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1988-05-17 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十七日(火曜日)    午前十時七分開会     ─────────────    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      高木健太郎君     原田  立君  五月十二日     辞任         補欠選任      宮崎 秀樹君     山岡 賢次君      渡辺 四郎君     青木 薪次君  五月十三日     辞任         補欠選任      山岡 賢次君     宮崎 秀樹君      青木 薪次君     渡辺 四郎君  五月十六日     辞任         補欠選任      遠藤 政夫君     初村滝一郎君  五月十七日     辞任         補欠選任      石井 道子君     中曽根弘文君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩崎 純三君                 斎藤 十朗君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 中曽根弘文君                 初村滝一郎君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 藤井 恒男君        発  議  者  山本 正和君    衆議院議員        修正案提出者   高橋 辰夫君    国務大臣        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        労 働 大 臣  中村 太郎君    政府委員        厚生大臣官房長  北郷 勲夫君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省保健医療        局老人保健部長  岸本 正裕君        厚生省生活衛生        局長       古川 武温君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省児童家庭        局長       長尾 立子君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省年金局長  水田  努君        厚生省援護局長  木戸  脩君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   佐々木喜之君        労働大臣官房審        議官       齋藤 邦彦君        労働省労政局長  白井晋太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○戦時災害援護法案山本正和君外三名発議) ○児童扶養手当法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○労働組合法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十日、高木健太郎君が委員辞任され、その補欠として原田立君が選任されました。  また、昨十六日、遠藤政夫君が委員辞任され、その補欠として初村滝一郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 戦時災害援護法案議題といたします。  発議者山本正和君から趣旨説明を聴取いたします。山本君。
  4. 山本正和

    山本正和君 私は、ただいま議題となりました戦時災害援護法案につきまして、日本社会党護憲共同、公明党・国民会議日本共産党、民社党・国民連合を代表いたしまして、提案理由を御説明申し上げます。  既に戦後四十二年を経て、あの忌まわしい戦争への記憶が一段と風化し、新しい戦争への危険さえもささやかれる中で、なお戦争の傷跡が生活を圧迫し、生命と健康を失った多くの一般戦災者が、国から何らの援護を受けることなく、戦争犠牲者として傷病苦生活苦にあえぎながら余命をつないでいる現実を放置することはできません。  私は、これら戦災者の心情と報われることなく高齢化し亡くなられる方々の続出する日々に思いをいたすとき、援護の手が一刻も早く差し伸べられる必要を痛感せざるを得ないのであります。  振り返ってみますと、さき大戦では、原爆投下を含め米軍の無差別爆撃によって、銃後と思われていた非戦闘員とその住居までも一瞬にして戦場に変わり、我が国全土にわたる諸都市が焼き払われました。  昭和二十年四月十三日の状況急迫せる場合に応ずる国民戦闘組織に関する閣議決定は、新たなる兵役義務により、兵として動員し、統帥権下に服役せしめ得る必要な法的措置を講ずることを決め、昭和二十年六月二十二日に即時公布された義勇兵役法では、国民義勇隊に参加せしむべきものは、老幼者病弱者妊産婦等を除くのほかは可及的広範に包含せしむるものを徴兵するとし、いわゆる国民皆兵体制をつくり上げたことによっても、当時既に平和な銃後は存在せず、戦場そのものとなっていたことは明白であります。  これによる一般市民死傷被害は、沖縄を除いても優に八十万人を超え、罹災人口は実に一千万人を超すと言われています。  中でも昭和二十年三月十日の東京空襲は、わずか二時間余の爆撃によって全都の四割が一瞬にして灰じんと化し、炎の中で約十万の都民の生命を奪いました。その惨状は、イギリスの一物理学者をして、原子爆弾攻撃による荒廃化を除けば、今までになされた空襲のうち、最も惨害をほしいままにした空襲であると指摘させるほどでありました。  昭和十七年二月二十四日に公布された戦時災害保護法では、昭和二十一年に廃止されるまでの間に十二万七千人の民間戦災者傷害者、同遺族に対し、救済、補償もなされました。  戦後、政府は、今日まで、戦争犠牲者対策軍人軍属及びその遺家族など、昭和六十二年末現在約九万四千人に限定してきているのであります。  その後、準軍属と言われる人々など、わずかな範囲の拡大はあったものの、銃後犠牲者に対する援護の手は基本的に皆無に等しいまま今日に至っているのであります。  一方、今次大戦の同じ敗戦国である西ドイツでは、既に昭和二十五年に戦争犠牲者援護に関する法律制定し、公務傷病と同視すべき傷害範囲を極めて広範に規定したため、援護の手はあまねく一般市民にまで及び、その対象は、昭和六十年一月においても百六十六万人にも上っています。  我が国戦争犠牲者対策は、原爆被爆者に対する特別措置は別として、あくまでも軍人軍属等に限定しようとするものであり、こうした政府の態度は、大戦の過ちを衷心から悔い改めようとする姿勢に欠けるばかりか、軍事優先の思想が根底にあるのではないかとの疑念さえもうかがわせるのであります。  戦後四十二年を経て、いまだに放置されたままの一般戦災者に対し、国の援護措置を望む国民の声は、戦災地域にとどまらず、それ以外の自治体からも決議、意見書が多く寄せられており、一夜にして十万人近い人々の命を奪われた東京では、犠牲者を悼み、反戦平和を願う大集会が催され、その都度一般戦災者に対する援護が強く求められているところであります。本案は、このような国民の声を背景に、本案成立の日まではいまだ戦後終わらずとの確信を持って作成し、再び提案するものであります。  次に、本案の要旨について簡略に申し述べます。  さき大戦空襲その他の戦時災害によって身体に被害を受けた者及び死亡した者の遺族に対し、戦傷病者特別援護法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法に規定する軍人軍属等に対する援護と同様、国家補償精神に基づく援護を行おうとするものであります。  ただし、遺族に対する援護については、遺族年金にかえて、一時金たる遺族給付金百二十万円を支給することとしております。  援護種類別に申し上げますと、第一は、療養給付療養手当万三千八百円の支給及び葬祭費十一万九千円の支給であります。  第二は、更生医療給付補装具支給及び修理、国立保養所への収容並びにJR各旅客会社への無償乗車等の取り扱いであります。  第三は、障害年金または障害一時金を支給することであります。  以上、支給要件給付内容はすべて軍人軍属等におけると同様であります。  第四は、遺族給付金、五年償還の記名国債として百二十万円の支給であります。  遺族範囲は、死亡した者の配偶者父母、子、孫及び祖父母で、死亡した者の死亡の当時、日本国籍を有し、かつその者によって生計を維持し、またはその者と生計をともにしていた者といたしております。  第五は、弔慰金五万円の支給であります。遺族範囲はおおむね軍人軍属等におけると同じであります。  最後に、施行期日は、公布の日から一年以内で政令で定める日としております。  何とぞ、御審議の上、速やかに本案成立を期せられんことをお願いいたしまして、提案理由の御説明を終わります。
  5. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。     ─────────────
  6. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 児童扶養手当法等の一部を改正する法律案原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案並びに厚生年金保険法の一部を改正する法律案の四案を便宜一括して議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 浜本万三

    浜本万三君 提案されております法案の中で、私は、主として厚生年金保険法の一部改正法案並びに原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案中心にいたしまして、持ち時間一時間ということでございますから、質問をさしてもらいたいと思います。  まず最初に、原爆被爆者に対する特別措置法の問題についてただしたいと思います。  御承知のように、広島、長崎に原子爆弾が落ちまして、二十万人以上の人々が一瞬にして無残にも焼き殺され、想像を絶する惨禍をこうむったわけでございます。それから早くも四十三年を経過いたしました。幸いにいたしまして生き延びた人々も、次々と放射線障害で亡くなりました。そして、今なお三十六万人余の被爆者原爆の後遺症で苦しみ続けておるわけでございます。  このような被爆者現状は昨年の六月に発表されました昭和六十年度原爆被爆者実態調査において明らかになったわけであります。それによりますと、被爆者は一段と健康をむしばまれる中で当然のごとく年をとっておられるわけでございます。そしてわずかな年金生活保護を受けながら不安な生活を余儀なくされておるわけであります。まさに、いつも言われておりますように、病苦、貧困、孤独、高齢化という大変厳しい状況が浮き彫りになっておるわけでございます。  厚生大臣はこれをどういうふうに受けとめ、具体的にはどのような形で六十三年度予算に反映されたのか、まず冒頭にお尋ねをいたしたいと思います。
  8. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 昨年の六月に取りまとめられました昭和六十年度被爆者実態調査は今先生指摘のとおり行われたわけでございますが、被爆後四十年余が経過をしたということでございまして、被爆者高齢化が非常に進んでおる、こういうことが明らかになったわけであります。また、それに伴いまして、健康面でのいろんな不安ですとかあるいはいわゆる配偶者が亡くなる等で一人で生活をしている人が多くなるとか、そういうような福祉ニーズが高まっておる実態がわかったわけでございます。  このために、厚生省といたしましては、昭和六十三年度におきましては今回御審議をいただきます各種手当の引き上げを行うとともに、さらに被爆者のがんの検診の導入あるいは各種相談事業充実などを行うこととして予算措置をしたところでございます。
  9. 浜本万三

    浜本万三君 被爆者高齢化に伴う保健福祉に関するニーズに対応するための施策に、報告があったように、一定の前進があったことは評価しないわけでもございませんが、基本的に言えば従来の施策の延長であって、私といたしましては大変不満内容であると思います。  なぜならば、基本懇基本懇考え方を出しました以降、また調査結果から見ましても、実態が相当変わっておるということでございます。例えば、被爆者現状を見ますと、健康破壊が非常に進行しておる。入院した者は四二・六%で同年齢の国民平均の二、三倍に達しておるということ、健康不安が伸長しておる、七四・二%が心労とか心配があるということを発表されております。また、孤老孤独化の進行がある、これは有配偶者率が七一・七%、一般よりも相当低いということ。生活破壊が進行しておるということ、それは年収二百万円未満の世帯が四分の一以上あって、その結果生活保護率というのは一・九%になって全国平均を上回っておる、そういうことが明らかになったわけでございます。原爆被爆受忍するといった基本懇意見をそういう実態から考えますと容認することができないというのが被爆者皆さんのお考えではないかと私は思います。  大臣は、今なお原爆被爆人間受忍すべきものという立場なのか、もしくは基本懇が出したそういう考え方はもうこの時点に来れば変更せざるを得ないというお考え方なのか、その点についてひとつ明確な御答弁をいただきたいと思います。
  10. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 原爆被爆者対策問題は、一般戦災者に比べまして放射線によります健康被害という特別な事情といいますか特別の犠牲という事情があるわけでございまして、このことから被害実態に即応した措置を講ずべきものであると私は考えております。したがいまして、被爆者本人のこのような特別の事情、特別の犠牲ということにつきましては、受忍すべきものであるというふうには考えていないわけでございます。  今後とも厚生省といたしましては、現行原爆二法を基本にいたしまして、なお引き続き十分に対応していかなければならぬ、かように考えております。
  11. 浜本万三

    浜本万三君 厚生大臣は、私からいえば、予想に反していい答弁をしていただいたと思います。  受忍すべきであるという従来の考え方が、受忍すべきでないと、こういう御判断を示されたわけでございますから、私は、今までの厚生大臣答弁よりは非常にいい答弁であると、かように思っております。つまり、受忍限度を超えた被害があるということになってまいりますと、それをどういうふうにして国家が救済するかということになれば被爆者援護法制定しかないと、かように思うわけでございます。被爆者皆さん被害を乗り越えて人間として生きていくことを可能にする唯一の方法というのは、国家補償による被爆者援護法しか私はないと信じております。そういう意味におきまして、私は、四十九年に国会に議席を得ましてから、毎年援護法の問題については代々の厚生大臣にその制定をお願いをしてきたところでございます。  私は、六十年の調査結果が被爆者皆さんにとっては非常に厳しい状態であるし、その厳しい状態というのはいわゆる基本懇による受忍限度を超えておるものということになってまいりますと、当然これは援護法制定していかなければならぬ、かように思いますが、重ねてその点をお尋ねいたしたいと思います。
  12. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) ただいま大臣がお答え申し上げました点は、私の察するところ、原爆被爆者が受けた被害の中でやはり放射線という特殊な影響を受けた、そこのところが特別の犠牲というふうに従来考えられておるわけでございまして、こういうところは受忍すべきということとは違うのではないか。他の一般戦災者とそこは違うのではないか。そういうことから、従来、厚生省原爆二法で特別の対応をやってきたわけでございまして、大臣の御答弁でもその旨言及をされたわけでございますけれども、そういう意味から申し上げまして原爆被害ということについては国民的な一般的な認識があるわけでございますので、そういうものをバックにした対策ということがとられるべきものであるというふうに考えておるわけでございます。  したがって、こういった特別の事情にはない、原爆で死亡されたというような遺族に対する弔慰金支給等内容といたします被爆者援護法、従来各方面で御議論をいただいておりますそういう援護法制定するということは、一般戦災者との均衡上やはり問題があるのではないか。政府といたしましては、今後とも現行原爆二法によって対処すべきものと、このように考えておるところでございます。
  13. 浜本万三

    浜本万三君 大臣がせっかくいい答弁をしておるのに、局長がそれを否定する答弁をしたらいかぬじゃないですか。  私は、大臣は非常にいい答弁をされたので、これを足がかりに援護法制定への道をぜひひとつ探求していきたい、こう考えておったんですが、まるっきりまたこれを否定するような答弁、まことに遺憾であります。つまり、局長答弁によると、どうも援護法制定については消極的意向のようであって、これは大変残念に思います。  私といたしましては、本来ならば援護法必要性についてさらにこれは論議すべきだと思っておったんですが、先ほども申しましたように時間もございませんし、ことしは既に衆議院におきまして社会党中心に野党の皆さん相談をして提案いたしました国家補償による援護法案も取り下げておるような経緯もございますので、これ以上この論議を深めようとは思いません。  そこで、国家補償による援護法という名前のようなものができないとすれば、ほかに便法があるんじゃないかと、こう私は思います。例えば現行二法の改善充実には努力をされるということは歴代の大臣もおっしゃっておるわけでございますから、また基本懇報告最高裁判所も広い意味国家補償であることは認めておるわけでございますので、現行二法を統一して一本の法形式として、これは援護法ができるまでですよ、国家補償的制度であることを明確にした被爆者対策法案、これは仮称でございますが、そういうものを検討する用意はありませんか。一歩引き下がってお尋ねをしてみたいと思います。
  14. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 先生の御提案原爆二法を統一をして国家補償的精神を踏まえた被爆者対策法仮称でございますけれども、の検討はどうか、こういう御質問でございますが、昭和五十五年の基本懇におきましては、原爆被爆者対策放射線による健康障害、ここをやっぱり着目をしておるわけでございまして、そこに着目をした「広い意味における国家補償の見地」、こう言っておるわけでございます。したがいまして、これは国の不法行為の責任というようなことを肯定するわけではないと言っておるわけでありまして、またその対策が他の戦争被害者に比べて著しい不均衡があってはいけない、こういうふうに言われておるわけでございます。現行のいわゆる原爆二法は、こうした考え方に立ちまして被爆者の置かれておる放射線障害、こういうことに着目して医療とその結果起こってくるいろんな福祉の問題に対応するということから、被爆者実態について十分に注意を払いながら漸次改善を図っておるところでございまして、そういった意味で二法を統一するということをするまでもなく、現状法律体系においてその目的は達成されるものと私ども考えておるわけでございます。  今後ともこの二法を中心施策充実を図っていくことがよいのである、こう考えておるところでございます。
  15. 浜本万三

    浜本万三君 私が申しておるのは、六十年の実態調査の結果では非常に厳しい条件報告をされておる、こう申しておるんです。したがって、そういう厳しい条件の中にある被爆者皆さんを一刻も早く救済していきますためには、何といっても国家補償に近いような政策ができる制度に変えていかなきゃならぬ、かように思っておるわけです。ですから、六十年の実態調査現実に即して厚生省ももう一回温かい検討をしてもらいたい、こういうことを要望しておきたいと思います。  そこで、引き続き六十年の実態調査にかかわる問題について質問をするわけなんでありますが、この調査では初めて死没者調査というものが実施されたわけでございます。本年度中にその解析作業が終了するということを私は承っておるわけでございます。  ところで、調査目的というところを見ますと「被害実態を明らかにし、正確に後世に伝えるための調査」というふうに位置づけられておるわけでございます。長年の懸案でありました死没者実態が明らかにされました今日、原爆最大被害者である死没者に対し弔意をあらわす方途を検討することがよろしいのではないかというふうに思っているわけです。そういたしませんと死没者調査をした意味がないわけであります。  私ども死没者調査を要求いたしましたのは、最大被害者である死没者に何らかの弔意をあらわしてもらいたい、このことが調査を実施することになったわけでございますので、この点についての認識とお考えを承っておきたいと思います。
  16. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 先生指摘のように、昭和六十年度の実態調査の中で死没者調査が行われたわけでございますが、今先生がお述べになられましたように、この調査目的は、原爆被害というものを今のうちに正確に把握して、それを後世に伝えるということがその目的になっておるわけでございまして、この原爆被害の大きさというものを明確にしていくという意味からもそこのところが非常に重要なところではないか。したがって、調査目的はそういうふうに考えたわけでございます。  先生弔意というお言葉でございますが、それがどういう意味を持つのか、いろんな考え方があろうかと思うわけでございますけれども、現在、政府として具体的にこの調査の結果を政策の上に活用するということは考えていないわけでございます。
  17. 浜本万三

    浜本万三君 この弔意金遺族年金を直ちに支給することは、現行制度では確かに困難だというふうに私も理解せぬでもないわけであります。したがって、こういう問題については、法の整備改正と同時に、ひとつ真剣に厚生省の方で検討をいただくことにしたいと思うわけでございます。  私の考え方は、とりあえず何らかの形で死没者弔意をあらわす方法として何か考えることはできないか、例えばお灯明料のようなものを考えることはできないかということです。これは、国として死没者のみたまとその家族に対して礼を失しないような措置にしてもらいたいという意味でございます。  なぜ私がきょうそういうことをここで申し上げるかというと、昭和六十一年五月十三日の当社労委員会において私が当時の厚生大臣でありました今井先生お尋ねをいたしました。その中で今井先生はこういうふうに答えられたわけです。「何か私ども弔意をあらわす方法をひとつ皆様とともに考えてみたいということでございます。」と、大変前向きな答弁をそのときにいただいているわけなのでございます。これはよもや否定されることはないと思うのであります。  したがって、私は、そういう今井元厚生大臣の善意を引き継いで現厚生大臣とされてもこの問題について真剣に考えてもらっておるだろう、こう思っておるから重ねて質問をしておるわけでございます。
  18. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 六十一年の参議院社会労働委員会における今井さんの答弁の御趣旨は今御指摘のようなとおりでございまして、私といたしましても、戦後四十年たって今日なお、実態調査の結果を見ましても、非常に被爆者高齢化して健康に不安があるとか福祉ニーズが高まっておるというようなことでございますので、これは十分に今後考えていかなきゃならない大きな問題だという認識は持っております。  死没者調査の問題は、先ほど申し上げましたように、原爆被爆の実質を明らかにして、それを後世に伝える、二度とこういうことを起こさないためにも必要な措置だと思うのであります。そういう実態を明らかにして後世に伝えるという中でどういうふうに弔意をあらわしていくことができるか、こういう問題でございまして、私といたしましても、どういう形で弔意をあらわしていくことができるかという問題につきましては引き続きまして今後検討をさらに重ねていかなければならないし、またそうしたいというふうに考えております。
  19. 浜本万三

    浜本万三君 希望しておきますが、とにかく現行法ができてから、死没された人には弔慰金が出ておる、これはもう間違いないことなんです。それ以前の人には弔慰金が出ていない。しかし、死没者調査をされ、明らかになったわけでありますから、したがってそういう死没者の方々に対しまして何らかの誠意ある態度を本当に示すということは、僕は緊急の課題であると思います。  せっかく今井大臣も現厚生大臣も何らか考えたい、こうおっしゃるわけでありますから、ことしじゅうにひとつ検討していただきたい、こう思いますが、よろしいという答弁をいただきたいと思います。
  20. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 申し上げておりますように、具体的方法につきましては今後検討してまいるということを申し上げておるわけでございまして、努力目標として承っておきます。
  21. 浜本万三

    浜本万三君 じゃ、次の問題に移りますが、現下の被爆者対策の最も重要な課題というのは、被爆者高齢化対策健康面施策をどのようにして充実させるかというところにあると思います。こういう点につきましては、政府の方のでも私の考え方でも余り認識の相違はない、かように思っております。  そこで、ぜひ前向きの御検討をいただきたいことがございます。それは、被爆者の方々からも出ておるように、また関係行政機関からも出ておりまするように、健康管理手当の申請手続の簡素化の問題を解決してもらいたいと思っておるわけです。  健康管理手当の受給者の多くは、大臣もよく御承知のように、生涯いえることのない疾病を抱えておられるわけでございます。そして、手当支給期間は最高で三年となっているため、現行の更新手続は、本人は言うまでもなく行政の立場から見ても大きな負担になっておるのが現状でございます。  こういう問題については既に厚生省内部におきましても検討を開始されておるということを私は聞いておるわけでございますが、明らかに治癒不可能と認められる疾病につきましては、疾病期間を廃止し終身支給とするようにひとつ御検討を願いたいということです。  また、特に健康管理手当の高齢受給者につきましては、高齢化に伴い治療期間が長期化している現状にかんがみまして、現行の受給期間を延長し負担を緩和する方向であわせて検討していただきたいと、かように思いますが、どうでしょうか。
  22. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 先生指摘の点については、私どもも関係者からのいろんな御意見を承っているわけでございますが、この健康管理手当というのはそもそも一定の疾病にかかっている状態ということを前提にしておるという制度上の問題があるものでございますから、そういった意味で、期間はともかくとしてどうしても定期的に確認をするということが前提になってしまうことは、これは御理解をいただけると思うわけでございます。  しかしながら、被爆者がだんだん高齢化をする、疾病も非常に慢性長期化をするというようなこともございますので、支給期間の見直し等について現在専門の先生方にもお願いいたしまして検討している段階でございますので、その結果を待ってできることは対応したい、このように考えておるところでございます。
  23. 浜本万三

    浜本万三君 それは、いつごろ検討の結果が出るんですか。  僕は、全部この申請手続を廃止せいとは言わないが、三年を少なくとも五年、六年に延ばすぐらいのことは簡単だと思うんですが、どうでしょうか。
  24. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) これは見通しでございますが、できれば年度内には何とかしたいなと、このように考えているところでございます。
  25. 浜本万三

