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1988-05-10 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      原田  立君     高木健太郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩崎 純三君                 遠藤 政夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 高木健太郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君    国務大臣        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省保健医療        局老人保健部長  岸本 正裕君        厚生省薬務局長  坂本 龍彦君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省児童家庭        局長       長尾 立子君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省年金局長  水田  努君        厚生省援護局長  木戸  脩君        社会保険庁長官        官房審議官    渡辺  修君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   佐々木喜之君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        文部省高等教育        局医学教育課長  佐藤 國雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○児童扶養手当法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨九日、原田立君が委員を辞任され、その補欠として高木健太郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 国民健康保険法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 対馬孝且

    対馬孝且君 きょうは国保の一部を改正する法律案中心議題になっておりますが、まず、その前に一、二点だけ、大臣基本的な問題をただしておきたいと思います。  それは、五月四日の読売新聞の報道によりますと、OECD経済協力開発機構におきまして二十一世紀に向けての社会保障あり方を協議する、そのために初の社会保障担当大臣会議、つまり社会保障サミットと言うべきものが七月にパリで行われるという報道がございます。  これは我が国が積極的に呼びかけたようでございますが、藤本厚生大臣は大変張り切っておられるようでありますから、大臣は、我が国現状をどう世界に向けて語ろうとしているのか、また諸外国から何を学ぼうとしているのか、この際大臣基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  5. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今お話がございましたように、OECD社会保障大臣会議が、我が国の働きかけによりまして、七月にパリで開催される運びになったわけでございます。  現在、先進各国ともに、人口高齢化さらには経済成長鈍化という共通の問題を抱えておるわけでございまして、そういう制約の中で今後社会保障制度を、これは申し上げるまでもなく国民生活の基盤の安定につながる大事な問題でございまして、この社会保障制度をいかにこれから進めていくか、こういう問題につきまして大臣会議で率直な意見の交換を行おう、こういう考え方から会議が行われるわけでございます。  申し上げましたように、人口高齢化であるとかまた経済成長鈍化、こういう共通制約のもとで、今後の社会保障制度の長期安定に各国ともそれぞれに工夫をしたりいろいろと改革をしてまいったわけでもございますし、今後また改革に取り組むわけでございます。現在、我が国社会保障制度は、先進ヨーロッパの諸国と比べまして遜色のない段階に来ておりますけれども、やはり先発国というような意味で考えましても、そういったヨーロッパの国々が今後社会保障制度の長期安定につきましてどういうふうに考えておるかということを承ることは私どもにとりましても非常に今後の参考になるというふうに思うわけでございますし、また昭和六十年度の年金の大改革につきましては非常に高く評価されているようでもございますので、そういう点につきましても私どもの方からはその内容なんかの披露があるかもわからないというようなことも考えておるわけでございます。
  6. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣の一応の考え方はわかりました。  問題は、これからも審議をするわけでありますが、これからの医療一元化課題がございます。加えて、我が国においても、今大臣が言ったように、社会保障制度一大転換期に来ている、六十五年度は抜本的改正もせねばならぬ、こういう情 勢でありますから極めて意義があることだと思います。  そこで、さらにお伺いしておきたいことは、我が国社会保障制度もかつては、今お話がございましたけれども先進国に追いつけ追い越せというこういう基本でやってまいりました。お手本としては、海外に求めてきたというのが実態だったろうと思います。しかし、我が国は経済的にも大国となったわけでございまして、そういう意味では、諸外国に対してむしろある意味ではこれから手本となるような施策も進めるという時期に入っている、こう思います。  したがって、恐らく、代表演説を当然行われると思うのでありますが、我が国施策の中で何を特に重点的に強調されようとしているのか。今も年金社会保障お話がございました。また、保健面では、世界的に今エイズ対策エイズ蔓延化が大きな社会問題になっております。こういった問題についても、国際的な協調の立場でどういうふうに考えていかれるかということをあわせてもう一問だけお伺いしたいと思います。
  7. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) エイズの問題につきましては、アメリカ側から非常に強い要請がございまして、このOECD大臣会議議題に加えられるようになったと伺っておるわけでございます。それだけアメリカ現状が非常に厳しいものだと理解するわけでございまして、我が国の状況は、御承知のようなことでまだまだ患者の数も感染者の数も少ないわけでございますが、そういう患者数におきましても五、六万というアメリカ現状を十分に伺うということは今後我が国エイズ対策を進めていく上で非常にプラスになると思っておるわけでございますし、またこの問題は、国際化時代におきまして国際的な協力というものがなければエイズ対策が進められないわけでございますので、私といたしましては非常に関心を持って承って帰りたいと思っております。  それから、社会保障全般の問題につきましては、御承知のように、日本の国は欧米の二、三倍のスピードで高齢化が進んでおるわけでございまして、それだけに、超高齢化時代にふさわしいといいますか揺るぎない社会保障制度の確立という問題につきましては大変重要な課題であるわけでございます。そのために、制度合理化であるとか効率化であるとかまた必要な施策は、これから進めてまいる所存でございますし、同時に、たびたび申し上げておりますけれども高齢化社会というものが財政面でとらえた暗いイメージではなくて明るいそういうイメージを持った社会をつくる、そういうために懸命にこれからも努力してまいりたいと考えております。
  8. 対馬孝且

    対馬孝且君 今大臣からお答えがございましたけれども、私は、残念ながら、まだ我が国社会保障計画ビジョン手順あるいは手法、今もありましたけれども財政的手だて、こういう問題がまとまっていないと思う、率直に申し上げて。それだけにこのサミットに臨むに対しては、それなりの識見、我が国ビジョンに対する基本姿勢というようなことを訴えないと、ただ聞くだけでは、これは意味がない。そこらあたりも踏まえて、これだけで時間をとるわけにいきませんから、我が国の将来の二十一世紀社会保障計画ビジョンは何であるか、何が高齢化社会の幸せであるか、人間の幸せの原点を踏まえて、十分ひとつ訴えてもらいたいということを特に申し上げておきます。  そこで、きょうの国保の一部改正問題に移りますが、私に与えられた時間は一時間しかありませんので。  国保のこの一部改正法案を検討いたしてまいりますと、どうも基本的な改正ではない、むしろ基本的改正が非常に欠落している、その意味ではどうも場当たり的しのぎ改革ではないか、そういう意味では改革の名に値しない改正だ、こう私は思っているところでございます。したがって、私は、これから国民医療と健康を守る、こういう立場からひとつ重点項目に絞って質問申し上げたいと思っています。  一つ医療一元化問題、二つ目国民医療問題の政策的目標三つ目地域医療計画と高医療費地域の格差問題に対する諸対策ということを中心に、絞ってまいりますので、できるだけ明瞭に答えてもらいたいと思います。  まず第一点は、医療保険一元化であります。  医療保険一元化につきましては、昭和五十九年四月、私も当委員会で約三時間質問いたしておりますが、保険法改正審議の際、将来のビジョンというものを特に六十年代後半のできるだけ早い時期に当面の政治課題として打ち出してまいりたいということになっているわけであります。しかし、今日まで行われてきたこの医療保険の諸改革は、国庫負担を減額するために、各制度加入者年齢差の調整または公平という名のもとに健康保険改革も行われました。これは私も参加をしています。加えてまた、私どもの目指す医療保険給付負担一元化、これがどうも私の感じでは今なおほど遠いという感を深くするのであります。それが実際問題として具体的に出ておりません。  そこで、政府はこの給付負担一元化ということをどういうふうに考えているのか、まず基本的な考え方を明らかにしてもらいたい。
  9. 下村健

    政府委員下村健君) 高齢化社会における医療保険制度あり方といたしましては、私どもとしては現行制度基本的な枠組み維持をしたい、このように考えておるわけでございます。また、給付水準がございましたけれども、八割程度給付水準ということで各制度、現在若干の差はございますが、これをそろえてまいりたい、このように考えております。それからもう一つの問題として、保険で一体どういった医療カバーしていけばいいかという問題があるわけでございますが、これについても必要なものは保険カバーをしていくという考え方維持してまいりたい。この三つを守っていくということを一つ前提といたしてまいりたい、こういうことでございます。  それには、現在いろいろな形で分立しております各制度間の不均衡を残したまま高齢化社会を迎えてまいりますと、それぞれの制度によって問題が生じてくる、各制度共通の問題としていえば弱体な保険者に運営上の困難が非常に生じてくる、このように考えているわけでございます。したがって、各制度を通じて負担面での公平化を行っていく、負担公平化を行うということになると給付面もある程度そろえていくということが当然必要になってくるというふうな考え方で、給付負担公平化を図る、これが一元化考え方でございます。
  10. 対馬孝且

    対馬孝且君 一元化方向は、今、給付負担の面の各保険間の均衡維持、そしてまた公的な問題などを含めての云々というような答弁がございました。  けれども、何といったって当面これは六十五年でしょう。私は健康保険法改正のときにも申し上げ、去年も、一昨年の老人保健法のときも申し上げましたけれども、ことしは六十三年ですから、六十四年にはある程度一元化ビジョンなり構想というものが出ていなきゃならないんじゃないか。ところが、いまだに具体的にこういう手法手だてあるいは財政的手当て、こうしますよというものがさっぱり見えないということで一体いいのか、六十五年に果たしてそれがどういう姿になって出てくるのかというあたりがどうも見えないという感を深くするんです。  そこでお伺いするんでありますが、現在、医療保険実効給付率は、私が調べたところによりますと、六十年度では八二・五九%、それから国保全体では七八・七%に達しています。したがって、給付一元化とは、当然、制度の法定の給付率、今もあなたからございましたけれども国保最低八割にそろえるという点が重要な問題ではないかと私は思うが、そういうことで理解していいかどうか。  それから、今言ったように、六十五年抜本改革だということを目指している限り、私は一定ビジョンなり考え方がここであっていいんじゃない かと思うが、この二つをちょっとお伺いしたいと思います。
  11. 下村健

    政府委員下村健君) ただいまお話に出ましたように、六十一年度で見ますと、医療保険制度全体の実効給付率が八二・七%、国保の場合は実効給付率七九%ということで差がございます。これを全体として同一水準にしていきたいというふうに考えているわけでございます。  厚生省といたしましては、現在の国民保険体制基本前提にし、これを八割程度、現在の水準ということで考えますと八二ないし三、こういうふうな水準になるわけでございますが、その程度維持ということを前提にいたしまして全体をそろえていこう、このように考えているわけでございます。  その給付具体的内容については、今後、関係審議会審議等も踏まえ、さらに検討してまいりたいと考えているわけでございます。
  12. 対馬孝且

    対馬孝且君 各種審議会社会保障制度審議会その他で審議するということはわかるけれども基本としては、ベースとしては八割ということはいいわけでしょう。もちろん、これは我々がいいと言っているんじゃないですよ。考え方として八割ということは、この前の健康保険法改正老人保健法改正の時点での論議を踏まえていくと、つまり政管健保、組合健保あるいは国民健康保険を含めて、最低八割というベースにひとつ維持していきたいという考え方で進めていると。  これはよろしゅうございますね。その点どうですか。
  13. 下村健

    政府委員下村健君) 八割程度と申しますのは、ただいまも申し上げましたように、現在の医療保険制度全体の給付率が八二%台ということになっております総体としての医療保険給付水準を、現状程度維持をしてまいりたいということを八割程度というふうに申し上げたわけでございます。  これは、現状水準維持するといたしましても、今後の高齢化という条件の中でやはり負担の方はふえてくるだろう、このように考えているわけでございます。  で、負担をどの程度にしていくのかという問題がもう一つあるわけでございますが、私どもとしては、負担を大幅にふやさない、しかし現状水準維持するというふうな考え方前提にして考えますと、やはり八割程度維持というところが現実的な答えではないだろうかと、このように考えたわけでございます。
  14. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで、冒頭私が申し上げましたように、今回の改革というのは基本的な改革ではない、私に言わせればその場しのぎ手だてだけである、抜本改正になっていない、抜本改正に連なるものにもなっていない、こう私が申し上げているのはなぜかと申しますと、現実的に、今回の法案を見ますと、何のことはない、国と地方自治体保険者の間で共同負担して共同作業をしよう、それで一定カバーをしていこうと。個々のことは別にして、一口に言えばそれだけのことなんだ。だから、今もあなたが言ったけれども社会保障制度審議会その他で財政一元化というのは当時からうたわれておって、なぜいまだに一元化方向ビジョンが出てこないのか。これがなくて、今回こういう目先改革だけどうしてするんだということが一つ疑問として残ります。これは答弁してもらって結構だけれども。  そこで、お伺いしたいことは、負担一元化というのは、給付を合わせると同時に、負担も公平にしていくということが基本ですわね。そうしますと、年間所得だけでは不公平ということから、国民健康保険で現在も行われているのは、四方式、つまり所得割、資産割、均等割、平等割、こういうことが組み合わされて賦課されているわけでしょう。これは間違いであれば御指摘になっていいですが。また、給与所得者に比較して所得捕捉率が相違をしているということが共通認識になっていることも事実です。  そういうことから判断しますと、こういう際に制度を越えて負担の公平ということは、言葉の上では簡単で容易でありますけれども、現実には大変難しいのではないかという認識を私はしているわけですが、その点どうですか。
  15. 下村健

    政府委員下村健君) 御指摘のように、被用者保険の方は標準報酬制度、それから国民健康保険市町村民税課税対象所得といったところを中心にいたしまして保険料の賦課をしている、したがってベースになる所得の面で差があって公平といっても難しいんじゃないか、これは御指摘のとおりであると思います。特に被用者の側に、国保加入者所得把握について不公平感があることは事実でございます。  ただ、一方から申しますと、医療保険制度の将来を考えますと皆保険体制維持という観点からはどうしても各制度間の負担の公平を図っていくということは必要であると考えているわけでございます。  そこで、私どもとしてそのやり方がどういう形がいいか、これは先ほども申しましたように、関係者の種々の御意見を伺いながらさらに検討していくということになるわけでございますが、私どもとしては、税とそれから保険料、その両者が医療費財源としては基本的なものになっているわけでございますから、その両面から見て公平で安定した負担制度をつくりたい、このように考えているわけでございます。
  16. 対馬孝且

    対馬孝且君 局長、きのうも参考人が全部ここで陳述しましたけれども賛成者の方でも言っているのは、この改正では将来の医療一元化ということは見出せない、むしろビジョンがない、そういう意味では抜本改正が必要であるということをここで言っているんですよ。みんながはっきり言っているんですよ。これは目先の問題だけだと、賛成者の方でもそう言っている。  ところが、私があえて言ったのは、今、あなたがそういう認識には変わりはないと言っているからあれなんだけれども、そこまでいくと、きのうも石本先生の陳述がありましたけれども我が国保険方式で来ている。フランス、その他ドイツでもそれでやっていますけれども、それと、アメリカのようにメディケアで、言うならば税方式、大ざっぱに言うとこの保険方式税方式というのがある。そういうものに対してこれからのビジョンをつくる場合の政策課題財政的措置を含めてどうあるべきなのかということを参考人も言いました。  そこのところを議論しておると時間がないから私申し上げませんが、しかしここまで来ると早く一元化構想というものをきちっと出さないと、ただ当面の問題だけを糊塗するということではならないのじゃないかということで言っている。あなたが、そのとおり同じ認識だ、そういうことを踏まえてこれから各委員会審議会等で検討してまいりたいということですから、積極的にひとつ審議を早めて、少なくとも来年はもう六十四年ですからね、六十四年に出なければ六十五年に間に合わない、法案を出せないんだからね。そういうことであれば、やっぱり、そういう基本的な問題を踏まえて対応してもらいたい。  そこで、長寿社会対策大綱というものが「現行医療保険制度基本的枠組み維持しつつ、給付負担公平化を図る。」ということを六十一年六月の閣議決定で出されました。これは大臣は参加しておられなかったと思うんですが、当然この考え方に従って今後の医療保険改善は実行されていくというふうに考えるわけであります。  そこで、私がここでお伺いしたいのは、厚生省は、五十九年以来一貫して当面の国庫負担だけの大義名分として、一生懸命、何のことはない、国庫負担だけ減らすようにやってきたんではないかという感を持っています。五十九年の健康保険法改正のときも、一〇〇%の按分率は九〇に引き下げて、その分、結果的には老人保健法の方で一応お互いの保険間の矛盾を解消するということで財源措置に充てたけれども、結果は国庫負担を切り下げたというだけのことであって、その場その場で、六十一年四月の高齢者対策企画推進本部報告老人保健改革をするための目的でそういうこと を実は出されている。それであってはならないんではないか。あなた方は、それはそうではないと言うかしらぬけれども、私は、五十九年の健康保険法改正も、六十一年四月の老健法改正においても、結果的にそういう国庫負担減らしのための対策だけがとられてきているんではないかと率直に言わなければなりません。何のことはない、国庫負担だけ減って、そして地方自治体にツケを回し、被保険者自己負担として保険料率が上がっていく。これからの医療保険一元化を目指した場合、私は、絶対こういうことであってはならないと思う。それだから先ほどから何回も申しますけれども。  ここでもう一回、はっきり大臣に私はお伺いしたいのでありますが、政府の言ういわゆる給付負担財政一元化構想に対する手順手だて財政的構想ということを、どういうふうにこれから結論を出していこうとするのか、その考え方をひとつ明らかにしてもらいたいと思う。これはひとつ確認しておきます。
  17. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 先ほど答弁を申し上げておりますとおり、我々といたしましては、各制度間における給付負担の公平を図っていく。これには、御承知のように、一本化という考え方もありますし、一元化という考え方もあるわけでございますが、我々としては、この制度維持しながら制度間の給付負担の公平を図っていく、こういうことを一元化として考えておるわけでございます。  その内容につきましては、先ほどビジョンといたしまして八割程度であるとか申し上げたわけでございまして、そこへ行き着くまでの一つ手順といいますか対策として、今非常に厳しい状態にある国保の運営の改善、長期安定を図っていくための改善策として今御提案申し上げておるわけでございまして、これが老人保健制度国保制度を六十五年度にもう一度見直しをして、そしてその内容によりまして所要の長期安定のための対策を講じて、その結果、一元化の問題へ向かって進めていく、こういう考え方であるわけでございます。
  18. 対馬孝且

    対馬孝且君 いや、大臣、それはわかっている、この法案にも書いてあるんだから。  今回の基本的な考え方というのは、低所得者の問題、医療費地域差の問題。そこで出てきたのが保険基盤安定制度であるとか地域医療適正化のプログラムの指針、これが出てきている。ただ、私が言っているのは、これは一つ手順だというけれども、言うならば、一元化構想に向けてどういう具体的な手順というのがあるでしょうかと。今保険間の調整とかいろんなことを言っているけれども、具体的にわかりやすく言うならば、公的負担というものを補強しながら保険方式で将来とも行くのかあるいはそうじゃなくて純然たる公的負担一本で税方式で行くのか、そういう手順あるいは手法だ。手順とは、六十五年なら六十五年をめどに六十四年ころには一応の結論を出します、法案を出すようにしますと。あるいは、手法としては今言ったようなことだ。それと、それじゃ財源としてはどうするんだと、こうなるわけだ。そういうものがないではないかと私は言っているわけですよ。  だから、そういうものをここへ出してもらわなければ困る。というよりも、国民はそれでは理解できない。今回の法改正だって、ただ六十三年、六十四年の暫定的なものでしょう。保険基盤安定制度というのは、そのためのものでしょう。地域医療プログラムの六十五年以降云々というのがこれに載っているけれども、これは六分の一の共同負担というだけのことです。  だから、そういうものであってはならないんじゃないかということを私は言っているんだ。大臣としてはそれに取り組むなら取り組むと、この姿勢を聞いているわけですよ。どうですか。
  19. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 私どもといたしましては、それは社会保険方式基本的にはやはりそういう考え方で進みたいというふうに考えております。
  20. 対馬孝且

    対馬孝且君 考え方は一応社会保険方式ということは、もちろん長い歴史的な経過があるんですから。  ただ、それだけでいくかどうかという問題は、公的負担の一部をどういうふうに調整をするかとかあるいは出来高払い制度を見直して例えば人頭割ということがいいか悪いかそういうことも踏まえて、全体的なそういう手法を、出来高払い制度を見直して人頭割がいいか悪いか、もちろん私はこれがいいとかといっているわけじゃなくて、そういうことを洗い直してみて、一つ手法手順なり財政方向をぜひ出してもらいたい、私はこのことを強く申し上げておきます。よろしゅうございますね。  そこで、次の問題であります。  国民医療費は、人口の増加、医学・医術の進歩発展、高齢化の進行でますます増高しております。二十一世紀高齢化社会医療費負担がどうなるかということは、先般の予算委員会で、私も同席しておりましたが、「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障給付負担の展望」が厚生、大蔵両省で出されました。私もこれ持っております。  これは連名で提起されているのでありますが、これらを見ますと、国民医療費と老人医療費をどのように将来推計をしておられますか、この考え方をちょっとお伺いしたいと思います。
  21. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費の推計でございますが、医療費の推計についてはいろんな推計があるわけでございますが、私どもといたしましては、一応過去の実績をもとにして推計をしているわけでございます。  ただいまお話がございました資料、これは、最近の実績の中で、いろいろな制度改正でありますとかあるいは診療報酬改定でありますとかそういった影響を受けていない時期を選びまして、その時点での成長率というものを医療費の自然状態における伸び率というふうに考えて、これをもとにして将来の医療費を推計したものでございます。これによりますと、大体七%というふうな数字になっておるわけでございます。
  22. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは私も検討させていただきました。  そこで、私は質問したいんでありますけれども政府国民医療費に対する政策目標は、総理がこの間同僚議員の質問にお答えしていますが、「当面は医療費の伸びを国民所得の伸び程度とする」という政策目標を総理が答えています。これまで以上に医療費の適正化のための諸施策を進めるというものであれば、一方で政策目標として医療費の伸びを国民所得の伸び程度に抑えることが一体できるかどうかという問題です。これが一つ。  他方で、最近の国民所得の伸びを上回るトレンドいわゆる傾向で将来展望をするというのは、政策目標の破綻になりはしないか、そういう感じがするんですが、どうですか、この点は。
  23. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費の伸びがどの程度であるべきかあるいはどの程度医療費があれば問題なく医療保障を保っていけるか、この辺の判断がなかなか難しいところでございますが、私どもとしては、長期的な傾向として見ますと医療費の伸びが国民所得の伸びと均衡をする、これはいわば経済全体の伸びと同一水準を保って医療が伸びていくという格好でございます。しかし、高齢化という条件がありますので基本的には難しい面があるという点は考えられるわけでございます。  医療現状を見ますと、実は現在の医療については、先ほど出来高払いの話も出ましたけれどもいろいろの問題がありますので、それらの適正化ということにやはり当面相当の重点を置いて取り組んでいかなければならないと、このように考えているわけでございます。そうしますと、それによってどの程度の数量的な効果が期待できるか、これはなかなか推計としては困難でございますが、政策目標としてはそういった適正化の努力を並行して行っていくべきであろう、ただし十年後、二十年後というふうな長期にわたる医療費の 推計ということになりますと、これは現在の実績値をもとにする以外は推計方法が適切なものがない、このように考えているわけでございます。
  24. 対馬孝且

    対馬孝且君 確かに、我が国の場合、加速度的に高齢者社会になるという条件を加味しなきゃならないんじゃないかということをあなたも言っていますが、私もそこが問題ではないか。だから非常に急速な人口高齢化がある以上、医療負担との関係がきちっと押さえられるかどうかということになるとなかなか問題がある。  そこで、私は、最近の傾向から見ましてそのままこれを是認するわけではないんでありますが、人口高齢化一定の部分ということを今あなたも指摘されましたけれども、問題は、六十三年度の国民医療費の増加要因というものを私なりに分析してみました。  これを見ますと、国民所得の伸びが一体どうなっているかということを調べてみますと、六十三年度は人口の増加が〇・五%、それから先ほど言った人口高齢化が一・二%ある。それから診療報酬の改定が〇・五%ありその他というのが三%あるわけだ。このその他三%というのが問題なんだ。それは医学・医術の進歩あるいは医師の数の増、病床の増というもので大体三%。トータルでこれで見ますと六十三年度の医療費の増加というのは五・二になっているわけです。ところが一方、総理が言っています国民所得の伸びというのは四・六でしかないんですよ。これは間違っていますか。六十三年度についてはこういう数字になっている。  そうだとすれば、問題なのは、先ほど私が言ったように、この急激な高齢化ということを加味しないと、単なるトレンド、傾向だけで見たのでは判断の基礎にはならないんじゃないか。そこらあたりを加味した政策目標がどうしても必要ではないのかということになるわけでありまして、この点ひとつ局長大臣の方からお聞かせ願います。
  25. 下村健

    政府委員下村健君) 数字につきましてはただいまお話に出たとおりの状況になっておりまして、六十三年度の医療費の伸び五・二%のうち三%というものが、いわゆる自然増と申しますかその要因を明確に分析できていないものになっているわけでございます。この中には、もちろん疾病構造の変化でありますとかいうふうな要素も含まれる。そのほかに、医学の進歩あるいは高度医療の導入あるいはその普及、また一方におきましては医師数、病床数が増加しているというふうな状況も影響している、このように考えられるわけでございます。  私どもといたしましては、この点についてはさらにそれぞれの要因について検討を加え、できる限りその三%というものの内訳あるいはこれにどのような要素が左右しているかという点を解明してまいりたい、その努力をすべきであるというふうに考えておりますが、現在のところはなかなかその要因の解明がうまくいかない、こういう状況でございます。その原因をはっきりさせて不合理な伸びというふうな要素はできるだけ排除していくべきだと、このように考えております。
  26. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 国民医療費の伸びの目標につきましては、先ほど答弁申し上げておりますように、国民所得の伸びの範囲内でとどめる、やはり、私ども当面の政策目標としては、これを守るためにいろいろと工夫してまいらなければならぬと思っております。  御指摘のように、この伸びの目標につきまして検討する必要はもちろんあると思いますけれども給付負担という関係からいたしますと、我我としては当面この政策目標を守るために全力を尽くす方が大事だろう、そういうように考えております。
  27. 対馬孝且

    対馬孝且君 まさにそのとおりで、政策目標としてはその他という面をどういうふうに問題認識をするか、またどういう手だてがあるかということについて、その点に重点を絞ってこれから質問してまいりたいと思います。  そこで、六十三年度予算編成に際しまして厚生省は、医療費の適正化として千二百五十億円の国庫負担減を見積もっているが、予算編成の時点、八月の省議の時点で医療費ベースで見た場合、その額はどの程度になりますか。
  28. 下村健

