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1988-04-20 第112回国会 参議院 国民生活に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         長田 裕二君     理 事                 斎藤栄三郎君                 水谷  力君                 矢野俊比古君                 山口 哲夫君                 高木健太郎君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 井上 吉夫君                 小野 清子君                 大島 友治君                 斎藤 文夫君                 高橋 清孝君                 寺内 弘子君                 中曽根弘文君                 福田 宏一君                 二木 秀夫君                 向山 一人君                 吉川 芳男君                 村沢  牧君                 山本 正和君                 刈田 貞子君                 近藤 忠孝君                 平野  清君    事務局側        第二特別調査室        長        菊池  守君    参考人        国際連合児童基      金駐日代表 ポールイグナチェフ君            (通訳 樋渡 紀子君)        日本生命保険相        互会社企画部基        礎研究所設立準        備室調査役    小林 隆三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国民生活に関する調査  (出生率動向対応に関する件)     ─────────────
  2. 長田裕二

    会長長田裕二君) ただいまから国民生活に関する調査会を開会いたします。  国民生活に関する調査を議題とし、出生率動向対応について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり二人の方々に御出席をいただいております。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本調査会に御出席をいただきましてありがとうございました。  本日は、出生率動向対応について忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、まず最初に二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  なお、本日の通訳樋渡紀子さんにお願いしております。  それでは、まずイグナチェフ参考人にお願いいたします。
  3. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) 会長、御紹介ありがとうございました。  議員皆様、そして私の友人の皆様、本日ここで皆様の前でお話ができることを大変光栄に思っております。私はユニセフスタッフメンバーとして、私の母国カナダ、そして発展途上国、また本部のある国々などで二十年以上このユニセフ仕事をしてまいりました。  本日は、世界におきます児童現状についてのお話をいたしまして、それが日本子供たちとどのように比較できるのかといった点についてもお話ししてまいりたいと思いますし、また人口問題についても少し触れたいと思っております。その後で、日本議員皆様方発展途上国各国議員方々とどのように連絡をとり合い、一緒仕事ができるのかといった点についても御提案させていただきたいと思います。ではベストを尽くしてお話しいたします。  それでは、簡単に子供を取り巻く今日の世界環境についてお話し申し上げたいと思います。  世界の総人口は去年の七月に五十億を超えました。また、十五歳以下の子供人口は十七億となっておりまして、この十七億のうちの八五%が発展途上国に住んでおります。  また、乳児死亡率は、これは日本では一千の出産に対して五・五人でありますけれども、発展途上国におきましてはずっと高くなっておりまして、アフガニスタンでは百八十五となっております。偶然ですけれども、七十年前の日本におきます乳児死亡率は百八十八、すなわち今日の最高とほぼ同じであったということが申し上げられます。  また、平均余命についてでありますけれども、今日日本におきます平均余命は七十七年となっておりまして、世界最高であります。発展途上国におきましては、これはアフリカのシエラレオネなどの三十六年などと非常に低くなっております。日本の百年前におきます平均余命は四十年となっておりました。  次に、大人識字率でありますけれども、日本ではこれはもう実質的に全員が識字であるということが申し上げられます。発展途上国におきましては、例えばアフリカのソマリアなどではこれは男性一八%、女性六%などと低くなっております。  ユニセフの一九八八年世界子供白書、これは皆様のお手元に行っていると思いますけれども、これによりますと、発展途上国子供たちは今日でも静かなる緊急事態に直面している、すなわち、頻繁に起こる感染症病気それから栄養失調などの緊急事態に直面しているということが申し上げられます。この緊急事態のために去年一年だけでも一千三百八十万人の子供たちが亡くなっております。これは、きょう私のお話を二十分かけて行いますけれども、この二十分の間にも五百二十人の子供が死ぬという計算になるのであります。それで、この子供たちが死んだ理由というのは比較的簡単な理由であった、簡単な理由であるがために低コストの手段や十分に情報を受けた親と地域とが存在することによって防ぐことができるような理由であります。  さて、そういった感染症とはどのようなものであったかを簡単に御説明したいと思います。  まず、下痢性疾患ですけれども、この下痢性疾患により五百万の子供たちが亡くなっております。このうち約三百五十万が脱水症状から亡くなっておりますけれども、このような死亡というのは、経口補水療法といいます、今お見せいたしました袋がありますけれども、これを使うことにより、低コストで比較的簡単な方法でこの子供たちを効果的に治療するということも可能だったわけであります。イギリスの医学雑誌ランセット」はこの薬を、恐らくこの一世紀でも最も重要な医学的進歩であったというふうに説明しております。  次に、マラリアにより百万の子供たちが亡くなっております。この悲劇的な損失というのは、もし大人たち親たちがこの子供たち症状に気づき、そして援助を求めることができれば低コストの薬品を使うことによって減らすことができた数字であったわけであります。  はしかにより百九十万の子供たちが亡くなっております。この死亡ワクチンを適切な時期に行うことができさえすれば予防することができた数字であります。  また、急性呼吸器感染症により二百九十万の子供たちが亡くなっております。これには百日ぜきで亡くなった六十万の子供たちも含まれております。この百日ぜき子供たちというのは、DPTワクチンを注射することにより救うことができたものであります。それ以外の呼吸器系疾患に関しましても、コストの低い抗生物質を、もし大人たち親たちが気づき、使うことができれば予防することができたものであります。  また、新生児破傷風により八十万の子供たちが亡くなっておりますけれども、これも妊婦母親予防接種を受けることによって助けることができた数であります。  次に、このような感染症が起こりました理由の幾つかについてお話し申し上げます。  栄養不良がこの一千三百八十万の子供死亡の三分の一近くの原因を占めているということが申し上げられましょう。栄養失調というのは、ただ単に食糧が不足しているという場合だけではなくて、情報不足という場合もあるわけであります。その情報とは、すなわち感染症を予防する方法、また生育を促すために食糧を効果的に使う方法、また親たちが妊娠、母乳育児、また病気の後いかに子供たちに食事を与えるかなどといったことに関する情報を十分に持っている、こういったことになるわけであります。  次の理由ですけれども、これは出産間隔ということであります。今日の子供死亡の四分の一近くが、出産の数が多過ぎる、もしくは間隔が近過ぎるといった原因、また母親が若過ぎる、もしくは高齢過ぎるといった原因から起きております。親になる人たちには、このようなことについて知っていてもらわなければなりません。  次の理由ですけれども、不適切な衛生状態というものが挙げられます。子供たち病気そして死亡の半分以上の場合は不衛生という問題が挙げられるのであります。ですから、地域、コミュニティーに対しては、安全な水の供給、衛生といったものについてよく理解してもらわなければなりません。特に、急速に都市化が起こっているような非常に混雑した地域に対してはこのような情報が必要になるのであります。  さて、ではこのような貴重な子供たちの命をむだに失うというようなことはとめられるものなのかという疑問が出てきます。その答えは、間違いなくできる、イエスであります。それを可能にするために、子供たち生存そして発育のためのさまざまな戦略というのが過去十年の間とられてきました。これは大変な努力をしてさまざまな方法というものがとられ、その方法が発達してきたわけであります。  発展途上国におきましては、より多くの国々がこれから申し上げますような低コスト戦略をとっております。一つ子供に対する予防接種、また経口補水治療によります下痢性脱水症状治療母乳育児の再導入、乳幼児の成長の観察、出産間隔を十分に置くということ、女性識字率を上げるということ、貧しい家庭に対しては食糧の補給を行うということなどであります。  今申し上げた中の一つ予防接種についてお話し申し上げたいと思います。  拡大予防接種計画、EPIと呼ばれているものがWHOそしてユニセフによって世界的にサポートされておりまして、これが公衆衛生の分野におきましてどんどんと大きな成功をおさめております。この計画最初に導入されましたのが十年前のことでありましたけれども、当時、発展途上国圏におきましてこの計画に到達することができた子供はほんの五%にすぎませんでした。今日、発展途上国圏子供の五〇%が、ポリオ、ジフテリア、百日ぜき破傷風予防接種を完全に終えております。去年一年間で二十万近くの子供たちはしかから救うことができましたし、百万以上の子供たちが、はしか、そして新生児破傷風百日ぜきから死ぬことを免れたのであります。  これからの目標ですけれども、現在五〇%でありますけれども、一九九九年までにはこれを七〇%に上げていきたいと考えております。そして、この目標というのはどんどんと達成に向かって近づいております。  子供死亡の数を減らすという話をこれまでしてきたわけでありますけれども、そうすると人口問題に懸念が出てくるというようなお考えを持たれるかもしれません。特に人口増加の問題に関して懸念を持たれるかもしれません。その点について少しお話し申し上げたいと思います。  まず第一点目には、人口増加を行うためには子供生存のための戦略、すなわち母乳生育などの戦略を効果的に行うということが重要になってくるわけであります。この母乳生育を行うということは自然の避妊ということにもなるわけであります。また同時に、出産間隔をあけるということも人口増加を減らすために重要なかぎとなるポイントであります。  二つ目の点ですけれども、親たちにどのようにして子供たちの命を守るかという知識を持たせることにより、彼ら自身の、親自身の生命に対する管理に対する意識というものを高めることもできるようになるわけであります。また、このような情報を親に持ってもらうということが家族計画を受け入れる最初のステップともなるのであります。  また三番目に、乳児死亡率が一千に対して十五以下に減ってきますと、出生数というものが子供死亡率の低下以上に少なくなってくるのであります。この理由というのは複雑でさまざまなものがあるわけでありますけれども、親たちは、きょう生まれた自分子供があしたも生き延びられるということがわかれば産む子供の数を減らすものであります。このようなパターンというのは、日本の近くのアジア国々、特にタイランド、フィリピンなどを含むアジア国々で見られるパターンであります。  皆様にぜひ覚えておいていただきたいのが、発展途上国におきまして将来の安全を約束するものは子供生存である、特に男の子供たち生存であるということであります。死亡率出生率の間の関連についてポピュレーションカウンシル、人口委員会会長でありますジョージ・ザイデンスタイン氏が話しておられますので、それをちょっとここで引用したいと思います。それはすなわち、近代化された社会において出生率乳幼児死亡率を上回ったという例はいまだかつてないということです。今お話しいたしました原則を語るに当たって日本が恐らく最もよい例となるのではないかと思います。  一九四〇年の日本におきます乳児死亡の数は一千の出産に対して九十でありました。これは今日の発展途上国死亡率よりも高いものであったわけであります。今日これは五・五人となっておりまして、日本はフィンランドとスウェーデンと並びまして世界でも最も乳児死亡率の低い国となっております。また同様に日本におきましては出生率も大幅に下がってきております。一九四〇年、一組の親に対する子供の数というのは平均して四人でありました。これが一九六〇年には二人に減り、今日は一・八人となっております。つまり、人口動態的な見方をいたしますと、日本の親は親の数の子供も生み出していない。二人の親に対して二人以下の子供の数であるということが申し上げられるわけであります。  疑いもなく、日本がこの人口管理成功した理由というのは、子供たちを守るために意識的にさまざまな努力を行ってきたということ、また健康のプロ、政府指導者政策決定者により親たち教育をされてきたということであります。例えば、生活改善員という人たち日本におりますけれども、この人たちが健康と栄養に関する教育を親に対してしたわけであります。また、すべての妊婦母親母子手帳を受け取ります。これによりまして母親子供のさまざまな統計的な数字というものを、その記録を追跡することができるわけであります。このような集団による努力によりまして、日本親たちはどのようにして自分子供たちの命を守ったらいいのかという知識を持つことができるようになったのであります。  現在、ユニセフ発展途上国で提唱しております子供たちの命を守るためのさまざまな戦略というのがどのような効果を得るかということを考えるに当たりまして、日本が最もよい例となるのであります。  次のお話に入りたいと思います。  現在、世界規模で起きております経済不況はすべての国々影響を与えているのであります。ブラックマンデーと呼ばれております株式の大暴落は先進国にもまだ影響を与えておりますけれども、この不況による発展途上国への影響というのはさらに大きなものであります。ユニセフといたしましては、一九七〇年代、そして八〇年代初期に大変な努力をして行ってきた成功が特にアフリカなどで失われてしまうのではないかということ、これを懸念しているのであります。多くの発展途上国において行われております調整計画というものは国際的なシステムによって問題が起きているわけであります。このような調整計画は、タンザニアのニエレレ大統領が申されましたように、国の負債を払うために子供たちを飢えさせなければいけないのか、この言葉でうまくあらわされるのではないかと思います。このニエレレ大統領がおっしゃっておられましたのは、健康、教育、そして社会的なサービスなどの社会的なオーバーヘッドというものが、ほかのものに比べてまずこういった点がカットされており、また非常にそれも少なくされてしまうということであります。  ユニセフ二つ懸念を持っております。まず最初に、我々は社会投資というものが一つの国の将来にとってどれだけ重要かということを強く訴えていかなければなりません。そしてこのさまざまな国がこういった社会的な要素というものを削減しないように訴えていかなければなりません。  これに関しまして、IMFのマネージングディレクターでありましたジャック・ド・ラロジエール氏の言葉を引用したいと思います。一九八五年、彼はECOSOCに対して次のように言ったわけであります。社会における最も弱いグループへの健康、栄養教育的な必要条件に対して注意を払う調整というのは人間状況生活状況というものをよく守る。それを無視した調整よりもさらに人間生活環境というものを保護することになるのである。これはすなわち、各国の権威を持った人たちというのは、自分たちの国の財政的な負債だけではなく、どのように生活を守るかということにも十分注意を払わなければならないのだということになるのであります。  二点目に、ユニセフ発展途上国社会的なセクター、特に健康、教育社会サービスなどを確実なものにしなければならない。そしてそれらをもっと効率よく、効果的なものにしていかなければならないのだということであります。それを成功させるためには、これまでにお話ししてきましたような低コスト子供生存のためのさまざまな戦略というものがとられるべきである、それが一つのやり方であるというふうに考えております。  日本議員方々は、個人的にもそしてグループとしてもこれからも日本だけではなく発展途上国子供たちのよい生活環境のために影響を与えていってくださるものと確信しております。議員方たち子供たちの最もよい弁護者となることができるのであります。  まず、日本におきます子供に対するケアというものは高い水準を持っているわけでありますけれども、この高い水準をこれからも維持していかなければなりません。子供環境というものは変化するわけでありますけれども、これに対応することができるものでなければなりません。新たなさまざまな挑戦、より複雑化した挑戦というものが子供たちに対して起きてくるわけでありますけれども、我々は十分にベースを保って、そして日本子供たち水準というものが世界最高であり続けるということを確実にしていかなければならないのであります。  議員方々は、発展途上国における各国議員方々とのつながりを発展させ、そして子供たち生存発育のために挑戦してくださると考えております。多くの方々子供たちのために活発に努力を行っておられます。特に人口部門、ASEANそしてSAARC地域におきます人口と健康、衛生の点でイニシアチブをとっておられるわけであります。議員方々興味を持たれるということは、その地域でのさまざまな活動を行っている人たちにとっても勇気を与えるようなものになると思います。  また、日本ODAの金額を非常に急速にふやしているわけでありまして、一九八八年にはアメリカを超えて世界最大寄附国となったわけであります。日本政府はまたODAの質を高めるための努力も始められております。これはすなわち、援助の内容そして実施についてより多くの考慮を払ってくださるようになったということであります。ですから、議員方々にもこのような社会的セクターに対するインプットをよりよい適切なものにしていってくださることを期待しているわけであります。  ユニセフは過去数十年にわたりまして社会的セクターへのプログラムというものを発展途上国で行いまして、その経験を持っているわけであります。ですから、この援助に関しまして日本の担当の関係の方々と協力をしていきたいと考えているのであります。  私たちはもうすぐに一九八九年度のための計画を始めなければなりません。これは二十世紀最後の十年の前の晩、イブと言ってもいい年になるかと思います。そしてこの最後の十年間で何をするかによって次の二十一世紀子供たちがどのようになっていくかという道づくりがなされるのであります。  また、日本におきますユニセフ活動に関しまして一九八九年というのは象徴的な年になります。四十年前、一九四九年、このとき日本はまだ戦後から立ち直ろうとしていた時代でありまして、子供たちはまだ飢えており、十分な洋服もまた医療の注意も払われていませんでした。この時期、ユニセフ日本子供たちを助ける努力をしたわけであります。その当時百五十万の子供たちユニセフによって助けられたわけでありますけれども、彼らが今や日本がなし得た経済的な奇跡の中での最も大きな力となったのであります。日本は二十一世紀に入りますとこの子供たちというのが主導的な指導者となっていくわけであります。  また、一九八九年というのは、一九七九年の国際児童年からの十周年に当たります。一九七九年には日本政府、そして日本の人々がユニセフを通して発展途上国子供たちを助けるための大変な努力をしてくださいました。ユニセフに対する寄附というものをどんどんふやしてくださったわけであります。これと同じようなことをもう一度繰り返すことはできないのだろうかと私は考えているわけでございます。  会長そして皆様、きょうここで皆様の前でお話できる機会を得ましたことは大変な栄誉でございました。皆様方がこの会議出席なさっているということは皆様日本子供たち現状について深い関心を寄せられているからだと確信しておりますけれども、それと同時に、世界発展途上国で助けを心から必要としている子供たち生活状況を助けるための興味皆様方がぜひ示していただけることを期待しております。  きょうは大変ありがとうございました。(拍手)
  4. 長田裕二