    浜本万三君 ぜひひとつ希望を取り上げていただくようにお願いをいたします。  その他の問題につきましてもたくさんあるんですが、先ほど申したように時間がございませんので私の方から特に例示をして、御検討をいただきたいと思います。  それは、諸手当に対する所得制限の撤廃、原爆養護ホームの法制化、被爆者家庭奉仕員の増員、相談事業充実医療特別手当生活保護法上の収入認定の適用除外とすること、小頭症患者の終身保障制度の確立、老人保健法に係る被爆者医療費地方負担の解消、被爆者に対する健康診断の充実医療費自己負担の解消、ショートステイや老人保健施設等の施設対策充実などなど、たくさんあるわけでございますが、そういう問題をぜひひとつ前向きで解決をしていただくように希望をいたしたいと思うわけです。  特に、これらの問題も、被爆者の方々や関係行政機関からは強く要望されておるところでございます。どのような基本姿勢でお答えになるのか、ひとつお示しをいただきたいと思います。
  26. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 先生がただいま御指摘いただいた点につきましては、制度の性格から、改善を図ることはできるわけでございますがどうしても御要望に沿えないという点も残るわけでございますが、厚生省といたしましては、いずれも、十分に検討をしてできる限り関係者の御意向に沿えるようさらに努力を重ねてまいりたい、このように考えております。
  27. 浜本万三

    浜本万三君 次は、広島県・市の黒い雨降雨地域の見直しについてのお尋ねをいたしたいと思います。長崎はまた別に自民党の先生からお尋ねがあると思いますので、私は広島の関係分についてお尋ねいたしたいと思います。  これは、いわゆる黒い雨地域の問題でございます。  原爆が爆発した際に爆風がちりを吹き上げ、そのちりが雨にまざって黒くなった黒い雨の地域は、元気象研究所予報研究室長であった増田氏が昨年発表した研究によりますと、定説の二倍ということでございます。その後、約千三百人から聞き取り調査やアンケートをいたしましたところ、黒い雨の範囲は定説の四倍にも及んでおる。これは、人員に直しますと約一万人が新たな対象になるんではないかというふうに言われておるわけでございます。  この最終報告書を受け取った広島県と広島市は、本年の三月、学者から成る専門家会議を設置いたしまして、厚生省被爆者救済の目安になっているこれまでの降雨域を見直す方針を明らかにされておるわけでございますが、こうした事態を厚生省はどのように受けとめておられるのか。また、何か考え方があればお答えをいただきたいと思います。
  28. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) ただいま先生が御指摘いただきました黒い雨の問題というのは私どもも承知をしておるわけでございますが、その雨の結果、どのように放射線の人体影響が起こったかどうか、起こる可能性があったかどうか、そこが一番問題になるところだと思うわけであります。  いろんな御意見があるわけでございますけれども昭和五十五年の基本懇報告にもありますように、そこは、どうしてもやはり科学的、合理的な根拠のある場合に限っていろいろ考えるべきである、こういうふうに指摘をされておるわけでこざいます。  黒い雨の降雨地域につきまして新たな研究結果が発表されておるわけでございますが、これまでの調査によれば、その雨が降った地域かどうか、降ったところと比べてでございますけれども残留放射能に有意な差があるのかどうか、こういうところが問題になるわけでございますけれども、いろんな従来のデータからしても、どうもそういう人間の健康に影響が及ぶというような意味の差はない、現時点の被爆地域への取り込みはそういった意味で困難ではないかと我々は考えておるところでございます。  しかしながら、地元広島県と市が共同で専門家の会議を設置してこの問題についての研究を行うということでございますので、厚生省といたしましては、その内容に関心を持って見守ってまいりたい、このように考えるわけでございます。
  29. 浜本万三

    浜本万三君 今の局長答弁によりますと、一口に言えば、黒い雨が降ったということだけで地域拡大を行うということはよく言われるように科学的、合理的根拠に乏しいという説明であったと思うんですが、しかし広島県・市当局がやっておる調査の問題については関心を持って見守る、こういう御答弁であったと思います。  そこで、私はさらにつけ加えて申し上げますと、当時は、雨以外にも放射能を含んだ灰やちりも舞っておるわけでございます。降雨時間から推定した大雨小雨の気象データだけで被爆者救済の線引きをしていることにそもそも無理があるのではないかと私はかねがね申しているわけでございます。したがって、行政とされましても、一刻も早く今まで見捨てられていた被爆者皆さんを救済するために、もう一度、科学的と言われるんですから科学的な調査をして、健康上の不安を抱えておられる被爆者に救済の道を開くのがよろしいのではないか、かように思うわけでございます。  先ほどもちょっと申し上げましたが、本問題に取り組む姿勢といたしまして、厚生省は常に先に結論ありきということで臨んではいけないと思います。つまり、これ以上もう適用拡大はしないんだという結論を先に置いて臨んではいけない、かように思います。あくまでもやはり新しい事態に立脚をいたしまして、被爆者皆さんの意に沿って、科学的、合理的な調査をしろと言うんですから、ぜひ厚生省でしていただきまして、検討を続けてもらいたい、かように思いますが、いかがでございましょうか。
  30. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 私どもも、専門家の意見も徴しながら、この点については慎重にいろんな議論を重ねてきておるわけでございます。  そういった中で既に昭和五十一年から五十三年にわたって厚生省といたしましてもかなりの大がかりな調査をやっておるわけでございまして、黒い雨が降った地域と他の地域で残留放射能が有意に異なることはない、こういう結論を得ておりますので厚生省といたしまして今後改めてそこをさらに直接見直すということは考えていないところでございますが、いろいろな従来のデータもあることでございますし、今回、また広島、長崎においてもそのように行われると聞いておるわけであります。直接いろんな検討をなさるということでございますので、その点については先ほども申し上げたように十分に見守ってまいりたいと、このように思うわけでございます。
  31. 浜本万三

    浜本万三君 広島県・市の検討委員会は、年に四回ぐらい開きまして検討されるということでございます。それに強い関心を持って見守っておられるわけでありますから、ぜひその結論が出ました暁には厚生省の方といたしましても真剣に見直しのための検討会あるいは実態調査等も行っていただきまして、前向きで取り組んでいただきますように希望しておきたいと思います。  次に、線量再評価をめぐる問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  先般から、原爆による線量の評価検討委員会の報告についていろんな御意見があるようでございます。広島、長崎に投下されました原爆放射線量の全面的な見直し作業を進めてこられました日米合同の原爆線量再評価検討委員会が昨年の七月八日、原爆の爆発力や放射線量が従来の推定値とは大幅に異なるという最終報告書をまとめられたところでございますが、厚生省とされましては、これをどのように受けとめ、どのような形で今後被爆者援護の諸対策に反映されていかれるつもりか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  32. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 昨年の七月に発表されました原爆による線量の再評価の検討報告は、原爆による放射線の物理学的な線量を決定する、そういう性格のものであったわけでございます。  この放射線が人体にどんな影響を及ぼしておるのか、線量との関係でどういう問題が起こってくるのか、この新しい線量の考え方に基づきまして、現在、放射線影響研究所におきましていろいろな検討、それから解析作業が進められておるわけでございます。そういう状況も逐次考慮に入れながら、厚生省といたしましては、諸般の施策に必要があれば反映をさせていく、こういう基本的な姿勢でおるところでございます。
  33. 浜本万三

    浜本万三君 その報告書によりますと、原爆の威力について発表されておりますが、例えば、広島型は従来のネバダ核実験等のデータから得られた暫定数値T65Dに対し二〇%ぐらい威力が大きいのではないかとこう発表されております。  つまり、従来、十二・五キロトンであったと言われておった爆弾が十五キロトンだと考えられるようになっておるわけでございます。かなり強力な爆弾であったということが言えるわけでございます。そうなってまいりますと、長崎型とほとんど変わっていないことが明らかになってまいったわけでございます。  また、放射線の中で特に人体に影響を与えると言われている中性子線、ガンマ線についても、広島ではガンマ線が従来の二ないし三・五倍に増大し、逆に中性子線は十分の一になっておるわけでございます。  今まで、広島の被爆者に白血病やがん患者が多いことについては、中性子線量が長崎型に比べて多いためというふうに私どもは理解をしておったわけでございますから、広島の中性子線が十分の一になったことで今までの通説は覆るのではないか、かように思いますが、どのような理解をされておるわけでしょうか。
  34. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 大変専門的な問題であります。それからまた、先生が御指摘になられましたように、中性子線量は従来よりも少なく評価をされ、ガンマ線は多く評価をされるというような幾つかの要因があるわけでございます。  この線量の再評価で空気線量につきましては若干の変更が起こる、こういうことでございますけれども、人体への健康影響に関しましては実際にそういう放射線が各臓器にどの程度到達をしたかということで検討されるわけでございまして、その臓器への透過係数が従来考えられたものよりも大きいけれども家屋による遮へいの透過係数は逆に小さいというようなこともあるようでございまして、現段階での専門家の総合的な判断では、臓器線量はこれまでと大きな変動はないのではないかと考えられております。そういったことから、白血病やがんと放射線の線量との関係については、大幅な変更は生じないものと考えられております。  今後、なおこの点につきましても十分に検討が詰められていくものと考えております。
  35. 浜本万三

    浜本万三君 もう一つ突っ込んで逆に申しますと、中性子線量が十分の一になったということはこれまでガンマ線の人体への影響を過小評価していたとも考えられるわけでございます。また、仮にガンマ線の影響評価に誤りがなかったとすれば、逆に中性子線の毒性が思っていたよりも強力であったということになるわけでございます。  したがって、暫定数値のデータは、いずれにしろ、放射線の影響を少な目に評価していたことにならないか。私は、これは動かしがたい事実ではないか、こう思うんですが、重ねて答弁をしてもらいたいと思います。
  36. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 物理的な線量の評価の問題でございますのでいろんな計算が考えられるわけでございますが、先ほども答弁申し上げましたように、専門家の御意見でありますが、従来の考え方とそんなに大きな変化が起こることはないのではないかというふうに言われておるというふうに私どもは理解しておるところでございます。
  37. 浜本万三

    浜本万三君 現に大きい影響があるということを言っておるんですから、余りかたくなにならないようにしてもらいたいと思うわけです。  それで最後に、この問題の締めくくりで要望しておきたいのは、私は、現行の被曝基準が甘過ぎたのではないかとこう思っておるわけです。  今度は、DS86というんですが、新しい線量体系があるわけでございますから、当然のことながらこれに基づき放射線量とそれから健康被害との関係の基準の見直しが必要になってくると私は思います。この点はどういうふうになっておるのかということ。  また、原爆とがん、白血病との相関関係についても再調査をすることが必要なのではないか、かように思いますが、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  38. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) いわゆる認定医療でございますが、これは、原子爆弾の放射能に起因した負傷あるいは疾病に対して給付をするものであります。  そのためには被曝線量が非常に大きな要因になるわけでございますけれども、それだけではなくて被爆の状況だとかその患者さんの被爆当時の急性症状だとかあるいは過去の病歴だとかあるいは現在の状況等を総合的に評価をしておるわけでございまして、認定に当たりましては、審議会における専門の先生方の御意見が総合的に検討をされた上で認定をしておるわけでございます。そういうことからいきまして、今回の線量見直しに関連いたしまして、放射線の人体への影響については放射線影響研究所等において研究がさらに続けるれているわけでございますけれども、基本的にはこれまでの認定の方式あるいはその基準を変える必要はないのではないかと専門家の御意見も踏まえて私どもは現在認識をしておるわけでございます。  またさらに、御質問のありましたがんですとか白血病の発生率でございますけれども、これも非常にいろんなファクターを踏まえて分析が続けられておるわけでございます。放射線影響研究所において非常に綿密なデータのもとに分析が続けられておるわけでございますので、厚生省といたしましては、その研究の結果がどのように答えを出されるのか、それに従って考え方を定めてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  39. 浜本万三

    浜本万三君 次は、大久野島の毒ガス障害対策について二問ほどお尋ねをいたします。  大久野島の毒ガス障害者というのは、御承知のように、さきの第二次大戦中、広島県大久野島にあった毒ガス製造工場において業務に従事させられた者のうち、軍との間に正規の身分関係のあった旧令共済組合員とそれから動員学徒、女子挺身隊員、人夫等の身分関係のない者の援護措置において大変差があるわけでございます。私としては、これはどうしても理解ができないわけでございます。  この問題について、昨年、私から厚生省お尋ねいたしましたところ、当時の保健医療局長は、作業の従事内容に差があり、旧令共済組合員の認定患者ほど重篤な典型的症状を持った者がいない、こういう答弁をなさいました。  この答弁考えてみると、それでは、該当者が存在すれば身分上の差別を是正するというお考えに解してよろしいか、お尋ねをいたしたいと思います。
  40. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 前任者がお答え申し上げましたとおりだと思いますが、旧令の共済組合員の救済措置における年金制度や認定制度につきまして、動員学徒等は大久野島に入ったのが毒ガス製造中止後である、また実際に携わった作業も風船爆弾の袋張りなどの比較的危険の少ないものであったというようなことが確認をされております。長期にわたって直接毒ガスを製造するというような仕事に従事をした旧令共済組合員とは作業内容が異なる、こういうことからそこに差が生じておると考えておるわけでございます。  今先生指摘の、じゃ差がなければどうするのか、こういうことでございますが、厚生省といたしましては、そのような申し出もありますので、本当にそうであったかどうか、まずそこを確認をするという作業から始まるのではないか。そういうことで、毒ガスと因果関係のある疾病の範囲等について専門家の方々にも従来からも研究をお願いしておるわけでございますけれども、今後も十分にさらにそういう疑問点について解明をしていく、それが先決ではないか、このように考えておるわけでございます。
  41. 浜本万三

    浜本万三君 さっきも答弁の中で、そういう身分関係のない人は比較的危険度の少ない作業であったという説明は私もわかるわけでございますが、何せ戦時中の工場のことでございますから、きちっとそれぞれの職分が決まっておったとしても仕事は融通しておったというふうに聞いておるわけです。関係者の話によりますと、全く仕事の内容が違っておっても実際にはイペリットガスなどを製造しておる箇所に足を踏み入れる場合もあった、こう伺っておるわけです。とすれば、身分関係のない障害者についても、これは何かやっぱり検討しなきゃならぬ、しかも重症患者が出ておるという現実から考えまして旧令共済と同じように取り扱うべきだということを私は重ねて申し上げたいと思います。  これは、最後ですからひとつ大臣の方から、よろしいという御答弁をいただきたいと思います。
  42. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 局長から御答弁申し上げましたように、現在、毒ガスと因果関係にある疾病の範囲等につきまして専門家の御意見を承っておる段階でございますので、その結果が出ましてから内容充実につきましては十分に対応をしてまいりたい、かように考えております。
  43. 浜本万三

    浜本万三君 ぜひひとつ善処を希望して、次の課題に移りたいと思います。  あと十分しかございませんから、年金の一元化問題について伺いたいと思います。  公的年金制度の一元化につきましては、昭和七十年を目途に公的年金制度の一元化を完了させるとの閣議決定がなされております。その後も、長寿社会対策大綱というものや関係閣僚会議等におきまして、この旨の再確認がなされておると承っておるわけでございます。さらに、昨年九月の関係閣僚懇は、今後昭和七十年の一元化に向けての課題、手順を明らかにしつつ、昭和六十四年の次期財政再計算において地ならしできるものは地ならしをする、こういう申し合わせをされておると聞いておるわけでございます。  そこで、伺いたいのですが、昭和七十年に実施する年金一元化の内容、さらにその手順や課題はどういうものか、また年金の財政再計算時期には地ならしに取りかかるということであるからその前提となる一元化の姿はどういうものか、明らかにしてもらいたい。また、来年、昭和六十四年に取り組む課題としてはどういう点を考えておられるのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  44. 水田努

    政府委員(水田努君) 御案内のとおり、七十年を目指して公的年金の改革を進めるのが政府の方針になっているところでございまして、既にさき年金改革で、いわゆる一階部分につきましては給付の面、負担の面両法方わたってその公平を図ったところでございまして、今後は、いわゆるその上に乗りますところの二階建て部分に当たる被用者年金、これの一元化をどのように進めていくかという問題であるわけでございますが、さき年金改革の際に、共済組合の方において給付の面につきましては将来にわたって厚生年金にそろえる、いわゆる整合性を図っていただきましたので、七十年に向けまして今後残されております課題というのは、被用者年金における負担の不均衡をどのように克服し是正するかという課題である、このように考えているわけでございます。  七十年に向けて一元化の姿をどのように展望するかということでございますが、さき年金改革の際に被用者年金に基礎年金を導入したわけでございます。その際、それぞれの共済組合にはいろいろな歴史、沿革というものがございまして、国家公務員共済につきましては大蔵委員会、地方公務員につきましては地方行政委員会、その他農水あるいは文教、それぞれの委員会におきましても、基礎年金は導入するがそれぞれ共済組合は今後とも存続を維持するという附帯決議が超党派でなされている経過等もございます。そういうことを考えますと、私ども、七十年の姿を無理にこの際考えるよりも、むしろ残されている課題でございます負担の不均衡というものを、その中間地点でございます六十四年の再計算のときに極力克服する、それが昨年九月の公的年金閣僚会議の申し合わせでございます、地ならしすべきものは極力地ならしをする、こういう表現になっておるわけでございます。  その具体的な地ならしの内容というものは、私ども、被用者年金制度をそれぞれ幾つかの制度に分立しておりますので、就業構造の変化に伴いまして保険料負担をする現役と年金をもらうところのOBとの割合、いわゆるこれを成熟度と言っておりますが、成熟度が著しく制度間で異なってまいっております。この成熟度の相違から来るところの負担の不均衡を各被用者年金制度が合理的に是認できる範囲で極力是正をするということが私ども次の再計算期に向けての被用者年金相互間の解決すべき課題であろうかと、このように考えている次第でございます。
  45. 浜本万三

    浜本万三君 ほかに、先般年金法の審議をいたしますときに、私どもからたくさんの検討課題を厚生省の方に要望しておるわけであります。これは時間がないので、我々が検討するためにできるだけ早くひとつ示してもらいたいということを希望しておきたいと思います。  それから最後に、非常に重要なことなので申しておきますと、次期再計算期の課題として厚生年金支給開始年齢の問題もあると聞いておるわけです。これは、本則では六十五になっておるようでございます。しかし、雇用、定年制と極めて密接な関係がございますから、これには手をつけないようにしてもらいたいと思いますがこの点どうかということと、それからもう一つは、厚生年金法の一部改正法案について、この法案が出る前に大蔵、厚生両軍務次官で資産運用の拡大方向としていろいろ意見を交換されたらしいんですが、今回は自主運営が見送られたというふうに伺っておりますが来年はどうなるのか、この二つを簡単にお答えいただきまして私の質問を終わりたいと思います。
  46. 水田努

    政府委員(水田努君) まず、自主運用の問題は、成案を得るまでに時間的余裕がなかったということで、厚生、大蔵両省の事務次官の確認書によりまして次期通常国会、来年の通常国会に法案を提出するものとし、そのための運用方法を拡大する方向で両省が誠意を持って協議をするということになっておりますので、金融の自由化の方向に即しまして円滑に円満に実現できるようこれから両省間で精力的に協議を進めてまいりたいと、このように考える次第でございます。  それから、開始年齢の引き上げの問題でございますが、前回の再計算のときに比べまして、今回、まだ計算中でございますが、次期再計算の結果によりますと年金財政はさらに悪化する見通しを私ども持っているわけでございます。特に、この財政の厳しさが顕著にあらわれますのは終戦直後に生まれたいわゆるベビーブームと言われる人たち、いわゆる団塊の世代が昭和八十年代に入りますと年金受給者になるわけでございまして、昭和八十年代後半をどう乗り切るかということが厚生年金に課せられた大変重大な問題でございます。特に、この時期になりますと厚生年金もほぼ財政が賦課方式に切りかわってまいるわけでございますので、後代の方の負担に耐え得るようにするためには厚生年金の開始年齢を引き上げるということは避けて通れない課題ではないかと私ども考えておるわけでございます。  先生指摘のとおり、今後における高齢者の雇用の状況等を踏まえながら、現在、年金審議会でこの問題も大きな課題として御検討いただいておりますので、その御意見も最終的に承りながら総合的に、かつ慎重に対処をしてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
  47. 浜本万三

    浜本万三君 ありがとうございました。
  48. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 六十二年版の厚生白書の初めの方にこういうふうに書かれております。  特に四十年代後半以降制度の拡充と社会保障給付費規模の拡充が図られた結果、欧米諸国と比べても遜色のない社会保障水準の実現をみた。 こういうふうに白書では表記をしております。  確かに制度そのものは外国の水準に近づいてきたと思うんですが、どうもその裏づけが完全ではないんじゃないか。裏づけといいますのは、いわゆる保障する金額そのものが、果たして欧米に遜色ないような保障の体系になっておるかどうかということは、どうしても私自身疑問でならないのであります。  今度の改正案を見てみますと、厚生年金を初め国民年金あるいは老齢年金あるいは母子家庭や身障者に対する各種手当等、いろいろ改定するものは提案されておりますが、恩給を除きまして改定の率が全国の消費者物価指数の率でスライドするということが基準になっておるものですから、私はさきに地方行政委員会でも申し上げましたけれども、例えば、恩給の場合は昨年が二%、厚生年金あるいは各種共済年金が〇・六%、こういう引き上げで格差がついていくんじゃないか。五年先の見通しまで立てると十八万七千円ぐらい、例えば、二百五十万の年金をもらっておる方がそのまま二%と〇・六%で五年間同じスライドでやっていった場合には、十八万七千円の格差かつくじゃないかということで具体的にケースをはじいて質問した経過もあるわけです。  今度の改定案を見てみますと、六十三年が〇・一%ということで、例えば、国民年金の十年年金関係では月にわずか三十三円あるいは五年物では一月にわずか二十五円、障害年金の一級でも一月に七十五円。児童手当を見てみますと、三万三千九百円が三万四千円に月額百円の引き上げ。先ほどから問題になっておりました原爆被爆者に対する手当の関係の部分だって、介護手当なんかの月額限度額が三万八千二百円を四百円引き上げて三万八千六百円、ところが一日当たりは千九百十円を千九百三十円、わずか二十円の引き上げだ。冒頭申し上げましたように、欧米諸国と比べても遜色のない社会保障水準というこの評価から見て、果たしてこういう引き上げでそういう評価ができるのだろうかということをまず私は疑問に感じたわけです。  そこで、若干お尋ねをしていきたいと思うんですが、私の持ち時間は少ないものですから。  近年、大変な努力によって物価の安定が続いておる。ところが一方では、日本経済そのものの不況のために、政策として国なり自治体が巨額の財政資金を投じて景気刺激対策を講じてきた。その結果、特に六十二年度の後半から経済成長はかなりな伸び率を示しつつある。六十三年の労働者の賃金も、春闘全体から見ても四%ないし五%台の上昇が期待されているんではないか。  そこで、先ほど申し上げましたように、社会保障関係についての各種年金引き上げ額が、確かに国民年金であれば十六条の二項に基づくとかあるいは厚生年金であれば厚生年金保険法の三十四条で附則が本則に変わって物価スライド制を適用するとか、そういう改正がされたことは私自身は承知をしながらお聞きをしていくわけですが、このような状況で続けていった場合、国民生活の中に二極分散が起きて貧富の差が拡大するのではないかという心配があるわけです。  まず、そこらについて厚生省の御見解をお聞きしたいと思うんです。
  49. 水田努

