○
対馬孝且君 ただいま議題となりました積雪又は寒冷の度が著しく高い
地域における
建設業等関係労働者の
通年雇用の
促進に関する
法律案につきまして、その
提案理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
北海道を初めとする北国の冬は、温暖な地方に住んでいる人々の想像を超えるほど、長くて厳しいものであります。このため、これらの
地域におきましては、冬期に積雪・寒冷などの厳しい気象条件に阻害されて建設業等の事業活動が著しく低下し、その結果、
地域経済活動の停滞、大量の季節的
失業者の
発生、出稼ぎの増加等さまざまな経済的・社会的問題が生じているところであります。
例えば、
北海道を例にとりますと、冬期における建設工事量は夏期の十分の一近くにまで落ち込みます。この冬期における建設活動の低下の
影響は建設労働者の
雇用状況に最もよくあらわれており、建設業における夏期と冬期の
雇用者数の差は約十九万人にも及んでおります。この建設業における季節労働者の数は、二十七万人とも言われる
北海道の全季節労働者のおよそ七〇%にも当たり、さらにこれに建設関連
産業における季節労働者数まで加えますと、実に
北海道の全季節労働者の八〇%近くが建設業及びその関連
産業の季節労働者で占められているのであります。ちなみに、
北海道の
雇用労働者数が約百九十八万人と言われておりますから、
北海道の
雇用労働者のおよそ九人に一人が建設業及びその関連
産業の季節労働者ということになるわけであります。
そして、これらの季節労働者は、その大半が
通年雇用を希望しているにもかかわらず、冬期に
失業を余儀なくされているのであって、その間、これらの人々は、
雇用保険法の特例一時金の受給や預貯金の取り崩しなどによって辛うじて生計を立てているというのが実情なのであります。なお、この特例一時金の支給額は、
北海道の建設業の季節労働者に支払われているものに限ってみましても年度合計で四百億円余にも上っております。
北海道等におけるこのような問題を解決するためには、通年施工・
通年雇用の
促進が不可欠であります。この通年施工・
通年雇用の問題は古くて新しい問題であり、これまで、
雇用促進事業団法による
通年雇用設備設置資金融資制度、
雇用保険法による
通年雇用奨励金制度、暫定
措置としての冬期
雇用安定奨励金・冬期
職業講習
助成給付金制度等種々の対応策が講じられてきたところではありますが、残念ながら十分な効果を上げているとは申せません。そこで、この際、季節労働者の
職業及び生活の安定と
地域経済の健全な発展を図るためには、既存の制度の維持・拡充によるのではなく、新規立法により、通年施工・
通年雇用の
促進のための諸施策を積極的かつ強力に推進していく必要があると
考えられ、ここに本
法律案を提出した次第であります。
次に、本
法律案の
内容についてその概要を御説明申し上げます。
まず第一に、積雪または寒冷の度が著しく高い
地域であって、この法律で定める
通年雇用の
促進のための
措置を講ずる必要がある
地域を「
特定地域」として、また、建設業その他冬期に、
特定地域内に所在する専業所において事業活動の縮小を余儀なくされ、これに伴い離職する者が多数
発生していると認められる
業種を「
特定業種」として、それぞれ政令で指定することとしております。
第二に、
特定地域内で
特定業種に属する事業を行う事業主であって、通年施工を行うことにより季節労働者の
通年雇用を行う者に対して、通年施工・
通年雇用の
促進のための各種
助成金を支給することとしております。
その一は、冬期に、
特定業種に属する事業を行い、かつ、季節労働者を
雇用するため必要な設備の設置・整備に要する費用に充てるための
助成金の支給であります。
その二は、事業主が冬期に積雪または寒冷の度が著しく高いため劣悪な作業環境のもとにおいて業務に従事することとなる労働者に対して特別に
支払う手当に要する費用に充てるための
助成金の支給であります。
その三は、事業主が冬期に専ら悪天候等によりやむを得ず業務に従事させることができなかった労働者に対して特別に支払う手当に要する費用に充てるための
助成金の支給であります。
その四は、以上の費用以外の冬期に
特定業種に属する事業を行うため特に必要となる費用に充てるための
助成金の支給であります。
第三に、
特定業種に属する事業を行う事業主に
特定地域内で季節的に
雇用されていた労働者に対して、
通年雇用を容易にするため必要な知識及び
技能を習得させるための講習であって、二十日以上の期間にわたって
実施されるものを行うとともに、当該講習を受けた日数が二十日以上である者に対して給付金を支給することとしております。
第四に、右の季節的に
雇用されていた労働者に対して生活指導、健康相談、健康診断等これらの季節労働者の
通年雇用の
促進及びその生活の安定に関し必要な
措置を講ずることとしております。
なお、以上述べました第二から第四までの施策につきましては、
雇用促進事業団にこれを行わせることとし、国はこれらに必要となる費用に相当する金額を当該事業団に交付することとしております。
続いて第五に、国、地方公共団体及び特殊法人は、公共事業を
計画実施するに当たっては、
特定地域内の
特定業種に属する事業分野における
通年雇用の
促進について配慮することとしております。
なお、この法律は公布の日から施行することとしております。
以上がこの
法律案の
提案理由及びその
内容の概要であります。
何とぞ慎重御
審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げて、
提案の理由にかえます。
以上であります。
ありがとうございました。