    会長長田裕二君) イグナチェフ参考人、有意義なお話をありがとうございました。  次に、小林参考人にお願いいたします。
  5. 小林隆三

    参考人小林隆三君) 今、御紹介がございました日本生命小林でございます。  お手元資料に基づきまして、若干高齢化に関する諸問題についてお聞き賜りたいと思います。  まず最初に、若干PRめいた形になりますが、日生基礎研究所といいますのは、実は私どもこの七月で日本生命が創業百周年を迎えるわけでございまして、その記念事業一つといたしまして研究所をつくるものでございます。経済調査金融調査都市開発生活関連という四つの部門から構成しておりまして、実は私はその一番最後生活関連部門を担当するという形になってございます。  それでは、早速本論に入りたいと思います。お手元資料でございますが、かなりコンパクトになっておりますので、若干お見苦しい点があるかと思いますが、お許しを願いたいと思います。  簡単に申し上げますと、まず左の真ん中あたりですが、ここで高齢化スピードということでの国際比較がございます。御承知のように日本高齢化スピードというのは、全人口の六十五歳以上比率というのが七%から一四%になるのにアメリカが七十五年かかるのに日本では二十五年という非常にハイスピード状況になっております。それが一点でございます。  それから二番目に、ちょうど真ん中あたりでございますが、「六十五才以上世帯の推移」、それとその真下でございますが、「老後に一緒に住みたい人」ということで、「夫だけと」とする人が六七%、こういう数字が出てございまして、これからどんどん高齢者単独世帯あるいは夫婦のみの世帯が増加する、こういうことになろうかと思われます。  それから一番右下でございますが、高学歴化、それから子供数の減少等を背景にいたしまして女性社会進出というのが急速に進行いたしておりまして、こういうことから、後ほどまた述べさせていただきますが、寝たきりの場合の介護の問題、こういうことに大きな関連が出てまいります。  参考までに、次のページの右上でございますが、ここに「寝たきりになった場合に介護を頼む人」ということで回答者として「全体、男、女」がございますが、男性の場合、配偶者に頼るのが六八・八%ということで七割近い人が妻に頼っておる。こういう状況からいたしますと、先ほど申し上げました女子の就業化の問題というのがかなりこの辺に大きな影響を及ぼしてくるであろう、こういうことがおわかりいただけるんじゃなかろうかな、こういうふうに思っております。  それから同じく二ページ目に入りまして、左上の方でございますが、老後生活の不安ということでの調査結果がございまして、一番上を見ていただきますと、「健康がすぐれないこと」が五七・二%、それから「経済的に不安定なこと」が二九・四%、こういうことで、結局老後生活の不安ということを考えますと、健康とお金の問題というふうに言っても過言ではないと思います。  それからさらに、その下でございますが、年齢別の悩みですとかあるいは心配事の有無、こういう調査がございますが、「健康がすぐれない」ということでの悩みというのはこれは年を増すごとにふえておりますので、これは当然といえば当然かと思いますが、若干気になりますのはその右の方の「経済的に不安定」、こういうことでございますが、六十歳から六十四歳、比較的初期の老年期といいますか、ここでの不安というのが三五・〇%と非常に多いわけです。逆に七十五歳以上になりますと一六・四%、こういう形で非常に数字が小さくなっております。ということで、何かやはりこの六十歳から六十四歳の老年の初期層において支出面での見通しがどうもつきにくい、こういうことからの不安が出ておるんじゃなかろうかな、こういうふうに思っております。  それから次に、ちょうど右の方の真ん中あたりでございますが、「子供からの経済的援助についての意見」と「財産を子供に残すことについての意見」、こういう表がございますが、まず老後の経済的安定の確保という面からしますと、自分自身の責任と考えておる人が、その「反対」というところで五九・四という数字がございますが、結局自分自身の責任だという人が六割いらっしゃるという数字でございます。それから子供には財産を残す必要なし、こういうふうに考えておる人が四九・九%、半分ぐらいの人がそういうふうに思っておられる。このような数字が出てございます。  等々ざっと数字を御説明させていただきましたが、さらに進みまして、三番目の社会保障と医療保障の現状につきましてはちょっと時間の関係で割愛させていただきまして、続きまして高齢者と健康の問題に入らせていただきます。  高齢者の三人に二人は元気であるという数字が出ておりまして、高齢者といえばどうも寝たきり等という暗いイメージをどうしても我々は想像するわけですが、五十九年の老人実態調査によりますと、みずからの健康状態を健康もしくは普通だというふうに答えた人が六十歳から六十四歳で七九%、それから六十五歳から六十九歳で六九%というふうに、大体三人に二人は元気であるというふうな数字が出ております。しかし、後ほどまた述べますが、どうもやはりメンタルヘルス、ここが高齢化を考えていく場合に重要な課題になるのではなかろうかというふうに考えております。すなわち仲間がいない、こういうことからメンタル面への影響がかなり大きなテーマとして出てくるのではなかろうかというふうに考えてございます。これは後ほどまた高齢者の組織化の問題とあわせてお話をしたいというふうに思っております。  ここで、高齢者と健康の問題を考えます場合にたまたまいい資料がございますので、御披露させていただきたいと思います。慶応ビジネススクールで日本アメリカのビジネスマンの健康観についての比較をした数字がございますので、御報告させていただきたいと思います。  日本アメリカのビジネスマンの、あなたは健康を維持増進していくためにどのような方法をとっておりますかという調査をした結果でございますが、日本のビジネスマンが一位、二位、三位と挙げました項目と、アメリカのビジネスマンが一位、二位、三位と挙げました項目を皆様方はいかほどに御想像されますでしょうか。いかがでございますか。実は、申し上げますと、日本のビジネスマンは健康対策の方法としてまず第一位がゴルフとテニス、二番目が食事に留意、それから三番目が健康診断でございます。これに対しましてアメリカのビジネスマンは一位がエクササイズ、二位がダイエット、それから三位がビタミン摂取ということでございます。一位を並べますと、日本の場合はゴルフ、テニス、それからアメリカの場合がエクササイズ。  エクササイズというのは、ここには小野清子先生がいらっしゃいますので、説明は非常に不足かと思いますが、結局自分自身で体を鍛えるということがエクササイズでございます。集団じゃなしに自分自身が意識して自分の健康づくりをしていくということ。ですから、アメリカでよく見られますように、マシーンに向かっていろいろ自分自身がトレーニングするとか、ジョギングなんかも一人でいろいろ自分自身の健康づくりをしていく、これがエクササイズでございます。  日本の場合はゴルフですとかテニスということで、これは私どもも時々休みの日にやるんですが、会社の同僚だとかそれから部長だとか課長だとか係長だとか、どうも役名を使いながらどちらかというと自分の健康維持管理よりは何かつき合い上のそういう形でのゴルフだとかテニスという形になっておる場合が多いんじゃなかろうかというようなことで、日本アメリカのそういう健康づくりという点を考えますと、アメリカの場合は非常に積極的であるのに対して、日本はどちらかというと消極的といいますか、みずからというよりはやや他力本願的な感じがいたしております。  実は、一昨年にアメリカへ参りまして向こうの健康産業について若干見てきたわけですが、その中で一つは、レジャーワールドというのがロサンゼルスから大体車で一時間ぐらいのところにあるんですが、そこに老人のタウンがございまして、やはり老人がエアロバイクをこいだりあるいは水泳をしたりということで、非常に熱心にみずからの体を鍛えておられるのです。  一方、日本を見ますと、これは非常に極端な言い方かもわかりませんが、例えばカイロプラクティックへ行きますと、何かぶら下がり器にぶら下がって毎日二十分、三十分、そういう医療施設といいますか、そういうところでのトレーニングというよりは、どちらかというと治療というか、そういう形のものがかなり目につくわけでございます。ですから、やはりもう少し若いころからそういう健康についての準備といいますか、何かそういうものを編み出すような工夫というのが必要じゃなかろうかな、こういうふうに思っております。もっと新しい健康観を国民が持つようなそういう工夫というのが一つは必要じゃなかろうかなと。  それから一方では、やはり正しい健康情報といいますか、例えばいろんな食事関係についての情報がございますが、もう少し整理された形での情報というのが国民に伝わるような仕掛けづくりというのが必要じゃなかろうかなと。これがひいては先ほどから申し上げております老後の健康問題、あるいはそういう運動習慣というものにつながっていくんじゃなかろうかなというふうに思っております。  以上、ざっと簡単に問題提起をいたしましたが、それでは高齢化問題への対応というところに参りたいと思います。  高齢化問題への対応では四つの観点から御報告申し上げたいというふうに思っております。  第一番目は健康の問題でございます。第二番目が社会参加の問題でございます。第三番目が自立できる生活設計の基盤づくり。四番目が最近の動きでございますシルバーサービス振興会という新しい団体の動きにつきまして御報告申し上げたいと思います。  それで、まず第一番目の健康の問題でございますが、先ほど申し上げましたように仲間づくり、日本人は特に一人きりになることについて非常に弱いという側面がございますので、そういう意味での仲間づくりというのが非常に重要になってくるんじゃなかろうかな、こういうふうに思っております。したがいまして、会員制クラブ、従来のああいう老人クラブ、どちらかというとお仕着せのそういうクラブではなしに、本人のニーズに合った非常に選択肢の多い特典を持つようなものが必要じゃなかろうかなというふうに思っております。  しかも、例えばサラリーマンですと、リタイアしてからそういう新しい地域との接触を持つんじゃなしに、リタイア前からそういう地域の人との接触を持つような形のものというのが望まれるんじゃなかろうかというふうに思っております。  アメリカに米国退職者協会というのがございまして、これは三千万人近いシルバーの組織化を図ってございます。旅行サービスですとかあるいは財産運用プログラムですとか、大体二十近くの項目を持ちました特典サービスというのをひっ提げております。  最近日本でも、これは昨年の十月に埼玉県でシルバーサービス情報公社という高齢者を対象にした組織化が図られております。わずか半年の間に現在で三万八千人以上の会員が確保されております。埼玉県は御承知のようにサラリーマンの方々を中心にした非常に新興住宅街として地域とのつながりを高齢者の皆さん方は非常に意識されておって、そういうところから三万八千人という方が早くも会員になられておる、こういう状況でございます。そういうことで、これから先やはり地域地域単位のこういう組織化の問題というのが非常に重要になってくるんじゃなかろうかなというふうに思っております。  それから次に、二番目の社会参加の問題でございますが、実は私の持論なんですが、シルバーを考えます場合に三つのKというのを頭に浮かべておりまして、健康と心、ハートでございますね、それからお金、三つのK、健康、心、お金。今健康の問題を述べさせていただきました。次が心の問題ということで、生きがいにつながるような社会参加、こういうことになろうかと思います。  これも私の持論でございますが、日本人の生きがいというのは、ただ老後遊び三昧にふけるというのじゃなしに、一本のしっかりした仕事、こういうものがあって、その上に二つか三つぐらいの趣味があるというのが一番理想じゃなかろうかなというふうに思っております。仕事といいますのは、これは何も職業人である必要はございませんで、あるいはボランティアでもいいでしょうし、自分のきちっとした、しっかりとした一本のそういう意味の仕事があって、プラス二つか三つの趣味を持ち合わせる、これが老後の一番幸せでやはり生きがいにつながっていくんじゃなかろうかというふうに思っております。  例えば、仕事という問題を考えました場合に、これから在宅をベースにした仕事というのが一例として挙げられるんじゃなかろうかというふうに思っております。最近ワープロですとかあるいはパソコンの教育が非常にシルバー層の間で関心が高まっておりますので、こういうものを推進していく、そうした暁には実際に御家庭にいらっしゃりながら仕事ができる、こういうことが可能になってくるんじゃなかろうかというふうに思っております。  そういう意味では、住居というのは山奥の村ではだめでございまして、都会にまず居を構えるというのが前提になるんじゃなかろうかというふうに思っております。やはり生きがいというものを感ずるのは、赤ちょうちんですとかあるいはネオンですとか、あるいはたまには美術を見るとか、何かそういういろんな変化がないことには生きる喜びといいますか、そういうものにもつながってこないというふうに思います。最近三世代混合型の住居というのがいろいろ世間では取りざたされておりますが、そういう意味では、やはり何か都会に立体的な形でそういう老人用の住居をつくるというようなことで先ほどから申し上げている生きがいのための社会参加ができないだろうかというふうなことを思っております。  それから次に、三番目の自立できる生活設計づくりの問題に入りたいと思います。ここで、要するに老後における費用の問題というのを考えてみたいと思います。  若干見にくいかと思いますが、まずベースになりますのが日常生活費、それから少し年老いてきますと医療費の問題というのが出てまいります。それから、どんどん高齢が進みまして最後の方には介護の問題というのが出てまいります。これは現在六十五歳以上で発生率が四%ないし五%というふうに言われておりますが、いずれにいたしましても、やはり将来自分が要介護の状態にならないとは限らないわけでございまして、そういう意味におきまして介護費の問題というのが出てまいります。  それで、この三つの費用、これが要するに老後のベースになるものでございまして、まず日常生活費、これは御承知のようにリタイア前の御自身生活をひっ提げてまいるわけでございますので、そういう意味では、現在平均が夫婦二人で月当たり大体二十二万というふうに言われておりますが、これは読める費用ということになっております。  それから、その上の医療費の問題でございますが、これはサラリーマンの場合を例にとりますと、在職中は本人負担部分というのが一割ございまして、それからリタイアいたしますと国民健康保険の退職者医療というのがございますので、本人負担部分が二割になります。それから七十歳になりますと老人医療の扱いになりますので、ですから、定年をお迎えになってこの間というのが本人負担が二割、これまでが一割で、七十歳以降になりますと、老人医療ですから若干一部定額負担部分がございますが、かなり軽減されるということになります。ですから、これも七十歳以降になりますと定額方式ですから、かなり読める世界になってくるわけです。  最後は介護費の問題になります。これは先ほど申し上げましたように、現在時点では大体四%ないし五%が六十五歳以上の発生率というふうになっておりますが、これが非常に読みにくい、こういうことでございます。したがいまして、先ほどの二枚目のところに「経済的に不安定」ということで、左の上から二番目の数字でございますが、六十歳から六十四歳、この比較的老年の若い層での不安というのが三五%という数字が出ております。七十五歳以上になりますと一六・四%、こういうことで徐々に数字が下がるというお話を申し上げたかと思いますが、結局この介護費というこのあたりの数字がやはり非常に不安材料として出てくるのではなかろうか、こんなふうに思っておるわけでございます。  そういう意味で、これへの対応策といたしまして、介護保険といいますか介護のための保険システムというのが必要になってくるわけでございます。これは公的な保険システム、さらに民間のシステム、この両方があろうかと思いますが、これが一つございます。それからもう一つは保険ですとか医療・福祉サービスの充実、こういう問題が一方であろうかと思います。  したがいまして、最近非常に言われております在宅サービスの促進でございますね、家庭内の介護の充実の問題ですとか、デイサービスあるいはショートステイサービスの普及の問題ですとか、ボランティア活動の活用ですとか、こういったことで公的なサービス、さらには民間のサービスをまぜたような形の在宅サービスの促進というのがやはり一つの大きな問題になってくるのではなかろうかというふうに考えてございます。  それから、ファイナンスの問題につきましては、また後ほど御質問等が出てまいるようでございましたら御説明させていただきますが、ちょっと割愛させていただきます。  次に、四番目のシルバーサービス振興会のことにつきまして若干触れさせていただきたいと思います。  けさの読売新聞ですかにシルバーサービス振興会の記事が出ておりましたので、あるいはごらんになった方がいらっしゃるかと思いますが、これは厚生省と民間の企業が一体となりまして昨年の三月につくった団体でございまして、先ほど来申し上げておりますように、高齢化が進む中で福祉サービス面を考えた場合に、やはり高齢者のニーズが非常に増大してしかも多様化する、こういう中にあるわけですが、その中で公的施策をもっと推進するべきだと思います。ですけれども、公的サービスだけでは量的にも質的にもやはり限界があるのではなかろうか、こんなふうに思っております。  現状を見てみますと、金があっても要するに欲しいサービスがなかなかない、自由なニードに対応する多様な商品、サービスの提供が求められておる、こういうような現状でございます。このようなことから、シルバーサービス分野に多数の、しかも多様な形での企業の参入が既に始まりつつございます。しかし、シルバーサービスというのは御承知のようにまだ揺籃期でございまして、したがいまして正しい現状認識のもとに動向を見きわめる必要があろうかと思います。  そこで、民間企業といいますのは真っ正面からこのシルバーサービスに取り組みまして、正しい役割を果たすことにより国民の理解を得よう、こういう趣旨でこの振興会がつくられたわけでございます。  最近の振興会の動きを申し上げますと、先ほど来申し上げておりますように正しい役割を果たすという、こういうことからみずから倫理綱領を作成いたしまして、自主的な品質、サービス基準を定めて、その基準をクリアする企業にはシルバーマーク、これはJISマーク風のものかと思いますが、シルバーマークを交付する、こういう動きを最近しております。  結論を申し上げますと、やはり公的施策と創造性あるいは効率性を持つ民間サービスとがお互いの役割分担を果たすことがこれからの高齢化対応の核といいますか、コアになるものと私自身は確信しておるわけでございまして、こういうシルバーサービス振興会というのがこれからどんどん所期の活動を続けていくことを期待してやまない次第でございます。  以上、非常に時間の関係ではしょりましたので不十分な点も多々あったかと思いますが、私の御報告とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 長田裕二

