゃったような大島つむぎとかそれから富山の薬売りとか、いろいろそれはありますよ。それから私にまで、こういうバッジをつけているということがわかっていながら電話をかけてきて、私にも粘るくらいの心臓の強いのもいる。だから、これくらいの根性でなければ二兆円規模の大台に乗るようなことはないんじゃないかなと感心することもありますけれども、しかし、現行法では余りにも穴だらけということで、今大臣も末木審議官もおっしゃったわけでありまするけれども、通産省も頭を悩ました。こちら立てればあちら立たず、あちら立てればこちら立たず、両方を立てるにはやっぱり場所がない、法の中にこういう場所がないんだということだと私は思っているわけであります。したがって、行政指導も空振りということが再三にわたって見受けられました。  大きな例はシーボン化粧品、具体的で悪いけれどもシーボン化粧品、これは消費者が業を煮やして化粧品本舗の販売会社の社長とそれから代理店の店長を詐欺容疑で告訴した。  この中には訪問販売法の第三条、「販売業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手方に対し、販売業者の氏名又は名称及び商品の種類を明らかにしなければならない。」、これは現行法でもうたっている。それから薬事法第六十六条の一項、これは誇大広告宣伝、「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療用具の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。」、それから刑法の関係では二百四十六条の詐欺の項に、「人ヲ欺罔シテ財物ヲ騙取シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス」、「前項ノ方法ヲ以テ財産上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ」ということで、このほかにまだたくさんのものがあるわけであります。軽犯罪法もあります。「他人の進路に立ちふさがって、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者」、これが軽犯罪法であります。  これらの違反容疑で、しかもシーボン化粧品の場合においては、急性香粧料皮膚炎、病名は接触性皮膚炎といった医師の診断書までつけられていたのでありまして、本件について起訴されたのか、不起訴になっているんじゃないかということで、私はこの際ひとつ聞いておきたい。これは元経済企画庁の役人をやっておりました竹内直一さんという人が、日本消費者連盟の代表としてこのことを訴えているわけです。大変な問題だと大きく新聞をにぎわしましたが、この点はいかがです
  75. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) お尋ねの会社の件につきましては、五十七年ごろでございますけれども、確かに悪質な手法でいろいろな消費者トラブルがございました。  私どもの記録によりますと、当時問題になりましたのは主としてキャッチセールスでございまして、執拗、悪質なキャッチセールスで化粧品を売ったというケースだと記憶しております。これにつきましては、当時通産省におきまして、法律上はキャッチセールスは適用外でございましたけれども、いずれにいたしましても、これは行政指導を行いまして改善をさせた経緯がございます。その後、最近では本件に関して当省にトラブルがほとんど寄せられておりません。  それから起訴につきましては、ちょっと今正確な資料がございませんのですけれども、起訴が正式に受理されたかどうか、受理されなかったのではないかというふうに今事務方は承知しておりますけれども、正確にはちょっと今資料がございませんので確かめさせていただきたいと思います。
  76. 青木薪次

    ○青木薪次君 これがもう最も典型的な悪と言われた事件であります。不起訴になっているんですな。不起訴になっている。したがって、今私が読み上げた訪販法第三条等々、これの発動がされていないということになるわけです。  だから、そうなった場合に、結局通産省とか経企庁の窓口へ行っても、担当者は根拠法規がないんだ、こう言われたようでありまして、これではやっぱり困るので、したがってこの問題に対応した通産省としてはどういうような考え方であったのか、ちょっと聞かしていただきたい。私のところへも意見が寄せられております。
  77. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) まさにキャッチセールス対策というのがここ数年来懸案の一つだったわけでございまして、そもそもキャッチセールスを法の規制の対象にしないことには法的な措置はとれないわけでございます。  そこで、今回その点を踏まえまして、まさにこういったようなケースに対応できるようにということで、キャッチセールス訪問販売法の対象の中に取り込むことにしたわけでございます。ですから、今度はこの法律に基づいて該当する条文で対処していくことが同じようなケースがあればできるわけでございまして、それはどの条文をそのとき発動するかというのは、今後どういった悪さをするかに応じて最も適切な条文を発動するということで、根本的にこの法律の中に取り込んだというところが今回の眼目でございます。
  78. 青木薪次

    ○青木薪次君 訪販法の抜本改正の見通しでありますが、訪販業界、通販業界においてそれぞれ倫理綱領を定めているということでありますが、これは訪販法が制定されたものの、余りにも規制内容がラフであり、これでは実効性を担保できないとしたことから、通産省の指導のもとにまとめられたというように思います。このような事例は好ましいことではありません。したがって、本法の構造的欠陥があるなら、倫理綱領内容を盛り込んだ抜本改正をするのが筋だったと思うんでありますが、この点に対する政府の考え方を聞きたい。
  79. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 私は、基本的に法律倫理綱領との関係ということは、お互いに補完し合ってワークすることが適切だと思います。法律の方は、当然のことながら取引の公正と購入者の保護のためにこれはどんな場合でも必ず守らなければならない、いわば必要最小限これは絶対守らなければならないということを定めるわけでございまして、その義務の課し方も相当の明確性を要求されます。  しかし、そういうふうにすればどうしても全部カバーし切れないではないかという問題が出てまいりますので、そこは今度は法律でそこまでやるのはいかがか、しかし野放しはおかしいではないかというところは、今度は倫理綱領で間口の狭いところは十分な広さまで補ってもらうこと、それから法律の方が取り上げてはいるんだけれども抽象的過ぎるではないかというのを具体化していくこともこれまた倫理綱領の守備範囲でございますし、さらにまた法律はいわばだれでも絶対どんな場合でも守らなければならない最低限を定めるのが筋でございますから、倫理綱領の方はそれよりさらにもうちょっと高いレベルの望ましい姿というのを描いていただくことも必要な場合もあり、適切な場合もございます。そういうことで補い合うものだと思うんでございます。  しかし、法律の方でできるだけのことをするというのもこれまた当然でありまして、倫理綱領があるから法律の方はほどほどでいいということにはもちろんなりません。そういう意味で、今回も法律の中でやるべきことは精いっぱい取り込んだつもりでございます。  一、二の例を挙げますと、例えば先ほど午前中の参考人のどなたかの中で、学者の方だったかと思いますが、なかなか難しいところがあるというお話で、例えば長時間粘ってはいけないというのも、もし何時間と書けば、じゃその何時間以内ならいいのかというふうにとられても困りますねというようなこともちょっと言及されたと思いますけれども、例えば法律で書く場合にそういうような問題もあります。  そこで、長時間居座るとか、執拗に説得をするとか、そういったいろいろな不当行為についてこれから省令等で検討する段階になるわけでございますが、省令でどう書くかということは一応おきまして、仮に法律なり政令なり省令なりで不明確とか足りないところがあればそれは大いに倫理綱領でやっていただく、しかし倫理綱領にゆだねて法律の方は手を抜くということはしないというのが私どもの考え方でございます。
  80. 青木薪次

    ○青木薪次君 通販業界においては、この業界倫理綱領に違反したとして厳正に処分しているということを聞いているわけでありますが、その実情とその後の消費者トラブルの発生状況との関係についてお伺いいたしたいと思います。  それから、訪販業界においても幾多の違反が生じてきていると聞いていますけれども、その処分についても御説明を願いたいと思います。  倫理綱領業界の浄化にとって十分なものとなっているかどうか、もしそうでなければどうすればいいのかというような、こういうような立場に立っての意見の開陳をお願いいたしたいと思うのであります。アウトサイダーの問題も出たのでありまするけれども、やはりこういう立場に立って、もう野放図に何をやってもいいんだ、迷惑をかけてもいいんだというような、我々の商売は一過性のものだなんて考えているものはないと思うんですけれども、しかし、その後立ち去って一向に顔を出してこないというような人も相当あるやに聞いておりますので、それらの点についてお伺いいたしたいと思います。
  81. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 初めに通信販売についてお尋ねでございましたが、通信販売協会の通信販売倫理綱領、これは基本綱領から細目に至るまで相当整備されたものをお定めになっていまして、倫理綱領そのもので一、二の項目を引きますと、「会員は、通信販売広告活動において真実に基づく表示を平易かつ明瞭に行い、消費者に誤解を与えるおそれのある表示を行わないものとする。」、これは基本原則でございまして、さらに進んで、「商品又は便益の品質・性能・価格等の取引内容および条件に関する正確かつ克明な情報を消費者に提供する」等々ありまして、これを受けた細目では、具体的にどういうところまで砕いて書かなければいけないか、例えば、返品を認めるのか認めないのか、認めるとすればどういう条件で認めるのか、返品をする場合の送料はだれの負担になるのか等々、いろいろな項目について詳しく定めてマニュアルをつくっておられます。こういった内部規制の違反に対しましては、その実態に応じて、資格停止等内部の規律を保っておられるものと承知しております。  さらに、訪問販売協会につきましては、同様の倫理綱領を定めておられますが、内部で、ちょっと私正式の名前を今失念いたしましたけれども、倫理審査委員会という、外部の中立の方に委嘱をしましてこの倫理綱領違反等の会員の不当、違法な行為があった場合にこれをチェックする内部組織をお持ちでございまして、厳しく対応していらっしゃる、最終的には総会の決議の除名処分まで想定した仕組みになっていると承知しております。
  82. 青木薪次

    ○青木薪次君 これだけ多くの訪問販売のトラブルが生じているにもかかわらず、業界サイドの消費者トラブルの窓口が極めて小規模なために十分な対応がなされておらないということを聞いております。  この業界の年間売上高が、さっきも言ったように二兆円余にも達して、しかも表ざたになったトラブルだけでも百三十五億円という状況を考えると、それで社会的責任を果たしているとは到底言えないのでありまして、この点については、今回ようやくこの業界消費者相談窓口が拡充されるところとなっているけれども、その規模及び内容はどの程度なのか。そしてそれが効果を上げ得ると断言できるのかどうか、効果が十分でない場合、主管官庁として率先して指導に当たると約束してもらえるかどうか確認いたしたいと思うのであります。  無店舗販売に係る被害状況は、かたり商法、危険商法、押しつけ商法、士商法、催眠商法、工事商法、送りつけ商法、内職商法、キャッチセールス、アポイントセールス、ホームパーティー、霊感商法、マルチ商法その他、合計いたしまして八十六件で百三十五億三千二百八十万円、こういうことでありますが、これをお認めになりますか。
  83. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 先生お挙げになりました数字は警察庁の調査資料だと思いますが、私どもも同様に承知しておりまして、数字につきましては今申されたとおりでございます。  それから苦情処理体制、前の方のお尋ねでございますが、訪問販売協会はいろいろな苦情処理、消費者対策をやっていることは参考人の陳述にもありました。私どももその点はよく承知しておりますが、個々に要約して整理いたしますと、まず直接的な消費者相談といたしまして、訪問販売一一〇番という制度が六十一年の四月からスタートしております。これは、しかし率直な話、東京中心でしかまだワークをしていない。そこで、これを全国的に展開することが今後の課題でございまして、とりあえず名古屋、大阪、福岡の三カ所に転送電話を設置することにしておりまして、さらにこれをその他の地域に広げることを今検討しているというふうに承知しております。  これは電話代の問題が確かにありまして、地方の方が東京に電話をすれば相談に乗ってもらえるといっても、何千円かの品物についてちょっと聞こうと思うと電話代が相当かかってしまうということじゃ実際上ワークしないではないかという、そういう御意見、御批判があるわけでございまして、この転送電話によりまして地元の電話にかければ東京につながるというふうになるわけでございます。  それからさらに、移動相談室を今後設けて、東京中心になりがちでございますが、今後は各地でできるだけ相談活動を強化していく。  それから第三に、全国各地にあります消費者センターとの連携を強化したいということを協会は申しておりまして、これは全国二百九十ぐらいたしかあったと思いますので、一気にとはまいりませんけれども、まずは各都道府県県庁所在地ぐらいのところとは必ず連携がとれるようにこれから志していきたいということを言っております。  これが当面の新しい措置を考えているところでございますが、そのほか例えば公述人のお話にもありました「登録証をお持ちですか」というステッカー、登録証を持っていない訪販員はお断りという意味ですが、そのステッカーを一万戸に張ったという話がありましたけれども、こういったことも今後さらに拡充していく。それから、高齢者対策について、特にお年寄りのクラブ等の会合の場を利用したセミナー等も考えております。また、今年度から約三百人の規模で消費者モニターを全国に委嘱をしまして、消費者相談あるいは被害予防の活動を強化していくというふうに計画を持っているところでありまして、私どもはぜひその線で強力にやっていただきたい。もし、そういうようなことが看板倒れで本当にやらないということであれば、それはもう困ります、ぜひしっかりやってくれというふうに強力に指導をするつもりでおります。
  84. 青木薪次

