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1988-05-24 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月二十四日(火曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  五月二十三日     辞任         補欠選任      対馬 孝且君     千葉 景子君  五月二十四日     辞任         補欠選任      藤井 恒男君     抜山 映子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩崎 純三君                 遠藤 政夫君                 斎藤 十朗君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 千葉 景子君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 抜山 映子君    衆議院議員        社会労働委員長  稲垣 実男君    国務大臣        労 働 大 臣  中村 太郎君    政府委員        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省児童家庭        局長       長尾 立子君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○柔道整復師法の一部を改正する法律案衆議院提出) ○あん摩マツサージ指圧師はり師、きゆう師等に関する法律の一部を改正する法律案衆議院提出) ○クリーニング業法の一部を改正する法律案衆議院提出) ○労働問題に関する調査  (育児休業に関する件) ○保育所制度充実に関する請願(第四号外二〇件) ○保育制度の維持、充実に関する請願(第二七号外七件) ○難病患者などの医療生活保障に関する請願(第四五号外四二件) ○腎(じん疾患総合対策早期確立に関する請願(第四六号外三五件) ○国民健康保険制度改革に関する請願(第四七号) ○高齢者雇用就労対策充実に関する請願(第八二号外一〇八件) ○暮らしと福祉国庫負担金削減反対等に関する請願(第九八号外三六件) ○障害者の働く権利の保障等に関する請願(第一〇五号外九件) ○国民健康保険制度改善に関する請願(第一三七号) ○原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願(第一六二号外一八件) ○覚せい剤麻薬等薬物乱用防止対策強化に関する請願(第一六六号外二件) ○歯科保険医療制度改善に関する請願(第一七九号外三件) ○労働組合法改正案反対に関する請願(第三三四号外二件) ○退職後の生活安定等に関する請願(第三三五号) ○国民健康保険法改悪反対に関する請願(第三八〇号外三九件) ○季節労働者対策充実に関する請願(第四一八号) ○国立腎じんセンター設立に関する請願(第四三二号外七件) ○医療福祉の拡充に関する請願(第五九二号外一件) ○肢体障害者福祉に関する請願(第五九四号外四件) ○国民健康保険法改正反対医療制度改善に関する請願(第五九五号外四五件) ○カイロプラクティック等非合法医業類似行為取締り強化に関する請願(第七〇八号外一件) ○療術の制度化促進に関する請願(第九五七号外二八件) ○保育所制度充実に関する請願(第一〇八四号) ○国民健康保険法改正案反対改善実現に関する請願(第一一六六号外四五件) ○中央労働委員会公益委員任命制度変更反対に関する請願(第一三二四号外四件) ○国民健康保険法改正反対医療制度改善に関する請願(第一三四五号外二件) ○重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(第一三七三号外一四件) ○雇用安定対策充実に関する請願(第一三八四号) ○国民健康保険法改正案反対国保制度改善に関する請願(第一四五九号外四件) ○国民健康保険国庫負担増額等に関する請願(第一四六四号) ○亜急性硬化性全脳炎の子供とその家族に対する医療福祉に関する請願(第一四八三号外四件) ○労働時間の短縮に関する請願(第一五〇八号) ○手話通訳制度化に関する請願(第一五〇九号) ○石綿(アスベスト)対策に関する請願(第一七一〇号) ○消費生活協同組合法改悪反対に関する請願(第一七九六号外一件) ○中央労働委員会公益委員任命制度変更反対に関する請願(第一九三二号) ○小規模障害者作業所等の助成に関する請願(第一九四〇号外二四件) ○臓器移植に関する法律の整備に関する請願(第一九七六号外二件) ○保育福祉充実等に関する請願(第二〇一二号) ○継続審査要求に関する件 ○継続調査要求に関する件     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十三日、対馬孝且君委員辞任され、そ の補欠として千葉景子君が選任されました。  本日、藤井恒男君が委員辞任され、その補欠として抜山映子君が選任されました。     ─────────────
  3. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 柔道整復師法の一部を改正する法律案あん摩マツサージ指圧師はり師、きゆう師等に関する法律の一部を改正する法律案及びクリーニング業法の一部を改正する法律案の三案を便宜一括して議題といたします。  まず、提出者衆議院社会労働委員長稲垣実男君から順次趣旨説明を聴取いたします。稲垣君。
  4. 稲垣実男

    衆議院議員稲垣実男君) ただいま議題となりました柔道整復師法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  近年の我が国における急激な高齢化社会への移行は、保健医療をめぐる環境を大きく変化させ、国民医療に対する関心は急速に高まってきております。  本案は、このような状況にかんがみ、我が国において古くから国民に親しまれ、国民の健康の保持に大きな役割を果たしてきた柔道整復術が、今後とも国民ニーズに対応し、国民信頼にこたえていくために、柔道整復師資質向上養成教育のより一層の充実を図ろうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、柔道整復師免許を与える者及びその試験実施する者を、都道府県知事から厚生大臣に改めること。  第二に、柔道整復師試験受験資格について、中学校卒業後四年以上または高等学校卒業後二年以上学校養成施設において必要な知識及び技能修得することとなっていたのを、高等学校卒業後三年以上に改めること。  第三に、国家試験実施に関する事務及び免許登録実施に関する事務については、厚生大臣指定する者に行わせることができること。  第四に、この法律は、昭和六十五年四月一日から施行することとし、学校養成施設等に関し必要な準備は、公布の日から行うことができること。  以上が本案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりましたあん摩マツサージ指圧師はり師、きゆう師等に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  近年の我が国における急激な高齢化社会への移行は、保健医療をめぐる環境を大きく変化させ、国民医療に対する関心は急速に高まってきております。  本案は、このような状況にかんがみ、我が国において古くから国民に親しまれ、国民の健康の保持に大きな役割を果たしてきたあんま、マッサージ、指圧、はり、きゅうが、今後とも国民ニーズに対応し、国民信頼にこたえていくために、あん摩マツサージ指圧師等資質向上養成教育のより一層の充実を図ろうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、あん摩マツサージ指圧師はり師及びきゆう師免許を与える者及びこれらの試験実施する者を、都道府県知事から厚生大臣に改めること。  第二に、あん摩マツサージ指圧師試験はり師試験及びきゆう師試験受験資格について、あん摩マツサージ指圧師については中学校卒業後二年以上、はり師またはきゆう師については中学校卒業後四年以上または高等学校卒業後二年以上学校養成施設において必要な知識及び技能修得することとなっていたのを、高等学校卒業後三年以上に改めること。  なお、著しい視覚障害のある者については、中学校卒業者であっても、学校養成施設修得すれば試験を受けられるよう特例を設けること。  第三に、国家試験実施に関する事務及び免許登録実施に関する事務については、厚生大臣指定する者に行わせることができること。  第四に、この法律は、昭和六十五年四月一日から施行することとし、学校養成施設等に関し必要な準備は、公布の日から行うことができること。  以上が本案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりましたクリーニング業法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  近年、繊維製品の素材の多様化クリーニング技術高度化等により、クリーニング所業務に従事する者には、より高度の知識及び技能が要求されるに至っております。  本案は、このような情勢を背景として、クリーニング所業務に従事する者の資質向上並びに知識修得及び技能向上を図るため、これらの者の研修及び講習制度を設けようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、クリーニング所業務に従事するクリーニング師は、都道府県知事指定した、クリーニング師資質向上を図るための研修を受けなければならないものとし、営業者は、そのクリーニング所業務に従事するクリーニング師に対し、この研修を受ける機会を与えなければならないものとすること。  第二に、営業者は、そのクリーニング所業務に従事する者に対し、都道府県知事指定した、クリーニング所業務に関する知識修得及び技能向上を図るための講習を受けさせなければならないものとすること。  第三に、この法律は、昭和六十四年四月一日から施行すること。  以上が本案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で三案の趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 浜本万三

    浜本万三君 ただいま提案されました三案につきまして、感想と一、二質問をさせていただきたいと思います。  今回提案されました三案につきましては、提案趣旨のとおり、それらの事業に従事する人たち資質向上に資したいというお話でございます。また、本案作成に当たりましては、関係者皆さんの全くの同意を得ると同時に、各党間の調整のもとに行われましたことで、私たちといたしましても大変喜んでおるような次第でございます。  ただ、中に一つ私のまだ十分理解を得ていない点がございますので、質問をさせていただきたいと思います。  それは、今回の議員立法の中に、国家試験指定試験機関に行わせることができる、そういう旨の規定が設けられておりますが、指定される試験機関とは具体的にどのようなものをお考えになっておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  7. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 今回の議員立法によります新しい国家試験が行われるまでに、私どもとしてお聞きしている範囲では、柔道整復師関係団体及びあん摩マツサージ指圧師はり師、きゆう師関係団体がそれぞれ御協力になって財団法人を設立するということでお聞きしておるところでございます。  そういう財団法人が設立された暁に、私ども審査を行った上で、要件を満たしておりますればこれらの財団法人について指定を行うということで考えておるところでございます。
  8. 浜本万三

    浜本万三君 財団法人を設立して、適格ならばそこに指定をしたい、こういうことなんですが、そういたしますと、これまで厚生省関係国家試験指定機関に行わせたような例があるんではないか、かように思いますが、あればその例をお示しいただきたい。  具体的にどういう財団指定したかということをお聞かせいただきたいと思います。
  9. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 国家試験指定試験機関に行わせているものの例といたしましては、臨床工学技士国家試験につきましては、臨床工学技士法に基づきまして六十三年、本年四月二十七日に財団法人医療機器センター指定試験機関として指定した例がございます。  あるいは、義肢装具士国家試験についてでございますが、これも義肢装具士法に基づきまして六十三年四月二十七日に財団法人テクノエイド協会指定試験機関として指定しております。  さらに、社会福祉士及び介護福祉士国家試験につきましても、社会福祉士及び介護福祉士法に基づきまして本年の四月一日に財団法人社会福祉振興試験センター指定試験機関として指定したという例があるわけでございます。
  10. 浜本万三

    浜本万三君 よくわかりました。それで安心をしたわけです。  そこで、最後にお願いをいたしたいと思いますのは、せっかく議員立法でこのような法律をつくるわけでございますので、あんま等国家試験指定試験機関に行わせるに当たりましては公平を第一の旨としなきゃならぬ、かように思います。公平性を維持するようにぜひ運営してもらいたい、かように思います。  その点、お答えをいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
  11. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 今回、議員立法改正をいただいたわけでございますけれども、目的はその資質向上が直接人の身体、生命にかかわるということから、国家試験が厳正に実施されることは非常に重要だと私ども考えておるわけでございます。  このため、この議員立法の両法律案におきまして、指定試験機関は、事業計画でございますとか役員の選任あるいは解任等につきまして厚生大臣の認可を受けねばならないという旨の規定でございますとか役職員不正行為に対する厳しい罰則規定が設けられていることを承知しておるところでございまして、私どもといたしましても、厳正な運用を行うことにより国家試験事務が適正に執行されることを監督してまいりたいと考えておるところでございます。
  12. 浜本万三

    浜本万三君 どうもありがとうございました。
  13. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で三案に対する質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、柔道整復師法の一部を改正する法律案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  14. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可法すべきものと決定いたしました。  次に、あん摩マツサージ指圧師はり師、きゆう師等に関する法律の一部を改正する法律案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  15. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、クリーニング業法の一部を改正する法律案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  16. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、三案に対する審査報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  18. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、労働問題に関する調査のうち、育児休業に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  19. 千葉景子