    会長長田裕二君) まことに有意義な御意見をありがとうございました。  以上でお二人の参考人からの意見聴取は終わりました。  これより両参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は会長の許可を得て順次御発言を願います。
  7. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 まず、イグナチェフ参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に、大変ユニセフ活動に御尽力されていらっしゃることに心から敬意を表したいと思います。  それで、いろいろとお話をお伺いさせていただきましたけれども、発展途上国で今緊急に必要としている問題は一体具体的に何なんでしょうか。その辺についてお考えをぜひお聞かせいただきたいと思うわけです。それと関連いたしまして、具体的にユニセフ日本政府あるいは民間団体に対して何を今求めていらっしゃるのか、なるべく具体的に教えていただきたい。まずそれが第一点です。
  8. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) 今、非常に重要な二つの問題点に関する御質問がありましたので、それについてお答え申し上げたいと思います。  まず、子供たちを助けるためには発展途上国各国の国内におけるみずからの努力というものが非常に重要であるということを強調したいと思います。ユニセフがしておりますのは、そのような各国努力をお手伝いするということであって、各国の国内での努力がまず何よりも重点を置いて考えられなければなりません。  発展途上国におきまして子供がどのようなことを必要としているかということについてですけれども、これは日本日本政府日本子供たちに対して与えていると同じようなものを発展途上国子供たちも必要としているのであります。子供の健康、きれいな水の供給、衛生、そして栄養に関する知識、また地域をベースにした家族へのさまざまなサービス、また公式な形、非公式な形でのさまざまな教育、特に女性識字率を上げなければいけないということ、また、これらのさまざまなプログラムづくりに対するサポートを行うということ、こういったことを発展途上国の非常に多くの国々がまだ緊急に必要としておりまして、ユニセフはこのようなことを可能にするようにお手伝いをするわけであります。  それから去年、一九八七年にユニセフ日本政府から受け取りました基金額が、これはドルでしか持っておりませんけれども、一千九百六十二万ドルでありました。また、NGO、非政府民間団体からユニセフがいただきました寄附金が一千四十六万三千ドルでありました。つまり、一九八七年にユニセフ日本から民間、公共合わせまして受け取りました寄附金の合計額が三千八万四千ドルであったわけであります。これは一九八七年にユニセフが受け取りました寄附金の額としては六番目に大きいものでありました。  それから最後の点になりますけれども、日本から国連全体組織へのODAの金額ですけれども、これは国連全体に関しましては二番目に大きな寄附をいただいているわけであります。またUNFPA、国連人口活動基金に関しましては二番目もしくは三番目に大きな援助をいただいているわけであります。UNDPに関しましてはこれは六番目に大きな金額援助をいただいております。また、ユニセフに対しては七番目に大きなものをいただいているわけであります。  私の希望といたしましては、これからも日本政府からの援助がより多くふえていくということ、ユニセフだけではなくて国連関連機関、さまざまな機関に対する援助がこれからも効果的にふえていってほしいというのが私の希望であります。
  9. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ユニセフに対する物資の調達額では日本が第一位というふうに出ています。それから拠出金の方も今お話があったように世界各国に比べると非常に高い、そんなふうにも言われているわけですが、反面、ユニセフが物資の調達を日本からしているものは日本が拠出している金額以上に非常に大きいものもあるわけでして、そういう点からユニセフとしてどの程度の拠出金というものを日本政府に対してお考えになっていらっしゃるのか、その辺のことをできれば率直に聞かせていただきたいものだなというふうに思います。と同時に、ユニセフとして今抱えている一番の悩みといいますか、課題は何なんでしょうか。
  10. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) 去年、一九八七年にユニセフ日本で調達いたしましたさまざまな機器、資材、これが米ドルで三千八百二十万ドル、日本円に直しますと五十六億円のものでございました。先ほど日本からいただきました寄附が合計いたしまして三千八万四千ドルであったと申し上げましたけれども、これは私どもの方から日本にお支払いした金額がユニセフの方にいただいた金額よりも大きかったということを示すものであります。  次に、大体どのぐらいの金額を希望しているのかという御質問がございました。こういうことは非常に危険な御質問でございまして、私どもとしてはできるだけ多くいただいた方がありがたいわけでございます。私の意見を正直にずばりと申し上げたいと思います。  まず、一九七九年、十年前のことですけれども、このときが日本からユニセフに対する寄附金の額が非常にふえた最後の年であったわけであります。この年には二百八十万から四百五十万ドルと実に七二%の寄附金の増加が見られました。  それでは、今何を希望しているかということを正直に私の夢ということでお話し申し上げたいと思います。これは正式な要請ではありませんので、正直な意見というものをここで申し上げたいと考えているわけでありますけれども、八九年にはジェネラルリソースへの基本的なレベルで寄附金を二倍にしていただければと思います。こうなりますと、日本からの金額というのがカナダ、ノルウェー、フィンランドを超えまして、スウェーデン、イタリア、アメリカに次いで四番目に大きな寄附国となるわけでありますので、倍になればというととを期待しております。ただ、これはあくまでも私の個人的な意見としてお聞きください。  それから最後に、ユニセフ日本にまず一番何を期待しているかという御質問であったかと思いますけれども、これは、もちろんユニセフに対する財政的な協力をいただけることも期待しているわけではありますけれども、それよりも何よりもまずODAを使っての二国間協力というものを日本から発展途上各国へしていただきたいと考えるわけであります。さまざまな物資、そしてサポートというものが発展途上国子供のために提供されなければなりません。そのために、ユニセフといたしましても経験と知識を持って協力を惜しまないつもりではございますけれども、我々は他国との国際的な活動を行うものであり、一番効果的にこういった活動が行われるのは二国間の、皆様方とそして各国政府方たちとを通じてが最もよく行われることではないかと思いますので、二国間協力というものを皆様にお願いしたいわけであります。
  11. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 国連の段階で人口問題の研究というのはどの程度進んでいるものなのか、もし御存じでしたらぜひお聞かせいただきたいと思います。また、発展途上国では大変出生率が高いわけですけれども、そういう問題について非常に私どもとしては不安もあるわけですけれども、何かお話によりますと、相当一生懸命に人口出生率の問題については取り組んでいらっしゃるというお話はありますけれども、どの程度やられていらっしゃるのか、もう少し詳しく聞かせていただければと思うのです。
  12. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) 人口の問題というのは非常に多くの国連の機関で扱われております。    〔会長退席、理事斎藤栄三郎君着席〕 その中でも一番重要になってきますのがUNFPA、国連人口活動基金でございます。ここで人口動態学に関するさまざまな調査も行われておりますし、人口管理、抑制のために必要な行動というものもとられているわけであります。  また、ほかにもこのUNFPAと非常に密接に活動を行っているところがございまして、ユニセフももちろんその一つでございます。ユニセフはMCHプログラムと呼ばれております母親子供のための予防接種などを含めたプログラムを共通して持っております。    〔理事斎藤栄三郎君退席、会長着席〕 この考え方といたしましては、健康な女の子供をつくることによってその子供が健康な母親になり、そしてその子供がまた生存力のある強い子供になっていく。すなわち、子供生存人口管理人口プログラムの第一歩であるという考え方からこのようなプログラムがつくられているわけであります。また、ほかにもUNDPなどが人口抑制に関する技術的なサポートをしておりますし、国連のさまざまな統計担当者も統計をとるに当たって人口問題にかかわっているわけであります。また、最も人口にかかわりの深いところとしてユネスコが取り組んでおります女性識字率を上げるということもあります。  最後にまとめて申し上げますと、国連のさまざまな機関で人間にかかわる仕事をしているところは多かれ少なかれ何らかの形で人口もしくは人口抑制と取り組んでいるということが申し上げられると思います。
  13. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 発展途上国で随分人口問題に取り組んでいらっしゃるというお話が先ほどありましたけれども、具体的にどの程度進んでいるものなのか、もう少し説明を加えていただければと思います。
  14. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) その御質問に関しましては、統計上の数字ではなくて一般的な答えということでお答えさせていただきたいと思います。  アジア地域を見てみますと、ここにおきます現在の子供人口というのは非常に高いものがあります。特に、中国、インド、バングラデシュ、パキスタンなどにおきまして子供の数というのは非常に多くなっているわけであります。しかしながら、各国におきましてはさまざまなプログラムがあり、そして人口抑制のための管理というものもなされているわけであります。特に中国におきましては人口増加に対して奇跡的な変化が見られております。また、インドの場合ですと、これはちょっと州によって状況は違った状態にありまして、例えばケララ州などでは、ここは女性識字率も高く、政策にかかわる女性の数も多いところですので、ここにおきます人口増加の抑制というものは非常に目覚ましい成果を見せております。バングラデシュにおきましては、ある程度の結果は見えているものの、実際の大きな数字としての変化はまだ見られておりません。パキスタンに関しましては状況は同じでございます。  アジア状況は今申し上げたとおりでありますけれども、アフリカにおきます人口増加というのはアジアよりもずっと大きなものとなっております。これは先ほどもお話しいたしましたようなさまざまな困難な状況があり、そして女性の文盲率が高い、そして家族計画に関する教育というものが行き届かない、このような問題があるわけであります。  発展途上国各国でさまざまな努力が行われております。アジアでは、現在非常に子供の数が多いものが、中国などを例としまして大変状況がよくなっているということが申し上げられます。ただ、今申しましたように、アフリカの方が非常に難しいということが申し上げられます。
  15. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 最後に、二十一世紀末には地球の人口というのは約百億人に到達するというふうに言われているわけですけれども、世界人口規模について伺ってみたいと思うのですが、食糧の問題やそのほかのいろいろな資源の問題、それから森林破壊など自然保護の問題、いろんな問題があるんですけれども、そういう面も加味しながら、世界人口規模、適正人口規模と言った方がいいんでしょうか、そういうことについて、もしお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  16. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) 今の御質問にお答えする前に、先ほどのお答えに戻らせていただきまして、人口増加率に関する具体的な数字をちょっと見ていただきたいと思います。これは皆さん方にお配りいたしました世界子供白書の中の表5に載っているものでございます。五十五ページの表にあります人口統計指標でございます。  今の御質問にお答えいたしますけれども、未来の世界がどのようになっていくかということに関しまして、さまざまなシナリオというものができ上がっております。  ドームズデーといったもの、それからゼロ成長というもの、そしてその中でさまざまな人口モデルがつくられております。しかしながら、ユニセフのオフィシャルといたしましては、私どもは余りこういった既につくられているシナリオ、モデルというものは見ません。といいますのは、こういったものに頼りますと、すべて想像をもとにするということになってしまうからであります。ですから、私どもといたしましては私たちが持っている知識をもとに将来がどうなるかということを考えたいと思っております。  世界世界子供たちの将来がどうなっていくかというのは、これは子供たち生存発育にかかわってくるわけであります。子供たちをどのようにして守り健康は発育させていくのか、それが世界の将来に大きな影響を与えることになります。また、この子供たちをちゃんと保護し健康な発育を促すことができれば、また人口増加の問題に関しても大きな影響が出てくると思います。これは日本でも既によい例として実際に見られていることでありますし、近隣のアジア諸国の中でも、フィリピン、タイ、中国などでも既にこの好影響というものはあらわれているわけであります。  私どもが持っております経験と知識をもとに考えますと、ユニセフとしては楽観的なアプローチ、楽観的な物の見方をすることができると考えております。  過去四十年の間に、子供生存発育のためにさまざまな活動が行われ、これは大きな成功をおさめてきました。二十一世紀までにこれをさらに強化することができれば、次の一世紀、二十一世紀というのは楽観とそして希望を持って迎えることができると考えております。ただ、二十一世紀に向かっての準備をよりよくすることができなくなれば、ドームズデーなどといった悪いシナリオどおりのことになってしまうのではないかと思っております。