    政府委員下村健君) 概算要求時点における当然増、これはかなり粗い数字も入っているわけでございますが、その時点での医療費と六十三年度予算で見込んだ医療費の差がそういった形で出てくるわけでございますが、国の予算額にして千二百億円程度ということになるわけでございます。これを医療費ベースに直しますと四千億ないし五千億近くと、こういう数字ではないかと思います。
  29. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで、問題は、先ほど言った三%の部分について幾つかの要因があるということなども申しました。この要因は、問題点としては何と何だというふうに考えますか。  医療技術の進歩あるいは医者の数あるいはベッド数というのは、もちろんそれは一つの要因ですけれども、そういうものを判断していった場合に、その要因を克服するというか要因の問題点として当面何と何が必要なのか、どういうふうにお考えになっていますか。
  30. 下村健

    政府委員下村健君) 私どもとして問題として考えておりますのは、一つは、この自然増の中に出来高払いの欠点というふうな形で言われているものがどの程度あるのかという点ではないかと思っております。出来高払いの欠点ということで言われておりますのは、一つは薬の問題、それからもう一つが検査の問題、それからもう一つは入院日数の問題でございます。そういった問題がございます。  それからもう一つは、医師数あるいは病床数の問題。救急体制面でこれがどのような影響を及ぼしているのか、医師あるいは病床、いずれも地域的な偏在というふうなことがかねてから問題点として言われているわけでございます。また、トータルとしての医師数あるいは病床数がいかにあるべきかという問題も当然あろうかと思われるわけでございます。そういった点がやはり問題としては大きなものではないか、このように考えております。
  31. 対馬孝且

    対馬孝且君 今まさに問題点を指摘されました。  そこで、私は端的にお伺いしますが、昨年来、都道府県の単位で地域医療計画の策定が進められております。その施行前にということで駆け込み増床の申請が殺到しています。特に、北海道、札幌は一番です。これはあなたが一番よく知っているとおりで、この前も申し上げたとおりです。  そこで、六十年以降の病床の増加数はどうなっていますか、一ベッド当たりの年間の医療費はどの程度になっていますか、端的にお伺いします。
  32. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 駆け込み増床がどれだけかというのは実は非常に難しいわけでございますけれども、一年間で純増いたしました病床数で見ますと、六十年が三万三百八十三床でございましたのに比較いたしまして、六十一年は四万一千五百九十二床となっておりまして、この中にいわゆる駆け込み増床と申しますかそういうのも含まれているということでございまして、六十年の三万に対しまして六十一年は四万一千ぐらいでございますので対前年比で一・三七の増加率でございます。  それから、医療費でございますけれども、単純に入院医療費を病床数で割ってみますと、一床当たりの入院医療費は六十年度におきまして四百三十五万円という数字でございます。
  33. 対馬孝且

    対馬孝且君 今数字が出されたとおりです。私も調べましたけれども、それだけになっています。  そこで問題は、今言った一ベッド当たり四百三十五万円ということ、また四万一千五百九十二床、六十一年度にこれだけ増床しているわけです。そこで、こういった病床の増加の姿は、医療資源の国民への配分のあり方として正しいというふうにお考えになっていますか。あるいはまた、病床増加に駆り立てる要因は何であったと思いますか。そういう分析は厚生省どういうふうにされ ていますか。
  34. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 私ども六十年の十二月に医療法を改正させていただいたときに地域医療計画を樹立いたしまして、地域の医療資源を適正に配分する、さらにそれをシステム化をするということで、当時、医療改正でいろいろ御審議いただいたわけでございます。そういう観点からいたしますと、いわゆる駆け込み増床というのは、この地域の体系的な医療供給体制の確立を図るという目的からいたしますとその理念に著しく反するものと私ども理解をしておるわけでございまして、病床過剰が見込まれる地域では、医療計画作成前でありましても、病院の開設等につきましてできるだけ申請の自粛、取り下げをするようにという指導をしてきておりますところでございますが、今後とも、そういう冒頭に申し上げましたような考え方から指導をいたしまして、引き続き厳正に対処するように徹底を図ってまいりたいと思うわけでございます。  今お話が出ておりますように、人口高齢化でございますとか地域的な偏在ということがあるわけでございますので、私ども地域医療計画という理念にもとらないような方向で知事に対してさらに指導をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  35. 対馬孝且

    対馬孝且君 随分行政指導しているといったって、これは札幌市の場合なんかは、六十三年度、最終的にことしの六月ですか七月のあれを見ると、相当落下傘的に、これは名前を言ってもいいんだけれども、固有名詞は言いませんけれども、三百床どころでない、落下傘的に五百床ですよ。三百なり五百床がどんと札幌市の西区地域に落下してきている。これはホテルと同じで、いい方に患者が行くというのは心理的な問題です。  だから、そういう駆け込み対策ということでただ行政指導しているといったって、現実にはどんどんこれはふえていっている。それは結構なことかもしらぬけれども、一面では看護婦の問題が出てきており、看護婦の引き抜き料が今札幌で三百万という話です。昔のホステスどころじゃない。一人三百万の引き抜き料、そういうやり方をしている。この間の北海道新聞にこれは出ました。  だから、そういう問題を含めて行政指導していることは結構なんだが、私は、時間もありませんから問題点の幾つか特徴点を挙げてみます。  先ほど申しましたように、最近医療費の地域格差というこういう問題が何で起きているかということについて厚生省はどういう検討をしているのかということでありますけれども、どうも地域住民の患者の責任であると。北海道のとにかく全国一高い入院のベッド費というのは大変なことだ。一番新しいのでいくと、老人医療費一人当たり北海道が、これは六十一年度ですけれども七十四万九千八百七十五円、全国が五十二万一千七百五十円で、全国一高い。この数字はまさにそのとおりです。  そこで問題は、これははっきり申し上げますけれども、地方公共団体が責任があるというふうなことを盛んに吹聴されるんだけれども厚生省は盛んに国庫負担地方自治体にツケを回しているわけですからこの点は極めて遺憾なんだけれども、一体こういう問題については患者の責任であるのか地域の責任なのか、この点どういう理解をしているんですか。その考え方をまずはっきりしてください。
  36. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費の地域差が特に最近問題になってきた一つの要因といたしましては、保険制度改革によりまして特に老人医療費につきましては、これは全体の共同負担というふうな形になってきたわけでございます。これは、先ほどお話をしております負担の公平というふうなことから、高齢者の医療費を共同で公平に負担をしようという考え方が出てきたわけでございますが、それを契機といたしまして、地域間の医療費の不均等ということを一体どういう形で負担をするのが公平であるかという議論が生じてきた、これが背景にあるわけでございます。  そこで、私どもとしては、その問題は単純にだれか特定の者の責任というふうに割り切ることはできない、こう思っております。それぞれに、先ほど申しましたように医療費の増加の要因としてはいろいろなものが考えられるわけでございますので、もちろん、患者あるいは被保険者がやはりその原因になっているという面も考えられるわけでございますしあるいは国もその責任があるというふうにも考えられますしまた地方、それぞれの関係者が責任という意味では責任がある、しかしそれは単一のものではない、このように私は考えているわけでございます。  そこで、昨年、今回の改革案を提出いたします際に私どもが当初そういう考え方から医療費の地域差について提案いたしました考え方は、一定の限度を設けて、その一定の限界を超えるものについては関係者の共同負担という形ではどうだろうか、こういう提案をしたわけでございますが、これについては地方が責任を持てる範囲内にとどめるべきだという反対論が出てまいりましたので、今回の案では、地方がある程度責任を持てる、適正化によって対応し得る範囲内というもので極力そこに絞った形で地方の負担を導入するという決着になったわけでございます。
  37. 対馬孝且

    対馬孝且君 それぞれの立場で責任があり、それぞれの立場で対応せざるを得ない、今のお答えがそういう趣旨のことでございます。  けれども、入院料が高い、増高している、それは北海道の場合は長期間の入院が原因なんだと。北海道に絞って私は申し上げているんです。問題はその認識なんだよ。あたかも患者が悪くて長期入院しているような入院があるんだという理解だと大変な間違いですよ。医者が診断をして入院を必要とする者でなかったら入院を認められないんだから。そうでしょう。医者の診断があって入院するのであって、勝手に入院しますというわけにいかないんだから。  そういう問題については基本的に患者の責任、地域住民の責任であるのかどうかという原点をはっきりしてもらいたい。どうなんですか、その点は。
  38. 下村健

    政府委員下村健君) 長期入院については社会的入院というふうなことも言われておりまして、社会的入院ということ自体については必ずしも明確な定義があるわけではございませんのではっきりいたしませんが、非公式なアンケートによりますと、医療関係者の間でも、一割ないし二割ぐらいは現在病院に入っている者の中で実際には純粋に医療上の観点だけからすると入院の必要のない者が含まれている、このようなことも言われている状況でございます。私ども医療関係者の話を聞きましても、なかなか退院してもらえないものもある、こういう話も出てくるわけでございます。  そういった状況からしますと、これは一概に患者だけの責任というふうに私は申し上げるつもりはございませんが、患者の方もその辺は現在の状況で病院が一番頼りになると申しますか病院が老人を預かってもらう場合に一番預かってもらいやすいというふうな現実があることは事実でございますけれども、そういった面を変えていく必要がある、このように考えておるわけでございます。
  39. 対馬孝且

    対馬孝且君 局長、これは基本的に医師が判断をして入院を認めるのであって、入院したくてする者もいるわけじゃない。  問題は、これは後ほど申し上げようと思ったが時間がありませんからここで申し上げなきゃならぬが、今日、在宅ケアというのはほとんどなされていないでしょう。これは国の、厚生省の怠慢ですよ、はっきり言って。昔の開業医のように訪問看護、訪問体制がとれているならいざ知らず、それができないじゃないですか。  北海道の認識として次の点が問題だということをお認めになるかどうか、私ははっきり申し上げておかなければなりません。  それは何かというと、北海道の実態として日大の先生が分析してこういう指摘をしています。北海道がなぜ医療費が高いか、なぜ入院が長いかということについて四点挙げています。これをお認 めになりますか。私は率直に申し上げますよ。  第一点は、北海道の場合、広大な地域において通院が困難だということですよ、はっきり言って。もっと言うと、道路整備がなされていないということ。これは国の責任なんだよ。僻地と都市との道路整備がなされていないから通院が非常に困難な状態にあることが一つ。時間がないからずばり言います。  第二の問題は、これは統計数字がきちっと出ていますから申しますが、統計数字上、老人夫婦のみの世帯、老人単身の世帯が全国平均に比較して非常に多いんです。これは数字が出ている。これは間違いなら間違いとして言ってもらっても結構。五十九年度は、単身世帯は全国が八・五%、北海道は一〇・三%。老人夫婦の世帯が全国は二〇・五%、北海道はそれに対して二五・七%。単身、老人夫婦世帯が、これだけ全国との格差があるということ。  それから、積雪寒冷の地帯ですから。率直に申し上げて、道東地域に無医村が何ぼありますか。いまだに無医村地区が三十七ある。釧路、根室、網走、あっちのずっと沿岸地帯で言うと。こういう積雪寒冷の地で、入院という状況が起きている。  それから、低所得者が非常に多いということです。はっきり申し上げます。それはなぜかといえば、最近の炭鉱閉山、鉄鋼、造船の構造不況、北海道特有の季節労働者と言われる三十万人季節労働者の滞留、これら低所得者が非常に多いということ。  もう一つ、私も意外だったけれども、これは日大の先生の分析なんだ。僻地へ行けば行くほど電話がついていないというんだよ。全国的な水準でいきますと、人口一万人当たり何ぼの電話個数ということがありますが、この電話個数が極めて少ない。  厚生省はこういう情勢分析をきちっとして、しかる後に対策を立てるということでなければだめじゃないか、私に言わせれば。例えば、あなたが言うように、必ずしも患者の責任ではないけれどもどうしても出ていかない者があるなんというそういう受けとめでなしに、こういう科学的医学的根拠がある。これは私が言っているんじゃないですよ。日大の先生が、北海道はなぜ高いかという医療費分析をやっているんだ。私も、この間、北海道庁で会ってきた。実態調査をしてきました。札幌市もやってきました。私は実際に会って話してきた。そういう結果を私は申し上げているのであります。  まず、厚生省は、そういう認識で今後の対応をすべきではないか。いかがですか、この点は。
  40. 下村健

    政府委員下村健君) ただいま四点、日大の先生が言っておられるというお話があったわけでございます。  これは、そういったことが確かに考えられるかもしれませんが、直接的にそれとの、例えば地域が広大であるということと一体入院がどう関係しているのか、これはなかなか立証できない面がございます。それから、単身世帯が多い、これはお話のとおりではないかと思います。ただ、それと入院が直接に結びつく要素というのはなかなか単純に立証できない。それから、四番の、低所得の問題も、大体同様ではないかと思います。したがって、一、二、四につきましては、明確に断定はできないけれども、そういった事情が存在しているということは御指摘のとおりではないかと思います。  それから、三番の気候の要素でございますが、これは、北海道だけを見ましても季節的に実は入院患者数というのは変動がほとんどないわけでございます。それからもう一つ、例えば、北海道と九州というふうな地域を比べてみますと、入院、受診率についての差が余り出てこない、同じようなパターンであるというふうな現象もございます。したがって、そういった気候の要因については、温暖な地域においても同様なパターンがあるというところから見ると、私どもとしては、どうも気候の要因というのは比較的関連性が薄いのではなかろうかというふうに考えております。  いずれの要素につきましても、私ども、なお今後十分に検討してまいりたいというふうに考えております。
  41. 対馬孝且

    対馬孝且君 私があえてなぜこれを出したかというと次のことを言いたいからです。  つまり、改正案の内容の、指定基準の問題を時間があれば本当は申し上げたかったが、時間がありませんからここで申し上げておきたいのでありますが、そういう実態があるんですよ。これは、何も私が言っているんじゃない、学者がいろいろ分析した結果、要因はそういうものがあるということを指摘されておるわけだ。だから、そういうことを踏まえながら、この地域医療の問題、地域格差の問題はどうあるべきなのかということを私は申し上げたいわけだ。  そこで問題は、何といっても調整対象外医療費の基準の問題なんですよ。時間もありませんから率直に申し上げますけれども、私が調べたところによると全体で百二十市町村あります。そのうちの七十市町村は北海道なんだよ。私が今ここで申し上げたいことはどういうことかといえば、現実の問題として頭打ち一・五で今回も調整されました。しかし、一・五を超える部分はどうなっているかといえば、結果的に保険者地方自治体の責任で解決するわけですよ。一例を言うと、札幌の場合は六十二年度一般会計から繰り入れたのが七十億です。ことしは何ぼだと思いますか、百八億ですよ。  現実に札幌の一老齢者からの訴えがここに出ていますよ。現実の問題として、退職してからの国保が三倍になったと言うんだ。年金生活者で、とても国保を払っておったらあすの不安がつきまとって、いつまで生きられるかという不安が先だと言っているんだよ。二・八倍も上がっていますよ、札幌市は。なおかつ一般会計から百八億の金を繰り入れている。  結果は、どういったって保険者地方自治体負担ではないか、この改正案というのは。私はそう言いたいんだ。それをもう一回やっぱり見直してみることが必要ではないか。見直しの必要がある。  そこで、私が冒頭申し上げたように、抜本的な医療一元化構想というものを目指しながら改正するならするということが大事だったんではないか。これでは、私に言わせれば、多少それは是正されたといっても、保険者地方自治体の責任に帰している、国は結果的にはそれほど犠牲を払っていない、こういう改革であっては改革の名に値しないというのは先ほどこの質問に入る前に私が指摘をいたしたとおりであります。  ここらあたり、今言った一・五の問題、それから一%指導している問題、これだって現に総務庁の調査が出ているじゃないですか。この総務庁の「国民健康保険事業の運営に関する行政監察報告」を見たって、一%行政指導したが従っているものは何%ありますか。私の調べではこんなものは数に値しないでしょう。たった五ないし八でしょう。こういうことを見た場合に、いま一度抜本的な見直しが必要であるということでお伺いしたわけであります。  それらを踏まえて今後どういう対応をしていくか、特に、先ほど申しましたけれども、我々は、これには反対です。この法案は賛成することはできません。しかし、これらを踏まえて、当面の問題としてとりあえず一・五という幅を弾力的に運用するとかあるいは一%行政指導という保険者なり自治体が持ち出す負担の見直しということはできないのかどうか、そこらあたりをお伺いします。
  42. 岸本正裕

    政府委員(岸本正裕君) 先生の御質問にあります一・五という数字でございますが、これは老人保健法に基づきます調整対象外医療費の倍率の数字であると思います。  御承知のように、昭和六十一年の老人保健法改正によりまして加入者按分率が引き上げられました。加入率の高い市町村国保の拠出負担がかなり軽減されまして、国保財政の安定化にも寄与し たところでございます。この調整対象外の医療制度というのは、一人当たりの老人医療費が全国平均に比べて著しく高い保険者につきまして、公平な負担という見地から、一定の基準を超える部分の医療費加入者按分による調整の対象外とするということによりまして、いわば異常値を除いた形で拠出金額を調整するとともに、このような保険者の経営努力を促す趣旨から設けられたものでございます。  この制度の運用でございますけれども、かねてから関係者の間で、この老人保健法に基づきます加入者按分率を導入するに際しましても保険者医療費の適正化の努力というものとあわせて行わなければかえって不公平になるのではないか、こういう御意見がございました。そういう趣旨からこの制度が導入されるに至ったわけでございます。  北海道につきましては、六十三年度はこの調整対象外の市町村が四十九市町村ということになるわけでございますが、前年度に比べますと十二市町村減少しております。つまり、それだけ一・五を超える高医療費の市町村の数が減少してきているということで、中心に収れんしてきている。私どもといたしましては、北海道市町村の御努力もありましてこの医療費の適正化の実が上がりつつあると、こういうふうに理解をしているわけでございます。
  43. 対馬孝且

    対馬孝且君 そういう答弁を聞いているんじゃないんだよ。  私は、一・五というそれと一%の行政指導というのは、それほど実っていないんじゃないかと。だから、当面の対策だといったって、厚生省がそんな答弁をするんだったら、退職者医療制度で今回千八億が何で出てきたんだ。六十二年度で千八億補てんしたわけでしょう、あなた方は。千八億を退職者医療制度で補てんせざるを得なかったということは、何のことはない、四百六万の退職者医療制度の加入見込みを二百二十六万に誤ったわけでしょう。その厚生省の見誤りが千八億の補てんになったんだよ。そんな説明をしたって詭弁ですよ。そういうことを言っているんじゃないんだ、私は。  そういう結果が出ているから、これらに対してもう一度やっぱりそういう全体を見直し、あるいはそういう一・五、行政指導の一%との兼ね合いからいって地方自治体財政負担は限界に来ている、保険者も限界に来ている、ここらあたりをもう一回踏まえて何らかの検討、対応をする道はないのかと、こう聞いているんだから、その点大臣、時間が来ていますから、最後に一言だけお答え願います。
  44. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 調整対象外医療費制度あり方の問題でございますが、これは御指摘の点もございますし、また老人保健審議会でいろいろ議論があったところでございますので、六十五年度に見直しを予定いたしております老人保健制度の見直しの中の一つ課題であるというふうに考えております。
  45. 浜本万三

    ○浜本万三君 それでは質問をいたします。  今回の国民健康保険法改正は、ある意味では一元化の地ならしとも言われておるわけでございますが、先ほど対馬委員からいろいろ質問をいたしましたけれども一元化の姿というものがまだ不明確であります。したがいまして、私は、まず医療保険制度一元化に関する問題から伺いたいと思います。  医療保険制度一元化につきましては、五十九年度の健康保険法等の一部改正案の審議の際、厚生省が六十年代の後半に全医療保険制度における給付負担公平化措置を講ずること等を内容とする保健医療政策長期ビジョンを示されました。しかし、その時期については、後の国会の答弁で六十年代後半のできるだけ早い時期としたところに端を発しておるというふうに思います。  さて、ここ数年来の医療をめぐる制度改革を概観してみますと、老人保健制度の創設やその後の加入者按分率の大幅引き上げ、さらには健保本人の一割負担の導入や退職者医療制度などによって、一元化という大きな流れに向かっての条件整備が厚生省立場から着々と進められてきたところであります。今回の国保法の改正案についても、政府は、一元化に向けての条件整備、段階的な改革一つとして位置づけているわけでありますが、しかし肝心の一元化の中身、最終的な姿は今もって先ほど答弁を伺いましても明らかにされていないわけであります。  今日の時点で大臣は、一元化についてどのようなイメージを持っておられるのか、責任のある答弁を求めたいと思います。
  46. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘のように、医療保険制度におきまして給付負担公平化を図っていく、これは年金一元化とあわしまして大目標であるわけでございます。  その給付負担公平化を図るという考え方につきましては、一本化であるとか一元化であるとか考え方があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、各制度枠組み維持し、つまり各制度は残しながら、その制度間における給付負担は公平を図っていく、つまり一元化を考えておるわけでございまして、そういう考え方から今御指摘のような改革を行ってきたわけでございます。  内容的に申し上げますと、まず第一は、先ほど申し上げましたように、制度基本的な枠組み維持をしていく、つまり一元化給付負担公平化を図る。それから、内容的に第二の点は、給付水準につきましてはおよそ八割程度を考えておるということ。それから第三点は、必要なものは保険カバーをしていく。こういうことであるわけでございまして、六十五年度の老人保健制度また国保制度の帰趨を見きわめながら見直しをしていく上で、この一元化方向もさらに明らかになってくるというふうに考えておるわけでございます。
  47. 浜本万三

    ○浜本万三君 そうすると、医療保険制度一元化の最終的な姿、具体像につきましては、今大臣から答弁をいただきましたように、現行制度前提として一元化のための措置を請じていくということになると思います。  これは、現行制度を解体するということでなくして、全医療保険制度の完全な統合一本化ではなく、被用者保険と地域保険という現行制度基本的枠組み維持する中で給付負担公平化一元化を図っていくという趣旨に理解してよろしゅうございますね。
  48. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) そのとおりでございます。
  49. 浜本万三

    ○浜本万三君 そういたしますと、一元化のおよそのイメージ方向が確認ができたわけでございます。  次は、その時期はいつかということをお伺いしたいわけです。  一元化の時期については、長期ビジョンでは六十年代の後半とされ、その具体的な時期については、今回の法案審議においても大臣が、今度は六十年代後半のできるだけ早い時期というふうに方針が明確になっておるわけでございます。それがいつなのかは今もって不明なのであります。  政府は、本法律案のねらいについて、国保制度の基盤強化、運営の安定化を図ることにより一元化に向けての前提条件を整備するものであると説明されておるわけでございますが、そうであるならば、当然のことといたしまして一元化のはっきりした時期とそれに向けて今後どのような改革を積み上げていくのか、タイムスケジュールと具体的な改革項目を明確にする責任があると思うんでありますが、その点いかがでございますか。
  50. 下村健

    政府委員下村健君) 六十年代後半ということで一元化の時期を申し上げてきたわけでございます。これは五十九年の退職者医療制度の創設等被用者保険本人の給付率八割というふうな改革を行ったわけでございますが、その時点でそういうことを申し上げ、その後も一応その方針をとってきているということでございます。  ただ、現在までの医療保険制度改革の流れを振り返ってみますと、五十九年に八割給付という提案をいたしまして、現実には九割ということで、八割の実施についてはさらに慎重に検討した上、国会の御承認をいただいた上で実行するという形になっております。  それから、次いで老人保健制度改革ということは取り組みまして、段階的に一〇〇に上げたいという提案をしたわけでございます。これも、実は、六十五年にもう一遍見直しをした上で按分率を一〇〇にするかどうかということを決定すべきだ、こういう形に変わってきているわけでございます。  それからさらに、今回の国保改革でございますが、私どもとしては、国保給付水準等の問題も含め当初検討に入ったわけでございますけれども、現実の検討結果としては、実は二年間の暫定措置という形で国保制度改革も終わっている、こんな状況でございます。  したがって、現在残っております問題は、給付率の問題、それから老人保健制度按分率をどうするかという問題、それから国保制度の問題、それからさらに最終的に一元化をどうするかという問題、これらをあわせて、六十年代後半といいますと六十五年も入ってくるわけでございますけれども、全部六十五年にやるのかどうか、ここらが実は非常に大きな問題であろう。私どもとしては、今後国保制度改革も実行に移しながら、そういった展望を踏まえて検討を進めていくことになるわけでございますが、これらの経過からしますと、全部一挙にということもなかなか現在の、これは一元化につきましては今後さらに関係審議会等で十分に御審議をいただく問題でございますが、現在までの流れ、現在の状況からしますと、全部を一遍に六十五年実行というのもなかなか難しいかなというふうな感じもいたしているわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、やはり段階的に実行していくという形が適当であろうかというのが、これはまだ政府としての最終的な結論というふうなことではございませんが、これまでの経過等を踏まえて考えますとそのように思われるわけでございます。
  51. 浜本万三

    ○浜本万三君 六十年代後半の早い時期というのは、先ほど対馬委員から質問があったように、もうまさに目前の状態になっているわけです。  そういう中で、国保と老健法の見直しも一元化前提ということであるならば、一元化のゴールとそれに至るプロセス、改革内容をやっぱり明らかにされなきゃならないんじゃないかというのが私の気持ちでございますが、その点いかがですか。
  52. 下村健

    政府委員下村健君) できるだけ速やかにそういった方向を示していくべきだという点については、私どもも同様に考えているわけでございます。  ただ、現実の一元化に関する関係者の状況を見ますと、一方において一本化というふうな議論もある、それから一元化自体につきましても、現在の進め方でもなお早きに過ぎるというふうな被用者保険側のかなり強い反対論もある、こんな状況でございます。  したがいまして、私どもとしては、こういった状況を踏まえますと、やはり一元化について十分に審議を尽くしながらできるだけ早く明らかにしていきたい、厚生省の気持ちとしてはできるだけ早く一元化方向を示してまいりたいと考えておりますが、審議会における審議の状況あるいは関係者意見がかなりまだ離れているというふうな状況からしますと、なおさらに十分な検討を尽くしていく必要があるというふうに考えているわけでございます。
  53. 浜本万三