    千葉景子君 それでは、私の方からまず質問をさせていただきたいと思います。  今回は、ちょうど通常国会の会期末ということでもございます。しかも、その審議時間というのも数時間ということで大変わずかな時間ではございますけれども、本日のこの委員会育児休業の問題が集中審議をされるということは非常に意味の大きいことではないかというふうに思います。  昨年の八月、政府提出労働基準法改正案審議のちょうどさなかでございましたけれども日本社会党、公明党、民社党及び社会民主連合の四党共同育児休業法案提出されまして、現在、それは継続審査の扱いになっております。きょうは、直接この四党共同提案になります法案について審議するわけではございませんけれども、このような法案提出されまして初めて育児休業問題について集中審議が行われることになったわけでございますので、そういう意味で大変画期的な意味のあることではないかと思います。  そこで、こういう審議がなされることになったことについて労働大臣感想をお聞きしたいわけでございます。  この育児休業問題は、振り返ってみますと二十一年前、一九六七年の五月に社会党の方から女子教育職員育児休暇法案を本院に提出させていただきまして、我が国における育児休業法制度化について先鞭をつけたという歴史がございます。その後、この問題は大変紆余曲折を経まして、一九七五年に至りまして与野党間の協議が調い、現行の育児休業法、すなわち義務教育学校等女子教育職員及び医療施設社会福祉施設等看護婦保母等育児休業に関する法律が制定されるに至っております。その後、我が党は、さらに一九八二年の五月、男女すべての労働者対象にいたしまして、選択、有給、原職復帰の原則に基づく育児休業法案を本院に提出させていただき、以来毎年この法案提出してまいりました。そして、昨年の三月には、労働団体から四党共同育児休業法案提出してほしいという大変強い統一要請がございまして、それにこたえるように他の三党と協議をさせていただきまして四党共同法案として提出に至っているわけでございます。  きょうも大変大勢の方が傍聴に来ていらっしゃっておりますが、労働団体の方でも、今、育児休業法実現を念願して、一千万人署名運動に取り組んでいるというさなかです。  したがいまして、私も、労働者、特に当面は女性労働者期待というものが大きいかと思いますけれども、このような期待にこたえて育児休業法早期実現のため、一丸となって我々が努力しなければならない、このように受けとめているわけでございます。労働大臣としても、そして労働省の各所管の皆さんにも、ぜひこの問題を真剣にそして前向き積極的にお考えいただきたい。  そういう意味で、まず冒頭、非常に関心の深まる中で集中審議がなされるこういう場にお立ちになって、労働大臣としてどんな御感想をお持ちなのか、まずお聞きしたいと思います。
  20. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 社労委員会育児休業制度を専門的な立場で一つのテーマとしてお取り上げいただきました御熱意に対しましては敬意を表したいと思うわけでございます。  労働省としましても、かねてから育児休業普及促進には努めてきたところでございますが、このような形で議論がなされ広く国民の間でコンセンサスの形成に資することができるということは大変意義の深いことであると承知をいたしております。
  21. 千葉景子

    千葉景子君 労働大臣の方からも大変積極的に受けとめていただくという御姿勢を示していただきましてありがとうございます。  ぜひそういう観点に立って、幾つかの質問お答えをいただきたいというふうに思います。  そこで、少し具体的にお尋ねをしたいというふうに思いますけれども我が国年齢別女子労働力の率を見てみますと、育児期がへこんでい る、ボトムになりまして、いわゆるM字型のカーブが描かれております。これは労働省の方でも既に御承知のところと思いますけれども、要するに、多くの女子労働者出産後も働きたいという意思は持っていながらも、育児のため一たん退職を余儀なくされている、こういうことが数字、統計などからもよくはっきりとあらわされているんではないかというふうに思うんです。一たん退職をいたしますと、再就職というのも大変難しい現状です。また、仮に再就職ができましても、労働条件などが大変不利になる、こういう状況があろうかと思うんです。  したがいまして、何としても育児休業制度というものが、女性にとっても、そしていずれは男性にとっても必要になってこようかと思いますけれども、まず、出産契機退職する女性の数、割合労働省の方としてどんなふうに把握されているか。  それから、出産後も働き続けていきたいと考えている女性も多いかと思うんですが、その数、割合などについて労働省の方で把握されている数等をまずお知らせいただきたいと思います。
  22. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 私どもでいたしました調査の結果によりますと、妊娠した者のうち出産契機として退職した者の割合は三一%でございます。  それから、就業継続の希望の有無を直接調べたものはないのでございますけれども、総理府の世論調査によりますと、調査対象の中で、結婚をしたらやめるあるいは出産等のためにやめる方がいいという方たちが二割ちょっとでございます。それから、結婚をし子供が生まれたら仕事をやめて子供が大きくなったらまた出てくるという方が五二%ということで、過半数でございますから、ほとんどの方は出産育児等のためにおやめになることがいいという理解でございますが、結婚しても出産しても働き続けたいという方の割合は一六%となっております。
  23. 千葉景子

    千葉景子君 三〇%の方が出産退職している。それから、希望する方も、一たんは職をやめてその後また職業を持ちたいという方が五〇%にも上るようですけれども、その中には十分な裏づけさえあれば働き続けたいという方もおありかというふうに思うんです。  こういう状況の中で諸外国、特に西欧諸国においては育児休業制度がかなり普及をしているというふうに私も認識しているところなんですけれども、いかがでしょうか、諸外国、特にEC諸国などを中心にいたしまして育児休業制度導入状況、これはどんなふうになっておりましょうか。
  24. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 私どもも、すべての国につきまして調査が行き渡っているわけではないのでございますが、把握しております限りでは西ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、オーストリアなどで育児休業請求権が法制化されているところでございます。  その内容は国によってさまざまなのでございますけれども、おおむねのところは、生まれた子供が一歳になるまでの間に父、母のいずれか一方または母親だけが育児休業を請求できるということになっております。
  25. 千葉景子

    千葉景子君 私もほぼそういう内容だというふうに認識しておりますし、それからそれ以外にも東欧諸国あるいはイスラエルなどでも一定の育児休業制度導入されているという実態があろうかというふうに思います。  このようにEC諸国ヨーロッパ諸国などではほとんどの国でこの育児休業制度導入をされておりまして、しかも、今お答えいただきましたように、父親についても育児休業が認められているという実情ではないかというふうに思います。  ことしたまたま私も目にいたしましたが、一月十一日付の日本経済新聞の夕刊によりますと、スウェーデンでは「育児休業期間は三百六十日。子供が四歳までの間に、夫婦いずれが取ってもいい。二百七十日までは給料の九〇%が保障される。」というような記事も出ております。そして、働く女性のほぼ全員が育児休業制度を利用していると同時に、男性の場合でも二五%ぐらいは育児休業制度を利用している、こういうような紹介も出ているところでございます。  こういうふうに西欧諸国では我が国に比べましてかなり先に行っている、進んでいるという状況ですけれども我が国ではまだ法制化というのがなされておりません。公立の学校や施設、女子職員とかあるいは看護婦さん、保母さん、こういうところにまだ限定をされているというのが今の制度の実情です。  そこで、我が国育児休業制度普及状況はどんなふうになっているか、ちょっと実情をお答えいただきたいと思います。
  26. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 労働省調査によりますと、育児休業制度導入した事業所はわずかずつではございますけれども増加をいたしておりまして、昭和六十年には従業員が三十人以上の事業所で一四・六%ということになっております。
  27. 千葉景子

    千葉景子君 この一四・六%という中には教育の分野も含まれていると考えてよろしいでしょうか。
  28. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) おっしゃるとおりでございます。
  29. 千葉景子

    千葉景子君 教育の分野も含まれているということでございまして、この教育の分野については育児休業法というのがございますね。  そうすると、教育の分野を除きますとこの普及率というのはどのくらいになるんでしょうか。  それから、教育の分野においても、民間・私立などの場合には現行の育児休業法の十七条で、準ずる努力義務のような形になっておりますけれども、こういう教育の分野を分けて考えますとどんな普及状況になっているか、お調べでいらっしゃいますか。
  30. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 今おっしゃったようなことで細分類いたしました数字はまだ出しておらないわけでございますけれども、大まかなことを申し上げますと、そういう育児休業法の適用対象になっておりますものを除きますと一割をやや切っておるのではないかと存じます。  民間で公務員の方と同じような職種、つまり看護婦さんとか保母さん、教員というような方たちについてどうなっているかということでございますが、正確な数字は統計上ちょっとわからないのでございますが、一般のものに比べますとかなり高くなっておるのではないかと思います。
  31. 千葉景子

    千葉景子君 教育の分野を除きますと今一割程度と、まだ育児休業制度というのがなかなか普及していない実態だと認識せざるを得ないわけですね。  しかも、一般のよりは少し高いといいましても、教育でも、制度が義務的でない部分については低目であるということが言えようかと思うんですね。これは、ぜひ大まかではなくて、現行の育児休業法もあることですので、教育などの部分あるいはそれ以外の部分とはっきりと分けた統計などもとっていただきたいと思うわけです。  こういう形で、現状はなかなか育児休業制度が進行していないということがわかるかと思うんです。これは、働く側にとってもこれから先が大変思いやられることですけれども育児休業制度をこれから普及するには、事業主にとってもこの制度が大きな意味を持つ、メリットがあることを労働省の側からも十分に啓蒙していただかなければ、この普及というのは難しいところがあろうかと思うんですね。  この点については、労働省では事業主などに対してはどんな啓蒙といいますか普及に努めていらっしゃるのか、その点についての基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  32. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) おっしゃるとおり、事業主への働きかけというのは非常に重要でございまして、私どもは、そういう点につきまして私どもなりに精いっぱいやっておるのでございます。  一つは、事業主に対しまして奨励の措置をとるということでございます。こうした育児休業制度導入した企業には奨励金を出すことにいたして おるのでございますけれども、これにつきましても近年、以前に比べますとその奨励の額の内容も大きくなりまして、今では大企業の場合は二年次にわたり八十万円、中小企業の場合には百万円の奨励金を出しておりますし、今年度からはさらに三人以上育児休業をとる方が出ました場合には、大企業と中小企業に事実上は一人頭の考え方を導入いたしまして奨励をするということにいたしておるわけでございます。  それからさらに、育児休業普及のための事業主に対する指導や助言をするために、育児休業促進の普及指導員を各婦人少年室ほ置いております。こういう事情でございますから人をふやしていくということは大変なことだったのでございますけれども、おかげさまで昨年度で全婦人少年室にこれを配置することができるようになりましたので、今年度からは全室で指導員の活動ができるようになっておるわけでございます。  それからさらに、使用者全般にこの制度について十分理解をしてもらうことが大事でございますので、毎年五月に育児休業普及促進のための旬間を設けまして、マスメディア等の協力も得て、事業主を直接訪問したりまた来ていただいて御説明するというような形でPRに努めておるわけでございますし、私ども調査もいろいろいたしまして、どういうメリットがあるかというようなことにつきましても使用者に積極的にPRをいたしているところでございます。
  33. 千葉景子

    千葉景子君 今御説明をいただきまして、幾つかの育児休業を勧めるような活動をなさっておられるようでございます。  考えてみますと、育児休業制度は、労働省の方でも企業にとってのメリットということで、例えば、熟練した労働者の確保あるいは企業のイメージアップまた女子労働者のモラールを高めることに役立つというような観点で普及指導を図っていらっしゃるように思うんですね、いろいろパンフレットなどを見せていただきまして。  それから、そのほかにも特定職種育児休業利用助成給付金というような制度も設けられていらっしゃるようですけれども、その点はいかがでしょうか。
  34. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先生おっしゃいましたとおり、看護婦等につきましては、民間の病院等で看護婦さんなどに対して育児休業制度をつくり、育児休業中には社会保険料に相当する顔以上の額を支給いたしております事業主に対しまして一定の助成をするというのが今おっしゃいました制度でございます。
  35. 千葉景子

    千葉景子君 私もこの質問をさせていただくに当たりまして、労働省の方からとてもきれいにでき上がっているこういうパンフレットも見せていただきました。こういうものをぜひ大いに利用していただきたいというふうに思うんです。  「育児休業制度のおすすめ」というようなこういうパンフレット類は、今現在どんなふうな使われ方をしているんですか。
  36. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) これは主に事業主を対象に考えておりますので、各都道府県を通じまして、さまざまな会合に使用者がおいでになりましたときはお配りをいたしましたり、それから育児休業普及指導員が各企業を訪問いたしまして育児休業制度導入のお勧めをするときに使うあるいはそのほかさまざまな会合に参りましたときにお配りをするというような形で使っているわけでございます。
  37. 千葉景子