    ○青木薪次君 ことしの三月、神奈川県の消費生活課の発表によりますと、訪問販売等の特殊販売に係る実態調査の結果でありますが、今後訪問販売を利用したくない人が七割ということになっております。その理由としては、強引に押しつけられる、非常に不安だ、家に来られるのが迷惑だというようなことになっているわけでありますが、訪問販売は社会の迷惑ということであるけれども、そんなことが重なってきたら、幾ら必要だとか必要でないとかと議論をしておりましても、業界の先はもうこれで見えたということになってしまう。  業界を指導する立場の通産省としては、業界の正常化のためには何が必要かという、今、倫理綱領とかいろいろあったわけでありますけれども行政サイドとしては、さてどういう指導が必要かという点についてひとつ御意見を伺いたいと思います。
  85. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 先ほど来お答えしたことと重複するかもしれませんが、改めて整理をしてみますと、三本柱が中心になるかと思うんでございます。  第一の柱は、法律の徹底とそれから先ほど申し上げました倫理綱領によりますその補完でございます。これにつきましては、例えば通信販売協会では自主的な返品制度を実施しておりまして、非常に特殊なもの、例えばコピー、大型テープのようなものとかビデオテープのようなコピーをとれるようなものはちょっとこれは例外かと思いますが、九五%の商品について自主的な返品制度をやっておりますが、こういったような補完措置も含めた法の徹底とその補完でございます。  第二の柱は、何かトラブルが残念ながら生じてしまった場合の的確な消費者救済、苦情処理の体制の整備でございまして、先ほど申し上げた訪販一一〇番、それから通販協会も通販一一〇番というのを持っております。こういった体制の整備、強化でございます。  第三の柱は、そもそもこういったトラブルをできるだけ事前に予防する、できるだけ起こさないようにするということでありまして、訪販の場合で言えば、これは従業員教育が最重点の問題だと思います。これは現在九十一万人教育をして登録しているという状況でございますが、これを内容的にもまた数の上でも一層充実、拡大していくということでございますし、それから通信販売の場合には、そこに当たるものが広告だろうと思うんですけれども、広告の適正化によりましてそもそもトラブルが起こらないようにすることが大事でございます。  この三つが大きな柱でございますけれども、不幸にして悪質な事件が出た場合には、これは今度は業界ではなくて、国が責任を持って法律を発動して行政処分なりあるいは刑罰の発動なりに進むべきだと思います。しかし、業界の問題、業界における体制整備としましては、こういった三つの柱に共通の問題として、悪いやつは法律が取り締まってくれるというようなことではなくて、自分たちもその気になって業界を浄化していかなければ、まじめにやっている自分自身の将来がないということをよく認識していただいて、自分だけちゃんとやっているからいいんだということでなく、業界全体をにらんで一社一社の企業に今のような柱に沿って努力をしていただきたいものだと思っております。
  86. 青木薪次

    ○青木薪次君 経済企画庁の委託調査で、情報システムの高度化と流通機構の変化に関するアンケート調査が五十九年度に行われました。この中で、流通業関係者の約九割が、無店舗販売は今後小売業全体よりも高い成長力を持つと予想しているのでありまして、その原因としては、カタログ販売とエレクトロニクス技術利用のものが成長を支えるとしているのであります。つまり、通信販売の伸びを期待しているところだが、通信販売の最近の実情と今後の見通しはどうだろうかという点について伺いたいと思います。
  87. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 通信販売は、各種の小売業の中でここ数年一番高い伸びをたしか示しているグループの一つでございまして、今手元の資料で見ましても、五十五年以来おおむねならして二けた成長でございます。五十五年には四千六百億円でございましたのが六十一年には九千七百億円、大変な高成長でございます。しかも、通信販売を担っております企業の面を見ますと、これは通信販売専業の企業のほかに、大手の流通企業が、古くからやっているところもありますけれども、最近さらに大手流通企業が参入しておりますし、それから新聞とかテレビとかマスコミ系の有力企業がこの通信販売の分野でかなりのウエートを占めておりますとか、あるいはまた外国の企業と日本の企業の提携によるものも発展しているとか、非常に多彩な発展をしております。  通信の手段というのが日進月歩で進んでおりますから、その方式も古典的な手紙によるものからテレビを使うものにまで最近は態様もいろいろ新しいものがあらわれてくる。そういったことで、これまでのところは大変順調といいますか、高い伸びを示しております。  今後につきましても、これは経済全体の成り行きにもちろん大きく左右されることでございますけれども、消費生活の多様化あるいは商品そのものの多様化がありますのと、それから生活パターンの変化によって、時間に制約されないで買い物ができるというメリットを持っている通信販売につきましては、今後とも恐らく高い伸びを続けていくのではないかと見ております。
  88. 青木薪次

    ○青木薪次君 その通信販売における契約の成立時期についてお伺いいたしたいと思うんでありますが、どこをもって認定しているか、わからないままになっていると思うんでありますが、政府に聞いてもやはり判然としないという状態でありま す。  経済企画庁は、五十九年に社団法人の商事法務研究会にそのあり方について委託調査をしているのでありますが、既に四年の歳月が経ております。今どういう状態にあるかということについてお伺いいたしたいと思います。
  89. 植苗竹司

    説明員(植苗竹司君) お答えいたします。  通信販売の関係につきまして一般的な形で調査いたしておりますが、この点につきまして、その後、今後そういう情報化時代におきまして消費者対策はどうあるべきかということを検討を進めております。  その対応につきましては、今回の訪販法の改正にいろんな形で通信販売の規制その他の強化が図られておるところでございます。御承知のとおり、誇大広告等の禁止とか、通販協会業界自主規制の強化、いろんな形でそういう制度の導入が図られておるところでございます。  当庁といたしましては、今後ともこの関係につきまして関係省庁と十分連携をとりまして消費者被害の防止を図ってまいりたいと思っております。
  90. 青木薪次

    ○青木薪次君 あなたは私の質問に答弁をしていない。契約の成立の時期についてどう考えるかと言ったら、これから誇大広告の禁止とかなんとか、そんなことを聞いているんじゃない。  したがって、そういう点についてはっきりしていないと思うんです。早急にひとつ関係省庁とも連絡をとって業界意見も聞いて、しっかりしたものにしないと、クーリングオフだってこれ困るじゃないですか。そういうことについてひとつ確認しておきます。いいですか。
  91. 植苗竹司

    説明員(植苗竹司君) 大変失礼いたしました。  契約の成立時点につきましては、いろいろな意見があろうかと思いますが、原則は民法によるんではなかろうかと思っております。ただ、問題がいろいろございますので、先生御指摘のとおり至急詰めていきたいと考えております。
  92. 青木薪次

    ○青木薪次君 そこで、クーリングオフ口頭告知でありますが、今回の改正においては、契約締結時に訪販業者が提示しなければならない書面に、クーリングオフに関する事項も記載しなければならないことになったわけでありますが、このこと自体は一歩前進だと思います。評価はできるけれども、ただ問題は、こういう訪問販売を受けて、書面を交付されたとしても、果たしてどれだけの人がこの書面を見ているだろうかということになると、クーリングオフの事項を読まない人が相当数いるんじゃないか。ほとんどの人が品物がよければよろしい、契約内容に納得すればよろしいということでやってしまう傾向が多い。だれかが言いましたけれども、日本人は人を信用し過ぎる民族だということを言われましたけれども、そういうことだと思います。この点に対する対策はいかがですか。
  93. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 行政の立場でお答えをいたしますと、消費者契約書を読まないという前提で一般的な制度を考えるというのは非常に困難なことでございまして、やはり最小限のところは読んでいただくというふうに前提せざるを得ないのであります。  そうは言いましても、自分はどうかというふうに考えますと、それは非常にややこしい、細かい字で書かれた書類を示されて自分がどうしたかということを振り返ってみれば、あるいは私一人じゃなくて多分私の同僚もそうだと思いますけれども、そうは言ったって余り煩瑣なものは読まないこともあり得るという点も認めざるを得ないと思います。しかし、そうは言いましても、やはり最小限は読んでいただかなきゃならない。それは消費者が自分自身を守るためにぎりぎりやらなきゃならないことだと思います。  そこで、そういう理屈と、それからそうは言ってもなかなか読まないこともあるという実態を両方を考えまして、書面にクーリングオフについて書かせることにいたしましたけれども、余り小さい字じゃいけないから、字の大きさは一定以上にしなければいけないとか、あるいはここは大事だということが少なくともわかるようにそこだけは赤い枠で囲むとか、これは従来から告知する場合にはそういうふうにしなきゃいけないといってやってきたわけでございますけれども、今回は告知する場合にはじゃなくて告知しなければいけないということにしたわけでございまして、今後もそういった形でできるだけ消費者に注意をしていただくということではなかろうかと思います。
  94. 青木薪次

    ○青木薪次君 不動産取引なんかについては、宅建業法でこれはこういうことですという、口頭で重要事項の説明を行わなければならないことが規定されているわけです。ですから、その点については訪問販売の場合においてもそういう点を義務づけるということで、率直に言って家庭の奥さんがこのことについて契約をしたということになれば、奥さんこれはこういうことで、クーリングオフはこういうことです、いつからいつまでです、ここに書いてあります、そういうことを言うぐらいのことは義務づけるということでないと、いい場合はいいんですけれども、悪い場合には本人がやったのだから仕方がないということになる可能性があるわけであります。これは衆議院でも附帯決議がついたようでありますけれども口頭で言わなければならないということを、いわゆる訪販協会も通販協会も法定団体になったわけですから、この点に対するひとつ指導を徹底してもらいたい、こう思います。いかがですか。
  95. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 先ほど法律論の立場でお答えいたしましたけれども、良心的な業者は、私はその法律に書いていなくても、ここのところをよくお読みください、こういうことですよというふうにお客様に親切にやるべきだと思いますし、そのような指導を私どもするつもりでございます。
  96. 青木薪次

    ○青木薪次君 裁判所だって裁判長が、あなたは黙秘権を使っても結構ですよ、言わなくたっていいんですよというようなことを先に言うんですね。ましてや取引ですから、こういうことのためにその指導をしてもらう。そうすれば、各業界の忌まわしいような出来事もだんだん変わってくるということを理解すべきだと思います。臭い物にはふたをするんじゃなくて、やはり中身を見せるというような立場に立ってやってもらいたいと思うんです。  役務取引クーリングオフについてお伺いいたしたいと思うのでありますが、この法の六条の五項において、役務提供契約を結んだ者がクーリングオフをしたときには、業者は既に提供した役務についての金銭の支払いを消費者に請求できないこととしていますけれども、この規定が置かれたことによって役務提供業者は今後役務提供契約の実行に当たってどのような行動をとることになるかという点について、当局はどう考えていますか。
  97. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) この規定は大変思い切った規定だと私ども思っております。  役務提供の訪問販売をやった。契約は結んだけれども、その後所定の期間内に消費者クーリングオフをして契約解除した。その場合には、仮に既に役務を提供し終わっていてもその対価の請求ができない。つまり、家庭を訪問していって、例えば換気扇を取りかえる、あるいは換気扇をつけるという工事をやった、これはそういう役務を提供した。しかし、その後で消費者クーリングオフした。クーリングオフしたけれども、換気扇はちゃんとそこについているんだし、工事はやったんだから工事代をちょうだいしますということでは消費者クーリングオフした意味がない。そこで、そういう場合でもこれは返還を請求できないということにしたわけです。  そうすると何が起きるかというお尋ねでございまして、そういうことになると、役務の提供はクーリングオフができる期間中はちょっと危険でできないなと業者の方は考えるわけです。ですから、今度の衆議院の修正後のあれで言いますと期間は八日でございますから、八日間業者の方はどうしようかと考えるわけでございまして、契約を結んだ経緯とかそのほかの事情から、この人は絶対クーリングオフしっこない人だし、仮にされたらそれはしようがないと思って工事をしてしまえばそれはそれで構いませんし、それから、事によるとこの消費者クーリングオフをするかもしれない、特に強引に押しつけたような場合には当然そう思うでしょう。強引にこれ契約させちゃったんだから、後で気がついて、だんなさんが帰ってきたら相談してクーリングオフと言うかもしれない。そうすると、これは今この場で工事をして帰るのは危険だなというようなことになりますから、恐らく工事を控えると思います。  そこで、そういう場合に消費者に困ったことが生じるかどうかでございますけれども消費者はもともとぜひきょうじゅうにとか、きょう明日じゅうにこの工事が欲しいと思っていた消費者であれば、そこでぼんやりと訪問セールスマンが来るのを待っているはずはありませんから、本当に差し迫った必要があればみずからしかるべきところに注文をしてやらせるわけです。たまたま来た人に頼んだということは、通常急ぐはずはないわけでございますから支障はないわけですし、たまたま急ぐケースがあればみずから積極的な注文の形をきちっととってやっていただけばいいわけでございまして、したがって、これは事実上クーリングオフ期間の役務の提供を引き延ばすことになるのが一般だと思います。それで消費者の利益が守られ、不都合はないものだと私ども思っております。
  98. 青木薪次