    政府委員(水田努君) 公的年金制度は、釈迦に説法で大変恐縮でございますが、社会保険方式によって維持をいたしておりまして、基本的には五年ごとの再計算期にそのときにおける国民生活水準なり賃金の動向等に見合って給付の水準を設定し、一方でそれに対する将来の負担ということの両面を配慮しながら制度の運営を図っているわけでございます。  私ども、公的年金というものの果たす役割というのは国民皆さんの老後の生活のよりどころになるものである、このように考えているわけでございまして、これをベースにしながら国民皆さんに企業年金なりあるいはその他の自助努力によって自分の老後の生活に見合った生活設計を立てていただく、こういうことに相なるのではないか、このように考えている次第でございます。
  50. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 確かに、五年に一回、賃金なりあるいは物価上昇を含めた抜本的な見直し、再検討をされておるということも実は承知をしておりますが、私が二極分散が起きるんじゃないかあるいは貧富の差が出てくる、拡大するんではないか、現にそういう傾向が出始めているんじゃないかというふうに、私らが地域に帰りまして高齢者の皆さんあるいは身障者の皆さん方と接触する中で、実はそういうお話を聞くわけです。現役の労働者と退職後の年金生活者との関係、いま一つが健常者と障害者あるいは母子家庭の家庭生活、そういう部分でやはり開きが出てくるんではないか。  そこで、私自身言葉は妥当とは思っておりませんけれども、現在、底辺生活といいますか、そういうふうに非常に苦しい厳しい生活をされておる方たちが障害者の家庭であり母子家庭であり、あるいは退職後の年金受給生活者ではないかというふうに実は考えておるものですから、貧富の差が拡大をすれば、貧の方がそこら付近の方たちに集中をしていくんじゃないか、こういうふうに実は考えておるところです。  ですから、国策として景気刺激対策をやるあるいは現在実施をしておるのは、国民全体の生活を向上するという大きな意味もあるわけですしあるいはその位置づけもあるわけですから、特に年金なりあるいは手当等で苦しい生活を送っている方々に対しても日本経済全体の流れの中に一緒に入っていただく、そういう立場での生活保障が必要ではないか、あるいはそうすることが私ら政治の役割ではないかというふうに実は感ずるわけです。国の政策によって国民の間に貧富の差を拡大するということは絶対に避けなければならないしあるいはやってはいけない、私はそれが政治だというふうに思うわけです。  そのために、さっきも申し上げましたが、確かに、今、法律事項では国民年金の場合は十六条二項に基づいて物価のスライドをやっておる。しかし、こういう時点でありますから、できるならば恩給と同じように公務員のベースアップ率を基準にする。  といいますのは、今の経済成長は国がたくさん金を投じてやっておるものですから、年金受給者もあるいは障害者家庭も一緒にこの経済の流れに乗っていただこう、そういう立場に立てば恩給と同じように、いわゆる公務員のベア率を適用すべきではないか、こういうふうに実は考えるわけですが、いかがでしょうか。
  51. 水田努

    政府委員(水田努君) 恩給は、いわゆる軍人とか官吏であった者に対する国家補償的な観点から全額国庫負担によって維持されている制度でございまして、社会保険のように財政再計算という仕掛けを持っておりません関係上、その年々によって賃金や物価の上昇等を総合勘案しながら決めるという方式がとられているわけでございます。  大多数の国民がその老後の生活のよりどころとしますところの公的年金は社会保険という方式で維持いたしておりまして、先ほども浜本先生の御質問の際にちょっと触れたわけでございますが、昭和八十年代における受給者もふえ、平均寿命の伸長に伴います受給期間が延びるあるいは年金制度が成熟化が重なるということで、公的年金の前途は大変厳しいものを持っているわけでございます。  先ほど先生の御指摘がございましたように、できるだけ公的年金に対する国民の信頼を確保するという観点から、政府部内でいろいろ批判はあったわけでございますが、私ども、厚生年金あるいは国民年金は物価の上昇が五%を超えた場合に行うというのが原則になっておりますが、欧米先進諸国においてはたとえ〇・一%であっても物価の上昇に伴ってスライドを行っていること等もございまして、現下の大変厳しい財政状況でございますが、ことで物価スライドというものに踏み切らさしていただいたわけでございますので、そこらあたりの点につきまして何分御理解を賜りたいと、このように思う次第でございます。
  52. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 私は確かに恩給と厚生年金を含めた他の各種年金関係の仕組みとか生い立ちとかの違いは、実は百も承知をしております。  がしかし、先ほども申し上げましたように、国の政策として、いわゆる景気刺激対策を数兆円という莫大な国費を突っ込んでやっているわけです。世界から見れば、日本は世界一の金持ちだ、こういうふうに言われておる。しかし、そういう中で今度の改定を見た場合には、月に五十円とか二十五円とか、一番底辺の生活を送っておる方たちに対してそういう状況が続いておるものですから、貧富の差が拡大をしてきつつある。だから、国の政策としてやっておるんだから、社会保障関係についても、国の政策として例えば公務員のベア率ぐらいは最低保障する、こういうようなことを私は採用しても悪いことはないんじゃないかという気がしてならないわけです。  今局長がおっしゃったように、確かに五年に一回の賃金上昇を含めて総合的な計算をされております。これを、今みたいなときには、最低二年に一回ぐらい見直すような、そして貧富の格差が出てくるところを防いでいくというようなお考えはないかどうか。  私は、恩給が高いとは言っていないわけですよ。去年、恩給が二%引き上げられた。ことしが一・二五%ですよ。二年間で三・二五%、恩給は引き上げになった。ところが、各種年金の場合は二年間で〇・七%ですよ。ですから、恩給生活者と同じ生活をしておりながら年金生活者の中でそういう差が出てくるわけですから、そうすればこういう実情で、五年に一回の見直しをぜひ二年に一回ぐらいで見直してそういう格差をなくしていく。  これは、本法三十四条の、附則にあったのを本則に切りかえたわけですから、これを修正をしさえすればできることでありますから、そこらについてひとつ御見解をお伺いしたいと思うんです。
  53. 水田努

    政府委員(水田努君) 私ども、五年に一回の再計算によって再計算時における国民生活水準、賃金の動向等に配慮して給付水準を基本的に見直すという原則を持っているわけでございますが、次の再計算期の間は物価の上昇に見合って実質的な年金の価値が減価しないような対応を講じていくということでこれまでやってまいっておるわけでございます。  この五年の再計算を待たずにその中間でもできないのか、こういう御質問でございますが、私ども、確かに大変急激なインフレーション等があるような場合にはそういう事態も考え得るかと思いますが、再計算を見直すということは当然それに見合った保険料の引き上げもその時点で行わなきゃならぬわけでございまして、現在、私どもは、基本的には一応給付水準の見直しに見合った保険料の引き上げということにつきましては、おおよそ五年に一回程度ということで負担の方もそのようにお願いをしている経過もございますので、やはり実質的な価値を維持するという現行の私どものとっておるやり方の方がむしろ妥当ではないかと考えている次第でございます。
  54. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 多分そういう答弁になろうというふうに思っておりますけれども、さっきから言いますように、国の政策として景気刺激対策をやっておる。景気刺激対策というのは、やっぱり消費を拡大するわけでしょう。そうすれば、年金受給者にしろあるいは障害家庭の皆さんにしろ、本当に消費が拡大するような手当てをあるいは年金支給をやらなきゃいけないんじゃないか。  しかし、今局長がおっしゃるように、三十四条に基づいて物価スライドというのは決まっておるんだということですから、私、その物価スライドの指数そのものに問題があるんじゃないか。これは、高齢者家庭の年金生活者やあるいは障害者の方々の生活実態と余りにもかけ離れた指数のとり方ではないかというふうに実は思っておるわけです。  と申し上げますのは、御承知のとおり、消費物者価指数というのは、自動車なんかを含めた、いわゆる耐久消費財まで入れた指数ですよね。そういうような中で六十三年度が〇・一だという指数が出ておる。ところが、これは厚生省でぜひ調査をしてもらいたいというふうに思っておりますけれども、高齢者や障害者の家庭の支出面で今ウエートの大きいのは何かといいますと、交通費と医療費、それに介護料なんです。  物価スライドの問題からいった場合、日本全土から見た場合の交通費の上昇率というのは、これは私は微々たるものだろうと思うんです。ところが、先ほど申し上げましたような高齢者やあるいは障害者の方々というのは、生きるためには、食料費を減らしてでも医者には行かなきゃいけない。そうすれば交通機関を使わなきゃいけない。  実はこれは非常に強い要求がありまして、私は水俣病の関係の部分でも環境委員会でやりましたけれども、交通費に対するウエートが非常に高い。これは、いわゆる消費者物価指数の中で、さっきから言いますように、わずかな部分しか出てこぬものですから、余りにも生活実態とかけ離れた指数のとり方ではないかというふうに申し上げておるところです。  そういう状況の中ですから、先ほども言いましたけれども、私のところにもお二人見えましたけれども、現に食料費を削りつつある、エンゲル係数は下がっておるわけです。そして交通費なりあるいは医療費の方に回しておるというのがこういう方たちの実態でありまして、その上に一番心配になっておるのが、ことしの四月あるいは五月から民営鉄道関係を含めた八%から一〇%以上の値上げが予定をされておる、あるいは、医療費も改定によって実質的には〇・五%程度上がるんではないか。ですから、医療費そのものは負担はしていないわけですけれども障害者になりますといろいろ病気を併発するわけです。初診料を払わなきゃいけないという問題等もあるものですから、そういうことが非常に実は心配として出ておるわけです。ですから、今の五年に一回の見直しを最低二年ぐらいに短縮をしてでもこういう方々に対しては対応すべきではないかというのが私がさっきからくどいように申し上げておる一つの要点なんです。  それで、高齢者世帯の所得関係を見てみますと、年間の総所得が百九十九万円以下というのが大体全体の六一%になっておりまして、二百四十九万以下というのが七一%強なんですね。そうすると、こういう家庭基盤の非常に貧弱な高齢者世帯が、六十一年度では、この厚生白書にも出ておりますけれども、三百三十二万世帯あるというふうに出ておるわけです。前回の調査から見ればこういう貧弱な脆弱な高齢者世帯が増大をしておる。先ほど言いましたように、百九十九万以下という所得の中で占める割合がどんどんふえていっておるのが交通費と医療費とそして介護料だという実態があるものですから、くどいようですけれども先ほどから何回も改定問題について申し上げておるわけです。  今、局長の方は、どうしても厚生年金を含めてそういう考えはないんだということですけれども、私は、国民生活全体を眺めた場合、今政治の努力によって物価は安定しておるわけですけれども、経済成長がどんどん上がっていけば現役労働者の賃金も上がりますし、恩給関係の皆さんの恩給も上がっていくわけです。そういう中で、いわゆる厚生年金を初め各種年金受給者あるいは障害者あるいは母子家庭を含めたそういう方たちだけが取り残されていくんではないか。いくんではないかではなくて、そういう現実にもう来つつある。そこを何とかひとつ考えていただいて、再検討する部分を短縮していただきたい。  もう一回、局長、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  55. 水田努

    政府委員(水田努君) 現在、六十四年つまり来年に向けまして年金審議会で先生の御指摘されたような問題を含めまして、給付水準のあり方、費用負担の問題等、既に種々広範多岐に御検討をいただいております。  先生の御指摘された事項等も十分念頭に置きながら、年金審議会の御意見がことしの秋に出てまいりますので、先生の今の御指摘の事項もその御意見を踏まえながら、さらに私ども総合勘案しながら明年の改正に取り組まさせていただきたいと、このように思う次第でございます。
  56. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 ぜひひとつ審議会の方に今申し上げたような意見が反映されるように努力をお願いしておきたいと思います。  次に、大臣お尋ねをしたいと思いますけれども、本委員会で国民健康保険法問題も議論をされてまいりました。その中で急速に進む高齢化社会に向けた医療保険制度についていろいろと議論がされましたが、六十二年十二月十九日の国保問題懇談会報告の中で「医療に関する総合的な対策」の②に長期入院の是正が実は提起をされております。これは、何も高齢者だけの問題でなくて、全体的な長期入院に対する是正の問題が提起をされておるんだというふうに私自身は解したわけです。  と申し上げますのは、先ほども浜本議員の質問の中でちょっと問題になりましたけれども原爆被災者やあるいは労働災害あるいは交通災害等で重度の障害を負いまして、そして入院治療した。その結果、症状だけは固定化するわけです。しかし、後は介護人なくしては生活できないという方たちが実はたくさんおられるわけです。  これも、この厚生白書の中に出ておりますが、身体障害者の実態調査を五十五年から七年ぶりに実施したということで、六十二年の二月にまとまった。その中でも、十八歳以上の在宅身障者が二百四十一万三千人。もちろん六十五歳以上の高齢者が全体の四五%となり、身障者の高齢化が進んでおるというふうに報告には提起をされております。そして一方、増加しておる中では、三十歳代の者が七年前の調査よりも三〇%も増加をしておる。この原因は労災とか交通事故ではないかというふうにこの白書でも実は報告をしております。  大臣にお聞きをしたいのは、私は、労働省との関係で労災問題でやりとりをしました。いわゆる労災の重度障害者に対する介護手当の問題で、社会保障学会なんかもかなりの問題提起をしておりますが、なかなか労働省も進まない。いろいろ聞いてみますと、どうもこの原爆被災者に対する介護手当、現在三万八千二百円、今回の改正で四百円上げまして三万八千六百円、この介護手当が実は一つの基準になっておるようなお話を聞きました。そうしますと、先ほど言いました懇談会の答申で、長期入院対策をやらなきゃいけない、ところが実はたくさんの障害者あるいは高齢者がおりまして、在宅でやる場合には必ず配偶者なり家族の介護がなければ重度障害者の皆さん生活ができないわけです。ところが、手当が三万八千二百円というのでは配偶者自身あるいは家族の生活ができないものですから、どうしてもその障害者が犠牲になって病院に入っておるという実態現実なんです。  ですから、大臣が一番御心配になっております全体的な医療費そのものを、今の伸び率をどうとめていくかということでいろいろ医療対策等もやられておりますし、在宅ケアにも力を入れていくということが言われておりますが、私は、一つの長期入院の是正対策として、いわゆる介護手当を大幅に増額をする、そしていわゆる長期入院対策の一環としてあるいは日本の国全体の財政から見た場合にも、私は介護手当を大幅に増額してあげてもその方が財政的にはかなり有利な面が出てくるのではないか。  これも、要介護老人対策の関係で、総務庁の老人対策室が六十二年の二月に六十歳代の人に対して行った調査がこの白書の中に出ております。これを見てみましても、自分が寝たきりとなった場合の介護を頼む相手はだれかという問いに対しては、配偶者ないし家族、親戚が全体の八割以上、そしてその多くの方々が在宅での介護を望んでおる。これは、私は、高齢者だけではなくて、障害者の皆さんだってそうだと思うんです。原爆被災者の皆さんだってそうだと思うんですよ。ところが、先ほどから申し上げますように、三万八千二百円では介護人を雇える金ではない。在宅療養すれば奥さんがつかなきゃいけない。何十年かかかるわけですからね。そうしますと、奥さん自身は全く年金もない、もしもその障害者の方が亡くなった場合には後は生活のめどが立たない、こういう問題で私は労災問題のときにいろいろやりとりしましたけれどもそれは別としまして、個々の介護手当厚生省が思い切って引き上げる、そのことが全体的な長期入院対策にもなりますしあるいは医療費全体の対策にもなるんじゃないか、そういう気がしてならないわけです。  大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  57. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 在宅における介護につきましては、今御指摘のように、家族の方々に物心両面における負担を伴うわけでございますから、そういう点に着目をいたしまして介護手当を支払うべきではないか、また充実すべきではないか、これは、確かに将来の在宅ケアを進めていく上での大きな課題であると私も思っております。  我々今考えておりますのは、現実に在宅ケアを充実していくためには、やはりむしろそういう家族の方々の負担をどうやって軽減していくか、家族構成であるとかまた御婦人の家庭外での社会参加ということも今後の問題としてあるわけでございますから、そういう実態面を見ますと、そういう家族の方々の負担を軽くしていくために、むしろホームヘルパーであるとかショートステイであるとかそういう形で在宅ケアを重視していくことが現実対策としてはより有効ではなかろうか、こういう考え方に立っておるわけでございます。  しかし、最初申し上げましたように、介護手当の問題については、これはやはり一つの大きな将来の課題であるというふうには思っております。御承知のように、家族の方々の負担を軽減する方法としては、現在は税制上におきまして配慮をいたしておるわけでございまして、そういう面での今後の対策というものはこれは今後とも考えていかなきゃならぬ問題であろうかと考えております。
  58. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 じゃ次に、直接的に本法案と関係があるわけじゃありませんが、廃棄物の処理・再利用問題についてちょっとお聞きをしておきたいと思うんです。  昨年の六月二十五日付で総務庁から厚生省に対して「廃棄物の処理・再利用に関する行政監察結果に基づく勧告」が出され、これに対して厚生省では、本年二月十六日付ですかに総務庁へ回答したというふうに聞いております。  そこで、厚生省はこれに基づいて都道府県に通知をする予定と思いますが、その内容は今後の廃棄物処理行政の方向を左右するものと思うものですから、処理行政を担当する厚生省にその基本的な態度をひとつお聞きをしたいと思うんです。
  59. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 委員指摘のように、廃棄物問題につきまして行政監察局の調査をいただき、それに基づいて問題点を指摘した上で勧告をいただいております。  厚生省といたしましては、これについて回答したところでありますが、単に回答を差し上げるということでなく、この回答の線に沿いまして都道府県、市町村等を指導するとともに、国についての責任も明確にしながら今後の廃棄物対策に遺憾のないように対処してまいりたいと考えております。
  60. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 回答の線に沿って都道府県、市町村を指導していくということは、清掃事業の目的そのものが廃棄物を適正に処理し住民の生活環境を保全することにあるのはそのとおりだと思うんですが、そのためには、市町村の固有事務として市町村の責任のもとに清掃事業を適正に行うことが必要だと思うわけです。そのことは廃棄物処理法の中でも明確になっておりますし、この旨を規定して、事業運営につきましても、直営を基本としながらいたずらに委託等による事業運営を求めているものではないというふうに私自身は思うわけです。  清掃車業に対する厚生省考え方をもう一度お聞きしたいと思うんです。
  61. 古川武温

    政府委員(古川武温君) ただいま委員指摘の点につきましては、清掃事業の対象の中、いわゆるごみ、一般家庭から排出される一般廃棄物を特に念頭に置いて委員指摘いただいたと思っております。  一般廃棄物の処理につきましては、委員指摘のとおり、法にもございますように市町村の固有事務として明確に規定され、その責任は明らかにされているわけでございます。  そういうことで、今後とも市町村の責任そしてその適正な運用、そうしたものがしっかり行われるよう指導してまいりたいと考えております。
  62. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 先ほど申し上げました勧告の中で、総務庁は、行政コストの面から廃棄物の収集運搬業務の合理化あるいは効率化を求めているようですが、厚生省としてはこの点についてはどういうふうなお考えか、お聞きしたいと思います。
  63. 古川武温

