運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-03-22 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十二日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩崎 純三君                 遠藤 政夫君                 斎藤 十朗君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君    国務大臣        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生大臣官房会        計課長      多田  宏君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省保健医療        局老人保健部長  岸本 正裕君        厚生省薬務局長  坂本 龍彦君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省児童家庭        局長       長尾 立子君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省年金局長  水田  努君        社会保険庁医療        保険部長     土井  豊君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   佐々木喜之君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君     ─────────────   本日の会議に付した案件社会保障制度等に関する調査  (厚生行政基本施策に関する件) ○社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  社会保障制度に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 山本正和

    山本正和君 大臣御就任の最初の常任委員会でございまして、実は、私も厚生省設置法という法律を初めて斜め読みをさせていただきまして、大変重要な仕事であるということをつくづくと感じさせられたところでございます。今特に大変難しい時期でございますだけに御苦労が多いかと思いますけれども、本当にひとつよろしくお願いします。  きょうは私は三点にわたりまして質問を申し上げたいと思うわけであります。その一つは、六十三年度の予算編成の中でも指摘されているわけでありますけれども医療費適正化問題であります。二つ目には、どうも最近新聞紙上等でも出ておりますが、お医者さんのあるいは医療機関の中でのさまざまな事件が報道されます。また医道審議会処分がされたりあるいは不正請求に伴うさまざまな事柄が国民不信を招いているという問題がございます。そしてさらに特に最近の新聞で取り上げられております血液問題、この三つのことにつきまして厚生省のお考えをただしていきたいと思うわけであります。  まず第一点の医療適正化の問題でありますが、六十三年度予算編成に際しまして厚生省の方の予算をずっと拝見してまいりますと、医療費適正化として国庫負担減を見積もっておみえでございます。医療費増高傾向にある中でしかも国民医療がいろんな意味で大変難しい状況にある中でのこの国庫負担減というのは、一体どういうふうな観点からこの予算算定をおやりになったのか、その辺の基本的なお考えをまず承っておきたいと思うわけであります。
  4. 下村健

    政府委員下村健君) 医療費の見通しは毎年度そのときどきの実績医療費伸びというふうなものの推移を見ながら予算編成を行うわけでございますが、最近におきましては、お話に出ましたように医療費適正化ということで、医療費伸び実績を勘案しながらそういった努力考え予算を編成してまいるわけでございます。千二百五十億というのは、したがいまして概算要求時点とそれから暮れの時点実績数値の差といったものが大きく影響しているわけでございますが、そういった状況を踏まえまして医療費総体伸びがある程度当初見積もりに比べると低くなってまいった、それに伴って国庫負担の方もそれに応じた分だけ少なくなってまいる、こんなことになるわけでございます。
  5. 山本正和

    山本正和君 厚生省予算財源捻出のところをずっと私なりに見させていただきますと、当然増が七千億円程度必要である、ところが六十三年度の予算の増額は二千九百四十六億円、三千億を若干切れるというところである、どうしても四千億足りない、足りないのでこの数字をどうしてもひねり出さなきゃいけないというところで随分苦心されまして、そこでそのうちの一部として千二百五十億が出たんじゃないかというふうな印象が否めないのでございます。要するに、今の医療の問題、とにかく医療費がかかり過ぎるかかり過ぎるというふうな言い方につい押し流されていってはいけないんじゃないかと、逆の意味でですね。ですからこういう形で減額するということを出す以上は、いや、これは減額していますけれども従来の医療水準は確実に確保いたします、国民に対する医療サービスはきちんと行います、こういうことを基本に置いてこの一千二百五十億ということの算定についてはやってありますということを、厚生省としてその辺の確信を持っての御答弁がいただけるかどうか、この辺をお聞きしておきたいと思うんです。
  6. 下村健

    政府委員下村健君) 私どもとしては必要な医療保険の中でも確保してまいるということで当然考えておりまして、医療水準を落とすというふうなことではございませんで、従来から現在の医療について、例えば薬の問題でありますとか検査の問題あるいは入院日数が長いとかいろいろ医療そのものについての問題点指摘も行われておりますので、そういった点を重点にしていわゆる適正化という形で努力を重ねていく、ただそのこと によって必要な医療が抑制されるあるいは医療水準を下げてもよろしい、こういうことはしないということで努力をしてまいりたい、こういう考え方でございます。
  7. 山本正和

    山本正和君 省内でもかねてから医療費といいましょうか、国民医療のあり方についての随分慎重な御検討が進められておるように聞いておるわけであります。そして私どもから見ましても、また国民の目から見ても、我が国の医療の中でヨーロッパやアメリカと比べて大変違っているのは何かといえば、例えば老人問題、これは、大臣のことしの所信表明の中でも高齢者の長い生活経験というものは国家社会の大変な財産である、こういう趣旨の御発言がございます。本来からいいますと、医療という分野じゃなしに国民全体、国家社会全体でもって老人問題について取り組まなきゃいけない時期が来ている、こういうものについてはきちんと対応していくべきだと。ただ、それは私は間接税へ持っていけという意味じゃございませんけれども、そういうふうな一番基本部分から来る問題を厚生省としてもお扱いになっている、御研究いただいているというふうに思うわけです。ですから、千二百五十億のお金をこんなところで削るという発想ではなしに、今後そういうところで大上段から切り結んで、そして内閣全体の立場でこの医療費問題については老人問題と切り離してひとつ十分な御対応を願いたい。これはかねてからの厚生省の御姿勢でございますけれども堅持していただきたい、こういうことを私思っておるものでございますから、適正化問題の中におけるこの種の問題についてのもし大臣の御見解がございましたら承りたいと思います。
  8. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 高齢化社会の本格的な到来によりまして医療費とか年金に対する多様な社会保障経費が増大してくる、しかし一方におきまして医療年金などの社会保障というのは国民生活を長期安定させるための基盤になる制度でございますから必要な給付は確保していかなきゃならぬ、しかし一方で過重な負担はなるべく避けるように適正化努力も推進していかなきゃならぬ、こういうことだと思うわけでございます。特に今後の医療費伸び考えてみますと、老人医療費が非常に大きなウエートを占めておるということも御承知のとおりだと思います。  そこで、適正化問題については全体的な適正化と、また老人医療については基本的に総合的にいろいろ見直ししていく必要があるのじゃないだろうか。一つは、無病息災という考え方から一病息災というような考え方も必要でありましょうし、それから老人医療というのはリハビリであるとか介護であるとかそういう面を今後今まで以上に重要視することも必要であると思いますし、また委員先ほどいろいろ御意見ございましたように医療だけではなくて保健とか福祉、そういう分野も含めた総合的な対策というのも必要だと思っておるわけでございまして、今後そういうことを十分に念頭に置きながら努力していきたい、そう考えております。
  9. 山本正和

    山本正和君 何といいましょうか、厚生省設置法に基づく中身を見てみますと、大変だと思うわけでありますけれども、特に老人問題が何か国民医療問題とごっちゃにされてそこから生まれてくる誤解が多いような気がいたしますので、国民に対する理解を得るためのお取り組みを厚生省としてもぜひお願いしておきたいと思っております。  その次に、私自身もお医者さんに友人もございますし、また先輩あるいは教え子等にもおりまして、多くのお医者さんや医療機関が大変な苦労をしながら国民医療のために頑張っておられることもよく承知しているのでありますけれども、やっぱりどうしてもこれはたくさんの数でございますから、中に不祥事件といいましょうかあるいはこんなことで一体患者信頼が得られるんだろうかというふうな心配が出てくる事件がたびたび出てまいります。  そこで特に、きょうは余り時間がございませんから、医療そのもの営利性というものが本来あってはならないんだろうと私は思うんでございます。ところが営利性をひたすら追求する金融業者医療の中に入ってきて、そしてそこでさまざまなトラブルが起こっているというようなことが盛んに最近言われております。貸金業者トラブルを起こしたら病院がつぶれたあるいは貸金業者の取り立てに遭って病院がつぶされたというふうな問題等も出てまいります。  そういうようなことも含めまして、医療機関貸金業規制違反で起訴されて調べを受けますと、これは大阪の調べでございますけれども貸金業規制違反で起訴された新日本医療サービスなるものが三年間で二百十カ所の融資をしているうちで医療機関が何と百四十四件に及んでいる、こういうふうなことが出ております。病院はまさに営利企業でない、そこへ町の金融がそれもやみ融資という格好でもってやっている、こういうことについては厚生省はどういうふうに把握しておみえになるんでしょうか。またその中には診療報酬債権を譲渡する権限、そんなものまでが担保になっているなどとも言われておるわけであります。この種の問題については厚生省としてはどういうふうに把握しておみえになるかをまずお伺いしておきたいと思います。
  10. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 医療機関が健全に経営されることは私ども国民が受けるべき医療が安んじて受けられるような基本にあるわけでございまして、私どもといたしましても医療機関経営それ自体が健全であることは非常に望ましいわけでございます。  御指摘のような事件は若干私どもといたしましても承知しておるわけでございますけれども、ややもすれば医療機関経営それ自体が非常に放漫に陥ったり、あるいは過剰投資によります資金繰りが苦しいとか原因はいろいろ千差万別であろうと思いますが、そういうことから町の金融業者等からつなぎ融資を受けるというふうなことでいろいろトラブルが起きているということを承知しておるわけでございます。  もちろん医療機関健全経営のためには経営者みずから御努力いただくわけでございますが、行政側といたしましても、経営指導その他の場面を通じまして、少なくとも患者さんに迷惑のかからないような医療継続性を担保するような健全経営というものを私どもさらに推し進めるようにいろいろな角度から努力をしてまいりたいと考えております。
  11. 山本正和

    山本正和君 特に、私、これは非常に問題だと思うのは、医療法七条四項の規定で、これはこのことには直接かかわってはおりませんが、「営利目的として、病院診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、前項の規定にかかわらず、」「許可を与えないことができる。」というのがございます。少なくとも町の金融業者が貸すというのは、営利対象にしている者に貸すというのが目的でもって大体こういう金融業者というのはあると思うんです。利潤のないところには貸さないというのは当たり前でありますから、それを貸しているというのは医療法第七条四項の精神からいって非常におかしいじゃないかと思いますし、本来やっぱり日本医師会、大変立派な長い伝統を持った立派な団体でございます、すぐれた方がたくさんおみえでございます。そういう中で同じ仲間に入っている医師会の会員がこういうことをするというのは本当は許せないことだろうと私は思うのですけれども、これは厚生省が何か医療機関等に対する御指導をされるあるいは医師に対する指導をされる場合には常に医師会との連携をしながらおやりになるということになっております。そういうことも含めまして、この種の問題については一体今後どういうふうに対応されていかれるのか、何か通達をお出しになったようには聞いておりますけれども、その後一体どういうふうな対応になっているのか、この辺をお聞きしておきたいと思います。
  12. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 先ほどもお尋ねございましたように病院が約一万ぐらい、診療所が八万、歯科診療所が五万という数の多さでございま すので、必ずしもその中のすべてが経営が健全であるというふうに言えない部分もあろうかと思いますが、私どもといたしましては、病院開設許可の場合には開設者営利目的としているか否かについて厳しく審査をしてもらいまして、営利性があると判断された場合には許可を与えないことができるということで、今お話のございました七条四項というのも規定としてあるわけでございます。ただ、開設した後、そういう町の金融業者等からつなぎに資金をお借りになること自体まではなかなか私どもとして目が届かない部分もありますので、そういう点につきましては本来医療機関を開設する側の方々が健全にその医療機関経営していただくことが望ましいということで先ほど申し上げましたが、そういう観点から六十二年の六月にも通知をお出しいたしまして、開設者がそういう営利性があるかどうかを確認するということ、さらにそれが非営利性であるということを十分確認するということでの通知を出すとともに、従前から行っております病院経営管理指導、そういう局面におきましてもできるだけ健全な経営をするようにということで指導をしておるわけでございます。病院経営にもいろいろの差がございますのでなかなか難しい面もあろうかと思いますけれども、今おっしゃいましたように日本医師会あるいは関係の病院団体等とも十分話し合いをしながら、その方向で努力をしたいと考えておるところでございます。
  13. 山本正和

    山本正和君 今直ちにどうこうというふうにはならないと私もよくその辺の事情は理解いたしますが、本来、国民の目から見れば、医療金融公庫というものが設立されておる、そして厚生省それから都道府県病院診療所等についてはきちっと指導し得る体制にあるということの前提の上に患者が安心して病院にかかるんだろうと思うんですね。ところが、実はあの病院は町の金融機関から借りているということになったら、本来からいえば、私は患者は行かないだろうと思う。その辺はぜひひとつ厚生省として医師会と十分御協議の上、もしそういうことがあるならば、その病院診療所はもうほかのお医者さんに任せて経営を放棄する、お医者さんは医者としての技術でもっておやりになったらいいんであって、経営をすることはもう禁止するというところまで詰めなければ国民医療に対する不信は僕はなくならないと思う。  特に心配いたしますのは、営利目的として病院を開設すればもうけざるを得ないわけですから、その病院で働いているお医者さんは、患者本位にいろんな処方をするあるいは検査をする、必要な検査しかしない、必要な薬しか出さないと思っても、病院経営者は、何しているんだといって怒ってくるわけですね。若いお医者さんは、いやこの薬しか要らないんですと言っても、君のこの処方の仕方は何だということで全く素人の理事長事務長が文句を言ってくるということにならざるを得ないわけであります。  この辺はですからぜひ医師会とも議論していただいて、少なくともそんなやみ金融機関から金を借りるようなことは、これはもうそのときには経営を放棄しようというぐらいにまで議論を煮詰めていただけないかと思うんです。これは今直ちにはできませんかと思いますが、医師会との協議の中でぜひ問題を指摘していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  14. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 六十年の十二月に医療法を改正させていただいた精神一つには、今おっしゃいましたように、単に営利的な目的を持って医師でない方が医療法人理事長になったりということがあっていろいろ事件が起こったのも事実でございましたので、そういうことにかんがみまして、医療の本質にもとらないようなことで医療法人の運営についても十分万全を期していただきたいということでの法律改正をいたしましたけれども、確かに、今、高度な医療機械を導入するとかそういういろいろ経営が難しいことから放漫になったりあるいは金利負担が非常に過重になったりということで、ついそのような形での借金をなさる医療機関もあるふうに聞いておりますので、今おっしゃいましたような趣旨で私ども引き続きいろいろ医療機関経営についての指導を図るように努力をしてまいりたいと考えます。
  15. 山本正和

    山本正和君 これから私も一年間かかりまして、国民の間にある医療機関への不信部分を解消するためにある意味で言えばそういう部分を摘発せざるを得ないだろう、具体的な事例等がありましてちょっとこれは国民の常識からいってどうだというふうなことについては私自身も今後指摘してまいりたいと考えております。どうかそういう意味でひとつ厚生省としても医師会との十分な話し合いをお願いしておきたいと思います。きょうはこの程度にこの問題はとどめたいと思います。  それからその次に、医道審議会でいろいろと審議が行われました中で、これは去る一月二十九日に医道審議会が開かれたわけでありますが、その中で不正請求あるいは所得税法違反、その他司法処分を受けたお医者さんについて審議が開かれたということを聞いております。どのような内容でどういうふうな結果になったのかについて御報告をいただきたいと思います。
  16. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 本年一月二十九日に行われました医道審議会審議対象二十二件のうち、処分内容といたしましては医師免許の取り消しが一件、医業停止あるいは歯科医業停止が十九件、処分をしなかったもの二件ということでございまして、二十件が処分対象になりましたが、そのうち六件が診療報酬不正請求でございます。それから所得税法違反が三件でございまして、そのような状況になっております。
  17. 山本正和

    山本正和君 今回審議対象となった方、それらの事件、そういうものの概要をずっと私なりにいろいろお聞きしておるところでは、施設外入院などの過剰収容、あるいは特に特徴的なのは歯科医師の方が四人大麻取締法違反で同じ事件処分を受けている。さらには過去の案件に比べて不正請求が増加している、こういう傾向が出ておりますが、この原因——原因といいますよりも傾向といいましょうか、今後の傾向としては一体過去と照らし合わせてどういうふうな状況にあるか、どういうふうにお考えでございますか。
  18. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 医道審議会医師歯科医師行政処分を行うための審議会でございまして、相手になりますお医者さんは二十万人あるいは歯科のお医者さんが七万人という数でございまして、中には少数ではございますけれどもこういう形で行政処分対象になるような事案があるわけでございます。件数的には、私どもといたしましては処分をより厳正にということでやってきておりますので、過去と比較するのはなかなか難しいふうに考えておりますけれども、今おっしゃいましたように過剰収容の問題でございますとか、若い歯医者さんが大麻取締法違反事案にひっかかるというふうなことで非常に好ましくない部分もございまするので、こういう観点からいたしまして私どもとしてはさらに医道の高揚のためにいろいろな行政施策を推進していく必要があると考えているところでございます。
  19. 山本正和

    山本正和君 これに至るまでに、当然医師会とも協議の中でいろいろな指導を行う、そしてその指導が何遍なされてもなかなか問題が解決しないものについては監査を行う、こういうふうな一つの手順があるようでございます。ところが一方、厚生省からも都道府県に対してこういう不正請求悪質化については何とかしなきゃいけないということでいろいろと通知なりあるいは通達なりでもって御指導をされておるわけでありますけれども、その中で被保険者からの疑義申し出を契機に一遍それじゃ調べてみようかというようなこともおやりになるというふうに聞いているわけでありますけれども、この被保険者からの疑義申し出というふうなことについては一体何件ぐらいやっているんですか。——これちょっと数字は出てないと思いますからこれはお尋ねしません。今後御検討をしておいていただきたいと思いますけれども、実際は患者自分のかかっているお医者さん を信頼できないでちょっとおかしいじゃないかと言うのは、患者はつらいと思うんです。しかし、その部分に対して不信感をなくしていかなければ医療に対する国民信頼はできませんし、特に今度のように国民健康保険法全体についての議論をするときにも、国民信頼を得た中での医療行政ということになりますと国民も安心して監視し得る。お医者さんの高度な技術部分や診断の部分なんかに対しては、これは議論が大変だと思うんです。しかし、自分風邪を引いてどう見ても風邪薬だというのが七種類も八種類も来ている、おかしい、一体おかしいということをどこへ届けたらいいんだ、こういう疑問がたくさん出るわけですね。ある病院に行ったら薬は二種類出されただけだった、こちらの病院に行ったら七種類もらった、こちらの病院の方がどうも年配の方でしっかりしたような顔——顔で見たらいかぬですけれども、そういうお医者さんにかかったら二種類だった、こちらへ行ったら何か私立の病院でいろいろやっているうちに薬をたくさんもらってしまったというふうな不信感がないでもないわけなんですね。私は、ですからこの種の形で、要するに、医道審議会で出てくる議論の中で処分するという以前のいろんな問題、こういう問題は一体どういうふうにお考えになっているか。この医道審議会へ行くことは大変だと私は思う。そうじゃない段階でどういうふうにこれは扱っておられるのか。これは件数等はわからぬと思いますけれども、過去において指導等もされておられるように聞きますから、その辺をお伺いしておきたいと思います。
  20. 下村健

    政府委員下村健君) 現在の手順でまいりますと、一般的には直接にというふうなものが比較的少ないわけでございますが、普通は、お話に出ましたように指導をやりまして、指導の結果問題があるということになりますと患者調査をやる、その段階で被保険者の直接の状況をお伺いに参るわけでございます。そのほかに、現在、医療費通知というふうな形で、それぞれの保険におきましてあなたの医療費はこのぐらいかかりましたよというふうな通知を出したりしております。これはコスト意識を高めるというふうなこともありましてやっておりまして、必ずしも不正摘発のためにそういう通知を出しているというわけではございませんが、その中に、どうもおかしい、私はかかってないのにとかいうふうな話が出てまいるわけでございます。それから、投書等によってこちらに話が出てくるというふうなケースもございます。ただ、通例は、医療費通知でありますとか、あるいはお医者さんに問題があれば健康保険組合とかそんなところにどうもというふうな形で相談に見えられるのが通例ではないかと思います。  六十一年の例で申しますと、ただいま申しました医療費通知によってそういう監査に結びついたものというのが八件、それから投書等によって調査をいたしましてそれが監査に結びついたというのが五件、合計十三件ございます。
  21. 山本正和

