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国務大臣(
田村元君) 先般、第二十七回のOECD閣僚理事会がパリで十八日から十九日、二日間ございました。
出席者は、
我が国からは中尾企画
庁長官、宇野外務大臣、そして私、三閣僚並びに各省
関係の役人、それでOECD加盟二十四カ国の代表閣僚が六十人集まったわけであります。大変豪華な顔ぶれの
会議でございました。
それで、まず中身を申し上げます前に、私が抱きました感懐というものを申し述べてみたいと思います。
今おっしゃったように、昨年も私は出席をいたしましたが、昨年は
アメリカに対しては双子の赤字の削減、競争力強化、そして
日本とドイツには内需の拡大、構造調整というようなものが特掲されて求められたわけでありますけれ
ども、特に
日本に対しては非常に厳しいものがございました。ノートリアス・ジャパン、悪名高き
日本というような言葉まで飛び出しました。それが昨年でございました。とにかく口を開けば
日本に対する批判、攻撃、それは幾たびこぶしを握りしめたことかわかりませんでした。
それが一年たちました今回は、全然様子が変わりまして、各国の閣僚がスピーチをいたしますと必ずといっていいぐらい
日本礼賛でありまして、
日本は立派に政策協調の約束を守った、そのパフォーマンスというものは見事なものである、皆
日本を見習わねばならぬというような礼賛でございました。中尾君や私
どもは本当に感無量の気持ちで聞き入ったわけであります。
と同時に、もはや
日本と
アメリカとドイツを抜いての世界経済の会合はあり得ない、そのうちの一国が抜けても、もうその会合はあり得ないといってもいいぐらいの
日本の国際的な地位が築かれたわけであります。それだけにもちろん批判もありますけれ
ども、しかし現在の
日本に対しては大変評価は高うございました。ただし、農業を除いてはということでございます。これは私も中尾君も農業はちょっと
関係がないものですから、外務大臣が対応されましたけれ
ども、ただその農業の場合も割合に
日本は集中攻撃を受けなかった。それはヨーロッパが農業問題では全く
アメリカあるいはケアンズ・グループとは対立した立場に立っておりますから、だから割合に
日本と、中身は違いますけれ
どもよく似た立場にあるものですから、ヨーロッパがおおむね受けて立った。それで
日本はそれについていったようなことだというふうに我々はそばではそういうふうに見ておったわけです。
というようなことから、ちょっと中身について申し上げますと、まずマクロ経済でございますけれ
ども、これは大変
日本に対する評価が高うございまして、今申し上げたようなことでございました。
それから農業問題は、これは
アメリカとECが主役を演じたわけでございまして、双方の折れ合うところで一応の結着が最終的についたようでございますが、私
ども担当でありませんので、これは御遠慮申し上げます。
それから、アジアNICSに関する問題であります。NICSにつきましては、為替調整や貿易政策など対話の対象範囲を明示しようとする
アメリカ、そしてNICSへの配慮から明示を避けるべしとする
我が国及び
我が国に同調するヨーロッパあるいはオセアニア諸国に
意見が分かれました。結果は穏健な対応が必要ということで対象範囲は明示いたしませんでした。なお、実はそのNICS問題が議論される前の晩に、議長招待ディナーで、議長から私にNICSに対してどう考えるかというので私の考えを述べたところ、議長はいいお考えだ、それをぜひやってくださいというようなことでございまして、議長の求めに応じまして私からアジアNICS諸国の経済動向、経済の脆弱性、輸出面のみならず輸入面での役割、つまり市場規模の拡大の評価等を説明いたしまして、慎重な対応の必要性について理解を求めました。
つまり、アジアNICSはまだまだ一人当たりのGDPは先進国の四分の一まででありますし、それから世界貿易に与える影響、そのシェアというものはわずかそれぞれ一、二%ぐらいであります。それから輸出というものが経済の六〇%を占めておるというようなことで、今これに対して特恵関税その他の問題で、彼らに与えられておる特椎を今剥奪したならば、アジアNICSは大変なパニック
状態に陥って、中南米の累積債務途上国の二の舞をしてしまう。今アジアNICSに対して性急に攻めるべきではない。同時に、例えば
日本の場合はもうアジアの一員だからこれは特別として、アジアNICSに反対しておる
アメリカを例にとっても、
アメリカの輸出量というものは中南米よりも多いのであります。アジアNICS、いわゆる四匹のトラと言われておるアジアNICS四カ国のGNPの倍が中南米の中進国だ。それよりも
アメリカはたくさん売り込んでおるわけです。ですから、脅威と受けとめるより、むしろ市場参入の世界経済への貢献という点で、よき機会、オポチュニティーとしてこれを見るべきではないのかと言って私は頑張ったわけです。
おかげさまで大変ヨーロッパの閣僚たちも賛成してくれまして、特に前のイタリーの総理大臣のファンファーニという人がおります。イタリーという国は、おもしろいというのでしょうか、ファンファーニさんは前の総理大臣で、去年のサミットのときには主催国の総理でありましたから、私は頭を下げて握手を賜ったわけですが、今度OECDへ行ったら、ひょいと見たら、一個の大臣として座っているわけです。それで中尾長官とえら
い仲よくなりまして、NICS問題で、中尾長官、
日本の言うことは正しい、おまえたちの言うことは正しいとえらい絶賛してくれたそうでありますが、そういうようなことでございました。
ウルグアイ・ラウンドにつきましては、その関心が急速に十二月の中間レビューの成果に移っております。
それから、構造調整政策の重視は昨年の閣僚
会議においてもある
程度出されましたが、マクロ政策の限界を認識して一層明確なものとなったということが言えます。
その他、閉鎖的な地域主義の回避とか、あるいは投資保護主義などの新保護主義の防圧等につきましても私もその必要性を訴えましたが、これらはすべてコミュニケに盛られることとなりまして、保護主義に対する懸念の大きさが示されたというわけでございます。
大体以上でございますけれ
ども、
我が国に対して各国のやはり関心というものは、
アメリカ経済は余り当てにならない、
日本から見たというわけじゃありません。諸外国の言うことは、そういうときに、おまえのところは、
日本とドイツが今後も内需の拡大をしっかりやってくれて、そうして世界経済の大きな変動のないように大黒柱になってくれなきゃ困るよというような声が圧倒的でございました。
大体以上でございますが、また中尾長官から補足してもらうことにいたします。