  17. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ありがとうございました。
  18. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 御指名をいただきました自民党の斎藤文夫でございます。  まず、イグナチェフ参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  考えてみますと、戦後私どももユニセフには大変お助けをいただきました。脱脂粉乳あるいはまた原綿、コットンを送っていただいて、医療、食糧等々で戦後疲弊した我々日本子供たちのために大きな援助の手を差し伸べていただいて、その当時をふと思い浮かべて心から感謝をいたしておるところでございます。  その後、ユニセフとしては世界におけるLLDC諸国等々に対して積極的な援助の手を差し伸べておられることは私ども承知しておりますし、また、昨年あるいは一昨年、アフリカの飢餓を救おうと、例えば毛布の運動等、日本の国内におけるいろいろな団体が御協力をされ、私ども個人的にも積極的に毛布を送らせていただいたわけでございます。いずれにしても、ユニセフ世界子供たちに温かい愛の手を差し伸べてこられましたことに心から敬意と感謝を表するものでございます。  そこで、先ほど御説明を聞きましたが、今この時間にも大勢のお子さんがとうとい生命を亡くしておられるわけでありますが、パー・デーに直して四万人、一年間千三百八十万人、まさにもうびっくりするような乳幼児死亡の数を思いますときに、どうしてもこれは少しでも死亡率を下げなければならない、こういうことが先ほどの御説明でよく理解できたところでございます。  その御説明の中で、日本が今日世界で最も幼児の死亡率の低い国だということでお褒めをいただきましたが、同時にこれは発展国の改善のよき一例だと。なるほどそうだなとも考えたわけでありますが、御承知のように日本は戦争によって壊滅的な打撃をこうむりましたが、工業の基盤、素地というものは十分ございましたし、あるいはまた教育レベルも戦前、戦中、戦後を通じて欧米にそれほど見劣りがしないレベルでもあったように思います。それだけに、戦後のいっとき大変苦しい、お助けをいただいた時期もございますけれども、その危機を乗り切れば欧米諸国に追いつくことは私は非常に容易なことだ、このように予測をしておったところでございます。  一方、LLDC諸国を見てみますと、今日その国々の国情、形態、いろいろ違うわけでありますが、まず近代工業等々の基盤づくりというものが大変おくれておる、ないしは期待が持てない。あるいは教育にしても非常に低水準にある。そのほか御婦人の社会的な地位、役割というものがこれまた比較にならないくらい低い。そういう悪条件の重なっておる途上国でございますから、そこで死亡率を少なくしていくという大きな使命感は我我も十二分に持っておりますけれども、現実にはなかなか困難な問題だなと。  死亡率を低くしていく、一方では確かにそれが定着していけば多産率が減るわけでありますけれども、死亡するから子供をたくさんつくる、子供をつくるから死亡が多いという悪循環を繰り返しているわけでありますから、こういう中でユニセフが一生懸命御努力をいただいてきたことに本当に敬意を表するわけであります。  しかし、幾ら応援、援助の手、あるいは教育環境づくりに汗を流しても、結局はそれを受け入れるその国の国民の意識、もっと言うならば政府の国民に対する指導力、そういうものがないとこれは本当に砂漠に水をまくような結果になってしまいはしないだうろか、こういう懸念を持っておるわけであります。したがって、御援助をされている国々の自助努力自分努力をしていくという体制がどうなっているのか。  大変ぶしつけな例でございますけれども、私、物の本で読んだものですから、ちょっと触れさせていただきますが、あるアフリカの国におきましては、支配階級と一般国民の格差がもうすごい差がある。国民は餓死をしている。ところが支配階級は栄耀栄華をしている。こういうような差を見た人はもう全く唖然としたと現地レポートでそういうことを伝えておりますし、さらに、子供や国民に世界じゅうの善意がストレートで渡らなきゃいけない、そういうものである援助物資が途中で消えちゃった、このような報告も報道されたことがございます。これらについてユニセフとしてはどういうふうにごらんになっていらっしゃいますか、お聞きをいたしたいと思います。
  19. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) 大変に現実的な御質問をいただきました。私といたしましても、フランクにそして現実的なお答えを差し上げたいと思います。  国際的なさまざまな援助がどのように行われているかということに関する懸念そして疑問というのは、これはすべての人々が持っているものだと思いますし、ユニセフとしてもやはりそういったさまざまな疑問というものを持っております。  我々からの援助ですけれども、毎日の定期的に行われているものに関しましては、まず私たちユニセフとしましては、発展途上国の国と政府が何を必要としているかを考え、その目標の人々、特に子供たちにその物資が達するためにはどのようにしたらいいかというプログラムづくりを行います。次にそのプログラムの実施を十分に監視し、物資が確実に送られているということを確認するわけであります。  途中で物資が消えるようなこと、漏れと言っておりますけれども、これがないと言ってしまってはちょっと非現実的なことになるかもしれませんけれども、ユニセフから送られているさまざまな物資が途中で消える場合というのは非常に少ないと我々は見ております。  この漏れが多くなりますのが、緊急援助のような場合になるわけでありますけれども、この漏れといいましても、これは途中でなくなってしまうということではなくて、到達するまでの時間がかかるために生鮮食料品などさまざまな食べ物が腐ってしまったり、だめになったりと、こういうことがあるわけであります。  それから非常に基本的な政策に関する御質問を受けました。世界の政策担当者がどれほどのコミットメントをサポートしているのかということであります。  まず、私自身ユニセフ仕事で五十から五十五カ国の発展途上国を回りました。カンボジア、スリランカ、モルジブなどユニセフ仕事で回っているわけでございます。それだけのさまざまな国国を見てきましたけれども、政府指導者子供を危機にあえてさらそうというようなところはいまだかつて見たことがございません。ですから、政府指導者たち子供のためのコミットメントを持っており、またその量というものもどんどん大きくふえてきているということが申し上げられます。  実は、先ほどプレゼンテーションの中で地元コミュニティーの参加、そしてマスメディアによるキャンペーンなどについてちょっとお話をしようと思っておりましたのですけれども、時間の関係で割愛させていただきました。  南米の各国で市民戦争、ゲリラ戦争などが行われております。ですが、このような戦争中の国々でさえも子供予防接種のために戦争を一時中断するというようなことが行われております。ニカラグア、ホンジュラス、サンディニスタの戦いなどでもこういうことが行われております。また、コロンビアのベタンクール大統領ですけれども、司法関係の惨殺がございましたが、そのようなことが起きる前に、大統領は子供に対する予防接種を行うべきだという宣言をし、個人的にもその手伝いをしているわけでございます。ブラジル、インドネシアのスハルト大統領、また中国においても同様に政治指導者子供予防接種というものを率先して行うべきだということを訴えているわけであります。ですから、この政治指導者方々子供予防接種に対する意識というものはどんどん高まっておりますし、また政治が介入することが非常に大切なのだという認識もどんどんと高まってきていると思います。  また個人、それからいわゆるエリートと呼ばれている人たちがどれほど興味を持っているかということでありますけれども、これは発展途上国人口の統計を見てみますと、エリートはその多くが都市部に住んでいるということが言えるわけでありまして、援助を必要としている貧しい人たちは農村部にいるということが言えます。  アフガニスタンの場合ですと、人口の一九%が都市部に住んでおり、エチオピアの場合は人口の一二%が都市に、パキスタンは三〇%、インドは二六%が都市部に住んでおります。特にインドの場合ですと、子供の数が世界で二番目に大きい国でありますので、そのリーダーシップというのは大きな問題になるわけでありますが、インドにおきましてはインディラ・ガンジー、そしてラジブ・ガンジー各首相が大変な努力をしまして、子供たちには予防接種を行うべきだということを提唱してまいりました。  最後に、識字率についてお答えしたいと思います。  これは非常に大きな問題をはらんでおります。特に女性識字率についてちょっと数字を申し上げたいと思います。  今、私が手元に持っておりますのは、世界子供白書の表4に載っている数字でございまして、一九七〇年と八五年の女性識字率数字を出したものでございます。まずアフガニスタンを見てみますと、これは七〇年の二%から十五年後の八五年までに八%となっております。たった八%というのは大変に低い、ひどい数字であるとも言えますけれども、それでも十五年で四倍になったということも言えるわけであります。バングラデシュの場合は一二%から二二%に十五年で二倍にふえております。パキスタンも一一%から一九%で約二倍にふえております。これらの諸国はイスラム圏諸国であり、女性識字率をふやすには大変に困難なさまざまな制約がある状況下だということを御記憶いただきたいと思います。また、インドの場合は七〇年の二〇%から八五年二九%へと五〇%の増加を見せております。
  20. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 もう一つだけイグナチェフ参考人にお尋ねします。  ユニセフとしてこれからの十年は二十一世紀へのイブと位置づけてプログラムを来年あたりから組んでいかれる、こういう御説明がございました。二十一世紀を展望してユニセフの果たす役割、特に新しい今までの御計画以外の分野に何かお考えがあればお聞かせをいただきたい。私ども、ユニセフはもとより、UNDP、UNFPA、そしてさらにはODA、それぞれ積極的に日本の責任と役割を果たすように今後とも努力をしていきたい、このように思っております。
  21. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) これからの十年間というものは非常に重要な十年間になります。  私どもは、その中でもやはり懸念を持っているわけでございまして、一つ目が経済問題に関する懸念でございます。現在の経済的な不況がこれからどのように影響が出てくるのかといったものが懸念されておりますし、また、今現在行われております開発途上国に対する調整計画影響がどのようになってくるかということも私どもは懸念しているところでございます。  過去三十年間の間さまさまなプログラムによりまして識字率も大変に上がりましたし、また健康、社会サービス、このような分野も非常に状況が改善されてきたわけであります。こういったプログラムをこれからも継続して子供たちに与えることによって子供たち生活環境というものはよりよくなっていくわけであります。しかしながら、こういったプログラムは今現在経済的な問題に直面しているのであります。ですから、一つ目が経済的な問題が考えられるということです。  二つ目に私どもが考えておりますのは、どのように子供の現在抱えている現実にアプローチをすることができるのだろうかということであります。  我々は十年前に比べますと今の方が子供が何を必要としているかということについてよく知っているわけでありますし、その子供たちのために何をしてやるべきかということもわかっております。ですから、今度はそれをみんなで協力して、さまざまな人たちが活発に子供のよりよい生活のために努力をするということが必要になってくると思います。  二国間の協力、そして多国間の協力というものを行うことによって本当の協力を行うことができるのではないか。現在もさまざまなグループ、機関、国がそれぞれに援助を行っているわけでありますけれども、これを組み合わせることによってよりよい援助ができるにようになるのではないかと考えております。私ども英語でシナジーという言葉を使います。これは端的にいえば一プラス一は三になるといったものでございますけれども、これからの十年間、開発途上国への援助をシナジーで行っていくことによってより多くの効果を生み出すことができるのではないかと思っております。
  22. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 それでは、小林参考人一つお尋ねをいたします。  先ほどお話がございました老人対策は三Kだと、まさに私どももそういうふうに思っておったところでございます。それに自助、互助、公助というような精神を加えて日本型の社会福祉社会をつくっていくべきだろうと、私もこれも持論でそう思っておったところでございます。  先ほど黒板にお書きになりましたそれを見ておって、とにもかくにも世界一の長寿国で、六十歳定年、男子が七十五歳、女子八十歳、こういう中で老後の蓄えというのは一体どうあったらいいんだろうか。先ほどちょうだいした資料を見ましても、二ページ目の貯金のところで、五百万から一千万あるいは一千万以上、こういう人が約七〇%六十歳以上の方の中にはおられるわけです。貯金そしてまた公的年金、あるいは御専門の保険、そういうようなものを総合的に含めてどのくらい夫婦でもって老後対策として持ったらいいのか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  23. 小林隆三