    千葉景子君 こういうリーフレット等は、予算の御都合などもあろうかと思いますので全事業所にというわけにもなかなかいかないかとは思いますけれども、一番もとになるような普及の資料ですので、こういうものも積極的に利用していただきたいというふうに思うんです。  こういう育児休業を勧めるための、普及のための諸施策、今御説明をいただきましたけれどもこの実績、先ほど出ました育児休業奨励金あるいは特定職種育児休業利用助成給付金、こういうものの利用実績といいますか給付実績、これはどんな程度でございますか。
  38. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業奨励金の最近の支給件数でございますが、昭和六十一年度は二百九十件、昭和六十二年度は三百五件となっております。
  39. 千葉景子

    千葉景子君 特定職種育児休業利用助成給付金の方はいかがでしょうか。
  40. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) まことに少なくて残念なのでございますけれども、六十年度が一件、六十一年度が四件ということでございます。
  41. 千葉景子

    千葉景子君 育児休業奨励金につきましても、全体から見ますと六十一年度で二百九十件、二年度で三百五件ということで決して多いというわけにはまいりませんし、特定職種育児休業利用助成給付金の方は、これは本当にほとんど給付実態がないと言っても過言ではないと思うんですね。  こういうふうに育児休業制度というのは、労働省の方でも普及に努められているとは存じますけれども、なかなか普及がしにくい。この普及しない理由、その状況といいますかは、一体どんなところに理由があるというふうに労働省の方ではお考えでしょうか。
  42. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 理由はさまざまだと思いますけれども、私どもで六十二年度に調査いたしました結果で見ますと、最も多く挙げられております困難な問題というのは、その労働者育児休業をとっている間、かわりに仕事をする代替要員でございますが、この代替要員を確保するということ。  それからもう一つは、お休み中はそれで働いてもらうということなのですが、育児休業が終わって帰ってきたときに代替要員をそれではどうするのか、解雇するのだろうかどうするのだろうかというようなところが、なかなか日本の場合には解雇の問題というのは難しい場合が多いと考える使用者もおりますので、そういう問題。  それから、休業中代替要員の給与を払っておるわけでございますが、そのほかにお休みしている労働者について社会保険等についての資格が継続する場合には、保険料を使用者の分は使用者が負担するということでございますが、無給であれば労働者の分も負担してあげた方がいいんじゃないかということになりますとそうしたコストの増加という問題があるかと思いますが、そのほか幾つかいろいろな問題があったというふうに使用者側はこの調査に対しては答えております。
  43. 千葉景子

    千葉景子君 我が国の場合、使用者側の考え方としては、できるだけ低コストで生産性を上げるという実態にあろうかと思うんです。  これは、長時間労働あるいは休日の問題、そういうことを考える場合でも、共通な基盤がこれまでも指摘をされてきている。なかなか余裕を持って人的な配置をしていないという状況があろうかと思うんです。それから、現在、労働者の方の組織率もなかなか上向きにはなりにくい。それから、育児休業制度育児休業ということになりますと、休日とか労働時間と違いまして、一律に適用するというわけにはまいりません。適用する労働者の範囲もある程度限られあるいはその時期も一定しないということで、行政指導しても企業側がすぐにそれに応じて育児休業制度を設けるというふうにはなかなかいかないんじゃないだろうかというふうに私は思うんです。  効率が優先する企業社会の中で、労働時間の短縮、時短についても、部分的には別ですけれども、全体としては十数年という長い時間がかかり、それでどうしても法的措置が必要だということでさきに労働基準法の改正もなされたわけです。まして育児休業制度ということになりますと、行政指導あるいは企業の自主的な制度の設置を待っていてはなかなか進まないだろうというふうに思います。しかも、労働時間の場合と違いまして育児休業の場合は、いろいろな条件がありましても、ほとんどの国が法律で定めている、法制化している。  こういう実態を見ますと、我が国でもなお法制化が早急に必要になってくるんじゃないかと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  44. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業制度普及させたいというのは、私どもにとっても大変大きな希望であり、また私ども対策の最重点の課題の一つでございます。  この問題につきましては、御存じのとおり、雇用機会均等法をつくりますときにも関係審議会でございます婦人少年問題審議会で均等法の問題につきまして長い時間をかけて御議論をいただきましたときに、この育児休業の請求権を法制化するかどうかということも大きな問題でございまして、長い時間をかけて御熱心な御討議をいただいたわけでございます。その結果、やっといただきました御建議が、まだまだ普及率が余りにも低い、したがってすべての企業に法律をもってその制度導入することを義務づけるのには時期尚早であるから、まず行政がもっと普及に力を入れることが先決であるという御趣旨の建議をいただいたわけでございます。そこで、私どもとしては、御建議の趣旨に沿いまして力を入れておりまして、またこの御建議をいただけたからこそ予算措置も年々充実し、指導員もふやすことができてきたのではないかというふうに考えております。  私どもとしては、まず、もう少し普及に、力はあるいは十分ではないという御批判があるかもしれませんけれども、精いっぱい努力をいたしてまいりたいと思います。
  45. 千葉景子

    千葉景子君 先ほどからいろいろな育児休業制度普及状況などをお聞きしても、努力はなさっていらっしゃるわけですけれども一向に進まない、それからまた育児休業制度普及しない理由も、先ほど労働省の方でも認識されているように、企業のコストの面であるとかそういうことが理由になっている。  こういうことになると、指導しながら普及を待ってということでは一向に、育児休業制度というのはしばらく様子を見ましたけれどもまだ普及しないので法制化は難しい、またしばらくたっても同じようなことを繰り返していくんではないだろうかというふうに私は懸念せざるを得ないわけです。こういうことは、労働時間短縮の問題でもなかなか全体化していない、普及の度合いが低いので急には短縮が難しいという御論議もありましたけれども、この育児休業制度は本当にそれ以上に難しい面があるかと思うんです。その点については、むしろ労働省の方でぜひ積極的に法制化に向けて啓蒙を図るという立場で頑張っていただきたいと思うんです。  ところで、この問題に関連をいたしまして、一九八五年六月に女性差別撤廃条約が批准されました。この国連条約は「子の養育には男女及び社会全体が共に責任を負うことが必要である」ということが基調になっているわけです。また、一九八一年のILO第百五十六号条約「男女労働者特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する条約」、これは「家族的責任を有する労働者労働力となり、労働力としてとどまり及び家族的責任を理由とする不就業の後に再び労働力となることができるようにするため、国内の事情及び可能性と両立するすべての措置をとる。」ということなどが規定をされております。そして、それと同時に、百六十五号勧告が採択をされまして、「両親のうちのいずれかは、出産休暇の直後の期間内に、雇用を放棄することなく、かつ、雇用から生ずる権利を保護された上、休暇をとることができるべきである。」と、こういうようなことがうたわれております。  このILO第百五十六号条約につきましては、女性差別撤廃条約の批准をめぐる国会の審議がさまざま行われまして、その中で我が党の土井委員長が、当時は副委員長でございましたけれども質問をさせていただきまして、安倍外務大臣が非常に前向きな御答弁をしていただいております。いろいろ女性差別撤廃条約にかかわり批准をしなければいけない条約があるけれども、とりあえず百五十六号条約につきまして検討を進めていきたい、これが政府としての外務大臣としての基本的な考え方であるということを御答弁していらっしゃるわけです。  この問題についてはまず真っ先に取り上げてやっていこうという前向きな御姿勢を示されたのだというふうに思いますけれども、この第百五十六号条約の批准等につきまして、労働大臣としてもそのときの論議を踏まえて、今どんなふうにお考えでしょうか。
  46. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 今御指摘の案件につきましては、私も、先生の御質問があると聞き及びまして、急遽うんと勉強したわけでございます。  もともと、労働省としては、ILO関係条約の批准というものを非常にシビアに考えておるわけでございます。いろんな条約の批准があるわけでございますけれども、その都度、批准をした以上的確に対応しなければいけないというふうな基本的な考え方でございまして、それだけにまず国内法との調整を図っていくということが前提に相なっておるわけでございます。  この条約につきましても、国内法との整合性の観点から検討を重ねてきたところでございますけれども、今御指摘になりますように、これは、雇用条件において家族的責任を有する男女労働者の必要を考慮した措置をとるように求めているところでありますが、我が国におきましては、こうした措置のすべてを男女労働者に等しく適用すること、具体的には育児休業制度を男子労働者にも適用するということでございますけれども、このことについては現在コンセンサスを得られているとは言いがたい。  そういう観点から、少なくとも今日、現段階におきましては、本条約を批准することは困難ではないかなと考えてはおりますけれども、御指摘のような点もありましたし、これからもコンセンサスの形成に積極的に努力していかなければいけない、このように考えておるわけであります。
  47. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひこれは政府全体として取り組んでいただかなければいけない課題だと思います。  そして、コンセンサスを得るということは、待っていてはやはり難かしいということになりますので、制度化、法制化に向けていろいろな諸条件の整備が必要だということは私もよく承知しておりますので、そういう条件整備が少しでも早く整うように、そして条約批准が速やかに行われるような措置を労働省としても積極的に講じていただきたいというふうに思います。  ところで、こういう論議が非常に高まっている中で、先日、五月二十日でございますけれども、本院の国民生活に関する調査会で「出生率の動向と対応」に関する報告書を議長の方に提出されております。その中で、今春義をされております育児休業の問題にも触れられておりまして、その報告によりますと   女子労働者が、出産後も家庭と仕事を両立させて、乳幼児を抱えながらも仕事を継続できるように、育児休業制度の早期法制化が必要である。さらに、家庭責任の男女共同参加を可能にし、育児に専念できるようにするため、女子労働者のみならず男子労働者を含めたすべての労働者対象とする育児休業制度の法制化が望まれる。 こういう意見を出されております。  そして、提言の中にも   女子労働者が、出産後も育児と仕事を両立させて、乳幼児を抱えながらも仕事を継続できるように、育児休業制度の早期法制化が必要である。さらに、家庭責任の男女共同参加を可能にし、育児に専念できるようにするため、女子労働者のみならず男子労働者を含めたすべての労働者対象とする育児休業制度の法制化が望まれる。 というような内容を含めた報告書が提出をされているわけでございます。  この国民生活に関する調査会は、与党を含めまして、各党から委員の出ている調査会でございます。この調査会というのは、性格上、立法の提案あるいは提言、勧告などができる、それを目的として設置されている調査会という趣旨でもございますので、大変重みのある報告ではないかという ふうに私も受けとめているわけですね。  こういう国民生活に関する調査会の報告などを受けられまして、大臣としてはどんなふうにこれを受けとめていらっしゃるか、その辺の御見解をお伺いしたいと思います。
  48. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) この報告につきましても私は拝見をいたしておりますし、それが極めて重みのあることも承知をいたしておるわけでございます。  この報告は、出生率の低下が将来の我が国経済社会に及ぼす影響及び出生、育児をめぐる国民の多様なニーズへの対応策を検討したものでございまして、各種の対策を提言されておるわけでございます。  育児休業制度充実につきましても述べられておることは承知をいたしておるわけでございますが、育児休業制度につきましては、企業の雇用管理、家庭における育児負担のあり方等、いろいろな難しい問題があります。本報告の提言の趣旨をも十分に尊重して、育児休業がさらに普及するよう積極的に諸対策を推進してまいりたいと考えております。  実は、私も大臣になりましてから、この普及率が非常に低いことに関心を持ちまして、その理由等をいろいろ問いただしもしたわけでございますけれども、なかなか難しい問題があることは御案内のとおりだと思うわけでございます。  先ほどもお答えをいたしましたように、とにかく男女雇用機会均等法の成立時に六年間かけて婦人少年問題審議会で御検討いただいたのですが、そのときに並行的にこの育児休業制度についてもいろいろ御意見をいただいたわけでございます。しかし、御承知のとおり、あの審議会は労使双方の代表の入っておる審議会でございまして、審議会としてのコンセンサスはとうとう得られなくて、御承知のような、現段階で一割前後の普及率ではこれを強制することは無理である、もう少し行政当局が熱意を持ってまずその普及、浸透を図るべきことが先決であるというような決定にとどまったわけでございます。  これを今のような状況の中で直ちに法制化ということになりますると、逆な面、女子労働者の門戸を閉鎖するというようなことにもなりかねないという心配もあるわけでございまして、労働省としましては、私もつぶさにその間の説明を受けまして、この際、その前提としてもっと、今も熱意を持ってやっていらっしゃるのですけれども、関係当局におきまして、特に婦人局におきまして積極的に普及、徹底を図るようにという要請もいたしたわけでございまして、その普及の浸透を見ながら、いずれは法制化の問題を手がけていかなければならないというのが今の私の感じでございます。
  49. 千葉景子

