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1988-03-31 第112回国会 参議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月三十一日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      高杉 廸忠君     丸谷 金保君  三月三十一日     辞任         補欠選任      丸谷 金保君     高杉 廸忠君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大木  浩君     理 事                 下条進一郎君                 前田 勲男君                 福間 知之君                 市川 正一君     委 員                 小島 静馬君                 杉元 恒雄君                 中曽根弘文君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 松浦 孝治君                 松尾 官平君                 向山 一人君                 青木 薪次君                 梶原 敬義君                 丸谷 金保君                 伏見 康治君                 矢原 秀男君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   田村  元君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君    政府委員        経済企画庁長官        官房会計課長   安田  靖君        経済企画庁調整        局長       横溝 雅夫君        経済企画庁国民        生活局長     海野 恒男君        経済企画庁物価        局長       冨金原俊二君        経済企画庁総合        計画局長     星野 進保君        通商産業大臣官        房長       棚橋 祐治君        通商産業大臣官        房会計課長    牧野  力君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省立地        公害局長     安楽 隆二君        通商産業省機械        情報産業局長   児玉 幸治君        工業技術院長   飯塚 幸三君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        特許庁長官    小川 邦夫君        中小企業庁長官  岩崎 八男君        中小企業庁次長  広海 正光君     事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君     説明員        防衛庁装備局開        発計画官     別府 信宏君        科学技術庁研究        開発局宇宙企画        課長       青江  茂君        外務省北米局安        全保障課長    岡本 行夫君        外務省経済協力        局政策課長    大島 賢三君        労働省労働基準        局安全衛生部安        全課長      北山 宏幸君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管公正取引委員会経済企画庁)、通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫)     ─────────────
  2. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨三十日、高杉廸忠君委員辞任され、その補欠として丸谷金保君が選任されました。     ─────────────
  3. 大木浩

    委員長大木浩君) 昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち公正取引委員会経済企画庁通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫を議題といたします。  去る二十八日に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣、きのうちょっと担当の方に申し上げておいたんですが、三月二十九日の朝日の「フジ三太郎」という漫画、これごらんになりましたか。
  5. 田村元

    国務大臣田村元君) 見ていません。
  6. 丸谷金保

    丸谷金保君 これはサトウサンペイさんが、日本製品アメリカでは自動車が袋だたきに遭っているのに、東南アジア、韓国等から日本に入ってくる車やテレビやそういうものは一生懸命日本人は喜んで磨いている、片一方ではたたき壊しているのに片一方では磨いている、最後に「性格いい日本人」と、こういうあれがついているんです。  私は、今問題になっております、日本アメリカ特許権秘密保持のための協約を結んでいく問題をずっと調べてみまして、やっぱりこの漫画のように、日本人というのはお人よしなのかなという感を実は深くしております。  特に、きょうは特許庁にお願いしておりますけれども、特許庁においてその感が深いんです。と申しますのは、特許庁というのは、大体転勤もないし、一度入ればほとんど終身同じ場所でみんな顔を突き合わせていて、だから単一民族日本人が何となくわかり合うと同じように、特許庁というところはそれに輪をかけたように非常にお互いがわかり合う、こういう性格を持っているというふうに昔から私は思っているんです。  今回のこの問題も、そういうふうに考えていきますと、大体特許法というのは手続法ですから、法律から今度は規則ができる、そしてまたその規則によって内部規定を細かく決めて処理をするようにできておるシステムですわね。しかし今回の場合には、条約に別段の定めがあるときには法律によらないでもやれるということですね。いろいろ調べてみますと、ほとんどそういう事務処理規定をつくらないで事が進んでいる。  内部では、例えば労働組合とも三月の初旬とか 二十日ころ、それからつい一昨日なんかも話し合いをやっているけれども、なかなか私たちのところへよくわかってこないんです、聞いても。普通労働組合交渉をやっていますと大体それは外から一体どういう交渉だと聞けばわかるんですが、これがなかなか労働組合から漏れてこないんです。まああれは我々はなるたけさわらないでというふうな、非常に中でのわかり合った形で話が進んでここへ来た。  昨日になりますと突如として新聞紙上で、政府筋が二十九日、日本国内で不用意に公開されることを防ぐため、日米両国政府の代表で構成する技術財産委員会を再発足、機能させて、この勧告に基づいて米機密特許日本でも非公開にするよう、防衛目的特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日米政府間協定、同議定書実施細目を策定することで日米間で合意したと、こういう新聞が出ているんですね。ところがおたくの方で労働組合なんかでやっている話を聞きますと、ほとんどまだ交渉中だ、交渉中だですよね。検討中だ、考えるというふうなことでさっぱり見えてこないのに、一方で政府筋が、もうこれは決まったというふうに明らかにしているという記事が出ているんです。これはもう恐らく特許庁じゃないと思うんですよ。  この犯人探し、ゆうべこの新聞を見まして、ああこれはけさの質問は少し変えてこの犯人探しからしなきゃならぬなと。一体この「政府筋」というのはどこなんですか、大臣。きのう出ているんですよ。
  7. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) その新聞記事の「政府筋」ということは、少なくとも私ども通産省では関知しておりません。  いずれにしましても、日米間の交渉状況お尋ねにつきましては、その主管である外務省交渉中の内容については申し上げることは差し控えたいと答弁しておられまして、私ども、直接の外交交渉当事者でない私としては、その交渉内容について申し上げることは差し控えさしていただきたいと存じます。
  8. 田村元

    国務大臣田村元君) 絶対論かどうかは別として、通産省のだれかが仮にしゃべったとすれば、大臣と事務次官は「通産首脳」と書かれます。それ以外は「通産幹部」と書かれます。「政府筋」と書く場合は通産省には無縁の場合がほとんどのように、従来の経過からいえばそういうことです。
  9. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで特許庁、僕は人がいいと思うのね。これ見ていますでしょう、この記事。おたく見ていないはずないんですよ。けしからぬというふうなことでどこかへ抗議しましたか。調べましたか。おたくの方が交渉している最中にもう決まったようなことを出されたら、大抵は怒るんですよ。ところが、特許庁というのは人がいいから怒らないんです。どうなんですか。
  10. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 本件につきましての交渉については、絶えず関係省庁十分連絡をとっております。したがいまして、その関係省庁間には誤解、溝というものはないと信じておりますので、そういう意味で特に改めて何らかの抗議等議論をしたということはございません。  ただ、引き続きよく連絡をとってほしいということは機会あるごとに外務省関係省庁には申し伝えておるところでございます。
  11. 丸谷金保

    丸谷金保君 しかしまだ通産では交渉中なんでしょう。何か四月一日以前に出ることはないと。しかし特許庁内部からいうと、これを決めても実際に実施するのには相当期間的に要るし、いろんな問題がありますね。所管をどこにするとか、細かく言えば鉛筆で書いたらだめだとか、決めますでしょう。私は、一遍鉛筆で書いて戻されたことがあるんです、昔。それで文句を言いましたら、何か細則かなんかを見せてくれまして、こういうふうに消えやすいものではだめだと、ちゃんと庁内の規則で決まっているからおまえのこの書類はこれじゃだめだ、こういうふうなことを言われたことがあるので、随分細かく決まっているんですよね。だからそう簡単には、外交交渉だけ進めてもそういう細則がちゃんとできないとやれませんし、その細則をどうつくるかということもまだ決まっていませんね。  そうすると、大体細則をつくることになると、技術財産委員会勧告を受けてやらなければならないでしょう。まだ勧告は来ていませんね、来ていないでしょう。きょう来ることになっているんですよね、多分、勧告が。そうでないんですか。まだ来ていませんか、勧告は。
  12. 岡本行夫

    説明員岡本行夫君) お尋ね技術財産委員会、本日開催する予定となっております。そこで条約の運用に関する手続細目について議論が行われ、そして勧告が出されるものと承知しております。
  13. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣、まだこういう状態なんです。勧告はまだ来ていないんです。それなのに一方で「政府筋」はもう決まったような、これはある意味での世論操作をやるために高等戦略をやっているのかもしれませんが、この問題というのは私は非常に考えれば考えるほど大変な問題だと思います。  そういうことで、大変お人柄のいい特許庁を相手に質問をするので非常にやりづらいのですが、一体なぜ五六年協定が今ごろ生きて動き出したのですか。その背景は何なのですか。これはおたくより外務省でしょうな、多分、発議してきたのは向こうですから。
  14. 岡本行夫

    説明員岡本行夫君) 一九五六年に国会の御承認を得て成立いたしましたこの条約の第三条の実施が今までおくれてまいったわけでございます。その背景には、我が国技術水準がこれまでは米国のそれと拮抗するに至らなかったという事情があると思います。したがいまして、現実の問題として三条の実施日米間で緊急の事案として取り上げられてこなかったわけでございます。  現在、この手続細目について事務的な話し合いを行っておるわけでございますけれども、これは基本認識といたしまして、日米間の特許を含む技術交流の一層の促進のためには米国知的所有権を保護する措置を具体的に講じていく必要がある、こういった米側要請をも踏まえたものでございます。
  15. 丸谷金保

    丸谷金保君 結局アメリカ側要請にこたえて協議に入った、こういうことですね、簡単に言うと。
  16. 岡本行夫

    説明員岡本行夫君) 五六年の協定実施は、日本側が受諾した義務でございます。五六年協定締結直後から米側はその実施をもちろん要請してきたわけでございます。そうして、その細則の度合いあるいはその細則の強弱と申しましょうか、したりしなかったりしてきたことがあるわけでございますが、やはり先ほど申し上げましたように、今回この話が出てまいりましたのは、そもそも日米間の経済摩擦深刻化ということが一つあると思います。そうして、その中で米国特許権著作権といった知的所有権の保護に強い関心を示してきていることが一つあると思います。  それから、これも先ほどちょっと申し上げたことでございますけれども、我が国技術水準米国と拮抗するぐらいの水準にまで高まってきております。したがって、日米間の技術交流を双務的かつ安定的に両方で体制をつくって行っていく、このような要請が高まってきたためと認識しております。
  17. 丸谷金保

    丸谷金保君 五六年の協定を、今あなたは日本義務だと言いましたが、協定というのは相互的なものじゃないんですか。一方的に日本だけが押しつけられる義務なんですか、この場合は。
  18. 岡本行夫

    説明員岡本行夫君) 五六年協定第三条におきましては、米国秘密に保持されている特許出願につきましては、我が国においても一定の手続のもとに、米国における取り扱いと類似の取り扱いを受けるという規定がございまして、具体的には米国秘密保持が終わるまで我が国における出願を公開しない、このような約束を国会の御承認を得て五六年に行っているわけでございます。
  19. 丸谷金保

    丸谷金保君 まさにそのとおり一方的な義務ですね、この協定は。米国側からこちら側へ来たものについての問題だけであって、日本からアメリカに対して同様なことを一方的に申し出るわけは ないんですからね。それであなたはこれを義務と言ったのだと思うんです。確かに日本義務なんですね。日本側だけが何とかしなきゃならない。この問題の一番明らかにしておかなければならないところは、わかり切ったことですが、そこだと思うんです。  だから、アメリカ側義務の履行を迫ってきているわけです、具体的にちゃんとやれということを。そして、これは国会でも再三予算委員会で取り上げられております。これを見ますと、この特許庁長官答弁は、まことに何でもない話です。  例えば、三月一日の衆議院予算委員会答弁で、「五六年協定枠組みの中である限りは新たな立法措置は不要」、それから後段で、「同じような発明日本独自で日本企業開発しておったようなことがあった場合に、それが網がかかってしまうのかという御趣旨だと理解させていただきますと、」、「たまたま結果的に内容がそのアメリカから来ておる秘密特許発明内容と同じであっても、それは通常出願手続処理されることになると理解しております。」、こういう答弁をしておりますね。  それから、参議院での三月十六日の伏見先生の御質問に対しても、「たまたま結果的に内容アメリカ秘密特許出願と同じでありましても通常特許手続に従って出願公開等処理が行われるものと理解しております。」、こういうふうに、これで何でもなければ別に、これだけ新聞も大騒ぎして、随分たくさん新聞に出てますし、いろいろな解説も出ています。国会でも再三取り上げられておるけれども、これだけのことなら私は何のことはないなと思うんです。しかし、こんなことだけでは済まないでしょう。これは御質問に対して答弁したんですから、恐らくその根拠議定書の3の(b)の後段ただし書き根拠にして答弁したんだと思いますが、(a)の方を根拠にはしていませんわね。どうなんですか。
  20. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 御指摘の各委員会の場で御答弁申し上げたとおりでございまして、日本企業、個人が独自の開発をしてそれを日本特許庁出願をした場合には通常出願手続で進められると答弁したわけでございまして、それが協定議定書のどこが根拠かという点は、まさに御指摘のとおり、議定書3の(b)項ただし書きにその旨が記されておることを根拠にして答弁申し上げているつもりでございます。
  21. 丸谷金保

    丸谷金保君 ですから、これを根拠にして御答弁したんだろうと思うんですが、ただし、問題は(a)と(b)の前段なんですよね。(a)と(b)の前段のことは質問されないから答弁する必要はないといえばそれまでですが、その点では、この記録を読んでいる限りでは何でもない話だというふうにしか読めないんですね。ところが実際には、問題は、(b)にしても前段、特に準協定出願の方が問題なんですよね。準協定出願判断所管はどこがやるんですか。
  22. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) (b)項ただし書きの御答弁だけを申し上げたという意図は全くございませんで、むしろ今まで再三各委員会で御質問をいただいたところが、日本独自開発協定出願と無関係なものについて出願があった場合に秘密になるのかという御質問があったのに対してのお答えでございますから、御質問ただし書きに相当する部分の御質問であったので、その点については通常どおりいくんだと申し上げたわけで、それ以上の他意はございません。  そして御質問の、(b)項前段の準協定出願判断ということでございますが、これは正直に申し上げまして、現在日米間で全体の手続のあり方について具体的な細目についての話し合い中であり、かつそれを受けて各省間でいろいろ相談をして決めることでございますから、明確なことは今の段階で申し上げることはちょっとできない状況でございます。
  23. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、この判断をどこがやるかまだ決まっていないということですか。
  24. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) その判断書類処理等々、手続項の全体について現在話し合い途上にあるという趣旨でございます。
  25. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、私は冒頭申し上げたんですが、もういかにも決まったような政府筋の見解というのは、あなたの言う話し合い途上なら出てくるはずがないでしょう。大臣、どうしてこういうばかなことが行われるんですか。話し合い途上なんです。まだ決まっていないんですよ。この協定に基づくところの(b)の後段質問については答弁した、根拠はこれだと。ところが、前段の方については質問がないから言う必要ないということなんでしょうけれども、問題は、前段に基づいた準協定出願の場合に、だれがこれを判断するかということが決まらないでこの協定のサインができますか、国内的に。どう思いますか、大臣
  26. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) ただし書きについてお答えして本文お答えしないという御指摘でございますけれども、実体的な決めはこの議定書三項(b)で決められておりまして、協定出願関係のあるものについては協定出願を公にすることにならないようにいわゆる準協定出願も公にしない、公開しないということがこの本文で書いてある。ただし書きは、無関係なものはその限りにあらずと書いてある。その議定書に書いてある限りの御質問については明確にお答えできるものですからお答えしておるわけでございますが、その協定議定書に具体的に書かれていなくて、さらに実施細目をこれから決めるという部分について現在話し合い中のところについては差し控えさせていただいておる、こういう趣旨でございます。
  27. 丸谷金保

    丸谷金保君 当たり前のことですよね。関係のないものについて公開するのはいいと、ただそれだけのことですよね。ただ記録を見ると、ああそれじゃいいんではないかというふうに思わせるようにお上手に御答弁しているのですけれども、問題は、やはり関係のあるものについての判断をどうするかというところが問題なんですよね。  特にこの協定によりますと、要するに防衛目的のための技術というと軍事技術ということになりますわね、アメリカ側からいいますとね。これはある新聞の論説にも出ていましたけれども、今それは非常に分けにくいと。それだけに、判断するのがどこでやるかということによってえらい違いが出てくるんです、実際の取り扱い上は。わずかこの何行かの協定で、五六年にこれは締結しているけれども、これを具体的に発足させていく、判断をどこでする、どこまでをその判断の中に入れる、これは軍事目的か非軍事目的か、ここいら辺枠組みとして非常に難しいと、そういう新聞論調もございましたけれども、まさにそのとおりだと思うんで、私は特にここのところが大事だと。交渉中と言うけれども、特許庁はどうすべきだと思っているんですか。交渉するからにはこちらの意見も出しているんでしょう。
  28. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) だれがどういうふうに判断をするかという部分は先ほど御答弁申し上げたとおりでございますが、御指摘のような、準協定出願であるかないかという判断というものは、特許実務を管掌する当庁としては大変重要な関心を持つところでございまして、やはり一般通常案件処理に無用な混乱をもたらすようなことのないような仕組みに何とかしてまいりたいというふうに考えておりますし、そのような考え方については関係省庁にもつとに伝えておるところでございます。
  29. 丸谷金保

    丸谷金保君 今のお答えではちっともわからないんですがね。これは、特許庁という中ではそういう話で皆さんわかり合うんでしょうけれども、我々外の者は今の御答弁を聞いていてちっともわからないんですよ。無用の混乱が起こらないようにどうするんです。どこがどういうふうに判断すべきだというふうに特許庁は考えているんですか。
  30. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) まさにその通常案件、まあ何十万件という処理に影響を与えることがあってはならない、そういった観点を踏まえて、では具体的にどういう手続をするかということは非常に重要なところでございますが、ただ、今のそのお尋ね、具体的にどういうふうにしておるか ということ自体現在相談中であることは確かでございまして、今の段階ではお答え申し上げることができないということでございます。
  31. 丸谷金保