    ○浜本万三君 誤解してもらっちゃ困るんですが、私は何が何でも一元化しろということを言っていないんですよ。医療制度改革になるような一元化ならば、その内容によっては私どもは賛成する立場なんですが、今厚生省が進めておるように、とにかく患者には負担を強要し、それから国庫補助金を削減いたしましてすべて他の保険者にその負担を強いるようなそういう形での一元化というものについては賛成をしていないわけです。そういう立場で質問していることを、誤解のないようにしてもらいたいと思います。  関連して伺いたいんですが、先ほど一元化の問題について給付負担の問題が議論をされております。負担の問題については対馬委員から議論がございましたので、私は国保給付率の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  つまり、一元化の際の給付水準につきましては、長期ビジョンでは八割程度で統一、先ほど局長はそういう趣旨の答弁をなさっておられます。そこで最大のネックとなるのは、いかにして国保給付率を八割に引き上げるかということだろうと思います。したがって、政府はいつ国保の八割給付を実現するおつもりなのか、お尋ねをいたしたいと思うわけです。  また、その場合の八割は、当然、定率で八割ということでなくてはならぬと思います。先ほど対馬委員の質問に対しましても、また私ども資料を見ましても、実効給付率は七八・七になっておることは御承知のとおりであります。したがって、八割ということは、当然、これは定率でなくてはならないと思います。五十九年時点での大方の理解もそうであったと思いますが、その点を確認をしておきたいと思います。
  54. 下村健

    政府委員下村健君) 国民健康保険の八割給付という問題につきましては、昨年の国保問題懇談会におきましても一つの問題点として御議論をいただいたわけでございますが、国保現状からいたしますと時期尚早ということで、ほとんどの委員が反対であったということで今回は見送りをすることにしたわけでございます。  したがって、この問題は、国保につきましては引き続き検討をいたしまして六十五年にまた再度改革をお願いすることになると思っているわけでございますが、その検討の中での一つの重要な課題であろうというふうに考えているわけでございます。  それから、八割の給付内容でございますが、八割給付にするかどうか、この点についてもしたがって実はまだ結論が出ていない問題でございます。お話のように八割程度給付といった場合に、八割の定率給付というふうに理解された方が多かったというふうに私どもも考えておりますけれども、八割に定率給付をいたしましてそれに大体現行程度の高額療養費制度をつけるということになりますと、八三ないし四程度実効給付率になろうかと思います。そういたしますと、現状から比べて総体として約五%近い給付改善をやる、その財源について現状維持についての安定的な財源の確保という面でも実はいろいろまだ問題が残されているというふうな状況でございますので、やはりこれは財源問題とあわせて一体どういう給付の形がいいのかという点はさらに検討を加えるべきではないかと考えているわけでございます。
  55. 浜本万三

    ○浜本万三君 私が思いますに、いずれにしましても、一元化方向に政策を進めていこうとする場合の給付率の問題は、やっぱり国保給付率だというふうに思うわけですね。そういう問題がはっきりいたしませんと一元化への地ならしとしての国保改正案にそうにわかに我々の意思表示をすることはできない、こう思うわけでございます。  なお、先ほどから質問をしておりましてどうも不明な点は、一元化の時期、タイムスケジュール、ゴールに至るそのプロセスあるいは先ほども申した給付内容等が不明確でございますので、もう少しわかりやすく私どもに説明願えるように御検討をいただきたいと思うわけです。これは宿題にしておきます。  それから次の質問は、今回の改正案では、四つの主要項目のうち、保険基盤の安定制度、老人保健拠出金に係る国庫負担の見直し、それから高額医療費共同事業の強化拡充に関する措置の三つが六十三年度、六十四年度の暫定措置ということになっております。また、六十五年までには老人保健法の見直しも行われることになっておるため、六十四年度にも二つの法改正が必要ではないか。 先ほど局長は、どうもそうではないというふうな趣旨の答弁でございましたが、私は二つの法改正が必要となるわけだと思っております。これらは一元化とはどのように関連づけられるのか、これはぜひお尋ねをしておきたいと思うわけです。  六十年代後半のできるだけ早い時期とは言うまでもなく六十五年ということになるわけでございますが、二つの法改正一元化は同時に行われないという話でございましたが、どのくらい時期がずれるのか、そういう点についてひとつ明確に答弁を願いたいと思います。
  56. 下村健

    政府委員下村健君) お話のように、六十五年度までに予定されている制度改革ということになりますと、老人保健法改革とそれから国民健康保険法改正をまたお願いするということではないかと思います。その際に、一元化との関係、これは当然一元化というものを頭に置いてこの二つ改正改革に取り組んでいく、この点については疑いのないところでございますが、一元化内容をこの改革にあわせて実行するのかどうか、これはさらに検討を続ける必要がある、このように申し上げたわけでございます。  現状からあるいはこれまでのいろいろの改革の経緯から考えますと、私どもとしては、給付改革に向けて段階的に進んでいくということになりますと、一元化の問題はこの二つ改革の帰趨を見きわめてさらに次の段階の問題として考えることが適当ではなかろうか。これはさらに今後関係の審議会において御検討いただくわけでございますので断定はできませんが、私どもとしては、段階的な改革を進めることが適当ではなかろうか、このように考えているわけでございます。
  57. 浜本万三

    ○浜本万三君 大体考え方はわからぬでもないんですが、そこに厚生省のやり方に対する疑惑が出るんですね。常に先ほど私が指摘をいたしましたような疑惑が出るわけですね。だから、できるだけ早く厚生省一元化への道筋をはっきりさせるような政策をとって、医療制度に対する厚生省の信頼をぜひ回復してもらいたいということを希望しておきたいと思います。  それから次は、医療の適正化対策並びに高医療費市町村の運営の安定化という問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、医療費の適正化対策について伺うんですが、医療費の適正化対策では、第八十二回国会で健保法案審議の際、厚生省が本院社労委に提出いたしました「医療保険制度改革基本考え方について」というのがあるわけでございます。これは十四項目から成っておりますが、その八項目目で「適正な医療費支出対策の推進」というのがございます。これを昭和五十三年度から実施するということになったわけでございます。ちょうどことしはこの発足から十年を経過いたしました。  したがって、今日、医療費の適正化対策はどのような形で充実されてきておるのか、概括的な説明を求めたいと思います。
  58. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費適正化対策でございますが、いわゆる適正化対策というのは、審査の面、それから診療報酬合理化といった問題、そういった側面の問題になってくるわけでございますが、五十三年度以降とった措置ということで御説明を申し上げたいと思います。  まず第一は、指導監査体制の強化ということで、顧問医師団というふうなものを厚生省に設けまして、医療の高度技術のような問題に対応するためにそういった体制をとったということがございます。  それから、レセプト審査の強化という側面で社会保険診療報酬支払基金、これは連合会の方も同様でございますが、特別審査委員会というふうなものを設けまして、これは高額な医療費についての特別審査を実行いたしております。  それから、薬価基準の適正化という側面につきましては、五十六年の六月にこれは相当大幅に全面改正をやって薬価差の縮小に努めたところでございます。またさらに、五十七年以降は、中医協の答申を受けまして薬価の新しい算定方式を決めまして、それ以降毎年薬価の改定を実行いたしたところでございます。次いで昨年、昭和六十二年にはこの新しい方式をさらに改定いたしまして、今回薬価の全面改定を行ったところでございます。  それから、診療報酬合理化の面からいいますと、昭和五十六年の改定におきましては、多項目検査の包括化ということで検査の合理化に取り組んでおります。それから、五十八年には、老人保健法の制定に伴いまして老人の診療報酬制度を別建てとして設けましてその合理化を進めているところでございます。六十年、その後、逐次診療報酬の改定をやっておるわけでございますが、新しい点を拾って申しますと、在宅医療の推進、それから医療法等との関連を考慮いたしまして、オーバーベッドに対する措置でありますとか長期入院に関する診療報酬の合理化といった問題に取り組んでいるところでございます。  概括的な事情を申し上げると以上のとおりでございます。
  59. 浜本万三

    ○浜本万三君 これまでの経過はよくわかりましたんですが、六十三年度の医療費適正化対策を見ますと、指導監査、レセプトの点検及び審査、医療費通知等、従来のやり方を充実強化する方向で対応するという方針のようでございますが、医療費水準を適正なものにとどめるためには、何といいましても健康づくりや医療の供給面を含めた総合的な医療費適正化対策の推進が重要であると思います。  この問題についてはどのような形で取り組んでおられるのか、説明をいただきたいと思います。
  60. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) おっしゃいますように、我が国国民医療をめぐる状況は非常に変化をしておるわけでございまして、医療費適正化対策については、今保険局長からお答えになりましたように、五十三年度以来充実強化をしてきておるわけでございます。  今、先生御指摘の供給面での対応でございますけれども、私どもといたしましても今まで五十三年からやはり健康づくり対策ということで打ち出してまいりましたけれども、今度新たに次の十年を目指しまして栄養、休養のほかにさらに運動を入れました「アクティブ80ヘルスプラン」という名前で、健康づくりのための運動指導者の養成でございますとか健康増進施設に対する各種施策の実施を通じて運動週間の普及を図るというふうなことで健康づくりを目指すというのが第一の着眼点でございます。  そのほか、御指摘のございました医療供給体制につきましては、先ほども若干お答えいたしたわけでございますが、医療計画を作成いたしまして地域医療のシステム化を図って、病院の機能分担あるいは病院と診療所の機能連携というふうな形でのシステム化、さらにはプライマリーケアを重視した家庭医機能と申しますか、そういう形でのプライマリーケアを普及、定着させるようなことで施策を進める、あるいは、在宅医療につきましても訪問看護を含めましていろいろの新しい対応を考えたらいかがか、さらには末期医療あり方というのも非常に問題でございますので末期医療をどういうふうにしたらいいかというふうなことでの検討を進めるとか、あるいは患者サービスあるいは入退院の基準の問題等、いろいろ問題もございますので、新しい高齢化社会あるいは多様化する患者サイドあるいは国民のニーズに対応できるような施策を展開すると同時に、医療従事者の資質の向上とか新しい形での老人医療のガイドラインとかいろいろな形で、私どもとしても、二十一世紀へ向かって国民の健康づくり、さらには包括的な医療供給体制の確立を目指したいと考えておるところでございます。
  61. 浜本万三

    ○浜本万三君 ぜひひとつ積極的に推進をいただきまして、完全な医療制度の確立とそれから医療費増高を防ぐような手だてを講じていただきたいと思います。  それから、ちょっとこれは議論を絞りまして、医療費増高要因の問題についてお尋ねするんですが、これは、私、先般も実は老健法の審議のときにも質問をいたしまして厚生省から御答弁をいた だいたことを今思い出しておるわけでございます。要するに、医療費増高の要因の大部分という人もおるんですが、私は、非常に積極的な医療行為を行っているお医者さん等もおられますから、その一部というふうに申し上げておきたいと思うんですが、実は、供給側の要因によってもたらされているということはないだろうか。積極的にこの問題を取り上げようとしておる人は、動かしがたい事実であるというふうに申されておるわけでございます。すなわち供給が需要をつくり出し医療費をとめどなく引き上げているのが今日の医療の姿でないかという議論もございます。今こそ医療費の支払い方式や医療の供給制度にまで踏み込んだ医療制度改革が必要ではないかということを強く求めておる意見が多いわけでございます。  こうした形での改革をせずに、国庫負担減らしのため、医療費を地方やそれから被用者保険にツケ回したり、給付水準の切り下げという形で安易な一元化を強行するならば、医療保障制度は衰退の方向に向かってしまうと考えられるわけでございます。抜本的な医療制度改革に取り組む姿勢を大臣から承りたいと思います。
  62. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 医療費の問題につきましては、問題は国民の健康を守るために適切な医療が行われているかどうかということにあると思うわけでございまして、医療費の適正化問題は重要な課題であると思っております。  先ほど来御答弁申し上げておりますようないわゆる適正化対策、レセプトの問題とか診療報酬、薬価基準の問題とかそういういわゆる適正化対策とあわせまして、供給につきまして良質な医療を効率的に供給するシステムづくりをするということも結果として医療費の適正化につながっていくというふうに考えておるわけでございます。  こういう基本的な考え方に基づきまして、これからも老人医療の見直しであるとか医療計画の推進また診療報酬の合理化等、必要な施策を逐次実施してまいらなきゃならぬ、かように考えております。
  63. 浜本万三

    ○浜本万三君 医療費増高の一つとしてベッド数と医療費との関係がよく言われるわけでありますが、その問題について質問をしてみたいと思います。  今日、一ベッドに対しまして年間どのぐらいの費用がかかるかという点については、先ほど局長から四百三十五万円という答弁がなされました。また、都道府県別の医療費格差を見ますと、医師の数、ベッドの数と相関関係があるように思われる資料が出ておるわけでございます。  さて、そういう中で私どもは、無理やりにベッド数をふやすということは医療費の増高になるということで随分この問題については注意深く見守っておったわけでございます。  ところで先般、地域医療計画の策定によって、無秩序、野放し状態であった地域の医療が体系化されること自体は、私もこれは一歩前進だというふうに思います。しかし、そこで問題なのは、地域医療計画公示後の病床規制を回避するため、いわゆる駆け込み増床が全国的に起きておるという指摘がございます。これは先ほど対馬委員からもお話があったとおりです。こういうことがあらかじめわかっておりましたので、先般の老健法のときに私は随分この点を指摘いたしまして、厚生省から厳重な指導をしてもらうように要望をしたところでございます。  現在、政府はこの実態をどのように把握されておるのか、またどういう手だてをされたのか、あわせてお知らせをいただきたいと思います。
  64. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 先ほどもお答えいたしたわけでございますけれども、六十一年の一年間のいわゆる新規の開設許可病床で申し上げますと、六万五千六百十六床が六十一年の一年間でございますが、これを医療法の施行前の六十年と比較いたしますと一・三九倍でございます。それから六十二年の新規開設許可病床数で申し上げますと七万二百六十五床でございまして、同じく六十年と比較いたしますと一・四九倍ということでございまして、この中に従来の増床のほかに、いわゆる駆け込み増床というのが含まれておるというふうに考えておるわけでございます。  私ども、この駆け込み増床それ自体は極めて好ましくない、医療計画の策定、さらには推進の上から好ましくないという基本的な考えに立っておるわけでございまして、事前に調整をするようなことあるいはそれぞれよく話し合いをしていただくというふうな形で駆け込み増床をできるだけ抑えるという方向で努力をしてまいってきておるところでございます。
  65. 浜本万三

    ○浜本万三君 重ねてこれはちょっと注文をつけておきたいと思うんですが、要するに、ベッド数の増加が医療費の増大を招いておる、そういう点は非常に明確になっておるわけでございます。また、さきの医療計画に関する医療法の改正は、もともと地域における体系的な医療供給体制を確立するということにあったと思います。無計画、不適切な病床の増加を抑制し医療資源の効率的活用を図ることを目的としたはずであります。  そのような医療法の理念からすれば、駆け込み増床に対しましては、厳正厳格な行政側の対応とそれから一刻も早い地域医療計画の策定が必要となると思うわけでございます。厚生大臣としては、今後どのような積極的な姿勢で取り組む御覚悟であるか、御答弁をいただきたいと思います。
  66. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 駆け込み増床問題につきましては厳しく取り組むべきであるという御指摘、私もそのとおりだと思っておるわけでございまして、今までもそうでありましたが、今後もこの問題につきましては厳正な態度で対応してまいりたいというふうに考えております。  それから、地域医療計画の問題でございますが、未作成の都道府県に対しましては一日も早く計画を作成するよう現在強力にお願い、指導しているところでございます。
  67. 浜本万三

    ○浜本万三君 我が国の病院のベッド数は地域によってかなり差があるという資料を拝見しております。こうした状況の中で、全国一律に基準医療費を設定いたしまして、超過費用額を都道府県、市町村に負担させることは、もともと無理であると私は思うわけでございます。  それについての御見解はいかがでございましょうか。
  68. 下村健

    政府委員下村健君) お話しのように、各都道府県ごとに相当の差がございます。したがいまして、一応全国的に統一的な基準は決めるわけでございますけれども、その基準におきましては、年齢構成のほかに、例えば原爆でありますとか災害等の特別事情を考慮するということになっておりますが、ベッド数につきましても、これを直ちに現在の差というものを解消するということもなかなか短期的には難しいという側面がございますので、ベッド数の格差についてもある程度地域差というものを考慮した上で基準を設定するということで対応したいと考えているわけでございます。
  69. 浜本万三

    ○浜本万三君 次は、保険基盤安定制度の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  保険基盤安定という名のもとに、低所得者に対する保険料軽減分を補てんする一千億円の事業が今度進められることになりました。国と地方の負担で実施していくということでございますので、これは至極もっともらしい話に見えるわけでございます。国は既に療養給付の半分を持っているから国庫負担の増減はないという説明になっております。  そこで、この事業に新たな地方負担を導入する理由はどこにあるのか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  70. 下村健

    政府委員下村健君) 低所得者に対する保険適用という問題は、皆保険以来実は保険制度の上では非常に大きな問題だったわけでございます。  これまでは、保険制度の完全な枠内で、保険料軽減による収入減につきまして保険料軽減費交付金といった形でその補てんを行ってきたわけでございます。これにつきましては、保険制度の中だけでやってまいりますと、軽減費交付金の額が年年増大して調整交付金の財政調整機能が低下していくという問題がございます。また、低所得者対 策を果たして保険制度の枠の中だけで考えていいのかどうか、福祉的配慮と申しますか福祉行政の体系で考えてはどうかという考え方もあるわけでございます。  そういった観点から、私どもとしては、今回はそういう福祉行政的な観点という面に立ちまして都道府県、市町村に一定負担をお願いするということを考えたわけでございます。
  71. 浜本万三

    ○浜本万三君 引き続いてお尋ねするんですが、将来そういう低所得者の方あるいはまた保険料軽減世帯というものはますますふえてくるんではないか、減少することはないんではないかという見通しを私は持っております。したがって、事業規模は拡大をするということになると思います。その際、国の負担は変わらないが、地方の負担は漸増していくことになると思います。  しかし、それでは余りにも地方に負担をかけ過ぎることになりますので、当然国も応分の負担を並行して行っていくということが必要ではないかと、かように思いますが、その点どうでしょうか。
  72. 下村健

    政府委員下村健君) 低所得者の状況でございますが、低所得者の総体としての絶対数は余り大きくは動いていない。ただ、国保加入者との関係で見ますと、これは、国保加入者全体がやや微減と、こういう格好でございますので、国保制度の中だけで対処しようとするとこれは国保制度にとっては大きな負担になってくるということでございます。  国庫負担と地方負担との関係でございますが、低所得者総体の数が不変といいましても医療費がふえるという問題もありますので、確かにこれに要する事業費の額というのは若干程度伸びていくということでございますが、その場合におきましても国も定率で一定負担をするということでございますので、国も地方も両方ふえてくる、こんな格好になるわけでございます。  いずれにいたしましても、低所得者問題というのは国保の構造問題として非常に大きな問題でございますので、今回の措置の実施状況を十分検討いたしながら、さらに検討を続けてまいりたいと考えているわけでございます。
  73. 浜本万三

    ○浜本万三君 しかも、後で私が問題にしたいというふうに思っておるんですが、厚生省のからくりの問題がどうも見えるわけですね。  地方負担の導入で軽減された保険料負担分五百億でしたと思いますが、は、老人保健拠出金の国庫負担率引き下げで相殺されてしまっておると思います。これでは国庫負担減らしの地方負担導入とも言えるのではありませんか。また、財政の健全化にも役立たないことになると思いますが、その点はいかがですか。
  74. 下村健

    政府委員下村健君) 今回の改革は、ただいまお話しになりました二点だけではございませんで、そのほかに高額医療費の共同事業の拡充といった問題等も含まれておるわけでございます。そういった今回の改革全体を通じまして保険料負担は総額で二百四十億円、一世帯当たり千七百円の負担緩和の効果が生ずるというふうに考えておりまして、その点については改革一つのねらいといたしました負担軽減という側面の効果も私どもとしては期待できると考えているわけでございます。  国と地方との関係という側面から見ますと、今回の改革に伴って生じました地方負担六百九十億円につきましては、地方に対する財源措置も特別に講じておりまして、国の一般会計総体としてはむしろ負担増という形になっておりまして、国庫負担だけが減るということではないわけでございます。  したがいまして、総体といたしまして地方負担転嫁ということではなくて、国保の安定に寄与し、国としても相応の努力をいたしているというふうに考えているわけでございます。
  75. 浜本万三

    ○浜本万三君 どうもそういう答弁は理解できないんですが、引き続いて次の質問をいたします。  市町村国保財政状況を見てまいりますと、先ほど来御質問があったように、一般会計からの繰入金が年々増加しております。六十年度一千七百六十一億円、六十一年度の決算では二千二百六十九億円というふうになっておりまして、一年間で約五百億円も負担がふえておるわけでございます。この一般会計からの繰り入れという実態について厚生省当局はどのように判断されておるか、やむを得ないというふうに思っておられるのか、望ましくないというふうに思っておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。これは保険制度上ですよ。  また、新しい制度のもとでの地方負担の導入は、当面は地方交付税の特例であったり、不交付団体には特別地方債の発行を認めるということで一応対処しておられますが、現在の一般会計からの負担はだれの負担になっておるというふうに思われますか。その点、お尋ねをいたしたいと思います。
  76. 下村健

    政府委員下村健君) 国保事業の財源といたしましては、基本的には保険料国庫負担中心になるべきものだ、現在の一般会計繰り入れの額はそういう観点からしますとかなり大きな額になり過ぎているのではないかと、このように考えられるわけでございます。  繰り入れの実態を見ますと、国保事業の運営主体である市町村がいろいろな自主的な判断によって保険料のかわりに一般会計繰り入れを行っているということになっているわけでございます。一般会計繰り入れの事由は、これはその市町村ごとにいろいろな理由をつけて繰り入れをしておられまして、保険料負担の緩和を目的とするのが相当の部分を占めているわけでございますが、そのほかに政策的な配慮、これは公費負担医療の形で、例えば障害者に対する医療を実行するとかいうふうな場合、それに対する国保負担緩和というふうな形で繰り入れておられるというふうなものも含まれているわけでございます。また、そのほかに事務費への補助でありますとかいろいろなものがございまして、それらの総体として繰入額が増大してきているという状況にあるわけでございます。  現在の国保制度の上では、地方のそういった自主的な判断というふうなものを一応認めているということになっておりますので、これを直ちに禁止するというふうなことはできないわけでございますが、私どもとしては国保制度の今後の一つの問題点であろうというふうに考えております。
  77. 浜本万三

    ○浜本万三君 これは申すまでもないんですが、要するに、地方の税負担は、住民税を初め地域住民の負担となっておるわけです。つまり、地方の税負担はその地域住民の負担となっておるわけです。住民税は相当のウエートで給与所得者負担となっておるわけでございます。これはもう御承知のとおりです。医療保険の中で地方負担を住民税負担で行うことは、現在の被用者保険者側からの財政調整、拠出金とあわせて考えると二重、三重の負担になっておるということもひとつ十分念頭に置きまして、この問題についての助成を図ってもらうように希望しておきたいと思います。  次は、保険料軽減基準の緩和の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  資料を見ますと、世帯当たりの平均所得も百五十万円程度、しかも百万円以下の所得の方が全世帯の四三%もおられる。軽減世帯は二九%にもなったというような状況でございまして、大変これは問題だというふうに思います。  そこで、私はこの軽減基準を緩和してもらいたいという希望を持っておるわけです。現在の軽減基準は、市町村民税の基礎控除額をもとにして定められておると聞いておりますが、低所得者の負担が重くならないよう毎年見直しも行われておるようでございます。六十三年度は、基礎控除額二十六万円に対しまして二万円ほどふやして二十八万円になったというふうに聞いておるわけでございます。しかし、私はさらにこれを見直してもらいたい。もう少し思い切った基準の緩和を行ってもらいたいという意見を持っておるわけでございますが、この点につきましてはどのような御見解でありましょうか。
  78. 下村健

    政府委員下村健君) お話しのように、国保税の軽減基準は、地方税法の規定上、市町村民税の基礎控除額と同額が原則とされているわけでございます。  近年、市町村民税の基礎控除額の引き上げがおくれておりましたので、五十六年以降は特別措置を講じまして、基礎控除額よりも高い水準を六割軽減の基準とすることによりまして低所得者の保険料負担の緩和を図ってきたわけでございます。五十九年度から六十二年度までは、基礎控除額二十六万円に対して二十八万円というふうな形で実行していたわけでございますが、先般の地方税法の改正によりまして基礎控除額が二十八万円に引き上げられたということで、六十三年度は同一額になったわけでございます。  今後どうするかということでございますが、市町村民税の基礎控除額の推移を見ながら、税務の方との関係もございますので税務当局とも十分協議をしながら検討を進めてまいりたいと考えております。
  79. 浜本万三

    ○浜本万三君 これは、昨年度はこの基礎控除額よりも二万円プラスした、今度は基礎控除額どおりになったというのは、政策の後退ということになるわけなんですよ。しかも、今減税問題が議論をされておるわけでございまして、六十三年度以降減税が実施されることは与野党の交渉におきましてもほぼ間違いないというふうに思っております。  そういう観点から言えば、今までのような考え方を六十三年度以降もやはりやっていただく必要がある、つまり市町村民税の基礎控除額に幾らか上積みをする、こういう取り扱いをしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  80. 下村健

    政府委員下村健君) これは、現在は、先ほども申し上げましたように、基礎控除額相当額というのが原則になっているわけでございます。  ただ、今後の問題として考えますと、低所得者問題というのは今回の制度改革の実行状況を踏まえながらさらに検討を続けるということになりますので、その際の論点の一つであろうかと思いますが、問題の本質といたしましてやはり低所得者につきましても保険制度を適用するというところが基本的な考え方としてございますので、そういう観点からいたしますと、低所得者につきましてもその保険料水準というものは医療費と関連を持って動かしていくというところが一つ入ってくるだろうと考えられるわけでございます。  一方、税の方は、基礎控除額自体は国保とは直接の関連性を持っておりませんのでその点をどう考えるか、これはかなり基本的な問題になると考えられるわけでございます。しかしながら、低所得者問題をどうとらえるかという観点からいたしますと、一つの今後の検討課題であろうかというふうに考えております。
  81. 浜本万三

    ○浜本万三君 これは、私もまだもう少し厚生省にその善処を期待するわけです。一回やってことしはやらぬというばかな話はないわけでありますので、これは宿題にしておきたいというふうに思います。  それから次は、高額医療費共同事業の問題についてお尋ねをいたします。  今回の政府案は、現在の制度前提とし、事業規模をマクロでは二倍にするものであると理解しておるわけですが、それでよろしいかどうかということ。  それからもう一つは、その際交付基準はどのように拡大していく考え方であるか、この点もお尋ねをいたしたい。また、経営主体を現状のままだとするならば、その事業規模はどの程度まで拡大させていくのが妥当だと考えられておるのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  82. 下村健