    政府委員(古川武温君) ごみの収集運搬業務の合理化の中で御指摘がございますが、こうした事業に携わる職員の労働安全衛生の確保というものが前提といいますか一番大事になるわけであります。その上で、分別収集による減量化あるいは資源化、施設設備の適正な整備・交通状況等を考慮した計画的な作業の実施等がございます。  あくまでもそうした前提に沿いまして対処してまいるのが基本だと考えております。
  64. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 そこで、今出されました清掃労働者の労働災害あるいは死亡事故については、先般来の労働安全衛生法の審議の中でも、私は、労働省の方にこの問題についてかなりの実例を挙げて対策について実は質問をしたわけです。そういう事故が多発しておるという状態、いま一つは、委託業者による不法投棄がかなり実は頻繁に行われております。  私自身も地方におりましていろいろやってきたわけですから実例を申し上げていいわけですけれども、これについて、まずもって、委託業者に法律をどう守らせるかという立場での指導を私は徹底すべきだと思うんですけれども、まずそこをお聞きしたいと思うんです。
  65. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 二つの点を御指摘いただきました。一つは、災害事故の点でございます。それからもう一つは、不法投棄の問題でございます。  災害事故につきましては、直接、委託ということとは別にいたしまして、これは、そうしたことがないようにマニュアル等もつくって指導しておるところでございますが、なおこの徹底を図るよう、都道府県、市町村を通じてさらにしっかりと対応してまいらなければいけないことだと考えております。  それから、不法投棄については、たびたびテレビ等でも出る問題でございますが、我々としても大変悩んでいるところでございます。特に、産業廃棄物、建築廃材については目に余るものがございます。こうしたことに対しましては、こうした違法行為に厳正に対処するというふうなことを行いながら、民間の処理業者の指導、適正処理を確保するよう努力してまいりたいと考えております。
  66. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 先ほど労働省との関係で労働安全衛生法審議の中でも申し上げたということを申し上げたわけですが、労働省は来ていないと思うんですけれども厚生省と労働省とにまたがっているものですからなかなか難しさがありまして、労働省にも、労働基準監督官が足らぬのじゃないかということでこの間の労安法の審議の段階で私の方から指摘をしたわけです。この間審議が終わった後、また神奈川で御承知のように委託関係の清掃労働者が清掃車に巻き込まれて亡くなった。あるいは、その前ですけれども、これは福岡のごみ焼き場でニスの入った缶が爆発して生徒が四名けがをする、用務員さんが責任をとって自殺をする、こういう悲惨な事故が続いておるわけです。そういう関係の部分で、これは厚生省と労働省が一体となっていただいて、安全対策についてはぜひひとつ万全を期していただきたいということをお願いしておきたいと思うんです。  不法投棄の問題について先ほど私は申し上げましたが、これは私の方から要望ということでお願いをしておきたいと思うんですが、一般廃棄物あるいは産業廃棄物の不法投棄が近々は非常に実は頻繁になってまいりました。生活環境審議会の専門委員会でも、六十二年の八月ですか、検討に入っておりまして、幾つかの手は実は打っておるようですけれども、私は少し手ぬるいんじゃないかという気がしてならないわけです。ですから、今、六十一年十一月に決定されました第六次産業廃棄物処理施設整備五カ年計画ですか、によって実施はされておりますけれども、不法投棄対策が都市近傍の自治体の今悩みの種となっておるというのが実態なんです。摘発という言葉はどうかと思いますが、摘発するにも、保健所の職員はもちろん何も権限はないわけです。しかし、取り締まりの責任は自治体にある。そうしますと、二人一組ぐらいで組みまして、当てもない山合いで、それも夜の夜中に巡回をしながら、不法投棄があればそこを押さえなければいけない。ところが、不法投棄を捕まえても、警察に連絡して警察の方から手を打たなければならないが、警察に連絡をする場合には何か物的証拠を残さなければいけない。そうしますと、不法投棄に来た車のナンバーを撮るかあるいは社名を撮るかです。ところが夜ですから、フラッシュをたかなければいけない。そうしますと、相手の方は、不法投棄ですからやっぱり構えてきておるわけです。そうしますと、保健所の職員、県の職員あるいは自治体職員が一人、二人でこれを取り締まるということはできないというのが現実なんです。そして、それがしかも山合いの、水源地の奥に産業廃棄物を中心にした不法投棄がされておるというのが今の実態であるわけですね。私は、このままの状態でいった場合には取り返しのつかない状態が起きてくるんじゃないかと思います。  これは、私の方の福岡県の久山町に小早川という町長さんがおりまして、行政改革についても医療対策についても非常に進んだことをやりました。現に市町村共済関係でも受診率がずっと減ってきたということで、この間、新聞でも大きく報道されておりました。そういうふうに環境、医療関係に小早川さんは非常な熱意がある方なんです。その方が私に訴えたのが、このまま放置した場合には大変なことになってしまう、飲み水が危険だということをおっしゃっておったわけです。  先ほどから言いますように、不法投棄を取り締まるのは県の職員、自治体の職員だというふうにはなっておりますが、現場で見つけても警察に連絡しなければいけない。警察に連絡するには物的証拠がなければいけない。しかし、物的証拠は、夜であれば写真を撮るのにフラッシュをたかなければいけないという問題もあるものですから、そういう点でなかなか困難性がある。あるいは、投棄された廃棄物を調べに昼間行って、何かそこに物的証拠に残るものがないかどうか、非常にこれは危険な問題ですけれどもそういうことまでしながら自治体の職員はこの不法投棄についての監視をやっておるわけです。しかし、それでも対応がなかなかおぼつかないというのが現状であるわけです。  確かに、五十七年ですか、清掃車業に対する安全管理の要綱等が出ておりますけれども、こっちの方の取り締まりに対する検討が少しおくれておるんじゃないか。そこらについてまずお聞きを、兼ねて要望をしてみたいと思うんです。
  67. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 委員指摘のように、産業廃棄物の不法投棄、しかもそれは建設廃材が大部分である、そしてそれらの捨てられ方というのが山間地といったところへ持っていって捨てるということで、まさにこれを証拠立て摘発していくというのは大変な仕事でございます。関係省庁と連絡し、あるいは部会等の意見等をいただきながら対処しているわけでありますが、実際にそのものを捕まえるということにはそういうふうな苦労があります。  そういうふうなことで、もう一方では、建設関係の事業者の集まり、例えば日本廃棄物対策協会に委託しまして、こうした建設事業者からの自主的なそうした自覚に即したような方向で対応策についての御意見を協会にいただく等、いろいろ努力しておりますが、まさに隔靴掻痒、十分ではございません。  今後とも最大の努力をしてまいりたいと思っております。
  68. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 それでは、これで終わるわけですけれども、最後に、私、お願いをし、御検討しておいていただきたいことは、先ほどから言いましたように、自治体の職員が現場で取り締まりをした場合に、見つけても、物的証拠を準備して警察に持っていかなければ何の措置もできない。確かに営業権を与えるかどうかというのは自治体にあるわけですけれども、そうすれば、もう少し何か保健所あるいは自治体の職員、監視員に対して強い権限を持たせるような方向で御検討していただかなければ、さっきから申し上げますように取り返しのつかない状態になってくるんじゃないか。  これは、私自身も住宅関係の仕事をしておりましたから詳しいわけですけれども、一番最初に建てました鉄骨のアパート類が大体二十年、三十年経過をしてき出したわけです。そして、今の土地ブームまた住宅ブームの関係があるものですから、そういう部分はどんどん取り壊される。それは鉄骨も入っておりますし、これらが中心的ですが、そういう廃棄物がたくさん捨てられてきつつある。しかし、それに対してはどうしても対応ができないというので、冒頭申し上げましたように自治体の悩みの種になっておるものですから、ぜひひとつ取り締まりについて厚生省中心になっていただいて、そして対策を少し強めるような方向で御検討願いたい。  同時に、先ほど申し上げましたように、労働安全衛生の問題についても、労働省に言わせますと、一つの事業体の中に五十人以上の従業員がおらなければ安全委員会は置かなくていいというか、置くのは五十人以上だ、こういうふうになっておりますけれども、一つの清掃事業の現場でもあるいは学校給食の現場でも、直営の部分がありますし、民間の部分がありますしあるいは一部事務組合の部分があって、いろいろと複雑になっておるわけです。  そういう関係の部分も、厚生省が主管庁でありますから、労働省と十分打ち合わせをしていただいて、そして安全対策についてもひとつ万全の対策を講じていただきたいとお願いをいたしまして、終わりたいと思います。
  69. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 四案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      ─────・─────    午後一時十三分開会    〔理事佐々木満君委員長席に着く〕
  70. 佐々木満

    ○理事(佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、児童扶養手当法等の一部を改正する法律案原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案並びに厚生年金保険法の一部を改正する法律案の四案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  71. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について厚生省側にお尋ねをするわけでありますが、大臣は最後に、行政当局が答弁をした後に、総くくりとして大臣の所感をいただければ幸せと思います。    〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕  したがって、私が申し上げることは特に被爆者の地域拡大について、これでもう三度目ですからね、同じ問題を。私は、私が納得するまでの間はたびたびこの委員会に来て質問をするわけでありますが、きょうは、特に一カ所の地点に絞って質問をいたしたいということでございますから、よろしく行政当局は御答弁をお願いしたいと思います。  私は、昭和五十四年に橋本龍太郎大臣あるいは去年の七月二十八日に斎藤十朗厚生大臣に、それぞれ当委員会において被爆地域拡大についてただしてきました。残念ながら行政当局の態度は、被爆後四十三年、後遺症に悩み、高齢化と相まって健康の不安におののきながら日々を送っておるのでありますが、現行医療法、特別措置法の対象とならない多くの被爆者の声に耳をかさずに、大変冷たい態度で答弁をしております。地域拡大については、昭和五十五年の基本問題懇談会の報告書を引用しまして、科学的、合理的な根拠のある場合に限って地域指定を行うと繰り返しているのであります。  しからば、科学的、合理的な根拠とはいかなるものか、お答えを願いたいと思います。
  72. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 特定の地域を被爆地域と指定するための科学的、合理的な根拠ということでございますが、これは、その地域における原爆の被曝線量が住民の健康に影響を及ぼすに足るものであることが残留放射能等の科学的データによって明らかにされ、当該地域が被爆地域に指定されることがもっともであるとして関係者の間から納得を得られるような合理的な根拠が認められるということでございます。
  73. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 今局長答弁したんですけれども、実際に現場に行ってみますると局長答弁されるような現象があるわけですね。  私は、これで三回やるわけですけれども、現場に三、四回行って、その実態を聞かされてきておるというのであります。したがって、この被爆者対策我が国において特に一般戦災者と異なって特別対策として実施するのは、放射能を被曝した、そこに特殊性を見つけて施策を実施しているのではないかと思うんですね。  したがって、原爆による放射能を被曝したことと生活、肉体に及ぼす影響等に他の人々との間に有意の差があれば、それは科学的、合理的根拠が立派に存在するということが言われるんじゃありませんか。
  74. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 人の健康あるいは生活の状況、これは地域地域によっていろんな状況にあるわけでございまして、ある地域では有病率が高いとかあるいは生活にいろんな困難な面を持っておるとかそういうことがあるわけでございますが、それだけでは原爆との関係ということが説明はできないわけでございまして、そういう状況の前提として、人の健康に影響を及ぼすであろうというような放射線のレベルがあるかどうかということがやはりこの問題の基本になると私ども考えているところでございます。
  75. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 単に残留放射能の線量のデータの大きさだけでの科学的、合理的な根拠ではないかなと思うわけですよ。  線量の多い少ないだけでこれは言われないと私は思うわけです。放射能被曝の肉体への影響はまだまだ解明されていない点が多々あるのではないかなと私は思います。地域住民の健康状態をつぶさに調査検討する必要もあるのではないか。そうでなければ被爆県民として納得しがたい。  厚生省はそれをやったことはないと私は思うんだが、やはり厚生省と県、市と一体となってその実態は検査する必要があると思う。いかがでしょう。
  76. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 確かに、先生指摘のように、放射線の人体への影響ということはまだまだわからない点が多いわけではございますが、我が国原子爆弾が投下をされて既に四十数年を経ておりまして、大変悲しい体験であるわけでございますけれども我が国では被爆による健康障害あるいは人体に影響を及ぼすような放射線のレベルというようなことについての科学的なデータは諸外国と比べましても非常に大量に蓄積をされておるわけでございます。  特に、今、広島、長崎両市に置かれております放射線影響研究所は、一定の対象人口を長年にわたってフォローアップをしてきておるわけでございまして、このデータによっても放射線によって障害を受けた疾病の状況については相当程度の蓄積を持っておるわけでございます。  私どもとしては、一方では、確かに被爆を受けられて身体に影響を及ぼされた方々への対応はもちろんでございますけれども、一方では、過剰な不安とでも言えると思いますけれども放射線に対するそういう非常に過剰な不安、必要でない不安は解消していく、両方の側面を持っているわけでございますので、そういう観点から、放射線の影響ということについては科学的なデータをやはりきちんと認識をしていくということが一番基本ではないかというふうに考えておるところでございます。
  77. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 今局長の御答弁を聞いて、やっぱり、そういうような地域住民の健康状態調査したりあるいはまた検討を加えるということは、私は非常に大事だろうと思うんです。だから、そういう点をぜひ一歩踏み込んでやってもらいたい。  そこで、被爆直後の当該地域の実態調査して、後でお手元に差し上げております原爆被爆地域図をごらんになればおわかりと思うんだが、やはり、今日でも地形上または地勢の上からも容易に理解、認識できるわけですから、もう少し踏み込んだ考え方をしてくれなければ私どもは到底納得しない。  そういう点をやる意思があるのかどうか、これをお答えいただきたいと思う。
  78. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、厚生省といたしましては、被爆当時の放射線の状況、さらには昭和五十一年と五十三年の二年度にわたりまして、その後の残留放射能の状況等についてかなり綿密な地点の調査をやっておるわけでございます。  そういう科学的な資料からいたしますと、現在の被爆地域をさらに拡大するという必要性は認めがたいという立場をとっておるわけでございまして、そういう状況にあるということについて御理解を賜りたいというふうに存じます。
  79. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 今の答弁を聞けば聞くほど、私は納得しがたい。  そこで、お手元に原爆被爆地域図を差し上げておるわけですが、これでもおわかりのように、赤色で塗っておる、これが間ノ瀬地区というんですが、既にこの北の方の長与村あるいはまた南の方の矢上村に区切られて、間に挟まれておるんですよ。その両方が指定を受けておるのに、何でこの地区を漏らしたのかなと、私自身がおかしくてならない。  しかもまた、この間ノ瀬地区は黒い雨の地域でもある。この黒い雨が一部入っておるわけですよ。さらに、地形的にあるいは風向きから見ても、放射性降下物があったことを容易に容認できるわけですよ。  これでもこの地区を指定する必要ないと判断するのかどうか。
  80. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 長崎の地域に原爆が投下をされて既に四十数年がたっておるわけでございますが、この被爆地域を指定をするという点から見ましても、非常に長い年月がたっておるわけでございます。  当初は、原爆放射線の影響というものを完全に掌握をするという観点から、かなり幅広く指定地域をとっておった、こういう状況があるわけでございまして、先生指摘の長与あるいは時津の地域につきましても、そういう流れの中で追加指定をされていったというふうに考えられるわけであります。  一方、その後、いろんな調査が進んでおりまして、放射線被害というものも実際にどの程度の線量の段階で問題があるのか、仮に放射性降下物が落ちたとしても、それはその量にもよるわけでございますけれども、その地域地域で残留をしている放射線のレベルを調査をすることによって、心配がない、こういうことになってきたわけでございます。  確かに、御指摘のように両側に挟まれたということで、その地域の住民の皆さんが御心配になる点は理解ができないわけではないわけでございます。先生も御承知のように、この原子爆弾による灰は島原半島の非常に遠くまでも到達をしておるというようなこともございまして、確かにそういう事実はあったわけでございますけれども、今日の放射線に関する医学の知識からいってそこまでは心配する必要はないのではないか、こういうことでございまして、昭和五十五年にいわゆる基本懇先生方の御意見もございまして、今後はもうそういう心配はないのだから、科学的、合理的な根拠がない地域の拡大は新たなる不合理を生ずるということで、現在置かれておる状況がこの地図の上からごらんになりますと非常に不合理な点があるわけでございます。けれども、五十五年の時点でそこのところは現状固定をした、こういう考え方をとっておるわけでございまして、周辺の地域が放射線の影響を大きく受けておるということは必ずしも言えないという状況にあるわけでございます。
  81. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 あのね、あなたは、もうこれ以上は我々は言わぬからということをだれか言ったの。  長崎県と長崎市が原爆の地域拡大を要請をしておるのは、毎年こういう書類を出して、この末尾の方にちゃんと書いておるんです。毎年これをやるんです。それをあなた方がしない。しないから、私は、特に間ノ瀬という地区に再三行って、実態を聞いて、それを何とかしなければいけないということでこの三回目の質問をするわけですから、私どもが知らないようなそういうことを言って、これでもうしないとかいうことを言っちゃだめです。  そこで、この間ノ瀬という地区が当時のことを一番よく詳しく調査しておるんです。ここは、長崎市の東部の六キロないし八キロの地点に位置をしておる山間部なんです。被爆当時、被爆者が長崎市の浦上方面から諫早方面へ抜ける唯一の近道として利用されておる。そのときに、当地区の各家々の方々は、水を与えたり食糧を与えたりして、負傷者の手当てをしてやった。そこから先へ行けないんですから、こういう人方を非常に努力して看護した話も聞かされておる。  それで、その地区は、被爆当時四百名程度の人口があったというわけだが、現在はもう半分近くになっておる。昭和二十年八月十日から六十年七月十一日までのこの地区の死亡者が百四十六名おる。しかも、その中で、がんによって死んだ方が二十九名、白血病が四名、原爆症が五名となっているんです。  こういう実態をあなた方は知っておるんですか。
  82. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 関係者のお話から、そういう数字があるということについては承知をしております。
  83. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、これを証明するためにどういう方法で調べたのかと電話で聞いてみたんです。そうしたら、病院のカルテがない。それはなぜないのかといったら、五十七年七月の水害で流れてしもうたというわけだ。そこで、死んだ方々の家を一軒一軒ずっと訪ねてみて、あなた方の方に渡しておるこの資料のような病態で亡くなっておるというのが実情のようであります。  だからして、健康の診査あるいは死亡者の死因等を十分調査して判断することも、私は、科学的、合理的根拠を見つけるためにぜひ必要ではないかなと思うんです。合理的、科学的根拠を見つけ出すには努力をしなければいけない。  地域拡大をしていくというのが被爆者対策の行政の姿勢じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  84. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 先生が御指摘の、そういう地域の健康状態をつぶさに調べていく、これは非常に大事なことであると思うわけでございますけれども、非常に小さな地域の死亡状況というものは、その地域に長年住んでおる方々の特性だとかあるいはその時点での偶発的ないろんな現象等で、ある場合には特定の疾患が非常に多くあらわれるというようなこともあるわけでございまして、またいろいろ統計的な手法で、そういうことの特殊性ということは明らかにする努力をする必要があると思うわけでございます。  一方では、先ほど来申し上げておりますとおり、この原子爆弾被爆者の問題は、あくまでも放射線被曝ということが基本にあるわけでございますので、そういう身体的な状況を調べる前に、本当に放射線がその地域で大量に人に被曝を及ぼしたのかどうか、そういうことが合理的に推定されるということが前提になるのではないかというふうに思うわけでございます。
  85. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 ごく最近の資料で、去る五月八日の読売新聞の報道で、長崎大学の水産学部の宮原教授が研究を明らかにしております。そこでも、長崎原爆の死の灰は西風に乗り、爆心地から東方に広範囲に放射性降下物があったことを明確に裏づけておる。  この研究結果をどのようにあなた方は認識しておりますか。
  86. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) いわゆる死の灰が西の方から東の方に流れた、それを精密に申し上げる資料は今手元に持っておりませんけれども、概念的にはそういう状況があったということは私どもも承知をしておるわけでございます。  しからば、いわゆる死の灰というものが持っておる放射線のレベル、そういうものから見ると、今までの昭和五十一年あるいは五十三年の調査の結果から見ても人体に影響を及ぼすようなレベルのものではなかった、こういうふうに理解をしているところでございます。
  87. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 放射能の灰が風によってずっと降下した、人体に影響がないからそれでいいんだということではどうかと私は思うんです。  爆心地から東の方にずっとこの放射線がおりているんですから、被爆地域指定についてもやっぱり厚く配慮があってしかるべきと私は思う。だからして、皆さん方も研究をされると思うが、よくそういう点をさらに再検討していただきたい。  そこで、時間がなくなりましたけれども、本年度から、長崎県と長崎市が共同して被爆地域是正へ科学的根拠を探るために、検討会を設置して検討に入ることが決まっておるわけです。  だからして、政府においても被爆住民の切実な声に謙虚に耳を傾けてもらいたい、そして地域拡大に前向きに対処していただきたいと思いますが、その気持ちがありますかどうか。
  88. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) ただいま先生指摘ございました長崎県・市が被爆地域を是正するという観点かち検討会を設置する、こういうことについては私どもも承知をしておるわけでございます。  私どもといたしましては、あくまでも、先ほど来申し上げておりますとおり、昭和五十五年の基本懇の専門の先生方の御意見が、非常に厳しく今後の放射線障害というものについて正しい認識をすべきである、こういう指摘をされておることからいいまして、どうしてもやはり科学的、合理的な根拠ということをスタンドポイントにせざるを得ない、そういう状況にあるわけでございまして、今回、長崎県・市が共同でそういう科学的、合理的な根拠をきちんとするという研究をするための検討会を設けられるということでございますので、厚生省といたしましてもとの点については十分に見守ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  89. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 もう時間もないんですが、これは前にも言うたんですが、この地図の空色、時津と長与を指定する場合に、右の上の黄色、伊木力村、大草村、喜々津村、これは合併しておるわけですが、この指定についても、当時、五十四年に一年間待ってくださいよということを言うておるんだから、何年になるの。もう十年になるよ。だから、これもやっぱり政治的配慮でやってもらわねばいかぬと思うよ。  そこで、大臣、時間があれば詳しく話すんですけれども、今問答をしたような実情でございます。これは、もう被爆県民として叫んでおるわけですから、県、市が毎年毎年厚生省にお願いをしておるわけですから、何とかこれに対する措置方法、これをひとつ御答弁願いたいと思うんです。
  90. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 地元におきます被爆住民の切実な声を背景にいたしまして先ほどから初村先生の御熱心な御議論、御意見を承っておりまして、私もできる限りの対応はしなければならないと思っております。  この被爆地域の見直しにつきましては、今までのいろいろな経緯の中で最終的には、今後見直す場合には科学的な合理的な根拠が必要だ、こういうことで基本懇報告をもとにして対応してきた、これは御理解いただけると思うわけでございます。そういうことでございますから、しからば今後の被爆地域の見直しということになりますと、科学的な合理的な根拠を立証していくという必要性があるわけでございます。  そこで、間ノ瀬地区の問題につきましては、先ほどからいろいろ具体的な根拠といいますかデータといいますか資料をお持ちのようでございますので、それにつきましては、厚生省としても専門家の方々に先生お持ちの資料をもとにしまして十分に研究検討をしてもらうというようなことをひとつ考えてみたらどうかなということが一点。  それから、県、市、地元におきまして科学的な合理的な根拠を見出すための検討会をつくられまして今後対応されるということでございますから、この検討会につきましても、我々としては、必要な御協力、御相談ということにつきましては十分に配慮してまいらなきゃならぬというふうに考えております。
  91. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 今大臣から前向きの御答弁を願ったわけですが、斎藤大臣もこの前、専門家の方々と相談をしてみますということを約束しておるんですから、専門家の方々と相談したのかどうかわかりませんけれども、これは別として、大臣の発言を信用して、私も今後被爆の地域指定について協力を惜しまないわけですから、よろしくお願いを申し上げまして質問を終わります。  ありがとうございました。
  92. 中西珠子

    ○中西珠子君 まず、厚生年金保険法の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。  厚生年金基金制度は、公的年金を補完する企業年金の中核をなすものとして重要な機能を果たすものでございます。今回この制度充実と普及を図るために改正法案を提出されていることは評価できるのでございますが、改正法案の中で、厚生年金保険法の第百三十二条に一項を加え、第三項として、厚生年金基金の支給する年金給付について努力目標の水準を設定していますが、この水準を老齢厚生年金の代行部分の二・七倍に相当する水準としている理由についてお伺いします。
  93. 水田努

    政府委員(水田努君) 今回の改正は、基金の制度を魅力あるものにするということと基金の制度を普及していくための条件整備を図るということの二つを大きな眼目にいたしておるわけでございます。  その最初の、基金の制度を魅力あるものにするために給付充実を図るということでこの努力目標を設定したわけでございますが、今の先生お尋ねは、なぜ代行部分の二・七倍にしたかと、こういうお尋ねでございます。  これは、この基金制度の普及充実を図るために厚生省の中に企業年金等研究会というものを設けまして、約一年間精力的に御審議をいただきまして昨年の七月御答申をいただいたわけでございますが、その中に、およそ老後の生活をより豊かに安定的にするために退職直前の給与の六割程度を満たすようにすべきであると。この六割程度を満たす水準としては、国から支給される年金と厚生年金基金から支給される年金を合算して六割程度、こういうことになるわけでございまして、ボーナスを含めた退職直前のこのおおよそ六割の給付水準を満たすために逆算してまいりますと代行部分の二・七倍、こういう水準が導き出されるわけでございます。  今回の改正案におきましては、この水準を満たすまで年金の積立金についてもあわせて非課税にするという措置を、今回の改正法案の附則において法人税法の年金積立金に関する非課税水準の手直しもあわせて図っているところでございます。
  94. 中西珠子