    ○青木薪次君 訪問販売による指定商品の販売とか、それから割賦販売において売買契約解除されたときには、この法七条に基づいて商品が返還された場合の通常の使用料の額について制限が設けられております。しかし、消費者からの返品を受ける際には、業者は法外な損料を吹っかけて、そのために結局消費者が買ってしまうケースが多い、そういう苦情が非常に多いと実は聞いておるのでございます。  こうしたトラブルから消費者被害を防止するために、契約書の中に標準使用損料についても添付しておくことを義務づけるべきじゃないかというような意見があるわけでありますけれども、この点はどう考えますか。
  99. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 御指摘のように、契約解除された場合において法外な損害賠償とか違約金の請求はできないように手当てがしてあるわけでございますけれども、通常の使用料を認められる場合がある、その通常の使用料だと称して非常に大きなまた額を請求したらどうするのかということだと思うのでございます。  もちろんこれは通常の使用料ですから、おのずから常識でも限界がありますし、徹底的な争いになれば、それは標準額が定まっていなくても裁判所が認定をすることになると思います。しかし、そんな裁判まで一々消費者は常にやれるわけじゃないから、現実的にはもっとワークしやすい仕組みが必要だろうという御指摘だと思うんです。  しかし今度は、通常の使用料を決めるというのもなかなか容易ではございませんで、この法律で多種多様なケースについて一律にこれを全部義務づけるというのはちょっと準備がまだできていないということで、そこまで法律規定しておりませんけれども、しかし業種、業態によってはそういう商慣習がかなり一般化しているところもございます。既に家庭電器とか書籍の業界とか教育機器とか、幾つかの業界ではそういうものの標準的な計算の仕方がございます。したがいまして、そういう実態も踏まえまして、できるだけ一々争わないで済むように、いわば標準使用料のようなものが契約に用いられるということになれば望ましいことだと思います。  したがいまして、結論づけますと、業界体制に応じまして、できるだけそういった慣行が行われるように持っていきたいと思っております。
  100. 青木薪次

    ○青木薪次君 一部の悪質業者による業界のイメージダウンは、多くのいわゆる良質と言われる業者にとってこの上ない迷惑なものだと思うのでありますが、これ以上放置できないものとして、その問題解決に苦しんでいるところの業者が多いのであります。  こうした業界内部の悲痛な声に対して、いわゆる良心的なもの、悪質なもの、こういう関係について、むしろ良質な関係業者は、早く通産省はてこ入れをやってくれ、こういう声さえ今出ているのでありますが、この点についてはどう考えていますか。
  101. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) その区別ができて印でもつけることができると非常にいいわけでございますし、業界によりましてはそういう制度を持っているところがあります。例えばレストランなんかそうですし、食品関係でもマル優のマークとかいろいろございますけれども、この訪問販売業界でそういうことがいきなりできるかといいますと、とにかく膨大な数の業界でございますし、まだなかなかそこまで体制が整備されておりません。そこで、そういう非常にわかりやすい、消費者が見てもすぐわかるような仕組みまではまだ難しいのでございますけれども、しかし方向としては、できるだけ消費者があの企業なら安心だということがわかるように持っていきたいと思います。  そこで、少なくとも非常に悪い企業というのがわかるようにするというのが一方で必要です。これにつきましては、今後、訪問販売トラブル情報提供制度というこれまでに既に設けられた制度がございますが、ここで非常に悪質なものは公表することにしておりますが、これは行政上の制度でございますからなかなかそう強力とは言えなかったかもしれませんが、これも使う。それから、今回新たに改正法の五条の四に基づいて業務停止をかけました場合には、これは今度法律上の根拠に基づいてその企業名を公表するということになっておりますから、これはもう全然気兼ねすることなくこの法律を発動して公表できるわけですから、典型的に悪質なものはこういったことで印がつけられるわけでございます。  それから、いい方につきましては、これはなかなか明快にお答えしにくいのですけれども、今度この法律訪問販売協会、通信販売協会を位置づけて任務を与え努力をしていただくわけでございますから、この協会の中のメンバーにつきましては、いやしくもインサイダーがおかしなことをしているということがないようにして、インサイダーであれば、つまり訪問販売協会企業であれば、そしてそこの訪問販売協会に登録されている販売員の登録証を持ってきた人であれば安心できるというような世間の評価を早急に確立していくということで努めてまいりたいと思っております。
  102. 青木薪次

    ○青木薪次君 今、審議官も触れられているのでありますけれども、今度の改正案開業規制の導入が見送られた点について聞きたいと思うのでありますが、この制度は、すべての訪問販売業者に登録や届け出を義務づけ、今も意見がありましたけれども、悪質事業者訪問販売業への参入を防止して事業者の把握に努めるというものでありますけれども、この制度の導入については産業構造審議会の答申でも今後の検討課題としております。  通産省もその理由として、もし導入すれば小売業全体に規制の網をかぶせることになってその作業が膨大になり、行政コストが非常に高まってくることを心配しているといったようなことを挙げておりますけれども、現実の消費者トラブルでは開業規制といった事前措置があれば被害が未然に防止できるものであって、実際に解約しようとしても業者の連絡先がわからず、クーリングオフ期間が過ぎてしまって解約できなかった、あるいは業者の責任を追及しようにもその所在がわからないというようなことで、消費者の側の被害の実情が全く考慮されていないというものであります。したがって、行政当局はこのことについて現状認識とともに対応策はどう考えているか、お聞きいたしたいと思います。
  103. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) いろいろな理由から開業規制を見送ったわけでございますけれども、ただいま先生お尋ねの手間数の問題に絞って申し上げますと、もしこれ登録制とか届け出制をやりますと、百万を超える届け出なり登録なりを処理しなければならなくなります。これは、役所というのは仕事に忠実にというか、ばか忠実というか、やらなきゃならない、そういうものだと思いますので、登録なり届け出の書類が出てまいりますと、これはやっぱり全部受け取るからにはでたらめが書いていないかどうかきちんとチェックをしなければなりません。これはなかなか大変な手間でございます。ところが、百万以上もの書類の中で悪いことをするのはどれかということになりますと、これは一部でございます。  そうなると、それじゃそんな膨大な手間がかかるんならその悪いことをしそうな一部の者について重点的にチェックをすることはできないのかということになりますが、そういうふうに考えてまいりますと、それならば、現実に問題が起きて消費者の方からいろいろ照会があったりトラブルが生じたりした情報は、苦情とか相談という形で入ってくるわけでございます。これは通産省に直接来る場合もあれば、国民生活センター、消費者生活センター、そのほかいろんな団体に行くこともあります。そういった情報の方が、その中に含まれている悪いものの比率というのは当然高い、つまり濃い濃度の情報でございます。  そこで、私どもは今の時点においてはそういう情報を重点的に追跡管理する、つまりそこでトラブルとか相談とかクレームとかいう形で登場した業者の名前なり所在なりというものをしっかり把握しておいて、そこに限られた人数の、役人でございますから限られた人数でございますから、そのエネルギーをつぎ込む、これが一番現実的な対策であろうというふうに考えまして、そこで開業規制は見送ったわけでございますけれども、今のような形でトラブル情報をここに生かしてこれを追跡していくということで対応していきたいと思います。  現に今週から、まだこれはテストの段階ではございますけれども、こういったトラブル情報をコンピューターにインプットして、そしてこれは提携している団体の間にその情報がお互いに共通に利用できるようにするシステムの試運転を開始したところでございます。そういった機械の力もかりてやっていきたいと思っておるところでございます。
  104. 青木薪次

    ○青木薪次君 大蔵省に伺いますが、五年ほど前にいわゆる高利貸しと言われる関係で相当問題が起きました。貸金業法が制定されていわゆる小売の関係の金融業者に対する苦情その他がぴたっととまったというように聞いているんでありますが、この効果はどうだったですか。
  105. 鏡味徳房

    説明員鏡味徳房君) 貸金業者に対します規制二法というのが昭和五十八年十一月に施行されております。  この法律のもとでは、業者を登録していただく登録制の実施、それから上限金利の設定、それから業務規制でございますけれども、例えば不法な取り立て行為の禁止とか広告の適正化等、それから行政庁による監督でございまして、例えば立入検査とか行政処分等を行ってきているところでございます。また、こういった行政側の措置とともに、各都道府県に貸金業者の方で協会を設立しておりまして、そういった協会が業務の適正化のための自主規制基準を設定してその実施に努めてきておりまして、例えば貸金業の業務に従事する者に対する研修などを実施して業務運営の適正化に努めてきております。  そのような効果が出てまいりまして、貸金業規制二法の実施以降、貸金業者の業務の健全化が図られ、資金需要者に対し適正な資金の供給が行われるというような状況になってきております。先生の御指摘のように苦情の件数も減ってきているのが現状でございます。  私どもとしましては、こういった状況を見ながらさらに厳正な行政運営を行い、貸金業界の健全な運営が行われるように努めてまいりたいと思っております。
  106. 青木薪次