    千葉景子君 大臣も、いずれはというような遠慮深い態度でなくて、法制化をみんなでしていこうというような気持ちで取り組んでいただければ幸いだというふうに思うんですね。  とりわけ西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画、これは婦人問題企画推進本部で出されているものですけれども、ここにおきましても、基本的な施策として育児休業制度普及促進ということがございます。そして、六十二年から六十五年の具体的施策としても、制度普及のための機運の醸成に努めるというようなことにもなってございまして、むしろそういう意味では法制化に向けて頑張っていこうじゃないか、こういうような姿勢をぜひこれからも強めていただきたいというふうに思うわけです。  先ほどもるる指摘させていただきましたように、我が国ではほかの問題とも共通の問題がございますけれども、特にこういう育児休業制度というようなことになりますと行政指導だけでは普及がなかなか難しいということがございます。男女雇用機会均等法の立法制定過程でも育児休業法制度化が論議されたと今のお話にもございましたけれども、その結果、事業主の努力義務というところで一応落ちついているわけですね。ただ、この均等法も施行後適当な時期に見直すということになっておりまして、これもいずれ近いうちには見直していかなければいけないだろう、その際にはこの問題も当然含まれてくるんじゃないだろうかというふうに思います。  そして、世界の趨勢を見ておりましても、それから世界経済の中で今日本の置かれている位置というものを考えてみても、今日本が積極的に労働条件の面でも前進を図ることが叫ばれているときではないかと思うんですね。外から指摘されてからいつもやっと重い腰が上がるということではなくて、日本も経済先進国として基本的なことをやっているじゃないか、こういうふうに言われるような体制づくりというのは当然必要になってくるだろうと思います。  こういう中で、我が党も四党共同という形で育児休業法案皆さんと一緒に提案させていただいているわけで、ぜひ政府・与党としても、この際、この共同法案につきまして十分検討していただいて、そして私どもと一緒になって早期実現に向けて努力していただきたいというふうに念願するわけでございます。  この法案の検討あるいは法制化に向けて、労働大臣の積極的な前向きな御見解をお伺いして私の質問を終わらせていただきたいと思いますので、ぜひその点、労働大臣、お願いいたします。
  50. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先ほどいずれはという言葉を申し上げましたが、いずれはという言葉は削除いたします。  法制化に向けて積極的に取り組んでいかなければいけない。しかし、その前提として、もうしばらく時をかしていただいて、その普及の徹底を図ってまいりたい、それが私どもの当然の責務であるというふうに考えていますから、よろしくお願いいたします。
  51. 石本茂

    ○石本茂君 いただいております時間が十五分という非常に短い時間でございますのであれこれお尋ねすることはできないのでございますが、この問題は非常に古い問題でございます。  我が党といたしましても、昭和五十三年だったと思うんですが、かつて労働大臣をされました早川崇先生を中心にいたしましてこの育児休業制度の法制化が必要であるということを提唱されまして、元大臣を含め多くの議員が一同に集まりましてこの問題を随分討議をし審議をしたわけでございます。原案につきましても、衆議院の法制局に諮りましてあれこれ検討したわけでございますし、同時に各政党にもお呼びかけをいたしまして、そして各政党の婦人議員が中心になりまして各党の意見とかあるいは試案なども持ち寄りまして随分調整に調整を重ねたわけでございます。もちろん一部分については了解いただけなかったものもあるわけでございますが、昭和五十七年ごろだったと思います、今書類をちょっとなくして見当たりませんのですが、これは自由民主党が議員立法として国会に提案しようじゃないかと、そこまで話がいったわけでございます。  当時、労働省におかれましては、国連婦人の十年の懸案事項でございます女子労働者の男女平等化の推進というようなことでいろいろ審議されておりまして、婦人少年問題審議会の婦人労働部会におきまして雇用における男女の機会均等とか待遇の平等化などについて審議されておったわけでございます。ここにおきましても、この育児休業問題とは離して考えることができないというようなお話もございましたので議員立法として提案することを我が党はあきらめまして、そしてこれを審議会に御一任した経過を思い出しております。  その結果、昭和五十九年でございましたか、育児休業の法制化は時期尚早であるというような結論が出されまして今日に至っているというような非常に古い経過をたどっている問題でありますことを、私も御承知いただいていると思うんですが申し上げておきたいと思います。  この時期尚早の理由は何でございましょうか。これもたびたび聞きまして私なりに了解はしているところでございますけれども、その理由の一つとして挙げられておりますのが、先ほどもちょっと出ておりましたけれども育児休業の奨励金、こ の消化率が極めて低いというようなこともたびたび聞かされているわけでございますが、それじゃこの消化率が一体どれくらいのパーセンテージになったら法制化に踏み切ろうとするお考えがあるのかどうか、これを一点お尋ねしたいと思います。  なお、続けまして、昭和六十二年度におきます奨励金の消化状況を大企業と中小企業に分けてお示しいただきたいと思います。
  52. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業制度化が難しい理由は何かということでございますが、私どもの考えております理由は、先ほどから大臣もお答えいただいているところでございますが、普及率が低いということが最大の理由でございます。たまたまそのことの一つの結果として私どもの奨励金が活用されていないということになるわけでございます。  六十二年度の規模別の奨励金の支給の件数でございますが、六十二年度初年度のものが中小企業に対しまして二百六十五件、しかし六十一年度に初年度支給いたしまして二年度にかかっておりますものがあるわけでございまして、これが二百三十六件ございますから、両方、二年度も含めますと五百件をちょっと超えるということになります。  それから、大企業につきましては、六十二年度は四十件でございますが、これは初年度の件数でございますから、その前の年に初年度として支給いたしました件数五十四件が六十二年度には二年度目として支給されますので、それを含めますと両方で九十四件ということで百件近くなるということになるわけでございます。
  53. 石本茂

    ○石本茂君 現状につきましては大体わかるわけでございます。  政府当局におかれましても、この「育児休業制度のおすすめ」でございますとかあるいはまた「女子再雇用制度のおすすめ」というようなこういうパンフレットあるいはリーフレットのようなものを毎年おつくりになりまして、そして企業を中心かあるいは一般といいますか我々民衆を中心かわかりませんけれども、配布をされまして、努力をされていることは痛いほどわかるわけでございますが、さっきもお話がございましたように、例えば普及率を高めると申しましてもあるいはまたこの奨励金の額をどんなに増額されましても、現在のままでは、その普及率を高めることができるだろうかというような、まあこれは非常に愚かな考えかもわかりませんが、私はいつもそれを思うわけでございます。  その点につきましては、普及率は絶対高まりますというふうに言い切っていただけるでしょうか。これは愚鈍な質問でございますけれども
  54. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 私どもにとっても大変につらいところなのでございますが、普及率の向上につきましては、私ども精いっぱいやっておりますが、時間は少しかかるのではないかと感じます。
  55. 石本茂

    ○石本茂君 これは、女子の就業の機会均等法をめぐりまして女子の職分野といいますかそういうものが徐々に高まってきた現実を見ておりますものですから、やがて必ず目標のところに到達していただく日が来るというふうには考えますけれども、いろんなたくさんの問題がございまして、一概に法制化に踏み切れと言うことはとてもつらいんでございます、特に中小企業につきましては。  ですけれども、この法制化ができない限り、職場環境の問題で遠慮がありましたりあるいはまた家庭の事情などなどを総合いたしまして、これはとても実現できないんじゃないだろうか。実現していただきますためには、ある時点に区切りをつけまして踏み切ることが、多くの問題を解決するためには時間もかかるでしょうし、努力も必要だと思いますけれども、私は、女子労働者のみとは言いません、もちろん産後休暇が終わりまして安心して子育てに専念できるお母さんだけじゃなくて、お父さんの立場でも、休暇がとれるということになると思います。  今から数年前に、当時そういう法案を立案したわけでございますし、それからヨーロッパなどの数カ国につきまして実情なども見ております。国柄によりますし民族性にもよりますけれども、いつまでも難しい、困難だからと言っておりましたのでは、これは永久に実現できないんじゃないだろうかというふうに思うわけです。  ある男性の方のお言葉がございました。我々男性も子供を産むときが来たら解決するだろう、どういいますか、そういうばかにされたような話でございまして、私は情けないと思ったこともございます。けれども、そういうことは抜きにしまして、ここまで世の中、社会が開発されましてそして各事業体におきましても雇用の機会均等が進んできております時期でございますから、これは今まで以上にひとつお力を入れてくださいまして一日も早くこの法制化が実現できるように、私はそのことをこいねがっている一人でございます。  このことにつきまして局長さんの御意見と大臣の御所見を伺いまして、非常に簡単な質問になりましたが終わります。お願いいたします。
  56. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 言われることは十分理解をしておるところでございます。  先ほど千葉先生にお答えしたような結論と同じになるわけでございますけれども、私は、育児休業制度普及だけが法制化の前提になるとは考えておりません。それも大変大きな支えになるわけでございますけれども、もう一つは、男女雇用機会均等法の精神がもっと浸透しまして、女性自身の労働者としての地位の向上、その女性がいなければ企業が成り立たないというような貴重な存在になることが一つの前提になりはしないかと思うんです。今育児休業制度実施しているところを見ましても、この女性に抜けられてはどうしてもかけがえのない人なんだから困るんだというような企業がこの制度を採用しております。  それらを考えますると、これから数年のうちに、今の雇用機会均等法も大わらわになって労働省は婦人局を中心に普及徹底に努力をいたしておりますけれども、そのことと相まって、女性御自身のみずからの地位、能力を高めるという御努力が重なり合っていきますると法制化の時期は早いというふうに考えておるわけでございまして、ともどもそういう面で努力をしていかなければいけないと考えております。
  57. 石本茂

    ○石本茂君 わかりましたが、局長さん、一言御決意をお願いします。
  58. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 大臣がおっしゃったことに補足すべきことはそんなにないんでございますが、石本先生、私ども育児休業制度普及についていろいろと側面からも大変御支援をいただいているわけでございますけれども、今後さらにそういう点について努力をしていきますと同時に、先ほど大臣からもお話しございましたように、私どもも法制化が必要ないというふうに考えているわけではないわけでございますから、現在の普及状況を見ながら、また企業の中で女子の能力を長期的に活用しようとしていくそういう機運をつくり上げていく。  それは、均等法の周知徹底ということも含めて、相まって行われていくことだと思いますが、私ども対策すべてが進んでいくととが結果的に育児休業制度化ということに結びつくのだと思いますので、今すぐということは私どもも残念ながらお約束できないのでございますけれども、できるだけ近い将来に法制化ができるような方向でさまざまな対策を積み上げてまいりたいというふうに考えております。
  59. 石本茂

    ○石本茂君 ありがとうございました。  大臣にお願いしたいんですが、代々の大臣にお目にかかってこの問題を私どもお願いしてきました。大臣がおかわりになりますと、何か、こうみんな消えてしまうというようなことになっておりますので、どうかまたその辺も継承していただきますようにお願いいたします。  ありがとうございました。
  60. 中西珠子