    政府委員下村健君) 高額医療費の共同事業でございますが、現在の全国的な規模がおよそ二百億程度の事業規模というふうに考えているわけでございます。これに対して新たに都道府県等の助成を期待するということでございますが、これと合わせて大体二倍程度の事業規模になるだろうというふうに私どもとしては期待をいたしているところでございます。  その補助のあり方につきましては、具体的には各都道府県の裁量という面が入ってくるわけでございますが、私どもとしては、交付基準額について現行の平均百万円から健康保険組合が実施しております八十万円程度にとりあえずは改善するということを目途としてはどうか、これを行いますと事業規模が直近実績の約二倍弱、三百八十億円程度に達するというふうに考えているわけでございます。
  83. 浜本万三

    ○浜本万三君 いずれにいたしましても、政府の今回の共同事業案は国庫負担わずか十億ということであります。十億を除きますと、ほとんどの事業費は新たな都道府県負担ということになるわけでございます。そうなってまいりますと、都道府県営事業というふうに申しても差し支えないんじゃないかと思います。将来、その部分を拡大していくならば、これは実質的にさらに県営化の色彩が強くなってくると、こう思います。  そこでお尋ねするんですが、新たに都道府県段階の負担を導入した理由はどういう点にあるかということ。それから第二は、国庫負担額十億円計上の説明はどのようになさるのかということ。三番目は、高額医療費についても応分の国庫負担がなされていることはこれは私も承知をしておりますが、高額医療費について補助の方法に対する考え方を変えてもっと増額をすべきではないか、かように思いますが、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  84. 下村健

    政府委員下村健君) まず第一は、都道府県負担の理由でございますが、高額医療費共同事業は、同一県内で各市町村の再保険として高額な医療給付の発生の危険を分散するために行っているわけでございます。特に、小規模な市町村国保の経営の安定を中心に重要な役割を果たしているというふうに認識をいたしております。こういった事業の重要性というふうなことを考えまして、今般、広域的な見地から市町村間の調整を行うという立場の都道府県にも補助をお願いし、その強化拡充を図ることにしたものでございます。  それから二番目は、国庫補助十億円の考え方でございますが、給付費自体につきましては、国保制度医療費全体と同様に、当然給付面についても同様な国庫負担がなされているわけでございます。したがいまして、国の補助十億円は、各都道府県に設立されております国保連合会が市町村国保の共同事業として保険者の経営安定化のために実施する事業に対して補助を行うことにしたものでございます。  具体的な内容で申しますと、高額医療費共同事業の事務に要する費用のほか、市町村保険者ごとのデータの整備あるいはレセプト点検の指導強化等保険者の共同の事業として適切なものあるいは市町村職員の保険運営についての研修会、講習会の開催等について補助をするということを考えているわけでございます。  国の補助のあり方が第三の問題でございますが、国の補助のあり方については、共同事業の対象となる高額医療費につきましても、これは国保給付費でございますから、その二分の一については国庫負担が行われているわけでございます。私どもとしては、社会保険という性格から考えますと、二分の一が一つの限度として考えられるわけでございますが、今回の改革におきましては共同事業の重要性という点も加味いたしまして十億円さらに特別の補助をしたということで、この体系を大幅に変えるというふうなことは困難ではないかと考えております。
  85. 浜本万三

    ○浜本万三君 次は、老人保健拠出金と被用者保険の拠出金の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  今回の国保改革で全く理解しがたいものがあります。それは老人保健拠出金にかかわる国庫負担の見直しということでございます。国保の老人保健拠出金の拠出方法を見直すという美名のもとに六十三年度予算で国庫負担を四百六十億円減額いたしまして保険料負担に押しつけている策は、これは全く理解することができません。この点どの ように説明されますか。
  86. 下村健

    政府委員下村健君) 老人保健拠出金にかかわる国庫負担は、国保の現在の体質が非常に脆弱であるというふうなことも考えまして、特例的に高い水準が設定されているわけでございます。  今回の措置は、保険基盤安定制度の創設等によりまして国保制度財政体質が改善されるといったこと等を考えまして、一方、国保財政への影響といった点も十分配慮いたしまして、この現在の特例的に高い国庫負担率を調整しようということでございます。ただ、国保国庫負担、原則二分の一というふうに考えているわけでございますが、これを一挙に二分の一ということではありませんで、二分の一の国庫負担率と現状の特例的な国庫負担率とのちょうど中間あたりの国庫担負率という点に設定したものでございます。
  87. 浜本万三

    ○浜本万三君 これは、いつも適当な理屈をそういうふうにつけられるんですが、その結果どういうことになったかというと、国庫負担率は、六十三年度予算ベースでいくならば五六・一%が五二・五%に引き下げることになっておるわけです。  そもそも、この負担率の引き下げ分は、先に四百六十億円ありきで、三・六%の引き下げは後からつけた理屈ではないかというふうに私は思うわけです。余りにも国庫負担減らしが先行しており、理由は後からつけるという実態が明確になっておるわけでございます。これは、数字合わせをいたしますと、概算の段階でこの縮減額が二千六百億円だったでしょう。それをどうして埋めていったかというと、九百億円は年金、残り千七百億円を医療費で埋めよう。で、適正化を一千二百五十億円、残りが四百五十億円になるわけなんでございまして、まさに厚生省のからくりがここに出ておるんではないか、かように思いますが、いかがですか。
  88. 下村健

    政府委員下村健君) 四百六十億円が先にあったのではないかというお尋ねでございますが、私どもとしては、そういったことではありませんで、あくまで老人保健医療費拠出金に係る国庫負担合理化を図るということをねらいとするわけでございます。  繰り返しになりますけれども、今回の制度改正全体を通ずる保険料負担の軽減の程度といったことも考え、また、現在の国庫負担の算定方式が導入された五十九年度当時の国庫負担率が五五%であったわけでございます、それと本来の負担率のほぼ中間ということで五二・五ということを考えたわけでございます。  今回の改革に伴いまして、厚生省の予算編成のためにということでございますが、国といたしましては地方に対する特別の財政措置も講じたということで、国保制度改革によりまして国の一般会計負担が減少したということはないわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  89. 浜本万三

    ○浜本万三君 老人保健の拠出制度は五十八年の二月からスタートし、その後、五十九年には、今お話しのように、国保の補助率を変え、さらに六十一年末には老人保健制度の見直しをしてきましたから、国保の老人保健拠出方法についても改めようと思えば私は機会は幾度もあったと、かように思うわけでございます。今日まで現行の拠出方法で来たことは、これをよしとして是認してきたのではないかと思います。なぜ今回見直すかわかりません。地方負担導入で軽減された保険料負担国庫負担の減額で取り戻そうとするのは甚だおかしいと、私はかように思っております。  国庫負担の軽減が目的でなく、考え方を改めるというならば、積極的な政策に改めるべきであります。例えば、保険基盤安定制度や共同事業あるいは保健施設事業の助成に振り向けるというならわかるんでありますが、これはどのように説明されますか。
  90. 下村健

    政府委員下村健君) 御指摘のように、老人保健制度改革とあわせてやるべきではないか、これも一つ考え方ではないかと思うわけでございますが、当時の国保制度財政状況あるいは退職者医療の影響といった問題を総合的に考えまして、国保国庫負担率は特例的なものをこれまでは維持をしてきたわけでございます。  で、今回の改革を実行するに当たりまして、私どもとしては、それらの状況を総合的に判断いたしまして、国保としても社会保険制度である以上はやはり保険給付の二分の一の国庫負担率という方向に向かうべきであろう、このように考えまして今回の調整措置を行ったわけでございます。  なお、今回の措置は六十三、六十四年度の二年間の暫定措置ということでございまして、国保総体の国庫負担あり方につきましては、六十五年度において改めてその見直しを行うことになるわけでございます。
  91. 浜本万三

    ○浜本万三君 もう一遍数字を申し上げますと、厚生省は、先ほどお話によると二百四十億の保険負担減で一世帯当たり千七百円の保険料軽減をした、こういうふうに言っておられます。ところで、私の考えを申しますと、その二百四十億に問題にしておる四百六十億円を合わせますとこれは七百億円になるわけです。そうすると、一世帯当たり五千円の軽減になるはずですよ。あるいは、保険料の抑制効果が出るはずなんですよ。それをやらずに、変な局長通達なんか出してやらさないというようなことでは、これは問題があるというふうに思います。したがって、私はどうしても納得できませんから、これは宿題にしておきたいと思います。  また、厚生省は、政管健保の老人保健医療費拠出金の国庫負担が若い人と同様に一六・四%にしていることも理由づけにしておられますが、それでは、この際お尋ねしますが、退職者医療制度への拠出について現役への負担と同様にするならば、政管健保拠出分について国庫負担をなぜ入れないんでしょうか。当然、政管健保拠出分については、国庫負担を入れるべきではないかと思います。  なお、この問題につきましては、五十九年の健保改正以降、私ども社会党が常に主張してきたところでございます。医療保険制度国庫負担は各制度を通じてどうあるべきか、整合性のあるものにしたいということを要望してきておるわけでありますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  92. 下村健

    政府委員下村健君) 退職者医療制度は、勤労者を引退した人を対象としたいわば被用者保険の延長と申しますかその体系に属する制度でございます。一方、老人保健は老人全体を医療保険全体で共同負担をする、こんな格好になっているわけでございます。  したがいまして、退職者医療財源は、退職者自身の保険料被用者保険の各保険者からの拠出金によっているわけでございます。この拠出金の分担につきましても被用者保険内部で現役の被保険者の標準報酬に応じて、言葉をかえますと、各保険者財政力に応じて按分されているわけでございまして、財政力の低い保険者はそれに見合う低い額しか拠出しなくていい、こういう仕組みになっているわけでございます。  したがいまして、政府管掌健康保険につきましても、その財政力に見合った拠出金負担をしているわけでありまして、特別の国庫負担をする必要はないと考えているわけでございます。
  93. 浜本万三

    ○浜本万三君 いずれにしても、現役の政管健保加入時には一六・四%の国庫補助があった、それが、退職して退職者になった人に国庫負担が行われないというのは、私は不合理だと思いますよ。これはひとつぜひ検討してもらいたい、宿題にしておきたいと思います。  それから、老人保健拠出金の見直しに関連をいたしまして、この際、被用者保険、特に健保組合の拠出金についてただしておきたいと思います。  先般、健保組合は、六十三年度以降今後十年間にわたる経常収支の見通しを発表しております。そこで顕著な事実は、もちろん一定前提を置いた話でございますが、保険料収入に対する拠出金の割合が著しく増加するということであります。  厚生省は、老人保健見直し後の被用者保険側の拠出金の実態をどのように把握されておるか、ま た今後どういう見通しを持っておられるか、御説明をいただきたいと思います。
  94. 下村健

    政府委員下村健君) 健康保険組合における保険料に占める拠出金の割合でございますが、昭和六十三年度予算では三一%というふうに見ております。  最近の趨勢をもとにして推計をいたしますと、昭和七十五年度に五割程度になるというふうに見込んでいるわけでございます。
  95. 浜本万三

    ○浜本万三君 私のもらいました健保連の数字と若干違いますから、私の方から具体的な資料を示して、ひとつお答えをいただきたいと思います。  この被用者保険、つまり健保組合の六十二年度の収支状況を、きのういただいたのを見ますと、千四百六十億赤字が見込まれております。健保組合が赤字を見込んだということは制度発足以来初めてのことでございます。これを料率に換算をしてみますと千分の三・三になります。また、六十三年度についても保険料率千分の四・五に相当する赤字が発生すると見込まれておるわけでございます。これは拠出金の増加に起因するものであることは言うまでもありません。その部分を保険料に上乗せしていかない限り、赤字の累積は避けられないわけでございます。また、保険料率を引き上げれば、昭和六十七年には平均でも保険料率は法定上限の千分の九十五に達してしまうことが予測されておるわけでございます。  健保組合の財政悪化について厚生省当局はどのように認識しておられるでしょうか、もう一回お尋ねをいたしたいと思います。
  96. 下村健

    政府委員下村健君) 老人保健法改正によりまして健康保険組合の拠出金負担が増大した、これが大きな問題になっているというのは御指摘のとおりでございます。  私どもとしては、当面、健康保険組合全体としては対応が可能な状況だというふうに見ているわけでございます。いろいろ数字を挙げて御指摘になったわけでございますが、単年度の収支ということだけで見てまいりますとそのような数字になってくるわけでございますが、一方において、現在の保険料と現実に給付費その他で必要な経費あるいは拠出金といったものの関係を考えますと、これまでのところ、私どももそのような指導をしてまいったわけでございますが、政府管掌健康保険、組合健康保険、いずれも保険料の引き上げをしないで対応するということで大体やってまいっているわけでございます。これまでは全体的にそういったゆとりが多少まだ残っている、これから先はなかなかその辺が難しくなってくるというふうは考えているわけでございます。  最近の経済状況あるいは老人医療費を初めとする医療費の状況等から見て、健康保険組合によってはその財政運営に必ずしも楽観を許さないものが出てくるように思われるわけでございますが、国としては、健康保険組合連合会の共同事業の強化ともあわせまして、健康保険組合の運営に支障が生ずることのないように十分注意を払い、努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  97. 浜本万三

    ○浜本万三君 その厚生省認識と私が資料を見た認識は若干違います。  違うということを前提にして、引き続き質問をするわけなんですが、保険料収入に対する拠出金の割合は、老人保健加入者按分率を九〇、退職者医療拠出率を千分の四と見込みますと、健保連の資料によると、六十五年度には三%上昇いたしまして保険料収入に対する拠出金の割合が三二・五%に達すると言われております。すなわち、保険料収入の三分の一は退職者と老人保健に振り向けられてしまうということになっておるわけでございます。また、五〇%に達する時期は、局長の七十五年でなしに、七十三年には到達をするということになっておるわけでございます。もちろん、これは、国民といたしまして退職者や老人医療に対し応分の負担をしていくということを拒むものではございませんが、医療保険あり方としていかがなものであるか非常に疑問を持っております。そして、その割合は年々増加してくるわけでございます。  こういう実態を見ますと、まさに被用者保険が退職者、老人医療財源調達機関となってしまうおそれもあるわけでございます。こういった過程で国庫負担を漸減させていく方式は、所得再配分の機能を持つべき社会保障で、保険料収入の半分を拠出する姿というのは被保険者の納得は到底得がたいものであると思います。  この点どのようなお考えか、お答えをいただきたいと思います。
  98. 下村健

    政府委員下村健君) お話のように、拠出金の割合がふえるということはそのとおりでございます。  数字的な面につきましては、健保連が言っておる数字と私どもの見方と差はございますが、いずれにせよ、これは、根底においては高齢者の医療費がどうしてもふえてくるという事情を反映してそのようなことが起こってくるわけでございます。老人保健制度あるいは退職者医療制度は高齢者の医療費を公平に負担するという形で実行いたしたものでございますので、そういった現象は、高齢者の医療費の増加ということを背景にいたしまして、健康保険組合もそのとおりでございますが、国民健康保険も同様に、同様な割合で実は高齢者の医療費負担しているというのが実情でございます。特に、按分率九〇%という前提で考えますと、国保負担はそれよりもなお高齢者に関しては重い、このように御理解いただきたいわけでございます。  そこで、そういった高齢者の医療費財源の持ち方が、現在のままの形が適切かどうかということになってくるわけでございます。  これについては種々御議論があるわけでございますが、私どもとしては、何らかの形でこれを公平に負担していく。現在は、老人については公費、国税、国、地方両方の負担が含まれているわけでございますが、これと拠出金で賄う。退職者医療につきましては、国保は本来それに加入していた者、被用者保険はもともと加入していた者を賄うということで、この部分については公平という観点から見ると実は差があるわけでございますが、一つあり方ということで現在そういう形がとられているわけでございます。  将来このままの形でいいかどうか、これについてもまたいろいろな議論があるわけでございますが、私どもとしては、今後一元化といった議論を深めていく中で、税、保険料双方を通じて公平で安定的な負担の体系をつくり上げていくということを目標にいたしまして努力を続けてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  99. 浜本万三

    ○浜本万三君 さきの老健法の審議の際に約束があったことなんですが、健保組合の拠出金がだんだん多くなる、そうすると健保組合の中で財政状況が非常に悪化する組合が出る、それについては適切な助成をしたい、それが臨時補助金という形になっておると思います。  六十三年度の臨時補助金が七十億五千万円ということでございます。しかし、先ほど申したように、六十三年、六十四年というふうに、決算見通しをいたしますと相当赤字が累積されるということになりますので、六十四年度分については、赤字の状態ですから臨時補助金のさらに増額が必要ではないかと思います。  健保組合の財政状況を見て六十四年度はさらに増額をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  100. 下村健

    政府委員下村健君) お話がありましたようなことで、これまで増額に努めてまいったわけでございます。  この補助金は、実はさきの老人保健法改正に伴う急激な負担増緩和ということが趣旨でございまして、基本的には臨時的な補助という性格を持っているわけでございます。したがいまして、なかなかその本質からしますと難しい面がございますが、私どもとしては、健康保険組合の状況等も十分に眺めながら最善の努力を尽くしてまいりたいと考えているわけでございます。
  101. 浜本万三

    ○浜本万三君 時間が迫ってまいりましたので、あと二つありますが、ひとつ結論だけを申し上げ てお答えをお願いしたいと思います。  一つは、保険料滞納者に対する制裁措置の問題でございます。  これは、私が先回の老健法の審議の際に特に確認答弁を求めて厚生省が確認した内容がございます。それによりますと、制裁措置を設ける場合には、財産名義の変更を行うというようなことで保険料納付を明らかに回避するということが認められる場合に今回の措置を適用するものである、こういうふうに述べられておるわけですね。  ところが、その後の実施状況を見ますと、その措置というのが非常に画一的に判断をされておるわけです。まず、あらわれておる現象を見ますと、保険証をそもそも交付しない。保険料を滞納している者に対しては窓口で保険料納付について指導、相談を行い、滞納しておる保険料の納付について誓約書や納付計画書を提出しない場合には保険証を交付しない。誓約書や納付計画書どおりに保険料を納付しない場合には、保険証更新時点で保険証でなく資格証明書を交付する、こういう状態になっておるわけです。これは安易な収納率アップの措置が行われておるのではないかと思います。そうしますと、あの確認答弁における厚生省と我々の約束が違ってくるわけなんですよ。  この点はどう説明されますか、またどう改善されますか、明確にしていただきたいと思います。
  102. 下村健

    政府委員下村健君) 先般の改正によりまして被保険者資格証明書の交付というふうな制度を設けたわけでございますが、これは、正当な理由がなく故意に保険料を滞納している悪質な滞納者に限って必要最小限の措置をとったというふうに私どもとしては考えているわけでございます。  この基本については、当時も今も何ら変わりはございません。したがって、この措置の実施に当たっては、単に保険料を滞納しているからといって直ちに行うのでなく、事前に滞納者への連絡、納付相談、指導等を十分に行ってその実情をよく把握した上で行うように通知等で指示をいたしているところでございます。  事前の納付相談あるいは指導を行うということがなかなか十分に徹底しないという側面があるようであれば、この点については、十分私どもとしてもさらに適正な運用が図られるように指導いたしてまいりたいと考えております。
  103. 浜本万三

    ○浜本万三君 そこの答弁がちょっと違っておるから、私は指摘をしておきたいと思うんです。  それは、質問は   今回の改正案における悪質滞納者の定義を明確にすること。 それに対して   悪質滞納者の定義については、合理的な理由がなく故意に保険料を滞納している者、 それで「具体的には、」と書いてあるわけだ。具体的には、   (1)災害、失業、長期入院等の特別の理由がなく長期間滞納をしており、   (2)財産の名義の変更を行うなど保険料納付を回避する意図が明らかである者。  を想定しております。 こうなっておるんですから、答弁ははぐらかさないようにしてもらいたいと思います。  そういう事情ですから、これからの指導については十分ひとつ慎重に適正に指導してもらいたい、かように思います。  それから次は、もう一つだけ申し上げるんですが、今回指定市町村が厚生大臣のつくる指針に従い安定化計画を樹立するようになるわけですが、そのことについて私どもといたしましては、高額医療費市町村については住民参加による医療費安定化協議会を設けてもらいたい、こういう希望を持っておるわけでございます。これは市町村だけでなしに、当然、都道府県にも持ってもらいたいという希望を持っております。これは、結局、医療費安定化政策を立てる場合には慎重にやってもらいたい、そして住民の意思を十分反映してもらいたい、関係者の意思を十分反映してもらいたいという気持ちがあるものですから、そのことを私どもは今要求をしておるわけなんでございますが、これについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか、お尋ねをいたしまして、時間が来ましたので質問を終わりたいと思います。
  104. 下村健

    政府委員下村健君) 今回の安定化計画は、これは国保保険者としての立場から運営主体である市町村が責任を持って策定し、これを推進するという性格のものでございますが、その計画の策定、推進に当たっては関係者意見が十分反映されるよう、その上で地域の実情をよく把握して実効性のある対策を推進していくべきだと考えているわけでございます。  そういった意味合いで御指摘のようなことも一つ考え方ではあろうと思いますが、現行制度では、既に国民健康保険事業の運営に関する重要事項を審議するために国民健康保険運営協議会が各市町村に設けられているわけでございます。この運営協議会の機能を十分活用することによりましてお話のような趣旨を生かしていくことが可能ではないかというふうに考えられるわけでございます。
  105. 浜本万三

    ○浜本万三君 ぜひひとつこれも宿題にしておきますから、検討をお願いいたしたいと思います。  以上で終わります。
  106. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  107. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、国民健康保険法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  108. 高木健太郎

    高木健太郎君 国民健康保険法の一部を改正する法律案そのものに関してではございませんが、これに関連する問題として、まず最初に、二、三御質問を申し上げたいと思います。  御承知のとおり、昨年でございましたか、三重大学の病院で二名の医師が劇症肝炎という病気で非常に短時日の間に亡くなったわけでございます。また、高橋善弥太という方でしょうか県立岐阜病院の名誉院長のアンケート調査によりますと、これは、ことしの二月二十八日にその報告がされておりますが、昭和五十八年以来非常に急増をしてきまして、約三百五十の医療施設を対象としてアンケートをとりましたところ、非常に大勢の方がこの肝炎にかかっているということがわかった、医療従事者に非常に肝炎が蔓延しているということを報告されております。しかも、それは、若い看護婦とか看護学生の間にも非常に多いということでございます。  これに関してまず厚生省側にお聞きいたしますが、国立病院その他厚生省関係の病院におきまして、臨床医師に対しましてその検査あるいは予防のためのワクチネーション、こういうものに対してどの程度対策あるいは費用というものを出しておられるでしょうか、その点について最初にお伺いいたします。
  109. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 先生御指摘の国立病院・療養所で直接医療にかかわる医師、看護婦等に対しましてB型肝炎予防のためのワクチンの接種のための経費を計上しているところでございます。  医師につきましては約五千人分、それから看護婦につきましては約三万人分、合計、全体をいろいろ合わせまして約三万九千人分の予防接種の経費のための予算を計上しているところでございます。  これは六十二年、六十三年両年にわたって実施をしております。
  110. 高木健太郎

    高木健太郎君 それでは、次に文部省の方にお尋ねをいたします。  文部省のいわゆる大学病院等におきましては、今のような措置は講じておられるでしょうか。  また、三重大学で、三名だったと思いますが劇症肝炎にかかられた方がありますが、その感染経 路はその後判明をいたしたでしょうか、その点をまずお伺いいたします。
  111. 佐藤國雄

    説明員(佐藤國雄君) 国立大学の附属病院におきましては、業務上、ウイルスに汚染されるそういう危険性が高いということもございまして、院内感染の予防委員会といいますかそういった委員会を大体組織しておりまして、従来から注意喚起をしてきているところでございますけれども、さらに抜本的な解決を図って不測の事故を未然に防止する必要がある、そういうことから、B型肝炎につきましては、検査及びワクチンの接種の経費を措置いたしまして院内感染の予防対策の一層の充実を図ってきておるところでございます。ちなみに、昨年、六十二年度は二億八千万余の予算を計上いたしたわけでございますが、六十三年度にも引き続き同様の措置を講じてきているわけでございます。  なお、お尋ねの三重大学の方で不幸な事故があったわけでございますが、これにつきましては、入院中のB型肝炎のウイルスを保有している患者さんから感染した、こういうことが調査で明らかになっておるわけでございます。
  112. 高木健太郎

    高木健太郎君 発症はしないで潜伏的に、あるいは、キャリアとしてウイルスを持っているというような検査はされたことはございましょうか。これは国立の病院でも結構でございますが、どうでございましょうか。
  113. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 個別にやっておるところはあるかもしれませんが、私どもとしては承知をしておりません。
  114. 高木健太郎

    高木健太郎君 また再び文部省の方にお尋ねいたしますけれども、今院内というお話がございましたが、大学にはいわゆる基礎医学教室もございまして、病理学者あるいは解剖学者に感染のおそれも多いと思うわけであります。事実私の同僚でありました教授にも、死体解剖から結核にかかりまして、片腎を取りまた睾丸を摘出するという非常に不幸に遭われた方があるわけでございますし、そういう意味では私は、死体に触れるあるいはそのような機会のある技術者、介助者といいますか、そういう者に対してのいわゆるワクチネーションあるいは検査というようなことは、文部省ではやっておられるでしょうか。  もしやっておられないようであれば、今後そういうことをやるかまたはそういう費用について考慮しておられるでしょうかどうか、その点についてお尋ねいたします。
  115. 佐藤國雄

    説明員(佐藤國雄君) ただいまのところは、病院内の全職員を基礎といたしまして、血液に特に関係の多い部署あるいは血液性の疾患の患者さんが多いところに所属しております医師、看護婦、臨床検査技師あるいは放射線技師、薬剤師、事務職員その他すべての職員を対象としておのおのの大学でもって決めまして、それを対象に今実施をしているところでございますが、先生御指摘の基礎系の先生方あるいは基礎系で働いておられる職員の方につきましては、病院の方で教育研究を行うことによって感染の危険性が高いと先生がおっしゃいましたような病理学の関係といったような人々についてはおのおのの大学の実情によってワクチンの接種をしてきているわけでございますが、完全にその基礎の方だけにおられるという方については現在のところまだ考えていないというのが実情でございまして、将来ともそういったことが問題になるのかどうかということも含めまして考えてみたいというふうに思っておるわけでございます。
  116. 高木健太郎

