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参考人(
小林隆三君) 今、御
紹介がございました
日本生命の
小林でございます。
お
手元の
資料に基づきまして、若干
高齢化に関する諸問題についてお聞き賜りたいと思います。
まず
最初に、若干PRめいた形になりますが、
日生基礎研究所といいますのは、実は私どもこの七月で
日本生命が創業百周年を迎えるわけでございまして、その
記念事業の
一つといたしまして
研究所をつくるものでございます。
経済調査、
金融調査、
都市開発、
生活関連という四つの
部門から構成しておりまして、実は私はその一番
最後の
生活関連部門を担当するという形になってございます。
それでは、早速本論に入りたいと思います。お
手元の
資料でございますが、かなりコンパクトになっておりますので、若干お見苦しい点があるかと思いますが、お許しを願いたいと思います。
簡単に申し上げますと、まず左の
真ん中あたりですが、ここで
高齢化の
スピードということでの
国際比較がございます。御承知のように
日本の
高齢化の
スピードというのは、全
人口の六十五歳以上比率というのが七%から一四%になるのに
アメリカが七十五年かかるのに
日本では二十五年という非常にハイ
スピードの
状況になっております。それが一点でございます。
それから二番目に、ちょうど
真ん中あたりでございますが、「六十五才以上
世帯の推移」、それとその真下でございますが、「老後に
一緒に住みたい人」ということで、「夫だけと」とする人が六七%、こういう
数字が出てございまして、これからどんどん
高齢者の
単独世帯あるいは夫婦のみの
世帯が増加する、こういうことになろうかと思われます。
それから一番右下でございますが、高学歴化、それから
子供数の減少等を背景にいたしまして
女性の
社会進出というのが急速に進行いたしておりまして、こういうことから、後ほどまた述べさせていただきますが、寝たきりの場合の介護の問題、こういうことに大きな
関連が出てまいります。
参考までに、次のページの右上でございますが、ここに「寝たきりになった場合に介護を頼む人」ということで回答者として「全体、男、女」がございますが、男性の場合、配偶者に頼るのが六八・八%ということで七割近い人が妻に頼っておる。こういう
状況からいたしますと、先ほど申し上げました女子の就業化の問題というのがかなりこの辺に大きな
影響を及ぼしてくるであろう、こういうことがおわかりいただけるんじゃなかろうかな、こういうふうに思っております。
それから同じく二ページ目に入りまして、左上の方でございますが、老後
生活の不安ということでの
調査結果がございまして、一番上を見ていただきますと、「健康がすぐれないこと」が五七・二%、それから「経済的に不安定なこと」が二九・四%、こういうことで、結局老後
生活の不安ということを考えますと、健康とお金の問題というふうに言っても過言ではないと思います。
それからさらに、その下でございますが、年齢別の悩みですとかあるいは心配事の有無、こういう
調査がございますが、「健康がすぐれない」ということでの悩みというのはこれは年を増すごとにふえておりますので、これは当然といえば当然かと思いますが、若干気になりますのはその右の方の「経済的に不安定」、こういうことでございますが、六十歳から六十四歳、比較的初期の老年期といいますか、ここでの不安というのが三五・〇%と非常に多いわけです。逆に七十五歳以上になりますと一六・四%、こういう形で非常に
数字が小さくなっております。ということで、何かやはりこの六十歳から六十四歳の老年の初期層において支出面での見通しがどうもつきにくい、こういうことからの不安が出ておるんじゃなかろうかな、こういうふうに思っております。
それから次に、ちょうど右の方の
真ん中あたりでございますが、「
子供からの経済的
援助についての
意見」と「財産を
子供に残すことについての
意見」、こういう表がございますが、まず老後の経済的安定の確保という面からしますと、
自分自身の責任と考えておる人が、その「反対」というところで五九・四という
数字がございますが、結局
自分自身の責任だという人が六割いらっしゃるという
数字でございます。それから
子供には財産を残す必要なし、こういうふうに考えておる人が四九・九%、半分ぐらいの人がそういうふうに思っておられる。このような
数字が出てございます。
等々ざっと
数字を御説明させていただきましたが、さらに進みまして、三番目の
社会保障と医療保障の
現状につきましてはちょっと時間の関係で割愛させていただきまして、続きまして
高齢者と健康の問題に入らせていただきます。
高齢者の三人に二人は元気であるという
数字が出ておりまして、
高齢者といえばどうも寝たきり等という暗いイメージをどうしても我々は想像するわけですが、五十九年の老人実態