    山本正和君 これはいろんな経緯等がございまして、またお医者さんの権威にかかわるさまざまな問題がありますから、いたずらに不信を招くようなことになるとぐあいが悪いという要素はあろうかと思います。しかし、実はこれは指導等の運営に関する留意事項というのが四十六年二月八日に決められまして、それからもう既に大変な年数がたっているわけですけれども、その間にいわゆる医療の水準も随分変わってまいりました。ですから医師会等とも協議していただきまして、簡単に言いますと、これは請求に不当な事実があると思われる場合は速やかに指導を行うこととし、さらに一定期間継続して指導してもなお改善されないときは監査を行うこと、あるいは診療の内容または診療報酬の請求に不正の事実が明らかにあると思われる場合で必要があると認められるときは監査を行うこと、こういうふうなことについてもう少し今の状況に合わした御検討がいただけないかということが、これは私の疑問も含めた希望でございます。  しかも、監査をいたしまして、監査の結果、今度は医師の免許取り消しまでの処分がやられるわけでありますが、この処分件数が、常識からいったら、もしもこれがほかの他の専門的な職業であれば直ちに処分取り消しになるというふうな事案が、実はどうもお医者さんの世界は甘いんじゃないかというふうな言われ方が一部にするわけです。これは、まさに、そういう何といいましょうか、事実ではありません、そういう印象を持って物を言っている空気がないでもないわけです。本当はもちろんきちっと厳正に審査されまして、これは取り消しに至らざるを得ない、これは注意でよろしいというふうに判断をされると思うんですけれども、新聞紙上等で報道される事件国民から見ておって、一体医者さんの相互批判というのはなっているのか、こういうふうな意見がないでもないわけであります。これもやはり私は不信感を招く原因だろうと思うんで、そういうふうなことについては、厚生省としても従来指導している、指導しても言うことを聞かない場合は監査するというこういう言い方でやっていますよというだけじゃなしに、国民にもその辺わかるような形で、今後ひとつどうしたらいいかということについて御検討いただけないだろうかと思います。  それから、もう一つ私が申し上げておきたいのは、医療一一〇番。私はこうやって病気にかかっていてこうやっておるけれどもどうもわけわかりません、何町の何という病院で私はこういう診療を受けました、だけどこうですというふうなことが全く秘密裏に申告できるこういうものもありますよというぐらいのことがなければ、今国民の中には病院に行くことに対して非常に不安な気持ちがあるわけですよ。だからみんな知り合いの医者のところにしか行かないんです。絶対あの人なら大丈夫、それなら行こうか、こうなる空気がないでもないんです。非常に私は恐ろしいことだと思うんです。  ですから、こういう医道審議会等で議論されるあるいは日本医師会等で議論されるような少数のお医者さんのために、私は大多数のお医者さんはすばらしいお医者さんだと思うんですよ。しかし、中に少数あるお医者さんのために大変なこういう不信、不安が生まれるとしたら、それを包み隠すんじゃなしに逆に国民全体で監視し得るような状況を与えて、そしてお医者さんに対する信頼感を回復すべきだというふうに思います。  それで、事例が幾つかあるんですけれども、これ質問していきますと大変でございますから、またこれはどうだというような大きな問題については個別に厚生省の方に事実をもって御連絡いたしますから、それについては医師会等と十分御協議をいただきたい、こういうふうに思っております。ただ抜本的に、一部の不良医師のために受けているお医者さんに対する国民不信感をなくすための何らかの措置が必要であるということにつきましてはここで強調をしておきたいと思います。  それから、どうも時間がつい経過してまいりましたので、最後に、血液問題についてちょっとお伺いしておきたいと思います。  ごらんになった方も多いかと思うのでありますが、これは某新聞でありますけれども、「「先にふろに入った子供が”おかあさん、ごめん。手を切ってふろの湯に血がまざっちゃった”と注意するんです。いまからそんな神経を使って生きていくのかと思うとかわいそうで……」と」、エイズ感染の子供の母親たちが初めて重い口を開いた。こういうふうな事柄からいろいろとエイズ問題、血友病の患者の子供の問題が出されまして、大変ショッキングな状況を今呈しております。  そういう意味で、現在、我が国の血友病の患者の中でいわゆるエイズに感染されている人、それから発病した人、その辺の数字をまずお聞かせいただきたいと思います。
  22. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 我が国の血友病の患者数は約五千人と考えられておりますが、エイズサーベイランス委員会の報告によります感染者は九百四十八名、それから患者は三十七名、こういうことになっております。
  23. 山本正和

    山本正和君 そのうち、これは正規の調査はな いかもしれませんけれども、十五歳以下の児童、幼児についてはどれぐらいの比率になっておりますか。
  24. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 血友病の患者さんのプライバシーの問題を配慮いたしまして現段階では年齢別の発表をしておりませんが、一方、昭和六十一年度に厚生省のある研究班が報告をした研究の中身によりますと約三割というような数字になっております。
  25. 山本正和

    山本正和君 血友病の患者さんの場合、血漿から得られる製剤、これを使わなければ毎日の生活が維持できない、こういう状況にある。血液というものがあるいは血液製剤がこの血友病の方々のまさに命綱である、こういうふうな状況である、これはもう間違いない事実だと思うんです。私は、ですからそういう本当に生まれながらにして、あるいは大変なそういう劣悪な状況の中で生きていかれようとする人たちの命であればあるほど、本当に大切にしてみんなでいたわっていかなきゃいけない、こう思います。  ところが、我が国の血液にかかわる行政について最近新聞等でも報道されておりますし、またお医者さんの中でも若干議論があるようでございますけれども、我が国の輸血いわゆる献血の行政について一体どうなるんだろうかというようなことで私もちょっと見てみたんでありますが、国際的に我が国民の献血率、これは一体どんな状況でございますか。また我が国の国民は、こういうみんなのために自分の血液をというふうなそういう気持ちというのは国際的に見て少ないのか多いのか。ですから、献血率は一体どれぐらいであって国際的には各国それぞれどの程度かというようなことにつきまして、数字がございましたらお知らせいただきたいと思います。
  26. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 献血率の国際比較でございますが、総人口に占める献血者の割合というように私どもはとらえておるわけでございます。昨年、昭和六十二年に日本ではその数字は六・八%ということになっております。それと主な外国における同様の献血率の数字でございますが、若干時点は古いのでございますが、昭和五十九年の数字といたしましては、スイスが九・三%と一番高い数字を示しております。以下高い順には、フィンランド七・二%、デンマーク六・二%、ベルギー五・二%、フランス四・〇%、イギリス、西ドイツ三・九%というところが欧米の主な国の献血率でございます。したがいまして、数字だけの比較ではございますが、日本は決して諸外国に比べて低い方ではないということは言えると思いますが、この献血の態様等についてはいろいろそれぞれの国によって違いのある面もあるということはまたそれなりにいろいろ考えるべき問題も含まれているというように理解しております。
  27. 山本正和

    山本正和君 それでは、献血をされた我が国民の非常に貴重な血液でございます。と同様に、諸外国でも、献血をしようかというふうな本当に人間性を持った大変な方々の大切な血だと思うんでございますね。ところが一方、聞くところによりますと、血漿の消費量がそれぞれの国でいろいろあるようでございますが、何か我が国の血漿の消費量は世界の中で群を抜いておるというふうなことを聞くのでありますけれども、その辺の数字をちょっとお知らせいただけませんか。
  28. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 血漿の消費量の国際比較でございますが、いろいろこの製剤の種類はございますけれども、私どもとして把握しておりますのは、血漿分画製剤のうちで最も使用量の多いアルブミン製剤について欧米各国との比較を見てまいりますと、国際比較のために外国のデータが若干古くて一応一九七九年、昭和五十四年の数字でございますが、まず人口百万人当たり年間の使用量といたしまして、スイスが九百二十五キログラム、西ドイツが六百五十キログラム、アメリカ合衆国が三百七十五キログラム、オーストリアが三百五十キログラム、ベルギーが三百五十キログラムというような数字がございます。一方、日本におきましては、一九八四年、昭和五十九年の数字でございますので若干時点がずれておりますけれども、七百二十二キログラムという確かに非常に多い数字になっておりまして、またその翌年の一九八五年、昭和六十年には八百キログラム前後ではないかという推定もございます。  そこで、私どもとしては、やはりこの使用量が外国に比べて多いという点をいろいろと専門家の御検討にもゆだねまして今後の対策等も考えたわけでございますが、中には栄養補給と同じような意味で使われている面もなきにしもあらずということでやはりここはある程度使用の適正化というものを考える必要があろうという御指摘をいただいたわけでございます。そこで、専門家にこの血漿の使用のための適正化ガイドラインというものを決めていただきまして、現在その普及に努めております。その結果、昨年、昭和六十二年には先ほどの人口百万人当たりの数字を見ますと約五百六十キログラム程度に減少しているというような推計がなされておるというのが現状でございます。
  29. 山本正和

    山本正和君 某新聞によりますと、世界で供給された血漿のうち三分の一を我が国が使っていると、こういうふうな報道があります。実際に国民はみんなびっくりするわけですね。何でそんなに血液を使うんだろうかと。しかも、いわゆる国民の感覚からいいますと、献血をする献血車といいますと日赤のあの車がいつも目に浮かぶわけです。ですから、我々は自分たちのなるべく健康な血液を、日赤のあの赤い赤十字の長い本当の赤十字精神のもとに我々は献血をしているんだ、それによって命の危険にさらされた大変に多くの患者さんたちが助かるんだ、こういうのが献血の思想の根本だというふうに思うわけでございますね。ところが、そういう血液から得られる製剤というものが栄養になるとかなんとかといってどんどん使われるとするならば、これは献血する人にとってはどんな気持ちになるだろうかというふうなことを私は思います。  ただ、今御答弁いただきました内容を伺っておりますと、若干アルブミンを含めた高たんぱく質のこれが栄養になると。これは議論はあろうかと思いますけれども、それは別として、血漿製剤、人間の体の本当に一番大切な血液からそういう製品がつくられて、しかもそれがなぜどんどんそんなふうに安易に大量に使われるんだろうか、どうしてもここのところがぴんとこないわけですね。また、国民から見ますと、我々の献血したものが使われているのかもしらぬぞ、どこかから来たんだと、こういう疑問を持つわけでございます。  厚生省としては、そういう血液製剤がなぜこういうふうに出回っているのか、どこから持ってきているのかというようなことについてひとつ御開陳をいただきたいと思います。
  30. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 血液を医療に使う場合には、基本的には、その患者の病状に応じて医師が判断をした上で必要な血液を使うということであろうかと存じます。したがいまして、国民の献血によって得られた血液にいたしましても本当に必要な医療に用いられているという限りにおいてはこれは問題がないと思うわけでございますが、従来いろいろと専門家の御意見も伺ってみた場合には、必ずしもどうしても血漿製剤でなければならないと思われるケースばかりでもないと、こういう御意見もございましたので、これは私どもの方で一概に使用の規制という面もなかなかできにくい面もありますが、専門家によって使用の適正化の基準というものを決めていただきまして、それに応じてできるだけ適正な使用が図られるようにということを考えておるのでございます。  また、この血漿製剤につきましては、医学、医術の進歩によって医療上非常に有効な医薬品であるというようなことで使用量が非常にふえてきておるわけでございます。この需要を賄うためには、現在我が国の献血で供給されてきております血液のみでは不足を来しておりますのでどうしても輸入に頼らざるを得ないという面があるのが実情でございまして、私どもはできるだけ国内で血液が自給できるような体制を目指していろいろと従来から努力をしてきておりますし、また今後と もそのような方向に向けて努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  31. 山本正和

    山本正和君 私どもは古い時代なものですから医学といえばドイツという時代に育っておりましたし、今の若い方々はアメリカの医学ということで、いずれにしても、アメリカや西ドイツは医学先進国だという感じがないでもないわけですね。ですから、そういう国では血漿製剤がこんなにたくさん使われていない。我が国は何で血漿製剤がこんなに使われるんだろうかということで、どうしても疑問を持ってまいります。  今の局長の御説明を聞いておりまして、そしてまたさらにその背景等に、もし間違っておったらきちっとこれは御説明いただきたいと思いますけれども、また最近の新聞紙上等で報道されておることとか私なりにいろいろとあちらこちらで聞いてまいりますと、アメリカの売血による採血ですね、それが大変単価が安くできる。それから、そこからできた血漿は我が国にうんと安く輸入できる。そして我が国で献血をされた大変貴重な血液を血漿製剤にする場合には大変お金がかかる。そしてまた、本来からいえば私は血液というのは赤十字社一社でやってもいいぐらいに思うんですけれども、なかなかそういうふうな条件になかったので、民間の製薬会社といいましょうか医薬品会社に血漿製剤の製造委託をした。そうすると、民間の会社であれば、これは営利を追求するのは当然でありますから、採算が合わなければつくらないということになります。ところが、先ほどのお話のように我が国の献血率は国際水準から比べて決して低くない。また、厚生省がかねてからおっしゃっておられることは、我が国の患者の必要な血液は我が国民の献血によって賄おう、こういう大方針がずっと堅持されているというふうに私は承っておるわけですね。ですから、なぜ日本赤十字社に対して献血あるいは採血、それから血液製剤その他をすべて委託しなかったんだろうか、その辺がどうしても国民の目から見たらわからないわけです。例えばミドリ十字なる会社があります。国民はこれはみんな赤十字だと思うんですね。赤十字が血液会社をつくったのかというような感じしかしない。  私は、そういう意味で血液行政の本来のあり方、血液並びに血液製剤というものを一体どう扱っていったらいいのかということについてちょっと調べてみました。そうしたら、かつて渡辺美智雄厚生大臣当時に大臣の御答弁がございました。我が党の片山議員の質問に対しましてこういうことをやっぱり言っておられる。要するに、血液なるものは臓器と一緒だ、我々の人間の体のまさに命の根源である、それを一般の医薬品と同じように扱うということは本来おかしいじゃないかと、こういう議論に対して、その趣旨には賛同であるということを言っておられる。またWHOやあるいは血液に関するさまざまな審議会等の答申を見ましても、血液を一般の医薬品と同じに扱うのはおかしいじゃないかということを言っているわけです。  そういうことも含めまして血液というものについて厚生省はどういうふうにお考えなのか、あるいは血液製剤についてどういうふうにお考えなのか、その辺ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  32. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 確かに血液というのは人の体の一部でございますし、また現在の血液製剤はほかの方法によってつくるという道もございません。したがって、大変貴重でまた他の医薬品とは異なった性格を持つものというふうに私どもも認識をしておるわけでございます。また、現在、国内では国民の方々の献血によって手術の際の輸血用の血液はすべて賄っておりますけれども、先ほどから御指摘ございましたような血漿製剤につきましては、なかなかその需要を満たすことができないということで外国からの輸入も行っているというのが現状でございます。したがって、私どもとしては、できるだけ国民医療に必要な血液製剤はこれを国民の献血によって賄うというような基本理念を打ち出しまして、これを実現するためにいろいろと対策を進めてまいってきております。  一つは供給面でございますが、やはりこれは献血の推進を図る必要があるということでございますけれども、従来二百ミリリットルの献血を行ってまいりましたものを最近では四百ミリリットルという採血も行いまして、これの供給をふやそうということも考えております。また、特に血漿分画製剤の使用が多いということでございますので、いわゆる成分献血ということで血液の中の血漿成分だけを取り出して採血できるような方法も用いるようにいたしてきております。そのほかに献血のための組織の育成でございますとかあるいは献血者の登録制度の推進といったようなものも引き続き行ってまいる考えでございます。  一方、需要面におきましては、先ほども申しましたように、血漿製剤の使用の適正化というものについてやはり今後とも関係方面の御協力を得て推進していく必要があろうかと考えておるわけでございまして、できるだけ私どもとしても従来から御指摘のありますような血液というとうといしかも限られた資源を本当に国民医療のために有効適切に使うというような方向に向けて努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  33. 山本正和

    山本正和君 これは三月十六日付の某新聞の報道でありますが、厚生省が「血液自給を本格推進」と、こういう大変すばらしい記事が載っておりまして、私も結構なことだ、こう思ったわけであります。  ただ、そこで申し上げておきたいのは、私は、我が国は自由社会でありますからそれぞれ企業活動の自由が保障されていると思うんであります。私も実は第一回国家試験に通った薬剤師の資格を持っていますから、同僚でもう薬品会社を定年退職であるいは平取でやめたやつもおりますし、薬品会社の経営内容について私も個人的にはいろいろ知っているわけです。企業である以上多くの人を雇ってやっているわけですから生き残らなければいけない、利潤を追求しなきゃいけません。しかし、その対象にもしも血液を当てるとしたら私は大変だと思うんであります。というのは、日本赤十字社社員というあの表札を掲げることを我々日本人は長い間名誉としてきた、こういう国柄でございます。その日本赤十字社の名によって献血をして、その献血したものと同じように、たとえこれはアメリカから輸入された血液であろうと血液というのは大事なものだと私は思うんですね。それは、アメリカの場合は売血、採血で非常に大変な問題があって社会的問題になっていることも私は知っております。しかも、スラムの中で採血された血液が一番安い、それもまざってきておるわけですね。そういうふうなまさに貧困の中から血液をお金、札束でもって買い取ってきて我が国の栄養剤に使っているんだったら私は人道上どうもいかがかと、こういう感じがしてならないわけです。アリナミンを合理化して安くつくって分けて売るということとは私は違うと思うんです。  そういう意味厚生省は、こうやって三月十六日の報道でされたように、血液というものの尊厳を行政の根っこにしかっと置いてそしてこれからちゃんとやっていくというならば、血液製剤会社に対しては一定の利潤はいいです、企業ですからやむを得ません。しかし、べらぼうな薬価基準の八五%引きでもって病院に売る。病院はそれでもってどんどん、何といいますか、利益が上がるというふうなばかな構造だけはなくしていただきたいと思うんです。もしそれは皆無というならば、絶対にありませんというなら自信を持ってありませんということを言っていただきたいし、私の方にはいろいろ資料があるわけですね。どこそこの病院では使っていますよというのを聞くんです。もう腹が立って仕方ない。だからこんなことを言ったらこれは大変語弊がございますけれども、かなりな病院がそしてまさに国民信頼しなきゃいけない病院ですらこのことが行われているというのを聞きまして、大変残念な思いでございます。  それからもう一つここで申し上げておきたいのは、我が国の国民の献血の中で血漿が採れます。 どうしても全血じゃない分は残りますから、二十日たったら廃棄しなきゃいけない。その残った血漿によって我が国の血友病の患者の方には賄い得ないのかどうか。何か百万キロリットルの云々と、こういうふうなことを言っておみえでございます。しかし、私はそれは当然賄い得るんじゃないかと。本当に血友病の患者さんたちのために日本赤十字社が血酸製剤のライセンスをちゃんと取ってやる。私、民間会社にやってもいいと思いますけれども、なぜ日本赤十字社がライセンスを取ってやらないんだ。そんなに難しい製造過程じゃございません。そんな特別な技術が必要な会社が三つだけ立派にあるんじゃないんですね。なぜ日本赤十字社がやらないのか。そういうことも思って大変心配でなりません。  そういうことも含めましてひとつ厚生省、もう時間が参りましたので余りございませんが、そういう血液行政の今後につきまして、特に血漿製剤というものから得られる利益という問題ですね、こういう問題についてどうお考えでございますか、承っておきたい。
  34. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 血漿製剤につきましても、保険で使用する薬価基準の適正化には私どもも実態調査をいたしましてできるだけ乖離がないような方向で適正化を図っておるわけでございます。先ほど御指摘のありましたような非常に大きな値下げ率の売買形態、これは私どもも何%があったというデータは今ここに持っておりませんけれども、いろいろ話を聞いておる中には相当な値引き率もあるという情報は得ております。ただ、その販売の仕方が一つの品目だけで売る場合とほかのと抱き合わせで特別な値引きの形態で売る場合といろいろございますので、その辺は十分調査をいたしまして、いずれにしても、薬価基準の上にそういった実勢価格を反映させていくという、こういう対策をとることによって血液製剤の価格についても適正化を図っていきたいと思っておる次第でございます。  また、日本赤十字社が国内の献血で濃縮の凝固因子製剤をつくれないかという問題でございます。現在日赤におきましてもそのような製品をつくるべく開発を進めておるわけでございまして、まだ国の方へ承認申請は参っておりませんが、現在いろいろな試験を開始しておりますので、これが予定どおり進行すれば間もなく国の方に申請が上がってくるということも見通しとしてございます。その節には私どもの方でもできるだけ承認審査を早く進めたいと考えておる次第でございます。しかし、全体の所要量からいたしますと、やはり濃縮凝固因子製剤というのは血液の中の特定の部分を相当量濃縮しまた加熱などをいたしますために実際に製品になる場合にはいわば率と申しましょうか、これが相当低くなるというそういう安全技術上の問題もございましてやはり現在の段階で全部を国内で供給するということにはなかなか難しい面もございますが、いずれにしても、日本赤十字社のそういう体制の整備と相まってできるだけ国内の献血によって供給が増大していくように私どもとしても今後最大限の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  35. 山本正和