    丸谷金保君 これはようやく手に入れたんです、労働組合分会ニュースというのを。これは皆さんに配ったんで、これを見ますと、二十九日に庁議をやっていますわね、この問題で。そこでも何も決まらなかったんですか。庁議内容メモをとってあるんでしょう。それは資料としては提出いただけますか。委員長にお願いします、資料要求
  32. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) まず庁議で何か決まったかということでございますが、そういう事実は何もございません。ただ、庁内で本件にかかわるいろんな職員からの関心心配点があるので、純粋に内部資料意味合いでできる限り説明の努力をするという趣旨メモをつくって庁内の理解を深めるということを行った事実があります。ただ、それはあくまで本件交渉にかかわる部分に及んでおる話でございますので、あくまで内部限りでという趣旨で作成した資料でございますので、交渉そのもの状況を公にすることにつながるかもしれない内容のものという意味合いでは、資料庁外に出すことは差し控えさせていただきたいと存じております。
  33. 丸谷金保

    丸谷金保君 庁内では、これは協議するというよりもこういうふうになってきているという報告、考え方を出したんでしょうね、そうすると。分会とも交渉ではないと言っていますがね、ここでも。交渉でなくて何と言うんですか、普通労働組合と話し合うときには交渉なんですがね。特許庁の場合は何と言うんです。
  34. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 先ほどの資料は組合との交渉のための資料ではございません。私ども、あくまで庁内全体の職員との会話ということを大切にしておりまして、先ほど御指摘資料というのも庁内職員への説明資料ということで使ったものでございます。  もちろん組合交渉というのも随時行われるわけで、その場合にどういう資料を使うかというのは随時判断しておりまして、結果的にその資料が使われることもあり得るとは思いますけれども、御質問に返りまして、組合のための資料かと、かつこれは組合交渉のための資料かというお尋ねの点は、必ずしもそういうわけではなくて、庁として庁内職員への理解を深めるための資料であるということであります。
  35. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、そのほかに組合とも交渉していますわね。その資料はどうなんですか。組合と交渉したんだから、別にやっていますよね。
  36. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) そのほかに組合交渉を適宜やってきておりますが、その間の資料というものは特にございません。
  37. 丸谷金保

    丸谷金保君 あそこは通産省労働組合特許庁分会というんですか。分会との話し合い、二十九日もやりましたね。これはメモも何もとっていないんですか。
  38. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 組合に資料を渡すというようなことはございません。もちろん当局側が手元の資料をもとにいろいろ説明をしているという事実はございますけれども、資料を組合に渡すということではなかったと承知しております。
  39. 丸谷金保

    丸谷金保君 私はメモをとっていないんですかと聞いているんです、組合と話し合いをしたとき。正式の団体交渉でないそうですけれども、メモもとっていないのか。組合ももちろんメモをとるだろうし、おたくの方も、そういうときは一問一答あるんですから、これはどうなんだあれはどうなんだと、必ず組合は組合の立場で、ここにも書いていますけれども、いつから実施するとか職員がどのようにかかわるのかとか、あるいはこの秘密はいわゆる特許法上の守秘義務だけなのかとか、いろんなことの疑問点をチラシで庁内に配っているんです。だから当然交渉すればそういうことは話し合いの中に出てくるでしょう。そうすると、それに対しておたくの方は回答していますよね、これはこうだあれはこうだと。するに決まっているんですから、そのメモもおたくの方ではとっていないんですか。
  40. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 公の仕組みとして、特に議事録をつくるというような処理はしておりません。もちろん個々人が何らかの備忘録というものを残すことはあるかもしれませんが、庁の公式の意味の議事録を残すということは特にやっておりません。
  41. 丸谷金保

    丸谷金保君 それはしかし秘密書類じゃないですね。
  42. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 交渉事でございますから内部限りの機微にわたるやりとりをしておるものでございますので、庁の外に出す性質のものではないと考えております。
  43. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこら辺からわからなくなるんですよね。組合と交渉してこれはどうかあれはどうかと回答する、メモをとる、これは内部のことだから外に出すべきものではない。ということは、組合側もそれを外に出してもらったら困るということですか。それは問題ですよ、そんなことになると。
  44. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 庁の判断として、庁の責任にかかわる部分についての扱いを申し上げておるわけでございますが、組合に対して組合が対外的な接触でどういうところまで発言し、公表するかということを規制するというようなことは特にしておりません。
  45. 丸谷金保

    丸谷金保君 長官、組合は組合員に対してこういう交渉をしたということを報告しなければならぬでしょう。そうすると、それは当然出てくるんです。そこまでの規制はしないということですわね、当然報告しなければならないんですから。そうすると、組合サイドでこういうふうな問題があって質問しているんだから出てくると思うんですが、組合が大変不満に思っているのは、非常に職場に対する説明が少な過ぎるということを言っているんですよ。そういうことを受けて、二十九日、庁議説明会をやる、あるいは組合とも話し合いをすると、団体交渉という形はとらないで話し合いをした、こういうふうなことだと思うんです。それで、そのときには今私が質問したようなことは全く触れられていないわけですね。一体準協定内容についての判断はどこでやるんだというふうなことは言いもしないし聞かれもしなかったというふうに理解していいんですか。  いいですか、もう一回聞きますよ。庁議の報告、組合との交渉、この中で、私が今質問した準協定出願判断をどこでするのかということについて、それからさらに言えば、判断するためにはその書類を受け取って管理するところが必要ですよね。書類を持たなければ判断できないんですから、その書類はどこが管理するのかというふうなことは、外交交渉中だからまだ説明はしなかった、こういうふうに理解していいんですか。
  46. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 組合あるいは職員全般に向けての説明では、決まったことは何もまだないものでありますから、かつまた交渉途上であるから、どこがどういうふうに管理するかということは今の段階では言えない。ただ、特許庁としてどう考えておるかという点について一般論として言えば、これは特許庁というのは特許出願その他の実務処理を責任権限を持って処理しているものであるから、その立場は特許庁としてしっかり踏まえていくように関係省庁にも話しておるし、庁の方針としてはその立場は堅持していくつもりであると、こういう説明はしておるわけでございます。
  47. 丸谷金保

    丸谷金保君 判断はどこでするかというふうなことは議論にも何もならなかった、こういうことですね。
  48. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 今の申し上げ方がやや包括的であったので再度のお尋ねかと思いますが、特許出願を初めとする実務処理特許庁が責任権限を持っておる立場である、その点は踏まえていきたいという庁としての方針は申し上げたと、このように申し上げました。  その場合に、じゃ出願特許庁が受け付けるのかというふうにその一般的なお答えの中のある部分の御指摘ということになるわけでございます が、それは特許庁になるべきだと特許庁としては考えておると、こういう意味になると思います。
  49. 丸谷金保

    丸谷金保君 五六年の協定もそういう細かい詰めをやっていませんね。ですから今度それをちゃんとやらなきゃならないわけで、やらなきゃ実務に入れないんですから。アメリカの要求しているのは実務としてやっていけということですからね。それで、特許庁としてはやっぱり特許庁がやるべきだと。当たり前の話ですよね。しかし、できるんですか、一体。軍事機密か軍事機密でないかと。協定出願はいいですよ。準協定出願の場合にそれを判断していかなきゃならないんです。いいですか。  例えば植物特許のバイオの問題なんかも私前にも質問しましたけれども、農水省に聞かなきゃわからないんでしょう、植物関係なんかの場合。そうすると、非常に多岐にわたるこの問題を今の特許庁として判断するとしたらどこでやるんですか。
  50. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 特許庁としてやはりその責任権限のもとに準協定出願であるかないかの判断を決めなければならないと思っておりますが、では、具体的に庁内でどこでどうするか、あるいは関係省庁との連携をどういうふうに保つか等々、これらについては交渉と連動しての実務の詰めでございますので、今の段階ではお答えできるような状況にはなっておりません。  ただ、大事なところは、私どもとしては通常の大量に流れておる出願本件判断がかかわりを持つことによって円滑に流れないようなことになって、出願人の無用な混乱、あるいは庁内の事務処理に支障を来すというようなことはないように実務処理のあり方をしっかり考えていきたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  51. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は交渉は相当に進んでいると思うんです。ある程度もう煮詰まってきている。だから、政府筋がもう極めて明確にこういう形でやっていくんだというのが出ているんですから、その段階出願してきたものを判断するところの場所もまだ決まっていないというばかなことは、それじゃ交渉はサインできませんでしょう。  ところが外電はこう言ってきているんですよ。これはほかの新聞にも出ていたから皆さんも御存じでしょうけれども、「米国の裁判所は米国の製造社が日本の競争相手に自社の特許を守ることで多忙となっている。規定を変えるまで四月まで待つのは単なる国会対策であると日本側は話している。制定側としては防衛予算を立往生させるような問題を反対側に与えたくはないのである」。これをお読みになってますね、この新聞。読んでますわね。国会対策でまだ交渉中だ交渉中だと言っているんじゃないですか、予算の通るまで。どうなんですか。
  52. 岡本行夫

    説明員岡本行夫君) 本件は、先ほど来お答えしておりますとおり、条約の第三条の実施のための手続細則を実務的に詰めるという話し合いをこれまで行ってきたわけでございます。したがいまして、議論内容手続的なことが多うございますので、日米間でお互いにそれを議論し合いながらきた、そういう経過でございます。  それで先ほど御答弁申し上げましたように、本日、技術財産委員会というものを開きまして、そこで手続細則につきまして勧告を行う段取りになっておるという流れでございまして、私どもの念頭に国会の御審議をにらみながらといった考慮がないことはもちろんでございます。
  53. 丸谷金保

    丸谷金保君 外国で発行している新聞だけでなくて、日本の国内で発行している英字新聞でさえもこれは既定の事実として受けとめているんですよ。しかも、なお、政府は交渉中だ交渉中だ、交渉中だから何も言えない。だけれど手続上の交渉でしょう、協定はできておって。  私はこの種の問題については、条約があっても手続上の法律なり規則なり施行細則なりというものをつくらなければ動き出さぬと思っているんですよ。特許庁のシステムはそういうものですわね。一歩譲って法律をいじらないでもいいとしても、これも問題あるんですよ。法律をいじらないでもいいかどうかということについては非常に問題があります。しかし、それにしてもやっぱり規則規定細則、細かくつくらなければ判断をどこでされるかさえも決められないですわね。じゃ、判断の前に準協定出願の場合の書類の受理はどこがやるんですか。
  54. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 手続そのものについてすべて日米交渉とそれに連動しての各省庁間の協議の途上でございますので、今具体的にこういう形になるということは申し上げられない状況でございます。  ただ、もちろん準協定出願であれ、協定出願であれ、あるいは一般通常出願であれ、特許庁特許出願を含めた実務処理の責任権限官庁である以上、特許庁に入ってくるものであることははっきりしております。ただ、どういうふうに入ってくるかとか、特許庁の中のどこかとか、そういったことはこれからの問題で、現段階では申し上げる状況にはないわけでございます。
  55. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ出願の様式はどうするんですか。
  56. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 様式につきましても、全般の手続細目の一環として今後具体的に決めていく問題でございます。
  57. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしたら、方式審査の段階でここまでは事務方ですよね。事務方でやる場合に、これはだめだと、鉛筆書きだから返すとか、言われたようにどこかでそういうものが出てきたら決めて、補正命令出すなりいろいろしなきゃならぬですわね。こういうのももちろんまだ決まっていないですね。どうなんですか。
  58. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 特許出願であることは、先ほど申し上げましたように、どの出願であれ変わりはないという意味合いでは特許出願に伴う所要のチェック、御指摘のような方式審査、それに伴う諸手続というものは当然必要になると思います。  しかし、何せ協定出願、準協定出願というものが一般通常出願とは違った非常に特異なものであるところと、いわゆる特許出願であることには変わりはないというところとをどういうふうに整理をするかというデテールについては現段階でまだクリアにはなっておらなくて、実施段階にはすべてその点を明確にしていく必要があるということで検討途上にあるわけでございます。
  59. 丸谷金保

    丸谷金保君 全部まだ検討ですね。何も決まっていないですね。  では、もう一つ聞きます。鉛筆で書いたらだめだったけれども、ペンで書いていったら受理してもらったんですよ、昔ね。今度は会社で一つ出したんです。そうしたら今度はペンで書いて持っていったやつはだめでタイプにしてこいと言うんですよね。個人なら鉛筆はだめだけれどもペンはよくて、会社でやったやつはペンもだめでタイプでやってこい、そういうふうに決まっているんですね。この場合はどうなるんですか。そういうことも決めなきゃならないんじゃないですか。どうなんです。
  60. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 長官として大変申しわけないんですが、会社と個人での鉛筆、ペン、タイプの仕分けということは承知しておらなかったところでございますが、ただそういった個々の詳細な手続を含めまして、先ほど申し上げましたようにいわゆる特許出願であることには変わらないことから、当然今までの通常出願で必要とされておった出願以後の事務処理をそのまま適用される場合と、特殊な出願であるがゆえにある部分例外にせざるを得ない。それでは、例外はどういうふうに扱うかというようなこと、その振り分け整備というのは今後していく必要があるわけでございます。
  61. 丸谷金保

    丸谷金保君 そういうことがきちんと内部的に整備されないうちに、外務省が四月の末だというふうなことで、アメリカ側新聞にも出た。しかもサインをするのはもっと先かもしれませんわね。予算が通ったときまではやらないんだと、これは新聞記事ですから、そういう見方もあるというふうに読めないこともないですがね。しかし まず大臣、当たらずといえども遠からずで、そんな気配がするんですよ。  そういうことが何にもまだ決まっていない。しかし、外交交渉としては随分進んでいるんでしょう。
  62. 岡本行夫

    説明員岡本行夫君) 先ほど御引用になりました新聞記事は、外務省としても一切関知するところではございませんが、今後の手続といたしましては、本日の技術財産委員会におきまして手続細則につきまして勧告が行われるものと承知しております。そして、その勧告を踏まえましてこれから両国の政府がこれを受け入れるのかどうか、具体的にどう実施していくのかということを詰めていくという段取りでございまして、先ほど来特許庁長官の方からおっしゃっておられることと同じでございます。
  63. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは、語るに落ちるという言葉があるけれども、やはりきのうの新聞のニュースソースは外務省だな。まだ長官の方は勧告を受けていないとさっきから言っていましたよね。あなたの方はきょう勧告があるんだということを知っているわけだ。そうすると大臣、どうもこの新聞記事というのは外務省のようですな。そうなんだね。あなたの方は知っているんだ、それ。
  64. 岡本行夫

    説明員岡本行夫君) 技術財産委員会は本日行われるものでございます。したがいまして、勧告は当然まだ出ていないわけでございまして、特許庁長官の御答弁と私の答弁との間にはいささかも食い違いがあるとは存じません。  私が、本日の技術財産委員会におきまして勧告が行われるであろうと申し上げましたのは、本日の委員会の見通しを述べたものでございまして、当然、委員会が終了しなければ勧告というものは発出されないわけでございます。  それから、繰り返して恐縮でございますけれども、先ほどの新聞記事のニュースソースについてのお尋ねでございますけれども、これは外務省として全くかかわっていないところでございます。
  65. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと後で議事録を拝見して精査したいんですが、今外務省の方はそういう予測を述べたと後で答弁し直しています。さっきはきょう勧告が行われると言ったような私は気がするんです。いいですか。技術財産委員会がきょう開催されるということは、これはいいですよ。しかし、結論が出るか出ないか、勧告が行われるか行われないかわからないんだ。特許庁の方は、まだ全然事務手続上の問題は検討中、検討中で何も決まっていないんですから。そうすると、ある程度そういうことは詰めた話をして、その上で当然勧告ということになるんですよね。  この委員会には特許庁からはだれも入らないんですか。これは一名ないし二名ということで二名の場合には当然……
  66. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 実は、外務省からの御答弁の代理になるかもしれませんが……
  67. 丸谷金保

    丸谷金保君 私の聞いたことに答えなさい。入るのか、委員会に。
  68. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) これは関係省庁が入る委員会でございますので、特許庁もメンバーになるわけでございます。
  69. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、特許庁はこの段階では困るという話になるでしょう、おたくから出た人、今私に答弁したとおりだとすると。何にも庁内はまとまっていない、決まっていない、検討中、検討中。だから先ほどから、あなたの答弁はまだ勧告は受けていませんということで、しかし外務省の方はきょう勧告があるんだと。ということは、相当程度おたくの方も煮詰まっていなきゃならないはずなんだ。ただ、予算が終わる前に余計な摩擦を起こしてはならないという政治的配慮のもとで、目下交渉中、交渉中。これだけ問題になって、これだけ詰まっていて庁内で何一つ決まっていない。こういうばかなことは、いかに人のいい特許庁でもあり得ないと思うんですよ。  これだけの外交問題になって、新聞にも書かれ、国会でも問題になっている。特許法というのは手続法だといいながら、実際に実施する手続に対する対応というのは何一つ今私が聞いても決まっていないんでしょう。大体、判断をどこでするかという一番大事な問題さえもまだ省庁間の決定も見ていないんでしょう。あるいは事務方で判断するのか審査官がやるのか、審査官がやるとすればこれは公開原則との、法と条約の整合性はどうなるんだとかいろいろ問題が出てきますよね。そうすると、そんなことが何も決まっていないで、勧告が出されて、そしてそれに従って最大限の協力をしなけりゃならぬことになっていますよね。  これにはまだたくさん問題が山積しております。軍事技術と非軍事技術のチェック、これはおたくの方から出した「特許庁百年史」というのがありますし、それから清瀬先生が非常に分厚い本も出しておりますよね。ああいうのを拝見いたしましても、それから「特許庁百年史」見ましても、軍事機密と戦前言われたものを例示してありますよね。虫下しのサントニンまで軍事機密の中に入っているんですね、そうでしょう。これを見て私は感心して、なるほどなと思ったんです。  もう時間がないから少しずつ聞いておきます。ただし、特許庁、これで質問終わったんじゃないんですよ。何にも決まっていないということがわかったというだけで、この次また十一日に決算でやりますから、もう少ししっかり今度は答弁できるようにしておいてください。  それで防衛庁、軍事的であるかないかということ、これは私はやっぱり防衛庁でないと最終的にはわからぬような気がするんですよね。それで、防衛庁の方としてはこの判断はおれの方でやるんだという気構えでいるんですか、どうですか。
  70. 別府信宏