    ○中西珠子君 各党の女性代表が、自民党も社会党も、これまで育児休業の法制化を強く要望されました。    〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕 そして、これまでの各党でのいきさつというものをお話しになりました。  私ども、公明党・国民会議といたしましては、昭和六十年四月に公明党独自の育児休業法案提出させていただいたわけでございます。その中では、男女、両親のいずれでも一年間育児休業がとれるということと、それから所得の六割が保障される。その所得の六割の育児休業手当というのはどこから出すかというと、国と労使が三分の一ずつ出す、いわゆる育児休業基金のようなものをつくりましてそこから出すというアイデアを盛り込んだ法案を国会に提出したわけでございます。  その後、四野党共同育児休業法案というものを、四野党の方々とお話しし、またその当時の労働四団体、全民労協の代表の皆様方とお話しを重ねまして提出したわけでございます。この四野党共同法案提出されましたのが六十二年八月でございますので、それ以来ずうっと継続審議ということになっていたわけでございます。  野党が提出した議員立法が長く継続審議になるということも大変珍しいことではございますが、これを何としてでも、現在育児休業の法制化というものに対する要望が非常に高まっておりますし、また労組の婦人の方々を中心として一千万人の署名を集めるという機運も高まっております中で、そしてとにかく雇用されている女性の中で六割以上が既婚者でありまた育児というものをやりながら家事もやりながら仕事を続けていかなくちゃならないという状況であるし、一たん仕事を離れてしまうと再びなかなかいい職場にはつけないという状況でもある。また、せっかく政府の方で再雇用制度というものを奨励金を出して一生懸命普及しようとしていらっしゃいますけれども、まだその普及度は非常に低いというふうな状況でもありますので、育児休業の四野党共同提案法案そのものを掲げて審議することが難しければとにかく育児休業集中審議をぜひしていただきたいということを私は社労委の理事といたしましてずうっと要望してまいりました。もちろん、婦人の代表でいらっしゃる沓脱さんは賛成してくださいましたけれども、各党の男性の理事が非常に御理解をお示しくださいまして、それで育児休業というものは大変重要なものであるから集中審議をしましょうということにしてくだすったわけです。社労委の歴史始まって以来、育児休業集中審議がきょうここでされるという段取りになりましたのも、ひとえに社労委の各党の男性理事の方々の御理解のおかげと私は心から感謝している次第でございます。  それで、先ほども石本先生からお話がございましたように、せっかく労働省育児休業普及のために奨励金をお出しになっても、これも最近非常に額が上がったわけですが、その奨励金の毎年度の予算の消化というものがなかなかできていない。  私は大体想像しているんでございますけれども、消化率はどのくらいなんでしょうか。
  61. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業の奨励措置のための予算は、私どもは、実は実際に使われるであろうというよりも数倍とっておるわけでございます。  それはなぜかといいますと、私どもが夢にまで見ているわけでございますが、どんどん高まりましてとても予算が足りなくなって奨励金をお出しでぎないというようなことになった場合にはまことに申しわけないことであるというようなことから少し多目に出しておるということでございます。  実際には十六億円準備をいたしているわけでございますけれども、六十二年度で二億六千万円ということでございますから、私どもは、未消化というよりはたくさん準備しておったものが余った。余りましてもむだにするわけではございませんで国庫に残っておりますので、そういうことで多目にとっておるということでございます。
  62. 中西珠子

    ○中西珠子君 たくさん予算をおとりになってうんと普及をして、そして奨励金は漏れなく出してあげようというお気持ちだと思うんです。  いずれにいたしましても、六十一年度が大体一三・二%ぐらい消化していらっしゃるし、六十年度が一一%ぐらい消化していらっしゃるというふうに考えているわけですね。ちょっと一応こちらでざっと計算したんですが。それから、奨励金をいただいた企業というのが、この前、社労委員会におきまして局長から御答弁があったんですが、一年間に大体二百九十ぐらいということですね。  そういうふうなことでなかなか遅々として育児休業普及が進まないという状況で、大変一生懸命なすっているのに成績が上がっていないということは大変な御苦労の種だと思うのでございますけれども、しかしこれはどういうところにネックがあるか。この間、いろいろな育児休業の実態調査というものもなさいましたけれども、なかなか普及しない理由はどのようにお考えになっていますか。
  63. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 私どもで実態調査をいたしました結果から出てまいりますのは、もう既に導入した企業の答えなのでございますけれども、その場合でも一番問題になる点は、代替要員の確保、それから育児休業をとりました者が帰ってまいりました後の代替要員の処遇の問題、それから休業中の育児休業をとっている者に対する社会保険料の負担その他こうした問題が挙げられて、一番大きいものはそういうものでございます。
  64. 中西珠子

    ○中西珠子君 既に育児休業を奨励金をいただいたりして導入した企業では、育児休業のメリットはどのように考えておりますか。
  65. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業制度をつくったために、定着率がよくなったとかそれから残ってほしかったような技術を持っている者などにつきまして定着率が上がっている、それからモラールがよくなった、それから企業に対する信頼が高まったというような答えが出てきております。
  66. 中西珠子

    ○中西珠子君 先ほどから大臣の御返答、局長の答弁を聞いておりまして、とにかく育児休業を法制化していくことは今すぐはなかなかできない、しかし法制化への努力はしなければならないと思っているという前向きの御返答をいただいたわけでございます。四野党の共同提案育児休業法案につきまして直接的にこれを議題にして審議をいただくことはできないのでございますけれども、一応育児休業問題の集中審議ということで、社労委始まって以来の集中審議が行われているわけでございます。  大変意義が深いと思うと同時に、この際、四野党が共同で提案いたしております育児休業法案の中身につきましてどのように受けとめていらっしゃるか、御感想なり御意見なりをお聞きしたいと思うんでございますが、いかがでしょうか。
  67. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 四党共同提案育児休業法案につきましては、私も承知をいたしております。  大変斬新な考え方でございまして、男女全労働者に対しまして育児休業の請求権を認め、育児休業手当を支給するという内容になっておると承知をいたしております。  国会の立法権の中でお取り扱いになるわけでございますから、私どもとしましては、今後の国会審議というものを十分見守ってまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  68. 中西珠子

    ○中西珠子君 全労働者対象、それからまた女性ばかりでなく男性も育児休業がとれるというふうにしているわけでございますが、男性も育児休業がとれるというところは、これはこれから大変必要なことだと思うんですね。  父子家庭もどんどんふえていますし、交通事故で奥様が急に亡くなって赤ん坊が残ってしまったとか蒸発してしまった奥さんの家庭というのもまたないわけではなくて、ここに乳飲み子が残ってしまって会社人間であるだんな様の方は途方に暮れた。でも核家族化がどんどん進んでいるわけでございますが、そういったときにゼロ歳児を預かってくれる保育所もなかなか少ないわけでございますし、近所づき合いというものも都会ではなか なかないわけでございますから、そういった場合に、本当に困ってしまって自殺してしまう、親子もろとも死んでしまうなんというそういう悲惨なケースだってないわけではないわけですね。    〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕  そういうこともございますけれども、一方、男女役割分業、女性育児をして家事をするんだ、男性は外へ行って働くんだというこの固定された男女役割分業観というものを打破するという意味もありまして、男女ともに家庭においても社会においても共同の責任があるんだし、殊に育児に関しては男女の責任であり両親の共同の責任でありまた社会の責任であるということを、日本が既に昭和六十年に批准いたしました女子差別撤廃条約の中にもはっきりうたっているわけでございますね。  ですから、その点に関しまして少し細かい御質問をさせていただきたいと思っているわけなんでございますが、労働大臣は、今は男性に与えるなんということはとんでもない、時期尚早なことだとお思いでいらっしゃいますか。
  69. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 最初は、今男性に与えるなんということはとんでもないことだと思っておりました。しかし、今は違うわけでございまして、そういう考え方も、これを新しい考え方というのかなというような実感でございます。  法律育児休業を男女ともに対象として実施することにつきましては、我が国の現状を見ますると、父親についての育児休業の必要性について社会的なコンセンサスを形成されているとはちょっと考えにくい状況ではないかと思います。  実態を見ましても、現実には、家庭内での家事、育児負担は他の先進諸国に比べましても日本の女性はより重く担っておるという数字が出ておるわけでございますし、また、社会生活基本調査の中においても、主に仕事をしている人のうち、男子で家事、育児に費やす時間は九分、わずかでございます。女子では一時間五十七分、こんなような状態になっておるわけでございます。また、フランスの男子有業者と日本の男子有業者を比較してみますると、家事、育児、買い物に費やす時間の二次活動時間に占める割合は、日本の三十代から五十歳代ではわずか三%前後、フランスの同世代の男子では二割前後というような状況に相なっております。  また、男女雇用機会均等法に基づいて女子労働者育児期における条件整備のため育児休業制度普及促進を図っていますが、個別企業において労使の協議による育児休業制度を男性を含め適用対象とすることはもとより望ましいことであると私どもは考えておるわけでございます。  また、育児についての責任は、おっしゃられるように男女ともに担うべきであると考えますが、一般に受け入れられるようこれから啓発活動に努めてまいりまして、専ら機運の醸成を図っていきたいというふうに考えております。
  70. 中西珠子

    ○中西珠子君 労働大臣、お考えをお変えになったということを伺って大変結構だと思いますが、これから国民に対する啓発、教育というものも盛んにやっていただきたいと心から要望いたします。  それで、私、昨日、男性に育児休業を与えるかどうか、日本ではなぜ与えていないかということについてお伺いしますと通報しました。そのときに、まだこれは三月の終わりに、女子差別撤廃条約の実施状況に関する日本の報告の審議内容を書いたリポートをいただきたいということを申し上げておきましたのに、昨日夕方五時ごろいただいたものですから、通報する暇がなかったので申しわけないんですけれども局長、この二月の時点におきましてこの女子差別撤廃条約の日本の実施状況を女子差別撤廃委員会、これは御承知のように二十三名の専門家から成るものでございます、その委員会のメンバーがいろいろお聞きして、そしてまた局長が百四十にわたる質問をお一人でばりばりとお答えになったということを伺って、心から賛辞を表したいと思っているのでございます。  昨日これを読みましたところが、ギリシャから来た、これはもちろん国を代表しているわけじゃないんですけれども、ライウ・アントニオとかいう女性が、現在日本の労働省が一生懸命やっていらっしゃる育児休業につきまして質問しているんです。それで、いろいろ奨励金を与えたりして一生懸命育児休業制というものを奨励して女子にだけ与えているということは、これは伝統的に固定化されたところの、今どこの国でも一生懸命払拭しようとしている男女役割分業観というものを固定し温存するものではないかという質問をしているんです。それに対する佐藤局長お答えをだあっと端から一生懸命見たんですけれども、それに対するお答えがぴたっとなかったわけです。  それからもう一つ、スウェーデンのワットステインというんですか、やはり女子だと思うのですが、この人が、日本では男性に対する育児休暇を与える考えがありますかというふうな質問をしているんです。それに対しては、そんな考えはありませんとお答えになっているんです。その答えは見つかったんです。  ですから、初めの方のギリシャの人の、男女役割分業観を温存するものではないかというそういう危惧に対してお答えをなさったのかどうか、この中には出ていないんですね。それでちょっとお聞きしたいと思います。
  71. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) CED、女子差別撤廃委員会の御審議というのは、先生御存じと思いますが、数時間という短時間の中でたくさんの質問が出まして、一夜明けましたらその百三十八の質問に数時間でお答えしなければならないという大作業だったわけでございます。  そこで、私は、委員の皆様方に、限られた時間の中ですべての御質問お答えしたいと思うと。それについては、類似の質問がたくさん出たわけでございます。例えば、育児休業ですと、ギリシャからも出ましたしスウェーデンからも出たわけでございますから、初めに、類似の質問は一応全部まとめて一つとしてお答えをさせていただくということで御了解をいただきまして、育児休業につきましては、ギリシャの方の御質問は、必ずしもそこまでの先生おっしゃったほどに強いニュアンスというふうに私はたまたま受けとめなかったのでございますが、男子もとれるようにする方が新しい時代の要請という意味でいいのではないかということと、スウェーデンのワットステインさんからは、男子に育児休業をとらせるような制度を考える予定はないか、そういう御質問でございましたので、その二つをくくって、我が国では育児休業について男子にもとれるようにするそういう予定はまだ現時点ではない、しかし個々の企業において父親もとれるような制度導入することは私どもとしては歓迎するところであるということをお答えしたわけでございます。  それから、その委員会では、答弁漏れがありましたり私の答弁がおかしいということであれば、再質問は当然許されるわけでございますが、答弁漏れがあったらいけないと思いまして最後に私は、皆様のすべての御質問お答えしたでしょうかと確認をいたしましたところ、皆様から、これでいい、多くの質問に答えてくれてありがとうということで、祝福のお言葉をいただいて終わったということでございます。
  72. 中西珠子