    高木健太郎君 これは解剖学者及び病理学者の方からそのような話もございますので、そういう人間の死体を扱う、特に神聖な死体を扱うあるいはそれに従事している介助者、技術者に対してもしかるべき対策をおとりいただくようにこの際お願いをしておきます。  次に、これもまた直接この法案とは関係がございませんが、御存じのように、これは、ここ二十年か三十年ぐらい前から問題になってきたんだと思いますが、私の在学中にはもちろん知らない問題でございましたけれども、略してSSPEという病気がございます。日本語に訳しますと亜急性硬化性全脳炎という病気だそうでございまして、サバキュート・スクレロティック・パン・エンセファリーティス、英語で言いますとそういう名前の頭文字をとりましてSSPEというそういう病気が最近非常に問題になってきております。  これは、御存じのとおり、はしかのウイルスが原因でございまして、はしかの種痘をやっている人ははしかにかからないわけでございますけれども、あるいはやっておってもはしかにかかる人がある、そういうはしかの罹患後、五年ないし十年の潜伏期を置きまして突然発病をいたしまして、けいれんや発作が起こるあるいは視力が消失するあるいはまた重度の脳障害を起こして言語障害も起こしてくる。そして、子供に起こる病気でございまして、半年あるいは数年後には死亡するという私は大変痛ましい病気であると思います。予防接種をすればかなり減るということも聞いておりますが、現在のところその治療法が全くありません。その罹患後は千人に一人ぐらいであるというので非常に小さいわけでございます。  このような病気のために悩んでおる患者さんの方々が自主的に「あおぞら」というパンフレットをつくられまして、お互いにその患者として慰め合いまたその医療についてのいろいろの相談あるいは討議をしておられる、あるいは時には大阪の微生物研の上田教授を呼んでレクチャーも聞かれる、何とかして助かる方法はないかというようなことを言っておられるわけでございます。  現在、二百十数名の方がこれにかかっておられるということでございますが、これは、原因がはしかのウイルスでございますので、原因がはっきりしております関係上、難病には指定されておりません。しかしながら、その病状といい、それから治療法がないということからいいますと、難病に指定してもよいのではないかというぐらいに私は思っているわけでございます。  そこで、この人たちからの要望書が私のところに参りましたのですが、この要望書としましては、予防のためのはしかワクチンの接種を全国統一的に実施してもらいたい、それからまたホームドクターの紹介制度を実施していただきたい、またホームヘルパー制度と短期入院の施設を拡充していただきたい、こういうことを私の方に申し出ておられます。これは他の議員の方にもこういう申し出が行っていると思いますが、私が医師という肩書きを持っているために私の方にもおいでになったと思うわけでございます。  それで、これに対しまして厚生省は、現在どのようないわゆる対策あるいは予防措置を講じておられるか、あるいはまたこれの治療に対しまして研究費その他助成をどの程度やっておられるのか、そして今後の見通しとしてはどのような見通しを持っておられるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  117. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 高木先生が御指摘いただきましたように、この疾患ははしかウイルスによって起こっておるということが明らかになっておるわけでございまして、難病に指定をすべきであるという御意見もあるわけでございますけれども、現段階においては、他のウイルス性のいろんな難病というものもあるという段階で難病に指定するということはなかなか困難ではないかというふうに考えておるところでございます。  ただ、一方、こういうウイルスによって起こる難病についての研究というのは、昭和五十一年以来、研究班を設けていろんな調査研究を進めておるところでございます。先ほど先生がお示しになられた二百十六名という数字もこのような研究班のデータから得られたものであるわけでございます。  治療方法というものも、こういう病気の性質上、なかなか明確なものはないわけでございますけれども、特にいろんな後遺症による重症心身障害というような問題に進むとすれば、これはまた厚生省の重症心身障害の研究あるいは国立療養所等における収容、ケアというようなことも行われておるわけでございますので、SSPEプロパー ということではございませんけれども、一般のそういう行政の対応ということの中で今後とも受け入れていくことができるのではないかというふうに考えるわけでございます。  なお、はしかのワクチンの接種の問題でございますけれども、接種率をさらに高めるとかあるいは接種の時期をどうするのかというような問題についてはいろんな御意見があるようでございますが、私どもといたしましては、特に接種時期の問題につきましてはさらに専門家の御意見も十分に承って、必要があればそういう行政指導をしていくように考えたいというふうに思っておるところでございます。
  118. 高木健太郎

    高木健太郎君 接種の時期及び接種法等、専門家の意見を入れてぜひこの予防対策を講じていただきたいと重ねてお願いをいたします。  次は、医師の卒後教育のことについてお尋ねをいたします。後で医師の数のことについてもお尋ねしますので、それの前段階としてお聞きするわけでございます。  たしか昭和四十年ごろと思いますけれども、医師国家試験を受ける前に、いわゆるインターンシップ、研修を受けまして、それが終わった後で国家試験を受ける、そこで初めて医師の資格を与える、このようになっておったわけですが、四十年ごろ改革されまして、まず国家試験を受けてそして医師の資格を得て、それからインターン研修をやるということになったわけでございますが、現在行われているこのインターンのことにつきましては文教委員会でも文部省側にお尋ねしたことがございます。あるいは厚生省の方においでいただきまして聞いたこともございますけれども、現場の方にいろいろ聞きますと、厚生省では、ぜひこの研修を一生懸命やってくれ、そして各科を回っていろんな各科の治療法あるいは診断というものに精通するようにというようなお気持ちでこれを強く進めておられるということは私承知しているわけでございますが、何といいましても義務的ではございませんから、結局は余り熱心には研修をしないという結果が生まれてくる。あるいはまた、免許証を取った後、ある教室にだけ一年間おりまして、そしてその後はどこの科にも回らない、だから全科のことはいわゆる実務的には、実際の医療は臨床的にはほとんど知らないという医者が、ある専門だけは知ってほかのことはわからないという医者がふえているんじゃないかなということを恐れるわけでございます。あるいはまた、現在インターンをやっておりますけれども、その回る教室あるいは医局というものは、他の自分の任務——教育あるいは研究そして医療という三つの業務を大学の臨床科では持っております。その上に、インターンを引き受けるということは、引き受け側にとりましては甚だ迷惑であるということになります。そういうことで、どうも私たちが希望するようなインターンシップが行われていないんじゃないかという気がするわけでございます。  これに対しましては、厚生省も格段の努力をされているようでございますけれども、何か、これを打開しさらによいものにするということについては、どんなことを今お考えでございましょうか、その点についてまずお伺いをいたします。
  119. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 医師の卒後教育の問題でございますけれども、御指摘のように、四十三年にインターン制度が廃止されて現在に至っているわけですが、そのときに、医師免許取得後二年間の臨床研修が定められるよう、努力規定として設けられたわけでございます。私どもといたしましても、この臨床研修は、患者さんを全人的に診るという態度を身につけることからいっても非常に重要なことだと考えているわけでございます。  しかし、今御指摘のように、研修を受けないで、いきなり大学院に入ったり医局へ入ったりという方がおられるわけでして、研修率が八割ぐらいでございます。しかも、そのうち大半の者が大学病院で研修を受けておられるということで、大学病院自体を悪いというわけではないんですが、やはり教育体制そのものの問題でございますとかあるいはそこへ集まってくる患者さんの症例のバラエティーの問題とかいろいろあるわけでございまして、私どもとしては、従前から総合臨床研修方式とかいうことでやっていただきたいということを何遍か申し上げておるわけですが、御指摘のように、必ずしもまだ十分その実態が追いついておらないというふうに考えているわけでございます。  そこで、その具体的な内容改善方向につきまして、現在、医療関係者審議会というのがございますが、その臨床研修部会でいろいろ幅広く御検討いただいておるわけでございます。医学教育の関係者あるいは医師団体、臨床研修病院等の御協力あるいは御理解を得ながら、その検討の成果を得ました上で、さらにいろいろやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  つい先ごろも、国家試験の内容でさらに改善を加えるべき意見もちょうだいいたしましたこともございますので、そういう卒前の教育との関連も考えながら、卒後の臨床研修をさらに実のあるような格好で伸ばしていくように努力したいと考えております。
  120. 高木健太郎

    高木健太郎君 今後、医療費が非常に高額化してくるというようなことで今度のような法案も出てきたと思いますし、将来の見通しも必ずしも明るくない。それには、医師会側としましてはあるいは医師側としましては、大学病院のように専門医というよりもいわゆるプライマリーケアをしっかりして、そして病人をそういう専門病院にただ入院させるというんじゃなくて、全般的に全人的に患者を診察しそして予防をするというようなことが私は強く今後は求められる、またそれがなければ病院はふえる一方であるというように思うわけです。  そういう意味では、プライマリーケアというと包括的に医療をやるわけでございますから、どうしても体全体のことを知っておく必要がある。例えば、私の聞いたこんなのはうわさ話かもしれませんけれども、足に水虫ができておったその患者が開業医のところへ行きましたら、そうしたら脳波をとった。それは体の一部ですから、足に水虫ができて脳波をとってもおかしくはない。何か変化はあるかもしれませんけれども、私にとってはちょっとこれはどうも変ではないか。もちろん、審査では問題になったそうでございます。  あるいはまた、何か交通事故等で倒れた、そしてけがもあるけれども意識不明で担ぎ込まれた。そうすると、ある医者へ行くというと、そこのけがをしているところに、赤チンかヨーチンか知りませんがそういうものを塗っている、意識不明であるというのにその傷にただヨーチンを塗っている、そういう医者がいるというわけで、全部ではございません、もちろんごくわずかのそういう医者がいるということでございますが、そういうことがあっては何にもならぬ。これで大学の教育を受けてきたのかと、こういうことを言いたくなるわけでございます。  後でお伺いしますけれども、厚生大臣も検査の適正化ということを主張されたと聞いております。私もそうであるべきだと。医学教育を受けるのは、何もかも検査せいというわけではなくて、この患者に対しては何が必要な検査なのかということをやることが大事だ。そういうことはインターンのときに学ぶべきじゃないかと思いますのに、それが十分行われていないということに私は非常に危惧を感じているわけでございます。  そういう意味で私は、現在の状態で幾ら上からインターンの実践を常に迫ってもなかなかうまくいかないということ、そういう事情がありますからして、もしできたら、本当の意味の受け入れ体制を大学の中なりあるいは国立病院なりに考えてやるべきじゃないか、そこに専門にそういう人たちがいなきゃだめなんじゃないかということを思うわけですが、そういうことをお考えになったことはございますでしょうか。  あるいは、大学病院であれば大学病院の中にそういうインターンの学生を受け入れるような何か特別な施設を、あるいはそういう施設とは言わぬ でも人員を確保するそういうことをお考えにならないと、いつまでたってもこれは解決しない問題じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  121. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 卒後臨床研修制度改善についてということで六十二年の七月に臨床研修部会から御意見をいただいた中にも同様の御指摘がございまして、私ども、予算的には指導医の謝金と申しますかそういう形で、各病院——各病院と申しますか、その臨床研修指定病院等で実際に指導してくださる方への人件費補助というような形で予算をつけておるわけでございますが、これは必ずしも実が上がっていない部分もあるわけでございますので、先ほどお答え申し上げたような方向でさらに努力をしてまいりたいということで考えておるわけでございます。  昨年の六月に発表いたしました国民医療総合対策本部の中間報告でも、そういう観点からも大学病院等におきます医療と研修の見直しということを大きな柱の一つとして取り上げておるわけでございまして、国家試験の改善と同時に、臨床研修の制度的な改善の検討ということで、今おっしゃったような方向も含めて、具体的にさらに検討を進めてまいりたいと考えております。
  122. 高木健太郎

    高木健太郎君 私は、医療にとって非常に基本的な大事な、特に今後大事な問題であると思いますので、この方面に少し力を入れていただきたい、そういうふうにお願いをいたしておきます。  次は、老人保健のことについて今度この法案に出ておりますので、これについて二、三御質問を申し上げたいと思います。  最近、老人の自殺がふえているということは御存じのとおりでございまして、老人の亡くなる原因としては、老人自体の人口がふえたということ、もう一つは無理な延命をしているんじゃないかということですね。それは、かえって人間の尊厳を無視したり、これはあるいはやむを得ない長寿国の一つの悲劇でもあるというふうにも考えられるわけでございますが、そのうちの、病を苦にして亡くなった、自殺をされた方が四五・五%あるということでございます。そのうち、六十から六十四歳の方が五七・六%、六十五歳の人は七五%もある。そして、老人の自殺者は全体の三分の一を占めているというふうに、いわゆる健やかで人生の終わりが楽しかるべき老人が自殺をするように追い込まれているということは、私は、長寿国の日本としては恥と言っては言い過ぎかもしれませんけれども、大変残念なことであるというように思うわけでございまして、こういうものをぜひ取り除いていただきたいと思うわけでございます。  また、これは一つは悪徳な医者がおりまして、老人を金の成る木だと、そう考えている医者も多いんじゃないかと思いますのは、入院の日数が老人では非常に長くなっておりまして、スウェーデンでは平均十一日間、アメリカでは八日間、ところが日本では平均四十日間というように非常に長いですね。しかし、老人の人口はスウェーデンなんかでは日本よりも今のところは多いわけでして、一七%である。日本は、将来は二〇%を超すでしょうけれども、そうなればもっと老人の自殺というのはふえていくのではないか。あるいはまた、自殺をしないまでも、老人は非常に孤独の寂しさを持って生きている。それは核家族化その他の社会的状況がそうさせたのであろうと思いますけれども、家族や知人と切り離された生活をしているということがあると思うんですね。  私がここでちょっと御質問いたしたいと思いますのは、このようなために現在厚生省のお骨折りでホームケアとかデイケアとかあるいはまた老人病院、特養老人ホームとかあるいはまたその間の中間施設、そういういろいろの施設あるいはやり方を実施してそれに努力しておられるわけでございますけれども、例えば老人病院は医療法に基づいておりますし、特養ホームは老人福祉法に基づいておるわけです。また中間施設は老人保健法に基づいている。デイケアとかあるいはホームステイその他のことは、私よく存じませんけれどもこれは福祉法とかになるのかもしれません。そういういろいろの法律のもとにこれがなっているということはやむを得ないことかもしれませんけれども、老人の医療あるいは介護、そういうものを一つにくくって一つのものとして、もっとシステマチックに系統的にこれを考えておく必要があるのではないかと思うのが一つでございます。それに関するお考えを聞きたい。  もう一つは、つい先日通った法律でございますけれども、民間の社会福祉・医療事業団に対して補助金を出していろいろなメニューをそろえる、幅広く老人の好むような施設にも入っていただけるようにする、私、いいことだとは思います。こういうものと全体の、何か、調和といいますかシステム化といいますかそういうものが、どうも足りないように思う。ぼこぼこぼこと勝手にそれが立てられている。これに対する大きな計画を現在立てておく必要があるのではないかと思いますが、これに対してひとつ御質問をいたしたいと思います。  また、厚生大臣は、こういう老人の対策として施設その他に今後どのような方針でお進みになるか、その点をできましたらお尋ねしたいと思います。
  123. 小林功典

    政府委員(小林功典君) お話しにございましたように、現在いろいろな老人福祉あるいは老人保健の施策があるわけでございます。  私どもは、中でも寝たきり老人等、いわゆる要介護老人対策の一層の充実を図るということが大変急務であるというふうに認識をしておりまして、そういった意味で、一つは、できるだけ住みなれた地域でお年寄りが家族や隣人と暮らしていけるように、在宅福祉対策を充実したい。今お話もありましたように、例えばホームヘルパーでありますとかデイサービス事業でありますとかあるいはショートステイ事業でありますとかそういった各種の在宅福祉施策を推進していきたいというのが一つ。  それから、それとあわせまして、そうはいいましてもなかなかいろんな事情で家庭での介護が難しいというお年寄りもいらっしゃるわけでありますので、そういった方々のためには特別養護老人ホームなりあるいは老人保健施設というものを着実に整備していく、こういう在宅福祉あるいは施設福祉と申しますか、保健の分野もありますけれども、そういうものをあわせまして充実を図っていきたいというふうに考えているわけであります。  ただ、心しなきゃいけませんのは、せっかくのこういう施策も、幾らそういう施策が整備されたとしましても、それらが連携がとれていませんと本当の老人のニーズというものに適切に対応できないという問題があることも事実でございます。  そこで、かねてから我々それを考えておりまして、実は、六十二年度に都道府県に高齢者サービス総合調整推進会議、それから市町村レベルでは高齢者サービス調整チームというものをつくりまして、ここでは福祉も保健医療もすべて包含したそういった連係プレーができるようなそういう協議検討をする場としてこれを設けております。  それから、さらに六十二年度から三年計画で高齢者の総合相談センター、これも福祉、保健、医療、全部の相談に応ずるというそういうシステムをつくりたいということで、六十二年度には十五県につくりまして、本年度はまたさらに十五県ふやしまして、六十四年度には全県にこれを設置するということを考えております。  このような施策を伸ばしまして、高齢者のニーズが最も適切に反映されるように、かつそのために関係機関の連携が十分とれていろいろな施策の有効な活用が図られるように、そういった意味の努力をしておるところでございます。  それから、後段のお話でございますが、先般、事業団法の改正をお願いしたわけでございますが、これの関係でいわゆるシルバーサービスについて公的な融資制度を設けるということで法案の御審議をいただいたわけでございますが、このシルバーサービスにつきましては、もちろんこれからの本格的な高齢化社会を迎えまして、公の福祉 施策というのは今後ともさらに一層充実しなきゃいかぬことはこれは当然でございますけれども、それとあわせまして高齢者がいろんな多様なニーズを持っておられます。もっと選択の幅を広げてほしいという声も多々あるわけでございまして、そういうことで公的な施策とあわせましてこういう民間のサービスを健全に、しかも節度ある運営として育成をしていく必要がある、このように考えております。いわば公的サービスと民間事業、民間サービスとが車の両輪のような形で老人福祉の推進に寄与していく、こういうふうなことが一番適切ではないかというふうに考えておりまして、これを健全に伸ばすために国、地方が連携して適切な行政指導を行うとともに、民間事業でございますから民間の自主的な取り組みも相まちまして健全な育成に努めていきたい、このように考えております。
  124. 高木健太郎

    高木健太郎君 厚生大臣、結構でございますが、今、民間と公とある、それからまたいろんなものがある、私も老人でそろそろそういうところへ入らなきゃならぬかしれませんが、どこへ行っていいかわからないというようなことで、今のような民間も公のものも含めたそういう相談機関をつくっておいていただかないとせっかく施設をおつくりになりましてもどこへどうやっていいか一般の国民にはなかなかわかりにくいことじゃないかな。大体、ホームヘルパーとかデイケアとか英語ですから、なかなかわからないわけですね。だから、そういうこともあって、せっかくやられたことは国民に十分理解でき、それが利用できるように、ひとつお考えをいただいたらどうかなと思っております。  いろいろお話ししたいことはありますが、時間もありませんからそのくらいにしておきたいと思います。  これは、全然これとは別個な話でございますけれども、私の、皆さんもそうでしょうけれども、いろいろ耳にしますのは、さっきもちょっとお話が出ましたいわゆる寝た切りというのは、意識もあって寝ておられる方もあるでしょうが、意識もなくて長い間寝ておられるという方がいわゆる植物人間のようになって、それも半年や一年じゃない、五年とか十年とかというふうに今は生きることができるわけでございます。大方の方に聞きますと、そんなにまでして生きたくないという方が多いわけでございまして、またそういう方が尊厳死協会というような一つの団体をつくっておられます。私もその協会の一員でございますけれども、人間らしくなくなっていつまでも植物のように寝ているということは、本人の人間の尊厳から考えてもどうもおかしい、あるいはまた家族にとっては非常に大変な労力と費用がかかるというようなことです。  しかし、脳死でさえもなかなかまだ決定できない場合に尊厳死というものは、言葉の上ではありましても日本ではこれはまだなかなか実施できない段階じゃないかと思うわけです。  ただし、アメリカでは三十何州で、それからオーストラリアなんかでは自然死法という「自然死」という名前で呼んでおりまして、そういう場合にはいわゆる積極的な医療はやらない、そして消極的にただやっている。しかし、人工呼吸器とかそういうものは、臓器移植をやるという場合に限ってだけこれを許す、このような格好になっておりまして、自然死法の方が先にありまして脳死だとか臓器移植がそれにくっついている、例外的にそれを認めている、オーストラリアにはこういうような法律があるわけです。アメリカではまた個人の意思を非常に尊重しまして、リビング法とかりビングウイル法とかあるいはまたそのほかの名前で法律を呼んでおられるわけです。  これは、将来、また現在の脳死あるいは臓器移植と同じように問題になってくると思いますのでこの点はひとつ厚生省としても少しずつお考えになっていただきたい、こう思うのですが、この尊厳死法あるいは尊厳死というものについて厚生大臣、どのように現在お考えでございましょうか。御所見だけを伺っておきたいと思います。
  125. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 医学の発達は目覚ましいわけでございまして、かつてならかなり短期間で亡くなっておった患者さんが、最終的には死を迎えるにしましてもかなりの期間延命できるということは、ある意味では非常に医学の成果として望ましいことだと思います。従前は、お医者さんは人を助けるということで医療をやってきたわけでございますので、何としても延命を図るというのが第一義だという立場医療を行っておられるわけでございますが、今お尋ねのようなことで単なる——単なると申しますか、延命だけを図るような医療があるということも一方においては事実だと考えられるわけでございまして、治療効果と申しますか治癒する見込みがない場合には、病気による苦痛から解放されたりあるいは家族や友人との交流の中で穏やかに死を迎えることを望む方もだんだんふえてきておるというふうに私ども考えておるわけでございます。  そんなこともございまして、尊厳死という立場からではございませんけれども、末期医療あり方全般について、そのケアのあり方全般について私ども検討会を設けておるところでございまして、できますれば六十四年の三月末までに報告書をまとめていただくということでいろんな角度から、例えば、施設の中での末期医療の問題点あるいは在宅での末期医療、そういうことをするについての支援体制を含めました在宅での末期医療の問題とか末期医療についての医療従事者に対する教育でございますとか一般に対する啓発啓蒙、さらには今おっしゃったような倫理的な面でございますとか法律的な面も含めまして、いろいろな角度から御検討いただいておるというのが実情でございます。  ただ、これも前に御質問いただいた脳死あるいは臓器移植とも非常に類似した性質を持っておる問題でもあるかと考えておるわけでございまして、我が国の場合に法律でどのようにする、リビングウイルを確認するとかそういうふうな形ではまだまだ熟していないことではございますと思っておりますので、行政庁としてはこういう関係者の御意見をさらにいろいろの角度から承りながら、医療の個々の現場の内容についてはなるべく立ち入らないという立場にいたいと思いますけれども、単なる延命が必ずしも患者さんにとっても家族にとってもあるいは社会にとっても好ましくないこともあり得るということも十分理解した上で、今後さらに事態の推移を見守っていきたいと考えております。
  126. 高木健太郎

    高木健太郎君 もう一つお尋ねしたいのは、今の寝たきりということに関係があるわけでございますが、いわゆる病院等に入院されましたときのいわゆる差額ベッドとそれから付添婦の費用のことでございます。  基準看護病院におきましては、付き添いは一切置かない、もしも置けばそれを取り消すというような話もあるわけでございますが、基準看護の承認を取り消すということもございます。ところが、大体の人は、お年寄り夫婦であればその夫婦の方のどららかがついているというわけにはいかない、あるいはその血筋の人が近所にはいないということになるとどうしても付添婦を置かなければならないということになります。この付添料というのはかなりの額になるようでございますが、大体どれぐらいかかるものなんでしょうか。  それからもう一つは、看護婦さんは、昼間看護力というのはかなり過剰ぎみなところもあるようでございますけれども、夜間看護婦の数、看護力というのは非常に少ない。昼に比べると少ない。ところが、病人というものは、実は、夜いろいろ看護婦さんに用がある方が多い。いろいろな二・八制とかその他の制度をとっておられることは存じてはおりますけれども、そういう付き添いあるいは差額ベッドというものに対する費用が非常に大きいということなんですね。  この前、八木参議院議員がお尋ねになったと思いますが、その友人の方で、恐らく植物人間ではないかと思いますけれども、その友人の方が三年間差額ベッドで寝ておられた、だからして土地も 手放すというようなことがございました。あるいはまた、皆さんもよく御存じの有名な哲学者で学士院賞か恩賜賞をもらわれました方ですけれども、奥さんが長い間寝ておられまして月に八十万ぐらいかかる、そのために、自分は幸いにして骨とう物が好きであったので骨とう物を集めておったけれども、それを手放しながらやっているよという話を聞きました。あるいはまた、大学の名誉教授でありますが、お母さんが意識ははっきりしているけれども寝ておられるというために、かえってその人のお子さんの方が体を壊してしまうというようなこともあるというわけです。  こういう意味で付添婦というものは、もう私はある意味では必要不可欠なものじゃないかと、そのように思うんですね。  これはどのように今後解決をしていこうとお考えになっておるか。付き添いなんか雇うのは勝手に雇えというようにお考えになるのか、これは基準看護で十分病院で見ているからそんなことは必要じゃありませんよと言われるのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  127. 岸本正裕

    政府委員(岸本正裕君) 付き添いの問題につきましては、先生おっしゃるとおり、基準看護をとっていない病院におきまして付き添い看護がついた場合には、付き添いに要した費用について患者に対しまして保険からの償還払いをしているわけでございます。この償還払いを行っている看護料といわゆる慣行料金との間に差がございまして、これが患者負担となっているわけでございます。従来から私どもとしましては、この看護料をできるだけ実勢価格に近づけるような改正を行ってきたところではございます。今後とも実態を十分に把握いたしまして、患者負担の軽減に努めてまいりたいと思っております。  また、老人病院につきましては、今回の診料報酬の改定におきまして、その看護・介護力を評価するという観点から、老人基準看護制度を創設したところでございます。これによりまして院内看護・介護力による十分な看護・介護が提供されていく方向に向けていきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、今どのくらいかというお尋ねがありましたが、付き添い看護におきます慣行料金と私どもで支給いたします看護料との差額が基本的な昼間の場合には大体一日千円程度でございまして、一月にしますと三万円ということになります。それで、泊まり込み給といいましょうか夜間を含めますと、この差が二千数百円になります。一カ月に直しまして八万五千円ということでございます。それは平均のところでございます。  それから、差額ベッドのお尋ねがございましたが、差額ベッド代につきまして徴収されている患者の割合は平均いたしまして五・九%、その一月当たりの徴収金額は五万一千円ぐらいが平均になっているわけでございます。  ただ、差額ベッドの全病床に対する比率でございますけれども、これはちょっと古い資料で恐縮でございます。五十八年度の数字でございますけれども、全患者合わせまして一〇・九%という数字を持っております。そして、老人病院におきましては六%弱、こういう数字になっているところでございます。
  128. 高木健太郎

