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1988-04-26 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十六日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      吉川 春子君     内藤  功君  四月二十五日     辞任         補欠選任      渡辺 四郎君     山口 哲夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 遠藤 政夫君                 斎藤 十朗君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 山口 哲夫君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 藤井 恒男君    衆議院議員        修正案提出者   高橋 辰夫君    国務大臣        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        労 働 大 臣  中村 太郎君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省保健医療        局老人保健部長  岸本 正裕君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省保険局長  下村  健君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君    事務局側        常任委員会事門        員        此村 友一君    説明員        大蔵省主計局主        計官       中島 義雄君        自治省財政局準        公営企業室長   大屋 正男君        自治省財政局調        整室長      嶋津  昭君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○連合審査会に関する件 ○国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○港湾労働法案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十五日、渡辺四郎君が委員辞任され、その補欠として山口哲夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国民健康保険法の一部を改正する法律案審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  国民健康保険法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  9. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 山口哲夫

    山口哲夫君 国民健康保険事業国民の健康を守るために役立つように、私は、そういう立場で、少し具体的な内容に細かく立ち入りまして質問をいたしたいと思います。  まず第一に、高医療費市町村安定化計画、この問題についてでありますけれども、その中で長期入院、とりわけ老人社会的入院についてお尋ねをいたします。  ことしの三月九日の衆議院予算委員会の第四分科会社会党村山富市議員質問に答えまして下村政府委員がこういうふうに答えております。「入院給付については、保険者国保の場合には保険者というと市町村でございますから市町村長ということになるかもしれませんが、入院については保険者承認が要る。」「したがって、例えば権限とか責任とかいうことだけでいけば、いわゆる社会的入院のようなものについては承認をしなければいいじゃないか、こんな議論もあるかと」思います。こういうふうにおっしゃっているわけです。これがもし政府の正式な見解だとするならば、これは極めて重要な発言と言わなければなりません。  市町村入院給付についての権限責任を持っているんだから社会的入院は許可しないことがあってもいいんだと、こんなふうに受けとめられるわけですけれども、この辺の真意をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  11. 下村健

    政府委員下村健君) ただいま御指摘の答弁につきましては、村山富市議員の、医療費に対して影響力を持っているのは地方ではなくてむしろ国ではないかというふうなお尋ねに対しまして、保険制度の上からは、法律上、入院給付保険者が必要と認める場合に限り行うということになっておりますので、権限責任といったことだけからいえば、いわゆる社会的入院のようなものについては承認をしなければよいといった議論もあり得るが、私どもとしては、そういった側面ばかりではなくて、現在の状況を見ますと老人入院する要因というのはいろいろあるわけでありますから、福祉施設整備在宅サービスの問題を含め老人にふさわしい処遇体系をつくっていくということを地方団体にぜひお願いしたいという旨を申し上げたわけでございます。  したがって、確かに、法律論あるいは権限責任論からいえば、社会的入院医療給付に適切なものかどうか、こういった議論はあり得るわけでありますけれども現状は、私どもとしてはそれを否認せよというふうな指導をいたしているわけではありませんし、今後もそういった形でこの問題を解決しようと思っておるわけではありません、こういうことを申し上げたわけであります。
  12. 山口哲夫

    山口哲夫君 理屈からいけば確かにそういうことだと思うんですけれども、ただこれには背景があるわけですね。  後ほど申し上げますけれども、この社会的入院というものに対してはなるべく長期にならないように抑えていこう、なるべく早く退院させよう、どうもそんなような動きがあるわけでして、そういう中での少なくとも下村局長発言ということになりますと、これは、場合によってはそういうことを市町村長権限承認しなくてもいい、退院させるための一つの方法としてそういうことも行ってもいいんだというふうにこれは受けとめられる危険性は多分にあると思うわけです。  ですから、その辺のいろんな背景をひとつ十分踏まえて、発言については慎重を期していただきたいなというふうに思いますけれども、いかがですか。
  13. 下村健

    政府委員下村健君) 実は、病院にそういった形で老人入院をするというのは我が国だけにある現象ではありませんで、ある程度ほかの国にもあるわけでございます。我が国の場合は非常に多いということで、これが医療あり方あるいは医療保険制度あり方として本来あるべき姿かどうかということについては問題があるわけでございます。  しかし、私どもとしては、これは時間をかけて適正な処遇体系の確立を図るという問題と老人個個の個別の事情もよく見ながら解決をしていくべき問題だというふうに考えておりますので、権限的にあるいは強制的に個別の事情を無視して退院をさせるといった形でその解決を図るという考え方ではございません。
  14. 山口哲夫

    山口哲夫君 決してそういう早期退院を迫るようなことは考えていないということだと思いますので、そういう立場でひとつ受けとめておきますけれども入院患者も非常に敏感になっているときですし、市町村としても取り扱いについていろいろな面で非常に心配をしている中での御発言なものですから、今後ひとつ十分注意をしていただきたいものだな、そんなふうに思っております。  それに関連いたしまして、実は、これは衆議院の四月五日の社会労働委員会社会党池端清一議員が取り上げた問題でございますけれども、北海道の国民健康保険団体連合会が「老人在宅療養にかかわる被保険者教育事業関係」というパンフレットを出しております。これは、老人医療費給付を受ける者の中から、六カ月以上の長期入院者かつ一定の条件を満たしているケース、そういうものを全員リストアップいたしまして、ケースごと患者家族に聞き取り調査をするために家庭訪問をしなさい、こういう指導になっているわけです。そして在宅療養への理解を求めるようにというそんなことなんです。  大臣にお聞きしたいと思うんですが、この中身を読んでみますと、プライバシー保護に非常に問題があるんではないだろうか、どうもこれは国保財政を健全化させるというそういうものに名をかりた早期退院促進運動にもつながりかねない、何か退院を強制しているように受けとめられる事業内容になっておりますけれども、その点どうお考えでしょうか。
  15. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 被保険者教育事業につきましては、十分にプライバシー保護につきまして配慮の上実施をされているものと理解しておるわけでございますが、今後とも御指摘のような心配がないように十分にプライバシー保護につきまして配慮するよう指導してまいりたいと考えております。
  16. 山口哲夫

    山口哲夫君 ぜひひとつ注意をしていただきたいと思うんです。  この質問事項を読んでみますと、「在宅療養に対する問題点」として、住宅事情から在宅が不適なのかどうなのかとかあるいは介護する人がいないのかとかあるいは家庭内のトラブルがあるのかないのかとか、そんな家庭事情にまで立ち入るような項目になっておりまして、これは私は非常に問題だなというふうに思うわけです。  世論調査なんかを見ておりますと、日本人というのは三世帯の同居を希望しているという人が非常に多いんですね。ですから、意外に在宅療養できるのであれば受け入れたいという気持ちはみんな持っていると思うんです。特に子供なんかは親に対してはそういう気持ちを持つと思うんです。しかし、それが今なかなかできない条件が残念ながらあるわけですから、そういう条件が取り払われない中で在宅を押しつけるような調査をやるということは、私は、非常に誤解を招くし、これは問題がある、そんなふうにも思いますので、今大臣お答えいただきましたように、ぜひこういうことのないように十分ひとつ注意をしていただきたいな、そんなふうに思います。  そこで、残念ながら、最近、在宅療養を強制するようなことがどうもあちこちで行われているのではないかなというような事件が幾つか起きているわけです。  ちょっと三つ、四つ具体的な問題を取り上げてみたいと思うんですけれども、私、友人に随分ケースワーカーをやっている者がいるものですからそのケースワーカー人たちの話なんかを聞きますと、最近、福祉事務所窓口施設の入所を希望する相談件数というのが非常にふえているというお話なんです。それで、長期入院患者老人病院からの追い出しがどうもふえているように思われると現場を担当しているケースワーカーが言うものですから、来られた方といろいろと話をすると、病院の方から早く退院してもらいたいんだというように言われるんですね。そういう人たちが最近非常にふえている、ところが残念ながら特別養護老人ホームは満員だし、そういう点では相当長い期間待ってもらわなければならない、と。  こういう状態現場で実は方々で起きているようなんですけれども、こんなことについてどうでしょうか、担当のどなたか、お聞きでしょうか。
  17. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 私ども基本的には、今先生がおっしゃったとおりに老人長期入院をされている方々が、できることであれば家庭家族隣人友人たちと一緒の生活をしたい、こういう希望が強いということを承知しているわけでございまして、そういうために、私どもとしましてはそういう在宅支援のいろいろな施策をこれから強化充実していかなければいけないというふうに考えているわけでございます。  市町村によりましていろいろとその辺の周辺整備状況というのは事情がまちまちだろうと思いますけれども長期入院老人の、いわゆる社会的入院をされているような老人方々をどうしたら老人のために最もふさわしい処遇になるかというようなことは、私どもといたしましては、市町村が例えばサービス調整委員会というようなものをつくりまして、関係者が集まって、その老人方々特別養護老人ホームがあいていればそこに入れるとかまたは在宅でもホームヘルパーを派遣すればやっていけるとかいろいろなことを、家族も含めて相談をして最も適切な処遇をしていくということは非常に大切なことだというふうに考えておりまして、そういうようなことで市町村を中心にして実際の老人処遇問題を個別に考えていくというような組織をつくってそれを充実させていかなければいけない、こういうふうに考えております。  具体的に追い出すというようなことは実際にはできることではございませんで、そういうことが現実に起こっているというふうには考えにくいわけでございますけれども、まあ病院が最もその老人にとってふさわしい場所であるということではございませんので、できるだけその老人のそのときの症状、状態に合った適切な処遇をみんなで考えていく、そういうことの姿勢は非常に大事なことだと、そういうふうに考えているところでございます。
  18. 山口哲夫

    山口哲夫君 追い出しを図っているようなことは考えにくいんだというお話ですけれども、実際に、現場窓口ではそういう関係者が非常にふえているというんですね。  病院の方から早く退院してもらいたいんだと言われているので何とか施設に入所させてもらえないかというような人たちが最近随分多くなってきているというのが現実なんです。これはできれば統計をとってほしいくらいですけれども、そういうようなせっぱ詰まった人たちというのがたくさんいるわけです。今局長おっしゃったように、確かに施設でも入れればいいんですけれども、残念ながら施設の方もない、上からも抑えられる、行き道を失ってしまうわけですね。それが現実だということを私はもう少し理解していただきたいものだなと思うんです。  それで、四月五日の朝日新聞にこういう記事が出ているんですね。「「二人寝込んだら親せき全滅」寝たきりの妻絞殺 体調崩した夫も後追い」、まことに悲惨な事件なんです。それで六畳間のこたつの上に「二人ネコンダラ シンセキヂュウ ゼンメツ ツレテユク」と書かれたその御主人のメモが残されていた。そして、この御主人奥さんを絞殺した後に自殺をして心中したと見ていると、こういう事件がございました。  これは、今私が申し上げたように、できることなら施設入院したい、しかし残念ながらその施設がない、在宅ケアもなかなか行き届いていない、そういうことが理由で結局家庭の中で病気がちの御主人奥さん病気を看護していて、もうどうにもならなくなった、にっちもさっちもいかなくなって無理心中をしたという事件なんですね。  ですから、私は、やっぱり、できるだけ早くそういう施設をつくらなければならないし、在宅ケアももっともっと急いで充実をしていかなければならないのではないかなというふうに思うんですけれども、こういう事件を知ってどうお考えでしょうか。できれば大臣にもお答えいただきたいと思うんです。
  19. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 私もその記事を拝見した覚えがございますけれども、非常に痛ましい、胸のつぶれる思いがするわけでございます。  私どもといたしましては、そのような家庭での介護能力というものがなくなっていくような場合に、できるだけ適切な施設に入所されるとかまたはその家庭での介護能力を補完するような在宅支援サービス充実するとか、そういう方向をできるだけ早く進めていかなければいけないというふうに考えているわけでございます。
  20. 山口哲夫

    山口哲夫君 それじゃ、大臣にお聞きします。  これも朝日新聞ですけれども四月の十三日、これは各紙に出た自殺白書についてですが、昨年の自殺者高齢者病苦がふえる、こういう記事で、六十歳以上と病気を苦にした自殺がふえたのが今回の自殺白書の特徴である。「病苦による自殺は全体の半数近くに及び、」「六十五歳以上では四人のうち三人にもなって」いる。七五%が病気を苦にしての老人自殺だ、「高齢化社会で健康の維持に悩むお年寄りの姿が浮き彫りになっている。」。こういうことで最近お年寄り病苦による自殺者が非常にふえているんですよ。  ですから、今も言ったように行き場所を失っているんですよ。在宅で何とか療養したいとは思っても、そういう今実態にない家庭というのはたくさんあるわけですね。核家族化が進んで住宅が狭い、娘があるいはお嫁さんが働いている、それじゃしようがないから施設に入れてもらおうかというけれども施設にははいれない、もうせっぱ詰まって結局はそういう自殺の道を歩まざるを得ないようなお年寄りが多いのではないか。  私は、こう考えるときに、高齢化社会を迎えて、今、政府として何をしなければならないかといえば、こういう方々のような不幸なことを二度と起こさないような老人施設の拡充だとかあるいは在宅ケアをもっと徹底してやるとか、そういうことに重点を置いた厚生行政をやってもらいたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  21. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘の問題につきましては、私も内容を分析といいますか調べてみたわけでございます。  いろいろな背景があると思うわけでございますけれども厚生省としては、そういうまことにお気の毒な状況にならないように十分に考えることはこれはもう当然のことでございまして、それだけ、例えて言えば、施設充実であるとかそれから在宅におけるサービス充実さしていくというようなことにつきましてさらに力を入れていかなければならない問題だというふうに痛感した次第でございます。
  22. 山口哲夫

    山口哲夫君 そういう点ではぜひ早期退院を迫るようなことは軽々しくやっていただきたくない、こう思いますのでその辺を十分ひとつ配慮するように慎重を期していただきたいと思いますけれども大臣いかがでしょうか。
  23. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 大事なことは、適切な処遇が行われるということが大事な問題だと思うわけでございまして、そういう基本的な考え方を念頭に置きまして慎重に努力してまいりたいと考えております。
  24. 山口哲夫

    山口哲夫君 ぜひひとつ慎重を期していただきたいと思います。  ところが、この社会保険診療報酬改定を見ますと、四月一日から改定になったんですけれども、この長期入院是正という中に入院時の医学管理料というのがあるんですけれども、これが今までの五区分が八区分にされているんですね。例えば、今までなかった一週間あるいは二カ月、一年半、こういう区分を新しく挿入したんですね。そうしまして逓減制を強化しているんですね。要するに、長期入院した場合には、入院時における医学管理料を減らしていくというそういう形をとっている。例えば、病院の場合には、甲類ですと九十七点を九十五点にするようにあるいは乙類では八十八点を八十五点にするように、診療報酬の点数をずっと下げていくんですね。ということは、これは、長く入院していればお医者さんの立場から見れば収入が減ってくるわけですね。ですから、そういう収入のことだけを考えれば余り長く入院してほしくない、だから適当なところで退院させようというそういう気持ちになりがちだと思うんですね。ですから、私は、この辺はやはり早期退院を迫るような一つの形というものが具体的に出てきている証拠だと思うんです。  あるいは、看護料も同じですね。例えば、特一類なんかは、四十日まで三百五十点なのが四十一日以降になると三百四十二点に減るんですね。そういうのが特二にもあるしあるいは精神、結核の患者さんの場合にも出てくるわけですね。  ですから、こういう逓減方式を一方でとって、決して早期退院を迫るようなことはしないんだというふうにはおっしゃるんですけれども現実にはこういう問題もあるんだということをひとつ十分考えに入れておいてこれに対するそれなりの施策をとると同時に、早期退院を迫るようなことをしないように十分ひとつ配慮をしていただきたいものだ、こんなふうに思います。  その辺についてのお考えはどうでしょう。
  25. 下村健

    政府委員下村健君) 私どもとしては、入院期間の長短によって医療内容がやはり実態においても差があるしあるいは当然差があるべきものなんだろう、こんなふうに考えているわけでございます。  一方、入院日数がほかの欧米諸国等に比べますと非常に長いあるいは地域による差も非常に著しいというふうな点もあるわけでございます。  そういったことを頭に置きまして私どもとしては、やはりあるべき姿と申しますか、その是正を図るために、入院料については医学管理料逓減制の強化、あるいは基準看護加算につきまして入院早期についての重点配分を行ったりしたわけでございます。  現状から見ますと、先ほど来お話が出ているように、病院に入らざるを得ないという側面があることも事実でございますが、私どもとしては、今の形のままが適切かどうかということを考えてみますと、五年も十年も一般の病院に入っているという形は必ずしも老人にとって適当でない、やはりそれにふさわしい処遇体系を、訪問看護等在宅療養でありますとかいうふうな問題も含めてそういった体系をつくり上げていくということが必要であろう、そんなことを頭に置きながら、これは長期入院是正といったことだけではなくて総合的な対策を講じていくようなことが必要であろう、御指摘のように現場実態にも十分配慮してまいりたいと考えておるわけでございます。
  26. 山口哲夫

    山口哲夫君 一方では、なるべく長く入院しないような施策というものを今度の国保の改正の中でもとろうとしている。そういう中で、診療報酬は、今言ったように、長期入院の場合には減額をしていくという逓減方式をとるというようなことが重なりますと、やっぱり厚生省はそういう早期退院を促進するような指導を金の面からもやってきたんだなというふうにとられざるを得ないと思うんですね。ですから、その点は十分ひとつ慎重を期してやっていただきたいものだ、こんなふうに要望しておきたいと思います。  その次、大きい二番目ですけれども、これは高額医療費市町村の指定を受けるに当たっての要件あるいは基準についてです。  三月三十一日の衆議院社会労働委員会池端清一議員質問に、六十一年度のデータから判断すると約百二十市町村、そのうち北海道は七十だというように言われておるんですけれども、資料を要求いたしましたら、指定市町村数は全国で百五十程度である、北海道は八十だ、こういうことでございます。その辺の食い違いの中身についてちょっと説明をしていただきたいと思いますし、できればこれは県別にいただきたいということでお願いいたしましたら、県の名前は出てきたんですけれども数字が出ておりませんので、後ほどで結構ですから、できればひとつ数字も出していただければと思います。  その点いかがでしょうか。
  27. 下村健

    政府委員下村健君) 安定化計画を策定し医療費適正化等に努力すべき市町村は、適正化を推進するという観点から共同負担が生ずる可能性のある市町村よりも若干幅広く指定をするということで考えているわけでございます。今後の努力というふうなことも考えながら指定をしていくわけでございますので、結果として負担をする市町村数というのは少し指定市町村よりは少なくなってくるんではないか、こんな考え方になるわけでございます。  したがって、計画をつくる市町村につきましては、全保険者の大体五%程度、百五十市町村程度というものを指定するということで考えているわけでございます。しかし、データ的に見ますと、実際に費用負担の生ずる可能性のある市町村は、統計的に見て著しく平均からの乖離が大きいというふうなところも考えてまいりますと、より限定された数で百二十程度になるんではないかというふうに考えておるわけでございます。これは六十一年のデータでいろいろやっておりますので、ぴったりこの数になるかどうかというところはさらに基準の具体化というふうな問題等もありまして確定できませんが、現在段階での見通しを申し上げるとそんなことになろうかと思っているわけでございます。  県別の内訳でございますが、具体的な指定基準について現在まだ検討中でございます。また、特に地域的な特殊事情ということになりますと各市町村ごとの詳細なデータも必要とするといった側面もありますので、現段階で確定的なことを申し上げるのはなかなか難しい面があるわけでございます。府県別の数はお聞きいただいたようでございますが、北海道が七十ぐらい、大阪が二十ぐらい、福岡が十ぐらい、百五十ということで考えると多少それに膨らみが出てくる、こんな感じではないかと思います。そのほか、西日本の県を中心にいたしまして十六府県程度が、これは十までいかない、一から九までの数、一市町村ぐらいしか該当にならないという県も三、四県ぐらいは出てくるかというふうに思っております。  ただ、これは先ほどもお断りいたしましたように、あくまで現段階における試算の結果でございますので、実際にはもう少し具体的な地域の特別事情等を配慮しながらやっていきますのでまだデータが変わるということもありまして、実は、個別の名前を挙げるあるいは個別に都道府県ごとの内訳を申し上げるということは控えているわけでございますので御了解をいただきたいと思います。
  28. 山口哲夫

    山口哲夫君 この数字を出すに当たりましては全国の平均値を基準にしているわけですね。ただ、問題は、地域の医療計画の必要病床数を出す場合には、これは全国を九ブロックに分けているんですね。    〔委員長退席、理事曽根田郁夫君着席〕 そういうことで、九ブロックの平均入院受療率というものを使用しているんですけれども、一方では九ブロックに分けて出す、一方では全国平均で出す、この点ちょっと整合性がないと思いますので、これは九ブロックに分けてやった方がいいのでないかという意見もあるんです。  ですから、その基準をどこに置くかによって指定市町村というのは随分変わるのでないかなというふうに思うんです。あるいは変わらないのか、私は変わると思うんですけれども、その辺ひとつ検討をしてみる必要があるのでないかなと私は思っているんですけれども、いかがでしょうか。
  29. 下村健

    政府委員下村健君) 国民健康保険制度、特に市町村国民健康保険につきましては、全国一本で国庫負担による財政調整を行っているわけでございます。したがって、費用に関連する問題として見ますと、基準値としては全国平均をとることが適当であろう。ただし、平均値でありますから、それに標準偏差のようなものも考慮しながら一定の幅を設け、さらに地域的な特殊事情考えるということでございます。  ベッドとの関係でございますが、ベッドは、直ちに現状を変更していくということがなかなか困難な性質の問題でございますので、ベッド数あるいは医療の供給体制の要素というものは、地域の特殊事情の中でこれは配慮していくより仕方がないだろう。そういう意味で、ベッド数の問題についてはそこの面で関連性が出てくるわけでございます。  したがって、特殊事情あるいはブロックごとの事情もその中にある程度含まれてまいると思いますが、そういった面は結果において含まれますが、費用負担あるいは安定化計画といった側面から考えますと、全国一本の財政的な調整をやっているということから考えますと、私どもとしては全国の平均値を用いるということが考え方としてはいいのではないか。ただ、おっしゃるような側面も、実態的な市町村の指定という場合にはそういう事情が反映されてくる、こんなふうに考えているわけでございます。
  30. 山口哲夫

    山口哲夫君 医療費の増高というのは、これはやっぱり地域のいろんな事情等もあるいはあるのかもしれませんですね。ですから、その辺もやっぱりある程度頭に入れて検討してみる余地というのは私はあると思うのです。ですから、軽々に結論を出す問題ではないと思いますだけに、十分ひとつ私どもも検討してみたいと思いますし、厚生省としてもその辺少し配慮して検討してみていただきたいものだなというように思っております。  それで、大きな三番目の質問ですけれども、高額医療費市町村安定化計画のうち、医療費水準の是正計画についてという問題がございます。  これは、今までの衆議院質疑の議事録もちょっと読ませていただいたんですけれども、狭い意味での医療費是正対策をしようとしているのかあるいは広い意味での医療費是正対策をしようとしているのか、その辺がどうもはっきりいたしません。    〔理事曽根田郁夫君退席、委員長着席〕 それから、それでは都道府県にどんなことをやってほしいと言っているのかあるいは市町村にどういうことをやってほしいと言っているのか、どうもその辺がはっきりしませんので、もう少しわかりやすく端的にひとつその辺示していただきたいなと、そんなふうに思います。
  31. 下村健

    政府委員下村健君) 私どもとしては、従来の狭い意味での適正化対策、レセプトの点検でありますとかそういったことは当然お願いしなければなりませんが、それだけではなくて、周辺の対策も含めた幅広い対策をお願いすることになるんではないか、ぜひそういった方向で考えていきたいと、こう思っておるわけでございます。  それから、都道府県に要請する問題がどんなことになるのか。これは、先ほども老人の問題に絡みまして施設病院の関係等も出てきたわけでございますが、老人福祉関係の行政というのは、市の場合にはかなり市がやっているところもありますけれども、県が例えば福祉事務所を持ってやっている地域も多いわけでございます。そういった側面についてはぜひとも両者の関係を考えていくという面では、都道府県にそういった周辺の問題がまず一つあろうかと思います。  それからもう一つは、医療行政。これは、地域医療計画というものも都道府県単位で策定しておりますし、健康保険とか国民健康保険の上でも、医療機関に関連するいろいろな仕事というのは、これは都道府県の仕事ということになっているわけでございます。あるいは国民健康保険団体連合会に対する指導でありますとかその運営についての問題というふうなものも、これも県の問題ということになってまいろうかと思います。  したがって、主たる問題として言いますと、そういった医療機関関係の問題あるいは福祉関連の問題、特に福祉事務所でありますとか保健所でありますとか、そういったところを使って周辺の対策をやっていくというふうな問題になりますと県の役割が大きいのではないかと、このように考えております。
  32. 山口哲夫

    山口哲夫君 ということは、今お話があったように、例えば、保健事業あるいは福祉活動、それから地域医療の問題、こういった問題をやっぱり県なり市町村なりにできるだけやってほしいというような考え方がこの中には一本入っていると、そういうことに理解してよろしいですね。
  33. 下村健

    政府委員下村健君) そのとおりでございます。  私どもとしては、安定化計画をつくっていく前提としてあるいはその中身の一番最初に出てくる問題として、各地域ごとのあるいは各市町村ごとの医療費内容についてのかなり細かい分析をお願いしようと思っているわけでございます。したがって、保健事業あるいは福祉事業というふうなものをやっていく場合も、あるいは市町村がレセプト点検をやっていくというふうな場合も、そういう要因の分析に基づいてより具体的に目標を絞った行政の展開あるいは対策の展開ということができるようにならないかと。  例えば、レセプト点検を例にとりますと、現在ほとんどの市町村がレセプトの点検というのはやっているわけですけれども、中身から申しますと、一般的にやっているというのが普通の形ではないかと思います。それをもう少し内容的に深めたものにしていきたい。それにはレセプトの全部についてそれを詳細に点検するということもなかなかできませんので、そういった要因分析を通じてポイントを決めてやっていくというふうなことが必要になるのではないか。あるいは、ヘルス事業にいたしましても、ヘルス事業一般ということではなくて、その地域の特性というふうなものを考慮したポイントを決めたヘルス対策というふうなものを強化していくという方向が必要ではなかろうか、こんなふうに思っておるわけでございます。
  34. 山口哲夫

    山口哲夫君 聞いているとちょっと不安になってくるんですがね。  高額医療費市町村医療費水準を是正するということで、レセプト審査とかそういうことをやることによって物理的に抑えようということが何かちょっと前面に出てくるような感じがしてならないんですね。ですから、後ほど私、もう少し具体的に触れたいと思いますけれども、そういうことではなくして、本当に長期な展望に立って、保健事業とかあるいは医療の問題だとか福祉の問題だとか、こういうものをきちっと三位一体にした中で医療費というものが余りかからないで済むような、そしてその地域の住民も健康になるようなそういった総合的な医療体制というものに重点を置くべきでないだろうか、私はそんなふうに思うんです。  ですから、そういう考え方というものは一本筋が入っているんでしょうねということをお聞きしているわけですけれども、どうですか。その点に限って、いかがですか。
  35. 下村健

    政府委員下村健君) お話のとおりでございます。
  36. 山口哲夫

    山口哲夫君 それじゃ、また後ほどその点について触れたいと思いますけれども、次に、この医療費支出の適正化対策の中で長期入院者の家庭復帰及び在宅ケアの実施というのが出ていますですね。  これは、調査室で出されたものを読んでみたんですけれども、これもちょっと中身がよくわからないですね。国として従来の事業のほかに何か新しい事業を実施しようとしているのか、例えば予算をちゃんとつけて実施しようとしているのかあるいは国は従来どおりで専ら都道府県や市町村に新しい事業をやってほしいと言っているのか。  その辺がちょっと理解できないんですけれども、いかがですか。
  37. 下村健

    政府委員下村健君) ただいまの御質問は、国民健康保険で実施しておりますモデル事業のことを御質問になったんだと思いますが、私どもモデル事業で目標といたしましたのは、まず長期入院者の実態把握を十分にやってほしいということがねらいの一つでございます。  もちろん、その実態把握ということをやる中で、ケースワーク等を通じまして家庭復帰の可能なものについてはその条件を探っていくというふうなことも含まれてまいろうかと思います。モデル事業考えておりますのは、さしあたり既定の施策の中でどこまでやっていけるかという点を実態把握とあわせてモデル的にやってみようと、こういうことでございます。
  38. 山口哲夫

    山口哲夫君 その後に、六十三年度の国保保健施設事業の助成という項目がございまして、八項目ずっと並んでいるんですね。  これも、件名だけずっと並んでおりまして、それじゃ具体的にどんなことを実施しようとしているのかちょっと見当がつかないんですけれども、余り長く時間をとられると困るんですが、——極めて端的に、どういうことをやろうとしているんですか。
  39. 下村健