    説明員(別府信宏君) お答えいたします。  ただいま御指摘の点は、基本的には特許手続の問題と私ども承知しておりまして、先ほど来特許庁長官が御答弁になっておりますような、現段階で防衛庁としてお答えする立場にはございませんが、いずれにいたしましても、本件に関連いたしまして防衛庁が特許出願、受理というような、私ども防衛庁の所掌外の事務を行うことはあり得ないものと考えております。
  71. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、これは軍事機密がそうでないかということを判断するのは防衛庁の所掌外ですか、どうなんです。
  72. 別府信宏

    説明員(別府信宏君) 先生御指摘の、軍事機密かどうかということにつきましては、基本的に今御指摘のそういう指定は米側がそれが軍事機密であるというふうに指定されたものであれば軍事機密と私どもは判断するのではないかというふうに思っております。
  73. 丸谷金保

    丸谷金保君 核の持ち込みの問題と同じだね。アメリカがそう判断すればそう判断する。ちょうど同じ論理ですな、これ。そうなんですか、防衛庁の方としては自主的に判断はできないんですね。
  74. 岡本行夫

    説明員岡本行夫君) 先ほど来のお尋ねは、協定の中に「防衛目的のために」と再三出てまいりますところを踏まえての御質問かと思います。  そもそもこの五六年協定と申しますのは、日米間でMDA協定に基づきます技術上の知識の交流の促進、種々の権利の保護等を目的として日米が協力することを定めたものでございまして、米側がこれが防衛目的とまず判断するというのは時系列的にはございます。そしてそれを受けまして日本政府が防衛目的のためと判断するかどうかということは、先ほどの防衛庁の方の御答弁もございますし、政府全体としてこれを判断していくことになろうと思います。  と申しますのは、防衛目的というのは、私ども防衛庁の装備品等の生産、調達などに直接関連する目的だけに限って解釈しておりませんで、我が国全体の防衛能力の発展といったことも防衛目的に含まれると解釈しておりまして、いわばさまざまな角度から我が国政府全体としてこの防衛目的に合致しているかどうかを判断していかなければならないということでございます。
  75. 丸谷金保

    丸谷金保君 防衛庁、軍事機密に属するかどうか防衛目的に対して判断するのはおたくの方だと。おたくの方はしかしアメリカからそう言ってくれば、アメリカが言ってきたんだからこれは防衛目的協定出願というふうにみなさなきゃなら ぬと。協定出願の場合はいいんですが、準協定出願じゃいろんな問題があるんです。損害賠償の問題だとか後願の問題だとか、特許出してしまった、後から解除になった問題とか、いろいろもう問題が山積しているんです。そしてそれらは一にかかって防衛目的に対してこれはどうかという判断をどうするか。これは新聞でも言っているように非常に難しいし、ほとんどもう不可能に近い。そうするとこれらはやはりこれこれだという例示規定か何かつくらなかったら、それは実務をやる者としては僕はやれないんじゃないかと思う。  例えばさっき虫下しの問題を挙げましたが、今バイオでいろんなインターフェロンを大腸菌にあれして新しい薬をつくるとか、それから例えばこの前私も委員会で取り上げて日本新薬の植物特許の問題を質問しましたね。あのときのヨモギでもそうなんですが、あのときはパキスタン原産のクラブヨモギ、それから北海道の方にありますミブヨモギ、これを染色体の個体の数をバイオ技術で操作して、そして新種をつくったんですよね。そうするともうそういうバイオの関係に入っていくと、例えば虫下しが、今はそんなことないと思いますけれども、戦前は日本陸軍がそこまで秘密特許にしちゃったんですからね。同じようにこういうバイオの技術そのもの、こういうものをこれは軍事機密に属する問題で準協定出願の対象になるぞと言われたらこれは大抵のものが綱かぶさっちゃうんですよ。まして知的所有権のうちのプログラムが、これは著作権持ってきましたわね。著作権の方の問題だって、これ当然防衛目的のためにということの対象になるとすれば——なるんじゃないですか。どうなんです、防衛庁。
  76. 別府信宏

    説明員(別府信宏君) ただいまの御例示で、御質問の件に直接的にお答えするのは非常に難しい問題でございますが、基本的に私どもは今回のこの関連で日米両国が保有しております防衛関連技術、そういうものを防衛庁といたしましても最大限に交換したいという見地から政府間の調整に参画しているところでございます。
  77. 丸谷金保

    丸谷金保君 きょうの答弁はもう全然納得のいかない答弁ばかりですけれども、まだ検討中で決まっていないと言うんですからね。決まっていないものは決まっていないんでしょうから、予算の通るまではやっぱり配慮しなきゃならぬと、それまで余計なことを言うなとチャックされていれば、あなたたち言えないわな。それはよくわかりますがね。  大臣、最後にこれだけは大臣お答え願いたいと思うんです。三月十一日の日経の朝刊に出てたんですが、「日米技術摩擦に苦言」と、利根川教授が会見して言っています。この中で同教授は、「米国では特許権などの保護強化や日本人研究者の締め出しなど、研究成果の交流を抑える声も出ているが、同教授は「日本へのフラストレーションの”たまもの”で、極端な意見だ」」ということで、こうした科学技術を人類は抑えていくという方向に進めるべきでないと、こういうふうな意見が出ているんです。これは大臣お読みになりませんでしたか。
  78. 田村元

    国務大臣田村元君) 私も読ませていただきました。結論から申しますならば、この科学技術の研究成果というものは人類の幸せ、福祉等の向上といいますか、生活の向上というものに積極的にその活用が図られるという点から当然公開されるべきもの。そこで、そういう原則の上に立って考えれば、率直に言って過度の規制はいかがなものかなというふうに思います。  それからなお、ちょっと今の御質問から逸脱しますが、先ほどの新聞に出ている記事がどうという問題でございます。三人の答弁聞いても確かにやや抽象的で、私もちょっとしっかりと判断いたしかねるような点もございましたけれども、新聞の報道というものについて、非常に正確な場合もありますけれども、時にとんでもない場合もあるんです。例えば今通産省の人事が出ております。私はあれ読ましていただいて参考にしておるんですけれども、いたずらして変えてやろうかなと思わぬでもないぐらいのことなんですけれども、余り新聞というものの記事について、これは一般論でございます、あくまでも一般論、中には立派な記事もございますけれども、それを絶対論としての、御質問はこれは当然のことでしょうけれども、御答弁ということになりますとちょっといたしかねる面があるということも了解してやっていただきたいんです。でございますから、その結論が出るまでは検討中というのはこれは役人として当然のことだと思います。そこいらのこともひとつ御理解をいただきたいと、私からちょっと役人たちに助け舟を出してやるとすれば、まじめな話、そういうことも一言だけ申し上げておきたい。  先ほどの過度の規制というのはいかがなものであろうかというふうに思います。
  79. 丸谷金保

    丸谷金保君 時間がありませんのでこれでやめますけれども、大臣、同じ新聞記事でもこの場合は署名入りの記事なんです。これはやっぱり相当責任あるものとして読ましてもらう場合もある。だから同じ新聞でも署名入りとそうでないのとこれもまた区別して大臣判断の材料にしていただきたい。このことをお願いいたしまして、私の質問を終わりにいたします。
  80. 井上計

    ○井上計君 最初に、中小企業問題についてお伺いをいたします。  昨年の秋以降かなり全般的に景気が回復をしております。したがって、輸出関連中小企業もやや小康を保っておる、このように言えると思いますけれども、しかしまだ景況の非常におくれておる地域がまだまだ多いと思います。そこでバランスのとれた国土の開発ということを考えるときには、景況のおくれておる地域の輸出関連中小企業の転換をさらに急いでいかなくてはいけないであろう、こういう考え方を持っておりますが、そこでそのような中小企業の転換を一層促進するためには中小企業庁、通産省、政府の一層の助成、指導が必要であろう、こう考えます。  例を挙げますと、私の地元選挙区でありますけれども、愛知県の瀬戸あるいは半田、常滑という古くから陶磁器や綿、スフをやっておる産地ではまだまだ大変おくれておるというふうに考えますが、内需転換のためにデザインだとか仕様だとかということについての開発、促進をしておりますけれども、まだ十分でありません。なかなか資金的な面あるいは人的な面その他の面でおくれておるというふうに判断をしておるんですが、そういうふうな地域等に対して中小企業庁はより積極的な支援、指導をぜひお願いいたしたい、こう考えておりますが、中小企業庁は現在どのようなお考えでおられますか、まずお伺いをいたします。
  81. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 御指摘のとおり今回の円高の一つの特徴は、ある特定の地域に非常に集中的な影響を及ぼしたということだと思っております。したがいまして私ども、一昨年にもうなりますか、秋に、いわゆる新地域法を制定いたしまして、その地域の中小企業者の新しい生き方の模索についての支援策をとったわけでございます。その地域の中小企業が新しい方向をどうとるかということと、その地域自体として新しい方向をどう模索するか、両方あると思います。  前者、その地域の、輸出に非常に依存しておりました中小企業がこの新しい環境の中でどう対応するか。これについては幸いにして六十二年に入りまして内需の拡大もございまして、内需転換という形はかなり進んだと思っております。そしてその内需転換を支援するための融資制度というのは、それなりに有効であったというふうに考えております。  御承知のとおり輸出というのは輸出契約時に頭金何割かもらいますし、出荷時に残金全部をもらいます。ところが、内需といいますのはそういう頭金もありませんし、通常は四カ月手形で、出荷後四カ月後にしか決済がなされません。したがって、輸出から内需への転換というものは相当な運転資金量の拡大を要するわけでございまして、そういう意味ではこの新地域法に基づく承認件数が七千三百二十件、融資の貸付実績件数は六千二百件ぐらいございますけれども、そういう融資制度というのは相当な効果を上げたんではないかと考 えております。  それからまた、内需転換のためには単に同じ仕様の物をつくるというわけにはまいりませんので、いろいろな仕様変更等が必要でございますし、またそれに伴っての設備の変更も必要な場合がございます。そういうことについてのいろいろな設備資金あるいは技術開発の支援、これもそれなりに効果があったんではないかというふうに考えておりまして、御指摘の瀬戸、半田、ここでも適用計画承認件数が五百九十八件、地域特貸し六百四十六件というようなことでございますし、またそこの組合が共同して新しい生面を開くというための補助制度もつくりましたけれども、常滑焼の協同組合はそういうものを活用して新しい素材の開発に努力をいたしております。そういう面で、地域中小企業が新しい方向を模索するということについては、それなりの効果があったと思いますし、また相対としての内需拡大がそれに益したというふうに考えております。  ただ、内需転換はそのようにかなり進んだと思いますけれども、業種の転換、これはやはり非常に短期間の間にはなかなか広範には進みがたいものでございまして、これは今後とも技術開発あるいは市場のアクセス支援、こういう面で支援を強化していかなければいけない問題であるというふうに考えております。  もう一つが、地域全体として新しい生面を模索していく努力、これはこの五十一地域について振興計画というのを自治体につくってもらいました。これが昨年の秋ごろほぼ出そろいましたけれども、それはそこの中小企業の振興にとどまらず、その地域全体についての新しいプロジェクトなりそういうものを模索する努力でもございました。かなりいろいろな地域でいろいろなアイデアが出てきております。  ただ、それをさらに突っ込んでそのフィージビリティーを調査する、こういう必要があるというような判断をいたしまして、六十三年度予算につきましては、そういう地域の新しいプロジェクト、それのフィージビリティー調査をより深めるための支援措置というものも今回追加して手当てをしようとしているところでございます。
  82. 井上計

    ○井上計君 よくわかりました。大いに期待をしておりますし、また今長官言われたように、かなり地域によってはそのようなものが浸透して、私どもの当初懸念しておったことが全く必要がなかったかなと思える面もあるわけですけれども、しかしまだまだ十分でないということ、それからもう一つは、今ちょっと御答弁ございましたけれども、個々の企業だとか組合が意欲を持って熱心にやっておるんですが、なかなか地方自治体とのつながりが十分でなくてうまくいかないというケースも実は若干聞くんです。それらについて地方自治体に対する通産省からの助言あるいはプッシュというと言い方がおかしいかもしれませんが、そういう面でのもっと配慮もひとつお願いをいたしたいと思います。  それから、特定地域以外の地域でもかなりあるわけですね。やはり転換を必要とするあるいは全面的な転換というふうなことを必要とする地域があるんです。ところが、そういうところは特定地域に指定されていないので、なかなかいろんな助成だとか指導を受けられないというふうな面があろうと思いますので、そういう地域に対する指導も、またあるいは助成も十分考えていく必要があるんではなかろうか、こう思っておりますが、どうお考えでありましょうか。特に、特定地域以外の地域のそのような企業に対しての助成等はどうお考えですか。
  83. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 確かに第一の点の地方自治体との連携、これはその当事者たる自治体も非常に熱心でございまして、ぜひそこらは私どももその意見なり御協力も得たいということで、この特定地域法ができましてから、地域ごとに中小企業庁では地域担当官制度をとりまして、課長すべてをどこかの地域に張りつけしております。その課長はこれまでに何回もその地域には出張して、その都度市長なり県知事と会っていろいろ御相談をするようにしてきております。今後ともそういう面では新しい地域プロジェクトの支援策の活用等を通じて、その連携を強めていきたいと考えております。  それから、そういう地域以外、あるいはその前につくりましたいわゆる業種別の新転換法の対象、そういうもの以外に、御指摘のとおり、全国の中小企業者個々にあるこの環境変化の中で努力をしなきゃいけなくなっている企業がある。そういう判断に立ちまして、これも六十三年度からでございますけれども、そういった地域なり業種なりという指定の網の目から漏れた中小企業者のために、地域構造調整対策貸付制度という特別の低利融資制度を六十三年度から手当てをするということを今考えているところでございます。  それにまた、当然六十二年度からとっております一般的な下請企業対策、あるいは今回とろうとしておりますより中長期的な融合化支援策、これもまたそういった個々に存在しておる中小企業者の今後の新しい活路開拓の一つの手段にはなろうかと考えております。
  84. 井上計

    ○井上計君 今下請対策についても若干お話をいただきました。特に下請が、円高に伴って親企業、大企業が円高対策として相当な合理化、特に海外立地、海外生産というものが、これまた予想以上に進みつつあると思いますけれども、そのような大企業、親企業の合理化に即応できない下請というのがまだまだ相当多いんですね。それらの下請に対して今後どういうふうな、さらにもっとどんな影響が起きるのか、そのような下請に対してどういうふうな施策を考えるのかということは、かなり考えてはおられますけれども、もっと強力に進めていかないと来年あたりは相当大きな問題になるんではなかろうかと、実は私個人的にはそんなふうな危惧をしておるんですが、どうお考えでありましょうか。
  85. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 短期的には、おかげさまで全体の景況の上昇が下請企業にも全体としては裨益しておりまして、昨年後半から例えばこの円高以降急激に落ちておりました下請企業全体としての受注量、これは回復をしてまいりました。今年一月時点では前年比一〇五ということで、むしろアップになっております。それから、ただ受注単価、これはずっと下がっておりましたけれども、これもやや上昇傾向に全体としてはなっております。ただ、依然これは一年前に比し九七というような感じにつかまえております。  そういうことで、短期的にはある程度内需拡大の中で機械、鉄鋼等の下請企業もそれなりの受注量を確保するようになってきておると判断しておりますけれども、御指摘のとおり、中長期的にこれは日本国の一つの大きな特徴でございました下請企業構造という組織構造に大きな変革がもたらされつつある、そう判断をいたしております。  六十二年度から私ども、下請企業について新製品のテクノフェアによる市場アクセスの支援、あるいは下請企業アドバイザーによるいろいろな下請企業の高度化の技術的支援、それから下請企業のそういう転換に対する資金面の支援、こういう面を整備してまいりました。しかし、それだけで十分かということになると、これはなかなかそういった大きな構造変革の中では今後さらに抜本的といいますか、基本的な対策が必要になるかもしれないというふうに考えておりますけれども、それについては私どもより基本的にはもっと下請問題についての実態あるいは動向の把握、これが今後必要ではないかというふうに考えております。
  86. 井上計

