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1988-03-24 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十四日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩崎 純三君                 斎藤 十朗君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 藤井 恒男君    国務大臣        労 働 大 臣  中村 太郎君    政府委員        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省労政局長  白井晋太郎君        労働省労働基準        局長       野見山眞之君        労働省労働基準        局安全衛生部長  松本 邦宏君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        労働省職業能力        開発局長     野崎 和昭君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        外務省経済局国        際機関第二課長  海老原 紳君        労働省労働基準        局労災管理課長  岡山  茂君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (労働行政基本施策に関する件) ○労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣提出) ○勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題とし、労働行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 浜本万三

    浜本万三君 先般、労働大臣所信表明がございましたので、私はその所信表明に対する質問をさしていただきたいと思っております。  まず最初、御質問をいたしたいと思いますのは雇用問題でございます。大臣は先般の所信表明の中で「今後構造変化進展する中で、労働力需給ミスマッチにより各種雇用問題が発生することが懸念されております。」、このためいろんな対策を立てられるということが述べられました。そこで、私といたしましては最近の雇用情勢の問題についてまずお尋ねをいたしたいと思います。  最近の雇用情勢につきまして、失業とか有効求人倍率でありますとかあるいは地域、職種などの雇用状況あるいは高齢者などの雇用状況等に絞りましてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  4. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 最近の雇用失業情勢有効求人倍率が上昇いたしますとともに雇用者も大幅に増加するなど、総じて改善を見ております。しかしながら、こうした中でも産業構造転換高齢化進展のもと、特定業種地域高齢者等につきましては、なお雇用失業情勢改善はおくれがちでございます。  例えば、まず業種でございますが、造船非鉄金属等の構造的な不況業種につきましては、状況が悪化したことによりまして大量の過剰人員が生じております。引き続き雇用調整進展が予想されるところでございます。  一方、産業別求人状況を見ますと、第三次産業を中心にこちらの方は堅調な動きとなっております。  地域別でございますが、北海道九州有効求人倍率昭和六十二年十—十二月期でそれぞれ〇・二八倍、〇・五一倍となっておりまして、他の地域に比べて著しい低い水準にあるわけでございます。また、失業率北海道九州では高いものとなっておりまして、他の地域と比べまして格差が見られるのでございます。  年齢別についてのお尋ねでございますが、高齢者につきましては依然として求人数の不足が見られるわけでございます。昭和六十二年十月における五十五歳以上層の有効求人倍率は〇・一四倍でございまして、他の年齢層に比べて非常に低い水準にございます。失業率につきましても高年齢者層は高いものとなっておりまして、他の年齢層に比べて厳しい状況が続いております。  こうしたことの背景には産業地域年齢間における労働力需給ミスマッチが発生していると言わざるを得ないのでございます。このため、昭和六十三年度におきましては産業地域高齢者雇用プロジェクトなど、各種雇用対策を強力に推進することにいたしているところでございます。
  5. 浜本万三

    浜本万三君 最近の雇用情勢につきましては、ただいま局長から御説明がありましたんですが、全体的にはやや好転の兆しはあるけれども産業地域年齢間における労働力需給ミスマッチが生ずる懸念があるんだと、こういうお話でございました。  ところでお尋ねするんですが、昨年成立をいたしました地域雇用開発等促進法、いわゆる三十万人プログラムによる雇用効果政策効果というものはどのようになっておるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  6. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 先生指摘の三十万人雇用開発プログラムでございますが、昨年の四月から実施をしてまいったところでございます。この雇用効果につきましては私ども非常に大きなものがあったと自負をいたしておりまして、最近における雇用失業情勢改善もこれが一つ要因であるというふうに考えているところでございます。  具体的には、この三十万人雇用開発プログラムは三つの大きな柱から成っておるわけでございます。それぞれについて見ますというと、まず第一に、円滑な産業間、企業間移動等促進によりまして労働移動を図るというこの人員につきましては二万九千名の実績でございます。それから第二に、雇用調整助成金活用によりまして失業予防雇用維持が図られる、こういった人員昭和六十二年の四月—十二月平均で約十五万人でご ざいます。第三に、地域雇用開発助成金等活用によりまして雇用機会開発が図られた人員が約四万九千人ということになっておりまして、これを合計いたしますというと、昨年末の時点におきまして約二十七万六千人でございます。三十万人雇用開発プログラムの三十万人に対しまして、ほぼ大体達成をしているわけでございますが、なお三月末日までの締めを行いますれば恐らく確実に三十万人を突破した開発効果があったという自負をいたしております。
  7. 浜本万三

    浜本万三君 そういたしますと、政府雇用開発プログラム政策効果というのは総合的にはまずまずというところであったという御報告があったものと受けとめたいと思います。しかし、非常に景気回復をしていないで問題のところもあるわけでございます。昨年の秋から昨年の暮れにかけての労働省が発表いたしました各種の指標を見ますと、相変わらず地域間の格差が大きいということがわかります。局長も、答弁の中にございましたように、地域的に言えば北海道九州はまだ問題だということが述べられたと思います。  私の出身であります広島県をとってみましても、六十三年の一月の県平均有効求人倍率を見ますと〇・八七でございますから、これは全国並み水準回復しておると、かように理解をしておりますが、特定雇用開発促進地域では〇・五六と少しやっぱり倍率は少ないように思います。中でも、尾道職業安定所管内では〇・四四、因島に至りましては日立造船が引き揚げたという関係がございまして〇・二五という状況でありまして、非常に問題があると思うわけでございます。  また、一部の報道によりますと、製造業雇用調整をやり過ぎたんではないか、こういう報道もあるようでございます。したがいまして、きめ細かく現在の雇用情勢検討いたしますと、まだまだ楽観が許されない状況ではないか、かように思うわけでございます。したがって、労働省とされましては今後早急に地域間の格差が是正されるように政策を行っていただきたいと思うのでございますが、その見通しはどのようにお考えになっておるか説明をいただきたいと思います。
  8. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 先生指摘のとおり、地域間格差の解消、地域対策というのは今後の行政一つの大きな柱であると認識をいたしております。このため、地域雇用開発等促進法に基づきまして失業情勢の厳しい地域雇用開発促進地域指定をいたしまして、地域雇用開発助成金をてこといたしまして地域開発に努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  先生ただいまお述べになりました広島状況でございますが、特に呉、尾道因島というような造船鉄鋼等不況業種に依存しております地域につきましては、特に私どもも重点を置いて施策を講じなければならないと考えております。これにつきましては法律によりますところの特定雇用開発促進地域指定をいたしまして、助成金支給期間優遇等を講じまして雇用開発の一層の促進に努めてまいることとしているわけでございます。そのほか、特定求職者雇用開発助成金活用あるいは雇用調整助成金活用はもとよりのことでございますが、さまざまな手だてを講じまして失業予防、再就職の促進ということでこれらの地域につきましてはさらに私ども力を注いでまいりたいというふうに考えております。
  9. 浜本万三

    浜本万三君 労働省はそういうミスマッチを解消するために中長期的な雇用対策検討に着手しておる、新しい法律も出しておると、こういうお話がございました。私が思いますのに、今までおやりになりました労働省政策としては、例えば賃金補助によって一定期間雇用をつなぎとめるとかあるいは職業訓練等によりまして新しい技術を習得させるとか、そういう政策効果というものは若干上がっておることは私としてはこれを認めることになると思います。しかし、これからの事情考えますと、サービスの経済化でありますとかあるいは急速な技術進展の中で大規模経済構造調整が進められておるわけでございますから、労働力需要だけでなしに労働力供給側に対する弾力的な対応が非常に難しくなっておるんではないかと、かように思うわけです。例えば、家族のある中高年労働者が新しい技術を習得すると申しましてもこれはなかなか容易なことでもございませんし、また、そういう方々が新しい地域転勤をすると申しましても、家族ともども引き揚げて新しい職場に転勤をするということもなかなか難しい事情があるんではないか、かように思うわけでございます。  そこで、考え方を変えたらどうかという気持ちがあるわけです。それは今までの政策を全部やりかえなさいという意味じゃありませんで、次のようなことについて発想転換をしたらどうかということを思うわけです。つまり、仕事のあるところへ人を移動させるということよりも、人のいるところへ仕事を創造する、仕事をつくるというような形での発想転換も若干まぜ合わせながら雇用政策を進めることが必要ではないか、かように思いますが、その点についての考え方説明してもらいたいと思います。
  10. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 雇用対策につきましては、産業構造転換、構造的な変化進展する中におきましては失業予防雇用維持といった施策はもとより大事でございますけれども、今おっしゃられましたような一歩進んで雇用機会の不足する地域に積極的に雇用開発をする、そのためには、仰せになりましたような産業政策の課題ではありますけれども、私どもとしましては関係当局と十分な連携をとりながら推し進めてまいりたいと考えております。  労働省としましては、こうした背景の中で、やはり地域雇用開発等促進法に基づき、現在地域における雇用開発を積極的に推進しておるわけでございますけれども昭和六十三年度におきましては、さらに先ほど申し上げましたような産業地域高齢者雇用プロジェクト、これにおきまして高齢者雇用機会拡大促進するため新たな助成制度を創設することといたしておるわけでございます。  なお、現在第六次の雇用対策基本計画策定事業を進めておるところでございまして、こうした問題も含め、おっしゃられたような御意見を踏まえながらさまざまな角度から十分に検討してまいりたいと考えております。
  11. 浜本万三

    浜本万三君 景気回復に伴いまして、これまで重要な政策として実施をされておりました例えば特定不況業種雇用安定法不況指定業種というものの見直しがあるいは行われるんではないだろうかという気がいたします。三十四不況業種指定をされておりますが、現在の景気動向に照らしてこれらの不況業種見直しは行うのか行わないのか、行うとすればどういう業種見直しの対象になろうとしておるのか、そういう点につきまして御説明をいただきたいと思います。
  12. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 現行特定不況業種法は、本年六月末で期限が切れるわけでございます。しかしながら、その存続の必要性から、その延長と内容改善を図るための改正法案を現在国会提出を申し上げているところでございます。  現在、指定業種は御指摘のように三十四業種でございますが、法律が一たん切れましてそれがまた新法にかわるわけでございますので、法改正を機に新たに見直すことになるのが普通の成り行きかと思うのでございます。  この指定に当たりましては、この法の趣旨に照らしまして、生産とか雇用動向製品等供給能力状況、あるいは事業を所管している官庁などの各種方針と申しましょうか、当該業種を今後どのように運営していくかというふうな縮小の方針があるかどうかというふうなもろもろなことを基準といたしましてその適否を判断することにしているわけでございます。  したがいまして、新法のもとにおきまして各業種状況を十分に調査、把握いたしまして、見直し必要性あるいはどのような業種指定するのかということについて具体的に検討を進めてまいりたいと考えております。
  13. 浜本万三

    浜本万三君 それでは抽象的で甚だ困るんであ りますが、私の方で例示をいたしますと、例えば鉄鋼製造業鋼管製造業鉄鋼関係というのは一体どうなるのかということです。例えば、そういう業種につきましてはどういうことになっているかというと、御承知のように雇用調整をしておるわけですね。例えば、鉄鋼業種から自動車産業に対しまして労働者派遣しておる。それに対しましては、現行制度では派遣した労働者賃金の半分はその派遣元が持ちまして、それに対する国の助成がある、こういうことになっておると思うんですが、今度新しい法律によりますと、今、国会に出されております特定不況業種雇用安定法によりますと、今度は派遣先事業主に対しましても負担分賃金の何ぼかが助成される、こういうことになっておるので大変いい政策だ、こう思っておるわけなのでございます。例えば、鉄鋼業好況になったとはいいながらみずからの労働者を他に派遣をいたしまして雇用調整をしてそして経営を営んでおるという事情があるわけなんですが、そういう鉄鋼業等に対しましてはどのようなお考えでございましょうか。
  14. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 鉄鋼業等業種指定に関しましては何分先のことでございますので、今ここでどういうことになるであろうと見通しを述べることはまことに困難なわけでございますが、一般的な状況からいたしますというと、鉄鋼業等の最近の景気回復というものをどのように判断をすべきであろうかというふうな観点、それから今回の改正の中で特に新たな制度といたしまして個別事業所ごとにこの指定を行う制度もございますが、その活用をどのように図っていくべきかどうかというもろもろ手だてもあるわけでございます。  したがいまして、現在のところ何ともこれは先のこととして申し上げることはできないわけでございますが、いずれにいたしましても、実態を十分に調査、把握いたしまして、法の趣旨に沿って検討を進めてまいりたいと考えております。
  15. 浜本万三

    浜本万三君 この問題について最後に大臣に希望するわけなんですが、今申しましたように経営が非常に不振だったもので、したがって雇用しておった労働者を他の企業派遣をいたしましてスリムになって現在の状況に来ておるわけです。その労働者を引き取る状況でもないという事情でございますので、局長答弁ではいろんな問題を考え見直しについては最終的に決定したいんだ、こういうお話でございますので、事情はやはりよく検討いただきましてできるだけ救済するような方向でひとつ御決定をいただきたい、かように思いますが、お考えを伺いたいと思います。
  16. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 今局長から大体お話を申し上げたわけでございますけれども、当然のことながら私どもといたしましてもお説のような方向検討を進めてまいる覚悟でございます。  本来的に言えば、政令によって定められました特定不況業種生産拡大をいたしまして好況にあるという状況におきましてはなかなか指定しがたいということでございますけれども、ただ一時期をとらえて直ちにそうするということであっては軽率のそしりも免れがたいと思いますので、今局長から内容につきましてお話がありましたように、各業種の実情というものをあらゆる角度から綿密に十分調査をいたしまして、その実態の上に立って方向としてはお説のような方向でこれからも見直しをしてまいりたいというふうに考えております。
  17. 浜本万三

    浜本万三君 次は、労働時間の短縮問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  これも先般大臣所信表明の中で特に気を使っておられることがわかるわけなんでございますが、労働条件の向上と福祉の増進のために週休二日制の普及とそれから改正基準法の円滑な執行に努めたい、こう述べられておるわけなんでございます。そこで、改正労基法がことしの四月一日から施行されるわけでございますので、この問題についての新しい大臣としての基本的なお考えを承っておきたいと思います。  週四十時間労働制への移行につきましては、先般の第百九回国会における改正法案審議の中で一九九〇年代前半にできるだけ速やかに移行できるよう最大限努力するという御答弁をいただきましたし、また一九九三年は努力目標一つになるとの御答弁中曽根総理からいただいておるわけでございます。そこで、移行時期についての中村労働大臣の基本的な考え方を承っておきたいと思うわけです。  なお、一九九三年が一つの目安になる時期とすれば、その時期までに四十時間労働制実施するために、できれば年次計画でありますとか、あるいは労働省ではプログラムというふうにおっしゃっておられるようでございますが、そういう問題についてあわせてお考えがあればお聞かせをいただきたいと思うんです。
  18. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 週四十時間労働制につきましては、可及的速やかに到達することとしまして、これに向けて法定労働時間を段階的に短縮することといたしておるわけでございます。  改正法施行後に三年を目途に週四十四時間労働制としまして、おっしゃられましたような一九九○年代前半までにできる限り速やかに週四十時間労働制移行できるように努力をしていかなければならないと考えております。  九三年というお話がございましたけれども前半ということになりますと大方その辺ではないかなという感触でございまして、九三年というふうに明確に決めておるわけではございませんけれども、そういう方向努力することにいたしております。  なお、現在、新たな労働時間短縮計画策定につきましては中央労働基準審議会労働時間部会に検討をお願いをしているところでありまして、労働省としましてはこの新しい計画に基づきまして今後とも労働時間対策計画的に進めてまいりたい、こういう所存であります。
  19. 浜本万三

    浜本万三君 せっかくそういう傾向にありますのに、実際の日本労働者労働時間が延びておるという現実があるわけです。私はまことに残念だというふうに思うわけでございますが、六十二年の毎月勤労統計調査によりますと、六十二年における労働者一人平均年間総実働時間は前年よりも九時間延びまして二千百十一時間になったと報告されております。これはまさに労働時間短縮に逆行する資料だというふうに思うわけでございます。  その理由はいろいろあるんでしょうが、一口に言えば景気がよくなったことが時間短縮に逆行する結果が出ておるというやゆ的な報道もありますとおり、景気がよくなって時間が延びておるということはまことにこれ残念だというふうに思います。  日本労働時間というのは、前々から言われておりますように、アメリカやイギリスに比べると約二百時間、西ドイツやフランスよりも五百時間も長いというそういう事態でございますので、それが国際摩擦要因にもなっておるし、まさに放置できない状態ではないか、かように思っております。したがいまして、早急に解決をしなきゃならぬのですが、とりあえず六十二年の労働時間が前年よりも長くなりました点について労働省としてはどう受けとめておられるか、また今後の見通しについてお考えがあれば承りたいと思います。
  20. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 六十二年におきまして年間の総実労働時間がふえましたことはただいま先生の御指摘のとおりでございます。その中で主として所定外労働時間がふえたということにつきましては、御指摘のように景気回復に伴いまして所定外労働時間が増加したことが大きな理由ではなかろうかというふうに判断しております。また、所定内労働時間も若干の増加をいたしておりますけれども、これは前年、すなわち六十一年に操業時間を短縮をしておった事業所がございますが、これが六十二年に入りまして減ってきたということで所定内労働時間の増加にも影響しているのではないかというふうに思っておりますが、出勤日数自体は六十一年、六十二年とも変化がございませんので、いわゆる週休二日制など制度面で の後退はなかったのではないだろうかというふうに思っております。  しかしながら、今後の見通しにつきましては、改正労働基準法施行によりましてさらに週休二日制の促進に努めますほか、時間短縮の大きな柱にしております恒常的な残業時間を減らしていくというための指導その他に努めることによりまして、今後景気の安定的な推移の中で労働時間の短縮をさらに進めてまいりたいと考えております。
  21. 浜本万三

    浜本万三君 今度、大臣に伺うんですが、その内容完全週休二日制の企業格差是正問題についてでございます。  労働時間について諸外国と比較いたしまして格差が出る要因としてこれまで言われておることは三つあると思います。一つ完全週休二日制の普及率が悪いということ、それから年次有給休暇消化率が悪いということ、三番目は残業時間が非常に長いということ、そういう問題が挙げられておるわけでございます。したがって、政策的には諸外国との格差をそれらの問題を一つ一つ解決しながら縮めていくような効果的な施策の展開が求められておると思うんでございます。  翻って、日本完全週休二日制につきまして労働省資料を調べてみますと、全企業におきましては二八・二%が実施されておるようでございますが、これは外国に比べると非常に普及率が悪いということになります。ところが、企業規模格差を見ますと非常に大きいということがわかるわけです。例えば千人以上の大企業は五〇・六%既に実施されておる、それに対しまして中小企業は一五・六%、小企業の場合にはわずか三・五%という状態になっておると思います。この格差を解消いたしまして週休二日制の実施拡大しない限り全産業規模の効果も上がりませんし諸外国との格差も縮まらない、かように思います。  したがって、この格差是正について労働大臣はどのような決意で取り組んでいただけるのかお考えを承りたいと思います。
  22. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 我が国の労働時間が欧米各国よりも二百時間ないし五百時間も長いというのは実態でございますし、その原因につきましては今お話がありましたことであると承知をいたしております。何といいましても週休二日制の普及状況の違いが根元から違っておるということが大きな原因であるというふうに思っておるわけでございます。何といいましても、この中小零細企業週休二日制のおくれというものを回復しなければならないというふうに考えておるわけでございます。このため、労働省としましても中小零細企業に対しましてはこれを集団としてとらえまして、その集団を対象にこれから啓発、指導、特に時間短縮のための指導員というような制度を設けましてこれに積極的に取り組んでまいると同時に、労使の双方の真剣な取り組みが行われるような援助促進をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、中小企業に波及効果の大きい例えば公務員の週休二日制の問題とか金融機関の週休二日制を推進することによりまして規模間の格差の是正に努めてまいる所存でございます。
  23. 浜本万三