    山本正和君 これで時間が参りましたので質問を終わりたいと思いますが、大臣に最後に、渡辺美智雄厚生大臣あるいは歴代大臣もずっと御答弁いただいておる中身でございますけれども献血制度の問題、そして採血さらには血液製剤、こういうふうな問題についてこれはやっぱり一般薬品とは違った観点から対応すべきだというふうに私は考えるんでございますけれども、その辺についての大臣の御見解を最後に承りまして質問を終わりたいと思います。
  36. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 血液製剤は人の血液からつくられるものでございまして極めて有限で貴重である、また他の医薬品と違う、そういう性格のものを金もうけの対象にすべきではない、御主張は私も同感でございます。  渡辺元厚生大臣の委員会における答弁も私会議録を拝見いたしました。自分なりにこの問題について勉強してみたいというふうに考えておりますので、しばらくお時間をいただきたいと思います。
  37. 山本正和

    山本正和君 終わります。
  38. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 まず冒頭に、藤本厚生大臣に対しまして、社会保障、福祉政策の基本的な理念の考え方につきましてお尋ねをしておきたいと思います。  戦後、日本の社会保障、福祉問題というのは、広義、狭義、広い意味でも狭い意味でも、我が国の憲法の理念に基づいた権利の基本に立ちながら制度、政策を追求いたしてまいりました。  そこで、私は、率直に新大臣ですから考え方をただしたいというふうに考えますのは、憲法の二十五条は、言うまでもありません、これは生存権の保障の権利であります。さらに憲法第十三条の快適生活権あるいは憲法第十四条の普遍的平等保障権という基本に立って今日まで我が国の社会保障あるいは社会福祉というものがいわゆる制度体系、権利体系の実現を期してきた、私はこういう基本に立っておるのでありますが、大臣はいかがですか、この考え方について。
  39. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 対馬先生御指摘のとおりだと思います。それに基づきまして我が国の社会保障制度の関係の法律が整備されてきたわけでございまして、今後も本格的な高齢化社会の到来を控えましてさらに社会保障制度が揺るぎなきものになるように最大限の努力をいたしたいと思います。
  40. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 今、大臣の答弁で認識は一致している、こういうことでございます。したがって、今もございましたけれども、今申し上げました社会保障制度、社会福祉の問題が私はやっぱり二十一世紀を目指しての転換期にある、この認識は何人を問わず一致していると思います。ただ、そのやり方を間違うと大変なことになるわけでありまして、私は、あくまでも国民的立場に立った基盤に立ってこれらの諸政策の転換なり改革をすべきものである、こう考えておるわけでございます。そういう意味で今憲法の基本精神をただしたわけでありますが、大臣もまさしくその理念に立ってこれからやってまいりたい、こういう趣旨でありますから、ぜひそれを言葉ではなくてひとつこれからの行政面においても執行に当たって実現を期していただきたいということを強くまず冒頭申し上げておきます。  そこで、私は今日の社会保障に対するまたもう一つ大臣予算上の基本認識をお伺いしたいというふうに考えます。  現在、国会で審議中の六十三年度予算は、財政再建、内需拡大の両立ということを基本にして問題がございます。  一つは、五十六兆六千九百九十七億円の規模である一般会計の伸び率が対前年度比では四・八%よりふえない、こういうことになるわけであります。したがって、行政改革以来の、五十七年度以来の高い伸び率に一面ではなる一方で赤字国債だけは一兆六千六百億が減額をされている。国債依存度は一五・六%になっている。特に五十年度に赤字国債を発行して以来最低のものになっていますけれども、しかし最も国民の関心を呼んでいる社会保障伸び率、これは数字で明らかになっておりますが、総額で十兆三千八百四十五億円です。対前年度比で二・六%増です。厚生省予算で見ますと十兆三千二百十一億円、これも伸び率で見ますと二・九%の伸び率になります。二千九百四十六億円の増ということにとどまっていますが、防衛費は御案内のとおり五・二%のことしの伸び率でございます。  こういった実態認識を考えてまいりますと、六十三年度、毎年そうでありますが、社会保障予算は当然増として七千億ということが通年見込まれているわけでありますが、これに対する総額としては四千億円分の予算の切り込みがまた反面行われている、これが実態です。こうした社会保障予算の特性を全く無視したことが行政改革以来これまで七年間にわたって連続強行されているということは極めて遺憾であると言わなければなりません。  そこで大臣、ここ数年のこういった社会保障予算をめぐる状況をどういうふうに総括していますか、特にまた六十三年度社会保障費についてどういう評価をいたしているか、ひとつ率直な御意見、考え方を求めたいと、こう思います。
  41. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 最近のマイナスシーリング、それに伴いまして、厚生省予算につきましてはその性格上巨額な当然増というものがあるわけでございます。率直に申し上げまして、毎年毎年予算編成のときに非常に苦労しておる。ここに前斎藤大臣もおられますけれども、非常に御苦労され、私も苦労したわけでございまして、このようなマイナスシーリングの状況が今後も相当続くということになりますとこれはもう大変なことだ、厚生省予算を編成する上で非常に厳しいことになるという率直な感想を持っております。  ただ、我々といたしましても最善を尽くしたつもりでございまして、一般歳出におきましては全体で四千億の増の中で厚生省関係の増を約三千億確保した、これによりまして必要な社会保障関係の予算は確保できるというふうに思っておりますし、またいろんな面で節約合理化も図りましてぜひ社会保障が前進するように努めてまいりたいと、かように考えております。
  42. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 今の大臣の答弁は、厳しい財政事情の中で一定の水準を維持するために努力をしてきたと、一口に言えばそういう答弁でありますが、どう言ったってこれは行革、五十七年からスタートして六十三年までのトータルがはっきりしていますよね。防衛費だけが四三・一%でしょう。社会保障伸び率というのが一四・三%ですよ。一口に言ったってこれは問題なんであって、それは何とか社会保障の水準を保ってきたというのは言葉だけであって、現実はやっぱりそれなりに切り込まれてきているわけですからね。後で申し上げますけれども、そういう考え方に立ってこれからもそういう改革を目指していく、こういう考え方にひとつ立ってもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、具体的にお伺いしなきゃならぬと思いますが、今日の厳しい財政事情下にあって国民福祉の水準を低下させないように精いっぱいの努力をしてきたと、あなたはこう言っていますが、問題はこれまで行革の方針以来一律マイナスシーリング予算をやってきた。そのために、結果的には年金とかあるいは医療とか、ある程度老人保健法も改正されて切り捨てられてきた。年金だって同じ、健康保険だってそうだ。私も全部ここで質問していますけれども、毎回、これは受益者負担、あるいは国庫負担の削減ということでマイナスされてきているわけだ。そうすると、私は率直に申し上げるんだけれども、このマイナスシーリング、一律削減ということは、人間の福祉の問題、命の問題としてもこの予算の一律削減というやり方は見直すことが正しいのではないか、私はこういう考え方を持っているんでありますが、この点の認識とどういう打開策をお持ちなのかということをお伺いしたい、こう思います。
  43. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 御指摘のように、予算編成厚生省、大変苦労いたしておるわけでありますけれども、その背景に御指摘のようなまたこれ一律のゼロシーリングというのがあることも事実でございます。しかし厚生省、いろいろとシーリング上も財政当局にお願いをいたしておりまして、昨年の場合ですと四千四百億の特別枠をいただきましてそのもとに編成をした、こういうことになっておるわけでございます。  一律ゼロシーリングというのがどこまで維持されるか私どもも承知いたしておりませんが、これからもなお財政再建の途上にあるということから見ますと今後とも厳しい概算要求基準がつくられるんではないかというふうに考えております。しかし、厚生省としてはまずできるだけ特別枠をいただくということで努力をする必要があるというのが一点でございます。  それから、その枠で予算編成をするわけでございますけれども、それに当たりましても、大臣から申し上げましたように、私どもとしては社会保障制度の運営に支障がないように、そして国民の福祉水準を下げないようにという信念に立って予算編成を志すわけでございますが、その中で、一つは、これからの高齢化社会ということを目指しまして制度面では引き続き合理化なり効率化を図っていく必要がある、そういう形で二十一世紀に軟着陸をする必要があるという意味でも制度の改革なり合理化には努めてまいる、そういうことで総合的に何とか真に必要な予算を確保していくことの努力は最大限払っていくつもりでございます。
  44. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 今審議官からありましたけれども、まあそれは言葉であって、結果的にはどう言ったって二回にわたる老人保健法の我々から言わせると改悪、健康保険法の改正、このことにおいて結果的にはやっぱり切り捨て、切り込んできたことは事実なんだから、それは最大限の予算編成をしてその手当てはしていると言ったって、国民的立場に立てばこれは結果的に切り込まれている、切り捨てられている。これはもう客観的な事実なんだから、それは高齢化社会を迎えて云々と、こう出たからいずれ一回基本論争をこれはしなきゃならぬ。これは前厚生大臣もいますけれども、あるべき社会保障、福祉という問題がどう基本的にあるべきなのか、これ一回基本論争を、きょうは時間がありませんから、いずれ挑んでみたいと思います。  そこで、今出ましたから具体的にひとつお聞きしますが、問題は、厚年国庫負担の繰り延べの廃止額とその返還がどういうふうに扱われるべきものなのかという考え方をちょっと私もお伺いしてみたいと思います。  厚生年金国庫負担の繰り延べは六十三年度で見ますと、私の調べによれば昨年同様三千六百億繰り延べが行われております。五十七年度以来元利合計を申し上げますと多大な額になっているんですね。二兆四千三百五十億、これはもちろん利子も含まれていますが、この繰り延べの措置は補助金特例法による六十三年度までの措置をされているものでありますけれども、これは当然六十三年度で終了とはっきりしていますけれども大臣、これはひとつはっきり確約してもらいたいんでありますが、六十三年度をもってこれは終わりであるという確約はどうですか。これは当然のことだと思いますが、特にこの繰り延べ額の利息分を含めて全額私は返還されるべきものである、こういう考え方を持っておりますが、この点をまず基本的に伺っておきたいと思います。
  45. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 六十四年度以降の問題でございますが、私はこの問題は安易に延長すべきものではないというふうに考えております。
  46. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 安易というか、基本的にこれは六十三年度をもって終わるということがこの問題をスタートしたときの考え方ですからね。  そこで、僕は局長にお伺いしたいんだが、五十七年度以来六十三年度までの年金国庫負担の繰り延べ額はトータルで何ぼになっていますか。
  47. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 厚生年金保険国庫負担の繰り延べ額の累計のお尋ねでございますので、私からお答えを申し上げます。  昭和六十三年度の予算案で三千六百億円の減額をということで措置をいたしておりますが、昭和五十七年度予算から昭和六十三年度予算案まで予算上措置しましたいわゆる繰り延べ額の累計は一兆九千七百十億円でございます。
  48. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それでは、これに対する利子は換算をしまして幾らになりますか。
  49. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) いわゆる利子分につきましては、一定の前提のもとに計算をいたした額を申し上げます。利子分を含めますと、昭和六十三年度末におきまして元利合計は二兆四千三百四十七億円となる見込みでございます。
  50. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 先ほど私が申し上げましたように、今もありましたが、約二兆四千億を超える膨大な繰り延べが今あるわけであります。したがって、そういう意味でこの六十四年度以降というのは、もちろん六十五年は当委員会でここにおりま浜本委員の問題の詰めの段階でもはっきりしま したけれども、六十五年度は一元化ということをうたっていますけれども、まずその前に、なぜこれを聞いたかというと、私の考え方は、少なくともやっぱりこういうものを解消していく中で六十五年度、将来のあるべき医療の一元化というものを目指していかないと、ただ切りっぱなしでだんだん切っていって最後になってとにかくどうにもならなくなったから改革が必要なんだというのではなくて、こういうものはきちっと今のうちから六十三年度は六十三年度をもって区切りをつけて、そして六十五年度の医療一元化構想を仮に出されるとするならばそのときには問題点がある程度解消できているということを目指していかないとなかなか六十五年度の医療一元化構想あるいは将来展望というものは出てこないんじゃないか。私はどうもそういう感じがするものですから今額を聞いてみたのですが、何と二兆四千億を超えているということは膨大な額ですよ。そこらあたりしかと踏まえて先ほど大臣にお答え願っておりますから、その方針でひとつぜひ対処してもらいたいということを強く申し上げておきます。大臣、よろしゅうございますか。
  51. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 先ほど御答弁申し上げましたようにこれから頑張っていきたいと思います。
  52. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そこで、政管健保の繰り延べの関係、これもこの機会に聞いておきたいと思います。  政管健保の国庫補助の繰り延べ、六十年度から六十二年度までに三千八百五十九億、私の調べによると減額が行われ、六十三年度もさらに六百五十億の減額がマイナス予算のつじつま合わせになっているわけです。これも結果としては強行されている。しかし、政管健保の赤字は当時三K赤字の一つであった、これは大臣も御存じだと思います。しかし、最近はようやく黒字に転じた。本年度の国庫負担分がカットされてしまっているわけであるが、六百五十億分をもし保険料に直せば、私の試算では千分の一・五引き下げは可能であると、こういうことになるわけですよ。ところが、保険料の引き下げであるとかあるいは給付の改善とか、こういうものにはこれ黒字になったからといってさっぱり生かされていないのだよ、大臣。  私もしばしば当委員会で健康保険法改正のときも随分質問してきたが、こういう性格のものはきちっと黒字に出た分は、剰余金があれば少なくともやっぱりこの分については給付改善、保険料を引き下げる、こういう姿勢に立つべきものである、こういう考え方を持っておりますが、いかがですか。ただ便宜主義的にこれを扱うというやり方はやめるべきだと思うが、これはどういうふうに思いますか。
  53. 土井豊

    政府委員(土井豊君) お話のとおり六十三年度六百五十億円の特例減額措置を講じているわけでございますが、その一方で、社保審の御意見等も踏まえまして六十三年度の財政状況を勘案しまして千分の一保険料率の引き下げを行っているというような措置も他方では講じているところでございます。  なお、六十二年度末四千億強の積立金があるであろうというふうに見込んでおりますけれども、私どもといたしましては非常に変動の大きい医療費でございますので二ないし三カ月程度の積立金というのを持ちたいという考え方対応いたしておりますので、直ちに保険料の引き下げ、恒久的な引き下げというのは困難ではないかというふうに考えている次第でございます。
  54. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 もちろん、それは直ちにと言うのではないんだ。私はそういう考え方を持つべきではないかと、これからの対策としてね。そのことをお伺いしているんで、そういう意味で私は申し上げたんだ。ただ、従来のマンネリ的な傾向というのは一つ一つやっぱり改善をしていく必要がある、それが将来の抜本的な医療の一元化という問題にいく場合に問題になるから私は言っているんだよ。いかがですか、その点。
  55. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 最近の傾向を見てみますと、医療費につきましては高齢化の問題でありますとか医療技術の高度化等によりまして根強い増加傾向というものがあると考えております。一方、政管健保の主たる収入であります賃金でございますけれども、比較的低い伸びにとどまっているというような状況から、昭和六十四年度あるいは近い将来を見通した場合には全体として非常に財政運営は窮屈になっていくだろうというような展望を持っております。したがいまして、今直ちに保険料の問題でありますとか給付改善というようなものを現行制度を前提に置きまして考えることは難しいんではないかというのが率直な気持ちでございます。
  56. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 今すぐという問題を私も言っているんじゃないんだ。そういう将来的な展望を見渡していった場合に一つ一つやっぱりそういう改善策をとっていくべきだと、こういうことを言っているんであってね。  それじゃお伺いするけれども、先ほど申しましたように、利子の扱いは一体どういうことなんですか、どういう考え方を持っていますか。
  57. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 特例措置に係る利子でございますけれども、財確法の中で特例措置につきまして繰り戻しその他の適切な措置を講ずるということを書いておりますけれども、その適切な措置の中に利子相当分も含まれるというふうに私ども考えておりますので、現実に特例措置額を返してもらう時点で大蔵省と協議をして取り扱いを決めるということになろうかと考えております。
  58. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 したがって利子も含めて一括返してもらう、こういうことでしょう。その考え方は間違いないでしょう。
  59. 土井豊