    ○中西珠子君 非課税にするその限度というものが大きなウエートを占めて二・七倍という数字が出てきたのかなと、こう思ったんですけれども、そればかりではなくて、やはり企業年金等研究会の提案に従って退職前の給与の六割を保障するために逆算すると代行部分の二・七倍になる、その後の方が重点があるわけですか。
  95. 水田努

    政府委員(水田努君) そのとおりでございます。
  96. 中西珠子

    ○中西珠子君 六十三年の二月一日現在で厚生年金基金は、基金数が千百九十四、加入員の数は厚生年金の被保険者の四分の一強に当たる七百四十九万、こういうことですね。私としても、厚生年金基金の老後の所得保障における重要な機能というものを考えますと、これをもっともっと普及していく必要があると思うわけです。  厚生年金基金の普及を図るために、今回の改正法案の中にも一つ二つ措置を入れていらっしゃいますけれども厚生省はそのほかにもいろいろ対策とか措置をお考えだと思うんですが、一般的にどのようになさっているかということをお伺いしたいと思います。
  97. 水田努

    政府委員(水田努君) 先ほどもお答えしましたように、基金の制度を普及しますためには、国民皆さんにとって基金自体が魅力のある制度であるということがまず大事であろうかと思います。  そのために、先ほども申し上げましたように、給付の水準について労使にとっての一つの努力目標というものを法律の上で設定したということと、それから短期脱退者についても、この基金制度というのは代行部分の上にプラスアルファの年金を上乗せすることがこの基金をつくる主たる目的でございますので、その主たる目的であるプラスアルファの上乗せ年金についてもできるだけ年金という形で支給できるようにするのが好ましいということで、今回その通算措置もあわせて講ずる改正内容を盛り込ませていただいているわけでございます。  それから、具体的な普及というのは、やはり設立の人員規模について一つのハードルがあるわけでございまして、このハードルをできるだけ下げていくということが私ども必要であろうと思います。そのハードルを下げる方法につきましては、先ほど申し上げました昨年七月にいただきました企業年金等研究会の報告の中で、単独企業の場合は現在従業員の数が八百人以上ある場合に認可するということになっているのを五百人まで下げるべきではないかというのが一つと、それから同種同業の総合基金というのを認めておりますが、現在の基準でございますと同種同業は五千人以上ということになっているわけでございますが、その報告はこの五千人を三千人まで下げるべきである、こういうふうな御報告をいただいております。私ども、そういう方向に持っていきたいと考えているわけでございます。  さらに、この改正案を諮問いたしました年金審議会でさらなる条件の緩和を検討すべきだと、こういうことを言われております。そのさらなる条件の緩和という内容は二つございまして、主として中小企業の方かつくられますところのいわゆる総合基金、これは一応三千人を想定しているわけでございますが、もうちょっとこの規模を下げられないかどうかを検討してほしいということと、現在この総合基金というのは同種同業で認めているわけでございますが、工業団地とか卸売団地に異業種間でもこれを認めるということを検討してほしい、こういう注文がついておりますので、私どもそれらの点について配慮をして対処してまいりたいと考えております。  ただ、この場合も、私どもそれに踏み切りますのには、やはり条件の整備が必要であるということで今回の法律改正になっているわけでございます。というのは、単独企業の場合八百人から五百人に人員規模を下げます場合に、そこに要しますところの事務費コストというのは人員規模のいかんにかかわりなく共通してかかるわけですから、規模が小さくなればなるだけ割高になるわけでございます。せっかくハードルは下げてもらったけれども、事務費負担にたえられないのでつくらないということになっては普及できませんので、私どもは、小規模の基金の場合には事務の共同処理によって徹底的な事務費負担の軽減を図れるような方策を法律上講じているということと、それからやはり人員規模が小さい企業がつくるということは母体企業が倒産する危険性というのがかなり従来に比して高くなるわけでございますので、母体企業が倒産した場合に年金権が保全できるような方策を講じる必要があるということで、母体企業が倒産した場合の支払いの保証制度というものを、そういう方策を講ずる道を厚生年金基金連合会に権能として付与するということを今回の改正案に盛らさしていただいております。  事務の共同化あるいは支払い保証制度の創設、こういう準備体制を整えた上で先ほど申し上げましたような設立認可の大幅な緩和措置を講じてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
  98. 中西珠子

    ○中西珠子君 今御説明のありましたような法案内容に盛られました普及のための措置というものは非常に大きな前進だと思いますので、早期実施、そして効果的な指導を行っていただきたいと思います。  次に、厚生年金基金の積立金の資産運用等についてお伺いしたいと思うのですが、現在十五兆円に上ろうとしている巨額な積立金が厚生年金基金にはあるわけです。  それで、現在は生保と信託への委託運用というものに限られておりまして、今回の改正案では自主運用の導入が見送られたということだそうですが、やはり自主運用というものを許して運用方法を拡大し効果的な運動をやるという必要があるのではないか、また運用の評価体制というものもあわせて確立する必要があるのではないかと思いますが、この点についての厚生省のお考えを伺いたい。  それからもう一点は、それに関連しているのですが、先ほど局長からもちょっと出ました企業年金等研究会の六十二年七月二十三日の中間報告、これは「厚生年金基金の育成普及方策のあり方について」の中間報告ですが、この中で言っているのは、生命保険会社による「積立金の運用については、運用の成果が十分反映され、また、十分なディスクロージャーを実現するためにも、分離勘定を設けるべきである。」、こういうことを指摘しているわけです。  この二つの点につきまして、厚生省の方のお考え、対応の仕方というものを御説明いただきたいと思います。
  99. 水田努

    政府委員(水田努君) 運用機関の拡大の問題につきましては、先ほど浜本先生の御質問の際にもお答えいたしたところでございますが、大蔵、厚生両省間でこれを具体化するまでの時間的な余裕がなかったことから、今国会に提出することを見合わせまして次期通常国会に、いわゆる金融の自由化の方向に即しながら運用範囲の拡大を図るということで合意を見ておりますので、その合意の線に沿いまして両省間で胸襟を開きまして十分話し合って、円満に次期通常国会に法案が提出できるように私ども最大限の努力をしてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。  次に、資産運用の内容の開示、いわゆるディスクロージャーと評価機関の問題でございますが、当然年金の資産というのは長期の資産で、しかも安全確実かつ有利にと、いわば相矛盾するような形のものをうまく適切に運用をしていかなきゃならぬわけで、それだけに運用機関というものは相当高度の運用能力というものを持っていただかなきゃならぬと、こういうことに相なるわけでございます。欧米の先進国は、いずれもこの年金資産の運用の内容というのが時々刻々に公開されるように委託者に対しまして受託者を公開するということが基本的な建前になっています。  ただ、資産の内容が委託者に公開されても、それがどういう適切なあるいは不適切な資産運用の内容になっているかどうか、こういう判断能力がなければほとんど意味がないわけで、公開されている国はいずれも評価機関というシステムが社会的に確立しているわけでございます。生命保険会社あるいは信詮会社それから投資顧問会社が、企業年金をやっている側から委託を受けた資産内容のその資産構成、パフォーマンスと言っておりますが、そのパフォーマンスであるとか刻々の資産の構成割合等を報告しまして、その評価機関が、これは適切な資産構成いわゆるパフォーマンスになっている、これは今後の経済動向から見て早く処分してほかの確実なものに乗りかえた方がいいというようなことで委託者にアドバイスが行きます。それに従いまして企業年金を実施している側は受託機関にそういう変更を要請する、こういうことに相なっておるわけでございます。私どもは、先生指摘のとおり、日本国内におきましても年金資産の評価機関を育成しながら、それに見合って生命保険会社あるいは信託会社に運用資産の開示をしていただく、ディスクロージャーをしていただくということが必要になってまいると思います。  次に、今、生命保険会社は、私どもが個人的に入っております生命保険もそれから企業年金も一緒に合同運用されておりまして、そういう関係から企業年金の分についての資産の運用内容の開示を求めるということは現実問題として困難なわけで、そこが、先ほどの企業年金等研究会の報告にもありますように、企業年金分として分離勘定してその資産の構成内容なり資産の運用内容が明らかになるような形で今後やっていくべきだ、こういう御提言を受けておるわけであります。これは、厚生省の方も生命保険業界に強く要請をいたしておりまして、ことしの五月から、年金福祉事業団が行っておりますところの公的年金については一部導入されることになったわけでございますが、この企業年金について分離勘定を実施するためには税法上の手当てが必要になるものですから、近く予定される税法の改正の際に所要の改正を行って、生保業界も企業年金についての分離勘定の導入は時代の要請であるということで前向きに対応するというふうな姿勢になっておられる、このように承知をいたしておるところでございます。
  100. 中西珠子

    ○中西珠子君 年金局長から非常に前向きのお答えをいただきましたが、大いに前向きに頑張っていただきたいと思います。  次に、公的年金の一元化ということについてお伺いしたいと思います。  昭和七十年には公的年金を一元化するというのが政府の方針であり、昭和六十二年九月十八日に開かれました公的年金制度に関する関係閣僚懇談会という会合もこれを再確認していると伺っております。その関係閣僚懇談会におきましては、とにかく昭和六十四年の次期財政再計算のときに地ならしをすることができるものは地ならしをしていくということを申し合わせたということでございます。  この地ならしというものの内容はどういうものを指して地ならしとおっしゃっているのかというのが一点でございますが、一元化、一元化とおっしゃいましても、国民の目には一元化というのはどういうことになるのだろう、その将来の一元化の姿というものがわからないわけですね。  ですから、一元化と政府のお考えになっている姿、そしてまたその公的年金一元化を達成するにはいろんな問題があると思うのですが、その問題をどのように克服していらっしゃるおつもりなのか、またどのような手順でやっていらっしゃるおつもりなのか。昭和七十年というと余り先でもないわけですから、一応いろいろ計画を立てて既にもう準備をなすっていると思うのですが、その辺の状況を御説明いただきたいと思います。
  101. 水田努

    政府委員(水田努君) 五十九年に公的年金一元化に向けての閣議決定を得ているわけでございまして、その線に沿って、私ども政府全体、積極的に取り組んでいるわけでございます。  六十年の年金改革で一階部分については基礎年金を導入するという形で私ども大きな第一歩を踏み出した、このように考えているわけでございます。  次の仕上げとして、被用者年金についてどのように一元化を図っていくかということが残された第二歩としての課題であろうと思っております。  この被用者年金につきましては、給付と負担、この両面があるわけですが、給付の面につきましては、共済組合の方が厚生年金給付水準を将来に向かって合わせるということできっちりとした整合性を図ることができた。残されている課題というのは、被用者年金相互間の負担の不均衡をどのように是正していくかということが七十年に向けて残された課題であるわけでございます。  被用者年金の一元化した最終の姿を実は先に提示して取り組むべきではないか、こういう御意見を、往々にして私ども指摘も受け、質問もお受けするわけでございます。  被用者年金の場合、御案内のとおり、それぞれの制度が大変異なった歴史、沿革というものを持っているわけでございまして、それを克服しながら一元化を完成していく、それを実際に成功に導く、こういうためには、最終の姿を、無理に被用者年金相互間で合意に達するという手順を踏むよりも、むしろ七十年の中間地点である次の再計算のときに、被用者相互間の制度をそのまま存続することを一応前提にしましてその間に生じているところの負担の不均衡というものをまず是正し、地ならしをして、その地ならしの上に立って、その経過を踏まえながら七十年の最終のゴールの姿を描くことの方が実際的な現実的な解決の方策になるんではないかと私ども考えているわけでございます。昨年の九月に公的年金制度に関する関係閣僚懇談会を開きまして、七十年一元化という方針の再確認とその中間地点に当たります六十四年の再計算期のときに地ならしすることができるものは地ならしする、こういう確認を得たのは、おおよそそういう認識のもとで行われたものと私ども理解をいたしているところでございます。  次に、じゃ具体的に六十四年の再計算期に向けて地ならしすべきものは何か、これが次の大きな問題になるわけでございます。  地ならしすべき問題の焦点というのは、当然、負担の不均衡の問題についてどう是正するかがこの地ならしの問題であるというふうに考えているわけでございます。  地ならしの内容としていろいろございますが、その中心的な課題となるものは、現在、被用者年金制度が分裂しておりますために、それぞれの保険集団で年金制度の成熟度というものにかなり大きな開きが出てまいっております。すなわち、就業構造の変化に伴いまして保険料負担をします現役と年金をもらう受給者との相関関係を示すのを、これを成熟度といっておりますが、成熟度が非常に極端に年金制度によって異なっている。この年金制度の成熟度の違いということは、それぞれの被用者年金制度に責任があるわけではございませんで、それは制度の分立によって生じた問題でございます。  私ども、この被用者年金相互間の成熟度の違いというものから起因するところの負担の不均衡につきましては、被用者年金相互間で許容できる各制度が納得できる合理的な均衡方法を来年の再計算時までに結論を出し対処していくべきものであると考えているところでございます。それを具体化するために、昨年の九月の、先ほど申し上げました公的年金関係閣僚懇談会の方針に従いまして、現在、この公的年金関係閣僚懇談会の下部機構でございます関係各省の局長から成りますところの連絡調整会議において、その地ならし作業の具体化について既に検討に着手いたしているところでございます。  また、私ども、被用者年金の大宗をなしますのは厚生年金でございますので、厚生年金の来年度の再計算に向けて既に昨年の九月から前広にいろいろと審議会で事前に御検討をいただいておりまして、制度間の一元化へ向けて展望して調整すべき事項についても重要な課題として御検討をいただくようにお願いいたしておるところでありまして、そういう方向に向かって現在被用者年金制度は努力をしている、こういうところでございます。
  102. 中西珠子

    ○中西珠子君 成熟度の違ういろいろな保険、共済組合の年金なんというものもたくさん並列的に存在しているわけですから、すべての保険者を納得させる合理的な方途を見出すということは非常に難しいでしょうけれども、そうかといって財政調整で犠牲を強いられるところが出てきても困るというふうないろいろな難問があると思いますので、どうぞ慎重に検討をしてくださいまして、国民すべてが老後保障をきちっと享受できるような方向に持っていっていただきたいと思います。  とにかく、現在核家族化がどんどん進行している中で、ひとり暮らし、もしくは夫婦だけで暮らしているというそういう高齢の人たちは、生活の維持を年金に頼っている者が多いと思うわけですね。そういう意味では年金制度、殊に公的年金制度の果たす役割というものは非常に重要性を増しておりますし、また公的年金を補完する企業年金、殊に厚生年金基金というものの重要性が非常に高まっているわけでございます。  国民の老後の所得保障について、大臣のお考えと御決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  103. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 高齢化社会、老後の長期化が進む中で公的年金の重要性、役割というものは非常に大きい、まさに御指摘のとおりでございます。  私どもといたしましても、かねてからの政府の方針のとおり、昭和七十年を目途といたしまして公的年金の一元化を図っていく、これは必ずしなければならない課題だと考えております。  今後の具体的な取り組み方につきましては今局長から御答弁申し上げましたとおりでございまして、中間地点でございます昭和六十四年の次期財政再計算期におきまして今後の一元化のために地ならしすべきものにつきましては地ならしを行い、今後一元化に向けて進んでまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  104. 中西珠子

    ○中西珠子君 では次に、児童扶養手当法等の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。  この法律案を見ますと、いろいろな手当がほんの少しずつ引き上げられている。例えば、児童扶養手当は百円引き上げ、特別児童扶養手当は重度障害児が二百円、障害児は百円の引き上げ、また障害福祉手当、特別障害手当、これは五十円ずつ引き上げ、それから老齢福祉年金は百円引き上げというふうに、非常に小刻みな引き上げが行われているわけでございます。  また一方、特例的な年金額の改定ということで、厚生年金国民年金も、十年、五年、二十二年年金障害年金、母子年金、それからまた基礎年金などが昨年の〇・六%に対して今年は〇・一%、スライドして引き上げられているということでございますね。  この〇・一%というのは六十二年度の消費者物価上昇率だから、〇・一%しか上がらなかったんだから仕方がないということになるかもしれませんけれども、これは、同僚議員も強調しておられましたように、消費者物価指数のとり方そのものも厚生省側のお考えとして所管の官庁に対していろいろ御注文をつけていただきたいと思いますし、余りにも生活実態が反映していない消費者物価指数じゃないかと思うことがたびたびあるわけでございます。  今回は、とにかく〇・一%という消費者物価上昇率に従って、児童扶養手当その他は〇・二%ということでたとえ少額であっても引き上げをなすっているということは、大蔵省はこんな面倒くさいことをしなくてもいいんじゃないかと言ったという話も聞いておりますので、その充実のためにたとえ五十円でも百円でも一生懸命引き上げというものを行おうということでなすっているんだと思うわけでございます。  厚生省としては、将来も、毎年毎年、五十円、百円という、いわゆる消費者物価指数の上昇率に応じた引き上げをなすっていくおつもりですか。また、する方がメリットがあるとお考えでいらっしゃいましょうか。
  105. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 先生指摘いただきましたことは、今回の各種手当の引き上げについて、物価の動向等を勘案したものとしても大変額が少ない、今後どういうふうに考えていくのか、こういうことかと思います。  こういった諸手当年金の引き上げにつきましては、社会経済情勢の動向、具体的にはこういった諸手当年金の実質価値を維持していくということが社会保障制度全体といたしましては基本的な考え方になるのではないかと思います。  先ほども御議論ございましたように、広くいろいろなほかの諸手当のほかの諸指標を勘案していくということを十分踏まえながら、実質的な価値を維持していくということを中心手当額の引き上げを考えてまいりたいと思っております。
  106. 中西珠子

    ○中西珠子君 厚生省が実質的な価値を維持していくためと考えてなすっていることは評価するんですのよ。  しかし、実質的価値を維持するために、消費者物価上昇率がたった〇・一%であったから結局百円とか五十円の引き上げしかできなかったということを国民はよくわからないわけですね。何でまた五十円とか百円なんてまるで、百円で買える物が何があるかしら、そういう感じの方が先にくるわけですね。ですから、毎年毎年、小刻みに五十円、百円、また一番多くて二百円という引き上げをやることが果たしていいのかどうかということを疑問に思うと同時に、また消費者物価指数そのもののとり方というものを再検討していただかなくちゃいけない。これは厚生省自体がなさることではないんですけれども厚生省国民の健康と生活を守る省庁であるという立場から厚生省の御意見というものは反映していただきたい、このように考えるわけです。  それから、児童扶養手当の問題でございますが、この児童扶養手当の所得制限が二段階制になり、また給付が二段階制になったということなんですね。逆に、給付が二段階制になるために所得の段階が設けられたということなんでございますが、五十七年の調査なんかでは、これが最も新しい調査ということになっているんですが、母子世帯の収入というのは一般世帯よりもずっと低くて二分の一以下というふうな状況であるし、離婚の場合の養育費を受けた女性というのが二割ぐらいで養育費を受けたことの全然ない人が八割というふうな状況であるという調査結果があるわけです。この児童扶養手当支給されている人、受給者数が、これは二段階制導入になったのは六十年からですね。その六十年に比べて六十一年は減っている。それからまた、児童扶養手当支給停止者というものもふえている。こういう統計を見たんですけれども、これはどういう理由なんでしょうか。やっぱり、二段階制を導入して給付が二段階になったというふうなことなのか。そして、その離婚した夫の最終の年収が一定の額を超えた場合は支給をしないし、そしてそういう別れた夫から養育費を払ってもらうようにするという改正法案にございました条項は今凍結されているわけですね。ですから、これはどういう理由でこのようになっているのかと非常に不思議に思うわけなんですけれども、児童扶養手当改悪反対とかいろいろやっていらっしゃる女性の団体がございますが、そういうところでは受給資格の認定がすごく厳しくなってなかなか認定してもらえないんだ、したがって受給者もふえるんだ、そういうふうな訴えもないわけではなくて、きょうここに文書を持ってきませんでしたけれどもいろいろ訴えがあるわけですね。  厚生省としては、受給者の減少している理由、六十年に比べ六十一年に減少しまた児童扶養手当支給を停止された者の数が増加している理由、こういうふうなものについてはどのように見ていらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。
  107. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) まず、受給者数の減少について申し上げます。  児童扶養手当は受給者の中の圧倒的な多数の方がいわゆる離婚による受給者の方でございますが、先生御承知のように、離婚件数が昭和五十八年をピークにいたしまして減少傾向にございます。また、対象児童の年齢到達、母の婚姻等による資格喪失件数が実はこの離婚等による受給者増というものを上回る形になっておりまして、そういう全体の傾向によりまして児童扶養手当の受給者が減っているという認識を持っておるわけでございます。  先生のお話のありましたような不当な認定をいたしておるという事態はないものと理解をいたしております。  御質問の第二点の支給停止の状況がふえているではないかということでございます。  昭和六十年の法改正をいたしましたときに、児童扶養手当につきましては全額支給かまたは一部支給かという形の制度に生まれ変わったわけでございますが、全額支給するかどうかというラインにつきましては、母子家庭の生活実態、必要度ということから重点化を図るという観点で、特に所得の低い方、これは世間的に見ますと所得税非課税ラインということが低所得という一つの線ではないかということで、所得税非課税ラインを所得制限の一つの線として決めたわけでございます。昭和六十生時点で収入ベースで申し上げまして二人世帯で百七十万六千円という金額であったわけでございますが、御承知のように、その後この所得税の非課税ラインにつきまして税法上の改正がございませんで、このラインが据え置かれております。この関係で手当支給停止率が若干ふえてきているということが現実であるというふうに理解いたしております。
  108. 中西珠子

    ○中西珠子君 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法に関連してお聞きしたいと思います。  中国帰国孤児に関しまして、いろいろ住居の問題でも悩んでいるとかなかなか就職ができないとかいうことを聞いておりますが、住居の状況とか就労の状況はどんな状態になっているか、またどのような分野で就職した場合は働いているか、どのような職業についているかということにつきまして、何か統計の新しいものがありましたら御説明いただきたいと思います。
  109. 木戸脩