    浜本万三君 今大臣がおっしゃられましたように、国民の合意がそこに形成されつつある中でまことに残念な発言が報道されておりまして、私もけしからぬことだと、かように思っておるわけです。つまり、最近銀行や証券や保険会社、郵便局など官民の金融機関が、来年、六十四年の二月から完全週休二日制へ移行する方針を明らかにされたわけでありますが、これは非常に私としても喜ばしいことだと思っております。  そういう中で、六十三年三月十七日付の報道によりますと、石川六郎さんという日本商工会議所会頭が定例の記者会見で「中小企業にとって土曜日も大事な(営業)日だ。国のサービス機関が率先して週休二日にすることには、いろいろ問題がある」という発言をされております。これは結局、郵便局の週休二日制に不満の意味を表明されたことになるのではないかと、かように思います。経営側のトップの人がそういう発言をいたしますと、大臣の期待されておるような波及効果というのがなかなか企業全体に及ばないと、かように思います。こういう発言につきましてひとつ中村労働大臣の率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。
  24. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 金融機関の完全な週休二日制につきましては、一面サービスの低下が生じないか、その場合中小零細企業に何らかの影響を与えないかということが懸念されているということは私どもも承知をいたしておるわけでございます。こうした懸念に対しまして各金融機関におきましては、完全週休二日制を実施するに当たってCDの設置とかあるいは夜間金庫の整備などによりましてサービスの低下は極力避けていきたいという意向を表明しておりますし、また労働省としましてもそういう方向でのこれから指導を行ってまいりたいと考えております。  金融機関の完全週休二日制の導入というのは、そこで働く人の、つまり勤労者の福祉の向上はもとよりでございますけれども中小企業における週休二日制推進に向かっての波及効果といいましょうか、一つの先導役といいましょうか、そういうことが極めて大きな意義を持つわけでございますので、円滑にできるよう今後とも関係機関や関係省庁と協力しながら適切な対処をしてまいりたいというふうに考えます。
  25. 浜本万三

    浜本万三君 先ほども例として申しましたように、経営のトップがいちゃもんをつけるという状態ではなかなか難しい事情であるわけなんでございますが、やはり完全週休二日制の普及に一段と弾みをつけるためには率先して金融機関の完全週休二日制を実施するとか公務員の土曜閉庁方式による完全週休二日制を早く実現するとかいうような積極的な施策をとることが必要であると思います。そのためにはどうしても労働大臣に積極的に発言をしていただき行動していただかないと完全週休二日制というものは全体に普及しないんじゃないかというふうに思いますので、そういう意味での積極的なひとつ御活動をしていただきますように、これは要望をしておきたいと思います。  それから次の問題は、週休二日制の普及と年休取得環境の整備の関連につきましてお尋ねをするわけなんでございますが、今後完全週休二日制を一層普及させていく中で逆に年休そのものの取得ができないようになるのではないかという懸念もあるわけでございます。そこで、年休が完全にとれるような環境整備が必要になってくると思います。完全週休制を導入した上で年休も二十日間はっきりと取得していくための方策をそういう意味では早急に確立していただく必要があると思います。先般の労働基準法改正のときにも年休の計画的付与ということが述べられ、労働省はこれを適切に指導するという御答弁でございました。この点をあわせまして、年休に対する労働大臣のお考えを明らかにしていただきたいと思います。
  26. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) お説のように、週休二日制の普及年次有給休暇の取得促進というものは我が国の労働時間短縮に向けての極めて基本的な重要事項であると承知をいたしておるわけでございます。年次有給休暇の取得促進につきましては、まず労使協定によりまする計画的付与、このことによりまして例えばゴールデンウイークのときあるいは夏季等におきまする連続休暇の定着、年次有給休暇の不利益な取り扱いの是正等、その環境整備に当然努めてまいらなければいけない、大きな決意のもとに推進するつもりであります。
  27. 浜本万三

    浜本万三君 今申しましたことでもう一回もとへ返ってお尋ねするんですが、昭和六十二年五月の経済審議会の建議によりますと、西暦二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に年間労働時間を千八百時間程度、その中身は例えば完全週休二日制の実施、有給休暇二十日の完全消化などを目指すことが必要であると提言をされております。  そこで、年休の取得率を引き上げていく必要があるわけでございますが、年休の取得状況労働省の統計で調べてみますと、五十五年の取得率が六一%、六十年が五二%、六十一年になりますとさらに下がりまして五〇%と年々下がっておるよ うな状況でございます。その原因は一体どこにあるのかということを明らかにしておかなきゃならぬと思うわけでございます。私の考え方では、先ほど申しました週休二日制の拡大傾向との関係があると同時に、もう一つ企業の人事考課に対する影響もあるのではないか、かように思うわけでございますが、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  28. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 最近におきまして年次有給休暇の取得率が低下傾向にございまして、六十一年が五〇・三%という状況になっておりますことは先生の御指摘のとおりでございまして、その理由につきまして世論調査等を見ますると、周囲への気兼ねあるいは病気などのために、不時のために休暇をとっておくというようなこと、あるいは職場の雰囲気として取りにくいということなどを挙げる人たちが多くなっているわけでございますが、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、年休を取得することに対して不利益な取り扱いがなされる、すなわち皆勤手当が出ないとかその他人事上にも差が出てくるというようなことであれば、これは本来の年次有給休暇趣旨に反することになるわけでございますので、先ほど来申し上げましたような不利益取り扱いの是正など環境整備によりましてこれら年休取得の促進が図られるんじゃないだろうかというふうに考えておりますほか、週休二日制が進んでくると年休の取得率が下がってくるという考え方も一部にございますけれども外国等では完全週休二日制が普及する中でまた年次有給休暇もバカンスその他でほぼ完全に近い形で取られておるということでございますので、要は年次有給休暇を十分に消化するような企業風土をこれから確立していくということが重要ではないだろうかという観点からさらに必要な指導、援助等に努めてまいりたいと考えております。
  29. 浜本万三

    浜本万三君 最近、労働組合の組織率が下がりまして二八%台になったとかいう話もございまするし、また、企業が小さくなればなるほど労働組合の組織率が少ないという状態でございますので、今申しましたように人事考課を恐れて休めない、こういう事情があってはいけないので、御答弁のようにより積極的に指導をしてもらうように要望をしておきたいと思います。  中小企業の問題について、国の助成措置が必要なのではないかということで次の御質問をいたしたいと思います。  労働時間の短縮を推進していく中で、中小企業は非常に大きな問題に直面することは間違いない、こう思います。中小企業では、従業員の福祉より企業の利益を優先させるという立場の方が非常に多いのが実態であります。休みを多くすることはコストアップにつながるというので、できるだけ労働時間の短縮や休暇を付与しないという問題もあるわけでございます。また、週休二日制の進め方を労使にゆだねておきましても、先ほど申したように労働組合の組織がないという企業が多いわけでございますのでなかなか事が進まないような状況にもなるんではないかと思います。したがって、中小企業における完全週休二日制を普及させるためにはある程度の国の助成措置が必要なのではないかと思います。このことは当時多くの新聞に投書も出ておりまするし、また世論としても若干そういう空気が向上しつつあると思います。  どういう国の助成措置かといえば、税制上の優遇措置でありますとかあるいは労働省が今行っておられます雇用保険四事業の中で時短の助成金制度を創設するとかいうようなことでできるだけ目的を達成するようにしたらどうかというのが私の考え方でございますが、それに対しましてはいかようなお考え方お尋ねをいたしたいと思います。
  30. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 中小企業におきます労働時間短縮の困難性にかんがみ、先ほど先生お話のような税制面あるいは助成金等による促進策を考えてはどうかという御意見がいろいろあることは十分承知いたしておりますが、基本的には労働時間短縮は大企業であろうと中小企業であろうとも労使の自主的努力、あるいは特に中小企業におきましては中小企業事業主が時間短縮によって企業の近代化あるいは人材確保等に寄与していくというメリットに着目をしていただくということが重要でなかろうかと考えているところでございますが、これらの助成制度の御提案につきましては時間短縮助成金を支給することを中心に進めることが適当なのかどうか、あるいは法定労働時間を四十六時間あるいは四十時間に向けて短縮していくという法律的な最低基準を守っていただくという観点に立って、国が助成をするということとは両立するのかどうかというような問題が考えられますほか、これらの助成金の支給というのが時間短縮に本当に効果があるのかどうかというようなことなど種々検討を要する点があろうかというふうに思っておりまして、直ちにこれを導入するということには問題があるというふうに思っております。  私どもといたしましては、六十三年度から新たに専門の指導員を配置してこれら中小零細企業に対する指導、援助、こういったソフト面の対策によって短縮に取り組みやすい条件、環境づくりに努めるということを中心に進めてまいりたいと考えております。
  31. 浜本万三

    浜本万三君 次は、長時間労働背景一つになっております時間外労働の規制の問題についてお尋ねするわけなんですが、時間外労働の規制につきましては、さきの改正基準法審議の中で、当面六十三年度には時間外労働協定に関する実態調査を行うとともに、これに基づき労使が締結する時間外労働協定締結の指針に年間の時間外労働時間の目安を加える等その見直しを行い、引き続き有効な規制方法について検討する、そういう方針が明らかにされたわけでございます。  そこで、その実態調査を行い、これに基づく指針の見直しは早急に行って、六十三年度中に新しい指針を明らかにすべきではないか、かように考えますが、いかがでございましょうか。  また、年間時間の目安といたしましては、現状を追認するという方法でなく、少なくとも現在の非工業的事業の女子労働者労働時間百五十時間以内におさめるべきだ、かように私は思うわけです。この点につきましては第百九国会におきまして我が党の千葉議員から質問をいたしまして、平賀労働基準局長が次のような答弁をされております。「新前川レポートでは、」「年間の総労働時間千八百時間程度実現の場合に、所定外の時間は年間百五十時間程度と想定をしておると承知しております。」、こういうふうな御答弁があるわけでございます。したがいまして、時間外労働時間の規制について労働大臣の所見を伺いたいと思います。
  32. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 指針の見直しにつきましては、先生の御指摘のとおり六十三年度中に時間外労働に関する実態調査を行いまして、この結果を踏まえまして、中央労働基準審議会にお諮りした上で六十四年四月実施を目途に見直しを進めたいと考えております。  その場合、年間の時間外労働時間数の目安につきましては、さきの国会での答弁等も参考にいたしまして、現在の月五十時間の十二カ月、いわゆる六百時間というような単純なものではなくて、時間外労働の業務の繁閑に応じた波を考慮した時間数というものを決めていく必要がある、かように考えております。
  33. 浜本万三

    浜本万三君 もう一つ労働時間の長い業種の指導の問題についてお尋ねをするんですが、これは旅客運送業に関するものでございます。  労働時間の短縮は時代の趨勢であるというふうに言われておりますが、自動車運転手の労働時間は全産業中最も長いと言われておるわけです。道路運送業の場合には二千六百時間を超えておるというふうに報告をされております。この問題につきまして、労基法改正案の審議をいたしました百九国会では参議院の社労委員会で「自動車運転者の労働時間等の規制に係る問題については、今次法改正と一体のものとして、適切な措置をとる」ようにという附帯決議がつけられたわけでござい ます。したがって、自動車運転者の労働時間の改善基準、二七通達というものでございますが、この見直し作業を早急に進めなきゃならぬと思うんですが、見直し作業の進展状況はどのようになっているのかということ、また有効な規制策について労働大臣はどのようなお考えを持っておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
  34. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 自動車運転者の労働時間問題は大変重要な問題でございますし従来も指導に当たってきたんですけれども、執務の実態から申し上げまして実効が上がっていないというのが本当の姿でないかと思うんです。したがいまして、この際さらに積極的に改善を図る、早急に解決していかなきゃいけないというふうに考えておるわけでございます。  この時間等の問題につきましては、現在、関係業界の労使代表が参加をいたしまして中央労働基準審議会の中で自動車運転者労働時間問題小委員会を設けまして鋭意検討をされているさなかでございます。同小委員会の結論が出た時点で、それを踏まえながら適切に対処してまいりたいと思いますし、その結果を踏まえて今の規制のあり方などもあわせて検討を進める予定にいたしておるわけでございます。
  35. 浜本万三

    浜本万三君 基準法の施行と一体なものということでございますので、その点は時期おくれでないように速やかにひとつ結論を出していただくように要望しておきたいと思います。  この問題で最後になりますが、新聞報道によりますと、労働省は、労働時間短縮を積極的に進めるため、労働大臣の私的懇談会として労働時間短縮政策会議を設置する旨明らかにされております。新聞によりますと、ハイレベルの人材をもって三月三十日に発足するんだということが報道されておりますから、この会議の設置目的、構成メンバー、活動の内容について決まっておれば伺いたいと思います。  さらに、労働時間短縮政策につきましてはどんどん知恵を出していただくことは大変結構だと思います。しかし、それを実行に移していただくということがなければ短縮の効果は上がらぬ、かように思います。労働大臣に特段の配慮をいただきたいと思うんですが、あわせて御所見を承りたいと思います。
  36. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 労働時間の短縮問題は、単に労働条件の問題だけではございません、国民生活全般にかかわる幅広い問題でありまして、今後労働時間をより一層短縮していくためには広く国民的なコンセンサスが形成される必要性があるわけでございます。このため、労使のトップを初めとしまして各界の有識者に御参集をいただきまして新たに労働時間短縮政策会議を開催し、幅広い視点から率直な意見交換を行い、労働時間短縮の進め方についてコンセンサスの形成を図っていただきたいと考えておるわけでございます。  なお、労働省としましても、来年の春ごろを目途にその結果を提言として取りまとめていただくよう考えておるわけでございまして、この結果を踏まえて、労働時間の短縮というのは労働行政にとりまして世紀の事業だと私も承知をいたしておるわけでございまして、御指摘のように、提言の中身に沿った積極的な取り組みをしていかなければいけないというふうに考えておるわけであります。
  37. 浜本万三

    浜本万三君 次は、若干五分ほど時間がございますので、春闘問題について簡単にお尋ねをいたしたいと思います。  大臣が先般の所信の中で「名実共に豊かな勤労者生活を実現することが求められており、私は、そのための労働行政を積極的に推進してまいる所存であります。」というふうに述べられております。そういう意味では労働者の生活条件を引き上げる春闘という問題につきましては非常に強い御関心を持っていらっしゃるのではないかと思います。春闘も四月上、中旬には一応のめどをつける方向で進められております。そういう問題につきましてどういう御感想を持っていらっしゃいますかお尋ねをいたしまして、時間が参りましたそうですから私の質問を終わりたいと思います。
  38. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 勤労者の生活のゆとりある質の向上あるいは福祉の向上という面から眺めましても、あるいはまた今内外から要請をされておりまする内需主導による均衡ある経済の発展とそのことに寄与するためにも、経済成長の成果というものを賃金等に配分されますことは極めて好ましいことであるというふうに私どもはかねてから主張をいたしておるわけでございます。ただ、個々具体的な賃金の決定というのは、これはいろんな経済指標があります。けれども、実際の個々の産業企業実態というものはやっぱり労使の皆さんが一番よく知っておるはずでございまして、そういうことを踏まえながら労使が真剣に話し合って自主的に決定することが原則でありますので、そうあるように私どもはこれからも十分関心を持って見守っていたいというふうに考えておるわけであります。
  39. 浜本万三