    参考人小林隆三君) これはよく言われておりますが、ちょっと図式いたしますと、一般的には千五百万という数字はよく言われておるんですが、それの基礎になるものとしてやはり公的年金というのが一番のベースになるわけです。  一応六十歳を定年という前提で考えますと、現在はもう少し五十五歳に近い方なんですが、在職中の平均賃金の大体七割ぐらいが公的年金のベースになってございます。これにプラスアルファ、現在企業年金というのがございまして、これは企業によってあるところとないところございますが、これがこの上に乗っかるわけでございます。これが今現在平均しますと大体五万から十万円、公的年金がモデルでいきますと一世帯当たり十八万四千円、こういう数字がございます。この上にさらに個人の私的年金といいますか、こういうものが乗っかっていくわけでございます。現在先ほど申し上げましたように夫婦で月当たり大体二十二万ぐらいでございますので、したがいまして、この方式でいきますとほぼ二十二万はクリアできるというのがございます。これは要するにランニングベースでの話でございます。  最近それともう一つ、この公的年金に、企業によりましては企業年金をつくっておるんですが、今ここで書きましたようにピストル型といいますか、こういうふうに六十から六十五歳を上積みしてございます。やはりこの間が多少、先ほど申し上げておりますように例えば医療費関係でも一割から二割へ個人負担分がふえてまいりますし、それから、やはりこの落差でございますね、大体在職中の平均給与の七割ぐらいの想定でございますから、この落差部分をどうカバーしていくかという、この辺のこともございますので、ランニングベースでいきますと大体これで見合うわけですが、将来的に医療費の予想以上の出費ですとかあるいは介護問題が出てまいりますと、たちまちにして月当たりやはり数十万円という出費が出てまいります。したがいまして、老後からそういうものをスタートさせるというのは、これはいささかやはり手おくれでございます。  ですから、リタイア前から、先ほど申し上げました、これは公的あるいは民間のものでもいいわけですが、そういう予測しがたい部分、例えば介護費用、こういうものをカバーできるような仕組みというのをやはりつくっておけばこの図式からいきさます図柄でほぼ見通せるんじゃなかろうか。ここの総面積がうまくカバーできるようなものがあらかじめ予定されればいいんじゃなかろうか、こんなふうに思っておるわけでございます。
  24. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。
  25. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 イグナチェフ参考人にはきょうは大変御苦労さまでございます。大変有意義なお話を伺わせていただきましてありがとうございました。  私は二十分しか持ち時間がございませんので、最初に質問をずっと並べてしまいますので、その後にお答えをいただきたいというふうに思います。  先ほど来お話を伺っておりまして大変参考になることが多うございましたんですが、私は国内委員会のメンバーの端くれに加わっておりまして、山下事務局長等ともよくお話をいたします。  まず、私は公的な立場の動きよりもユニセフに対して民間レベルでどんなことができるのかということをいつも考えておるものの一人でございます。国内委員会ではいつも、あなたの持つ千円が途上国の子どもたちの七本の予防注射にかわるのだから皆様の御協力をということを訴えておるわけでございますけれども、こうしたPRが最近はかなり浸透してまいりまして、国内でも特に我が国のお母さんたちにとても共感を呼んでおるところでございまして、そういうPRはとても大事だというふうに思いますし、国内ではNGOのメンバーが大変頑張っておるところです。  ところで、この八八年版の子供白書では昨年の世界子供死亡数、千三百八十万人ということでございますが、その中で下痢等による脱水症の死亡率が非常に高いというお話を先ほど伺いましたが、これはいわゆる経口補水液ですか、これがあればすべて助かる子供たちだということで、言うてみれば糖液ですね、これを何とかみんなで集めてそういう子供たちに送りたいと、私たちはこういう運動を考えておるわけでございますけれども、先ほどお持ちになられました補水液の袋は日本のお金にかえると幾らになるんでしょうか、一袋。そういう具体的なことを私たちは知って、そしてPRをしていかなければならないというふうに思っております。公的な私たちの運動はもちろんですけれども、そういう具体的な中から民間の動きがこれからますます大事な時期に入るのではないかと思うので、まずその値段を教えていただくことが一つです。  それから先ほどのお話の中で千三百八十万人の死亡という、五歳未満の幼児でございますが、その中に、貧困とか飢餓とか干ばつとかというふうなことで亡くなっていく子供たちのほかに、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、戦禍というような課題はどういうふうに考えればよろしいのか。  ちょうだいいたしましたこの白書の中にも書いてございまして、これは平和を回復し、アパルトヘイト等をやめさせ、国際社会が緊急に必要な資金や食糧、医薬品、ワクチン、あるいは輸送網をつくり、水を供給し、食糧を生産することを教えていくならば数百万人の子供の命を救うことができるのだということが書いてございます。  ここら辺のところは私は非常に関心を持っておるところなんですが、特にこの平和を回復すること、そのことがやはり実はその隠れた犠牲となっている子供や、そしてその子供を保護し、はぐくまなければならない母親の命を私は助けることができるというふうに思っておりますので、この辺のところの関係をどう考えればよろしいか。この箇所では、モザンピーグあるいはアンゴラ等で亡くなった子供は十四万人と書いてございます。これは非常に驚異的な数字でございまして、こうした子供たち死亡率、つまり軍事活動の結果がもたらした子供死亡率が七五%も高まってきているというようなことが書いてございますけれども、こういうふうなことは、世界人道上の問題はもちろんでございますけれども、人口という問題から見てどういうふうにこういう問題を考えていけばよろしいのか、私は大変心にかかることでございますので、お教えをいただきたいというふうに思います。  そうした戦禍の中、つまり社会的混乱とか経済的混乱とか、そしてそれがもたらす貧困の中にあってなおかつ親の教育、先ほど教育の普及ということをおっしゃられましたけれども、事実上はそういう混乱した状況の中での教育ということが非常に困難なのではないかというふうに思いますので、そのこともあわせて伺わせていただきたいというふうに思います。  そして、私ども国政の立場でやらなければならないこととあわせて、もう一度伺いますが、今民間でできることは何なのかということ、まずこの点についてお伺いしたい。
  26. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) このユニセフなどの民間団体がどのようなことをしなければならないかという非常に重要な問題について御質問いただきましたことをありがたく思っております。  ユニセフは人の腕から人の腕へという援助を考えているわけでございまして、そのユニセフに対しては三十四カ国の民間団体、非政府団体が現在援助をしてくれているわけであります。日本ユニセフ協会もその一つであり、民間のボランタリーの機関であり、ユニセフを助けてくださっているものであります。この民間の活動について私は個人的にも非常に興味を持っております。といいますのは、私のユニセフとの最初の六年間の経験というのはカナダにおきますユニセフ委員会における業務であったからであります。  それから、ユニセフが受け取っております収入、この二五%は民間団体、非政府団体から受け取っているものでございます。  次に、経口補水剤のコストについてでございますけれども、これは一袋当たり約十セント、日本でいえば大体十円ぐらいということが申し上げられるのではないかと思います。一袋十円といいますと非常にコストの低いものだと思われると思いますけれども、発展途上国におきましてはこれでもコストが高く考えられているわけであります。一つの家庭に子供が二、三人いて、それぞれが三回、四回、年に十回も下痢性疾患にかかるというふうなこともあるわけです。日本の場合ですと、子供が下痢をするようなことというのは、あっても一、二回程度だと思いますけれども、発展途上国ですと十回近くにもなるわけですので、やはりそこで個々のコストというのは高くなってくるわけであります。  それから今の経口補水剤に加えまして、このポカリスエットの袋ですけれども、(資料を示す)こういったパッケージもございまして、これは一袋約百二十円だと聞いております。大体十倍ぐらいではないかと思います。  さて、経口補水剤ですけれども、この内容はほんの少しの塩とそして一握りの砂糖、これを一リットルの水に溶かして子供に飲ませる、これが一番基本的な経口補水剤になるわけでございます。経口補水剤のこの袋に加えまして、先ほどお見せしましたようなスプーンもあわせて提供し、そのスプーンの片側で少しの塩をはかり、そして反対側で砂糖をはかり、コストを下げることによって経口補水塩の基本的なものをつくることができるのであります。  我々といたしましては、このコストもまたさらに下げたいと思っております。といいますのは、発展途上国において砂糖というのは高いものであり、大人がお茶を飲むときに、子供にこれを与えないで自分のお茶に入れて飲んでしまうというようなこともあるわけです。このようなことを防ぐために私どもが現在考えておりますのは、さまざまな穀物からのスターチを取り出してこれを砂糖の代替品として使うということでございます。スターチを使うこともやはり同じように効果的なものと思っております。  次に、戦争とそれから子供に関する御質問に対するお答えですけれども、私は個人的に、私自身がカンボジアのインドシナ戦争の場に二年半いたことがございますし、プロジェクトの援助のためにウガンダに参ったこともございます。いろいろと見てまいりましたけれども、戦争が起きますと子供が抱えておるすべての問題が起きてきて、それが一層激しくなるわけであります。  まず一つ目に、戦争が起きているところではどんどんと子供たちが兵士となってとられていく、この数がどんどんふえていくということもございます。そして二つ目に起きてくる問題といたしましては、子供たちがほとんど教育を受けられない、もしくは全く教育を受けられない世代ができてしまうということがあります。三番目には、さまざまなサービス、特に健康のサービスがほとんど提供できなくなってしまう。そのために子供栄養失調もひどくなり、病気子供たち予防接種を全く受けられない子供たちというものができてしまう、こういった問題が戦争によって起きております。ユニセフが現在今この瞬間にも直面しているさまざまな問題であります。  御指摘のように、この囲み記事の四十二ページにございますけれども、ここでもモザンビーク、アンゴラ、そして南アのさまざまな国々が抱えている問題について書いてあります。モザンビークに関しましては、黒柳徹子さんが御自身でモザンビークに参られましたので彼女の方がよりよく状況については御存じかと思います。  今日ユニセフは、アフガニスタンでの国内そして国境地帯においても活動しておりますし、南アの各国、カンボジア、フィリピン、こういったところにもユニセフのスタッフが行き、ユニセフのプログラムが実施されております。  なぜこのようなことをユニセフができるかということに関しまして、一つ目には、ユニセフが非常に中立的な立場を何年もとってきたということで知られている。つまり、政治的な立場ではなく中立的な立場からさまざまな援助を差し伸べられるということがあります。これは子供を兵士にとっている国での仕事ですとちょっと政治的にもなってまいりますけれども、それ以外は中立的であるということです。  それから子供たちが何を必要としているかということを知り、我々はそれを提供しているわけであります。まず何よりも重要なのが健康に対するケアを子供たちに提供するということです。また教育でも、学校に行けない分できるだけのことを私たちはしようとしており、エチオピアの難民キャンプでも子供教育をできるだけしようとしております。  子供たちとしても、それほど多くのことはできないにしても、だれかが自分たちのことを見ていてくれるのだということを知るのは大変に重要なことだと思います。ですから、手を差し伸べようとしている人たちがいるということで我々が活動しているのであり、また中立的な立場で動いております。そして政治的な活動ができるというところでアムネスティー・インターナショナル、赤十字など、こういったところも活動しておりますので、我々ユニセフとしては、こういうところと手を取り合ってこれからも努力を続けていきたいと思っております。
  27. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ありがとうございました。
  28. 吉川春子