    政府委員(土井豊君) そのような趣旨でございます。
  60. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そこで再び問題になる点はこの補助金カットの六十四年度以降の扱いの問題です。先ほど六十三年度までわかりました。問題は六十四年度以降が一体どうなっていくかということに我々は非常に重大な関心を持っております。そこで、地方に対する国の補助金カット、暫定措置では六十三年度までの三年間ということになっておりますが、仮に国庫負担率の引き下げ措置が六十四年以降も継続されれば一層の地方財政の硬直化を招く、これはもう火を見るより明らかであります。そこで、六十三年度末の地方の借入金額が私の調べによりますと六十七兆となっております。間違いであれば御指摘願って結構ですが、したがってこういうことが必至の情勢になっているわけですから、補助金カット、元来六十三年までという暫定措置でありますが、この時点では廃止をされるのは当然である。先ほどもちょっと触れましたけれども、そういう意味で六十四年度以降の再確認をもう一度はっきりしておきたいと思うが、いかがですか、その点。
  61. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 補助率カットの問題でございますが、六十三年度で五千四百四十三億の節減額になっておるわけでございます。この措置は、御案内のように、六十一年度から三年間という暫定措置になっておるわけでございますが、こういった措置は、これも御案内のように補助金問題検討会というのがつくられておりまして、これは補助金問題関係閣僚会議の下でこういう検討会をつくって検討の結果の措置であるわけでございます。厚生省といたしましては、こういう補助率の変更とともに、既に例えば社会福祉施設への入所に関する事務等を機関委任事務から団体委任事務に改める等の改正もあわせて行っておるわけであります。そういう中で、要は、国と地方の財源配分のあり方の見直しというものが継続的な検討課題というふうになっておることから、三年間という暫定措置にされておるわけであります。したがいまして、これは政府全体で考えるべき事項というふうに理解をいたしておりまして、したがって六十四年度以降の取り扱いにつきましては、国と地方の財政状況等を勘案しながら政府全体で協議をしながら適切に対処してまいりたいと考えております。
  62. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 大臣、今局長から答弁があったけれども、これは大蔵、自治、厚生を含めまして、 ここにも当時の梶山静六自治大臣発言がありますけれども、自治省としては三年間の暫定措置は一度白紙に返して基本的に見直すべきものであるとこれは大蔵当局に明確に言っていますね。だから問題は、私が言っているのは、この段階ではやっぱりこれ以上地方財政にしわ寄せをさせるというものではない、この認識に大臣がきちっと立ってこれからの問題に対処すべきものではないか。この考え方を私は聞いているんだ。この考え方大臣としては当然だと思うんだけれども、どうもまた再び財源論争が六十四年度以降もだらだらだらだらとなって、地方にまたしわ寄せをしていく。けじめとしてやっぱりこの考え方がどうあるべきなのか、このことを言っているわけですよ。いかがですか、この点。
  63. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 私も関係閣僚会議のメンバーの一人でございまして、御指摘のような考え方は私も同感でございますので頑張ってみたいと思います。
  64. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 ぜひひとつその考え方を貫いてもらいたいということを申し上げておきます。  そこで、中長期の社会保障に対する基本姿勢をこの機会に伺っておきたいと思います。  これは、大臣、この間予算委員会で政府側が一応考え方をちょっと触れています。これはきょう論争するつもりはございません、時間がありませんから。「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担の展望」ということでここにずっと載っています。私も予算委員会を傍聴しておりましたから資料を持っております。これを今論じようとは思いません、私はきょうは時間がありませんから。先ほど中長期の社会保障に対する大臣としての理念は聞いたけれども、これに対する基本的な考え方はどういうふうに受けとめているのか。これは、前厚生大臣おりますからはっきり申し上げますけれども、かなり積極的に社会福祉目的税などを斎藤厚生大臣発言をしております。これは私も持っています。それから、さかのぼると六十年に増岡厚生大臣も社会保険の特別会計ということを目的とした発言もいたしております。それはそれで一回論議するとしても、藤本厚生大臣として中長期における社会保障に対するあなたの基本姿勢がどうあるか。もちろん論争しようとは思いません、時間ありませんから。私は考え方だけただしておきたいと思います。
  65. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 中長期の社会保障のビジョン、理念、こういうことでございまして、現在まででは政府としては六十一年の長寿社会対策大綱、これは本格化してまいります長寿社会の中でお年寄りが安心して生きがいを持って生活できる社会を築いていこう、そのための指針として政府がまとめ上げたものでございます。ですから、まずこれが一つの大きなビジョン、目標ということが言えると思います。それをもとにいたしまして、厚生省関係では高齢者対策企画推進本部報告という形で特に医療年金、社会福祉、そういう問題につきましては中長期の目標、水準というものを御報告さしていただいておるわけでございます。  先般、衆議院の予算委員会におきまして二十一世紀の初頭における社会保障の給付と負担、また高齢化の状況につきましての資料要求がございまして、今の現状を自動延長した形で数字を出さしていただいたわけでございます。それで昭和七十五年ないし八十五年の時点におきまして、今のままで制度を自動延長して考えてみると給付と負担の中身についてはこのような内容になりますというおおよその姿をお出ししたわけでございまして、それについて国民の皆さん方から広く御議論いただきたいというふうに思っておるわけでございます。我々といたしましては、社会保障というのは国民生活の長期安定の基盤でございますから、必要な給付についてはこれは確保していかなきゃならぬ。そのためにどうやって財源を賄っていくかという問題は極めて大きな問題でございまして、今後この財源をどうやって賄っていくかということにつきましても大いに国民の皆さん方の間で議論をお願いいたしたいというふうに考えておるところでございます。
  66. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 議論をお願いしたいというのはこれは出ているんで、むしろ藤本厚生大臣としての私見でも結構ですから。これは前厚生大臣がここにおりますからあれですけれども、斎藤厚生大臣は非常に歯切れよく、実は社会福祉目的税というものを導入する時期に来ていると極めてはっきり言っているわけです。どうも最近、税制問題が出ましてから大蔵省あたりがひもつき、色つきの金はだめだというような財政当局の反響を呼んでしまったら、何か地盤沈下しちゃって、発言が出てこなくなった。これはいい悪いを言っているんじゃないんですよ。いい悪いじゃなくて、あなたの私見でもいいから、この考え方に対してどうお考えですかということを簡単にお伺いしたいと思いますが、どうですか。
  67. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今までの議論の経緯からいたしまして福祉目的税というのも一つの選択肢だと思います。しかし、私どもの立場はいかにして必要な給付を行っていくかということでございまして、そういう中長期の目標を絶えず頭に置きながら毎年毎年努力していく、これが厚生大臣の大きな務めであるというふうに考えております。
  68. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 一応の考え方はわかりました。  私は今社会福祉目的税がいい悪いを言っているんじゃない。基本的に六十四年度以降の社会保障予算編成に対しては我々は次のとおり考えています。我が党としては、これは言うまでもないんでありますが、六十三年度予算編成に当たっても公明、民社さんの共同を得まして、現在政府修正案を要求いたしております。目下実務者会談で鋭意検討されているところでありますが、私は、現在ある有価証券のキャピタルゲインの課税あるいは土地の譲渡益の見直し、まず不公平是正というものを基本的にやるべきである。そこに税外収入、NTTの株益あるいは自然増収、こういう問題の兼ね合いを全部含めながら、当面何といってもこれらを洗い直して不公平是正を基本に見直しながら、当面する社会保障なり社会福祉なり教育文化というものをなすべきものである、こういう考え方に立っておりますことを、この機会に我々の考え方を明確にしておきます。  あなたの認識は一応聞いたという程度でございまして、こういう基本に立ちながら、あるべき姿をこれからも当委員会を通しまして問題を論議いたしてまいりたいと思っております。  私はこの機会に、国保の一部改正法案が出ておりますからいずれ論議しますが、国と地方自治体との社会保険なり医療保険のあり方がどうあるべきかということを議論したかったんでありますが、時間があとなくなりまして限られておりますので、福祉灯油問題だけにひとつ絞ってちょっと申し上げたいと、こう思います。  これはここに斎藤前厚生大臣もおりますが、さかのぼりますとこういう問題でございます。東京地方は春めいてはきておりますけれども、北海道は今なお寒さが厳しくマイナス気候が続いております。この問題は、高齢者、退職者の方々はもちろんでありますけれども、全国高齢者協議会というのがございまして、この方々の要望が当時、灯油の価格が御案内のとおり第一次エネルギーショックのときに非常に高騰しまして、それで当時十八リッターの標準価格四百三十円というのが出たわけであります。これは私は随分国会で問題にしましたのでよくわかっているんですが、このころに出ました問題は、何とか国のレベルで福祉灯油というものを実現をすべきである。それは寒冷積雪地帯の北海道ではどういうことになっているかといいますと、標準でドラム缶十二本ですよ。ドラム缶十二本。十八リットルの石油缶じゃないですよ。あの二百リッター入りのドラム缶を十二本使うんだ。それで当時で標準で大体二十三万円という支出で年金生活者、身体不自由者、母子家庭の方がまさにこれはもう灯油の下敷きになって野たれ死にするという、こういう深刻さが訴えられまして、私は五年間当委員会で福祉灯油問題の議員立法を実は出してまいりました。  これは一口に言いますとどういう法律かといいますと、現在北海道の市町村は全部やっているんです。こういう方々に対して十万から十五万の貸し付け、町村によってはもう全部これを免除して生活扶助費として一部は出しておるわけです。これにナショナルミニマムで国と道と県と市町村で、言うならば四本、四本、四本、ドラム缶標準十二本ですから。公務員の積雪寒冷地手当の支給基準というのは昔は石炭でありましたが、今は灯油が十二本であります。これをナショナルミニマムで国が四本、県が四本、市町村が四本と、これが私の法案の趣旨なんであります。  これを随分やってきましたけれどもなかなか実現せずして、増岡厚生大臣のときに、何とかひとつ社会局を中心に学識経験者による研究の場を設けたいと。斎藤前厚生大臣にも非常な努力をしていただきまして当時幸いこの研究会が発足をされました。日本社会事業大学の三浦教授を中心にしまして発足をした。時間もありませんから多くを申しませんが、このときの研究会の報告書をどういうふうに受けとめているか、これをまず一点冒頭にお伺いしたい、こういうふうに思います。
  69. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 今お話がございましたように、対馬先生の大変熱心なお取り組みもありまして「社会福祉制度における地域的特性の問題に関する研究会」というものをつくりました。その報告が出ておりますが、その内容の要旨を申し上げますと、まず、「最低生活の保障など、ナショナル・ミニマムは、国の責任で行ない、それを超える地域的特性に基づく需要に関する施策は、各地方公共団体の責任のもとに実施されることが原則」というのが第一点であります。ただし、「経済が極めて著しい変動のある状況に至った場合には、通常とは異なった国の施策が求められる場合がある」ということ、それから北海道におけるいわゆる福祉灯油問題については、地域特性についての国と地方の役割分担を考えると、「国が新たに具体的な施策を講じることを理論づけることは、必ずしも容易なことではない。」という内容であると認識をしております。
  70. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 抽象的な要点だけ言ったんだけれども、私、報告書を持っていますけれども、まず実態論として、これは全部研究会の報告書に載っていますが、これで見ますと、御案内のとおり、六十年度でございますけれども、全国の世帯平均でいきますと二万二千円です。北海道の場合は七万九千円で三・六倍と。もちろんそのときの灯油の実勢価格によって変動しておりますから変わりがあるかもしれませんけれども、その必要量として使う使用量が三・六倍である、具体的にこれだけの実績が伴っていると。これは間違いありませんでしょう。この点どうですか。
  71. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 報告書に出ておりますのは六十年度まででありますが、六十年度は先生のおっしゃるとおり三・六倍であります。  なお、直近の六十一年をちょっと調べてみましたら、全国平均で支出金額が一万九千七百三十二円、北海道では七万一千六百四十五円、同じように三・六倍。倍率としては横ばいになっております。
  72. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 今、報告書にあるとおり三・六倍の灯油の使用量がかかっているんです。それで高齢者年金生活者が今申しましたようにこの額を出していくということは、年金生活者にとっては非常なやっぱり生活苦になっておるわけです。昔は早起きは三文の徳ということわざがあったわけです。ところが、今、早く寝て朝早く起きたら灯油の下敷きになっちゃって年金生活ができなくなる。今はもうこのことわざが変わりまして、早寝遅起きが三文の徳というのが寒冷地老人のこれ合い言葉に実はなっているわけで、そのくらい実は大変であると。  そこで私が申し上げたいのは、二つ目に、この報告書にありますようにあえて北海道の暖房の重要性、単独事業実施云々ということを考慮しまして、老人、身体障害者、低所得者に対して世帯更生資金の積極的な利用の促進、歳末たすけあい運動における配慮とか国として北海道に対して必要な施策実施、指導援助を行うべきであるということがこの報告書の中に出たということについてはどういう認識を持っていますか。
  73. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 先ほど研究会の報告の内容を申し上げましたように、基本的には地方自治体の責任だということを述べつつ、さらに世帯更生資金でありますとかあるいは歳末たすけあい運動について国も何とかしろと、こういうことを言っているわけであります。したがいまして、国としてできます世帯更生資金の扱い、これは現在でも福祉資金というのがその中にありまして、冬季間の暖房用燃料の一括購入経費なんかもこれで処理できることになっておりますので、これを活用するということで資金も用意をしております。  また、歳末たすけあい運動につきましては、寄附金の配分対象に六十一年の十月から、地域の特性に応じた援護活動と、まさに報告書の言っているようなそういう活動を新たに追加をいたしておりますので、そういった意味では世更あるいはたすけあい運動といったことで、やれるものは一応既に手を打っているということでございます。
  74. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 厚生省としてこれに対して具体的にどういう行政指導を実際問題として行われていますか。
  75. 小林功典

    政府委員(小林功典君) ただいま申しましたように世帯更生資金につきましては実施主体がございますので、それの需要があれば御要望に沿えるような資金の準備をしております。これが一つ。  それから歳末たすけあい運動につきましては、中央共同募金会に話をいたしまして、中央共募の方から北海道の共同募金会の方に連絡していただきました。その内容は、先ほど申しました寄附金の配分対象の中に新たに地域の特性に応じた援護活動、これはまさにこの報告書が言っているそういう項目でありますが、これを新たに追加したという通知をいたさせまして、さらにその中央共募から道共募に対する通達を私の方から県に流しております。
  76. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 行政指導を今しているということは出ていますけれども、私は、これは研究報告書ですからここでとやかく申し上げませんけれども、結果的にはこういう生活実態あるいは出費増に絡んで年金生活者あるいは身体不自由者、母子家庭の方々には何らかの措置が必要だということでしょう、これが出たのは。必要だからこの二つのことが出たわけだ。今あなたが行政指導しているんだとこう言うんだが、そうだとすれば、やっぱりこれ国として何らかの措置を本来すべきものであるが——これは私の考えですよ。すべきものであるんだけれども財政事情が非常に厳しい、とりあえずできるものは今言った世帯更生資金の積極的利用の促進と歳末たすけあい運動における配慮だと、こういう考え方であるというふうに私は受けとめているんです。これは三浦教授を座長にして現地に調査に行っていただいたということもございますけれども、そうでなかったらこれは触れること自体もおかしいんだよ。何でこういう行政的な手だてが研究会報告書の中に載るかということ自体が、必要でなかったらこんなもの載せる必要もない。こういう措置の手だてが必要なかったら僕は載る必要がないと思うんですよ。むしろ私の言いたいのは、これは触れることはおかしいといっても現実に出ているんだからそれは結構だが、こういう程度のことで一体年金生活者なり身体不自由者が——何も全面的にやれと言っているんじゃないんだよ。先ほど私申しましたでしょう。多いところでは八雲町というところは十五万まで福祉灯油の制度をやっているんですよ。これは北へ行けば行くほど、稚内とか根室管内、網走管内でも多いところでは二十万というところもありますよ。最低でも大体八万から二十万の間で年金生活者、身体不自由者の方々に市町村が手だてをしているんですよ。私が言っているのは、そういうことに対して何も国が全面的に見ろと言っているんじゃないんだ。その一部を国が一部を県が一部を地方自治体がとさっき冒頭私申しましたように、ナショナルミニマムの考え方に立つとすれば最低この程度のことは必要ではないのか。だか ら、先ほど二つの、世帯更生、歳末というのが出てきているわけですから、その点はどういうふうに北海道の実態をつかまえているのか、ここが問題だと思うんですよ。それを把握していないから何か抽象的になる。本来こんなことは何も国が積極的にやっているわけではないんだ。歳末たすけあいだって、これは一つのボランティア運動みたいなものでしょう。世帯更生資金は別にしても、歳末たすけあい運動なんて、これは一つのボランティア運動だよ。そういうものを利用してその一部に充てるという考え方は、これは僕は筋が通らないと思うんだね。こういう点についてどういうふうに考えますか。
  77. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 研究会の報告は、はっきり言っていますようにナショナルミニマムは国の責任で行う、それを超える地域的特性に基づく需要に関する施策というのは原則としては地方公共団体が行うべきだ、これをまず言いました上で、国としてもさっき申しましたような二つの施策をあわせてとるようにと、こういうことでございます。したがいまして、何といいますか、国が二つ以上のことをやれということを研究会が言っているわけじゃございませんで、ただその場合にもあくまで現在のような経済状況あるいは灯油の状況というそういう前提があるようには思いますけれども、そういう意味では国と地方の役割分担というものをさっき申し上げたようなことで明確にしている、こういうふうに我々は理解しているわけでございます。
  78. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 その認識はちょっと違っていますよ。  私はこの問題は重大な関心を持っておりますから、三浦座長にもただしたんだ、この報告書を書いたこの考え方を。ここにありますよ、これ。日本社会事業大学の三浦教授を座長にいたしまして大森先生、坂田先生、三和先生、山本先生、計五人のこの方々は福祉の国と地方の役割分担がいかにあるべきか、日本の権威者ですよ。これは私も聞きました。もちろん基本的に今国と地方の役割分担がかくあるべきだという結論は出ていない。しかし、北海道の実質的な出費、さっき言った三・六倍という出費増、これは客観的な事実です。それに対して何らかの政策的な手だてが必要である、これははっきり言っていますよ。必要がある、しかし財政的な面から見てもこれを補うだけの今の事情というのは非常に厳しい、もう少し時間をかけて国と地方の役割の分担はするが、当面の国としての政策的な手だての一助として先ほど言った歳末たすけあいなり世帯更生資金というものの考え方を出しています、こう言っているんですからちょっとその点は局長、あなたと私の認識は違うよ。私は現状はこうだということはわかるよ。現状はこうだということは大体のことわかるが。  そこで、これは時間もありませんから、私ちょっと十二時から会議があるものですからあれですけれども、こういうことをはっきり私はこの機会に申し上げなきゃならぬと思うんです。なぜこれを申し上げるかといいますと、これは先ほども話の中に出しておりますが、北海道・東北の高退連というのがございまして、これは略称高退連と言っているわけですが、全国高齢者協議会というのがございます。この代表と今は亡き園田厚生大臣と五十七年三月二十六日厚生省におきまして会見をいたしております。私も今の衆議院の池端代議士とその場に立ち会っています。そのときにどういうことを言ったかといいますと、こういうことですよ。  この高齢者の代表からかねがねこういう訴えがございまして、そのときに園田厚生大臣からありましたのは、ことしは国際障害者年の年である、したがって一遍に身体不自由者あるいは母子家庭、年金生活者ということにはいかないにしても、何とかモデルとしてナショナルミニマムの考え方に立って最低二百リッタードラム缶一本ぐらいを福祉灯油券として発行するよう努力したい、その結論は今秋、五十七年の秋ですね、今秋九月を目途に結論を出したい、そういう回答があったわけであります。このときは年金生活者の代表が非常に感動しまして、感激しましてふるさとへ帰ってこの報告を申し上げた。その後園田厚生大臣が御案内のとおり外務大臣に昇格をしたわけであります。そのときに、ちょうど五十七年は皆さん御存じのとおり行政改革のあらしが吹きまくってくる。何とか努力はしたんだけれども、その行革の中で非常に厳しい財政硬直化の時代に来ました、もう少し時間をかしてください、何とかこの言ったことだけは大臣がかわってもやります、やらせるように努力します、こういうことになっているんですよ。ここを忘れてもらっては困るんだよ。これ大事なことなんだ。僕は斎藤前厚生大臣にも言ったことがあるんですけれども、これ何回も、毎回厚生大臣に必ず言っているんだよ、このことだけは。  ところが問題は、私が言いたいのは、こういう問題についてこれは一つの食言ですよ、これはやっぱり。この発言は重いものである。何も自民党が天下をかわって社会党が取ったわけでないんだから。自民党が天下を残念ながら取っておるんだから、大臣がかわったって自民党政権下における厚生大臣であることには間違いないんだよ。私が言うんじゃない、率直にこれは高齢者の方々の代表がこれ素朴に訴えてもらいたいということを言っているわけだ、毎回これ。こういう経過があったということを厚生省も踏まえてもらわぬと、その場限りに適当なものを持っていって、はいさようなら、御苦労さんでしたという、私はやっぱりこういうものじゃないと思うんだね。私はそのときの園田厚生大臣発言というものは非常に重いものであるということを受けとめていただいて、今やりとりしましたけれども、この点を踏まえてこれから前向きに対応してもらいたい、対応すべきものであるという考え方に私は立っているのでありますが、この点、局長並びに大臣にひとつお考えをお伺いしたい。
  79. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 先ほどから先生からお話しございますように、先生たちのいわゆる議員立法があり、その後園田大臣発言あり、それから何回かにわたる先生の御質問、厚生省答弁、これあったのは十分承知をしております。そういったいろんな経過を踏まえて、五十九年十二月になりまして先ほどから申し上げておりますような研究会ができまして、そこで慎重に検討していただいた結果が六十二年一月の報告書になっている、こういうふうなことだと思います。  したがいまして、私ども、現段階で御質問を受けますと、この研究会報告というものをもとにして対処していきたいということしか申し上げようがないわけでありまして、その中で国に求められている先ほどの二つの、世帯更生資金あるいは歳未たすけあい運動の問題、これについては一応手を打った、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  80. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 大臣、今のやりとりを聞いておってわかるでしょう。  それで、そういう経過を踏まえてこの報告書が出たと今言うけれども、報告書とあなた食言とを一緒にしてもらっては困るよ。報告書はあくまでも研究者としての、ここで言っているのは現段階だよ。そうでしょう。これだってはっきりしているんだよ。何も結論ではないんだよ。これ現段階におけるとはっきり書いているんだよ。これは現段階における中間報告であって、そういう点でやっぱり政策として政治としてここで約束した経緯があるんだから、大臣とのやりとりがあるんだから、そういうことを踏まえていま一度積極的な面で前向きにひとつ検討してもらいたい。この歳末たすけあいだとかあるいはここにあるように世帯更生資金なんてこんなものは、私に言わせれば、あなたやったうちに入らぬ。やっぱり政治として政策的にやる限り、この経過を踏まえてもう一歩突っ込んだ再検討をしてもらいたい、ひとつ前向きに検討してもらいたい。これは大臣にひとつ答弁を求めます。
  81. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) この問題の経緯につきましては今局長から御答弁を申し上げたとおりで ございまして、今この問題のやりとりを承っておりまして対馬先生の御努力でここまでこの福祉灯油の問題が前進してきたということについては大変なものだなというふうに私も拝聴いたしました。ただ、なかなかこれは難しい問題だと思うわけでございまして、地域特性に基づいた問題について国がどこまで対応できるかなということについては国民全体の皆さんのやっぱり理解と納得ということもこれまた一方において必要なことでございまして、現段階において対応できる策として先ほど来から言われている二つの対応をさしていただいておるというようなことかなというふうに私も今承ってまいりました。先生の御熱意は大変尊敬もし敬意を表しながら承らしていただいたわけでございまして、今後の問題については報告書の内容を踏まえまして十分にひとつ考えてまいりたい、そう思っております。
  82. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いずれにしても、報告書は現段階の報告書ですからね、これははっきり言って。私が言っているのは、世帯更生資金なりいわゆる歳末たすけあいも結構だと、これだめだと言っているんじゃないんだ。結構だけど、さらにそれだけが当面の手だてではない。先ほど言ったように市町村段階で本当に地方財政が二割、三割自治の中でそれだけの手だてをしているんだから。あなた地方自治体あたりが村や町でこれだけの手だてをしているというのは大変なことですよ、この財政事情からいうならば。そう思いませんか、大臣。  そういう意味で私は申し上げているんであって、何も園田厚生大臣の言ったことをそのままイコールすぐできるかどうかは別にして、そういう面も含めてもう一度ひとつ前向きに検討してもらいたい。どうですか、その点ひとつもう一度、大臣
  83. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 報告書の内容を十分に念頭に置きまして努力してみたいと思います。
  84. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 以上であります。
  85. 中西珠子