    政府委員(木戸脩君) お答え申し上げます。  中国残留孤児で帰国をされる方々が最近大変ふえているわけでございますが、日中国交正常化、昭和四十七年九月以降昭和六十三年四月末までに永住の目的を持って帰国された孤児のうち、厚生省が国費を支給して帰国をしていただいたという方が七百四十五名おられます。このほかに自費で帰国をされた方というのがかなりおられると思います。  厚生省が、帰国孤児なり家族の方の生活の状況把握をするために、過去二度調査をやっております。一つは、昭和六十年の十二月末までに永住帰国した二百六十世帯を対象に昭和六十一年の二月一日現在で一回実施をいたしました。また、昨年の十一月末日までに永住帰国した五百十五世帯を対象に同日現在で生活実態調査、二度行ったわけでございます。  このうち、昨年末に実施した分については現在鋭意集計中でございまして、ややデータが古うございますが、六十一年二月に行いました調査結果に従いましてお答えを申し上げたいと思います。  まず、住宅の状況でございますが、回答のございました二百三十四世帯の七六・九%に当たる百八十世帯が公営住宅に入居しております。しかし、一〇・三%に当たる二十四世帯の方は民間の借家や借間に入居をしておられます。なお、自費帰国者を含めまして都道府県の方で自主的に調査を行っているわけでございますが、この調査によりましても、昨年八月現在で公営住宅の入居者全体の入居率は七三%程度ということになっております。  それから、就労状況でございますが、回答のありました二百三十四名の五九・八%に当たる百四十名が就労をしておられます。職業別に見ますと、製造業におきまして直接製造工程に従事しているいわゆる工員の方が最も多く、就労者の四一%を占め、次いで事務の人が一八・六%、それから清掃等の労務作業に従事している方が七・二%ということで、数の面ではそういった順番になっております。しかし、数は少のうございますが、銅灸師、看護婦、中国語の講師など、中国での職業歴を生かしている方も数は少ないがおられるような状態でございます。
  110. 中西珠子

    ○中西珠子君 中国の帰国孤児で現在も生活保護を受けている方がいると思うんですが、その割合はどのくらいでありましょうか。  また、帰国後の経過期間ごとの、例えば二年目になったら生活保護から外しても大丈夫になったというふうな二年、三年、四年、五年というふうなそういう経過期間ごとの適用状況というものを、もしおわかりになれば御説明いただきたいと思います。
  111. 木戸脩

    政府委員(木戸脩君) 先ほどお答え申し上げました六十一年二月の生活実態調査によってお答えをさせていただきます。  生活保護を受給している世帯は、回答があった二百三十四世帯のうち百一世帯で全体の四三・二%という率になっております。なお、東京都を除く道府県におきまして自費帰国者を含めて自主的に行った調査によっても大体ほぼ同率になってございます。  それから、お尋ねの帰国後の経過期間ごとに生活保護の受給率はどうなっているかという点でございます。先ほどの六十一年二月一日現在の二百三十四世帯のうちの百一世帯について申し上げますと、帰国後一年未満では二百三十四世帯のうち二百二十世帯で受給して九四・〇%ということになっておりますが、一年以上二年未満になりますとこれが七〇・九%、それから二年以上三年未満になりますと五七・一%、それから三年以上四年未満になりますと四六・八%というふうに半分を下りまして、帰国後五年以上では九十七世帯のうち二十六世帯で二六・八%というふうになっているわけでございます。
  112. 中西珠子

    ○中西珠子君 生活保護を受けなくても済むような状況になるにはなかなか時間もかかるという数字であろうかとも思うのでございます。  中国帰国孤児は、残留している人もそうでございますが、本人の意思にはかかわらず戦争というものに巻き込まれ、殊に敗戦後のどさくさの中で孤児として中国にとどまらざるを得なかった。また、中国の方が育ててくださったというその恩義というものも非常に感じるわけでございますが、とにかく母国に帰ってきた帰国孤児に対しましては自立を促進してあげる政策が必要だと思いますし、また厚生省も既にいろいろの面で自立促進策をお考えになり実施していらっしゃるわけでございます。  一般的に、中国帰国孤児、まだ残っている人たちのこともあわせまして、どのような対策をこれからとっていくおつもりでいらっしゃいますか、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  113. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今中西先生言われましたように、二つの問題があろうかと思うわけでございます。  帰国を希望する孤児につきましては、早期に帰国を完了する、これは六十四年度までに完了したいと考えております。  それから、二番目の問題が最も重要な問題でございまして、帰国の問題はおおよそ峠を越えたわけでございまして、今後の主たる問題は、帰国後の孤児の定着自立という問題でございます。  この問題は、孤児の皆様方が自立への意欲を持つということが何といっても不可欠の問題でございますけれども、同時に受け入れ側が根気強く支援を行うということが重要でございまして、政府だけではこれは十分ではございません。各省、各地方公共団体また関係者の皆様方の御協力を得ながら、我々といたしましては、最も孤児問題の重要な問題でございます定着自立の問題について積極的に取り組んでまいりたいと、かように考えております。
  114. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうぞ一層の御努力をお願いしたいと思います。  次に、原爆被爆者対策についてお伺いしたいと思います。  昭和六十三年度予算に計上されまして、全被爆者に対するがん検診が行われる、また被爆者相談事業の拡充ということが行われることになりましたが、がん検診の結果、被爆者ががんだということがわかりましたときには、どのように告知をするということになっているか。  これは、お医者さん任せであって、本人とお医者様との間の問題ということかもしれませんが、そのことについてどういうふうになさるのか、厚生省としてはどのようなお考えかということと、それからプライバシーを守るという面ではどういう配慮をしていらっしゃるかということをちょっとお聞きしたいと思います。
  115. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 原爆被爆者に対する健康管理の一環といたしまして、昭和六十三年度予算でがんの検診の経費を組んでいるわけでございます。  胃がん、肺がん、乳がん、子宮がん、それから多発性骨髄腫の五つを考えているわけでございますが、がんであるということでその告知の問題を先生御心配いただいているわけでございますが、この検診そのものはいわゆる検査でございますので、確定診断はがんの専門の医療機関でなされることになるわけでございまして、そこのところはどのように告知をするのかしないのか、これは行政としては特段関与をしておりません。  それから、そういう患者さんのプライバシー問題についても、これは、原爆であるからといって特別な対応を考えるまでもなく、一般医療機関において医師なり医療関係者は当然秘密保護の義務を持っておるわけでございますので、そういう一般の体制の中で扱っていくというふうに考えておるところでございます。
  116. 中西珠子

    ○中西珠子君 厚生省昭和六十二年六月に発表なさいました昭和六十年度の原爆被爆者実態調査を拝見いたしてみますと、被爆者高齢化がどんどん進んでいるということが明らかになっているし、また高齢になるに従ってホームに入所したり、世話人というか家庭奉仕員というのでしょうか、世話人の派遣と書いてございますが、世話人の派遣などのサービスに関する希望が非常に高くなっているということだそうです。  それで、厚生省としては、こういった被爆者高齢化に対する対策として何か特別にお考えになっていますか。
  117. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 先生が御指摘いただきますように、被爆者全体が非常に高齢化が進んでいるということがこの調査でもよくわかったわけでございますが、高齢化被爆者生活や健康の面にいろんな影響を及ぼしておるわけでございまして、被爆者高齢化への対応ということがこれからの被爆者対策の重要な課題になるわけでございます。  昭和六十三年度におきましては、家庭奉仕員の派遣事業の充実、それから一般の老人ホームに入所している被爆者に対する費用の負担等の予算措置を講じ、関係者の御要望に答えておるところでございます。
  118. 中西珠子

    ○中西珠子君 高齢者に対する措置は、普通の高齢者に対してもでございますけれども、殊に被爆者高齢化した人で住居にも困りまた介護する人もなくて困っている人に対しては手厚い援護の手を差し伸べていただきたいと思います。  私のところに日本被団協、日本原水爆被害者団体協議会から要請文が来ているわけでございます。  厚生省調査なさいました調査の欄に自由記載欄というのがございますそうで、その自由記載欄の内容と、それから死没者調査の結果というものを一日も早く公表して被爆者対策に反映していただきたい、こういうことが要請されているわけでございますが、この点についてはいかがでしょうか。
  119. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 昭和六十年度に行われました被爆者調査のうち、死没者調査につきましては、現在、広島、長崎両市におきまして調査票と既存のいろんな資料との照合が鋭意進められているところでございまして、なかなか細かな仕事でございますために、どうしても昭和六十三年度いっぱいかかるという見込みを持っております。  また、生存者調査のうちの自由記載欄、これは被爆者がいろいろと体験をされたことあるいは感じられたこと等、非常に重要な内容を持っておるわけでございまして、なるべくその実態をつまびらかに公表していこうということを考えているわけでございますが、何分にも非常に大量のものでございますので何とかこれを統計的に処理をしていく方策をまず考えなければいけないということで、被爆者の方々の健康に対する不安だとかあるいはいろんな御要望の内容等に応じていろいろと今分類をやっておるわけでございまして、これもやはり六十三年度いっぱいかかる見込みで現在作業を進行しておるところでございます。
  120. 中西珠子

    ○中西珠子君 できるだけ早く分析をしたり集計をしたりしていただきまして、一日も早く公表していただくようにお願い申し上げます。  それから、同じ日本被団協からの要請なのでございますが、当面やっていただきたいこととして幾つか挙げているわけでございますが、例えば「次の者の遺族に特別給付金を支給すること。」として、一は「国が原爆による障害・疾病と認めた「原爆症認定患者」で死亡した者」、それから二は「原爆放射線による影響が大きいとされている「癌」で死亡した者」、それから三は「国際法違反の原爆投下による直接の死没者、直爆死および昭和二十年内に急性放射能障害で死亡した者」、こういった人たちに特別給付金を支給していただきたい。それから、現行のすべての諸手当の所得制限を撤廃して、その年金化を図っていただきたい。それから、七十歳以上で健康管理手当を受給している者については、更新の手続を廃止してもらいたい。  こういった要望が来ているわけでございますが、厚生省としてこういった要望に対する対応の仕方というものについてお伺いしたい。できる限り要望を取り入れて、そして援護措置を強めていただきたいと思うわけでございますが、厚生省のお考えを伺いたいと思います。
  121. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 特別給付金の問題でございますけれども原爆被爆者対策につきましては、被爆による放射線障害、こういう他の戦争犠牲者には見られない特別の犠牲着目して、その被害実態に即して国民的な合意が得られるということを基本として施策を進めてきておるところでございます。したがいまして、そういう状況にはない原爆死没者遺族に対する特別給付金を支給するということは一般戦災者との均衡上の問題がございますので、その実施は非常に困難であると考えておるところでございます。  次に、現行のいろんな手当に対する所得制限の撤廃の問題でございますけれども、これも基本的には放射線による健康障害を現に有する被爆者に対して支給されております医療特別手当及び原爆小頭症手当、これはいずれも原爆放射線と非常に因果関係があるということが考えられる疾病でございますけれども、このような方々に対する手当については所得制限は行っていません。しかし、それ以外の一般的な特別手当、健康管理手当あるいは保健手当等につきましては、放射線障害との関係が明らかでないあるいはそういう障害が現在その人に存在してないというようなことから、一般の社会福祉の体系との均衡ということも考慮しまして所得制限を設けておる、こういうことでございます。  また、健康管理手当の更新手続につきましては、被爆者高齢化というようなことも考えながら現在いろいろ検討を続けておる段階でございますので、早い時期になるべく改善を図ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  122. 中西珠子

    ○中西珠子君 もう時間が参りましたが、最後に、大臣にお伺いしたいと思うんでございます。  原爆で広島、長崎で亡くなった方、それからまた被爆されて命は長らえているけれども非常な病苦、困難、貧苦、いろいろな問題を抱えていらっしゃる方々、そういった方々に対しては、やはり、原爆に遭われたということにつきましては国家の責任として国家補償の見地に立って対策考えられ、手厚い援護措置考えられるべきであると思うわけでございまして、原爆被爆者に対する特別措置というものも一層充実していっていただきたいということを考えるし、またできれば死没者調査の結果を見ましてそして対策に反映をさせていただきたいというふうに考えるわけでございます。  大臣のこの問題に関するお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  123. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 原爆被爆者皆さん方は被爆されましてから四十年余りたつわけでございますが、その間にいろいろな御苦労をされておられますし、また今なお健康障害に苦しんでおられる方が多いわけでございまして、私といたしましても胸の痛む思いでいっぱいでございます。  原爆被爆者は、今御指摘がございましたように、一般戦災者とは異なる特別な犠牲者であるわけでございまして、最高裁の判決にもございますように、広い意味での国家補償、こういう考え方に立って私どもといたしましても今日まで対応してまいっておるわけでございます。今後も、原爆被爆者対策は、厚生省の重要施策の一つとして、私も十分にその特殊な犠牲という点を念頭に置きまして全力を挙げて対応してまいりたい、かように考えております。
  124. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 中西君、時間です。
  125. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。
  126. 内藤功

    ○内藤功君 原爆被爆者特別措置法に関連をして質問をしたいと思います。  最初に、原爆病院に対する国の医療機械設備整備の予算は、昭和六十一年度、六十二年度にかけてどのくらい支出をされておりますか。また、六十三年度予算の計上額は幾らかということを、総額並びに病院別の数字でお示しいただきたいと思います。
  127. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 原爆病院の医療機器の整備に対しましては、厚生省保健衛生施設等の設備整備費補助金で対応しておるところでございますが、昭和六十一年度及び六十二年度の補助額について申し上げます。  まず、六十一年度でございますが、広島の場合には一千三百万、それから長崎に一千八百七十三万、合計いたしまして約三千二百万、こういうことでございます。  六十二年度でございますが、広島に対しては約九千万、それから長崎に対しては約三千万、合わせて一億二千万という数字でございます。  なお、六十三年度の件につきましては、現在、関係県・市等の要望を受けてどのようにするかこれから決めてまいりたい、こういう状況にございます。
  128. 内藤功

    ○内藤功君 六十三年度の見込み額をお示しいただけますか。
  129. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 病院からの要望がまだ確定をしておりませんので、具体的に幾らかということは現段階ではまだ持っていないわけでございます。
  130. 内藤功

    ○内藤功君 私、昨年の八月に原爆病院の院長さん、それから医療関係者の方の切実な要望をお聞きしたわけでございますが、現在、原爆病院側の望むものと大分まだ距離がある、増額は図られてはおりますが非常に距離があるということを痛感いたしました。  被爆者が必要とする、また医療関係者がぜひ必要とすると思われる医療を十分に受けられるように、今後一層の増額の努力を当局にお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
  131. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 全体の補助金の中でどこに重点を持っていくのか、いろいろと六十三年度の配分案を決定するに当たっては、まだ現段階では何とも申し上げられないわけでございます。  いずれにいたしましても、原爆医療の問題というのは、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、厚生省としても非常に重要視をしておるところでございますので、今後関係局と十分に詰めていきたい、このように考えております。
  132. 内藤功

    ○内藤功君 一九八五年、昭和六十年の十月に厚生省被爆手帳所持者の方全員を対象に実施されました、また昨年六月に発表されました実態調査の結果でございますが、今回の回答された方は三十一万三千四百九十九人、回収率が八六・七%、十年前の率と比較すると四・五%上回っているという数字でございます。  私は、これを見まして、被爆者の方の被害の実相、被爆者実態をよく政府につかんでいただきたい、被爆者対策を一層強化してもらいたいという切実な願いがこの回収率の数字にもにじみ出ているというふうに受け取ったわけであります。  厚生省はこの点についてどのように認識をされておりますか。
  133. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 先生指摘のように回収率が八六・七%、これをどのように評価するかはいろんな考え方があるわけでございますが、厚生省もこの調査に対する被爆者の気持ちというものが十分に反映されておるのであるというふうに考えておるところでございます。
  134. 内藤功

    ○内藤功君 この調査結果につきましては、被爆者であることからどういうことに苦労され心配されているかという点について、七四%の方が自分の健康、三一%の方が子供や孫の健康についての不安を訴えておられます。四〇%を超える人が入院または通院をして、被爆者でない方に比べて二、三倍の数字に上っておりますね。これが一つ。もう一つは、収入の面ですが、年収三百万以下の方が四九・八%、約半分に及んでいる。寝たきりの方が七千人を超えているという数字は非常に重要なものと認めなきゃならぬと思うんです。  日本被団協の方々が分析されましたように、今、被爆者の方にとって健康問題が最大の深刻な関心事である、そして生活の困難、もっと言葉を強めて言いますと貧困化傾向、それから孤独・孤老化の傾向が進んでいる、こういう分析をしておられますが、私もそのとおりだと思うんです。私なりの言葉で表現さしていただけば、耐えがたい健康不安と生活苦をこの調査回答は告発し、訴えたものだと私は受けとめておるわけでございます。  この点、大臣認識、これに臨む基本的な姿勢についてお答えをいただきたいと思います。
  135. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) この調査被爆者のいろんな生活あるいは健康上の実態を浮き彫りにしておるわけでございますが、被爆者原爆による放射線被曝を受けたということからの健康へのいろんな不安が特に強いということ、これが一般の集団と違うところではないかというふうに考えておるわけであります。  特に、被爆後、既に四十年余を経ておるわけでございまして、被爆者全体が非常に高齢化をしてきておる、こういうことからいけば、被爆の問題とそういう高齢化の問題とが重なって今先生が御指摘になられたような状況を呈しておるのである、こういうふうに考えているところでございまして、厚生省といたしましてもそういう点を素直に見て必要な対応をしていくというふうに考えておるところでございます。
  136. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 被団協のまとめました調査結果をお伺いいたしまして、原爆による被害の重大さを痛感いたしております。私といたしましても、二度とこのようなことのないように、このようなことを繰り返すことがないように思いを強くいたしておる次第でございます。  また、被害を受けられました被爆者の方々につきましては、放射線による健康被害健康障害という他の戦災者には見られない特別な犠牲着目をいたしまして、広い意味での国家補償という見地に立って、今後とも施策充実、適切妥当な措置を講じてまいらなきゃならない、かように考えております。
  137. 内藤功

    ○内藤功君 具体的な問題に入りますが、先ほども同僚議員からも御指摘がありましたが、生存者調査の末尾欄に設問第一というのがありまして、原爆によってあなたの家族がお亡くなりになったときの状況、こういうことでございます。そこの自由記載欄の公表は非常に必要だと思います。当時の状況をリアルに知る上で重要でありますし、これを公表するということが世界唯一の被爆国としての日本政府の今後の施策を遂行していく上で責務でもあると思います。  また、関連をしまして、死没者調査の結果は今いろいろ分析しているとおっしゃいましたが、先ほど北川局長は後世に残すための調査だ、かように言われたんですけれども、それならば、私は、速やかに公表して被爆者対策に反映をさせるべきではないか、調査のまとまり次第これは必ず公表していただくことが必要だと思います。  この両方につきまして、必ず公表するんですねということを、私は確認の意味でお伺いしたいと思います。
  138. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 第一の自由記載欄の件でございますが、これは、原爆投下時のことやあるいは被爆者の立場からいろんな御意見が書かれておりまして、非常に貴重な資料であるわけでございます。その取りまとめはなかなか難しい点が多いわけでございます。文章で記載をされておるわけでございますから、その処理がなかなか難しいわけでございますが、被爆者の方々の健康に対する不安や御要望の内容等に応じましてある程度区分して統計処理をする、こういうことがどうしても必要であるということで現在その作業を進めておるところでございまして、そういうものを合理的な形で公表をさせていただけるものと考えております。  また、死没者調査につきましては、この調査目的がいろいろと御議論があるわけでございますけれども被爆後四十数年を経た今日、現段階での死没者に関する調査、こういうことでございますので今後だんだんいろんな資料が散逸するということも考えられるわけでございますから、この時点できちんと取りまとめていく。また、死没者に関しまして従来から広島、長崎両県・市がいろんな資料を持っているわけでございますけれども、そういうものとの突合というようなこともございまして現在作業が進められている段階でございまして、六十三年度いっぱいかかるというふうに見通しておるわけでございますが、その段階でまたどのような格好で公表させていただくか、いずれにいたしましても公表させていただく、こういうふうに考えております。
  139. 内藤功

    ○内藤功君 次に、厚生省調査の直後でありますが、一九八五年の十一月から八六年三月までの五カ月間にわたりまして、日本被団協が全国一万人の方を目標に原爆被害者調査を実施されました。目標を上回る一万三千百六十九人の方から御回答をいただいたと承っております。  回答によりますと、回答者の御家族で被爆した方のうち、一九四五年、昭和二十年内に死亡された方が四五%、一九四六年、昭和二十一年以降に死亡された方が五五%。また、原爆投下の日に亡くなられた方のうちの六五%は子供と女性とお年寄りであった、それから建物内での圧焼死六〇%、戸外で爆死三七%というような非常に注目すべき数字があらわれております。  また、回答によりますと、四十二年間の心の悩みが示されております。例えば、就職、仕事の悩みというところで一番多い回答は、無理して体が悪化した、望んだ仕事につけなかったという方が一、二位を占めております。それから、家庭生活の悩みでは、病弱で家族に苦労をかけたという方が六〇%を占めている。その他、結婚をめぐり子供を産むことが不安で悩んだという四一・九%の数字が目を引くのであります。  また、回答によりますと、四人に一人が、生きる意欲を失ったことがある、と。その理由として、私が非常に注目しましたのは、毎日が病気との闘いであったというのが三八・二%、病気がちで家族に絶えず迷惑をかけているのが心苦しくてというのが三四・二%、被爆によって自分の夢や人生の目標が断ち切られたからというのが三三・三%、家族を原爆で亡くし心の支えを失ったというのが二九・九%。  以下、次々に続きますが、こういうことが非常に特徴的に印象に強く残っておるわけでございます。  以上、日本被団協がおやりになった調査のごく一部でございますけれども、あの地獄の体験とそれがもたらした四十年余に及ぶ苦しみ、特に心の苦しみをあらわした回答であると私は受けとめております。  厚生省としても当然ごらんになっていただいていると思いますが、これに対する御認識とそれから特に大臣の御所見をこの際伺っておきたいと思います。
  140. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 先ほども大臣が御答弁になられましたように、被団協の実態調査の結果につきましても、改めて原爆被害の大きいこと、それから被害を受けた方々の生活にいろんな面で大きな影響を及ぼしてきたということがそこにうかがわれるわけでございまして、私どももそういう調査から得られた実態を十分踏まえて今後の被爆者対策を進めてまいりたい、このように考えております。
  141. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 先ほどお答え申し上げましたが、この被団協のまとめました調査結果は私も拝見をいたしておりまして、原爆による被害の甚大さということにつきましては非常に思いを新たにしておるわけでございます。  今後の対策につきましては、申し上げましたように、他の戦災者に見られない特別の犠牲ということでございますので、今後とも施策充実に向けて全力を挙げてまいりたい、かように考えております。
  142. 内藤功