    政府委員下村健君) 簡単に申し上げたいと思います。  第一が、ヘルスパイオニアタウン事業。これは五十八年度から実行いたしておりますが、保険者の創意工夫によりまして市町村のヘルス事業の水準を向上させるということでいわばメニュー式の補助のような形になっておりまして、市町村の具体的な計画に沿ってこういった趣旨に沿う事業について定額の補助を行うというものでございます。  それから二番目も、第二次分のヘルスパイオニアタウン事業ということで、これは内容同一でございます。  それから三番目は、健康管理データバンク事業ということで、継続的あるいは機動的な健康管理指導を行うために健康情報をコンピューターにより管理する事業、これも定額でございます。  それから四番目が、受診者健康管理データバンク事業ということで、三番のやや変形のような形でございますが、直診施設がその直診施設で診療を受けた方の健康管理を的確に行うために受診者の症病歴、健康情報等をコンピューターにより管理するといった事業でございます。  それから五番目が、コンピューターによる健康調査事業ということで、成人を対象にいたしましてアンケート方式の調査を行って、対象者の健康、体力、生活状況等をコンピューターで分析処理する、これを保健施設事業に活用していこうということでございます。これも定額補助でございます。  それから六番が、先ほどから話が出ております在宅療養者等訪問指導事業でございまして、訪問看護等の支援システムとして在宅療養者の健康情報、症病歴及び家族介護状況等の情報を、これもコンピューターを使いまして管理をしていこうということでございます。  それから七番が、保健施設事業を積極的に行い他の保険者の範と認められるもの、これも、個別認定ということでございますので一般的に具体的な内容を申し上げることは難しゅうございますが、保健施設事業を積極的に行い他の保険著の範と認められるものに対する助成ということでございます。  それから八番は、直診施設として保健施設事業を積極的に行い他の直診施設の範と認められるものということで、直診施設の中で、健康教育、健康相談その他の保健施設事業を積極的に行っている他の直診施設のモデルあるいは模範と考えられるようなものに対する助成ということでございます。  以上の八項目でございます。
  40. 山口哲夫

    山口哲夫君 今説明された中でも、私は、六、七、八の事業というのは、これは非常に重要な仕事だと思っております。  ただ、残念なことに、せっかくこれだけの重要な事業をやるための助成をしようとおっしゃるんですけれども、例えば、在宅療養者の訪問指導事業なんというのは一件当たり二百万円の助成しかないんですね。これでは、せっかく一生懸命やろうと思っているところでも、保健婦さんの人件費の半分にもならないんですね。ですから、私は、重点を置かなければならないというのであれば、もう少し思い切った予算措置というものをやっぱり重点的にとるべきでないだろうか。  それから八番目の、この直診施設の範と認められるものに対しても、限度額が七百万で抑えられている。これは後ほども申し上げたいと思いますけれども、そこの例えば病院なら病院の出費というのは非常に大きいわけですね。ですから、自治体の負担も物すごく大きいわけですから、せっかくこの事業を伸ばそうというのであれば、それなりの予算措置はこれはもう少し考えて、本当に各自治体が意欲を持って、よしそれじゃやってみようじゃないかというような気持ちにさせるようなそういった対策が必要でないかなと思うんですけれども、これはぜひ増額を今後考えたらいかがでしょうかね。
  41. 下村健

    政府委員下村健君) いずれも比較的最近に始めた事業でございまして、まだ歴史が浅いというふうなこともございますが、今後、事業の実施状況等をよく見まして、お話に出ました限度額の問題等を含めまして検討をしてまいりたいというふうに考えております。  毎年度、これらの補助単価でありますとかあるいは総額でありますとか考えて検討をしているわけでございますが、十分御趣旨を踏まえて考えてみたいと思います。
  42. 山口哲夫

    山口哲夫君 六十一年度で特別調整交付金が十六億円、国保の保健施設事業に出ていますですね。六十二年度では四億ふえて二十億。  六十三年度はまだやってみなきゃわからないそうですけれども、これはせっかく意欲を持ってやろうとしているんですから、これは大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、六十三年度においてはひとつ十分意欲を持ってやれるようにもう少しやっぱり手厚い助成策を考えていただきたいものだな、これからやることですから。いかがでしょうか。
  43. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 大変重要な問題だと考えておりまして、六十三年度におきましての助成額はまだ確定しておりませんけれども、十分に努力してまいりたいと考えております。
  44. 山口哲夫

    山口哲夫君 ぜひひとつ努力をしていただきたいと思います。  それでは次に、大きい四番目ですけれども国保の直営医療機関、それから自治体立病院老人保健施設についてお伺いしたいと思います。  こういった今申し上げたような機関や施設を中心にいたしまして地域の保健医療活動というものを充実強化していく、そのことが国保財政を健全化させるためには非常に重要である、こんなふうに考えるわけです。しかし、現実には、地域で一生懸命やろうと思ってはいても、医者の確保だとかそれから財政面で市町村の負担が非常に大きいんですね。ですから、やろうと思っても財政的な面でなかなかやっていけないというそういう障害があるわけです。  そこで、国民健康保険責任者というのは国なわけですから、国としては今申し上げたような病院だとか診療所、施設の運営にもう少し積極的な助成を基本的に考えるべきでないだろうか。中身については後ほどやりますので、国が責任者である国保事業を伸ばしていくために一番必要なこういう機関、施設に対する助成というものにこれから積極的にひとつ対処してほしいと思うんですけれども大臣にその決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  45. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘の点につきましては私もそのように考えておりまして、従来から例えば運営費の補助とか施設整備費の補助を行っているところでございますけれども、今後さらに充実してまいりたい、かように考えております。
  46. 山口哲夫

    山口哲夫君 ぜひひとつ努力していただきたいと思います。  それで、次に大きい五番目ですけれども、自治体病院、これは国保の直診施設と重なり合うところもあると思うんですけれども、この自治体病院の当面する現状と課題ということで幾つか質問をしてみたいと思います。  全国自治体病院協議会が出した報告がございまして、それを見ますと決算が非常に赤字の自治体病院があるんです。六十一年度が三七・七%、六十二年度になりますとこれがふえまして四九・三%になるんですね。自治体病院はそれだけ赤字がどんどんふえていくということです。そのためか、どうも病院経営が苦しくなってきたということで、最近、自治体病院を診療所に転換してしまうというそういう動きがございます。また、病院を他の団体や民間に経営を移譲しようというそういった動きが出てきているわけです。  それで、自治体病院というのは、これは後ほども具体的に申し上げてみたいと思うんですけれども、地域医療のいわば拠点的な立場にあるわけです。ですから、地域医療を積極的に厚生省が進めようとすれば、一番大事なところはどこかといえば、その中核となる自治体病院だと思うんです。その自治体病院が、今申し上げたように、だんだん民間に移したり格下げして診療所にしてしまうという全く反対の方向に出ているわけです。  厚生省長期展望に立った健康問題、この間、国民生活に関する調査会で厚生省の方からお聞きしたら、医療・保健・福祉施設の連携強化を図るんだ、そういうことを非常に重要な柱として据えているという説明があったわけですね。そうしますと、その医療・保健・福祉の一番中核になるのが自治体病院だということになれば、その自治体病院というものをもう少し私は重大視していくべきでないかなというように思っているんですけれども、今申し上げたように逆な方向で、病院の存在が非常に危うい状態になっております。一体、厚生省としてどういう手だてを講じようとされているのか。  それから、きょうは自治省にもおいでいただいているつもりですけれども、いらしていますか。——自治省としてもそういう自治体病院に対しての手だてをこれからどう考えていこうとしているのか、少し基本的な問題についてお話ししていただきたいと思います。
  47. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 地域医療の中におきます自治体病院の役割、おっしゃいますように重要な部分も非常にあろうかと思いますので、従前から不採算地区にございます病院でございますとか救急医療のような不採算部門、がん診療施設とか小児医療施設を含めましたそういう不採算部門等についての運営費の補助等も行ってきておりますし、六十三年度からは医学的リハビリテーションの施設につきましても運営費の補助を行うということで新たな予算も確保させていただいたわけでございます。  同時に、施設整備費の方でも直接補助金を差し上げるほかに年金積立金の還元融資によります特別地方債で手当てをするということで必要な措置をやってきたつもりではおりますが、今お尋ねの全体の流れの中で地域の医療計画の中で自治体の医療施設がどのような機能を占めるかというのはやはり地域地域でかなり違う部分もあると考えられますので、それをシステム的に機能分担をしていただくということで私ども六十年十二月に医療法を改正さしていただいて、地域医療計画の中でその機能分担を図って計画的にやっていただくということを行っておりますので、すべてが自治体にお任せするということにはならないかと思いますけれども、苦しんでおられる自治体病院についての先ほど申し上げましたような助成措置については引き続きいろいろのことをやらしていただきたいと考えておるところでございます。
  48. 大屋正男

    説明員(大屋正男君) 自治体病院の経営状況は、その経営努力等によりまして全体といたしましては昭和六十一年度におきまして黒字に転じたところでございます。  しかしながら、御指摘がございましたように、経常収支で赤字を生じた事業が全体の約三五%ございまして、累積欠損金が四千百八十億円と多額に上っております。経営状況は依然として厳しい状況にあるというふうに見ております。  このような状況に対処いたしますため、自治省といたしましては、経営悪化の著しい事業につきましては地方公営企業法に基づきます財政再建を行うよう指導するほか、法に基づく手続によらなくても徹底した経営の改善合理化などによりまして経営の健全性を回復し、同時に、不良債務の解消を図ろうとするものにつきましては本年度から新たな経営健全化措置を講じる予定でございます。  その内容でございますが、まず、企業の経営体質等から不良債務が生じ経営が悪化しております市町村立の病院事業で経営の健全性を積極的に回復しようとするものにつきましては、不良債務の発生の原因でございますとか程度等を勘案しながら不良債務の計画的な解消、単年度収支の均衡その他経営の健全性の回復のための所要の措置を盛り込んだ経営健全化計画を策定することとしております。  この経営健全化計画の実施段階におきましても適切な指導を行うなど、その的確な実施が確保されるよう所要の措置を講じますとともに、経営健全化計画に基づきます不良債務の解消に要する経費及び不良債務の範囲内におきます一時借入金の利子の支払いに要する経費につきましては徹底した経営努力を前提といたしまして一般会計等からの繰り入れを行うことができるものとし、これに対し所要の財政措置を講ずる予定でございます。
  49. 山口哲夫

    山口哲夫君 今の答弁はちょっと問題があるんで後ほど触れたいと思うんですけれども、その前に、大臣にお聞きしておきたいと思うんです。  地域における公立病院の役割の重要性の問題なんです。地域における病院がしっかり中核となって、さっき申し上げましたように、厚生省の言うように保健活動とか福祉活動とか三位一体にして活動している中で地域の住民の健康は高まるし、そして国保事業そのものの財政も非常に好転してくる、こういうことは実態例としてあるわけですね。  これは余りにも有名な岩手県の沢内村なんかはその代表だと思うんですね。これはちょっと五年ほど前の本で古いんですけれども、昭和五十六年度の数字を見ておりますと、医療費一人当たりが、全国の平均が十万一千四百九十九円、県平均が十二万四百四十七円に対して、沢内村は九万六千五百九十五円と非常に低いんですね。これはもう数字がはっきり示している。それから、老人医療費の一人当たりを見てみましても、全国平均が三十四万三千七百円、それから県平均が四十万一千百円、それに対して沢内村はぐっと低くて十八万六千七百円、こういうふうに非常に医療費が低いんです。そして保険税もやはり全国平均よりもぐっと低いわけですね。そういう中で公立病院が本当に中心になって頑張っているところは、今申し上げたように、政府が今心配している医療費はぐっと下がってきて、国保事業が健全化しているわけですね。  ですから、そういう意味で、私は、公立病院・診療所、そういった役割というものは今厚生省が進めようとしている地域医療計画の中では非常に重要な位置を占めると思うんですけれども、その辺の基本的な考え方について大臣いかがでしょう。
  50. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 自治体病院が地域の中核的な医療のために重要である、全くそうだと思います。  私も郷里でそういう実態を見ておりまして、県立病院であるとか組合立病院であるとかいろいろございます。この何十年間かの過去の経緯も存じ上げているわけでございますが、医者の問題とかそれから財政上の問題とかいろいろございましたけれども、いろいろと努力をされまして、私の郷里では今相当いい線に行っておるようなそういう状況です。  それについては、先ほど答弁いたしましたように、不採算部門については運営費補助をするとかそれから施設整備についてはその補助をするとか、こういう対策もそれなりに効果が上がってきておるのかなと思うわけでございます。  今後、御指摘のような点は私も同感でございますので、自治体病院が健全に運営されるまたそれによって地域の住民の健康増進に役立つという役割を十分に果たしてもらう、そのことを念頭に置いて考えてまいりたいと考えております。
  51. 山口哲夫

    山口哲夫君 厚生大臣のおっしゃるとおりだと思うんですね。それだけ地方の自治体病院というのは、その地域の保健・医療というものを高めていくためには本当に大事な存在になっていると思うんですね。  ところが、今自治省の方のお答えがあったように、自治省の方としては、自治体立病院の経営の健全化ということを中心に置きまして盛んに経営努力をせい、合理化せいと言っているんですね。ところが、公立病院の持つ役割は一体何なのかということですね。赤字を出さなきゃいいというものではないと思うんですよ。これは、やっぱり、中核となってその地域の住民の医療を守っていく、保健活動を高めて健康な人たちをつくっていくというところに重点があるのが公立病院だと思うんですね。だから、そういうことからいきますと、自治省が今示そうとしている合理化計画というのは、ただ赤字さえなくすればそれでいいんだというそういう考え方が最初にあるんですね。  ですから、現実に合理化されて赤字を解消した自治体なんかを見てみますと、これは、実態としては大変なんですよ。例えば、看護婦が非常に定数が少なくなっていく、それからそのほかいろいろな関係職員も減っていく、そして労働時間は長くなっていく。だから、看護婦さんの世論調査なんかをやってみますと、疲れているというのが六〇%もいるんですよね。患者を扱っていて一番しっかりして頑張ってもらわなきゃならない看護婦さんみずから六〇%も疲れている中でいい医療ができるはずかないと思うんですよ。  だから、地域医療の極めて重要な役割を担っている公立病院の目的ということを考えたら、自治省は、自治体の病院が地域でどういう役割を担っていく病院になるのか、そこをしっかり厚生省と協議をして、そこをよく踏まえて、ただ赤字をなくすればいいんだなんというそういう軽率な考え方でやっていただきたくない、私はこういうふうに思います。  この点については機会があれば地行の中でもう少しやりたいと思いますけれども、どうですか、今の考え方について。
  52. 大屋正男

    説明員(大屋正男君) 自治体病院が地域社会の中で極めて重要な役割を果たしておるということは私どもも十分に認識をしておるわけでございまして、そういった認識の上に立ちつつ、なおかつ経営の健全化にできるだけの努力をする、これは、限られた財源を極力有効に活用いたしまして住民にあらゆる面で還元をする、こういった基本的な立場に立って経営の努力をすべきものであるというふうに考えておるものでございます。
  53. 山口哲夫

    山口哲夫君 おっしゃっていることとやっていることがまるっきり違うんですよね、残念ながら。  口ではそうおっしゃるけれども、実際にはどうかというと、自治体の財政を健全化させるために合理化せい合理化せいと言って、もう患者は二の次にして、病院をいかにして黒字にさせるかということだけを先行するんですよ。それは人を減らしたりしていけば赤字を解消できるでしょう。しかし、それじゃ何のための公立病院かというふうに言いたくなるんですよね。ですから、公立病院の果たす役割で一番大事なものは何なのか、その辺にひとつ重点を置きながらこれからの地方交付税の中での自治体病院に対する対策ということについては真剣に考えていただきたい。特にこの点強調しておきたいと思うんです。  それで、もうちょっと具体例を出して、いかに重要かということをお話ししてみたいと思うんです。  長野県というのは、なかなか医療活動を熱心にやっていて、そして医療費の方も結構低い地位にあるんですね。で、専門家の方から聞いてみましたら、ここは農協を中心とする厚生連なんか九つ病院があるんですけれども、昭和二十年代から予防活動に非常に重点を置いてきているんですね。保健婦の数なんかも全国で三番目に多いんですね。それで、社団法人の長野県国保地域医療推進協議会では、百七十名のお医者さんと看護婦さんが一緒になって、地域医療の活動に昭和四十六年ころから物すごい努力をしているのですね。それから、諏訪中央病院なんかは地域医療活動に非常に熱心ですし、それから佐久総合病院の予防活動もこれは大変活発なんです。まさに厚生省が言っている医療・保健・福祉を一体化させてその地域の健康を守っている、こういう今までの努力の成果というものがあるわけですね。これなんかを見ますと、公立病院が中心になって非常に血の出るような努力をみんなで重ねてやっているんですね。  それから、新潟県の大和町なんかもそうですね。ゆきぐに大和総合病院なんというのは、これは、町立病院を中心にして健診センターとか特老ホームとかそういうのが一体になって無医地区に一日置きに診療に行ったり、町内にある二カ所の村落には四人から五人のチームを組んで一週間に一回巡回診療なんかやっているんですね。恐らくそういうことの成果として出てきたと思うんですけれども医療費への効果が、例えば、一般患者医療なんかは、新潟県平均医療費一人当たり十一万六千円が大和町の場合には十万八千円に下がっている、退職者医療の場合でも新潟県の平均が二十万五千円のところが大和町は十三万五千円に減っているというふうに、医療費がぐっと減ってきているんですね。  広島県の西城なんかもそうです。西城病院なんというのは、これは労働組合が中心になりまして、地域の健康を守るために公立病院が中核となってもっと健診制度を実行しようじゃないかということで、誕生日健診なんていうのを組合が提案いたしまして、そして病院と一緒になって努力をして今まで大変な活動を続けてきている。その結果を見ますと、これも住民一人当たりの一般医療費というのは、五十七年から六十年までの四年間を見ても広島市とかほかの方から見ると、やはり医療費の伸び率というものが抑えられているんですね。それから、老人医療費を見てもそうですよ。西城の総合病院を中心とした努力というものがあって、老人医療費四年間を見ましてもほかの方より伸びが非常に低いんですね。  こういうように公立病院が中核となってその地域の保健・福祉活動と一体になってやってきたとこは非常に大きな成果を上げつつあるということが言えるんです。そういうことから考えたら、この公立病院の果たす役割の重要性というのは、これは国民健康保険事業を本当に進めていくためにも非常に大事な役割を担っている、そんなふうに思いますので、ぜひひとつその点を配慮しながらこれからの公立病院に対する助成というものを特に考えてほしい。さっき厚生大臣が、重要な地位を占めている、こういうふうにもおっしゃっているんですから、厚生省も自治省も十分ひとつ対策を講じてほしいことを強く要望しておきたいと思います。  それで、今度は少し具体的に要請しておきたいと思うんですけれども、例えば、僻地医療なんかを見ておりますと、医者の確保に非常に苦労しているんです。私も自治体で医師の確保には随分苦労した方ですけれども、僻地に行きますと大変な苦労をしているんですね。  例えばある町に行きますと、北海道ですよ、九州からお医者さんを呼ぶんですね。一人一カ月の月給が百万円ですよ。そのほかに、そこの教室に百万円くらい出すんですね。そして、何か手術するということになると、そこの大学の方から来ていただかなくちゃならない。スタッフの費用を全部町が持つわけですね。これは市町村にとっては大変な負担です。しかし、住民の健康を守るためにはどうしてもやらざるを得ない。そんな深刻な実態というのが特に僻地と言われる地域の医療実態なんです。  そういうことを考えながら、病院財政に対する補助金あるいは交付税措置をもう少し考えてもいいんではないだろうかというように思いますけれども、いかがでしょうか。
  54. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) ただいまお話しございましたように、医療機関と保健所あるいは市町村の保健活動、さらには地区の医師会の皆さんの御協力を得て包括的な保健サービス、健康増進から早期発見、適正医療あるいはリハビリテーションということで展開した結果、医療費が安くなるということは我々としても大いに歓迎することでもございますので、そういう方向で今後の保健サービスあり方を大きく変えていかなくてはいけないということでいろいろの角度から検討を行っておりますし、新しい予算も要求をするということでやっております。  ただいまの僻地につきましても、従前は、僻地診療所でございますとかいろいろな形でやっておりましたけれども、それはどうしても無医地区といういわゆる点を中心とする対策がメーンであったということでございますが、今後は、さらに広域市町村圏ごとと申しますか、非常に広い範囲でもっと全体を考えたらどうかということで、僻地中核病院あり方でございますとか僻地診療所のあり方でございますとか、いろいろ工夫をしていったらどうか。同時に、ただいま御指摘のような保健予防活動もそういうところで展開していったらどうかということで、予算の僻地医療対策を第六次ということで現在やっておりますけれども、御指摘のような方向でさらに伸ばしていく方向で予算を確保していきたいというふうに考えているところでございます。
  55. 大屋正男

    説明員(大屋正男君) 自治体病院の経営に要する経費のうち、不採算地区病院に要する経費でございますとか僻地医療に要する経費でございますとか、当該病院を経営する地方団体の一般会計において負担すべき経費に対しましては地方交付税により措置をしてきておるところでございまして、毎年度これまでその充実に努めてきておるところでございますが、今後とも自治体病院の経営状況等を見ながら適切に対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  56. 山口哲夫

    山口哲夫君 自治省の方から細かく資料をいただいておりますけれども、交付税の中でも普通交付税、特交の中でいろいろと見ているようですが、これは項目だけは多いけれども金額的には非常に私どもとしては不満な点がたくさんあります。これはいずれまたやることにいたしまして、ぜひひとつ公立病院の重要性を認識して、これからも財政的な手当てを考えてほしいなと思います。  一つだけ新しい問題で、公立病院を建設する場合の資金の返済助成なんですけれども、今こういったものは制度として取り入れられていないですね。公立病院を新築したり改築したりするときに物すごいお金がかかるわけですね。そういうものを返すことが大変でなかなか運営費の方に重点が置けないというそういう問題も出てきているんです。  どうですか、これ、建設費に対する返済の助成等について新たに考えてみてはいかがかと思うんですけれども
  57. 大屋正男

    説明員(大屋正男君) 自治体病院の建設等のために借り入れました企業債の償還金につきましては、その一部につきまして当該病院を経営する地方公共団体の一般会計で負担すべきものについて病院の経営に要する経費の一部といたしまして地方財政計画に計上いたしますとともに、地方交付税により措置をしておるところでございます。
  58. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 先ほどお答えいたしましたが、自治体病院施設と設備のための補助を行っておりますし、不採算部門についての補助金、運営費の補助も行っておるところでございますので、現在、私どもといたしましては、重ねてその返済資金のための補助というのは現状ではなかなか難しいというふうに考えております。
  59. 山口哲夫

    山口哲夫君 現実には、公立病院がもう非常に古くなって、何とかここで改築をして、本当に地域の人たちが安心してかかれるようなそういう病院にしたいというところもたくさんあるわけですね。実際にやっているところもあるんですけれども、相当無理がかかっていますね、これは新しく建て直すわけですから。そのために、今、地域の医療保健の一番大きな中核的な役割を果たすために厚生省が言っているいろんな事業をやっていきたいと思っていても、なかなかそっちの方に目が向かない。一番大事なこの運営の方に、建設費の返済のために目が向かないというようなそういうことがあると思うんですよ。ですから、その辺はやっぱり少しは考えていただいてもいいんでないだろうか、こんなふうに思っておりますので、これからの新しい問題としてひとつ御検討いただきたい、こんなふうに思います。  時間もあとありませんので最後に、大きな問題の六番目ですけれども老人保健施設についてお伺いいたします。  これは、厚生省がおっしゃっている社会的入院というものをなるべく解消していこうということからいけば、私は一番大きな役割を担っている施設ではないかなというふうに思うんですね。それで、寝たきり老人というのは、昭和七十五年になりますと百万人になるんだそうですね。その三〇%である三十三万人を老人保健施設に入れよう、そのために昭和六十三年度から百カ所を建設しようということなんですけれども、一カ所わずか三千万円の補助金なんですね。それで、五十人入る施設をつくるのに、今、実際にやっているところに聞きましたら、大体四億から五億円くらいかかっているんです。そうすると、一割にも満たない金額なんですね。これでは、やってみようかと思っても、なかなか手が出ないということになりかねないんではないかなと思うんです。  これは、もう少し補助金を増額すると同時に、運営の方にも非常に不安があるわけでして、運営に対する助成なんかもやっぱり考えていくべきでないかな、そんなふうにも思っているんですけれども、その辺いかがですか。
  60. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 老人保健施設につきましては、先生おっしゃるとおりにこれからの在宅ケアの支援の施設としてますます重要性を増していくものであるというふうに認識をいたしております。  それで、昭和七十五年に三十三万床ぐらいの整備というふうに先生おっしゃいましたけれども、実は、私どもは、施設の収容のケースとそれから在宅サービスケースにつきまして、在宅ケースを三十三万から三十七万くらいにいたしたい、そしてそのほかに病院とか特別養護老人ホーム、それから老人保健施設を合わせまして残りを整備したい、こういうふうに考えているわけでございます。そして、その老人保健施設につきましては、大体二十六万ベッドから三十方ベッドぐらいを整備したいというようなことを考えております。  それで、まず建設費に対する助成でございますけれども、この老人保健施設整備につきましては、基本的には自己資金と社会福祉・医療事業団等の融資により行われるものというふうに考えておりまして、整備に伴う借入金の返済、利息の支払い等につきましては、施設療養費の方で対応しているところでございます。したがいまして、その老人保健施設整備費に対する国庫補助は整備促進の機運を高めるための奨励として定額補助により行っているものでございまして、引き続きこのような形で助成を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。  それから、運営費の関係の御質問がございましたけれども、この老人保健施設の運営費は、老人保健施設の療養費としての二十一万円の定額とそれから入所者の利用料というものを合わせたもので運営をされていくということを基本に考えているわけでございます。そして老人保健施設の療養費の額につきましては、老人病院における経営実態やモデル施設の運営状況等を踏まえまして、入所者基本施設療養費一人一月二十一万円のほか、痴呆性老人加算、短期入所ケア加算、緊急時の施設療養費等につきまして中医協で慎重な御審議をお願いした上で定められたものでございまして、この利用料と合わせました収入によりまして施設の適正な運営が図られるものというふうに考えているわけでございます。  今後とも、この施設の運営状況や入所者に対するケアの実態等を把握いたしまして、中医協での御審議を踏まえてその適正化は努めてまいりたいと、かように考えております。
  61. 山口哲夫

    山口哲夫君 せっかくいい施設をつくりましても、中に魂が入っていないと何にもならないんですね。  それで、今のようなお答えで本当にこの施設が健全な経営目的を果たせるというふうにお考えですか。  実際にモデルになっている七カ所がありますね。これは軒並み赤字だというふうに私は聞いているんですよ。本当に今おっしゃったようなことで目的をきちっと達成できる自信がおありですか。
  62. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 今申し上げましたように、老人病院における経営実態とかモデル施設の運営状況を踏まえまして中医協で慎重に御審議いただきまして定められたものでございまして、この施設療養費にいろいろな加算も含めまして、また利用料を含めますと適正な運営が図られるものというふうに考えているところでございます。  なお、モデル施設については非常に赤字が多いと、こういうお話でございますけれども、これはモデル施設ということで規模も概して非常に小さいわけでございますし、それからまた業務開始が年度途中になったりいたしますし、運営の期間も短いわけでございますし、また初年度ということでございますから、いろいろと通常の経費と違った面で影響が大きいと思います。そういうこともございますのでモデル施設実態は赤字のところが多いわけでございますけれども、これは経常的な運営に入るということになれば、これで適正な運営が図られるというふうに考えているところでございます。
  63. 山口哲夫