    ○中西珠子君 御承知のとおり、男女役割分業というものが差別の根源をなすということは、婦人局長初め労働大臣も御承知のことと思うのでございます。  現在の、婦人だけに育児休業を与えるということは、もちろん世論が熟していないからという面があっても、先ほど大臣がおっしゃったように、やはり意識改革をしていかなければいけない。男女ともに養育に対する責任はあるしまた社会的な責任というものがあるのだということで、育児休業の法制化はどうしても促進する方向で御努力いただきたい、そして男女ともにとれるという方向で御努力いただきたいと思うわけでございます。  とにかく、均等法の理念や基本原則のところにも、職業の責任と家庭の責任とを調和させていく ようにすることを一つの目的としているのだということもうたっていらっしゃるわけでございますから、育児休業を申し出た女子労働者に対してなるたけ与えるように努力しなけりゃいけないという努力義務だけではなかなか進まないのではないか。また、女子だけではいけないのではないか、男性をも対象にした育児休業というものの法制化をお願いしたいと思うわけです。  各国におきましても、先進国、殊にECの国々には、ほとんど、男女ともに、いずれでもとれる育児休暇がございますでしょう、いかがでございますか。先ほど、こういうところには権利があるというお話がありましたけれども、もう少したくさん国があるのじゃありませんか。
  73. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先ほどは簡単にお答えしましたのですべての国を挙げたわけではございませんが、先ほど挙げた国以外にも育児休業制度を採用している国はございます。父親、母親、両方がとれるあるいは母親だけがとれる、それぞれにつきまして採用している国はもう少しございます。
  74. 中西珠子

    ○中西珠子君 それから、スウェーデンは先ほどお挙げになりました。西独もお挙げになりましたが、もっとも西独は最近できたんですね。スウェーデンとかほかのノルウェー、フィンランドあたりも、同じような男女ともにいずれでもとれるという育児休業制度を持っておりますし、それからイタリアとかスペインとかフランスとかそういうところももちろんございますし、東独の国々だってあるわけでございますから、日本の国際的な地位というものを考えても、日本だけがないということのないように。  それから、ILO百五十六号条約と百六十五号勧告のお話も出ましたので、重複してまた申し上げることは私いたしませんけれども、とにかく早い時期にこれを批准していただくような方向で御検討を願いたいと思いますが、もう一度御確認のお返事をいただきたいと思います。
  75. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 私どもも、育児休業制度の恩恵に少しでも多くの女性が浴するような形での施策が重要であるということは当然のことでございまして、先ほど大臣も申し上げましたように、今すぐにということはなかなか環境条件が整っておらないために難しい点が多々あるわけでございますけれども、こうした環境条件の整備に努めた上で、できるだけ早い将来に法制化ということに積極的に取り組んでいくということは考えておるわけでございます。  また、国際条約、特にILO百五十六号条約につきましては、先ほどからもお話が出ておりますように、男子も含めての対応ということでございまして、諸外国のお話も出てまいりましたが、日本ではなかなか全般的な理解、コンセンサスという点でもう少し時間がかかる点がございますと思います。  すべて含めまして総合的に解決していくことを努力目標といたしまして、これから努めてまいりたいと思います。
  76. 中西珠子

    ○中西珠子君 先日、社労で厚生省にお伺いいたしまして長尾局長から御返事をいただいたんですが、保育所の数は非常に多くなっておりますけれども、午後七時までやる延長保育が全国で今四百十一カ所しかない、それから午後十時までやる夜間保育は全国で二十六カ所しかない、ゼロ歳児保育、乳児を預かっている保育所は指定保育所が三千二百カ所で現在三万六千六百七十人の乳幼児を預かっているというお話でございましたけれども、全国で考えますとこれは本当に微々たる数字なんですね。  それで、昨年の労働基準法の改正によりまして変形労働時間というものが導入されて、労使協定ができれば、これは国会の修正によりまして一日の上限をつけ一週間の上限をつけるということで、一日十時間ということに労働省の方でしてくだすったわけでございます。一日十時間働いて、夜遅くなって子供を連れに行きたいと思っても、長くなっている十時間までの所定労働時間ということで途中で子供を連れに保育所に行くこともできないという状況も出てくるし、第一ゼロ歳児を預ける産休明けの保育所というのが非常に少ないわけでございますから、今回の基準法改正で変形労働時間の導入とかということになってまいりました場合、どうしてもフルタイムで働けなくなる。子供を産んだらもうフルタイムで働けなくなるという状況が非常に出てくると思うわけでございますので、どうしても育児休業を法定の育児休業ということで認めてあげて、そして手当も少なくとも従前の所得の六割ぐらいは何とか確保していくというふうなことをしませんと、家庭を持って出産して育児をしながら働いていくという女性は、フルタイムでは働き続けなくなるし、またフルタイムで働き続けないばかりか、とにかくどうにもならない状況になってしまうというのが現在の育児環境であると思うんです。殊に婦人に対しては家庭責任が依然として非常に重くのしかかっている、幾ら男女役割分業だからといっても、働いている女の人に何といっても育児と家事の負担というものが多くかかっているわけでございますから、そういうような状況を何とか打破して婦人労働者の継続的な雇用を図ってやると同時に、健康と福祉を守ってやるという意味からも、また先ほども御指摘ございましたけれども参議院の国民生活調査会が、とにかく男女いずれでもとれる育児休業の法制化が必要であるという提言を人口問題の見地からやったわけでございますね。これは、これから高齢化社会に向かいまして、生産年齢人口、殊に二十歳から五十九歳までの生産年齢人口、働き盛りの人口というものは、二〇一〇年ぐらいになると四九%から四八%ぐらいに落ちてしまうわけですね。そうすると、どうしたって女性が、年齢のいかんを問わず、できる限り経済活動に従事して、日本の経済発展のためにまた社会発展のために大きな役割を担うということになってくると思うんです。そうすると、育児と家事とそれから職業の責任というものを全うすることが大変難しい環境のままでは、どうしても子供を産むことをためらってしまう、子供をだんだん産まなくなってしまう傾向がもっと強まっていくのではないかということを恐れるわけです。  そういったことも含めまして、いずれにしても、今、なるたけ早い時期に育児休業というものの法制化、それも男でも女でもどちらでも、両親のいずれでもとれる育児休業の法制化、そしてまた育児休業基金というアイデア、基金という名前は四野党の共同提案では使っておりませんけれども、いずれにしても国と労使が三分の一ずつ出すというそのアイデアは一カ月八十五円から九十円ぐらいをそれぞれが出せば実現するということで、私ども何回も計算してみたのですけれどもそういうことなので、何とか休業中の所得も保障ができて男女どちらでもとれる育児休業の法制化というものに向かいまして、これは世界の趨勢でもございますし日本のこれから高齢化社会を迎えるニードでもあると思うので、この点につきましてなお一層の御努力をいただきまして、近い将来に実現に向けての御検討をしていただきたいと思うわけでございます。  労働大臣に最後に御決意を伺いまして、さっきから何回も伺っておりますけれども前向きの御返答をいただいて、私は質問を終わりたいと思うんでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  77. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先ほど来急速な法制化は非常に困難でありますという御答弁を申し上げたんですけれども、御承知のように、政府提案法律案の場合は必ず関係審議会の合意を得なければならないということになっておるわけでございます。  この問題につきましての婦人少年問題審議会の過去六年にわたる審議を見てまいりますると、近き将来その合意が得られるという状況ではないわけであります。  それには当然背景があるわけでございまして、今の普及率が低いとかあるいは労使の使の側の納得が得られないとかあるいは本来的には、先生も御指摘になったかと思うんですけれどもILO百 六十五号勧告の中では、要するに、やろうと思えば労使の協約の中でもこれはできるんです。しかし、そのことも実はなかなかまとまらないという実態を眺めましたときに、労働省としては、もっと勧告を受けやすいあるいは条約を批准しやすいあるいは労使の合意を得やすいような環境整備をみずからの手で図ることが先決であるということで、先ほど来お答えしていますように、皆さんの御意見を踏まえて積極的にこれからも取り組んでいかなければいけないと感じておる次第でございます。
  78. 中西珠子