    吉川春子君 お二人の参考人きょうはお忙しい中大変ありがとうございます。  まず、私はイグナチェフ参考人にお伺いいたしますが、ユニセフのいろいろな報告を読ませていただきまして、リアルに子供たちの状態を報告し、それを救うために活動なさっていることに心から敬意を表します。かつて日本ユニセフから援助を受けたというお話がありましたが、私もそのユニセフから援助を受けて戦後育ってきた世代に当たります。  「日本ユニセフ」というパンフレットによりますと、政府と民間の拠出金は、日本世界第五位、国民一人当たりでは第十六位という低い水準にあるということです。ユニセフへの拠出金をふやすこと、そして先ほどおっしゃいましたODAを通じてこれを正しく使って必要なところに援助をふやすということに私たちも全力を挙げていきたいと思います。  そこで、今のお話とも関連しますが、白書の中で、「防衛費を削減すべきなのか、それとも人々の健康を切り詰めるべきなのか。」「選択の道が残されている。」と指摘されています。日本の軍事費も、NATO方式、北大西洋条約機構の方式で計算すると、アメリカ、ソ連に次いで第三位になります。世界の軍事費は十兆ドルと言われています。人類が軍事費より子供の生命、健康、安全、こういうものを選択するという事態をもたらすために私たちは何をなすべきか、この点が第一点です。  第二番目は、子供の健康、生命を守る、そのためには適正な出産間隔を置くことが必要だ、そのためには母親識字率を高めることが必要だということを繰り返しおっしゃっておられます。  私、二年前にニカラグアに参りました。サンディニスタ政権になって、数年間で驚くべき文盲の解消といいますか識字率の向上がもたらされ、また乳幼児死亡率も劇的に減少してユニセフから評価されたということも聞きました。しかし一方、ニカラグアはたびたび報道されておりますように北部のホンジュラスの国境で戦闘を続けているわけで、医療品も食糧も日常物資もすべてもう想像を絶するほど不足している中で成し遂げられたことです。  ニカラグアについてということでなくて、一般論としてお答えいただいて結構なんですけれども、戦争を他国にしかける、または戦争をしかけられるということこそ子供の健康やあるいは文盲の克服ということの最大の敵ではないか、こういうふうに思いますが、お考えはいかがでしょうか。  それから三つ目の質問をいたします。  これは「世界政治」といいまして、私ども日本共産党が月二回出している雑誌ですが、その中にユニセフの「南アフリカ子供たち」という八七年三月の報告が載っていて、これを読ませていただいて南アの子供たちの置かれている状態が大変よくわかりました。これによりますと、南アの黒人、カラード、つまり白人以外の子供たちは、アパルトヘイト政策のもとで、空腹、劣悪な教育条件、そして拘留、拘留というのは日本では考えられないんですけれども、二カ月で三千人の十六歳以下の子供たちが拘留されたということですが、こういう報告が載っておりますし、五歳までに死亡する子供たちは白人の十五倍も多い、この報告を見てびっくりいたしました。  それで、日本は南ア政府との貿易額が実は世界第一位になりました。国連の場でも非難されているわけですけれども、私たち政府がこういう南ア政府と貿易を積極的にふやしていくなどという政策について厳しく批判しているのです。  ところで、ユニセフはこの南アの子供たちを救済するために児童協会の設立など幾つかの方法を考えていらっしゃるということですが、そのことをお伺いしたいのと、また、日本としてこの問題についてどういうことができるのか、その点についてお伺いしたいと思います。  以上、まとめて三点お伺いいたしました。
  29. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) 今の三点の御質問についてちょっと確認させていただきたいと思います。  一点目の御質問というのは、軍事的な支出そして軍事的な行動というものが援助にどのような影響を与えているかということ。二点目の御質問は、戦争の影響がさまざまなプログラムにどのような影響を与えているか。例えば識字率を上げるためのプログラムに戦争がどのような影響を与えているか。そして三点目としては、南アフリカ子供たち、特に国境地帯における南アフリカ子供たち現状はどのようになっているか、この三点ということでよろしいでしょうか。
  30. 吉川春子