    浜本万三君 じゃ終わります。
  40. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本調査に対する午前の質疑はこの程度とし、正午まで休憩いたします。    午前十一時二分休憩      ─────・─────    午後零時一分開会
  41. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、労働問題に関する調査を議題とし、労働行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  42. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 まず、私は社会労働委員会初めての質問でもありますから大変幼稚な点もあると思うんですが、ひとつ御勘弁を願いたいと思います。  まず、大臣にお聞きをしたいと思っておりますけれども、ここに労働省雇用政策研究会の発表もありますが、七十年には失業率も三%に達するんではないか、こういう失業見通しを立てた発表と思うんですが出されておるわけです。こういう状況の中で、産業構造変化を含めてこれから先労働省の果たす役割というのは非常に私は大事ではないか。そういう点で霞が関の各省庁間を見てみますと、確かに労働省そのものは一般国民あるいは皆様方の意見をよく聞いていただいて非常に民主的に運営をされておるという評価が一般的にあるわけです。そういう点ではぜひ今後もそういう方向でひとつ労働行政を進めていっていただきたいというふうに思っておりますが、役割なんかについては私が今大臣からここでお聞きする必要はないと思いますから、そういう姿勢でぜひひとつ今後進めていただきたい、冒頭お願いをしておきたいと思うんです。  そこで、第一〇一国会からずっと連続して続いてまいりましたNTT関係の本院での附帯決議の問題について、これは三年後に廃止をするという方向検討するというのが附帯決議で決定をされておるわけですが、既に発足をしてことしで三年経過をいたします。そういう中で、衆議院段階でこの間、これは逓信委員会の中の問題でありますが、第一義的には労働省の御判断を仰がなければいけないということで政府委員の方が阿部委員の質問に対してそういう回答をなさっておるわけです。私は、労働省そのものが法案をつくって提案をされる担当の省でありますからもちろんこのとおりであろうと思うんですが、既に三年経過をしつつありますから、このことについて今の大臣の御所見をひとつお伺いをしたい。  同時に、NTTの労使関係、これについて三年前の審議の段階も坂本労働大臣あるいは中曽根総理を含めて大変な実は評価をされておるわけですが、今、現在のNTTの労使間についてどういうふうに大臣は評価をされておるかお伺いをしたいと思います。
  43. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) NTTにつきましては民営化後におきましても一度もストライキは行われてはございませんし、またすべて労使間におき まして円満な中で問題が解決をされておりますし、労使関係全般について安定的に推移しているという判断をいたしておるところであります。
  44. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 例えばストライキ問題についても、これも衆議院の逓信委員会で参考人として出てまいりましたNTTの朝原参考人が、いわゆる労使関係の協定を結んでおりまして事実上運営としては支障がないんだと。これは電通の労働組合の幹部の皆さんからお聞きをしましても、いわゆる保安対策については民間に移行する前からNTTになる前からそういう協約を結んでストライキ等は打っておったようですから、そういう労使関係等もありますから、私は、ここらでひとつ労働省が一歩前向きになっていただいて、確かに前向きとは思いますけれども三月いっぱいに、三年間経過をした後議論をするということでなくて、もう三年経過しつつありますから、きょうやっぱりこの時点ぐらいでこういう方向へ持っていきたいんだと、あるいは今国会中にぜひともこの附帯決議については廃止をして、そして二重規制についてはもう必要ないというような前向きの大臣のお考え方をいただきたいと思うんです。
  45. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) NTTの特例調停制度問題につきましては、当時の中曽根総理大臣の委員会における答弁も十分承知をいたしておりますし、また当時の大蔵大臣、今の竹下総理がいろんな御答弁をなさった中身につきましても十分承知をいたしておるわけでございます。四月で三年たったということでございますから、私どもは四月以降に本来的には見直しをするというのが建前であろうと思いますけれども事業法の中にもいろいろ規定があるわけでございます。それらを踏まえまして今日まで検討を重ねておるわけでございますけれども、本院の附帯決議もありますわけでございますから、御趣旨の線に沿いましてできるだけ努力してまいりたいと思います。  ただ、今国会中と言われましても関係者、あるいはこれは内々の話でございますけれども党内の意見等も集約いたさなければならない問題も残っておりますので、それらのことに努力をいたしながら、申し上げましたように精いっぱい努力いたしましてできるだけ早い時期にということで結論を出したいというふうに考えております。
  46. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 ぜひひとつ、私は、もう附則三条を廃止するだけですから別に大した手間は要らぬと思うんです。大臣の今の前向きの御答弁をひとつ大いに信頼をしてお願いをしておきたいと思います。  じゃ次に、これは私の意見を申し上げておきたいと思うんですが、今度の国会の中で労働組合法の一部改正案も提案をされておるわけですが、私は、今日まで国労委にしろ中労委にしろ各都道府県段階の地方労働委員会にしろ、それぞれ、特に公労委の皆さんたちの選任については労働委員会の基本として底を据えてお互いに議論をし、そして推薦を申し上げて、最後にやっぱり任命をしていただいてきたという歴史的な経過もありますし、あれはやはり民主的な運営の根幹ではないかというふうに言われてきたわけですね。そこらの部分が改正をされる問題とか、あるいは今の行政改革で例えば国家公務員にしろ地方公務員にしろ、定数増だってなかなか認めることは非常に困難。そういう中で、見ていますと公労委の方の二人の常勤制をしくというような問題なんかも出ておるようです。これはこれから後、法案の委嘱審議の段階で申し上げてまいりたいと思うんですが、やっぱりこういう問題についてこそ私は、今冒頭申し上げましたけれども労働省は国民的な評価は非常に高い省庁でありますから、ひとつこういう点についてはもう少し慎重に、そして多くの意見を聞きながらまとめていくような方向でやっていただきたい。これは意見としてきょうは申し上げておきたいと思います。  きょう私は労働者災害補償保険法を中心にお尋ねをしてまいりたいというふうに思っております。  今、労災あるいは職業病の発生というのは生産過程では避けることのできないものとされて、労働者の基本的な権利であります生命と身体そして健康が常に犠牲にさらされておるというのが現状であり、その中で生産性向上を果たして日本企業は世界一のものになってきたんではないか。そういう中で一たん労働者が被災をいたしますとあるいは病気にかかりますと、被災者本人はもちろん、家族ともども生活そのものが根底から破壊をされる。今から申し上げますが、私は、非常に悲惨な状態に置かれておる労働災害の一級認定を受けておる方の問題についてひとついろいろと過去の経過を含めてお尋ねしてみたいと思うんです。  それで、事の起こりは非常にこれは古い話でありまして、社労の先生方あるいは大臣も御本人からお手紙をもらったかもしれませんけれども昭和三十三年に、この方は朝日新聞の記者で、取材途中にトラックにはねられましてそして重傷を負われました。その後ずっと一級の認定を受けられて、本当に全く不自由な体で奥さんの全面的な介護のもとに生活をなさっておる方で、私は当選後何十通という実は叫びといいますか訴えといいますか非常に悲壮な状況での手紙をたくさんもらいました。是が非でもこういう方たちのためにもということで実はきょう準備をしたわけですが、今日まで労災保険を除いた各種の共済なりあるいは福祉関係、直接関係ありませんが例えば国民健康保険なんかは、医療費の増高によりまして例えば福岡市でもことしで七年連続実は値上げがされるわけですが、そういう中で労災保険料率について私は大体七年間ぐらい引き上げがされていないんじゃないかというお話を聞いております。こんなに医療費もふえておりますしあるいは被災者もたくさんふえておるわけですが、いつごろ引き上げが行われたのかあるいは近々そういう労災保険料率の引き上げがあったのか、ひとつお聞かせを願いたいと思うんです。
  47. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労災保険の保険料率につきましては、労働保険の保険料の徴収等に関する法律におきまして、過去三カ年の業務災害及び通勤災害に係る災害率、労働福祉事業として行う事業の種類及び内容その他の事情を考慮して定めることになっておるわけでございますが、これに基づきまして保険料率は三年ごとに見直しを行っているところでございまして、ただいま申し上げましたような事情を考慮して改定の必要な業種につきましてはその必要に応じまして労災保険料率の改定を行っているところでございまして、この事業の種類の区分は五十三になっておりますけれども、最近の料率の改正につきましては、六十一年、一昨年の四月に木材伐出業ほか漁業、鉱業、建設事業の一部等を含めて十四業種についての引き上げを行っているところでございます。
  48. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 確かに、部分的な業種については一定程度上がっておるというふうに見ておりますが、では現在の労働災害の発生件数、その中で特に重度障害、いわゆる一級から三級の認定を受けた障害者の数は大体どのくらいなのか、四、五年分ぐらいで結構ですけれども、お知らせ願いたいと思います。  と申しますのは、ここに私幾つかの資料を持っております。これは本年の一月二十九日に労働省労働基準局安全衛生部計画課が発表された内容ですけれども、これによりましても、確かに労働災害そのものは全体的には努力によって減少しつつある。がしかし、死傷者の数はいまなお年間八十一万人に達しており、約二千三百名のとうとい命が失われています。これは特に中小規模事業所に多いんだ、こういうことが報告として挙がっておるわけです。  そして、私は、これはフクニチ新聞のコピーですけれども、「ピーポー」というこれにも、福岡市の消防署の救急出動の件数が前年よりも五十四件実はふえて、その中で一番多いのがやっぱり労働災害の現場であった。特に、建築現場等の災害が非常に実は発生率が高くなってきた。それで労働災害だけを見てみますと、前年度に比較して二〇%もアップをした。消防の救急出動の件数から見てもそういう状況だというふうに載っております。  それから、これは六十三年の三月十八日の朝日新聞ですが、「出稼ぎ者にも有給休暇を」ということで秋田県出稼組合連合会の方の投稿を読ましてもらいましたが、この中でも、二万二千四百人余りが加入をしておる、ところがことしの三月一日現在の出稼ぎ先の死亡者が三十九人に上る。この数は昨年よりも八人多い。内訳は病死が二十三人、労災事故死が十三人、そして交通事故死等が三人で、特に労災事故死が昨年よりも十人も増しているというふうにこれにも出ておるわけです。そして、これも先ほど言いましたように建設現場がやっぱり中心なんです。こういう状況の中で、私は七不思議の一つではないかと思うんですけれども、先ほど言いましたように、医療費なんかどっどっどっどっと上がっておる。その中で、労災の保険料率だけが幾らか上がってはおりますけれども、確かに支払いというのは使用者側ですから企業側が全部払うわけですから、労働省の思うようにはいかないと思うんです。抵抗はあろうと思うんですけれども、七不思議の一つではないかというような気がして実はならないわけです。  そういう点で、世界各国との、特に欧米なんかとの比較ぐらいで結構でございますが、日本の労災保険料率と欧米の保険料率との対比、幾つか私も持っておりますが、労働省でわかっておればひとつお示し願いたいと思います。
  49. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) ただいま幾つかの問題についてあわせて御質問いただきましたので、順次御説明申し上げたいと思います。  まず、欧米諸国との保険料率の比較からお答え申し上げたいと存じますが、我が国の労災保険制度と欧米諸国の労災保険制度とでは財政方式が異なっていること等もございまして直接比較することは難しいわけでございますが、比較的似ております西ドイツと比較してみますると、全業種平均で労災保険料率は賃金総額に対して約一・五%、これは一九八二年の数字でございますが、こうなっております。これに対しまして我が国の労災保険の全業種平均の保険料率平均は約一・〇二%でございまして、西ドイツよりも形の上では低くなっております。しかし、我が国におきましては年金受給者が今後増加するということが予想されておりましたけれども、西ドイツにおきましては既に年金受給者の数は増加基調がとどまっておりまして、いわゆる年金制度の完熟状態に達しているというようなことなども留意する必要があるのではないだろうかと考えております。  それから二番目に、最近五カ年問の労災の被災者の状況ということ、そのうち特に重度障害の方々の状況についてのお尋ねがございました。  ちなみに五十七年度から見てまいりますと、大体九十六万から八十六万程度六十一年にかけましての新規保険給付の支払い者がおりますけれども、ただいま申し上げました五十七年から六十一年度の五年間を累計いたしますと約四百五十八万人に達するわけでございます。また、この五年間に障害等級が一級から三級に認定された方々の総数が約四千人でございまして、傷病年金の新規受給者は約一万人という状況にございます。  そのほか、最近における災害の状況についても、お話がございましたとおり最近災害件数の減少傾向にいわば鈍化傾向が生じていることは事実でございますし、また建設業等において死亡災害が増加しているというような遺憾な状況も出ておりましたので、さらに安全対策につきましては十分意を用いているところでございますし、六十三年度から新しい第七次の労働災害防止計画策定いたしましてさらに災害防止の実を上げてまいりたいと考えております。
  50. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 それでは、経過等についてはそういうことでしょうが、さっきから私が少し触れましたけれども、今、一級—三級の重度の労災被災者の皆さん、こういう方たちの要求の中心というものは御存じでしょうか。
  51. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労働災害による重度障害の方々の団体、例えば全国じん肺患者同盟あるいは全国脊髄損傷者連合会等から労働省に対しまして陳情を受けておりますが、その内容等例示いたしますと、重度障害者で長期にわたって療養した後に業務外の事由等で亡くなった場合にも遺族に対して必要な救済措置を講じてもらいたいこと、あるいは介護料の大幅な引き上げ、さらには高齢重度障害者の介護施設を早急に設置すること、労災年金と社会保険年金の完全併給をすることなどの陳情を受けておるところでございます。
  52. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 今言われました中の二つの問題、通称二課題というふうに被災者の皆さん言っておるようですが、いわゆる介護料の問題とそれから被災者が亡くなった後の遺族年金問題、かなりな経過がありますが、これについて、労働省として労働保険事業の重要事項として労災補償保険審議会の方に提起をされたことがありますか。
  53. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労働者災害補償保険審議会の中に労災保険基本問題懇談会を設けまして労災保険制度に関する重要な問題を検討していただいているところでございますが、この懇談会が昭和五十七年から六十年にかけまして検討を行った際に各関係団体からの要望についても幅広く収集いたしまして検討を行ったところでございまして、御指摘の要望についても検討をお願いしたところでございます。これらの検討の結果、同審議会において当面講ずべき措置として取りまとめられた建議につきましては六十一年に必要な法改正を行ったところでございますし、引き続き検討すべきとされた基本問題についてはさらに懇談会におきまして検討をお願いしているところでございます。
  54. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 そうすると、今の言いました二課題については引き続き検討する事項に入っておりますか。
  55. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) この二つの課題につきましても先ほど申し上げました基本問題懇談会において検討をお願いしたわけでございますが、その際、重度障害者が業務外の事由によりまして亡くなった際にその遺族に対して労災保険の保険給付を認めるということは労災保険の基本を揺るがすことにもなり、これをとることはできないという御意見でございまして、私どもといたしましても、このような経緯を踏まえ、現在の法制度に基づきまして業務に起因しない死亡について遺族補償を行うことは困難であるというふうに考えているところでございます。  また、介護料の問題につきましては、年金の一、二級の方々には介護費用も考慮した割り増しが行われていることもございまして、給付体系全体の中で検討すべき問題ではないかということでございまして、この給付体系のあり方につきましては基本問題懇談会において引き続き検討をお願いしているところでございます。
  56. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 大臣御存じだと思うんですけれども、これは非常に古い歴史があるわけです。最初は五十三年の八月七日の参議院の社会労働委員会で片山甚市委員が取り上げて、それからずっと話が続いてきておるわけですが、五十九年の四月十二日に本院で本岡委員が取り上げております。その間、五十八年の十月には当時の愛知労働政務次官がこの被災者の方に対して直接御返事も送っておるわけですね。今局長がおっしゃったように、確かにいろいろな問題点がある、難しさがある、がしかし労災保険基本問題懇談会の検討テーマになっておる、いずれ論議されるとのことでありましたのでそれを見守っていきたいという政務次官からの御返事も本人に直接実は行っておるわけですが、ここで最後といいますか、衆議院の社会労働委員会で同じ問題が取り上げられました。これが五十九年の六月十九日です。その段階で当時の社会党の多賀谷委員がこの二課題問題について大臣を含めていろいろと質問をされておるわけです。その中で、当時の望月さん、政府委員としての答弁ですが、この望月政府委員は、この二課題については労災補償審議会の中の労災保険基本問題懇談会の中でこの問題を提起をしています、現在議論をしていただいている最中でございますと。今おっしゃったとおりだと思うんですね。その結論を待ってこの問題に対応していきたいと考えておりますと。ところが、このときに坂本労働 大臣もやっぱり御答弁なさって、多賀谷委員のおっしゃるお気持ちもよくわかるので懇談会に十分その意見を反映さして議論をさしていただきたいというふうに思っておりますと。このときに多賀谷委員はかなり労働省に対して、いわゆる姿勢そのものは後退をしておるんじゃないかと。いわゆる大気汚染による公害補償関係の問題が二月いっぱいでなくなったわけですが、発生源の企業責任による非常にすぐれた補償の制度ができ上がった、それに労災そのものも後からついてきたんじゃないか、労働省は怠慢じゃないかというような指摘までして、そういうやりとりの中で今言ったような御見解も大臣から出ておるわけです。この被災者の方もそういう議事録を実はすべて読まれておるわけです。ところが、いつまでたっても結論が出ないというようなことで、どうしても死に切れないんだという言い方をなさるわけです。  それで、私もことしの二月五日の日に御本人の自宅に行きました。そのときにお聞きをしましたら、新潟大学のあの桑原教授も、社会保障法学会におられます桑原先生も自宅までお見えになって御本人とお会いをしておるわけです。そういう点から見て、確かに今労働省の方が言いましたが、さっき私が言いましたように結局七不思議の一つではないのか。医療費がこんなにどんどんどんどん上がっておって、そして被災者そのものも非常に高齢化してきておるわけでしょう。労災保険そのものの財政もかなり私は厳しいんじゃないかという気がしますけれども、保険料率は余り上がっていない。話に聞けば、日経連からの抵抗が強いんだという話も聞きますよ。しかし、労働省としては、これは日経連にお願いをしてでも保険料率を上げていただいてやっぱり被災者の救済に当たるべきじゃないかと私は思うんです。大臣、そこらについてひとつお考え方をお聞かせいただきたい。
  57. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今過去の経緯にもお触れになりましたので、その辺をちょっと繰り返しになりますけれども申し上げますと、これらの政府委員答弁あるいは元大臣の御答弁等の中で検討さしていただきたいというお話等につきましては、先ほど申し上げました基本問題懇談会あるいは審議会等におきまして当面改善すべき措置等の中で検討をいただいたわけでございますが、その際の検討の経緯は、先ほど申し上げましたような制度趣旨等においてとり得ないということで、その他改善すべき措置につきまして所要の制度改正法律改正をさしていただいたというような経緯になっているわけでございます。  さらに今お話しのような医療費増高の問題等もございますけれども、労災補償におきましては賃金の一定額ということで、総額自体が減少しているわけではなくて全体としてはふえておりますけれども、災害の状況等によりまして収支を図ってきているという中で保険料率が設定されてきているということでございまして、先ほど来申し上げましたように業種によっては引き上げているもの等がございまして、制度の健全な運営につきましては引き続き堅持をしているところでございます。
  58. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 じゃ、ちょっと視点を変えてお尋ねします。  私が知った範囲内ですが、労働省か労災年金福祉協会かどちらか存じませんが、昭和四十六年と五十年に労災重度障害者の一級から三級までの方々の配偶者の方を対象にいわゆる介護の実態あるいは生活の実態等を中心にしたアンケート調査をなさった。その結果を発表されて、八五%程度の配偶者の皆さんが三年から九年間ぐらい介護に専念をしておるそういう大変な実態が明らかになった。これは小冊子で公表したというふうにお聞きをしておりますが、そういう事実はありましたですか。
  59. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 婦人局では、毎年、勤労者家族のさまざまな側面を調査しようということで年々やってまいりましたわけでございますが、先生指摘のような調査もいたしております。
  60. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 これは小冊子で公表したわけですが、これは三年に一回の調査じゃないですか。
  61. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 調査は労災につきましては毎年やっているわけではございませんが、勤労者家族の調査というのは毎年やっておりまして、たまたま労災家族についての調査で今御指摘のようなものがあったということでございます。
  62. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 その後、調査をしたことはありませんか。
  63. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 労災家族につきましては五十年までいたしております。
  64. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 この調査の結果が余りにもひどい状態にある、いわゆる配偶者の皆さんを含めてですね、そういうことでやめたんではないかという言い方がありますが、なぜその後やめたのか。
  65. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先ほど申し上げましたように、婦人局は勤労者家族全般の問題を所掌いたしておりますので、毎年できる限り予算の許す範囲におきまして勤労者家族のさまざまな側面を調査しているわけでございます。  労災家族につきましても何度か調査をいたしまして先生指摘のような実態というものもわかってきたわけでございますが、私どもといたしましては、勤労者家族の問題というのはそれだけではなくってもっと別の面でも実態を把握したいということがございまして、五十一年以降は勤労者の家庭の主婦の生活ですとかあるいは寡婦の就業実態、それから老親の扶養とかさまざま難しい問題を抱えております家庭がございますので、そういったものも含めまして、労災だけではなくてさまざまな面からの調査をしているということでございます。
  66. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 婦人局の方はそうだろうと思うんですね。  それじゃ、六十二年の十一月に労災年金福祉協会が、これは財団法人です。これは労働省の外郭団体でしょう。ここの手によって「労災障害(補償)年金受給者各位」ということで「労災障害(補償)年金受給者の生活実態調査についてお願い」というのを実施をされておりますね。これは労働省の方から依頼をされて調査をされておるのか、あるいは福祉協会の方が自発的にされておるのか、そこらをひとつお聞きしたいと思う。
  67. 岡山茂

    説明員(岡山茂君) 御説明申し上げます。  先ほど婦人局長の方からお話ございましたのは婦人局の立場で特に労災被災者の配偶者の方々の生活実態等を調査をされたわけでございますが、その後は私どもの方の立場で労災年金の受給者あるいはその家族についての生活実態を把握する必要があろうということを考えまして、その後は婦人局にお願いするということではなくて、私どもの方が労災年金福祉協会に委託をいたしまして五十三年度に実施をいたしました。また、五十七年からは毎年その対象をローテーションをいたしまして変えながら、その生活の実態調査をしておるところでございます。
  68. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 その結果について公表されたことがありますか。
  69. 岡山茂

    説明員(岡山茂君) ただいまお話し申し上げました生活実態調査につきましては、私ども行政の参考にしようということで調査をいたしたわけでございまして、最初から特別に公表をするということでやっておりませんので特別の新聞発表とかあるいは報告書にまとめて出版するとかそういったことはやっていないわけでございますが、それは内部的に例えば労災保険審議会に審議の際の御参考にお出しするとかいったような形で使っておるわけでございます。したがいまして、特に秘密にしておるわけでもございませんので、お問い合わせなどがあればその調査内容はお知らせしておるところでございます。
  70. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 そうですか。私が聞いたのは、その調査内容を要求してもなかなかいただけないということで、秘密にしておるんじゃないかというふうなことで上がってきたものですからそういうことをお聞きしたわけです。そうすると、これからおたくの方にお願いをすれば結果についてはいただけるということですね。
  71. 岡山茂