    ○内藤功君 次の問題です。  具体的な問題ですけれども被爆者の方の相談の問題なんですね。  日本被団協の中央相談所、それから東京原爆被害者団体協議会の窓口には、最近、特に被爆者の方からのいろいろな相談がふえておると聞いております。  東京原爆被害者団体協議会の方のお話を直接伺ったわけでございますが、そこの窓口では、六年前は年間二千二百件ぐらいの相談件数であったが、現在は二倍以上の五千五百四十件にも達している。これを三人の相談員の方が、主に電話が多いようですが対応していらっしゃる。  特徴として、お聞きしますと、一つは、被爆者高齢化に伴って生活問題、健康問題など、深刻な内容がふえているということですね。それから二つ目は、医療給付特別措置法による手当の申請手続が高齢化によって本人ひとりではとてもやれなくなってきているので悩んでいるという問題。それから三番目は、電話でお名前や住所を聞くと答えないかあるいは切ってしまうという方がかなりおられる。ということは、逆に、名前は言えないが深刻な悩みを抱えている人が多くなっているんじゃないかと窓口の方は言っておられました。四番目は、話を聞いてもらうこと自体を非常に心の支えとして願う人が多くなっている。こういうふうなお話でございました。  そこで、御質問でありますが、日本被団協の切実な当面の要求事項にも書いてありますが、被爆者相談事業の一層の強化を図っていただきたい。これは、広島、長崎の両県・市からの要求にもいつも書いてあります社団法人日本被団協中央相談所への補助金交付という問題あるいは広島、長崎と同様被爆者の多く住んでいる都道府県に被爆者相談員の配置をするというふうな問題。  これは、厚生省大臣の御決断いかんでそう困難ではない問題でありますが、御熱意があればやっていただける問題だと思っておりますが、こういう問題はおやりいただけないんでしょうか。
  143. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御意見につきましては私も同感でございまして、このために、昭和六十三年度におきましては、広島、長崎両県・市の相談員の増員を図ることにいたしておりますし、両県・市以外の被爆者の多い六つの都府県におきまして新たに相談事業を行うことといたしております。
  144. 内藤功

    ○内藤功君 一層その面で強化をしていただくことをお願いをいたします。  今、大臣並びに局長からもその決意の一端をお示しいただきましたが、被爆者の方が高齢化して、援護の強化は今日ますます緊急の課題であります。ところが、現行法は、被爆者年金支給の点について遺族に対する弔慰、被爆者に対する援護制度、こういったものを欠いておりまして、この点で被害者に対する対策としては極めて不十分であります。  国家補償に基づく被爆者援護法制定は緊急の要請であるというふうに感じております。被爆者皆さんの切実な願いを法制化するために、私どもは、政府提出法案国家補償に基づく原子爆弾被爆者援護法に名称、内容、名実ともに変えていくように修正すべきだとかねてより提案をしておるところでございます。  その主な内容は五点あります。一つは、健康診断、医療給付及び一般疾病医療費の支給。二番目は、被爆者に月十万円以内の医療手当及び家族介護を含め介護手当支給。三点目は、全被爆者被爆者年金支給する。四点目は、死没者遺族への特別給付金の支給。そして五番目に、被爆者が死亡されたときの葬祭料の支給。  これらは被爆者の方々の切実な要求にこたえる道だと私どもは思うわけであります。一つでも二つでもあるいは一歩でも二歩でも、こういう要求が実現できるように骨を折っていただきたいというのが被爆者の方々の願いであり、また我々の強い要求でもあります。  厚生大臣厚生省はこの点どのようにお考えになりますか。政府の中で、このほかには言うところがないのですから。
  145. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 従来から今委員指摘のような御要望があることは承知をしておるわけでございますが、先ほど来諸先生方への御答弁でも申し上げておるとおり、原爆被爆者対策につきましては、被爆による放射線障害という他の戦争犠牲者に見られない特別の犠牲着目し、その被爆実態に即した対策を進めていく、こういうことでございます。  ただいま委員から御指摘のございましたようないろんな手当等を含めた援護法あるいはこれに準ずる法制の問題につきましては、厚生省としては現在考えていないところでございます。  今後とも現行原爆二法を中心といたしました施策充実をするということによって被爆者のいろんな問題に対応してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  146. 内藤功

    ○内藤功君 唯一の被爆国の厚生省答弁ですからぬ。非常にかたくなで、また冷たい感じがするわけです。前段においてせっかく熱意あふるるお話のように聞こえたのが、これでは私ども非常に失望するわけであります。  広島、長崎に原爆が投下されて四十三年に間もなくなろうとしております。私は、毎年八月、東京・品川のお寺で東京原爆被害者団体協議会東友会の方が原爆犠牲者合同慰霊祭をおやりになるのに参加をさせていただき、心から追悼申し上げるとともに、被爆者遺族の方のお話を聞くことが政治家としての大事な原点だと思って毎年伺っておるわけでございます。  先ほどから基本問題懇談会の報告を引用されておりまして、一般戦災との違いは放射線による被害の特異なところだと強調されます。しかし、これは、とりようで大変いろんな問題があると思うんですね。  原爆は、その性格上、無差別、非戦闘員も含む大量虐殺の兵器だという点で、ほかのいかなる兵器とも違うというところが大きな問題点であります。その殺傷・破壊の態様、それから被害の長く人体と自然に深刻なる影響を及ぼすこと、人体のみならず子々孫々にも及ぶというこの特異性、これがやはり大きな問題だと思うんですね。  マーシャルというアメリカ陸軍参謀総長は、投下直後に弁解をして、戦争終結を早めるために、数千万人の米人の命を守るために投下したなどと言っていますが、これは国際法・条約に違反することは明らかな残虐な兵器であります。本来ならば、日本は、敗戦国といえども、この被害について、条約に基づく損害賠償請求権を国際法上留保すべきものであったにかかわらず、サンフランシスコ条約でこれを放棄してしまう。その結果、数十万の方々が米政府に対する損害賠償の固有の権利を喪失してしまったわけであります。そうなった場合、法的には、日本政府の責任においてこの医療生活保障その他の責任を国民に対して負ってくるのが当然でございます。  まあ理屈っぽく言いましたけれども、これが私どもが一貫して国家補償による援護法制定を要求しておる根本の道理であります。法理でもあるわけです。  私は、最近の被団協の調査によりまして、自分の生きる支えとして援護法制定の日まで生き抜くことというのを三四・二%、三千八百十五人のお方が挙げていられることは非常に深刻に考えていただかなきゃならぬ問題だと思います。国がやりませんと地方自治体の方でも非常に困っておりまして、地方自治体でも既に東京都、それから鎌倉、藤沢、三鷹、日野というところで、地方自治体の非常に困難な財政条件下ですが、一定の限界のある援護条例をつくる動きが出てきております。国が率先してやらなくちゃならぬ問題だと思うんです。  この答弁は、聞いても恐らく同僚議員に対するお答えと同じものでありましょうから、私は、そういう同じ答弁ならあえて求めません。  時間がありませんから、この基本問題懇談会の考え方の間違い、一つは、原爆投下は「戦争終結への直接的契機ともなった。」、これは許すべからざることです。原爆投下をある意味で美化しているわけですからね。  二点目は、受忍論です。受忍というのは、音がうるさいとか震動がひどいとかいうのを我慢せいということですから、それをどうして原爆の場合に応用できるか。これはもう絶対容認できないですよ。  それから、開戦、講和という政治行為に不法行為責任を追及できないと言いますが、ここで追及しようとしているのは、国際法違反の残虐行為の責任は問い得るんだと、そんな問題ですから、これは全然違っていますよ。  それから、「対策の真の対象そのものは、漸減していく」と言っておりますが、老齢化、健康生活不安でかえってふえていきますよ。のみならず、今までは被爆者ということを公にせず、年をとって今になってこれを名のってくる方がいるのは現実の問題です。  私は、今、時間の関係でこの三点に絞りましたが、こういう基本問題懇談会の答申を金科玉条のようにして今でも受忍論を言っているということは、大臣、ぜひ考え直してもらいたいということを強く要望して、私は質問を終わるものであります。     ─────────────
  147. 関口恵造

    委員長関口恵造君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、石井道子君が委員辞任され、その補欠として中曽根弘文君が選任されました。     ─────────────
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 本日の審議は四つの法案が一括審議でありまして、しかも極めて時間が少ない中で私、厚生年金保険法の一部改正案についてお尋ねをしていきたいと思っております。  今回の改正の要点になっております厚生年金基金制度について最初にお伺いをいたします。  基金制度で最も気をつけなければならないと思いますのは、まず基金の安定、安全な基金運営、これが損なわれますと労働者の掛金である年金保障が大変なことになると思うわけでございます。今回の法改正によって基金の拡大、普及に力を入れていくということになるわけでございますが、同時に、これは安全性、確実性を第一とするということが何よりも大事だと思うわけでございますが、その点は大丈夫でございましょうね。  最初に、大臣に一言お伺いをしておきたいと思います。
  149. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘のとおりでございまして、厚生年金基金の年金資産は長期にわたって安全、確実かつ有利に運用なされければならない、かように考えております。
  150. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 現行の基金というのは、資金を信託銀行、それから生命保険会社に預託をして長期運用をしておりますね。有利運用を求め過ぎてこの資金運用が投機的になっては絶対によくないんじゃないかと思うわけです。  厚生年金基金連合会が行いました意識調査、これは六十一年の十二月にやっておられますが、資金運用についての御意見というのはいろいろ出ておりますが、情報の開示が不十分だという御意見が大変強いようでございます。具体的にちょっと言いますと、利回りが受託機関で調整される懸念があるという御意見、不満が八〇・五%、それから運用内容の開示が不十分であるというのが三六・一%なんですね。  こういう状況なのですから、私は、委託金融機関は基金に対して当然運用決算報告をすることになっているようだと思いますが、これはどうなっているのか。不十分だからこういう意見が出てくると思うんですが、この点は大変大事な点だと思いますので、改善をすべき点があるんではないかと思いますが、その点について簡潔に伺っておきたい。
  151. 水田努

    政府委員(水田努君) 基金は、生保、信託に、さらに有利運用が行えるんではないかという観点で資産運用の内容の開示を希望する者が多い、このように受けとめております。  なお、生保、信託は、毎年、資産運用の実績について基金に報告をいたしておるところでございます。
  152. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは、資金運用の対象については既に大蔵省の銀行局長通達で出されておりますね。ですから、一応の規制はなされておるわけです。  しかし、信託銀行などが地価の暴騰を招いてきた、あの投機的な役割を果たしてきているというのは国民の中で記憶に新しいところであります。あのお金の中へ年金の基金が入っているに違いない、こういうことになるんですよね。お金に色がついていないからわからぬだけだと。そういうことですから、私ども、もう時間かないのできょうは一般論で言いますが、関係者の意見を聞きましても、明らかに株式だとか外債など有価証券の運用の比率というのは増加傾向にあるということは言われております。銀行の投機的傾向が非常に強くなっているというのは顕著ですね。投機運用に走って、もし元も子もなくなれば大変なことになるというふうに思いますので、これは安全、確実な運用を第一にするということ、多くの労働者の老後保障のための大事な施策でございますから安全、確実運用を第一とするということ、それから情報開示をするということ、こういった点で、被保険者一人一人はわからぬわけですけれども心配のないような運営ということについて指導を徹底されたいと思うわけです。  最後に、大臣に一言そのことについて伺って、この問題は終わりたいと思います。
  153. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 先ほど安全、確実かつ有利とこう申し上げたわけでございますが、無論安全、確実というものがまず第一義的に担保されなきゃならない問題でございます。  また、そのための対策として情報開示を十分に行う、これももっともなことでございますので、この点につきましては十分に行えるようにこれから努力をしてまいりたいと思っております。
  154. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは引き続きまして、老後保障の中で生活保障していく上の公的年金制度というのは極めて大事であります。老後の生活が保障される公的年金の確立がどうなっているか、これが高齢化社会を迎えていくに当たっての国民の大変強い願いになっておるわけでございます。  厚生年金が六十年の改正で給付水準が大幅に引き下げられました。そして法律では、六十五歳支給というのが明記をされたわけですが、当分の間ということで附則で六十歳支給現行の状況です。それを考えますと、六十歳定年というのがまだ雇用の側面では定着をしていない。六十歳の定年が定着していないのに六十五歳支給になったら、国民は大変だと思うんですね。そういう点で、雇用と年金の継続性というものが、老後保障の上で、働く国民の、特に労働者の生活を守る上で大変大事だと思います。この点は、七十年の一元化の問題等が同僚議員からも既に論議をされておるところでございますが、そういった点を含めて考えていく場合に、雇用と年金の継続性、こういうものを抜きにして七十年の一元化などということを考えられたら大変だと思うんですね。  そういう点で、基本的な見解を大臣から、まずお聞きをしておきたいと思います。
  155. 水田努

    政府委員(水田努君) この開始年齢の問題でございますが、六十年の再計算のときには五十五年の国勢調査の結果に基づきます将来推計を前提として財政の試算を行ったわけでございます。その後、明年年金の再計算を迎えているわけでございますが、五年後の六十年の国勢調査の結果、男女とも御案内のとおりそれぞれ三歳延びているわけでございまして、前回の再計算のときよりも明年の再計算はさらに公的年金、なかんずく厚生年金の財政の状況は厳しさを一段と加えるものでございます。  午前中の浜本先生の御質問にもお答えいたしたわけでございますが、特に厚生年金につきましては、いわゆる団塊の世代というのはほとんどサラリーマンになっておりまして、この方々が昭和八十年代に年金の受給者になるわけでございます。いわゆる昭和六十年代の後半から厚生年金の受給者は現在のほぼ三倍近くにふえるという状況のほかに、財政の仕組みも、その時点になりますと厚生年金はほぼ賦課式に切り変わっているわけでございまして、昭和六十年代の現役労働者が先輩のいわゆるサラリーマンOBであるところの厚生年金の受給者の負担に耐え得るかどうか、これは大変大きな深刻な問題でございます。そういう意味合いにおいて私ども厚生年金の開始年齢の引き上げの問題は避けて通れない課題ではないかと考えている次第でございます。  もちろん、開始年齢の引き上げを行うに当たりましては、先生が御指摘のとおり、高齢者の雇用の状況を十分見きわめて慎重に対処しなきゃならぬということと同時に、公的年金というのは国民の老後生活の大きなよりどころになっているわけでございますので、開始年齢の引き上げを行う場合には、国民がそれに対応できるような十分な準備期間というものが必要ではないかと私ども考えているわけでございます。  いずれにしましても、この問題は現在年金審議会におきまして種々御検討いただいておりますので、これからの厚生年金の苦しい財政状況、高齢者の雇用の状況あるいは必要な準備期間、余裕期間を設けること等を総合勘案し、この問題は慎重に対処してまいりたい、私どもこのように考えている次第でございます。
  156. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣にお願いしましたけれども、ちょっと後にします。  いろいろおっしゃるけれども、働いている国民にとっては、定年制と年金支給開始のこの継続性というのは絶対守ってもらわなかったら困ると思うんですよ。年金厚生省、定年制の問題は労働省で、縦割りだから少々食い違いができてもしようがございませんでは、国民はたまらない。その点はやはり厳に踏まえていただくということが大事です。  限られた時間ですから、あとそういう立場で少しお聞きをしたい。  厚生省の六十一年度のモデル年金、三十二年加入で十八万三千八百四十二円、かなりになっているなと私も思っておりました。ところが、実際の受給状況を見てみますと、六十二年三月の新規裁定状況では、年金額十八万円以下の方というのは六五%ですね。十八万以上の方がわずか。わずかでないかもわからぬけれども三五%。これでは、厚生省のモデル年金というのはこのぐらいになっていますよという国民向けの宣伝にちょっと過ぎはしないかなというふうに思うんですね。逆に統計の実態を見たら、老後保障を困難にしていることを示す指数になろうと思いますが、十万円以下の方々が二七%。だから、老後保障が大変厳しいというのは当然のことだと思うわけです。  さらに、時間がありませんから続けて言いますが、厚生年金の新制度ではどうなっているかというと、四十年加入で五十九年度の価額で十七万六千円という設計でしたね。しかし、四十年加入で十七万六千二百円、これは四十年間一カ月も休まずに保険料を納入しなきゃならぬわけでしょう。そんなことありますかな。うまいこといきますかね。第一、学卒の人が就職をしたら、大体留年をしたりあるいは入学試験に落ちたり、浪人をしなくても四年制の大学で二十二歳でしょう。六十年定年だったら、四十年掛けようたって掛けられへん。もっと言えば、中小企業の労働者なんていうのはいろいろと工場の職場を転々としますよね。一カ月も抜けないで保険料を納めるなんというようなことはなかなかあり得ないことだと思うんです。そうなったら、四十年というこの年限を切ったら、これは十七万六千二百円という年金が低くなるわけでしょう。だから、これもモデルだからしようがないといえばしようがないんだけれども、十八万何がしというのも、これも宣伝のにおいがするな、実態とは少し離れているなと思います。この新制度による十七万六千二百円の四十年加入という問題も、これはもらう段取りになってみたらどうもその水準がもらえそうもないということになるんですね。  私は、大臣、さっき答弁よろしいわいと言うたんで、今度お願いしたいと思うのは、年金制度の一元化を七十年を目途に検討されているというわけですけれども、老後保障を保障していく年金制度という点で、四十年加入というようなちょっと不可能みたいな条件を付したりあるいはモデルだというて出るのが大分高かったりというふうなことではなくて、本当にそういった条件を除いてもそういうことをもっと緩めるなり除外するなりして、まあ普通に働いている労働者なら十七万なり十八万なりは確実にもらえるというふうな点を確立をしておくべきではないかと思う。特に一元化に向けて他の制度との関係が出てくるわけですから、再計算に向けていろいろ御検討のようでございますから、この際、少なくとも老後保障の足しになるように安心できるような年金制度の確立という視点で御検討の必要がありはしないか。  その点を御要望申し上げたいんですが、御見解はいかがですか。
  157. 水田努

    政府委員(水田努君) 大臣にお答えいただく前に、モデル年金と四十年加入の点について、技術的な点でございますので私の方から一言釈明をさしていただきたいと思います。  まず、六十年の改正の際に、これは再計算に伴って新たな給付水準を設定した場合、その給付水準によって新規裁定を受ける人たちは一体全体どういう年金額になるんだろうか、これをわかりやすくするためにモデル年金というものを計算しているわけでございます。  前回の改正の際、六十一年度価額で十八万三千八百四十二円といたしましたのは、これは改正後新規裁定を受ける方の男子の標準的な老齢年金の額を示したものでございます。  計算基礎となりましたのは、男子の被保険者、これは再評価を受けます者で平均的な標準報酬額は二十七万円、それから六十一年度に新たに年金の裁定を受けるいわゆる二十年以上のフルペンションの方の男子の平均加入期間は三十二年五カ月でございます。これを用いまして基礎年金額を算出いたしまして、これに妻の加給年金額を加えたものでございまして、現実に新規裁定を受けた方々はこの水準に現に到達しているわけでございます。  先生が用いられました資料は、私どもの社会保険庁が提供しました資料の作成が余りうまくなかったんじゃないかと思いますが、いわゆる四十歳以降中高年の加入者については二十年を十五年という短縮措置を講じております。そういう方も入っておりますし、新法になりますと、音の通算老齢年金も厚生年金の老齢給付という形でこういうものをカウントしておりますので先生の御指摘のような低い金額が表として出ているわけで、多分下の方に注がついていると思いますが、そういうことでございますので御了解をいただきます。  それから四十年加入につきましては、……
  158. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 簡潔に、時間がないから。
  159. 水田努

    政府委員(水田努君) はい。  現在、既に厚生年金の開始年齢は平均的に六十二歳でございますし、これから高齢者の雇用の機会が、若年層が相対的に減りますので増大することから見ますと、十分四十年以上の雇用期間の確保はできるものと、私どもこのように考えている次第でございます。
  160. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私、大臣にお聞きしようと思いましたけれども、今の答弁、モデル年金の言いわけをしてもあかんのです。国民は、モデル年金でこうなるんやというと、そういうふうに思うわけですよ。ところが、実際には違うんや、大分差があるなと。  それから、私は、六十二年度の新規裁定の分の統計数字を先ほど申し上げたんです。おたくからもらった六十二年度の新規裁定ですよ。だから、古い人たちの分だけが一緒に入っているという問題じゃないんです。  そういう点でこれをやりとりしていたら時間がなくなるので、私は、年金全体の一元化に向けて、厚生年金という労働者の老後保障の一番の根幹になるべきものについて改善の検討をきちんとしておくべきではないかという点を申し上げて、大臣の御見解を簡潔に伺いたいと思ったわけです。  それじゃ、一言、言うてくれますか。
  161. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 国民の不安のない年金制度を確立するためにいろいろ御提言がございました。  先ほどの雇用と年金の継続性、これは、十分念頭に置いて今後考えていかなきゃならない問題だと私も思っております。  それから、基本的には後代の負担に耐えられるような長期安定という問題が大きい問題でございまして、その点について十分に今後いろいろな面で年金審議会の御審議の結果も踏まえて対処してまいりたいと思います。  それから、モデル年金につきましては、今後とも国民に誤解を与えないように、設定につきましては十分留意してまいりたいと考えております。
  162. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 残り時間がわずかなんで、次に、具体的な問題で障害基礎年金についてお伺いをしたい。  これは、六十三年度では一級が月額六万五千三百三十三円、二級が五万二千二百六十七円になっておりますね。これの受給者というのは、六十一年度末に一級が五十万六千人、二級の方が二十二万人、合わせて七十二万七千九十九人ということになっておりますね。  時間がありませんから簡潔にお聞きをしたいと思うんですが、二十歳前に障害を受けた方の障害基礎年金の受給者というのは所得制限がありますね。六十三年度の予定では収入ベースで三百八十二万円ということになっておりますが、私は、これは基本的には撤廃するべきじゃないかと思うんです。  というのは、社会保障だから所得制限があってもいいという考えだろうと思いますけれども、今申し上げたように、七十二万人の中で二十歳前の障害の方というのは六千人から七千人内外でしょう。約一%なんですね。そういう点で、私は、少なくとも国連のマニュアルにも言われておりますし、日本の経済の発展の段階に適応した形でこれは考えていくべきではないのだろうかと。片方では、世界一、二を争う大金持ちの国になった、経済大国になったと言われていて、こんな小さいことがまともでないというのは本当にひどいじゃないかなと思うんです。  それなら、所得制限は一切なくていいかといったら、社会保障制度ということになればそうはいかぬでしょうが、めどをどこへ置くか。めどは、少なくとも労働者の現金給与の総額ですね。六十二年度の平均では年額四百三万八千円ですね。労働者の年間の平均賃金程度に所得制限を引き上げるというふうなことをせめてやったらどうかいうふうに思いますが、どうですか。
  163. 水田努

