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参考人(
佐長勉君) 御指名くださいました
全国公団住宅自治会協議会の
代表幹事の
一員であります
佐長勉でございます。関西自治協の事務局長をしています。関西人ですから時々関西弁が出ると思いますけれどもお許しいただきたいと思います。
私は、
服部先生や堀内先生の地元である奈良県の紀寺
団地に
昭和三十九年から住んでおります。また、私は、今
先生方にお配りをしております新聞の切り抜きですが、例の暴力団事件で有名になりましたさざなみプラザ
団地で、住民が自治会をつくっていい
団地にしていこう、こういうことで頑張っておりますし、路上駐車の問題などでも
建設省にお願いしたり、いろんなことをして、安心して住み続けられる
公団住宅を実現するために頑張っております。
今度の
家賃値上げに関して、
建設大臣の承認以前に、国権の最高機関である国会で集中審議をしていただき、本当にありがとうございます。
建設委員会の
先生方には心から感謝を申し上げます。
それでは、全国自治協の
代表として、
団地居住者及び
公団住宅に入居したいと願っている多くの勤労者の立場から、今度の値上げ案と
ルールに
賛成できないことを申し上げたいと思います。ただ、誤解がないようにしていただきたいと思うのでございますが、絶対反対というふうな印象がありますけれども、そうでないということを前もって申し上げたいと思います。
賛成できない問題は四つございまして、第一に、
公団基本問題懇談会家賃部会の
運営の
あり方です。第二に、
家賃改定の
必要性及び
基本的な考え方です。第三に、
家賃算定方法です。第四に、
家賃値上げに対する
公団住宅の
居住者の不安や
生活実態の問題です。この四点について、過去の経過を踏まえながら、
賛成できない
内容を申し上げます。
第一に、
昭和五十八年四月十二日のこの
建設委員会で、「
公団は、今後の
家賃の
改定について、適切な手続きに基づく必要な
ルール作りを行い、
改定が公正かつ円滑に」云々と
委員長要望が
公団に出されました。そして、私たちは、国会
要望の全面実現運動を内外に呼びかけ、将来にわたって
公団と自治会、自治協との
関係を円滑なものにすることが大切であるということから、
家賃裁判和解運動に取りかかりました。
昭和五十九年七月十四日から
家賃裁判和解のための交渉を進めてまいりました。そして、九月二十二日の交渉のときに、
家賃改定の
ルールは将来の紛争防止のために必要であるが、その
意味で
ルールの策定なしには次回の
家賃改定はしないと理解するがと、こう
公団に尋ねた。
公団はそのとおりだと答えました。私たちは、この
公団の回答を
家賃裁判和解に値すると評価したんです。すべての
団地の
居住者は
公団のこの約束を信じました。さらに、
昭和六十年三月十九日の
家賃裁判和解の
建設大臣あっせん
内容も信じました。
ところが、昨年十二月二十一日に突如として提示された
ルールなるものは、次回値上げとセットされたものでした。私らは、
ルールなくして値上げなしという
公団の約束が一方的に破られたことに強い憤りを感じたわけです。しかも、その後の
家賃部会の
議論を見ると、審議回数はわずか四回、その時間は何と実算討議は七時間というではありませんか。そして値上げ案の
内容は、
前回の値上げまでは最大の根拠にしていた
公営限度額方式を変質させておりまして、地価の
上昇に合わせた値上げを目的としたものでした。そして
補正率という
方法を新たに導入しているのです。この間
公団に聞いてみました。
公団の話では、
補正率の公表は
算定のプロセスにおける数値を示すことであり、
居住者の
方々に無用の不安と混乱を招くおそれがあるから公表しないんだということでありました。
このような進め方や
内容では、
改定が公正かつ円滑になるようにという国会
要望にほど遠いものであります。私たちに円滑な
関係として理解できるかと言われても無理だ。私は、円滑な
関係を確立していくというのは、双方の話し合いの機会をもっと多くしていくとかあるいは
家賃部会に自治協
代表の
委員を複数で参加させる、こういう工夫をすべきだと思います。
第二に、
家賃改定の
必要性及び
基本的な考え方の問題であります。
公団が
家賃改定の大臣
申請前に全戸配布したビラによると、
改定の理由として、
一つに
公団住宅相互間の
家賃の不
均衡是正、二つに
修繕費等
維持管理経費の確保、三番目に国民的視点の三点を挙げております。しかし、不
均衡是正という理由は過去二回の値上げ理由にも使いました。これは、既存
住宅の
家賃と新設
住宅の高
家賃を比較して、既存
住宅の
家賃を高い
家賃に限りなく近づけていこうとするものです。十五万円とか二十万円の
家賃の
住宅をつくっておいて、公共
住宅としての
あり方が問われていることについての政府、
公団の責任を不問にした比較論で値上げすることは認められないのであります。
また、
修繕費、維持管理費の確保が理由になっておりますが、例えば過去二回の
家賃値上げ
増収額は二千六百十八億円であります。そのうち二千四億円を
修繕費、維持管理費に使ったと言われております。私は、こうした総額が公表されることは大事だと思いますが、それ以上に、どこにどれだけの
費用が使われたのかという明細を明らかにすることが最も重要だと思っております。このことの実行がなければ納得できないわけであります。
そして、国民的視点という理由が今度の値上げ理由として目立っております。
公団住宅は国民共有の貴重な財産ですから国民的視点で考えることには
賛成です。しかし、ビラに書かれている
内容で、
税金から多額の援助の問題や受益者の特定化と応募率の問題については納得できないところがございます。