    説明員(岡山茂君) 御要望ございますればお知らせすることはできますので、よろしくお願いします。
  72. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 じゃ、昨年の五月八日に日本社会保障法学会の第二十回の春季総会が開かれまして、百五十人以上の方が集まって非常に熱心な討議がされた。ここに私もこの論文を持ってきておりますが、その総会の中で新潟大学の桑原教授の「労災保険法の今日的課題」と題した、重度障害者のさっきから申しております要求二課題の問題についての特別報告が発表された。これは「週刊社会保障」の六十二年十月十二日号でも論評が出ておりましたが、御存じですか。
  73. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 新潟大学の桑原教授が発表されました「労災保険法の今日的課題」という論文におきましては、介護料の保険給付化、そしてその額を実費相当額とするというような立法論、あるいは業務外で死亡した被災障害者の遺族に対する給付についての立法論、あるいは労災特別介護施設の中間報告についての検討などいろいろなテーマについて論文を発表されておられるということを承知いたしております。
  74. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 いま一つは、京都大学の西村助教授がいわゆる「労災保険法の現状と課題」という論文の中で、この先生は介護料と遺族年金問題で幾つかの外国の例を取り上げている。例えば西ドイツのRVO六百条ですかあるいは五百八十九条三項、いわゆる遺族年金、介護手当の問題等なんかの立法例なんかも出しながら、ここに私その論文を持っておりますが、提起をされておるということも御存じでしょうか。
  75. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 西村京都大学助教授の「労災保険法の現状と課題」におきましては受給者の高齢化、長期化あるいは重篤化の中での介護料の位置づけの問題、あるいは業務因果関係のない場合の給付の問題、さらに今お話しの西ドイツにおける立法例等について触れておられることを承知いたしております。
  76. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 さっき、中ごろだったですけれども労働省の方から被災者その者が亡くなった原因と障害との因果関係がなければ遺族年金は難しいんだというお話がありましたが、この間、私は福岡労働基準局長にもちょっとお会いをしました。青森労働基準局長にもちょっとお会いをしたんです。ところが局長さん方は今一番頭を痛めておる。その因果関係というのは、それぞれ各大学なんかに専門医もおられるわけですから、そこら付近で何かぽっと診たらわかるようなそういうものをつくっていただいたら非常にいいんだということを言われております。  ここに「脊髄損傷により長期療養中の心筋梗塞死」と。私が言いたいのは、今、被災者の方が亡くなった後、遺族年金を受けておるというのは全体の一〇%内外ですよね。因果関係がないからということで遺族補償が打ち切られてしまう。一生懸命になって人に頼んで、勉強して、配偶者の方が最初監督署長あてに遺族年金の請求をする、監督署から却下を受ける、そうしますと労働者災害補償保険審査官に審査の請求をする、ここでも却下をされる、それでもどうしてもということで再審請求をした。これは再審請求で実は認定をしたわけですね。労働基準監督署長が却下をした部分、それから労働者災害補償保険審査官が却下をした部分を再審請求で認める。相当の時間もかかるわけですよ。私も公務災害の労働側の参与をしておりましたからこの部分については同じようなケースでよく存じ上げておりますが、そういう点から見てやはり因果関係をどうとるか、健常であればそういう病気なんかにはならなくて済むはずじゃなかったのかというのが遺族の方たちの御意見なんですよね。ですから、基準監督署長も言っておりますように、そこらについてはもう因果関係と言わずに、重傷を負われた方というのはやっぱりそのために他の病気を併発するわけですから、そういう部分については専門機関であります労災保険基本問題懇談会ですか、そこの方に行政の立場からもぜひひとつ強く私は要望しておいていただきたいということをお願いしておきたいと思うんです。どうでしょうかね。
  77. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 重度障害者、なかんずく脊髄損傷等によりまして長期間療養をしている被災労働者が亡くなった場合等につきまして労災保険の給付請求がなされました場合には、その被災労働者の死亡が業務に起因したものかあるいはそうでないのかという判断をした上で行うわけでございますが、個々の事案ごとに十分調査いたしまして、必要な場合には専門医の意見を徴するなど慎重に判断をしているところでございますが、今お話しのように適切、迅速に判断をしていくということのためにも、この点につきましてはなお検討する余地があるというふうに考えております。  脊髄損傷等によりまして長等間療養を継続した方が併発する疾病などにつきましては、この疾病あるいは影響の重要性にかんがみまして、種々の観点から医学専門家による検討を行うことを予定しているところでございまして、これらの専門家等によりまして医学情報の収集、研究等を進めまして、被災労働者の保護に欠けることのないように努めてまいりたいと考えております。
  78. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 さっきちょっと申し上げましたけれども、私自身が公務災害の労働側の参与をしておった。私らみたいに組合をつくっておってもなおかつ再審請求まで行くということになりますと、相当なやっぱり日数、年月がかかるわけです。  労災の被災者の方々というのは中小企業労働者が非常に多いということで、そういうことを知らないままに泣き寝入りに終わっていくという方だってたくさんおるわけです。そこらをだれかがかぎつけてあるいは聞きつけてそしてそこの遺族の方にお話をするというような手だてをしなければ、知らないままに済んでいくというケースがたくさん実はあるわけですから、そういうことはもう絶対にないように私はこれは労働行政の上からもひとつぜひお願いをしておきたいと思うんです。  そこで、労災保険財政の問題について、私は心配する必要はないと思いますが、三月二十日の朝日新聞で、これは社会保険福祉協会が出した内容ですか、「家族の負担重い在宅介護」、「慢性病では入院治療の二倍」ということが出ておりました。ところが、国家的な見地から見た場合あるいは労災保険財政そのものから見た場合には、病院で治療をなさるよりも奥さんの介護で在宅介護を受けてやった方が医療費も非常に少なくて済むというようなことでその対比が実は出されておるわけです。病院に入った場合、例えばこの方の場合一カ月で六十六万八千円入院費がかかっておる、在宅であれば五万八千円でよかったんだと。ところがあとの諸経費、介護費、そういうものをすべて足しますと患者の負担が、病院に入っておれば二十万七千円で済んだ、ところが自宅におって在宅介護でやれば三十四万四千円金が要るんだ、こういうことが出されておるわけです。これは医療費全般を厚生省としては何とか抑制をしたいという立場からでしょうが。  そういう点から、私は先ほどから申し上げておりますこの被災者の方から何十通という実は手紙をいただいておるわけです。そこで大臣、ここでこの手紙を一通御紹介してみたいと思うんです、要約して書いてまいりましたから。これはちょうど予算案が政府間で議論されておりましたちょうどナーシングホームの建設問題がマスコミに出る時期のころの手紙なんです。この方はさっき言いましたように昭和三十三年の十月に事故に遭いまして、そして一級の認定を受けて現在も不自由な生活を続けておる方なんですけれども、手紙の内容はこう書いてあります。   被災後長い年月の入院治療を受け続けてきたが、当時の医学ではこれ以上症状好転は望めないとして治癒認定を受け、在宅療養を勧められたとき、何か不安は残るが、家族と一緒に生活ができることを喜んでいました。しかし、その後二十数年間の在宅療養が続き、妻の介護にすがりきょうまで生き続けてきました。この間、幾度となく妻を介護から解放するために入院を 考えたけれども、入院すれば家政婦さんをお願いしなければならない。家政婦さんの支払いは紹介料も含めて二十五万から三十万必要とも聞く。労災による介護手当は六十二年度で三万八千二百円。不足額を埋めるためには妻が働きに出て稼ぐ以外にない。しかし、妻の手で月二十五万から三十万稼げる働き場所もないし、せめて介護料を十万円に引き上げてほしい。そして、自宅療養を続け、家族と一緒の生活ができる喜びを味わわしてください。 その方が言っていますのが、やはり同じような意見です。自宅で奥さんの介護を受けながらやった場合、国家的に見た場合には医療費が要らずに、全体的にやはり少なくて済むんじゃないか、そういうことも言われております。  また今日まで介護一筋に尽くしてもらった妻に、私の死後、生活の保障のないことが一番の心の痛みです。現在、労災被災者の死後、配偶者に対する遺族年金の受給者は十人に一人ぐらい。ぜひ動けない私たち労災重度障害者の声を聞いてください。  これがこの方からの私に対する手紙です。何十通と持っております。大臣もいただいたと思うんです。昔労働省の事務次官をしておりました、今の福岡の桑原市長にもこの方はお手紙をやりました。恐らく労働省の方にも来ておると思うんです。  そして、この方と同じ記者の仲間の一人がこういう手紙を多くの記者の皆さんに配っておるわけです。これもちょっと読んでみたいと思うんです。  ○○君は人間が変わった。人世観も変わらざるを得ない運命の奇禍に遭遇したからであろう。彼からの手紙を読み、彼と電話で話をしても、自分の記憶にある彼ではなく、全く違った印象を受ける。それは、単に、歳月だけのなせる結果ではない。これが私の強い第一印象であった。 これは友達の記者の方の手紙です。そして、彼から仮名タイプでもらった最初の手紙から始まり、いろいろ事故の状況なんかも書いております。そして、  当時、六歳と四歳の幼児を抱え、その日より奥様の全面介護に頼る生活が続き、○○君の心情もさることながら、奥様の心身の苦衷は察するに余りあるものがある。   ○○君は、重度障害者の八五%がその妻の介護に依存をしているというふうに言っている。特に、本人死亡後の遺族補償と介護専念の人生を送ってくれた未亡人に対する年金、いわゆる二つの訴えを何とか我々記者たちの手で広げようではないか。 そして、二課題問題について、遺族年金の問題と介護手当の問題を書かれておるわけです。  彼が叫び続ける、障害者の立場を理解してもらいたい一心を貫こうとする信念の鬼とも言うべきであろう。そして、彼は、二課題の解決に時間がかけられない自分自身の命の限界をも感じ取っている。  政治には時として外交辞令の要素が多く、道遠しの感なきにしもあらず。しかし、検討という名の問題先送りだけは避けてほしい。 これは、友達の記者が多くの全国の記者の皆さんにいわゆる報告ということで訴えておるわけです。  こういう点から、この記者の方も行ってお会いになっておるようですけれども大臣、私は二つの手紙を紹介をしました。確かに審議会の専門機関があると思うんです。しかし、そこに対して労働省そのものの姿勢がどう動くかということが私はやはり非常に大きなウエートになると思うんです。ですから、労災による重度障害者の介護に専念してきた配偶者の方は、本人が亡くなった後は生活の見通しがないわけですから、これについてはひとつぜひ大臣努力をしていただきたい、そういうふうに実現する方向努力をしていただきたいと思いますが、最後に大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  79. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 言われましたことは、私は十分理解できるという気持ちでございます。  ただ、労災保険基本問題懇談会あるいは労働者災害補償保険審議会等々の討議の結果にも出ておりますように、この制度雇用主の負担によって賄われているということ、言うならば保険財政そのものの問題である、給付を多くすれば当然労災保険料は上げていかざるを得ない、これは事業主の負担になるという問題、そういう背景がありますし、もう一つは、あくまでも業務に起因するというんですから、まあ常識的に私どもが素人なりに考えますると、脊損になって寝たきりだからこれは体が衰弱してきますからいろんな余病を併発するチャンスは十分あり得るということなんですから、間接的といいましょうか、それは脊損にやはり原因があるんじゃないかと素人なりに考えます。しかし、それは果たして業務であるかどうかということになりますると、それはあくまでお医者さんの専門的な判断ということになろうかと思いますね。  それらの問題を総合的に比較検討していかなきゃいかぬと思いますが、私がここで直ちに検討します、そういう方向で進みますと言うわけにはまいらないし、それだけ私自身もまだ認識を深めておりませんから、しっかり勉強さしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  80. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 大いに勉強はしていただいて、御検討願って結構でございますが、結局、各大臣とも今まで懇談会の方に提起をされた重要課題であるという御認識をいただいて、そういう立場でひとつ御努力願いたいと思います。  終わります。
  81. 中西珠子

    ○中西珠子君 労働大臣所信表明をお伺いいたしまして、それについて二、三質問させていただきたいと思います。  時間が限られておりますので、同僚議員が既に御質問になったことに関しましてはなるたけ重複を避けたいと思っております。しかし、雇用問題については新たにお始めになるプロジェクトについて構想などをちょっとお伺いしたいと思うわけでございます。  経済企画庁の国民所得統計の速報によりますと、六十二年の実質成長率が四・二%になる見込み、外需は〇・七%とマイナスに転じ、住宅投資、設備投資、公共投資など内需が記録的な伸びとなり、内需主導型の成長が軌道に乗ってきたということが鮮明になったと新聞が報道しておりますけれども景気が立ち直ってきたということ、また円高不況からの立ち直りの努力がすさまじく行われた、産業構造転換が急速に進んでいった、その中で労働力需給ミスマッチなどによる各種雇用問題も起きておりますでしょうし、失業防止対策、職業転換のための教育訓練問題、労働災害の防止の問題などと取り組むために労働省がこれまで果たしていらした役割というのはまことに大きいと思うわけでございますが、これからもなお一層労働大臣の指揮のもとで働かれる労働省に対する期待はますます高まってくるものと信じます。  労働大臣は、所信表明の中で「労働力需給ミスマッチにより各種雇用問題が発生すること」を恐れている、「雇用失業情勢の均衡ある改善」を図るために、新たに「産業地域高齢者雇用プロジェクト」を実施するとおっしゃっておりますが、具体的な構想について、また労働大臣のそれに対する信念というか、積極的な取り組みの決意というものについて伺いたいと思います。
  82. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 最近、御承知のように景気は確かに回復基調というよりも拡大基調になっておる、すべての経済指標は大変よくなっておるわけでございます。なるほど、労働行政の中の雇用失業情勢を眺めましても、そのことは表向きはうなずけるわけでございます。例えば、昨年の六月ごろの失業率は三・一というようなことあるいはまた求人倍率は〇・六〇というような最低でございましたけれども、最近はそれが非常に向上しております。求人倍率も前月あたりは〇・八六倍というふうになりましたし、失業率も大体二・ 六%、百六十一万前後の失業者だというふうに言われておるわけでございます。しかし、そうは言いましても、労働行政の面で雇用失業情勢を眺めていきますると全面的に喜べる状態ではございません。一般的な傾向としてはそういう傾向にございますけども、少し中へ入ってみますると、地域、例えば求人倍率が〇・一七倍というようなところもありますしあるいは〇・二五倍というようなところもあります。最高の地域におきましては一・七五倍でございますけれども、今申し上げたような地域がたくさんあるわけで、まだら模様が激しいと、こういう状態でございます。しかも、産業構造転換という事業はこれからも続くわけでございます。それだけに労働省というのは、個々の労働者労働者全体の福祉の向上を図ることを目的としてあるわけでございますから、そういう厳しい地域あるいは厳しい雇用情勢にある高齢者等々を、全体がよければそこはほっといてもいいんだというわけにもまいりません。一人一人のやっぱり豊かさというものを、福祉の向上を求めていくのが労働行政の柱でございます。それだけに非常にきめの細かい福祉政策、わけても福祉の原点は、何といいましても雇用なくして何の福祉だということでございますだけに、この面に重点的に考えていかなきゃいけないということでございます。  そういう面で、その解消策の一環として、来年度は産業地域高齢者雇用プロジェクトをセットをいたしたわけでございますけれども、今、御承知のように今年度はこの三月まで三十万人雇用開発プログラムをセットいたしまして、これは着実な成果を上げております。恐らく三月末では三十万人以上の雇用開発がされるであろうと確信を持っておるわけでございますけれども、そういうプログラムのいい点、これからもそのことをやれば効果が上がるだろうという柱は残しまして、それを中心に新たに助成奨励制度などをつけ加えまして、産業地域高齢者雇用プロジェクトというものをセットしたわけでございます。  具体的に申し上げますると、特定不況業種法改正産業雇用対策の拡充強化、これは特定不況業種の新たな指定もあるでしょうしあるいは今の下請の孫請程度まで含むでありましょうし、特定不況業種指定を受けないまでも、例えば大幅な雇用調整を図らなきゃならぬというような事情につきましても同じような扱いをするというようなことも含んでおるわけでございますけれどもこういうようなこと、あるいは地域雇用開発を中心とした総合的な地域雇用対策の推進、これは御承知のように雇用開発促進助成費というようなものをフル活用いたしましてなお一層の地域雇用開発を推進してまいりたいということ。それから、高年者層の雇用機会確保の推進でございますけれども、これはこのプロジェクトの中にもろもろの今まであった制度、新たに新しい制度、そのための奨励金助成措置の設定とかあるいはまた従来からやっておりまするところの高齢者雇用対策、つまり六十歳定年制の確保とかそれを基盤にしてさらに六十五歳ぐらいまで雇用の延長を図る施策とかあるいは職業能力の開発事業とか、あるいはまたシルバー人材センターの活用によりまして定年後の臨時的な短期的な就業の場の確保とか、こういうものを挙げて総合的な対策を講じていこうというようなことを含んでおるわけでございまして、四月一日以降におきましてはこれの施策を強力に推進してまいりたいと思っておるわけでございます。そのためにも、もう既に国会へ提案をしておりますけれども特定不況業種法改正につきまして御審議をいずれは煩わすことになっておるわけでございますけれども、それらのことを総合いたしましてこのプロジェクトチームの推進を図ってまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  83. 中西珠子

    ○中西珠子君 日本は国際的にも産業構造転換に対応する施策のやり方、方針政策が大変上手だ、また失業防止対策もうまくいっているという評判があるわけでございますが、実際に地域雇用開発等促進法による三十万人雇用開発プログラムの目標ももう既に二十七万六千人を達成したし、三月末には三十万人を突破するだろうということで大変喜ばしい結果を見ているわけでございます。また今度特定不況業種雇用安定法の延長、そして内容拡大充実を図られるということでございまして、高齢者対策もまた非常に総合的に推し進められるということで産業地域高齢者雇用プロジェクトという総合的なプログラムを積極的に推進していただきたいし、また効果的に実施していただきたいと心から要望する次第でございます。  また、労働大臣は「新雇用対策基本計画策定することとしております。」とおっしゃって外国労働者問題にお触れになっているわけでございますが、外国労働者問題は今各方面でいろいろな意見が述べられておりますけれども労働省としては単純労働者を受け入れないというこれまでの基本方針ということだそうでございますが、既に不法な就労者というものが大変ふえているそうでございまして、法務省の入管局の昨年度の摘発件数は一万一千三百七件で昨年一年でもう一万人を超してしまっているし、五万人もいるだろうとか十万人もいるだろうというふうなそういう推測もなされているわけでございますが、こういった不法就労の外国労働者が最近ふえているという理由はどういうところにあるのでございましょうか。
  84. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 不法就労の数そのものははっきりした把握統計がございませんけれども先生おっしゃいますように不法残留だけでも五万人と言われておりますので、恐らくそれを大幅に上回る数字であろうと思うのでございます。  で、そのような不法就労者が発生する原因というのは、やはり一つには、その送り出し国の失業状態が一つあろうかと思うのでございます。それらの国々における職のない人たちが職を求めて日本に来られるということが一つ。それから、日本とその国の間における経済的な格差と申しますか、賃金水準格差ということがこれまた大きな誘因になっていると思われるのでございます。日本の数十分の一というふうな賃金水準の国が多いわけでございまして、このようなことで日本で短い期間働いて国に送金すれば相当大きなお金になるというふうな形の宣伝がかなり行き渡っているやに聞くのでございますが、そのような経済的な誘因というものが大きいと存ずる次第でございます。
  85. 中西珠子

    ○中西珠子君 円高の影響もあるわけでしょうね。
  86. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) はい。そこへもってきまして、先生がおっしゃいますように円高がさらにそれに拍車をかけていると存じます。
  87. 中西珠子