調査によりますと、みずからの健康状態を健康もしくは普通だというふうに答えた人が六十歳から六十四歳で七九%、それから六十五歳から六十九歳で六九%というふうに、大体三人に二人は元気であるというふうな
数字が出ております。しかし、後ほどまた述べますが、どうもやはりメンタルヘルス、ここが
高齢化を考えていく場合に重要な課題になるのではなかろうかというふうに考えております。すなわち仲間がいない、こういうことからメンタル面への
影響がかなり大きなテーマとして出てくるのではなかろうかというふうに考えてございます。これは後ほどまた
高齢者の組織化の問題とあわせて
お話をしたいというふうに思っております。
ここで、
高齢者と健康の問題を考えます場合にたまたまいい
資料がございますので、御披露させていただきたいと思います。慶応ビジネススクールで
日本と
アメリカのビジネスマンの健康観についての比較をした
数字がございますので、御報告させていただきたいと思います。
日本と
アメリカのビジネスマンの、あなたは健康を維持増進していくためにどのような
方法をとっておりますかという
調査をした結果でございますが、
日本のビジネスマンが一位、二位、三位と挙げました項目と、
アメリカのビジネスマンが一位、二位、三位と挙げました項目を
皆様方はいかほどに御想像されますでしょうか。いかがでございますか。実は、申し上げますと、
日本のビジネスマンは健康対策の
方法としてまず第一位がゴルフとテニス、二番目が食事に留意、それから三番目が健康診断でございます。これに対しまして
アメリカのビジネスマンは一位がエクササイズ、二位がダイエット、それから三位がビタミン摂取ということでございます。一位を並べますと、
日本の場合はゴルフ、テニス、それから
アメリカの場合がエクササイズ。
エクササイズというのは、ここには小野清子先生がいらっしゃいますので、説明は非常に不足かと思いますが、結局
自分自身で体を鍛えるということがエクササイズでございます。集団じゃなしに
自分自身が意識して
自分の健康づくりをしていくということ。ですから、
アメリカでよく見られますように、マシーンに向かっていろいろ
自分自身がトレーニングするとか、ジョギングなんかも一人でいろいろ
自分自身の健康づくりをしていく、これがエクササイズでございます。
日本の場合はゴルフですとかテニスということで、これは私どもも時々休みの日にやるんですが、会社の同僚だとかそれから部長だとか課長だとか係長だとか、どうも役名を使いながらどちらかというと
自分の健康維持
管理よりは何かつき合い上のそういう形でのゴルフだとかテニスという形になっておる場合が多いんじゃなかろうかというようなことで、
日本と
アメリカのそういう健康づくりという点を考えますと、
アメリカの場合は非常に積極的であるのに対して、
日本はどちらかというと消極的といいますか、みずからというよりはやや他力本願的な感じがいたしております。
実は、一昨年に
アメリカへ参りまして向こうの健康産業について若干見てきたわけですが、その中で
一つは、レジャーワールドというのがロサンゼルスから大体車で一時間ぐらいのところにあるんですが、そこに老人のタウンがございまして、やはり老人がエアロバイクをこいだりあるいは水泳をしたりということで、非常に熱心にみずからの体を鍛えておられるのです。
一方、
日本を見ますと、これは非常に極端な言い方かもわかりませんが、例えばカイロプラクティックへ行きますと、何かぶら下がり器にぶら下がって毎日二十分、三十分、そういう医療施設といいますか、そういうところでのトレーニングというよりは、どちらかというと
治療というか、そういう形のものがかなり目につくわけでございます。ですから、やはりもう少し若いころからそういう健康についての準備といいますか、何かそういうものを編み出すような工夫というのが必要じゃなかろうかな、こういうふうに思っております。もっと新しい健康観を国民が持つようなそういう工夫というのが
一つは必要じゃなかろうかなと。
それから一方では、やはり正しい健康
情報といいますか、例えばいろんな食事関係についての
情報がございますが、もう少し整理された形での
情報というのが国民に伝わるような仕掛けづくりというのが必要じゃなかろうかなと。これがひいては先ほどから申し上げております老後の健康問題、あるいはそういう運動習慣というものにつながっていくんじゃなかろうかなというふうに思っております。
以上、ざっと簡単に問題提起をいたしましたが、それでは
高齢化問題への
対応というところに参りたいと思います。
高齢化問題への
対応では四つの観点から御報告申し上げたいというふうに思っております。
第一番目は健康の問題でございます。第二番目が
社会参加の問題でございます。第三番目が自立できる
生活設計の基盤づくり。四番目が最近の動きでございますシルバー
サービス振興会という新しい団体の動きにつきまして御報告申し上げたいと思います。
それで、まず第一番目の健康の問題でございますが、先ほど申し上げましたように仲間づくり、