    吉川春子君 、第一点目は、軍事費を削減する方をとるのか子供の健康を守る方をとるのかというユニセフの報告がありますが、私たちが軍事費の削減という方を選ぶためにはどういうことをすればいいのかということですけれども。
  31. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) できるだけ今の御質問に沿ったお答えをさせていただきたいと思います。  まず、ユニセフというのは非常に小さな組織ですので、一国の政策に関してあれこれ言うことはできません。一つの国がとる政策に関しましては、我々としてはそれに敬意を表していく考え方を持っているわけであります。  ただ、五機のF14戦闘機の金額というものを考えますと、もちろんこれはさまざまな形、大きさ、モデルといったものがあるでしょうけれども、一般的に見てみますと、五機のF14の金額で全世界子供たち予防接種を行うことができるわけでありますので、やはりここには密接な関係があると考えていいのではないかと思います。ユニセフといたしましては、政府の政策に対して反対をしていくのではなく、適切な注意子供たちに向けて払うべきである、こういったことを政府に対して訴え続けていくものであります。  二点目の御質問に対するお答えですけれども、戦争地域子供たちには戦争が直接的な影響を与えております。これは前にもお話し申し上げたとおりです。特に南アフリカ各国の国境地域、いわゆる戦線地域にいる子供たちに関する影響というのは非常に多くなっております。  ここでユニセフがとることのできる役割というものがありまして、そのうちの一つは、戦争が子供たちにどのような影響を与えているかということ、その点を強調し、そして世界人たちに訴え、世界の注目を集めるということであります。我々は問題を直接解決しようとするのではなく、そのかわりに世界の注目を集めようとしているわけであります。また、そのほかの国連のさまざまな組織がありまして、私どもはほんのそのファミリーの一部にすぎないわけでありますけれども、そのさまざまな組織を通じて軍縮の促進のための努力というものも続けております。やはり軍縮が行われることによって子供たちに対する直接的な影響というものも出てくるわけであります。我々の考え方といたしましては、平和が来るまでは発展もあり得ないだろうということでございます。  最後の御質問にお答えいたします。  南アフリカ子供たちということでございますけれども、ユニセフは南アフリカの国内での活動はしておりません。国境地帯における南アフリカ子供たち援助をしております。我々ユニセフは国連のほかの機関と一緒に反アパルトヘイト運動の促進をしております。  アパルトヘイトに関しましては、つい最近日本でも封切られました「遠い夜明け」という映画がございました。この映画の監督、プロデューサーをなさったアッテンボロー監督はユニセフの親善大使でもあられます。  ついでにそのお話が出たので申し上げますけれども、先ほど申し上げました黒柳徹子さん、皆様方もよく御存じだと思いますけれども、彼女もユニセフの五人の親善大使の一人でございます。  先ほどF14戦闘機と子供予防接種関連についてお話をいたしました。F14が安くなったのか予防接種が高くなったのかはわかりませんけれども、先ほど五機と申し上げましたのを十機に訂正させていただきます。
  32. 三治重信