    ○中西珠子君 単純労働者を受け入れないとおっしゃっても、やはり建築土木作業とか製造業の中の、それも日本人が余り好まないような劣悪な労働条件の中の非常に難しい困難な仕事とか肉体的に非常な負担のかかる仕事とか、それから雑役とかそういった単純作業に従事している殊に男性がふえていると聞いていますけれども、いかがですか。
  88. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 最近の不法就労者の顕著なる傾向は、男性の不法就労者がふえておる。インド、パキスタン、バングラデシュというような国々が挙げられておりまするが、おっしゃいますようにそれが顕著なる傾向であろうと思います。  そこで、そのついている仕事というのは、まさしく土木作業員でありますとかあるいは雑役というふうなあるいは非常な重筋肉労働の工員というふうな分野でございまして、そのようなところには日本人青年がなかなか最近はつきたがらないという傾向も出ているわけでございますが、それにつきましては、やはり汚れ仕事、ダーティーワークを外国人に任せていくというこの考え方は非常に危険なるものを含んでいると私ども考えるわけでございます。そのような骨の折れる仕事はやはり労働条件を高めてそこに日本人の青年が喜んでつくようにというふうなことでやってまいりませ んと、そういうような二重構造的な労働構造になった西ドイツその他の国の歴史が示しているところでございまして、私ども大いに警戒をしなければならないポイントではなかろうかと思います。
  89. 中西珠子

    ○中西珠子君 非常に労働時間も長く賃金も低いと聞いておりますけれども、大体そういった面での調査とかいうものをなすっておりますか。
  90. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) これら外国人による就労の実態につきましても国内法令、特に労働基準法等法令違反の状況がありました場合にはこれらについては厳正に対処するということで、既に通達等で対処いたしているところでございます。同時に、重大悪質な法違反等についての情報収集に今努めているところでございまして、早急にこの実態把握に努めてまいりたいと考えております。
  91. 中西珠子

    ○中西珠子君 基準法違反はもちろん取り締まっていただかなくちゃいけないんですけれども、単純労務に従事する者として入ってきたのではなくて研修の目的で入ってきたということで、非常にひどい例などが最近の新聞にちょいちょい出ているわけでございます。  ここにございますのは、長野県の中小企業主が共同出資してスリランカのコロンボに設立した音響機器関係の製造会社、アポロエレクトーンカンパニーというんですけれども、ここでスリランカの女性を三十四名研修目的で長野県に連れてきて働かせておる。そして、それは日本で研修している間は全く無給、帰国後最低三年間千五百ルピー、約七千五百円の基本給、これは月給ですか、それで勤務するということを条件にしている。そして、研修直後に日本語の習熟試験とか一年ごとの能力試験を受けなければならないということにしておりまして、試験に失敗すると解雇もあり得る。また、その契約に違反した場合には二万五千ルピー、約十二万五千円の罰金を科することにしている、こういうふうな報道があるわけでございますが、こういったケースについては調査をしていらっしゃいますか。
  92. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) お尋ねの長野県の事例でございますが、これにつきましては私ども職業安定行政機関が直ちに調査に入りまして、これにつきましては労働者派遣事業法違反の疑いがあるということで調査をいたしまして、これが法違反であることを断定いたしまして、厳しくこれにつきましては措置をとったところでございます。
  93. 中西珠子

    ○中西珠子君 このケースは労働者派遣事業法違反ということで厳しく取り締まって、送還なすったんですか、この女性たちは。——いや、今のお答えで、労働者派遣事業法の違反ということで厳しく取り締まったとおっしゃいましたけれども、この関係の女性たちはコロンボに送還されたわけですか。
  94. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) ちょっと私、事案を勘違いいたしまして、訂正させていただきます。ただいまの事案は労働基準局において取り扱われた事案でございますので私の発言を訂正させていただきます。どうも申しわけございません。
  95. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) このアポロエレクトーン社なるものが関係電機事業場に研修目的で配置しておった事案につきまして、新聞報道されました直後に長野労働基準局及び所轄の労働基準監督署が調査に入りまして実態を把握したわけでございますが、契約面においては今先生の御指摘のような内容があるということは確認いたしておりますが、研修自体につきましては計画的に進められているというような報告を受けておりますけれども、なお最終的にこの事案が研修なのか、あるいは就労であるとすればこれは必要な労働基準法その他労働関係法令の適用になる問題でございますので、これが就労ということになれば必要な対応措置をとらなければいけない、かように考えております。  なお、研修等で来ておった女性につきましては、確認はいたしておりませんけれども、ビザの更新が得られなくて三月上旬ごろに帰国する予定であるということをその調査直後に聞いておりまして、最終的な確認はいたしておりません。
  96. 中西珠子

    ○中西珠子君 こういった外国人の就労の場合の基準法の適用ということ、それから労働基準監督という面は非常に大事な問題でございますし、国内の基準法を犯すということばかりでなく、これはやはり国際的に人権問題にもなる可能性がある問題でございますから、この点はぜひ厳しく取り締まっていただきたいし、指導していただきたいと思いますが、大臣のその点に関する御決意をお願いいたします。
  97. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御意見のとおりでございまして、私どもとしましては、特にこの一月の末におきまして各都道府県あるいはまた各都道府県の労働基準局長に向けましてきつい指示を出したところであります。  それは、要するに、不法就労の実態調査、情報収集に努めなさい、万が一にも法令違反があった場合には厳正に対処しなさいということで、各局とも今真剣に取り組んでおるところでございますし、また経営者団体、日経連あるいは日本商工会議所に向かいましても不法就労者の雇用はぜひひとつ慎んでほしいという要請もいたしておるわけでございまして、今後とも厳重に対応してまいりたいと考えております。
  98. 中西珠子

    ○中西珠子君 さっき職安局長が、労働者派遣事業法の違反として断固取り調べましたとおっしゃいましたケースは、これはどういうケースですか。不法就労の場合、八割以上がブローカーが仲介していて、そして暴力団が加わっているとかいろんなことが言われているわけでございますが、そういうケースが労働者派遣事業法の違反のケースまたは職業安定法の違反のケースになるのではないかと私は考えていたので、そのことをお聞きしたいと思っていたわけです。具体的な事例がありましたらお教えいただきたいと思いますが。
  99. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) これは三協工業株式会社という事案でございまして、神奈川県に本社を有する事業所でございますが、これは主としてブラジル移民のUターン組と申しましょうか、そういうブラジルから還流してこられた方々を幾つかの複数の企業に就労をあっせんしていたという事案でございます。これは、形態的に申しますというと労働者派遣事業法違反ということでございまして、その点の是正を厳しく指導した、こういう事案でございました。
  100. 中西珠子

    ○中西珠子君 とにかく労働関係法規違反というのは厳しく取り締まっていただきたいし、また就労している人たちの福祉ということも考えていただきたいわけでございますが、安全衛生についてはどうなんでしょうか。労働者災害補償保険法ですね、労災、これの適用はあるんですか。
  101. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 国内で労働している者に対する適用があるわけでございまして、現行法令におきましては外国人の就労につきましても労災補償の対象になっているわけでございます。
  102. 中西珠子

    ○中西珠子君 現在は非常に日本人がつきたくないようなダーティーワークというふうなものだとかそのほか非常に筋肉労働の厳しい仕事というふうな単純作業、単純労働にどうしても安く、日本人の半分とか三分の一の賃金で使いたいという需要はあると思うんですね。しかし、やはり国際化だから自由化した方がいいという意見も一方にはありますけれども、    〔委員長退席、理事曽根田郁夫君着席〕 西欧の国々もこれまで外国労働者を経済成長期にはうんと受け入れてそしてダーティーワークや筋肉労働をやってもらった、しかしその人たちが今度は経済の停滞時期に入ってくると失業してしまう。それからまた、その外国労働者の子供たちというものもやはり教育もしてやらなきゃいけないし医療もしてやらなきゃいけないというふうな問題もありますから、それこそ外国労働者というものを現在安い労働力として使いたいという気持ちの人は多くても、結局特別の技能のある人とか現在認められている人たちの入国・就労カテゴリーの見直しはしなければならないとは思いますけれども、単純労務に従事する人たちをどうしても自由に受け入れるということについては、結局、住宅問題、医療問題、保健問題、教育問題と か年金その他の社会保障の問題とかそういう問題も含まれてきますから、これは現在目先の経済効率が上がるというふうなことで入れたがっている人も多いとは思いますし、また途上国に対していい顔ができないからもっともっと自由化した方がいいというふうな意見もあるとは思うんでございますけれども、これはやはり慎重に百年の計の上に立って検討しなければならない問題であるし、また労働省とか法務省とか外務省だけでは結論が見出せない問題ではないかと思うわけですね。ですから、文部省や通産省や企画庁、厚生省も建設省も、その他関係官庁全部を網羅したような委員会をおつくりになって慎重に協議していただきたい、検討していただきたいと思うわけでございますが、大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  103. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) お説につきましては全く同感でございます。  もともと単純労働者を受け入れないという考え方は、昭和四十二年当時の閣議で決定いたしまして、ずっと今日まで一貫して政府方針として決めてまいったわけでございます。そのときの主たる考え方というのは、やっぱり日本の国内の雇用失業情勢に重大な影響を及ぼすということが一番の理由でございました。その当時から比較しますると、今日の方がはるかに雇用失業情勢の不安は高いわけでございますし、また私ども外国人の単純労働者を一時的に日本に採用するということは、本来的に言って相手国の雇用開発にもなりませんし相手国の経済の発展にもつながらないということでございますし、今お話がありましたように、安いから使うというのも本来これは邪道でありまして、雇用における需給調整というのはやっぱり国内でやっていかぬとかえって雇用の需給調整をおくらせますしあるいは労働市場への悪影響を及ぼすというような考え方から、今もこの考え方は変わりはないわけでございます。  ただ、一方におきましては、企業の国際化、産業の国際化に伴いまして、優秀な技能者、技術者等を受け入れてほしいというニーズが高まっていることも事実でございまして、これらにつきましては、今の単純労働者と技能者、こういう調整をどこで接点を求めるかということが今後の研究課題になろうと思っておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、今お話しになりましたように、これから労働省だけでなくて外務省あるいは法務省あるいは警察庁等々踏まえて一義的に意見調整を図らなきゃなりませんし、最終的には政府全体としてこれからお説のような方向で進まなければならぬと思っておりますけれども、その際労働省が主張することはやっぱり単純労働者は今後とも受け入れないという基本方針だけは維持すべきものだというふうに考えております。
  104. 中西珠子

    ○中西珠子君 今労働大臣おっしゃいましたように、もしこれがどんどんふえれば国内の雇用情勢に対する影響は非常に深刻なものになってくるし、賃金労働条件を引き下げるという心配もありますし、それから治安の問題とかいろいろあると思うんでございますけれども、第一に、向こうからやってくる人たちの賃金労働条件が非常に劣悪であるとか労働関係法規の違反があるということはこれは人権問題ですから、やはり国際的な人権問題としてもお考えいただきたい。そして、開発途上国が雇用機会が非常に少ないためにまた賃金も低い、それから円高で日本に来ればうんともうかるというふうなことでやってくる人もふえるかもしれませんけれども、これはやはり政府開発援助というふうなものを通じて開発途上国の雇用開発雇用機会の創出への協力、それから職業訓練への協力というこれまで労働省がやっていらしたような技術協力の面をILOのような専門性を持った機関とも協力していただきまして大いに積極的にやっていただきたいと思うわけでございます。大臣、いかがでございましょう。
  105. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) お説のとおり全く同感でございます。
  106. 中西珠子

    ○中西珠子君 今度はちょっと違う問題でございますが、パート労働についての問題をお聞きしたいと思います。  昭和六十一年の総務庁の労働力調査によりますと、非農林業雇用者の一一・七%、すなわち五百三万人がパート労働者でそのうちの女子は三百五十二万人、女子雇用者の二二・七%がパートで働いているということでございます。  それで、これからは高齢者の中でもパートで働きたいという人がふえてきますでしょうし、労働省の方も助成金をお出しになって高齢者のパートというものをふやす努力をしていらっしゃるし、また専門的な分野でのパートというものもこれからふえていくと思うわけでございますが、依然としてパートというのは、イメージとしては主婦が短時間働いて、そして雇用が不安定で、低賃金なんだというふうなそういうふうなイメージがあるわけでございますけれども、これからの日本産業経済の上でパートというのはやはりますます重要な労働力になっていくのではないか、また第三次産業においては基幹労働力にもなっていくのではないかという感じがするわけでございますが、最近、信州大学の高梨教授を座長とする女子パートタイム労働対策に関する研究会がパートタイム労働者福祉法(仮称)の制定を提言しておりますが、労働省はこれに対してどのような対応をなさるつもりですか。
  107. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) パートタイム労働者は仰せになったように質量ともに我が国の重要な労働力一つとなっている状況を踏まえまして、昨年十月、女子パートタイム労働対策に関する研究会から、パートタイム労働者の福祉の向上を図るため法的整備をも含めた総合的な対策を推進すべきであるとの提言を得たわけでございます。  労働省としましては、六十三年度において各方面の専門家から成りまするところのパートタイム労働問題専門家会議を設けまして、今後のパートタイム労働対策のあり方について総合的な検討を進めてまいる所存でございます。
  108. 中西珠子

    ○中西珠子君 パートタイム労働問題専門家会議をお開きになりまして検討中と伺ったわけでございますが、その結論を待っているということもなかなか時間のかかることでございますので、一応労働省としてのお考え方を聞きたいと思うんでございますが、このいわゆるパートタイム労働者福祉法に盛り込むことについて検討を要する事項というのがございますね、雇用管理の改善とか就業に対する援助の措置とか、それから健康、安全管理とかそういったことですね、それからパートの職業能力の開発、こういったことは本当に非常に結構なことだと思うんでございますが、パートタイム労働者福祉共済事業というのを提唱をされておるわけですね。これにつきましては慶弔お見舞い、生活資金の貸し付けとか、それからその他の福利厚生の充実に関することをやる。そしてその一番大きな目玉というのは、退職金のような準退職金としての報奨金の支給ということが提案されているわけでございます。そしてパートタイム労働者福祉財団のようなものをつくってそこにやらせる、こういうことなのでございますけれども、これは労働省としてはどうお考えでしょうか。現在も中小企業の退職金の共済制度があるわけでございますから、それとの関連がどうなるのかというふうな疑問もあるわけでございますが、勤続報奨金というものについて、この支給についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  109. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先ほど中小企業退職金共済制度との関係はどうかというお尋ねもあったわけでございますが、現在でも中小企業退職金共済制度にパートタイム労働者も含めて入っていただくということは可能なのでございますが、現実には入っておられる企業というのはそれほど多くないわけでございます。  それにつきましてはさまざまな理由があるわけでございますが、一つは、この中小企業退職金共済制度が長期の勤続をされて退職される方を前提に考えておりますために一年とか二年とか短い期間でおやめになる場合には掛けた掛金よりも少ししか退職金が出ないというような制度になっておるわけでございます。したがいまして、パートタ イム労働者の方々だんだんに勤続年数が延びてはおりますけれどもまだまだ短い期間でおやめになる方もあるために、そういうことも一つの大きな原因ではないかというようなことから現行中小企業退職金共済制度の中でパートタイム労働者を対象に含めれば十分なのであるかどうかということにつきましてはもう少し私どもとしても検討して、これでは不十分であるということであればそれ以外の方策があるかどうかということ、しかもそれが一つ制度として成り立ち得るかどうかということにつきましては大きな課題だと思います。  たまたま、先生十分御存じで、高梨研究会の内容につきましても今お話しいただきましたけれども、そこでも貴重な御提言をいただいておりますので、ほかの御提言と含めて検討をしたいというふうに考えているわけでございます。
  110. 中西珠子

    ○中西珠子君 疑似的な退職金というか、退職金に準ずるものということで勤続報奨金を支払うというアイデアですけれども、これは一種の賃金の後払いということになるわけですね。現在パートで働いている方々は非常に賃金が低くて、労働省が全国平均としてお出しになっている額を地方に行って言いますと、とんでもない、そんなにたくさんもらっていませんという答えが出てきたり、お話しの後からわざわざ私のところにいらして、とんでもない、労働省のパートの平均賃金はどうやって出しているんでしょうねなんておっしゃる方があるくらい非常に低い。それから、パートタイマーという身分であるがゆえに、同じ仕事をしている常用雇用の一般の従業員と同じ時間給を払う必要はないのだという考え方で、同じ仕事をしているにもかかわらず非常に低い賃金を払っているところが多いということが言えると思うんですけれども、やはり同じ仕事をしている以上は時間給というものは同じレートで払うというふうな、もちろんその人の熟練度とか勤勉度とかいろんなことを考えなければなりませんけれども、一応同一労働同一賃金の原則というもので例えパートで短時間労働であっても時間給はもっと高くして、そして時間で払っていくというふうなことを考えた方がむしろ勤続報奨金なんという賃金後払い制度をやるよりもいいのではないかと私は考えるわけなんですけれども、いかがなものでしょうか。
  111. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 賃金制度は、一般的に言いますとその賃金を定める要因というのを考えてみました場合に、勤続ですとか学歴、年齢その他さまざまな要因で決定されるわけでございますが、もう一つ、フルタイム労働者の場合には、もちろん企業により業態により制度によって異なってくるわけでございますが、フルタイマーの場合には長時間労働もさせられる場合もあるあるいは場合によっては地方に転勤させられるというようなことも含めた企業に対する貢献度その他さまざまな要因があって決まっておる面があると存じます。  ただ、一般的に申しますと、場合によっては先生おっしゃいましたように、フルタイム労働者に比べてかなり賃金が低くなっている場合もあるわけでございまして、私どもはパートタイム労働対策要綱に基づきましてできる限り一般の労働者と均衡を——均衡というのは何かという難しい問題があるわけでございますが、    〔理事曽根田郁夫君退席、委員長着席〕 均衡を考慮した賃金が払われるようにということで企業には指導をいたしておるわけでございます。  それからもう一つの問題は、パートタイム労働者の方々につきましてしばしば指摘されますことは、所得税、あるいはパートタイム労働者が主婦である場合にはその夫の配偶者控除の問題、その他さまざまな問題がございまして、一定の額を超えるとなかなか働きにくくなるというような御指摘もあり、場合によってはそういう場合には退職金に回してもらいたいというような意見もごく一部にはあるというふうに聞いておりまして、なかなかこれは一律にははかりがたい難しい問題を含んでいるわけでございまして、私どもも十分先生のおっしゃったことも頭に置きながらこれから対応を考えてまいりたいと存じます。
  112. 中西珠子

    ○中西珠子君 税制の問題は、昨年度いわゆる消滅控除というのが入りまして少しはよくなったかと思うんでございますけれども、まだまだ改善の余地はあると思っているわけでございます。とにかくパートであるからボーナスも低くていいとか、全然やらなくていいとか、昇進昇格はさせる必要もないとか、能力開発の問題、福利厚生の問題も大して考えてあげなくてもいいというふうな考え方はもちろん問題外なんでございますけれども、いわゆる疑似パート労働者と高梨教授などが言っている、パートとは言いながら所定労働時間はほかの一般労働者とほとんど同じというふうないわゆる疑似パート労働者というのがございますね。こういう人の扱いについては労働省はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  113. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先生がおっしゃいましたように、パートタイム労働者というふうに呼ばれておりながら実際には労働時間については一般の労働者とほとんど変わりがないという方も一部あるわけでございます。私どもといたしましては、そういう方々につきましてはできる限り一般の労働者と同じような扱いが受けられるようにということで考えておるわけでございます。
  114. 中西珠子