    ○中西珠子君 女子差別撤廃条約の精神に基づきましても、また紀元二〇〇〇年に向けての婦人の地位向上のための将来戦略の中でも、男女いずれでもとれる育児休業法実現をと言っておりますので、どうぞ大臣、そういう機運を醸成するように御指導を賜りますようにお願いいたします。  終わります。
  79. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 きょうは、国民皆さん方の強い御要望に支えられて社会労働委員会の理事会で合意が得られて、育児休業制度の法制化についての集中審議が行われることになって、大変うれしいと思っております。  私も、与えられた時間はわずかでございますが、この育児休業制度の法制化についてお伺いをしたいと思います。  私は、戦後の働く婦人の今日までを歴史的に見てまいりますと、確かに大変困難であった保育所の増設やあるいは一定の改善の努力といったもののおかげで、この三十年の間に働く婦人の社会参加が大変広がったと思うわけでございます。しかし、今日の社会経済の発展の中で労働条件の変化も極めて急速に起こっております。そういうもとでの育児休業制度の法制化というのは、働く婦人の社会参加、婦人の地位向上を飛躍させていく上で、働く婦人の歴史にとっても大変大きなエポックになるような時期ではないかと思っているわけでございます。  そういうことで、限られた時間でございますから御見解をお伺いするのをやめますが、そういう点で育児休業制度の経過をちょっと考えてみますと、一九七五年に国公立の教員、看護婦、保母に限定された現行法が大変長い間の運動と世論の成果でできました。これができたことで弾みがつけられて、民間と全職種にこの制度を拡大適用してほしいという強い運動と世論が、その当時、高揚をしておりました。  そういう中で、先ほどもお話がありましたけれども昭和五十六年九月三日に、早川元労働大臣が東西ヨーロッパ諸国十カ国余りをお回りになった調査を踏まえての報告をなさいました。その中で、我が国でも早期に法制化をやる必要があるという提言もあって、動きが大変活発になってまいりました。  当時、早川元労働大臣が読売新聞に掲載されておられる一節を見ましても、この際、立法化に踏み切る段階に来ているということを大変端的にお述べになっておられます。時間の都合でほんの一節を読みますが、   ヨーロッパ歴訪では、日本に対する風当たりの強さを膚で感じた。日本の工業製品の進出が写真機のライカをつぶし、時計のオメガを倒産させて、さらに家電製品、自動車へとその脅威が広がっている。こういったことが第二の黄禍論となり、がめつく働きすぎの日本人、働く女性を奴隷扱いする日本となってマスコミに登場する。その場合、日本の福祉の後進性、その例として育児休業制の欠如が指摘される。(中略)   出生率の低下も併せ考慮し、この際、立法化に踏み切る段階にきていると思われる。 と大変明確に述べておられるわけでございます。  私ども、当時、超党派の婦人議員懇談会でも、早川元労働大臣をお招きして報告をお伺いするというふうな働きもございましたし、先ほど石本議員からのお話もありましたように与党・自民党の中でも法制化が具体化されていくというふうに、機運が大変高揚しておった時期がございます。  ところが、そういう国民の動きあるいは与党・自民党の中での動きなどもありまして財界筋が大変慌てたという事実もございます。早川先生が報告書をお出しになったのが昭和五十六年の九月三日でございます。ところが、同じ九月十七日には、日経連は、育児休業制度の法制化に反対する決議というのをわざわざ行って、政府・自民党にその旨の申し入れをしています。さらに、日経連だけでは不十分と思ったのでしょうか、十月六日には、経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済四団体の名前で、再度、育児休業制度の法制化反対で政府・自民党に申し入れを行ってきたという経過がございます。  そういう中で、労働省が、あるいは労働大臣かという方が正確でしょうが、わかりましたと言ったかどうか知りませんが、姿勢が大変慎重になったということを当時の情勢として思い起こしておるわけでございます。  そして、婦人少年問題審議会に問題が提起をされ、そういう結果、建議としては消極論が出てきた。五十九年三月二十六日、普及率も一割強にすぎないことなどを考慮すると時期尚早という結論が出てきたという経過になっていると思うわけです。  大体そういうことでしょう。
  80. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 大変古いお話も出まして、沓脱先生の御観察の結果を今お話しいただいたわけでございます。  私も、すべてを詳細に正確に記憶しているかどうかについては必ずしも自信がないのでございますが、私の記憶では、確かに早川先生が大変に御熱心であり、自民党の有志の先生方がそれに呼応されまして御熱心に御検討されたということは覚えております。それにつきまして、確かに使用者団体からもそういう動きがあったように記憶をいたしております。  ただ、労働省といたしましてこの問題にどう対応したかということでございますが、労働省といたしましては、五十年代の後半は雇用機会均等法の整備ということも含めて、女性の職場での地位の向上のためにできる限りのことをしなければならない、そして女子差別撤廃条約が批准できるような条件整備をしなければならないということで努力をいたしておった時期でございまして、審議会では、この問題につきまして、雇用機会均等を図るための法制の整備ということも含めた均等の対策の問題と並んで、育児休業の請求権を法制化するかどうかということはその前から検討課題に上っておりまして、その時点で既に労使の間ではかなりの御意見の隔たりがあり、私ども法案を、政府が法案をつくり国会に提出しますためには関係審議会を必ずクリアしなければならないわけでございますから、そういう意味では既にそのような動きがある前から、私どもとしては、この問題で審議会でまとまったお返事をいただくということはなかなか困難であるという状況にあったわけでございます。私どもは、これはなかなかお返事がまとまらないのではないかというような感じが最後まである意味では続いたわけでございますけれども、最終的には、普及率が余りにも低いのでまず行政でもう少し環境整備をしろという御建議をいただき、あのような結論になったわけでございます。  労働省としては、その決意がどうこうということではなくて、どのような法律でもそうでございますが、労働関係の法律は、政府が提案いたします場合には必ず三者構成の審議会である程度の御意見のまとまりがなければできないということの結果そのようになったのだというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  81. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それはそういうふうにおっしゃると思いますが、当時、私ども、婦少審の建議に時期尚早などという消極論が出てくるなどとはゆめゆめ思っていなかった。労働省はそう思っておられたのかもしれませんが。  要するに、この経過から見て、与党・自民党の中でも早川先生を先頭にかなり具体化しているそういう中で、慌てて経済団体が、待ったをかけるというか、制度化、法制化反対だというふうに言 われた。この経過で明らかなように、私ども国民の目から見ていると、財界の圧力に屈服して慎重論になってしまったというふうに、あの当時、私ども理解をしたわけでございます。  時間の都合がありますから簡単にいきますが、過日、六十三年一月二十九日の本会議での我が党の小笠原議員の質問に対する答弁を見てみますと、これも五十九年の婦少春の審議を用いて御答弁になっておられるんですね。私、あれを拝聴していて、何かの間違いと違うかなと思った。  「時期尚早である」というふうに大臣はお述べになっておられるんですが、何か、勘違いではないだろうかという思いがしたんですが、いかがですか。
  82. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) それでは、私の方からとりあえず。  そのように大臣はお答えいたしたと思います。  と言いますのは、普及率がこのように低くては、法制化をしても、実質的にそれが守られるような状況にはなかなかならないのではないかという審議会での御心配を反映しているものであるとすれば、普及率という点では、その当時と小笠原議員から御質問いただきました当時とでは残念ながら余り変わっておらないというようなことから、大臣はそのようにお返事を申し上げたのだというふうに思います。
  83. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私、勘違いをなさっているんじゃないかなというふうに申し上げましたのは、確かに四年前の建議を用いて時期尚早の理由にお挙げになっておるんですね。そういうことで、むしろ行政指導で普及の促進をということなんですけれども、こういうやり方でいったら、さっきからお話が出ておりますように、普及は本当におぼつかない、百年河清を待つに等しいんじゃないかという思いがいたしまして、四年前の婦少審の建議を用いての御答弁は勘違いと違いますかと言うたんです。  なぜかというと、細かい資料は余りたくさんありませんが、労働省の資料を拝見していて思ったんですが、例えば、「育児休業制度実施事業所の割合」というのがこの六十二年度の白書に出ておりますね。  これによりますと、昭和五十三年は六・六%なんですよね。それが、五十六年には一四・三%、六十年には一四・六%。四年間に〇・三%しかふえていないんです。これを全事業所ということで考えていきますと、四年間に〇・三%しかふえていないんだけれども、もし毎年ふえたとしても千年以上かかりますわね。行政指導をがあっとやることで大変テンポが早まったということになったとして、三倍のテンポで進んだといたしましても九十五年かかりますよ、実際。だから、百年河清を待つに等しいと言うたのは、実際数字を見ていて率直にそういう感じがするということなんですね。ですから、行政指導を強化してその普及率を高めて、そして一定の段階でというふうにおっしゃるんだけれども、これは百年かかるぞという感じが率直にするわけです。それで申し上げたんです。  そういう中で私は、既に同僚議員からもお話がありましたように、制度化の必要性、緊急性は非常に差し迫ってきていると思うんです。  というのは、今、婦人労働者の置かれている実情というのは、この四年間に急速に変わってきていますね。その一つは、男女雇用機会均等法が制定されまして、コース別人事だとか残業がふえるだとかを含めて、男性並の仕事のやり方というものが強いられてきています。もう一つは、労基法の改正が施行されて、変型労働時間制が入れられる。あるいは、婦人保護規制の緩和というふうなこともありまして、労働時間が長くなったり夜間の労働時間が多くなったりというふうなことが随分起こってきています。こういうふうに急速に働く婦人の労働条件が変化いたしますと、これは保育所だけでは対応できないんじゃないかというふうに思うんです。  これは、以前にもお聞きをしたことがあるんですが、片方で、労働条件の変更に関する法制化は労働省がおやりになっているわけですね。厚生省は、保育行政は従来どおりやって、それを少々追っかけていかなきゃならぬというふうなことになってくるわけですね。だから、国民の側から見たら、行政の整合性という点では非常に欠けるんじゃないかと思うんですね。だって、労働省は、労働条件の変更に関する法制化をやっていくわけでしょう。厚生省は、そのことと密接に関係して保育行政を変化させていくことが今日の状況の中ではそんなにできないわけですね。  ちょっと厚生省にもお伺いをしたいんですが、私、冒頭に申し上げたように、保育行政というものの御苦労の結果が、今日、六十二年四月一日で二万二千八百三十五カ所の保育所ができ、定数が約二百三万人。このことが、働く婦人の社会参加を広げていく上で非常に大きかったと思うんです。しかし、この三、四年の間の急速な変化に対応できるかというと、さっきもお話があったように、延長保育は四百十一カ所、夜間保育は全国で二十六カ所だという状況になっているわけですね。  私は、育児休業の一番の差し迫った問題の乳児保育、特に産休明け保育状況はどうなっているかという問題を、非常に関係が深いので少しお聞きしておきたいと思います。  今厚生省の統計を聞きますと、ゼロ歳児の入所児童数というのは三万六千六百七十人ですかね、六十二年四月一日現在。ところが、中央児童福祉審議会の意見具申では、三カ月未満は慎重にというふうな御意見が出ておるわけです。  厚生省としては、その産休明けの子供さんの保育は、どういうふうにお考えになっておられますか、いつから扱うというふうに考えておられます
  84. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 今先生から御指摘がございましたが、私どもの中央児童福祉審議会では、乳児の保育所への受け入れに関しては、特に三カ月未満の乳幼児については慎重にという趣旨の御意見をいただいております。  これは、先生御承知のとおり、三カ月未満の乳児の場合には、体の発達がまだ非常に急激に発達している段階でございまして、いわば非常な未熟状態にございますので外界の刺激に対する抵抗力が弱いこと、それから普通は床に寝て生活をするということが常態であるにもかかわらず保育所に通所するというような外部の刺激、それから移動といったようなことに対して大変弱いというようなことから身体の発育を阻害する危険性が多いために、もう一つは、乳児の情緒的な発達ほ不可欠である母子関係を維持することは非常に重要であるという観点から、家庭において保育をすることが望ましいというお立場でございまして、三カ月未満の保育所における保育については慎重にしろという御意見をいただいておるわけでございます。  しかしながら、今、先生から、厚生行政と労働行政については大変いろいろな意味でそごがあるのではないかという御指摘もございましたが、私どもは、現実に児童の福祉を守るという観点もございますし、また社会全体の中でお母様方が置かれております状況というものも十分に踏まえまして行政を進めさせていただきたいと思っております。私どもは、基本的にこの中央児童福祉審議会の御意見を踏まえて指導はしてきたつもりでございますが、三カ月未満の保育を絶対に引き受けてはいけないというような指導はいたしてはおりません。現実問題といたしましては、入所措置事務は昨年四月に市町村の団体委任事務ということになりましたので、こういった具体的な話になりますと市町村が地域の実情を踏まえて行うという措置になったわけでございます。  私どもといたしましては、産休明けから乳児の保育を行うかどうかというのは、今のような基本的な中央児童福祉審議会の御意見も踏まえた上でまた地域の実情も十分お考えになった上で、市町村において御判断を願いたいと思っておるわけでございます。
  85. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大変御努力をしておられるのはよくわかるんですが、実際に産休明けのお子さんを預かっておられる保育所はたくさんありません。もう時間がありませんから、細かくは結構です。  私ども大阪の状況を見ましても、幾つかの自治体では産休明けから預かっておりますが、大部分はやはり六カ月以上ということになっているわけでございます。そうなりますと、実際上は、私、行政の整合性がないと先ほども申し上げましたけれども、そうなるんですね。産休明けで、八週間になりましたから八週間休んで、そして六カ月まで保育所で預かってもらえるところがないというたら、どうなるか。八週間以降は、ベビーシッターを雇うかあるいは職場へ連れていくか、やむなくベビーホテルへお願いするか、それもどうにもできなかったらやめる以外にないということになるんですよね。だからおやめになる方々がたくさんあるわけだと思うんです。  国民生活調査会での御意見がたくさん出ましたけれども、私は人口問題の視点からもそうだと思うんですよね。安心して働きながら子育てもできる状況に今日の施策はなっていない。だから、本当は三人、四人は子供が欲しいけれどもということで一人ないし二人、六十一年度の調査では平均一・七二というところまで出生率が低下してきているというのも、働きながらの子育てが大変困難という今日の情勢になっているわけなんで、私は、そういった点では働く婦人の労働条件の急速な変化、法制化を含めてそういう変化と保育行政の隘路の中で、その矛盾の集中してきているのが働く婦人と子供たちだと思うんです。だからこそ、この矛盾を解決しなくちゃならないということで、法制化して解決を求める御要望は大変強いわけです。そこなんですね。  時間がありませんから簡単に言いますが、憲法二十七条を出すまでもなく、憲法二十七条では、「勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」というふうに明記されております。これはもう既に多くを申し上げなくてもおわかりのとおりでございますが、そういう点で今法制化をしなければならないところへ来ているのは、こういう制度上の矛盾を含めて、その矛盾の集中点というのが子育てをしながら働く婦人とその子供たちに来ている、ここを解決するためにはどうしても法制化が必要だというふうに思うわけでございます。  大臣に最後に御意見を伺いたいと思っておりますが、法制化を進めていく上で、大臣もおっしゃっておられましたけれども制度をつくるためには全労働者、全国民の合意が大変必要だと思うんですよ。  したがって、我が党も、ことしの三月二十九日付で、そういった立場で、すべての産業労働者に適用できるように、それから本人の申請による選択制のものにすること、期間は一年生児が一歳まで両親のいずれかがとれるように、休業後は原職復帰ができるように、今日の労働強化の職場の中では代替要員は必ず確保するように、休業中は一定の育児手当、私ども賃金の約三割程度を保障していくという内容法案要綱等も含めて提案してきているのはそういうことなんですね。  時間があればもう少し説明をしようと思ったんですが、残された時間がわずかでございます。  なぜ全国民、全労働者の合意が必要かという点です。私ども考えておるのは、育児休業制度というのは、いわゆる一般の社会保障制度ではないという立場を堅持してきております。そういう点を踏まえて、今そういった要綱を発表したわけでございます。いずれにいたしましても、法制化を実現していくためには全国民、全労働者の合意と支援がなければ、これは大臣がやるとおっしゃってもなかなかできないと思いますので、ぜひその点では結集できるような御努力が非常に大事だし、我々もそういう立場で大いに努力をしていきたいと考えているわけでございます。  最後に、私は冒頭にも申し上げたように、今、婦人、とりわけ働く婦人を取り巻く情勢は随分変化してきている。そういう中で働きながら子育てもしていくためにどうしても必要だと思いますのは、依然として保育所の充実であり学童保育充実だと思います。もう一つは、育児休業制度の法制化。私は、この二本立てで充実をしていくということが極めて大事だというふうに感じるわけでございます。時間がありませんから詳しくは申し上げられませんが、さっきほんのわずかお伺いしてもそういう点が明らかになっているところでございます。  そこで、大臣、先ほどから、いずれは法制化するんだとかあるいは困難の要因を幾つかお述べになったりしておるんですけれども、私はなぜ過去のいきさつを持ち出したかといいますと、国民は要求している、労使の労は早く法制化をしたいと思っている。しかし、合意が得られないのは使なんですね。そうでしょう。大臣もさっき申されました。反対をしているのは経営者団体なんですよ。だから、私は、これだけ国民的な要求の広がりがあって盛り上がってきているんだから、何としてもこの機会に、ぜひ早期に政府の責任で法制化に踏み切っていただきたいと思うんです。そのために、隘路の一つであります、これは唯一の反対団体である財界に、大臣、話をつけてほしいなと思うんです。産業労働懇話会でしたね、これは定期的なお話し合いの場もあるわけでございますから、そういった点は国会や国民の意思をひとつしっかりと握っていただいて、ぜひ財界とも話し合って説得をしてもらいたい。そのことが日本経済の発展に役立つんだということをひとつ理解をさせてほしい。  もう一つは、早急に法制化するというお立場で、これは、政府がお出しになる場合にはどうしても婦人少年問題審議会の義を経なければならないと先ほどもおっしゃっておられましたから、今日のこの四年間の間に急速に変わった働く婦人たちの実態を踏まえて、この婦少審に対する諮問のやり直しというんですか、新たに諮問をしてもらいたい、そして可及的速やかに、できるだけ早く法制化を実現させていただきたいと思うんです。  大臣の御見解を伺いたいと思います。
  86. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 言われますことは十分了解はいたしておるわけでございますけれども、婦人少年問題審議会への再度の諮問につきましては、残念ながら今のような育児制度普及状態の中ではこれを出す勇気はございません。  しかし、その法制化の前提となるべき制度普及やあるいはもろもろの環環整備につきましては、皆さんから異口同音に御指摘もありましたので、それらのことを踏まえながら一層の環環整備を図ってまいりたいと考えております。
  87. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 財界との話。
  88. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 財界を説得しろというふうな御意見でございますけれども、企業というものの本来的な運営というものは、使用者あるいは労働者の合意の中あるいは混然一体の中で事業が営まれるということが一番望ましいことであります。  いかに勤労者の方で望んでおりましても、事業主の方の絶対反対というふうな態度の中では、仮にこのことを取り入れましてもうまくいくはずはないわけでございまして、そのためにも、もう少し使用者の了解をいただきながらこの制度普及を図っていくことが前提ではないかというふうに考えておるわけでございまして、いましばらく時をかしていただきたいと思います。
  89. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ありがとうございます。
  90. 抜山映子