    ○青木薪次君 末木審議官、大蔵省でさえも貸金業法を改正いたしました。その後、私どもの知っているところについては、全部苦情がとまったということもないでしょうが、しかし相当数、もう大半とまったというように聞いているわけであります。  しかし、私はマルチの関係でも、この法が制定されてもマルチまがいの商法も行われる思いますよ。まあ相当効果は出ると思いますけれども、しかし、今言ったいわゆる届け出チェックといいますか、いろんなことを考えつつ参考にして、この問題によって一家が悲惨な状態になったりしないように、あるいはまた夫婦間のいろんなトラブルに発展しないように、生活に支障を来さないように、いろいろ平和と安定のために一般の消費者は期待しているし、また良質の業者はそのことをまた期待しているということを参考にしてひとつやってもらいたい。  時間の関係もありますので、私の質問は以上をもって終わりたいと思います。
  107. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 通産大臣、きょうの午前中に、御報告行っていると思いますけれども参考人として教授本田さん、それから訪販協会増田さん、通販協会の綾さん、それから弁護士連合会の木村さん、消費者代表の八田さん、この五人の方からそれぞれ貴重な御意見を伺ったわけでございますが、やはり一つは、結論的に私も御答弁をいただきながら私なりにまとめましたことは、悪質業者によるいろんな被害が起きたときは、早く手を打って消費者被害を局部的に消しとめて、全国的に類似の発生を防ぐということを行政側がやらなければ大変だなということを感じました。  私もきょうは短い時間ですが、消費者の皆さんの保護教育についてはどうかという問題を、前回から続いておりますので、きょうはまとめたいと思いますけれども、非常にきょうの参考人方々のお話を聞いておりまして、消費者保護のためにいろいろな機関で連携をとることも大事ではあるけれども、それよりも一番大事なことは行政が早く対応しなければいけない、悪いものには厳しくしなければまじめな業界も大変な迷惑がかかる、そして、ひいては消費者が大変なことになる、そういうことを私は感じたわけでございます。  通産大臣には後でまとめてこの件について伺いますけれども、当局として、きょう午前中の参考人方々の御意見を伺っておられまして、全部の方が行政が早く手を打つこと、間違いに対して厳しくすること、それが消費者保護教育をやるよりも先の問題だと、きょうは非常に厳しく私たちも伺ったわけでございますが、それに対しての対応をどうすべきかということを、改めて再確認の意味で決意を伺いたいと思うわけでございます。
  108. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 私ども三本の柱と言っております法規制の強化、消費者啓蒙、それから業界自主規制と言っておりますが、その中でどれが一番先に先頭で走るべきかとかどれが最も大事かという議論は、率直に申し上げますと観念論といいますか抽象論になりますし、余り実り多くないのではないかと思います。  そこで私どもは、その三本の柱ということは今後とも堅持してまいりたいと思いますけれども、それが決して行政がなすべきことをなさないでいてもいいという責任逃れとか責任転嫁とかいうことにつながるものであっては決してなりませんから、行政は行政としてやるべきことは時間的にも内容的にもきちっとやるべきだということははっきり申し上げられると思います。
  109. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 きょうの午前中の参考人方々の御意見というものを私なりに集約をして、今決意を込めて伺っていたわけですが、通産大臣として、今回この法改正の中できょうの参考人方々の御意見というものの集約が恐らくあなたに御報告があったと思うんですけれども、そういうような形の御報告を受けた中で、通産大臣として、行政の長としてどう思っているかということをひとつ。
  110. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 率直に申しまして、消費者教育も大切ですけれども、行政がもっと厳しく対応すべきではないかということだろうと思います。私も確かにそのとおりだと思うんです。ただどちらが大切かという比較論ではないと思うんです。消費者教育もしっかりやらなければいけない。同時に行政の対応も厳しく対応しなきゃならぬ。例えば何が健全で何が悪質か、この判断基準を作成することは必要でございますけれども、これがまた客観的な基準を作成するということはある程度困難を伴うことにもなります。  しかし、だからといって、明らかに悪質あるいは問題のある企業を特定するということはこれは可能でございましょうし、それから訪問販売トラブル情報の提供制度に基づきまして公表された企業とか、あるいは法改正の第五条の四に基づく業務停止命令を受けて公表された企業、そういうものを悪質な企業として対応しても社会的に問題はないと私は思うんでありますが、それにしても非常に難しい問題もございます、いいのもあれば悪いのもあるわけでございますから。難しい問題もありますけれども、後追い行政であってはやっぱりならないと私は思うんです。  これからもなお事務方を督励したいと思いますし、今ここでまさにこの案件について審議の終盤を迎えておるときに、こういうことを言うことはいかがかと思いますけれども、庶民のために率直に私の心境を申し上げるならば、いつも申しますように絶対というものはないわけでございます。でございますから、やはり何かを見つけたときにやはり恥ずかしがることなく、ためらうことなく改正をしていく、そうして庶民を守るということは私は必要だと思う。試行錯誤というのは世の中では当然なんですから、今の段階では我々はこれがいいと思っております。けれども、絶対という言葉は使うわけにいかないわけです。でございますから、これからも事務当局を督励をいたします。  事務当局の答弁としては、私が今言ったようなことは言えないと思うんですけれども、あえて政治家として物を言えばということで、今後の各位の御督励を特にこいねがう次第であります。
  111. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 立入検査と罰則についての考え方について当局にお伺いしたいと思います。  第二十条の二の「報告及び立入検査」で、主務大臣は、訪問販売業者、通信販売業者及び連鎖販売取引に係る統括者等に対し報告をさせ、またはこれらのものの事業所へ立入検査をすることができるとか、また、第二十一条の二の「権限の委任」ですが、主務大臣の権限の一部を地方支分部局の長または都道府県知事に委任することができることとする。第二十二条から第二十五条は罰則、罰金、その他の刑罰を所要の水準に引き上げる、こういうふうな条項があるわけでございます。  消費者としましては、今回の改正によって行政による取り締まりが速やかに強化される、そして悪質な訪問販売の発生が抑止されることを期待していることは当然でございますけれども、今申し上げた立入検査権発動や罰則の適用に関して具体的にはどういうふうな対応、決しておくれがあってはいけないと思うけれども、そういうふうな対応、組織的な連帯というのか、そういう面についてはどういうような考え方でございますか。
  112. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 今回の改正によりまして大幅に行政庁の介入権と申しますか、打つ手が拡充されたわけでございます。そういったいろいろな改善命令あるいは業務停止命令等の発動の前提として報告徴収とか立入検査の権限も与えられることになるわけでございますから、これはできるだけ有効に使わなきゃならないと思います。もちろん権限の乱用は、これは我々常に戒めなければならないわけでございまして、立入検査にしても報告徴収にしましてもこれはこの法律の施行のために必要な範囲において行うわけでございますけれども、必要であればちゅうちょすることなくこういった制度を使う方針であります。  限られた人数で取り締まりをやるわけでございますから、片っ端からというわけにもいきませんけれども、非常に悪質な場合には何も遠慮することはありませんから堂々とこの権限を使いますし、それから、しばしばあることですけれども、新しいタイプの悪徳商法がある地域からスタートした、何県のあの辺でどうもこういう新しい手口が最近しばしば見られるぞというようなことが例えばあれば、そのときにはそういったところを重点的に立入検査をして、なるべく早い時期に芽を摘むということもありますし、あるいは遵守すべき事項のうち特定のことがどうも最近守られていないようだということであれば、そういった点に重点を絞った対策もありますので、効果的にやってまいります。  罰則につきましても同様でございまして、罰則は結論としては警察、検察が取り上げてくださって裁判までいかないとおりないわけでございますけれども、私どもが直接やれることとしては行政処分がございますから、これら改善の指示とか業務停止命令とかいうものについては、悪質なものについてはちゅうちょすることなくやっていく方針でありますし、こういったものに従わなければまた罰則がかかるということになります。与えられた手段は有効に使ってまいります。
  113. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 とにかく全力を挙げてきちっとしていただきたいと思います。  時間がございませんので、国民生活センターの高齢者相談の実態、このテーマの情報を見ておりますと、高齢化社会を迎える日本で、やはり高齢者の方々が非常に対応判断が大変な状況の中で被害金額、そして御相談というものが非常に多くなっております。時間がございませんから数字の点は言いませんけれども、非常に高齢者の方々の相談や被害が大きいわけでございますが、まず高齢者の方々のいわゆるこれに関連する教育というか、知恵の普及というか、経企庁としてはこの被害実態から見て、今高齢者だけに絞っていますけれども、そういう方々への周知徹底というか教育、今どういうふうな動きをされているか伺いたい。
  114. 吉田博

    説明員(吉田博君) 御指摘のように、高齢者に対しての被害がふえております。これに対しまして、経済企画庁では政府広報をいろいろ使って啓発を行っておりますし、国民生活センターのテレビ、ラジオあるいはリーフレット等を使いまして普及啓発に努めております。それから、地方の消費生活センターでもいろいろ啓発を行っておりますし、老人会等にも出向いていろいろ啓発を行っております。
  115. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 通産省。
  116. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 私どもも高齢者が特に問題だという認識は共通でございます。先生おっしゃるとおりでございます。しかし、実際にはなかなか通産省もそうたくさんの手足を持っているわけではございませんので具体的なやり方については難しいわけでございますが、最近の具体的な例で申しますと、例えば豊田商事事件のときには、私どもは厚生省の協力を得まして民生委員とかあるいはお年寄りのクラブを通じまして、現物まがい商法についてこういう点を御注意いただきたいという資料をつくりまして、そういうルートでほかと比べて特に手厚くといいますか、丁寧にPR、啓蒙に努めた経緯がございます。  今後につきましても、訪販一般についても考え方は同様でございますので、こういったルートを考える、あるいはそのほかにもいい案があれば活用したいと思いますけれども、特に高齢者については注意を喚起してまいりたいと思っております。
  117. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 先日は、豊田商事事件の問題から国が提訴されているということで、おとついですか、いろいろ質疑をさせていただきました。  豊田商事事件が大きな教訓になっていろいろ行政の対応というものが今行われていることは事実でございますけれども、やはり高齢者の方々に対しての消費者啓発、地元では民生委員の方とか、また老人クラブの活用等いろいろと努力をされているようでございますけれども、しかし、先ほどから申し上げておりますように、今後日本全体という立場でこういうことがやはりどんなに規制をつくってもすぐ解消するということはできないと思うんですね。そういう意味では厚生省も非常に 大きな責任のある省としていろいろと手を打っていらっしゃると思いますけれども、今法案を審議している過程の中で今後さらにどういうふうに充実していくのか、その点を伺います。
  118. 真野章

    説明員(真野章君) 高齢者の孤独や知識の不足につけ込みました悪徳商法につきましては、特に高齢者の場合には長年の蓄えを失うという意味で極めて重要な問題だと私ども考えております。そのために、老人クラブ連合会で「全老連」という機関紙を出しておりますが、豊田商事事件以降、再三そこに啓発の関係の記事を掲載するように指導をいたしておりますし、また、地域に十八万人おります民生児童委員につきましても、「ひろば」という会報がございますが、そういうところに啓発記事を掲載いたしまして御注意をいただきたいというふうに思っております。また、その十八万人の民生児童委員を中心に全国に三千四百カ所の心配ごと相談所を設けておりますが、その心配ごと相談所の機関紙であります「心配ごと相談」というようなところにおきましても啓発記事を掲載するように指導をいたしております。  今後とも私どもといたしましては、そういう老人クラブなり民生児童委員という方々を通じて啓発に努力してまいりたいと思いますし、また、六十二年度から各都道府県に高齢者の総合相談センター、シルバー一一〇番と略称いたしておりますが、高齢者の総合相談センターを設けております。そういうところでもそういう高齢者の方々の御相談に乗っていきたいというふうに考えております。
  119. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 法務省、お見えですか。——高齢化社会の中で、この前も国会で、日本の医学界の痴呆性老人という形の推移がどういう形で出てくるのかということで我々はこれは医学的な面で討議もさしていただきましたけれども、そういう形へこなくても、やはりいきなり家庭訪問をされる、そうして痴呆性老人ではないけれども、やはり悪質な営業マンの場合にはいろんな手口の中で対応していけない、こういうかなり能力が低下されている高齢者の方々がまた契約をされる。そういうふうな場合に、契約の効力とか契約解除、取り消し、こういうことが今後やはり法務省の面においても多くなろうかと思うわけでございます。  午前中の参考人の論旨を聞いておりましても、やはり心理的ないろんな面で私はこの問題を非常に懸念するわけでございますが、こういう事例とか今後の対応とか、そういう面でもしこれだけは明確にしておかなくちゃいけないようなことがございましたら、法務省としておっしゃっていただきたいと思います。
  120. 細川清

    説明員(細川清君) お答え申し上げます。  御指摘のような症状のある老人の方の判断能力がどの程度減退しているかというのは、具体的な場合によっていろいろ差異があると思いますけれども、これが自分の行為の結果について判断することができない、そういう状態になっております場合には、法律上意思能力がないという場合でございます。こういう場合には、別に禁治産宣告等を受けておりませんでも当然その契約は無効だということになるわけでございます。それから、判断能力が減退している、意思能力がないまでには至らないんですけれども判断能力が減退している場合に、それにつけ込んで事実と異なることを誤信させて契約をさしたというようなことになりますと、これは民法の一般原則によって詐欺による取り消しということがあるわけでございます。  また、そのほか一般的な形態としましては、割賦販売法とか本日御審議いただいております訪問販売法等の適用がございますので、そういう点で一応法律制度はできておりますが、今後ともさらに検討すべきことはないかどうか、関係省庁とも協議して協力してまいりたい、このように考えている次第でございます。
  121. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 最後に文部省に伺いますが、小学校、中学校、高校生に対する消費者教育として、学習指導要領及び指導書には訪問販売、通信販売等また被害者救済方法の記述もしくは視聴覚指導等が必要と私は考えるわけでございますけれども、いろいろ見ておりますともう少し検討を要するんではないかなと思うんでございますけれども、こういう点ではどういう教育をされようとしているのか伺います。
  122. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 消費者教育の問題は、初等中等教育段階におきましても重要な課題だという認識を持っております。現在でも具体的には社会科とか家庭科というような教科の中で小学校、中学校、高等学校それぞれの子供の発達段階がございますので、それに応じまして消費者としての必要な態度、知識の基礎を学習させるということで取り組んでいるわけでございますが、ただいま御指摘のとおり、昨今のいわゆる取引の多様化というような現実の問題に即した面での内容はどうかということになりますと、これからなお改善充実を図っていかなければならない部門があるというふうに我々も認識をいたしております。  先般、私どもの審議会で出されました教育課程審議会の答申におきましても、やはり消費者教育という項が具体的に提言をされているわけでございまして、私どももただいまのような提言を踏まえまして、なおそういった面での充実に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  123. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私も今小学校、中学校、高校の学習指導要領と指導書の抜粋を今持っているわけでございますけれども、高校になると割に表面的にはきれいにきちっと載っておりますけれども、今法案の審議をしているような過程で、本当に被害を受けた御家庭の方々の非常に悲惨な状況というものはないわけですね。しかし、教育の中で表には出なくても指導する場合に、やはり消費生活とか消費者保護の問題が出たときには、せめて教える側に、今社会の中で本当に被害を受けた消費者の皆さんの実態はこうだというふうな私は指導書が小学生、中学生の中にも、高校生に対しても必要であろうかと思います。そういう意味で、文部大臣はいらっしゃいませんが、参考までに言っておきます。  最後に通産大臣、時間がございませんので、各関係省庁はしょって質疑を交わしましたけれども、いずれにいたしましても、各省庁にまたがりますけれども、通産省はそのかなめでございますから、通産大臣として、先ほども意見を伺いましたけれども、さらなる決意を込めて抱負を伺いたいと思います。
  124. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) もうおっしゃるとおりでありまして、いろいろと感ずるところも多いわけであります。ただ、この法案現行法に比べますとやはり大幅な規制強化が導入されております。政府としましては、この法案が現時点では最善のものというふうに確信しておるところでございます。  いろいろなすり合わせの問題、法解釈の問題等々、いろんな面であちらで頭を打ちこちらで頭を打ちしてつくり上げていった法案でございますから、事務方の苦労もさこそと察せられるわけでありますが、しかし、だからといって現時点で最善のものと考えましても、将来、先ほども申し上げましたように、やはり取り入れなきゃならぬ点があるかもしれない、切り捨てなきゃならぬ点があるかもしれない。試行錯誤はこれは世の常であります。でございますから、この法案が成立を見ました暁におきましては、機動的な運用によりまして消費者トラブルの解消に努めてまいることは当然でございますけれども、同時に一通産省というより日本国政府の名において対応しなきゃなりません。関係省庁に御協力をお願いすることは当然であり、またしていただくことも当然であります。  私は通商産業大臣でありますが、その前に国務大臣でありますから、国務大臣としての立場の重きを考えてこの問題と真剣に取り組んでまいる所存であります。
  125. 市川正一