    ○中西珠子君 パートの労働者であったけれどもフルタイムで働きたくなった、そしてまた募集、採用を常用雇用労働者をする場合にはパートを優先的に雇用するというやり方、また逆に今までフルタイムで働いていたけれどもパートで働くことがいいのではないかという家庭の事情、その他の事情でなった人に対する優先的なパートへの雇用というそういうふうな面では非常にいい提言をされているとは思うわけでございますが、その点についてはいかがですか。
  115. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 高梨座長からはそういう御提言をいただきまして、私どもとしてもできる限り労使の話し合いに基づきましてそういう制度が取り入れられるということは望ましいことだというふうに考えております。
  116. 中西珠子

    ○中西珠子君 高梨教授の座長をしていらっしゃいます同じ研究会の報告の中に「法定最低賃金は時間給を基本とする方式に改めることが望ましい。」こういう提言をしているわけですね。これについては基準局長はどうお考えですか。
  117. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) パートタイム労働者等について時間の単位で働く労働者にとって必要な法的規制が行われるというような段階になれば時間当たりの最低賃金というのも一つの方法だと思っております。
  118. 中西珠子

    ○中西珠子君 パート労働法の制定が先ということでございますね。——結構です。  それから、もう一つ提言していらっしゃるんですよ。職安局長にお聞きしたいんですけれども、パートタイマーの能力開発が必要だということを言い、また教育訓練が必要だということをこの報告書が言っているんですね。そのとおりだと思うんですけれども、それから福祉の増進も必要だということも強調しておられるわけですが、これについては雇用保険の四事業というものを使った方がいい、この四事業が重要な役割を果たすと思うからパートと雇用保険制度との関係検討する必要がある、雇用保険制度全体のあり方との関連でパートの問題を考えてほしいというふうな提言をされているわけですが、いかがなものでございますか。
  119. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) ただいまの実情を申し上げますというと、パートタイム労働者雇用保険に入っておられる方はごく一部でございます。入っておられる方につきましては四事業もろもろの適用ということは当然考えられるわけでございますが、パートタイムの方々の就労形態というのは非常に短時間働くということでございまして、雇用保険の適用につきましては一定のめどというものがございまして、極めて短時間働く方につきましては雇用保険の適用をしないというのが従来の扱いであるわけでございまして、その辺との兼ね合いは私どもさらに今後の勉強の課題では あると思いますけれども、現状はそのとおりでございます。
  120. 中西珠子

    ○中西珠子君 昨年の労働基準法の改正、そしてことしの四月一日から実施になるということですが、その中で特筆大書して褒めて差し上げたいのは、パートタイムの人たちに年次有給休暇を比例付与するということなんですね。これは労働大臣労働省の本当に立派なお仕事一つとして高く評価しているわけでございます。そしてまた、このパートの人たちが働いている職場に対してこれはやっぱり周知徹底をして、実施の実を上げなければいけないと思うわけですが、どのような方針、またどのような対策でこれを周知徹底するようになさりますか。
  121. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 改正労働基準法の四月からの施行を控えまして、現在、改正労働基準法施行準備月間といたしまして多くの地域におきまして事業主に対する説明会、講習会等々を行っておるところでございまして、その中で、今般の新しくなりました法定労働時間の短縮と同時に、変形労働時間の問題なり今お話のございましたパートタイム労働者に対する比例付与についても特に必要な説明といたしまして周知徹底を図っているところでございますし、今後施行になりました後も必要に応じ各方面に対する指導、助言等に努めてまいりたいと思っております。
  122. 中西珠子

    ○中西珠子君 だんだん時間が少なくなってまいりましたので、今度は男女雇用機会均等法関係質問をさせていただきたいと思いますが、法施行以後今日まで雇用差別に関する訴え件数がどのくらいあったのか、都道府県の婦人少年室の扱った件数、また機会均等調停委員会への付託件数をお教えいただきたいと思います。
  123. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 雇用機会均等法が施行されましてから各都道府県の婦人少年室には相談や質問その他たくさん寄せられておるわけでございますけれども、これらの相談の内容は、電話で簡単に済みますものから、まあ電話の場合もかなり長く話される方、また直接来室されましてほとんど半日ぐらいかかるぐらい御熱心にお話しされ、またたびたび来られるというようなものもございますので、件数だけで申し上げるのは必ずしも実態を十分お知らせできるというようなものではないかもしれませんけれども、均等法に基づきまして、女子労働者事業主の間の紛争の解決の援助あるいは企業雇用管理制度改善を目的といたしまして婦人少年室が行いました助言あるいは指導等に関しまして申し上げますと、六十一年度で二千件を超えるものがあったわけでございます。で、六十二年度につきましてもこれを上回るペースで推移をいたしているところでございます。  それから、均等法に基づく調停につきましては現時点ではまだ行われておられないわけでございます。ただ、これは私ども考え方でございますけれども、今までかなりの相談があり、企業との間に立って室長が助言、指導いたしております過程で多くのものが解決しているということが大きな原因ではないかというふうに考えているわけでございます。
  124. 中西珠子

    ○中西珠子君 六十一年度が二千件、六十二年度も二千件を上回る件数ということで、その件数も、一つの相談や訴えというものについて大変時間を費やして紛争の解決の援助にもまた雇用管理の改善にも非常に御努力をなすっている婦人少年室の方々の御苦労は大変だと思って大いに高く評価して感謝しているわけでございますけれども、機会均等調停委員会への付託件数が全然これまでないというのは相談や助言の中でもうほとんど解決してしまった結果であるとお考えだということでございますけれども、まあそのとおりなのかもしれませんが、私は、やっぱり均等法が調停の付託には使用者の同意を必要条件としているという点とそれから差別を訴え出た女子労働者に対する解雇などの差別禁止規定ということですね、そういうものを不利益取り扱い禁止条項と一般に申しますけれども、そういうものがないために機会均等調停委員会への付託件数がこれまで全然ないということなのではないかなという気がしてならないんですけれども、調停に付託するには使用者の同意を絶対必要条件としていつまでもやっておくおつもりなのか、また不利益取り扱いの禁止条項というものは入れなくてもいいと依然としてお考えなのか、ちょっとその辺のお考えをお聞きしたいと思います。
  125. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) これまで調停がゼロということで、私どもは実は各室にも調停を女子の方が希望されるのであれば積極的に取り上げるようにという指示もいたしておるわけでございますが、現実には、じゃ調停に行きましょうかという方があっても、企業の方にそういうことで持ってまいりますと、企業としては、日本企業はある意味では非常にイメージを大事になさるところが多いものですから、そういうところでは急にとんとんと解決するという例もあったわけでございまして、これまで私どもが調べております範囲で企業が同意しないために調停に行かなかったというものは全くないわけでございます。私どもも、できれば調停で解決したというようなものも出てくればまたこれはある意味では均等法についての関心を持っていただくという意味ではいい面もあるのかと思いますけれども、そういう意味で出てこない。そのことは、ある意味では女子の方たちの問題が女子自身についても余り難しい局面に至らないうちに解決しているという意味で、女子の方たちにとってもあるいはそこまでいかないうちに解決するという方法も決して悪いものではなく、私どもの室長がかなりそういう点で努力していることの結果でもあるのかなというふうに感じておるわけでございまして、これまでのところは同意がないためとかあるいはそういうことが調停に持ってこられますと不利益取り扱いになるというようなことで調停までいかなかったというふうに私どもは全然考えておりません。
  126. 中西珠子

    ○中西珠子君 不利益取り扱い禁止条項も必要ではないとお考えなんですね。この間の労働基準法の改正時に、修正要求として野党がお出ししていまして自民党もそれに賛成なさった年休の取得を理由として不利益な取り扱いをしてはならないという不利益取り扱い禁止条項が入りましたね。それと同じように、均等法にも差別を訴え出た女子労働者に対して解雇その他の不利益取り扱いをしてはならないという条項をどうしても入れたいと思うし、諸外国の男女雇用平等法にはそれがあるわけですね。それがなかったらだれも訴え出てこないでしょう、怖がって訴えに出てくる人は少ないでしょうといつも外国の人から言われるわけですけれども、この点についてももうしばらく様子をごらんになって、また見直しの時期も来ると思いますので、そのときにはお考えいただきたいと思います。これは要望です。  それから、やはり同じ均等法の中に育児休業に対する奨励援助というのがございますね。育児休業の民間企業への普及を図るためには民間も公的部門も一つにした育児休業法というものが必要だと思いまして四野党が共同で育児休業法案を御提案しているわけでございますが、労働省は依然として民間の育児休業法案は必要ないとお考えなのですか。そして、育児休業制度普及状況というものは、今相当奨励金を引き上げて二年度にわたってお出しになっておりますけれども、その奨励金を予算として計上なすって全部消化ができているかどうかというふうな点ですね。それから育児休業の民間への普及率というふうなものについてお伺いしたいと思います。
  127. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業制度の民間への普及率は現在一四%ちょっとということで、決して高いものではございません。私どもも、最近は女性も結婚しても、出産しても働き続ける方が多いわけでございますから、育児休業制度必要性は非常に高いというふうに思っておりますし、決して民間で育児休業制度普及が必要ではないというふうには思っておらないわけでございますが、ただ雇用機会均等法に関する審議が婦人少年問題審議会で行われましたとき実に長い年月かけまして御審議をいただいたわけでございます が、その御審議の結論が、まだまだ民間での普及状況を見ると普及率が低いのでもう少し普及をしないと中小企業も含めてすべての企業に請求権ということで義務づけるのには時期尚早である、もう少し普及に努めろという御建議をいただいておりますので、私どもとしてはまずもう少し普及率を上げたいということで努力をいたしているところでございます。
  128. 中西珠子

    ○中西珠子君 女子再雇用制度ですね、特別の再雇用制度、これはいかがですか、普及状況は。
  129. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) この女子再雇用制度雇用機会均等法で初めて規定が設けられたものでございまして日が浅いということもございますけれども、現在、三十人以上の事業所で五・六%ということでございます。
  130. 中西珠子

    ○中西珠子君 施行後日が浅いにもかかわらず五・六%ということはなかなかいい成績を上げていらっしゃると思うわけでございます。  大きな企業で名前を少し挙げていただくことができますか。
  131. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) ただいま十分資料を持っておらないのでございますが、例えば、伊勢丹、西武グループ、そのほかにもサービス業関係でいろいろあるのではないか、また卸・小売というところでももう少し、百貨店その他であると思います。
  132. 中西珠子

    ○中西珠子君 時間がなくなってまいりましたけれども、ちょっとお聞きしたいのは、労働者派遣事業関係でございますが、これまでの登録件数と許可件数についてお教えいただきたい。  それから、派遣労働者の中の女性の割合をお教えいただきたいと思います。
  133. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 本年三月一日までの状況を言いますというと、常用以外の労働者派遣する一般労働者派遣事業の許可事業所が千三百三十一件、それから常用労働者のみを派遣する特定労働者派遣事業、これは届け出でいいわけでございますが、届け出件数が六千九百二十八件でございまして、合わせて八千二百五十九事業所労働者派遣事業を開始いたしておるわけでございます。  そこで、派遣労働者の中の女性の割合はどれぐらいかというお尋ねでございますが、これにつきましてはそういう報告を出させておりませんので、別途調査を行うことが必要でございます。これにつきましては、現在、一般労働者派遣事業についての調査を行っておりますので、これは本年の夏ごろに集計が完了するというようなめどでございますので、いずれ概要は明らかになると思います。
  134. 中西珠子

    ○中西珠子君 女性ばかりでなく男性の派遣労働者がふえているという傾向だそうでございますが、その実態調査はいつごろ完成なさるんですか。
  135. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) その一般労働者派遣事業につきましてはことしの夏ごろに調査の取りまとめが行われるわけでございますが、特定労働者派遣事業につきましては来年度の事業として調査を行うということにいたしておりますので、これは来年に調査の集計がまとまると、こういうようなタイミングでございます。
  136. 中西珠子

    ○中西珠子君 なかなかこの労働者派遣事業実態調査は難しいと思いますが、厳密に徹底した調査をやっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  それからあと一分間、長寿社会の対応の一つとして老人介護労働力の供給体制の充実を図るということを労働大臣もおっしゃっておるわけでございますが、どのようにして養成をなさるおつもりか、それから技能検定もお考えになっているのか、それから厚生省の介護福祉士ですね、これとの関係はどうなっているかについてお示し願いたいと思います。
  137. 野崎和昭

    政府委員(野崎和昭君) 先生指摘のとおり、高齢化社会への移行に伴いまして今後は老人介護労働力の養成が重要な課題になるわけでございます。現在、この点につきましては各地の職業訓練校で家政科それから福祉ヘルパー科というところで年間約七百人程度養成を行っております。これにつきまして今後ともその数の増加あるいは訓練内容の充実に努めてまいりたいと考えております。  また、これらの介護従事者の技能の向上あるいは社会的地位の向上を図るために、これも先生指摘のとおり、六十三年度介護サービスの技能検定を行うことにいたしております。この技能検定に合格されました方につきましては、厚生省との連携によりまして登録をすることによりまして介護福祉士となることができるということに相なっております。
  138. 中西珠子

    ○中西珠子君 厚生省と連携をおとりになってなさっていることは大変結構だと思いますし、老人介護労働力はもう本当に不足しているわけでございますからぜひ積極的にやっていただきたいと思います。  それから、私は労働外交についてお聞きすると申し上げましたけれども、もう時間が参りましてこれは予算の委嘱審査のときにやらしていただくことにいたしますが、最後に、週四十時間労働制の実現のために労働大臣がどのようにお考えになっているかということを、同僚委員も伺ったので重複するとは思いますが、週四十時間労働制に可及的速やかに移行するための労働大臣の御決意ということを最後に伺いまして質問を終わりたいと思います。
  139. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 法定労働時間につきましては、本年四月から施行される改正労働基準法の本則において週四十時間制を規定し、当面は週四十六時間としているところでございますが、施行後三年を目途に週四十四時間へ移行するように努め、一九九〇年代前半においてできるだけ早い時期に週四十時間労働制移行するよう努力する所信でございます。このため、労働省としましては、改正労働基準法の円滑な施行に全力を挙げますとともに、労働時間短縮のための社会的国民的合意の形成と労使の自主的努力に対する指導、援助に一層の努力を行ってまいる所存であります。さらにまた、経営基盤の問題や同業他社との関係等から労働時間短縮が進めにくい中小企業に対しましてきめ細かな助言、指導を行うこと等により法定労働時間の段階的短縮が円滑に進むよう積極的に努力してまいる所存であります。
  140. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。時間が参りましたので。
  141. 内藤功

    ○内藤功君 まずJR東日本におきます安全衛生委員会の問題を質問したいと思います。  最初に労働安全衛生法の目的、それから労安法、その前は労働基準法ですが、その労安法等において安全衛生委員会の設置、開催が義務づけられているその法の考え方というものを最初にお伺いをしておきたいと思うんです。
  142. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 労働安全衛生法の目的は、労働災害の防止を図るための危害防止基準を確立をしあるいは責任体制を明確化する、それによって自主的活動の促進措置を講ずるといったことでその防止に関します総合的計画的な対策を推進することによりまして職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な作業環境の形成を促進することにあるということで、労働安全衛生法の第一条でそういう形で明記をされております。  御指摘の安全衛生委員会につきましては、事業場において真にその安全衛生を確保するためには、事業主がもちろん一義的には安全衛生の責任があるわけでございましていろいろな措置を講じていただくわけでございますけれども、その事業場の安全衛生問題についてやはり労働者自身も十分な問題意識を持ち、その意見が事業者の行う安全衛生のためのいろんな措置に反映される必要があるであろうということを考えておりまして、事業場における労働者の危険あるいは健康障害防止のための基本となるべき対策に関することなどを調査審議をさせ、事業者に対して意見を述べさせるためにこの安全衛生委員会の設置を義務づけているものでございます。
  143. 内藤功

    ○内藤功君 この安全衛生委員会という制度が労 安法、その前は労働基準法時代もありましたが、労働基準法に規定があった時代もありましたが、実際に労働者の生命、健康を守り、職場の安全に資する上で果たしてきた役割、またこれから果たすであろう役割についてはどのように評価をされておりますか。
  144. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 安全衛生委員会につきましては、やはり事業場の安全衛生水準維持向上のために重要な役割を果たしてきておると思っておりますし、今後ともその役割は十分果たしていただけるものと認識をいたしております。
  145. 内藤功

    ○内藤功君 違反に対する制裁はどういうふうになっていますか。
  146. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 安全衛生法の規定に違反をいたしまして安全委員会あるいは衛生委員会あるいは安全衛生委員会を設置しなかった場合は三十万円以下の罰金に処せられるということになっております。
  147. 内藤功

    ○内藤功君 そこで、JR東日本の東京圏運行本部上野保線区というところですが、昨年四月以来この安全衛生委員会が開かれていないのであります。  私の調査によれば、この上野保線区では、昨年の四月の一日付及び五月の二十日付の二次にわたりまして労働組合、これは国鉄労働組合の分会がございますが、これが多数組合ですが、その中心的な活動家、執行委員を本来業務と関係のない直営店ですね、例えばサンクス、上野、北千住、柏。それからコーヒー店、池袋、我孫子。それからそば屋、これが秋葉原、池袋。旅行センター、これが大宮です。それから、ベンディングといって「大清水」の自動販売機の仕事、池袋。こういうように、直営店の販売業務に国鉄の長年の技術を持った人を配転をするということをやりました。これ自体が東京都労委が三月三日に出した不当労働行為命令などに照らして不当労働行為であることは非常に顕著だと思うんですが、さらにそれに加えて、組合から推薦して指定されていた労働安全委員をねらい撃ちにして配転をしたのであります。  まず、四月一日付の発令によりまして、これは兼務発令という形で当時の労働安全委員、組合推薦の人五名全員を本務から外して配転をした。会社側は、この兼務発令によって現場にいなくなった方なので労働安全委員とはみなさない、こういう見解に立って労働安全委員会の開催を拒否をしたわけですね。組合側はこれに抗議してその配転の取り消しを要求をしましたが、同時に、放置できないので、とりあえず暫定的に新しい人を選んでこれを暫定委員として推薦したわけなんです。ところがJR、会社側はその委員による委員会開催も拒否する。それで今度は五月二十日付で暫定委員のうち四名をまた配転して、さっき申しましたような別のところにしかも鉄道本来の仕事と無関係なそういうところに配転をしたわけなんであります。以上が私の調査をした骨格なんです。  私は前代未聞の安全衛生委員会軽視だと思います。これじゃ開けないですね。そして去年の八月十九日に私どもの党の衆議院の中島武敏議員がこの点を労働省指摘をいたしまして、労働省は御調査に入ったと承っておりますが、この調査の結果とられた対策、これを御報告いただきたい。
  148. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 上野保線区におきます安全衛生委員会につきましては、労働組合推薦の委員が配転になったということで委員の構成ができずに開催し得なかったというのが基本的な点だと思います。  その後、五月二十日には配転対象者を組合が推薦してこられたということでこれまた労働側の委員の構成ができずに開催できないという状況になっているわけでございまして、安衛法の趣旨から安全衛生委員会の委員の要件に必ずしも合致していないというような状況でいるんではないか。いずれにいたしましても、安全衛生委員会が設置、開催されないという状況については改善する必要があるということで、所轄の監督署におきまして労使が十分話し合いを行うように指導したところでございます。
  149. 内藤功