    高木健太郎君 僕が予想していたよりもはるかに実勢価格といいますかは安いように思うんです。  日に一万円ぐらいは要るんじゃないかと思うわけです。だから、安くても月三十万ぐらいはかかるんじゃないかと予想しておりましたけれども、今お聞きすると、はるかに安いように思います。私ももう一遍調べましてどれくらいのものかはっきりしたいと思いますけれども
  129. 岸本正裕

    政府委員(岸本正裕君) 先生、今私が申し上げましたのは慣行料金と保険での償還払いをする看護料金との差額を申し上げまして、昼間の場合に大体一日千円程度、それから夜間の場合ですと三千円弱で、一月で八万五千円程度の差額が出る、こういうお話を申し上げたわけでございまして、慣行料金の根っこの額を千円とか三千円とかと申し上げたのではございません。
  130. 高木健太郎

    高木健太郎君 いろいろお考えいただいていることはわかります。ただ、かなり金持ちでも、このごろは保険とかいろいろそういう救済措置があるにもかかわらず、何千万なければ年をとれませんよというような話を一般市民はみんなしておるわけです。皆さん方もしているんじゃないかと思うんです。まだあなたはお若いからいいけれども、年寄りはみんな大体そういう話に持ち切っているわけなんです。そういう意味で、私は付添料というのが入院したときに大変だよということを申し上げているので、じっくり国民の身になって考えていただきたい、こういうことを申し上げているわけです。  それではもう一つ、その次にお聞きいたしますけれども、年をとるとだれでもどこか少し体が弱ってくるので、いろいろなところが体が悪くなるわけなんです。それを病気と言うべきかあるいは単なる生理的な老化現象であるか、それはよくわからないわけですけれども、いろんなところが痛んだりあるいは何となく訴えが多くなってくるということは御存じのとおりでございます。そういう場合に、よく私のところにも相談に来られるのは、東洋医学といいますか漢方だとかはり・きゅうをどこか紹介してくれという話が非常に多いわけなんでございます。この問題についてちょっとお聞きしたいと思います。  高齢者といいますと、これは病気だと言えないような病気、例えば自律神経の失調症であるとかあるいは腰痛であるとか肩凝りとか、それはレントゲンを調べてもどこをなにしても別にこれという症状は出てこない、あるいは五十肩のような慢性痛の場合、そういうものは現代医学ではなかなか処置しにくい。あるいは症状的にしかこれに対応ができない。ところが、こういうことで悩んでいる老人というのは非常に多いわけでございまして、中曽根前総理も自分ではりを持っておられますし、はりを実際に打っておられたと総理自身から、私お聞きをいたしました。  ところが、御存じのように、はり・きゅうというようなものは保険には適用されておりません。そのために多くの高齢者は、国保その他に加入はしておりましても、そして保険料は支払っておるにもかかわらず、自由診療としてかなりの負担を強いられているわけでございます。また、医師の同意書を取りつけるということもなかなか面倒なことでございまして、そういう意味では不便であるというような訴えもたくさん来ているわけでございます。こういう意味で、年寄りあるいは老人に対してもう少し東洋医学あるいははり・きゅうというようなものが簡便に使えるような方法をひとつお考えいただけないだろうか。  これは、厚生省自身にもいろいろの訴えが参っていると思いますけれども、そしてまたお考えになっているし、たびたびお話しすることでございますので十分御理解していただいているものと存じますが、一つの注文は、はり・きゅうの療治に対しましてこれを保険で見てくれということは、これでなかなか困難だと思いますけれども少なくとも柔整師や接骨師並みの、同意書の簡素化といいますか簡易化といいますかそういうものを図っていただけないだろうか。また、自律神経失調症とかあるいは不定愁訴というようなものも現在認められている五疾患のほかに加えるというようなことも考慮いただけないだろうか、こういうふうに考えるわけですが、いかがでございましょうか。
  131. 下村健

    政府委員下村健君) 現在の医療保険給付をしている医療というものがどういうものかというところの考え方と非常に絡んでいるような気がするわけでございます。  現在の考え方は、主治医がおられて、その人の手で医療が行われているというふうな前提になっていると思うわけでございます。したがって、同意書ということが当然必要だ、こういうことで、同意がない場合には療養費払いの対象にならないということになっているわけでございます。  はり・きゅうの関係につきましては、施術者団 体の方からも要望がございまして、その様式の統一を図るあるいは簡素化を図るということで、前回の改定に引き続きまして、かなりその円滑な実施ということに配慮してきたわけでございます。  これまでの経緯を考えますと、現在の取り扱いを直ちに変更するということはなかなか困難ではないかというふうに考えております。  それから、もう一つは疾患の拡大でございますが、結局東洋医学と申しますかはり・きゅうの関係、効く人には効くと、こんな感じになっておりまして、治療効果のメカニズム等が必ずしも十分解明されていない。一般的に効くと考えられる疾病について特に鎮痛効果というふうなものが認められるものについては保険給付の対象にしているわけでございます。  したがいまして、対象疾病の拡大という点につきましても、今後治療効果のメカニズム等につきましていろいろ解明が進められ、鎮痛効果以外の効果について医学的に確認がなされるというふうなことがあった上でその拡大について検討されるべきではなかろうかと、このように考えておるわけでございます。
  132. 高木健太郎

    高木健太郎君 私、これを導入したことによってそんなに医療費は上がらないんじゃないか。というのは、病気になる前に予防的にそれが働き得る、特に漢方等はそういうふうになるから、かえって医療費は下がるんじゃないか。これは、何か、そういうものをやるから必ず医療費が上がるというふうに、短絡的に物を考えるべきじゃないんじゃないか。しかも、国民は非常に喜ぶことなんだから、そういう人にはぜひ安い医療費でこういうものも受けられるように私は工夫されていくべきじゃないかなと思っておるわけです。  ところで、いろんなはり・きゅう師を私は知っておりますけれども、鍼灸の専門学校を出ましても、実際的に病人に対してはやらないわけですね。大学は明治鍼灸大学というのが京都府にございますけれども、それでも、患者に対してははりを打つことを地方の自治体の衛生部長等は、いや、患者にはりを打ってはいけないというようなことを言っている、何のために関連病院を置いたかわからない。要するに、病人に対してはりの実習をするということは、現在のところちょっとどこにもないわけなんです。だから、専門学校でははりの実習ということは、おのおのが打ち合いするというだけで、実際にある病気のときに何か手ごたえがあったとかなんとかいうことは全然わからないで、ただ余り十分じゃないようなカリキュラムの勉強をして、そして二年半なり三年で鍼灸学校を卒業して、そのままいきなり患者に向かう、ところが自分自身には非常に自信がないのでやはりどこかで実際にはりを打ってみたいというので、やむを得ず昔から開業しているはりの専門の治療所といいますか治療院といいますかそういうところに行って、三年なりあるいは五年なりそこででっち奉公をするわけですね。でっち奉公っておかしいですが、徒弟修業をする。それではり師のしていることを見ながら、見よう見まねで時時ちょっとやらしてもらってみる。もちろん免許証は持っていますからできることはできるわけですけれども、おまえこう打てああ打てとやっている。医者のインターンは、十分整っているとは言えませんけれどもとにかく形はあるわけですが、鍼灸師にはそういうものが全然ないわけですね。鍼灸学校を建てただけ、あとはどうぞというそういうことでは、私は本当のはりじゃないんじゃないかなと。  私、自分自身も、この間からいろいろ違う三人ぐらいの鍼灸のところへ行きまして、やってもらいました。ところが、全部やり方が違うんですね。それで、人にいろいろ聞きますと、あの人がうまい、この人がうまいという。それから、宣伝のうまいところへたくさん行く。実際は治りゃせぬというようなのもあるわけなんですね。だから、卒業までは鍼灸専門学校で、厚生省のこれは所管になっていると思いますけれども、それまでは何とか面倒を見ておられるが、実際の患者を診るというところに対しては全くもうこれは切れているわけです。  そして、理論がないとおっしゃるとおりに、何何式、何々流という本家本元というふうな名前をみんなつけて、そこへみんな弟子が入っていく。その弟子をでっち奉公がわりに使いながら大きなはり医院ではやっている、こういう状態なんですね。こういうことを言ってははり師の人から怒られるかもしれませんけれども、しかし現実はそうせざるを得ないような状態になっているということなんです。  これは、医師のインターンと同じように、何か鍼灸専門学校にそういうものがある程度はできるようにしておかないと全く経験のない者がはりを打つ、しかも自我流でやるということになるのではないかと思いますが、これに対しては何かお考えになったことはございますか。あるいは、将来、これはぜひお考えいただきたいと、こう思います。
  133. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 実は、私ははり・きゅうのファンでございまして、月に一、二度の頻度で、肩が凝りましたり数年前のむち打ちの後遺症もございまして、利用いたしております。私は、注射は嫌いでございますけれども、はりの方は効果があるように思っております。したがって、今、高木先生からいろいろ言われましたもっと適用範囲を広げるとかまた治療に行く人の側に立ちまして簡素化するというようなことにつきましては、私も賛成でございます。ただ、これはいろいろ関係者が多いわけでございますので、その点を十分に念頭に置きながらひとつ時間をかけて考えてみたい、さように私は思っております。  また、臨床研修制度の導入についての問題でございますが、これも関係者間での合意が得られておりませんので、また導入をしたといたしましても臨床研修の場の確保、整備等に問題があるので現在のところは考えていないということでございますが、この点につきましても私なりにひとつ勉強してみたいと、かように考えております。  医学・医療の問題につきましては、歴史的な文化の背景というものがあるわけでございまして、そういう背景のもとに東洋医学が存在し、しかも国民医療の一部を担っておるわけでございまして、そういう点につきましては十分に考えるべき分野であろうというふうに私は考えております。
  134. 高木健太郎

    高木健太郎君 ありがとうございました。御理解のある御答弁をいただいて私大変うれしく存じます。  もう一つ、文部省の方、大分長いことお待たせいたしました。  これは毎々文部省の方に申し上げているわけなんですけれども、実は、現代の大学あるいは医学関係のそういうところにおきましては、歯学部もそうだと思いますけれども、カリキュラムの中に東洋医学というのは全然入っていないわけですね。ところが、これは厚生省の方は御存じだと思いますけれども、医者の中で、いわゆる漢方あるいははりというようなものを使っているお医者さんがたくさんおられるわけです。恐らく漢方は一万人以上あるんじゃないかと思いますし、はりでも数千人は超すんじゃないかなと思っております。にもかかわらず、大学ではこれは全然教えていない。  で、東洋医学というのは、西洋医学とは考え方基本がちょっと違っておりますので、西洋医学的に東洋医学を見てもなかなか解釈できないところがあるわけなんでして、少なくとも東洋医学の基礎理論といいますか基礎だけは何らかの形で大学の在学中にその基礎理論だけはどこかで教える必要があるんじゃないか。その先生の不足ということはもちろんあると思いますが、幸い中国というところがございますし、そういうところから呼んできてもよいし、あるいはまた欧米ではもう既にメディカルドクターが鍼灸だとか東洋医学をやっておりまして、日本のように鍼灸師というものはないわけなんですね。それで、学会に出ましても、日本の鍼灸師のレベルと欧米におけるレベルとはもうはるかに違うわけなんです。  で、世界鍼灸学会連合というものが昨年北京で 初めて成立いたしまして、約百カ国の学者がそこに集まりましたけれども、日本のお医者さんの方は、医学の根本じゃないものだから、余りそれに関心がないんですね。しかし、関心がないのに、実際は東洋医学の漢方を使いあるいははりを自分でやっておられる。ただし、併療は認められないから、はりの方はただにするあるいは現金を取る、そして西洋医学の方は保険を出す、こういうことになって医療が非常にがたがたになっているわけなんです。今、厚生省の方もよくご存じなんですけれども。  私、文部省の方にお願いしたいのは、これは、前々から私、口が酸っぱくなるように言っておるわけですから、医学教育課長も前から御存じだと思うんですけれども、同じ佐藤という鳥取大の麻酔科の教授がアンケートをとった。どれくらい大学ではりのことを教えているかというアンケートも、多分お読みになっていると思うんですね。  そういう意味で、もう一遍ここで力を振り絞って、どういうふうに東洋医学というものを日本の医学の中に入れていくかというその基本的なことをひとつお考えいただきたいと思うんですが、それについての御見解を文部省側にお尋ねをいたします。
  135. 佐藤國雄

    説明員(佐藤國雄君) 東洋医学の問題につきましては、私どもより高木先生の方がよく御存じのところがあるんじゃないかと思いますけれども、一般的には、先生御指摘のように、医学・医療が進展してまいりましたし、あるいは人口高齢化とかそういった社会情勢の変化の中で医学教育におきましても東洋医学を含めて新しい分野に関する教育の充実が必要だと、こういうふうに言われてきております。  昨年の九月に文部省の方で組織いたしました医学教育の改善に関する調査研究協力会議というものがございますが、慈恵医科大学の阿部学長が座長を務められたわけでございます。この最終まとめの中におきましても、今後要請が高まる分野の一つとして漢方薬、はり・きゅう等を活用する東洋医学の教育というものを挙げております。各医科大学においても、私どもの調査によりますと、昭和六十二年度には十二の大学で独立した授業料目として東洋医学を開講しておるところでございます。ただ、ほかの麻酔学とかその他の分野でかなりの大学において実際上は臨床講義において教えられているというふうに、例えば日本ペインクリニック学会等から報告を聞くところによりますと行われておるわけでございます。私どもといたしましては、一般の教科の中でどの程度実際に教えられているかということについては今詳細を持っていないわけでございますが、先ほど申し上げましたように、十二の大学でもう既に独立した科目として教えている、また多くの大学において学生の自主的な研究グループの活動も行われておりまして、東洋医学研究会といったようなものがつくられているというふうに聞いておるわけでございます。  文部省といたしましては、医学部の教育課程に係る基準については弾力化をいたしましてそれぞれの大学が自己の教育研究方針に創意工夫を生かしていけるふうに配慮をしておるところでございますが、今後とも各大学の改善を支援いたしまして実現を容易にしていくために諸般の条件整備等、努力を重ねてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  136. 高木健太郎

    高木健太郎君 もう時間がなくなりましたので、最後に厚生大臣にお尋ねをいたします。  先般、ことしの二月に藤本厚生大臣は中医協に対して諮問をしておられます。それは、先ほどちょっと申し上げました検査の適正化とかあるいは長期入院の是正であるとか大学病院の紹介外来制の制度化というふうなことを中医協に諮問されておられるわけですが、その結果はどうなったでしょうか。もう答申が出たと思っておりますが、その結果はどうなっているか。  きょうの朝日新聞に、ごらんになったと思いますけれども、まずがんセンターからやろうじゃないか、それから大阪の国立循環器病センターという配下の病院では紹介外来制をとろうということが出ているわけなんですね。これを、将来は大学病院を管轄する文部省などに制度導入を積極的に働きかけていく方針だと。これは、新聞が書いたことですから、厚生省がおっしゃったことじゃないとは思いますけれども、何かそういうことをおやりになっているというその趣旨、その目的、それから将来の見通し、そういうことについて厚生大臣の御意見を伺っておきたいと思います。  それからまた、文部省の方にお伺いをしますけれども、大学に附属した病院というのは、これは教育ということもありますので、紹介者だけ診るということでは実は大学病院としての責務が果たせないのではないか、こう思います。だからそういう意味では、働きかけているということが書いてありますが、文部省としてはどのようにするというお考えですか。長崎の大学では、こういうことを少しやりかけたということも聞いておりますが、厚生省並びに文部省の御意見をお聞きするとともに、藤本厚生大臣から中医協に諮問されたということで、厚生大臣のその趣旨とその結果を、将来の見通し等をお話しいただければありがたいと思います。
  137. 下村健

    政府委員下村健君) いろいろな経過もございますので、私からまずお答えをいたしたいと思います。  今回の診療報酬改定におきましては、医療機関のあるべき機能、特質に即して診療報酬上の評価を行っていきたいということで、その一環といたしまして大学病院等、高度専門病院における医療の見直しというふうな問題を取り上げたわけでございます。  検査の適正化、紹介外来制の導入という問題の具体化でございますが、いずれも中医協の諮問、答申を経て、まず検査でございますが、検査一般につきましての形といたしまして、検体検査につきましては検査の実施料と判断料へ再編成をするということを行ったわけでございます。  それから、生体検査につきましては、回数による逓減制の導入を行っていく、これが第二点でございます。  それから、第三点といたしましては、大学病院等における検査及び画像診断に要する費用につきまして、一般の医療機関とは別の算定方法を定めることができるという形を診療報酬の上でとったわけでございます。  また、これにあわせまして、紹介外来制につきましては、大学病院等からの申請に基づいて厚生大臣が指定を行うという形で紹介外来制を導入したわけでございます。  ただいまの大学病院における検査の問題あるいは紹介外来制の問題につきましては、さらに今後、関係者、特に大学の関係者等と協議を進めるということになっておりまして、実は今月中にも再開の第一回の協議を始めようかというふうな段取りで考えておるわけでございます。厚生省所管の病院につきましても、きょう新聞報道がございましたけれども、それらの病院につきまして具体的な実施方法について目下協議を行っている、こんな段階でございます。
  138. 佐藤國雄

    説明員(佐藤國雄君) 紹介外来制を大学病院に導入する問題につきましては、かねてから厚生省の方に、文部省、それから大学病院の関係者から、この問題の極めて重要なことを説明してきておるわけでございます。  先生も先ほど指摘のように、現在プライマリーケアといいますか総合的な臨床医の養成というようなことも、かねてから大学病院の方に要望が強くなってきている。また、それが社会的な要請でもございまして、私どもとしてもそういう方向で今大学病院の編成を変えつつあるわけでございますが、もし紹介外来制というようなことを今の段階で導入いたしますと、症例数が減少して疾病の種類に偏りを生じたり、それから総合的な医療技術の習得が困難になるといったようなことから、よりよい医師の養成に重大な支障が生ずるのではないかという懸念がございますので、最終的には各大学で決めることでございますけれども、 私どもとしては慎重な対応が必要であるというふうに考えておる段階でございます。
  139. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今政府委員から御答弁申し上げたとおりでございまして、今後の問題につきましては関係者意見もさらによく承りまして慎重に対応してまいりたい、かように考えております。
  140. 高木健太郎

    高木健太郎君 終わります。
  141. 内藤功

    ○内藤功君 私は、四月十八日の参議院本会議でも申し上げましたが、国民健康保険の今の大きな問題は、一つは、高い保険料、払いたくても払えないという人が続出をしておる、そうして滞納に対しては保険証の未交付、こういう深刻な事態が相次いでおる、この問題でございます。  まず、ことしの一月二十八日、保険局長から知事あての「昭和六十三年度国民健康保険保険者の予算編成について」という通知が今大問題になっております。「予算編成の基本方針」の三のところで「保険料(税)の引き下げの措置を取るようなことは厳に行わないこと。」、続けて「なお、」「保険料(税)の引き下げの措置をとった保険者に対しては、財政調整交付金の配分について一部見合わせることを考慮するものであること。」、こういうふうにしております。  衆議院の社会労働委員会参考人意見聴取のときに、自治体医療関係者として朝日俊弘参考人がこう述べています。  こういう形で厚生省の側が一方的に自治体にいわばおどしをかけるような通知を出していくということについて、大変残念に思います。実際、自治体の窓口では、年々に高くなる一方の保険料を納入していただくに当たって、(中略)大変困難を生じているような現実がございます。このような状況がございますだけに、今回のような厚生省の態度は、何とも非常に高飛車で、自治体だけではなくて住民感情を逆なでするものだというふうに考えざるを得ません。 こう述べておられます。  朝日新聞の四月三日付でも「”脅し”にも似た厳しい注文」と批判をしております。  ところが、衆議院の三月三十一日の社会労働委員会で、我が党の児玉委員に対して保険局長は、国保は単年度事業でないので「先行きを考えながら運営をしてほしいという意味でお願いをしているわけでございます。」、こう答弁しています。  これはそのとおりであるか確認したいことと、もしお願いであるならば、都道府県知事や市町村長は従わなくてもよいということになりますが、そういうことなんでしょうか。
  142. 下村健

    政府委員下村健君) いろいろな意味が入っていると思うわけでございますが、御指摘の通知におきまして保険料の引き下げについて言及しておりますのは、国保制度の安定的な運営を確保していくためには、医療費の増高に見合った適切な水準保険料の賦課徴収が必要不可欠であるということを前提にいたしまして、十分な経営努力あるいは今後の見通し等もなく安易な保険料の引き下げ措置を行わないよう指導をしたわけでございます。  その問題ともう一つは、そういった経営努力といったことを十分に加味した上で国庫負担の配分を行うべきである、こういう議論がありまして、調整交付金の配分についてはまた改めて私どもから国庫負担の配分についての通知を出すわけでございますが、予算編成の際にあらかじめそういったことで努力をした市町村と努力をしない市町村と差をつける、差をつけた配分を行いますということを明らかにするという意味と二通りあるわけでございます。  前段の保険料の問題については、これは最終的な決定権は、保険者である各市町村が決定権を持っているという意味では直接的な拘束力を持っていない、こういう意味で私は、地方団体にそういうお願いをした、指導と申してもいいわけでございますが、そのように申し上げたわけでございます。    〔委員長退席、理事曽根田郁夫君着席〕
  143. 内藤功

    ○内藤功君 文脈は、明らかに第三項の中に入っているんです。前段と後段は「なお、」で接続しておりまして、いろいろ「安易」とかなんとかという言葉を除きますと、引き下げは厳に行わないこと、引き下げをとった場合は調整交付金の配分について一部見合わせる、こういうふうにこれを受け取った側はとることはもう間違いないですね、日本語の文脈としては。これが一つ。  それから、いろいろ市町村で努力ということを言われましたが、私はある首長に聞いたんですが、やりくりしてよく値下げをやった、補助金、交付金をふやしてやろうというんじゃなくて値下げをしたら罰だ、これじゃ自治体の活力も独立もなくなるじゃないか、こう言ったある地方自治体の首長がおられました。私は、これは明らかな、朝日参考人が言い、また新聞も言っているおどしに似たようなことだ、こういうふうに文脈としては言わざるを得ないと思うんですね。特に、被保険者の重なる負担を軽くするために値下げをするかどうかという地方公共団体の裁量の問題にこういう交付金配分権限をもって介入をするということは、私は中央官庁として甚だ好ましくないことだと思うんです。  きのうも連合審査で山口議員から質問がありました。私は、山口議員のは正論だと思います。そのときに局長は、こういう通知を出す権限は国民健康保険法の百八条の報告や実地検査、地方自治法二百四十五条四項の助言、勧告だと言いましたが、これは、法律論としては全然根拠にならない。  国保法の百八条一項というのは、報告や実地検査ですが、値下げを厳にするな、値下げをしたら配分のときに見合わせる、こういうようなのは実地検査でも報告でもないし、いわんや技術的な助言、勧告でもない。  あなたの言っている根拠は、全然根拠になっていないんじゃありませんか。
  144. 下村健

    政府委員下村健君) 私が昨日申し上げましたのは、国民健康保険法の第四条におきまして一般的な国保の安定運営についての監督権を有している、その具体的なあらわれとしては百八条のような規定もある、また団体委任一般については地方自治法の規定もある、このように申し上げたわけでございます。  したがって、一般的な指導監督権というものは国としては持っており、それの範囲内で保険料について一定の指導を行う権限は国は持っている、このように考えているわけでございます。
  145. 内藤功

    ○内藤功君 それは一般論であって、今読み上げました第三項という、こういうようなやり方について根拠になるものじゃありませんね。これははっきりしていると思うんですね。  特に、これは団体委任事務ですよ。こういう団体委任事務について値下げを厳に行わないこと、こういう形で地方公共団体の固有の団体委任事務という権限を侵すということは、これはできませんね。
  146. 下村健

    政府委員下村健君) 問題の通知は、六十三年度の予算編成につきまして私どもとしての一定の方針、考え方を示したわけでございます。  市町村の国民健康保険の予算編成も大概は三月中に行われるわけでございますから、その時点におきましては国の予算自体も確定していない、こういうこともありまして国の負担金等の配分についても配分方針は明確にできていないわけでございます。しかしながら、市町村としては、実際に予算編成を行う上で、六十三年度で国庫負担をどの程度もらうことができるだろうか、その配分を受けることができるかという見通しも立てる必要があるわけでございます。そんなことをもとにいたしまして六十三年度の保険料を決定する、これが現実に市町村で行われていることだと思っております。  そこで、六十三年度の保険料決定に当たって、現在の状況といたしまして医療費の状況等を考えますと、一般的な判断といたしまして市町村が保険料を引き下げることができるというふうな状況にはない、こういう前提に立ちまして私どもとしては保険料を下げるようなことはすべきでない、このように申したわけでございます。  それに関連をいたしまして、国庫負担の配分については、これは予算成立後にこちらとしては追って通知をすることになるわけでございますが、そういうふうな保険料についての決定方針というものを配慮した上で国庫負担の配分を決めるということを明らかにした、こういうことでございます。
  147. 内藤功

    ○内藤功君 非常に苦しい答弁ですね、ますます苦しくなってくる。  三項の内容は、前段の厳に引き下げを行わないこと、後段の財政調整交付金の配分について見合わせることを考慮する、これがなお書きでもってきちんと結びついているんですね。ですから、受け取る方は、引き下げればこの配分について見合わせる、つまり一種のペナルティーとして受け取ることは明らかなんですね。  私は、これは非常に重大な問題だと思うのは、国の地方自治に対する態度として、国に行政の基本として非常に大きな問題があると思うんですよ。  国家行政組織法の十六条というのを御存じですか。国家行政組織法の十六条ではこういうふうに規定しておるんですよ。「各大臣が地方公共団体の長に対してなす命令、示達その他の行為について、地方自治の本旨に反するものがあると認めるときは、」地方公共団体の長は、これに対して内閣総理大臣に異議を申し出ることができるんですね。これは、いわゆる国の機関として処理する行為についてもできるんですね。いわんや、これは団体委任事務でしょう。団体委任事務というのは、国家の、中央行政の指揮監督を一切許さないというのが原則です。ここのところが大事なんです。  ですから、この書き方というのは地方自治を侵す、地方自治の本旨を侵す。骨っぽい首長だったら、そういうことで逆に抗議を申し出てきますよ。私が首長ならやりますね、内閣総理大臣に言いますよ。そういう問題なんですね。  それをお考えかどうか、どういうふうにお考えでしょうか。
  148. 下村健