    ○市川正一君 一昨日の本委員会において、私は今回の改正案一定の改善策を盛り込んでいると同時に、また幾つかの重要な問題点について、これをよりよくする立場から、指定制の廃止、行為規制の強化などについてただしました。これは、本日の午前中の参考人意見聴取の際にも共通の見解が多く表明されたところでありますが、本日も引き続いて他の問題点についてただしたいと考えます。  本論に入る前に、実は先日のシアン流出問題について関係省庁である通産省に一言お伺いしておきたいのでありますが、去る二十五日、埼玉県の狭山市にあるヂーゼル機器狭山工場から大量のシアンの入ったメッキ液が入間川に流入し、荒川を飲料水の水源にしている埼玉県や東京都が取水を中止する事件が起こりました。これはバルブの締め忘れという単純なミスで危険なシアンが簡単に水源に流れてしまったというのでありますが、どうしてこういうことが起こるのか。また、メッキ槽よりもその廃液の貯留槽の方が小さかったとも伝えられておりますが、いずれにせよ安全管理に重大な欠陥があると言わざるを得ないのであります。通産省の所管業種でもあり、既に三日もたっておりますので、原因その他必要な調査をされたと思いますが、状況報告を承りたいと思います。
  126. 安藤勝良

    政府委員(安藤勝良君) 今回のヂーゼル機器株式会社が起こした事故につきましてはまことに遺憾であります。事故原因につきましては、現在関係しております埼玉県及び埼玉県警が司法捜査の立場から詳細に調査中でございますので、確定的なことは申し上げかねますが、私の方でも早速担当官を現地に派遣いたしまして事情聴取をしているところでございます。  現在までのところ、確定的なことは申し上げかねますが、わかっていることは、この原因につきましてはメッキ槽系統のポンプ接続部における液漏れ点検後のバルブ操作の誤りではないかと思われます。
  127. 市川正一

    ○市川正一君 今回の事件は、住民生活にとってもまた事業所にとっても重大な影響を及ぼすものであります。この際、この種の事故の再発防止のために、こうしたシアンなど劇毒物を取り扱う事業所の安全管理などについて総点検を実施さるべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  128. 安藤勝良

    政府委員(安藤勝良君) シアンのメッキ廃水につきましては、対象法規は水質汚濁防止法また毒物及び劇物取締法、これが大きな対象法の二つでございますが、これはそれぞれ環境庁あるいは厚生省が所管しておりますので、そういった関係する省庁とも緊密な連携をとりつつ、また省内におきましても関係部局とも連絡をとり、かつまた今次原因の究明が明らかになる過程におきまして今後の対応を考えていきたい、こう思っております。
  129. 市川正一

    ○市川正一君 よく関連省庁と連携をとって進められることを要望いたします。  そこで、本論でありますが、本日は引き続きクーリングオフの問題についてお伺いいたします。  クーリングオフの期間は衆議院の修正で八日間になりました。しかし、消費者保護を目的としたほかの法律である例えば海外先物の規制法あるいは預託法、これは十四日間であります。また、同じ法律の中にある連鎖販売取引も十四日間であります。訪問販売も通信販売も十四日間で統一するのが至当ではないでしょうか。きょうは私持ち時間が少ないので、まことに恐縮でありますが、簡潔な御答弁を期待いたします。
  130. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 簡潔にということでございますので、結論を申しますと、私どもは今のお諮りしている案、衆議院では一日延びておりますが、でバランスがとれていると思います。  理由は、預託法、これは一つの財産形成的といいますか投資的な取引でございます。それからマルチ、連鎖販売取引、これは一つの組織への加入という後ずっと尾を引く行為でございます。それから海先法、これも投資的な取引でございます。事の性質上、海先法はちょっと性質が正確に言うとクーリングオフと少し違うんで、基本契約を結んでから個別売買するまで十四日置かなければならないということで、ちょっと違います。  そういった消費者がかかわります取引の態様に応じて、通常の売買、それ以外の組織とか投資とかという性質に応じて七日と十四日、今度は八日と十四日でございますけれども、これで均衡がとれていると思いますし、それから、そういう比較の問題を離れましても、クーリングオフについて今の最大の問題点は、もう一日あったら、もう十日あったらということでは実はないんで、そもそも知らなかったとか、うまくごまかされて権利の行使をし損なったとかいうのが多いわけでございまして、そこのところをまず有効に使っていって制度の実効を上げたいということでございます。
  131. 市川正一

    ○市川正一君 残念ながらきょうは論戦を繰り返す余裕がありませんので、問題の指摘ということで前へ進めていきますが、私は十四日にすることによって整合性がとられるということを重ねて主張しておきます。  次に、契約に際して、交付する書面にクーリングオフについて記載をするだけでなしに、口頭説明することを義務づける必要があると思うのであります。  第四条の第四号で、クーリングオフができない場合について交付する書面に記載することが三点明記されております。ここではもう省略いたしますが、私はこれを口頭でもきちんと説明しておくということを義務づける必要があると思いますが、この点いかがでしょうか。
  132. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) クーリングオフについての告知をどういうやり方でやらせるかということについては、いろいろの御意見がありますし、どれが絶対正しい、どれが絶対間違っているというものでもないと思うのでございますけれども、これは要するに消費者にいかにしてよくわからせるか、そしてその規制が実効性あるものと言えるかどうかということでございまして、これも詳しく申し上げたいのでございますけれども、私ども口頭でということについておかしいと申し上げるわけではございませんけれども法律義務づけるについては、やったかやらなかったかが明確に残る形が望ましいということでいろいろ考えまして、そこで書面でということにしたわけでございます。
  133. 市川正一

    ○市川正一君 書面はもとより、口頭でもというのが私の主張です。と申しますのは、こういう例を一昨日も引用いたしましたが、「消費者紛争ハンドブック」ですが、これを読んでみますとこういう例が紹介されております。  二週間前、訪問販売でトイレファン、要するにトイレ用換気扇でありますが、を購入した。その際、セールスマンから、これは大切なものだからと契約書を畳んで封筒に入れ、のりづけにして、しまっておくように言われた。後で工事が雑なことがわかり、解約したい、こういうケースについての相談なんです。  これはクーリングオフを故意に隠したケースだから、詰めていけばそれは解約になるとは思いますが、実際の取引ではなかなかそうはまいりません。したがって、私はクーリングオフなど重要な事項は、口頭でも説明するように義務づけることが至当ではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  134. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 先ほど申し上げましたように、義務づけとしては私どもは書面で明確に義務を課し、違反があればはっきり形に残るようにすることがいいと思いまして、後々争いが残るような、言ったか言わないか争いが残ってごたごたするようなのは法律義務づけとしてはいかがかと思うわけでございます。  なお、今お挙げになりましたケースにつきましては、具体的なことを調べなきゃ断定的なことは言えませんけれども、のりづけにしてあけるなというのは、これは交付したことにならないと思いますので、それはもうまた別にそれで法違反を犯しているケースだと思います。
  135. 市川正一

    ○市川正一君 しかし、実際には、きょう午前中の参考人の話もありましたけれども、そういう信じられないことが横行しているわけです。ですから、私は書面もさることながら、口頭でもやはり説明をするということを義務づける。  さらに、もう一つ提案をいたしたいのは、クーリングオフを通知するための受取人払いの書留はがきというものをこれを顧客に、消費者に手渡すことを義務づけてはどうかという提起であります。というのは、産構審の答申の十ページにございますが、「クーリング・オフの実効性を向上させるための適切な措置を講ずる必要がある。」というふうに提起をいたしております。私は、この実効性のある適切な措置、その具体化としていろんなイニシアチブを発揮すべきだと思うんですが、例えばこの受取人払いの書留はがきもその一つだと思うんですが、いかがでしょうか。
  136. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) もちろんそういった方法が消費者にとって便利であることはあえて否定するものではございません。しかし、これは結局販売業者消費者の間の責任関係といいますか、どちらがどれだけのことをしょうかというバランスの問題だと思います。  私はやはり、消費者契約をする以上は、ある程度の注意義務を持ち、ある程度の主体性をお持ちいただきたいと思うわけでございまして、そうでないとこの法律全体、幾らやりましても、やっぱり最後にぴしっと消費者が最小限のところは自覚していただき、自分を守るという気概を持っていただかないと法律も動かなくなります。  そこで、今のものにつきましては、そういったことももちろん考え得ることでございますけれども、非常にイージーに契約を結ぶというふうに流れる弊害を生ずるおそれなしといたしません。現時点におきましては、そこで何がクーリングオフのネックになっているかということを考えた場合に、先生が御指摘のようなことも、今この時点で未来永劫おかしいと私は申し上げているわけじゃございませんけれども、この時点においてはまず何と何をやるべきかということになりますと、この制度を有効に使っていただくためには、先ほど申し上げたように、まず制度の存在、これを知っていただく、そのための義務業者に課す、この辺が正直に申し上げまして今の社会常識といいますか、そこで均衡のとれたところではないかと思っているわけでございます。
  137. 市川正一

    ○市川正一君 これはぜひ、産構審のこういう答申もあることですから、研究をいただきたいと思います。  次に、契約解除権及び中途解約権の問題でありますが、クーリングオフの期間が過ぎてしまうと、詐欺だとか強迫の行為が立証されない限りなかなか契約解除は難しいのであります。それは、豊田商事や霊感商法の実態でも明らかなところであります。したがって、訪問販売業者が違反行為を行った場合は消費者契約解除権を認めるべきだ。これは午前の参考人意見も強くございましたし、各地からのはがきの要請も寄せられているところでありますが、この点についてどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  138. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) これは研究会でも産構審でも大変議論があったところでございますけれども、率直に申しまして、学界と申しますか学識経験者の方や実務家の方や各方面の御意見がまだ十分出尽くしているというか熟している段階とは思えないわけでございます。  午前中、私も伺っておりましたけれども、記憶に誤りなければ、これは短い時間の陳述でございますから、これだけでお話しいただいた方の全主張を決めつけるのは私もいかがかとは思いますけれども、伺った限りでは、いわば民活といいますか、お上の力によらないで、契約ベースで私法の世界を通じて悪いものに制裁を加える、やり得ということをなくすということもおっしゃっていましたが、これは根本論でございまして、この解約権というのは売り手と買い手の間の利益の均衡が乱されたのでそれを正しい姿に戻すという私法の世界で考えるのか、それとも解約ということによって業者が痛手を受けるであろう、そういう意味業者に罰を加えるというような意味合いで考えるのか、その辺の整理が、まだ議論が世の中尽きていないと思います。それから、本日も言及されなかったのでございますけれども、解約した場合に不当利得の問題をどう考えるのかという議論もいろいろ難しい議論があるようでございます。  そういうことがいろいろありまして、これは今私ども最終的にどうということではございませんけれども、審議会からも引き続き検討課題である、通産省よく勉強せいと言われておりまして、そのとおり勉強してまいりたいと思っております。
  139. 市川正一

    ○市川正一君 至急に勉強の結果、結論を出していただきたいと思います。  次に、被害者救済のための親事業者の共同責任の問題であります。  詐欺、強迫など悪質な訪問販売を行っている業者や委託販売員などは、捕まりそうになるとトンズラする、開き直ったりするということで、消費者被害の救済に当たっては、それらの業者を事実上支配する親事業者に共同責任を負わせて、被害者が泣き寝入りしなくても済むようにする必要があると思いますが、この点はどうでしょうか。
  140. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 先生の御指摘でございますけれども、この問題につきましては、先ほどの解約の問題以上に難しい問題があると思います。どのようなものを親事業者と定義するか、なかなかこれは困難な議論があろうかと思います。直接契約の当事者でない、形式的、法律的には第三者ということになりますので、第三者だけれども実質こういう責任があるではないかというふうに法律で決めつけていくためにはどういう関係があるということに着眼したらいいのか、これはなかなか難しい問題ではないかと思っております。
  141. 市川正一

    ○市川正一君 しかし、豊田商事の場合を見ても、親会社がどこなのか、親事業体が何なのかということは、これはもう一目瞭然なんですね。だから、そういう点では私は実態に即してこういう点を今後研究し、具体化していくことを強く重ねて主張いたします。  次の問題でありますが、午前中の参考人意見でも、協会加盟各社は、セールスマンの名簿の登録だとかあるいは一定教育を行うとかいうことを自主的にやっているということが協会側から述べられました。私は、これを義務づけること、及び悪質な常習犯は登録を抹消することなどを法律として明示し、これを定めるべきではないかと思うんですが、この点はどうですか。
  142. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 勧誘員の名簿を業者が備えるということについては、その内部管理の問題としては名簿は当然持っているわけでございますから、それを閲覧に供するかどうかということでございます。  私は、なかなかすべての業者に徹底するかどうかは別としまして、協会によく話をいたしまして、訪問販売協会のメンバーにつきましては、少なくとも今先生が御指摘のような趣旨で照会のあったような場合に、全部のものをお見せするのが適当かどうかわかりませんけれども、御趣旨に沿うような誠実な対応が必要だと思います。  例えば、ある企業がある営業所で千人の名簿を持っている場合に、何かよくわからない人が来てその千人の名簿を全部見せろというようなときに、一々のケースではなかなか難しいわけでございます。例えば競争相手の企業が何か装ってきて引き抜きのためにこういうものを見ていくということが間々あるわけでございますので、実務はちょっと難しい点があるんですが、精神としては、消費者保護の観点からは誠実に対応しなければいけないと思いますし、この点はよく協会とも相談をして、しかるべき指導してまいりたいと思います。
  143. 市川正一