    ○中西珠子君 厚生大臣所信表明の中で「長寿社会を財政負担の増大の面のみ強調した暗いイメージでとらえることなく、お年寄りの豊富な人生経験が社会の財産であるとの認識を持って、国民の一人一人が明るく健康で生きがいを持って暮らせるような活力ある社会づくりに努めていかなければならないと考えます。」とおっしゃっております。私は全く同感なのでございます。と申しますのは、長寿社会を財政負担の増大の面ばかり強調して暗いイメージでとらえる傾向が非常に今まであった。そして高齢化社会が来るから大変だ大変だということで高齢化社会危機説というものが流布されて国民が大変だ大変だという不安感を持つ一方、行政改革、財政再建の名のもとで五十七年から六十三年までいろいろと国庫の負担の削減が図られてきました。しかし防衛費はどうかというと、先ほどもこの話が出ましたけれども、五十七年—六十三年の間に防衛費は四三・一%もふえている。ところが社会保障費というのはたった一四・三%しかふえていない。これは自然増を考えるとマイナスと言ってもいいのではないかと思うわけでございます。社会保障制度のもとでは負担強化と給付の水準の切り下げが徐々ではありますが図られ、また社会福祉がカットされたり抑制されたりするという傾向がございます。    〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕 こういった傾向の中で、高齢化社会は暗い、もう本当に嫌なものだという気持ちが国民の中に浸透している中で厚生大臣がこのように「長寿社会を財政負担の増大の面のみ強調した暗いイメージ」でとらえてはならない、そして「お年寄りの豊富な人生経験が社会の財産であるとの認識を持って、国民の一人一人が明るく健康で生きがいを持って暮らせるような活力ある社会づくりに努めていかなければならない」とおっしゃってくだすったことは私は本当にうれしいわけでございますが、それでは、厚生大臣はそのためにはこれからどのようなビジョンを持ってどのような具体的な施策を展開していらっしゃるのか、大臣の御所見を、この前所信として伺ったんですが、もう少し具体的に伺いたいと思います。
  86. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今御指摘ございましたように、高齢化社会といいますと社会保障経費の増大、その負担を若い人ができるのかなというお金の面の話が先行いたしまして暗いイメージがともすればある、それは間違いでありまして高齢化社会というのは明るい社会であります、それは健康で賢明で人生経験の豊富なそういう高齢者がふえていく社会でございますから家庭にとっても地域社会にとっても国にとってもこれはすばらしいことなので、決してお年寄りが肩身の狭いそういう思いをするような社会であってはいけない、高齢化社会、長寿社会というのは明るい社会、そういうイメージでなければならぬということを申し上げたわけでございます。  この明るい活力のある高齢化社会を築いていくためにはいろいろな具体的な施策が必要だと思うわけでございまして、一つは、やはりお一人お一人のお年寄りが健康でなければならぬ、したがって健康増進のための施策というのは非常に大事な柱であるというふうに思います。この健康増進のためには特に栄養、休養、運動、こういう問題があるわけでございますが、運動の面につきましては特に今後重点を置きましていろいろな施設の整備、また適切な運動が行われるような指導員もこれから養成をしてまいりたいと思っておりますし、ことしの秋には全国で第一回の全国健康福祉祭という計画もございまして、全国から腕自慢のお年寄りの皆さんにお集まりいただいてスポーツであるとかセミナーであるとか意見交換であるとかいろんなそういう計画もいたしております。  それからさらに、やはり大事なこととして考えなければならぬことは、お年寄りの方々が生きがいを持つということはこれは非常に大事なことでございまして、それには自分が社会参加をしているというこの実感、またそういう具体性が私は必要だと思うわけでございまして、ボランティア、奉仕活動も含めてそういう高齢者の方々が今までの経験、知識を生かしてそして社会に参加をしている、貢献をしている、また家のためにもそれなりに大きな役割を持っておられるという、そういうふうに生きがいを持って生活をしていただくということが非常に大事なことだと思うわけでございまして、老人クラブの活動等を含めまして具体的にこれからさらに力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  87. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。  老人をも含めて国民全般は社会保障に対してこれまでよりもずっと多くの期待を持っていると思うのでございますが、これまでのような医療保障、所得保障制度の中で給付と負担が均衡すればいいという給付と負担の均衡とか、それからたくさん給付をもらうにはたくさん負担をしなければいけないのが当然である、これはまあ一理はあるわけでございますけれども、低所得者層で負担ができない人たちに対してのやはり社会サービス、社会福祉というものがもっともっと拡大強化されていかなければ今の医療保障、所得保障だけでは低所得層それから弱い者、身体障害者、また全然所得のない貧困な老人層、そういった人たちが取り残されていってしまうのではないか。今保健の重要性や社会参加の重要性、生きがいを感じさせることの重要性を大臣が強調なさいまして、全くそのとおりだと思うのでございますけれども、そういった保健の面だとか医療の面、それから所得保障の面、それから福祉の面、そういったものがもっと総合的に統合化された形で国民に提供されなければならないのではないかと考えるわけでございます。  厚生省は今度民間のシルバーサービスに対する融資制度を始められるそうでございますが、この民間のシルバーサービスというものは非常にいい面もございますけれども、例えば入浴サービスが一回一万円以上もするというふうなそういうシルバーサービスの業者もいるわけでございまして、それで弱い層の人たち、負担能力のない人たちに対してはやはり社会サービス、公的なサービスというものを減らしていただきたくない。何かシルバーサービス融資制度をおつくりになってどんど んいわゆる民間活力も利用してシルバーサービスを振興するということは結構なんですけれども、そこから生まれてくる弊害というものもやはりお考えになっていただかなければいけないのではないか。またシルバーサービスをふやすことによって公的サービスがどんどん減っていくのではないかという不安、心配を国民は抱いている。またシルバーサービスが営利だけを目的にしてしまって、入浴サービス一回一万円なんというのはもう庶民から本当に手の届かないようなサービスですね。ですから負担能力のある人はいいかもしれませんけれども、そういった入浴サービスなども半年にたった一回市や区から来てくれるだけだというふうなそういうような状況ではなくて、もっともっと公的なサービスもふやす一方、シルバーサービスの方も振興する。またシルバーサービスに対しては過度の利潤追求を抑制するようなやはり対策をお立てになっていただきたいし、規制というものも必要ではないか、またその質の向上というものも必要ではないかと考えますが、厚生省のこのシルバーサービス振興、また融資制度創設に関するお考えをお聞きしたいと思います。
  88. 小林功典

    政府委員(小林功典君) シルバーサービス産業が随分出てまいりました。これを我々は健全に育成しようという姿勢でおるわけでありますが、そのことはむしろ健全、節度あるシルバーサービスの振興ということでありまして、公的な部門を撤退するとか削減するとかということは毛頭考えておりません。例えば特別養護老人ホームにしましても増床計画を持っておりますし、    〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕 それから給食とか入浴等についてのデイサービス事業、これも大幅に毎年拡充しておりますし、またホームヘルパー制度も毎年これも大幅増員を図っております。したがいまして、公的部門と相まってより以上のサービスを必要とされる方にはシルバーサービスもあっていいではないか、しかしその場合にはあくまで健全な発展育成ということが必要である、こういう基本的な姿勢でいるわけでございます。  そこで、第二の御質問でありますシルバーサービスについての利潤の抑制等に対する指導という御質問でございますが、まず第一には、いわゆる行政指導をやりたいというふうに考えております。六十一年十一月に厚生省の中にシルバーサービス振興指導室というのを設けまして良質なサービスが供給されるように民間事業者の指導等を行っておるわけでありますが、今お話ありました利潤の問題、料金の問題等につきましてもその指導を徹底していきたいというのが第一点であります。  それから第二点は、こうした行政サイドの取り組みと並行いたしまして、やはり民間サイド自体における取り組みというのは必要だというふうに考えておりまして、昨年の三月に設立されました社団法人のシルバーサービス振興会、これは民間事業者百五十数社から成っておりますが、そこでサービスの質の向上を図るための調査研究あるいは倫理綱領の策定といったいわば自主的な活動が今盛んに行われております。こうした民間の自主的な取り組みの中で適正な価格ということも含めて自発的な取り組みを期待しておるところであります。  それから第三に、これは今までも社会福祉医療事業団が有料老人ホーム等に対して融資を行っておりまして、さらに来年度からはこの融資対象を拡大したいということで法案も提出いたしまして、いずれ御審査をお願いすることになると思いますが、そういった社会福祉医療事業団の融資の審査の際にも例えば入居一時金等の水準が妥当なものかどうかといった点も十分に審査をいたしましてこの適正な実施あるいは健全な育成というものを図ってまいりたい、このように考えております。
  89. 中西珠子

    ○中西珠子君 シルバーサービスの中にはやはりちょっと問題になるようなものもないわけではないわけですね。ですから、シルバーサービスの健全な育成、それから倫理観の確立、そういったことにやはり重点を置いて行政指導を大いにやっていただきたいと思います。  それでは次に移りまして、職域型福祉施設企画開発推進事業、こういうものを六十二年度から厚生省お始めになっていますが、その現状と見通しについてお教えください。
  90. 水田努

    政府委員(水田努君) 戦後お生まれになったいわゆる団塊の世代の方はこれから二十年ないし二十五年後に定年退職を迎えられる、こういうことになるわけですが、この団塊の世代の方の大部分が都市サラリーマンをやっておられていわゆる縦社会の中で生きてこられた方が老後を迎えられるということになるので、そういう都市部にとどまるであろうところのサラリーマンOB向けにやはりそろそろ私ども準備を始めていいんではなかろうか、こういうことで職域型福祉施設企画開発という予算を六十二年度、六十三年度それぞれ三億余計上さしていただいているわけでございますが、この事業の主体として私ども考えておりますのは、サラリーマン向けに厚生年金基金という制度がございまして、これは医療における健保組合に相当るすものでございますが、私ども、ひとつ個別の基金が個々に対応するということではなくて、資産の効率的な活用を含めましてできるだけ共同で連合してサラリーマンOBのシニア対策を進めたらいいのではなかろうかというふうに考えまして、基金の集合体でありますところの基金連合会にその助成をし、特に六十二年度は基礎的なニーズ調査をし、六十三年度はその基礎的なニーズ調査に基づいて主として都市部に残留するであろうところのOBに対してシニア施設、シニアサービス、それから年金生活の教育等を含めてどういう対応をしたらいいかということを六十三年度で基本的な構想を固めていきたい、このように考えておる次第でございます。
  91. 中西珠子

    ○中西珠子君 これは外国には例がありますか。
  92. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもちょっと不勉強で外国の例は承知しておりませんが、私ども、一応日本のそういう団塊の世代というものに着目した独自なものを考えてみたいな、こう頑張っておる次第でございます。
  93. 中西珠子

    ○中西珠子君 いわば日本型福祉社会の一つの特徴ということかもしれませんが、これはどんどん広がっていくという見通しを持っていらっしゃるわけですか。
  94. 水田努

    政府委員(水田努君) これは今後の私ども努力いかんでございますが、大変各方面から期待をされておりまして、いわゆる公的年金を補完するものとして位置づけているわけでも決してございませんで、私どもは例えば自分のニーズに合った老後のホームでありたいという場合があり得ると思うんですが、それをいわゆる俗に言うところの民間の有料老人ホームよりも低廉で、かつ公的な施設に比べれば個性的といいますか、選択性があるというのか、主体的な選択ができるこういう形のものを提供したいという一つの抽象的な段階ですが、ねらいで、いろいろこれから研究し進めてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  95. 中西珠子

    ○中西珠子君 会社人間が老後も一緒にやはり職域的なコミュニティーで暮らしたいという余りにも日本的な発想ではないかと思うけれども、うまくいけばいいですよね。これはとにかくまだ試行錯誤の段階ではいらっしゃると思いますので、もう少し見守ってみたいと思います。  痴呆性老人の対策についてお伺いしたいんですが、これまでも何回も伺っているんですけれども、痴呆性老人が昭和六十年は約六十万人だったのが七十五年には百万人を上回る、九十年には約百八十万人になるであろうということですし、また六十年の九月に行われました全国民生委員児童委員協議会の調査結果によりますと、これは在宅痴呆性老人の介護実態調査というんですが、在宅の痴呆性老人の主たる介護者の八割は妻、嫁などの女性なんですね。その三分の二以上は五十歳以上なんです。私は老人介護の問題は婦人問題だと何回も何回も予算委員会でも申し上げたしここでも申し上げているんですけれども、とにかく痴呆性老人の半分以上、五三%は寝たきりだという調 査結果も東京都の調査結果に出ております。そういった痴呆性の老人というものの介護をするに当たっては昼夜を問わず一日じゅう介護しなくちゃいけないというのがほとんどの人の答えでありまして、大変体が疲れるとか睡眠不足になって困る、自由な時間が全然ない、この先どうすればいいか不安だというふうな身体の疲労、精神的な不安というものを訴えている婦人が多いわけでございまして、この状況は全然まだ最近よくなっていないということなんですけれども、こういった家族、殊に女性の介護の負担を少しでも軽減してそして痴呆性老人の処遇そのものも向上させていくということはこれからのまた現在の大きな課題であると思うのでございますが、厚生省はどういうことをやってくださるおつもりですか。その対応策についてお聞きしたいと思います。
  96. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 先生御指摘のように、痴呆性老人の問題というのは現在でもなかなか大変な問題でありますが、今後高齢化が進展をするに伴ってますますその問題は大きな社会問題になってくることが想定されておるわけでございますが、この問題は保健医療と福祉、全般的な連携のもとに取り組んでいくことが必要であると考えられておるわけであります。  厚生省では、これは既に昭和六十一年の八月に省内に痴呆性老人対策推進本部を設けまして鋭意検討を進め、六十二年の八月に報告をしておるわけでございますが、その主な柱は、第一に、痴呆の原因究明、これはなかなかいろいろと難しい問題があるわけでございますが、何としても予防をする、発生防止ということのためにも一番大事なことであるというふうに考えております。第二は、具体的な問題を抱えた本人あるいはファミリーに対する相談事業あるいは一定の地域社会におけるデイサービス事業の充実等介護家族への支援方策の充実、それから第三は、痴呆性老人が非常に精神的な障害を帯びる時期があるわけでございますが、こういう状態に対する治療病棟を整備するというような施設対策の推進、それから第四は、専門職に対する研修等マンパワーの確保の問題、この四点を重点としまして総合的な痴呆老人対策を進めていくということで六十三年度におきましても所要の予算を確保しておるところでございます。
  97. 中西珠子

    ○中西珠子君 痴呆性老人でなくてもとにかく在宅の寝たきり老人はどんどんやはりふえているわけでございますね。現在は在宅寝たきり老人は二十二万人という国民生活基礎調査の結果が出ておりますが、特養とか入院をしている人の入院期間六カ月以上の寝たきりとみなされる人も加えると約六十万人はいるということでございます。  こういう人たちはやはり在宅では女性がほとんど介護しているわけでございまして、労働省でも在宅介護のマンパワーを育てるなんということを言い始めているし、厚生省はことしの四月から発足する介護福祉士とか社会福祉士の資格を与える人たちを養成、またあちらこちらに配置するというふうな御計画をお持ちなんだと思うのでございますけれども、それでもとにかくまだまだ足りない、在宅介護を支援するサービスというものはこれからうんと必要になってくるのではないかと思うのでございますが、そのマンパワーの確保、養成というものについてはどのような対策をお持ちでいらっしゃいますか。
  98. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 寝たきり老人等の在宅介護のためにマンパワーが非常に重要な問題であるということは私どもも同じ認識でございます。  そういうことで家庭奉仕員派遣制度というのがございます。ホームヘルパーでございますが、これの増員を毎年図っております。この数年を見ますと、大体年に千八百人程度の増員を図っております。それとともに家庭奉仕員、ホームヘルパーの質の向上も図らなければならないということで六十二年度からは新たに家庭奉仕員の講習会を実施いたしまして、いろいろ技能を身につけていただくという事業も実施してその資質の向上に努めているところでございます。  また、今後の介護事業の増大に対応しまして在宅介護の充実強化を図るという面で、今先生もお話ございましたように、昨年社会福祉士及び介護福祉士法というものを制定いたしまして老人等の介護や相談、援助に関する専門的な能力を有するマンパワーの養成、確保を現在推進しているところでございます。ことしの四月から全面実施になりまして来年の春には新しい社会福祉士あるいは介護福祉士が誕生するというところまで来ております。  そういうことで今後とも家庭奉仕員の量的質的充実あるいは民間部門のマンパワーにつきましても、社会福祉士あるいは介護福祉士制度の適切な運用によりまして質の高い人材を養成、確保していきたい、このように考えております。
  99. 中西珠子

    ○中西珠子君 日本では非常にボランティア活動というものが浸透していないという面もあるので社会福祉また老人福祉のためのボランティアをやってあげようという気持ちの人たちが少ないということで、厚生省もボラントピア事業などというものをお始めになっているらしいんですが、ボラントピア事業の現状とこれからの見通しというものはどのように見ていらっしゃいますか。
  100. 小林功典

    政府委員(小林功典君) ボランティアにつきまして私どもはこう考えております。つまり、ボランティアといいますのは文字どおり国民の自発的な意思に基づく善意の行動でありますから、そういうものが育ちますように政府としてはボランティア振興のための環境づくりと申しますか、条件整備と申しますか、そういった面に国としては力を入れていきたいということが基本的な態度でございまして、そういう考え方に基づきまして今お話ありましたようにボラントピア事業というものをボランティア振興の一つの柱として今推進しているわけであります。  ボラントピア事業といいますのは、内容といたしましては例えばボランティアの養成、研修、それからボランティアの登録、あっせんあるいは組織化、それからボランティアについての市民啓発あるいは福祉教育といったものを内容としておりますが、これを実施しております市町村は六十二年度で申しますと百四十四カ所でございます。これはだんだんローテーションしてふえていきますので、今までボラントピア事業を実施した市町村というのは累計で現在百九十七カ所になっております。毎年新規のボラントピア事業の実施市町村をふやしてまいりますので、どんどんこれからもそういうことでふやしてまいりたいというふうに考えております。
  101. 中西珠子