    山口哲夫君 先ほども冒頭幾つか例を出しましたように、福祉事務所窓口では病院を追われて行き場所を失って施設に入りたいという方が非常に多くなってきているという問題、それから老人病気を苦にして自殺する方、無理心中をされた方、いろいろと述べたんですけれども、それだけに私はこういう施設に対する期待というのは非常に大きいと思うんですね。ですから、せっかくこういういい計画をやるんであればもう少しこの辺は重点を置きまして、もっとやっぱり徹底した仕事をやってみてはいかがかなというふうに思うんですね。  それで、まだ経営が始まったばかりですから何とかやっていけるだろう、中医協で考えたことなんだからとおっしゃるんですけれども現実はなかなかそう甘くはないようですね。  私も二、三新しくこれからやろうとするところに聞いてみました。そうしましたらこういう意見があるんですね。例えば、看護婦だとか介護職員の人員配置等については、これは、当直制ではなくて三交代の夜勤体制を義務づけられるとすれば、基準の人員では編成がなかなかできないんだと。だから、基準人員ということを考えて、例えば療養費二十一万というふうに考えているんでしょうけれども現場の方としては、やっぱりこれだけの職員ではやっていけない。だから、本当に目的を達成するためには、ちゃんとした職員を置いて入院してくるお年寄りに安心して療養してもらえるようなものを考えるのはこの施設の長の方としてはそれは当然のことだと思うんですね。そんなようなことを考えたら、今局長がおっしゃっているようにそう甘いものではないと思うんですね。  週刊誌を読んでおりましたら、この老人保健施設のことについてこう書いているんです。週刊新潮ですけれども、「”老人保健施設”を老人ホスピス的性格のものとして、老人のターミナル・ケア(終末看護)の場にしようと開設を考えているんですが、その中で出来る医療内容が非常に薄く、採算性も悪いんですよ。これではこの施設の普及は難しいでしょう」と、これは実際に民間の保健施設を経営されている方がこう言っているんですね。ですから、いろいろと事前に厚生省お話を聞きますと、赤字が出ているところもモデルとしてはあるけれども民間の方では何とかうまくやっているんだ、やっていこうとしているんだとおっしゃるんですけれども、実際に民間で施設を経営しようという人がこういう不安を述べているんですね。  そういうことを考えたら、最後に大臣に決意のほどをお聞きしたいんですけれども、今始まったばかりですからなかなか一概にこうだああだということが言えない点もあるかと思いますけれども、しかし実際にやってみて、なかなかこれは目的どおりにはいかないな、厚生省の方としてもせめて運営費にはできるだけの助成をすることによって本当に当初考えていた目的が達成できるんだなという事態が来ると私は思うんですね。だから、そういう点でぜひ建設費ほ対しても助成幅を大きくしてほしいし、それから運営についても助成というものを、これは常設化して制度化してほしいと思いますけれども、そういうこれからの運営等を考えてみた上でもう一度検討してみるというような決意のほどをぜひひとつお聞かせいただきたいと思います。
  64. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 看護・介護職員の数の点に先生お触れになりましたけれども、私どもといたしましては、看護・介護職員は二十八人、収容者百人につきまして二十八人という基準考えているわけでございますが、例えば特別養護老人ホームの場合ですと、同じ収容者数につきまして二十五人という基準になっておりまして、先生おっしゃいますように、この特別養護老人ホームよりもそういう意味では手厚い配置になっているわけでございますから、私どもといたしましてはこの施設運営に支障を来すようなことはないのではないかというふうに考えているところでございます。  それから、今のこの老人保健施設がホスピスとしてとかターミナルケアとしてやっていく場合には、とても不十分だというか、これでは苦しいのではないかというお話でございましたけれども、私ども、この老人保健施設というのはまさに病院から退院をして家庭復帰をする場合の中間施設家庭復帰を促進するための施設といたしましてそのリハビリテーションを中心にした治療・介護を行うということを考えているわけでございまして、ターミナルケアとは全く対極にある考え方をしているわけでございます。  私どもといたしましては、この老人保健施設整備を進めることによりまして明るく家庭的な雰囲気の中で身近に利用しやすい施設として家庭復帰が促進される、こういうことを願っているものでございます。よろしく御了承いただきたいと思います。
  65. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 老人保健施設の適正な運営、これはおっしゃるとおりでございまして、私どももぜひそうしていかなきゃならぬ問題だと思っております。  そこで、療養費とか利用料、この問題につきましては、いろいろな角度から検討いたしました結果このように決めておるわけでございますが、今後実施をしてみなければおっしゃるようにわからないという点もあろうかと思うわけでございまして、そういう実施状況を十分見まして、また十分に中医協の御審議を踏まえまして療養費の額につきましては適正なものにしてまいりたい、かように考えております。
  66. 山口哲夫

    山口哲夫君 ぜひひとつ老人保健施設の持っている重要性を考えまして十分御努力をいただきたい、こんなふうに思います。  時間が過ぎましたので、以上で終わります。  ありがとうございました。
  67. 山本正和

    ○山本正和君 ただいまも国民健康保険法の一部改正につきましていろいろと御質疑があったわけでありまずけれども、引き続きまして私の方から、今日の国民健康保険が抱えている問題点についてさらにお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、四千百万人を超える被保険者方々国民生活において国民健康保険が自分たちの生活の支えといいましょうか、生涯の自分たちの暮らしの中に占める比重というのは大変大きいと思うわけでございますが、この国民健康保険制度そのものについて厚生省として、まず大変初歩的な御質問をいたしますけれども、現在どういうふうにお考えいただいておるか、このことを承りたいと思います。
  68. 下村健

    政府委員下村健君) お話のように、国民健康保険は、発足当初は国民の大体六割ぐらいをカバーしていたわけでございますが、現在は四割ということでそのウエートは下がってきておりますけれども、自営業者あるいは農家といった方々医療保障につきましてはこれによって確保されているという側面があるわけでございます。  また、一般の勤労者にいたしましても、退職後は国保に加入される方も多いわけでございまして、国民健康保険国民が一生のうち何らかの形でかかわりを持ってくるというふうなことも考えられるわけでございますから、そういう意味で非常に重要性を持っている。また、皆保険達成の経緯を考えてみましても、国民健康保険ができることによって皆保険ができたわけでございますから、そういった点から見ましても現在の皆保険体制を支えている基盤的な制度だというふうに私ども考えておるわけでございます。
  69. 山本正和

    ○山本正和君 国民皆保険という言葉が使われておりますし、それから我が国医療の水準が国際的に見て非常に高い位置づけをされている、さらにまた医師といいましょうか、医療関係者方々も大変御苦労をいただいているわけでありますけれども、国際的に見て一定の位置づけはなされておる。こういう状況になってきておりますが、こういうものの背景は、国民健康保険制度でもって国民皆保険ができた、そして医療を安心して国民が受けられる、そのために医療に当たられるお医者さんを含めた医療関係者もとにかくきちんとした社会的位置づけが受けられるというところから来ている、こう私は思うわけであります。  ですから、何といいましょうか、例えば、お隣の中国では、はだしのお医者さんという言葉もあってお医者さんの地位が非常に低い、看護婦さんあるいはその他の関係者方々も大変いろんな問題点がある中で、それぞれの国が取り組んでおるのでありますから、そういう意味では我が国は非常にすぐれたこの制度を誇っていいんじゃないか、こういうふうに思うわけです。  ところがその一方で、今度の法律改正案にありますように、医療費の構造上の問題あるいは高齢化社会の到来というふうなことで財政的にこれが保ち得ない、したがってこれを何とか改定していかざるを得ないというふうなところが先にあらわれてきているような気がしてならないわけですね。  ですから、本当に国民医療という立場から法改正をしていこう、国民医療をさらにもっと充実させていこうという観点からの法改正であればもう少し違った論議ができるんじゃないかと思うんですけれども、財政といいましょうかあるいは経済的な問題がいたずらに強調されるような印象がなきにしもあらずと、こういうところを大変私も心配をしているわけであります。そういう意味で総務庁が六十二年の十二月に行政監察をいたしまして、国民健康保険事業の運営についての勧告がなされております。これも私もいろいろと読んでみたわけでありますけれども、いろんな意味での指摘がございます。しかし、その指摘の中でどういう形でどの辺を特徴的に指摘しているのか、そしてこのことが今度の法改正についての問題提起とどう絡んでいるのかというようなことを本会議場でも御質問をいたしましたけれども、きょうはそれに絡みましていろんな細かい問題についてお尋ねしてまいりたいと思います。  まず、この行政監察結果に基づく勧告、これをどういうふうにお受けとめになられて、そしてこれに対する対応が今どういう形でなされようとしているのか、ここのところをまずお聞きしておきたいと思います。
  70. 下村健

    政府委員下村健君) 六十二年十二月の総務庁からの行政監察結果に基づく勧告でございますが、これは国民健康保険の被保険者の的確な把握、それから保険料の適正な徴収、医療費の厳正な審査、支払い等現行制度のもとにおける国保事業運営の一層の適正化を図ることを内容としたものというふうに受けとめているわけでございます。  今回の改革案は、低所得者問題、それから医療費の地域差問題等そういった運営面の問題だけでは解決し得ないような構造問題につきまして国が地方公共団体の御協力を受けまして取り組んでいく仕組みをつくっていくというものでございまして、今回の改革とあわせて事業運営の適正化を図るということによって国保の健全かつ安定的な運営が図られるというふうに考えているわけでございます。  総務庁の御指摘はそういったことで運営の改善といった色彩が強いわけでございますが、私どもとしては、その内容につきましては安定化計画の具体化といったような面で大いにその勧告の内容も生かしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  71. 山本正和

    ○山本正和君 巷間いろいろと国民健康保険問題で議論されるときに出てまいりますのがレセプト審査の問題、さらにはこれの点検の問題が出てくるわけですね。  私は、多くの医療機関あるいは多くのお医者さんが本当に患者を中心に医療のために献身的に努力されておられる、これが大多数だと思うんですね。しかし、幾つかの事例として出されたことが、これがあたかも医療機関全体がこういうことをしているんじゃないかというふうな不信が生まれてくる。こういう意味からいっても、これは本当に厳正に行われていますよ、国民の皆さん御安心くださいと、こういうことをしなきゃいけないだろうというふうに思うんですね。  そういう意味で見てまいりますと、いわゆるレセプト審査の中で重点審査といいましょうか、十万点を超えた場合には云々というふうな指摘等もして、本当にこのとおりきちっとやっていますよということをやらなきゃいけない。ところが、それについてこの勧告を見てみますと若干問題があるように思うんですけれども、その辺につきましてはどういうふうな把握でございますか。
  72. 下村健

    政府委員下村健君) 重点審査についてのお尋ねでございますが、現在、国民健康保険連合会が各県にございますが、そこでは医科、歯科の通常の審査の部会のほかに一定点数以上の高額のレセプトにつきまして重点審査を行うための審査専門部会を設けて審査を実施しているわけでございます。  大体が十万点以上というふうなことでやっているわけでございますが、審査体制面での問題等もございまして現在のところまだ二県、十万点になっていない県があるということでございます。私どもとしては、一応国保としては十万点でやろうということが全体的な方針として決まっておりますので、速やかにそういった統一的な処理ができるように指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  73. 山本正和

    ○山本正和君 これはお医者さん仲間でも、いわゆる十万点以上のこういうレセプト等については大変苦労の多い患者の場合が多い。したがって、それは不信の目で見るのではなしに、きちんと正確に審査し得ることにしなければ、今度は医療機関にこの保険制度に対する不信や反感が生まれますと大変な問題になる。そういうことも含めまして、要するに、こういう高額医療といいましょうか、十万点以上の問題についての適正審査をみんなが納得できる形で実施していただきたい、こういうふうに思っておるわけですね。  そこで、この審査をする機関がどこなんだといいますと、ほとんど保険団体連合会が被保険者たる市町村から委託されてそして連合会で事実上審査されている、こういうことでございますけれども、その連合会というのはどういう構成になっているのか、そしてまたそれぞれ審査委員が選ばれるときにどういう基準で選んでおられるのか、その辺ちょっとお聞かせいただきたい。
  74. 下村健

    政府委員下村健君) 国保連合会自体は、各県の国民健康保険保険者、この場合は市町村が主体ということになるわけでございますが、それを会員として構成している社団的な形の団体でございますが、その中に審査委員会というふうなものを設けて今お話に出ました診療報酬請求の審査を行っているということになるわけでございます。  審査委員会の委員は三者構成ということが言われておりまして、第一は診療担当者を代表する者、それから二番目に保険者を代表する者、三番日が公益代表、支払基金の場合はこれは学識経験者というふうなことになっておりますが公益代表者、その三者の構成で審査を行っているわけでございます。  診療担当の代表者、それから保険者の代表者につきましては、それぞれ関係団体の推薦により、また公流を代表する者はつきましては、国保連の場合は都道府県知事の委嘱ということで任命が行われているわけでございます。審査業務の性格からいたしましてこれは臨床がわかるような方でなければなりませんので、実態としては、大部分が医師、歯科医師ということになるわけでございます。その中で適任者を選ぶということでございます。  適任者を選ぶということが審査委員会の機能を的確に果たしていく上で最も重要な要件になってまいります。したがいまして、かねてからその人選につきましては、厳正、公平を期待し得る適任者を委嘱する、それから専門的に高度の技能を有し診療担当者の信頼を期待し得る最適任者を委嘱するといった指導を行っているところでございます。
  75. 山本正和

    ○山本正和君 今、三者構成ということで、バランスを考えてでき上がっていると思うんですね。ところが、公益代表という立場委員の中にそれぞれの県の医師会の幹部の方もなきにしもあらずということを聞くわけですね。医師会の役員になられた方は、どっちかといえば診療者側のいろんな立場を代表することをせざるを得ない性格だろうと私は思うんです。  その辺は、実際そういうふうになっているのかなっていないのか、またそういうことに対する指導はどうされているのか、お伺いしたいと思います。
  76. 下村健

    政府委員下村健君) 先ほど申しましたように、医師の中から適任者を選ぶという条件がございまして、適任者を見つけるということがなかなか難しいということが実態上もございます。そういったところもありまして診療担当者を代表する委員の推薦母体、医師会等の役職にあられる方が含まれている例が現実にはございます。ただ、その割合は逐次減少に向かっているという格好でございます。  私どもとしては、ただいま御指摘のような議論もございまして、三者構成という趣旨からいたしますと、診療担当者を代表する委員の推薦母体がまた公益の立場からも審査委員会に加わるということは適当でないということで、こういった方につきましては十分意見調整をしながら改選時期等に改善措置を講ずるよう指導を行っているわけでございます。その結果、数が減ってきているということでございますが、まだ現状といたしましては若干残っているということでございます。
  77. 山本正和

    ○山本正和君 私は、連合会が別に医療機関のサイドから云々ということで言うつもりはないんです。しかし、一般的にこれを国民全体の前に連合会というのはこうですというふうな形で提示しますと、やっぱりそれはわからないという印象を持つだろうと思うんです。  教育委員という制度があります。これは、どちらかといったら教育関係者はむしろ外す。教育行政ですから本当は学校のことをよく知っている者がなった方がいいわけですけれども、ある程度は入れますけれども、全くそうでない実業界からとかあるいはその他の格好で教育委員は選ばれる。あるいは、県の公安委員でもそうですね。警察関係じゃないんです。  少なくとも連合会の中の公益委員という部分は、そういう方がおられて、そして医療の素人であっても審査の中でいろいろ議論がし得る、そしていわゆる素人が見て常識的にああなるほどなとわかるということが本来あるべき姿じゃないか。私は、個々の患者とお医者さんの関係というのは、これは専門的な立場ですから、そのお医者さんが診療内容その他について云々ということは言いにくい、また言うべきことでもないという部分が多いと思うんですね。しかし、こういう国民みんなで保険税を払って、そして国の責任において国民医療をやろうという機関、そういう中での連合会、こういうことからいったら、公益委員についてはなるべくそういう構成ができ上がるようはしていただきたいと思います。確かに、医療は専門制ということで難しい部分がありますから、到底一般の素人ではわからない。わからなくても、しかし、ああなるほどなと説明は聞けると思うんですね、今日の非常に高い教育水準にある国民状況ですから。ですから、そういう人も含めた格好での連合会がきちっとありますよ、そこでレセプトはきちっと審査していますよということでなかったら、何か問題が出た場合、何だおかしいじゃないか、こういうふうな声が出ないでもない。  ですから、今そういう形で御指導をおやりになっている、また逐次、公益側の代表についてはお医者さんじゃない格好の、お医者さんといいますか医師会、そういう診療代表と思われるような立場じゃない方が出られるということで、私もぜひそういう方向での御指導を願いたいと思うんです。  それから、同じ医学の関係者といいましても、例えば医事評論家もおる、大学で基礎医学をおやりになっている方もおられる、また全くそういう経営には関係のないお医者さんの専門家もおいでになるわけですね。そういう観点からいった場合に、この公益委員の選任に当たりましては都道府県に対する指導を十分におやりいただきたいと思いますが、そういうふうに今後取り組まれるということに承ってよろしゅうございますか。
  78. 下村健

    政府委員下村健君) おっしゃるように、実態としては診療担当者を代表する委員の方が出られてうまく審査がいっているという例もあるわけでございますが、実態論は別といたしまして、そういった構成で審査委員会が構成されるということになると審査委員会自体の公平さを保っているかどうかという点について外部からの疑惑を招きやすいという点は御指摘のとおりだと思います。  したがいまして、私どもとしては、そういったやや変則の形は解消してまいるということで今後も十分に努力をしてまいりたいと考えております。
  79. 山本正和

    ○山本正和君 それから、これは大変な事務量があるようでございまして、その事務上のミスから生まれる間違いも出てくる。どうもおかしいじゃないかと、こう保険者審査によって出てきた請求書を見て、待てよと思って調べてみると事務上のミスがあったというふうな問題が出てきているようですね。  これは、この勧告にもありますように、電算を導入してそして間違いのないようはしていこうじゃないか、こういう指導をされていると聞くんですけれども、見ておりますとどうも必ずしも全部がそういうふうになっていないように思うんですが、その辺についてはどうでございますか。
  80. 下村健

    政府委員下村健君) 大変膨大な事務量になりますので、電算機等の処理によりまして事務的にこなせるものはできるだけそういった形でやっていったらいいんじゃないかということで、私どもとしてもその方向を推進しているわけでございます。  現在、そういうことで共同電算化というふうなことを実施いたしております国保連の数は四十三都道府県ということでございまして、したがいまして未実施が四県ばかりあるということになろうかと思いますが、残りのそういった未実施の国保連につきましても早急に実施するように指導してまいりたいと考えております。
  81. 山本正和

    ○山本正和君 事務的な問題等についてはそういう方向でお取り組みいただいているようでありますけれども、私ども考えてちょっとどうなのかしらん、できるのかしらんと、こう思うものに、市町村がレセプト点検をやる、このときに内容点検という部分もやらざるを得ないが、内容点検をし得る能力が市町村にあるんだろうか、また仮にし得る能力のある市町村があったとしても、本当にそれは万全の体制ができるんだろうかと非常にその辺が不思議に思うんです。  こういうふうな市町村内容点検等の問題については、これは厚生省から十分な御指導なりあるいは援助がなければなし得ないだろうと、こう思うんですけれども、その辺の問題はいかがでございますか。
  82. 下村健

    政府委員下村健君) レセプト点検でございますが、これは医療費適正化という上から見ましてもどうしてもそういった面の努力というのは強化していただかなければならぬと思っているわけでございます。  現在の実態から申しますと、比較的事務的に容易な資格の点検でありますとか交通事故等に関連いたしまして本来健康保険あるいは国民健康保険が負担すべきでないものの点検をやるとか、そういったやや入り口のところでとまっているというのが素直なところではないかと思います。その辺までは逆に大体全部の保険がやるところまで来ているということではないかと思います。  ただ、それだけでは足りませんで、本来、もう少し立ち入った内容点検がレセプト点検についても必要ではないか、私どもとしてはそのように考えております。これには、お話しのようにそういった面の体制整備とまた現実問題としてそれを全部のレセプトについてやっていくということはなかなか難しいだろうという面もございます。私どもが今回考えましたのは、そういったことで安定化計画ということで医療費の要因分析を行って各市町村ごとの問題点をはっきりさせていく、その問題点に沿ってレセプト点検の内容も深めていくといった方向が現実的ではないだろうか、こんなふうに考えたわけでございます。  これに要する費用につきましては、私どもとしては、事務費補助金という形で六十三年度の予算額で約八百億円になりますが、その予算の中で所要経費を全額これは国が負担をするという形でやっているわけでございます。なかなか事務職員だけでは対応できない問題が含まれてまいりますので、ベテランの医療事務経験者等を嘱託として雇うといったことも考慮してもらってはどうかというふうなことも指導いたしまして、レセプト点検の充実を図ってまいるようにしているわけでございます。  なお、特別にそういった事業をやっているところにつきましては、医療費適正化特別対策事業といった形で、これは六十二年度の予算で二億円でございますが、特別の助成もいたしているところでございます。
  83. 山本正和

    ○山本正和君 レセプト審査あるいはレセプト点検等につきましては、本当に国民全体の中に信頼が確立されるような格好での御指導を今後ともお願いしたいと思います。  それから、今度の法改正に伴って国民の間に不安がありますのは何かと私どもなりに見てみたんですが、それは今度の勧告の中にも若干出ている、いわゆる保険者によって大変な医療費の格差があること。そうしたら、その格差というのは、これは本当に必要なところから生じた格差なのかあるいはそうでないのか、こういう問題について受けとめ方がまちまちでございます。確かに、なるほどその地域ならば当然医療費は高額にならざるを得ないだろうという条件のあるところも現実にあるわけですね。そうかと思ったら、地域医療ということで、先ほど山口委員からも幾つかの例を出されましたけれども、地域ぐるみで本当に住民医療のために取り組んでいることによって医療費をうんと安くしているところもまたある。また、その地域の医師会できちっと確立したものをお持ちになって、そして不当なそういうふうなことはないよという地域、いろいろあるわけですね。  そこで、心配いたしますのは今度の法改正の中に出てくる基準医療費の問題で、この基準医療費を大きく上回るところは市町村自身がそれを切り下げるための努力をするんだと。そうすると、基準医療費が決められましたら、そういう高いところが仮に下がったら、また下がるだろうと。そうすると、そういうふうな形で機械的にいった場合に本当にその地域で必要な医療が受けられなくなる、そうなった場合はどうなるんだと、こういう不安がかなりあるわけです。  その基準医療費という問題をどういうふうにこの勧告との関係の中でお考えいただいたのか、そしてまた今後どういうふうにこの問題の推移をお考えになっているのか、この辺を承りたいと思います。
  84. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費の地域差の要因はいろいろ考えられるわけでございまして、これに対してどの程度的確に対応していけるか、またそれによってどのように医療が変わってくるか、なかなか難しい問題でございます。  ただ、御指摘のようなどんどん下がっていくんではないかということにつきましては、私ども考え方といたしましては、確かに医療費の高い地域、低い地域、いろいろありまして、また逆にこれを伸び率という点から見るとこれも地域差があるわけでございますが、高い地域が幾らでもどんどん高くなっていく、これはどうもおかしいんではないかというふうに私どもは思っているわけでございます。  したがって、こういった安定化計画の推進によりまして実際に起こってくることは、やはり伸び率に影響が出てくるのではないか。現実医療費の額が直接にこれによって低下するというところまではなかなか難しい面があろうかと思います。ただ、全体的に平均化していくという方向に向かっていくべきではないかというふうに私ども考えております。  ただ、根底といたしまして供給体制の問題等いろいろございますのでなかなか一挙にそうはまいりませんが、全体として平均的な医療費の消費水準と申しますか、そういった形に向かっていくことが好ましいだろう、私どもとしてはそういった効果を期待したいと考えているわけでございます。
  85. 山本正和

    ○山本正和君 これはお答えいただかなくても結構なんですが、今度の法案の関係資料の四ページに国民健康保険制度の都道府県別被保険者一人当たり医療費というのが載ってございます。ここで沖縄県が十万二千円。要するに、平均一〇〇に対して六二、こういう数値が出ているわけですね。ところが、沖縄県は恐らく四十七都道府県の中でもお年寄りが大変多い、そして長寿県としてこれはもうみんなが知っている事実です。  ですから、私が思いますのは、国民健康保険が大変財政的に苦しくなってきた原因として高齢化の問題が常に言われる。しかし、現実に沖縄では高齢者が非常に多い、そして高齢者といいましてもまさに記録的なギネスブックに載るような方もおられるし、大家族制度というふうな名残も若干はありますから他の府県とは違います。ですから、医療費が高いから一定の基準を設けてその基準より高いところの市町村に対しては努力義務を負わせるんだ、こういう一般的な言い方はよくわからないでもないんですけれども、そういう条件によっての違いというものがある。したがって、基準医療費の設定とそれに伴う市町村の努力の問題も、こういうふうにいろんなケースによって違いが出てくる。  そういうことも含めて基準医療費の問題、そしてこれに伴う市町村への自助努力といいましょうか、市町村が自分の市町村で一生懸命になって医療費の増高を防ぐためのさまざまな施策といって、先ほど同僚議員からも言いましたように、そのために患者がひどい目に遭うあるいはお年寄りがひどい目に遭うというようなことになったら大変だと思いますので、その辺を含めて基準医療費の設定については個々に市町村のそれぞれの事情に合わせて御指導いただく、こういうふうなことになってほしいと思うんですけれども、その辺の見解はいかがでございますか。
  86. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費の地域差の原因については、お話しのようにいろいろな原因が考えられるわけでございます。  一番はっきりいたしておりますのは人口の年齢構成の相違といったことがあるわけでございますが、そのほかに住民の生活習慣でありますとか健康に対する意識、受診行動、あるいはヘルス事業状況がどうなっているかとかあるいは医療機関の診療パターンがどうかとかベッド数がどうなっているかとかいろいろございます。  したがって、私どもとしては、基準医療費を決める場合に、医療費の高低を判断するのに何を物差しとしてとればいいか、この辺も難しい議論があり得るかと思いますが、一応平均値で見ていこう、全国の平均的な医療費水準と比較してはどうか。これも、平均値という場合に、ただいま申しました高齢化の進展の違い等による年齢構成の相違ということは無視できませんので、こういったことをまず考慮に入れて全国平均というものをもとにして地域差を考えよう。しかも平均値ということで使いますと、これはあくまで平均値という以上の意味がないわけですから、それにある程度の偏差値というふうなものを考慮してある程度の幅を考える。その上に、さらに地域的な特殊事情、これは個別的にいろんなものが出てくるかと思いますが、一応私どもとして考えられるものはいろいろ拾った上でそういったものを考慮しようということで基準医療費というものを決めたらどうか、このように考えているわけでございます。  沖縄の例が出てまいりましたけれども、沖縄の場合は主として離島というふうな事情が非常に大きく影響しているのではないかというふうに思っているわけでございます。最近の事情からいいますと、沖縄本島の医療費というのはかなりの程度に上昇してきているというふうに見ているわけでございますが、県内でもそういった差も出てまいります。  そういった地域的な事情を十分考慮いたしまして、私どもとしては、現在の保険体制のもとでいきますと、老人保健制度等ができてそれぞれの保険が一本の保険体制というものにつながっているわけでございますので、そういったことから考えますと、医療費の消費の状況といいますか、負担の状況というものが地域によって大きな差が出てくるというのは決して好ましくない。当然負担の不公平感というものを生み出すもとにもなりますので、できるだけ根っこの医療費が全体として公平に使われているといいますか、そういった形に向かうように持っていきたいと考えているわけでございます。
  87. 山本正和

    ○山本正和君 実は、参議院の国民生活調査会で沖縄に視察に参りまして、そこで老人施設にいろんな形で県を挙げて取り組みをしておられる、特に戦争の犠牲、こういう観点から地域住民の皆さん方の大変な理解を得てお取り組みいただいている。ですから、本土と比べて、本土といえばおかしいですが、本州あるいは九州等と比べまして随分いろんな意味での施設があるのを見てまいりました。確かにお年寄りが安心して暮らせる条件をどうつくるかということと絡むだろうと、こんなことも思って帰ってきたわけです。  私は、医療費というものを考えるのに、何か数字だけでもってずっと出して平均してぽんと決めてしまって、これより高いものはだめだぞと、こういう言い方では逆に国民は納得しないんじゃないか。むしろ、いろんな地域の条件があるわけでありますから、例えばかつての公害と言われたようなところから発する病弱の方あるいは広島や長崎のように大変な被害を受けられた地域、それぞれ違ってくると思うんです。そういうふうなことも含めまして、この基準医療費の問題については今後とも十分な御配慮をお願いしておきたいと、こう思います。  それから、それに絡みまして市町村が、現在一応納得をして、今度の法改正に対しても結構でございますという市町村がふえていることは事実です。しかし一方、本当の底を割った話をいろいろしてまいりますと、二年間はいいだろう、その後どうなるんだと、こういう大変な不安をお持ちです。市町村財政が苦しいというのはこれはずっと言われ続けているんですけれども、その一方で、財政需要というのは二十一世紀社会を迎えて市町村は大変なものを抱えている。ですから、この国民健康保険に対して保険税がどんどん高くなってきて、しまいには最高のところに全部の市町村がいくんじゃないかというぐらいの不安を抱えている。私は、これは本会議質問でも申し上げましたけれども、本来、国民健康保険というのは、被保険者が掛ける保険とそして国の負担とでもって、とにかく日本の国に住んでおる日本の国民であれば皆さん御安心くださいというのが建前だろうと思うんですね。そこで、市町村の役割は何かといったら、市町村もそれは日本の国の機関じゃないかと言えばそれでしまいですけれども、役割かきちっと別になっているというふうに私は思うんですね。  そういう意味からいいまして、この六十五年度以降を一体どうお考えなんだろうか、これは三大臣が御協議を随分交わされて云々ということも聞いておりますけれども、当面の二年間はわかった、しかしそこから後のところが私どもにとっては一向に見えないわけですね。  ですから、六十五年度以降のその辺の問題は、これは政府としての統一見解はできないでしょうけれども厚生省としてはどういうふうに六十五年度以降対応しようと考えておられるのか、その辺を承りたいと思います。
  88. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今回の国保改革は、御承知のように、国保が持っております構造上の問題を解決するために国と市町村が共同して取り組む、こういう仕組みをつくったわけでございます。  まずはそういう取り組む仕組みをつくらしていただいたわけで、六十五年度までの間にこの実施状況を踏まえまして見直しを行います。その見直しを行いました上で、六十五年度にさらに制度が長期安定を図るために必要な措置を行うわけでございまして、そのようにお考えいただければ結構かと思います。  また、この国保制度の長期安定の方策につきましては、現在社会保障制度審議会の御意見も承っておるわけでございまして、その御意見も十分に承り、それを十分に念頭に入れて六十五年度に長期安定のための改革を行う、こういうふうに考えておるわけでございます。
  89. 山本正和