    ○市川正一君 と申しますのは、午前の参考人質疑を通じても、悪徳商法はアウトサイダーが多いということはこれはもう明白です。悪徳業者や悪徳セールスマンにどうやって指導を徹底させていくかという問題が問われています。  ところが、例えば霊感商法で問題になった世界のしあわせ社それからハッピーワールド社、この二社に対して通産省は、訪問販売法の遵守を指導するとともに、日本訪問販売協会に対して所要の処分をするように指導をされました。ところが、結局協会から自主的に脱退することで矛はおさまっているんです。  きょう私がそのことを協会代表に聞きましたら、六十二年の七月三十日に自主的退会といいますか脱会をして、それでチョンなんです。それで同僚議員も、霊感商法の業者がこのれっきとした協会に入っていたとは知らなんだということまでおっしゃるほどの事態であるわけですね。言うならば、悪者を外へ追い出したということではあるんだけれども消費者の中にオオカミを野放しにしただけのことであって、被害はちっともおさまらぬどころかますます拡大する危険性さえあるじゃありませんか。この点はどうですか。
  144. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 行政あるいは法律による規制業界自主規制とは互いに補完し合うものだと思います。そこで私どもは、できるだけインサイダーの比率が高まって、そしてなおかつ自主規制によってインサイダーは安心できるという体制をつくってもらいまして、そうなればアウトサイダーは相対的に少なくなりますからそこに集中的に行政的な目を光らせる、役所はアウトサイダーに重点を置いてやるということにすれば、それだけ効率よく規制ができるわけでございます。そういうふうなやり方をしていけば、今おっしゃったように悪いものが放たれた、その放たれたものを追っかけるということになるわけでございます。  それからいま一つは、今お挙げになりましたケースはたまたま自主脱会ということで終わってしまったわけでございますけれども、本当に悪いものであれば、自主脱会でなくて除名という一番重い処分がございますから、除名という形で社会的に制裁を受けるというのが制裁として考えれば一番明確な姿だと思います。  今後につきまして協会にもよく検討していただきますけれども、本当に悪いものが仲間にいた場合には、あいまいなことではやっぱり協会のインサイダーなら安心できるということにならないわけでございますから、これから法律に位置づけられた協会としてその大事な歴史が始まるわけでございますから、気持ちを引き締めて協会にもぜひきちっとやってもらいたいと思っております。
  145. 市川正一

    ○市川正一君 もう一つは、違反行為があって業務停止の命令を出したときは公表されることになっているんですが、今申しました世界のしあわせ社、ハッピーワールド社の二社の場合は名前すら公表されておりません。改正法による公表は名称、所在地などは当然でありますが、扱っている商品や販売の手口など違反の詳しい内容も含めて公表し、消費者に周知させるべきだと思いますが、いかがですか。
  146. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 非常に詳細にわたっていまだお答えする用意がございませんけれども、五条の四の二項では、「主務大臣は、前項の規定による命令をしたときは、その旨を公表」で、通常「その旨」というのは命令をしたということでしょうけれども、なぜそういう命令をしたのかというのは、ただ何にも理由なく命令したとは言わないでしょうから、法律の許すぎりぎりの範囲で、まあ法律違反はできません、これは公表というのは社会的制裁としては重い措置でございますから慎重に検討いたしますけれども、気持ちとしてはそういうことでなければ、手口を知らせなければ効果がないと私も思いますので、ぎりぎりの検討をしたいと思います。
  147. 市川正一

    ○市川正一君 時間が参りました。気持ちだけやなしにそれを行動でわかるように示していただきたい。  最後に、大臣に伺いたいんでありますが、今回の法改正でクレジットつき訪問販売のうち割賦販売法の指定商品については抗弁権の接続が適用されますが、特定役務については割賦販売法で対象に指定していないために抗弁権の接続がございません。私は消費者保護の観点からすると片手落ちだと思うんです。  具体的事例は省略いたしますが、したがって、今回の法改正の趣旨に基づいて、割賦販売法など消費者保護関連の法律をあわせて改正する必要があるんではないかと思いますが、これは法体系にかかわる将来的問題でもありますので、田村通産大臣の所見をお伺いいたしまして質問を終わります。
  148. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 割賦販売法に役務を追加することにつきましては、割賦販売における消費者トラブルの実態をよく把握した上で所要の検討を適切にしてまいる所存でございます。
  149. 市川正一

    ○市川正一君 終わります。
  150. 井上計

    ○井上計君 大分審議が尽くされておりますから、私は若干意見を述べて、一、二質問をいたしたい、こう思います。  なお、きょうは消費者団体を初めとして傍聴人の方が大勢お見えでありますから、誤解されると困りますから最初に申し上げておきます。  私も消費者保護の必要性については当然のことと考えておるわけであります。ただ、いろいろと伺っておりまして、またけさの参考人の方の御意見も伺っておりまして感じましたことは、消費者がすべて善であってという考え方、私はいかがであろうかというふうに思います。というのは、消費者の中に悪があるという意味じゃありません。まあ遠い昔から、人を見れば泥棒と思えという実は言い伝え、ことわざもあるぐらい世の中というものは、どんな法律をつくり、どんな規制をし、どのような罰則を加えても、やはり悪いことを考える人は後を絶たないということ、これをまず考えていかなくちゃならない。同時に、余り消費者保護、すべて消費者立場に立って物を考えておると、逆に過保護になり過ぎて消費者を無知にするおそれがあるんではなかろうか、これも考えていかなくちゃいかぬ、こう思います。  だから、消費者の中にもいろんな階層があります。いろんな立場の人もあります。特にお年寄り、あるいはけさほどもちょっと参考人から伺いましたが、子供が通信販売でだまされたということもありますけれども、これは最近の核家族化というふうなことも一つの原因であります。あるいは家庭内で親と子供との間に対話がないということも大きな原因だ、こう思います。それからもう一つは、子供がやはり自由に使える、親に相談をしなくてもいいような小遣いをたくさん持っておるというふうな現象からの原因もあると思いますし、お年寄りは、言い方は失礼ですけれども、年金等によって自分で自由になるお金を持っておられるというふうなこともその原因かと思うんです。  したがって、すべてが消費者立場に立ち、消費者がすべて善だという立場で幾ら法律をつくり規制をしてもなかなか問題の解決はつかない。だから、今までもやっていただいていますけれども、もっと積極的に消費者に対する知識、教養といいますか、啓蒙、指導というものを活発にやってもらって、やっぱり消費者も、いわば自分がお金を出してだまされたといえばどの辺がだまされたのか、あるいは甘い口に乗ったのかというふうな、限界はありますけれども、少なくともお金を出し、あるいは契約をするというふうなこと等についてやっぱり自分自身が責任を持つ、こういうふうな消費者の主体性といいますか、そのような消費者としての義務もあるわけですから、そういうふうなことを十分考えてもらうような、認識してもらうようなこれから指導、教育もぜひやっていただかなくちゃいけない、こう思います。これは特に意見として申し上げておきます。  そこで、一、二お伺いしますけれども、今度の改正案は、端的に言うと、見方を若干変えますと、かなり業者にとっては厳しい規制の面が出てきていると思うんですね。その一つは、一括現金取引の場合でもクーリングオフの対象になったということは、いわば従来の商習慣というものをかなり変えていく、まあ変えることになると思うんですね。これは大変なことだな、通産省は法案提出者としてよくそこまで踏み切られたなという実は感じもするわけですよ。  そのようなことを考えますと、消費者もこの訪問販売によってかなりメリットを受けておるわけですね。けさほど、悪は絶たないんだから訪問販売は必要がないというふうな参考人の若干御意見もありましたが、決してそうじゃない。やはり市場構造も変わってきますし、これから消費者のニーズもますます変わってきておるわけですから、やはり訪問販売は伸びるべくして伸びてきた。さらに今後無店舗販売、通信販売というのはますます拡充されるわけですから、伸びることは間違いないわけですね。そういうふうな中で、いわば従来の商習慣を変えるような、変えるがごとき規制まで織り込んだという法案改正は、私は通産省、消費者立場に立って随分思い切って提案されたなという感じがするわけです。  しかし、余り規制が強くなると善良ないわば業者企業が萎縮することになります。さらに善良な消費者が逆に迷惑をこうむることになる、こういう懸念を持っておるんですが、その点についてこれは審議官、どうお考えでありますか、まずお伺いをいたします。
  151. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 消費者の利益の保護と、それからまじめにやっている業者に過大な負担をかけてはいけない、規制は最小限でなければならないという二つの原則の両立を探していくということだと思うわけです。抽象的にはそういうことだと思いまして、それでお答えは終わってしまうのかもしれませんけれども、現実にそれを適用すると非常に悩むわけでございます。現金販売をどうするかというのはその悩んだ一つでございます。通常ですと、お互いの債務の履行が済んでしまう、売り手も債務の履行が済んだ、買い手も代金払って債務の履行が済んだ、完結してしまったものまでクーリングオフを認めるというのは、考え方としては大変大きな転換でございますし、なかなか踏み切りにくい問題でございます。  最近のトラブルの実態で、本当は現金販売ではないのに、現金販売ならクーリングオフにされないということに着眼して、悪いセールスマンが、私が立てかえて払ったんだから、会社との関係では現金払いで済みになっちゃっているんだからというようなことを言ってみたり、あるいは銀行まで一緒に行きましょうと言って、そこでお金がなければおろさせて現金払いにしちゃったり、こういったことが出てきたものですから、悩みましたけれども今回現金取引クーリングオフの対象にせざるを得ないと踏み切ったわけでございます。  踏み切った以上は、これはもうきちんと現金取引についても守っていただかなければなりませんが、しかし、イージーに規制強化に走ってしまえばどうなるかといえば、先生御指摘のように結局全体としての流通コスト、取引コストは最終的にはそれは消費者に回りますから、したがって、物の考え方としては、私どもとしてはやはり規制は必要最小限という哲学は守っていかなければならないと思います。今回はそういうことを前提にしつつも、かなり思い切った規制を導入したつもりでおります。
  152. 井上計