    ○井上計君 下請対策等についてまだ若干私も実は意見があります。きょうは時間がありませんから、中小企業問題はこの程度にしておきます。また次の民活法の法案審査のときに、地域の下請問題ということについては若干お尋ねをいたしたい、こう思いますので、よろしくお願いします。  次に、先般発表された四全総では、名古屋圏を世界的な産業技術の中枢圏地域、このように位置づけておるわけであります。通産省ではこれに対して、中部圏の今後の産業技術開発、研究等々についてはどのようなお考えをお持ちであるの か、あるいはどのような計画を既にお立てになっておるのか等々について、簡単で結構ですからひとつお伺いをいたしたい、こう思います。
  87. 田村元

    国務大臣田村元君) 名古屋圏は、従来から特色のある地場産業を初めとしまして機械産業等の高い工業集積を維持いたしております。四全総計画におきましても、このような既存の工業生産機能の高い集積を生かしながら、世界的な水準の研究開発機能の集積などを図って世界的な産業技術中枢圏域を形成していこう、そういう地域というふうに位置づけておるものと理解をしております。  通産省としましても、従来から名古屋圏を初めとする地域における技術先端型の企業の育成や技術開発拠点の形成のために、テクノポリス施設や中小企業施設などを積極的に推進してまいりました。私がこの仕事につきましてからも、名古屋圏いわゆる中部圏というものについて格段の努力を傾けてまいったつもりでございます。  今後とも四全総の考え方も踏まえながら、名古屋圏の産業技術中枢圏の形成についていろいろな地域振興施策の活用を通じてその対応を検討してまいりたいと考えておりますが、井上さんはお地元でもあります。いろいろとまた私どもにお気づきの点もお聞かせを願いとうございますし、私もまた、自分で言うのもおかしゅうございますけれども、自分の郷里といってもいいわけでございますから、土地カンというものにはたけておるつもりでございますので、またいろいろと御相談申し上げたいと思っております。
  88. 井上計

    ○井上計君 ありがとうございました。委員長も愛知でありますし、大臣も隣県でありますから、お互いに地元のことという意味ではありませんけれども、しかし相対的に見てやはり名古屋を中心とする中部圏が既存の産業等から考えても、今大臣お話しになりました工業出荷額等から見ても、それらのいえば基礎になっているものをさらに拡大をしていくということが全体的に見て政策として一番得策であろう、こんなふうなことから特にお願いをし、申し上げているわけであります。  今大臣お話しのように、工業出荷額、愛知県だけで見ても全国の一〇%超えているわけですね。特にその中でこれからさらに発展するであろう、また発展させなきゃいけない付加価値の高い産業というものが非常に多いということになりますから、やはり今後の我が国のハイテク政策からしても一層重要性を加えるてあろう、こういう意味でぜひまた今後の通産省としてのいろいろな計画等に期待をしておりますので、お願いしたいと思うんです。  そこで、ただ残念なことには、そのような既に工業集積も非常に高い、特に先端産業である航空宇宙産業あるいは自動車産業は非常に進んでおるにかかわらず、研究所というのが実は非常に中部に少ないんですね。そういう意味でもっと今後、特に通産省にお考えいただきたいのは、中部地区の頭脳強化といいますか、そのようなものをぜひお考えをいただかなくちゃいけない、こう考えます。  その一つとしては、既に名古屋の東部、それから大臣の地元である鈴鹿山ろくですか、岐阜県の東部あたりに研究学園都市構想までいかないんですが、大体それに近いようなものがあるんですけれども、それをもっと機能的に一元化して、何も地域を一緒という意味じゃありませんが、あの地域に筑波研究学園都市クラスのものがぜひ相対的に見て必要ではなかろうかと、こう考えておるんですが、これは大臣でなくて結構ですが、通産省、そんなふうな構想は何かお持ちでありますかどうか。
  89. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) 先生御指摘になりましたように、中部地方あるいは名古屋圏が非常に高度の工業集積を持っているにもかかわらず確かに研究所の比率等から見ますと、特に東京圏への研究所等の一極集中の中でウエートが弱いということで、この面をどうやって強化していくかということが今後の中部圏、名古屋圏の高度化の一つの大きな柱だというふうに考えております。  それで私ども、先ほど大臣の方からも御説明申しましたようないろいろな施策をこれに活用すべくメニューをそろえてやっておるわけでございますが、今先生のそれとの関係で御指摘のございました研究開発都市構想のことではないかというふうに考えておりますけれども、三重県の東部とか岐阜県などに研究都市構想というのが幾つかございまして、こういうものを横の連絡をとった形で総合的な研究都市構想というふうに考えていく必要があるのではないかという考え方もあるわけでございます。私どもといたしましても、この構想がうたわれておりまして、実は政府全体といたしましても、国土庁が中心になりまして、そして通産省もこれに参画をいたしまして、名古屋の大都市圏の学術研究都市整備プロジェクト推進調査とちょっと長い名前でございますが、こういう推進調査というものを現在実施しているわけでございます。したがいまして、この総合研究都市構想につきましては、こうした調査の進展を十分踏まえまして今後検討を進めていきたいというふうに考えております。
  90. 井上計

    ○井上計君 大いにひとつ期待をしておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。  そこで、若干また今までの質問と関連しますけれども、特に航空宇宙産業なんですが、これが愛知県と岐阜県の両県の出荷額が現在五〇%を超えておる、五二%ぐらいですね。さらに今後一層シェアが拡大をすることは確実なわけです。ところが、我が国の航空宇宙産業を諸外国と比べますと、アメリカの十六分の一にしかすぎない。それからフランス、イギリスの三分の一、西ドイツの二分の一でありまして、ようやく最近カナダあるいはイタリアに追いついたという程度なわけですね。だから、我が国の航空宇宙産業というのが非常に立ちおくれをしておるというふうなことは明らかであろうと思うんです。  そこで、通産省と、同時に科技庁にお伺いしたいんですが、まず最初に、科学技術庁にお伺いするんですが、現在東京にありますところの航空宇宙研究所、これを愛知県にという移転の要請を地元ではもちろんしておりますし、また、例の一省一機関地方移転計画にも多分入っておったと思いますが、現在科技庁の内部ではどのようにこの移転問題については進行しているのか、まずそれをお伺いいたします。
  91. 青江茂

    説明員(青江茂君) お答え申し上げます。  科学技術庁航空宇宙技術研究所につきましてでございますが、先生御案内のとおり、現在航空宇宙技術研究所は三鷹に本所のほか、宮城県の角田等に支所を持ってございまして研究の用に供しておるというふうな状況でございます。目下のところ試験研究用のための新たな拠点というものを求めなければならないといったふうな状況下にはないわけでございますけれども、ただ、より長期的に眺めました場合、今先生御指摘のとおり航空宇宙関係の研究開発の今後の重要性ということにつきましては、論をまたないところではないかというふうにも考えてございまして、そうすれば、それに伴いまして新たな試験研究用の施設といったものの整備というものも可能性としては考えられると、そういうふうな問題の中で今先生の御指摘につきましても考えさしていただきたい、かように考えておるところでございます。
  92. 井上計

    ○井上計君 といいますと、今の御答弁からすると、新たに設けることについて今後必要が加わればそれは考えるけれども、現在の三鷹にある航空宇宙技術研究所を移転をする考えは全くないと、こんな御答弁ですね。
  93. 青江茂

    説明員(青江茂君) 特に航研の場合には大きな施設、例えば風洞といったふうな施設というものを保有いたしまして、その関係の各界の利用に供しておるという実態があるわけでございますけれども、これらの施設につきましては、いわゆる建屋と一体となっておるといったふうな状況でございまして、その移転につきましてはまずは極めて多額な経費といいましょうか、建屋と一体でございますので、これは物を移すというよりは新たに建てるというふうなことにもなるわけでございま す。そういう問題もあり、かつまた、今申し上げましたとおり、日々利用に供しておるということになりますと、その辺の中断ということも非常に大きな支障を生ずるといったふうな問題もございまして、具体的な移転計画の対象にはなっておらないという状況でございます。
  94. 井上計

    ○井上計君 余りこれ突っ込んで今とやかく言うこともどうかと思いますし、またあなたのお立場でそれ以上の御答弁できぬでしょうが、これはひとつ通産大臣にぜひお願いしておきますけれども、やはり研究所というのは、もちろんそれは移転には費用を要するでありましょうが、しかし地理的な条件だとか今後のやはり産業の発展的ないろんな条件等々考えて、適地に持っていくことが一番よかろうと、こう思うんです。  従来は東京にあったことが一番よかったかもしれませんけれども、今後の推移を考えるときには、やはり東京にあるよりもいわば中部圏、特に航空宇宙産業の非常に集積の高い、さらにこれがますます強くなっていく、あるいは十年後には実際に航空宇宙産業の八〇%ぐらいが中部圏に来る可能性があるわけですから、それらのことを考えるときに、これはひとつ積極的な移転計画を立てるべきだと、このように考えますので、これは一言申し上げておきます。御答弁要りませんが、大臣もぜひひとつ、その点恐らく大臣も御同感であろうと思いますからお願いをしたいと思います。  そこでもう一つ、時間がありませんから最後に、これは科技庁にお伺いするんでありますけれども、科技庁が六十年から官民一体で取り組んでおられる例の短距離離着陸機、STOL「飛鳥」が先般実験飛行に成功いたしました。私も素人でよくわかりませんけれども、三年ほど前でしたか、各務原に科技庁から御案内いただいて行っていろいろと説明受けたときに、これはすばらしい飛行機だなあと、これが成功すれば日本のような国土、また日本のような飛行場の条件が非常に限られておるところでは大変有効に使える飛行機だなあというふうに強く感じておったわけですが、今度の成功によってこれを今後どう進めていくのか。  何か聞くところによると、六十三年度中か六十四年度でこの試験を打ち切るとかいうことを聞いていますが、打ち切りということは、もう実際に生産への可能性が出てくるから打ち切るのか、あるいは予算面で打ち切るのか、あるいは何かほかにお考えがあるのかよくわかりませんが、それらのことと、今後これがここまで成功しているわけですから、今後の市場等から考えて実際に生産計画にこれを移すべきだというふうなことを考えますけれども、これらについて科技庁のお考えと、通産省はどのように今後お考えであるのか、これをお伺いしておきます。
  95. 青江茂

    説明員(青江茂君) お答え申し上げます。  「飛鳥」の飛行実験でございますけれども、今先生御指摘のとおり、先般、三月二十三日に一番難しいと言われてございました着陸の実験に成功いたしまして、予想を越えました非常に優秀な成果をおさめたというふうな状況にあるわけでございますけれども、この飛行実験は三カ年計画でもって、来年度いっぱいというふうな予定で今進捗中というふうな状況にあるわけでございます。  今後でございますけれども、これまでの「飛鳥」の開発それからこの飛行実験という過程におきまして得られましたデータといいますのは膨大なデータであり、かつ貴重なデータでございまして、これにつきまして目下整理中であり、今後何年かかかろうと思うんでございますが、データベースとして整備を進めていく予定にしております。そういたしますれば、その関係の方々から容易にアクセスができるというふうな状況にもなろうと思ってございまして、今後の新型機の開発でございますとか、そういったことに広く利用されてくるのではないかと私ども期待しておる次第でございます。
  96. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 「飛鳥」につきましては、昭和五十二年から科学技術庁の方で実験をしておられるわけでありまして、最近着陸実験も非常にうまくいったということについては私どもよく承知しているところでございます。  「飛鳥」という飛行機は、いずれにいたしましてもこれはあくまで実験機でございまして、実用機ができたということではなくて、現在実験機を使いまして新しい航法高揚力技術と申しますか、それだとか、コンピューターを使いました飛行制御技術あるいは高精度の操縦方式、こういったものについての新技術の実証をするのに非常に役に立つのではないかというふうに考えているところでございます。  先生も御承知のように新しい飛行機を、それでは実用機を開発するかということになりますと、これは技術的な課題が解決されなければならないと同時に、そのつくられる飛行機が世界じゅうのマーケットでどの程度売れるものであるか、つまり経済的にそろばんが合うものであるかというような点につきましても十分に検討しなければならないわけでございまして、昨今では少し大きな飛行機になりますととても一つの国の手には負えないということで、先年航空機工業振興法も改正していただきましたが、国際共同開発をしなければとても追いつかないというぐらいに金がかかりリスクも大きい、こういう性質のプロジェクトでございます。  そこで、科学技術庁で今集めていただいておりますデータにつきましては、私どもも航空宇宙工業会の中にSTOL委員会という特別の組織を設けておりまして、この委員会には科技庁の航空宇宙技術研究所の方、さらには航空機のメーカー、それからユーザーでございますエアライン等々の人々に集まってもらい、これにオブザーバーとしまして科学技術庁、運輸省、それに私どもも参加をいたしまして、「飛鳥」で得られますデータ及び国際的な市場動向につきまして、今後逐次検討を進めていくということにいたしているところでございます。  現在、先行きをどうこうというふうに申し上げるわけにいきませんけれども、何はともあれまず技術的なデータをよく解析し、それから世界的な市場動向を分析していくということになろうかと思います。
  97. 井上計

    ○井上計君 終わります。
  98. 大木浩

    委員長大木浩君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  99. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  100. 市川正一

    ○市川正一君 先般の所信表明におきまして田村通産大臣は、景気は全体としては着実な回復局面にあるものの、輸出型産地、企業城下町等の景況は依然としてはかばかしくない旨を述べられました。まさしく輸出型産地の中小企業の実態は深刻であります。  去る二十二日の所信に対する一般質疑において、私はその一例として新潟県燕市の金属洋食器などの業界について触れましたが、時間がなかったために労働省に一問だけお聞きするにとどまりました。本日は改めてこの問題を取り上げたいのでありますが、まず、金属洋食器やハウスウエアの業界の景況、あるいは労働災害の特徴などについて通産、労働両省から簡潔に報告を承りたいと思います。
  101. 広海正光

    政府委員(広海正光君) まず金属洋食器の関係でございますけれども、生産額が六十一年に前年比マイナス一八%ということになっておりますが、六十二年について見ますとマイナス一三・八%ということでございます。また金属ハウスウエアでございますけれども、六十一年がマイナスの一〇・一%、六十二年につきましてもやはりマイナスの六・五%ということで、依然として生産は停滞をしておりまして、景況ははかばかしくないという状況にございます。
  102. 北山宏幸

    説明員(北山宏幸君) 昨年の数字はまだ出てい ないわけでございますけれども、プレス機械等による災害統計で見てみますと、昭和六十一年、全産業で五千件の災害が発生をしております。そのうち金属製品製造業を含みます製造業では三千八百八件のプレス機械による災害が発生しております。
  103. 市川正一

    ○市川正一君 重ねて労働省に伺いますが、三月十日の朝日新聞は、「円高苦境で能率向上裏目指失う事故急増 昨年九十三人が百五十二本」と報道されています。これ自体極めてショッキングでありますが、この数字は三条労働基準監督署の調査を報道したものであります。果たしてこれでこの地域のすべてのプレス関係の事故を把握していることになるんでしょうか。いかがでしょう。
  104. 北山宏幸

    説明員(北山宏幸君) この災害件数は、いわゆる労災保険の給付データによって作成をしておりまして、休業四日以上の災害でございますので、休業四日未満の災害等につきましてはこれよりも多いというふうに思います。
  105. 市川正一

    ○市川正一君 おっしゃったように四日未満ということだけでなしに、この調査では一人親方とか夫婦で仕事をしているいわゆる労働者を雇用していない零細な業者の実態は掌握していないと思うんでありますが、つまりそこでの実態はもっと深刻なんであります。労働省は、事業主の報告や届け出を待つだけではなしに、こういう零細な業者の実態を積極的に調査して、適切な指導をまた対策をとる必要があると思うんですが、そこで二つの点を具体的に伺いたいんです。  一つは、三条労働基準監督署が二月十日に、プレス災害防止についてという指導通達を出しております。この趣旨をもっと零細な下請業者にも徹底するための具体的対策が私は必要だと思うんです。  それから二つ目は、先ほど申しました零細な下請業者の労働災害の実態をみずから調査してほしいと思うんですが、この二点について見解を承りたい。
  106. 北山宏幸

    説明員(北山宏幸君) 御指摘のとおり、先ほど申しました数字は労災保険で給付をいたしましたいわゆる労働者による災害の件数でございまして、労働者以外の、例えば一人親方であるとかあるいは夫婦の方で作業をされておられる方であるとか、そういう災害についてはのっていないわけでございます。ただ、こういった方々は大体家内労働法の適用があるというふうに思われますので、家内労働者として別な面から把握ができるのではないかというふうに考えております。  それから、二月十日付で、三条労働基準監督署が各業界団体それから事業者等に対しましてプレス災害の防止について要請を行っておりますけれども、これはいわゆる労働者を使用している事業者すべてを対象としているわけでございまして、なかなか中小零細までは徹底をしないのかもしれませんけれども、一応そういったところまで含めて要請をしたというふうに考えております。
  107. 市川正一

    ○市川正一君 やっぱり血の通ったといいますか、実態を掌握することとそれに対する生きた対策をやっていただきたいと思いますが、その具体的指導と措置をとりあえず当該地域にやっていただけるでしょうか、念のために確認しておきます。
  108. 北山宏幸

    説明員(北山宏幸君) 新潟労働基準局管内の三条労働基準監督署につきましては、管内にプレス機械を使用する事業場を非常に多く抱えているということから、従来から監督指導の最重点としていろいろ指導をしているわけでございますので、今後ともそういう形で徹底をするように三条労働基準監督署の方で指導をしていきたいというふうに考えております。
  109. 市川正一