日本人は特に一人きりになることについて非常に弱いという側面がございますので、そういう意味での仲間づくりというのが非常に重要になってくるんじゃなかろうかな、こういうふうに思っております。したがいまして、会員制クラブ、従来のああいう老人クラブ、どちらかというとお仕着せのそういうクラブではなしに、本人のニーズに合った非常に選択肢の多い特典を持つようなものが必要じゃなかろうかなというふうに思っております。
しかも、例えばサラリーマンですと、リタイアしてからそういう新しい
地域との接触を持つんじゃなしに、リタイア前からそういう
地域の人との接触を持つような形のものというのが望まれるんじゃなかろうかというふうに思っております。
アメリカに米国退職者協会というのがございまして、これは三千万人近いシルバーの組織化を図ってございます。旅行
サービスですとかあるいは財産運用プログラムですとか、大体二十近くの項目を持ちました特典
サービスというのをひっ提げております。
最近
日本でも、これは昨年の十月に埼玉県でシルバー
サービス情報公社という
高齢者を対象にした組織化が図られております。わずか半年の間に現在で三万八千人以上の会員が確保されております。埼玉県は御承知のようにサラリーマンの
方々を中心にした非常に新興住宅街として
地域とのつながりを
高齢者の皆さん方は非常に意識されておって、そういうところから三万八千人という方が早くも会員になられておる、こういう
状況でございます。そういうことで、これから先やはり
地域地域単位のこういう組織化の問題というのが非常に重要になってくるんじゃなかろうかなというふうに思っております。
それから次に、二番目の
社会参加の問題でございますが、実は私の持論なんですが、シルバーを考えます場合に三つのKというのを頭に浮かべておりまして、健康と心、ハートでございますね、それからお金、三つのK、健康、心、お金。今健康の問題を述べさせていただきました。次が心の問題ということで、生きがいにつながるような
社会参加、こういうことになろうかと思います。
これも私の持論でございますが、
日本人の生きがいというのは、ただ老後遊び三昧にふけるというのじゃなしに、一本のしっかりした
仕事、こういうものがあって、その上に
二つか三つぐらいの趣味があるというのが一番理想じゃなかろうかなというふうに思っております。
仕事といいますのは、これは何も職業人である必要はございませんで、あるいはボランティアでもいいでしょうし、
自分のきちっとした、しっかりとした一本のそういう意味の
仕事があって、プラス
二つか三つの趣味を持ち合わせる、これが老後の一番幸せでやはり生きがいにつながっていくんじゃなかろうかというふうに思っております。
例えば、
仕事という問題を考えました場合に、これから在宅をベースにした
仕事というのが一例として挙げられるんじゃなかろうかというふうに思っております。最近ワープロですとかあるいはパソコンの
教育が非常にシルバー層の間で関心が高まっておりますので、こういうものを推進していく、そうした暁には実際に御家庭にいらっしゃりながら
仕事ができる、こういうことが可能になってくるんじゃなかろうかというふうに思っております。
そういう意味では、住居というのは山奥の村ではだめでございまして、都会にまず居を構えるというのが前提になるんじゃなかろうかというふうに思っております。やはり生きがいというものを感ずるのは、赤ちょうちんですとかあるいはネオンですとか、あるいはたまには美術を見るとか、何かそういういろんな変化がないことには生きる喜びといいますか、そういうものにもつながってこないというふうに思います。最近三世代混合型の住居というのがいろいろ世間では取りざたされておりますが、そういう意味では、やはり何か都会に立体的な形でそういう老人用の住居をつくるというようなことで先ほどから申し上げている生きがいのための
社会参加ができないだろうかというふうなことを思っております。
それから次に、三番目の自立できる
生活設計づくりの問題に入りたいと思います。ここで、要するに老後における費用の問題というのを考えてみたいと思います。
若干見にくいかと思いますが、まずベースになりますのが日常
生活費、それから少し年老いてきますと医療費の問題というのが出てまいります。それから、どんどん高齢が進みまして
最後の方には介護の問題というのが出てまいります。これは現在六十五歳以上で発生率が四%ないし五%というふうに言われておりますが、いずれにいたしましても、やはり将来
自分が要介護の状態にならないとは限らないわけでございまして、そういう意味におきまして介護費の問題というのが出てまいります。
それで、この三つの費用、これが要するに老後のベースになるものでございまして、まず日常
生活費、これは御承知のようにリタイア前の御
自身の
生活をひっ提げてまいるわけでございますので、そういう意味では、現在平均が夫婦二人で月当たり大体二十二万というふうに言われておりますが、これは読める費用ということになっております。