税金の問題では、
公団住宅は本来公共
住宅でありますから、国の施策上、財政的な援助があって当然であるというふうに思うわけであります。受益者の特定化と応募率の問題では、公共
住宅、
公団住宅の量が決定的に少ない、ここに原因があるということを言わなければなりませ
ん。
そして重要なことは、総務庁が発表している公共料金四十品目の中に
公団家賃が含まれております。公共料金の特徴は安定性にあります。
公団家賃が三年
ごとに値上げされるということでは、安定性が失われようとしていることに大きな問題があると思っております。
第三に、
家賃算定方法の問題です。
関西に武庫川
団地、レインボータウンという関西最大の
団地がございます。この
団地は、高
家賃のため入居希望者がなかったのですが、
公団は
入居者を確保するため
家賃を次々とダンピングしていきました。
家賃を安くすることはよいことです。本来
公団家賃は個別原価
方式で決定され、それを七十年間で償却するという仕組みになっております。ところが、
家賃のダンピングによって個別原価
方式を崩す結果になりました。このダンピングした
家賃はどこで取り戻すのでしょうか。この結果、
公団は
家賃設定を需給バランスによって設定する
方法に変えたとしか思えないのです。
今度提示されている
家賃算定の新たな要素として
補正率なるものが出されています。この
補正率はさきに述べた需給バランスから発想したように思えてなりません。しかも、
補正率の中に地価が大きく反映する
内容になっております。これを導入することは、
公団家賃を市場
家賃というかあるいは相場
家賃に近づけることになるので、将来は
民間家賃並みになることは必至だと思います。このような
算定内容は容認できません。再考を強く
要望いたします。
第四に、
家賃値上げに対する
公団居住者の不安や
生活実態の問題について述べます。
私は、たくさんの
団地の自治会主催の
家賃値上げ問題学習会に行きます。ことしの学習会の特徴はお年寄りの参加者が非常に多いことです。寒風が吹いている中、夜遅くても、集会所から遠くても参加してくるのです。そして熱心に私の話を聞いてくれます。なぜこのような状況になったのか、答えは簡単であります。収入の低下と医療費の増大など経済的状況が深刻化しているからです。
委員の
先生方にお配りさせていただきました
居住者実態
調査をごらんください。世帯主五十歳以上が全国で三二・四%を占めております。世帯の総収入は、第一分位に属する世帯が三二・八%です。第二分位に属する世帯が二八・六%です。関西では第一と第二分位で六六・七%となっており、
生活の深刻度は高くなっているのです。
公団は三年
周期の値上げを考えていますよと、こう話をいたしますと、不安の
気持ちがぱあっと集会所に広がります。また、
公団は三回の値上げ分の
敷金を払えと言うていると話をしますと、国会で取らぬと決めたんやろ、何で蒸し返すんやという声が集会所いっぱいになります。学習会を終えて帰る私に、お年寄りの方が手を合わせて拝みます。こんなときの私の
気持ち、
総裁わかりますか。また、こんなことを言われたこともあります。
公団は年寄りと貧乏人は死ねというのか、聞いてほしいとね。過去の二回の値上げによる
特別措置は、五十三年の値上げでは三百四世帯、五十八年の値上げでは三百六世帯でした。この実態を知っているからこそこのような声が出てくるのです。
建設大臣は過日の集中審議で、
家賃が払えないからといって日本から出ていけとは言っていないという趣旨の発言をいたしました。どうか、収入が十万円や十二万円しかない老人や
社会的弱者を
公団から出ていけと言わない実効ある施策を講じてください。よろしくお願い申し上げます。
そしてもう
一つの特徴は、主婦からの声であります。二回も値上げして
修繕なんかしてくれへんやんか、値上げのときの約束であった窓枠のアルミサッシ化なんかほとんど進んでいないやんか、三十年代の
住宅は建てかえや言うて
修繕対象から外してるやん、それでも値上げだけはきっちりやりよる、やらずぶったくりやんか、こういう不満の声が非常に多いことであります。中には私を
公団の職員と間違えて、真剣に抗議してくる場面もあるわけです。
最後に、私は、
修繕費などに必要な
費用はその
内容と経理がはっきりしていれば支払います。しかし、現在でも八万円あるいは十万円もする
家賃まで今度また値上げしようとする値上げ案には反対です。
公団から
申請の出ている値上げ案の再
検討をお願い申し上げます。
次の問題について
委員長初め
委員の
先生方に御尽力いただくことを希望申し上げる。
第一は、
公団が国会
要望決議を公共
住宅制度存続発展の立場で守り、その実現に努力するようにしてください。
第二は、
家賃改定ルールは円滑な
関係を築くのにほど遠い
内容です。引き続き審議をするようにしてください。
第三は、
居住者の
生活実態を踏まえて、安心して継続入居ができる諸施策を拡充及び導入してください。
第四は、公共
住宅の決定的な不足と高
家賃を糊塗するため、今回の
家賃改定を機会に、継続居住の
家賃が安過ぎる論が広げられています。これは、公共
賃貸住宅の供給を高
家賃政策に組み込み、特定階層
住宅化、
公団住宅の場合は
所得の第三分位中位以上の世帯というふうに言っておりますが、そこに固定化しようとする目的があるように思えてなりません。安くて住みやすい公共
賃貸住宅の大量
建設の政策を軽視しないで、
住宅に困窮する多くの国民を大切にしてください。
第五に、値上げ
周期の三年はやめてください。
まだ申し上げたいことがありますが、時間がちょっとオーバーいたしました。
先生方からの
質問の際に機会がありましたら発言させていただきたいと思います。
以上、
参考人としての発言を終わります。お聞きいただきましてありがとうございました。