    ○山本正和君 厚生省立場からいろいろと御主張いただきたいと私は思います。それで、確かに国全体という立場からいきますと、財政という観点から、そんなことを言うけれどもこうじゃないかという話が出てくるだろうと思うんですね。しかし、国民が今何を政府に期待しているかといえば、とにかくこの国に生きてこの国に住んで人生を全うしたいという中で、せめて病気になったときにはみんなでこういう国になっていますよというその安心感だと思うんですね。そこのところの原点は絶対に大臣に頑張っていただきまして、あるいは自治省や大蔵省と見解が違うかもしれませんけれども、これはひとつ頑張っていただきたい、こう思います。  それからその次に、現在の中で直すべき問題点はやっぱり随分あるんじゃないか。実は、お医者さんの中でも国民健康保険制度についていろんな意見がありまして、こんなことを言うと大変語弊がありますけれども、あの医者は患者扱いが大変上手だ、短時間でちょんちょんちょんと診察をされて、そして多くの患者が殺到している。ところが少し偏屈なお医者さんがおって、患者の顔色を診て心配になっていろいろと症状を聞く、何時間もかかる。その場合に、これはもう大変な診療報酬の違いが山てくる。こういうふうな問題がお医者さんの仲間でも議論されるわけです。おまえまごまごしておるといかぬぞというような話が出ぬでもない。  ですから、現行の国民健康保険制度が制度として公費でもっていろんなものを賄わなきゃいけない、あるいは財政的ないろいろな問題がある、こういうことからいきますと当然矛盾は生まれると思うんです。矛盾なしにはこれは成り得ないと思うんですけれども、とにかく今の国民健康保険制度の中での医療供給体制あるいは支払い方式はこれでいいんだろうかという声がかなりある。私は現行制度を全面的に否定する気持ちはありません。確かに、お医者さんが安心して患者を診ようという場合に、出来高払いということがなかったら安心して診療できないという側面があると思うんです。ですから全部悪いと言うんじゃないんですけれども、現行のこの医療供給体制あるいは支払い方式の中に幾つかの欠陥があるということはさまざまな議論があると思うんです。  厚生省は、その現行制度の中での問題点、どういうところに問題があるとお考えでございましょうか、ちょっと聞かせてください。
  90. 下村健

    政府委員下村健君) 現在の診療報酬の方式でございますが、出来高払い方式、こう言われているわけでございますが、出来高払い方式と申しますのは、結局、個別の医師の手間と申しますか医療行為、これに対しまして個別に評価をしていく。手間をかければその手間に応じて診療報酬を支払う、こういうことでございますので、医療の本質から見ますと、これは患者さんが個人個人違うわけですから、一人一人の病状に応じていろいろな処置をしたり検査をしたり投薬をしたりする。それが個別の事情に応じて医療費が算定されるという意味では非常に長所でありますけれども、逆に、そういったことで医療機関の収入をふやすということから、薬の多用あるいは検査を過剰にやるあるいは入院日数を延ばすというふうなことがあるんではないか、こういうことが言われております。  現在の状況あるいは出来高払いの本質から考えてみますと、私どもやはり一番の欠点ということからいいますと、ただいま申しました薬の問題、それから検査の問題、それから入院の問題、この辺が一番動きやすいと言うと語弊があるかもしれませんが、欠点になりやすい部分だというふうに考えているわけでございます。
  91. 山本正和

    ○山本正和君 こんなことがあってはならないと私は思ったんですが、健康保険組合連合会が「老人医療費出来高払方式問題事例集」というのを出しておられる。これを読んで、もしこれが事実という形で国民の間に広がったら、医療機関に対するあるいは現在の医療制度に対する不信というものはもう大変な勢いで広がるだろうと思うんですね。  例えば、こんなことが書いてある。要するに、七十七歳の方、兵庫県。クモ膜下出血・脳梗塞で入院しておった。「毎日普通の食事を取っているにもかかわらず、毎日栄養補給のための点滴が行われております。  さらに、この点滴の中には、内服が可能な薬も含めて行われているのです。栄養補給のための点滴は毎日行わなくてもよいのではないでしょうか。」そして、六十二年五月分の医療費が三十四万八千四百三十円となっている。こういうふうなことがこれは一番初めに書いてある。もっと大変ひどい例がずっと載っておるわけですね。こういうふうな問題点国民の間に出てきた場合、医療に対する不信が大変なものになっていくだろう。  厚生省としては、一体どういう形でこの種の問題に今後お取り組みをされるのか、この辺ちょっとお答えにくいかもしれませんけれども、これはほうっておけない問題だろうと思うんです。その辺につきまして御見解を承りたいと思います。
  92. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 今、先生も御指摘になりまた保険局長からもお答え申し上げましたように、出来高払い制が陥りやすい欠点として薬の多用でございますとか検査の多用とかまた入院日数長期化ということが挙げられているわけでございまして、この健保連の事例集ではそういう典型例が列挙されているんだと思うわけでございます。  で、こういうことが非常に極端に走りますと、まさに先生御指摘のように、医療に対する国民の不信感というものがどうしてもぬぐい切れなくなってしまう、大変なことになるだろうと思います。  私どもといたしましては、老人医療ということにつきましては、老人というものは一般に病気にかかりやすい、それから一人で多くの病気を持っている、その病気というのは多くの場合に高血圧等の慢性疾患が多い、心理的な不安も伴いがちである、こういうような心身のいわば特性というようなものがありますので、そういうものを十分に踏まえて、そういう老人に最もふさわしい医療を提供するにはどうしたらよいかということから、常に検討を怠ってはいけないというふうに考えているわけでございます。  で、今申し上げましたようなことで出来高の欠点をできるだけ是正をしていく、そして長所を生かす、また地域での在宅医療といいますかそういうものを今後重点的に伸ばしていく、こういうような総合的な方策で今のような欠点を是正していきたいというように考えております。
  93. 山本正和

    ○山本正和君 これは、私はお役所から云々ということ以前の、本当は医師の良心といいましょうか医療の本来の任務というものから、これはお医者さん仲間で、こんなばかなことをしたら承知せぬぞという声が随分出ていると思うんですね。それが今度はつまらぬことで新聞に載せられて、そしてまた脱税云々というような格好で出される、非常に情けないことだと思うんですね。そういう情けないことだと思う一方で、しかしそういう制度があればどうしても人間ですからつい陥りやすいという部分がありはせぬかと思うんです。  例えば三重県に神島という離れ島があります。そこで、お医者さんが行かれて大変な御苦労を願って、まさにもう二十四時間いつ電話がかかってくるかわからぬ。一生懸命苦労されて、その神島の島の人たちから神様のようにあがめられているお医者さんを私自身もよく承知しております。  しかし一方で、この前も申し上げましたけれども、何か知らないけれども金貸しがお医者さんの何人かの名前をかりて病院をでっち上げてその病院によって金もうけをした、こんなことが載ってくるとこれはもう非常に情けないことだと思うんです。何とかこれは行政としてお取り組みいただかないわけにいかないだろうと思います。ですから、こういう過剰診療等のこういうものが出ないように医療機関その他の関係団体との協議をぜひお願いしておきたいと思います。  それからもう一つは、これも国民の間に必ずしも正しい認識じゃないところから生まれている誤解がかなりありますけれども、薬価の問題です。  薬価基準と実勢価格との差がある。例えば三万円の薬が実は何と四千五百円で手に入る、残りはみんな医療機関の収入だと、こんなことが言われたりするわけですね。私自身もこの前の本会議質問に伴って三重県の医師会関係から、おまえは大分誤解しているぞというふうなことも聞きました。しかし、現実にそういうものがあることは否めない事実なんですね。  本来、診療報酬の中で薬価基準でもってお金を払う。しかし、薬価基準と実勢価格の間の差額というものは診療報酬の中に入れて、これは収入として差し支えないというふうに考えているのかいないのか、この辺はどうでございますか。
  94. 下村健

    政府委員下村健君) 私どもとしては、薬価については実勢価格を反映して適正な価格を設定していくということが基本だと思っているわけでございます。  しかしながら、実際には、薬価の改定というのは一定の時期で行うわけでございますから、その間の差というふうなものもございます。薬の購入自体は全くの経済行為ということで一般の取引の中で行われるわけでございますので、どうしてもそこに薬価差というものが出てまいりますが、これは薬価差を診療報酬として認めているということではありませんで、結果としてそういうものがあるということで、診療報酬の本来的な構成要素として薬価差を認めているということではございません。
  95. 山本正和

    ○山本正和君 いずれにしても、経営しようとすれば、薬価基準よりも安く入れば経営は安定するわけですからそれはやらざるを得ない。そうかといって国民健康保険制度の建前から、実勢価格で入ったものを仮に請求しなかったと、こうしますね。そうすると、実際はその医療機関は、何をばかなことをしているんだということにしかならないんですね。  そういう矛盾というものは現在ここにあると、これは厚生省としても十分御理解でございますね。
  96. 下村健

    政府委員下村健君) これは薬価というものを診療報酬の中で決めていくか決めていかないかという辺の診療報酬の立て方の問題もあろうかと思いますが、保険制度のような形でやりますとどうしてもそこに薬価差のようなものが出てくる、ある意味では各国ともにある程度そういうものは存在していると。  ただ、日本の場合にはそういった薬価差が極めて大きいというところがありまして、私どもとしては、できる限り適正な薬価基準を決めるということでその解消に努力をしてまいりたいと考えているわけでございます。
  97. 山本正和

    ○山本正和君 国民の負担ということからいきますと、保険税がどんどん上がってきている。だけれども、それはみんなのために守っていこう、あるいは他の組合健保等も高齢化社会に対して一定の負担をしていかざるを得ぬじゃないか、こういう機運をつくろうとするならば、こういうところにはやっぱりメスを入れて、これはだめですと。将来の医療の安定のためには、また医療に携わる方々の将来も含めてみんなが相互信頼するためにはこういうものはなくしていくということについてのお取り組みをぜひいただきたい、これはなかなか一遍には解決しない問題だと思いますけれどもひとついろんな段階で議論を始めていただきたい、今までやっておられるわけでありますけれどももう少しいろいろ議論をしていただきたいというふうに思います。  それと絡んで私、こんなばかなことはないと思うのは、何でお医者さんの初診料あるいは再診料がこんなに低いんだろうかということです。そして、診察に対する報酬というものが非常に低い。  お医者さんというのは、患者立場からいけばお医者さんの顔を見て、お医者さんからいろいろな話を聞いて、精神的にああよかったといって治癒に向かうということが随分大きいと思うんですよね。お医者さんの一番重要な部分は患者と接触することですよね。患者と接触する部分に対して大変安い。これは諸外国と比べてうんと安いというふうなことを言うんですけれども、この辺の初診料、再診料の問題についてはどうお考えでございますか。
  98. 下村健

    政府委員下村健君) 医師の無形の技術料のようなものも大いに評価すべきではないかというふうな御意見ではないかと思いますが、私どもといたしましても、技術料重視という観点から御指摘の初診料、再診料といったものについては逐次改定を行ってきておりまして、今回、四月に改定を行ったわけでございますが、その中でも引き上げを行っているわけでございます。  外国との比較は、診療報酬体系自体が違いますのでそこの部分だけを取り出してというのはなかなか難しゅうございますが、アメリカ等に比べるとまだ差があるという点はあろうかと思います。  私どもといたしましては、今後とも中医協での御議論を踏まえながら技術料重視といった基本方針のもとに診療報酬の合理化を図ってまいりたい、そういった方向で今後もぜひとも努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  99. 山本正和

    ○山本正和君 歯科の先生の中で、薬をもう扱わない、どうぞ薬局へ行って買ってくださいと、こういうことを言われるお医者さんがぼつぼつふえてきております。それからまた、個人医の方で、保険薬局へ行ってくださいよと、こういう方もおられるわけですね。ところが、そういう方々と話をいろいろしてみますと、処方せん料というのがべらぼうに安い。  これは、処方せんというのはお医者さんのまさに技術そのものだと私は思うんです。この患者に対してどういう薬を与えるか、これは医の一番の根本だろうと思うんですね。あとは薬局が薬を管理して、そして持っているものを、このごろはこんなことはやらないんですが、袋に入れて渡すだけの問題ですよね。しかし、それは管理しなきゃいけない大変な役割が薬局にはあると私は思うんですね。ところが、お医者さんが患者のことで頭がいっぱいなのにもかかわらず、薬屋との折衝をする。何で薬屋がこの忙しいときにやってくるんだと、こう思っても、仕方がないからやっぱり薬屋と話をしなきゃいけない。そしていろんな時間をとられる。今度は薬の点数計算とかなんとかまで奥さんとしては大変苦労される。処方せん料をもっときちんと高くすれば、待てよと、そんなつまらぬ手数をかけぬでもいいじゃないかというようなことにもなりはせぬかと私は思うんです。  この処方せんの点数、これはいつごろ決められて、今までどうなってきたんでしょうか。これはちょっと私質問の中になかったんですけれども、大ざっぱな形ですけれども現在のお医者さんの世界ではこの処方せん料がこんなに安くていいと思っておられるんでしょうか。この辺ちょっと承りたいんです。
  100. 下村健

    政府委員下村健君) ちょっと詳しい経過を覚えておりませんが、五十年前後であったかと思いますが、処方せん料をかなり思い切って引き上げて、現在はその価格を手直しするという形で推移いたしておると思います。今回も若干引き上げを行っておりますが、五百円程度、五十点に引き上げたというのがかなり処方せんについては大幅な改定だと。時期はたしか五十年前後ではなかったかというふうに覚えております。  ただいま御指摘のような考え方も踏まえ、また医薬分業を推進していくというふうな考え方もございまして大幅に改定をして、現在はおおむねその水準を維持するような改定を行ってきている、こんな経過ではないかと思います。
  101. 山本正和

    ○山本正和君 ぜひ処方せん、処方されるということのお医者さんの大変な知識といいましょうか、あるいはいろんな症例に当たられる中から、これはまさにお医者さんの本当の持ち前の技術だろうと思うんですね。それに対して五百円という、一枚五百円になるわけでしょう。マッサージしてもらって五千円取られる、お医者さんに処方せんを書いてもらって五百円。こういうことはちょっと、どうも医療そのものを軽視しているんじゃないかというふうに私は思えてならないんですね。この辺は今後の審議会の中で御論議いただくことだろうと思うんですけれども、ぜひともひとつこれからの御検討をいただきたいと思います。  そこで、時間があとわずかになってまいりましたけれども老人医療、いろんな議論がございます。老人医療あり方というものは、これは一概にこうとはなかなか言い得ない難しい問題を抱えている。私自身も実は九十一歳の母親がまだ生きておりまして、時々やっぱりぼけるんです。時々ぼけます。だけれども、それぞれの人生を抱えて年をとってくるわけですから、それぞれいろんな人生経験を背負った中での老人の症状が出てくると思う。  私、今大変心配しておりますのは、お年寄り医療の世界で見る目とそれからお年寄りが長い間人生をお暮らしになってきてそして本当に最後の余生をせめて楽しく全うしたいという部分と、そこがいろいろまざって議論されているというような気がしてならないのですね。ですから、医療として老人問題を扱う部分とそれから高齢者問題として扱う部分、その辺のこれからの考え方というものが大変重要じゃないかというふうに思うんです。  最近の議論の中で、老人医療について定額制度を、健保連なんかは中身はちょっと別にいたしまして、こう言っている。これは一体どういう趣旨のことを言っているのか、またこんなことに対して厚生省はどうお考えになっているのか、その辺ちょっと見解を承りたいんですが。
  102. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 定額制度というのはいろいろな形のものがあるだろうと思います。例えば、件数で定額、患者一人当たり定額であるとか一日の医療費が定額であるとかまたは疾病分類別の定額であるとか、いろんなことがあると思うんですが、健保連の御主張は、詳細には私もわからないところでございますけれども老人の疾病が急性期を過ぎて慢性期に移ったような段階について出来高払いをやめて定額払い方式を導入したらどうか、こういうような改革の御提言であるというふうに考えているわけでございます。  私どもといたしましては、先ほども申し上げましたけれども、一番大切なことは老人にふさわしい医療を提供するのにはどのような支払い方式が最もふさわしいかということを基本に据えなければいけないと思うわけでございまして、現在は、御承知のように出来高払い方式、これが非常に長期にわたって用いられておりますし定着をしているわけでございまして、いろいろな欠点は包含しつつも患者の病状に応じた診療行為を行いやすいことであるとか医学の進歩に対応した医療が取り入れやすいというようなことから医師と患者双方にとって大きな長所を持っているというふうに考えているわけでございまして、この出来高払い方式の欠点を是正しつつ良質な医療を効率的に提供するという方向で努力をいたしたいというふうに考えているところでございます。  いろいろなお考えがこれからもあろうかと思います。私どもは、いろいろと多くの方々の御意見を伺いながらあるべき方向というものを検討はしていかなければいけないというふうに考えております。
  103. 山本正和

    ○山本正和君 老人医療の問題はいろんな角度からぜひ御検討いただきたい。何かこう形を決めてしまって、年寄りだからこれでいいじゃないかというふうな発想ではないと思いますけれども、この定額という問題はそういういろんなことを含めまして十分な御検討をいただきたいと思います。  それから、これはきのうの新聞でしたですか載っておりまして、私も気がついたんですけれども、歯科の診療報酬改定が四月からずっと見送られてきておって、これは技工士に対する技術料の問題等があったと聞いておりましたら、新聞紙上に載っておりました。このごろ歯科に通う患者が随分ふえてまいりまして、それも昔の自由診療というのはほとんどなくなって、保険診療に切りかわってきている。それだけに、歯科の診療報酬の問題もなぜ延びたんだというようなことで、国民の間ではわからない。  それで、今度は技術料の問題云々と、こんなことを言われているわけですけれども、今の段階はどういうふうな状況になっておるのか。大体合意ができたというふうな書き方を新聞はしておりますけれども、この辺の問題はいかがでございますか。
  104. 下村健

    政府委員下村健君) 歯科につきましては、かねてから技工料問題の解決が中医協の懸案になってきたわけでございます。  これは、前回の診療報酬改定の際にこの問題が出てまいりまして、その時点で解決を図るという合意ができていたわけでございますが、なかなか実際にはそれが実行できないということで、昨年末の予算編成期になりましてなお関係者間の協議が調わなかったということでございます。このため、中医協では、技工料問題の解決が図られた上で歯科診療報酬改定に取り組むべきであるという意見が大勢を占めまして、この意見を踏まえて昨年の診療報酬改定問題を予算の時期に決める場合に歯科の改定は見送るというふうな取り扱いにいたしたわけでございます。その後、関係者間でいろいろ協議が進められてきたわけでございますが、合意に達したということで新聞報道等につながったわけでございますが、その合意につきましては、きょう実はこの委員会と同時に十時から中医協が開かれまして、その席上で歯科診療の担当者を代表する委員の方から合意ができたというふうな御報告がなされまして、お尋ねの歯科診療報酬についてはこの報告を中医協が了解いたしまして、診療報酬改定について具体的に取り組むべきだというふうな御意見を賜ったと、実は、私、今報告を受けたばかりでございますが、そういう運びになったようでございます。  したがいまして、厚生省といたしましては、具体的な改定幅、内容等につきましてこれから検討を続けまして、早期にその改定を実現すべく取り組んでまいるという段取りになってまいります。
  105. 山本正和

    ○山本正和君 それじゃ、最後に大臣にお伺いして質問を終わりたいと思います。  私は、こういう国民健康保険の制度改正ということは、単に今度の法律の一部改正問題ではなしに、国民の間に医療に対する関心が非常に高い、そして今後のあり方について二十一世紀はどうなるんだというようなことも含めて国民の間にいろんな不安が生まれてきている、こういうことが一方にあると思うんですね。それからもう一つは、現行の医療制度、今の診療制度、こういうものについてもこれでいいんだろうかという素朴な疑問がいろいろ生まれてきているというふうに思うんです。それからまた、先ほど同僚議員から出ておりましたけれども、僻地や文化的環境に恵まれていない地区の医療の問題、特に最近若いお医者さんで僻地医療に携わることを希望される方が少なくなってきている、結局大学で医学を学ぶ学生が、医療に対する使命感という言葉は余りいい言葉じゃないかもしれませんけれども医療によし本当に自分で取り組もう、こんなことは大変きざな言い方かもしれませんけれども、田舎へ行ってあるいは離島へ行ってその人たちのために頑張ろう、こういう気概を持つような医学教育というものも必要じゃないかというようなことも思ったりするんですね。ですから、大学における医師の養成というものも含めて、そして医療に従事するということのとうとさという点も含めて国民全体が医療に対する信頼や尊敬の念をかち得るような形に持っていかざるを得ないんじゃないか。そういう意味で、診療報酬制度あるいはその他さまざまな問題についていろんな問題を抱えて厚生行政をおやりになる立場で、大臣から御所見を伺っておきたいと思います。  私は、何といいましょうか、ちょっと差しさわりがあるから物を言わぬでおこうというふうな形では医療問題は解決しないと思います。私自身も、誤解を招くんじゃないかということで、医療問題というのはなかなか発言しにくい部分もあります。しかし、そうじゃなしに率直な疑問をぶつけていかなければいけない。特に私自身が心配しますのは、かつて地域では、お医者さんというのは自分たちの体の問題ばっかりじゃなしにその地域の文化あるいは教養、そういうものも含めてよき相談相手であったというそういう時代があるわけであります。ところが、今の診療報酬制度でいきますと、まじめにそういうことに取り組もうとしても、それに取り組んでいたのでは経済的に成り行かないということがもし制度から生まれるとするならこれは大変残念なことだと、こんなことを思っておるわけです。そういう意味でひとつ大臣から御所見を承りたいと思います。
  106. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 先ほどからいろいろ御意見を交えての御質問でございまして、私も拝聴いたしております中で非常に同感の点が多いわけでございます。  これから人口の高齢化も進んでいくわけでございますし、医療また医学の高度化という問題もあるわけでございまして、そういう中で適切な医療、それにふさわしい医療国民に提供される、これは極めて重要な課題だと思うわけでございます。  そういう中で、先ほど御指摘がございましたように、診療報酬改定もこれまた非常に重要な問題でございまして、今後とも十分に考えてまいることは無論でありますけれども、同時に在宅医療の問題やまた末期医療あり方の検討、さらに老人医療のガイドラインの作成等によりまして医療の質の向上に努める、それから都道府県の医療計画の推進を通じまして地域医療のシステム化を図っていく、こういうことによりまして良質で効率的な医療が提供されるようにこれからも努力を重ねてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  107. 山本正和

    ○山本正和君 終わります。
  108. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ─────・─────    午後一時四十七分開会
  109. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を再会いたします。  午前に引き続き、国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  110. 中西珠子

    ○中西珠子君 私は、四月十八日の本会議におきましても質問をさせていただいたわけでございますが、本日はもう少し細かい点につきましてお伺いしたいと思います。  まず、私は、国民がすべてだれでもどこでもいつでも安心して医療が受けられるような医療保障制度の確立を願っております。そういう立場から御質問を申し上げるわけでございますが、保険料につきましてまずお聞きしたいと思うわけです。  国民健康保険の保険料はほかの保険に比べまして一番高いわけで、給付はまた一番低いわけでございます。それで、年々保険料が上がりまして、所得の伸び率よりも上回る伸び率を示しているということだそうでございます。そしてまた、地域によりまして非常に地域格差があるし、賦課方式も違っている。所得の捕促なども難しいし、地域によって所得の格差もあるわけですからなかなか難しいこととは思いますが、国民全体が一律の保険料を払うべきであるという要求だとかまた標準的な保険料というものを設定するべきであるとかというふうな要求もございますが、厚生省としてはこの保険料についてどのようなお考えをお持ちですか。
  111. 下村健

    政府委員下村健君) 保険料の実態でございますが、相当の地域差がございまして、六十一年度の実績等で見ますと、一人当たり保険料で最高と最低で約八倍近い開きがあるというふうな状況になっております。  賦課方式の方も九割程度が、四方式と言われておりますが所得割、資産割、均等割、平等割というふうなことでやっておりますが、そのほかに、資産割をとっていないところ、それから均等割をとっていないところというふうなものも少数ございまして、賦課方式にも差があるという点は御指摘のとおりでございます。  私どもとしては、国庫負担を通じまして財政調整をやっておりまして、医療費と所得水準が同一水準にあるというところはおおむね保険料も同一水準ということで統一するような調整をやっているわけでございます。  ただ、保険の方も、老人保健制度等を通じまして全体の保険制度としての公平性というふうなことが問題になってまいりますと、特に医療費との関係で保険料をどうするかというところがもう少し標準化できないか、また賦課方式の点についてももう少し、約一割足らずでございますが、その辺のところも統一的な方式というものができないかということで、その辺の課題についてこれは今回の改革に引き続きまして検討を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  112. 中西珠子

    ○中西珠子君 検討を進めてまいりたいとお考えで、早く検討を進めていただいてなるたけ国民が払えるような保険料水準というものにしていただきたいと思います。  それから、今回の改正によって保険基盤安定制度というのができまして、厚生省の御説明では一世帯千七百円ぐらい保険料負担が軽くなる、こう言っておられますけれども、千七百円ぐらい保険料をお引き下げになる御予定でございますか。
  113. 下村健

    政府委員下村健君) 今回の改正全体を通じまして、総額で二百四十億、国保の一世帯当たりで年間千七百円の保険料負担が軽減される効果があるというのはそのとおりでございます。  ただ、一方で依然として医療費の増高も続いておりまして、国保の安定的な運営を確保していくためには医療費の増に見合った適切な保険料引き上げを図っていく必要があると考えておりまして、したがって千七百円というのは負担の緩和と申しますか、引き上げ幅がその程度少なくて済むんではないか、このように考えているわけでございます。
  114. 中西珠子

    ○中西珠子君 引き上げ幅が少なくなるということで、全然引き下げにはならないわけですね。  保険料を引き下げてはいけないという通達を最近お出しになっているそうですけれども、本当ですか。
  115. 下村健

    政府委員下村健君) 医療保険は短期保険ということになっておりますけれども、実際には保険料の上げ下げというのはある程度先のことも考えて保険料水準というものを設定した方がよかろうというふうな考え方をとっているわけでございます。  そのような観点から、六十三年度につきましては、一千億円というふうな補正予算の財政影響も出てくるというふうなところもありまして一時的に相当な財政的な余裕が出てくるところも予想されますので、そういった一時的な事情のみで判断をしないで長期的な見通しのもとに保険の運営を考えるべきだということを申してあるわけでございます。
  116. 中西珠子

    ○中西珠子君 国民健康保険国民皆保険の根幹をなしているわけですね。それで四千五百二十九万人に上る被保険者というものを擁しているわけです。  この国民健康保険の保険料が、一番高くて、年年増加して所得の伸びを上回っているということは大問題だと思うんですね。昭和五十三年を一〇〇とすると、六十年は、一世帯当たりの必要経費を除いた平均所得は一三五になっている。一世帯当たりの保険料は一六七となっているわけですね。  それで、とにかく何とかこの保険料を少し伸び率を抑える、少なくとも下げるということに今度の保険基盤安定制度でなるのかなと思ったんですけれども、今の御答弁だと長期的な見地から慎重にやるようにというふうなお考えでまたそのような通達をお出しになっているということで、せっかく地方負担を新たに都道府県などは導入されたわけですから少しこの保険料の負担というのが軽くなるということを大いに期待しているわけですけれども、なかなかそれも実現しそうもないということだそうですが、保険料の収納率も国民健康保険は悪いわけですね。  これは、どういう理由で収納率が悪いのか、また滞納金額というのはどのくらいになっているのか、また収納率を上げるためにどういう努力を厚生省がやっていらっしゃるのか、そういう問題をお聞きしたいと思います。
  117. 下村健

    政府委員下村健君) 保険料の収納率でございますが、国民健康保険は被用者保険と異なって保険料の源泉徴収ができないということになります。で、当然個別徴収ということに頼らざるを得ないというふうなことが制度的に一番大きな原因としてあろうかと思います。また、近年、都市化に伴いまして住所の異動が非常にふえてきているあるいは留守がちな単身世帯等が増加しているというふうな要因もございまして、これらが全体として収納率を低くする大きな原因になっているというふうに考えているわけでございます。  滞納額が六十一年度で千二百九十二億円ということになっております。収納率が九三・七%ということでございます。これに対しまして収納率の向上を図るために従来から保険料収納率特別対策事業というふうなものも実施いたしまして、休日とか夜間訪問等格別の収納努力を行っている市町村に対して特別な助成措置を行うということとともに、収納率の上下ということで、国庫補助金の一部、これは普通調整交付金でございますが、それの差をつける、収納率の低いところが普通調整交付金の配分が少なくなるというふうな措置を実施しておりまして、最近三年間は収納率の低下傾向に歯どめがかかるといった傾向が出ているように見受けているところでございます。まあ若干でございますが収納率がやや上がってきているという格好でございます。  今後とも、これらの措置に合わせましてまた悪質滞納者対策といった問題等も含めまして、適正な運営を行うことによりまして収納率の向上に努力をしてまいりたいと考えております。
  118. 中西珠子