    ○市川正一君 重要なことは、こうした労働災害が多発する背景にはいろいろ調べてみると商社の製造業者いじめ、元請企業の下請業者いじめ、これが横行しているという問題があります。  通産省に伺いますが、例えば一方的な工賃引き上げを押しつけ、これに応じないところは発注を打ち切る、ここにその関係書類がありますが、あるいは工賃を徹底的にたたいておきながら、支払いの際に一方的に円高の協力金という名目で支払い総額から五%ないし一〇%を差し引くなどのことがやられております。通産省は、こうした実態をつかんでいらっしゃるでしょうか。
  110. 広海正光

    政府委員(広海正光君) 親事業者の下請事業者に対します不公正な取引を防止是正するために、かねてから下請代金支払遅延等防止法に基づきまして下請取引の実態の把握に鋭意努めているところでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、公正取引委員会と協力いたしまして、毎年全国の親事業者を悉皆的に調査しております。また、必要に応じまして下請事業者に対しましても確認の調査を実施しておりまして、違反の疑いのある親事業者に対しましては立入検査等を行っている次第でございます。
  111. 市川正一

    ○市川正一君 私は具体的事実を指摘したんで、そういう事実に基づく対処を希望するんでありますが、今広海次長も言われましたが、こういう取引方法は独禁法違反の疑いが濃厚であります。そして、公取委員会が厳正に対処することはもちろんでありますが、通産省も公取委員会と協力してという表現をなさいましたが、毎年手分けをして全親事業者を対象に下請取引の実態調査を行っているわけですね。ですから、公取と通産省の中小企業庁とは一体となってやっている、どちらにも責任があるわけです。ところが、こうした事態が横行し、いまだに放置されている。通産省としてなぜそういうことがてきぱきと改善されないのか、そういう問題についての認識をお伺いしたいんです。
  112. 広海正光

    政府委員(広海正光君) 現在、燕地区におきましてそういう今先生御指摘になりましたような事実があるかどうかという点につきましては、今六十二年の下期分の調査の取りまとめをしている最中でございますので、具体的にそういうケースがあるかどうかという点につきましてはただいまのところお答え申し上げかねるわけでございます。  先ほども申し上げましたように、この不公正な取引の防止ということは非常に重要な観点でございまして、六十一年も十一万八千件の調査をいたしました。また、六十二年も引き続き同様の調査をしております。六十一年について申し上げますと、十一万八千件のうち改善措置を講じたものが約四千五百件ほどございます。そういうような下請代金支払遅延等防止法に基づきますいろんな対策、それ以外にいろんな講習会やなんかを開いたりあるいは指導通達を出したりして、そういう不公正な取引の防止に努めているところでございまして、昨年の暮れにも大臣名で関係の親事業所あるいは親事業者団体に対しまして、不公正な取引の防止に全力を挙げてほしいという旨の通達も出している次第でございます。
  113. 市川正一

    ○市川正一君 ここには前労働大臣もいらっしゃるわけですが、労働省、通産省、それに公取委員会が一体になってもっと実態をつかんでいただきたい。  この際、田村通産大臣に伺いたいんでありますが、本日は一つの典型として燕の例を取り上げましたが、大臣も所信の中で触れられたように、依然苦境にある輸出型産地のこういう零細下請業者のリアルな実態を積極的に調査し、不当な下請いじめをやめさせるように指導されることが重要であると思いますが、所信を承りたい。
  114. 田村元

    国務大臣田村元君) 私は、先般燕と非常に酷似した岐阜の関それから瀬戸等へ行ってまいりました。そしてまざまざとこの目で経済の二面性という極端な例を実は見てまいりました。これではいかぬ、あらゆる知恵を絞って真剣に対応しなければと、このように感じたところでございます。  私も部下を督励して、万遺憾なきを期して頑張る所存でございます。
  115. 市川正一

    ○市川正一君 さて、本日は八八年度予算案の委嘱審査でありますので、問題を最近顕著な増額を見せております政府開発援助、いわゆるODAについての質問に移らせていただきたいと思います。  政府のODA予算は年々増額を見せております。伺いたいのは、これは外務省になるかと思う んですが、八二年度と比較して八八年度予算案は率にしてどれぐらいの伸びになるんでしょうか。
  116. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 御説明申し上げます。  一九八二年度、昭和五十七年度のODA一般会計予算は四千四百十七億円でございました。六十三年度政府原案におきます一般会計ODA予算は七千十億円でございます。したがいまして、五八・七%の伸び率となっております。
  117. 市川正一

    ○市川正一君 八二年度というのは、私があえて選びましたのはちょうど臨調行革が発足した年であります。それと比べてこの六年間に、今お答えがあったようにODAは五八・七%の増、これはちょうど防衛予算の四三・一%増とともにまさに異常突出の双壁であります。これに反して中小企業対策費は二一・八%の減、文教費は〇・七%の減であります。まさに国民生活向けの予算は切り捨てられる異常事態であります。  次に伺いますが、政府は三次にわたるODAの中期目標を決めて拡充をしてまいりました。その実績とDACいわゆるOECDの開発援助委員会加盟国内での日本の位置づけはどうなっているか、外務省だと思いますが、承りたい。
  118. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 我が国の政府開発援助につきましては、今委員指摘になりましたように計画的に拡充をしてまいっております。これは、政府開発援助を通ずる日本の国際社会に対する貢献が、もはや今日において我が国の重要な国際的な責務であるという認識に基づいてなされているわけでございますが、その結果におきまして、一九八六年度、これが実績をとります上で最新のデータでございますが、我が国の実績は約九千五百億円、ドルに直しますと五十六億ドルというふうになっております。DAC諸国十八カ国の中で、この五十六億ドルという実績はアメリカに次ぎまして第二位の規模になっております。
  119. 市川正一

    ○市川正一君 金額や伸び率ではまさに顕著な前進が見られました。にもかかわらず、その質といいますか、内容といいますか、この点では国際的な批判があることもこれまた事実であります。  我が国の援助のどういう点が国際的に批判されているのか、またそれに政府はどう対応しようとしていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  120. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 量的には、ただいま申し上げましたようにかなりの勢いで伸びてきておりますが、まず量の面について申し上げますと、今日国際的に量の面で目標とされておりますのが、一国のGNP比〇・七%というのが一応国際的に掲げられてある目標でございます。これは国力にふさわしい貢献をするという意味での指標ということで一般的に受け入れられているわけでございますが、そのGNP比ということでございますと、まず我が国におきましては〇・二九%でございますので、国際的に一般的にも目標とされているというところからいたしますと、量的にもまだまだ努力をする必要があると私どもは感じております。  それから質の面につきましては、援助におきます一つは贈与の部分がどうであるかということで、贈与比率というものがよく議論になる点でございます。この贈与比率ということになりますと、一九八六年におきまして、我が国の贈与比率は大体六〇%ということでございます。その前の一九八五年は四七、八%ということでございましたので、この間にかなりの改善を見ました。他方、国際的にはこの贈与比率といいますのは大体八〇%、九〇%以上をいっている国が多うございますので、この面でもまだ相当な努力の必要があるというふうに考えております。
  121. 市川正一

    ○市川正一君 両大臣に見解を承りたいんでありますが、今ありましたように、我が国のODAが世界で大きな比重を持つ、五十六億を上回る八六年度の実績がある。したがって、我が国の経済協力の理念のあり方が極めて重要な意義を持ってくると思うんです。  そこで、ODAを進める理念について両大臣はどうお考えなのか、この際見解を承りたいと思います。
  122. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 委員御案内のとおり、現在私どもの経済企画庁では新経済計画を打ち立てていこう、こういうことで目下進行中でございまして、大体五月の下旬ぐらいまでには何とかこれを上げていこうという考え方に立っております。  その骨子といいますのを大きく前提として分けるならば、三つに分かれるのではなかろうか。一つは、国民の一人一人の暮らしをどのように位置づけていくか、また向上せしめていくか、豊かな暮らしに結びつけていくかという点であろうと思います。第二点は、もうここの委員会におきましても大変俎上にのりました遷都を含めた一極中心主義的な行政を多極分散型にどう改めていこうかという点でございます。第三点の大きな柱がただいま委員指摘のとおりでございまして、かつてのケネディ大統領の言葉ではございませんが、一人一人何を国家のために、世界のために貢献でき得るかを問えと言われたように、どのような形で私どもが国際的に寄与でき得るかという観点において当然果たすべき役割を尽くしていこう。  こういう経済計画を、目下進行中でございますが、その基本理念として考えておりますのは、我が国の経済協力はまず南北問題が根底にございます。相互依存と人道的考慮を基本理念といたしまして、開発途上国の経済社会開発に対する自助努力を支援し、もって民生の安定あるいは福祉の向上に貢献するということが基本方針でございます。  このために、我が国開発途上国に対する協力を国の重要政策として積極的に推進をしておるわけでありまして、これまでに三度にわたり中期目標を掲げ、ODAの充実に努めてきたところでございます。さらにまた、昨年決定いたしました緊急経済対策におきましては、現行の策三次ODA中期目標につきまして極力その早期達成を図ること、少なくとも七年倍増の目標を二年繰り上げるという形を達成していくということを決定するなどが経済協力の積極的な推進に努めている大きな柱である。このようにお答えをしたいと考えております。
  123. 田村元

    国務大臣田村元君) 大体今企画庁長官が申したとおりでございまして、私も全く同じ考えでございます。  あえて私なりの表現で御答弁を申し上げれば、我が国は発展途上国の貧困、飢餓等の諸困難を看過し得ないという人道的、道義的な考慮、さらに発展途上国の安定と発展が世界全体の平和と繁栄にとって不可欠であるという意味での国際社会の相互依存性の認識等に立ちまして、発展途上国の経済社会開発に対する自助努力を支援して、もって民生の安定、福祉の向上に貢献することを目的として経済協力を実施しておるところでございます。またそうなければならないのであります。  このような協力を効果的、効率的に進めるためには、相手国の実情に応じて援助、投資、貿易というこの三つが三位一体となった総合的な協力を行うことが重要でございます。こういう観点から、通産省としましても、特に我が国と経済的、歴史的関係の深いアジア諸国に対しまして、外貨獲得型産業の育成を支援する新アジア工業化総合協力プラン、これは私は昨年の一月にタイのバンコクで発表しましたプランでございます。俗にニューAIDプランと申しておりますが、これを推進しているところでございます。今後ともその着実な実施に努めていく所存でございます。
  124. 市川正一

    ○市川正一君 それでは外務省に伺いますが、アメリカの経済協力の理念はどうなっていますか。
  125. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) アメリカは世界第一の実績を誇る国でございますけれども、私どもが承知しておりますところでは、対外援助を重要な外交政策の一環ということに位置づけつつ、かつ理念におきましては基礎生活分野への援助を相当に重視いたしてやっておるというふうに承知いたしております。
  126. 市川正一

    ○市川正一君 あなたは踏み込んでお話がなかったんですが、その外交政策の一環という意味は、援助政策の根底にやはり安全保障といいますか、戦略的側面を極めて重視していることはもういろ んな文献で明らかです。そしてこの方向を具体化するために、アメリカは毎年戦略重点国というのを発表しておりますが、それはどことどこですか。
  127. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) ただいま御指摘になったアメリカの援助につきまして、いわゆる戦略的に重要視してやっている国という御指摘でございますが、恐らく御指摘になっておるのは、アメリカの援助実施の中でESFと呼ばれている部分がございます。これを御指摘になっているんだろうと思いますが、私どもが承知しておる限りでは、このESFというのはかなり政策的なあるいは安全保障的な視点を重視しつつ実施されておるというふうに理解しておるわけですが、これによりますと、例えばイスラエル、エジプト、パキスタン、こういった国がESFと呼ばれている援助部分の大きな受取国になっているというふうに理解しております。
  128. 市川正一

    ○市川正一君 そうすると、あなたのおっしゃるESFで結構ですが、どのぐらいの援助をしているのか、またそれは援助額全体の中でどれぐらいのウエートを占めているのか、ひとつ教えていただきたい。
  129. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 一九八八年度のアメリカ援助予算の数字で私ども把握しておりますものに基づいて申し上げますと、約八十七億ドルというふうに聞いております。そのうち今御指摘になりましたESFと呼ばれているものが約三十三億ドルというふうに聞いております。
  130. 市川正一

    ○市川正一君 今おっしゃっただけでも八十七億ドルのうちの三十三億ですから、約四割近い比率ですね。そうでしょう。今あなたはイスラエル、エジプト、パキスタンしか言われなかったけれども、我々の調査ではアメリカが戦略重点国として示しているのは少なくとも三十七カ国に及びます。  アメリカは毎年議会に対して戦略的に重要な国というのを報告しておりますが、その中には韓国もありますし、フィリピンもありますし、インドネシアなどがあります。そうでしょう。ちょっと正確に答えてください。
  131. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 戦略的に重要な国というのと、それからアメリカの援助におきますESFの供与国というものが完全に一致しておるかどうか、私もちょっと正確に存じませんけれども、いわゆるESFが出されておる国と申しますのは、二、三十の国に上っているというふうに聞いております。
  132. 市川正一

    ○市川正一君 そうしますと、アメリカの戦略重点国に対する我が国のODAがどれぐらいの水準になっているのか。あなたの今おっしゃった二十数カ国でも結構です。それはどうなんでしょうか。
  133. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 我が国の二国間援助の受取国でございますけれども、大どころは、上から十カ国申し上げますが、これは一九八六年の実績でございますけれども、中国、フィリピン、タイ、バングラデシュ、ビルマ、インド、インドネシア、パキスタン、スリランカ、エジプト、こういう順番に上から十番取り上げますとなっております。アメリカが先ほどのESFというのを出している国の中には、私の記憶が間違いなければ、先ほど申し上げましたがパキスタンが入っておりますし、それからこの中ではエジプトが入って、国としては一致しておるということであろうと思います。
  134. 市川正一

    ○市川正一君 議論を時間の関係で前へ進めますが、アメリカが示している戦略重点国三十七カ国に対する日本のODAは、資料をちょうだいして集計しますと、総額の約半分を占めております。  ところで、次に伺いたいのは、国連分類によるLLDC、いわゆる後発開発途上国ですね、今四十一カ国になっていると思うんですが、これへの我が国のODAの実績はどういうことになっていましょうか。
  135. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 国連におきましてLLDC、後発開発途上国という国が一定の手続に従いまして認定されておるわけでございますが、四十一カ国御指摘のようにございます。アジアではバングラデシュ、ネパール、ビルマ、こういった国がこの中に含まれておりますが、こういったLLDC諸国に対します我が国の援助実績は、二国間援助それから世銀等通じます多数国間援助合わせまして全体の約四分の一、二六%というものがこのLLDC諸国に向けられております。ちなみに一九八五年に比べまして約二割の伸びで伸びていっているということでございます。
  136. 市川正一

    ○市川正一君 そうしますと、LLDCに対するODAは、先ほど両大臣が理念としておっしゃった人道的見地からの援助というウエートが当然高いと見るべきだと思うんですが、そのとおりでしょうか。
  137. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 国際的な比較で見ますと、我が国の対LLDC諸国が今二六・四%となっておりますけれども、ちなみにほかの主要国を見てみますと、同じベースで比較された数字によりますればアメリカが一五・七%、イギリスが二八・二%、フランスが一九%、西独が二六・八%、イタリアが四三・四%、カナダが二八・八%、大体こういうふうになっております。これはDACの資料でございます。したがいまして、こういったほかの主要な援助供与国と比べまして日本のLLDC諸国に対します援助の比率と申しますのは、大体平均かあるいは若干いいところにいっているんじゃないかというふうに思われます。  なお、私どもとしましては、このLLDC諸国に対します援助ニーズ、これはアフリカ諸国それからアジアにも人口の大きなLLDC諸国がございますので、こういった諸国に対します援助の増強を図るということは心しておるところでございまして、今後ともこの比率の向上等には努めてまいるというふうに考えております。
  138. 市川正一

    ○市川正一君 量的にはそうなんですが、質的に見るとこのLLDCに対する我が国のODAの実績のうちでアメリカの戦略重点国に対するウエートがどうなっているのか、これはおわかりでしょうか。
  139. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 具体的に今御指摘のありました点を数字でもってちょっとお答えできる資料の持ち合わせございませんけれども、この中で先ほど田村大臣からも御答弁がございましたけれども、アジア諸国に対する援助というものが全体の地域配分の中で大きくなっております。大体六十数%から七〇%ぐらいがアジア向けということになっておりますが、その中で特に大きなのがアジアで申しますとバングラデシュでございます。あるいは今度ビルマがLLDCに入ったわけでございますが、こういった国が非常に大きな受取国になっているというふうには申し上げられます。
  140. 市川正一

    ○市川正一君 私どもの調査では、LLDC諸国四十一カ国の中に含まれているアメリカの戦略重点国で、最近ODAの援助実績があるのはビルマ、イエメン、スーダン、ジブチ、ソマリア、この五カ国です。この五カ国を集計しますと、これだけで四割を超えております。  確認をしたいんですが、議論を前へ進めていくために論点を発展させますと、このことは人道的な立場から実施するLLDCに対するODAすら、アメリカの戦略重点国に言うならば集中しているという状況の反映だと私は思うんです。つまり、日本のODAは、冒頭申しましたアメリカの戦略に従って実施されているということに相なるんではないでしょうか。
  141. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 日本の政府開発援助の実施につきましては、先ほども両大臣から御説明がございましたとおりでございまして、今日日本は世界で二番目の大きな援助国になっておりますので、その援助活動もアジア中心ではございますけれども、アフリカそれから中南米含めまして、全地球的な規模になっているというのが姿でございます。その中で、先ほどのように相互依存の観点あるいは人道的な観点を基本にいたしまして、相手国の開発努力の自助努力を側面的に支援していくということでやっておるわけでございます。したがいまして、いわゆる戦略援助というものはやっておらないわけでございます。  あくまでも相手国の自助努力を支援していくということ、それから世界的な見地からの対応ということ、それからもちろん我が国との二国間関係を十分配慮しながらやっていくということも当然 でございますので、こういったことを踏まえながらやっている実績が今日の数字になってあらわれている、こういうことではないかと思うわけでございます。
  142. 市川正一