    政府委員下村健君) ただいまも申しましたように、現在の一般的な判断といたしましては、医療費の動向等を考えますと保険料の引き下げができるような状況ではないという国としての判断を示して、保険料の決定に対応するように求めたものでございます。したがって、これは地方自治法に抵触するものではない、このように考えております。  なお、後段の問題でございますが、繰り返しになりますけれども、これは、国庫負担の配分の基本的な考え方についてあらかじめ必要な情報を市町村に提供をした、こういうことでございます。
  149. 内藤功

    ○内藤功君 国家行政組織法十六条の私の理論については、どうお答えになりますか。
  150. 下村健

    政府委員下村健君) 十六条に抵触するところはないと考えております。
  151. 内藤功

    ○内藤功君 地方自治の本旨に反するかどうかは、あなたが判断するんじゃないんですよ。  十六条というのは「地方自治の本旨に反するものがあると認めるときは、当該地方公共団体の長は、」というんです。認めるか認めないかは、地方公共団体の長が地方自治の本旨というものから見て反論ができ、異議ができる、こういう問題なんですね。  答えになっていないじゃないですか、それは。
  152. 下村健

    政府委員下村健君) 十六条の解釈についてはお考えのとおりであろうと思いますが、十六条に該当するような問題でない、こう申し上げているわけでございます。
  153. 内藤功

    ○内藤功君 大体あなたの見解のあるところは、この第三項というものの前段と後段を切り離してばらばらにして、前の方は値下げをしないというこういう一つの要請だ、後の方はそれと関係ない、切り離す、こういうことであると思うんですね。これは何回やっても、議論は大体そういうところだと思うんです。  私は、読んだ人がどう見るか、地方自治体がどう見るか、こういう大きな問題だと思います。これは、私は、日本語の読み方、常識として、間違いなく、値下げをしない場合にはこれはペナルティー的に配分についての見合わせをやる、こういうふうにまとめてこれは読むべきものだ、こう思いますね。  私は、こういうような通知というものは、絶対にこれは許すことができない、地方自治の観点で許せない、こういう考え方で今後中央行政をやるということは非常に問題だという点を指摘しておきたいと思うわけです。  そればかりではなくて、この通達にはもう一つの重大な問題があります。それは第二の八のところです。  「広報活動については、」「特に、国民健康保険制度保険料(税)による相扶共済の制度であること、保険料(税)の納付が制度運営の根幹であること等につき積極的な理解を得べく、十分な広報活動を行うこと。」としておるところであります。  相扶共済ですね。きのうも論戦になりました。相互扶助の相扶共済、これは、昭和十三年の旧国保法第一条に「国民健康保険ハ相扶共済ノ精神ニ則リ疾病、負傷、分娩又ハ死亡ニ関シ保険給付ヲ為スヲ目的トスルモノトス」とありまして、これは旧法の考え、現行国保法にはない、現在の国保法とは相入れない考え方じゃないですか。
  154. 下村健

    政府委員下村健君) 相扶共済のみで成り立っていたというのが旧法であるとすれば、相扶共済という考えも社会保険という枠の中で生かしながら国の負担を明確にしたというのが新しい国民健康保険法の精神である、このように考えております。
  155. 内藤功

    ○内藤功君 それは違うんですよ。  この旧国保法は、昭和十三年といいますから、日本の中国に対する侵略戦争が激化して長期化の様相を呈してきたそういう中で、いわゆる健民健兵政策、それから農村で結核に侵される人が多い、こういう状況が放置できなくなったので制定された。社会不安の原因を除去する、こう言っておりますね、そういうふうにしてできた法律です。  この法律のもとでの補助というのは、帝国議会の議事録を見ると、スズメの涙どころかノミの涙だ、こういうふうに言われています。国民を愚弄するごとき計画だと帝国議会でさえ批判されているような状況だったんですね。それが相扶共済の精神というものの歴史的な意味なんですよ。  現在の国保法は、御承知のとおり、「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与する」。一つも相扶共済という文字はない。きのうも神谷議員がこの問題で発言しましたが、これはもうはっきり除かれている、要らない、相扶共済というのは。国庫負担とそして保険料というものを基本的な柱とする運営を憲法二十五条に基づいてやれ、こういうことですからね。  ですから、都道府県知事に対してこういう相扶共済制度というものを中心に広報活動をやれというのは、これは今の国保法、憲法をゆがめた宣伝をやれということを言うことになるんじゃないですか。
  156. 下村健

    政府委員下村健君) 相扶共済という考え方は、社会保険である以上は生きている、このように考えられるわけであります。  今のお話は、国保社会保険でない、こう言っておられるんではないと思うんですけれども、新しい国民健康保険でありましても、皆保険というふうな言葉にあらわれておりますように、社会保険としての本質は死んでいない。それで、これは、新法のもとでの国民健康保険の全体としての財源の構成、保険料でいかなる部分を賄い国庫負担でどの程度負担をするかといった基本的な制度の仕組みの中にそれはちゃんとあらわれていると思うわけでございます。  したがって、相扶共済という面を特に今の時点で強調するということは、保険料の重要性を、社会保険としての国保の位置づけというものを特に理解を得られるように広報を行え、このようなことを言っているわけでございます。
  157. 内藤功

    ○内藤功君 広報というのは、国または地方公共団体のとうとい予算を使ってやるわけで、国民に誤解を与えるものはいけないですね。税金のむだ遣いですよ。  それならば、今の憲法、国保法に基づくこういう社会保障制度である、今の第一条、そういう制度であるということを基本にした広報をすべきなんですね。そしてそういう中で保険料の納付をお願いする、これは私は言えると思うんです。ここに出ているのは、そうじゃなくて相扶共済だけなんだ。  これは、まさに戦前の国保法の第一条の復活ですよ。きのうも神谷議員は連合審査会で、明らかに考え方が変わってきているんじゃないか、国保社会保障だという考え方から戦前の国民健康保険の相扶共済というもの、つまり国の負担をなくしていくという方向に変わってきているんじゃないか、こう言ったんですね。私は、重ねてこの点、旧法の考え方を復活させていくものだと。  これについてどういうふうに反論されますか。そういう相扶共済を中心にする広報をやるならば。大事なところですよ。
  158. 下村健

    政府委員下村健君) 社会保険ではありますけれどももちろん我が国社会保障制度の中核をなす制度であるということについては、これは疑いがないわけでございます。社会保障でありますが年金医療については社会保険方式でそういった具体的な医療保障を展開していく、これが我が国基本政策になっておりまして、国民健康保険社会保険である、したがって皆保険という形で国民医療保障を確立していく、こういう考え方基本において変わりはないわけであります。    〔理事曽根田郁夫君退席、委員長着席〕  ただし、国民健康保険ができた時点におきましては、国の責任を明確にして皆保険を達成する、そういった意味合いで国の責任を特に強調し、皆保険体制社会保障の一環という点に重点を置いて理解を求めたということでありますし、今日の時点においては、国民健康保険社会保険であるという本質については変わっておりませんので、その点について十分理解を得て保険料の納入が円滑に行われるように努力するように、こういうことを言っているわけでございます。
  159. 内藤功

    ○内藤功君 それならばそういうふうに通達に書くべきなんだよ、社会保障だということを。社会保障だとは書かないでいきなり相扶共済、これでは戦前の国保法への逆戻りだと私ははっきり指摘をしておきたいと思います。  次に、保険料が払えない方に対して窓口で保険証を交付されないという事例は何度か取り上げましたが、東京都北区でも昨年の七月末までに現実に起きた保険証の未交付事例が、私は行って調べてきたんですが、数十件発生をしております。  この東京都北区の例をとりますと、八七年の国保料が一世帯八万三千七百二十円、十年前と比べて二・二九倍と聞いております。  まず、昭和六十一年分の滞納額が九万二千九十二円、窓口で毎月分納で二万円分割払いを申し出た方がおられます。この人は、滞納額を半分以上払わなければ保険証を渡さないと言われた。  二番目。十六万円の滞納がある人が保険証の交付を求めたところ、半分の八万円払わなくては交付しないと言われて追い返された。  三番目の例。夫婦で入院していた。退院後滞納分を支払うとしていたが、病気のため生計が立たず約束した分納額を払えなかった。この事情を知りながら窓口では、あなたが約束を守らないからといって保険証を交付されなかった。  四番目の例。保証債務の返済で生活が苦しく滞納が十二万円になった。いいですか。子供のけがで奥さんが保険証を求めに行ったところ、約半分の五万円払わないと渡さないと追い返された。次に本人が休みをとって行ったが、だめだと。やっと借金して二万円持っていったそうです。そうしたら、事情をどんなに話しても頑としてびた一文まけない。五万円を払わなきゃだめだと都合四回追い返されてしまった。結局、親戚に借金して、しばらくおくれて五万円払った、こういうことですね。この人は、食事は本当に貧しい食事、納豆と豆腐でしばらくの間やっていた、こういうふうに言っております。  私は、これらの事例が悪質だとはとても思えませんね。悪質事例じゃないですよ。払いたくても払えない人なんですね。分納を申し出ているんですよ。  もう一つ、問題は、窓口で、半分払わなければ保険証を渡さない、こういうふうに言われたという点が共通している。その場合の根拠として、厚生省昭和六十一年十二月二十七日に出した国民健康保険課長通知というのを根拠にしているんですね。これを根拠にしていますよ。明らかにこれを、こういうのが来ていると、こう言っているわけですよ。  これはどうなんですか。こういう通達がその根拠にされて、現に自治体の窓口でやられている。そういうふうに読めるところがあったからじゃないですか。私は、これについて厚生省の責任をはっきりさしてもらいたいと思うんですね。
  160. 下村健

    政府委員下村健君) 滞納者がすべて悪質な滞納者でないと、このように申し上げてきているわけでございますが、各市町村あるいは保健所の窓口でもそのような理解をしているんではないかと思います。  ただ、その場合に、一体どのくらい滞納したところから注意をして対応していけばいいかということの目安といたしまして、私どもとしては、年間の保険料の二分の一程度のところを目安として対応するようにというふうな指導をしているわけでございます。  したがいまして、お話しのような事例が出てくるんではないかと思うわけでありますが、ただ、今のお話を伺っておりましても、そのお話に出た方が悪質と認定されているわけではないと、このように考えられるわけであります。悪質と認定したのであれば、交付をしないで直ちに被保険者資格証明書を交付する、こういう形になるわけでございますが、資格証明書を交付するという形になっていないところを見ますと、北区の場合も悪質滞納者として認定した上でそれに対応したということではないんだろうと、このように理解をされるわけでございます。  したがって、確かに手数がかかってなかなか大変だという面はあろうかと思いますが、私どもとしては、十分に実情が理解されるように納付相談の徹底とそれから被保険者の実態を十分に把握するようにと、こういうことを申しているわけでございまして、そういった過程としてお話しのような事例が生じてきたということであろうというふうに理解されるわけであります。
  161. 内藤功

    ○内藤功君 そこが問題なんです。  悪質と認定されなかったと、それはそうでしょう。こんなの悪質にはなりませんよ。悪質と認定されなかったのに、なぜ、このように四回も追い返されるということになったんでしょうね。これは、相談という名前による実際上の未交付ですね。相談という口実による未交付、こういうふうに私は見ざるを得ないわけですね。なお悪質であります。行政側の対応がなお悪質であると思います。  結局、これは北区において激しい抗議を行いまして、都の指導もあって、事務に適正さを欠いたと文書で回答して、最終的にはこれは交付をされたわけです。しかし、それまでの苦労は、あなたは煩雑と言うけれども煩雑どころじゃないですよ。やっぱり生死、健康に関するわけですからね。  私、そこで最後に、大臣にお聞きしておきたいと思うんです。  これらの人は、みんな払う意思がある善良な誠実な人ですよ。業者でありその奥さんであり家族ですよ。そうして、保険料が高いということ、保険証取り上げの滞納者制裁条項が導入されたこと、それに基づく課長通知というああいうどのようにでもとれるものを出したこと、そういうことが善良な人を苦しめている、悪質でない人に悪質の範囲を広げている、ここに大きな問題があると 思うんですね。  私は大臣にお伺いしたい。  今度のこの法案でこういう諸問題が解決できますか。これが一つ。  こんなことが許されていいですか。ごくわずかな例外とはいえ、こんな例外が許されていいか、こんなことが許されていいかという問題ですよ。そして、これについては、この保険証取り上げなどの制裁措置条項をやっぱり削除するということですよ。  それから、十二月二十七日の課長通知、ああいうものは撤回すべきですよ。そしてさらに、こういう意味なんだという適切な下部の機関に対する指導、口じゃないですよ、きちんとこういうことでやるんだと、間違いの起こらないような文書によるきちんとした指導もあわせてやる必要がある。  きょう郵便で私のところに、恐らく他の委員各位のところにも来ているかと思いますが、お名前は出さないで、こういう投書が来ています。   私は、昨年十月、高血圧症の夫を亡くしました。不況のため、営業不振が続き、保険料が納め切れず、短期保険証の期限が切れたまま病院に行くのをためらっていて、手おくれとなってしまったのです。これ以上犠牲者を出さないため、私たちの負担を大きくする国保法の改悪は絶対しないでください。  こういう手紙が、きょう私、昼休みに帰ったら来ておりました。  大臣の御所見を伺いたいと思います。
  162. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 国保保険料滞納者に対する措置でございますが、被保険者の資格そのものを奪うものではございません。保険料の滞納の状況に応じまして特に悪質な滞納者に限っては最小限必要な措置を行っているものでございます。  これは言うまでもないことでございますけれども国保制度というものは、被保険者の相互扶助の精神に基づいております社会保険制度であるわけでございまして、みんなでお互いに助け合おう、こういう考え方で成り立っている制度でございますから、保険料を納めていただくということは、これはこの制度を続けていくためにはぜひとも必要な基本でございまして、九十何%の方々は納めておられるわけでございます。  しかし、今後ともこの運営につきましては、御指摘のような誤解があっては困りますので、市町村におきまして適切に運用されるように十分に私どもといたしましても配慮するようにいたしたいと考えております。
  163. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、前回、国民健康保険保険料国民負担能力を超える高さになっている、こういう事態になったのは政府の退職者医療制度の見込み違いで国庫負担を大幅に引き下げたことだという点を取り上げまして、その上に非常にひどいのは、これは今も御指摘がありましたけれども保険局長通達まで出して、一方では一世帯あたり千七百円の保険料の引き下げができるといいながら、保険料は引き下げてはならない、そしてそんなことをやればペナルティーを行うなどといって、実質的には保険料の引き上げになるような結果になるではないかという点を御指摘を申し上げました。さらに、本改正案の主要な柱になっております医療費適正化のプログラムについてただしてまいったわけでございます。  きょうも、大変限られた時間でございますから、簡潔にするために少し申し上げておきたいと思いますが、高いところの医療費を抑えていくために、要するに、全国の平均医療費より年齢構成などを勘案してもなお高い市町村は百二十前後大臣が指定する、指定された市町村は医療費水準を抑えるための是正計画をつくる、この是正計画を推進するために国と府県が指導して進めていく、なお医療費が下がらない場合にはその分はこれは一般会計から面倒を見なさい、国は面倒を見ませんよという代物なんですね。ですから、市町村が負担が嫌なら、しゃにむに抑え込んででも高い医療費は抑えなきゃならないということになるではないか、そういう結果は、一番手っ取り早く医療費を抑えられる長期入院の高齢者の入院の抑制をやっていく、そしてひいては医療内容の低下を招くというゆゆしい事態になるではないかという問題を指摘をしてまいったわけでございます。  私は、そういう適正化プログラムなどというもので行政機構を通じて一方ではやり、一方では四月一日からの診療報酬の改定によって、先ほどからも局長の御説明にもありましたけれども診療報酬の改定というものを通じて、またまた長期入院の老人が追い出される仕組みをつくってきているという点を非常に憂慮するものであります。四月一日からの診療報酬の改定というのは問題を大変多く含んでおります。  しかし、限られた時間でございますし、この問題に関連のある特徴点を申し上げておきたいと思いますけれども、例えば、基準看護料あるいは入院時医学管理料、これらの診療報酬が、在院日数、病院に入院している日数がふえるほど安くなっていくという仕組みをつくっていることであります。従来から仕組みはあったわけですけれども、それを極端にひどくしてきているということであります。  例えば入院時の医学管理料を見てみますと、これは、九区分にしているんですね。九つに分けている。老人医療の場合には十区分にしているんですが、一般の入院医学管理料の場合でも、一週間以内は三百九十六点、つまり三千九百六十円です。それが六カ月を過ぎますと百三点、つまり千三十円、およそ四分の一に減る仕組みになっている。老人の場合にはもっとひどくて、入院して一週間は四百六点ですから四千六十円。ところが六カ月を超しますと、これまた千百円に減るわけで、約四分の一になってしまうわけでございます。  基準看護料も、これは、一般の入院については六つの区分にし、お年寄りの入院については九区分にして、やっぱり入院の日数によって診療報酬を引き下げるというやり方をしてまいっております。  私は、こういうやり方をずっと見てまいりますと、もともと医学管理料というものの区分というようなものはなかったんですね。それが老人保健法が成立をしたときに六段階になったんですか、もともと四段階あったんですね。それを六段階にし、今回一般を九区分にし、老人を十区分にする。つまり長いこと入院をしていたら医療費がもう出ませんよ、六カ月したら四分の一になりますよと。だから、病院としても長く置いておけないではありませんかということで、老人の長期入院を追い出すというふうな結果に導くという仕組みをつくってきた。  これは極めて冷酷だというふうに思うんですけれども、そうじゃないですか。
  164. 岸本正裕

    政府委員(岸本正裕君) 老人患者の場合、一般的には、入院早期の急性患者につきましては集中的な治療看護が必要でございます。これに対しまして長期入院をしている慢性患者につきましては、比較的症状が安定化、定型化する傾向があるものと考えられるわけでございます。  このような観点から、入院料の基本的部分であります入院時医学管理料や看護料につきましては、入院早期を重点的に評価をしているわけでございまして、これらのこういう措置によりまして老人患者の症状に見合った適切な治療や看護が行われるように入院医療の適正化を図る、こういうことを考えているわけでございます。  今先生の御指摘のような措置、これは老人の心身の特性に見合った良質で効率的な医療を確保するという立場から行っているものでございまして、医療機関からの老人の追い出しを意図しているものではないということを御理解いただきたいと存じます。
  165. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、老人のことだけを言っていない、一般も言っているんです。  同じように、それじゃ、一週間たったからといって病室を変えるとか病棟を変えて管理を変えるのか。同じ管理をやり同じ看護をやって、半年し たら四分の一の管理料しか診療報酬が出ないというふうなこういう仕組み、こういうやり方というのは、とにかく何でもかんでも長期入院を排除してそして医療費を抑えるということだけが目的になっているからではないか。これがお年寄りに適用されたらいや応なしに病院を、局長は前回は追い出すという言葉は嫌だといって言われたけれども、追い出さざるを得ないようになるそういう仕組みができている。これは病院当局にとっても大変ですよ。あるいは看護の実態にも合わない。いろいろ問題ありますが、時間が余りありませんから詳しくは申し上げません。何しろそういう仕組みをつくってきているという点を指摘をしておきたいわけです。  それからもう一つは、例えば、この診療報酬の改定を見ますと、こういうことが起こっておるんですね。  お年寄りで入院が一年を超える場合、これは老人医療の場合にはしばしばあると思いますが、とにかく一日に処置を何回やっても一日に十点だと。十点というのは一日に百円ですね。それから、老人病院であったら、一年以上の入院者は一日に何を何回やっても二百五十円だと。あるいは湿布や吸入や目、耳、鼻、口、のど、どこを何回処置をしても一日に十五点、百五十円です。大体、今の時代の経済観念とはおよそ話にならないようなこういうことが決められてきているわけです。  こういう仕打ち、こういうやり方というのは一体何を示すんだろうか。私は、病院に長くおってもらってはよくないということで、点数で締め上げるというやり方で厚生省はやってきているなと思ったけれども、ちょっと考えてみたら、お年寄りは病気をしても診療報酬は払いませんよ、必要があってもほっておいたらよろしいということになるじゃないかという点が極めて重大だと思うんです。高齢化社会を迎えてお年寄りを大切にしなければならないと言いながら、こういうひどいことは何だと。もっと言えば、私は、厚生省はここまで考えているんじゃないかなと思うんですが、どうしてもやってもらいたい、しかしもう診療報酬、費用は出ないですよ、出ないからこれ以上やれませんと言われた場合に、自分でお金を出してでもやってもらえということなのか。そこまで考えざるを得ないけれども、そういうことですか。
  166. 岸本正裕

    政府委員(岸本正裕君) 今の先生の御指摘の検査とか処置等につきましてのいわゆる包括化の問題につきましては長期入院者を対象にしておりまして、入院一年を超えるようなケースを対象にしているわけでございまして、非常に疾病が慢性化をして定型化をしている、そういうものを対象に対しまして検査づけをするとかそういういわゆる出来高払いの欠点で、それが老人の幸せにも反する、こういうようなことが言われているわけでございまして、そういうことを是正し、老人の症状にふさわしい医療を適切に提供する、こういう趣旨で今申し上げたような包括化をしているわけでございます。  そういうことで、だれにもそういう今のような包括化をしているのではございませんで、一年を超えるような長期の慢性症状のものを対象に行っていると、こういうことでございます。
  167. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 さっぱりわかりませんがね。  特定の患者さんあるいは特定の患者さんだけを想定したような診療報酬体系というのはよろしくないんです。実際そうなんです。  例えば、一般の病気で入院をした患者さん、がんの人だと考えたらいいですよ。入院したときにはそれほど大して手はかからないけれども、半年ぐらいしていよいよ大変な状況になってくるという場合には非常に看護の手間暇もかかります。病室管理も大変な負担になるんです。そういう場合に、六カ月を超したら入院管理料は四分の一なんというのは実態に合わないじゃないかということを申し上げているんです。何でもかんでも日にちがたったら下げたらいいというものと違うんですよ。  これは厚生省だから言うんです。いわゆる財政対策だけを中心にして、医療費を抑える抑えるということだけを中心にしてやってまいりますと、お年寄りの場合には本当にひどい医療内容の低下、お年寄りにとってはほうり出されていくというふうな実に酷な状況になる。こういうことは私は断じて認められないですよ。実際には老人病院だって認められない。一般病院はなおさらです。そういう点をどう考えているかという点をもっとはっきりしてもらいたいと思うんです。  それは、いや、薬づけ、検査づけにすることがお年寄りのためにならぬからと言うけれども、すべての入院患者を考えてそんなことがぬけぬけ言えますか。どの患者さんが薬づけになっているか、どの患者さんが検査づけになっているか、ここの患者さんはどうしてもやらなきゃならないかという区別がないんじゃないですか、これは。
  168. 下村健

    政府委員下村健君) 一般的な議論として申し上げますと、日本の場合には医療機関の、特に病院の場合でありますけれども、急性期の病院と慢性期の病院の区分がはっきりできていない、また診療報酬の上でもそれに対応したような体系になっていなくて一律の診療報酬体系ではないかということがこれまで言われ続けてきたわけでございます。制度的にそれにどう対応していくのか。特にお年寄りの状況を見ますと、一般病院にかなり多数の方が入って、しかもかなり長期間、数年間にわたって入院をするというふうな事例もある、こういうことでございます。私たちは、そういった形は好ましくないんで好ましい方向にむしろ変えていくべきではないか、やはりその時期によりまして、例えば脳卒中の患者であれば、その直後の急性的な症状がある時期とそれからリハビリテーションにしても時期によってある程度違ってくる、このように考えているわけでございます。  患者の状態を見ながらそれに応じた適切な医療が行われるということが好ましい、こういった保険の上での診療報酬制度でありますからある程度画一的な割り切りということはあるわけでありますけれども、全体的なあるいは一般的な状況を見て、多少の幅を見ながらそういった患者の状況に応じた適切な医療施設の体系あるいは診療報酬体系、こんなものをつくっていくべきだと考えているわけでございます。
  169. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 今局長が言われたのは、例えば脳出血の場合に入院して一週間が一番大変だと。  逆の場合もある。落ちついて、入院をされてから再発作を起こしたということが起こる可能性もある。そういう場合でも、それじゃそういうことがちゃんと対応できるのかというと、この一般論ではできませんわ。二カ月目に再発作が起こったらやっぱり二カ月以上という低コストのところでしか支払わない、こういうのは実情に合わぬです。そのことを申し上げているんです。実情に合わないということと、お年寄りにとにかく病院から早く出ていってもらわぬと病院もたまらぬという状態をつくり上げているこの仕組みというのは、けしからぬと思う。  時間がありませんから次へいきますが、とりわけ私が理解に苦しむのは、今回、保険医療養担当規則、いわゆる療担規則の十条を改正しまして、「家庭事情等のため退院が困難であると認められたとき。」には、保険医療機関は保険者、都道府県知事に通知義務を課したんですね。わざわざ療担規則の十条を改正していますね。これは一体どういうことですか。  いわゆる社会的入院とえらい言われている病状としては退院をしてもいいけれども家庭事情などのために退院を勧告してもなかなか退院してもらえないという人の場合に、通知をせよというんですね。そういうふうにもう決められたんですね。  簡単に言いますわ。そうしたら、病院長が保険者あるいは都道府県知事に通知をした場合、この人は退院してよろしいといっても帰りませんといって通知をした場合には、その患者さんに対しては保険給付の打ち切りをするんですか。これ、どうなんです。
  170. 下村健