    ○井上計君 現金取引の場合のクーリングオフについては、さらにこれにクーリングオフを適用したことによってまた新しい問題が起きるんではなかろうかなという、実は懸念がちょっとするんですが、十分行政指導等でひとつそれらの問題が起きないようにお願いをいたしたいと、こう思います。  それから、消費者もやはりこの訪問販売についてのメリットがあるということを私申し上げたんですが、時間がありませんから細かく申し上げませんが、訪問販売と同じようにこの数年来、五、六年前から非常に伸びた業者といいますか、業種の一つに便利屋さんというのがあるんですね。便利屋さんの話を聞きますと、一本百円の缶ジュースを買ってきてくださいと、一時間三千円なら三千円の料金、手数料を払って。自分で買いに行けば百円で買える缶ジュースを三千百円出す依頼者が実はたくさんあるんだそうですね。もっとびっくりしたのは、二時間なら二時間話し相手に来てくださいと、そうしてその便利屋さんと一緒に仕出しのお料理をとって一緒に食事してもらって、話し相手をしてもらうというお年寄りも実はたくさんあるというんですね。だから、そういうふうな人たちはある意味では善良な訪問販売員を大変歓迎しておるという人もあるわけです。  だから、全部がそういうふうな考え方で規制をしてしまうと、やはり消費者のいわばメリットも逆に消すようなことになる、こういうふうに考えますので、今後行政指導の中で特に改正された法律等の運用についても十分配慮していく必要があるであろうと、こう思います。  そこでもう一点質問をいたしますけれども、先ほど来お話が出ていますが、協会に加盟しておる会員の表示は既にされておるということであります。ところが、表に表示がされておると、逆に表示がないところへ悪質な業者訪問販売員を追いやるような、逆にシフトを変えるような心配があるというふうな参考人のお話もありましたが、できるだけそういうふうなものをいろんな相談員あるいは民生委員等々を通じて各家庭に配布してもらうような方法、それから協会に加盟しておるインサイダーのいわば自主規制、十分指導、教育を受けておる訪問販売員については当然身分証明書か何かを持たせておると思いますけれども、そのようなものをやはり十分消費者が確認をした上でそういう人たちと会う、話を聞くというふうな、こういう指導も必要であろうと、こう思います。  同時に、これはひとつ審議官あるいは大臣にお伺いしたいんですけれども、そのような証明書を持たない販売員あるいは表示をしていない業者等々から品物を買わないように、会わないようにという、排除するためのそういう宣伝あるいは宣伝方法等々を正規の会員業者がとること、現行ではやはり独禁法に抵触すると思いますが、独禁法の適用除外にするようなことを私は考えたらいかがであろうかなと、こう考えるんですが、いかがでしょうか。
  153. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) ステッカーをたくさん張ってもらうとか、それから登録証を有効に活用するということは全く御指摘のとおりでございます。ステッカーを張らせると、張っていない家の方に行ってしまうという議論もありましたけれども、そう言ってしまうと、取り締まりをやると取り締まりのやらないところへ行くということで身もふたもない話になってしまいますので、私どもはやはり愚直にやっていくしかないと思っておりますが、しかし、おっしゃるように独禁法の適用除外までということは、これは先生も承知でおっしゃっていることだと思いますけれども、大分法律論としてはスケールの大きいといいますか難しい問題でございます。  気持ちとしては私どもも同じ感じを持っておるのでございますけれども、まだそこまで、協会の登録員マークも実は市場の大勢を制するまでに至っておりませんので、まずはこれの認識を消費者に十分していただく、どういうふうにしたら訪販協の登録マークというものがもうちょっと知れ渡って、あなたは登録証をお持ちですかと消費者の方が進んで聞いていただけるかなというまだ段階でございますし、これは恐らく役所のPRだけではとても足りないと思いますので、地方自治体や関係消費者団体、コンサルタントの方や生活改善指導員の方やいろいろ大勢の方々に御協力をいただいて、まずそこをやっていきたい。  せっかくの先生の問題提起でございますので、並行して私どもも内部で勉強する気持ちはございますが、重点は、まずはこれをできるだけ普及させたいと思っております。
  154. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 私からもということでございますので、お答えといいますか、私の感想を申し述べてみたいと思います。  実は、二十五日ですか、私の選挙区の人たちが三十人ほど大臣室に参りました。そこで、よもやま話をしておりまして、私が訪問販売法改正で忙しいんだということで、訪問販売というのを知っておるかという話をしたところ、ほとんどの者が知らないんですよ。ああ、あの昔の押し売りかというようなもので、その程度のことなんですね。  これは国民全体に周知徹底させる、特にこれは僕は老人と婦人だと思うんですね。周知徹底させるのは並み大抵のことじゃないが、これはやらなきゃならない。それには、政府だけでやれるものじゃない、やはり地方公共団体、それから協会等々あらゆる面でやってもらわなきゃならないということが言えると思います。それからもちろんマスコミにも御協力を願う。  それから、だからといって私はやっぱり取り締まりは厳しくした方がいいという感じがするんです。ということは、率直に言いまして悪いことをしなければ法律なんか怖くないんですから。ひどいやつがおりまして、最近でもありませんが、そう遠くないころに、通産大臣である私の家、しかも私の家の門の前にお巡りさんがおるんですが、そこへ物を売りにやってきまして、ベルを押したのでお手伝いさんが出たんですよ。そうしたら、一種の押し売りみたいなことだというので、私どもは要りませんと言ってドアを閉めようと思ったら閉まらない。見たら、ドアのところにきゅっと片足を入れておるんだそうですよ。僕は後で言ったんですが、そういうときにお巡りさんと大きな声で叫べばいいと言ったんですけれどもね。  それから、ちょっと話はそれますけれども、銀行と保険屋、あれもひどいですよ。本当にうっかり銀行へ普通預金でも預金しますと、もう定期預金にせいのどうのこうの、保険屋は、入ってくれたら選挙応援してやるとか、ひどいものです。本当にこの訪問販売法の中に入れてもらいたいと思うぐらいのことですけれども、それはそれとしまして、両方、消費者の責任、やっぱり何といったってそれはだます方も悪いが、だまされる方もそれなりの、それは小学生をだますのと意味が違うんですから責任はあるでしょうけれども、取り締まりの方もある程度厳しくして、そうして両々相まってということじゃないでしょうか。ちょうど国会議員は必要だと、しかし選挙違反はやっつけるというのと同じじゃないかという感じがいたします。
  155. 井上計

    ○井上計君 終わります。     ─────────────
  156. 大木浩

    委員長大木浩君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、杉元恒雄君が委員辞任され、その補欠として下稲葉耕吉君が選任されました。     ─────────────
  157. 木本平八郎

    木本平八郎君 ついに我々も訪問販売並みに扱われたわけですけれども、それで最近私どうも悪い癖ができまして、どの法案も渋々賛成するという癖がついて、この法案も渋々賛成するという結論なんですけれども、なぜ渋々なのかということをちょっとしつこいようですけれども、もう一度繰り返したいと思うんです。  私の受ける感じは、盲腸の手術をするのに胃を切り取られたような感じがしているわけですね。全然盲腸は治らずに、胃だけなくなっちゃうというひどい結果になるんじゃないかということを非常に心配するわけなんです。この法案の目的は消費者の擁護、消費者被害防止なんですよ。それであるべきであって、業界規制とかなんとかというのはもうその手段にすぎないんですね。ところが、実際にそれじゃ消費者が擁護されるか、被害が防止されるかということになると、これではだめだということは何遍も繰り返して申し上げたとおりなんです。  私はけさほども言いましたように、この法案商工委員会でなくて法務委員会にかけられるべき性質のものだというふうに思っているんですよ。悪いやつを対象にしてやるわけですからね。いい方はいいわけですよ、もう何にもしなくたっていいんですよね。それが、悪いやつのためにいい方ばっかり押さえられているという感じがするわけですね。私もいろいろ議論を聞いていてちょっと危ないなと思うのは、業界に対する規制を強くしろというふうな声が何か強くなってくるような気がするんですよ。私はそれは絶対反対なんです。  なぜかというと、規制を強くするとコストが上がるんですよ。そのコストは消費者がかぶるわけでしょう。だから私は、もうできるだけ規制は少ない方がいい、自由化した方がいいというのが私はこれにも適用される考え方だと思うんです。したがって、何でもかんでも締めつけりゃいいということじゃ困るので、また繰り返しますけれどもクーリングオフというのは、私この法案を見たときにクーリングオフと入っていて、それで七日を八日にすると言ったので、ああこれはこの法案だめだと思ったんですね。よっぽどこれ知能の低いやつが考えたんだなという気がするんですよ。その理由はけさほど説明申し上げたとおりです。したがって、今後ともこういうふうなコストが高くなる、高くつくということはもう常に考えていただかなきゃいかぬと思うんですね。  それで、私は一つの要望なんですけれども、この問題は決して解決しない、今後ますます悪化するだろうと思うんですね。したがって、この次は悪人に対することをきちっとまずそこに焦点を合わせてやっていただきたいということが一つ。  それから二番目は、先ほどのクーリングオフもそうなんですけれども、これ実際問題いろいろ実施されて、登録の問題とか現金の解約を認めるとか、何か書面を交付しろとやってみて、これが非常に業界にマイナスになっている、コストが高くなるということで、余り必要性がなければ潔くやっぱり逆改正やってもらいたい、それから緩和していただきたいと思うわけなんですが、その辺いかがですか。
  158. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) くどくどと申し上げるまでもないんですけれども、木本先生には先日もお答えしましたが、訪問販売というのは一つの小売の態様として私はそれなりの存在を主張し得るものだと思っておりますし、私の手元にたまたま業界の専門紙の数字がございますけれども、五十年代以降化粧品業界に新しく入ってきた企業が百二十数社あるわけでございますが、そのうち百近くが訪問販売という形で入ってきておりまして、こういったことで業界における競争の促進とか流通の合理化とかいろいろなメリットを持っておりますし、それから古く戦前にさかのぼりますと、ミシンとか、憶測していただくとおわかりでございますけれども、もっと消費者に親しまれ、愛される業界だったわけでございます。  したがいまして、そのいい面を生かし、しかし悪いものは正していくという姿勢でやっていかなければならないと思いますし、今回の法改正でも、別の御意見の先生もいらっしゃいますが、私どもが例えば開業規制を見送ったのは、一部の悪い業者を重点的にやるべき段階であって、全部に負担をかけるのはいかがかというのが幾つかの理由のうちの主な一つでございました。そういう意味で、その点については木本先生御指摘の考え方に基づいて整理をしたつもりでございます。  ただ、個々の規定につきましてその哲学が貫かれていないのではないか、あるいはそうでないことがもし明らかになったらどうするのかというお尋ねでございますが、これは私事務方としてはこの時点でお答えできないわけでございますけれども、先ほど大臣は、事務方は答えられないだろうけれどもということで、大臣のお言葉として、今後試行錯誤とおっしゃいましたですか、新たに取り入れるべきは取り入れ、切り捨てるべきは切り捨てという趣旨の御答弁を大臣がなさっておりますので、私はその大臣のお言葉のもとに今後勉強を続けていく考えでございます。
  159. 木本平八郎

    木本平八郎君 末木さん、大分お疲れだと思うんですね、連日一人で答弁なさっているわけだから。あと一つだけ末木さんにお願いして、あとは杉山局長にお伺いします。  私は、こういうとりあえずの悪人退治というのはどうしたらいいだろうということなんですがね。私一つの提案なんですけれども、やはり素人がこれだけの悪人どもに立ち向かっていくというの悪いという意味じゃなくて、プロにはプロが対抗しないとだめだと思うんです。  したがって、具体的には、これは無理だと思うんですね。やっぱり私は、蛇の道はヘビで、こういう悪いやつには、悪いやつにこの協会の会員会社のメンバーがいますね、セールスマンが。この人たちは、例えば悪いやつだったら道をすれ違っただけでああこいつは悪人だというのがプロ同士ならすぐわかるんですよ。素人はわかりませんけれどもね。したがって、すっと出てきたセールスマンを見ただけでああこいつはインチキだというのがすぐわかるはずですから、この人たちが協会に通報するなり警察に通報するかどうするかは具体的には考えなければいかぬですけれども、そういう任務を担う。私は非常に防止の効果が上がると思うんですよ。  これは、協会は非常に大変なんですけれども、しかし協会自身も自分たちの業界を自分たちで守る、自衛するということをやらないと、このままだったら、私みたいな乱暴なやつが出てきて、訪問販売自身やめちまえなんということを言い出しかねないから、これは業界つぶされます。こういうことでつぶされた業界というのはいっぱいあるんですね。ゲームマシンだってそうですしね。それで私は、そういう意味協会が自衛的にいかに自分の業界を守るかということを彼らに考えてもらう。そして、それをやりやすいように通産省も我々国会も支援していく。  ということは、セールスマンが彼らの仲間で言えば、おまえがおれを指しやがったなということで復讐される可能性があるんですよ、こういう悪い業界には。そうすると、それが怖いものだから、ついびびっちゃうということがあるんで、それを彼らが安心して告発できるように何か手段を考えて、支援を考えていくのがいいんじゃないか。したがって、私はとりあえずはどういうふうにしてそういう被害を防いでいくかということを改めて協会に相談なさるのがいいんじゃないかと思うんですが、末木さん、最後に御意見を承ります。
  160. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 訪問販売協会の幹部の方々や事務局の方々も、今回の衆参両院の御審議を通じて恐らく想像以上に世間の批判が強いということを感じられたに違いないと思っております。  したがいまして、今先生おっしゃいましたことにつきましては、私もお話を伺いながら実は感じたのでございますけれども、相手は何しろ海千山千の悪質業者ですからうかつなやり方をいたしますと逆ねじを食うということになりますし、協会としてもこれは恐らく慎重に対処したいということだと思いますけれども、そういう御提案がある背景に今相当厳しい目があるということを踏まえまして、密告とかスパイとかいう隠微なことではなくて、もっときちっと堂々とやれる姿、あるいはもっと明るい前向きのものとして業界のそういった情報機能といいますか、専門知識を有効に活用する手段について率直に協会の幹部とも相談してみたいと思います。
  161. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、今回こういう規制が強くなって、ある意味では協会自身が非常に信用を得る面があると思うんですね。ところが、協会が信用を得れば得るほど、トラの威をかるんじゃないけれども、それを隠れみのに使う悪人も一緒になるんですね。だから、羊が大きくなればその陰に隠れて入ってくるオオカミも便利になるというようなもので、これはやっぱり協会自身がよくなるとともにそういうことがあるということで対処していかなきゃいかぬと思うんです。  それで、あとは局長に簡単なことなんですけれども、これは局長は聞いておられなかったですけれども、けさほど私は八田参考人の話を聞いてあれと思ったのは、今後法の改正その他があるときには自分たちの意見を聞いてくれというお話なんですね。私は当然これは聞いておられると思っていたんですね。ところが、何か自分たちの意見を聞いてもらえないというふうなことだったんです。これではやっぱりうまくいかないですね。  今、通産省にいろいろ審議会がいっぱいありますね。ところが、本当に御用委員ばかりで、どうも民間の意見消費者意見なんか反映されてないんじゃないかという感じがするんですよ。例えば石油の審議会、あれを私もやりまして、あそこの消費者代表というのは決して消費者の利害を考えていないんですよ、これはもうあなた方、内容は御存じないかもしらぬけれども。そんなことで、形だけとは言いませんけれども、御用学者というか、そういう人の意見だけ聞いてやっていたんじゃこれは大きく間違える。民活というのは民間の知恵を利用されなきゃいかぬと思うんです。ただ単にうまいこと金を出させようなんという民活だけじゃ困るわけですよ。  したがって、そういう点で私は、今後の通産行政全体として、杉山さん、いろいろ大きく担っていかれるわけですけれども、こういう審議会とかそういうもののあり方、あるいはこういうものにどういうふうにして民間の意見を吸い上げていったらいいと思っておられますか、御意見を承りたいんですがね。
  162. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 最初に事実関係だけ一言コメントさせていただきますが、今回なるべく広くの方から意見を聞くということで、消費生活コンサルタントの方の話も聞いておりますし、それから日常的に私ども国民生活センターとか地方自治体とかとも連携がございます。さらに、今回それに加えまして十六回の研究会、東京だけでやらずに大阪、札幌、福岡と地方で三回開いておりまして、そういった努力はしております。  たまたま、きょうそういう御発言が確かにあったわけでございますが、そういう努力をしてきたということを念のためにお耳に入れておきたいと思います。
  163. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 訪問販売問題につきましては、末木審議官が着任以来二年間事実上責任を分担して改正問題に取り組んできましたので、今回の法律改正に際しましての御答弁は末木審議官から申し上げたわけでございますが、今お尋ねは、一般的な審議会の委員構成のあり方、こういうことでございますので、この点につきまして私から御答弁させていただきます。  おっしゃいますように、とかく審議会の委員の人選が偏りがちだという御批判はかねがねあるわけでございまして、そういう観点から、これは通産省のみならず政府全体としてでございますが、審議会の委員につきましては兼職の制限ということもございまして一部の方々に偏らないようには配慮しているところでございますが、なおそれぞれの審議会の趣旨、目的に応じて適切な人選が得られるよう、これは私どもとしてもよく注意をしていかなければならない問題かと思っておりますし、これからもぜひそういう点については一層の配慮を重ねてまいりたい、かように考えております。
  164. 木本平八郎