    ○三治重信君 お二人の参考人さん大変御苦労さまでございます。ありがとうございます。  イグナチェフさんの方への質問が随分ありましたので、私はユニセフの方への質問は遠慮させていただいて、小林さんの方へ質問をさせていただきたいと思います。  小林さん、老齢化対策の関係資料として非常にティピカルな調査資料を整えていただきまして、非常にわかりやすく説明していただきましてありがとうございました。  それで、きょうの御説明の一番最後高齢化問題への対応の中で、四つの項目のうちの第四番目のシルバーサービス振興会の問題についてちょっとお尋ねしたいと思うのです。  シルバーサービス振興は、政府や地方公共団体がいわゆる税金を使ってシルバーサービスをやる分は今後も充実していただかなくちゃならぬでしょうが、やはり老人みずからがお金を出してシルバーサービスを受け、そして楽しく生きがいのある人生を送るということについて、今のところ日本では利用するにも施設が非常にないんじゃないか、こう思うわけです。  先ほど、埼玉県の方でシルバーサービス情報公社というものをつくったというんですが、三万八千人も加入されたその中身ですね、埼玉県の情報公社はどんな種類のものを計画しているのか、一つのティピカルな例で御説明願いたいのと、それから、シルバーサービス振興会というのは厚生省と民間で倫理綱領をつくって、いろいろ清らかというんですかな、社会正義に基づいたようなものをやっているというんだけれども、これはやはりクラブ的なもので全部やっていこうというのか、あるいは営利会社としてもこういうものが成立していくことを企図して、もうけ仕事としてやって相当できるものだと、またその方が活気のあるシルバーサービスができるものだと、こういうふうに思われるか。もしもそうだとするとこのシルバーサービス産業というものはどれぐらいの規模に発展する可能性が今後あるだろうか、こういうようなことについて御説明願いたい。
  33. 小林隆三

    参考人小林隆三君) お答えさせていただきます。  まず、最初の埼玉県のシルバーサービス情報公社の件でございますが、これはまだ発足して間がございませんで、当面、機関誌でございますね、これを二、三カ月に一回ずつ、年に多分三回か四回ぐらい発行するということで高齢者の非常に役に立つような情報を流していこう、こういうことが一つございます。これがキーになっております。  シルバーサービスを供給する民間企業が、ちょっと数は定かじゃございませんが、数十社そこに参画しておりまして、例えば旅行業者ですとか、あるいは生命保険会社ですとか損害保険会社等の金融機関ですとか、あるいはシルバー向けのいろんなサービスを提供するようなそういう会社が参画しておりまして、いずれはそういう参画企業がその会員に対していろいろ有料のサービスを提供していくという形で進んでいくんじゃなかろうかな、こういうふうに思っております。それが第一点目でございます。  それから二番目のシルバーサービス振興会の件でございますが、これは現在百六十社余りの民間企業が参画しておりまして、そのときにも申し上げましたが、目的はやはりシルバーサービスを供給する会社の集まりということでございます。ですから、あくまでも民間企業の自主的な集まりで、そこにいろいろ厚生省と私ども民間とのお互いの話し合いの場といいますか、こういうものを持っていって、民間としても倫理綱領等に基づいて自主的にやはり社会に範たるそういう基準をつくっていって、それを守りながらシルバーの信頼を得ていこうということでございます。
  34. 三治重信

    ○三治重信君 そのシルバーサービスの中身が、旅行はわかります。それから金融といっても、それは持っている資産の運用についての情報提供という意味か。それから生保の問題でも、これは今現在の営利会社がやっていることの営業部面だけですよね。
  35. 小林隆三

    参考人小林隆三君) そうでございます。
  36. 三治重信

    ○三治重信君 新しい事業というようなものは別に考えてはおらないんですか。
  37. 小林隆三

    参考人小林隆三君) それはこれからの課題になると思います。埼玉県の方はまだできて半年ぐらいでございますので、したがいまして、とりあえずそういう企業が集まりまして、これは県の方の老人福祉課ですか、この辺が中心に音頭をとっておるようでございます。それで別途民間企業が参画して外郭団体といいますか、公社をつくったわけです。  ですから、今おっしゃったような形のサービスについては、これから要するに官と民がお互いに知恵を出し合ってこの辺のところをつくっていくという状況でございますので、まだ緒についたばかりということでございます。ですから、実際にその機関誌、会誌で出ておりますサービス内容といいますのは、旅行のメニューですとか、それから金融関係のものについてはまだ具体的なものは出ておりません。公社の方から各金融会社の方にも、金融機関として一体これから先どういうサービスが提供できるか、この辺について意見を聞かせてほしい、アイデアを出してほしい、こういう問い合わせがございましたり打ち合わせをやっておる、こういう段階でございます。これから少しずつ実際にそういう参画企業がどのようなサービスを提供していけるかというのをお互い工夫していく、こういうまだ段階でございます。
  38. 平野清

    ○平野清君 お二人の参考人には長時間御苦労さまでございます。時間がありませんので、お二人に一問ずつ質問をさせていただきます。  まず、イグナチェフさんに御質問したいのですが、最初お話のときに、日本人口問題で大変な成功をおさめた国で、ユニセフとしても日本人口政策をまねしていきたいというようなふうな御発言があったと思います。  しかし、私よく考えますのに、日本人口問題の裏に優生保護法というのがあると思います。その優生保護法は、御存じかどうかよくわかりませんけれども、経済的に困難な女性に限って中絶を認めるということが行われてきました。それによって人口抑制が行われ、その裏でやみ中絶というものが大変な数に上ったわけです。そういうことに関して、人口問題を推し進める上でこの日本の優生保護法というものをどう解釈されているのか。それからユニセフとしてもこういう形で発展途上国その他の政府に推奨されたことがあるのかないのか、お伺いしたいと思います。  それから小林参考人には、高齢社会が来るということは皆さん認めていらっしゃいますけれども、私たち考えるところによりますと、同じ高齢化でも女性高齢化時代じゃないか。例えば夫が死亡した後、女性のみが相当の長い期間一人で生活をするという高齢社会が来るんじゃないかというふうに聞いているわけです。その場合に、先ほど黒板等でお示しくださった図式の中で、女性一人が経済的に例えば有料なり無料なりのマイホームできちっと生涯年齢を過ごすことができる図式がとれるのかどうかということをお答えいただければと思います。
  39. ポール・イグナチェフ

    参考人ポールイグナチェフ君)(樋渡紀子通訳) 非常に興味深い質問をいただきましたけれども、残念なことに私は優生保護法について今まで知っておりませんでしたし、そのために法律内容を見てみる機会というものもなかったわけですので、その点についての自信を持ったお答えというのは残念ながらできかねます。  しかしながら、中絶に関して少しお話し申し上げます。  まず、ユニセフは中絶は全く提唱はいたしておりません。MCH、マザー・チャイルド・ヘルスセンターにおきまして、治療の目的のため、すなわち母体が危険にさらされている場合のみの治療の目的のための中絶の機器というものは提供しておりますけれども、これは全く家族計画が目的ではございません。ユニセフといたしましては家族計画方法論についての何らの提唱もしておりません。ユニセフとして何よりも大切と考えておりますのは、母親の健康、家族に対する情報を提供するということでございます。  家族計画に関しましては、我々国連の一員であるUNFPAが深く関与しておりまして、家族計画などの話もそちらの方で行われております。  私、優生保護法について余り詳しく知りませんで、そのお答えができなかったことを申しわけなく思っております。
  40. 小林隆三

    参考人小林隆三君) 夫の死亡後、女性一人でというお話でございますが、御承知のように公的年金では遺族厚生年金が出てまいりますが、水準的にはあらかじめそれが一つの基礎的な生活部分のあれにはなりますが、どの程度の生活を望むかによりましてかなり違ったものにはなってこようかと思います。  一つは、やはり先ほども申し上げましたように、介護部分ですとか、これから発生するであろうものをあらかじめ用意しておく、こういうことで、例えば有料老人ホーム等にきちっとした形でお入りいただくような、こういうものをあらかじめ在職中にどう準備するかとか、いろんな形のリタイア前の備えというものがある程度出てきて、それと公的年金から支出される部分と足し込んでいってという状況になると思いますので、なかなかこの問題、具体的な数字を持ち合わせておりませんので難しい問題ですが、やはり事前の蓄え、それからベースには公的年金と、こういう形で進捗するんじゃないかな、こんなふうに思います。
  41. 平野清

    ○平野清君 どうもありがとうございました。
  42. 長田裕二

    会長長田裕二君) 以上で両参考人に対する質疑は終わりました。  イグナチェフ参考人小林参考人にはお忙しい中を御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等は今後の調査参考にさせていただきます。お二人に対しまして調査会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会