    ○中西珠子君 収納率の向上のために大変御努力をなすっているということを伺いましたが、保険料と公費との、国保医療費に対しまた事務費に対して、適切な負担割合というのはどの辺にあるんでしょうか、どの辺だとお考えですか。
  119. 下村健

    政府委員下村健君) 私どもとしては、国保はいろいろな性格を持っておりますので、いろいろな構造的な要因も持っておりますので、社会保険としての基本的な機能を維持するために例えば今回の低所得者に対する措置等をやっておるわけでございますが、そういった要因に対する対策を前提といたしまして国庫負担については二分の一が社会保険という性格から見て適当ではないかと考えているわけでございます。
  120. 中西珠子

    ○中西珠子君 保険料をとにかく滞納している方もある一方、どうしても保険料が払えないという方もあって、そういう人たちに対しては保険料の軽減措置というのがあるわけですね。  その保険料軽減対策というものは何世帯ぐらいあるのか、その数と割合、そして軽減額は全体でどのくらいになっているのかということをお教えください。
  121. 下村健

    政府委員下村健君) 軽減基準につきましては、被保険者の所得の状況等を勘案いたしまして逐年引き上げを図っておりまして、その基準によりまして対象数等も動いてまいるわけでございますが、軽減世帯の割合が六十年度で二三・五%、六割軽減されているものが一七%、四割軽減が六・五%ということでございます。  世帯の実数でございますが、三百七十五万世帯でございます。
  122. 中西珠子

    ○中西珠子君 大体、保険料軽減世帯の割合というのは全世帯の四分の一近い二三・五%に上っているわけですね。  で、今のお話によりますと三百七十五万世帯ということだそうですが、この保険料軽減世帯の多い県というのはどこでしょうか。
  123. 下村健

    政府委員下村健君) 全国で軽減世帯の割合が一番大きいのは沖縄県でございまして四三%、第二位が高知県四二・七%ということになっております。
  124. 中西珠子

    ○中西珠子君 その次に多いところはどこですか。沖縄と高知の次に多いところはどこですか。
  125. 下村健

    政府委員下村健君) 鹿児島県で三九・三%ということになっております。
  126. 中西珠子

    ○中西珠子君 その次に多いのが大分なんですね。それから長崎県。大体九州が割と多いんですね。  どういう事情でしょうか。
  127. 下村健

    政府委員下村健君) 国保加入者に占める低所得者の割合がこういった諸県では多いということであると理解しております。
  128. 中西珠子

    ○中西珠子君 六割軽減世帯の中ではやはり高齢者が多かったり、無職の人が多かったり、単身で住んでいるひとり住まいが多いということを聞いていますが、どうなんでしょうか。
  129. 下村健

    政府委員下村健君) 六割軽減については御指摘のような特徴が認められるというふうに考えております。
  130. 中西珠子

    ○中西珠子君 これから高齢者がどんどんふえていく中で、そういった高齢者世帯、ひとり暮らしの世帯、全然所得のない世帯というのはどんどんふえていくのではないかと思うんですね。  それで、現在審議しております国保改正案の中で保険財政基盤安定化制度ということで都道府県、それから市町村、そして国ということで公費負担というものをお考えになっていて、それはまあ結構なんですが、結局、一番国庫の負担が減るわけで、そして地方は新たに負担がふえてくるわけです。  こういう軽減世帯というものがどんどんふえてくるとこれは大変なことになって、これは本会議のときにもちょっとお聞きしましたけれども、こういう国保の構造的な問題である低所得者層というものの対策というのは保険だけでは対応ができなくなるときが来るんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
  131. 下村健

    政府委員下村健君) 低所得者についてはいろいろな議論があるいはいろんな見方があるわけでございます。その部分を保険という形でカバーし切れるのかどうかという点については国保制度発足のときから実は議論がございまして、高齢化の進行に伴って現状はさらにそれが深刻化しているというのが現状ではないかと思います。  私どもとしては、しかしながらせっかくこれまで長い間にわたって皆保険体制ということで定着してまいりましたので、保険制度という形は保っていきたい。その中で、しかしながら低所得者に対しては特別な対策を講じて、全体としての皆保険体制というものは保っていこうという考え方で今回も改革をお願いしているわけでございます。
  132. 中西珠子

    ○中西珠子君 厚生省が六十二年の十月二十八日に国保問題懇談会に提出なさいました試案の中に福祉医療制度というのがありますね。この福祉医療制度で低所得者の問題に取り組むという御提案だったと思うんですが、これが今回は保険財政基盤安定化制度、こうなったわけですけれども国保問題懇談会ではこの福祉医療制度についてはどのような議論があったんでしょうか。
  133. 下村健

    政府委員下村健君) 昨年十月に国保問題懇談会にお示しをいたした案における福祉医療制度というのは、国保の被保険者のうちの低所得者の医療給付に要する費用について低所得者の支払う保険料のほかはすべて国、都道府県、市町村の公費負担で賄う制度を創設しよう、こういうものでございます。  今回は、それはかわって保険料面から低所得者の問題に対応するということで、給付の面から対応をしようとした福祉医療制度とはその点で非常に異なっているわけでございます。ただ、低所得者の問題が国保の構造的問題という点について共通の認識は一応できたというふうに考えております。  その際の御議論としては、給付で対応するということになりますと保険制度との関連がどうなるのか、給付面で何か差別的なことが出てこないかとかあるいは将来の給付の伸びが一体どうなるかとかといったいろいろな御議論もございまして、給付面からの対応ということにつきましてはなかなか意見が一致しなかったというふうなことでございます。  したがって、今回の改正案におきましては、給付面からではなくて、現行の保険料軽減というふうな制度に着目した新しい制度をつくるということで対応するという結論になったわけでございます。
  134. 中西珠子

    ○中西珠子君 保険で対応してそして給付面の対応を主にやるということですと、保険料の方はどのようにお考えになったんですか。
  135. 下村健

    政府委員下村健君) 福祉医療制度の考え方では、給付費の二分の一を福祉医療制度の方に移して、福祉医療給付と保険給付と合わせて現行の水準を維持するというふうな考え方をとったわけでございます。  それに対して、ただいま出ましたように保険料負担の問題をどう考えるか、これは先ほどの標準保険料というふうな議論とも絡みまして、さらに今後議論すべき問題点もあるというふうなこともございまして今回のような結論になったということでございます。
  136. 中西珠子

    ○中西珠子君 まあこれは研究課題ですね。  今回の国民健康保険法の改正案に関連いたしまして、初めは地方からの反対が非常にあったわけですね。例えば六十二年の予算編成のときに、財政当局が現在の国庫負担のうちの一部について都道府県に肩がわりをしてもらいたいという申し入れをされて、都道府県の側から国の負担の肩がわりはのめないという強い反対運動が起きたと聞いております。その後、国保問題懇談会などが設置されたりしたのですが、国保制度というのは国民皆保険のもとにおける国の制度として基本的には国の責任において運営が行われるものだと理解しているのですが、今回の改正案でいわば地方負担の強化、そして地方交付税の特例加算をなさっているから地方への負担の転嫁ではないということをおっしゃって、地方負担強化はちゃんと埋め合わせをしているとおっしゃっておりますけれども、こういった地方負担全額補てんというふうな形のやり方がいつまでも続けられるものであるかどうか、大蔵省おいでになっていたら御答弁願いたいと思います。
  137. 中島義雄

    説明員(中島義雄君) ことしの御提案さしていただいております案は、六十三年度及び六十四年度の方式として私どもとしては考えているものでございます。  こういった新しい制度の運用状況等を見ながらまたなお幅広い検討を踏まえまして、六十五年度において国保制度のあり方についてなお検討を重ねてまいりたいということでございまして、その後においてどのような制度とするかについては現段階ではまだ申し上げる段階ではございませんのでお許しいただきたいと思います。
  138. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、自治省にお伺いしたいと思うんですが、自治省おいでになっておりますか。——今回の国民健康保険法改正案に関連して都道府県などの財政負担の導入をするということが伝えられましたときに全国知事会、全国町村会などからも反対運動が起きました。その反対の主な理由は何であったのか、自治省としてはどのような認識のもとに厚生省や大蔵省と話し合いをなすったのか、お聞かせいただけますか。  私のところにも反対の陳情が来まして書類など持っているわけでございますが、ちょっとその間の事情をお聞かせいただきたいと思います。
  139. 嶋津昭

    説明員(嶋津昭君) お答えいたします。  十月二十八日に国保問題懇談会におきまして厚生省がたたき台、試案を提示されたわけでございますが、その内容は、一定の幅を持って提案されたわけでございますので区々に別かれておりますけれども地方団体の受けとめ側といたしますと、おおよそ三千億円ほど地方団体の負担がふえる、二千億ほど国庫負担が削減されて結果的に一千億ほどが国保会計の中でプラスになる、金額的に申しますとそういうようなたたき台であったわけでございます。  そういう点につきまして都道府県の立場といたしますと、今委員指摘のように、六十二年度の予算編成の経緯も踏まえまして、都道府県は国保の運営指導に当たっているわけでございますが、財政負担的にはこれは一切していないわけでございますが、そういうものを都道府県が財政負担をする、その結果、その分につきまして国庫負担が削減されるということでは、肩がわりということでもって国保の経営に前向きの案ではないのではないかという反発が一番強かったように考えております。    〔委員長退席、理事曽根田郁夫君着席〕  一方、市町村あるいは保険者のお立場といたしますと、一つは、地域差調整システムという御提案がございましたが、医療費というものを保険者なり市町村としてコントロールする力を持っていない、しかし結果的に財政負担なりをしなくちゃいけないという点についての市町村長さんなりあるいは保険者のサイドからの疑問が非常に強かったように考えております。  さらにもう一点といたしますと、制度改正をいたしました退職者医療制度導入の際の見込み違いと申しますか計算違いにより国保会計に非常に大きな穴があいておる、そのことにより五十年代終わりから六十年代にかけて国保会計が非常に悪くなったわけでございますので、今回の制度改正に当たってはまずその点についてそれを回復していただくことが必要じゃないかというような御意見が強かったように考えております。  それぞれの立場の御意見につきまして、たたき台が出された直後、六団体で集まりまして意見交換をいたしまして、基本的には、その懇談会の場に知事会の代表あるいは市長会、町村会の代表の方が参加しておられますので、それらの方々を通じて懇談会の場において議論として反映されているというふうに考えております。
  140. 中西珠子

    ○中西珠子君 今自治省のお話しになりましたような反対運動があって、いろいろ地方自治団体の方の言い分というものもわかるような気がするんでございますけれども、結局、自治省としては、初めは相当抵抗なさいましたけれども、自治大臣、大蔵大臣、厚生大臣の三者会談で「国保制度の見直しについて」という三大臣の合意事項ができたわけですね。  その合意事項ができましたのに当たりましては、合意された最大の理由というのはどういうことですか。やはり地方財政の負担をなくして何とか補てんしてやるという点なんでしょうか。
  141. 嶋津昭

    説明員(嶋津昭君) 先ほど委員も御指摘なされましたように、やはり、国保制度は国の保険制度でございまして、国民皆保険というものをもとに国の制度として行われているものでございますので、国の負担と保険料負担において賄われるものでは基本的にその根幹は維持されなくちゃいけないというふうに考えているわけでございます。  しかし、都道府県も、地域行政を担当しております。市町村長さんも、いわば国保保険者としてではなくて地域の保健を担当しているわけでございますので、住民の医療水準の維持、向上ということについて非常に御腐心されているわけでございます。そういうことから考えますと、国保会計が医療費の増高等が主因として非常に苦しい危機的な状況にあるという認識は、市町村長さん、都道府県知事さんも基本的な認識は同じではなかろうかと考えております。  そういう状況に対してやはり地域行政として何らかの寄与をすることが必要ではないかという認識は、都道府県の知事さんなりあるいは都道府県のそういう担当の部局の方の意見としてもあったわけでございまして、そういう点で今回の改革は、六十三年度、六十四年度におきますところの暫定措置でございますので、試行という意味ではないかと考えております。そういう立場で都道府県も国保の経営のための環境整備に協力をすることができるのではないか、例えば保険基盤安定制度は保険料軽減補助制度でございますが、そういうものを通じて国保の低所得者が多いところにも外部から財源を入れることによりまして保険を自立させる方向、プラスの方向で働くんではないか、将来はそういうものが標準的な保険料というようなものをつくっていく一つの筋道になっていくのではないか、こういうふうな点も勘案いたしまして都道府県あるいは市町村方々の今回の結論につきましては大方の御理解が得られているところだと考えております。
  142. 中西珠子

    ○中西珠子君 今おっしゃったところはよくわかったんですけれども、例えば、今度の国保改正案の中に、医療費適正化プログラムというのがありますね。  地域については、医療費が非常に高いところを指定市町村にして、そして安定化計画をつくらせる。それからまた、それでもまだ医療費がなかなか適正化されないところは一種のペナルティーを課したように、一定部分というのは後から聞こうと思っているんですけれども、国と都道府県と市町村で六分の一ずつ負担することにするというふうなそういうやり方をしていくわけですが、医療費の適正化について都道府県、市町村、それぞれ役割が違います。実際には適正化に有効な手段とか権限というものを与えられていない地方団体というものが、果たして直接的に医療費適正化に対応ができて、医療費の抑制ができるのかという点について私は疑問に思っているし、またこの地方自治確立対策協議会なんかも非常に疑問は思っているわけですが、自治省としてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  143. 嶋津昭

    説明員(嶋津昭君) 医療費の適正化につきましては、厚生省の方でも従来からいろいろと御努力をしていただいているわけでございます。  しかし、最近の情勢として保険における医療費、特に国民健康保険医療費が他の医療保険制度と比較してもやや高く推移している、それを何とかしなくちゃいけない、保険者なり市町村長さんの立場といたしますとそれが直接に保険料負担に響くという意味で大変切実な問題なわけでございますので、何とかしなくちゃいけないという気持ちを持っているわけでございますが、医療費対策の中で市町村としても何とも手が出ないという部分もございますし、あるいは保険経営というサイドから住民を啓発するあるいは被保険者の方にいろいろと御協力をしていただくというような面で医療費対策ができる部分もありますし、あるいは都道府県が国保経営の指導をするという立場で保険の取り扱っておりますところの療養機関に対する指導をする権限があるわけでございますので、そういうことを通じて医療費の適正化の方向で協力をすることは可能ではないか。  しかし、これも、厚生省、大蔵省、自治省と三省の間でも十分議論をしたわけでございますけれども、やはり医療費の適正化は、もちろん医療費制度の根幹を担っておりますところの国、厚生省において検討されあるいは推進されることがまず第一のことになるんではないかと思いますが、それに県と市町村がそれぞれ協力をし合って、保険経営の安定化に向けての医療費の適正化という方向で、国保経営をよくする方向で協力していくことはできるんではないか。その国、県、市町村の協力という点が今度の安定化対策の根幹でございますので、そういう点を踏まえて制度改正がなされていくというふうに考えておりますので、都道府県、市町村もそれなりに今後医療費の適正化の方向で努力をしていくことはできるんではないかと考えております。
  144. 中西珠子

    ○中西珠子君 都道府県、市町村、それぞれが安定化のため、医療費の抑制のために協力していく、適正化のために協力していくということだそうで結構でございますが、果たしてうまくいくかどうかですね。  今、赤字市町村の数はどのくらいありますか。国保をやっている市町村で赤字のところ、赤字保険者ですね。
  145. 下村健

    政府委員下村健君) 実質収支の赤字市町村数でありますが、昭和六十年度が四百四十六、全保険者の一三・六%でございます。それから昭和六十一年度は三百三十七、全保険者の一〇・三%ということでございます。
  146. 中西珠子

    ○中西珠子君 赤字保険者が多い地域というのはどこでしょうか。
  147. 下村健

    政府委員下村健君) 比較的医療費の高いと言われている地域に多く分布しているわけでございますが、北海道、大阪府、京都府といった地域に比較的赤字保険者が多いわけでございます。
  148. 中西珠子

    ○中西珠子君 医療費適正化ということが大きな問題になっておりまして、この改正案につきましても医療費適正化のためのいろいろな仕組みをお考えになっているわけでございますが、医療費というのは非常に地域差があるらしいですね。    〔理事曽根田郁夫君退席、委員長着席〕  高医療費県というのは北海道、高知、熊本などというところらしいですけれども、その高額医療費の要因分析というのはなすっておりますか。
  149. 下村健

    政府委員下村健君) ただいま申しましたように、地域差の状況、実績数値は、そのまま見ますと、一番高い県が広島、それから北海道、その他山口、高知、富山、徳島、京都というふうなことで比較的西の方が多い。それから、低い県は沖縄、千葉、埼玉、栃木といったふうな格好になっているわけでございます。  これの原因といたしましては、さまざまな社会的、経済的な要因が絡み合って決まってくるというふうに見ておりましてなかなか単純に割り切れない側面がございますが、私どもとしては、一つは、やはり病床数等の医療供給の量にばらつきがあるということが何といってもあろうかと思います。そのほかに、はっきりしている問題といたしましては、人口の年齢構成の相違、それから住民の生活習慣あるいは健康に対する意識あるいは受診のパターンと申しますか受診行動の差、それから住民に対するヘルスの関係の事業状況でありますとかあるいは医療機関側の診療パターンに差があるんではないかといったいろいろな要因が考えられるというふうに思っております。
  150. 中西珠子

    ○中西珠子君 厚生省があちらこちらで説明なさっている資料などを拝見いたしますと、どうも高額医療費のところは病床数が非常に多くて、それで入院患者、殊に老人長期入院患者が多い、それでとにかく過剰な病床数は規制していかなきゃいけない、そういうふうなことをおっしゃっているんですが、本当に入院の必要な人が入るのではなくて、病床数が多いからどうしても入ってしまうという入院の度数、それから入院の期間、それから病床数の間には非常に相関関係があるから、とにかくベッド数を規制しなければならないと受け取られるような御発言というか、御説明があちらこちらにうかがわれるわけなんですが、その点はどうなんでしょうか。
  151. 下村健

    政府委員下村健君) 確かに、入院医療費との関連で申しますと、病床数が非常に大きな相関度を持っているわけでございます。  しかも、病床数が多いところが在院日数も長いというふうな関係もございまして、私ども、現在の状況を見ておりますと、社会的入院ということについてははっきりした定義があるわけではありませんのでなかなか難しゅうございますが、医療関係者自身のアンケート調査のようなもので見ましても、一割ぐらいはいるんじゃないかとか二割ぐらいはあるとかいうふうなこともありまして、実態といたしまして現在老人をかなり病院が受け入れているあるいは受け入れざるを得ないというふうな状況もあるということは事実ではないか。一方、現在病院に入っております老人のかなりの者は一般病院に入っているわけですから、一般病院老人のそういったふうな需要に応ずる施設として果たして最もふさわしいかどうかという点についても私どもは疑問を持っているわけでございます。  したがって、病床の規制といったことも当然必要とは考えますが、在宅対策の普及でありますとかあるいはその他の適切な施設整備でありますとか、そういった老人に対する適切な処遇のためのシステムをつくっていくというふうなこととあわせて統合的に取り組んでいく必要があるものと考えているわけでございます。
  152. 中西珠子

    ○中西珠子君 施設整備在宅対策の拡充というふうにおっしゃいましたけれども、まだ老人保健施設も緒についたばかりで十分な数はないし、それから特別養護老人ホーム、これはもう長いウエーティングリストがあってなかなか入れない。そしてまた、在宅対策も、ことしは非常にたくさん予算をふやした、非常に緊急な財政のもとでふやしたとお考えでしょうけれども、絶対に必要な数というものを考えるとまだまだ非常に少ないわけですね。  それで、私も本会議で申しましたけれども、警察庁の発表によると、昨年度の自殺者の中で六十五歳以上の人が四分の一を占めており、そしてその中で病苦というものを原因とするもしくは動機とする自殺者というのは七五%を占めているわけですね。四人のうち三人が病気でもうどうしようもないということで自分の手で自分の命を終えるというふうなそういう現象が出ているわけでございますから、やはり、老人対策というものは、老人医療費が余りかかってしまうからという面だけで病床の規制をうんと考えたり何かなさるということじゃなくて、もちろん病床の地域格差の是正というものは大事でございますけれども老人はあと三カ月たつと病院から出される、それで出されてしまったら行き場がないというふうなそういう状況というものはなくしていただかなきゃならないし、また病院に入る必要のない人は、老人施設をもっとふやしていただいて、そして必要な融資なり補助金などを与えて本当に質のよい老人保健施設をつくっていただく、また特別養護老人ホームもふやしていただくということ、それから在宅介護に対する社会サービスというものも拡充していただきたい。  そういう総合的な施策をとっていただきたいと思うんでございますが、大臣はいかがでいらっしゃいましょうか。
  153. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘の点につきましては私も同感でございまして、そのような考え方で対応したいと考えております。
  154. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうぞよろしくお願い申し上げます。  それで、高額医療費の適正化に関しまして、現行法のもとでは医療費適正化へのインセンティブがないと厚生省はおっしゃっているんですね。それで、高額医療費をいつまでも続けているようなところは指定市町村ということにして厚生大臣が指定なさるということになっているのですが、いつごろその指定基準を発表されまして、そして指定はいつごろなさるのですか。  また、予想としては指定市町村はどのくらいの数、割合になるのでしょうか、お伺いします。
  155. 下村健

    政府委員下村健君) 具体的な指定基準につきましては、政令で定めるということになっておりまして、現在鋭意検討しているところでございますが、法律の施行に遅滞がないよう速やかに決定したいと考えているわけでございます。  この指定基準に基づきまして、今後、こういった制度ができてまいりますと、毎年度、年度の始まる前に指定市町村を指定することを考えておりますが、本年度は、現在改正法案を御審議いただいているところでございますので改正法成立後にできるだけ早く指定をするという段取りをとってまいりたいと考えております。  その数でございますが、現段階で確定的なことを申し上げることはなかなか困難でございますけれども、現時点で考えております状況からいたしますと、指定市町村数としてはおおむね全市町村の五%くらい、百五十程度の保険者を指定するということになろうかと考えております。
  156. 中西珠子

    ○中西珠子君 指定基準は政令事項だからまだわからないということだそうでございますが、大体どういうことをお考えになっているか、厚生省考え方というのはあるんでしょう。
  157. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費の額がいずれにせよ問題になるわけでございますが、根っこになります医療費基準といたしましては、平均値に一定の幅を見込む、標準偏差等をもとにいたしまして大体二割前後の幅を見込んではどうかというふうなことを考えておるわけでございます。  それで、それを超えるものからさらに地域的事情による特別な要因というようなものを除外していきたい。地域的な特別な要因といたしましては、災害に起因する疾病の医療費、それから例えば腎透析のような高額医療費患者が多発したというふうな場合、それから診療報酬の面で例えば北海道には療養担当手当というふうなものがついておりますが、そういったものは除外する、それから原爆被爆者等も考慮に入れる、それから病床、これは先ほど供給体制の面が医療費の高低に相当影響していると申し上げたわけでありますが、これは直ちに是正できるという性格のものでありませんので、病床数の状況についても一定の考慮を払うというふうなことで考えてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  大体、以上のような要素を盛り込みまして指定基準をつくりたいというふうに考えております。
  158. 中西珠子

    ○中西珠子君 じゃ、今のは指定基準ということですね。  それから、その指定市町村の中で給付費などが基準を超える場合、その基準を超える著しく高い給付費の一定部分、これは二割ぐらいを考えていらっしゃるわけですか。
  159. 下村健

    政府委員下村健君) ただいまの二割ということにつきましてある程度幅を見まして二割より低い水準で指定をする、共同費用負担に結びつく場合には大体二割程度が一つの目安になろうか、このように考えております。
  160. 中西珠子

    ○中西珠子君 その著しく多い給付費の一定部分について都道府県、市町村が六分の一ずつ共同負担する、こういうことですね。  その一定部分というのは二割ですかとお聞きしているんです。
  161. 下村健

    政府委員下村健君) 二割を超えるものから地域的な要因によってこれはやむを得ないと考えるものをさらに除外いたしまして、さらに最終的に市町村が負担をすることができる状況につきましては費用負担の面での限界というものも配慮をいたして費用負担額は最終的に決めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  162. 中西珠子

    ○中西珠子君 共同負担することになる可能性が非常に強い市町村というのはどのくらいありますか。これは推定になりますが。
  163. 下村健

    政府委員下村健君) お話しのように、確定的な数値はなかなか申し上げられませんが、指定市町村が先ほど大体百五十と申し上げましたが、そのうち百二十程度かというふうに考えております。
  164. 中西珠子

    ○中西珠子君 これは推定でございますが、百五十の中の百二十というと大分多いですね。この安定化計画というのをつくらしてそして一生懸命努力をさせて、そして適正化の努力が足りないというところは結局共同負担ということになるわけですが、指定市町村の百五十の中で百二十というのは相当大きいですね。  額としては大体どのぐらいになるんでしょうか、ざっと大ざっぱなところ。
  165. 下村健

    政府委員下村健君) これも大体その程度のオーダーということで御理解いただきたいと思うわけでございますが、十億あるいは二十億というふうなオーダーになろうかと思います。
  166. 中西珠子

    ○中西珠子君 総額で十億から二十億ということですね。
  167. 下村健

    政府委員下村健君) 市町村負担だけに限りまして、大体その程度の金額ということになろうかと考えております。
  168. 中西珠子

    ○中西珠子君 老人医療費の増加というものを何とか抑制したいということで、いろいろ厚生省はやっていらっしゃるということを伺っておりますが、長期入院者の家庭復帰等促進モデル事業というのを昨年からなすっていますね。  ことしもなさる御予定ですか。この内容と実施地域につきまして、そしてどのような成果が上がっているかということにつきましてお話ししていただきたいと思います。
  169. 下村健

    政府委員下村健君) 長期入院者の家庭復帰等促進モデル事業でございますが、これは長期入院患者のうち退院が可能と見られる者についてのケーススタディーを通じて家庭復帰や老人保健施設あるいは老人福祉施設への入所等の推進を図る上での問題点や受け入れ基盤の整備等の対策の検討に資することを目的としておるわけでございます。  実施主体は国保連合会及び市町村保険者としての市町村ということでございます。  市町村保険者は、該当者の家庭に保健婦等を派遣し、在宅療養についての理解を求めるとともに、家庭復帰施設への入所等について指導助言を行う、あるいは家庭復帰等をした者に対し在宅ケア指導助言を行うため定期的に保健婦等を派遣するということを考えているわけでございます。  国保連合会は、このための検討委員会のようなものを設置いたしまして、個別の事例につきまして市町村保険者からの相談に応じ助言を行うあるいは個別の事例についての問題点を協議するあるいは受け入れ基盤の整備等の対策の検討を行うというふうなことを考えているわけでございます。  六十二年度におきましては全国で八つの国保連合会が実施しておりまして、現在、その実施結果につきまして取りまとめを行っている段階でございます。  六十四年度以降の本事業の取り扱いにつきましては、これまでの実施状況等を踏まえながら検討してまいりたいと考えておりますが、安定化計画との関連ということも踏まえて考えてまいるということになろうかと思います。
  170. 中西珠子

    ○中西珠子君 全国で八つの地域で実施しているとおっしゃいましたが、これはみんな高額医療費の地域ですか。大体そういうことになるのでしょうか。
  171. 下村健

    政府委員下村健君) 大体そのような地域というふうに御理解いただいて結構ではないかと思います。
  172. 中西珠子

    ○中西珠子君 安定化計画との関連というふうなことを今おっしゃいましたけれども安定化計画をつくってそして医療費適正化というものを図る場合に、やはり長期入院老人というものは減らしていく、家庭に帰らしてそして医療費を抑制するというふうなことになりがちだと思うんです。  結局、長期入院老人病院から出すということになるし、また安定化計画のために医療費を削減するということになりますと医療内容の低下をもたらすというふうな心配があるわけですが、この点はどうでしょうか。
  173. 下村健

    政府委員下村健君) 私どもとしては、施設に入る老人の数は全体としての高齢化が進んでいく中で実数として減るかどうかというところは、実数として減るということはなかなかないんでやはり総数としてどうしてもふえてまいるだろうと思います。  ただ、現在の状況からしますと、現在施設に入っておられる方がそのままの形でいいのかどうか、あるいは、日本の場合は病院に非常に偏って入っているという形があるわけでございます。これは全体としての施設整備といった問題あるいは在宅療養のための体制づくりといった問題と関連してくるわけでございますが、私どもとしては、そういったものの整備とあわせて、老人に対してそれぞれの老人状況に適したそれにふさわしい処遇が与えられるようなことを考えてまいりたい、それによって医療自体の適正化ということに資するのではないかと、このように考えているわけでございます。
  174. 中西珠子