    ○中西珠子君 今度は、厚生省は訪問看護等在宅ケア総合推進モデル事業というのをなさるそうですね。これはどこでなさるというふうな具体案はできているんですか、また内容はどのようにお考えなんですか。
  102. 岸本正裕

    政府委員(岸本正裕君) 本格的な高齢化社会を控えまして、老人が長年住みなれた家庭で安心して療養生活を送れるように在宅ケアを充実する必要があるわけでございます。訪問看護等在宅ケア総合推進モデル事業は、このような観点から要介護老人に対する在宅対策を推進するために訪問看護をモデル実施するとともに、訪問看護とホームヘルパー等の在宅福祉サービスや訪問指導等のいわゆるヘルス事業との連携のあり方を探るということを目的として実施したいと思っております。  このモデル事業は、実施主体は市町村でございますが、全国で十市町村程度を選んで、都市型でありますとか農村型など、地域特性等を考慮した幾つかのタイプに分けて、おおむね二年間を期間として実施をいたしたいというふうに考えております。
  103. 中西珠子

    ○中西珠子君 老人保健施設のモデル事業、例えば長野県の佐久総合病院などでなさいましたね。そして老人保健施設の運営の基準、施設の設備の基準、そのほか療養費の基準その他お決めになって、そしてこれからそのモデルをうんと普及していこうとしていらっしゃるわけですね。  まず第一にお聞きしたいのは、昭和七十五年までには二十六万床から三十万床ぐらいにしたいという目標を持っていらっしゃるということを伺っ ているわけですが、積極的に建設と設備のための助成金か何かを出すというふうなことをお考えなのでしょうか。それがないとなかなか進まないのではないかという気もしますね。  それから今度は、老人保健施設に入る人の自己負担の額、老人保健施設の問題がここで論議されましたときにいろいろ額を大体の目安を伺いましたけれども、今ではどういうことをお考えになっているか、この二つの点についてお伺いしたいと思います。
  104. 岸本正裕

    政府委員(岸本正裕君) 老人保健施設につきましては、昭和六十二年度におきまして七カ所のモデル施設を実施いたしました。その運営の状況を踏まえまして老人保健審議会及び中医協で御議論いただきまして、施設、設備、人員、運営に関する基準を定めたところでございます。今後はこの老人保健施設につきましてこの基準に沿って開設の許可及び指導監督を行っていきまして、寝たきり老人に対するふさわしい医療ケアと生活サービスを提供する施設として普及をいたしていきたいと思っております。  この助成の関係でございますけれども、六十二年度はおきましては全国七十六カ所に対しまして補助金の交付を決定したところでございます。今各地で建設が進められつつあるわけでございます。また六十三年度の予算でも百カ所程度の補助を予定しているわけでございまして、私どもといたしましてはこのスタート時において円滑によい老人保健施設の整備が進められるように奨励的な助成を行っているところでございます。  なおまた、今自己負担についての御質問がございましたけれども、私どもといたしましては医療ケアとあわせまして生活ケアを行うわけでございまして、この生活ケアの部分につきましては食費とかおむつ代、そのほか日常生活雑費が中心でございますけれども、これは自己負担をしていただくという考えでおるわけでございまして、私どもこれをつくるに当たりまして平均をしますとおおむね月五万円程度の自己負担になるのではないかということで国会等でも御説明を申し上げてきたところでございます。これからでございまして、これは施設ごとに若干の差がございますし、またおむつを使う人、使わない人等個人的にも差が出てくるわけでございますけれども、今のモデル施設の利用料の実態を見てみますと四万数千円というところが平均的な額ではなかろうかというふうは考えているわけでございまして、そういう日常生活雑費でございますからそれほどの大きな違いがなくて、大体そういう平均水準にある程度の幅で上下したような利用料負担ということになるのではないかというふうに考えております。
  105. 中西珠子

    ○中西珠子君 自己負担については老人保健施設の方と契約して決めるわけでしょう。ですから、やはり大体五万円程度と思っていらしても、平均は四万九千円だから五万円程度とお考えでいらしてもたくさんやはり徴収する施設も出てくるかもしれませんね。そういったものに対する指導とか規制というのはどのようにお考えなんですか。
  106. 岸本正裕

    政府委員(岸本正裕君) 私ども、この施設につきましては、老人保健審議会の御答申の中でも余り硬直的、画一的なものとするのはどうかと思うというような御意見をいただいているわけでございますので、これは施設の入所者の方々の御意見を尊重してこの利用料というものが決められていく部分というのがあってしかるべきではないかというふうに考えているわけでございます。  ただ、今先生御心配のように、非常に高額の利用料のために多くの老人が利用できないというようなことがあってはなりませんので、私どもといたしましてはこの利用料を取ってよいという範囲を明確にさせるように指導いたしておりまして、これは施設内の見やすいところに料金を取ってよい費目をはっきりと書く、そしてそれぞれの利用料金につきましても実費程度ということで、皆さんの納得の得られるような利用料を取るようにということで指導は徹底していきたいというふうに考えております。
  107. 中西珠子

    ○中西珠子君 ぜひ自己負担内容のモデルをそれこそきちっとおつくりになりまして、そしてたくさんぼるところがないように指導していただきたいと思います。  それから、六十三年度予算におきましては生活保護の予算が減っているんですね、二百九十四億円ぐらいの減額となっているということでございますが、これは最近被保護者の生活実態調査か何かをなすって、その結果こういう減額をしても構わないという確信をお持ちになったわけでございますか。
  108. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 生活保護費、確かに六十二年度当初予算に比べまして六十三年度予算はやや減額になっております。これは近年の生活保護受給者の減少傾向というものを勘案したものでございます。  なぜ最近この生活保護受給者が減っているかということはいろいろ分析しております。いろいろな要因がありますので一概に申せませんけれども、私どもの方としましては主なものとして次のことを考えております。  一つは景気でございます。景気が昭和五十八年度以降一時的に若干の後退はありましたけれども全体的にはかなり好況で推移しているというのが第一点。  第二点は、六十一年四月は障害基礎年金制度、それから特別障害者手当制度が導入されたということが第二点であります。これが相当大幅な改善でございまして、六十一年四月の時点で申しますと従来の福祉年金一級が三万九千八百円でありましたものが、障害基礎年金は六万四千八百七十五円という大幅増になっております。また特別障害者手当制度につきましては、その前の福祉手当が一万一千二百五十円たったのが特別障害者手当としまして二万八百円ということで、年金とそれから手当が大幅にふえた、これが非常は大きく効いているようでございます。  それから第三に、昭和五十九年から離婚率が減少してきております。年々減少してきておりまして、それによって母子世帯の生活保護適用が減ってきている、これが第三点。  第四は、国と地方公共団体の保護の適正実施。この生活保護は御案内のようにいずれも全額国と地方の税金でございますので、不適正な事例があってはいけないと適正化をやっておりますが、この四点が主な原因となってずっとこのところ減少傾向にある。そういう減少傾向を勘案して来年度の予算を減額で決めたということでございます。
  109. 中西珠子

    ○中西珠子君 生活保護を受けている人の中で、現金収入は全然ないけれども不動産を持っている人がありますね。不動産保有者に対する生活保護の取り扱いというものはどのようにお決めになりますか。  というのは、現在東京を初め都市部で非常に地価が高騰しているし、土地も持っている、家屋も持っている、ですから住むには困らないけれども全然勤労所得もないし何の現金収入もないなんという人もいるかもしれませんね。こういうときはちょっと生活保護の対象にするかどうか、また既に生活保護をもらっている人をどうするかということはなかなか難しいと思うんですけれども、どういう方針をお立てになっていますか。
  110. 小林功典

    政府委員(小林功典君) お話ありましたように大変これは難しい問題でございます。  土地、家屋はあるけれどもフローがないために生活保護を受けなければならぬという面もございますが、最近では都会地では非常に地価が高騰していまして、例えば別の方から見ますと、生活保護は受けてないけれども非常に苦しい生活をしているという方もいらっしゃいます。そういうことで特に地価の高騰などを背景にしまして、不動産を持っている方と一般の世帯の方の均衡、公平というものをどう考えたらいいんだと。なかなか難しい問題でございます。両方から両論の意見がございます。  そこで、私ども悩みまして実は昭和六十年に生活保護制度運営研究会というものを設置いたしまして、そこで不動産保有者に対する生活保護のあり方について議論をしていただいたんですけれど も、昨年の十二月に報告書が出ました。そこで言っていますのは、処分価値が利用価値に比べて著しく大きくない場合、これは不動産の保有を認めると。これは従来の方針でございます。この考え方はそのままでいいではないか、それを踏襲していいじゃないかと。ただ、その考え方を踏まえはするんだけれどもより具体的な基準というものを設定することによって法の適用の公平性を確保していくことを検討しろ、こういう御趣旨の提案が出ました。したがいまして、私どもとしては、処分価値が利用価値に比べて著しく大きくない場合は不動産保有を認めてもいいけれども具体的に幾らとか何坪とかそういった具体的な基準をつくれ、こういう御提案をいただいたものですから、その提言を踏まえまして現在各部道府県の実情なども聴取をいたしながら具体的な判断基準づくりを今一生懸命やっているところでございますが、なかなか難問でございます。
  111. 中西珠子

    ○中西珠子君 全く難問だと思いますけれども、不動産保有者と一般の不動産など持っていない人との間の均衡を保つ、また不公平にならないようにするということを念頭に置いて対処していただきたいと思います。  それから、最近非常に就労する女性がふえておりまして、殊に結婚、出産後も就労を続けるということを希望するまたそれが必要である婦人がふえているわけでございますが、とにかく保育所というのが朝九時にあいて夕方五時に閉まってしまうというのではこれから、労働基準法の改正なども最近ありましたし、いろいろ労働時間の問題との絡みで例えば変形労働時間の導入された職場で忙しいときは遅くまで働かなくちゃならない、それが所定内の労働時間になってしまうから職場を離れて保育所に子供を連れに行くことができないなんていう母親もふえてくるのではないかと思うんですが、その保育の需要というものが非常に多様化してきていると思うんですね。  例えば、これまでは子供がゼロ歳の間は結局働くのはやめて家にいるというふうな人もいましたでしょうけれども、まだ育児休業制度が普及していない中でやっぱりゼロ歳の子でも預けて働きたいまた働かねばならないという人に対するゼロ歳児保育の場とか、それから午後七時までの延長保育をやる場所とか、それから午後十時までの夜間保育をやる場所とか、そういった保育所が非常に少ないということで、働く婦人の人たちからもっともっと保育所が、就労形態が変わってきているんだから、それに対応したようなやり方をやってもらえないかという要望が強いわけでございますが、この点は関しては厚生省はどのような対策をおとりになるつもりですか。
  112. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 確かに現在保育所に対します保育の需要の形、これは先生のお話のようにさまざまの形のものがあると思います。特に赤ちゃんの乳児保育、それから時間を少し延長する形の延長保育、それからこれは数がそれほどないかと思いますが夜間まで保育をしてほしいという夜間保育、こういった新しい形の保育需要が大変厳しい状況になっておるということは十分認識をいたしておるわけでございます。  保育時間につきましてはおおむね午後六時までということでやっておりますが、この時間は入り切らないというお子さんのための延長保育事業を昭和五十六年度から開始をいたしております。また同じく夜間の保育所につきましても、昭和五十六年からおおむね午後一時ごろから午後十時ごろまでの夜間まで保育をしていただくという形の保育所の制度を設けましてこの推進を図っておるわけでございます。  乳児保育は、本来赤ちゃんを保育所でお引き受けするということは前からやっていたわけでございますが、昭和四十四年から特別対策という形で保母の加配をいたす形で乳児保育をやっていただいております。しかしながら、全体の状況を見ますと、例えば延長保育を実施いたしております保育所は全国で四百十一カ所、それから夜間保育を実施いたしておりますのは二十六カ所ということでございまして、十分に需要を満たしておるとは言いがたい要素はあるかと思います。  これらの保育が伸びません理由といたしましては、なかなか市町村側が積極的になっていただけないという面も正直言ってあるわけでございまして、先生お話しのようなお母様方の御要望を十分踏まえました上でこういった事業を実施してまいりたい、十分私どもも市町村側と話し合いをしていきたい、こういうふうに考えております。
  113. 中西珠子

    ○中西珠子君 乳幼児を扱っているいわゆるゼロ歳児保育をやっているところは幾つくらいでございますか。
  114. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 全国の保育所自体は乳児を扱っております。これが全国で三万六千六百七十人乳児が入っておりますが、今さっき申し上げました指定保育所となっておりますのは三千二百カ所でございます。
  115. 中西珠子

    ○中西珠子君 市町村がやはり余り延長保育、夜間保育に熱心ではないというところにはマンパワーの確保ができないということもあるでしょうし、確保ができないばかりでなく、新た佐保母さんを雇うとどうしても人件費がふえますね。そしてその国庫の補助も減らされたところだからとてもそんなことはできないというふうに考えているところが多いのではないでしょうか。
  116. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 夜間保育所は非常昨数が少ないわけでございますが、これは実際の実施いたしております県の数も少のうございます。需要自体も地域性があるのかと思いますので、全国の市町村が夜間保育に取り組むという必要はないのかと思います。お話のように、この夜間保育を行います際は職員の方の勤務が大変厳しい形のもの確なりますので対応するのが大変に難しいという御事情があることは十分承知しておりますけれども、お母様方も例えば看護婦さんでございますとかお医者様でございますとか、こういった夜間保育の御要望がございますのでぜひ実施をしていただきたいと思っております。  もちろん、この夜間保育部分につきましてまたは延長保育部分につきましては、それなりの私どもの方の予算を計上いたしまして対応はいたしておるところでございます。
  117. 中西珠子

    ○中西珠子君 その予算について少しお教えいただけますか。
  118. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 延長保育の場合には、通常保育単価という形でお一人のお子様一人当たりの金額を私ども予算措置をいたしておるわけでございますが、延長が七時までの場合には一〇%増しをいたしまして、八時までの場合は二〇%増しをするという形で対応をいたしておるわけでございます。  夜間保育の場合は、夜間保育それ自体が今申し上げましたように一時から十時までという形で、夜間保育の需要というのは通われる子供さんの範囲というのは限られますのでそう大きなものができないわけでございますので、非常に小規模の保育所になりますので小規模単価という形で実施をいたしておりますが、これがさらにもうちょっと早くからというふうに時間が延びますと一〇%増し、二〇%増しという形で予算を出しておるわけでございます。
  119. 中西珠子

    ○中西珠子君 厚生省の方としてもやはり働く婦人のニードに対応してできる限りこういったものをふやしていただきたいと思います。これは私が働く婦人を代表して要望として申し上げます。  最後になりますが、国際保健福祉協力の課題ということで大臣は「保健医療分野を中心に発展途上国の我が国に対する国際協力の要請がますます大きくなっている」ということを御指摘になりまして、「WHOを通じるなどによりこれに積極的にこたえていく所存であります。」とおっしゃっておりますが、「WHOを通じるなどにより」という意味はWHOなどと一緒に日本が共同してやっていくといういわゆるマルチ・バイ協力というものをもっと積極的に進めていきたいというふうにお考えになっているのでございましょうか。
  120. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 発展途上国に対します保健福祉協力の問題でございますけれども、我が国としては、一つは経済大国として、あるいは世 界のトップクラスでございます我が国の保健あるいは福祉水準を今後ますます発展途上国に対しまして御協力申し上げるという非常に重要な観点であろうと思っているわけでございます。  その協力方式でございますけれども、マルチ・バイ方式が中心かというようなお尋ねかと思いますけれども、もう先生専門家であられるから重々御承知だと思いますが、一つは二国間協力、バイ方式というのが一つ重要な柱でございます。二国間協力の形で病院等の建設資金を供与する資金協力、あるいは専門家の派遣とか途上国の研修生を受け入れます技術協力、こういった形の協力関係というものを外務省等とも相談をしながら今後とも積極的に実施していくことが一つでございます。  加えまして御指摘のマルチ方式、WHO等を通じます事業でございますけれども、分担金の拠出とか任意の拠出を行っておりますが、さらにはWHOの行います専門家会議への人の派遣あるいはフェローの受け入れ、事業への協力、そういった形でのマルチ協力方式も推進していきたいということでございます。  さらに、今後はハード面のみならずソフト面での協力も非常に重要になるわけでございますが、そういうことを勘案しながらWHO等とも協力をしながら、さらに二国間協力とも組み合わせながら、厚生省といたしましては、特に外務省、JICA等とも密接な連携をとりましてより発展途上国の実情にふさわしい協力方式ということで効果的な国際保健福祉協力に取り組んでまいりたいということでございます。
  121. 中西珠子

    ○中西珠子君 日本は開発途上国にいろんな立派な近代的な病院などを建てたりまた医療の面でも専門家を派遣したり、それから非常に近代的な医療設備というものやそれから医薬品を提供したりなすってきましたけれども、余りにも近代的過ぎて開発途上国にそぐわないというふうな批判も時時聞くわけでございますね。殊にフォローアップが余りない場合はせっかく上げたその医療機械が全然使われないでさびついているとかそういったこともあるということを聞いておりますが、これはやはりフォローアップをやっていくためのマンパワーというものが不足なのではないかというふうにも考えます。そのフォローアップをもっとやっていただくためにもまた国際協力をもっともっと強力にソフトの面でも推し進めていただくためにもマンパワーの確保というのが本当に大事だと思うのですけれども医療関係のまた保健関係のマンパワーの養成というものは何か特別にやっていらっしゃいますか、その国際協力のためのマンパワーの養成ということは。
  122. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) その国々の実情に沿った協力を申し上げたいと思っておるわけでありますが、そのために、一つは事前の調査が非常に大事だということで我が方からも事前にいろいろ調査した上でプロジェクトを動かすということも重視していきたいと思っておりますけれども、御指摘のマンパワーの確保につきましても極めて重要だという観点から六十一年十月に国立病院医療センターに国際医療協力部を設置したところでございます。ここに国際協力に従事する専門家をプールの形で配置をしているところでございまして、将来的にはこのセンターを国際協力の中核となるナショナルセンターとして組織機能の充実を図りましてマンパワーの養成、確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
  123. 中西珠子

