○市川正一君 私は、今までの歴史的経過と事実に基づいて少しく問題を解明していきたいと思うんですが、そういう
アメリカの世界戦略を補完しているという例は決して事実としても少なくないんですね。
例えば一九八一年に、当時の鈴木善幸首相は、
日米共同声明の中で「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化してゆく」、こう約束をいたしました。それ以後、
アメリカの肩がわり要求は極めて露骨な形で、例えばジャマイカ、タイ、パキスタン、トルコ、スーダン、エジプト、ペルシャ湾岸諸国等々、国名を挙げて援助をふやすように要求してまいりました。
八一年の春に
アメリカから、ジャマイカを援助してほしい、こういう
要請があった。ところが、ジャマイカというのはどこにあるの、ということで、有名な話でありますが、首相側近も面食らったが、訪米の手土産にしなければと大蔵省を説得して、約六十億円の有償援助を内定したというのが、これは朝日
新聞が発行しております「援助
途上国ニッポン」という本にも紹介されております。しかも、その後そのジャマイカが、カリブ海の中にある島国ですが、これが
アメリカのグレナダ侵略に参画したことは周知のとおりです。また、最近も、ニカラグアに圧力をかけるために
アメリカが軍隊を派遣しましたホンジュラスについても、紛争が起こった八三年ごろから
我が国のODAは急増をいたしております。
もともと
日米諮問
委員会の報告、これは八四年の九月でありますが、こう言うております。「
日本のODAの六〇〜七〇%をアジアに向けてきたが、これはこの地域の安全に大きく貢献してきた。最近になってみられるエジプト、トルコ、スーダン、ソマリア、およびアラブ湾岸諸国の一部、さらにカリブ海地域などに対する援助の拡大は、戦略的に重要な地域にたいする援助の政治的重要性を
日本が認識している」、こういうふうに評価をいたしております。
私、
予算委員会の準備のちょうどその最中に読売
新聞が報道し、
予算委員会でも取り上げられましたが、フィリピンの米軍基地の貸与料の全部または一部を
日本に肩がわりさせるという構想を、
アメリカ上院でカールッチ国防長官がそれにグッドアイデアであると言って同意を表明したという証言も伝えられております。ところが政府、特に防衛庁筋の幹部がこの問題について、ODAでこれをやればいいというふうなことが公然と論じられたということも報道されているところであります。
私、幾つかの例を申し述べましたが、つまり
我が国のODAは、人道的な立場というよりも、事実上
アメリカのこういう世界戦略を補完する役割を果たしているということをこれらの事実が物語っていると断ぜざるを得ないのですが、これは
質問してもあなたがそうだということは
お答えにならぬでしょうから、私は事実をまず
指摘した上で問題を進めたいと思うんです。
我が国の経済協力の
考え方も、
外務省経済協力局の「経済協力の理念 政府
開発援助はなぜ行うのか」という中で、
日本の総合的な安全保障を確保するための国際秩序構築のコストとしてというふうに位置づけられております。また、
外務省の外交の現場でもこういう
考え方は今や定着しつつあります。
例えば八四年六月、当時の安倍外務
大臣も出席して開かれたアフリカ大使会議の概要報告はこう言っております。「近年、従来東寄りとされてきた国の中にも、経済困難克服のためには西側の援助が必要との認識から西側寄りの姿勢をとり始めている国が散見されるところ、かかる動きを助長すべきであるとの
議論とともに、さらに事態の推移を客観的に見極める必要があるとの意見もあった。また、東側寄りの国であっても最貧国である場合や国と国とのコレクトな
関係を保つためにはミニマムな援助は行う等
関係はつないでいくべきであるとの意見もだされた」、非常にわかりにくい表現でありますが、要するに従来の南北という論理じゃなしに、さっき両
大臣もおっしゃいましたが、東西の論理を優先して考えるものに変質したということを私はここからうかがい知るのであります。
経企長官に伺います。こうした、比喩的に言えば東西の論理に立った経済協力の姿勢を私は改めて、
アメリカの戦略重点国に対する援助は削減する、そしてLLDC諸国へのまさに人道的な援助を増額し、その条件も緩和する、このことが国際国家
日本の役割を果たすことになるんではないかと思うんですが、いかがでしょう。