    ○市川正一君 私は、今までの歴史的経過と事実に基づいて少しく問題を解明していきたいと思うんですが、そういうアメリカの世界戦略を補完しているという例は決して事実としても少なくないんですね。  例えば一九八一年に、当時の鈴木善幸首相は、日米共同声明の中で「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化してゆく」、こう約束をいたしました。それ以後、アメリカの肩がわり要求は極めて露骨な形で、例えばジャマイカ、タイ、パキスタン、トルコ、スーダン、エジプト、ペルシャ湾岸諸国等々、国名を挙げて援助をふやすように要求してまいりました。  八一年の春にアメリカから、ジャマイカを援助してほしい、こういう要請があった。ところが、ジャマイカというのはどこにあるの、ということで、有名な話でありますが、首相側近も面食らったが、訪米の手土産にしなければと大蔵省を説得して、約六十億円の有償援助を内定したというのが、これは朝日新聞が発行しております「援助途上国ニッポン」という本にも紹介されております。しかも、その後そのジャマイカが、カリブ海の中にある島国ですが、これがアメリカのグレナダ侵略に参画したことは周知のとおりです。また、最近も、ニカラグアに圧力をかけるためにアメリカが軍隊を派遣しましたホンジュラスについても、紛争が起こった八三年ごろから我が国のODAは急増をいたしております。  もともと日米諮問委員会の報告、これは八四年の九月でありますが、こう言うております。「日本のODAの六〇〜七〇%をアジアに向けてきたが、これはこの地域の安全に大きく貢献してきた。最近になってみられるエジプト、トルコ、スーダン、ソマリア、およびアラブ湾岸諸国の一部、さらにカリブ海地域などに対する援助の拡大は、戦略的に重要な地域にたいする援助の政治的重要性を日本が認識している」、こういうふうに評価をいたしております。  私、予算委員会の準備のちょうどその最中に読売新聞が報道し、予算委員会でも取り上げられましたが、フィリピンの米軍基地の貸与料の全部または一部を日本に肩がわりさせるという構想を、アメリカ上院でカールッチ国防長官がそれにグッドアイデアであると言って同意を表明したという証言も伝えられております。ところが政府、特に防衛庁筋の幹部がこの問題について、ODAでこれをやればいいというふうなことが公然と論じられたということも報道されているところであります。  私、幾つかの例を申し述べましたが、つまり我が国のODAは、人道的な立場というよりも、事実上アメリカのこういう世界戦略を補完する役割を果たしているということをこれらの事実が物語っていると断ぜざるを得ないのですが、これは質問してもあなたがそうだということはお答えにならぬでしょうから、私は事実をまず指摘した上で問題を進めたいと思うんです。  我が国の経済協力の考え方も、外務省経済協力局の「経済協力の理念 政府開発援助はなぜ行うのか」という中で、日本の総合的な安全保障を確保するための国際秩序構築のコストとしてというふうに位置づけられております。また、外務省の外交の現場でもこういう考え方は今や定着しつつあります。  例えば八四年六月、当時の安倍外務大臣も出席して開かれたアフリカ大使会議の概要報告はこう言っております。「近年、従来東寄りとされてきた国の中にも、経済困難克服のためには西側の援助が必要との認識から西側寄りの姿勢をとり始めている国が散見されるところ、かかる動きを助長すべきであるとの議論とともに、さらに事態の推移を客観的に見極める必要があるとの意見もあった。また、東側寄りの国であっても最貧国である場合や国と国とのコレクトな関係を保つためにはミニマムな援助は行う等関係はつないでいくべきであるとの意見もだされた」、非常にわかりにくい表現でありますが、要するに従来の南北という論理じゃなしに、さっき両大臣もおっしゃいましたが、東西の論理を優先して考えるものに変質したということを私はここからうかがい知るのであります。  経企長官に伺います。こうした、比喩的に言えば東西の論理に立った経済協力の姿勢を私は改めて、アメリカの戦略重点国に対する援助は削減する、そしてLLDC諸国へのまさに人道的な援助を増額し、その条件も緩和する、このことが国際国家日本の役割を果たすことになるんではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  143. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 多少私見も入るかもしれませんが、率直に私の見解を申し上げさせていただきますならば、言うなれば人道上世界人類の平和あるいはまたその希求のためにも、これはもう未発展の国々に対する相互援助というものは極めて大事であることは、先ほど理念としても申し上げたつもりでございます。これは私はイデオロギー、あるいはまたその国における歴史観というようなものは問わず、むしろある意味における倫理的な道のりからも、あるいはまた世界観からも、これは困窮している国を救っていくというヒューマニズムの精神がまず基本の中の条件の一になければなるまいと、こう思うわけであります。  例えば一つの例を挙げて言いますならば、つい先般のことでございますが、エチオピアの国の大使に近く私はお会いすることにしております。エチオピアといいますならば、あの国内騒動以来どちらかというとソ連圏内における国家になっているわけでございまして、在駐する軍隊もソ連の軍事顧問は言うに及ばず、キューバの軍事顧問団も入っているという国ではございます。しかし、私ども日本の国といたしましては、それに幾つかの形の変動があろうとも、差をつけるということなく、人類の一環としてどうやって救済していくかということに力点を置くべきであるということにまずもって重点政策としての我々はカテゴリーを見出しておるわけでございまして、その意味におきましても、委員御案内のとおり、特別に私どもが世界的な戦略市場の中においてこの援助計画を推進していくという気持ちはまずもって持っておるわけではないということだけは指摘しておきたいと思う次第でございます。
  144. 市川正一

    ○市川正一君 この点は、私は事実に基づいてやはり今後明らかにしていきたいということを申し上げます。  時間が迫ってまいりましたので、私今まで指摘いたしましたのはアメリカの世界戦略に従属したものであるという側面から取り上げてまいりましたが、もう一つの側面、それは日本の大企業の利益確保、利潤追求の露払いの役割を果たしているという側面であります。  その典型例の一つとして、七大ナショナルプロジェクトの一つであるシンガポール石油化学、以下PCSと申します、についてお聞きしたいと思います。  このPCSプロジェクトは、御承知のようにシンガポール政府から住友化学工業への石油化学コンビナート建設の協力要請があって、同社は当時、東南アジアが我が国石油化学製品の大きな輸出先であり、今後需要の伸長が見込める地域である、また、我が国原料ナフサの輸入の大部分の供給先でもあったということから進出を決定し、そして七五年五月に、シンガポールのリー首相の協力要請もあってナショナルプロジェクトに格上げされ、海外経済協力基金の出資がなされたものであります。  ところが、現状はPCSプロジェクトに石油メジャーであるシェルが資本参加を要求してきたと聞いておるのでありますが、その対応はどうなっているのか。これは通産省からお伺いいたします。
  145. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 御指摘のように、シンガポール石化プロジェクトにつきまして現在いろいろな方面で話し合い等が行われているところでございます。民間当事者間の話し合い、あるいは シンガポール政府の対応というのが本件の帰趨につきまして重要であるというふうに私ども考えておりまして、日本政府としましても日本、シンガポール間の経済協力プロジェクトとしての趣旨を踏まえながら、今後検討を進めていきたいというふうに考えております。
  146. 市川正一

    ○市川正一君 この経過から見ても、私は住友化学の判断はあるかもしれないけれども、日本政府もまたパートナーであり、独自の判断をすべきだと思う。  シンガポール政府がシェルに持ち分を譲渡するのであれば、それが全部であれ一部であれ、基金は出資を引き揚げるべきです。民間企業でやれるプロジェクトに、しかも相手国政府が関与しないものにそういう基金を使用するのは、私は妥当性を欠くと思うんです。しかも、その基金というのは日本国民の血税です。また産投が使われておりますから、庶民の血のにじむような郵便貯金などもこの中には含まれております。そういう資金をいわばシェルその他のえじきにするわけにいかぬと思うんです。私は、シンガポール政府にその旨を伝えるべきであると思いますが、いかがですか。
  147. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 本プロジェクトは、先生御案内のとおり、日本側におきましては、海外経済協力基金とそれから民間の出資等からその資本形成がなされているわけでございまして、日本側におきましても政府のみのプロジェクトではございません。それから一方におきまして、本プロジェクトはシンガポール側におきます雇用の改善あるいは産業構造の高度化等いろいろな面におきまして十分重要視され得るプロジェクトであるというふうに認識をしておりまして、先ほどお答えを申し上げましたように、現在いろいろな方面でのお話し合い等を見守っているという状態でございます。
  148. 市川正一

    ○市川正一君 時間が参りましたので、これで結びの質問にいたしますが、シェルはシンガポールに大規模な石油精製基地を持っています。この地域に石油化学センターを持つことは大幅なコストダウンが可能になる。さらに、欧米を中心に年産約五百万トンのエチレン生産能力を持っています。したがって、傘下のシェル・インターナショナル・ケミカル・カンパニーのアジア地域進出の足がかりになるという、そういう企業戦略があることは見え見えです。本来このプロジェクトはそういう民間のためにやるんだったらこういうものは出さぬはずです。したがって、こういうものに変質しようとするならば、日本政府がパートナーとして出している部分は引き揚げるべきであるというのが私は筋だと思う。そういう事態などを見てまいりますと、私はこの機会に日本の経済協力のあり方ということについてきちっとした基本を打ち立てるべきときだ、こう思うのであります。  私ども日本共産党は、巨額な国費を投入するこういう対外経済援助に対して五つの原則、すなわち民主的公開、自主性、新植民地主義反対、平和・中立、社会進歩を目指す国際的連帯という五原則に基づいて進めるべきであるということを提案しておりますが、この点では衆議院外務委員会その他で決議も行われ、また、冒頭両大臣から認識を伺いましたが、私は今、これは仮称でありますが、経済協力基本法というふうなものを制定する必要があると考えるのでありますが、そうして国会でもその法律に基づいて必要な規制もやる、監視もするというように運営をしていくべきであると思いますが、両大臣の所見を伺って質問を終わりたいと思います。
  149. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 何と申しますか、新しい基本方針を打ち立てていくべきであろうと、こういう仰せは非常に現時点の中では大変実り多いまた発言であると、同時にまた私どももそのようには感ずるわけでございます。具体化という問題になりますると、いろいろの意見も出てまいりましょうけれども、理念の点から申し上げますれば、やはり日本の国がつい先般、顧みて二、三十年前は援助を受けなければならないというような状況の中から脱却して、むしろ一人前以上な力を持ち、なおかつ世界の今や第一等国になりまして、これだけの大きな予算計上もできると同時に、外的部門においても大変な寄与でき得る国になったということだけは紛れもない事実でございますから、そこにおいて基本的な方針というものが私どもの国内になければなるまい、このように考えておるわけでございます。  したがいまして、私どもの中には新たに基本法の制定というものそのものは必要があるかと問われますると、もう現時点の中で私ども自体が私どもの理念に応じて、先ほど新経済計画の中でも盛り込んでやっているという考え方がございますから、それだけを特筆して新たに打ち立てるということはないまでも、今後とも現行体制の運用面での改善とかあるいは改革とかあるいはまた強化とか、あるいはそういう効率的、効果的な実施の確保に努めていくべきであるという、こういう考え方に立つものでございます。
  150. 田村元

    国務大臣田村元君) 我が国の経済協力の実施体制は全体として順調に機能しております。発展途上国から高い評価を受けておると考えております。私は国際会議にしばしば出ておりますが、発展途上国の閣僚から非常に身近なおつき合いを求められております。  今後ともこの現行体制の運用面での改善、強化を通じまして経済協力の一層の効果的、効率的な実施を図る所存でございます。  このために、現行の関係法令等の枠内での運用によって必要な措置がとれると考えられますので、いわゆる援助基本法とも申すべき法制定は今特に必要はないのではないかという感じがいたします。
  151. 市川正一

    ○市川正一君 終わります。     ─────────────
  152. 大木浩

    委員長大木浩君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、丸谷金保君が委員辞任され、その補欠として高杉廸忠君が選任されました。     ─────────────
  153. 木本平八郎

    木本平八郎君 先般、大臣が予算編成についてあいさつされました中に、七つの重点項目があったわけですね。この中で中小企業関係はきのう質問いたしましたので、あとの残りの六項目のうち、時間の許す限り四項目ぐらいについて質問したいと思うわけです。  まず、簡単な方からやりますと、四番目に「創造的飛躍を目指した技術開発の推進」ということをおっしゃっているわけです。  これについてひとつ、私としてちょっとアイデアみたいなものを申し上げたいと思うんですけれども、昨年二回にわたって私、筑波の電総研を初め通産関係の研究所を見学させていただきました。実はあんなに立派に研究を、建物だけじゃなくって内容も立派にやっておられるというのを見て、実はびっくりするというよりも非常に感激したんです。  これはぜひ今後ともこういったことを進めていただきたいと思ったわけですけれども、ところが六十三年度の予算、これ拝見しますと、合計が出ていないんでちょっとわからないんで目の子で私拾ってみたんですけれども、予算全部でこれは一般会計と特別会計合わして九百三十億円なんですね。私これ一けた違うんじゃないかと思ったんですけれども、計算し直してみてもやっぱり九百三十億円なんですね。今の日本の経済力を考えた場合に、それから将来の日本の行くべき方向を考えた場合に、もっともっと研究開発というものに金も力も入れなきゃいかぬじゃないかという気がするわけですね。  それでまた、研究開発も即効性のある商品開発みたいなものをやりますとまた貿易摩擦を起こすんで、筑波でやっておられるようなああいうグルントの研究にどんどん力を入れていって、そしてその成果を広く世界にばらまくというか、提供するということが必要なんじゃないかと思うんですけれども、この点について、まあ予算全体に制約がありますからなかなか思うようにいかぬと思うんですけれども、通産省としてはどういうふうにお考えになっているか、御所見を伺いたいんです。
  154. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 技術開発につきましては通産省、これまでも力を入れてきたつもりでございますが、先生お示しのように予算面で一けた違うじゃないか、こういうような御指摘もございますが、御案内のような財政事情のもとでございまして、特に私ども通産省技術開発に関します予算はいわゆる一般経費の範疇に入ったものでございますから、これまで年々シーリングの制約を受けて減少をいたしてきております。  ただ、そうした中で、やはり基礎的な面におきます技術開発の必要性ということについての国の役割も大きいということでございますので、実は今年度の予算におきましては、これから国会にも法案を提出いたしておりますので御審議をいただきますが、それぞれの個別企業では建設ができないような大規模な、しかも共通的に利用される試験研究設備につきまして、それを国の手で建設をして広く一般の使用に供すというようなことも考えておりますし、新エネルギー開発機構を改組いたしまして、そこで直接国から出資を受けて研究をする、出資でございますと投資的経費ということになりますので予算的な面での制約は幾分楽になりますので、そういう方面でいろいろ知恵を出してやっているところでございます。  またこのほか、直接国の予算ではございませんが、産業投資特別会計からの出資等を受けて、基盤技術研究促進センターでの出資、また無利子融資というようなこともやっておりますし、技術開発の重要性につきましては十分認識した上で、いろいろな制約のもとで最大限の努力を払ってきているところでございます。
  155. 木本平八郎

    木本平八郎君 この後法案が出てくるというのは私も承知しているんですけれども、ぜひそういう方面で積極的にやってもらいたいと思うわけです。  それで、予算がないという点において私一つアイデアがあるんですけれども、大学なんかに冠講座というのがありますね。木本講座とか杉山講座とかあって、金を寄附した人の名前をつけて研究しているわけですね、その人のためにやっているわけじゃないですね。今現在、日本には企業が冠講座を設けているというケースがあるわけですね。大学じゃなくて、こういう国立の研究所に個人が寄附して、例えば十億円なら十億円単位で寄附していく。それで講座を設けてグルントの研究をやるということで、それはもちろん所得から控除されるわけです。  そこで、私はそういう人たちに対して勲章をやったらどうかと思うんですよ。勲章というのは、何かお金をうんと持った人はやっぱり次は名誉が欲しいらしいのですね。それで失礼ですけれども、皆さん方とか我々議員はそんな勲章をもらう必要ないと思うんです。もっともっと社会的に貢献した人にやると、一千億円寄附すれば勲一等やってもいいと思うんですがね。  それはどうしてかというと、今のように税金だけでは富の再配分はなかなかできないのですね。そうすると、積極的にそういうふうに喜んで自分から出そうという人には出してもらって、税収の不足を補うということも私は非常に意義があるのじゃないか。例えば、東京近辺なんかでおばあさんでビルを二つぐらい持っていて、何千億円という資産を持っている人がおるわけです。これは死んだらもう相続税ごっそり取られるだけで、寄附した方がいいということがあるかもしれぬ。  私は、やはり冠講座というのを今後国立の研究所で考えていくべきじゃないかと思うんですが、ちょっと田村大臣に御所見だけ承りたいのですが。
  156. 田村元

    国務大臣田村元君) 大変積極的な魅惑的な御意見なので、ちょっと今どういうふうにお答えしたらいいのか、しかしおもしろいアイデアではありますね。
  157. 木本平八郎