    ○中西珠子君 大いにマンパワーの養成をしてくださいまして、そして国際協力を保健医療の面または福祉の面で推進していただきたいと思います。  とにかく国際的にもそうでございますが、日本の厚生省の活動というのは非常に高く評価されておりますし、また国民厚生省に対する期待というものもこれからそれこそ高齢化社会が近づいてくるにつれて、医療保障、所得保障、また社会福祉サービスそれから国民全体の健康を守る保健衛生サービス、そういった面でも本当に国民の厚生大臣並びに厚生大臣が指揮なさる厚生省の活動に対する期待はますます高まっていると思うわけでございます。厚生省のこれからの活動について、国民の健康を守りまた医療、福祉それから保健、所得保障、あらゆる面でまた医療の中身という面でもまだまだこれから改善していただかなきゃならない面が私はあると思っているんです。もう少しお聞きしたいこともあったんですけれども、時間が来ましたので一応またこの次の機会にお聞きすることにいたします。  いずれにいたしましても、厚生大臣厚生省に対する期待は日々高まっているわけでございますので、ここで厚生大臣の御決意のほどを伺いまして私の質問を終えます。
  124. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御承知のように、厚生省の行政は国民生活また健康に直接関係する分野でございまして、一口で言えば極めて重要な問題を扱っておると言えます。また、今後の問題といたしましては、特に本格的な高齢化社会が到来するわけでございまして、やはりこの社会保障制度というものは国民生活の長期安定のために基盤となるものでございますから、高齢化社会の到来を控えまして十分に社会保障制度が機能するように今から、言ってみれば過渡期の今こそこの制度を将来揺るぎないものにするために全力を挙げていかなきゃならぬと思っております。  特に、やはり考え方といたしましては、この制度を長期安定をするということ、それから負担が給付がふえていくわけでございますから、公平にこれがならなければならぬというようなことが基本的な物の考え方だと思うわけでございますが、そういうことを念頭に置きながら、明るくしかも安心して生きがいを持って国民一人一人が生活できるようなそういう長寿社会を築いていかなければならぬと思っております。  厚生省の行政もいろいろ、厚生省ができまして五十年という大きな節日を迎えておるわけでございまして、さらにこれから前進をさしていくためには活力を持った厚生行政、明るさを持った厚生行政、こういうものを特に念頭に置きながら全力を挙げてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  125. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。大いに期待しておりますから、どうぞ頑張ってくださいませ。
  126. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本調査に対する午前の質疑はこの程度とし、午後四時十分まで休憩いたします。    午後一時二分休憩      ─────・─────    午後四時十分開会
  127. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、社会保障制度等に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  128. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、限られた時間でございますけれども、まず厚生行政基本姿勢についてお伺いをします。  厚生大臣、これ、五十周年特集号に年頭所感をお述べになっておられまして、その中の一節に「私は、高齢社会を財政負担の増大の面のみ強調した暗いイメージで把えることなく、お年寄りの豊富な人生経験が社会の財産であるとの認識を持って、国民の一人一人が明るく健康で生きがいを持って暮らせるような活力ある」云々とお述べになっておられるわけでございます。こういう見地については私も賛成であります。ところが、現実のとってこられた政府の姿勢というのは、高齢化社会が来る、高齢化社会対応するために、ということが口実で社会保障制度も総決算をしてきて後退をさせてきたのではないかと思うんですね、現実には。  まず、そういった点で、お述べになっておられる大臣の所感と現実との関係で大臣に反省をなさるところはないでしょうか。
  129. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 高齢化社会に対するイ メージ、確かに暗いものであってはいけませんし、特にお年寄りが肩身の狭い思いをするような社会であってはいけない、むしろ明るい積極的なしかも経済社会が活力を持つような社会を建設をして、そういう中でさらに高齢者の福祉というものが確保できる、こういうことが必要だと思うわけでございます。  で、高齢化社会を展望してみますと、いろいろな政策努力適正化対策を無論進めてまいるわけでございますけれども社会保障の経費というものはこれは増大を避けられないというふうに思うわけでございます。一方、社会保障制度というのは国民の皆さん方の生活が長期安定するための基盤であるわけでございまして、まず何よりも大事なことはこれらの制度が長期的に安定したものでなけりゃならぬ。すなわち、本格的な高齢化社会に到達した段階において何よりも私ども考えなければならない制度の長期安定、揺るぎのない社会保障制度をつくっていく、こういうことが何よりも大事であると考えておるわけでございまして、そういうことを念頭に置きながら、具体的にいろいろな制度につきまして国民の皆さんに御理解いただきながら改革を進めていかなければならないというふうに基本的には考えておるところでございます。
  130. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 何しろ今は高齢化社会論というのが盛んに口実に使われます。税制論議の中でも、直間比率の見直しあるいは間接税の必要論、これは高齢化社会の安定的な財源づくりだということで口実にされているというのが現実の姿です。  私は社会保障を見る場合に二つの視点があるだろうと思うんです。その一つ国民生活の視点から福祉行政を見ていくということ、それからもう一つは財政的観点から主に切り詰めの視点で専らこれを見ていくということ、この二つは相反しておりますから随分大違いですね。政府は、経済の低成長、高齢化社会論を理由に、専ら財政的な視点から社会保障対応してきたというのが特にこの五年、六年の間でございます。その極がいわゆる臨調行革路線、中曽根内閣時代の戦後政治の総決算という形であらわれたと思うわけでございます。  私は、そういう点で一般会計の歳出総額に占める社会保障関係費の割合を見てみますと、これは昭和五十五年と六十三年度の比較を見たら、五十五年は一九・二八%、六十三年度は一八・三一%と低下しています。これは、よく言われておりますように、防衛予算はこの六年間で四三%伸びているわけですが、現実に一般会計に占める社会保障の割合は低下している。人口の高齢化高齢化と言われておるこの進行によって一般的に考えますと社会保障関係費は伸びるのが当然だと思うんです。それがこういうマジックのように逆になっておるわけです。これは一体どういうことなのかというふうに思うんです。これはどうですか。
  131. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 数字の点でございますが、私は、一般会計ということよりも一般歳出の中で比較をいたしますと社会保障経費が下がっておるというふうには見てないわけでございまして、一般歳出の中で約三〇%弱の予算を確保しておる、しかも六十三年度予算につきましては一般歳出の伸びの五千億の中で厚生省関係は約三千億確保しておるわけでございますので、非常に厳しい状況の中でやりくりしながら頑張っておる、こういうふうに御理解いただければありがたいと思います。
  132. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、これは厚生省にいただいた数字をピックアップしているだけの話ですからね。  私は、こういうマジックのような状況が起こってくるというのは、これは当然のことだなと思うんです。これは午前中にも論議をされましたが、例えば厚生省予算編成に大変御苦労しておられると。御苦労なはずで、当然増が昭和五十七年度以降それぞれ七千億要るところが二千五百億余りしかもらえない、あるいは昨年でも八千億要るところが二千五百億しかもらえない、あるいは六十三年度も七千億当然増が要るところを二千九百四十六億しかもらえないというふうなあたりで当然増が極端に圧縮をされてきているというのが、これは当然のことですね。そういう当然増を圧縮されるとそれは全部施策に細かく影響がいくわけで、時間の都合があるから多くを申し上げませんけれども、六十二年度、六十三年度、御苦労、御苦心の跡というのはいろんなところによく出ているなと思うんです。結局、高率補助率の見直しだとか、厚生年金国庫負担の一部繰り延べだとか、国民年金国庫負担の平準化だとか、政府管掌健康保険の特例だとか、国民健康保険制度の改革だとか、旧法国民年金の障害年金等の支給月の変更、これなんか大概知恵を絞ったところだと思いますが、医療費適正化だとかいうふうなことになって当然増の圧縮というものを何とかその年度その年度やってきている。その結果、繰り延べ等が随分やられてきているんですね。これは午前中にも論議がありましたけれども、大きな分だけとらえても三兆円以上というふうな繰り延べになっておりますね。厚生年金あるいは国民年金の平準化あるいは健康保険の特例等を含めましてね。これは利息を除いて三兆四千億ぐらいになるでしょう。結局は、補助率の切り下げだとか年金への借金だとか国民や地方自治体への負担増だとかいう形で当然増の減った分を切り抜けてきた、こういうふうにしか見られないと思うんです。この際、これは当然こういう貸した金は返してもらうという約束になっておるわけだから当たり前ですが、借金と地方自治体、国民へのツケ回し方式で当然増まで削り込むというふうなやり方というのは改めなかったらどうにもならないんじゃないかというのが一つと、もう一つは、この膨大な繰り延べ、ツケ回しですね、こういうものはいつちゃんと元利合計返してもらうのか、その辺ははっきりしておいてほしいと思うんですね。
  133. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 最初の問題でございますけれども厚生省予算は御承知のように当然増が非常にあるわけでございまして、マイナスシーリングで七年前から四苦八苦してやりくりしてきたわけで、その中の大きな問題は適正化努力と繰り延べであったと思うわけです。したがって、こういうやり方が、マイナスシーリングが続くという前提で考えますと、いつまでも続くかどうかという問題につきましては将来非常に厳しいと思うわけでございまして、これは厚生省予算を編成する上でまことに厳しい非常に深刻な問題だというふうに思っております。  それから、繰り延べ措置の問題につきましては、これは好ましい問題ではございませんけれども支障のない範囲でやむを得ない問題として今まで協力をしてきたわけで、昨年暮れの予算折衝のときにも私は大蔵大臣に政管健保の繰り延べのことにつきましても注文申し上げたわけでございまして、私どもは決してこれがいいとは思っていないわけで、財政上もし支障が起こるような場合にはこれは当然措置してもらわなきゃなりませんし、また厚生年金、政管健保につきましては繰り戻しを行う旨を法律上明らかにしておりますし、また国民年金につきましては法律上六十五年から計画的に補てんをする、具体的に厚生年金及び政管健保につきましてはこれから財政当局と十分に詰めていかなきゃならぬ、かように考えております。
  134. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 きょうお尋ねをする本題の保育所行政についてお伺いをしたいと思います。  保育所は随分いろいろな課題を抱えてきております。定員割れの問題、高い保育料の問題、それから国民的な強いニーズのあります保育時間の延長、どれをとらえてみましても曲がり角と言われるような事態に来ていると思うんです。とりわけ今日の状態の中で高い保育料、それから定員割れなどの困難なところへ追い込んだ責任というのは、やっぱりこれは政府の責任が大きいんじゃないかというふうに思うんですね。  これはことしの厚生白書特集、これを拝見をいたしますとなかなかよく分析をされておると思うんですね。児童を取り巻く環境の変化等について も随分正確に分析をされているわけですが、この分析に基づいて「的確な対応が求められている。」というふうにお述べになっておられるわけです。  私はこの分析の中で感心をしたのは、一つは「児童をとりまく環境の変化」、「すべての児童が心身ともに健やかに生まれ、かつ、育成されることは児童福祉の基本的理念であり、いつの時代においても変わることのない国民の願望であるとともに、国民すべての責務である。」というふうにお述べになって、「将来を担うべき児童を心身ともに健やかに育成していくことが重要となっている。  ところで、児童を取り巻く環境は次のように変化している。」ということで六つに分けておられるわけですね。その一つは「出生率の低下」、二つは「女性の社会進出、核家族化の進行、離婚等の増加」、三つは「保護者の子育て観、家族観等の意識の変化」、四つは「地域社会における連帯意識の希薄化」、五つは「人口の都市への集中」、六は「地域における広場等の遊び場の減少」というふうに述べられておるわけです。「現状と課題」のところでも「人口急増地域等の一部特定の地域を除き、全国的には施設不足の状況はほぼ解消されてきてきて」おるというふうにお述べになっております。この認識というのは私は確かなものだと思うんです。  保育行政の実際はこの認識、ころいった児童を取り巻く環境の変化にうまく合致するように進んでいるんだろうか、むしろ逆にたってきていはしないかという心配をいたしますが、御見解を伺っておきたいと思います。
  135. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 今先生からお話がございましたように、児童を取り巻く環境、大変変化をいたしておると思います。  保育所行政について申し上げますと、婦人の方の就労の状況に合わせまして四十年代後半から五十年代へかけまして施設をつくっていくということが私どもの大きな課題であったわけでございますが、現在におきましては児童数の減少等がございまして先生御指摘のような定員割れという事態が一部の地域において起こっておることは事実でございます。しかし、保育所がその使命を十分に果たしていく必要があることは当然でございまして、私どもは、現時点における保育所の最大の課題はさまざまな多様化した保育需要に保育所が柔軟に対応していくということがまず重大な課題であるというふうに認識いたしております。保育所が不足いたしておりまして保育所の整備がまず優先されました時期におきましては、正直に申し上げまして多様化する需要に十分こたえてこられなかったということがあると思います。現時点ではおかげさまをもちましてある程度達成したわけでございますので、保育需要の多様化に応じたいろいろな夜間保育でございますとか延長保育でございますとか乳児保育または障害児保育といったような多様化した保育需要に柔軟にこたえていけるようなそういう体制づくりを考えていくということが大きな現代の課題であると思っております。
  136. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、余り時間もありませんので、いろいろアンケート等で調べまして保育行政の中で一番強い要求というのは、保育料が高い、もっと値下げをしてもらえないだろうか、高過ぎるという要求が一番強いんですね。その点に集中をしてなぜ保育料の値下げ要求が大きいか、保育料が高いという要求が大きいか。やっぱり今日の保育行政のあり方、特に国庫負担のあり方の関係が非常に大きいんではないかと思いますので、この点について伺っていきたいと思うんです。  国庫負担と父母負担率の推移というこれは厚生省でいただいた資料を見ますと、国庫負担のこの十年を比べてみますと、昭和五十四年は国庫負担分がちょうど四八・〇%ですね。費用徴収分、これは父母負担ですが、これが四〇・〇%。それが従来どおり児童福祉法に基づく八〇%の国の費用負担をしていた最後の年度というのは五十九年ですから五十九年を比べてみますと、国庫負担分が三八・四、一〇%減になっているんですね。そして費用徴収分の父母負担というのが四〇%が五二%に上がっております。六十三年度、来年度を見てみますと、これは当然政府が半額、五〇%しか出していないわけですから国庫負担分というのが二四・四%、地方負担分が二四・四%、費用徴収分が五一・二%ということで父母負担の割合というのがどんどん上がってきておって、この国庫負担額と費用徴収の父母負担、地方自治体負担の比較をいたしましても、非常にはっきりしているのは、父母負担だけはどんと上がって国の負担はどんと下がって地方自治体の負担がどんとふえている。まさにこの十年の間に国庫負担分と父母負担分というのは逆転をしている。これは表に出ている数字だけではなしに地方自治体がさらにこれにプラスして上乗せがされているわけです。  なぜこういうことになるのかという問題なんですが、基本的には保育単価ですか、措置費と保育料、これは国の負担がリンクされているという状況ですね。保育料の上の階層、保育を受ける人たちの所得の上の階層が多くなれば多くなるほど相対的は国の負担は減る仕組みになっていますね、そうですね、違いますか。
  137. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 現実の保育料は父兄の方の税収に応じまして費用負担額を決めておりますので、これは国の地方公共団体に対する決済区分でございますが、そういう意味では先生がおっしゃいましたようにいわゆるD階層、特にD階層の上部の方がふえてまいりますと全体としての徴収金の比率が高くなるということは事実だと思います。
  138. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、保育料の階層別児童数の割合と推移というのをいただいて見てみますと、A階層というのはこれは生活保護、B階層というのは非課税世帯、C階層というのは税の低い層ですが、D階層が幾つにも割れているわけですが、昭和五十三年がD階層は五九・七%、それが今日、六十二年四月一日では七一・三%にふえています。これも約一〇%以上の伸びを示しているわけです。ですからこれは父母にとっては大変なことだと思うんですね。  余り時間をとれないですから具体的にはどうなるかということを少し申し上げてみたいんですが、例えば、これは子供を預けて両親が働いている人なんですが、夫はJR西日本に勤めている、私は共同保育の保母で勤めておって、両方の手取りが二十三万。この人はD6階層ですが、その中からゼロ歳児の子供の保育料を今二万四千九百円払っているんだそうですが、国基準なら三万四千三百五十円ですね。これは自治体が上乗せをして二万四千九百円。それで、その上にこの二月に二人目の出産をする予定になっているが、いやもう産まれたのかな、措置をすぐにされないので自由契約児になるので六万円、将来二人が措置をされるとしても五万ないし六万かかるであろうと。こういうことになってくると保育所に子供を預けて働く親は大変苦しいんだ、そうかといって仕事をやめるともっと苦しいんだ、だから何とかして保育所の保育料が毎年毎年上がるというふうな仕組みを変えてほしいというのが切なるお声です。  もう一つ具体例を申し上げますと、これは個人の名前を出したら悪いから出しませんが、実在の個人の方ですが、妻と夫との二人の手取りの賃金が一カ月三十一万、それでお子さんがゼロ歳と一歳と四歳と三人おられるのですね。それで、D10階層の保育料を払っているんですが、九万一千二百円払っておられる。それでこれは上乗せされているので九万一千ですが、国基準でいきますと十二万一千九百円になるんですね。そうしたら、三十一万の中で十二万一千九百円の保育料ということになりますと、国基準でいきますと保育料だけで約四割、手取り給与の四割になる。これでは保育料が高過ぎてどうにもならぬというのは当たり前だと思うわけです。そういう実例はたくさん実は持っておりますが、これを多く申し上げている余裕がありません。  ですから、保育園がどういう事態になってきているかということを見ますと、これは吹田のこばと保育園という私立の認可保育園ですが、ここでは百二十人定数の中でD12階層、今で言うたら一 番高いところですね、一番高い階層のお子さんたちは乳児でも八〇%、幼児でも八〇%なんですね。つまり、D12階層といえばもう国の公費負担なしですね。保育単価でやるというふうな人たちが保育児童の中の八〇%になっている。だから、これは国の費用はどんどん減っていくかわりに父母の負担はどんどんシーソーゲームで上がっていくのは当たり前なんです。もう一つ、これは堺市の例でも、やっぱりこれは幼児が七九%だから約八割なんです。これは保育単価というランクですね。徴収基準の保育単価というのが七九%、幼児では。それで全体では約六三%が保育単価。そうなってくると、国の金はろくに要らぬですわね。  さっき申し上げた吹田のこばとというのは、D12ですから最高ランクですね、それが八割という事態にまでなっている。ここは長時間だとかいろいろやっておられるから集中しているわけですね。ですから、こういう実態を国民生活感覚から見たら、保育料は何とかしてもっと安くならぬのか、毎年毎年上げられるようなことでは安心して暮らせないじゃないか、そうかといって子供を預けるのをやめて仕事をやめたら生活が成り立たない、もっと苦しくなる、もう板挟みになっているんだというのが生活の実態になっているわけです。  時間を節約する意味で申し上げますが、こういう仕組みになっているのは徴収金基準額表というのを今まで厚生省でずっと出していましたね。それを見てみたら、五十四年の四月一日のも六十一年の四月一日のも大体三万円以上六万円未満の所得税ですか、の方はこれは保育単価とするというランクになっておるんですが、これは五十四年も六十一年も変わってないんですね。そうしたら、変わらなかったら国民生活の中では幾ら賃上げが少ないといったってやっぱり少しずつは給与は上がっていますよ。だから少し上がったら税金が上がるんですね。それが全部保育料の負担ランクにひっかかってくるというふうになっているんで、こういう仕組みというものをやっぱり変えなければならないんではないかと思うんですね。この仕組みを、これは国の負担がどんどんどんどん減っていってそして父母負担と地方自治体の負担だけがどんどん上がっていく、こういう仕組みというものを変える必要があるんではないかと思いますが、いかがですか。
  139. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 保育所にお子さんをお預けになった場合の措置費について保護者の方にどの程度の負担をお願いすればいいかということは大変難しい問題だと思いますけれども、現実に保育所にお預けにならなかった御両親もやはり税金を納めていただいておるわけでございまして、そういった方との均衡を考えますとやはり保護者の方にその所得に応じた御負担をお願いするという原則はやむを得ないものと御理解をいただきたいと思うわけでございます。  現実に保護者の方の負担にどの程度応じてどの程度を御負担いただくかということになりますと大変難しい問題だと思うわけでございますが、先ほど先生がお示しになられましたケースにつきまして、例えば、お子様がお二人ある場合につきましていわゆる第二子半減ということをやっておるわけでございますが、この第二子半減の対象の階層の引き上げを年々図っておりまして、現在は全徴階層以外は第二子半減というような措置の対象になっておるわけでございます。  また、先生は今の階層区分について改正をやっていないではないかという御指摘でございますが、その点はいわゆる全徴階層、現在で申しますと第十でございますが、この部分につきまして六十二年度は修正をいたしておるわけでございます。全体としての負担のあり方ということにつきまして、私どもは現在の徴収金の個々の具体的な数字が適当かどうかという点につきましてはさらに勉強させていただきたいと思いますけれども、全体といたしまして今の援護率、今程度の御負担を保護者の方にお願いするということはやむを得ないというふうに考えております。
  140. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 突いたり押したり余りしてもしようがないんですけれども、保育に欠ける子供を保育するという点では、あなたの方でお述べになっておられるように、子供たちの健全な育成を図るという点、もう一つはお母さんが社会活動に参加をされて生産に参加をされているという両面があるわけです。御家庭でお母さんが子供を見ておられるという場合には、保育所を利用していないという方は、これはお子さんは自分でお育ていただいているかもわからぬけれども社会参加をして社会活動をやっておられない。これは両方の条件があるわけなんで、子供の健全な育成、これを保障していくという側面と働く母親が社会参加をして社会活動の中で社会の活動に貢献をしているという両側面をこれは見過ごしちゃならぬ。だから預かっている人と預かってない人との差をどういうふうに見るかなんというのは、そういう問題じゃないんじゃないかと私は思っている。これは論議はいたしませんが、そういうふうに思うんですね。この点は非常に問題点だと思っているんです。そしてこういう今の段階のやり方、私が仕組みを改めたらどうかと言ったこのままのこの仕組みでいきますと、これはせっかくやっておられる保育所の公的性格というのが薄れてくるんじゃないかと心配をいたします。  というのは、これは官庁速報のことしの一月十三日号に出ていたんですが、ショッキングなことを書いてある。「頭もたげる保育産業 手軽さとサービスが売り物 深まる認可施設の危機感」という見出しで「最近、ある雑誌に「キリンビールなどが米国最大手の保育産業と提携して、日本国内で保育園チェーンの展開を検討中」という記事」が戦ったと。「現に、日本国内では既に、認可施設にはないサービスや便利さをセールスポイントにした無認可の保育所が登場。定員割れに悩む認可保育所にとって脅威になろうとしている。」。富山市に本拠を置くという「ちびっこ園」、これは「フランチャイズで急成長」と書いてありますが、今次々と全国に進出をして、東は千葉県から西は岡山まで十都府県、計三十一カ所に保育園チェーンを広げている。この社長というのが言うているんですね。「ちびっこ園」と認可保育所との相違点について、「「認可保育所はあくまで福祉だが、ここはサービスを提供している」と強調する。」、そして「世の中では無認可施設と呼ぶが、自分では無補助施設だと思っている。ちっぽけな金をもらって内容に制限を付けられるなら、補助などもらいたくない。公立は体質的にサービスは無理なんですから福祉の保育をやってもらい、私どもは質の高いサービスを追求します」というようなこういう記事が出ている。私はちょっと驚きました。それで、民間活力論というのはここまで来ているというふうに思うんです。  そこで大臣、まさか公立保育所をこういう方向へ持っていくのがねらいだとは思いませんが、ここまで来ているということを御承知いただいて、これは考え直してみる、見直してみるということが必要ではないんだろうか。見直しの基準ですが、これは、今みたいに税額と保育料とがもうシーソーゲームでちょっと税金が上がったら保育料はどんどん上がります、そのかわりに国の補助はその部分減りますというこんな仕組みというのをもっと緩和しなければいかぬと思うんですね。ですから、例えば、国は措置費なら措置費に五〇%の定率の予算確保をきちんとやってあとの五〇%を例えば応能負担にするというふうなことになれば、うんとこれは保育料というのは緩和されるのではないかと思いますが、こういう五〇%なら五〇%の予算確保というのをきちんとやっていくということが極めて大事だと思いますけれども、こういう点はお考えになっていただけないでしょうか。
  141. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 現在全国で二万二千ほどの保育所がございますが、私ども承知している限り、保育所の施設長さん、保母さん、大変いい保育をしていただいておりますし保育に情熱を持って当たっていただいておると思っております。無認可保育所の問題が先生から御指摘ございましたが、こういった保育所の皆様が保育所としての 本来の役割、それからすばらしい保育内容をしていただけるならばこういった無認可保育所問題というのは私どもは将来的には解消できるものというふうに考えておるわけでございます。私どもは、こういった無認可保育所がそういったいわば企業ベースで行われることに対しまして、何か民間活力を考えていくというような気持ちは全然ございません。  しかしながら、先生御指摘のように、保育料についての一定の国庫負担というものを固定いたしまして保護者の方がどのような所得があってもある程度の公費負担が確実に負担されるというような仕組みはなかなかに国民一般の皆様の御理解を得がたいのではないかと思います。現在の保育所の措置費全体といたしましても相当な規模になっておるわけでございますが、働いているお母様が働いておられる上にある程度の所得がおありになるならばやはり御負担はいただくということが保育所制度を逆な意味で守っていく方向ではないかというふうに考えておるわけでございます。国民一般の皆様の御理解、御支持がないとやはり保育所制度というものは維持できないというふうに私は考えております。
  142. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと時間がないから。ここはよく言いたいところなんですがね。  一挙に変えられないと思いますが、ここまで来たら、例えば何で定員割れが起こるかといったら、保育料が高いから預けたいけれども預けられない、だからベビーホテルにということにあるいは今お読みしましたようなフランチャイズ制のところへ持っていくということになっているわけです。ですから私は保育料の問題についての検討、それから入所基準ですよ。  これは政令で同居の親族とか児童の保護者がおる場合には預からぬといっておりますけれども、それは核家族化で年寄りが一緒に住んでいないというのは随分多いですけれども、近くに祖父母がおるといった場合、その人たちが働いている場合はやむを得ないが、体が悪くてあるいは年齢が七十、七十五になっておってもおるやないかということで入所させないというふうなことまで今起こっているんですよ。それで子供を見られないからどないしようかということになったら、そのお年寄りが体が悪いという診断書でももらってきてくれたら何とかなると、こうなんです。私、おまえいいかげんにせいと言いたい。それは今日の社会ですから六十や六十五の祖父母はみんな働いていますよ。七十過ぎて子供を見いと言われたらどないして見ますねん。育ち盛りの二歳、三歳、走り回るような子供を綱でもつけて見いと言うのかということになりますねん。  だからその辺のところは、これは団体委任のことにもなった事態でもありますから、それぞれの地域の実情に応じてもっと弾力性を持たせるように入所基準なんかやりませんと、営利企業としてやるところは実に簡単にはいれる。しかも金額も幾らも変わらぬ、あるいは安いかもわからぬということになったら、何ぼ孤高を保っていてもこれは発展させられないというところまで来ているというふうに私は思うんです。で、局長おっしゃるように保育担当者は大変な情熱を持ってやっていますよ。安い給料で本当に気の毒なほどの安い給料や待遇でよくぞあれだけやっていただけると思います。そういう保育担当者の待遇の改善にもあるいは子供たちの処遇の改善にも本当に子供を預ける両親たちが安心できるような施策というものを今考えるべきときに来ているんではないか。冒頭に私、曲がり角に来ているんではないかということを申し上げたのはそこなんです。  大臣、これは恐らく全然お考えになっていないことを私ぽんと申し上げたのですが、一遍ひとつ考えていただきたいと思います。御見解を伺って、この問題は終わりたいと思うのです。
  143. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 私も郷里で保育所を経営していらっしゃる方々また保母の皆さん等存じ上げている方が多いわけで、先ほど局長から答弁いたしましたように非常に情熱を持ってやっておることについては感謝もしておりますしよく知っております。  今だんだんお話を承っておりまして、今後女性の社会進出もふえていくでしょうし、保育所の需要といいますか、今以上に保育所に対する要望というのは高まってくると思うわけでございまして、そういう中で現行の保育制度を堅持しながらどうやってサービスの向上を図っていけるか、私も勉強してまいります。
  144. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 じゃちょっと課題を変えます。  歯科保険点数の問題について二、三問お伺いしたい。  歯科診療報酬が、医科や調剤が四月一日から引き上げが行われるのに歯科だけやらないことになったんですね。これが積み残された理由は何ですか。
  145. 下村健