    政府委員(水田努君) 六十二年の毎勤統計月報によりますと、先生指摘のとおりの金額、いわゆる四百万円になっているわけでございますが、この四百万円という金額は、世帯の累計にかかわりなく給与を平均した額でございます。  この点、私ども障害基礎年金の所得制限は、二人世帯で三百八十二万円、月額三十二万円、三人世帯で四百二十三万円、月額にして三十五万円、四人世帯で四百六十四万円、月額にして三十九万円というように世帯構成に配慮しながら行っているわけで、結果的には先生指摘のとおりの勤労者の平均賃金で所得制限した場合とほぼ同様な形になり得ているんではないかと考えている次第でございます。
  164. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、私が指摘したような水準が所得制限になっているというわけですね。
  165. 水田努

    政府委員(水田努君) 結果的に。
  166. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それだったら、そこまで考えているんだったら、このわずか一プロの人はせめて撤廃をする方向で検討を進めていくべきではないかと思うんです。  私、なぜこのことを盛んに細かく言うかというと、障害者の所得保障というものを引き上げるということが非常に大事だという立場に立っているわけですね。  もう時間がないので多くを申し上げる暇がありませんけれども、これは六十年に引き上げられた、改善されたことを私もよく存じておりますが、こういう程度の改善にとどまらず、少なくとも生活保護水準の基準までの引き上げを当面検討するべきではないかと思いますが、いかがですか。
  167. 水田努

    政府委員(水田努君) 欧米先進国の給付水準を見ましても、およそ障害給付というのは長期の老齢給付をベースにしているのが国際的な給付のあり方であろうかと思います。我が国も、やはり欧米先進国の場合と同様、老齢給付をベースとして障害年金給付水準を設定しているわけでございます。  老齢基礎年金の額につきましては、御案内のとおり、私どもは、老齢世帯の基礎的な衣食住、光熱費という部分を充足するという形で設定しているわけでございまして、先生の御指摘でございますが、老齢年金とミーンズテストを課すところの生活保護とは目的機能が異なるので、残念ながら先生の御指摘の方向に持っていくことは私どもは必ずしも適当ではないと、このように考えておる次第でございます。
  168. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 沓脱君、時間です。
  169. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そのことはよくわかっているんです。  老齢基礎年金を基準にしている、整合性をとっておるということはよく知っておりますが、障害者の障害基礎年金の場合には、そういう整合性ということと別に所得保障というものを、そういう立場から検討する必要がありはしないかという点で、せめて生活保護水準までに引き上げるということが何よりも大事ではないかというふうに思うんです。完全参加と平等などと言われますけれども、所得保障が一定度きちんと保障されなかったら完全参加なんてなかなかできない、そういう点では改善を要求しておきたいと思います。  もう時間がありませんので最後に一言申し上げておきたいと思いますのは、お父さんが障害基礎年金をもらって子供がある場合には、子供の加算児童扶養手当があって子供一人の場合は九万九千三百三十三円です。ところが、母親が障害基礎年金一級をもらっている場合には、母子世帯でも児童扶養手当がもらえないために八万五千五百円になっているんです。  これは、私、委員長の御要望もあるから詳しく言いませんけれども、このままほうっておいたら男女差別ですよ。
  170. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 沓脱君、時間です。
  171. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 父親が障害者一級で障害基礎年金をもらって子供が一人ある場合、この人には子供の児童扶養手当が加算をされて九万九千三百三十三円。ところが、母親が障害基礎年金をもらう一級で子供一人の場合には……
  172. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 沓脱君、時間です。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは児童扶養手当がないために八万五千五百円になるわけです。  男女差別になるような制度内容というのは、これは、私は検討して改善するべきだと思いますので、その点について簡潔に御意見を聞いて終わりたいと思います。
  174. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 今先生指摘のケースは、母が受給者ということでございますので、母親御本人が公的年金給付をお受けになる場合には児童扶養手当は遠慮していただく、こういう原則的な考え方に立ちまして併給調整をいたしておりますので、その観点から出てくる具体的な差かと思います。  しかしながら、これは、必ずしも父親と母親ということにおいて差をつけているのではなくて、受給者本人に着目した併給調整の制度でございますのでこういう取り扱いになっておるわけでございまして、御了解をいただきたいと思います。
  175. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上をもちまして四案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  176. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、国民健康保険法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は、去る十日、既に質疑を終局しておりますので、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  177. 山本正和

    山本正和君 私は、日本社会党護憲共同を代表して、ただいま議題となっております国民健康保険法の一部を改正する法律案について反対の討論を行うものであります。  今日、我々に課せられている課題は、二十一世紀を迎えようとする今日、高齢化社会における揺るぎない医療保険制度を確立し、国民にひとしく高度に発展した現代医学の恩典を及ぼしていくという点にあると思います。  したがって、そのためには、増高する医療費のその場しのぎの対策のための議論ではなく、今日の疾病構造に対応した予防・保健体制の確立であり、医療の供給を高齢者を含めて国民全体が安心して受けるための諸条件を整備していくことでなければなりません。残念ながら、本案は、六十三、六十四年の文字どおり暫定的な措置であり、当面の糊塗策にすぎず、今日の課題にこたえるものとはなっておらず、到底賛成するわけにはまいりません。  国保を含めた医療保障制度の抜本改正に対する政府考え方を速やかに国民の前に提起することを求めます。  以下、数点にわたって反対の理由を申し述べたいと思います。  まず第一は、今日の増高する医療費の最大の問題であります高齢者医療費について何ら抜本的手当てがなされず、高医療費を保険者たる市町村の責任であるかのように位置づけ、国保医療費について地方負担を導入していることであります。このことは、国民健康保険法の本旨にもとるものと指摘せざるを得ません。  第二は、五十九年四月、政府が法定の給付率を最低八割でそろえると約束した医療保険一元化について本案は何ら触れることなく、給付率を改善するものとはなっていないばかりか、本委員会の質疑においても五十九年当時の答弁を後退させるものとなっている点であります。  第三に、今日の国保の保険料率の引き上げ、国保財政の窮迫が、五十九年の国庫負担率の引き下げ、その前提となった退職者医療制度への加入者の政府の見込み違い等によるものであることは明らかであり、国庫負担率の改善が図られなければならない点であります。  さらに、六十二年度以降については、老人保健拠出金の按分率を変えて被用者負担とさせたことによって穴埋めしていると答弁していますが、これは、六十一年の老人保健法改正の際の穴埋めではないとする政府答弁と食い違っており、その責任も追及しなければなりません。  第四に、現在の高い国保保険料の支払いに苦慮している加入者に対する現在の保険行政の執行についても問題にしなければなりません。  保険料滞納者に対し、保険証を交付せずあるいは返還させ、償還制の給付となっている点は、軽症の患者の受診機会をおくらせ、症状を悪化させるおそれがあり、国の国民に対する医療保障を放棄する結果となっています。こういった行政は直ちに改められるべきだと考えます。  申し述べたい点は多々ありますが、私は、本委員会で課題として残した諸点について誠意ある検討をされ、できるだけ早い時期に社会保障の全体構想を明確にしていただきたいことを強く要望し、本案に対する反対の討論といたします。  以上でございます。(拍手)
  178. 曽根田郁夫

    曽根田郁夫君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております国民健康保険法の一部を改正する法律案に賛成の意を表するものであります。  国民健康保険制度は、就業構造の変化、人口の高齢化等を背景にさまざまな構造問題を抱え、その運営の不安定性が増大するに至っております。  本格的な高齢化社会の到来を控え、医療保険各制度における給付と負担の公平化を図ることが不可欠でありますが、国民健康保険制度が当面する問題を解決し、その運営の安定を図ることは、かかる給付と負担の公平化に向けた条件整備となるものであり、まさに喫緊の課題となっております。  本法案は、このような要請にこたえ、国民健康保険制度の不安定要因となっている医療費の地域差問題や低所得者問題等に対して国、都道府県、市町村が一体となって取り組む仕組みをつくることにより制度の安定化を図ろうとするものであります。  すなわち、高医療費市町村における安定化計画の作成及び国、都道府県と一体となった計画の推進、低所得者の保険料軽減分の国、都道府県、市町村の共同負担による完全補てん、さらには国民健康保険団体連合会が行う高額医療費共同事業に対する国及び都道府県の補助等の対策全体を通じて国保加入者の保険料負担の増大が緩和されるものであります。  なお、本法案の実施に伴う新たな地方負担については、地方財政に支障が生じないよう所要の財源措置が講ぜられているところであります。  このように、国民健康保険法の一部を改正する法律案は、国民健康保険制度を取り巻く情勢の変化に的確に対応し、その当面する問題に国と地方が一体となって取り組むことで制度の長期的安定に向けた基盤づくりとなるものであり、私はこの法案に対し強く賛意を表するものであります。  これをもちまして私の討論を終わります。(拍手)
  179. 中西珠子

    ○中西珠子君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっています国民健康保険法の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論をいたします。  反対の第一の理由は、今回の国保改正案は、二年間にわたる暫定措置であり、地方負担の増加分は全額補てんするので地方への責任転嫁ではないと政府は言っていますが、国庫負担を削減し、地方の財政負担を恒常的にふやしていく道を開くものであります。国民健康保険は国民皆保険の中核をなすものであり、国が責任を持って改善と安定化を図るべきものであります。  第二に、改正法案は、国と地方が一体となって取り組む仕組みを導入するとして保険基盤安定制度を創設し、また高医療費市町村を指定して安定化計画をつくらせて実施させる、なおそれでも医療費が下がらない市町村の給付費等の一定部分は国庫負担の対象外として市町村と都道府県と国の共同負担とする、いわばペナルティーを科すことにしていることであります。  第三に、保険基盤安定制度については、厚生省は、一世帯当たり保険料負担は千七百円軽減されると宣伝している一方で、保険料を下げてはならないとの通達を出しています。国保は医療保険の中で保険料が一番高く、給付率は一番低い状況にあります。政府は、給付と負担の公平化を図り医療保険の一元化を図るとの政策を掲げており、今回の改正は一元化への条件整備のためであるとしていますが、国保の保険料を下げ、給付を改善することにはつながっていないではありませんか。一元化を図るのならば、その手順、方法と実現の時期を国民の前に明らかにするべきであります。  第四に、今回の改正では、保険料は安くならない上、地方自治体の一般会計からの繰り入れは一層増加し、税金を納める地域住民の負担も一層ふえることが懸念されます。もし六十五年以降も地方負担を続けて恒常的なものとしていくのであるならば、国と地方の役割分担を明確にし、地方への権限の移譲も真剣に考えるべきであります。現在の三割自治の状況のまま地方負担のみ増加することは許されるべきではありません。  第五に、地域医療適正化プログラムにおける指定市町村に作成と実施を義務づける安定化計画は、医療内容の低下を来し、患者にしわ寄せがいく、特に長期入院の老人は病院から追い出される結果となるおそれがあります。老人の長期入院、いわゆる社会的入院を減らすには、特養や老人保健施設の早期増設、在宅介護への公的サービスの拡充など、福祉政策充実増強が必須であります。  これに関連して、医療供給体制整備のおくれも指摘しておかねばなりません。医療機関の地域的偏在や無医村地区の存在は国民医療を受けるのに平等であるべき機会を奪っています。  最後に強調したいことは、国民は、だれでも、いつでも、どこでも、差別を受けることなく、安心して医療を受ける権利があり、すべての国民にリハビリを含む医療を保障し、医療供給体制の整備と老人福祉対策充実を総合的に推進する究極的な責任は、憲法二十五条に基づいて、国が担うべきものだということです。  今回の改正案は、国庫負担の削減と国の責任の地方への転嫁をねらったものであり、すべての国民に差別なく医療を保障するという展望が全くない、医療賛仰制のための単なる財政措置にすぎないと考えますので、到底賛成することはできません。  以上述べた理由で反対するものであります。(拍手)
  180. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、国民健康保険法一部改正案に反対の討論をいたします。  今回の改正案は、国民の願いである負担にたえがたい保険料を引き下げてほしい、滞納を理由とした保険証の不交付はやめてほしい、給付内容をよくしてほしいという切実な要求をことごとく裏切るものであり、強く反対の意思を表明するものです。  現行国民健康保険法は、国民医療保障を行うことは国の責務であることを本来の趣旨、目的としております。これを踏みにじって都道府県及び市町村の負担を新たに導入することは、国の責任を地方自治体に転嫁するということにとどまらず、憲法二十五条二項並びに国民健康保険法一条、四条に明記された国の責務規定に反するものであります。  現在の国民健康保険には、無職の世帯が激増し、年間所得二百万以下の世帯が実に七二・三%を占めているため抜本的な低所得者対策が求められています。真に低所得者対策考えるならば、保険料軽減の所得制限を引き上げて、減額幅も拡大すべきです。ところが、今回導入されようとしている保険基盤安定制度はこれらの課題には何ら手をつけず、減額分への現在の国の補助率八割を五割に引き下げるものになっています。  低所得者がふえている中で、国保の保険料は最近の三年間に全国平均で三六%も値上げがされました。これは加入者の負担能力をはるかに超えるものとなっています。負担能力の限界を超える大幅値上げを押しつけておきながら、それによって滞納を余儀なくされた世帯に対して保険証を交付しない仕打ちが行われ、既に数々の悲劇を生み出していますが、この改正によってこの事態は固定化され、さらに深刻化するでありましょう。  本改正案の本則に盛り込まれました地域医療費適正化プログラムは、医療費削減の強制により医療内容の低下を強いることになります。もしこの制度が実施されるならば、地方自治体は平均医療給付費を上回らないよう果てしない競争を強いられることになります。  この医療費抑制システムで最も影響を受けるのが長期入院のお年寄りであります。四月一日改定された診療報酬は、入院日数が長くなるほど削減率を大きくして事実上の長期入院ができない仕組みをつくっています。既に北海道などでは受け入れ態勢のないままで病院から高齢者を追い出すことが始まっているのであります。  国保財政の再建のためには、国保に対する国庫負担率をもとの四五%に戻すことこそが求められているのに、政府は逆に本改正案によって老人保険に対する国庫負担金を四百六十億も削減しようとしています。  以上のように、本改正案は、国保に対する国の責任放棄につながるばかりか、昭和六十五年に予定されている医療保険の一元化、すなわち国庫負担の大削減と国民負担増を意図する医療保険制度の抜本改悪に道を開くものであり、絶対に容認することはできません。  以上の理由により、私は本改正案に強く反対することを重ねて表明をして討論を終わります。(拍手)
  181. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  国民健康保険法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  182. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、山本正和君から発言を求められておりますのでこれを許します。山本君。
  183. 山本正和

    山本正和君 私はただいま可決されました国民健康保険法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     国民健康保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。  一、高齢化社会の展望に立った社会保障の将来構想を明らかにするよう努めること。  二、昭和六十四年度においても、昭和六十三年度と同様に、地方公共団体の負担について、所要の財源措置を講ずること。  三、改正後の国民健康保険事業の運営状況を踏まえ、地方財政に支障が生じないよう、国民健康保険の安定的運営のために必要な助成に努めること。また、国民健康保険組合についてて、今後とも健全な運営が図られるよう十分配慮すること。  四、国民健康保険制度の長期的安定を図るために必要な措置について、国と地方の役割分担と権限、低所得者への対応等を含め、幅広く検討を行い、その結果に基づいて、昭和六十五年度から抜本改革を行うこと。  五、医療保険制度給付と負担の公平化を図るに当たっては、各制度において運営の安定化を確保する等、その条件整備に努めること。また、レセプト審査の充実、薬価基準の適正化、医療費通知の充実等、医療費適正化対策をより一層積極的に推進すること。  六、高医療費市町村の安定化計画については、国民健康保険運営協議会の活用を図ること等により、被保険者の理解と協力が得られるよう努めること。  七、診療報酬について、技術重視の診療報酬体系を確立し、その合理化を図ること。  八、医療供給体制の適正な整備を図るため、各都道府県における地域医療計画の早期策定及びその適切な実施につき、必要な指導を行うこと。   右決議する。  以上であります。
  184. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいま山本君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  185. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 多数と認めます。よって、山本君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、藤本厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤本厚生大臣
  186. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存であります。
  187. 関口恵造

    委員長関口恵造君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  189. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、児童扶養手当法等の一部を改正する法律案原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案並びに厚生年金保険法の一部を改正する法律案の四案を議題といたします。  四案につきましては、先ほど既に質疑を終局しておりますので、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、児童扶養手当法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  190. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  191. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、中西珠子君から発言を求められておりますので、これを許します。中西君。
  192. 中西珠子

    ○中西珠子君 私は、ただいま可決されました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党護憲共同、公明党・国民会議日本共産党、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、広い意味における国家補償の見地に立ってその対策が講じられるべきであるとの原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見等にかんがみ、被害実態に即応した援護対策を一層拡充するよう努めるとともに、次の事項についてその実現に努めるべきである。  一、昭和六十年に行われた原爆被爆者実態調査のうち死没者調査について、速やかな解析、その集大成を図ること。  二、被爆者障害実態に即して所得制限を撤廃するとともに、医療特別手当等については、他制度との関連も考慮し、生活保護の収入認定から外すことについて検討すること。  三、原爆症の認定については、近時の科学的知見を踏まえつつ、被爆者の実情に即応するよう、制度と運営の改善を行うとともに、健康管理手当の認定についても、原爆被爆者高齢化していることを踏まえ、そのあり方について検討すること。  四、原爆病院の運営に当たっては、被爆者が必要とする医療を十分受けられるよう、施設・設備の充実を含め、万全の措置を講ずるとともに、被爆者に対する家庭奉仕員制度充実及び相談業務の強化を図ること。  五、被爆者とその子及び孫に対する放射能の影響についての調査、研究及びその対策について十分配慮するとともに、原爆医療調査機関の一元一体化について検討し、その促進を図ること。  六、放射線影響研究所の研究成果を、被爆者の健康管理と治療に、より役立てるため、運営の一層の改善、同研究所の移転、原爆病院との連携強化等につき検討すること。   右決議する。  以上であります。
  193. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいま中西君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  194. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、中西君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、藤本厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤本厚生大臣
  195. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存であります。
  196. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  197. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、曽根田郁夫君から発言を求められておりますので、これを許します。曽根田君。
  198. 曽根田郁夫

    曽根田郁夫君 私は、ただいま可決されました戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党護憲共同、公明党・国民会議日本共産党、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、速やかに格段の努力を払うべきである。  一、戦没者遺族等の老齢化の現状及び生活実態にかんがみ、国民生活水準の向上等に見合って、今後とも援護の水準を引き上げ、公平な援護措置が行われるよう努めること。  二、戦没者遺族等の高齢化にかんがみ、海外旧戦域における遺骨収集、慰霊巡拝等に、ついて、さらに積極的に推進すること。  三、生存未帰還者の調査については、引き続き関係方面との連携を密にし、調査及び帰還の促進に万全を期すること。  四、訪日調査により肉親が判明しなかった中国残留日本人孤児について、引き続き肉親調査最大限の努力をするとともに、今後とも、日本人であることが判明した中国残留孤児については、すべて訪日調査の対象とすること。    また、帰国孤児の定着先における自立促進を図るため、関係省庁及び地方自治体が一体となって、広く国民の協力を得ながら、日本語教育、就職対策、住宅対策等の諸施策の総合的実施に遺憾なきを期すること。  五、ガス障害者に対する救済措置は、公平に行うとともにその改善に努めること。  六、法律内容について必要な広報等に努める等さらにその周知徹底を図るとともに、相談体制の強化、裁定等の事務の迅速化にさらに努めること。   右決議する。  以上であります。
  199. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいま曽根田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  200. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、曽根田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、藤本厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤本厚生大臣
  201. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。
  202. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、厚生年金保険法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  203. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、四案に対する審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  205. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 労働組合法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。中村労働大臣
  206. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) ただいま議題となりました労働組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  我が国の公共企業体等における労使紛争の処理等については、国営企業労働委員会がこれに当たってまいりましたが、その対象企業もかつての三公社五現業から郵政事業等の四現業に減少し、臨時行政調査会の最終答申でも指摘されたように、労働委員会機構の簡素化が重要な課題となっております。  さらに、近年不当労働行為の審査の迅速化等の要求が高まる中で、労働委員制度の効率的運営及び機能強化を図る必要が生じてまいりました。  本法律案は、このような状況に対処するため、中央労働委員会と国営企業労働委員会とを統合するとともに所要の改正を行おうとするものであります。  次に、この法律案内容につきまして、概要を御説明いたします。  第一は、統合後の中央労働委員会の委員についてであります。  委員の数は、使用者委員、労働者委員、公益委員おのおの十三人といたしております。  委員の任命権者は内閣総理大臣とし、公益委員については労使委員意見を尊重して作成した委員候補者名簿のうちから国会の同意を得て任命することとし、また、使用者委員及び労働者委員については、それぞれ関係労使の推薦に基づいて任命することとし、そのうち各九人については民間企業関係労使の、また、各四人については国営企業関係労使の推薦に基づくことといたしております。  第二は、国営企業の地方における労使紛争の処理についてであります。  現行の国営企業労働委員会の地方調停委員会は廃止いたしますが、その現在果たしている機能を維持するため、統合後の中央労働委員会に地方調整委員を置くこととし、専ら地方における事件を担当させることといたしました。なお、この地方調整委員は、従来中央労働委員会が扱うこととしていた民間企業の事件のうちの一部についても担当することができることといたしております。  第三は、中央労働委員会における紛争調整手続についてであります。  使用者委員及び労働者委員についてはそれぞれの推薦母体別に、公益委員については会長の指名により、国営企業担当と一般企業担当を定め、紛争調整の開始決定やあっせん、調停、仲裁等に参与させることといたしております。  第四は、国営企業の事件に関する不当労働行為の審査等のための審査委員会の設置についてであります。  不当労働行為の審査等については、国営企業の事件の特殊性にかんがみ、重要な事件を除き、国営企業担当の公益委員のみで処理することができるようにいたしております。  最後に、この法律施行期日は、委員の任命のための準備行為に関するもの等を除き、昭和六十三年十月一日といたしております。  以上、この法律案提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上であります。
  207. 関口恵造

    委員長関口恵造君) この際、本案衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員高橋辰夫君から説明を聴取いたします。高橋辰夫君。
  208. 高橋辰夫

    衆議院議員(高橋辰夫君) 労働組合法等の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  修正の要旨は、第一に、中央労働委員会の公益委員委員候補者名簿の作成について、労使委員の「意見を尊重して」を「同意を得て」に改めるものとすること。  第二に、日本電信電話株式会社に係る調停事件についての実情の公表等の特例措置を廃止するものとすること。  第三に、国営企業の職員が労働組合の役員として専ら従事する期間の上限は、国営企業の運営の実態等にかんがみ、当分の間、「五年」を「七年以下の範囲内で労働協約で定める期間」とするものとすること。  以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  209. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十七分散会