    ○中西珠子君 国民医療費は、厚生省の推計によりますと、六十三年度は対前年比五・二%上昇ということだそうですね。国民所得の伸び率は四・六%と見込まれているわけです。  そうすると、国民医療費の伸び率を国民所得の伸び率の範囲に抑えるという政府の政策目標というのはここ三年間ずっと達成できないということになるわけでございますが、どうしても国民医療費の伸び率は国民所得の伸び率の範囲におさめたい、おさめねばならないとお考えなのでしょうか。
  175. 下村健

    政府委員下村健君) 高齢化の進行というふうな状況の中での医療費でございますから、長期的に考え国民所得の伸びの範囲内に医療費をおさめていけるかどうか、この点についてはさらに検討の余地があろうかと思います。  ただ、私どもといたしましては、国民負担のこれからの状況等を考えますと、当面の努力目標ということでは国民所得の範囲内におさめていくことが必要ではないか。現在の医療状況を見ますと、まだまだいろいろな問題点指摘されているような状況でございますので、私どもとしては、当面国民所得の範囲内におさめるということでできる限りの努力をしていくことが必要ではないかと、このように考えているわけでございます。
  176. 中西珠子

    ○中西珠子君 国民所得は、景気変動の影響とかまた経済情勢に非常に左右されるわけですね。一方、医療費は、人口の高齢化、高齢者の増加、それから医療技術の高度化、そういったものに影響を非常に受けるわけですね。ですから、国民所得と医療費の伸びというのを同列に考えてそしてそれを政策目標とするということは、ちょっと無理があるのではないか、また合理的ではないのではないかと思うのです。  長期的に見ればそれは必ずしもどこまでも固執するものではないというふうなことをおっしゃいましたけれども、短期的には医療費の伸びを抑えるという意味の努力目標と、こういうことですか。
  177. 下村健

    政府委員下村健君) 医療現状をどう見るかというふうなものとも結びついてくるわけでございますが、いろいろな改革でありますとか診療報酬の合理化といったことを通じて、当面国民所得の範囲内におさめていこうというのが努力目標だと、こう申し上げたわけでございます。  ただ、おっしゃるように、医療費国民所得というのは、それぞれ一応は別個のものでございますから、私どもは、単年度単年度で必ず国民所得の範囲内でなければならないかどうか、そこはちょっと違った面があるんじゃないかと思います。  ただ、傾向的に言いますと、国民所得の伸びと医療費の伸びに大きな差があるという状態が長く続きますとこれは負担の問題に必ず結びついてくるということで、当面は国民負担がかなり医療費の保険料について言いますと急増せざるを得ないというふうにも見られますので、私どもとしては、そういった努力は必要であろう、ただし、これはあくまでもただいま申しましたように負担を急増させないといった負担面からの努力目標ということですから、医療自体が果たしてその範囲内で長期的に賄えるかどうかということになればこれはまた別個の見方も出てくるかもしれないと、このように申し上げたわけであります。
  178. 中西珠子

    ○中西珠子君 昭和六十三年度の国民医療費の推計は十八兆九千六百億円、十九兆の大台に乗るということですし、医療費の適正化対策というのは大きな課題ではあるわけでございます。  厚生省も一生懸命努力はしていらっしゃると思うんですけれども、レセプトの審査の強化とか不正請求や過剰請求を是正するとかいろいろやらなけりゃならないこともあるし、今回の改正法案の中でいろいろの仕組みもお考えになっていることですけれども、基本的には、結局国民が健康を保持し、そしてなるたけ病気にならないようにするということが大事なんだと思うんですね。それでまた、早期発見早期治療というふうなことが大事ですし、病気になれば早く治療して早く社会復帰が図れるようにする。予防からリハビリに至る総合的な保健医療事業ということをなさっていただくのが不可欠だと思うのです。  これを今まで具体的にどのように実行に移していらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。
  179. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 病気の予防、それから健康を保持増進をする、これは、単に経済的な問題だけではなくて、個人にとっても大変重要な意義があるというふうに考えております。  厚生省といたしましても、先生御存じのように、老人保健法でも特にがんだとか循環器疾患等のように早期発見早期治療の可能なものについてはなるべくそういう機会を増大をしていく、さらに最近は、そういう成人病、いわゆる成人病でございますが、こういう疾病は栄養ですとか運動ですとか休養ですとかこういう日常生活のパターンも非常に影響があるということで、厚生省といたしましては、昭和五十三年度から国民の健康づくり対策ということで生涯を通ずる健康づくりの運動を進めておるところでございます。  だんだんと高齢化が進んでいくわけでございますので、昭和六十三年度からは、アクティブ80ヘルスプランということでこういう栄養、運動、休養ということについてさらに国民の関心を深めていただくために諸般の施策を展開をしていきたいと、このように考えているところでございます。
  180. 中西珠子

    ○中西珠子君 大いに疾病予防、健康保持増進策というものを推し進めていただきたいと思いますが、医療保険の問題の中でまた大変問題にされているのは医療費の支払い方法なんですね。  出来高払いとそれから定額払い、これがいろいろなことが言われておりまして、健保連あたりは、老人医療費は少なくとも漫性の病気については定額の支払い方式にするべきである、こう主張されているようでございますが、出来高払いと定額払いの長所、短所というものがあると思うんですが、厚生省はどのようにお考えなのでしょうか。
  181. 下村健

    政府委員下村健君) 現在の出来高払いの長所といたしましては、患者の病状に応じて、これは患者個人個人病気状況は違うわけでございますから、その個人個人の患者の病状に応じて医療サービスを行う、それに見合って報酬を払うというふうなことになるわけでありますから、そういった医療の特性に見合っているという側面があろうと考えられるわけであります。また、医療の進歩あるいは高度化といったものに対応いたしましていろんな技術評価をして新しいものを取り入れていくという場合も、比較的対応が容易だというふうなことが考えられるわけであります。  他方、短所といたしましては、どうしても薬の多用あるいは検査が過剰になるあるいは入院日数が長くなるといったことを誘発しやすいということが言われているわけでございます。  定額払いの長所といたしましては、総額が定額という形で抑えられているわけでありますから過剰な診療を誘発するおそれが少ない、そういう意味で一定の額の中で医療機関の効率的経営が進むというふうなことが言われているわけでありますが、他方、これは手を抜けば収益が上がるというふうなことにもなるわけですから、医療の質の低下が起こるのではないかあるいは重症患者を回避するといった問題が生じやすいのではないかという短所が挙げられるわけであります。  いずれも、そういう意味では長所もありますが短所も持っているということでございますが、厚生省としては、診療報酬については当面出来高払いの先ほど申し上げましたような欠点の是正を図る、その上でこの方式を維持して良質な医療を効率よく確保できるよう努めていきたいと考えているわけでございます。
  182. 中西珠子

    ○中西珠子君 重ねてお伺いいたしますが、老人医療費について少なくとも慢性のものは定額払いにするというお考えはないわけですね。
  183. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 今、医療費の支払い方法につきましては、保険局長から申し上げたとおりに考えているわけでございます。  老人医療費の問題をめぐりましては、いろいろの関係者からいろいろな御意見が出ているわけでございます。昭和六十五年度までに老人保健法を見直すということになっておりますので、その際にはそういういろいろな大方の御意見を伺いながら今後の方向を考えていかなければならないというふうに考えているわけでございまして、そういう中での検討事項の一つではあろうかというふうに考えております。
  184. 中西珠子

    ○中西珠子君 医療費の問題につきましては、レセプトの審査をもっともっと厳密にするとかそれから国保医療費の通知、これは非常に実施率が低いということですからもっともっと通知をやっていただきたいと思うわけですけれども、毎月通知をしている実施率は二・三%だそうですね。  この数字は確かでしょうか。
  185. 下村健

    政府委員下村健君) 六十一年度で二・九%でございます。
  186. 中西珠子

    ○中西珠子君 依然として低いですね。  もう少しやっていただきたいと思うんですけれども、これはもちろん保険者がやることでございますが、厚生省の方でももう少し指導していただけますか。
  187. 下村健

    政府委員下村健君) 確かに低い数字であると思っております。  ただ、全体として膨大な量でありますので一律にそういう形でやっていくのがいいかどうか、やり方の改善といった問題も含めて私どもとしては御指摘の方向で市町村指導してまいりたいと考えております。
  188. 中西珠子

    ○中西珠子君 今回の国保改正案によりますと、地方負担はどうしても増加するということはやはり否定できないと思うんですね、全額補てんをなすったにしても。  そして、とにかく地方の負担を増加させるということは、交付税の特例加算その他で補って全額負担ということでありますし、また六十三年、六十四年の暫定措置だということなんですが、六十五年からは恒常的なものになさるのではないでしょうかと本会議でも御質問いたしましたら、そのときになってみないとわからない、そのときに所要の措置をとりますということでございました。  くどいようでございますが、やはり国保というものは国の責任においてやるべきものである、そして地方ももちろん応分の負担も責任の遂行もやるということでございますけれども、この地方負担というのを六十五年度からも恒常的なものにするという傾向が非常に強いのではないかと思うんですけれども、重ねてお聞きいたします。
  189. 下村健

    政府委員下村健君) 私どもとしては、六十五年以降の国保制度のあり方についてはこれからまだ検討を続ける問題でございますが、国保制度の運営について地方団体の御協力とそれに応じた一定の負担がやはり有効であるというふうに考えております。  ただ、その具体的なあり方についてはどうかということにつきましては、今回の改革案の実績でありますとかいうふうなものも十分に見ながら、地方団体それから関係省庁と十分に議論を重ねてまいりたい。国保長期的安定というためには二年度だけで終わってはなりませんので、これはそういった実績等を踏まえて長期安定につながるような努力をしていくということだと考えております。
  190. 中西珠子

    ○中西珠子君 地方に負担をさせるということは、地方には権限が余り与えられていないんだから困るのだという地方自治体や何かの主張がございますね。  厚生省としては、現在、都道府県、市町村、それぞれに与えられている役割、権限というものの上にもう少し地方権限移譲をしようというお考えはないのですか。
  191. 下村健

    政府委員下村健君) 恐らく権限と言われる場合にその方の頭にあるのは、多分、診療報酬の決定権が国にあるんだ、したがって地方医療費については余り関係がないんだ、こういう感じのことが頭にあるんではないかと思うわけでございますが、診療報酬の問題については、かつて地方ごとに決定するような形もあったものを、なかなかそれでうまくいかないで国で一本にするといったような形になった経緯もございます。そういうことから考えますと、その面は一般論としてはなかなか難しいというふうに思っているわけでございます。  ただ、診療報酬の中でも、地方的に対応することが適当な問題については知事の権限にゆだねるようなシステムに現在もなっております。  それから、今後の問題といたしましては、現在も、都道府県は現行制度でいきますと医療機関に対するいろいろな監督権、指導権というふうなものも持っておりますが、さらに今回の改革案の実績等も見ながら、必要な権限については、これは厚生省としても十分考えていっていいんではないかというふうに考えております。
  192. 中西珠子

    ○中西珠子君 今厚生省としても必要な権限については考えていってもいいということをおっしゃいましたが、これはもちろん検討課題でございますし、この改正法案の中身を実施なすっていった、その暫定措置を終えた後の問題になると思いますが、この点はよく御検討をいただきたいと思います。  それで、現在、今度の改正法案で地方の負担がふえるわけですけれども、既に地方自治体の中では独自で一般会計から国保会計の中に繰り入れている市町村もあるわけでございましょう。その額は総計二千二百六十七億円にも上る、このように聞いているわけですけれども、今回の改正でさらに義務として負担がふえるということになりますとどうしてもこれまで独自でやっていた繰入額との調整を図らなくちゃいけない、はっきり言うとそっちの方を減額せざるを得ないというようなことになったりして、結果的には保険料が値上げになるというふうなことに将来ならないかという心配があるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  193. 下村健

    政府委員下村健君) 現在の市町村の一般会計からの繰入額二千二百億でございますが、その内容は、国保運営の必要に迫られていろいろやっておられるわけでございますけれども、いろいろな内容のものが含まれている。また、その繰り入れの理由についても、保険料負担の軽減のためでありますとかあるいは低所得者の保険料負担を軽減するためであるとかいろんなことを言っておられるようでございます。したがって、今回のものは制度として一般会計繰り入れを制度化するわけでありますけれども、質的に重複しているものもあるいはあるかもしれない、このように思っております。したがって、そこはこれまでの繰り入れと今回の新しい制度化されたものとの関係がどうなるかという点はもう少しこの制度改正を実行してみませんとわからない点がございます。すべてが従来の二千二百億の上に上積みになるのかどうか、これはもう少し様子を見ないとわからない、こういうことでございます。  ただ、私どもとしては、そういうことでやはり今後の問題としてはそういったいわば制度外の対応というものができるだけ少なくて済むような方向で努力をしていくべきではないか、理屈の立つものについてはまた制度面からも対応を考えていくというふうなことも必要ではないか、厚生省としてはそのように考えております。
  194. 中西珠子

    ○中西珠子君 もう時間になりましたけれども、日本の診療報酬は技術料を全然見ていないとかいろいろお医者様の側から苦情があるわけですが、薬価基準につきましても、けさ同僚議員からの質問にもありましたように、薬価基準が実勢価格と大分違うというふうな面もあるとかいろいろありましたが、近く見直しをなさる予定はありますか。最近診療報酬は見直しをなさいましたね。
  195. 下村健

    政府委員下村健君) 薬価基準につきましては、実際の取引価格を基準にいたしましてなるべく速やかにそれに対応して薬価基準改定するというのが基本的な考え方になっております。  従来は、そういう考え方から毎年薬価の見直しをやるということでやったわけでございますが、毎年の改定ということになりますとなかなか事務的にも対応が難しい、あるいは取引の実態からしますと毎年改定ということになると市場がなかなか安定しないというふうなこともございますので、昨年、中医協で御議論をいただきまして、その結論としては、二年に一回今後は薬価の改定をやろう、そのかわり従来のような部分的な改定ではなしは全面的な改定を二年に一回やっていこう、これが基本ルールになっております。  ただいまお話がありましたように、ことしはこの四月に診療報酬改定とあわせまして薬価基準改定を行いましたので、そのルールでまいりますとおおむね二年後に薬価の改定を行う、こういうことになろうかと考えております。
  196. 中西珠子

    ○中西珠子君 時間が参りましたので、私は、医療供給体制の整備をも含めまして医療保障の体制というもの、だれでもどこでもいつでも安心して医療が受けられるような体制の確立ということを心から念願いたし、また要望いたしまして質問を終わりたいと思います。  一言厚生大臣の御決意のほどを伺いまして質問を終わらせていただきます。
  197. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今後、人口の高齢化並びに医療の高度化が進んでまいるわけでございまして、それに対応した望ましい医療を供給するということは、これはまことに私どもにとりまして重要な課題だと思っておるわけでございます。  その点につきましてはいろいろ今検討すべき問題を考えておるわけでございまして、在宅医療あり方の検討であるとか老人医療ガイドラインの作成等によりまして医療の質の向上に努めるというような問題もあります。また、都道府県の医療計画の推進を通じまして地域医療のシステム化、高額機械の共同利用であるとか病院のオープン化であるとかそういうことも含めまして検討を行いまして、良質な医療供給体制の整備に努めてまいりたいと、かように考えております。
  198. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、お伺いをいたしたいと思います。  初めに、今回の国保改正案でございますが、これは単に国民健康保険を改正するというだけではなしに、関係する諸文書等の内容によりますと、今回の改正というのはずっと一連の医療体系を変えていくための一つの位置づけになっているように思うわけでございます。  そういう点で、今回の国保改正についての位置づけについてまずお伺いをしておきたいと思います。
  199. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘のとおりでございまして、将来の給付と負担の一元化を図るためにいろいろと今日まで改革を進めてきたわけでございまして、その中の一つの改革、国保長期安定を図るためにどうしても構造上の問題をこの際改革する必要がある、そういうことを考えた上での処置でございます。
  200. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 できるだけ早い機会に医療保険の一元化に向けての条件づくりだというふうにおっしゃっておるわけです。私は、この問題は大変重要なので、後で詳しくお聞きをしたいと思っているんです。  まず、国保の今回の改正案についてずばりお聞きをしたいんですが、今国民の中で、国民健康保険に対しては国保料が払えるようにもうちょっと安くしてほしい、高過ぎる、それからもう一つは、高くて払えなくて滞納したときに保険証がもらえない、こんなことはやめてほしい、もう一つは、こんなに高い保険料を掛けているのに給付が他の保険と比べて悪い、これを何とか引き上げてほしい、これが国民の中の大体共通的な要求でございます。  そこで、私は、この改正案がこの国民の要求にこたえているだろうかという立場からお尋ねをしていきたいと思うわけです。  まず、国民健康保険が今日の困難に逢着している要因についてですが、一体なぜそうなったかという点、ひとつ簡単にお尋ねをしておきたい。
  201. 下村健

    政府委員下村健君) 御指摘のように、六十年度がおよそ九百億余り、六十一年度が千二百億というふうなことで、国保財政が大変厳しい状況にあるというのは事実でございます。  その基本的な原因としては、何と申しましてもここ数年国保医療費の伸びが大変著しく、それに伴って保険給付費が大きく増加している。特に、高齢者の加入割合が高いことに加えて高齢化が進展する一方、六十二年の老健法改正までは加入者按分率が漸減する。負担の公平ということで老人保健法をつくっていただいたわけでございますが、加入者按分率の方は落ちていったわけでございます。そういったことで老人医療費の負担が非常に過重になっていたんではないか、そこら辺が国保の財政問題の基本であるというふうに考えております。
  202. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、まず一つは、年齢構成ですね。それから低所得者層が多いという問題、そういう問題があります。  年齢構成が高いというのは非常に大きい要因のわけですけれども、これはどうなっていますか。
  203. 下村健

    政府委員下村健君) 年齢構成を現状のままといたしまして医療費の比較をいたしますと、国民健康保険と他の保険との医療費の対比は大体六割増しという格好になります。国民健康保険が六割負担が大きくなるという結果になります。  で、高齢者を、老人を仮に按分率一〇〇ということにいたしまして退職者医療現状程度ということでこれを考えますと六割の差が一割以内ぐらいに縮まるということで、高齢者問題のウエートというのはそういう意味ではかなりの程度現在までに解消される道筋が立ってきていると、このように認識しているわけでございます。
  204. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 確かに医療費も他の保険と比べて高いわけですが、年齢構成を見てみますと、六十年度で組合健保の平均年齢三十・五歳ですね。それから政管健保が三十三・六歳。国保が四十一・九歳、つまり組合健保と比べまして十一・四歳被保険者の平均年齢が高い。政管と比べたら八・三歳ですね。これは随分大きな差になっておると思うんですね。  六十二年度の制度別の老人割合を見てみますと、これは逆に国保が一三・五%。これは六十二年度の推計のようですが、政管で四・四%、組合が三・三%。つまり組合の老人の割合というのが国保は約四倍になっている。それから政管が約三倍になっているんですね。これは数字が違っていたらあれですが、これはいただいている数字だと思いますからね。  こういう数値から見まして、構造的に医療費が相対的に高くなるというのは当たり前のことだと思うんですね。これはそうでしょう、医療費が相対的に高くなるのは当たり前でしょう。
  205. 下村健

    政府委員下村健君) 今のは推計値の方で、六十二年三月末の実績で申しますとちょっと違っております。大体今お話に出たような数値でございます。  老人を抜きましても実は平均年齢はかなり国保の方が高うございまして、年齢の要因が医療費に大きく影響している、これはそのとおりだろうと思います。
  206. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ですから、一人当たりの医療費は各保険ごとに非常に大きく聞きが出ているというのは先ほどちょっとお触れになりましたけれども、これは当たり前のことですが、それはどうなっていますか、若干数字が違うと言われるから、ちょっと数値を言ってみてください。
  207. 下村健

    政府委員下村健君) 実績で申しますと、六十二年三月末の老人割合は、国民健康保険が一三・六%、政管四・四%、組合二・九%、共済組合三・九%でございます。  なお、七十歳以上を除いた七十歳未満の平均年齢で申しますと、国民健康保険が三十七・五歳、政府管掌健康保険が三十一・六歳、組合が二十九・三歳ということで、七十歳未満の層だけをとりましてもかなりの年齢の差があるということでございます。  医療費の格差を年齢だけですべて一〇〇%説明し切れるかどうか、この辺はさらに私どもとしても検討してみたいと思いますが、年齢が現在の医療費格差のかなりの部分を説明する要因になるというふうには考えておるわけでございます。
  208. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私が聞いていることを答えてくださらないで、訂正をしてくれたですな。  私、今申し上げたのは、だから一人当たりの医療費が各保険ごとにどうなっているかということを今申し上げたんです。
  209. 下村健

    政府委員下村健君) 大変失礼をいたしました。  一人当たりの診療費、六十年度でございますが、国民健康保険が十五万五百円、政府管掌健康保険が十万六千七百円、組合が八万三千四百円、総体の平均が十万七千七百円。老人医療費を抜きますと、国民健康保険が十万三千三百円、政府管掌健康保険が八万九千四百円、組合が七万二千二百円、平均が八万九千五百円ということになります。
  210. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ですから、国保というのは構成員の平均年齢というふうなことから見ましても相対的に医療費が高くなるという構造的な要因というのがやはりあるんではないかという点が一つだと思うんですね。  それからもう一つは、国保財政を困難にしている問題として、国保の被保険者の中には低所得者が多い、これが一つの問題ですね。  で、これは六十年度所得で百万円以下の人、二百万円以下の人、三百万以下の人を階層でどういうふうに分布されているか、これはいかがですか。
  211. 下村健

    政府委員下村健君) 階層別の国民健康保険の加入者でございますが、六十年度でございます。所得なしが一六%、五十万までが一二・七%、五十万から百万が一六・一%、百万から二百万が二七・五%、二百万から三百万が一三%、三百万以上が一四・七%、このような構成になっております。
  212. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 今おっしゃったとおりで、二百万円以下の方、被保険者が全体の七二・三%になりますね。年所得百万といえば収入で約百七十万程度ですね。その百万以下の方々が四四%。所得二百万円といえば収入で言うと約三百万余り、三百十九万ぐらいでしょうか、この人たち収入なしまでを含めたらそれで七二・三%もいるわけですから、構造的に国民保険というのは大変困難だという点は明らかでございまして、これは何にも国民責任でも何でもないですね。  この国民保険という制度の仕組み自体がそういう困難な要因を抱えているという点が明らかだと思うんですが、そういうふうに見ていいですね。
  213. 下村健

    政府委員下村健君) 地域保険ということでありますから国民健康保険は他の保険に加入した残りの者はすべて加入させる、これが原則になっておりますのでそういった性格からしますと低所得者が多く国保に加入することになる、これは制度的なある意味では必然的な結果でございます。
  214. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そういう構造的な状況がある上に、所得が低いのに保険料が高いという問題が今国民の中で大問題になっています。  私、大阪の幾つかの具体例を調べてみたんです。例えば、大阪府の八尾市といったら保険料の恐らく一番安い方のランクだと思うんですけれども、六十二年度の限度額が三十二万円です。四人家族の所得百万円の方の保険料が十五万四千四百円、百二十万の方の保険料が十七万三千円、百八十万の方が二十三万六千五百円、二百四十万の方で二十九万九千五百八十円と、それぞれ所得に対する保険料の率というのは百万からいいますと一五・四%、一四・四%、一三・一%、一二・四%とすべて所得の一〇%以上の保険料になっています。しかも、低所得者ほどその負担率は高くなっている。その上に、これらの御家庭でどうしても払わなきゃならない社会保障関係費といえば国民年金なんですね。国民年金は、今、一人月七千七百円でございますね。ですから年間九万二千四百円、御夫婦で十八万四千八百円です。ですから、これは払いにくい限度を超えているというのは当たり前のことだと思うんですね。  それからもう一つは、これは大阪の高い方の実例で門真市というところを調べてみました。ここでは所得が五十万円台までのものは三二・五%、百万円台までのものが四三・八%。保険料は標準四人世帯で所得五十万円の人で月額一万四千円、だから一年間十六万八千円ですね。所得に対する負担率は驚くなかれ三三・六%です。所得百万円に対しての保険料は月額一万九千円、ですから年額二十二万八千円。これでも所得の二二・八%の負担率になるわけですから、これは限度を超えていると思うんですね。  時間の都合もありますから少し急ぎますけれども、例えば門真市が大阪でも高い方だということを私申し上げましたが、保険財政が困難でこういうふうになっているわけですね。  これは具体的に少し申し上げておきたいんですが、門真市で四人世帯、五十九年度は限度額が二十八万円でございました。そのときの限度額を払う人の最低所得は、給与所得者で三百四十二万三百六十円以上の者、これは二十八万円、事業所得者では三百二万二千三百六十円ですね。被保険者、全体の中で最高限度額を払っている世帯はどれだけおったかというと一四・四%でした。ところが、六十三年度がどのように変化をしたかといいますと、限度額が三十七万円、その場合に給与所得者でこの限度額いっぱいの保険料を払う人の所得が幾らかというと、これは給与所得者が二百二十四万百八十円以上の人、事業所得者では二百二十万百八十円以上。しかも、最高限度額を払っている人の率は被保険者全体の何と二五・六%、つまり四世帯に一世帯は最高限度額なんです。五十九年から六十三年までですから、五年間で限度額が九万円上がった。その上に限度額の対象者は一四・四%から二五・六%、対象の全世帯の四世帯に一世帯ですね、二五%。これはひどいです。ちなみに門真市の生活保護費を調べてみたんです。門真というのは一級地でございますが、四人世帯で年二百三十四万円。そうなってくると、所得が二百二十二万円ですから可処分所得はもうちょっとあるでしょうから、この二百三十四万円という生活保護水準よりもちょっと高かったら限度額いっぱいの保険料を払うということになるんですよね。ですから、それは保険料の負担は大変なんです。  何とか値下げをしてほしいというふうに要求されるのは当然だと思うんですけれども、どう思われますか。
  215. 下村健

    政府委員下村健君) 国保の保険料負担がなかなか厳しい状況になっているというのはお話しのとおりだろうと思います。  現在、国としては二分の一の国庫負担をやりまして、医療費と所得が同じ水準であれば同じような保険料になるというふうな財政調整をやっておるわけでございます。したがって、非常に高い負担が出るというところは相対的に言うと医療費が高くて所得の方が余り高くないといった地域がどうしても保険料負担が高いという結果が出てまいると思います。  そこで、私どもとしては、低所得者の問題は、今回の対策の中では一応国民健康保険制度の枠内でありますけれども、保険基盤安定制度という形で低所得者に対する助成措置というものを、従来の国保制度を支えるような形で基盤安定制度というものをつくって、そのかわり全体としての国民健康保険制度は社会保険としての形を保っていこう、そういった形で皆保険体制を維持しようというふうに考えたわけでございます。低所得者に対する対策あるいは保険料軽減の対策としてはいろいろあろうかと思いますが、私どもとしては低所得者に直接対応する形としてはそれを考えている。  それからもう一つは、そういった高い保険料負担が生じている地域というのは医療費の高い地域でありますので、高い医療費についての取り組みというものをもう一遍考え直してみようということで安定化計画というふうな形で高医療費に対する対策を一方であわせてお願いしているわけでございます。  国保問題はなかなか難しい問題が多うございますので一挙に解決とはまいりませんが、私どもとしては、国保制度を保険制度として残すということであればそういった二つの方向で考えていくというのが基本であろうというふうに考えているわけでございます。
  216. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、保険料が高くて払いにくい、何とか値下げをしてほしいというこの国民の要求、これをどう感じますかと言うんですよ。たくさん難しいことを言うてもらわぬでもいいんです。  だって、生活保護水準よりちょっと収入が多かったら被保険者の四分の一以上がみんな最高限度額だというところまで来ている、だからこういうのは確かに高いな、何とかしなくちゃいけないなと思わないですか。そんなもの何とか格好つけますと言うけれども、今度の制度で保険料が下がるということにはならぬと言ってさっきも同僚議員に対して説明しておったじゃないですか。こんなものをそのままやったら、だから保険料はいや応なしに滞納が起こるんですよ。この上に、さっきも言いましたように、国民健康保険料でしょう、年間約十八万五千円プラスして払わにゃならぬですね。三十七万に十八万、五十五万でしょう。所得が二百二十二万、だからせいぜい三百万足らずの中でちょっと多いだけですから、二百三十四万より国保と年金で五十五万払わにゃいかぬですね。それは、商売していて金がなくて滞納するときが起こってきますわ。  このごろの国民の意識というのは、病気になったときに保険がなかったら困るということで、一番大事に思っているのは保険料の支払いですよ。今はそういうふうに意識が変わってきているんですよ。これでは払えないじゃないか、それで滞納したら保険証をくれない、これは国民怒りますよ。それはもう具体的に対応しなかったらだめだと思うんですね。  大臣、これ聞いてどない思います。非常に具体的なんですがね。
  217. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 最も基本的に考えなきゃならぬことは、この社会保障制度が長期安定をしていくということが一つの基本にあると思います。  それからもう一つは、負担がふえていくわけでございますから、社会保障経費がふえていくわけでありますから、給付と負担については公正、公平でなけりゃならぬ、これは一つの大きな基本の考え方だと思うわけです。  それからもう一つは、社会保険という方式をとる以上は給付と負担というものが裏表の関係にある、これはやはり一つの基本的な問題でございまして、そういうことを念頭に置いてさあこの現実をどうするか、こういうことになってまいりますと、この国保の保険料負担が非常に、何といいますか、重いものになっておる、こういう現状は私もよくわかります。したがって、これを直していくということは非常に喫緊の大事な問題だという認識もあるわけでございまして、そのために、給付と負担という関係においてとにかく国保の財政の安定化を図るためにはこういう構造上の問題を解決しなきゃならぬ、こういうことを考えて今対応しておるわけでございますが、私も、国保の今の保険料が決して安いものではない、負担が非常に重いものになってきておるという認識は共通しております。
  218. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは他の保険との、いわゆる被用者保険との比較が衆議院でもやられておりますし、これも細かく言わなくても二倍、三倍あるいは三・七倍というふうな実例もありますが、そういう重さになっておりますね。その上に給付内容が低いわけですね、被用者保険と比べたら。ですから国民にとっては負担感が重いということは当たり前なんですよ。そういう中で、滞納したらすぐに保険証を取り上げるなどという、資格証明書を発行したら今度は社会保険診療並みに取り扱いますという法律の改正も今回の法案には出ていますが、これはほかの目的もあるんだろうと思うけれども、結局保険証を取り上げるということを固定化するようなこういうやり方というのはよくないと思うんですよ。その辺は何とか救済措置を考えるべきだと思いますよ。  で、私は、余談になるかもわかりませんが、どんなにつらいであろうということを感じますのは体験的にも感じるんです。全国各地で、保険証を持っていないために命を縮めた、重症に陥ったというふうな事例は多々報ぜられております。  私は、戦後、国民皆保険が実施されるまで、実は、直接診療に参加しておりました。その当時どうであったかというたら、被用者で健康保険をお持ちの方々はすぐに病院へ来るんです。保険証のないいわゆる中小企業あるいは商工業者の皆さん、それから無職の人たちは、保険証がないからとことん悪くならぬと病院に来ない、来たら即入院か即手術という状況であった。あるいは、そういう過程で一カ月、二カ月と長期に疾病にかかると、これは医療費が払えないだけではありません、必ず生活保護に転落をするという状況がありました。あの当時の医療費は今日の医療費の水準と比べて随分低いと思うんですよ。低い時代であってもそうであった。  今日、資格証明書をもらって病院に行って全部懐から金を払うということになったら、そんなもの医療が受けられるという状態ではないですよ。ですから、これは本当に皆保険の精神をきちんと踏まえるということであれば、何としても保険証の未交付というのはやめるべきだと思うんですよ。この未交付問題が出る前には、法律を変えるときには悪質滞納者だけだということを盛んに言われた。今、滞納したら全部悪質並みですよ。その辺はもっときちんと対応するなり救済策をとるなりやるべきだと思うんですよ、保険料がとにかく大臣だって認めるほど高いんだから。  その辺はどうですか。
  219. 下村健