    ○内藤功君 このように去年の四月と五月の二次にわたって安全衛生委員会の組合側推薦の委員を兼務発令と称して配転をしたということが事の根本原因なんですね。  組合側からは、国労分会が推薦、指定した人については少なくとも自後おおむね一年間は配転をしないように、そうしないと仕事ができませんから少なくともその程度の確約、保証はできないのかと。不当労働行為の根本問題はありますけれども、しかし安全衛生委員会は非常に重要ですから、そのくらいできないのかと。ところがJR側は、それに対する確約、保証を今日に至るまで一切避けたままなんですね。かくては、組合側が委員を推薦して指定したくてもまたその人が今度はほかに配転させられてしまって安全衛生委員会が再び機能を停止してしまうということも予想されるので、二度そういうことがありましたので、このような事態のもとでは安心して後継者といいますか新委員の推薦、指定もできない。全く異常事態であります。  これは、今言われたように労安法十七条違反の事態であると思います。そしてその原因をつくっているのは配転です。そういう人を配転する。それから、安全衛生委員は一年間保証する、確約するということがない、そこに原因があると私は思います。話し合いというのも結構ですが、ポイントはそこなんです。それなしの話し合いというのはこれは意味が全くないですね。こういう点についてはどのように御調査をなさいましたか。
  150. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 安全衛生委員会の機能が十分発揮するようにするためにはどういうような委員あるいは構成で進めていくか等につきましては、職場における実情に応じまして労使の話し合いが基本的には重要であると考えておりますし、その上に立って安全衛生委員会が適切に機能するよう、その面におきましては私どもとして必要な指導はしてまいりたいと思っております。
  151. 内藤功

    ○内藤功君 しつこく言うようですが、この必要な指導ですね、それはいまのところがやはりポイントなんです。物事のポイントは、せっかく推薦してもその人がぽんとまたコーヒー屋に飛ばされる、そば屋に飛ばされる、サンクスに飛ばされるということじゃこれは安心して推薦できない、私は、これはもっともだと思うんですね。ここのところが物事の基本だというふうに思うんです。中島議員の指摘に対しては、当時、本省の労働基準局の方が、その兼務発令の撤回なり、つまり配転をもとに戻すことなりあるいは今後指名される人は配転させないということを含めて指導するというふうに言っておられますので、これは単に双方に話し合いをしなさいという指導のほかに、もう一つ、このJR事業者側に対して今のポイントについての何らかの適切な指導が明確にされることが必要だと思いますけれども、再度これを要望しておきたい。いかがですか。
  152. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 安全衛生委員会におきます労働者側委員をどのように選出しまた機能させるかということは、その職場におけるそれぞれの問題に応じて対応していくべき問題であろうというふうに思っておりますし、そういう意見で先ほど来労使の話し合いをさらに要請したいと申し上げているわけでございますが、安全衛生委員会が機能する上で重大な障害が起きているかどうかその他につきまして、事情を承知した上で必要な指導があれば私どもとしても考えたいと思っております。
  153. 内藤功

    ○内藤功君 それが、繰り返しますが今の点なんですね。つまり、安全衛生委員会の委員の任期とおおむね一致する向こう一年間その人については配転をさせないと。これはもう最低の保証だと思いますね。これを含めて私の今言ったことはポイントになると思うので、そこのところを頭に置いて関係の局署を御指導いただきたいと思うんです。いかがでしょう。
  154. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 先ほど来繰り返しておりますけれども、今お話しのような一年間雇用の保証というようなものは、これは職場における人事管理上の問題として取り上げられるべき問題で安全衛生委員会における委員の任期と直結す るものではないように思っておりますので、これは先ほど来申し上げましたような委員会の効率的なあるいは適切な運営に関する労使の話し合いにゆだねるべき問題ではないかと思っております。
  155. 内藤功

    ○内藤功君 安全衛生委員会は、冒頭に述べましたように非常に重要なものです。JRなどの多数の乗客と労働者の生命を預かる鉄道職場、輸送業務にありましては、安全輸送というのが最大の使命であることは言うまでもありません。  この上野保線区は、特に安全衛生委員会は、従来国有鉄道時代から非常に大きな役割を果たしてきたところなんです。同区では職員の殉職死亡事故が昭和五年から四十一年まで四十九人でした。しかし四十二年から六十二年まではゼロなんですね、職員の死亡事故ゼロ。業務上災害認定の問題だとか安全設備の要求で非常に大きな役割を果たしてきたと思うんです。  しかし、最近外部からの外注労働者、請負労働者の転落死亡事故が相次いでいます。五十八年五月、昭和六十一年三月には荒川橋梁転落事故、昭和六十二年十二月二十五日は江戸川橋梁転落事故、いずれも死亡者を出しております。安全さくとか安全ネット、転落防止板、安全歩道というものを設置しろというのが非常な緊急課題になってきております。今言いましたこれらの事故について、当時労働省基準監督署を中心に調査されたと伺っておりますが、この調査の結果、それからそれに基づく勧告あるいは指導というものはどういうふうになさったか、伺っておきたいと思います。
  156. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 今御指摘の三件の事故でございますが、まず五十八年五月に起こりました事故につきましては、安全衛生法違反の疑いがございましたので法人及び代表取締役を送検いたしました。ただ、処分結果は嫌疑不十分ということになっております。  それから、六十一年三月の事故につきましても安全衛生法違反の疑いで法人並びに出張所長を送検をいたしておりますが、これは元請につきまして今申し上げました安衛法違反で法人と出張所長、それから下請につきましては同じく安全衛生法違反で法人と専務取締役を送検をいたしております。これにつきましては、結果的には起訴猶予ということになっております。  それから、六十二年十二月の事故につきましては、まだ現在、法違反の有無について調査中でございます。
  157. 内藤功

    ○内藤功君 安全上どういう手段を講ずべきかというアドバイスなり指導は事業者側にいたしたんですか。どうですか。
  158. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) それはもちろんいたしております。
  159. 内藤功

    ○内藤功君 その内容
  160. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 具体的に渡しました文書について今ちょっと手元に持ち合わせがございませんので具体的な内容までは申し上げられませんが、具体的法条文の違反が明確でございますので、それに関連をして指導をいたしておるわけでございます。
  161. 内藤功

    ○内藤功君 これはきのう通告をしておった問題ですよ。検察庁がどういうようにやったかということより、ここは社労ですからね、やはり安全上どういう手を打ったかということが問題なんで、これを調べていないのはけしからぬですね。
  162. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 例えば六十一年の事故について申し上げますと、送検は送検といたしまして、橋梁上あるいは作業を行う場合には、閉口部全面を覆うか、少なくとも防綱を張って行うようにというような具体的な措置を指導いたしております。
  163. 内藤功

    ○内藤功君 それだけじゃないでしょう。いわゆる安全さく、安全ネット、転落防止板、安全歩道というようなことについてあなたの方は指導しているんですよ。いいことをやっているんだから、それをちゃんと報告しろと言っているんです。こっちの方が言ってあげる。そういうことをやったんですよ。そうでしょう。  そういう中でこの安全衛生委員会というのは保線区では特に大事な役割を持っているんです。基準局長、よく聞いていただきたいんですけれども、こういう安全衛生委員会ですからやはり非常に重視をしていかなくちゃならぬということを私は申し上げているんです。言うまでもなく、JRは国が一〇〇%出資、国から至れり尽くせりの保護を受けておる。業績も東日本の場合は上がっておる。社長は高級官僚出身者で、役員、幹部、皆法令には精通しているはずであります。これはやはり厳正に対処していただかなくちゃなりません。労使間でいろんな不当労働行為の争いがあったとしても、労働者、利用者の生命の安全を守るという体制だけはいかなる場合でも絶対条件です。その保障である安全衛生委員会というものが速やかに開かれる、その原因をやっぱりなくしていくということが私は大事だということを強調しておきたいと思うんです。  これについて大臣、今のお話を聞いておられて安全衛生問題、安全衛生委員会というものについてのそういう事態をどういうふうにお考えになるかという点を中村大臣にお伺いしたい。
  164. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 事業場につきまして労働者の安全衛生を確保するというためにはやっぱり労使が本当に協力し合って安全衛生上の問題に対処することが大事でございます。このための安全衛生委員会が適切に開催されることはその前提でございまして、一般的な意味で事業場に対しましてもその観点に立って指導してまいりたいというふうに考えます。
  165. 内藤功

    ○内藤功君 物事の根本は国鉄労組に対する不当労働行為をやめることだと私は思うんですよ。  三月三日に東京都労委の命令が出まして、これは車掌をやっておられる方を二階級格を下げた、降格をした、これが国鉄労組に対する不利益取り扱い、さらに組織の動揺を策した不当労働行為だと、こういう非常に明確な判断が出ています。これはこれからどんどん出てくると思いますね。労働委員会の命令が次々に出てくると思います。これは一体従わなくていいんですか。また、中労委に再審申し立てをするということですけれども、中労委で一体勝てますかね、これ。勝てるんですか。ほかの事件はどうなんです。同じ運命をみんなたどると思うんです、ほとんどがですね。そういう場合に、十分な勝訴の見込みもない、ただ引き延ばすために中労委に申し立てをする。中労委でもしJR側が負ければ、行政訴訟で東京地裁に訴える、また高裁だ、最高裁だ。こういうことで、国から一〇〇%出資を受けて至れり尽くせりのことをやっている人が社長をやっている、幹部をやっているというところがこれ許されるのですかね。私は、労働省は個別の案件だと言わないで、これは政府が民営化をやってそしてその中でこういうJRができて、一〇〇%出資をしているその会社の問題というのが、こういうふうに地労委、中労委というようなところでもって行われて長期に解決がつかないまま続いていく。一方、やっぱり労働組合の方もこれは屈するわけにいかないでしょうね。局長だってそうでしょう。あなたがうどん屋へ行け、コーヒー屋へ行けと。許されますか。これはやっぱり人間の尊厳からいって許されない。闘うのは当たり前です。これは、ただ今後中労委の経過を見ていますということで済む問題かどうかですね。  この根本の国労に対する不当労働行為、この間予算委員会で我が党の市川議員も質問しましたが、百件に上る不当労働行為審査案件、これをこのまま放置しておくのかどうか。長くなりますから、質問のポイントはそこのところですけれども労働省としてはどういうふうにこれを見ているんですかね。
  166. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  不当労働行為事件が地労委、中労委に対しまして出ておりますのは御指摘のとおりでございます。今先生いろいろおっしゃいましたが、しかし勝てるかどうかというような問題はちょっと我々としては意見を差し挟むべき問題ではないと思いますし、おっしゃることに対しての回答にはならないかもしれませんけれども、やはり正規の手続 によりまして労働委員会で審査が行われている以上、その審査の推移を我々としては見守っていかざるを得ない、こういうふうに考えております。
  167. 内藤功

    ○内藤功君 それなら聞きますけれども、きのう三月二十三日に日本鋼管川崎で労働者の差別是正の和解が成立したんですよ。  これは、横浜地方裁判所川崎支部という裁判所。十五年かかった、十五年。一九七三年四月に提訴しまして、十五年やったんです。宮尾さんら三十四人が日本共産党員であるあるいは日本民主青年同盟員であるという理由で社員資格を定年まで見習い工扱いにされちゃったんです。れっきとした社員が見習い工扱い。定年までおまえさんは見習い工だと。同期入社の労働者に比べて年間百数十万円に達する賃金差別。社宅の入居や住宅融資さえ拒否された。原告の人が一番怒っているのは、住宅の融資や社宅入居まで差別されたといって怒っているんですね。工場長は宮尾という原告の方に対して「いかに君がまじめで優秀であっても共産党員には昇進の道はない。憲法の思想の自由は社内では通用しない。」と、こう公言したんですね。これは和解になりました。一審で和解になりましたが、ポイントは、解決金八千万円総員に支払う、原告の賃金と資格を是正する、ほかに地労委申し立て準備中の百十五人の方も原告に準じて是正する、こういう和解条項なんですね。私は、内容は当然だと思うんです。当たり前のことなんですよ。ただ、当たり前のことが通るのに十五年かかったというんです。この間の本人、家族の苦痛は大変でございましょう。行商をやったりいろいろな苦労をしたと思うんです。どんなであったろうか。世界に冠たる大企業ですね、これがやるべきことじゃありませんよ。JRでも石川島でも同様の紛争がたくさんありますが、こういうふうな十五年もかかる争いになっていく。さっきのJRでもそうですけれども、そういうところまでいきますよ、このままでいくと。そういうことがいいのかどうかということで私は申し上げたわけです。  そこで、次に在日外資系企業の問題に入りたいと思います。  在日外資系企業日本に非常にふえてきておる。いわゆる国際化というのはこういう面で非常に深刻な問題が出てきておる。在日外資系企業労働問題の特色は、私の見るところ二つあると思うんです。一つは、日本法律労働慣習を無視した企業閉鎖、それから規模縮小、合併、それから大量の人員削減、人減らしですね、そういういわゆる合理化問題。もう一つは、組合を敵視した不当労働行為の多発とこれに伴います長期化、激化というのが特色だと思います。  それでお伺いしたいんですが、私の知るところ、我が国へ進出している外資系企業の数は約二千社、昭和六十年度の四月から十二月までの新規参入企業数は約四百九十七社、こういうふうに聞いておるわけなんですが、労働省に聞きたいのは、これら在日外資系企業で働く労働者の数はどのぐらいとつかんでおられますか。
  168. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  正確な把握はなかなか難しいところでございますが、労働省が行いました五十八年八月の外資比率二五%以上の企業を対象とした調査によりますれば、集計した企業千五十一社の労働者数は二十万九千六百三十三人となっております。  なお、昨年の八月時点といたしまして同様の調査を行いました結果を現在集計中でございますので、それ以後の状況についてはこの集計によってまた出てくるかというように思っております。
  169. 内藤功

    ○内藤功君 労使間のいわゆる争議の発生状況、これはどんなふうになっていますか。
  170. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今申し上げました外資系企業の労使関係実態調査によりますれば、この調査前二年間に争議行為を伴った労働争議が発生した企業は集計した企業千五十一社のうち五十二社ということになっております。
  171. 内藤功

    ○内藤功君 私の方で最近のいろんな外資系企業労働争議の問題をできるだけ調べてみたんですが、非常にふえておるんですね。この十三年間で、ちょっと調べてみましたが、労働委員会、中労委、池労委含めて、不当労働行為であるということで救済命令を出した数が、昭和四十九年の十二月から六十二年二月までとりましたが、八十四件に上っております。外資系企業の割合は日本全体の不当労働行為の中でも非常に大きな位置を占めていると思いますね。  労働省では、この点どういうふうに把握をしておられますか。現在、主要な外資系企業労働争議について、企業名を含めてどういうところを把握しておられますか。
  172. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今先生の御調査は四十九年から六十二年二月ということでございましたが、地労委、中労委での不当労働行為の件数としまして、救済命令につきましては、外資系企業総覧等に掲載されております数字として昭和五十年以降六十一年までに地労委で六十九件、中労委で十七件という数字が出ております。  なお、その中で、係争中の争議件数等につきましては、裁判所の問題その他を含めまして十分に把握ができてはおりませんが、具体的にはリーダーズ・ダイジェストの企業閉鎖の問題、それから外銀労P・Fカリヤーの支店閉鎖、解雇の問題、それからチェース・マンハッタン銀行基地内支店での慰謝料請求の問題等を含めまして大体十数件の件数が係争中だということで把握いたしております。
  173. 内藤功

    ○内藤功君 昨年の三月に東京都の品川労政事務所が外資系企業における労働条件実態調査というものをやりましたが、これを見ますと、外資系企業というのは日本労働法、労働慣行を十分理解しているというのが回答のわずか一三%、一応理解しているが五二%、こういう数字が出ています。それから、労働組合というのをどう意識するかということで、もめごとが生じやすいと考えているのが四八%、かなりこれ高いですね。こういう数字が出てきています。  私、こういうものを見まして、例えば、今冒頭に言われましたリーダーズ・ダイジェスト、これは本社がアメリカ合衆国のニューヨークにあって二十七カ国に子会社があります。一九四六年に日本支社ができて、一九六一年に日本リーダーズ・ダイジェスト社が設立された。アメリカが一〇〇%出資で、社長はアメリカから来る。編集内容、会社業務、人事一切米本社の決定に従うと。ところが、一九八五年の十二月三日に突然閉鎖通告をしたんですね。全く寝耳に水です。労組の反対を押し切って、八六年一月末日で閉鎖する、もう二カ月先に閉鎖すると、こう言うわけです。その期限までに退職に納得しなかった組合役員、組合員三十一名おりましたが、これを二月三日に即座に解雇してしまう。いまだに退職金も払っておりません。退職金の供託というのを日本経営者だと普通やるんですけれども、それもやらないですね。退職金を払う意思を普通示すんですけれども、それもやらない。解雇撤回、雑誌再刊を求めて労働委員会、裁判所に係っておりまして、今全国を行商、物品販売。平均勤続十五年の有能な社員がこういう苦しみに耐えて頑張っているわけです。  リーダーズ・ダイジェストの読者は、ここにおられる皆さんも御経験があるでしょうが、日本で多くて、現在でも三十万人読者がいたんですね。それで、この三十万人の人に雑誌を売るだけでも三年間は商売ができるだろうと言われているものを、このようにして突如閉鎖した。閉鎖の直前まで購読予約はちゃっかりとっているんですね、とっている。長年にわたる日本の愛読者を傷つけるやり方だと思うんですよ。スペインのリーダーズ・ダイジェストでは、八四年の八月に閉鎖決定したけれども、十カ月続刊して、スペイン政府の了解を一応得てお客さんにも迷惑をかけないようにやったと。同じやり方でもそういうやり方です。しかも、閉鎖の一年前の一九八五年二月に当時時価五百億円を下らないと言われた土地二千七十六坪、これを七十一億円で安売り、さらに株式 を十一億円で売って、累積赤字が三十四億円だというのにこの七十一億円をこの赤字につぎ込むこともしないで本国に撤退しちゃったわけですね。労働組合に対する態度としてアメリカの本社は、ダイジェストでは世界どこの国でも労働組合はない、すぐ解散させろ、中心人物は首にしろと、これが本社から入手した文章の中に出ているんですね。私はいろいろ申し上げたのは、日本労働法、労働慣行無視という点でこのリーダイだけじゃなくて外資系企業は非常に一致しているということを申し上げたいんです。  私は、そういう点で外資系企業というものについて、外務省おいでいただいておりますが、一九七六年の六月にOECDの第十五回閣僚理事会の国際投資及び多国籍企業に関する宣言というのが出て、その附属書の多国籍企業の行動指針第六項の中でこういう問題について明確に規定していると思うんですが、ちょっとその内容をお示しいただきたいと思います。
  174. 海老原紳

    説明員(海老原紳君) お答えいたします。  先生指摘の多国籍企業に関する行動指針でございますけれども、多国籍企業が自主的に守るべき指針につきまして、前文十一項に続きまして一般方針、情報公開、競争、財務、課税、雇用及び労使関係、科学技術の七領域につきまして規定をしておりますけれども、今先生指摘の点につきましては雇用及び労使関係についての第六項におきまして規定をしておりますので、読み上げさしていただきます。   企業は、事業活動が行われるそれぞれの国における法律、規則並びに一般的な労働関係及び雇用慣行の枠内において、   特に集団的な解雇(一時解雇を含む。)を伴う構成体の閉鎖の場合のように、従業員の生活に重大な影響を及ぼすような事業活動の変更を検討するに当たっては、従業員の代表及び適当な場合には関係政府当局に対し、かかる変更に関して合理的な予告を行い、また、最大限に実行可能な限度において、悪影響を緩和するため従業員代表及び適当な政府当局と協力すべきである。 と規定しております。
  175. 内藤功