    政府委員下村健君) 入院治療の必要がないにもかかわらず家庭事情等のために入院を続けるよ うないわゆる社会的入院は、患者にとって好ましくないだけでなく、保険料や税金で賄われている保険制度立場から見てもこれは問題があると、このように考えているわけでございます。  したがいまして、老人ばかりでなく、ヘルスあるいは福祉の施策の中から、このような患者にとって最もふさわしい処遇を見出していく必要があると考えているところでございます。  こういった観点から、従来から老人保健に係る療養担当基準につきましては、家庭事情のため退院が困難な場合には、医療機関は市町村長に対して通知しなければならないこととされていたところであります。今回の改正は、保険者においてもこれと同様の取り組みを行うこととして、患者にとって最もふさわしい処遇を見出す契機にしようということであります。  したがいまして、現在の状況で、これは一般論として申し上げているわけでございますけれども患者に対する給付を打ち切るというふうな措置と直ちに結びつけるというふうな考え方はとっておりません。
  171. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、医療機関に対しては、例えば通知がおくれる、通知を怠るという場合には、療担規則違反で処分の対象にするんですか。
  172. 下村健

    政府委員下村健君) 今回の療養担当規則の改正は、ただいま申し上げましたように、いわゆる社会的入院に対する総合的な対応を図っていく、こういう見地から保険者サイドからの取り組みを促していこうと。行政サイドが行うべきことを医療機関に押しつけようというふうなことを考えているわけではございません。  また、この規定の改正の趣旨から、医療機関が都道府県知事に通知を行わないということだけで直ちに処分を行うということには必ずしもならない。これはいろんな事例があるいはあるかもしれませんが、一般的な判断として申し上げますと、私どもとしては、この規定の趣旨を体し、医療機関の側でも不必要な入院を減少するよう尽力をしていただきたい、このように考えておりますけれども、これはなかなか判定が難しいというふうな面もあろうかと思います。したがって、通知が行われないということで直ちに処分に結びつけるということを考えているわけではございません。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは当たり前のことだと思うんだけれども、処分の対象になるような通知義務などということだったらただではおさまらぬですね。  しかし、ここまで徹底をしてきているという具体的な例だと思うんですね。結局、どうなるかいうたら、行政的には、指定市町村はいわゆる是正計画をつくって、それで国と都道府県の指導によって審査、監査減点等々を強化して、突出した医療費は削れ削れと圧力をかけられる。それから、診療報酬では、長く入院をさせておいたらいわば幾ら温情をしようと思っても病院自身の経営が成り立たぬようになるということで締め上げる。上からは行政的に押しつけてくる、下では自分のおる病院の中からはもろおってもろうたら困るんやということで突き上げられる。サンドイッチになるのはだれかといったら、やっぱり、長期入院の高齢者になってしまうと思うんですね。  あげくの果てに通知義務で追い出すというふうなことになったら、これはひどい仕組みだと思うんですが、実に物の見事につくり上げていると思うんです。私は、財政対策、とりわけ医療費を減らすということを中心にしての対策としては大変物の見事な仕組みだと思いますよ。しかし、患者国民立場に立ったら、こんなことをやられたらたまらぬと思うんです。医療費の高さを無理に抑えるのにはこんな仕組みをがんがんやる以外に抑えられないということになるじゃないか。どんなにうまく言葉で飾ってみてもそうなんですよ。それ以外に方法はない、患者さんを減らすということが一挙にできないんだから。  そこで、私、この問題は終わりたいと思いますので大臣にお伺いをしたいんだけれども、とにかく医療費の高さを抑えるということになると、こういう無理に無理を重ねないとどうにもならないということだけははっきりしたですね。ですから、私は、こういう施策の遂行に当たって長期入院の年寄りたちを強制的に追い出すようなことのないように、これはまず約束をしておいてもらいたいと思うんです。これはいかがですか。
  174. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) まず、一般的な問題といたしましては、医療費というものは高齢化の問題だとか医療の高度化という問題でこれからふえていく、そういう中で国民に必要な給付というものはこれは確保していかなきゃならぬ、これはそう思っております。  ただ、それは、給付負担という両面の関係がございまして、給付がふえればふえるほど国民の皆さん方の負担もこれまたふえていく、こういう関係があるわけでございますので、その点につきましては国民負担が過重なものにならないような配慮をすることは、これは至極当然なことだと思っております。  御指摘の老人医療の問題でございますけれども、問題はその老人の状態に応じて適切な医療というものができるかどうかということが大事であるわけでございまして、私どもといたしましては、先ほど局長が申しておりますような高医療費市町村の安定化計画の推進であるとか老人診療報酬の改定とか在宅医療等を含めまして、こういうお年寄りの状態に応じた適切な処置というものが促進されるというふうに考えておるわけでございます。  しかし、御指摘の点もあるわけでございまして、お年寄りが病院から追い出される、そういうことはあってはならないわけでございますので、そういうことのないように十分に配慮はしてまいりたいと考えております。
  175. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 なぜ無理に追い出すなと申し上げたかといいますと、やっぱり在宅サービスの受け皿というのがないわけですよ。そのことが不十分なままでこれをがんがんやられたら大変なことになる、そのことを私はおもんぱかって申し上げているわけです。  厚生省は、この資料によりますと、長期入院の抑制あるいは在宅重視の方針というのを方針として出しておられますね。六十一年度の要介護老人をデータで見ますと、六カ月以上の入院者が六十一年度で二十五万人、おおむね今も似たようなところだと思います。これを七十五年には十万から十四万人に減らすという方針だというのが資料に出ていますね。果たして、高齢化社会を迎えて高齢者がふえていく、入院患者は今六カ月以上の人が二十五万人おるのを、昭和七十五年になったら十万人から十四万人ぐらいに減らすといってそんなにうまいこといくだろうか、受け皿があるんだろうか、だれが一体介抱するんだろうか、大変重大な問題だと思うわけでございます。  そこで、時間の関係がありますから簡潔にしたいと思うんですが、これは前回の委員会でも申し上げましたけれども、いわゆる北海道のモデル事業の実際が大変見事に示しておったと思うんです。九千六百六十五人のリストアップをした入院患者の中で実際にお宅へ帰られたのは十六人だ、退院をされた方が六十人だという実態がございましたが、それほどやはり受け皿というのは難しい。  在宅サービスは、何といっても、まず住宅でしょう。それから所得でしょう。介護体制の条件というのは極めて厳しいですよ。だからこそ社会的入院などと言われている実態があるんじゃないですか。  私、東京保険医協会が六十二年度に行った患者さんの住宅環境調査の資料を拝見しておりますので、たくさんあるんですが、ごく特徴的な二、三例を参考までに申し上げます。これは要介護老人で家庭におる人の例です。  八十歳の女性。脳梗塞で脳萎縮。胃瘻造設。胃にフィステルができているんですね。この人は三畳と四畳半の二部屋に息子と二人で同居していて、とにかく部屋じゅう足の踏み場もない荷物の間にやっと布団を敷いて寝ておる。往診に行って も座る場所もない。そういう状況になっている。  それから、こういう例もある。七十五歳のこの女性は、脳卒中で高血圧、膝関節炎です。台所もトイレもない、食事の支度はしちりんに炭をおこしてインスタントラーメンなどを食べる。このしちりんは冬には唯一の暖房器だ。トイレはないのでポータブルトイレで、部屋の中は常に尿臭、トイレのにおいが満ちている。  これは七十歳の男性。脳卒中、左麻痺です。この人は、家が狭く、しかも奥まったところにあるので、東京の区の巡回入浴車も入れない。  これはもう全部そういう例なんですが、そういう調査の結果が出てきているほど深刻です。これがまさに受け皿がうまくできていない、退院ができますよといっても帰れない、帰ったらこういうことになるという状況なんです。まさに政治の貧困だと思うんですね。私はやっぱり受け皿の解決が先決だと思うんですよ。  そこで、その辺の受け皿対策というのを本気になってやってもらわなかったら、お年寄りは無理無理に退院させられたら今申し上げたような本当にみじめな家庭療養の姿になってしまわざるを得ない。こうしないためにやっぱり政治の力を発揮するべきではないか、政治の力で解決するべきではないかと思います。  受け皿対策についてのお話はたくさん聞いておりますが、簡潔にちょっと聞いておきます。
  176. 下村健

    政府委員下村健君) モデル事業の状況等につきましては、お話のようなことを中間的に聞いているわけでございます。私どもとしては、それでは在宅対策だけで対応できるか、必ずしもそれだけで対応するということではありませんで、やはり東京のような地区では特に在宅対策が非常に困難な問題がある、これはもうお話のとおりであろうと思います。  したがって、私どもとしては、老人保健施設を初めとして特別養護老人ホームのようなものもあるいはその他の施設も必要ではないかと思いますが、そういったものも含めて総合的に受け皿をつくっていく。これとあわせて、とにかく現在病院に入っておられる老人の処遇の改善を図っていくというふうなことが必要であろう。やむを得ないからといって、現在のように病院に老人を入れてそれを保険給付で賄う、そのために医療費が膨らんで保険料が払えない、これはどう考えても私はおかしいと思っておるわけでございます。したがって、なかなか短期に解決できる問題ではないと私どもも考えておるわけでございますが、一日も早くそれを変えていくという方向で努力をしていくべきであろうと、このように考えているわけでございます。  したがって、先ほど通知の問題も出ましたけれども、現在のところそれを直ちに給付を打ち切るというふうな問題に結びつけるつもりはないと、このように申し上げておるわけでございます。
  177. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、政治が貧困で受け皿が不十分なままで強行してはならぬということを言っておるんでありまして、入院をする必要のない人をいつまでも入院をさせるということが一番大事なことだなどとはゆめゆめ申し上げておりませんので、それは誤解のないように御理解を賜りたいと思いますよ。  それで、私は非常に心配をしておりますのは、前回の法律改正でいわゆる社会福祉・医療事業団法の改正がやられましたね。あのときに、シルバーサービスというのを民間優先でやっていくという問題が出されたわけですね。  で、事業団法の提案理由にはこういうふうに書いていますよ。これまでの公的福祉施設の一層の推進と相まって民間部門の云々というふうに書かれているんですけれども、私は、あのときにも申し上げたように、行政改革推進審議会などの基本的な方針というのは、いわゆる行政改革基本方向ではっきりしているのは、公的部門における福祉サービスというのは「基礎的なものを主体とするとともに、その他の多様なサービスについては民間の多様な有償サービスやボランティア活動等民間活動の活用を推進すること」というふうに明記されていることですね。つまり、いろいろ言われるけれども、公的サービスというのは基礎的なものに限る、あとはもう民間サービスに限れというふうなことになるわけですよ。私は、だから特別にこのことを強調しているわけで、受け皿なしに長期入院の人を、とにかく医学的にはこんなものけしからぬのだということで無理無理に追い出していって、行きどころがないというふうなやり方にならないようにできるだけ公的サービスとして受け皿をつくっていくということをもっと積極的にやって、そういうことと並行して実現をするというふうにやってもらいたいと思うのです。  これは、いや、やっています、ヘルパーさんを二千人、ことしはびっくりするほどふやしましたという、そんな二千人や三千人ふやしたからというて今日の要介護老人の在宅サービスに間に合うような時代じゃない。  少なくともそれは思い切ってふやすというふうなこともこれは考えるべきだと思うんですが、大臣どうですか。
  178. 下村健

    政府委員下村健君) 大変困難な問題でございますが、おっしゃるように、私どもとしては、受け皿の整備も含めて全体のバランスを考えながらこの対策は進めていくべきだ、このように考えているわけでございます。  民間の問題でございますが、民間サービスについては、供給面の問題とその費用負担をどうするか、この二つの側面があろうかと考えておるわけであります。ホームヘルパーの問題が出たわけでございますが、ホームヘルパーのようなサービスをすべて公的な供給主体で提供していくということになれば、これは全体として国民負担というのは相当高い水準に上がるだろう、このように私どもは考えているわけでございます。  スウェーデンの話がよくそういった在宅サービスあるいはホームヘルパーの例として取り上げられるわけでありますけれども、スウェーデンは確かに相当手厚い在宅サービスをやっておりますが、反面、国民負担国民所得の六〇%に達しているというふうな高い負担率になってきているわけでございます。  したがって、費用負担の問題をどういうふうに組み合わせていくかという問題はあるわけですけれども、公的なサービスというもので基本的な部分を賄いながら補完的にそういった民間のサービス供給主体というふうなものを育てていくことができないだろうか。また、これにあわせてその費用負担をどうしていくか、問題は別にもう一つございますがそういった観点から取り組んでおるわけでございます。
  179. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんから詳しく申し上げられませんけれども、民間サービスとおっしゃるけれども、実際、一時間千円で交通費つきというようなヘルパーさんをそんなに雇えるようなお年寄りがどれだけありますか。入浴サービスが一回一万円、一万五千円というようなのを一カ月に一回、一週間に一遍でもできるお年寄りがどれだけありますか。今の年金水準を見てごらんなさい。福祉年金関係では三万円以下でしょう。国民年金の十年年金や十五年年金だって同じようなものでしょう。五万円にもならぬのですわね。そんな収入でそういうことができる人がどれだけありますか。  そのことを申し上げておるから、私は、民間サービス以前に、公的サービスの充実ということを先決問題としてやってもらいたい。その上にもろもろのニーズのある方々には、必要な方々もたくさんありますから、民間サービスも必要な段階で発展をさせていただくということが必要であろうと思いますが、しかし基本をはっきりしてもらいたい、公的サービスを基礎としてもらいたいということでございます。  残り時間がわずかになりましたので、私は医療保険一元化構想についてお聞きをしたいと思っております。もう本当に時間がなくなったので、同僚委員の皆さん方が午前中にこの分野についてはたくさん御発言がありましたので、端的にお聞かせをいただきたいと思います。  今回この改正をやって、六十五年には国保抜本改正をやるというんですね。老人保健法改正もやる。その場合に、保険料の減免者を別建てにする福祉医療制度が当初厚生省案にあったわけですが、この福祉医療制度が今度の改正案では保険基盤安定制度に変わったと思うんです。  これは、福祉医療制度を今後創設するんですか。
  180. 下村健

    政府委員下村健君) 福祉医療制度というものの中身が必ずしも実体としてはっきりしているわけではございません。  福祉医療制度ということで具体的な構想として言えば、昨年私どもが提案いたしました福祉医療制度が恐らく唯一のものではないかと思うわけでございます。ただ、前回の福祉医療制度についてはいろいろな御批判もございましたので、あのままの形ということはこれは考えられない、このように思っているわけでございます。  ただ、先ほど来、低所得者の保険料問題を含めいろいろな御議論があったわけでございますけれども、低所得者問題にどのように対応していくかということについては今後いろいろ検討していく必要がある問題だ、これは国保の非常に大きな構造的な問題であるというふうに考えているわけでございます。
  181. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 この高齢者対策企画推進本部の報告では福祉医療制度をつくると書いてあるんですね。  その項目を見ますと、前段にこう書いてある。福祉医療制度で、「その際、合わせて公費負担医療制度、生活保護の医療扶助制度基本的見直しを行う。」というふうに書かれておりますが、厚生省はこんなことを一元化の際にはやるおつもりでございますか。
  182. 下村健

    政府委員下村健君) これも今後の検討事項でございますので現在の段階で確定的なことは申すわけにいかないんでありますが、例えば公費負担医療というものを取り上げてみますと、現在の保険給付では定率の八割あるいは九割、七割といった給付にあわせて高額療養費制度というものができておりまして、その高額療養費の給付でなお残る自己負担額五万円あるいは三万円といったものについて公費負担医療が受け持っている、こんな格好になっているわけでございます。したがって、一〇〇%低所得対策というふうに割り切ることはできない側面がございます。現在の公費負担医療にはそれ以外の機能も含まれているわけですけれども、低所得対策という観点から現在の公費負担医療制度の機能をかなりの程度考えることができるわけでございます。  したがって、低所得対策あるいは低所得者に対する医療保障をどうするかというのが福祉医療制度という形で言われている問題意識でありますから、そういった場合には公費負担医療あるいはもう少し幅を広くとれば医療扶助といったものもあわせて見直しをすべきではないかという考え方を企画推進本部の報告では述べているわけでございます。
  183. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 極めて重要であります。  こんなことをやれば、これはもう皆保険構想も崩すであろうと思いますし、差別医療がはびこってくるということになりますし、社会保障全体の崩壊、変質につながるというふうに思います。大変な変革であり、改悪だと思います。  もう一つ聞いておきたいのは、国保改正をしていく場合に、国保に加入している被用者は六十年度で千百八十一万人おられます。約二八%余りですね。これは政府管掌健康保険に漸次移すんですか。
  184. 下村健

    政府委員下村健君) 五十九年の健康保険法改正の際にそのような方向法律上はっきり位置づけられておりまして、計画的にそういった小規模零細事業といった部門につきましても被用者保険の適用を行っていくということで、現在、社会保険庁が努力している段階でございます。
  185. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう時間がありませんので、これは最後にまとめて申し上げたいと思います。  そうすると、国保について六十五年の改正のときに考えられると。  それまでに考えられるのは、一つは、今、組合を除きますと加入者全体で国保の被保険者は四千百七十万人ですね。そのうち被用者が千百八十一万人、これは健保へ移す。そして、つまり低所得者の四百七十万人は何らかの形の福祉医療に移行させる。そうなりますと、国保全体の中で残るのは二千五百十九万人、加入者全体の六〇%になるんですね。国保から四〇%の人が被用者保険に移行したら、国保は現行の六〇%程度になりそうですね。そうなったら、国保に対する国庫負担は、これは四〇%の人間が減ったら四〇%減るわけで、六十年度で二兆円ですから、四〇%減ったらそれで大体八千億円はざっと減るという仕掛けになるわけですね。それはそのはずだと思うんですね。国保におれば給付費の五〇%は国の費用で出さにゃならぬが、健康保険へ行ったら一六・四%で済む。さらにそれを組合健保にしたら、組合健保の事務費で国の費用は三%か四%で済むと。つまりどんどんどんどん転がして、他の保険へ移行できるものはどんどん移行さして、そうして保険料が大体まともに払えるという所得の高い水準だけを残して段取りをする、そのあげくに社会保険との一元化に進むというふうな考え方になるのではないかと思うのです。  そういうふうに考えてまいりますと、国保のいわゆる抜本改正もあるいは医療保険一元化も、これは全部国庫負担を限りなく減らしていくということにつながるというふうに思うんですよね。そういうふうなやり方でもって医療保険一元化をやるというふうなことになれば、これは、国民医療あるいは年金も含めまして、国民社会保障制度に対して極めて大きな影響を及ぼすものだと思うんです。  とりわけ今回の国保改正というのは、国民の要求を実現するために国の費用を出して保険料を下げるなりあるいは給付率を上げるなり改善をするというんだったらいいけれども、国の負担を削って府県や市町村あるいは国民保険者負担をツケ回しをするというこういうやり方というのは、断じて認めるわけにいかない。しかも、これがいわゆる医療保険一元化へ向けての重大な一里塚だということになれば極めて重大であり、こんなことは認めるわけにはいきません。  最後に、私申し上げておきたいと思いますのは、今日、新しい大型間接税の創設に当たって、高齢化社会を迎えて福祉対策が福祉対策がということが盛んに言われている。私はもう残念でならない。福祉に対してどんどんお金をつぎ込んでいって財源が足らぬからというんならよろしい。どんどん医療保険からは削り上げ、年金からは削り上げ、どんどん削り上げておりながら……
  186. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 沓脱君、時間です。
  187. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 はい、もう終わりますから。  どんどん削りながら、財源をつくるんだなどとは、ぬけぬけよく言えたと思うんです。  私は、そういう立場で言いましても、本改正案は絶対に認めることができないということを申し上げまして、委員長のお言葉もございますので、本日の質問を終わりたいと思います。
  188. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で質疑は終局いたしました。     ─────────────
  189. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、児童扶養手当法等の一部を改正する法律案原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案並びに厚生年金保険法の一部を改正する法律案の四案を議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。藤本厚生大臣
  190. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) ただいま議題となりました児童扶養手当法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。  母子家庭及び心身障害者に係る各種手当制度並 びに老人、障害者等の所得保障の中心である年金制度につきましては、従来からその充実に努めてきたところでありますが、最近の厳しい財政状況のもとにあっても、母子家庭、障害者、老人等に対しては社会経済情勢の動向に対応した適切な配慮がなされる必要があります。  今回の改正案は、このような趣旨にかんがみ、児童扶養手当、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当等の額の引き上げ並びに拠出制国民年金、厚生年金及び老齢福祉年金の額の引き上げ等を行うとともに、年金福祉事業団が行う住宅融資制度を拡充し、親子助け合い住宅融資制度を創設するものであります。  以下、改正案の内容について御説明申し上げます。  まず、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律改正について申し上げます。  第一に、児童扶養手当の額につきましては、児童一人の場合月額三万三千九百円から三万四千円に、児童二人の場合月額三万八千九百円から三万九千円に、それぞれ本年四月から引き上げることとしております。  第二に、特別児童扶養手当の額につきましては、障害児一人につき月額二万七千四百円から二万七千五百円に、重度障害児一人につき月額四万千百円から四万千三百円に、それぞれ本年四月から引き上げることとしております。  第三に、障害児福祉手当、特別障害者手当及び特別障害者手当制度の発足に伴い経過的に支給されている福祉手当の額についてでありますが、障害児福祉手当及び経過的に支給されている福祉手当の額につきましては、月額一万千六百五十円から一万千七百円に、特別障害者手当の額につきましては、月額二万九百円から二万九百五十円に、それぞれ本年四月から引き上げることとしております。  次に、国民年金法等の一部を改正する法律改正年金制度改善について申し上げます。  第一に、拠出制国民年金及び厚生年金の物価スライドの特例措置について申し上げます。  現行の制度におきましては、消費者物価上昇率が五%を超えた場合に物価スライドを実施することとなっておりますが、昭和六十三年度におきましては、特例として昭和六十二年の物価上昇率に応じた年金額の引き上げを本年四月から実施することとしております。  第二に、老齢福祉年金の額につきましては、拠出制年金の額の引き上げに準じて月額二万七千四百円から二万七千五百円に、本年四月から引き上げることとしております。  第三に、旧国民年金法による障害年金等につきましては、昭和六十四年二月から、現行の年四回支払いを二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の年六回支払いに変更することとしております。  第四に、年金福祉事業団の住宅融資制度を拡充し、被保険者の直系血族等の居住の用に供するための住宅を融資の対象とする親子助け合い住宅融資制度を創設することとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概略でありますが、この法律案につきましては、昭和六十三年四月一日から施行することとしておりましたものを、衆議院におきまして公付の日から施行し、昭和六十三年四月一日にさかのぼって適用することとする修正がなされております。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者については、原子爆弾被爆者医療等に関する法律により、健康診断及び医療給付を行うとともに、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律により、医療特別手当等の支給を行い、被爆者の健康の保持増進と生活の安定を図ってまいったところであります。  本法律案は、被爆者の福祉の一層の向上を図るため、医療特別手当等の額の引き上げを行うこととし、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正しようとするものであります。  以下、その内容について御説明申し上げます。  まず第一は、医療特別手当の額を現行の月額十一万千六百円から十一万二千円に引き上げることであります。  第二は、特別手当の額を現行の月額四万千百円から四万千三百円に引き上げることであります。  第三は、原子爆弾小頭症手当の額を現行の月額三万八千四百円から三万八千五百円に引き上げることであります。  第四は、健康管理手当の額を現行の月額二万七千四百円から二万七千五百円に引き上げることであります。  第五は、保健手当の額を一定の範囲の身体上の障害のある者等に対し支給されるものについては現行の月額二万七千四百円から二万七千五百円に、それ以外のものについては現行の月額一万三千七百円から一万三千八百円に引き上げることであります。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要でありますが、この法律案につきましては、昭和六十三年四月一日から施行することとしておりましたものを、衆議院におきまして公付の日から施行し、昭和六十三年四月一日にさかのぼって適用することとする修正がなされております。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  戦傷病者、戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、各種の援護措置を講じ、福祉の増進に努めてきたところでありますが、今回、年金等の支給額を引き上げるとともに、国債の最終償還を終えた戦没者父母等に対し改めて特別給付金を支給することとし、関係の法律改正しようとするものであります。  以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。これは、障害年金、遺族年金等の額を恩給法の改正に準じて引き上げるものであります。  第二は、戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、再々継続分の国債の最終償還を終えた戦没者父母等に対し、特別給付金として、七十五万円、五年償還の無利子の国債を改めて支給するものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でありますが、この法律案につきましては、昭和六十三年四月一日から施行することとしておりましたものを、衆議院において公付の日から施行し、昭和六十三年四月一日にさかのぼって適用することとする修正がなされております。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。  次に、ただいま議題となりました厚生年金保険法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  厚生年金基金制度は、厚生年金保険の老齢給付を代行するとともに、被保険者及び事業主の自助努力により代行部分を上回る年金給付を行うものであり、制度発足後二十年余を経て、被用者のより豊かな老後生活を保障するものとして大きな役割を果たしておりますが、今後、人口高齢化等が急速に進展することに伴い、老後生活の多様な需要に柔軟に対応するため、厚生年金基金制度のより一層の普及育成を図ることが緊要の課題となっております。  以上のような状況にかんがみ、厚生年金基金の支給する年金給付を充実させるとともに、その普及を図るため所要の措置を講ずることを目的とし てこの法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、年金給付の充実に関する事項であります。  まず、厚生年金基金の支給する年金給付について、努力目標水準を設定し、厚生年金基金は、給付水準がこの努力目標水準に達するよう努めるものとすることとしております。この水準は、代行部分の二・七倍に相当する水準としております。  次に、厚生年金基金の中途脱退者については、厚生年金基金が支給する脱退一時金にかえて、これを厚生年金基金連合会が年金給付として支給することができることとしております。  また、解散した厚生年金基金の加入員であった者については、清算手続後の年金積立金が残余財産として分配されておりますが、これを厚生年金基金連合会が年金給付として支給することができることとしております。  さらに、厚生年金基金が設立母体企業の倒産等により解散した場合においても、厚生年金基金連合会がその加入員のために一定額の年金給付を確保する事業を行うことができることとしております。  第二は、厚生年金基金の普及を図るための措置を講ずることであります。  まず、小規模厚生年金基金についてその業務の共同処理により事務費負担の軽減を図るため、厚生年金基金は、業務の一部を厚生年金基金連合会に委託することができることとしております。  また、厚生年金基金及び厚生年金基金連合会の業務が適正な年金数理に基づいて行われるよう、年金数理人による関係書類の確認等の措置を講ずることとしております。  以上のほか、厚生年金基金及び厚生年金基金連合会に係る退職年金等積立金に関する法人税法の改正等、所要の改正を行うこととしております。  なお、この法律の施行期日は、本年九月一日としておりますが、中途脱退者及び解散した厚生年金基金の加入員であった者に対し厚生年金基金連合会が支給する年金給付に関する事項並びに厚生年金基金連合会の年金給付の確保事業に関する事項は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  191. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  四案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会