    政府委員下村健君) 国民健康保険は皆保険体制の一環ということで保険制度でやっているわけでございますから、やはり保険料を納めていただくというのが義務だと思うわけでございます。  私どもとしては、現在の未交付問題に関連して言えば、被保険者との接触がなかなか難しいというふうな状況もございますので、保険証交付の機会にできるだけ接触を保ちたい、ただいまのような問題に即して言いますと、できるだけ納付相談を徹底してやるようにということで市町村指導しているわけでございます。  したがって、保険料は義務であると申しましたけれども、保険料をすべて払っていただくということではなくてもいろいろ相談に来ていただきたいということをまずは申し上げているわけでございまして、やはりその点は守っていただきたいというお願いを私としてはいたしたいと思います。
  220. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは後でもまたちょっと触れたいと思うんですが、国民皆保険の立場できちんと対応しませんと保険があって医療を受けられないという妙なことになりかねない。  時間の都合もありますからちょっと急ぎますが、国保運営の特に赤字の保険者が急増したというのはいつごろからですか。
  221. 下村健

    政府委員下村健君) 五十九年にそれまで年間二、三百というところであったものが五百にふえて、六十年に約九百、六十一年に千二百——失礼いたしました。金額でございますが、赤字保険者の数で申しますとやはり五十九年以降ではないかと思います。
  222. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 確かに赤字保険者は五十九年度から急増していますね。  五十八年までは百二十四保険者、それが五十九年は四百二、六十年四百四十六、六十一年三百三十七ということでふえておるわけですが、この原因は一体何でしょう。
  223. 下村健

    政府委員下村健君) 五十九年度というのは老人保険法の改正が行われまして、その影響による財政運営というものが一つ影響しているかと思います。  また、それに合わせまして退職者医療制度の導入に伴う財政影響というものが五十九年に限っては出てきているんではないか、このように思っております。
  224. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 確かに退職者医療制度の創設に伴う見込み違いというんですかね、その結果、国庫負担の引き下げというんですか、医療費の四五%の国庫負担を三八・五%に下げたんですね。これがやっぱり大きな要因だと思います。  これも具体的に自治体を調べてみたんですが、大阪市の場合の六十一年度影響額、これが百十二億です。百十二億影響を受けているんですよ。それで、これを保険料収入にしたら、保険料収入全体の二三・四%です。そのうち国の補てんは五十一億ですね。これは、補てんをされております分が五十一億、それから補てんをされない分が六十一億残っています。で、これは見込み違いでも、完全に補てんされていたら一二・七%保険料を下げられるんですね。これは、細かく言えばたくさん言いたいんですけれども。だから、やはり五十九年度の退職者医療制度の創設に伴う国庫負担の引き下げ、この見込み違いというのは地方自治体、保険者に大変大きな影響を与えていると思うのです。そういう見込み違いの補てんを何とか全部やろうというので、三大臣合意で六十一年までの未補てん分の千八億の補てんをしましたね。これは六十一年度までの分なんですね。  ところが、今後も見込み違いの影響というのは続いているんですが、六十二年度以降は国はどうなさるんですか、面倒を見るんですか見ないんですか。
  225. 下村健

    政府委員下村健君) 国庫負担につきましては、国保財政全体の状況を見ながら国庫負担を決めているわけでございます。  五十九年、六十年、六十一年、その三年につきましては、退職者医療の創設に伴う国庫負担削減のマイナス効果を補てんするという意味合いの財政措置をとって、したがって従前の補助が維持されていたと同程度の予算措置をとった、こういうことになるわけでございます。  六十二年以降につきましては、新たに老人保健制度の改革といった条件の変化が出てまいりましたので、それとあわせて国保制度について退職者医療分については特段の措置を要しないものというふうに考えているわけでございます。
  226. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは依然として影響が続いているんです。老健法の改正で按分率が変わったというけれども、それは別の話だ。政府の見込み違いで出すべき金を削ってその影響がずっと続いているというようなものはちゃんと責任を持って補てんするべきだと思うんですよ。状況はそんなに甘くはありません。  大阪市の場合、これは大阪市の試算でございますが、六十二年度の見込みは、国庫負担引き下げの影響は百十三億です。按分率九〇%にした効果が四十三億、その差し引きは七十億です。六十三年度の見込みでも、これは引き下げの影響額が百二十六億、按分率九〇%にした場合の効果が五十二億で、差し引きの残が七十四億。見込みではあっても、大阪市はこの程度の影響が出るだろうと試算をしている。この分は何とかして補てんしてもらいたいというのが大阪市の要求ですね。  補てんするべきじゃないですか。
  227. 下村健

    政府委員下村健君) 確かに、財政影響額というのは、これは各年度についてある意味では永久に計算できるわけでございますけれども国保財政全体の状況を眺めてみますと、私が申し上げたとおり、老人保健制度の改革によりまして総体で二千億余りの効果が出ているということになりますので、国保財政全体としてはそのような措置は必要としないというふうに考えているわけでございます。
  228. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だから、被保険者に何の責任もない中でこういう構造的に非常に困難な体質を抱えている国民健康保険、こういう中でさらに国庫負担を下げて地方団体へ負担を転嫁するというのは酷ですよ。せめて四五%に国庫負担を前のように戻さないと大幅な国保料の値上げ、支払い不能者の増加、国保運営の困難さというのはいよいよ拡大をするし、その責任政府が負わなきゃならぬと私は思うんですよ。  で、いろいろな文書を読ましてもらいましたけれども、提案理由でもこんなふうに書いてあるんですね。私、非常に理解しにくいのでこれは聞きたいと思うんですが、   保険料負担能力の低い被保険者の加入割合が高いという問題や医療費の地域差問題等、国民健康保険制度が当面している不安定要因に対して、国、都道府県及び市町村が共同して取り組む仕組みをつくることにより、国民健康保険事業の運営の安定化を図ることを目的として、この法律案を提出した次第であります。 というわけです。  だって、困難を解決するのに、なぜ地方負担の導入というのが突然出てきたのかさっぱりわからぬのですがね。だって、困難な要因というのは地方団体責任でもないわけでしょう。何で急にこれが出てきたのか、これはどういうことですかね。論理に合わないと思うんですがね。
  229. 下村健

    政府委員下村健君) 私どもとしては、国民健康保険を皆保険体制の一環ということで、社会保険としての基本的な機能を保持させたいということをまず第一の原則として考えているわけでございます。  その中で、社会保険の原理だけではなかなか対応しにくい問題がある、そういう意味で構造的な問題と、こう言っているわけでありますが、医療費の非常に大きな地域差の問題、それからもう一つは、低所得者の問題がある。低所得者の問題については、社会保険以外の原理ということで私どもがそこで申し上げたいと思っているのは、福祉的な観点からあるいは福祉行政的な体系の中でその一部を考える、こういうことで地方との共同ということを取り上げているわけでございます。
  230. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 現に、一般会計から地方団体は二千数百億も拠出をしているわけですからね。さらに国が、本来、国保というのは保険料と国の負担で行うという原則を曲げて、地方に負担を押しつけるという論拠というのは成り立たない。酷なということだけじゃなくて、私は論理的に成り立たないと思うんですよ。  その点について御意見を簡単に伺っておきたい、もう時間が余りないから。
  231. 下村健

    政府委員下村健君) 低所得者の問題についてどういう対応をするか、これは、国民皆保険を実施に移した段階から低所得者について保険制度の枠内でやっていくかどうかというところは一つの大きな問題点であったというふうに思っております。それが、今日、高齢化という中でさらに深刻な形で我々の目の前にある、こう思っているわけでございます。  そこで、そういったことについて今後も保険制度でやっていくのかどうか、基本的に言えばそういった問題になろうかと思うわけでありますが、私どもとしては、国保発足以来約四半世紀の間、皆保険ということで保険による給付体系というものが国民の間に定着しているわけですから、皆保険制度という基本的な体制は維持していきたい、ただし保険料と国庫負担という社会保険制度の枠内だけで維持していくのは困難なのでそれをサポートする制度として福祉的な考え方を取り入れてそれを支持する保険料軽減制度というものを制度化したと、こういう考え方になるわけであります。  それから、地域差の問題も、余りに大きい地域差ということになりますと、その部分の負担をどうするかというところはやはり大きな問題になってくるわけであります。当初、厚生省考えましたのは、そのために特別の負担体系を導入してはどうか、国、地方が共同して負担をするということで考えたわけでありますけれども、残念ながらこの点については国保問題懇談会で十分な御理解が得られなかったわけであります。したがって、その部分については地方がある程度努力して解消することができると申しますか、努力の範囲内にある限界にそういった地方の負担というものはとどめるべきだという考え方で決着を見まして、現在提案しているような制度になったと。  したがって、その二つの部分は国保制度の中に一応取り入れたと、こんな格好になっておりますが、社会保険としてはやや異質な部分がつけ加わったようなもので、国保をサポートする制度がその部分にそれぞれつけ加わっている、このように御理解いただけばいいんではないかと思っているわけでございます。
  232. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は理解しにくいと思うんです。  光栄ある皆保険、保険料と国庫負担で賄うという光栄ある制度にいよいよ地方負担を導入する、国庫の負担を少なくして地方負担へ移譲していくというそういうことをやろうとするわけです。戦後四十年あるいは国保ができてから三十年、皆保険になってから三十年ほどですね。それは、政府地方負担を何とかして転嫁できないかというねらいが恐らくあったであろうと思う。しかし、原則を堅持してきたのをここで曲げていこうということに踏み出したという点では、これはもう大変な問題だという点を指摘しておきたいと思います。  そういうことと関連をいたしまして、六十三年一月二十八日の保険局長通達、これは随分ひどいことを書いてありますね。これを見てみますと、「今後とも国民健康保険制度の安定的な運営を確保していくためには、」という頭がついてはいますけれども、「保険料(税)の引き下げの措置を取るようなことは厳に行わないこと。 なお、十分な経営努力や今後の」云々で、「見通しもなく安易に、保険料(税)の引き下げの措置をとった保険者に対しては、財政調整交付金の配分について一部見合わせることを考慮するものである」。ひどいことを書いてありますね。  先ほどから言うているように、これは国庫負担を四五%から三八・五%へ削って、いわゆる政府の退職者医療保険をつくったときの見込み違い、そういうことがやられて地方団体はやむなく保険料を急速に上げた。そして、それでも赤字の保険者が急増した。全国で千二百億以上の赤字になっている。そういう急激な保険料のアップ、そういう中で国民、被保険者の中における矛盾の激化、それでやっと、見込み違いだった、補てんをしますといって不十分でも補てんをした。ところが、この六十三年度は、保険料を引き下げてはならぬ、もし下げるようなことなら調整交付金はかげんするぞと。それで、その後に書いてあるのは、厚生省は限度額を四十万円に引き上げた、だからこれを基準にせよと、こんなひどいことを書いている。厚生省は、改正案は千七百円ずつ保険料は安くなると言うけれども、安くなるどころかこの考え方では、安くしちゃならぬ、したら罰則、罰金だぞと。それで、厚生省は最高限度額を四十万円に決めておるんだからこれを守れと。  これは大変なことになると思うんです。これは、こんなもの見込み違いやといって引き上げて、そこで高値安定にさせて、ちょびっと丸々じゃなしに補てんをして高値安定したら、今度は、それは引き下げてはならぬと。こんなひどいやり方はないですよ。大臣、違いますか。私は、こういう高値安定を固定するというようなことをしちゃならぬと思う。今、先ほど申し上げたとおりの窮状なんだから、そういう問題こそ地方自治体の裁量に任すべきだと思うんですよ。これはどうですか。下げてはならぬとか下げたらいや調整交付金で金出すのを手かげん、さじかげんしますよ、厚生省は四十万円に決めたからそれを基準にしなさい、こんなことを言われたらこれはもうたまらぬですよ、被保険者は。  こんな高値安定を固定するというようなやり方をせずに、せめて自治体の裁量にこんなことぐらいは任すべきだと思いますが、どうですか。
  233. 下村健

    政府委員下村健君) 高値安定とおっしゃられるわけでございますが、医療費の現在の状況を見ますと、やはり、保険料負担というのは傾向的に言いますとどうしても上がっていくということは避けられないと思っているわけでございます。もちろんこれが所得の伸びと歩調を合わせていってくれると比較的保険料負担の面も容易なわけでございますが、国保状況から見ますと、現状ではなかなか厳しいものがあるということではないかと思います。  そこで、今後のそういった状況考えた上で国保制度の運営をやるべきだ、また大多数の市町村はそういった形で大変苦労しておられるのは事実でございますが、苦しい状況の中で適正な保険料水準の確保ということで努力をしておられるわけでございます。そういうことを考えますと、短期的なことだけではなくてやはり多少先行きを考えながら国保の運営をやってほしい、国庫負担の配分もそういった努力の状況に応じてこれは考えざるを得ないと、こういうことになってくるわけでございます。
  234. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、国庫負担を減らすために地方に負担を転嫁する、それと同時に、国民、被保険者に負担を転嫁するというこういうひどいやり方は認めるわけにはいかぬですよ。  そのことを申し上げて問題を次に移します。  今度の改正案の中の一番大きな柱になっております、いわゆる運営安定化事業、これをちょっと聞きたい。  国保運営の安定化事業の推進ですか、指定市町村の安定化システム。これを読ましていただくと、これは全国の平均医療費の高い市町村大臣が指定する指定市町村ということにするんですね。大臣の定める指針に基づいて計画を策定して、国、都道府県の指導、援助のもとで給付の適正化、運営の安定化を期すというんですが、結局どうするんですか、全国平均より医療費の高いところは大臣が指定して、それで大臣の定める指針に基づいて高い医療費をへこませるための計画を策定して、国と都道府県が指導と援助をして高い医療費を減らす、こういう話のようなんですが、指定市町村は、先ほどからもお話があったように百二十とか百五十とか言うているんだけれども、さっぱりはっきり言わないんですが、どういうことなのか、どれぐらいあるのか。盛んに北海道と大阪と言うているから、大阪は幾つでどの辺やといって言うてください。  それから、大臣の定める指針というのは一体どういうことですか。
  235. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費の地域差が非常に大きくあるわけでございます。したがって、その大きい医療費の高いところを指定をしてそこは特別に医療費適正化のための努力をしていただこう、これが基本的な考え方になるわけでございますが、大臣の定める基準ということでは医療費の平均値を使うわけでございますが、その平均値の中には年齢構成による差を加味してさらに二割程度ぐらいの幅を見込んではどうか、費用負担のところでは大体二割ぐらいのところが目安になるだろうというふうに考えているわけでございます。  ただし、指定のところは、これは今後の状況によって動いてまいりますので、二割増しというよりは少し低い数値で指定をした方がよかろう、少し費用負担に結びつかない市町村も出てくるわけでございますが、指定の幅としてはしたがって二割増しよりも少し低い水準で大体百五十ぐらいの市町村を指定しよう、しかし最終的には費用を負担する基準としては二割程度というところを数値としては一つ基準にしようということで、これで考えると百五十が百二十ぐらいに減ってくるんではないかと、こんなふうに考えているわけでございます。  ただ、具体的な指定に当たりましては、あるいは費用負担に当たりましても同様でございますが、そういった平均値からの二割というふうな幅だけではなくて、災害でありますとかあるいは腎透析のような高額医療費の問題でありますとか療養担当手当、原爆の医療費あるいは病床数といったものについてもそれぞれ配慮をしてまいるということで大臣基準を決めようと、こう考えているわけでございます。  そこで、指定をされた市町村は、安定化計画ということで地域ごとの医療費の要因分析をやってもらおう、これは現在の方法でいきますと、入院でありますとか入院外でありますとかそのほかに受診率、一件当たり日数あるいは一日当たり医療費といった伝統的な医療費の分析方法がございますが、そのほかに年齢階級別あるいは疾病別に見たらどうなるか、医療機関別ではどうかといった具体的な要因の分析をしてもらおう、その要因の分析に対応いたしまして具体的な対策を、例えば被保険者指導の徹底というものも含まれてまいりますが、レセプトの審査でありますとか医療費通知でありますとかあるいは各種のヘルス事業の推進といった問題あるいは長期入院者のケースワークといったものも含まれてまいりますが、そういった形で総合的に安定化計画に従った適正化の対策を関連面の施策も含めまして展開していただこうということでございます。その結果を見て最終的に費用負担をお願いするということを考えているわけでございます。  大阪は、これも現在のところはいずれも六十一年実績による推計ですから、確定数値は余り不確実なことを申し上げてもかえって混乱が起きますので余りはっきりしたことを申し上げていないわけでございますが、大阪は十幾つかの市町村が指定をされるということになろうかと思っております。
  236. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、つまり高いところは値下げをするように計画をして、その値下げをするため医療費を抑えるための計画を大臣の指針ということで立てる。それで、国と府県が指導と助言というけれども、大分激しい注文をしたり審査減点などをやって、とにかく高いところは医療費を抑えるのが目的だというんですね。  これで計画どおり進まなかったら、計画どおり進んだらよろしいが、進まずに医療費が下がらなかったらどうするんですか。
  237. 下村健

    政府委員下村健君) これは、市町村の負担能力といった面もございますが、費用負担に結びついていくということでございます。
  238. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 よう引き下げなかったら、その分については国は負担をしない、その地方自治体が一般会計で面倒を見る、面倒を見たらそのあと六分の一ずつ国と府県が面倒を見てやるというわけですか。書いたのを読むとそんなふうに読めるんだけれども、そうですか。
  239. 下村健

    政府委員下村健君) 国も都道府県も市町村も負担をするということでございます。
  240. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、六分の一、三分の一でしょう。国が三分の一、それから都道府県、市町村が六分の一ずつじゃなかったですか。そんなふうに書いてあった。
  241. 下村健

    政府委員下村健君) 保険料負担部分を抜きまして、残りの部分につきまして三分の一ずつの負担をする。概念的に言いますと、保険料負担部分が原則的な負担割合でいきますと二分の一ということになるわけですから、二分の一の三分の一ずつということで六分の一という表現になるわけでございます。
  242. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう時間がなくなってきたんですが、この指定市町村というのは毎年指定するんでしょう。違いますか。
  243. 下村健

    政府委員下村健君) 毎年指定をいたします。
  244. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 是正計画をやって熱心にどんどんやったら、毎年、基準医療費というのは下がってきませんか。下がるでしょうね。  下がってもまた翌年は新しい指定市町村をやるということになるとどういうことが起こってくるかというと、これは、初めに指定された市町村はもちろんのことですが、指定されていない市町村も、うかうかしていると指定されたところが慌てて点数を下げて医療費を下げたら、自分のところがぽっと頭を出していつ指定されるかわからぬということになるから、指定をしなくても全国の市町村が一生懸命医療費の圧縮のために努力をするということになるんじゃないですか。
  245. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費の適正化あるいは医療費対策という面につきましては、これは、指定の有無にかかわらず、全市町村がやはり努力をしていただきたいと思っております。  ただ、今のお話に即してまいりますと、全国平均を一つの物差しとして見ていくわけですから、全国平均そのものは現在の医療費の動向からするとやはり上がってまいると思うわけでございます。それからの乖離の度合いというかあるいは偏差値のようなもので見ていただいてもいいんですけれども、それからの乖離の、隔たりの大きい市町村が毎年指定をされる、こういうことになるわけで、今まで指定されなかったところがむやみにどんどん広がって指定をされる、これは指定されたところを除いて平均を出せばおっしゃるようにどんどん広がっていくと思いますが、指定をされたところも含めて全国平均というものを考えながらやっていくわけですから指定市町村がむやみに広がっていくということはない、このように考えております。
  246. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、むやみに広がると言うていない。  毎年指定市町村を指定するというたら、ことし指定した百二十か三十か知らぬが、物すごく頑張って医療費を抑えたとしますよ。そうしたら、来年度になったらいわゆる基準医療費というのはランクが下がってくるでしょう。全国平均の医療費というのはランクが下がりますわ、みんな一生懸命減らしたら。それは単純計算だ。  そうしたら、今まで別に何もそんな枠に入りそうもないと思っておったものも、基準医療費というんですかそれのランクが下がったら、かかるはずがなかった自治体もかかるということになってくるおそれがあるんですね。そうならない保証はないでしょう。
  247. 下村健

    政府委員下村健君) ランクというよりは、医療費の平均値との差がどのぐらい出てくるか、その差が問題になるわけでございます。  平均医療費は、現在の医療の動向からしますと当然上がるでしょう。それから、医療費の高いところの医療費は下がるかどうか、あるいは伸び率が下がるということになると差が縮まる、こういうことになるんだろうと思います。  その場合に、一体どの程度のところをこういう医療費考えるかという基準の問題ともつながってまいりますが、全体がある一定の範囲内におさまるということになれば指定される市町村がなくなる、こういう結果が出るだけで、別に高い方から順番に百五十番目までを指定しよう、このように申し上げているわけではございませんので、ランクというのは順番のことを言っておられるのではないと思いますが、要するに、平均値に対する医療費の乖離の度合いがどの程度大きいかということによって指定されるされないは決まるということでございます。
  248. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私、極端なことを言うているんじゃないんですが、指定市町村だけが是正計画をつくってあとはのうのうとやっているというわけにいかぬような状況になるとこれはいつどうなるかわからぬ、とにかく医療費が一定水準より高いからというてもらうべき金もちゃんともらえぬということになったら、税金から出さにゃならぬわけでしょう。罰金ですがな。そんなことになったらかなわぬということでかんかんになる。各保険者、自治体が皆そうですよ。  こういうことは何をもたらすかといったら、先ほど午前中からも問題になりましたように、とりわけ長期入院老人退院の問題、俗な言葉で言えば老人の追い出しの問題、それから医療内容の低下が起こるおそれが十分にあるわけです。大体、考えてみたら、医療費を削っていく一番の早道は長期入院是正、お年寄り病院からたくさん出ていってもらうのが一番の早道。だから大問題になっているんです。  北海道では、午前中も北海道の同僚委員からお話がありましたが、いわゆるモデル事業実態を私もお伺いしました。これは厚生省、承知しているでしょうね。入院患者九千六百六十五人をリストアップして、結局、そのうちで在宅療養可能な人は六十人ですよ。で、現実に自宅へ帰った人が十六人、施設へはいれた人が十九人、施設へ入るので待っている人が二十五人。その六十人の中では、一遍帰ったけれども入院するとかあるいは死亡する者が出るというふうな状況ですが、これは御承知でしょうか。お年寄り病院から追い出そうとしてもそう簡単じゃないなということを、私は、実はこの北海道のモデル事業で拝見したんですが、御承知ですか。
  249. 下村健

    政府委員下村健君) 北海道の状況は承知いたしております。  私どもとしては、先ほども申し上げたわけでございますが、やはり、まず第一の着手としては、家庭復帰促進事業長期入院者のケーススタディーをとにかく十分やる、またその実態把握をやってそれに対する適切な対策を考えていくということをまずは主眼として取り組むように、こう言っているわけでございまして、必ずしも現在の退院患者の多寡のみによって事業の意義を判断することは適当でないと考えているわけでございます。  追い出し追い出しとおっしゃるわけでございますけれども、私どもとしては、現状からいいますと、仮に追い出しましても入りたいお年寄りは大勢いらっしゃるというのが現状の姿なんですから、追い出すだけで問題が解決すると、それほど安易にこの問題を考えているわけではございません。確かに、患者の入れかえによってその摩擦的な部分だけはあるいは医療費が少し少なくなるということはあるかもしれませんが、そんなことを私どもは言っているわけではないんで、現在の状況を見ますと、やはり相当長期病院に置かれてその処遇も適切でない、またそれを医療の対象として医療給付を行っているという現状がよくない、こう思っているわけで、私どもは、その現状を変えていく、それは同時に施設あり方というか供給体制の面も変えていくという必要があると思っているわけです。けれども現状を今のままで、高齢化社会というのはこれからも進行してくるわけですからそれをそのままにほうっておいたのではお年寄りのためにもよくないと思って言っているわけでございます。お年寄りに対して適切な処遇のできるような体制をつくっていくということが医療費の適正化にもつながるのではないか、こう申しておるわけで、誤解をしておられるわけではないと思いますが、追い出しで問題が解決するというふうなことを申し上げているわけではないということを申し上げさしていただきます。
  250. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、私ゴカイもロッカイもしていません。厚生省が善意でどのようにおっしゃっても、客観的にお年寄りは追い出されるという結果になる。無理をしてお年寄りを追い出したりはしないということをはっきりしてもらいたいから特に言うているんです。何でそのことを私が心配するかというと、財政対策が中心になって行政が進められるということになると国民、とりわけ弱い立場のお年寄りにとっては酷だなと思うんです。受け皿がないじゃないですか。これはもうきょうはとてもやれませんから省きますけれども。  これはこの国保改定とは直接関係ありませんが、診療報酬。  四月一日からのこの改定を見てちょっと驚きました。これは、長いこと入院していたら病院ではもうやっていけないようにどんどん点数を改正している。入院医学管理料とかたくさんあるんだけれども、特徴的なところを言いますが、基準看護料とかそういうところは在院日数によって逓減方式をとっています。それも、しかも実に丁寧——丁寧というか、むちゃくちゃだなという感じがするのは、例えば在院日数が基準看護の場合は二十日以内、それから二十一日以上三十日以内、四十日以内という点数を決めておる。入院医学管理料は一週間以内、一週間から二週間、二週間から一カ月、一カ月から二カ月。それで一般は九ランクに、お年寄りは十ランクに分けているんですね。  で、私これを見てびっくりしたんだけれども、看護婦さんの基準が二十日以内、それから医学管理料基準は一週間以内というふうに分けている。どないするんかな。病院で、例えば六人部屋で患者さんがおって、この人は一週間以内、この人は三週間、この人は五週間、一カ月とベッドへ色でもつけておかなかったら区別がつかぬ。第一、これは診療報酬点数は物すごく下がるんですけれども、例えば、病院ではもう三カ月以上の人は全部まとめて別の部屋へ入れて処遇を変えろということなんですか。いずれにしても、そんなことは現実にはできないわけですから、これは診療報酬の側からいうても長期入院を抑制して、お年寄りに長いこと入院していられないようにしているというふうにしか見られない。で、今まで入院医学管理料が、区分は四段階だったんですね。それを、老人保健法が成立して六段階になった。今度は一般が九段階、老人は十段階。実によくもよくも細かく逓減制を取り入れたというふうに思うんです。  ですから、これを見たら、行政的には、保険者がいわゆる是正計画をつくって国と行政の指導によって一生懸命点数を減らすように、診療報酬を減らすように努力する。病院の方では、長いこと置いておいたらあんたのところが損しますよと言わぬばかりの診療報酬逓減方式で、退院してくださいと言わにゃいかぬようなシステムづくりをしている。上からは行政で、下からは病院からそういうふうに言われる。サンドイッチで一番不安な思いに陥れられるのはお年寄りじゃないですか。私は、やっぱりひどいことをやるなと思いました。こんなことはちょっと認めがたいなと思うわけです。  で、ちょっといろいろまだ聞きたいことがたくさんあるんだけれども、もう制約の時間が追っておりますので、私、今医学管理料とかあるいは基準看護を例にとりましたけれども、今回の診療報酬改定は矛盾がたくさんあります。例えば在宅看護、在宅看護というけれども、訪問着護料を初めて——初めてではないんだな、ちょっと改善した。ところが、これは制約がきついですね。准着ではあかぬのですってね。あかぬのですか。  私、もう時間がないから自分で申し上げますが、地方だとか開業医のところに正看の方がたくさんおりますかな。私ども病院の方でも、大都会ですけれども、正看、准看おりますよ。それは准看も制度がある以上は実効の上がるような措置をとるようなことがやれないものか、その辺ははっきりしてください。
  251. 下村健