    木本平八郎君 最後に大臣に御所見を承りたいんですが、先ほどから消費者教育の問題というのが何遍も話題に上っているわけですけれども、これを要約しますと、私ちょっと不勉強で調べていないんですけれども、どうもやっぱり日本の方がこのトラブルは多いんじゃないかという気がするんですね、総契約高とか件数、扱い高に比べて。その辺、何かありましたら御答弁いただきたいんですがね。
  165. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 共通のデータがないので的確なお答えはできませんけれども、例えば参考人意見陳述のときに、これは衆議院でございますけれども、ある学識経験者の方がおっしゃいましたが、ドイツでは開業規制をやったけれどもかなりやっぱりトラブルが多いというようなことも御専門の立場からおっしゃっておりまして、格別日本が多いかどうか、否という資料もございませんけれども、肯定する資料もございません。
  166. 木本平八郎

    木本平八郎君 その比較は難しいと思うんですね。外国の場合が多いとすれば、外国というのは訴訟ずれしているというか、何でもかんでも訴訟するという風土がありますので、非常にそういうものがトラブルとして表面に上がりやすい。日本のように泣き寝入りしないということですね。ところが大臣、日本で私この消費者問題というのは、日本の消費者というのは少し外国と違っているんじゃないかという気がするんですね、私の乏しい経験ですけれども。  まず、日本の消費者は何でもかんでもお上に頼りたがる、お上がそれだけしっかりしているということもあるんですけれども、自分でやらなきゃいかぬことまで全部お上に持っていく、人のせいにする、お上の責任にするということがあると思うんですね。それからもう一つは、日本には契約概念というものがないわけですよ。何でもあうんの呼吸でやるとかそういうことがあって、契約というものに対する概念が非常に乏しいというふうなことで、条件を一つ一つ詰めていくとか、そういう自分の利益を自分で守るという意識が非常に低いんじゃないか。それからもう一つは、日本人は習性としてノーということが言えないですね。言わない。だから、セールスマンに対してノーとこう言えばいいのに、ああそうですかとかあいまいな返事をしている。したがって非常につけ入れられることが多いんですね。  こういうふうな日本人の欠点といいますか、習性がこういうところに出てくるわけです。それを変えるべきだといったって、そう簡単に変えられるものじゃないわけですね。したがって、日本人のそういう習性とか欠点ということを踏まえた上でやはり今後対処していかなきゃいかぬ。だから、外国よりももっと行政の立場としては苦しいかもしれませんけれども、やっぱりそういうところを克服していただかなきゃいかぬじゃないかと思うんですが、最後に大臣の御所見を承って私の質問を終わります。
  167. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 先ほど来井上さんもおっしゃって、あなたが今おっしゃったこと、私全くそのとおりだと思うんです。こういう問題は、一番被害防止に役に立つのは消費者がしっかりすることだと、これはもう一番はっきりしております。  今御指摘のあったような特性といいますか、欠点が日本人に、つまり外国人に比べて日本人に多くあるのかどうか私はちょっとわかりませんけれども、それにしても訪問販売以外でも、例えば人の借金の保証をして、こんなはずじゃなかった、ちょっと判こをついただけなのにというようなことが多いわけでございます。でございますから、やはり消費者、つまり庶民が自分に責任を持つということの観念をしっかり持ってもらう。それをまた植えつけるために我々も努力をするということが必要だ。率直に言って莫大な費用がかかるかもしれませんけれども、必ずしもその予算というものはどこで持たなきゃならぬという筋のものでもない。例えば、それこそ訪問販売業者に会費で出さして、協会なんかでPR費に使ってもいいでしょうし、それは何とでもできると思いますから、今お二人がおっしゃったこと、私まさに同感でございます。  ただ、さっきも申しましたように、それはそれ、これはこれで、やはり消費者教育ということと同時に、やはり消費者保護というより、むしろ悪徳を許さぬという、つまり犯罪的な悪徳を許さぬという意味規制というものは十分にしなきゃならぬだろうと思います。  これからも実行に当たりましていろいろと突き当たる壁もあると思いますけれども、そのたびに率直に、国会でおしかりを受けることを覚悟の上で、削るものは削る、加えるものは加えるという対応をしていかなきゃならぬのじゃないかというふうに思います。
  168. 大木浩

    委員長大木浩君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認めます。  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案の修正について市川君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。市川君。
  170. 市川正一

    ○市川正一君 訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本共産党を代表して、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  今回政府が提出した訪問販売法改正案は、一定の改善策を盛り込んでいることを評価いたすものでありますが、質疑を通じ、また参考人意見聴取を通じ明らかになった幾つかの問題点について、迅速かつ実効ある被害防止と被害者救済が行えるようにする立場から本修正案を提出いたした次第であります。  以下、修正案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、指定制を廃止し、すべての商品サービス等を法律規制対象にすることであります。政府案規制の対象に役務、権利を加えたものの、指定制を維持しているため、被害が多発し社会問題化して初めて追加指定するという従来の後追い行政の欠陥を残しています。修正は、この点を是正するものであります。  第二に、クーリングオフ制度の充実であります。政府案義務づける書面に加えて業者に対しクーリングオフ権の存在を口頭告知する義務を負わせ、口頭による通知でも無条件解約できることとし、さらに悪質業者へのクーリングオフを実効あるものにするため、すべての業者に対しクーリングオフ通知用の受取人負担による書留はがきを客に手渡すことを義務づけ、クーリングオフ期間を延長し、これを通信販売にも適用することとしております。  第三に、悪質な勧誘行為の規制範囲について、勧誘契約時に重要事項を告げないこと、早朝、深夜や長時間にわたり私生活の平穏を害する勧誘行為も禁止するなど、具体的に示すこととしております。  第四に、消費者契約解除権及び中途解約権の新設であります。訪問販売業者が違反行為を行った場合、消費者契約の日から一年を経過するまでの間は、契約解除することができるようにし、継続的な契約についても、消費者一定の予告期間を置いて中途解約ができるものとしています。  第五に、消費者被害救済のため親事業者に共同責任を負わせることであります。詐欺、強迫、その他悪質な訪問販売を行っている訪問販売業者や委託販売員等を実質的に支配する親事業者に対し、消費者被害救済の共同責任を負わせることとしております。  第六に、消費者は、事業者の違法行為について指示、命令等の必要な措置をとるよう関係省庁及び都道府県知事に申し立てることができるようにしております。  以上が、修正案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、ぜひとも御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  171. 大木浩

    委員長大木浩君) それでは、修正案について質疑のある方は御発言を願います。——別に御発言もないようですから、これより訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、市川君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  172. 大木浩

    委員長大木浩君) 少数と認めます。よって、市川君提出の修正案は否決されました。  次に、原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  173. 大木浩

    委員長大木浩君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、福間君から発言を求められておりますので、これを許します。福間君。
  174. 福間知之

    ○福間知之君 私は、ただいま可決されました訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、サラリーマン新党・参議院の会各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読します。    訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一、消費者被害の拡大を防止するため、商品、権利及び役務指定に当たっては、実態に即応して迅速かつ機動的に対応すること。  二、商品の継続的な引き渡し、施設の継続的な利用又は役務の継続的な提供を行う取引については、約款の適正化等を通じ、必要な場合、中途解約が合理的な条件で円滑に行われるよう指導すること。  三、本法の禁止行為について、その概念の明確化に努めるとともに、その違反に対する指示及び業務の停止等については、消費者保護の観点から法の適正な運用を図ること。  四、訪問販売協会、通信販売協会に対し、訪問販売業者等の禁止行為違反等の苦情が寄せられた場合、両協会が適切に対処するよう指導すること。  五、クーリング・オフ制度については、消費者に対し、その周知徹底に努めるとともに、事業者に対し、契約の際、訪問販売員等が同制度の概要・起算日等について消費者口頭説明を行うよう強力に指導すること。  六、消費者契約意識の向上を図り被害の発生を未然に防止するため、学校教育や社会教育等における消費者啓発の一層の推進に努めること。  七、割賦販売における消費者トラブルの実態を把握し、割賦販売についても早急に役務取引を対象とするよう検討すること。  八、訪問販売等の健全な発展と消費者保護の充実強化を図るため、関係省庁間の連携の緊密化によって消費者被害の早期把握に努め、適時適切な対策を講ずること。  九、悪質業者に対する法の厳正な運用を図るとともに、今後とも消費者被害の実情を把握し、必要に応じ、訪問販売等取引適正化のための方策を更に検討すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  175. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいま福間君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  176. 大木浩

    委員長大木浩君) 全会一致と認めます。よって、福間君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、田村通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田村通商産業大臣
  177. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重して、本法案の適切な実施に努めてまいる所存でございます。
  178. 大木浩

    委員長大木浩君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  180. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。田村通商産業大臣
  181. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  オゾン層保護問題につきましては、昭和六十年三月、オゾン層保護のためのウィーン条約が、さらに、本条約に基づいて、昨年九月特定のフロン及び特定のハロンの生産量及び消費量の規制限度等を具体的に定めたオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書が採択されたところであります。  条約及び議定書につきましては、今国会におきまして、別途御審議いただいているところでありますが、我が国といたしましては、これら条約及び議定書を的確かつ円滑に実施するために、特定のフロン及び特定のハロンの製造の規制並びに排出の抑制及び使用の合理化に関する措置等を講じ、もって人の健康及び生活環境の保全に資することが必要であると考えられます。  このような要請に対応するため、今般、本法律案を提案した次第であります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  まず、環境庁長官及び通商産業大臣は、議定書に基づき我が国が遵守しなければならない特定のフロン及び特定のハロンの生産量及び消費量の基準限度、オゾン層保護についての施策の実施に関する重要な事項等を定めて公表することとしております。  第二に、特定のフロンまたは特定のハロンを製造しようとする者は、毎年、製造しようとする数量について、通商産業大臣の許可を受けなければならないこととしております。  第三に、特定のフロンまたは特定のハロンを輸入しようとする者は、外国為替及び外国貿易管理法の規定により、輸入の承認を受ける義務を課せられることとしております。  第四に、通商産業大臣は、我が国の特定のフロンまたは特定のハロンの生産量及び消費量が議定書に基づき我が国が遵守しなければならない特定のフロンまたは特定のハロンの生産量及び消費量の限度を超えることとならないように、製造の許可、輸入の承認等に関する処分を行うこととしております。  第五に、環境庁長官及び通商産業大臣は、特定のフロン及び特定のハロンの排出の抑制及び使用の合理化を図るための指針を定め、これを公表し、主務大臣は、当該指針に即して必要な指導及び助言を行うことできることとしております。  第六に、その他国の援助、観測及び監視、報告徴収、立入検査等について所要の措置を講ずることとしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  182. 大木浩

    委員長大木浩君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日に行うこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散会