    抜山映子君 大臣にお伺いしたいと思います。  先ほど来、法制化の時期につきまして、急速な法制化は難しいあるいはしばらく時をおかしください、こういう御回答がございました。政治家というものは先見性と将来に対する展望を持つことが必要でございます。  大臣は、それでは法制化の時期をいつごろとお考えですか。
  91. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) これは、今の時点でいつごろまでにはしたいと思うという回答はなかなか困難でございます。  先ほど来申し上げておりますように、これを契機としまして今の制度としての一層の普及を徹底 的に図ってまいる、そしてその実態を眺めながら、なおかつ一方におきましては男女雇用機会均等法に基づく婦人の地位の向上、婦人の企業における存在のいかん等々、もろもろの環環整備を考えながら、早い時期に実現するよう努力していくべきであるというふうに考えております。
  92. 抜山映子

    抜山映子君 大臣というものはやはり牽引車となるべき方なんですね。  ですから、見通しが困難であるとおっしゃるならば、せめて大臣としてどういう希望を持っておられるか、お伺いします。
  93. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 牽引車でなければならぬという仰せもわかりますけれども、独断であってはならないと思っておるわけでございまして、私は、大臣就任以来、独善をみずから戒めてまいったわけでございます。  民主主義の世の中でございますから、下からの意見というものを十分に率直に聞きながら、全体としての合意を得ながら諸般の政策は行ってまいるべきであるというふうに考えております。  これからどうするんだということでありますけれども、先ほど来事務当局から御説明申し上げておりますように、各般の角度からこの対策につきましてさらに一層の見直しを行いながら前進を図っていくことが最大の課題であるというふうに考えております。
  94. 抜山映子

    抜山映子君 私は、独断で決めろと申し上げたことは全くございませんのです。  男女雇用機会均等法が通過いたしました。女子差別撤廃条約も批准されました。労基法も改正されました。そして、総労働人口に占める女子の割合が三九・八%に至りました。女子雇用者に占める既婚者の割合も七割を占めるに至りました。このような状況のもとでは、もう法制化の時期が来たんではないか。しかも、先進諸国はすべて育児休業法をもう制定してしまっている。日本だけが取り残されている。  このような状況において、大臣がイニシアチブをとることが必要ではないか、このように私申し上げるんですが、いかがですか。
  95. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先ほど来申し上げておりますように、政府提案としてこの法律を、育児制度を法制化する場合には、当然のことながら関係審議会のコンセンサスが得られなければなりません。手続上、そうしなければ提案できないということであります。  その審議会が、労使と学識経験者で構成されておるわけでございますけれども、そこの論議がまとまらないという一つの問題があるわけでございます。しかし、それにはやっぱり背景があるわけでございまして、この普及率が浸透しないのもその辺にあるんではないかと考えておるわけでございます。  しかし、本来、やろうと思えば、必ずしも法制化でなくても、先ほど申し上げましたILO百六十五号勧告にあるように、労使の協約の中でもこれはできないはずはないわけでございますが、それすらもなかなかできないというのが実態であるわけでございます。  それだけに、いろんな難しい奥深い問題もあろうと思うわけでございまして、労使が納得いくようなあるいはまた事業者が納得できるようなきめ細かい指導の強化を図っていくことが前提にならなければいけないというふうに考えておるわけであります。
  96. 抜山映子

    抜山映子君 非常に消極的な答弁に終始しておられるのは大変残念に思います。  それでは質問をこのように申し上げてみましょう。  先ほど来、法制化の時期が今すぐというわけにいかないのは育児休業制度実施している率が低いからだ、このように言われました。私、それは矛盾だと思います。  育児休業法を制定すれば育児休業制度実施する企業がふえると思うんですが、大臣いかがですか。
  97. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業制度普及が低いということでなかなかやりにくいと言うのはおかしいという御質問の御趣旨かと思いますが、なぜ育児休業制度普及が低いかということでございます。  私どもも、精いっぱい、力がないなりにやっておりますが普及がいかない。それから、こういうことにつきましては、多分、先進国の場合には労使の間でもお話し合いをして進んでいく中で法制化が進んでいくというような状況の国もあったかと思いますが、日本でも労働組合が積極的にお取り組みになりまして使用者側とも御熱心なお話し合いあるいは団体交渉をされている例がたくさんあると思います。  普及が徐々にであれ進んでいる中には、政府の努力とそうした民間の方々の御努力が相まっているのではないかと思いますが、そういう政府また民間の御努力を含めて、なおかつ普及しない。それはやはりそれなりの隘路がある。そういう状況の中で、法律をつくって一人二人という少ない労働者雇用しているような中小・零細企業にまで義務づけるということになった場合に、どのようなことになるか。本当に法の目指しているようなことが実現されるのか。あるいは、できる限り法律の規制を逃れるような女子の雇用の仕方を少し制限するとかあるいはなるべく正規の女子労働者雇用しないようにするとかさまざまな方法が出てきた場合には、かえって女性の地位の向上には問題が起こるわけでございまして、私どもは、そのようなことがなく、しかも育児休業制度女性が安心してとれるようにするにはそれなりの社会的な環境の整備というものが必要だというふうに考えておりまして、そういう意味普及率が低いということを申し上げているのでございます。
  98. 抜山映子

    抜山映子君 大変御丁寧にお答えいただきましたけれども育児休業法をつくれば育児休業制度実施するところがふえるのではないかと私は質問たんです。  大臣、いかがですか。
  99. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) その考え方も一つであろうと思います。
  100. 抜山映子

    抜山映子君 そうしますと、育児休業法をつくらなければいけない時期に来ている。労基法の改正によって、女性も男性並みに働くように変わったではありませんか。  それならば、社会全体の先ほど来出ております労働人口の再生産の観点からも、また女性が子育ての責任と就業の継続を調和させる意味からも、設けることがいいと大臣はお思いになりませんか。お答えください。
  101. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) その考え方もあろうと私は申し上げたのは、あなたはそう考えるだろうとこういうことでありまして、私どもは、必ずしも法制化したから直ちにふえるというふうには承知をいたしておりません。  むしろ女性にとりまして不利の面も発生するのではないかという懸念も持っておるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、元来、自由主義経済の中における企業というものは労使双方が気持ちよい混然一体の中で運営されることが一番望ましいというふうに考えておりますので、そのための前提としてのいろんな行政指導というものを行っておるところであります。
  102. 抜山映子

    抜山映子君 男女雇用機会均等法を制定せよと迫ったときに経営者側は、それは女性に対して不利な面が出る、このように詭弁を弄したのでございます。ただいまの大臣の答弁も、育児休業法をつくれば女性に対する不利な面が出てくる、全く同じ論法なんですね。  しかし、男女雇用機会均等法を制定されて後、明らかに女性の就業の定着率も高まりましたし、企業における平等の意識も高まりました。この育児休業制度を法制化してもらいたいと強く切望するものでございます。  ところで、先ほどの局長お答えでございますけれども環境整備をしてから、このように言われました。しかし、私は、法制化の内容によっては環境に合ったような法制化もできるだろうと思いますよ。  この点は、局長、いかがですか。
  103. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 私、今先生の御質問趣旨を必ずしも十分理解しておらないのかもしれませんけれども、この育児休業法をつくるにつきましては、先ほどからたびたびお話がありましたように、審議会での御審議をクリアするという最大の問題があるわけでございまして、私どもはそのことと環境の整備ということがかなり深くかかわっているように思います。  私の理解があるいは十分ではないのかもしれませんけれども環境整備というのは、そういう普及率が高まっていく、個々の企業で女性が安心して育児休業をとれるようなさまざまな政策をとり続けていくということが私どもが今当面できることなのではないかというふうに考えまして努力をいたしているところでございます。
  104. 抜山映子

    抜山映子君 育児休業中の賃金ですけれども、これについて諸外国でもいろいろな制度があると思います。  私ども四野党の出した育児休業中の労働者の所得保障、これはヨーロッパでも大体似たり寄ったりだと思いますが、各国ではどのような形で財源を設定しておりますでしょうか。
  105. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 私ども十分に把握ができているわけではございませんけれども、私どもの把握している範囲で申し上げますと、休業中無給としている国もかなりあるわけでございます。それから、手当を支給している国もあります。  そういう手当を支給しております国での、その支給割合はまちまちでございますけれども、財源について申し上げますと、西ドイツでは、全額国庫負担でございます。イタリアでは、労使、国庫拠出の疾病保険団体が負担をいたしております。それから、スウェーデンでは、使用者が八五%、国庫が一五%拠出の両親保険から負担をいたしております。
  106. 抜山映子

    抜山映子君 終わります。
  107. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     ─────────────
  108. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、請願審査を行います。  第四号保育所制度充実に関する請願外五百四十五件を議題といたします。  これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、第四号保育所制度充実に関する請願外百三件は採択すべきものにして内閣に送付するを要するものとし、第四五号難病患者などの医療生活保障に関する請願外四百四十一件は保留とすることに意見が一致いたしました。  以上のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたします。  なお、審査報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  111. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、継続審査要求に関する件についてお諮りいたします。  育児休業法案、積雪又は寒冷の度が著しく高い地域における建設業等関係労働者の通年雇用の促進に関する法律案、林業労働法案及び戦時災害援護法案の四案につきましては、閉会中もなお審査を継続することとし、四案の継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  114. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、これら二件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会