それから、その上の医療費の問題でございますが、これはサラリーマンの場合を例にとりますと、在職中は本人負担部分というのが一割ございまして、それからリタイアいたしますと国民健康保険の退職者医療というのがございますので、本人負担部分が二割になります。それから七十歳になりますと老人医療の扱いになりますので、ですから、定年をお迎えになってこの間というのが本人負担が二割、これまでが一割で、七十歳以降になりますと、老人医療ですから若干一部定額負担部分がございますが、かなり軽減されるということになります。ですから、これも七十歳以降になりますと定額方式ですから、かなり読める
世界になってくるわけです。
最後は介護費の問題になります。これは先ほど申し上げましたように、現在時点では大体四%ないし五%が六十五歳以上の発生率というふうになっておりますが、これが非常に読みにくい、こういうことでございます。したがいまして、先ほどの二枚目のところに「経済的に不安定」ということで、左の上から二番目の
数字でございますが、六十歳から六十四歳、この比較的老年の若い層での不安というのが三五%という
数字が出ております。七十五歳以上になりますと一六・四%、こういうことで徐々に
数字が下がるという
お話を申し上げたかと思いますが、結局この介護費というこのあたりの
数字がやはり非常に不安材料として出てくるのではなかろうか、こんなふうに思っておるわけでございます。
そういう意味で、これへの
対応策といたしまして、介護保険といいますか介護のための保険システムというのが必要になってくるわけでございます。これは公的な保険システム、さらに民間のシステム、この両方があろうかと思いますが、これが
一つございます。それからもう
一つは保険ですとか医療・福祉
サービスの充実、こういう問題が一方であろうかと思います。
したがいまして、最近非常に言われております在宅
サービスの促進でございますね、家庭内の介護の充実の問題ですとか、デイ
サービスあるいはショートステイ
サービスの普及の問題ですとか、ボランティア
活動の活用ですとか、こういったことで公的な
サービス、さらには民間の
サービスをまぜたような形の在宅
サービスの促進というのがやはり
一つの大きな問題になってくるのではなかろうかというふうに考えてございます。
それから、ファイナンスの問題につきましては、また後ほど御質問等が出てまいるようでございましたら御説明させていただきますが、ちょっと割愛させていただきます。
次に、四番目のシルバー
サービス振興会のことにつきまして若干触れさせていただきたいと思います。
けさの読売新聞ですかにシルバー
サービス振興会の記事が出ておりましたので、あるいはごらんになった方がいらっしゃるかと思いますが、これは厚生省と民間の企業が一体となりまして昨年の三月につくった団体でございまして、先ほど来申し上げておりますように、
高齢化が進む中で福祉
サービス面を考えた場合に、やはり
高齢者のニーズが非常に増大してしかも多様化する、こういう中にあるわけですが、その中で公的施策をもっと推進するべきだと思います。ですけれども、公的
サービスだけでは量的にも質的にもやはり限界があるのではなかろうか、こんなふうに思っております。
現状を見てみますと、金があっても要するに欲しい
サービスがなかなかない、自由なニードに
対応する多様な商品、
サービスの提供が求められておる、こういうような
現状でございます。このようなことから、シルバー
サービス分野に多数の、しかも多様な形での企業の参入が既に始まりつつございます。しかし、シルバー
サービスというのは御承知のようにまだ揺籃期でございまして、したがいまして正しい
現状認識のもとに
動向を見きわめる必要があろうかと思います。
そこで、民間企業といいますのは真っ正面からこのシルバー
サービスに取り組みまして、正しい役割を果たすことにより国民の理解を得よう、こういう趣旨でこの振興会がつくられたわけでございます。
最近の振興会の動きを申し上げますと、先ほど来申し上げておりますように正しい役割を果たすという、こういうことからみずから倫理綱領を作成いたしまして、自主的な品質、
サービス基準を定めて、その基準をクリアする企業にはシルバーマーク、これはJISマーク風のものかと思いますが、シルバーマークを交付する、こういう動きを最近しております。
結論を申し上げますと、やはり公的施策と創造性あるいは効率性を持つ民間
サービスとがお互いの役割分担を果たすことがこれからの
高齢化対応の核といいますか、コアになるものと私
自身は確信しておるわけでございまして、こういうシルバー
サービス振興会というのがこれからどんどん所期の
活動を続けていくことを期待してやまない次第でございます。
以上、非常に時間の関係ではしょりましたので不十分な点も多々あったかと思いますが、私の御報告とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)