    木本平八郎君 ぜひ考えていただきたいと思うわけです。  それで、ちょっと時間を急がないといけませんので急ぎますけれども、次は第三項目目の「地域の活性化」なんです。  これはいろいろあると思うんですけれども、何といったって一番問題は、大臣は井上議員なんかと一緒にいつも遷都ということをおっしゃるんですけれども、私も遷都は大賛成なんです。やはり東京の一極集中を地方に思い切って移さなければいかぬ。これは東京に一極集中したということによって非常に生産性が上がったわけですね。金とか物とか人とかいうのを中央に集めて効率よく使ったために日本が非常に発展した。しかしもうその経済発展というのはここで少しいいんじゃないか。私はむしろ二十一世紀に備えて次は収縮の段階というか縮まる段階で、そして次に飛躍する、このままで伸び切っちゃいますともうそのままタウンしちゃうんじゃないかという気がするので、ここは意識的にやはり収縮するということが必要だろうと思うんですね。  したがって、地方に分散するときにぜひお考えいただきたいのは、これから日本は非効率を目指す、不経済性を目指す。非常に言い分はパラドキシカルなんですけれども、したがって遷都する場合も、例えば都を中京とか京都とかに持っていくんじゃなくて、思い切って熊本の方まで持っていっちゃうわけですね。あるいは北海道でもいいんです。それから省庁もうんと遠くにやっちゃう。そうすると、必然的に交通網、通信網、あらゆる便宜をそこにつくっていかなきゃいかぬわけですね。そうすると、十年二十年たちますとそこに力が蓄えられてくるわけですね、全国的に。それが次の飛躍のパワーになると思うんですよ。  だから当面はむだを承知で、あるいは非効率を承知で、そして十年か二十年は地方へ移して、そしてそこに、地方に力をつけさせるということが私は必要じゃないかと思うんですが、その辺の御所見はいかがでしょうか。
  158. 田村元

    国務大臣田村元君) 私実は遷都という言葉を使ったことは一遍もないんです。国会を持っていけと言うんです。遷都ということになりますと、天皇のお住まいとかいろんなことになりましょうから、私は国会を持っていけ、こう言っておるわけです。通産大臣として言っておるわけじゃありません、一個の政治家として言っておる。  そうなりますと、議会がどこかへ行きますと嫌でも各省庁ついてくると思うんです。今は各省庁なかなか移転したがっていないようですけれども、国会との便宜上移転することを好まないのかということを聞いて、そうじゃありませんと言うやつがおったら、国会をよそへ持っていくときに、おまえ来ぬでもいい、こう言ってもいいんじゃないかと思うぐらいです。  でございますから、今のお話、前段のくだり、僕はおもしろい話だと思うんです。どこでもいいわけです。私は浜名湖と言っているんですけれども、これは気候も温暖でありますし、土地も十分あるし湖もあるし、外交官なんかの場合でも外国のVIPを遇する場合でも便利だと思います、名古屋もそばにある。それはどこでもいいんです。北海道でもいいんです。網走でもいいし、それこそ鹿児島でもいいと思います。  その場合といえども、やっぱり各省庁は、通産省は島根へ行け、建設省は稚内へ行けと言って分けるということは、これは国会が許せばそれでいいんでしょうけれども、国会がもうおまえの答弁要らぬと言うんならこれはみんな喜ぶでしょうけれども、そうもいかぬでしょうからそこいらの問題ございましょうけれども、まじめな話、今おっしゃったことは私は基本的に賛成でございます。ただ極端なことになりますとどうかとは思いますけれども、そこはいわゆる常識的な判断でございましょう。そういうことは私いつも言っておるわけです。
  159. 木本平八郎

    木本平八郎君 私も、まず国会を持っていかなきゃいかぬと思うんですね。それができる時分にはここにおられる方々はほとんど引退されているでしょうから、今ここで決議しておいた方がいいと私は思うんですよね。  それから、省庁を持っていく場合、私はやっぱり許認可権はこの際地方自治体に移しちゃう、そして政策官庁としてであれば、不便なところへ 行っても余り国民の側から見てそう影響がないんじゃないかと思うんですね。したがって、そういったところもあわせて考えていただく必要があるんじゃないかという気がするわけです。  それで、第七番目に「快適でゆとりのある国民生活の実現」ということをおっしゃっているわけです。これはぜひやっていただきたい。  今までの日本の経済政策というのは、生産大国といいますか、生産、それから経済成長、拡大、そういったものが優先されて、どちらかといえば消費者とか国民生活というのは後回しにされてきたわけですね。しかし、ここまで日本の経済力が大きくなったんですからもう生産はいいんじゃないか、経済志向はちょっともういいんじゃないか、少し人間の快適な生活をということでこれをお書きなったと思うんですけれども、それでまず経企庁にお伺いしたいんです。  経企庁長官の話の中に、生活関連物資の対策及び監視ということがなにされているんですけれども、具体的にはどういうことを考えておられるのか、簡潔に御説明いただきたいんですが。
  160. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 先ほども、私も新経済計画の中の一つの柱として申し上げましたが、特に私どもの考え方といたしましては、我が国においては近時為替レートで換算した一人当たりの国民所得は世界最高の水準になったということなどを考えまして、経済力というものの高まりはさすが目覚ましいものがあるということを肯定しておるわけでございます。  しかしながら、住宅とか社会資本の整備ということになりましょうか、これのおくれが特に目立ちますし、長い労働時間、特にいわゆる内外価格差の問題等は国民生活の豊かさの実感から見ますると解決を要する問題も数多いのではなかろうか。すなわち皮膚感覚的に豊かになったという感覚はまだないと思っている人も相当いるということも感ぜざるを得ません。  特に住生活面においての立ちおくれは豊かで質の高い国民生活を実現する上で大きな隅路となっていることは事実でございまして、そういう観点から、国民生活審議会の住生活特別部会というのがございますが、ここで豊かな住生活実現のための方策について、先般ではございますが、報告書を取りまとめて、私もいただいたばかりのところでございます。  政府としましては、同報告の趣旨を十分踏まえて住生活の向上に全力を尽くしますとともに、社会資本の整備のおくれを取り戻す、それから労働時間の短縮、これも、田村通産大臣も御指摘いただいておりましたが、やはりある意味では官庁、金融機関というものの実施がないとなかなか言うはやすく行うはがたいという点も事実でございましょう。円高差益の還元等もございます。そういったもの、内外価格差の縮小等の各般の施策を推進いたしまして、そして快適でゆとりのある国民生活の実現に努めてまいりたいと、こういう考え方に立っておるものでございます。
  161. 木本平八郎

    木本平八郎君 ぜひそういう線で今後は経済企画庁、まあ公取にも申し上げたいんですけれども、経済企画庁とか公取が先頭に立って経済をリードしていただきたいと思うわけです。  例えばここ二、三年、民活ということを政府が主唱されました。私は大賛成なんです。ところが、どうもその間にどこかで何か狂っちゃったという感じを今現在受けているわけですね。それはどういうことかといいますと、民活民活ということで民間の金を動員してやったのはいいんですけれども、結果的には東京を初めとする土地の高騰だけが残っちゃったという感じなんですね。  サラリーマンの立場からしますと、もうこの近辺では持ち家というのは一生絶望的なんですね。困難とか難しいとかというんならいいですけれども、絶望的というのはこれはやっぱり非人道的ですね。これはまさに政治の大責任だ。非常に皮肉な言い方をしますと、私は民活方式というのはサラリーマン窮乏化政策ではなかったか。少なくとも結果的にそうなっちゃったわけですね。  こういうふうなことで、やはり今後ともいろいろなことを政府がやりますと、政府は何も善意でやっておられると思いますので、中には国債の百六十兆円を減価させるためにインフレ政策をとったんだなんといううがった言い方をする人もいますけれども、私はそこまで思いませんけれども、よほど注意していただかないと、善意でおやりになったことも、このくらい経済が大きくなってきますと、ちょっと狂うとぐうっと変な方に行っちゃうということがありますんで、ぜひこの辺は注意して政策をとっていただきたいと思うのですがね。
  162. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 委員指摘の点は、私ども鋭意腹中におさめまして、一番論議の対象になっておる点でございます。けさほども、大体サラリーマンが住生活を営めるという許容力、大体どのくらいであるだろうか。坪五十万円単位が相場であるといいますると、東京都内には全くもう既に見当たりません。私の故郷の例を引いて申しわけございませんが、私の故郷の果ての果てである上野原地区が五十万と、こういうことでございますから、そのような中にあって、とても問題はあろうかと思います。  そこで、近年の東京の地価の上昇というものは、国際化や情報化による事務所の需要の増大、あるいはまた住宅地における買いかえの需要の増大、あるいはまた投機的な取引等が、金融の緩和状況にも支えられるなどのいろいろの要因がございまして、複合的に影響して出てきたものだなと、このように考えているものでございまして、御指摘のような民活政策が地価高騰を直接引き起こしたものとは必ずしも言えないとは思っておるのでございます。  そこで、最近東京都心部を初めといたしまして地価の鎮静化の傾向が見られております。しかし、先ほど言うたように、現実的に私どもが着手でき得る問題点にはまだ至っておらないという点でございますから、現実の地価水準と平均的な勤労者の年収との関係で住宅を取得できるような地価水準との乖離は依然として大きく、思い切った土地対策を進めることが大きな乖離を埋めていく問題になっていくのではなかろうかと、こう考えるわけです。  私ども企画庁といたしましては、今後とも関係省庁と、この点はもう先生御指摘のとおり、鋭意懸命に努力をいたしまして、十分連絡をとりつつ、積極的に土地対策問題とは取り組んでいこうと、このように決意をしておる次第でございます。
  163. 木本平八郎

    木本平八郎君 ぜひそれを強力に進めていただきたいと思うのです。やはりこれからは、先ほども申し上げましたように、消費者中心の行政に移っていただきたいと考えるわけですね。  これ、ひとつまた手っ取り早いことでのお願いなんですけれども、現在の政府がやっている許認可とかそれから行政指導とかそれから諸規制、こういったものはみんな、みんなとは言いませんけれどもほとんどが生産者向けに、生産者擁護というか、健全なる産業育成ということを中心に組み立てられてきたんですね。今までの日本なら、私はそれはもうそれでよかったと思うのです。しかし、もうここまで経済的に充実してきますと、こういう許認可とか規制のあり方というのは、かえって消費者中心に変えていかなきゃいかぬと思うのですね。  したがって、ぜひ通産省だけでも、これは経企庁の方は全般的にチェックしていただきたいんですけれども、通産省の方も、特に通産省というのは産業を育成して、産業界のゴッドファーザーみたいな存在ですから、どうしてもそういう通産省関係の許認可とか、行政指導、諸規制に生産向けのものが非常に多いんじゃないか。だから、思い切って私はこれを緩和していただきたい。廃止していただきたいと思うんですが、杉山さんいかがですか。
  164. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 通産省のやっております許認可等が産業サイド寄りであって、消費者サイドの観点が欠けているんじゃないか、こういう御指摘でございますが、私どもは必ずしもそう思っておりませんで、最近の実情に基づきまして、そ の都度許認可制度のあり方については見直してきているつもりでございます。ただ、これは私どもだけではございませんで、政府部内でも総務庁を中心といたしましたいわゆる臨時行政改革推進委員会等におきましてこういった問題が取り上げられております。  そういったところで出されました結論につきましては、私どもこれまで十分尊重してそれを実行してきておりますし、また現にその作業が進められているところでもございますので、今後とも今御指摘のような方向に従っての許認可制度のあり方の見直しというものは、私どもとしてもぜひ重点を置いて続けていきたいと思っております。
  165. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、これは経企庁にまたお願いがあるんですけれども、率直に言って、日本の消費者というのは外国に比べて非常におくれているという感じがするんですね。何かありますと、すぐお上に泣きついていくわけですね。例えば何とかが高いから何とかしてくれとか、何とかがぐあいが悪いからあれを取り締まってくれとかいうことで、それは国会にも来ますし、請願なんか見てもみんなそうなんですね。みんなとは言いませんけれども、非常に多いんですね。  むしろ外国だったら、これはドイツなんかもそうですし、アメリカなんか特にそうですけれども、何かメーカーがおかしなものをやっているとか、ぐあい悪けりゃすぐメーカーに押しかけていくわけですよ。これはついこの間の新聞にも出ていましたけれども、それでメーカーが言うことを聞かなけりゃ不買運動をやろうじゃないかとか、むしろ旗を立てて気勢を上げて消費者がみずから対決しているんですね。ところが、日本の消費者というのはすぐお上に言って、お上がやらなきゃだめだとか、政府はどうしているかとか、そういう発想なんですね。これでは私は、これからの消費者の生活というのはなかなかうまくいかない、やっぱり消費者が自分の問題として積極的に取り組んでいくということは必要だと思うんです。そういう点で、経企庁にぜひそういう意味の消費者教育というのに力を入れていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  166. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 全く今委員指摘のとおり、私どもも切実に感じておる問題でございまして、もう御指摘はそのとおりであると、こう私はまず同感の意を表しておきたいと思います。  特になかんずく、昨今話題になっております悪質な商法などによる消費者の被害を絶って、豊かな消費生活を確保するためにも消費者教育の推進は委員指摘のとおり絶対欠くべからざるものである、こう思います。  政府といたしましては、消費者保護基本法の第十二条に定められているところに沿いまして、従来から消費者行政の柱としてその推進を図ってきたところではございます。また、経済企画庁の我々といたしましては、委員から御激励賜りましたように、昨年十月から消費者教育を考える研究会、これは座長を元東大学長、今成城学園長でございます加藤一郎先生にお願いいたしまして、私も既に二、三回お邪魔させていただきましたが、文部省の協力も得まして、そして消費者教育の推進の具体策について検討を行っております。そして先般その報告書が取りまとめられたところでございまして、間もなく私も拝見させていただけると思います。  今後は本報告書の趣旨などを十分踏まえまして、消費者教育の一層の充実に委員指摘のとおりに励んでいきたいと、このように考えている次第でございます。
  167. 木本平八郎

    木本平八郎君 それでは、第二番目の、「国際社会への積極的な貢献」という点に話を移したいんですが、まず抽象的なことをお伺いしたいんですけれども、今日本は世界のGNPでは一番目になったとかあるいは一人当たりが一番目になったとか、非常に経済大国になったわけですね。それで非常にバーゲニングパワーみたいなものも大きくなってきた。こういうことで、我々日本の役割というか地位というのが非常に違っていると思うんですね。その辺をどういうふうにとらえておられますか、まずその辺をお聞きしたいんですが。
  168. 田村元