    ○内藤功君 今外務省からお話がありました。このように「解雇を伴う構成体の閉鎖の場合のように、従業員の生活に重大な影響を及ぼすような事業活動の変更を検討するに当たっては、従業員の代表及び適当な場合には関係政府当局に対し、」「予告を行い、また、最大限に実行可能な限度において、悪影響を緩和するため従業員代表及び適当な政府当局と協力すべきである。」と非常に明確にうたっておるわけであります。  私、今、たくさん例がありますが、リーダーズ・ダイジェストの例だけを挙げたわけです。この個別問題について答弁を求めようとは思いませんが、こういうようなことが次々行われてきますと、外国の多国籍企業が入ってくると、もうかるときは仕事をどんどんやって、そして一方的にこういうふうに土地を売っ払って撤退をする、そして企業閉鎖を突如やって、労働者で言うことを聞かない者は塗炭の苦しみに陥れて省みない、日本人の経営者だったらここまではやらないという極端なものが出てきているんですね。OECDはこれをきちっとうたっておるわけでございます。  そこで、私は、これを野放しにするわけにいかないと思うんですね。大きな問題であります。私はずっといろんなケースを調べてみまして、一番大きな特徴というのは、外資系企業いろいろありますけれども企業の縮小、合併、閉鎖等を本国本社で一方的に決めるわけですよ。そして日本に来ている人にはこれに対してチェックする権限のある人はいない。で、日本政府日本の国にはこれに対する規制の措置、規制の根拠になる法令もない。結局本社の言いなりになっている。在日経営者は本社の言いなり、本国の言いなりで、日本労働者を無視して人員縮小、解雇を簡単にやってくる。今のリーダイの例がもう端的な例だと思うんですね。で、外資企業が責任を放棄して本国に撤退した場合、それにかわり責任を持って後始末をやってくれる交渉主体は日本にないと。ですから、昨年でしたか、労働組合の代表団がニューヨークまで乗り込んでいってやるというふうなこういう事態も起きているんです。政府が労使の推移を見守るじゃこれは済まないと思う。やはりOECDのこういう決議もあることでありますから、私は、この際、在日外資企業人員縮小、合併、閉鎖、資産売却等について、OECDのこの行動指針を十分に踏まえて、日本労働者、さらに日本のいろいろ関係の市民の権利、生活というものを守る立場から何らかのやっぱりお考えをここで具体的に打ち出すときが来ていると思う。これは政府全体の問題ですが、特に労働という面で労働者の保護を任務とする労働省考えがまず出されなきゃならぬと思うんです。  伝えられるところによりますと、外資系企業労働問題連絡協議会、商工会議所の人を集めてやるとか外国人トップセミナーをやるとか、これも結構ですよ。しかしこれだけじゃだめなんですね。もっと守るという立場での方法があってしかるべきと思いますが、いかがなもんでしょうか。
  176. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  外資系企業をめぐる労働問題につきましては、今先生指摘のとおり、いろいろとそういう企業がふえるにつれまして問題がだんだんふえたりいたしております。もとより外資系企業といえども我が国の労働法令を遵守していただくことは当然でございまして、このような立場から指導を行ってきたところでございますけれども、今先生おっしゃいましたように、六十三年度からは在日外国商工会議所に対する指導、トップセミナー等も加えて、よくそういう趣旨での話が十分浸透するように、そしてまた我が国の法令その他についても十分理解が深まるように、まずそれを強化してまいりたいというふうに考えております。  なお、御指摘のOECDの多国籍企業の行動指針についても、これらの場面におきまして十分これを考慮して指導を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  177. 内藤功

    ○内藤功君 重要な問題ですから即答を求めませんけれども、私は何らかの規制法的なものを御検討いただきたいと思うんです。これは、きょう私即答を求めませんが、関係省庁とも十分に相談をしていただきたい。私はそういうものが必要だと思う。それがやっぱり行動の基準になると思うんですね。  それから、私自身も、外国商社の経営者が、労働組合の役員だというので首を切った件について、直接その商社の社長と交渉したことがあるんです。私は交渉していて思ったですね。よく勉強していると言っているんですけれども労働組合法の本当のところはやっぱりわからないですよ。これはわからないです。ですから詳しく説明すると、ああそうかと。聞かなかったのかと言ったら、知らなかったと言うんですね。そういうのが多いんです。ですからこれはもう徹底的にやっていただかないと、これから多くなりますから、お願いをしておきたいと思うんですね。  それから、残る時間ですが、基準法の施行問題についてお伺いしたい。  労働基準法の一部改正法が四月一日から施行されるわけであります。さきの百九臨時国会での審議に当たって、私は、同法案が八時間労働制を崩し変形労働時間制の導入によって労働者の生活設計、健康にも重大な影響を与えるものとして強く反対し、これに対する我が党の抜本的対案としての修正案を提出したところであります。  ところで、本法の四月一日施行を前にいたしまして、その運用の面で幾つかの問題をお伺いをしたいと思うんです。  まず、百九臨時国会の社労委の法案審議の際に私は次のように質問をしたんです。変形労働時間の労使協定が結ばれてもどうしても納得できない、八時間以上働きたくないという労働者がいた場合、保育、介護、看病あるいはその他の理由で八時間以上はどうしても働けないし働きたくないという労働者がいた場合に、一たん変形労働時間の労使協定が結ばれると拒否ができなくなる、こ れは人間の人権、自由という問題でどう考えるかという問題を質問したところ、当時の野崎審議官が答弁された内容は、労使協定は労基法上の禁止を解除する効力を持つだけである、先ほど来お話に出ているような特別の事情のある方についてはそこで配慮し、一定の範囲内で禁止を解除しないということを定めれば拒否の可能性が出てくる、こういう答弁をされておるわけです。これは九月十日の会議録に出ております。ところで、今度の改正省令を拝見しますと、その中に、変形労働時間制により労働させる場合には、育児、老人等の介護、職業訓練、教育その他特別の配慮を要する者について必要な時間を確保できるような配慮をするように努めなければならない、こういうふうに書いてありおおむねこの野崎審議官の答弁が省令に条文化されたものかなと思うわけなんです。思うわけなんですが、ことしの一月一日付で基発一号、婦発一号で出たこの省令、政令の内容にかかわる通達をよく読みましても、この配慮というのはどういう内容なのか、それはもう勝手に労使でその場で判断しろ、こういうことなのかあるいは基準監督官が常識で判断しろというのか、これは野崎審議官は拒否の可能性というところまで言っているわけですからね。  その内容については、これ以上の内容はないのかあるいはどんなことをお考えになっているのか、これを伺っておきたいと思います。
  178. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 変形労働時間制におきますこの配慮の努力義務でございますが、今お尋ねのように、どのように配慮するかということの内容につきましては変形労働時間制を採用する事業場におきます事業実態あるいは労使の話し合い等によってこの変形労働時間制を導入するかどうかが決まるわけでございまして、個々のケースによって配慮の中身を必ずしも一概に基準的に定めるということは難しかろうというふうに思うわけでございます。  いよいよこれがスタートするわけでございますけれども、それぞれの事業場においてどのような配慮が行われているかというような事態のある程度の累積の中で一般的傾向としてこういう配慮が行われているあるいは好ましいというような事態は判明するかと思いますけれども、今の時点でこれこれの中身の配慮をしろというような指導を画一的にするということは困難ではないだろうかと。したがいまして、この導入の際に当たってそれぞれの事業場の実態に即したあるいはそれぞれの事情にある人を配慮した労使間の話し合いによって考慮する内容が決められていくべきではなかろうかと。しかしながら、私どもといたしましては、この法施行規則におきまして配慮義務が必要であるということにつきましては関係労使に十分指導してまいりたいと考えております。
  179. 内藤功

    ○内藤功君 これから施行されるところですからお互いによく実態を見て、その都度私もここで質問したいと思うし、そういうふうにして配慮という中身を充実させていきたいと思うんですね。  そこで、例えば、労使協定とか就業規則あるいは労働協約の中に、配慮というあなたの言葉を使えば、労働者から配慮の申し出をしやすくするような手続制度を設ける、例えば、どうしても保育園に子供を迎えにいかなきゃならぬあるいは年老いた両親の病院にどうしても帰りに寄らなくちゃならぬ、看病しなきゃならぬというふうな具体的な配慮ということが申し出がしにくい職場もあるでしょう。そういうところをしやすくするような手続制度を例えば協約の中に盛り込みなさいよ、就業親則の中に盛り込みなさいよというようなことも私は一つ内容であろうかなと思うんです。そういうことも含めて、ただ配慮と言うだけじゃなくて、その中に非常にいろんな実態がありますから、中身を豊かにしていくようにひとつこれをお願いしたい。この規則自体は答弁趣旨を踏まえたわずかに評価のできるものだと私は思います。それだけに充実させていかなくちゃいかぬと思うんです。  次に、一週間単位の変形労働時間制の対象として小売業が出てきたんですよ。私の質問のときにもこの点を非常に強調したんです。小売業は、私の知るところ全国百十六万五千六百八十五事業場、労働者は五百五十六万五千四百四十五人と理解をいたします。影響は少なくないんですね。で、社労委員会のこの法案審議のこの場での私の質問に対しましては、政府側は野崎審議官を中心に旅館のことだけ言っていたんですよ。例を挙げると僕は言ったんです、こういうことになるんじゃないかなと思ったものですから。一週間単位の変形労働時間制はどういう事業場か例を挙げてと。小売業は一言も言わなかったと思います。旅館のことしか言わない。旅館というと、なるほどそうかなと僕も思ったんですよ。しかし、国会が終わって省令が出ると、今度は小売業が忽然とあらわれてきた。これは国会答弁で言わないことを拡大したと私は非常に遺憾な気持ちなんですが、いかがですか。
  180. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 当時の答弁におきまして例示として旅館業を挙げたということは事実でございますが、同時に、中央労働基準審議会において第三次産業を中心に検討していただくという答弁を当時申し上げたところでございます。  その後、対象業種につきまして中央労働基準審議会において審議をいただいておる過程で、その対象事業に関しまして小売業を含めるということについての答申をいただくことになったわけでございますが、そのときの答申の中におきまして、特に公益委員の意見といたしまして「制度趣旨に則って適切な運用を図り、今後、その運用実態を把握し、必要に応じ、その範囲等について検討を行うこととすべきである」旨の御意見もいただいたわけでございまして、今後、この一週間単位の変形労働時間制の対象業種の適切な運営につきましては十分意を用いてまいりたいと考えております。
  181. 内藤功

    ○内藤功君 それごらんなさい、答弁に言ってないでしょう、第三次産業としか言ってない。ね。国会でやはり明確にその考えを言うべきだというふうに思いますよ。私は、今の局長の言われた、制度趣旨にのっとって範囲等について検討を行うと、こういうのが出ておるわけですから、小売業といったって広いんですから、やはりこれについては非常に広過ぎるというふうに思うんです。これも今後の運用の問題ですから、実態に即して範囲を制限的にやっぱり考えていくというふうにすべきだと私は思っているわけです。  時間がもう余りありませんので、基準法に関係して、この百九臨時国会では労働基準法の改正法案に対する私どもの修正案の中で、時間外労働の上限を一日二時間、年間百二十時間までとするということを具体的に御提案申し上げたところであります。なお、参議院の附帯決議ではその問題についての検討がうたわれております。これについては、私はもう非常に重要な問題だと思うんです。日本の場合、残業、時間外労働の上限規制がないんですね、目安ということであって規制になっていないんです。これは、どうしても労働省として次の労働基準法改正の機会には必ずこれを入れてもらいたいと私は強く要望しておるわけです。この附帯決議に対する態度も含めて、具体的なこれについて臨む姿勢をお伺いしたい。
  182. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 時間外労働の上限につきましては、基準法においては定めはございませんけれども、労使協定締結の指針に基づきまして指導を行っているところでございまして、特に昨年の基準法改正におきます当委員会の附帯決議を踏まえまして、六十三年度に時間外労働に関する実態調査実施することにいたしております。その結果に基づきまして、この指針に年間の時間外労働時間数の目安を加えるということを内容といたしまして、来年、六十四年四月実施を目途にその見直しを図るという予定にいたしております。
  183. 内藤功

    ○内藤功君 もう一つ、これも私どもの修正案の中で提起したんですが、附帯決議には残念ながら織り込まれませんでしたが、就職初年度の労働者、いわゆるフレッシュマン、入社した一年目の人にもやはり年休を付与してあげる必要がありま す。この人たちは、体は若くて元気なようですけれどもやはり新しい職場でもって心身ともに非常に苦しい面もある、ストレスもたまる、休養の必要性は全く人間として同じであります。この御検討を願えないかということをお伺いしたい。
  184. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 我が国の年次有給休暇制度につきましては、一年の継続勤務を要件として勤続年数に従って付与日数が逓増する形をとっておりますが、これは我が国の雇用慣行に即したものであると考えておりまして、これを変更することは適当でないというふうに考えております。
  185. 内藤功

    ○内藤功君 非常に頭がかたいと思いますよ、その考え方は。これは改めていただきたいと思います。  時間がないので最後の一問になりますが、これは法案も用意をされているようですが、私は黙っているわけにいかないのでぜひこれは申し上げておきたいですね。  それは中労委の公益委員の労使同意制の問題ですよ。きょうは法案審査の機会じゃないけれども、非常に重要な問題です。特に、公益委員をやった経験のある著名な学者、弁護士の方がみんな労使同意制は非常に重要だということを言っておられるということなんですね。  例えば石川吉右衛門さん、東大の教授ですが、この方は「同意制を廃止すれば、任命権者に対して遠慮されることになり、私としては、少なくとも現在においてはその弊害の方が大きいと考えるのでこの同意制廃止の主張には賛成しない」、それから、これは東大の現役の先生ですが菅野教授は「日本労働委員会制度一つの特色であり、労使関係の中立的専門家の選定を労使自身に委ねているという意義を持つ」。この方は現在公益委員をやっておられる方ですね。それから、最高裁判事をやり中労委の公益委員をやった塚本重頼弁護士は「労使関係の識見を有する人材を広く民間に求め、労働委員会における労使紛争の処理が労使関係の実情に即して処理されることをねらったものと考えられる」と、この制度に肯定的ですよ。それから、大阪の地労委の公益委員を長くやった本多淳亮教授は「同意制は、一方において立場の鮮明過ぎる極端な考え方の人物を排除するとともに、他方において労働問題に理解のない、良識を欠く人物の登場を阻むことによって、労委に対する社会一般の信頼感を維持するという役割を果たしてきた。また、公益委員の立場から見ると、労使から支持されているという一種の安定感の上に立って仕事ができるという効用がある」。  私は、これだけの人がこういうふうに言っているんですから、こういう同意制を今にわかに廃止する理由が全く納得できないですね。もちろんほかの点もありますが、これは法案審査のときでないから私はきょうは触れません。触れませんし、今の問題についての答弁もあえて私は求めませんけれども、こういう強い反対がやっぱり起きている。公益委員経験者の方から起きている。私らが中労委にかつて代理人として出まして、やはりこの本を書かれた東大の労働法の先生あるいは最高裁の判事をやるような弁護士さん、そういう人たちが座っておると何となく公平な感じがするんですね。負ければこれはちょっと悔しいですけれども、そうであってもやっぱり公平ということの意味で労使が同意した人がここへ座っているというのは大きな制度の中心なんだね。それを外してしまえば労使があんな人はだめだという人が座るということになるのは制度として甚だよくないと思う。ですから労使同意制、ほかにも問題はあるけれども、これは絶対に守ってもらいたい。私はそういう意味でこの法案は撤回してもらいたいという考え方を持っているわけなんですよ。このことを最後に要望いたしまして、時間が経過したので私これで質問を終わりたいと思います。
  186. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本件に関する質疑は以上で終了いたします。     ─────────────
  187. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 労働安全衛生法の一部を改正する法律案及び勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案の両案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。中村労働大臣
  188. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) ただいま議題となりました労働安全衛生法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  最近における労働災害の発生状況を見ますと、逐年減少傾向にあるものの、今なお年間八十万人もの人々が被災し、そのうち二千五百人ものとうとい生命が失われております。  これら労働災害の多くは、中小企業において発生しており、中小企業労働災害発生率は依然として高い水準で推移しております。  また、世界にも例を見ない速さで進行している高齢化社会への移行により、高年齢労働者労働災害が多く発生しております。  さらに、ストレスによる職場不適応の発生等労働者の心身両面での健康の保持に新たな問題が生じてきております。  このような近年における労働者の安全衛生をめぐる状況にかんがみ、政府としては、社会経済情勢の変化に対応した総合的な安全衛生対策を展開するため、中央労働基準審議会の答申を得て、労働安全衛生法の一部を改正する法律案を取りまとめ、提案した次第であります。  次に、その内容の概要を御説明申し上げます。  第一に、小規模事業場における安全衛生業務を担当する者として安全衛生推進者を選任することとするとともに、安全管理者等に対し職場の安全衛生管理を進めるための新たな知識・技能を付与すること等により、安全衛生管理体制を充実することとしております。  第二に、法令上の要件を具備していない機械等の製造者及び輸入者に対し、その回収または改善を命じる制度を創設することにより機械等に関する安全性の確保を充実することとしております。  第三に、労働者に対する健康教育、健康相談の実施促進することとし、このために必要な指針の公表や援助を行うことにより、労働者の健康の保持増進のための措置を充実することとしております。  以上のほか、建設業における労働災害を防止するための計画の届け出制度の充実、発注者に対する勧告または要請等につきまして、必要な規定を設けることといたしております。  なお、この法律施行期日は、原則として、昭和六十三年十月一日といたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  続きまして、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  勤労者財産形成促進制度は、勤労者の計画的な財産形成を促進して、その生活の安定を図ることを目的としており、現在、勤労者財産形成貯蓄を行う勤労者は千九百万人に達し、その貯蓄額は十二兆円を超えるなど、勤労者生活に広く定着してきております。  しかしながら、勤労者の財産形成をより一層促進するためには、当面次の事項についての改善が急務となっております。  すなわち、一つには、今後の本格的な高齢化社会に対応して、勤労者の老後生活の安定を図るための個人年金資産の着実な蓄積の促進であり、二つには、既存の持ち家についてニーズが高まっている増改築等への対応であり、三つには、勤労者の企業間・事業所間の異動の活発化に対応した継続的な資産形成の方策であります。  政府は、このような状況にかんがみ、勤労者財産形成促進制度につき所要の改善を図ることとし、勤労者財産形成審議会の答申をいただいた上で、ここに勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案として提出した次第であります。  次に、この法律案内容につきまして、概要を 御説明申し上げます。  第一は、勤労者財産形成年金貯蓄契約の払い出し制限要件の緩和であります。  勤労者財産形成年金貯蓄の額が、据置期間中の予期しない金利の上昇により非課税限度額を超えることとなる場合には、一定の手続により利子等の額を払い出すことを可能とすることといたしております。  第二は、勤労者財産形成住宅貯蓄契約の使途の拡大であります。  勤労者財産形成住宅貯蓄契約の使途として、一定規模の住宅の増改築等を加えることといたしております。  第三は、勤労者財産形成給付金制度及び勤労者財産形成基金制度の転職時等における継続措置の創設であります。  転勤、出向、転職の際も、勤労者財産形成給付金制度及び勤労者財産形成基金制度の継続を可能とすることといたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上です。
  189. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十二分散会