    政府委員下村健君) 訪問着護につきましては、その適正な実施ということで従来から保健婦、看護婦に限定されておりまして、今回の改定においてもそれを踏襲したわけでございます。  ただ、対象患者につきましては、従来退院後の寝たきり老人に限定されていたものを、老人以外の患者も対象とするとともに、退院の要件を撤廃したあるいは算定回数についても回数の増加を図った、それから実施する医療機関につきましても収容施設を持たない診療所に初めて算定を認めるというふうなことなどをいたしまして今回の改定に大幅な改善を行っているところでありまして、従来から一歩在宅対策を進めたということで御理解をいただきたいわけでございます。
  252. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 よくわからなかったけれども、時間がないから後でちょっと聞きますわ。  緊急の問題をちょっと申し上げておきたい。  これは、今度の診療報酬改定で特例許可老人病院では特定病院収容管理料が三月末で廃止になったわけですね。四月一日から老人看護料として特一類、特二類のいずれかを請求することになったわけです。ところが、これは勝手にできないので、都道府県の承認が必要なんです。都道府県は、該当医療機関から申請があり次第、調査をして基準を満たすものについては速やかに承認する責務があるというふうになっているんだけれども、大阪で、医療機関からの申請に対して大阪府は承認は六月ごろになるというふうなことが言われているんだそうです。現実にあるんです。  それで、この診療報酬改定を告示したのは三月十九日ですね。四月一日から新点数なんですよ。それを六月にならぬと承認できぬというたら四月分の請求ができない。そんなばかなことがあってはならぬと思うんです。たって、こんなことをやられたら三百ベッドの老人病院だったらどうなるかといったら、大体数千万の影響が出ますよ。病院の運営が危殆に瀕するかもわからぬ。  そういう無責任なことを厚生省がやるべきではないと思うので、これは厚生省じゃないんだけれども厚生省、これは大阪府当局を督励して少なくとも改善をさせてもらいたいと思いますが、どうですか。
  253. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 都道府県知事が老人基準看護の承認を行うに当たりましては、看護婦数等の所定の要件を恒常的に確保できるようにある程度の実績期間というものを求めましてそれを承認するという場合があり得るわけでございます。これは、この基準看護制度というものの適正な運用を図るという観点から行われている都道府県の指導であるというふうに考えております。  御指摘の大阪府の事例につきましても、このような観点で大阪府の方で実績期間を置くということで適正な指導を行っているものというふうに考えます。その実績期間の経過を見て速やかに承認の適否が判断されることになるだろう、こういうふうに考えるところでございます。
  254. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 沓脱君、時間です。
  255. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間が二十四分までというから、もう時間ですな。  速やかにやるというんですか、さっぱりわからない。何か言うけれども、結論がわからぬ。
  256. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) こういう基準看護のような人的要件に絡むようなものにつきましては、例えば、そういうものが恒常的に確保されるかどうかということで実績を見る、こういうことの措置を適正な運用の一環としてとってきている、大阪府においてそういう方針でやっているようでございまして、この実績期間を四月一日からどのくらいとるか、これは府の判断でございますけれども、府の方に私の方からも問い合わせましたけれども、この適正な指導を行った上で速やかに承認の適否を判定をする、それで承認をする、こういうことでございます。
  257. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 長いこと言わぬと、端的に言ってくれたらいいんですけどね。  それで、私、もう時間が来ましたのできょうは終わりたいと思うんですが、診療報酬の関係の矛盾の問題、それから先ほども年寄りを無理やりに退院をさせるというふうなことにならないようにということを特に申し上げましたが、その点については大臣の御見解をぜひ聞いておいて終わりたいと思うんです。  あと、受け皿の問題あるいは医療保険の一元化の問題等を準備しておりましたが、これは今回はやめて終わりたいと思います。  最後に、年寄りを、こういう制度をやっていくからというて無理やりに、無理無理に退院をさせたり病院から追い出したといわれるようなことをやらないようにしてもらいたいと思いますので、決意のほどを伺って終わらせてもらいます。
  258. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 最も大事なことは、適切な医療といいますか、対応ができるかどうかということだと思うわけでございまして、そういうことを十分考えて慎重に対処してまいりたいと思っております。
  259. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 きょうは五時から港湾労働法案の趣旨説明ということになっておりますので、私、ちょっとずれ込んでおりますが、五時まで短い時間でありますけれども、きょうは概括的なことについてお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、大臣にお伺いいたしますが、もう同寮議員から質問の都度出ていることでありますが、我が国は本格的な高齢化社会を迎えておりますし、さらにこれからはそのピッチが早まっていくわけであります。  こういった社会環境の中で、広い意味の社会保障に対する大臣の基本的なお考え方をお聞きしたいと思います。
  260. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 本格的な高齢化がこれから進んでまいるわけでございますが、私といたしましては、その場合、まずだれもが喜べるそういう長寿社会というものを建設することを厚生行政の基本的な理念として考えておるわけでございます。  財政面での負担がふえるというような暗いそういうイメージで考えるのではなくて、お年寄り一人一人が豊かで生きがいを持って明るく健康で過ごせる、自分の老後について不安を持たなくていい、そういう社会を築いていきたい。また、ハンディキャップがある人たちに対しましても温かい抱擁力で包み込んでいける、そういう社会の建設に向かって全力を挙げてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  261. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 労働省あたりでも高齢者社会という言葉を長寿社会というふうに呼んだりしているわけですが、どういうわけか高齢化社会というのが一般的な呼び名になっている。何を取り上げても高齢化社会というまくらの言葉がついて、高齢化社会を迎えるから間接税をやらなきゃいかぬのだとか高齢化社会を迎えるから老人医療費が増高するんだ、高齢化社会を迎えるから社会福祉費を削らなきゃいかぬのだと高齢化社会というまくらがついて何か後ろに負担増を強いる。私たちも年をとってきたわけなんだけれども、年をとっていくことが悪いことのような、現役の人たちに申しわけないような雰囲気になったんでは、これは、今大臣いみじくもおっしゃった暗いイメージになる。そういう社会は全く不幸なことですね。だから、私は、すべての人が健康を維持して長寿でいられるということは非常にめでたいことなんだから、まさに、大臣おっしゃったように、明るく長寿社会をみんなで楽しむというものを知恵を出してつくっていかなきゃいかぬ。これは特に政治家としては大事なことであって、私は、大臣の今のお話を聞いて大変うれしく思うわけで、ぜひその心構えでやっていただきたい。厚生省としても、厚生行政の最たるものですから、そこに視点を当てていただきたいというふうに思うわけです。  しかし、現実は、社会保障予算というのは厳しいシーリングが続いて、毎年巨額な当然増の縮減を繰り返してきているわけです。しかし、これももう限界ではないかなというふうに思われるわけなんで、そういった中から必要な福祉水準というものを維持、充実していくために、社会保障予算というものをどうやって確保していくのか。社会保障予算といえども聖域ではないという言葉も予算編成の折には間々耳にするわけなんだけれども、しかし社会保障予算というものは、今大臣も申されたように、国の予算でやっぱり柱でなきゃいかぬわけなんだから、そういった視点から、厚生省は一番責任のある所管庁でありますからどういうふうに確保していくお考えなのか、そのことをお聞きしておきます。
  262. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 厚生省予算につきまして理解あるお尋ねでございますけれども、確かに国の財政が非常にきつい中で、先ほど申し上げましたように、高齢化社会ということから当然増が生ずる、これをどうするかということで厚生省毎年毎年予算編成には大変苦労をしているところでございます。  しかし、おかげさまでと申しますか、私どもは、各年度の予算編成に当たりまして、申されたように福祉水準は下げない、社会保障制度の運営には支障を来さないというそういうポリシーで予算編成に取り組んでいるところでございまして、そのためにはさまざまな工夫ももちろん凝らしてきているところでございます。現に、六十三年度予算におきましては、国家予算四千億の一般歳出の増でございますが、その四分の三に当たります三千億について厚生省は増額を認められているというふうなこともございまして国家予算の中ではそれなりに配慮されているんではなかろうかと思いますし、社会保障あるいは福祉水準の切り下げというものは避けながら必要な予算は確保できているというふうに考えております。  来年度予算また今後予算をどうするかというのはまだ申し上げる段階ではございませんけれども、今後とも、先ほど申しましたように、社会保障の安定的な運営に支障がないように福祉水準の維持、改善ができますように最大限努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  263. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 いろいろと御苦心の多いことと思いますが、私はいささか残念に思っているわけですが、例えば社保審の基本問題小委員会から出ている書類で、これは国保の審議の過程で審議内容の整理メモという形で一月二十九日に出たものですが、その中でやはりこういうふうに書いておるんですね。「税制改正の動向も踏まえ、医療保険制度における財源のあり方について更に検討する必要がある。」。だから、これは実態が後追いなんだな。  衆議院予算委員会の段階でも厚生省と大蔵省が「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担の展望」という資料を出された。これを見ても恐ろしいようなことですわね。これは仮定計算によるものだから、この数字をそのまま受け取るわけにはいかぬと私は思う。しかし、この数字が是であるとしたら、これをどうするのだということを思わない人間はいないと思う。そういったことが全部ぱっとばらまかれていて、今おっしゃることと実態が違うわけなんです。  だから、少なくとも私は厳しい環境にあることはよく承知しているわけだけれども、やはり、厚生省が中長期にわたる福祉ビジョンというものを、それは財源を思い切ってつけて、本来国が負担すべきものはきちっと負担するんだという形で私は立てるべきじゃないか。そして、それに基づいて単年度の予算編成というものをどうしていくのかということにすべきであって、何とはない、高齢化社会が来るから間接税を入れなきゃいかぬのだと、こういう論議が先に来て、それじゃ中長期国民の社会保障費の負担割合は一体どう見ているのかといったら、これはまだ出ていませんと、こういうようなことでしょう。  だから、どこをやるというより厚生省が、まず我が国における、ここに出ているこれだけかかるぞかかるぞというんじゃなく、二十一世紀初頭を展望してこういった中期ビジョンを持っているんだ、だから高齢者も安心してくれあるいはハンディキャップのある人たちも明るく生きてくれ、そのためにはひとつみんなでこういう負担もしようじゃないか、国庫もこういう形での助成をしようじゃないかと、そういう展望を国民に示さなければ高齢化社会というものがひとり歩きして暗いイメージだけ与えていく。私は非常に残念だというふうに思うんですよ。  そういった意味で社会保障の中長期計画というものを策定すべきだと思うんだけれども、いかがなものでしょうか。
  264. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 御説のとおりでございまして、これからのいわば未知の社会でございます長寿社会にどういうふうに私どもが軟着陸するかというのは大事なことでございますし、そのために、国民にできるだけその方向を明らかにして、合意を得ながら進んでいくというのが私どもの基本的な立場であるわけでございます。  そのためにと言ってはまたおしかりを受けるかもわかりませんけれども、「長寿社会対策大綱」というのを政府全体としてはつくっておりまして、社会保障、医療から年金から福祉から、それから私ども以外の、雇用から住宅から教育まで含めました総合的な政府としての取り組むべき基本的な方向を定めておりまして、これに沿って政府は毎年毎年施策を実施する、そして実施した後にはフォローアップをいたしまして、今年度はここまでできた、さらに残された課題はこうだということで、フォローアップの結果を国民に明らかにしながら進んでいこうという形で今政府は取り組んでおるわけでございます。  御提案のように、もっと具体的な、例えば民社党から高齢者福祉七カ年計画というのを御提案なさっていることも承知をいたしております。大変いい考え方というふうに思っておりますけれども、私どもとしては、具体的な施策を年次計画として明らかにするまでには年金も医療もその他もろもろについてまだまだ国民のコンセンサスを得ながらやっていく施策が非常に多うございますとともに、また定量的な推計につきましては余りにも幅広い施策体系になっておりますために非常にできづらい困難な面もあるわけでございますので、いましばらく御提案のような年次計画的な長期ビジョン、中長期ビジョンができますかどうか研究をさしていただければというふうに考えております。
  265. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 では次に移りますが、国民保険、国保というものは、構造的な側面から見て、どうしても窮屈な状態を続けざるを得ない体質を持っていると私は思うんです。しかるがゆえに今回この改正案を出されたことだと理解するし、その意味において私は一歩前進であろうというふうに思います。  しかし、六十年代後半に医療保険制度を一元化しようという厚生省の基本方針があるわけですが、その一元化しようとする中で今回の改正がどのような位置づけになると見ておられるのか、その辺についてお聞きいたしたいと思います。
  266. 下村健

    政府委員下村健君) お話のように一元化、これは給付と負担の公平と言いかえてもよろしいかと思うわけでございますが、退職者医療制度あるいは老人保健制度といった形で保険制度の改革を行ってまいったわけでございます。その中で出てきた議論一つとして、特に老人保健制度の改革の際などには、国保自体の制度改革も必要なんじゃないか、国保自体の基盤安定も考えるべきではないかというふうな議論もございました。また、これまでの改革の成果については年齢格差という面から見ますと相当評価できるわけでございますが、なお国保の財政状況が厳しいというふうな問題もあるわけでございます。  そこで、今回は、低所得者の問題あるいは医療費の地域差問題といった国保の不安定要因になっております構造問題について国と地方が共同して取り組む体制をつくるということで一元化に向けての条件整備をしようということでありまして、そういう観点からいたしますと給付と負担の公平化に向けての改革の一環だというふうに私ども考えているわけでございます。  国保の問題につきましては医療保険制度全体の中で今後さらに検討を進めていく所存でありまして、社会保障制度審議会におきましても長期的安定のための方策について御検討いただく予定にいたしておるわけでございますが、さしあたりこういった形で国保制度の改革で一歩前進していこうということを考えたわけでございます。
  267. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 昨年の十月二十八日に国保問題懇談会に厚生省の事務当局が試案を提出されたわけでありますが、今回の今ここに提出されている改正案と十月二十八日に試案として提出されたものといささか内容が違うわけだけれども、際立ってここが違うんだという点を指摘していただきたいと思うんです。
  268. 下村健

    政府委員下村健君) 昨年たたき台という形で十月二十八日に案を出したわけでございます。その際取り上げました問題も、同じく低所得者問題あるいは医療費の地域差問題といった構造的な問題ということであったわけで、これらが国保の基本的な問題だという点については共通しているわけでございます。  ただし、低所得者対策では、昨年の十月には福祉医療制度という形で給付制度という面から低所得者の問題に対応するということを考えたわけでございますが、今回は保険料軽減に着目した補助制度といった構成をとる、そういう意味で同じ低所得者対策でありましてもとらえ方が違ってまいっているわけでございます。  それから、医療費の地域差対策という面では、昨年十月の案では、全国平均水準を超える医療費は保険料以外はすべて地方負担というふうな考え方をしていたわけでございますが、今回の案では、まず高医療費市町村における安定化計画推進による取り組みを重視している、その計画実施の結果を踏まえ、著しく高い医療費の一定部分に限定して保険料のほかに、これは地方団体のみでなく国、都道府県、市町村が共同負担をするという形に改めたということでございます。  また、地方負担の問題につきましては、昨年十月の案では、どういう財源措置をとるかという辺までははっきりいたしておりませんでしたけれども、今回の案では、地方交付税の特例加算等で全額補てんをするということでそこを明確にいたしたわけでございます。  重立った点を申し上げると以上のとおりでございます。
  269. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 今おっしゃるように変わってきたわけだけれども、その試案を出された昨秋は、地方公共団体はこぞってこれに反対して、大臣も何か自治大臣とけんかしたのか何か知らぬけれども新聞で連日のごとく国保問題が報ぜられて、厚生省は孤立して、みんな挙げて、これ全部反対、袋だたきというような印象を持つような記事が連日新聞をにぎわしておりました。今でもまだ地方団体はみんな反対のはずだと思い込んでいる人がいっぱいいますね。これはもういっぱいいる。なぜならば、その後の三省合意というものが非常に小さく扱われているだけだから、だからみんな反対しておるのにという印象が非常に強い。  この委員会も九日の日には地方行政委員会との連合審査を持って地方行政の立場の方たちのこれに対する御意見を我々も拝聴するわけですが、厚生省として、今の時点で、この法案は成立するという前提に立った状態において、地方公共団体はこれをどのように評価しているのか、どのようにそれを感じとっておられますか。
  270. 下村健

    政府委員下村健君) 御指摘のとおり、昨年十月の案について地方団体側に大変強い反対があったことはお話のとおりでございます。  その時点では、先ほども申し上げましたように、一昨年の予算編成以来の経緯がありまして、国の予算編成の都合で地方に負担を転嫁するのではないかというふうな見方が非常に強かったという気がするわけでございます。それに対して、今回の案では地方に対する財源措置を明確にした、また従来から懸案になっておりました退職者医療制度の財政影響額の未補てん分を補てんしたというふうな点も、地方団体との間で十分な意思疎通をするという意味で非常に大きな信頼感を回復する上で役に立ったと思っておるわけでございます。  そういったことで、基本的には地方団体国保制度の安定に向けて早急に手を打つべきだという認識もあるわけでございますので、内容についてもその後、地方団体の御意見も入れて手を加えて相当変わったものになってきている面もありまして、現在の案に対しましては国保運営の安定化に寄与するということで評価していただいているというふうに感じているわけでございます。現実問題として、国保団体の中央会あるいは市長会、町村長会においては改正法案の早期成立に関する御要望を決議されているというふうに聞いております。
  271. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 私たちは、国保についての都道府県の役割を重視すべきだと考えておるわけです。そういった意味から、今回の高額医療費共同事業充実というのは、私は一歩前進だと評価するものです。しかし、この改正案では「都道府県は、」「補助することができる。」という、いわゆるできる規定になっているわけで強行規定ではないんですね。  現実に都道府県が補助する保証というのはあるのか、その実施についてどのように見込んでいるのか。これは附則十九項でしたかな。  それから、東京都の場合にはまだ検討中ということでしょう。たしか私はそのように聞いているんだけれども、そういった点について今どういうふうになっているのかお尋ねします。
  272. 下村健

    政府委員下村健君) お話のありましたように、今回の案では、高額医療費共同事業に対する都道府県補助は「補助することができる。」というふうな規定になっておりまして、義務的な負担までは求めていないわけであります。  これは、現在の共同事業保険者間の再保険事業というふうな形で、これもやや任意事業のような形の位置づけになっているということもございまして、都道府県の補助もそれに見合った形になっている、また県の役割を具体的な形で導入するのが初めてであるというふうなこともございまして、今後実施状況を見守るべきだというふうな関係者の意向も踏まえてこのような形にしたわけでございます。  しかしながら、地方交付税の措置等で総額百九十億円の補てん措置を用意しているということもございまして、自治省とも十分御連絡をとった上で都道府県が適切な予算措置を講ずるようお願いをしてきているわけでございます。  現在、東京、神奈川以外の四十五道府県では既に予算措置を講じているところでございまして、東京、神奈川についてもさらに十分協力を求めていきたい。東京の場合は、お話が出ましたように、二十三区については特別の調整事業をやっているというふうな点もございますが、この趣旨に沿って御協力をいただけるものというふうに考えております。
  273. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 六十五年度の見直しということになっておるし、衆議院の審議段階でもその辺のことについていろいろ論議があったようでございますが、この六十五年度の見直しは抜本改正と、俗にこう言われているんだけれども、抜本改正でいくのかあるいは六十三年、六十四年の傾向を見て現在のこの措置の延長線上で絵をかいていくのか、この辺どういうお考えでしょうか。
  274. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 六十五年度におきましては、今回の国保改革の実施状況等を踏まえまして見直し、改革を行い、国保長期的な安定が図られますよう所要の措置を講じてまいる考えでございます。  なお、その際には、国保長期安定を図るために社会保障制度審議会に今お考えお尋ねしておりますので、昭和六十五年度の見直しにつきましては社会保障制度審議会のお考えも十分に念頭に置きながら見直しを行うと、こういうことになろうかと考えております。
  275. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 この医療保険の制度問題とともに、増高する医療費の問題に対応していくために保健・医療・福祉を通ずる総合的な対策が必要だと思うんです。  そこで、医療供給面では地域医療計画の策定が重要であるというふうに思うんですが、現在までの計画の策定状況及び今後の見通しをお伺いします。
  276. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) お尋ねの地域医療計画の策定状況と今後の見通しでございますが、きょう現在までに地域医療計画を策定いたしました道府県は三十一でございまして、全体の六六%、約三分の二でございます。六十三年度中に完了予定の府県は十五で、それを合わせますと四十六、つまりほとんどの県が作業を完了するという予定になっておるわけでございます。
  277. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 先ほども申し上げましたが、まさに人生八十年時代、そういう状況の中で疾病の予防、さらに積極的な健康づくりの果たす役割というのが非常に重要になってきているわけです。  老人保健法に基づく保健事業は、第一次五カ年計画を終えて第二次五カ年計画に入っているわけでありますが、これまでの事業の実施状況をどのように評価しておられるか、また今後どのようにしていこうと考えておられるのか、あわせて国保の保健施設の活動の実施状況及び今後の取り組みについてもお伺いいたします。
  278. 岸本正裕

    政府委員岸本正裕君) 私から老人保健法に基づきます保健事業のことについてお答えを申し上げます。  壮年期からの健康づくりと成人病の早期発見を目的とするいわゆるヘルス事業は、活力ある長寿社会を築くために極めて重要な役割を担うものと認識をいたしております。このために、老人保健法でも大きな柱立ての一つと位置づけておりまして、制度発足以来、第一次五カ年計画を策定いたし計画的に事業の拡大を図ってきたところでございまして、その結果、ほぼ全市町村で保健事業が実施されるに至り、また脳卒中や胃がん等の死亡率の減少が見られるなど、着実に成果を上げてきたところでございます。  ヘルス事業は、長期にわたって着実に事業を積み重ねていくことによりまして成果が上がってくるものでございます。  昭和六十二年度を初年度とする第二次五カ年計画におきましては、第一次計画の実績も踏まえ、地域住民の多様なニーズにきめ細かく応じられるように、一般健診と精密検診を一回で受けられる基本健診や、近年増加しつつある肺がん、乳がんの検診の導入など、魅力ある健診づくりを推進することといたしております。また、そのほか寝たきり老人食生活指導など、テーマを重点化して絞った健康教育・健康相談の新設など、事業の質的な面での工夫改善を凝らして一層の推進を図っていきたいと思っております。  今後とも、この二次計画に沿いましてヘルス事業を積極的に推進することによりまして、本格的な長寿社会に向けての国民の健康レベルの一層の向上に努めてまいりたいと思っております。
  279. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 五時になったからやめますが、もう一つ、今の国保施設状況だけ。
  280. 下村健

    政府委員下村健君) 国保の保健施設活動の重要性については御指摘のとおりでございます。  市町村に対しましてより効果の高い事業計画を策定し、それに必要な経費を計上するよう指導いたしておるわけでございますが、これに対しまして国庫負担の配分に当たっても調整交付金の中でヘルスパイオニアタウン事業を初めとする各種の保健事業に対する補助を行っているところでございます。  現状を見ますと、六十一年度決算では、市町村国保の保健施設費といたしまして保険料収入の〇・五八%が計上されているわけでございます。これを少なくとも一%以上に引き上げるよう国も指導しているわけでございますが、市町村側も一%程度にこの規模を大きくしていこうというふうな動きがございまして、今後とも保健施設事業に対する補助の充実とあわせて格段の指導を強化してまいりたいと考えております。
  281. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     ─────────────
  282. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、港湾労働法案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。中村労働大臣
  283. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) ただいま議題となりました港湾労働法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  港湾労働法は、港湾運送に必要な労働力の確保と港湾労働者の雇用の安定その他福祉の増進を図るため、一定数の日雇い港湾労働者を登録し、優先的に雇用せしめるとともに、港湾労働者の雇用の調整を行うことを目的として、昭和四十年に制定されたものであります。  その後、昭和四十年代後半から五十年代前半にかけて、コンテナ輸送の増大等港湾における輸送革新が著しく進展し、最近におきましてもさらにその度合いが強まってきているところであります。また、これに伴い港湾労働者の常用化が進んできているものの、港湾荷役の波動性に伴う臨時的な労働力需要の充足については、なお企業外の労働力に依存しなければならないという事情があります。  このような状況のもとで、港湾運送に必要な労働力については、企業外に確保する労働力を含め、荷役機械の操作等を行う技能労働力を安定的に確保することが喫緊の課題となっております。  このため、政府といたしましては、従来から登録日雇い港湾労働者に対する訓練の実施等港湾労働者の能力の開発及び向上に努めてきたところであります。しかしながら、今後、企業内に雇用される港湾労働者につきましては、その雇用の改善を図ることにより良質な技能労働力を安定的に確保するための基盤を整備するとともに、その能力の開発及び向上を図るほか、企業外に確保する労働力につきましては、計画的かつ継続的に能力の開発及び向上を図りつつ、港湾荷役の波動性に対応した需給調整を行うために、常用労働者によって確保することを原則とすることが求められているところであります。  このような情勢を背景として、昨年十月には港湾調整審議会から、また十二月には中央職業安定審議会から、それぞれ労働大臣に対して、今後の港湾労働対策に関する建議が提出されたのであります。  政府といたしましては、これらの建議の趣旨に沿って、港湾労働対策を一層充実するための法律案を作成し、中央職業安定審議会にお諮りした上、ここに提出した次第であります。  次に、その内容の概要を御説明申し上げます。  第一に、港湾労働対策を整合的かつ計画的に実施するため、労働大臣は港湾ごとに港湾雇用安定等計画を策定することといたしております。  第二に、港湾労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上等を促進するための施策を明らかにいたしております。  まず、事業主、国等関係者の責務に関する規定を設けるとともに、企業内における取り組みを推進するため、事業主は、港湾労働者の雇用管理に関する事項を管理させるため、雇用管理者を選任しなければならないことといたしております。  また、公共職業安定所長は、港湾労働者の雇用管理の改善を図る必要があると認められる事業主に対し、必要な勧告を行うことができるものとするとともに、当該勧告を受けた事業主は、必要に応じ雇用管理に関する計画を作成するものといたしております。  さらに、迅速かつ適正な需給調整を確保するため、事業主が港湾運送の業務に従事させるために日雇い労働者を雇い入れるときは、原則として公共職業安定所の紹介によらなければならないこととするほか、港湾労働者の雇用に関する届け出等所要の措置を講ずることといたしております。  第三に、港湾労働者の雇用の安定等を図ることを目的として設立された公益法人を港湾労働者屋用安定センターとして指定することとし、これが港湾労働者の雇用の安定に関する調査研究、雇用管理に関する相談援助及び訓練等の業務を行うとともに、企業外に確保する労働者を常用労働者として雇用し、労働者派遣を行う体制を整備することといたしております。  最後に、この法律は、昭和六十四年一月一日から施行することといたしております。また、現行の港湾労働法を廃止するとともに、所要の経過措置を講ずるほか、関係法律について所要の改正を行うことといたしております。  以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上であります。
  284. 関口恵造

    委員長関口恵造君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員高橋辰夫君から説明を聴取いたします。高橋辰夫君。
  285. 高橋辰夫

    衆議院議員(高橋辰夫君) 港湾労働法案に対する衆議院の修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  修正の要旨は、第一に、事業主が、その常時雇用する労働者以外の者を港湾運送の業務に従事させようとするときに、港湾労働者雇用安定センターに対し、労働者派遣を求める「努力義務」を、事業主の「義務」に改めること。  第二に、公共職業安定所長に対する港湾労働者の雇用の届け出義務に違反した事業主等に対し、罰則を科すること。  第三に、政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、必要な措置を講ずること。  以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  286. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で本案についての趣旨説明聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会