    国務大臣田村元君) 今おっしゃいましたように、今日我が国は世界経済において枢要な地位を占めるに至っております。まさに世界の中の日本として今後とも世界経済の持続的成長に向けて、対外不均衡を是正しながらその経済的な規模にふさわしい国際社会への貢献を行っていくことが重要な課題でございます、申すまでもありません。  先般、大変皆様方には御迷惑とは存じましたけれども、私は西ドイツのコンスタンツへ参りました。これは西独のバンゲマン経済大臣が呼びかけた貿易大臣会合で、三十何カ国、途上国の方々も随分来ておられました。そのときのバンゲマンの私に対するインビテーション、そのレターの中にこういうことが書いてございました。予算審議で大変だろうと思う、その事情は自分も同じ立場でよくわかる。しかし、あなたは来なければならない。なぜならば、日本の貿易担当大臣が出席しない貿易大臣会合というものは何の意味もないと、こういうことでございまして、私は行ってよかったと思います。行って、バンゲマンが、つまり西ドイツが議長をやり、そしてその取りまとめ、総括というのを頼まれて、私が全部やってきたわけです。  そういうことから、日本の経済的地位というものは確かに自覚しなければならないと思います、もちろんおごってはなりませんけれども。このような観点から、我が国としましてはODAの積極的な拡充、特にグラントエレメントなんかの拡充は必要でございましょう。それから、途上国の経済、技術支援のためのニューAIDプランの積極的な推進とか、あるいはまた、ガット・ウルグアイ・ラウンドの一層の推進を図る。先般のコンスタンツ会合でもこの点に集中したわけでございます。  それから、国際的な経済政策協調のもとで、国内的には内需中心の経済成長を確保して、国際協調型産業構造への転換を実現しながら、諸外国との円滑な通商関係の維持、発展等に全力を挙げなければなりません。今や国際分業というものはいやでもなさねばならぬことでございます。その戦列に加わらなければなりません。また、先進国として、経済大国として、とりわけ日米独の政策協調というものは絶対に必要でございます。また、高目の経済成長を図りつつ、日本のインフレなき内需拡大というものを図っていかなきゃならぬことも当然でございます。  ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムなど、基礎科学研究の推進を通じて科学技術面でも積極的な国際貢献を図っていく必要がございます。日本の基礎科学というものは今や高く評価されております。でございますから、そういう点も十分に配慮しながら、今後もろもろの点に取り組んでいかなきゃならぬと、このように考えております。
  169. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) ただいまゴッドファーザー、じゃない、通産大臣から答えていただきましたように——頭の中に先ほどの言葉がずっと残っておりまして、ついつまらぬことを発言しまして、申しわけございません。言うなれば通産省のゴッドファーザー、我々の先輩でもありますし、そんなことでお許し願いたいと思います。  まあ全くその言葉に尽きるわけでございまして、ただ一点、発展途上国への経済協力につきましては、政府開発援助の第三次中期目標について、その早期達成を図るとともに、発展途上国への資金の還流、拡大のために積極的な役割を果たしていく、このことも私どもも付言をさしていただきながら申し述べたいと思います。  以上、全部通産大臣に右へ倣えでございます。
  170. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、今大臣おっしゃいましたように、私は、日本というのは双羽黒みたいなものかもしれぬけれども、一応横綱になったと思うんですよね。それは確かに益荒雄みたいにすばらしい相撲取りもいますけれども、横綱になったらやっぱり横綱の相撲を取らなきゃいかぬ。手をちゃんとついて立つとか、立ち上がってすぐ変わり身をやっちゃいかぬとか、いろいろ横綱相撲と いうのはあると思うんですね。それをやっぱりやれということ、特にアメリカからの要求が非常に強いと思うんですね。余り勝つことばかり考えてちゃだめだと、横綱になったんだから横綱らしくやれということを言っていると私は思うんです。  それで、例えば自由経済を日本がやっていこうと思うんなら、あなた方も自分の市場を開放して自由経済をやりなさいと、自分の方は閉めておいて自由経済自由経済と言うのは、これはもうアンフェアだと、ずるいと。あるいは約束して、これは竹下総理が行かれて、あれ約束されて実行されなかったというのも大変な一部では反響があるんですよね。総理が言ったことを実行できないというのはとんでもないと。これは日本の役人が抵抗したか、業界が抵抗したか知りませんけれどもね。それはやっぱり大変なことなんですね、彼らにしてみたら。ずるいとか、アンフェアという言葉、日本人が感じるよりももっと彼らはビビッドに感じるんですね。だから、その点はもっと我々としても真剣に受けとめなきゃいかぬと思うんですよ。  それで、最近、私非常に心配なのは、これは大臣も同じお考えじゃないかという気がするのは、どうも最近の日米関係というのは昭和十四年とか、十五年ぐらいの状況のような、第二次大戦前夜になってきているんじゃないかという気がするんですね。例えば日本側に非常に被害者意識が強いんです。アメリカ側はどんどんABCDで包囲網をしてくる、石油は禁輸する、綿は出さない、そういうふうにどんどん日本はもう追い込められて殺されちゃう、締めつけられちゃうという被害者意識が物すごく強くなってきているし、それで一方は、英米何するものぞというふうな意気軒高たるものがあるんですね。これは経済的な自信でしょうね。こういう状況というのはまさにファッショなんですね。こういうファッショが進むと私はもうえらいことになっちゃうという気がするんですよ。  したがって、政治というのは常に国内向けを考えて、対外的に非常に高姿勢をとり、強腰をやるというのは大体どこの政府でもやっていることですけれども、最近のアメリカとの交渉を見てみますと、もうだめなことがわかっていて余りアメリカ側にぎゃあぎゃあ言っていると、アメリカがますます不信感を高めてくるわけですね。  それで、私なんかその一部かもしれませんけれども、そういうのが、もっと国会でおまえアメリカのことがわかっているんだからはっきり言わなきゃだめだということをやかましく言ってきているわけですよ。そういう点で少し日本のその交渉の仕方というのは、これはもうわかっていておやりになっているんだと思うんですよ、各大臣が行っておられるんですから。しかし、わかっていておやりになっているにしては余りにも後に影響が大き過ぎる、アメリカ側に残している問題が。今はこれでいいですけれども、後で申し上げますけれども、来年あたりになると、こういうものが蓄積されていると大爆発を起こすんじゃないかという気がしますんでね。  その辺は大臣、実際にアメリカ交渉されていましてどういうふうなアメリカ側の感触を受けておられるか、差し支えない範囲でお聞きしたいんですが。
  171. 田村元

    国務大臣田村元君) 今例え話としておっしゃいましたことではありますけれども、昭和十年代の日米関係と今の日米関係は基本的に違うと思います。昭和十年代の日米関係というのは日本という、要するにジャパンバッシングですね。ところが、日本というけんかたれがめちゃくちゃするもんだから、このけんかたれ財産あるわけじゃない、それじゃ締め上げてやろうかというようなところがあったと思うんです、率直なことを言って。  ところが、今はあの成金めがというところがありまして、成金が成金なりにちゃんとすればいいんですけれども、我々一つの土地に住んでいますね。成金、別に金もうけて悪いわけじゃないんですが、成金がお宮さんの寄附も運動会の寄附もそれなりに分相応にきちっとするというふうにすればいいんでしょうけれども、そこいらでトラブルが起こるというようなところがあると思います。でございますから、私は基本的に違うと思いますけれども、防衛問題ではこれはうまくいっているんですし、それから特に政府間はうまくいっているんですが、問題は議会なんですよ。まあ日本の議会は非常に温厚で品がよろしゅうございますけれども、議会が非常にいらつきを示すというところがございます。  しかしながら、アメリカ側といろいろと談判する大臣、それぞれその人の個性があると思いますから一概にはちょっと言えないかもしれませんが、私は今日までいろんな問題でやり合ってきましたけれども、言うべきはきちっと言っております。向こうがそう言ったからといって、アイ・シンク・ソーばかり言っておったら、これはもう問題にならぬので、だから何を言うかといってはっきり物を言う。ただし約束したことはきちっと守らなきゃなりません。これはアメリカだけじゃございません。諸外国すべてそうです。にやにやしてその場をだますというような隠ぺい、糊塗するようなやり方というものはもう通用しません。でございますから、はっきり物を言って、そしてだめなものはノーと、何と言われてもノーと。しかし、いいことはオーケーと。オーケーをした以上は必ずそのレザルトは出す。こういうふうにしませんといけないと思います。  今御質問の御趣旨、そういうことを言えということであっただろうと思いますが、私は私の流儀としてそれをはっきりとやっておるつもりでございます。
  172. 木本平八郎

    木本平八郎君 私の知り合いのアメリカ人、これは日系のアメリカ人なんですけれでも、それがこういう言い方したんです、必ずしも私はそう思わないんですけれども。日本は憲法九条で戦争を放棄しているわけですね。そこに「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と。また最後の方には「国の交戦権は、これを認めない」と、まあ交戦権はいいんですけれども、だから国際紛争を解決する手段として武力を使わない、これは当たり前なんですね。ところが、武力じゃないけれども、日本はバーゲニングパワーというか経済的な非常に優位性を持ったパワーを使っているじゃないかということを言っているわけです。  彼らは、あなた方はただ単に鉄砲だとか大砲で撃ち合うのを戦争だと思っているけれども、日米間はもうこれはトレードウオーなんだ、まさに戦争なんだと。日本側はトレードフリクションとかごまかしていますけれども、向こうはウオーなんです。あなた方はこうしてパワー使っているじゃないかという言い方するわけですね。私もそれ聞いてちょっとびっくりしちゃったんですけれども、やっぱりアメリカ側にはそういう受け取り方さえあるんですね。  だからその点はよっぽど我々も考えて、相手が何を考えているか、どう反応しているかということを考えてやらないと、例えば横綱ですからね、横綱だからやっぱりみんなが気にするわけですよ。これがまだ前頭の三枚目か五枚目、小結ぐらいだったら余り気にしないだろうと思うんですね。その辺、長官いかがですかね。
  173. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 先生の御経歴を見ましても欧米関係が長いわけでございまして、私も二十代の前半向こうに住んでおりましたものですから、多少自分の体験からも申し上げられますけれども、何といいましようか、マーシーといいましょうか慈悲を、どちらかというとキリスト教が行き渡っている国だけに、相手が困っているとかあるいは相手が貧困のきわみであるとかということに対しては大変に温かい慈愛を示す国民性を持っておる。ところが、一たんこれがある程度の力で、まさに先生御指摘の横綱クラスになると、イコールパートナーあるいはイコールベースで考えますから、したがって多少日本の国のわがままというのは、おれたちもこれだけのことをしておるんだからこれだけのことを日本はすべきであるという義務を当然リクワイアするというのは、これはごく当たり前のことではございますが、なかんずくパイオニア精神で育ってきたアメリカの先 達、年とった方々には、特に昨今アメリカのニューヨークで一番高いビルが百二十階であればシカゴに今度は百四十階のをつくるというような、こういう負けじ魂も大変に強いパイオニア精神がある国でございますから、それだけにつとに日本に対しての最近のなりふり構わず稼いで、ある意味においてこれだけのファーストランキングになったということは、非常に義務を課しているんだぞという気持ちが強かろうと思う。  よく田村大臣も議員外交を申されますが、私もそんなことで国会はまだ二十年でございますが、その間においても議員外交も推進してまいりました。それで、ちょうど八年前ぐらい、福田内閣の末期でございましたか、五十三名アメリカ委員長日本に呼んだことがございます。各政党の代表にも会っていただいたこともございます。  しかしそのときもう既に、というよりも、そのときをさかのぼってさらに数年前にオレンジ、牛肉の問題等は言われたわけでございまして、私は公共事業の問題、専門家ではございませんから、先ほど来るや否や田村大臣に聞きましたらば、まあ何と言って返事をしていいかなというところで私に答えていただきましたが、多少、オレンジ、牛肉の問題は、私も自由化阻止の自民党の委員長でございましたから、初代として申し上げるならば、この問題は何も急にここでアメリカで強まった問題ではなくして、もう過去十数年にわたって言い続けてきて最後のサミットに来たわけでございます。  その問題点も我々は重要視しませんと、これは緊急に向こうの方がハッスルして言いがかりをつけてきたというものではありませんので、それだけに十分向こうの立場も考えながら判断を下していくというこちらに雅量がございませんと、過去四十年間における貸し借りから考えますれば、どちらが大きいものであったかはだれでも必然的にわかることでございまして、その意味において日米関係のきずなをきちっとさせておくことは基礎であると私は思っておりますので、そのようなことでお答えにさせていただきたいと思います。
  174. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、最近の日本で私ちょっと心配なのは、アメリカは双子の赤字か三つ子の赤字を抱えて、少なくとも財政だとか貿易の赤字を抱えてひいひい言っておる、あいつら相当弱っているという感じ方が日本の中にあるんじゃないかという気がするんですね。ところが、私はこれは大変な——事実はそういうことがあるかもしれないですね、数字の上で見れば何千億ドルの赤字だとかありますから。しかし彼らの考え方というのは、やっぱり自分は世界の大国なんだ、世界のリーダーなんだ、おれがおらなきゃ世界はえらいことになっちゃうという自信満々なんですね。  先ほど長官がおっしゃいましたように、日本もそこまで行ったんだからおまえも少し手伝えと、あれだけ面倒見てやったんだから手伝えと、パートナーなんだしちゃんとやれということを言っているんであって、日本にお願いして何とかアメリカの物を買ってくださいとか、アメリカの物を市場開放してくださいとか、彼らは頭を下げる気持ちなんて全然ないわけですね。  例えば日本で、アメリカは保護主義になっているというんですけれども、彼らは自分の市場を守るか自分のメーカーを守るか、それもあります。それもありますけれども、保護主義を彼らが否定しているのは、もしも自分たちが保護主義になって世界が保護主義になったら再び第三次世界大戦が起こる。保護主義というのは一番諸悪の根源だ、絶対に保護主義をやっちゃだめだ、過去の経験で懲りて保護主義だけはいかぬと、だからアメリカはどんなに犠牲を払ってでも自由主義経済を守らなきゃいかぬということを彼らは言っているので、どんどん日本に入ってきて自分の産業がやられるから保護主義というふうな、それはそういうことを考えておる人もおるかもしれませんよ。おるかもしれませんけれども、一般的に彼らの基本的な考え方はそういうことなんですね。  それから、双子の赤字も彼らとしては今ここで自分たちが輸入を引き締めたらこれはえらいことになってしまう。南米だとかNICSを初め、先ほどのLLDCとかああいったのはアメリカへどんどん輸出しているんですね。それがとめられちゃったらみんなアウトになってしまうんです。中南米を初め、累積赤字が一遍になにして倒産が起こって、世界的にはえらい混乱が起こる。だから彼らとしては開いている。それで開いていて、しかも彼らは自信を持っているんですね。こんな赤字ぐらい大したことはないと思っているんですね。日本から考えたら何千億ドルあったらえらいことだと思いますけれども、彼らはそんなものはどうということはない。例えば、日本が百六十兆円の国債残高を持っていてだれも心配していないです。日本がやられるとはだれも思っていないですよ。それは日本のGNPというのか国力がうんと大きいから、そんな借金があったって大したことはないというのと同じなんですね。  その辺をこっちの方で勝手に、アメリカは弱っておるはずだなんという考え方は困る。実際はそれはアメリカは弱っている面もあります。ありますけれども、それだけ彼らはプライドと自信を持ってやっているんだということもちゃんと認識して対応しないと大きく誤るんじゃないか。だから先ほども申し上げましたように、米英何するものぞという感覚がもしもあったらえらいことだと思うんですね。いかがでございますか。
  175. 田村元

    国務大臣田村元君) おっしゃることは多分にあるんです。アメリカの場合、もちろん防衛に対する自負心というものは非常に強うございます。けれども、そういうことだけを見て他を見失っては大変だと思うんです。  まず彼らは、日本が物を買わないということに対して、逆に日本を非常な保護主義だ、自分らは保護主義と思っていないんですよ、日本のことを保護主義だと思っているんです。それは考えてみますと、アメリカがなぜ貿易赤字が多いか。これは、日本人はお金を稼ぐとそれを貯金しますね。アメリカ人は、金というのは使うためにあるものだというので、しかも外国の品物はばかすか買って、輸入は輸出よりはるかに多い。おれらはこれだけ使っているじゃないか、外国からどんどん買っているじゃないか、日本だって売るばかりが能じゃない、もっと買ったらどうだと、非常に単純明快なんですね。  それからもう一つは、非常に大まかでございまして、政治や経済の騒ぎというのは大衆は余りぴんとこないんですよ。先般、有名な「ローマの休日」の主役の俳優であるグレゴリー・ペックが日本へやってきて、私はいろいろおしゃべりしたんですよ。グレゴリー・ペックというのは体の大きい、二メートル近くあるような男ですが、ジューン・アリスンと一緒に来ましてね、それでグレゴリー・ペックが私に忙しいですかと、こう言うから、いや、忙しくて映画もろくに見れぬが、何しろもう君の国のことで参るよ、東芝問題等々と言ったら、東芝問題って何だ、私はそんなことは知らぬ、それはワシントンDCでの話だろうというようなもので、知らぬのですよ。大まかなものです。  それからもう一つ、忘れてはならないことは、日本が円高だドル安だで大騒ぎしておるでしょう。アメリカは全然通貨に対する観念はないです。なぜか。基軸通貨が自国通貨なんですから、だから物価さえ上がらなきゃ彼らは痛くもかゆくもないんですよ。だから、ドルが高かろうが安かろうが、物価さえ上がらなければ彼らは満足しているんです。そういうようなことで、全然日本と事情が違いますからね。ですから、そういういろいろな面を見きわめながら対応しなきゃならぬ。  しかし、だからといって、時に自負心は思い上がりにつながることがありますし、それがまた意識せざる保護主義につながることが往々にしてあり得るんですから、日本はやはり言うべきはきちっと言い、そして彼ら自身は余りぴんときていないかもしれないであろう問題でも、それを指摘してその姿勢を正してもらうための努力をするということは当然だと、日本は属国じゃありませんから。日本は堂々たる独立国であり、しかもアメ リカより今や内容のいい国なんですから。ただ、先祖から受け継いだ財産というのを持っていないだけのこと、いわゆるストックがないだけのことで、現ナマはいっぱい持っているんですから、そういう点では卑屈な思いをしないで堂々と物を申すべきだと、このように思ってやっております。
  176. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 全く田村大臣の言葉にそのまま尽きますけれども、ただ一言つけ足させていただきますならば、私は何といいますかアメリカの底力は底力として率直に認めておかなきゃいかぬと思うんです。例えば、私もこの間の選挙は落選中でございましたが、中曽根総理から電話があって、民主党の党大会へ、御案内のモンデールがサンフランシスコで党大会をやりました、団長で数人の若い代議士を連れて行ってくれぬか、こういう御依頼を受けました。私は民主党、二階堂さんは共和党の方に団長で行かれました。  私は落選中ではございましたが、数名の若い代議士を連れて行ったときに驚いたのは、その大会のすぐそばで十万人ぐらいの別の大会をやっておりまして、その大会がホモの大会でございました。それで、男同士が抱き合っているわけです。私がそばへ行こうと思ったらば、大使が、それは誤解されるからよした方がいいと、そういうわけでございました。私は控えて見ておりましたが、これを見て若い代議士のメンバーの多くは、アメリカは病気だ、これはもうだめだ、こう言いました。ニューヨークへ行っても、昔私がいたころとは違って、ドランカーズがたくさん町の中を歩くような、ゴールドエージのアメリカとは比較対照にならない時代になりました。  しかし、かといって、西南部に行ったらばアメリカは健全そのものですし、しかも力強いパワーがある。このことを無視をしてはならないということを十分に頭の中に入れておく必要があろうと思うわけでございます。その点、あとはもう田村大臣の言うとおり。  ただ、日本国会並びに我々が一番心しなきゃならぬのは、アメリカに行くとあなたの意見にアグリーする、こういう格好であなたの立場はよくわかると言いながら、日本へ帰ってきて、農協団体の大勢の圧力の前へ行くと、あのわがままは断じて許すななんてやるわけですから、それがその,まま向こうに伝わりますので、すると二枚舌なのかという疑問を非常に持たれることも事実でございます。そういうことも、すべて反省しながら考えていかなきゃなるまい、こう思います。
  177. 木本平八郎

    木本平八郎君 終わります。
  178. 大木浩

    委員長大木浩君) 以上をもちまして、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち、公正取引委員会経済企画庁通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十八分散会