    政府委員下村健君) 歯科につきましては、かねてから中医協におきまして技工問題の解決ということが懸案になって話にもずっと出てまいったわけでございます。前回の六十一年の診療報酬改定の際にこの技工問題またいろいろ議論がございまして、所定点数の範囲内で別に定める、決まった点数の範囲内で技工料を決めるというふうな方向で、これを七月に実施するということで協議を進めるという合意がこれは六十一年の診療報酬改定の一つの絡みとしてできたわけでございますが、実際には七月になりましても関係者の意見が調わず中医協としては事態の推移を見守ってきたという格好になっていたわけでございます。昨年暮れの予算編成時期になりまして診療報酬改定をどうするかという問題が出てまいりましたが、関係者の調整が十分でないというふうなことが中医協でも確認されたということになったわけでございます。  そこでこの問題、前回の改定の際の問題でございますが、どうするかという議論になりまして、技工問題の解決が図られた上で歯科の改定に取り組むべきであるという意見が大勢を占めて、この意見に従いまして今回のような取り扱いにしたということでございます。  厚生省としては関係者の間で合意ができ、中医協の結論が得られ次第速やかに改定が実施できるように努力をいたしたいと存じております。
  146. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、委託技工料について歯科医師会と関係者と話し合いがつかなかったと言うんだけれども診療報酬の点数には委託技工料なんというものはないんだよな。ないでしょう。直接関係のないものを理由にして改定しないというようなことは、これは本当に公正を欠くと思うんですよ。これは直ちにやるべきですよ、こんなもの。その辺はっきりしなかったら、いや話が調いません、関係者の話が調いませんて、そんなこと理由になりますか。点数を決めるのに、これがどうだこうだと意見があったかて今までちゃんと意見聞いて延ばしたりなんか簡単にせぬじゃないですか。そんなあなた、診療報酬にも載ってないような委託技工料というようなそんなもの、まとまらぬからなんというような答えはこれは口実ですよ。  私は、これは時間がないからもうまとめて言いたいと思っているのは、歯科医師と技工士の料金の比率を七対三とかなんとかいってますわな。その比率が妥当かどうかというのも十分検討の必要があると。技工士の方々も現状では大変な困難に逢着している、だから改善しなくちゃならないというところへ来ているということを私どももよく存じております。要は限られた小さなパイですよ。例えば、総義歯をつくるといったらその総義歯をつくるという補綴の小さな金額の配分についてあれこれあれこれ言うておったって、こんなもの片がつかぬのですよ、本当は。しかし、小さければ小さいなりでちゃんとやらなきゃいかぬのと同時に、我が国の歯科診療報酬技術料評価というのは余りにも低いと思うんですよ。これは余り時間ないからゆっくり言えませんけれども、外国と比べてみなさいな。これもよう知ってますでしょう、局長も。これは大臣も御存じだと思うけれども言うてみますと、国際比較見てみますと、例えば総義歯の片方、上あごとか下あごの片方、こ れ日本は一万九千二百三十円、アメリカでは四百ドルで、この調査のときは一九八五年だからドルのもっと高いときですから十万四千円、今やったら六万五千円ぐらいでしょうね。それで西ドイツは四万八千円です。スウェーデンでは四万九百二十円、余りにも低い。余りにも低いものをいろいろと分けているものだから技工士の方も大変、歯科医師にとっても大変ということになるわけなんで、この辺のところのパイを大きくするということが何よりも第一。当たり前に、国際水準に照らして不細工でないようにちゃんとそれは評価をし直すということが第一です。技工士の方は取り分が五割しかないのでせめて七割にしてほしいという御意見もあります。当たり前だと思う。全体の金額が低いんだからそう言うでしょう。しかし歯科医師の方はどうなんやと言うたら、それはあんた、義歯をつくるときには診断も設計もそれを表現する技工指示書もつくらにゃならぬ。できたらちゃんと適合の審査もやらにゃならぬ。この歯科医師としての技術評価、当たり前なんですからね。  こういうことをこの機会に十分検討する必要があると思うんですが、たまたま技工士会と歯科医師会で話がつくやつかぬやということが起こった機会に、国際水準にせめて近づけるように評価のあり方を検討するおつもりはありませんか。
  147. 下村健

    政府委員下村健君) お説が当たっているところもあるわけでございますが、したがって確かに評価が低いというふうな面もあるものですから、前回の診療報酬改定の際に、幾らかでも上げるときにこの問題を解決しようとこういう話が起こってきた、こういう経緯になっているわけでございます。  それから、歯科医療につきましては、ただいまいろいろございましたけれども日本の場合は補綴につきましても比較的制限をしないで給付をしていると、こういう格好になっております。総義歯の例で申しますと、アメリカなどではメディケアでは総義歯は全部給付をしないあるいはドイツとかヨーロッパにおきましても補綴関係については給付率を低くするとかいろんな形で補綴の扱いが異なっておりまして、日本の場合が一番制限が少ないというふうな事情もございます。  したがいまして、それらの問題も含めて歯科医療の問題は議論をしていく必要があるわけでございますが、前に、補綴問題については脱保険というふうな問題もございまして日本の場合は歯科医療保険給付の中に取り入れるものはできるだけ取り入れていこうというふうなことで一遍決着を見たことがございます。まだ実はその方針が生きているわけでございますけれども、改めてそういった歯科の問題を全体的に検討いたしまして、差額問題でありますとかいろんな議論があるわけでございますが、歯科の診病問題についてはいろいろな問題点を含めて検討していく必要があるということはお話しのとおりであろうと思います。
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあ時間がないから詳しく言いませんけれども大臣ね、四月一日にはこれもう間に合いませんから、六月でも七月でもしようがないですから一日も早くとにかく診療報酬の改定はやるべし、そして歯科における技術料評価についてはこれはやはり見直してみるべきです。日本でつくったら入れ歯が片方一万九千円でアメリカだったら十万円。アメリカはそんなえらい違うような上等な歯をつくっているわけでもないでしょう。まあちっとは考えにゃいかぬというふうに思いますから、できるだけ早くやってもらいたいと思いますので、大臣、一言返事を聞きましてこれは終わります。
  149. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 基本的には技術料を重視していく、これは方向として間違いありませんし、そういう方向で私ども努力をしておりますし、これからもいたします。  それから、歯科診療報酬の改定の問題は、整理をいたしますと、これは厚生大臣が決めるわけですけれども中医協の諮問答申というその手続があるわけで、その中医協におきまして六十一年度の診療報酬改定のときの宿題がございます。それは技工料の問題をどう明確化していくかという問題、これは歯科医師会の方で内輪の問題であるから自分たちできちっと解決をする、こういう意見がありましてそれをずっと待っておるわけでございます。そういう経緯があるものですから、去年の暮れの中医協の意見の大半がその解決を待って歯科医師診療報酬の改定をすべきでないかと、こういう多数意見になったためにやむを得ず積み残しになった。で、私は、これは決して積み残しがいいとは思っておりません。また、一般の歯科医師の皆さん方が、本来別の問題であるのにこれが絡んでそれで積み残しになっているのはおかしいというようなことを言われていることもよく承知をいたしておりますけれども、事情はそういうことでございますので、やはり一日も早くこの技工料の問題が、関係者というか、歯科医師会と技工士会の間で解決することがやはりこの問題を動かす大前提になっておりますので、私もその問題について力をおかしして早く解決をまずしたい。その上で中医協におきましてこの歯科診療報酬の改定についてできるだけ早く結論を出していただいて、結果として改定を早くいたしたい、かように考えておりますので、今後しっかりやりますからどうぞひとつしばらくお待ちいただきたいと思います。
  150. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう時間がなくなりましたけれども、最後に、エイズ感染症の血友病患者の救済問題について一言お聞きをしておきたいと思います。  多くを申し上げたいわけですがいろいろと論議をされておりますので、限られた時間ですので簡単にお聞きをしたいんですが、まあ平たく言いまして、血友病という病気になって、そうして厚生省がちゃんと認めた血液製剤で、保険診療報酬の点数にもちゃんと載っているこの血液製剤を使ってエイズに感染をした。これは悲劇ですよ。もし自分だったら大変なことです。こういうことが起こっているという現実、もう細かい内容は省略をいたしますが、これはやはりその製剤をつくることあるいは使用を認めてきた厚生省、政府が責任を負わざるを得ないですよね、実際。だって安心して薬品として使ってきているんだから。そうでしょう。だから、そういう点ではこれは予算委員会で竹下総理も、すぐれて政治の問題だと言われておりますように、私は政府が責任を負わなくちゃならないなと思うんです。  で、血友病の患者団体では、全国へモフィリア友の会ですか、こういう輸入の血液製剤によるエイズの感染を薬害と明確に位置づけている。そして危険な製剤を承認した国、そして供給した製薬各社に対して、医療費負担生活保障、本人が死亡した場合の遺族補償などを求めていくという方針を出しておりますけれども、こういうことに対して国は誠意ある対応をしていかれるのかどうか、これをひとつ聞いておきたい。
  151. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 血友病の患者の方に用いられました凝固因子製剤の中にエイズのウイルスが混入していたということによって感染したということは確かに今おっしゃいましたように大変悲劇的なことで、患者の方のお立場はお気の毒であるということは私どもも十分認識しておるわけでございます。  ただ、このエイズ問題は非常に難しい問題で、アメリカにおきましても当初はどういう病気なのかがわからなかった。それからそういったウイルスなどがだんだんわかってまいりました過程においてこの凝固因子製剤についてもいろいろな改良が加えられてまいったわけでございまして、日本においてもそういった状況を把握いたしまして、アメリカで加熱による凝固因子製剤の開発が指示されたという情報を得て日本でもほぼ同じ時期にその開発の指示をいたしましたが、やはり日本ではどうしても医薬品の副作用があるかどうかという面での安全性の確認ということを欠かすことができないという状況にもございましたので臨床試験を行うということが必要であったわけでございます。そういったことで当時の科学技術の水準に照らしまして最大限の努力を行いつつ、加熱の凝 固因子製剤が普及するようにしてまいったわけでございます。  しかしながら、国としても、結果としてエイズに感染された方々に対して今後どういう対応策をとっていくかということについては現在真剣に検討しておる段階でございまして、今後、私どもとしてもできるだけ検討を進めまして結論をまとめてまいりたいと考えておる次第でございます。
  152. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、もう終わりますけれども、これは薬害とは違うとかあるいは当初はわからなかったとか、それは条件はあるかもわからぬ。しかし、アメリカが加熱し出してから二年数カ月も日本ではそれがおくれているとかいろいろあるわけですわ。だから、そういうことを四の五の言うてもしようがないので、総理が言われているように政治の力で対応すべき段階へ来ていると思うし、そういう問題だと思います。この辺でそういった政府の認識、そして被害者に対する解決をしていくという覚悟のほどを、これは大臣の御見解を伺って終わりたいと思います。
  153. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) エイズ対策の根本はこの病気の蔓延を防ぐこと、これがやはり根本にあるわけで、今五百万とも一千万とも言われるエイズ感染者がおりまして、発病すれば九〇%の死亡率というような非常に怖い病気ですから、しかも治療方法が発見されていない。ですから、これはエイズの蔓延を防ぐということがまず第一。  それを進めていく中で我々が考えていますのは、血液凝固製剤を使ってエイズに感染した人たちが、極めて不可抗力であるわけですからこれは非常に御同情申し上げているわけでもあるし、この方々に対して何らかの措置はしていかなきゃならぬ。ところが、薬害かどうかということになりますとこれはまた副作用があったかどうかということになって、これは両方が幾ら話し合っても議論してもなかなか結論が出ない。そういう話を聞いておられた総理が、そういうことは別として、この血液製剤の関係者でエイズに感染された、患者になられた方々については救済せないかぬ、これは政治そのものの力で対応すべき問題だ、こういうように言われたわけでございまして、私どもも全くそういう考え方でいるわけでございますので、ひとつどういう対策ができるかなということにつきまして今事務当局に検討を命じておるところでございます。  六十三年度の予算につきましては、斎藤前大臣が随分努力をされまして概算要求で要求をいただきまして、幾つかの問題はございますけれどもそれ以上にどういう対策ができるか、これを今検討しておる段階でございます。
  154. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ結構です。
  155. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本件に関する質疑は以上で終了いたします。     ─────────────
  156. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。藤本厚生大臣
  157. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) ただいま議題となりました社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  今後、人口の急速な高齢化、家庭における介護能力の低下、年金制度の成熟等に伴い、福祉サービスに対する国民のニードは確実に増大、多様化するものと思われます。  こうした状況に的確に対応していくためには、公的福祉施策の一層の推進と相まって、民間の創意工夫を生かした多様なサービスを健全に育成する必要があります。  このため、良質の民間サービスに対する社会福祉・医療事業団による低利融資制度を創設することとし、この法律案を提出することとした次第であります。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、社会福祉・医療事業団が、社会福祉事業施設の設置等に必要な資金を貸し付ける対象者として、社会福祉法人のほかに政令で定める者を加えることとしております。  第二に、社会福祉・医療事業団が、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者の居宅において介護を行う事業その他政令で定める事業を行う者に対し、必要な資金を貸し付けることとしております。  なお、この法律の施行期日は、昭和六十三年十月一日としております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  158. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会